(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】熱間圧延機の仕上げ列の上流における圧延製品の冷却
(51)【国際特許分類】
B21B 45/02 20060101AFI20240709BHJP
B21B 37/74 20060101ALI20240709BHJP
C21D 9/52 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B21B45/02 320T
B21B37/74 A
C21D9/52 102
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575470
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2022063733
(87)【国際公開番号】W WO2022258350
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515153152
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・オーストリア・ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】516128728
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】エーリヒ・オピッツ
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・ピヒラー
(72)【発明者】
【氏名】アロイス・ザイリンガー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ヴァインツィール
(72)【発明者】
【氏名】アクセル・リムナック
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒト・ジーベル
【テーマコード(参考)】
4E124
4K043
【Fターム(参考)】
4E124AA01
4E124BB06
4E124BB07
4E124BB08
4E124EE01
4E124EE02
4E124EE15
4E124FF01
4K043AA01
4K043BA03
4K043CB01
4K043FA03
4K043GA10
(57)【要約】
本発明は、熱間圧延機(1)の仕上げ列(9)の上流に位置する冷却部(19)において圧延製品(15)を冷却する方法に関し、冷却部(19)は、冷却剤(35)の冷却剤流量を圧延製品(15)の圧延製品表面(29)上に供給することができる少なくとも1つの冷却装置(21、22、23)を備えている。本方法では、各冷却装置(21、22、23)によって各冷却部通過で、冷却剤流量が圧延製品表面(29)上に供給され、冷却剤流量は、冷却部通過の関連する冷却装置(21、22、23)に割り当てられた設定値に設定される。冷却部通過の設定値は、冷却部通過のシミュレーションにおいて、このシミュレーションで決定された、冷却装置(21、22、23)の有効領域(31、32、33)を出る際の圧延製品表面(29)の表面温度が、圧延製品表面(29)の表面温度の最小値を超えないように決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却部(19)において圧延製品(15)を冷却する方法であって、前記冷却部(19)は、熱間圧延機(1)の仕上げ列(9)の上流に配置され、前記圧延製品(15)は、前記冷却部(19)を通って冷却部経路に沿って所定の搬送速度で1回、または毎回所定の搬送速度で交互方向に数回搬送され、前記冷却部(19)は、有効領域(31、32、33)を有する1つの冷却装置(21、22、23)、または前記冷却部経路に沿って前後に配置され、それぞれが有効領域(31、32、33)を有する複数の冷却装置(21、22、23)を有し、隣接する冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)は互いに直接隣接しており、各有効領域(31、32、33)の各冷却装置(21、22、23)によって、冷却剤(35)の冷却剤流量を前記圧延製品(15)の圧延製品表面(29)上に供給することができ、前記冷却剤流量は、値ゼロと前記冷却装置(21、22、23)に固有の最大値との間に設定することができ、
- 前記冷却部(19)を通る前記圧延製品(15)の前記搬送中に、前記圧延製品表面(29)の表面温度(T
S)の最小値が受け入れられ、
- 前記最小値を維持するために、前記冷却部(19)を通過する冷却部通過ごとに、前記冷却剤流量の設定値が各冷却装置(21、22、23)に割り当てられ、
- 冷却剤流量は、冷却部通過ごとに各冷却装置(21、22、23)によって前記圧延製品表面(29)上に送られ、前記冷却剤流量は、前記冷却部通過の関連する冷却装置(21、22、23)に割り当てられた前記設定値に設定され、
- 冷却部通過の前記設定値を決定するために、前記所定の搬送速度で前記冷却部(19)を通過する前記圧延製品(15)の圧延製品部に対して前記冷却部通過が少なくとも1回シミュレーションされ、シミュレーションによる冷却部通過ごとに、各冷却装置(21、22、23)に対して次の値が連続的に決定される、すなわち、
- - 前記冷却装置(21、22、23)によって供給される冷却剤流量のデフォルト値が、遅くとも前記圧延製品部が前記冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)に入る直前に受信されるかまたは決定され、
- - 前記冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)への進入時の前記圧延製品部内の初期エンタルピー分布および/または初期温度分布に基づき、物理モデルを使用して、前記冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)から出る際の前記圧延製品部内のエンタルピー分布および/または温度分布を計算し、
- - 前記設定値が、前記設定値が前記デフォルト値を超えないこと、および、前記初期エンタルピー分布および/または初期温度分布から導出される前記圧延製品表面(29)の表面温度、または、前記圧延製品部の前記計算されたエンタルピー分布および/または計算された温度分布から導出される前記圧延製品表面(29)の表面温度が、前記冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)から出るときに前記最小値を下回らないこと、という二次条件下で前記冷却装置(21、22、23)から前記圧延製品表面(29)に供給される前記冷却剤流量を準最大化するように決定され、
- - 前記冷却部通過中に前記圧延製品部が直後に連続的に通過する2つの有効領域(31、32、33)ごとに、通過した第1の有効領域(31、32、33)について計算された前記エンタルピー分布および/または計算された温度分布が、他の有効領域(31、32、33)への進入時に前記初期エンタルピー分布および/または初期温度分布として前記他の有効領域(31、32、33)に割り当てられ、
- - 元の初期エンタルピー分布および/または元の初期温度分布が、前記冷却部通過中に前記圧延製品部が通過する第1の冷却装置(21、22、23)に対して受け入れられる、
方法。
【請求項2】
圧延製品部のシミュレーションによる冷却部通過ごとに、少なくとも1つの冷却装置(21、22、23)に、
【数1】
に従って前記設定値が割り当てられ、
【数2】
は、前記冷却装置(21、22、23)によって供給される前記冷却剤流量の前記デフォルト値であり、
【数3】
は、前記冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)に入ったときの、前記初期エンタルピー分布および/または初期温度分布から導出される、前記圧延製品表面(29)の表面温度であり、T
minは、前記圧延製品表面(29)の前記表面温度(T
S)の前記最小値であり、
【数4】
は、事前に決定可能な予備温度差であり、f
i(T)は、T≦T
minの場合は0、
【数5】
の場合は1、区間
【数6】
では厳密に単調増加する関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
まず、前記冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)から出る際の前記圧延製品表面(29)の前記表面温度を、前記冷却装置(21、22、23)の前記冷却剤流量の前記デフォルト値に対して計算し、前記デフォルト値に対して計算された前記表面温度が前記最小値を下回らない場合、前記設定値を前記デフォルト値と等しく設定することにより、少なくとも1つの冷却装置(21、22、23)の前記設定値が、シミュレーションによる冷却部通過ごとに決定され、それ以外の場合、前記有効領域(31、32、33)から出る際の前記計算された表面温度が十分な精度で前記最小値と一致する前記冷却剤流量の設定値を決定するために、前記有効領域(31、32、33)から出る際の前記表面温度の前記計算が、前記デフォルト値より小さい少なくとも1つの冷却剤流量に対して繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各冷却装置(21、22、23)について、関連する冷却装置(21、22、23)に固有の前記冷却剤流量の前記最大値が、シミュレーションによる冷却部通過ごとの前記冷却剤流量の前記デフォルト値として受け入れられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
圧延製品部の冷却部通過のシミュレーションのために、前記冷却部通過中に前記圧延製品部に属する前記圧延製品表面(29)の表面部分に合計として最大で供給される冷却剤(35)の総冷却剤量が決定され、前記シミュレーションによる冷却部通過の前記冷却剤流量の前記デフォルト値が、前記冷却部通過に指定された前記総冷却剤量と前記搬送速度とに応じて決定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
冷却部通過後に前記圧延製品(15)の目標平均温度が受け取られ、圧延製品部の冷却部通過の各シミュレーションにおいて、前記冷却部通過の終了時における前記圧延製品部の平均温度が計算され、前記計算された平均温度が前記目標平均温度に十分正確に対応していない場合、前記計算された平均温度を前記目標平均温度と一致させるために、圧延製品部の冷却部通過の後続のシミュレーションのために冷却剤の総量が変更される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
圧延製品部の冷却部通過のシミュレーション中に、各冷却装置(21、22、23)に残留冷却剤量が割り当てられ、前記総冷却剤量が、前記残留冷却剤量として前記冷却部通過の前記第1の冷却装置(21、22、23)に割り当てられ、さらなる各冷却装置(21、22、23)には、残留冷却剤量として、前記圧延製品部に属する前記圧延製品表面(29)の前記表面部分に前記冷却部通過の先行する冷却装置(21、22、23)に対して決定された冷却剤流量設定値に従って前記先行する冷却装置(21、22、23)によって供給される冷却剤量を差し引いた前記先行する冷却装置(21、22、23)の残留冷却剤量が割り当てられ、冷却装置(21、22、23)の前記冷却剤流量の前記デフォルト値は、
【数7】
に従って計算され、
【数8】
は、前記冷却装置(21、22、23)の前記冷却剤流量の前記最大値であり、W
Rは、前記冷却装置(21、22、23)に割り当てられた前記残留冷却剤量であり、
【数9】
は、前記冷却部通過中に、前記冷却装置(21、22、23)によって前記圧延製品部に属する前記圧延製品表面(29)の前記表面部分上に供給することができる最大冷却剤量である、
請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記圧延製品部の前記冷却部通過の前記シミュレーション中に、冷却装置(21、22、23)に対して受け取ったデフォルト値よりも小さい設定値が前記冷却装置(21、22、23)に対して決定された場合、および、前記冷却部通過中に後で到達し、受け取ったデフォルト値が当該冷却装置(21、22、23)の前記冷却剤流量の前記最大値よりも小さい後続の冷却装置(21、22、23)が少なくとも1つある場合、前記冷却部通過中に前記圧延製品部に属する前記圧延製品表面(29)の前記表面部分上に供給される冷却剤の総量を、前記冷却部通過のために決定された冷却剤の前記総量に適合させるために、少なくとも1つの前記後続の冷却装置(21、22、23)の前記デフォルト値が増加する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項9】
前記圧延製品部の冷却部通過のシミュレーション中に、冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)から出る際の前記圧延製品部の前記エンタルピー分布および/または温度分布を計算するために、圧延製品の厚さ方向に沿った前記圧延製品部の前記エンタルピー分布および/または温度分布を記述する1次元熱伝導方程式が解かれる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記1次元熱伝導方程式を解くために、熱放射による前記圧延製品部の冷却、前記圧延製品表面(29)に供給される冷却剤、前記圧延製品部から周囲空気に放散される熱、および、前記圧延製品(15)を搬送する搬送ローラーに前記圧延製品部から放散される熱をパラメータ化する境界条件が考慮される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記圧延製品部に属する前記圧延製品表面(29)の表面部分の前記表面温度(T
S)が、冷却部通過の前に圧延製品部が通過する少なくとも1つの測定点(39)において測定され、前記圧延製品部の冷却部通過のシミュレーションに対する前記元の初期エンタルピー分布および/または元の初期温度分布が、前記少なくとも1つの測定された表面温度(T
S)に応じて決定される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記圧延製品(15)の圧延製品上面(29)もしくは圧延製品底面(29)に対して、または前記圧延製品上面(29)と前記圧延製品底面(29)に対して別々に実行される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
熱間圧延機(1)の仕上げ列(9)の上流で圧延製品(15)を冷却するための冷却部(19)であって、前記冷却部(19)が、
- 1つの冷却装置(21、22、23)または複数の冷却装置(21、22、23)であって、前記複数の冷却装置(21、22、23)は、前記冷却部(19)を通る冷却経路に沿って前後に配置され、前記複数の冷却装置(21、22、23)のそれぞれによって、冷却剤(35)の冷却剤流量を前記圧延製品(15)の圧延製品表面(29)上に供給することができ、前記冷却剤流量は、値ゼロと前記冷却装置(21、22、23)に固有の最大値との間に設定することができる、1つの冷却装置(21、22、23)または複数の冷却装置(21、22、23)と、
- 前記冷却部(19)を通る冷却部経路に沿って前記圧延製品(15)を搬送するように設計された複数の搬送ローラー(25)と、
- 請求項1から12のいずれか一項に記載の方法に従って前記冷却部(19)を動作させるように設計された制御部(27)と、
を備える、冷却部(19)。
【請求項14】
複数の冷却装置(21、22、23)を備え、前記複数の冷却装置(21、22、23)は、前記複数の冷却装置(21、22、23)の供給可能な冷却剤流量の最大値に従って前記冷却部経路に沿って配置され、前記最大値が前記仕上げ列(9)に向かって単調減少するようになっている、請求項13に記載の冷却部(19)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延機の仕上げ列の上流において圧延製品を冷却するための方法および冷却部に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延機では、鋼帯などの金属圧延材を圧延して厚さを低減する。熱間圧延機は、多くの場合、いわゆる粗加工列といわゆる仕上げ列とを有する。粗加工列では、圧延材はトランスファーバー厚を有するいわゆるトランスファーバーに圧延される。トランスファーバーは、いわゆる中間ローラーテーブルを介して仕上げ列に供給され、そこで圧延製品の厚さがトランスファーバー厚から最終的な厚さまでさらに低減される。
【0003】
圧延材は、たとえば1100℃~1200℃の範囲の温度で粗加工列に供給される。たとえば、粗加工列の前に加熱炉で圧延材をこの温度まで加熱するか、すでに加熱された圧延材を粗加工列に直接供給する。中間ローラーテーブルでは、圧延された製品は再成形されない。つまり、圧延によって厚さが減少することはなく、圧延された製品は単に冷却されるだけである。つまり、トランスファーバーの温度が、たとえば700℃~900℃の範囲の温度に低下する。
【0004】
中間ローラーテーブルで圧延製品を冷却することは、仕上げ列に入る際の圧延製品の入口温度を制限する働きをする。入口温度は、特に管状鋼やマイクロアロイ鋼などのいわゆる熱機械圧延製品の製造において、仕上げ列を通過する圧延製品の搬送中に圧延製品の再結晶を抑制するため、かつ/または自動車の外側スキンや缶の板金の製造などで高い表面品質を達成するためなど、冶金学的理由で制限される。さらに、中間ローラーテーブルを通して圧延製品を搬送する際には、仕上げ列の所望の入口温度をできるだけ早く達成することが有利なことが多い。
【0005】
一方、中間ローラーテーブルにおける圧延製品の過剰な冷却は、圧延製品の表面の表面領域の冷却不足を引き起こす可能性がある。圧延製品の表面に近い領域では、このような過冷却は相変態を引き起こし、圧延処理中に製造される製品の品質を損なう可能性があるため、回避する必要がある。このような過冷却を防ぐためには、中間ローラーテーブルにおける圧延製品の圧延製品表面の表面温度が一定の最小値を下回らないことが必要である。
【0006】
特許文献1は、冷却部に沿って配置された冷却装置を備えた冷却部で平坦な圧延製品を冷却する操作方法を開示しており、圧延製品が冷却部を通過するときに各冷却装置から圧延製品上に冷却剤を供給することができる。冷却部を通る圧延製品のポイントの搬送のシミュレーションによって冷却装置の冷却能力が決定され、冷却部を通る圧延製品の搬送中にこれらの冷却能力に従って冷却装置が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】出版物W.Timmら(2002)、Modelling of heat transfer in hot strip mill runout table cooling、Steel Research、73: 97-104、https://doi.org/10.1002/srin.200200180
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、熱間圧延機の仕上げ列の上流で圧延製品を冷却するための方法および冷却部であって、圧延製品の圧延製品表面の表面温度が所定の最小値を下回らないように圧延製品を冷却する、方法および冷却部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有する方法と、請求項13の特徴を有する冷却部とによって達成される。
【0011】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0012】
本発明による方法では、圧延製品は、冷却部において冷却され、冷却部は、熱間圧延機の仕上げ列の上流に配置され、圧延製品は、冷却部を通って冷却部経路に沿って所定の搬送速度で1回、または毎回所定の搬送速度で交互方向に数回搬送される。所定の搬送速度は時間の経過とともに変化してもよい。ただし、時間が経過しても一定であってもよい。冷却部は、有効領域を有する1つの冷却装置、または冷却部経路に沿って前後に配置され、それぞれが有効領域を有する複数の冷却装置を有し、隣接する冷却装置の有効領域は互いに直接隣接しており、各有効領域の各冷却装置によって、冷却剤の冷却剤流量を圧延製品の圧延製品表面上に供給することができ、冷却剤流量は、値ゼロと冷却装置に固有の最大値との間に設定することができる。
【0013】
本発明による方法では、冷却部を通る圧延製品の搬送中に、圧延製品表面の表面温度の最小値が受け入れられる。最小値を維持するために、冷却部を通過する冷却部通過ごとに、冷却剤流量の設定値が各冷却装置に割り当てられ、冷却剤流量は、冷却部通過ごとに各冷却装置によって圧延製品表面上に送られ、冷却剤流量は、冷却部通過の関連する冷却装置に割り当てられた設定値に設定される。
【0014】
冷却部通過の設定値を決定するために、所定の搬送速度で冷却部を通過する圧延製品の圧延製品部に対して冷却部通過が少なくとも1回シミュレーションされる。シミュレーションによる冷却部通過ごとに、各冷却装置に対して次の値が連続的に決定される。
- 冷却装置によって供給される冷却剤流量のデフォルト値が、遅くとも圧延製品部が冷却装置の有効領域に入る直前に受信されるかまたは決定される。
- 冷却装置の有効領域への進入時の圧延製品部の初期エンタルピー分布および/または初期温度分布に基づき、物理モデルを使用して、冷却装置の有効領域から出る際の圧延製品部のエンタルピー分布および/または温度分布を計算する。
- 設定値が、設定値がデフォルト値を超えないこと、および、初期エンタルピー分布および/または初期温度分布から導出される圧延製品表面の表面温度、または、圧延製品部の計算されたエンタルピー分布および/または計算された温度分布から導出される圧延製品表面の表面温度が、冷却装置の有効領域を出るときに最小値を下回らないこと、という二次条件下で冷却装置から圧延製品表面に供給される冷却剤流量を準最大化するように決定される。
【0015】
冷却部通過のシミュレーション中に、冷却部通過中に圧延製品部分が直後に連続的に通過する2つの有効領域ごとに、通過した第1の有効領域から出る際に、通過した第1の有効領域について計算されたエンタルピー分布および/または計算された温度分布がさらに、他の有効領域への進入時に初期エンタルピー分布および/または初期温度分布として他の有効領域に割り当てられる。元の初期エンタルピー分布および/または元の初期温度分布は、冷却部通過中に圧延製品部が通過する第1の冷却装置に対して受け入れられる。
【0016】
したがって、本発明による方法では、圧延製品の各冷却部通過が最初に、圧延製品の圧延製品部に対して少なくとも1回シミュレーションされ、シミュレーション中にすべての冷却装置の冷却剤流量の設定値が決定される。これらの設定値は、圧延製品の実際の冷却部通過中に冷却装置を制御するために使用される。冷却装置の設定値は、冷却部通過のシミュレーション中に、設定値によって決定される冷却剤流量が、設定値がデフォルト値を超えていないこと、およびシミュレーション中に決定された圧延製品表面の表面温度が、冷却装置の有効領域を出るときに最小値を下回らないこと、という二次条件下で準最大になるように決定される。冷却装置の冷却剤流量のデフォルト値は、シミュレーション中に決定されるか、たとえば上位レベルの制御システムから受信される。
【0017】
ここでの準最大冷却剤流量とは、指定された二次条件下で最大となる冷却剤流量、または制御設計の一部として最大冷却剤流量に近似する冷却剤流量であると理解される。これは、シミュレーションが冷却部のみをモデル化する数学的モデルに基づいており、したがって冷却部を正確に表現していないため、実際には冷却剤流量を正確に最大化する必要がなく、そのため、冷却部における実際の冷却処理からのシミュレーションのわずかな偏差はいずれにしても受け入れなければならないことを考慮している。さらに、冷却剤流量を正確に最大化するには、不当に高い計算量が必要となり、シミュレーションをできるだけ早く実行することが妨げられる可能性がある。
【0018】
冷却剤流量を準最大化することで、冷却部を通過する搬送中に圧延製品の冷却を最適化できるという利点がある。冷却剤流量の設定値のデフォルト値を使用して、圧延製品の冷却部の終端での目標温度を指定でき、この温度は、仕上げ列への進入時の圧延製品の望ましい入口温度に適応される。シミュレーション中に決定された圧延製品表面の表面温度が、冷却装置の有効領域を出るときに表面温度の最小値を下回らないという二次条件は、冷却部を通過する圧延製品の搬送中に発生し、製品の品質が低下する上述の圧延製品表面の過冷却を有利に防止する。したがって、このような圧延製品表面の過冷却が起こらないように最小値を設定する。
【0019】
本発明による方法の一実施形態では、圧延製品部のシミュレーションによる冷却部通過ごとに、少なくとも1つの冷却装置、特に各冷却装置に、
【数1】
および
【数2】
の積として、
【数3】
に従って設定値が割り当てられる。ここで、iは冷却装置に割り当てられた実行指数の値であり、冷却部通過中に圧延製品部が通過する順序で冷却装置の有効領域に番号を付ける。ここで、
【数4】
は冷却装置によって供給される冷却剤流量のデフォルト値であり、
【数5】
は、冷却装置の有効領域に入ったときの、初期エンタルピー分布および/または初期温度分布から導出される、圧延製品表面の表面温度であり、T
minは、圧延製品表面の表面温度の最小値であり、
【数6】
は、事前に決定可能な予備温度差である。f
i(T)は、T≦T
minの場合は0、
【数7】
の場合は1、区間
【数8】
では厳密に単調増加する関数である。
【0020】
本発明による方法の前述の実施形態では、設定値がデフォルト値を超えないという二次条件は、関数f
i(T)が値1を超えないという点で実現される。冷却装置の有効領域から出たときに圧延製品表面の表面温度が最小値を下回らないという二次条件は、予備温度差
【数9】
を適切に選択することで達成できる。冷却剤流量の準最大化は、関数f
i(T)を0から1まで単調増加させることによって達成される。
【0021】
前述の実施形態に代わる本発明による方法の一実施形態では、まず、冷却装置の有効領域から出る際の圧延製品表面の表面温度を、冷却装置の冷却剤流量のデフォルト値に対して計算することにより、少なくとも1つの冷却装置、特に各冷却装置の設定値が、シミュレーションによる冷却部通過ごとに決定される。デフォルト値に対して計算された表面温度が最小値を下回らない場合、設定値はデフォルト値と等しく設定される。それ以外の場合、有効領域から出る際の計算された表面温度が十分な精度で最小値と一致する冷却剤流量の設定値を決定するために、有効領域から出る際の表面温度の計算が、デフォルト値より小さい少なくとも1つの冷却剤流量に対して繰り返される。十分に正確な一致とは、たとえば、絶対的または相対的な偏差を除き、その量が指定された許容値を超えない一致を意味すると理解される。
【0022】
本発明による方法の前述の実施形態は、前述の二次条件も実現する。この実施形態は、反復計算後に表面温度が実際に最小値に対応する場合、冷却剤流量の正確な最大化を実現する。ただし、最小値をわずかに超えることは、上記の理由により許容され、冷却剤流量が準最大化されることを意味する。
【0023】
本発明による方法のさらなる実施形態では、各冷却装置について、関連する冷却装置に固有の冷却剤流量の最大値が、シミュレーションによる冷却部通過ごとの冷却剤流量のデフォルト値として受け入れられる。
【0024】
本発明による方法の前述の実施形態は、特に、各デフォルト値を関連する冷却装置に固有の冷却剤流量の最大値に設定することによって、冷却部通過中に圧延製品をできるだけ早く冷却することを可能にする。
【0025】
前述の実施形態に代わる本発明による方法の一実施形態では、圧延製品部の冷却部通過のシミュレーションのために、冷却部通過中に圧延製品部に属する圧延製品表面の表面部分に合計として最大で供給される冷却剤の総冷却剤量が決定され、シミュレーションによる冷却部通過の冷却剤流量のデフォルト値が、冷却部通過に指定された総冷却剤量と搬送速度とに応じて決定される。「冷却剤量」という用語は常に、1つまたは複数の冷却装置の有効領域を通る、考慮中の圧延製品部の稼働時間中の冷却剤流量の積分を意味する。圧延製品部に作用する冷却剤流量が常に同じ効果をもたらすとは限らない可能性もある。この場合、冷却剤量とは、冷却剤流量の冷却効果に応じて重み付けされた積分を指す。冷却剤流量の物理単位は、たとえば、冷却装置の幅1mあたりの特定の冷却剤流量(m3/s)に対応するm2/sである。冷却剤量の物理単位はm2であり、冷却装置の幅1mあたりの冷却剤量(m3)に相当する。
【0026】
本発明による方法の前述の実施形態では、冷却部通過全体の冷却効果、したがって冷却部通過後の圧延製品の目標温度は、総冷却剤量によって事前に決定することができる。シミュレーションされた冷却部通過の冷却剤流量のデフォルト値は、総冷却剤量に応じて決定され、総冷却剤量がデフォルト値によって冷却装置に分配される。
【0027】
本発明による方法の上述の実施形態の発展形では、冷却部通過後に圧延製品の目標平均温度が受け取られる。圧延製品部の冷却部通過の各シミュレーションにおいて、冷却部通過終了時における圧延製品部の平均温度が計算され、計算された平均温度が目標平均温度に十分正確に対応していない場合、計算された平均温度を目標平均温度と一致させるために、圧延製品部の冷却部通過の後続のシミュレーションのために冷却剤の総量が変更される。これにより、冷却部通過の終了時に十分な精度で目標平均温度を達成するために、総冷却剤量を繰り返し変更することが可能になるという利点がある。計算された平均温度と目標平均温度との間の十分に正確な一致とは、たとえば、絶対的または相対的な偏差を除き、その量が指定された許容値を超えない一致を意味すると理解される。このさらなる設計では、冷却部通過後の圧延製品の目標平均温度が圧延製品の目標温度として指定され、冷却剤の総量が目標平均温度に合わせて調整される。
【0028】
さらに、圧延製品部の冷却部通過のシミュレーション中に、各冷却装置に残留冷却剤量が割り当てられるようにしてもよい。総冷却剤量は、残留冷却剤量として冷却部通過の第1の冷却装置に割り当てられる。さらなる各冷却装置には、残留冷却剤量として、圧延製品部に属する圧延製品表面の表面部分に冷却部通過の先行する冷却装置に対して決定された冷却剤流量設定値に従って先行する冷却装置によって供給される冷却剤量を差し引いた先行する冷却装置の残留冷却剤量が割り当てられる。そこで、冷却装置の冷却剤流量のデフォルト値は、
【数10】
および
【数11】
の積として、
【数12】
に従って計算される。ここで、
【数13】
は、冷却装置の冷却剤流量の最大値であり、W
Rは、冷却装置に割り当てられた残留冷却剤量であり、
【数14】
は、冷却部通過中に、冷却装置によって圧延製品部に属する圧延製品表面の表面部分上に供給することができる最大冷却剤量である。
【数15】
は2つの値、1および
【数16】
の最小値を示す。本発明による方法のこの実施形態では、冷却装置の冷却剤流量のデフォルト値は、各冷却装置に残留冷却剤量を割り当て、残留冷却剤量に応じて冷却装置のデフォルト値を決定することによって、冷却部通過のシミュレーション中にこのようにして決定される。
【0029】
代替的に、圧延製品部の冷却部通過のシミュレーション中に、冷却装置に対して受け取ったデフォルト値よりも小さい設定値が冷却装置に対して決定された場合、および、冷却部通過中に後で到達し、受け取ったデフォルト値がこの冷却装置の冷却剤流量の最大値よりも小さい後続の冷却装置が少なくとも1つある場合、冷却部通過中に圧延製品部に属する圧延製品表面の表面部分に供給される冷却剤の総量を、冷却部通過のために決定された冷却剤の総量に適合させるために、少なくとも1つのそのような後続の冷却装置のデフォルト値が増加するようにしてもよい。本発明による方法のこの実施形態は、シミュレーションの開始時に受け取ったデフォルト値に基づいている。シミュレーション中に冷却装置に対して決定された設定値が関連するデフォルト値を下回る場合、デフォルト値は必要に応じてシミュレーション中に調整される。デフォルト値を適応させる場合、冷却部通過の冷却効果を総冷却剤量に対応する冷却効果に適応させるために、可能であれば後続の冷却装置のデフォルト値が増加する。
【0030】
本発明による方法のさらなる実施形態では、圧延製品部の冷却部通過のシミュレーション中に、冷却装置の有効領域から出る際の圧延製品部のエンタルピー分布および/または温度分布を計算するために、圧延製品の厚さ方向に沿った圧延製品部のエンタルピー分布および/または温度分布を記述する1次元の熱伝導方程式が解かれる。熱伝導方程式を解くために、たとえば、熱放射による圧延製品部の冷却、圧延製品表面に供給される冷却剤、周囲空気に放散される熱、および圧延製品を搬送する搬送ローラーに放散される熱をパラメータ化する境界条件が考慮される。圧延製品の厚さ方向とは、圧延製品の上面から下面に向かう方向、またはその逆の圧延製品の下面から上面に向かう方向である。
【0031】
本発明による方法の前述の実施形態は、圧延製品内の縦方向または横方向の熱流が、圧延製品の厚さ方向の熱流に比べて無視できることを考慮している。したがって、圧延製品部内のエンタルピー分布および/または温度分布を圧延製品の厚さ方向に沿って記述する1次元の熱伝導方程式を用いて、圧延製品部内のエンタルピー分布および/または温度分布を十分な精度で算出することができる。これにより、2次元または3次元の熱伝導方程式を使用する場合と比較して、計算労力と計算時間が大幅に削減される。前述の境界条件は、圧延製品内のエンタルピー分布と温度分布の発達に対する主な影響を考慮している。
【0032】
本発明による方法のさらなる実施形態では、圧延製品部に属する圧延製品表面の表面部分の表面温度が、冷却部通過の前に圧延製品部が通過する少なくとも1つの測定点で測定され、圧延製品部の冷却部通過のシミュレーションに対する元の初期エンタルピー分布および/または元の初期温度分布が、少なくとも1つの測定された表面温度に応じて決定される。
【0033】
本発明による方法は、圧延製品の圧延製品上面もしくは圧延製品底面に対して、または圧延製品上面および圧延製品底面に対して別々に実行することもできる。
【0034】
熱間圧延機の仕上げ列の上流で圧延製品を冷却するための本発明による冷却部は、
- 1つの冷却装置または複数の冷却装置であって、複数の冷却装置は、冷却部を通る冷却経路に沿って前後に配置され、複数の冷却装置のそれぞれによって、冷却剤の冷却剤流量を圧延製品の圧延製品表面上に供給することができ、冷却剤流量は、値ゼロと冷却装置に固有の最大値との間に設定することができる、1つの冷却装置または複数の冷却装置と、
- 冷却部を通る冷却部経路に沿って圧延製品を搬送するように設計された複数の搬送ローラーと、
- 先行する請求項のいずれか一項に記載の本発明による方法に従って冷却部を動作させるように設計された制御部と、
を備えている。
【0035】
複数の冷却装置を備えた本発明による冷却部の一実施形態では、冷却装置は、それらの供給可能な冷却剤流量の最大値に従って冷却部経路に沿って配置され、最大値が仕上げ列に向かって単調減少するようになっている。これにより、冷却部の開始時に圧延製品の急速冷却が可能になる。さらに、圧延製品表面の表面温度が、一般に冷却部の後部ですでに最小値に達しているため、そこでは低い冷却能力しか必要とされないので、冷却部の後部の冷却装置は、冷却部の前部の冷却装置よりもシンプルでコスト効率が高いように設計できる。
【0036】
上述した本発明の特性、特徴、および利点、ならびにそれらが達成される方法は、図面と併せてより詳細に説明される以下の例示的な実施形態の説明と併せてより明瞭かつ明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図3】本発明による方法の方法ステップの第1の例示的な実施形態のフローチャートである。
【
図4】本発明による方法の方法ステップの第2の例示的な実施形態のフローチャートである。
【
図5】本発明による方法の方法ステップの第3の例示的な実施形態のフローチャートである。
【
図6】本発明による方法の方法ステップの第4の例示的な実施形態のフローチャートである。
【
図7】冷却部通過前および冷却部通過中の圧延製品部の温度の温度曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図中の対応する部分には同じ参照符号が付されている。
【0039】
図1は、熱間圧延機1を概略的に示す図である。熱間圧延機1は、加熱炉3、粗加工列5、中間ローラーテーブル7、仕上げ列9、出口冷却領域11およびコイラー領域13を備えている。圧延製品15は、加熱炉3からコイラー領域13の方向に熱間圧延機1内を搬送される。
【0040】
加熱炉3は粗加工列5の上流に配置され、圧延製品15を特定の温度、たとえば1100℃から1200℃の範囲に加熱するように設定される。
【0041】
粗加工列5は、少なくとも1つの粗加工列圧延スタンド17を有する。粗加工列5において、圧延製品15は、たとえば30mmから170mmの間の範囲のトランスファーバー厚を有するトランスファーバーに圧延される。
【0042】
中間ローラーテーブル7は、圧延製品15を粗加工列5から仕上げ列9まで所定の搬送速度で搬送する。中間ローラーテーブル7は、本発明による冷却部19の例示的な実施形態を有する。冷却部19は、冷却部19を通る冷却部経路に沿って前後に配置された複数の冷却装置21、22、23と、冷却部を通る冷却部経路に沿って圧延製品15を搬送するように設計された複数の搬送ローラー25と、圧延製品15を冷却するための本発明による方法の例示的な実施形態に従って冷却部19を動作させるように設計された制御部27と、を備えている。本発明による方法の例示的な実施形態について、
図2から
図6を参照して以下に説明する。
図1は、3つの冷却装置21、22、23を備えた冷却部19の例を示す。ただし、冷却部19は、異なる数の冷却装置21、22、23を有することもできる。
【0043】
各冷却装置21、22、23により、値ゼロと冷却装置21、22、23に固有の最大値との間に設定され得る冷却剤35の冷却剤流量が、冷却装置21、22、23の有効領域31、32、33内の圧延製品15の圧延製品表面29上に供給され得る。冷却剤35は、たとえば水である。
図1において、圧延製品表面29は、圧延製品15の上面である。他の例示的な実施形態では、圧延製品表面29は圧延製品15の底面であってもよく、その場合、冷却装置21、22、23は圧延製品15の下に配置される。さらに、冷却部19は、圧延製品15の上面および下面の両方に冷却装置21、22、23を備えることができる。後者の場合、本発明による方法は、圧延製品15の上面および下面に対して別々に実行される。
【0044】
各冷却装置21、22、23は、たとえば、圧延製品15の幅に沿って延在し、冷却剤35を圧延製品表面29上に供給することができる複数のノズルを有する冷却バーとして設計される。有効領域31、32、33は、隣接する冷却装置21、22、23の有効領域31、32、33が互いに直接隣接するように、冷却装置21、22、23に割り当てられる。たとえば、冷却装置21、22、23は、供給可能な冷却剤流量の最大値に従って冷却経路に沿って配置され、その最大値は仕上げ列9に向かって単調減少する。
【0045】
中間ローラーテーブル7には、冷却部19の上流側の測定点39に測定装置37も設けられており、測定装置37は圧延製品表面29の表面温度を検出するように設定されている。たとえば、測定装置37は、この目的のために高温計を備えている。
【0046】
仕上げ列9は、複数の仕上げ列圧延スタンド41と仕上げ列冷却装置43とを備え、仕上げ列冷却装置43のそれぞれが2つの仕上げ列圧延スタンド41の間に配置され、それぞれの仕上げ列冷却剤45を圧延製品表面29上に供給することができる。仕上げ列9では、仕上げ列圧延スタンド41を用いて圧延製品15の板厚を最終板厚まで減厚する。
【0047】
出口冷却領域11には出口冷却装置47、49が配置されており、出口冷却装置47、49を用いて出口冷却剤51を圧延製品表面29上に供給することができる。出口冷却領域11では、仕上げ列9の後に圧延製品15が冷却される。
【0048】
少なくとも1つの圧延製品コイラー53がコイラー領域13に配置され、圧延製品15を巻き取るように設計されている。
【0049】
図2は、冷却部19内で圧延製品15を冷却するための方法ステップ100、200、300を含む本発明による方法のフローチャートを示す。
【0050】
第1の方法ステップ100において、制御部27は、冷却部19を通る圧延製品15の搬送中に圧延製品表面29の表面温度の最小値Tminを受け取る。最小値Tminは、たとえば、上位制御システム(図示せず)によって、または熱間圧延機1のオペレータによって指定される。最小値Tminは、冷却部19を通過する圧延製品15の搬送中に下回らない圧延製品表面29の表面温度である。
【0051】
第2の方法ステップ200において、冷却部19を通る圧延製品15の冷却部通過では、各冷却装置21、22、23に、冷却装置21、22、23から圧延製品表面29上に供給される冷却剤流量の設定値が割り当てられる。第2の方法ステップ200の例示的な実施形態は、
図3から
図6を参照して以下でより詳細に説明される。
【0052】
第3の方法ステップ300では、冷却部通過中に、各冷却装置21、22、23によって冷却剤流量が圧延製品表面29上に送られ、冷却剤流量は、第2の方法ステップ200における冷却部通過のために関連する冷却装置21、22、23に割り当てられた設定値に設定される。
【0053】
方法ステップ200および300は、冷却部19を通る圧延製品15の搬送中に冷却装置21、22、23の設定値を変更できるように、数回実行することもできる。これは、
図2に破線の矢印記号で示されている。
【0054】
たとえば、圧延製品15は、冷却装置21、22、23の有効領域31、32、33を順番に通過する複数の圧延製品部に分割され、方法ステップ200および300は、各圧延製品部に対して連続的に実行される。この場合、第2の方法ステップ200において、冷却装置21、22、23によって圧延製品部に属する圧延製品表面29の部分に供給される冷却剤流量の設定値が、冷却部19を通過する圧延製品部の冷却部通過のための各冷却装置21、22、23に割り当てられる。
【0055】
第3の方法ステップ300では、冷却剤流量が、圧延製品部の冷却部通過において各冷却装置21、22、23によって、圧延製品部に属する圧延製品表面29の部分上に供給され、冷却剤流量が、第2の方法ステップ200における圧延製品部の冷却部通過のために関連する冷却装置21、22、23に割り当てられた設定値に設定される。好ましくは、各冷却装置21、22、23に対して、冷却装置21、22、23の設定値の変更と、冷却装置21、22、23によって実際に供給される冷却剤流量が変更された設定値に変化するまでの間に経過する遅延期間が考慮され、冷却装置21、22、23の設定値は、圧延製品部が冷却装置21、22、23の有効領域31、32、33に入る時刻よりも遅延期間だけ早い時刻に変更される。
【0056】
図3は、冷却部19を通過する圧延製品15の冷却部通過のための冷却装置21、22、23の設定値を決定する、サブステップ201から216を有する第2の方法ステップ200の第1の例示的な実施形態を示す。この場合、冷却部通過は、圧延製品15の圧延製品部に対して、それに指定された搬送速度で少なくとも1回シミュレーションされる。実行指数i=1,…,nは、冷却部通過中に圧延製品部が通過する順序で冷却装置21、22、23の有効領域31、32、33に番号を付け、ここで、nは冷却装置21、22、23の数を表す(すでに上で説明したように、
図1には例として3つの冷却装置21、22、23のみが示されている。この方法は、一般的な数の冷却装置21、22、23について以下に説明される)。
【0057】
第1のサブステップ201では、冷却部通過後、すなわち、すべての有効領域31、32、33の通過後、圧延製品部の目標平均温度
【数17】
が受け入れられる。第1のサブステップ201の後、第2のサブステップ202が実行される。
【0058】
第2のサブステップ202では、冷却剤35の合計冷却剤量Wが受け入れられ、冷却剤35は、冷却部が圧延製品部に属する圧延製品表面29の表面部分を通過する間に合計で最大でも供給されることになる。第2のサブステップ202の後、第3のサブステップ203が実行される。
【0059】
第3のサブステップ203では、総冷却液量Wに初期値として残留冷却液量WRを代入し、初期値として実行指数iに値1を代入する。第3のサブステップ203の後、実行指数値i=1に対して第4のサブステップ204が実行される。
【0060】
第4のサブステップ204では、実行指数iの現在値で有効領域31、32、33に入ったときの、圧延製品の厚さ方向に沿った圧延製品部の初期温度分布
【数18】
が受け入れられるか、採用される。圧延製品の厚さ方向は、圧延製品15の上面から下面への、冷却部19を通過する圧延製品15の搬送の搬送方向と直交する方向である。xは圧延製品の厚さ方向に沿った変数を示し、ここで、x=0は圧延製品15の上面上の点であり、x=dは圧延製品の厚さ方向に沿って点x=0とは反対側の圧延製品15の下面上の点である。
【0061】
実行指数値i=1の場合、元の初期温度分布は、たとえば、測定装置37によって記録された圧延製品表面29の表面温度から、および/または加熱炉3の加熱温度から導出される、初期温度分布
【数19】
として受け入れられる。たとえば、初期温度分布
【数20】
は、圧延製品15の上面と底面との間の中間の想定される中心温度と、測定装置37によって記録された表面温度と、の間の、圧延製品の厚さ方向の放物線状の温度分布としてモデル化され、ここで、中心温度は、たとえば加熱炉3の加熱温度から導出される。
【0062】
各実行指数値i>1について、実行指数値i-1を有する有効領域31、32、33についてサブステップ207の前回の実行で決定された温度分布
【数21】
が、初期温度分布
【数22】
として決定された。
【数23】
【0063】
初期温度分布
【数24】
の代わりに、またはそれに加えて、サブステップ204において、初期エンタルピー分布
【数25】
を現在の実行指数値iに対して同様に受け入れるかまたは採用することができる。第4のサブステップ204の後、第5のサブステップ205が実行される。
【0064】
第5のサブステップ205では、実行指数iの現在値を使用して、冷却装置21、22、23の冷却剤流量のデフォルト値
【数26】
が決定される。この目的のために、たとえば、冷却部通過中に、冷却装置21、22、23によって圧延製品部に属する圧延製品表面29の表面部分に供給することができる最大冷却剤量
【数27】
が決定される。最大冷却剤量
【数28】
は、特に、冷却装置21、22、23に固有の供給可能な冷却剤流量の最大値
【数29】
および指定された搬送速度に依存する。そこで、デフォルト値
【数30】
は、2つの値1と
【数31】
の最大値
【数32】
と最小値
【数33】
の積として定義される。
【数34】
【0065】
換言すれば、残留冷却剤量W
Rの現在値が最大冷却剤量
【数35】
より大きいか、最大冷却剤量
【数36】
に等しい場合、デフォルト値
【数37】
は、冷却装置21、22、23に固有の供給可能な冷却剤流量の最大値
【数38】
に対応する。それ以外の場合、デフォルト値
【数39】
は、残留冷却剤量W
Rの現在値の商、および、実行指数iの現在値を使用した、有効領域31、32、33を通る圧延製品部の有効スループット時間
【数40】
の商になる。第5のサブステップ205の後に、第6のサブステップ206が実行される。
【0066】
第6のサブステップ206では、実行指数iの現在値を伴う冷却装置21、22、23の冷却剤流量の設定値w
iには、第5のサブステップ205の前回の実行でこの冷却剤流量に対して決定されたデフォルト値
【数41】
が初期値として割り当てられる。第6のサブステップ206の後、第7のサブステップ207が実行される。
【0067】
第7のサブステップ207では、実行指数iの現在値を用いて、有効領域31、32、33から出る際の圧延製品厚さ方向に沿った圧延製品部の温度分布
【数42】
を計算する。温度分布
【数43】
は、1次元熱伝導方程式を使用して圧延製品部内の温度分布の時間的発展を記述する物理モデルに基づいて計算される。熱伝導方程式は、関連する有効領域31、32、33への進入時の温度分布としての関連する初期温度分布
【数44】
を用いて、以下にリストされる境界条件に対して計算される。
【0068】
第7のサブステップ207における温度分布
【数45】
の代わりに、またはそれに加えて、第4のサブステップ204の前回の実行において、この有効領域31、32、33への進入時に関連する初期エンタルピー分布
【数46】
が受け入れられた、または採用された場合、有効領域31、32、33から出る際の圧延製品部のエンタルピー分布
【数47】
は、実行指数iの現在値を用いて同様に計算することができる。
【0069】
熱伝導方程式の簡単な形式は以下のとおりである。
【数48】
ここで、
【数49】
は圧延製品15の熱拡散率であり、λは熱伝導率であり、
【数50】
は密度であり、cは熱容量である。
【0070】
熱伝導方程式(3)に必要な境界条件は、圧延製品15の上面(x=0)の熱流束密度j
oと下面(x=d)の熱流束密度j
uである。たとえば、上面の場合、
【数51】
が使用され、底面には
【数52】
が使用される。ここで、vは有効領域を通過する際の平均搬送速度であって、以降単に搬送速度と呼び、ε
oは上面からの熱放射の放射係数であり、ε
uは、搬送ローラー25での熱放射の反射によりε
oより小さくなる底面からの熱放射係数である。f
L(T
o、T
e、v)およびf
L(T
u、T
e、v)は、圧延製品15の上面の表面温度T
o、または圧延製品15の底面の表面温度T
uに依存する周囲空気の冷却効果を記述する関数であり、周囲温度T
eと搬送速度vは記述する。f
R(T
u、T
e、v)は、表面温度T
u、周囲温度T
e、および搬送速度vに応じて搬送ローラー25の冷却効果を記述する関数である。f
w(T
o、v、T
w、w
oi)は、上面冷却装置21、22、23、すなわち、圧延製品15の上面を冷却する冷却装置21、22、23の冷却効果を説明する関数であり、表面温度T
o、搬送速度v、冷却剤温度T
w、および設定値w
oiによって与えられる冷却装置21、22、23の冷却剤流量に依存する実行指数値iを有する。したがって、f
w(T
u、v、T
w、w
ui)は、底部側冷却装置21、22、23の冷却効果を記述する関数であり、表面温度T
u、搬送速度v、冷却剤温度T
w、および設定値w
uiによって与えられる冷却装置21、22、23の冷却剤流量に依存する実行指数値iを有する。
【0071】
関数fwは、より単純なパラメータ化を可能にするために分離されることがよくあり、たとえば、冷却効果fT(T,v)の搬送速度vおよび関連する表面温度T=ToまたはT=Tuへの依存関係を説明しやすくすると、実行指数値iを使用して、冷却効果gT(Tw)の冷却剤温度Twに対する依存性、および、上部側または底部側の冷却装置21、22、23の冷却効果hw(w)の冷却剤流量w=woiまたはw=wuiへの依存性を含んで、
fw(T、v、Tw、w)=fT(T、v)gT(Tw)hw(w) (4c)
のようになる。上側冷却装置21、22、23から圧延製品15上に冷却剤流量が供給されない冷却経路に沿った点では、次の式:fw(To、v、Tw、woi)=0が適用される。それに応じて、底側冷却装置21、22、23から圧延製品15上に冷却剤流量が供給されない冷却部経路に沿った点では、fw(Tu、v、Tw、woi)=0、が適用される。
【0072】
本発明による方法が上側および下側の冷却装置21、22、23に対して実行される場合、それは上側冷却装置21、22、23および下側冷却装置21、22、23に対して別々に実行される。したがって、
図3では、以下の:wi=w
oiが上側冷却装置21、22、23に適用され、下側冷却装置21、22、23については、したがって、w
i=w
ui等が適用される。ここで、上側冷却装置21、22、23の実行指数iの実行範囲は、下側冷却装置21、22、23の実行指数iの実行範囲と異なっていてもよい。
【0073】
熱伝導方程式の別の形式は以下のとおりである。
【数53】
式(5)において、p
k、k=1、…、mは、圧延製品15の相分率、たとえばオーステナイト分率、フェライト分率、セメンタイト分率および/または他の分率である。位相分数は常に負ではなく、その合計は1である。変数hはエンタルピー密度であり、以下のとおりである。
【数54】
さらに、各相分率について、関連する相分率のエンタルピー密度h
kと関連する温度T
kの間に既知の依存関係が存在し、つまり、温度T
k=T
k(h
k)は、エンタルピー密度分率h
kの厳密に単調増加する関数である。ある点xの温度はすべての相分率で同じ値を1つだけ持つことができるため、ここでは:T
1(h
1)=T
2(h
2)=…=T
m(h
m)=Tが当てはまる。この連立方程式を解くことにより、関数T(h,p
1,…,p
m)を計算できる。したがって、熱伝導率λは、エンタルピー密度hと相分率p
1,…,p
mの関数として表すことができる。変数ρは、圧延製品15の密度を示し、これはすべての相分率について同じであると仮定される。
【0074】
相分率は、特に熱伝導方程式の解と組み合わせて、必要に応じてここで計算できる。たとえば、位相成分には結合微分方程式系を使用できる。
【数55】
【0075】
式(3)、ならびに式(5)および(6)は、実行指数iの現在値を用いて、有効領域31、32、33から出る際の圧延製品部の温度分布
【数56】
またはエンタルピー分布
【数57】
および相分率
【数58】
を計算するため、初期温度分布
【数59】
および初期エンタルピー分布
【数60】
ならびに初期相分率p
1i、…、p
miについて、式(4a)と(4b)に従って境界条件を使用して解かれる。
【0076】
式(4a)および(4b)に含まれる関数f
L、f
w、f
Rは、たとえばいわゆるBスプラインなど、従来技術から知られる方法で適切にパラメータ化される。場合によっては、閉じた表現も指定できる。この点に関しては、たとえば非特許文献1を参照されたい。ここで、式(6)では、熱流定数
【数61】
と無次元補正関数f
iの積である関数f
L、f
w、f
Rがそれぞれ使用され、指数iは特定のタイプの冷却(空気、冷却剤、または搬送ローラーによる)を表す。さらに、たとえば、空気による冷却については前述の刊行物の式(7)から(9)、冷却剤による(さまざまな種類の)冷却については式(11)から(14)、搬送ローラーによる冷却については式(10)を参照されたい。
【0077】
第7のサブステップ207の後、第8のサブステップ208が実行される。
【0078】
第8のサブステップ208では、第7のサブステップ207で計算された、実行指数iの現在値を有する有効領域31、32、33から出る際の圧延製品表面29の温度
【数62】
が最小値T
minを超えるかどうか、または最小値T
minと等しいがチェックされる(圧延製品表面29が圧延製品15の底面である場合、
【数63】
を
【数64】
に置き換えるか、座標xの選択をx=0が圧延製品15の底面を示すように適合させる必要がある)。そうでない場合、第9のサブステップ209が実行される。そうでない場合、第10のサブステップ210が実行される。
【0079】
したがって、実行指数iの現在値で有効領域31、32、33から出る際の圧延製品表面29の計算された表面温度が最小値Tminを下回る場合、つまり、実行指数iのこの値に対する現在の設定値wiが高すぎる場合、第9のサブステップ209は常に実行される。第9のサブステップ209では、したがって、この設定値wiには、新しい設定値wiに対して計算された表面温度が最小値Tminに近似されるように、たとえばニュートン法を使用して、新しい(より小さい)値が割り当てられる。次に、第7のサブステップ207と第8のサブステップ208が再度実行される。すなわち、実行指数iの現在値を有する有効領域31、32、33から出る際の表面温度が、新しい設定値wiに対して計算される。これは、計算された表面温度が最小値Tminと一致するか、最小値Tminをわずかに超えるか、またはそれをわずかに超えるまで、たとえば最大10℃、好ましくは最大5℃まで繰り返される。次に、第10のサブステップ210が実行される。
【0080】
第10のサブステップ210では、残留冷却剤量W
Rの値は、前回の値から、冷却装置21、22、23によって、実行指数iの現在値とともに、圧延製品部に属する圧延製品表面29の表面部分に送られる設定値w
iに対応する冷却剤量W
iを減算することによって変更される。冷却剤量W
iは、たとえば
【数65】
に従って計算できる。
【0081】
第10のサブステップ210の後に、第11のサブステップ211が実行される。
【0082】
第11のサブステップ211では、実行指数iの現在値が最終値nに達したか否か、すなわちシミュレーションによる冷却部通過が終了したか否かをチェックする。そうでない場合、第12のサブステップ212が実行される。そうでない場合、第13のサブステップ213が実行される。
【0083】
第12のサブステップ212では、実行指数iの値がインクリメントされる。次に、実行指数iの新しい値に対して第4のサブステップ204が実行される。
【0084】
第13のサブステップ213では、シミュレーションによる冷却部通過後、すなわちすべての有効領域31、32、33のシミュレーションによる通過後、圧延製品部の平均温度が計算される。この平均温度は、たとえば、第7のサブステップ207の前回の実行で計算された温度分布
【数66】
から
【数67】
に従って計算される。式(8)によれば、すべての有効領域31、32、33をシミュレーションによる通過の後の計算された平均温度は、実行指数値i=nで有効領域から出るとき、つまり、冷却部通過中に最後に通過した有効領域から出る際の圧延製品15の厚さ全体にわたって平均化された温度である。第13のサブステップ213の後、第14のサブステップ214が実行される。
【0085】
第14のサブステップ214では、第13のサブステップ213の前回の実行で計算された平均温度
【数68】
が、冷却部通過後の圧延製品部の目標平均温度
【数69】
と十分な精度で一致するかどうかがチェックされる。十分に正確な一致とは、たとえば、絶対的または相対的な偏差を除き、その量が所定の許容値を超えない一致を意味すると理解される。平均温度
【数70】
が十分な精度で目標平均温度
【数71】
と一致しない場合、第14のサブステップ214の後に第15のサブステップ215が実行される。そうでない場合、第14のサブステップ214の後に第16のサブステップ216が実行される。
【0086】
したがって、シミュレーションによる冷却部通過後の計算された平均温度
【数72】
が十分な精度で目標平均温度
【数73】
と一致しない場合、第15のサブステップ215が実行される。計算された平均温度
【数74】
が目標平均温度
【数75】
を超えている場合、これはシミュレーションによる冷却部通過の基礎となった総冷却剤量Wが少なすぎることを示す。計算された平均温度
【数76】
が目標平均温度
【数77】
を下回る場合、これはシミュレーションによる冷却部通過の基礎となった総冷却剤量Wが多すぎることを示す。したがって、第15のサブステップ215では、総冷却剤量Wの値が、たとえば、目標平均温度
【数78】
からの計算された平均温度
【数79】
の偏差に依存する量だけ変更される。これにより、次のシミュレーションによる冷却部通過後の計算された平均温度
【数80】
を目標平均温度
【数81】
に近づけることができる。総冷却剤量Wの調整は、たとえばニュートン法を使用して、後でシミュレーションされる冷却部通過で改善できる。
【0087】
第15のサブステップ215の後、総冷却剤量Wの新しい値を用いて第3のサブステップ203が実行される。すなわち、圧延製品部の冷却部通過のさらなるシミュレーションが、総冷却剤量Wの値を変更して開始される。冷却部通過のシミュレーションは、シミュレーションされた冷却部通過後の計算された平均温度
【数82】
が目標平均温度
【数83】
と十分な精度で一致するまで、または、総冷却剤量Wの値がゼロになるか、最大値に達するか最大値
【数84】
を超えるまで、または、サブステップ210がi=nに対して実行された後の残留冷却剤量W
Rがゼロになっていない、すなわち、初期総冷却剤量Wが大きすぎる場合、総冷却剤量Wの値を変更して繰り返される。最大値W
maxは、圧延製品部の冷却部通過(指定された搬送速度で)中にすべての冷却装置21、22、23によって圧延製品部に属する圧延製品表面29の部分に同時に供給することができる最大冷却剤量である。
【0088】
シミュレーションによる冷却部通過後の計算された平均温度
【数85】
が十分な精度で目標平均温度
【数86】
に一致する場合、このシミュレーションによる冷却部通過の第14のサブステップ214の後に第16のサブステップ216が実行される。
【0089】
総冷却剤量Wの値がゼロになると、各設定値w
i,i=1,…,nには値0が割り当てられる。つまり、∀i:w
i=0が使用され、その後、第16のサブステップ216が実行される。総冷却剤量Wの値が最大値W
maxに達するかそれを超える場合、各設定値w
iには、関連する冷却装置21、22、23、…に固有の最大値
【数87】
が割り当てられる。つまり、
【数88】
が使用され、その後、第16のサブステップ216が実行される。わかりやすくするために、総冷却剤量Wがゼロになるか、最大値W
maxに達するかそれを超える場合は、
図3および
図4には示されていない。W=0の場合には、冷却部19における圧延製品15の積極的な冷却が示唆されておらず、冷却装置21、22、23に固有の最大可能な冷却剤流量が各冷却装置21、22、23によって供給されるW=W
maxの場合、冷却部19における圧延製品15の可能な最大冷却が示唆されていないため、これらの場合は例外である。
【0090】
第16のサブステップ216では、第2の方法ステップ200が終了し、方法ステップ200で決定された冷却剤流量の最後の冷却剤流量設定値wiが各冷却装置21、22、23に対して保存される。関連する冷却装置21、22、23の冷却剤流量は、第3の方法ステップ300においてこの設定値wiに設定される。
【0091】
図4は、方法ステップ200の第2の例示的な実施形態を示す。この例示的な実施形態は、サブステップ206の修正とサブステップ208および209の省略においてのみ、
図3を参照して説明した第1の例示的な実施形態とは異なる。したがって、以下では、
図3を参照して説明した第1の例示的な実施形態と比較した変更点のみを説明し、コメントする。
【0092】
この例示的な実施形態のサブステップ206では、圧延製品部のシミュレーションによる冷却部通過中、実行指数iの現在値による冷却装置21、22、23の冷却剤流量の設定値w
iは、
【数89】
に従って決定される。
【0093】
式(9)において、
【数90】
は、実行指数iの現在値を用いて冷却装置21、22、23の冷却剤流量についてサブステップ205の前回の実行で決定されたデフォルト値である。
【数91】
は、この冷却装置21、22、23の有効領域31、32、33に入ったときの圧延製品表面29の表面温度の値であり、サブステップ204の前回の実行中に受け入れられた温度分布
【数92】
から導出される。圧延製品表面29が圧延製品15の底面である場合、式(9)および
図4の
【数93】
は
【数94】
で置き換えられるべきであり、または、座標xの選択は、x=0が圧延製品15の底面を示すように適合される必要がある。
【0094】
f
i(T)は、T≦T
minの場合は0、
【数95】
の場合は1、区間
【数96】
では厳密に単調増加する関数である。たとえば、区間
【数97】
の関数f(T)は、
【数98】
に従って定義される。
【0095】
T
minは、冷却部19を通る圧延製品15の搬送中の圧延製品表面29の表面温度について、第1の方法ステップ100で許容される最小値である。
【数99】
は予備温度差であり、たとえこの有効領域31、32、33に進入する際の圧延製品表面29の表面温度が
【数100】
より高くても、そして、実行指数値iを有する冷却装置21、22、23によって圧延製品表面29上に供給される冷却剤流量が最大である、すなわち、冷却装置21、22、23に固有の最大値
【数101】
を受け入れる場合でも、実行指数値iを有する冷却装置21、22、23の有効領域31、32、33から出る際の圧延製品表面29の表面温度は、最小値T
minを下回らないように事前に設定される。
【数102】
は、加熱炉3の加熱温度と圧延製品15の搬送速度に依存して、たとえば、圧延製品15の冷却部通過の別個のシミュレーションにおいて、または冷却部19の数学的モデルに基づいて決定される。予備温度差
【数103】
は、実行指数iの値に依存し得る。つまり、異なる冷却装置21、22、23に対して異なる予備温度差を指定できる。
【0096】
図4に示される方法ステップ200の第2の例示的な実施形態は、サブステップ208および209、したがってサブステップ207から209の潜在的な反復が省略されるため、
図3に示される第1の例示的な実施形態よりも単純である。特に、方法ステップ200の第2の例示的な実施形態は、一般に、第1の例示的な実施形態よりも必要な計算労力が少なく、したがって、一般に、より短い計算時間またはより低い計算能力も必要とする。対照的に、方法ステップ200の第1の例示的な実施形態は、サブステップ207から209を繰り返すことにより、冷却装置21、22、23の冷却剤流量の設定値を最小値T
minにさらに正確に適合させることができるので、一般に、第2の例示的な実施形態よりも圧延製品15のより速い冷却を可能にする。
【0097】
本発明による方法の一実施形態は、冷却装置21、22、23の有効領域31、32、33を連続的に通過する圧延製品15の圧延製品部に対して連続的に実行される方法ステップ200および300を提供することはすでに説明した。本発明による方法のこの実施形態では、方法ステップ200は、たとえば、
図3または
図4を参照して説明した例示的な実施形態の1つに従って、各圧延製品部に対して実行される。しかし、その代わりに、本発明による方法のこの実施形態について、
図3および
図4を参照して説明した例示的な実施形態を修正することも可能である。
【0098】
図5は、
図3に示される例示的な実施形態のそのような修正を示す。この変更では、圧延製品部に番号を付ける第2の実行指数jが使用される。第2のサブステップ202では、
図3に示す例示的な実施形態のように、冷却剤35の初期総冷却剤量Wが受け取られる。さらに、第2のサブステップ202では、第2の実行指数jに初期値として値1が割り当てられる。サブステップ203~214は、
図3に示す例示的な実施形態のサブステップ203~214と同様に、第2の実行指数jの関連する現在値に対して、すなわち関連する圧延製品部に対して実行される。
【0099】
サブステップ213で計算された平均温度
【数104】
が、冷却部通過後の圧延製品部の目標平均温度
【数105】
と十分な精度で一致する場合、第2の実行指数jの値は、サブステップ214の後のサブステップ217でインクリメントされる。冷却部通過後、平均温度
【数106】
が圧延製品部の目標平均温度
【数107】
と十分な精度で一致しない場合、
図3に示す例示的な実施形態と同様に、総冷却剤量Wの値がサブステップ215で変更され、その後、第2の実行指数jの値がサブステップ217でインクリメントされる。そうすることで、第2の実行指数jの値が小さい圧延製品部の平均温度は、冷却部通過後の目標平均温度
【数108】
に十分な精度でまだ一致していないことが認められる。
【0100】
サブステップ217の後、サブステップ203が、第2の実行指数jの新しい値に対して実行される。すなわち、後続の圧延製品部の冷却部通過のシミュレーションが、変更された可能性のある総冷却剤量Wを用いて開始される。
図5に示す例示的な実施形態では、したがって、冷却部通過は各圧延製品部に対して一度だけシミュレーションされ、おそらくサブステップ215で適応される総冷却剤量Wが、後続の圧延製品部の冷却部通過のシミュレーションに転送される。このようにして、圧延製品部に対して実行される第2の方法ステップ200は、後続の圧延製品部に対して実行される第2の方法ステップ200にリンクされる。第2の方法ステップ200の各実行後、各冷却装置21、22、23について、方法ステップ200のこの実施形態で決定された冷却剤流量の設定値w
iが、第2の実行指数jの関連値として保存される。第2の実行指数jの値に対して保存されている設定値w
iは、第2の実行指数jの別の値に対して決定された設定値w
iによって上書きされない。
【0101】
第2の方法ステップ200の繰り返し実行は、第2の実行指数jが最終値に達すると終了する。たとえば、第2の方法ステップ200を実行するたびに、第2の実行指数jが最終値に達したかどうかがチェックされ、そうでない場合にのみサブステップ217が実行される。そうでない場合、第2の方法ステップ200の繰り返し実行は終了される。わかりやすくするために、これは
図5には示されていない。
【0102】
さらに、
図5では、厳密に言えば、指数iまたはnを持つ変数は、第2の実行指数jの値が異なる場合にこれらの変数が互いに異なる可能性がある場合、追加の指数jを持つ必要がある。たとえば、設定値はw
iではなくw
ijによって参照される必要がある。これも、わかりやすくするために
図5では省略されている。
【0103】
第3の方法ステップ300は、各圧延製品部に対して別個に、かつ他の圧延製品部とは独立して実行することもできる。第2の実行指数の1つの値kについて、第3の方法ステップ300はすでに実行することができ、そこでは、第2の実行指数の値kを有する圧延製品部の冷却部通過中に、冷却装置21、22、23によって、この値kに対して決定された冷却剤流量wiが圧延製品部上に供給され、一方、第2の方法ステップ200が、j>kである第2の実行指数の値jに対して実行される。この目的のために、方法ステップ300において、値kを有する圧延製品部が冷却装置21、22、23の有効領域31、32、33に入るとき、搬送速度または搬送速度の時間的経過に応じて、各冷却装置21、22、23について決定される。関連する遅延時間を考慮すると、次に、冷却装置21、22、23は、値kを有する圧延製品部が冷却装置21、22、23の有効領域31、32、33に位置するとき、正確に、この値kに対して決定された冷却剤流量wiを供給するように設定される。
【0104】
図6は、
図4に示される第2の方法ステップ200の例示的な実施形態の
図5に類似した修正を示す。
【0105】
上述した本発明による方法の例示的な実施形態は、圧延製品が冷却部19を通って複数回搬送される場合にも実行することができる。たとえば、仕上げ列9は、圧延製品15が交互の方向に複数回案内される反転スタンドを備えることができる。次いで、圧延製品15を、冷却部19を通して交互の方向に複数回搬送することもできる。この場合、方法ステップ200および300は冷却部通過ごとに実行される。この場合、たとえば、冷却部19の下流側、すなわち、中間ローラーテーブル7と仕上げ列9との間に第2の測定点が設けられ、第2の測定点では、第2の測定点から圧延製品部が冷却部19を通過する前に、圧延製品部に属する圧延製品表面29の表面部分の表面温度が記録される。この圧延製品部の冷却部通過のシミュレーションでは、元の初期エンタルピー分布および/または元の初期温度分布は、第2の測定点で検出された圧延製品部に属する圧延製品表面29の表面部分の表面温度に応じて決定される。
【0106】
さらに、中間ローラーテーブル7は複数の冷却部19を有することができ、または冷却部19は複数の部分冷却部を有することができ、それぞれに対して本発明による方法が別個に実行される(そこで、各部分冷却部は、本発明の意味における冷却部として理解される)。たとえば、中間ローラーテーブル7に、圧延製品15の表面温度が記録される中間測定点が配置されている場合、本発明による方法は、第1の部分冷却部または第1の測定点39と中間測定点との間に配置される冷却部に対して、および第2の部分冷却部または中間測定点と仕上げ列9との間に配置される冷却部に対して個別に実行することができる。次に、第2の部分冷却部または第2の冷却部の元の初期温度分布および/または元の初期エンタルピー分布が、中間測定点で記録された圧延製品15の表面温度に応じて決定される。中間ローラーテーブル7に複数の中間測定点を配置し、各中間測定点で圧延製品15の表面温度を記録する場合も同様である。
【0107】
図7は、冷却部の前および最中に、時間tに応じて冷却部19を通過する圧延製品部における本発明による方法の適用から得られる温度T
K、T
Sおよび
【数109】
の温度曲線の例を示す。ここで、T
Kは、圧延製品15の上面と底面との中間の圧延製品部の中心温度を示す。T
Sは、圧延製品15の圧延製品表面29の表面温度を示す。
【数110】
は圧延製品部の平均温度を示し、式(8)と同様に定義される。
【0108】
圧延製品部は、時間ゼロ点から約3秒後に冷却部19に入る。冷却部19の先頭の冷却装置21、22、23の冷却効果により、表面温度T
Sは、圧延製品部が冷却部19への進入時の約1070℃から、この場合は約800℃であり、時刻ゼロ点から約5.5秒後にすでに表面温度T
Sが達する最小値T
minまで急速に低下する。圧延製品部のさらなる冷却部通過中に、後者の表面温度T
Sは、時間ゼロ点から約7.7秒後に圧延製品部が冷却部19を出るまで、本発明による冷却部19の冷却装置21、22、23によって比較的一定に最小値T
minに維持される。その後、圧延製品部の内部から圧延製品表面29に熱が伝導するため、冷却不足により表面温度T
Sが再び上昇する。圧延製品部の中心温度T
Kは、冷却部通過中、約1100℃で比較的一定に保たれる。圧延製品部の平均温度
【数111】
は、冷却部通過中に約1090℃から約1020℃に低下する。
【0109】
本発明を好ましい例示的な実施形態によって詳細に図示し説明してきたが、本発明は開示された例によって限定されるものではなく、当業者であれば本発明の保護の範囲から逸脱することなく他の変形を導き出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0110】
1 熱間圧延機
3 加熱炉
5 粗加工列
7 中間ローラーテーブル
9 仕上げ列
11 出口冷却領域
13 コイラー領域
15 圧延製品
17 粗加工列圧延スタンド
19 冷却部
21、22、23 冷却装置
25 搬送ローラー
27 制御部
29 圧延製品表面
31、32、33 有効領域
35 冷却剤
37 測定装置
39 測定点
41 仕上げ列圧延スタンド
43 仕上げ列冷却装置
45 仕上げ列冷却剤
47、49 出口冷却装置
51 出口冷却剤
53 圧延製品コイラー
100、200、300 方法ステップ
201~217 サブステップ
t 時間
T
K 中心温度
T
S 表面温度
【数112】
平均温度
【手続補正書】
【提出日】2024-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却部(19)において圧延製品(15)を冷却する方法であって、前記冷却部(19)は、熱間圧延機(1)の仕上げ列(9)の上流に配置され、前記圧延製品(15)は、前記冷却部(19)を通って冷却部経路に沿って所定の搬送速度で1回、または毎回所定の搬送速度で交互方向に数回搬送され、前記冷却部(19)は、有効領域(31、32、33)を有する1つの冷却装置(21、22、23)、または前記冷却部経路に沿って前後に配置され、それぞれが有効領域(31、32、33)を有する複数の冷却装置(21、22、23)を有し、隣接する冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)は互いに直接隣接しており、各有効領域(31、32、33)の各冷却装置(21、22、23)によって、冷却剤(35)の冷却剤流量を前記圧延製品(15)の圧延製品表面(29)上に供給することができ、前記冷却剤流量は、値ゼロと前記冷却装置(21、22、23)に固有の最大値との間に設定することができ、
- 前記冷却部(19)を通る前記圧延製品(15)の前記搬送中に、前記圧延製品表面(29)の表面温度(T
S)の最小値が受け入れられ、
- 前記最小値を維持するために、前記冷却部(19)を通過する冷却部通過ごとに、前記冷却剤流量の設定値が各冷却装置(21、22、23)に割り当てられ、
- 冷却剤流量は、冷却部通過ごとに各冷却装置(21、22、23)によって前記圧延製品表面(29)上に送られ、前記冷却剤流量は、前記冷却部通過の関連する冷却装置(21、22、23)に割り当てられた前記設定値に設定され、
- 冷却部通過の前記設定値を決定するために、前記所定の搬送速度で前記冷却部(19)を通過する前記圧延製品(15)の圧延製品部に対して前記冷却部通過が少なくとも1回シミュレーションされ、シミュレーションによる冷却部通過ごとに、各冷却装置(21、22、23)に対して次の値が連続的に決定される、すなわち、
- - 前記冷却装置(21、22、23)によって供給される冷却剤流量のデフォルト値が、遅くとも前記圧延製品部が前記冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)に入る直前に受信されるかまたは決定され、
- - 前記冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)への進入時の前記圧延製品部内の初期エンタルピー分布および/または初期温度分布に基づき、物理モデルを使用して、前記冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)から出る際の前記圧延製品部内のエンタルピー分布および/または温度分布を計算し、
- - 前記設定値が、前記設定値が前記デフォルト値を超えないこと、および、前記初期エンタルピー分布および/または初期温度分布から導出される前記圧延製品表面(29)の表面温度、または、前記圧延製品部の前記計算されたエンタルピー分布および/または計算された温度分布から導出される前記圧延製品表面(29)の表面温度が、前記冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)から出るときに前記最小値を下回らないこと、という二次条件下で前記冷却装置(21、22、23)から前記圧延製品表面(29)に供給される前記冷却剤流量を準最大化するように決定され、
- - 前記冷却部通過中に前記圧延製品部が直後に連続的に通過する2つの有効領域(31、32、33)ごとに、通過した第1の有効領域(31、32、33)について計算された前記エンタルピー分布および/または計算された温度分布が、他の有効領域(31、32、33)への進入時に前記初期エンタルピー分布および/または初期温度分布として前記他の有効領域(31、32、33)に割り当てられ、
- - 元の初期エンタルピー分布および/または元の初期温度分布が、前記冷却部通過中に前記圧延製品部が通過する第1の冷却装置(21、22、23)に対して受け入れられる、
方法。
【請求項2】
圧延製品部のシミュレーションによる冷却部通過ごとに、少なくとも1つの冷却装置(21、22、23)に、
【数1】
に従って前記設定値が割り当てられ、
【数2】
は、前記冷却装置(21、22、23)によって供給される前記冷却剤流量の前記デフォルト値であり、
【数3】
は、前記冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)に入ったときの、前記初期エンタルピー分布および/または初期温度分布から導出される、前記圧延製品表面(29)の表面温度であり、T
minは、前記圧延製品表面(29)の前記表面温度(T
S)の前記最小値であり、
【数4】
は、事前に決定可能な予備温度差であり、f
i(T)は、T≦T
minの場合は0、
【数5】
の場合は1、区間
【数6】
では厳密に単調増加する関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
まず、前記冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)から出る際の前記圧延製品表面(29)の前記表面温度を、前記冷却装置(21、22、23)の前記冷却剤流量の前記デフォルト値に対して計算し、前記デフォルト値に対して計算された前記表面温度が前記最小値を下回らない場合、前記設定値を前記デフォルト値と等しく設定することにより、少なくとも1つの冷却装置(21、22、23)の前記設定値が、シミュレーションによる冷却部通過ごとに決定され、
前記デフォルト値に対して計算された前記表面温度が前記最小値を下回る場合、前記有効領域(31、32、33)から出る際の前記計算された表面温度
が前記最小値と一致する前記冷却剤流量の設定値を決定するために、前記有効領域(31、32、33)から出る際の前記表面温度の前記計算が、前記デフォルト値より小さい少なくとも1つの冷却剤流量に対して繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各冷却装置(21、22、23)について、関連する冷却装置(21、22、23)に固有の前記冷却剤流量の前記最大値が、シミュレーションによる冷却部通過ごとの前記冷却剤流量の前記デフォルト値として受け入れられる、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
圧延製品部の冷却部通過のシミュレーションのために、前記冷却部通過中に前記圧延製品部に属する前記圧延製品表面(29)の表面部分に合計として最大で供給される冷却剤(35)の総冷却剤量が決定され、前記シミュレーションによる冷却部通過の前記冷却剤流量の前記デフォルト値が、前記冷却部通過に指定された前記総冷却剤量と前記搬送速度とに応じて決定される、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
冷却部通過後に前記圧延製品(15)の目標平均温度が受け取られ、圧延製品部の冷却部通過の各シミュレーションにおいて、前記冷却部通過の終了時における前記圧延製品部の平均温度が計算され、前記計算された平均温度が前記目標平均温度
に対応していない場合、前記計算された平均温度を前記目標平均温度と一致させるために、圧延製品部の冷却部通過の後続のシミュレーションのために冷却剤の総量が変更される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
圧延製品部の冷却部通過のシミュレーション中に、各冷却装置(21、22、23)に残留冷却剤量が割り当てられ、前記総冷却剤量が、前記残留冷却剤量として前記冷却部通過の前記第1の冷却装置(21、22、23)に割り当てられ、さらなる各冷却装置(21、22、23)には、残留冷却剤量として、前記圧延製品部に属する前記圧延製品表面(29)の前記表面部分に前記冷却部通過の先行する冷却装置(21、22、23)に対して決定された冷却剤流量設定値に従って前記先行する冷却装置(21、22、23)によって供給される冷却剤量を差し引いた前記先行する冷却装置(21、22、23)の残留冷却剤量が割り当てられ、冷却装置(21、22、23)の前記冷却剤流量の前記デフォルト値は、
【数7】
に従って計算され、
【数8】
は、前記冷却装置(21、22、23)の前記冷却剤流量の前記最大値であり、W
Rは、前記冷却装置(21、22、23)に割り当てられた前記残留冷却剤量であり、
【数9】
は、前記冷却部通過中に、前記冷却装置(21、22、23)によって前記圧延製品部に属する前記圧延製品表面(29)の前記表面部分上に供給することができる最大冷却剤量である、
請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記圧延製品部の前記冷却部通過の前記シミュレーション中に、冷却装置(21、22、23)に対して受け取ったデフォルト値よりも小さい設定値が前記冷却装置(21、22、23)に対して決定された場合、および、前記冷却部通過中に後で到達し、受け取ったデフォルト値が当該冷却装置(21、22、23)の前記冷却剤流量の前記最大値よりも小さい後続の冷却装置(21、22、23)が少なくとも1つある場合、前記冷却部通過中に前記圧延製品部に属する前記圧延製品表面(29)の前記表面部分上に供給される冷却剤の総量を、前記冷却部通過のために決定された冷却剤の前記総量に適合させるために、少なくとも1つの前記後続の冷却装置(21、22、23)の前記デフォルト値が増加する、請求項
5に記載の方法。
【請求項9】
前記圧延製品部の冷却部通過のシミュレーション中に、冷却装置(21、22、23)の前記有効領域(31、32、33)から出る際の前記圧延製品部の前記エンタルピー分布および/または温度分布を計算するために、圧延製品の厚さ方向に沿った前記圧延製品部の前記エンタルピー分布および/または温度分布を記述する1次元熱伝導方程式が解かれる、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記1次元熱伝導方程式を解くために、熱放射による前記圧延製品部の冷却、前記圧延製品表面(29)に供給される冷却剤、前記圧延製品部から周囲空気に放散される熱、および、前記圧延製品(15)を搬送する搬送ローラーに前記圧延製品部から放散される熱をパラメータ化する境界条件が考慮される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記圧延製品部に属する前記圧延製品表面(29)の表面部分の前記表面温度(T
S)が、冷却部通過の前に圧延製品部が通過する少なくとも1つの測定点(39)において測定され、前記圧延製品部の冷却部通過のシミュレーションに対する前記元の初期エンタルピー分布および/または元の初期温度分布が
、少なくとも1つの測定された
前記表面温度(T
S)に応じて決定される、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記圧延製品(15)の圧延製品上面(29)もしくは圧延製品底面(29)に対して、または前記圧延製品上面(29)と前記圧延製品底面(29)に対して別々に実行される、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
熱間圧延機(1)の仕上げ列(9)の上流で圧延製品(15)を冷却するための冷却部(19)であって、前記冷却部(19)が、
- 1つの冷却装置(21、22、23)または複数の冷却装置(21、22、23)であって、前記複数の冷却装置(21、22、23)は、前記冷却部(19)を通る冷却経路に沿って前後に配置され、前記複数の冷却装置(21、22、23)のそれぞれによって、冷却剤(35)の冷却剤流量を前記圧延製品(15)の圧延製品表面(29)上に供給することができ、前記冷却剤流量は、値ゼロと前記冷却装置(21、22、23)に固有の最大値との間に設定することができる、1つの冷却装置(21、22、23)または複数の冷却装置(21、22、23)と、
- 前記冷却部(19)を通る冷却部経路に沿って前記圧延製品(15)を搬送するように設計された複数の搬送ローラー(25)と、
- 請求項1から12のいずれか一項に記載の方法に従って前記冷却部(19)を動作させるように設計された制御部(27)と、
を備える、冷却部(19)。
【請求項14】
複数の冷却装置(21、22、23)を備え、前記複数の冷却装置(21、22、23)は、前記複数の冷却装置(21、22、23)の供給可能な冷却剤流量の最大値に従って前記冷却部経路に沿って配置され、前記最大値が前記仕上げ列(9)に向かって単調減少するようになっている、請求項13に記載の冷却部(19)。
【国際調査報告】