IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャンハイ ジモン バイオファーマ カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2024-525966B型肝炎ウイルスヌクレオカプシド阻害剤の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】B型肝炎ウイルスヌクレオカプシド阻害剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 413/14 20060101AFI20240705BHJP
   C07D 413/04 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 31/422 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C07D413/14
C07D413/04
A61P31/20
A61P1/16
A61K31/422
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504194
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 CN2022107463
(87)【国際公開番号】W WO2023001298
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】202110839582.2
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518358228
【氏名又は名称】シャンハイ ジムン バイオファーマ,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ZHIMENG BIOPHARMA INC.
【住所又は居所原語表記】Room A302, A304, Building 1, 1976 Gaoke Middle Road, China(Shanghai)Pilot Free Trade Zone, Pudong New Area, Shanghai 201210, China
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ガン
(72)【発明者】
【氏名】リャン,ボウ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ファンミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ヂァオジャン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086BC69
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA16
4C086ZA75
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、B型肝炎ウイルスヌクレオカプシド阻害剤の製造方法に関する。具体的に、本発明に係る方法は、プロセスを最適化することによって式I化合物(各基は明細書で定義された通りである)を製造する新な方法を得る。当該方法は、顕著に収率を向上させ、製品の純度を向上させ、かつ産物において顕著に遺伝子毒性の不純物を低下させることができる。また、本発明は、式I化合物の製造のための新な中間体を公開した。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I化合物、または薬学的に許容される塩、またはその互変異性体、または立体異性体、またはそのラセミ体の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
1)触媒の存在下において、式II化合物を環形成させて式I化合物を得る。
【化1】
(ただし、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン、置換または無置換のC1-C6アルキル基、アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれ、前記置換とはハロゲン、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基からなる群から選ばれる一個または複数個(たとえば、2、3、4または5個)の置換基で置換されることである。
は、水素、重水素、ハロゲン、アミノ基、ヒドロキシ基からなる群から選ばれる。
nは0、1、2、3または4で、
Qは、一個または複数個のハロゲンで置換されたか、または無置換のC6-C10アリール基、一個または複数個のハロゲンで置換されたか、または無置換のN、OおよびSから選ばれる1-3個のヘテロ原子を含む6-10員ヘテロアリール基からなる群から選ばれる。
Xは、ハロゲンである。)
【請求項2】
工程1)では、前記触媒は、ヨウ化(第一)銅、塩化(第一)銅、臭化(第一)銅、硫酸銅、銅粉、酸化(第一)銅、水酸化(第一)銅、酢酸(第一)銅、クエン酸銅、メタンスルホン酸銅、フルオロホウ酸銅、塩基性炭酸銅、グルコン酸銅、酒石酸(第一)銅、銅アセチルアセトナート、8-ヒドロキシキノリン銅、チオシアン酸(第一)銅、硝酸(第一)銅、シアン化(第一)銅、シュウ酸銅、リン酸銅、トリフルオロメタンスルホン酸(第一)銅、ギ酸銅、セレン化銅、ジクロロ(1,10-フェナントロリン)銅、(1,10-フェナントロリン)(トリフルオロメチル)銅、CuTC、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質またはその水和物であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式I化合物は、
【化2】
からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
工程1)の前に、前記方法は、さらに、以下の工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法:
2) 式III化合物をハロゲン化試薬と反応させて式II化合物を得る。
【化3】
(式III化合物において、R、R、R、R、R、R、n、XおよびQは請求項1で定義された通りである。)
【請求項5】
工程2)では、前記ハロゲン化試薬は、N-ヨードスクシンイミド(NIS)、ヨウ素、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン、N-ブロモコハク酸イミド、臭素、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、塩素ガス、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド(NBS)、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
工程2)の前に、前記製造方法は、さらに、以下の工程を含むことを特徴とする、請求項4に記載の製造方法:
3) 式IV化合物をカルボニル化試薬と反応させて式IV-1イソシアネート中間体を得る;
4) 工程3)で得られた式IV-1イソシアネート中間体を、分離せずに、系においてそのままアミノ化試薬と反応させて式III化合物を得る。
【化4】
(式IV化合物および式IV-1イソシアネート中間体において、R、R、R、R、R、R、nおよびQは請求項1で定義された通りである。)
【請求項7】
工程3)では、前記カルボニル化試薬は、トリホスゲン、CDI、イソシアン酸カリウム、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、ならびに/あるいは
工程4)では、前記アミノ化試薬は、アンモニア水、アンモニアガス、アンモニアの有機溶液、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる
ことを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
式IIで表される中間体。
【化5】
(R、R、R、R、R、R、n、XおよびQは請求項1で定義された通りである。)
【請求項9】
式IIIで表される中間体。
【化6】
(R、R、R、R、R、R、nおよびQは請求項1で定義された通りである。)
【請求項10】
請求項1に記載の式I化合物、または薬学的に許容される塩、またはその互変異性体、または立体異性体、またはそのラセミ体の製造のために用いられることを特徴とする、請求項8に記載の式IIで表される中間体または請求項9に記載の式IIIで表される中間体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬および精密化学工学の分野に関し、具体的に、B型肝炎ウイルスヌクレオカプシド阻害剤の製造方法および当該阻害剤の製造のための新たな中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
【化1】
式Iで表される化合物シリーズはB型肝炎ウイルスヌクレオカプシド阻害剤であり、上海摯盟医薬科技有限公司によって開発され、臨床実験の段階にある新たなB型ウイルス性肝炎の薬物である。現在、市販のB型肝炎の薬物は有限的にB型肝炎ウイルスの複製を抑え、そして肝硬変の進展を遅延させることができるが、慢性B型肝炎を治癒する目的が実現できるものが少ない。式I化合物はHBVウイルスのヌクレオカプシドの形成を抑制することによって慢性B型肝炎の機能的治癒率を向上させ、臨床前の研究結果では、優れた安全性および有効性が示された。
【0003】
そのため、上記化合物の製造プロセスの開発および最適化は、その生産コストの低減、市場化の推進、より多くの患者が早くその恩恵を受けることには、重要な意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、収率が高く、条件が温和で、産物の純度が高く、副反応が少なく、操作が便利で、かつ遺伝子毒性のある中間体の使用が避けられる、式Iの化合物を製造する方法を提供することにある。
【0005】
また、本発明の目的は、式I化合物の製造のための新たな中間体、すなわち、式II化合物および式III化合物を提供することにある。
【発明を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の側面では、式I化合物、または薬学的に許容される塩、またはその互変異性体、または立体異性体、またはそのラセミ体の製造方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
1)触媒の存在下において、式II化合物を環形成させて式I化合物を得る。
【化2】
(ただし、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン、置換または無置換のC1-C6アルキル基、アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基からなる群から選ばれ、前記置換とはハロゲン、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基からなる群から選ばれる一個または複数個(たとえば、2、3、4または5個)の置換基で置換されることである。
は、水素、重水素、ハロゲン、アミノ基、ヒドロキシ基からなる群から選ばれる。
nは、0、1、2、3または4である。
Qは、一個または複数個のハロゲンで置換されたか、または無置換のC6-C10アリール基、一個または複数個のハロゲンで置換されたか、または無置換のN、OおよびSから選ばれる1-3個のヘテロ原子を含む6-10員ヘテロアリール基からなる群から選ばれる。
Xは、ハロゲンである。)
【0007】
もう一つの好適な例において、式Iに係る立体異性体はR体である。
もう一つの好適な例において、式Iに係る立体異性体はS体である。
もう一つの好適な例において、前記R体は下記式I-Rで表される構造である。
【化3】
(ただし、各基は上記で定義された通りである。)
【0008】
もう一つの好適な例において、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲンからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、nは0である。
もう一つの好適な例において、Qはハロゲン置換のC6-C10アリール基、好ましくはハロゲン置換のフェニル基、同時に重水とハロゲンで置換されたフェニル基である。
もう一つの好適な例において、Xは臭素またはヨウ素である。
【0009】
もう一つの好適な例において、工程1)では、前記触媒は、ヨウ化(第一)銅、塩化(第一)銅、臭化(第一)銅、硫酸銅、銅粉、酸化(第一)銅、水酸化(第一)銅、酢酸(第一)銅、クエン酸銅、メタンスルホン酸銅、フルオロホウ酸銅、塩基性炭酸銅、グルコン酸銅、酒石酸(第一)銅、銅アセチルアセトナート、8-ヒドロキシキノリン銅、チオシアン酸(第一)銅、硝酸(第一)銅、シアン化(第一)銅、シュウ酸銅、リン酸銅、トリフルオロメタンスルホン酸(第一)銅、ギ酸銅、セレン化銅、ジクロロ(1,10-フェナントロリン)銅、(1,10-フェナントロリン)(トリフルオロメチル)銅、CuTC、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質またはその水和物である。
本発明において、CuTCとは、チオフェン-2-カルボン酸銅(I)である。
【0010】
もう一つの好適な例において、工程1)は触媒および以下の群から選ばれる配位子の共存下で行われる。
【化4】
【0011】
もう一つの好適な例において、工程1)では、前記触媒は銅粉である。
もう一つの好適な例において、工程1)では、前記触媒と式II化合物のモル比は0.2-3、好ましく0.4-2、より好ましく0.6-1.5、最も好ましく0.8-1.2である。
もう一つの好適な例において、工程1)は40-150℃、好ましくは50-130℃、より好ましくは60-110℃で行われる。
【0012】
もう一つの好適な例において、工程1)の反応時間は0.1-36 h、好ましく0.3-10 h、より好ましく0.4-5 hである。
もう一つの好適な例において、工程1)では、前記触媒は、酸化第一銅、塩化第一銅、ヨウ化第一銅、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0013】
もう一つの好適な例において、工程1)は触媒および配位子の共存下で行われ、前記触媒と式II化合物のモル比は0.0001-1(好ましくは0.001-0.5、より好ましくは0.005-0.2、最も好ましくは0.01-0.1)である。
前記触媒と前記配位子のモル比は0.2-5.0(好ましくは0.5-2.0、より好ましくは0.8-1.2)である。
【0014】
もう一つの好適な例において、工程1)は塩基の存在下で行われる。
もう一つの好適な例において、工程1)では、前記塩基は、1,5-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-5、1,8-ジアザビシクロウンデセン-7(DBU)、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウム t-ブトキシド、カリウム t-ブトキシド、リン酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記工程1)では、前記塩基と式II化合物のモル比は0.5-5.0、好ましくは1.0-2.0である。
【0015】
もう一つの好適な例において、式I化合物は、
【化5】
からなる群から選ばれる。
【0016】
もう一つの好適な例において、前記方法は、工程1)の前に、さらに、以下の工程を含む:
2) 式III化合物をハロゲン化試薬と反応させて式II化合物を得る。
【化6】
(式III化合物において、R、R、R、R、R、R、n、XおよびQは請求項1で定義された通りである。)
【0017】
もう一つの好適な例において、工程2)では、前記ハロゲン化試薬は、N-ヨードスクシンイミド(NIS)、ヨウ素、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン、N-ブロモコハク酸イミド、臭素、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、塩素ガス、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド(NBS)、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、工程2)では、前記ハロゲン化試薬と式III化合物のモル比は0.8-2、好ましくは0.9-1.8、より好ましくは1.1-1.5である。
【0018】
もう一つの好適な例において、工程2)は40-100℃、好ましくは50-90℃、より好ましくは55-85℃で行われる。
もう一つの好適な例において、工程2)はアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる溶媒、好ましくはアセトニトリルにおいて行われる。
【0019】
もう一つの好適な例において、前記製造方法は、工程2)の前に、さらに、以下の工程を含む:
3) 式IV化合物をカルボニル化試薬と反応せて式IV-1イソシアネート中間体を得る;
4) 工程3)で得られた式IV-1イソシアネート中間体を、分離せずに、系においてそのままアミノ化試薬と反応させて式III化合物を得る。
【化7】
(式IV化合物および式IV-1イソシアネート中間体において、R、R、R、R、R、R、nおよびQは請求項1で定義された通りである。)
【0020】
もう一つの好適な例において、式IV化合物はR体である。
もう一つの好適な例において、工程3)では、前記カルボニル化試薬は、トリホスゲン、CDI、イソシアン酸カリウム、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、ならびに/あるいは
工程4)では、前記アミノ化試薬は、アンモニア水、アンモニアガス、アンモニアの有機溶液、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0021】
もう一つの好適な例において、工程3)では、前記カルボニル化試薬はトリホスゲンである。
もう一つの好適な例において、工程2)では、前記カルボニル化試薬と前記式IV化合物のモル比は0.2-2、好ましくは0.25-1.5、より好ましくは0.3-1.2である。
【0022】
もう一つの好適な例において、工程3)および/または工程4)は、ピリジン、トリエチルアミン、イミダゾール、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる塩基の存在下で行われる。
もう一つの好適な例において、工程3)および/または工程4)では、前記塩基はピリジンである。
もう一つの好適な例において、工程3)および/または工程4)では、前記塩基と式IV化合物のモル比は0.5-5、好ましくは1.0-4.0、より好ましくは2.0-3.5である。
【0023】
もう一つの好適な例において、前記アミノ化試薬と前記式IV化合物のモル比は1.0-30、好ましくは3-20、より好ましくは8.0-15である。
もう一つの好適な例において、工程3)および/または工程4)は、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ジオキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、アセトニトリル、エチレングリコールジメチルエーテル、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる溶媒において行われる。
もう一つの好適な例において、工程3)および/または工程4)はジクロロメタンにおいて行われる。
【0024】
もう一つの好適な例において、工程3)は-40-40℃、好ましくは-30-30℃、より好ましくは-20-20℃で行われる。
もう一つの好適な例において、工程4)は-40-10℃、好ましくは-30-5℃、より好ましくは-20-0℃で行われる。
もう一つの好適な例において、工程4)は、10-40℃の間で反応が水によってクエンチングされる。
【0025】
本発明の第二の側面では、式IIで表される中間体を提供する。
【化8】
(R、R、R、R、R、R、n、XおよびQは本発明の第一の側面で定義された通りである。)
【0026】
もう一つの好適な例において、式IIで表される中間体は、
【化9】
からなる群から選ばれる。
【0027】
本発明の第三の側面では、式IIIで表される中間体を提供する。
【化10】
(R、R、R、R、R、R、nおよびQは本発明の第一の側面で定義された通りである。)
【0028】
もう一つの好適な例において、式IIIで表される中間体は、
【化11】
からなる群から選ばれる。
【0029】
本発明の第四の側面では、本発明の第一の側面に記載の式I化合物、または薬学的に許容される塩、またはその互変異性体、または立体異性体、またはそのラセミ体の製造のための、本発明の第二の側面に記載の式IIで表される中間体または本発明の第三の側面に記載の式IIIで表される中間体の使用を提供する。
【0030】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明者は、長期間の深い研究を経て、プロセスを最適化することにより、式I化合物を製造する、新たな方法および式I化合物の製造のための新たな中間体を得た。当該方法は、収率が高く、産物の純度が高く、条件が温和で、操作が安全で便利で、かつ最後の三つの工程で遺伝子毒性のある中間体の発生が避けられる。具体的に、本発明に係る方法は、アニリン系重要中間体から、ウレアを生成した後、ウルマン反応によって閉環させ、本発明のB型肝炎ウイルスヌクレオカプシド阻害剤を合成する。これに基づき、発明者らが本発明を完成した。
【0032】
用語
本発明において、特別に説明しない限り、用いられる用語は、当業者に公知の一般的な意味を持つ。
本発明において、用語「ハロゲン」とは、F、Cl、BrまたはI、好ましくはCl、BrまたはIである。
【0033】
本発明において、「C1-C6アルキル基」とは、炭素原子を1~6個有する直鎖または分岐鎖のアルキル基で、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、または類似の基が挙げられる。
本発明において、用語「C6-C10アリール基」とは、環にヘテロ原子を含まず、炭素原子を6-10個有する芳香族環基で、たとえばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
用語「複数個」とは2、3または4個である。
【0034】
用語「6-10員ヘテロアリール基」とは、N、OおよびSから選ばれる1-3個のヘテロ原子および3-9個の炭素原子を含む芳香族複素環である。非限定的な例は、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピラゾリル基、ピロリル基、N-アルキルピロリル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、イミダゾリル基、テトラゾリル基などを含む。前記ヘテロアリール環はアリール基、複素環基またはシクロアルキル環に縮合してもよいが、ここで、母体構造と連結した環はヘテロアリール環である。ヘテロアリール基は任意に置換のものまたは無置換のものでもよい。
用語「室温」とは、10-40℃、好ましくは15-30℃、より好ましくは20-30℃である。
【0035】
式I化合物
【化12】
(R、R、R、R、R、R、nおよびQは上記で定義された通りである。)
【0036】
本発明に係る合成方法によって製造される式I化合物は、明らかにより高い収率およびより高い純度を持ち、かつ合成過程における操作が簡単で、ニトロ化のような危険係数の高い操作がなく、同時にカラムクロマトグラフィーのような大規模生産に適しないプロセスが避けられる。当該化合物を合成する最後の三つの工程の中間体は、AMESによって検出したところ、いずれも陰性で、遺伝子毒性がない。当該化合物における遺伝子毒性の不純物が規準を超えるリスクが低減された。
【0037】
ここで用いられるように、用語「薬学的に許容される塩」とは本発明化合物と酸または塩基とで形成される、薬物として適切な塩である。薬学的に許容される塩は無機塩と有機塩を含む。一種類の好適な塩は、本発明の化合物と酸とで形成される塩である。塩の形成に適切な酸は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロパン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機酸、およびプロリン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸を含むが、これらに限定されない。
【0038】
もう一種類の好適な塩は、本発明化合物と塩基とで形成される塩で、たとえばアルカリ金属塩(たとえばナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(たとえばマグネシウム塩またはカリシウム塩)、アンモニウム塩(たとえば低級アルカノールのアンモニウム塩および他の薬学的に許容されるアミン塩)、たとえばメチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ジメチルアミン塩、トリメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、t-ブチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ヒドロキシエチルアミン塩、ジヒドロキシエチルアミン塩、トリヒドロキシエチルアミン塩、およびそれぞれモルホリン、ピペラジン、リシンから形成されるアミン塩が挙げられる。
【0039】
既存の合成方法
化合物
【化13】
を例とし、WO2017173999 A1の実施例6の開示を参照すると、当該化合物は以下のように製造される。
【化14】
【0040】
WO2017173999 A1の実施例6で示されるように、工程3は無水酢酸を溶媒とし、濃硝酸でニトロ化反応を行う必要があり、反応条件が激しい。ニトロ化反応は大量の熱が発生し、ニトロ化が繰り返されるリスクが潜んでおり、拡大生産に不利で、後の生産において高い安全性に隠れた危険がある。
【0041】
WO2017173999 A1の実施例6で示されるように、中間体26から、最終の閉環反応に四つの工程が必要で、四つの工程の反応の収率はそれぞれ65.3%、32.6%、69.3%、24.9%と低い。そして、最後の工程の反応では、カラムクロマトグラフィーによる精製で製品を得る必要があり、大規模生産の要求に不適切である。
【0042】
WO2017173999 A1の実施例6で示されるように、上記製造経路では、工程3-5で生成する中間体27、28、29はいずれもニトロベンゼンやo-フェニレンジアミンの構造を含み、潜在的なリスクがある。原薬におけるいずれの中間体もppm級の分析方法を開発して厳格な制御を行う必要があり、以上の中間体の残留が原薬の品質管理に影響し、きれいに除去しない、厳格な臨床の要求に満足できず、大規模で安全で規準に合う臨床のサンプルを製造するのに不利である。
【0043】
本発明の合成方法
上記既存の合成方法と異なるのは、化合物4
【化15】
を例とし、本発明が以下に示される合成経路を用いることである。
【化16】
【0044】
以下のような工程を含む:
1)化合物24と化合物31からp-トルエンスルホン酸の触媒において化合物32を生成する;
2)化合物32をラネーニッケルの触媒において水素ガスで化合物33に還元する;
3)キラルクロマトグラフィーまたは超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)あるいはほかの分割手段によってラセミ体の化合物33を分割し、光学的に単一の化合物34を得る;
4) 化合物34とトリホスゲンおよびアンモニア水からピリジンの作用下において化合物17を生成する;
5)化合物17からp-トルエンスルホン酸ピリジニウムの触媒において化合物9を生成する;
6)化合物9から銅粉およびDBUの触媒において化合物4を生成する;
工程1)は単一または組み合わせの溶媒において行われ、溶媒はトルエン、キシレン、メタノール、エタノール、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。トルエンが好ましい。
【0045】
工程1)における酸は、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸を含むが、これらに限定されず、p-トルエンスルホン酸が好ましい。
工程1)における酸の使用量は、化合物31に対する質量比が0.1-1、好ましくは0.25である。
【0046】
工程1)における化合物24の使用量は、化合物31に対するモル比が0.90 eq.-1.5 eq.、好ましくは1.2 eq.である。
工程1)における温度は60-120℃、好ましくは110-120℃である。
【0047】
工程2)におけるニトロ基の還元は、鉄粉、亜鉛粉、ハイドロサルファイド、二塩化スズなどの還元剤を使用してもよく、触媒水素化の手段を使用してもよい。
工程2)におけるニトロ基の触媒水素化反応に使用される触媒は、パラジウム炭素、白金炭素、ラネーニッケル、水酸化パラジウム炭素を含むが、これらに限定されず、ラネーニッケルが好ましい。
【0048】
工程2)において、ラネーニッケルでニトロ基の触媒水素化反応を行う場合、その化合物32に対する質量比が0.1-0.5、好ましくは0.3である。
工程2)は単一または組み合わせの溶媒において行われ、溶媒はエタノール、メタノール、酢酸エチル、トルエン、キシレン、メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランおよび水を含むが、これらに限定されず、酢酸エチルが好ましい。
【0049】
もちろん、本発明の式IV化合物(たとえば、化合物33)は上記製造方法によって製造してもよく、既存技術で既知の製法によって製造してもよく、あるいは市販品でもよい。
【0050】
上記既存の合成方法と比べ、本発明に係る合成方法は元の工程3)および後のプロセスを最適化して化合物4を代表とする式I化合物を得る。三つの工程の反応の収率がそれぞれ90.86%、86.9%、83.5%で、総収率が65.9%である。総収率は前の文献におけるラセミ体合成の四つの工程の反応(収率がそれぞれ70%、93.8%、90%、75.4%)の総収率44.6%よりも顕著に向上した。本発明に係る合成方法では、中間体17、中間体9は検出したところ、警告される構造が含まれておらず、有効に関連不純物の残留の化合物4を代表とする式I化合物への影響が避けられる。本方法の最後の三つの工程は、カラムクロマトグラフィーによる精製が避けられ、有効に精製効率を向上させた。本方法は、同時に、元の合成プロセスにおけるニトロ化のような安全性のリスクの高い操作が避けられ、より拡大生産に有利である。当該方法は、収率が高く、不純物が制御可能で、操作が便利で、キログラム級の製造に適するといった利点がある。
【0051】
式II化合物および式III化合物
【化17】
(R、R、R、R、R、R、n、XおよびQは上記で定義された通りである。)
【化18】
(R、R、R、R、R、R、nおよびQは上記で定義された通りである。)
【0052】
同定したところ、本発明の式II化合物および式III化合物の大半は第1級アニリンやニトロベンゼンなどの警告される構造を含まず、標的産物である式I化合物の品質管理に非常に有利である。
【0053】
既存技術と比べ、本発明は以下の主な利点を有する。
(1)前記製法は、収率が高く、プロセスの操作が安全で、拡大しやすく、条件が温和で、化学合成工程にカラムクロマトグラフィーによる分離が不要といった利点がある。また、前記製法はコストが低いという利点がある。
(2)前記製法は、警告される構造を有する中間体の使用が避けられ、有効に製造過程および最終製品における不純物の制御の難易度が低減される。
【0054】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常、通常の条件、あるいはメーカーの薦めの条件で行われた。特に断らない限り、%と部は、重量で計算された。
【0055】
別途に定義しない限り、本文に用いられるすべての専門用語と科学用語は、当業者に熟知される意味と同様である。また、記載の内容と類似あるいは同等の方法および材料は、いずれも本発明の方法に用いることができる。ここで記載の好ましい実施方法及び材料は例示のためだけである。
【0056】
実施例1 化合物32の合成
【化19】
室温で、オートクレーブに順にトルエン(303 kg)、化合物31(35 kg)およびp-トルエンスルホン酸(7 kg)を入れ、105~115℃に昇温させ、1時間撹拌しながら水分を除去した。60~80℃に降温させ、化合物24(28.33 kg)をオートクレーブに入れ、110~120℃に昇温させ、還流させて水分を除去しながら12時間反応させた。78~80℃に降温させ、余分のp-トルエンスルホン酸(180 g)および化合物24(505 g)を入れて続いて7-8 h加熱して還流させて水分を除去したが、HPLCによるモニタリングで大半の化合物31が完全に転換したことが示された。反応系を50~55℃に降温させ、メタノール(35.4 kg)を入れて2時間撹拌し、降温後、ろ過し、得られたケーキを少量のトルエン/メタノール溶液で洗浄した。ケーキを乾燥した後、40.5 kgの化合物32を得たが、収率が72.5%で、HPLC純度が98%であった。MS:[M+H]=551.4/553.4
【0057】
実施例2 化合物33の合成
【化20】
室温で、反応フラスコに酢酸エチル(8 L)、化合物32(178.3 g, 1.0 eq.)、トリエチルアミン(80 mL)およびラネーニッケル(48 g, 27%)を入れた。反応系を水素ガスで3回置換し、室温で8 h反応させ、HPLCによるモニタリングで化合物32が完全に転換したことが示された。ろ過し、ろ液を濃縮して160.4 gの化合物33を得た。収率が95.1%で、HPLC純度が98.2%であった。MS:[M+H]=521.5/523.5
【0058】
実施例3 化合物33の分割
【化21】
5 gのラセミ体の化合物33を取り、キラルクロマトグラフィーによって分割し、メタノールを主要な移動相とした。キラル分割して1.3 gの化合物34(ee>99%)および1.78 gの化合物34-Sを得た。
【0059】
実施例4 化合物17の合成
【化22】
-10℃で、ジクロロメタン(6 L)のトリホスゲン(BTC)(170.75 g, 0.58 mol)溶液を配置した。化合物34 (600 g, 1.15 mol)のジクロロメタン(4.8 L)溶液を、ゆっくり上記トリホスゲンのジクロロメタン溶液に滴下した。30分間撹拌した。-5℃以下で、ピリジン(273.07 g, 3.45 mol)のジクロロメタン(1.2 L)溶液を滴下し、滴下完了後、続いて20分間撹拌した。-5℃以下で、アンモニア水(0.9 L)を滴下し、続いて少なくとも30分間撹拌した。
HPLCで反応が完成したことが示され、水で2回洗浄した後、濃縮した。得られた産物を酢酸エチルで溶解させた後、n-ヘプタンで混ぜた。ケーキを収集し、加熱乾燥して590 gの化合物17を得たが、収率が90.86%で、純度が98.45%であった。MS:[M+H]= 563.01/565.02
【0060】
実施例5 化合物9の合成
【化23】
化合物17 (190 g, 0.337 mol)をアセトニトリル(1.3 L)に溶解させ、PPTS(すなわち、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム)(42.3 g, 0.168 mol)、 NIS(すなわち、N-ヨードスクシンイミド) (90.88 g, 0.4 mol)を入れた。56℃で一晩反応させた後、固体が大量に析出した。HPLCによる検出で合格した後、20~30℃に降温さえ、それに5%の亜硫酸ナトリウム溶液を入れて洗浄した。吸引ろ過して固体を収集し、得られた固体をMTBE(メチル-t-ブチルエーテル)で洗浄した。加熱乾燥して202 gの化合物9を得たが、収率が86.9%で、純度が98.75%であった。MS:[M+H]=689.84 /691.84
【0061】
実施例6 化合物4の合成
【化24】
化合物9(200 g, 0.29 mol)をDMSO(1.6 L)に溶解させ、それに銅粉(18.5 g, 0.29 mol)および1,5-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-5(48.5 g, 0.319 mol)を入れ、106℃で2時間反応させ、HPLCによるモニタリングで合格した後、活性炭素を入れた。ろ過し、ろ液を収集した。ろ液を7%の酢酸水溶液に入れ、20分間撹拌した。吸引ろ過し、ケーキを収集した。得られたケーキを酢酸エチルおよびTHFで溶解させた。7%希酢酸および7%炭酸水素ナトリウム(2.0 L)でそれぞれ有機相を洗浄した。得られた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濃縮して有機溶媒を除去した。アセトンにおいて混ぜた後、ろ過し、ケーキを収集し、乾燥して136 gの化合物4を得たが、収率が83.5%で、純度が99.33%であった。
MS:[M+H]=562.5/563.4; H NMR (600 MHz, DMSO-d) δ 10.48 - 10.43 (m, 2H), 8.73 (s, 1H), 7.93 - 7.87 (m, 2H), 7.75 - 7.69 (m, 2H), 7.67 - 7.60 (m, 2H), 7.33 - 7.26 (m, 2H), 6.73 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.64 (s, 1H), 6.61 (dd, J = 8.0, 1.6 Hz, 1H), 6.03 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 4.30 - 4.21 (m, 2H), 3.70 (dt, J = 14.3, 7.3 Hz, 1H), 2.92 (dt, J = 14.3, 7.3 Hz, 1H), 2.69 (dt, J = 14.5, 7.4 Hz, 1H), 2.62 (dt, J = 14.1, 7.0 Hz, 1H).
【0062】
実施例7 化合物4の合成
【化25】
化合物9(1 g, 1.45 mmol)、酸化第一銅(10 mg, 0.07 mmol.)、配位子L19 (20 mg,0.07 mmol)および炭酸セシウム(1.89 g,5.79 mmol)をジメチルスルホキシドに溶解させ、75℃で24時間反応させた。HPLCによるモニタリングで反応が完了した後、室温に降温させ、50 mLの水および50 mLの酢酸エチルを入れて分液した。水相を酢酸エチルで3回抽出した後、有機相を合併して乾燥して濃縮した後、粗製品を得た。粗製品を酢酸エチルと石油エーテルの混合溶液において混ぜ、化合物4の完成品(520 mg, 純度95.15%,収率65%)を得た。MS:[M+H]+=562.1/564.1
【0063】
本発明において、配位子L19がN,N-ビス[(チオフェン-2-イル)メチル]シュウ酸アミド(N,N- bis(thiophen-2-ylmethyl)oxalamide)。
【0064】
WO2017173999 A1の実施例3と比べると、共通の中間体(本特許における化合物34)からニトロ化、加水分解、還元およびCDI閉環という計四つの工程を経て最終の閉環反応を完成させる必要があり、四つの工程の反応の収率がそれぞれ70%、94%、90%、75%で、総収率が44%で、合成工程が長時間でかつ収率が低い。また、最後の工程の反応では、カラムクロマトグラフィーによる精製で製品を得る必要もあり、大規模生産の要求に不適切である。本特許に記載の合成経路は必要な工程が三つのみで、合成の総収率が最高で66%に達することもある。生産効率も総収率も顕著に向上した。
【0065】
WO2017173999 A1の実施例3と比べると、その最後の三つの工程に使用される中間体は当該特許における実施例6と類似し、いずれもニトロベンゼンやo-フェニレンジアミンの構造を含み、潜在的なリスクがある。原薬における関連中間体はいずれもppm級の分析方法を開発して厳格な制御を行う必要がある。このような経路は大規模で安全で規準に合う臨床のサンプルを製造するのに不利である。本特許の合成経路は、類似する構造を含む化合物の使用が避けられ、化合物17および化合物9はAmes実験において陰性で、より良い安全性を有する。相応する生産における制御もより簡便になる。
【0066】
実施例8 化合物4の合成
【化26】
化合物9(1.0 g, 1.45 mmol)、塩化第一銅(7.17 mg, 0.072 mmol.)、配位子L21 (18 mg, 4.35 mmol)および炭酸セシウム(1.416 g,4.35 mmol)をジメチルスルホキシド(10 mL)に溶解させ、70℃で16時間反応させた。HPLCによるモニタリングで反応が完了した後、室温に降温させ、50 mLの水および50 mLの酢酸エチルを入れて分液した。水相を酢酸エチルで3回抽出した後、有機相を合併して乾燥して濃縮した後、粗製品を得た。粗製品を酢酸エチルと石油エーテルの混合溶液において混ぜ、化合物4の完成品(650 mg, 純度99.76%,収率80%)を得た。MS:[M+H]+=562.0/564.1
【0067】
本発明において、配位子L21がN,N-ビス[(フラン-2-イル)メチル]シュウ酸アミド(N,N- bis(furan-2-ylmethyl)oxalamide)。
【0068】
本発明の実施例6-8とWO2017173999 A1の実施例3(比較例1)および実施例6(比較例2)の比較のまとめは下記表に示す。
【表1】
【0069】
実施例9 化合物35の合成
【化27】
化合物17 (1.5 g, 2.66 mmol, 1.0 eq)をアセトニトリル( 20 mL)に溶解させた後、NBS (570 mg, 3.19 mmol, 1.2 eq)を入れ、反応液を室温で2時間撹拌した。反応液を酢酸エチル(40 mL)で希釈した後、それぞれ飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(20 mL×2)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20 mL×2)で洗浄した。分離された有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮して化合物35(1.7 g, 99%)を得たが、黄色固体であった。
LCMS: [M+H] = 644.1
【0070】
実施例10 化合物4の合成
【化28】
化合物35 (100 mg, 0.155 mmol, 1.0 eq)をDMSO(2 mL)に溶解させた後、順にヨウ化第一銅(29.6 mg, 0.155 mmol, 1.0 eq)およびDBU (47.6 mg, 0.310 mmol, 2.0 eq)を入れ、窒素ガスで3回置換した後、反応液を窒素ガスの保護下において120℃で21時間撹拌した。室温に冷却し、反応液を酢酸エチル(40 mL)で希釈した後、それぞれクエン酸水溶液(5%, 10 mL×2)および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=1/20)によって精製して化合物4(34 mg,純度99%)を得たが、白色固体であった。LCMS: [M+H] = 562.1
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 9.88 - 9.48 (m, 2H), 7.85 (s, 1H), 7.62 - 7.52 (m, 6H), 7.14 - 7.10 (m, 2H), 6.79 - 6.63 (m, 3H), 5.90 (s, 1H), 4.43 - 4.26 (m, 2H), 3.96 - 3.80 (m, 1H), 3.08 - 2.96 (m, 1H), 2.78 - 2.68 (m, 2H)
【0071】
実施例11 化合物37の合成
【化29】
化合物36(2.5 g, 19.51 mmol, 1.0 eq)をメタノール(30 mL)に溶解させた。さらに、ギ酸アンモニウム (6.2 g, 97.55 mmol, 5.0 eq)を入れ、反応液を室温で10分間撹拌した。パラジウム炭素 (10%, 300 mg)を反応液に入れ、70℃に昇温させて20分間撹拌した。室温に冷却した後、ろ過し、ろ液を濃縮し、得られた残留物ををフラッシュリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=5/1)によって精製して化合物37(1.5 g、78%)を得たが、無色の油状物であった。LCMS: [M+H] =99.2
【0072】
実施例12 化合物38の合成
【化30】
化合物37 (3.7 g, 37.693 mmol, 1.0 eq)をクロロホルム(75 mL)に溶解させた後、三臭化テトラブチルアンモニウム (19 g, 39.578 mmol, 1.05 eq)を入れた。反応液を室温で1時間撹拌した。pH値が8になるまで反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注いだ。分離された有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性酸化アルミニウム、石油エーテル/酢酸エチル=20/1~12/1)によって精製して化合物38(2.6 g,39%)を得たが、褐色固体であった。LCMS: [M+H] =176.0
【0073】
実施例13 化合物39の合成
【化31】
化合物38(1.5 g, 8.523 mmol, 1.0 eq)を酢酸(24 mL)に溶解させた後、濃塩酸(48 mL)を入れた。-5℃に冷却した後、亜硝酸ナトリウム (0.7 g, 10.227 mol, 1.2 eq)の水 (9 mL)溶液を滴下した。反応液を-5℃で0.5時間撹拌した後、塩化第一スズ (4.0 g, 21.307 mmol, 2.5 eq)の濃塩酸 (9 mL)溶液を滴下し、滴下の過程において反応液の温度を0℃~5℃の間に維持した。滴下完了後、反応液を0℃~5℃の間で40分間撹拌した。ろ過し、固体を冷却された濃塩酸水溶液で洗浄した。固体を収集した後、凍結乾燥して化合物39(1.74 g,87%)を得たが、白色固体であった。LCMS: [M+H] =191.0
【0074】
実施例14 化合物40の合成
【化32】
化合物39 (1.74 g, 7.647 mmol, 1.0 eq)をエタノール(8 mL)に溶解させた後、化合物41(1.05 g, 7.647 mmol, 1.0 eq)および酢酸カリウム(0.75 g, 7.647 mmol, 1.0 eq)を入れ、反応液を88℃で2時間撹拌した。室温に冷却した後、反応液を濃縮し、残留物を酢酸エチルで溶解させた後、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、石油エーテル (30 mL)を残留物に入れて半時間撹拌した。ろ過し、得られた固体を石油エーテルで洗浄し、真空乾燥して化合物40(1.34 g,56%)を得たが、褐色固体であった。LCMS: [M+H] =311.1
【0075】
実施例15 化合物42の合成
【化33】
DMF (692 mg, 9.473 mmol, 2.2 eq)を0℃に冷却した後、塩化ホスホリル (1.45 g, 9.473 mmol, 2.2 eq)を滴下した。滴下完了後、反応液を0℃で半時間撹拌した後、化合物40 (1.34 g, 4.306 mmol, 1.0 eq)のDMF (9 mL)溶液を上記反応液に滴下した。滴下完了後、室温に昇温させて40分間撹拌した後、70℃に昇温させて5時間撹拌した。室温に冷却した後、反応液を氷水に注いだ。ろ過し、固体を収集した後、トルエンで共沸して水を除去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=5/1~2/1)によって精製して化合物42(1.0 g,66%)を得たが、白色固体であった。LCMS: [M+H] =349.0
【0076】
実施例16 化合物43の合成
【化34】
化合物42 (1.0 g, 2.863 mmol, 1.0 eq)をトルエン(100 mL)に溶解させた後、化合物24(0.77 g, 3.436 mmol, 1.2 eq)およびp-トルエンスルホン酸一水和物(0.27 g, 1.432 mmol, 0.5 eq)を入れた。反応液を148℃で4時間撹拌し、室温に冷却し、反応液を酢酸エチル(50 mL)で希釈した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=1/1)によって精製して化合物43(1.27 g,純度80%)を得たが、白色固体であった。LCMS: [M+H] =555.0
【0077】
実施例17 化合物44の合成
【化35】
化合物43 (1.27 g, 2.286 mmol, 1.0 eq)をエタノール( 40 mL)に溶解させた後、塩化第一スズ(10.84 g, 57.166 mmol, 25.0 eq)を入れ、反応液を90℃で1.5時間撹拌し、室温に冷却し、反応液を炭酸ナトリウム水溶液(2 N)でpH値を9に調整した後、酢酸エチル(100 mL)で希釈した。ろ過し、ろ液を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮して化合物44(1.1 g、 91%)を得たが、白色固体であった。LCMS: [M+H] =525.1
【0078】
実施例18 化合物21の合成
【化36】
化合物44(0.9 g, 1.717 mmol, 1.0 eq)をテトラヒドロフラン(35 mL)に溶解させた後、0℃に冷却した。トリホスゲン (0.25 g, 0.858 mmol, 0.5 eq)を入れた後、室温に昇温させて室温で2時間撹拌した。0℃に冷却した後、アンモニア水 (2.5 mL)を入れた。反応液を室温に昇温させて半時間撹拌した。反応液を酢酸エチル(50 mL)で希釈した後、順に水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮して化合物21(0.95 g、 97%)を得たが、白色固体であった。LCMS: [M+H] =568.1
【0079】
実施例19 化合物13の合成
【化37】
化合物21 (950 mg, 1.675 mmol, 1.0 eq)をアセトニトリル(35 mL)に溶解させた後、p-トルエンスルホン酸一水和物 (64 mg, 0.335 mmol, 0.2 eq)およびNIS (565 mg, 2.513 mmol, 1.5 eq)を入れ、反応液を80℃で16時間撹拌した。室温に冷却し、反応液を亜硫酸ナトリウム水溶液 (0.2 N)でpH値が8になるように調整した後、濃縮してアセトニトリルを除去した。残留物を酢酸エチル(50 mL)で希釈した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=1/1~1/5)によって精製して化合物13(605 mg,52%)を得たが、褐色固体であった。LCMS: [M+H] =693.9
【0080】
実施例20 化合物5の合成
【化38】
化合物13 (400 mg, 0.576 mmol, 1.0 eq)をDMSO(30 mL)に溶解させた後、DBU(175 mg, 1.152 mmol, 2.0 eq)およびヨウ化第一銅 (109 mg, 0.576 mmol, 1.0 eq)を入れ、反応液を120℃で0.5時間撹拌した。室温に冷却し、反応液を酢酸エチル(80 mL)で希釈した後、順に水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=40/1~30/1)によって精製して化合物5(244 mg,純度99.34%,収率75%)を得たが、黄色固体であった。LCMS: [M+H] =566.1
【0081】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
【国際調査報告】