(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】波長分割多重化のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H01S 3/067 20060101AFI20240709BHJP
H01S 3/094 20060101ALI20240709BHJP
H04B 10/291 20130101ALN20240709BHJP
【FI】
H01S3/067
H01S3/094
H04B10/291
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575811
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 US2022032888
(87)【国際公開番号】W WO2022261361
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】グライムス,アンドリュー,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ハリハラン,アナンド
(72)【発明者】
【氏名】ニコルソン,ジェフリー,ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
5F172
5K102
【Fターム(参考)】
5F172AF03
5F172AG03
5F172BB12
5K102AA56
5K102AD01
5K102AK05
5K102KA42
5K102PB01
5K102PH12
5K102PH13
5K102PH48
(57)【要約】
本開示の実施形態は、一般に、様々な目的のために波長分割マルチプレクサ(WDM)と共にファイバレーザを使用するためのシステム、方法、及び製造品に関する。例えば、本明細書で説明する実施形態は、高出力ラマンファイバレーザ(RFL)システムなどで使用することができる。ファイバーレーザと、光ファイバからなるレーザ経路と、光ファイバを結合するレーザ経路内に配置された複数の波長分割マルチプレクサ(WDM)とを含み得るレーザーシステムが提供され、複数のWDMのうちの少なくとも1つは、最も広い波長間隔を有し、レーザー経路内に最初に配置され、それにより、増大した出力安定性を提供する。
【参照図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバレーザと、
光ファイバを備えるレーザ経路と、
前記光ファイバを結合する前記レーザ経路内に配置される複数の波長分割マルチプレクサ(WDM)とを備え、
前記複数のWDMのうちの少なくとも1つは、最も広い波長間隔を有し、前記レーザ経路内に最初に位置し、増加したパワー安定性を提供することを特徴とするレーザシステム。
【請求項2】
ファイバ増幅器と、
シード源と、
前記複数のWDMのうちの第2のWDMとを備え、
前記第2のWDMは、前記ファイバレーザおよび前記シード源を前記ファイバ増幅器に結合することを特徴とする請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項3】
前記ファイバ増幅器は、エルビウムファイバ増幅器を含むことを特徴とする請求項2に記載のレーザシステム。
【請求項4】
前記シード源は1550nmシードレーザであることを特徴とする請求項2に記載のレーザシステム。
【請求項5】
前記第2のWDMは、前記最も広い波長間隔を有する前記複数のWDMのうちの前記少なくとも1つよりも長い結合長およびより広いフィルタリングを備えることを特徴とする請求項2に記載のレーザシステム。
【請求項6】
前記ファイバレーザは、ファイバ増幅器の励起源であることを特徴とする請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項7】
前記ファイバレーザは、1480nmのラマンファイバレーザを含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項8】
前記複数のWDMのそれぞれの送信設計波長は同じであり、
前記複数のWDMのそれぞれの分離設計波長は異なり、重複しないことを特徴とする請求項1に記載のレーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本出願は、米国特許仮出願63/209,321(”Systems and Methods for Wavelength Division Multiplexing,”、2021年6月10日)に対する優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載されるのは、高出力ラマンファイバレーザシステムなどの様々な目的のために波長分割マルチプレクサ(WDM)およびファイバレーザを使用するためのシステム、方法、および製造品である。ラマンファイバレーザは光学的に励起され、一般に光増幅機構として誘導ラマン散乱を使用することができる。光ポンピングは、レーザ媒質において光利得を生成するために、光が電源として使用されるプロセスである。ポンプ光子は、吸収または散乱され、「ストークス」光子と呼ばれるより低い周波数のレーザー光光子として再放出され得る。
【0003】
一般に、WDMは、入力として、異なる光ファイバ上を伝搬する2つ以上の別個の波長を取り、出力として、共通ファイバ上を伝搬する両方の波長を提供する。WDMは、単一の光ファイバを通して伝送される信号の数を増加させ得、光伝送デバイスの容量の増加を可能にする。WDMは、いくつかの理由でラマンファイバレーザの出力で使用され得る。例えば、WDMは、出力をフィルタリングし、中間ストークス波長におけるパワー(または帯域外パワー)を除去するために使用され得る。WDMはまた、光ポンピング増幅器において使用されるべき信号源と出力を組み合わせるために使用され得る。
【0004】
WDMは、WDM内で共に結合するように設計された波長によって特徴付けられる。例えば、1480nmのポンプ波長および1550nmの信号波長を有するエルビウムファイバ増幅器は、1480nmおよび1550nmの波長を共に結合するように設計されたWDMを必要とし得る。WDMの設計波長が狭間隔であるとき、設計は、テーパ比およびテーパ長等の設計パラメータにより敏感になる。逆に、動作波長の間隔がより広くなると、設計の感度が低下する。
【0005】
ラマンファイバレーザは、利得媒体における1つ以上のストークスシフトのいずれかの結果である最終出力を有し得る。ラマンシフトは、誘導散乱によるものである。複数のストークスシフトを有するラマンレーザは、カスケードラマンファイバレーザ(CRFL)として知られている。1つのストークスにおけるパワーが充分に高くなると、次のストークスにおいて誘導散乱が開始するのに充分な利得が存在し得る。このプロセスは、ポンプと最終波長との間の波長における残留パワーにつながり得る。所望の最終波長以外の波長でのパワーは帯域外パワーとして知られ、最終的な所望のストークス波長でのパワーは帯域内パワーとして知られる。
【0006】
高パワーシステムの場合、これは、WDMに対するいくつかの問題につながり得る。例えば、帯域外ストークス光は、1390nmのOH吸収で有意なパワーを有し得る。加えて、全体的なパワーは、クラッドモードに結合し得る。これは、WDMのためのより高い挿入損失を引き起こし、クラッドがエポキシとインターフェースし、ファイバをヒートシンクおよびサブマウントに固定する場所により多くのパワーを結合し得る。WDMは、1つの単一の融合テーパの全体的な損失を有するように組み合わせられる2つの融合テーパを含み得るので、サブマウントは、パワー制限構成要素であり得、概して、構成要素の最短寿命を有し得る。単一の融合テーパは、その損失を最小化し、設計波長で制御することができるが、他の波長ではそうではない。他の波長において過剰な損失がある場合、これらの波長は、クラッド内で消散され得、そこで、ファイバをそのサブマウントに固定するエポキシによって吸収されるであろう。
【0007】
傾斜ファイバブラッググレーティングを使用して1390nmのパワーを軽減する努力がなされてきたが、これらは、非常に高い出力パワーに対して不充分であることが証明されている。例えば、100ワットを上回るパワーを増加させるとき、WDMは、経時的に、特に100時間にわたって性能の低下を経験し得る。
【発明の概要】
【0008】
本開示の実施形態は、概して、様々な目的のために波長分割マルチプレクサ(WDM)を有するファイバレーザを使用するためのシステム、方法、および製品に関する。本開示の実施形態は、ファイバレーザと、光ファイバを備えるレーザ経路と、光ファイバ内のレーザの経路内に配置された複数の波長分割マルチプレクサ(WDM)とを備えるレーザシステムを含み、複数のWDMのうちの少なくとも1つは、最も広い波長間隔を有し、レーザ経路内に最初に位置付けられ、それによって、増加したパワー安定性を提供する。
【0009】
本開示の実施形態はまた、高出力ラマンファイバレーザ(RFL)と、光ファイバを備えるレーザ経路と、光ファイバを結合するレーザ経路内に位置決めされを備える第1の波長分割マルチプレクサ(WDM)とを備えるレーザシステムを含み、第1のWDMは、レーザ経路内で最初に位置決めされ、光ファイバを結合するレーザ経路内に第2のWDMが配置され、第2のWDMはレーザ経路内の広WDMの後に配置され、第1のWDMは、第2のWDMよりも広い波長間隔を有し、第1のWDMは、レーザ経路内で最初に位置付けられ、それによって、増加したパワー安定性を提供する。
【0010】
本開示の実施形態はまた、レーザシステムにおける出力安定性を増加させる方法を含み、この方法はラマンファイバレーザを提供するステップと、レーザ経路内に配置された複数の波長分割マルチプレクサ(WDM)を提供するステップとを含み、レーザ経路は光ファイバを含み、複数のWDMのうちの少なくとも1つは、最も広い波長間隔を有し、最も広い波長間隔を有するWDMのうちの少なくとも1つをレーザ経路内で最初に位置決めし、それによってパワー安定性を増大させ、ラマンファイバレーザによって、レーザ経路を通るレーザを生成する。
【0011】
本開示の実施形態はまた、レーザシステムにおける出力安定性を増加させる方法を含み、この方法はラマンファイバレーザを提供するステップと、レーザ経路内に配置された複数の波長分割マルチプレクサ(WDM)を提供するステップとを含み、前記レーザ経路は光ファイバを含み、前記複数のWDMのうちの少なくとも1つは、最も広い波長間隔を有するステップとを含み、最も広い波長間隔を有するWDMのうちの少なくとも1つをレーザ経路内で最初に位置決めし、それによってパワー安定性を増大させ、ラマンファイバレーザによって、レーザ経路を通るレーザを生成し、ラマンレーザを別のファイバ増幅器の光ポンプ源として使用し、ラマンレーザポンプ源および増幅される信号源は、WDMによって第2の利得媒質に共に結合される。
【0012】
したがって、本開示の上記で挙げた特徴を詳細に理解することができるように、本開示の実施形態のより具体的な説明は、添付の図面を参照することによって得ることができる。しかしながら、添付の図面は、本開示の範囲内に包含される例示的な実施形態のみを示し、本開示が他の等しく効果的な実施形態を認め得るため、限定と見なされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】傾斜ブラッググレーティング(TBG)フィルタリング前の高出力ラマンファイバレーザ(RFL)スペクトルを示すチャートである。
【
図1B】TBGフィルタリング後の高パワーRFLスペクトルを示すチャートである。
【
図2】異なる出力波長分割マルチプレクサ(WDM)を有する高パワーRFLからの出力パワー安定性を示すチャートである。
【
図3】本開示の実施形態による、高出力ラマンファイバレーザシステムにおいて波長分割WDMを使用する例示的なシステムを示すブロック図である。
【
図4】本開示の実施形態による、エルビウムファイバ増幅器のためのポンプ源としてラマンファイバレーザを使用する例示的システムを示すブロック図である。
【
図5】本開示の実施形態による、広WDMによってフィルタリングされたスペクトルにおける強度と波長との間の関係を示すチャートである。
【
図6】本開示の実施形態による、組合せWDMにおける経時的な正規化出力パワー安定性を示すチャートである。
【
図7】本開示の実施形態による、高出力ラマンファイバレーザシステムにおいて波長分割WDMを使用する方法を示すフローチャートである。
【0014】
本明細書で使用される見出しは、編成目的のみのためであり、説明または請求項の範囲を限定するために使用されることを意味しない。本出願を通して使用される場合、用語「あり得る」は、必須の意味(すなわち、必要とされる意味)ではなく、許容的な意味(すなわち、潜在性を有する意味)で使用される。同様に、「含む(include)」、「含む(including)」、および「含む(includes)」という用語は、これらに限定されないが含むことを意味する。理解を容易にするために、可能な場合、図面に共通の同様の要素を示すために同様の参照番号が使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施形態は、概して、様々な目的のために波長分割マルチプレクサ(WDM)を有するファイバレーザを使用するためのシステム、方法、および製品に関する。例えば、本明細書で説明する実施形態は、高出力ラマンファイバレーザ(RFL)システムなどとともに使用され得る。本明細書で説明する例示的な実施形態は、帯域外パワーの全体的な量を減らすことによって、互いに結合するように設計された波長間の狭い間隔をもつWDMに関連する問題を解決または軽減することができる。本開示に合致するアプローチおよび構成は、設計波長間のより広い間隔を伴うWDMを提供し、それによって、経時的な安定性を増加させ、狭い間隔を伴うWDMとともに存在する帯域外光を除去または低減し得る。本明細書で使用される場合、「広い」および「狭い」という用語は、WDMを説明するために使用される場合、WDM間隔が別のWDMよりも「広い」または「狭い」のいずれかであることを示すことを意図する相対的な用語であり得る。「広い」および「狭い」という用語は、他のWDMを参照することなく、WDM間隔の特定のサイズを個々に限定することを意図するものではなく、システム内に存在する他のWDMとの比較などの目的で使用される。
【0016】
本開示の実施形態によれば、システム内で最も広い間隔の設計波長が最初に行われるように互い違いにされた、異なるアイソレーション波長を有する複数のWDMを使用して、個々のWDMによって実行されるフィルタリングの量が分散され、低減され得、一方で、出力パワーがシステムの寿命とともに増加され得る。本開示の実施形態によれば、より広い間隔を有するWDMは、レーザシステムにおいてより狭い間隔を有するWDMの前に位置決めされ得る。この構成は、安定したパワーを提供し、長期間にわたる不可逆的劣化を低減し得る。いくつかの例では、本開示によるシステムは、長期間にわたって不可逆的な劣化を経験しなくてもよい。例えば、この構成は、数百時間の間不可逆的な劣化を伴わずに、150ワットを超えるレベルで安定したパワーを提供し得る。
【0017】
本開示の例示的な実施形態によれば、WDMは、例えば、共に結合(融合)された2つのファイバにおける基本モードの側方結合を可能にする双円錐融合ファイバ要素であってもよい。完全なパワー伝達は、2つのクラッドモードが結合領域などのビート長の半分を通って伝搬した後に起こり得る。この結合長は、2つの設計波長がWDMの一方のアームに対して最大の伝送を有し、設計波長において他方のアームに対して最低の伝送を有するために必要とされる長さなどとして決定され得る。
【0018】
本開示の例示的な実施形態によれば、WDMの構築のために同様のファイバを使用するとき、この結合長は、設計波長の分離が減少するにつれて増大し得る。結合長が増加するにつれて、WDMは、いくつかの有害な影響を受け得る。結合長が長いほど、加熱に起因して生じ得る長さの変化に対してより敏感であり得、帯域内伝送を低減させる。より長い結合長は、WDMを正確に構築し、所望の波長を標的化することをより困難にし得る。より長い結合長は、より長い長さのファイバをトーチに暴露させ、OH吸収を増加させ、それによって、1390光等の問題を引き起こし得る。
【0019】
設計波長のより近い分離は、設計波長のより狭い透過窓をもたらし得る。広い波長源では、これは、追加の帯域内パワーをフィルタ除去することができる。これらの要因はすべて、高出力で使用された場合、寿命の短縮につながり得、劣化は、全システム故障につながり得る故障メカニズムを引き起こし得る。
【0020】
狭い波長分離WDMは、アプリケーションが2つの近接して分離された波長を組み合わせることを要求する場合、有益であり得る。例えば、狭い波長分離は、ラマンレーザからの1480nmのポンプ光が、1545~1600nm等であり得るシード源光と組み合わせられるであろう、エルビウム増幅器とともに有益であり得る。さらに、狭い波長分離は、単一周波数ラマン増幅器において有益であり得、ポンプは、信号/シード波長を下回る1つのストークスシフト、または同等物であってもよい。また、狭い波長分離は、Yb波長における増幅器構成において有益であり得る。別の実施例では、狭い波長分離は、一次レーザ出力を送達ファイバまたは同等物内で生成されるストークスから分離するために有益であり得る。
【0021】
本開示の例示的な実施形態によれば、狭波長分離WDMの問題を考慮するために、狭波長分離WDMの前に、さらに間隔を空けて配置され得る設計波長を有するWDMを初期フィルタリング要素として使用することができる。より広WDMは、より短い結合長およびより広いフィルタリングを有し得る。これらのより広WDMは、高パワーなどで数時間にわたって性能の低下を実質的に示さないことがある。
【0022】
図1Aは、傾斜ブラッググレーティング(TBG)フィルタリング前の高出力ラマンファイバレーザ(RFL)スペクトルを示すチャート100aである。この例では、帯域外パワーは約12Wであり、帯域内パワーは約161Wである。この例のラマンレーザースペクトルの総出力は約173Wである。
図1bは、TBGフィルタリング後の高出力RFLスペクトルを示すチャート100bである。この例では、帯域外パワーは約11.5Wであり、1390nm帯域は約0.05W未満であり、帯域内パワーは約161Wである。この例におけるラマンレーザスペクトルの総出力は約172.5Wである。
【0023】
いくつかの構成によれば、RFLは、出力が1つ以上のラマンストークスシフトの結果であるレーザであってもよい。RFLは、希土類ドープファイバであり得る固定波長レーザを特定の用途に必要とされる波長にシフトすることを可能にし得る。ラマンシフトは、概して、ポンプおよび中間ストークス波長におけるパワーの残りとともに、例えば、90%を上回る、所望の波長における高出力スペクトル純度をもたらす、効率的プロセスであり得る。全体出力パワーを増加させることはまた、システムの安定性および性能が損なわれ得る点まで、これらの波長における残留パワーの量を増加させ得る。
【0024】
融合ファイバWDMは、様々な目的のためにファイバレーザにおいて使用され得る。例えば、いくつかのファイバレーザシステムでは、1480nmのラマンレーザなどによって励起される高出力エルビウム増幅器は、融合ファイバWDMを使用して、ポンプと信号を共に結合し、エルビウムファイバに発射することができる。高出力ラマンファイバレーザ出力への暴露後、溶融ファイバWDMは、経時的に性能が劣化し得る。場合によっては、ラマンファイバレーザによって生成される1390nmの光と重複するOH分子吸収のオーバートーンが存在し得る。この問題を解決するために、いくつかの実施形態では、任意の他のシステム構成要素に入る前に出力からこの1390nmのパワーを拒絶するように適合および設計された専用ファイバフィルタが使用され得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、システム出力は、このフィルタリング技法を使用して経時的に安定したままであり得る。例えば、システム出力は、最大100ワットの出力パワーで1000時間を超えて安定したままであり得る。しかしながら、100ワットを上回る出力パワーレベルでは、システム出力は、経時的に不可逆的に劣化し始め得る。例えば、システム出力は、約100時間後に劣化し得、1390nm成分のフィルタリングを増加させることは、この劣化が生じるまでの時間を増加させることに限定された影響を有するか、または影響を及ぼさない場合がある。本開示の実施形態によれば、WDM自体の設計波長分離は、出力パワーが不可逆的に低下し始めるまでの全体の安定性および持続時間を決定または影響を及ぼし得る。
【0026】
図2は、異なる出力WDMを有する高パワーRFLからの出力パワー安定性を示すチャート200である。チャート200は、異なる設計波長分離および150W公称出力パワーに対する経時的な正規化出力安定性を示す。チャート200に示されるように、WDMの構築のために同様のファイバを使用するとき、設計波長分離を広げることは、著しいパワー劣化を示すことなくラマンファイバレーザが動作することができる時間の長さの著しい増加をもたらす。ファイバが融合される結合長は、設計波長の分離が減少するにつれて増加する。結合長が増加するにつれて、WDMは、次いで、いくつかの影響を受け得る。例えば、結合長が長いほど、加熱によって引き起こされ得る長さの変化に対して敏感である。これは、帯域内送信を低減し得る。より長い結合長は、WDMを正確に構築し、所望の波長を標的化することをより困難にし得る。より長い結合長は、より長い長さのファイバをトーチに暴露させ、OH吸収を増加させ、1390nmの光の吸収を問題にし得る。したがって、ラマンレーザが動作できる時間の長さは、WDMにおける結合長と逆相関する。
【0027】
設計波長のより近い分離は、設計波長のより狭い透過窓をもたらし得る。例えば、広波長源では、これは、いくつかの追加の帯域内パワーをフィルタ除去し得る。より長い結合長は、帯域外成分がより高い挿入損失を有し、クラッドモードにより多く結合する単一のファイバから作られた双円錐ファイバテーパと同様のより多くの特性を有することができ、それらのパワーはエポキシによって吸収され、全体的な伝達を損なう可能性があり、不可逆的な暴走効果などにつながる可能性がある局所的な加熱効果を生成する。炎は、それがより長いヒューズ長を横断しているときでさえ、より少なくなり得、それをより対称にし、指定されていない設計波長において追加の挿入損失を引き起こす。
【0028】
図3は、本開示の実施形態による、高出力RFLシステムなどのレーザシステムにおいてWDMを使用する例示的なシステム300を示すブロック図である。本開示のいくつかの実施形態によれば、システム300は、RFL302、光ファイバ308、複数のWDM304、306、レーザ出力先(destination)310、追加の光ファイバ312などを備え得る。RFL302が
図3に示されているが、これは例示を目的としており、本開示と一致する他のタイプのレーザが使用されてもよい。いくつかの実施形態では、複数のWDMは、広WDM404および狭WDM306、またはより広WDMとより狭WDMとの他の組合せなどを備え得る。2つのWDM304、306が示されているが、追加のWDMが本開示によるシステム300に含まれ得ることが企図される。いくつかの実施形態では、光ファイバ308は、レーザ302と出力先310との間にレーザ経路を形成するために、WDM304、306と通信可能に結合され得る。いくつかの実施形態では、システム300は、追加の出力先などと結合するための追加の光ファイバ312を含み得る。また、システム300は、例えば、光ファイバを終端するためのコアレスファイバ313などを含んでもよい。
【0029】
例示的な実施形態によれば、帯域外パワーの全体的な量が同様に低減される場合、上述の問題を含む、狭い間隔のWDM306の使用に関連する多くの問題が低減または軽減され得る。広WDM304(すなわち、より広い間隔を有するWDM)は、数百時間にわたって安定し得、狭WDM306(すなわち、より狭い間隔を有するWDM)などにとって問題である帯域外光を除去し得る。いくつかの実施形態では、より広い間隔のまたは広WDM304が、レーザ302と出力先310との間のレーザ経路に沿ったより狭い間隔のまたは狭WDM306の前に配置される構成は、安定したパワーを与え得る。例えば、狭WDMの前の広WDMは、数時間にわたる不可逆的な劣化なしに150ワットを超えるレベルで安定したパワーを提供し得る。いくつかの構成では、本開示によるシステムは、数百時間にわたって不可逆的劣化を示さなくてもよい。
【0030】
本開示の例示的な実施形態によれば、フィルタリングおよびビーム結合機構は、狭い間隔のまたは狭WDM306のより高いパワー動作を可能にし得る。フィルタリングは、複数のWDMを用いて互い違いに実行され得、各WDMの伝送設計波長は同じであってもよいが、各WDMの分離設計波長は重複しない。例えば、1480/1600および1480/1550は、2つの別個のWDM304、306の設計波長として構成され得る。いくつかの実施形態では、第1の広WDM304の設計波長は、任意の後続の狭WDM306よりも遠く離間され得る。本開示に従う構成の構成は、第1の広WDM304がパワー劣化またはドリフトのような問題の影響を受けにくくすることを可能にする。いくつかの実施形態では、第1の広WDM304は、任意の後続の狭WDM306よりも短い結合長を有し得る。
【0031】
図4は、本開示の実施形態による、エルビウムファイバ増幅器410のためのポンプ源としてラマンファイバレーザ(RFL)402を使用する例示的システム400を示すブロック図である。システム400は、シード源414を含み得る。シード源は、例えば、1550nmシードレーザなどを含むことができる。ラマンファイバレーザ402は、例えば、エルビウムファイバ増幅器410を励起する1480nmラマンファイバレーザを含んでもよい。エルビウムファイバ増幅器が
図4に図示されるが、ラマンファイバレーザが、概して、他のファイバ増幅器も同様にポンピングするために使用されることができることが、本開示の実施形態によって、およびその範囲内で検討される。例えば、ラマンファイバレーザは、ツリウムドープファイバ増幅器、ビスマスドープファイバ増幅器、またはラマンファイバ増幅器等のファイバ増幅器を励起するために使用されてもよい。
【0032】
本開示のいくつかの実施形態によれば、システム400は、RFL402、光ファイバ408、複数のWDM404、406、レーザ出力先410、追加の光ファイバ412などを備え得る。RFL402が
図4に示されているが、これは例示を目的としており、本開示と一致する他のタイプのレーザが使用されてもよい。いくつかの実施形態では、複数のWDMは、最も広い間隔を有する第1のWDM404と、より狭い間隔を有する第2のWDM406と、またはより広WDMとより狭WDMとの他の組合せなどを備え得る。2つのWDM404、406が示されているが、追加のWDMが本開示によるシステム400に含まれ得ることが企図される。いくつかの実施形態では、光ファイバ408は、レーザ402と出力先410との間にレーザ経路を形成するために、WDM404、406と通信可能に結合され得る。いくつかの実施形態では、システム400は、追加の出力先などと結合するための追加の光ファイバ412を含み得る。システム400はまた、例えば、光ファイバの端部終端のためのコアレスファイバ413等を備えてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1のより広い間隔のWDM404が、レーザ402とエルビウムファイバ増幅器410との間のレーザ経路に沿って第2のより狭い間隔のWDM406の前に配置される構成は、安定したパワーを提供することができる。例えば、狭WDMの前の広WDMは、数時間にわたる不可逆的な劣化なしに150ワットを超えるレベルで安定したパワーを提供し得る。いくつかの構成では、本開示によるシステムは、数百時間にわたって不可逆的劣化を示さなくてもよい。
【0034】
本開示の例示的な実施形態によれば、システム400は、エルビウムファイバ増幅器410と、シード源414と、複数のWDMのうちの第2のWDM406とを備えることができ、第2のWDM406は、ファイバレーザ402およびシード源414をエルビウムファイバ増幅器410と結合する。いくつかの実施形態では、シード源414は、1550nmシードレーザなどであり得る。第2のWDM406は、最も広い波長間隔を有する第1のWDM404よりも長い結合長およびより広いフィルタリングを備え得る。いくつかの実施形態では、ファイバレーザ402は、1480nmラマンファイバレーザを備え得る。いくつかの例では、WDM404、406の各々の送信設計波長は同じであってもよく、WDM404、406の各々の分離設計波長は異なっていてもよく、重複しなくてもよい。
【0035】
図5は、本開示の実施形態による、広WDMによってフィルタリングされたスペクトルにおける強度と波長との間の関係を示すチャート500である。
図5に示されるチャート500は、強度と波長との間の関係を示し、約9.5ワット等で広WDMによって除去されるパワーのスペクトルを示す。
図6は、本開示の実施形態による、組合せWDMにおける経時的な正規化出力パワー安定性を示すチャート600である。
図6に示すチャート600は、150Wの公称出力パワーを有する広WDM構成と狭WDM構成との組み合わせにおける経時的な正規化出力パワー安定性を示す。
【0036】
過度に波長感受性ではないいくつかの用途では、広い波長間隔を伴うWDMが、高出力ラマンファイバレーザシステムで使用されてもよい。しかしながら、ラマンレーザによって励起されるエルビウム増幅器等のいくつかの用途では、狭い波長間隔を伴う特定のWDMが有益であり得る。1480nmおよび1550nmの動作波長を有するWDMは、そのようなシステムにおいて一般的である。これらの例では、最も広い間隔の設計波長が最初になるように互い違いにされた、異なる分離波長を有する複数のWDMを使用することによって、個々のWDMによって実行されるフィルタリングの量を分散および低減し、出力パワーならびにシステムの寿命を増加させることができる。
【0037】
より広WDMは、より短い結合長およびより広いフィルタリングを有し得る。これらのより広WDMは、高出力で1000時間にわたって性能の低下を実質的に示さない。狭い波長分離WDMは、アプリケーションが2つの近接して分離された波長を組み合わせることを要求する場合、有益であり得る。例えば、狭い波長分離は、ラマンレーザからの1480nmのポンプ光が、典型的には、1545~1600nm等である、シード源光と組み合わせられるであろう、エルビウム増幅器とともに有益であり得る。さらに、狭い波長分離は、単一周波数ラマン増幅器において有益であり得、ポンプは、信号/シード波長を下回る1つのストークスシフト、または同等物であってもよい。また、狭い波長分離は、Yb波長における増幅器構成において有益であり得る。別の実施例では、狭い波長分離は、一次レーザ出力を送達ファイバまたは同等物内で生成されるストークスから分離するために有益であり得る。
【0038】
図7は、本開示の実施形態による、高出力ラマンファイバレーザシステムにおいてWDMを使用する方法700を示すフローチャートである。方法700は開始することができ、702において、RFLを提供することができる。例えば、RFLは、高出力RFLを含んでもよい。方法は、704に続き、複数のWDMが提供され得る。いくつかの実施形態によれば、WDMは、広WDMおよび狭WDMなどを含み得る。例示的な実施形態によれば、広WDMは、レーザ経路内の複数のWDMの任意の後続のWDMよりも短い結合長を備え得る。
【0039】
方法700は706に進み、WDMがシステム内に配置される。例示的な実施形態では、最も広WDMは、システム内のより狭WDMの前に位置決めされ得る。たとえば、2つのWDMを有する例では、広WDMは、システム内の狭WDMの前に位置決めされ得る。方法700は継続し、708において、レーザが生成される。レーザは、広WDMおよび狭WDMを通過してから、その目的地などに到達することができる。この構成は、安定したパワーを提供し、長期間にわたる不可逆的劣化を低減し得る。例えば、この構成は、150ワットを超えるレベルで安定したパワーを提供し得、数百時間の間不可逆的な劣化を伴わないなどである。
【0040】
図示の簡素化および明瞭化のために、添付の図面には一般的な構成スキームが示されており、本開示の例示的な実施形態の議論が不必要に不明瞭になることを避けるために、当技術分野で周知の特徴および技術についての詳細な説明は省略されている。さらに、添付の図面における構成要素は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。例えば、サイズは、本開示の例示的な実施形態の理解を助けるために誇張されている場合がある。
【0041】
本明細書に記載される本開示の例示的実施形態は、本明細書に図示または説明される順序とは異なる順序で動作されてもよいことが理解されるであろう。方法が一連のステップを含むと本明細書で説明される場合、本明細書で提案されるこれらのステップのシーケンスは、必ずしもこれらのステップが実行され得るシーケンスではない。
【0042】
本開示において使用される用語は、本開示を限定するのではなく、例示的な実施形態を説明するためのものである。本開示において、単数の表現は、特に明示的な記載がない限り、複数の表現を含む。本開示で使用される「備える(comprise)」および/または「備える(comprising)」という用語によって言及される構成要素、ステップ、動作、および/または要素は、1つまたは複数の他の構成要素、ステップ、動作、および/または要素の存在または追加を排除しない。
【0043】
上記において、本開示は、その例示的な実施形態を参照して説明されている。本開示に開示される全ての例示的な実施形態及び条件付き説明は、本開示が属する技術分野の当業者による本開示の原理及び概念の理解を助けることを意図して説明されている。したがって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を変形して実施できることを理解できるであろう。種々の特徴を有する多数の実施形態が本明細書に説明されているが、本明細書に議論されない他の組み合わせにおけるそのような種々の特徴の組み合わせは、本開示の実施形態の範囲内であると想定される。
【国際調査報告】