(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】波長変換材料および波長変換材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240709BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20240709BHJP
C09K 11/80 20060101ALI20240709BHJP
C09K 11/54 20060101ALI20240709BHJP
C09K 11/59 20060101ALI20240709BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20240709BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20240709BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/08 J
C09K11/08 G
C09K11/80
C09K11/54
C09K11/59
C09K11/88
H01L33/50
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575435
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2022066437
(87)【国際公開番号】W WO2022263581
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM International GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッツモリス ロバート
(72)【発明者】
【氏名】セオボールド ブライアン
【テーマコード(参考)】
2H148
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA09
2H148AA11
2H148AA19
4H001CA02
4H001CA05
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4H001YA25
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4H001YA63
5F142AA82
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5F142DA64
5F142DA72
5F142DA73
(57)【要約】
波長変換材料および当該波長変換材料の製造方法は、任意で酸化物被覆した蛍光体材料を提供することと、任意で酸化物被覆した蛍光体材料と任意で酸化物被覆した常磁性ナノ粒子とを混合することと、任意で酸化物被覆した蛍光体材料と任意で酸化物被覆した常磁性ナノ粒子とを酸化物被覆で被覆して被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体を作製することと、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体を分離して波長変換材料を作製することとを含み得る。被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体の分離は、磁場を印加することによって実施し得る。さらに、波長変換材料および発光ダイオードについて本明細書に記載する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長変換材料の製造方法であって、
1つまたは複数の蛍光体材料を提供する工程であって、前記蛍光体材料が任意の酸化物被覆を含み、
前記1つまたは複数の蛍光体材料と、1つまたは複数の常磁性ナノ粒子とを混合する工程であって、前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子が、任意で、任意の酸化物被覆を含み、
前記1つまたは複数の蛍光体材料と前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子とを酸化物被覆で被覆し、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体を形成する工程と、
前記被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体を分離し、波長変換材料を形成する工程と
を含み、前記被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体の分離を、磁場を印加することによって行う、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の蛍光体材料が量子ドットである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離の前に、前記被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体をシェリングする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子が、Ni、Co、Fe
3O
4(磁鉄鉱)、γ-Fe
2O
3、Pt、W、Cs、Al、Li、Mg、Na、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の蛍光体材料の前記酸化物被覆、前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子の前記酸化物被覆、前記被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体の前記酸化物被覆、およびこれらの組み合わせが、SiO
2、ZrO
2、Al
2O
3、TiO
2、HfO
2、MgO、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の蛍光体材料が、LuAG:Ce、LuAGaG:Ce、YAGaG:Ce、YAG:Ce、Sr(Sr,Ca)Si
2Al
2N
6:Eu
2+、CaAlSiN
3:Eu
2+、K
2SiF
6:Mn
4+、β-SiAlON:Eu
2+(Ba,Sr)
2Si
5N
8:Eu
2+、Ca-α-SiAlON:Eu
2+、YAG:Ce+CaAlSiN
3:Eu、(Ca,Sr)AlSiN
3:Eu
2+、(Sr,Ca)Al
2Si
2N
6:Eu
2+、(Ba,Sr,Ca)
2Si
5N
8:Eu
2+、Sr(LiAl
3N
4):Eu
2+、CdS、CdSe、CdTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、InN、GaN、InP、GaP、AlP、InAs、GaAs、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体をオプトエレクトロニクス半導体チップに付着させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体が、前記1つまたは複数の被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体に対して約0.1質量%~約10質量%の前記1つまたは複数の蛍光体材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数の蛍光体材料が酸化物被覆を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子が酸化物被覆を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記1つまたは複数の蛍光体材料が酸化物被覆を含み、前記1つまたは複数の常磁性材料が酸化物被覆を含み、かつ前記1つまたは複数の蛍光体材料の前記酸化物被覆が、前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子のための酸化物材料と異なる、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記1つまたは複数の蛍光体材料が酸化物被覆を含み、前記1つまたは複数の常磁性材料が酸化物被覆を含み、かつ前記被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体の酸化物被覆が、前記1つまたは複数の蛍光体材料の前記酸化物被覆、前記1つまたは複数の常磁性材料の前記酸化物被覆、またはその両方と異なる、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法により製造した波長変換材料。
【請求項14】
1つまたは複数の蛍光体と、
1つまたは複数の常磁性ナノ粒子と、
前記1つまたは複数の蛍光体と前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子とを取り囲む1つまたは複数の酸化物被覆と
を含む、波長変換材料。
【請求項15】
前記1つまたは複数の蛍光体が量子ドットである、請求項14に記載の波長変換材料。
【請求項16】
前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子が、Ni、Co、Fe
3O
4(磁鉄鉱)、γ-Fe
2O
3、Pt、W、Cs、Al、Li、Mg、Na、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の波長変換材料。
【請求項17】
請求項14に記載の波長変換材料を含む、発光ダイオード(LED)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2021年6月17日に出願された米国特許出願公開第17/349,971号明細書からの優先権を主張するものであり、その開示内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、波長変換材料の製造方法、本発明の方法によって製造した波長変換材料、波長変換材料、発光ダイオード、および波長変換材料の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
量子ドットおよび蛍光体は多くの用途に有益な材料であり、発光ダイオード(LED)や太陽光装置によく使用されている。
【0004】
量子ドットまたは他の蛍光体材料の使用における欠点は、材料の製造方法、特に当該材料の精製であり得る。例えば、量子ドットの一般的な製造方法は、遠心分離、堆積、二相抽出、イオン交換クロマトグラフィー、またはタンジェンシャルフローである。遠心分離は、量子ドット(QD)ダウンコンバーターの精製や、LEDパッケージ上へのダウンコンバーターの堆積に用いられる、時間と費用のかかる手順である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的の1つは、先行技術の欠点を克服することである。
【0006】
さらなる目的は、波長変換材料の製造方法を提供することである。
【0007】
さらなる目的は、波長変換材料を提供することである。
【0008】
さらなる目的は、波長変換材料を有する発光ダイオードを提供することである。
【0009】
さらなる目的は、波長変換材料の使用を提供することである。
【0010】
非限定的な実施形態によると、波長変換材料の製造方法は、酸化物被覆で任意に被覆した1つまたは複数の蛍光体材料を提供することと、蛍光体材料(複数可)と、酸化物被覆で任意に被覆した1つまたは複数の常磁性ナノ粒子とを混合することと、蛍光体材料(複数可)と常磁性ナノ粒子(複数可)とを酸化物被覆で被覆して1つまたは複数の被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体を形成することとを含み得る。方法は、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体(複数可)を分離し、波長変換材料を形成することをさらに含み得る。被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体(複数可)は、凝集体(複数可)を含む溶液に磁場を印加することによって分離し得る。
【0011】
別の非限定的な実施形態では、波長変換材料は、1つまたは複数の蛍光体材料、1つまたは複数の酸化物被覆、および1つまたは複数の常磁性ナノ粒子を含み得る。
【0012】
さらに別の非限定的な実施形態では、ダウンコンバーターの精製方法、または発光ダイオード(LED)の製造方法における波長変換材料の使用が提供される。
【0013】
以下に、本明細書に説明する波長変換材料および波長変換材料の製造方法について、図面を参照しながら非限定的な実施形態を詳細に説明する。同一の参照符号は、個々の図において同一の要素を指す。ただし、縮尺の基準は示さず、むしろ、理解を深めるために個々の要素を誇張して示している場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
その他の目的およびさらなる目的と併せて本発明の利点および特性をより理解するために、先に説明した図面と共に以下の開示および添付の特許請求の範囲を参照されたい。
【0016】
蛍光体、LED、または変換材料の色に関する言及は、別段の定めがない限り、一般にその発光色を指す。したがって、青色LEDは青色光を発し、黄色蛍光体は黄色光を発する、などとなる。
【0017】
波長変換材料の製造方法は、酸化物被覆で任意に被覆した1つまたは複数の蛍光体材料を提供すること、蛍光体材料(複数可)と、酸化物被覆で任意に被覆した1つまたは複数の常磁性ナノ粒子とを混合すること、蛍光体材料(複数可)および常磁性ナノ粒子(複数可)を酸化物被覆で被覆し、1つまたは複数の被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体を形成すること、ならびに被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体(複数可)を分離し、波長変換材料を形成することを含み得る。被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体(複数可)の分離は、磁場を印加することによって起こすことができる。
【0018】
波長変換材料を作製することができる。波長変換材料は、所定の第1の波長の光の少なくとも一部を所定の第2の波長の光に変換可能な任意の材料を含み得る。非限定的な実施形態では、波長変換材料は、青色光を第2の波長、例えば赤色、黄色、白色などの光に変換することができる。
【0019】
方法は、酸化物被覆で任意に被覆された1つまたは複数の蛍光体材料を提供することを含み得る。
【0020】
非限定的な蛍光体は、ガーネット、オキシニトリドシリケート、ペロブスカイト、量子ドット、ケイ酸塩、またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されず、それぞれ少なくとも1つの適切な元素でドープされる。非限定的な実施形態では、蛍光体は、LuAG:Ce、LuAGaG:Ce、YAGaG:Ce、YAG:Ce、Sr(Sr,Ca)Si2Al2N6:Eu2+、CaAlSiN3:Eu2+、K2SiF6:Mn4+、β-SiAlON:Eu2+(Ba,Sr)2Si5N8:Eu2+、Ca-α-SiAlON:Eu2+、YAG:Ce+CaAlSiN3:Eu、(Ca,Sr)AlSiN3:Eu2+、(Sr,Ca)Al2Si2N6:Eu2+、(Ba,Sr,Ca)2Si5N8:Eu2+、Sr(LiAl3N4):Eu2+、もしくはこれらの組み合わせであるか、またはこれらを含むものであってもよい。
【0021】
非限定的な実施形態では、蛍光体は、LuAG:Ce、LuAGaG:Ce、YAGaG:Ce、YAG:Ce、Sr(Sr,Ca)Si2Al2N6:Eu2+、CaAlSiN3:Eu2+、K2SiF6:Mn4+、β-SiAlON:Eu2+、もしくはこれらの組み合わせであるか、またはこれらを含むものであってもよい。
【0022】
蛍光体は、以下に詳述するような好適な酸化物被覆で被覆されてもよい。
【0023】
さらなる非限定的な実施形態では、蛍光体は量子ドットでもよい。量子ドットは、コアシェル構造を有する材料である。これは、特定の材料がコアを形成し、そのコアが少なくとも部分的に少なくとも1つのシェル材料によって取り囲まれていることを意味する。一部の量子ドットはシェルを持たず、コア材料のみを含む。非限定的な実施形態では、量子ドットは、II-VI構造、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、および/もしくはこれらの化合物半導体から作られた三元(CdZnSe、CdZnS、CdSeS、ZnSeS)材料、四元(CdZnSeS、CdZnTeS)材料などであるか、またはこれらを含むものであってもよい。
【0024】
代替的に、量子ドットは、III-V族構造、例えば、InN、GaN、InP、GaP、AlP、InAs、GaAs、および/またはこれらの化合物半導体から作られた三元材料、もしくは四元材料から選択し得る。さらなる量子ドットは、PbS、PbSe、InAs、GaAs、CuInSe2、AgInS2、CuGaSe2、CuGaS2、ペロブスカイト、シリコン、もしくはこれらの組み合わせであるか、またはこれらを含むものであってもよいが、これらに限定されない。
【0025】
蛍光体は粉末状で提供されるか、または蛍光体は、好適な溶媒(例えばトルエン、シクロヘキサン、エタノール、クロロホルムなどであるがこれらに限定されない溶媒)に溶解してもよい。
【0026】
蛍光体は、以下に詳述するような好適な酸化物被覆で被覆してもよい。非限定的な酸化物被覆としては、シリカ、アルミナ、ハフニア、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。酸化物被覆は、蛍光体の表面を少なくとも部分的にまたは完全に覆ってもよい。酸化物被覆は、約1~約50nm、例えば約5~約15nmの範囲の厚さを有し得る。
【0027】
方法は、蛍光体材料(複数可)と、酸化物被覆で任意に被覆した1つまたは複数の常磁性ナノ粒子とを混合することを含み得る。
【0028】
ナノ粒子は、100nm未満、例えば1~100nm、または10~50nm、または20~30nmのサイズを有し得る粒子である。常磁性ナノ粒子は、常磁性を有するナノ粒子であり得る。非限定的な実施形態では、常磁性ナノ粒子は超常磁性ナノ粒子である。ナノ粒子については、例えば、Wheeler et al. Ann. Phys. (Berlin) 524, No. 11, 670-679 (2012) およびAdams et al., ACS Appl. Nano. Mater. 2018, 1, 1406-1412に記載されている。
【0029】
常磁性ナノ粒子は、以下に詳述するような好適な酸化物被覆で被覆されていてもよい。非限定的な酸化物被覆は、シリカ、アルミナ、ハフニア、またはこれらの組み合わせであり得る。酸化物被覆は、常磁性ナノ粒子(複数可)の表面を少なくとも部分的にまたは完全に覆い得る。酸化物被覆は、約1~約50nm、例えば約5~約15nmの範囲の厚さを有し得る。
【0030】
蛍光体材料(複数可)と常磁性ナノ粒子(複数可)との混合は、材料の混合に利用可能な任意の手段、例えば超音波処理、ボルテックス撹拌、機械的撹拌、せん断混合、またはこれらの組み合わせによって実施することができる。
【0031】
混合により、任意に酸化物被覆した蛍光体材料と任意に酸化物被覆したナノ粒子とがランダムに分布し得る。粒子の一部は、接着力により互いに付着し得る。いくつかの実施形態では、任意に酸化物被覆した蛍光体材料と任意に酸化物被覆したナノ粒子との間の力は、粒子と溶媒の間の引力よりも弱い。
【0032】
混合は、好適な溶媒、例えばシクロヘキサン、クロロホルム、オクタン、テトラクロロエチレン、またはこれらの組み合わせの中で実施することができる。
【0033】
方法は、任意に酸化物被覆した蛍光体材料と任意に酸化物被覆したナノ粒子とを酸化物被覆で被覆して、1つまたは複数の被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体を形成することも含み得る。
【0034】
非限定的な実施形態では、蛍光体材料を酸化物で被覆する、および/または常磁性ナノ粒子を酸化物で被覆する。さらに、蛍光体材料および/または常磁性ナノ粒子は、それぞれが2種以上の酸化物の被覆を有し得る。第1の酸化物被覆は、蛍光体ナノ粒子凝集体(複数可)および/または常磁性ナノ粒子(複数可)を少なくとも部分的にまたは完全に覆う最も外側の酸化物被覆であり得、第2の酸化物被覆は、第1の酸化物被覆を少なくとも部分的にまたは完全に被覆し得る。第1の酸化物被覆および/または第2の酸化物被覆は、同じ材料または異なる材料であり得る。
【0035】
酸化物被覆(複数可)は好適な被覆方法を用いて実施することができる。被覆方法としては、任意に酸化物被覆した蛍光体材料および任意に酸化物被覆したナノ粒子を破壊することなく、任意に酸化物被覆した蛍光体材料上および任意に酸化物被覆したナノ粒子上に少なくとも部分的なまたは完全な酸化物被覆(複数可)を施すものを選択する。したがって、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体(複数可)は、少なくとも部分的にまたは完全に酸化物被覆で被覆されている。
【0036】
被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体(複数可)は、1種の任意に酸化物被覆した蛍光体材料と1種の任意に被覆したナノ粒子とを含み得るものであり、これらは被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体の酸化物被覆を介して互いに付着している。代替的な実施形態では、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体は、複数種の任意に酸化物被覆した蛍光体材料と複数種の任意に被覆したナノ粒子とを含み得るものであり、これらは被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体の酸化物被覆を介して互いに付着している。任意に酸化物被覆した蛍光体材料と任意に被覆した常磁性ナノ粒子との比率は、さまざまな可能性から個別に選択し得る。任意に酸化物被覆した蛍光体材料と任意に被覆した常磁性ナノ粒子との比率は、特にポンプ波長、すなわち450nm、における2つの成分の吸光度を考慮して選択する。任意に被覆した常磁性ナノ粒子が吸収する光は、任意に酸化物被覆した蛍光体材料が吸収する光の10%未満であり得る。
【0037】
被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体の酸化物被覆は完全に硬化させることができる。硬化は、被覆を適切な温度で適切な時間乾燥させることによって実施することができ、例えば、非限定的な実施形態では、蛍光体材料である量子ドット上にSiO2被覆を施す場合、80℃で120分間硬化させるが、これに限定されるものではない。
【0038】
方法は、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体を分離し、波長変換材料を形成することを含み得る。被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体を分離するために、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体に磁場を印加し得る。磁場の印加とは、蛍光体ナノ粒子溶液の近く(例えば、蛍光体ナノ粒子溶液を収容する容器の外側)に磁石を配置することと理解され得る。
【0039】
被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体は、磁石に直接付着させてよい。代替的な実施形態では、磁石を好適な表面の下に置き、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体(複数可)を磁石の結合力によって当該表面に付着させることができる。後者の非限定的な実施形態では、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体(複数可)は、オプトエレクトロニクス半導体チップ(例えば、InGaNまたはGaNチップ)などの所望の表面上に配置し得る。
【0040】
好適な磁石は、電磁石、ネオジムなどの永久磁石、またはこれらの組み合わせなどであるか、またはこれらを含むものであってもよいが、これらに限定されない。
【0041】
被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体に磁場を印加することにより、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体を不純物、副生成物、溶媒などから分離し得る。不純物および/または副生成物となり得るものは、未反応の酸化物前駆体、部分的に加水分解した酸化物前駆体、触媒(酸または塩基)、エタノール、水、メタノール、ポリマー、界面活性剤、またはこれらの組み合わせである。
【0042】
非限定的な実施形態では、方法は、分離の前に、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体をシェリングすることを含み得る。
【0043】
本明細書に記載するシェリングとは、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体の酸化物被覆の上方にシェルを設けることと定義される。シェルは、酸化物被覆を少なくとも部分的にまたは完全に覆うことができる。非限定的な実施形態では、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体は、酸化物被覆で完全には被覆されていなくてもよく、シェルは、任意に酸化物被覆した蛍光体材料および/または任意に酸化物被覆した常磁性ナノ粒子凝集体と接触していてもよい。
【0044】
シェリングは、湿度、放射線、酸素、またはこれらの組み合わせに対する凝集体の耐性に影響を及ぼし得る。シェリングは、疎水性または親水性などの特性ももたらし得る。非限定的な実施形態では、シェリングは、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体の磁気特性に影響を及ぼさない可能性がある。
【0045】
好適なシェリング材料は、ZnS、ZnSeS、ZnSe、AlP、またはこれらの組み合わせなど、ポンプ波長(450nm)を吸収しない任意のワイドバンドギャップ半導体であるか、またはこれらを含むものであってもよい。非限定的な実施形態では、シェリング材料は、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、硫化銀ガリウム(AgGaS2)、硫化銅ガリウム(CuGaS2)、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0046】
非限定的な実施形態では、シェリングは酸化物材料によるものであるが、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体の酸化物被覆、任意に酸化物被覆した蛍光体材料、および/または任意に酸化物被覆した常磁性ナノ粒子の酸化物材料とは異なる酸化物であり得る。シェリングの非限定的な酸化物は、ZnO、TiO2、ZrO2、Al2O3、SnO2、BaO、もしくはこれらの組み合わせであるか、またはこれらを含むものであってもよいが、これらに限定されない。
【0047】
シェリングは、1nm~50nmの範囲の厚さを有し得る。非限定的な実施形態では、シェリングは、5nm~15nm、例えば5nm~10nmの範囲の厚さを有し得る。
【0048】
非限定的な実施形態では、任意に酸化物被覆した常磁性粒子は、Ni、Co、Fe3O4(磁鉄鉱)、γ-Fe2O3、Pt、W、Cs、Al、Li、Mg、Na、もしくはこれらの組み合わせであるか、またはこれらを含むものであってもよい。非限定的な実施形態では、任意に酸化物被覆した常磁性粒子は、Fe3O4、γ-Fe2O3、もしくはこれらの組み合わせであるか、またはこれらを含むものであってもよい。任意に酸化物被覆した常磁性粒子は、Ni、Co、Fe3O4、γ-Fe2O3、Pt、W、Cs、Al、Li、Mg、Na、もしくはこれらの組み合わせ、ならびにさらなる常磁性もしくは非常磁性元素および/もしくは化合物でもあるか、またはこれらを含むものであってもよい。任意に酸化物被覆した常磁性ナノ粒子は、常磁性および超常磁性元素および/または化合物の組み合わせを含んでもよい。
【0049】
ナノ粒子の元素および/または化合物の非限定的な組み合わせは、Fe3O4(磁鉄鉱)およびγ-Fe2O3であるか、またはこれらを含むものであってもよい。
【0050】
一実施形態では、酸化物被覆は、SiO2、ZrO2、Al2O3、TiO2、HfO2、MgO、もしくはこれらの組み合わせであるか、またはこれらを含むものであってもよいがこれらに限定されない。
【0051】
非限定的な実施形態では、酸化物被覆は、SiO2、ZrO2、Al2O3、もしくはこれらの組み合わせであるか、またはこれらを含むものであってもよい。
【0052】
酸化物は、1つの酸化物、または異なる酸化物の組み合わせであり得る。酸化物の非限定的な組み合わせは、シリカとアルミナまたはシリカとジルコニアであり得る。
【0053】
一実施形態では、異なる複数種の酸化物が存在してもよく、例えば蛍光体材料が酸化物被覆(例えば、SiO2)で被覆され得、常磁性ナノ粒子が同じまたは異なる酸化物被覆(例えば、SiO2またはAl2O3)で被覆され得、蛍光体ナノ粒子凝集体の被覆が、同じまたは異なる酸化物被覆(例えば、SiO2、Al2O3、またはMgO)であり得る。したがって、この非限定的な実施形態では、2種または3種の異なる酸化物被覆が存在し得る。さらなる非限定的な実施形態では、蛍光体材料、常磁性材料、および/または凝集体のための各酸化物被覆の複数の層が存在してもよく、そのための酸化物被覆の各層は異なっていてもよい。
【0054】
酸化物被覆および酸化物被覆のために選択した材料は、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体の特性に影響を及ぼし得る。酸化物被覆は、特に蛍光体が量子ドットである場合、非常に安定した高いフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)粒子をもたらし、耐湿性を向上させ得る。酸化物被覆は、絶縁被膜として機能し得る。さらに、酸化物被覆は、量子ドット-ナノ粒子凝集体のような個々に封入された蛍光体ナノ粒子凝集体の湿潤高温動作寿命(WHTOL)を改善し得る。
【0055】
一実施形態では、方法は、蛍光体材料およびポリマーのスラリー中の被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体をオプトエレクトロニクス半導体チップ上に堆積させることをさらに含み得る。オプトエレクトロニクス半導体チップは、特定の第1の波長の光を生成するように構成された任意の装置であり得る。非限定的な実施形態では、オプトエレクトロニクス半導体チップは青色光を発する。オプトエレクトロニクス半導体チップの非限定的な例は、InGaNまたはGaNチップである。同様にオプトエレクトロニクス半導体チップとして使用し得る他のデバイスとしては、固体レーザーダイオードが挙げられる。
【0056】
方法は、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体をオプトエレクトロニクス半導体チップに付着させることをさらに含み得る。
【0057】
さらなる実施形態では、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体は、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体に対して約0.1質量%~約10質量%の蛍光体を含み得る。非限定的な実施形態では、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体は、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体に対して約3質量%~約8質量%の蛍光体を含んでもよく、例えば被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体は、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体に対して約5質量%~約6質量%の蛍光体を含む。
【0058】
非限定的な実施形態では、蛍光体材料は量子ドット(QD)であり、QDが生成物の全質量の約5%を占め、酸化物被覆が約95%であり得る。磁性粒子による光の吸収を10%未満とするためには、QDの質量をQDの約10%未満とし得る、すなわち、0.5%が磁性粒子、5%がQD、94.5%が酸化物被覆とし得る。
【0059】
被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体は、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体に対して約0.1質量%~約20質量%のナノ粒子を含み得る。非限定的な実施形態では、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体は、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体に対して約0.2質量%~約5質量%のナノ粒子を含んでもよく、例えば被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体は、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体に対して約0.4~約1質量%のナノ粒子を含む。
【0060】
被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体は、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体に対して約20質量%~約98質量%の酸化物被覆を含み得る。非限定的な実施形態では、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体は、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体に対して約50質量%~約96質量%の酸化物被覆を含んでもよく、例えば被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体は、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体に対して約85質量%~約95質量%の酸化物被覆を含む。
【0061】
酸化物被覆およびナノ粒子の量は、所定の第1の波長の光を所定の第2の波長の光に変換する際の波長変換特性に影響を及ぼさないように選択する。
【0062】
蛍光体、酸化物被覆、および常磁性ナノ粒子について本明細書に記載する実施形態は、上記特徴を含む波長変換材料にも適用される。
【0063】
波長変換材料の蛍光体は、ガーネット、オキシニトリドシリケート、ペロブスカイト、量子ドット、ケイ酸塩、もしくはこれらの組み合わせであるか、またはこれらを含むものであってもよいが、これらに限定されない。
【0064】
非限定的な実施形態では、波長変換材料の常磁性ナノ粒子は、Ni、Co、Fe3O4(磁鉄鉱)、γ-Fe2O3、Pt、W、Cs、Al、Li、Mg、Na、もしくはこれらの組み合わせであるか、またはこれらを含むものであってもよいが、これらに限定されない。非限定的な実施形態では、常磁性粒子は、Fe3O4、γ-Fe2O3、もしくはこれらの組み合わせであるか、またはこれらを含むものであってもよいが、これらに限定されない。常磁性粒子は、Ni、Co、Fe3O4(磁鉄鉱)、γ-Fe2O3、Pt、W、Cs、Al、Li、Mg、Na、もしくはこれらの組み合わせからなる群から選択される元素または化合物、ならびにさらなる常磁性または非常磁性元素および/または化合物を含む粒子でもあり得る。常磁性ナノ粒子は、常磁性および超常磁性元素および/または化合物の組み合わせも含み得る。
【0065】
したがって、各ナノ粒子は同一でも異なっていてもよい。第1のナノ粒子は第1の化合物を含んでもよく、第2以降のナノ粒子は同一または異なるナノ粒子組成物であり得るか、またこれらを有し得る。ナノ粒子の非限定的な組み合わせは、Fe3O4(磁鉄鉱)およびγ-Fe2O3であり得る。
【0066】
波長変換材料中の蛍光体、酸化物被覆、およびナノ粒子のそれぞれの量は、本明細書に記載する量にそれぞれ対応する。
【0067】
非限定的な実施形態では、波長変換材料は、波長変換材料に対して約0.1質量%~約10質量%の蛍光体を含み得る。非限定的な実施形態では、波長変換材料は、波長変換材料に対して約3質量%~約8質量%の蛍光体を含んでもよく、例えば波長変換材料は、波長変換材料に対して約5質量%~約6質量%の蛍光体を含んでよい。
【0068】
波長変換材料は、波長変換材料に対して約0.1質量%~約20質量%のナノ粒子を含み得る。非限定的な実施形態では、波長変換材料は、波長変換材料に対して約0.2質量%~約5質量%のナノ粒子を含んでもよく、例えば波長変換材料は、ナノ粒子が波長変換材料に対して約0.4質量%~約1質量%の範囲である。
【0069】
波長変換材料は、波長変換材料に対して約20質量%~約98質量%の酸化物被覆を含み得る。非限定的な実施形態では、波長変換材料は、波長変換材料に対して約50質量%~約96質量%の酸化物被覆を含んでもよく、例えば波長変換材料は、波長変換材料に対して約85質量%~約95質量%の酸化物被覆を含む。
【0070】
発光ダイオード(LED)は波長変換材料を含み得る。
【0071】
発光ダイオード(LED)は、所定の第1の波長の光を発する発光ダイをさらに含み得る。発光ダイは、通常、特定の第1の波長の光として青色光または紫外線を発する。非限定的な発光ダイは青色発光ダイである。オプトエレクトロニクス半導体チップも発光ダイとして使用され得る。発光ダイの非限定的なオプトエレクトロニクス半導体チップは、InGaNもしくはGaNチップ、または固体レーザーダイオードである。
【0072】
波長変換材料は、LEDの発光ダイに直接付着させてよい。代替的に、波長変換材料とLEDの発光ダイとの間にさらなる手段が存在してもよい。
【0073】
波長変換材料は、発光ダイの少なくとも1つの面を、少なくとも部分的にまたは完全に覆ってよい。
【0074】
LEDは、波長変換材料に加えて、異なる蛍光体などの波長変換材料をさらに含んでもよい。
【0075】
波長変換材料は、発光ダイオード(LED)の製造方法など、波長変換材料の精製方法にも使用し得る。
【0076】
波長変換材料の精製方法は、異なる波長変換材料を含む溶液もしくは混合物から波長変換材料を単離すること、および/または反応副生成物および不純物を単離することを含み得る。非限定的な実施形態では、波長変換材料は、そのような単離、すなわち精製工程において使用し得る。波長変換材料は、磁石を用いて溶液から単離することにより溶液から精製され得る。
【0077】
発光ダイオード(LED)の製造方法は、LEDダイ上に波長変換材料を(例えば、堆積によって)配置することを含み得る。波長変換材料は、磁石を用いてLEDダイ上の所望の位置に正確に配置され得る。
【0078】
非限定的な実施形態では、QDは、従来の蛍光体よりも小さいことがあり、LEDのパッケージ内でLEDダイに堆積させるのが困難になり得る。堆積とは、ポリマー中の蛍光体スラリーをLEDパッケージ内に沈着させ、次いでパッケージを遠心分離し、ヒートシンクに接続したオプトエレクトロニクス半導体チップに蛍光体結晶を近づける過程である。堆積させた蛍光体は、動作中に低温に保たれるため、通常、ダウンコンバージョン効率および動作状態での長期安定性が向上する。
【0079】
波長変換材料は磁場を用いて堆積させ、遠心分離工程を省いてもよい。波長変換材料は、選択的に堆積させるか、またはポリマー溶液に再懸濁させて、QDおよび蛍光体の空間配置にさらに柔軟性をもたしてもよい。例えば、蛍光体が高温性能に乏しく、QDが高フラックス性能に乏しい場合、蛍光体を堆積させた後、磁場を用いてQDをポリマー溶液に再懸濁させてよい。
【0080】
図1は波長変換器の製造方法を示す。「A」で蛍光体材料を提供する。蛍光体材料を常磁性ナノ粒子と混合し、「B」で2つの材料に1つまたは複数の酸化物被覆を施す。「B」の酸化物被覆蛍光体および酸化物被覆常磁性ナノ粒子を、「C」において酸化物被覆で被覆し、蛍光体ナノ粒子凝集体を形成する。被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体を、「D」において、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体を含む溶液に磁石を適用することにより分離する。
【0081】
図2は非限定的な波長変換材料1を示す。波長変換材料1は、酸化物被覆で任意に被覆した蛍光体材料2、酸化物被覆で任意に被覆した常磁性ナノ粒子3、および蛍光体材料2と常磁性ナノ粒子3とを取り囲む酸化物被覆4を含み得る。
【0082】
図3は、波長変換材料1とLEDダイ6とを含む例示的な発光ダイオード(LED)5を示す。
【実施例】
【0083】
界面活性剤としてスルホコハク酸ジオクチル20gを、超音波処理と撹拌を用いて30mLのヘキサンに溶解した。別途、18mLのシクロヘキサン中に30ナノモルのQDを含有するQD溶液(例えば、CdSe/ZnSe/ZnS)を調製した。次いで、シクロヘキサンに磁鉄鉱ナノ粒子を含む溶液を、450nmにおける吸光度が前述のQD溶液の吸光度と等しくなるように調製し、この溶液2mLを18mLのQD溶液と混合した。続いて、QD/磁鉄鉱ナノ粒子溶液をスルホコハク酸ジオクチル溶液に添加し、1時間撹拌した。50容量%の水/エタノール溶液を調製した。撹拌中のQD溶液に1gのアルミニウムイソプロポキシドを、続いて3mLの50容量%の水/エタノール溶液を添加した。1時間後、さらに1gのアルミニウムイソプロポキシドおよび3gの水/エタノールを添加した。反応の1時間後、撹拌しながら100mLのイソプロパノールを添加し、溶液を遠心分離して、QD、磁鉄鉱、およびアルミナを含有する固体の着色ペレットを得た。上清を捨て、ペレットを空気中で10分間乾燥させ、20mLのトルエンに再分散させ、30mLのイソプロパノールと共に粉砕し、遠心分離した。上清を捨て、固体生成物を空気中で10分間乾燥させた。この段階で、個々の量子ドットおよび磁鉄鉱ナノ粒子がアルミナ中に封入されていた。次の反応では、さらにアルミナを沈着させ、これらの粒子を、複数のQDおよび磁鉄鉱粒子を含有するより大きな構造体に凝集させた。
【0084】
固体ペレットを、30mLのヘキサンおよび20gのスルホコハク酸ジオクチルからなる溶液に再分散させた。溶液を室温で1時間撹拌した後、1gのアルミニウムイソプロポキシドと3mLの50%水/エタノールの両方を30分間隔で4回添加した。溶液は4時間反応させた。反応が完了したら撹拌を止め、ネオジム永久磁石をフラスコの外側に2分間保持し、固形物をすべて回収した。無色の液体は廃棄した。必要に応じて、得られた生成物をさらに洗浄することができる。
【0085】
非限定的な実施形態を説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書においてさまざまな変更および修正が可能であることは、当業者には明らかであろう。本開示は、任意の新たな特徴に加え、特徴の任意の組み合わせを含み、特に、特徴または組み合わせがそれ自体特許請求の範囲または実施例に明示的に示されていなくても、添付の特許請求の範囲における特徴の任意の組み合わせを含む。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長変換材料の製造方法であって、
1つまたは複数の蛍光体材料を提供する工程であって、前記蛍光体材料が任意の酸化物被覆を含み、
前記1つまたは複数の蛍光体材料と、1つまたは複数の常磁性ナノ粒子とを混合する工程であって、前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子が、任意で、任意の酸化物被覆を含み、
前記1つまたは複数の蛍光体材料と前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子とを酸化物被覆で被覆し、被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体を形成する工程と、
前記被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体を分離し、波長変換材料を形成する工程と
を含み、前記被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体の分離を、磁場を印加することによって行う、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の蛍光体材料が量子ドットである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離の前に、前記被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体をシェリングする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子が、Ni、Co、Fe
3O
4(磁鉄鉱)、γ-Fe
2O
3、Pt、W、Cs、Al、Li、Mg、Na、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の蛍光体材料の前記酸化物被覆、前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子の前記酸化物被覆、前記被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体の前記酸化物被覆、およびこれらの組み合わせが、SiO
2、ZrO
2、Al
2O
3、TiO
2、HfO
2、MgO、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の蛍光体材料が、LuAG:Ce、LuAGaG:Ce、YAGaG:Ce、YAG:Ce、Sr(Sr,Ca)Si
2Al
2N
6:Eu
2+、CaAlSiN
3:Eu
2+、K
2SiF
6:Mn
4+、β-SiAlON:Eu
2+(Ba,Sr)
2Si
5N
8:Eu
2+、Ca-α-SiAlON:Eu
2+、YAG:Ce+CaAlSiN
3:Eu、(Ca,Sr)AlSiN
3:Eu
2+、(Sr,Ca)Al
2Si
2N
6:Eu
2+、(Ba,Sr,Ca)
2Si
5N
8:Eu
2+、Sr(LiAl
3N
4):Eu
2+、CdS、CdSe、CdTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、InN、GaN、InP、GaP、AlP、InAs、GaAs、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体をオプトエレクトロニクス半導体チップに付着させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体が、前記1つまたは複数の被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体に対して
0.1質量%~
10質量%の前記1つまたは複数の蛍光体材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数の蛍光体材料が酸化物被覆を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子が酸化物被覆を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記1つまたは複数の蛍光体材料が酸化物被覆を含み、前記1つまたは複数の常磁性材料が酸化物被覆を含み、かつ前記1つまたは複数の蛍光体材料の前記酸化物被覆が、前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子のための酸化物材料と異なる、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記1つまたは複数の蛍光体材料が酸化物被覆を含み、前記1つまたは複数の常磁性材料が酸化物被覆を含み、かつ前記被覆蛍光体-ナノ粒子凝集体の酸化物被覆が、前記1つまたは複数の蛍光体材料の前記酸化物被覆、前記1つまたは複数の常磁性材料の前記酸化物被覆、またはその両方と異なる、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
1つまたは複数の蛍光体と、
1つまたは複数の常磁性ナノ粒子と、
前記1つまたは複数の蛍光体と前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子とを取り囲む1つまたは複数の酸化物被覆と
を含む、波長変換材料。
【請求項14】
前記1つまたは複数の蛍光体が量子ドットである、
請求項13に記載の波長変換材料。
【請求項15】
前記1つまたは複数の常磁性ナノ粒子が、Ni、Co、Fe
3O
4(磁鉄鉱)、γ-Fe
2O
3、Pt、W、Cs、Al、Li、Mg、Na、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、
請求項13に記載の波長変換材料。
【請求項16】
請求項13に記載の波長変換材料を含む、発光ダイオード(LED)。
【国際調査報告】