(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】大型車両のための適応経路追従アルゴリズム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20240709BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/24 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/65 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/644 20240101ALI20240709BHJP
B60W 40/072 20120101ALI20240709BHJP
【FI】
B60W30/10
G05D1/43
G05D1/24
G05D1/65
G05D1/644
B60W40/072
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023572186
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2022062481
(87)【国際公開番号】W WO2022248204
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/063818
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ヤンイェン
(72)【発明者】
【氏名】ラーマン,シャミ
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,レオン
【テーマコード(参考)】
3D241
5H301
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA15
3D241BA49
3D241BA62
3D241BA63
3D241BB27
3D241CA15
3D241CE04
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB20Z
3D241DC33Z
3D241DC37Z
3D241DC38Z
3D241DC41Z
5H301AA03
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301GG08
5H301GG12
5H301HH01
5H301HH15
(57)【要約】
大型車両100を基準経路Pに追従するように制御するための方法であって、方法が、車両100が追従すべき基準経路Pを取得することS1と、経路Pの近傍の車両位置xからの操舵基準として使用されることになる、経路Pに沿った目標地点Gを決定することS2であって、目標地点Gが、経路Pに沿って、車両位置xに関連付けられた基準位置x,G
0から測定される予見距離D
pだけ離れており、予見距離D
pが、基準経路Pからの車両位置xの側方偏位yに少なくとも部分的に基づいて、基準経路Pからの側方偏位yが増加するにつれて予見距離D
pが増加し、側方偏位yが減少するにつれて予見距離が減少するように決定される、ことS2と、目標地点Gに基づいて車両100を制御することS3と、を含む方法。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型車両(100)を基準経路(P)に追従するように制御するための方法であって、前記方法が、
前記車両(100)が追従すべき前記基準経路(P)を取得すること(S1)と、
前記経路(P)の近傍の車両位置(x)からの操舵基準として使用されることになる、前記経路(P)に沿った目標地点(G)を決定すること(S2)であって、前記目標地点(G)が、前記経路(P)に沿って、前記車両位置(x)に関連付けられた基準位置(x,G
0)から測定される予見距離(D
p)だけ離れており、
前記予見距離(D
p)が、前記基準経路(P)からの前記車両位置(x)の側方偏位(y)に少なくとも部分的に基づいて、前記基準経路(P)からの側方偏位(y)が増加するにつれて前記予見距離(D
p)が増加し、側方偏位(y)が減少するにつれて前記予見距離が減少するように決定される、前記決定すること(S2)と、
前記目標地点(G)に基づいて前記車両(100)を制御すること(S3)と、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記制御すること(S3)は、前記車両(100)を前記目標地点(G)に向けて少なくとも断続的に制御すること(S3)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両(100)の縦速度(U)に少なくとも部分的に基づいて、縦速度(U)が増加するにつれて前記予見距離が増加するように、前記予見距離(D
p)を決定すること(S21)をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記予見距離(D
p)を決定すること(S22)が、第1の調整パラメータ(a)にも基づいており、前記車両(100)を前記経路(P)に追従するように制御するための制御努力が、前記第1の調整パラメータ(a)の増加に伴って増加する、請求項1乃至3いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の調整パラメータ(a)が、前記基準経路(P)の曲率に応じて調節される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基準位置における前記基準経路(P)に関連付けられた求心横加速度成分を決定すること(S23)と、前記求心横加速度成分に基づいて前記第1の調整パラメータ(a)を調節することとを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記予見距離(D
p)を、以下として決定すること(S24)を含む、請求項1乃至6いずれか1項に記載の方法。
【数1】
式中、Uは前記車両(100)の前記縦速度、yは前記側方偏位、aは前記第1の調整パラメータ、b≧0は第2の調整パラメータである。
【請求項8】
前記予見距離(D
p)を、以下として決定すること(S25)を含む、請求項1乃至7いずれか1項に記載の方法。
【数2】
式中、Uは前記車両(100)の前記縦速度、yは前記側方偏位、aは前記第1の調整パラメータ、b≧0は第2の調整パラメータ、L
0は最小予見距離である。
【請求項9】
前記第2の調整パラメータbは、前記車両(100)の前記縦速度Uに依存する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の調整パラメータは、以下によって与えられる、請求項9に記載の方法。
【数3】
【請求項11】
前記基準経路(P)に関連付けられた第1のフロー場の方向wを以下として決定すること(S26)を含み、
【数4】
式中、t
1は、基準位置(G
0)で評価された前記基準経路(P)への単位長接線ベクトル、t
2は、目標地点(G)で評価された前記基準経路(P)への単位長接線ベクトル、t
3は、前記車両位置(x)から前記目標地点(G)に向かう単位長ベクトル、角度θは、前記2つの接線ベクトルt
1及びt
2間の角度の半分であり、前記車両が、前記第1のフロー場の前記方向w
1に従って制御される(S3)、請求項1乃至10いずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記目標地点は、最小予見距離L
0が強制されない予見距離(D
p)に従って決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記車両は、前記側方偏位(y)が閾値側方偏位(y
max)を超えるときには前記第1のフロー場の前記方向w
1に従って、また第2のフロー場の方向w
2に従って制御され(S3)、前記第2のフロー場が前記第1のフロー場よりも弱い復元作用を有する、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
最初に、前記第1のフロー場と、前記基準位置(G
0)で評価された前記基準経路(P)への前記接線ベクトルt
1とを補間することによって、前記第2のフロー場を生成すること(S11)をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のフロー場は、前記閾値側方偏位(y
max)での前記第1のフロー場と、前記基準位置(G
0)で評価された前記接線ベクトルt
1とを補間することによって生成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のフロー場は、前記側方偏位(y)がゼロに減少するにつれて、前記基準位置(G
0)で評価された前記接線ベクトルt
1に漸近的に近づくように生成される、請求項13乃至15いずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のフロー場の前記方向は、以下によって与えられ、
w
2=(cosΓ,sinΓ)
式中、
【数5】
∠t
1は、前記基準位置(G
0)で評価された前記接線ベクトルの配向、
【数6】
は、前記閾値側方偏位(y
max)に対して評価された前記第1のフロー場の配向である、
請求項13乃至16いずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
純粋追跡に基づく経路追従アルゴリズムに従って前記車両(100)を制御すること(S31)を含み、前記基準位置(x)が前記車両位置に等しい、請求項1乃至17いずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ベクトル場誘導に基づく経路追従アルゴリズムに従って前記車両(100)を制御すること(S32)を含み、前記基準位置(G
0)が、前記車両位置(x)を通る前記基準位置(G
0)で前記経路(P)に直交する直線が交差する前記経路(P)上の位置である、請求項1乃至18いずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記車両を制御することは、車線維持支援、LKA、機能、半自動運転アプリケーション、または自動運転アプリケーションを実行すること(S33)を含む、請求項1乃至19いずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
大型車両(100)を基準経路(P)に追従するように制御するための制御ユニット(130、140、150)であって、前記制御ユニットが、
前記車両(100)が追従すべき前記基準経路(P)を取得することと、
前記経路(P)の近傍の車両位置(x)からの操舵基準として使用されることになる、前記経路(P)に沿った目標地点(G)を決定することであって、前記目標地点(G)が、前記経路(P)に沿って、前記車両位置(x)に関連付けられた基準位置(x,G
0)から測定される予見距離(D
p)だけ離れており、
前記予見距離(D
p)が、前記基準経路(P)からの前記車両位置(x)の側方偏位(y)に少なくとも部分的に基づいて、前記基準経路(P)からの側方偏位(y)が増加するにつれて前記予見距離(D
p)が増加し、側方偏位(y)が減少するにつれて前記予見距離が減少するように決定される、前記決定することと、
前記目標地点(G)に基づいて前記車両(100)を制御することと、
を行うように構成された処理回路(1010)を含む、前記制御ユニット(130、140、150)。
【請求項22】
請求項21に記載の制御ユニット(130、140、150)を備える、大型車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、主として、トラック及びセミトレーラ車両などの大型車両に関するが、本明細書に開示された技術は、他のタイプの車両に使用することもできる。本開示は、特に、予見距離または前方注視距離に基づく、車両制御において使用するための経路追従方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先進運転支援システム(ADAS)、及び自律車両による自動運転(AD)を制御するための方法は、通常は何らかの形態の経路追従アルゴリズムに基づいて車両を制御する。制御システムは、最初に、例えば、現在の輸送ミッションに基づいて、ある場所から別の場所へ車両を進めるために取り得るルートを示すマップデータと併せて、車両が辿るべき所望の経路を決定する。
【0003】
経路追従は、車両が追従すべきあるターゲット経路に従うための各時点における車両速度及び操舵を決定する方法に関するプロセスである。文献には利用可能な多くの異なるタイプの経路追従アルゴリズムがあり、各アルゴリズムにそれぞれ利点及び欠点が伴う。
【0004】
純粋追跡は、比較的低い複雑さで実現可能な周知の経路追従アルゴリズムであり、例えば、R.C.Coulter著「Implementation of the pure pursuit path tracking algorithm」(Carnegie-Mellon University,Pittsburgh PA Robotics INST,1992)に記載されている。このアルゴリズムは、操舵角を含む一組の車両制御を計算し、この車両制御に従って、車両は、現在の位置から追従すべき経路に沿って所定の「予見」距離離れた地点に向かって移動する。純粋追跡法では、車両が、経路に沿って車両から予見距離だけ隔てられた地点を「追いかける」ので、このように呼ぶ。
【0005】
ベクトル場誘導は、代わりにベクトル場に基づいて車両を制御する別の経路追従アルゴリズムであり、このベクトル場もまた、予見距離または前方注視パラメータに基づいて決定される。ベクトル場誘導法は、例えば、論文「An Automated Driver Based on Convergent Vector Fields」(Proc.Inst.Mech.Eng.Part D,vol.216,pp.329-347,2002)においてGordon、Best及びDixonによって論じられている。
【0006】
US2014180543A1は、基本操舵量算出部が、自車両を走行車線に沿った基本ルートで走行させるための基本操舵量を算出する車両制御デバイスを開示している。横位置及びヨー角で示される車両の姿勢状態を姿勢検出部が検出する。基礎ルートと横位置との間のオフセット距離をオフセット距離検出部が検出する。修正操舵量算出部が、仮想修正ルートに沿って自車両を駆動するための操舵制御量として修正操舵量を算出する。仮想修正ルートを用いることにより、自車両の姿勢が、所定の仮想ターゲット地点において所定のターゲット姿勢に合わせられる。指示操舵量算出部が、基本操舵量と修正操舵量とに基づいて指示操舵量を算出する。
【0007】
EP2251238A1は、車線マークの認識精度が低下した時でも運転を継続することができる車両走行支援デバイスを開示している。
【0008】
これらのタイプの経路追従プロセスの挙動においては、予見距離パラメータが重要な役割を果たす。経路追従方法を連結式の大型車両での使用により適したものにするためには、このパラメータを求める改善された方法が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】R.C.Coulter著「Implementation of the pure pursuit path tracking algorithm」(Carnegie-Mellon University,Pittsburgh PA Robotics INST,1992)
【非特許文献2】Gordon、Best及びDixon著「An Automated Driver Based on Convergent Vector Fields」(Proc.Inst.Mech.Eng.Part D,vol.216,pp.329-347,2002)
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US2014180543A1
【特許文献2】EP2251238A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、経路追従操作中に大型車両を制御するための方法及び制御ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、大型車両を基準経路に追従するように制御する方法によって達成される。本方法は、車両が追従すべき基準経路を取得することを含む。この方法はまた、経路に沿った目標地点であって、経路の近傍の車両位置からの操舵基準として使用されることになる目標地点を決定することを含み、目標地点が、経路に沿って、車両位置に関連付けられた経路上の基準位置から測定される予見距離だけ離れている。予見距離は、本開示の方法によれば、基準経路からの車両位置の側方偏位に少なくとも部分的に基づいて、基準経路からの側方偏位が増加するにつれて予見距離が増加し、側方偏位が減少するにつれて予見距離が減少するように決定される。本方法はまた、目標地点に基づいて車両を制御することを含む。このようにすれば、有利には、車両は、ターゲット経路からの車両の側方偏位に応じて車両自体の経路追従挙動を調節するようになる。車両が横方向にターゲット経路から遠くに離れている場合には、車両がターゲット経路に横から近づいているときに比べて、車両はターゲット経路上のさらに離れた地点を目指すようになる。このような挙動により、車両による経路追従性能が改善されるようになる。
【0013】
態様によれば、車両が目標地点に向かって制御されるという意味で、または車両が目標地点に向かって少なくとも断続的に制御されるという点において、車両が目標地点に基づいて制御される。
【0014】
本方法はまた、態様によれば、少なくとも部分的に車両の縦速度に基づいて、縦速度が増加するにつれて予見距離が増加するように、予見距離を決定することを含む。速度に対するこの追加の依存性により、車両による経路追従挙動がさらに改善される。
【0015】
本方法はさらに、態様によれば、予見距離を決定することが、第1の調整パラメータにも基づいており、車両を経路に追従するように制御するための制御努力が、第1の調整パラメータの増加に伴って増加する。この調整パラメータは、車両挙動をカスタマイズするために使用され得る。車両経路追従挙動はまた、種々の車両タイプに合わせて微調整され得る。また、経路追従挙動は、例えば車両負荷に応じて調節され得る。第1の調整パラメータはまた、例えば、基準経路の曲率に応じて調節され得る。このようにして、カーブでの車両の経路追従を調節して、経路追従挙動を改善することができる。
【0016】
開示された方法は、基準位置における基準経路に関連付けられた求心横加速度成分を決定することと、求心横加速度成分に基づいて第1の調整パラメータを調節することとをさらに含むことができる。第1の調整パラメータaを、a=f(κ)の形の式に従って適応させることにより、より高い精度が必要な場合には常に、制御努力が経路追従に有利に適用される。ここで、κはターゲット経路の曲率の尺度であり、f(κ)は増加関数であり得る。
【0017】
予見距離は、例えば、以下として求めることができる。
【数1】
式中、Uは車両の縦速度、yは側方偏位、aは第1の調整パラメータ、b≧0は第2の調整パラメータである。この比較的単純な式は、限られた計算量でリアルタイムに評価可能であり、このことは有利な点である。例えば次の式に従って、予見距離を最小予見距離L
0に制限することにより、さらなる利点が得られる場合がある。
【数2】
ここでもまた、Uは車両(100)の縦速度、yは側方偏位、aは第1の調整パラメータ、b≧0は第2の調整パラメータ、L
0は最小予見距離である。パラメータbは、ターゲット経路に近い挙動を修正するために使用可能な調節パラメータである。もちろん、1つ以上のパラメータを含む他の式f(・)もまた、次のように予見距離を決定するために使用できる。
【数3】
【0018】
いくつかの実施形態では、第2の調整パラメータbは定数である。他の実施形態では、第2の調整パラメータbは、車両の縦速度Uの関数である。特に、第2の調整パラメータは、以下によって与えられてもよい。
【数4】
【0019】
本明細書で開示する方法は、ベクトル場経路追従方法と有利に組み合わせることができ、その人工フロー誘導方法がサブセットに相当する。直線状のターゲット経路の場合、ベクトル場は直接的に予見地点を指し示す。より一般的には、カーブでは、基準経路を任意選択的に以下として求めることができる。
【数5】
式中、t
1は、基準位置で評価された基準経路への単位長接線ベクトル、t
2は、目標地点で評価された基準経路への単位長接線ベクトル、t
3は、車両位置から目標地点に向かう単位長ベクトル、角度θは、2つの接線ベクトルt
1及びt
2間の角度の半分である。これにより、コーナリング時の車両制御が改善する。本開示の後のセクションでは、式w
1を第1のフロー場と呼ぶ。好ましくは、ベクトルt
2及びt
3を計算する目的で、最小予見距離L
0を強制することなく計算された予見距離(D
p)に従って目標地点が決定される。
【0020】
人工フロー誘導方法を適用する実施形態のさらなる発展形態では、車両は、現在の側方偏位に基づいて選択的に制御される。より正確には、車両は、側方偏位(y)が閾値(ymax)を超えるときには第1のフロー場の方向w1に従って、また第2のフロー場の方向w2に従って制御される場合があり、第2のフロー場が第1のフロー場よりも弱い復元作用を有する。これにより、特定の状況において、例えば曲率が変化している基準経路の区間において観察された振動挙動が改善する。本開示の後のセクションでは、|y|≦ymaxによって定義される区域を基準経路の境界領域と呼ぶこととする。
【0021】
本明細書に開示される方法は、例えば純粋追跡に基づく経路追従アルゴリズムと有利に組み合わされ、基準位置が車両位置に等しく、またはベクトル場誘導に基づく経路追従アルゴリズムと有利に組み合わされ、基準位置が、車両位置を通る基準位置で経路に直交する直線が交差する経路上の位置である。本明細書に開示される経路追従方法はまた、車線維持支援(LKA)機能、半自動運転、及び/または自動運転を含む車両用途において有利に使用することができる。
【0022】
本明細書では、上記の利点と関連している車両、コンピュータ可読媒体、及びコンピュータプログラム製品も開示される。
【0023】
一般に、特許請求の範囲で使用される全ての用語は、本明細書で明示的に別段の定義がない限り、技術分野における通常の意味に従って解釈されるものとする。「要素、器具、構成要素、手段、ステップなど」への全ての言及は、明示的に別段の記載がない限り、その要素、器具、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つの例を指すものとしてオープンに解釈されるべきである。本明細書に開示される任意の方法のステップは、明示的に記載されない限り、開示された順序で正確に行われる必要はない。添付の特許請求の範囲及び以下の説明を検討すると、本発明のさらなる特徴及び利点が明らかになるであろう。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に記載されるもの以外の実施形態を作成できることを認識する。
【0024】
例として挙げられる本発明の実施形態のより詳細な説明が、添付図面を参照して以下に続く。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図3】純粋追跡に基づく方法による経路追従を例示する。
【
図4】ベクトル誘導に基づく方法による経路追従を例示する。
【
図5】異なる予見距離設定に対する経路追従挙動を例示する。
【
図6】車両制御機能アーキテクチャを概略的に例示する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで、本発明の特定の態様を示す添付図面を参照しながら、本発明はより完全に以下に説明される。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載された実施形態及び態様に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、本発明の範囲が当業者に十分に伝わるように、例として提供されるものである。同様の数字は、明細書全体を通して同様の要素を指す。
【0027】
本明細書に説明され、図面に例示される実施形態に、本発明は限定されないことが理解されるべきであり、むしろ、添付の特許請求の範囲内で多くの変更及び修正が行われてもよいことが、当業者には認識されよう。
【0028】
図1は、本明細書で開示される技術を有利に適用できる貨物輸送用の車両100の例を例示する。車両100は、既知の方法でトレーラユニット120を牽引するように構成されたトラックまたは牽引車両110を含む。
図1のトラクタ110の例は、経路追従及び車両運動管理など、様々な車両制御機能を実行するように構成された車両制御ユニット(VCU)130を備える。トレーラユニット120は、任意選択的にVCU140を含むこともできる。車両100は、任意選択的に、ワイヤレスリンクを介して、リモートサーバ150に接続される。リモートサーバ150もまた、制御ユニットを備える。本明細書に開示される技術は、制御ユニット130、140、150のいずれかによって、または1つ以上の制御ユニットの組み合わせによって実施することができる。車載VCU130、140を、リモートサーバ150によってパラメータ化することもできる。
【0029】
図2は、例えばトラクタ110に搭載のホイール210を、ここでは電気機械(EM)などのパワーステアリング装置230及び推進装置220を備える、いくつかの運動支援デバイス(MSD)の例によって制御するための機能200を概略的に例示する。パワーステアリング装置230及び推進装置220は、1つ以上のMSD制御ユニット240によって制御可能なアクチュエータの例である。
【0030】
交通状況管理(TSM)機能270は、例えば、1~10秒程度の時間軸で運転操作を計画する。このタイムフレームは、例えば車両100がカーブを通過するのにかかる時間に対応する。TSMが計画し実行する車両操縦は、加速度プロファイル及び曲率プロファイルと関連付けられ得、これらは、所与の操縦での所望の車両速度及び旋回を表す。TSMは、車両運動管理(VMM)機能250から所望の加速度プロファイルareq及び曲率プロファイルcreqを継続的に要求し、車両運動管理(VMM)機能250は、安全かつロバストな方法でTSMからの要求を満たすために力配分を実行し、異なるMSDに要求を伝える。VMM機能250は、力発生及びMSD連係の両方を管理する。すなわち、VMM機能250は、TSM機能270からの要求を満たすために、例えば、TSMによって要求された要求加速度プロファイルに従って車両を加速させるために及び/または同様にTSMによって要求された車両による特定の曲率運動を発生させるために、どの力が車両ユニットで必要とされるのかを判定する。力は、例えば、ヨーモーメントMz、縦力Fx、及び横力Fy、ならびに異なるホイールに加えられる異なるタイプのトルクを含み得る。
【0031】
MSD制御ユニット240、VMM機能250、及びTSM機能270は共に、車両制御の基礎となり得る種々の車載センサ260からのセンサデータにアクセスすることができる。これらのセンサは、例えば、全地球測位システム(GPS)の受信機、視覚ベースのセンサ、ホイール速度センサ、レーダーセンサ及び/またはライダーセンサを含んでいてよい。センサは、とりわけ、基準経路に対する車両位置を特定するように構成されている。
【0032】
図3及び
図4は、本明細書に開示する技術の少なくともいくつかを有利に使用することができる、2つの経路追従方法の例を例示する。
【0033】
図3は、純粋追跡アルゴリズムが、意図した経路または基準経路Pに追従するように車両を制御し得る方法の例300を示す。車両は、車両位置xにおいて、基準経路Pから側方偏位yの状態で位置している。基準経路からの側方偏位は、多数の異なる手法で決定できることが理解される。本明細書で用いられる定義は、
図3に例示されているように、経路Pに対して直交する線yに沿った、車両位置xから基準経路Pまでの距離である。本明細書に開示された一般的な概念は、もちろん、側方偏位の他の定義にも適用可能である。
【0034】
例300では、車両はホイールベース長Lを有する。純粋追跡アプローチの背後にある一般的な着想は、車両を現在の位置xから基準経路P上の目標地点Gに移すことになる曲率を算出することである。目標地点は、半径Rを有する円を、この円が目標地点と現在の車両位置xとの両方を通過するように定めることによって求められる。次いで車両は、
図3に示されているように、この円に対して決定された操舵角αによって制御される。目標地点Pの選択は、純粋追跡アルゴリズムの挙動において重要な役割を果たす。目標地点は、車両位置xから目標地点までの距離が常に予見距離D
pに等しくなるように選択される。
【0035】
この種の純粋追跡アルゴリズムに関するさらなる詳細が、R.C.Coulter著「Implementation of the pure pursuit path tracking algorithm」(Carnegie-Mellon University,Pittsburgh PA Robotics INST,1992)に掲載されており、また、Park、Myung-Wook、Sang-Woo Lee、及びWoo-Yong Han著「Development of lateral control system for autonomous vehicle based on adaptive pure pursuit algorithm」(14th International Conference on Control, Automation and Systems(ICCAS 2014),IEEE,2014)にも掲載されている。
【0036】
図4は、ベクトル場誘導に基づく経路追従法の例400を例示する。この方法では、ベクトル場410が生成され、車両は、現在の車両位置xでのベクトルwに従って制御される。各ベクトルwは、それが位置xから基準経路P上のそれぞれの目標地点Gを向くように決定される。この目標地点は、再び予見距離D
pに基づいて決定されるが、ここでは予見距離は、基準経路P上の基準位置G
0から基準経路Pに沿って測定された距離である。この基準位置G
0は、
図4に示すように、基準位置G
0で経路Pに直交する、車両位置xをも通る直線が交わる経路P上の位置である。ベクトル場誘導に基づく方法は、「An Automated Driver Based on Convergent Vector Fields」(Proc.Inst.Mech.Eng.Part D,vol.216,pp.329-347(2002))においてGordon、Best及びDixonによって論じられている。著者のSong M、Wang N、Gordon T,及びWang J.は、Vehicle System Dynamics,2019 Aug 3;57(8):1090-107に公表された「Flow-field guided steering control for rigid autonomous ground vehicles in low-speed manoeuvring」でも、ベクトル場に基づく方法について論じている。ベクトル場に基づく誘導に関するいくつかの追加の詳細が、Semsar-Kazerooni,Elham et al.によって、IFAC-PapersOnLine 50.1(2017):15006-15011の「Multi-objective platoon maneuvering using artificial potential fields」に提供されている。
【0037】
ベクトル場誘導に基づく経路追従方法の若干進んだバージョンについては、後で
図7に関連して説明する。
【0038】
純粋追跡及びベクトル場に基づく経路追従法は両方とも、前方注視距離と称されることもある予見距離Dpに依存する。予見距離は、目標地点が車両の位置から基準経路Pに沿ってどのくらい離れているかに関係する。直観的には、予見距離Dpが短いほど、側方偏位yをより迅速に低減するために、制御努力の増大を招き、すなわち、操舵制御動作をより強力にすることになる。その代わりに、予見距離Dpが長くなると、制御努力の低減を招き、それに伴い、制御動作はより円滑で緩慢になる。予見距離Dpが長くなれば、当然、車両100がコーナーを首尾よく曲がる能力及びより急なカーブを曲がる能力を低下させてしまい、したがって不利益になる。
【0039】
本明細書では、制御努力という用語は、車両を軌道により接近させるときに費やされる労力の量として解釈されるべきである。制御努力は、例えば、横加速度、車両のヨーレート、発生した横滑り、適用された操舵角の大きさ、車両のアクチュエータによる全体的な消費エネルギーなどに関して測定されてもよい。
【0040】
図5は、経路Pから側方偏位yの状態で車両位置xを起点として、真っ直ぐな基準経路Pに追従する際の、2つの異なる予見距離D
pの設定の効果を例示する。例510は、予見距離が比較的大きく選択された場合に何が起こるかを示し、例520は、予見距離が短くなるように選択された場合に何が起こるかを示す。
【0041】
本明細書に開示された技術は、意図した経路Pからの側方オフセット(または偏位)yに応じて予見距離Dpを調節することによって、自動化車両または半自動化車両の誘導を改善する。さらなる改善は、前後方向、すなわち車両の進行方向での車両速度に応じて予見距離を変更することによっても得ることができる。
【0042】
現在の経路追従方法は、予見距離Dpを設定するためのアルゴリズムが不完全でありかつ場当たり的なものであることに悩まされている。例えば、速度に比例して、またはいくつかの道路曲率基準の関数として、Dpを設定することが提案されている。これらの適応は、曲率が大きいときには予見距離を減少させ、曲率が小さいときには予見距離を増大させるように行われる。しかしながら、現行手法では、ターゲット経路Pからの側方オフセットyは考慮されない。その結果、車両がターゲット経路に近いとき、すなわち追尾誤差が比較的小さいときには、制御努力が低減され、かつオフトラッキング性能が悪化する。そのため、例えば車両100などの連結式車両のオフトラッキング性能に悪影響を及ぼす。
【0043】
車両が基準経路Pに近いときの経路追従性能を改善するために、基準経路からの側方偏位yをも含む拡張された一連の基準に基づいて、予見距離を連続的に調節することを提案する。それによって、ターゲット経路の近くでは制御努力が少ないという問題を軽減する。実際に、一部の状況においては、基準経路Pからの現在の側方偏位に依存することなく、安定した制御努力が生じるように、予見距離を設定することができる。
【0044】
本明細書に開示された新規の技術的特徴の1つは、制御努力と密接に関係している設計パラメータを用いて、複数の基準に基づく予見距離を適応させることである。経路追従方法は、任意選択でベクトル場誘導に基づいており、このベクトル場誘導により、上述の
図4に例示されているように、ターゲット運動方向(または加速度)を与えるベクトル場が構築される。
【0045】
本明細書に開示された方法の別の特徴は、制御努力が、いくつかの所望の制御努力に向かって調節されるか、または少なくとも望ましい最大の制御努力を下回って維持されることが可能であり得る。この制御努力は、車両の状態またはタイプに応じて決定可能であり、場合によっては、道路摩擦が低いまたは高い場合など、道路状況にも応じて決定可能である。例えば、道路摩擦が低い状況において、かつ車両が重量物を運んでいる場合には、制御努力が軽減され得る。
【0046】
本明細書で説明している技術を、
図6に例示された制御アーキテクチャ600によって示されているように、速度、曲率及び側方オフセット(または偏位)に応じてリアルタイムで動作する「予見地点監視」として動作させるように構成することができる。車両620から予見地点調節モジュール610へのフィードバックループが破線として示されている。これは、速度及び側方オフセットなどの緩慢に変化する変数のみが使用されることを示す。ヨーレート及び車体横滑り角などの動的状態は使用されない。なぜなら、これらの状態に従ってD
pを適応させると、下層制御ループ、すなわち、車両100のVMM250によって実行される制御機能及びまたは車両100のMSD制御ユニット240で実行される制御機能の動的安定性が妨げられる可能性があるためである。人工フロー誘導(AFG)などのベクトル場誘導に基づく方法では、フローマップに関連付けられた車両状態のみが、破線でフィードバックされる。
【0047】
決定された予見距離Dpは、例えばベクトル場に基づく経路追従方法を実施することができる経路フォロワモジュール640に送られる。次いで、車両100は、既知の手法で、生成された基準データに基づいて制御される。すなわち、この制御の一部として、経路フォロワモジュールは、制御信号を様々な車両制御ユニットに伝送する。純粋追跡に基づく経路追従ストラテジでは、制御信号は操舵角コマンドを含むが、より一般的には、制御信号は曲率要求及び/またはフローベクトル方向を含む場合がある。
【0048】
予見地点調節モジュール610は、マップ機能630からの幾何学的データと車両状態信号とに基づいて、使用する現在の予見距離D
pを決定する。この予見距離は、少なくとも部分的に、基準経路Pからの側方偏位yに基づいて、基準経路Pからの側方偏位yが増加するにつれて予見距離D
pが増加し、側方偏位yが減少するにつれて予見距離が減少するように決定される。純粋追跡アルゴリズムでは、側方偏位yは
図3に示されているように決定され、ベクトル場に基づく方法では側方偏位は
図4に示されているように決定される。もちろん、側方偏位を定義する他の手法も可能であり、この場合、全ての手法に共通するのは、側方偏位yが、基準経路から横方向に車両位置xまで、何らかの手法で測定された側方制御誤差を表す、ということである。
【0049】
図7は、コーナリング時、すなわち基準経路Pが曲率を有するときの経路追従を例示する。本明細書に開示される方法は、ベクトル場誘導法で有利に使用され得る。具体的には、ベクトル場内のベクトルwの方向は、「切断曲線」を回避するために、経路曲率に応じて調節され得る。例えば、コーナリング時に車両の優先方向を調節するために、以下の関係(第1のフロー場)を利用し得る。
【数6】
ここで、t
3は予見地点、または目標地点Gを直接指し示す単位長ベクトルであり、t
1及びt
2は、それぞれローカル地点G
0及びターゲット地点Gにおける単位長接線ベクトルである。角度θは、ターゲット経路上の2つの接線ベクトル間の角度の半分である。これにより、以下の特殊なケースでは、フローベクトルw
1がターゲット経路に接するようになる。すなわち、
(i)xが、ターゲット経路上に位置する、
(ii)ターゲット経路の曲率が、G
0とGとの間で一定である、
ケースである。
好ましくは、ベクトルt
2及びt
3を計算する目的で、最小予見距離L
0が強制されない予見距離(D
p)に従って目標地点が計算される。以下の加算は、経路曲率を考慮したベクトル場に対する方向調節であることが理解される。
【数7】
特別なケースt
1=t
2では、曲率はなく、ベクトルt
3の方向に対する調節もいらない。この式の形式は、車両がターゲット経路上に配置され、曲率がゼロの場合を含めて、曲率が一定である全てのケースにおいて、wがターゲット経路に接するという条件から導出される。上記の式は、曲率が変化する場合では有効なままであるが、接している状態からのわずかな偏位が生じる可能性がある。同様の概念は、「An Automated Driver Based on Convergent Vector Fields」(Proc.Inst.Mech.Eng.Part D,vol.216,pp329-347,2002)においてGordon、Best及びDixonによって論じられている。
【0050】
人工フロー誘導方法を適用する実施形態のさらなる発展形態では、車両は2つの別個のフロー場に基づいて選択的に制御され、その選択は車両の現在の側方偏位yに導かれる。より正確には、車両は、側方偏位(y)が閾値(y
max)を超えるときには第1のフロー場の方向w
1に従って、また第2のフロー場の方向w
2に従って制御される場合があり、第2のフロー場が第1のフロー場よりも弱い復元作用を有する。したがって、車両は、以下によって与えられる偏位依存方向W(y)に従って制御されることになる。
【数8】
明らかに、W(y)は車両の長手位置にさらに依存する可能性があるが、簡略化のため、本明細書で使用される表記法では明確にされない。第2のフロー場w
2は、第1のフロー場と、基準位置(G
0)で評価された基準経路(P)への接線ベクトルt
1とを補間することS11によって生成され得る。いくつかの実施形態では、第2のフロー場w
2は、閾値側方偏位y
maxで評価された第1のフロー場w
1と、基準位置(G
0)で評価された接線ベクトルt
1とを補間することによって生成され得る。さらに、第2のフロー場w
2は、側方偏位(y)がゼロに減少するにつれて、上記の接線ベクトルt
1に漸近的に近づくように生成され得る。特定の例では、第2のフロー場の方向は、以下によって与えられる。
w
2=(cosΓ,sinΓ)
式中、配向Γは、以下によって与えられる。
【数9】
∠t
1は、基準位置(G
0)で評価された上記の接線ベクトルの配向であり、
【数10】
は、閾値側方偏位(y
max)に対して評価された第1のフロー場の配向である。したがって、第2のフロー場w
2は常に、第1のフロー場と、基準位置(G
0)で評価された接線ベクトルt
1との間に配向されることになる。
【0051】
図8は、大型車両100がカーブを通って基準経路Pに沿って動く状況の例示的なシナリオ800を例示する。車両100は、縦速度Uを有しており、初期の側方偏位y1で始めて、次にy2に減少し、さらにy3に減少する。
【0052】
図9は、上記の説明を要約した方法を例示するフローチャートである。大型車両100を基準経路Pに追従するように制御する方法が例示されている。この方法は、車両100が追従すべき基準経路Pを取得することS1を含む。基準経路Pは、例えば、上記のように、マップデータと、達成すべき輸送ミッションとに基づいて決定されてよい。経路Pに対する車両の位置xは、GPS受信機、レーダトランシーバ、視覚ベースのセンサ、及びこれらに類するものなどの車載センサを使用して決定され得る。例えば、
図2に示されているTSM機能270は、所与の曲率に関連付けられたコーナリング操作を介して車両を制御することを要求する場合がある。この曲率は、次いで、コーナリング操作の間に従うべき基準経路Pを決定する。
【0053】
この方法はまた、経路Pに沿った目標地点Gであって、経路Pの近傍の車両位置xからの操舵基準として使用されることになる目標地点Gを決定することS2を含み、目標地点Gが、経路Pに沿って、車両位置xに関連付けられた基準位置x、G
0から測定される予見距離D
pだけ離れている。この方法が、純粋追跡に基づく経路追従アルゴリズムまたはこれに類するものに従って車両100を制御することS31の一部として実行されている場合には、基準位置xは単に車両位置と等しくなり得る。この方法が、ベクトル場誘導に基づく経路追従アルゴリズムに従って車両100を制御することS32の一部として実行されている場合には、上記の
図4に例示したように、基準位置G
0は、基準位置G
0で経路Pに直交しかつ車両位置xを通過する直線420と交差する経路P上の位置として決定され得る。例えば冗長性の目的で、制御ユニット130、140、150により、2つ以上の経路追従アルゴリズムを並行して実行できることが理解される。
【0054】
この方法は、有利には、車線維持支援(LKA)機能を実行することS33に適用される。これらの機能は、車両前方の道路の幾何学的形状を決定し、この道路の幾何学的形状に応じて基準経路Pを決定するために、カメラ及びレーダなどの車両搭載センサを使用し得る。道路の幾何学的形状は、例えば、既知の方法で車線マークなどから決定され得る。
【0055】
本明細書に開示する方法は、当然ながら、連結式車両100の半自動運転または自動運転にも適用可能である。
【0056】
特に、予見距離Dpは、基準経路Pからの車両位置xの側方偏位yに少なくとも部分的に基づいて、基準経路Pからの側方偏位yが増加するにつれて予見距離Dpが増加し、側方偏位yが減少するにつれて予見距離が減少するように決定される。このようにして、側方偏位が小さくなるときでも制御努力が維持される。これは、以前に提案された経路追従アルゴリズムに影響を与えることが知られている問題である。
【0057】
本方法はまた、目標地点Gに基づいて車両100を制御することS3を含む。本明細書に開示された経路追従アルゴリズムは、トラクタ110以外の車両ユニットを操舵するために適用されてもよいことが理解される。例えば、連結式車両は、自走式台車ユニットまたは動力付きトレーラなどの他の操縦可能な車両ユニットを含んでいてよい。これらの車両ユニットもまた、本明細書に開示されている技術に従って制御することができる。具体的には、ステップS3は、目標地点Gに向かって車両100を制御することを含むことができる。
【0058】
この方法は、態様によれば、任意選択的に、車両100の縦速度Uにも少なくとも部分的に基づいて、縦速度Uが増加するにつれて予見距離が増加するように、予見距離Dpを決定することS21を含む。つまり、車両がよりゆっくりと移動するときに比べて、車両が高速度で走行する場合には、より滑らかな車両制御が構成される。当然ながら、高速度での急峻な旋回操作は望ましくない。
【0059】
予見距離を決定するための戦略に、1つ以上の調整パラメータを導入することができる。例えば、この方法は、予見距離Dpを決定することS22が、第1の調整パラメータaにも基づいており、車両100を経路Pに追従するように制御するための制御努力が、第1の調整パラメータaの増加に伴って増加する。したがって、この第1の調整パラメータaは、予見距離を使用する経路追従アルゴリズムの制御努力を調節するための手段に相当する。制御努力とは、一般的に、車両を基準経路Pに近づけて従わせることを意図した車両運動管理操作の程度のことをいう。例えば、制御努力が大きければ、より小さい制御努力に比べて、より大きい横加速度が車両に生じる可能性が高い。第1の調整パラメータaは、有利なことに、基準経路Pの曲率に応じて調節可能である。例えば、基準位置における基準経路Pに関連付けられた求心横加速度成分を決定することS23と、その求心横加速度成分に基づいて第1の調整パラメータaを調節することとにより、異なる経路曲率が考慮され得る。
【0060】
第1の調整パラメータはまた、車両100が重い荷を積載しているか否か、及び場合によってはまた、車両100が新しいタイヤを履いている否かなど、車両状態または車両タイプに応じて調節されてもよい。第1の調整パラメータを、リモートサーバ150などのリモートエンティティから構成すること、または整備中に技術者によって構成することが可能である。運転者は、個人的好みまたは運転状況に応じてパラメータを手動で設定することもできる。
【0061】
例えば制限された空間での操縦時の精度を向上させるために、ターゲット経路の曲率または平均曲率に従ってDpを適応させることにより、利益を得ることができる。これは減速によって間接的に生じるが、a=f(κ)の形の式に従って加速度パラメータaを適応させることにより、さらなる利点が達成され得る。ここで、κはターゲット経路の曲率の任意の尺度であり、f(κ)は、より高い精度が必要なときには常に経路追従に費やされる制御努力が増加するように、増加関数であり得る。
【0062】
一実施例によれば、この方法は、予見距離D
pを以下のように決定することS24を含む。
【数11】
式中、Uは車両100の縦速度(
図8に示す)、yは側方偏位、aは第1の調整パラメータ、b≧0は第2の調整パラメータである。パラメータbは調節パラメータであり、この調節パラメータは、ターゲット経路に近い経路追従の挙動を制御するために用いることができる。パラメータbは、ゼロよりも大きいときには、ターゲット経路へのアプローチにおける非線形性を低減する効果を有し得る。第2の調整パラメータbは、設定可能な定数であり得る。あるいは、第2の調整パラメータbは、車両の縦速度Uの関数である。特に、第2の調整パラメータbは、例えば以下のように、速度の二次関数である。
【数12】
本発明者らは、このbの選択により、車両が縦速度に関係なく一定の角度で境界領域に進入することを実証した。
【0063】
予見距離の決定に、予見距離の下限となる最小距離を加えることもできる。すなわち、予見距離は以下になる。
【数13】
これは、
【数14】
が小さくなったとき、例えば速度Uが非常に小さいとき、または経路偏位の大きさyがゼロに向かうとき、不安定な操舵が発生する可能性があることを考慮している。L
0を使用することで、操舵アクチュエータの時間遅延に対する感度が低下し、大型車両の物理的な操縦制限が考慮される。もちろん、予見距離の他の数式f(・)もまた、このようにして下限にすることが可能である。
【0064】
図10は、本明細書の説明の実施形態による制御ユニット130、140、150、1000のコンポーネントを、いくつかの機能ユニットに関して概略的に示す。この制御ユニットは、車両100に、例えばVMMユニットまたはTSMユニットの形態で含まれていてよい。処理回路1010は、例えば、記憶媒体1030の形態のコンピュータプログラム製品に記憶されたソフトウェア命令を実行することができる、適切な中央処理装置(CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)などの1つ以上の任意の組み合わせを使用して、提供される。処理回路1010は、さらに、少なくとも1つの特定用途向け集積回路ASIC、またはフィールドプログラマブルゲートアレイFPGAとして提供され得る。
【0065】
詳細には、処理回路1010は、
図9に関連して説明した方法などの一連の動作またはステップを制御ユニット1000に実行させるように構成される。
【0066】
したがって、本明細書では、大型車両100が基準経路Pを追従するように制御するための制御ユニット130、140、150が開示される。この制御ユニットは、車両100が追従すべき基準経路Pを取得することと、経路Pの近傍の車両位置xからの操舵基準として使用されることになる、経路Pに沿った目標地点Gを決定することであって、目標地点Gが、経路Pに沿って、車両位置xに関連付けられた基準位置x,G0から測定される予見距離Dpだけ離れており、予見距離Dpが、基準経路Pからの車両位置xの側方偏位yに少なくとも部分的に基づいて、基準経路Pからの側方偏位yが増加するにつれて予見距離Dpが増加し、側方偏位yが減少するにつれて予見距離が減少するように決定される、決定することと、目標地点Gに基づいて車両100を制御することと、を行うように構成された処理回路1010を含む。
【0067】
例えば、記憶媒体1030は一連の動作を記憶してよく、処理回路1010は記憶媒体1030から一連の動作を読み出して、制御ユニット1000に一連の動作を実行させるように構成されてよい。一連の動作は、実行可能な命令のセットとして提供されてよい。したがって、処理回路1010は、本明細書で開示される方法を実行するように構成される。特に、トラクタ110と、1つ以上の被牽引車両ユニット120、130、140、150とを含む連結式車両100、300の後退を制御するための制御ユニット115、210、1000であって、この制御ユニットが、処理回路1010と、処理回路1010に結合されたインタフェース1020と、処理回路1010に結合されたメモリ1030とを備え、このメモリが、処理回路によって実行されたとき、
図8に関連して上述した方法を制御ユニットに実行させる機械可読コンピュータプログラム命令を含む、制御ユニット115、210、1000が開示される。
【0068】
例えば、記憶媒体1030は、また、磁気メモリ、光学メモリ、ソリッドステートメモリ、またはさらにリモートに搭載されたメモリのうちの任意の単一のものまたは組み合わせであり得る永続記憶装置を含み得る。
【0069】
制御ユニット1000は、さらに、少なくとも1つの外部デバイスと通信するためのインタフェース1020を含み得る。したがって、インタフェース1020は、アナログコンポーネント及びデジタルコンポーネントと、有線通信または無線通信のための適切な数のポートとを含む、1つ以上の送信機及び受信機を含み得る。
【0070】
処理回路1010は、例えば、インタフェース1020及び記憶媒体1030にデータ及び制御信号を送信することによって、インタフェース1020からデータ及び報告を受信することによって、ならびにデータ及び命令を記憶媒体1030から取り出すことによって、制御ユニット1000の通常の動作を制御する。制御ノードの他のコンポーネントならびに関連機能は、本明細書に提示される概念を不明瞭にしないために省略される。
【0071】
図11は、上記のプログラム製品がコンピュータ上で起動するとき、
図8に示される方法を行うためのプログラムコード手段1120を備えるコンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体1110を示す。コンピュータ可読媒体及びコード手段は、共に、コンピュータプログラム製品1100を形成し得る。
【国際調査報告】