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特表2024-525991ヒト又はキメラTFR1を有する遺伝子組換え非ヒト動物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ヒト又はキメラTFR1を有する遺伝子組換え非ヒト動物
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/0275 20240101AFI20240705BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240705BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240705BHJP
   A01K 67/0278 20240101ALI20240705BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A01K67/0275 ZNA
C12N15/12
C07K14/705
A01K67/0278
C12N15/09 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 T
A61P9/10
A61P17/02
A61P25/08
A61P25/16
A61P25/28
A61P21/00
A61P37/08
A61P37/02
A61P11/06
A61P13/12
A61P1/16
A61P17/00
A61P19/02
A61P7/04
A61P7/06
A61P1/04
A61P3/10
A61P25/00
A61P25/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525758
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 CN2022105924
(87)【国際公開番号】W WO2023284850
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202110808740.8
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111238943.4
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521213200
【氏名又は名称】バイオサイトジェン ファーマシューティカルズ (ベイジン) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】リウ チャン
(72)【発明者】
【氏名】シャン チョンチャン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ シアオフェイ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE03
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ヒト又はキメラ(例えば、ヒト化)TFR1を発現する遺伝子組換え非ヒト動物、及びその使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノムが、ヒト又はキメラTFR1(トランスフェリン受容体タンパク質1)をコードする配列を含む少なくとも1つの染色体を含む、遺伝子組換え非ヒト動物。
【請求項2】
前記ヒト又はキメラTFR1をコードする前記配列は、前記少なくとも1つの染色体内の内因性TFR1遺伝子座位において、内因性制御エレメントに作動可能に連結されている、請求項1に記載の動物。
【請求項3】
前記ヒト又はキメラTFR1をコードする配列は、ヒトTFR1(NP_003225.2(配列番号2))と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードする配列を含む、請求項1又は2に記載の動物。
【請求項4】
前記ヒト又はキメラTFR1をコードする配列は、配列番号9と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードする配列を含む、請求項1又は2に記載の動物。
【請求項5】
前記ヒト又はキメラTFR1をコードする配列は、配列番号2のアミノ酸89~760と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードする配列を含む、請求項1又は2に記載の動物。
【請求項6】
前記動物は哺乳類、例えば、サル、げっ歯類、マウス、又はラットである、請求項1~5のいずれか一項に記載の動物。
【請求項7】
前記動物はマウスである、請求項1~6のいずれか一項に記載の動物。
【請求項8】
前記動物は内因性TFR1を発現しないか、又は、内因性TFR1の発現レベルが低下している、請求項1~7のいずれか一項に記載の動物。
【請求項9】
前記動物は、ヒト又はキメラTFR1を発現する1つ以上の細胞を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の動物。
【請求項10】
前記動物は、ヒト又はキメラTFR1を発現する1つ以上の細胞を有し、前記発現されたヒト又はキメラTFR1は、ヒトトランスフェリン(Tf)及び鉄と相互作用することができ、鉄-Tf-TFR1錯体を形成して鉄の輸入を促進する、請求項1~9のいずれか一項に記載の動物。
【請求項11】
前記動物は、ヒト又はキメラTFR1を発現する1つ以上の細胞を有し、前記発現されたヒト又はキメラTFR1は、内因性トランスフェリン(Tf)及び鉄と相互作用することができ、鉄-Tf-TFR1錯体を形成して鉄の輸入を促進する、請求項1~9のいずれか一項に記載の動物。
【請求項12】
遺伝子組換え非ヒト動物であって、前記動物のゲノムが、内因性TFR1遺伝子座位において、内因性TFR1の領域をコードする配列を、ヒトTFR1の対応する領域をコードする配列で置き換えることを含む、遺伝子組換え非ヒト動物。
【請求項13】
前記ヒトTFR1の対応する領域をコードする配列は、前記内因性TFR1座位において、内因性制御エレメントに作動可能に連結され、前記動物の1つ以上の細胞はヒト又はキメラTFR1を発現する、請求項12に記載の動物。
【請求項14】
前記動物は内因性TFR1を発現しないか、又は、内因性TFR1の発現レベルが低下している、請求項12又は13に記載の動物。
【請求項15】
前記置き換えられた座位は、TFR1の細胞外領域である、請求項12~14のいずれか一項に記載の動物。
【請求項16】
前記動物は、細胞質領域、膜貫通領域、及び細胞外領域を有するキメラTFR1を発現する1つ以上の細胞を有し、前記細胞外領域は、ヒトTFR1の細胞外領域と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%同一である配列を含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の動物。
【請求項17】
前記キメラTFR1の細胞外領域は、ヒトTFR1の細胞外領域内に存在する連続配列と同一である、少なくとも100、200、300、400、500、600、620、650、660、665、666、667、668、669、670、671、又は672個の連続アミノ酸を有する配列を有する、請求項16に記載の動物。
【請求項18】
前記内因性TFR1の領域をコードする配列は、内因性TFR1遺伝子のエクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/若しくはエクソン19、又はこれらの一部を含む、請求項12~17のいずれか一項に記載の動物。
【請求項19】
前記動物はマウスである、請求項18に記載の動物。
【請求項20】
前記動物は、前記内因性TFR1遺伝子座位における置き換えに関してヘテロ接合である、請求項12~19のいずれか一項に記載の動物。
【請求項21】
前記動物は、前記内因性TFR1遺伝子座位における置き換えに関してホモ接合である、請求項12~19のいずれか一項に記載の動物。
【請求項22】
遺伝子組換え非ヒト動物を作製するための方法であって、
前記動物の少なくとも1つの細胞内の、内因性TFR1遺伝子座位において、内因性TFR1の領域をコードする配列を、ヒトTFR1の対応する領域をコードする配列で置き換えることを含む、方法。
【請求項23】
前記ヒトTFR1の対応する領域をコードする配列は、ヒトTFR1遺伝子のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/若しくはエクソン19、又はこれらの一部を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒトTFR1の対応する領域をコードする配列は、ヒトTFR1遺伝子のエクソン4の一部;エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18;及びエクソン19の一部を含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記ヒトTFR1の対応する領域をコードする配列は、配列番号2のアミノ酸89~760をコードする、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記領域は、TFR1の細胞外領域の中に位置する、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記内因性TFR1の領域をコードする配列は、内因性TFR1遺伝子のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/若しくはエクソン19、又はこれらの一部を含む、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記動物はマウスであり、前記内因性TFR1の領域をコードする配列は、内因性TFR1遺伝子のエクソン4の一部;エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18;及びエクソン19の一部を含む、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
キメラTFR1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの細胞を含む非ヒト動物であって、前記キメラTFR1ポリペプチドは、ヒトTFR1の対応する連続アミノ酸配列と同一である、少なくとも50個の連続アミノ酸残基を含み、前記動物は前記キメラTFR1ポリペプチドを発現する、非ヒト動物。
【請求項30】
前記キメラTFR1ポリペプチドは、前記ヒトTFR1細胞外領域の対応する連続アミノ酸配列と同一である、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも550、少なくとも600、少なくとも650、少なくとも660、少なくとも670、少なくとも671、又は少なくとも672個の連続アミノ酸残基を有する、請求項29に記載の動物。
【請求項31】
前記キメラTFR1ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸89~760と少なくとも90%、95%、又は99%同一である配列を含む、請求項29又は30に記載の動物。
【請求項32】
前記ヌクレオチド配列は、前記動物の内因性TFR1制御エレメントに作動可能に連結される、請求項29~31のいずれか一項に記載の動物。
【請求項33】
前記キメラTFR1ポリペプチドは、内因性TFR1細胞質領域、及び/又は内因性TFR1膜貫通領域を含む、請求項29~32のいずれか一項に記載の動物。
【請求項34】
前記ヌクレオチド配列は、前記動物の内因性TFR1遺伝子座位に組み込まれている、請求項29~33のいずれか一項に記載の動物。
【請求項35】
前記キメラTFR1ポリペプチドは、少なくとも1つのマウスTFR1活性、及び/又は少なくとも1つのヒトTFR1活性を有する、請求項29~34のいずれか一項に記載の動物。
【請求項36】
キメラTFR1を発現する遺伝子組換え動物細胞の作製方法であって、
内因性TFR1遺伝子座位において、内因性TFR1の領域をコードするヌクレオチド配列を、ヒトTFR1の対応する領域をコードするヌクレオチド配列で置き換えることにより、前記キメラTFR1をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子組換え動物細胞を生成することを含み、前記動物細胞は、前記キメラTFR1を発現する、方法。
【請求項37】
前記動物はマウスである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記キメラTFR1は、
マウスTFR1の細胞質領域及び/又は膜貫通領域、並びに
ヒトTFR1の細胞外領域、
を含む、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記キメラTFR1をコードする前記ヌクレオチド配列は、内因性TFR1調節領域、例えばプロモーターに作動可能に連結される、請求項36~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記動物は、追加のヒト又はキメラタンパク質をコードする配列をさらに含む、請求項1~21、及び29~35のいずれか一項に記載の動物。
【請求項41】
前記追加のヒト又はキメラタンパク質は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、細胞毒性T-リンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、TNF受容体スーパーファミリーメンバー4(OX40)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、又はCD73である、請求項40に記載の動物。
【請求項42】
前記動物又はマウスは、追加のヒト又はキメラタンパク質をコードする配列をさらに含む、請求項22~28、及び36~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記追加のヒト又はキメラタンパク質は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、OX40、LAG-3、TIM3、又はCD73である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
癌の治療に対する抗TFR1抗体の有効性を測定する方法であって、
a)前記抗TFR1抗体を、請求項1~21、29~35、40、及び41のいずれか一項に記載の動物に投与することであって、前記動物は癌を有する、前記投与することと、
b)前記抗TFR1抗体の、前記癌に対する阻害効果を測定することと、
を含む、方法。
【請求項45】
前記癌は、TFR1を発現する1つ以上の細胞を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記癌は、前記動物に注射される1つ以上の癌細胞を含む、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記抗TFR1抗体の、前記癌に対する阻害効果を測定することには、前記動物で腫瘍体積を測定することを伴う、請求項44~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記癌は、脳腫瘍、乳癌、大腸癌、肝癌、卵巣癌、肺癌、骨肉腫、白血病、及び/又はリンパ腫である、請求項44~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
抗TFR1抗体及び追加の治療剤の、癌の治療に対する有効性を測定する方法であって、
a)前記抗TFR1抗体及び前記追加の治療剤を、請求項1~21、29~35、40、及び41のいずれか一項に記載の動物に投与することであって、前記動物は癌を有する、前記投与することと、
b)前記癌における阻害効果を測定することと、
を含む、方法。
【請求項50】
前記動物は、ヒト又はキメラプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)をコードする配列をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記動物は、ヒト又はキメラプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)をコードする配列をさらに含む、請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
前記追加の治療剤は、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体である、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記癌は、TFR1及び/又はPD-L1を発現する1つ以上の癌細胞を含む、請求項49~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記癌は、1つ以上の癌細胞を前記動物に注射することにより引き起こされる、請求項49~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記治療の阻害効果を測定することには、前記動物で腫瘍体積を測定することを伴う、請求項49~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記動物は、脳腫瘍、乳癌、大腸癌、肝癌、卵巣癌、肺癌、骨肉腫、白血病、及び/又はリンパ腫を有する、請求項49~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
治療剤が血液脳関門を通過する送達効率を測定する方法であって、
a)前記治療剤を、請求項1~21、29~35、40、及び41のいずれか一項に記載の動物に投与することと、
b)前記治療剤の濃度を、前記動物の脳内及び/又は血清中で経時的に測定することと、
を含む、方法。
【請求項58】
前記治療剤は、抗TFR1抗体又はその抗原結合断片を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記治療剤は、TFR1(例えば、ヒトTFR1)及び第2の抗原を標的にする多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記第2の抗原は、β-セクレターゼ1(BACE1)又はアミロイドβである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記治療剤の濃度は、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも15時間、少なくとも20時間、又は少なくとも25時間にわたって測定される、請求項57~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
骨疾患を治療するための抗TFR1抗体の有効性を測定する方法であって、
a)前記抗TFR1抗体を、請求項1~21、29~35、40、及び41のいずれか一項に記載の動物に投与することであって、前記動物は前記骨疾患を有する、前記投与することと、
b)前記骨疾患の治療に関する前記抗TFR1抗体の効果を測定することと、
を含む、方法。
【請求項63】
前記骨疾患は、骨折、骨の変質、関節炎、骨の変形、骨粗鬆症、及び/又は大腿骨頭の壊死である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
神経変性病を治療するための抗TFR1抗体の有効性を測定する方法であって、
a)前記抗TFR1抗体を、請求項1~21、29~35、40、及び41のいずれか一項に記載の動物に投与することであって、前記動物は前記神経変性病を有する、前記投与することと、
b)前記神経変性病の治療に関する前記抗TFR1抗体の効果を測定することと、
を含む、方法。
【請求項65】
前記神経変性病は、脳虚血、脳損傷若しくは癲癇、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、及び/又は脊髄小脳失調症である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
免疫不全を治療するための抗TFR1抗体の有効性を測定する方法であって、
a)前記抗TFR1抗体を、請求項1~21、29~35、40、及び41のいずれか一項に記載の動物に投与することであって、前記動物は前記免疫不全を有する、前記投与することと、
b)前記免疫不全の治療に関する前記抗TFR1抗体の効果を測定することと、
を含む、方法。
【請求項67】
前記免疫不全は、アレルギー、喘息、心筋炎、腎炎、肝炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、強皮症、甲状腺機能亢進症、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、潰瘍性大腸炎、自己由来の免疫肝疾患、糖尿病、疼痛、及び/又は神経障害である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
アミノ酸配列を含むタンパク質であって、前記アミノ酸配列は、
(a)配列番号1、2、又は9に示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号1、2、又は9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
(c)配列番号1、2、又は9と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列;
(d)配列番号1、2、又は9に示されるアミノ酸配列と、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個以下のアミノ酸が異なるアミノ酸配列;並びに
(e)配列番号1、2、又は9に示されるアミノ酸配列に対して、1、2、3、4、5個、又はそれ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を含むアミノ酸配列
のうちの1つである、タンパク質。
【請求項69】
ヌクレオチド配列を含む核酸であって、前記ヌクレオチド配列は、
(a)請求項68に記載のタンパク質をコードする配列;
(b)配列番号3、4、5、6、7、又は8;
(c)配列番号3、4、5、6、7、又は8と少なくとも90%同一である配列;及び
(d)配列番号3、4、5、6、7、又は8と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列
のうちの1つである、核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2021年6月16日に出願された中国特許出願第202110808740.8号明細書、及び、2021年10月25日に出願された中国特許出願第202111238943.4号明細書の利益を主張する。上述の出願の内容全体が参照により、本明細書に組み込まれている。
【0002】
技術分野
本開示は、ヒト又はキメラ(例えば、ヒト化)TFR1を発現する遺伝子組換え動物、及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
分化クラスター71(CD71)としても知られているトランスフェリン受容体1(TFR1)は広範にわたり発現し、高い親和性でトランスフェリン(Tf)に結合することができる。血液脳関門の内皮細胞で発現するTFR1を前臨床研究で用いることで、抗体を含む巨大分子を脳に送達させることが可能となる。したがって、TFR1を標的にする抗体は、中枢神経系の治療法にとって重要である可能性がある。例えば、TFR1を使用して、巨大分子を、血液脳関門を通して輸送し、中枢神経系に治療法を送達することができる。
【0004】
従来の、様々な治療法に対する薬剤研究及び開発には、動物モデルを伴う。しかし、ヒトと動物とでの差が原因で、インビボの薬理学試験に従来の実験動物を用いることで得られる試験結果は、実際の病状、及び、標的部位での相互作用を反映しない可能性があり、結果的に、多くの臨床試験における結果が動物実験結果とは著しく異なることとなる。したがって、ヒト抗体のスクリーニング及び評価に好適なヒト化動物モデルを開発することによって、新しい薬剤開発の効率が著しく改善され、薬剤研究及び開発のコストが著しく低下する。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、ヒトTFR1又はキメラTFR1を有する動物モデルに関する。動物モデルは、体内でヒトTFR1又はキメラTFR1(例えば、ヒト化TFR1)タンパク質を発現することができる。当該動物モデルを、TFR1遺伝子の機能研究で用いることができ、抗ヒトTFR1抗体のスクリーニング及び評価で用いることができる。さらに、本明細書に記載の方法により調製される動物モデルを、薬剤スクリーニング、薬力学研究、免疫関連疾患の治療、及び、ヒトTFR1標的部位の癌治療で用いることができる;当該動物モデルを用いて、新しい薬剤の開発及び設計を容易にし、また、時間及びコストを節約することもまた可能である。まとめると、本開示は、TFR1タンパク質の機能研究のための強力なツール、及び、抗癌剤をスクリーニングするためのプラットフォームを提供する。
【0006】
一態様では、本開示は、ゲノムが、ヒト又はキメラTFR1(トランスフェリン受容体タンパク質1)をコードする配列を含む少なくとも1つの染色体を含む、遺伝子組換え非ヒト動物に関する。いくつかの実施形態では、ヒト又はキメラTFR1をコードする配列は、少なくとも1つの染色体内の内因性TFR1遺伝子座位において、内因性制御エレメントに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、ヒト又はキメラTFR1をコードする配列は、ヒトTFR1(NP_003225.2(配列番号2))と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒト又はキメラTFR1をコードする配列は、配列番号9と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒト又はキメラTFR1をコードする配列は、配列番号2のアミノ酸89~760と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、動物は哺乳類、例えば、サル、げっ歯類、マウス、又はラットである。いくつかの実施形態では、動物はマウスである。いくつかの実施形態では、動物は内因性TFR1を発現しないか、又は、内因性TFR1の発現レベルが低下している。いくつかの実施形態では、動物は、ヒト又はキメラTFR1を発現する1つ以上の細胞を有する。いくつかの実施形態では、動物は、ヒト又はキメラTFR1を発現する1つ以上の細胞を有し、発現されたヒト又はキメラTFR1は、ヒトトランスフェリン(Tf)及び鉄と相互作用することができ、鉄-Tf-TFR1錯体を形成して鉄の輸入を促進する。いくつかの実施形態では、動物は、ヒト又はキメラTFR1を発現する1つ以上の細胞を有し、発現されたヒト又はキメラTFR1は、内因性トランスフェリン(Tf)及び鉄と相互作用することができ、鉄-Tf-TFR1錯体を形成して鉄の輸入を促進する。
【0007】
一態様では、本開示は、遺伝子組換え非ヒト動物に関し、いくつかの実施形態では、動物のゲノムは、内因性TFR1遺伝子座位において、内因性TFR1の領域をコードする配列を、ヒトTFR1の対応する領域をコードする配列で置き換えることを含む。いくつかの実施形態では、ヒトTFR1の対応する領域をコードする配列は、内因性TFR1座位において、内因性制御エレメントに作動可能に連結され、動物の1つ以上の細胞はヒト又はキメラTFR1を発現する。いくつかの実施形態では、動物は内因性TFR1を発現しないか、又は、内因性TFR1の発現レベルが低下している。いくつかの実施形態では、置き換えられた座位は、TFR1の細胞外領域である。いくつかの実施形態では、動物は、細胞質領域、膜貫通領域、及び細胞外領域を有するキメラTFR1を発現する1つ以上の細胞を有し、いくつかの実施形態では、細胞外領域は、ヒトTFR1の細胞外領域と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、キメラTFR1の細胞外領域は、ヒトTFR1の細胞外領域内に存在する連続配列と同一である、少なくとも100、200、300、400、500、600、620、650、660、665、666、667、668、669、670、671、又は672個の連続アミノ酸を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、内因性TFR1の領域をコードする配列は、内因性TFR1遺伝子のエクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/若しくはエクソン19、又はこれらの一部を含む。いくつかの実施形態では、動物はマウスである。いくつかの実施形態では、動物は、内因性TFR1遺伝子座位における置き換えに関してヘテロ接合である。いくつかの実施形態では、動物は、内因性TFR1遺伝子座位における置き換えに関してホモ接合である。
【0008】
一態様では、本開示は、遺伝子組換え非ヒト動物を作製するための方法であって、上記動物の少なくとも1つの細胞内の、内因性TFR1遺伝子座位において、内因性TFR1の領域をコードする配列を、ヒトTFR1の対応する領域をコードする配列で置き換えることを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、ヒトTFR1の対応する領域をコードする配列は、ヒトTFR1遺伝子のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/若しくはエクソン19、又はこれらの一部を含む。いくつかの実施形態では、ヒトTFR1の対応する領域をコードする配列は、ヒトTFR1遺伝子のエクソン4の一部;エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18;及びエクソン19の一部を含む。いくつかの実施形態では、ヒトTFR1の対応する領域をコードする配列は、配列番号2のアミノ酸89~760をコードする。いくつかの実施形態では、領域は、TFR1の細胞外領域の中に位置する。いくつかの実施形態では、内因性TFR1の領域をコードする配列は、内因性TFR1遺伝子のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/若しくはエクソン19、又はこれらの一部を含む。いくつかの実施形態では、動物はマウスであり、内因性TFR1の領域をコードする配列は、内因性TFR1遺伝子のエクソン4の一部;エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18;及びエクソン19の一部を含む。
【0009】
一態様では、本開示は、キメラTFR1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの細胞を含む非ヒト動物に関し、いくつかの実施形態では、キメラTFR1ポリペプチドは、ヒトTFR1の対応する連続アミノ酸配列と同一である、少なくとも50個の連続アミノ酸残基を含み、いくつかの実施形態では、動物はキメラTFR1ポリペプチドを発現する。いくつかの実施形態では、キメラTFR1ポリペプチドは、ヒトTFR1細胞外領域の対応する連続アミノ酸配列と同一である、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも550、少なくとも600、少なくとも650、少なくとも660、少なくとも670、少なくとも671、又は少なくとも672個の連続アミノ酸残基を有する。いくつかの実施形態では、キメラTFR1ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸89~760と少なくとも90%、95%、又は99%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、動物の内因性TFR1制御エレメントに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、キメラTFR1ポリペプチドは、内因性TFR1細胞質領域、及び/又は内因性TFR1膜貫通領域を含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、動物の内因性TFR1遺伝子座位に組み込まれている。いくつかの実施形態では、キメラTFR1ポリペプチドは、少なくとも1つのマウスTFR1活性、及び/又は少なくとも1つのヒトTFR1活性を有する。
【0010】
一態様では、本開示は、キメラTFR1を発現する遺伝子組換え動物細胞の作製方法であって、上記方法が、内因性TFR1遺伝子座位において、内因性TFR1の領域をコードするヌクレオチド配列を、ヒトTFR1の対応する領域をコードするヌクレオチド配列で置き換えることにより、キメラTFR1をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子組換え動物細胞を生成することを含む、方法に関し、いくつかの実施形態では、動物細胞は、キメラTFR1を発現する。いくつかの実施形態では、動物はマウスである。いくつかの実施形態では、キメラTFR1は、マウスTFR1の細胞質領域及び/又は膜貫通領域、並びに、ヒトTFR1の細胞外領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラTFR1をコードするヌクレオチド配列は、内因性TFR1調節領域、例えばプロモーターに作動可能に連結される。
【0011】
いくつかの実施形態では、動物は、追加のヒト又はキメラタンパク質をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、追加のヒト又はキメラタンパク質は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、細胞毒性T-リンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、TNF受容体スーパーファミリーメンバー4(OX40)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、又はCD73である。
【0012】
一態様では、本開示は、癌(例えば、腫瘍)の治療に対する抗TFR1抗体の有効性を測定する方法であって、a)上記抗TFR1抗体を本明細書に記載する動物に投与することであって、いくつかの実施形態では、上記動物は癌(例えば、腫瘍)を有する、上記投与することと;b)上記抗TFR1抗体の、上記癌(例えば、腫瘍)に対する阻害効果を測定することとを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、癌(例えば、腫瘍)は、TFR1を発現する1つ以上の細胞を含む。いくつかの実施形態では、癌(例えば、腫瘍)は、動物に注射される1つ以上の癌細胞を含む。いくつかの実施形態では、抗TFR1抗体の、癌に対する阻害効果を測定することには、動物で腫瘍体積を測定することを伴う。いくつかの実施形態では、癌は、脳腫瘍、乳癌、大腸癌、肝癌、卵巣癌、肺癌、骨肉腫、白血病、及び/又はリンパ腫である。
【0013】
一態様では、本開示は、抗TFR1抗体及び追加の治療剤の、癌の治療に対する有効性を測定する方法であって、a)上記抗TFR1抗体及び上記追加の治療剤を本明細書に記載する動物に投与することであって、いくつかの実施形態では、上記動物は癌(例えば、腫瘍)を有する、上記投与することと;b)上記癌(例えば、腫瘍)における阻害効果を測定することとを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、動物は、ヒト又はキメラプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、動物は、ヒト又はキメラプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態では、癌は、TFR1及び/又はPD-L1を発現する1つ以上の癌細胞を含む。いくつかの実施形態では、癌は、1つ以上の癌細胞を動物に注射することにより引き起こされる。いくつかの実施形態では、治療の阻害効果を測定することには、動物で腫瘍体積を測定することを伴う。いくつかの実施形態では、動物は、脳腫瘍、乳癌、大腸癌、肝癌、卵巣癌、肺癌、骨肉腫、白血病、及び/又はリンパ腫を有する。
【0014】
一態様では、本開示は、治療剤が血液脳関門を通過する送達効率を測定する方法であって、a)上記治療剤を、本明細書に記載する動物に投与することと;b)上記治療剤の濃度を、動物の脳内及び/又は血清中で経時的に測定することとを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、治療剤は、抗TFR1抗体又はその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、TFR1(例えば、ヒトTFR1)及び第2の抗原を標的にする多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、β-セクレターゼ1(BACE1)又はアミロイドβである。いくつかの実施形態では、治療剤の濃度は、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも15時間、少なくとも20時間、又は少なくとも25時間にわたって測定される。
【0015】
一態様では、本開示は、骨疾患を治療するための抗TFR1抗体の有効性を測定する方法であって、a)上記抗TFR1抗体を本明細書に記載する動物に投与することであって、いくつかの実施形態では、上記動物は上記骨疾患を有する、上記投与することと;b)上記骨疾患の治療に関する上記抗TFR1抗体の効果を測定することとを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、骨疾患は、骨折、骨の変質、関節炎、骨の変形、骨粗鬆症、及び/又は大腿骨頭の壊死である。
【0016】
一態様では、本開示は、神経変性病を治療するための抗TFR1抗体の有効性を測定する方法であって、a)上記抗TFR1抗体を本明細書に記載する動物に投与することであって、いくつかの実施形態では、上記動物は上記神経変性病を有する、上記投与することと;b)上記神経変性病の治療に関する上記抗TFR1抗体の効果を測定することとを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、神経変性病は、脳虚血、脳損傷若しくは癲癇、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、及び/又は脊髄小脳失調症である。
【0017】
一態様では、本開示は、免疫不全を治療するための抗TFR1抗体の有効性を測定する方法であって、a)上記抗TFR1抗体を本明細書に記載する動物に投与することであって、いくつかの実施形態では、上記動物は上記免疫不全を有する、上記投与することと;b)上記免疫不全の治療に関する上記抗TFR1抗体の効果を測定することとを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、免疫不全は、アレルギー、喘息、心筋炎、腎炎、肝炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、強皮症、甲状腺機能亢進症、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、潰瘍性大腸炎、自己由来の免疫肝疾患、糖尿病、疼痛、及び/又は神経障害である。
【0018】
一態様では、本開示は、アミノ酸配列を含むタンパク質に関し、いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、以下のうちの1つである:(a)配列番号1、2、又は9に示されるアミノ酸配列;(b)配列番号1、2、又は9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;(c)配列番号1、2、又は9と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列;(d)配列番号1、2、又は9に示されるアミノ酸配列と、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個以下のアミノ酸が異なるアミノ酸配列;並びに、(e)配列番号1、2、又は9に示されるアミノ酸配列に対して、1、2、3、4、5個、又はそれ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を含むアミノ酸配列。
【0019】
一態様では、本開示は、ヌクレオチド配列を含む核酸に関し、いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、以下のうちの1つである:(a)本明細書に記載するタンパク質をコードする配列;(b)配列番号3、4、5、6、7、又は8;(c)配列番号3、4、5、6、7、又は8と少なくとも90%同一である配列;並びに、(d)配列番号3、4、5、6、7、又は8と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列。
【0020】
一態様では、本開示は、本明細書に記載するタンパク質及び/又は核酸を含む細胞に関する。
【0021】
一態様では、本開示は、本明細書に記載するタンパク質及び/又は核酸を含む動物に関する。
【0022】
別の態様では、本開示は、ゲノムが、動物の内因性TFR1遺伝子内に破壊を含み、内因性TFR1遺伝子の破壊が、内因性TFR1遺伝子のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/若しくはエクソン19、又はその一部の欠失を含む、遺伝子組換え非ヒト動物もまた提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、内因性TFR1遺伝子の破壊は、内因性TFR1遺伝子のエクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/又はエクソン19からなる群から選択される、1つ以上のエクソン、又はエクソンの一部の欠失を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、内因性TFR1遺伝子の破壊は、内因性TFR1遺伝子のイントロン4、イントロン5、イントロン6、イントロン7、イントロン8、イントロン9、イントロン10、イントロン11、イントロン12、イントロン13、イントロン14、イントロン15、イントロン16、イントロン17、及び/又はイントロン18からなる群から選択される、1つ以上のイントロン、又はイントロンの一部の欠失をさらに含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、欠失は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400個、又はそれ以上のヌクレオチドを欠失することを含むことができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、内因性TFR1遺伝子の破壊は、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/又はエクソン19の、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、又は300個のヌクレオチドの欠失(例えば、エクソン4、エクソン5~18から、少なくとも180個のヌクレオチドの、及び、エクソン19から、少なくとも200個のヌクレオチドの、欠失)を含む。
【0027】
本開示はさらに、ヒト化マウスのTFR1ゲノムDNA配列、DNA配列と一致する、又は相補的な、その転写により得られるmRNAの逆転写により得られるDNA配列;そのアミノ酸配列を発現する構築物;その構築物を含む細胞;その細胞を含む組織に関する。
【0028】
本開示はさらに、ヒト細胞の免疫付与プロセスと関連する生成物の開発、ヒト抗体の製造、又は、薬理学、免疫学、微生物学、及び医学における研究用モデルシステムにおける、非ヒト哺乳動物若しくはその子孫、又は腫瘍を有する非ヒト哺乳動物、本明細書に記載する方法により生成される動物モデルの使用に関する。
【0029】
本開示は、ヒト細胞を伴う免疫付与プロセスの動物実験疾患モデルの製造及び利用、病原体の研究、又は、新しい診断方法及び/若しくは治療方法の開発における、非ヒト哺乳動物若しくはその子孫、又は腫瘍を有する非ヒト哺乳動物、本明細書に記載する方法により生成される動物モデルの使用にもまた関する。
【0030】
本開示はさらに、TFR1遺伝子機能、ヒトTFR1抗体、ヒトTFR1標的部位に対する薬剤又は有効性、並びに免疫関連疾患用薬剤及び抗腫瘍薬剤のスクリーニング、認証、評価、又は研究における、非ヒト哺乳動物若しくはその子孫、又は腫瘍を有する非ヒト哺乳動物、本明細書に記載する方法により生成される動物モデルの使用に関する。
【0031】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明で使用するための方法及び材料が、本明細書に記載される;他の好適な、当該技術分野において既知の方法及び材料もまた使用することができる。材料、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定的であることは意図されない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、及び他の参考文献は、参照によりその全体が援用される。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。
【0032】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】マウス及びヒトTFR1遺伝子座位を示す概略図である。
図2】ヒト化TFR1遺伝子座位を示す概略図である。
図3】TFR1遺伝子標的法を示す概略図である。
図4】Aプローブ及びNeoプローブを用いる組換え後の、細胞のサザンブロットの結果を示す。WTは野生型対照である。
図5】TFR1遺伝子ヒト化マウスにおける、Flp-Frt組換えプロセスを示す概略図である。
図6A-6D】それぞれ、プライマー対Frt-F/Frt-R、WT-F/WT-R、Flp-F2/Flp-R2、及びWT-F/Mut-RによるF1世代マウスの、マウスの尾のPCR同定結果を示す。Mはマーカーである。PCは陽性対照である。WTは野生型対照である。HOは水対照である。
図7A-7C】それぞれ、野生型C57BL/6マウス(+/+)、及び、TFR1遺伝子ヒト化ホモ接合マウス(H/H)の脾細胞における、ヒト化TFR1 mRNA、マウスTFR1 mRNA、及びGAPDH mRNAのRT-PCR検出結果を示す。Mはマーカーである。HOは水対照である。GAPDHは内部参照である。
図8A-8C】図8Aは、ELISAにより測定される、マウス脳組織内での抗ヒトTFR1抗体AbのPK検出結果を示す。ヒトIgG1(hIgG)は対照である。図8Bは、ELISAにより測定される、マウス血清中での抗ヒトTFR1抗体AbのPK検出結果を示す。ヒトIgG1(hIgG)は対照である。図8Cは、マウス脳組織と血清とでの、経時的な、抗ヒトTFR1抗体Abの濃度比を示す。ヒトIgG1(hIgG)は対照である。
図9-1】ヒトTFR1アミノ酸配列(NP_003225.2;配列番号2)と、マウスTFR1アミノ酸配列(NP_035768.1;配列番号1)とのアラインメントを示す。
図9-2】ヒトTFR1アミノ酸配列(NP_003225.2;配列番号2)と、マウスTFR1アミノ酸配列(NP_035768.1;配列番号1)とのアラインメントを示す。
図10-1】ヒトTFR1アミノ酸配列(NP_003225.2;配列番号2)と、ラットTFR1アミノ酸配列(NP_073203.1;配列番号31)とのアラインメントを示す。
図10-2】ヒトTFR1アミノ酸配列(NP_003225.2;配列番号2)と、ラットTFR1アミノ酸配列(NP_073203.1;配列番号31)とのアラインメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、ヒト又はキメラ(例えば、ヒト化)TFR1を有するトランスジェニック非ヒト動物、及び、その使用方法に関する。
【0035】
鉄は、酸素輸送、エネルギー生成/ミトコンドリア機能、加えて、DNA合成及び修復を含む、いくつかの生物学的プロセスにおける必須の元素である。癌細胞の文脈の中では、DNA合成を促進することで増殖が増加する一方、DNAを修復する能力が増加することで、癌細胞の中で一般的な、変異負荷の増加によるDNAの損傷を修復するのに役立つ。鉄代謝の制御における中心的なタンパク質は、トランスフェリン(Tf)及びその受容体である。鉄の主たる細胞インポーターとして、トランスフェリン受容体1(TFR1)の機能は、鉄が関与するプロセスに不可欠であり、TFR1による、Tfが結合した鉄の取り込みは一般的に、細胞鉄輸入の主たる源である。
【0036】
鉄のホメオスタシスが破壊されることで、場合により潜在的に細胞に有害な結果がもたらされ得るため、TFR1の発現は厳しく制御されている。しかし、TFR1は、多くの場合、通常の細胞よりも数倍高いレベルで、多くの異なる種類の癌細胞において過剰発現する。実際、TFR1は、普遍的な癌マーカーとして同定されている。TFR1の発現の増加は、多数の癌、例えば、食道扁平上皮癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、子宮頸癌、膀胱癌、骨肉腫、膵癌、胆管癌、腎細胞癌、肝細胞癌、副腎皮質癌、並びに、神経系の癌、加えて、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、及び非ホジキンリンパ腫(NHL)などの造血性悪性腫瘍などの固形癌における、ステージの進行及び/又は不十分な予後と相関している。したがって、TFR1は、癌に対する潜在的なバイオマーカー及び治療標的とみなされる。
【0037】
さらに、血液脳関門の内皮細胞で発現するTFR1を用いて、抗体を含む巨大分子を脳に送達させることができる。TFR1標的抗体のいくつかは、鉄の取り込みに干渉することなく血液脳関門を通過することが示されている。抗体-TfRの相互作用の親和性は、血液脳関門の内皮細胞における、トランスサイトーシス性輸送の成功の測定において重要なようである。
【0038】
実験動物モデルは、これらの抗体(例えば、抗TFR1抗体)の効果を研究するために不可欠な研究ツールである。一般的な実験動物としては、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、サル、ブタ、サカナなどが挙げられる。しかし、ヒトと動物の、遺伝子及びタンパク質配列には多くの違いがあり、多くのヒトタンパク質は、動物の相同タンパク質に結合して生物学的活性を生み出すことができず、多くの臨床試験の結果が、動物実験から得られる結果と一致しないこととなっている。多数の臨床研究が、より良い動物モデルを喫緊に必要としている。遺伝子組換え技術が連続的に開発され、成熟する中で、ヒト細胞又は遺伝子を用いて、ある動物の、類似の内因性細胞又は遺伝子を置き換える、又は置換することで、ヒトに近い生物学的系又は疾患モデルを確立し、ヒト化実験動物モデル(ヒト化動物モデル)を確立することによって、新しい臨床アプローチ又は手段に対して重要なツールが提供されてきた。本文脈において、遺伝子組換え動物モデル、即ち、遺伝操作技術を用いて、ヒトの通常又は変異遺伝子を用いて、動物の相同遺伝子を置き換えることによって、よりヒト遺伝子の系に近い、遺伝子組換え動物モデルを確立することができる。ヒト化動物モデルは、様々な重要用途を有する。例えば、ヒト又はヒト化遺伝子が存在することで、動物は、ヒト機能を有するタンパク質を発見することができ、又は上記タンパク質の一部を発現することができ、ヒトと動物とでの臨床試験の差を大きく低減し、動物レベルでの薬剤スクリーニングの可能性をもたらす。
【0039】
TFR1
分化クラスター71(CD71)としても知られているトランスフェリン受容体1(TFR1)は広範にわたり発現し、高い親和性でトランスフェリン(Tf)に結合することができる。ヒトTFR1は、細胞表面でジスルフィド結合により結合される、二量体(180kDa)として発見される760個のアミノ酸からなる、90kDaのII型膜貫通糖タンパク質である。TFR1モノマーは、Tf結合部位、膜貫通ドメイン(28個のアミノ酸)、及び、細胞内N末端ドメイン(61個のアミノ酸)を含有する、671個のアミノ酸の、大型の細胞外C末端ドメインで構成される。C末端細胞外ドメインは、アスパラギン残基251、317、及び727における3つのN結合グリコシル化部位、並びに、トレオニン104における1つのO結合グリコシル化部位を含有し、これらは全て、受容体の十分な機能に必要なものである。
【0040】
トランスフェリン(Tf)は、短いリンカー配列により分離されているN-及びC-lobeとして知られている、40kDaのサブユニット2つで構成される、80kDaの糖タンパク質である。各サブユニットは、1個の遊離第二鉄イオン(Fe3+)に結合することができるが故、Tfは、結合した鉄の原子を最大2つ有し得る。鉄遊離形態にあるTf、即ちアポTfは、血液中にて高効率でFe3+に結合し、Fe3+を、TFR1との相互作用により、内在化のために細胞表面まで輸送する。鉄輸入を制御する膜タンパク質として、TFR1は、Fe3+に結合したトランスフェリン(Tf)にナノモル親和性を示す、TFRファミリーのメンバーである。Tf-TFR1の錯体は、クラスリンが媒介するエンドサイトーシスにより内在化し、pHが5.5まで低下したときにFe3+はTfから解離する。このpHでは、アポTf及びTFR1は依然として会合しており、生理的pHで細胞表面までリサイクルされ、アポTfが放出される。
【0041】
トランスフェリン受容体による鉄の取り込みは、癌細胞が鉄を吸収するための重要な方法であるため、腫瘍の開始及び進行に関与したTFR1、及びその発現が、多くの癌において著しく調節不全に陥ったことが、蓄積した証拠により証明されている。TFR1と癌の関係が明らかになっており、TFR1が、癌に介入するための貴重な薬学的標的となっている。
【0042】
血液脳関門の内皮細胞で発現するTFR1を前臨床研究でもまた用いることで、抗体を含む巨大分子を脳に送達させることが可能となる。TFR1標的抗体のいくつかは、鉄の取り込みに干渉することなく血液脳関門を通過することが示されている。
【0043】
TFR1、Tfの詳細、及びこれらの機能の詳細の説明は、例えば、Candelaria,P.V.,et al.“Antibodies targeting the transferrin receptor 1(TfR1) as direct anti-cancer agents.”Frontiers in Immunology 12(2021):607692;及びShen,Y.,et al.Transferrin receptor 1 in cancer:a new sight for cancer therapy.”American Journal of Cancer Research 8.6(2018):916に見出すことができ、これらそれぞれは、その全体が参照により組み込まれている。
【0044】
ヒトゲノムでは、TFR1遺伝子(遺伝子ID:7037)座位は、19個のエクソン、即ち、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及びエクソン19を有する(図1)。TFR1タンパク質は、N末端からC末端にかけて、細胞質領域、膜貫通領域、及び細胞外領域もまた有する。ヒトTFR1 mRNAに対するヌクレオチド配列はNM_003234.4であり、ヒトTFR1に対するアミノ酸配列はNP_003225.2(配列番号2)である。ヒトTFR1ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列内での、各エクソン及び各領域の位置を以下に列挙する:
【0045】
【表1】
【0046】
ヒトTFR1遺伝子(遺伝子ID:7037)は、ヒトゲノムの染色体16に位置し、これは、NC_000003.12の196018694~1960821231に位置する。転写物NM_003234.4に基づくと、5’UTRは、196082043~196082090、及び196077100~196077122であり;エクソン1は196082090~196082043であり;第1のイントロンは196082042~196077123であり;エクソン2は196077122~196077064であり;第2のイントロンは196077063~196075361であり;エクソン3は196075360~196075159であり;第3のイントロンは196075158~196074126であり;エクソン4は196074125~196073930であり;第4のイントロンは196073929~196072153であり;エクソン5は196072152~196072003であり;第5のイントロンは196072002~196071499であり;エクソン6は196071498~196071396であり;第6のイントロンは196071395~196069569であり;エクソン7は196069568~196069455であり;第7のイントロンは196069454~196068131であり;エクソン8は196068130~196068032であり;第8のイントロンは196068031~196067658であり;エクソン9は196067657~196067518であり;第9のイントロンは196067517~196065601であり;エクソン10は196065600~196065443であり;第10のイントロンは196065442~196064429であり;エクソン11は196064428~196064309であり;第11のイントロンは196064308~196062940であり;エクソン12は196062939~196062854であり;第12のイントロンは196062853~196062646であり;エクソン13は196062645~196062582であり;第13のイントロンは196062581~196060248であり;エクソン14は196060247~196060180であり;第14のイントロンは196060179~196058633であり;エクソン15は196058632~196058574であり;第15のイントロンは196058573~196058366であり;エクソン16は196058365~196058284であり;第16のイントロンは196058283~196055302であり;エクソン17は196055301~196055080であり;第17のイントロンは196055079~196053559であり;エクソン18は196053558~196053418であり;第18のイントロンは196053417~196052185であり;エクソン19は196052184~196049284であり、及び3’UTRは196049284~196051941である。マウスTFR1座位に関連する全ての情報は、NCBIウェブサイトの遺伝子ID:7037において見出すことができる。
【0047】
マウスにおいて、TFR1遺伝子座位は、19個のエクソン、即ち、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及びエクソン19を有する(図1)。マウスTFR1タンパク質は、N末端からC末端にかけて、細胞質領域、膜貫通領域、及び細胞外領域もまた有する。マウスTFR1 mRNAに対するヌクレオチド配列はNM_011638.4であり、マウスTFR1に対するアミノ酸配列はNP_035768.1(配列番号1)である。マウスTFR1ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列内での、各エクソン及び各領域の位置を以下に列挙する:
【0048】
【表2】
【0049】
マウスTFR1遺伝子(遺伝子ID:22042)は、マウスゲノムの染色体16に位置し、これは、NC_000082.7の32427714~32451612に位置する。転写物NM_011638.4に基づくと、5’UTRは、32427738~32427854、及び32431986~32432008であり;エクソン1は32427738~32427854であり;第1のイントロンは32427855~32431985であり;エクソン2は32431986~32432044であり;第2のイントロンは32432045~32433383であり;エクソン3は32433384~32433585であり;第3のイントロンは32433586~32434010であり;エクソン4は32434011~32434212であり;第4のイントロンは32434213~32435566であり;エクソン5は32435567~32435716であり;第5のイントロンは32435717~32435914であり;エクソン6は32435915~32436017であり;第6のイントロンは32436018~32437035であり;エクソン7は32437036~32437149であり;第7のイントロンは32437150~32437450であり;エクソン8は32437451~32437549であり;第8のイントロンは32437550~32437854であり;エクソン9は32437855~32437994であり;第9のイントロンは32437995~32439183であり;エクソン10は32439184~32439341であり;第10のイントロンは32439342~32439992であり;エクソン11は32439993~32440115であり;第11のイントロンは32440116~32441874であり;エクソン12は32441875~32441960であり;第12のイントロンは32441961~32442189であり;エクソン13は32442190~32442253であり;第13のイントロンは32442254~32443186であり;エクソン14は32443187~32443254であり;第14のイントロンは32443255~32443585であり;エクソン15は32443586~32443644であり;第15のイントロンは32443645~32443801であり;エクソン16は32443802~32443883であり;第16のイントロンは32443884~32445366であり;エクソン17は32445367~32445588であり;第17のイントロンは32445589~32447293であり;エクソン18は32447294~32447434であり;第18のイントロンは32447435~32448911であり;エクソン19は32448912~32451612であり;及び3’UTRは32449155~32451612である。マウスTFR1座位に関連する全ての情報は、NCBIウェブサイトの遺伝子ID:22042において見出すことができ、このウェブサイトは、本明細書中にその全体が参照により組み込まれている。
【0050】
図9は、ヒトTFR1アミノ酸配列(NP_003225.2;配列番号2)と、マウスTFR1アミノ酸配列(NP_035768.1;配列番号1)とのアラインメントを示す。したがって、ヒトとマウスのTFR1間の対応するアミノ酸残基又は領域は、図9に見出すことができる。
【0051】
他の種のTFR1遺伝子、タンパク質、及び座位もまた、当該技術分野において既知である。例えば、ドブネズミ(ラット)のTFR1の遺伝子IDは64678であり、イエネコ(ネコ)のTFR1の遺伝子IDは493880であり、イエイヌ(イヌ)のTFR1の遺伝子IDは403703であり、イノシシ(ブタ)のTFR1の遺伝子IDは397062である。これらの遺伝子に関連する情報(例えば、これらのタンパク質のイントロン配列、エクソン配列、アミノ酸残基)は、例えば、NCBIデータベースに見出すことができ、このデータベースは、本明細書中にその全体が参照により組み込まれている。図10は、ヒトTFR1アミノ酸配列(NP_003225.2;配列番号2)と、ラットTFR1アミノ酸配列(NP_073203.1;配列番号31)とのアラインメントを示す。したがって、ヒトとげっ歯類のTFR1間の対応するアミノ酸残基又は領域は、図10に見出すことができる。
【0052】
本開示は、ヒト又はキメラ(例えば、ヒト化)TFR1ヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列を提供する。いくつかの実施形態では、マウスのエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、エクソン19、細胞質領域、膜貫通領域、及び/又は細胞外領域の配列全体が、対応するヒト配列により置き換えられる。いくつかの実施形態では、マウスのエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、エクソン19、細胞質領域、膜貫通領域、及び/又は細胞外領域の「一領域」又は「一部」が、対応するヒト配列により置き換えられる。「一領域」又は「一部」という用語は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、若しくは2000個のヌクレオチド、又は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、650、660、若しくは670個のアミノ酸残基を意味することができる。いくつかの実施形態では、「一領域」又は「一部」は、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、エクソン19、細胞質領域、膜貫通領域、又は細胞外領域と、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%同一であることができる。いくつかの実施形態では、マウスのエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/又はエクソン19の一領域、一部、又は配列全体(例えば、エクソン4の一部、エクソン5~18、及びエクソン19の一部)は、ヒトのエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/又はエクソン19の一領域、一部、又は配列全体(例えば、エクソン4の一部、エクソン5~18、及びエクソン19の一部)により置き換えられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、細胞質領域、膜貫通領域、細胞外領域、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/又はエクソン19の「一領域」又は「一部」が欠失される。
【0054】
いくつかの実施形態では、本開示は、ゲノムが、キメラ(例えば、ヒト化)TFR1ヌクレオチド配列を含む、遺伝子組換え非ヒト動物に関する。いくつかの実施形態では、キメラ(例えば、ヒト化)TFR1ヌクレオチド配列は、細胞外領域を含むTFR1タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する細胞外領域は、配列番号2のアミノ酸89~760と少なくとも80%、85%、90%、95%、又は100%同一である。いくつかの実施形態では、細胞外領域は、ヒトTFR1細胞外領域の全体又は一部を含む。いくつかの実施形態では、動物のゲノムは、配列番号3、4、5、6、7、8、又は10と少なくとも80%、85%、90%、95%、又は100%同一である配列を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する遺伝子組換え非ヒト動物は、ヒト又はヒト化TFR1タンパク質をコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、TFR1タンパク質は、N末端からC末端にかけて、細胞質領域、膜貫通領域、及び細胞外領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1タンパク質は、ヒト又はヒト化細胞質領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1タンパク質は、内因性細胞質領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1タンパク質は、ヒト又はヒト化膜貫通領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1タンパク質は、内因性膜貫通領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1タンパク質は、ヒト又はヒト化細胞外領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1タンパク質は、内因性細胞外領域を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する遺伝子組換え非ヒト動物は、ヒト又はヒト化TFR1遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1遺伝子は19個のエクソンを含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1遺伝子は、内因性若しくはヒト化エクソン1、内因性若しくはヒト化エクソン2、内因性若しくはヒト化エクソン3、ヒト若しくはヒト化エクソン4、ヒト若しくはヒト化エクソン5、ヒト若しくはヒト化エクソン6、ヒト若しくはヒト化エクソン7、ヒト若しくはヒト化エクソン8、ヒト若しくはヒト化エクソン9、ヒト若しくはヒト化エクソン10、ヒト若しくはヒト化エクソン11、ヒト若しくはヒト化エクソン12、ヒト若しくはヒト化エクソン13、ヒト若しくはヒト化エクソン14、ヒト若しくはヒト化エクソン15、ヒト若しくはヒト化エクソン16、ヒト若しくはヒト化エクソン17、ヒト若しくはヒト化エクソン18、及び/又は、ヒト若しくはヒト化エクソン19を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1遺伝子は、内因性若しくはヒト化イントロン1、内因性若しくはヒト化イントロン2、ヒト若しくはヒト化イントロン3、ヒト若しくはヒト化イントロン4、ヒト若しくはヒト化イントロン5、ヒト若しくはヒト化イントロン6、ヒト若しくはヒト化イントロン7、ヒト若しくはヒト化イントロン8、ヒト若しくはヒト化イントロン9、ヒト若しくはヒト化イントロン10、ヒト若しくはヒト化イントロン11、ヒト若しくはヒト化イントロン12、ヒト若しくはヒト化イントロン13、ヒト若しくはヒト化イントロン14、ヒト若しくはヒト化イントロン15、ヒト若しくはヒト化イントロン16、ヒト若しくはヒト化イントロン17、及び/又は、ヒト若しくはヒト化イントロン18を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1遺伝子は、ヒト又はヒト化5’UTRを含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1遺伝子は、ヒト又はヒト化3’UTRを含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1遺伝子は、内因性5’UTRを含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1遺伝子は、内因性3’UTRを含む。
【0057】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、キメラ(例えば、ヒト化)TFR1ヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列もまた提供し、いくつかの実施形態では、配列の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%が、マウスTFR1 mRNA配列(例えば、NM_011638.4)、マウスTFR1アミノ酸配列(例えば、配列番号1)、又は、これらの一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3;エクソン4の一部、及びエクソン19の一部)と同一であるか、又はこれに由来し、いくつかの実施形態では、配列の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%が、ヒトTFR1 mRNA配列(例えば、NM_003234.4)、ヒトTFR1アミノ酸配列(例えば、配列番号2)、又はこれらの一部(例えば、エクソン4の一部;エクソン5~18;及びエクソン19の一部)と同一であるか、又はこれに由来する。
【0058】
いくつかの実施形態では、マウスTFR1(配列番号1)のアミノ酸89~763をコードする配列が置き換えられる。いくつかの実施形態では、配列は、ヒトTFR1の対応する領域(例えば、ヒトTFR1(配列番号2)のアミノ酸89~760)をコードする配列により置き換えられる。
【0059】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する核酸は、プロモーター又は制御エレメント、例えば、内因性マウスTFR1プロモーター、誘導性プロモーター、エンハンサー、及び/又はマウス若しくはヒト制御エレメントに作動可能に連結される。
【0060】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、マウスTFR1ヌクレオチド配列の一部又は全体(例えば、NM_011638.4のエクソン4の一部;エクソン5~18;及びエクソン19の一部)と異なる、少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100個のヌクレオチド、例えば連続又は非連続ヌクレオチド)を有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、マウスTFR1ヌクレオチド配列の一部又は全体(例えば、NM_011638.4のエクソン1~3;エクソン4の一部;及びエクソン19の一部)と同じ、少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100個のヌクレオチド、例えば連続又は非連続ヌクレオチド)を有する。
【0062】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、ヒトTFR1ヌクレオチド配列の一部又は全体(例えば、NM_003234.4のエクソン1、エクソン2、エクソン3;エクソン4の一部、及びエクソン19の一部)と異なる、少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100個のヌクレオチド、例えば連続又は非連続ヌクレオチド)を有する。
【0063】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、ヒトTFR1ヌクレオチド配列の一部又は全体(例えば、NM_003234.4のエクソン4の一部;エクソン5~18;及びエクソン19の一部)と同じ、少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100個のヌクレオチド、例えば連続又は非連続ヌクレオチド)を有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、マウスTFR1アミノ酸配列の一部又は全体(例えば、NP_035768.1(配列番号1)のアミノ酸89~763)と異なる、少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100個のアミノ酸残基、例えば連続又は非連続アミノ酸残基)を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、マウスTFR1アミノ酸配列の一部又は全体(例えば、NP_035768.1(配列番号1)のアミノ酸1~88)と同じ、少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100個のアミノ酸残基、例えば連続又は非連続アミノ酸残基)を有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、ヒトTFR1アミノ酸配列の一部又は全体(例えば、NP_003225.2(配列番号2)のアミノ酸1~88)と異なる、少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100個のアミノ酸残基、例えば連続又は非連続アミノ酸残基)を有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、ヒトTFR1アミノ酸配列の一部又は全体(例えば、NP_003225.2(配列番号2)のアミノ酸89~760)と同じ、少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100個のアミノ酸残基、例えば連続又は非連続アミノ酸残基)を有する。
【0068】
本開示は、ヒト化TFR1マウスアミノ酸配列であって、上記アミノ酸配列が、
a)配列番号1、2、又は9に示されるアミノ酸配列;
b)配列番号1、2、又は9に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有する、又は少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
c)核酸配列によりコードされるアミノ酸配列であって、上記核酸配列が、低ストリンジェンシー条件、又はストリクトなストリンジェンシー条件下で、配列番号1、2、又は9に示すアミノ酸をコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができる、アミノ酸配列;
d)配列番号1、2、又は9に示すアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の相同性を有する、又は、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列;
e)配列番号1、2、又は9に示すアミノ酸配列と、10、9、8、7、6、5、4、3、2個以下、又は1個以下のアミノ酸が異なるアミノ酸配列;あるいは
f)配列番号1、2、又は9に示すアミノ酸配列に対して、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を含むアミノ酸配列
からなる群から選択される、アミノ酸配列もまた提供する。
【0069】
本開示は、ヒト化TFR1アミノ酸配列であって、上記アミノ酸配列が、
a)配列番号2のアミノ酸89~760の全体又は一部;
b)配列番号2のアミノ酸89~760と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号2のアミノ酸89~760と、10、9、8、7、6、5、4、3、2個以下、又は1個以下のアミノ酸が異なるアミノ酸配列;及び
d)配列番号2のアミノ酸89~760に対して、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を含むアミノ酸配列
からなる群から選択される、アミノ酸配列もまた提供する。
【0070】
本開示は、ヒト化TFR1アミノ酸配列であって、上記アミノ酸配列が、
a)配列番号1のアミノ酸1~88の全体又は一部;
b)配列番号1のアミノ酸1~88と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号1のアミノ酸1~88と、10、9、8、7、6、5、4、3、2個以下、又は1個以下のアミノ酸が異なるアミノ酸配列;及び
d)配列番号1のアミノ酸1~88に対して、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を含むアミノ酸配列
からなる群から選択される、アミノ酸配列もまた提供する。
【0071】
本開示は、TFR1核酸(例えば、DNA又はRNA)配列にもまた関し、核酸配列は、
a)配列番号3、4、5、6、7、若しくは8に示す核酸配列、又は、ヒト化マウスTFR1の相同TFR1アミノ酸配列をコードする核酸配列;
b)低ストリンジェンシー条件、又はストリクトなストリンジェンシー条件下で、配列番号3、4、5、6、7、又は8に示すヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができる核酸配列;
c)配列番号3、4、5、6、7、又は8に示すヌクレオチド配列と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の相同性を有する、又は、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一である核酸配列;
d)配列番号1、2、又は9に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有する、又は少なくとも90%同一であるアミノ酸配列、をコードする核酸配列;
e)配列番号1、2、又は9に示すアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の相同性を有する、又は、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列、をコードする核酸配列;
f)配列番号1、2、又は9に示すアミノ酸配列と、10、9、8、7、6、5、4、3、2個以下、又は1個以下のアミノ酸が異なるアミノ酸配列、をコードする核酸配列;及び/あるいは
g)配列番号1、2、又は9に示すアミノ酸配列に対して、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を含むアミノ酸配列、をコードする核酸配列
からなる群から選択することができる。
【0072】
本開示はさらに、ヒト化マウスのTFR1ゲノムDNA配列に関する。DNA配列は、その転写により得られる、配列番号5又は8に示す配列と相同なDNA配列と一致する、又は相補的なmRNAの逆転写により得られる。
【0073】
本開示は、配列番号1、2、又は9に示す配列と少なくとも90%の相同性を有する、又は少なくとも90%同一であり、タンパク質活性を有するアミノ酸配列もまた提供する。いくつかの実施形態では、配列番号1、2、又は11に示す配列との相同性は、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、前述の相同性は、少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、又は85%である。
【0074】
いくつかの実施形態では、配列番号1、2、又は9に示す配列との同一性パーセントは、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、前述の同一性パーセントは、少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、又は85%である。
【0075】
本開示は、配列番号3、4、5、6、7、又は8に示す配列と少なくとも90%の相同性を有し、又は少なくとも90%同一であり、タンパク質活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列もまた提供する。いくつかの実施形態では、配列番号3、4、5、6、7、又は8に示す配列との相同性は、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、前述の相同性は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、又は85%である。
【0076】
いくつかの実施形態では、配列番号3、4、5、6、7、又は8に示す配列との同一性パーセントは、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、前述の同一性パーセントは、少なくとも約50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、又は85%である。
【0077】
本開示は、本明細書に記載する任意のヌクレオチド配列と、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である核酸配列、及び、本明細書に記載する任意のアミノ酸配列と、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるアミノ酸配列もまた提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載する任意のペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は、本明細書に記載する任意のヌクレオチド配列によりコードされる任意のアミノ酸配列に関する。いくつかの実施形態では、核酸配列は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、150、200、250、300、350、400、500、又は600ヌクレオチド未満である。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、又は200アミノ酸残基未満である。
【0078】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、(i)アミノ酸配列を含み;又は、(ii)アミノ酸配列からなり、上記アミノ酸配列は、本明細書に記載する配列のいずれか1つである。
【0079】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、(i)核酸配列を含み;又は、(ii)核酸配列からなり、上記核酸配列は、本明細書に記載する配列のいずれか1つである。
【0080】
2つのアミノ酸配列、又は、2つの核酸配列の同一性パーセントを測定するために、最適に比較するために配列をアライメントする(例えば、比較するために、最適にアライメントするように第1及び第2のアミノ酸又は核酸配列の1つ又は両方にギャップを導入してもよく、非相同配列を無視してもよい)。続いて、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列の位置が第2の配列の対応する位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドと同じものによって占められている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列を最適にアライメントするために導入される必要のあるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮して、配列に共有される同一の位置の数の関数である。例えば、2つの配列間の配列比較及び同一性パーセントの測定は、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、及び、フレームシフトギャップペナルティ5の、Blossum62スコアリングマトリックスを用いて実施することができる。
【0081】
同様の物理化学的特性(相同性パーセント)が保存されている残基、例えば、ロイシン及びイソロイシンの割合もまた使用して、配列類似性を測定することができる。同様の物理化学的特性を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。 これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。多くの場合、相同性割合は、同一性割合よりも高くなる。
【0082】
本明細書に記載するヌクレオチド配列を含む細胞、組織、及び動物(例えば、マウス)、加えて、内因性非ヒトTFR1座位由来のヒト又はキメラ(例えば、ヒト化)TFR1を発現する細胞、組織、及び動物(例えば、マウス)もまた、提供される。
【0083】
遺伝子組換え動物
本明細書で使用する場合、「遺伝子組換え非ヒト動物」という用語は、動物のゲノムの少なくとも1つの染色体内に外来性DNAを有する非ヒト動物を意味する。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え非ヒト動物の、少なくとも1つ以上の細胞、例えば、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%の細胞は、外来性DNAをそのゲノムに有する。外来性DNAを有する細胞は、様々な細胞、例えば、内因性細胞、体細胞、免疫細胞、T細胞、B細胞、抗原提示細胞、マクロファージ、樹状細胞、生殖細胞、胚盤胞、又は、内因性腫瘍細胞であることができる。いくつかの実施形態では、外来性配列(例えば、ヒト配列)、例えば、非ヒト配列の、1つ以上のヒト配列での置き換えを含む、組換え内因性TFR1座位を含む遺伝子組換え非ヒト動物を提供する。動物は一般に、即ち、生殖細胞系伝達を通じて、子孫に組換えを伝えることができる。
【0084】
本明細書で使用する場合、「キメラ遺伝子」又は「キメラ核酸」という用語は、遺伝子又は核酸であって、上記遺伝子若しくは上記核酸の2つ以上の部分が異なる種に由来する、又は、上記遺伝子若しくは上記核酸の配列の少なくとも1つが、動物の野生型核酸に対応しない、上記遺伝子又は核酸を意味する。いくつかの実施形態では、キメラ遺伝子又はキメラ核酸は、2つ以上の異なる源に由来する配列、例えば、異なるタンパク質をコードする配列、又は、2つ以上の異なる種の同一(若しくは、相同)タンパク質をコードする配列の、少なくとも一部分を有する。いくつかの実施形態では、キメラ遺伝子又はキメラ核酸は、ヒト化遺伝子又はヒト化核酸である。
【0085】
本明細書で使用する場合、「キメラタンパク質」又は「キメラポリペプチド」という用語は、タンパク質又はタンパク質であって、上記タンパク質若しくは上記ポリペプチドの2つ以上の部分が異なる種に由来する、又は、上記タンパク質又は上記ポリペプチドの配列の少なくとも1つが、動物の野生型アミノ酸配列に対応しない、上記タンパク質又は上記ポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態では、キメラタンパク質又はキメラポリペプチドは、2つ以上の異なる源に由来する配列の少なくとも一部分、例えば、異なる種の同一(又は、相同)タンパク質を有する。いくつかの実施形態では、キメラタンパク質又はキメラポリペプチドは、ヒト化タンパク質又はヒト化ポリペプチドである。
【0086】
本明細書で使用する場合、「ヒト化タンパク質」又は「ヒト化ポリペプチド」という用語は、タンパク質又はポリペプチドであって、上記タンパク質又は上記ポリペプチドの少なくとも一部分がヒトタンパク質又はヒトポリペプチドである、上記タンパク質又は上記ポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態では、ヒト化タンパク質又はポリペプチドは、ヒトタンパク質又はポリペプチドである。
【0087】
本明細書で使用する場合、「ヒト化核酸」という用語は、核酸であって、上記核酸の少なくとも一部分がヒトに由来する、上記核酸を意味する。いくつかの実施形態では、ヒト化核酸の核酸全体がヒトに由来する。いくつかの実施形態では、ヒト化核酸はヒト化エクソンである。ヒト化エクソンは、例えば、ヒトエクソン又はキメラエクソンであり得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、キメラ遺伝子又はキメラ核酸は、ヒト化TFR1遺伝子又はヒト化TFR1核酸である。いくつかの実施形態では、遺伝子又は核酸の少なくとも1つ以上の部分は、ヒトTFR1遺伝子に由来し、遺伝子又は核酸の少なくとも1つ以上の部分は、非ヒトTFR1遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、遺伝子又は核酸は、TFR1タンパク質をコードする配列を含む。コードされるTFR1タンパク質は、機能的である、又は、例えば、トランスフェリンと相互作用する、エンドサイトーシスにより鉄の細胞取込みを制御する、及び、鉄ホメオスタシスを維持する、ヒトTFR1タンパク質若しくは非ヒトTFR1タンパク質の少なくとも1つの活性を有する。
【0089】
いくつかの実施形態では、キメラタンパク質又はキメラポリペプチドは、ヒト化TFR1タンパク質又はヒト化TFR1ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、タンパク質又はポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも1つ以上の部分は、ヒトTFR1タンパク質に由来し、タンパク質又はポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも1つ以上の部分は非ヒトTFR1タンパク質に由来する。ヒト化TFR1タンパク質又はヒト化TFR1ポリペプチドは、機能的である、又は、ヒトTFR1タンパク質若しくは非ヒトTFR1タンパク質の少なくとも1つの活性を有する。
【0090】
いくつかの実施形態では、細胞質領域はヒト又はヒト化である。いくつかの実施形態では、細胞質領域は内因性である。いくつかの実施形態では、膜貫通領域はヒトであるか、又はヒト化されている。いくつかの実施形態では、膜貫通領域は内因性である。いくつかの実施形態では、細胞外領域はヒトであるか、又はヒト化されている。いくつかの実施形態では、細胞外領域は内因性である。
【0091】
遺伝子組換え非ヒト動物は、様々な動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ウシ科の動物(例えば、ウシ、雄牛、バッファロー)、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、マーモセット、アカゲザル)であることができる。好適な、遺伝子組換え可能な胚幹(ES)細胞が速やかに入手できない非ヒト動物に関しては、他の方法を用いて、遺伝子組換えされた非ヒト動物を作製する。このような方法としては、例えば、非ES細胞ゲノム(例えば、線維芽細胞又は人工多能性細胞)を組み換え、核移植を用いて組換えゲノムを好適な細胞、例えば卵母細胞に移すこと、及び、好適な条件下で、非ヒト動物にて組換え細胞(例えば、組換え卵母細胞)を妊娠させて胚を形成することが挙げられる。これらの方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、A.Nagy,et al.,“Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual(Third Edition),”Cold Spring Harbor Laboratory Press,2003に記載されており、本明細書中に、その全体が参照により組み込まれる。
【0092】
一態様では、動物は哺乳類、例えば、トビネズミ上科又はネズミ上科のスーパーファミリーである。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物はげっ歯類である。げっ歯類は、マウス、ラット、及びハムスターから選択することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物は、カンガルーハムスター科(例えば、カンガルーハムスター)、キヌゲネズミ科(例えば、ハムスター、新世界ラット及びマウス、野ネズミ)、ネズミ科(トゥルーマウス及びラット、アレチネズミ、トゲマウス、クレステッドラット)、アシナガマウス科(クライミングマウス、ロックマウス、オジロネズミ、マラガシーラット及びマウス)、トゲヤマネ科(例えば、トゲヤマネ)、並びに、メクラネズミ類(例えば、モグラネズミ、タケネズミ、及びゾコール)から選択されるファミリーに由来する。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えげっ歯類は、トゥルーマウス又はラット(ネズミ科族)、アレチネズミ、トゲマウス、及びクレステッドラットから選択される。いくつかの実施形態では、非ヒト動物はマウスである。
【0093】
いくつかの実施形態では、動物は、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、及びC57BL/Olaから選択されるC57BL株のマウスである。いくつかの実施形態では、マウスは、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/SvIm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2である株からなる群から選択される129株である。これらのマウスは、例えば、Festing et al.,Revised nomenclature for strain 129 mice,Mammalian Genome 10:836(1999);Auerbach et al.,Establishment and Chimera Analysis of 129/SvEv-and C57BL/6-Derived Mouse Embryonic Stem Cell Lines(2000)に記載されており、これらは共に、その全体が、本明細書に参照により組み込まれている。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えマウスは、129株とC57BL/6株のミックスである。いくつかの実施形態では、マウスは、129株のミックス、又は、BL/6株のミックスである。いくつかの実施形態では、マウスはBALB株、例えば、BALB/c株である。いくつかの実施形態では、マウスは、BALB株と別の株とのミックスである。いくつかの実施形態では、マウスは、ハイブリッド株(例えば、50%のBALB/c-50%の12954/Sv;又は、50%のC57BL/6-50%の129)に由来する。いくつかの実施形態では、非ヒト動物はげっ歯類である。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、BALB/c、A、A/He、A/J、A/WySN、AKR、AKR/A、AKR/J、AKR/N、TA1、TA2、RF、SWR、C3H、C57BR、SJL、C57L、DBA/2、KM、NIH、ICR、CFW、FACA、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL(C57BL/10Cr、及びC57BL/Ola)、C58、CBA/Br、CBA/Ca、CBA/J、CBA/st、又はCBA/Hバックグラウンドを有するマウスである。
【0094】
いくつかの実施形態では、動物はラットである。ラットは、ウィスターラット、LEA株、Sprague Dawley株、フィッシャー株、F344、F6、及びDark Agoutiから選択することができる。いくつかの実施形態では、ラット株は、ウィスター、LEA、Sprague Dawley、フィッシャー、F344、F6、及びDark Agoutiからなる群から選択される2つ以上の株のミックスである。
【0095】
動物は、ヒト化TFR1動物が作製される特定目的に好適な、1つ以上の他の遺伝子組換え、及び/又は他の改変を有することができる。例えば、異種移植片(例えば、ヒトの癌又は腫瘍)を維持するのに好適なマウスは、非ヒト動物の免疫系の全体又は一部を不全にする、不活性化する、又は破壊する、1つ以上の組換えを有することができる。非ヒト動物の免疫系の不全、不活性化、又は破壊としては、例えば、化学的手段(例えば、毒素の投与)、物理的手段(例えば、動物への放射線照射)、及び/又は、遺伝子組換え(例えば、1つ以上の遺伝子のノックアウト)による、造血細胞及び/又は免疫細胞の破壊を挙げることができる。このようなマウスの非限定例としては、例えば、NODマウス、SCIDマウス、NOD/SCIDマウス、IL2Rγノックアウトマウス、NOD/SCID/γcnullマウス(Ito,M.et al.,NOD/SCID/γcnull mouse:an excellent recipient mouse model for engraftment of human cells,Blood 100(9):3175-3182,2002)、ヌードマウス、並びにRag1及び/又はRag2ノックアウトマウスが挙げられる。こちらのマウスを所望により放射線照射し、又は、別の方法で処理し、1つ以上の免疫細胞型を破壊することができる。したがって、様々な実施形態では、内因性非ヒトTFR1座位の少なくとも一部のヒト化を含むことができ、非ヒト動物の免疫系(又は、免疫系の1つ以上の細胞型)の全体又は一部を不全にする、不活性化する、又は破壊する組換えをさらに含む遺伝子組換えマウスを提供する。いくつかの実施形態では、組換えは、例えば、NODマウス、SCIDマウス、NOD/SCIDマウス、IL-2Rγノックアウトマウス、NOD/SCID/γcnullマウス、ヌードマウス、Rag1及び/又はRag2ノックアウトマウス、NOD-Prkdcscid IL-2rγnullマウス、NOD-Rag1-/--IL2rg-/-(NRG)マウス、Rag2-/--IL2rg-/-(RG)マウス、及びこれらの組み合わせをもたらす組換えからなる群から選択される。これらの遺伝子組換え動物は、US20150106961に記載されており、当該明細書の全体が本明細書に参照により組み込まれている。いくつかの実施形態では、マウスは、成熟TFR1コード配列の全体又は一部を、ヒト成熟TFR1コード配列で置き換えることを含むことができる。
【0096】
遺伝子組換え非ヒト動物は、内因性非ヒトTFR1座位の組換えを含む。いくつかの実施形態では、組換えは、成熟TFR1タンパク質の少なくとも一部分をコードする(例えば、成熟TFR1タンパク質配列と少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である)ヒト核酸配列を含むことができる。本明細書に記載する組換えを含むことができる遺伝子組換え細胞(例えば、ES細胞、体細胞)もまた提供するが、多くの実施形態では、遺伝子組換え非ヒト動物は、動物の生殖細胞系における、内因性TFR1座位の組換えを含む。
【0097】
遺伝子組換え動物は、内因性マウス座位からヒトTFR1及び/又はキメラ(例えば、ヒト化)TFR1を発現することができ、内因性マウスTFR1遺伝子は、ヒトTFR1配列の一領域をコードするヒトTFR1遺伝子及び/若しくはヌクレオチド配列、又は、ヒトTFR1配列と少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列で置き換えられている。様々な実施形態では、成熟TFR1タンパク質の少なくとも1つのタンパク質コード配列をコードするヒト核酸配列を含むように、内因性非ヒトTFR1座位の全体又は一部を組み換える。
【0098】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えマウスは、マウスプロモーター及び/又はマウス制御エレメントの制御下で、内因性座位からヒトTFR1及び/又はキメラTFR1(例えば、ヒト化TFR1)を発現する。内因性マウス座位における置き換えにより、適切な細胞型で、かつ、当該技術分野において既知のいくつかの他のトランスジェニックマウスで観察される潜在的な病状をもたらさない方法で、ヒトTFR1又はキメラTFR1(例えば、ヒト化TFR1)を発現する非ヒト動物がもたらされる。動物で発現するヒトTFR1又はキメラTFR1(例えば、ヒト化TFR1)は、動物内で、野生型マウス又はヒトTFR1の1つ以上の機能を維持することができる。例えば、ヒト又は非ヒトTFR1リガンド(例えば、トランスフェリン)は、発現したTFR1に結合することができる。さらに、いくつかの実施形態では、動物は内因性TFR1を発現しない。いくつかの実施形態では、動物は、野生型動物と比較して、低レベルの内因性TFR1を発現する。本明細書で使用する場合、「内因性TFR1」という用語は、任意の遺伝子組換えの前に、非ヒト動物(例えば、マウス)の内因性TFR1ヌクレオチド配列から発現するTFR1タンパク質を意味する。
【0099】
動物のゲノムは、ヒトTFR1(NP_003225.2)(配列番号2)と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードする配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、ゲノムは、配列番号9と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードする配列を含む。
【0100】
遺伝子組換え動物のゲノムは、内因性TFR1遺伝子座位で、内因性TFR1の領域をコードする配列を、ヒトTFR1の対応する領域をコードする配列で置き換えることを含むことができる。いくつかの実施形態では、置き換えられる配列は、内因性TFR1遺伝子座位の中の任意の配列、例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、エクソン19、5’-UTR、3’-UTR、イントロン1、イントロン2、イントロン3、イントロン4、イントロン5、イントロン6、イントロン7、イントロン8、イントロン9、イントロン10、イントロン11、イントロン12、イントロン13、イントロン14、イントロン15、イントロン16、イントロン17、イントロン18などである。いくつかの実施形態では、置き換えられる配列は、内因性TFR1遺伝子の調節領域内にある。いくつかの実施形態では、置き換えられる配列は、内因性マウスTFR1遺伝子座位の、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、エクソン19、又はその一部分である。
【0101】
遺伝子組換え動物は、N末端からC末端にかけて、細胞質領域、膜貫通領域、及び細胞外領域を有するヒト又はキメラTFR1(例えば、ヒト化TFR1)を発現する、1つ以上の細胞を有することができる。いくつかの実施形態では、細胞外領域は、ヒトTFR1の細胞外領域と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1の細胞外領域は、ヒトTFR1と同一である、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、620、650、660、665、666、667、668、669、670、671、又は672個のアミノ酸(例えば、連続又は非連続)を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1の細胞外領域は、5~760個、又は10~672個のアミノ酸(例えば、連続又は非連続)である配列を有する。多くの場合、ヒトTFR1と非ヒトTFR1(例えば、マウスTFR1)は異なるため、ヒトTFR1に結合する抗体は必ずしも、非ヒトTFR1と同じ結合親和性を有するわけでなく、又は、非ヒトTFR1に対して同じ効果を有するわけではない。したがって、ヒト又はヒト化細胞外領域を有する遺伝子組換え動物を使用して、動物モデルにおける、抗ヒトTFR1抗体の効果をよりよく評価することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物のゲノムは、ヒトTFR1のエクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/若しくはエクソン19の配列の一部若しくは全体、ヒトTFR1の細胞外領域の配列の一部若しくは全体、又は、配列番号2のアミノ酸89~760の配列の一部若しくは全体に対応するアミノ酸配列をコードする配列を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物のゲノムは、ヒトTFR1遺伝子のエクソン4の一部;エクソン5~18;及びエクソン19の一部を含む。いくつかの実施形態では、エクソン4の一部は、少なくとも50、70、100、130、150、160、165、166、167、168、169、170、180、190、又は196ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、エクソン19の一部は、少なくとも100、200、220、230、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、250、270、300、500、700、1000、1300、1500、1700、2000、2200、2500、2700、2900、又は2901ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物のゲノムは、ヒトTFR1遺伝子配列の、約20~63430、約20~22158、約20~5224、又は約20~2016個のヌクレオチド(連続又は非連続ヌクレオチド)を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、内因性TFR1遺伝子座位において、キメラヒト/非ヒトTFR1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有することができ、キメラヒト/非ヒトTFR1ポリペプチドのヒト部分は、ヒトTFR1細胞外ドメインの一部を含み、動物は、動物の細胞表面で機能性TFR1を発現する。キメラヒト/非ヒトTFR1ポリペプチドのヒト部分は、ヒトTFR1のエクソン4の一部;エクソン5~18;及び/又はエクソン19の一部によりコードされるアミノ酸配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、キメラヒト/非ヒトTFR1ポリペプチドのヒト部分は、配列番号2のアミノ酸89~760と少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%同一である配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、細胞質領域は、配列番号1のアミノ酸1~65の全体又は一部に対応する配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通領域は、配列番号1のアミノ酸66~88の全体又は一部に対応する配列を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、キメラヒト/非ヒトTFR1ポリペプチドの非ヒト部分は、内因性非ヒトTFR1ポリペプチドの膜貫通及び/又は細胞質領域を含む。
【0105】
さらに、遺伝子組換え動物は、内因性TFR1座位における置き換えに関してヘテロ接合性であることができる、又は、内因性TFR1座位における置き換えに関してホモ接合性であることができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1座位は、ヒトTFR1 5’-UTRを欠いている。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1座位は、内因性(例えば、マウス)5’-UTRを含む。いくつかの実施形態では、ヒト化は、内因性(例えば、マウス)3’-UTRを含む。適切な場合、マウス及びヒトTFR1遺伝子は、その5’隣接配列の類似性に基づくと、同様に制御されるようであると推定することが合理的であり得る。本開示に示すように、マウスの制御エレメントを保持しながら、TFR1コード配列のヒト化を含む、内因性マウスTFR1座位における置き換えを含むヒト化TFR1マウスは、病状を示さない。ヒト化TFR1に対してヘテロ接合性又はホモ接合性である遺伝子組換えマウスは共に、全体的に正常である。
【0107】
本開示はさらに、上述の方法により生成される非ヒト哺乳動物に関する。いくつかの実施形態では、そのゲノムはヒト遺伝子を含有する。
【0108】
いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物はげっ歯類であり、好ましくは、非ヒト哺乳動物はマウスである。
【0109】
いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物は、ヒト化TFR1遺伝子によりコードされるタンパク質を発現する。
【0110】
さらに、本開示は、腫瘍を有する非ヒト哺乳動物モデルにもまた関し、上記非ヒト哺乳動物モデルが、本明細書に記載の方法により得られることを特徴とする。いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物はげっ歯類(例えば、マウス)である。
【0111】
本開示はさらに、非ヒト哺乳動物若しくはその子孫、又は、腫瘍を有する非ヒト哺乳動物に由来する細胞若しくは細胞株、又はその初代細胞培養物;非ヒト哺乳動物若しくはその子孫、又は、腫瘍を有する非ヒト哺乳動物に由来する組織、器官、又はその培養物;及び、非ヒト哺乳動物又はその子孫が腫瘍を有する場合、当該非ヒト哺乳動物又はその子孫、又は、腫瘍を有する非ヒト哺乳動物に由来する腫瘍組織に関する。
【0112】
本開示は、本明細書に記載の方法のいずれかにより作製される非ヒト哺乳動物もまた提供する。いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物を提供し、遺伝子組換え動物は、動物のゲノム内に、ヒト又はヒト化TFR1をコードするDNAを含有する。
【0113】
いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物は、本明細書に記載する遺伝子構築物(例えば、図2、3、及び5に示す遺伝子構築物)を含む。いくつかの実施形態では、ヒト又はヒト化TFR1を発現する非ヒト哺乳動物を提供する。いくつかの実施形態では、ヒト又はヒト化TFR1タンパク質の組織特異的発現を提供する。
【0114】
いくつかの実施形態では、特異的なインデューサー又はレプレッサー基質を添加することで、遺伝子組換え動物における、ヒト又はヒト化TFR1の発現が制御可能である。いくつかの実施形態では、特異的なインデューサーは、Tet-Off System/Tet-On System、又はTamoxifen Systemから選択される。
【0115】
非ヒト哺乳動物は、当該技術分野において既知の任意の非ヒト動物であることができ、これを、本明細書に記載する方法で使用することができる。好ましい非ヒト哺乳動物は哺乳類(例えば、げっ歯類)である。いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物はマウスである。
【0116】
上述の非ヒト哺乳動物の遺伝、分子、及び挙動分析を実施することができる。本開示は、同一又は他の遺伝子型と交配された、本開示で提供される非ヒト哺乳動物により産生される子孫にもまた関する。
【0117】
本開示は、非ヒト哺乳動物又はその子孫に由来する、細胞株又は初代細胞培養物もまた提供する。細胞培養に基づくモデルは、例えば、以下の方法により調製することができる。細胞培養物は、非ヒト哺乳動物からの単離によって入手することができ、あるいは、細胞は、同じ構築物、及び標準的な細胞トランスフェクション技術を用いて確立された細胞培養物から入手することができる。ヒトTFR1タンパク質をコードするDNA配列を含有する遺伝子構築物の組込みは、様々な方法で検出することができる。
【0118】
(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)又はサザンブロッティング、及びin situハイブリダイゼーションを用いる、mRNA定量化アプローチを含む)核酸レベルでの方法、並びに、(組織化学、イムノブロット分析、及びインビトロ結合研究を含む)タンパク質レベルでの方法を含む、外来性DNAを検出するために使用可能な多くの分析法が存在する。さらに、対象となる遺伝子の発現レベルを、当業者に周知のELISA技術により定量化することができる。多くの標準的な分析法を用いて定量的測定を完了することができる。例えば、RNase保護、サザンブロット分析、RNAドット分析(RNAdot分析)を含む、RT-PCR及びハイブリダイゼーション法を用いて、転写レベルを測定することができる。免疫組織化学染色、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット分析もまた用いて、ヒト又はヒト化TFR1タンパク質の存在を評価することができる。
【0119】
ベクター
本開示は、a)100~10,000ヌクレオチドの長さのTFR1遺伝子ゲノムDNAから選択される、改変可能な領域の5’末端(5’アーム)に相同なDNA断片;b)ドナー領域をコードする所望の/ドナーDNA配列;及び、c)100~10,000ヌクレオチドの長さのTFR1遺伝子ゲノムDNAから選択される、改変可能な領域の3’末端(3’アーム)に相同な第2のDNA断片を含む標的化ベクターに関する。
【0120】
いくつかの実施形態では、a)改変可能な保存領域の5’末端(5’アーム)に相同なDNA断片は、NCBI受託番号NC_000082.7と少なくとも90%の相同性を有するヌクレオチド配列から選択され;c)改変可能な領域の3’末端(3’アーム)に相同なDNA断片は、NCBI受託番号NC_000082.7と少なくとも90%の相同性を有するヌクレオチド配列から選択される。
【0121】
いくつかの実施形態では、a)改変可能な領域の5’末端(5’アーム)に相同なDNA断片は、NCBI受託番号NC_000082.7の位置32429794~位置32434036のヌクレオチドから選択され;c)改変可能な領域の3’末端(3’アーム)に相同なDNA断片は、NCBI受託番号NC_000082.7の位置32449155~位置32453445のヌクレオチドから選択される。
【0122】
いくつかの実施形態では、標的化ベクター内の、選択されるゲノムヌクレオチド配列の長さは、約3kb、約4kb、約5kb、約6kb、約7kb、約8kb、約9kb、約10kb、約15kb、約20kb、約21kb、約22kb、約23kb、約24kb、又は約25kb超であることができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、改変可能な領域は、TFR1遺伝子のエクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/又はエクソン19(例えば、マウスTFR1遺伝子のエクソン4の一部;エクソン5~18;及びエクソン19の一部)である。
【0124】
標的化ベクターは、1つ以上の選択可能なマーカー、例えば、ポジティブ又はネガティブ選択可能なマーカーをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、ポジティブ選択可能なマーカーは、Neo遺伝子又はNeoカセットである。いくつかの実施形態では、ネガティブ選択可能なマーカーは、DTA遺伝子である。
【0125】
いくつかの実施形態では、5’アームの配列を配列番号3に示し、3’アームの配列を配列番号4に示す。
【0126】
いくつかの実施形態では、配列は、ヒト(例えば、NC_000003.12の196051942~196074099)に由来する。例えば、標的化ベクターの標的領域は、ヒトTFR1のヌクレオチド配列の一部又は全体、好ましくは、ヒトTFR1のエクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/又はエクソン19である。いくつかの実施形態では、ヒト化TFR1のヌクレオチド配列は、NCBI受託番号NP_003225.2(配列番号2)のヒトTFR1タンパク質の、全体又は一部をコードする。
【0127】
本開示は、上述の標的化ベクターを含む細胞にもまた関する。
【0128】
加えて、本開示はさらに、前述の標的化ベクターのいずれか1つ、及び、本明細書に記載する構築物の、1つ以上のインビトロ転写物を有する、非ヒト哺乳動物細胞に関する。いくつかの実施形態では、細胞は、Cas9 mRNA、又は、そのインビトロ転写物を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、細胞内の遺伝子はヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、細胞内の遺伝子はホモ接合性である。
【0130】
いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物細胞はマウス細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は受精卵細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は胚幹細胞である。
【0131】
遺伝子組換え動物の作製方法
遺伝子組換え動物は、例えば、非相同末端結合(NHEJ)、相同組換え(HR)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFNs)、転写活性化様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、及び、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列反復(CRISPR)-Casシステムを含む、当該技術分野において既知のいくつかの技術により作製することができる。いくつかの実施形態では、相同組換えを用いる。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas9ゲノム編集を用いて遺伝子組換え動物を生成する。これらのゲノム編集技術の多くは当該技術分野において既知であり、例えば、Yin et al.,“Delivery technologies for genome editing,”Nature Reviews Drug Discovery 16.6(2017):387-399に記載されており、当該刊行物はその全体が参照により組み込まれている。多くの他の方法もまた提供し、これらを、ゲノム編集、例えば、遺伝子組換え核の、除核した卵母細胞へのマイクロインジェクション、及び、除核した卵母細胞の、別の遺伝子組換え細胞との融合で用いることができる。
【0132】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、動物の少なくとも1つの細胞内の、内因性TFR1遺伝子座位において、内因性TFR1の領域をコードする配列を、ヒト又はキメラTFR1の対応する領域をコードする配列で置き換えることを提供する。いくつかの実施形態では、置換えは、生殖細胞、体細胞、胚盤胞、又は線維芽細胞などで生じる。体細胞又は線維芽細胞の核は、除核した卵母細胞に挿入することができる。
【0133】
図3は、マウスTFR1座位のヒト化方法を示す。図3において、標的方法には、5’末端相同アーム、ヒトTFR1遺伝子断片、及び3’相同アームを含むベクターが関与する。プロセスには、相同組換えにより、内因性TFR1配列をヒト配列で置き換えることを伴うことができる。いくつかの実施形態では、(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、又はCRISPRにより)標的部位の上流及び下流において切断を行うことで、DNA二本鎖の破壊をもたらすことができ、相同組換えを用いて、内因性TFR1配列をヒトTFR1配列で置き換えることができる。
【0134】
したがって、いくつかの実施形態では、遺伝子組換えヒト化動物の作製方法は、内因性TFR1座位(又は部位)において、内因性TFR1の領域をコードする配列をコードする核酸を、ヒトTFR1の対応する領域をコードする配列で置き換えるステップを含むことができる。配列は、ヒトTFR1遺伝子のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/又はエクソン19の一領域(例えば、領域の一部又は全体)を含むことができる。いくつかの実施形態では、配列は、ヒトTFR1遺伝子のエクソン4の一部;エクソン5~18;及びエクソン19の一部(例えば、NM_003234.4の核酸548~2566)を含む。いくつかの実施形態では、領域は、TFR1の細胞外領域の中(例えば、配列番号2のアミノ酸89~760;又は、配列番号1のアミノ酸89~763)に位置する。いくつかの実施形態では、内因性TFR1座位は、マウスTFR1のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、エクソン15、エクソン16、エクソン17、エクソン18、及び/又はエクソン19である。いくつかの実施形態では、配列は、マウスTFR1遺伝子のエクソン4の一部;エクソン5~18;及びエクソン19の一部(例えば、NM_011638.4の核酸429~2456)を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、マウスのTFR1座位を改変してキメラヒト/マウスTFR1ペプチドを発現させる方法は、内因性マウスTFR1座位において、マウスTFR1をコードするヌクレオチド配列を、ヒトTFR1をコードするヌクレオチド配列で置き換えることにより、キメラヒト/マウスTFR1をコードする配列を生成するステップを含むことができる。
【0136】
いくつかの実施形態では、キメラヒト/マウスTFR1をコードするヌクレオチド配列は、マウスTFR1の細胞質領域及び膜貫通領域をコードする第1のヌクレオチド配列;並びに、ヒトTFR1の細胞外領域をコードする第2のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するヌクレオチド配列は、互いに重なり合わない(例えば、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列は重なり合わない)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載するアミノ酸配列は互いに重なり合わない。
【0138】
本開示は、
(a)本明細書に記載の方法に基づき、細胞(例えば、受精卵細胞)を提供するステップと、
(b)液体培地内で細胞を培養するステップと、
(c)培養した細胞を、レシピエントのメス非ヒト哺乳動物の卵管又は子宮に移植し、メス非ヒト哺乳動物の子宮で細胞を成長させるステップと、
(d)ステップ(c)における妊娠したメスの、子孫の遺伝子組換えヒト化非ヒト哺乳動物において生殖細胞系伝達を同定するステップと、
を伴う、TFR1遺伝子ヒト化動物モデルの確立方法をさらに提供する。
【0139】
いくつかの実施形態では、前述の方法における非ヒト哺乳動物はマウス(例えば、C57BL/6マウス)である。
【0140】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)における非ヒト哺乳動物は、偽妊娠(又は想像妊娠)したメスである。
【0141】
いくつかの実施形態では、上述の方法のための受精卵は、C57BL/6受精卵である。本明細書に記載する方法で用いることができる他の受精卵としては、FVB/N受精卵、BALB/c受精卵、DBA/1受精卵、及びDBA/2受精卵が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
受精卵は、任意の非ヒト動物、例えば、本明細書に記載する任意の非ヒト動物に由来することができる。いくつかの実施形態では、受精卵細胞はげっ歯類に由来する。遺伝子構築物を、DNAのマイクロインジェクションにより受精卵に導入することができる。例えば、マイクロインジェクション後に受精卵を培養することで、培養受精卵を偽妊娠非ヒト動物に移し、この後非ヒト哺乳動物が生まれることで、上述の方法で言及した非ヒト哺乳動物を生成することができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物の作製方法は、例えば、非ヒト動物のTFR1遺伝子の内因性制御エレメントの直後に、ヒト又はヒト化TFR1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(例えば、cDNA配列)を挿入することにより、非ヒト動物のTFR1遺伝子のコードフレームを改変することを含む。例えば、非ヒト動物のTFR1遺伝子の1つ以上の機能性領域配列をノックアウトし、又は、これに配列を挿入し、非ヒト動物が内因性TFR1タンパク質を発現することができない、又は、低レベルの内因性TFR1タンパク質を発現するようにすることができる。いくつかの実施形態では、改変された非ヒト動物のTFR1遺伝子のコーディングフレームは、非ヒト動物のTFR1遺伝子のエクソン1からエクソン19のヌクレオチド配列の、全体又は一部であることができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物の作製方法は、非ヒト動物のTFR1遺伝子の内因性制御エレメントの後に、ヒト若しくはヒト化TFR1タンパク質をコードするヌクレオチド配列、及び/又は補助配列を挿入することを含む。いくつかの実施形態では、補助配列は、TFR1遺伝子ヒト化動物モデルが、ヒト又はヒト化TFR1タンパク質をインビボで発現することができるが、非ヒト動物のTFR1タンパク質を発現しないようにする終止コドンであることができる。いくつかの実施形態では、補助配列は、WPRE(WHP転写後応答エレメント)、及び/又はポリAを含む。
【0145】
遺伝子組換え動物の使用方法
内因性非ヒト座位において、内因性プロモーター及び/又は制御エレメントの制御下で、非ヒト動物のヒト遺伝子を、相同又はオーソロガスヒト遺伝子又はヒト配列で置き換えることにより、通常のノックアウト+導入遺伝子動物とは実質的に異なり得る品質及び特徴を備える非ヒト動物をもたらすことができる。通常のノックアウト+導入遺伝子動物において、内因性座位は取り除かれ、又は損傷を受け、完全ヒト導入遺伝子が動物のゲノムに挿入され、恐らく、ランダムにゲノムに組み込まれる。通常、組み込まれる導入遺伝子の位置は未知である;ヒトタンパク質の発現は、ヒト遺伝子及び/又はタンパク質アッセイ及び/又は機能アッセイの転写により測定される。上流及び/又は下流ヒト配列をヒト導入遺伝子に含めることで、導入遺伝子の発現及び/又は制御を適切に支えることが十分にもたらされることは、明らかに推定される。
【0146】
場合によっては、ヒト制御エレメント含む導入遺伝子は、反生理的に、又は別の点で不十分に発現し、実際、動物にとって有害であり得る。本開示は、内因性制御エレメントの制御下で、内因性座位においてヒト配列で置き換えることによって、ヒト化動物の生理機能の文脈において、置き換えられた遺伝子の生理機能が有用かつ適切である、有用なヒト化動物をもたらす、生理学的に適切な発現パターン及びレベルがもたらされることを開示する。
【0147】
例えば、生理学的に適切な方法で、ヒト又はヒト化TFR1タンパク質を発現する遺伝子組換え動物は、ヒト疾患及び障害に対する治療薬の開発、並びに、動物モデルにおけるこれらのヒト治療薬の毒性及び/又は有効性の評価を含むが、これらに限定されない、様々な用途をもたらす。
【0148】
様々な態様では、TFR1とTFR1リガンド(例えば、トランスフェリン)との相互作用、又は、TFR1と抗ヒトTFR1抗体との相互作用を低下させる、又は遮断することができ、剤が免疫反応を増加させる若しくは低下させることができるか否かを試験し、及び/又は、剤がTFR1アゴニスト若しくはアンタゴニストであるか否かを測定する試験剤に対して有用な、ヒト又はヒト化TFR1を発現する、遺伝子組換え動物を提供する。遺伝子組換え動物は、例えば、疾患が遺伝により誘発される(ノックイン又はノックアウト)、例えば、ヒト疾患の動物モデルであることができる。様々な実施形態では、遺伝子組換え非ヒト動物は、免疫系の不全、例えば、ヒト異種移植片、例えば、ヒト充実性腫瘍又は血液細胞腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫、若しくは、B若しくはT細胞腫瘍)を持続させる、又は維持するように遺伝子組み換えされた非ヒト動物をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗TFR1抗体は、TFR1関連シグナル伝達経路を遮断又は阻害する。
【0149】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する抗TFR1抗体は、TFR1とトランスフェリンとの相互作用を遮断することで、例えば、エンドサイトーシスによる鉄の輸入を阻害することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する抗TFR1抗体は、TFR1と、γアミノ酪酸関連タンパク質(GABARAP)、又は、ヒトホメオスタシス鉄調節タンパク質(HFE)との相互作用を遮断することができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、癌の治療に対する抗TFR1抗体の有効性を測定するために、遺伝子組換え動物を用いることができる。本方法は、抗TFR1抗体(例えば、抗ヒトTFR1抗体)を、本明細書に記載する動物に投与することであって、上記動物が腫瘍を有する、上記投与することと、抗TFR1抗体の、腫瘍に対する阻害効果を測定することと、を伴う。測定可能な阻害効果としては、例えば、腫瘍サイズ又は腫瘍体積の減少、腫瘍増殖の低減、被験体における、(例えば、治療前の同一被験体、又は、このような治療を伴わない別の被験体における、腫瘍体積の増加率と比較しての)腫瘍体積の増加率の低下、転移の進行リスク又は1つ以上のさらなる転移の進行リスクの低下、生残率の増加、及び、平均余命の増大などを挙げることができる。被験体での腫瘍体積は、例えば、直接測定、MRI、又はCTにより測定される、様々な方法により測定することができる。さらに、TFR1は、多くの他の細胞でもまた発現するため、これらの抗体には繊細なバランスが必要とされる。したがって、内因性TFR1と比較して、ほぼ同じ方法でヒト化TFR1が機能することで、ヒト化動物での結果を用いて、ヒトにおけるこれらの治療剤の有効性又は毒性を予測することが重要である。いくつかの実施形態では、例えば、補体媒介細胞傷害(CMC)、又は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導して、癌細胞を殺傷することにより、TFR1を発現するがん細胞に対して、抗TFR1抗体を直接標的とすることができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、腫瘍は、動物に注射される1つ以上の癌細胞(例えば、ヒト又はマウス癌細胞)を含む。いくつかの実施形態では、抗TFR1抗体は、トランスフェリンがTFR1に結合するのを妨げる。いくつかの実施形態では、抗TFR1抗体は、トランスフェリンがTFR1に結合するのを妨げない。
【0152】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物を用いて、抗TFR1抗体がTFR1アゴニスト又はアンタゴニストであるか否かを測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する方法を設計して、TFR1での剤(例えば、抗TFR1抗体)の効果、例えば、剤が、免疫細胞を刺激する、若しくは免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、若しくはNK細胞)を阻害することができるか否か、剤が、サイトカインの産生を増加又は減少させることができるか否か、剤が、免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、若しくはNK細胞)を活性若しくは不活性化することができるか否か、剤が血液脳関門を通過することができるか否か;剤が免疫反応を上方制御する、若しくは免疫反応を下方制御することができるか否か、及び/又は、剤が、補体媒介細胞傷害(CMC)若しくは抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導することができるか否か、もまた測定する。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物は、被験体における疾患、例えば癌を治療するための治療剤の有効用量を測定するために使用することができる。
【0153】
腫瘍における阻害効果は、当該技術分野において既知の方法、例えば、動物における腫瘍体積を測定すること、及び/又は、腫瘍(体積)阻害割合(TGITV)を測定することによってもまた測定することができる。腫瘍増殖阻害割合は、TGITV(%)=(1-TVt/TVc)×100[式中、TVt及びTVcは、治療群及び対照群における平均腫瘍体積(又は重量)である]を用いて計算することができる。
【0154】
いくつかの実施形態では、抗TFR1抗体は、様々な癌を治療するために設計される。本明細書で使用する場合、「癌」という用語は、自律増殖能を有する細胞、即ち、急速に増殖する細胞増殖を特徴とする異常な状況又は状態を意味する。この用語は、組織変化の種類又は侵襲性のステージに関係なく、あらゆる種類の癌性増殖又は発癌性プロセス、転移性組織又は悪性形質転換細胞、組織、又は器官を含むことを意味する。本明細書で使用する場合、「腫瘍」という用語は、癌性細胞、例えば、癌性細胞の塊を意味する。本明細書に記載の方法を用いて治療又は診断可能な癌としては、肺、胸、甲状腺、リンパ系、胃腸、及び尿生殖器に影響を与えるなどの、様々な器官系の悪性腫瘍、加えて、大部分の大腸癌、腎細胞癌、前立腺癌及び/又は精巣腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸癌、並びに食道癌などの悪性腫瘍を含む腺癌が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する剤は、被験体における癌腫を治療又は診断するために設計される。「癌腫」という用語は当該技術分野において認知されており、呼吸器系癌、消化器系癌、泌尿生殖器系癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌、及び黒色腫を含む、上皮又は内分泌腺組織の悪性腫瘍を意味する。いくつかの実施形態では、癌は腎癌又は黒色腫である。例示的な癌腫としては、子宮頸、肺、前立腺、胸、頭頸、結腸、及び卵巣の組織から形成される癌腫が挙げられる。この用語は、例えば、癌性及び肉腫性組織で構成される悪性腫瘍を含む癌肉腫もまた含む。「腺癌」とは、腺組織に由来する癌腫、又は、腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する癌腫を意味する。「肉腫」という用語は当該技術分野において認知されており、間葉由来の悪性腫瘍を意味する。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する癌は、リンパ腫、非小細胞肺癌、子宮頸癌、白血病、卵巣癌、鼻咽頭癌、乳癌、子宮体癌、大腸癌、直腸癌、胃癌、膀胱癌、膠腫、肺癌、気管支癌、骨肉腫、前立腺癌、膵癌、肝及び胆管癌、食道癌、腎臓癌、甲状腺癌、頭頸癌、精巣癌、グリア芽腫、星状膠細胞腫、黒色腫、骨髄異常増殖症候群、並びに肉腫である。いくつかの実施形態では、白血病は、急性リンパ性(リンパ芽球性)白血病、急性骨髄性白血病、骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、形質細胞性白血病、及び慢性骨髄性白血病から選択される。いくつかの実施形態では、リンパ腫は、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含む、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫から選択される。いくつかの実施形態では、肉腫は、骨肉腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、滑膜肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、及び軟骨肉腫からなる群から選択される。特定の実施形態では、腫瘍は、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、黒色腫、腎臓癌、肺癌、又は肝癌である。
【0156】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する癌は、固形癌(例えば、食道扁平上皮癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、子宮頸癌、膀胱癌、骨肉腫、膵癌、胆管癌、腎細胞癌、肝細胞癌、副腎皮質癌)、神経系の癌、又は、造血性悪性腫瘍(例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、若しくは非ホジキンリンパ腫(NHL))である。
【0157】
いくつかの実施形態では、TFR1抗体は、脳腫瘍、乳癌、大腸癌、肝癌、卵巣癌、肺癌、骨肉腫、白血病、及び/又はリンパ腫を治療するために設計される。
【0158】
いくつかの実施形態では、抗TFR1抗体は、関節リウマチ、クローン病、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、又は強皮症を含む様々な自己免疫疾患を治療するために設計される。いくつかの実施形態では、抗TFR1抗体は、アレルギー、喘息、及び/又はアトピー性皮膚炎を含む、様々な免疫不全を治療するために設計される。したがって、本明細書に記載する方法を用いて、免疫反応の阻害における、抗TFR1抗体の有効性を測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する免疫不全は、アレルギー、喘息、心筋炎、腎炎、肝炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、強皮症、甲状腺機能亢進症、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、潰瘍性大腸炎、自己免疫性肝疾患、糖尿病、疼痛、及び/又は神経障害などである。
【0159】
いくつかの実施形態では、抗TFR1抗体は、様々な骨疾患、例えば、骨折、骨の変質、関節炎、骨の変形、骨粗鬆症、及び/又は、大腿骨頭の壊死を治療するために設計される。いくつかの実施形態では、抗TFR1抗体は、様々な神経変性疾患、例えば、脳虚血、脳損傷若しくは癲癇、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、及び/又は脊髄小脳失調症を治療するために設計される。
【0160】
本開示は、抗体(例えば、抗TFR1抗体)の毒性を測定する方法もまた提供する。本方法は、抗体を、本明細書に記載する動物に投与することを伴う。次に、当該動物の体重変化、赤血球数、ヘマトクリット、及び/又はヘモグロビンを評価する。いくつかの実施形態では、抗体は、赤血球(RBC)、ヘマトクリット、又はヘモグロビンを、20%、30%、40%、又は50%を超えて低下させることができる。いくつかの実施形態では、動物は、対照群の体重(例えば、抗体で治療されていない動物の平均体重)より、少なくとも5%、10%、20%、30%、又は40%を超えて下回る体重を有することができる。
【0161】
いくつかの実施形態では、疾患又は状態を治療するための抗TFR1抗体の有効性を測定するために、本明細書に記載する遺伝子組換え動物を使用することができる。いくつかの実施形態では、疾患又は状態は、鉄摂取、又は鉄関連代謝と関連している。本方法は、抗TFR1抗体(例えば、抗ヒトTFR1抗体)を、本明細書に記載する動物に投与することと、疾患又は状態における抗TFR1抗体の効果を測定することとを伴うことができる。
【0162】
いくつかの実施形態では、治療剤が血液脳関門を通過する送達効率を測定するために、本明細書に記載する遺伝子組換え動物を使用することができる。本方法は、治療剤(例えば、抗TFR1抗体若しくはその抗原結合断片;又は抗TFR1二重特異性若しくは多重特異性抗体若しくはその抗原結合断片を含む)を動物に投与することと、動物の脳及び/又は血清における、経時的な治療剤の濃度(例えば、薬物動態)を測定することとを伴うことができる。いくつかの実施形態では、治療剤は、抗TFR1抗体又はその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、剤は、抗TFR1抗体又はその抗原結合断片(例えば、抗TFR1抗体のC末端)に結合する。いくつかの実施形態では、抗TFR1二重特異性又は多重特異性抗体又はその抗原結合断片は、第2の抗原もまた標的にすることができる。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、アルツハイマー病で示唆されるタンパク質(例えば、BACE1又はアミロイドβ)である。
【0163】
いくつかの実施形態では、治療剤が中枢神経系での疾患を治療する有効性を測定するために、本明細書に記載する遺伝子組換え動物を使用することができる。本方法は、治療剤(例えば、抗TFR1抗体若しくはその抗原結合断片;又は抗TFR1二重特異性若しくは多重特異性抗体若しくはその抗原結合断片を含む)を動物に投与することと、疾患における剤の効果を測定することと、を伴うことができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、投与時、抗TFR1抗体の濃度(例えば、本明細書に記載する単一特異的、二重特異的、又は多重特異的抗TFR1抗体又はその抗原結合断片のいずれか)は、動物の脳内の対照抗体(例えば、ヒトIgG)の濃度よりも、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%高い。いくつかの実施形態では、投与時、抗TFR1抗体の濃度(例えば、本明細書に記載する単一特異的、二重特異的、又は多重特異的抗TFR1抗体又はその抗原結合断片のいずれか)は、動物の血清中の対照抗体(例えば、ヒトIgG)の濃度の、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、又は20%未満である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する治療剤(例えば、本明細書に記載する単一特異的、二重特異的、又は多重特異的抗TFR1抗体又はその抗原結合断片のいずれか)の濃度は、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも15時間、少なくとも20時間、又は少なくとも25時間にわたって測定される。特定の時点(例えば、投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30時間後)において、脳内での抗体濃度の、血清中での抗体濃度に対する比率を計算することができる。場合によっては、比率は、本明細書に記載する治療剤(例えば、本明細書に記載する単一特異的、二重特異的、又は多重特異的抗TFR1抗体又はその抗原結合断片のいずれか)に対して、少なくとも0.5、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、又は少なくとも20である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する治療剤に対する比率は、対照抗体(例えば、ヒトIgG)に対する比率と比較して、少なくとも5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍である。
【0165】
本開示は、ヒト細胞の免疫付与プロセスと関連する生成物の開発、ヒト抗体の製造、又は、薬理学、免疫学、微生物学、及び医学における研究用モデルシステムにおける、本明細書に記載する方法により生成される動物モデルの使用にもまた関する。
【0166】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒト細胞を伴う免疫付与プロセスの動物実験疾患モデルの製造及び利用、病原体の研究、又は、新しい診断方法及び/若しくは治療方法の開発における、本明細書に記載する方法により生成される動物モデルの使用を提供する。
【0167】
本開示は、TFR1遺伝子機能、ヒトTFR1抗体、ヒトTFR1標的部位用の薬剤;ヒトTFR1標的部位に対する薬剤又は有効性;免疫関連疾患用薬剤及び抗腫瘍薬剤のスクリーニング、認証、評価、又は研究における、本明細書に記載する方法により生成される動物モデルの使用にもまた関する。
【0168】
いくつかの実施形態では、本開示は、TCR-T、CAR-T、及び/又は、他の免疫療法(例えば、T細胞養子移植療法)のインビボ有効性を検証する方法を提供する。例えば、方法は、ヒト腫瘍細胞を本明細書に記載する動物に移植することと、ヒトCAR-Tを、ヒト腫瘍細胞を有する動物に適用することとを含む。CAR-T療法の有効性を測定及び評価することができる。いくつかの実施形態では、動物は、本明細書に記載の方法により調製されるTFR1遺伝子ヒト化非ヒト動物、本明細書に記載するTFR1遺伝子ヒト化非ヒト動物、本明細書に記載の方法により生成される二重又は多重ヒト化非ヒト動物(若しくはその子孫)、ヒト若しくはヒト化TFR1タンパク質を発現する非ヒト動物、又は、本明細書に記載する腫瘍を有する動物モデル若しくは炎症性動物モデルから選択される。いくつかの実施形態では、TCR-T、CAR-T、及び/又は他の免疫療法は、本明細書に記載するTFR1関連疾患を治療することができる。いくつかの実施形態では、TCA-T、CAR-T、及び/又は他の免疫療法は、本明細書に記載するTFR1関連疾患を治療するための調査方法を提供する。
【0169】
2つ以上のヒト又はキメラ遺伝子を有する遺伝子組換え動物モデル
本開示はさらに、2つ以上のヒト又はキメラ遺伝子を有する遺伝子組換え動物モデルの生成方法に関する。動物は、ヒト又はキメラTFR1遺伝子、及び、追加のヒト又はキメラタンパク質をコードする配列を含むことができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、追加のヒト又はキメラタンパク質は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、細胞毒性T-リンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、TNF受容体スーパーファミリーメンバー4(OX40)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、又はCD73であることができる。
【0171】
2つ以上のヒト又はキメラ遺伝子(例えば、ヒト化遺伝子)を含む遺伝子組換え動物モデルの生成方法は、
(a)本明細書に記載するヒトTFR1遺伝子又はキメラTFR1遺伝子を導入する方法を用いて、遺伝子組換え非ヒト動物を入手するステップと、
(b)遺伝子組換え非ヒト動物を別の遺伝子組換え非ヒト動物と交配させた後、子孫を配列決定して、2つ以上のヒト又はキメラ遺伝子を有する遺伝子組換え非ヒト動物を得るステップと、
を含むことができる。
【0172】
いくつかの実施形態では、方法のステップ(b)において、遺伝子組換え動物を、ヒト又はキメラPD-1、PD-L1、CTLA-4、OX40、LAG-3、TIM3、又はCD73を有する遺伝子組換え非ヒト動物と交配させることができる。これらの遺伝子組換え非ヒト動物のいくつかは、例えば、それぞれの全体が本明細書に参照により組み込まれている、PCT/CN2018/110069、PCT/CN2017/090320、PCT/CN2017/099574、PCT/CN2017/099577、PCT/CN2017/099575、PCT/CN2017/110435、PCT/CN2019/127084、PCT/CN2017/110494、及びPCT/CN2019/119793に記載されている。
【0173】
いくつかの実施形態では、TFR1ヒト化は、ヒト又はキメラPD-1、PD-L1、CTLA-4、OX40、LAG-3、TIM3、又はCD73遺伝子を有する遺伝子組換え動物において直接行われる。
【0174】
これらのタンパク質は異なるメカニズムを有し得るため、これらのそのタンパク質の2つ以上を標的にする併用療法が、より効果的な治療であり得る。実際、関連する多くの臨床試験が進行中であり、良好な効果を示している。これらのタンパク質の2つ以上を標的にする併用療法の有効性、例えば、抗TFR1抗体と、癌治療用の追加の治療剤との有効性を測定するために、2つ以上のヒト又はヒト化遺伝子を有する遺伝子組換え動物モデルを使用することができる。本方法は、抗TFR1抗体及び追加の治療剤を動物に投与することであって、動物が腫瘍を有する、上記投与することと、腫瘍に対する併用治療の阻害効果を測定することとを含む。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、OX40、LAG-3、TIM3、又はCD73に特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、抗CTLA4抗体(例えば、イピリムマブ)、抗PD-1抗体(例えば、ニボルマブ)、又は抗PD-L1抗体である。
【0175】
いくつかの実施形態では、動物は、ヒト若しくはヒト化PD-1をコードする配列、ヒト若しくはヒト化PD-L1をコードする配列、又は、ヒト若しくはヒト化CTLA-4をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、抗PD-1抗体(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ)、抗PD-L1抗体、又は抗CTLA-4抗体である。いくつかの実施形態では、腫瘍は、CD80、CD86、PD-L1、及び/又はPD-L2を発現する1つ以上の腫瘍細胞を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する様々な癌、例えば、黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、膀胱癌、前立腺癌(例えば、転移性ホルモン不応性前立腺癌)、進行性乳癌、進行性卵巣癌、及び/又は、進行性不応性充実性腫瘍を治療するために、併用治療が設計される。いくつかの実施形態では、転移性充実性腫瘍、NSCLC、黒色腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、及び多発性骨髄腫を治療するために、併用治療が設計される。いくつかの実施形態では、黒色腫、癌腫(例えば、膵臓癌)、中皮腫、血液悪性腫瘍(例えば、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、慢性リンパ性白血病)、又は充実性腫瘍(例えば、進行性充実性腫瘍)を治療するために、併用治療が設計される。いくつかの実施形態では、乳癌、大腸癌、子宮頸癌、線維肉腫、肝癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、卵巣癌、腎癌、皮膚癌、形質細胞腫、リンパ腫、及び/又は白血病を治療するために、併用治療が設計される。
【0177】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して、いくつかの他の方法との併用治療を評価することができる。単独で、又は、本明細書に記載する方法と組み合わせて使用可能な癌の治療方法としては、例えば、化学療法、例えば、カンプトテシン、ドキソルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、アドリアマイシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、エトポシド、ベランピル、ポドフィロトキシン、タモキシフェン、タキソール、trans白金、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及び/又はメトトレキサートによる被験体の治療が挙げられる。あるいは、またはさらに、方法は、被験体で手術を行い、癌の少なくとも一部分を除去すること、例えば、患者から、腫瘍の一部又は全てを除去することを含むことができる。
【実施例
【0178】
実施例
本発明を以下の実施例でさらに説明し、これらは、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものではない。
【0179】
材料及び方法
以下の材料を、以下の実施例で用いた。
【0180】
DraIII、EcoRV、及びAseI制限酵素を、NEBから購入した(カタログ番号:それぞれ、R3510V、R3195V、及びR0101M)。
【0181】
C57BL/6マウス及びFlpトランスジェニックマウスは、中国食品及び薬剤研究機関国立げっ歯類実験動物センターから購入した。
【0182】
精製抗マウスCD16/32抗体は、BioLegendから購入した(カタログ番号:101302)。
【0183】
Brilliant Violet 510TM抗マウスCD45抗体は、BioLegendから購入した(カタログ番号:103138)。
【0184】
PerCP/Cy5.5抗マウスTCRβ抗体は、BioLegendから購入した(カタログ番号:109228)。
【0185】
FITC抗マウスCD19抗体は、BioLegendから購入した(カタログ番号:115506)。
【0186】
Brilliant Violet 605TM抗マウスTER-119/赤血球細胞抗体は、BioLegendから購入した(カタログ番号:116239)。
【0187】
PE抗マウスCD43抗体は、BioLegendから購入した(カタログ番号:143205)。
【0188】
APC抗ヒトCD43抗体は、BioLegendから購入した(カタログ番号:343205)。
【0189】
APC抗ヒトCD71抗体は、BioLegendから購入した(カタログ番号:334107)。
【0190】
Zombie NIRTMFixable ViabilityキットはBioLegendから購入した(カタログ番号:423106)。
【0191】
Brilliant Violet 605TM抗マウスTER-119/赤血球細胞抗体は、BioLegendから購入した(カタログ番号:116239)。
【0192】
PE抗マウスCD71抗体は、BioLegendから購入した(カタログ番号:113807)。
【0193】
実施例1:ヒト化TFR1遺伝子を有するマウスの生成
非ヒト動物(例えば、マウス)のゲノムを組み換えて、遺伝子組換え非ヒト動物がヒト又はヒト化TFR1タンパク質を発現することができるように、ヒトTFR1タンパク質の全て又は一部をコードする核酸配列を含めることができる。マウスTFR1遺伝子(NCBI遺伝子ID:22042、一次資料:MGI:98822、UniProt ID:Q62351)は、染色体16(NC_000082.7)の32427714~32451612に位置し、ヒトTFR1遺伝子(NCBI遺伝子ID:7037、一次資料:HGNC:117631、UniProt ID:P02786)は、染色体3(NC_000003.12)の196018694~196082123に位置する。マウスTFR1転写物はNM_011638.4であり、対応するタンパク質配列のNP_035768.1は配列番号1に示される。ヒトTFR1転写物はNM_003234.4であり、対応するタンパク質配列のNP_003225.2は配列番号2に示される。マウス及びヒトTFR1遺伝子座位を図1に示す。
【0194】
ヒトTFR1タンパク質をコードするヌクレオチド配列の全て又は一部を、マウス内因性TFR1座位に導入し、マウスがヒト又はヒト化TFR1タンパク質を発現するようにすることができる。具体的には、マウスTFR1遺伝子制御エレメントの制御下で、ヒトTFR1タンパク質をコードするヌクレオチド配列を使用して、遺伝子編集技術を用いて対応するマウス配列を置き換え、図2に示すヒト化TFR1遺伝子座位を得ることで、マウスTFR1遺伝子をヒト化した。
【0195】
図3の標的方法の概略図に示すとおり、標的化ベクターは、マウスTFR1遺伝子の上流及び下流の相同アーム配列、並びに、ヒトTFR1遺伝子のDNA配列を含有する「A断片」を含有する。具体的には、上流相同アームの配列(5’相同アーム、配列番号3)は、NCBI受託番号NC_000082.7の、32429794~32434036のヌクレオチド配列と同一であり、下流相同アームの配列(3’相同アーム、配列番号4)は、NCBI受託番号NC_000082.7の、32449155~32453445のヌクレオチド配列と同一である。TFR1遺伝子由来のヒトゲノムDNA配列(配列番号5)は、NCBI受託番号NC_000003.12の、196051942~196074099のヌクレオチド配列と同一である。
【0196】
標的化ベクターは、ポジティブクローンスクリーニング用の抗生物質耐性遺伝子(ネオマイシンリン酸転移酵素遺伝子、又はNeo)、及び、Neoカセットを形成した抗生物質耐性遺伝子に隣接する、2つのFrt組換え部位もまた含む。Neoカセットの5’末端とヒト配列との接続は、5’-TAGCCTCCTTTAGAATTTTAACCTTAGAAGATTAGCATTAGCCAATTGCATCTGGCGAATCGGACCCACAAGAGCACTGAGGTCGGAAGTTCCTATTCTCTAGAAA-3’(配列番号6)として設計され、式中、配列「ATTAGC」中の「C」は、ヒト配列の最後のヌクレオチドであり、配列「CAATT」中の「C」は、Neoカセットの最初のヌクレオチドである。Neoカセットの3’末端とヒト配列との接続は、5’-TCATCAGTCCAGGATACATAGATTACCACAACTCCGAGCCTGGTTCTCAGCATTCTTTTTTCCTTACTCTGCTATAGAAA-3’(配列番号7)として設計され、式中、配列「CGAGC」中の「C」は、Neoカセットの最後のヌクレオチドであり、配列「CTGGT」中の「C」は、ヒト配列の最初のヌクレオチドである。加えて、ネガティブ選択可能なマーカーを有するコード遺伝子(ジフテリア毒素Aサブユニット(DTA)をコードする遺伝子)もまた、標的化ベクターの3’相同アームの下流に構築した。ヒト化後の、組換えマウスTFR1のmRNA配列、及びその、コードされたタンパク質配列は、それぞれ配列番号8及び配列番号9に示す。
【0197】
例えば、制限酵素消化及びライゲーションにより、標的化ベクターを構築した。構築した標的化ベクター配列を予め、制限酵素消化により確認し、その後、配列決定により検証した。電気穿孔法により、C57BL/6マウスの胚幹細胞に正しい標的化ベクターをトランスフェクトした。ポジティブ選択可能なマーカー遺伝子を用いて細胞をスクリーニングし、外来性遺伝子の組み込みを、PCR(PCRプライマーを下表に示す)及びサザンブロットにより確認した。
【0198】
【表3】
【0199】
具体的には、マウス胚幹細胞に標的化ベクターをトランスフェクトした後、PCRにより陽性と同定されたクローンを、サザンブロットにより検証し(細胞DNAをそれぞれ、DraIII、EcoRV、及びAseIにより消化し、3つのプローブでハイブリダイズし)、正しい陽性クローン細胞をスクリーニングした。制限酵素、プローブ、及び標的断片のサイズを下表に示す。サザンブロットの検出結果を図4に示す。4つのPCR陽性胚幹細胞(ES-1~ES-4)が、無作為な挿入を伴わずに陽性クローンとして検証されたことを、結果は示す。
【0200】
【表4】
【0201】
以下のプライマーを、サザンブロット同定に用いた:
Aプローブ:
Aプローブ-F:5’-GGTGAGAAGAAACTAAACTATGCCA -3’(配列番号14)、
Aプローブ-R:5’-TCTGGTTCACCCAGGTTAGAGC -3’(配列番号15);
Neoプローブ:
Neoプローブ-F:5’-GGATCGGCCATTGAACAAGAT-3’(配列番号18)、
NeoプローブR:5’-CAGAAGAACTCGTCAAGAAGGC-3’(配列番号19)。
【0202】
スクリーニングした陽性クローン(黒色マウス)を、単離した胚盤胞(白色マウス)に導入し、得られたキメラ胚盤胞を短期間培養用培地に移し、その後、レシピエントである母(白色マウス)の卵管に移植して、F0キメラマウス(黒及び白)を作製した。F0世代のキメラマウスを野生型マウスと戻し交配させることでF1世代のマウスを得た後、F1世代のヘテロ接合マウス同士を交配させることにより、F2世代のホモ接合マウスを入手した。陽性マウスを、Flpトランスジェニックマウスともまた交配させて、ポジティブ選択可能なマーカー遺伝子を除去し(概略図を図5に示す)、その後、ヘテロ接合マウス同士を交配させることにより、ヒト化TFR1遺伝子を含むヒト化ホモ接合マウスを得た。
【0203】
TFR1遺伝子ヒト化マウスの遺伝子型を、下表に示すプライマーを用いるPCRにより検証した。例示的なF1世代のマウス(Neoカセットを除去した)の同定結果を図6A~6Dに示し、F1-01及びF1-02の番号を付けた2匹のマウスを、陽性ヘテロ接合マウスと同定した。用いたPCRプライマーを下表に示す。
【0204】
【表5】
ヒト化TFR1遺伝子を含む遺伝子組換えマウスを、本明細書に記載の方法を用いて構築することができることを、結果は示す。マウスは、無作為挿入を伴わずに安定して継代することができる。
【0205】
例えば、フローサイトメトリー又は蛍光活性化細胞選別(FACS)により、陽性マウスでのヒト化TFR1タンパク質の発現を確認することができる。具体的には、7週齢のメスC57BL/6野生型マウスを1匹、及び、7週齢のメスTFR1遺伝子ヒト化ヘテロ接合マウスを1匹選択した。頚椎脱臼による安楽死の後、骨髄組織を収集し、細胞を、精製抗マウスCD16/32抗体(抗マウスCD16/32抗体);Brilliant Violet 510TM抗マウスCD45抗体(抗マウスCD45抗体);PerCP/Cy5.5抗マウスTCRβ抗体(抗マウスTCRβ抗体);FITC抗マウスCD19抗体(抗マウスCD19抗体);Brilliant Violet 605TM抗マウスTER-119/赤血球細胞抗体(抗マウスTER-119抗体);PE抗マウスCD43抗体(抗マウスCD43抗体);APC抗ヒトCD43抗体(hCD43-PE;抗ヒトCD43抗体);PE抗マウスCD71抗体(mTFR1;抗マウスTFR1抗体);及び、APC抗ヒトCD71抗体(hTFR1;抗ヒトTFR1抗体)で染色した後、フローサイトメトリー検出を行った。
【0206】
C57BL/6マウスの脾臓内のB細胞(mCD45+mCD19+を特徴とする)の50.6%が、mTFR1陽性(mCD45+mCD19+mTFR1+を特徴とする)であり、0.20%がhTFR1陽性(mCD45+mCD19+hTFR1+を特徴とする)であることを、結果は示した。TFR1遺伝子ヒト化ヘテロ接合マウスの脾臓内では、B細胞の32.9%がmTFR1陽性(mCD45+mCD19+mTFR1+を特徴とする)であり、11.3%がhTFR1陽性(mCD45+mCD19+hTFR1+を特徴とする)であった。ヒト化TFR1ではなく、マウスTFR1の発現が野生型マウスの脾細胞で検出された;一方で、マウスTFR1及びヒト化TFR1の両方の発現が、TFR1遺伝子ヒト化ヘテロ接合マウスにおいてインビボで検出されたことを、結果は示した。TFR1は、TFR1遺伝子ヒト化マウスにおいて正常に発現することができることを、上記実験結果は示している。
【0207】
F2世代のTFR1遺伝子ヒト化ホモ接合マウスを、F1世代のヘテロ接合マウスを交雑することにより入手した。TFR1遺伝子ヒト化ホモ接合マウスにおけるmRNAの転写を、RT-PCRにより検出した。具体的には、7週齢のメスC57BL/6野生型マウスを1匹、及び、TFR1遺伝子ヒト化ホモ接合マウス(本明細書に記載の方法を用いて生成される)を1匹選択した。頚椎脱臼による安楽死の後、マウス脾細胞を収集した。TRIzolTMキットの取扱説明書に従い細胞RNAを抽出した。次に、抽出した細胞RNAをcDNAに逆転写し、その後、以下に示すプライマーを用いるRT-PCRにより検出した。図7A~7Cに示すとおり、ヒト化TFR1 mRNAではなく、マウスTFR1 mRNAのみが、C57BL/6野生型マウスにて検出された。対称的に、マウスTFR1 mRNAではなく、ヒト化TFR1 mRNAのみが、TFR1遺伝子ヒト化ホモ接合マウスにて検出された。
【0208】
以下のプライマーを、RT-PCR検出において用いた:
PCR-F1:5’-CTCTGCTTTGCAGCTATTGCAC-3’(配列番号27)、
PCR-R1:5’-CAGGATTCTCCACCAGGTAAACA-3’(配列番号28)、
PCR-F2:5’-GTTCGAGAGTCACCACGCTGAG-3’(配列番号29)、
PCR-R2:5’-GGCAACCCTGATGACTGAGATG-3’(配列番号30);
GAPDH-F:5’-TCACCATCTTCCAGGAGCGAGA-3’(配列番号16)、
GAPDH-R:5’-GAAGGCCATGCCAGTGAGCTT-3’(配列番号17)。
【0209】
上述のフローサイトメトリーを用いる、同様の方法を用いて、TFR1遺伝子ヒト化ホモ接合マウスにおける、ヒト化TFR1タンパク質の発現を検出することができる。具体的には、7週齢のメスC57BL/6野生型マウスを1匹、及び、7週齢のメスTFR1遺伝子ヒト化ホモ接合マウスを1匹選択した。頚椎脱臼による安楽死の後、骨髄組織を収集し、細胞を、精製抗マウスCD16/32抗体(抗マウスCD16/32抗体);Brilliant Violet 605TM抗マウスTER-119/赤血球細胞抗体(抗マウスTER-119抗体);PE抗マウスCD71抗体(mTFR1;抗マウスTFR1抗体);及び、APC抗ヒトCD71抗体(hTFR1;抗ヒトTFR1抗体)で染色した後、フローサイトメトリー検出を行った。C57BL/6マウスの骨髄中の赤血球細胞(mTer119+を特徴とする)の14.2%がmTFR1陽性(mTer119+mTFR1+を特徴とする)であり、0.087%がhTFR1陽性(mTer119+hTFR1+を特徴とする)であったことを、結果は示した。TFR1遺伝子ヒト化ホモ接合マウスの骨髄において、赤血球細胞の0.04%がmTFR1陽性であり、10.1%がhTFR1陽性であった。本明細書に記載の方法を用いて生成したTFR1遺伝子ヒト化マウスは、ヒト化TFR1タンパク質をインビボで上手く発現することができることを、結果は示す。
【0210】
さらに、野生型C57BL/6マウス及びTFR1遺伝子ヒト化ホモ接合マウスの、脾臓、リンパ節、及び末梢血中での白血球及びT細胞を、フローサイトメトリーによる免疫表現型検出のために収集した。日常的な血液検査及び生化学試験もまた、行った。白血球の亜型(B細胞、T細胞、NK細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、顆粒球、樹状細胞(DC細胞)、マクロファージ、単球を含む)、並びに、T細胞の亜型(CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びTreg細胞を含む)の割合、加えて、TFR1遺伝子ヒト化ホモ接合マウスの各組織試料における、日常的な血液検査及び生化学試験は、C57BL/6野生型マウスにおいて検出されたものと基本的には同じであることを、結果は示した。TFR1遺伝子のヒト化は、マウスにおける、白血球及びT細胞の分化;脾臓、リンパ組織、及び末梢血における白血球及びT細胞の成長及び分布に著しく影響を及ぼさなかったことを、結果は示す。
【0211】
実施例2:マウスにおける、抗ヒトTFR1抗体の薬物動態(PK)検出
マウスの脳組織及び血清における、抗ヒトTFR1抗体のPKプロセスを、以下のとおり検出した。TFR1遺伝子ヒト化ホモ接合マウスを選択し、無作為に対照群と治療群に分けた。対照群のマウスには、10mg/kgの対照ヒトIgG1(hIgG)を注射し、治療群マウスには、等モル量(10.9mg/kg)の、抗ヒトTFR1抗体Abを、尾静脈から注射した。マウスの脳組織及び血清試料を収集し、マウスの脳組織及び血清試料における、抗ヒトTFR1抗体Abの濃度を、抗ヒトFc抗体を用いるELISAにより測定した。図8A~8Cに示すように、治療群マウスの脳組織でのAbの濃度は、実験期間中、高レベルで維持され(図8A);血清中でのAbの濃度は時間とともに低下し(図8B);治療群マウスの、脳組織中の、血清中に対するAb濃度比は、対照群マウスの濃度比よりも著しく高かった(図8C)。TFR1遺伝子ヒト化マウスの脳は、静脈内投与された抗ヒトTFR1抗体を取り込むことができることを、結果は示す。したがって、本明細書に記載するTFR1遺伝子ヒト化マウスを、タンパク質治療薬の、中枢神経系(CNS)への効果的な送達を評価する、及び有効性を評価する動物モデルとして用いることができる。
【0212】
実施例3:インビボでの有効性検証
本明細書で生成したTFR1遺伝子ヒト化マウスを用いて、ヒトTFR1を標的にする調節物質の有効性を評価することができる。例えば、本明細書に記載するTFR1遺伝子ヒト化ホモ接合マウスに、マウス大腸癌細胞MC38を皮下播種することができる。腫瘍が約100mmまで成長したら、マウスを腫瘍サイズに基づいて、対照群、及びいくつかの治療群に、無作為に分けた。治療群マウスを無作為に選択し、ヒトTFR1を標的にする薬剤(例えば、抗体)を投与することができ、対照群には、等体積の生理食塩水を投与することができる。マウスの腫瘍体積及び体重を測定することができ、結果を用いて、例えば、マウスの腫瘍体積と体重の変化を比較することにより、薬剤のインビボ安全性及び有効性を効率的に評価することができる。
【0213】
実施例4:二重又は多重遺伝子ヒト化マウスの生成
本明細書に記載の方法を用いて生成したTFR1遺伝子ヒト化マウスを用いて、二重又は多重遺伝子ヒト化マウスモデルもまた生成することができる。例えば、実施例1において、胚盤胞マイクロインジェクション用の胚幹(ES)細胞を、組換え(例えば、ヒト又はヒト化)PD-1、PD-L1、CTLA-4、OX40、LAG3、TIM3、及び/又はCD73遺伝子などの、他の遺伝子組換えを含むマウスから選択することができる。あるいは、本明細書に記載するヒト化TFR1マウス由来の胚幹細胞を単離することができ、遺伝子組換え標的化技術を用いて、TFR1及び他の遺伝子組換えの、二重遺伝子又は多重遺伝子組換えマウスモデルを得ることができる。さらに、本明細書に記載の方法により入手したホモ接合又はヘテロ接合TFR1遺伝子ヒト化マウスを、他の遺伝子組換えホモ接合又はヘテロ接合マウスと交配させることができ、かつ、子孫をスクリーニングすることができる。メンデルの法則によれば、組換え(例えば、ヒト又はヒト化)TFR1遺伝子及び他の遺伝子組換えを含む、二重遺伝子又は多重遺伝子組換えヘテロ接合マウスを生成することが可能である。次に、ヘテロ接合マウス同士を交配させて、ホモ接合二重遺伝子又は多重遺伝子組換えマウスを得ることができる。これらの二重遺伝子又は多重遺伝子組換えマウスを、ヒトTFR1及び他の遺伝子を標的にする遺伝子制御因子の、インビボ検証のために用いることができる。
【0214】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、上記の説明は例示を目的とするものであり、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、及び修正は、以下の特許請求の範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A-6D】
図7A-7C】
図8A-8C】
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
【配列表】
2024525991000001.xml
【国際調査報告】