(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ベーパーチャンバのウィック部形成方法およびベーパーチャンバの製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20240709BHJP
F28D 15/04 20060101ALI20240709BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20240709BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
F28D15/02 106Z
F28D15/02 101H
F28D15/04 A
B23K26/364
H05K7/20 Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575716
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 KR2022008279
(87)【国際公開番号】W WO2022260499
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0076257
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0071314
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508112782
【氏名又は名称】ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン ヒョン チョ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ミン リ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ ホ ジャン
(72)【発明者】
【氏名】カン ヒョン リ
【テーマコード(参考)】
4E168
5E322
【Fターム(参考)】
4E168AD01
4E168DA43
5E322AA05
5E322AA10
5E322DB12
(57)【要約】
【課題】ベーパーチャンバの製品生産性を向上させる。
【解決手段】ベーパーチャンバのウィック部形成方法は、冷媒が収容されるチャンバボディの母材を準備する母材準備ステップと、前記母材準備ステップにより準備された母材の一側にレーザ照射器をセットするレーザ設置ステップと、前記レーザ設置ステップにより設けられた前記レーザ照射器を用いて、所定の照射されたレーザビームで所定の大きさのウィック部を所定の掘り込みパターン形状に加工するウィック部加工ステップとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が収容されるチャンバボディの母材を準備する母材準備ステップと、
前記母材準備ステップにより準備された母材の一側にレーザ照射器をセットするレーザ設置ステップと、
前記レーザ設置ステップにより設けられた前記レーザ照射器を用いて、所定の照射されたレーザビームで所定の大きさのウィック部を所定の掘り込みパターン形状に加工するウィック部加工ステップと、を含む、ベーパーチャンバのウィック部形成方法。
【請求項2】
前記ウィック部加工ステップは、前記レーザビームは所定のマークスピード(Mark Speed)で移動時間が設定されている、請求項1に記載のベーパーチャンバのウィック部形成方法。
【請求項3】
前記マークスピードは、300mm/sに設定される、請求項2に記載のベーパーチャンバのウィック部形成方法。
【請求項4】
前記ウィック部加工ステップは、前記レーザビームの発振周波数が20kHz~40kHzの範囲内に設定されかつ、前記レーザビームはpulse modeで発振する、請求項1に記載のベーパーチャンバのウィック部形成方法。
【請求項5】
前記レーザビームが照射されるライン(line)間隔は、最大0.01mmを超えないように設定されている、請求項1に記載のベーパーチャンバのウィック部形成方法。
【請求項6】
前記レーザ照射器によって前記母材に形成される前記ウィック部は、Cross、Blockおよび「己」形状のいずれか1つのパターンに加工される、請求項1に記載のベーパーチャンバのウィック部形成方法。
【請求項7】
冷媒が収容されるチャンバボディの母材を準備する母材準備ステップと、
前記母材準備ステップにより準備された母材の一側にレーザ照射器をセットするレーザ設置ステップと、
前記レーザ設置ステップにより設けられた前記レーザ照射器を用いて、所定の照射されたレーザビームで所定の大きさのウィック部を所定の掘り込みパターン形状に加工するウィック部加工ステップと、
前記ウィック部加工ステップにより形成された前記ウィック部を覆うように焼結工程で多数の気孔を含むように多孔体で形成されたウィックボディの加工平面である外側面を、前記チャンバボディの内側面に結合させるウィックボディ結合ステップと、を含む、ベーパーチャンバの製造方法。
【請求項8】
前記ウィックボディ結合ステップは、前記チャンバボディの内側面に形成された前記ウィック部と、前記ウィックボディの表面に露出した多数の気孔の少なくとも一部とが相互連通するように結合させるステップである、請求項7に記載のベーパーチャンバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーパーチャンバのウィック部形成方法およびベーパーチャンバの製造方法(METHOD FOR FORMING WICK PART FOR VAPOR-CHAMBER AND METHOD FOR MANUFACTURIG VAPOR CHAMBER)に関し、より詳しくは、アルミニウム素材の母材にレーザ照射器を用いて精密かつ迅速にウィック部を形成できるベーパーチャンバのウィック部形成方法およびベーパーチャンバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子装置を構成する電子部品は、動作時に熱を発生する。例えば、コンピュータやサーバおよび高性能アンテナ装置などの電子装置は、ICチップ、CPUおよび送受信素子を含み、このような電子部品は、動作時に多量の熱を発生する。熱を発生させる電子部品(以下、「発熱素子」という)は冷却されなければならず、冷却されない場合、その性能が著しく低下したり、場合によっては損傷して作動が困難になりうる。
【0003】
一方、最近の電子装置は、スリム化、高集積化および高性能化などによって部品間の間隔が狭くなり、発熱負荷が増加しているのが現状である。このため、発熱素子の冷却はほぼ必須であり、大部分の電子装置には発熱素子を冷却させるための冷却装置が設けられている。
【0004】
冷却装置の種類には、周辺の空気を循環させて冷却させる空冷方式と、冷媒を循環させて冷却させる冷媒方式とが挙げられる。空冷方式は、能動的に空気を循環させる送風ファンが必須として備えられなければならない一方、冷媒方式は、冷媒の相変化を起こすために気相冷媒を圧縮させる圧縮機が必須として備えられなければならない。
【0005】
送風ファンと圧縮機を必須として備える条件は、電子装置のサイズを増大させるだけでなく、消費電力を増加させる問題点がある。
【0006】
したがって、最近は、圧縮機を備えなくても、周辺の温度差によって所定の冷媒が相変化しながら循環するように備えられたヒートパイプ(heat-pipe)タイプまたはベーパーチャンバ(vapor chamber)タイプの冷却装置が多く活用されている。
【0007】
ヒートパイプタイプまたはベーパーチャンバタイプの冷却装置は、中空(または内部空間)が形成され、熱伝導性材質で備えられたパイプ形状(またはパネル)のボディチューブ(またはボディパネル)の内部に、多孔性体のキャピラリウィック部(Capillary Wick、毛細管芯部)が焼結方式で製造される。
【0008】
ところが、キャピラリウィック部が焼結方式だけで製造されるという点で、焼結過程および焼結条件など多様な制約があることから、製品の生産性が低下する問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであって、レーザを活用したキャピラリウィック部の形状を形成することにより、製品の生産性を向上させることができるベーパーチャンバのウィック部形成方法およびベーパーチャンバの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、レーザ照射器を用いて多様なパターン形状を有するウィック部を製造可能なため、放熱設計の多様性を確保できるベーパーチャンバのウィック部形成方法およびベーパーチャンバの製造方法を提供することを他の目的とする。
【0011】
本発明の課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるベーパーチャンバのウィック部形成方法の一実施例は、冷媒が収容されるチャンバボディの母材を準備する母材準備ステップと、前記母材準備ステップにより準備された母材の一側にレーザ照射器をセットするレーザ設置ステップと、前記レーザ設置ステップにより設けられた前記レーザ照射器を用いて、所定の照射されたレーザビームで所定の大きさのウィック部を所定の掘り込みパターン形状に加工するウィック部加工ステップとを含む。
【0013】
ここで、前記ウィック部加工ステップは、前記レーザビームは所定のマークスピード(Mark Speed)で移動時間が設定可能である。
【0014】
また、前記マークスピードは、300mm/sに設定されてもよい。
【0015】
また、前記ウィック部加工ステップは、前記レーザビームの発振周波数が20kHz~40kHzの範囲内に設定されかつ、前記レーザビームはpulse modeで発振できる。
【0016】
また、前記レーザビームが照射されるライン(line)間隔は、最大0.01mmであってもよい。
【0017】
また、前記レーザ照射器によって前記母材に形成される前記ウィック部は、Cross、Blockおよび「己」形状のいずれか1つのパターンに加工される。
【0018】
本発明の一実施例によるベーパーチャンバの製造方法は、冷媒が収容されるチャンバボディの母材を準備する母材準備ステップと、前記母材準備ステップにより準備された母材の一側にレーザ照射器をセットするレーザ設置ステップと、前記レーザ設置ステップにより設けられた前記レーザ照射器を用いて、所定の照射されたレーザビームで所定の大きさのウィック部を所定の掘り込みパターン形状に加工するウィック部加工ステップと、前記ウィック部加工ステップにより形成された前記ウィック部を覆うように焼結工程で多数の気孔を含むように多孔体で形成されたウィックボディの加工平面である外側面を、前記チャンバボディの内側面に結合させるウィックボディ結合ステップとを含む。
【0019】
ここで、前記ウィックボディ結合ステップは、前記チャンバボディの内側面に形成された前記ウィック部と、前記ウィックボディの表面に露出した多数の気孔の少なくとも一部とが相互連通するように結合させるステップであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるベーパーチャンバのウィック部形成方法およびベーパーチャンバの製造方法の一実施例によれば、次のような多様な効果を達成することができる。
【0021】
第一、毛細管力を形成するウィック部を形成するにあたり、もっぱら焼結方式にのみ依存するわけではないので、焼結条件などの制約を抜け出して、迅速なベーパーチャンバの製造が可能という効果を有する。
【0022】
第二、レーザの精密調整によりキャピラリチューブ(毛細管)効果を有するベーパーチャンバのウィック部の形成が容易という効果を有する。
【0023】
第三、使用される冷媒の種類および材料自体の表面張力を考慮してウィック部の大きさを精密調整可能なため、製品の放熱性能を向上させる効果を有する。
【0024】
第四、掘り込みパターン形状にチャンバボディの内側面にウィック部が加工形成されることにより、冷媒が相変化しながら流動する面積として冷媒との接触面積を相対的に増加させて放熱性能を向上させる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施例によるベーパーチャンバのウィック部形成方法を示すフローブロック図である。
【
図2】本発明の一実施例によるベーパーチャンバを示す平面図である。
【
図3】
図2のA-A線に沿った断面図であって、ベーパーチャンバを通した熱伝達原理を説明するための断面図である。
【
図4】
図1のレーザ照射器を用いた実際のパターン写真およびその部分拡大図である。
【
図5】
図1のレーザ照射器を用いたライン間隔を示す平面図である。
【
図6A】
図1のレーザ照射器によって母材に形成されるウィック部のパターン形状の実施例を示す平面写真である。
【
図6B】
図1のレーザ照射器によって母材に形成されるウィック部のパターン形状の実施例を示す平面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施例によるベーパーチャンバのウィック部形成方法およびベーパーチャンバの製造方法を、添付した図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
各図面の構成要素に参照符号を付すにあたり、同一の構成要素については、たとえ他の図面上に表示されてもできるだけ同一の符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本発明の実施例を説明するにあたり、かかる公知の構成または機能に関する具体的な説明が本発明の実施例に対する理解を妨げると判断された場合、その詳細な説明は省略する。
【0028】
本発明の実施例の構成要素を説明するにあたり、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。このような用語はその構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語によって当該構成要素の本質や順番または手順などが限定されない。また、他に断らない限り、技術的または科学的な用語を含む、ここで使用されるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有すると解釈されなければならず、本出願において明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない。
【0029】
図1は、本発明の一実施例によるベーパーチャンバのウィック部形成方法を示すフローブロック図であり、
図2は、本発明の一実施例によるベーパーチャンバを示す平面図であり、
図3は、
図2のA-A線に沿った断面図であって、ベーパーチャンバを通した熱伝達原理を説明するための断面図である。
【0030】
本発明の一実施例の最終生産製品であるベーパーチャンバ(Vapor Chamber)は、圧縮機による冷媒の相変化誘導を除く概念の放熱方式を適用できる放熱部品の一つであって、圧縮機を用いずに大気圧状態でもっぱら外部から供給される熱によって相変化を起こしながら熱を伝達することにより、電気的に駆動されて発熱する特定の発熱素子を冷却させるように設計された代表的な放熱器である。
【0031】
より詳しくは、ベーパーチャンバ10は、
図2に示されるように、内部に所定の真空空間を形成し、冷媒が収容されるチャンバボディ20と、チャンバボディ20の内部に結合され、内部に充填された冷媒を流動させるための多数の気孔が形成された多孔体で備えられたウィックボディ30とを含むことができる。
【0032】
ウィックボディ30の外部表面は、
図3に示されるように、チャンバボディ20の内側面に密着するように平らな面を有するように切削加工されて備えられかつ、チャンバボディ20とウィックボディ30との間には、上述のように冷媒が充填されて流動することができる。
【0033】
ここで、ウィックボディ30に形成された多数の気孔は、気体状態の冷媒が流動したり、液体状態の冷媒が自体の表面張力によって外部に吐出されて、チャンバボディ20に形成された後述の各ウィック部(
図3の図面符号「P」参照)に吐出させる役割を果たす。各ウィック部Pを通して吐出された液体状態の冷媒は、後述のウィック部加工ステップS30により形成されたウィック部を通して少なくともチャンバボディ20の内側面とウィックボディ30の外側面との間に沿って一方向または他方向に移動できる。
【0034】
より詳しくは、ウィックボディ30は、焼結方式によって生成される部位であって、毛細管構造(Capillary tube)を有するように多孔性体で形成され、貯留された冷媒の熱接触面積を増加させることにより、液相冷媒から気相冷媒への相変化を促進させることはもちろん、気相冷媒に変化した冷媒を通過させる通路になる。
【0035】
仮に、
図3に示されるように、チャンバボディ20の厚さ方向の一側面に備えられた所定の熱源によって熱がチャンバボディ20を通して内側に伝達されると、内部に充填された冷媒は伝達される熱によって相変化を起こしながら液体状態に変化させて、チャンバボディ20の厚さ方向である気孔の外部に吐出させ、液体状態の冷媒は所定の形状のウィック部Pを介して表面張力およびcapillary forceによってチャンバボディ20の厚さ方向の他側面に熱を伝達させると同時に、液体状態の冷媒をチャンバボディ20の内側面に沿って移動させ、チャンバボディ20の厚さ方向の他側面に伝達された熱は外部へ放熱される原理を利用したのである。
【0036】
特に、毛細管力(capillary force)を形成するための重要な要素として、ウィックボディ30の外部表面が密着するチャンバボディ20の内側面には、チャンバボディ20の内側面に水平な方向に一定の大きさの流体経路を形成しなければならず、その大きさは冷媒として採用された流体の表面張力(またはAnti-Gravity)を考慮して設計されることが好ましい。
【0037】
参照として、チャンバボディ20とウィックボディ30との間に充填される冷媒は、アセトン、アンモニア、蒸留水のいずれか1つを含むことができる。充填される冷媒の種類によって表面張力またはAnti-Gravityの大きさが異なるので、後述のウィック部加工ステップS30により形成されるパターンの深さおよび幅の大きさを適切に設計変更する必要がある。
【0038】
ここで、本発明の一実施例は、ベーパーチャンバ10の内部に備えられるウィックボディ30のウィック部形成方法の重要な技術的特徴を開示する。
【0039】
本発明の一実施例によるベーパーチャンバのウィック部形成方法は、
図1に示されるように、ベーパーチャンバの構成のうちウィックボディ30を構成するチャンバボディ20である母材を準備する母材準備ステップS10と、母材準備ステップS10により準備された母材の一側にレーザ照射器をセットするレーザ設置ステップS20と、レーザ設置ステップS20により設けられたレーザ照射器を用いて、所定の照射されたレーザビームで所定の形状のウィック部Pを加工するウィック部加工ステップS30とを含む。
【0040】
母材準備ステップS10は、
図3に示されるように、チャンバボディ20を構成する母材として、後述のレーザ照射器によってウィック部Pが加工形成される前の熱伝導性素材(特に、アルミニウム素材)の母材を準備するステップとして定義することができる。
【0041】
従来は、焼結過程により製造された多数の気孔が形成されたウィックボディ30を母材として採用し、ウィックボディ30の外側面を平らな面に切削した後、切削された平らな面にウィック部を加工形成したが、ウィック部を形成するための母材であるウィックボディ30が必ず焼結過程を経て製造されなければならないという工程上の複雑さがあった。
【0042】
しかし、本発明の一実施例によるベーパーチャンバのウィック部形成方法の場合、ウィック部Pが形成される母材をウィックボディ30ではないチャンバボディ20に設定し、これを非常に簡明なレーザビームを用いた加工方式を採用することによって、より精密かつ簡明な工程で製造できるという利点を提供する。
【0043】
図4は、
図1のレーザ照射器を用いた実際のパターン写真およびその部分拡大図であり、
図5は、
図1のレーザ照射器を用いたライン間隔を示す平面図であり、
図6Aおよび
図6Bは、
図1のレーザ照射器によって母材に形成されるウィック部のパターン形状の実施例を示す平面写真である。
【0044】
レーザ設置ステップS20は、所定のビーム幅でレーザビームを照射するレーザ照射器を設置およびセットするステップである。
【0045】
すなわち、図示しないが、母材であるチャンバボディ20を加工旋盤上に固定させ、加工旋盤上で所定のビーム幅のレーザビームを照射できるレーザ照射器を設けるとともに、レーザ照射器のレーザビーム照射のための移動速度および移動方向を後述のパターン形状に合わせて設定するステップであってもよい。
【0046】
ここで、ウィック部加工ステップS30は、レーザビームを所定のマークスピード(Mark Speed)で移動時間を設定して、チャンバボディ20の内側面に相当する母材の一面に掘り込みパターン形状にウィック部Pを加工するステップであってもよい。
【0047】
この場合、マークスピードは、300mm/sに設定されてもよい。マークスピードが30mm/s超と過度に速く移動するように設定されると、レーザビーム形態で母材に伝達される熱量が少なすぎて所望のパターン形状を形成することができず、マークスピードが30mm/s未満と過度に遅く移動するように設定されると、レーザビーム形態で母材に伝達される熱量が大きすぎるので、母材の形状が要求されるウィック部の大きさより大きく変形される問題点が発生しうる。
【0048】
一方、従来ウィック部が焼結工程により製造されたウィックボディ30の平らに加工された表面に形成されていたのと比較すれば、ウィック部加工ステップS30は、チャンバボディ20の内側面に相当する部位に所定の掘り込みパターン形状に加工形成するステップであるという点で、従来より冷媒との接触面積がより増加するという利点がある。冷媒との接触面積の増加は微細であるが、製品の放熱性能を向上させるという利点につながる。
【0049】
また、ウィック部加工ステップS30は、レーザビームの発振周波数が20~40kHzの範囲内に設定されかつ、レーザビームはpulse modeで発振できる。特に、母材であるチャンバボディ20がアルミニウム素材として採用された場合、ウィック部Pの形成のためのレーザ照射器のレーザビームの発振周波数は上述した20~40kHzの範囲が最も適切である。
【0050】
また、レーザビームが照射されるライン(line)間隔は、
図5に示されるように、最大0.01mmであってもよい。
【0051】
ここで、ライン間隔が過度に広がると(すなわち、0.01mmを超えると)、毛細管力(Capiliary Force)がなく、流路が存在せず、Anti-Gravity特性を実現できないからである。チャンバボディ20とウィックボディ30との間に毛細管力が小さい場合には、内部の温度変化による冷媒の流動を考慮して、熱源部分は常に低い位置に位置させなければならず、放熱部分は常に高い位置に位置させなければならないという設計上の制限が生ずる。
【0052】
そのため、レーザビームによって照射されるライン間隔は、毛細管力が発生する限度で制限設計することが好ましく、熱源の位置と放熱位置の制限を除去するための1つの結果値として、レーザビームが照射されるラインの間隔である0.1mmは、重要な技術的意義を有する。
【0053】
一方、レーザ照射器によって前記ウィックボディ30に形成されるウィック部Pは、
図4に示されるようなチェック柄のパターン形状のみならず、
図6Aに示されるようなCrossパターン、および
図6Bに示されるようなBlockパターンのいずれか1つのパターンに加工されてもよい。
【0054】
さらに、図面に示さないが、熱源部位から放熱部位まで連続的につながるように「己」形状を有するパターン形状に加工できることは言うまでもない。
【0055】
本発明の一実施例によるベーパーチャンバのウィック部形成方法は、上述のように、レーザ照射器を用いて精密かつ迅速にウィック部Pを形成可能なため、製品の生産性を大きく向上させるという利点を提供する。
【0056】
一方、本発明の一実施例によるベーパーチャンバの製造方法は、上述したベーパーチャンバのウィック部形成方法によりパターン形状に加工されたウィック部Pを含むチャンバボディ20の内側面に、ウィックボディ30を結合させるウィックボディ結合ステップ(図面符号未表記)をさらに含む。
【0057】
より詳しくは、本発明の一実施例によるベーパーチャンバの製造方法は、母材準備ステップS10と、母材準備ステップにより準備された母材の一側にレーザ照射器をセットするレーザ設置ステップS20と、レーザ設置ステップS20により設けられたレーザ照射器を用いたウィック部加工ステップS30とにより、上述したチェック柄パターン、Crossパターン、Blockパターンおよび「己」パターン形状のいずれか1つのパターン形状のウィック部Pが形成されたチャンバボディ20の内側面に、多数の気孔を含むように多孔体で形成されたウィックボディ30を結合させるウィックボディ結合ステップの過程をさらに行うことができる。
【0058】
ここで、ウィックボディ結合ステップは、チャンバボディ20の内側面に形成されたウィック部Pと、ウィックボディ30の表面に露出した多数の気孔の少なくとも一部とが相互連通するように結合させるステップであってもよい。
【0059】
一方、ウィックボディ30は、多数の気孔を含む気孔体で形成するために、焼結工程により製造できる。
【0060】
より詳しくは、ウィックボディ30は、所定の金属材質(仮に、銅(Cu)材質)からなるウィック原料をパウダー状に準備する。この時、ウィック原料は、粒度が30~300umであり、純度は90~99%で採用されることが好ましい。
【0061】
ここでの焼結温度条件は、ウィック原料に添加剤を投入するか否かによって異なるが、添加剤のうちGlass fritを所定量投入した後の焼結温度は350~550℃/2hrが最も好まれる条件である。
【0062】
以上のような構成または工程からなる本発明の一実施例によるベーパーチャンバのウィック部形成方法およびベーパーチャンバの製造方法によれば、ウィックボディの製造時、焼結過程によりウィック部を形成していた従来の方法(工程)を抜け出して、ウィックボディ30との間に毛細管力を形成できるチャンバボディ20の内側面により精密なレーザ照射器を用いたパターン形状にウィック部Pを加工形成可能なため、工程上の利点とともに、放熱性能を向上させるという利点を提供することができる。
【0063】
これとともに、本発明の一実施例によるベーパーチャンバのウィック部形成方法およびベーパーチャンバの製造方法は、レーザの精密調整によりキャピラリチューブ(毛細管)効果を有するウィック部Pの製造が可能という点で、使用される冷媒の種類によって能動的な設計変更が可能という利点を提供する。
【0064】
以上、本発明の一実施例によるベーパーチャンバのウィック部形成方法およびベーパーチャンバの製造方法を、添付した図面を参照して詳細に説明した。しかし、本発明の実施例が必ずしも上述した一実施例により限定されるものではなく、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者による多様な変形および均等な範囲での実施が可能であることは言うまでもない。そのため、本発明の真の権利範囲は後述する特許請求の範囲によって定められる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、レーザを活用したキャピラリウィック部の形状を形成することにより、製品の生産性を向上させ、放熱設計の多様性を確保できるベーパーチャンバのウィック部形成方法およびベーパーチャンバの製造方法を提供する。
【符号の説明】
【0066】
10:ベーパーチャンバ
20:チャンバボディ
30:ウィックボディ
S10:母材準備ステップ
S20:レーザ設置ステップ
S30:ウィック部加工ステップ
P:ウィック部
【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が収容されるチャンバボディの母材を準備する母材準備ステップと、
前記母材準備ステップにより準備された母材の一側にレーザ照射器をセットするレーザ設置ステップと、
前記レーザ設置ステップにより設けられた前記レーザ照射器を用いて、所定の照射されたレーザビームで所定の大きさのウィック部を所定の掘り込みパターン形状に加工するウィック部加工ステップと、を含む、ベーパーチャンバのウィック部形成方法。
【請求項2】
前記ウィック部加工ステップは、前記レーザビームは所定のマークスピード(Mark Speed)で移動時間が設定されている、請求項1に記載のベーパーチャンバのウィック部形成方法。
【請求項3】
前記マークスピードは、300mm/sに設定される、請求項2に記載のベーパーチャンバのウィック部形成方法。
【請求項4】
前記ウィック部加工ステップは、前記レーザビームの発振周波数が20kHz~40kHzの範囲内に設定されかつ、前記レーザビームはpulse modeで発振する、請求項1に記載のベーパーチャンバのウィック部形成方法。
【請求項5】
前記レーザビームが照射されるライン(line)間隔は、最大
0.1mmを超えないように設定されている、請求項1に記載のベーパーチャンバのウィック部形成方法。
【請求項6】
前記レーザ照射器によって前記母材に形成される前記ウィック部は、Cross、Blockおよび「己」形状のいずれか1つのパターンに加工される、請求項1に記載のベーパーチャンバのウィック部形成方法。
【請求項7】
冷媒が収容されるチャンバボディの母材を準備する母材準備ステップと、
前記母材準備ステップにより準備された母材の一側にレーザ照射器をセットするレーザ設置ステップと、
前記レーザ設置ステップにより設けられた前記レーザ照射器を用いて、所定の照射されたレーザビームで所定の大きさのウィック部を所定の掘り込みパターン形状に加工するウィック部加工ステップと、
前記ウィック部加工ステップにより形成された前記ウィック部を覆うように焼結工程で多数の気孔を含むように多孔体で形成されたウィックボディの加工平面である外側面を、前記チャンバボディの内側面に結合させるウィックボディ結合ステップと、を含む、ベーパーチャンバの製造方法。
【請求項8】
前記ウィックボディ結合ステップは、前記チャンバボディの内側面に形成された前記ウィック部と、前記ウィックボディの表面に露出した多数の気孔の少なくとも一部とが相互連通するように結合させるステップである、請求項7に記載のベーパーチャンバの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
また、前記レーザビームが照射されるライン(line)間隔は、最大0.1mmであってもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
この場合、マークスピードは、300mm/sに設定されてもよい。マークスピードが300mm/s超と過度に速く移動するように設定されると、レーザビーム形態で母材に伝達される熱量が少なすぎて所望のパターン形状を形成することができず、マークスピードが30mm/s未満と過度に遅く移動するように設定されると、レーザビーム形態で母材に伝達される熱量が大きすぎるので、母材の形状が要求されるウィック部の大きさより大きく変形される問題点が発生しうる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
また、レーザビームが照射されるライン(line)間隔は、
図5に示されるように、最大
0.1mmであってもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
ここで、ライン間隔が過度に広がると(すなわち、0.1mmを超えると)、毛細管力(Capiliary Force)がなく、流路が存在せず、Anti-Gravity特性を実現できないからである。チャンバボディ20とウィックボディ30との間に毛細管力が小さい場合には、内部の温度変化による冷媒の流動を考慮して、熱源部分は常に低い位置に位置させなければならず、放熱部分は常に高い位置に位置させなければならないという設計上の制限が生ずる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
この場合、マークスピードは、300mm/sに設定されてもよい。マークスピードが300mm/s超と過度に速く移動するように設定されると、レーザビーム形態で母材に伝達される熱量が少なすぎて所望のパターン形状を形成することができず、マークスピードが300mm/s未満と過度に遅く移動するように設定されると、レーザビーム形態で母材に伝達される熱量が大きすぎるので、母材の形状が要求されるウィック部の大きさより大きく変形される問題点が発生しうる。
【国際調査報告】