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特表2024-526061トカマクプラズマチャンバ用の中心柱
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】トカマクプラズマチャンバ用の中心柱
(51)【国際特許分類】
   G21B 1/11 20060101AFI20240709BHJP
   H01F 6/04 20060101ALI20240709BHJP
   H01F 6/06 20060101ALI20240709BHJP
   H10N 60/20 20230101ALI20240709BHJP
【FI】
G21B1/11 A
H01F6/04 ZAA
H01F6/06 110
H10N60/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023575536
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2021071497
(87)【国際公開番号】W WO2022258206
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】2108265.6
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512317995
【氏名又は名称】トカマク エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】スレード、 ロバート
【テーマコード(参考)】
4M114
【Fターム(参考)】
4M114AA17
4M114BB07
4M114CC03
4M114CC11
4M114DB02
4M114DB62
4M114DB70
(57)【要約】
中心柱を有するトカマクプラズマチャンバ用のトロイダル磁場コイル。トロイダル磁場コイルは、中心柱の軸に平行に電流を伝導するためのそれぞれ1つ以上のHTSテープを備える第1及び第2の高温超伝導体(HTS)アセンブリを備える。各HTSテープは、中心柱の使用時のHTSテープにおける磁場に依存する関連臨界電流を有するHTS材料を含む。中心柱はさらに、第1のHTSアセンブリを第2のHTSアセンブリに対して優先的に冷却して第2のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流に対する第1のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流の差を低減又は除去するように構成された冷却機構を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トカマクプラズマチャンバのトロイダル磁場コイル用の中心柱であって、
前記中心柱の軸に平行に電流を伝導するためのそれぞれ1つ以上のHTSテープを備える第1及び第2の高温超伝導体(HTS)アセンブリであって、各HTSテープは前記中心柱の使用時の前記HTSテープにおける磁場に依存する関連臨界電流を有するHTS材料を含む第1及び第2のHTSアセンブリと、
前記第1のHTSアセンブリを前記第2のHTSアセンブリに対して優先的に冷却して前記第2のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流に対する前記第1のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流の差を低減又は除去するように構成された冷却機構と
を備える中心柱。
【請求項2】
各HTSテープの臨界電流は、前記HTSテープにおける磁場の強度に、前記磁場の強度が増加すると前記臨界電流が減少するように反比例して依存し、前記第1のHTSアセンブリにおける磁場の強度は、第2のHTSアセンブリにおける磁場の強度よりも大きい、請求項1に記載の中心柱。
【請求項3】
各HTSテープは、前記HTSテープのHTS材料の結晶構造に関して定められた関連する平面を有し、各HTSテープの臨界電流は、前記HTSテープにおける磁場と前記HTSテープの平面との間の磁場角度に依存し、前記臨界電流は前記角度が増大するにつれて減少し、前記HTSアセンブリは、前記第1のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの磁場と平面との間の磁場角度が前記第2のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの磁場と平面との間の磁場角度よりも大きいように配置される、請求項1又は2に記載の中心柱。
【請求項4】
前記各HTSアセンブリについて、前記HTSアセンブリのHTSテープのそれぞれの平面は互いに平行であり、任意選択で、前記第1のHTSアセンブリのHTSテープの平面は、前記第2のHTSアセンブリのHTSテープの平面と平行である、請求項3に記載の中心柱。
【請求項5】
前記第1のHTSアセンブリと前記中心柱の軸との間の距離は、前記第2のHTSアセンブリと前記中心柱の軸との間の距離よりも大きく、各距離は前記軸に垂直な平面で測定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項6】
前記冷却機構は、極低温流体を流す1つ以上のチャネルを備える、請求項5に記載の中心柱。
【請求項7】
前記冷却チャネル又は各冷却チャネルは、前記中心柱の軸に平行な方向に延びる、請求項6に記載の中心柱。
【請求項8】
前記冷却チャネル又は各冷却チャネルと前記第1のHTSアセンブリとの間の熱インピーダンスは、前記冷却チャネル又は各冷却チャネルと前記第2のHTSアセンブリとの間の熱インピーダンスよりも小さい、請求項6又は7に記載の中心柱。
【請求項9】
前記冷却チャネル又は各冷却チャネルと前記第1のHTSアセンブリとの間の最短距離は、前記冷却チャネル又は各冷却チャネルと前記第2のHTSアセンブリとの間の最短距離よりも短く、各距離は前記軸に垂直な平面で測定される、請求項6から8のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項10】
前記冷却チャネル又は各冷却チャネルは、前記第1のHTSアセンブリと前記第2のHTSアセンブリの両方よりも前記中心柱の軸から遠くに位置する、請求項6から9のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項11】
前記第1のHTSアセンブリに隣接する前記冷却チャネルの密度は、前記第2のHTSアセンブリに隣接する前記冷却チャネルの密度よりも大きく、かつ/又は前記第1のHTSアセンブリに隣接する前記冷却チャネルのそれぞれの断面積は、前記第2のHTSアセンブリに隣接する前記冷却チャネルのそれぞれの断面積よりも大きい、請求項6から10のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項12】
前記第1のHTSアセンブリ及び前記第2のHTSアセンブリはそれぞれ、それぞれが前記HTSテープのHTS材料の結晶構造に関して定められた関連するab平面を有する複数のHTSテープを備え、前記HTSテープのそれぞれのab平面は、各HTSアセンブリ内で互いに平行である、請求項1から11のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項13】
1つ以上のチャネルを有する支持部材をさらに備え、前記チャネル又は各チャネルは、好ましくは前記中心柱の軸に平行な方向に延び、前記第1及び第2のHTSアセンブリは、前記支持部材の前記1つ以上のチャネル内に設けられる、請求項1から12のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項14】
前記支持部材の少なくとも一部は熱伝導性材料で作られ、前記冷却機構は、前記支持部材の一部の本体部分と連続した前記支持部材の面を通して前記支持部材の一部を冷却するように構成され、前記本体部分は、前記第1及び第2のHTSアセンブリが設けられた前記支持部材のチャネル又は各チャネルの1つ以上の壁を介して前記第1のHTSアセンブリ及び/又は前記第2のHTSアセンブリと接触しており、それにより前記第1のHTSアセンブリ及び/又は前記第2のHTSアセンブリが前記支持部材の一部によって冷却される、請求項13に記載の中心柱。
【請求項15】
前記熱伝導性材料は、銅、好ましくは硬質銅を含む、請求項14に記載の中心柱。
【請求項16】
前記第2のHTSアセンブリの少なくとも一部分は、前記第1のHTSアセンブリの半径方向内側に位置し、前記一部分は前記冷却機構によって冷却される前記支持部材の一部の本体部分と熱接触しており、それにより前記冷却機構によって冷却される前記支持部材の一部を介して前記第2のHTSアセンブリの一部分から前記冷却機構に熱が伝達される、請求項14又は15に記載の中心柱。
【請求項17】
前記支持部材は、前記冷却機構によって冷却される前記一部の半径方向内側に位置しかつ前記冷却機構によって冷却される前記一部よりも高い機械的強度を有する他の一部を備える、請求項14から16のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項18】
前記冷却機構は、各HTSテープを前記HTSテープ中の前記HTS材料の臨界温度未満まで冷却するように構成される、請求項1から17のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の中心柱と、HTSテープの複数の巻線を備えるトロイダル磁場コイルとを備え、各巻線が前記中心柱のHTSテープのそれぞれ1つを備える、トカマクプラズマチャンバ。
【請求項20】
前記トロイダル磁場コイルの巻線の周りを電流が流れるときに前記プラズマチャンバ内にトロイダル磁場を提供するように構成された複数のトロイダル磁場コイルを備え、前記中心柱は、各トロイダル磁場コイルに対してそれぞれの第1及び第2のHTSアセンブリを備える、請求項19に記載のトカマクプラズマチャンバ。
【請求項21】
請求項20に記載のトカマクプラズマチャンバを動作させる方法であって、前記複数のトロイダル磁場コイルのそれぞれについて、
前記トロイダル磁場コイルの巻線の周りに電流を流すことと、
前記第1のHTSアセンブリを前記第2のHTSアセンブリに対して優先的に冷却して前記第2のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流に対する前記第1のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流の差を低減又は除去するために前記冷却機構を使用することと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トカマクプラズマチャンバ、例えば核融合炉で使用されるトカマクプラズマチャンバのトロイダル磁場コイル用の中心柱に関する。詳細には、本発明は、高温超伝導体(HTS)材料を含む中心柱に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導材料は通常、「高温超伝導体」(HTS)と「低温超伝導体」(LTS)に分類される。NbやNbTiなどのLTS材料は、その超伝導性をBCS理論で説明できる金属又は金属合金である。すべての低温超伝導体は、約30K未満の臨界温度(それを超えるとゼロ磁場でも材料が超伝導にならない温度)を有する。HTS材料の挙動はBCS理論では説明されておらず、このような材料は約30Kを超える臨界温度を有する可能性がある(ただし、HTS材料を定義するのは、臨界温度ではなく、超伝導動作及び組成の物理的な違いであることに注意すべきである)。最も一般的に使用されるHTSは「銅酸化物超伝導体」、BSCCO(ビスマスストロンチウムカルシウム銅酸化物)又はREBCO(Reは希土類元素、通常はY又はGd)などの銅酸化物(銅酸化物基を含む化合物)をベースとするセラミックである。他のHTS材料は、鉄ニクタイド(例えば、FeAs及びFeSe)及び二ホウ化マグネシウム(MgB2)を含む。
【0003】
REBCOは通常、図1に示すような構造を有するテープとして製造される。このようなテープ100は、一般に厚さ約100ミクロン(マイクロメートル)であり、基板101(通常は厚さ約50ミクロン(マイクロメートル)の電解研磨ハステロイ(登録商標))を含み、基板101の上にIBAD、マグネトロンスパッタリング、又は他の好適な技術によって、バッファスタック102として知られる厚さ約0.2ミクロン(マイクロメートル)の一連のバッファ層が堆積される。エピタキシャルREBCO-HTS層103(MOCVD又は他の好適な技術によって堆積される)がバッファスタックを覆い、通常は1ミクロン(マイクロメートル)の厚さである。1~2ミクロン(マイクロメートル)の銀層104がスパッタリング又は他の好適な技術によってHTS層上に堆積され、銅安定化層105が電気めっき又は他の好適な技術によってテープ上に堆積され、多くの場合テープを完全に封入する。
【0004】
基板101は、製造ラインを通して供給することができかつ後続の層の成長を可能にする、機械的なバックボーンを提供する。バッファスタック102は、その上にHTS層を成長させるための二軸配向結晶テンプレートを提供するために必要とされ、その超伝導特性を損なう基板からHTSへの元素の化学拡散を防止する。銀層104は一般に、REBCOから安定化層への低抵抗界面を提供するために必要とされ、安定化層105は、REBCOのいずれかの部分が超伝導ではなくなる(「常伝導」状態になる)場合に代替的な電流経路を提供する。
【0005】
HTSテープは、本明細書ではHTSアセンブリとも呼ばれるHTSケーブルに配置することができる。本明細書で言及するHTSケーブルは、典型的には導電性材料(通常は銅)を介してそれらの長さに沿って接続される1つ以上のHTSテープを備える。HTSテープは積み重ねる(すなわち、HTS層が平行になるように配置する)ことができ、又はHTSテープはケーブルの長さに沿って変化し得るテープの他の配置を有することができる。HTSケーブルの注目すべき特殊なケースは、単独のHTSテープとHTS対である。HTS対は、HTS層が平行になるように配置された1対のHTSテープを備える。基板付きテープを使用する場合、HTS対は、タイプ0(HTS層が互いに向かい合う)、タイプ1(一方のテープのHTS層が他方のテープの基板と向かい合う)、又はタイプ2(基板が互いに向かい合う)であることができる。3つ以上のテープを備えるケーブルは、テープのいくつか又は全部をHTS対に配置することができる。積層されたHTSテープは、HTS対の様々な配置、最も一般的には、タイプ1の対のスタック又はタイプ0の対(又は同等にタイプ2の対)のスタックのいずれかを備えることができる。
【0006】
HTSテープ(及び超伝導体全般)の重要な特性は、「臨界電流」(Ic)であり、これは、所与の温度及び外部磁場において、HTSが電流の一部を安定化層に駆動するのに十分な電圧を生成する電流である。超伝導体が「常伝導になった」とみなされる超伝導転移の特徴点は、ある程度任意であるが、通常は、テープがE0=10又は100マイクロボルト/メートルを生成したときとみなされる。臨界電流は、超伝導体の温度及び超伝導体の磁場を含む多くの要因に依存し得る。後者の場合、磁場の大きさと磁場中の超伝導体結晶軸の配向の両方が重要である。
【0007】
図2は、xz平面における例示的なREBCOテープ200の断面図を示す。REBCO層自体は結晶質であり、REBCO結晶の主軸がテープ内の1点について示されている。REBCOテープは、HTS層201、銅被覆202、及び基板203を有する簡略化された形態で示されている。REBCOの結晶構造は、当技術分野でa、b、及びcと呼ばれる、相互に垂直な3つの主軸を有する。本開示の目的では、ab平面内の磁場成分の配向に対する臨界電流のいかなる依存性も無視されるので、a軸及びb軸は交換可能であるとみなすことができるため、それらは「ab平面」(すなわち、a軸とb軸によって定義される平面)としてのみ考慮される。図2では、REBCO層201のab平面は、c軸220に垂直な単一の線210として示されている。多くのテープでは、ab平面210はHTS層201の平面と厳密に一致しているが、これは一般的な条件ではない。
【0008】
テープの臨界電流はREBCO結晶の厚さと品質に依存する。また、周囲温度と印加磁場の大きさにほぼ逆の依存性を有する。最後に、c軸に対する印加磁場の向きにも依存する。印加磁場ベクトルがab平面210内にあるとき、臨界電流は、印加磁場ベクトルがc軸220に沿って整列しているときよりもかなり高い。臨界電流は、「ab平面外」の磁場配向におけるこれらの2つの極値の間で滑らかに変化する。(実際には、臨界電流がピークを示す角度は複数あるかもしれない。さらに、ピークの振幅と幅は印加磁場と温度の両方によって異なるが、この説明の目的として、最大臨界電流を与える印加B磁場の最適な配向を定義する単一の支配的なピークを有するテープを考えることができる)。
【0009】
REBCOテープは通常、c軸がテープの平面に対して可能な限り垂直に近いように製造される。しかしながら、市販のテープの中には、x/y平面の垂線から最大35°の角度でc軸を有するものがある。
【0010】
HTSケーブルの場合、ケーブルが均一な温度で、その全長に沿って均一な磁場にあると仮定すると、スタック内のすべてのテープの臨界電流は比較的均一になる。この場合、ケーブルが電源に接続されると、電流はオームの法則に従って、ケーブルの端の終端抵抗の比率でテープ間に分布する。しかしながら、多くの場合、電流分布は、ケーブル内のテープの長さに沿って又は幅全体にわたって、局所的な磁場の大きさの変化、又はREBCO層のc軸に対する磁場角度の変化など、多くの要因の影響を受ける可能性がある。
【0011】
高温超伝導体を含む磁石は、非常に高温でプラズマを閉じ込めるために、球状トカマク(ST)などの核融合炉内で使用され得る。球状トカマクは、単位プラズマ体積当たりのより高い熱出力と大きなブートストラップ電流を含む、商用核融合発電所にとって重要な利点を提供する。これらの利点により、より小型で効率的な機械の開発が可能になり、開発期間が短縮され、リサイクル電力が削減される。STの物理の理解は、パルス抵抗磁石を使用するMAST、NSTX、ST40などの実験装置において世界中で進展が続いている。
【0012】
商用発電所は、長パルス又は連続運転のいずれかのため、及び正味の発電量を最大化するために超伝導磁石を必要とする。トロイダル磁場(TF)磁石の細い中心柱が従来の低温超伝導体(LTS)の能力を超える超伝導体上の磁場をもたらすため、これは、以前はSTにとって障害となっていた。最近、複数の供給業者から高性能REBCO被覆導体(「テープ」)が商業的に入手可能になったことにより、D-T燃料を用いて正味電力利得(Q>1)を実証するという使命を持った高磁場STが、LTSを用いた従来のアスペクト比のトカマクよりも小規模で実現可能になった。軸上に4T磁場を有する長半径1.4mのHTS STは、適切な厚さの中性子シールド(>25cm)を実現できれば、この使命を達成できる。
【0013】
図3Aは、トロイダル磁場コイル301と、ポロイダル磁場コイル303と、トロイダル磁場コイル301内に位置するトロイダルプラズマチャンバ305とを備える球状トカマク300の垂直断面図を示す。トカマク300はまた、プラズマチャンバ305とトロイダル磁場コイル301及びポロイダル磁場コイル303の中心を通って延びる中心柱307を備える。D形状のトロイダル磁場コイル301のそれぞれは、中心柱307の軸A-A’に沿って延びる概ね直線部分309(TFコイル301の「内側リム」)と、直線部分309の両端に電気的に接続されてD形状を形成する湾曲部分311(TFコイル301の「外側リム」)とを備える。この例では、球状トカマク300は1.4mの長半径を有し、中心柱307は約0.6mの半径を有する。
【0014】
図3Bは、軸A-A’に沿って見た中心柱307の軸方向断面図を示す。トカマク300は、12個のトロイダル磁場コイル301を備え、各トロイダル磁場コイル301のそれぞれの直線部分309は、中心柱307の軸A-A’を中心に等角配置で角度方向に間隔を置いて配置されている。中心柱は、軸A-A’に沿って延びかつトロイダル磁場コイル311の直線部分309が収容される複数のチャネル315を有する支持部材313を備える。支持部材313は、オレンジの房のように互いに嵌合する複数の角度セグメントから形成することができ、各セグメントは、TFコイル301のうちの1つの内側リム309を収容する。
【0015】
図4は、トロイダル磁場コイル301のうちの1つの内側リム401を収容する、支持部材313のセグメントの半分を構成する、中心柱307の角度セグメント400の軸方向断面図である。角度セグメントの「上」半分のみが図4に示され、省略された「下」半分は上半分の鏡像である。複数の角度セグメント400は、実質的に円筒形の中心柱307を形成するように組み立てられる。トロイダル磁場コイル301の内側リム401は、HTSケーブル402の複数のターンを巻くことによって形成され(複数のターン(「複数の巻線」)をまとめて「巻線」部又は「コイル」部と呼ぶことができる)、各ターンは、中心柱307の軸に平行に(すなわち、図4に関して紙面内に)延びるHTSテープを含む。巻線部を構成するHTSケーブル402の4つの個別のターンを示す巻線部401の一部分が、図5により詳細に示されている。
【0016】
一般に、HTSアセンブリ(ケーブル)402の既存の設計は、低温超伝導体に使用されるものに従っている。これらの設計は、HTSケーブル402が冷却チャネル505を設けた安定化材料502(銅又はアルミニウムなど)によって取り囲まれたHTSテープのスタック501を備える「ケーブルインコンジット導体」(CICC)構造を想定している。安定化材502及び冷却チャネル505は弱いため、インコネルなどの高強度材料で作られた構造支持体503を備える高強度「ジャケット」を使用して、コイルが通電されるときに生じる電磁石圧力下でのHTSアセンブリ402の機械的変形を防止する。絶縁体504は、HTSケーブル402を互いに電気的に絶縁するために、HTSケーブル402の間に設けられる。HTSテープのスタック501は、安定化材料502を通る中央冷却チャネル505に寒剤を流すことによって冷却される。HTSアセンブリ402への冷却チャネル505と大量の柔軟な高導電性安定化材502の導入により、HTSアセンブリ402が弱くなり、比較的強い(すなわち厚い)構造支持体503が必要となる。HTSテープのスタック501は、HTSテープのスタック501が均一に冷却されることを確実にするために、中央冷却チャネル505の周りに等間隔に配置される。従来、HTSテープは、HTSテープの方向が中心柱の軸に沿って変化する「撚り」又は「転位」配置で設けられる。
【0017】
再び図4を参照すると、中心柱307の角度セグメント400は、極低温構成要素(HTSケーブル402及び支持部材313)を中性子遮蔽材404から分離する真空ギャップ403を有し、中性子遮蔽材は、巻線部401及び支持部材313よりも中心柱307の軸から遠くに設けられる。
【0018】
HTSアセンブリ402へのケーブルインコンジット導体の使用は通常、100A/mm2よりもはるかに小さい巻線部の電流密度(Jwp)をもたらし、これは、所与の中心柱307の直径に対して、中性子遮蔽材404のために利用可能な中心柱307の面積が、特に小型のトカマクにおいて制限されることを意味する。その結果、CICC構造により、HTSコイル部401は、トカマクを運転するときに望ましい核加熱よりも高い核加熱にさらされる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様によれば、トカマクプラズマチャンバのトロイダル磁場コイル用の中心柱が提供される。中心柱は、中心柱の軸に平行に電流を伝導するためのそれぞれ1つ以上のHTSテープを備える第1及び第2の高温超伝導体(HTS)アセンブリを備える。各HTSテープは、中心柱の使用時のHTSテープにおける磁場に依存する関連臨界電流を有するHTS材料を含む。中心柱はさらに、第1のHTSアセンブリを第2のHTSアセンブリに対して優先的に冷却して第2のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流に対する第1のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流の差を低減又は除去するように構成された冷却機構を備える。
【0020】
例えば、トロイダル磁場コイルの動作中に発生する磁場により、第2のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流が、第1のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流よりも大きくなることがある。後述するように、臨界電流は、HTSテープにおける磁場の強度及び/又は磁場の磁場角度に依存することがある。詳細には、第1のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープにおける磁場強度及び/又は磁場角度は、第2のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープにおける磁場強度及び/又は磁場角度よりも大きいことがある。その結果、第1のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流は、第2のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流よりも小さいことがある。冷却機構は、臨界電流の差を補償するために、第1のHTSアセンブリを第2のHTSアセンブリよりも低い温度まで冷却するように構成することができる。
【0021】
第1のHTSアセンブリと第2のHTSアセンブリとの間の臨界電流の差を低減するか又は好ましくは除去することにより、輸送電流がそれらの間でより均等に分配され得る。例えば、冷却機構は、第1のHTSアセンブリのHTSテープの臨界電流が第2のHTSアセンブリのHTSテープの臨界電流の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内、もしくは1%以内であることを確実にするように構成することができる。
【0022】
HTS材料は、例えばREBCOであることができる。
【0023】
各HTSテープの臨界電流は、HTSテープにおける磁場の強度に反比例して依存し得る。第1のHTSアセンブリにおける磁場の強度は、第2のアセンブリにおける磁場の強度よりも大きくなり得る。一般に、臨界電流は、磁場強度の増加と共に減少し(すなわち、臨界電流は磁場強度に反比例して依存する)、かつ温度の上昇共に減少し(すなわち、臨界電流は温度に反比例して依存する)、例えば、臨界電流は、磁場の強度(B)及び温度(T)に反比例することがあり、冷却機構は、第1及び第2のHTSアセンブリにおける磁場強度の差を補償する温度分布を第1及び第2のHTSアセンブリにわたって生成するように構成される。例えば、第1のHTSアセンブリにおける磁場の強度が第2のアセンブリにおける磁場の強度よりも大きい場合、冷却機構は、第1のアセンブリを第2のアセンブリよりも低い温度まで冷却するように構成することができる。
【0024】
例えば、冷却機構は、第1のHTSアセンブリと第2のHTSアセンブリとの間に負の半径方向の温度勾配(dT/dr)を生成することによって、正の半径方向の磁場の勾配(dB/dr、rは中心柱の軸からの半径方向の距離)を補償するように構成することができる。温度勾配は、磁場の勾配によって生成される臨界電流Ic(B,T)の変動がほぼ相殺されるように選択することができる。
【0025】
各HTSテープは、HTSテープのHTS材料の結晶構造に関して定められた関連する平面を有することができる。平面は、例えば、図2のREBCOテープ200に関連して上述したようにab平面であることができる。各HTSテープの臨界電流は、HTSテープにおける磁場とHTSテープの平面との間の磁場角度に依存し、臨界電流は角度が増加するにつれて減少する。HTSアセンブリは、第1のアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの磁場と平面との間の磁場角度が、第2のアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの磁場とab平面との間の磁場角度よりも大きくなるように配置することができる。各HTSアセンブリについて、HTSアセンブリのHTSテープのそれぞれの平面は、互いに平行であることができる。任意選択で、第1のHTSアセンブリのHTSテープの平面は、第2のHTSアセンブリのHTSテープの平面と平行であることができる。例えば、第1及び第2のHTSアセンブリは、それぞれが、軸を中心とするHTSテープの入れ子にされた巻線を備えるそれぞれの平面的なパンケーキコイルの一部であることができ、パンケーキコイルは、向かい合った配置で互いに隣接して積み重ねられる。一例では、各HTSテープの最大臨界電流は、磁場(B)がHTSテープのab平面に平行であるときに発生し得る。例えば、冷却機構は、第1のアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの磁場とab平面との間の磁場角度が第2のアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの磁場とab平面との間の磁場角度よりも大きいときに、第1のHTSアセンブリを第2のHTSアセンブリよりも低い温度まで冷却するように構成することができる。
【0026】
第1のHTSアセンブリと中心柱の軸との間の距離は、第2のHTSアセンブリと中心柱の軸との間の距離よりも大きいことができ、各距離は軸に垂直な平面で測定される。
【0027】
冷却機構は、極低温流体、好ましくはヘリウム、より好ましくは超臨界ヘリウムを流すための1つ以上のチャネルを備えることができる。
【0028】
冷却チャネル又は各冷却チャネルは、実質的に直線状である(すなわちチャネルの中心線は直線である)ことができ(又は直線状である部分を含み)、中心柱の軸に平行な成分を有する方向に延びることができる。例えば、冷却チャネル又は各冷却チャネル及びHTSテープはすべて、中心柱の軸に(実質的に)平行であることができる。
【0029】
冷却チャネル又は各冷却チャネルと第1のHTSアセンブリとの間の熱インピーダンスは、冷却チャネル又は各冷却チャネルと第2のHTSアセンブリとの間の熱インピーダンスよりも小さいことができる。
【0030】
冷却チャネル又は各冷却チャネルと第1のHTSアセンブリとの間の最短距離は、冷却チャネル又は各冷却チャネルと第2のHTSアセンブリとの間の最短距離よりも短いことができ、各距離は軸に垂直な平面で測定される。このような構成により、冷却チャネル又は各冷却チャネルは、(少なくとも距離が測定される平面において)第1のHTSアセンブリを第2のHTSアセンブリに対して優先的に冷却することができる。いくつかの例では、冷却チャネル又は各冷却チャネルは、中心柱の全体に沿って第2のHTSアセンブリよりも第1のHTSアセンブリに近いことができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、冷却チャネル又は各冷却チャネルは、第1のHTSアセンブリと第2のHTSアセンブリの両方よりも中心柱の軸から遠くに位置することができる。好ましくは、冷却チャネル又は各冷却チャネルは、第2のHTSアセンブリと比較して第1のHTSアセンブリに優先的な冷却を提供するために、第1のHTSアセンブリからよりも第2のHTSアセンブリから遠くに位置する。
【0032】
第1のHTSアセンブリに隣接する冷却チャネルの密度は、第2のHTSアセンブリに隣接する冷却チャネルの密度よりも大きいことができる。代わりに、又は加えて、第1のHTSアセンブリに隣接する冷却チャネルのそれぞれの断面積は、第2のHTSアセンブリに隣接する冷却チャネルのそれぞれの断面積よりも大きいことができる。これらの構成により、冷却チャネルは、第2のHTSアセンブリと比べてより大きな冷却力を第1のHTSアセンブリに提供することができる。
【0033】
第1及び第2のHTSアセンブリはそれぞれ、それぞれがHTSテープのHTS材料の結晶構造に関して定められた関連するab平面を有する複数のHTSテープを備えることができ、HTSテープのそれぞれのab平面は、各HTSアセンブリ内で互いに平行である。
【0034】
HTS磁石はさらに、1つ以上のチャネルを有する支持部材を備えることができ、チャネル又は各チャネルは、好ましくは中心柱の軸に平行な方向に延びる。第1及び第2のHTSアセンブリは、支持部材の1つ以上のチャネル内に設けることができる。
【0035】
中心柱の少なくとも一部は、銅、好ましくは硬質銅などの熱伝導性材料、すなわち、HTSテープ中のHTS材料の臨界温度よりも低い温度で高い熱伝導性を有する材料で作ることができる。いくつかの例では、材料は、20Kから40Kの範囲の温度に対して、100W/mKよりも大きい、300W/mKよりも大きい、又は7000W/mKよりも大きい熱伝導性を有することができる。冷却機構は、支持部材の一部の本体部分と連続した支持部材の面を通して(すなわち、本体部分と面との間に界面がない)支持部材の一部を冷却するように構成することができる。本体部分は、第1及び第2のHTSアセンブリが設けられた支持部材のチャネル又は各チャネルの1つ以上の壁を介して第1のHTSアセンブリ及び/又は第2のHTSアセンブリと接触しており、それにより第1のHTSアセンブリ及び/又は第2のHTSアセンブリが支持部材の一部によって冷却される。
【0036】
第2のHTSアセンブリの少なくとも一部分は、第1のHTSアセンブリの半径方向内側に位置することができ、すなわち、第1のHTSアセンブリよりも中心柱の軸の近くに延びる。この部分は、冷却機構によって冷却される支持部材の一部の本体部分と熱接触していることができ、それにより冷却機構によって冷却される支持部材の一部を介して第2のHTSアセンブリの一部分から冷却機構に熱が伝達される。冷却機構は、冷却機構によって冷却される支持部材の一部を、中心柱の使用時の各HTSアセンブリの温度よりも低い温度まで冷却するように構成することができる。例えば、第1及び第2のHTSアセンブリは、25Kから35Kの温度まで冷却することができ、一方、冷却機構によって冷却され得る支持部材の一部は、20Kから25Kの温度まで冷却することができる。
【0037】
支持部材は、冷却機構によって冷却される一部の半径方向内側に位置しかつ冷却機構によって冷却される一部よりも高い機械的強度を有する他の一部を備えることができる。他の一部は、例えば、イコネル(登録商標)から作ることができる。増加した機械的強度は、中心柱の使用時に発生するローレンツ力の結果としてのHTSアセンブリによる中心柱の圧縮に抵抗する。
【0038】
冷却機構は、各HTSテープを、HTSテープ中のHTS材料の臨界温度未満まで、好ましくは30K未満の温度まで、より好ましくは25K未満の温度まで、例えば約20Kまで冷却するように構成することができる。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、上記の第1の態様による中心柱と、HTSテープの複数の巻線を備えるトロイダル磁場コイルとを備え、各巻線がそれぞれ1つのHTSテープを備えるトカマクプラズマチャンバが提供される。トカマクプラズマチャンバはさらに、トロイダル磁場コイルの巻線の周りを電流が流れるときにプラズマチャンバ内にトロイダル磁場を提供するように構成された複数のトロイダル磁場コイルを備えることができ、中心柱は、各トロイダル磁場コイルに対してそれぞれの第1及び第2のHTSアセンブリを備える(すなわち、トロイダル磁場コイルの各巻線は、第1及び第2のHTSアセンブリのそれぞれ1つのHTSテープを備える)。
【0040】
トロイダル磁場コイルは、例えば、巻線が、中心柱のHTSテープによって形成される内側リム(D形状の直線部分に対応する)と、各巻線を構成する他のHTSテープによって形成される外側リム(D形状の曲線部分に対応する)とを形成するように配置された、D形状コイルであることができる。トロイダル磁場コイルの第1の巻線に供給された電流は、コイルの他の巻線のそれぞれの周りを順番に循環し(ソレノイドのように)、電流は、巻線ごとに、内側リムに沿って流れ、外側リムを回り、内側リムに戻る。
【0041】
本発明の第3の態様によれば、上記の第2の態様によるトカマクプラズマチャンバを動作させる方法が提供される。方法は、複数のトロイダル磁場コイルのそれぞれについて、
トロイダル磁場コイルの巻線の周りに電流を流すことと、
第1のHTSアセンブリを第2のHTSアセンブリに対して優先的に冷却して第2のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流に対する第1のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流の差を低減又は除去するために冷却機構を使用することと
を含む。
【0042】
冷却機構が1つ以上の冷却チャネルを備える場合、冷却機構を使用することは、冷却チャネル又は各冷却チャネルを通して超臨界ヘリウムなどの極低温流体を流すことを含むことができる。
【0043】
トロイダル磁場コイルによって生成される磁場は、例えば、それぞれの第1のHTSアセンブリにおける磁場の強度が、それぞれの第2のHTSアセンブリにおける磁場の強度よりも大きいようにすることができる。代わりに、又は加えて、それぞれの第1のHTSアセンブリのHTSテープにおける磁場とab平面又は各ab平面の平面との間の磁場角度は、それぞれの第2のHTSアセンブリのHTSテープの磁場とab平面との間の磁場角度よりも大きいことができる。
【0044】
本発明の第4の態様によれば、トカマクプラズマチャンバのトロイダル磁場コイル用の中心柱が提供される。中心柱は、中心軸の周りに間隔を置いて配置された複数のチャネルを有する支持部材を備える。各チャネルは、各チャネルに設けられた、中心軸に平行に電流を伝導するための超伝導体材料の1つ以上の層を備える導体要素を有する。中心柱はさらに、核融合炉としてのトカマクプラズマチャンバの運転前又は運転中に、中心軸に垂直な半径方向に沿った各導体要素全体にわたる下向きの温度勾配を生成(又は維持)するために超伝導体材料を冷却するように構成された冷却機構を備え、それにより各導体要素の温度は半径方向に沿って中心軸から離れるにつれて低下する。
【0045】
各導体要素全体にわたる温度勾配は、中心軸からの距離の増加に伴う磁場強度の増加及び/又は最適でない磁場角度を少なくともある程度補償することによって、導体要素の超伝導体材料内の電流対臨界電流(I/Ic)の比を半径方向でより均一にするのに役立つ。
【0046】
冷却機構は、極低温流体を流すために支持部材を通って延びる1つ以上の冷却チャネルを備えることができる。冷却チャネルの密度及び/又は冷却チャネルのそれぞれの断面積は、極低温流体が冷却チャネルを通って流れるときに、支持部材の半径方向内側部分と半径方向外側部分に差別的な冷却を提供するために、支持部材を横切って半径方向に増加することができる。
【0047】
冷却機構は、冷却チャネルを通る極低温流体の流量を制御するためのレギュレータを備えることができ、冷却チャネル及びレギュレータは、第1セットの冷却チャネルを通して第2セットの冷却チャネルよりも大きな流量を提供するように構成され、第1セットの冷却チャネルは、第2セットの冷却チャネルよりも中心軸から遠くに位置する。
【0048】
各導体要素は、冷却チャネルのそれぞれの1つを画定するためにチャネルの1つ以上の壁から間隔を置いて配置することができる。
【0049】
各導体要素は、超伝導体材料の複数の層を備え、これらの層は、半径方向に対して実質的に垂直に配置することができる。
【0050】
使用時に、各導体要素について、超伝導体材料の第1の層の平均温度は、超伝導体材料の第2の層の平均温度よりも高いことができ、第1の層は第2の層よりも中心軸の近くに位置する。第1の層は、導体要素の半径方向に最も内側の層であることができ、第2の層は、導体要素の半径方向に最も外側の層であることができる。冷却チャネルは、使用時に、極低温流体が各導体要素の第2の層に接触するように配置することができる。
【0051】
各導体要素は、導体要素が設けられる支持部材のチャネルの一部分(例えば、壁)に接触することができ、その部分は中心軸に垂直な方向に延在し、熱伝導性材料で作られる。熱伝導性材料は、銅、好ましくは硬質銅であることができ、又は銅、好ましくは硬質銅を含むことができる。
【0052】
超伝導体材料は、REBCOなどの高温超伝導体(HTS)材料であることができる。
【0053】
各導体要素は、チャネル内に並んで配置されたHTSテープの複数のスタックを備えることができ、好ましくは隣接するスタックの間に絶縁体材料が設けられる。冷却チャネル又は各冷却チャネルは、それぞれの導体要素の面にまたがることができる。
【0054】
極低温流体は、ヘリウム、好ましくは超臨界ヘリウムであることができる。
【0055】
本発明の第5の態様によれば、上記の第4の態様による中心柱と、複数のトロイダル磁場コイルとを備え、各トロイダル磁場コイルがそれぞれ1つ以上の導体要素を備えるトカマクプラズマチャンバが提供される。
【0056】
本発明の第6の態様によれば、上記の第4の態様による中心柱と、複数のトロイダル磁場コイルとを備え、各トロイダル磁場コイルがそれぞれ1つ以上の導体要素を備えるトカマクプラズマチャンバを動作させる方法であって、各トロイダル磁場コイルに電流が供給される前及び/又は供給されている間に冷却チャネルに極低温流体を流すことを含む方法が提供される。極低温流体は、ヘリウム、好ましくは超臨界ヘリウムであることができる。極低温流体の流量は、核融合炉としてのトカマクプラズマチャンバのパルス運転前及び/又はパルス運転中に増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】先行技術のHTSテープの概略斜視図である。
図2】テープのa-b面及びc軸を示すHTSテープの概略断面図である。
図3A】トカマクの概略断面図である。
図3B図3Aのトカマクの中心柱の概略軸方向断面図である。
図4図3A及び図3Bの中心柱の扇形部分(セグメント)の概略軸方向断面図である。
図5図4の中心柱のセグメントの巻線部の概略軸方向断面図である。
図6】本発明によるトカマクの中心柱のセグメントの概略軸方向断面図である。
図7】本発明による中心柱の巻線部の概略軸方向断面図である。
図8】本発明による中心柱のセグメントの概略軸方向断面図である。
図9図8の中心柱のセグメントの概略軸方向断面図であり、中心柱の温度分布のシミュレーション結果を重ね合わせたものである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明の目的は、トカマクプラズマチャンバの既存の中心柱に関する上述の問題のいくつかを克服するか又は少なくとも軽減することである。いくつかの実施形態では、本発明は、トカマクプラズマチャンバを運転するときに中心柱(トロイダル磁場コイルの「内側」脚を形成する)の軸に沿って延びるHTSケーブル(すなわちHTS「アセンブリ」)間の輸送電流の分布が既存の中心柱と比較してより均一である中心柱を製造することを可能にする。詳細には、輸送電流のより均一な分布は、トロイダル磁場コイルの一方のHTSケーブル内のHTSテープをトロイダル磁場コイルの他方のHTSケーブル内のHTSテープに対して優先的に冷却する冷却機構を提供することによって実現することができる。このような冷却は、2つのHTSケーブルのHTS材料内の臨界電流の差(すなわち、不均衡)を補償する。臨界電流の差を低減又は除去することにより、輸送電流は中心柱内のHTSケーブル間でより均等に配分される。例えば、臨界電流に対する輸送電流の割合は、HTSケーブルに対してより一定であることができる。HTS材料の差別的な冷却は、HTS材料が中心柱のどこに位置するかにかかわらず、HTS材料に均一に高い冷却速度を提供することを目的とする既存の中心柱で使用されたアプローチとは対照的である。
【0059】
HTS材料の使用は、LTS材料とは対照的に、一般に、2つ(又はそれ以上)のHTSケーブル間のより大きな温度差が超伝導性の喪失(又は部分的喪失)による熱暴走のリスクなしに存在できることを意味する。例えば、LTS材料を使用する既存の磁石では、LTS材料の温度マージン、すなわち、動作温度と熱暴走が始まる臨界温度との差は、1K未満である可能性がある。対照的に、HTS材料の場合、温度マージンは1桁高い可能性があるため、HTS磁石は、超伝導性の喪失なしにその巻線全体にわたるより大きな温度勾配に耐えることができる。
【0060】
図6は、トカマクプラズマチャンバ(例えば、図3Aのトカマク300)の中心柱600の角度セグメントの軸方向断面図である。図4(及び後述する図8)と同様に、図6には角度セグメントの半分のみが示されており、角度セグメントの省略された半分は、図に示されているものの鏡像である。中心柱600は、図3B及び図4の支持部材313と同様の支持部材613を備える。支持部材613は、中心柱600の軸に平行に(すなわち、図6の紙面内に)延び、「巻線部」602として配置された複数のHTSアセンブリ601を収容するチャネルを備える。各HTSアセンブリ601は、中心柱600の軸に平行な方向に(すなわち、図6の紙面内に)細長い。図6に示す実施形態では、各HTSアセンブリ601は複数のHTSテープを備え、各HTSテープは、その最長軸が中心柱600の軸に(実質的に)平行であるように整列される。各HTSアセンブリ601はまた、少なくとも中心柱600の軸に向かう成分を有する方向に、すなわち中心柱の半径に沿って延びる。HTSアセンブリ601はスタックとして配置され、HTSアセンブリ601の長さは角度セグメントの形状を効率的に利用するために異なっており、すなわち、スタックの端にあるHTSアセンブリ601(例えば、図6に関してスタックの最上部にあるHTSアセンブリ601)の長さは、スタックの中央にあるHTSアセンブリ601の長さよりも短い。
【0061】
中心柱600はまた、支持部材613と、トカマクが使用されている(すなわち、核融合炉として動作する)ときに、支持部材613とHTSアセンブリ601の核加熱を制限するために支持部材613を取り囲む核遮蔽604との間に真空ギャップ603を備える。支持部材613は、(他の金属及び/又は合金を使用することができるが)銅から作ることができ、単一の部品として形成することができ、又は図8に関連して後述するように、2つ以上の部品から形成することができる。
【0062】
図7は、支持部材613のチャネル内に設けられた巻線部602の一部を示す中心柱600の軸方向断面図である。図7に示す巻線部602は、(図6に示す3つのHTSアセンブリ601のスタックではなく)4つのHTSアセンブリ701のスタックを備える。一般に、スタックは、中心柱600のサイズ及びHTSテープの寸法によってのみ制限される任意の数のHTSアセンブリ601を備えることができる。例えば銅又はアルミニウムから作られた一対の安定化層702A、702Bは、HTSアセンブリ701のスタックの両側で、スタックと巻線部602を収容する支持部材613のチャネルの対向する壁との間に設けられる。チャネルの壁は、HTSテープの変形及び起こり得る損傷を防ぐために、HTSアセンブリ701のための構造支持体703として機能する。この例では、電気絶縁層704が、HTSアセンブリ701を互いに分離するために、HTSアセンブリ701のそれぞれの隣接する対の間に設けられる。
【0063】
HTSアセンブリ701はそれぞれ、向かい合って配置されたHTSテープのアレイを備え、HTSテープは互いに平行に延び、それぞれの面を介して互いに接触する。この場合、HTSテープの各アレイは、図3Aに示されるTFコイル301などのトロイダル磁場(TF)コイルの一部である、それぞれのパンケーキコイルの一部を形成する。この配置は、中心柱600の軸から最も遠いHTSアセンブリ701の端部の冷却により、介在するHTSテープを介してHTSアセンブリ701の他方の端部を冷却することができるように、HTSテープ間で効率的に熱を伝達することを可能にする。
【0064】
核融合スケールのHTS磁石における撚り又は転位のないHTSアセンブリ(「ケーブル」)の使用については議論の余地がある。しかしながら、これらの特徴は、名目上、AC損失を最小限に抑え、テープ間の均等な電流共有を確実にするために、核融合磁石用のLTSケーブルから引き継がれている。しかしながら、コーティングされたREBCO導体の比較的大きなサイズは、撚りピッチが長く、損失低減が実際には最小限であることを意味する。逆に、高温での動作によってもたらされる熱安定性の増大は、撚りや転位のない大型コイルの安定動作が実現可能であることを意味する。(上述のHTSアセンブリ701にあるような)積層テープ設計の選択はまた、REBCOのab平面を局所磁場ベクトルとより良く位置合わせすることによって、3~5倍高い臨界電流を実現することを可能にし、これは上述のTF中心柱600において可能である。
【0065】
冷却チャネル705は、巻線部602の半径方向最外端に設けられ、すなわち、中心柱600は、巻線部602が中心柱600の軸と冷却チャネル603との間に設けられるように配置される。この例では、HTSアセンブリ701の面は共に冷却チャネル705の壁の1つを形成し、極低温流体(超臨界ヘリウムなど)が冷却チャネル705を流れるときに流体がHTSテープの半径方向最外面に接触し、HTSテープの半径方向最外面を優先的に冷却することができるようにする。
【0066】
図6の中心柱600は、図4の中心柱400と同じ半径を有するが、少なくとも部分的には、冷却チャネル705が巻線部602の外側に設けられるため、著しく小さな面積を占める巻線部602を有する。したがって、図6及び図7に示す巻線部602は、CICC型HTSアセンブリ402を備える図4の巻線部402よりもかなり高い巻線部電流密度(Jwp約350A/mm2)を提供することができる。さらに、中心柱600のより大きな割合を核遮蔽604に使用することができ、これにより、トカマクを運転するときの核加熱率が低下し、中心柱600への損傷が減少するとともに、HTSアセンブリ601のHTSテープ中の臨界電流の中性子誘起劣化のリスクが減少する。厚い中性子遮蔽材604に起因する核加熱の低下は、HTSアセンブリの半径方向内側部分が、例えば、図8を参照して後述するように、流れる超臨界ヘリウムの環で支持部材613を取り囲むことにより、支持部材613を介した伝導冷却によって冷却され得ることも意味する。さらに、冷却チャネルを巻線部602の外側に配置することにより、巻線部602の機械的完全性は高いままであり、その結果、各HTSアセンブリ701の周りの厚い高強度のジャケット(すなわち支持構造)を必要としないことができ、それによりHTSテープがより多くのスペースを占めることが可能になり、HTSアセンブリ601の熱伝導率が増加する。
【0067】
図8は、例示的な中心柱800のセグメント(の半分)を通る軸方向断面図であり、例示的な中心柱800は、支持部材が、トロイダル磁場コイルが動作するときの中心柱への高い機械的負荷に抵抗するために、(例えば)イコネル(登録商標)合金から作ることができる半径方向内側部分801Aを備えることを除いて、図6の中心柱600と同様である。支持部材はまた、硬質銅などの銅で作ることができる半径方向外側部分又は「サイドバー」801Bを備え、サイドバーは、図7に関連して説明したHTSアセンブリ701と同様の6つのHTSアセンブリ802A、802B、802C(図8にはそのうちの3つのみを示す)のスタックを備える巻線部802を横切って延びる。この例では、HTSアセンブリ802A、802B、802Cは、スタックとして配置された3つのパンケーキコイル(の実質的に直線部分)であり、各パンケーキコイルは、それぞれが複数のHTS材料層を含むHTSテープ(例えば、図1に関連して上述したHTSテープ100)を備える。
【0068】
中心柱800はまた、「内部」冷却チャネル805がサイドバー801B内に含まれる点で、図6の中心柱600と異なる。冷却チャネル805は、中心柱800の軸に平行な方向に、すなわち図8の紙面内に延びている。この構成により、サイドバー801Bは、冷却チャネル805内を流れる極低温流体によって内部から冷却することが可能になる。
【0069】
当然ながら、2つ以上の内部冷却チャネル805をサイドバー801B内に設けることができ、冷却チャネル805の数及び/又は密度及び/又はチャネル805の断面積は、HTSアセンブリ802A~802C内のHTSテープの臨界電流がより均一になるように中心柱800内の温度分布を変更するために変化を持たせられる。
【0070】
トカマクの運転中に、トロイダル磁場は、HTSアセンブリ802A~802Cを備えるパンケーキコイル(及び図8には示されていない中心柱800の対応する他のセグメントのパンケーキコイル)の巻線の周りの電流の循環によって生成される。磁場は、中心柱800を横切って半径方向に変化し、中心柱800の軸A~A’上の0から始まり、HTSアセンブリ802A~802Cのそれぞれを横切って(すなわち、図8の左から右へ)ほぼ直線的に増加する。
【0071】
HTSアセンブリ802A~802Cが異なる量だけ概ね半径方向内側に(すなわち、少なくとも中心柱800の軸に向かう成分を有する方向に)延びるため、HTSアセンブリ802A~802CのHTSテープは、異なる強度の磁場を受ける。HTSテープは、この例ではすべてが互いに平行に配置されているため、各HTSテープにおける磁場の角度も、HTSテープがどのHTSアセンブリ802A~802Cに属するかに応じて異なる。例えば、セグメントの中央寄りに(すなわち、図8の下部に)位置するHTSアセンブリ802AのHTSテープに対する磁場の整列(アライメント)は、サイドバー801Bに最も近いHTSアセンブリ802CのHTSテープに対する磁場の整列よりも、超伝導にとって好ましい。異なる磁場強度とアライメントの複合効果は、HTSアセンブリ802A~802Cの臨界温度が異なることを意味する。例えば、磁場アライメントがより有利であり、HTSアセンブリ802A全体にわたる磁場強度が全体としてより低いHTSアセンブリ802Aは、約40Kの臨界温度を有することができ、一方、他の2つのHTSアセンブリ802B~802Cは、それぞれ約37K及び32Kのより低い臨界温度を有することができる。
【0072】
図9は、図8の中心柱800のセグメントに重ねて、超臨界ヘリウム流による能動冷却を考慮した、核融合炉としてのトカマクのパルス運転後の中心柱800における温度分布に関するモンテカルロN粒子輸送(MCNP)シミュレーション及び熱有限要素解析(FEA)の結果を示す。冷却チャネル805は、明確にするために図9では省略されている。核融合パルスの前に、各HTSアセンブリ802A~802Cは約20Kまで冷却される。35MWの核融合パルス中、約50kWの熱が中心柱800に伝達され、各HTSアセンブリ802A~802Cのそれぞれの温度が約35K(HTSアセンブリ802A)、33.5K(HTSアセンブリ802B)及び31K(HTSアセンブリ802C)まで上昇する。シミュレーションは、核熱負荷が中心柱800にわたって半径方向に変化することを示し、最も高い核熱負荷はHTSアセンブリ802A~802Cの半径方向最外端で発生することが判明し、中心柱800の軸の近くで約2分の1に減少する。しかしながら、より多くの熱がこのチャネルに流れ、チャネルに最も近い構成要素からヘリウム冷却材に除去されるため、温度は冷却チャネル805の位置により反対方向に変化する。
【0073】
代わりに又は加えて、「外部」冷却チャネルをサイドバー801Bの外側に設けることができ、「外部」冷却チャネルは、巻線部802(すなわち、HTSアセンブリ802A~802Cの面)とサイドバー801Bの面の両方にまたがり、冷却チャネルの壁の1つがサイドバー801B及びHTSアセンブリ802A~802Cの半径方向に最も外側の面で形成されるようにする。この構成により、サイドバー801B及びHTSアセンブリのこれらの面が、冷却チャネル内を流れる極低温流体によって冷却されることが可能になる。一例では、冷却チャネルは、中心柱800の周りに連続的に延びて、各セグメントのHTSアセンブリ802A~802C及びサイドバー801Bを取り囲む環を形成することができる。使用時に、超臨界ヘリウムは冷却チャネルを通って流れ、サイドバー801B及びHTSアセンブリ802A~802Cを直接冷却する。すなわち、超臨界ヘリウム(又は他の極低温流体)は、サイドバー801B及びHTSアセンブリ802A~802Cのそれぞれの面に接触して、それらを冷却することができる。詳細には、超臨界ヘリウムに接触するサイドバー801Bの面は、高い熱伝導率を確実にするために、サイドバー801Bの異なる領域間でサイドバー801B内に界面なしに、サイドバー801Bの残りの部分と連続していることができる。
【0074】
本発明の様々な実施形態について上述したが、これらは例として示したものであり、限定するものではないことを理解すべきである。本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、本発明において形態及び詳細の様々な変更を行うことができることが、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トカマクプラズマチャンバ用の中心柱であって、
前記中心柱の軸に平行に電流を伝導するためのそれぞれ1つ以上のHTSテープを備える第1及び第2の高温超伝導体(HTS)アセンブリを備えるトロイダル磁場コイルであって、各HTSテープは前記トロイダル磁場コイルの使用時の前記HTSテープにおける磁場に依存する関連臨界電流を有するHTS材料を含むトロイダル磁場コイルと、
前記第1のHTSアセンブリを前記第2のHTSアセンブリに対して優先的に冷却して前記第2のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流に対する前記第1のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流の差を低減又は除去するように構成された冷却機構と
を備える中心柱。
【請求項2】
各HTSテープの臨界電流は、前記HTSテープにおける磁場の強度に、前記磁場の強度が増加すると前記臨界電流が減少するように反比例して依存し、前記第1のHTSアセンブリにおける磁場の強度は、第2のHTSアセンブリにおける磁場の強度よりも大きい、請求項1に記載の中心柱。
【請求項3】
各HTSテープは、前記HTSテープのHTS材料の結晶構造に関して定められた関連する平面を有し、各HTSテープの臨界電流は、前記HTSテープにおける磁場と前記HTSテープの平面との間の磁場角度に依存し、前記臨界電流は前記磁場角度が増大するにつれて減少し、前記HTSアセンブリは、前記第1のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの磁場と平面との間の磁場角度が前記第2のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの磁場と平面との間の磁場角度よりも大きいように配置される、請求項1又は2に記載の中心柱。
【請求項4】
前記各HTSアセンブリについて、前記HTSアセンブリのHTSテープのそれぞれの平面は互いに平行であ、請求項3に記載の中心柱。
【請求項5】
前記第1のHTSアセンブリのHTSテープの平面は、前記第2のHTSアセンブリのHTSテープの平面と平行である、請求項4に記載の中心柱。
【請求項6】
前記冷却機構は、極低温流体を流す1つ以上の冷却チャネルを備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項7】
前記冷却チャネル又は各冷却チャネルは、前記中心柱の軸に平行な方向に延びる、請求項6に記載の中心柱。
【請求項8】
前記冷却チャネル又は各冷却チャネルと前記第1のHTSアセンブリとの間の熱インピーダンスは、前記冷却チャネル又は各冷却チャネルと前記第2のHTSアセンブリとの間の熱インピーダンスよりも小さい、請求項6又は7に記載の中心柱。
【請求項9】
前記冷却チャネル又は各冷却チャネルと前記第1のHTSアセンブリとの間の最短距離は、前記冷却チャネル又は各冷却チャネルと前記第2のHTSアセンブリとの間の最短距離よりも短く、各距離は前記軸に垂直な平面で測定される、請求項6から8のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項10】
1つ以上のチャネルを有する支持部材をさらに備え、前記第1及び第2のHTSアセンブリは、前記支持部材の前記1つ以上のチャネル内に設けられる、請求項1からのいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項11】
前記チャネル又は各チャネルは、前記中心柱の軸に平行な方向に延びる、請求項10に記載の中心柱。
【請求項12】
前記支持部材の少なくとも一部は、熱伝導性材料で作られた本体部分を備える、請求項10又は11に記載の中心柱。
【請求項13】
前記熱伝導性材料は銅を含む、請求項12に記載の中心柱。
【請求項14】
記冷却機構は、前記本体部分の面を通して前記本体部分を冷却するように構成され、前記本体部分は、前記第1及び第2のHTSアセンブリが設けられた前記支持部材のチャネル又は各チャネルの1つ以上の壁を介して前記第1のHTSアセンブリ及び/又は前記第2のHTSアセンブリと接触しており、それにより前記第1のHTSアセンブリ及び/又は前記第2のHTSアセンブリが前記本体部分によって冷却される、請求項13に記載の中心柱。
【請求項15】
前記冷却機構は、前記本体部分内に冷却チャネルを備え、前記本体部分は、前記第1及び第2のHTSアセンブリが設けられた前記支持部材のチャネル又は各チャネルの1つ以上の壁を介して前記第1のHTSアセンブリ及び/又は前記第2のHTSアセンブリと接触しており、それにより前記第1のHTSアセンブリ及び/又は前記第2のHTSアセンブリが前記本体部分によって冷却される、請求項12から14のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項16】
前記第2のHTSアセンブリの少なくとも一部分は、前記第1のHTSアセンブリの半径方向内側に位置し、前記一部分は、前記本体部分と熱接触しており、それにより前記本体部分を介して前記第2のHTSアセンブリの一部分から前記冷却機構に熱が伝達される、請求項12から15のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項17】
前記支持部材は、前記本体部分の半径方向内側に位置しかつ前記本体部分よりも高い機械的強度を有する他の一部を備える、請求項12から16のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項18】
前記第1及び第2のHTSアセンブリを備える巻線部と、前記巻線部の側面にわたって延在する支持部材とをさらに備え、前記冷却機構は、前記支持部材の内部にチャネルを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項19】
前記第1及び第2のHTSアセンブリはそれぞれ、軸の周りに巻かれたHTSテープの入れ子になった巻線を含むそれぞれの平面コイルの一部を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の中心柱。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の中心柱を備えるトカマクプラズマチャンバであって、前記トロイダル磁場コイルの巻線の周りを電流が流れるときに前記プラズマチャンバ内にトロイダル磁場を提供するように構成された複数のトロイダル磁場コイルを備え、各トロイダル磁場コイル、それぞれの第1及び第2のHTSアセンブリを備える、請求項19に記載のトカマクプラズマチャンバ。
【請求項21】
請求項20に記載のトカマクプラズマチャンバを動作させる方法であって、前記複数のトロイダル磁場コイルのそれぞれについて、
前記トロイダル磁場コイルの巻線の周りに電流を流すことと、
前記第1のHTSアセンブリを前記第2のHTSアセンブリに対して優先的に冷却して前記第2のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流に対する前記第1のHTSアセンブリのHTSテープ又は各HTSテープの臨界電流の差を低減又は除去するために前記冷却機構を使用することと
を含む方法。
【国際調査報告】