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特表2024-525961疾患治療のためのアルファフェトプロテインバイオコンジュゲート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】疾患治療のためのアルファフェトプロテインバイオコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20240705BHJP
   A61K 31/537 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240705BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20240705BHJP
   C07K 14/82 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
A61K47/64
A61K31/537
A61K9/08
A61P35/00
C07K14/47 ZNA
C07K14/82
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504144
(86)(22)【出願日】2022-07-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 CA2022051144
(87)【国際公開番号】W WO2023000114
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/203,467
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524028670
【氏名又は名称】アルファ キャンサー テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シャーマン,イゴール
(72)【発明者】
【氏名】フリジェリオ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ゴドウィン,アントニー
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ジェユ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC27
4C076DD60Z
4C076DD67Q
4C076EE59
4C076FF36
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB22
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045CA40
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA10
(57)【要約】
がん治療のために、ジスルフィド、グルタチオン感受性リンカーを通して細胞毒とリンクしたアルファフェトプロテイン(AFP)を含むバイオコンジュゲートが記述される。好ましい実施形態では、バイオコンジュゲートは、グルタチオン感受性リンカーを介してメイタンシノイド細胞毒にリンクしたAFPバリアントであり、そのため、バイオコンジュゲートは、AFP当たり特定の高比または低比の細胞毒のいずれかを含む。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患細胞の治療において有用なバイオコンジュゲートであって、
(1)AFPR細胞の表面上のアルファフェトプロテイン(AFP)受容体(AFPR)に結合する薬剤と、
(2)AFPR+細胞に対して毒性である細胞毒(CT)と、
(3)グルタチオン切断可能なジスルフィヨードリンカーであって、リンカーが、
(i)AFPR結合剤と前記CTとの間に共有結合され、かつ
(ii)CTをAFPR+細胞へと細胞内で放出するリンカーと、を含む、バイオコンジュゲート。
【請求項2】
前記AFPR結合剤が、成熟した、野生型AFPのアミノ酸配列、AFPR結合断片のアミノ酸配列、または前記成熟野生型AFPもしくは前記AFP断片のAFPR結合バリアントのアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項3】
前記AFPが、組み換え型ヒトAFP、またはそのAFPR結合断片もしくはバリアントであり、前記バリアントが、1~5個のアミノ酸置換を含む、請求項2に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項4】
前記薬剤が、グリコシル化を欠くAFPである、請求項3に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項5】
前記薬剤が、配列番号3を含む組み換え型[Asn233Gln]成熟ヒトAFPである、請求項1に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項6】
前記薬剤が配列番号4を含む、請求項1に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項7】
前記組み換え型[Asn233Gln]ヒトAFPが、トランスジェニック細菌によって産生される、請求項5に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項8】
前記組み換え型[Asn233Gln]ヒトAFPが、トランスジェニックヤギを含むトランスジェニック哺乳類によって産生される、請求項5に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項9】
前記細胞毒(CT)が、式:を有する請求項1~8のいずれか一項に記載のバイオコンジュゲート。
【化1】
【請求項10】
前記リンカーが前記AFPR結合剤と前記細胞毒との間に連結され、前記細胞毒が、
リンカー1 -S-CH(CH3)-(CH2)-CO--、および
リンカー2 -S-(CH2)-CO-から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項11】
前記リンカーが前記AFPR結合剤と前記細胞毒との間に連結され、前記細胞毒が、
リンカー1 -S-CH(CH3)-(CH2)-CO--、および
リンカー2 -S-(CH2)-CO-から選択される、請求項9に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項12】
前記コンジュゲートが、以下に示されるリンカー細胞毒:を含む、請求項1に記載のバイオコンジュゲートの産生において有用なコンジュゲート。
【化2】
【請求項13】
前記コンジュゲートが、以下に示されるリンカー細胞毒素:を含む、請求項1に記載のバイオコンジュゲートの産生において有用なコンジュゲート。
【化3】
【請求項14】
次式のバイオコンジュゲートであって、
【化4】

式中、AFPが、アルファフェトプロテインのAFP受容体結合形態である、バイオコンジュゲート。
【請求項15】
前記nが、1~11の範囲内にある、請求項14に記載のバイオコンジュゲートを含む製剤。
【請求項16】
前記平均DPRが2~8である、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
前記平均DPRが5~7である、請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
前記平均DPRが5.6~6.1である、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
前記平均DPRが約5.9である、請求項17に記載の製剤。
【請求項20】
前記平均DPRが3~4.5である、請求項16に記載の製剤。
【請求項21】
前記平均DPRが3.6~4.1である、請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
前記平均DPRが約3.9である、請求項20に記載の製剤。
【請求項23】
前記AFPが、配列番号3を含む組み換え型[Asn233Gln]成熟ヒトAFPである、請求項14に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項24】
前記nが、1~11の範囲内にある、請求項23に記載のバイオコンジュゲートを含む製剤。
【請求項25】
前記平均DPRが2~8である、請求項24に記載の製剤。
【請求項26】
前記平均DPRが5~7である、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
前記平均DPRが5.6~6.1である、請求項26に記載の製剤。
【請求項28】
前記平均DPRが約5.9である、請求項26に記載の製剤。
【請求項29】
前記平均DPRが3~4.5である、請求項24に記載の製剤。
【請求項30】
前記平均DPRが3.6~4.1である、請求項24に記載の製剤。
【請求項31】
前記平均DPRが約3.9である、請求項24に記載の製剤。
【請求項32】
次式のバイオコンジュゲートであって、
【化5】

式中、APFが、アルファフェトプロテインのAFP受容体結合形態である、バイオコンジュゲート。
【請求項33】
前記nが、1~11の範囲内にある、請求項32に記載のバイオコンジュゲートを含む製剤。
【請求項34】
前記平均DPRが2~8である、請求項33に記載の製剤。
【請求項35】
前記平均DPRが5~7である、請求項34に記載の製剤。
【請求項36】
前記平均DPRが5.5~6.1である、請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
前記平均DPRが約5.8である、請求項35に記載の製剤。
【請求項38】
前記平均DPRが3~4.5である、請求項34に記載の製剤。
【請求項39】
前記平均DPRが3.4~4.0である、請求項38に記載の製剤。
【請求項40】
前記平均DPRが約3.7である、請求項38に記載の製剤。
【請求項41】
薬学的に許容可能な担体と、請求項17に記載のバイオコンジュゲートと、を含む、医薬組成物。
【請求項42】
前記担体が水性ビヒクルである、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記水性ビヒクルが、5%スクロースを有するpH7.5の10mMのHEPES緩衝剤である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
AFPR+であるがんを患う対象へと投与するための、請求項41~43のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項45】
薬学的に許容可能な担体と、請求項1~8、14、および26のいずれか一項に記載のバイオコンジュゲートとを含む、医薬組成物。
【請求項46】
前記担体が水性ビヒクルである、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記水性ビヒクルが、5%スクロースを有するpH7.5の10mMのHEPES緩衝剤である、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
AFPR+であるがんを患う対象へと投与するための、薬学的に許容可能な担体と、請求項1~8、14、および26のいずれか一項に記載のバイオコンジュゲートと、を含む、医薬組成物。
【請求項49】
薬学的に許容可能な担体と、請求項9に記載のバイオコンジュゲートと、を含む、医薬組成物。
【請求項50】
前記担体が水性ビヒクルである、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記水性ビヒクルが、5%スクロースを有するpH7.5の10mMのHEPES緩衝剤である、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項53】
AFPR+であるがんを患う対象へと投与するための、請求項52に記載の医薬組成物。
【請求項54】
薬学的に許容可能な担体と、請求項10に記載のバイオコンジュゲートと、を含む、医薬組成物。
【請求項55】
前記担体が水性ビヒクルである、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
前記水性ビヒクルが、5%スクロースを有するpH7.5の10mMのHEPES緩衝剤である、請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項57】
AFPR+であるがんを患う対象へと投与するための、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
薬学的に許容可能な担体と、請求項11に記載のバイオコンジュゲートと、を含む、医薬組成物。
【請求項59】
前記担体が水性ビヒクルである、請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
前記水性ビヒクルが、5%スクロースを有するpH7.5の10mMのHEPES緩衝剤である、請求項59に記載の医薬組成物。
【請求項61】
AFPR+であるがんを患う対象へと投与するための、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項62】
それを必要とする対象内のAFPR+細胞を治療するための方法であって、治療有効量の請求項31に記載の医薬組成物を対象へと投与することを含む、方法。
【請求項63】
前記AFPR+細胞が、がん細胞である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記AFPR+細胞が、MDSCである、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記AFPR+細胞が、卵巣がん細胞である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記AFPR+細胞が、結腸直腸がん細胞である、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記AFPR+細胞が、乳がん細胞である、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記AFPR+細胞が、リンパ腫細胞である、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
それを必要とする対象内のAFPR+細胞を治療するための方法であって、治療有効量の請求項35に記載の医薬組成物を対象へと投与することを含む、方法。
【請求項70】
前記AFPR+細胞が、がん細胞である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記AFPR+細胞が、MDSCである、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記AFPR+細胞が、卵巣がん細胞である、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記AFPR+細胞が、結腸直腸がん細胞である、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
前記AFPR+細胞が、乳がん細胞である、請求項70に記載の方法。
【請求項75】
前記AFPR+細胞が、リンパ腫細胞である、請求項70に記載の方法。
【請求項76】
それを必要とする対象内のAFPR+細胞を治療するための方法であって、治療有効量の請求項49に記載の医薬組成物を対象へと投与することを含む、方法。
【請求項77】
前記AFPR+細胞が、がん細胞である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記AFPR+細胞が、MDSCである、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記AFPR+細胞が、卵巣がん細胞である、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記AFPR+細胞が、結腸直腸がん細胞である、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
前記AFPR+細胞が、乳がん細胞である、請求項77に記載の方法。
【請求項82】
前記AFPR+細胞が、リンパ腫細胞である、請求項77に記載の方法。
【請求項83】
それを必要とする対象内のAFPR+細胞を治療するための方法であって、治療有効量の請求項56に記載の医薬組成物を対象へと投与することを含む、方法。
【請求項84】
前記AFPR+細胞が、がん細胞である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記AFPR+細胞が、MDSCである、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記AFPR+細胞が、卵巣がん細胞である、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記AFPR+細胞が、結腸直腸がん細胞である、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記AFPR+細胞が、乳がん細胞である、請求項84に記載の方法。
【請求項89】
前記AFPR+細胞が、リンパ腫細胞である、請求項84に記載の方法。
【請求項90】
AFPR+であるがんを患う対象の治療のための、治療的な組み合わせにおける使用のための、請求項31で定義されるような医薬組成物および第二の治療剤。
【請求項91】
前記第二の治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤もしくはCAR-T剤、または別のがん免疫療法である、請求項90に記載の使用。
【請求項92】
AFPR+であるがんを患う対象の治療のための、治療的な組み合わせにおける使用のための、請求項35で定義されるような医薬組成物および第二の治療剤。
【請求項93】
前記第二の治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤もしくはCAR-T剤、または別のがん免疫療法である、請求項92に記載の使用。
【請求項94】
AFPR+であるがんを患う対象の治療のための、治療的な組み合わせにおける使用のための、請求項49で定義されるような医薬組成物および第二の治療剤。
【請求項95】
前記第二の治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤もしくはCAR-T剤、または別のがん免疫療法である、請求項94に記載の使用。
【請求項96】
AFPR+であるがんを患う対象の治療のための、治療的な組み合わせにおける使用のための、請求項56で定義されるような医薬組成物および第二の治療剤。
【請求項97】
前記第二の治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤もしくはCAR-T剤、または別のがん免疫療法である、請求項96に記載の使用。
【請求項98】
請求項2~8のいずれか一項に記載のAFPR結合形態のAFPを、請求項12に記載のコンジュゲートと連結することを含む、バイオコンジュゲートを産生するためのプロセス。
【請求項99】
請求項2~8のいずれか一項に記載のAFPR結合形態のAFPを、請求項13に記載のコンジュゲートと連結することを含む、バイオコンジュゲートを産生するためのプロセス。
【請求項100】
バイオコンジュゲートを産生するためのプロセスであって、それによって、細胞毒ABZ-981が、最初にグルタチオン感受性ジスルフィドリンカーと連結されて、次式の中間体を産生し、
【化6】

これがその後、配列番号3を含む組み換え型[Asn233Gln]成熟ヒトAFPである、AFPのAFPR結合形態と反応し、そして前記中間体が、AFP内のリジン残基のイプシロンアミノ基へと共有結合される、プロセス。
【請求項101】
バイオコンジュゲートを産生するためのプロセスであって、それによって、細胞毒ABZ-981が、最初にグルタチオン感受性ジスルフィドリンカーと連結されて、次式の中間体を産生し、
【化7】

これがその後、配列番号3を含む組み換え型[Asn233Gln]成熟ヒトAFPである、AFPのAFPR結合形態と反応し、そして前記中間体が、AFP内のリジン残基のイプシロンアミノ基に共有結合される、プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月23日に出願された米国仮特許出願第63/203,467号の優先権を主張するものであり、これは参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、がんならびに他の疾患および病態の治療の上で有用であるバイオコンジュゲートおよびその製剤に関する。本発明は特に、アルファフェトプロテインおよび細胞毒を含むバイオコンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0003】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)は、細胞毒が、疾患細胞標的へと選択的に結合する抗体または他のタンパク質(バイオコンジュゲート)などの標的化剤にリンクしている医薬品の広義のクラスである。細胞結合剤(標的化剤)および細胞毒(ペイロード)は、異なるリンカー構造を介して共有的にリンクすることができる。一部のリンカーは、バイオコンジュゲートが細胞に入ると、細胞内で消化されて細胞毒を放出する切断部位を提供する。一部のリンカーは不活性であるが、自己犠牲可能であり、サイトゾルまたはリソソーム内で段階的に分解して、細胞毒を放出することになる。切断可能なリンカーは、酵素消化、pH変化、および他の細胞内の条件または薬剤に依存して、より制御され、かつ直接的な薬物放出機構を提供する。
【0004】
バイオコンジュゲートは、数多くの高度に可変な構成要素から構成され、また各構成要素は、最適な特性のために、各構成要素の単独の、および他の薬剤と組み合わせた注意深い選択を必要とする。標的化剤は、毒性が標的部位に限定されるように、疾患細胞によって提示される標的に選択的に結合すべきである。バイオコンジュゲートは、疾患細胞に対して致死的または少なくとも損傷する毒素を含むべきであり、リンカーは、バイオコンジュゲートが細胞に入ったときに細胞毒の放出を許容するべきである。標的化剤とバイオコンジュゲートとの間に形成されるリンケージも切断可能であるべきであり、また標的化分子ごとにそのようにリンクされた毒素の数も重要なパラメータである。同様に、構成要素が連結される順序、および構成要素がそれによって分離される(または分離されない)方法は、商業的に有用な収率に対して重要とすることができる。それ故に、バイオコンジュゲート自体は、細胞によって取り込まれ、次いで細胞の条件および構成要素によって処理されて、細胞毒が毒性形態で提供されるべきである。バイオコンジュゲートの設計および生産における主構成要素または工程のうちのいずれか1つ以上における変化は、例えば、バイオコンジュゲートの力価の低減または全身毒性および他の特性の増加などの著しい変化をもたらすことができることが、当技術分野では理解され、かつ許容される。
【0005】
アルファフェトプロテイン(AFP)受容体(AFPR)は、腫瘍上で高度に発現され、そして一般に、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、およびAFP受容体も発現するある特定の活性化リンパ球を除いて、健康な組織において低い発現または発現の不在を示す。AFP受容体は、すべての胚細胞上に存在し、そして通常、出生のすぐ後に消滅するが、その後、ほとんどの成人および小児のがんにおいて再発現される。胎児では、AFPは、成人におけるアルブミンと同様にシャトルタンパク質として機能し、これらの分子に可逆的に結合し、次いでAFP受容体を介して細胞の中へとそれらを送達することによって、アミノ酸、脂肪酸、および他の必要な分子を胚細胞にもたらす。細胞の内側に入ると、AFPは、栄養素を細胞の中へと放出し、次いで循環へと戻って、追加の分子を細胞内にシャトリングすることを再開する。
【0006】
先行技術のAFPバイオコンジュゲートは、AFPが抗がん剤としてタキサンと非共有結合で複合体化される調製を含む(2016年8月4日に公開された国際公開第2016/119045号を参照のこと)。いかなるリンカーも使用されず、また複合体は細胞に浸透し、次いでタキサンを放出して治療を達成することが期待される。また、非切断可能なリンカーまたは架橋を使用してリンクされた、メイタンシノイドとしても知られる薬物メイタンシン(DM)を組み込むAFPベースのバイオコンジュゲートについても言及されている。メイタンシノイドは、それ自体が、リファマイシン、ゲルダナマイシン、およびアンサトリエニンと構造的に類似した細胞毒である。メイタンシノイドは、チューブリンと結合し、かつマイクロチューブルの形成と干渉して、「中毒性」の細胞における有糸分裂停止を誘発することができる。
【0007】
他の開示は、コンジュゲート化したリンカーを使用するが切断不可能なAFPバイオコンジュゲートおよび毒性ペイロードに関する;2007年4月24日に公開されたMerrimackの米国特許第7,208,576号を参照のこと。このコンジュゲートでは、タカツズマブAFP抗体、およびDM-1は、切断不可能なリンカー、すなわち、N-スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)の間に連結される。DM-1毒素は、(N2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)メイタンシンである。AFPとともに有用な他の毒素およびリンカーとしては、Polythericsによる国際公開第2018/051109号(参照により本明細書に組み込まれる)で記述されるものが挙げられ、ここでグルタチオン切断可能であるジスルフィドリンカーは、DM様であるがクロロ基を置換するフェニル基を含む細胞毒を含む、新しい様々な毒性剤と連結される。AFPがダウノルビシンと連結しているコンジュゲートは、Belyaev et alによるCancer Immunol Immunother.,2017にも記述される。この研究は、AFPRを発現することが示されている免疫細胞のサブセットである骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)に対するAFPベースのバイオコンジュゲートのために正の効果を実証するうえで特に関心のある研究である。この研究では、エールリッヒ癌を持つマウスをAFP-ドキソルビシンで治療すると、脾臓のMDSC数の低減、NK細胞レベルの正常化、および腫瘍増殖の阻害がもたらされた。得られた結果は、別の実施形態では、AFPに基づく細胞毒性バイオコンジュゲートが、腫瘍細胞に対するそれらの直接的な効果に加えて、有望な抗MDSC薬物であることを実証する。
【発明の概要】
【0008】
その表面上に、正常な細胞に対する毒性が最小限である、またはまったくないAFP受容体(AFPR)を提示する疾患細胞に毒素を送達するための組成物を提供することが望ましいであろう。また、グルタチオンを用いた切断によってサイトゾル中に放出することができる細胞毒に選択的に応答する細胞を治療するための治療および医薬組成物を提供することも望ましいであろう。
【0009】
ここで、AFPR陽性(AFPR+)疾患細胞の治療において有用なバイオコンジュゲートが提供され、AFPR+疾患細胞には、造血がん細胞などのAFPR+がん細胞およびがん幹細胞を含む固形腫瘍がん細胞が含まれる。骨髄由来サプレッサー細胞などのAFPR+である非がん細胞も、本出願で開示されるバイオコンジュゲートを用いて治療することができる。これらのバイオコンジュゲートでは、AFPなどのAFPR結合剤は、グルタチオン切断可能な、すなわちグルタチオン感受性のジスルフィドリンカーを使用して細胞毒へとコンジュゲート化される。ペイロード/毒素、リンカー、およびAFPR標的化剤を含む構成成分種の注意深い選択により、これらのバイオコンジュゲートは、サイトゾル中のグルタチオン切断細胞毒の効率的かつ選択的な、また所望に応じて毒性の形態および濃度での放出を極めて良好に実施する。現在好ましいバイオコンジュゲートは、COLO-205マウスモデルにおける結腸直腸腫瘍異種移植片の成長の低減または阻害においてなど、数多くのパラメータにおいて著しい改善を示す。
【0010】
本発明によると、疾患細胞の治療に有用なバイオコンジュゲートが提供され、バイオコンジュゲートは、
(1)AFPR細胞の表面上のアルファフェトプロテイン(AFP)受容体(AFPR)に結合する薬剤と、
(2)AFPR+細胞に対して毒性である細胞毒(CT)と、
(3)グルタチオン切断可能なジスルフィヨードリンカーであって、リンカーが、
(i)AFPR結合剤とCTとの間に共有結合され、かつ
(ii)CTをAFPR+細胞へと細胞内で放出するリンカーと、を含む。
【0011】
一態様では、AFPR結合剤は、成熟した、野生型AFPのアミノ酸配列、AFPR結合断片のアミノ酸配列、または成熟した野生型AFPもしくはAFP断片のAFPR結合バリアントのアミノ酸配列を有する。別の態様では、AFPは、組み換え型ヒトAFP、またはそのAFPR結合断片もしくはバリアントであり、バリアントは、1~5個のアミノ酸置換を含む。また別の態様では、薬剤はグリコシル化を欠くAFPである。さらに別の態様では、薬剤は、配列番号3を含む組み換え型[Asn233Gln]成熟ヒトAFPである。別の態様では、薬剤は、配列番号4を含む。別の態様では、組み換え型[Asn233Gln]ヒトAFPは、トランスジェニック細菌によって産生される。さらに別の態様では、組み換え型[Asn233Gln]ヒトAFPは、トランスジェニックヤギを含むトランスジェニック哺乳類によって産生される。
【0012】
本発明の別の態様では、細胞毒(CT)は、次式を有する。
【化1】
【0013】
本発明の別の態様では、AFPR結合剤と細胞毒との間に連結されるリンカーは、以下から選択される。
リンカー1 -S-CH(CH3)-(CH2)-CO--、および
リンカー2 -S-(CH2)-CO-。
【0014】
さらに別の態様では、コンジュゲートは、以下に示されるリンカー-細胞毒を含む。
【化2】
【0015】
本発明のまた別の態様では、コンジュゲートは、以下に示されるリンカー細胞毒を含む。
【化3】
【0016】
本発明によると、次式のバイオコンジュゲートが提供され:
【化4】
式中、AFPは、アルファフェトプロテインのAFP受容体結合形態である。
【0017】
本発明の一態様では、nは、1~11の範囲にある。別の態様では、DPRが薬物対タンパク質比として定義される平均DPRは、2~8である。別の態様では、平均DPRは、5~7である。また別の態様では、平均DPRは、5.6~6.1である。さらに別の態様では、平均DPRは、約5.9である。また別の態様では、平均DPRは、3~4.5である。別の態様では、平均DPRは、3.6~4.1である。さらに別の態様では、平均DPRは、約3.9である。
【0018】
本発明の別の態様では、AFPは、配列番号3を含む組み換え型[Asn233Gln]成熟ヒトAFPである。本発明の一態様では、nは、1~11の範囲にある。別の態様では、平均DPRは、2~8である。別の態様では、平均DPRは、5~7である。さらに別の態様では、平均DPRは、5.6~6.1である。本発明のまた別の態様では、平均DPRは、約5.9である。さらに別の態様では、平均DPRは、3~4.5である。さらに別の態様では、平均DPRは、3.6~4.1である。また別の態様では、平均DPRは、約3.9である。
【0019】
本発明によると、次式のバイオコンジュゲートが提供され:
【化5】
式中、APFは、アルファフェトプロテインのAFP受容体結合形態である。
【0020】
本発明の一態様では、nは、1~11の範囲にある。別の態様では、平均DPRは、2~8である。別の態様では、平均DPRは、5~7である。別の態様では、平均DPRは、5.5~6.1である。さらに別の態様では、平均DPRは、約5.8である。また別の態様では、平均DPRは、3~4.5である。別の態様では、平均DPRは、3.4~4.0である。さらに別の態様では、平均DPRは、約3.7である。
【0021】
また別の態様では、薬学的に許容可能な担体と、上記に提示したようなバイオコンジュゲートとを含む医薬組成物が提供される。別の態様では、担体は水性ビヒクルである。別の態様では、水性ビヒクルは、5%スクロースを有するpH7.5の10mMのHEPES緩衝液である。さらに別の態様では、医薬組成物は、AFPR+であるがんを患う対象への投与のためのものである。
【0022】
別の態様では、医薬組成物は、AFPR+であるがんを患う対象への投与のためのものである。
【0023】
別の態様では、それを必要とする対象においてAFPR+細胞を治療するための方法が提供され、方法は、治療有効量の上記に提示した医薬組成物を対象へと投与することを含む。一態様では、AFPR+細胞は、がん細胞である。別の態様では、AFPR+細胞はMDSCである。別の態様では、AFPR+細胞は、卵巣がん細胞である。さらに別の態様では、AFPR+細胞は、結腸直腸がん細胞である。さらに別の態様では、AFPR+細胞は、乳がん細胞である。また別の態様では、AFPR+細胞は、リンパ腫細胞である。
【0024】
本発明の別の態様では、AFPR+であるがんを患う対象の治療のための、上記に提示した医薬組成物、および第二の治療剤が、治療的な組み合わせでの使用のために提供される。一態様では、第二の治療剤は、免疫チェックポイント阻害剤もしくはCAR-T剤、または別のがん免疫療法である。
【0025】
本発明の別の態様では、上述のAFPのAFPR結合形態を、上記に提示したコンジュゲートと連結することを含む、バイオコンジュゲートを産生するためのプロセスが提供される。
【0026】
本発明の別の態様では、バイオコンジュゲートを産生するためのプロセスが提供され、それによって、細胞毒ABZ-981は、最初にグルタチオン感受性ジスルフィドリンカーと連結されて、次式の中間体を産生し、
【化6】
これはその後、配列番号3を含む組み換え型[Asn233Gln]成熟ヒトAFPである、AFPのAFPR結合形態と反応し、そして中間体は、AFP内のリジン残基のイプシロンアミノ基へと共有結合される。
【0027】
本発明の別の態様では、バイオコンジュゲートを産生するためのプロセスが提供され、それによって、細胞毒ABZ-981は、最初にグルタチオン感受性ジスルフィドリンカーと連結されて、次式の中間体を生成する。
【化7】
【図面の簡単な説明】
【0028】
ここで、本発明のこれらおよび他の態様を、添付図面を参照しながらより詳細に記述する。
【0029】
図1図1は、U-937細胞上のAFP受容体へのバイオコンジュゲートの特定の結合を示す。
図2図2は、COLO-205結腸直腸がん異種移植片を持つマウスにおける腫瘍増殖に対するAFP細胞毒バイオコンジュゲートの効果を示す。
図3図3は、COLO-205結腸直腸がん異種移植片を持つマウスにおける生存に対するAFP細胞毒バイオコンジュゲートの効果を示す。
図4図4は、A2780卵巣がん異種移植片を持つマウスにおける腫瘍増殖に対するACT-903の効果を示す。
図5図5は、A2780卵巣がん異種移植片を持つマウスにおける生存に対するACT-903の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、細胞毒性薬物(細胞毒(CT)、ペイロード、またはワーヘッドとしても知られる)が、標的化細胞の表面上のAFPR標的に結合する任意の薬剤に共有結合される、薬学的に有用なバイオコンジュゲートを提供する。標的化剤は、AFPと略称されるアルファフェトプロテインのAFPR結合形態である。細胞毒と標的化剤との間に共有結合を提供するリンカーはまた、細胞内グルタチオンによる切断に感受性であり、それによって、血中で安定なまま、それを送達したAFPからの細胞毒の細胞内放出の機構を提供する。本明細書では、リンカーは、グルタチオン感受性として記述されており、これは、リンカーを、特に治療される疾患細胞のサイトゾル内に存在する際に、グルタチオンによって切断することができることを意味することが意図される。リンカーは、その構造内に-S-S-配置を組み込むため、ジスルフィドであると言われる。これらのリンカーはまた、数日の期間にわたってペイロードの最小限の損失のみで血漿中で安定である。
【0031】
バイオコンジュゲートで使用されるAFPは、その天然状態で、胎生肝および卵黄嚢によって胎児で最初に産生されるヒト輸送タンパク質である。これは、特定のAFP受容体への結合後にエンドサイトーシスによって細胞に入る。これらのAFPR結合特性および輸送特性を有するAFPR結合ドメインを構成するペプチドを含む他の形態のAFPは、本バイオコンジュゲート中の有用な標的化剤である可能性がある。
【0032】
特定の実施形態では、本発明は、野生型(UniProt KB P02771)または特に[Asn233Gln]成熟ヒトAFP[1-591]を含むバリアントの、切断された、断片化された、または断片形態のAFPR結合アルファフェトプロテイン(AFP)がAFPR結合剤として提供される、バイオコンジュゲートを提供する。他の実施形態では、この結合剤は、記載される2つのジスルフィドリンカーのうちの1つを通して、細胞毒へと共有的にリンクされる。
【0033】
「アルファフェトプロテイン(alpha-fetoprotein)」、「アルファフェトプロテイン(alfa-fetoprotein)」、および「AFP」という用語は、UniProtKB名称P02771で記載される591マーの成熟配列(残基19~609)を有する分泌ヒトタンパク質を参照しながら、本明細書で同じ意味で使用される。成熟ヒトAFPの実際の配列は、成熟形態で、かつ分泌シグナルを欠く609マーとして以下に示され(残基1~18)、全部で591の残基に減少する:
MKWVESIFLI FLLNFTESRT LHRNEYGIAS ILDSYQCTAE ISLADLATIF 50
FAQFVQEATY KEVSKMVKDA LTAIEKPTGD EQSSGCLENQ LPAFLEELCH 100
EKEILEKYGH SDCCSQSEEG RHNCFLAHKK PTPASIPLFQ VPEPVTSCEA 150
YEEDRETFMN KFIYEIARRH PFLYAPTILL WAARYDKIIP SCCKAENAVE 200
CFQTKAATVT KELRESSLLN QHACAVMKNF GTRTFQAITV TKLSQKFTKV 250
NFTEIQKLVL DVAHVHEHCC RGDVLDCLQD GEKIMSYICS QQDTLSNKIT 300
ECCKLTTLER GQCIIHAEND EKPEGLSPNL NRFLGDRDFN QFSSGEKNIF 350
LASFVHEYSR RHPQLAVSVI LRVAKGYQEL LEKCFQTENP LECQDKGEEE 400
LQKYIQESQA LAKRSCGLFQ KLGEYYLQNA FLVAYTKKAP QLTSSELMAI 450
TRKMAATAAT CCQLSEDKLL ACGEGAADII IGHLCIRHEM TPVNPGVGQC 500
CTSSYANRRP CFSSLVVDET YVPPAFSDDK FIFHKDLCQA QGVALQTMKQ 550
EFLINLVKQK PQITEEQLEA VIADFSGLLE KCCQGQEQEV CFAEEGQKLI 600
SKTRAALGV
配列番号1、分泌可能な野生型ヒトAFP(1-609)、

RTLHRNEYGI ASILDSYQCT AEISLADLAT IFFAQFVQEA TYKEVSKMVK 50
DALTAIEKPT GDEQSSGCLE NQLPAFLEEL CHEKEILEKY GHSDCCSQSE 100
EGRHNCFLAH KKPTPASIPL FQVPEPVTSC EAYEEDRETF MNKFIYEIAR 150
RHPFLYAPTI LLWAARYDKI IPSCCKAENA VECFQTKAAT VTKELRESSL 200
LNQHACAVMK NFGTRTFQAI TVTKLSQKFT KVNFTEIQKL VLDVAHVHEH 250
CCRGDVLDCL QDGEKIMSYI CSQQDTLSNK ITECCKLTTL ERGQCIIHAE 300
NDEKPEGLSP NLNRFLGDRD FNQFSSGEKN IFLASFVHEY SRRHPQLAVS 350
VILRVAKGYQ ELLEKCFQTE NPLECQDKGE EELQKYIQES QALAKRSCGL 400
FQKLGEYYLQ NAFLVAYTKK APQLTSSELM AITRKMAATA ATCCQLSEDK 450
LLACGEGAAD IIIGHLCIRH EMTPVNPGVG QCCTSSYANR RPCFSSLVVD 500
ETYVPPAFSD DKFIFHKDLC QAQGVALQTM KQEFLINLVK QKPQITEEQL 550
EAVIADFSGL LEKCCQGQEQ EVCFAEEGQK LISKTRAALG V 591
配列番号2、野生型成熟ヒトAFP(1-591)

RTLHRNEYGI ASILDSYQCT AEISLADLAT IFFAQFVQEA TYKEVSKMVK 50
DALTAIEKPT GDEQSSGCLE NQLPAFLEEL CHEKEILEKY GHSDCCSQSE 100
EGRHNCFLAH KKPTPASIPL FQVPEPVTSC EAYEEDRETF MNKFIYEIAR 150
RHPFLYAPTI LLWAARYDKI IPSCCKAENA VECFQTKAAT VTKELRESSL 200
LNQHACAVMK NFGTRTFQAI TVTKLSQKFT KVQFTEIQKL VLDVAHVHEH 250
CCRGDVLDCL QDGEKIMSYI CSQQDTLSNK ITECCKLTTL ERGQCIIHAE 300
NDEKPEGLSP NLNRFLGDRD FNQFSSGEKN IFLASFVHEY SRRHPQLAVS 350
VILRVAKGYQ ELLEKCFQTE NPLECQDKGE EELQKYIQES QALAKRSCGL 400
FQKLGEYYLQ NAFLVAYTKK APQLTSSELM AITRKMAATA ATCCQLSEDK 450
LLACGEGAAD IIIGHLCIRH EMTPVNPGVG QCCTSSYANR RPCFSSLVVD 500
ETYVPPAFSD DKFIFHKDLC QAQGVALQTM KQEFLINLVK QKPQITEEQL 550
EAVIADFSGL LEKCCQGQEQ EVCFAEEGQK LISKTRAALG V 591
配列番号3、[Asn233Gln]rhAFP(1-591)

MKWVESIFLI FLLNFTESRT LHRNEYGIAS ILDSYQCTAE ISLADLATIF 50
FAQFVQEATY KEVSKMVKDA LTAIEKPTGD EQSSGCLENQ LPAFLEELCH 100
EKEILEKYGH SDCCSQSEEG RHNCFLAHKK PTPASIPLFQ VPEPVTSCEA 150
YEEDRETFMN KFIYEIARRH PFLYAPTILL WAARYDKIIP SCCKAENAVE 200
CFQTKAATVT KELRESSLLN QHACAVMKNF GTRTFQAITV TKLSQKFTKV 250
XFTEIQKLVL DVAHVHEHCC RGDVLDCLQD GEKIMSYICS QQDTLSNKIT 300
ECCKLTTLER GQCIIHAEND EKPEGLSPNL NRFLGDRDFN QFSSGEKNIF 350
LASFVHEYSR RHPQLAVSVI LRVAKGYQEL LEKCFQTENP LECQDKGEEE 400
LQKYIQESQA LAKRSCGLFQ KLGEYYLQNA FLVAYTKKAP QLTSSELMAI 450
TRKMAATAAT CCQLSEDKLL ACGEGAADII IGHLCIRHEM TPVNPGVGQC 500
CTSSYANRRP CFSSLVVDET YVPPAFSDDK FIFHKDLCQA QGVALQTMKQ 550
EFLINLVKQK PQITEEQLEA VIADFSGLLE KCCQGQEQEV CFAEEGQKLI 600
SKTRAALGV [609]
[配列番号4] X251は、Gln、すなわち、[Asn251Gln]rhAFP(1-609)である。
【0034】
当然のことながらAFPR結合活性および輸送活性などのAFP活性は、AFPRに結合するタンパク質全体または断片における特に保存的アミノ酸置換を含む、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、または添加を組み込むAFPバリアント内に保持されるべきである。これらは、AFPまたはそのAFPR結合断片の変異体またはバリアントと呼ぶことができる。改変は、グリコシル化部位、酵素脆弱性、およびこれに類するものなどの翻訳後修飾部位を導入または除去することができる。
【0035】
本方法で有用なのは、AFP受容体に結合し、かつ天然状態またはLys187Glnバリアントなどの天然バリアント、およびAsn233Glnバリアントのいずれかで発生するそれらのAFPの形態である。同様に、本発明は、AFPR結合を保持するAFPの任意の断片、および任意のこうした断片のバリアントの使用を包含する。
【0036】
また、グリコシル化を組み込むものを含む、翻訳後修飾されたAFP形態も本明細書で有用である。ヒト形態では、Nリンクしたグリコシル化はAsn233において発生する。それ故に、ヒトAFPの天然形態は、本発明での使用に適している。また、天然のヒトAFP中の16個のジスルフィド架橋によって可能になる適正な3-Dフォールディングが維持されることを条件として、大腸菌およびストレプトマイセスなどの原核生物宿主細胞で産生される場合があるなどのヒトAFPの非グリコシル化形態も有用である。同様に、代替的に、ヒトAFPのグリコシル化形態は、酵母、アスペルギルス属、ピキア属、昆虫細胞、およびこれに類するものを含む真核生物宿主、およびCHO細胞およびCOS細胞を含む哺乳類細胞宿主において産生することができるそれらの形態など、本明細書で有用である。また、本発明に対して特に好適なヒトAFPの形態は、ヤギ、ウサギ、および一部の事例ではブタを含むトランスジェニック動物で産生されるヒトAFP形態である。トランスジェニック動物における、および特にヤギのミルクにおける組み換え型ヒトAFPの産生は、例えば、Merrimackの米国特許第7208576号に記述されており、これはAsn233Gln置換を組み込む成熟AFPの非グリコシル化形態の産生をさらに記述する。
【0037】
好ましい実施形態では、AFPは、ヤギ発現系由来のトランスジェニックヤギにおいて産生されるヒトアルファフェトプロテイン(hAFP)の非グリコシル化成熟形態である、ヒトアルファフェトプロテインの組み換え型である。「ACT-101」は、成熟配列(アスパラギンに対するグルタミン)のアミノ酸233において1つのアミノ酸置換を含有するという点で、天然に存在するヒトAFPとは異なるAFPの有用な種である。本質的に、同じ組み換え型AFPは、例えば、発現がtrpおよびmal系から駆動される大腸菌によって、非グリコシル化形態で産生することができる。
【0038】
AFP結合に対する標的は、アルファフェトプロテイン受容体(AFPR)である。これは、典型的に、胎児組織と関連付けられ、また出生後2ヶ月以後の成体細胞上には存在しない。しかしながら、がん細胞の大部分は、機能的AFPRを発現する。この受容体は部分的にのみ特徴付けられているが、その存在は実験的証拠によって明白に裏付けられている。マウスに移植されたマウスまたはヒト腫瘍異種移植片における自発的に発生する腫瘍は、Cancer Biother Radiopharm 1999, 14(6):485-94に記述されるように、Tc-99m形態のrhAFPを使用して、AFPの放射性標識形態を取り込むことが示されている。
【0039】
それ故に、本バイオコンジュゲートによって標的とされる疾患細胞は、AFPR抗体とのそれらの反応性、またはAFP自体に対するそれらの結合親和性のいずれかによって特定されることが理解されるであろう。これらの細胞標的は、AFPR陽性であること、またはAFP結合親和性を有することとして特徴付けすることができる。
【0040】
こうした試薬を使用して、細胞毒性薬物を標的疾患細胞に送達するために有用なAFPの異なる形態が、診断目的のために標識されたAFPをAFPRとの結合から等モルで置き換えるそれらの能力によって、またはAFPRを直接的に係合するそれらの能力によって特定することができることも理解されるであろう。細胞ベースのアッセイも、この目的のために有用である。一実施例では、AFPR発現U937細胞(カタログ番号CRL 1593.2TMでATCCから入手可能なヒト雄組織球性リンパ腫細胞株)を利用して、AFPまたはAFPバイオコンジュゲートの任意の所与の形態のAFPR結合親和性を確認する。
【0041】
一実施形態では、AFPと細胞毒とを共有的にリンクすることによって形成されるバイオコンジュゲートが提供される。細胞毒は、様々な薬物コンジュゲート内で、または単一の治療薬として使用される、非常に周知の、非常に広範なクラスの薬剤である。本バイオコンジュゲートでは、バイオコンジュゲートのAFP構成成分は、DM-1, DM-3、またはDM-4ではないが、これらの細胞毒といくつかの構造的態様を共有する細胞毒に連結または架橋される。本発明で有用な細胞毒は、以下を含む。
【化8】
【0042】
本バイオコンジュゲート中のこれらのメイタンシノイド細胞毒ペイロードは、切断可能なグルタチオン感受性ジスルフィド架橋を含有するリンカーを使用して、組み換え型ヒトAFP(rhAFP)に付着される。グルタチオンは、数多くのチオールジスルフィドレドックスプロセスと統合的に伴うチオール含有補酵素である。その還元型(チオール)形態では、グルタチオンは「GSH」と略称される。その酸化形態では、グルタチオンは、ジスルフィド基によってリンクした2つの分子の二量体として存在し、「GSSG」と略称される。標的タンパク質およびグルタチオン中のジスルフィド結合および遊離チオール基は、ジスルフィド交換反応を通して「場所を入れ替える」ことができる。このプロセスは、本質的に、2つの直接的な変位事象と、求核剤、求電子剤、および脱離基として作用する硫黄原子との組み合わせであり、リンカージスルフィドの切断および毒素の放出を引き起こす。細胞内グルタチオン濃度は通常、0.5~10mMの範囲であるが、一方で細胞外値は実質的により低く、血漿中で約2uMである。加えて、グルタチオンレベルは、卵巣がんを含む腫瘍内で上昇し、そのためグルタチオンのこの差次的な濃度は、血液中のバイオコンジュゲートの安定性、および腫瘍細胞による取り込み後の細胞毒の放出を可能にすることができる。バイオコンジュゲートの安定性は、ジスルフィド結合に隣接するR基の立体的性質を変化させることによって調整することができる。他の放出機構(例えば、pHおよびプロテアーゼ感受性リンケージ)も採用することができるが、AFPは、プロテアーゼ不安定リンカーを切断することができるリソソームに輸送しないため、グルタチオン放出機構は、rhAFP毒素バイオコンジュゲートに最も関連している。これは、rhAFPコンジュゲートに関する研究によって確認されており、ここでジペプチド、酸感受性、または切断不可能なリンカーとのバイオコンジュゲートは、おそらく細胞内側での毒素の放出の欠如に起因して、インビトロで不十分な力価を示し、一方で、ジスルフィドリンクしたメイタンシン含有バイオコンジュゲートは、インビトロで比較的高い(一桁のnM)力価を示し、これはAFP(DPR)の分子当たりの装填された細胞毒の数に比例して増加した。
【0043】
それ故に、好ましい実施形態では、AFPおよび細胞毒は、グルタチオン感受性ジスルフィドを形成するリンカーを以下で定義される化学構造を有するABZ-981とともに使用して架橋した。
【化9】
または
【化10】
【0044】
これらのリンカーは、選ばれた細胞毒ABZ981を用いて形成されて、好ましい実施形態では、以下に示されるようにABZ-1827またはABZ-982の構造を有するコンジュゲート中間体を提供する。
【化11】
【化12】
【0045】
CT ABZ-981が、本明細書に教示されるようにモノメチル化グルタチオン切断可能なジスルフィドリンカーを通して連結される場合、合成中間体として有用な、結果としてもたらされるリンカー/ペイロードコンジュゲートは、ABZ-1827と名付けられた。別の方法として、CT ABZ-981が、本明細書に教示されるようにジメチル化グルタチオン切断可能なジスルフィドリンカーを通して連結される場合、合成中間体として有用な、結果としてもたらされるリンカー/ペイロードコンジュゲートは、ABZ-982と名付けられた。
【0046】
リンカー-ペイロードは、本明細書の実施例に表されるように合成される。AFP:細胞毒バイオコンジュゲートを産生するために、細胞毒をまずグルタチオン感受性ジスルフィドリンカーと連結させて中間体、例えば、上記で示すような中間体を産生し、次いで、リンカーが、通常、AFP中のリジン残基のイプシロンアミノ基に、および他方の末端において所望の細胞毒に共有結合されるように、AFPと反応させる。次いで、単離されたバイオコンジュゲートは、水性ビヒクル、望ましくは等張性であり、かつ生理学的またはわずかにより酸性であるpHを有するものの中で混合することができる。一実施形態では、水性ビヒクルは、約6~約7.5の範囲内のpHにおけるリン酸緩衝生理食塩水である。別の実施形態では、水性ビヒクルは水である。さらなる実施形態では、水性ビヒクルは生理食塩水(0.154M NaCl)である。さらなる実施形態では、水性ビヒクルはHEPES((4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)緩衝液である。
【0047】
室温および標準圧力は、許容可能な混合条件である。混合は、軽度の攪拌、混合、およびこれに類するものを使用して促進することができる。プロセスでは、細胞毒:AFPの所望の平均比が得られるように条件が管理される。比は、本明細書では、「平均DPR」、すなわち、平均薬物:タンパク質比として参照される。抗体薬物コンジュゲートの場合、これは「薬物抗体比、DAR」として知られることになる。平均DPRは、AFPとの反応に対して使用可能な細胞毒の量を制御することによって達成される。
【0048】
計算された単位用量の細胞毒をそれから調製することができる組成物を産生するために、バイオコンジュゲートの産生は、所定の量の各試薬の使用を伴うことが望ましい。液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)を使用した実験では、混合が上述の条件下で発生したときに、1つのAFP分子(分子量=66.5kD)が、約1~11個の細胞毒コンジュゲート分子(分子量=854kD)に結合し、かつ保持することができることが見出された。より高いDPR比は、溶解度の低下に起因するバイオコンジュゲートの沈殿のリスクを増加させる。それ故に、DPRの上限は、保管中に沈殿することなく、溶液中でバイオコンジュゲートを維持する必要性によって決定される。異なるDPR値は、モル濃度の観点から各成分の負荷などの条件を改変することによって、または反応媒体のpHを改変することによって到達することができる。
【0049】
毒素とタンパク質との間のジスルフィド結合は、例示され、かつ好ましいバイオコンジュゲートに組み込まれたメチル基の分布を組み込むことが望ましいと決定され、ジスルフィド結合は、下記のABZ1827-AFPに示されるようにモノメチル化される、または下記のABZ982-AFPに示されるようにジメチル化される。ABZ1827-AFPは、ABZ982-AFPより好ましい。このメチル化は、ジスルフィド結合を遮蔽する場合があり、また生物活性とバイオコンジュゲートの安定性との間の望ましく、かつ強化されたバランスを提供する。
【化13】
【0050】
このバイオコンジュゲートは、本明細書ではABZ1827-AFPと呼ばれる。「n」は、AFPの各分子に結合された細胞毒/リンカー分子(コンジュゲート中間体)の数を表す。ABZ1827-AFPは通常、nの値の範囲を含有する。nの値は、典型的に1~11の範囲であるが、微量のより高いn種の種があってもよい。
【0051】
別の実施形態では、AFPタンパク質は、以下に示されるリンカー細胞毒へと共有結合する。
【化14】
【0052】
このバイオコンジュゲートは、本明細書ではABZ982-AFPと呼ばれる。「n」は、AFPの各分子に結合された細胞毒/リンカー分子(コンジュゲート中間体)の数を表す。ABZ982-AFPは通常、nの値の範囲を含有する。nの値は、典型的に1~11の範囲であるが、微量のより高いn種の種があってもよい。
【0053】
本出願で考察されるバイオコンジュゲートは、概して、様々なnを有するバイオコンジュゲートの混合物から構成される。より限定された範囲のnを有する、または他の事例では、特定の数の周囲に焦点を合わせたnの分布を有する、バイオコンジュゲートを調製することができる。バイオコンジュゲートはまた、n(上記で定義されるように、DPRとしても特定される)の平均値によって調製および特徴付けることもできる。
【0054】
それ故に、本発明は、ある特定の実施形態では、以下に記述されるように、選ばれたAFPを、好ましくはABZ982またはABZ1827である細胞毒/リンカーと連結した結果であるバイオコンジュゲートを提供する。細胞毒構成成分は、AFPリジン残基上のイプシロンアミノ基などの、一級アミンを介してAFPへと連結される。1つ、2つ以上であるが、通常は11つを超えない細胞毒を、この様態で各AFP分子へと連結することができる。各AFPタンパク質へと連結された細胞毒の比を操作して、この比に応じて、バイオコンジュゲート生物活性および溶解度を上昇または低減することもできる。
【0055】
DPRは、バイオコンジュゲートの力価、可溶性、および毒性に影響することが知られている。低いDPR値は、同じバイオコンジュゲートに対する高いDPR値と比較して、比較的低い力価と関連付けられる。高いDPR値は、時に同じバイオコンジュゲートのより低いDPR値と比較して、比較的より高い毒性と関連付けられるが、常にではない。異なるDPR値を有するバイオコンジュゲートの調製は、AFPへの連結のために提供される細胞毒の濃度および反応の持続時間を制御することによって達成される。AFPと比較して細胞毒の量が多いほど、合成からもたらされるDPR値が高くなり、約11のDPRで最大値に到達し、また通常は11未満である。
【0056】
他の特定の実施形態では、バイオコンジュゲートは、AFP分子当たり平均で約2~8個の細胞毒分子であるDPRを有する。
【0057】
1つの具体的な実施形態では、細胞毒/リンカーがABZ-982である場合、DPRが平均で3~4.5あるという意味では、またはより具体的な実施形態では約3.7+/-0.3であるという意味では、DPRは、好適に「低い」。
【0058】
別の実施形態では、細胞毒/リンカーは、ABZ-982であり、DPRが平均で5~7、またはより具体的な実施形態では約5.8+/-0.3であるという意味では、DPRは、好適に「高い」。
【0059】
さらなる実施形態では、毒素/リンカーがABZ1827である場合、DPRが平均で約5.9+/-0.3(約6)であるという意味で、DPRは、好適に「高い」。別の実施形態では、DPRは、AFP当たり5~7DMの範囲内にある。
【0060】
別の実施形態では、毒素/リンカーがABZ1827である場合、バイオコンジュゲートは、約4.5未満の「低い」DPRを有する。特定の実施形態では、DPRは、平均で約3.9+/-0.3(約4)である。
【0061】
表4に示されるように、ABZ1827-AFPおよびABZ982-AFPは、DPRが「高い」場合、インビトロでより強力であるが、DPRが「低い」場合も同様に力価を保持する。
【0062】
バイオコンジュゲートは、AFP結合またはAFPR陽性である疾患細胞を呈する対象を治療するために治療的に有用である。標的細胞はまた、単に細胞内細胞毒に対して応答性である細胞が、生命力の低下または不在を示すことを意味する「細胞毒応答性」でもあり、そしてバイオコンジュゲートから放出される細胞毒によって、少なくともそれらの数、サイズ、分布などの観点で、殺傷、枯渇、または低減のいずれかである。AFPおよび細胞毒は、バイオコンジュゲートの調製の過程において、および内因性投与後に、メイタンシノイドが関連するAFPによって疾患細胞に選択的に、また全身的に低減された毒性で送達されるのに十分な親和性で結合することが見出された。メイタンシノイド送達に対するこのアプローチは、結合した細胞毒の毒性が低いためだけでなく、細胞毒がAFPR陽性疾患細胞に選択的に送達されるためもあって、細胞毒の投与の低減、およびその結果として関連付けられた有害事象の低減を可能にし、それ故に正常な健康な細胞を温存することが可能である。さらに、AFP:細胞毒バイオコンジュゲートは、生理食塩水またはHEPES緩衝液などの良性かつ標準的な薬学的なビヒクル中で製剤化することができ、それによって、患者への送達時にそれ自体が毒性の問題を作り出す担体の使用を回避する。
【0063】
バイオコンジュゲートは、その後、治療的な投与のために直ちに製剤化する、その水性ビヒクル中に短時間貯蔵する、好ましくは凍結する、または本明細書に例示されるように長期保管のために凍結乾燥することができる。凍結解凍サイクルは、バイオコンジュゲートの凝集/二量体形成に影響を与えない。バイオコンジュゲートは、2~8℃にて少なくとも3日間、溶液中で分解することなく貯蔵することができる。これらはまた、急速冷凍(≦-60°C)で貯蔵することもでき、そして溶液中のバイオコンジュゲートは、凍結/解凍サイクルを通して活性を保持することが示されている。それ故に、別の実施形態では、本発明は、HEPES緩衝液中で、凍結乾燥もしくは凍結形態の、または2~8℃で冷蔵された、AFP:細胞毒バイオコンジュゲートを提供する。
【0064】
治療的な使用のために、本発明は、バイオコンジュゲートが薬学的に許容可能な担体を用いて製剤化された医薬組成物として、AFP:細胞毒バイオコンジュゲートを提供する。一実施形態では、製剤は、注射または注入によってなどの静脈内投与のために適合される。その結果、担体は、注射用の水、生理食塩水、およびこれに類するものなどの水性ビヒクルとすることができる。
【0065】
インビボ投与のために使用される活性成分は、滅菌されることになる。これは、滅菌濾過膜を通した濾過によって遂行される。
【0066】
AFPコンジュゲート細胞毒の製剤化に使用される任意の他の担体、ビヒクル、または賦形剤は、所望のバイオコンジュゲート安定性を妨害するか、またはAFPRに対するAFPの結合親和性を変化させる薬剤または条件を回避するために選ぶことができる。有機溶媒は、回避される可能性がある。生理的範囲外のpH、すなわち、約pH6未満および約pH8超、を導入する薬剤も、この理由から回避される可能性がある。AFP:細胞毒バイオコンジュゲートは、水、または通常の生理食塩水、または特にHEPES緩衝液中で製剤化されてもよい。水性緩衝生理食塩水(リン酸緩衝生理食塩水を含む)は、生理的に耐えられるpHを有し、また好ましい注射または注入経路による投与に適しているため、好ましい。スクロースなどの凝集または沈殿を防止する化合物の添加が望ましい。別の好ましい担体/ビヒクルは、5%のスクロースを有する10mMのHEPES緩衝液pH7.5である。
【0067】
AFP:細胞毒バイオコンジュゲートは、治療的に有用である。その結果、そして一態様では、本発明は、AFPR陽性またはAFP結合疾患細胞を提示する対象を治療するための方法を提供し、本方法は、AFP結合細胞毒を含むAFP:細胞毒バイオコンジュゲートを、その疾患細胞の成長および/または増殖を阻害するのに有効な量で、対象へと投与することを含む。
【0068】
AFPバイオコンジュゲートは有望な抗がん剤であり、これはAFPに対する受容体を発現する腫瘍細胞に対する直接的な効果に加えて、MDSCの低減(または除去)に貢献する場合がある。これらは、腫瘍の生命力を支持することができ、また同じ対象内の腫瘍微小環境中に存在する場合、有害であるAFPR+細胞である。これらの細胞の低減、枯渇、または撲滅は、治療効果を強化するための有望な経路である。細胞毒性薬剤とコンジュゲートしたベクター分子としてのAFPは、MDSCを具体的に認識し、したがってMDSCの数を低減するためにがん患者に使用することができる。
【0069】
AFP受容体陽性疾患細胞は、検出可能かつ選択的なAFP受容体結合リガンドを採用するアッセイを使用して、インビボおよびエクスビボの両方での治療のために特定されてもよい。本バイオコンジュゲートによって標的化することができるAFPR陽性疾患細胞としては、AFPR陽性がん細胞が挙げられ、AFPR陽性がん細胞としては、一般に、特異性を有するAFPと結合するすべてのがん細胞が挙げられる。腫瘍サイズの低減、または腫瘍成長速度の低減に反映されるように、成長または増殖の所望の阻害を有する細胞毒に応答するAFPR陽性疾患細胞にのみ効果が見られる場合があることが予想される。こうした細胞および腫瘍は、「細胞毒応答性」である特性を有し、そして本バイオコンジュゲートを用いた治療のための好ましい標的である。加えて、AFPRに結合した後、バイオコンジュゲートが、エンドサイトーシスと呼ばれるプロセスによって膜を通過し、ここで、AFPR-バイオコンジュゲートが小胞内に封入され、かつ細胞の内部に輸送され、それ故に、膜ポンプとの相互作用を回避するため、細胞から細胞毒を能動的に除去する膜ポンプの過剰発現に起因するある特定の細胞毒耐性がん細胞を、本AFP:細胞毒製剤で効果的に治療することが可能である。
【0070】
静脈内、筋肉内、皮下、頭蓋内、眼窩内、脳室内、関節内、脊髄内、嚢内、病巣内、腫瘍内腹腔内投与を含む、任意の適切な投与経路、例えば、非経口投与経路を採用することができる。注射または注入による静脈内投与が好ましい可能性がある。
【0071】
AFPに結合するがん細胞を提示する対象の治療については、AFP:細胞毒バイオコンジュゲートの適切な用量は、治療される疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、以前の療法、ならびに患者の臨床履歴および薬剤に対する応答に依存することになる。薬剤は、一連の治療/治療の過程にわたって患者に好適に投与される。疾患の進行は、がん療法における実施基準に従ってモニターすることができる。具体的にがんの事例では、それを必要とする対象の効果的な治療は、その成長および/または増殖もしくは成熟の速度の低減を含む、数、体積、分布、生命力、および他の細胞パラメータの低減をもたらすことができる。
【0072】
例えば、疾患のタイプおよび重症度に応じて、3週間に1回投与される場合、例えば、1回以上の別個の投与によって、または注入によってのいずれかで、0.5mg/kg~5mg/kgのAFPバイオコンジュゲート中に存在する約20μg/kg~200μg/kgの細胞毒が、患者への投与の候補用量である。病態に応じて、週1回もしくは2回、または3週間に1回、または数週間以上にわたる反復投与については、疾患症状の所望の抑制が生じるまで、または疾患の進行が観察されるまで、治療が持続される。しかしながら、他の投与レジメンが有用である場合がある。AFP-細胞毒バイオコンジュゲートの重量に基づく単位用量は、例えば、1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、および400mgなど、約500ug~500mgの範囲内とすることができる。製剤化されたバイオコンジュゲートは、各容器、例えば、バイアル内に2、3、4、5、またはそれより多くの単位用量を含む、複数投与形態で提供することができる。バイオコンジュゲートした調製薬はまた、バイオコンジュゲートを含む凍結乾燥または凍結調製薬と、調製薬を投与可能な剤形へと再構成するための別個に包装されたビヒクルとを含む、キット形態でも提供することができる。代替では、キットは、単にバイオコンジュゲートした調製薬、およびその投与可能な剤形への再構成のための取扱説明書を備えてもよい。抗がん療法の進行は、治療される特定の疾患に対して確立された技法およびアッセイによってモニターされる。
【0073】
本バイオコンジュゲートに対する用量ガイダンスについては、市販されているバイオコンジュゲートであるKADCYLA(商標)(アドトラスツズマブエムタンシン)の推奨用量は、疾患進行もしくは許容できない毒性まで、または乳がんを有する患者に対して合計14サイクルまでの、3週間ごと(21日サイクル)の静脈内注入と仮定すると3.6mg/kgであることを理解するべきである。
【0074】
それ故に、当然のことながら、バイオコンジュゲートの有効量は、正常な幹細胞と関連付けられた特性、具体的には特定のがん試料に見出されるすべての細胞型を生じさせる能力を有する、がん細胞(腫瘍または血液がん内に見出される)である、AFPR+がん幹細胞(CSC)を含む、細胞毒応答性かつAFPR+に対して陽性である疾患細胞および悪性腫瘍の成長または増殖の速度を遅延もしくは阻害するための、単位用量として、または治療レジメンの一部として有効な量である。
【0075】
バイオコンジュゲートは、血液がんおよび固形腫瘍を含む、がん細胞およびそれらを含む腫瘍の成長または増殖を阻害するために、様々な細胞毒応答性がんの治療に有用である。対象に投与される組成物の特定の用量は、例えば、投与経路、投与の頻度、レシピエントの状態、および治療されるがんのタイプに依存する。治療に対して好適ながんは、AFP受容体を発現するがんである。AFPRの実証された発現は、乳がん、卵巣がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、胃がん、肺がん、リンパ腫、前立腺がん、および肝臓がんを含む、ヒトがんまたはがん細胞株において述べられている。これらのがんの転移はまた、本明細書に記述される方法に従って治療することもできる。
【0076】
「対象」、「患者」、および「レシピエント」という用語はすべて、特にヒトを含むが、他の霊長類、家畜、ペット、ウマ、およびこれに類するものも含む哺乳類を指す。当然のことながら、本バイオコンジュゲートで治療される対象は、内因性AFP受容体が対象の健康な細胞および組織上で広まっていないように、少なくとも約3か月齢であるべきである。また、非ヒトを治療するために使用されるバイオコンジュゲートは、その種に特異的なAFPの形態を組み込むことが望ましい。
【0077】
標的化された細胞毒性剤を他の療法と組み合わせて投与することが一般的であり、そのため、当業者であれば、バイオコンジュゲートを免疫療法を含む他のがん療法と組み合わせて使用することができることを理解するであろう。
【0078】
バイオコンジュゲートは、有用な他の治療薬と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することができる。1つ以上のさらなる治療薬「と組み合わせた」投与は、同時(同時発生的)および任意の順序での連続投与を含む。他の治療レジメンが、本発明の抗がん剤の投与と組み合わされてもよい。例えば、こうした抗がん剤で治療される患者は、外部ビーム放射などの放射線療法も受けてもよい。別の方法として、または追加的に、化学療法的薬剤または生物学的薬剤が患者に投与されてもよい。こうした化学療法的薬剤または生物学的薬剤の調製および投与スケジュールは、製造業者の取扱説明に従って、または当業者によって経験的に決定されるように使用されてもよい。化学療法剤は、投与もしくはバイオコンジュゲートに先行してもよく、または後に続いてもよく、またはそれらと同時に投与されてもよい。特定の実施形態では、バイオコンジュゲートは、チェックポイント阻害剤またはCAR-T調製薬などの免疫刺激剤と組み合わせて使用することができる。なぜなら、こうした免疫抗がん薬の有効性はMDSCの存在下で減少するためである。AFPバイオコンジュゲートによるMDSCの低減(または除去)は、免疫抗がん薬剤の有効性を大幅に強化するはずである。
【0079】
本発明のバイオコンジュゲートおよび医薬組成物は、所望であれば、細胞増殖を低減する、追加的な治療薬、例えば、追加的な抗がん剤、例えば、CAR-T剤、免疫チェックポイント阻害剤、アルキル化剤、スルホン酸アルキル、アジリジン、エチレンイミンおよびメチルアメラミン、アセトゲニン、オーリスタチン、カンプトセシン、ブリオスタチン、カリスタチン、CC-1065、クリプトフィシン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エリュテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチインと、スポンジスタチン、ナイトロジェンマスタード、抗生剤、エンジイン抗生物質、ダイネミシン、ビスホスホネート、エスペラミシン、色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、アウトラマイシン(authramycin)、アザセリン、アザシチジン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、代謝拮抗剤、エルロチニブ、ベムラフェニブ、クリゾチニブ、ソラフェニブ、イブルチニブ、エンザルタミド、葉酸類似体、プリン類似体、アンドロゲン、抗副腎薬(anti-adrenal)、フロリニン酸(frolinic acid)などの葉酸補充剤、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン、エダトレキサート、デフォファミン(defofamine)、デメコルチン、ジアジクオン、エフロルニチン、酢酸エリプチニウム、エポチロン、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダイニン(lonidainine)、メイタンシノイド、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット(phenamet)、ピラルビシン、ロソキサントロン、ポドフィリン酸2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PS(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products、オレゴン州ユージン)、ラゾキサン; リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン(特にT-2毒素、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリジンAおよびアングイジン); ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン; ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(Camptosar、CPT-1 1)、トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylornithine);レチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン;オキサリプラチン;PKC-アルファの阻害剤(抗体など)、Raf、H-Ras、EGFR、およびVEGF-A、およびそれらの薬学的に許容可能な塩、酸、もしくは誘導体、またはそれらの組み合わせと組み合わせて使用されてもよい。
【0080】
本発明のバイオコンジュゲートおよび医薬組成物はまた、抗がん抗体またはポリペプチド、例えば、アバゴボマブ、アデカツムマブ、アフツズマブ、アレムツズマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブ、アルシツモマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カンツズマブ、カツマキソマブ、セツキシマブ、シタツズマブ、シクスツムマブ、クリバツズマブ、コナツムマブ、ダラツムマブ、ドロジツマブ、デュリゴツマブ、デュシギツマブ、デツモマブ、ダセツズマブ、ダロツズマブ、エクロメキシマブ、エロツズマブ、エンシツキシマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、ファーレツズマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フツキシマブ、ガニツマブ、ゲムツズマブ、ギレンツキシマブ、グレンバツムマブ、イブリツモマブ、イゴボマブ、イムガツズマブ、インダツキシマブ、イノツズマブ、インテツムマブ、イピリムマブ、イラツムマブ、ラベツズマブ、レクサツムマブ、リンツズマブ、ロルボツズマブ、ルカツムマブ、マパツムマブ、マツズマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モキセツモマブ、ナルナツマブ、ナプツモマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ノフェツモマブン(nofetumomabn)、オカラツズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブ、オレゴボマブ、パニツムマブ、パルサツズマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、ピンツモマブ、プリツムマブ、ラコツモマブ、ラムシルマブ、ラドレツマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、サツモマブ、シブロツズマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、ソリトマブ、タカツズマブ、タプリツモマブ、テナツモマブ、テプロツムマブ、ティガツズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブ、ウブリツキシマブ、ベルツズマブ、ボルセツズマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、CC49、3F8、またはそれらの任意の組み合わせと組み合わせて使用されてもよい。
【0081】
本発明の別の実施形態では、本明細書に記述される障害の治療のために有用なAFP:細胞毒バイオコンジュゲートを含有する製造品が提供される。製造品は、本バイオコンジュゲートを、溶液中に、または凍結乾燥もしくは凍結形態で、容器中に備え、そして好適にラベルを有する。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は、病態を治療するために有効な組成物を保持し、また滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、真皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであってもよい)。容器上の、または容器と関連付けられたラベルは、組成物ががん状態を治療するために使用されることを示す。製造物品は、生理食塩水、HEPES緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、注射用水などを含む、薬学的に許容可能な緩衝剤を含む第二の容器をさらに損なう場合がある。これは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ、および本発明による使用説明書を有する添付文書を含む、商業的および使用の観点から望ましい他の事柄をさらに含む場合がある。AFP調製標準などの、本方法に有用な対照薬剤または標準および較正剤も、キットに含むことができる。
【0082】
それ故に、アルファフェトプロテイン(AFP)受容体は、がん胎児性抗原であり、またがん治療法の新規の標的であることが理解されるであろう。この受容体は、数多くの一般的ながんの表面上で高度に発現されるが、一般に正常な成体細胞上では発現されない。新規のメイタンシノイド毒素をAFPの組み換え型ヒト形態へと共有的にコンジュゲートすることによって、毒素ペイロードを、正常細胞を温存しながら、がん細胞へと選択的に送達することができる。AFPはヒトタンパク質であるため、AFPバイオコンジュゲートに対するいかなる有害な免疫反応のリスクも低減される。
【0083】
合成の実施例
2つの形態のバイオコンジュゲートを、それらのリンカー構造のみが異なる(モノメチル対ジメチル)ように調製し、そして一部の事例では、メイタンシノイドDM1ならびに/またはDM3および/もしくはDM4に基づくバイオコンジュゲートと比較した。それらの合成に対する一般的なアプローチを以下に図示し、ここでRは、試薬細胞毒であり、またPは、タンパク質、AFPである。
【化15】
1)AFPの調製
グリコシル化を欠く成熟した[Asn233Gln]rhAFP(1-591)を、トランスジェニックヤギで産生し、そして2007年4月24日に公開された米国特許第7208576号のMerrimackによって記述され、かつ参照により完全に本明細書に組み込まれる様態で、ヤギ乳から回収した。この形態のAFPは、ACT-101と名付けられ、また成熟AFPにAsn233Gln置換を組み込む配列番号3を有する。
2)細胞毒の調製:リンカーバイオコンジュゲート
ABZ981と名付けられたメイタンシノイド様細胞毒は、最初に国際公開第2018/051109号に記述される様態で産生され、次いで、以下の様態でジスルフィドグルタチオン感受性リンカーと共有結合した。
【0084】
一般的な分析方法:リンカーペイロードを、以下に示されるように合成した。使用された溶媒はすべてそのまま使用され、またSigma AldrichまたはFisher Scientificのいずれかから購入した。1H-NMRスペクトルを、Varian Inova 500 MHz NMR機器上で記録した。化学シフト(δ)は、分析のために使用したNMR溶媒に関してppmで報告された。結合定数(J)をヘルツ(Hz)で報告した。クロマトグラフィー純度を、Kinetex(登録商標)1.7μm C18 100Åカラム(50×2.1mm)および以下の分析的UPLC方法:注入量2~5μL、流量0.6mL/分、2.5~5分にわたって水中10~90%アセトニトリル、=254nmにおけるACQUITY UPLCフォトダイオードアレイ(PDA)検出器、室温、を使用してWaters UPLC/MS-5SQDシステム上で決定した。クロマトグラフィー純度を、Chromolith(登録商標)FastGradient RP-18e分析カラム(50×2mm、Merck KGaA、P/N 1.52007.0001)を使用して、Agilent 6130、1260 Infinity、LC/MSシステム上で決定した。
【0085】
標的化合物の合成
【化16】
【0086】
合成スキーム:
【化17】
【0087】
実験的手順
化合物AおよびABZ-947の合成
【化18】
【0088】
化合物A:
室温にてアルゴン下で、26mLの無水THF中のメイタンシノール(2.6g、4.60mmol)およびDMAP(0.56g、4.60mmol)の混合物溶液に、ZnHMDS(4.6mL、11.50mmol)を滴加した。混合物を30分間撹拌して、褐色の懸濁溶液を得た。この溶液に、イソ酪酸無水物を滴加した。得られた溶液を室温にて1.5時間撹拌した。LC/MSによるアリコートは、反応が完了して、所望の生成物を得たことを示した。粗製を飽和NHCl溶液(100mL)でクエンチし、100mLの酢酸エチルで希釈し、そして有機層を分離した。水性層を酢酸エチル(120mL×2)で抽出した。組み合わされた有機物を水(50mL)、塩水溶液(50mL)で洗浄し、そしてNaSO上で乾燥した。濃縮後、粗製の褐色の固体を得て、それをHP 120g GoldカラムISCOシステムを使用してDCM中の5%MeOHによって精製して、1.48g(51%)のcomp Aを得た。MS(ESI、pos.): C3243ClNに対する計算値、634.27、実測値635.3(M+H)、1293.4(2M+Na)。別のバッチを完了し、そして次の工程のために組み合わせた。
【化19】
【0089】
ABZ-947:
水とTHFの混合物を、使用前にアルゴンによって完全に脱気した。100mLの丸底中の化合物A(3.10g、4.88mmol)、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)アニリン(1.60g、7.32mmol)、およびKPO(4.14g、19.52mmol)の混合物へと、THF(50mL)およびHO(7mL)を満たした。撹拌混合物を真空によって脱気し、そしてアルゴンで再充填した。これを3回繰り返し、そしてアルゴンによってさらに脱気した。次いで、SphosPd-G3(0.38g、0.488mmol、0.1当量)を添加し、そしてセプタムでキャップした。混合物をアルゴン下でさらに脱気し、そして室温にて一晩撹拌した。反応の進行をLC/MSによってモニターして、反応を完了した。NHCl水溶液(30mL)を添加して、反応物をクエンチした。粗製を、セライトのパッドによって濾過して、清浄な溶液を得た。水性層を酢酸エチル(120mL×2)を用いて抽出した。酢酸エチル層を水、塩水で洗浄し、そしてNaSO上で乾燥した。濃縮後、粗製の暗黄色の固体を得て、それを120g GoldカラムISCOシステムを使用してDCM中の5%MeOHによって精製して、3.37g(89%)のABZ-947を得た。MS(ESI、pos.):C3849の計算値、691.35;実測値692.3(M+H)、1383.8(2M+H)。
【化20】
【0090】
化合物BおよびABZ-981の合成:
【化21】
【0091】
化合物B:
8mLの無水DMF中のABZ-947(237mg、0.0342mmol)、4-((5-ニトロピリジン-2-イル)ジスルファニル)ペンタン酸(101mg、0.753mmol)、およびHATU(390mg、1.03mmol)の撹拌溶液を、0℃に冷却し、続いてDIEA(0.24mL、1.37mmol)をゆっくりと添加した。得られた溶液を室温まで加温させ、一晩撹拌した。UPLCを使用したアリコートのプロセスにより、反応の完了が示された。反応混合物を水(20mL)および塩水(20mL)で希釈した。混合物を酢酸エチル(50mL×2)を用いて抽出した。有機層を真空中で濃縮して、粗生成物を得た。粗製をDMSO(5mL)で希釈し、次いで、C18 aq.150gのISCOカラム(水中5%ACN~95%ACN、修正剤として0.05%AcOH)によって精製した。純粋な画分を収集し、凍結し、そして凍結乾燥して、淡褐色の固体として253mg(77%)のComp Bを得た。MS(ESI、pos.):C485912に対する計算値、961.36;実測値962.42(M+H)。
【化22】
【0092】
ABZ-981:
ACN(1mL)および水(0.8mL)の混合物中の化合物B(22mg、0.0207mmol)およびTCEP・HCl(59mg、0.207mmol)の溶液に、pHが7~8に達するまで飽和NaHCO溶液(1.2mL)をゆっくりと添加した。得られた溶液を室温にて2時間撹拌した。アリコートを取ることによってLC/MSが結果をもたらし、反応が完了した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残留物を50mLの酢酸エチルを用い、続いて塩水(20mL)を添加して希釈した。有機物を分離し、そして真空中で濃縮し、これをC18 aq.50gのISCOカラム(水中5%ACN~95%ACN、修正剤として0.05%AcOH)によって精製した。純粋な画分を収集し、凍結し、そして凍結乾燥して、白色固体として14mg(83%)のABZ-981を得た。MS(ESI、pos.):C435710Sに対する計算値、807.38;実測値808.92(M+H)。
【化23】
【0093】
化合物CおよびABZ-982の合成:
【化24】
【0094】
化合物C:
化合物B(420mg、0.436mmol)を有する40mLの透明なバイアルに、DMF(6mL)を添加し、そして撹拌して、透明な溶液を得た。PBS pH=7.4緩衝剤(2.0mL)、続いて4-メルカプトペンタン酸(234mg、1.746mmol)を室温にて添加した。30分間撹拌し、そしてLC-MS上で反応の進行をモニターした(反応が完了していない場合、完了まで撹拌した)。反応が完了した後、反応混合物を真空中で濃縮し、1mLのDMSOで希釈し、そして予め平衡化したC18 aq.100gカラムへと移送した。溶離液(水中10%ACN~95%ACN、修正剤として0.05%AcOH)を使用して精製を実施した。純粋な画分を収集し、凍結し、そして凍結乾燥して、白色固体として317mg(77%)のComp Cを得た。MS(ESI、pos.):C486512に対する計算値、939.40;実測値940.54(M+H)。
【化25】
【0095】
ABZ-982:
化合物C(300mg、0.319mmol)を有する40mLの透明なバイアルに、DCM(10mL)を添加し、そして撹拌して、透明な溶液を得た。EDCI(110mg、0.574mmol)、続いてNHS(55mg、0.479mmol)をアルゴン下で氷浴において添加した。得られた溶液を16~24時間撹拌し、そしてLC-MSによって反応の進行をモニターした。反応の完了後、粗製を減圧下で濃縮した。粗製を1mLのDMSOを用いて溶解し、そして予め平衡化したC18 aq.150gカラムの中へとプラグした。溶離液(水中10%ACN~95%ACN、修正剤として0.05%AcOH)を使用して精製を実施した。純粋な画分を収集し、凍結し、そして凍結乾燥して、白色固体として280mg(85%)のABZ-982を得た。MS(ESI、pos.):C526814に対する計算値、1036.42;実測値1037.71(M+H)。
【化26】
【0096】
化合物DおよびABZ-1827の合成:
【化27】
【0097】
化合物D:
化合物B(500mg、0.519mmol)を有する40mLの透明なバイアルに、DMF(7mL)を添加し、そして撹拌して、透明な溶液を得た。PBS pH=7.4緩衝剤(2.5mL)、続いて4-メルカプトブタン酸(250mg、2.08mmol)を室温にて添加した。暗色反応混合物を30分間撹拌し、そしてLC-MS上で反応の進行をモニターした(反応が完了していない場合、完了まで撹拌した)。反応の完了後、反応混合物を真空中で濃縮し、1mLのDMSOで希釈し、そして予め平衡化したC18 aq.150gカラムへと移送した。溶離液(水中10%ACN~95%ACN、修正剤として0.05%AcOH)を使用して精製を実施した。純粋な画分を収集し、凍結し、そして凍結乾燥して、白色固体として351mg(73%)のComp Dを得た。MS(ESI、pos.):C476312に対する計算値、925.39;実測値926.73(M+H)。
【化28】
【0098】
ABZ-1827:
化合物D(350mg、0.377mmol)を有する40mLの透明なバイアルに、DCM(10mL)を添加し、そして撹拌して、透明な溶液を得た。EDCI(130mg、0.680mmol)、続いてNHS(65mg、0.565mmol)をアルゴン下で氷浴において添加した。得られた溶液を16~24時間撹拌し、そしてLC-MSによって反応の進行をモニターした。反応の完了後、粗製を減圧下で濃縮した。粗製を1.5mLのDMSOを用いて溶解し、そして予め平衡化したC18 aq.150gカラムの中へとプラグした。溶離液(水中10%ACN~95%ACN、修正剤として0.05%AcOH)を使用して精製を完了した。純粋な画分を収集し、凍結し、そして凍結乾燥して、白色固体として270mg(70%)のABZ-1827を得た。MS(ESI、pos.):C516614に対する計算値、1022.40;実測値1023.75(M+H)。
【化29】
【0099】
異なるDPR値を有するAFPバイオコンジュゲートを調製するために、AFPタンパク質を、30kDaのMWCOフィルタを用いて10mMのHEPES pH7.5緩衝剤へと緩衝剤交換した。緩衝剤交換後、タンパク質濃度を5mg/mLへと調整した。コンジュゲーション反応のために、少量のDMSOを反応に添加し、続いてABZ982またはABZ1827リンカーペイロード(DMSOを有する10mM原液として新たに調製した)を添加した。反応混合物中に存在するDMSOの総量は、10%(v/v)、(DPR 3~4バイオコンジュゲートについては7当量のリンカーペイロード、DPR 5~6バイオコンジュゲートについては10当量のリンカーペイロード)であった。反応混合物を、室温(22℃)にて10rpm/分で16~20時間、管リボルバー上で混合した。30kDaのMWCOフィルタを使用して、粗製バイオコンジュゲートを10mMのHEPES、5%スクロース、pH7.5へと緩衝剤交換することによって、バイオコンジュゲートを精製した。精製されたバイオコンジュゲートを滅菌濾過し、そして-80℃で貯蔵した。
【0100】
定義されたDPRを有する生成物について、各コンジュゲーション反応溶液を、等体積の50mMリン酸ナトリウム、2M NaCl、pH7と混合した。各バイオコンジュゲートを、50mMのリン酸ナトリウム、pH7、20%イソプロパノールの勾配でカラムから溶出した。粗製溶液を等体積の50mMリン酸ナトリウム、4M NaCl、pH7と混合し、そして得られた溶液を、50mMのリン酸ナトリウム、2M NaCl、pH7で平衡化したToyoPearl Phenyl-650S HICカラムへと装填した。異なる値のDPRを含有する画分をプールし、そして濃縮した。濃縮した試料を、pH7.1~7.5のPBSへと緩衝剤交換し、そして滅菌濾過した(0.22umのPVDF膜)。DPRの割り当ては、A248/A280吸収比に基づく。平均DPRを、280nmでのHIC分析後の個々のDPR種の相対ピーク面積から計算した。
【0101】
バイオコンジュゲート試験
リード化合物をインビトロで試験する前に、以下の表1に要約される研究と同様に、U937細胞株だけでなく他の細胞株においても、AFP受容体の発現、および蛍光標識されたrhAFPに結合し、かつ取り込む細胞の能力を確立した。この研究では、rhAFPを、市販のAlexa Fluor-647(AF-647)タンパク質標識キットからの製品プロトコル内に記述される手順を使用して標識した。結合実験を96ウェルプレートで実施し、そしてプレートリーダーを使用して蛍光を測定した。腫瘍細胞を懸濁液中で培養した、または細胞培養培地中に播種した。各腫瘍細胞株を、AF-647標識されたrhAFPを用いて、37°℃で0.5、2、および5時間インキュベートした(n=3複製)。氷上で冷却することによってインキュベーションを停止した。懸濁液中の細胞については、細胞および培養培地を遠心分離によって別個に収集し、そして繰り返し洗浄工程に供した。播種した細胞については、トリプシン/EDTAを細胞分離のために使用した。MOLT-4を除いて、細胞株の大部分は高い結合を示し、MCF7(乳がん)は、試験したすべての細胞株の中で最も高い結合を示し、U937(リンパ腫)およびCOLO-205(結腸直腸がん)が続いた。
【0102】
他のAFP受容体結合研究では、rhAFPは、FluoroTaTM FITCコンジュゲーションキットを使用して、Alexa Fluor-488またはFITCで標識され、そして同様の結果を達成した。
【表1】
【0103】
様々な反応条件下で合成されたDM1、DM3、DM4、またはABZ981を含有する一連のバイオコンジュゲートは、異なる平均DPRをもたらす。これらのバイオコンジュゲートの細胞毒性を、腫瘍細胞株(白血病、乳房、結腸直腸、卵巣、および肺)のパネルにおいてインビトロで評価した。結果を以下の表2に要約する。
【0104】
ABZ981コンジュゲートは、シリーズ1のバイオコンジュゲートのうち、最も高いDPR(7.5)を有したが、U937細胞株では、より低いDPR(4.4~5.1)で合成された他のコンジュゲートと同様の力価を有した。DM4コンジュゲート(DPR 4.4)はまた、MCF-7細胞株でもABZ981コンジュゲートと同様の力価を有した。しかしながら、力価DM1およびDM3コンジュゲートは、この細胞株ではおよそ3倍より低かった。
【0105】
類似のDPR(3.5~4)で合成されたシリーズ2のコンジュゲートでは、DM4コンジュゲートは、調べた細胞株にわたって最も強力であったが、ABZ981コンジュゲート(DPR3.5)は、3~15倍能力が低かった。
【0106】
これらの結果は、インビトロでの力価が必ずしもDPRに関連しないことを示した。
【表2】
【0107】
マウスおよびヒトの血清中で、37°℃にてそれぞれ3日間および7日間、インキュベートされた、シリーズ2のAFPバイオコンジュゲートをインキュベートするエクスビボ研究を実施した。バイオコンジュゲートを、抗AFP抗体が装填されたInnova磁気ビーズ上で捕捉した。捕捉された試料をLC-ESI-MSによって分析して、DPRプロファイルおよびタンパク質の完全性を確認した。すべてのバイオコンジュゲートは、3日後のマウス血清中の-5.9%~-13.5%のDPRの平均減少で、また7日後のヒト血清中の-8.1%~15.8%のDPRの平均減少で、良好な安定性を示した。
【0108】
腫瘍を持つマウスにおける生体内分布/薬物動態
COLO-205腫瘍異種移植片を皮下移植したマウスにおける薬物動態/生体内分布(PK/BD)研究での比較試験のためにDM4、DM1、またはABZ981を含有するバイオコンジュゲートを、およそ4のDPRで再合成した(表3)。
【表3】
【0109】
投与の体積は、尾静脈へと単回IV注射と同じ量のバイオコンジュゲート(25mg/kg)を各動物のグループへと送達するように調整された。血液試料を注射の0.25時間後および1時間後に採取し、そして血液および組織試料を4時間、8時間、および24時間において採取して、バイオコンジュゲートの薬物動態および生体内分布を評価した(時点当たりn=3)。市販のELISAキットを使用して、AFPレベルを測定し、遊離メイタンシンおよびその代謝物のレベルをLC/MSによって測定した。血液中の無視できるほどの量の遊離毒素が、この期間にわたって検出され(注射された総用量の≦0.001%)、マウス血清中のバイオコンジュゲートのエクスビボ安定性と一致した。
【0110】
バイオコンジュゲートの腫瘍取り込みならびに毒素放出および代謝
腫瘍への毒素の送達(遊離メイタンシンプラス代謝物)は、ng/mg組織として、または投与された総用量のパーセントとしてのいずれか発現された場合、他のグループと比較して、すべての時点で、DMベースのコンジュゲートと比較して、AFP-ABZ981コンジュゲートで最高であった。AFP-ABZ981コンジュゲートで達成されたレベルは、それぞれDM1コンジュゲートおよびDM4コンジュゲートよりもおよそ3倍および22倍高かった。AFP-ABZ981コンジュゲートは、DM4コンジュゲートと比較してインビトロではより強力ではなかったため、これは予想外であった。AFPに対して正規化された場合のAFP-ABZ981コンジュゲートグループにおけるピーク遊離毒素レベルは、腫瘍におけるAFPレベルの18%であり、毒素の有意な割合がAFPに結合したままであることを示唆する。しかしながら、腫瘍における毒素放出は、AFP-ABZ981コンジュゲートについては、AFP-DM4およびAFP-DM1に対してより高かった(それぞれおよそ1%および9%)。AFP-ABZ981コンジュゲートで達成される毒素のより高いレベルは、このコンジュゲートとのジスルフィド結合の両側に単一のメチル基のみが存在するため、立体障害がより少ないことに起因する場合がある。
【0111】
その後、2つの異なる放出機能性を有するABZ981を含有するバイオコンジュゲート(AFP-ABZ982およびAFP-ABZ1827)を、2.5~6.3のDPRで調製した。U937細胞株およびSKOV3細胞株におけるインビトロ試験の結果を表4に示す。細胞を、8点濃度範囲にわたって化合物の存在下で4日間インキュベートし、各濃度を3回ずつ試験した。新たに解凍されたU937細胞を使用して実施された2つの実験は、培養物中で維持されたU937細胞と類似の結果をもたらした。
【表4】
【0112】
これらのバイオコンジュゲートのAFP受容体への具体的な結合は、蛍光標識されたrhAFPを使用するU937細胞株における競合実験によって確認された(図1)。簡潔に述べると、培養されたU-937細胞を、無血清培地へと移送し、37℃にて2時間の間、AlexaFluor488-標的化rhAFPを用いて共インキュベートし、そして標識化されていないrhAFPまたはバイオコンジュゲートの滴定を4℃にて1時間行った。細胞を洗浄し、固定し、そしてフローサイトメトリーによって分析した。
【0113】
表5に目を移すと、COLO-205ヒト腫瘍異種移植片モデルにおけるインビボでの有効性試験のために、AFP-ABZ982およびAFP-ABZ1827(合計で4個)の各々の2つのバイオコンジュゲートを、およそ4個(「低DPR」)および6個(「高DPR」)のDPRで調製した。移植前のCOLO-205細胞株における力価を評価した。簡潔に述べると、96ウェルプレートに、ウェル当たり50mLの総体積で、COLO-205細胞を、ウェル当たり5,000細胞または2,500細胞のいずれかで播種した。プレートを一晩インキュベートし、次いで37℃にて72時間の間バイオコンジュゲートで処理し、次いでCellTiter-Gloアッセイを実施して、細胞生存能力を測定した。試料を3回実行した。高DPRバイオコンジュゲートは、低DPRバイオコンジュゲートより強力であり、またインビトロでCOLO-205に対して同様の力価を示したが、AFP-ABZ982高DPRバイオコンジュゲートは最も強力であり、非コンジュゲート毒素リンカーよりも低いIC50を有した。
【表5】
【0114】
腫瘍を有するマウスにおける有効性
本実験では、異なる薬物-タンパク質比(AFP-ABZ982高DPR/低DPRおよびAFP-1827高DPR/低DPR)およびわずかに異なるリンカー構造の4つの新規のAFP-メイタンシノイドバイオコンジュゲートの有効性。上記の4つのABZ981-含有バイオコンジュゲートを再合成し、そしてpH7.5で10mMのHEPES緩衝剤、5%のスクロース中で製剤化した(表6)。腫瘍を有するマウスでの有効性を試験する前に、0、5、10、20、および40mg/kgの用量での有効性研究(2週間のQ1Dx5)に対して使用されるのと同じ投与レジメンを採用して、健康なマウスでの各バイオコンジュゲートについて最大耐量(MTD)を決定した。MTDは、投与期間中に毎日行われた臨床観察、および治療終了時に決定された肝臓酵素(AST/ALT)の上昇に基づいた。驚くべきことに、AFP-ABZ1827の高DPRのMTDは、低DPRに対するMTDより高かった。一般に、より多くの量の毒素を担持するより高いDPRを有するバイオコンジュゲートは、より低いMTDを有することが期待されることになる。
【表6】
【0115】
結腸がん異種移植片モデルでは、7週齢のオスの胸腺欠損マウスに、右脇腹に1×10個のCOLO-205細胞を皮下移植した。およそ100mm~200mmの腫瘍を有するマウスを無作為化して、対照(ビヒクル)または4つのバイオコンジュゲートのうちの1つ(10匹/グループ)を受容させた。動物を、5回の投与後に2日間の休息で2週間毎日処置し、移植後60日間、腫瘍体積を週に2回評価した。図2および図3は、この研究によって示されるように、結腸がんのCOLO 205ヒト異種移植片モデルにおける本バイオコンジュゲートの貴重な特性を明らかにする。
【0116】
図2に示すように、AFPバイオコンジュゲートAFP-ABZ982および特にAFP-ABZ1827は、特にAFP-ABZ982が低DPRで使用される場合、およびAFP-ABZ1827が高DPRで使用される場合、COLO-205腫瘍の成長に劇的な阻害効果を有する。腫瘍重量の統計的に有意な(p<0.05)減少が、17日目から始まり、すべての対照動物が安楽死させられるまで続いた対照と比較して、すべての治療グループで観察された。高DPR AFP-ABZ1827グループでは、腫瘍退行はより早く(14日目)発生し、そして10匹中9匹の動物において、腫瘍体積が検出限界未満に低下した状態で治療中止後まで継続した。
【0117】
図3に示すように、試験されたすべてのバイオコンジュゲートは、ビヒクル対照と比較して、腫瘍を持つマウスの全生存を改善した。AFP-ABZ1827高DPRグループでは、60日間の観察期間の終了時にすべてのマウスが生存していた一方で、対照群のすべての動物は、制御されていない腫瘍増殖に起因して38日目までに死亡した。処置したマウスでは毒性のいかなる徴候も観察されなかった。
【0118】
この研究では、高いDPR AFP-ABZ1827は、腫瘍重量を低減し、かつ腫瘍を持つマウスの全生存を改善するという文脈で、低DPR均等物および試験されたすべての他のバイオコンジュゲートより優れていた。
【0119】
COLO-205異種移植片モデルにおいて示された異なる用量レベルでの高DPR AFP-ABZ1827(ACT-903)のさらなる研究は、30mg/kg、40mg/kg、または50mg/kgのいずれかの用量での単回IV注射後14日目までに腫瘍増殖の著しい低減を示した(p<0.05)。この研究では、これらの2つの用量グループに対して24日目に第二の用量を投与した。このレジメンは、ビヒクル対照群と比較して、40mg/kgグループ(p<0.001)および50mg/kgグループ(p=0.0037)において有意に延長された生存と関連付けられた。
【0120】
高DPR AFP-ABZ1827(ACT-903)のさらなる研究を、2人の患者に由来する卵巣がんオルガノイドにおいて実行した。蛍光標識されたACT-101を使用する研究は、化合物が卵巣オルガノイドに結合し、かつ卵巣オルガノイドによって急速に取り込まれたため、AFP受容体の存在を確認した。ACT-903は、両方のオルガノイドにおいて濃度依存的および時間依存の様式で細胞死を効果的に誘導した。アネキシンV染色を使用して、実験で使用される陽性対照、既知の細胞毒タプシガルギンおよびスタウロスポリンと同様に、低濃度のACT-903でさえも72時間までに大規模なアポトーシスが観察された一方で、非コンジュゲート化タンパク質(ACT-101)は細胞に対して無害であった。
【0121】
高ACT-903のさらなる研究を、卵巣がん異種移植片モデルで実行した。5~7週齢のメスの胸腺欠損マウスに、A2780卵巣腫瘍細胞を右脇腹に皮下移植した。マウスを、対照(ビヒクル)またはACT-903を受容するように(5匹/グループ)無作為化した。動物を、5回の投与後に2日間の休息で10日間毎日処置した。治療前のベースラインでの腫瘍体積は、108mm~288mmの範囲であった。移植後60日間、腫瘍体積を週に2回評価した。図4および図5は、この研究によって示されるように、卵巣がんのA2780ヒト異種移植片モデルにおける本バイオコンジュゲートの貴重な特性を明らかにする。
【0122】
図4に示すように、ACT-903は、A2780腫瘍の成長に劇的な阻害効果を有する。腫瘍成長曲線は、ACT-903治療グループにおける腫瘍量の著しい(p<0.0001)低減を示し、処置後のすべてのマウスにおいて完全な腫瘍退行(腫瘍が不可視、または触診可能ではない)が生じる。その上、腫瘍の再増殖は、60日間の観察期間中に治療の終了後には生じなかった。
【0123】
図5に示されるように、ACT-903は、ビヒクル対照と比較して生存を著しく改善し(p<0.0001)、ACT-903処置グループのすべてのマウスは、対照群ではいかなる生存するマウスもいなかったのと比較して、60日間の観察期間の終わりまで生存した。
【0124】
それ故に、当然のことながら、AFP受容体は、その発現がMDSCを除く正常組織では一般的に非常に低い、または存在しないが、多くの一般的ながんでは多数存在するため、がん治療法にとって非常に魅力的な新規の標的である。その上、AFPは、あらゆるヒト胎児が子宮内で曝露される天然に存在するヒトタンパク質であるため、rhAFP細胞毒バイオコンジュゲートに対するいかなる有害な免疫反応のリスクも低減される。
【0125】
本明細書に記述されるバイオコンジュゲートは、腫瘍細胞の内側では高濃度で存在するが、血流中では低濃度であるグルタチオンによって還元することができるジスルフィドリンカーを含有する。それ故に、本バイオコンジュゲートは、腫瘍上のAFP受容体の差次的発現と、腫瘍内のグルタチオン濃度の増加との両方に基づいて、二重腫瘍標的化機構を提供する。
【0126】
本明細書に特許請求されるものを含むコンジュゲートは、AFP-ABZ982低DPRおよび高DPRだけでなく、好ましいAFP-ABZ1827低DPRおよび特に高DPRを含んで、追加の動物モデルへと前向きに取ることができる。これらは、異なる放出機能性とDPR負荷とを表す。インビトロでの力価は、低nM範囲であり、U937細胞株内の遊離細胞毒と同程度の高さである。二量体形成は、使用されるコンジュゲーション条件下では問題ではなく、またバイオコンジュゲートは、5%スクロースを有する10mMのHEPESまたはTris-HCl緩衝剤のいずれかで製剤化された場合、20℃にて少なくとも96時間の間安定であり、またマウス/ヒト血清で7日間にわたって37℃にて高い血清安定性を示す。
【0127】
本明細書に引用される出版物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患細胞の治療において有用なバイオコンジュゲートであって、
(1)細胞の表面上のアルファフェトプロテイン(AFP)受容体(AFPR)に結合する薬剤と、
(2)前記細胞に対して毒性である細胞毒(CT)と、
(3)グルタチオン切断可能なジスルフィドリンカーであって
(i)前記AFPR結合剤と前記CTとの間に共有結合され、かつ
(ii)前記CTを前記細胞へと細胞内で放出するリンカーと、を含む、バイオコンジュゲート。
【請求項2】
前記AFPR結合剤が、成熟した、野生型AFPのアミノ酸配列、AFPR結合断片のアミノ酸配列、または前記成熟野生型AFPもしくは前記AFP断片のAFPR結合バリアントのアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項3】
前記AFPが、組み換え型ヒトAFP、またはそのAFPR結合断片もしくはバリアントであり、前記バリアントが、1~5個のアミノ酸置換を含む、請求項2に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項4】
前記薬剤が、配列番号3を含む組み換え型[Asn233Gln]成熟ヒトAFPである、請求項1に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項5】
前記薬剤が配列番号4を含む、請求項1に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項6】
前記細胞毒(CT)が、次式を有する請求項に記載のバイオコンジュゲート。
【化1】

【請求項7】
前記リンカーが前記AFPR結合剤と前記細胞毒との間に連結され、前記細胞毒が、
リンカー1 -S-CH(CH3)-(CH2)-CO--、および
リンカー2 -S-(CH2)-CO-から選択される、請求項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項8】
前記コンジュゲートが、以下に示されるリンカー細胞毒を含む、請求項1に記載のバイオコンジュゲートの産生において有用なコンジュゲート。
【化2】
【請求項9】
次式のバイオコンジュゲートであって、
【化3】

式中、AFPが、アルファフェトプロテインのAFP受容体結合形態である、バイオコンジュゲート。
【請求項10】
前記平均DPRが~8である、請求項に記載のバイオコンジュゲート
【請求項11】
前記平均DPRが約5.8である、請求項に記載のバイオコンジュゲート
【請求項12】
薬学的に許容可能な担体と、請求項10に記載のバイオコンジュゲートと、を含む医薬組成物であって、前記薬学的に許容可能な担体が、5%スクロースを有するpH7.5の10mMのHEPES緩衝剤である、医薬組成物
【請求項13】
それを必要とする対象内のAFPR+骨髄由来サプレッサー細胞を治療するための方法であって、治療有効量の請求項10に記載の医薬組成物を対象へと投与することを含む、方法。
【請求項14】
請求項に記載のAFPR結合形態のAFPを、請求項に記載のコンジュゲートと連結することを含む、バイオコンジュゲートを産生するためのプロセス。
【請求項15】
バイオコンジュゲートを産生するためのプロセスであって、それによって、細胞毒ABZ-981が、最初にグルタチオン感受性ジスルフィドリンカーと連結されて、次式の中間体を産生し、
【化4】

これがその後、配列番号3を含む組み換え型[Asn233Gln]成熟ヒトAFPである、AFPのAFPR結合形態と反応し、そして前記中間体が、AFP内のリジン残基のイプシロンアミノ基へと共有結合される、プロセス。
【国際調査報告】