(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】敗血症及び敗血症性ショックを予測する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240709BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240709BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240709BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/53 D
C07K14/47
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576140
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2022066592
(87)【国際公開番号】W WO2022263648
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514122524
【氏名又は名称】シュピーンゴテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ベルクマン
【テーマコード(参考)】
2G045
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB03
2G045CB07
2G045CB30
2G045DA36
2G045FB03
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA52
(57)【要約】
本発明の主題は、患者における敗血症、重症敗血症又は敗血症性ショックを予測するための方法であって、当該対象から得られた体液中のプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルを決定することと、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片の決定されたレベルを敗血症又は敗血症性ショックと相関させることと、を含み、ある一定の閾値を超える上昇したレベルが、敗血症、重症敗血症又は敗血症性ショックを予測する、方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法であって、
●前記対象から得られた体液の試料中のプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルを決定することと、
●プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片の決定されたレベルを敗血症又は敗血症性ショックと相関させることと、
を含み、ある一定の閾値を超える上昇したレベルが、敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測する、方法。
【請求項2】
前記患者の体液の前記試料が、前記患者が敗血症、重症敗血症及び/若しくは敗血症性ショックついての臨床症状を示さないか、又は感染疾患の軽度な症状を示す時点で採取される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロ-タキキニンAが配列番号1~4を含む群から選択され、その断片が配列番号5~12を含む群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルが、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に対する結合剤を使用することによって決定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記結合剤が、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に結合する、抗体、抗体断片又は非Ig足場を含む群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記結合剤が、配列番号5、配列番号11及び配列番号12を含む群から選択されるアミノ酸配列内の領域に結合する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記閾値範囲が、75~200pmol/L、より好ましくは90~175pmol/L、更により好ましくは100~150pmol/Lであり、最も好ましくは前記閾値レベルが120pmol/Lである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
プロ-タキキニンAのレベルがイムノアッセイで測定され、前記結合剤がプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に結合する抗体又は抗体断片である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)であるプロ-タキキニンAの領域内の2つの異なる領域に結合する2つの結合剤を含むアッセイが使用され、前記領域の各々が少なくとも4又は5アミノ酸を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルを測定するためにアッセイが使用され、前記アッセイのアッセイ感度が健康な対象のプロ-タキキニンA又はプロ-タキキニンA断片を定量することができ、<10pmol/Lである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記体液が、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)、及び唾液を含む群から選択され得る、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
更なる少なくとも1つのバイオマーカ及び/又は臨床パラメータ及び/又は臨床スコアが、D-ダイマー、プロカルシトニン(PCT)、C反応性タンパク質(CRP)、乳酸、penKid、ADM-NH
2、MR-proADM、NT-proBNP、BNP、プレセプシン、ペントラキシン-3(PTX-3)、CD-64、カルプロテクチン、白血球数、リンパ球数、好中球数、ヘモグロビン、血小板数、アルブミン、アラニントランスアミナーゼ、クレアチニン、血中尿素、乳酸デヒドロゲナーゼ、クレアチニンキナーゼ、心筋トロポニンI、プロトロンビン時間、血清フェリチン、インターロイキン-6(IL-6)、IL-10、IL-2、IL-7、インターフェロンガンマ(IF-γ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、顆粒コロニー刺激因子(GCSF)、IP-10、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、MIP-1α、SOFA、qSOFA、APACHE IIを含む群から選択されて決定され得る、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記決定が、1人の患者において2回以上実施される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象をリスク群に層別化するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)に対する少なくとも2つの抗体又は抗体断片を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実施するためのポイントオブケアデバイス。
【請求項16】
アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)に対する少なくとも2つの抗体又は抗体断片を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、患者における敗血症、重症敗血症又は敗血症性ショックを予測するための方法であって、当該対象から得られた体液中のプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルを決定することと、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片の決定されたレベルを敗血症又は敗血症性ショックと相関させることと、を含み、ある一定の閾値を超える上昇したレベルが、敗血症、重症敗血症又は敗血症性ショックを予測する、方法である。
【背景技術】
【0002】
サブスタンスP(SP)は、神経伝達物質及び神経調節物質として機能するニューロペプチド:ウンデカペプチドである。これはタキキニンニューロペプチドファミリーに属する。SPは、SPに加えてニューロキニンA、ニューロペプチドK、ニューロペプチドγ、及びニューロキニンBを含むタキキニンファミリーの5つのメンバーの1つである。それらは、プレプロ-タキキニンA遺伝子のディファレンシャルスプライシング後にタンパク質前駆体から産生される(Helke et al.1990.FASEB Journal 4(6):1606-15)。SPは、侵害受容、炎症、血漿溢出、後毛細管細静脈における血小板凝集及び白血球凝集、並びに血管壁を通る白血球走化性移動において役割を果たす(Otsuka M,Yoshioka K.Neurotransmitter functions of mammalian tachykinins.Physiol Rev.1993 Apr;73(2):229-308)。サブスタンスPは、免疫細胞を含む神経細胞及び非神経細胞によって産生される(Bodkin and Fernandes 2012 Brit J Pharmacol 170:1279-1292)。
【0003】
敗血症におけるSPの役割は不明のままである。一方で、いくつかの研究において、SPは、インターロイキン(IL)-1、IL-6、及び腫瘍壊死因子(TNF)-αのような炎症促進性サイトカインの放出による、敗血症に対する炎症反応において役割を果たし得ることが見出された(Lotz et al.1988.Science 241:1218-1221;Laurenzi et al.1990.Scand.J.Immunol.31:529-533;Ansel et al.1993 J.Immunol.150:4478-4485;Yamaguchi et al.2004.Inflamm.Res.53:199-204)。一方、他の研究において、SPは、TNF-α、IL-6、及び誘導性酸化窒素シンターゼ(iNOS)を減少させ、IL-10を増加させることによって抗炎症効果を有し得ることが見出された(Jiang et al.2012.Neuroreport 23:786-792;Jiang et al.2013.Neuroreport 24:846-851)。更に、更なる研究の知見によれば、SPは、食作用能力を調節する微生物クリアランスにおいて役割を果たし得る(Verdrengh and Tarkowski 2008.Scand.J.Immunol.67:253-259;Yang et al.2014.Crit.Care Med.42:2092-2100;Kincy-Cain and Bost 1996.J.Immunol.157:255-264;Lighvani et al.2005.Eur.J.Immunol.35:1567-1575)。
【0004】
敗血症患者における循環SP濃度は十分に研究されていない。61人の敗血症患者による1つの研究において、著者らは、敗血症の最終段階の間に、健康な対照と比較して敗血症患者において、及び生存患者と比較して非生存者において、より高い血清SP濃度を見出した(Beer et al.2002.Crit Care Med.30:1794-1798)。42人の敗血症患者による別の研究では、健康な対照と比較して敗血症患者において、血漿中SP濃度がより低いことが見出された(Arnalich et al.1995.Life Sci 56:75-81)。更に、血清SPレベルは、敗血症における死亡率に関連することが示された(Lorente et al.2015.J.Crit.Care 2015,30,924-928;Lorente et al.2017.Int J Mol Sci 18(7):1531)。しかしながら、非生存者は、生存者患者と比較してより低い血清SPレベルを示した(Lorente et al.2015.J.Crit.Care 2015,30,924-928)。
【0005】
更に、マウスCLPモデルにおいて、SPの時間依存的上昇があり、最も高いSPレベルが1時間の時点で血漿中に観察された。SPレベルは、血漿中で5時間の時点から減少し、20時間の時点で再びピークに達し、サブスタンスPの二段階性応答を示した(Puneet et al.2006.J Immunol 176:3813-3820)。加えて、野生型マウスへのLPSの投与は、SPの循環レベルの有意な増加を引き起こした(Ng et al.2008.Journal of Leukocyte Biology 83:288-295)。
【0006】
敗血症におけるSPの潜在的な役割は広範囲にわたる(総説については、Bodkin and Fernandes 2012 Brit J Pharmacol 170:1279-1292)。それは敗血症の進行に関連する多くの炎症作用を誘導し、そのほとんどはNK1受容体の活性化に起因する。SPは神経原性炎症の誘導因子としてよく知られており、血管拡張、浮腫及び白血球浸潤の特徴を示す。これらの作用は全て、NK1受容体に作用するSPによって誘導され得(O’Connor et al.,2004 J Cell Physiol 201:167-180)、敗血症において有害である。内皮細胞上のNK1活性化は、細胞退縮を誘導し、浮腫をもたらし、NO及びプロスタサイクリンなどの血管拡張物質の産生ももたらし(Katz et al.,2003.J Vet Pharmacol Ther 26:361-368)、低血圧症の一因となる。NK1活性化はまた、いくつかの細胞型においてケモカイン、サイトカイン及び接着分子を含む炎症性メディエーター転写を誘導することができる(Maggi,1997.Regul Pept 70:75-90)。SPはまた、ケモカインに対する走化性応答のために好中球を刺激することが知られており、ケモカイン受容体の発現を誘導し、応答はNK1アンタゴニストで阻害され得る(Sun et al.,2007.Am J Physiol Cell Physiol 293:C696-C704)。SPのこれらの作用は、炎症を悪化させ、致命的な臓器損傷をもたらすので、敗血症の間は有害である。浮腫及び血管拡張は、敗血症からの転帰不良に関連する、危険な低血圧及び肺機能の低下の一因となり得る。
【0007】
これまで、ヒトにおける研究は、SPの非常に短い半減期(12分)によって妨げられてきた(Conlon and Sheehan.Regul.Pept.1983;7:335-345)。不安定なSPの代用物である安定なプロ-タキキニンA(PTA)断片(N末端プロ-タキキニンA又はNT-PTA)についてのアッセイの最近の開発(Ernst et al.Peptides 2008;29:1201-1206)は、ヒト疾患におけるこのタキキニン系の役割に関する研究を可能にした。
【0008】
感染が疑われて救急治療部(ED)を訪れた患者の治療が遅れると、入院期間が長くなり、罹患率が増加し、感染に関連する死亡率が高くなる可能性がある。したがって、宿主応答の重症度、並びに敗血症、重症敗血症、敗血症性ショック及び臓器機能不全への更なる疾患進行の可能性の正確な評価は、迅速かつ標的化された治療奏功を司るために重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の1つの目的は、集中治療を必要とする敗血症、重症敗血症又は敗血症性ショックを発症する可能性が高いか又はそのリスクが高い患者を、そのような治療を必要とするリスクが低い患者から区別するためのプロ-タキキニンA又はその断片の使用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法であって、
●前記対象から得られた体液の試料中のプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルを決定することと、
●プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片の決定されたレベルを敗血症又は敗血症性ショックと相関させることと、
を含み、ある一定の閾値を超える上昇したレベルが、敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測する、方法。
【0011】
(2)前記患者の体液の前記試料が、前記患者が敗血症、重症敗血症及び/若しくは敗血症性ショックついての臨床症状を示さないか、又は感染疾患の軽度な症状を示す時点で採取される、(1)に記載の方法。
【0012】
(3)前記プロ-タキキニンAが配列番号1~4を含む群から選択され、その断片が配列番号5~12を含む群から選択される、(1)又は(2)に記載の方法。
【0013】
(4)プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルが、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に対する結合剤を使用することによって決定される、(1)~(3)のいずれか一項に記載の方法。
【0014】
(5)前記結合剤が、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に結合する、抗体、抗体断片又は非Ig足場を含む群から選択される、(1)~(4)のいずれか一項に記載の方法。
【0015】
(6)前記結合剤が、配列番号5、配列番号11及び配列番号12を含む群から選択されるアミノ酸配列内の領域に結合する、(1)~(5)のいずれか一項に記載の方法。
【0016】
(7)前記閾値範囲が、75~200pmol/L、より好ましくは90~175pmol/L、更により好ましくは100~150pmol/Lであり、最も好ましくは前記閾値レベルが120pmol/Lである、(1)~(6)のいずれか一項に記載の方法。
【0017】
(8)プロ-タキキニンAのレベルがイムノアッセイで測定され、前記結合剤がプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に結合する抗体又は抗体断片である、(1)~(7)のいずれか一項に記載の方法。
【0018】
(9)アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)であるプロ-タキキニンAの領域内の2つの異なる領域に結合する2つの結合剤を含むアッセイが使用され、前記領域の各々が少なくとも4又は5アミノ酸を含む、(1)~(8)のいずれか一項に記載の方法。
【0019】
(10)プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルを測定するためにアッセイが使用され、前記アッセイのアッセイ感度が健康な対象のプロ-タキキニンA又はプロ-タキキニンA断片を定量することができ、<10pmol/Lである、(1)~(9)のいずれか一項に記載の方法。
【0020】
(11)前記体液が、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)、及び唾液を含む群から選択され得る、(1)~(10)のいずれか一項に記載の方法。
【0021】
(12)更なる少なくとも1つのバイオマーカ及び/又は臨床パラメータ及び/又は臨床スコアが、D-ダイマー、プロカルシトニン(PCT)、C反応性タンパク質(CRP)、乳酸、penKid、ADM-NH2、MR-proADM、NT-proBNP、BNP、プレセプシン、ペントラキシン-3(PTX-3)、CD-64、カルプロテクチン、白血球数、リンパ球数、好中球数、ヘモグロビン、血小板数、アルブミン、アラニントランスアミナーゼ、クレアチニン、血中尿素、乳酸デヒドロゲナーゼ、クレアチニンキナーゼ、心筋トロポニンI、プロトロンビン時間、血清フェリチン、インターロイキン-6(IL-6)、IL-10、IL-2、IL-7、インターフェロンガンマ(IF-γ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、顆粒コロニー刺激因子(GCSF)、IP-10、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、MIP-1α、SOFA、qSOFA、APACHE IIを含む群から選択されて決定され得る、(1)~(11)のいずれか一項に記載の方法。
【0022】
(13)前記決定が、1人の患者において2回以上実施される、(1)~(12)のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
(14)前記対象をリスク群に層別化するための、(1)~(13)のいずれか一項に記載の方法。
【0024】
(15)アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)に対する少なくとも2つの抗体又は抗体断片を含む、(1)~(14)のいずれか一項に記載の方法を実施するためのポイントオブケアデバイス。
【0025】
(16)アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)に対する少なくとも2つの抗体又は抗体断片を含む、(1)~(14)のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキット。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】典型的なNT-プロ-タキキニンA用量-シグナル曲線である。
【0027】
【
図2】健康な集団(n=4463)におけるNT-ProTAの頻度分布である。
【0028】
【
図3】健康なヒトの血漿中のエンドトキシンによる処置後の炎症のバイオマーカ(IL-6、TNFα、PCT、NT-PTA)である。
【0029】
【
図4】入院後48時間以内に敗血症/重症敗血症を発症しなかったCAP患者対入院後48時間以内に敗血症/重症敗血症を発症したCAP患者におけるNT-proTA値についてのBox-and Whiskerプロット(p=0.0007)である。
【0030】
【
図5】入院後48時間以内に敗血症/重症敗血症を発症しなかったCAP患者対入院後48時間以内に敗血症/重症敗血症を発症したCAP患者におけるNT-proTA値のROCプロット(AUC 0.632;p=0.08)である。
【0031】
【
図6】敗血症/敗血症性ショックの疑いのある入院患者における入院時のNT-proTA値についてのBox-and Whiskerプロットである。
【0032】
【
図7】敗血症又は敗血症性ショックを発症する患者対敗血症も敗血症性ショックも発症しない患者におけるNT-proTA値についてのROCプロット(AUC 0.703;p<0.0001)である。
【0033】
【
図8】入院後に敗血症性ショックを発症する患者対敗血症性ショックを発症しない患者におけるNT-proTA値についてのROCプロット(AUC 0.757;p<0.0001)である。
【0034】
【
図9】入院時のED患者の生存についてのカプラン・マイヤープロット(PTA四分位数による)である。
【0035】
【
図10】入院時のED患者の生存についてのカプラン・マイヤープロット(PTAカットオフ100pmol/L)である。
【0036】
【
図11】敗血症カテゴリーの変化によるNT-proTAの中央値である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
プロ-タキキニンA又はその断片が、患者が後に敗血症、重症敗血症及び敗血症性ショックを発症することを予測するための初期バイオマーカであることは、本発明の驚くべき発見であった。「初期バイオマーカ」という用語は、患者が敗血症、重症敗血症又は敗血症性ショックを発症する前に、患者においてバイオマーカのプロ-タキキニンA又はその断片のレベルが上昇することを意味する。
【0038】
本明細書で使用される「対象」という用語は、生きているヒト又は非ヒト生物を指す。好ましくは、本明細書では、対象はヒト対象である。対象は、別段の記載がない場合、健康であっても罹患していてもよい。
【0039】
用語「上昇したレベル」は、ある一定の閾値レベルを超えるレベルを意味する。
【0040】
「体液」は、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)、及び唾液を含む群から選択され得る。本発明による体液は、1つの特定の実施形態において、血液試料である。血液試料は、全血、血清及び血漿を含む群から選択され得る。診断方法の特定の実施形態において、当該試料は、ヒトクエン酸血漿、ヘパリン血漿及びEDTA血漿を含む群から選択される。
【0041】
「予測」という用語は、対象についての転帰又は特定のリスクの予後に関する。これはまた、当該対象の回復の可能性又は有害転帰の可能性の推定を含み得る。
【0042】
本発明の方法はまた、モニタリング、治療モニタリング、治療ガイダンス及び/又は治療制御のために使用され得る。本出願の文脈において、「モニタリング」は、例えば、治癒プロセスの進行又は患者の健康状態に対する特定の処置若しくは治療の影響を分析するために、患者及び潜在的に生じる合併症を追跡することに関する。
【0043】
本発明の文脈における「治療モニタリング」又は「治療制御」という用語は、例えば治療の有効性に関するフィードバックを得ることによる、当該患者の治療的処置のモニタリング及び/又は調整を指す。本明細書で使用される場合、「治療ガイダンス」という用語は、1つ以上のバイオマーカ及び/又は臨床パラメータ及び/又は臨床スコアの値/レベルに基づく特定の治療、治療行為又は医学的介入の適用を指す。これは、治療の調整又は治療の中止を含む。
【0044】
本発明において、「リスク評価」及び「リスク層別化」という用語は、対象の更なる予後に従って対象を異なるリスク群にグループ化することに関する。リスク評価は、予防手段及び/又は治療手段を適用するための層別化にも関する。「治療層別化」という用語は、特に、患者を分類に応じて特定の違いのある治療手段を受けるリスク群又は治療群などの異なる群にグループ化又は分類することに関する。「治療層別化」という用語はまた、感染症を有するか又は感染疾患の症状を有する患者を、特定の治療手段を受ける必要がない群にグループ化又は分類することに関する。
【0045】
敗血症は、感染に対する調節不全の宿主応答によって引き起こされる、生命を脅かす臓器機能不全として定義される(Singer et al.2016.JAMA 315(8):801-810を参照されたい)。臓器機能不全は、感染の結果としての総SOFAスコア≧2ポイントの急性変化として特定することができる。ベースラインSOFAスコアは、既存の臓器機能不全を有することが既知ではない患者において0であると仮定することができる。SOFAスコア≧2は、感染が疑われる全体的な病院集団における約10%の全体死亡リスクを反映する。中程度の機能不全を示す患者であっても、更に悪化する可能性があり、この状態の重篤度、及びまだ開始されていない場合には迅速かつ適切な介入の必要性が強調される。敗血症は、感染に対する身体の応答がそれ自体の組織及び器官を損傷する場合に生じる、生命を脅かす状態である。長期のICU入室又は病院で死亡する可能性が高い感染症が疑われる患者は、qSOFA、すなわち精神状態の変化、収縮期血圧≦100mm Hg、又は呼吸数≧22/分で、ベッドサイドで迅速に特定することができる。
【0046】
敗血症性ショックは、根底にある循環及び細胞/代謝異常が、死亡率を実質的に増加させるのに十分に深刻である敗血症のサブセットである。敗血症性ショックを有する患者は、平均動脈圧(MAP)≧65mm Hgを維持するために昇圧剤を必要とし、適切なボリューム蘇生にもかかわらず>2mmol/L(18mg/dL)の血清乳酸レベルを有する持続性低血圧を有する敗血症の臨床構築物で特定することができる。これらの基準では、病院死亡率は40%を超える。
【0047】
本出願の文脈において使用される「敗血症」という用語は、敗血症の発症における全ての可能な段階に関する。
【0048】
用語「敗血症」はまた、SEPSIS-2の定義に基づく重症敗血症又は敗血症性ショックを含む(Bone et al.1992.Crit Care Med 20(6):864-874)。用語「敗血症」はまた、SEPSIS-3の定義に含まれる対象を含む(Singer et al.2016 JAMA 315(8):801-810)。本明細書で使用される場合、臓器機能不全は、臓器がその予想される機能を果たさない状態又は健康状態を意味する。「臓器不全」は、外部からの臨床的介入なしでは正常な恒常性を維持することができない程度の臓器機能不全を意味する。当該臓器不全は、腎臓、肝臓、心臓、肺、神経系を含む群から選択される臓器に関連し得る。対照的に、臓器機能は、生理学的範囲内のそれぞれの臓器の予想される機能を表す。当業者は、医療検査中の臓器のそれぞれの機能を知っている。
【0049】
臓器機能不全は、連続臓器不全評価スコア(SOFAスコア)又はその構成要素によって定義することができる。以前は敗血症関連臓器不全評価スコアとして知られていたSOFAスコア(Singer et al.2016.JAMA 315(8):801-10)は、集中治療室(ICU)に入室中の人の状態を追跡して、人の臓器機能の程度又は不全率を決定するために使用される。スコアは6つの異なるスコアに基づき、呼吸器系、心血管系、肝臓系、凝固系、腎臓系及び神経系について各々1つずつ、各々0~4でスコア付けされ、スコアの増加は臓器機能不全の悪化を反映する。SOFAスコアの評価基準は、例えばLamden et al.(概説についてはLambden et al.2019.Critical Care 23:374を参照されたい)に記載されている。SOFAスコアは、伝統的に、ICUへの入室時及びその後の24時間毎に計算することができる。特に、当該臓器機能不全は、腎臓減退、心機能不全、肝機能不全又は気道機能不全を含む群から選択される。
【0050】
クイックSOFAスコア(quickSOFA又はqSOFA)は、感染による転帰不良のリスクが高い患者を特定するための初期の方法として、SOFAスコアの簡略版として、2016年2月に敗血症(Sepsis)-3グループによって導入された(Angus et al.2016.Critical Care Medicine.44(3):e113-e121)。qSOFAは、その3つの臨床基準のみを含めることによって、及びGCS<15を必要とする代わりに「任意の変化した精神作用」を含めることによって、SOFAスコアを大幅に簡略化する。qSOFAは、患者に対して容易かつ迅速に連続して繰り返すことができる。スコアは0~3点の範囲である。1ポイントが以下に与えられる。低血圧(SBP≦100mm Hg)、高呼吸数(≧22呼吸/分)及び変化した精神作用(GCS≦15)。感染の発症付近に2以上のqSOFAポイントが存在することは、死亡又は長期の集中治療室入室のより大きなリスクと関連していた。これらは、合併症ではない感染を有する患者よりも敗血症であり得る感染患者においてより一般的である転帰である。これらの知見に基づいて、Third International Consensus Definitions for Sepsisは、qSOFAを、敗血症である可能性が高いICU外の感染患者を特定するための簡易なプロンプトとして推奨している(Seymour et al.2016.JAMA 315(8):762-774)。
【0051】
本発明の好ましい実施形態において、方法は、医学的状態の重篤な悪化の重篤なリスクが存在し、それによって入院を必要とするかどうかを、日常的な臨床的及び/又は分子的診断手段によって決定することが以前は不可能ではないにしても困難であった患者群における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックの予測によって定義される。この患者群は、感染疾患の軽度な症状を有する患者、又は重篤な感染疾患の症状を有していない(例えば、敗血症の症状を有していない)患者とみなされ得る。
【0052】
一実施形態において、試料提供時に、患者は、0又は1のqSOFAスコアに対応する感染疾患の軽度な症状を示す。
【0053】
一実施形態において、試料提供時に、患者は、敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックの臨床症状を示さない。
【0054】
一実施形態において、試料提供時に、患者は、細菌、ウイルス、真菌、又は寄生虫起源の感染疾患を有すると診断されている。
【0055】
一実施形態において、試料提供時に、患者は、市中感染性肺炎(CAP)又は尿路感染症(UTI)と診断されている。
【0056】
感染疾患の軽度な症状のみを示す患者、例えば0又は1のqSOFAスコアに対応する患者、及び感染疾患の症状を示すが敗血症の存在を示さない患者が、本発明に従ってプロ-タキキニンA又はその断片の高リスクレベルを決定することに基づいて入院を必要とするものとして分類できることは全く驚くべきことであった。専門の医師は、感染疾患の軽度な症状及び/又は敗血症を示唆しない症状を有する患者が、例えば感染疾患の症状の進行をモニターし、治療を行うために入院を必要とすることを予想しないので、これは本発明の方法の大きな利点を表す。そのような患者は、通常、医療スタッフによって検査され、その後、例えば、専門的な医療監督なしに実行することができる治療指示によって、連続的な医療観察から解放され得る。しかしながら、本発明の方法は、敗血症の重篤な症状を示さず、依然として入院を必要とする患者を、客観的手段によって特定することができる。
【0057】
本発明の一実施形態において、本方法は、当該患者をリスク群に層別化するために使用される。
【0058】
一実施形態において、PTA又はその断片の高リスクレベルは、患者が48時間、24時間、12時間、6時間、4時間、好ましくは2時間以内に敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを発症するリスクがあることを示し、PTA又はその断片の低リスクレベルは、患者が48時間、24時間、12時間、6時間、4時間、好ましくは2時間以内に敗血症、重症敗血症又は敗血症性ショックを発症するリスクがないことを示す。
【0059】
一実施形態において、当該体液試料中のPTA又はその断片のレベルは、入院を必要とする患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックの発症のリスクを示す。
【0060】
一実施形態において、PTA又はその断片の高リスクレベルは、患者が48時間、24時間、12時間、6時間、4時間、好ましくは2時間以内に入院を必要とする敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを発症するリスクがあることを示し、PTA又はその断片の低リスクレベルは、患者が48時間、24時間、12時間、6時間、4時間、好ましくは2時間以内に入院を必要とする敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを発症するリスクがないことを示す。
【0061】
本発明の別の実施形態において、方法は、早期治療(例えば、抗生物質投与の必要性)のために当該患者を群に層別化するために使用される。「早期」という用語は、患者が敗血症、重症敗血症及び/若しくは敗血症性ショックの臨床徴候及び症状を示す前、又は患者が敗血症、重症敗血症及び/若しくは敗血症性ショックを有すると診断される前の治療時間として定義される。
【0062】
一実施形態において、当該体液試料中のPTA又はその断片のレベルは、患者が頻繁なモニタリング及び/又は救命救急治療を必要とすることを示す。一実施形態において、高リスクレベルを有する患者は、病院環境において提供される医療処置を必要とする。
【0063】
これらの処置の例としては、輸液療法、昇圧剤、静脈内抗体が挙げられるが、これらに限定されず、いくつかの実施形態において、家庭で自己管理され得る経口抗体の域を超えた本質的に任意の処置が挙げられる。
【0064】
本発明の方法の結果に応じて、本方法の実施形態は、その後の治療上の決定及び/又は治療行為を含み得る。そのような治療決定は、医療処置の開始、変更又は修正を含み得る。好ましくは、本発明の方法が、病院内の処置を必要とする状態への進行を示す場合、好適な治療手段、例えば、特定の投薬又は輸液療法の開始又は変更が開始され得る。
【0065】
本明細書に開示される任意の療法、医学的処置又は治療行為は、特に、静脈内輸液療法、透析、電解質異常(特にカリウム、カルシウム及びリン)の管理を含むがこれらに限定されない治療手段が院内で特異的に施される場合、その後の治療決定又は治療行為として本発明の方法の文脈において使用することができる。更に、患者の維持された集中的な観察及びケアは、潜在的に、数日、数週間、又は数ヶ月などの長期間にわたって示され得る。これは、患者をICUに留めること若しくは移動させること、並びに/又はICUにおける患者の入室を長期化することを伴い得る。
【0066】
一方、本発明の方法の結果が、敗血症、重症敗血症又は入院を必要とする敗血症性ショックを発症するリスクがないことを示す場合、このような合併症に関する特定の処置手段は必要とされないか、又はあまり重篤でない、自己管理可能な処置が処方され得る。
【0067】
プロ-タキキニンA又はその断片は、特に、救急治療部入室者全員の患者群における前述の医学的有用性のためのものである。
【0068】
本明細書全体を通して、プロ-タキキニン及びプロ-タキキニンA(PTA)という用語は同義的に使用される。この用語は、プロ-タキキニンAの全てのスプライスバリアント、すなわちαPTA、βPTA、γPTA及びδPTAを含む。本明細書全体を通して、プロ-タキキニンAの断片という用語は、特に明記しない場合、サブスタンスP及びニューロキニンA、ニューロペプチドK、ニューロペプチドγ、並びにニューロキニンBも含むことを理解すべきである。
【0069】
「Pro-タキキニン、サブスタンスP及びニューロキニンを含むそのスプライスバリアント又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルを決定する」という用語は、通常、前述の分子内の領域に対する免疫反応性が決定されることを意味する。これは、ある特定の断片が選択的に測定される必要がないことを意味する。プロ-タキキニン、又はサブスタンスP及びニューロキニンを含む少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルの決定に使用される結合剤は、当該結合剤の結合領域を含む任意の断片に結合することが理解される。当該結合剤は、抗体若しくは抗体断片又は非IgG足場であり得る。
【0070】
本発明の主題は、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルが、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に対する結合剤を使用することによって決定される、方法である。
【0071】
本発明の一実施形態において、当該結合剤は、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に結合する抗体、抗体断片又は非Ig足場を含む群から選択される。
【0072】
PTA遺伝子転写物の選択的スプライシングは、それぞれαPTA、βPTA、γPTA、及びδPTAと称される4つの異なるPTA-mRNA分子を生成し(Harmar et al.1990.FEBS Lett 275:22-4;Kawaguchi et al.1986.Biochem Biophys Res Comm 139:1040-6;Nawa et al.1984.Nature 312:729-34)、それらのエクソンの組合せが異なる。7つのエクソン全ては、β-PTA mRNAにのみ含まれる。しかし、SPをコードする最初の3つのエクソン及び37アミノ酸からなる共通のN末端領域(配列番号5)は、全てのPTA前駆体分子に存在する。
【0073】
選択的スプライシングは、以下のプロ-タキキニンA配列を与える。
配列番号1(アイソフォームαPTA)
EEIGANDDLNYWSDWYDSDQIKEELPEPFEHLLQRIARRPKPQQFFGLMGKRDADSSIEKQVALLKALYGHGQISHKMAYERSAMQNYERRR
配列番号2(アイソフォームβPTA)
EEIGANDDLNYWSDWYDSDQIKEELPEPFEHLLQRIARRPKPQQFFGLMGKRDADSSIEKQVALLKALYGHGQISHKRHKTDSFVGLMGKRALNSVAYERSAMQNYERRR
配列番号3(アイソフォームγPTA)
EEIGANDDLNYWSDWYDSDQIKEELPEPFEHLLQRIARRPKPQQFFGLMGKRDAGHGQISHKRHKTDSFVGLMGKRALNSVAYERSAMQNYERRRSEQ
配列番号4(アイソフォームδPTA)
EEIGANDDLNYWSDWYDSDQIKEELPEPFEHLLQRIARRPKPQQFFGLMGKRDAGHGQISHKMAYERSAMQNYERRR
体液中で測定することができるプロ-タキキニンAの断片は、例えば以下の断片の群から選択することができる。
配列番号5(プロ-タキキニンA 1-37、P37、NT-PTA)
EEIGANDDLNYWSDWYDSDQIKEELPEPFEHLLQRIA
配列番号6(サブスタンスP)
RPKPQQFFGLM(-NH2)
配列番号7(ニューロペプチドK)
DADSSIEKQVALLKALYGHGQISHKRHKTDSFVGLM(-NH2)
配列番号8(ニューロペプチドガンマ)
GHGQISHKRHKTDSFVGLM(-NH2)
配列番号9(ニューロキニンB)
HKTDSFVGLM(-NH2)
配列番号10(C末端隣接ペプチド、PTA 92-107)。
ALNSVAYERSAMQNYE
配列番号11(PTA 3-22)
GANDDLNYWSDWYDSDQIK
配列番号12(PTA 21-36)
IKEELPEPFEHLLQRI
【0074】
プロ-タキキニンA又はその断片のレベルを決定することは、サブスタンスP及びニューロキニンを含むPTA又はその断片に対する免疫反応性が決定されることを意味し得る。結合領域に応じてPTA又はその断片の決定に使用される結合剤は、上記に示された分子の2つ以上に結合し得る。これは当業者には明らかである。
【0075】
本発明のより具体的な実施形態において、PTAの断片は、配列番号5、配列番号10、配列番号11及び配列番号12から選択され得る。
【0076】
本発明による方法のより具体的な実施形態において、PTA 1-37又はNT-PTAとも呼ばれるペプチド37(P37)、配列番号5のレベルが決定される。本発明による更により具体的な実施形態において、PTA 1-37(NT-PTA)、配列番号5に結合する少なくとも1つ又は2つの結合剤が使用され、2つ以上の結合剤の場合、それらは、好ましくはPTA 1-37(NT-PTA)、配列番号5内の2つの異なる領域に結合する。当該結合剤は、好ましくは抗体又はその結合断片であり得る。
【0077】
更により具体的な実施形態において、結合剤は、PTA、PTA 1-37(NT-PTA)内の以下の領域:PTA 3-22(配列番号11であるGANDDLNYWSDWYDSDQIK)及びPTA 21-36(配列番号12であるIKEELPEPFEHLLQRI)の一方又は両方にそれぞれ結合するそのバリアント及び断片の決定のために使用される。
【0078】
したがって、本発明によれば、上記のペプチド及びペプチド断片(すなわち、プロ-タキキニンA(PTA)及び配列1~12のいずれかによる断片)のいずれかのアミノ酸配列内の領域に結合する少なくとも1つの結合剤を使用することによる免疫反応性分析物のレベルは、当該対象から得られた体液中で決定され、臨床関連の特定の実施形態と相関する。
【0079】
本発明による方法のより具体的な実施形態において、PTA 1-37のレベルが決定される(配列番号5:NT-PTA)。
【0080】
より具体的な実施形態において、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に結合する少なくとも1つの結合剤を使用することによって免疫反応性分析物のレベルが決定され、次の臨床関連の特定の実施形態に対する本発明による上述の実施形態と相関する。
●当該免疫反応性分析物のレベルを敗血症又は敗血症性ショックと相関させることであって、ある一定の閾値を超える上昇したレベルが、敗血症、重症敗血症又は敗血症性ショックを予測する、相関させること。
【0081】
あるいは、上記分析物のいずれかのレベルは、他の分析方法(例えば、質量分析)によって決定され得る。
【0082】
本出願の主題は、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法であって、
●当該対象から得られた体液中のプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルを決定することと、
●プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片の決定されたレベルを敗血症又は敗血症性ショックと相関させることと、
を含み、ある一定の閾値を超える上昇したレベルが、敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測する、方法である。
【0083】
本出願の一実施形態は、患者における敗血症、重症敗血症又は敗血症性ショックを予測するための方法に関し、当該患者の体液の試料は、患者が敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックの臨床症状を示さない時点で採取される。
【0084】
本出願の別の実施形態は、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法に関し、当該プロ-タキキニンAは配列番号1~4を含む群から選択され、その断片は配列番号5~12を含む群から選択される。
【0085】
本出願の別の実施形態は、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法に関し、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルは、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に対する結合剤を使用することによって決定される。
【0086】
本出願の別の特定の実施形態は、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法に関し、結合剤が、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に結合する抗体、抗体断片又は非Ig足場を含む群から選択される。
【0087】
本出願の別の好ましい実施形態は、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法に関し、当該結合剤は、配列番号5、配列番号11及び配列番号12を含む群から選択されるアミノ酸配列内の領域に結合する。
【0088】
本出願の別の実施形態は、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法に関し、閾値範囲は、75~200pmol/L、より好ましくは90~175pmol/L、更により好ましくは100~150pmol/Lであり、最も好ましくは当該閾値レベルは120pmol/Lである。
【0089】
本出願の更なる実施形態は、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測する方法に関し、プロ-タキキニンAのレベルは、イムノアッセイで測定され、当該結合剤はプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に結合する抗体又は抗体断片である。
【0090】
本出願の別の実施形態は、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法に関し、アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)であるプロ-タキキニンAの領域内の2つの異なる領域に結合する2つの結合剤を含むアッセイが使用され、当該領域の各々が少なくとも4又は5アミノ酸を含む。
【0091】
本出願の別の特定の実施形態は、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法に関し、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルを決定するためにアッセイが使用され、当該アッセイのアッセイ感度は、健康な対象のプロ-タキキニンA又はプロ-タキキニンA断片を定量することができ、<10pmol/Lである。
【0092】
本出願の別の実施形態は、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法に関し、当該体液は、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)及び唾液を含む群から選択され得る。
【0093】
本出願の別の実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測する方法に関し、更に、少なくとも1つのバイオマーカ及び/又は臨床パラメータ及び/又は臨床スコアは、D-ダイマー、プロカルシトニン(PCT)、C反応性タンパク質(CRP)、乳酸、penKid、ADM-NH2、MR-proADM、NT-proBNP、BNP、プレセプシン、ペントラキシン-3(PTX-3)、CD-64、カルプロテクチン、白血球数、リンパ球数、好中球数、ヘモグロビン、血小板数、アルブミン、アラニントランスアミナーゼ、クレアチニン、血中尿素、乳酸デヒドロゲナーゼ、クレアチニンキナーゼ、心筋トロポニンI、プロトロンビン時間、血清フェリチン、インターロイキン-6(IL-6)、IL-10、IL-2、IL-7、インターフェロンガンマ(IF-γ)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、顆粒コロニー刺激因子(GCSF)、IP-10、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、MIP-1α、SOFA、qSOFA、APACHE IIを含む群から選択されて決定される。
【0094】
本出願の別の好ましい実施形態は、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法に関し、当該決定は、1人の患者において2回以上実施される。
【0095】
本出願の一実施形態は、当該対象をリスク群に層別化するために、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測する方法に関する。
【0096】
本出願の主題はまた、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法を実施するためのポイントオブケア(POC)デバイスであり、当該ポイントオブケアデバイスは、アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)に対する少なくとも2つの抗体又は抗体断片を含む。
【0097】
本出願の主題はまた、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法を実施するためのキットであり、当該キットは、アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)に対する少なくとも2つの抗体又は抗体断片を含む。
【0098】
本出願の主題はまた、患者の敗血症、重症敗血症/又は敗血症性ショックに罹患するリスクを評価するための方法であって、
●当該対象から得られた体液中のプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルを決定することと、
●プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片の決定されたレベルを敗血症又は敗血症性ショックと相関させることと、
を含み、ある一定の閾値を超える上昇したレベルが、敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックの発症のリスクを示す、方法である。
【0099】
本出願の一実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価する方法に関し、当該患者の体液の試料は、患者が敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックの臨床症状を示さない時点で採取される。
【0100】
本出願の別の実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法に関し、当該プロ-タキキニンAは配列番号1~4を含む群から選択され、その断片は配列番号5~12を含む群から選択される。
【0101】
本出願の別の実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法に関し、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルは、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に対する結合剤を使用することによって決定される。
【0102】
本出願の別の特定の実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法に関し、結合剤が、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に結合する抗体、抗体断片又は非Ig足場を含む群から選択される。
【0103】
本出願の別の好ましい実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法に関し、当該結合剤は、配列番号5、配列番号11及び配列番号12を含む群から選択されるアミノ酸配列内の領域に結合する。
【0104】
本出願の別の実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法に関し、閾値範囲は、75~200pmol/L、より好ましくは90~175pmol/L、更により好ましくは100~150pmol/Lの範囲であり、最も好ましくは当該閾値レベルは120pmol/Lである。
【0105】
本出願の更なる実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法に関し、プロ-タキキニンAのレベルは、イムノアッセイで測定され、当該結合剤はプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に結合する抗体又は抗体断片である。
【0106】
本出願の別の実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法に関し、アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)であるプロ-タキキニンAの領域内の2つの異なる領域に結合する2つの結合剤を含むアッセイが使用され、当該領域の各々が少なくとも4又は5アミノ酸を含む。
【0107】
本出願の別の特定の実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法に関し、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルを決定するためにアッセイが使用され、当該アッセイのアッセイ感度は、健康な対象のプロ-タキキニンA又はプロ-タキキニンA断片を定量することができ、<10pmol/Lである。
【0108】
本出願の別の実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法に関し、当該体液は、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)及び唾液を含む群から選択され得る。
【0109】
本出願の別の実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法に関し、更に、少なくとも1つのバイオマーカ及び/又は臨床パラメータ及び/又は臨床スコアは、D-ダイマー、プロカルシトニン(PCT)、C反応性タンパク質(CRP)、乳酸、penKid、ADM-NH2、MR-proADM、NT-proBNP、BNP、プレセプシン、ペントラキシン-3(PTX-3)、CD-64、カルプロテクチン、白血球数、リンパ球数、好中球数、ヘモグロビン、血小板数、アルブミン、アラニントランスアミナーゼ、クレアチニン、血中尿素、乳酸デヒドロゲナーゼ、クレアチニンキナーゼ、心筋トロポニンI、プロトロンビン時間、血清フェリチン、インターロイキン-6(IL-6)、IL-10、IL-2、IL-7、インターフェロンガンマ(IF-γ)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、顆粒コロニー刺激因子(GCSF)、IP-10、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、MIP-1α、SOFA、qSOFA、APACHE IIを含む群から選択されて決定される。
【0110】
本出願の別の好ましい実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法に関し、当該決定は、1人の患者において2回以上実施される。
【0111】
本出願の一実施形態は、当該対象をリスク群に層別化するために、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法に関する。
【0112】
本出願の主題はまた、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法を実施するためのポイントオブケアデバイスであって、当該ポイントオブケアデバイスは、アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)に対する少なくとも2つの抗体又は抗体断片を含む、ポイントオブケアデバイスである。
【0113】
本出願の主題はまた、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法を実施するためのキットであって、アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)に対する少なくとも2つの抗体又は抗体断片を含む、キットである。
【0114】
したがって、本発明の主題は、患者において敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法であって、
●当該対象から得られた体液中の配列番号1~12のペプチド及び断片を含む群から選択されるペプチドのアミノ酸配列内の領域に結合する少なくとも1つの結合剤を使用することによって、免疫反応性分析物のレベルを決定することと、
Pro-タキキニン又はその断片のレベルを、敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックと相関させることと、
を含み、ある一定の閾値を超える上昇したレベルが、敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックの発症のリスクを示す、方法である。本出願のより具体的な実施形態において、当該対象から得られた体液中のプロ-タキキニン1-37、N末端プロ-タキキニンA断片、NT-PTA(配列番号5)のアミノ酸配列内の領域に結合する少なくとも1つの結合剤を使用することによる免疫反応性分析物のレベル。
【0115】
本出願の特定の実施形態において、プロ-タキキニンA又はその断片のレベルは、プロ-タキキニンA又はその断片に結合する抗体又は抗体の断片を使用するイムノアッセイで測定される。プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルを決定するのに有用であり得るイムノアッセイは、実施例1に概説したステップを含み得る。全ての閾値及び値は、実施例1に従って使用された試験及び較正との相関において見る必要がある。当業者は、閾値の絶対値が、使用される較正によって影響され得ることを知っている場合がある。これは、本明細書で示される全ての値及び閾値が、本明細書で使用される較正(実施例1)の文脈において理解されるべきであることを意味する。
【0116】
本発明によれば、プロ-タキキニンAに対する診断用結合剤は、抗体、例えばIgG、典型的な全長免疫グロブリン、又は例えば化学的に結合した抗体(断片抗原結合)として重鎖及び/又は軽鎖の少なくともF可変ドメインを含有する抗体断片からなる群から選択され、Fabミニボディ、単鎖Fab抗体、エピトープタグを有する一価Fab抗体、例えばFab-V5Sx2を含むFab断片;CH3ドメインと二量体化した二価Fab(ミニ抗体);例えば異種ドメインを用いた多量体化を介して、例えばdHLXドメインの二量体化を介して形成される二価Fab又は多価Fab、例えばFab-dHLX-FSx2;F(ab’)2断片、scFv断片、多量体化多価又は/及び多重特異性scFv断片、二価及び/又は二重特異性ダイアボディ、BITE(登録商標)(二重特異性T細胞エンゲージャ)、三官能性抗体、例えばGとは異なるクラスの多価抗体;単一ドメイン抗体、例えばラクダ科動物又は魚免疫グロブリンに由来するナノボディを含むが、これらに限定されない。
【0117】
本出願の特定の実施形態において、プロ-タキキニンA又はその断片のレベルは、以下により詳細に記載される、プロ-タキキニンA又はその断片に結合する抗体、抗体断片、アプタマー、非Ig足場を含む群から選択される結合剤を使用するアッセイで測定される。
【0118】
プロ-タキキニンA又はその断片のレベルを決定するために使用され得る結合剤は、プロ-タキキニンA又はその断片に対して少なくとも107M-1、好ましくは108M-1の親和性定数を示し、好ましい親和性定数は109M-1より大きく、最も好ましくは1010M-1より大きい。当業者は、より高い用量の化合物を適用することによって、より低い親和性を補うことが考慮され得ることを知っており、この尺度では、本発明の範囲外にはならない。結合親和性は、例えばBiaffin,Kassel,Germany(http://www.biaffin.com/de/))でサービス分析として提供されるBiacore法を使用して決定することができる。
【0119】
抗体の親和性を決定するために、Biacore 2000システム(GE Healthcare Europe GmbH,Freiburg,Germany)を使用する無標識表面プラズモン共鳴によって、固定化抗体へのPTAスプライスバリアント又はその断片の結合動態を決定した。抗体の可逆的固定化は、CM5センサー表面に高密度で共有結合された抗マウスFc抗体を使用して、製造者の説明書に従って実施した(マウス抗体捕捉キット;GE Healthcare)。(Lorenz et al.,” Functional Antibodies Targeting IsaA of Staphylococcus aureus Augment Host Immune Response and Open New Perspectives for Antibacterial Therapy”;Antimicrob Agents Chemother.2011 January;55(1):165-173)。
【0120】
アッセイは、合成(本発明者らの実験のために、本発明者らは合成P37、配列番号5を使用した)又は組換えPTAスプライスバリアント又はその断片によって較正され得る。
【0121】
抗体に加えて、他のバイオポリマー足場は、標的分子を複合体化することが当技術分野で周知であり、高度に標的特異的なバイオポリマーの生成に使用されている。例は、アプタマー、スピーゲルマー、アンチカリン及びコノトキシンである。非Ig足場は、タンパク質足場であってもよく、リガンド又は抗原に結合することができるので、抗体模倣物として使用することができる。非Ig足場は、テトラネクチンに基づく非Ig足場(例えば、米国特許出願公開第2010/0028995号に記載されている)、フィブロネクチン足場(例えば、欧州特許第1266025号に記載されている);リポカリンベースの足場(例えば、国際公開第2011/154420号に記載されている);ユビキチン足場(例えば、国際公開第2011/073214号に記載されている)、転移足場(例えば、米国特許出願公開第2004/0023334号に記載されている)、プロテインA足場(例えば、欧州特許第2231860号に記載されている)、アンキリン反復に基づく足場(例えば、国際公開第2010/060748号に記載されている)、マイクロタンパク質、好ましくはシスチンノットを形成するマイクロタンパク質)足場(例えば、欧州特許第2314308号に記載されている)、Fyn SH3ドメインに基づく足場(例えば、国際公開第2011/023685号に記載されている)EGFR-Aドメインに基づく足場(例えば、国際公開第2005/040229号に記載されている)及びKunitzドメインに基づく足場(例えば、欧州特許第1941867号に記載されている)を含む群から選択され得る。
【0122】
本出願の別の好ましい実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測する方法に関し、PTA又はその断片の閾値レベルは75~200pmol/L、より好ましくは90~175pmol/L、更により好ましくは100~150pmol/Lであり、最も好ましい当該閾値レベルは120pmol/Lである。
【0123】
本出願の別の好ましい実施形態は、患者の敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価する方法に関し、PTA又はその断片の閾値レベルは75~200pmol/L、より好ましくは90~175pmol/L、更により好ましくは100~150pmol/Lであり、最も好ましくは当該閾値レベルは120pmol/Lである。
【0124】
別の好ましい実施形態において、PTA又はその断片の閾値は、上限正常範囲(99パーセンタイル、107pmol/L)であり得る。
【0125】
本出願の1つの特定の実施形態において、プロ-タキキニンA又はその断片のレベルはイムノアッセイで測定され、当該結合剤はプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に結合する抗体又は抗体断片である。
【0126】
本出願の1つの特定の実施形態において、使用されるアッセイは、アミノ酸3~22(配列、配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列、配列番号12)であるプロ-タキキニンAの領域内の2つの異なる領域に結合する2つの結合剤を含み、当該領域の各々が少なくとも4又は5アミノ酸を含む。
【0127】
本発明による体液試料中のプロ-タキキニンA又はプロ-タキキニンA断片を測定するためのアッセイの本出願の一実施形態において、当該アッセイのアッセイ感度は、健康な対象のプロ-タキキニンA又はプロ-タキキニンA断片を定量することができ、<20pmol/L、好ましくは<10pmol/L、より好ましくは<5pmol/Lである。
【0128】
本発明の主題は、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法における、当該対象から得られた体液中の配列番号1~12のペプチド及び断片を含む群から選択されるペプチドのアミノ酸配列内の領域に結合する少なくとも1つの結合剤の使用である。
【0129】
本発明の主題は、患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを発症するリスクを評価する方法における、当該対象から得られた体液中の配列番号1~12のペプチド及び断片を含む群から選択されるペプチドのアミノ酸配列内の領域に結合する少なくとも1つの結合剤の使用である。
【0130】
本発明の一実施形態において、当該結合剤は、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に結合する抗体、抗体断片又は非Ig足場を含む群から選択される。特定の実施形態において、当該少なくとも1つの結合剤は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び12を含む群から選択される配列を有する領域に結合する。特定の実施形態において、当該結合剤は、配列番号6、7、8及び9に結合しない。特定の実施形態において、当該少なくとも1つの結合剤は、配列番号1、2、3、4、5、11及び12を含む群から選択される配列を有する領域に結合する。別の具体的な実施形態において、当該少なくとも1つの結合剤は、配列番号5、11及び12を含む群から選択される配列を有する領域に結合する。別の非常に具体的な実施形態において、当該結合剤は、プロ-タキキニンA 1-37、N末端プロ-タキキニンA断片、NT-PTA(配列番号5)に結合する。
【0131】
本出願のより具体的な実施形態において、少なくとも1つの結合剤は、当該対象から得られた体液中のプロ-タキキニンA 1-37、N末端プロ-タキキニンA断片、NT-PTA(配列番号5)のアミノ酸配列内の領域、より具体的にはアミノ酸3-22(GANDDLNYWSDWYDSDQIK、配列番号11)及び/又はアミノ酸21-36(IKEELPEPFEHLLQRI、配列番号12)に結合し、当該領域の各々が少なくとも4又は5アミノ酸を含む。
【0132】
したがって、本方法によれば、上記結合剤の免疫反応性のレベルは、当該対象から得られた体液において決定される。免疫反応性のレベルは、結合剤のそのような分析物への結合反応によって定量的、半定量的又は定性的に決定される分析物の濃度を意味し、好ましくは、結合剤は少なくとも108M-1の分析物への結合に対する親和定数を有し、結合剤は抗体又は抗体断片又は非IgG骨格であってもよく、結合反応はイムノアッセイである。
【0133】
本発明の主題はまた、先行する実施形態のいずれかによる患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法であり、当該対象から得られた体液中のプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルが、単独で、又は以下の選択肢から選択され得る他の有用なバイオマーカ及び/又は臨床パラメータ及び/又は臨床スコアと組み合わせてのいずれかで使用される。
●「健康な」又は「見かけ上健康な」対象の集団における所定の試料のアンサンブルで当該対象から得られた体液中のプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルの中央値との比較、
●「健康な」又は「見かけ上健康な」対象の集団における所定の試料のアンサンブルで当該対象から得られた体液中のプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルの四分位数との比較、
●Cox Proportional Hazards分析に基づく、又はNRI(Net Reclassification Index)、IDI(Integrated Discrimination Index)などのリスク指標算出を用いることによる算出。
【0134】
本発明の主題はまた、先行する実施形態のいずれかによる患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを受けるリスクを評価するための方法であり、当該対象から得られた体液中のプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルが、単独で、又は以下の選択肢から選択され得る他の有用なバイオマーカ及び/又は臨床パラメータ及び/又は臨床スコアと組み合わせてのいずれかで使用される。
●「健康な」又は「見かけ上健康な」対象の集団における所定の試料のアンサンブルで当該対象から得られた体液中のプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルの中央値との比較、
●「健康な」又は「見かけ上健康な」対象の集団における所定の試料のアンサンブルで当該対象から得られた体液中のプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルの四分位数との比較、
●Cox Proportional Hazards分析に基づく、又はNRI(Net Reclassification Index)、IDI(Integrated Discrimination Index)などのリスク指標算出を用いることによる算出。
【0135】
当該更なる少なくとも1つのバイオマーカ及び/又は臨床パラメータ及び/又は臨床スコアは、D-ダイマー、プロカルシトニン(PCT)、C反応性タンパク質(CRP)、乳酸、penKid、ADM-NH2、MR-proADM、NT-proBNP、BNP、プレセプシン、ペントラキシン-3(PTX-3)、CD-64、カルプロテクチン、白血球数、リンパ球数、好中球数、ヘモグロビン、血小板数、アルブミン、アラニントランスアミナーゼ、クレアチニン、血中尿素、乳酸デヒドロゲナーゼ、クレアチニンキナーゼ、心筋トロポニンI、プロトロンビン時間、血清フェリチン、インターロイキン-6(IL-6)、IL-10、IL-2、IL-7、インターフェロンガンマ(IF-γ)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、顆粒コロニー刺激因子(GCSF)、IP-10、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、MIP-1α、SOFA、qSOFA、APACHE IIを含む群から選択されて決定され得る。
【0136】
閾値レベルは、例えば、疾患の発生が集団におけるバイオマーカの四分位数と相関するカプラン・マイヤー分析から得ることができる。この分析によれば、75パーセンタイルを超えるバイオマーカレベルを有する対象は、本発明による疾患に罹患するリスクが有意に高い。この結果は、古典的リスク因子について完全に調整したコックス回帰分析によって更に裏付けられる。全ての他の対象に対する最も高い四分位数は、本発明による疾患に罹患するリスクの増加と非常に有意に関連する。
【0137】
他の好ましいカットオフ値は、例えば、正常集団の90パーセンタイル、95パーセンタイル又は99パーセンタイルである。75パーセンタイルよりも高いパーセンタイルを使用することにより、識別された偽陽性対象の数が減少するが、依然としてリスクが高いにもかかわらず、中程度の対象を識別することができない可能性がある。したがって、「偽陽性」も特定することを犠牲にしてリスクのある対象の大部分を識別することがより適切であると考えるかどうか、又は中程度のリスクのいくつかの対象を見落とすことを犠牲にして主に高リスクの対象を識別することがより適切であると考えるかどうかに応じて、カットオフ値を採用することができる。
【0138】
上述の閾値は、本発明に使用されるアッセイシステムとは異なるように較正されている場合、他のアッセイでは異なる可能性がある。したがって、上述の閾値は、較正の差異を計算に入れて、そのように異なって較正されたアッセイに適用されるものとする。較正の差異を定量化する1つの可能性は、両方の方法を使用した試料中のそれぞれのバイオマーカ(例えばNT-PTA)を測定することによる、本発明において使用されるそれぞれのバイオマーカアッセイによる、問題のアッセイの方法比較分析(相関)(例えばNT-PTAアッセイ)である。別の可能性は、問題のアッセイを用いて、この試験が十分な分析感度を有することを前提として、代表的な正常集団のバイオマーカレベルの中央値を決定し、結果を平均バイオマーカレベルと比較し(実施例2参照)、この比較によって得られた差異に基づいて較正を再計算することである。本発明において使用される較正を用いて、正常な(健康な)対象由来の試料を測定した:平均血漿NT-PTAは、55.2pmol/L(SD±17.8pmol/L)であった。
【0139】
様々なイムノアッセイが知られており、本発明のアッセイ及び方法に使用することができ、これらとしては、ラジオイムノアッセイ(「RIA」)、ホモジニアス酵素増幅イムノアッセイ(「EMIT」)、酵素結合免疫吸着測定法(「ELISA」)、アポ酵素再活性化イムノアッセイ(「ARIS」)、化学発光及び蛍光イムノアッセイ、ルミネックス(Luminex)ベースのビーズアレイ、プロテインマイクロアレイアッセイ、並びに例えば免疫クロマトグラフィストリップ試験(「ディップスティックイムノアッセイ」)及び免疫クロマトグラフィアッセイなどの迅速試験フォーマットが挙げられる。
【0140】
本発明の一実施形態において、このようなアッセイは、酵素標識、化学発光標識、電気化学発光標識を含むがこれらに限定されない任意の種類の検出技術を使用するサンドイッチイムノアッセイであり、好ましくは完全自動化アッセイである。本発明の一実施形態において、このようなアッセイは、酵素標識サンドイッチアッセイである。自動化又は完全自動化アッセイの例は、以下のシステムのうちの1つに使用され得るアッセイを含む。Roche Elecsys(登録商標)、Abbott Architect(登録商標)、Siemens Centauer(登録商標)、Brahms Kryptor(登録商標)、Biomerieux Vidas(登録商標)、Alere Triage(登録商標)。
【0141】
本発明の一実施形態において、それは、いわゆるPOC検査(ポイントオブケア)であってもよく、これは、完全に自動化されたアッセイシステムを必要とせずに、患者の近くで1時間未満以内に検査を実施することを可能にする検査技術である。この技術の一例は、免疫クロマトグラフィ検査技術である。
【0142】
本発明の一実施形態において、当該2つの結合剤の少なくとも1つは、検出されるために標識される。
【0143】
好ましい実施形態において、当該標識は、化学発光標識、酵素標識、蛍光標識、放射性ヨウ素標識を含む群から選択される。
【0144】
アッセイは、同種又は異種アッセイ、競合及び非競合アッセイであってもよい。一実施形態において、アッセイは、非競合イムノアッセイであるサンドイッチアッセイの形態であり、検出及び/又は定量される分子は、第1の抗体及び第2の抗体に結合される。第1の抗体は、固相、例えば、ビーズ、ウェル又は他の容器の表面、チップ又はストリップに結合され得、第2の抗体は、例えば、色素、放射性同位体、又は反応性若しくは触媒的に活性な部分で標識された抗体である。次いで、分析物に結合した標識抗体の量を、適切な方法によって測定する。「サンドイッチアッセイ」に関与する全般的な組成物及び手順は、十分に確立されており、当業者に公知である(The Immunoassay Handbook,Ed.David Wild,Elsevier LTD,Oxford;3rd ed.(May 2005),ISBN-13:978-0080445267;Hultschig C et al.,Curr Opin Chem Biol.2006 Feb;10(1):4-10.PMID:16376134)。
【0145】
別の実施形態において、アッセイは、2つの捕捉分子、好ましくは、液体の反応混合物中に分散物として両方とも存在する抗体を含み、第1の標識成分が第1の捕捉分子に付着し、当該第1の標識成分が蛍光又は化学発光消光又は増幅に基づく標識系の一部であり、当該マーキング系の第2の標識成分が第2の捕捉分子に付着し、その結果、両方の捕捉分子が分析物に結合すると、試料を含む溶液中に形成されたサンドイッチ複合体の検出を可能にする測定可能なシグナルが生成される。
【0146】
別の実施形態において、当該標識系は、蛍光色素又は化学発光色素、特にシアニン型の色素と組み合わせて希土類クリプテート又は希土類キレートを含む。
【0147】
本発明の文脈において、蛍光に基づくアッセイは、例えば、FAM(5-又は6-カルボキシフルオレセイン)、VIC、NED、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、IRD-700/800、シアニン色素、例えばCY3、CY5、CY3.5、CY5.5、Cy7、キサンテン、6-カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、TET、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオロセイン(JOE)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、5-カルボキシローダミン-6G(R6G5)、6-カルボキシローダミン-6G(RG6)、ローダミン、ローダミングルーン、ローダミンレッド、ローダミン 110、BODIPY色素、例えばBODIPY TMR、オレゴングリーン、ウンベリフェロンなどのクマリン、Hoechst 33258などのベンズイミド;フェナントリジン、例えばテキサスレッド、Yakima Yellow、Alexa Fluor、PET、エチジウムブロミド、アクリジニウム色素、カルバゾール色素、フェノキサジン色素、ポルフィリン色素、ポリメチン色素などを含む群から選択され得る色素の使用を含む。
【0148】
本発明の文脈において、化学発光に基づくアッセイは、化学発光材料について記載されている物理的原理に基づく色素の使用を含む(551~562頁の引用を含む、参照により本明細書に組み込まれる、Kirk-Othmer,Encyclopedia of chemical technology,4th ed.,executive editor,J.I.Kroschwitz;editor,M.Howe-Grant,John Wiley&Sons,1993,vol.15,p.518-562)。好ましい化学発光色素は、アクリジニウムエステルである。
【0149】
本明細書において言及されるように、「アッセイ」又は「診断アッセイ」は、診断の分野において適用される任意のタイプのものであり得る。このようなアッセイは、特定の親和性を有する1つ以上の捕捉プローブへの検出される分析物の結合に基づき得る。捕捉分子と標的分子又は対象となる分子との間の相互作用に関して、親和定数は、好ましくは108M-1より大きい。
【0150】
本発明の文脈において、「結合剤分子」は、試料由来の標的分子又は対象となる分子、すなわち、分析物(本発明の文脈において、Pro-Tachyinin A及びその断片)を結合するために使用され得る分子である。したがって、結合剤分子は、標的分子又は対象となる分子に特異的に結合するために、空間的、並びに表面電荷、疎水性、親水性、ルイス供与体及び/又は受容体の有無などの表面特徴の両方に関して、適切に成形される必要がある。これにより、結合は、例えば、イオン、ファンデルワールス、パイ-パイ、シグマ-パイ、疎水性若しくは水素結合相互作用、又は捕捉分子と標的分子若しくは対象となる分子との間の前述の相互作用の2つ以上の組合せによって媒介され得る。本発明の文脈において、結合剤分子は、例えば、核酸分子、炭水化物分子、PNA分子、タンパク質、抗体、ペプチド又は糖タンパク質を含む群から選択されてもよい。好ましくは、結合剤分子は抗体であり、標的又は対象となる分子に対して十分な親和性を有する抗体の断片を含み、組換え抗体又は組換え抗体断片、並びに当該抗体又は少なくとも12アミノ酸長を有するバリアント鎖に由来するその断片の化学的及び/又は生化学的に修飾された誘導体を含む。
【0151】
化学発光標識はアクリジニウムエステル標識、イソルミノール標識を伴うステロイド標識などであってもよい。
【0152】
酵素標識は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチンキナーゼ(CPK)、アルカリホスファターゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、酸性ホスファターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼなどであってよい。
【0153】
本発明の一実施形態において、当該2つの結合剤の少なくとも1つは、磁性粒子としての固相及びポリスチレン表面に結合される。
【0154】
本発明による体液試料中のプロ-タキキニンA又は断片を決定するためのアッセイの一実施形態において、このようなアッセイはサンドイッチアッセイ、好ましくは全自動アッセイである。それは、完全に自動化された又は手動のELISAであり得る。それは、いわゆるPOC検査(ポイントオブケア)であってもよい。自動化又は完全自動化アッセイの例としては、以下のシステムのうちの1つに使用され得るアッセイが挙げられる。Roche Elecsys(登録商標)、Abbott Architect(登録商標)、Siemens Centauer(登録商標)、Brahms Kryptor(登録商標)、Biomerieux Vidas(登録商標)、Alere Triage(登録商標)。試験フォーマットの例は上に提供されている。
【0155】
本発明による体液試料中のプロ-タキキニンA又は断片を決定するためのアッセイの一実施形態において、当該2つの結合剤の少なくとも1つは、検出されるために標識される。標識の例は上に提供されている。
【0156】
本発明による体液の試料中のプロ-タキキニンA又は断片を決定するためのアッセイの一実施形態において、当該2つの結合剤の少なくとも1つは、固相に結合している。固相の例は上に提供されている。
【0157】
本発明による体液試料中のプロ-タキキニンA又は断片を測定するためのアッセイの一実施形態において、当該標識は、化学発光標識、酵素標識、蛍光標識、放射性ヨウ素標識を含む群から選択される。本発明の更なる主題は、本発明によるアッセイを含むキットであり、当該アッセイの成分が1つ又は複数の容器に含まれ得る。
【0158】
一実施形態において、本発明の主題は、本発明による方法を実施するためのポイントオブケアデバイスであり、当該ポイントオブケアデバイスは、アミノ酸3~22(GANDDLNYWSDWYDSDQIK、配列番号11)又はアミノ酸21~36(IKEELPEPFEHLLQRI、配列番号12)のいずれかに対する少なくとも1つの抗体又は抗体断片を含み、当該領域の各々が少なくとも4又は5アミノ酸を含む。
【0159】
一実施形態において、本発明の主題は、本発明による方法を実施するためのポイントオブケアデバイスであり、当該ポイントオブケアデバイスは、アミノ酸3~22(GANDDLNYWSDWYDSDQIK、配列番号11)及びアミノ酸21~36(IKEELPEPFEHLLQRI、配列番号12)に対する少なくとも2つの抗体又は抗体断片を含み、当該領域の各々が少なくとも4又は5アミノ酸を含む。
【0160】
一実施形態において、本発明の主題は、本発明によるキット又は方法を実施するキットであり、当該キットは、アミノ酸3~22(GANDDLNYWSDWYDSDQIK、配列番号11)又はアミノ酸21~36(IKEELPEPFEHLLQRI、配列番号12)のいずれかに対する少なくとも1つの抗体又は抗体断片を含み、当該領域の各々が少なくとも4又は5アミノ酸を含む。
【0161】
一実施形態において、本発明の主題は、本発明による方法を実施するためのキットであり、当該キットは、アミノ酸3~22(GANDDLNYWSDWYDSDQIK、配列番号11)及びアミノ酸21~36(IKEELPEPFEHLLQRI、配列番号12)に対する少なくとも2つの抗体又は抗体断片を含み、当該領域の各々が少なくとも4又は5アミノ酸を含む。
【0162】
本発明の方法は、部分的にコンピュータ実装されてもよい。例えば、マーカ、例えばNT-PTAの検出されたレベルを参照及び/又は閾値レベルと比較するステップは、コンピュータシステムにおいて実施することができる。例えば、決定された値は、コンピュータシステムに(医療従事者によって手動で、又はそれぞれのマーカレベルが決定されたデバイスから自動的のいずれかで)入力されてもよい。コンピュータシステムは、ポイントオブケア(例えば、集中治療室又はED)に直接あってもよく、又はコンピュータネットワークを介して(例えば、インターネット、又は病院情報システム(HIS)などの他のITシステム又はプラットフォームと任意選択で組合せ可能な専用医療クラウドシステムを介して)接続された遠隔位置にあってもよい。代替的に又は追加的に、関連付けられた治療ガイダンス及び/又は治療層別化は、ユーザ(典型的には医師などの医療従事者)のために表示及び/又は印刷される。
【0163】
以下の実施形態も本発明の主題である。
1.患者における敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測するための方法であって、
●当該対象から得られた体液の試料中のプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルを決定することと、
●プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片の決定されたレベルを敗血症又は敗血症性ショックと相関させることと、
を含み、ある一定の閾値を超える上昇したレベルが、敗血症、重症敗血症及び/又は敗血症性ショックを予測する、方法。
2.当該患者の体液の試料が、患者が敗血症、重症敗血症及び/若しくは敗血症性ショックついての臨床症状を示さないか、又は感染疾患の軽度な症状を示す時点で採取される、実施形態1に記載の方法。
3.当該プロ-タキキニンAが配列番号1~4を含む群から選択され、その断片が配列番号5~12を含む群から選択される、実施形態1又は2に記載の方法。
4.プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルが、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に対する結合剤を使用することによって決定される、実施形態1~3のいずれか一項に記載の方法。
5.結合剤が、プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に結合する抗体、抗体断片又は非Ig足場を含む群から選択される、実施形態1~4のいずれか一項に記載の方法。
6.当該結合剤が、配列番号5、配列番号11及び配列番号12を含む群から選択されるアミノ酸配列内の領域に結合する、実施形態1~5のいずれか一項に記載の方法。
7.閾値範囲が75~200pmol/L、より好ましくは90~175pmol/L、更により好ましくは100~150pmol/Lであり、最も好ましくは当該閾値レベルが120pmol/Lである、実施形態1~6のいずれか一項に記載の方法。
8.プロ-タキキニンAのレベルがイムノアッセイで測定され、当該結合剤がプロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片に結合する抗体又は抗体断片である、実施形態1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)であるプロ-タキキニンAの領域内の2つの異なる領域に結合する2つの結合剤を含むアッセイが使用され、当該領域の各々が少なくとも4又は5アミノ酸を含む、実施形態1~8のいずれか一項に記載の方法。
10.プロ-タキキニンA又は少なくとも5アミノ酸のその断片のレベルを決定するためにアッセイが使用され、当該アッセイのアッセイ感度が健康な対象のプロ-タキキニンA又はプロ-タキキニンA断片を定量することができ、<10pmol/Lである、実施形態1~9のいずれか一項に記載の方法。
11.当該体液が、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)、及び唾液を含む群から選択され得る、実施形態1~10のいずれか一項に記載の方法。
12.更なる少なくとも1つのバイオマーカ及び/又は臨床パラメータ及び/又は臨床スコアが、D-ダイマー、プロカルシトニン(PCT)、C反応性タンパク質(CRP)、乳酸、penKid、ADM-NH2、MR-proADM、NT-proBNP、BNP、プレセプシン、ペントラキシン-3(PTX-3)、CD-64、カルプロテクチン、白血球数、リンパ球数、好中球数、ヘモグロビン、血小板数、アルブミン、アラニントランスアミナーゼ、クレアチニン、血中尿素、乳酸デヒドロゲナーゼ、クレアチニンキナーゼ、心筋トロポニンI、プロトロンビン時間、血清フェリチン、インターロイキン-6(IL-6)、IL-10、IL-2、IL-7、インターフェロンガンマ(IF-γ)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、顆粒コロニー刺激因子(GCSF)、IP-10、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、MIP-1α、SOFA、qSOFA、APACHE IIを含む群から選択されて決定され得る、実施形態1~11のいずれか一項に記載の方法。
13.当該決定が、1人の患者において2回以上実施される、実施形態1~12のいずれか一項に記載の方法。
14.当該対象をリスク群に層別化するための、実施形態1~13のいずれか一項に記載の方法。
15.アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)に対する少なくとも2つの抗体又は抗体断片を含む、実施形態1~14のいずれか一項に記載の方法を実施するためのポイントオブケアデバイス。
16.アミノ酸3~22(配列番号11)及びアミノ酸21~36(配列番号12)に対する少なくとも2つの抗体又は抗体断片を含む、実施形態1~14のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキット。
【実施例】
【0164】
実施例1-抗体の開発
免疫化のためのペプチド/コンジュゲート
ウシ血清アルブミン(BSA)へのペプチドのコンジュゲーションのため、追加のN末端システイン残基により免疫化用ペプチドを合成した(JPT Technologies,Berlin,Germany)。Sulfo-SMCC(Perbio-science,Bonn,Germany)を用いることにより、ペプチドをBSAに共有結合させた。カップリング手順は、Perbioのマニュアルに従って実施した。
【0165】
【0166】
モノクローナル抗体の作製
BALB/cマウスを、0日目及び14日目に100μgのペプチド-BSA-コンジュゲート(100μlの完全フロイントアジュバント中に乳化)で、21日目及び28日目に50μg(100μlの不完全フロイントアジュバント中)で免疫化した。融合実験を実施する3日前に、動物に、100μlの生理食塩水に溶解した50μgのコンジュゲートを1回の腹腔内注射及び1回の静脈内注射として与えた。免疫化したマウス由来の脾細胞及び骨髄腫細胞株SP2/0の細胞を、1mLの50%ポリエチレングリコールと37℃で30秒間融合した。洗浄後、細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種した。ハイブリッドクローンを、HAT培地(20%ウシ胎児血清及びHATサプリメントを補充したRPMI 1640培養培地)中で増殖させることによって選択した。2週間後、HAT培地をHT培地と交換して3回継代した後、通常の細胞培養培地に戻す。細胞培養上清を、融合の3週間後に抗原特異的IgG抗体について一次スクリーニングした。試験した陽性微小培養物を、増殖のために24ウェルプレートに移した。再試験後、選択された培養物をクローニングし、限界希釈法を用いて再クローニングし、アイソタイプを決定した(Lane,R.D.1985:J.Immunol.Meth.81:223-228;Ziegler,B.et al.1996:Horm.Metab.Res.28:11-15)。抗体は、標準的な抗体生成方法によって生成され(Marx et al.1997,Monoclonal Antibody Production ATLA 25,121)、プロテインAクロマトグラフィによって精製された。抗体純度は、SDSゲル電気泳動分析に基づいて>95%であった。
【0167】
抗体の標識及びコーティング
標識化合物(トレーサー、抗PTA 3-22):100μg(100μl)抗体(PBS中1mg/ml、pH7.4)を10μlのアクリジニウムNHS-エステル(アセトニトリル中1mg/ml、InVent GmbH、Germany)と混合し、室温で20分間インキュベートした。標識抗体を、Bio-Sil SEC 400-5(Bio-Rad Laboratories,Inc.,USA)でのゲル濾過HPLCによって精製した。精製した標識抗体を(300mmol/lのリン酸カリウム、100mmol/lのNaCl、10mmol/lのNa-EDTA、5g/lのウシ血清アルブミン、pH7.0)中に希釈した。最終濃度は、200μl当たり約800.000相対光単位(RLU)の標識化合物(約20ngの標識抗体)であった。アクリジニウムエステル化学発光を、AutoLumat LB 953(Berthold Technologies GmbH&Co.KG)を使用することによって測定した。
【0168】
コーティング(固相、抗PTA 22-36):ポリスチレンチューブ(Greiner Bio-One International AG,Austria)を抗体(1.5μgの抗体/0.3mL 100mmol/lのNaCl、50mmol/lのTris/HCl、pH7.8)でコーティングした(室温で18時間)。5%ウシ血清アルブミンでブロッキングした後、チューブをPBS(pH7.4)で洗浄し、真空乾燥した。
【0169】
プロ-タキキニンAイムノアッセイ及び較正
50μlの試料(又はキャリブレータ)を、コーティングしたチューブにピペットで移し、標識抗体(200μl)を加えた後、チューブを18~25℃で2時間インキュベートした。未結合トレーサーを、洗浄溶液(20mmol/lのPBS、pH7.4、0.1%Triton X-100)で5回(各1mL)洗浄することによって除去した。Luminometer LB 953,Berthold,Germanyを用いることによって、チューブに結合した標識抗体を測定した。20mMのK
2PO
4、6mMのEDTA、0.5%BSA、50μMのアマスタチン、100μMのロイペプチン、pH8.0中に希釈した合成P37の希釈液を用いて、アッセイを較正した。PTA対照血漿は、ICI-diagnostics,Berlin,Germanyで入手可能である。
図1は、典型的なPTA用量/シグナル曲線を示す。
【0170】
分析アッセイ感度は、(0キャリブレータ(PTA無添加)+2SD2標準偏差(SD)の20回の測定によって生成された中央値シグナル、対応するPTA濃度は、標準曲線から計算される)4.4pmol/Lであった。
【0171】
実施例2-健康な対象におけるNT-PTA
絶食している健康な対象(n=4435、平均年齢56歳)からのEDTA血漿試料を、NT-PTAアッセイを用いて測定した。集団におけるNT-PTAの平均値は55.2pmol/L、標準偏差±17.8pmol/Lであり、最低値は9.07pmol/Lであり、99
thパーセンタイルは107.6pmol/Lであった。アッセイ感度は4.4pmol/Lであったので、全ての値がアッセイで検出可能であった。健康な対象におけるPTA値の分布を
図2に示す。
【0172】
実施例3-ヒトにおけるエンドトキシン研究
32人の健康な男性応募者(平均(±SE)年齢23.9[±0.7歳])を病院の臨床研究ユニットに収容した。スクリーニング試験は全て正常であった。参加者をt=0時間で、LPS(大腸菌(Escherichia coli)リポ多糖、0311.H10:k)で、標準化された用量である4ng/kgの用量でボーラス静脈内注射としてチャレンジした。血液を、LPS注射の2時間前からその後24時間までの間隔で収集した。血液を直ちに遠心分離し(4℃、10分、3000 rpm)、血漿をアッセイするまで-20℃で保存した。エンドトキシンで処置された試験ヒト対象における炎症インターロイキン-6(IL-6)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、及びプロカルシトニン(PCT)並びにN末端プロタキキニンA(NT-PTA)の異なるバイオマーカの決定は、血液中の物質の濃度の時間依存的経過を示した(
図3参照)。
【0173】
第1に、エンドトキシンの注射後約1時間後にTNFαの増加が予想通りに起こる。その直後に、細胞毒素IL-6の増加が続く(エンドトキシンの注射後約1.5時間)。3時間後、TNFα及びIL-6の濃度は減少しているが、驚くべきことにここで、A-ペプチド濃度の増加が起こり、わずか約7時間後に開始レベルに達する。PCTは、5時間後に濃度の増加を示し、更なる経過の間に着実に増加する。NT-PTAの分泌は、エンドトキシンの単独注入によって誘導可能であり、この分泌はTNFα/IL-6とPCTとの間の免疫カスケードにおける1つの事象である。
【0174】
PCTは敗血症診断の確立されたマーカであり、本研究において敗血症の発症を示す。しかしながら、NT-PTA濃度は、敗血症バイオマーカPCTが上昇する約3時間前に上昇する。したがって、NT-PTAは敗血症予測のマーカであると結論付けることができる。
【0175】
実施例4-CAPを有する患者における48時間以内の敗血症の予測のためのPTA
市中肺炎(CAP)で入院した218人の対象のコホートを調査した。主な転帰は敗血症及び重症敗血症であり、これらは国際コンセンサス会議基準に従って定義された(
Singer et al.2016.JAMA 315(8):801-10)。合計105人の患者が、48時間以内に敗血症/重症敗血症を発症した。NT-PTAは、入院時にEDTA血漿試料において測定した。入院後48時間以内に敗血症/重症敗血症を発症した患者は、敗血症/重症敗血症を発症しない患者と比較して有意に高いNT-PTA濃度を有し(p=0.0007)(
図4)、AUCは0.632(p=0.08)であった(
図5)。表2は、それぞれの感受性及び特異性を有する例示的なカットオフ値を示す。
【0176】
【0177】
実施例5-敗血症の疑いのある患者におけるPTA
敗血症の疑いで入院した712人の患者を調査した。組み入れ基準は、年齢≧18歳、qSOFA少なくとも1(GCS<15)、呼吸数≧22/分、収縮期血圧≦100mm Hgであった。198人の患者が入院後に敗血症又は敗血症性ショックを発症した。入院時にEDTA血漿試料中のNT-proTAを測定した(
図6)。敗血症を発症した患者は、敗血症を発症しなかった患者(中央値76.9pmol/L[55.5-115.2])よりも有意に高いNT-proTA濃度(中央値125.8pmol/L[IQR 77.8-237.8])を有した。更に、敗血症性ショックを更に発症した患者(n=23)では、敗血症性ショックも敗血症も発症していない患者と比較して、NT-proTAレベルが有意に上昇した(209.2pmol/L[118.7-402.3])。ROCプロット分析により、NT-proTAについて0.703のAUC(p<0.0001)が、入院後に敗血症又は敗血症性ショックを発症する患者と敗血症も敗血症性ショックも発症しない患者とを区別することが明らかになった(
図7)。
【0178】
表3は、患者群(敗血症/敗血症性ショックを全く発症しない対敗血症/敗血症性ショックの発症)を区別するためのそれぞれの感受性及び特異性を有する例示的なカットオフ値を示す。
【0179】
【0180】
入院後に敗血症性ショックを発症する患者と敗血症性ショックを発症しない患者とを区別するためのROCプロット分析により、NT-proTAについて0.757のAUC(p<0.0001)が明らかになった(
図8)。
【0181】
表4は、患者群(敗血症性ショックを発症しないvs敗血症性ショックの発症)を区別するためのそれぞれの感受性及び特異性を有する例示的なカットオフ値を示す。
【0182】
【0183】
実施例6-救急治療部(ED)に入院した患者におけるPTA
これは、急性の病理学的状態及び更なる入院のためにローマのSant’ Andrea Hospitalの救急治療部に連続して入院した97人の患者を登録する前向き観察試験であった。各登録患者について、臨床検査データ及び血漿NT-proTA値を到着時に収集した。患者の特徴を表5に要約する。退院後、電話による60日間の追跡調査を実施した。
【0184】
【0185】
生存率は81.4%であり、事象(死亡)は主に入院後1週目に発生した。NT-proTAを入院時に測定した。本発明者らは、初期PTA値を院内死亡率と相関させた。NT-proTAは、入院しているED患者における転帰について高度に予後診断的である(AUC/C指数0.795;p<0.00001)。
図9は、a)入院時のPTAの四分位数及びb)入院時の100pmol/LのNT-proTAのカットオフによるED患者の生存についてのカプラン・マイヤープロットを示す。
【0186】
プロカルシトニンを入院時並びにその24/48及び72時間後に測定した。PCT値を敗血症の診断の代用として使用した。敗血症のカテゴリーは以下のように定義される。高-高(HH)-敗血症を発症し、まだ寛解していない、低-高(LH)-敗血症を発症している、高-低(HL)-敗血症は寛解している、低-低(LL)-敗血症なし。変化を以下のように定義した:PCT t0<1ng/mLでありt24~t72最大PCT値>1ng/mLの場合、低-高(LH);PCT t0>1ng/mLでありt24~t72最大PCT値<t0の75%である場合、高-低(HL);全ての時点でPCT t0<1ng/mLの場合、低-低(LL);全ての時点でPCT t0>1ng/mLの場合、高-高(HH)。敗血症カテゴリーについてのNT-proTA値(72時間以内、p=0.049)を
図10に示す。それぞれのサブグループにおけるNT-proTA濃度を表6に示す。
【0187】
【0188】
敗血症を有し、次の72時間以内に寛解しない患者(HH)は、72時間以内に敗血症を発症する患者(LH)よりも高いNT-proTA値を示し、これは、寛解している敗血症患者(HL)及び敗血症を発症していない患者(LL)におけるNT-proTA値よりも、この場合も高い。
【0189】
表7は、患者サブグループ、及びそれぞれ100、120及び140pmol/Lの例示的なカットオフ値を超える患者のパーセンテージを示す。
【0190】
【配列表】
【国際調査報告】