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特表2024-525959ランチオニン合成酵素C様タンパク質(LanCL)に結合可能なペプチド組成物およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ランチオニン合成酵素C様タンパク質(LanCL)に結合可能なペプチド組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/09 20060101AFI20240705BHJP
   C07K 5/11 20060101ALI20240705BHJP
   C07K 7/04 20060101ALI20240705BHJP
   C07K 7/64 20060101ALI20240705BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240705BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C07K5/09 ZNA
C07K5/11
C07K7/04
C07K7/64
C12N15/11 Z
A61K38/06
A61K38/07
A61K38/08
A61K38/10
A61P3/00
A61P3/04
A61P1/14
A61P3/06
A61P3/10
A61P11/00
A61P17/02
A61P19/00
A61P21/00
A61P21/04
A61P25/00
A61P25/06
A61P25/16
A61P25/20
A61P25/28
A61P27/02
A61P31/14
A61P31/16
A61P31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504021
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 AU2022050778
(87)【国際公開番号】W WO2023000038
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】2021902267
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520260832
【氏名又は名称】ラテラル、アイピー、プロプライエタリー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LATERAL IP PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー、ギアリング
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド、ケンリー
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA15
4C084BA16
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA53
4C084CA59
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA081
4C084ZA082
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB321
4C084ZB322
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC351
4C084ZC352
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA12
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045EA21
4H045EA29
(57)【要約】
本発明は、ランチオニン合成酵素C様タンパク質(LanCL)に結合可能な、鎮痛、抗炎症および抗微生物特性を有する種々のペプチド組成物を提供する。組成物は、ペプチド式(I):X-X-X-X-X-Xを含み、式中、Xは、特定のアミノ酸の群を表し;ペプチドは3~20アミノ酸長であり;配列CRSRPVESSC、CRSVEGSCGまたはCRIIHNNNCを含まず;配列EQLERALNSSを含む直鎖状ペプチドではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランチオニン合成酵素C様(LanCL)タンパク質に結合可能なペプチドであって、
前記ペプチドが、式(I)のアミノ酸配列:
-X-X-X-X-X (I)
[式中、
(a)Xは、リジン、アルギニンおよびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXは存在せず、
(b)Xは、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、システイン、チロシンおよびセリンからなる群から選択され、
(c)Xは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群から選択され、
(d)Xは、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、アルギニン、グルタミン、チロシン、アスパラギン酸、リジン、グルタミン酸、プロリンおよびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXは存在せず、
(e)Xは、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、アルギニン、グルタミン、チロシン、リジン、ヒスチジンおよびグリシンからなる群から選択されるか、またはXは存在せず、かつ、
(f)Xは、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシンおよびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXは存在しない。]
を含み、
前記ペプチドが、3~20アミノ酸長であり、
前記ペプチドのアミノ酸配列が、CRSRPVESSC、CRSVEGSCGまたはCRIIHNNNCを含まず、かつ、
前記ペプチドが、アミノ酸配列EQLERALNSSを含む直鎖状ペプチドではない、前記ペプチド。
【請求項2】
がアルギニンである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
が、アラニン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニンおよびセリンからなる群から選択される、請求項1または2に記載のペプチド。
【請求項4】
が、バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
が、アスパラギン、グルタミン酸、プロリンおよびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXが存在しない、請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
が、アスパラギン、グルタミン酸、プロリンおよびヒスチジンからなる群から選択される、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
が存在しない、請求項5に記載のペプチド。
【請求項8】
が、セリン、アスパラギンおよびグリシンからなる群から選択されるか、またはXが存在しない、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項9】
が、セリン、アスパラギンおよびグリシンからなる群から選択される、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
が存在しない、請求項8に記載のペプチド。
【請求項11】
が、セリンもしくはアスパラギンであるか、またはXが存在しない、請求項1~10のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項12】
が、セリンまたはアスパラギンである、請求項11に記載のペプチド。
【請求項13】
が存在しない、請求項11に記載のペプチド。
【請求項14】
前記式(I)のアミノ酸配列において、
(a)Xが、リジン、アルギニンおよびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択され;
(b)Xが、アラニン、イソロイシン、プロリン、セリンおよびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択され;
(c)Xが、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択され;
(d)Xが、アスパラギン、グルタミン酸およびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択されるか、またはXが存在せず;
(e)Xが、セリン、グルタミンおよびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択されるか、またはXが存在せず;かつ、
(f)Xが、セリンもしくはその保存的アミノ酸置換であるか、またはXが存在しない、請求項1に記載のペプチド。
【請求項15】
前記式(I)のアミノ酸配列において、
(a)Xが、リジンまたはアルギニンであり;
(b)Xが、アラニン、イソロイシン、プロリンおよびセリンからなる群から選択され;
(c)Xが、バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群から選択され;
(d)Xが、アスパラギンもしくはグルタミン酸であるか、またはXが存在せず;
(e)Xが、セリンもしくはグルタミンであるか、またはXが存在せず;かつ、
(f)Xがセリンであるか、またはXが存在しない、請求項14に記載のペプチド。
【請求項16】
前記ペプチドが、RAL、RALN、RALNS、RALNSS、RSV、RSVE、RSVEG、RSVEGS、RPV、RPVE、RPVES、RPVESS、RII、RIIH、RIIHNおよびRIIHNNからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項17】
前記ペプチドが、RAL、RALN、RALNS、RALNSS、RSV、RSVE、RSVEG、RSVEGS、RPV、RPVE、RPVES、RPVESS、RII、RIIH、RIIHNおよびRIIHNNからなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、請求項1~15のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項18】
前記ペプチドが、アミノ酸配列RALNSSを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項19】
前記ペプチドが、アミノ酸配列RALNSSからなる、請求項1~15のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項20】
前記ペプチドが、環状ペプチドである、請求項1~19のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項21】
前記環状ペプチドが、2つのシステイン残基間のジスルフィド結合によって形成されている、請求項20に記載のペプチド。
【請求項22】
前記環状ペプチドが、アミノ酸配列CQEQLERALNSSCを含む、請求項21に記載のペプチド。
【請求項23】
前記環状ペプチドが、アミノ酸配列CQEQLERALNSSCからなる、請求項21に記載のペプチド。
【請求項24】
前記ペプチドが、アミノ酸配列CRALNSSCを含む、請求項21に記載のペプチド。
【請求項25】
前記ペプチドが、アミノ酸配列CRALNSSCからなる、請求項21に記載のペプチド。
【請求項26】
前記ペプチドが、アミノ酸配列CRSVEGSCGからなるペプチドとLanCLへの結合について競合することができる、請求項1~25のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項27】
が存在しない、請求項1に記載のペプチド。
【請求項28】
が存在しない、請求項14または15に記載のペプチド。
【請求項29】
前記ペプチドが、アミノ酸配列ALNSSを含む、請求項27または28に記載のペプチド。
【請求項30】
前記ペプチドが、アミノ酸配列ALNSSからなる、請求項27または28に記載のペプチド。
【請求項31】
前記式(I)のアミノ酸の1または2以上が、D-アミノ酸である、請求項1~30のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項32】
前記ペプチドが、アミノ酸配列QEQLERALNSSを含む直鎖状ペプチドではない、請求項1~31のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか一項に記載のペプチドを含む医薬組成物。
【請求項34】
対象における状態を治療する方法であって、治療有効量の請求項1~32のいずれか一項に記載のペプチドを、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項35】
前記状態が、疼痛、炎症性気道疾患、微生物感染症、呼吸器感染症、片頭痛、サルコペニア、耐糖能障害、糖尿病、肥満、代謝性疾患および肥満に関連する状態、変形性関節症、筋肉の障害、消耗性疾患、老化、悪液質、食欲不振、AIDS消耗症候群、筋ジストロフィー、神経筋疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、炎症性ミオパチー、眼科的状態、中枢神経系の状態、神経変性状態、パーキンソン病、アルツハイマー病、熱傷、創傷、傷害または外傷、LDLコレステロールの上昇に関連する状態、軟骨細胞、プロテオグリカンまたはコラーゲンの産生または品質の障害に関連する状態、軟骨組織の形成または品質の障害に関連する状態、筋肉、靭帯または腱の量、形態または機能の障害に関連する状態、筋肉または結合組織に影響を及ぼす炎症、外傷または遺伝子異常に関連する状態および骨障害からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記状態が、疼痛である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記状態が、神経障害性疼痛である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記状態が、炎症性気道疾患である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記炎症性気道疾患が、慢性閉塞性肺疾患である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記状態が、呼吸器感染症である、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記呼吸器感染症が、呼吸器ウイルス感染症である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ウイルスが、インフルエンザウイルスまたはコロナウイルスである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
それを必要とする対象における状態を治療するための医薬の製造における、治療有効量の請求項1~32のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項44】
前記状態が、疼痛、炎症性気道疾患、微生物感染症、呼吸器感染症、片頭痛、サルコペニア、耐糖能障害、糖尿病、肥満、代謝性疾患および肥満関連状態、変形性関節症、筋肉の障害、消耗性疾患、老化、悪液質、食欲不振、AIDS消耗症候群、筋ジストロフィー、神経筋疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、炎症性ミオパチー、眼科的状態、中枢神経系の状態、神経変性状態、パーキンソン病、アルツハイマー病、熱傷、創傷、傷害または外傷、LDLコレステロールの上昇に関連する状態、軟骨細胞、プロテオグリカンまたはコラーゲンの産生または品質の障害に関連する状態、軟骨組織の形成または品質の障害に関連する状態、筋肉、靭帯または腱の量、形態または機能の障害に関連する状態、筋肉または結合組織に影響を及ぼす炎症、外傷または遺伝子異常に関連する状態および骨障害からなる群から選択される、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
それを必要とする対象における状態の治療に使用するための、請求項1~32のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項46】
前記状態が、疼痛、炎症性気道疾患、微生物感染症、呼吸器感染症、片頭痛、サルコペニア、耐糖能障害、糖尿病、肥満、代謝性疾患および肥満関連状態、変形性関節症、筋肉の障害、消耗性疾患、老化、悪液質、食欲不振、AIDS消耗症候群、筋ジストロフィー、神経筋疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、炎症性ミオパチー、眼科的状態、中枢神経系の状態、神経変性状態、パーキンソン病、アルツハイマー病、熱傷、創傷、傷害または外傷、LDLコレステロールの上昇に関連する状態、軟骨細胞、プロテオグリカンまたはコラーゲンの産生または品質の障害に関連する状態、軟骨組織の形成または品質の障害に関連する状態、筋肉、靭帯または腱の量、形態または機能の障害に関連する状態、筋肉または結合組織に影響を及ぼす炎症、外傷または遺伝子異常に関連する状態および骨障害からなる群から選択される、請求項45に記載の使用のためのペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、疼痛、炎症状態および呼吸器感染症等の状態の治療に適したペプチドおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において引用される特許または特許出願を含むすべての参考文献は、本発明の完全な理解を可能にするために、参考として本明細書に組み込まれる。しかしながら、このような参考文献は、これらの文献のいずれかが、オーストラリアまたはその他の国における当該技術分野における一般的な知識の一部を形成していることを認めるものとして読まれるものではない。
【0003】
Leeら(Int J Mol Sci.,2019年,20(10):2383頁)によって記載されているように、タンパク質間相互作用(PPI)は、ほとんどすべての細胞プロセスの基礎である。それらの生化学的プロセスは、多くの場合、核酸の転写および/または翻訳されたタンパク質の翻訳後修飾を調節する一連の細胞シグナル伝達事象を間接的または直接的に制御する活性化受容体で構成されている。このような受容体に特異的に結合する薬物は、アゴニストまたはアンタゴニストとして作用し、細胞挙動に下流の結果をもたらし得る。したがって、PPIを阻害するペプチドおよび低分子は、疾患関連タンパク質の相互作用を調節する可能性があるため、治療剤として求められている。著者らは、標的化可能な疾患関連PPIのより良い同定とペプチド薬物結合特性の最適化が、臨床的成功の鍵となるだろうと指摘する。しかしながら、PPIの分子認識機構を理解し、結合親和性を明らかにすることは、計算生物学者にとってもタンパク質生化学者にとっても複雑な課題であり、これは主として、PPI複合体界面に一般的に存在する、大きく平坦な疎水性結合界面と比較して、タンパク質の深い折りたたみポケットへの結合において、低分子が優れているためである。抗体は一般に、PPI界面を認識するのにより有効ではあるが、細胞膜を透過して細胞内の標的に到達し認識することは一般的にはできない。著者らは、近年、低分子薬物の5倍までの大きさで、バランスのとれたコンフォメーション柔軟性と結合親和性を有するペプチドが非常に注目されていることを指摘する。例えば、環状ペプチドは、例えば、抗体のような強固な結合親和性と最小限の毒性を維持しながらも、長期のin vivo安定性がある低分子薬物の特性を有する。
【0004】
de la TorreとAlbericio(2020年;Molecules;25(10);2293頁)は、ペプチドベースの創薬分野が最近著しい活況を呈していることを報告しており、2015年から2019年までに、米国食品医薬品局(FDA)は208の新薬を認可し、そのうち150が新規化学物質であり、58が生物製剤であり、15のペプチドまたはペプチド含有分子を含むことを指摘した。これらの中には、イキサゾミブ(多発性骨髄腫治療のためのN-アシル化C-ボロン酸ジペプチド)、アドリキシン(骨粗鬆症治療のための副甲状腺ホルモン関連タンパク質の34アミノ酸アナログ)、エテルカルセチド(副甲状腺機能亢進症の治療のための、ジスルフィド架橋を介してL-Cysに結合したAc-DCys-DAla-(DArg)-DAla-DArg-NH)およびアファメラノチド(皮膚損傷および疼痛の治療のためのα-メラノサイト刺激ホルモン(αMSH)の13アミノ酸直鎖状ペプチドアナログ)が挙げられる。著者らは、FDAによって承認されたペプチドベースの治療薬の適応症は、腫瘍学、代謝学および内分泌学が最も多いが、心臓血管学、消化器病学、骨疾患、皮膚科学および性機能障害もまた、FDAによって承認された、ペプチドベースの治療薬が標的とする適応症であると指摘する。
【0005】
タンパク質および抗体等の低分子と比較して、ペプチドは、それらの生化学的および治療的な独特の特性に基づく、ユニークなクラスの医薬化合物である。ペプチドベースの天然ホルモンアナログに加えて、ペプチドは、タンパク質間相互作用(PPI)を破壊し、受容体型チロシンキナーゼのような細胞内分子を標的化または阻害するための薬物候補として開発されてきた。このような戦略により、ペプチド治療薬は、年間20件近くの新しいペプチドベースの臨床試験が行われるリーディング産業となった。実際、現在世界的に臨床開発中のペプチド薬物は400を超え、米国、欧州および日本では、すでに60以上が臨床使用について承認されている。
【0006】
ペプチドベースの治療薬は、かなりの進歩があるものの、ペプチドベースの治療薬の大部分は、これらのペプチドベースの治療薬が標的とするPPIおよび細胞シグナル伝達経路に対応する特定の疾患および状態の治療に制限されている。したがって、細胞の老化、損傷またはストレスに関連するものを含む、複数の疾患、状態またはそれらの症状を有効に緩和することができる、広域スペクトルのペプチドベースの治療戦略が継続的に必要とされている。本発明は、広域スペクトル活性、例えば、鎮痛活性、抗炎症活性および抗微生物活性を有する治療用のペプチドを提供することにより、この制限を解除するか、または少なくとも部分的に緩和する。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に開示される態様において、ランチオニン合成酵素C様(LanCL)タンパク質に結合可能なペプチドであって、
前記ペプチドが、式(I)のアミノ酸配列:
-X-X-X-X-X (I)
[式中、
は、リジン、アルギニンおよびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXは存在せず、
は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、システイン、チロシンおよびセリンからなる群から選択され、
は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群から選択され、
は、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、アルギニン、グルタミン、チロシン、アスパラギン酸、リジン、グルタミン酸、プロリンおよびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXは存在せず、
は、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、アルギニン、グルタミン、チロシン、リジン、ヒスチジンおよびグリシンからなる群から選択されるか、またはXは存在せず、かつ、
は、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシンおよびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXは存在しない。]
を含み、
前記ペプチドが、3~20アミノ酸長であり、
前記ペプチドのアミノ酸配列が、CRSRPVESSC、CRSVEGSCGまたはCRIIHNNNCを含まず、かつ、
前記ペプチドが、アミノ酸配列EQLERALNSSを含む直鎖状ペプチドではない、前記ペプチドが提供される。
【0008】
本明細書に開示される別の態様において、ランチオニン合成酵素C様(LanCL)タンパク質に結合可能なペプチドであって、
前記ペプチドが、式(I)のアミノ酸配列:
-X-X-X-X-X (I)
[式中、
は、リジン、アルギニンおよびヒスチジンからなる群から選択され、
は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、システイン、チロシンおよびセリンからなる群から選択され、
は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群から選択され、
は、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、アルギニン、グルタミン、チロシン、アスパラギン酸、リジン、グルタミン酸、プロリンおよびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXは存在せず、
は、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、アルギニン、グルタミン、チロシン、リジン、ヒスチジンおよびグリシンからなる群から選択されるか、またはXは存在せず、かつ、
は、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシンおよびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXは存在しない。]
を含み、
前記ペプチドが、3~20アミノ酸長であり、
前記ペプチドのアミノ酸配列が、CRSRPVESSC、CRSVEGSCGまたはCRIIHNNNCを含まず、かつ、
前記ペプチドが、アミノ酸配列EQLERALNSSを含む直鎖状ペプチドではない、前記ペプチドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、タキソールストレス負荷A549腺癌ヒト肺胞基底上皮細胞の生存性に対する配列番号1のペプチドの効果を示す。細胞をLanCL1 siRNA(100nM、48時間)で処理し、LanCL1発現をノックダウンした。次いで、細胞を、タキソール(IC50 約350μM)の存在下、インキュベートした。インキュベートは、ビヒクルのみ(ジメチルスルホキシド;DMSO)の存在下、または1、5、25、50および100μM濃度の配列番号1のペプチド(DMSOで希釈)の存在下で行った。Y軸は相対発光量(RLU)を示し、X軸はペプチドの濃度を示す。
図2図2は、タキソールストレス負荷A549細胞の生存性に対する配列番号9のペプチドの効果を示す。細胞を、ビヒクルのみ(DMSO)の存在下、または1、5、25、50および100μM濃度の配列番号9のペプチド(DMSOで希釈)の存在下で、タキソール(IC50 約350μM)を用いて処理した。Y軸は相対発光量(RLU)を示し、X軸はペプチドの濃度を示す。
図3図3は、神経障害性疼痛のラットChungモデルにおける同側の肢逃避閾値(PWT;グラム)に対するペプチドRSVEGS(配列番号9)、SVEGS(配列番号62)およびALNSS(配列番号63)の効果を示す。ビヒクル群と比較した場合、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(一元配置分散分析;群あたりn=6)。
図4図4は、神経障害性疼痛のラットChungモデルにおける対側の肢逃避閾値(PWT;グラム)に対するペプチドRSVEGS(配列番号9)、SVEGS(配列番号62)およびALNSS(配列番号63)の効果を示す(一元配置分散分析;群あたりn=6)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料を記載する。本発明の目的のために、次の用語を以下に定義する。
【0011】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書において、冠詞の文法的対象が1つであること、または1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)であることを指すために使用される。例として、「1つの要素」は、1つの要素または1つ以上の要素を意味する。
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「約(about)」は、基準となる量(quantity)、レベル、値、寸法、サイズまたは量(amount)に対して最大で10%(例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%)変化する量(quantity)、レベル、値、寸法、サイズまたは量(amount)を指す。
【0013】
本明細書を通して、文脈上別段の要求がある場合を除き、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、記載された工程もしくは要素または工程もしくは要素の群を含むことを意味するが、その他の工程もしくは要素または工程もしくは要素の群を排除することを意味しないと理解される。
【0014】
ペプチド
本発明者らは、以前に、鎮痛およびその他の治療特性が以前に認められていた新しいクラスの環状ペプチド分子の分子標的(ランチオニン合成酵素C様タンパク質;LanCL)を同定していた。この研究は国際公開第2021/127752号に記載されている。その後、本発明者らは、このクラスの環状LanCL結合ペプチドに従来認められていた、鎮痛活性、抗炎症活性および抗微生物活性を含む生物学的活性の少なくとも一部を予想外に保持するペプチドの新規コンセンサス配列(式(I))を同定した。さらに、本発明者らは、このコンセンサス配列を含む多くのペプチドが、環状ペプチドの形態で存在するか直鎖状ペプチドの形態で存在するかにかかわらず、生物学的活性を保持することを予想外に見出した。したがって、本明細書に開示される態様において、ランチオニン合成酵素C様(LanCL)タンパク質に結合可能なペプチドであって、
前記ペプチドが、式(I)のアミノ酸配列:
-X-X-X-X-X (I)
[式中、
は、リジン、アルギニンおよびヒスチジンからなる群から選択され、
は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、システイン、チロシンおよびセリンからなる群から選択され、
は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群から選択され、
は、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、アルギニン、グルタミン、チロシン、アスパラギン酸、リジン、グルタミン酸、プロリンおよびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXは存在せず、
は、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、アルギニン、グルタミン、チロシン、リジン、ヒスチジンおよびグリシンからなる群から選択されるか、またはXは存在せず、かつ、
は、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシンおよびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXは存在しない。]
を含み、
前記ペプチドが、3~20アミノ酸長であり、
前記ペプチドのアミノ酸配列が、CRSRPVESSC、CRSVEGSCGまたはCRIIHNNNCを含まず、かつ、
前記ペプチドが、アミノ酸配列EQLERALNSSを含む直鎖状ペプチドではない、前記ペプチドが提供される。
【0015】
一実施形態において、Xは、アルギニンである。一実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列QEQLERALNSSを含む直鎖状ペプチドではない。
【0016】
本発明者らはまた、本明細書中に記載のペプチドが、Xが存在しない場合であっても、このクラスの環状LanCL結合ペプチドに従来認められていた、鎮痛活性、抗炎症活性および抗微生物活性を含む生物学的活性の少なくとも一部を予想外に保持することを示した。したがって、本明細書に記載される一実施形態において、Xは存在しない。
【0017】
本明細書に開示されるその他の態様において、ランチオニン合成酵素C様(LanCL)タンパク質に結合可能なペプチドであって、
前記ペプチドが、式(I)のアミノ酸配列:
-X-X-X-X-X (I)
[式中、
は、リジン、アルギニンおよびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXは存在せず、
は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、システイン、チロシンおよびセリンからなる群から選択され、
は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群から選択され、
は、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、アルギニン、グルタミン、チロシン、アスパラギン酸、リジン、グルタミン酸、プロリンおよびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXは存在せず、
は、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、アルギニン、グルタミン、チロシン、リジン、ヒスチジンおよびグリシンからなる群から選択されるか、またはXは存在せず、かつ、
は、セリン、システイン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、およびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXは存在しない。]
を含み、
前記ペプチドが、3~20アミノ酸長であり、
前記ペプチドのアミノ酸配列が、CRSRPVESSC、CRSVEGSCGまたはCRIIHNNNCを含まず、かつ、
前記ペプチドが、アミノ酸配列EQLERALNSSを含む直鎖状ペプチドではない、前記ペプチドが提供される。
【0018】
一実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列QEQLERALNSSを含む直鎖状ペプチドではない。
【0019】
一実施形態において、ペプチドのアミノ酸配列は、CRSRPVESSC、CRSVEGSCG、CRIIHNNNC、CRRFVESSCAまたはCRIVYDSNCを含まない。
【0020】
一実施形態において、Xは、アラニン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニンおよびセリンからなる群から選択される。
【0021】
一実施形態において、Xは、バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群から選択される。
【0022】
一実施形態において、Xは、アスパラギン、グルタミン酸およびヒスチジンからなる群から選択されるか、またはXは存在しない。一実施形態において、Xは、アスパラギン、グルタミン酸、プロリンおよびヒスチジンからなる群から選択される。一実施形態において、Xは存在しない。
【0023】
一実施形態において、Xは、セリン、アスパラギンおよびグリシンからなる群から選択されるか、またはXは存在しない。一実施形態において、Xは、セリン、アスパラギンおよびグリシンからなる群から選択される。一実施形態において、Xは存在しない。
【0024】
一実施形態において、Xは、セリンもしくはアスパラギンであるか、またはXは存在しない。一実施形態において、Xは、セリンまたはアスパラギンである。一実施形態において、Xは存在しない。
【0025】
一実施形態において、Xは、リジン、アルギニンおよびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択され、Xは、アラニン、イソロイシン、プロリン、セリンおよびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択され、Xは、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択され、Xは、アスパラギン、グルタミン酸、プロリンおよびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択されるか、またはXは存在せず、Xは、セリン、グルタミンおよびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択されるか、またはXは存在せず、かつ、Xは、セリンもしくはその保存的アミノ酸置換であるか、またはXは存在しない。
【0026】
一実施形態において、Xは存在しないか、またはリジン、アルギニンおよびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択され、Xは、アラニン、イソロイシン、プロリン、セリンおよびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択され、Xは、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択され、Xは、アスパラギン、グルタミン酸、プロリンおよびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択されるか、またはXは存在せず、Xは、セリン、グルタミンおよびこれらのいずれかの保存的アミノ酸置換からなる群から選択されるか、またはXは存在せず、かつ、Xは、セリンもしくはその保存的アミノ酸置換であるか、またはXは存在しない。
【0027】
一実施形態において、Xは、リジンまたはアルギニンであり、Xは、アラニン、イソロイシン、プロリンおよびセリンからなる群から選択され、Xは、バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群から選択され、Xは、アスパラギン、プロリンもしくはグルタミン酸であるか、またはXは存在せず、Xは、セリンもしくはグルタミンであるか、またはXは存在せず、かつ、Xは、セリンであるか、またはXは存在しない。
【0028】
一実施形態において、Xは存在しないか、またはXはリジンもしくはアルギニンであり、Xは、アラニン、イソロイシン、プロリンおよびセリンからなる群から選択され、Xは、バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群から選択され、Xは、アスパラギン、プロリンもしくはグルタミン酸であるか、またはXは存在せず、Xは、セリンもしくはグルタミンであるか、またはXは存在せず、かつ、Xはセリンであるか、またはXは存在しない。
【0029】
一実施形態において、ペプチドは、RAL、RALN、RALNS、RALNSS、RSV、RSVE、RSVEG、RSVEGS、RPV、RPVE、RPVES、RPVESS、RII、RIIH、RIIHNおよびRIIHNNからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0030】
一実施形態において、ペプチドは、RAL、RALN、RALNS、RALNSS、RSV、RSVE、RSVEG、RSVEGS、RPV、RPVE、RPVES、RPVESS、RII、RIIH、RIIHNおよびRIIHNNからなる群から選択されるアミノ酸配列からなる。
【0031】
一実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列ALNSSを含む。一実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列ALNSSからなる。
【0032】
一実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列KAPLPRSを含む。一実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列KAPLPRSからなる。
【0033】
一実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列RALNSSを含む。
【0034】
一実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列RALNSSからなる。
【0035】
一実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列CRALNSSCを含む。
【0036】
一実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列CRALNSSCからなる。
【0037】
一実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列CRSVEGSCGからなるペプチドと、LanCLへの結合について競合することができる。
【0038】
本明細書のその他の箇所に記載されるように、本発明者らは、わずか3アミノ酸長の、式(I)のアミノ酸配列を含むペプチドが生物学的活性を保持することを予想外に示した。本明細書において開示される一実施形態において、ペプチドは、3~19アミノ酸残基長、好ましくは3~18アミノ酸残基長、好ましくは3~17アミノ酸残基長、好ましくは3~16アミノ酸残基長、好ましくは3~15アミノ酸残基長、好ましくは3~14アミノ酸残基長、好ましくは3~13アミノ酸残基長、好ましくは3~12アミノ酸残基長、好ましくは3~11アミノ酸残基長、好ましくは3~10アミノ酸残基長、好ましくは3~9アミノ酸残基長、好ましくは3~8アミノ酸残基長、好ましくは3~7アミノ酸残基長、好ましくは3~6アミノ酸残基長、好ましくは3~5アミノ酸残基長、好ましくは3~4アミノ酸残基長、または好ましくは3アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、20アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、19アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、18アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、17アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、16アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、15アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、14アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、13アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、12アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、11アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、10アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、9アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、8アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、7アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、6アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、5アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは、4アミノ酸残基長である。一実施形態において、ペプチドは3アミノ酸残基長である。
【0039】
本明細書に記載のペプチドは、好適には、タンパク質原性または非タンパク質原性の、天然に存在するアミノ酸残基を含んでいてもよい。これらのアミノ酸は、典型的にはL-立体化学を有する。天然に存在するアミノ酸を以下の表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、1~10個の炭素原子を有する直鎖飽和炭化水素基または分岐鎖飽和炭化水素基を指す。好適な場合、アルキル基は特定の数の炭素原子を有していてもよく、例えば、C1-6アルキルは、直鎖または分岐鎖の配置で1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルキル基を含む。好適なアルキル基の例としては、これらに限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、4-メチルブチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、5-メチルペンチル、2-エチルブチル、3-エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルが挙げられる。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニル」は、炭素原子間に1または2以上の二重結合を有し、2~10個の炭素原子を有する直鎖炭化水素基または分岐鎖炭化水素基を指す。好適な場合、アルケニル基は特定の数の炭素原子を有していてもよい。例えば、「C-Cアルケニル」におけるC-Cは、直鎖または分岐鎖の配置で2、3、4、5または6個の炭素原子を有する基を含む。好適なアルケニル基の例としては、これらに限定されるものではないが、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、ブタジエニル、ペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル、ヘキサジエニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニルおよびデセニルが挙げられる。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「アルキニル」は、1または2以上の三重結合を有し、2~10個の炭素原子を有する直鎖炭化水素基または分岐鎖炭化水素基を指す。好適な場合、アルキニル基は特定の数の炭素原子を有してもよい。例えば、「C-Cアルキニル」におけるC-Cは、直鎖または分岐鎖の配置で2、3、4、5または6個の炭素原子を有する基を含む。好適なアルキニル基の例としては、これらに限定されるものではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルおよびヘキシニルが挙げられる。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」は、飽和および不飽和(ただし、芳香族ではない)の環状炭化水素を指す。シクロアルキル環は、特定の数の炭素原子を含んでもよい。例えば、3~8員シクロアルキル基は、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を含む。好適なシクロアルキル基の例としては、これらに限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」は、各環に7個までの原子を有する安定な、単環式、二環式または三環式の炭素環系であって、少なくとも1つの環が芳香族である単環式、二環式または三環式の炭素環系を意味することが意図される。このようなアリール基の例としては、これらに限定されるものではないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、フルオレニル、フェナントレニル、ビフェニルおよびビナフチルが挙げられる。
【0046】
一実施形態において、ペプチドは、1または2以上のD-アミノ酸を含む。その他の実施形態において、式(I)のアミノ酸の1または2以上は、D-アミノ酸である。
【0047】
本明細書のその他の箇所で述べたように、本発明者らは、本明細書に記載のペプチドが、環状ペプチドの形態で存在するか直鎖状ペプチドの形態で存在するかにかかわらず、生物学的活性を保持することを予想外に見出した。したがって、一実施形態において、ペプチドは直鎖状ペプチドである。その他の実施形態において、ペプチドは環状ペプチドである。当業者は、環状ペプチドを形成するのに適した方法を熟知しており、その例示的な例は、ChoiとJoo(Biomol Ther(Seoul).2020年;28(1):18~24頁)によって記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
一実施形態において、ペプチドは、2つのシステイン残基間のジスルフィド結合によって環状化されている。一実施形態において、ジスルフィド結合は、2つのシステイン残基の間に形成されており、ここで、2つのシステイン残基は、式(I)のC末端(X)残基およびN末端(X)残基にすぐ隣接する位置にある。すなわち、ペプチドは、アミノ酸配列「システイン-X-X-X-X-X-X-システイン」を含むことになる。あるいは、ジスルフィド結合は、2つのシステイン残基の間に形成されており、ここで、1つまたは両方のシステイン残基は、式(I)のC末端(X)およびN末端(X)残基の遠位にある。例えば、ペプチドは、アミノ酸配列「システイン-Y-X-X-X-X-X-X-システイン」または「システイン-X-X-X-X-X-X-Y-システイン」または「システイン-Y-X-X-X-X-X-X-Y-システイン」を含んでいてもよく、ここで、Yは1または2以上のアミノ酸残基である。その他の例において、ペプチドは、アミノ酸配列「システイン-Y-X-X-X-X-X-システイン」または「システイン-X-X-X-X-X-Y-システイン」または「システイン-Y-X-X-X-X-X-Y-システイン」を含んでいてもよく、ここで、Yは、1または2以上のアミノ酸残基である。一実施形態において、環状ペプチドは、2つのシステイン残基間のジスルフィド結合によって形成されている。
【0049】
本明細書のその他の箇所に記載されるように、本発明者らは、式(I)のアミノ酸配列を含む特定の環状ペプチドが、直鎖状の対応物と比較して、より高い生物学的活性を有することを予想外に見出した。例えば、本発明者らは、2つのシステイン残基間のジスルフィド結合によって環状化された環状ペプチドCQEQLERALNSSCが、非環状化対応物であるQEQLERALNSSと比較して、LanCLに対してより大きな結合親和性を有し、インフルエンザA呼吸器感染症の動物モデルにおいてin vivoでより有効であることを示した。したがって、一実施形態において、環状ペプチドは、アミノ酸配列CQEQLERALNSSCを含む。一実施形態において、環状ペプチドは、アミノ酸配列CQEQLERALNSSCからなる。
【0050】
本明細書に記載のペプチドは、当業者に公知の好適な方法によって製造され得、その例示的な例としては、FmocまたはBoc保護アミノ酸残基を使用する溶液または固相合成による方法、ならびに標準的な微生物培養技術、遺伝子操作微生物および組換えDNA技術を使用する当技術分野で公知の組換え技術が挙げられる(SambrookとRussell、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版)、2001年、CSHL Press)。
【0051】
一実施形態において、本明細書に記載のペプチドは、薬学的に許容可能な塩として形成される。非薬学的に許容可能な塩もまた想定されることを理解すべきである。なぜなら、これらが薬学的に許容可能な塩の調製における中間体として有用であり得るか、または保存もしくは輸送において有用であり得るためである。好適な薬学的に許容可能な塩は、当業者に公知であり、その例示的な例としては、薬学的に許容可能な無機酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸および臭化水素酸)の塩、または薬学的に許容可能な有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベネゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸および吉草酸)の塩が挙げられる。好適な塩基塩の例示的な例としては、薬学的に許容可能な陽イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびアルキルアンモニウム)で形成されたものが挙げられる。塩基性窒素含有基は、低級アルキルハライド(例えば、メチル、エチル、プロピルおよびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物)、ジアルキル硫酸塩(例えば、ジメチルおよびジエチル硫酸塩)およびその他の薬剤で四級化されていてもよい。
【0052】
本明細書中に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を含むプロドラッグも本明細書中に開示される。本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」は、典型的には、本明細書に記載の活性ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を提供または放出するために、in vivoで代謝され得る化合物を指す。一実施形態において、プロドラッグ自体もまた、本明細書のその他の箇所に記載されるように、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩と同じ、または実質的に同じ治療活性を共有する。
【0053】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、C末端キャッピング基をさらに含んでいてもよい。用語「C末端キャッピング基」は、本明細書で使用される場合、C末端カルボン酸の反応性をブロックする基を指す。好適なC末端キャッピング基は、C末端カルボン酸とアミド基またはエステルを形成し、例えば、C末端キャッピング基は、-C(O)NHRまたは-C(O)ORを形成し、ここで、C(O)は、C末端カルボン酸基由来であり、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルまたはアリールであり、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルまたはアリールである。特定の実施形態において、C末端キャッピング基は、-NHであり、-C(O)NHを形成する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、C末端ポリエチレングリコール(PEG)を含む。一実施形態において、PEGは、220~5500Da、好ましくは220~2500Da、より好ましくは570~1100Daの分子量を有する。
【0054】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、N末端キャッピング基をさらに含んでいてもよい。用語「N末端キャッピング基」は、本明細書で使用される場合、N末端アミノ基の反応性をブロックする基を指す。好適なN末端キャッピング基は、N末端アミノ基とアミド基を形成するアシル基であり、例えば、N末端キャッピング基は、-NHC(O)Rを形成し、ここで、NHは、N末端アミノ基由来であり、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルまたはアリールである。特定の実施形態において、N末端キャッピング基は、-C(O)CH(アシル)であり、-NHC(O)CHを形成する。
【0055】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、本明細書に記載されるように、C末端キャッピング基およびN末端キャッピング基を含んでいてもよい。本明細書に開示されるペプチドは、ヒト成長ホルモンまたはその非ヒトアイソフォームの全長アミノ酸配列を含まないことを理解すべきである。
【0056】
治療および予防の方法
本明細書のその他の箇所に記載されるように、本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載されるペプチドが、細胞の老化、損傷およびストレスに関連する状態の治療を含む治療上の使用に役立つ、有利な特性を有することを見出した。そのような状態の例示的な例としては、老化、疼痛、炎症状態/炎症および微生物感染症が挙げられる。本明細書に記載のペプチドに認められる活性により、それらは抗老化化合物としても有用である。したがって、本明細書に記載のペプチドは、好適には、それを必要とする対象における、その1または2以上の症状を含む、そのような状態の重症度を治療、緩和またはその他の方法で無効にするために使用され得る。したがって、本開示は、対象における状態を治療する方法にまで拡張され、その方法は、治療有効量の本明細書に記載のペプチドを、それを必要とする対象に投与することを含む。また、それを必要とする対象における状態を治療するための医薬の製造における、本明細書に記載のペプチドの使用も提供される。また、それを必要とする対象における状態の治療における使用のための、本明細書に記載のペプチドも提供される。
【0057】
一実施形態において、状態は、疼痛、炎症性気道疾患、微生物感染症、呼吸器感染症、片頭痛、サルコペニア、耐糖能障害、糖尿病、肥満、代謝疾患および肥満に関連する状態、変形性関節症、筋肉の障害、消耗性疾患、老化、悪液質、食欲不振、AIDS消耗症候群、筋ジストロフィー、神経筋疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、眼科的状態、神経変性状態を含む中枢神経系の状態(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病)、炎症性ミオパチー、熱傷、創傷、損傷または外傷、LDLコレステロールの上昇に関連する状態、軟骨細胞、プロテオグリカンまたはコラーゲンの産生または品質の障害に関連する状態、軟骨組織の形成または品質の障害に関連する状態、筋肉、靭帯または腱の量、形態または機能の障害に関連する状態、筋肉または結合組織に影響を及ぼす炎症、外傷または遺伝子異常に関連する状態および骨障害からなる群から選択される。
【0058】
本明細書において、「治療する(treating)」、「治療(treatment)」等の用語は、疾患または状態(それらの1または2以上の症状を含む)の重症度を緩和(relieve)、軽減、緩和(alleviate)、改善または抑制することを意味する目的で互換的に使用される。本明細書において、「治療する(treating)」、「治療(treatment)」等の用語はまた、疾患または状態(それらの1または2以上の症状を含む)を予防することを含む目的で互換的に使用される。
【0059】
「治療する(treating)」、「治療(treatment)」等の用語はまた、疾患、状態および/またはそれらの1もしくは2以上の症状の重症度を、少なくとも一定期間、予防、緩和(relieve)、軽減、緩和(alleviate)、改善または抑制することを含む。「治療する(treating)」、「治療(treatment)」等の用語は、疾患、状態またはそれらの1もしくは2以上の症状が、永久的に予防、緩和(relieve)、軽減、緩和(alleviate)、改善または抑制されることを意味するものではなく、したがって、疾患、状態またはそれらの1もしくは2以上の症状の重症度の一時的な予防、緩和(relieve)、軽減、緩和(alleviate)、改善または抑制に及ぶことを理解すべきである。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、疾患、状態またはそれらの1もしくは2以上の症状の治療が望まれる哺乳動物対象を指す。好適な対象の例示的な例としては、霊長類、特にヒト、伴侶動物(例えば、ネコ、イヌ等)、使役動物(例えば、ウマ、ロバ等)、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ等)、実験用試験動物(例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター等)および飼育野生動物(例えば動物園および野生動物公園にいるシカ、ディンゴ等)が挙げられる。一実施形態において、対象はヒトである。
【0061】
本明細書における対象への言及は、対象が疾患、状態またはそれらの1もしくは2以上の症状を有することのみを意味するのではなく、疾患、状態またはそれらの1もしくは2以上の症状を発症する危険性のある対象も含むことを理解すべきである。
【0062】
一実施形態において、本明細書に開示される方法は、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を、ヒト対象に投与することを含む。
【0063】
本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、治療有効量で、有利に投与されることを理解すべきである。「治療有効量」という語句は、典型的には、所望の応答を達成するのに必要な量を意味する。治療有効量のペプチドは、いくつかの要因によって変化することは当業者には理解されることであり、その例示的な例としては、治療される対象の健康状態および身体状態、治療される対象の分類群、治療される疾患、状態または症状の重症度、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物の剤形、投与経路およびこれらのいずれかの組合せが挙げられる。
【0064】
治療有効量は、典型的には、当業者による日常的な試験を通じて決定され得る比較的広い範囲内にある。ヒト対象に投与するための、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩の、好適な治療有効量の例示的な例としては、体重1kgあたり約0.001mg~体重1kgあたり約1g、好ましくは体重1kgあたり約0.001mg~体重1kgあたり約50g、より好ましくは体重1kgあたり約0.01mg~体重1kgあたり約1.0mgが挙げられる。本明細書に開示される一実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよび/またはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量は、1用量あたり体重1kgあたり約0.001mg~体重1kgあたり約1g(例えば、0.001mg/kg、0.005mg/kg、0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.15mg/kg、0.2mg/kg、0.25mg/kg、0.3mg/kg、0.35mg/kg、0.4mg/kg、0.45mg/kg、0.5mg/kg、0.5mg/kg、0.55mg/kg、0.6mg/kg、0.65mg/kg、0.7mg/kg、0.75mg/kg、0.8mg/kg、0.85mg/kg、0.9mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、4.5mg/kg、5mg/kg、5.5mg/kg、6mg/kg、6.5mg/kg、7mg/kg、7.5mg/kg、8mg/kg、8.5mg/kg、9mg/kg、9.5mg/kg、10mg/kg、10.5mg/kg、11mg/kg、11.5mg/kg、12mg/kg、12.5mg/kg、13mg/kg、13.5mg/kg、14mg/kg、14.5mg/kg、15mg/kg、15.5mg/kg、16mg/kg、16.5mg/kg、17mg/kg、17.5mg/kg、18mg/kg、18.5mg/kg、19mg/kg、19.5mg/kg、20mg/kg、20.5mg/kg、21mg/kg、21.5mg/kg、22mg/kg、22.5mg/kg、23mg/kg、23.5mg/kg、24mg/kg、24.5mg/kg、25mg/kg、25.5mg/kg、26mg/kg、26.5mg/kg、27mg/kg、27.5mg/kg、28mg/kg、28.5mg/kg、29mg/kg、29.5mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、85mg/kg、90mg/kg、95mg/kg、100mg/kg、105mg/kg、110mg/kg体重等)である。一実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量は、体重1kgあたり約0.001mg~体重1kgあたり約50mgである。一実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩の治療有効量は、体重1kgあたり約0.01mg~体重1kgあたり約100mgである。一実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量は、体重1kgあたり約0.1mg~体重1kgあたり約10mg、好ましくは体重1kgあたり約0.1mg~体重1kgあたり約5mg、より好ましくは体重1kgあたり約0.1mg~体重1kgあたり約1.0mgである。投与レジメンは、最適な治療応答が得られるように調整されてもよい。例えば、数回に分割した用量を、毎日、毎週、毎月またはその他の好適な時間間隔で投与してよく、あるいは状況の緊急性に応じて、用量を比例的に低減させてもよい。
【0065】
疼痛
本明細書のその他の箇所に記載されるように、本発明者らは、本明細書に記載されているペプチドが、神経障害性疼痛の緩和を含む有効な鎮痛特性を有することを見出した。したがって、一実施形態において、状態は疼痛である。一実施形態において、状態は神経障害性疼痛である。
【0066】
理論または特定の適用様式に拘束されるものではないが、神経障害性疼痛は、典型的には、神経組織または神経細胞自体に対する傷害または疾患による損傷、または神経組織内の機能障害に起因する疼痛として特徴付けられる。疼痛は、末梢、中枢またはその組合せであってもよく、言い換えれば、用語「神経障害性疼痛」は、典型的には、末梢神経系または中枢神経系における一次的な病変または機能障害によって発症または引き起こされる任意の疼痛症候群を指す。神経障害性疼痛は、通常、オピオイドのような一般的な鎮痛薬による治療に効果的に反応しないという点でも区別される。これとは対照的に、侵害受容性疼痛は、組織に損傷または傷害を引き起こし得る侵害刺激または有害であり得る刺激によって侵害受容器が刺激されることによって生じる疼痛として特徴付けられる。侵害受容性疼痛は通常、オピオイド等の一般的な鎮痛薬に反応する。
【0067】
本明細書において、「鎮痛」という用語は、痛覚の消失を含む疼痛知覚の低下状態、ならびに侵害刺激に対する感受性の低下または消失状態を表すために使用される。このような痛覚の低下または消失の状態は、典型的には、当技術分野で一般的に理解されているように、疼痛制御剤(複数可)の投与によって誘導され、意識を失うことなく生じる。化合物が鎮痛効果を提供し得るかどうかを判定するための好適な方法は、当業者に公知であり、その例示的な例としては、慢性収縮損傷、脊髄神経結紮および部分的坐骨神経結紮のような神経障害性疼痛の動物モデル(Bennettら,2003年;Curr.Protoc.Neurosci.,第9章,9.14ユニット参照)、およびホルマリン、カラギーナンまたは完全フロイントアジュバント(CFA)誘発炎症性疼痛等の侵害受容性疼痛の動物モデルの使用が挙げられる。その他の好適な疼痛モデルについては、Gregoryら(2013年,J.Pain.;14(11);An overview of animal models of pain:disease models and outcome measures)によって議論されている。
【0068】
当業者には公知であるように、神経障害および神経障害性疼痛の原因には多くの可能性がある。したがって、原因に関係なく神経障害性疼痛を治療または予防することが本明細書で企図されることを理解すべきである。いくつかの実施形態において、神経障害性疼痛は、神経に影響を及ぼす疾患または状態(一次神経障害)および/または全身性疾患によって引き起こされる神経障害(二次神経障害)の結果であり、その例示的な例としては、糖尿病性神経障害;帯状疱疹関連神経障害;線維筋痛症;多発性硬化症、脳卒中、脊髄損傷;慢性術後疼痛、幻肢痛、パーキンソン病;尿毒症関連神経障害;アミロイドーシス神経障害;HIV感覚神経障害;遺伝性運動感覚神経障害(HMSN);遺伝性感覚神経障害(HSN);遺伝性感覚自律神経障害;潰瘍損傷を伴う遺伝性神経障害;ニトロフラントイン神経障害;トマキュラス神経障害;栄養欠乏によって引き起こされる神経障害;腎不全によって引き起こされる神経障害および複合性局所疼痛症候群が挙げられる。神経障害性疼痛を引き起こし得る状態のその他の例示的な例としては、タイピングまたは組立ラインでの作業等の反復的な活動、ddC(ザルシタビン)およびddI(ジダノシン)等のいくつかの抗レトロウイルス薬、抗生物質(クローン病に使われる抗生物質であるメトロニダゾール、結核に使われるイソニアジド)、金化合物(関節リウマチに使われる)、いくつかの化学療法薬(ビンクリスチン等)、およびその他の多くが挙げられる。また、アルコール、鉛、ヒ素、水銀および有機リン系殺虫剤等の化合物も末梢神経障害を引き起こすことが知られている。末梢神経障害の中には、感染プロセスに関連するもの(ギラン・バレー症候群等)もある。神経障害性疼痛のその他の例示的な例としては、熱的または機械的痛覚過敏、熱的または機械的アロディニア、糖尿病性疼痛、口腔に影響を及ぼす神経障害性疼痛(例えば、三叉神経障害性疼痛、非定型歯痛(幻歯痛)、口腔灼熱症候群)、線維筋痛症および絞扼性疼痛が挙げられる。
【0069】
本明細書に開示される一実施形態において、神経障害性疼痛は、糖尿病性神経障害;帯状疱疹関連神経障害;線維筋痛症;多発性硬化症、脳卒中、脊髄損傷;慢性術後疼痛、幻肢痛、パーキンソン病;尿毒症関連神経障害;アミロイドーシス神経障害;HIV感覚神経障害;遺伝性運動感覚神経障害(HMSN);遺伝性感覚神経障害(HSN);遺伝性感覚自律神経障害;潰瘍損傷を伴う遺伝性神経障害;ニトロフラントイン神経障害;トマキュラス神経障害;栄養欠乏によって引き起こされる神経障害;腎不全によって引き起こされる神経障害;三叉神経障害性疼痛;非定型歯痛(幻歯痛);口腔灼熱症候群;複合性局所疼痛症候群;反復性疲労損傷;薬物誘導性末梢神経障害;感染に伴う末梢神経障害;アロディニア;知覚過敏;痛覚過敏;灼熱痛および電撃痛からなる群から選択される。
【0070】
いくつかの実施形態では、神経障害性疼痛は、しびれ、脱力および反射消失を伴うことがある。疼痛は、重度になり、何もできない状態になることがある。「痛覚過敏」とは、通常痛みを伴う刺激に対する反応の亢進を意味する。痛覚過敏の状態は、通常は痛みを感じない刺激によって引き起こされる疼痛を伴う。用語「知覚過敏」は、特に皮膚の、過度な身体的感度を指す。本明細書で使用される用語「アロディニア」は、非侵害性刺激から生じる疼痛、すなわち、通常は疼痛を誘発しない刺激による疼痛を指す。アロディニアの例示的な例としては、熱アロディニア(冷たいまたは熱い刺激による疼痛)、触覚アロディニア(軽い圧力または接触による疼痛)、機械的アロディニア(強い圧力または針による刺傷による疼痛)等が挙げられる。
【0071】
神経障害性疼痛は、急性または慢性の場合があり、この文脈では、神経障害の時間経過は、その根本的な原因に基づいて変化し得ることを理解すべきである。例えば、外傷の場合、神経障害性疼痛または神経障害性疼痛の症状の発症は急性または突然であるが、ほとんどの重症な症状は時間をかけて発症し、何年も持続することがある。数週間から数ヶ月にわたる慢性的な経過は、通常、毒性神経障害または代謝性神経障害を示す。有痛性糖尿病性神経障害またはほとんどの遺伝性神経障害、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)の状態のように、慢性的で緩徐に進行する神経障害は、何年にもわたる経過をたどることがある。再発と寛解を伴う症状を有する神経障害性状態としては、ギラン・バレー症候群が挙げられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、神経障害性疼痛は、線維筋痛症または過敏性腸症候群のような神経過敏性を特徴とする状態に起因する。
【0073】
その他の実施形態では、神経障害性疼痛は、神経過敏症をもたらす異常な神経再生に関連する障害に起因する。このような障害としては、乳房痛、間質性膀胱炎、外陰部痛および癌化学療法誘発性神経障害が挙げられる。
【0074】
いくつかの実施形態において、神経障害性疼痛は、手術、術前の疼痛および術後の疼痛、特に術後の神経障害性疼痛に関連する。
【0075】
微生物感染症
細菌、ウイルスおよび真菌等の病原体による微生物感染症は、依然として、深刻な社会経済的損失を伴う、世界規模の主要な健康問題である。細菌感染の治療は抗生物質に頼ることが多いが、ウイルス感染に対する標準的なアプローチは、支持療法と症状の緩和にとどまっている。このような治療が一定の効果を示す一方で、新興および再興の病原体はヒトおよび非ヒトの集団を苦しめ続けており、これは、少なくとも部分的には、感染力が強化されたおよび/または既存の薬理学的介入に対する耐性を有する新型株を生み出す変異の結果である。ワクチンを含む抗ウイルス剤が適時に入手できないことも、世界的なウイルス流行の封じ込めを困難にしている。
【0076】
呼吸器感染症を含む感染症を引き起こすウイルスの血清学的に公知の株は200以上あり、その中で最も一般的なものはライノウイルス(30~50%)である。その他としては、コロナウイルス(10~15%)、インフルエンザウイルス(5~15%)、ヒトパラインフルエンザウイルス、ヒト呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスおよびメタニューモウイルスが挙げられる。30種以上のコロナウイルスが同定されているが、ヒトの呼吸器感染症を引き起こすことが知られているのは3または4種のみである。さらに、コロナウイルスは一般的にはin vitroでの培養が困難であるため、その機能を研究し、適切な治療法を開発することが困難である。コロナウイルスは、小胞体-ゴルジ体中間区画またはシス-ゴルジ網から出芽する、エンベロープ型のプラス鎖RNAウイルスである。コロナウイルスはヒトおよび動物に感染する。ヒトコロナウイルス、229E、OC43、および近年同定された重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2;Zhu Nら,N Engl J Med.,2020年を参照)は、呼吸器感染症の主な原因として公知であり、特に高齢者、新生児および免疫不全者において肺炎を引き起こす可能性がある。呼吸器感染症を引き起こすコロナウイルスの例示的な例は、米国特許公開第20190389816号に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0077】
その他の広範性のウイルス感染症は、ピコルナウイルス科のエンテロウイルス属の一員であるヒトライノウイルス(HRV)によって引き起こされる。HRVは、鼻粘膜、副鼻腔および中耳等の上気道および下気道に感染し、通常の風邪の症状を引き起こす感染症を伴う。感染症は通常、自己限定的であり、上気道に限定される。
【0078】
ウイルス感染症には、ある人には無症状でも、その他の人には感染性であるものもある。このような場合、感染者が病気に見えないため、ウイルスの伝播が広範囲に及ぶ可能性がある。学校、病院、老人ホーム等、感染しやすい集団が密接な関係で生活している場合、伝播は特に有害である。
【0079】
現在、インフルエンザまたは風邪を含む呼吸器のウイルス感染の治療または予防のために承認されている抗ウイルス剤はごく少数である。これには、リン酸オセルタミビル(商品名Tamiflu(登録商標))、ザナミビル(商品名Relenza(登録商標))、ペラミビル(商品名Rapivab(登録商標))およびバロキサビルマルボキシル(商品名Xofluza(登録商標))が含まれる。呼吸器感染症の治療は通常、症状(例えば、くしゃみ、鼻づまり、鼻漏、眼刺激感、咽頭痛、咳、頭痛、発熱、悪寒)の管理に基づいており、通常は市販の経口抗ヒスタミン薬、アスピリン、咳止め薬および鼻腔充血除去薬を用いて行われる。対症療法には通常、抗ヒスタミン薬および/または血管収縮性の充血除去薬が使用されるが、これらの多くは眠気等の望まない副作用を有する。
【0080】
理論または特定の適用様式に拘束されるものではないが、本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載のペプチドが、呼吸器感染症等の感染症の症状の少なくとも一部を緩和することを含む、微生物感染症の治療に使用できることを見出した。
【0081】
呼吸器感染症(RTI)は、典型的には、上気道または下気道のあらゆる感染性疾患として定義される。上気道感染症(URTI)としては、風邪、喉頭炎、咽頭炎/扁桃炎、急性鼻炎、急性鼻副鼻腔炎および急性中耳炎が挙げられる。下気道感染症(LRTI)としては、急性気管支炎、気管支炎、肺炎および気管炎が挙げられる。プライマリーケアでは、成人および小児のRTIに対して抗生物質が一般的に処方される。RTIは、一般診療における全抗生物質処方の60%を占めており、医療システムにとって大きなコストとなっている(NICE Clinical Guidelines,No.69;Centre for Clinical Practice at NICE(UK),London:National Institute for Health and Clinical Excellence(UK);2008年)。
【0082】
ヒトおよび非ヒトの対象における上気道および/または下気道の感染症を生じさせる病原体は、当業者には公知であり、細菌およびウイルスを含み、その例示的な例は、Charltonら(Clinical Microbiology Reviews;2018年,32(1):e00042-18)、Popescuら(Microorganisms.2019年;7(11):521頁)およびKikkert,M.(J Innate Immun.2020年;12(1):4~20頁)によって記載されており、これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一実施形態において、呼吸器感染症はウイルス感染症である。
【0083】
ヒトおよび非ヒト対象において気道(上気道および/または下気道)の感染症を引き起こすウイルスは、当業者には公知であり、その例示的な例としては、ピコルナウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスおよびメタニューモウイルスが挙げられる。したがって、本明細書に開示される一実施形態において、ウイルスは、ピコルナウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスおよびメタニューモウイルスからなる群から選択される。一実施形態では、ウイルスはインフルエンザウイルスである。その他の実施形態では、ウイルスはコロナウイルスである。呼吸器感染症を生じさせるコロナウイルスの例示的な例は、当業者には公知であり、その例示的な例としては、以前のZhu Nら(N Engl J Med.2020年)および米国特許公開第20190389816号に記載されたSARS-CoV-2が挙げられ、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一実施形態において、ウイルスはSARS-CoV-2である。
【0084】
本明細書に記載のペプチドは、呼吸器感染症を悪化させるような基礎疾患を有する対象における呼吸器感染症の治療に特に有用であり得る。そのような基礎疾患は、当業者に公知であり、その例示的な例としては、慢性閉塞性肺疾患、喘息、嚢胞性線維症、肺気腫および肺癌が挙げられる。一実施形態において、対象は、慢性閉塞性肺疾患、喘息、嚢胞性線維症および肺癌からなる群から選択される、さらなる呼吸器状態を有する。その他の実施形態において、対象は、治療の結果(例えば、化学療法、放射線療法による)またはそうでない場合(例えば、HIV感染による)にかかわらず、免疫不全である。
【0085】
ヒトにおけるウイルスの複製は、通常、最初の接触から2~6時間後に始まる。場合によっては、患者は症状発症の2~3日前から感染性を示す。症状は通常、最初の感染から約2~5日後に始まる。風邪のような呼吸器感染症は、症状が出てから最初の2~3日間が最も感染性が高い。現在のところ、風邪の罹病期間を短縮する治療法は知られていないが、症状は通常7~10日程度で自然に解消し、症状が3週間程度続く場合もある。症状が完全に解消するまで、ウイルスはなお感染性である可能性がある。
【0086】
本明細書のその他の箇所に記載されるように、本発明者らは、本明細書に記載されているペプチドが、驚くべきことに、in vivoでのウイルス複製を制限し、IAV感染中の過剰炎症および重症例を低減するのに有効であることも見出した。
【0087】
炎症性気道疾患
本明細書に開示する実施形態では、状態は炎症性気道疾患である。慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、慢性気管支炎、肺気腫、嚢胞性線維症、肺癌および気管支肺異形成等の炎症性気道疾患は、世界で最も有病率の高い疾患に含まれる。特に喘息の有病率は過去20年間で増加し、現在ほとんどの先進国では人口の最大10%が罹患している。COPDは世界で6番目に多い死因であり、45歳以上の約4~6%の人が罹患していると言われている。炎症性気道疾患は、直接的および間接的なコストの両方を考慮すると、社会にとって大きな経済的負担となっていることは論を待たない。
【0088】
喘息およびCOPDは、特徴的な症状および機能異常の存在によって特定され、気道閉塞は両疾患の必須条件である。喘息における気道閉塞は典型的には可逆的であるのに対し、COPDは典型的には、数ヶ月の観察期間にわたって顕著に変化しない呼気流量の異常を特徴とする。いずれの気道疾患も、種々の誘発因子によって引き起こされる肺の炎症と関連し、その例としては、環境アレルゲンおよび発癌物質、職業性感作物質、タバコの煙、アスベストならびにシリカが挙げられる。しかしながら、非喫煙喘息患者の中にも、COPDと同様の不可逆的な気道閉塞を発症する人がいることは留意すべきである。
【0089】
慢性閉塞性肺疾患は、人口の高齢化およびタバコ製品の世界的な使用の増加に伴って悪化することが予期される、深刻化しつつある医療問題である。禁煙は唯一の効果的な予防手段である。雇用主は、従業員の禁煙を支援する特有の立場にある。無症状期が長く続く間にも、肺機能は低下し続けるため、多くの患者は進行段階で、または急性増悪を経験した時に初めて医療機関を受診する。患者のQOLを維持し、この慢性疾患に関連する医療コストを削減するために、臨床医は状態を正確に診断し、疾患の経過の長期にわたり患者を適切に管理する必要がある。
【0090】
Devine,FJ(2008年;Am Health Drug Benefits;1(7):34~42頁)が指摘するように、COPDは可逆性の乏しい肺の疾患であり、世界的に罹患および死亡の主な原因の1つである。米国におけるその他の主要な慢性疾患の傾向とは逆に、COPDの有病率および死亡率は上昇し続けており、1970年から2002年の間に死亡率は2倍になり、現在は女性の死亡率は男性の死亡率を上回っている。COPD事象の大半は喫煙が原因であり、本来予防可能な疾患である。COPD患者のほとんどは中高年である。COPDの有効な治療法はほとんど見つかっていない。疾患の発症を低減させることが知られている唯一の方策は禁煙である。
【0091】
喘息は、多様性に富む多因子疾患であり、慢性気管支炎症反応に基づく、可変的でありほとんどが可逆的な呼吸経路閉塞を伴う(Horakら,2016年;Wien Klin Wochenschr.,128(15):541~554頁)。喘息の症状(咳、痰、鼻汁、喘鳴、胸部圧迫感または息切れ)は可変的であり、一般的に呼気流量制限と相関する。その多様性のために、多くの異なる表現型が喘息に帰属され、アレルギー性喘息、非アレルギー性喘息、小児喘息/再発性閉塞性気管支炎、遅発性喘息、固定気流閉塞を伴う喘息、肥満関連喘息、職業性喘息、高齢者の喘息および重症喘息が含まれる。
【0092】
喘息の治療(薬理学的および非薬理学的介入)は、主に症状管理(評価、調整および再評価のサイクル)に基づいており、通常、喘息増悪の抑制と関連している。薬理学的観点からは、喘息治療のゴールドスタンダードは、一般的に低用量吸入コルチコステロイドであり、しばしばオンデマンド短時間作用型ベータ-2-アゴニスト(SABA)と併用される。その他の治療法としては、LTRA(ロイコトリエン受容体拮抗薬)、低用量吸入コルチコステロイドと長時間作用型ベータ-2-アゴニスト(LABA)の組合せが挙げられる。しかしながら、既存の治療法は、特に長期使用中に副作用を引き起こす可能性がある。予防医薬(例えば、吸入コルチコステロイド)の一般的な副作用は、声のかすれ、口腔および喉の痛みならびに喉の真菌感染である。
【0093】
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載のペプチドが、炎症性気道疾患の炎症性メディエータの少なくとも一部を緩和し得ることを見出した。
【0094】
炎症性気道疾患は、当業者に公知であり、その例示的な例としては、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、慢性気管支炎、肺気腫、嚢胞性線維症、肺癌および気管支肺異形成が挙げられる。一実施形態において、炎症性気道疾患はCOPDである。一実施形態において、炎症性気道疾患は喘息である。一実施形態において、炎症性気道疾患は慢性気管支炎である。一実施形態において、炎症性気道疾患は肺気腫である。一実施形態において、炎症性気道疾患は嚢胞性線維症である。一実施形態において、炎症性気道疾患は肺癌に関連する。一実施形態において、炎症性気道疾患は気管支肺異形成である。
【0095】
本明細書に記載される方法は、炎症性気道疾患を悪化させるような疾患に罹患しやすい対象における炎症性気道疾患の治療に特に有用であり得る。そのような基礎疾患は当業者に公知であり、その例示的な例としては、例えば、ウイルス、細菌またはその他の病原体による呼吸器感染症が挙げられる。その他の実施形態において、対象は、治療の結果(例えば、化学療法、放射線療法による)またはそうでない場合(例えば、HIV感染による)にかかわらず、免疫不全である。
【0096】
投与経路
本明細書に記載されるようなペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、本明細書に記載されるように、治療有効量のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩の対象への送達を可能にする任意の好適な経路によって、対象に投与され得る。好適な投与経路は、当業者に公知であり、その例示的な例としては、経腸投与経路(例えば、経口投与および直腸内投与)、非経口投与経路、典型的には注射またはマイクロインジェクションによる投与(例えば、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、硬膜外投与、関節内投与、腹腔内投与、大槽内投与または髄腔内投与)、および局所(経皮または経粘膜)投与経路(例えば、頬投与、舌下投与、膣内投与、鼻腔内投与、または吸入、吹送、坐剤もしくはネブライゼーションによる)が挙げられる。一実施形態において、投与経路は、吸入または吹送によるものである。本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩はまた、好適には、長期間にわたって有効成分(複数可)の徐放を提供するための、徐放性投与形態として対象に投与され得る。「徐放」という用語は、典型的には、ある期間(例えば、約8時間~最長約12時間、最長約14時間、最長約16時間、最長約18時間、最長約20時間、最長1日、最長1週間、最長1ヶ月、または1ヶ月超)にわたり、対象において一定の、または実質的に一定の濃度の有効成分を提供するための有効成分の放出を意味する。有効成分の徐放は、必要に応じて、投与後数分以内、または投与後の遅延時間(ラグタイム)経過後に開始することができる。好適な徐放性投与形態は当業者には公知であり、その例示的な例は、Anal,A.K.(2010年;Controlled-Release Dosage Forms;Pharmaceutical Sciences Encyclopedia;11:1~46頁)によって記載されている。
【0097】
理論または特定の適用様式に拘束されるものではないが、本明細書に記載されるように、疾患、状態またはそれらの1もしくは2以上の症状の重症度に基づいて投与経路を選択することが望ましい場合がある。本明細書に開示される一実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、対象に経腸投与される。本明細書に開示される一実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、対象に経口投与される。本明細書に開示される一実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、対象に非経口投与される。本明細書に開示されるその他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、対象に局所投与される。本明細書に開示されるその他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、吸入により対象に投与される。本明細書に開示されるその他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、吹送により対象に投与される。
【0098】
本明細書のその他の箇所に記載されるように、「局所」投与は、典型的には、身体の表面、例えば皮膚または粘膜等への有効成分の適用を意味し、好適には、クリーム、ローション、フォーム、ゲル、軟膏、点鼻薬、点眼薬、点耳薬、経皮パッチ、経皮フィルム(例えば、舌下フィルム)等の形態での投与である。局所投与はまた、吸入または吹送による呼吸器の粘膜を介した投与を含む。本明細書に開示される一実施形態において、局所投与は、経皮投与および経粘膜投与からなる群から選択される。一実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、対象に経皮投与される。一実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、吸入、吹送またはネブライゼーションによって対象に投与される。
【0099】
一実施形態において、方法は、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を、吸入または吹送によりヒトに投与することを含む。その他の実施形態において、方法は、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を、吸入または吹送により非ヒト対象に投与することを含む。さらにその他の実施形態において、方法は、ネコ、イヌおよびウマからなる群から選択される非ヒト対象に、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む。
【0100】
一実施形態において、方法は、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩をヒトに経口投与することを含む。その他の実施形態において、方法は、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を、非ヒト対象に経口投与することを含む。さらにその他の実施形態において、方法は、ネコ、イヌおよびウマからなる群から選択される非ヒト対象に、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を経口投与することを含む。
【0101】
局所投与の例示的な例は、本明細書のその他の箇所に記載される。一実施形態において、局所投与は経皮投与である。
【0102】
本明細書に開示される一実施形態において、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、徐放性投与形態として対象に投与され、その例示的な例は、本明細書のその他の箇所に記載される。一実施形態において、方法は、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を、徐放性投与形態としてヒトに投与することを含む。その他の実施形態において、方法は、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を、徐放性投与形態として非ヒト対象に投与することを含む。さらにその他の実施形態において、方法は、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を、徐放性投与形態として、ネコ、イヌおよびウマからなる群から選択される非ヒト対象に投与することを含む。
【0103】
本明細書のその他の箇所に記載されるように、いくつかの(すなわち、複数の)分割用量は、毎日、毎週、毎月またはその他の好適な時間間隔で投与されてよく、あるいは用量は、状況の緊急性に応じて、比例的に低減されてもよい。複数の用量の治療単位が必要であるか、または望まれる場合、本明細書に開示されるペプチドを2以上の経路を介して投与することが有益であり得る。例えば、第1の用量を非経口的に(例えば、筋肉内、静脈内、皮下、硬膜外、関節内、腹腔内、大槽内または髄腔内の投与経路を介して)投与して、対象における急速なまたは急性の治療効果を誘導し、次いで、それに続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)用量を、経腸的に(例えば、経口的または直腸内的に)、吸入によりまたは吹送により、および/または局所的に(例えば、経皮または経粘膜投与経路を介して)投与し、治療の急性期に続き長期間にわたって持続的に有効成分を利用できるようにすることが望ましい場合がある。あるいは、用量を経腸的に(例えば、経口的または直腸内的に)投与し、次いで、それに続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)用量を、非経口的に(例えば、筋肉内、静脈内、皮下、硬膜外、関節内、腹腔内、大槽内または髄腔内投与経路を介して)、吸入によりまたは吹送により、および/または局所的に(例えば、経皮または経粘膜投与経路を介して)投与することが望ましい場合がある。あるいは、用量を局所的に(例えば、経皮または経粘膜投与経路を介して)投与し、次いで、それに続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)用量を、非経口的に(例えば、筋肉内、静脈内、皮下、硬膜外、関節内、腹腔内、大槽内または髄腔内投与経路を介して)、吸入によりまたは吹送により、および/または経腸的に(例えば、経口的または直腸内的に)投与することが望ましい場合がある。
【0104】
また、複数の投与経路が望まれる場合、2つ以上の投与経路の任意の組合せが、本明細書に開示される方法に従って使用され得ることを理解すべきである。好適な組合せの例示的な例としては、これらに限定されるものではないが、(投与順に)(a)非経口-経腸;(b)非経口-局所;(c)非経口-経腸-局所;(d)非経口-局所-経腸;(e)経腸-非経口;(f)経腸-局所;(g)経腸-局所-非経口;(h)経腸-非経口-局所;(i)局所-非経口;(j)局所-経腸;(k)局所-非経口-経腸;(l)局所-経腸-非経口;(m)非経口-経腸-局所-非経口;(n)非経口-経腸-局所-経腸等が挙げられる。
【0105】
医薬組成物
本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、ニート化学物質(neat chemical)として対象に投与するために製剤化され得る。しかしながら、特定の実施形態では、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を、獣医学的組成物を含む医薬組成物として製剤化することが好ましい場合がある。したがって、本明細書中に開示されるその他の態様において、本明細書に記載されるように、それを必要とする対象における状態の治療に使用するための、本明細書中に記載のペプチドが提供される。
【0106】
本明細書のその他の箇所に記載されるように、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、逐次的に、または組合せ(例えば、配合剤として)のいずれかで、治療されるべき基礎疾患に好適な1または2以上のその他の有効成分と共に投与され得る。例えば、本明細書に開示される組成物は、喘息の治療に一般的に使用される吸入コルチコステロイドと、逐次的にまたは組合せ(例えば、配合剤として)のいずれかで、共に投与するために製剤化され得る。その他の好適な併用療法または補助療法は、当業者に公知であり、その選択は、基礎疾患またはその症状に依存する。
【0107】
一実施形態において、組成物は、本明細書のその他の箇所に記載されるような、薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含む。
【0108】
本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、好適には、経口使用のための固体(例えば、錠剤または充填カプセル)または液体(例えば、液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤またはこれらを充填したカプセル剤)として;直腸内投与のための軟膏、坐剤または浣腸剤の形態で;非経口使用(例えば、筋肉内、皮下、静脈内、硬膜外、関節内および髄腔内投与)のための滅菌注射液の形態で;または非経口(例えば、局所、頬内、舌下、膣内)投与のための軟膏、ローション、クリーム、ゲル、パッチ、舌下ストリップまたはフィルム等の形態で使用するために、医薬組成物または単位投与形態として調製され得る。一実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、局所(例えば、経皮)送達のために製剤化される。好適な経皮送達系は、当業者に公知であり、その例示的な例は、PrausnitzとLanger(2008年;Nature Biotechnol.;26(11):1261~1268頁)によって記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。その他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、舌下送達または頬送達のために製剤化される。好適な舌下送達システムおよび頬送達システムは、当業者に公知であり、その例示的な例としては、Balaら(2013年;Int.J.Pharm.Investig.;3(2):67~76頁)によって記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
好適な医薬組成物およびその単位投与形態は、追加の有効化合物または成分の有無にかかわらず、従来の割合で従来の成分を含んでもよく、そのような単位投与形態は、意図される1日用量の範囲に見合った任意の好適な有効量の有効成分を含んでもよい。本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、多種多様な経腸、局所および/または非経口の投与形態での投与のために製剤化され得る。好適な投与形態は、有効成分として、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩の2つ以上の組合せを含んでいてもよい。
【0110】
一実施形態において、組成物は、ヒトへの経口投与のために製剤化される。その他の実施形態において、組成物は、非ヒト対象への経口投与のために製剤化される。さらにその他の実施形態において、組成物は、ネコ、イヌおよびウマからなる群から選択される非ヒト対象への経口投与のために製剤化される。
【0111】
その他の実施形態において、組成物は、ヒトへの非経口投与のために製剤化される。その他の実施形態において、組成物は、非ヒト対象への非経口投与のために製剤化される。さらにその他の実施形態において、組成物は、ネコ、イヌおよびウマからなる群から選択される非ヒト対象への非経口投与のために製剤化される。一実施形態において、非経口投与は皮下投与である。
【0112】
その他の実施形態において、組成物は、ヒトへの局所投与のために製剤化される。その他の実施形態において、組成物は、非ヒト対象への局所投与のために製剤化される。さらにその他の実施形態において、組成物は、ネコ、イヌおよびウマからなる群から選択される非ヒト対象への局所投与のために製剤化される。一実施形態において、局所投与は経皮投与である。
【0113】
その他の実施形態において、組成物は、ヒトへの吸入または吹送による投与のために製剤化される。その他の実施形態において、組成物は、非ヒト対象への吸入または吹送による投与のために製剤化される。さらにその他の実施形態において、組成物は、ネコ、イヌおよびウマからなる群から選択される非ヒト対象への吸入または吹送による投与のために製剤化される。
【0114】
その他の実施形態において、組成物は、ヒトに投与するための徐放性投与形態として製剤化される。その他の実施形態において、組成物は、非ヒト対象に投与するための徐放性投与形態として製剤化される。さらにその他の実施形態において、組成物は、ネコ、イヌおよびウマからなる群から選択される非ヒト対象に投与するための徐放性投与形態として製剤化される。好適な徐放性投与形態の例示的な例は、本明細書のその他の箇所に記載されている。
【0115】
本明細書に記載される医薬組成物を調製するために、薬学的に許容可能な担体は、固体または液体のいずれかであり得る。固体形態の調製物の例示的な例としては、粉末剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、カシェ剤、坐剤および分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤またはカプセル化材料としても作用し得る1または2以上の物質であり得る。粉末剤の場合、担体は、細かく分割された有効成分との混合物中にある細かく分割された固体であってもよい。錠剤の場合、有効成分は、必要な結合能を有する担体と好適な割合で混合され、所望の形状および大きさに圧縮されてもよい。
【0116】
いくつかの実施形態では、粉末剤および錠剤は、有効化合物を5または10%~約70%含有する。好適な担体の例示的な例としては、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバター等が挙げられる。「調製物」という用語は、有効化合物とカプセル化材料との製剤を含むことを意図しており、担体の有無にかかわらず有効成分が担体で包囲されたカプセル剤を提供する。同様に、カシェ剤およびトローチ剤も本明細書で想定される。錠剤、粉末剤、カプセル剤、丸薬、カシェ剤およびトローチ剤は、経口投与に適した固体形態として使用され得る。
【0117】
坐剤を調製するためには、始めに、低融点ワックス、例えば脂肪酸グリセリド、またはカカオバターの配合剤を溶融し、攪拌することによって、有効成分をそこに均一に分散させる。次いで、溶融した均一な混合物を適当な大きさの型に流し込み、冷却することによって固化させる。
【0118】
膣内投与に適した製剤は、有効成分に加えて、当技術分野で好適なあることが公知である担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレーとして提示することができる。
【0119】
液体形態の調製物としては、液剤、懸濁剤および乳剤、例えば、水または水-プロピレングリコール溶液が挙げられる。例えば、非経口注射液調製物は、液剤(水性ポリエチレングリコール溶液)として製剤化され得る。
【0120】
本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、非経口投与(例えば、注射、例えばボーラス注射または持続注入)のために製剤化することができ、アンプル、プレフィルドシリンジ、少量注入液または保存剤を添加した多用量容器に単位投与形態で提示することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤または乳剤の形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤等の配合剤を含有し得る。あるいは、有効化合物(複数可)は、使用前に好適なビヒクル、例えば無菌のパイロジェンフリー水と一緒に構成するために、無菌固体の無菌分離または溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末の形態であってもよい。
【0121】
経口使用に好適な水溶性液剤は、有効成分を水に溶解し、所望により好適な着色剤、香味剤、安定化剤および増粘剤を添加することにより調製することができる。
【0122】
経口使用に好適な水性懸濁剤は、細かく分割された有効成分を、粘稠材料、例えば天然もしくは合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはその他の公知の懸濁化剤等と共に水中に分散させることにより製造することができる。
【0123】
また、本明細書では、使用直前に経口投与のための液体形態の調製物に変換することを意図した固体形態の調製物も意図される。このような液体形態の調製物としては、液剤、懸濁剤および乳剤が含まれる。これらの調製物は、有効成分に加えて、着色剤、香味剤、安定剤、緩衝剤、人工甘味料および天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含有してもよい。
【0124】
表皮への局所投与のために、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、軟膏、クリームもしくはローションとして、または経皮パッチとして製剤化することができる。軟膏およびクリームは、例えば、好適な増粘剤および/またはゲル化剤を添加した水性または油性基剤と共に製剤化することができる。ローションは、水性または油性基剤と共に製剤化され、一般に、1または2以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤または着色剤も含有してもよい。
【0125】
口腔への局所投与に好適な製剤としては、有効成分をフレーバー基剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に含むトローチ剤(lozenge);有効成分をゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアのような不活性基剤中に含むトローチ(pastille);ならびに有効成分を好適な液体担体中に含む洗口剤が挙げられる。
【0126】
液剤または懸濁剤は、従来の手段、例えばスポイト、ピペットまたはスプレーを用いて鼻腔に直接適用される。製剤は、単回投与または多回投与の形態で提供することができる。後者のスポイトまたはピペットの場合、これは、患者が適切な所定体積の液剤または懸濁剤を投与することにより達成され得る。スプレーの場合、これは、例えば、定量噴霧スプレーポンプまたは吸入器によって達成することができる。鼻への送達および保持を改善するために、本発明で使用されるペプチドは、シクロデキストリンでカプセル化されてもよく、または鼻粘膜への送達および保持を亢進することが期待される薬剤と共に製剤化されてもよい。
【0127】
気道への投与は、有効成分が、クロロフルオロカーボン(CFC)(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンまたはジクロロテトラフルオロエタン)、二酸化炭素またはその他の好適なガスを含む好適な高圧ガスと共に加圧パックで提供されるエアロゾル製剤によって達成することもできる。エアロゾルは、レシチンのような界面活性剤も好都合に含有し得る。薬物の用量は、定量バルブを設けることにより制御することができる。
【0128】
代替的、または付加的に、有効成分を乾燥粉末の形態で提供することができ、例えば、乳糖、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のデンプン誘導体およびポリビニルピロリドン(PVP)等の好適な粉末基剤における化合物の粉末混合物の形態で提供することができる。好都合には、粉末担体は鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、例えば、ゼラチン等のカプセルまたはカートリッジ、または粉末が吸入器によって投与され得るブリスターパック等の単位投与形態で提示され得る。
【0129】
鼻腔内投与形態を含む気道への投与を意図した製剤では、ペプチドは一般に、例えば1~10ミクロン以下のオーダーの小さな粒径を有する。このような粒径は、当技術分野で公知の手段、例えば微粒子化によって得ることができる。
【0130】
所望により、本明細書のその他の箇所に記載されるように、有効成分の徐放または持続放出をもたらすように適合させた製剤を採用することができる。
【0131】
一実施形態において、本明細書に記載される医薬調製物は、好ましくは単位投与形態である。このような形態では、調製物は、好適な量の有効成分を含有する単位用量に細分化される。単位投与形態は、パッケージ化された調製物であってもよく、そのパッケージは、別個の量の調製物(例えば、包装された錠剤、カプセル剤、バイアルまたはアンプル中の粉末剤)を含んでいてもよい。また、単位投与形態は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤またはトローチ剤自体であってもよいし、包装された形態のこれらのいずれかの適当な数であってもよい。
【0132】
一実施形態において、本明細書に開示される組成物は、ヒトへの経口投与のために製剤化される。さらにその他の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、非ヒトへの経口投与のために製剤化される。さらなる実施形態において、本明細書に開示される組成物は、ネコ、イヌおよびウマからなる群から選択される非ヒトへの経口投与のために製剤化される。
【0133】
一実施形態において、本明細書に開示される組成物は、ヒトへの吸入または吹送による投与のために製剤化される。さらにその他の実施形態において、本明細書に開示される組成物は、非ヒトへの吸入または吹送による投与のために製剤化される。さらなる実施形態において、本明細書に開示される組成物は、ネコ、イヌおよびウマからなる群から選択される非ヒトへの吸入または吹送による投与のために製剤化される。
【0134】
その他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、ヒト対象への経口投与のために製剤化される。その他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象への経口投与のために製剤化される。さらにその他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌおよびウマからなる群から選択される非ヒト対象への経口投与のために製剤化される。
【0135】
その他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、ヒト対象への局所投与のために製剤化される。さらにその他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象への局所投与のために製剤化される。その他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌおよびウマからなる群から選択される非ヒト対象への局所投与のために製剤化される。一実施形態において、局所投与は経皮投与である。
【0136】
その他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、ヒト対象への吸入または吹送による投与のために製剤化される。さらにその他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象への吸入または吹送による投与のために製剤化される。その他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌおよびウマからなる群から選択される非ヒト対象への吸入または吹送による投与のために製剤化される。
【0137】
その他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、ヒト対象への徐放性投与形態としての投与のために製剤化される。さらにその他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象への徐放性投与形態としての投与のために製剤化される。その他の実施形態において、本明細書に記載のペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象への徐放性投与形態としての投与のために製剤化され、ここで、非ヒト対象は、ネコ、イヌおよびウマからなる群から選択される。一実施形態において、徐放性投与形態は、非経口投与のために製剤化される。
【0138】
本明細書のその他の箇所に記載されるように、いくつかの(すなわち、複数の)分割用量は、毎日、毎週、毎月またはその他の好適な時間間隔で投与されてよく、あるいは用量は、状況の緊急性に応じて、比例的に低減されてもよい。複数の用量の治療単位が必要であるか、または望まれる場合、本明細書に開示される組成物は、前記の複数の経路を介する投与のために好適に製剤化され得る。例えば、第1の用量を非経口的(例えば、筋肉内、静脈内、皮下等)に投与して、対象における急速なまたは急性の治療効果を誘導し、次いで、それに続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)用量を、非経口的(例えば、経腸的および/または局所的)に投与して、治療の急性期に続き長期間にわたって持続的に有効成分を利用できるようにすることが望ましい場合がある。したがって、一実施形態において、本明細書に開示のペプチドおよび組成物は、第1の用量として対象への非経口投与のために(すなわち、非経口投与形態として)製剤化され、第1の用量の後に、対象への非経口ではない投与のために(例えば、経腸および/または局所投与形態として)製剤化される。一実施形態において、非経口投与は、筋肉内投与、皮下投与および静脈内投与からなる群から選択される。さらなる実施形態において、非経口投与は皮下投与である。
【0139】
その他の実施形態では、経腸投与は経口投与である。したがって、一実施形態において、本明細書に開示されるペプチドおよび組成物は、第1の用量として対象への非経口投与のために製剤化され、第1の用量の後に、対象への経口投与のために(すなわち、経口投与形態として)製剤化される。
【0140】
その他の実施形態では、経腸投与は局所投与である。したがって、一実施形態において、本明細書に開示されるペプチドおよび組成物は、第1の用量として対象への非経口投与のために製剤化され、第1の用量の後に対象への局所投与のために(すなわち、経口投与形態として)製剤化される。一実施形態において、局所投与は経皮投与である。
【0141】
その他の実施形態では、第1の用量を非経口的に(例えば、筋肉内、静脈内、皮下等に)投与して、対象に急速なまたは急性の治療効果を誘導し、次いで、それに続き(例えば、第2、第3、第4、第5等の)、本明細書のその他の箇所に記載されるような徐放性投与形態の投与を行い、治療の急性期に続き長期間にわたって有効成分の徐放をもたらすことが望ましい場合がある。したがって、その他の実施形態において、本明細書に開示されるペプチドおよび組成物は、第1の用量として対象への非経口投与のために製剤化され、第1の用量の後に、対象に投与される徐放性投与形態として製剤化される。一実施形態において、徐放性投与形態は、非経口投与のために製剤化される。
【0142】
また、第1の用量を経腸的(例えば、経口的または直腸的)に投与し、次いで、それに続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)用量を、局所的(例えば、経皮的)に投与することが望ましい場合もある。したがって、一実施形態において、本明細書に開示されるペプチドおよび組成物は、第1の用量として対象への経腸投与のために(すなわち、経腸(経口または直腸)投与形態として)製剤化され、第1の用量の後に、対象への局所投与のために(例えば、経皮または経粘膜投与形態として)製剤化される。その他の実施形態において、本明細書に開示されるペプチドおよび組成物は、経皮投与および経粘膜投与からなる群から選択される局所投与のために製剤化される。さらなる実施形態において、本明細書に開示されるペプチドおよび組成物は、経皮投与のために製剤化される。
【0143】
さらにその他の実施形態では、本明細書に開示されるペプチドまたは組成物を、本明細書のその他の箇所に記載されるように、第1の用量として経腸的(例えば、経口的または直腸的)に投与し、次いで、それに続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)用量を徐放性投与形態として投与することが望ましい場合がある。したがって、一実施形態において、本明細書に開示されるペプチドおよび組成物は、第1の用量として経腸投与するために製剤化され、徐放性投与形態として投与するために製剤化され、ここで、徐放性投与形態は、第1の用量に続いて投与するために製剤化される。一実施形態において、経腸投与用量は、経口投与のために製剤化される。その他の実施形態において、徐放性投与形態は、非経口投与のために製剤化される。
【0144】
一実施形態において、本明細書において開示されるペプチドまたは組成物を、本明細書のその他の箇所に記載されるように、第1の用量として局所的に(例えば、経口的または直腸的に)投与し、次いで、それに続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)用量を徐放性投与形態として投与することが望ましい場合がある。したがって、一実施形態において、本明細書に開示されるペプチドおよび組成物は、第1の用量として局所投与するために製剤化され、徐放性投与形態として投与するために製剤化され、ここで、徐放性投与形態は、第1の局所投与用量に続いて投与するために製剤化される。一実施形態において、局所投与用量は、経皮投与のために製剤化される。その他の実施形態において、徐放性投与形態は、非経口投与のために製剤化される。
【0145】
ここで、本発明のいくつかの好ましい態様を例示する以下の実施例を参照して本発明を説明する。しかしながら、本発明の以下の説明の特殊性は、本発明の先行する説明の一般性に取って代わるものではないことを理解すべきである。
【実施例
【0146】
実施例1:LanCL結合アッセイ
架橋タンパク質のゲルベースの分析
異なるペプチドまたはPBS/DMSOビヒクルの存在下で、光プローブで事前に光標識したLANCL1の乾燥ペレットを、30μLのSDSローディングバッファー(2.5%v/v 2-メルカプトエタノールを含むBio RadのXT Sample Buffer)に再懸濁し、加熱した(60℃、30分間)。タンパク質をSDS-PAGE(4~15% Criterion(商標)TGX Stain-Free(商標)Protein Gel、Bio Rad)を用いて分離し、ChemiDoc(商標)MP Imaging System(Bio Rad)を用い、励起光源に緑色LEDライト、BP600/20nm発光フィルターを用いたインゲル蛍光スキャンにより分析した。インゲル蛍光スキャン後、ゲルをクマシーブルーで染色し、各レーンに同量のタンパク質サンプルがロードされていることを確認し、ChemiDoc(商標)MP Imaging Systemで画像化した。Image labソフトウェア(Bio Rad)を用いて、対応するゲルバンドの蛍光強度を測定し、ローディングの差異を調節するために、クマシーブルーで染色したLANCL1ゲルバンドの強度値に対してこの値を正規化することにより、LANCL1への各光プローブの光取り込みを定量的に評価した。
【0147】
結果
表2に示すように、ペプチドはLanCL1に特異的に結合し、公知のLanCL1リガンドであるPAL-CRSVEGSCGF(配列番号22)を組換えLanCL1(rLanCL1)から置換することが見出された。ED50置換値を表2に示す。配列番号38の環状化ペプチドは、その直鎖状の対応物である配列番号37と比較して、rLanCL1に対して予想外に大きな結合親和性を有していたことに留意されたい。同様に、配列番号40の環状化ペプチドは、その直鎖状の対応物である配列番号39と比較して、rLanCL1に対してより良好な結合親和性を有していた。
【0148】
【表2】
【0149】
実施例2:呼吸器上皮細胞生存率
LANCL1と相互作用することにより、本特許に記載されるペプチドは、化学的または酸化的ストレスの有害な影響から細胞を保護する役割を果たすことが示されている。化学療法剤であるタキソールの一定用量で、細胞にストレスを与えるアッセイが開発され、その結果、未処理の細胞と比較して細胞の生存率が50%阻害された。次いで、ペプチドを、濃度を上げて細胞培養液に添加し、タキソール処理細胞の生存率を回復させる能力を評価した。
【0150】
簡単に説明すると、A549細胞を、96ウェルプレートのウェルあたり100μLの培養培地(DMEM培地 11960-044 Thermoscientific、+10% FBS 10270-106 Gibco、Thermoscientific、+1% ピルビン酸Na S8636-100ML、Sigma、+1% Glutamax 35050061、Thermoscientific、+1% ペニシリン-ストレプトマイシン 11074440001、Sigma)中、不透明壁マルチウェルプレートで、50000個のA549細胞/ウェルで培養した。バックグラウンド発光の値を得るために、細胞を含まない培地を入れたコントロールウェルを使用した。細胞は37℃、5% CO中で一晩インキュベートした。
【0151】
タキソール(T7402-5MG、Sigma-Aldrich)を、DMSO中の10mM溶液として最終濃度350μMで各ウェルに添加し、これによって、ビヒクルのみと比較して増殖の50%阻害が得られる。培地+DMSO+ペプチドまたは培地+タキソール+ペプチド(各濃度)100μLを各ウェルに添加し、37℃、5% COで16時間インキュベートした。
【0152】
細胞の形態、生存率、およびコンフルエンシーは、位相差顕微鏡で評価した。次いで、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(G7571、Promega-存在するATPの定量に基づいて培養中の生存細胞数を決定するホモジーニアス法(homogeneous method))を用いて、製造者の説明書に従って代謝的に活性な細胞数を定量した。100μL容量のCellTiter-Glo(登録商標)試薬を各ウェルに存在する100μL容量の細胞培養液に添加し、内容物をオービタルシェーカーで2分間混合して細胞溶解を誘導し、プレートを室温で10分間インキュベートして発光シグナルを安定化させた後、CLARIOstarマルチウェルルミノメーター(BMG Labtech)を用いて0.5秒の積分時間で発光を記録した。
【0153】
結果
表3に示すように、ペプチドは、in vitroにおいて、未処理の細胞と比較して増殖を50%低下させる用量のタキソールで処理されたA549細胞の生存率を回復させることが見出された。上記の表2のLanCL1結合データと一致して、配列番号38の環状化ペプチドはA549の生存率を回復させることが見出されたが、その直鎖状の対応物である配列番号37は回復させなかった。同様に、配列番号10の環状化ペプチドはA549の生存率を回復させることが見出されたが、その直鎖状の対応物である配列番号11は回復させなかった。予期せぬことに、3-、4-、5-および6-アミノ酸長の比較的短いペプチド(配列番号39、42および59~61)もまた、部分的にA549の生存率を回復させることがわかった。配列番号40のペプチド(配列番号39の環状化バリアント)もA549の生存率を回復させた。配列番号9のペプチド(配列番号1の直鎖状フラグメント)もまた、タキソール誘導性の細胞生存率の損失を回復させた(図2も参照)。
【0154】
ペプチドの効果がLanCL発現に依存するかどうかを評価するために、A549細胞をLanCL1 siRNA(100nM)で48時間処理し、LanCL1発現をノックダウンした。次いで、細胞をタキソール(IC50 約350μM)の存在下で、ビヒクルのみ(ジメチルスルホキシド;DMSO)、または配列番号1のペプチド(DMSOで希釈)の存在下のいずれかで、1、5、25、50および100μMの濃度でインキュベートした。対照siRNA(SiCTL)またはLanCL1に対するsiRNA(SiLanCL1)でのトランスフェクションは、A549細胞の生存率を変化させなかった。図1に示すように、配列番号1のペプチドは、非トランスフェクトA549細胞(NT)、またはタキソールの非存在下でSiCTLをトランスフェクトしたA549細胞の生存率に有意な影響を及ぼさなかった。SiLanCL1をトランスフェクトした細胞では、配列番号1のペプチドは、より高い用量でA549の増殖を阻害した。
【0155】
350μMのタキソールの存在下において、配列番号1のペプチドの存在は、非トランスフェクトA549細胞(NT)またはSiCTLでトランスフェクトされたA549細胞の生存率の損失をレスキュー(rescue)した。この効果は、上皮細胞に対する保護効果を表すものである。対照的に、配列番号1のペプチドは、A549の生存率に対するタキソールの負の効果をレスキューしなかった。
【0156】
これらのデータは、式(I)のアミノ酸配列を含むペプチドが、上皮細胞の生存率に対するタキソール誘導性ストレスの負の効果をレスキューすることができ、このレスキュー効果はLanCL1に依存することを示している。
【0157】
【表3】
【0158】
実施例3:インフルエンザA感染マウスモデル
6~8週齢のC57BL/6雄マウスを、Monash Medical CentreのSpecific Pathogen Free Physical Containment Level 2 (PC2) Animal Research Facilityで飼育した。すべての実験手順はHudson Animal Ethics Committeeの承認を受け、承認されたガイドラインに従って実験手順を実施した。本試験で使用したIAV株はHKx31(H3N2)であり、これはA/Aichi/2/1968(H3N2)の表面糖タンパク質を保持するA/PR/8/34(H1N1)の高収量遺伝子再集合体である。HKx31は、標準的な手順により10日胚化鶏卵中で増殖させ、Madin-Darby Canine Kidney(MDCK)細胞上で滴定した。
【0159】
ウイルス感染試験のために、8匹の雄のC57BL/6マウスの群を無作為化した。マウスを軽く麻酔し、50μL PBS中10 PFUのHKx31(H3N2)を経鼻感染させた(重篤な疾患を誘導することが以前に示されている(Rosliら,2019年;Tateら,2016年))。マウスを、本明細書に記載のペプチド(5または20mg/kg;示す通り)で、鼻腔内経路を介して、示された時点で処理した。対照マウスにはPBSのみを処理した。マウスは毎日体重を測定し、不活発、毛並みの乱れ、呼吸困難およびうずくまり行動を含む臨床疾患の視覚的徴候について評価した。体重が元の体重の20%以上減少した、または疾患の重篤な臨床症状を示した動物は安楽死させた。気管支肺胞洗浄(BAL)液は、安楽死後直ちに、肺を1mLのPBSで3回フラッシュすることにより得た。次いで、肺を摘出し、直ちに液体窒素で凍結した。肺ホモジネート中の感染性ウイルスの力価は、MDCK細胞を用いた標準プラークアッセイで測定した。
【0160】
マウスBAL液および血清中のサイトカインの定量
サイトカインを検出するために、BAL液を採取し、-80℃で保存した。IL-6、MCP-1/CCL2、IFNγ、IL-10、IL-12p70およびTNFαタンパク質のレベルを、マウス炎症キット(Becton Dickinson)を用いてサイトカインビーズアレイ(CBA)によって決定した。マウスIFNαのレベルは、マウスモノクローナルクローンF18(Thermo Scientific)およびウサギポリクローナル抗体(PBL)を用いたサンドイッチELISAによって決定した(Thomasら,2014年)。マウスIFNβのレベルは、マウスモノクローナルクローン7F-D3(Abcam)およびウサギポリクローナル抗体(PBL)を用いたサンドイッチELISAによって決定した(Thomasら,2014年)。マウスIFNλ2/3は、ELISA(R&D Systems)により定量した。
【0161】
マウスからの白血球の回収および特徴付け
フローサイトメトリー分析のために、BAL細胞を赤血球溶解緩衝液(Sigma Aldrich)で処理し、血球計数装置を用いてトリパンブルー排除法により細胞数および生存率を評価した。BAL細胞をFcブロック(2.4G2;eBiosciences)とインキュベートし、次いでLy6C、Ly6G、CD11cおよびI-A(MHC-II)に対するフルオロクロム標識モノクローナル抗体(BD Biosciences,USA)で染色した。好中球(Ly6G)、マクロファージ(CD11c I-Ab低)、樹状細胞(DC;CD11c I-Ab高)、炎症性マクロファージ(Ly6G-Ly6C)は、以前に記載されたように、フローサイトメトリーにより定量した(Rosliら,2019年;Tateら,2016年)。生細胞(ヨウ化プロピジウム陰性)は、BD FACS Canto IIフローサイトメーター(BD Biosciences)およびFlowJoソフトウェア(BD Biosciences)を用いて分析した。
【0162】
肺水腫および血管漏出の評価
肺の湿重量/乾燥重量比を、肺における体液蓄積の指標として用いた。マウスを安楽死させた後、肺を外科的に解剖し、ブロットドライして、直ちに重量を測定した(湿重量)。次いで、肺組織を55℃のオーブンで72時間乾燥させ、乾燥重量として再計量した。各動物について湿重量対乾燥重量の比を算出し、組織の水腫を評価した(Tateら,2009年;Tateら,2010年)。無細胞BAL上清中のタンパク質濃度は、Bradfordタンパク質色素を添加して測定した(Tateら,2009年;Tateら,2010年)。ウシ血清アルブミンを用いて標準曲線を作成し、595nmで光学濃度(OD)を測定した。
【0163】
結果
表4に示すように、配列番号1の環状ペプチドによる処理(10mg/kg単回用量)は、ウイルス感染によって引き起こされる気管支洗浄液中の多形核細胞(PMN)の浸潤、ウイルス力価およびIL-6レベルを規定通りに(routinely)減少させた。単回10mg/kg用量において、配列番号1、2、9、29、37~39、42、56および59~61のペプチドは、BAL液中のPMN浸潤を減少させることにおいて配列番号38のペプチドと同程度に有効であったが、一方、配列番号23、40、41、50、57および58のペプチドは、単回10mg/kg用量においてBAL液中のPMN浸潤を減少させることにおいて配列番号38のペプチドよりも相対的に有効性が低かった。配列番号43、44、47~49および52のペプチドのいずれか1つによる処理は、単回10mg/kg用量でBAL液中のPMN浸潤に変化を示さなかった(活性スコア:0=不活性;1=配列番号38のペプチドより低活性;2=配列番号38のペプチドと同等またはそれ以上の活性)。
【0164】
配列番号38と比較して、配列番号1、9、23、29、37、38、42、50、52、56および59~61のペプチドのいずれか1つ(10mg/kg単回用量)による処理は、3日目のウイルス力価を低下させるのに有効であることが示された。
【0165】
サイトカインプロファイルは、肺および血清サンプルにおいて変動したが、データは、配列番号1、9、23、29、37、38、42、44、47、49、50、52、56および59~61のペプチドのいずれか1つによる処理が、配列番号38のペプチドに匹敵するレベルで、BAL液中のIL-6レベルを減少させるのに有効であったことを示している。
【0166】
【表4】
【0167】
実施例4:神経障害性疼痛のin vivoモデル
本試験は、Chungラットの神経収縮モデルを用いて、神経障害性疼痛に対する本明細書に記載のペプチドの鎮痛効果をin vivoで評価するために実施した。簡単に述べると、8~9週齢、手術時の体重220~250gの成体雄Sprague-Dawleyラットを、Charles River UK Ltd.から購入した。
【0168】
動物は、12時間の明/暗サイクルで空調の効いた部屋に、4匹ずつの群で収容した。餌と水は自由に摂取できた。動物は、3日間、高くした金属メッシュの上に少なくとも40分間は放置し、実験環境に馴化させた。ベースラインの肢逃避閾値(PWT)は、手術前の連続3日間、一連の目盛り付きvon Freyヘアを用いて調べ、手術後6~8日目および手術後12~14日目の薬物投与前に再評価した。
【0169】
各ラットを、酸素と混合した5%イソフルラン(毎分2L)で麻酔し、次いでケタミン90mg/kg+キシラジン10mg/kgを筋肉内(i.m.)注射した。背中を剃毛し、ポビドンヨードで滅菌した。動物を仰臥位にし、L4~6レベルを覆う皮膚に傍正中切開を行った。L5脊髄神経を注意深く分離し、6/0絹縫合糸でしっかりと結紮した。完全に止血した後、創傷を重層的に閉鎖した。手術後の感染予防のため、抗生物質(アモキシペン、15mg/ラット、i.p.)の単回投与を慣用的に行った。動物は、完全に目覚めるまで温度制御された回復チャンバーに入れられ、その後ホームケージに戻された。
【0170】
ビヒクル(PBS中1% DMSO)またはペプチドを、損傷部位とは反対側の脚に筋肉内(i.m.)投与した。投与は二人目の実験者が行った。神経障害性疼痛状態を検証したラットは、無作為に5つの実験群に分けられた:1mL/kgビヒクル、0.1、0.5、1および5mg/kgペプチド。
【0171】
各群は8匹の動物を有した。動物は、試験の少なくとも40分前から、高くした金属メッシュ上の個別のPerspexボックスに入れられた。最も応力の弱いフィラメント(約1g)から開始し、各フィラメントを前肢の腹側表面の中央部に垂直に、わずかに曲がるまで6秒間当てた。刺激によって動物が前肢を引っ込めたり持ち上げたりした場合は、試験したものよりすぐ下の応力のヘアを使用した。反応が観察されない場合は、すぐ上の応力のヘアで試験した。信頼できる反応(5回の試行のうち3回で陽性)を誘発するのに必要な応力の最小量をPWTの値として記録した。
【0172】
薬物試験は、手術後12~14日目に実施した。PWTは、薬物またはビヒクル投与前、投与後1時間、2時間および4時間で評価した。動物は、隣接する2つの試験時点の間に、ホームケージに戻されて休息させられた(約30~60分)。ペプチドは、約0.1mg/kg体重~約5mg/kg体重の用量で、同側の肢に単回筋肉内注射(IM)により投与した。
【0173】
結果
以下の表5に示すように、配列番号39の6-merペプチドを含む配列番号1、2、3、10、24および37のペプチドは、経口、皮下および/または筋肉内投与(経口用量は2~10mg/kg、皮下用量は0.1~3mg/kg、および筋肉内用量は0.5~5mg/kg)の後、Chungモデルにおける神経障害性疼痛を低下させた。
【0174】
【表5】
【0175】
実施例5:全身性脳心筋炎ウイルス(EMCV)感染症のin vivoモデル
全身性脳心筋炎ウイルス(EMCV)感染症モデルマウスを用いた予備実験では、配列番号1、37および38のペプチドを腹腔内投与した後、好中球数および炎症性マクロファージ数の減少が腹腔内で観察された(表6)。この観察は、これら両方の免疫細胞の移動および活性化を促進するサイトカインである循環MCP-1の減少と相関していた。
【0176】
【表6】
【0177】
実施例6:神経障害性疼痛のin vivoモデル(II)
脊髄神経結紮(Chung)モデルを、上記の実施例4に記載したように準備した。簡単に述べると、8~9週齢、手術時の体重が250~350gの64匹の成体雄Sprague-Dawleyラットを、Charles River UK Ltd.から購入した。動物は、12時間の明/暗サイクルで空調の効いた部屋に、4匹ずつの群で収容した。餌と水は自由に摂取できた。動物は、3日間、高くした金属メッシュの上に少なくとも40分間は放置し、実験環境に順化させた。ベースラインの肢逃避閾値(PWT)は、手術前の連続した3日間、一連の目盛り付きvon Freyヘアを用いて調べ、手術後7日目および手術後12~14日目の薬物投与前に再評価した。
【0178】
各ラットを、酸素と混合した5%イソフルラン(毎分2L)で麻酔し、次いでケタミン60mg/kg+キシラジン10mg/kgを筋肉内(i.m.)注射した。背中を剃毛し、ポビドンヨードで滅菌した。動物を仰臥位にし、L4~6レベルを覆う皮膚に傍正中切開を行った。L5脊髄神経を注意深く分離し、6/0絹縫合糸でしっかりと結紮した。完全に止血した後、創傷を重層的に閉鎖した。手術後の感染予防のため、抗生物質(アモキシペン、15mg/ラット、i.p.)の単回投与を慣用的に行った。動物は、完全に目覚めるまで温度制御された回復チャンバーに入れられ、その後ホームケージに戻された。
【0179】
神経障害性疼痛状態が確認された動物を無作為に4つの実験群に分けた:ビヒクル(最初5% DMSO、次いで0.9%生理食塩水中)、3mg/kg LAT9997、3mg/kg LAT9997x1および3mg/kg LAT1233x1。各群には6匹の動物が含まれた。
【0180】
RSVEGS(配列番号9;LAT9997)、SVEGS(配列番号62;LAT9997x1)およびALNSS(配列番号63;LAT1233x1)は、最初に5% DMSOに溶解し、次いで0.9%生理食塩水に溶解し、これはビヒクル対照としても機能した。すべての化合物はGenScriptからLateral Pharmaに提供された。ビヒクル/化合物はすべて1mL/kg体重で静脈内投与した。
【0181】
肢逃避閾値(PWT(paw withdrawal threshold))
動物を、少なくとも40分間、高くした金属メッシュ上の個別のPerspexボックスに入れた。最も応力の弱いフィラメント(1グラム(g))から開始し、各vFHフィラメントを前肢の腹側表面の中央部に垂直に、わずかに曲がるまで6秒間当てた。刺激によって動物が前肢を引っ込めたり持ち上げたりした場合は、試験したものよりすぐ下の応力のフィラメントを使用した。反応が観察されない場合は、すぐ上の応力のフィラメントを試験した。信頼できる反応(3回の試行のうち2回で陽性)を誘発するのに必要な応力の最小量をPWTの値として記録した。
【0182】
PWTは、機械的アロディニアの発現をモニタリングするために、手術前3日間(preD1、preD2、D0)および手術後7日目に、毎日1回評価した。
【0183】
すべての薬物試験は、手術後13~17日目に実施した。PWTは、薬物またはビヒクル投与前(BL)、投与後1時間および2時間で評価した。
【0184】
一元配置分散分析(ANOVA)(IBM statistics SPSS,Version 27)を、同じ時点における異なる群のPWTを比較するための統計分析に使用した。適切な場合には、フィッシャーの最小有意差(LSD)事後検定を使用して、薬物処理群と対照群とを比較した。同一群の異なる時点の値の比較には、対応のあるStudentのt検定(Microsoft Excel 365)を用いた。ビヒクルに対するPWTの薬物誘導性の変化を特徴付けるために、ビヒクルの値を適切な薬物の値から差し引いた。有意水準はP<0.05とした。
【0185】
結果
ナイーブラット(手術前)のPWTは10.0~15.0gであった。手術前日のビヒクル群の同側(左)後肢および対側(右)後肢の平均PWTはそれぞれ14.17±0.83gおよび15.00±0.00gであった。LAT9997群の平均PWTは左右後肢とも15.00±0.00g、LAT9997x1群とLAT1233x1群の平均PWTは左右後肢とも15.00±0.00gであった。群間で統計的に有意な差はなかった(P>0.05、一元配置分散分析)。
【0186】
手術後7日目に、結紮した神経の同側のPWTは、手術前に決定された値よりも有意に低かった(ビヒクル群では6.00±0.52g;LAT9997群では5.67±0.33g;LAT9997x1群では6.33±0.33g;およびLAT1233x1群では5.33±0.42g;手術前の値と比較して、すべての群でP<0.001、対応のあるStudentのt-検定)。対側のPWTは手術による有意な影響を受けなかった(LAT1233x1群では14.17±0.83g;およびその他の全群では15.00±0.00g;手術前の値と比較した全群のP>0.05、対応のあるStudentのt-検定)。
【0187】
PWTに対するビヒクル(5% DMSO)の効果
試験日にビヒクル(5% DMSO)を投与する前、(同側の)後肢のPWTは、対側の後肢と比較して有意に低く:同側で3.33±0.42g、および対側で14.17±0.83gであった(図3および4参照)。ビヒクル処理後、同側PWTは投与後1時間~4時間まで有意な影響を受けず、1時間、2時間および4時間の各時点で、それぞれ3.67±0.61g、3.67±0.61g、および4.00±0.89gであった(すべてP>0.05、投与前レベルと比較、対応のあるStudentのt-検定、図3および表7参照)。対側では、PWTは影響を受けなかった(すべての時点ですべて14.17±0.83g、図4および表8参照)。
【0188】
PWTに対するLAT9997の効果
3mg/kgで、LAT9997は、Chungモデルラットの同側後肢のPWTの有意な増加を誘導した(図3および表7参照)。この効果は投与後1時間から有意であった:投与前は3.33±0.42gであったのに対し、投与後1時間では7.83±1.72gであった(P<0.05、投与前レベルと比較、対応のあるStudentのt-検定)。投与2後時間において、PWTはさらに9.67±1.73gに増加した(P<0.01、投与前レベルと比較、対応のあるStudentのt-検定)。投与後4時間において、PWTは8.17±1.60gにわずかに減少した(P<0.05、投与前レベルと比較、対応のあるStudentのt-検定)。PWTは、投与後2時間および4時間においてビヒクル群から記録されたものと有意に異なっていた(いずれもP<0.05、一元配置分散分析)。
【0189】
対側のPWTは、観察期間全体にわたって変化しなかった(投与前では14.17±0.83g、投与後1、2および4時間では15.00±0.00g)。対側のPWTは、投与後のどの時点でもビヒクル群と有意差はなかった(P>0.05、一元配置分散分析、図4および表8参照)。
【0190】
PWTに対するLAT1233x1の効果
3mg/kgで、LAT1233x1はまた、投与後1時間から、Chungモデルラットの同側後肢のPWTの急激で有意な増加を誘導した:投与前は3.33±0.42gであったのに対し、投与後1時間では10.67±1.67gであった(P<0.01、投与前レベルと比較、対応のあるStudentのt-検定)。投与後2時間において、PWTは11.50±1.80gにわずかに増加した(P<0.01、投与前レベルと比較、対応のあるStudentのt-検定)。投与後4時間において、PWTは10.17±1.17gにわずかに減少した(P<0.01、投与前レベルと比較、対応のあるStudentのt-検定)。投与後のすべての時点において、PWTはビヒクル群から記録されたものと有意に異なっていた(すべてP<0.01、一元配置分散分析;図3および表7参照)。
【0191】
対側のPWTは、観察期間全体にわたって有意な変化はなかった(投与前は15.00±0.00g、投与後1、2および4時間はそれぞれ15.00±0.00g、14.17±0.83gおよび15.00±0.00g)。対側のPWTは、投与後のどの時点でもビヒクル群と有意差はなかった(P>0.05、一元配置分散分析、図4および表8参照)。
【0192】
【表7】
【0193】
【表8】
【0194】
【表9】
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
【国際調査報告】