(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】磁気ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
H01F 1/08 20060101AFI20240709BHJP
H01F 1/057 20060101ALI20240709BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240709BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20240709BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240709BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20240709BHJP
H10N 52/00 20230101ALI20240709BHJP
H01L 29/82 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01F1/08 130
H01F1/057 110
C22C38/00 303A
B22F1/05
B22F1/00 Y
B22F3/00 F
H10N52/00 Z
H01L29/82 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574461
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 US2022031316
(87)【国際公開番号】W WO2022256252
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン・シン
【テーマコード(参考)】
4K018
5E040
5F092
【Fターム(参考)】
4K018BA18
4K018BB04
4K018BD01
4K018BD04
4K018CA29
4K018CA31
4K018KA45
5E040AA04
5E040AA11
5E040AA19
5E040BB03
5E040BD01
5E040CA20
5E040NN01
5E040NN06
5E040NN13
5E040NN14
5F092AB01
5F092AC02
5F092BA02
5F092BA23
5F092BA37
5F092BA40
5F092DA08
5F092DA10
(57)【要約】
液晶ポリマーを含む約20vol.%~約60vol.%のポリマーマトリックスと約20vol.%~約60vol.%の磁気粒子とを含むポリマー組成物が提供される。ポリマーマトリックスの体積の磁気粒子の体積に対する比は、約0.6~約1.5である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリマーを含む約20vol.%~約60vol.%のポリマーマトリックスと約20vol.%~約60vol.%の磁気粒子とを含むポリマー組成物であって、前記ポリマーマトリックスの体積の前記磁気粒子の体積に対する比が約0.6~約1.5である、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマーマトリックスが、前記ポリマー組成物の約8wt.%~約50wt.%を構成しており、前記磁気粒子が、前記ポリマー組成物の約50wt.%~約99wt.%を構成している、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が、ISO試験番号11443:2014に従って1,000秒
-1のせん断速度および前記組成物の溶融温度よりも15℃高い温度で決定して、200Pa・s以下の溶融粘度を呈する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記ポリマー組成物が、ISO試験番号75-2:2013に従って1.8MPaの指定荷重で決定して、約280℃以上の溶融温度および/または約200℃以上の荷重たわみ温度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記液晶ポリマーが、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸から誘導された繰り返し単位を前記ポリマーの約15mol%以下の量で含有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記液晶ポリマーが、4-ヒドロキシ安息香酸から誘導された繰り返し単位を前記ポリマーの約40mol%~約80mol%の量で含有し、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸から誘導された繰り返し単位を前記ポリマーの約0.5mol%~約15mol%の量で含有する、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記液晶ポリマーが、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸から誘導された繰り返し単位を前記ポリマーの約15mol%超の量で含有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記液晶ポリマーが、4-ヒドロキシ安息香酸から誘導された繰り返し単位を前記ポリマーの約20mol%~約60mol%の量で含有し、2,6-ナフタレンジカルボン酸から誘導された繰り返し単位を前記ポリマーの約16mol%~約50mol%の量で含有する、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記磁気粒子が、JIS C2501:2019に従って23℃の温度で決定して、約300~約2,000mTの残留磁気値を呈する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記磁気粒子が、JIS C2501:2019に従って23℃の温度で決定して、約15~約200kJ/m
3の最大エネルギー積を呈する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記磁気粒子が、JIS C2501:2019に従って23℃の温度で決定して、約400~約3,000kA/mの固有保磁力を呈する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記磁気粒子が、ASTM E1582-17に従って熱重量分析によって決定して、約200℃~約400℃のキュリー温度を呈する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記磁気粒子が、約1~約200マイクロメートルのメジアン粒径を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記磁気粒子が希土類元素を含有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記希土類元素がネオジムを含む、請求項14に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記磁気粒子が、以下の一般式:
(R
1-aR’
a)
uFe
100-u-v-w-x-yZ
vM
wT
xB
y
[式中、
Rは、Nd、Pr、ジジミウム、MM、またはそれらの組み合わせであり、
MMは、ミッシュメタルまたはその合成同等物であり、
R’は、La、Ce、Y、またはそれらの組み合わせであり、
Zは、Fe以外の遷移金属、例えば、Co、Rh、Ir、Mt、Ni、Pd、Pt、Ds、またはそれらの組み合わせであり、
Mは、Zr、Nb、Ti、Cr、V、Mo、W、Rf、Ta、Db、Sg、Hf、またはそれらの組み合わせであり、
Tは、Al、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Ga、In、Ti、Ge、Sn、Pb、Si、またはそれらの組み合わせであり、
aは、0~1であり、
uは、7~13であり、
vは、0~20であり、
wは、0~5であり、
xは、0~5であり、
yは、4~12である]
を有する希土類材料を含有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
aが0.1~0.8である、請求項16に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
RがNdであり、YがCoである、請求項16に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
Mが、Zr、Nb、またはそれらの組み合わせであり、Tが、Al、Mn、またはそれらの組み合わせである、請求項18に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
炭素粒子をさらに含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
前記炭素粒子がカーボンブラックを含む、請求項20に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
前記組成物が、約0.5ミリメートルの厚さおよび400~1,500ナノメートルの波長で決定して、約4以上の光学濃度を呈する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項23】
磁気感知材料を含む磁気コンポーネントであって、前記磁気感知材料が、請求項1に記載のポリマー組成物を含む、磁気コンポーネント。
【請求項24】
前記磁気コンポーネントが磁気センサを含む、請求項23に記載の磁気コンポーネント。
【請求項25】
請求項24に記載の磁気コンポーネントを含む、電子デバイス。
【請求項26】
前記デバイスがポータブル電子デバイスである、請求項25に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本願は、2021年6月1日を出願日とする米国仮特許出願第63/195,285号および2021年9月24日を出願日とする米国仮特許出願第63/247,851号の優先権に基づき、この優先権を主張するものであり、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]磁気コンポーネント(例えば、センサ)は、多くの場合、電子デバイスに用いられる。磁気センサは、例えば、(磁場センサの)特定の軸または表面に沿った磁場を検出することができるが、他の軸または表面に沿った磁場は検出しない(または実質的に無視する)。残念なことに、ほとんどの磁気コンポーネントを形成するために使用される金属は、多くの場合、コストが高く、それらの大きなサイズを理由により小さなポータブル電子デバイスに組み込むことが困難である。同様に、より小さくかつより精密なコンポーネントの製造を可能にする磁気特性を有するポリマー組成物を使用する試みは、従来のポリマー組成物が磁気特性および高度な耐熱性の両方を呈することができないことに基づいて、困難であると考えられてきた。したがって、磁気コンポーネントにおける使用のための改善された磁気ポリマー組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
[0003]本発明の一実施形態によると、液晶ポリマーを含む約20vol.%~約60vol.%のポリマーマトリックスと約20vol.%~約60vol.%の磁気粒子とを含むポリマー組成物が開示されている。ポリマーマトリックスの体積の磁気粒子の体積に対する比は、約0.6~約1.5である。
【0004】
[0004]本発明の他の特徴および態様は、以下でより詳細に示されている。
[0005]本発明の完全かつ実現可能な開示は、当業者に対するその最良の形態を含むものであり、添付図面の参照を含む明細書の残りの部分においてより具体的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】[0006]
図1は、磁気センサを含み得る電子デバイスの一実施形態の正面斜視図である。
【
図2】[0007]
図2は、磁気センサを有する電子デバイスの例示的な回路およびコンポーネントのダイアグラムである。
【
図3】[0008]
図3は、磁気センサが様々な向きで接続された例示的なハウジングの斜視図である。
【
図4】[0009]
図4は、磁気センサが様々な向きで接続されたデバイスハウジング内の電子コンポーネントの斜視図である。
【
図5】[0010]
図5は、電子コンポーネントを覆うカウリング構造に接続された例示的な一組の磁気センサの斜視図である。
【
図6】[0011]
図6は、電子コンポーネントを覆う複数の向きの折り畳まれた部分を有するカウリング構造に接続された例示的な一組の磁気センサの斜視図である。
【
図7】[0012]
図7は、本発明のポリマー組成物を用いることができる例示的な一方向性磁気センサの上面図である。
【
図8】[0013]
図8は、本発明のポリマー組成物を用いることができる例示的な一方向性磁気センサの側断面図である。
【
図9】[0014]
図9は、フレキシブル回路への薄型結合のための段付きエッジを有する例示的な一方向性磁気センサの斜視図である。
【
図10】[0015]
図10は、本発明のポリマー組成物を含有し得る基準センサ要素を有する例示的な磁気センサの側断面図である。
【
図11】[0016]
図11は、本発明のポリマー組成物を含有し得る例示的な双方向性磁気センサの上面図である。
【
図12】[0017]
図12は、本発明のポリマー組成物を含有し得る共有基準センサ要素を有する例示的な双方向性磁気センサの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0018]当業者であれば、本議論が例示的な実施形態のみを説明するものであり、本発明のより広範な態様を限定するものとして意図されることはないと理解されたい。
[0019]一般に言うなら、本発明は、電子デバイスにおける使用のための磁気ポリマー組成物を対象とする。より具体的には、磁気ポリマー組成物は、液晶ポリマーを含むポリマーマトリックスとポリマーマトリックス内に分散された磁気粒子とを含有する。磁気粒子は、ポリマー組成物の約50wt.%~約99wt.%、いくつかの実施形態では約50wt.%~約95wt.%、いくつかの実施形態では約60wt.%~約90wt.%、いくつかの実施形態では約70wt.%~約88wt.%、またポリマー組成物の約20vol.%~約60vol.%、いくつかの実施形態では約30vol.%~約55vol.%、いくつかの実施形態では約35vol.%~約55vol.%を構成し得る。ポリマーマトリックスも同様に、ポリマー組成物の約8wt.%~約50wt.%、いくつかの実施形態では約10wt.%~約40wt.%、いくつかの実施形態では約12wt.%~約30wt.%、またポリマー組成物の約20vol.%~約60vol.%、いくつかの実施形態では約30vol.%~約55vol.%、いくつかの実施形態では約35vol.%~約55vol.%を構成し得る。典型的には、ポリマーマトリックスおよび磁気粒子の体積は、比較的類似しており、そのため、ポリマーマトリックスの体積の磁気粒子の体積に対する比は、約0.6~約1.5、いくつかの実施形態では約0.8~約1.4、いくつかの実施形態では約0.9~約1.3である。
【0007】
[0020]組成物に用いられる成分の特定の性質および濃度を注意深く制御することによって、本発明者らは、得られる組成物が磁気特性と耐熱性との独自の組み合わせを呈し得ることを発見した。例えば、ポリマー組成物は、粒子によって生成される磁場の全体的な強度を特徴とする比較的高い残留磁気値(remanence value、Br)を呈し得る。例えば、残留磁気値は、JIS C2501:2019(ASTM A977/A977M-07(2020)とほぼ同等)に従って23℃の温度で決定して、300~約2,000mT、いくつかの実施形態では約350~約1,500mT、いくつかの実施形態では約400~約1,000mTの範囲であり得る。磁束密度(B)の最大値と磁場強度(H)との積によって特徴付けられる磁気エネルギーの密度である最大エネルギー積(maximum energy product、BHmax)はまた、JIS C2501:2019(ASTM A977/A977M-07(2020)とほぼ同等)に従って23℃の温度で決定して、約15~約200kJ/m3、いくつかの実施形態では約20~約150kJ/m3、いくつかの実施形態では約25~約100kJ/m3、いくつかの実施形態では約30~約60kJ/m3など、高くなり得る。強い程度の磁気特性を呈することに加えて、粒子はまた、様々な条件下でもそのような特性を維持することができる。例えば、粒子は、減磁することに抵抗する粒子の能力を特徴とする特性である高度の固有保磁力(Hci)を呈し得る。例えば、固有保磁力は、JIS C2501:2019(ASTM A977/A977M-07(2020)とほぼ同等)に従って23℃の温度で決定して、約400~約3,000kA/m、いくつかの実施形態では約700~約2,500kA/m、いくつかの実施形態では約900~約1,500kA/mの範囲であり得る。
【0008】
[0021]材料がその磁気を失う温度であるキュリー温度(TC)もまた、ASTM E1582-17に従って熱重量分析によって決定して、約200℃~約400℃、いくつかの実施形態では約250℃~約350℃、いくつかの実施形態では約280℃~約320℃など、高くなり得る。さらに、ポリマー組成物はまた、ISO試験番号11357-2:2020に従って示差走査熱量測定(「DSC」)によって決定して、約280℃以上、いくつかの実施形態では約290℃以上、いくつかの実施形態では約300℃~約400℃、いくつかの実施形態では約320℃~約360℃などの高い溶融温度(「Tm」)を呈し得る。高い溶融温度を呈することに加えて、組成物はまた、耐熱性であり得る。例えば、組成物は、ISO試験番号75-2:2013に従って1.8MPaの指定荷重で測定して、約200℃以上、いくつかの実施形態では約210℃以上、いくつかの実施形態では約220℃~約300℃の荷重たわみ温度(DTUL)を呈し得る。
【0009】
[0022]そのような良好な磁気特性および耐熱性を呈するにもかかわらず、ポリマー組成物は、それでも優れた機械特性を呈し得る。例えば、組成物は、ASTM D256-10(2018)に従って23℃で測定して、約4kJ/m2以上、いくつかの実施形態では約5~約60kJ/m2、いくつかの実施形態では約8~約50kJ/m2のアイゾットノッチなし衝撃強度を呈し得る。組成物はまた、約20~約500MPa、いくつかの実施形態では約30~約300MPa、いくつかの実施形態では約40~約150MPaの引張強度、約0.5%以上、いくつかの実施形態では約0.8%~約15%、いくつかの実施形態では約1%~約10%の引張破断歪み、および/または約5,000MPa~約30,000MPa、いくつかの実施形態では約7,000MPa~約25,000MPa、いくつかの実施形態では約9,000MPa~約20,000MPaの引張弾性率を呈し得る。引張特性は、ISO試験番号527-2:2019に従って23℃で決定され得る。組成物はまた、約40~約500MPa、いくつかの実施形態では約50~約300MPa、いくつかの実施形態では約70~約200MPaの曲げ強度、約0.5%以上、いくつかの実施形態では約0.8%~約15%、いくつかの実施形態では約1%~約10%の曲げ破断歪み、および/または約7,000MPa以上、いくつかの実施形態では約8,000MPa以上、いくつかの実施形態では約9,000MPa~約30,000MPa、いくつかの実施形態では約10,000MPa~約25,000MPaの曲げ弾性率を呈し得る。曲げ特性は、ISO試験番号178:2019に従って23℃で決定され得る。
【0010】
[0023]これより、本発明の様々な実施形態をより詳細に説明する。
I.ポリマー組成物
A.ポリマーマトリックス
[0024]ポリマーマトリックスは、典型的には、1種以上の液晶ポリマーを含有し、これらの液晶ポリマーは、一般に、これらが棒状構造を有し得、かつそれらの溶融状態(例えば、サーモトロピックネマチック状態)で結晶挙動を呈し得る限りにおいて「サーモトロピック」として分類される。ポリマーは、ISO試験番号11357-2:2020に従って示差走査熱量測定によって決定して、約280℃以上、いくつかの実施形態では約290℃以上、いくつかの実施形態では約300℃~約400℃、いくつかの実施形態では約320℃~約360℃などの比較的高い溶融温度を有する。そのようなポリマーは、当技術分野で知られているように、1つ以上のタイプの繰り返し単位から形成され得る。液晶ポリマーは、例えば、一般に、以下の式(I):
【0011】
【0012】
[式中、
環Bは、置換もしくは非置換の6員アリール基(例えば、1,4-フェニレンもしくは1,3-フェニレン)、置換もしくは非置換の5員もしくは6員アリール基に縮合した置換もしくは非置換の6員アリール基(例えば、2,6-ナフタレン)、または置換もしくは非置換の5員もしくは6員アリール基に結合した置換もしくは非置換の6員アリール基(例えば、4,4-ビフェニレン)であり、
Y1およびY2は、独立的に、O、C(O)、NH、C(O)HN、またはNHC(O)である]
によって表される1個以上の芳香族エステル繰り返し単位を含有し得る。
【0013】
[0025]典型的には、Y1およびY2の少なくとも1つはC(O)である。そのような芳香族エステル繰り返し単位の例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸繰り返し単位(式IのY1およびY2はC(O)である)、芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位(式Iにおいて、Y1はOであり、Y2はC(O)である)、およびそれらの様々な組み合わせが挙げられ得る。
【0014】
[0026]例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸、4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸など、ならびにそれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにそれらの組み合わせなどの芳香族ヒドロキシカルボン酸から誘導された芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位が用いられ得る。特に適した芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)である。望ましい特性の達成を助けるために、ヒドロキシカルボン酸(例えば、HBAおよび/またはHNA)から誘導された繰り返し単位は、典型的には、ポリマーの約20mol%以上、いくつかの実施形態では約25mol%以上、いくつかの実施形態では約30mol%以上、いくつかの実施形態では約32mol%以上、いくつかの実施形態では約35mol%~90mol%、いくつかの実施形態では約40mol%~約80mol%を構成している。
【0015】
[0027]テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタンなど、ならびにそれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにそれらの組み合わせなどの芳香族ジカルボン酸から誘導された芳香族ジカルボン酸繰り返し単位も用いられ得る。特に適した芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸(「TA」)、イソフタル酸(「IA」)、および2,6-ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)が挙げられ得る。用いられる場合、芳香族ジカルボン酸(例えば、IA、TA、および/またはNDA)から誘導された繰り返し単位はそれぞれ、任意選択的に、ポリマーの約1mol%~約45mol%、いくつかの実施形態では約5mol%~約40mol%、いくつかの実施形態では約10mol%~約35%を構成し得る。
【0016】
[0028]他の繰り返し単位もポリマーに用いられ得る。ある特定の実施形態では、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(または4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど、ならびにそれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにそれらの組み合わせなどの芳香族ジオールから誘導された繰り返し単位が用いられ得る。特に適した芳香族ジオールとしては、例えば、ヒドロキノン(「HQ」)および4,4’-ビフェノール(「BP」)が挙げられ得る。用いられる場合、芳香族ジオール(例えば、HQおよび/またはBP)から誘導された繰り返し単位はそれぞれ、任意選択的に、ポリマーの約1mol%~約45mol%、いくつかの実施形態では約2mol%~約40mol%、いくつかの実施形態では約5mol%~約35mol%を構成し得る。
【0017】
[0029]芳香族アミド(例えば、アセトアミノフェン(「APAP」))および/または芳香族アミン(例えば、4-アミノフェノール(「AP」)、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミンなど)から誘導されたものなどの繰り返し単位も用いられ得る。用いられる場合、芳香族アミド(例えば、APAP)および/または芳香族アミン(例えば、AP)から誘導された繰り返し単位は、任意選択的に、ポリマーの約0.1mol%~約15mol%、いくつかの実施形態では約0.5mol%~約10mol%、いくつかの実施形態では約1mol%~約6mol%を構成し得る。様々な他のモノマー繰り返し単位がポリマーに組み込まれ得ることも理解されたい。例えば、ある特定の実施形態では、ポリマーは、脂肪族または脂環式ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、アミド、アミンなどの非芳香族モノマーから誘導された1個以上の繰り返し単位を含有し得る。当然のことながら、他の実施形態では、ポリマーは、非芳香族(例えば、脂肪族または脂環式)モノマーから誘導された繰り返し単位を欠くという点で「全芳香族」であり得る。
【0018】
[0030]ある特定の実施形態では、液晶ポリマーは、NDA、HNA、またはそれらの組み合わせなどのナフテン系ヒドロキシカルボン酸およびナフテン系ジカルボン酸から誘導された比較的低含有量の繰り返し単位を含有する限りにおいて「低ナフテン系」ポリマーであり得る。すなわち、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸(例えば、NDA、HNA、またはHNAとNDAとの組み合わせ)から誘導された繰り返し単位の総量は、典型的には、ポリマーの約15mol%以下、いくつかの実施形態では約12mol%以下、いくつかの実施形態では約10mol%以下、いくつかの実施形態では約1mol%~約6mol%である。一実施形態では、例えば、HNAから誘導された繰り返し単位は、ポリマーの約0.5mol%~約15mol%、いくつかの実施形態では約1mol%~約10mol%、いくつかの実施形態では約2mol%~約8mol%を構成し得る。液晶ポリマーはまた、様々な他のモノマーを含有し得る。例えば、ポリマーは、HBAから誘導された繰り返し単位を、約40mol%~約80mol%、いくつかの実施形態では約45mol%~約75mol%、いくつかの実施形態では約50mol%~約70mol%の量で含有し得る。用いられる場合、HBAのHNAに対するモル比は、望ましい特性の達成を助けるための特定の範囲内、例えば、約0.5~約20、いくつかの実施形態では約5~約20、いくつかの実施形態では約8~約18、いくつかの実施形態では約10~約15で選択的に制御され得る。すべての場合に必要というわけではないが、多くの場合、ポリマーマトリックスのかなりの部分が、そのような低ナフテン系ポリマーから形成されることが望ましい。例えば、本明細書に記載されているような低ナフテン系ポリマーは、典型的には、ポリマーマトリックスの50wt.%以上、いくつかの実施形態では約65wt.%以上、いくつかの実施形態では約70wt.%~100wt.%、いくつかの実施形態では約80wt.%~100%(例えば、100wt.%)を構成している。
【0019】
[0031]必要に応じて、液晶ポリマーはまた、NDA、HNA、またはそれらの組み合わせなどのナフテン系ヒドロキシカルボン酸およびナフテン系ジカルボン酸から誘導された比較的高含有量の繰り返し単位を含有する限りにおいて「高ナフテン系」ポリマーであり得る。すなわち、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸(例えば、NDA、HNA、またはHNAとNDAとの組み合わせ)から誘導された繰り返し単位の総量は、ポリマーの約15mol%超、いくつかの実施形態では約18mol%以上、いくつかの実施形態では約30mol%以上、いくつかの実施形態では約40mol%以上、いくつかの実施形態では約45mol%以上、いくつかの実施形態では50mol%以上、いくつかの実施形態では約55mol%以上、いくつかの実施形態では約55mol%~約95mol%である。理論によって制限されることを意図するものではないが、そのような「高ナフテン系」ポリマーは、ポリマー組成物が水を吸収する傾向を軽減することができ、それによって、加工性および物理特性向上を補助することができると考えられる。すなわち、そのような高ナフテン系ポリマーは、典型的には、ISO62-1:2008に従って24時間にわたって水中に浸漬した後に、約0.015%以下、いくつかの実施形態では約0.01%以下、いくつかの実施形態では約0.0001%~約0.008%の水吸着性を有する。高ナフテン系ポリマーはまた、ISO62-4:2008に従って23℃の温度で湿った雰囲気(50%の相対湿度)に曝された後に、約0.01%以下、いくつかの実施形態では約0.008%以下、いくつかの実施形態では約0.0001%~約0.006%の水分吸着性を有し得る。一実施形態では、例えば、NDAから誘導された繰り返し単位は、ポリマーの約16mol%~約50mol%、いくつかの実施形態では約16mol%~約40mol%、いくつかの実施形態では約17mol%~約35mol%、いくつかの実施形態では、約18mol%~約30mol%を構成し得る。そのような実施形態では、液晶ポリマーはまた、芳香族ヒドロキシカルボン酸(例えば、HBA)などの様々な他のモノマーを、約20mol%~約60mol%、いくつかの実施形態では約30mol%~約50mol%の量で、芳香族ジカルボン酸(例えば、IAおよび/またはTA)を、約2mol%~約30mol%、いくつかの実施形態では約5mol%~約25mol%の量で、および/または芳香族ジオール(例えば、BPおよび/またはHQ)を、約2mol%~約40mol%、いくつかの実施形態では約5mol%~約35mol%の量で含有し得る。
【0020】
B.磁気粒子
[0032]先に示されているように、ポリマー組成物は、ポリマーマトリックス内に分散された磁気粒子も含有する。望ましい特性の達成を助けるために、粒子は、一般に、強い程度の電磁気を呈する。例えば、粒子は、粒子によって生成される磁場の全体的な強度を特徴とする比較的高い残留磁気値(Br)を呈し得る。例えば、残留磁気値は、JIS C2501:2019(ASTM A977/A977M-07(2020)とほぼ同等)に従って23℃の温度で決定して、約500~約2,000mT、いくつかの実施形態では約650~約1,500mT、いくつかの実施形態では約750~1,000mTの範囲であり得る。磁束密度(B)の最大値と磁場強度(H)との積によって特徴付けられる磁気エネルギーの密度である最大エネルギー積(BHmax)はまた、JIS C2501:2019(ASTM A977/A977M-07(2020)とほぼ同等)に従って23℃の温度で決定して、約50~約250kJ/m3、いくつかの実施形態では約70~約200kJ/m3、いくつかの実施形態では約80~約140kJ/m3など、高くなり得る。強い程度の磁気特性を呈することに加えて、粒子はまた、様々な条件下でもそのような特性を維持することができる。例えば、粒子は、減磁することに抵抗する粒子の能力を特徴とする特性である高度の固有保磁力(Hci)を呈し得る。例えば、固有保磁力は、JIS C2501:2019(ASTM A977/A977M-07(2020)とほぼ同等)に従って23℃の温度で決定して、約400~約3,000kA/m、いくつかの実施形態では約700~約2,500kA/mの範囲であり得る。材料がその磁気を失う温度であるキュリー温度(TC)もまた、ASTM E1582-17に従って熱重量分析によって決定して、約200℃~約400℃、いくつかの実施形態では約250℃~約350℃、いくつかの実施形態では約280℃~約320℃など、高くなり得る。
【0021】
[0033]得られるポリマー組成物の磁気強度および機械特性および流動特性の間のバランスの達成を助けるために、粒子のメジアン(D50)粒径は、粒子をメッシュスクリーン分析(例えば、107×107μmの開口部を有する140メッシュスクリーン、89×89μmの開口部を有する170メッシュスクリーン、および45×45μmの開口部を有する325メッシュスクリーン)に通過させることによって決定して、一般に、1~約200マイクロメートル、いくつかの実施形態では約5~約150マイクロメートル、いくつかの実施形態では約10~約120マイクロメートル、いくつかの実施形態では約25~約100マイクロメートル、いくつかの実施形態では約50~約90マイクロメートルなどの制御された範囲内で選択される。粒子はまた、粒子の少なくとも95vol.%(D95)または97vol.%(D97)が上述の範囲内のサイズを有するように、比較的狭いサイズ分布を有し得る。
【0022】
[0034]磁気粒子を形成するために使用される材料は、望ましい特性に基づいて変更され得る。それにもかかわらず、磁気粒子は、典型的には、ネオジム、プラセオジム、ランタン、セリウム、サマリウム、イットリウム、鉄、コバルト、ジルコニウム、ニオブ、チタン、クロム、バナジウム、モリブデン、タングステン、ハフニウム、アルミニウム、マンガン、銅、ケイ素、ホウ素、またはそれらの組み合わせなどの1種以上の希土類元素を含有する。そのような希土類粒子は、希土類磁石のための合金を粉砕して合金粉末を形成し、この合金粉末を圧縮し、合金粉末を焼結およびエージングに供することによって形成され得る。磁気粒子の形成における使用に特に適した希土類材料は、希土類-鉄-ホウ素材料(以下、「RFeB型磁石」と称し、Rは、ネオジム(Nd)などの任意の希土類元素である)である。一般に言うなら、そのような材料は、様々な磁石のなかで最も高い磁気エネルギー積を呈する。1つの特定の実施形態では、例えば、粒子は、以下の一般式:
(R1-aR’a)uFe100-u-v-w-x-yZvMwTxBy
[式中、
Rは、Nd、Pr、ジジミウム(Nd0.75Pr0.25の組成のNdとPrとの天然混合物)、MM、またはそれらの組み合わせであり、
MMは、ミッシュメタルまたはその合成同等物であり、
R’は、La、Ce、Y、またはそれらの組み合わせであり、
Zは、Fe以外の遷移金属、例えば、Co、Rh、Ir、Mt、Ni、Pd、Pt、Ds、またはそれらの組み合わせであり、
Mは、Zr、Nb、Ti、Cr、V、Mo、W、Rf、Ta、Db、Sg、Hf、またはそれらの組み合わせであり、
Tは、Al、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Ga、In、Ti、Ge、Sn、Pb、Si、またはそれらの組み合わせであり、
aは、0~1、いくつかの実施形態では0.1~0.8、いくつかの実施形態では0.2~0.6であり、
uは、7~13、いくつかの実施形態では10~13、いくつかの実施形態では11~12であり、
vは、0~20、いくつかの実施形態では0~10、いくつかの実施形態では0~5であり、
wは、0~5、いくつかの実施形態では0.1~1、いくつかの実施形態では0.2~0.8であり、
xは、0~5、いくつかの実施形態では0.1~5、いくつかの実施形態では1~4.5であり、
yは4~12、いくつかの実施形態では4~10、いくつかの実施形態では5~6.5である]
を有する希土類材料から形成され得る。
【0023】
[0035]特定の実施形態では、RはNdであり、および/またはYはCoである。Mも同様に、Zr、Nb、またはそれらの組み合わせであり得、および/またはTは、Al、Mn、またはそれらの組み合わせであり得る。ミッシュメタルまたはその合成同等物(MM)は、20%~30%のLa、2%~8%のPr、10%~20%のNd、40%~55%のCe、および任意の付随的な不純物を含有する材料などのセリウムベースのミッシュメタルであり得る。
【0024】
[0036]必要に応じて、磁気材料粒子は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2012/0119860号に記載されているようなリン酸前駆体(例えば、リン酸イオン供与体)などの酸化防止剤も含有し得る。より具体的には、酸化防止剤のリン酸イオンは、希土類元素との錯体を形成し得る。リン酸イオン源は、金属リン酸錯体などのリン酸含有化合物であり得る。金属リン酸錯体は、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、およびリン酸アルミニウムからなる群から選択され得る。
【0025】
C.顔料
[0037]必須ではないが、ポリマー組成物は、組成物が磁気センサに用いられる場合などの特定の種類の用途のための組成物の光学濃度を増加させることを助ける顔料を任意選択的に含有し得る。光学濃度は、材料の吸光度であり、一般に、式A(光学濃度)=log10 100/%Tに従って透過率(%T)を対数測定することによって決定され得る。ある特定の実施形態では、ポリマー組成物の光学濃度は、400~1,500ナノメートルの範囲の波長の場合、例えば、約2以上、いくつかの実施形態では約3以上、いくつかの実施形態では約4以上、いくつかの実施形態では約5~約20であり得る。ポリマー組成物は、様々な異なる部品厚さ、例えば、約2ミリメートル以下、いくつかの実施形態では約0.1~約1.5ミリメートル、いくつかの実施形態では約0.2~約1ミリメートル(例えば、約0.5ミリメートル)の厚さでそのような光学濃度値を呈し得る。
【0026】
[0038]一般に、そのような光学濃度値の達成を助けるために、様々な顔料が用いられ得る。例えば、いくつかの実施形態では、顔料は、粒子、染料、着色剤などの黒色顔料であり得る。用いられる場合、黒色粒子は、カーボンブラック(例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、またはランプブラック)などの炭素材料から形成され得る。炭素粒子は、粒状、フレーク状(鱗状)などの任意の望ましい形状を有し得る。炭素粒子の平均サイズ(例えば、直径)は、比較的小さくてもよく、例えば、約1~約200ナノメートル、いくつかの実施形態では約5~約150ナノメートル、いくつかの実施形態では約10~約100ナノメートルであり得る。また、典型的には、炭素粒子が、比較的純粋であること、例えば、多核芳香族炭化水素(例えば、ベンゾ[a]ピレン、ナフタレンなど)を、約1パーツ・パー・ミリオン(「ppm」)以下、いくつかの実施形態では約0.5ppm以下の量で含有することが望ましい。例えば、炭素粒子は、ベンゾ[a]ピレンを、約10パーツ・パー・ビリオン(「ppb」)以下、いくつかの実施形態では約5ppb以下の量で含有し得る。必要に応じて、粒子はまた、約20平方メートル毎グラム(m2/g)~約1,000m2/g、いくつかの実施形態では約25m2/g~約500m2/g、いくつかの実施形態では約30m2/g~約300m2/gなどの高い比表面積を有し得る。表面積は、ASTM D6556-19aに従って物理ガス吸着(BET)法(吸着ガスとしての窒素)によって決定され得る。理論によって制限されることを意図するものではないが、そのような小さなサイズ、高い純度、および/または高い表面積を有する粒子は、多くのフリーラジカルに対する吸着能力を改善することができ、それによって、液晶ポリマーの酸化を最小限に抑えることができると考えられる。
【0027】
[0039]必要に応じて、炭素材料は、炭素粒子をカプセル化することができる担体樹脂を含んでいてもよく、それによって、様々な利益をもたらす。例えば、担体樹脂は、粒子を取り扱う能力および粒子をポリマーマトリックスに組み込む能力を向上させることができる。任意の公知の担体樹脂をこの目的に用いることができるが、特定の実施形態では、担体樹脂は、ポリマーマトリックスに用いられる液晶ポリマーと同じであっても異なっていてもよい上記のような液晶ポリマーであり得る。必要に応じて、担体樹脂を炭素粒子と事前にブレンドしてマスターバッチを形成し、これを後にポリマーマトリックスと組み合わせることができる。用いられる場合、担体樹脂は、典型的には、マスターバッチの約40wt.%~約90wt.%、いくつかの実施形態では約50wt.%~約80wt.%、いくつかの実施形態では約60wt.%~約70wt.%を構成しており、炭素粒子は、典型的には、マスターバッチの約10wt.%~約60wt.%、いくつかの実施形態では約20wt.%~約50wt.%、いくつかの実施形態では約30wt.%~約40wt.%を構成している。本発明では、炭素粒子および担体樹脂の相対濃度は、ポリマー組成物の磁気特性、機械特性、および流動特性に悪影響を与えることなく、望ましい光学特性を達成するように選択的に制御され得る。例えば、炭素粒子は、典型的には、ポリマー組成物全体の約0.01~約8wt.%、いくつかの実施形態では約0.05~約4wt.%、いくつかの実施形態では約0.1~約2wt.%の量で用いられる。担体樹脂を含有し得る炭素材料も同様に、ポリマー組成物の約0.1wt.%~約15wt.%、いくつかの実施形態では約0.2wt.%~約10wt.%、いくつかの実施形態では約0.4wt.%~約5wt.%、またポリマー組成物の約0.5vol.%~約30vol.%、いくつかの実施形態では約1vol.%~約15vol.%、いくつかの実施形態では約2vol.%~約10vol.%を構成し得る。
【0028】
D.他の添加剤
[0040]必要に応じて、滑剤、熱伝導性フィラー、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、滴下防止添加剤、核形成剤(例えば、窒化ホウ素)、ならびに特性および加工性を向上させるために添加される他の材料などの幅広い種類の追加的な添加剤もポリマー組成物に含まれ得る。例えば、実質的な分解なしで液晶ポリマーの加工条件に耐えることができる滑剤がポリマー組成物に用いられ得る。そのような滑剤の例としては、脂肪酸エステル、それらの塩、エステル、脂肪酸アミド、有機リン酸エステル、およびエンジニアリングプラスチック材料の加工において滑剤として一般に使用されるタイプの炭化水素ワックスが、それらの混合物を含め、挙げられる。適した脂肪酸は、典型的には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、モンタン酸、オクタデシニックアシッド(octadecinic acid)、パリンリックアシッド(parinric acid)などの、約12~約60個の炭素原子の骨格炭素鎖を有する。適したエステルとしては、脂肪酸エステル、脂肪族アルコールエステル、ワックスエステル、グリセロールエステル、グリコールエステル、および複合エステルが挙げられる。脂肪酸アミドは、脂肪第1級アミド、脂肪第2級アミド、メチレンおよびエチレンビスアミド、ならびにアルカノールアミド、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N,N’-エチレンビスステアラミドなどを含む。ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸の金属塩;パラフィンワックス、ポリオレフィンワックスおよび酸化ポリオレフィンワックス、ならびにマイクロクリスタリンワックスを含む炭化水素ワックスも適している。特に適した滑剤は、ステアリン酸の酸、塩、またはアミド、例えば、ペンタエリトリトールテトラステアレート、ステアリン酸カルシウム、またはN,N’-エチレンビスステアラミドである。用いられる場合、滑剤は、典型的には、ポリマー組成物の約0.05wt.%~約1.5wt.%、いくつかの実施形態では約0.1wt.%~約0.5wt.%(重量)を構成している。
【0029】
II.形成
[0041]ポリマー組成物の成分は、溶融加工され得るか、または一緒にブレンドされ得る。これらの成分は、バレル(例えば、円筒形のバレル)内に回転可能に取り付けおよび収容された少なくとも1つのスクリューを含む押出機に個別にまたは組み合わせて供給することができ、供給セクションと、スクリューの長さに沿って供給セクションの下流に置かれている溶融セクションとを画定し得る。押出機は、単軸スクリュー押出機または二軸スクリュー押出機であり得る。スクリューの速度は、望ましい滞留時間、せん断速度、溶融加工温度などを達成するように選択され得る。例えば、スクリュー速度は、約50~約800回転毎分(「rpm」)、いくつかの実施形態では約70~約150rpm、いくつかの実施形態では約80~約120rpmの範囲であり得る。溶融ブレンディングの最中の見かけのせん断速度はまた、約100秒-1~約10,000秒-1、いくつかの実施形態では約500秒-1~約5000秒-1、いくつかの実施形態では約800秒-1~約1200秒-1の範囲であり得る。見かけのせん断速度は、4Q/πR3に等しく、式中、Qは、ポリマー溶融物の体積流量(「m3/s」)であり、Rは、溶融ポリマーが流れる毛細管(例えば、押出機ダイ)の半径(「m」)である。得られるポリマー組成物の溶融粘度は、比較的低くてもよく、それによって、加工の最中の流動性を向上させることができるのみならず、組成物の他の特性も相乗的に改善することができる。例えば、ポリマー組成物は、1,000秒-1のせん断速度で決定して、約200Pa・s以下、いくつかの実施形態では約1~約100Pa・s、いくつかの実施形態では約2~約80Pa・s、いくつかの実施形態では約5~約60Pa・s、いくつかの実施形態では約10~約40Pa・sの溶融粘度を有し得る。溶融粘度は、ISO試験番号11443:2014に従って組成物の溶融温度よりも15℃高い温度(例えば、約380℃の溶融温度では約395℃または335℃の溶融温度では350℃)で決定され得る。
【0030】
III.磁気コンポーネント
[0042]先に示されているように、本発明のポリマー組成物は、磁気センサ、磁気スイッチ(例えば、磁気センサと組み合わされたスイッチ)、電気コンポーネントのためのクラスプ(例えば、ウォールチャージャ)、電気コンポーネント(例えば、スピーカ、カメラモジュール、受信機、ボイスコイルモータ、振動モータ、イヤーバッド、イヤホン、ヘッドセットなど)における使用のための個別の磁石、ハウジングなどの磁気コンポーネントにおける使用に特に良好に適している。適した磁気センサとしては、例えば、ホール効果センサ、磁気抵抗センサ(例えば、異方性)、光磁気センサ(MOセンサ)などが挙げられ得る。ホール効果センサは、磁場がセンサ要素にわたって印加されるとホール電圧の変化を呈する磁気感知材料を含有し、その一方で、磁気抵抗センサは、磁場がセンサ要素にわたって印加されると抵抗の変化を呈する磁気感知材料を含有する。対照的に、MOセンサは、磁場を分析するために、電気効果の代わりにファラデー効果に基づく。そのようなセンサの様々な例は、例えば、米国特許第9,664,747号、同第10,914,567号および同第10,955,494号、ならびに米国特許公開第2020/0319265号に記載されており、これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる。種類に関係なく、そのようなコンポーネントは、一般に、本発明のポリマー組成物から形成され得る磁気感知材料の1つ以上の層を含む。
【0031】
[0043]磁気コンポーネントは、当技術分野で知られているように、幅広い種類の電子デバイス、例えば、ポータブル電子デバイス(例えば、携帯電話、ポータブルコンピュータ、タブレット、時計など)、コンピュータ、メディアプレーヤ、テレビ、自動車部品、全地球測位システム、カメラ、ゲーミングデバイスなどにおいて用いられ得る。
図1を参照すると、例えば、1つ以上の磁気センサ20を含む電子デバイス10の一実施形態が示されている。示されているように、デバイス10は、ハウジング12、ディスプレイ14、ユーザの入力を収集するために使用され得る1つ以上のボタン16、1つ以上のデータポート26、および追加的な入力出力コンポーネント(例えば、スピーカ18)を有し得る。デバイス10には、電子デバイスの磁気的に静かな領域に配置され、かつコンパスインターフェース回路(compass interface circuitry)に結合された、磁気センサ20などの1つ以上の内部磁気感応デバイスも設けられ得る。コンパスインターフェース回路は、複数のセンサ20からの磁場データを組み合わせ、方向コンパスデータを生成し、コンパスデータを他の回路に提供するように構成され得る。デバイス10内のコンパスインターフェース回路または他の制御回路は、コンパス較正データを保存するように構成することができ、コンパス30をオンおよびオフにするように構成することができ、他の電子コンポーネントの動作ステータスについての情報にアクセスするように構成することができ、他の電子コンポーネントに関連する動作ステータス情報(ステータスデータ、動作ステータスデータなどとも呼ばれる)に基づくコンパスデータの修正を適用するように構成することができ、これらの機能を組み合わせるようにまたはデバイス10に対してその他のコンパス関連機能を実施するように構成することができる。
【0032】
[0044]
図2を参照すると、例えば、磁気センサ20は、コンパスインターフェース回路32などの回路と組み合わされて、コンパス30を形成し得る。コンパスインターフェース回路32は、部分的に磁気センサ20上に、部分的に磁気センサ20とは個別に形成され得るか、またはセンサ20とは完全に個別に形成され得る。それにもかかわらず、コンパスインターフェース回路32は、センサ20から生の磁場データを収集し、関連するコンパスデータをデバイス10の記憶および処理回路40などの他の制御回路に提供するように構成され得る。記憶および処理回路40は、コンパスデータをコンパス30から回路40で実行される他のソフトウェアアプリケーションに送るように構成され得る。
図2に示されているように、デバイス10は、1つ以上のカメラ(例えば、前面カメラ、背面カメラなど)、1つ以上の光源(例えば、カメラのフラッシュ、LEDカメラライト、懐中電灯など)、または地球磁場の検出を妨げ得る磁場を生成する他のコンポーネントなどの他の電子コンポーネント22も含み得る。磁気センサ20は、デバイス10内で、デバイスの比較的磁気的に静かな領域に(例えば、コンポーネント22から離れて、またはデバイスのバッテリの近くに)位置決めされ得る。
【0033】
[0045]ある特定の実施形態では、デバイス10は、慣性測定ユニット(IMU)44などの位置決めセンサも含み得る。慣性測定ユニット44は、デバイス10の場所および位置を決定するための1つ以上の加速度計、1つ以上のジャイロスコープ、GPS回路などを含み得る。記憶および処理回路40は、コンパス30との組み合わせにおいてIMU44を動作させて、デバイス10で実行されるアプリケーションに位置および場所の情報を提供するように構成され得る。記憶および処理回路40は、動力管理ユニット(PMU)38を動作させて、電力をカメラ34および光源36などのコンポーネント22に供給するために使用され得る。記憶および処理回路40は、入力/出力コンポーネント42などの入力/出力コンポーネントを動作させるために、かつ入力/出力コンポーネント42を使用してデバイス10に入力されたデータを処理および記憶するために使用され得る。入力/出力コンポーネント42は、
図1のボタン16およびスピーカ18などのボタンまたはスピーカを含み得る。入力/出力コンポーネント42は、ディスプレイ14のタッチ感応部分を含んでいてもよく、キーボード、無線ローカルエリアネットワークトランシーバ回路および携帯電話ネットワークトランシーバ回路などの無線回路、ならびに入力を受信して出力を供給するための他のコンポーネントを含み得る。コンポーネント22は、デバイス10の内部にあっても、またはデバイス10の外面の一部において見える部分を有していてもよい。上述のコンポーネント(例えば、スピーカ18、入力/出力コンポーネント42、磁気センサ20など)のいずれも、本発明のポリマー組成物を含有し得る。
【0034】
[0046]磁気センサ20は、様々な手法でデバイス10内に組み込まれ得る。
図3に示されているように、例えば、磁気センサ20は、ハウジング12の一部に接続され得る。より具体的には、この例では、デバイス10は、ハウジング側壁12Sおよび後部ハウジング部分12Rに接続された3つの一方向性磁気センサ20を含む。各一方向性磁気センサ20は、他の2つのセンサ20に対して直交する方向に沿って整列され得る。例えば、1つのセンサは、
図3のx方向に沿って整列した細長い寸法を有し得、1つのセンサは、y方向に沿って整列した細長い寸法を有し得、1つのセンサは、z方向に沿って整列した細長い寸法を有し得る。このようにして、組み合わせた磁気センサを、これらが地球磁場のすべての直交成分をサンプリングするように位置決めすることができる。しかしながら、これは単なる例である。必要に応じて、デバイス10は、多方向性磁気センサ(例えば、2つまたは3つの直交方向の磁場成分を検出するように構成されたセンサ要素を有するセンサ20)を含み得る。3つのセンサ20を使用するか、または1つもしくは2つのセンサ20上の複数のセンサ要素を使用して収集された磁場データを、(例えば、コンパスインターフェース回路32を使用して)組み合わせて、デバイス10が地球磁場に対して向けられている方向に関連する情報を含む方向コンパスデータを形成することができる。
図4は、センサ20が、比較的小さな磁場(例えば、地球磁場の検出を最小限に妨げる磁場)を生成するデバイス10内のバッテリまたは他のコンポーネントなどの、デバイス10内のコンポーネント50に取り付けられる、別の実施形態を示す。センサ20は、カバー(カウリング)構造などの他の構造に取り付けることもできる。
図5では、例えば、カウリング52を、コンポーネント50(例えば、バッテリ)を少なくとも部分的に囲むために使用することができ、センサ20をその上に取り付けることができる。カウリング構造52は、コンポーネント50の延長上面を覆う頂部52Tと頂部52Tに直交する側部52Sとを含み得る。側部52Sおよび頂部52Tが、折り畳まれたまたは曲げられた共通の構造から形成され得るか、または側部52Sが、頂部52Tに接続されたまたは隣接して取り付けられた個別の構造であり得る。図示されている実施形態では、2つのセンサ20が、上面52Tに直交方向(例えば、
図5のx方向およびy方向に平行)に取り付けられており、第3のセンサ20が、構造52の直交する折り畳まれた側部52Sに接続されている。
図6に示されているように、カウリング構造52は、側壁部分52および頂部52Tの両方に直交した追加的な側部52S’も含み得る。このようにして、構造体52に、3つの一方向性磁気センサ20が取り付けられ得る3つの直交面を設けることができる。
【0035】
[0047]磁気センサ20を形成する手法は、当業者に知られているように変更されてもよい。
図7を参照すると、例えば、センサ20などの1つの特定の実施形態がより詳細に示されている。より具体的には、センサ20は、幅「w」を有し、本発明のポリマー組成物を含有する磁気感知要素58を含む。感知要素58は、矢印61によって示される方向に沿って整列した磁場が、基板56内の回路またはデバイス10内の他の回路によって検出され得る応答を磁気感知要素58内に生成するように、センサ回路基板56(例えば、ケイ素)上に配置され得る。このようにして、センサ20は、一方向性磁気センサとして構成され得る。回路基板56は、伝導性トレース64と電気接点66とを含む保護基板54(例えば、ポリイミド、エポキシ樹脂など)によって封入され得る。電気接点66は、プリント回路基板、別のフレキシブルプリント回路、またはデバイス10内の他の回路に接続され得る。トレース64は、磁場データを基板56からコンパスインターフェース回路32(
図2)などの他のデバイス回路に送るために使用され得る。環境変化によるノイズ信号の検出および除去を助けるために、センサ20に、本発明のポリマー組成物を含有し得る基準磁気感知要素60を設けることもできる。
【0036】
[0048]
図8を参照すると、磁気感知要素58は、保護基板54の上に形成され得る(または保護基板54内に部分的もしくは完全に埋め込まれ得る)。回路基板56は、基板54Lの最下層に取り付けられていてもよく、追加的な基板材料54Tによって覆われていてもよい。伝導性トレース64は、保護基板54の最上層および最下層である54Tおよび54Bの間に形成され得る。各伝導性トレース64は、伝導性接点66としての役割を果たす露出部分を含み得る。トレース64の反対側の端部は、回路基板56内のトレース55などの伝導性トレースに結合されていてもよく、それによって、磁気感知要素58を接点66に結合する。伝導性トレース64は、これらがセンサ20の近傍の磁場を妨げないように、磁気的に透明な材料(例えば、銅)から形成され得る。回路基板56は、磁気感知要素58から受信した磁場信号を処理するための回路57を含み得る。例えば、回路基板56に1つ以上の磁気感知要素58および1つ以上の基準感知要素60が設けられている構成では、回路57は、(例えば、要素58によって収集された磁場信号からの基板56の温度の変化に基づく影響を除去することによって)要素60からの磁場信号を使用して要素58からの磁場信号を変化させるために使用され得る。
【0037】
[0049]描かれているように、センサ20は、センサ20の表面に垂直でありかつ基板56および磁気感知要素58を通過する寸法に沿った特徴的な最大高さ「H」を有する比較的薄いセンサであり得る。高さは、例えば、約200マイクロメートル以下、いくつかの実施形態では約40~約150マイクロメートルであり得る。必要に応じて、センサ20の高さは、
図9に示されているように、回路基板56にプリント回路54を収容するための凹部を設けることによってさらに低減され得る。
図9では、例えば、基板56の延長部分74が保護基板54の延長部分75と接合することができるように、基板56の一部が除去されている。このようにして、プリント回路材料の最上層なしで回路基板56が提供され得る。
図9に示されているタイプの構成では、回路基板56に、磁気感応磁気感知要素58から延長部分74上に延びて電気接点78に接続する伝導性トレース76が設けられ得る。電気接点78は、保護基板54内のトレース64に結合され得る。基板54および基板56に接合延長部分を設けることによって、センサ20の高さは、約150マイクロメートル以下、いくつかの実施形態では約30~約100マイクロメートルの高さH’に低減され得る。
【0038】
[0050]
図10は、磁気感知要素58および基準感知要素60が回路基板56の共通の表面上に形成されている磁気センサの側断面図を示す。この実施形態では、回路基板56は、要素58および60ならびに回路57に結合された電気接点84(例えば、基板56の伝導性金属層の露出部分)を含み得る。伝導性ライン55は、磁場データを要素58および60から回路57におよび/またはプリント回路54の伝導性トレース64に提供するために使用され得る。示されているように、磁気感知要素58および基準感知要素60のどちらも、本発明のポリマー組成物を含有し得る磁気センサ層80を含み得る。磁気センサ層80は、本発明のポリマー組成物などの磁気感応性材料、ならびにパッシベーション層、遮蔽層、伝導性層などの1つ以上の他の任意選択的な層を含み得る。基準要素60は、磁気センサ層80を覆い、かつ外部磁場が基準センサ内のセンサ層80に到達することを防止する1つ以上の追加的な遮蔽層82を含み得る。そのような磁気遮蔽材料としては、ミューメタル、ニッケルもしくは他の適した磁場遮蔽材料、または材料の組み合わせが挙げられ得る。
【0039】
[0051]
図10の例では、センサ20は、1つの磁気感知要素58および1つの基準要素60を含む。しかしながら、これは単なる例である。必要に応じて、センサ20が基準センサなしで設けられ得るか、またはセンサ20に1つより多くの磁気センサ要素および/もしくは1つより多くの基準センサ要素が設けられ得る。
図11を参照すると、例えば、センサ20に2つの磁気センサ要素が設けられ得る。センサ20は、矢印61に平行な方向に沿って磁場成分を検出するように構成された第1のセンサ磁気感知要素58、および矢印61’に平行な直交方向に沿って磁場成分を検出するように構成された第2のセンサ磁気感知要素58を含み得る。このようにして、センサ20は、双方向性磁気センサ(すなわち、2つの直交方向の磁場成分を検出することができるセンサ)として構成され得る。
図12に示されているように、双方向性磁気センサ20は、共有基準要素60も含み得る。これに関して、第1のセンサ磁気感知要素58および基準要素60からの信号は、組み合わされ(例えば、減算され)、デジタル化され得る(例えば、基板56内の回路57またはデバイス10内の他の回路を使用する)。第2のセンサ磁気感知要素58および基準要素60からの信号は、組み合わされ(例えば、減算され)、デジタル化され得る(例えば、基板56内の回路57またはデバイス10内の他の回路を使用する)。必要に応じて、各センサ58および共有基準要素60からの組み合わされた信号は、共通の共有アナログ-デジタル変換器回路を使用してデジタル化され得る。
【0040】
[0052]望ましい磁気コンポーネントは、これが使用される手法に関係なく、様々な異なる技術を使用して形成され得る。適した技術としては、例えば、フィルム押出、熱成形、ブロー成形、射出成形、低圧射出成形、押出圧縮成形、ガス射出成形、発泡射出成形、低圧ガス射出成形、低圧発泡射出成形、ガス押出圧縮成形、発泡押出圧縮成形、押出成形、発泡押出成形、圧縮成形、発泡圧縮成形、ガス圧縮成形などが挙げられ得る。例えば、ポリマー組成物が射出され得る鋳型を含む射出成形システムが用いられ得る。ポリマーマトリックスが事前に凝固しないように、射出機内の時間が制御および最適化され得る。サイクル時間に達し、バレルが排出に向けて満ちたら、組成物を鋳型キャビティに射出するためにピストンが使用され得る。圧縮成形システムも用いられ得る。射出成形と同様に、望ましい物品へのポリマー組成物の成形も鋳型内で生じる。組成物は、自動ロボットアームによって拾い上げられることなどによる任意の公知の技術を使用して圧縮鋳型内に設置され得る。鋳型の温度は、凝固を可能にするのに望ましい期間にわたって、ポリマーマトリックスの凝固温度以上に維持され得る。次いで、成形される生成物は、これを溶融温度未満の温度にすることによって凝固され得る。得られた生成物は、離型され得る。各成形プロセスのサイクル時間は、十分な結合を達成し、全体的なプロセス生産性を向上させるように、ポリマーマトリックスに合わせて調整され得る。
【0041】
試験方法
[0053]溶融粘度:溶融粘度(Pa・s)は、ISO試験番号11443:2014に従って、1,000s-1のせん断速度および溶融温度よりも15℃高い温度で、Dynisco LCR7001キャピラリーレオメーターを使用して決定され得る。レオメーターオリフィス(ダイ)は、直径1mm、長さ20mm、L/D比20.1、および入口角180°を有していた。バレルの直径は9.55mm+0.005mmであり、ロッドの長さは233.4mmであった。
【0042】
[0054]溶融温度:溶融温度(「Tm」)は、当技術分野で知られているように、示差走査熱量測定(「DSC」)によって決定され得る。溶融温度は、ISO試験番号11357-2:2020によって決定されるような示差走査熱量測定(DSC)のピーク溶融温度である。DSC手順では、TA Q2000装置において行われるDSC測定を使用して、ISO規格10350に述べられているように、サンプルを毎分20℃で加熱および冷却した。
【0043】
[0055]荷重たわみ温度(「DTUL」):荷重温度下でのたわみは、ISO試験番号75-2:2013(技術的にはASTM D648-18と同等)に従って決定され得る。より具体的には、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの試験片サンプルを、指定荷重(最大外部繊維応力)が1.8メガパスカルであるエッジワイズ三点曲げ試験に供することができる。試料をシリコーン油浴中に下げることができ、そこで、試料が0.25mm(ISO試験番号75-2:2013では0.32mm)たわむまで、毎分2℃で温度を上げる。
【0044】
[0056]引張弾性率、引張応力、および引張伸び:引張特性は、ISO試験番号527:2019(技術的にはASTM D638-14と同等)に従って試験され得る。弾性率および強度の測定は、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの同じ試験片サンプルについて行われ得る。試験温度は23℃であり得、試験速度は1または5mm/分であり得る。
【0045】
[0057]曲げ弾性率、曲げ応力、および曲げ伸び:曲げ特性は、ISO試験番号178:2019(技術的にはASTM D790-10と同等)に従って試験され得る。この試験は、64mmのサポートスパン(support span)で実施され得る。試験は、切断されていないISO3167多目的バーの中心部分において実行され得る。試験温度は23℃であり得、試験速度は2mm/分であり得る。
【0046】
実施例1
[0058]以下の成分を含有するサンプルが形成され得る:
【0047】
【0048】
[0059]LCP1は、約340℃の溶融温度を有し、60%のHBA、18%のTA、12%のBP、5%のHNA、および5%のAPAPを含有する。磁気粉末1は、Magnequenchから「MQP-AA4-15-7」という名称で得られるNdFeB磁気粉末である。
【0049】
実施例2
[0060]以下の成分を含有するサンプルが形成され得る:
【0050】
【0051】
[0061]磁気粉末2は、Magnequenchから「MQP-B+」という名称で得られるNd-Fe-Co-B磁気粉末であり、これは、約900mTの残留磁気(Br)、約130kJ/m3のエネルギー積(BHmax)、716~836kA/mの固有保磁力(Hci)、および360℃のキュリー温度(TC)を有する。
【0052】
実施例3
[0062]以下の成分を含有するサンプルが形成され得る:
【0053】
【0054】
[0063]LCP2は、約325℃の溶融温度を有し、約43%のHBA、8%のTA、29%のHQ、および20%のNDAを含有する。
実施例4
[0064]以下の成分を含有するサンプルが形成され得る:
【0055】
【0056】
実施例5
[0065]以下の成分を含有するサンプルが形成され得る:
【0057】
【0058】
[0066] 磁気粉末3は、約850mTの残留磁気(Br)、約119kJ/m3のエネルギー積(BHmax)、および約987kA/mの固有保磁力(Hci)を有するNd-Fe-B磁気粉末である。メジアン粒径(D50)は約45マイクロメートルであり、D97粒径は約192マイクロメートルである。
【0059】
[0067]サンプルを、上記のように、様々な磁気特性および機械特性について試験した。結果を以下の表に示す。
【0060】
【0061】
[0068]本発明のこれらおよび他の修正形態および変形形態は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって実践され得る。さらに、様々な実施形態の態様が全体的または部分的のどちらで交換されてもよいと理解されたい。さらに、当業者であれば、前述の説明は単なる例であり、そのような添付の特許請求の範囲にさらに記載されている本発明を限定することを意図していないと理解するであろう。
【国際調査報告】