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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】手持ち式気体及び蒸気分析器
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20240709BHJP
   G01J 3/45 20060101ALI20240709BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20240709BHJP
   G01N 27/64 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01J3/45
G01N21/03 B
G01N27/64 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577146
(86)(22)【出願日】2022-06-11
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 US2022033157
(87)【国際公開番号】W WO2022261522
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/209,956
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523466385
【氏名又は名称】シーエーエム2 テクノロジーズ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レスラー、グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】フラッタロリ、ジョナサン エー.
(72)【発明者】
【氏名】シーリング、デビッド ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ゼーレンバインダー、ジョン エー.
(72)【発明者】
【氏名】シュライバー、ケネス シー.
(72)【発明者】
【氏名】シュトルツェ、マーク
(72)【発明者】
【氏名】マクウィリアムズ、ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ディドメニコ、アンソニー ダブリュー.
【テーマコード(参考)】
2G020
2G041
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G020AA03
2G020BA02
2G020BA12
2G020CA02
2G020CA12
2G020CC23
2G020CD04
2G020CD13
2G020CD32
2G020CD35
2G020CD37
2G041CA02
2G041DA02
2G057AA01
2G057AA07
2G057AB02
2G057AB06
2G057AC03
2G057BA01
2G057DA03
2G057DB05
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC09
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE09
2G059JJ11
2G059JJ13
2G059LL01
2G059MM02
2G059MM05
2G059MM10
2G059MM14
(57)【要約】
気体及び蒸気分析器システム、及び、気体又は蒸気サンプルを検出する方法が提供される。分析器システムのFTIR分光法システムは、励起信号を変調するように適合された干渉計を備える。気体セルは、変調励起信号を受信し、入力レンズを介して気体セル内で変調励起信号を集束させるように適合されている。軸外多重反射ジオメトリは、集束された変調励起信号を受信し、セルの長手軸に対して傾斜した複数のビーム経路を介して、集束された変調励起信号を気相又は蒸気相試料に通過させて光サンプル信号を生成するように適合されている。出射レンズは、気体セルからの光サンプル信号をIR放射線検出器に方向付けるように適合され、コントローラは、光サンプル信号に基づき、検出された気体及び蒸気サンプルを同定するように適合されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち式蒸気及び気体分析器システムであって、
励起信号を提供するように適合された光エネルギー源;
前記光エネルギー源に光結合され、前記励起信号を変調するように適合された干渉計;
赤外(IR)放射を変調電気信号に変換するように適合されたIR放射線検出器;
前記干渉計に光結合された気体セル
を備え、前記気体セルは、
前記変調励起信号を受信し、前記変調励起信号を前記気体セル内で集束させるように適合された入力レンズ、
前記集束された変調励起信号を受信し、前記集束された変調励起信号を前記気体セル内の蒸気相試料に通過させて光サンプル信号を生成するように適合された軸外多重反射ジオメトリ、前記軸外多重反射ジオメトリは、前記気体セルの長手軸に対して傾斜した複数のビーム経路を含む;及び
前記光サンプル信号を前記気体セルから前記IR放射線検出器に方向付けるように適合された出射レンズ;
気相又は蒸気相試料を前記気体セルに導入するように適合されたポンプ;及び
前記光サンプル信号に基づき、検出された気体及び蒸気サンプルを同定するように適合されたコントローラ
を有する、フーリエ変換赤外(FTIR)分光計を含む手持ち式システム。
【請求項2】
前記FTIR分光計の前記干渉計は二重振り子である、請求項1に記載の手持ち式システム。
【請求項3】
前記FTIR分光計の前記干渉計はリニアアクチュエータを有する、請求項1に記載の手持ち式システム。
【請求項4】
光イオン化検出器(PID)は、前記ポンプからの前記気体及び蒸気をサンプリングし、周囲の気体及び蒸気を検出する、請求項1に記載の手持ち式システム。
【請求項5】
前記ポンプは、前記蒸気相試料を前記PID内に引き込むように適合されている、請求項4に記載の手持ち式システム。
【請求項6】
前記ポンプは、前記蒸気相試料を前記気体セルから前記PID内に引き込むように適合されている、請求項5に記載の手持ち式システム。
【請求項7】
前記ポンプは、前記気体セル内への前記蒸気相試料と並行して、第2の蒸気相試料を前記PID内に引き込むように適合されている、請求項4に記載の手持ち式システム。
【請求項8】
第2のポンプは、第2の蒸気相試料を前記PID内に引き込むように適合されている、請求項4に記載の手持ち式システム。
【請求項9】
前記手持ち式システムは、10ポンド(4.5キログラム)未満の重量を有する、請求項1に記載の手持ち式システム。
【請求項10】
前記手持ち式システムは、片手を用いて操作されるように適合されている、請求項1に記載の手持ち式システム。
【請求項11】
前記手持ち式システムは、1つ又は複数のボタン及びディスプレイを介して操作されるように適合されている、請求項1に記載の手持ち式システム。
【請求項12】
気体セル体積の気体セル経路長に対する比が、0.02、0.03、及び0.04からなる群のうちの1つ又は複数未満である、請求項1に記載の手持ち式システム。
【請求項13】
前記コントローラは、オペレーティングソフトウェア、分析ソフトウェア、及びスペクトルライブラリを記憶するメモリを有する、請求項1に記載の手持ち式システム。
【請求項14】
前記干渉計は、スペクトル記録周期の過程において生じる衝撃又は振動に起因する摂動を自己補正する二重振り子干渉計を有する、請求項1に記載の手持ち式システム。
【請求項15】
前記気体セル内の前記入力レンズ及び出力レンズは視野レンズである、請求項1に記載の手持ち式システム。
【請求項16】
前記コントローラは、レーザインタフェログラム及びIRインタフェログラムをデジタル化して記憶するように適合されている、請求項1に記載の手持ち式システム。
【請求項17】
前記記憶されたインタフェログラムデータは、干渉計速度摂動を補正するために後処理される、請求項16に記載の手持ち式システム。
【請求項18】
前記気体セルは、視野ミラー上に搭載された再帰反射器を有する、請求項1に記載の手持ち式システム。
【請求項19】
前記再帰反射器の軸は幾何学的に配向されている、請求項18に記載の手持ち式システム。
【請求項20】
前記再帰反射器は、特定の視野像パターンが前記視野ミラー上で永続するように、前記気体セルのx、y、及びz平面に対して幾何学的に斜めに配向され、前記気体セルの前記x、y、及びz平面のうちの1つは前記気体セルの長手軸に対応する、請求項19に記載の手持ち式システム。
【請求項21】
赤外(IR)分光法に基づき気体及び蒸気を分析するための方法であって、
励起信号を提供する段階;
干渉計を介して前記励起信号を変調する段階;
前記変調励起信号を、気体セル内に配設された気相又は蒸気相試料を含む前記気体セルに通過させて光サンプル信号を生成する段階、ここで前記変調励起信号は、前記気体セルの長手軸に対して傾斜した複数のビーム経路を含む軸外多重反射ジオメトリによって方向付けられ、前記変調励起信号は、入力レンズを介して前記気体セルに入り、出力レンズを介して前記気体セルを出る;
IR検出器を用いて前記光サンプル信号を検出して、前記光サンプル信号のIR放射を変調電気信号に変換する段階;及び
前記光サンプル信号に基づき、前記検出された気相又は蒸気相サンプルを同定する段階
を備える、方法。
【請求項22】
気相又は蒸気相サンプルを同定する連続動作は、点又は継続的動作モードのいずれかで行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記連続する気相又は蒸気相サンプルを前記気体セル内に引き込むように適合されたポンプは、IR吸収信号に基づきフィードバックループで制御される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
記憶された基準又はバックグラウンドは、記録されたIR吸収信号から計算された統計的メトリクスに基づき更新される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
気体又は蒸気の同一性は、記憶されたライブラリスペクトルとの比較によって判定される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
信号対雑音比(SNR)を高めるために、IRスペクトルが同時に追加される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
信号対雑音比(SNR)を高めるために、統計的メトリクスを使用してIRスペクトルの同時追加を開始する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
統計的メトリクスを使用して、IRスペクトルの同時追加を停止する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
統計的メトリクスを使用して、未知の化学気体又は蒸気を同定するためにスペクトルライブラリ検索を開始するかどうかを判定する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
統計的メトリクスを使用して、気体又は蒸気サンプルが検出されたか又は存在するかを判定する、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年6月11日に出願された米国仮出願第63/209,956号の利益を主張するものであり、これは、参照によって本明細書に完全に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0002】
a.分野
本開示は、未知の気体サンプルの光学測定及び同定に関する。
【背景技術】
【0003】
b.バックグラウンド
気相材料及び蒸気相材料の検出及び同定は、初期対応者、一般大衆及び軍関係者の健康を保護するために重要である。健康にとって有害且つ危険である蒸気が存在し得る。対応者は、これらの化学的脅威を検出するために様々な技術を採用している。殆どが、広範な材料を同定するための特異性の欠如に悩まされている。幾つかの異なる技術が、手持ち式の構成で比較的少ない気体の検出を提供している。これらの技術は、光イオン化検出器(Photoionization Detector:PID)、イオン移動度分光計(Ion Mobility Spectrometer:IMS)、表面弾性波(Surface Acoustic Wave:SAW)センサ、及び炎光発光デバイスを含む。これらのデバイスは、赤外(Infrared:IR)分光法で可能な幅広い化学的同定を提供しない。IR分光法は、未知の材料の同定によく適している。分子のIR吸収スペクトルは物理定数であり、分子構造に非常に敏感である。IRスペクトルは高度に特異的であり、分子の指紋とみなされている。少数の例外を除き、全ての蒸気相分子はIR吸収スペクトルを呈する。従って、IR分光法は、遥かに広範囲の分子をより高度の信頼性を伴って潜在的に同定し得る。現在のところ、蒸気相化学物質を即時に同定するための市販の現場用手持ち式FTIR機器は存在しない。
【0004】
気体及び蒸気分析器に関する以下の参考文献は、本明細書に完全に記載されているものとして参照により組み込まれる。
・ 米国特許4,383,762 1983年5月 Burkert
・ 米国特許5,914,780 1999年6月 Turner他
・ 米国特許10,451,540 B2 2019年10月 Baum他
・ 米国特許9,279,721 B2 2016年8月 Krause他
・ WO 2016/118431 A1 2016年1月
・ EP 0 596 605 A1 1993年8月
・ J.U.White、"Long Optical Paths of Large Aperture"アメリカ光学学会誌、32:285-288(1942年)
・ D.Horn及びG.C.Pimentel、"2.5-km Low-Temperature Multiple-Reflection Cell"応用工学、10(8):1892-1898(1971年)
・ H.Rippel及びR.Jaacks、"Performance Data of the Double Pendulum Interferometer"Mikrochemica Acta、95:303-306(1988年)
・ P.R.Griffiths及びJ.A.De Haseth、Fourier Transform Infrared Spectrometry、第二版、J.Wiley&Sons,Inc.:Hoboken,NJ.(2007年)
【発明の概要】
【0005】
開示された手持ち式蒸気及び気体同定器は、初期対応者などによる、蒸気の迅速で正確な現場での同定を可能にする機器を提供する。同定器/分析器は即時性のある情報を提供することができ、従って、必須の蒸気相同定に関して、脅威は何か?それは私にどのような損害をもたらすことになるのか?それはどのくらいの速さで私のもとに迫ってきているのか?という3つの主要な質問が存在する環境において、不安を払拭し、情報に基づく意思決定を容易にする。本デバイスは、化学的バックグラウンド/機器への精通度が最小限であるオペレータにとって直感的な製品であり得る。
【0006】
一実施形態において、未知の蒸気相化合物の分析及び同定のための、長経路多重反射気体セルを有する、頑丈で完全に統合された手持ち式フーリエ変換赤外(Fourier Transform Infrared:FTIR)分光計が提供される。統合されたPIDは、気体検出のための補足情報、及び、気体及び蒸気濃度を推定するための潜在能力を提供する。分光計は人間工学的に設計されており、迅速で正確な結果を供給する。分光計はバッテリ駆動式であり、リアルタイムの現場での脅威の同定及び実用的なインテリジェンスを供給する。オンボードソフトウェアアルゴリズムは、優先化合物の記憶された赤外線スペクトルシグネチャによる補助のもと、未知の蒸気を速やかに同定する。可能な同定された成分は、材料に関する物理データと共に、統合されたスクリーンディスプレイに表示され得る。
【0007】
簡素化された直感的なユーザインタフェース(User Interface:UI)により、オペレータはボタンを押すことなどを介して、個別又は継続的分析モードを選択し得る。一体型ポンプは、吸気ポートを介して気体セルを充填し得、ボタンを押すと、個別のサンプリングモードにおけるサンプル分析が完了する。
【0008】
継続的調査モードにおいて、機器は自由に動作し、周囲の蒸気をサンプリングし、バックグラウンドとは異なる蒸気を同定し得る。
【0009】
本発明の、上述及び他の態様、特徴、詳細、有用性、及び利点は、以下の記載及び特許請求の範囲を読むことにより、及び、添付図面を検討することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】気体及び蒸気分析器の実施形態の概略図を示す。
【0011】
図2A】気体及び蒸気分析器の気体セルの実施形態の視野絞り像パターン(A)を示す。
図2B】実施形態の標準的なWhiteのセル視野絞り像パターン(B)を示す。
【0012】
図3】気体及び蒸気分析器の気体セル内で使用され得る例示的な視野絞り及び瞳像パターンを示す概略図を示す。
図4】気体及び蒸気分析器の気体セル内で使用され得る例示的な視野絞り及び瞳像パターンを示す概略図を示す。
【0013】
図5A】Horn及びPimentelによって開示された再帰反射器ミラーによって作成された元の視野像パターン(34)を示す。
【0014】
図5B】本実施形態における視野ミラーの図である。
図5C】本実施形態における視野ミラーの図である。
【0015】
図6A】標準的な入力及び出力ウィンドウに代わる視野レンズの概略図を示す。
図6B】標準的な入力及び出力ウィンドウに代わる視野レンズの概略図を示す。
【0016】
図7】蒸気及び気体分析器の実施形態の機器制御、電力及び出力のためのエレクトロニクス及び方法を示す概略図である。
【0017】
図8】一点測定の方法を示すフローチャートである。
【0018】
図9】点測定モードと同様の基準又はバックグラウンド測定を用いる継続的測定の方法を示すフローチャートである。
【0019】
図10】フーリエ変換赤外分光計を採用する蒸気及び気体分析器システムの例示的な一実施形態の線図を示す。
【0020】
図11】気体及び蒸気同定器の好ましい実施形態で収集された(A)二酸化硫黄、(B)一酸化炭素、及び(C)アンモニアのスペクトルを提示することにより、有毒気体の同定のための赤外分光法の特異性を明示する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の一般的な科学分野は、気体及び蒸気の分析において使用される赤外(IR)分光法、特にフーリエ変換赤外(FTIR)分光法である。当分野は周知であり、バックグラウンド知的財産及び他の参考文献に含まれる、Griffiths及びDe Hasethにおけるような科学文献に記載されている。FTIR分光計の操作及び信号分析の一部の詳細は省略されており、上述の参考文献及び含まれる他の参考文献において検討され得る。
【0022】
図1は、気体及び蒸気分析器の実施形態の概略図を示す。この図において、光学系及び機械ハードウェア(1)が示されている。この実施形態において、分析器は、長経路気体セル(16)に光インタフェースされたFTIR分光計(2)を採用している。分析器の干渉計(2)は二重振り子であり、フレックスピボットによって拘束された鉛直軸(30)を中心とする回転運動を用いて動作する。このタイプの干渉計は当技術分野において周知であり、含まれるバックグラウンド知的財産及び他の参考文献-Rippel及びJaacks、Griffiths及びDe Haseth、又は米国特許4,383,762に記載されている。このタイプの干渉計は、それが手持ち式機器によって経験され得る外部摂動に起因する光学的配列の変化を自己補償するため、有利である。リニアアクチュエータを有するものなど、当技術分野において既知の他の干渉計も使用され得る。
【0023】
以下でより詳細に記載されている長経路気体セル(16)は、一実施形態において、37ミリリットル(milliliter:ml)などの小さい体積で、2メートル(meter:m)などの長い光路長を提供する。周囲の蒸気(21)は、統合されたポンプ(24)でセル内に引き込まれる。IR放射はIR放射源(3)から放射され、IRビーム(4)は光源光学系(11)によってコリメートされて干渉計に方向付けられる。IRビーム(4)は、2枚の補償器(5)光学プレートの間に挟み込まれたIRビームスプリッタコーティング(6)によって構成されるビームスプリッタアセンブリ(15)に衝突する。IRビームは、光学マウント(10)によって所定の位置に保持された再帰反射器(29)の、干渉計のピボットポイント(30)を中心とした運動によって変調される。FTIR分野で使用される干渉計において一般的であるように、移動ミラー位置は基準レーザ干渉計を用いて追跡される。開示された実施形態において、再帰反射器(29)は、IR及び基準レーザ干渉計の両方において移動ミラーを備える。単色のコリメート光出力は、基準レーザ(7)によって提供される。レーザビーム(9)は、IRビームについて記載されている通り干渉計によって変調され、レーザ検出器(8)によって検出される。ダイオードレーザを含む気体レーザ及び固体レーザは、当技術分野において既知である。また、レーザは可視又はIR領域において発光を有し得る。レーザ波長による必要に応じて、適切なレーザ検出器(8)が使用される。
【0024】
変調IR放射は、セル前反射光学系(14)によって長経路気体セルに方向付けられる。長経路気体セル(16)への入力レンズ(20)は、気体セル対物ミラー(17)においてビームスプリッタ(15)の像を形成する。IRビーム(4)は、視野ミラー(18)及び対物ミラー(17)の間のセル(16)内で多重反射を経て、蒸気分子と相互作用する。IRビーム(4)は、出力レンズ(19)を通って長経路気体セル(16)を出て、検出器前置光学系(13)によってIR検出器(12)素子において集束される。出力レンズ(19)は、検出器前置光学系(13)上で対物ミラー(17)の像を形成して、体系光学像の伝達を最大化する。
【0025】
変調IRビーム信号は、重水素化l―アラニンドープトリグリシン(Deuterated L-Alanine Doped Triglycine:DLATGS)又はタンタル酸リチウム(Lithium Tantalate:LiTaO)検出器などの室温焦電検出器(12)によって検出される。テルル化カドミウム水銀(Mercury-Cadmium-Telluride:MCT)光導電体など、より高感度の冷却型検出器も想定されており、焦電検出器の代用になり得る。光イオン化(Photoionization:PID)検出器は、放出された気体又は蒸気の存在を検出し、その濃度を定量化するために使用されるものとして周知である。これらの検出器は、主にスタンドアロンの機器として見受けられる。PIDは、FTIR同定の補足データを提供し、気体又は蒸気放出の迅速な表示(検出)を提供し得、FTIR分光分析によって提供される蒸気又は気体同一性の使用を通じて、PIDは濃度推定を提供し得る。ポンプ(24)からの蒸気排出(28)は、光イオン化検出器(PID、25)に方向付けられ得る。或いは、ポンプ(24)及びPID(25)の位置を並列させることもでき、ポンプは気体セルからPIDを通って蒸気を引き込み、最終的には周囲環境に排出(26)し得る。PIDがシステムに統合されていない、気体及び蒸気同定器の他の実施形態が知られている。
長経路気体セル
【0026】
未知の材料のFTIR同定についての同定限界(Limits of identification:LOI)は、ベールの法則に従って、気体サンプルを通る赤外ビーム経路を拡大する及び/又は最大化することによって高められ得る。ベールの法則では、任意の波数における吸光度(A)はA=abcであると述べており、(a)は気体の比吸光係数、(b)は気体を通るIRビーム経路長、及び(c)は気体の濃度である。
【0027】
様々な実施形態において、分析器は、統合された気体セル(例えば、2.0メートル経路長の気体セル)の設計を含む。これにより、ベールの法則に従い、減少した、及び/又は最小の気体サンプル体積を伴って、増加した、及び/又は最大化された気体吸光度がもたらされる。これは、最小のセル体積でセルを通る経路長を拡大する及び/又は最大化することによって達成され得、従って、セルを充填するのに必要とされる時間を短縮/最小化しつつ、測定される吸光度を増加させ及び/又は最大化し、その結果、サンプルの測定及び同定時間が短縮される。これらの実施形態において、特徴は、継続的サンプリング及びリアルタイムのサンプル同定を可能にする。
【0028】
気体セルの設計は、Whiteによって最初に提案された一般的な多重反射ジオメトリに基づいている。基本的なWhiteのセルの光学設計は、基本距離によって分離された、2枚の主ミラー、ビーム入力/近位端における視野ミラー、及び、遠端/遠位端における一対の対物ミラーを特徴とする。視野ミラー軸はセル軸と同一線上にあり、そのため、そのミラー中心はセル軸上に位置する。対物ミラーペアの中心は所定の距離だけ鉛直に分離されている。両対物ミラーペア軸は、それらのサグポイントを中心として、セル軸に向かって内側に、所定の角度を介して傾斜している。このジオメトリは、視野ミラー上の視野絞りパターンを駆動する。初期視野絞り像0は、干渉計からの中継光学系を介して視野ミラー表面上で集束される。連続する視野絞り像は、各セル内中継視野像について、対物ミラーを介して視野ミラー上で作成される。視野ミラーは次に、2枚の対物ミラー上の連続する瞳像を頂部から底部へと交互に中継する。このようにして、セル内の閉じられた光学システムは、所望のパスの数にわたり反復して連続する視野像及び瞳像を作成する。Whiteによって教示された視野絞りジオメトリは、視野ミラー上に配設された隣接する行及び積み重ねられた列を示し、視野像を伴わない大きな「デッド」ゾーンを有する視野ミラー面を駆動する。この大きなデッドゾーンは次に、大きい内径及び対応する大きい内部セル体積をもたらす。
【0029】
図2Bは、26パスについての視野ミラー(18)上の標準的なWhiteのセル視野絞り像パターン(34)を示す。0とラベル付けされた視野絞り像(31)は最初の像であり、セル前中継光学系により形成され、26とラベル付けされた視野絞り像(33)は、ビームがセルを出る前に形成される最後の像である。この図は、先行技術の視野像進行の結果としての、視野ミラー上の「デッド」エリアを明確に示している。図2Aはまた、視野像入れ子パターン(35)及び縮小された/最小の「デッド」エリアを有する26パス用の気体セルの実施形態についての視野絞りパターンを示しており、この実施形態において、内径の21%の縮小が容易になる。0とラベル付けされた視野絞り像(31)は、セル前反射光学系(14)によって形成された最初の像である。26とラベル付けされた視野絞り像(33)は、ビームがセルを出る前に形成された最後の像である。像14において視野ミラーに搭載された再帰反射器アセンブリ(32)は、入れ子パターン(35)を永続させ、効率を高める。この設計上の特徴は、以下でより詳細に論述される。この実施形態について記載の通り、内径の縮小/最小化は、体積の減少/最小化に対応しており、高い効率を推進し、未知のものを検出又は同定するための時間を短縮/最小化する。
【0030】
新たなセル設計のユニークな特徴は、1メートルあたりのリットル数で測定される体積/経路長比、E=V/PL(効率)が高いことである。一実施形態において、セルは、効率=.019で37mlの体積を通じ、2.0m(6.53フィート)の総経路長にわたる3インチ(7.62センチメートル)の公称ベースセル経路で26パスを生成する。この設計は、高感度の且つ正確な同定のために小さい気体体積の使用を容易にする。わずか1mlの入力体積で、未知のものの同定のために十分な分析用データがもたらされた。
【0031】
気体セル経路長に対する気体セル体積の比として定義されている.019のセル効率を実現するために、視野絞り像設計の実施形態は、視野ミラー(18)上に入れ子パターン(35)を提供する。この効率的な入れ子は、2つの幾何学的設計の実装により実現される。第1の幾何学的考察は、隣接する視野像の列及び行をずらして、像の密充填、及び視野ミラー(18)上の最小の「デッド」エリアを生成することである。様々な実施形態において、気体セル経路長に対する気体セル体積の比として定義されている効率は、0.02未満、0.03未満、又は0.04未満であり得る。
【0032】
図3及び図4を参照すると、第2の幾何学的考察は、所望の視野絞り入れ子パターン(35)のジオメトリによって規定されている通り、セル中心線に対して斜めであるセルへの、及び当該セルからの、入力及び出力ビーム軸を作成することである。IR源(3)で発生し、分光計(2)から赤外線ビーム(4)として伝播する気体セル入力光線(39)は、視野ミラー(18)の視野像0(31)を経由して、気体セル中心線軸(38)から傾斜した斜めの角度でセルに入り、瞳像1(36)で上部対物ミラー(42)に当たる。下部対物ミラー(43)上の瞳像25(37)で発生する気体セル出力光線(40)も、気体セル中心線軸(38)から傾斜している。対物ミラー(17)及び視野ミラー(18)の間で反射する他の光線も同様に、気体セル中心線軸(38)から傾斜している。気体セル中心線軸(38)に対して斜めの角度である光線を導入することにより、長光路を維持しつつ、視野絞り像(35)の入れ子及びセル体積の減少がサポートされる。セル視野絞り径、セル瞳径、セルベース経路長、セル総経路長、セル内光学収差、干渉計ターゲット分解能、光源径、光源動力、光源温度、検出器径、検出器D*、セル入力及び出力ビームジオメトリ、効率的な体系光学スループットマッチング、システム総経路長、体積、及び重量の最小化などの設計変数の意図的な操作を通じ、視野ミラー上の最大視野絞り密度がオーバーラップ又は口径食を伴うことなく実現される。この光学的入れ子パターン(35)は、セル内径を縮小及び/又は最小化し、それにより、小さい内部体積、最小の全体セルサイズ、及び軽量を可能にする。
【0033】
図4は、視野ミラー(18)上の26の像のユニークで効率的な視野絞り入れ子(35)を示す。像のオーバーラップを排除しつつ、視野ミラーの「デッド」エリアが縮小される/最小になるよう、像が入れ子になっている。左図における各像番号及び右図における連続する瞳番号(41)の間の光線は、セル(16)を通過するビームに対応する。瞳像(41)は、頂部対物(42)及び底部対物(43)上の対物ミラー(17)上のセル軸(38)の上下に位置する。対物ミラー(17)は、互いに対して傾斜した2枚のミラーを備える。頂部対物ミラー(42)及び底部対物ミラー(43)が存在する。従って、図3及び図4において、視野絞り像0(31)は、頂部対物ミラー(42)上の瞳像1(36)に向かう光線(39)を作成する。頂部対物ミラー(42)からの瞳像1(36)は、視野像2(60)に向かう光線を作成し、同様に、底部対物ミラー(43)上の瞳像25(37)が視野像26(33)に向かう光線26(40)を作成し、ひいてはセルを出るまで、視野ミラー及び対物ミラーの間を行き来する。画像14-14'は、視野ミラー上の再帰反射器像位置(32)である。図4の中央図は、セルを通る全ての光線(41)経路の進行、及び、気体セル中心線軸(38)に対する角度の歪みの側面斜視図を示す。2次元投影の像経路オーバーレイは、像0/14'、4/18、8/22、12/26、24/10、20/6、16/2を含む。
【0034】
右図は、上部対物ミラー(42)及び下部対物ミラー(43)の瞳像スタックをそれぞれ示す。
【0035】
開示された実施形態は、Horn及びPimentelによって最初に提案された概念を基にした再帰反射器ミラーの実装を含む。Horn及びPimentelの元の設計は、視野ミラー(18)上の視野絞り像の追加列を作成するために再帰反射器ミラーを採用している。
【0036】
開示された実施形態は、視野ミラー(18)上の効率的な視野絞り入れ子パターンを永続させるために、新たな再帰反射器ミラーのユニークな特徴を採用している。再帰反射器のジオメトリは、視野ミラー(18)上で視野像の2つの追加の入れ子列を生成し、ユニークなセルジオメトリによって確立された高密度の視野絞り入れ子パラダイムを維持しつつ、経路長を大幅に拡大する。
【0037】
図4はまた、頂部対物ミラー(42)上の像点14(98)、14'(99)、及び(41)によって画定されるレトロ平面が、再帰反射のIR放射の中心線を含み、直交するセル平面x、y、及びzに対して斜めである例示的な実施形態を示す。
【0038】
図5Aは、Horn及びPimentelによって開示された再帰反射器ミラーによって作成された元の視野像パターン(34)を示す。示されている例は、26パスセル用のものである。視野ミラー(18)上の像14-14'は、再帰反射器ミラーの位置である。14-14'の鉛直配向は、内側2行に接している追加の上部及び下部視野像行を作成することに留意されたい。例えば、像12及び16、及び、6及び22は鉛直に積み重ねられており、その結果、視野ミラーエリアの使用効率が低下する。記載された26パスセルの場合、先行技術についての像入れ子(34)の直径は、使用されるシステム視野絞り径について1.58インチ(4.01センチメートル)である。
【0039】
図5B及び図5Cは、本実施形態における視野ミラー(18)の2つの図である。図5Bは、明確にするため、図5Cに対して反転されている。図5Cは、視野ミラー(18)、再帰反射器(32)、入力視野レンズ(20)及び出力視野レンズ(19)の機械図を示す。図5Bを参照すると、再帰反射器(32)は、視野絞り像位置14-14'で新規の角度配向ジオメトリを呈している。入れ子パターン(35)の角度配向を維持することにより、2つの外側列の入れ子パターンは、内側列によって確立されたパターンと一致する。像0(31)は入力視野レンズの位置、像26(33)は出力視野レンズの位置である。
【0040】
この実施形態の更にユニークな設計上の特徴は、標準的な入力及び出力ウィンドウの代わりに入力及び出力視野レンズ(20、19)を代用したことである。当技術分野における標準は、シールを生成するためにIR透過ウィンドウを使用することである。各視野レンズを入力/出力視野絞り像に配置することにより、セル内外における瞳像の効率的な中継が実現される。このようにして、光源及び検出器前置光学系に対するセルの効率的な体系光学マッチングが、必須の高い光学スループットを実現する。記載された26パスセルの場合、例示的な実施形態についての像入れ子パターン(35)の直径は、使用されるシステム視野絞り径について1.437インチ(3.65センチメートル)である。この特定の例示的な実施形態は、入れ子パターン(35)の直径において9%の縮小をもたらす。
【0041】
図5Cは、再帰反射器ミラーアセンブリ(32)を、この例においては、2枚の45°の平面ミラー、及び、入力(20)及び出力(19)視野レンズを示している視野ミラー(18)アセンブリの斜視図を示す。像14-14'は、2枚の再帰反射平面の中間にある。再帰反射器の設計ジオメトリは、像14-14'が視野絞り像の新たな列から発せられたように見え、それにより、連続する外側列像を作成するようなものである。加えて、レトロの第2の平面は、瞳像を頂部対物ミラー(42)に直接送り返すように幾何学的に配向されており、それにより、瞳像の適切な確立された連続を維持する。
【0042】
図6A及び図6Bは、標準的な入力及び出力ウィンドウに代わる視野レンズの概略図を示す。図6Aは、入力視野レンズ(20)が干渉計瞳(44)を気体セルの頂部対物ミラー(42)上で効率的に結像することを示す。図6Bは、出力視野レンズ(19)が底部セル対物(43)瞳を検出器ミラー(13)上で効率的に結像することを示す。絞り及び瞳の光学マッチングにより、効率的なエネルギー伝達及びスループット最適化を確実にする。結果としてもたらされる高感度が、低サンプル濃度での迅速な同定を容易にする。更に、高い光スループットにより、コスト及び電力消費を最小限に抑える室温IR検出器の使用が可能になる。
【0043】
記載された特定の例示的な実施形態において、再帰反射器(32)の角度配向、入力及び出力における視野絞り像位置でのレンズ(20、19)の使用、再帰反射器に対する入力及び出力レンズの位置、及び気体セル中心線軸に対する入力及び出力光線角度は、視野ミラーエリアのより効率的な使用をもたらす。この結果、他の設計に対して、同じ気体セル経路長について、気体セル体積における21%の減少がもたらされる。
エレクトロニクス及び制御アーキテクチャ
【0044】
機器制御、電力及び出力のためのエレクトロニクス及び方法が、概略図、図7において示されている。機器は、再充電可能な内蔵バッテリ(46)などのバッテリによって電力を供給される。或いは、変圧器によって適切な直流電圧及びアンペア数に変換されている主電源によるものなどの外部電力が供給され得る。電源回路(47)は、配電接続(48)を介して、他のコンポーネント又は回路に電力を分配する。
【0045】
ユーザインタフェース(UI)ハードウェアは、ボタン(49)及びディスプレイスクリーン(50)で構成されている。回路へのUIハードウェア接続(51)は、機器制御及びデータ分析を容易にする。ボタン(49)は、機器をオン又はオフにする、動作属性を選択する、データ収集を開始する、データ分析結果を観察する、及びソフトウェアをナビゲートするために使用される。可聴検出アラームスピーカ(52)の起動、及び、制御線(54)を介しての統合されたポンプ(24)の制御を含む幾つかの機能は、電源回路(47)から調整される。バッテリ及び他のステータスインジケータは電源回路(47)からアクセスされ;ステータス、出力、及び制御接続(54)は、電源(47)及びメインコンピュータボード(55)の間で行われる。
【0046】
全地球測位衛星(Global Positioning Satellite:GPS)インタフェース回路(56)は、位置情報の判定を可能にする。ステータス、出力、及び制御接続(54)は、GPS回路及びメインコンピュータ(55)の間で行われる。Wi-Fi(登録商標)(57)無線インターネット接続及びBluetooth(登録商標)(58)無線接続は、ステータス、出力、及び制御接続(54)を介してメインコンピュータ(55)に対して行われる。Wi-Fi(登録商標)(57)は、双方向通信のための機器のインターネットへのインタフェースを可能にする。外部ソフトウェアアプリケーションにインタフェースすることにより、データ及び分析レポートが送信及び共有され得、機器のステータスにアクセスされ得る。Bluetooth(登録商標)は、外部ソフトウェアアプリケーションへのデータ及び分析レポートの短距離送信及び共有を容易にする。
【0047】
メインコンピュータ(55)は、収集されたデータ、スペクトルライブラリシグネチャ、制御及び分析ソフトウェア、標準グラフィックディスプレイハードウェアインタフェース(59)、及び機器の制御、データの分析、及び結果の表示を可能にするシステムレベルコンポーネント及び機能へのインタフェースの記憶のためのメモリを含む。
【0048】
幾つかの回路は、干渉計を制御するためのハードウェア及びソフトウェアプロトコルを含む。接続(60、61)、及びメインコンピュータ(55)へのデジタル線接続(62)によって示されている通り、機器コンポーネント間に通信が存在する。IR源(3)出力(4)は、IR源回路(63)によって制御される。メトロロジレーザ(7)出力(9)は、レーザ制御回路(64)によって制御される。レーザ検出器(8)は、干渉計によるメトロロジレーザ出力(9)の変調を検出するための回路構成を含むレーザ検出器回路(65)に接続する。このアナログ出力(69)は、接続(60)を介して検出器回路(66)上の24ビットアナログ-デジタル変換器の1つのチャネルに渡される。レーザインタフェログラムは、米国特許5,914,780及びBraultにおいて記載の通り、時間ベースのレーザインタフェログラムを用いるIRインタフェログラムの後処理において使用するためにデジタル化される。レーザ干渉縞のゼロ交差は、再帰反射器ミラー駆動電圧(68)を調節するためにサーボ制御回路(67)によって使用される。レーザ干渉縞のデータは、接続(61)を介してサーボ制御回路に送信される。駆動電圧は、ピボット(30)を中心に振り子アセンブリを動かす振り子アクチュエータを駆動する。IR検出器回路(66)はまた、IR検出器(12)によって変換されているIR信号インタフェログラムを処理する。アナログIR信号出力(69)はIR検出器回路(66)に渡される。デルタシグマADCの第2のチャネルは、米国特許5,914,780及びBraultに係る処理において使用するために、IR検出器(12)によって記録された通り、IRインタフェログラムをデジタル化するために使用される。デジタル化されたIR及びレーザインタフェログラムは、処理のためにデジタル線(62)を介してメインコンピュータ回路に渡される。
気体サンプリング及び分析
【0049】
1つの使用モードにおいて、記載された分析器は、単一の別個のサンプルを同定し得る。点測定と称されるこの分析モードは、従来のIRスペクトル分析と同様の様式で行われる。最初に、サンプルを含まない清浄な空気のサンプルが基準として測定される。次に、サンプルを含む空気のサンプルが測定される。分析器は、機器及び大気の干渉を受けないサンプルの赤外線スペクトルを生成する。一実施形態において、非線形スペクトル応答を考慮し得る教師なし適応データフィルタリングプロセスを用いて、大気成分、機器線形状、及び、光学及び電子雑音の赤外線シグネチャがサンプルスペクトルから除外される。結果として得られるサンプルスペクトルの同定は、1つ又は複数のIRスペクトルライブラリとの比較によって達成される。ライブラリ比較は、スペクトルフィット、確率計算、又は相関計算など、複数のメトリクスを用いて最適化され得る。これらの比較メトリクスは、フルスペクトルの使用、基準又はライブラリデータ、又はその2つの組み合わせに基づく比較の重み付けを通じて更に最適化され得る。
【0050】
第2の動作モードにおいて、分析器は、監視又は調査モードにおいて機能し得る。継続的測定と称されるこのモードは、点測定モードと同様の基準測定値を使用する;しかしながら、基準は継続的に更新され、以前に収集された基準と比較される。新たな各赤外線スペクトルは、1つ又は複数のライブラリと比較される。未知の化学物質を同定するために十分な情報が存在する場合、アルゴリズムは検出モードに入ることができ、検出結果における信頼性を高めるためにデータが同時に追加され得る。収集されたIRスペクトルが基準の統計的制御の範囲から外れているが、未知のサンプルを同定するために十分なデータが存在しない場合、新たなデータを使用して既存の基準が更新される。このようにして、検出モードが同定可能な未知のサンプルを継続的に監視している間、基準は常に最新に保たれる。未知のサンプルの同定は、上記の一点測定において所定の最適化された検索メトリクスを用いて達成され得る。
【0051】
赤外分光法による未知の材料の同定には、最適化された信号強度又は信号対雑音比(Signal-to-Noise Ratio:SNR)が必要となる。不十分な信号(吸光度)は、ライブラリ比較による同定のための十分なスペクトル情報を提供しない。同様に、過剰な信号は非線形スペクトル応答を作成し、これも結果として乏しいライブラリ比較をもたらす。開示された気体及び蒸気分析器は、ポンプ(24)動作、気体セル上に統合された電子的にアクティベートされたバルブ、及び、観察された分析済みのIR信号の間の新規の統合されたフィードバックループを活用し得る。点測定において、化学蒸気のない既知の清浄な環境において基準又はバックグラウンドスペクトルが記録される。図8を参照すると、データ収集が開始された場合、一体型ポンプ(24)はサンプル(71)を気体セル内に引き込み始める。ポンプ(24)の動作時間(70)は、初期値に設定される。IRスペクトルが速やかに記録され(72)、事前記録されたバックグラウンドを参照して、水及び二酸化炭素による大気中のIR吸収が補償される。この速やかに測定されたスペクトルは、信号(吸光度)振幅又は他のスペクトルメトリクスについて評価される(73)。スペクトルメトリクスを超過した場合、分析用IRスペクトルが記録され(74)、周囲の空気中の未知の化学物質の同定が進行する(75)。他方で、スペクトルメトリクスが閾値未満である場合、ポンプ(24)の動作に対するフィードバックが行われる。ポンプ(24)の動作時間が増加し(76)、例えば2倍になると、より多くのサンプルがセル内に引き込まれる(71)。再び、IRスペクトルが速やかに記録され(72)、事前記録されたバックグラウンドを参照して、水及び二酸化炭素による大気中のIR吸収が補償される。この速やかに測定されたスペクトルは、信号(吸光度)振幅又は他のスペクトルメトリクスについて評価される(73)。スペクトルメトリクスを超過した場合、分析用IRスペクトルが記録され(74)、周囲の空気中の未知の化学物質の同定が進行する(75)。スペクトルメトリクスが閾値未満である場合、ポンプ(24)の動作に対するフィードバックが行われ、プロセスが反復されて(77)、同定が進行するために十分なIR信号振幅が生じるまで、ポンプ(24)にフィードバックを提供する。サンプルIRスペクトルの吸光度信号強度は継続的に監視される(73)。ポンプ(24)は、吸光度ウィンドウ内に収まるよう、最適な量のサンプルを供給するために切り替えられる。
【0052】
継続的測定において、同定のために十分なIR信号が検出されると同時にセルバルブが閉鎖される。このようにして、気体セルの充填は最適な信号レベルで停止され、過剰な信号による非線形スペクトル結果を防止する。これにより、存在する濃度とは無関係に、最小量のサンプルの検出が可能になる。各事例において、フィードバックループが上手く作用するために、ポンプ(24)速度、セル体積及び赤外線収集時間の最適化が必要とされる。
【0053】
継続的動作モードにおいて、開示された気体及び蒸気分析器は、監視又は調査モードにおいて機能し得る。図9を参照すると、継続的測定は、点測定モードと同様の基準又はバックグラウンド測定を使用している。初期基準が確立され(78)、IRスペクトルが速やかに記録され(79)、事前記録されたバックグラウンドを参照して、水及び二酸化炭素による大気中のIR吸収が補償される。測定された各単一のIRスペクトルは、1つ又は複数のIRスペクトルライブラリと比較され、パターンマッチングについての統計的基準を用いて情報内容が評価される(80)。情報メトリクスが閾値を超過した場合(81)、サンプル検出が留意され(82)、SNRを高めるために追加のスペクトルが同時に追加され(83)、最終的に気体又は蒸気サンプルが同定される(75)。情報メトリクスが閾値(81)を超過しない場合、サンプルの不検出が留意される(84)。IRスペクトルの更なる分析が実行される。IRスペクトルは、基準と統計的に比較される(85)。IRスペクトルがフィットメトリクスを超過し、確立された基準(78)と統計的に異なる場合、新たなIRスペクトル測定(79)が開始され、プロセスが反復される。IRスペクトルがフィットメトリクスを超過せず、確立された基準(78)と統計的に異ならない場合、基準は新たに記録されたスペクトルで更新され、その後、新たなIRスペクトル測定(79)が開始され、プロセスが反復される。
【0054】
継続的動作モードにおいて、基準は継続的に更新され、以前に収集された基準と比較される。未知の化学物質を同定するために十分な情報が存在する場合、アルゴリズムは検出モードに入ることができ、検出結果における信頼性を高めるためにデータが同時に追加され得る。収集されたIRスペクトルが基準の統計的制御の範囲から外れているが、未知のサンプルを同定するために十分なデータが存在しない場合、新たなデータを使用して既存の基準が更新される。このようにして、検出モードが同定可能な未知のサンプルを継続的に監視している間、基準は常に最新に保たれる。未知のサンプルの同定は、上記の一点測定において所定の最適化された検索メトリクスを用いて達成され得る。
【0055】
ここに記載の統合された気体及び蒸気分析器は、サンプル気体の測定された赤外線スペクトルを市販の及びカスタマイズされたスペクトルライブラリの両方と比較することにより、多くの異なる有害気体を正確に同定するためのユニークな能力を有する。赤外線スペクトルのスペクトルバンドは、調べられたサンプルの分子振動に起因する。各共有化学結合は基本振動を有し;それらの振動の大部分は、この統合された気体及び蒸気分析器によって測定される領域である4000~650cm-1の赤外線領域で発生する。各化学結合はユニークな振動周波数及び対応するユニークな赤外バンドを有する。図11は、気体及び蒸気同定器の好ましい実施形態で収集された(A)二酸化硫黄、(B)一酸化炭素、及び(C)アンモニアのスペクトルを提示することにより、有毒気体の同定のための赤外分光法の特異性を明示する。これらの化学物質のそれぞれは有害工業化学物質(Toxic Industrial Chemical:TIC)であり、公衆安全にとっての懸案事項である。そのスペクトルはユニークであり、容易に区別できる。固形材料又は液体材料の赤外線スペクトルと比較すると、これらの気相スペクトルは、気相赤外線スペクトルにおいて通常観察される細線形状及び比較的少ないバンドを明示している。統合された気体及び蒸気分析器は、これら及び多くの他の有毒気体の高信号対雑音スペクトルを生成し、ライブラリ検索アルゴリズムによる容易な同定を可能にする。
【0056】
図10は、フーリエ変換赤外分光計を採用する蒸気及び気体分析器システムの例示的な一実施形態の線図を示す。
【0057】
ある程度の詳細さを伴って上記に実装形態が記載されているが、当業者であれば、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に多数の改変を行うことができるであろう。全ての方向に関する言及(例えば、上部、下部、上方、下方、左、右、左方、右方、頂部、底部、上、下、鉛直、水平、時計回り、及び反時計回り)は、本発明に対する読者の理解を助けるべく、識別目的においてのみ使用されているものであり、特に本発明の位置、配向、又は使用に関する制限を生じさせるものではない。接合に関する言及(例えば、取り付けられる、連結される、及び接続される、など)は広く解釈されるべきであり、素子の接続及び素子間の相対移動の間の中間部材を含み得る。そのため、接合に関する言及は、必ずしも2つの素子が直接的に接続され、互いに固定された関係にあることを推論するものではない。上述の記載に含まれる、又は添付図面に示される全ての事項は、例示としてのみ解釈されるべきであり、限定するものではないことが意図されている。詳細又は構造における変更は、添付の特許請求の範囲において定義されているような本発明の趣旨から逸脱することなく行われ得る。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】