(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】V型RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系
(51)【国際特許分類】
C12N 15/55 20060101AFI20240709BHJP
C12N 9/22 20060101ALI20240709BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240709BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240709BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240709BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240709BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240709BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C12N15/55
C12N9/22 ZNA
C12N15/113 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575553
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2022065691
(87)【国際公開番号】W WO2022258753
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】313006625
【氏名又は名称】バイエル・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】クニプハウセン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ニーリンクス,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】マルケルト,サスキア・ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】ベドナルスキー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】トゥラン,ゾーレン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
新規なV型B-Gen.1又はB-Gen.2ヌクレアーゼ及びそのバリアントを使用して、細胞又は無細胞環境においてDNAを標的化、編集又は操作するための新規な系、並びにDNAを操作するための方法及びキットが本明細書に記載される。さらに、新規かつ改良されたシングルガイドRNAが開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1又は配列番号:39によるB-GEn.1、及び配列番号:2によるB-GEn.2の群から選択されるポリペプチド、上記のいずれかと少なくとも80%同一であるいずれかのポリペプチド配列、又はそれらをコードするいずれかの核酸。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチド及び配列番号:40、41、42、43、及び45から選択される配列を含むsgRNAを含む組成物。
【請求項3】
(i)請求項1に記載のポリペプチド、及び
(ii)1つ若しくは複数のシングル異種ガイドRNA(sgRNA)又はそのような1つ若しくは複数のsgRNAのin situでの生成を可能にするDNA(複数可)であって、各sgRNA又はsgRNAをコードするDNAが:
a.ポリヌクレオチド遺伝子座中の標的配列とハイブリダイズすることができる人工DNA標的化セグメント、
b.tracrメイト配列、及び
c.tracr RNA配列
を含み、ここで、tracrメイト配列がtracr配列とハイブリダイズでき、さらにここで(a)、(b)、及び(c)が、5’から3’への方向に配置されているもの、
を含む、組成物。
【請求項4】
人工DNA標的化セグメントが、その3’末端において、標的DNAセグメント上のPAM配列に直接隣接しているか、又はそのようなPAM配列が、標的DNA配列の5’部分における一部であり、ここで、PAM配列は配列モチーフ「DTTN」を有し、ここで「D」は「A」又は「T」又は「G」を表し、さらに「N」はいずれかのヌクレオチドを表す、を含む、
請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
細胞又はin vitroにおいて1又は複数の位置で標的DNAを標的化、編集、改変、又は操作する方法であって、本方法が、
(i)請求項1に記載のポリペプチド又はそれをコードする核酸を、細胞内又はin vitro環境内に導入するステップと;
(ii)1つ若しくは複数のシングル異種ガイドRNA(sgRNA)又はそのような1つ若しくは複数のsgRNAをコードするDNA(複数可)を細胞又はin vitro環境に導入するステップであって、各sgRNA又はsgRNAをコードするDNAが:
a.RNAを含み、ポリヌクレオチド遺伝子座中の標的配列とハイブリダイズできる人工DNA標的化セグメント、
b.RNAで構成されたtracrメイト配列、及び
c.RNAで構成されたtracr RNA配列
を含み、ここでtracrメイト配列が、tracr配列とハイブリダイズし、さらにここで(a)、(b)、及び(c)は、5’から3’への方向に配置される、ステップと;
(iii)標的DNAにニック若しくはカット又は塩基編集を1つ又は複数創出するステップであって、ここで、B-GEnポリペプチドが、そのプロセシングされた形態又はプロセシングされていない形態のsgRNAによって標的DNAに方向づけられる、ステップと、
を含む方法。
【請求項6】
i.請求項1に記載のポリペプチド又はそれをコードする核酸;及び/又は
ii.1つ若しくは複数のシングル異種ガイドRNA(複数可)(sgRNA)又はそのような1つ若しくは複数のsgRNAのin situでの生成に好適なDNA(複数可)であって、それぞれが:
a.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座中のそのような標的配列とハイブリダイズできる人工DNA標的化セグメント、
b.RNAで構成されたtracrメイト配列、及び
c.RNAで構成されたtracr RNA配列
を含み、ここでtracrメイト配列がtracr配列とハイブリダイズし、さらにここで(a)、(b)、及び(c)が、5’から3’への方向に配置されるもの、
を含む組成物の使用であって、
細胞内又はin vitroにおいて、1つ又は複数の位置で標的DNAを標的化、編集、改変、又は操作するための、
組成物の使用。
【請求項7】
i.請求項1に記載のポリペプチド又はそれをコードする核酸;及び
ii.1つ若しくは複数のシングル異種ガイドRNA(sgRNA)又はそのような1つ若しくは複数のsgRNAをin situで生成するのに好適なDNA(複数可)であって、それぞれが:
a.ポリヌクレオチド遺伝子座中の標的配列とハイブリダイズできる人工DNA標的化セグメント、
b.tracrメイト配列、及び
c.tracr RNA配列
を含み、ここでtracrメイト配列がtracr配列とハイブリダイズでき、さらにここで(a)、(b)、及び(c)が、5’から3’への方向に配置されるもの、
を有する細胞。
【請求項8】
I.請求項1に記載のB-GEnポリペプチドをコードする核酸であって、B-GEnをコードする核酸はプロモーターに作動可能に連結されているもの;及び
II.1つ若しくは複数のシングル異種ガイドRNA(sgRNA)又はそのような1つ若しくは複数のsgRNAをin situで生成するのに好適なDNA(複数可)であって、各sgRNAが:
a.ポリヌクレオチド遺伝子座中の標的配列とハイブリダイズできる人工DNA標的化セグメント、
b.tracrメイト配列、及び
c.tracr RNA配列
を含み、ここでtracrメイト配列がtracr配列とハイブリダイズでき、さらにここで(a)、(b)、及び(c)が、5’から3’への方向に配置されるもの、
を含むキット。
【請求項9】
配列番号:40~44から選択される核酸又は配列番号:40~44から選択される核酸で構成された核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全体として分子生物学の分野に関し、特に遺伝子編集のための新規CRISPR Cas RNAプログラム可能DNAエンドヌクレアーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
CRISPR-Cas又はCRISPR/Cas系として集合的に知られる、クラスター化して規則的な間隔を有する短い回文配列反復(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)(CRISPR)及びCRISPR会合(Cas)遺伝子は、現在、ファージ感染に対して細菌及び古細菌に免疫を提供すると理解されている。原核生物の適応免疫のCRISPR-Cas系は、遺伝子座構造と同様に、タンパク質エフェクター非コード要素の極めて多様な群であり、いくつかの例は、重要なバイオテクノロジーを生み出すように設計され、適応されている。
【0003】
宿主防御に関与する系の成分には、DNA又はRNAを改変することができる1つ又は複数のエフェクタータンパク質、及びファージDNA又はRNA上の特定の配列にこれらのタンパク質活性を標的化する役割を果たすRNAガイドエレメントが含まれる。RNAガイドはCRISPR RNA(crRNA)からなり、エフェクタータンパク質による標的核酸操作を可能にするために、さらなるトランス作用性RNA(tracrRNA)を必要とするかもしれない。crRNAは、エフェクタータンパク質へのcrRNAの結合を担う「ダイレクトリピート(direct repeat)」と称されるセグメントと、所望の核酸標的配列に相補的である「スペーサー配列」と称されるセグメントとからなる。CRISPR系は、crRNAのスペーサー配列を改変することによって、別のDNA又はRNA標的を標的とするように再プログラムすることができる。
【0004】
CRISPR-Cas系は大きく2つのクラスに分類することができる:クラス1系は、crRNAの周りに一緒になって複合体を形成する複数のエフェクタータンパク質からなり、クラス2系は、crRNAガイドと複合体を形成してDNA又はRNA基質を標的とする単一のエフェクタータンパク質からなる。クラス2系の単量体サブユニットエフェクター組成物は、エンジニアリング及び適用のためのより単純なコンポーネントセットを提供し、これまでプログラム可能なエフェクターの重要な供給源であった。したがって、新規なクラス2系の発見、エンジニアリング、及び最適化は、ゲノムエンジニアリング及びそれ以降のための広範かつ強力なプログラム可能な技術をもたらし得る。CRISPR(クラスター化して規則的な間隔を有する短い回文配列反復(Clustered Regularly lnterspaced Short Palindromic Repeats))-Cas(CRISPR会合タンパク質)のRNAガイドDNA標的化原理を用いたゲノムの編集は、過去数年にわたって広く利用されてきた。5種類のCRISPR-Cas系(I型、II型及びIIb型、Ill型、V型、及びVI型)が記載されてきた。ゲノム編集のためのCRISPR-Casのほとんどの使用は、II型系を用いたものであった。細菌II型CRISPR-Cas系によってもたらされる主な利点は、プログラム可能なDNA干渉のための最小限の要件である:カスタマイズ可能なデュアルRNA構造によって誘導されるエンドヌクレアーゼ、Cas9。ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)の元のII型系において最初に実証されたように、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)は、前駆体CRISPR RNA(pre-crRNA)の不変反復に結合し、Cas9の存在下でのRNase IIIによるcrRNA同時成熟(co-maturation)、及びCas9による侵入DNA切断の両方に必須であるデュアルRNAを形成する。ストレプトコッカス・ピオゲネスにおいて示されるように、Cas9は、成熟した活性化tracrRNAと標的化crRNAとの間に形成される二本鎖によって誘導され、侵入同族DNAにおいて部位特異的二本鎖DNA(dsDNA)切断を導入する。Cas9は、HNHヌクレアーゼドメインを使用して標的鎖(crRNAのスペーサー配列に相補的であると定義される)を切断し、RuvC様ドメインを使用して非標的鎖を切断するマルチドメイン酵素である。
【0005】
II型CRISPR Cas 9ヌクレアーゼに加えて、Cas12a、Cas12b、Cas12e、Cas12f、Cas13a、Cas13bなどの多数の異なるV型CRISPR Casヌクレアーゼが記載されてきた(Kooninら、Curr Opin Microbiol.2017年6月;37:67~78、及びMakarovaら、Nat Rev Microbiol.2020年2月;18(2):67-83)。これらの系のいくつかはtracr RNAを必要としないが(Cas 12a、Cas 13a、cas 13b)、Cas12bは典型的にtracr RNAを必要とする(Kooninら、Curr Opin Microbiol.2017年6月;37:67~78)。
【0006】
哺乳動物細胞におけるゲノム編集は、部分的には様々なCas9タンパク質のサイズによって制限されている。今日まで最も広く使用されている酵素であるスタフィロコッカス・ピオゲネス(Staphylococcus pyogenes)(SpyCas9)由来のCas9は、約4.2kbのDNA(WO2013/176722)を含み、同族シングルガイドRNA(sgRNA)との直接的な組み合わせは、サイズをさらに増加させる。アデノ随伴ウイルスは、遺伝子治療用途におけるCas9酵素の送達に使用されるベクターの中にある。しかし、AAVカーゴサイズは約4.5kbに制限されている。サイズの制約のために、Cas9とそのsgRNA及び潜在的なDNA修復テンプレートの送達は、本方法の使用を妨げる可能性がある。より小さいCas9分子が特徴付けられているが、それらの大部分は、SpyCas9によって使用されるものと同様に定義されていないプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に悩まされている。例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SauCas9は、R=A又はGである「NNGRR(T)」配列を使用し、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)(Cja)Cas9は、それぞれ、Y=T又はGである「NNNACAC」/「NNNRYAC」PAMを使用する。PAMのあいまいさは、PAMに対して高い又は完全な配列同一性を有するオフターゲット配列における酵素の望ましくない活性の可能性を増加させる。類似部位を誤っての標的化(「オフターゲット」)は有害事象の可能性を増大させるので、これらの系の特異性は依然として懸念される。
【0007】
既存のCRISPR-Cas系は一般に、以下の1つ又は複数の欠点を有する:
a)それらのサイズは、アデノ随伴ウイルス(AAV)のような確立された治療的に好適なウイルス送達系のゲノム内に運ばれるには大きすぎる。
b)それらの多くは、非宿主環境、例えば真核細胞、特に哺乳動物細胞において、実質的に活性ではない。
c)それらのヌクレアーゼは、スペーサー配列とプロトスペーサー配列との間のミスマッチが存在する場合、DNA鎖切断を触媒することができ、例えば、それらを遺伝子治療用途又は高精度を必要とする他の用途に適さないものにする、望ましくないオフターゲット効果をもたらす。
d)それらは、哺乳動物におけるイン・ビボ(in vivo)適用のためのそれらの使用を制限し得る免疫応答を誘発し得る。
e)それらは、DNA標的化セグメントの標的選択を制限する複雑な及び/又は長いPAMを必要とする。
f)それらは、プラスミド又はウイルスベクターからの発現が乏しい。
g)それらは、活性であるために追加のRNA配列又はガイドRNAの一部として追加のRNA配列を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kooninら、Curr Opin Microbiol.2017年6月;37:67~78
【非特許文献2】Makarovaら、Nat Rev Microbiol.2020年2月;18(2):67~83
【発明の概要】
【0010】
本発明は、B-GEn.1(配列番号:1)、B-Gen1.2(配列番号:39)及びB-GEn.2(配列番号:2)を含む、B-GEnと命名される新規なV型CRISPR Casヌクレアーゼ、又はいずれかの配列に対して少なくとも80の同一性を有するいずれかのタンパク質、配列番号:1、2若しくは39のいずれかの配列に対して、その全長にわたって、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.5%のアミノ酸同一性を有するいずれかのタンパク質、又はそれらをコードするいずれかの核酸に関する。
【0011】
あるいは、本発明は、B-GEn.1(配列番号:1)及びB-GEn.2(配列番号:2)を含む、B-GEnと命名される新規なV型CRISPR Casヌクレアーゼ、又はいずれかの配列に対して少なくとも80の同一性を有するいずれかのタンパク質、配列番号:1、2のいずれかの配列に対して、その全長にわたって、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.5%のアミノ酸同一性を有するいずれかのタンパク質、又はそれらをコードするいずれかの核酸に関する。
【0012】
本発明はさらに、B-GEn.1又はB-GEn.2、好適なガイドRNA(特に配列番号:40~44による)を含み、配列番号:3及び配列番号:4に含まれる配列、並びに標的DNAを含む、CRISPR Cas系に関する。
【0013】
別の実施形態では、いずれかのB-Gen1.2(配列番号:39)が、B-GEn.1(配列番号:1)のための本明細書のいずれかの実施形態の下で、好適で機能的に同一の置換である。
【0014】
一態様では、本明細書で提供されるのは、細胞内又はイン・ビトロ(in vitro)において1つ又は複数の位置で標的DNAを標的化、編集、改変、又は操作する方法であり、前記方法は、(I)本明細書に開示される異種B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又は本明細書に開示されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2をコードする核酸を細胞内又はイン・ビトロ(in vitro)環境に導入するステップと;及び(II)1つ又は複数の異種シングルガイドRNA(複数可)(sgRNA)又はそのような1つ又は複数のsgRNAをコードするDNAを細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境に導入するステップであって、それぞれのsgRNA又はsgRNAをコードするDNAは、(a)RNAを含み、ポリヌクレオチド遺伝子座中の標的配列にハイブリダイズすることができる人工DNA標的化セグメント、(b)RNAで構成されたtracrメイト(mate)配列、及び(c)RNAで構成されたtracr RNA配列を含み、ここで、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズし、(a)、(b)及び(c)が、5’から3’への方向に配置されているステップと;並びに(III)標的DNAにおいて1つ又は複数のニック又はカット又は塩基編集を創出するステップであって、ここで、B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドは、そのプロセシングされた形態又はプロセシングされていない形態のsgRNAによって標的DNAに方向づけられるステップとを含む。
【0015】
一態様では、本明細書で提供されるのは、細胞内又はイン・ビトロにおいて1つ又は複数の位置で標的DNAを標的化、編集、改変、又は操作するための、(I)本明細書に開示されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそれらをコードする核酸;及び/又は(II)1つ又は複数のシングル異種ガイドRNA(複数可)(sgRNA)又はイン・サイチュ(in situ)で、そのような1つ又は複数のsgRNAの生成に好適なDNA(複数可)であって、それぞれが、(a)RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座中のそのような標的配列にハイブリダイズすることができる人工DNA標的化セグメント、(b)RNAで構成されたtracrメイト配列、及び(c)RNAで構成されたtracr RNA配列を含み、ここで、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズし、(c)、(b)及び(a)が、それぞれ5’から3’への方向に配置されているsgRNA又はDNA、を含む組成物の使用である。
【0016】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、(I)本明細書で開示されるようなB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチド、又は本明細書で開示されるB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドをコードする核酸、及び(II)1つ又は複数のシングル異種ガイドRNA(複数可)(sgRNA)又はイン・サイチュ(in situ)で、そのような1つ又は複数のsgRNAの生成に好適なDNA(複数可)であって、それぞれが、(a)ポリヌクレオチド遺伝子座中の標的配列にハイブリダイズすることができる人工DNA標的化セグメント、(b)tracrメイト配列、及び(c)tracr RNA配列を含み、ここで、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズすることができ、(c)、(b)及び(a)が、それぞれ5’から3’への方向に配置されているsgRNA又はDNA、を含む細胞である。
【0017】
さらに別の態様では、本明細書で提供されるのは、(I)本明細書で開示されるようなB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドをコードする核酸配列であって、ここで、B-GEn.1又はB-GEn.2をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されている核酸配列;及び(II)1つ又は複数のシングル異種ガイドRNA(複数可)(sgRNA)又はイン・サイチュ(in situ)で、そのような1つ又は複数のsgRNAの生成に好適なDNA(複数可)であって、それぞれのsgRNAが、(a)ポリヌクレオチド遺伝子座中の標的配列にハイブリダイズすることができる人工DNA標的化セグメント、(b)tracrメイト配列、及び(c)tracr RNA配列を含み、ここで、tracrメイト配列は、tracr配列にハイブリダイズすることができ、(a)、(b)、及び(c)が、5’から3’への方向に配置されているsgRNA又はDNA、を含むキットである。
【0018】
別の態様では、5つの合成的に誘導され、最適化されたsgRNA(配列番号:40~44)配列も本明細書に開示される。これらの配列は、配列特異的ガイドを提供するそれらの3’末端に約20ヌクレオチドの配列特異的ストレッチを必要とする。
【0019】
低活性標的に対するB-GEn.1(配列番号:1)、及びまた潜在的に他のV型CRISPR Casヌクレアーゼの活性を改善するために、及び将来の治療プログラムのためのRNA合成負荷を低減するために、短縮された突然変異sgRNAが設計された。配列番号:40~44のsgRNA(複数可)は、特に編集が困難であり、有意に短くされた長さ(20ヌクレオチドガイド配列で示される)を有する標的上で、改善された活性を示す:
【0020】
1.配列番号:40:B-GEn.1_sgRNA4、117ヌクレオチド
2.配列番号:41:B-GEn.1_sgRNA4.2、107ヌクレオチド
3.配列番号:42:B-GEn.1_sgRNA4.3、107ヌクレオチド
4.配列番号:43:B-GEn.1_sgRNA4.4、107ヌクレオチド
5.配列番号:44:B-GEn.1_sgRNA4.5、106ヌクレオチド
【0021】
別の態様において、本発明は、
【0022】
a)B-GEn.1(配列番号:1)又はB-GEn.1.2(配列番号:39)、又はいずれかの配列に対して少なくとも80%の同一性を有するいずれかのタンパク質、配列番号:1、2によるいずれかの配列に対して、その全長にわたって、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.5%のアミノ酸同一性を有するいずれかのタンパク質、又はそれらをコードするいずれかの核酸、及び
【0023】
b)配列番号40、41、42、43、及び45から選択される配列を含むsgRNA
の組合せに関する。
【0024】
典型的には、これらのsgRNA配列は、その3’末端に標的特異的配列を含み、典型的には約20ヌクレオチドの長さを有する。
【0025】
sgRNAは、他のV型CRSIPR Casヌクレアーゼにも使用することができる。
【0026】
本明細書で言及される各特許文献及び科学論文、並びにそれによって引用されるそれらの特許文献及び科学論文の開示全体は、全ての目的のために参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0027】
本発明の追加の特徴及び利点は、以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、スクリーニングアッセイ、並びにCRISPR CasエンドヌクレアーゼとしてのB-GEnポリペチドの活性を試験するために使用されたアッセイを示す。
【0029】
【0030】
以下のsgRNA配列を有する:v1 配列番号:3;v4 配列番号:40;v4.2 配列番号:41;v4.3 配列番号:42;v4.4 配列番号:43;v4.5 配列番号:44;及びv4.6、v5、v5.2、v5.3、v5.4、v5.5、v5.6は、より低活性又は非活性配列である。
【0031】
全てのsgRNAは、それらの3’末端に実施例3による23ヌクレオチド長のTCRA配列特異的領域を含む。実線の棒はTCRAガイド1、斜線の棒はTCRAガイド2である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
配列表の参照
【0033】
本明細書に開示される配列は、BHC211037-FC_sequence_listing.xmlという名称の配列表に含まれる。配列番号:1(B-GEn.1タンパク質)及び配列番号:2(B-GEn.2タンパク質)の配列も印刷される。
【0034】
配列表に記載されている配列の概要
【0035】
【0036】
配列番号:1
【0037】
Met Thr Ile Arg Ser Met Lys Leu Lys Leu Lys Ile Tyr Ser Gly Arg
1 5 10 15
Ser Ala Pro Gln Leu Arg Gln Gly Leu Trp Arg Leu His Arg Leu Leu
20 25 30
Asn Glu Gly Thr Ala Tyr Tyr Met Asp Trp Leu Val His Met Arg Gln
35 40 45
Glu Ala Leu Pro Gly Lys Ser Lys Glu Glu Ile Arg Ala Glu Leu Glu
50 55 60
Arg Arg Val Arg Gln Gln Gln Glu Lys Asn Gly Val Gln Asn Asp Gln
65 70 75 80
Val Pro Met Asp Glu Val Leu Ser Ala Leu Arg Gln Leu Tyr Glu Leu
85 90 95
Leu Val Pro Ser Ala Val Asn Asn Ser Gly Asp Ala Gln Thr Leu Ser
100 105 110
Arg Lys Phe Leu Ser Pro Leu Val Asp Pro Asn Ser Glu Gly Gly Lys
115 120 125
Gly Thr Ser Asn Ala Gly Ala Lys Pro Gly Trp Arg Lys Lys Gln Glu
130 135 140
Ala Gly Asp Pro Ser Trp Glu Lys Asp Tyr Glu Arg Trp Leu Lys Arg
145 150 155 160
Lys Gln Ala Asp Pro Thr Ala Glu Ile Leu Gly Lys Leu Glu Thr Ala
165 170 175
Gly Leu Lys Pro Leu Phe Pro Leu Tyr Thr Asn Glu Val Lys Asp Ile
180 185 190
Arg Trp Met Pro Leu Thr Ser Lys Gln Tyr Val Arg Asn Trp Asp Arg
195 200 205
Asp Met Phe Gln Gln Ala Ile Glu His Leu Leu Ser Trp Glu Thr Trp
210 215 220
Asn Arg Lys Val Asn Glu Glu Arg Ala Lys Leu Lys Glu Thr Val Arg
225 230 235 240
Arg Phe Glu Glu Gln His Leu Ala Asn Gly Lys Asp Trp Leu Ser Pro
245 250 255
Leu Gln Ala Tyr Glu Ala Asn Arg Glu Gln Ala Leu Arg Asp Met Ala
260 265 270
Ile Ser Pro Ser Asp Arg Phe Arg Ile Thr Arg Arg Gln Ile Lys Gly
275 280 285
Trp Ser Glu Leu Tyr Glu Arg Trp Asn Lys Leu Ala Pro Thr Ala Ser
290 295 300
Val Glu Ala Tyr Met Gln Glu Val Arg His Val Gln Lys Lys Leu Gly
305 310 315 320
Gly Thr Phe Gly Asp Ala Asp Leu Tyr Arg Phe Leu Ala Lys Pro Glu
325 330 335
Asn Val His Ile Trp Arg Asp His Gln Glu Arg Leu His Tyr Tyr Ala
340 345 350
Ala Tyr Asn Asp Leu His Lys Arg Leu Met Ser Ala Lys Glu Gln Ala
355 360 365
Ala Phe Thr Leu Pro Asp Pro Val Ala His Pro Leu Trp Val Arg Phe
370 375 380
Asp Ala Arg Asp Gly Asn Leu Phe Thr Tyr Ile Leu Gln Ala Asp Ser
385 390 395 400
Ser Lys Gln Arg Ser Arg Arg Tyr Val Asn Phe Ser Arg Phe Leu Trp
405 410 415
Pro Val Glu Asp Gly Tyr Phe Glu Glu Thr Glu Asn Val Lys Val Glu
420 425 430
Leu Ala Leu Ser Lys Gln Phe Tyr Arg Gln Val Ile Val His Asp Asn
435 440 445
Pro Thr Gly Lys Gln Lys Ile Thr Phe Gln Asp Tyr Ser Ser Lys Glu
450 455 460
Ile Leu Glu Gly His Leu Gly Gly Ala Lys Leu Gln Leu Asp Arg Asn
465 470 475 480
Phe Leu Arg Lys Ser Gly Arg Asp Phe Glu Thr Gly Asp Phe Gly Pro
485 490 495
Ala Phe Leu Asn Val Val Leu Asp Leu Lys Pro Lys Gln Glu Val Lys
500 505 510
Asn Gly Arg Leu Gln Ser Pro Leu Gly Gln Ala Leu Leu Val Lys Ser
515 520 525
Arg Pro Asn Asp Ile Pro Lys Val Tyr Gly Tyr Lys Pro Asp Ala Leu
530 535 540
Ala Ala Trp Leu Glu Gln Ala Ser Gly Glu Glu Ser Leu Gly Ser Glu
545 550 555 560
Ser Leu Arg Gln Gly Phe Arg Val Met Ser Ile Asp Leu Gly Val Arg
565 570 575
Ser Ala Ala Ala Ile Ser Val Phe Ser Val Lys Gly Glu Lys Thr Arg
580 585 590
Glu Gly Asp Lys Val Cys Tyr Pro Val Gly Glu Thr Gly Leu Phe Ala
595 600 605
Val His Asp Arg Ser Phe Leu Leu Arg Leu Pro Gly Glu Ser Ser Glu
610 615 620
Lys Arg Val Asn Val Glu Arg Asp Lys Arg Lys Thr Glu Arg Met Gln
625 630 635 640
Ile Arg Tyr His Ile Arg Thr Leu Ala Arg Val Leu Arg Leu Ala Asn
645 650 655
Lys Ala Thr Pro Met Asp Arg Ile Lys Ala Val Gln Asp Val Leu Asn
660 665 670
Asp Ile Glu Ser Thr Arg Phe Met Asn Asp His Asp His His Val Tyr
675 680 685
Asn His Ala Leu Glu Thr Leu Arg Thr Tyr Ala Pro Asp His Gln Gly
690 695 700
Ile Trp Glu Glu Gln Val Ile Ala Ala His Arg Gln Leu Glu His His
705 710 715 720
Val Gly Val Ile Val Gly Glu Trp Arg Lys Asn Trp Gly Lys Asp Arg
725 730 735
Arg Gly Thr Val Gly Leu Ser Met Asp Asn Ile Glu Glu Leu Asp Glu
740 745 750
Met Arg Arg Leu Leu Ile Ser Trp Ser Arg Arg Ala Arg Tyr Pro Arg
755 760 765
Glu Ala Lys Pro Phe Gln Val Asn Glu Ser Asn Pro Val His Leu Leu
770 775 780
Arg His Leu Gln Asn Leu Lys Glu Asp Arg Leu Lys Gln Leu Ala Asn
785 790 795 800
Leu Ile Val Met Thr Ala Leu Gly Tyr Val Tyr Asp Ser Lys Glu Lys
805 810 815
Lys Trp Lys Ala Ala Tyr Pro Ala Cys Gln Leu Ile Leu Phe Glu Asp
820 825 830
Leu Gln Arg Tyr Arg Phe His Leu Asp Arg Ser Ala Arg Glu Asn Ser
835 840 845
Gln Leu Met Lys Trp Ala His Arg Ser Ile Pro Lys Tyr Val Trp Met
850 855 860
Gln Gly Glu Pro Tyr Gly Leu Gln Ile Gly Asp Val Trp Ala Gly Phe
865 870 875 880
Thr Ser Arg Tyr His Ala Lys Thr Gly Ala Pro Gly Ile Arg Cys Lys
885 890 895
Ala Leu Thr Glu Lys Asp Phe Gln Gln Gly Arg Leu Leu Glu Ser Leu
900 905 910
Val Ala Glu Gly Met Phe Thr Leu Gln Glu Val Gly Thr Leu Lys Pro
915 920 925
Gly Asp Ile Val Pro Ala Glu Gly Gly Glu Leu Phe Val Thr Leu Ala
930 935 940
Asp Asp Ser Gly Asp Arg Ile Val Ile Thr His Ala Asp Ile Asn Ala
945 950 955 960
Ala Gln Asn Val Gln Lys Arg Phe Trp Leu Ala Asn Ser Glu Arg Phe
965 970 975
Arg Val Ala Cys Arg Ser Val Gln Ile Ala Ser Gln Glu Cys Phe Ile
980 985 990
Pro Ser Ser Glu Ser Val Ala Lys Lys Met Gly Lys Gly Val Phe Val
995 1000 1005
Arg Asp Phe Ser Phe His Lys Asp Met Glu Val Tyr His Trp Asn Asn
1010 1015 1020
Gln Val Lys Leu Thr Ala Lys Asn Val Pro Thr Asp His Ser Asp Asp
1025 1030 1035 1040
Leu Gln Asp Leu Gln Asp Tyr Gln Ala Ile Leu Glu Glu Ala Arg Glu
1045 1050 1055
Ser Ser Ser Ser Tyr Lys Thr Leu Phe Arg Asp Pro Ser Gly Phe Phe
1060 1065 1070
Phe Pro Asp Asp Val Trp Val Pro Gln Asn Ile Tyr Trp Arg Glu Val
1075 1080 1085
Lys Lys Thr Ile Thr Ala Leu Leu Arg Lys Arg Ile Met Ser Thr
1090 1095 1100
【0038】
配列番号:2
【0039】
Met Pro Ile Arg Ser Phe Lys Leu Lys Leu Val Thr His Asn Gly Asp
1 5 10 15
Ser Thr Tyr Met Asp Lys Leu Arg Arg Gly Leu Trp Lys Thr His Val
20 25 30
Ile Ile Asn Arg Gly Ile Ala Tyr Tyr Met Asn Thr Leu Ala Leu Met
35 40 45
Arg Gln Glu Pro Tyr Gly Ser Lys Ser Arg Glu Glu Val Arg Leu Asp
50 55 60
Leu Leu Ser Thr Leu Arg Glu Gln Gln Arg Arg Asn Asn Trp Ser Glu
65 70 75 80
Gln Thr Gly Thr Asp Asp Glu Leu Leu Ser Leu Ser Arg Arg Val Tyr
85 90 95
Glu Leu Leu Val Pro Ser Ala Ile Gly Glu Lys Gly Asp Ala Gln Met
100 105 110
Leu Ser Arg Lys Phe Leu Ser Pro Leu Val Asp Pro Asn Ser Glu Gly
115 120 125
Gly Arg Gly Thr Ala Lys Ser Gly Arg Lys Pro Arg Trp Lys Lys Met
130 135 140
Met Glu Glu Gly His Pro Asp Trp Glu Lys Glu Lys Glu Lys Asp Ala
145 150 155 160
Ala Lys Lys Ala Glu Asp Pro Thr Ala Ser Ile Leu Ala Asp Leu Glu
165 170 175
Ala Val Gly Leu Leu Pro Leu Phe Pro Leu Phe Ser Asp Glu Gln Lys
180 185 190
Glu Ile Arg Trp Leu Pro Lys Lys Lys Arg Gln Phe Val Arg Thr Trp
195 200 205
Asp Arg Asp Met Phe Gln Gln Ala Leu Glu Arg Met Leu Ser Trp Glu
210 215 220
Ser Trp Asn Arg Arg Val Ala Glu Glu Tyr Leu Lys Leu Gln Ala Gln
225 230 235 240
Arg Asp Glu Val Tyr Ala Lys Tyr Leu Glu Asp Ala Gly Ser Trp Leu
245 250 255
Asn Asp Leu Gln Thr Phe Glu Lys Gln Arg Glu Glu Glu Leu Ala Glu
260 265 270
Val Ser Phe Glu Pro Asn Ser Glu Tyr Leu Ile Thr Arg Arg Gln Ile
275 280 285
Arg Gly Trp Lys Glu Val Tyr Glu Lys Trp Ser Lys Thr Ser Glu Asn
290 295 300
Ala Ser Gln Glu Gln Leu Trp Arg Met Val Ala Asp Val Gln Thr Ala
305 310 315 320
Met Ala Gly Ala Phe Gly Asp Pro Lys Val Tyr Gln Phe Leu Ser Gln
325 330 335
Pro Lys His His His Ile Trp Arg Glu His Pro Asn Arg Leu Phe Tyr
340 345 350
Tyr Ser Lys Tyr Asn Glu Val Arg Glu Lys Leu Asn Arg Ala Lys Lys
355 360 365
Gln Ala Ala Phe Thr Leu Pro Asp Pro Val Glu His Pro Leu Trp Thr
370 375 380
Arg Phe Asp Ala Arg Gly Gly Asn Ile His Asp Tyr Glu Ile Ser Lys
385 390 395 400
Val Gly Lys Gln Tyr His Val Thr Phe Ser Ser Leu Ile Leu Pro Glu
405 410 415
Ala Gln Ser Trp Val Glu Ile Glu Asn Val Thr Val Gly Ile Gly Asn
420 425 430
Ser Leu Gln Leu Lys Arg Gln Ile Arg Leu Asp Gly Tyr Ala Asp Lys
435 440 445
Lys Gln Lys Val Lys Tyr Tyr Asp Tyr Ser Ser Arg Phe Glu Leu Thr
450 455 460
Gly Val Leu Gly Gly Ala Lys Ile Gln Phe Asp Arg Lys His Leu Lys
465 470 475 480
Lys Ala Ala His Arg Leu Ala Glu Gly Glu Thr Gly Pro Ile Phe Leu
485 490 495
Asn Val Val Val Asp Val Glu Pro Phe Leu Glu Val Lys Asn Gly Arg
500 505 510
Leu Arg Thr Pro Leu Gly Gln Val Leu Gln Val Asn Thr Arg Asp Trp
515 520 525
Pro Lys Val Val Asp Tyr Lys Ala Lys Glu Leu Ser Val Leu Met Glu
530 535 540
Asn Thr Gln Ile Gly Asn Glu Asn Gly Val Ser Thr Ile Glu Ala Gly
545 550 555 560
Met Arg Ile Met Ser Ile Asp Leu Gly Gln Arg Thr Ala Ala Ala Val
565 570 575
Ser Ile Phe Glu Val Ile Ser Lys Lys Pro Asp Glu Lys Glu Thr Lys
580 585 590
Leu Phe Tyr Pro Ile Ala Asp Thr Asp Leu Tyr Ala Val His Arg Arg
595 600 605
Ser Leu Leu Leu Arg Leu Pro Gly Glu Glu Ile Ser Ser Lys Lys Met
610 615 620
Ile Glu Lys Arg Lys Glu Arg Ala Arg Ile Arg Ser Leu Val Arg Tyr
625 630 635 640
Gln Ile Arg Leu Leu Ser Glu Val Leu Arg Leu His Thr Gln Gly Thr
645 650 655
Ala Glu Gln Arg Arg Phe Lys Leu Asp Glu Leu Leu Val Ser Ile Gln
660 665 670
Lys Lys Leu Glu Leu Asp Gln Ser Glu Trp Ile Ser Glu Leu Glu Lys
675 680 685
Leu Phe Asp Tyr Ile Asp Glu Ser Ala Glu Lys Trp Lys Glu Ala Leu
690 695 700
Val Val Ala His Arg Thr Leu Glu Pro Ile Val Val Glu Ala Val Arg
705 710 715 720
Asn Trp Lys Lys Ser Leu Ser Lys Glu Asn Lys Asp Arg Arg Arg Ile
725 730 735
Ala Gly Ile Ser Ile Trp Ser Ile Glu Glu Leu Glu Glu Thr Arg Lys
740 745 750
Leu Leu Ile Ala Trp Ser Lys His Ser Arg Glu Pro Gly Ile Pro Lys
755 760 765
Arg Leu Glu Lys Glu Glu Thr Phe Ala Pro Glu His Leu Gln His Ile
770 775 780
Gln Asn Val Lys Asp Asp Arg Leu Lys Gln Met Ala Asn Leu Phe Val
785 790 795 800
Met Thr Ala Leu Gly Tyr Lys Tyr Asp Glu Gly Asn Lys Arg Trp Val
805 810 815
Glu Ala Tyr Pro Ala Cys Gln Val Ile Leu Phe Glu Asp Leu Ser Arg
820 825 830
Tyr Arg Phe Ala Leu Asp Arg Pro Arg Arg Glu Asn Asn Arg Leu Met
835 840 845
Lys Trp Ala His Arg Ser Ile Pro Arg Leu Thr Tyr Met Gln Ala Glu
850 855 860
Leu Phe Gly Ile Gln Val Gly Asp Val Tyr Ser Ala Tyr Thr Ser Arg
865 870 875 880
Phe His Ala Lys Thr Gly Ala Pro Gly Ile Arg Cys His Ala Leu Thr
885 890 895
Glu Ala Asp Leu Gln Ser Asn Ser Tyr Val Val Asn Gln Leu Ile Lys
900 905 910
Asp Lys Phe Ile Gln Asp Asn Gln Thr Glu Ile Leu Lys Ala Gly Gln
915 920 925
Ile Val Pro Trp Gln Gly Gly Glu Leu Phe Val Thr Phe Ala Asp Arg
930 935 940
Ser Gly Ala Ser Leu Ala Val Ile His Ala Asp Ile Asn Ala Ala Gln
945 950 955 960
Asn Leu Gln Lys Arg Phe Trp Gln His Asn Ser Glu Val Phe Arg Val
965 970 975
Pro Cys Lys Val Val Lys Gly Gly Leu Val Pro Val Tyr Glu Lys Met
980 985 990
Arg Lys Leu Phe Gly Lys Gly Leu Phe Val Asn Ile Asp Asp Pro Glu
995 1000 1005
Ser Lys Glu Val Tyr Arg Trp Glu His Ser Thr Lys Met Lys Ser Lys
1010 1015 1020
Thr Thr Pro Val Asp Leu Glu Ser Glu Asp Ile Asp His Glu Glu Leu
1025 1030 1035 1040
Ser Asp Glu Trp Glu Asp Met Gln Glu Gly Tyr Lys Thr Leu Leu Arg
1045 1050 1055
Asp Pro Ser Gly Phe Phe Trp Ser Ser Asp Ser Trp Ile Pro Gln Lys
1060 1065 1070
Asp Phe Trp Ile Arg Val Lys Ser Arg Ile Gly Lys Ser Leu Arg Glu
1075 1080 1085
Gln Ile Arg
1090
【0040】
発明の詳細な説明
【0041】
本出願は、新規のCRISPR-Casヌクレアーゼ及びそのようなヌクレアーゼに基づく遺伝子編集系を提供する。新規のヌクレアーゼは、本明細書において、B-GEnヌクレアーゼ又はB-GEn.1又はB-GEn.2ヌクレアーゼと称される。
【0042】
一般に、B-GEnヌクレアーゼの群は以下のメンバーを含み、これらはテーブル1に記載されている:
【0043】
【0044】
本発明による一実施形態は、配列番号:1、2、及び39と比較してアミノ酸レベルで少なくとも80%同一であるポリペプチド又はそれをコードする核酸である。
【0045】
本発明による1つの好ましい実施形態は、配列番号1、2、及び39と比較してアミノ酸レベルで少なくとも85%同一であるポリペプチド又はそれをコードする核酸である。
【0046】
本発明による1つのより好ましい実施形態は、配列番号1、2、及び39と比較してアミノ酸レベルで少なくとも90%同一であるポリペプチド又はそれをコードする核酸である。
【0047】
本発明による1つのさらにより好ましい実施形態は、配列番号1、2、及び39と比較してアミノ酸レベルで少なくとも95%同一であるポリペプチド又はそれをコードする核酸である。
【0048】
本発明による1つの特に好ましい実施形態は、配列番号1、2、及び39と比較してアミノ酸レベルで少なくとも99%同一であるポリペプチド又はそれをコードする核酸である。
【0049】
本発明による1つの非常に特に好ましい実施形態は、配列番号1、2、及び39と比較してアミノ酸レベルで少なくとも99.5%同一であるポリペプチド又はそれをコードする核酸である。
【0050】
本発明によるさらに別の実施形態は、以下のB-GEn.1又はB-GEn.2のバリアントである:
【0051】
(I)配列番号1又は2のいずれかによる配列に対して、それらの全長にわたって、少なくとも80%の、アミノ酸同一性の好ましい順位が増大するバリアント、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.5%のアミノ酸同一性のバリアント。
【0052】
(II)例えば、無細胞反応又は原核細胞だけでなく、植物又は動物のような生きた生物を含む真核細胞環境においても、B-GEn.1又はB-GEn.2 CRISPR系の適切な活性を得るための核局在化シグナルとしての追加の成分を含む(I)によるバリアント;
【0053】
(III)B-GEn.1又はB-GEn.2並びに(I)及び(II)によるバリアントをコードする対応するポリヌクレオチド配列のコドン最適化バリアント。
【0054】
特に明記しない限り、用語B-GEn及びB-GEn.1又はB-GEn.2は、(I)、(II)、(III)で特定される全てのバリアントを含む。
【0055】
本発明によるさらに別の実施形態は、以下のアミノ酸交換:単独であるか、2つ又は好ましくは3つ全ての組み合わせでの、L235Q、K673R、D1036E、を有するB-GEn.1の以下のバリアント、特に配列番号:39によるB-GEn.1のバリアントである:
【0056】
(I)配列番号1又は39のいずれかに記載の配列に対して、それらの全長にわたって、少なくとも80%の、アミノ酸同一性の好ましい順位が増大するバリアント、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.5%のアミノ酸同一性のバリアント。
【0057】
(II)例えば、無細胞反応又は原核細胞だけでなく、植物又は動物のような生きた生物を含む真核細胞環境においても、B-GEn.1又はB-GEn.1.2 CRISPR系の適切な活性を得るための核局在化シグナルとしての追加の成分を含む(I)によるバリアント;
【0058】
(III)B-GEn.1又はB-GEn.1.2並びに(I)及び(II)によるバリアントをコードする対応するポリヌクレオチド配列のコドン最適化バリアント。
【0059】
特に明記しない限り、用語B-GEn及びB-GEn.1又はB-GEn.2は、(I)、(II)、(III)で特定される全てのバリアントを含む。
【0060】
B-GEn.1又はB-GEn.2に基づくCRISPR-Cas系
【0061】
本発明による一実施形態は、組成物であって、以下の:
(a)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド、又はそのようなB-GEn.1若しくはB-GEn.2をコードするポリヌクレオチド;
(b)シングル異種ガイドRNA(sgRNA)又はイン・サイチュ(in situ)でのそのようなsgRNAの生成を可能にするDNAであって:
i.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座中の標的配列にハイブリダイズすることができる人工DNA標的化セグメント、
ii.RNAで構成されたtracrメイト配列、及び
iii.RNAで構成されたtracr RNA配列を含み、
ここで、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズし、(i)、(ii)及び(iii)が5’から3’への方向に配置されているsgRNA又はDNA
を含む組成物を表す。
【0062】
sgRNA内で、tracrメイト配列及びtracr配列は一般に、好適なループ配列によって連結され、ステム-ループ構造を形成する。
【0063】
B-GEn.1又はB-GEn.2を含むCRISPR-Cas系の使用のための好適なPAM配列
【0064】
B-GEn.1及びB-GEn.2の機能は、標的配列上の好適なプロトスペーサー隣接モチーフ(「PAM」)配列を必要とする。
【0065】
好適なPAM配列をテーブル2に列挙し、ここで、人工DNA標的化セグメントは、その3’末端において、標的DNAセグメント上のPAM配列に直接隣接しているか、又はそのようなPAM配列は、その5’部分における標的DNA配列の一部である。
【0066】
テーブル2:対応するB-GEn.1又はB-GEn.2エンドヌクレアーゼに好適なPAM配列
【0067】
【0068】
CRISPR Cas系におけるB-GEn.1又はB-GEn.2の使用に好適なtracr配列
【0069】
CRISPR Cas系におけるB-GEn.1又はB-GEn.2の使用に好適なtracr配列をテーブル3に列挙する。あるいは、これらの配列のバリアントを用いることができる。バリアントは、そのような配列の部分又は切断型のいずれか、及び/又は配列の1つ又は複数の場所に塩基改変を有する配列を含むことができる。それぞれのDNA配列は、それぞれ、配列番号:5及び6に開示されている。
【0070】
テーブル3
【0071】
【0072】
いくつかの実施形態において、B-GEn.1又はB-GEn.2をコードするポリヌクレオチド及びsgRNAは、細胞内又はイン・ビトロ(in vitro)環境における発現のための好適なプロモーター及び/又は好適な核局在化シグナルを含有する。
【0073】
本発明による別の実施形態は、細胞内又はイン・ビトロ(in vitro)での1つ又は複数の位置で標的DNAを標的化、編集、改変、又は操作する方法であって、以下の:
【0074】
(a)異種B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチド又は同じタンパク質をコードする核酸を細胞内又はイン・ビトロ(in vitro)環境に導入するステップと;及び
【0075】
(b)シングル異種ガイドRNA(sgRNA)又はイン・サイチュ(in situ)でのそのようなsgRNAの生成に好適なDNAを導入するステップであって:
【0076】
i.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座中の標的配列にハイブリダイズすることができる人工DNA標的化セグメント、
【0077】
ii.RNAで構成されたtracrメイト配列、及び
【0078】
iii.RNAで構成されたtracr RNA配列を含み、ここで、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズすることができ、(i)、(ii)及び(iii)は、5’から3’への方向に配置されているステップと;
【0079】
(c):標的DNAにおいて1つ又は複数のカット、ニック又は編集を創出するステップであって、ここで、B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドは、そのプロセシングされた形態又はプロセシングされていない形態のgRNAによって標的DNAに方向づけられるステップと
を含む方法を表す。
【0080】
本発明による別の実施形態は、細胞中又はイン・ビトロ(in vitro)での1つ又は複数の位置で標的DNAを標的化、編集、改変、又は操作するための組成物の使用であって、
【0081】
(a)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド、又はそのようなB-GEn.1若しくはB-GEn.2をコードするポリヌクレオチド;
【0082】
(b)シングル異種ガイドRNA(sgRNA)又はイン・サイチュ(in situ)でのそのようなsgRNAの生成に好適なDNAであって:
【0083】
i.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座中のそのような標的配列にハイブリダイズすることができる人工DNA標的化セグメント、
【0084】
ii.RNAで構成されたtracrメイト配列、及び
【0085】
iii.RNAで構成されたtracr RNA配列を含み、ここで、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズし、(i)、(ii)及び(iii)が、5’から3’への方向に配置されているsgRNA又はDNA
を含む組成物の使用である。
【0086】
本発明による別の実施形態は、エクス・ビボ(ex vivo)又はイン・ビトロ(in vitro)の細胞であって:
【0087】
(a)異種B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチド又はそれをコードする核酸、
【0088】
(b)シングル異種ガイドRNA(sgRNA)又はイン・サイチュ(in situ)でそのようなsgRNAの生成に好適なDNAであって:
【0089】
i.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座中のそのような標的配列にハイブリダイズすることができる人工DNA標的化セグメント、
【0090】
ii.RNAで構成されたtracrメイト配列、及び
【0091】
iii.RNAで構成されたtracr RNA配列を含み、ここで、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズし、(i)、(ii)及び(iii)は、5’から3’への方向に配置されているsgRNA又はDNA
を含む細胞、又は上記(a)及び(b)を用いてそのゲノムが標的化、編集、改変、又は操作されているそのような細胞である。
【0092】
本発明によるさらなる実施形態は、キットであって:
【0093】
(a)B-GEn.1又はB-GEn.2をコードする核酸配列であって、ここで、B-GEn.1又はB-GEn.2をコードする核酸配列が、プロモーター又はリボソーム結合部位に作動可能に連結されている核酸配列;
【0094】
(b)シングル異種ガイドRNA(sgRNA)又はイン・サイチュ(in situ)でそのようなsgRNAの生成に好適なDNAであって:
【0095】
i.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座中のそのような標的配列にハイブリダイズすることができる人工DNA標的化セグメント、
【0096】
ii.RNAで構成されたtracrメイト配列、及び
【0097】
iii.RNAで構成されたtracr RNA配列を含み、ここで、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズし、(i)、(ii)及び(iii)が、5’から3’への方向に配置されているsgRNA又はDNA
を含むキットであるか、
又は
【0098】
(a)B-GEn.1又はB-GEn.2タンパク質;
【0099】
(b)1つ又は複数のシングル異種ガイドRNA(sgRNA)であって、それぞれが:
【0100】
iv.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座中のそのような標的配列にハイブリダイズすることができる人工DNA標的化セグメント、
【0101】
v.RNAで構成されたtracrメイト配列、及び
【0102】
vi.RNAで構成されたtracr RNA配列を含み、ここで、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズし、(i)、(ii)及び(iii)が、5’から3’への方向に配置されているsgRNA
を含むキット。
【0103】
本発明によるさらに別の実施形態は、細胞中又はイン・ビトロ(in vitro)での1つ又は複数の位置で1つ又は複数の標的DNAを標的化、編集、改変、又は操作するための組成物及び方法であって:
【0104】
(a)B-GEn.1又はB-GEn.2
【0105】
(b)ガイドRNA(gRNA)又はイン・サイチュ(in situ)でのそのようなgRNAの生成に好適なDNAであって:
【0106】
i.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座中のそのような標的配列にハイブリダイズすることができる人工DNA標的化セグメント、
【0107】
ii.RNAで構成されたtracr RNA配列を含み、ここで、(i)及び(ii)が、1つのシングルRNA分子であり、(iii)が、別のRNA分子上にあるgRNA又はDNA
を含む組成物及び方法を含む。
【0108】
マルチプレックス化
【0109】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、細胞内の複数の位置においてDNAを編集又は改変する方法であって、i)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチドをコードする核酸を細胞に導入するステップと;及びii)RNAとしての、又はDNAとしてコードされ、1つのプロモーターの制御下の、2つ以上のプレ-CRISPR RNA(プレ-crRNA)を含むシングル異種核酸を細胞に導入するステップであって、各pre-crRNAが、リピートスペーサーアレイ又はリピートスペーサーを含むステップとから本質的になり、ここで、スペーサーが、DNA中の標的配列に相補的な核酸配列を含み、リピートが、ステムループ構造を含み、B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドが、ステムループ構造の上流にある2つ以上のプレ-crRNAを切断し、2つ以上の中間体crRNAを生成し、2つ以上の中間体crRNAが、2つ以上の成熟crRNAにプロセシングされ、2つ以上の成熟crRNAが、B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドをガイドして、2つ以上の二本鎖切断(DSB)をDNAにもたらす方法である。例えば、B-GEn.1又はB-GEn.2の1つの利点は、導入時に、B-GEn.1又はB-GEn.2によってプロセシングされるいくつかのリピートスペーサー単位を含む1つのみのプレcrRNAのみを、DNA上のいくつかの異なる配列を標的とする活性リピートスペーサー単位に導入することが可能であることである。
【0110】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、細胞内の複数の位置でDNAを編集又は改変する方法であって、本質的に、i)エンドリボヌクレアーゼ活性が低下したB-GEn.1又はB-GEn.2の形態を、ポリペプチド又はB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドをコードする核酸として、細胞に導入するステップ;及びii)RNAとしての、又はDNAとしてコードされ、1つ又は複数のプロモーターの制御下の、1つ又は複数のプレ-CRISPR RNA(プレ-crRNA)、中間体crRNA又は成熟crRNAを含むシングル異種核酸を導入するステップであって、各crRNAが、リピートスペーサーアレイを含み、スペーサーが、DNA中の標的配列に相補的な核酸配列を含み、リピートが、ステムループ構造を含むステップとから本質的になり、ここで、B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドが、エンドリボヌクレアーゼ活性が低下又は消失しており、シングル異種核酸中の1つ又は複数のスペーサー配列によって方向づけられように完全なエンドヌクレアーゼ有する1つ又は複数のシングル異種RNAに結合する方法。
【0111】
いくつかの実施形態では、シングル異種核酸中のプレ-crRNA配列は、特異的な位置、配向、配列で、又は特異的な化学的連結により一緒に連結されて、異なるcrRNA配列によって特定される部位のそれぞれにおいてB-GEn.1又はB-GEn.2のエンドヌクレアーゼ活性を指向又は差次的に調節する。
【0112】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、細胞内の複数の位置でDNAの構造又は機能を編集又は改変するための一般的な方法の例であり、i)RNAガイド化エンドヌクレアーゼ、例えばB-GEn.1又はB-GEn.2を、ポリペプチド又はRNAガイド化エンドヌクレアーゼをコードする核酸として、細胞に導入するステップ;及びii)RNAとしての、又はDNAとしてコードされ、1つ又は複数のプロモーターの制御下の、2つ以上のガイドRNAを含むか又はコードするシングル異種核酸を導入するステップから本質的になり、ここで、RNAガイド化エンドヌクレアーゼの活性又は機能は、シングル異種核酸中のガイドRNA配列によって方向づけられる、方法の例である。
【0113】
定義
【0114】
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」、「核酸」、及び「核酸」という用語は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかの長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。したがって、この用語は、一本鎖、二本鎖、若しくは多本鎖のDNA若しくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド/三重ヘリックス、又はプリン塩基及びピリミジン塩基を含むか、若しくは他の天然、化学的若しくは生化学的に改変された、非天然の、若しくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0115】
「オリゴヌクレオチド」は一般に、一本鎖又は二本鎖DNAの約5~約100ヌクレオチドの間のポリヌクレオチドを指す。しかしながら、本開示の目的のために、オリゴヌクレオチドの長さに上限はない。オリゴヌクレオチドはまた、「オリゴマー」又は「オリゴ」としても知られ、遺伝子から単離され得るか、又は当技術分野で公知の方法によって化学的に合成され得る。「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、記載されている実施形態に適用可能な場合、一本鎖(センス又はアンチセンスなど)及び二本鎖ポリヌクレオチドを含むと理解されるべきである。
【0116】
「ゲノムDNA」は、細菌、真菌、古細菌、原生生物、ウイルス、植物又は動物のゲノムのDNAを含むが、これらに限定されない生物のゲノムのDNAを指す。
【0117】
DNAを「操作する」という用語は、結合、1本鎖のニッキング、又は切断、例えば、DNAの両方の鎖の切断を包含するか、又はDNA若しくはDNAに会合するポリペプチドを改変若しくは編集することを包含する。DNAを操作することは、DNAによってコードされるRNA若しくはポリペプチドの発現をサイレンシング、活性化、若しくは調節(増加若しくは減少する)することができ、又はポリペプチドのDNAへの結合を防止若しくは増強することができる。
【0118】
「ステム-ループ構造」は、主に一本鎖ヌクレオチドの領域(ループ部分)によって一方の端で連結されている二本鎖(ステム部分)を形成することが知られているか又は予測される、ヌクレオチドの領域を含む二次構造を有する核酸を指す。用語「ヘアピン」及び「フォールドバック」構造はまた、ステムループ構造を指すために本明細書で使用される。そのような構造は当技術分野で周知であり、これらの用語は、当技術分野で周知の意味と一致して使用される。当技術分野で知られているように、ステムループ構造は、正確な塩基対合を必要としない。したがって、ステムは、1つ又は複数の塩基ミスマッチを含み得る。あるいは、塩基対合は正確であってもよく、例えば、いかなるミスマッチを含まなくてもよい。
【0119】
「ハイブリダイズ可能である」又は「相補的である」又は「実質的に相補的である」とは、核酸(例えば、RNA又はDNA)が、適切な温度及び溶液イオン強度のイン・ビトロ(in vitro)及び/又はイン・ビボ(in vivo)条件下で、配列特異的で、逆平行で、様式(例えば、核酸が相補的な拡散に特異的に結合する)で、別の核酸に非共有結合すること、例えば、ワトソン・クリック塩基対及び/又はG/U塩基対を形成すること、「アニールする」、又は「ハイブリダイズする」ことを可能にするヌクレオチドの配列を含むことを意味する。当技術分野で知られているように、標準的なワトソン・クリック塩基対合には、以下が含まれる:アデニン(A)とチミジン(T)の対合、アデニン(A)とウラシル(U)の対合、及びグアニン(G)とシトシン(C)の対合[DNA、RNA]。加えて、2つのRNA分子間(例えば、dsRNA)、グアニン(G)塩基対のウラシル(U)との間のハイブリダイゼーションについても、当技術分野で公知である。例えば、G/U塩基対合は、mRNA中のコドンとのtRNAアンチコドン塩基対合に関連する遺伝コードの縮重(例えば、冗長性)に部分的に関与する。本開示に関連して、ガイドRNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)のグアニン(G)は、ウラシル(U)に相補的であると考えられ、逆もまた同様である。したがって、G/U塩基対がガイドRNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)の所与のヌクレオチド位置で作製され得る場合、その位置は、非相補的であると見なされず、代わりに相補的であると見なされる。
【0120】
ハイブリダイゼーション及び洗浄条件は周知であり、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.andManiatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor (1989),特に、そのチャプター11及び表11.1;及びSambrook,J.and Russell,W.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor(2001)に例示されている。温度及びイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。
【0121】
ハイブリダイゼーションは、塩基間のミスマッチが可能であるが、2つの核酸が相補的配列を含むことを必要とする。2つの核酸間のハイブリダイゼーションに適切な条件は、当技術分野で周知の変数である核酸の長さ及び相補性の程度に依存する。2つのヌクレオチド配列間の相補性の程度が大きいほど、それらの配列を有する核酸のハイブリッドの融解温度(Tm)の値はより高くなる。短い一続きの相補性(例えば、35以下、30以下、25以下、22以下、20以下、又は18以下のヌクレオチドにわたる相補性)を有する核酸間のハイブリダイゼーションについては、ミスマッチの位置が重要になる(Sambrookら、前出、11.7-11.8を参照されたい)。一般に、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは、少なくとも10ヌクレオチドである。ハイブリダイズ可能な核酸の例示的な最小長は、少なくとも15ヌクレオチド;少なくとも20ヌクレオチド;少なくとも22ヌクレオチド;少なくとも25ヌクレオチド;及び少なくとも30ヌクレオチドである。さらに、当業者は、温度及び洗浄溶液の塩濃度が相補領域の長さ及び相補の程度などの因子に従って必要に応じて調整され得ることを認識するのであろう。
【0122】
ポリヌクレオチドの配列は、特異的にハイブリダイズ可能であるために、その標的核酸の配列と100%相補的である必要はないことが、当技術分野において理解されている。さらに、ポリヌクレオチドは、介在セグメント又は隣接セグメントがハイブリダイゼーション事象(例えば、ループ構造又はヘアピン構造)に関与しないように、1つ又は複数のセグメントにわたってハイブリダイズし得る。ポリヌクレオチドは、それらが標的とする標的核酸配列内の標的領域に対する少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%の配列相補性を含むことができる。例えば、アンチセンス化合物の20個のヌクレオチドのうちの18個が標的領域に相補的であり、したがって特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸は、90パーセントの相補性を表し得る。この例では、残りの非相補的ヌクレオチドは、クラスター化又は相補的ヌクレオチドと散在されていてもよく、互いに又は相補的ヌクレオチドに連続している必要はない。核酸内の特定の核酸配列間の相補性のパーセントは、BLASTプログラム(基本的な局所アラインメント検索ツール)及び当技術分野で公知のPowerBLASTプログラム(Altschulら、J.Mol.Biol.1990,215,403-410;Zhang and Madden,Genome Res.,1997,7,649-656)を用いて、又はGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park,Madison Wis.)を用いて、又はSmith及びWaterman(Adv.Appl.Math.1981(2)482-489)のアルゴリズムを使用するデフォルト設定を用いて、ルーチン的に決定することができる。
【0123】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、コード化及び非コード化アミノ酸、化学的又は生化学的に改変又は誘導体化されたアミノ酸、並びに改変ペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る、いずれかの長さのアミノ酸のポリマー形態を指す。
【0124】
本明細書で使用される「結合」(例えば、ポリペプチドのRNA結合ドメインに関して)は、高分子間(例えば、タンパク質と核酸との間)の非共有結合的相互作用を指す。非共有相互作用の状態では、高分子が「会合している」又は「相互作用する」又は「結合する」と言われる(例えば、分子Xが分子Yと相互作用すると言われる場合、分子Xが非共有結合的に分子Yに結合することを意味する)。結合相互作用の全ての成分が配列特異的である必要はないが(例えば、DNA骨格中のリン酸残基との接触)、結合相互作用の一部は配列特異的であり得る。結合相互作用は一般に、10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、10-10M未満、10-11M未満、10-12M未満、10-13M未満、10-14M未満、又は10-15M未満の解離定数(Kd)で特徴づけられる。「親和性」は、結合の強度を指し、結合親和性の増加は、より低いKdと相関する。
【0125】
「結合ドメイン」とは、別の分子に非共有結合的に結合することができるタンパク質ドメインを意味する。結合ドメインは例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)及び/又はタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合することができる。タンパク質ドメイン結合タンパクの場合、それ自身に結合することができ(ホモダイマー、ホモトリマーなどを形成する)、また/又は、別のタンパク質(単数又は複数)の1つ又は複数の分子に結合することができる。
【0126】
「保存的アミノ酸置換」という用語は、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のタンパク質における互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンからなる;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリン及びトレオニンからなる;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギン及びグルタミンからなる;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンからなる;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リシン、アルギニン、及びヒスチジンからなる;酸性側鎖を有するアミノ酸の群は、グルタメート及びアスパルテートからなる;並びに硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システイン及びメチオニンからなる。例示的な保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、及びアスパラギン-グルタミンである。
【0127】
ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、別のポリヌクレオチド又はポリペプチドに対して一定パーセントの「配列同一性」を有し、これは、アラインメントされたとき、塩基又はアミノ酸のそのパーセントが同じであり、2つの配列を比較するとき、同じ相対位置にあることを意味する。配列同一性は、いくつかの異なる方法で決定することができる。配列同一性を決定するために、ncbi.nlm.nili.gov/BLAST,ebi.ac.uk/Tools/msa/tcoffee,ebi.Ac.Uk/Tools/msa/muscle,mafft.cbrc/alignment/softwareを含むサイトで世界中のウェブ上で入手可能な様々な方法及びコンピュータプログラム(例えば、BLAST、T-COFFEE、MUSCLE、MAFFTなど)を使用して配列をアライメントすることができる。例えば、Altschulら、(1990),J.Mol.Biol.215:403-10を参照されたい。本開示のいくつかの実施形態では、別のCas9エンドヌクレアーゼにおけるアミノ酸残基「に対応する」B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントにおけるアミノ酸残基を決定するために、当技術分野において標準的な配列アラインメントが本開示に従って使用される。他のCas9エンドヌクレアーゼのアミノ酸残基に対応するB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントのアミノ酸残基は、配列のアラインメントにおいて同じ位置に現れる。
【0128】
特定のRNAを「コードする」DNA配列は、RNAに転写されるDNA核酸配列である。ポリデオキシリボヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されるRNA(mRNA)をコードしてもよく、又はポリデオキシリボヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されないRNA(例えば、tRNA、rRNA、又はガイドRNA;「非コード」RNA又は「ncRNA」とも呼ばれる)をコードしてもよい。「タンパク質コード配列」又は特定のタンパク質又はポリペプチドをコードする配列は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合にイン・ビトロ(in vitro)又はイン・ビボ(in vivo)で、(DNAの場合)mRNAに転写され、(mRNAの場合)ポリペプチドに翻訳される核酸配列である。コード配列の境界は、5’末端の開始コドン(N末端)及び3’末端の翻訳終止ナンセンスコドン(C末端)によって決定される。コード配列は、原核生物又は真核生物mRNA由来のcDNA、原核生物又は真核生物DNA由来のゲノムDNA配列、及び合成核酸を含むことができるが、これらに限定されない。転写終結配列は一般に、コード配列の3’に位置する。
【0129】
本明細書で使用される場合、「プロモーター配列」又は「プロモーター」は、RNAポリメラーゼに結合し、下流(3’方向)コード配列又は非コード配列の転写を開始することができるDNA調節領域である。本明細書で使用される場合、プロモーター配列は、転写開始部位によってその3’末端で結合され、上流(5’方向)に伸長して、バックグラウンドを超える検出可能なレベルで転写を開始するために必要な最小数の塩基又はエレメントを含む。プロモーター配列内には、転写開始部位、並びにRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメインが見出される。真核生物プロモーターは常にではないが、多くの場合、「TATA」ボックス及び「CAAT」ボックスを含む。誘導性プロモーターを含む、様々なプロモーターを使用して、本開示の様々なベクターを駆動することができる。プロモーターは構成的に活性なプロモーター(例えば、構成的に活性な「ON」状態であるプロモーター)であり得、それは、誘導性プロモーター(例えば、その状態、活性/「ON」又は不活性/「OFF」)が、外部刺激、例えば、特定の温度、化合物、又はタンパク質の存在によって制御されるプロモーター)であり得、それは、空間的に限定されたプロモーター(例えば、転写制御エレメント、エンハンサーなど)(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーターなど)であり得、及びそれは、時間的に限定されたプロモーター(例えば、プロモーターは、胚発生の特定の段階の間、又は生物学的プロセス、例えば、マウスの毛包周期の特定の段階の間、プロモーターが「ON」状態又は「OFF」状態にある)であり得る。好適なプロモーターは、ウイルスに由来することができ、したがって、ウイルスプロモーターと呼ぶことができ、又は原核生物若しくは真核生物を含むいずれかの生物に由来することができる。好適なプロモーターを使用して、いずれかのRNAポリメラーゼ(例えば、pol I、pol II、pol Ill)による発現を駆動することができる。例示的なプロモーターには、SV40初期プロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス長末端反復(LTR)プロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV前初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6核内小分子プロモーター(U6)(Miyagishiら、Nature Biotechnology 20,497-500(2002))、強化されたU6プロモーター(例えば、Xiaら、Nucleic Acids Res.2003 Sep 1;31(17))、ヒトH1プロモーター(H1)などが含まれるが、これらに限定されない。誘導性プロモーターの例としては、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、T3 RNAポリメラーゼプロモーター、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)調節性プロモーター、ラクトース誘導性プロモーター、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、誘導性プロモーターは、限定されないが、ドキシサイクリン;RNAポリメラーゼ、例えば、T7 RNAポリメラーゼ;エストロゲン受容体;エストロゲン受容体融合体などを含む分子によって調節され得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、プロモーターは、多細胞生物において、プロモーターが特異的細胞のサブセットにおいて活性(例えば、「ON」)であるような、空間的に限定されたプロモーター(例えば、細胞型特異的プロモーター、組織特異的プロモーターなど)である。空間的に限定されたプロモーターは、エンハンサー、転写制御エレメント、制御配列などとも称され得る。いずれかの好適な空間的に限定されたプロモーターを使用することができ、好適なプロモーター(例えば、脳特異的プロモーター、ニューロンのサブセットにおける発現を駆動するプロモーター、生殖系列における発現を駆動するプロモーター、肺における発現を駆動するプロモーター、筋肉における発現を駆動するプロモーター、膵臓の島細胞における発現を駆動するプロモーターなど)の選択は生物に依存する。例えば、様々な空間的に限定されたプロモーターが、植物、虫、線虫、哺乳動物、マウスなどについて知られている。したがって、空間的に限定されたプロモーターを使用して、生物に応じて、多種多様な異なる組織及び細胞型において部位特異的改変酵素をコードする核酸の発現を調節することができる。いくつかの空間的に限定されたプロモーターはまた、胚発生の特定の段階の間、又は生物学的プロセスの特定の段階(例えば、マウスにおける毛包周期)の間、プロモーターが「ON」状態又は「OFF」状態にあるように、時間的に限定される。例示目的のために、空間的に限定されたプロモーターの例としては、ニューロン特異的プロモーター、脂肪細胞特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、平滑筋特異的プロモーター、光受容体特異的プロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されない。ニューロン特異的な空間的に限定されたプロモーターには、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(例えば、EMBL HSEN02、X51956を参照);芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)プロモーター;ニューロフィラメントプロモーター(例えば、GenBank HUMNFL、L04147を参照);シナプシンプロモーター(例えば、GenBank HUMSYNIB、M55301を参照);thy-1プロモーター(例えば、Chenら、(1987)Cell 51:7-19;及びLlewellynら、(2010)Nat.Med.16(10):1161-1166);セロトニン受容体プロモーター(例えば、GenBank S62283を参照);チロシンヒドロキシラーゼプロモーター(TH)(例えば、Ohら、(2009)Gene Ther.16:437;Sasaokaら、(1992)Mol.Brain Res.16:274;Boundyら、(1998)J.Neurosci.18:9989;及びKanedaら、(1991)Neuron 6:583-594);GnRHプロモーター(例えば、Radovickら、(1991) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3402-3406を参照);L7プロモーター(例えば、Oberdickら、(1990)Science 248:223-226参照);DNMTプロモーター(例えば、Bartgeら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3648-3652を参照);エンケファリンプロモーター(例えば、Combら、(1988)EMBO J.17:3793-3805を参照);ミエリン塩基性タンパク質(MBP)プロモーター;Ca2+-カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ11-アルファ(CamKIM)プロモーター(例えば、Mayfordら、(1996)Proc. Natl.Acad.Sci.USA 93:13250;及びCasanovaら、(2001)Genesis 31:37);CMVエンハンサー/血小板由来増殖因子-pプロモーター(例えば、Liuら、(2004)Gene Therapy 11:52-60を参照)が含まれるが、これに限定されない。
【0131】
本明細書において互換的に使用される用語「DNA調節配列」、「制御エレメント」、及び「調節エレメント」は、非コード配列(例えば、ガイドRNA)又はコード配列(例えば、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント)の転写を提供及び/又は調節し、及び/又はコードされたポリペプチドの翻訳を調節する、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タンパク質分解シグナルなどの転写及び翻訳の制御配列を指す。
【0132】
核酸、ポリペプチド、細胞、又は生物に適用される、本明細書で使用される「天然に存在する」又は「非改変の」という用語は、天然に見出される核酸、ポリペプチド、細胞、又は生物を指す。例えば、天然の供給源から単離することができ、実験室においてヒトによって意図的に改変されていない生物(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。
【0133】
核酸又はポリペプチドに適用される、本明細書で使用される「キメラ」という用語は、異なる供給源に由来する構造から構成される1つの実体を指す。例えば、「キメラ」がキメラポリペプチド(例えば、キメラB-GEn.1又はB-GEn.2タンパク質)に関連して使用される場合、キメラポリペプチドは、異なるポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含む。キメラポリペプチドは、改変された又は天然に存在するポリペプチド配列(例えば、改変又は未改変B-GEn.1又はB-GEn.2タンパク質由来の第1のアミノ酸配列;及びB-GEn.1又はB-GEn.2タンパク質以外の第2のアミノ酸配列)のいずれかを含み得る。同様に、キメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関連して、「キメラ」は、異なるコード領域に由来するヌクレオチド配列(例えば、改変又は非改変B-GEn.1又はB-GEn.2タンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列;及びB-GEn.1又はB-GEn.2タンパク質以外のポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列)を含む。
【0134】
「キメラポリペプチド」という用語は天然には存在しない、例えば、ヒトの介入を介した2つ以上の別の方法で分離されたアミノ配列のセグメントの人工的な組合せ(例えば、「融合」)によって作製されるポリペプチドを指す。キメラアミノ酸配列を含むポリペプチドは、キメラポリペプチドである。いくつかのキメラポリペプチドは、「融合バリアント」と称することができる。
【0135】
「異種」は、本明細書で使用される場合、それぞれ、天然の核酸又はタンパク質中に見出されないヌクレオチド又はペプチドを意味する。本明細書に記載されるB-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質は、異種ポリペプチド配列(例えば、B-GEn.1又はB-GEn.2以外のタンパク質由来のポリペプチド配列)に融合されたB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチド(又はそのバリアント)のRNA結合ドメインを含み得る。異種ポリペプチドは、B-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質によっても示される活性(例えば、酵素活性)を示し得る(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、キナーゼ活性、ユビキチン化活性など)。異種核酸は、融合ポリペプチドをコードする融合ポリヌクレオチドを生成するために、天然に存在する核酸(又はそのバリアント)に(例えば、遺伝子操作によって)連結され得る。別の例として、融合バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドにおいて、バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドは、異種ポリペプチド(例えば、B-GEn.1又はB-GEn.2以外のポリペプチド)に融合され得て、それは、融合バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドによっても示される活性を示す。異種核酸はバリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドに連結されて(例えば、遺伝子工学によって)、融合バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを生成し得る。「異種」は、本明細書で使用される場合、さらに、その天然細胞ではない細胞中のヌクレオチド又はポリペプチドを意味する。
【0136】
「同族の」という用語は、通常、天然において相互作用又は共存する2つの生体分子を指す。
【0137】
「組換え」とは、本明細書において使用される場合、特定の核酸(DNA又はRNA)又はベクターが、天然系において見出される内因性核酸と区別可能な構造コード配列又は非コード配列を有する構築物をもたらす、クローニング、制限、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び/又はライゲーション工程の様々な組み合わせの産物であることを意味する。ポリペプチドをコードするDNA配列は、cDNA断片から、又は一連の合成オリゴヌクレオチドから組み立てて、細胞又は無細胞転写及び翻訳系に含まれる組換え転写単位から発現することができる合成核酸を提供することができる。関連配列を含むゲノムDNAはまた、組換え遺伝子又は転写単位の形成において使用され得る。非翻訳DNAの配列は、オープンリーディングフレームからの5’又は3’に存在してもよく、そのような配列は、コード領域の操作又は発現を妨害せず、実際に、様々な機構によって所望の産物の産生を調節するように作用し得る(以下の「DNA調節配列」を参照されたい)。加えて、又は代わりに、翻訳されないRNA(例えば、ガイドRNA)をコードするDNA配列もまた、組換えと考えられ得る。したがって、例えば、用語「組換え」核酸は、天然に存在しない、例えば、ヒトの介入を介して配列の2つの他の分離されたセグメントの人工的な組み合わせによって作製される核酸を指す。この人工的な組み合わせは、しばしば、化学合成手段、又は核酸の単離されたセグメントの人工的操作、例えば、遺伝子工学技術のいずれかによって達成される。そのようなものは、一般に、コドンを、同じアミノ酸、保存的アミノ酸、又は非保存的アミノ酸をコードするコドンで置き換えるために行われる。加えて、又は代わりに、所望の機能の核酸セグメントを一緒に結合して、所望の機能の組み合わせを生成することが行われる。この人工的な組み合わせは、しばしば、化学合成手段、又は核酸の単離されたセグメントの人工的操作、例えば、遺伝子工学技術のいずれかによって達成される。組換えポリヌクレオチドがポリペプチドをコードする場合、コードされるポリペプチドの配列は、天然に存在する(「野生型」)ものであり得るか、又は天然に存在する配列のバリアント(例えば、突然変異体)であり得る。したがって、「組換え」ポリペプチドという用語は、配列が天然には存在しないポリペプチドを必ずしも意味しない。代わりに、「組換え」ポリペプチドは、組換えDNA配列によってコードされるが、ポリペプチドの配列は、天然に存在してもよく(「野生型」)又は天然に存在しなくてもよい(例えば、バリアント、突然変異体など)。したがって、「組換え」ポリペプチドは、ヒトの介入の結果であるが、天然に存在するアミノ酸配列であってもよい。「天然に存在しない」という用語は、化学的に改変又は突然変異した分子を含む、それらの天然に存在する対応物と著しく異なる分子を含む。
【0138】
「ベクター」又は「発現ベクター」は、プラスミド、ファージ、ウイルス、又はコスミドなどのレプリコンであり、これに、別のDNAセグメント、例えば、「インサート」を付着させて、細胞中に付着セグメントの複製をもたらすことができる。
【0139】
「発現カセット」は、プロモーターに作動可能に連結されているDNAコード配列を含む。「作動可能に連結されている」は、そのように記載された成分がそれらが意図された様式で機能することを可能にする関係にある並置を指す。例えば、プロモーターがその転写又は発現に影響を及ぼす場合、プロモーターは、コード配列に作動可能に連結されている。用語「組換え発現ベクター」又は「DNA構築物」は、本明細書において互換的に使用され、ベクター及び少なくとも1つのインサートを含むDNA分子を指す。組換え発現ベクターは一般に、インサートを発現及び/又は増殖させる目的で、又は他の組換えヌクレオチド配列の構築のために生成される。核酸(複数可)は、プロモーター配列に作動可能に連結されていてもいなくてもよく、DNA調節配列に作動可能に連結されていてもいなくてもよい。
【0140】
「作動可能に連結された」という用語は、本明細書で使用される場合、2つ以上の要素、例えば、ポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列の間の物理的又は機能的な連結を意味し、これらは、それらが意図される様式で作動することを可能にする。例えば、対象のポリヌクレオチドと調節配列(例えば、プロモーター)との間の作動可能な連結は、目的のポリヌクレオチドの発現を可能にする機能的連結である。この意味で、「作動可能に連結されている」という用語は、調節領域が目的のコード配列の転写又は翻訳を調節するのに有効であるように、転写される調節領域及びコード配列の位置付けを指す。本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、「作動可能に連結されている」という用語は、制御配列がポリペプチドをコードするmRNA、ポリペプチド、及び/又は機能性RNAの発現又は細胞局在化を指令又は調節するように、制御配列がポリペプチド又は機能性RNAをコードする配列に対して適切な位置に配置される構成を示す。したがって、プロモーターは、核酸配列の転写を媒介することができる場合、核酸配列と作動可能に連結している。動作可能に連結された要素は、連続的又は非連続的であり得る。
【0141】
細胞は、外因性DNA、例えば組換え発現ベクターが細胞内に導入されている場合、そのようなDNAによって「遺伝子改変(genetically modified)」又は「形質転換(transformed)」又は「トランスフェクト(transfected)」されている。外因性DNAの存在は、永続的又は一過性の遺伝的変化をもたらす。形質転換DNAは、細胞のゲノムに組み込まれていても(共有結合されていても)、組み込まれていなくてもよい(共有結合されていなくてもよい)。
【0142】
例えば原核生物、イースト及び哺乳類細胞では、形質転換DNAはプラスミドのようなエピソームエレメント上で保持されていてもよい。真核細胞に関して、安定に形質転換された細胞は、染色体複製を介して娘細胞によって受け継がれるように形質転換DNAが染色体に組み込まれている細胞である。この安定性は、形質転換DNAを含有する娘細胞の集団を含む細胞系又はクローンを確立する真核細胞の能力によって実証される。「クローン」は、有糸分裂によって単一の細胞又は共通の祖先に由来する細胞の集団である。「細胞系」は、イン・ビトロ(in vitro)で多くの世代にわたって安定な増殖が可能な初代細胞のクローンである。
【0143】
遺伝子改変(「形質転換」とも呼ばれる)の好適な方法には例えば、ウイルス又はバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、パーティクルガン法、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介核酸送達(例えば、Panyamら、Adv Drug Deliv Rev.2012 Sep 13.pp:S169-409X(12)00283-9.doi:10.1016/j.addr.2012.09.023を参照されたい)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
本明細書で使用される「宿主細胞」は、イン・ビボ(in vivo)又はイン・ビトロ(in vitro)真核細胞、原核細胞(例えば、細菌又は古細菌細胞)、又は単細胞実体として培養された多細胞生物(例えば、細胞系)由来の細胞を意味し、真核細胞又は原核細胞は、核酸のレシピエントとして使用され得るか、又は使用されており、核酸によって形質転換された元の細胞の子孫を含む。単一細胞の子孫は、天然の、偶発的な、又は意図的な突然変異のために、形態において、又はゲノム若しくは全DNA相補体において、元の親と必ずしも完全に同一でなくてもよいことが理解される。「組換え宿主細胞」(「遺伝子改変宿主細胞」とも呼ばれる)は、異種核酸、例えば発現ベクターが導入された宿主細胞である。例えば、細菌宿主細胞は、外因性核酸(例えば、プラスミド又は組換え発現ベクター)の好適な細菌宿主細胞への導入によって遺伝子改変された細菌宿主細胞であり、真核宿主細胞は、外因性核酸の好適な真核宿主細胞への導入によって遺伝子改変された真核宿主細胞(例えば、哺乳動物生殖細胞)である。
【0145】
本明細書で使用される「標的DNA」は、「標的部位」又は「標的配列」を含むポリデオキシリボヌクレオチドである。「標的部位」、「標的配列」、「標的プロトスペーサーDNA」、又は「プロトスペーサー様配列」という用語は、結合のための十分な条件が存在する場合、ガイドRNAのDNA標的セグメント(「スペーサー」とも呼ばれる)が結合する標的DNA中に存在する核酸配列を指すために、本明細書で互換的に使用される。例えば、標的DNA内の標的部位(又は標的配列)5’-GAGCATATC-3’は、RNA配列5’-GAUAUGCUC-3’によって標的化される(又はそれに結合される、又はそれとハイブリダイズする、又はそれに相補的である)。好適なDNA/RNA結合条件は、細胞中に通常存在する生理学的条件を含む。他の好適なDNA/RNA結合条件(例えば、無細胞系における条件)は当技術分野において公知である;例えば、Sambrook、前出を参照されたい。ガイドRNAに相補的であり、ガイドRNAとハイブリダイズする標的DNAの鎖は、「相補鎖」と呼ばれ、「相補鎖」に相補的である(したがって、ガイドRNAに相補的でない)標的DNAの鎖は「非相補鎖(non-complementary strand)」又は「非相補鎖(non-complementary strand)」と称される。
【0146】
「部位特異的改変酵素」又は「RNA結合部位特異的改変酵素」とは、RNAに結合し、B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドなどの特異的DNA配列を標的とするポリペプチドを意味する。本明細書に記載の部位特異的改変酵素は、それが結合するRNA分子によって特定のDNA配列を標的とする。RNA分子は、標的DNA内の標的配列に結合する、ハイブリダイズする、又は相補的である配列を含み、したがって、結合したポリペプチドを標的DNA(標的配列)内の特定の位置に標的化する。「切断」とは、DNA分子の共有結合骨格の切断を意味する。切断は、ホスホジエステル結合の酵素的又は化学的加水分解を含むが、これらに限定されない様々な方法によって開始することができる。一本鎖切断及び二本鎖切断の両方が可能であり、二本鎖切断は、2つの異なる一本鎖切断事象の結果として起こり得る。DNA切断は、平滑末端又は付着端のいずれかの生成をもたらし得る。特定の実施形態において、ガイドRNA及び部位特異的改変酵素を含む複合体は、標的化された二本鎖DNA切断のために使用される。
【0147】
「ヌクレアーゼ」及び「エンドヌクレアーゼ」は、本明細書において互換的に使用され、ポリヌクレオチド切断のためのエンドヌクレアーゼ触媒活性を有する酵素を意味する。
【0148】
ヌクレアーゼの「切断ドメイン」又は「活性ドメイン」又は「ヌクレアーゼドメイン」とは、DNA切断のための触媒活性を有するヌクレアーゼ内のポリペプチド配列又はドメインを意味する。切断ドメインは、単一のポリペプチド鎖に含まれ得るか、又は切断活性は、2つ(又はそれより多く)のポリペプチドの会合から生じ得る。単一のヌクレアーゼドメインは、所与のポリペプチド内の2つ以上の単離されたアミノ酸のストレッチからなり得る。
【0149】
「ガイド配列」又は「DNA標的化セグメント」又は「DNA標的化配列」又は「スペーサー」は、本明細書において「プロトスペーサー様」配列と称される標的DNA(標的DNAの相補鎖)内の特定の配列に相補的であるヌクレオチド配列を含む。タンパク質結合セグメント(又は「タンパク質結合配列」)は、部位特異的改変酵素と相互作用する。部位特異的改変酵素がB-GEn.1若しくはB-GEn.2、又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2-関連ポリペプチドである場合(以下により詳しく説明する)、標的DNAの部位特異的な切断は、(i)ガイドRNAと標的DNAの間の塩基対合の相補性、及び(ii)標的DNA中の短いモチーフ(プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と称される)の両方によって決定される位置で起こる。ガイドRNAのタンパク質結合セグメントは、部分的に、互いにハイブリダイズして二本鎖RNA二重鎖(dsRNA二重鎖)を形成するヌクレオチドの2つの相補的なストレッチを含む。いくつかの実施形態において、核酸(例えば、ガイドRNA、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸;部位特異的改変酵素をコードする核酸など)はさらなる望ましい特徴(例えば、改変又は調節された安定性;細胞内標的化;追跡、例えば、蛍光標識;タンパク質又はタンパク質複合体のための結合部位など)を提供する改変又は配列を含む。非限定的な例としては、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニレートキャップ(m7g));3’ポリアデニル化尾部(例えば、3’ポリ(A)尾部);リボスイッチ配列(例えば、タンパク質及び/又はタンパク質複合体による調節された安定性及び/又は調節された接近性を可能にするための);安定性制御配列;dsRNA二重鎖(例えば、ヘアピン)を形成する配列;RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化する改変又は配列;追跡を提供する改変又は配列(例えば、蛍光分子への直接コンジュゲーション、蛍光検出を容易にする部分へのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列など);タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに作用するタンパク質)のための結合部位を提供する改変又は配列、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0150】
いくつかの実施形態では、ガイドRNAが上記の特徴のいずれかを提供する追加のセグメントを5’又は3’末端のいずれかに含む。例えば、好適な第3のセグメントは、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニレートキャップ(m7g));3’ポリアデニル化尾部(例えば、3’ポリ(A)尾部);リボスイッチ配列(例えば、タンパク質及びタンパク質複合体による調節された安定性及び/又は調節された接近性を可能にするための);安定性制御配列;dsRNA二重鎖(例えば、ヘアピン)を形成する配列;RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化する配列;追跡を提供する改変又は配列(例えば、蛍光分子への直接コンジュゲーション、蛍光検出を容易にする部分へのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列など);タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに作用するタンパク質)のための結合部位を提供する改変又は配列、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0151】
ガイドRNA及び部位特異的改変酵素、例えばB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、リボ核タンパク質複合体を形成し得る(例えば、非共有相互作用を介して結合する)。ガイドRNAは、標的DNAの配列に相補的なヌクレオチド配列を含むことによって、複合体に標的特異性を提供する。複合体の部位特異的改変酵素は、エンドヌクレアーゼ活性を提供する。言い換えれば、部位特異的改変酵素は、ガイドRNAのタンパク質結合セグメントとの会合により、標的DNA配列(例えば、染色体核酸中の標的配列;染色体外核酸中の標的配列、例えば、エピソーム核酸、ミニサークルなど;ミトコンドリア核酸中の標的配列;葉緑体核酸中の標的配列;プラスミド中の標的配列など)に誘導される。RNAアプタマーは、当技術分野で公知であり、一般にリボスイッチの合成バージョンである。「RNAアプタマー」及び「リボスイッチ」という用語は、本明細書において互換的に使用され、それらが一部であるRNA分子の構造(したがって、特定の配列の利用可能性)の誘導性調節を提供する合成及び天然核酸配列の両方を包含する。RNAアプタマーは一般に、特定の構造(例えば、ヘアピン)に折り畳まれる配列を含み、それが特定の薬物(例えば、小分子)に特異的に結合する。薬物の結合は、RNAの折り畳みにおける構造変化を引き起こし、これは、アプタマーが一部である核酸の特徴を変化させる。非限定的な例として、(i)アプタマーを有する活性化因子-RNAは、アプタマーが適切な薬物によって結合されない限り、同族のターゲターRNAに結合することができない場合があり;(ii)アプタマーを有するターゲター-RNAは、アプタマーが適切な薬物によって結合されない限り、同族の活性化因子-RNAに結合することができない場合があり;及び(iii)それぞれが異なる薬物に結合する異なるアプタマーを含むターゲター-RNA及び活性化因子-RNAは、両方の薬物が存在しない限り、互いに結合することができない場合がある。これらの実施例によって例示されるように、2分子ガイドRNAは、誘導可能であるように設計され得る。
【0152】
アプタマー及びリボスイッチの例は例えば、Nakamuraら、Genes Cells.2012 May;17(5):344-64;Vavalleら、Future Cardiol.2012 May;8(3):371-82;Citartanら、Biosens Bioelectron.2012 Apr 15;34(1):1-11;及びLibermanら、Wiley lnterdiscip Rev RNA.2012 May-Jun;3(3):369-84に見出され得る;これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0153】
遺伝子改変の方法の選択は一般に、形質転換される細胞のタイプ及び形質転換が行われる状況(例えば、イン・ビトロ(in vitro)、エクス・ビボ(ex vivo)、又はイン・ビボ(in vivo))に依存する。これらの方法の一般的な考察は、Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology、第3版、Wiley & Sons、1995に見出すことができる。
【0154】
アプタマー及びリボスイッチの例は例えば、Nakamuraら、Genes Cells.2012 May;17(5):344-64;Vavalleら、Future Cardiol. 2012 May;8(3):371-82;Citartanら、Biosens Bioelectron.2012 Apr 15;34(1):1-11;及びLibermanら、Wiley lnterdiscip Rev RNA.2012 May-Jun;3(3):369-84に見出すことができる;これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0155】
「幹細胞」という用語は、本明細書において、自己複製する能力及び分化細胞型を生成する能力の両方を有する細胞(例えば、植物幹細胞、脊椎動物幹細胞)を指すために使用される(Morrisonら、(1997)Cell 88:287-298を参照されたい)。細胞個体発生に関連して、形容詞「分化されている」又は「分化している」は、相対的な用語である。「分化細胞」は、それが比較される細胞よりも発生経路をさらに進行した細胞である。したがって、多能性幹細胞(以下に記載する)は、系列限定前駆細胞(例えば、中胚葉幹細胞)に分化することができ、それは次に、さらに限定されている細胞(例えば、ニューロン前駆細胞)に分化することができ、それは、最終段階の細胞(例えば、最終分化細胞、例えば、ニューロン、心筋細胞など)に分化することができ、それは、特定の組織型において特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持しても保持しなくてもよい。幹細胞は、特定のマーカー(例えば、タンパク質、RNAなど)の存在及び特定のマーカーの非存在の両方によって特徴付けられ得る。幹細胞はまた、イン・ビトロ(in vitro)及びイン・ビボ(in vivo)の両方の機能アッセイ、特に幹細胞が複数の分化した子孫を生じさせる能力に関するアッセイによって同定され得る。
【0156】
目的の幹細胞は、多能性幹細胞(PSC)を含む。「多能性幹細胞」又は「PSC」という用語は、本明細書では生物の全ての細胞型を産生することができる幹細胞を意味するために使用される。したがって、PSCは、生物の全ての胚葉(例えば、脊椎動物の内胚葉、中胚葉、及び外胚葉)の細胞を生じさせることができる。多能性細胞は、奇形腫を形成することができ、生体内の外胚葉、中胚葉、又は内胚葉組織に寄与することができる。植物の多能性幹細胞は、植物の全ての細胞型(例えば、根、幹、葉などの細胞)を生じさせることができる。
【0157】
動物のPSCは、多くの異なる方法で誘導することができる。例えば、胚性幹細胞(ESC)は胚の内部細胞塊に由来し(Thomsonら、Science.1998 Nov 6;282(5391):1145-7)、一方、誘導多能性幹細胞(iPSC)は、体細胞に由来する(Takahashiら、Cell.2007 Nov 30;131(5):861-72;Takahashiら、Nat Protoc.2007;2(12):3081-9;Yuら、Science.2007 Dec 21;318(5858):1917-20.Epub 2007 Nov 20)。
【0158】
PSCという用語は、その派生にかかわらず多能性幹細胞を指すので、PSCという用語は、ESC及びiPSCという用語、並びにPSCの別の例である胚性生殖幹細胞(EGSC)という用語を包含する。PSCは、樹立細胞系の形態であってもよく、一次胚組織から直接得られてもよく、又は体細胞に由来してもよい。PSCは、本明細書に記載の方法の標的細胞であり得る。
【0159】
「胚性幹細胞」(ESC)とは、胚から、一般に胚盤胞の内部細胞塊から単離されたPSCを意味する。ESC系は、NIHヒト胚性幹細胞登録(NIH Human Embryonic Stem Cell Registry)に列挙されており、例えば、hESBGN-01、hESBGN-02、hESBGN-03、hESBGN-04(BresaGen,Inc.);HES-1、HES-2、HES-3、HES-4、HES-5、HES-6(ES Cell International);Miz-hES1(MizMedi Hospital-Seoul National University);HSF-1、HSF-6(University of California at San Francisco);及びH1、H7、H9、H13、H14(Wisconsin Alumni Research Foundation(WiCell Research Institute))である。目的の幹細胞はまた、アカゲザル幹細胞及びマーモセット幹細胞などの他の霊長類由来の胚性幹細胞を含む。幹細胞は、いずれかの哺乳動物種、例えばヒト、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、げっ歯動物、例えばマウス、ラット、ハムスター、霊長類などから得ることができる(Thomsonら、(1998)Science 282:1145;Thomsonら、(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7844;Thomsonら、(1996)Biol.Reprod.55:254;Shamblottら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:13726、1998)。培養において、ESCは一般に、大きな核-細胞質比、明確な境界及び顕著な核小体を有する平坦なコロニーとして増殖する。さらに、ESCは、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、及びアルカリホスファターゼを発現するが、SSEA-1は発現しない。ESCを生成し、特徴付ける方法の例は例えば、米国特許第7,029,913号、米国特許第5,843,780号、及び米国特許第6,200,806号に見出すことができ、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。未分化形態のhESCを増殖させる方法は、WO99/20741、WO01/51616、及びWO03/020920に記載されている。「胚性生殖幹細胞」(EGSC)又は「胚性生殖細胞」又は「EG細胞」とは、生殖細胞及び/又は生殖細胞前駆細胞、例えば、始原生殖細胞、例えば、精子及び卵子となるものに由来するPSCを意味する。胚性生殖細胞(EG細胞)は、上記の胚性幹細胞と同様の特性を有すると考えられる。EG細胞を生成及び特徴付ける方法の例は例えば、米国特許第7,153,684号;Matsui,Y.ら、(1992)Cell 70:841;Shamblott,M.ら、(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:113;Shamblott,M.ら、(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:13726;及びKoshimizu、U.ら、(1996)Development、122:1235に見出すことができ、これらの記載は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0160】
「誘導多能性幹細胞」又は「iPSC」とは、PSCではない細胞(例えば、PSCと比較して分化した細胞)に由来するPSCを意味する。iPSCは、最終分化細胞を含む複数の異なる細胞型に由来し得る。iPSCは、大きな核-細胞質比、定義された境界及び顕著な核を有する平坦なコロニーとして増殖するES細胞様形態を有する。加えて、iPSCは、当業者に公知の、1つ又は複数の重要な多能性マーカーを発現し、アルカリホスファターゼ、SSEA3、SSEA4、Sox2、Oct3/4、Nanog、TRA160、TRA181、TDGF 1、Dnmt3b、Fox03、GDF3、Cyp26al、TERT、及びzfp42を含むが、これらに限定されない。
【0161】
iPSCを生成し、特徴付ける方法の例は例えば、米国特許出願公開第US20090047263、US20090068742、US20090191159、US20090227032、US20090246875、及びUS20090304646に見出すことができ、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。一般に、iPSCを生成するために、体細胞は、多能性幹細胞になるように体細胞を再プログラミングするために、当技術分野で公知の再プログラミング因子(例えば、Oct4、SOX2、KLF4、MYC、Nanog、Lin28など)を提供される。
【0162】
「体細胞」とは、実験的操作の非存在下で、通常、生物において全てのタイプの細胞を生じさせない、生物におけるいずれかの細胞を意味する。言い換えれば、体細胞は、体の3つの胚葉全て、例えば、外胚葉、中胚葉及び内胚葉の細胞を自然に生成しないように十分に分化した細胞である。例えば、体細胞は、ニューロン及び神経前駆細胞の両方を含み、後者は、中枢神経系の全て又はいくつかの細胞型を自然に生じさせることができるが、中胚葉又は内胚葉系統の細胞を生じさせることはできない。
【0163】
「有糸分裂細胞」とは、有糸分裂を受けている細胞を意味する。
【0164】
「有糸分裂終了細胞」とは、有糸分裂を脱した細胞を意味し、例えば、それは「静止状態」であり、例えば、もはや分裂を行っていない細胞を意味する。この静止状態は一時的、例えば、可逆的であってもよく、又は永続的であってもよい。
【0165】
「減数分裂細胞」とは、減数分裂を受けている細胞を意味する。
【0166】
「組換え」とは、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換プロセスを意味する。本明細書で使用される場合、「相同組換え修復(HDR)」は例えば、細胞における二本鎖切断の修復中に起こる特殊形態のDNA修復を指す。このプロセスはヌクレオチド配列相同性を必要とし、「ドナー」分子を「標的」分子(例えば、二本鎖切断を経験したもの)の鋳型修復に使用し、ドナーから標的への遺伝情報の伝達をもたらす。相同組換え修復は、ドナーポリヌクレオチドが標的分子と異なり、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部又は全部が標的DNAに組み込まれる場合、標的分子の配列の変更(例えば、挿入、欠失、突然変異)をもたらし得る。いくつかの実施形態において、ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、又はドナーポリヌクレオチドのコピーの一部は、標的DNAに組み込まれる。
【0167】
「非相同末端結合(NHEJ)」とは、(修復を誘導するために相同配列を必要とする相同組換え修復とは対照的に)相同鋳型を必要とせずに切断末端を互いに直接連結反応することによるDNA中の二本鎖切断の修復を意味する。NHEJはしばしば、二本鎖切断部位付近のヌクレオチド配列の損失(欠失)をもたらす。
【0168】
用語「処置(treatment)」、「処置すること(treating)」などは本明細書で使用され、一般に、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。この効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に予防するという点で予防的であり得、及び/又は疾患及び/又は疾患に起因する有害作用の部分的又は完全な治癒という点で治療的であり得る。「処置」は、本明細書で使用される場合、哺乳動物における疾患又は症状のいずれかの治療を包含し、(a)疾患又は症状を発症する素因はあるが、それを有するとまだ診断されていない対象において、疾患又は症状の発症を予防すること;(b)疾患又は症状を抑制すること、例えば、その発症を阻止すること;又は(c)疾患を緩和すること、例えば、疾患の退行を引き起こすことを含む。治療剤は、疾患又は傷害の発症前、発症中、又は発症後に投与することができる。進行中の疾患の処置であって、処置が対象の望ましくない臨床症状を安定化又は低減する処置は、特に興味深い。そのような処置は、望ましくは罹患組織における機能の完全な喪失の前に実施される。治療は、望ましくは疾患の症候段階の間、場合によっては疾患の症候段階の後に実施される。
【0169】
「個体」、「対象」、「宿主」、及び「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、診断、処置、又は治療が望まれるいずれかの哺乳動物対象、特にヒトを指す。
【0170】
分子及び細胞生化学における一般的な方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(Sambrookら、Harbor Laboratory Press 2001);Short Protocols in Molecular Biology、第4版(Ausubelら、編集、John Wiley & Sons 1999);Protein Methods(Bollagら、John Wiley & Sons 1996);Nonviral Vectors for Gene Therapy(Wagnerら、編集、Academic Press 1999);Viral Vectors(Kaplift & Loewy編集、Academic Press 1995);Immunology Methods Manual(1.Lefkovits編集、Academic Press 1997);and Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle & Griffiths,John Wiley & Sons 1998)のような標準的な教科書に見出すことができる。その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0171】
値の範囲が提供される場合、文脈が別途明確に指示しない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各介在値、及びその記載された範囲におけるいずれかの他の記載された値又は介在値は、本開示内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して、より小さい範囲に含まれてもよく、記載された範囲におけるいずれかの具体的に除外された限界に従うことを条件として、本開示内にも包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も本開示に含まれる。
【0172】
「から本質的になる」という語句は、本明細書では指定された活性成分若しくは系の成分ではない、又は指定された活性部分若しくは分子の部分ではないいずれのものを除外することを意味する。
【0173】
特定の範囲は本明細書において、用語「約」が先行する数値と共に提示される。用語「約」は本明細書において、それが先行する正確な数、並びに用語が先行する数に近いか、又はおよそその数に対する文字通りのサポートを提供するために使用される。数が具体的に列挙された数に近いか、又は近似しているかどうかを決定する際に、近いか又は近似している引用されていない数は、それが提示される文脈において、具体的に列挙された数の実質的な等価物を提供する数であり得る。
【0174】
明確にするために別々の実施形態に関連して記載される本開示の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態に関連して記載されている本開示の様々な特徴は別々に、又はいずれかの好適なサブコンビネーションで提供することもできる。本開示に関連する実施形態の全ての組み合わせは、本開示によって具体的に包含され、あたかもそれぞれ及び全ての組み合わせが個別にかつ明示的に開示されたかのように、本明細書に開示される。さらに、様々な実施形態及びその要素の全てのサブコンビネーションもまた、本開示によって具体的に包含され、あたかもそのようなサブコンビネーションのそれぞれ及び全てが本明細書で個別に明示的に開示されたかのように、本明細書で開示される。
【0175】
B-GEn.1又はB-GEn.2融合ポリペプチド
B-GEn.1又はB-GEn.2を使用して、B-GEn.1又はB-GEn.2ヌクレアーゼと比較してさらなるドメイン及び活性を有する融合タンパク質を形成することができる。非限定的な例として、Foklドメインは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントに融合することができ、それは、触媒活性エンドヌクレアーゼドメインを含むことができ、又はFoklドメインは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントに融合することができ、それはB-GEn.1若しくはB-GEn.2エンドヌクレアーゼドメインを不活性にするように改変されている。B-GEn.1又はB-GEn.2との融合タンパク質を作製するために融合され得る他のドメインには、転写調節因子、エピジェネティック修飾因子、タグ及び他の標識又は造影剤、ヒストン、及び/又は遺伝子配列の構造又は活性を調節又は改変する当技術分野で公知の他のモダリティが含まれる。
【0176】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、転写活性化因子又は抑制因子、又はエピジェネティック修飾因子、例えば、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、又はデアセチラーゼに融合される。
【0177】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、検出、分子間相互作用、翻訳活性化、改変、又は当技術分野で公知のいずれかの他の操作のために、機能性タンパク質成分に融合される。
【0178】
例示的なB-GEn.1又はB-GEn.2バリアントポリペプチド
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、a)標的部位に結合する能力を保持し、任意で、b)その活性を保持する。いくつかの実施形態では、保持される活性は、エンドヌクレアーゼ活性である。特定の実施形態では、エンドヌクレアーゼ活性は、tracrRNAを必要としない。
【0180】
いくつかの実施形態では、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの活性部分が、改変される。いくつかの実施形態では、改変が、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントのヌクレアーゼ活性を低減又は増加させるアミノ酸変化(例えば、欠失、挿入、又は置換)を含む。例えば、いくつかの実施形態において、改変B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、対応する非改変B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、又は1%未満のヌクレアーゼ活性を有する。いくつかの実施形態では、改変B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、実質的なヌクレアーゼ活性を有さない。いくつかの実施形態では、それは50%、2倍、4倍、又は10倍を超えるヌクレアーゼ活性を有し得る。
【0181】
いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの活性部分は、DNA改変活性及び/又は転写因子活性及び/又はDNA会合ポリペプチド改変活性を有する異種ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、異種ポリペプチドは、ヌクレアーゼ活性を提供するB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの一部を置換する。いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、通常ヌクレアーゼ活性を提供するB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの一部(及びその一部は完全に活性であり得るか、又は代わりに対応する未改変活性の100%未満を有するように改変され得る)及び異種ポリペプチドの両方を含む。言い換えれば、いくつかの実施形態では、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、通常ヌクレアーゼ活性を提供するB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの部分と異種ポリペプチドの両方を含む融合ポリペプチドであり得る。
【0182】
例えば、B-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、異種ポリペプチド配列(例えば、B-GEn.1又はB-GEn.2以外のタンパク質由来のポリペプチド配列)に融合され得る。異種ポリペプチド配列は、B-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質によっても示される活性(例えば、酵素活性)を示し得る(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、キナーゼ活性、ユビキチン化活性など)。異種核酸配列は、融合ポリペプチドをコードする融合ヌクレオチド配列を生成するために、別の核酸配列に(例えば、遺伝子工学によって)連結され得る。いくつかの実施形態において、B-GEn.1又はB-GEn.2融合ポリペプチドは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを、細胞内局在化(例えば、核への標的化のための核局在化シグナル(NLS);ミトコンドリアへの標的化のためのミトコンドリア局在化シグナル;葉緑体への標的化のための葉緑体局在化シグナル:ER保持シグナルなど)を提供する異種配列と融合させることによって生成される。いくつかの実施形態では、異種配列は、追跡又は精製を容易にするためのタグ(例えば、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、RFP、CFP、mCherry、tdTomatoなど;HISタグ、例えば、6XHisタグ;ヘマグルチニン(HA)タグ;FLAGタグ;Mycタグなど)を提供することができる。いくつかの実施形態において、異種配列は、安定性の増加又は減少を提供することができる。いくつかの実施形態において、異種配列は、結合ドメイン(例えば、B-GEn.1又はB-GEn.2融合ポリペプチドの、目的の別のタンパク質、例えば、DNA又はヒストン改変タンパク質、転写因子又は転写抑制因子、動員タンパク質などに結合する能力を提供する)又は目的のヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド結合タンパク質のアプタマー又は標的部位)を提供することができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドバリアントのいずれかによれば、B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドバリアントは、エンドデオキシリボヌクレアーゼ活性が低下している。例えば、本開示の転写調節方法における使用に好適なB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドバリアントは、未改変B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドの約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約1%未満、又は約0.1%未満のエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性を示す。
【0184】
いくつかの実施形態において、バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドは、検出可能なエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性(dB-GEn.1又はB-GEn.2)を実質的に有さない。いくつかの実施形態では、B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドバリアントが低減された触媒活性を有する場合、ポリペプチドは、ガイドRNAと相互作用する能力を保持する限り、部位特異的な様式で(ガイドRNAによって依然として標的DNA配列に誘導されるため)依然として標的DNAに結合することができる。いくつかの実施形態において、バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドは、標的DNAの相補鎖を切断することができるが、標的DNAの非相補鎖を切断する能力が低下しているニッカーゼである。
【0185】
いくつかの実施形態において、バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドは、標的DNAの非相補鎖を切断することができるが、標的DNAの相補鎖を切断する能力が低下しているニッカーゼである。
【0186】
いくつかの実施形態において、バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドは、標的DNAの相補鎖及び非相補鎖の両方を切断する能力が低下している。例えば、アラニン置換が企図される。
【0187】
いくつかの実施形態において、バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドは、融合ポリペプチド(「バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2融合ポリペプチド」)、例えば、i)バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチド;及びii)共有結合した異種ポリペプチド(「融合パートナー」とも呼ばれる)を含む融合ポリペプチドである。
【0188】
異種ポリペプチドは、バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2融合ポリペプチドによっても示される活性(例えば、酵素活性)を示し得る(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、キナーゼ活性、ユビキチン化活性など)。異種核酸配列は、別の核酸配列に(例えば、遺伝子工学によって)連結され、融合ポリペプチドをコードする融合ヌクレオチド配列を生成することができる。いくつかの実施形態において、バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2融合ポリペプチドは、バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドを、細胞内局在化を提供する異種配列と融合させることによって生成される(例えば、異種配列は、細胞内局在化配列、例えば、核への標的化のための核局在化シグナル(NLS);ミトコンドリアへの標的化のためのミトコンドリア局在化シグナル;葉緑体への標的化のための葉緑体局在化シグナル;ER保持シグナルなどである)。いくつかの実施形態において、異種配列は、追跡及び/又は精製を容易にするためのタグ(例えば、異種配列は、検出可能な標識である)を提供することができる(例えば、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、RFP、CFP、mCherry、tdTomatoなど;ヒスチジンタグ、例えば、6XHisタグ;ヘマグルチニン(HA)タグ;FLAGタグ;Mycタグなど)。いくつかの実施形態において、異種配列は、安定性の増加又は減少を提供することができる(例えば、異種配列は、安定性制御ペプチド、例えば、いくつかの場合において制御可能であるデグロン(例えば、温度感受性又は薬物制御可能なデグロン配列、下記を参照))。いくつかの実施形態において、異種配列は、標的DNAからの転写の増加又は減少を提供することができる(例えば、異種配列は、転写調節配列、例えば、転写因子/活性化因子又はその断片、転写因子/活性化因子を動員するタンパク質又はその断片、転写抑制因子又はその断片、転写抑制因子を動員するタンパク質又はその断片、小分子/薬物応答性転写調節因子などである)。いくつかの実施形態において、異種配列は、結合ドメインを提供することができる(例えば、異種配列は例えば、融合dB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドが目的の別のタンパク質、例えば、DNA又はヒストン改変タンパク質、転写因子又は転写抑制因子、動員タンパク質などに結合する能力を提供するタンパク質結合配列である)。
【0189】
安定性の増加又は減少を提供する好適な融合パートナーとしてはデグロン配列が挙げられるが、これらに限定されない。デグロンは、それらが一部であるタンパク質の安定性を制御するアミノ酸配列であることが当業者によって容易に理解される。例えば、デグロン配列を含むタンパク質の安定性は、少なくとも部分的にデグロン配列によって制御される。いくつかの実施形態では、好適なデグロンは、デグロンが実験対照とは無関係にタンパク質安定性にその影響を及ぼすように構成的である(例えば、デグロンは、薬物誘導性、温度誘導性などではない)。いくつかの実施形態において、デグロンは、バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドが所望の条件に応じて「オン」(例えば、安定)又は「オフ」(例えば、不安定、低下した)になり得るように、制御可能な安定性を有するバリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドを提供する。例えば、デグロンが温度感受性デグロンである場合、バリアントB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドは、閾値温度(例えば、42℃、41℃、40℃、39℃、38℃、37℃、36℃、35℃、34℃、33℃、32℃、31℃、30℃など)未満では機能的(例えば、「オン」、安定)であるが、閾値温度を超えると非機能的(例えば、「オフ」、低下した)であり得る。別の例として、デグロンが薬物誘導性デグロンである場合、薬物の存在又は非存在は、タンパク質を「オフ」(例えば、不安定)状態から「オン」(例えば、安定)状態に、又はその逆に切り替えることができる。例示的な薬物誘導性デグロンは、FKBP12タンパク質に由来する。デグロンの安定性は、デグロンに結合する小分子の有無によって制御される。
【0190】
好適なデグロンの例としてはShield-1、DHFR、オーキシン、及び/又は温度によって制御されるデグロンが挙げられるが、これらに限定されない。好適なデグロンの非限定的な例は、当技術分野で公知である(例えば、Dohmenら、Science,1994.263(5151):p.1273-1276:熱誘導性デグロン:温度感受性突然変異体の構築方法;Schoeberら、Am J Physiol Renal Physiol.2009 Jan;296(1):F204-11:Shield-1を用いた多量体TRPV5チャネルの条件付き高速発現及び機能;Chuら、Bioorg Med Chem Lett.2008 Nov 15;18(22):5941-4:FKBP由来の不安定化ドメインに関する最近の進歩;Kanemaki、Pflugers Arch.2012 Dec 28:条件付きデグロンによるタンパク質発現制御の最前線;Yangら、Mol Cell.2012 Nov 30;48(4):487-8:破壊への動機づけ:メチルデグロン;Barbourら、Biosci Rep.2013 Jan 18;33(1).:チミジル酸シンターゼのユビキチン非依存性分解を制御する二部構成デグロンの特性評価;及びGreussingra、J Vis Exp.2012 Nov 10;(69):デグロン(dgn)不安定化緑色蛍光タンパク質(GFP)ベースのレポータータンパク質を用いた、生細胞中のユビキチン-プロテアソーム活性のモニタリング;これらの全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0191】
例示的なデグロン配列は、細胞及び動物の両方において十分に特徴付けられ、試験されている。したがって、B-GEn.1又はB-GEn.2をデグロン配列に融合すると、「調整可能」かつ「誘導可能」なB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドが生成される。本明細書に記載の融合パートナーのいずれも、いずれかの望ましい組み合わせで使用することができる。この点を説明するための1つの非限定的な例として、B-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質は、検出のためのYFP配列、安定性のためのデグロン配列、及び標的DNAからの転写を増加させるための転写活性化因子配列を含むことができる。さらに、B-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質において使用することができる融合パートナーの数は制限されない。いくつかの実施形態において、B-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質は、1つ又は複数(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、又は5つ以上)の異種配列を含む。
【0192】
好適な融合パートナーとしては、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、クロトニル化活性、脱クロトニル化活性、プロピオニル化活性、脱プロピオニル化活性、ミリストイル化活性、又は脱ミリストイル化活性を提供するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されず、これらのいずれも、DNAを直接改変すること(例えば、DNAのメチル化)又はDNA会合ポリペプチド(例えば、ヒストン又はDNA結合タンパク質)を改変することを目的とすることができる。さらなる好適な融合パートナーとしては限定されないが、境界エレメント(例えば、CTCF)、末梢動員を提供するタンパク質及びその断片(例えば、ラミンA、ラミンBなど)、並びにタンパク質ドッキングエレメント(例えば、FKBP/FRB、Pil 1/Aby 1など)が挙げられる。
【0193】
B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントはまた、従来の組換え合成方法に従って単離及び精製され得る。ライセートは、発現宿主から調製することができ、ライセートは、HPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、又は他の精製技術を使用して精製することができる。ほとんどの場合、使用される組成物は、生成物の調製方法及びその精製に関連する夾雑物に関して、少なくとも20重量%の所望の生成物、少なくとも約75重量%、少なくとも約95重量%、及び治療目的のために、典型的には少なくとも99.5重量%を含む。一般に、パーセンテージは、総タンパク質に基づく。DNA切断及び組換え、又は標的DNAへのいずれかの所望の改変、又は標的DNAに会合するポリペプチドへのいずれかの所望の改変を誘導するために、ガイドRNA及び/若しくはB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドは、核酸又はポリペプチドとして導入されるかどうかにかかわらず、約30分~約24時間、例えば、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、16時間、18時間、20時間、又は約30分~約24時間のいずれかの他の期間、細胞に提供され、これは、約毎日~約4日毎、例えば、1.5日毎、2日毎、3日毎、又は約毎日~約4日毎のいずれかの他の頻度で反復され得る。薬剤(複数可)は、細胞に1回以上、例えば、1回、2回、3回、又は3回超、提供されてもよく、細胞は、各接触事象後、ある時間、例えば、16~24時間、薬剤とインキュベートされ、その後、培地は、新鮮な培地と交換され、細胞がさらに培養される。2つ以上の異なる標的化複合体が細胞に提供される場合(例えば、同じ又は異なる標的DNA内の異なる配列に相補的である2つの異なるガイドRNA)、複合体は、同時に(例えば、2つのポリペプチド及び/又は核酸として)提供され得るか、又は同時に送達され得る。あるいは、それらは連続的に提供されてもよく、例えば、標的化複合体が最初に提供され、続いて第2の標的化複合体などが提供されてもよく、又はその逆であってもよい。
【0194】
核酸
【0195】
ガイドRNA/sgRNA
【0196】
いくつかの実施形態において本明細書に記載される系、組成物、及び方法は、会合ポリペプチド(例えば、B-GEn.1ポリペプチド若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント)の活性を標的核酸内の特定の標的配列に向けることができるゲノム標的化核酸を使用する。いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸は、RNAである。ゲノム標的化RNAは、本明細書において「ガイドRNA」又は「gRNA」と称される。ガイドRNAは、目的の標的核酸配列及びCRISPR反復配列(そのようなCRISPR反復配列は、「tracrメイト配列」とも称される)にハイブリダイズすることができる少なくともスペーサー配列を有する。II型系では、gRNAは、tracrRNA配列と呼ばれる第2のRNAも有する。II型ガイドRNA(gRNA)において、CRISPR反復配列及びtracrRNA配列は、互いにハイブリダイズして二重鎖を形成する。V型ガイドRNA(gRNA)では、crRNAは二重鎖を形成する。両方の系において、二重鎖は、ガイドRNA及び部位特異的ポリペプチドが複合体を形成するように部位特異的ポリペプチドに結合する。ゲノム標的化核酸は、部位特異的ポリペプチドとのその会合により、複合体に対する標的特異性を提供する。したがって、ゲノム標的化核酸は、部位特異的ポリペプチドの活動を指示する。
【0197】
いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸は、二重分子ガイドRNAである。いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸は、単一分子ガイドRNA又はシングルガイドRNA(sgRNA)である。二重分子ガイドRNAは、2本のRNA鎖を有する。第1の鎖は5’から3’への方向に、任意のスペーサー伸長配列、スペーサー配列及び最小CRISPR反復配列を有する。第2の鎖は、最小tracrRNA配列(最小CRISPR反復配列に相補的)、3’tracrRNA配列及び任意のtracrRNA伸長配列を有する。II型系における単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’への方向に、任意のスペーサー伸長配列、スペーサー配列、最小CRISPR反復配列、単一分子ガイドリンカー、最小tracrRNA配列、3’tracrRNA配列及び任意のtracrRNA伸長配列を有する。任意のtracrRNA伸長は、ガイドRNAにさらなる機能性(例えば、安定性)を与えるエレメントを有し得る。単一分子ガイドリンカーは、最小CRISPR反復及び最小tracrRNA配列を連結して、ヘアピン構造を形成する。任意のtracrRNA伸長は、1つ又は複数のヘアピンを有する。
【0198】
V型系における単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’への方向に、最小CRISPR反復配列及びスペーサー配列を有する。あるいは、V型系における単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’への方向に、任意のtracr伸長配列、tracr RNA配列、単一分子ガイドリンカー、最小CRISPR反復配列、スペーサー配列、及び任意のスペーサー伸長配列を有する。
【0199】
あるいは、V型系における単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’への方向に、任意の伸長配列、最小CRISPR反復配列、スペーサー配列、及び任意のスペーサー伸長配列を有する。
【0200】
さらに別の代替法では、V型系における単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’への方向に、任意の伸長配列、人工ヌクレアーゼ結合RNA配列及びスペーサー配列、並びに任意のスペーサー伸長配列を含む。
【0201】
本発明によるCRISPR Casヌクレアーゼ、及び潜在的に他のV型CRISPR Casヌクレアーゼのための特に有用なsgRNAは、配列番号:40~44に開示される配列である。
【0202】
【0203】
これらは、それらの3’末端に好適な標的特異的配列を付加することを可能にする。
【0204】
例示的なゲノム標的化核酸は、例えば、WO2018002719に記載されている。一般に、CRISPR反復配列は、(1)対応するtracr配列を含む細胞中のCRISPR反復配列に隣接するDNA標的化セグメントの切除;及び(2)標的配列でのCRISPR複合体の形成であって、CRISPR複合体が、tracr配列にハイブリダイズしたCRISPR反復配列を含む形成、のうちの1つ以上を促進するために、tracr配列と十分な相補性を有するいずれかの配列を含む。一般に、相補性の程度は、CRISPR反復配列及びtracr配列の、2つの配列のうちの短い方の長さに沿った、最適なアラインメントを基準とする。最適なアラインメントは、いずれかの好適なアラインメントアルゴリズムによって決定することができ、さらに、tracr配列又はCRISPR反復配列内の自己相補性などの二次構造を考慮することができる。いくつかの実施形態では、最適にアライメントされたときの、tracr配列とCRISPR反復配列との間の、2つのうちの短い方の30ヌクレオチド長に沿った相補性の程度は、約25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97.5%、99%、又はそれ以上である。いくつかの実施形態では、tracr配列が約5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上、25以上、30以上、40以上、50以上、又はそれ以上のヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、tracr配列及びCRISPR反復配列は、2つの間のハイブリダイゼーションが、ヘアピンなどの二次構造を有する転写物を生成するように、単一の転写物内に含まれる。いくつかの実施形態では、転写物又は転写ポリヌクレオチド配列が少なくとも2つ以上のヘアピンを有する。
【0205】
ガイドRNAのスペーサーは、標的DNA中の配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。言い換えれば、ガイドRNAのスペーサーは、ハイブリダイゼーション(例えば、塩基対合)を介して、配列特異的な様式で標的DNAと相互作用する。そのようなものとして、スペーサーのヌクレオチド配列は、変化することができ、ガイドRNA及び標的DNAが相互作用する標的DNA内の位置を決定する。ガイドRNAのDNA標的化セグメントは、標的DNA内のいずれかの所望の配列にハイブリダイズするように(例えば、遺伝子工学によって)改変することができる。
【0206】
いくつかの実施形態において、スペーサーは、10ヌクレオチド~30ヌクレオチドの長さを有する。いくつかの実施形態において、スペーサーは、13ヌクレオチド~25ヌクレオチドの長さを有する。いくつかの実施形態において、スペーサーは、15ヌクレオチド~23ヌクレオチドの長さを有する。いくつかの実施形態において、スペーサーは18ヌクレオチド~22ヌクレオチド、例えば、20~22ヌクレオチドの長さを有する。
【0207】
いくつかの実施形態では、スペーサーのDNA標的化配列と標的DNAのプロトスペーサーとの間の相補性パーセントは、20~22ヌクレオチドに対して、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%)である。
【0208】
いくつかの態様において、プロトスペーサーは、その3’末端上の好適なPAM配列に直接隣接するか、又はそのようなPAM配列は、その3’部分におけるDNA標的化配列の一部である。
【0209】
ガイドRNAの改変は、ガイドRNA及びCasエンドヌクレアーゼ、例えばB-GEn.1又はB-GEn.2を含むCRISPR-Casゲノム編集複合体の形成又は安定性を増強するために使用することができる。ガイドRNAの改変はまた、又は代わりに、ゲノム中の標的配列とのゲノム編集複合体間の相互作用の開始、安定性又は動態を増強するために使用することができ、これは、例えば、オンターゲット活性を増強するために使用することができる。ガイドRNAの改変はまた、又は代わりに、特異性、例えば、他の(オフターゲット)部位での効果と比較した、オンターゲット部位でのゲノム編集の相対速度を増強するために使用することができる。
【0210】
改変はまた、又は代わりに、例えば、細胞中に存在するリボヌクレアーゼ(RNase)による分解に対するその耐性を増加させ、それによって細胞中のその半減期を増加させることによって、ガイドRNAの安定性を増加させるために使用され得る。ガイドRNA半減期を増強する改変は、B-GEn.1又はB-GEn.2などのCasエンドヌクレアーゼが、B-GEn.1又はB-GEn.2エンドヌクレアーゼを生成するために翻訳される必要があるRNAを介して編集される細胞に導入される実施形態において特に有用であり得、それはエンドヌクレアーゼをコードするRNAと同時に導入されるガイドRNAの半減期を増加させることが、ガイドRNA及びコードされるCasエンドヌクレアーゼが細胞中に共存する時間を増加させるために使用され得るからである。
【0211】
ドナーDNA又はドナー鋳型
【0212】
DNAエンドヌクレアーゼなどの部位特異的ポリペプチドは、核酸、例えばゲノムDNAに二本鎖切断又は一本鎖切断を導入することができる。二本鎖切断は、細胞の内因性DNA修復経路(例えば、相同組換え修復(HDR)又は非相同末端結合若しくは代替的な非相同末端結合(A-NHEJ)又は微小相同性媒介末端結合(MMEJ))を刺激することができる。NHEJは、相同鋳型を必要とせずに、切断された標的核酸を修復することができる。これは、時には切断部位における標的核酸における小さな欠失又は挿入(インデル)をもたらし得、遺伝子発現の破壊又は変化をもたらし得る。相同組換え(HR)としても知られているHDRは、相同修復鋳型又はドナーが利用可能である場合に起こり得る。
【0213】
相同ドナー鋳型は、標的核酸切断部位に隣接する配列に相同な配列を有する。姉妹染色分体は一般に、修復鋳型として細胞によって使用される。しかし、ゲノム編集の目的のために、修復鋳型は、プラスミド、二本鎖オリゴヌクレオチド、一本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖オリゴヌクレオチド、又はウイルス核酸などの外因性核酸として供給されることが多い。外因性ドナー鋳型では、追加の又は改変された核酸配列も標的遺伝子座に組み込まれるように、相同性の隣接領域間に追加の核酸配列(例えば、導入遺伝子)又は改変(例えば、単一又は複数の塩基の変更又は欠失)を導入することが一般的である。MMEJは、小さな欠失及び挿入が切断部位で起こり得るという点で、NHEJと同様の遺伝的結果をもたらす。MMEJは、切断部位に隣接する数塩基対の相同配列を利用して、好ましい末端結合DNA修復結果を駆動する。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ標的領域における潜在的な微小相同性の分析に基づいて、可能性のある修復結果を予測することが可能であり得る。
【0214】
したがって、場合によっては、相同組換えを用いて、外因性ポリヌクレオチド配列を標的核酸切断部位に挿入する。外因性ポリヌクレオチド配列は、本明細書においてドナーポリヌクレオチド(又はドナー若しくはドナー配列又はポリヌクレオチドドナー鋳型)と称される。いくつかの実施形態では、ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、又はドナーポリヌクレオチドのコピーの一部が標的核酸切断部位に挿入される。いくつかの実施形態では、ドナーポリヌクレオチドが外因性ポリヌクレオチド配列、すなわち、標的核酸切断部位に天然に存在しない配列である。
【0215】
外因性DNA分子が、二本鎖切断が起こる細胞の核内に十分な濃度で供給される場合、外因性DNAは、NHEJ修復プロセス中に二本鎖切断で挿入され得、したがって、ゲノムへの永続的な付加となり得る。これらの外因性DNA分子は、いくつかの実施形態ではドナー鋳型と呼ばれる。ドナー鋳型が本明細書に記載される1つ又は複数の系構成要素のコード配列を、場合により、プロモーター、エンハンサー、ポリA配列及び/又はスプライスアクセプター配列などの関連する調節配列と一緒に含む場合、1つ又は複数の系構成要素は、ゲノム中の組み込まれた核酸から発現され得、細胞の寿命の間、永続的な発現をもたらす。さらに、ドナーDNA鋳型の組み込まれた核酸は、細胞が分裂するときに娘細胞に伝達され得る。
【0216】
二本鎖切断のいずれかの側のDNA配列と相同性を有する隣接DNA配列を含むドナーDNA鋳型(相同性アームと呼ばれる)の十分な濃度の存在下で、ドナーDNA鋳型は、HDR経路を介して組み込むことができる。相同性アームは、ドナー鋳型と二本鎖切断のいずれかの側の配列との間の相同組換えのための基質として作用する。これは、二本鎖切断のいずれかの側の配列が非改変ゲノム中の配列から変更されない、ドナー鋳型の誤りのない挿入をもたらし得る。
【0217】
HDRによる編集のための供給されたドナーは著しく変化するが、一般に、ゲノムDNAへのアニーリングを可能にするために、小さな又は大きな隣接相同アームを有する意図された配列を含む。導入された遺伝的変化に隣接する相同性領域は、30bp以下、又はプロモーター、cDNAなどを含有し得るマルチキロ塩基カセット程度の大きさであり得る。一本鎖及び二本鎖オリゴヌクレオチドドナーの両方を使用することができる。これらのオリゴヌクレオチドはサイズが100nt未満から多くのkbを超える範囲であるが、より長いssDNAを生成し、使用することもできる。PCRアンプリコン、プラスミド、及びミニサークルを含む二本鎖ドナーがしばしば使用される。一般に、AAVベクターはドナーテンプレートの送達の非常に有効な手段であるが見出されているが、個々のドナーのパッケージング限界は<5kbである。ドナーの活性転写は、HDRを3倍増加させ、プロモーターの包含が変換を増加させ得ることを示す。逆に、ドナーのCpGメチル化は、遺伝子発現及びHDRを減少させることができる。
【0218】
いくつかの実施形態では、ドナーDNAが、ヌクレアーゼと共に、又は独立して、様々な異なる方法、例えばトランスフェクション、ナノ粒子、マイクロインジェクション、若しくはウイルス形質導入などによって供給され得る。いくつかの実施形態では、HDRのためのドナーの利用可能性を増加させるために、ある範囲のテザリングオプションを使用することができる。例としては、ドナーをヌクレアーゼに結合させること、近くに結合するDNA結合タンパク質に結合させること、又はDNA末端結合若しくは修復に関与するタンパク質に結合させることが挙げられる。
【0219】
NHEJ又はHDRによるゲノム編集に加えて、NHEJ経路及びHRの両方を使用する部位特異的遺伝子挿入を行うことができる。組合せアプローチは、おそらくイントロン/エクソン境界を含む、特定の状況において適用可能であり得る。NHEJは、イントロンにおけるライゲーションに有効であることを証明することができ、一方、エラーのないHDRは、コード領域により適していることができる。
【0220】
ベクター
【0221】
別の態様では、本開示の実施形態を実施するために必要な、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント、gRNA、及び/又はいずれかの核酸又はタンパク質性分子をコードするコドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、そのような核酸は、ベクター(例えば、組換え発現ベクター)である。
【0222】
企図される発現ベクターとしては、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、並びにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳房腫瘍ウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)に基づくウイルスベクター、及び他の組換えベクターが挙げられるが、これらに限定されない。真核生物標的細胞のために企図される他のベクターとしては、ベクターpXT1、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVLSV40(Pharmacia)が挙げられるが、これらに限定されない。真核生物標的細胞のために企図されるさらなるベクターとしては、ベクターpCTx-1、pCTx-2、及びpCTx-3が挙げられるが、これらに限定されない。他のベクターは、それらが宿主細胞と適合性である限り、使用され得る。
【0223】
いくつかの実施形態において、ベクターは、1つ又は複数の転写及び/又は翻訳制御エレメントを有する。利用される宿主/ベクター系に応じて、構成的及び誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含む、多くの好適な転写及び翻訳制御エレメントのいずれかが、発現ベクターにおいて使用され得る。いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルス配列又はCRISPR機構の構成要素又は他のエレメントを不活性化する自己不活性化ベクターである。
【0224】
好適な真核生物プロモーター(すなわち、真核細胞において機能するプロモーター)の非限定的な例としては、サイトメガロウイルス(CMV)前初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウイルス由来の長末端反復(LTR)、ヒト伸長因子-1プロモーター(EF1)、ニワトリ-β-アクチンプロモーター(CAG)に融合したサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーを有するハイブリッド構築物、マウス幹細胞ウイルスプロモーター(MSCV)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1遺伝子座プロモーター(PGK)、及びマウスメタロチオネイン-Iからのものが挙げられる。
【0225】
Casエンドヌクレアーゼに関連して使用されるガイドRNAを含む低分子RNAを発現させるために、例えばU6及びH1を含むRNAポリメラーゼIIIプロモーターなどの様々なプロモーターが有利であり得る。そのようなプロモーターの記載及びその使用を増強するためのパラメーターは,当技術分野で公知であり、さらなる情報及びアプローチha,定期的に記載されている;例えば、Ma,Het.ら、Molecular Therapy-Nucleic Acids 3、e161(2014)doi:10.1038/mtna.2014.12を参照されたい。
【0226】
発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合部位及び転写ターミネーターを含むことができる。発現ベクターはまた、発現を増幅するための適切な配列を含むことができる。発現ベクターはまた、部位特異的ポリペプチドに融合され、したがって融合タンパク質をもたらす非天然タグ(例えば、ヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ、緑色蛍光タンパク質など)をコードするヌクレオチド配列を含むことができる。
【0227】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節プロモーター、ステロイド調節プロモーター、金属調節プロモーター、エストロゲン受容体調節プロモーターなど)である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、構成的プロモーター(例えば、CMVプロモーター、UBCプロモーター)である。いくつかの実施形態では、プロモーターは、空間的に限定された及び/又は時間的に限定されたプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーターなど)である。いくつかの実施形態において、ベクターは、ゲノムに挿入された後、ゲノム中に存在する内因性プロモーターの下で、遺伝子が発現される場合、宿主細胞中で発現される少なくとも1つの遺伝子のためのプロモーターを有さない。
【0228】
核酸及びポリペプチドの改変
【0229】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは例えば、本明細書にさらに記載され、当技術分野において公知であるように、活性、安定性又は特異性を増強するため、送達を変更するため、宿主細胞における先天性免疫応答を低減するため、タンパク質サイズをさらに低減するため、又は他の増強のために使用され得る1つ又は複数の改変を含む。いくつかの実施形態において、そのような改変は、配列番号:2の配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドをもたらす。
【0230】
コドン最適化
【0231】
特定の実施形態において、改変ポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるCRISPR-B-GEn.1又はB-GEn.2系において使用され、ここで、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするポリヌクレオチド配列を含むDNA又はRNAは、以下に記載及び例示されるように改変され得る。そのような改変ポリヌクレオチドは、いずれかの1つ又は複数のゲノム遺伝子座を編集するために、CRISPR-B-GEn.1又はB-GEn.2系において使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドにおけるそのような改変が、コドン最適化、例えば、コードされたポリペプチドが発現される特定の宿主細胞に基づくコドン最適化、を介して達成される。本開示のいずれかのヌクレオチド配列及び/又は組換え核酸は、目的のいずれかの種における発現のためにコドン最適化され得ることが、当業者によって理解される。コドン最適化は、当技術分野において周知であり、種特異的コドン使用頻度表を用いたコドン使用頻度バイアスのためのヌクレオチド配列の改変を伴う。コドン使用頻度表は、目的の種について最も高度に発現された遺伝子の配列分析に基づいて作成される。非限定的な例では、ヌクレオチド配列が核内で発現される場合、コドン使用頻度表は、目的の種についての高度に発現された核遺伝子の配列分析に基づいて作成される。ヌクレオチド配列の改変は、種特異的コドン使用頻度表を天然ポリヌクレオチド配列中に存在するコドンと比較することによって決定される。
【0232】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、コドン最適化ポリヌクレオチド配列から発現される。例えば、意図される標的細胞がヒト細胞である場合、B-GEn.1又はB-GEn.2(又はB-GEn.1又はB-GEn.2バリアント、例えば酵素的に不活性なバリアント)をコードするヒトコドン最適化ポリヌクレオチド配列が好適であろう。別の非限定的な例として、意図される宿主細胞がマウス細胞である場合、B-GEn.1又はB-GEn.2(又はB-GEn.1又はB-GEn.2バリアント、例えば酵素的に不活性なバリアント)をコードするマウスコドン最適化ポリヌクレオチド配列が好適であろう。
【0233】
コドン最適化のための戦略及び方法論は当技術分野で公知であり、酵母(Outchkourovら、Protein Expr Purif、24(1):18-24(2002))及び大腸菌(Fengら、Biochemistry、39(50):15399-15409(2000))を含むがこれらに限定されない様々な系について記載されている。いくつかの実施形態では、コドン最適化は、GeneGPS(登録商標)Expression Optimization Technology(ATUM)を使用し、製造業者が推奨の発現最適化アルゴリズムを使用することによって実施された。いくつかの実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、ヒト細胞における発現の増加のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、大腸菌細胞における発現の増加のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、昆虫細胞における発現の増加のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、Sf9昆虫細胞における発現の増加のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態では、コドン最適化手順で使用される発現最適化アルゴリズムは、推定ポリAシグナル(例えば、AATAAA及びATTAAA)、並びにポリメラーゼスリップをもたらし得るAの長い(4つを超える)ストレッチを回避するように定義される。
【0234】
当技術分野において十分に理解されるように、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、天然ヌクレオチド配列に対して100%未満の同一性(例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%未満)を有するが、元の天然ヌクレオチド配列によってコードされるものと同じ機能を有するポリペプチドを依然としてコードしているヌクレオチド配列をもたらす。したがって、本開示の代表的な実施形態では、本開示のヌクレオチド配列及び/又は組換え核酸は、目的の特定の種における発現のためにコドン最適化され得る。
【0235】
いくつかの実施形態において、コドン最適化ポリヌクレオチド配列は、配列番号1に対して少なくとも90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.8%、99.9%、又は100%の配列同一性を有する。いくつかの態様において、本開示のポリヌクレオチドは、標的細胞におけるコードされたB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドの発現の増加のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、ヒト細胞における発現の増加のためにコドン最適化される。一般に、本開示のポリヌクレオチドは、いずれかのヒト細胞における発現の増加のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、大腸菌細胞における発現の増加のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、昆虫細胞における発現の増加のためにコドン最適化される。一般に、本開示のポリヌクレオチドは、いずれかの昆虫細胞における発現の増加のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、Sf9昆虫細胞発現系における発現の増加のためにコドン最適化される。
【0236】
ポリアデニル化シグナルはまた、意図される宿主における発現を最適化するように選択され得る。
【0237】
その他の改変
【0238】
改変はまた、又は代わりに、細胞に導入されたRNAが先天性免疫応答を誘発する可能性又は程度を低下させるために使用され得る。低分子干渉RNA(siRNA)を含む、RNA干渉(RNAi)に関連して十分に特徴付けられているこのような応答は、以下に及び当技術分野において記載されるように、RNAの半減期の減少及び/又は免疫応答に関連するサイトカイン若しくは他の因子の誘発に関連する傾向がある。
【0239】
1つ又は複数のタイプの改変も、細胞に導入されるB-GEn.1又はB-GEn.2などのエンドヌクレアーゼをコードするRNAに行うこともでき、それは、限定するものではないが、RNAの安定性を増強する改変(例えば、細胞中に存在するRNaseによるその分解を減少させることによる)、得られる産物の翻訳を増強する改変(例えば、エンドヌクレアーゼ)、及び/又は細胞に導入されるRNAが先天性免疫応答を誘発する可能性又は程度を減少させる改変を含む。前述及び他のものなどの改変の組み合わせも同様に使用することができる。CRISPR-B-GEn.1又はB-GEn.2の場合、例えば、ガイドRNA(上記で例示したものを含む)に1つ又は複数のタイプの改変を行うことができ、及び/又はB-GEn.1又はB-GEn.2エンドヌクレアーゼ(上記で例示したものを含む)をコードするRNAに1つ又は複数のタイプの改変を行うことができる。
【0240】
例として、CRISPR-B-GEn.1又はB-GEn.2系又は他のより小さなRNAにおいて使用されるガイドRNAは、化学的手段によって容易に合成することができ、以下に例示され、当技術分野において記載されるように、多数の改変を容易に組み込むことを可能にする。化学合成手順が絶えず拡大している一方で、高速液体クロマトグラフィー(PAGEなどのゲルの使用を回避するHPLC)などの手順によるそのようなRNAの精製は、ポリヌクレオチド長が100ヌクレオチド程度を超えて著しく増加することにつれて、より困難になる傾向がある。より長い長さの化学的に改変されたRNAを生成するために使用される1つのアプローチは、一緒にライゲーションされる2つ以上の分子を生成することである。B-GEn.1又はB-GEn.2エンドヌクレアーゼをコードするものなどのはるかに長いRNAは、より容易に酵素的に生成される。より少ないタイプの改変は、酵素的に産生されたRNAにおいて使用するために一般的に利用可能であるが、以下及び当技術分野においてさらに記載されるように、例えば、安定性を増強し、先天性免疫応答の可能性若しくは程度を低減し、及び/又は他の属性を増強するために使用され得る改変が依然として存在し、新規のタイプの改変が定期的に開発されている。様々なタイプの改変、特に、より小さい化学的に合成されたRNAと共に頻繁に使用される改変の例として、改変は、糖の2’位で改変された1つ又は複数のヌクレオチド、いくつかの実施形態では2’-O-アルキル、2’-O-アルキル-O-アルキル又は2’-フルオロ改変ヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施形態では、RNA改変は、ピリミジンのリボース上の2’-フルオロ、2’-アミノ、及び2’O-メチル改変、塩基性残基、又はRNAの3’末端の逆方向塩基を含む。そのような改変は、オリゴヌクレオチドに日常的に組み込まれ、これらのオリゴヌクレオチドは、所与の標的に対する2’デオキシオリゴヌクレオチドよりも高いTm(例えば、より高い標的結合親和性)を有することが示されている。
【0241】
多くのヌクレオチド及びヌクレオシド改変は、それらが組み込まれるオリゴヌクレオチドを、天然オリゴヌクレオチドよりもヌクレアーゼ消化に対してより耐性にすることが示されており;これらの改変オリゴヌクレオチドは、未改変オリゴヌクレオチドよりも長時間無傷に生存する。改変オリゴヌクレオチドの具体例としては、改変骨格を含むもの、例えば、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、短鎖アルキル若しくはシクロアルキル糖間結合、又は短鎖ヘテロ原子若しくは複素環糖間結合が挙げられる。いくつかのオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチド、ヘテロ原子骨格、特にCH2-NH-O-CH2、CH、-N(CH3)-O-CH2(メチレン(メチルイミノ)又はMMI骨格として知られている)、CH2-O-N(CH3)-CH2、CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2及びO-N(CH3)-CH2-CH2骨格;アミド骨格[De Mesmaeker ら、Ace.Chem.Res.、28:366-374(1995)を参照];モルホリノ骨格構造(Summerton and Weller、米国特許第5,034,506号を参照);ペプチド核酸(PNA)骨格(ここで、オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格は、ポリアミド骨格で置き換えられ、核酸は、直接又は間接的にポリアミド骨格のアザ窒素原子に結合され、Nielsenら、Science 1991、254、1497を参照)を有するものである。リン含有結合としては、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル及び他のアルキルホスホネート(3’アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含む)、ホスフィネート、ホスホラミデート(3’アミノホスホロアミデート及びアミノアルキルホスホロアミデートを含む)、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、及び正常な3’-5’結合を有するボラノホスフェート、これらの2’-5’結合アナログ、並びにヌクレオシド単位の隣接する対が3’-5’と5’-3’又は2’-5’と5’-2’で結合している極性が反転したものが挙げられるが、これらに限定されない;米国特許第3,687,808号;4,469,863号;4,476,301号;5,023,243号;5,177,196号;5,188,897号;5,264,423号;5,276,019号;5,278,302号;5,286,717号;5,321,131号;5,399,676号;5,405,939号;5,453,496号;5,455,233号;5,466,677号;5,476,925号;5,519,126号;5,536,821号;5,541,306号;5,550,111号;5,563,253号;5,571,799号;5,587,361号;及び5,625,050号を参照。
【0242】
モルホリノベースのオリゴマー化合物は、Braasch and Corey,Biochemistry,41(14):4503-4510(2002);Genesis,Volume 30,Issue 3,(2001);Heasman,Dev.Biol.,243:209-214(2002);Naseviciusら、Nat.Genet.,26:216-220(2000);Lacenra etc.,Proc.Nat/.Acad.Sci.,97:9591-9596(2000);及び1991年7月23日に発行された米国特許第5,034,506号に記載されている。シクロヘキセニル核酸オリゴヌクレオチド模倣体は、Wangら、J.Am,Chem.Soc.,122:8595-8602(2000)に記載されている。
【0243】
その中にリン原子を含まない改変オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキル若しくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子及びアルキル若しくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、又は1つ若しくは複数の短鎖ヘテロ原子若しくは複素環式ヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらには、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される)を有するもの;シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド及びスルホン骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチレンアセチル及びチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;スルホネート及びスルホンアミド骨格;アミド骨格;並びに混合N、O、S及びCH2成分部分を有する他のものが含まれ;米国特許第5,034,506号;5,166,315号;5,185,444号;5,214,134号;5,216,141号;5,235,033号;5,264,562号;5,264,564号;5,405,938号;5,434,257号;5,466,677号;5,470,967号;5,489,677号;5,541,307号;5,561,225号;5,596,086号;5,602,240号;5,610,289号;5,602,240号;5,608,046号;5,610,289号;5,618,704号;5,623,070号;5,663,312号;5,633,360号;5,677,437号;及び5,677,439号を参照されたし;これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0244】
1つ又は複数の置換された糖部分も含めることができ、例えば、2’位に以下の:OH、SH、SCH3、F、OCN、OCH3、OCH3 O(CH2)n CH3、O(CH2)n NH2又はO(CH2)n CH3(ここでnは1~10);C1からC10低級アルキル、アルコキシアルコキシ、置換低級アルキル、アルカリル又はアラルキル;Cl;Br;CN;CF3;OCF3;O-、S-、又はN-アルキル;O-、S-、又はN-アルケニル:SOCH3;SO2CH3;ONO2;NO2;N3;NH2;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;レポーター基;インターカレーター;オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善するための基;オリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基又は類似の特性を有する他の置換基のうちの1つを含むことができる。いくつかの実施形態において、改変は、2’-メトキシエトキシ(2’-O-CH2CH2OCH3、2’-O-(2-メトキシエチル)としても知られている)(Martinet a/,Helv.Chim.Acta,1995,78,486)を含む。他の改変には、2’-メトキシ(2’-O-CH3)、2’-プロポキシ(2’-OCH2CH2CH3)及び2’-フルオロ(2’-F)が含まれる。同様の改変は、オリゴヌクレオチド上の他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位及び5’末端ヌクレオチドの5’位でもなされ得る。オリゴヌクレオチドはまた、ペントフラノシル基の代わりにシクロブチルなどの糖模倣体を有する可能性がある。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド単位の糖及びヌクレオシド間結合の両方、例えば、骨格が、新規な基で置き換えられる。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。1つのそのようなオリゴマー化合物、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖骨格はアミド含有骨格、例えば、アミノエチルグリシン骨格で置き換えられる。核酸塩基は、保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的又は間接的に結合する。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許には、米国特許第5,539,082;5,714,331;及び5,719,262号が含まれるが、これらに限定されない。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsenら、Science、254:1497-1500(1991)に見出すことができる。
【0245】
ガイドRNAはまた、追加的又は代替的に、核酸塩基(当技術分野では単に「塩基」と称されることが多い)改変又は置換を含むことができる。本明細書で使用される場合、「非改変」又は「天然」核酸塩基には、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)が含まれる。改変核酸塩基には、天然核酸ではまれにしか見つからない、又は一時的にしか見つからない核酸塩基、例えば、ヒポキサンチン、6-メチルアデニン、5-Meピリミジン、特に5-メチルシトシン(5-メチル-2’デオキシシトシンとも呼ばれ、当技術分野ではしばしば5-Me-Cと称される)、5-ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMC及びゲントビオシルHMC、並びに合成核酸塩基、例えば、2-アミノアデニン、2-(メチルアミノ)アデニン、2-(イミダゾリルアルキル)アデニン、2-(アミノアルキルアミノ)アデニン又は他のヘテロ置換アルキルアデニン、2-チオウラシル、2-チオチミン、5-ブロモウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、8-アザグアニン、7-デアザグアニン、N6(6-アミノヘキシル)アデニン及び2,6-ジアミノプリンである。Kornberg,A、DNA Replication,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,pp75-77(1980);Gebeyehuら、Nucl.Acids Res.15:4513(1997)。当技術分野で公知の「ユニバーサル」塩基、例えばイノシンも含めることができる。5-Me-C置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6~1.2℃増加させることが示されており(Sanghvi,Y.S.,in Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds.,Antisense Research and Applications、CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276-278)、塩基置換の実施形態である。
【0246】
改変核酸塩基には、他の合成及び天然核酸塩基、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオ、8-チオアルキル、8-ヒドロキシ及び他の置換アデニン及びグアニン、5-ハロ特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルクアニン(7-methylquanine)、7-メチルアデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザアデニン及び3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンなどが含まれる。
【0247】
他の有用な核酸塩基には、米国特許第3,687,808号に開示されているもの、「The Concise Encyclopedia of Polymer Science And Engineering」、858~859頁、Kroschwitz、J.l.編、John Wiley & Sons、1990に開示されているもの、Englischら、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30、613頁に開示されているもの、及びSanghvi,Y.S.、Chapter 15、Antisense Research and Applications、289-302頁、Crooke.T.and Lebleu,B.ea.,CRC Press,1993に開示されているものが含まれる。これらの核酸塩基のいくつかは、本開示のオリゴマー化合物の結合親和性を増加させるために特に有用である。これらには、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン並びにN-2、N-6及び-O-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシンを含む)が含まれる。5-メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を0.6-1.2oc増加させることが示されており(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276-278)及び、さらにより詳細には2’-O-メトキシエチル糖改変と組み合わせた場合に、塩基置換の実施形態である。改変された核酸塩基は、米国特許第3,687,808号;5,130,302号;5,134,066号;5,175,273号;5,176号;5,175,266号;5,432,272号;5,457,187号;5,459,255号;5,484,908号;5,502,177号;5,525,711号;5,552,540号に記載されている。
【0248】
所与のオリゴヌクレオチド中の全ての位置が均一に改変される必要はなく、実際には、上述の改変の2つ以上が単一のオリゴヌクレオチドに、又はオリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシド内に組み込まれてもよい。
【0249】
いくつかの実施形態において、ガイドRNA及び/又は本開示のB-GEn.1又はB-GEn.2などのエンドヌクレアーゼをコードするmRNAは、mCAP、ARCA又は酵素キャッピング法などの現在のキャッピング法のいずれか1つを使用してキャッピングされ、生物学的に活性を維持し、自己/非自己細胞内応答を回避する生存可能なmRNA構築物を作製する。いくつかの実施形態において、ガイドRNA及び/又は本開示のB-GEn.1又はB-GEn.2などのエンドヌクレアーゼをコードするmRNAは、CleanCap(商標)(TriLink)共転写キャッピング法を使用することによってキャッピングされる。
【0250】
いくつかの実施形態において、ガイドRNA及び/又は本発明のエンドヌクレアーゼをコードするmRNAは、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、及び5-メトキシウリジンからなる群より選択される1つ又は複数の改変を含む。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞(例えば、ヒト及びマウス)などの動物細胞におけるRNA安定性及び/又は蛋白質発現の増強及び免疫原性の低下を提供するために、1つ又は複数のN1-メチルシュードウリジンが、ガイドRNA及び/又は本開示のエンドヌクレアーゼをコードするmRNAに組み込まれる。いくつかの実施形態において、N1-メチルシュードウリジン改変は、1つ又は複数の5-メチルシチジンと組み合わせて組み込まれる。
【0251】
いくつかの実施形態において、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1又はB-GEn.2などのエンドヌクレアーゼをコードするmRNA(又はDNA)は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、又は細胞取り込みを増強する1つ又は複数の部分又はコンジュゲートに化学的に連結される。そのような部分は、コレステロール部分[Letsingerら、Proc.Nat/.Acad.Sci.USA,86:6553-6556(1989)];コール酸[Manoharanら、Bioorg.Med.Chem.Let.,4:1053-1060(1994)];チオエーテル、例えばヘキシル-S-トリチルチオール[Manoharan eta/,Ann.N.Y Acad.Sci.,660:306-309(1992)及びManoharanら、Bioorg.Med.Chem.Let.,3.2765-2770(1993)];チオコレステロール[Oberhauserら、Nucl.Acids Res.,20:533-538 (1992)];脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール又はウンデシル残基[Kabanovら、FEBS Lett.,259:327-330(1990)及びSvinarchukら、Biochimie,75:49-54(1993)];リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロール又はトリエチルアンモニウム1、2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホナート[Manoharanら、Tetrahedron Lett.,36:3651-3654(1995)及びSheaら、Nucl.Acids Res.,18:3777-3783(1990)];ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖[Mancharan etc.,Nucleosides & Nucleotides,14:969-973(1995)];アダマンタン酢酸[Manoharanら、Tetrahedron Lett.,36:3651-3654(1995)];パルミチル部分[Mishra etc.,Biochim.Biophys.Acta,1264:229-237(1995)];又はオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ-カルボニル-t オキシコレステロール部分[Crookeら、J.Pharmacol.Exp.Ther.,277:923-937(1996)]を含むが、これらに限定されない。米国特許第4,828,979号;4,948,882号;5,218,105号;5,525,465号;5,541,313号;5,545,730号;5,552,538号;5,578,717号、5,580,731号;5,580,731号;5,591,584号;5,109,124号;5,118,802号;5,138,045号;5,414,077号;5,486,603号;5,512,439号;5,578,718号;5,608,046号;4,587,044号;4,605,735号;4,667,025号;4,762,779号;4,789,737号;4,824,941号;4,835,263号;4,876,335号;4,904,582号;4,958,013号;5,082,830号;5,112,963号;5,214,136号;5,082,830号;5,112,963号;5,214,136号;5,245,022号;5,254,469号;5,258,506号;5,262,536号;5,272,250号;5,292,873号;5,317,098号;5,371,241、5,391,723号;5,416,203、5,451,463号;5,510,475号;5,512,667号;5,514,785号;5,565,552号;5,567,810号;5,574,142号;5,585,481号;5,587,371号;5,595,726号;5,597,696号;5,599,923号;5,599,928号及び5,688,941号を参照されたい。
【0252】
糖及び他の部分を使用して、カチオン性ポリソーム及びリポソームなどの、ヌクレオチドを含むタンパク質及び複合体を特定の部位に標的化することができる。例えば、肝細胞指向性移入はアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)を介して媒介され得る;例えば、Huら、Protein Pept Lett.21(1 0):1025-30(2014)を参照されたい。当技術分野で公知であり、かつ定期的に開発された他の系を使用して、本ケースで使用される生体分子及び/又はその複合体を、目的の特定の標的細胞に標的化することができる。
【0253】
これらのターゲティング部分又はコンジュゲートは、第一級又は第二級ヒドロキシル基などの官能基に共有結合したコンジュゲート基を含むことができる。好適なコンジュゲート基としては、インターカレーター、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を増強する基、及びオリゴマーの薬物動態学的特性を増強する基が挙げられる。典型的なコンジュゲート基としては、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸塩、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、及び色素が挙げられる。薬力学的特性を増強することができる基は取り込みを改善し、分解に対する耐性を増強し、及び/又は標的核酸との配列特異的ハイブリダイゼーションを増強する基を含む。薬物動態学的特性を増強することができる基には、本開示の化合物の取り込み、分布、代謝又は排泄を改善する基が含まれる。代表的なコンジュゲート基は、1992年10月23日に出願された国際特許出願第PCT/US92/09196号及び米国特許第6,287,860号に開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。コンジュゲート部分には、脂質部分、例えばコレステロール部分、コール酸、チオエーテル、例えばヘキシル-5-トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えばドデカンジオール又はウンデシル残基、リン脂質、例えばジ-ヘキサデシル-rac-グリセロール又はトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-Hホスホネート、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖、又はアダマンタン酢酸、パルミチル部分、又はオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分が含まれるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第4,828,979号;4,948,882号;5,218,105号;5,525,465号;5,541,313号;5,545,730号;5,552,538号;5,578,717号、5,580,731号;5,580,731号;5,591,584号;5,109,124号;5,118,802号;5,138,045号;5,414,077号;5,486,603号;5,512,439号;5,578,718号;5,608,046号;4,587,044号;4,605,735号;4,667,025号;4,762,779号;4,789,737号;4,824,941号;4,835,263号;4,876,335号;4,904,582号;4,958,013号;5,082,830号;5,112,963号;5,214,136号;5,082,830号;5,112,963号;5,214,136号;5,245,022号;5,254,469号;5,258,506号;5,262,536号;5,272,250号;5,292,873号;5,317,098号;5,371,241号、5,391,723号;5,416,203号、5,451,463号;5,510,475号;5,512,667号;5,514,785号;5,565,552号;5,567,810号;5,574,142号;5,585,481号;5,587,371号;5,595,726号;5,597,696号;5,599,923号;5,599,928号及び5,688,941号を参照のこと。
【0254】
化学合成の影響を受けにくく、一般に酵素合成によって生成されるより長いポリヌクレオチドも、様々な手段によって改変することができる。そのような改変には、例えば、特定のヌクレオチド類似体の導入、分子の5’又は3’末端における特定の配列又は他の部分の組み込み、及び他の改変が含まれ得る。例として、B-GEn.1又はB-GEn.2をコードするmRNAは、約4kbの長さであり、イン・ビトロ(in vitro)転写によって合成することができる。mRNAに対する改変は例えば、その翻訳又は安定性を増加させる(例えば、細胞による分解に対するその耐性を増加させることによって)、又は外因性RNA、特にB-GEn.1又はB-GEn.2をコードするものなどのより長いRNAの導入後に細胞においてしばしば観察される先天性免疫応答を誘発するRNAの傾向を減少させるために適用することができる。
【0255】
多数のそのような改変が当技術分野で記載されており、例えば、ポリA尾部、5’キャップアナログ(例えば、アンチリバースキャップアナログ(ARCA)若しくはm7G(5’)ppp(5’)G(mCAP))、改変された5’若しくは3’非翻訳領域(UTR)、改変された塩基(例えば、シュード-UTP、2-チオ-UTP、5-メチルシチジン-5’-トリホスフェート(5-メチル-CTP)若しくはN6-メチル-ATP)の使用、又は5’末端ホスフェートを除去するためのホスファターゼによる処理である。これら及び他の改変は当技術分野において公知であり、RNAの新しい改変は、定期的に開発されている。
【0256】
例えば、TriLink Biotech、Axolabs、Bio-Synthesis Inc.,Dharmacon及び多くの他のものを含む、改変RNAの多数の商業的供給者が存在する。TriLinkによって記載されるように、例えば、5-メチル-CTPを使用して、ヌクレアーゼ安定性の増加、翻訳の増加、又は先天性免疫受容体とイン・ビトロ(in vitro)転写RNAとの相互作用の減少などの望ましい特徴を付与することができる。5’-メチルシチジン-5’-トリホスフェート(5-メチル-CTP)、N6-メチル-ATP、並びにシュード-UTP及び2-チオ-UTPはまた、以下に言及されるKonmannら及びWarrenらによる刊行物に示されるように、培養物及びイン・ビボ(in vivo)における先天性免疫刺激を低減する一方で、翻訳を増強することが示されている。
【0257】
イン・ビボ(in vivo)で送達される化学的に改変されたmRNAが、改善された治療効果を達成するために使用することができることが示されている;例えば、Kormannら、Nature Biotechnology 29、154-157(2011)を参照されたい。そのような改変は例えば、RNA分子の安定性を増加させ、及び/又はその免疫原性を低下させるために使用することができる。シュード-U、N6-メチル-A、2-チオ-U及び5-メチル-Cなどの化学改変を用いて、ウリジン残基及びシチジン残基のわずか4分の1をそれぞれ2-チオ-U及び5-メチル-Cで置換することが、マウスにおけるmRNAのtoll様受容体(TLR)媒介性認識を著しく減少させることが見いだされた。したがって、先天性免疫系の活性化を低減することによって、これらの改変を使用して、イン・ビボ(in vivo)でのmRNAの安定性及び寿命を効果的に増大させることができる;例えば、Konmannら、前出を参照されたい。
【0258】
また、先天性抗ウイルス応答を迂回するように設計された改変を組み込んだ合成メッセンジャーRNAの反復投与は、分化したヒト細胞を多能性に再プログラムすることができることも示されている。例えば、Warrenら、Cell Stem Cell,7(5):618-30(2010)を参照されたい。一次リプログラミングタンパク質として作用するそのような改変mRNAは、複数のヒト細胞型をリプログラミングする効率的な手段であり得る。このような細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)と称され、5-メチル-CTP、シュード-UTP及び抗逆キャップアナログ(ARCA)を組み込んだ酵素的に合成されたRNAが、細胞の抗ウイルス応答を効果的に回避するために使用され得ることが見出された;例えば、Warrenら、前出を参照されたい。当技術分野において記載されるポリヌクレオチドの他の改変には、例えば、ポリA尾部の使用、5’キャップアナログ(例えば、m7G(5’)ppp(5’)G(mCAP))の付加、5’又は3’非翻訳領域(UTR)の改変、又は5’末端リン酸を除去するためのホスファターゼによる処理が含まれ、新しいアプローチが定期的に開発されている。
【0259】
低分子干渉RNA(siRNA)を含む、RNA干渉(RNAi)の改変に関連して、本明細書で使用するための改変RNAの生成に適用可能な多くの組成物及び技術が開発されている。siRNAは、mRNA干渉を介した遺伝子サイレンシングに対するそれらの効果が一般に一過性であり、反復投与を必要とし得るため、イン・ビボ(in vivo)で特定の課題を提示する。さらに、siRNAは、二本鎖RNA(dsRNA)であり、哺乳動物細胞は、ウイルス感染の副産物であることが多いdsRNAを検出及び中和するために進化した免疫応答を有する。このように、Toll様受容体(TLR3、TLR7及びTLR8など)が、そのような分子に応答してサイトカインの誘導を誘発することができるのと同様に、dsRNAに対する細胞応答を媒介することができる、PKR(dsRNA応答性キナーゼ)及び潜在的にレチノイン酸誘導性の遺伝子I(RIG-I)などの哺乳類の酵素が存在する;例えば、Angartら、Pharmaceuticals(Basel)6(4):440-468(2013);Kanastyら、Molecular Therapy 20(3):513-524(2012);Burnettら、Biotechnol J.6(9):1130-46(2011);Judge及びMaclachlan、Hum Gene Ther 19(2):111-24(2008)による概説;並びにそこで引用される参考文献を参照されたい。
【0260】
多種多様な改変が開発され、RNA安定性を増強し、先天性免疫応答を低減し、及び/又は本明細書に記載されるようなポリヌクレオチドのヒト細胞への導入に関連して有用であり得る他の利益を達成するために適用されている;例えば、Whitehead KAら、Annual reviews of Chemical and Biomolecular Engineering,2:77-96(2011);Gaglione and Messere,Mini Rev Med Chem, 10(7):578-95 (2010);Chernolovskayaら、Curr Opin Mol Ther.,12(2):158-67(2010);Deleaveyら、Curr Protoc Nucleic Acid Chem Chapter 16:Unit 16.3(2009);Behlke,Oligonucleotides 18(4):305-19 (2008):Fuciniら、Nucleic Acid Ther 22(3):205-210(2012);Bremsenら、Front Genet 3:154(2012)による概説を参照されたい。
【0261】
上記のように、改変RNAの多くの商業的供給者が存在し、その多くは、siRNAの有効性を改善するように設計された改変に特化している。文献に報告されている様々な知見に基づいて、様々なアプローチが提供されている。例えば、Dharmaconは、Kale、Nature Reviews Drug Discovery 11:125-140(2012)によって報告されているように、非架橋酸素を硫黄(ホスホロチオエート、PS)で置換することは、siRNAのヌクレアーゼ耐性を改善するために広く使用されていると述べている。リボースの2’位の改変は、ヌクレオチド間リン酸結合のヌクレアーゼ耐性を改善する一方で、二重鎖安定性(Tm)を増加させることが報告されており、これはまた、免疫活性化からの保護を提供することが示されている。Soutschekら、Nature 432:173-178 (2004)によって報告されているように、中程度のPS骨格改変と、小さな、忍容性の良好な2’-置換(2’-O-、2’-フルオロ、2’-ヒドロ)との組み合わせは、イン・ビボ(in vivo)での適用のための高度に安定なsiRNAと関連している;及び2’-O-メチル改変は、Volkov,Oligonucleotides 19:191-202(2009)によって報告されているように、安定性の改善に有効であることが報告されている。先天性免疫応答の誘導の減少に関して、2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-ヒドロを用いて特異的配列を改変することは、TLR7/TLR8相互作用を減少させる一方で、一般にサイレンシング活性を保存することが報告されている;例えば、Judgeら、Mol.Ther.13:494-505(2006);及びCekaiteら、J.Mol.Biol.365:90-108(2007)を参照されたい。2-チオウラシル、シュードウラシル、5-メチルシトシン、5-メチルウラシル、及びN6-メチルアデノシンなどのさらなる改変も、TLR3、TLR7、及びTLR8によって媒介される免疫効果を最小限にすることが示されている;例えば、Karikoら、Immunity 23:165-175(2005)を参照されたい。
【0262】
また、当技術分野において公知であり、市販されているように、多数のコンジュゲートを、例えばコレステロール、トコフェロール及び葉酸、脂質、ペプチド、ポリマー、リンカー及びアプタマーを含む、細胞によるそれらの送達及び/又は取り込みを増強することができる、本明細書において使用するためのRNAなどのポリヌクレオチドに適用することができる;例えば、Winkler,Ther.Deliv.4:791-809(2013)による総説及びその中で引用される参考文献を参照されたい。
【0263】
追加の配列
【0264】
いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、5’又は3’末端のいずれかに少なくとも1つの追加のセグメントを含む。例えば、好適な追加のセグメントは、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニレートキャップ(m7g));3’ポリアデニル化尾部(例えば、3’ポリ(A)尾部);リボスイッチ配列(例えば、タンパク質及びタンパク質複合体による調節された安定性及び/又は調節された接近性を可能にする);dsRNA二重鎖(例えば、ヘアピン)を形成する配列;RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化する配列;追跡を提供する改変又は配列(例えば、蛍光分子への直接コンジュゲーション、蛍光検出を容易にする部分への直接コンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列など);タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに作用するタンパク質)のための結合部位を提供する改変又は配列;増加した、減少した、及び/又は制御可能な安定性を提供する改変又は配列;並びにそれらの組み合わせを含む。
【0265】
安定性制御配列
【0266】
安定性制御配列は、RNA(例えば、ガイドRNA)の安定性に影響を及ぼす。好適な安定性制御配列の非限定的な例は、転写ターミネーターセグメント(例えば、転写終結配列)である。ガイドRNAの転写ターミネーターセグメントは、10ヌクレオチド~100ヌクレオチド、例えば、10ヌクレオチド(nt)~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、又は90nt~100ntの全長を有することができる。例えば、転写ターミネーターセグメントは、15ヌクレオチド(nt)~80nt、15nt~50nt、15nt~40nt、15nt~30nt又は15nt~25ntの長さを有することができる。
【0267】
いくつかの実施形態において、転写終結配列は、真核細胞において機能的である配列である。いくつかの実施形態において、転写終結配列は、原核細胞において機能的である配列である。
【0268】
安定性制御配列(例えば、転写終結セグメント、又は安定性の増加を提供するためのガイドRNAのいずれかのセグメント)に含まれ得るヌクレオチド配列としては、例えば、Rho非依存性trp終結部位が挙げられる。
【0269】
模倣体
【0270】
いくつかの実施形態において、核酸は、核酸模倣体であり得る。ポリヌクレオチドに適用される「模倣体」という用語は、フラノース環のみ、又はフラノース環及びヌクレオチド間結合の両方が非フラノース基で置き換えられているポリヌクレオチドを含むことが意図され、フラノース環のみの置き換えは、当技術分野において糖サロゲートであるとも呼ばれる。複素環式塩基部分又は改変複素環式塩基部分は、適切な標的核酸とのハイブリダイゼーションのために維持される。そのような核酸の1つで優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているポリヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNAにおいて、ポリヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置き換えられる。ヌクレオチドは保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的又は間接的に結合する。
【0271】
優れたハイブリダイゼーション特性を有することが報告されている1つのポリヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)である。PNA化合物中の骨格は、2つ以上の連結アミノエチルグリシン単位であり、これは、PNAにアミド含有骨格を与える。複素環式塩基部分は、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的又は間接的に結合している。PNA化合物の調製を記載する代表的な米国特許には、これらに限定されるものではないが、米国特許第5,539,082号;5,714,331号;及び5,719,262号が含まれる。
【0272】
研究されているポリヌクレオチド模倣体の別のクラスは、モルホリノ環に結合した複素環式塩基を有する連結モルホリノ単位(モルホリノ核酸)に基づく。モルホリノ核酸中のモルホリノモノマー単位を連結する多数の連結基が報告されている。連結基の1つのクラスは、非イオン性オリゴマー化合物を与えるように選択されている。非イオン性モルホリノ系オリゴマー化合物は、細胞タンパク質との望ましくない相互作用を有する可能性が低い。モルホリノベースのポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの非イオン性模倣体であり、細胞タンパク質と望ましくない相互作用を形成する可能性が低い(Dwaine A.Braasch and David R.Corey,Biochemistry,2002,41(14),45034510)。モルホリノベースのポリヌクレオチドは、米国特許第5,034,506号に開示されている。単量体サブユニットを連結する様々な異なる連結基を有する、ポリヌクレオチドのモルホリノクラス内の様々な化合物が調製されている。
【0273】
ポリヌクレオチド模倣体のさらなるクラスは、シクロヘキセニル核酸(GeNA)と称される。DNA/RNA分子中に通常存在するフラノース環は、シクロヘキセニル(cydohexenyl)環で置き換えられる。GeNA DMT保護ホスホラミダイトモノマーが調製され、古典的なホスホラミダイト化学に従ってオリゴマー化合物合成に使用された。GeNAで改変された特定の位置を有する完全に改変されたGeNAオリゴマー化合物及びオリゴヌクレオチドが調製され、研究されている(Wangら、J.Am.Chem.Soc.,2000、122、85958602を参照)。一般に、DNA鎖へのGeNAモノマーの組み込みは、DNA/RNAハイブリッドのその安定性を増加させる。GeNAオリゴアデニレートは、天然複合体と同様の安定性を有するRNA及びDNA複合体と複合体を形成した。天然核酸構造にGeNA構造を組み込む研究は、NMR及び円偏光二色性により、容易な立体配座適応を進めることが示された。
【0274】
さらなる改変は、2’-ヒドロキシル基が糖環の4’炭素原子に連結され、それによって2’-C,4’-C-オキシメチレン連結を形成し、それによって二環式糖部分を形成する、ロックド核酸(LNA)を含む。連結は、2’酸素原子及び4’炭素原子を架橋するメチレン(-CH2-)基であり得、ここで、nは、1又は2である(Singhら、Chem.Commun.,1998,4,455-456)。LNA及びLNAアナログは、相補的DNA及びRNAと非常に高い二重鎖熱安定性(Tm=+3~+10℃)、3’-エキソヌクレアーゼ分解に対する安定性及び良好な溶解特性を示す。LNAを含有する強力かつ非毒性のアンチセンスオリゴヌクレオチドが記載されている(Wahlestedtら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A、2000、97、5633-5638)。
【0275】
LNAモノマーであるアデニン、シトシン、グアニン、5-メチル-シトシン、チミン及びウラシルの合成及び調製は、それらのオリゴマー化及び核酸認識特性と共に記載されている(Koshkinら、Tetrahedron、1998、54、3607-3630)。LNA及びその調製は、WO98/39352及びWO99/14226にも記載されている。
【0276】
改変糖部分
【0277】
核酸はまた、1つ又は複数の置換された糖部分を含むことができる。好適なポリヌクレオチドとしては、OH;F;O-、S-、又はN-アルキル;O-、S-、又はN-アルケニル;O-、S-又はN-アルキニル;又はO-アルキル-O-アルキルから選択される糖置換基が挙げられ、ここで、アルキル、アルケニル及びアルキニルは、置換又は非置換のC1~C10アルキル又はC2~C10アルケニル及びアルキニルであり得る。特に好適なのは、O((CH2)nO)mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CHz)nNH2、O(CH2)CH3、O(CH2)nONH2、及びO(CH2)nON((CH2)nCH3)2であり、ここで、n及びmは、1~約10である。その他の好適なポリ核酸は、C1からC10低級アルキル、置換低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリル又はO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改良するための基、又はオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改良するための基、及び同様の性質を有する他の置換基から選択される糖置換基を含む。好適な改変には、2’-メトキシエトキシ2’-O-CH2-CH2OCH3、-2’-O-(2-メトキシエチル)又は2’-MOEとしても知られ(Martinら、Hely.Chim.Acta、1995、78、486-504)、例えばアルコキシアルコキシ基が含まれる。さらなる好適な改変は、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、例えば、本明細書の以下の実施例に記載されるようなO(CH2)2ON(CH3)2基(2’-DMAOE)、及び2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ(2’-O-ジメチル-アミノ-エトキシ-エチル又は2’-DMAEOEとしても当技術分野において公知である)、例えば、2’-O-CH2-O-CH2-N(CH3)2を含む。
【0278】
他の好適な糖置換基としては、メトキシ(-O-CH3)、アミノプロポキシ(-O-CH2CH2CH2NH2)、アリル(-CH2-CH=CH2)、-O-アリル(-O-CH2-CH=CH2)及びフルオロ(F)が挙げられる。2’-糖置換基は、アラビノ(up)位又はリボ(down)位にあり得る。好適な2’-アラビノ改変は、2’-Fである。同様の改変はまた、オリゴマー化合物上の他の位置、特に3’末端ヌクレオシド上又は2’-5’連結オリゴヌクレオチド中の糖の3’位及び5’末端ヌクレオチドの5’位に行うことができる。オリゴマー化合物はまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣体を有し得る。
【0279】
塩基の改変及び置換
【0280】
核酸はまた、核酸塩基(当技術分野において単に「塩基」と称されることが多い)改変又は置換を含み得る。本明細書で使用される場合、「非改変」又は「天然」核酸塩基には、プリン塩基アデニン(A)及びグアニン(G)、並びにピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)が含まれる。改変核酸塩基には、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニル(-C=CH3)ウラシル及びシトシン並びにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル及び他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニン及び3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンなどの他の合成及び天然核酸塩基が含まれる。さらなる改変核酸塩基としては、三環式ピリミジン、例えば、フェノキサジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾオキサジン-2(3H)-オン)、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾチアジン-2(3H)-オン)、G-クランプ、例えば、置換フェノキサジンシチジン(例えば、9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド(5,4-(b)(1,4)ベンゾオキサジン-2(3H)-オン)、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド(4,5-b)インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド(3’,2’:4,5)ピロール(2,3-d)ピリミジン-2-オン)が含まれる。
【0281】
複素環式塩基部分はまた、プリン又はピリミジン塩基が他の複素環、例えば、7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン及び2-ピリドンで置き換えられているものを含んでもよい。さらなる核酸塩基には、米国特許第3,687,808号に開示されているもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering、858-859頁、Kroschwitz、J.1.、編集、John Wiley & Sons、1990に開示されているもの、Englischら、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30、613によって開示されたもの、及びSanghvi、Y.S.、Chapter 15、Antisense Research and Applications、289-302頁、Crooke、S.T.and Lebleu、B.編集、CRC Press、1993によって開示されたものが含まれる。これらの核酸塩基のいくつかは、オリゴマー化合物の結合親和性を増加させるのに有用である。これらには、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン並びにN-2、N-6及びO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシンを含む)が含まれる。5-メチルシトシン置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6-1.2oc増加させることが示されており(Sanghviら、編集、Antisense Research and Applications、CRC Press、Boca Raton、1993、276-278頁)、例えば、2’-O-メトキシエチル糖改変と組み合わせた場合に、好適な塩基置換である。
【0282】
「相補的」とは、天然又は非天然(例えば、上記のように改変された)塩基(ヌクレオシド)又はその類似体を含む2つの配列間で、塩基スタッキング及び特異的水素結合を介して対合する能力を指す。例えば、核酸の1つの位置の塩基が標的の対応する位置の塩基と水素結合することができる場合、塩基は、その位置で互いに相補的であると考えられる。核酸は、ユニバーサル塩基、又は水素結合に正又は負の寄与を与えない不活性脱塩基スペーサーを含むことができる。塩基対合は、標準的なワトソン・クリック塩基対合及び非ワトソン・クリック塩基対合(例えば、ゆらぎ塩基対合及びフーグスティーン塩基対合)の両方を含み得る。
【0283】
相補的塩基対合に関して、アデノシン型塩基(A)は、チミジン型塩基(T)又はウラシル型塩基(U)に相補的であり、シトシン型塩基(C)は、グアノシン型塩基(G)に相補的であり、3-ニトロピロール又は5-ニトロインドールなどのユニバーサル塩基は、いずれかのA、C、U、又はTにハイブリダイズすることができ、それらに相補的であると考えられることが理解される。Nicholsら、Nature、1994;369:492-493及びLoakesら、Nucleic Acids Res、1994;22:4039-4043を参照されたい。イノシン(I)はまた、当技術分野において、ユニバーサル塩基であると考えられており、いずれかのA、C、U、又はTに相補的であると考えられている。Watkins and Santalucia、Nucl.Acids Research、2005;33(19):6258-6267を参照されたい。
【0284】
コンジュゲート
【0285】
核酸の別の可能な改変は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布又は細胞取り込みを増強する1つ又は複数の部分又はコンジュゲートをポリヌクレオチドに化学的に連結することを含む。これらの部分又はコンジュゲートは、第一級又は第二級ヒドロキシル基などの官能基に共有結合したコンジュゲート基を含むことができる。コンジュゲート基としては、インターカレーター、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を増強する基、及びオリゴマーの薬物動態学的特性を増強する基が挙げられるが、これらに限定されない。好適なコンジュゲート基としては、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸塩、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、及び染料が挙げられるが、これらに限定されない。薬力学的特性を増強する基は、取り込みを改善し、分解に対する耐性を増強し、及び/又は標的核酸との配列特異的ハイブリダイゼーションを増強する基を含む。薬物動態学的特性を増強する基には、核酸の取り込み、分布、代謝又は排泄を改善する基が含まれる。
【0286】
コンジュゲート部分は、コレステロール部分(Letsingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1989、86、6553-6556)、コール酸(Manoharanら、Bioorg.Med.Let.、1994、4、1053-1060)、チオエーテル、例えばヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharanら、Ann.N.Y.Acad.Sci.、1992、660、306-309;Manoharanら、Bioorg.Med.Chem.Let.、1993、3、2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauserら、Nucl.Acids Res.、1992、20、533-538)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison-Behmoarasら、EMBO J.、1991、10、1111-1118;Kabanovら、FEBS Lett.、1990、259、327-330;Svinarchukら、Biochimie、1993、75、49-54)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロール又はトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharanら、Tetrahedron Lett.、1995、36、3651-3654;Sheaら、Nucl.Acids Res.、1990、18、3777-3783)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharanら、Nucleosides & Nucleotides、1995、14、969-973)、又はアダマンタン酢酸(Manoharanら、Tetrahedron Lett.、1995、36、36513654)、パルミチル部分(Mishraら、Biochim.Biophys.Acta、1995、1264、229-237)、又はオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crookeら、J.Pharmacal.Exp.Ther.、1996、277、923-937)を含むが、これらに限定されない。
【0287】
コンジュゲートは、「タンパク質形質導入ドメイン」又はPTD(CPP細胞膜透過性ペプチドとしても知られる)を含み得、これは脂質二重層、ミセル、細胞膜、細胞小器官膜、又は小胞膜を通過することを促進するポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、又は有機若しくは無機化合物を指し得る。別の分子に結合したPTDは、小極性分子から大型巨大分子及び/又はナノ粒子に及ぶことができ、例えば細胞外空間から細胞内空間へ、又は細胞質ゾルから細胞小器官内へと分子が膜を通過することを促進する。いくつかの実施形態において、PTDは、外因性ポリペプチド(例えば、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント)のアミノ末端に共有結合される。いくつかの実施形態において、PTDは、外因性ポリペプチド(例えば、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント)のC末端又はN末端に共有結合される。いくつかの実施形態において、PTDは、核酸(例えば、ガイドRNA、ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするポリヌクレオチドなど)に共有結合される。例示的なPTDは、これに限定されるものではないが、最小のウンデカペプチドタンパク質形質導入ドメイン(YGRKKRRQRRRを含むHIV-1 TATの残基47-57に対応する;細胞に直接侵入するのに十分な数のアルギニンを含むポリアルギニン配列(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10又は10-50アルギニン);VP22ドメイン(Zenderら、(2002)Cancer Gene Ther.9(6):489-96);ショウジョウバエアンテナペディアタンパク質形質導入ドメイン(Noguchiら、(2003)Diabetes 52(7):1732-1737);短縮型(truncated)ヒトカルシトニンペプチド(Trehinら、(2004)Pharm.Research 21:1248-1256);ポリリシン(Wenderら、(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:13003-13008)である;いくつかの実施形態において、PTDは、活性化可能CPP(ACPP)である(Aguileraら、(2009)lntegr Biol(Camb)June;1(5-6):371-381)。ACPPは、切断可能なリンカーを介してマッチするポリアニオン(例えば、Glu9又は「E9」)に接続されたポリカチオン性CPP(例えば、Arg9又は「R9」)を含み、これは、正味の電荷をほぼゼロに減少させ、それによって、細胞への接着及び取り込みを阻害する。リンカーが切断されると、ポリアニオンが放出され、ポリアルギニン及びその固有の接着性を局所的にアンマスキングし、したがって、ACPPを、膜を横断するように「活性化」する。いくつかの実施形態では、PTDが、PTDのバイオアベイラビリティを増加させるために化学的に改変される。例示的な改変は、Expert Opin Drug Deliv.2009 Nov;6(11):1195-205を参照のこと。
【0288】
ポリペプチド改変
【0289】
コドン最適化ポリヌクレオチド配列から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、イン・ビトロ(in vitro)で、又は真核細胞によって、原核細胞によって、又はイン・ビトロ(in vitro)転写及び翻訳(IVTT)によって産生され得、それは、アンフォールディング、例えば、熱変性、OTT還元などによってさらに処理され得、当技術分野で公知の方法を使用してさらにリフォールディングされ得る。
【0290】
一次配列を変化させない目的の改変には、ポリペプチドの化学的誘導体化、例えばアシル化、アセチル化、カルボキシル化、アミド化などが含まれる。また、グリコシル化の改変、例えば、その合成及びプロセシングの間にポリペプチドのグリコシル化パターンを改変することによって、又はさらなるプロセシング工程において、例えば、哺乳動物のグリコシル化又は脱グリコシル化酵素などのグリコシル化に影響を及ぼす酵素にポリペプチドを曝露することによってなされる改変も含まれる。リン酸化されたアミノ酸残基、例えば、ホスホチロシン、ホスホセリン、又はホスホトレオニンを有する配列も包含される。
【0291】
いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、タンパク質分解に対するそれらの耐性を改善し、標的配列特異性を変化させ、溶解性特性を最適化し、タンパク質活性(例えば、転写調節活性、酵素活性など)を変化させ、又はそれらを治療剤としてより適切にするために、通常の分子生物学的技術及び合成化学を用いて改変されている。このようなポリペプチドのアナログには、天然に存在するL-アミノ酸以外の残基、例えばO-アミノ酸又は非天然の合成アミノ酸を含有するものが含まれる。D-アミノ酸は、アミノ酸残基の一部又は全部が置換されていてもよい。B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、当技術分野で公知の従来の方法を使用して、イン・ビトロ(in vitro)合成によって調製することができる。様々な市販の合成装置、例えば、Applied Biosystems、Inc.、Beckman等による自動合成装置が利用可能である。合成機を用いることにより、天然アミノ酸を非天然アミノ酸で置換することができる。特定の配列及び調製方法は、便宜性、経済性、必要とされる純度などによって決定され得る。
【0292】
必要に応じて、他の分子又は表面への連結を可能にする様々な基を、合成中又は発現中にペプチドに導入することができる。したがって、システインを、チオエーテル、金属イオン錯体に連結するためのヒスチジン、アミド又はエステルを形成するためのカルボキシル基、アミドを形成するためのアミノ基などを作製するために使用することができる。
【0293】
組換え細胞
【0294】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるコドン最適化B-GEn.1又はB-GEn.2系は、真核生物、例えば哺乳動物細胞、例えばヒト細胞において使用され得る。いずれかのヒト細胞は、本明細書に開示されるコドン最適化B-GEn.1又はB-GEn.2系との使用に適している。
【0295】
いくつかの実施形態では、細胞は、エクス・ビボ(ex vivo)又はイン・ビトロ(in vitro)で、(a)本明細書に記載のB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はバリアントをコードするコドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸、又は核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び(b)gRNA又はgRNAをコードする核酸であって、ここで、gRNAが、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列に誘導することができるgRNA又は核酸を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、コドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、gRNAを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、gRNAをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、シングルガイドRNA(sgRNA)である。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ又は複数のさらなるgRNA又は1つ又は複数のさらなるgRNAをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、ドナー鋳型をさらに含む。
【0296】
一態様では、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、本明細書に提供される核酸を動物細胞などの宿主細胞に導入するステップと、及び形質転換細胞を選択又はスクリーニングするステップとを含む、細胞を形質転換する方法に関する。用語「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」は、本明細書において互換的に使用される。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫又は潜在的子孫も指すことが理解される。特定の改変は、突然変異又は環境の影響のいずれかにより後世に起こり得るので、そのような子孫は、実際には親細胞と同一でなくてもよいが、本明細書で使用される用語の範囲内に依然として含まれる。多種多様な上記宿主細胞及び種を形質転換するための技術は、当技術分野において公知であり、技術文献及び科学文献に記載されている。したがって、本明細書に開示される少なくとも1つの組換え細胞を含む細胞培養物もまた、本出願の範囲内である。細胞培養物を生成及び維持するのに好適な方法及び系は、当技術分野で公知である。
【0297】
関連する態様において、いくつかの実施形態は、組換え宿主細胞、例えば、本明細書に記載の核酸を含む組換え動物細胞に関する。核酸は、宿主ゲノムに安定的に組み込まれ得るか、又はエピソームで複製され得るか、又は安定的若しくは一過性発現のためのミニサークル発現ベクターとして組換え宿主細胞中に存在し得る。したがって、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、核酸は、エピソーム単位として組換え宿主細胞中で維持され、複製される。いくつかの実施形態では、核酸は、組換え細胞のゲノムに安定に組み込まれる。いくつかの実施形態において、核酸は、安定又は一過性発現のためのミニサークル発現ベクターとして組換え宿主細胞中に存在する。
【0298】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、例えば、宿主細胞のゲノムの一部に相同な核酸配列を含む相同組換えのためのベクターであり得る、又は目的の遺伝子のいずれか又は組合せの発現のための発現ベクターであり得る、本出願のベクター構築物を用いて遺伝子操作され得る(例えば、形質導入又は形質転換又はトランスフェクトされ得る)。ベクターは例えば、プラスミド、ウイルス粒子、ファージなどの形態であり得る。いくつかの実施形態において、目的のポリペプチドの発現のためのベクターはまた、例えば、相同組換えによって、宿主への組み込みのために設計され得る。
【0299】
いくつかの実施形態では、本開示は、遺伝子改変宿主細胞、例えば、単離された遺伝子改変宿主細胞であって、遺伝子改変宿主細胞が、1)外因性ガイドRNA;2)ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸;3)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む外因性核酸;4)コドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸から発現される外因性B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;又は5)上記のいずれかの組み合わせを含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞は、例えば:1)外因性ガイドRNA;2)ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸;3)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む外因性核酸;4)コドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸から発現される外因性B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;又は5)上記のいずれかの組み合わせで宿主細胞を遺伝子改変することによって生成される。
【0300】
上記のような標的細胞であるのに好適な全ての細胞はまた、遺伝子改変宿主細胞であるのに好適である。例えば、目的の遺伝子改変宿主細胞は、いずれかの生物由来の細胞、例えば、細菌細胞、古細菌細胞、単細胞真核生物の細胞、植物細胞、藻類細胞(ボツリオコッカス・ブラウニ(Botryococcus braunii)、クラミドモナス・ラインハルティ(Chlamydomonas reinhardtii)、ナンノクロロプシス・ガディタナ(Nannochloropsis gaditana)、クロレラ・ピレノイドサ(Chlorela pyrenoidosa)、ヤツマタモク(Sargassum patens)(C.アガード(C.Agardh))など)、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、動物細胞、無脊椎動物由来の細胞(例えば、ショウジョウバエ、刺胞動物、棘皮動物、線虫など)、脊椎動物由来の細胞(例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物)、哺乳動物由来の細胞(例えば、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、げっ歯類、ラット、非ヒト霊長類、ヒトなど)である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、ヒト由来のいずれかの細胞であり得る。
【0301】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子改変宿主細胞は、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸で遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、本明細書に記載のB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸で遺伝子改変されている。遺伝子改変宿主細胞のDNAは、ガイドRNA(又は改変されるゲノム位置/配列を決定する、ガイドRNAをコードするDNA)及び任意のドナー核酸を細胞内に導入することによって、改変のために標的化され得る。いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列は、誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーターなど)に作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列は、空間的に限定された及び/又は時間的に限定されたプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーター、細胞周期特異的プロモーター)に作動可能に連結される。いくつかの態様において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列は、構成的プロモーターに作動可能に連結されている。
【0302】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、イン・ビトロ(in vitro)である。いくつかの実施形態において、遺伝子改変宿主細胞は、イン・ビボ(in vivo)である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、原核細胞であるか、又は原核細胞に由来する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、細菌細胞であるか、又は細菌細胞に由来する。いくつかの実施形態において、遺伝子改変宿主細胞は、古細菌細胞であるか、又は古細菌細胞に由来する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、真核細胞であるか、又は真核細胞に由来する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、植物の細胞であるか、又は植物の細胞に由来する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、動物の細胞であるか、又は動物の細胞に由来する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、無脊椎動物の細胞であるか、又は無脊椎動物の細胞に由来する。いくつかの実施形態において、遺伝子改変宿主細胞は、脊椎動物の細胞であるか、又は脊椎動物の細胞に由来する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、哺乳動物の細胞であるか、又は哺乳動物の細胞に由来する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、げっ歯類の細胞であるか、又はげっ歯類の細胞に由来する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、ヒト細胞であるか、又はヒト細胞に由来する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、ヒト細胞であるか、又はヒト細胞に由来する。
【0303】
本開示は遺伝子改変細胞の子孫をさらに提供し、子孫は、それが由来した遺伝子改変細胞と同じ外因性核酸又はポリペプチドを含み得る。本開示は、いくつかの実施形態において、遺伝子改変宿主細胞を含む組成物をさらに提供する。
【0304】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞が遺伝子改変幹細胞又は前駆細胞である。好適な宿主細胞としては、例えば、幹細胞(成体幹細胞、胚性幹細胞、iPS細胞など)及び前駆細胞(例えば、心臓前駆細胞、神経前駆細胞など)が挙げられる。他の好適な宿主細胞としては、哺乳動物の幹細胞及び前駆細胞、例えば、げっ歯類の幹細胞、げっ歯類の前駆細胞、ヒト幹細胞、ヒト前駆細胞などが挙げられる。他の好適な宿主細胞としては、イン・ビトロ(in vitro)宿主細胞、例えば、単離された宿主細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、外因性ガイドRNA核酸を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、コドン最適化ヌクレオチド配列から発現される外因性B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む。いくつかの実施形態において、遺伝子改変宿主細胞は、1)ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列、及び2)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む。
【0305】
非ヒト遺伝子改変生物
【0306】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む外因性核酸で遺伝子改変されている。そのような細胞が真核生物の単一細胞生物である場合、改変された細胞は、遺伝子改変生物とみなすことができる。いくつかの実施形態において、非ヒト遺伝子改変生物は、B-GEn.1又はB-GEn.2トランスジェニック多細胞生物である。
【0307】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変非ヒト宿主細胞(例えば、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む外因性核酸で遺伝子改変された細胞)は、遺伝子改変非ヒト生物(例えば、マウス、魚、カエル、ハエ、線虫など)を生成することができる。例えば、遺伝子改変宿主細胞が、多能性幹細胞(例えば、PSC)又は生殖細胞(例えば、精子、卵母細胞など)である場合、遺伝子改変生物全体は、遺伝子改変宿主細胞に由来することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、遺伝子改変生物を生じ得る、イン・ビボ(in vivo)又はイン・ビトロ(in vitro)のいずれかの多能性幹細胞(例えば、ESC、iPSC、多能性植物幹細胞など)又は生殖細胞(例えば、精子細胞、卵母細胞など)である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、脊椎動物PSC(例えば、ESC、iPSCなど)であり、遺伝子改変生物を作製するために使用される(例えば、PSCを胚盤胞に注入して、キメラ/モザイク動物を作製し、次いで、非キメラ/非モザイク遺伝子改変生物を作製するために交配することができる;植物の場合は移植することなどによって)。本明細書に記載の方法を含む、遺伝子改変生物を作製するためのいずれかの好適な方法/プロトコールは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む遺伝子改変宿主細胞を作製するのに適している。遺伝子改変生物を産生する方法は、当技術分野において公知である。例えば、Choら、Curr Protoc Cell Biol.2009 Mar;Chapter 19:Unit 19.11:トランスジェニックマウスの作成;Gamaら、Brain Struct Funct.2010 Mar;214(2-3):91-109.Epub 2009 Nov 25:動物の遺伝子導入:概要;Husainiら、GM Crops.2011 Jun-Dec;2(3):150-62.Epub 2011 Jun 1:植物における遺伝子標的化及び標的化遺伝子発現のためのアプローチ、を参照されたい。
【0308】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変生物は、本開示の方法のための標的細胞を含み、したがって、標的細胞の供給源とみなすことができる。例えば、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む遺伝子改変細胞を使用して遺伝子改変生物を作製する場合、遺伝子改変生物の細胞は、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む。いくつかのそのような実施形態では、細胞のDNA又は遺伝子改変生物の細胞は、細胞又は細胞(複数)にガイドRNA(又はガイドRNAをコードするDNA)及び任意にドナー核酸を導入することによって、改変のために標的化することができる。例えば、遺伝子改変生物の細胞(例えば、脳細胞、腸細胞、腎臓細胞、肺細胞、血液細胞など)のサブセットへのガイドRNA(又はガイドRNAをコードするDNA)の導入は、改変するためにそのような細胞のDNAを標的化することができ、そのゲノム位置は、導入されたガイドRNAのDNA標的化配列に依存する。
【0309】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変生物は、本開示の方法のための標的細胞の供給源である。例えば、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む外因性核酸で遺伝子改変された細胞を含む遺伝子改変生物は、遺伝子改変細胞の供給源、例えば、PSC(例えば、ESC、iPSC、精子、卵母細胞など)、ニューロン、前駆細胞、心筋細胞などを提供することができる。
【0310】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞が、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含むPSCである。したがって、PSCは、PSCのDNAが、ガイドRNA(又はガイドRNAをコードするDNA)及び任意のドナー核酸をPSCに導入することによる改変のために標的化され得るような、標的細胞であり得、改変のゲノム位置は導入されたガイドRNAのDNA標的化配列に依存する。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して、遺伝子改変生物に由来するPSCのDNAを改変する(例えば、いずれかの所望のゲノム位置を欠失及び/又は置換する)ことができる。次いで、そのような改変PSCを使用して、(i)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む外因性核酸と、(ii)PSCに導入されたDNA改変との両方を有する生物を作製することができる。
【0311】
いくつかの実施形態では、外因性核酸は、未知のプロモーターの制御下にある(例えば、作動可能に連結されている)ことができ(例えば、核酸が宿主細胞ゲノムにランダムに組み込まれている場合)、又は既知のプロモーターの制御下にある(例えば、作動可能に連結されている)ことができる。好適な公知のプロモーターは、いずれかの公知のプロモーターであり得、構成的に活性なプロモーター(例えば、CMVプロモーター)、誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーターなど)、空間的に限定された及び/又は時間的に限定されたプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーターなど)などを含む。
【0312】
遺伝子改変生物(例えば、その細胞が、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む生物)は、例えば、植物;藻類;無脊椎動物(例えば、刺胞動物、棘皮動物、回虫(worm)、ハエなど);脊椎動物(例えば、魚類(例えば、ゼブラフィッシュ、フグ、キンギョなど)、両生類(例えば、サラマンダー、カエルなど)、爬虫類、鳥類、哺乳動物など);有蹄動物(例えば、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ウシなど);げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット);ウサギ目(ウサギなど)などを含むいずれかの生物であり得る。
【0313】
いくつかの実施形態では、活性部分は、RNaseドメインである。いくつかの実施形態では、活性部分は、DNaseドメインである。
【0314】
トランスジェニック非ヒト動物
【0315】
上記のように、いくつかの実施形態において、核酸(例えば、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列)又は組換え発現ベクターを導入遺伝子として使用して、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを産生するトランスジェニック動物を作製する。したがって、本開示は、上記のようなB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む核酸を含む導入遺伝子を含むトランスジェニック非ヒト動物をさらに提供する。いくつかの実施形態において、トランスジェニック非ヒト動物のゲノムは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、トランスジェニック非ヒト動物は、遺伝子改変についてホモ接合型である。いくつかの実施形態では、トランスジェニック非ヒト動物は、遺伝子改変についてヘテロ接合型である。いくつかの実施形態では、トランスジェニック非ヒト動物は、脊椎動物、例えば、魚(例えば、ゼブラフィッシュ、キンギョ、フグ、ドウクツギョなど)、両生類(カエル、サラマンダーなど)、鳥(例えば、ニワトリ、シチメンチョウなど)、爬虫類(例えば、ヘビ、トカゲなど)、哺乳動物(例えば、有蹄動物、例えば、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジなど、ウサギ目(例えば、ウサギ)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス)、非ヒト霊長類など)である。
【0316】
いくつかの実施形態において、核酸は、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む外因性核酸である。いくつかの実施形態では、外因性核酸は、未知のプロモーターの制御下にある(例えば、作動可能に連結されている)か(例えば、核酸が宿主細胞ゲノムにランダムに組み込まれる場合)、又は既知のプロモーターの制御下にある(例えば、作動可能に連結されている)ことができる。好適な公知のプロモーターは、いずれかの公知のプロモーターであり得、構成的に活性なプロモーター(例えば、CMVプロモーター)、誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーターなど)、空間的に限定された及び/又は時間的に限定されたプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーターなど)などを含む。
【0317】
宿主細胞への核酸の導入
【0318】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド若しくはそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む1つ又は複数の核酸を宿主細胞(又は宿主細胞の集団)に導入することを含む。いくつかの実施形態において、標的DNAを含む細胞は、イン・ビトロ(in vitro)である。いくつかの実施形態において、標的DNAを含む細胞は、イン・ビボ(in vivo)である。いくつかの実施形態では、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列は、誘導性プロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列は、構成的プロモーターに作動可能に連結される。
【0319】
ガイドRNA、又はそれをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、様々な周知の方法のいずれかによって宿主細胞に導入することができる。同様に、方法が、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含む核酸を宿主細胞に導入することを含む場合、そのような核酸は、様々な周知の方法のいずれかによって宿主細胞に導入することができる。ガイドポリヌクレオチド(RNA又はDNA)及び/又はB-GEn.1又はB-GEn.2ポリヌクレオチド(RNA又はDNA)は、当技術分野で公知のウイルス又は非ウイルス送達ビヒクルによって送達することができる。
【0320】
核酸を宿主細胞に導入する方法は、当技術分野で公知であり、いずれかの公知の方法を使用して、核酸(例えば、発現構築物)を幹細胞又は前駆細胞に導入することができる。好適な方法には、例えば、ウイルス又はバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、パーティクルガン法、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介核酸送達(例えば、Panyamら、Adv Drug Deliv Rev.2012 Sep 13.pii:50169-409X(12)00283-9.doi:10.1016/j.addr.2012.09.023を参照されたい)などを含み、エクソソーム送達を含むがこれに限定されない。
【0321】
ポリヌクレオチドは、ナノ粒子、リポソーム、リボ核タンパク質、正に荷電したペプチド、小分子RNAコンジュゲート、アプタマー-RNAキメラ、及びRNA-融合タンパク質複合体を含むが、これらに限定されない非ウイルス送達ビヒクルによって送達され得る。いくつかの例示的な非ウイルス性送達ビヒクルは、Peer and Lieberman、Gene Therapy、18:1127-1133(2011)(他のポリヌクレオチドの送達にも有用であるsiRNAのための非ウイルス性送達ビヒクルに焦点を当てている)に記載されている。
【0322】
遺伝子編集のために本開示の核酸(例えば、mRNA及びsgRNA)を送達するための好適な系及び技術には、脂質ナノ粒子(LNP)が含まれる。本明細書で使用される場合、用語「脂質ナノ粒子」は、それらのラメラリティ、形状又は構造及びリポプレックスにかかわらず、細胞への核酸及び/又はポリペプチドの導入について記載されるような、リポソームを含む。これらの脂質ナノ粒子は、生物学的に活性な化合物(例えば、核酸及び/又はポリペプチド)と複合体化することができ、イン・ビボ(in vivo)送達ビヒクルとして有用である。一般に、当技術分野で公知のいずれかの方法を適用して、本開示の1つ又は複数の核酸を含む脂質ナノ粒子を調製し、生物学的に活性な化合物と前記脂質ナノ粒子との複合体を調製することができる。そのような方法の例は、例えば、Biochim Biophys Acta 1979,557:9;Biochim et Biophys Acta 1980,601:559;Liposomes:A practical approach(Oxford University Press,1990);Pharmaceutica Acta Helvetiae 1995,70:95;Current Science 1995,68:715;Pakistan Journal of Pharmaceutical Sciences 1996,19:65;Methods in Enzymology 2009,464:343)に開示されている。本開示の1つ又は複数の核酸及び/又はポリペプチドを含むLNP製剤を調製するための特に好適な系及び技術としては、これらに限定されないが、Intellia(例えば、WO2017173054A1を参照)、Alnylam(例えば、WO2014008334A1を参照)、Modernatx(例えば、WO2017070622A1及びWO2017099823A1を参照)、TranslateBio、Acuitas(例えば、WO2018081480A1)、Genevant Sciences、Arbutus Biopharma、Tekmira、Arcturus、Merck(例えば、WO2015130584A2を参照)、Novartis(例えば、WO2015095340A1を参照)、及びDicernaにより開発されたものを含み;これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0323】
ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む好適な核酸は、発現ベクターを含み、ここで、発現ベクターは、ガイドをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、ウイルス構築物、例えば、組換えアデノ随伴ウイルス構築物(例えば、米国特許第7,078,387号を参照)、組換えアデノウイルス構築物、組換えレンチウイルス構築物、組換えレトロウイルス構築物などである。好適な発現ベクターには、以下に限定されないが、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Liら、Invest Opthalmol Vis Sci 35:2543 2549,1994;Borrasら、Gene Ther 6:515 524,1999;Li and Davidson,PNAS 92:7700 7704,1995;Sakamotoら、H Gene Ther 5:10881097,1999;WO94/12649、WO93/03769;WO93/19191;WO 94/28938;WO 95/11984をよびWO95/00655を参照);アデノ随伴ウイルス(例えば、Aliら、Hum Gene Ther 9:81 86,1998,Flanneryら、PNAS 94:6916 6921,1997;Bennettら、Invest Opthalmol Vis Sci 38:2857 2863,1997;Jomaryら、Gene Ther 4:683-690,1997,Rollingら、Hum Gene Ther 10:641 648,1999;Aliら、Hum Mol Genet 5:591 594,1996;Srivastava in WO 93/09239,Samulskiら、J. Vir.(1989)63:3822-3828;Mendelsonら、Viral.(1988)166:154-165;及びFlotteら、PNAS(1993)90:10613-10617を参照);SV40;単純ヘルペスウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshiら、PNAS 94:10319 23,1997;Takahashiら、J Virol 73:7812 7816,1999を参照);レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、並びにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳房腫瘍ウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)に基づくウイルスベクター)などが含まれる。
【0324】
アデノ随伴ウイルス(AAV)
【0325】
組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、送達のために使用され得る。当技術分野におけるrAAV粒子を産生するための公知の技術は、2つのAAV逆位末端反復(ITR)の間に送達されるポリヌクレオチド、AAV rep及びcap遺伝子、並びにヘルパーウイルス機能を細胞に提供することである。rAAVの産生は、以下の成分が単一細胞(本明細書ではパッケージング細胞として示される)内に存在することを必要とする:2つのITR間の目的のポリヌクレオチド、AAVゲノムから分離した(すなわち、中に存在しない)AAV rep及びcap遺伝子、並びにヘルパーウイルス機能。AAV rep及びcap遺伝子は、組換えウイルスが誘導され得るいずれかのAAV血清型に由来し得、パッケージングされたポリヌクレオチド上のITRとは異なるAAV血清型に由来し得、これらに限定されないが、AAV血清型AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13及びAAV rh.74を含む。シュードタイプrAAVの産生は、例えば、WO01/83692に開示されている。
【0326】
【0327】
パッケージング細胞を作製する方法は、AAV粒子産生に必要な全ての成分を安定に発現する細胞系を作製することである。例えば、AAV ITRの間の目的のポリヌクレオチド、AAVゲノムから分離したAAV rep及びcap遺伝子、並びにネオマイシン耐性遺伝子などの選択マーカーを含むプラスミド(又は複数のプラスミド)を、細胞のゲノムに組み込む。AAVゲノムは、GCテーリング(Samulskiら、1982、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79:2077-2081)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含む合成リンカーの付加(Laughlinra、1983、Gene、23:65-73)などの手順によって、又は直接的な平滑末端ライゲーション(Senapathy & Carter、1984、J.Bioi.Chem.,259:4661-4666)によって細菌プラスミドに導入された。次いで、パッケージング細胞系を、アデノウイルスなどのヘルパーウイルスに感染させる。この方法の利点は、細胞が選択可能であり、rAAVの大規模生産に好適であることである。好適な方法の他の例は、rAAVゲノム及び/又はrep及びcap遺伝子をパッケージング細胞に導入するために、プラスミドではなくアデノウイルス又はバキュロウイルスを使用する。
【0328】
rAAV産生の一般原理は例えば、Carter,1992,Current Opinions in Biotechnology,1533-539;及びMuzyczka,1992,Curr.Topics in Microbial.and lmmunol.,158:97-129)に概説されている。様々なアプローチが、Ratschinら、Mol.Cell.Biol.4:2072(1984);Hermonatら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466(1984);Tratschinら、Mol.Cell.Biol.5:3251(1985);Mclaughlinら、J.Virol.,62:1963(1988);及びLebkowskiら、1988 Mol.Cell.Biol.,7:349(1988)、Samulskiら(1989,J.Virol.,63:3822-3828);米国特許第5,173,414号;WO95/13365及び対応する米国特許第5,658.776号;WO95/13392;WO96/17947;PCT/US98/18600;WO97/09441(PCT/US96/14423);WO97/08298(PCT/US96/13872);WO97/21825(PCT/US96/20777);WO97/06243(PCT/FR96/01064);WO 99/11764;Perrinら(1995)Vaccine 13:1244-1250;Paulら(1993)Human Gene Therapy 4:609-615;Clarkら(1996)Gene Therapy 3:1124-1132;米国特許第5,786,211号;米国特許第5,871,982号;及び米国特許第6,258,595号に記載されている。
【0329】
形質導入に使用されるAAVベクター血清型は、標的細胞型に依存する。例えば、以下の例示的な細胞型は、とりわけ、示されたAAV血清型によって形質導入されることが知られている。
【0330】
【0331】
多数の好適な発現ベクターは、当業者に公知であり、多くが市販されている。以下のベクターは例えば、真核宿主細胞として提供される:pXT1、pSG5(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVLSV40(Pharmacia)。しかし、宿主細胞と適合性がある限り、いずれかの他のベクターを使用することができる。
【0332】
利用される宿主/ベクター系に応じて、構成的及び誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含む、多くの好適な転写及び翻訳制御エレメントのいずれかが、発現ベクターにおいて使用され得る(例えば、Bitterら(1987)Methods in Enzymology、153:516-544を参照されたい)。
【0333】
いくつかの実施形態では、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをRNAとして提供することができる。そのような場合、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするRNAは、直接化学合成によって製造することができ、又はガイドRNAをコードするDNAからイン・ビトロ(in vitro)で転写することができる。DNA鋳型からRNAを合成する方法は、当技術分野において周知である。いくつかの実施形態において、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするRNAは、RNAポリメラーゼ酵素(例えば、T7ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼ、SP6ポリメラーゼなど)を用いてイン・ビトロ(in vitro)で合成される。一旦合成されると、RNAは、標的DNAに直接接触し得るか、又は核酸を細胞に導入するための周知の技術(例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、トランスフェクションなど)のいずれかによって細胞に導入され得る。
【0334】
ガイドRNA(DNA又はRNAとして導入される)及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント(DNA又はRNAとして導入される)及び/又はドナーポリヌクレオチドをコードするヌクレオチドは、十分に開発されたトランスフェクション技術を用いて細胞に提供され得る;例えば、Angel及びYanik(2010)PLoS ONE 5(7):e 11756、並びにQiagenからの市販のTransMessenger(登録商標)試薬、StemgentからのStemfect(商標)RNAトランスフェクションキット、及びMims BioからのTransiT(商標)-mRNAトランスフェクションキットを参照されたい。Beumerら(2008)Efficient gene targeting in Drosophila by direct embryo injection with zinc-finger nucleases.PNAS 105(50):19821-19826も参照されたい。それに加えて、又はその代わりに、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント、及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2融合ポリペプチド又はそのバリアント、及び/又はドナーポリヌクレオチドをコードする核酸を、DNAベクター上に提供することができる。核酸を標的細胞に移入するのに有用な多くのベクター、例えば、プラスミド、コスミド、ミニサークル、ファージ、ウイルスなどが利用可能である。核酸を含むベクターは、エピソーム的に、例えば、プラスミド、ミニサークルDNA、サイトメガロウイルス、アデノウイルスなどのウイルスとして維持されてもよく、又はそれらは、相同組換え又はランダム組込み、例えば、MMLV、HIV-1、ALVなどのレトロウイルス由来ベクターを介して、標的細胞ゲノムに組込まれてもよい。
【0335】
ベクターは、細胞に直接提供され得る。言い換えれば、ベクターが細胞に取り込まれるように、細胞は、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド若しくはそのバリアント及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2融合ポリペプチド若しくはそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドをコードする核酸を含むベクターと接触させられる。エレクトロポレーション、塩化カルシウムトランスフェクション、マイクロインジェクション、及びリポフェクションを含む、プラスミドである核酸ベクターと細胞を接触させるための方法は、当技術分野において周知である。ウイルスベクター送達のために、細胞は、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド若しくはそのバリアント及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2融合ポリペプチド若しくはそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドをコードする核酸を含むウイルス粒子と接触させられる。レトロウイルス、例えばレンチウイルスは、本開示の方法に特に好適である。一般的に使用されるレトロウイルスベクターは、「欠損」であり、例えば、増殖性感染に必要なウイルスタンパク質を産生することができない。むしろ、ベクターの複製は、パッケージング細胞系における増殖を必要とする。目的の核酸を含むウイルス粒子を生成するために、核酸を含むレトロウイルス核酸は、パッケージング細胞系によってウイルスカプシドにパッケージングされる。異なるパッケージング細胞系は、カプシドに組み込まれる異なるエンベロープタンパク質(同種指向性、両指向性又は異種指向性)を提供し、このエンベロープタンパク質は、細胞に対するウイルス粒子の特異性を決定する(マウス及びラットについては同種指向性;ヒト、イヌ及びマウスを含むほとんどの哺乳動物細胞型については両指向性;マウス細胞を除くほとんどの哺乳動物細胞型については異種指向性)。適切なパッケージング細胞系は、細胞がパッケージングされたウイルス粒子によって標的化されることを確実にするために使用され得る。リプログラミング因子をコードする核酸を含むレトロウイルスベクターをパッケージング細胞系に導入する方法、及びパッケージング細胞系によって生成されるウイルス粒子を収集する方法は、当技術分野で周知である。核酸はまた、直接マイクロインジェクション(例えば、ゼブラフィッシュ胚へのRNAの注入)によって導入され得る。
【0336】
ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2融合ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドをコードする核酸を細胞に提供するために使用されるベクターは一般に、目的の核酸の発現、すなわち転写活性化、を駆動するための好適なプロモーターを含む。言い換えれば、目的の核酸は、プロモーターに作動可能に連結される。これは、偏在的に(ubiquitously)活性なプロモーター、例えば、CMV-13-アクチンプロモーター、又は誘導性プロモーター、例えば、特定の細胞集団において活性であるか、又はテトラサイクリンなどの薬物の存在に応答するプロモーターを含み得る。転写活性化によって、転写は、標的細胞における基礎レベルを少なくとも10倍、少なくとも100倍、より典型的には少なくとも1000倍上回って増加することが意図される。さらに、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2融合ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドを細胞に提供するために使用されるベクターは、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2融合ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドを取り込んだ細胞を同定するために、標的細胞内の選択マーカーをコードする核酸配列を含み得る。
【0337】
ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2融合ポリペプチド又はそのバリアントを代わりに使用して、DNAと接触させるか、又はRNAとして細胞に導入することができる。RNAを細胞に導入する方法は当技術分野において公知であり、例えば、直接インジェクション、トランスフェクション、又はDNAの導入に使用されるいずれかの他の方法を含み得る。B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは代わりに、ポリペプチドとして細胞に提供され得る。そのようなポリペプチドは場合により、生成物の溶解度を増加させるポリペプチドドメインに融合され得る。ドメインは、規定されたプロテアーゼ切断部位、例えば、TEVプロテアーゼによって切断される、TEV配列、を介してポリペプチドに連結され得る。リンカーはまた、1つ又は複数の柔軟な配列、例えば、1~10個のグリシン残基を含み得る。いくつかの実施形態では、融合タンパク質の切断が例えば、0.5~2Mの尿素の存在下、溶解度を増加させるポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドの存在下など、生成物の溶解度を維持する緩衝液中で実施される。目的のドメインには、エンドソーム分解ドメイン、例えばインフルエンザHAドメイン;及び産生を補助する他のポリペプチド、例えばIF2ドメイン、GSTドメイン、GRPEドメインなどが含まれる。ポリペプチドは、改善された安定性のために製剤化され得る。例えば、ペプチドは、PEG化されてもよく、この場合、ポリエチレンオキシ基は、血流中での寿命の向上を提供する。
【0338】
加えて、又は代わりに、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをポリペプチド浸透性ドメインに融合させて、細胞による取り込みを促進することができる。多数の浸透性ドメインが当技術分野において公知であり、ペプチド、ペプチド模倣体、及び非ペプチド担体を含む、本開示の非組み込みポリペプチドにおいて使用され得る。例えば、浸透性ペプチドは、アミノ酸配列RQIKIWFQNRRMKWKK(この配列は本特許出願の下では開示されていない)を含む、ペネトラチンと称されるキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)転写因子アンテナペディア(Antennapaedia)の第3のαヘリックスに由来し得る。別の例として、浸透性ペプチドは、HIV-1 tat塩基性領域アミノ酸配列を含み、これは、例えば、天然に存在するtatタンパク質のアミノ酸49~57を含み得る。
【0339】
他の透過性ドメインとしては、ポリアルギニンモチーフ、例えば、HIV-1 revタンパク質のアミノ酸34~56の領域、ノナアルギニン、アクタアルギニンなどが挙げられる。(例えば、Futakiら(2003)Curr Protein Pept Sci.2003 Apr;4(2):87-9 and 446;及びWenderら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2000 Nov.21;97(24):13003-8;米国特許出願公開第20030220334号;同第20030083256号;同第20030032593号;及び同第20030022831号を参照されたい、ここで、転座ペプチド及びペプトイドの教示について参照により本明細書に具体的に組み込まれる)。ノナアルギニン(R9)配列は、特徴付けられたより効率的なPTDの1つである(Wenderら、2000;Uemuraら、2002)。融合が行われる部位は、ポリペプチドの生物学的活性、分泌又は結合特性を最適化するために選択され得る。最適部位は、日常的な実験によって決定することができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチド浸透性ドメインは、PTDのバイオアベイラビリティを増加させるために化学的に改変される。例示的な改変は、Expert Opin Drug Deliv.2009 Nov;6(11):1195-205を参照のこと。
【0340】
一般に、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドの有効量は、標的改変を誘導するために標的DNA又は細胞に提供される。ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドの有効量は、陰性対照、例えば、空のベクター又は無関係なポリペプチドと接触させた細胞と比較して、gRNAで観察される標的化改変の量の2倍以上の増加を誘導する量である。すなわち、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドの有効量又は用量は、標的DNA領域で観察される標的改変の量の2倍の増加、3倍の増加、4倍の増加又はそれ以上を誘導し、いくつかの実施形態では観察される組換え量の5倍の増加、6倍の増加又はそれ以上、ときには7倍又は8倍以上の増加、例えば、いくつかの実施形態では観察される組換え量の10倍、50倍又は100倍又はそれ以上の増加、いくつかの実施形態では観察される組換え量の200倍、500倍、700倍又は1000倍又はそれ以上の増加、例えば5000倍又は10,000倍の増加を誘導する。標的改変の量は、いずれかの好適な方法によって測定することができる。例えば、相同配列に隣接するガイドRNAのスペーサーに対する相補配列を含むスプリットレポーターコンストラクトであって、組換えられた場合、活性レポーターをコードする核酸を細胞に再構成することができるものは、細胞に同時トランスフェクトされ得、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドとの接触後、例えば、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドとの接触後2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間又はそれ以上で、レポータータンパク質の量が評価される。別の例として、より感度の高いアッセイ、例えば、標的DNA配列を含む目的のゲノムDNA領域における組換えの程度は、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドとの接触後、例えば、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドとの接触後2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間以上で、領域のPCR又はサザンハイブリダイゼーションによって評価され得る。
【0341】
細胞をガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドと接触させることは、細胞の生存を促進するいずれかの培養条件下で、いずれかの培養培地中で起こり得る。例えば、細胞は、ウシ胎児血清又は熱不活化ウシ胎児血清(約5~10%)、L-グルタミン、チオール、特に2-メルカプトエタノール、及び抗生物質、例えばペニシリン及びストレプトマイシンを補充した、lscoveの改変DMEM又はRPMI1640などの適切な栄養培地中に懸濁され得る。培養物は、細胞が応答する増殖因子を含有する可能性がある。本明細書で定義される成長因子は、膜貫通型受容体に対する特異的効果を介して、培養物中又は無傷組織中のいずれかで、細胞の生存、成長及び/又は分化を促進することができる分子である。増殖因子には、ポリペプチド及び非ポリペプチド因子が含まれる。細胞の生存を促進する条件は、一般に、非相同末端結合及び相同組換え修復を許容する。ポリヌクレオチド配列を標的DNA配列に挿入することが望ましい用途では、挿入されるドナー配列を含むポリヌクレオチドも細胞に提供される。「ドナー配列」又は「ドナーポリヌクレオチド」とは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントによって誘導される切断部位に挿入される核酸配列を意味する。ドナーポリヌクレオチドは、切断部位の隣接ゲノム領域に対する十分な配列相同性、例えば、切断部位に隣接するヌクレオチド配列との70%、80%、85%、90%、95%、又は100%の配列同一性、例えば、切断部位の約50塩基以内、例えば、約30塩基以内、約15塩基以内、約10塩基以内、約5塩基以内、又は切断部位に直ぐに隣接していることを含み、それと相同性を有するゲノム配列との間の相同組換え修復をサポートする。ドナーとゲノム配列との間の相同配列の約25、50、100、若しくは200ヌクレオチド、又は200を超えるヌクレオチド(又は10~200ヌクレオチド以上のいずれかの整数値)は、相同組換え修復をサポートする。ドナー配列は、いずれかの長さ、例えば、10ヌクレオチド以上、50ヌクレオチド以上、100ヌクレオチド以上、250ヌクレオチド以上、500ヌクレオチド以上、1000ヌクレオチド以上、5000ヌクレオチド以上などであり得る。
【0342】
ドナー配列は一般に、それが置換するゲノム配列と同一ではない。むしろ、ドナー配列は、相同組換え修復をサポートするのに十分な配列同一性が存在する限り、ゲノム配列に関して少なくとも1つ又は複数の単一塩基置換、挿入、欠失、逆位、又は再配列を含み得る。いくつかの実施形態では、ドナー配列は、標的DNA領域と相同な2つの領域(相同アームとも呼ばれる)が隣接する非相同配列を含み、その結果、標的DNA領域と2つの隣接相同アームとの間の相同組換え修復が、標的領域における非相同配列の挿入をもたらす。ドナー配列はまた、目的のDNA領域に相同ではなく、目的のDNA領域への挿入を意図しない配列を含有するベクター骨格を含んでもよい。一般的に、ドナー配列の相同領域は、組換えが望まれるゲノム配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有する。特定の実施形態では、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、又は99.9%の配列同一性が存在する。ドナーポリヌクレオチドの長さに応じて、1%~100%の配列同一性のいずれかの値が存在し得る。ドナー配列は、ゲノム配列と比較して特定の配列差異、例えば、制限部位、ヌクレオチド多型、選択マーカー(例えば、薬物耐性遺伝子、蛍光タンパク質、酵素など)を含んでもよく、これは切断部位でのドナー配列の成功した挿入を評価するために使用されてもよく、又は場合によっては他の目的(例えば、標的ゲノム遺伝子座での発現を示すために)のために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、コード領域に位置する場合、そのようなヌクレオチド配列の相違は、アミノ酸配列を変化させないか、又はタンパク質の構造又は機能に実質的に影響を及ぼさないアミノ酸変化を生じさせる。あるいは、これらの配列の相違は、マーカー配列の除去のために後に活性化され得る、FLP、loxP配列などの隣接組換え配列を含み得る。
【0343】
ドナー配列は、一本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖DNA、又は二本鎖RNAとして細胞に提供され得る。それは、線形又は円形の形態で細胞に導入され得る。線形形態で導入される場合、ドナー配列の末端は当業者に公知の方法によって保護され得る(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)。例えば、1つ又は複数のジデオキシヌクレオチド残基が線形分子の3’末端に付加され、及び/又は自己相補的オリゴヌクレオチドが一方又は両方の末端にライゲーションされる。例えば、Changら、(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4959-4963;Nehlsら、(1996)Science 272:886-889を参照されたい。外因性ポリヌクレオチドを分解から保護するためのさらなる方法としては、末端アミノ基の付加、及び改変ヌクレオチド間結合、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、及びO-メチルリボース又はデオキシリボース残基の使用が挙げられるが、これらに限定されない。線形ドナー配列の末端を保護する代わりに、組換えに影響を及ぼすことなく分解することができるさらなる長さの配列を相同性アームの外側に含めることができる。ドナー配列は、例えば、複製起点、プロモーター、及び抗生物質耐性をコードする遺伝子などのさらなる配列を有するベクター分子の一部として細胞に導入することができる。さらに、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドをコードする核酸について上述したように、ドナー配列は、裸の(例えば、未改変の)核酸として、リポソーム又はポロキサマーなどの薬剤と複合体化した核酸として導入することができ、又はウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV)に送達され得る。
【0344】
上記の方法に続いて、目的のDNA領域は、エクス・ビボ(ex vivo)で、切断及び改変、例えば、「遺伝子改変(genetically modified)」され得る。いくつかの実施形態では、選択マーカーが目的のDNA領域に挿入されたとき、遺伝子改変された細胞を残りの集団から分離することによって、遺伝子改変を含むものについて細胞集団を濃縮することができる。濃縮の前に、「遺伝子改変」細胞は、細胞集団の約1%又はそれ以上(例えば、2%又はそれ以上、3%又はそれ以上、4%又はそれ以上、5%又はそれ以上、6%又はそれ以上、7%又はそれ以上、8%又はそれ以上、9%又はそれ以上、10%又はそれ以上、15%又はそれ以上、又は20%又はそれ以上)のみを構成し得る。「遺伝子改変」細胞の分離は、使用される選択マーカーに適したいずれかの好適な分離技術によって達成され得る。例えば、蛍光マーカーが挿入されている場合、細胞は、蛍光活性化細胞選別によって分離され得、一方、細胞表面マーカーが挿入されている場合、細胞は、アフィニティー分離技術、例えば、磁気分離、アフィニティークロマトグラフィー、固体マトリックスに結合したアフィニティー試薬を用いた「パンニング」、又は他の好適な技術によって、異種集団から分離され得る。正確な分離を提供する技術には、様々な程度に洗練された蛍光活性化細胞ソーターが含まれる。例えば、多色チャネル、低角度及び鈍角光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネルなどである。細胞は、死細胞に会合する染料(例えば、ヨウ化プロピジウム)を用いることによって、死細胞に対して選択され得る。遺伝子改変された細胞の生存能力に過度に悪影響を及ぼさないいずれかの技術を用いることができる。改変DNAを含む細胞について高度に濃縮された細胞組成物は、このようにして達成される。「高度に濃縮された」とは、遺伝子改変された細胞が、細胞組成物の70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、例えば、細胞組成物の約95%以上、又は98%以上であることを意味する。言い換えれば、組成物は、遺伝子改変細胞の実質的に純粋な組成物であってもよい。
【0345】
本明細書に記載の方法によって産生された遺伝子改変細胞は、直ちに使用することができる。加えて、又は代わりに、細胞を液体窒素温度で凍結し、長期間保存し、解凍し、再利用することができる。そのような場合、細胞は一般に、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)、50%血清、40%緩衝培地、又はそのような凍結温度で細胞を保存するために当技術分野で一般に使用される他の溶液中で凍結され、凍結培養細胞を解凍するために当技術分野で一般に知られている方法で解凍される。
【0346】
遺伝子改変細胞は、様々な培養条件下でイン・ビトロ(in vitro)で培養され得る。細胞は、例えば、その増殖を促進する条件下で増殖するなど、培養物中で増殖させることができる。培養培地は、例えば、寒天、メチルセルロースなどを含有する、液体又は半固体であり得る。細胞集団は、ウシ胎児血清(約5~10%)、L-グルタミン、チオール、特に2-メルカプトエタノール、並びに抗生物質、例えばペニシリン及びストレプトマイシンを通常補充した、lscoveの改変DMEM又はRPMI 1640などの適切な栄養培地中に懸濁され得る。培養物は、それぞれの細胞が応答する増殖因子を含有してもよい。本明細書で定義される成長因子は、膜貫通型受容体に対する特異的効果を介して、培養物中又は無傷組織中のいずれかで、細胞の生存、成長及び/又は分化を促進することができる分子である。増殖因子には、ポリペプチド及び非ポリペプチド因子が含まれる。このように遺伝子改変された細胞は、遺伝子治療などの目的のために、例えば、疾患を処置するために、又は抗ウイルス、抗病原性、若しくは抗癌治療薬として、農業において遺伝子改変生物の産生のために、又は生物学的研究のために、対象に移植され得る。対象は、新生児、若年者、又は成人であってもよい。特に興味深いのは、哺乳動物の対象である。本発明の方法で処置することができる哺乳動物の種には、イヌ科動物及びネコ科動物;ウマ;ウシ;ヒツジなど;及び霊長類、特にヒトが含まれる。動物モデル、特に小型哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ目(例えば、ウサギ)など)を、実験研究のために使用することができる。
【0347】
細胞は単独で、又は、例えば、それらが移植されている組織におけるそれらの増殖及び/又は組織化をサポートするために、好適な基質又はマトリックスと共に、対象に提供され得る。一般に、少なくとも1×103個の細胞、例えば、5×103個の細胞、1×104個の細胞、5×104個の細胞、1×105個の細胞、1×106個又はそれ以上の細胞が投与される。細胞は、以下の経路:非経口、皮下、静脈内、頭蓋内、脊髄内、眼内、又は髄液内のいずれかを介して対象に導入され得る。細胞は、インジェクション、カテーテルなどによって導入することができる。局所送達の方法の例、すなわち損傷部位への送達には、例えば、オンマイヤーレザバー(Ommaya reservoir)を介して、例えば、髄腔内送達のための(例えば、本明細書に参照として組み込まれている米国特許第5,222,982号及び第5,385,582号を参照)、ボーラス注射により、例えば、注射器、例えば、関節への注射;例えば、持続注入により、例えば、カニューレ挿入により、例えば、対流ありで(例えば、本明細書に参照により組み込まれている米国特許出願第20070254842号を参照)、又は細胞が可逆的に固定されている装置を移植することにより(例えば、本明細書に参照により組み込まれている米国特許出願第20080081064号及び第20090196903号を参照)などがある。また、トランスジェニック動物(例えば、トランスジェニックマウス)を作製する目的で、胚(例えば、胚盤胞)に細胞を導入してもよい。
【0348】
いくつかの実施形態では、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列は、制御エレメント、例えば、プロモーターなどの転写制御エレメントに作動可能に連結される。転写制御エレメントは一般に、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)などの真核細胞;又は原核細胞(例えば、細菌細胞又は古細菌細胞)のいずれかにおいて機能的である。いくつかの実施形態において、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列は、原核細胞及び真核細胞の両方において、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列の発現を可能にする複数の制御エレメントに作動可能に連結される。
【0349】
プロモーターは、構成的に活性なプロモーター(例えば、活性な「ON」状態で構成的に存在するプロモーター)であり得、それは誘導性プロモーター(例えば、その状態、活性/「ON」又は不活性/「OFF」、が、外部刺激、例えば、特定の温度、化合物、又はタンパク質の存在によって制御されるプロモーター)であり得、それは空間的に限定されたプロモーター(例えば、転写制御エレメント、エンハンサーなど)(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーターなど)であり得、及び、それは時間的に限定されたプロモーター(例えば、そのプロモーターは、胚発生の特定の段階の間、又は生物学的プロセスの特定の段階の間、例えば、マウスの毛包周期に、活性/「ON」又は不活性/「OFF」状態である)。
【0350】
好適なプロモーターは、ウイルスに由来することができ、したがって、ウイルスプロモーターと称することができ、又は原核生物若しくは真核生物を含むいずれかの生物に由来することができる。好適なプロモーターを使用して、いずれかのRNAポリメラーゼ(例えば、pol I、pol II、pol III)により発現を駆動することができる。例示的なプロモーターには、SV40初期プロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス長末端反復(LTR)プロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV前初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6小核プロモーター(U6)(Miyagishiら、Nature Biotechnology 20,497-500(2002))、強化されたU6プロモーター(例えば、Xiaら、Nucleic Acids Res.2003 Sep 1;31(17))、ヒトH1プロモーター(H1)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0351】
誘導性プロモーターの例としては、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、T3 RNAポリメラーゼプロモーター、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)調節性プロモーター、ラクトース誘導性プロモーター、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター(例えば、TetON、Tet-OFFなど)、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、誘導性プロモーターは、限定されないが、ドキシサイクリン;RNAポリメラーゼ、例えば、T7 RNAポリメラーゼ;エストロゲン受容体;エストロゲン受容体融合体などを含む分子によって調節され得る。
【0352】
いくつかの実施形態において、プロモーターは空間的に限定されたプロモーター(例えば、細胞型特異的プロモーター、組織特異的プロモーターなど)であり、その結果、多細胞生物において、プロモーターは特異的細胞のサブセットにおいて活性(例えば、「ON」)である。空間的に限定されたプロモーターは、エンハンサー、転写制御エレメント、制御配列などとも称され得る。いずれかの好適な空間的に限定されたプロモーターを使用することができ、好適なプロモーター(例えば、脳特異的プロモーター、ニューロンのサブセットにおける発現を駆動するプロモーター、生殖系列における発現を駆動するプロモーター、肺における発現を駆動するプロモーター、筋肉における発現を駆動するプロモーター、膵島細胞における発現を駆動するプロモーターなど)の選択は生物に依存する。例えば、様々な空間的に限定されたプロモーターは、植物、ハエ、寄生虫(worms)、哺乳動物、マウスなどについて知られている。したがって、空間的に限定されたプロモーターを使用して、生物に応じて、多種多様な異なる組織及び細胞型におけるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする核酸の発現を調節することができる。いくつかの空間的に限定されたプロモーターはまた、胚発生の特定の段階の間、又は生物学的プロセスの特定の段階(例えば、マウスにおける毛包周期)の間、プロモーターが「ON」状態又は「OFF」状態にあるように、時間的に限定される。
【0353】
例示目的のために、空間的に限定されたプロモーターの例としては、ニューロン特異的プロモーター、脂肪細胞特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、平滑筋特異的プロモーター、光受容体特異的プロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されない。ニューロン特異的な空間的に限定されたプロモーターには、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(例えば、EMBL HSEN02、X51956を参照);芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)プロモーター;ニューロフィラメントプロモーター(例えば、GenBank HUMNFL、L04147を参照);シナプシンプロモーター(例えば、GenBank HUMSYNIB、M55301を参照);thy-1プロモーター(例えば、Chenら(1987)Ce/151:7-19;及びLlewellynら(2010)Nat.Med.16(10):1161-1166を参照);セロトニン受容体プロモーター(例えば、GenBank S62283を参照);チロシンヒドロキシラーゼプロモーター(TH)(例えば、Ohら(2009)Gene Ther 16:437;Sasaokaら(1992)Mol.Brain Res.16:274;Boundyら(1998)J.Neurosci.18:9989;及びKanedaら(1991)Neuron 6:583-594を参照);GnRHプロモーター(例えば、Radovickら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3402-3406);L7プロモーター(例えば、Oberdickら(1990)Science 248:223-226を参照);DNMTプロモーター(例えば、Bartgeら(1988)Proc.Nat/.Acad.Sci.USA 85:3648-3652を参照);エンケファリンプロモーター(例えば、Combら(1988)EMBO J.17:3793-3805を参照);ミエリン塩基性タンパク質(MBP)プロモーター;Ca2+-カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ11-α(CamKIIa)プロモーター(例えば、Mayfordら(1996)Proc.Nat/.Acad.Sci.USA 93:13250;及びCasanovaら(2001)Genesis 31:37を参照);CMVエンハンサー/血小板由来増殖因子-0プロモーター(例えば、Liuら(2004)Gene Therapy 11:52-60を参照)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0354】
脂肪細胞特異的な空間的に限定されたプロモーターとしては、aP2遺伝子プロモーター/エンハンサー、例えば、ヒトaP2遺伝子の-5.4kb~+21bpの領域(例えば、Tozzoら(1997)Endocrinol.138:1604;Rossら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:9590;及びPavjaniら(2005)Nat.Med.11:797を参照);グルコース輸送体-4(GLUT4)プロモーター(例えば、Knightら(2003)Proc.Nat/.Acad.Sci.USA 100:14725を参照);脂肪酸トランスロカーゼ(FAT/CD36)プロモーター(例えば、Kurikiら(2002)Biol.Pharm.Bull.25:1476;及びSatoら(2002)J.Biol.Chem.277:15703を参照);ステアロイル-CoAデサチュラーゼ-1(SCD1)プロモーター(例えば、Taborら(1999)J.Biol.Chem.274:20603);レプチンプロモーター(例えば、Masonら(1998)Endocrinol.139:1013;及びChenら(1999)Biochem.Biophys.Res.Comm.262:187を参照);アディポネクチンプロモーター(例えば、Kitaら(2005)Biochem.Biophys.Res.Comm.331:484;及びChakrabarti(2010)Endocrinol.151:2408を参照);アジプシンプロモーター(例えば、Plattら(1989)Proc.Nat/.Acad.Sci.USA 86:7490を参照);レジスチンプロモーター(例えば、Seoら(2003)Malec.Endocrinol.17:1522);などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0355】
心筋細胞特異的な空間的に限定されたプロモーターとしては以下の遺伝子に由来する制御配列が挙げられるが、これらに限定されない:ミオシン軽鎖-2、a-ミオシン重鎖、AE3、心臓トロポニンC、心臓アクチンなど。Franzら(1997)Cardiovasc.Res.35:560-566;Robbinsら(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci.752:492-505;Linnら(1995)Circ.Res.76:584591;Parmacekら(1994)Mol.Cell.Biol.14:1870-1885;Hunterら(1993)Hypertension 22:608-617;及びSartorelliら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4047-4051。
【0356】
平滑筋特異的な空間的に限定されたプロモーターとしては、SM22aプロモーター(例えば、Akyilrekら(2000)Mol.Med.6:983;及び米国特許第7,169,874号を参照);スムースリンプロモーター(例えば、国際公開第2001/018048号パンフレットを参照);α-平滑筋アクチンプロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、2つのCArGエレメントが存在する、SM22aプロモーターの0.4kb領域は、血管平滑筋細胞特異的発現を媒介することが示されている(例えば、Kimら、(1997)Mol.Cell.Biol.17,2266-2278;Liら、(1996)J.Cell Biol.132,849-859;及びMoesslerら、(1996)Development 122、2415-2425を参照されたい)。
【0357】
光受容体特異的な空間的に限定されたプロモーターとしては、ロドプシンプロモーター;ロドプシンキナーゼプロモーター(Youngら(2003)Ophthalmol.Vis.Sci.44:4076);βホスホジエステラーゼ遺伝子プロモーター(Nicoudら(2007)J.Gene.Med.9:1015);網膜色素変性症遺伝子プロモーター(Nicoudら(2007)上記のとおり);光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子エンハンサー(Nicoudら(2007)上記のとおり);IRBP遺伝子プロモーター(Yokoyamaら(1992)Exp Eye Res.55:225);等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0358】
ガイドRNAを含む組成物
【0359】
いくつかの実施形態では、ガイドRNAを含む組成物が本明細書で提供される。該組成物は、ガイドRNAに加えて、1つ又は複数の:塩、例えば、NaCl、MgCl2、KCl、MgSO4など;緩衝剤、例えば、トリス緩衝剤、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、MESナトリウム塩、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)など;可溶化剤;洗浄剤、例えば、Tween-20などの非イオン性洗浄剤など;ヌクレアーゼ阻害剤;などを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、ガイドRNA及び核酸を安定化するための緩衝剤を含む。
【0360】
いくつかの実施形態では、組成物中に存在するガイドRNAは、純粋であり、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は99%超純粋であり、ここで、「%純度」は、ガイドRNAが、ガイドRNAの産生中に存在し得る他の高分子又は夾雑物を含まない、記載されたパーセントであることを意味する。
【0361】
B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドを含む組成物
【0362】
いくつかの実施形態では、コドン最適化ポリヌクレオチド配列から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを含む組成物が本明細書で提供される。B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントに加えて、1つ又は複数の:塩、例えば、NaCl、MgCl2、KCl、MgSO4など;緩衝剤、例えば、トリス緩衝剤、HEPES、MES、MESナトリウム塩、MOPS、TAPSなど;可溶化剤;洗浄剤、例えば、Tween-20などの非イオン性界面活性剤など;プロテアーゼ阻害剤;還元剤(例えば、ジチオスレイトール);などを含むことができる。
【0363】
いくつかの実施形態では、組成物中に存在するB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、純粋であり、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は99%超純粋であり、ここで、「%純度」は、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントが、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの産生中に存在し得る他のタンパク質、他の高分子、又は夾雑物を含まない記載されたパーセントであることを意味する。
【0364】
ガイドRNA及び部位特異的改変ポリペプチドを含む組成物
【0365】
いくつかの実施形態では、(i)ガイドRNA又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチド;及び(ii)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸、又は核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを含む組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、標的DNAを改変する酵素活性を示す。いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、標的DNAによってコードされるポリペプチドを改変する酵素活性を示す。いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、標的DNAからの転写を調節する。
【0366】
いくつかの実施形態では、組成物の成分は、個々に純粋であり、例えば、成分のそれぞれは少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも99%純粋である。いくつかの実施形態では、組成物の個々の成分は、組成物に添加される前に純粋である。
【0367】
キット
【0368】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を実施するためのキットが提供される。キットは、1つ又は複数の:例えば、コドン最適化ポリヌクレオチド配列から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;ガイドRNA;ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸、を含むことができる。キットは、2つ以上の:B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチドを含む核酸;ガイドRNA;ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸、を含む複合体を含むことができる。いくつかの実施形態において、キットは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント、又はそれをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの活性部分は、低下した又は不活性化したヌクレアーゼ活性を示す。いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、B-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質である。
【0369】
いくつかの実施形態では、キットが、(a)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸、又は核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び(b)gRNA又はgRNAをコードする核酸を含み、ここで、gRNAは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列に誘導することができる。いくつかの実施形態では、キットは、コドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸を含む。コドン最適化ポリヌクレオチド配列から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント、又はコドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸を含むキットは、1つ又は複数のさらなる試薬をさらに含むことができ、ここで、そのようなさらなる試薬は、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを細胞に導入するための緩衝剤;洗浄緩衝剤;コントロール試薬;コントロール発現ベクター又はポリリボヌクレオチド;DNAからのB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントのイン・ビトロ(in vitro)産生のための試薬などから選択することができる。
【0370】
本明細書に記載のキットのいずれかのいくつかの実施形態では、キットは、sgRNAを含む。いくつかの実施形態では、キットは、2つ以上のsgRNAを含む。
【0371】
本明細書に記載されるキットのいずれかのいくつかの実施形態において、gRNA(例えば、2つ以上のガイドRNAを含む)はアレイ(array)(例えば、RNA分子のアレイ、ガイドRNAをコードするDNA分子のアレイなど)として提供され得る。そのようなキットは、例えば、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを含む上記の遺伝子改変宿主細胞と組み合わせて使用するために有用であり得る。
【0372】
本明細書に記載のキットのいずれかのいくつかの実施形態では、キットは、所望の遺伝子改変をもたらすためのドナーポリヌクレオチドをさらに含む。
【0373】
キットの成分は、別々の容器中にあってもよく、又は単一の容器中に組み合わせてもよい。
【0374】
本明細書に記載されるキットのいずれも、1つ又は複数のさらなる試薬をさらに含むことができ、ここで、そのようなさらなる試薬は、希釈緩衝液;再構成溶液;洗浄緩衝液;コントロール試薬;コントロール発現ベクター又はポリリボヌクレオチド;DNAからのB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントのイン・ビトロ(in vitro)産生のための試薬、などから選択することができる。
【0375】
上述の成分に加えて、キットは、方法を実施するためにキットの成分を使用するための説明書をさらに含むことができる。本方法を実施するための説明書は一般に、適切な記録媒体に記録される。例えば、説明書は、紙又はプラスチックなどの基材上に印刷されてもよい。そのようなものとして、説明書は添付文書としてキット中に、キットの容器又はその成分(例えば、パッケージ又はサブパッケージに関連する)のラベリング中に存在し得る。いくつかの実施形態では、説明書は、好適なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、CD-ROM、ディスケット、フラッシュドライブなどに存在する電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態では、実際の説明書がキット中に存在しないが、遠隔源から、例えばインターネットを介して、説明書を得るための手段が提供される。この実施形態の例は、説明書を閲覧することができ、及び/又は説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、説明書を得るためのこの手段は、好適な基材上に記録される。
【0376】
開示の方法
【0377】
標的DNA及び/又は標的DNAによってコードされるポリペプチドを改変する方法
【0378】
いくつかの実施形態では、標的DNA及び/又は標的DNAによってコードされるポリペプチドを改変するための方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、(i)配列番号:1又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする配列番号:1と少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントをコードする核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び(ii)gRNA又はgRNAをコードする核酸を提供することを含み、ここで、gRNAは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド若しくはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列に誘導することができ、その結果、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及びgRNAを含む複合体(「標的化複合体」)が形成され、標的ポリヌクレオチド配列を含む標的DNAと接触するようになる。
【0379】
いくつかの実施形態において、本方法は、(i)配列番号:2又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする配列番号:2と少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントをコードする核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び(ii)gRNA又はgRNAをコードする核酸を提供することを含み、ここで、gRNAは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列に誘導することができ、その結果、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及びgRNAを含む複合体(「標的化複合体」)が形成され、標的ポリヌクレオチド配列を含む標的DNAと接触するようになる。
【0380】
いくつかの実施形態において、本方法は、(i)配列番号:3又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする配列番号:3と少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントをコードする核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び(ii)gRNA又はgRNAをコードするその核酸を提供することを含み、ここで、gRNAは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列に誘導することができ、その結果、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及びgRNAを含む複合体(「標的化複合体」)が形成され、標的ポリヌクレオチド配列を含む標的DNAと接触するようになる。
【0381】
いくつかの実施形態では、本方法は、(i)配列番号:4又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする配列番号:4と少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントをコードする核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び(ii)gRNA又はgRNAをコードする核酸を提供することを含み、ここで、gRNAは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列に誘導することができ、その結果、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及びgRNAを含む複合体(「標的化複合体」)が形成され、標的ポリヌクレオチド配列を含む標的DNAと接触するようになる。
【0382】
いくつかの実施形態では、本方法は、(i)配列番号:5又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする配列番号:5と少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントをコードする核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び(ii)gRNA又はgRNAをコードする核酸を提供することを含み、ここで、gRNAは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列に誘導することができ、その結果、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及びgRNAを含む複合体(「標的化複合体」)が形成され、標的ポリヌクレオチド配列を含む標的DNAと接触するようになる。
【0383】
いくつかの実施形態では、本方法は、(i)配列番号:6又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする配列番号:6と少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントをコードする核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び(ii)gRNA又はgRNAをコードする核酸を提供することを含み、ここで、gRNAは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列に誘導することができ、その結果、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及びgRNAを含む複合体(「標的化複合体」)が形成され、標的ポリヌクレオチド配列を含む標的DNAと接触するようになる。
【0384】
いくつかの実施形態では、本方法は、(i)配列番号:7又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする配列番号:7と少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントをコードする核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び(ii)gRNA又はgRNAをコードする核酸を提供することを含み、ここで、gRNAは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列に誘導することができ、その結果、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及びgRNAを含む複合体(「標的化複合体」)が形成され、標的ポリヌクレオチド配列を含む標的DNAと接触するようになる。
【0385】
いくつかの実施形態では、本方法は、(i)配列番号:8又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする配列番号:8と少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントをコードする核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び(ii)gRNA又はgRNAをコードする核酸を提供することを含み、ここで、gRNAは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列に誘導することができ、その結果、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及びgRNAを含む複合体(「標的化複合体」)が形成され、標的ポリヌクレオチド配列を含む標的DNAと接触するようになる。
【0386】
いくつかの実施形態では、本方法は、(i)配列番号:9又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする配列番号:9と少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントをコードする核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び(ii)gRNA又はgRNAをコードする核酸を提供することを含み、ここで、gRNAは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列に誘導することができ、その結果、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及びgRNAを含む複合体(「標的化複合体」)が形成され、標的ポリヌクレオチド配列を含む標的DNAと接触するようになる。
【0387】
いくつかの実施形態では、本方法は、(i)配列番号:133又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする配列番号:133と少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントをコードする核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び(ii)gRNA又はgRNAをコードする核酸を提供することを含み、ここで、gRNAは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列に誘導することができ、その結果、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及びgRNAを含む複合体(「標的化複合体」)が形成され、標的ポリヌクレオチド配列を含む標的DNAと接触するようになる。
【0388】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境中の1つ又は複数の位置で標的DNAを標的化、編集、改変、又は操作する方法であって、(a)例えば、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド若しくはそのバリアントをコードするコドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び(b)gRNA又はgRNAをコードする核酸を細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境に導入することを含み、ここで、gRNAは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを標的DNA中の標的ポリヌクレオチド配列に誘導することができる。いくつかの実施形態では、本方法は、コドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸を細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境に導入することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境に導入することを含む。いくつかの実施形態において、B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドは、配列番号:1~9又は133のアミノ酸配列を含む(又はそれからなる)。いくつかの実施形態では、本方法は、gRNAを細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境に導入することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、gRNAをコードする核酸を細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境に導入することを含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、シングルガイドRNA(sgRNA)である。いくつかの実施形態において、本方法は、標的DNAを標的化する1つ又は複数のさらなるgRNA又は1つ又は複数のさらなるgRNAをコードする核酸を、細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境に導入することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境にドナー鋳型を導入することをさらに含む。
【0389】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境中の1つ又は複数の位置で標的DNAを標的化、編集、改変、又は操作する方法であって、(a)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする核酸、又はそのような核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド若しくはそのバリアント;及び(b)gRNA又はgRNAをコードする核酸を細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境中に導入することを含み、ここで、gRNAは、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを標的DNA中の標的ポリヌクレオチド配列に誘導することができる。いくつかの態様において、本方法は、核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境に導入することを含む。いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、配列番号:1~9、若しくは133のアミノ酸配列、又はそれらのアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、gRNAを細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境に導入することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、gRNAをコードする核酸を細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境に導入することを含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、シングルガイドRNA(sgRNA)である。いくつかの実施形態において、本方法は、標的DNAを標的化する1つ又は複数のさらなるgRNA又は1つ又は複数のさらなるgRNAをコードする核酸を、細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境に導入することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、細胞又はイン・ビトロ(in vitro)環境にドナー鋳型を導入することをさらに含む。
【0390】
上記のように、gRNA又はsgRNA及びB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、リボ核タンパク質複合体を形成し得る。ガイドRNAは、標的DNAの配列に相補的なヌクレオチド配列を含むことによって、複合体に標的特異性を提供する。複合体のB-GEn.1mしくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、エンドヌクレアーゼ活性を提供する。いくつかの実施形態では、複合体は、標的DNAを改変し、例えば、DNA切断、DNAメチル化、DNA損傷、DNA修復などをもたらす。いくつかの実施形態では、複合体は、標的DNA(例えば、ヒストン、DNA結合タンパク質など)と会合した標的ポリペプチドを改変し、例えば、ヒストンメチル化、ヒストンアセチル化、ヒストンユビキチン化などをもたらす。標的DNAは例えば、イン・ビトロ(in vitro)での裸の(例えば、DNA会合タンパク質によって結合されていない)DNA、イン・ビトロ(in vitro)での細胞中の染色体DNA、イン・ビボ(in vivo)での細胞中の染色体DNAなどであり得る。
【0391】
本明細書に記載されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントのヌクレアーゼ活性は、標的DNAを切断して二本鎖切断を生じ得る。次いで、これらの切断は、2つの方法:非相同末端結合、及び相同組換え修復のうちの1つで、細胞によって修復される。非相同末端結合(NHEJ)において、二本鎖切断は、切断末端を互いに直接連結することによって修復される。このプロセスにおいて、数個の塩基対が切断部位に挿入又は欠失され得る。相同組換え修復では、切断された標的DNA配列に対して相同性を有するドナーポリヌクレオチドが、切断された標的DNA配列の修復のための鋳型として使用され、ドナーポリヌクレオチドから標的DNAへの遺伝情報の移動をもたらす。そのようなものとして、新たな核酸材料が、その部位に挿入/コピーされ得る。いくつかの実施形態では、標的DNAは、ドナーポリヌクレオチドと接触される。いくつかの実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、細胞に導入される。NHEJ及び/又は相同組換え修復による標的DNAの改変は、例えば、遺伝子補正、遺伝子置換、遺伝子タグ付け、導入遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチド挿入、遺伝子破壊、遺伝子突然変異、配列置換などをもたらす。したがって、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントによるDNAの切断は、標的DNA配列を切断し、外因的に提供されたドナーポリヌクレオチドの非存在下で細胞が配列を修復することを可能にすることによって、標的DNA配列から核酸材料を欠失させるために(例えば、細胞を感染に感受性にする遺伝子(例えば、HIV感染に感受性にするCCRS又はCXCR4遺伝子)を破壊するため)、ニューロンにおける疾患を引き起こすトリヌクレオチド反復配列を除去するため、研究における疾患モデルとして遺伝子ノックアウト及び変異を作製するためなどに使用され得る。したがって、本方法は、遺伝子をノックアウトするため(転写/翻訳の完全な欠如又は転写/翻訳の変化をもたらす)、又は遺伝物質を標的DNA中の選択された遺伝子座にノックインするために使用することができる。
【0392】
それに加えて、又はその代わりに、ガイドRNA及びB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントが、標的DNA配列と少なくとも相同性を有するセグメントを含むドナーポリヌクレオチド配列と共に細胞に同時投与される場合、主題の方法は、標的DNA配列に核酸材料を付加するため、例えば、挿入又は置き換えするため(例えば、タンパク質、siRNA、miRNAなどをコードする核酸を「ノックイン」するために)、タグを付加するために(例えば、6xHis、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、など)、ヘマグルチニン(HA)、FLAG、など)、遺伝子に調節配列を付加するために(例えば、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、内部リボソーム侵入配列(IRES)、2Aペプチド、開始コドン、終止コドン、スプライスシグナル、局在化シグナル、など)、核酸配列を改変するために(例えば、突然変異を導入する)、などのために使用され得る。したがって、ガイドRNA及びB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを含む複合体は、疾患を処置するため、例えば、遺伝子治療などで使用されるように、又は抗ウイルス、抗病原性、若しくは抗癌治療剤として又は農業における遺伝子改変生物の産生、治療、診断、又は研究目的のための細胞によるタンパク質の大規模産生、iPS細胞の誘導、生物学的研究、欠失又は置換のための病原体の遺伝子の標的化などのように、「標的化された」方法で、例えば、遺伝子ノックアウト、遺伝子ノックイン、遺伝子編集、遺伝子タグ付け、配列置換などで、部位特異的にDNAを改変することが望ましいいずれかのイン・ビトロ(in vitro)又はイン・ビボ(in vivo)適用に有用である。
【0393】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、異種配列(例えば、B-GEn.1又はB-GEn.2融合ポリペプチド)を含むB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを使用する。いくつかの実施形態において、異種配列は、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント(例えば、核への標的化のための核局在化シグナル(NLS);ミトコンドリアへの標的化のためのミトコンドリア局在化シグナル;葉緑体への標的化のための葉緑体局在化シグナル;ER保持シグナルなど)の細胞内局在化を提供することができる。いくつかの実施形態では、異種配列は、追跡又は精製を容易にするためのタグ(例えば、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、RFP、CFP、mCherry、tdTomatoなど);ヒスチジンタグ、例えば、6XHisタグ;ヘマグルチニン(HA)タグ;FLAGタグ;Mycタグなど)を提供することができる。いくつかの実施形態において、異種配列は、増加又は減少した安定性を提供することができる。
【0394】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、標的細胞における遺伝子発現を遮断するための誘導系として使用されるガイドRNA及びB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを使用する。いくつかの実施形態では、適切なガイドRNA及び/又は適切なB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする核酸は、標的細胞の染色体に組み込まれ、誘導性プロモーターの制御下にある。ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントが誘導される場合、標的DNAは、目的の位置(例えば、別のプラスミド上の標的遺伝子)で切断され(又はその他の方法で改変され)、ガイドRNA及びB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの両方が存在する場合、複合体を形成する。したがって、いくつかの実施形態において、標的細胞は、ゲノム中の適切なB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする核酸配列及び/又はプラスミド上の適切なガイドRNAを含むように操作され(例えば、誘導性プロモーターの制御下で)、いずれかの標的遺伝子の発現(株に導入された別のプラスミドから発現した)が、ガイドRNA及びB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの発現を誘導することにより制御され得る実験を可能にする。いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、二本鎖切断を導入する以外の方法で標的DNAを改変する酵素活性を有する。標的DNAを改変するために使用され得る目的の酵素活性(例えば、酵素活性を有する異種ポリペプチドをB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントに融合させ、それによってB-GEn.1若しくはB-GEn.2融合ポリペプチド又はそのバリアントを生成することによって)は、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プリン活性、酸化活性、ピリミジン二量体形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポザーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、フォトリアーゼ活性又はグリコシラーゼ活性を含むが、これらに限定されない。メチル化及び脱メチル化は、当技術分野において、エピジェネティック遺伝子調節の重要な様式として認識されているが、DNA損傷の修復は、細胞生存及び環境ストレスに応答した適切なゲノム維持に不可欠である。したがって、本明細書の方法は、標的DNAのエピジェネティックな改変における使用を見出し、ガイドRNAのスペーサー領域に所望の配列を導入することによって、標的DNAのいずれかの位置で標的DNAのエピジェネティックな改変を制御するために使用され得る。本明細書の方法はまた、標的DNA内のいずれかの所望の位置におけるDNAの意図的及び制御された損傷における使用を見出す。本明細書の方法はまた、標的DNA内のいずれかの所望の位置におけるDNAの配列特異的かつ制御された修復における使用を見出す。DNA改変酵素活性を標的DNAの特定の位置に標的化する方法は、研究及び臨床用途の両方における使用を見出す。
【0395】
いくつかの実施形態では、複数のガイドRNAは、同じ標的DNA上又は異なる標的DNA上の異なる位置を同時に改変するために使用される。いくつかの実施形態では、2つ以上のガイドRNAは、同じ遺伝子又は転写物又は遺伝子座を標的とする。いくつかの実施形態において、2つ以上のガイドRNAは、異なる非関連遺伝子座を標的とする。いくつかの実施形態では、2つ以上のガイドRNAは、異なるが関連する遺伝子座を標的とする。
【0396】
いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、タンパク質として直接提供される。1つの非限定的な例として、真菌(例えば、酵母)は、スフェロプラスト形質転換を用いて外因性タンパク質及び/又は核酸で形質転換され得る(Kawaiら、Bioeng Bugs.2010 Nov-Dec;1(6):395-403:“transformation of Saccharomyces cerevisiae and other fungi: methods and possible underlying mechanism”;及びTankaら、Nature.2004 Mar 18;428(6980):323-8:“Conformational variations in an infectious protein determine prion strain differences”を参照;それらの両方は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。したがって、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、スフェロプラスト(ガイドRNAをコードする核酸を含むか又は含まずに、ドナーポリヌクレオチドを含むか又は含まずに)に組み込まれ得、スフェロプラストは、酵母細胞に内容物を導入するために使用され得る。B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、いずれかの好適な方法によって細胞に導入され得(細胞に提供され得);そのような方法は当業者に公知である。別の非限定的な例として、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは細胞(例えば、ガイドRNAをコードする核酸を含むか又は含まずに、ドナーポリヌクレオチドを含むか又は含まずに)、例えば、ゼブラフィッシュ胚の細胞、受精マウス卵母細胞の前核などに直接注射することができる。
【0397】
転写を調節する方法
【0398】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、宿主細胞中の標的核酸の転写を調節する方法である。この方法は一般に、標的核酸を酵素的に不活性なB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチド及びガイドRNAと接触させることを含む。これらの方法は、様々な用途において有用であり、また提供される。
【0399】
本開示の転写調節方法は、RNAiを伴う方法の欠点のいくつかを克服する。本開示の転写調節方法は、研究用途、創薬(例えば、ハイスループットスクリーニング)、標的バリデーション、工業用途(例えば、作物工学;微生物工学など)、診断用途、治療用途、及び撮像技術を含む、多種多様な用途における使用を見出す。
【0400】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、宿主細胞、例えば、ヒト細胞における標的DNAの転写を選択的に調節する方法である。本方法は一般に、a)宿主細胞に、i)ガイドRNA、又はガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸、及びii)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント、又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を導入するステップであって、ここで、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントが、低下したエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性を示すステップを含む。ガイドRNA及びB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、宿主細胞において複合体を形成し;複合体が宿主細胞における標的DNAの転写を選択的に調節する。
【0401】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、B-GEn.1又はB-GEn.2タンパク質の改変型を用いる。いくつかの態様において、B-GEn.1又はB-GEn.2タンパク質の改変型は、B-GEn.1又はB-GEn.2タンパク質のヌクレアーゼ活性を低下させるアミノ酸変化(例えば、欠失、挿入、又は置換)を含む。例えば、いくつかの実施形態において、B-GEn.1又はB-GEn.2タンパク質の改変型は、対応する非改変B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドのヌクレアーゼ活性の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、又は1%未満を有する。いくつかの実施形態において、B-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドの改変型は、実質的なヌクレアーゼ活性を有さない。B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントが、実質的なヌクレアーゼ活性を有さないB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドの改変型である場合、それは、「dB-GEn.1又はB-GEn.2」と称することができる。
【0402】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される転写調節方法は、宿主細胞における標的核酸の選択的調節(例えば、減少又は増加)を可能にする。例えば、標的核酸の転写の「選択的」減少は、ガイドRNA/B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの複合体の非存在下での標的核酸の転写のレベルと比較して、標的核酸の転写を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は90%超減少させる。標的核酸の転写の選択的減少は、標的核酸の転写を減少させるが、非標的核酸の転写を実質的に減少させない、例えば、非標的核酸の転写は、ガイドRNA/B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの複合体の非存在下での非標的核酸の転写レベルと比較して、たとえ減少したとしても10%未満減少する。
【0403】
いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、標的DNAの転写を調節する活性を有する(例えば、B-GEn.1若しくはB-GEn.2融合ポリペプチド又はそのバリアントの場合など)。いくつかの実施形態において、転写を増加又は減少させる能力を示す異種ポリペプチド(例えば、転写活性化因子又は転写抑制因子ポリペプチド)を含むB-GEn.1若しくはB-GEn.2融合ポリペプチド又はそのバリアントは、ガイドRNAのスペーサーによって誘導される、標的DNA中の特定の位置における標的DNAの転写を増加又は減少させるために使用される。転写調節活性を有するB-GEn.1若しくはB-GEn.2融合ポリペプチド又はそのバリアントを提供するための供給源ポリペプチドの例としては、光誘導性転写調節因子、小分子/薬物応答性転写調節因子、転写因子、転写リプレッサーなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本方法は、標的遺伝子コードRNA(タンパク質コードmRNA)及び/又は標的非コードRNA(例えば、tRNA、rRNA、snoRNA、siRNA、miRNA、long ncRNAなど)の転写を制御するために使用される。いくつかの実施形態において、B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、DNAに会合するポリペプチド(例えば、ヒストン)を改変する酵素活性を有する。いくつかの実施形態において、酵素活性は、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性(例えば、ユビキチン化活性)、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性、脱ミリストイル化活性、グリコシル化活性(例えば、GlcNAcトランスフェラーゼからの)又は脱グリコシル化活性である。本明細書に列挙される酵素活性は、タンパク質への共有結合改変を触媒する。そのような改変は、標的タンパク質の安定性又は活性を変化させることが当技術分野で公知である(例えば、キナーゼ活性によるリン酸化は、標的タンパク質に応じてタンパク質活性を刺激又はサイレンシングすることができる)。タンパク質標的として特に興味深いのは、ヒストンである。ヒストンタンパク質はDNAに結合し、ヌクレオソームとして知られる複合体を形成することが当技術分野で知られている。ヒストンを(例えば、メチル化、アセチル化、ユビキチン化、リン酸化によって)改変して、周囲のDNAにおける構造変化を誘発することができ、したがって、転写因子、ポリメラーゼなどの相互作用因子へのDNAの潜在的に大きな部分のアクセス可能性を制御する。単一のヒストンは、多くの異なる方法及び多くの異なる組み合わせで改変することができる(例えば、ヒストン3のリジン27のトリメチル化、H3K27は、抑制された転写のDNA領域と会合し、一方で、ヒストン3のリジン4のトリメチル化、H3K4は、活性転写のDNA領域と会合する)。したがって、ヒストン改変活性を有するB-GEn.1若しくはB-GEn.2融合ポリペプチド又はそのバリアントは、染色体構造の部位特異的制御における使用を見出し、標的DNAの選択された領域におけるヒストン改変パターンを変更するために使用することができる。このような方法は、研究及び臨床用途の両方における使用を見出す。
【0404】
増加された転写
【0405】
標的DNAの「選択的」増加転写は、ガイドRNA/B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの複合体の非存在下での標的DNAからの転写のレベルと比較して、標的DNAからの転写を少なくとも1.1倍(例えば、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、又は少なくとも20倍)増加させることができる。標的DNAの転写の選択的増加は、標的DNAからの転写を増加させるが、非標的DNAの転写を実質的に増加させず、例えば、非標的DNAの転写は、ガイドRNA/B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの複合体の非存在下での非標的DNAの転写のレベルと比較して、あったとしても約5倍未満である(例えば、約4倍未満、約3倍未満、約2倍未満、約1.8倍未満、約1.6倍未満、約1.4倍未満、約1.2倍未満、又は約1.1倍未満)。
【0406】
非限定的な例として、増加された転写は、dB-GEn.1又はB-GEn.2を異種配列に融合することによって達成することができる。好適な融合パートナーには、標的DNA又は標的DNAに会合するポリペプチド(例えば、ヒストン又は他のDNA結合タンパク質)に直接作用することによって転写を間接的に増加させる活性を提供するポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。好適な融合パートナーとしては、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、クロトニル化、脱クロトニル化、プロピオニル化、脱プロピオニル化、ミリストイル化活性、又は脱ミリストイル化活性を提供するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0407】
さらなる好適な融合パートナーには、標的核酸(例えば、転写活性化因子又はその断片、転写活性化因子を動員するタンパク質又はその断片、小分子/薬物応答性転写調節因子など)の転写の増加を直接提供するポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0408】
原核生物における転写を増加させるためにdB-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質を使用する方法の非限定的な例としては、細菌ワンハイブリッド(B1H)又はツーハイブリッド(B2H)系の改変が挙げられる。B1H系では、DNA結合ドメイン(BD)は、細菌転写活性化ドメイン(AD、例えば、大腸菌RNAポリメラーゼ(RNAPa)のαサブユニット)と融合される。したがって、dB-GEn.1又はB-GEn.2は、ADを含む異種配列に融合され得る。dB-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質が、プロモーター(ガイドRNAによって標的化される)の上流領域に到達すると、dB-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質のAD(例えばRNAPa)は、RNAPホロ酵素を動員し、転写活性化をもたらす。B2H系では、BDは、ADに直接融合されず、その代わりに、それらの相互作用はタンパク質-タンパク質相互作用(例えば、GAL11P-GAL4相互作用)によって媒介される。本方法で使用するためのそのような系を改変するために、dB-GEn.1又はB-GEn.2を、タンパク質-タンパク質相互作用を提供する第1のタンパク質配列(例えば、酵母GAL11P及び/又はGAL4タンパク質)に融合させることができ、RNAaを、タンパク質-タンパク質相互作用を完成させる第2のタンパク質配列(例えば、GAL11PisがdB-GEn.1又はB-GEn.2に融合した場合はGAL4、GAL4がdB-GEn.1又はB-GEn.2に融合した場合はGAL11Pなど)に融合させることができる。GAL11PとGAL4との間の結合親和性は、結合効率及び転写発火速度を増加させる。
【0409】
真核生物における転写を増加させるためにdB-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質を使用する方法の非限定的な例としては、dB-GEn.1又はB-GEn.2の活性化ドメイン(AD)(例えば、GAL4、ヘルペスウイルス活性化タンパク質VP16又はVP64、ヒト核因子NF-KB p65サブユニットなど)への融合が挙げられる。系を誘導性にするために、dB-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質の発現は、誘導性プロモーター(例えば、Tet-ON、Tet-OFFなど)によって制御することができる。ガイドRNAは、既知の転写応答エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)、既知の上流活性化配列(UAS)、標的DNAの発現を制御できることが疑われる未知又は既知の機能の配列などを標的とするように設計することができる。
【0410】
さらなる融合パートナー
【0411】
増加又は減少した転写を達成するための融合パートナーの非限定的な例としては、転写活性化因子及び転写リプレッサードメイン(例えば、Krueppel関連ボックス(KRAB又はSKD);Mad mSIN3相互作用ドメイン(SID);ERFリプレッサードメイン(ERD)など)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかのそのような場合において、dB-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質は、ガイドRNAによって標的DNA中の特定の位置(例えば、配列)に標的化され、プロモーターへのRNAポリメラーゼ結合の遮断(転写活性化因子機能を選択的に阻害する)及び/又は局所クロマチン状態の改変(例えば、標的DNAを改変するか、又は標的DNAに会合するポリペプチドを改変する、融合配列が使用される場合)などの遺伝子座特異的制御を発揮する。いくつかの実施形態において、変化は、一過性(例えば、転写抑制又は活性化)である。いくつかの実施形態において、変化は、遺伝性である(例えば、エピジェネティックな改変が標的DNA又は標的DNAに化合するタンパク質、例えば、ヌクレオソームヒストンに対してなされる場合)。いくつかの実施形態において、異種配列は、dB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドのC末端に融合され得る。いくつかの実施形態において、異種配列は、dB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドのN末端に融合され得る。いくつかの実施形態において、異種配列は、dB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドの内部部分(例えば、N末端又はC末端以外の部分)に融合され得る。dB-GEn.1又はB-GEn.2融合タンパク質を使用する方法の生物学的効果は、任意の好適な方法(例えば、遺伝子発現アッセイ;クロマチンベースのアッセイ、例えば、クロマチン免疫沈降(ChIP)、クロマチンイン・ビボ(in vivo)アッセイ(CiA)など)によって検出することができる。
【0412】
いくつかの実施形態では、方法は、2つ以上の異なるガイドRNAの使用を含む。例えば、2つの異なるガイドRNAを単一の宿主細胞において使用することができ、ここで、2つの異なるガイドRNAは、同じ標的核酸中の2つの異なる標的配列を標的とする。いくつかの実施形態では、同じ標的核酸中の2つの異なる標的配列を標的とする2つの異なるガイドRNAの使用が、標的核酸の転写の増加された調節(例えば、減少又は増加)を提供する。
【0413】
別の例として、2つの異なるガイドRNAを単一の宿主細胞において使用することができ、ここで、2つの異なるガイドRNAは、2つの異なる標的核酸を標的とする。したがって、例えば、転写調節方法は、第2のガイドRNA、又は第2のガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を宿主細胞に導入することをさらに含むことができる。
【0414】
いくつかの実施形態において、核酸(例えば、ガイドRNA、例えば、単一分子ガイドRNA;ドナーポリヌクレオチド;B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードする核酸など)は、さらなる望ましい特徴(例えば、改変又は調節された安定性;細胞内標的化;追跡、例えば、蛍光標識;タンパク質又はタンパク質複合体の結合部位など)を提供する改変又は配列を含む。非限定的な例としては、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニレートキャップ(m 7G));3’ポリアデニル化尾部(例えば、3’ポリ(A)尾部);リボスイッチ配列又はアプタマー配列(例えば、タンパク質及び/又はタンパク質複合体による調節された安定性及び/又は調節された接近性を可能にするための);ターミネーター配列;dsRNA二重鎖(例えば、ヘアピン)を形成する配列;RNAを細胞下位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化する改変又は配列;追跡を提供する改変又は配列(例えば、蛍光分子への直接コンジュゲーション、蛍光検出を容易にする部分へのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列など);タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写リプレッサー、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含むDNAに作用するタンパク質)の結合部位を提供する改変又は配列;このようなRNAの構造を変化させ、結果としてB-GEn.1又はB-GEn.2リボ核タンパク質とするRNAの改変;及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0415】
複数の同時ガイドRNA
【0416】
いくつかの実施形態において、複数のガイドRNAは、同じ標的DNA上又は異なる標的DNA上の異なる位置で同時に転写を調節するために、同じ細胞において同時に使用される。いくつかの実施形態では、2つ以上のガイドRNAが、同じ遺伝子又は転写物又は遺伝子座を標的とする。いくつかの実施形態において、2つ以上のガイドRNAは、異なる非関連遺伝子座を標的とする。いくつかの実施形態では、2つ以上のガイドRNAが、異なるが関連する遺伝子座を標的とする。
【0417】
ガイドRNAは、小型で堅牢であるので、それらは、同じ発現ベクター上に同時に存在することができ、所望であれば、同じ転写制御下にあってもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上(例えば、3つ以上、4つ以上、5つ以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、又は50以上)のガイドRNAが標的細胞において(同じ又は異なるベクターから/同じ又は異なるプロモーターから)同時に発現される。いくつかの実施形態において、複数のガイドRNAは、ターゲター(targeter)RNAの天然に存在するCRISPRアレイを模倣するアレイにおいてコードされ得る。標的化セグメントは、約30ヌクレオチド長の配列(約16~約100ntであり得る)としてコードされ、CRISPR反復配列によって分離される。アレイは、RNAをコードするDNAによって、又はRNAとして、細胞に導入され得る。
【0418】
複数のガイドRNAを発現させるために、Csy4エンドリボヌクレアーゼによって媒介される人工RNAプロセシング系を使用することができる。例えば、複数のガイドRNAを、前駆体転写物(例えば、U6プロモーターから発現される)上のタンデムアレイに連結し、Csy4特異的RNA配列によって分離することができる。共発現されたCsy4タンパク質は、前駆体転写物を複数のガイドRNAに切断する。RNAプロセシング系を使用するための利点は第1に、複数のプロモーターを使用する必要がないこと、第2に、全てのガイドRNAが前駆体転写物からプロセシングされるので、それらの濃度は、類似のdB-GEn.1又はB-GEn.2結合について正規化されることを含む。
【0419】
Csy4は、細菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に由来する小エンドリボヌクレアーゼ(RNase)タンパク質である。Csy4は、最小17bpのRNAヘアピンを特異的に認識し、迅速(<1分)かつ高効率(>99.9%)のRNA切断を示す。ほとんどのRNaseとは異なり、切断されたRNA断片は安定であり、機能的に活性である。Csy4ベースのRNA切断は、人工RNAプロセシング系に再利用することができる。この系では、17bpのRNAヘアピンが、単一のプロモーターからの前駆体転写物として転写される複数のRNA断片の間に挿入される。Csy4の共発現は、個々のRNA断片を生成するのに有効である。
【0420】
宿主細胞
【0421】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、有糸分裂細胞又は有糸分裂後細胞における転写調節をイン・ビボ(in vivo)及び/又はエクス・ビボ(ex vivo)及び/又はイン・ビトロ(in vitro)で誘導するために使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、有糸分裂細胞又は有糸分裂後細胞におけるDNA切断、DNA改変、及び/又は転写調節をイン・ビボ(in vivo)及び/又はエクス・ビボ(ex vivo)及び/又はイン・ビトロ(in vitro)で誘導するために使用され得る(例えば、個体に再導入され得る遺伝的に改変された細胞を産生するために)。
【0422】
ガイドRNAは、標的DNAにハイブリダイズすることによって特異性を提供するので、有糸分裂細胞及び/又は有糸分裂後細胞は、さまざまな宿主細胞のいずれかであり得、ここで、宿主細胞には、細菌細胞;古細菌細胞;単細胞真核生物;植物細胞;藻類細胞、例えば、ボツリオコッカス・ブラウニ(Botryococcus braunii)、クラミドモナス・ラインハルティ(Chlamydomonas reinhardtii)、ナンノクロロプシス・ガディタナ(Nannochloropsis gaditana)、クロレラ・ピレノイドサ(Chlorela pyrenoidosa)、ヤツマタモク(Sargassum patens)、C.アガード(C.Agardh)など;真菌細胞;動物細胞;無脊椎動物由来の細胞(例えば、昆虫、刺胞動物、棘皮動物、線虫など);真核寄生虫(例えば、マラリア原虫、例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium fakiparum);蠕虫など);脊椎動物由来の細胞(例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など);哺乳動物細胞、例えば、げっ歯類細胞、ヒト細胞、非ヒト霊長類細胞などが含まれるが、これらに限定されない。好適な宿主細胞には、天然に存在する細胞;遺伝子改変された細胞(例えば、実験室で、例えば、「ヒトの手」によって遺伝子改変された細胞);及び任意の方法でイン・ビトロ(in vitro)で操作された細胞が含まれる。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、単離される。
【0423】
任意のタイプの細胞(例えば、幹細胞、例えば、胚性幹(ES)細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、生殖細胞;体細胞、例えば、線維芽細胞、造血細胞、ニューロン、筋肉細胞、骨細胞、肝細胞、膵臓細胞;任意の基、例えば、1細胞期、2細胞期、4細胞期、8細胞期等のイン・ビトロ(in vitro)又はイン・ビボ(in vivo)胚性細胞、ゼブラフィッシュの胚;等)が対象であり得る。細胞は確立された細胞系由来であってもよく、又はそれらは初代細胞であってもよく、ここで、「初代細胞」、「初代細胞系」、及び「初代培養物」は、本明細書において互換的に使用され、対象に由来し、培養物の限られた数の継代、例えば、分裂の間、イン・ビトロ(in vitro)で増殖させた細胞及び細胞培養物を指す。例えば、初代培養物は、0回、1回、2回、4回、5回、10回、又は15回継代されている可能性があるが、十分な回数が危機段階を通過していない培養物を含む。初代細胞系は、イン・ビトロ(in vitro)で10継代未満維持することができる。標的細胞は、いくつかの実施形態では、単細胞生物であるか、又は培養物中で増殖される。
【0424】
細胞が初代細胞である場合、そのような細胞は、任意の好適な方法によって個体から採取され得る。例えば、白血球は、アフェレーシス、白血球アフェレーシス、密度勾配分離などによって適切に採取され得、一方、皮膚、筋肉、骨髄、脾臓、肝臓、膵臓、肺、腸、胃などの組織からの細胞は、生検によって最も好適に採取される。回収された細胞の分散又は懸濁には、適切な溶液を使用することができる。そのような溶液は一般に、平衡塩溶液、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ハンクス平衡塩溶液などであり、これらは、低濃度、例えば、5~25mM、の許容される緩衝液と併せて、ウシ胎児血清又は他の天然に存在する因子が好適に補充されている。好適な緩衝液としては、HEPES、リン酸緩衝液、乳酸緩衝液などが挙げられる。細胞は、直ちに使用されてもよく、又は長期間保存、凍結されていてもよく、解凍して再利用が可能である。そのような場合、細胞は一般に、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)、50%血清、40%緩衝培地、又はそのような凍結温度で細胞を保存するために当技術分野で一般に使用される他の溶液中で凍結され、凍結培養細胞を解凍するために当技術分野で一般に知られている方法で解凍される。
【0425】
使用
【0426】
本開示による転写を調節するための方法は、様々な用途での使用を見出し、これもまた提供される。用途には、研究用途、診断用途、工業用途、及び治療用途が含まれる。
【0427】
研究用途には、例えば、標的核酸の転写を減少又は増加させる効果を、例えば、発生、代謝、下流遺伝子の発現などに対して決定することが含まれる。ハイスループットゲノム分析は、ガイドRNAのスペーサーのみを変化させる必要があるが、タンパク質結合セグメント及び転写終結セグメントは(場合によっては)一定に保つことができる転写調節法を用いて実施することができる。ゲノム分析に使用される複数の核酸を含むライブラリーは、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを含み、各核酸は、共通のタンパク質結合セグメント、異なるスペーサー、及び共通の転写終結セグメントを含む。チップは、5×104を超える固有のガイドRNAを含むことができる。用途は、大規模表現型決定、遺伝子-機能マッピング、及びメタゲノム分析を含む。
【0428】
本明細書に開示される方法は、代謝工学の分野において用途を見出す。転写レベルは本明細書に開示されるように、適切なガイドRNAを設計することによって効率的かつ予測可能に制御され得るので、代謝経路(例えば、生合成経路)の活性は、目的の代謝経路内の特定の酵素のレベルを制御することによって(例えば、増加又は減少した転写を介して)、正確に制御及び調整され得る。目的の代謝経路には、化学物質(ファインケミカル、燃料、抗生物質、毒素、アゴニスト、アンタゴニストなど)及び/又は薬物生産のために使用されるものが含まれる。
【0429】
目的の生合成経路には、(1)メバロン酸経路(例えば、HMG-CoAレダクターゼ経路)(アセチル-GoAをジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)及びイソペンテニルピロリン酸(IPP)に変換する)、これらは、テルペノイド/イソプレノイドを含む多種多様な生体分子の生合成に使用される)、(2)非メバロン酸経路(例:「2-C-メチル-D-エリスリトール 4-リン酸/1-デオキシ-D-キシルロース 5-リン酸経路」又は「MEP/DOXP経路」又は「DXP経路」)(また、DMAPP及びIPP、代わりに、メバロン酸経路の代替経路を介してピルビン酸及びグリセルアルデヒド 3-リン酸をDMAPP及びIPPに変換することによる)、(3)ポリケチド合成経路(種々のポリケチド合成酵素を介して様々なポリケチドを生成する。ポリケチドは、化学療法に使用される天然の小分子(例えば、テトラサイクリン、及びマクロライド)を含み、工業的に重要なポリケチドとしては、ラパマイシン(免疫抑制剤)、エリスロマイシン(抗生物質)、ロバスタチン(抗コレステロール薬)、エポチロンB(抗癌剤)が挙げられる)、(4)脂肪酸合成経路、(5)DAHP(3-デオキシ-D-アラビノヘプツロソン酸?-リン酸)合成経路、(6)潜在的バイオ燃料(短鎖アルコール及びアルカン、脂肪酸メチルエステル及び脂肪アルコール、イソプレノイドなど)を生成する経路などが含まれるが、これらに限定されない。
【0430】
ネットワークとカスケード
【0431】
本明細書に開示される方法は、制御の統合ネットワーク(例えば、カスケード又は複数のカスケード)を設計するために使用することができる。例えば、ガイドRNA及びB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントを使用して、別のDNAターゲティングRNA又は別のB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントの発現を制御(例えば、調節、例えば、増加、減少)することができる。例えば、第1のガイドRNAは、第1のB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントとは異なる機能(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性など)を有する第2の融合dB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドの転写の調節を標的とするように設計され得る。いくつかの実施形態では、第2の融合dB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドは、第1のガイドRNAと相互作用しないように選択され得る。いくつかの実施形態では、第2の融合dB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドは、第1のガイドRNAと相互作用するように選択され得る。いくつかのそのような場合、2つ(又はそれ以上)のdB-GEn.1又はB-GEn.2タンパク質の活性は(例えば、ポリペプチドが反対の活性を有する場合)競合し得るか、又は(例えば、ポリペプチドが類似又は相乗活性を有する場合)相乗し得る。同様に、上記のように、ネットワーク中の複合体(例えば、ガイドRNA/dB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチド)のいずれも、他のガイドRNA又はdB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチドを制御するように設計され得る。ガイドRNA及びB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントは、いずれかの所望のDNA配列を標的とすることができるので、本明細書に記載の方法を使用して、いずれかの所望の標的の発現を制御及び調節することができる。設計され得る統合ネットワーク(例えば、相互作用のカスケード)は非常に単純から非常に複雑までの範囲であり、限定されない。
【0432】
2つ以上の成分(例えば、ガイドRNA及びdB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチド)がそれぞれ別のガイドRNA/dB-GEn.1又はB-GEn.2ポリペプチド複合体の調節制御下にあるネットワークにおいて、ネットワークの1つの成分の発現レベルは、ネットワークの別の成分の発現レベルに影響を及ぼし得る(例えば、発現を増加又は減少させ得る)。この機構を介して、1つの成分の発現は、同じネットワークにおける異なる成分の発現に影響を及ぼし得、ネットワークは、他の成分の発現を増加させる成分の混合物、並びに他の成分の発現を減少させる成分を含み得る。当業者によって容易に理解されるように、1つの成分の発現レベルが1つ又は複数の異なる成分の発現レベルに影響を及ぼし得る上記の例は、例示目的のためであり、限定するものではない。1つ又は複数の成分が操作可能であるように(例えば、実験制御、例えば、温度制御;薬物制御、例えば、薬物誘導制御;光制御などの下で)改変される場合、追加の複雑な層が、任意選択でネットワークに導入され得る。
【0433】
1つの非限定的な例として、第1のガイドRNAは、標的治療/代謝遺伝子の発現を制御する第2のガイドRNAのプロモーターに結合することができる。そのような場合、第1のガイドRNAの条件的発現は、治療/代謝遺伝子を間接的に活性化する。このタイプのRNAカスケードは例えば、リプレッサーを活性化因子に容易に変換するために有用であり、標的遺伝子の発現のロジック又はダイナミクスを制御するために使用することができる。
【0434】
転写調節方法はまた、創薬及び標的検証のために使用することができる。
【0435】
疾患又は状態を処置する方法
【0436】
本開示のいくつかの態様では、ガイドRNA及び/又はB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント及び/又はドナーポリヌクレオチドは、遺伝子治療などの目的のために、例えば、疾患を処置するために、又は抗ウイルス、抗病原性、若しくは抗癌治療剤として、農業における遺伝子改変生物の産生のために、又は生物学的研究のために、イン・ビボ(in vivo)で細胞DNAを改変するために用いられる。これらのイン・ビボ(in vivo)実施形態において、(i)ガイドRNA又はgRNAをコードする核酸;(ii)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び/又は(iii)ドナーポリヌクレオチドを含むCRISPR/B-GEn.1又はB-GEn.2系の成分は、個体に投与される。投与は、被験体へのペプチド、小分子及び核酸の投与のための当技術分野で周知のいずれかの方法によるものであり得る。CRISPR/B-GEn.1又はB-GEn.2系の成分は、様々な製剤に組み込むことができる。より具体的には、本開示のCRISPR/B-GEn.1又はB-GEn.2系の成分が、適切な薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせることによって医薬組成物に製剤化することができる。
【0437】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるものは、(i)ガイドRNA又はgRNAをコードする核酸;(ii)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び/又は(iii)薬学的に許容されるビヒクル中に存在するドナーポリヌクレオチドを含むCRISPR/B-GEn.1又はB-GEn.2系の成分を含む医薬調製物又は組成物である。「薬学的に許容されるビヒクル」は、ヒトなどの哺乳動物における使用のために、連邦若しくは州政府の規制当局によって承認された、又は米国薬局方若しくは他の一般的に認識されている薬局方に列挙されたビヒクルであり得る。用語「ビヒクル」は、哺乳動物への投与のために本開示の化合物と製剤化される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は担体を指す。そのような薬学的ビヒクルは、脂質、例えばリポソーム、例えばリポソームデンドリマー;液体、例えば水及び油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物又は合成由来のもの、生理食塩水;アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイダルシリカ、尿素などであり得る。さらに、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤を使用することができる。医薬組成物は、固体、半固体、液体又は気体の形態、例えば、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル、ミクロスフェア、及びエアロゾルの製剤に製剤化することができる。したがって、CRISPR/B-GEn.1又はB-GEn.2系の成分の投与は、経口、口腔、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮、気管内、眼内などの投与を含む様々な方法で達成することができる。活性薬剤は投与後に全身性であってもよく、又は局所投与、壁内投与、又は移植部位で活性用量を保持するように作用するインプラントの使用によって局在化されてもよい。活性薬剤は、即時活性のために製剤化されてもよく、又は持続放出のために製剤化されてもよい。
【0438】
いくつかの状態、特に中枢神経系の状態については、血液脳関門(BBB)を通過する薬剤を製剤化することが必要であり得る。BBBを介する薬物送達のための1つの戦略は、マンニトール又はロイコトリエンなどの浸透圧手段によるか、又はブラジキニンなどの血管作用物質の使用による生化学的のいずれかによるBBBの破壊を伴う。脳腫瘍に対する特異的薬剤を標的とするためにBBB開口を使用する可能性もまた、選択肢である。BBB破壊剤は、組成物が血管内注射によって投与される場合、本開示の治療組成物と同時投与することができる。BBBを通過させるための他の戦略は、カベオリン-1媒介性トランスサイトーシス、グルコース及びアミノ酸担体などの担体媒介性輸送体、インスリン又はトランスフェリンの受容体媒介性トランスサイトーシス、並びにasp-糖タンパク質などの活性排出輸送体を含む、内因性輸送系の使用を伴い得る。活性輸送部分はまた、血管の内皮壁を横切る輸送を容易にするために、本開示において使用するための治療化合物にコンジュゲートされ得る。加えて、又は代替的に、BBBの背後への治療薬の薬物送達は、局所送達、例えばクモ膜下腔内送達による、例えば、オンマヤ(Ommaya)リザーバを通して(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,222,982号及び第5385582号を参照されたい);ボーラス注射、例えば、注射器による、例えば、硝子体内又は頭蓋内に;持続注入、例えば、カニューレ挿入による、例えば、対流ありで(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第20070254842号を参照されたい);又は薬剤が可逆的に固定されたデバイスを移植することによる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第20080081064号及び第20090196903号を参照されたい)ことができる。
【0439】
一般に、(i)ガイドRNA又はgRNAをコードする核酸;(ii)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び/又は(iii)ドナーポリヌクレオチドを含む、CRISPR/B-GEn.1又はB-GEn.2系の成分の有効量が提供される。エクス・ビボ(ex vivo)方法に関して上述したように、イン・ビボ(in vivo)でのCRISPR/B-GEn.1又はB-GEn.2系の成分の有効量又は有効用量は、陰性対照、例えば、空のベクター又は無関係なポリペプチドと接触させた細胞と比較して、2つの相同配列間で観察される組換えの量の2倍以上の増加を誘導する量である。組換えの量は、いずれかの好適な方法によって、例えば、上記に記載され、当技術分野で知られているように、測定することができる。投与されるべきCRISPR/B-GEn.1又はB-GEn.2系の成分の有効量又は有効用量の計算は、当業者の技術の範囲内であり、当業者には日常的であろう。投与される最終量は、投与経路、及び処置される障害又は状態の性質に依存する。
【0440】
特定の対象に与えられる有効量は、様々な要因に依存し、そのうちのいくつかは、対象ごとに異なる。有能な臨床医は、必要に応じて疾患状態の進行を停止又は逆転させるために対象に投与する治療剤の有効量を決定することができる。LD50動物データ、及び薬剤に利用可能な他の情報を利用して、臨床医は、投与経路に応じて、個体のための最大安全用量を決定することができる。例えば、治療用組成物が投与される体液の量が多いことを考慮すると、静脈内投与される用量は、髄腔内投与される用量よりも多くてもよい。同様に、身体から迅速に除去される組成物は、治療濃度を維持するために、より高い用量で、又は反復用量で投与され得る。通常の技術を利用して、有能な臨床医は、日常的な臨床試験の過程で特定の治療薬の投薬量を最適化することができる。
【0441】
薬剤に含めるために、CRISPR/B-GEn.1又はB-GEn.2系の成分は、好適な商業的供給源から得ることができる。一般的な命題として、用量あたり非経口的に投与されるCRISPR/B-GEn.1又はB-GEn.2系の成分の薬学的に有効な総量は、用量応答曲線によって測定することができる範囲内である。
【0442】
CRISPR/B-GEn.1又はB-GEn.2系の成分に基づく治療、例えば、(i)ガイドRNA又はgRNAをコードする核酸;(ii)B-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアントをコードするコドン最適化ポリヌクレオチド配列を含む核酸、又はその核酸から発現されるB-GEn.1若しくはB-GEn.2ポリペプチド又はそのバリアント;及び/又は(iii)ドナーポリヌクレオチドの治療的投与に使用される調製物は、無菌でなければならない。無菌性は、無菌濾過膜(例えば、0.2マイクロメートルの膜)を通した濾過によって容易に達成される。治療用組成物は、無菌取出口を有する容器、例えば皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静注液バッグ又はバイアルに入れられる。CRISPR/B-GEn.1又はB-GEn.2系の成分に基づく治療は、ユニット又は多用量容器、例えば、密封アンプル又はバイアル中に、水溶液として、又は再構成のための凍結乾燥製剤として保存することができる。凍結乾燥製剤の例として、10mlバイアルを5mlの無菌濾過された化合物の1%(w/v)水溶液で満たし、得られた混合物を凍結乾燥する。輸液は、静菌注射用水を用いて凍結乾燥化合物を再構成することによって調製される。
【0443】
医薬組成物は、所望の製剤に応じて、動物又はヒト投与のための医薬組成物を製剤化するために一般に使用されるビヒクルとして定義され、薬学的に許容される、希釈剤の非毒性担体を含むことができる。希釈剤は、組み合わせの生物学的活性に影響を与えないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、緩衝水、生理食塩水、PBS、リンゲル液、デキストロース溶液、及びハンクス溶液である。さらに、医薬組成物又は製剤は、他の担体、アジュバント、又は非毒性、非治療的、非免疫原性安定剤、賦形剤などを含むことができる。組成物はまた、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤、湿潤剤、並びに洗剤などの、生理学的条件に近い追加の物質を含むことができる。
【0444】
組成物はまた、例えば抗酸化剤などの様々な安定化剤のいずれかを含むことができる。医薬組成物がポリペプチドを含む場合、ポリペプチドは、ポリペプチドのイン・ビボ(in vivo)安定性を増強するか、又はそうでなければその薬理学的特性を増強する(例えば、ポリペプチドの半減期を増加させ、その毒性を低下させ、溶解性又は取り込みを増強する)様々な周知の化合物と複合体化することができる。そのような修飾剤又は錯化剤の例としては、硫酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩及びリン酸塩が挙げられる。組成物の核酸又はポリペプチドはまた、それらのイン・ビボ(in vivo)属性を増強する分子と複合体化され得る。そのような分子としては、例えば、炭水化物、ポリアミン、アミノ酸、他のペプチド、イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン)、及び脂質が挙げられる。
【0445】
様々な種類の投与に適した製剤に関するさらなるガイダンスは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Company,Philadelphia,Pa.,第20版(2003)及びThe United States Pharmacopeia:The National Formulary (USP 24 NF19)1999年に出版、に見出すことができる。薬物送達のための方法の簡単な概説については、Langer、Science 249:1527-1533(1990)を参照されたい。
【0446】
医薬組成物は、予防的及び/又は治療的処置のために投与することができる。活性成分の毒性及び治療有効性は例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定することを含む、細胞培養物及び/又は実験動物における標準的な薬学的手順に従って決定することができる。毒性及び治療効果の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比として表すことができる。大きな治療指数を示す治療が一般に好ましい。
【0447】
細胞培養及び/又は動物研究から得られたデータは、ヒトのための用量の範囲を処方する際に使用することができる。活性成分の投与量は一般に、低毒性のED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。医薬組成物を製剤化するために使用される成分は一般に高純度であり、潜在的に有害な夾雑物を実質的に含まない(例えば、少なくとも国家食品(National Food)(NF)グレード、一般に少なくとも分析グレード、より典型的には少なくとも医薬グレード)。さらに、イン・ビボ(in vivo)での使用を意図した組成物は、一般に無菌である。所与の化合物を使用前に合成する必要がある限り、得られる生成物は一般に、合成又は精製プロセス中に存在し得る、いずれかの潜在的に有毒な薬剤、特にいずれかのエンドトキシンを実質的に含まない。非経口投与のための組成物も、無菌であり、実質的に等張であり、GMP条件下で製造される。
【0448】
特定の対象に与えられる治療用組成物の有効量は様々な要因に依存し、そのうちのいくつかは、対象ごとに異なる。有能な臨床医は、必要に応じて疾患状態の進行を停止又は逆転させるために対象に投与する治療剤の有効量を決定することができる。LD50動物データ、及び薬剤に利用可能な他の情報を利用して、臨床医は、投与経路に応じて、個体のための最大安全用量を決定することができる。例えば、治療用組成物が投与される体液の量が多いことを考慮すると、静脈内投与される用量は、髄腔内投与される用量よりも多くてもよい。同様に、身体から迅速に除去される組成物は、治療濃度を維持するために、より高い用量で、又は反復用量で投与され得る。通常の技術を利用して、有能な臨床医は、日常的な臨床試験の過程で特定の治療薬の投薬量を最適化することができる。
【0449】
対照への処置の投与の数は変動し得る。遺伝子改変細胞を対象に導入することは1回限りの事象であり得るが、特定の状況ではそのような処置が限られた期間の間、改善を誘発し得、継続的な一連の反復処置を必要とし得る。特定の状況では、効果が観察される前に、遺伝子改変細胞の複数回投与が必要とされ得る。正確なプロトコールは、疾患又は状態、疾患の段階、及び治療される個々の対象のパラメーターに依存する。
【0450】
同等物
【0451】
全ての技術的特徴は、そのような特徴の全ての可能な組み合わせにおいて個々に組み合わせることができる。
【0452】
本発明は、その精神又は本質的特性から逸脱することなく、他の特定の形態内で実施されてもよい。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載される本発明を限定するのではなく、全ての点で例示的であると考えられるべきである。
【実施例】
【0453】
以下の非限定的な実施例は、本明細書に記載される本発明の実施形態をさらに例示する。
【0454】
実施例1:
【0455】
新規V型ヌクレアーゼの実験的特徴付け
【0456】
可能性のあるエフェクター配列を、社内微生物データベースのゲノム解析から同定した。B-GEn.1及びB-GEn.2のDNAシークエンスを合成し(Twist)、NdeI及びXhoIを用いてpET29ベースのカスタマイズされた発現ベクター(pBLR107)にクローニングした(配列番号:7は、このベクターにB-GEn.1の完全なプラスミドシークエンスを表し、その結果得られたプラスミドは、B-GEn.1_full_plasmid_pBLR373と命名され、配列番号:8は、このベクターにB-GEn.2の完全なプラスミドシークエンスを表し、その結果得られたプラスミドは、B-GEn.2_full_plasmid_pBLRと命名される)。tracr含有DNAを得るために、エフェクターORFを取り囲む遺伝子内領域を連結し、RNA分子の発現のためにカスタマイズされたColE1含有ベクター(任意で順方向及び逆方向のT7配向を有し、それぞれpBLR150及びpBLR151と呼ばれる)にクローニングした。プラスミドベースのスクリーニングのために、2つの合成スペーサー配列(PAMライブラリープラスミドと一致する)をCRISPRリピート領域に隣接させ、ssDNAオリゴマーとして順序付け、その後、T7プロモーターの制御下でpBLR107にクローニングした。この系は、
図1にも示されている。
【0457】
活性についてスクリーニングするために、RTS(商標)100 E.coli HY Kit(Biorabbit)を用いて、無細胞発現系においてプラスミドを発現させた。簡単に説明すると、各プラスミド250ngを、サーモサイクラー中、30℃で6時間、20μlの総試料容量で製造業者の指示に従って発現させた。2μlの発現試料と、10mM Tris pH7.5、100mM NaCl及び50mM MgCl2で緩衝化した50nM PAMライブラリープラスミドを用いて、37℃で4時間、全量10μlで、プラスミドDNAのPAM依存性切断を行った。続いて、SPRIビーズ(SpeedBeads(商標)磁性カルボキシレート改変粒子;Sigma)を用いてプラスミドDNAを試料から精製し、EB(Qiagen)を用いて10μl中に溶出した。スタガードカット線形化プラスミドの末端修復のために、5μlの溶出液を、製造業者の指示に従って、NEB Next Ultra II End Repair/dA-Tailing Module(New England Biolabs)と共に20℃で30分間インキュベートした。続いて、SPRIビーズ(SpeedBeads(商標)磁性カルボキシレート改変粒子;Sigma)を用いてDNAを再び精製し、EB(Qiagen)を用いて10μl中に溶出した。最後に、Karvelis及び同僚(DOI 10.1186/s13059-015-818-7)によって記載されているように、アダプターライゲーションを、総容量12μlの1xBlunt TA Ligase Mastermix(NEB)中の1μM二本鎖アダプターを使用して行った。切断されたプラスミド配列を得るために、3μlのアダプターライゲーションサンプルを、1.25μlの10uMバーコード化フォワード及びリバースプライマー、並びに12.5ulのQ5 High-Fidelity 2x Master Mix(NEB)及び7.5ulの水と混合した。増幅のために、以下の設定を使用した:初期変性(98℃で30秒)、増幅のための30xサイクル(98℃で10秒、66℃で30秒及び72℃で30秒)及び最終伸長(72℃で2分)。プライマーは、5’末端に5個の追加のヌクレオチドを付加することによってバーコードされた。その後、全てのPCR反応物をプールし、製造業者の指示に従ってSPRIビーズを1:1の比で使用して精製した。次世代シーケンシングのために、2ugのバーコード化及び精製されたアンプリコンを、ライブラリー調製(Prep.)のための入力として使用した。アンプリコンプールは、末端修復され、dA-尾部化され(NEBNext Ultra II Repair/dA-Tailing Module、NEB)、続いてIlluminaバーコードライゲーションされた(Blunt/TA Ligase Master Mix、NEB)。正しいアンプリコンサイズをゲル電気泳動(E-gel EX 2%、ThermoFisher)によってチェックした。ライブラリーの濃度は、dsDNA HS Kit(ThermoFisher)を用いてQubit(ThermoFisher)で測定した。5%PhiXスパイクインを含む10pMライブラリーを、MiSeq 300PE v2ケミストリー(Illumina)を使用する次世代シークエンシングのための入力として使用した。
【0458】
バイオインフォマティクス分析
【0459】
PAM配列を決定するために、アダプター配列由来のモチーフ及び標的部位の上流のプラスミド配列由来のモチーフの両方を含む全てのNGSリードを分析した。最初に、両方のモチーフを含む全ての読み取りについて、2つのモチーフ間の介在配列の長さを決定した。次いで、最も頻繁に生じる介在配列長を有するリードのサブセットを別々に分析した。このリードのサブセットについて、8N-PAMライブラリーセグメント上で観察された全てのユニークな配列を、それらのリードカウントと共に決定した。最も頻繁に生じる100個の配列を使用して、配列モチーフを作製した。結果を用いてテーブル2を作成した。
【0460】
実施例2:
【0461】
哺乳動物細胞におけるヌクレアーゼ活性を検出するためのスクリーニング方法
【0462】
細胞培養
【0463】
HEK 293T細胞(ATCC(登録商標)CRL-3216(商標))を、10%FBS及び1%Pen/Strepを含有するDMEM中で培養した。細胞をT75フラスコ中で培養し、2~3日毎に分割した。
【0464】
トランスフェクション
【0465】
トランスフェクションの1日前に、細胞を、ポリ-D-リシン被覆96ウェルプレート(Poly-D-Lysine CELLCOAT(登録商標);Greiner)に、ウェル当たり12.000細胞の密度で播種した。翌日、培地を交換し、LipoD293(商標)In Vitro DNAトランスフェクション試薬(SignaGen)を製造業者の指示に従って用いて、細胞を140ngのヌクレアーゼプラスミド及び60ngのsgRNAプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクション混合物を翌日交換し、標準培地と交換した。トランスフェクションの3日後、細胞を下流DNA抽出のために回収した。
【0466】
粗DNA抽出及び増幅
【0467】
回収した細胞を100ulのPBSに再懸濁し、60ulを新しい96ウェルプレートに移し、ペレット化した。その後、上清を除去し、25μg/mlのプロテイナーゼK(Thermo Scientific)を添加した0.05%SDSを含む10mM Tris、pH7.0の60μlを各ウェルに添加し、十分に混合した。粗DNA試料を37°Cで1時間インキュベートし、80°Cで30分間加熱し、3.5μlの粗DNAを1.25μlの10uMバーコード化フォワード及びリバースプライマー並びに12.5ulのQ5 High-Fidelity 2x Master Mix(NEB)及び6.5ulの水と混合した。増幅のために、以下の設定を全てのアンプリコンに使用した:初期変性(98℃で30秒)、増幅のための30xサイクル(98℃で10秒、66℃で30秒及び72℃で30秒)及び最終伸長(72℃で2分)。プライマーは、5’末端に5個の追加のヌクレオチドを付加することによってバーコードされた。その後、全てのPCR反応物をプールし、製造業者の指示に従ってSPRIビーズを1:1の比で使用して精製した。
【0468】
ライブラリー調製と次世代シーケンシング
【0469】
2ugのバーコード化及び精製されたアンプリコンを、ライブラリー調製のための入力として使用した。アンプリコンプールは、末端修復され、dA-尾部化され(NEBNext Ultra II Repair/dA-Tailing Module、NEB)、続いてIlluminaバーコードライゲーションした(Blunt/TA Ligase Master Mix、NEB)。正しいアンプリコンサイズをゲル電気泳動(E-gel EX2%、ThermoFisher)によってチェックした。ライブラリーの濃度は、dsDNA HS Kit(ThermoFisher)を用いてQubit(ThermoFisher)で測定した。5%PhiXスパイクインを含む10pMライブラリーを、MiSeq 300PE v2ケミストリー(Illumina)を使用する次世代シークエンシングのための入力として使用した。
【0470】
NGS分析
【0471】
生のfastqリードは、カットアダプトバージョン1.18(http://dx.doi.org/10.14806/ej.17.1.200)を使用して、Q30の最低クオリティスコアで、クオリティトリミングした。フィルタリングされたリードを、fastq-joinバージョン1.3.1(doi:10.2174/1875036201307010001)を使用して結合し、及びNat Commun.2021 Jul 9;12(1):4219.doi:10.1038/s41467-021-24454-5,Supplementary Material,Section entitled:“Amplicon sequencing(AmpSeq) for on- and off-target analysis and NGS analysis”に記載されているカスタム逆多重化スクリプトを使用して逆多重化した。その後、逆多重化されたfastqファイルをCRISPResso v 1.0.13(doi:10.1038/nbt.3583)で分析した。この分析の結果をテーブル4に示す(一方、平均活性は、3つの個々の実験から得られ、B-GEn.1を有するpBLR709及びB-GEn.2を有するpBLR710)。
【0472】
テーブル4
【0473】
【0474】
実施例3:
【0475】
新規sgRNA設計を用いた哺乳動物細胞におけるヌクレアーゼ活性を検出するためのスクリーニング方法
【0476】
配列番号:40~44に従った新規なsgRNA設計及び7つの追加のより少ない又は非活性の設計の活性を試験するために(実施例2による実験は、これらのsgRNA配列を用いて実施した)。2つの異なる標的遺伝子座を用いた:
TCRA_ガイド1:NCBI参照配列:NC_000014.9 REGION:21724060..21724082(逆相補体は、標的特異的ガイド配列を表す)。
TCRA_ガイド4:NCBI参照配列:NC_000014.9 REGION:21724157..21724179(逆相補体は標的特異的ガイド配列を表す)。
【0477】
いずれも2022年6月8日のhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/568815584より評価。
【0478】
【配列表】
【国際調査報告】