(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ビーム分析システムを含むレーザ加工装置並びにビーム特性の測定及び制御の方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/06 20140101AFI20240709BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240709BHJP
【FI】
B23K26/06
B23K26/00 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576398
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 US2022033390
(87)【国際公開番号】W WO2022271483
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593141632
【氏名又は名称】エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスティ,ジョー
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】コール,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ロード,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ウンラート,マーク
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CA02
4E168CB04
4E168CB07
4E168DA32
4E168DA33
4E168DA38
4E168DA42
4E168DA43
4E168DA54
4E168EA05
4E168EA13
4E168EA15
4E168EA16
(57)【要約】
レーザ加工装置の数多くの実施形態が開示されている。一実施形態においては、レーザ加工装置は、レーザエネルギービームを生成するように動作するレーザ源と、ビーム経路内に配置された音響光学偏向器(AOD)と、AODに連結されたコントローラと、ビームの特性を測定し、ビーム特性を表す測定データを生成し、その測定データに基づいてAODの動作を制御するように動作するコントローラに測定データを送信するように動作するビーム分析システムとを含んでいる。他の実施形態においては、レーザ加工装置は、ガルバノメータミラーの交差軸揺らぎを特徴付けるためのシステムであって、基準レーザビームを出射するように構成された基準レーザ源と、ガルバノメータミラー上に形成され、基準ビームの位置を表す信号をコントローラに出力するように構成されたセンサに基準レーザビームを反射するように構成された反射面とを備えたシステムを含んでいる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム経路に沿って伝搬するレーザエネルギービームを生成するように動作するレーザ源と、
前記ビーム経路内に配置され、前記レーザエネルギービームを回折するように動作する音響光学偏向器(AOD)と、
前記AODに連結されたコントローラと、
レーザエネルギービームの1以上の特性を測定し、1以上の前記測定されたビーム特性を表す測定データを生成し、前記測定データを前記コントローラに送信するように動作するビーム分析システムと
を備え、
前記コントローラは、少なくとも一部の前記測定データに基づいて前記AODの動作を制御するように動作する、
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記レーザエネルギービームの前記特性は、パルス繰り返し率、ビーム直径、スポットサイズ、真円度、ビーム非点収差、焦点高さ、ビームウェスト、又はビーム軸位置のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記AODは、前記ビーム経路を第1の方向及び第2の方向にそれぞれ回折するように動作する一対のAODを含む、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記ビーム分析システムは、カメラを用いたビームプロファイラを含む、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記ビーム分析システムは、レイリー散乱ビームプロファイラを含む、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記ビーム分析システムは、回転スリットビームプロファイラを含む、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記ビーム直径、前記スポットサイズ、前記真円度、前記非点収差、前記焦点高さ、前記ビームウェスト、又は前記レーザエネルギービームの前記ビーム軸位置のうちの少なくとも1つを変化させるように前記AODの動作を制御するように動作する、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
レーザビーム特性を制御する方法であって、
レーザエネルギービームを生成し、
AODを使用して、前記レーザエネルギービームをビーム経路に沿ってビーム分析システムに方向付け、
前記ビーム分析システムを使用して、前記レーザエネルギービームの1以上の特性を測定し、
1以上の前記測定されたビーム特性を表す測定データを生成し、
前記測定データを前記ビーム分析システムからコントローラに送信し、
少なくとも一部の前記測定データに基づいて前記コントローラから前記AODに制御コマンドを出力する、方法。
【請求項9】
前記ビーム特性は、パルス繰り返し率、ビーム直径、スポットサイズ、真円度、非点収差、焦点高さ、ビームウェスト、又はビーム軸位置のうちの少なくとも1つである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記AODは、前記測定データに基づいて、前記レーザエネルギービームの前記ビーム直径を変化させるように動作する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記AODは、前記測定データに基づいて、前記レーザエネルギービームの前記スポットサイズを変化させるように動作する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記AODは、前記測定データに基づいて、前記レーザエネルギービームの前記スポット位置を変化させるように動作する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記AODは、前記測定データに基づいて、前記レーザエネルギービームの前記真円度を変化させるように動作する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記AODは、前記測定データに基づいて、前記レーザエネルギービームの前記非点収差を変化させるように動作する、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記AODは、前記測定データに基づいて、前記レーザエネルギービームの前記焦点高さを変化させるように動作する、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記AODは、前記測定データに基づいて、前記レーザエネルギービームの前記ビームウェストを変化させるように動作する、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記AODは、前記測定データに基づいて、前記レーザエネルギービームの前記ビーム軸位置を変化させるように動作する、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
レーザビーム特性を制御する方法であって
レーザエネルギービームを生成し、
第1のAODと第2のAODとからなる群から選択された少なくとも1つを使用して、前記レーザエネルギービームをビーム経路に沿ってビーム分析システムに方向付け、
前記ビーム分析システムを使用して、前記レーザエネルギービームの1以上の特性を測定し、
1以上の前記測定されたビーム特性を表す測定データを生成し、
前記測定データを前記ビーム分析システムからコントローラに送信し、
前記測定データに少なくとも部分的に基づいて前記コントローラから前記第1のAOD及び前記第2のAODの少なくとも一方に制御コマンドを出力する、方法。
【請求項19】
前記ビーム特性は、パルス繰り返し率、ビーム直径、スポットサイズ、真円度、非点収差、焦点高さ、ビームウェスト、及びビーム軸位置のうちの少なくとも1つである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記コントローラから前記第2のAODに出力される、前記測定データに基づく前記制御コマンドは、前記第1のAODによって引き起こされたビーム非点収差を補正するように動作する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
レーザエネルギービームを生成し、
AODを用いて、前記レーザエネルギービームをビーム経路に沿ってビーム分析システムに向け、前記AODは、前記レーザエネルギービームの第1の特性を変化させ、それによって前記レーザエネルギービームの第2の特性を変化させるように動作し、
前記ビーム分析システムを用いて前記第2のビーム特性を測定し、
前記測定された第2のビーム特性を表す測定データを生成し、
前記測定データを前記ビーム分析システムからコントローラに送信し、
前記測定データに少なくとも部分的に基づいて制御コマンドを前記コントローラから前記AODに出力し、
前記AODは、前記第2のビーム特性の変化の大きさを減少させるように動作する、
レーザビーム特性を制御する方法。
【請求項22】
前記AODは、一対のAODを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1のビーム特性及び前記第2のビーム特性は、ビーム直径、スポットサイズ、真円度、非点収差、焦点高さ、ビームウェスト、又はビーム軸位置のうちの少なくとも1つである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
測定ステップ中に、
コントローラからレーザ源に送信された制御コマンドに基づいて複数のレーザパルスを生成し、
AOD内に、前記コントローラから前記AODに送信されたAOD制御コマンドに基づいて音響信号を生成し、前記音響信号は、前記複数のレーザパルスの少なくとも1つのレーザパルスを回折するように構成されており、
前記複数の回折されたレーザパルスの少なくとも1つの特性を測定し、当該測定中に、前記制御コマンドと前記AOD制御コマンドとの間のタイミングオフセットを調整し、
回折されたそれぞれのレーザパルスの少なくとも1つの測定された特性を表す測定データを生成し、
前記測定データのうちの少なくとも1つの測定データと、回折されたそれぞれのレーザパルスに関連付けられた前記タイミングオフセットとを相関させ、
ワークピース加工ステップ中に、
レーザパルスを生成し、
音響信号をAOD内に生成し、前記音響信号は、前記複数のレーザパルスの少なくとも1つのレーザパルスを回折するように構成されており、
前記少なくとも1つの回折されたレーザパルスをワークピースに方向付け、
前記レーザ制御コマンドと前記AOD制御コマンドとの間の前記タイミングオフセットは、前記測定ステップにおける前記測定データと相関関係があり基準特性と所定の関係を有するタイミングオフセットに対応する、
方法。
【請求項25】
前記音響信号は、チャープ音響信号である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記音響信号は、非チャープ音響信号である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記複数の回折されたレーザパルスの前記特性は、パルス繰り返し率、ビーム直径、スポットサイズ、真円度、非点収差、焦点高さ、ビームウェスト、又はビーム軸位置のうちの少なくとも1つである、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
測定ステップ中に、
レーザエネルギービームを生成し、
AOD内に、レーザエネルギービームを回折するように構成されている音響信号を生成し、
前記回折されたレーザエネルギービームの少なくとも1つの特性を測定し、
前記回折されたレーザエネルギービームの前記少なくとも1つの測定された特性を表す測定データを生成し、
前記測定データのうちの少なくとも1つの測定データと、前記回折されたレーザエネルギービームに関連する1以上のシステム動作パラメータの基準値とを相関付け、
ワークピース加工ステップ中に、
前記AOD内に、前記レーザエネルギービームを回折するように構成されている音響信号を生成し、
レーザエネルギービームをワークピースに方向付け、
前記レーザエネルギービームの前記特性は、前記測定ステップにおける前記測定データと相関関係があり前記レーザエネルギービームの前記特性と所定の関係を有する前記システム動作パラメータの少なくとも1つの基準値に対応する、
方法。
【請求項29】
前記レーザエネルギービームの前記特性は、パルス繰り返し率、ビーム直径、スポットサイズ、真円度、非点収差、焦点高さ、ビームウェスト、又はビーム軸位置のうちの少なくとも1つである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記システム動作パラメータは、RF信号チャープレート、音響信号チャープレート、及びパルス繰り返し率のうちの少なくとも1つである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
レーザエネルギービームを生成し、
第1のAODを用いて、前記レーザエネルギービームをビーム経路に沿ってビーム分析システムに方向付け、
前記ビーム分析システムを用いて、前記レーザエネルギービームのビーム非点収差を測定し、
前記ビーム分析システムを用いて、レーザエネルギービームの測定されたビーム非点収差を表す前記測定データを生成し、
前記測定データをコントローラに送信し、
前記測定されたビーム非点収差を補正するために第2のAODを動作させるように動作する制御コマンドを前記コントローラから前記第2のAODに出力する、
レーザビーム非点収差を補正する方法。
【請求項32】
前記第2のAODは、前記測定されたビーム非点収差を補正するために前記レーザエネルギービームに単一軸焦点タームを適用する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ガルバノメータミラーの交差軸揺らぎを特徴付けるためのシステムであって、
基準レーザビームを出射するように構成された基準レーザ源と、
前記ガルバノメータミラー上に形成され、前記基準レーザビームを反射ビームとして反射するように構成された反射面と、
センサ基準スポットにおいて前記反射ビームを受けるように構成され、前記基準スポットの位置を表す信号をコントローラに出力する補助センサと
を備える、システム。
【請求項34】
前記補助センサは、4セル光検出器、デュアルセル光検出器、連続位置検知検出器、及びビーム分析システムからなる群から選択される、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
ガルバノメータミラーの交差軸揺らぎを補正する方法であって、
基準レーザ源から基準レーザビームを出射し、
前記基準レーザビームは、前記ガルバノメータミラー上に形成された反射面に入射し、
反射したレーザビームを、基準スポットにおいて前記反射したレーザビームを受けて前記基準スポットの位置を表す信号をコントローラに出力するように構成された補助センサによって検知し、
前記コントローラは、前記基準スポットの位置を表す前記信号を受信し、交差軸揺らぎの補償値を計算し、AODシステムに交差軸揺らぎを補正するためのコマンドを出力して前記AODシステムを動作させる、
方法。
【請求項36】
前記補助センサは、4セル光検出器、デュアルセル光検出器、及び連続位置検知検出器からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記補助センサは、
ビーム経路に沿って伝搬する入射1次ビームの少なくとも一部を反射する反射面が形成されたトークンと、
前記反射面に形成された複数のアパーチャと
を備え、
前記トークンは、レーザエネルギービームに対して前記反射面よりも透過性の高い材料から形成されており、
前記トークンの光学的に下流側に配置された光検出器アセンブリ
をさらに備えるビーム分析システムである、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
ビーム経路に沿って伝搬する入射1次ビームの少なくとも一部を反射するように構成された反射面が形成されたトークンと、
前記反射面に形成された複数のアパーチャと
を備え、
前記トークンは、レーザエネルギービームに対して前記反射面よりも透過性の高い材料から形成されており、
前記トークンの光学的に下流側に配置された光検出器アセンブリ
をさらに備える、ビーム分析システム。
【請求項39】
前記アパーチャは、前記光検出器アセンブリを伝搬し得るシステム散乱光の合計を最小化するために前記反射面において十分な距離で互いに離れて配置される、請求項38に記載のビーム分析システム。
【請求項40】
ビーム経路に沿って伝搬するレーザエネルギーのビームを生成するように動作するレーザ源と、
ビーム経路内に配置されて第1の方向に通過する前記ビームを偏向するように動作する音響光学偏向器(AOD)と、
第1の方向とは異なる第2の方向に通過する前記ビームを偏向するように動作するガルバノメータミラーと、
前記AOD及び前記ガルバノメータミラーに連結されたコントローラであって、前記ガルバノメータミラーにおける交差軸揺らぎを誘引するガルバノメータミラーの動作を制御し、前記交差軸揺らぎを補正するために前記AODの動作を制御するように動作するコントローラと
を備える、レーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2021年6月21日に提出された米国仮特許出願63/213,075の利益を主張するものであり、その内容は全体として参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
技術分野
本明細書において説明される実施形態は、概してレーザ加工装置に関し、より詳細には、ワークピースを加工するための音響光学偏向器(AOD)、その構成要素、及びこれを操作する手法に関する。
【0003】
背景
レーザ加工システム又は装置は、プリント回路基板(PCB)機械加工、積層造形などを含む幅広く様々な用途において使用される。PCBを加工するためには、例えば、孔又はビアを形成するためにレーザ加工が使用される場合に、(例えば、金属、絶縁体、ビア形成に使用されるものなどの)PCB材料のアブレーションの精密な制御が必要とされる。いくつかの用途においては、ワークピースを加工する間にレーザ加工ビームを回折するために使用されるAODの操作を制御することが困難な場合がある。特に、AODをチャープすることによるレーザスポットサイズの変化は、制御が困難なことがあり、加工ビームの特性評価には多大な時間を必要とする場合があり、要求される精密な制御が提供されないこともある。適切な/正しいAODチャープを確保するには、AODを通過する際のレーザパルス及び音響波面の正確なタイミングが求められる。AODのための制御コマンドとレーザ源との間の不正確なタイミングは、低質なスポット位置の変位及び低質なスポット品質の原因となる可能性があり、システム全体の正確性とフィーチャの品質を低下させる。このタイミングの閉ループ制御は、処理能力及び生産性を含む全体のシステム性能を向上させることができる。本明細書で述べられる実施形態は、本発明者等により発見されたこれらの問題及び他の問題に鑑みて開発されたものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本開示の一実施形態は、ビーム経路に沿って伝搬するレーザエネルギービームを生成するように動作するレーザ源、ビーム経路内に配置されてレーザエネルギービームを回折するように動作する音響光学偏向器(AOD)、AODに連結されたコントローラ、及びレーザエネルギービームの1以上の特性を測定し、1以上の測定されたビーム特性を表す測定データを生成し、測定データを、少なくとも一部の測定データに基づいてAODの動作を制御するように動作するコントローラに送信するように動作するビーム分析システムを含むレーザ加工装置として特徴付けることができるものに関する。
【0005】
本開示の他の実施形態は、方法レーザビーム特性を制御する方法であって、レーザエネルギービームを生成し、(AODを使用して)レーザエネルギービームをビーム経路に沿ってビーム分析システムに向け、(ビーム分析システムを使用して)レーザエネルギービームの1以上の特性を測定し、1以上の測定されたビーム特性を表す測定データを生成し、測定データをビーム分析システムからコントローラに送信し、そして少なくとも一部の測定データに基づいてコントローラからAODに制御コマンドを出力する方法に関する。
【0006】
他の実施形態は、レーザビーム特性を制御する方法であって、レーザエネルギービームを生成し、第1のAOD及び第2のAODからなる群から選択された少なくとも1つを使用してレーザエネルギービームをビーム経路に沿ってビーム分析システムに向け、(ビーム分析システムを使用して)レーザエネルギービームの1以上の特性を測定し、1以上の測定されたビーム特性を表す測定データを生成し、測定データをビーム分析システムからコントローラに送信し、少なくとも1つの少なくとも一部の測定データに基づいてコントローラから第1のAOD及び第2のAODの少なくとも1つに制御コマンドを出力する方法に関する。
【0007】
他の実施形態は、レーザエネルギービームを生成し、(AODを用いて)レーザエネルギービームをビーム経路に沿ってビーム分析システムに向け、AODレーザエネルギービームの第1の特性を変化させ、それによってレーザエネルギービームの第2の特性を変化させるように動作し、ビーム分析システムを使用して第2のビーム特性を測定し、測定された第2のビーム特性を表す測定データを生成し、測定データをビーム分析システムからコントローラに送信し、続いて測定データに少なくとも部分的に基づいて、コントローラから第2のビーム特性の変化の大きさを減少させるように動作するAODに制御コマンドを送信する、レーザビーム特性を制御する方法に関する。
【0008】
本開示の他の実施形態は、測定ステップ中に、コントローラからレーザ源に送信された制御コマンドに基づいて複数のレーザパルスを生成し、コントローラからAODに送信されたAOD制御コマンドに基づいてAOD内に音響信号を生成し、音響信号は、複数のレーザパルスの少なくとも1つのレーザパルスを回折するように構成されており、複数の回折されたレーザパルスの少なくとも1つの特性を測定し、この測定中に制御コマンドとAOD制御コマンドとの間のタイミングオフセットを調整し、回折された各々のレーザパルスの少なくとも1つの測定された特性を表す測定データを生成し、測定データのうちの少なくとも1つの測定データと回折されたそれぞれのレーザパルスに関連したタイミングオフセットとを相関させ、続いて、ワークピース加工ステップ中に、レーザパルスを生成し、複数のレーザパルスの少なくとも1つのレーザパルスを回折するように構成された音響信号をAOD内に生成し、少なくとも1つの回折されたレーザパルスをワークピースに向け、レーザ制御コマンドとAOD制御コマンドとの間のタイミングオフセットは、測定ステップにおける測定データと相関関係があり基準特性と所定の関係を有するタイミングオフセットに対応する方法に関する。
【0009】
本開示の他の実施形態は、測定ステップ中に、レーザエネルギービームを生成し、AOD内にレーザエネルギービームを回折するように構成された音響信号を生成し、回折されたレーザエネルギービームの少なくとも1つの特性を測定し、回折されたレーザエネルギービームの少なくとも1つの測定された特性を表す測定データを生成し、測定データのうちの少なくとも1つの測定データと回折されたレーザエネルギービームに関連する1以上のシステム動作パラメータの基準値とを相関付け、続いて、ワークピース加工ステップ中に、AOD内にレーザエネルギービームを回折するように構成された音響信号を生成し、レーザエネルギービームをワークピースに方向付け、レーザエネルギービームの特性は、測定ステップにおける測定データと相関関係がありレーザエネルギービームの特性と所定の関係を有するシステム動作パラメータの少なくとも1つの基準値に対応する方法に関する。
【0010】
本開示の他の実施形態は、レーザエネルギービームを生成し、第1のAODを用いてレーザエネルギービームをビーム経路に沿ってビーム分析システムに向け、ビーム分析システムを用いてレーザエネルギービームのビーム非点収差を測定し、ビーム分析システムを用いてレーザエネルギービームの測定したビーム非点収差を表す測定データを生成し、測定データをコントローラに送信し、測定されたビーム非点収差を補正するために第2のAODを動作させるように動作する制御コマンドをコントローラから第2のAODに出力する、レーザビーム非点収差を補正する方法に関する。
【0011】
本開示の他の実施形態は、基準レーザビームを出射するように構成された基準レーザ源と、ガルバノメータミラー上に形成され、基準レーザビームを反射ビームとして反射するように構成された反射面と、基準スポットにおいて反射ビームを受けるように構成され、基準スポットの位置を表す信号をコントローラに出力する補助センサとを備えた、ガルバノメータミラーの交差軸揺らぎを特徴付けるためのシステムに関する。
【0012】
本開示の他の実施形態は、基準レーザ源から基準レーザビームを出射し、基準レーザビームは、ガルバノメータミラー上に形成された反射面に入射し、基準スポットにおいて反射したレーザビームを受け、基準スポットの位置を表す信号をコントローラに出力するように構成された補助センサを用いて反射したレーザビームを検知し、コントローラは、基準スポットの位置を表す信号を受信し、交差軸揺らぎの補償値を計算し、AODシステムに交差軸揺らぎを補正するためのコマンドを出力してAODシステムを動作させる、ガルバノメータミラーの交差軸揺らぎを補正する方法に関する。
【0013】
本開示の他の実施形態は、ビーム経路に沿って伝搬する入射1次ビームの少なくとも一部を反射するように構成された反射面が形成されたトークンと、反射面に形成された複数のアパーチャとを備え、トークンはレーザエネルギービームに対して反射面よりも透過性の高い材料で形成されており、トークンの光学的に下流側に配置された光検出器アセンブリをさらに備えるビーム分析システムに関する。
【0014】
本開示の他の実施形態は、ビーム経路に沿って伝搬するレーザエネルギーのビームを生成するように動作するレーザ源と、ビーム経路内に配置されて第1の方向に通過するビームを偏向するように動作する音響光学偏向器(AOD)と、第1の方向とは異なる第2の方向に通過するビームを偏向するように動作するガルバノメータミラーと、AOD及びガルバノメータミラーに連結されて、ガルバノメータミラーにおける交差軸揺らぎを誘引するガルバノメータミラーの動作を制御し、交差軸揺らぎを補正するためにAODの動作を制御するように動作するコントローラとを備えたレーザ加工装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態によるレーザ加工装置を模式的に示している。
【
図2】
図2は、一実施形態による音響光学偏向器の制御図を模式的に示している。
【
図3-4】
図3及び
図4は、一実施形態による、ビーム分析システムを使用したレーザエネルギービームの例示的な特性評価を模式的に示している。
【
図5】
図5は、一実施形態による例示的なビーム特性評価ツールを模式的に示している。
【
図6】
図6は、
図5におけるビーム特性評価ツールの実施形態と共に使用されるトークンの平面図を示している。
【
図7】
図7は、一実施形態によるガルバノメータ軸の振動モードを測定するための例示的な装置を模式的に示している。
【
図8】
図8は、一実施形態による反射したレーザエネルギービームを測定するように構成されたフォトダイオードの図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
以下、添付図面を参照しつつ実施形態の例を説明する。明示的に述べている場合を除き、図面においては、構成要素、特徴、要素などのサイズや位置などやそれらの間の距離は、必ずしも縮尺通りではなく、また理解しやすいように誇張されている。図面を通して同様の数字は同様の要素を意味している。このため、同一又は類似の数字は、対応する図面で言及又は説明されていない場合であっても、他の図面を参照して述べられることがある。また、参照番号の付されていない要素であっても、他の図面を参照して述べられることがある。
【0017】
明細書において使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明するためだけのものであり、限定を意図しているものではない。特に定義されている場合を除き、本明細書において使用される(技術的用語及び科学的用語を含む)すべての用語は、当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合には、内容が明確にそうではないことを示している場合を除き、単数形は複数形を含むことを意図している。さらに、「備える」及び/又は「備えている」という用語は、本明細書で使用されている場合には、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するものであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそのグループの存在又は追加を排除するものではないことを理解すべきである。特に示している場合を除き、値の範囲が記載されているときは、その範囲は、その範囲の上限と下限の間にあるサブレンジだけではなく、その上限及び下限を含むものである。特に示している場合を除き、「第1」や「第2」などの用語は、要素を互いに区別するために使用されているだけである。例えば、あるノードを「第1のノード」と呼ぶことができ、同様に別のノードを「第2のノード」と呼ぶことができ、あるいはこれと逆にすることもできる。
【0018】
特に示されている場合を除き、「約」や「その前後」などは、量、サイズ、配合、パラメータ、及び他の数量及び特性が、正確ではなく、また正確である必要がなく、必要に応じて、あるいは許容誤差、換算係数、端数計算、測定誤差など、及び当業者に知られている他のファクタを反映して、概数であってもよく、さらに/あるいは大きくても小さくてもよいことを意味している。本明細書において、「下方」、「下」、「下側」、「上方」、及び「上側」などの空間的に相対的な用語は、図に示されるような、ある要素又は特徴の他の要素又は特徴に対する関係を述べる際に説明を容易にするために使用され得るものである。空間的に相対的な用語は、図において示されている方位に加えて異なる方位を含むことを意図するものであることは理解すべきである。例えば、他の要素又は特徴の「下方」又は「下」にあるとして説明される要素は、図中の対象物が反転した場合には、他の要素又は特徴の「上方」を向くことになる。このように、「下方」という例示的な用語は、上方及び下方の方位の双方を含み得るものである。対象物が他の方位を向く場合(例えば90度回転される場合や他の方位にある場合)には、本明細書において使用される空間的に相対的な記述子はこれに応じて解釈され得る。
【0019】
本明細書において使用されるセクション見出しは、特に言及している場合を除いて、整理のためだけのものであり、述べられた主題を限定するものと解釈すべきではない。本開示の精神及び教示を逸脱することなく、多くの異なる形態、実施形態及び組み合わせが考えられ、本開示を本明細書で述べた実施形態の例に限定して解釈すべきではないことは理解できるであろう。むしろ、これらの例及び実施形態は、本開示が完全かつすべてを含むものであって、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供されるものである。
【0020】
I.システム概要
図1は、本発明の一実施形態によるレーザ加工装置を模式的に示すものである。
【0021】
図1に示される実施形態を参照すると、ワークピース102を加工するためのレーザ加工装置100(本明細書においては単に「装置」ともいう)は、レーザエネルギービームを生成するためのレーザ源104と、1以上のポジショナ(例えば、第1のポジショナ106、第2のポジショナ108、第3のポジショナ110、又はこれらを任意に組み合わせたもの)と、スキャンレンズ112とを含むものとして特徴付けることができる。スキャンレンズ112及び第2のポジショナ108を以下でさらに詳細に説明するスキャンヘッド120に一体化してもよい。
【0022】
ビーム経路114に沿ってスキャンレンズ112を透過したレーザエネルギーは、ワークピース102に照射されるようにビーム軸118に沿って伝搬する。ビーム軸118に沿って伝搬するレーザエネルギーは、ガウス形空間強度プロファイル又は非ガウス形(すなわち「整形された」)空間強度プロファイル(例えば、「トップハット」空間強度プロファイル)を有するものとして特徴付けられ得る。空間強度プロファイルの種類に関係なく、空間強度プロファイルは、ビーム軸118(又はビーム経路114)に沿って伝搬するレーザエネルギービームの形状(すなわち、断面形状。本明細書では「スポット形状」ともいう)として特徴付けられ得る。そのような形状は、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形、六角形、リング形状など、あるいは任意の形状であり得る。本明細書で使用される場合には、「スポットサイズ」という用語は、照射されるレーザエネルギービームによって少なくとも部分的に加工されるワークピース102の一領域をビーム軸118が交差する位置(「プロセススポット」、「スポット位置」、あるいは単に「スポット」とも呼ばれる)に照射されるレーザエネルギービームの直径又は最大空間幅を意味する。本明細書における説明については、スポットサイズは、ビーム軸118から、光強度がビーム軸118での光強度の1/e2にまで下がるところまでの半径方向距離又は横断距離として測定される。一般的に、レーザエネルギービームのスポットサイズは、ビームウェストで最小となる。
【0023】
一般的に、上述したポジショナ(例えば、第1のポジショナ106、第2のポジショナ108及び第3のポジショナ110)は、スポットとワークピース102との間の相対位置を変更するように構成される。以下の説明から、装置100が第1のポジショナ106を含み、必要に応じて第3のポジショナ110を含む場合には、第2のポジショナ108を含めることは任意的なものであることを理解すべきである。同様に、装置100が第1のポジショナ106を含み、必要に応じて第2のポジショナ108を含む場合には、第3のポジショナ110を含めることは任意的なものであることを理解すべきである。
【0024】
A.レーザ源
一実施形態においては、レーザ源104はレーザパルスを生成することができる。このため、レーザ源104は、パルスレーザ源、CWレーザ源、QCWレーザ源、バーストモードレーザなど、あるいはこれらを任意に組み合わせたものを含み得る。レーザ源104がQCWレーザ源又はCWレーザ源を含む場合、レーザ源104は、パルスモードで動作してもよく、あるいは非パルスモードで動作するが、QCWレーザ源又はCWレーザ源から出力されるレーザ放射を時間的に変調するパルスゲーティングユニット(例えば、音響光学(AO)変調器(AOM)、ビームチョッパなど)をさらに含んでいてもよい。レーザ源104は、複数の個別のパルスがバーストエンベロープ(burst envelope)内にグループ化され得る「バーストモード」で動作させることができる。バーストエンベロープ内では、各パルスパワーと各パルス間の時間を、特定のレーザ加工要件に合うように調整することができる。このように、レーザ源104は、その後ビーム経路114に沿って伝搬可能な一連のレーザパルスとして、あるいは連続又は準連続レーザビームとして表され得るレーザエネルギービームを生成可能なものとして広く特徴付けることができる。本明細書で述べられるいくつかの実施形態はレーザパルスに言及しているが、適切な場合又は必要な場合には、連続ビーム又は準連続ビームを代替的又は付加的に用いることができることを理解すべきである。
【0025】
波長、平均パワー、及びレーザエネルギービームが一連のレーザパルスとして表される場合にはパルス持続時間及びパルス繰り返し率に加えて、ワークピース102に照射されるレーザエネルギービームは、パルスエネルギー、ピークパワーなどの1以上の他の特性により特徴付けることができる。そのような特性は、(例えば、1以上のフィーチャを形成するために)ワークピース102を加工するのに十分な光強度(W/cm2で測定される)やフルエンス(J/cm2で測定される)などでワークピース102のプロセススポットを照射するために(例えば、必要に応じて波長、パルス持続時間、平均パワー、パルス繰り返し率などの1以上の他の特性に基づいて)選択することができる。
【0026】
B.第1のポジショナ
第1のポジショナ106は、ビーム経路114に配置され、位置付けられ、あるいは設置されており、レーザ源104により生成されたレーザパルスを回折し、反射し、屈折し、又はこれに類似することを行い、あるいはこれらを任意に組み合わせてビーム経路114を(例えば、スキャンレンズ112に対して)偏向又は移動し、その結果、ワークピース102に対してビーム軸118を偏向又は移動させるように動作する。一般的に、第1のポジショナ106は、X軸(又はX方向)、Y軸(又はY方向)、又はこれらを組み合わせたものに沿ってビーム軸118をワークピース102に対して移動するようになっている。図示されていないが、X軸(又はX方向)は、図示されたY軸(又はY方向)及びZ軸(又はZ方向)に直交する軸(又は方向)を意味するものと理解できるであろう。
【0027】
本明細書において開示された実施形態においては、第1のポジショナ106は、入射レーザビームを回折することによってビーム経路114を偏向するように動作する1以上のAO偏向器(AOD)システムとして提供される。入射レーザビームを回折することにより、典型的にはゼロ次及び1次回折ピークを含み、さらに高次(例えば、2次、3次など)の他の回折ピークも含み得る回折模様が生じる。当該技術分野において知られているように、ゼロ次回折ピークにおいて回折されたレーザエネルギービームの部分は「ゼロ次」ビームと呼ばれ、1次回折ピークにおいて回折されたレーザエネルギービームの部分は「1次」ビームと呼ばれるなどする。概して、ゼロ次ビーム及びその他の次数の回折ビーム(例えば1次ビームなど)は、AODシステムから出ていくときに異なるビーム経路に沿って伝搬する。ゼロ次ビーム(及びその他の1次ビーム以外の高次ビーム)内のレーザエネルギーは、1以上のビームダンプ(図示せず)において好適又は所望の手法で吸収することができ、1次ビーム内のレーザエネルギーはビーム経路114に沿って伝搬することができる。AODシステムのAODは、一般的に、AO偏向器(AOD)システムは、結晶ゲルマニウム(Ge)、ガリウムヒ素(GaAs)、黄鉛鉱(PbMoO4)、二酸化テルル(TeO2)、水晶、ガラス状SiO2、三硫化ヒ素(As2S3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)など、あるいはこれらを任意に組み合わせたものなどの材料から形成されるAOD結晶を含んでいる。
【0028】
C.第2のポジショナ
第2のポジショナ108は、ビーム経路114に設置され、レーザ源104により生成され、第1のポジショナ106を通過したレーザパルスを回折し、反射し、屈折し、又はこれに類似することを行い、あるいはこれらを任意に組み合わせて、ビーム経路114を(例えばスキャンレンズ112に対して)偏向又は移動して、その結果、ワークピース102に対してビーム軸118を偏向又は移動させるように動作する。一般的に、第2のポジショナ108は、X軸(又はX方向)、Y軸(又はY方向)、又はこれらを組み合わせたものに沿ってワークピース102に対してビーム軸118を移動することができる。上記の観点から、第2のポジショナ108は、AODシステム、ガルバノメータミラースキャニングシステム、回転多面鏡システム、可変鏡、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)リフレクタなど、又はこれらを任意に組み合わせたものとして提供され得る。
【0029】
D.第3のポジショナ
図示された実施形態においては、第3のポジショナ110は、ワークピース102とスキャンレンズ112との間で相対移動を生じさせ、その結果、ワークピース102とビーム軸118との間で相対移動を生じさせるように配置及び構成される(例えば、それぞれワークピース102にX方向、Y方向、及び/又はZ方向に沿った並進移動を与えることができる)1以上の直動ステージ、(例えば、それぞれワークピース102にX方向、Y方向、及び/又はZ方向に平行な軸を中心とした回転移動を与えることができる)1以上の回転ステージなど、あるいはこれらを任意に組み合わせたものを含んでいる。本明細書で述べられる実施形態によれば、図示はされていないが、第3のポジショナ110は、スキャンレンズ112と第1のポジショナ106との間で相対移動を生じさせるように構成及び適合された1以上のステージを含んでいる。
【0030】
本明細書で述べられる構成の観点においては、(例えば、第1のポジショナ106及び/又は第2のポジショナ108により行われる)ワークピース102に対するプロセススポットの移動を第3のポジショナ110により行われるワークピース102又はスキャンレンズ112の移動に重ね合わせることができることは理解すべきである。
【0031】
図示された実施形態においては、第3のポジショナ110は、ワークピース102を移動するように動作する。しかしながら、他の実施形態においては、第3のポジショナ110は、スキャンヘッド120及び必要に応じて第1のポジショナ106のような1以上の構成要素を移動するように配置され、動作可能とされ、ワークピース102を静止させておいてもよい。
【0032】
第3のポジショナ110がZステージを含む一実施形態においては、Zステージは、ワークピース102をZ方向に沿って移動させるように配置及び構成され得る。この場合において、Zステージは、ワークピース102を移動又は位置決めするための上述した他のステージのうち1つ以上により搬送されてもよく、あるいは、ワークピース102を移動又は位置決めするための上述した他のステージのうち1つ以上を搬送してもよく、あるいはこれらを任意に組み合わせてもよい。第3のポジショナ110がZステージを含む他の実施形態においては、Zステージは、スキャンヘッドをZ方向に沿って移動させるように配置及び構成され得る。ワークピース102又はスキャンヘッドをZ方向に沿って移動させることにより、ワークピース102でのスポットサイズを変化させることができる。
【0033】
E.スキャンレンズ
概して、(例えば、単純なレンズ又は複合レンズのいずれかとして提供される)スキャンレンズ112は、典型的には、所望のプロセススポット又はその近傍に位置し得るビームウェストを生成するようにビーム経路に沿って方向付けられたレーザエネルギービームの焦点を合わせるように構成されている。スキャンレンズ112は、fシータレンズ、テレセントリックレンズ、アキシコンレンズ(その場合には、一連のビームウェストが生成され、ビーム軸に沿って互いにずれた複数のプロセススポットが生じる)など、あるいはこれらを任意に組み合わせたものとして提供され得る。スキャンレンズ112は、(図示されるような)非テレセントリックレンズfシータレンズ、テレセントリックレンズ、アキシコンレンズ(その場合には、一連のビームウェストが生成され、ビーム軸118に沿って互いにずれた複数のプロセススポットが生じる)など、あるいはこれらを任意に組み合わせたものとして提供され得る。
【0034】
一実施形態においては、スキャンレンズ112は、固定焦点距離レンズとして提供され、(例えば、ビームウェストの位置をビーム軸に沿って変化させるように)スキャンレンズ112を移動可能なスキャンレンズポジショナ(例えば、図示しないレンズアクチュエータ)に連結される。例えば、レンズアクチュエータは、Z方向に沿ってスキャンレンズ112を直線的に並進可能なボイスコイルとして提供され得る。この場合において、ここでは、レンズアクチュエータは、上述した第3のポジショナ110の構成要素として考えることができる。ビーム軸118に沿ってビームウェストの位置を変化させることにより、ワークピース102でのスポットサイズを変化させることができる。
【0035】
上述したように、一実施形態においては、スキャンレンズ112と第2のポジショナ108とは共通のスキャンヘッド120に一体化されている。このように、装置100がレンズアクチュエータを含む実施形態においては、(例えば、スキャンヘッド120内で第2のポジショナ108に対するスキャンレンズ112の移動を可能にするように)レンズアクチュエータがスキャンレンズ112に連結されていてもよい。あるいは、レンズアクチュエータは、スキャンヘッド120に連結され、スキャンヘッド自体を移動可能とするように動作可能であってもよく、この場合には、スキャンレンズ112及び第2のポジショナ108が一緒に移動する。いずれの場合においても、ここでは、レンズアクチュエータは、上述した第3のポジショナ110の構成要素として考えることができる。他の実施形態においては、スキャンレンズ112及び第2のポジショナ108は、(例えば、スキャンレンズ112が一体化されるハウジングが第2のポジショナ108が一体化されるハウジングに対して移動可能となるように)異なるハウジングに一体化される。
【0036】
F.コントローラ
一般的に、装置100は、装置100の制御及び動作を制御又は促進するためのコントローラ122のような1以上のコントローラを含んでいる。一実施形態においては、コントローラ122は、レーザ源104、第1のポジショナ106、第2のポジショナ108、第3のポジショナ110、レンズアクチュエータ、(可変焦点距離レンズとして提供される場合には)スキャンレンズ112、固定具などの装置100の1以上の構成要素と(例えば、1以上の有線又は無線の通信リンクを介して)通信可能に連結されており、これにより、これらの構成要素が、コントローラ122により出力された1以上の制御信号に応答して動作するようになっている。
【0037】
例えば、コントローラ122は、ビーム軸118とワークピース102との間で相対移動を行い、ワークピース102内で経路又は軌跡(本明細書においては「プロセス軌跡」とも呼ばれる)に沿ってプロセススポットとワークピース102との間で相対運動を生じさせるように第1のポジショナ106、第2のポジショナ108、又は第3のポジショナ110、あるいはこれらを任意に組み合わせたものの動作を制御し得る。これらのポジショナのうち任意の2つ、又はこれらのうちの3つすべてが、2つのポジショナ(例えば、第1のポジショナ106及び第2のポジショナ108、第1のポジショナ106及び第3のポジショナ110、第2のポジショナ108及び第3のポジショナ110)又は3つのポジショナが同時にプロセススポットとワークピース102との間で相対移動を生じさせる(これにより、ビーム軸とワークピースとの間で「複合相対移動」を生じさせる)ように制御されてもよいことは理解できるであろう。
【0038】
G.ビーム分析システム
装置100は、レーザエネルギービームの1以上の特性を測定するように動作可能なビーム分析システム130を含み得る。ビーム分析システム130を用いて、ビーム直径、スポットサイズ、スポット位置、ビーム真円度、ビーム非点収差、焦点高さ、ビームウェストサイズ、(例えば、X、Y又はZ方向に沿った)ビームウェスト位置、ビーム軸位置、空間エネルギー分布、パルス繰り返し率、平均パワー、ピークパワーなど、あるいはこれらを任意に組み合わせたものを含む様々なビーム特性を測定することができる。上記に列挙したビーム特性の測定値は、ビーム非点収差及び焦点高さ(例えば、既知のデータと比較したビームウェストの高さ)などのレーザビームパラメータを算出するために、コントローラ122によって使用され得る。ビーム分析システム130は、これらの測定したビーム特性を表す測定データを生成することができ、そしてその測定データを(例えば1以上の測定信号として)コントローラ122に送信することができる。ある実施形態においては、コントローラ122に送信された測定データは、レーザ源104によって出射されたパルスタイミング又はパルス数を表している。そして、コントローラ122は、1以上のポジショナ(例えば、第1のポジショナ106、第2のポジショナ108、第3のポジショナ110又はそれらの任意の組み合わせ)の動作を制御するための測定データを解釈し、適用し又は処理し得る。
【0039】
ビーム分析システム130は、(
図1に示すように)第3のポジショナ110に設置することができ、又は必要に応じて又は有利なように、種々の他の構造又はステージに設置することができる。例えば、第3のポジショナ110は、(例えば、上述したような)1以上の直動ステージを含んでいてよく、ビーム分析システム130は、同じ直動ステージ(例えば、その側面に)か、又は第3のポジショナ110に連結されている固定具に設置されていてよい。一実施形態においては、ビーム分析システム130は、レーザエネルギービームから光検出器にレイリー散乱した光を測定するように構成された、カメラを用いたビームプロファイラとして提供される。他の実施形態においては、ビーム分析システム130は、ナイフエッジを通過し、光検出器に入射する光パワーの量を測定し、1以上の軸又は方向におけるナイフエッジの既知の位置と関連付けることができるように、光検出器より光学的に上流側に設置されるナイフエッジフィーチャとして提供される。他の実施形態においては、ビーム分析システム130は、ビーム軸118に沿って直接に配置された光検出器上に直接又は減衰フィルタを通してビームの焦点を合わせるように構成された、カメラを用いたビームプロファイラとして提供される。他の実施形態においては、ビーム分析システム130は回転スリットビームプロファイラとして提供される。ビーム分析システム130のこれらの構成のそれぞれにおいて、ビームは光検出器の平面(すなわち、
図2に示した検出器平面)において測定される。
【0040】
II.概してチャープAOD
一般に、コントローラ122は、AODの1以上の超音波変換器素子にチャープRF信号を印加することによって第1のポジショナ106の1以上のAODの動作を制御して、ビーム軸118に沿って伝搬するレーザエネルギーによりワークピース102上に照射されるスポットの形状(すなわち「スポット形状」)を変化させ、あるいはスポットのサイズ(すなわち「スポットサイズ」)を変化させ、あるいはこれに類することをし得る。チャープRF信号は、AODに印加されると、AOD結晶を通って伝搬するチャープ音響波形(すなわち、時間の経過とともに変化する瞬間周波数を有する音響波形、「チャープ音響信号」とも呼ばれる)を生み出す効果を有する。対照的に、「非チャープ」音響波形、又は「非チャープ音響信号」は、実質的に不変の瞬間周波数を有する音響波形のことをいう。チャープ音響信号によって回折された1次ビームは、「チャープビーム」、「チャープ1次ビーム」などと呼ばれることがある。RF信号の周波数の変化速度は、(例えば、MHz/μsで測定される)「チャープレート」と呼ばれる。印加されるRF信号は、直線的に、又は非直線的に、又は他の所望のもしくは好適な方法でチャープされ得る。チャープ音響波形の瞬間周波数における変化は、AOD結晶内で、1次ビームに単一軸の(非点収差)焦点ターム(single-axis focusing term)(又はシリンドリカルレンズ効果)を適用し、AODを出る1次ビームのコリメーションを変化させる(すなわち、チャープレートの符号によって、入射ビームに対して発散又は収束する)効果を有する。
【0041】
III.ビーム分析システムを備えたレーザ加工装置に関する実施形態
上述したように、ビーム分析システム130をレーザ加工装置100の中に組み込むことにより、様々なビーム特性を測定することができる。ビーム分析システム130によって生成された測定データは、フィードバックとしてシステムコントローラ122に提供され得る。コントローラ122は、フィードバックを処理して、第1のポジショナ106の1以上のAOD及び/又はレーザ源104に送信された制御コマンドを変更することができる。例えば、AOD(例えば、第1のAOD)が、チャープ1次ビームを生成し、それによって入射ビームの1つのビーム特性を変化させる(例えば、入射ビームに対して1次ビームのスポットサイズを大きくする)ように駆動される場合には、入射ビームの他のビーム特性(例えば、スポット位置決め、ビーム非点収差など)は、結果として望ましくない変化をもたらす可能性がある。ビーム分析システム130は、これらのビーム特性のうちの1以上を測定し、ビーム特性に対するそのような変化を補正し、補償し、又は最小化するようにコントローラ122が第1のAOD又は第2のAODを駆動できるようにコントローラ122に測定データを提供するために使用される。さらに、ビーム分析システム130からコントローラ122に送信された測定データは、1次ビームの特定のビーム特性を最適化又は調整して様々なワークピース加工機能を可能にするために用いられ得る。以下は、システム方法ビーム分析システム130を用いて第1のポジショナ106のこの閉ループを実行するためのシステム及び方法の例示的な実施形態の説明である。
【0042】
A.AODシステムを制御するように構成されたビーム分析システムの実施形態
図2は、
図1に関して上記で述べた、コントローラ122、レーザ源104、第1のポジショナ106のAODシステム140、及びビーム分析システム130の間の機能的関係の一実施形態を示した制御概略図を示している。この実施形態においては、AODシステム140は、超音波変換器142、AOD結晶144及びRF源146を含んでいる。
【0043】
RF源146は、(例えば、コントローラ122から出力された1以上の制御コマンド164に応答して)RF信号170を生成し、送信するように構成されている。RF信号170は、印加されたRF信号170に応答してAOD結晶144を通って伝搬可能な1以上の音響波又は波形148(すなわち、音響信号148)を生成するように構成された超音波変換器142に送信される。音響信号148は、(例えば、角度θだけ)ビーム分析システム130の検出器平面132に対して回折される1次ビーム152を生成するように、(例えば、通信リンク166を介してコントローラ122から出力された制御コマンド又はトリガコマンド168に応答してレーザ源104から出力された)入射ビーム150を回折する。ビーム分析システム130は、1次ビーム152の少なくとも1つのビーム特性を測定し、対応する測定データ160を生成し、通信リンク162を介してコントローラ122に送信するように動作する。そしてコントローラ122は、この測定データに少なくとも部分的に基づいて、1以上のポジショナ(例えば、(
図1に示した)第1のポジショナ106、第2のポジショナ108及び第3のポジショナ110又はそれらの任意の組み合わせ)の動作を制御し得る。
【0044】
図示された実施形態においては、第1のポジショナ106は、単一軸に沿った非点収差又はシリンドリカルレンズ効果を誘引してチャープ1次ビーム152を生成することのできるAODシステム140を1つだけ含んでいる。しかしながら、他の実施形態においては、第1のポジショナ106は、(例えば、相互に直交する)異なる軸に沿って入射ビーム150を回折するように配置された複数のAODシステム140を含んでおり、このため複数の軸に沿った非点収差又はシリンドリカルレンズ効果を誘引してチャープ1次ビーム152を生成することができる。
【0045】
第1のポジショナ106の構成に関係なく、生成されたチャープ1次ビーム152の非点収差を特徴付けるためにビーム分析システム130を使用することができる。例えば、
図3及び
図4に関する以下の説明を参照されたい。
図3及び
図4は、ビーム軸118に沿ってスキャンレンズ112を通って伝搬し、ビーム分析システム130の検出器平面132に入射するチャープ1次ビーム152のそれぞれX方向及びY方向の断面図を示している。
図3及び
図4に示した例においては、1次ビーム152はX方向においてチャープされているが、Y方向においてはチャープされていない。しかしながら、1次ビーム152がY方向においてチャープされX方向においてはチャープされていなくてもよく、又は、X方向及びY方向において任意の方法でチャープされていてもよいことは理解できよう。
【0046】
その結果、チャープ1次ビーム152のビームウェスト250は、検出器平面132から(例えば、検出器平面132の上方又は下方に)Z方向に沿って(例えば、距離ΔZだけ)離れるようにシフトされる。ビーム分析システム130は、検出器平面132におけるX方向及びY方向のスポットサイズを測定するように動作させることができ、そしてビーム分析システム130によって生成された測定データは、距離ΔZを決定するために使用することができる。一の例示的な実施形態においては、ビームウェスト250のΔZを測定するために、スポットサイズ測定がビーム分析システム130によって行われている間、ビーム分析システム130(及び検出器平面132)を±Z方向に移動できるように、ビーム分析システム130を(例えば、第3のポジショナ110の)Z軸ステージに設置することができる。別の例示的な実施形態においては、ビーム分析システム130によってスポットサイズの読み取りが行われている間、ビームウェストを±Z方向に移動できるように、(
図1に示した)スキャンヘッド120が(例えば、第3のポジショナ110の)Z軸ステージに設置される。スポットサイズを表すデータは、ビーム分析システム130によって、ビームウェスト250のΔZを当該技術分野における好適な手法によって計算するコントローラ122に送信される。X方向及びY方向に沿ったスポットサイズとビームウェスト250及び260の距離ΔZとを測定することによって、ビーム分析システム130は、ビーム非点収差を表す測定データ160を(
図2に示した)コントローラ122に対して生成することができる。
【0047】
上述したように、AODシステム140は、AOD結晶144を通って伝搬する音響信号148の周波数に基づいて入射ビーム150を回折する。音響信号148が上記で説明したようなチャープ波形を有する場合、AODシステム140は入射ビーム150を回折させてビーム分析システム130の検出器平面132に入射するチャープ1次ビーム152を生成し得る。AODシステム140に送信される制御コマンド164の出力とレーザ源104に送信される制御コマンド168との間の時間的な関係(以下、「タイミングオフセット」という)は、レーザパルス(又は複数のレーザパルス)とAOD結晶144内の音響信号との間の正確な同期が必要とされる様々なレーザ加工用途にとって重要となり得る。
【0048】
第1のポジショナ106が上記で説明したような多軸AODシステムとして提供される実施形態においては、コントローラ122は、一対のAODにおけるそれぞれのAODのためのRF信号のチャープを独立して制御し得る。この場合、第1の方向(例えば、X方向)におけるスポットサイズ又はスポット形状は、第2の方向(例えば、Y方向)におけるスポットサイズ又はスポット形状と異なっていてよい。コントローラ122は、ビーム分析システム130からのスポットサイズの特徴である測定データ160に基づいて、第1のAOD及び第2のAODシステム140の動作を制御して、レーザ加工装置100によって実行されるプロセスによって必要とされるように、X方向及びY方向の一方又は両方においてワークピース102での非点収差の程度を変更し、これによりビーム真円度及びスポットサイズを変更することができる。
【0049】
i.システムオペレータ又は自動制御によるビーム特性の変更に関する実施形態
上述したように、ビーム分析システム130をレーザ加工装置100に組み込むことにより、ビーム特性を制御するための様々な方法が可能になり得る。一実施形態においては、レーザ加工装置100のオペレータが(例えば、プリント回路基板にビアを形成するために)特定のビーム直径又はスポットサイズを有するレーザエネルギービームをワークピース102に照射したいと考える場合、ビーム分析システム130は、ビーム直径を測定してビーム直径を表す測定データをコントローラ122に送信するために使用される。システムオペレータは、コントローラ122によって受信された測定データ160を(例えば、ソフトウェアグラフィカルユーザインタフェイス上で)検討し、変更を加えるべきかどうかを判断することができる。システムオペレータが測定データ160に基づいてスポットサイズを変更したいと考える場合、システムオペレータは、RF源146がチャープRF信号170を超音波変換器142に印加して、AOD結晶144内にチャープ音響信号148を生成し、ワークピース102上に入射する特定のスポットサイズを有する1次ビーム152を生成するための更新制御コマンド164を出力するようにコントローラ122をプログラムすることができる。
【0050】
他の実施形態においては、レーザ加工装置100が(例えば、システムオペレータによってプログラムされた自動ルーチン又はサブルーチンに基づいて)自動モードで動作している場合、コントローラ122は、ビーム分析システム130から測定データ160を受信し、そして、そのようなプログラミングに基づいて、RF源146が、チャープRF信号170を超音波変換器142に印加し、それによってAOD結晶144内にチャープ音響信号148を生成し、ワークピース102上に入射する、特定のスポットサイズを有する1次ビーム152を生成するための更新制御コマンド164を出力することができる。
【0051】
ii.ビーム特性の変化を補償する方法に関する実施形態
一実施形態においては、ビーム分析システム130は、様々なビーム特性の変化を補償するため、又はあるビーム特性(例えば、「第1の」ビーム特性)の変化が別のビーム特性(例えば、「第2の」ビーム特性)に与える影響を最小化するために、レーザ加工装置100の一部として使用される。例えば、AODシステム140が1次ビームに対する入射ビームの第1のビーム特性(例えば、スポットサイズ)を変更するように動作する場合、この変更は、1次ビームの第2のビーム特性(例えば、スポット位置決め、ビーム非点収差など)の変化を引き起こす可能性がある。第2のビーム特性の変化の影響を補正するか又は低減させるために、ビーム分析システム130は、第2のビーム特性を測定し、第2のビーム特性を表す測定データ160を生成し得る。そしてビーム分析システム130は、その測定データ160をコントローラ122に送信することができる。コントローラ122は、AODシステム140が第2のビーム特性の変化の大きさを低減させることができるように、測定データ160に少なくとも部分的に基づいて更新制御コマンド164を計算し、AODシステム140に出力し得る。
【0052】
一実施形態においては、ワークピースにおける所望のスポットサイズを実現するため、AODシステム140が第1のチャープ音響信号148に基づいてチャープ1次ビーム152を生成するように動作する。第1のチャープ音響信号148の中心周波数は、スポット位置誤差(所望のスポット位置と実際のスポット位置との差)を引き起こす可能性がある。ビーム分析システム130は、チャープ1次ビーム152のスポット位置を測定し、測定されたスポット位置を表す測定データ160をコントローラ122に送信することができる。測定データ160を受信すると、コントローラ122はスポット位置誤差を計算し、このスポット位置誤差を補正するために、更新制御コマンド164をAODシステム140に送信して第1の音響信号と同じチャープレートを有するが異なる中心周波数を有する第2のチャープ音響信号148を生成することによりスポット位置誤差を低減又は除去することができる。
【0053】
他の実施形態においては、制御コマンド164は、1次ビーム152のビーム非点収差を補正するように動作することができる。上述したように、チャープ音響信号は単一軸焦点タームを1次ビーム152に適用する効果を有する。これによってビーム非点収差(直交する軸に異なる焦点を有するビームとして定義される)が引き起こされる可能性がある。ビーム分析システム130は、(上述したように)X方向における焦点(又はビームウェスト)と検出器平面132との間及びY方向における焦点(又はビームウェスト)と検出器平面132との間の高さの差ΔZを測定することによって、ビーム非点収差を測定する。AODシステム140が多軸AODシステムとして提供される場合、コントローラ122は、ビームに単一軸焦点外しターム(single-axis defocusing term)を適用するチャープ音響信号を生成して第1のAODをチャープすることによって引き起こされる非点収差を補正するように1つのAOD(例えば、第2のAOD)を動作させ得る。
【0054】
iii.レーザ源とAODシステムとの間のタイミング誤差の補正に関する実施形態
図2を参照すると、(例えば、ワークピース102上に1以上のフィーチャを形成するための)いくつかのレーザ加工用途においては、入射ビーム150(例えば、レーザパルス又はレーザパルスのグループ)は、AOD結晶144において(例えば特定のスポットサイズを実現するための特定のチャープレートを有する、さらに/あるいは、ワークピース102における特定のスポット位置を実現するための特定の中心周波数を有する)特定のチャープ音響信号148と一致するAODシステム140を通過するように意図され得る。AODシステム140によって与えられる回折角θは、AOD結晶144内のレーザパルスの横方向寸法にわたるチャープ音響信号の中心周波数に対応するので、レーザパルスが期待される又は所望のチャープ音響信号148に重なるAOD結晶144を通過しなければ、レーザパルスは、所望のスポット位置とは異なるワークピース102上のスポット位置に照射されることになる。制御ループは、レーザ源104に送信される制御コマンド168とRF源146に送信される制御コマンド164との間のタイミングオフセットを調整してタイミング誤差を補正し、タイミング忠実性を確保し、そのようなスポット位置誤差を防止するために用いることができる。
【0055】
ある実施形態においては、第1のチャープ信号と第2のチャープ信号とは別個のものであり、時間的に分離されたチャープ信号であり、タイミング誤差によって、レーザパルスは、(第1のチャープレートを有する)第1のチャープ信号と一致するAOD結晶144を通過するのではなく、(第2のチャープレートを有する)第2のチャープ信号と一致するAOD結晶144を通過することになる。他の実施形態においては、各周波数帯域は異なる中心周波数を有しており、タイミング誤差によって、レーザパルスは、比較的長く(例えば、AOD結晶144を通過するパルスの通過時間よりも長く)連続的な(一定のチャープレートを有する)チャープ信号の(意図するのとは)異なる周波数帯域と一致するAOD結晶144を通過することになる。さらに他の実施形態においては、タイミング誤差によって、レーザパルスは、音響波形の存在しない領域のAODシステム140を通過することになる。
【0056】
一実施形態においては、第1のチャープ信号と第2のチャープ信号とは時間的に分離しており、タイミング誤差によって、レーザパルスは、(第1のチャープレートを有する)第1のチャープ信号と一致するAOD結晶144を通過するのではなく、(第2のチャープレートを有する)第2のチャープ信号と一致するAOD結晶144を通過することになる。この実施形態においては、このようなタイミング誤差に起因するスポット位置誤差を補正する例示的な方法は、まず基準ビーム特性(例えば、スポット位置)とタイミングオフセットとの間の相関関係を構築するように動作する測定ステップを含んでいる。この相関関係は、この相関関係を利用するその後のワークピース加工ステップにおいて用いられ、タイミングオフセットはその基準ビーム特性(スポット位置)と所定の関係を有しており、これによってレーザ加工装置100がスポット位置誤差を回避し、補正し又は低減させることを可能にする。測定ステップの間、ビーム分析システム130はレーザスポット位置を測定し、各レーザパルスに関して測定されたスポット位置を表す測定データ160を生成する。この測定データ160がコントローラ122に送信されると、コントローラ122は、(例えば、自動的に、又はシステムオペレータによってそのようにプログラムされて)測定されたスポット位置とタイミングオフセットとの間の相関関係を構築する。例えば、コントローラ122は、RF源146がAOD結晶144内に(例えば、5MHz/μsのチャープレートと30MHzの中心周波数を有する)第1のチャープ音響信号をもたらす第1のチャープRF信号を生成するように制御コマンド164をAODシステム140に送信する。コントローラ122はまた、AODシステム140がパルスをビーム分析システム130に所望のスポット位置に回折させることを期待して第1のチャープ音響信号に重なることを意図した第1のレーザパルスを出射するように制御コマンド168をレーザ源104に送信する。一般に、制御コマンド164及び168は、チャープレーザパルスが所望のスポット位置まで回折されることを保証するために、(例えば、タイミングオフセットT0だけ)時間的に相互にオフセットされる。しかしながら、例えば、第1のレーザパルスが、第1のチャープ音響信号を逃し、その代わりに第1のチャープ信号と時間的に分離された(例えば、同じ5MHz/μsのチャープレートを有するが26MHzの中心周波数を有する)第2のチャープ音響信号に重なることがあり、これは(例えば、1μmの)スポット位置誤差をもたらすことになる。ビーム分析システム130は、その第1のレーザパルスのスポット位置を測定し、測定したスポット位置を表す測定データ160をコントローラ122に送信する。そしてコントローラ122は、その第1のレーザパルスに対するタイミングオフセットT0と相関関係にあるスポット位置誤差(例えば、E0)を計算する。タイミングオフセット(例えば、T1、T2、T3及びT4など)を調整し、結果として得られるスポット位置誤差(例えば、E1、E2、E3及びE4など)を計算しつつ、スポット位置測定を繰り返すことによって、コントローラ122は、タイミングオフセットとスポット位置誤差との間の関係を特徴付ける、タイミングオフセットとスポット位置誤差との間の相関関係を構築する。そしてコントローラ122は、スポット位置誤差を低減するか又は除去するために、その後のワークピース加工ステップ中にタイミングオフセットに対して補正を適用する。コントローラ122は、このワークピース加工ステップ中、AOD結晶144内でチャープ音響信号148を生成するように制御コマンド164をAOD140へ送信し、意図されたチャープ信号によって回折されるレーザパルスをワークピース102に向けて出射するように制御コマンド168をレーザ源104に送信する。タイミングオフセットは測定ステップ中に測定されたビーム特性(スポット位置)と相関関係があるので、タイミングオフセットは基準特性(スポット位置)と所定の関係性を有している。コントローラ122は、この所定の関係性を用いてAOD制御コマンド164と制御コマンド168との間のタイミング忠実性を向上させてスポット位置誤差を低減又は除去する。
【0057】
他の実施形態においては、例示的な方法は、タイミング誤差に起因して同時に生じる2つの誤差(例えば、1以上の方向におけるスポットサイズ誤差及びスポット位置誤差)を補正することができる。上記で説明した例示的なワークピース加工シナリオにおいては、プリント回路基板の金属層の(非チャープビームを用いた)アブレーションと下層の積層材の(チャープビームを用いた)アブレーションとの間で1次ビーム152のフルエンスを変化させることが必要となる場合がある。これを実現するため、同じプロセススポットに対して、焦点の合った1次ビーム152として入射ビーム150を回折するAOD結晶144内の非チャープ音響信号に、(低いレーザフルエンスを有する)焦点の外れたレーザ1次ビーム152として入射ビーム150を回折するチャープ音響信号を続けることになる。もし、(例えば、非チャープ音響信号を必要とする)金属層をアブレートすることを意図したレーザパルスがチャープ音響信号に重なったAOD結晶144を通過すると、2つの問題が生じる可能性がある。第1に、レーザパルスは、金属層をアブレートするために必要とされるフルエンスを有しない点まで、チャープ音響信号によって焦点外れが引き起こされる可能性がある。第2に、レーザパルスにわたるチャープ音響信号の中心周波数がレーザパルスにわたる非チャープ音響信号の周波数と等しくない場合、スポット位置誤差を生じる可能性がある。タイミングオフセットを基準ビーム特性(例えば、スポットサイズ及びスポット位置)と関連付けるために用いられる測定ステップと、それに続くタイミングオフセットとビーム特性との所定の関係性に基づいた更新されたタイミングオフセットを使用するワークピース加工ステップとを含む、上述した方法と同様の方法を適用することで、スポット位置及びスポットサイズの誤差は最小化され、補正され又は回避される。
【0058】
この例においては、ビーム分析システム130は、測定ステップの間、スポット位置及びスポットサイズを測定し、それぞれのレーザパルスに対して測定された両方の特性を表す測定データ160を生成し、測定データ160をコントローラ122に送信することができる。そしてコントローラ122は、測定されるスポット位置、測定されるスポットサイズ、及びタイミングオフセットの間の相関関係を構築する。例えば、コントローラ122は、RF源146がAOD結晶144内で(例えば、30MHzの周波数を有する)非チャープ音響信号と、それに続く(例えば、5MHz/μsのチャープレート及び32MHzの中心周波数を有する)チャープ音響信号を生成するように、制御コマンド164をAODシステム140に送信し得る。そしてコントローラ122は、AODシステム140がパルスをビーム分析システム130に所望のスポットサイズで所望のスポット位置に回折させることを期待して非チャープ音響信号に重なることを意図した第1のレーザパルスを出射するように制御コマンド168を(例えば、AODシステム140に送信される制御コマンド164に対してタイミングオフセットT0で)レーザ源104に送信する。しかしながら、例えば、パルスが非チャープ音響信号を逃し、その代わりに32MHzの中心周波数を有するチャープ音響信号の一部に重なることがあり、これは望まないスポット位置及び望まないスポットサイズをもたらすことになる。ビーム分析システム130は、スポット位置及びスポットサイズを測定し、そのレーザパルスの測定されたスポット位置及び測定されたスポットサイズを表す測定データ160をコントローラ122に送信し、これによってコントローラ122はスポット位置誤差(例えば、予測スポット位置に対する測定されたスポット位置ESP0)及びスポットサイズ誤差(例えば、予測スポットサイズに対する測定されたスポットサイズESS0)を計算することができる。両方の誤差は、そのレーザパルスに対するタイミングオフセットT0に相関関係がある。タイミングオフセット(例えば、T1,T2,T3及びT4など)を調整し、結果として得られるスポット位置誤差及びスポットサイズ誤差(例えば、ESP1、ESS1、ESP2、ESS2、ESP3及びESS3など)を計算しつつ、スポット位置及びスポットサイズ測定を繰り返すことによって、コントローラ122は、タイミングオフセット、スポット位置誤差、及びスポットサイズ誤差の間の関係性を特徴付けるタイミングオフセットTx,スポット位置誤差ESPx、及びスポットサイズ誤差ESSxの間の相関関係を構築する。レーザパルス、非チャープ音響信号、及びチャープ音響信号の間のタイミングオフセットは測定ステップ中に測定されたビーム特性(スポット位置及びスポットサイズ)と相関関係があるので、タイミングオフセットは両方の基準特性(スポット位置及びスポットサイズ)と所定の関係性を有している。コントローラ122は、これらの関係性を用いてAOD制御コマンド164とレーザ制御コマンド168との間のタイミング忠実性を向上させてワークピース加工ステップ中のスポット位置誤差及びスポットサイズ誤差を低減又は除去する。
【0059】
iii.システム動作パラメータの制御に関する実施形態
ビーム分析システム130からの測定データを用いるシステム性能の他の閉ループ制御に関して上記で説明した方法は、レーザ加工装置100の様々な構成要素の性能の変化を補償するために制御することのできる様々なシステム動作パラメータ(例えば、RF信号周波数、RF信号チャープレート、音響信号チャープレート、AOD温度、レーザパルスバーストエンベロープ、パルス繰り返し率、パルスエネルギーなど、又はそれらの任意の組み合わせ)により広く適用することができる。レーザ加工装置100が老朽化するにつれ、様々な光学要素(例えば、利得結晶、利得ファイバ、高調波発生結晶、光学格子、プリズム、リレー光学系、回折素子、ビーム伝達光学系、AOD、レンズなど又はそれらの任意の組み合わせ)は、劣化して公称スポットサイズが変化する。以下では、このような劣化が公称スポットサイズに及ぼす影響を補償するためにビーム分析システム130を使用する実施形態について説明する。
【0060】
一実施形態においては、例えば、システム動作パラメータは、(例えば、コントローラ122からの制御コマンド164に応答して)RF源146によって超音波変換器142に適用されるRF信号170のチャープレートCであり得る。この実施形態においては、スキャンレンズ112が古くなるにつれ、レーザ加工中のデブリの付着は、レーザエネルギービームの吸収を増加させる可能性があり、これによりスキャンレンズ112の動作温度が高温となり、おそらくコントローラ122とシステムオペレータにはわからない、公称スポットサイズを変化させる熱レンズ効果が生じる可能性がある。ビーム分析システム130によるビーム特性の測定は、そのような誤差を検知してそうした誤差を補償するために用いることができる。この実施形態においては、これを実現する例示的な方法は、システム動作を通じて様々なときに実行される測定ステップを含んでおり、ビーム特性(例えば、スポットサイズ)が基準特性として選択される。関連するシステム動作パラメータに応じた(例えば、ビーム分析システム130による)基準ビーム特性の特定の測定値が期待値から逸脱している(例えば、予測許容範囲又は制御限界から外れた)場合、コントローラ122は、(例えば、
図2に関して上記で説明したように)ビーム分析システム130からの測定データ160を使用してシステム動作パラメータを調整する。この実施形態においては、測定される基準ビーム特性は、システム動作パラメータである、RF源146によって超音波変換器142に印加されるRF信号170のチャープレートCに対応するスポットサイズSである。(例えば、スポットサイズS
1が100μmの場合に)システム使用期間A
1で使用されるRF信号チャープレートC
1(例えば5MHz/μs)が、RF信号チャープレート基準値となる。そしてビーム分析システム130は、システム使用期間A(時間)の関数としてスポットサイズSの測定データを生成し、SをチャープレートC及びコントローラ122における使用期間Aと相互に関連付ける。システムが、例えば、使用期間A
2に経年劣化すると、RF信号チャープレートC
1(例えば、使用期間A
1で適用される5MHz/μs)の基準値によって生じるスポットサイズS
2は、S
2=120μmに変化し得る。ビーム分析システム130からの測定データを使用して、スポットサイズ(S
2)をRF信号チャープレート(C
1)の基準値及びシステム使用期間(A
2)と比較することによって、コントローラ122は、システム動作パラメータと基準特性との間の関係性を使用して、所望のスポットサイズS
1=100μmを達成するために、AODシステム140を駆動する更新RF信号チャープレートC
2(例えば6MHz/μs)を計算する。この方法は、チャープスポットサイズを測定し、ワーク表面でのスポットサイズがシステムの寿命にわたって維持されることが保証されるようにチャープレートを修正するために利用することができる。これにより、長期にわたる一貫したレーザ加工品質が保証される。
【0061】
B.ビーム分析システムの信号対雑音比に関する実施形態
ある実施形態においては、ビーム分析システム130を高出力ビーム伝達システムと共に使用する場合、とりわけ(例えば、非常に高いレーザフルエンスを有する10-20μmのスポットサイズを測定する際に)ビーム分析システム130の構成要素へのダメージを回避するために1次ビーム152の減衰が必要な場合、ビーム経路における光学素子によって生み出される散乱光の強度は、光検出器によって検出される加工ビームの強度と同程度になり得る。このことは、1次ビーム152の信号を散乱光によって生み出されたノイズから判別するのを困難にし、ビーム分析データの忠実性を悪化させる低信号対雑音比を生じさせる可能性がある。この範囲でのスポットサイズを正確に測定するためには、光検出器に届く散乱光の量を減少させることによって信号対雑音比を向上させることが重要である。以下では、信号対雑音比性能を向上させるビーム分析システム130の例示的な実施形態について説明する。
【0062】
図5及び
図6は、
図1に示したビーム分析システム130の例示的な実施形態の様々な図を示している。
図5及び
図6を参照すると、ビーム分析システム130は、光検出器アセンブリ上に設置されているか又は配置されたトークン310を含んでいる。トークン310は、入射1次ビーム152の少なくとも一部が光検出器アセンブリに到達するのを阻止するように構成された(例えば、金属、セラミック、光学コーティングなどで形成された)材料層312を備える(例えば、ガラス、石英又は他の光透過性材料から形成された)基板311を含んでいる。この実施形態においては、材料層312は、その表面に入射する1次ビーム152の一部を反射するように構成された高反射クロム(本明細書において「HRクロム」ともいう)として提供される。他の実施形態においては、材料層312は反射防止クロム(本明細書において「ARクロム」ともいう)として提供される。入射光を反射するという理由でレーザ誘発ダメージ閾値(LIDT)の高いHRクロムとは対照的に、ARクロムの材料層312は、入射光を吸収するためHRクロムよりもLIDTが低い。HRクロムのLIDTが高いことで、1次ビーム152に必要とされる減衰が少なくて済み、それによって信号対雑音比が向上する。1以上のアパーチャ(例えば、1以上のアパーチャ314及び/又は316)が材料層312に形成され得る。アパーチャ314及び316は、1次ビーム152の一部(すなわち透過した部分154)が基板311を通過できるように構成されている。ビーム分析システム130はさらに、(例えば、ビーム分析システム130が使用されていない場合に)デブリ又は他の混入物がアパーチャ314及び316又は材料層312に付着するのを阻止するために、トークン310上に選択的に位置決めされるように構成されたカバー(図示せず)を含んでいてもよい。この実施形態においては、光検出器アセンブリは、積分球320と光検出器326とを含んでいる。光検出器アセンブリは、ビーム軸が(例えば、X軸又はY軸に沿って)トークン上でスキャンされるときに、ビーム軸118を有してビーム経路114に沿ってスキャンレンズ112を通過して伝搬する入射1次ビーム152の一部の光パワー又は光エネルギーを測定するように構成されている。
【0063】
当該技術分野で知られているように、積分球320は、中空球形の(又は少なくとも実質的に球形の)空洞を含み、その内面が拡散反射コーティングで被覆されている光学的構成要素である。積分球320は、採光ポート322と検出ポート324とを含んでおり、ビーム経路114に沿って伝搬する光が採光ポート322を通って積分球320の空洞の中に入ることができるように配置されている。空洞の内部表面の任意の点に入射する光は散乱し、最終的には、検出ポート324で積分球320から出て光検出器326に入射するようになっている。トークン310は、積分球320の採光ポート322上又は近接した位置に位置決めされている。1次ビーム152の透過部分154のエネルギーパワーは、検出ポート324に設置された光検出器326によって測定される。光検出器326は、検出ポート324に入射する光を吸収して(例えば、上述のように)対応する測定データをコントローラ122に伝達するように構成されている。
【0064】
図6は、
図5において示したトークン310の実施形態の平面図を示している。
図6を参照すると、アパーチャ314及び316(それぞれを総称して「アパーチャ」という)の大きさ、形状、向き、又はその他の構成は、所望の又は有利な任意の方法で提供され得る。この実施形態においては、(例えば、314で特定されるように)X軸及びY軸に(例えば、X軸から測って0度及び90度で)方向付けられた辺を有する1以上の正方形形状のアパーチャが提供される。(例えば、316で特定されるように)X軸及びY軸から(例えば、X軸から測って45度及び135度で)オフセットした辺を有する1以上のひし形形状のアパーチャも材料層312に形成されている。隣接するアパーチャの縁部間の最小距離(すなわち、アパーチャアレイの「ピッチ」)は、光学列における上流で(例えば転回ミラー、レンズその他の光学部品において)生じる散乱光が、隣接するアパーチャ(すなわち、1次ビーム152が方向付けられていないアパーチャ)を通って積分球320に入り光検出器326に到達するのを最小化するように選択される。さらに、アパーチャアレイのピッチは、材料層312のHRクロムによって反射されて他のシステム構成要素に向かい、これらのシステム構成要素によって反射されて隣接するアパーチャに入射する光からの散乱光を回避するか又は最小化するために選択することができる。例えば、一実施形態においては、アパーチャアレイのピッチは、隣接するアパーチャがその寸法に対して互いに十分遠く離れて(例えば、アパーチャが250μmの寸法でアパーチャ間に約1-2mmの間の空間を有して)配置され、(例えば、HRクロムからなる)材料層312がトークン310の95%を超える領域を覆うように選択される。そのように構成されることにより、光検出器326に入射する散乱光の量が最小化又は低減される。積分球320を使用することによる別の有利な点は、光検出器の測定に関するアパーチャ位置の影響の減少である。光検出器がトークン310の真下に配置されている場合、その光検出器に到達する1次ビームからの光の量は、(例えば、1次ビーム152はトークンの面に対してある角度でアパーチャの縁部に入射するため)トークン310上の異なる位置に配置されたアパーチャに対して異なり得る。積分球320を使用することにより、この位置的な影響の受けやすさを低減させることができる。
【0065】
図5を参照すると、1次ビーム152の特性を測定する動作中、ビーム軸118は、少なくとも1つのアパーチャの1以上の縁部にわたってスキャンされ、1次ビーム152の透過部分154の光パワーは、光検出器326によって検知される。アパーチャの縁部は、(例えば、走査スリット型プロフィルメータなどの)様々なビームプロファイラで使用されるナイフエッジに類似する役割を果たす。一例においては、ビーム特性評価ツール130は、1次ビーム152の1以上の特性を測定し、光検出器326に到達するビームパワーを表す対応した測定データを生成するために用いることができ、この測定データは、(例えば、上述のように任意の目的で)コントローラ122に送信されてコントローラ122によって処理され得る。
【0066】
IV.ビーム安定性に関する実施形態
ある場合においては、レーザ加工装置100の動作中に、ガルバノメータミラーがそれらの個別の性能限界又はその近くで駆動されている際、(例えば、ガルバノメータモータによって)与えられるトルクに対する寄生力がガルバノメータミラー又は軸の小さな不均衡の原因となる可能性がある。これらの影響が組み合わさると、ミラーにおける交差軸の角運動(例えば、主回転軸に対して直交する動き)(本明細書においては「交差軸揺らぎ」ともいう)が励起される可能性があり、これはガルバノメータミラーの角度位置の誤差の原因となる。この交差軸揺らぎは、典型的にはガルバノメータ位置決めシステムによっては検知されず、ガルバノメータミラーの角度位置における誤差によって、(例えば、回折された1次ビームの焦点をスキャンレンズによって合わせた後で)ワークピース102表面におけるレーザスポット位置誤差が生じる可能性がある。交差軸揺らぎの程度が測定できれば、ガルバノメータから光学的に上流側に配置されたAODシステムの動作の調節は、交差軸揺らぎを事前に補償することができ、これによって位置決め誤差を低減又は回避することができる。以下では、交差軸揺らぎの検出と事前補償を可能にする実施形態について説明する。
【0067】
A.ビーム分析システムを使用した交差軸揺らぎの測定
第1のポジショナ106(例えばAODシステム)と第2のポジショナ108(例えば、1以上のガルバノメータ)とを含むレーザ加工装置100においては、ビーム軸118は、(例えば、
図5に示したように)スポットの半分(又はスポットの約半分)が光検出器326に伝達されるように位置決めされる。そして、ガルバノメータの1つは、ナイフエッジ(例えば、アパーチャ314又は316の1つの縁部)に平行な方向におけるビーム軸118をスキャンするために、その性能限界の近くでは駆動されない。このスキャンから得られた測定データはコントローラ122に送信され、コントローラ122は、ガルバノメータのその性能限界またはその近くでの動作との比較のために(例えば、ベースライン測定値として)このデータを記憶する。
【0068】
ガルバノメータの性能限界又はその近くでの動作の結果、ガルバノメータに交差軸揺らぎが生じなければ、ビーム分析システム130測定値は(例えば、上述のようにベースライン測定値と比較した際に)変化しないであろう。ガルバノメータに交差軸揺らぎが生じた場合は、ビーム分析システム130測定値はベースライン測定値と比較して変化するであろう。測定データはコントローラ122によって誤差補正信号へと処理され、この誤差補正信号は、交差軸揺らぎを補正するためにAODシステム140に入力される。コントローラ122は、様々な周波数を除去し、(例えば、センサインタフェイスエレクトロニクスに起因する)検知遅延を補償し、(例えば、データ送信、スケーリング、フィルタリング及びAODコマンドデータ送信に起因する)処理遅延とAOD遅延(例えば、AODドライバ及びAOD結晶における伝搬遅延)とを補償することによって測定データを処理することができる。コントローラ122は、揺らぎ角度を、ガルバノメータミラー及びスキャンレンズの形状に起因するワーク表面の変位に変換するために測定データを幾何学的にマッピングすることができる。別の例では、ビーム分析システム130による交差軸揺らぎの測定は、ガルバノメータシステムの1以上の部品に対するダメージを示し得る交差軸揺らぎの大きさの増加を検知するために使用することができる。
【0069】
上述のように構成されることにより、ビーム分析システム130は、動作パラメータ(例えば、スポットサイズ、スポット位置など又はそれらの任意の組み合わせ)に影響を及ぼすか、又はビーム分析システム130自体に正しい測定値の提供を妨げるレーザ加工装置100に対する外乱の影響を測定するためにも用いることができる。1次ビーム152のビーム軸118を直接1以上のアパーチャ314の縁部に位置決めし、光検出器326によって測定された光パワーの変動を監視することにより、ビーム分析システム130は、そのような外乱を検出し、数値化することができる。例えば、一実施形態においては、デブリ排出システムが作動している間にビーム分析システム130によって取得された測定データは、許容できない信号対雑音比を示す場合がある。デブリ排出が行われている際にビーム分析システム130によって取得された測定値は、デブリ排出が行われていない際に取得された測定値と比較され、不安定性の原因が究明され得る。
【0070】
B.交差軸揺らぎ補正システムを使用した事前補償
図7は、レーザ加工装置100の動作中にガルバノメータミラーの交差軸揺らぎを測定するように動作する装置(例えば交差軸揺らぎ補正システム520)の実施形態の図を示している。1次ビーム152は、第1のガルバノメータミラー(例えば、ガルバノメータモータ500によって駆動されるX軸ガルバノメータミラー502)と、スキャンレンズ112を介して1次ビーム152をワークピース102へと方向付ける第2のガルバノメータミラー(例えば、ガルバノメータモータ506によって駆動されるY軸ガルバノメータミラー508)とに入射する。揺らぎ補正システム520は、入射基準レーザビーム524をX軸ガルバノメータミラー502の裏面に形成された反射面504に方向付けるように動作する基準レーザ源522を含んでいる。入射基準レーザビーム524は、補助センサ600上の基準スポット528に入射する反射ビーム526として面504で反射される。他の実施形態においては、入射基準ビームを反射面504に出射するためにLED光源(図示せず)が用いられ得る。
【0071】
図8は、補助センサ600の実施形態の図を示している。この実施形態においては、補助センサ600は、基板602上に形成されて4つのセグメント604,606,608及び610を有する4セルセグメントフォトダイオードとして提供されている。基準スポット528がフォトダイオード上に入射すると、照射されたそれぞれのセグメントは、そのセグメントに入射した光パワーに比例する光電流を生成する。セグメントの光電流間の相違は、基準スポット528の位置を示している。そのため、補助センサ600は、基準スポット528の位置を検知して基準スポット528の位置を表す測定データをコントローラ122に送信するように構成されている。そして、コントローラ122は、補正又は補償因数を計算するためにこの測定データを用いて交差軸揺らぎ510を補正又は補償することができるように、交差軸揺らぎ510がワークピース102におけるプロセススポットの位置決め誤差を引き起こさないように保証する制御コマンドを第1のポジショナ106(すなわち、X AOD及びY AOD)に送信する。
【0072】
この実施形態においては、交差軸揺らぎ補正システム520の動作中、X軸ガルバノメータミラーが±X方向における1次ビーム152をスキャンする際に、基準スポット528は補助センサ600上を±X方向に移動する。例えば、交差軸揺らぎ510が(例えばY方向において)生じた場合、基準スポット528は±X方向に加えて±Y方向にも移動する可能性があり、これにより下側のセグメント608及び610によって吸収される光の量に対して上側のセグメント604及び606によって吸収される光の量の変化が引き起こされる。この基準スポット528の吸収の差を表す測定データは、補助センサ600からコントローラ122へと送信される。そして、コントローラ122は、Y方向揺らぎを補償し(そしてそれによって補正し)、補償因数を計算してワークピース102におけるプロセススポットの位置決め誤差を防止するための制御コマンドを(例えば、第1のポジショナ106のY軸AODに)出力する。
【0073】
他の実施形態においては、補助センサ600は(例えば、X方向に方向付けられた)ギャップの両側(例えばY方向)に配置された2つのセグメントを有するデュアルセルセグメントフォトダイオード(図示せず)として提供される。このデュアルセル配置は、(例えば、基準スポット528がセグメント606,608とセグメント604,610との間のY方向に方向づけられたギャップを横切る際の4セル補助センサ600からの)フォトダイオード信号の非線形性に起因する誤差を回避し得る。他の実施形態においては、補助センサ600は連続位置検知フォトダイオード(PSD)として提供される。他の実施形態においては、補助センサ600は静電容量変位センサ、渦電流センサ、又は誘導センサとして提供され得る。
【0074】
他の実施形態においては、(
図5及び
図6に関して上記で述べたように)ビーム分析システム130が補助センサ600として使用される。例えば、反射ビーム526はトークン310に向けられ、反射ビーム526の軸はアパーチャ314の1以上の縁部に沿ったX方向に沿ってスキャンされ得る。交差軸揺らぎ510が(例えば、
図7に示したようにY方向において)発生した場合、反射ビーム526の軸はアパーチャ314の縁部を前後に横切り、これによって積分球320に入るレーザエネルギーの量の変化が引き起こされる。光検出器326によって測定されるレーザエネルギーの量の変動を表す測定データはコントローラ122に送信され、そしてコントローラ122は補正又は補償因数を計算して、Y方向揺らぎを補正するか又は事前に補償する(そしてそれによって補正する)ための制御コマンドを(例えば、第1のポジショナ106のY軸AODに)出力する。
【0075】
他の実施形態においては、ビーム分析システム130によって得られた測定値に基づいて(ガルボ軸回転に起因する)軸上の位置と(軸上の運動に対して垂直な)交差軸揺らぎ運動との間の利得及び位相として定義される揺らぎ周波数応答を生成することによって、交差軸揺らぎの事前補償を生成するためにビーム分析システム130を用いることができる。揺らぎ周波数応答の動的モデルはこの測定データから得ることができ、このモデルを使用して(モデル化した揺らぎデータを用いて)ワークピース102の加工中にリアルタイムで揺らぎを予測し、事前に補償することができる。
【0076】
上述の実施形態はX軸ガルバノメータミラー502の交差軸揺らぎ510を補正するために使用される交差軸揺らぎ補正システム520に関するものであるが、Y軸ガルバノメータミラー508の(例えば、X方向に沿った)交差軸揺らぎを測定して補正するために類似又は同一の揺らぎ補正システム(図示せず)を使用することもできる。他の実施形態においては、交差軸揺らぎの補償は、高速ステアリングミラー(FSM)のような独立したビームステアリング装置を使用しても実現し得る。
【0077】
V.結論
上記は、本発明の実施形態及び例を説明したものであって、これに限定するものとして解釈されるものではない。いくつかの特定の実施形態及び例が図面を参照して述べられたが、当業者は、本発明の新規な教示や利点から大きく逸脱することなく、開示された実施形態及び例と他の実施形態に対して多くの改良が可能であることを容易に認識するであろう。したがって、そのような改良はすべて、特許請求の範囲において規定される本発明の範囲に含まれることを意図している。例えば、当業者は、そのような組み合わせが互いに排他的になる場合を除いて、いずれかの文や段落、例又は実施形態の主題を他の文や段落、例又は実施形態の一部又は全部の主題と組み合わせることができることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲とこれに含まれるべき請求項の均等物とによって決定されるべきである。
【国際調査報告】