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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】放射線検出
(51)【国際特許分類】
   G01T 3/08 20060101AFI20240705BHJP
   G01T 1/17 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
G01T3/08
G01T1/17 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504250
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 GB2022051773
(87)【国際公開番号】W WO2023002156
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】2110711.5
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503126681
【氏名又は名称】エムビーディーエー・ユーケー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボーデン-ピータース、エドウィン・ジョン・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】クック、ベンジャミン・ジェームス
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB06
2G188CC29
2G188DD35
2G188GG09
(57)【要約】
放射線検出器が開示される。本検出器は、入射放射線を受けると電圧を生じさせるように構成された変換デバイスと、閾値電圧によってトリガされると第1の状態と第2の状態との間を移行するように構成された動作可能なスイッチと備える。変換デバイスは、閾値電圧が変換デバイスの両端で生じると、スイッチが第1の状態から第2の状態に移行するようにトリガされるようにスイッチに接続される。検出器は、スイッチが第1の状態にあるか、又は第2の状態にあるかを判断し、それによって、検出器が閾値電圧に関連付けられた閾値レベルの放射線を受けたかどうかを判断するように動作可能な問い合わせ回路を更に備える。放射線感受性装置と放射線検出器とを備えるシステムも開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線検出器であって、
(a)入射放射線を受けると電圧を生じさせるように構成された変換デバイスと、
(b)閾値電圧によってトリガされると第1の状態と第2の状態との間を移行するように構成された第1のスイッチと、
ここにおいて、前記変換デバイスは、前記閾値電圧が前記変換デバイスの両端で生じると、前記スイッチが前記第1の状態から前記第2の状態に移行するようにトリガされるように前記スイッチに接続され、
(c)前記スイッチが前記第1の状態にあるか、又は前記第2の状態にあるかを判断し、それによって、前記検出器が前記閾値電圧に関連付けられた閾値レベルの放射線を受けたかどうかを判断するように動作可能な問い合わせ回路と
を備える、放射線検出器。
【請求項2】
前記スイッチは、MEMSスイッチである、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記スイッチは、ラッチ回路を備える、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記スイッチは、リレー回路を備える、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記変換デバイス及び前記スイッチは、いかなる更なる電力源もなしに動作可能であり、前記問い合わせ回路は、電力源に接続されると、前記問い合わせ回路が電力に接続されていない間に前記検出器が前記閾値レベルの放射線を受けたかどうかを判断するように動作可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項6】
閾値電圧によってトリガされると第1の状態と第2の状態との間を移行するように構成された第2のスイッチを備え、前記第2のスイッチは、前記第1のスイッチが前記第2の状態にあるときに前記第1のスイッチを介して前記変換デバイスに接続され、前記検出器は、前記第2のスイッチが前記第1の状態にあるか、又は前記第2の状態にあるかを判断するように動作可能な第2の問い合わせ回路を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の複数の放射線検出器を備える装置。
【請求項8】
前記複数の放射線検出器の各々は、異なる閾値電圧を有するように構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記放射線検出器又は各放射線検出器の前記問い合わせ回路と通信し、前記問い合わせ回路によって判断されたスイッチ状態に応じて放射線曝露の更なる特性を判断するように構成されたプロセッサを更に備える、請求項6~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記更なる特性は、放射線への曝露の持続時間及び放射線のタイプのうちの1つ以上を備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の前記放射線検出器又は請求項7~10のいずれか一項に記載の装置と、放射線感受性装置とを備えるシステムであって、前記システムは、前記放射線検出器が前記閾値レベルの放射線を受けたと前記問い合わせ回路が判断した場合、操作者に警告するように構成される、システム。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の前記放射線検出器又は請求項1~7のいずれか一項に記載の装置と、放射線感受性装置とを備えるシステムであって、前記システムは、前記放射線検出器が前記閾値レベルの放射線を受けたと前記問い合わせ回路が判断した場合、前記放射線感受性装置が無効にされるように構成される、システム。
【請求項13】
前記放射線検出器は、前記放射線感受性装置に隣接して配置される、請求項11又は12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器と、放射線検出器を備えるシステムとに関する。より具体的には、限定はしないが、本発明は、放射線曝露の特定の閾値限界を延長された時間期間にわたって上回った否かを判断する際に使用するための放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのシステムは、アルファ、ベータ、又はガンマ線などの電離放射線、様々な異なるタイプの放射線を含む宇宙放射線、又はX線への曝露によって損傷を受けることが知られている。そのような電離放射線は、電子部品を損傷する可能性があり、場合によっては、材料に損傷を引き起こす可能性がある。携帯電話又はコンピュータなどのデバイスは、放射線損傷に対して脆弱であり得、構造材料への損傷は、損傷が構造破壊をもたらすほど深刻である場合、製品に対して深刻な結果を有する可能性がある。
【0003】
システムが使用されるより前に適切な措置が講じられることができるように、システムが損傷又は誤動作を引き起こし得るレベルの放射線に曝露されたか否かを迅速且つ確実に識別することが可能であることが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明の態様によると、放射線検出器が提供され、本放射線検出器は、入射放射線を受けると電圧を生じさせるように構成された変換デバイスと、閾値電圧によってトリガされると第1の状態と第2の状態との間を移行するように構成された第1のスイッチと、ここにおいて、変換デバイスは、閾値電圧が変換デバイスの両端で生じると、スイッチが第1の状態から第2の状態に移行するようにトリガされるようにスイッチに接続され、スイッチが第1の状態にあるか、又は第2の状態にあるかを判断し、それによって、検出器が閾値電圧に関連付けられた閾値レベルの放射線を受けたかどうかを判断するように動作可能な問い合わせ回路とを備える。
【0005】
スイッチは、MEMSスイッチであり得る。MEMSは、微小電気機械システムを指す。そのようなシステムは、マイクロメートル範囲のサイズの構成要素を有する。本明細書で使用される場合、MEMSはまた、NEMSと呼ばれることもあるナノメートルのサイズの構成要素を有するシステムを含む。MEMSスイッチは、非常にロバストになるように、高温に耐えることが可能になるように、且つ耐放射線性になるように作製されることができる。
【0006】
スイッチは、ラッチ回路を備え得る。代替として、スイッチは、リレー回路を備え得る。
【0007】
変換デバイス及びスイッチは、いかなる更なる電力源もなしに動作可能であり得、問い合わせ回路は、電力源に接続されると、問い合わせ回路が電力に接続されていない間に検出器が閾値レベルの放射線を受けたかどうかを判断するように動作可能であり得る。電力を必要としないことにより、放射線検出器が、例えば放射線感受性装置と関連付けられて長い時間期間使用され、装置が使用されるべきときにのみ問い合わされることを可能にする。これは、装置が長い時間期間保管されるべきである場合、又は電力供給源を提供することが困難である場合に有益であり得る。少なくとも問い合わせ回路が動作される時点まで、このように動作するために電力が必要とされない検出器は、受動放射線検出器と呼ばれることができる。
【0008】
スイッチがラッチ回路又はリレーを備える場合、少量の電力が必要とされ得るが、これは、例えば、太陽光発電を使用して、又はその方が都合が良ければ装置自体からの電力を使用して供給され得る。
【0009】
放射線検出器は、閾値電圧によってトリガされると第1の状態と第2の状態との間を移行するように構成された第2のスイッチを更に備え得、第2のスイッチは、第1のスイッチが第2の状態にあるときに第1のスイッチを介して変換デバイスに接続され、検出器は、第2のスイッチが第1の状態にあるか、又は第2の状態にあるかを判断するように動作可能な第2の問い合わせ回路を更に備え得る。以下で更に詳細に説明されるように、そのような構成は、放射線への曝露の持続時間が判断されることを可能にする。検出器が、第2のスイッチに同様に接続された第3のスイッチを更に備え得、また更なるスイッチを備え得ることを認識されたい。スイッチの数は、予想される放射線曝露の持続時間、又は検出することが望ましい放射線曝露の持続時間に応じて選択され得る。
【0010】
本発明は、上記で説明されたような複数の放射線検出器を備える装置にまで及ぶ。複数の放射線検出器の各々は、異なる閾値電圧を有するように構成され得る。代替として、複数の放射線検出器の各々は、同じ閾値電圧を有するように構成され得る。
【0011】
装置は、放射線検出器又は各放射線検出器の問い合わせ回路と通信し、問い合わせ回路によって判断されたスイッチ状態に応じて放射線曝露の更なる特性を判断するように構成されたプロセッサを更に備え得る。更なる特性は、放射線への曝露の持続時間、及び放射線のタイプのうちの1つ以上を備え得る。
【0012】
本発明は更に、上記で説明されたような放射線検出器又は装置と、放射線感受性装置とを備えるシステムにまで及び、本システムは、放射線検出器が閾値レベルの放射線を受けたと問い合わせ回路が判断した場合、操作者に警告するように構成される。代替として、本システムは、放射線検出器が閾値レベルの放射線を受けたと問い合わせ回路が判断した場合、放射線感受性装置が無効にされるように構成され得る。
【0013】
放射線検出器は、放射線感受性装置に隣接して配置され得る。好ましくは、放射線検出器は、放射線感受性装置の外側に配置され得る。
【0014】
ここで、本発明の実施形態が、添付の図面を参照して例としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態による放射線検出器の図である。
図2図1の放射線検出器の構成部品の更なる詳細を示す。
図3】本発明の第2の実施形態による放射線検出器の図である。
図4】放射線検出器を含むシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、放射線検出器100の概略図である。大まかに言えば、放射線検出器は、変換デバイス110、スイッチ120、及び問い合わせ回路130を備える。変換デバイスは、入射電離放射線を電気信号に変換するように動作する。変換デバイスに入射する放射線は、変換デバイスの両端に電圧を生じさせる。スイッチ120は、変換デバイスに接続され、変換デバイスの両端の電圧が閾値レベルに達すると、第1の状態から第2の状態に移行するようにトリガされる。変換デバイスの両端の電圧は、既知のように、放射線へのその曝露に依存するので、変換デバイスがある特定の閾値放射線レベルに曝露されると、閾値電圧に達するであろう。このことから、閾値放射線曝露レベルに達すると、スイッチがトリガされる。
【0017】
この問い合わせ回路は、スイッチがトリガされたか否か、及びこのことから、デバイスが閾値レベルの放射線に曝露されたか否かを判断するために使用される。典型的には、使用中の放射線検出器は、コンピューティングデバイス、又は放射線感受性材料から製作された主要な構造要素を有する装置など、何らかの放射線感受性装置と関連付けられ、問い合わせ回路は、装置を動作させることが所望されるときに動作されることができる。これは、実際の放射線への曝露が行われた後のある時間である可能性がある。しかしながら、放射線検出器100は、装置が潜在的に損傷を与えるレベルの放射線に曝露されたか否かが、そのレベルの曝露が最近であったかどうかにかかわらず、判断されることを可能にする。
【0018】
変換デバイス110は、半導体p-n接合を含む。接合を通過する電離放射線は、半導体材料と相互作用して電子-正孔対を作成する。一般に理解されるように、接合中の電子は、接合の一方の側に向かってバイアスされ、その一方で、正孔は、他方の側に向かってバイアスされ、そのため、接合の2つの側間の電位差は、作成される電子-正孔対の数に応じて生じる。作成される対の数は、入射放射線のエネルギーに依存するので、生じる電圧は、接合の電離放射線への曝露に関連する可能性がある。使用される半導体材料は、取ることが所望される電離放射線の特定のタイプ又はエネルギーレベルに応じて選ばれることができる。その上、半導体材料のドーパント及びドーピングレベルは、デバイスのバンドギャップを変化させるために選ばれることができ、従って、デバイスの入射電離放射線への反応に対して何らかの制御を及ぼすために選ばれることもできる。このことから、放射線検出器は、検出することが所望される放射線のタイプ及びエネルギーへの適切な反応を達成するように、いくつかの方法で修正されることができることを認識されたい。
【0019】
多くの異なる半導体材料が使用されることができ、より高いバンドギャップを有するものが、より適切であると予想される。バンド構造及びバンドギャップは、使用される材料、ドーパント、及び半導体材料中のドーパントの濃度を変化させることを通じて変化させられることができる。本例では、ガリウムヒ素が使用される。いくつかの代替の例は、炭化ケイ素、窒化ガリウム、及びダイヤモンドを含む。
【0020】
スイッチ120は、MEMSスイッチである。MEMSは、微小電気機械システム、又は構成部品がマイクロメートル範囲又はナノメートル範囲のサイズである電気機械システムに関連するものと理解されたい。スイッチ120は、図2に更に詳細に示されており、本例では、Nature Communications (2020) 11:1181の「Nanoelectromechanical relay without pull-in instability for high-temperature non-volatile memory」においてRana et al.によって開示されているタイプのものである。不揮発性メモリで使用するために設計されたスイッチは、電力が除去されたときにスイッチ状態が保持されるという望ましい特質を有する。スイッチ120は、円弧状ビーム210を備え、円弧状ビームの曲率中心に向かって延在する更なるビーム220を有する。更なるビームは、ヒンジ230を介して固着される。図2では、スイッチ120は、その中立状態で示され、円弧状ビーム210のいずれかの端部とそれぞれの端子240、250との間に小さい間隙がある。円弧状ビーム210の内部に配置された主要ゲート260、270と、円弧状ビーム210の外部に配置された補助ゲート280、290とは、静電電圧が円弧状ビームに印加されて、それを端子240、250のうちの一方又は他方に向かってバイアスすることを可能にする。閾値電圧に達すると、ビーム210は、端子240、250のうちの一方に接触するであろう。反対の電圧など、端子からビームを除去するために更に印加される力がない場合、ビームは、端子と接触したままであろう。スイッチ120は、動作するために、いかなる更なる電力源も必要としない。場合によっては、電気的特性を改善するために、円弧状ビーム及び接点が金属めっきされることが望ましくあり得る。Rana et al.によると、Cr-Auでのめっきはまた、スイッチの特質を変化させるために使用されることができ、そのため、接触が行われると、円弧状ビームは、接点に冷間溶接される。本出願では、これは、閾値放射線レベルへの曝露を検出する非常にロバストな手段を提供する。
【0021】
図1を参照すると、変換デバイス110が、スイッチ120の端子240とゲート270の両端に接続されている。この電圧は、端子240に向かってビーム220をバイアスする静電力をもたらす。変換デバイスの放射線への曝露が、閾値電圧に達するのに十分である場合、ビーム220は、端子240に接触する。このことから、問い合わせ回路130が閉じられる。検出器が閾値放射線レベルを受けたかどうかを判断するために、後の任意の適切な時点で、問い合わせ回路の状態が検出されることができる。
【0022】
放射線検出器100は、例として、システムが輸送中に宇宙放射線に曝露されたか否かを判断するために使用され得る。電子機器は、宇宙放射線に敏感であり得、場合によっては、十分なエネルギーの単一の電離粒子に曝露された場合であっても、そのような機器を含むシステムが誤動作する可能性がある。例えば、ケイ素ベースのデバイスは、宇宙放射線又は高エネルギーの二次粒子に曝露されると、破損又はソフトエラーを被りやすい。これは、宇宙放射線の入射が高い高度でより頻繁であるため、航空機システム、又は航空機によって輸送されるシステムにとって特に問題となる可能性がある。また、長い時間期間にわたって保管されるシステムにとっても問題となり得るが、その場合、単にシステムが保管される時間の長さの結果として、曝露のリスクが増大する。
【0023】
放射線検出器100は、そのようなシステム中に組み込まれることができ、システムが使用するのに安全であるか否かに関して、又は宇宙放射線への曝露の結果として生じる誤作動の起こりそうなリスクに関して、輸送後又は保管後に判断が行われることを可能にする。放射線検出器100を備えるシステム400が、図4に例示されている。放射線検出器100は、システム中の対象のプロセッサ420に隣接して配置され、そのため、検出器100は、対象のプロセッサとほぼ同じレベルの放射線に曝露される。本実施形態に示されるように、検出器100は、プロセッサに到達するどの放射線もまた検出器100を通過した可能性が最も高くなるように、予想される入射放射線の方向に面するように配向されて、対象のプロセッサの最上部に配置されることができる。一般に、検出器が内側に配置された場合、損傷を与える放射線が対象のプロセッサによって吸収され得るか、又は検出器が放射線曝露からある程度遮蔽され得ることが可能なので、検出器100が対象のプロセッサの外側に配置されることが望ましいであろう。いくつかの例では、変換材料は、対象のプロセッサの全て、又は少なくとも実質的な部分を覆うように拡張され得る。変換材料は、そのような場合、対象のプロセッサを覆う傘のように形成され得る。このようにして、どのトリガイベントも、近接性から推論されるのではなく、対象のプロセッサに入射する電離放射線に直接関連する可能性がある。
【0024】
放射線検出器100を使用することにより、輸送中ずっと、又はシステムが保管されている長い時間期間にわたって放射線を監視するいかなる必要もなくなる。いくつかの放射線検出器がシステム中に組み込まれることができ、各検出器は、判断された放射線曝露レベルにおける信頼性を増大させるために、同じ放射線タイプ及びエネルギーを検出するように構成される。
【0025】
システムが使用される準備ができると、輸送及び/又は保管後、放射線検出器が閾値レベルの放射線に曝露されたか否かを判断するために、問い合わせ回路が動作される。検出器が閾値レベルの放射線に、又はそれより高いレベルに曝露されたと判断された場合、スイッチがトリガされたことを問い合わせ回路を通じて判断することによって、システムは、追加の操作者による入力なしに、自動的にアクションを実行するように構成され得る。例えば、システムは、アラームを通じて操作者に警告し得る。代替として、例えば、セーフティクリティカルシステムの場合、システムは、自動的にシャットダウンし得るか、又はシステムは、正常に機能していることを確認するために、メモリ再構成若しくはチェック、又は他の診断を実行し得る。
【0026】
放射線検出器100と同様であるが、変換デバイスにおいて異なる変換材料を使用するいくつかの放射線検出器は、システムが曝露された放射線のタイプをより良く特徴付けるために、システム中で組み合わされることができる。異なる変換材料は、異なるタイプ及びエネルギーの入射放射線に対して異なる反応をし、スイッチ120は、異なる電圧でトリガするように構成されることができる。このことから、例えば、システムは、第1の検出器及び第2の検出器を備え得る。第1の検出器は、第1の閾値電圧でトリガするように構成され得、第2の検出器は、第2のより高い閾値電圧でトリガするように構成され得る。放射線検出器の問い合わせ時に、第1の検出器がトリガされたが、第2の検出器がトリガされていないと判断された場合、システムの放射線への曝露は、第1の閾値電圧に関連付けられたレベルと第2の閾値電圧に関連付けられたレベルとの間であったと推論されることができる。
【0027】
代替として、第1の検出器は、ベータ粒子などの第1のタイプの電離放射線に反応するが、ガンマ放射線などの第2のタイプの電離放射線には反応しないように構成され得、第2の検出器は、第2のタイプの放射線に反応するが、第1のタイプの放射線には反応しないように構成され得る。このようにして、システムが第1のタイプの放射線には曝露されたが第2のタイプの放射線には曝露されなかったか、第2のタイプの放射線には曝露されたが第1のタイプの放射線には曝露されなかったか、両方のタイプの放射線に曝露されたか、又はいずれのタイプの放射線にも曝露されなかったかが判断されることができる。この情報は、システムが宇宙放射線に曝露されたか否かを推論するために使用されることができる。典型的には、宇宙放射線は、ベータ粒子を含むが、ガンマ放射線を含まないと予想され得る。このことから、例えば、システムが宇宙放射線以外の放射線源に曝露されたと推論されることができる。
【0028】
システムが放射線に曝露されたか否かの判断の結果における信頼性を確実にするために、複数の検出器がシステム中で使用されることができる。検出器は、特にシステムがその領域の大部分にわたって放射線損傷を受けやすい場合にはシステム上の異なる点に位置付けられ得るか、又は単一のデバイス中にパッケージされ得る。
【0029】
複数の放射線検出器を備えるシステムは、複数の放射線検出器の各々と通信するプロセッサを更に備え得る。プロセッサは、例えば、標準的なコンピュータであり得るか、又は特別に設計されたマイクロプロセッサであり得る。プロセッサは、放射線検出器の問い合わせ回路の各々を動作させ、例えば、放射線検出器のうちのどれがトリガされたかを示す出力をユーザに提供するか、又は、どの放射線検出器がトリガされたかを推論する更なる情報を提供するようにプログラムされる。
【0030】
本発明の実施形態による放射線検出器300が、図3に概略的に例示されている。検出器300は、検出器300が複数のスイッチ320、330、340、350を備えることを除いて、検出器100と同様である。スイッチ320、330、340、及び350は各々、スイッチ120と同じタイプであり得る。検出器100と同様に、検出器300は、変換デバイス110を備える。変換デバイス310は、変換デバイス110と同じであり得、検出器100と同様に、変換デバイス310の両端に閾値電圧が生じると、スイッチ320が第1の状態から第2の状態に移行するようにトリガされるように、スイッチ320に接続される。本実施形態では、スイッチ320の第1の状態は開状態であり、第2の状態は閉状態である。閉状態では、変換デバイスの両端の電圧は降下する。閉状態はまた、スイッチ330を変換デバイスに接続する。このことから、変換デバイスの両端で再び閾値電圧に達した場合、スイッチ330は、その第1の開状態からその第2の閉状態に移行するようにトリガされる。これは、変換デバイスの両端の電圧が再び降下し、スイッチ340が変換デバイスに接続されることをもたらす。スイッチ340及び350は、変換デバイスに同様に接続され、スイッチ340は、スイッチ330がトリガされた後に1度目に閾値電圧に達するとトリガされ、スイッチ350は、スイッチ330がトリガされた後に2度目に閾値電圧に達するとトリガされる。
【0031】
放射線検出器300はまた、4つの問い合わせ回路360を備える。各問い合わせ回路360は、スイッチ320、330、340、350のうちの1つと関連付けられ、放射線検出器100に関して上記で説明されたように動作し、そのため、必要なときに各スイッチの状態の判断が行われることができる。問い合わせ回路は、スイッチの状態を判断するように動作可能なプロセッサ370に接続される。プロセッサは、第2の状態にあるスイッチの数に応じて、曝露の持続時間など、放射線曝露の更なる特性を判断するように更に動作可能であり得る。
【0032】
検出器300は、第2の状態に移行するようにトリガされたスイッチの数を通じて、閾値レベルを超える放射線に曝露されている持続時間の表示を提供する。例えば、スイッチのうちの1つのみがトリガされた場合、曝露の持続時間は、比較的短い。全てのスイッチがトリガされた場合、曝露の持続時間は、比較的長くなるであろう。検出器がより長い曝露についての情報を提供することを可能にするために、検出器300中に上記で説明されたような4つよりも多くの数のスイッチを含むことが可能であることが、更に認識されるであろう。また、用途によっては、検出器300中のスイッチの閾値電圧を変化させることが望ましくあり得る。例えば、第1の閾値電圧は、高エネルギー入射のみが検出器をトリガするように比較的高くあり得、その一方で、残りのスイッチは、曝露の持続時間を判断するように比較的より低い閾値電圧を有し得る。
【0033】
本発明のいくつかの特定の実施形態が上記で説明されたが、当業者は、それらの実施形態に対する変形及び修正が可能であることを認識されたい。例えば、MEMSスイッチを使用することが上記で説明されたが、スイッチが、更なる操作者による入力なしに、延長された時間期間にわたって又は無期限に第2の状態に留まることを条件として、第1の状態から第2の状態に移行するように所定の電圧でトリガされることができる任意のスイッチを使用して、本発明の利点の多くが達成されることができることを認識されたい。好ましくは、従って、スイッチは、不揮発性である。スイッチはまた、好ましくは、耐放射線性である。耐放射線性スイッチは、電離放射線への曝露によって損傷を受けず、電離放射線への曝露の結果として状態を変化させる可能性が低い。例えば、多くの異なるタイプの低エネルギーリレー回路が、より大きいスイッチをトリガするために使用されることができるか、又はラッチ回路が使用されることができる。磁気抵抗RAM、他のタイプの耐放射線性不揮発性RAM、又は耐放射線性FLASH(登録商標)メモリを使用することも可能であり得る。そのようなスイッチは、動作するために電力供給源を必要とし得る。しかしながら、電力要件は、低いと予想され、従って、例えば、放射線感受性装置中に含まれる電源を使用して、又は太陽光発電などの追加の電源を使用して、長い持続時間にわたって比較的容易に提供される。
【0034】
その上、放射線検出器100及び放射線検出器300などの放射線検出器の様々な組み合わせが上記で説明されたが、検出器の組み合わせの他の用途が可能であることに留意されたい。検出器は、例えば、放射線の特性に関連する論理計算を可能にするように組み合わせて配置された異なるタイプの検出器と、いくつかの方法で組み合わされ得る。異なるタイプの検出器は、異なるドーピング特性を有する変換材料、異なる閾値電圧を有するスイッチ、又は異なるサイズの変換材料、又はこれらの変形形態の一部若しくは全ての組み合わせを備え得る。同じ又は異なるタイプの検出器が論理的に組み合わされて、特定のレベルの放射線への曝露が発生したか否かをより高い信頼性で判断するための投票システムを作成することもできる。
【0035】
検出器が使用されるべき特定の用途に応じて、他の構成要素が放射線検出器回路中に含まれ得ることを更に認識されたい。例えば、場合によっては、変換デバイスとスイッチとの間にキャパシタを含むことが望ましくあり得る。キャパシタは、例えば、強いが短い放射線のバーストによって引き起こされる電圧スパイクがスイッチをトリガしないように、いかなる突然の変動も平滑化するように作用する。高いキャパシタンスは、より大きな平滑化効果を有するであろう。キャパシタは、その電荷を排出することを可能にする耐ブリード性を伴う可能性が高い。
【0036】
最後に、任意の1つの実施形態に関連して上記で説明されたどの特徴も、単独で、又は説明された他の特徴と組み合わせて使用され得、また、任意の他の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、又は任意の他の実施形態の任意の組み合わせで使用され得ることを明確に理解されたい。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線検出器であって、
(a)入射放射線を受けると電圧を生じさせるように構成された変換デバイスと、
(b)閾値電圧によってトリガされると第1の状態と第2の状態との間を移行するように構成された第1のスイッチと、
ここにおいて、前記変換デバイスは、前記閾値電圧が前記変換デバイスの両端で生じると、前記スイッチが前記第1の状態から前記第2の状態に移行するようにトリガされるように前記スイッチに接続され 、
(c)前記スイッチが前記第1の状態にあるか、又は前記第2の状態にあるかを判断 し、それによって、前記検出器が前記閾値電圧に関連付けられた閾値レベルの放射線を受けたかどうかを判断するように動作可能な問い合わせ回路 と
を備える、放射線検出器。
【請求項2】
前記スイッチは、MEMSスイッチである、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記スイッチは、ラッチ回路を備える、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記スイッチは、リレー回路を備える、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記変換デバイス及び前記スイッチは、いかなる更なる電力源もなしに動作可能であり、前記問い合わせ回路は、電力源に接続されると、前記問い合わせ回路が電力に接続されていない間に前記検出器が前記閾値レベルの放射線を受けたかどうかを判断するように動作可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項6】
閾値電圧によってトリガされると第1の状態と第2の状態との間を移行するように構成された第2のスイッチを備え、前記第2のスイッチは、前記第1のスイッチが前記第2の状態にあるときに前記第1のスイッチを介して前記変換デバイスに接続され、前記検出器は、前記第2のスイッチが前記第1の状態にあるか、又は前記第2の状態にあるかを判断するように動作可能な第2の問い合わせ回路を更に備える、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項7】
請求項1に記載の複数の放射線検出器を備える装置。
【請求項8】
前記複数の放射線検出器の各々は、異なる閾値電圧を有するように構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記放射線検出器又は各放射線検出器の前記問い合わせ回路と通信し、前記問い合わせ回路によって判断されたスイッチ状態に応じて放射線曝露の更なる特性を判断するように構成されたプロセッサを更に備える、請求項~8 のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記更なる特性は、放射線への曝露の持続時間及び放射線のタイプのうちの1つ以上を備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
請求項1に記載の前記放射線検出器又は請求項7に記載の装置と、放射線感受性装置とを備えるシステムであって、前記システムは、前記放射線検出器が前記閾値レベルの放射線を受けたと前記問い合わせ回路が判断した場合、操作者に警告するように構成される、システム。
【請求項12】
請求項1に記載の前記放射線検出器又は請求項7に記載の装置と、放射線感受性装置とを備えるシステムであって、前記システムは、前記放射線検出器が前記閾値レベルの放射線を受けたと前記問い合わせ回路が判断した場合、前記放射線感受性装置が無効にされるように構成される、システム。
【請求項13】
前記放射線検出器は、前記放射線感受性装置に隣接して配置される、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記放射線検出器は、前記放射線感受性装置に隣接して配置される、請求項12に記載のシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
最後に、任意の1つの実施形態に関連して上記で説明されたどの特徴も、単独で、又は説明された他の特徴と組み合わせて使用され得、また、任意の他の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、又は任意の他の実施形態の任意の組み合わせで使用され得ることを明確に理解されたい。
以下に本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
放射線検出器であって、
(a)入射放射線を受けると電圧を生じさせるように構成された変換デバイスと、
(b)閾値電圧によってトリガされると第1の状態と第2の状態との間を移行するように構成された第1のスイッチと、
ここにおいて、前記変換デバイスは、前記閾値電圧が前記変換デバイスの両端で生じると、前記スイッチが前記第1の状態から前記第2の状態に移行するようにトリガされるように前記スイッチに接続され、
(c)前記スイッチが前記第1の状態にあるか、又は前記第2の状態にあるかを判断し、それによって、前記検出器が前記閾値電圧に関連付けられた閾値レベルの放射線を受けたかどうかを判断するように動作可能な問い合わせ回路と
を備える、放射線検出器。
[C2]
前記スイッチは、MEMSスイッチである、C1に記載の放射線検出器。
[C3]
前記スイッチは、ラッチ回路を備える、C1に記載の放射線検出器。
[C4]
前記スイッチは、リレー回路を備える、C1に記載の放射線検出器。
[C5]
前記変換デバイス及び前記スイッチは、いかなる更なる電力源もなしに動作可能であり、前記問い合わせ回路は、電力源に接続されると、前記問い合わせ回路が電力に接続されていない間に前記検出器が前記閾値レベルの放射線を受けたかどうかを判断するように動作可能である、C1~4のいずれか一項に記載の放射線検出器。
[C6]
閾値電圧によってトリガされると第1の状態と第2の状態との間を移行するように構成された第2のスイッチを備え、前記第2のスイッチは、前記第1のスイッチが前記第2の状態にあるときに前記第1のスイッチを介して前記変換デバイスに接続され、前記検出器は、前記第2のスイッチが前記第1の状態にあるか、又は前記第2の状態にあるかを判断するように動作可能な第2の問い合わせ回路を更に備える、C1~5のいずれか一項に記載の放射線検出器。
[C7]
C1~6のいずれか一項に記載の複数の放射線検出器を備える装置。
[C8]
前記複数の放射線検出器の各々は、異なる閾値電圧を有するように構成される、C7に記載の装置。
[C9]
前記放射線検出器又は各放射線検出器の前記問い合わせ回路と通信し、前記問い合わせ回路によって判断されたスイッチ状態に応じて放射線曝露の更なる特性を判断するように構成されたプロセッサを更に備える、C6~8のいずれか一項に記載の装置。
[C10]
前記更なる特性は、放射線への曝露の持続時間及び放射線のタイプのうちの1つ以上を備える、C9に記載の装置。
[C11]
C1~6のいずれか一項に記載の前記放射線検出器又はC7~10のいずれか一項に記載の装置と、放射線感受性装置とを備えるシステムであって、前記システムは、前記放射線検出器が前記閾値レベルの放射線を受けたと前記問い合わせ回路が判断した場合、操作者に警告するように構成される、システム。
[C12]
C1~6のいずれか一項に記載の前記放射線検出器又はC1~7のいずれか一項に記載の装置と、放射線感受性装置とを備えるシステムであって、前記システムは、前記放射線検出器が前記閾値レベルの放射線を受けたと前記問い合わせ回路が判断した場合、前記放射線感受性装置が無効にされるように構成される、システム。
[C13]
前記放射線検出器は、前記放射線感受性装置に隣接して配置される、C11又は12に記載のシステム。
【国際調査報告】