(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】近視の進行を制御するためのリングフォーカス眼鏡レンズ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/02 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
G02C7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504238
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 CN2022079507
(87)【国際公開番号】W WO2023005211
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】32021035686.3
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506329269
【氏名又は名称】ザ ホンコン ポリテクニック ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュン チー ファイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ボー
(72)【発明者】
【氏名】トー チー-ホー
(72)【発明者】
【氏名】レオン ツェ マン
(72)【発明者】
【氏名】ホー ライ ティン
(72)【発明者】
【氏名】チュン カ チュン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン チョク ミン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン チン ハン
(57)【要約】
近視の進行を制御するためのリングフォーカス眼鏡レンズ(1)、及びその製造方法。リングフォーカス眼鏡レンズ(1)は、患者に対して明瞭な視力を与えることができ、また光学的デフォーカス効果を提供するための複数のリング状のデフォーカスゾーンを有する。互いに接する異なる屈折力の連続的な同心リング間に接合部がないので、リングフォーカス眼鏡レンズ(1)は、一般的な眼鏡レンズと同じくらい美的である。本製造方法では、3つの前方金型コア(71)、後方金型コア(72)、及び平面の後方金型コアを使用して、異なる度数を有する一連のリングフォーカス眼鏡レンズ(1)を製造し、その結果、金型コアの数及び製造コストが減る。加えて、重度の近視及び乱視を有する個人の要件に対しては、半完成レンズが本製造方法によって提供される。これは、金型コアの数が大幅に減るだけでなく、所望のレンズの在庫量も減り、その結果、コストが下がる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視の進行を制御するためのリングフォーカス眼鏡レンズであって、
前記リングフォーカス眼鏡レンズは、凸状の前面と、凹状の後面と、網膜上に光を結像するための複数の補正ゾーンと、網膜の前方に光を結像するための複数の乱視ゾーンとを含み、前記前面と前記後面との光学中心は同じ光軸上に位置し、前記補正ゾーンは第1の屈折力を有し、前記乱視ゾーンは前記第1の屈折力よりも大きい第2の屈折力を有し、前記補正ゾーンと前記乱視ゾーンとは、前記リングフォーカス眼鏡レンズ内で互い違いに配置され、
前記前面は、複数の第1の曲面と複数の第2の曲面とからなる自由曲面を含み、前記複数の第1の曲面は同じ曲率半径を有し、前記複数の第2の曲面は同じまたは異なる曲率半径を有し、前記第1の曲面の前記曲率半径は、前記第2の曲面の前記曲率半径よりも大きく、前記第1の曲面と前記第2の曲面とは、前記自由曲面内で互い違いに接合され、前記補正ゾーンは、少なくとも前記第1の曲面によって規定され、前記乱視ゾーンは、少なくとも前記第2の曲面によって規定され、
第1の曲面及び隣接する第2の曲面は、接線連続的または遷移曲面的に接合され、
前記接線連続的な場合、前記第1の曲面及び前記隣接する第2の曲面は接線連続であり、前記第1の曲面の端点と前記第2の曲面の端点とが、接合点において一致し、前記第1の曲面の接線と前記第2の曲面の接線とが、前記接合点において同じ傾きを有し、前記第1の曲面の中心と前記第2の曲面の中心とを接続する接続線の延長線が、前記接合点を通り、
前記遷移曲面的な場合、遷移曲面が、前記第1の曲面及び前記隣接する第2の曲面の間に設けられ、前記遷移曲面の開始点と終了点とは、前記第1の曲面の終了点及び前記隣接する第2の曲面の開始点と、それぞれ接合され、前記第1の曲面と前記遷移曲面との曲率の方向及び値が、前記第1の曲面と前記遷移曲面との接合点において同じであり、前記第2の曲面と前記遷移曲面との曲率の方向及び値が、前記第2の曲面と前記遷移曲面との接合点において同じであり、前記遷移曲面上の曲率は連続的に変化する、前記リングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項2】
前記レンズの中心から半径方向外側に、先の曲面のジオプタから次の曲面のジオプタを引いたものが閾値以下である場合、前記先の曲面と前記次の曲面とは前記接線連続的に接合されており、前記先の曲面の前記ジオプタから前記次の曲面の前記ジオプタを引いたものが閾値より大きい場合、前記先の曲面と前記次の曲面とは前記遷移曲面的に接合されている、請求項1に記載のリングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項3】
前記閾値は3.5Dである、請求項1に記載のリングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項4】
互いに隣接する第1の曲面と第2の曲面とがすべて前記接線連続的に接合されている、請求項1に記載のリングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項5】
前記自由曲面は、光軸に沿って回転する母線によって形成され、前記母線は、複数の第1の曲線と複数の第2の曲線とからなり、各第1の曲線は、前記第1の曲面の曲率半径を有し、各第2の曲線は、前記第2の曲面の曲率半径を有し、前記第1の曲線と前記第2の曲線とは、前記母線内で互い違いに接合され、前記第1の曲線は、前記第1の曲面を形成するように回転し、前記第2の曲線は、前記第2の曲面を形成するように回転する、請求項1~4のいずれか1項に記載のリングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項6】
前記母線は、凹凸のない連続的で滑らかな曲線である、請求項5に記載のリングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項7】
前記複数の第2の曲面の前記曲率半径は、前記リングフォーカスレンズの半径方向において一定であるかまたは増加する、請求項1~4のいずれか1項に記載のリングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項8】
前記第2の屈折力は、前記第1の屈折力よりも0.5D~5Dだけ大きい、請求項1~4のいずれか1項に記載のリングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項9】
前記第1の屈折力が-2D~0Dである場合、前記前面の補正ゾーン曲がりは401~600曲げである、請求項1~4のいずれか1項に記載のリングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項10】
前記第1の屈折力が-4D~-2Dである場合、前記前面の補正ゾーン曲がりは201~400曲げである、請求項1~4のいずれか1項に記載のリングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項11】
前記第1の屈折力が-6D~-4Dである場合、前記前面の補正ゾーン曲がりは50~200曲げである、請求項1~4のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項12】
前記後面は、球面、偶数非球面、または双円錐面である、請求項1~4のいずれか1項に記載のリングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項13】
前記複数の補正ゾーンは、補正中心ゾーンと複数の補正同心リングとを含み、前記補正中心ゾーンは前記レンズの中心に位置し、前記複数の乱視ゾーンは、複数の乱視同心リングを含み、前記補正同心リングと前記乱視同心リングとは、互い違いに配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載のリングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項14】
前記補正中心ゾーンの直径は5~12mmであり、補正同心リングの幅は0.5~2mmであり、乱視同心リングの幅は0.5~2mmである、請求項13に記載のリングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項15】
前記複数の乱視ゾーンは、5~15の乱視同心リングを有し、前記複数の補正ゾーンは、5~15の補正同心リングを含む、請求項13に記載のリングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項16】
前記リングフォーカス眼鏡レンズの中心厚さが1~3mmであり、前記リングフォーカス眼鏡レンズの直径が60~80mmである、請求項1~4のいずれか1項に記載のリングフォーカス眼鏡レンズ。
【請求項17】
一連の請求項1に記載のリングフォーカス眼鏡レンズを製造するための方法であって、
前記一連の前記リングフォーカス眼鏡レンズは、異なる近視度及び乱視度を有する第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズと、異なる近視度及び乱視度を有する第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズと、異なる近視度及び乱視度を有する第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズと、異なる近視度及び乱視度を有する第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズとを含み、前記第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズの前記近視度は、前記第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズのそれよりも小さく、前記第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズの前記近視度は、前記第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズのそれよりも小さく、前記第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズの前記近視度は、前記第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズのそれよりも小さく、前記方法は、
第1の補正ゾーン曲がりを有する前面を生成するための第1の前方金型コアを用意することと、
第2の補正ゾーン曲がりを有する前面を生成するための第2の前方金型コアを用意することであって、前記第1の補正ゾーン曲がりは、前記第2の補正ゾーン曲がりよりも大きい、前記用意することと、
第3の補正ゾーン曲がりを有する前面を生成するための第3の前方金型コアを用意することであって、前記第2の補正ゾーン曲がりは、前記第3の補正ゾーン曲がりよりも大きい、前記用意することと、
異なる曲率半径を有する後面を生成するための後方金型コアの組を用意することであって、前記後方金型コアの組は、複数の後方金型コアを含み、各後方金型コアは、対応する曲率半径を有する後面を生成するために使用される、前記用意することと、
平面の後面を生成するための平面の後方金型コアを用意することと、
前記第1の前方金型コアと前記後方金型コアの組とを使用して、前記第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成することと、
前記第2の前方金型コアと前記後方金型コアの組とを使用して、前記第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成することと、
前記第3の前方金型コアと前記後方金型コアの組とを使用して、前記第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成することと、
前記第3の前方金型コアと前記平面の後方金型コアとを使用して、半完成レンズを生成することと、
前記半完成レンズの前記後面を処理して、前記第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成することと、を含む前記方法。
【請求項18】
前記第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズは、-2D~0Dの第1の屈折力を有するリングフォーカス眼鏡レンズを有し、前記第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズは、-4D~-2Dの第1の屈折力を有するリングフォーカス眼鏡レンズを有し、前記第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズは、-6D~-4Dの第1の屈折力を有するリングフォーカス眼鏡レンズを有し、前記第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズは、-6D未満の第1の屈折力または-2D未満の乱視度を有するリングフォーカス眼鏡レンズを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の補正ゾーン曲がりは401~600曲げであり、前記第2の補正ゾーン曲がりは201~400曲げであり、前記第3の補正ゾーン曲がりは50~200曲げである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記後方金型コアの組は、80~120の後方金型コアを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記半完成レンズの中心厚さは2~20mmである、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズに関し、詳細には、近視の進行を制御するためのリングフォーカス眼鏡レンズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近視は一般的な眼疾患である。近視は主に、眼球の過度の伸びによって生じ、遠方の物体の焦点面が網膜の前方に落ちる結果、距離における視力がぼやける。研究によれば、2050年までに、世界人口の50%超が近視になる。近視の進行を制御する効果的な介入策を見つけるために、関連分野の学者が多くの研究を行っている。現在、以下を含む3つの主流の方法がある。1)アトロピン点眼剤、2)角膜のラジアンを変化させる「OKレンズ」、3)周辺視野をぼかすデフォーカスレンズ。アトロピンの濃度が高いほど、効果は良好であるが、副作用も明らかである。瞳孔拡大、光恐怖症、近見視における困難、アレルギー、そして濃度が高いほど、近視のリバウンドが明らかである等。低濃度のアトロピンでさえ、密接なフォローアップモニタリングの下で使用する必要があり、セキュリティの保証は困難である。オルソケラトロジーレンズ(「OKレンズ」として広く知られている)は、夜間、眠っている間に装用するハードコンタクトレンズである。原理は、レンズと角膜との間の接触を通して、角膜を理想的なラジアンに変えるために圧力を使用することである。患者は、安定した治療効果を維持するために、毎夜それを装用する必要がある。一旦それを停止すると、リバウンドが生じる。加えて、レンズの衛生が適切に取り扱われない場合、感染のリスクが増大するか、または角膜に傷がつく。デフォーカスレンズは、光学技術を使用してレンズの周りの焦点をそらし、その結果、周辺視野をぼかして、眼球の伸びを抑制するのを助ける。しかし、周辺視野がぼやけているため、容易につまずく。そのため、歩行し、階段を上下するときに、特に注意する必要がある。
【0003】
Hong Kong Polytechnic UniversityのSchool of Optometryが行った最近の無作為化臨床試験が示すところによれば、デフォーカスを組み込んだソフトコンタクトレンズ(DISC)を装用した初等及び中等学校の生徒の近視は、単焦点コンタクトレンズを使用する子供と比べて、最近の2年間において進行がゆっくりであった。初等学校の生徒がDISCレンズを毎日8時間装用すると、近視の進行が60%遅くなる。DISCレンズは、異なる屈折力を有する交互の同心リングのデザインを通して患者に明瞭な視力を与え、同時に、患者が種々の視距離において正のデフォーカス信号を連続的に受け取って、眼球の伸びを抑制することを可能にする。DISCレンズは、コンタクトレンズの一種として、近視制御に対してプラス効果があるが、本質的に侵襲性である。眼の健康の問題があるために、初等及び中等学校の生徒の多くが、ソフトコンタクトレンズを装用することができない。たとえば、レンズ不耐性問題または安全性に対する懸念があり得るため、装用時間が制限される場合がある。
【0004】
デフォーカス機能を組み込んだ眼鏡レンズは、非常に魅力的であり、すべての患者に受け入れられる。なぜなら、従来の眼鏡レンズと同様に本質的に非侵襲性であり、装用が容易で非常に安全であるからである。同時に、眼鏡レンズは、装用時間を最大にして、最良の近視制御を達成することができる。しかし、DISCレンズの同心リングのデザインコンセプトを眼鏡レンズに単に移しても、多くの問題が生じる。詳細には、コンタクトレンズの場合、異なる屈折力を有する同心リングは、接合位置において明らかな接合を生じる。これらの接合は、涙液の影響により、外観において容易には観察されない。しかし、接合が眼鏡レンズ上に現れると、外観は見てすぐに分かるため、美観に著しく影響し、患者の装用の意思を下げる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、近視の進行を制御するためのリングフォーカス眼鏡レンズ、及びその製造方法を開示する。このリングフォーカス眼鏡レンズは、患者に対して明瞭な視力を与えることができ、また光学的デフォーカス効果を形成するための複数のリング状のデフォーカスゾーンを有する。このリングフォーカス眼鏡レンズは、異なる屈折力を有する同心リング間に接合部がないので、このリングフォーカス眼鏡レンズは、通常の眼鏡レンズと同じくらい美的である。この製造方法では、3つの前方金型コア、後方金型コアの組、及び平面の後方金型コアを使用して、全範囲を有する一連のリングフォーカス眼鏡レンズを製造することができ、その結果、金型コアの数及び製造コストが減る。同時に、この製造方法は、高い近視度及び高い乱視度を伴うリングフォーカス眼鏡レンズを製造するための半完成レンズ/レンズ(複数)を提供する。高い近視度及び高い乱視度に対する市場需要は小さいので、別個の金型コアを使用する費用対効果は高くない。この半完成レンズの後処理方法を使用すると、金型コアの数が大きく減るだけでなく、必要なレンズの在庫数も減り、その結果、コストが下がる。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態は、近視の進行を制御するためのリングフォーカス眼鏡レンズを開示する。このレンズは、凸状の前面、凹状の後面、網膜上に光を結像するための複数の補正ゾーン、及び網膜の前方に光を結像するための複数の乱視ゾーンを含む。前面及び後面の光学中心は、同じ光軸上に位置する。補正ゾーンは第1の屈折力を有し、乱視ゾーンは第1の屈折力よりも大きい第2の屈折力を有する。補正ゾーンと乱視ゾーンとは、リングフォーカス眼鏡レンズ内で互い違いに配置され、前面は、複数の第1の曲面と複数の第2の曲面とからなる自由曲面を含む。複数の第1の曲面は同じ曲率半径を有し、複数の第2の曲面は同じまたは異なる曲率半径を有する。第1の曲面の曲率半径は、第2の曲面のそれよりも大きい。第1の曲面及び第2の曲面は、自由曲面内で互い違いに接合されている。補正ゾーンは、少なくとも第1の曲面によって規定され、乱視ゾーンは、少なくとも第2の曲面によって規定される。第1の曲面及び隣接する第2の曲面は、接線連続的または遷移曲面的に接合されている。接線連続的な場合、第1の曲面及び隣接する第2の曲面は接線連続であり、第1の曲面の端点と第2の曲面の端点とが、接合点において一致し、第1の曲面の接線と第2の曲面の接線とが、接合点において同じ傾きを有する。第1の曲面の中心と第2の曲面の中心とを接続する接続線の延長線が、接合点を通る。遷移曲面的な場合、遷移曲面が、第1の曲面及び隣接する第2の曲面の間に設けられる。遷移曲面の開始点と終了点とは、第1の曲面の終了点及び隣接する第2の曲面の開始点と、それぞれ接合される。第1の曲面と遷移曲面との曲率の方向及び値は、第1の曲面と遷移曲面との接合点において同じである。第2の曲面と遷移曲面との曲率の方向及び値は、第2の曲面と遷移曲面との接合点において同じであり、遷移曲面上の曲率は連続的に変化する。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、レンズの中心から半径方向外側に、先の曲面のジオプタから次の曲面のジオプタを引いたものが閾値以下である場合、先の曲面と次の曲面とは接線連続的に接合されている。先の曲面のジオプタから次の曲面のジオプタを引いたものが閾値より大きい場合、先の曲面と次の曲面とは遷移曲面的に接合されている。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、閾値は3.5Dである。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、互いに隣接する第1の曲面と第2の曲面とがすべて、接線連続的に接合されている。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、自由曲面は、光軸に沿って回転する母線によって形成され、母線は、複数の第1の曲線と複数の第2の曲線とからなる。各第1の曲線は、第1の曲面の曲率半径を有し、各第2の曲線は、第2の曲面の曲率半径を有する。第1の曲線と第2の曲線とは、母線内で互い違いに接合されている。第1の曲線は、第1の曲面を形成するように回転し、第2の曲線は、第2の曲面を形成するように回転する。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、複数の第2の曲面の曲率半径は、リングフォーカス眼鏡レンズの半径方向において一定であるかまたは増加する。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、第2の屈折力は、第1の屈折力よりも0.5D~5Dだけ大きい。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、第1の屈折力が-2D~0Dである場合、前面の補正ゾーン曲がりは401~600曲げ(bend)である。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、第1の屈折力が-4D~-2Dである場合、前面の補正ゾーン曲がりは201~400曲げである。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、第1の屈折力が-6D~-4Dである場合、前面の補正ゾーン曲がりは50~200曲げである。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、後面は、球面、偶数非球面、または双円錐面である。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、複数の補正ゾーンは、補正中心ゾーンと複数の補正同心リングとを含み、補正中心ゾーンは、リングフォーカス眼鏡レンズの中心に位置し、複数の乱視ゾーンは、複数の乱視同心リングを含み、補正同心リングと乱視同心リングとは、互い違いに配置される。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、補正中心ゾーンの直径は5~12mmであり、補正同心リングの幅は0.5~2mmであり、乱視同心リングの幅は0.5~2mmである。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、複数の乱視ゾーンは、5~15の乱視同心リングを有し、複数の補正ゾーンは、5~15の補正同心リングを含む。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、リングフォーカス眼鏡レンズの中心厚さが1~3mmであり、リングフォーカス眼鏡レンズの直径が60~80mmである。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態は、一連のリングフォーカス眼鏡レンズを製造するための方法を開示する。一連のリングフォーカス眼鏡レンズは、異なる近視度及び乱視度を有する第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズと、異なる近視度及び乱視度を有する第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズと、異なる近視度及び乱視度を有する第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズと、異なる近視度及び乱視度を有する第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズとを含み、第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズの近視度は、第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズのそれよりも小さく、第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズの近視度は、第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズのそれよりも小さく、第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズの近視度は、第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズのそれよりも小さく、本方法は、以下のステップを含む。第1の補正ゾーン曲がりを有する前面を生成するための第1の前方金型コアを用意することと、第2の補正ゾーン曲がりを有する前面を生成するための第2の前方金型コアを用意することであって、第1の補正ゾーン曲がりは、第2の補正ゾーン曲がりよりも大きい、用意することと、第3の補正ゾーン曲がりを有する前面を生成するための第3の前方金型コアを用意することであって、第2の補正ゾーン曲がりは、第3の補正ゾーン曲がりよりも大きい、用意することと、異なる曲率半径を有する後面を生成するための後方金型コアの組を用意することであって、後方金型コアの組は、複数の後方金型コアを含み、各後方金型コアは、対応する曲率半径を有する後面を生成するために使用される、用意することと、平面の後面を生成するための平面の後方金型コアを用意することと、第1の前方金型コアと後方金型コアの組とを使用して、第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成することと、第2の前方金型コアと後方金型コアの組とを使用して、第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成することと、第3の前方金型コアと後方金型コアの組とを使用して、第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成することと、第3の前方金型コアと平面の後方金型コアとを使用して、半完成レンズを生成することと、半完成レンズの後面を処理して、第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成すること。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズは、-2D~0Dの第1の屈折力を有するリングフォーカス眼鏡レンズを有し、第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズは、-4D~-2Dの第1の屈折力を有するリングフォーカス眼鏡レンズを有し、第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズは、-6D~-4Dの第1の屈折力を有するリングフォーカス眼鏡レンズを有し、第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズは、-6D未満の第1の屈折力または-2D未満の乱視度を有するリングフォーカス眼鏡レンズを有する。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、第1の補正ゾーン曲がりは401~600曲げであり、第2の補正ゾーン曲がりは201~400曲げであり、第3の補正ゾーン曲がりは50~200曲げである。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、後方金型コアの組は、80~120の後方金型コアを有する。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、半完成レンズの中心厚さは2~20mmである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態によるリングフォーカス眼鏡レンズの概略構造図である。
【
図2】本発明の実施形態によるリングフォーカス眼鏡レンズの光学効果図である。
【
図3】本発明の実施形態による自由曲面の母線の概略図である。
【
図4】本発明の実施形態による補正ゾーン及び乱視ゾーンの分布図である。
【
図5】a及びbは、異なる曲面を接合する方法を例示する図である。
【
図6】本発明の実施形態による一連のリングフォーカス眼鏡レンズを製造するための方法のフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態による金型の構造図である。
【
図8】本発明の実施形態による前面及び後面が互いに協働する概略図である。
【
図9】本発明の実施形態によるリングフォーカス眼鏡レンズの実写図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の具体的な実施について、添付図面及び実施形態を参照して、以下に説明する。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態は、近視の進行を制御するためのリングフォーカス眼鏡レンズを開示する。このレンズは、凸状の前面、凹状の後面、網膜上に光を結像するための複数の補正ゾーン、及び網膜の前方に光を結像するための複数の乱視ゾーンを含む。前面及び後面の光学中心は、同じ光軸上に位置する。補正ゾーンは第1の屈折力を有し、乱視ゾーンは第1の屈折力よりも大きい第2の屈折力を有する。補正ゾーンと乱視ゾーンとは、リングフォーカス眼鏡レンズ内で互い違いに配置される。前面は、複数の第1の曲面と複数の第2の曲面とからなる自由曲面を含む。第1の曲面は同じ曲率半径を有し、第2の曲面は同じまたは異なる曲率半径を有する。第1の曲面の曲率半径は、第2の曲面のそれよりも大きい。第1の曲面及び第2の曲面は、自由曲面内で互い違いに接合されている。補正ゾーンは、少なくとも第1の曲面によって規定され、乱視ゾーンは、少なくとも第2の曲面によって規定される。第1の曲面及び隣接する第2の曲面は、接線連続的または遷移曲面的に接合されている。接線連続的な場合、第1の曲面及び隣接する第2の曲面は接線連続であり、第1の曲面の端点と第2の曲面の端点とが、接合点において一致し、第1の曲面の接線と第2の曲面の接線とが、接合点において同じ傾きを有する。第1の曲面の中心と第2の曲面の中心とを接続する接続線の延長線が、接合点を通る。遷移曲面的な場合、遷移曲面が、第1の曲面及び隣接する第2の曲面の間に設けられ、遷移曲面の開始点と終了点とは、第1の曲面の終了点及び隣接する第2の曲面の開始点と、それぞれ接合され、第1の曲面と遷移曲面との曲率の方向及び値は、第1の曲面と遷移曲面との接合点において同じであり、第2の曲面と遷移曲面との曲率の方向及び値は、第2の曲面と遷移曲面との接合点において同じであり、遷移曲面上の曲率は連続的に変化する。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、レンズの中心から半径方向外側に、先の曲面のジオプタから次の曲面のジオプタを引いたものが閾値以下である場合、先の曲面と次の曲面とは接線連続的に接合されている。先の曲面のジオプタから次の曲面のジオプタを引いたものが閾値より大きい場合、先の曲面と次の曲面とは遷移曲面的に接合されている。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、閾値は3.5Dである。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、互いに隣接する第1の曲面と第2の曲面とは両方とも、接線連続的に接合されている。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、自由曲面は、光軸に沿って回転する母線によって形成される。母線は、複数の第1の曲線と複数の第2の曲線とからなる。各第1の曲線は、第1の曲面の曲率半径を有し、各第2の曲線は、第2の曲面の曲率半径を有する。第1の曲線と第2の曲線とは、母線内で互い違いに接合されている。第1の曲線は、第1の曲面を形成するように回転し、第2の曲線は、第2の曲面を形成するように回転する。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、複数の第2の曲面の曲率半径は、リングフォーカス眼鏡レンズの半径方向において一定であるかまたは増加する。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、第2の屈折力は、第1の屈折力よりも0.5D~5Dだけ大きい。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、第1の屈折力が-2D~0Dである場合、前面の補正ゾーン曲がりは401~600曲げである。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、第1の屈折力が-4D~-2Dである場合、前面の補正ゾーン曲がりは201~400曲げである。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、第1の屈折力が-6D~-4Dである場合、前面の補正ゾーン曲がりは50~200曲げである。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、後面は、球状、偶数非球面、または双円錐である。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、複数の補正ゾーンは、補正中心ゾーンと複数の補正同心リングとを含み、補正中心ゾーンは、リングフォーカス眼鏡レンズの中心に位置し、複数の乱視ゾーンは、複数の乱視同心リングを含み、補正同心リングと乱視同心リングとは、互い違いに配置される。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、補正中心ゾーンの直径は5~12mmであり、補正同心リングの幅は0.5~2mmであり、乱視同心リングの幅は0.5~2mmである。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、複数の乱視ゾーンは、5~15の乱視同心リングを有し、複数の補正ゾーンは、5~15の補正同心リングを含む。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、リングフォーカス眼鏡レンズの中心厚さが1~3mmであり、リングフォーカス眼鏡レンズの直径が60~80mmである。
【0043】
図1~5に、本発明の実施形態による、近視の進行を制御するための無接合部のリングフォーカス眼鏡レンズを例示する。
図1~2に示すように、リングフォーカス眼鏡レンズ1は、凸状の前面11及び凹状の後面12と、複数の補正ゾーン101と、複数の乱視ゾーン102とを含む。前面11の光学中心111と後面12の光学中心121とは、同じ光軸10上に位置する。前面11は、複数の曲面131と複数の曲面132とからなる自由曲面13である。曲面131は曲率半径R
Aを有し、曲面132は曲率半径R
Bを有する。R
AはR
Bよりも大きい。曲面131と曲面132とは、自由曲面13内で互い違いに接合されている。後面12は、球面、またはさらに偶数非球面もしくは双円錐面であってもよい。補正ゾーン101は、網膜201上に光を結像する明瞭な視力を患者に与えるために使用され、屈折異常を矯正するための第1の屈折力X
1を有する。補正ゾーン101は、少なくとも曲面131によって規定される。乱視ゾーン102は、網膜201の前面の位置202に光を結像する光学的デフォーカスを与えるために使用され、乱視の第2の屈折力X
2を有する。乱視ゾーン102は、少なくとも曲面132によって規定される。この実施形態では、X
2=X
1+m、m∈[0.5D,5D]、X
2は好ましくは3.5Dである。補正ゾーン101と乱視ゾーン102とは、リングフォーカス眼鏡レンズ1内の半径方向に沿って互い違いに配置される。
【0044】
図3に示すように、自由曲面13は、母線14として滑らかな曲線によって光軸10に沿って回転することによって形成することができる。母線14は、曲率半径R
Aを有する複数の曲線141と、曲率半径R
Bを有する複数の曲線142とからなる。曲線141と曲線142とは、母線14内で互い違いに接合されている。曲線141は、曲面131を形成するように回転し、曲線142は、曲面132を形成するように回転する。いくつかの実施形態によれば、曲線142の曲率半径R
Bは、リングフォーカス眼鏡レンズ1の半径方向において一定であるかまたは増加する。
【0045】
図4に示すように、複数の補正ゾーン101は、補正中心ゾーン101a、複数の補正同心リング101b、補正同心外側リング101cを含む。複数の乱視ゾーン102は、複数の乱視同心リング102aを含む。この実施形態によれば、補正中心ゾーン101aは、リングフォーカス眼鏡レンズ1の中心に位置し、円柱状であり、直径D
1である(好ましくは8mm)。補正同心リング101bの幅W
1は、好ましくは1mmである。リングフォーカス眼鏡レンズ1の直径D
2は、好ましくは70mmである。乱視同心リング102aの幅W
2は、好ましくは1mmである。複数の乱視ゾーン102は好ましくは、9つの乱視同心リング102aを含む。リングフォーカス眼鏡レンズ1の中心厚さは、好ましくは1.5mmである。
【0046】
前面11は、RAを有する曲面131と、RBを有する曲面132とからなる自由曲面13であるため、異なる屈折力を有する同心リング(すなわち、異なる曲率半径の種々のリング)を接合したときの接合問題を解決するために、リングを接線連続的または遷移曲面的に接合することができる。
【0047】
接線連続的では、n番目のリング(たとえば、補正同心リング101b)の曲面131の終了点(すなわち、終点)と、(n+1)番目のリング(たとえば、乱視同心リング102a)の曲面132の開始点(すなわち、終点)とは、接合点において一致し、曲面131と曲面132との接線の傾きは接合点において同じであり、同時に、曲面131と曲面132との中心を接続する接続線の延長線は、接合点を通る。
【0048】
遷移曲面的では、遷移曲面が、n番目のリングと(n+1)番目のリングとの間に設けられる。遷移曲面の開始点と終了点とは、n番目のリングの終了点及び隣接する(n+1)番目のリングの開始点とそれぞれ接合し、第1の曲面と遷移曲面との曲率の方向及び値は、第1の曲面と遷移曲面との接合点において同じであり、第2の曲面と遷移曲面との曲率の方向及び値は、第2の曲面と遷移曲面との接合点において同じであり、遷移曲面上の曲率は連続的に変化する。
【0049】
実際の応用では、前述の接線連続的及び遷移曲面的は、必要に応じて、隣接するリング(曲面)を接続するために選択することができる。たとえば、接線連続的は、すべての接合に対して選択してもよい。遷移曲面的は、すべての接合に対して選択してもよい。接続方法は、隣接するリングの曲面のジオプタ差に従って選択してもよい。
【0050】
一実施形態によれば、レンズの中心から半径方向に沿って外側に、先の曲面のジオプタ131から次の曲面132のジオプタを引いたものが、閾値(たとえば、3.5D)以下である場合、リングは接線連続的に接合されて、n番目のリング(たとえば、補正同心リング101b)の曲面131の終了点(すなわち、終点)と、(n+1)番目のリング(たとえば、乱視同心リング102a)の曲面132の開始点(すなわち、終点)とが、接合点において一致し、曲面131と曲面132との接線の傾きが接合点において同じであり、同時に、曲面131と曲面132との中心を接続する接続線の延長線が接合点を通っている。
図5aに示すように、曲面131と曲面132とは接線連続であり、そのため、曲面131の終点1311と曲面132の終点1321とは、接合点1331においてオーバーラップし、曲面131の接線1312と曲面132の接線1322とは、接合点1331において同じ傾きを有する。曲面131の中心O
Aを曲面132の中心O
Bと接続する接続線O
AO
B134の延長線1341は、接合点1331を通り、それによって接合問題を解決する。
【0051】
レンズの中心から半径方向に沿って外側に、先の曲面のジオプタ131から次の曲面132のジオプタを引いたものが、前述の閾値(たとえば、3.5D)より大きい場合、リングは曲率連続的に接続され、第1の曲面131と第2の曲面132との間に遷移曲面133が存在する。
図5bに示すように、第1の曲面131の終了点1311と遷移曲面133の開始点とは一致し、この点において、両方の曲率及び方向は同じである。同様に、第2の曲面132の開始点1321と遷移曲面の終了点1332とは一致し、この点において、両方の曲率及び方向は同じである。遷移曲面133上では、曲率は、R
AからR
Bに連続的に変化する。
【0052】
さらに製造に至ると、本発明によって、前方及び後方金型が互いに協働して、異なる補正度を有するレンズを形成する製造方法が提供され、その結果、金型コアの数が大きく減り、その結果、製造コストが下がる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態は、一連のリングフォーカス眼鏡レンズを製造するための方法を開示する。一連のリングフォーカス眼鏡レンズは、異なる近視度及び乱視度を有する第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズと、異なる近視度及び乱視度を有する第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズと、異なる近視度及び乱視度を有する第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズと、異なる近視度及び乱視度を有する第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズとを含み、第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズの近視度は、第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズのそれよりも小さく、第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズの近視度は、第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズのそれよりも小さく、第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズの近視度は、第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズのそれよりも小さく、本方法は、以下のステップを含む。第1の補正ゾーン曲がりを有する前面を生成するための第1の前方金型コアを用意することと、第2の補正ゾーン曲がりを有する前面を生成するための第2の前方金型コアを用意することであって、第1の補正ゾーン曲がりは、第2の補正ゾーン曲がりよりも大きい、用意することと、第3の補正ゾーン曲がりを有する前面を生成するための第3の前方金型コアを用意することであって、第2の補正ゾーン曲がりは、第3の補正ゾーン曲がりよりも大きい、用意することと、
異なる曲率半径を有する後面を生成するための後方金型コアの組を用意することであって、後方金型コアの組は、複数の後方金型コアを含み、各後方金型コアは、対応する曲率半径を有する後面を生成するために使用される、用意することと、平面の後面を生成するための平面の後方金型コアを用意することと、第1の前方金型コアと後方金型コアの組とを使用して、第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成することと、第2の前方金型コアと後方金型コアの組とを使用して、第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成することと、第3の前方金型コアと後方金型コアの組とを使用して、第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成することと、第3の前方金型コアと平面の後方金型コアとを使用して、半完成レンズを生成することと、半完成レンズの後面を処理して、第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成すること。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズは、-2D~0Dの第1の屈折力を有する眼鏡レンズを有し、第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズは、-4D~-2Dの第1の屈折力を有する眼鏡レンズを有し、第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズは、-6D~-4Dの第1の屈折力を有する眼鏡レンズを有し、第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズは、-6D未満の第1の屈折力を有する眼鏡レンズを有する。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、第1の補正ゾーン曲がりは401~600曲げであり、第2の補正ゾーン曲がりは201~400曲げであり、第3の補正ゾーン曲がりは50~200曲げである。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、後方金型コアの組は、80~120の後方金型コアを有する。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、半完成レンズの中心厚さは2~20mmである。
【0058】
図6は、本発明の実施形態による一連のリングフォーカス眼鏡レンズを製造するための方法のフローチャートである。この一連のリングフォーカス眼鏡レンズは、異なる近視度及び乱視度を有する複数の組のリングフォーカス眼鏡レンズを含む。近視度が-6Dよりも大きく、乱視度が-2Dよりも大きい場合、ステップS61に従って、近視度が0~-2Dの第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成するための第1の前方金型コアと、近視度が-2D~-4Dの第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成するための第2の前方金型コアと、近視度が-4D~-6Dの第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成するための第3の前方金型コアと、異なる曲率半径を有する後面を生成するための後方金型コアの組とを用意する。第1の前方金型コアは、第1の補正ゾーン曲がりを有する前面を生成するために使用され、第2の前方金型コアは、第2の補正ゾーン曲がりを有する前面を生成するために使用され、第3の前方金型コアは、第3の補正ゾーン曲がりを有する前面を生成するために使用される。第1の補正ゾーン曲がりは、第2の補正ゾーン曲がりよりも大きく、第2の補正ゾーン曲がりは、第3の補正ゾーン曲がりよりも大きい。後方金型コアのこの組は、複数の後方金型コアを含み、各後方金型コアは、対応する曲率半径を有する後面を生成するために使用される。
【0059】
ステップS62によれば、第1の前方金型コアと後方金型コアの組とを使用して、第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成し、第2の前方金型コアと後方金型コアの組とを使用して、第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成し、第3の前方金型コアと後方金型コアの組とを使用して、第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成する。
【0060】
近視度が-6D未満であり、乱視度が-2D未満である場合、ステップS63に従って、近視度が-6D未満であり乱視度が-2D未満の第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成するための平面の後方金型コアを、平面の後面を生成するために用意する。第3の前方金型コアと平面の後方金型コアとを使用して、第3の補正ゾーン曲がりを伴う前面と平面の後面とを有する半完成レンズを生成し、半完成レンズの後面を処理して、第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズを生成する。第1の組のリングフォーカス眼鏡レンズと、第2の組のリングフォーカス眼鏡レンズと、第3の組のリングフォーカス眼鏡レンズと、第4の組のリングフォーカス眼鏡レンズとは、近視度及び乱視度が重ならない。
【0061】
図7は、本発明の実施形態による金型70の構造図である。金型70は、前方金型コア71と後方金型コア72とを含む。この実施形態では、
図8に示すように、リングフォーカス眼鏡レンズ1の第1の屈折力X
1がX
1∈[-2D,0D]を満足する場合、前面の補正ゾーン曲がりは、好ましくは500曲げであり、すべての近視度及び乱視度は、一致させた後面12(R
C1、R
C2、R
C3、...)によって完成する。この実施形態では、補正ゾーン曲がりは、以下の実験式によって計算することができる。補正ゾーン曲がり=(0.532/R
A)x100。R
Aの単位はメートルであるが、補正ゾーン曲がりは、本分野における他の関連式によっても計算することができる。X
1∈[-4D,-2D]である場合、補正ゾーン曲がりは、好ましくは300曲げであり、すべての近視度及び乱視度はやはり、一致させた後面12(R
C1、R
C2、R
C3、...)によって完成する。X1∈[-6D,-4D]である場合、補正ゾーン曲がりは、好ましくは100曲げであり、すべての近視度及び乱視度はやはり、一致させた後面12(R
C1、R
C2、R
C3、...)によって完成する。すなわち、全眼鏡レンズ系列の金型は、3つの異なる自由曲面を有する前面11を生成するための3つの前方金型コア61と、後面12を生成するための後方金型コア62の組とを含み、両方を互いに一致させて、全系列の大部分を完全に製造することができる。金型の組の全体は、各度合いに対して独立した金型コアの組を必要としないので、この方法によって、前面及び後面に対する金型コアの数が大きく減り、製造コストが下がる。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、前面の補正ゾーン曲がりは500曲げであり、曲率半径が104.5819の後面と一致させれば、平坦な補正ゾーンを有するレンズを形成することができ、曲率半径が82.6233の後面と一致させれば、補正ゾーンが-1.5Dの近視レンズを形成することができる。前面の補正ゾーン曲がりが300曲げである場合、曲率半径が104.5819の後面を一致させれば、補正ゾーンが-2.25Dの近視レンズを形成することができ、曲率半径が82.6233の後面を一致させれば、補正ゾーンが-3.75Dの近視レンズを形成することができる。同様に、前面の補正ゾーン曲がりが100曲げである場合、曲率半径が104.5819の後面を一致させれば、補正ゾーンが-4.5Dの近視レンズを形成することができ、曲率半径が82.6233の後面を一致させれば、補正ゾーンが-6Dの近視レンズを形成することができる。
【0063】
近視度<-6Dまたは乱視度<-2Dが必要な場合は、100曲げの前方金型と平面の後方金型とを使用し、中心厚さは好ましくは8mmであり、100曲げの補正ゾーンを有する前面と平面の後面とを有する半完成レンズを作製し、次いでこの半完成レンズを二次処理に供して、近視度<-6Dまたは乱視度<-2Dを有するリングフォーカス眼鏡レンズを生成する。これは、この種のレンズに対する需要がそれほど高くなく、金型を用いてそれらを製造することは費用対効果が高くないからである。半完成製品によって、金型コアの数及び在庫を減らすことができ、これによってコストを下げることができる。
【0064】
図9は、本発明の実施形態によるリングフォーカス眼鏡レンズの実写図であり、レンズの表面上に接合部がないことを明瞭に例示することができる。光の下でレンズを投影すると、補正ゾーンと乱視ゾーンとが明らかに異なる屈折力を有することが分かり、本発明の正確さ及び実現性を完全に検証している。
【0065】
従来技術と比較して、本発明は以下の著しい利点を有する。
【0066】
1.本発明によって、近視の進行を制御するための製造指向の無接合部リングフォーカス眼鏡レンズデザイン技術、及び前面の異なる屈折力を有する同心リングの連続的なデザインが提供される。その外観は、通常のレンズと一致し、接合部を有さず、美的外観を有する。
【0067】
2.補正ゾーンと乱視ゾーンとが互い違いに配置されて、光学的デフォーカスによって生じる周辺視野の剥離が減る。
【0068】
3.製造指向の方法は、3つの前方金型コア、後方金型コアの組、及び平面の後方金型コアを使用して、完全な度合いを有する一連のレンズを製造するため、金型コアの数及び製造コストが大きく減る。
【0069】
4.最適化された屈折力分布は、患者に明瞭な視力を与えるだけでなく、患者が正の光学的デフォーカス信号を受け取ることによって、眼球の伸びを抑制し、視力を改善できることを確実にする。
【0070】
本発明の具体的な実施について前述してきたが、当業者であれば分かるように、これらは単なる例であり、本発明の原理及び本質から逸脱することなく、これらの実施態様にある程度の修正及び変更を行ってもよい。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【国際調査報告】