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特表2024-526089神経変性状態についての診断インデックス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】神経変性状態についての診断インデックス
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20240709BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240709BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240709BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALI20240709BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20240709BHJP
   C12Q 1/26 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/53 M
C12Q1/02
C12Q1/48 Z
C12Q1/68
C12Q1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577307
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 US2022033517
(87)【国際公開番号】W WO2022266160
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/210,939
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】519348587
【氏名又は名称】チェイス セラピューティクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】チェイス トーマス エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】クラレンス-スミス キャサリーン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045DA14
2G045DA20
2G045DA36
4B063QA08
4B063QA19
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ22
4B063QQ27
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR02
4B063QR07
4B063QR35
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS33
4B063QS39
(57)【要約】
生体試料(例えば、静脈血)の非侵襲的収集、小さな、神経細胞由来の細胞外小胞(例えば、エキソソーム)の単離、臨床的に有用な診断/予後/反応アルゴリズムの構築のための情報バイオマーカー(例えば、シグナル伝達キナーゼ、触媒タンパク質およびmiRNA種)の量についてそれらの外部および/または内部内容物のアッセイを伴う、病因診断、予後、および療法に対する反応に関して特定の神経変性疾患(例えば、パーキンソン病)を有する個体を評価する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性状態についての診断インデックスを作成するための方法であって、以下の工程:
a)生体試料のコレクション中の各生体試料を、神経細胞由来の細胞外小胞、例えば微小小胞またはエキソソームについて濃縮する工程であって、生体試料のコレクションが対象のコホート中の対象に由来し、コホートが、以下を含む対象:
(i)1つまたは複数の異なる病期の各々にある神経変性状態と診断された複数の対象であって、診断された対象の各々が推定神経保護剤を受けたことがある、複数の対象、および/または
(ii)神経変性状態と診断されなかった複数の対照対象
を含み、生体試料が、推定神経保護剤による処置過程前に、および処置過程中に再び、1回または複数回、および、任意で処置過程後に、収集された、工程;
b)複数のバイオマーカー試料を生成するために、各試料より、細胞外小胞全体、細胞外小胞の内部区画、または細胞外小胞膜から、タンパク質内容物を単離する工程;
c)データセットを作成するために、各バイオマーカー試料において、バイオマーカーのセットを測定する工程であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(3)1つまたは複数のmiRNA
を含む、工程;ならびに
d)(i)疾患進行速度または推定神経保護剤に対する反応の程度を予測する診断アルゴリズムを決定するため、経時的に個々の対象において、または
(ii)(1)病原診断を行う、(2)臨床的に類似しているが病因的に異なる神経変性障害サブグループを分ける、または(3)対象が推定神経保護剤に反応する可能性が高いかどうかもしくは対象が推定神経保護剤に反応する可能性が高い程度を予測する、診断アルゴリズムを決定するため、異なる対象間で、
バイオマーカーセットにおける差を比較するために、データセットに対して解析を行う工程
を含む、方法。
【請求項2】
濃縮する工程の前に、以下の工程:
I)対象のコホートを提供する工程であって、コホートが、以下を含む対象:
(i)複数の異なる病期の各々にある神経変性状態と診断された複数の対象、および/または
(ii)複数の対照対象
を含む、工程;
II)診断された対象の各々へ推定神経保護剤を投与する工程;
III)推定神経保護剤の投与前に、および投与中に再び、1回または複数回、および、任意で投与後に、コホート中の対象の各々から生体試料を収集する工程
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
e)標準臨床的尺度に対して診断アルゴリズムのうちの1つまたは複数を検証する工程
をさらに含む、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
バイオマーカーが、(1)1つまたは複数のリン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素、1つまたは複数(one or more)、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNAを含む、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
酵素が、1つまたは複数のシグナル伝達キナーゼを含む、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
シグナル伝達キナーゼのうちの少なくとも1つが、PI3K-Akt-mTORシグナル伝達経路のキナーゼである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
シグナル伝達キナーゼのうちの少なくとも1つが、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPKまたはMEK)、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3B)、AKTキナーゼ、およびベクリンより選択される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのシグナル伝達キナーゼが、複数のシグナル伝達キナーゼである、請求項5記載の方法。
【請求項9】
複数のシグナル伝達キナーゼが、AKT、MAPK3、MEK、mTOR、GSK3B、JNK、MEK 1/2、およびPI3Kより選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
複数のシグナル伝達キナーゼが、リン酸化AKT(例えば、AKT S473またはAKT T308)およびリン酸化MAPK3(例えば、MAPK T202)を含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
シグナル伝達キナーゼのうちの少なくとも1つが、AKT S473;AKT T308;ERK P44;GSK3B S6;GSK3B S9;GSK3 T216;GSK3A S21;MAPK T202;mTOR S2448;mTOR c1/2 T246;mTOR c1/2 S638;JNK 1/2/3;JNK pY183;JNK pY185;MEK 1/2 S217;MEK S221;PI3K p85;PI3K T458;PKB S473;PI3K p55-T199;およびPKB T308より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項12】
診断アルゴリズムが、AKT:MAPKの相対量を決定する、請求項8記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの触媒酵素が、TH(チロシンヒドロキシラーゼ)全体、ならびにリン酸化形態、TH S40、TH S19およびTH S32より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
診断アルゴリズムが、1つまたは複数のシグナル伝達キナーゼ、1つまたは複数の触媒酵素、1つまたは複数の神経変性関連タンパク質形態、および1つまたは複数のマイクロRNAの測定値の関数である、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
診断アルゴリズムが、AKT、リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ、miRNA、MAPK3、および非リン酸化チロシンヒドロキシラーゼの測定値の関数である、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
診断アルゴリズムが、(AKT、リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ、miRNA) 対 (MAPK3および非リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ)の、測定値の関数である、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
診断アルゴリズムが、少なくとも神経変性関連タンパク質形態の関数である、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
定量的測定値が決定される神経変性関連タンパク質形態が、以下:
(I)少なくとも1つのオリゴマー形態;
(II)複数のオリゴマー形態;
(III)少なくとも1つのオリゴマー形態および少なくとも1つのモノマー形態;
(IV)複数のオリゴマー形態および少なくとも1つのモノマー形態;
(V)少なくとも1つのオリゴマー形態および複数のモノマー形態;ならびに
(VI)複数のオリゴマー形態および複数のモノマー形態
より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
診断アルゴリズムが、(AKTのリン酸化形態、第2のシグナル伝達キナーゼのリン酸化形態、アルファ-シヌクレインのオリゴマー形態、miRNA) 対 (MAPK3のリン酸化形態、第4のシグナル伝達キナーゼのリン酸化形態、チロシンヒドロキシラーゼの非リン酸化形態)の、相対的測定値の関数である、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
診断アルゴリズムが、AKT、リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ、神経変性関連タンパク質形態、MAPK3、および非リン酸化チロシンヒドロキシラーゼの測定値の関数である、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
診断アルゴリズムが、(AKT、リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ、神経変性関連タンパク質形態) 対 (MAPK3および非リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ)の、相対的測定値の関数である、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
診断アルゴリズムが、1つまたは複数の神経変性関連タンパク質形態および1つまたは複数のmiRNAの関数である、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
バイオマーカーが、(i)シグナル伝達キナーゼおよび触媒酵素より選択される酵素、ならびに(ii)モノマーおよびオリゴマーより選択される神経変性関連タンパク質を含む、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
バイオマーカーが、(i)シグナル伝達キナーゼおよび触媒酵素より選択される酵素、ならびに(iii)miRNAを含む、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
神経変性関連タンパク質が、アルファシヌクレイン、アミロイドβ、タウ、またはハンチンチンより選択される、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
神経変性関連タンパク質のオリゴマー形態が、オリゴマー形態、例えば、アルファシヌクレインのオリゴマー、例えば、アルファシヌクレイン2-50、例えば、アルファシヌクレイン4-30、例えば、アルファシヌクレイン4-20のコレクションである、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
バイオマーカーが、7-5p;15b-5p;19b;22-3p;24;27a-3p 24;29a;30c-2-3p;494-3p;92b-3p;106b-3p;122-5p;124-3p;122-5p;132-3p;138-5p;142-3p;146a-5p;204-5p;220-3p;331-5p;338-3p;431-5p;584-5p;942-5p;および1468-5pより選択される1つまたは複数のmiRNAを含む、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
神経変性状態が、シヌクレイノパチー障害、例えば、パーキンソン病、またはレヴィー小体認知症を含む、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
神経変性状態が、アミロイドパチー、例えばアルツハイマー病、タウオパチー、例えばアルツハイマー病、またはハンチントン病を含む、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
タンパク質内容物をミクロソームの内部区画から単離する、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
標準臨床的尺度が、UPDRSスコア、CGIスコア、および放射線学的所見より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項32】
解析が、相関、ピアソン相関、スピアマン相関、カイ二乗、平均値の比較(例えば、対応のあるT検定、独立T検定、ANOVA)、回帰分析(例えば、単回帰、重回帰、線形回帰、非線形回帰、ロジスティック回帰、多項回帰、段階的回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、エラスティックネット回帰)またはノンパラメトリック分析(例えば、ウィルコクソン順位和検定、ウィルコクソン符号順位検定、符号検定)を含む、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
解析が、コンピューターによって実行される、前述の請求項のいずれかのいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
解析が、機械学習を含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
生体試料が、静脈血試料を含む、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
異なる病期が、疑いあり、初期、中期、および臨床的進行のうちの1つまたは複数を含む、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
投与中または投与後の時間が、処置後1、2、3ヵ月またはそれ以上より選択される、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
試料をドーパミン産生ニューロンからの細胞外小胞についてさらに濃縮する、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
濃縮する工程が、1つまたは複数の脳特異的タンパク質マーカーを使用することを含む、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
脳特異的マーカーのうちの少なくとも1つが、K1camを含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
単離する工程が、表面膜結合タンパク質を除去するために各濃縮試料中の細胞外小胞を洗浄することを含む、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
細胞外小胞をPBSで洗浄する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
神経変性関連タンパク質の形態を、ゲル電気泳動、ウェスタンブロット、または蛍光技術によって測定する、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
対象が、ヒトである、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
対象が、神経変性疾患の病因に関与する(例えば、神経変性疾患を引き起こす)と疑われる環境条件へ曝露された(例えば、パーキンソン病を引き起こす疑いがある、パラコートへ曝露された)ことがある、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
生体試料のコレクションが、少なくとも25、50、100、200、500または1000の試料のうちのいずれかを含む、前述の請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
個体における神経変性状態の状況を推測する診断インデックスを開発する方法であって、以下の工程:
a)複数の対象の各々について、(1)神経変性状態の状況、および(2)バイオマーカーのセットの測定値を示す値を含むデータセットを提供する工程であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(3)1つまたは複数のmiRNA
を含む、工程;ならびに
b)個体における神経変性状態の状況を推測するモデルを開発するために、データセットに対して解析を行う工程
を含む、方法。
【請求項48】
解析が、コンピューターによって行われる、請求項47記載の方法。
【請求項49】
解析が、コンピューターによって行われない、請求項47記載の方法。
【請求項50】
解析が、相関、ピアソン相関、スピアマン相関、カイ二乗、平均値の比較(例えば、対応のあるT検定、独立T検定、ANOVA)、回帰分析(例えば、単回帰、重回帰、線形回帰、非線形回帰、ロジスティック回帰、多項回帰、段階的回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、エラスティックネット回帰)またはノンパラメトリック分析(例えば、ウィルコクソン順位和検定、ウィルコクソン符号順位検定、符号検定)を含む、請求項47記載の方法。
【請求項51】
解析が、データセットをコンピューターメモリに受け取ること、およびコンピュータープロセッサを用いてデータセットに対して機械学習アルゴリズムを訓練することを含む、請求項47記載の方法。
【請求項52】
機械学習アルゴリズムが、以下:人工神経回路網(例えば、バックプロパゲーションネットワーク)、デシジョンツリー(例えば、再帰分割プロセス、CART)、ランダムフォレスト、判別分析(例えば、BayesianクラシファイヤーまたはFischer分析)、線形分類器(例えば、多重線形回帰(MLR)、部分最小二乗(PLS)回帰、主成分回帰(PCR))、混合または変量効果モデル、ノンパラメトリック分類器(例えば、k最近傍)、サポートベクターマシン、およびアンサンブル法(例えば、バギング、ブースティング)より選択される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
状況が、神経変性状態の診断、病期、予後、または進行より選択される、請求項47記載の方法。
【請求項54】
状況が、カテゴリー変数(例えば、バイナリー状況、または複数のカテゴリー状況のうちの1つ)として測定される、請求項47記載の方法。
【請求項55】
カテゴリーが、神経変性状態を有することと一致する診断(例えば、陽性または有すると診断される)、および神経変性状態を有することと矛盾する診断(例えば、陰性または有さないと診断される)を含む、請求項54記載の方法。
【請求項56】
カテゴリーが、神経変性状態の異なる病期を含む、請求項54記載の方法。
【請求項57】
状況が、(例えば、スケールにおける)連続変数として測定される、請求項47記載の方法。
【請求項58】
連続変数が、神経変性状態の範囲または程度である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
対象が、動物、例えば、魚類、鳥類、両生類、爬虫類、または哺乳動物、例えば、げっ歯動物、霊長動物、もしくはヒトである、請求項47記載の方法。
【請求項60】
複数の対象が、少なくとも10、25、50、100、200、400、または800のうちのいずれかである、請求項47記載の方法。
【請求項61】
各対象について、定量的測定値が決定される試料を第1の時点で採取し、神経変性状態の状況を、後の時点である第2の時点で決定する、請求項47記載の方法。
【請求項62】
生体試料が、血液または血液画分(例えば、血漿または血清)を含む、請求項47記載の方法。
【請求項63】
神経変性状態が、シヌクレイノパチー、例えば、パーキンソン病またはレヴィー小体認知症である、請求項47記載の方法。
【請求項64】
神経変性状態が、アミロイドパチー、例えばアルツハイマー病、タウオパチー、例えばアルツハイマー病、またはハンチントン病である、請求項47記載の方法。
【請求項65】
複数の対象が、少なくとも25、50、100、200、500、または1000の対象のうちのいずれかである、前述の請求項である請求項47~64のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
神経変性関連タンパク質によって特徴付けられる神経変性状態の、発症リスク、診断、病期、予後、または進行を推測する方法であって、以下の工程:
a)データセットを作成するために、神経細胞由来の細胞外小胞、例えば微小小胞またはエキソソームについて濃縮された対象からの生体試料から、バイオマーカーのセットを測定する工程であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(3)1つまたは複数のmiRNA
を含む、工程;ならびに
b)神経変性状態の、発症リスク、診断、病期、予後、または進行を推測するために、データセットに対してモデル、例えば、請求項47記載のモデルを実行する工程
を含む、方法。
【請求項67】
シグナル伝達キナーゼのうちの少なくとも1つが、PI3K-Akt-mTORシグナル伝達経路のキナーゼである、請求項66記載の方法。
【請求項68】
シグナル伝達キナーゼのうちの少なくとも1つが、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPKまたはMEK)、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3B)、AKTキナーゼ、およびベクリンより選択される、請求項66記載の方法。
【請求項69】
神経変性関連タンパク質が、アルファシヌクレイン、アミロイドβ、タウ、またはハンチンチンより選択される、請求項66記載の方法。
【請求項70】
神経変性関連タンパク質のオリゴマー形態が、オリゴマー形態、例えば、アルファシヌクレインのオリゴマー、例えば、アルファシヌクレイン2-50、例えば、アルファシヌクレイン4-30、例えば、アルファシヌクレイン4-20のコレクションである、請求項66記載の方法。
【請求項71】
オリゴマー形態のうちの少なくとも1つが、神経変性関連タンパク質の種のコレクションを構成する、請求項66記載の方法。
【請求項72】
モデルが、神経変性関連タンパク質のモノマー形態に対するオリゴマー形態の相対量を、統計的に有意な数の対照個体における相対量と比較することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項73】
モデルが、複数のオリゴマー形態の相対量のパターンを検出することを含み、これからモデルが推測を行う、請求項66記載の方法。
【請求項74】
対象が、神経変性状態について無症候または症状発現前である、請求項66記載の方法。
【請求項75】
対象が、定期的な通院中にまたは医療専門家の通常の医療活動の一部として、医療専門家などの医療提供者を訪れる、請求項66記載の方法。
【請求項76】
モデルが、コンピューターによって実行される、請求項66記載の方法。
【請求項77】
モデルが、コンピューターによって実行されない、請求項66記載の方法。
【請求項78】
神経変性状態の処置における治療的介入の有効性を決定するための方法であって、以下の工程:
(a)以下の段階:
(1)データセットを作成するために、神経細胞由来の細胞外小胞、例えば微小小胞またはエキソソームについて濃縮された対象からの生体試料から、バイオマーカーのセットを測定する段階であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(A)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(B)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(C)1つまたは複数のmiRNA
を含む、段階、および
(2)モデル、例えば、請求項47記載のモデルを使用して、初期状況を推測する段階
によって、神経変性状態の初期状況を、複数の対象を含む集団中の各対象において、推測する工程;
(b)推測する工程後、対象へ治療的介入を施す工程;
(c)施す工程後、以下の段階:
(1)データセットを作成するために、神経細胞由来の細胞外小胞、例えば微小小胞またはエキソソームについて濃縮された対象からの生体試料から、バイオマーカーのセットを測定する段階であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(3)1つまたは複数のmiRNA
を含む、段階、および
(2)モデルを使用して後続状況を推測する段階
によって、神経変性状態の後続状況を、集団中の各対象個体において、推測する工程;ならびに
(d)集団中の初期および後続の推測に基づいて、後続の推測が初期の推測と比較して正常状況の方への統計的に有意な変化を示す場合は、治療的介入が有効であること、または、後続の推測が初期の推測と比較して正常状況の方への統計的に有意な変化を示さない場合は、治療的介入が有効ではないことを決定する工程
を含む、方法。
【請求項79】
治療的介入が、薬物または薬物の組み合わせの投与を含む、請求項78記載の方法。
【請求項80】
集団が、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500または少なくとも1000の対象を含み、対象のうちの少なくとも20%、少なくとも35%、少なくとも50%、または少なくとも75%が、タンパク質のモノマー形態の量と比べてのタンパク質のオリゴマー形態の上昇した量を最初に有する、請求項78記載の方法。
【請求項81】
対象のうちの少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、または少なくとも35%、少なくとも50%、少なくとも66%、少なくとも80%、または100%が、神経変性状態の診断を最初に有する、請求項78記載の方法。
【請求項82】
推測が、コンピューターによって行われる、請求項78記載の方法。
【請求項83】
推測が、コンピューターによって行われない、請求項78記載の方法。
【請求項84】
神経変性状態の処置または予防のための治療的介入の臨床試験について対象を認定するための方法であって、以下の工程:
a)以下の段階:
(1)データセットを作成するために、神経細胞由来の細胞外小胞、例えば微小小胞またはエキソソームについて濃縮された対象からの生体試料から、バイオマーカーのセットを測定する段階であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(A)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(B)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(C)1つまたは複数のmiRNA
を含む、段階、および
(2)神経変性状態に関して対象が異常であることを推測するために、プロフィールに対してモデル、例えば、請求項47記載のモデルを実行する段階
によって、神経変性状態に関して対象が異常であることを決定する工程;ならびに
b)該神経変性状態についての潜在的治療的介入の臨床試験に対象を登録する工程
を含む、方法。
【請求項85】
モデルが、コンピューターによって実行される、請求項84記載の方法。
【請求項86】
モデルが、コンピューターによって実行されない、請求項84記載の方法。
【請求項87】
神経変性状態についての治療的介入における対象の経過をモニタリングする方法であって、以下の工程:
(a)以下の段階:
(1)神経細胞由来の細胞外小胞、例えば微小小胞またはエキソソームについて濃縮された対象からの生体試料から、バイオマーカーのセットの測定値を決定する段階であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(A)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(B)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(C)1つまたは複数のmiRNA
を含む、段階、および
(2) 神経変性状態の初期状況を推測するために、モデル、例えば、請求項47記載のモデルを実行する段階
によって、神経変性状態の初期状況を、対象において、推測する工程;
(b)推測する工程後、対象へ治療的介入を施す工程;
(c)施す工程後、以下の段階:
(1)データセットを作成するために、神経細胞由来ミクロソーム粒子について濃縮された対象からの生体試料から、複数の異なるシグナル伝達キナーゼの各々の量を含むバイオマーカープロフィールを決定する段階、および
(2)神経変性状態の後続状況を推測するために、モデル、例えば、請求項47記載のモデルを実行する段階
によって、神経変性状態の後続状況を、対象において、推測する工程;ならびに
(d)初期状況および後続状況の推測に基づいて、後続の推測が初期の推測と比較して正常状況の方への変化を示す場合は、対象が、治療的介入に対してポジティブに反応していること、または、後続の推測が初期の推測と比較して正常状況の方への変化を示さない場合は、治療的介入が、有効ではないことを決定する工程
を含む、方法。
【請求項88】
モデルが、コンピューターによって実行される、請求項87記載の方法。
【請求項89】
モデルが、コンピューターによって実行されない、請求項87記載の方法。
【請求項90】
(a)請求項66記載の方法によって、対象が、神経変性状態を有することを決定する工程、および
(b)状態を処置するために効果的な緩和的または神経保護的な治療的介入を該対象へ施す工程
を含む、方法。
【請求項91】
治療的介入が、正常の方へ対象のバイオマーカープロフィールを移動させ、正常の方への移動が、神経保護を示す、請求項90記載の方法。
【請求項92】
請求項66記載の方法によってバイオマーカーの異常なパターンを有すると決定された対象へ、状態を処置するために有効な緩和的または神経保護的な治療的介入を施す工程
を含む、方法。
【請求項93】
対象が、神経変性状態について無症候または症状発現前である、請求項92記載の方法。
【請求項94】
(1)シグナル伝達キナーゼのうちの少なくとも1つおよび神経変性関連タンパク質の少なくとも1つのオリゴマー形態;または
(2)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ
のいずれかを検出するために十分な試薬を含む、キット。
【請求項95】
試薬が、抗体を含む、請求項94記載のキット。
【請求項96】
神経変性状態の、発症リスク、診断、病期、予後、または進行を推測する方法であって、以下の工程:
a)データセットを作成するために、神経細胞由来の細胞外小胞、例えば微小小胞またはエキソソームについて濃縮された対象からの生体試料から、バイオマーカーのセットを測定する工程であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(A)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(B)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(C)1つまたは複数のmiRNA
を含む、工程;ならびに
b)データセットを、神経変性状態の、発症リスク、診断、病期、予後、または進行と関連付ける工程
を含む、方法。
【請求項97】
以下の工程:
(a)神経変性状態を有するかまたは神経変性状態についての処置に対してポジティブに反応する可能性が高い対象を特定する工程であって、特定する工程が、以下の段階:
(1)バイオマーカープロフィールを作成するために、神経細胞由来の細胞外小胞について濃縮された対象からの試料において(例えば、細胞外小胞の内部内容物から)、バイオマーカーのセットを測定する段階であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(A)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(B)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(C)1つまたは複数のmiRNA
を含む、段階、および
(2)異常なバイオマーカープロフィールに基づいて、対象が、神経変性状態に罹患していると決定する段階
を含む、工程;ならびに
(b)特定された対象へ、神経変性状態を処置するために有効量の薬学的組成物を投与する工程
を含む、方法。
【請求項98】
神経変性状態が、シヌクレオパチー状態(synucleopathic condition)であり、
薬学的組成物が、ドーパミンアゴニスト(例えば、プラミペキソール(例えば、Mirapex(商標))、ロピニロール(例えば、Requip)、ロチゴチン(例えば、Neupro)、アポモルフィン(例えば、Apokyn))、レボドパ、カルビドパ-レボドパ(例えば、Rytary、Sinemet)、MAO-B阻害剤(例えば、セレギリン(例えば、Eldepryl、Zelapar)もしくはラサギリン(例えば、Azilect))、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤(例えば、エンタカポン(Comtan)もしくはトルカポン(Tasmar))、抗コリン作用薬(例えば、ベンズトロピン(例えば、Cogentin)もしくはトリヘキシフェニジル)、アマンタジンまたはコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、リバスチグミン(Exelon))を含む、請求項97記載の方法。
【請求項99】
シヌクレオパチー状態が、パーキンソン病である、請求項97記載の方法。
【請求項100】
薬学的組成物が、ドーパミンアゴニストを含む、請求項99記載の方法。
【請求項101】
薬学的組成物が、NK1-アンタゴニストをさらに含む、請求項100記載の方法。
【請求項102】
ドーパミンアゴニストが、6-プロピルアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-アミンであり、NK1-アンタゴニストが、アプレピタントまたはロラピタントである、請求項101記載の方法。
【請求項103】
薬学的組成物が、5HT3-アンタゴニストをさらに含む、請求項100記載の方法。
【請求項104】
ドーパミンアゴニストが、6-プロピルアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-アミンであり、5HT3アンタゴニストが、オンダンセトロン塩酸塩二水和物である、請求項103記載の方法。
【請求項105】
神経変性状態を示すバイオマーカープロフィールを有するかまたは神経変性状態についての処置に対してポジティブに反応する可能性が高いと特徴付けられた対象へ、神経変性状態を処置するために有効量の薬学的組成物を投与する工程
を含む方法であって、
バイオマーカーパネルが、
神経細胞由来の細胞外小胞について濃縮された対象からの試料から(例えば、細胞外小胞の内部内容物から)測定された、1つまたは複数のシグナル伝達キナーゼ、および、任意で、神経変性関連タンパク質の少なくとも1つのオリゴマー形態
を含む、バイオマーカーのセット
を含む、方法。
【請求項106】
神経変性状態が、パーキンソン病であり、薬学的組成物が、ドーパミンアゴニストを含む、請求項105記載の方法。
【請求項107】
(1)シグナル伝達キナーゼのうちの少なくとも1つ、
(2)少なくとも1つの触媒酵素、
(3)神経変性関連タンパク質の少なくとも1つのオリゴマー形態、および
(4)少なくとも1つのmiRNA
のいずれかを検出するために十分な試薬を含む、キット。
【請求項108】
少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサによる実行のための少なくとも1つのプログラムを記憶するメモリとを含むコンピューターシステムにおいて、
以下の工程:
a)少なくとも25、50、100、200、500または1000の対象の各々からの生体試料から複数のバイオマーカーについての電子形式のバイオマーカーデータを得る工程であって:
(i)対象が、
(i)1つまたは複数の異なる病期の各々にある神経変性状態と診断された複数の対象であって、診断された対象の各々が推定神経保護剤を受けたことがある、複数の対象と、
(ii)神経変性状態と診断されなかった複数の対照対象と
を含み;
(ii)試料が、神経細胞由来エキソソームについて濃縮され;かつ
(iii)バイオマーカーデータが、以下の測定値:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(3)1つまたは複数のmiRNA
を含む、工程;
b)(i)経時的に個々の対象において、疾患進行速度または推定神経保護剤に対する反応の程度を予測する、または
(ii)異なる対象間で、(1)病原診断を行う、(2)臨床的に類似しているが病因的に異なる神経変性障害サブグループを分ける、または(3)対象が、推定神経保護剤に反応する可能性が高いかどうか、もしくは、対象が、推定神経保護剤に反応する可能性が高い程度を予測する、
モデルを生成するために、コンピューター論理を用いて、学習アルゴリズムを実行する工程
を含む、方法。
【請求項109】
少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサによる実行のための少なくとも1つのプログラムを記憶するメモリとを含むコンピューターシステムにおいて、以下の工程:
a)対象からの生体試料から複数のバイオマーカーについての電子形式のバイオマーカーデータを得る工程であって:
(i)試料が、神経細胞由来エキソソームについて濃縮され;かつ
(ii)バイオマーカーデータが、以下の測定値:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(3)1つまたは複数のmiRNA
を含む、工程;
b)(i)経時的に個々の対象において、疾患進行速度または推定神経保護剤に対する反応の程度を予測する、または
(ii)異なる対象間で、(1)病原診断を行う、(2)臨床的に類似しているが病因的に異なる神経変性障害サブグループを分ける、または(3)対象が、推定神経保護剤に反応する可能性が高いかどうか、もしくは、対象が、推定神経保護剤に反応する可能性が高い程度を予測する、
モデルを、コンピューター論理を用いて、実行する工程;ならびに
c)対象によってアクセス可能な電子デバイスへ予測を出力する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2021年6月15日に出願された米国仮出願第63/210,939号に関し、この内容はその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
神経変性疾患は、ニューロンの機能低下および死を含む、脳内の変性変化によって特徴付けられる。神経変性疾患としては、非限定的に、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症およびレヴィー小体認知症が挙げられる。
【0003】
様々なシグナル伝達キナーゼが、神経変性疾患と関連付けられている。例えば、Mehdi, S.J. et al., “Protein Kinases and Parkinson’s Disease,” Int J Mol Sci. 2016 Sep; 17(9): 1585 (doi: 10.3390/ijms17091585)(非特許文献1);Martin, L. et al., “Tau protein kinases: Involvement in Alzheimer's disease,” Ageing Research Reviews, Volume 12, Issue 1, January 2013, Pages 289-309 (doi.org/10.1016/j.arr.2012.06.003)(非特許文献2);およびBowles, K. R. et al., “Kinase Signaling in Huntington’s Disease,” Journal of Huntington’s Disease 3 (2014) 9-123 (DOI 10.3233/JHD-140106)(非特許文献3)を、参照されたい。
【0004】
多くの神経変性疾患はタンパク質オリゴマー形態の異常な蓄積によって特徴付けられる。これらのオリゴマー形態は、ニューロンの変性および死に寄与すると考えられている。特に、パーキンソン病は、アルファシヌクレインのオリゴマー形態の蓄積によって特徴付けられる。アルファシヌクレインは凝集し得、タウおよびアミロイドβなどの他のタンパク質とコポリマーを形成することがさらに分かった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Mehdi, S.J. et al., “Protein Kinases and Parkinson’s Disease,” Int J Mol Sci. 2016 Sep; 17(9): 1585 (doi: 10.3390/ijms17091585)
【非特許文献2】Martin, L. et al., “Tau protein kinases: Involvement in Alzheimer's disease,” Ageing Research Reviews, Volume 12, Issue 1, January 2013, Pages 289-309 (doi.org/10.1016/j.arr.2012.06.003)
【非特許文献3】Bowles, K. R. et al., “Kinase Signaling in Huntington’s Disease,” Journal of Huntington’s Disease 3 (2014) 9-123 (DOI 10.3233/JHD-140106)
【発明の概要】
【0006】
開示の概要
図1を参照して、キナーゼについてのアッセイは以下の操作を含む:対象由来の体液試料、例えば血液または唾液試料を得る(100)。血液画分、例えば血漿試料を提供するために、血液試料を処理してもよい(110)。血液試料を、細胞外小胞、例えばエキソソームについて濃縮する。これは、第一に、総エキソソームを単離すること(111)、および、第二に、神経細胞由来エキソソームについて濃縮すること(112)、を伴う、二段階操作であり得る。神経細胞由来エキソソームは、一般的には、全てのニューロン由来のもの(120a)、または具体的には、神経伝達物質としてドーパミンを用いるものなどの、ニューロンのサブセット由来のもの(112b)であり得る。
【0007】
単離エキソソームは3つの方法で処理することができる。一つの方法では、総エキソソーム溶解物を使用する。別の方法では、内部エキソソーム内容物またはコアを、例えば使用前に透過処理および洗浄によって、単離および濃縮する。これは、それらの表面へ結合したタンパク質を除去するためのスクラビングを伴い得る(121)。別の方法では、細胞外小胞の膜内容物を単離する。
【0008】
エキソソーム産物を次いでさらなる解析(122)へ供する。解析は、試料において、以下のいずれかより選択されるバイオマーカーを測定することを伴う:(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ;ならびに(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:(1)シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA。これらのバイオマーカーの測定値は、特定の神経変性状態(例えば、シヌクレイノパチー状態)の存在もしくは非存在、または発症リスク、またはその累積的重症度もしくは現在の進行速度を決定するために診断検査において、または本明細書に記載される1つもしくは複数のバイオマーカータンパク質の量もしくは相対量を正常量に変えるための薬物の効能を決定するために、使用することができる。アッセイは、ウェスタンブロットまたはEliza法を用いて行うことができる。
【0009】
本明細書に開示されるのは、数ある中でも、神経変性状態、例えば、シヌクレイノパチー状態、アミロイドパチー状態、タウオパチーおよびハンチントン病、ならびにそれに関連する神経変性についてのバイオマーカープロフィールである。ある態様において、バイオマーカープロフィールは、少なくとも1つのシグナル伝達キナーゼを含み、かつ、(1)少なくとも1つのシグナル伝達キナーゼ、および、任意で、神経変性関連タンパク質の少なくとも1つのオリゴマー形態、または(2)1つもしくは複数の異なるシグナル伝達キナーゼの各々より選択され得る、バイオマーカーのセットの測定値を含む。バイオマーカープロフィールは、アルファ-シヌクレイン、アミロイドβ、タウまたはハンチンチンなどの神経変性関連タンパク質の1つまたは複数のオリゴマー形態の測定値を含み得る。
【0010】
測定されるシグナル伝達キナーゼは1つまたは複数のキナーゼであり得る。それらは、AKTまたはmTOR経路などの、同じシグナル伝達経路より、または異なるシグナル伝達経路より選択され得る。
【0011】
測定される神経変性関連タンパク質のオリゴマー形態は、形態のコレクション、例えば、総オリゴマーアルファシヌクレイン、または個々のオリゴマー形態、例えば、アルファシヌクレインの6量体であり得る。あるいは、5量体から部分的可溶性フィラメント-マー(partially soluble filaments-mer)までの範囲内のアルファシヌクレインオリゴマーなどの、複数の形態を測定することができる。神経変性関連タンパク質のモノマー形態もまた測定することができる。従って、例えば、バイオマーカープロフィールは、以下より選択される1つまたは複数の神経変性関連タンパク質形態の各々の測定値を含み得る:(I)少なくとも1つのオリゴマー形態;(II)複数(例えば、パターン)のオリゴマー形態;(III)少なくとも1つのオリゴマー形態および少なくとも1つのモノマー形態;(IV)複数のオリゴマー形態および少なくとも1つのモノマー形態;(V)少なくとも1つのオリゴマー形態および複数のモノマー形態;ならびに(VI)複数のオリゴマー形態および複数のモノマー形態。
【0012】
さらに本明細書に開示されるのは、シヌクレイノパチー状態、アミロイドパチー状態、タウオパチー状態、およびハンチントン病などの神経変性状態の処置のための医薬を開発する方法である。方法は、状態に対する候補医薬の効果を決定するためにバイオマーカープロフィールを使用することを伴う。バイオマーカープロフィールは、(1)少なくとも1つのシグナル伝達キナーゼ、および、任意で、神経変性関連タンパク質の少なくとも1つのオリゴマー形態、または(2)1つもしくは複数の異なるシグナル伝達キナーゼの各々より選択されるバイオマーカーを含む、バイオマーカーセットの測定値を含む。バイオマーカータンパク質は、例えば、対象の血液からの、神経細胞由来の細胞外小胞、例えばエキソソームから、定量化することができる。
【0013】
ある態様において、タンパク質種は、例えば血液、唾液、または尿から単離された、神経細胞由来の細胞外小胞(例えば、エキソソーム)から測定される。検査される種は、エキソソーム細胞外小胞の内部区画に由来し得、例えば、表面タンパク質が除去されたエキソソーム細胞外小胞に由来し得る。このように測定されるバイオマーカープロフィールは、中枢神経系に主に由来するエキソソーム内容物の比較的簡単かつ非侵襲性の測定手段を示す。
【0014】
従って、神経変性についてのバイオマーカープロフィールを測定するための本開示の方法は、本明細書において推定神経保護剤と称すことがある、薬物候補の神経保護効能を試験するための薬物開発において有用である。例えば、本明細書に記載される方法は、キナーゼ活性の下流効果をさらに理解するために、および、現在利用可能な臨床評価方法によるよりも遥かに早く定量的処置反応情報を迅速かつ確実に提供することによって、有効な治療戦略の開発を促進するために使用され得る。バイオアッセイ方法はまた、臨床試験における登録について対象を特定するため、およびシヌクレイノパチー状態の診断、予後、進行または発症リスクを決定するために有用である。シヌクレイノパチー状態に関連する神経変性を有するまたはこれを発症するリスクがある、と、本開示の方法によって決定された対象を処置する、新規の方法、特に、神経保護処置を、本明細書にさらに提供する。
【0015】
本開示の他の目的は下記の明細書および特許請求の範囲を読むことにより当業者に明らかとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示の新規の特徴は添付の特許請求の範囲に特に記載される。本開示の特徴および利点のよりよい理解は、本開示の原理が利用される例示的な態様を記載する下記の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られるだろう。
図1】細胞外小胞からのキナーゼ、および、任意で、神経変性関連タンパク質形態を検出する、例示的な方法のフローチャートを示す。
図2】治療的介入の効能を検証するための、例示的なプロトコルのフローチャートを示す。
図3】神経変性状態を診断するための診断モデルを作製および検証する、例示的なフローチャートを示す。
図4】バイオマーカープロフィールに対して、診断アルゴリズム、またはモデルを実行することによっていくつかの状況のいずれかに従って対象を分類するための、例示的なフローチャートを示す。
図5】パーキンソン病の病因に関与するシグナル伝達機構を示す。
図6】AKT S473はパーキンソン病において上方制御され、MAPK T202はパーキンソン病において下方制御されることを示すグラフを示す。
図7】神経変性状態についての例示的なインデックスを示す。
図8】例示的なコンピューターシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
開示の詳細な説明
I.神経変性状態についてのバイオマーカー
本明細書に開示される方法は、様々な神経変性状態の診断およびこれらについての薬物開発のために有用である。これらとしては、非限定的に、シヌクレイノパチー(例えば、パーキンソン病、レヴィー小体認知症、多系統萎縮症)、アミロイドパチー(例えば、アルツハイマー病)、タウオパチー(例えば、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症)、およびハンチントン病が挙げられる。
【0018】
A.バイオマーカーおよびバイオマーカープロフィール
バイオマーカーは、単独でまたは組み合わせて、特定の状態と正または負に関連している分析物である。バイオマーカーとして機能し得る分析物は、対象または対象試料において検出可能である任意の生体分子または有機もしくは無機分子を含む。バイオマーカーとして働くことができる生体分子としては、非限定的に、例えばタンパク質およびペプチド、ならびにRNAおよびDNAなどの核酸を含む、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドが挙げられる。
【0019】
本明細書において使用される場合、用語「バイオマーカー」は、その測定値が特定の生物学的カテゴリーに関連する特徴を指す。例えば、バイオマーカーは、ある神経変性障害において上方制御または下方制御され得る。特徴は、典型的には、タンパク質または核酸などの生体分子(例えば、アルファ-シヌクレイン、β-アミロイド、プロテインキナーゼ、miRNA)であるが、それらはまた、臨床的変数(例えば、振戦もしくは認知症の有無)または表現型形質などの非分子特徴であり得る。本明細書において使用される場合、用語「バイオマーカープロフィール」は、1つまたは複数のバイオマーカーの各々の測定値を指す。バイオマーカープロフィールは、単一のバイオマーカー単独よりも特定の生物学的カテゴリー(例えば、神経変性状態)により密接に関連し得る、複数のバイオマーカーを含む。バイオマーカープロフィールは、1つまたは複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、触媒酵素、神経変性関連タンパク質および/またはmiRNAの活性の測定値を含み得る。
【0020】
用語「バイオマーカープロフィール」はまた、それが使用される文脈に依存して、神経変性状態の、診断、病期、進行、速度、予後、薬物反応性および発症リスクなどのカテゴリーに関連する、バイオマーカーの測定値の特定のパターンを指し得る。そのような測定値は、状態についての単一のインデックスに統合することができる。
【0021】
キナーゼ活性などの、変数の測定値は、数値および/または単語の任意の組み合わせであり得る。測定値は、名義(例えば、名称またはカテゴリー)、順序(例えば、カテゴリーの階層的順序)、間隔(順序のメンバー間の距離)、比率(意味のある「0」と比較した間隔)、またはセット内の物の数をカウントする基数測定値を含む、任意の尺度であり得る。名義尺度での変数の測定値は、例えば「健康」または「不健康」、「老年」または「若年」、「形態1」または「形態2」、「対象1…対象n」などの、名称またはカテゴリーを指す。順序尺度での変数の測定値は、「第1」、「第2」、「第3」;または「最年少」から「最年長」へ;または最多から最少への順序などの、順位を付ける。比率尺度での測定値としては、例えば、質量、信号強度、濃度、年齢などの、事前定義された尺度上の任意の測定値、ならびに頻度、平均値、中央値、標準偏差、または分位数などの、統計的測定値が挙げられる。比率尺度での測定値は、相対量または正規化測定値であり得る。例えば、一態様において、バイオマーカープロフィールは、第1および第2のシグナル伝達キナーゼの相対量を含む。別の態様において、バイオマーカープロフィールは、2つの異なるバイオマーカータンパク質の量の比率を含む。
【0022】
異常プロフィール(例えば、様々なシグナル伝達キナーゼの異常な絶対量または相対量)は、病理学的活性(または発病過程に対する特徴的な身体反応)、従って、将来の臨床的発症までの時間およびその後の臨床的進行速度を示す。さらに、バイオマーカープロフィールにおける正常の方への回復(例えば、シグナル伝達キナーゼおよび/または神経変性関連タンパク質のオリゴマー形態の、絶対量または相対量の減少)は、候補神経保護介入の効能を反映する。従って、本明細書に記載されるバイオマーカープロフィールは、神経保護効果についての薬物候補の効能を決定するために有用である。実際問題として、それらは、時間および費用の両方の節約、ならびにその臨床症状ではなく発病過程に対する有効性を定量化するための決定的な手段の観点から、神経保護薬試験の実際的な実施に不可欠であると考えられ得る。
【0023】
従って、バイオマーカープロフィールは、既存の病理学的状況の診断としてだけではなく、例えば、対象が発症前または症状発現前である場合、例えば、疾患の診断には不十分である徴候または症状を有する場合、臨床的発症前の病理の見張りとしても機能する。これは重要であり、何故ならば、神経保護処置の相対的な成功は、しばしば、それらのできるだけ早期の投与に関連するようであるためである。さらに、これらのバイオマーカープロフィールは、神経変性状態の病期(例えば、神経細胞脱落の速度または累積量)を示すと考えられる。従って、バイオマーカープロフィールを決定することは、例えば、臨床試験における、および、個体における、例えば、シヌクレイノパチー、アミロイドパチー、タウオパチー、またはハンチントン病を含む、神経変性を処置するために有効であると考えられる治療的介入について、処置の有効性を決定するために極めて重要であり得る。
【0024】
さらに、バイオアッセイ由来のインデックス/指標は、神経変性疾患の病因の理解の促進に寄与する。類似した臨床表現型を有する患者間で恐らく異なる疾患メカニズムのより正確な理解は、より特異的な、従ってより効果的な治療的介入の開発に向けた将来の取り組みを導くのを助けるだろう。
【0025】
B.酵素
神経変性状態は、シグナル伝達キナーゼおよび触媒酵素を含む、特定の酵素の活性の異常な変化(増加または減少)によって特徴付けられる。対象におけるこれらのシグナル伝達キナーゼの活性の測定は、診断、予後、患者の進行、患者の層別化、ならびに薬物開発および試験のために使用することができる。
【0026】
シグナル伝達キナーゼ
キナーゼは、シグナル伝達経路に関与する任意のキナーゼを含む。
【0027】
パーキンソン病に関連するキナーゼまたはパーキンソン病の症状に影響を及ぼす薬(例えば、プラミペキソール(6-プロピルアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-アミン))の投与に関連するキナーゼとしては、非限定的に、mTOR(ラパマイシンの機構的標的)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPKまたはMEK)、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3B)、AKTキナーゼ、およびベクリン ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、c-Jun N末端キナーゼシグナル伝達経路(JNK)のメンバー(MAPKセリン-スレオニンキナーゼ)、およびホスファターゼテンシンホモログ(PTEN)誘導推定キナーゼ1(PINK1)が挙げられる。
【0028】
アルツハイマー病に関連するキナーゼとしては、非限定的に、プロリン指向性プロテインキナーゼ(PDPK)、非PDPKプロテインキナーゼおよびチロシンプロテインキナーゼ(TPK)などの、タウプロテインキナーゼが挙げられる。
【0029】
ハンチントン病に関連するキナーゼとしては、非限定的に、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ、MEK、ERK、JNK、IKK、細胞分裂プロテインキナーゼ5(CDK5)、AKT、MKP1が挙げられる。
【0030】
本開示の方法において有用なキナーゼの例示的なリストは以下を含む:AKT S473;AKT T308;ERK P44;GSK3B S6;GSK3B S9;GSK3 T216;GSK3A S21;MAPK T202;mTOR S2448;mTOR c1/2 T246;mTOR c1/2 S638;JNK 1/2/3;JNK pY183;JNK pY185;MEK 1/2 S217;MEK S221;PI3K p85;PI3K T458;PKB S473;PI3K p55-T199;PKB T308。
【0031】
これらの疾患はまた、毒性オリゴマーポリペプチド種、および場合によっては異常にリン酸化されたオリゴマーまたはモノマー形態の蓄積と、神経細胞由来の細胞外小胞においてそのような形態が検出され得ることが共通している。
【0032】
1.触媒酵素
触媒酵素は、本明細書に開示されるようなクラシファイヤーにおいてバイオマーカーとして機能し得る。神経変性過程に関与する触媒酵素は、本明細書に記載される方法において有用である。例えば、パーキンソン病の場合、L-DOPA産生に関与する酵素がバイオマーカーとして機能し得る。特に、一つのそのような酵素はチロシンヒドロキシラーゼ(「TH」)である。チロシンヒドロキシラーゼ(チロシン3-モノオキシゲナーゼとも呼ばれる)は、アミノ酸L-チロシンからL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)への変換を触媒することを担う酵素である。触媒酵素はリン酸化状態または非リン酸化状態にあり得る。
【0033】
例示的な触媒酵素としては、TH全体、ならびにリン酸化形態、TH S40、TH S19およびTH S32が挙げられる。
【0034】
C.神経変性関連タンパク質
本明細書において使用される場合、用語「神経変性関連タンパク質」は、特にオリゴマー化形態で、神経変性に関連する、タンパク質を指す。神経変性関連タンパク質としては、非限定的に、アルファ-シヌクレイン、タウ、アミロイドβ、およびハンチンチンが挙げられる。そのようなタンパク質はオリゴマー形態に凝集する傾向がある。
【0035】
脳ポリペプチドのあるオリゴマー化形態(およびサイズ範囲)または異常にリン酸化された形態は、様々な神経変性状態の基礎をなすと考えられている。これは、例えば、シヌクレイノパチー状態におけるアルファ-シヌクレイン、アミロイドパチー状態におけるアミロイドβ、タウオパチー状態におけるタウ、およびハンチントン病におけるハンチンチンの役割を含む。特に、現在の証拠は、α-シヌクレインオリゴマーがPDおよび他のシヌクレイノパチーにおいて毒性種として作用し得ることを示唆している。ある態様において、検出されるオリゴマー種は、異常にリン酸化された種である。
【0036】
神経変性関連タンパク質の形態としては、非限定的に、(I)少なくとも1つのオリゴマー形態;(II)組み合わされた複数のオリゴマー形態(例えば、一緒に測定される全てのオリゴマー形態またはオリゴマー形態のサブセット、例えば、アルファシヌクレイン2-14、または>4量体)、(III)複数の異なるオリゴマー形態の各々;(IV)少なくとも1つのオリゴマー形態および少なくとも1つのモノマー形態;(V)複数のオリゴマー形態および少なくとも1つのモノマー形態;ならびに(VI)少なくとも1つのオリゴマー形態および複数のモノマー形態、が挙げられる。神経変性関連タンパク質の形態は、数ある中でも、神経変性状態または神経変性状態への進行を推測するためにモデルにおいて使用することができ、典型的には、モデル中に含まれる1つまたは複数のオリゴマー形態が疾患の存在および活性または疾患への進行を示す。これは、シヌクレイノパチーの存在および活性、またはシヌクレイノパチーへの進行を示す、オリゴマーアルファ-シヌクレイン形態の漸増相対量;アミロイドパチーの存在および活性、またはアミロイドパチーへの進行を示す、オリゴマーアミロイドβの漸増相対量;タウオパチーの存在および活性、またはタウオパチーへの進行を示す、オリゴマーまたは異常にリン酸化されたタウの漸増相対量;ならびに、ハンチントン病の存在および活性、またはハンチントン病への進行を示す、オリゴマーハンチンチンの漸増相対量を含む。従って、そのようなオリゴマーの異常プロフィールは神経変性のプロセスを示す。
【0037】
神経変性関連タンパク質形態は、1つまたは複数のオリゴマー形態、および、任意で、1つまたは複数のモノマー形態を含み得る。これは、オリゴマー、および、任意で、モノマーアルファ-シヌクレイン;オリゴマー、および、任意で、モノマーアミロイドβ、オリゴマー、および、任意で、過リン酸化、および、任意で、モノマータウ;ならびにオリゴマー、および、任意で、モノマーハンチンチンの、種の量を含む。例えば、バイオマーカープロフィールは、(I)少なくとも1つのオリゴマー形態;(II)複数のオリゴマー形態;(III)少なくとも1つのオリゴマー形態および少なくとも1つのモノマー形態;(IV)複数のオリゴマー形態および少なくとも1つのモノマー形態;(V)少なくとも1つのオリゴマー形態および複数のモノマー形態;ならびに(VI)複数のオリゴマー形態および複数のモノマー形態、を含むことができる。
【0038】
タンパク質形態は、個々のタンパク質種または種のコレクションを指し得る。例えば、アルファ-シヌクレインの6量体は、アルファ バックスペース-シヌクレインの形態である。同様に、アルファ-シヌクレインの6量体~18量体のコレクションは、集合的に、アルファ-シヌクレインの形態であり得る。
【0039】
バイオマーカープロフィールは、複数のタンパク質形態を含み得る。一態様において、バイオマーカープロフィールは、神経変性関連タンパク質の複数のオリゴマー形態およびモノマー形態の各々の定量的測定値を含み得る。従って、例えば、バイオマーカープロフィールは、2量体、3量体、4量体、5量体、6量体、7量体、8量体、9量体、10量体、11量体、12量体、13量体、14量体、15量体、16量体、19量体、20量体、24量体、50量体などの各々の定量的測定値を含むことができる。
【0040】
本明細書において使用される場合、「シヌクレインバイオマーカープロフィール」は、オリゴマー、および、任意で、モノマーアルファ-シヌクレインを含むプロフィールを指し、用語「アミロイドバイオマーカープロフィール」は、オリゴマー、および、任意で、モノマーβ-アミロイドを含むプロフィールを指し、用語「タウバイオマーカープロフィール」は、オリゴマー、および、任意で、モノマータウを含むプロフィールを指し、用語「ハンチンチンバイオマーカープロフィール」は、オリゴマー、および、任意で、モノマーハンチンチンを含むプロフィールを指す。
【0041】
本明細書において使用される場合、用語「モノマータンパク質/ポリペプチド」は、リン酸化種などの、その任意の種を含む、単一の、非凝集タンパク質またはポリペプチド分子を指す。本明細書において使用される場合、用語「オリゴマータンパク質/ポリペプチド」は、リン酸化種を含む、個々のオリゴマー種または複数のオリゴマー種を含む凝集体を指す。タンパク質のオリゴマー形態の測定は、本明細書において使用される場合、全てのオリゴマー形態(総オリゴマー形態)または指定されるオリゴマー形態の測定を指し得ることが理解される。指定されるオリゴマー形態は、例えば、特定のサイズ範囲または物理的条件内の形態、例えば、可溶性フィブリルを含むことができる。
【0042】
これらの状態の各々において、本明細書に記載されるポリペプチドのオリゴマー化/凝集形態は、ニューロンに有毒であると考えられており、これらのポリペプチドのオリゴマー形態、および、任意で、モノマー形態を含むバイオマーカープロフィールは、病理学的活性を推測するようにモデルにおいて機能する。特に、モノマー形態と比較してのオリゴマー形態の増加した相対量は、病理を示す。これらのバイオマーカーの測定値は、既存のまたは開発中の療法に対する対象反応を追跡するために、ならびに疾患の発症または既存の疾患の状況もしくは進行を予測するために、使用され得る。
【0043】
D.miRNA
マイクロRNA(「miRNA」)は、約22ヌクレオチドの短い一本鎖RNA分子である。miRNAはmRNA分子とハイブリダイズしてそれらをサイレンシングする。これは、mRNAの切断、ポリ(A)テールの短縮によるmRNAの不安定化、およびmRNA翻訳効率の低下によって生じ得る。miRNAは試料中のRNA分子の単離および配列決定によって同定することができる。本明細書に記載される方法においてバイオマーカーとして有用なマイクロRNAとしては、非限定的に、miR-15b-5p、miRNA -24、およびmiR-27a-3pm m204-5p、124-3p、および22-3pが挙げられる。
【0044】
本開示の方法において有用なmiRNAの例示的なリストは、7-5p;15b-5p;19b;22-3p;24;27a-3p 24;29a;30c-2-3p;494-3p;92b-3p;106b-3p;122-5p;124-3p;122-5p;132-3p;138-5p;142-3p;146a-5p;204-5p;220-3p;331-5p;338-3p;431-5p;584-5p;942-5p;1468-5pを含む。
【0045】
II.神経変性状態および関連するタンパク質
A.シヌクレイノパチー
1.状態
本明細書において使用される場合、用語「シヌクレイノパチー」および「シヌクレオパチー状態」は、アルファ-シヌクレインの異常な凝集形態である、オリゴマーアルファ-シヌクレインの異常プロフィールによって特徴付けられる状態を指す。ある態様において、シヌクレイノパチーは、例えば、PD、レヴィー小体認知症、多系統萎縮症、およびいくつかの形態のアルツハイマー病、ならびに他の稀な神経変性障害、例えば、様々な神経軸索ジストロフィーなどの、臨床的に明らかなシヌクレオパチー疾患として発現する。シヌクレイノパチー疾患の臨床診断に十分な徴候、および、任意で、症状は、そのような臨床診断をするためにそのような状態の診断の分野における当業者に一般に十分なものである。
【0046】
パーキンソン病(「PD」)は、60歳以上の成人集団において1%~2%の有病率を有する、中枢神経系(CNS)の進行性障害である。PDは、振戦、硬直、姿勢動揺および随意運動の緩慢を含む、運動症状によって特徴付けられる。総PD症例の90%超を構成する、疾患の特発型の原因は、捉えがたいままであるが、現在は、環境的および遺伝的要因の両方を伴うと考えられている。運動症状は、黒質におけるドーパミン産生ニューロンの進行性変性と明らかに関係がある。ごく最近になって、PDは、大脳基底核(例えば、PD)、または大脳皮質(例えば、レヴィー小体認知症)、または大脳基底核、脳幹および脊髄(例えば、多系統萎縮症)に主に影響を与える、多系統疾患の群の1つと認識されるようになり、これらは全て、アルファ-シヌクレインと呼ばれる脳タンパク質から主になる細胞内沈着物(レヴィー小体)の存在によって結び付けられる。従って、これらの障害は、Hallevorden-Spatz症候群、神経軸索ジストロフィー、および外傷性脳損傷と共に、「シヌクレイノパチー」としばしば呼ばれてきた。
【0047】
PDの徴候および症状は、例えば、安静時振戦、硬直、運動緩徐、姿勢動揺および加速パーキンソン病様歩行(festinating parkinsonian gate)を含み得る。PDの1つの徴候は、カルビドパ-レボドパに対するこれらの運動機能障害における肯定的な反応である。
【0048】
パーキンソン病の臨床的に認識される病期は以下を含む:ステージ1-軽度;ステージ2-中程度;ステージ3-中期;ステージ4-重症;ステージ5-進行。
【0049】
プラミペキソール(Mirapex(商標)のブランド名で販売されている)は、特発性パーキンソニズムを処置のに使用される薬物である。プラミペキソールは、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)アゴニストとしての活性を有する。従って、キナーゼ活性に対するプラミペキソールおよび他のキナーゼモジュレーターの効果を決定することは、パーキンソン病に対する薬物の有効性を決定するのに有用である。
【0050】
現在、PDの診断は、改変Hoehn and Yahr病期分類スケール(Hoehn and Yahr, 1967, Neurology, 17:5, 427-442)および統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)の使用によってしばしば定量化される身体検査の結果に主に基づく。パーキンソニズムの他の形態、例えば進行性核上性麻痺(PSP)に対するPDの鑑別診断は、困難であると分かる場合があり、誤診は、従って、患者の最大25%において生じ得る。実際に、PDは、一般に、最初の臨床診断がなされ得る前の数年間、発見されないままである。これが起こる時には、黒質中のドーパミンニューロンの減少は、既に50%を超過しており、70%に近づいている場合がある。PDまたは任意の関連するシヌクレイノパチーについての血液検査はまだ検証されていない。陽電子断層撮影法(PET)またはMRIを使用するイメージング研究が、神経変性プロセスの場所および程度についての情報を提供することによって、PDの診断において使用されてきたが、それらは、観察された変性の病因についての情報をほとんどまたは全く与えず、特定のシヌクレオパチー特異的介入の選択の指針とならない。
【0051】
レヴィー小体認知症(LBD)は、米国において約130万人の人に影響を与えている。症状としては、例えば、認知症、認知変動、パーキンソニズム、睡眠障害および幻覚が挙げられる。それは、アルツハイマー病に次ぐ認知症の2番目に高頻度の形態であり、通常、50歳を過ぎてから発症する。パーキンソン病と同様に、LBDは、脳内におけるアルファ-シヌクレインの異常な沈着物によって特徴付けられる。
【0052】
多系統萎縮症(MSA)は、2つのタイプ、パーキンソン病型および小脳型に分類される。パーキンソン病型は、例えば、PDのパーキンソン病様症状によって特徴付けられる。小脳型は、例えば、運動および協調障害、構音障害、視覚障害ならびに嚥下困難によって特徴付けられる。MSA症状は、脳、特に、黒質、線条、下オリーブ核、および小脳の損傷領域における、細胞消失およびグリオーシスまたは星状細胞の増殖を反映する。異常なアルファ-シヌクレイン沈着物が特徴的である。
【0053】
PDおよび他のシヌクレイノパチーについての誤診断率は、神経保護療法などの、有効な疾患修飾療法の導入で重要となり得る事態である、特にそれらの初期段階で、比較的高い場合がある。
【0054】
2.アルファ-シヌクレイン
アルファ-シヌクレインはヒト脳中に見られるタンパク質である。ヒトアルファ-シヌクレインタンパク質は、140個のアミノ酸で作られており、SNCA遺伝子(PARK1とも呼ばれる)によってコードされる。(アルファ-シヌクレイン: 遺伝子ID: 6622; ホモサピエンス; 細胞遺伝学的位置: 4q22.1.)。
【0055】
本明細書において使用される場合、用語「アルファ-シヌクレイン」は、正常(未修飾)種、ならびに修飾種を含む。アルファ-シヌクレインは、モノマー形態または凝集形態で存在し得る。アルファ-シヌクレインモノマーはオリゴマーへと異常に凝集し得、オリゴマーアルファ-シヌクレインはフィブリルへと凝集し得る。フィブリルはさらに凝集し、レヴィー小体と呼ばれる細胞内沈着物を形成し得る。モノマーアルファ-シヌクレインおよびその様々なオリゴマーは平衡状態で存在すると考えられている。脳内におけるアルファ-シヌクレインプロセシングはまた、セリン129でリン酸化されたアルファ-シヌクレイン(「p129アルファ-シヌクレイン」)などの、他の推定的に異常な種を産生し得る。
【0056】
アルファ-シヌクレインは、ヒト中枢神経系(CNS)においては豊富に、様々な他の器官においてはより少ない程度に発現される。脳内において、アルファ-シヌクレインは、特に、大脳皮質、海馬、黒質および小脳中の、ニューロンの末端において主に見られ、ここで、それは神経伝達物質放出の調節に寄与する。正常な環境下で、この可溶性モノマータンパク質は、凝集に抵抗する安定して折り畳まれた四量体を形成する傾向がある。しかし、ある病理学的状態において、理由は分からないが、アルファ-シヌクレインは、異常にβプリーツを形成し、ミスフォールドし、オリゴマー化し、そして凝集し、最終的にフィブリルを形成し、これは、高い細胞毒性中間体をもたらし得る代謝経路である。
【0057】
本明細書において使用される場合、用語「モノマーアルファ-シヌクレイン」は、その任意の種を含む、単一の、非凝集アルファ-シヌクレイン分子を指す。本明細書において使用される場合、用語「オリゴマーアルファ-シヌクレイン」は、複数のアルファ-シヌクレインタンパク質分子を含む凝集体を指す。これは、総オリゴマーアルファ-シヌクレインおよびその形態または選択された種を含む。オリゴマーアルファ-シヌクレインは、少なくとも2つの単量体単位を有する形態からプロトフィブリル形態までを含む。これは、例えば、2~約100個の単量体単位、例えば、4~16個の単量体単位または少なくとも2、3、4または5ダースの単量体単位を有するオリゴマー形態を含む。本明細書において使用される場合、用語「比較的低分子量のシヌクレインオリゴマー」は、30個までの単量体単位(30量体)から構成されるシヌクレインオリゴマーを指す。典型的には、相対的に低分子量のシヌクレインオリゴマーは可溶性である。従って、アルファ-シヌクレインの「可溶性オリゴマー形態」は、2量体~30量体、例えば、4量体~18量体のサイズ範囲にあるオリゴマーを含む。ある態様において、アルファ-シヌクレインは、特定の検出方法によって検出される形態(複数可)を指す。例えば、形態は、アルファ-シヌクレインの特定のモノマーまたはオリゴマー形態に対して惹起された抗体で検出可能なものであり得る。
【0058】
オリゴマー化形態へと異常にプロセシングされたアルファ-シヌクレインの神経毒性ポテンシャルは、現在は、前述の病理学的状態、とりわけ、PD、レヴィー小体認知症、多系統萎縮症、およびいくつかの他の障害の、症状の発症およびその後の進行に寄与すると考えられている。これらは、一般に、異常なアルファ-シヌクレイン凝集体の細胞内蓄積によって部分的に特徴付けられる神経変性障害の群と定義され、これらのうちのいくつかは、有毒であるようであり、前述の障害の病因に寄与し得る。酸化ストレス、ミトコンドリア損傷、および孔形成としてのそのような因子についての役割が示唆されたが、アルファ-シヌクレインのあるオリゴマー化形態が正確にどのように神経変性を引き起こし得るかは未だに分かっていない。それにもかかわらず、多数が、現在、アルファ-シヌクレインオリゴマー化および凝集へ至るプロセスは、これらの障害において生じる細胞損傷および破壊の中心であり得ると考えている。
【0059】
いくつかの研究が、プレフィブリルシヌクレインオリゴマーおよびプロトフィブリルは特に神経毒性を与える傾向があることを示した(Loov et al.,“α-Synuclein in Extracellular Vesicles: Functional Implications and Diagnostic Opportunities”, M. Cell Mol Neurobiol. 2016 Apr;36(3):437-48. doi: 10.1007/s10571-015-0317-0.)。他のものは、より低度のオリゴマーシヌクレイン種が主に原因であることを示唆し、正確にどのシヌクレイン種が、または異なるβシート配置を有する種のどのアンサンブルが、単一のまたは複数の病理学的機構によって単独でまたは協力して作用して、PDにおいてまたは任意の関連するシヌクレイノパチーにおいて最も神経毒性であるかは、ほとんど明らかでないままである(Wong et al.,“α-synuclein toxicity in neurodegeneration: mechanism and therapeutic strategies”, Nat Med. 2017 Feb 7;23(2): 1-13. doi: 10.1038/nm.4269)。
【0060】
細胞内シヌクレインの一部は、その代謝産物の一部と共に、エキソソーム小胞内にパッケージ化され、脳内の細胞内液中へ放出され、ここから、それは脳脊髄液(CSF)および末梢血循環中へ移行する。アルファ-シヌクレインはヒト脳中に見られるタンパク質である。ヒトアルファ-シヌクレインタンパク質は、140個のアミノ酸で作られており、SNCA遺伝子(PARK1とも呼ばれる)によってコードされる。(アルファ-シヌクレイン: 遺伝子ID: 6622; ホモサピエンス; 細胞遺伝学的位置: 4q22.1.)。
【0061】
B.アミロイドパチー
1.状態
本明細書において使用される場合、用語「アミロイドパチー」は、脳内のアミロイドポリマーの蓄積によって特徴付けられる状態を指す。アミロイドパチーとしては、非限定的に、アルツハイマー病およびある他の神経変性障害、例えば、後期PDが挙げられる。アルツハイマー病は認知症の最も一般的な形態である。それは、β-アミロイドの凝集形態から作られるアミロイド斑の蓄積、ならびに神経原線維変化によって、解剖学的なレベルで特徴付けられる。症状的には、進行性記憶喪失、認知低下および神経行動変化によって特徴付けられる。アルツハイマー病は進行性であり、現在、この疾患を停止または逆転させる公知の方法はない。
【0062】
2.アミロイドβ
アミロイドベータ(アミロイド-β、Aβ、A-ベータおよびベータ-アミロイドとも呼ばれる)は、アミロイド前駆体タンパク質のペプチド断片である。アミロイドβは、典型的に、36~43個のアミノ酸を有する。アミロイドβは、凝集し、いくつかの形態で存在し得る可溶性オリゴマーを形成する。アミロイドβのミスフォールドされたオリゴマーは、他のアミロイドβ分子に、ミスフォールドされたオリゴマー形態をとらせ得ると考えられている。A-β1-42は、アミノ酸配列:
を有する。
【0063】
アルツハイマー病において、アミロイド-βおよびタウタンパク質はオリゴマー化し、脳組織内に蓄積し、ここで、それらは、ニューロン損傷および喪失を引き起こすようであり;実際に、一部は、凝集のそのような可溶性中間体、またはオリゴマーは、毒性を媒介しそして疾患において播種および拡散の基礎となる重要な種であると断言されている(The Amyloid-β Oligomer Hypothesis: Beginning of the Third Decade. Cline EN, Bicca MA, Viola KL, Klein WL. J Alzheimers Dis. 2018;64(s1):S567-S610; "Crucial role of protein oligomerization in the pathogenesis of Alzheimer's and Parkinson's diseases,” Choi ML, Gandhi S. FEBS J. 2018 Jun 20.)。アミロイドβオリゴマーは、ADの発症および進行に不可欠であり、一般的な薬物標的であるとされ、恐らく最も直接的なバイオマーカーである。タウタンパク質はまた異常に過リン酸化され得る。
【0064】
A-βのモノマーおよびオリゴマー形態を定量化するための現在使用されている方法としては、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、単一オリゴマー検出のための方法などが挙げられ、これらは主にバイオセンサーに基づく方法である("Methods for the Specific Detection and Quantitation of Amyloid-β Oligomers in Cerebrospinal Fluid”, Schuster J, Funke SA. J Alzheimers Dis. 2016 May 7;53(1):53-67.)。
【0065】
表面ベースの蛍光強度分布解析(sFIDA)は、高度に特異的かつ感受性のオリゴマー定量化ならびにモノマーへの完全非感受性の両方を特徴とする(“Advancements of the sFIDA method for oligomer-based diagnostics of neurodegenerative diseases”, Kulawik A. et al., FEBS Lett. 2018 Feb;592(4):516-534)。
【0066】
C.タウオパチー
1.状態
本明細書において使用される場合、用語「タウオパチー」は、神経変性に関連する蓄積および凝集によって特徴付けられる状態を指す。タウオパチーとしては、非限定的に、アルツハイマー病(「AD」)、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、およびピック病が挙げられる。
【0067】
ADはまた、第2の病理学的特徴である、神経原線維変化(NFT)によって特徴付けられる。NFTは解剖学的にニューロン喪失に関連し、NFT形成のプロセスをニューロン損傷および脳機能不全に結び付ける。NFTの主成分は、微小管結合タンパク質である、タウの過リン酸化形態である。NFT形成中、タウは、タウオリゴマーを含む、様々な異なる凝集種を形成する。増加する証拠は、タウオリゴマー形成が、神経原線維変化の出現に先行し、ニューロン喪失に重要に寄与することを示している(J Alzheimers Dis. 2013;37(3):565-8 “Tauopathies and tau oligomers”, Takashima A.)。
【0068】
非線維性可溶性多量体は、線維状タウから作られた神経原線維変化よりもより有毒であるようである。
【0069】
前頭側頭葉認知症において、完全長TAR DNA結合タンパク質(「TDP-43」)は、脳の前頭部中に蓄積する毒性アミロイドオリゴマーを形成する。筋萎縮性側索硬化症(ALS)も含む、TDP-43タンパク質症は、ポリユビキチン化および過リン酸化されている完全長および切断型TDP-43によって形成される封入体によって特徴付けられる。組換え完全長ヒトTDP-43は、抗アミロイドオリゴマー特異的抗体と共通のエピトープを共有する、構造的に安定した、球状オリゴマーを形成する。TDP-43オリゴマーは、インビトロおよびインビボの両方において神経毒性であることがわかった。(Nat Commun. 2014 Sep 12;5:4824. Full-length TDP-43 forms toxic amyloid oligomers that are present in frontotemporal lobar dementia-TDP patients)。TDP-43オリゴマーの存在および存在量の決定は、FTLD-TDPの種々のサブタイプの中でもTDP-Oと呼ばれる特異的TDP-43アミロイドオリゴマー抗体を使用して達成することができる("Detection of TDP-43 oligomers in frontotemporal lobar degeneration-TDP”, Kao PF, Ann Neurol. 2015 Aug;78(2):211-21.)。
【0070】
2.タウ
タウは、最長のタウアイソフォーム上に79個の潜在的なセリン(Ser)およびトレオニン(Thr)リン酸化部位を有する、リンタンパク質である。タウは、結合ドメインの数によって識別される、6つのアイソフォームで存在する。3つのアイソフォームは3つの結合ドメインを有し、他の3つは4つの結合ドメインを有する。アイソフォームは、タウ遺伝子のエクソン2、3、および10における選択的スプライシングに起因する。タウは、11個のエクソンを有する、MAPT遺伝子よってコードされる。ハプログループH1は、アルツハイマー病などの、ある認知症の増加した確率に関連するようである。
【0071】
6~18量体の範囲のものを含む、様々なタウオリゴマー種が、タウオパチー脳障害に関連する神経毒性プロセスに関与し、ウェスタンブロットおよび単一分子蛍光を含む他の技術によって測定された(例えば、Kjaergaard M., et al., Oligomer Diversity during the Aggregation of the Repeat Region of Tau” ACS Chem Neurosci. 2018 Jul 17; Ghag G et al.,“Soluble tau aggregates, not large fibrils, are the toxic species that display seeding and cross-seeding behavior”, Protein Sci. 2018 Aug 20. doi: 10.1002/pro.3499; およびComerota MM et al.,“Near Infrared Light Treatment Reduces Synaptic Levels of Toxic Tau Oligomers in Two Transgenic Mouse Models of Human Tauopathies”, Mol Neurobiol. 2018 Aug 17を参照のこと)。
【0072】
オリゴマータウ種を測定するための方法としてはイムノアッセイが挙げられる。タウは、通常の発現、続いてのクロマトグラフィー、例えば、アフィニティー、サイズ排除、および陰イオン交換クロマトグラフィーによって単離することができる。この形態は、動物を免疫化して抗体を作製するために使用することができる。タウの凝集はアラキドン酸を使用して誘導され得る。オリゴマーは、ショ糖ステップ勾配による遠心分離によって精製することができる。タウのオリゴマー形態はまた、動物を免疫化して抗体を作製するために使用することができる。タウオリゴマー特異的TOC1抗体を利用するサンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法が、オリゴマータウを検出するために使用することができる。タウオリゴマー複合体1(TOC1)抗体は、トリス不溶性、サルコシル可溶性フラクションにおいて、オリゴマータウ種を特異的に同定する。(Shirafuji N., et al,“Homocysteine Increases Tau Phosphorylation, Truncation and Oligomerization”, Int J Mol Sci. 2018 Mar 17;19(3).)(例えば、Methods Cell Biol. 2017;141 :45-64. doi: 10.1016/bs.mcb.2017.06.005. Epub 2017 Jul 14. Production of recombinant tau oligomers in vitro. Combs B1 , Tiernan CT 1 , Hamel C1 , Kanaan NM.を参照のこと)。
【0073】
D.ハンチントン病
1.ハンチントン病
ハンチントン病は、ハンチンチン遺伝子中の常染色体優性突然変異によって引き起こされる遺伝性疾患である。突然変異は、CAGトリプレットの複製によって特徴付けられる。それは進行性神経変性によって特徴付けられる。症状としては、運動障害、例えば、不随意運動、歩行障害、ならびに嚥下および発語での困難が挙げられる。それはまた、進行性の認知低下によって特徴付けられる。
【0074】
2.ハンチンチンタンパク質
ハンチントンタンパク質は、HTTまたはHDとも呼ばれるハンチントン遺伝子によってコードされる。正常なハンチントンタンパク質は約3144個のアミノ酸を有する。タンパク質は、通常は、約300 KdAである。
【0075】
ハンチントン病(HD)において、より小さな、可溶性の凝集傾向があるmHtt断片への、完全長突然変異ハンチンチン(mHtt)タンパク質の切断は、この障害の病態生理学において重要なプロセスであるようである。実際に、増加した数のポリグルタミン(polyQ)リピートを含有する突然変異タンパク質の凝集および細胞毒性は、HDに加えて、いくつかの疾患の特徴である。細胞内で、突然変異ハンチンチン(mHtt)および他のポリグルタミン拡大突然変異タンパク質は、モノマー、可溶性オリゴマー、および不溶性封入体として存在する。(J Huntingtons Dis. 2012; 1 (1): 119-32. Detection of Mutant Huntingtin Aggregation Conformers and Modulation of SDS-Soluble Fibrillar Oligomers by Small Molecules. Sontag EM, et al. , Brain Sci. 2014 Mar 3;4(1):91-122. Monomeric, oligomeric and polymeric proteins in Huntington disease and other diseases of polyglutamine expansion. Hoffner G. et al.)。ある態様において、オリゴマーは、高さが2~10 nmであり、2.5未満のアスペクト比(交差する最短距離に対する交差する最長距離)を有し、球状構造を示す。
【0076】
III.バイオマーカーの検出および測定
A.生体試料
本明細書において使用される場合、用語「試料」は、分析物を含む組成物を指す。試料は、生の試料(ここで、分析物は、その天然形態で他の材料と混合されている)(例えば、供給源材料)、分画試料(ここで、分析物は、少なくとも部分的に濃縮されている)、または精製試料(ここで、分析物は少なくとも実質的に純粋である)であり得る。本明細書において使用される場合、用語「生体試料」は、例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖類、脂質、およびより高次レベルのこれらの物質、例えば、細胞外小胞、細胞、組織または器官を含む、生物学的物質を含む試料を指す。
【0077】
本明細書において使用される場合、用語「細胞外小胞」は、細胞から自然に放出され、約50~約5000nmの流体力学直径を有する、典型的には脂質二重層で区切られた、膜結合粒子を指す。細胞外小胞の一例は、約50nm~約350nmの直径を有する「エキソソーム」である。
【0078】
シグナル伝達キナーゼ、ならびに、アルファ-シヌクレイン、アミロイドβ、タウ、およびハンチンチンなどの神経変性関連タンパク質の形態は、対象由来の体液試料からの細胞外小胞において検出され得る。より詳しくは、神経細胞由来の細胞外小胞の単離物は、シヌクレイノパチー状態の検出および解析のための細胞外小胞の好ましいサブセットである。特に、細胞外小胞の内部区画からのタンパク質が有用である
【0079】
細胞外小胞は、対象由来の様々な生体試料から単離することができる。ある態様において、生体試料は体液である。細胞外小胞の体液供給源としては、例えば、血液(例えば、全血またはその画分、例えば、血清もしくは血漿、例えば、末梢静脈血)、脳脊髄液、唾液、乳および尿、またはそれらの画分が挙げられる。
【0080】
細胞外小胞の供給源としての静脈血の使用は、医療現場での常用される静脈穿刺の安全性、受容性、および利便性が理由で、成人および小児の両方における使用予定の診断検査について好ましい試料である。標的分析物は血液中に少量で存在し得るため、大量の試料を採取してもよい。例えば、試料は、少なくとも5 ml、少なくとも10 ml、少なくとも20 mlの血液を有し得る。全血を凝固させ、例えば遠心分離により血餅を除去することによって、血清を調製することができる。例えば、全血をEDTAなどの抗凝固剤で処理し、例えば遠心分離により血球を除去することによって、血漿を調製することができる。対象から試料を採取することによって、または対象から血液を採取した人から試料を受け取ることによって、血液試料を提供することができる。血液試料は、典型的に、例えば氷上で、冷蔵保存されるか、または-80℃で凍結保存される。
【0081】
B.バイオマーカーの測定方法
1.シグナル伝達キナーゼ
キナーゼは基質のリン酸化においてATPをADPに変換する。キナーゼ活性を測定するための様々なアッセイタイプが当技術分野において公知である。
【0082】
a)放射性シンチレーション
放射性シンチレーションアッセイはキナーゼによる基質への32Pの取り込みを測定する。
【0083】
b)FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)
これらのアッセイのいくつかはキナーゼ活性の指標としてATPまたはADPの量を使用する。そのようなアッセイの1つにおいて、キナーゼ活性について試験される試料、キナーゼについての基質、およびATPが組み合わされる。キナーゼが存在する場合、それはATPを用いて基質をリン酸化することになる。残存するADPは、様々なアッセイによって検出することができる。そのようなアッセイの1つはFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)アッセイであり、ここでは、反応後の試料中のADPがドナーまたはアクセプターフルオロフォアの1つでタグ化される。ADPに結合し、対の他方のフルオロフォア、即ち、アクセプターまたはドナーフルオロフォアを含む抗体を、混合物に添加する。抗体はADPに結合する。励起すると、ドナーフルオロフォアはアクセプターフルオロフォアにエネルギーを移し、これは蛍光を発し、検出することができる。
【0084】
c)免疫検出
別のアッセイにおいて、特定のキナーゼを、キナーゼに特異的な抗体を用いて免疫沈降させることができる。沈降したキナーゼは、キナーゼの基質とのリン酸化反応に用いられる。キナーゼ反応の生成物は、ウェスタンブロットによって検出され得る。
【0085】
d)市販のキナーゼアッセイ
多くのキナーゼアッセイが市販されている。これらとしては、例えば、多数の異なるキナーゼに特異的である、Promega (Promega.com)から入手可能なアッセイが挙げられる。別の例は、Thermo Fisher Scientific (ThermoFisher.com)から入手可能なAdapta(登録商標)Universal Kinase Assay Systemである。PerkinElmer(商標)(PerkinElmer.com)は、蛍光標識基質とユーロピウム標識抗リン酸化抗体を使用して、FRETを介して検出可能なリン酸化生成物を認識する、LANCE(登録商標)キナーゼアッセイを商品化している。Samdi Tech, Inc. (SamdiTech.com)は、質量分析法を使用するラベルフリーアッセイを商品化している。
【0086】
2.触媒酵素
チロシンヒドロキシラーゼなどの触媒酵素は、当技術分野において公知の任意の方法によって検出することができる。これとしては、例えば、活性アッセイ、ELISAおよびウェスタンブロットが挙げられる。
【0087】
3.マイクロRNA
マイクロRNA(「miRNA」)は、例えば、核酸配列決定法によって検出することができる。これらは、RNAをDNAに変換し、標準的なDNA配列決定技術を用いることを伴い得る。一つのそのような方法はqRT-PCR。アッセイ結果は異なるmiRNAの比率として表され得る。
【0088】
4.神経変性関連タンパク質
タンパク質のモノマーおよびオリゴマー形態は、非限定的に、イムノアッセイ(例えば、ELISA)、質量分析、サイズ排除クロマトグラフィー、ウェスタンブロットおよび蛍光ベースの方法(例えば、蛍光分光法またはFRET)および近接ライゲーションアッセイを含む、当技術分野において公知の任意の方法によって検出することができる。
【0089】
ウェスタンブロットにおいて、混合物中のタンパク質は電気泳動によって分離される。分離されたタンパク質は、典型的にエレクトロブロッティングによって、ニトロセルロースフィルターなどの、固体支持体上へブロットされる。ブロットされたタンパク質は、αシヌクレインオリゴマーに対する結合剤を用いる直接結合によって、または間接結合によって、のいずれかで検出することができ、間接結合において、例えば、ブロットは、オリゴマーと結合することが可能である、α-シヌクレインオリゴマーに対して向けられた標識一次抗体と接触される。典型的に、ブロットは、未結合抗体を除去するために、洗浄される。次いで、オリゴマー形態は、一次抗体または一次抗体へ結合されたタグに対して向けられた標識抗体(典型的に二次抗体と呼ばれる)を使用して検出される。
【0090】
標識としては、例えば、金ナノ粒子、ラテックスビーズ、蛍光分子、発光タンパク質、および基質から検出可能な生成物を生成する酵素が挙げられ得る。タグとしては、例えばビオチンが挙げられ得る。
【0091】
代わりに、混合物中のオリゴマー種を互いに分離し、その後、検出することができる。混合物中のオリゴマー種はいくつかの方法によって分離することができる。1つの方法では、種を電気泳動によって分離する。これはゲル電気泳動を含む。電気泳動法は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(「PAGE」)およびアガロースゲル電気泳動を含む。1つの方法では、native PAGEまたはblue native PAGEが使用される。Native PAGE Bis-Trisゲルは、例えばThermoFisher(登録商標)から入手可能である。充填キャピラリー電気泳動、または「pCE」と呼ばれる方法では、非多孔性コロイダルシリカをキャピラリー内に充填することによって任意の幅の孔が作られる。代わりに、種は、サイズ排除クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィーなどの、クロマトグラフィーによって分離することができる。
【0092】
いったん分離されると、α-シヌクレインの特定のオリゴマー形態を区別することができる。これは、特定のオリゴマー形態へ特異的に結合する結合剤の必要性なしに行うことができ、何故ならば、それらは既に分離されており、従って、識別可能であるためである。α-シヌクレインオリゴマーへ結合する結合剤を、一般に、それらの形態を検出するために使用することができる。ゲル上でのそれらの場所、またはカラムからの溶出時間が、検出される特定の形態を示すために使用され得る。例えば、より大きなオリゴマーは、典型的に、より小さなオリゴマーと比べてよりゆっくりとゲル中を移動する。
【0093】
a)アルファ-シヌクレイン
モノマーアルファ-シヌクレインおよびオリゴマーアルファ-シヌクレインの量は、個々に決定され得る。代わりに、試料中の総アルファ-シヌクレインが、モノマーアルファ-シヌクレインまたはオリゴマーアルファ-シヌクレインのいずれかと共に測定され得、他方の種の量は差に基づいて決定され得る。
【0094】
モノマー、オリゴマーおよび総アルファ-シヌクレインは、例えば、イムノアッセイ(例えば、ELISAもしくはウェスタンブロット、例えば、化学発光検出法)、質量分析またはサイズ排除クロマトグラフィーによって、検出され得る。アルファ-シヌクレインに対する抗体は、例えば、Abeam (Cambridge, MA)、ThermoFisher (Waltham, MA)およびSanta Cruz Biotechnology (Dallas, TX)から市販されている。
【0095】
以下の参考文献は、総アルファ-シヌクレイン含有量を測定する方法を記載した。Mollenhauer et al. (Movement Disorders, 32:8 p. 1117 (2017))は、体液から総アルファ-シヌクレインを測定する方法を記載する。Loov et al. (Cell Mol. Neurobiol., 36:437-448 (2016))は、血漿からL1CAM陽性細胞外小胞を単離するための抗体の使用を記載する。Abd-Elhadi et al. (Anal Bioanal Chem. (2016) Nov;408(27):7669-72016)は、脂質-ELISAによって決定されたヒト血液細胞、CSF、および唾液中の総アルファ-シヌクレインレベルを決定する方法を記載する。
【0096】
総アルファ-シヌクレインは、例えば、捕捉のための抗ヒトα-synモノクローナル抗体211 (Santa Cruz Biotechnology, USA)、およびホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)結合化学発光アッセイによる検出のための抗ヒトα-synポリクローナル抗体FL-140 (Santa Cruz Biotechnology, USA)を使用して、ELISAにおいて検出することができる。そのようなアプローチは、モノマーα-シヌクレインの検出を回避するが、異なる多量体形態を識別しない。
【0097】
アルファ-シヌクレインのモノマーおよびオリゴマー形態は、例えば、形態に特異的な抗体を使用するイムノアッセイによって、検出することができる。例えば、Williams et al. (Oligomeric alpha-synuclein and β-amyloid variants as potential biomarkers for Parkinson's and Alzheimer's diseases”, Eur J Neurosci. (2016) Jan;43(1):3-16)およびMajbour et al. (Oligomeric and phosphorylated alpha-synuclein as potential CSF biomarkers for Parkinson’s disease”, Molecular Neurodegeneration (2016) 11:7)を参照のこと。El-Agnaf O. et al, (FASEB J. 2016;20:419-425)は、PDについての潜在的なバイオマーカーとしてのヒト血漿中のアルファ-シヌクレインタンパク質のオリゴマー形態の検出を記載した。
【0098】
アルファ-シヌクレインモノマーおよびオリゴマーに対する抗体は、アルファ-シヌクレインモノマーまたはオリゴマーで動物を免疫化することによって生成することができる。(例えば、米国出願公開第2016/0199522号(Lannfelt et al.)、同第2012/0191652号(El-Agnaf)を参照こと)。アルファ-シヌクレインオリゴマーはEl Agnaf (U.S. 2014/0241987)の方法によって調製することができ、ここで、新たに調製されたα-シヌクレイン溶液は、1 :7のモル比(α-シヌクレイン:ドーパミン)でドーパミンと混合され、37℃でインキュベートされた。アルファ-シヌクレインの異なるオリゴマー形態に対する抗体はまた、Emadi et al. (“Isolation of a Human Single Chain Antibody Fragment Against Oligomeric α-Synuclein that Inhibits Aggregation and Prevents α-Synuclein-induced Toxicity”, J Mol Biol. 2007; 368:1132-1144. [PubMed: 17391701])(二量体および四量体)およびEmadi et al. (“Detecting Morphologically Distinct Oligomeric Forms of α-Synuclein”, J Biol Chem. 2009; 284:11048-11058. [PubMed: 19141614])(三量体および六量体)において記載されている。プロトフィブリル結合抗体は、例えば、U.S. 2013/0309251 (Nordstrom et al.)に記載されている。
【0099】
モノマーアルファ-シヌクレインは、シヌクレインのオリゴマー形態によって一意的に認識される抗体を使用するイムノアッセイによってポリマーアルファ-シヌクレインと識別することができる。別の方法は、例えば質量分析を使用する、質量差の検出を伴う。蛍光方法を使用することができる。(例えば、Sangeeta Nath, et al.,“Early Aggregation Steps in α-Synuclein as Measured by FCS and FRET: Evidence for a Contagious Conformational Change” Biophys J. 2010 Apr 7; 98(7): 1302-1311, doi: 10.1016/j.bpj.2009.12.4290; およびLaura Tosatto et al.,“Single-molecule FRET studies on alpha-synuclein oligomerization of Parkinson’s disease genetically related mutants”, Scientific Reports 5, December 2015を参照のこと)。別の方法は、総アルファシヌクレインの測定、続いて非病理学的アルファシヌクレインのプロテイナーゼK消化および残存するアルファシヌクレインの検出を伴う。別の方法はアルファシヌクレイン近接ライゲーションアッセイを伴う。タンパク質ライゲーションアッセイプローブは、推定される相互作用に関与するタンパク質の各々についてのものである、関心対象のタンパク質に対して惹起された抗体から作製され、これらは短いオリゴヌクレオチドへコンジュゲートされる。プローブが相互作用タンパク質に結合する場合、オリゴヌクレオチドは増幅反応をプライミングするために十分に接近しており、これは、タグ化オリゴヌクレオチドによって検出され得、点状シグナルとして観察され得、各点は相互作用を示す。(Roberts RF et al.,“Direct visualization of alpha-synuclein oligomers reveals previously undetected pathology in Parkinson’s disease brain. Brain”, 2015;138:1642-1657. doi: 10.1093/brain/awv040、およびNora Bengoa-Vergniory et al., “Alpha-synuclein oligomers: a new hope”, Acta Neuropathol. 2017; 134(6): 819-838)。
【0100】
モノマーに対するアルファ-シヌクレインのオリゴマー形態の相対量は、比率として表すことができる。
【0101】
数量または量は、例えば、体積当たりの質量によって、アッセイからの信号出力として、または、例えば標準曲線からの、変換後の絶対量として、表すことができる。
【0102】
試料中のアルファ-シヌクレイン種をさらに層別化することができる。例えば、オリゴマー種は、より低度のオリゴマー、例えば、2~24の単量体単位、より高度のオリゴマー、例えば、24~100の単量体単位、またはプロトフィブリルなどへ分けることができる。
【0103】
b)アミロイドβ
オリゴマーおよびモノマーは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して識別することができる。このアッセイはサンドイッチELISAに似ている。Aβモノマーは1つのエピトープを含有し、一方、オリゴマーは複数のこれらのエピトープを含有する。従って、上記ユニークエピトープに向かうエピトープ重複抗体が、捕捉および検出抗体のために使用される場合、特異的かつユニークなエピトープへの結合は、これら2つの抗体間での競合を生じさせるだろう。換言すると、モノマーは、捕捉抗体または検出抗体によって占有され、その両方によってではないだろう。("Oligomeric forms of amyloid-β protein in plasma as a potential blood-based biomarker for Alzheimer's disease”, Wang MJ et al. Alzheimers Res Ther. 2017 Dec 15;9(1):98.“Potential fluid biomarkers for pathological brain changes in Alzheimer's disease: Implication for the screening of cognitive frailty”, Ruan Q et al., Mol Med Rep. 2016 Oct; 14(4):3184-98. "Methods for the Specific Detection and Quantitation of Amyloid-β Oligomers in Cerebrospinal Fluid,” Schuster J, Funke SA. J Alzheimers Dis. 2016 May 7;53(1):53-67)。
【0104】
検出のためのアミロイドβのオリゴマー形態としては、例えば、アミロイドβの4~24量体が挙げられる。
【0105】
c)タウ
生体液、例えばCSF中のタウオリゴマーは、抗タウオリゴマー抗体を使用してELISAおよびウェスタンブロット分析によって測定することができる(Sengupta U, et al., “Tau oligomers in cerebrospinal fluid in Alzheimer's disease”, Ann Clin Transl Neurol. 2017 Apr; 4(4): 226-235。
【0106】
検出のためのタウのオリゴマーは、例えば、低分子量オリゴマー、例えば、20量体以下、例えば、3~18量体を含む。脳脊髄液中の溶性オリゴマーの存在は、ウェスタンブロットおよびサンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法(sELISA)を用いてモノクローナル抗オリゴマー抗体で検出することができる。David, MA et al.,“Detection of protein aggregates in brain and cerebrospinal fluid derived from multiple sclerosis patients”, Front Neurol. 2014 Dec 2;5:251。タウのオリゴマー形態はオリゴマータウの過リン酸化形態を含む。
【0107】
d)ハンチンチン
最近の定量化研究はTR-FRETベースのイムノアッセイを使用した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)および時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR-FRET)を組み合わせる一つの検出方法は、脳内における天然可溶性mHtt種および不溶性凝集体の形成および凝集の分解および定義を可能にする。“Fragments of HdhQ150 mutant huntingtin form a soluble oligomer pool that declines with aggregate deposition upon aging”, Marcellin D. et al., PLoS One. 2012;7(9):e44457。
【0108】
様々な公表された技術が、オリゴマーハンチンチン種をアッセイするために使用されており、これらは、例えば、アガロースゲル電気泳動(AGE)分析(天然もしくは軽度変性、0.1 % SDS条件下またはBlue-Native PAGE、天然条件下)を含み、これは、多数の免疫反応性オリゴマーを提供し;抗ハンチンチン抗体は、特異的ハンチンチンオリゴマーを差別的に認識する。
【0109】
ワンステップTR-FRETベースイムノアッセイが、細胞および組織ホモジネート中の可溶性および凝集mHttを定量化するために開発された(TR-FRET-based duplex immunoassay reveals an inverse correlation of soluble and aggregated mutant huntingtin in Huntington's disease. Baldo B, et al., chem Biol. 2012 Feb 24;19(2):264-75)。
【0110】
時間分解Forsterエネルギー移動(TR-FRET)ベースアッセイは、関心対象のタンパク質の定量化について広く用いられるハイスループットの、均一な、高感度イムノアッセイである。TR-FRETは短い距離に対して非常に感受性であり、従って、選択的抗体によって認識されるような標的タンパク質上に存在するエピトープの露出および相対的位置の検出に基づいて構造情報を提供することができる。本発明者らは、異なるアミノ末端HTTエピトープに特異的な抗体の使用に基づいてHTTタンパク質を定量化するためのTR-FRETアッセイを以前報告した(Fodale, V. et al.,“Polyglutamine- and temperature-dependent conformational rigidity in mutant huntingtin revealed by immunoassays and circular dichroism spectroscopy”, PLoS One. 2014 Dec 2;9(12):e112262. doi:10.1371/journal. pone.0112262. eCollection 2014。
【0111】
C.細胞外小胞細胞外小胞の単離
エキソソームは、中間エンドサイトーシス区画である、多小胞体(MVB)の、原形質膜との融合時に細胞から放出されると考えられている細胞外小胞である。
【0112】
細胞外小胞を単離する多くの方法が当技術分野において公知である。これらとしては、例えば、免疫親和性捕捉方法、サイズベースの単離方法、分画超遠心分離、細胞外小胞沈殿、およびマイクロ流体ベースの単離技術が挙げられる。(Loov et al., “α-Synuclein in Extracellular Vesicles: Functional Implications and Diagnostic Opportunities”, M. Cell Mol Neurobiol. 2016 Apr;36(3):437-48. doi: 10.1007/s10571-015-0317-0)。
【0113】
試料中の細胞外小胞の量は、多数の方法のいずれによっても決定することができる。これらとしては、例えば、(a)免疫親和性捕捉(IAC)、(b)非対称フローフィールドフローフラクショネーション(AF4)、(c)ナノ粒子トラッキング解析(NTA)、(d)動的光散乱(DLS)、および(e)表面プラズモン共鳴(SPR)が挙げられる。許可を得て転載。免疫親和性捕捉(IAC)は、間接的単離方法を用いる免疫親和性による細胞外小胞捕捉技術である。IACは、色、蛍光、または電気化学信号を解析することによって細胞外小胞を定量化する。非対称フローフィールドフローフラクショネーション(AF4)は、フィールドフローフラクションおよび拡散を用いて分子を分離および定量化する。ナノ粒子トラッキング解析(NTA)は、粒子をそれらのサイズに従って分離および定量化する。NTAは、粒子を分析するためにブラウン運動の速度を用いる。この技術はまた、光散乱技術を用いて細胞外小胞の濃度およびサイズを追跡する。動的光散乱(DLS)は、ブラウン運動を示す粒子によって散乱される光によって粒度を決定する。表面プラズモン共鳴(SPR)は、SPRセンサー表面上の受容体で細胞外小胞を捕捉する免疫親和性ベースのアッセイである。結合が受容体の光信号を変化させ、次いで、それらの共鳴が光源で定量化され得る。別の方法では、細胞外小胞は、電子顕微鏡法によって、例えば、Zeiss LSM 200透過型電子顕微鏡において120 kVで視覚化することによって、調べることができる。
【0114】
1.免疫親和性捕捉
免疫親和性捕捉方法は、抽出部分へ結合された抗体を使用し、細胞外小胞に結合し、試料中の他の材料からそれらを分離する。固体支持体は、例えば、磁気的に誘引可能な微粒子であり得る。ラテックスイムノビーズを使用することができる。
【0115】
Qiagenは、血清、血漿、細胞培養上澄みおよび他の生体液から細胞外小胞および他の細胞外小胞を効率的に単離するために膜親和性スピンカラムを使用するとしてそのexoEasy Maxi Kitに記載している。
【0116】
2.サイズベースの方法
サイズベースの単離方法としては、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーおよび限外濾過が挙げられる。サイズ排除クロマトグラフィーにおいて、多孔性固定相が、サイズに基づいて細胞外小胞を分離するために使用される。限外濾過において、多孔性膜フィルターが、それらのサイズまたは分子量に基づいて細胞外小胞を2つに分離するために使用される。
【0117】
3.分画超遠心分離
分画超遠心分離は、試料中の他の成分から密度およびサイズの差に基づいて細胞外小胞を単離するために、異なる遠心力および期間の、一連の遠心分離サイクルを伴う。遠心力は、例えば、約100,000~120,000 x gであり得る。タンパク質分解を防ぐために、プロテアーゼ阻害剤を使用することができる。試料から他の大きな物質を除去するために、事前の浄化ステップを使用することができる。
【0118】
4.密度勾配超遠心分離
密度勾配超遠心分離は、スクロース、Nycodenz (イオヘキソール)、およびイオジキサノールなどの勾配媒体を用いて細胞外小胞を選別する。細胞外小胞は、超遠心分離によって層へ単離され、ここで、勾配媒体の密度は細胞外小胞のそれに等しい。
【0119】
5.ポリマーベースの方法
細胞外小胞は、それらの可溶性または分散性を変えることによって生物学的物質の溶液から単離することができる。例えば、例えば8000 Daの分子量を有する、ポリエチレングリコール(PEG)などのポリマーの添加を、溶液から細胞外小胞を沈殿させるために使用することができる。
【0120】
6.マイクロ流体ベースの方法
マイクロ流体ベースの方法を、細胞外小胞を単離するために使用することができる。これらとしては、例えば、音波、電気泳動および電磁方法が挙げられる。例えば、アコースティックナノフィルターは、それらのサイズおよび密度に従って試料中の細胞外小胞を分離するために超音波定在波を使用する。
【0121】
7.他の方法
神経由来細胞外小胞を単離する他の方法は、例えば、Kanninnen, KM et al., “Exosomes as new diagnostic tools in CNS diseases”, Biochimica et Biophysica Acta, 1862 (2016) 40 Differential ultracentrifugation-410に記載されている。
【0122】
8.神経細胞由来の細胞外小胞についての濃縮
神経細胞由来の細胞外小胞は、ニューロンによって生成される細胞外小胞である。好ましくは、研究の目的は、CNS由来細胞外小胞である、つまり、末梢神経系とは区別されて、中枢神経系において生成される細胞外小胞である。本明細書に記載の方法は、神経細胞由来の細胞外小胞、および、ひいては、CNS由来細胞外小胞について、細胞外小胞を含む生体試料を濃縮する。神経細胞由来の細胞外小胞について濃縮された試料は、濃縮されていない類似のタイプの試料(例えば、血液試料)と比べて、より高い比率の、神経細胞由来の細胞外小胞 対 非神経細胞由来エキソソームを有する。従って、例えば、濃縮は、未濃縮試料と比べて、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍であり得る。神経細胞由来の細胞外小胞について濃縮された試料において、神経細胞由来の細胞外小胞は、全ての細胞外小胞の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも98%を構成し得る。
【0123】
免疫親和性方法は、脳特異的バイオマーカー(例えば、神経および神経膠マーカー)を使用して神経細胞由来の細胞外小胞を単離するために有用であり、1つのそのようなマーカーはL1CAMである。別のマーカーはKCAMである。他の、比較的脳に特異的なタンパク質もまたこの能力において役立ち得る。神経細胞由来の細胞外小胞は、例えば、KCAM、L1CAMおよびNCAMおよびDAT(ドーパミントランスポーター)を含む、脳に関連するタンパク質マーカーによって特徴付けられる。(例えば、US 2017/0014450、US 2017/0102397、US 9,958,460を参照のこと)。神経細胞由来の細胞外小胞は、親和性捕捉方法を使用して単離することができる。そのような方法は、例えば、L1CAMなどの特異的マーカーに対する抗体へ結合された常磁性ビーズを含む。(例えば、Shi et al., “Plasma exosomal α-alpha-synuclein is likely CNS derived and increased in Parkinson’s disease”, Acta Neuropathol. 2014 November; 128(5): 639-650を参照のこと)。
【0124】
別の方法では、神経細胞由来エキソソームについて濃縮するために抗CD171を使用することができる。
【0125】
ドーパミン産生ニューロン由来の細胞外小胞は、チロシンヒドロキシラーゼの存在によって特徴付けられる。THを標的とする免疫親和性方法によってそのような細胞外小胞について試料を濃縮することができる。
【0126】
D.細胞外小胞内容物
ヒト神経変性疾患の病因へ結び付けられる、キナーゼを含む多くのタンパク質は、CNSの外側でならびに脳内で生成され、細胞外小胞の外表面へ付着され得、これは、血液脳関門を通り抜けて末梢循環に達する。従って、本明細書に開示される方法のある態様において、エキソソーム画分は、エキソソーム表面へ結合された分子を除去するために処理される。これは、例えば、リン酸緩衝液液(PBS)でなど、ストリンジェントな洗浄手順によって行われ得る。そのような処理後、細胞外小胞の内容物をアッセイのために処理することができる。
【0127】
スクラブド細胞外小胞を次いで溶解し、それらの内部内容物を分析のために放出させることができる。
【0128】
IV.神経変性状態の診断、病期、進行、予後および発症リスクの決定
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、より選択される生体試料中のバイオマーカーの量を含む、バイオマーカープロフィール、ならびに経時的なプロフィールの変化は、神経変性タイプの神経変性状態の存在、重症度および方向性を示す。例えば、本明細書に開示されるタンパク質バイオマーカーの、異常な比率、例えば、上昇した量は、神経変性のプロセスを示す。このプロセスは、検査されずに、シヌクレイノパチー状態における症状を発現するように至らせ得る。従って、1つまたは複数のバイオマーカータンパク質の異常な量によって特徴付けられる神経変性状態(各々、本明細書において、「ニューロパチー状態」、例えば、「シヌクレイノパチー状態」、「アミロイドパチー状態」、「タウオパチー状態」、「ハンチントン状態」と呼ばれる)の診断、病期、進行、速度、予後、薬物反応性および発症リスクを対象(例えば、症候性または無症候性の個体)において確認する方法を本明細書に提供する。
【0129】
本明細書において使用される場合、用語「診断」は、例えば、その状態の病期を含む、特定の病原性状態を有するかまたは有さないとしての個体の分類を指す。
【0130】
本明細書において使用される場合、用語「臨床的に類似しているが病因的に異なる」は、臨床的徴候および/または症状を共有するが、異なる生物学的原因に起因する、状態を指す。
【0131】
本明細書において使用される場合、用語「病期」は、状態の重症度の相対的な程度、例えば、疾患の疑いあり、初期、中期または進行期を指す。病期分類は、病因、病態生理学、重症度などに基づいて患者をグループ化するために使用することができる。
【0132】
本明細書において使用される場合、用語「進行」は、経時的な状態の病期または重症度の、変化、またはその欠如を指す。これは、状態の重症度の増加、減少または停滞を含む。ある態様において、進行の速度、即ち、経時的な変化を測定する。
【0133】
本明細書において使用される場合、用語「予後」は、状態の予測される経過、例えば、進行の見込みを指す。例えば、予後は、状態の重症度が、将来ある時点で増加する、減少するまたは同じままである可能性が高いという予測を含み得る。本開示の文脈において、予後は、個体が、以下となる見込みを指し得る:(1)神経変性状態を発症する、(2)状態のある病期から別の、より進行した、病期へ進行する、(3)状態の重症度の減少を示す、(4)ある速度で機能低下を示す、(5)一定期間、ある状態と共に生存する(例えば、生存率)、または(6)状態の再発を有する。状態は、シヌクレオパチー状態(例えば、PD、レヴィー小体認知症、多系統萎縮症またはいくつかの関連するシヌクレイノパチー)、アミロイドパチー状態(例えば、アルツハイマー病)、タウオパチー状態(例えば、アルツハイマー病)、およびハンチントン病であり得る。これらの用語は、医療診断の分野の当業者によって認識されるように、絶対的であるようには意図されない。
【0134】
本明細書において使用される場合、用語「発症するリスク」は、無症候または症状発現前である個人が疾患の確定診断へ発展する確率を指す。確率を決定することは、「どちらかといえば多分」、「可能性が高い」、「可能性が低い」、またはパーセント見込み、例えば、「90%」などの、正確な確率および相対的確率の両方を含む。リスクは、一般集団と比較することができ、または、年齢、性別、遺伝的リスク、および環境的リスク因子のいずれかに基づいて対象と一致させた集団と比較することができる。そのような場合、対象は、集団の他のメンバーと比較して増加したまたは減少したリスクがあると決定され得る。神経変性状態を発症するリスクが高い対象は、神経変性状態についての処置に対して、例えば、状態の発症の予防、状態の発症の遅延、または症状の重症度もしくは状態に関連する罹患率の低下によって、ポジティブに反応する可能性が高い。
【0135】
V.神経変性状態の診断、病期、進行、予後および発症リスクを推測するためのキナーゼのプロフィールのモデリング
神経変性状態の診断、病期、進行、予後およびリスクを決定することは、疾患/健康(診断)、ステージI/ステージII/ステージIII(病期)、寛解する可能性が高い/進行する可能性が高い(予後)またはある範囲におけるスコアを割り当てることなどの、異なる状態またはある状況内の異なるクラスもしくは状態へ、対象を分類するプロセスである。バイオマーカープロフィールを使用する分類方法は、様々な状況に特徴的であるプロフィールを同定すること、およびクラスまたは状況を有する対象由来のプロフィールと関連付けることを伴い得る。そのようなプロフィールを同定することは、異なる状況に属する対象由来のバイオマーカープロフィールの解析、およびパターンまたはプロフィール間の差異を見分けることを伴う。解析はプロフィールの目視検査によってまたは解析によって行うことができる。
【0136】
A.解析
本明細書において使用される場合、用語「解析」は、入力を出力に変換する(例えば、入力を出力にマッピングする)任意のアルゴリズムまたは関数を指す。解析としては、非限定的に、統計解析、機械学習解析、ニューラルネット解析が挙げられる。
【0137】
典型的に、解析は、統計的に有意な結果を提供するために十分に多い数の試料の解析を伴う。当技術分野における公知の任意の統計法を、この目的のために使用することができる。そのような方法、またはツールとしては、非限定的に、相関、ピアソン相関、スピアマン相関、カイ二乗、平均値の比較(例えば、対応のあるT検定、独立T検定、ANOVA)、回帰分析(例えば、単回帰、重回帰、線形回帰、非線形回帰、ロジスティック回帰、多項回帰、段階的回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、エラスティックネット回帰)またはノンパラメトリック分析(例えば、ウィルコクソン順位和検定、ウィルコクソン符号順位検定、符号検定)が挙げられる。そのようなツールは、MATLAB、JMP Statistical SoftwareおよびSASなどの市販の統計パッケージ中に含まれている。そのような方法は、特定のバイオマーカープロフィールを特定の状況へ分類するために使用することができるモデルまたはクラシファイヤーを作る。
【0138】
解析は、オペレーター実行され得るかまたは機械学習によって実行され得る。
【0139】
B.機械学習
ある態様において、解析は、機械学習ツールの使用によって増強される。そのようなツールは学習アルゴリズムを用い、ここで、関連する変数(複数可)が、異なる可能な状況において測定され、状況を区別するパターンが決定され、試験対象を分類するために使用される。従って、本開示の任意の分類方法が、特定のシヌクレイノパチー状況内の様々な状態に属する対象における1つまたは複数の変数の測定を比較することによって、開発され得る。これは、例えば、様々な診断を有するかまたは様々な時点での様々な病期にある対象における、(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、より選択されるバイオマーカーの量を含む、バイオマーカープロフィールを決定し、診断、病期、進行、予後、薬物反応性またはリスクの予測を可能にすることを含む。家族歴、生活習慣、化学物質への曝露、様々な表現型形質などの、他の変数が同様に含まれ得る。
【0140】
1.訓練データセット
訓練データセットは、複数の対象(より一般にはオブジェクトと呼ばれる)の各々についての複数の特徴の各々についての測定値のベクターを典型的に含むデータセットである。特徴のうちの1つは、対象の分類、例えば、診断またはスケールにおける程度の測定値であり得る。これは、教師あり学習法において使用され得る。他の特徴は、例えば、(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、より選択されるバイオマーカーの測定量であり得る。従って、例えば、個々の対象についてのベクターは、神経変性状態の診断(例えば、パーキンソン病を有すると診断されたまたは有すると診断されなかった)、ならびに本明細書に記載される複数のバイオマーカーのうちの各々の測定値を含み得る。ある態様において、クラシファイヤーを作製するために使用される訓練データセットは、少なくとも100、少なくとも200、または少なくとも400の異なる対象からのデータを含む。状態を有すると分類された対象 対 状態を有さないと分類された対象の比は、少なくとも2:1、少なくとも1:1、または少なくとも1:2であり得る。代わりに、状態を有すると事前分類された対象は、対象の66%以下、50%以下、33%以下、または20%以下を含み得る。
【0141】
2.学習アルゴリズム
機械学習アルゴリズムとも呼ばれる、学習アルゴリズムは、例えば、クラスタリング、分類またはプロフィール認識について、解析モデル構築を自動化する、コンピューター実行アルゴリズムである。学習アルゴリズムは、アルゴリズムへ提供された訓練データセットに対して解析を行う。
【0142】
学習アルゴリズムは、クラシファイヤー、分類アルゴリズムまたは診断アルゴリズムとも呼ばれる、モデルを出力する。モデルは、インプットとして、テストデータを受け入れ、アウトプットとして、診断、病期、予後、疾患進行、薬物に対する反応性などの、いずれかのクラス、クラスター群またはスケールにおける位置に属するとしての入力データの推測または分類を生じさせる。
【0143】
様々な機械学習アルゴリズムを、対象の状態または状況を推測するために使用することができる。機械学習アルゴリズムは、教師ありまたは教師なしであり得る。学習アルゴリズムとしては、例えば、人工神経回路網(例えば、バックプロパゲーションネットワーク)、判別分析(例えば、BayesianクラシファイヤーまたはFischer分析)、サポートベクターマシン、デシジョンツリー(例えば、再帰分割プロセス、例えば、CART - 分類および回帰ツリー)、ランダムフォレスト、線形分類器(例えば、多重線形回帰(MLR)、部分最小二乗(PLS)回帰および主成分回帰(PCR))、階層的クラスタリングならびにクラスター解析が挙げられる。学習アルゴリズムは、推測、例えば、対象の疾患状況についての推測を行うために使用することができるモデルまたはクラシファイヤーを作る。
【0144】
3.検証
モデルは、検証データセットを使用して続いて検証され得る。検証データセットは、典型的に、訓練データセットと同じ特徴についてのデータを含む。モデルが訓練データセットに対して実行され、真陽性、真陰性、偽陽性および偽陰性の数が、モデルの性能の指標として、決定される。
【0145】
モデルは、次いで、その有用性を決定するために検証データセットに対して試験され得る。典型的に、学習アルゴリズムは複数のモデルを作製する。ある態様において、モデルは、検討中の状態を診断するために使用される標準臨床的尺度に対する忠実度に基づいて検証することができる。これらのうちの1つまたは複数が、その性能特性に基づいて選択することができる。
【0146】
C.モデル実行および推測実施
選択されたモデルは、オペレーター実行解析または機械学習のいずれかに由来し得る。いずれの場合でも、モデルは、試験対象について推測(例えば、予測)を行うために使用され得る。例えば、モデルによって使用される特徴の値を含有する、ベクターを含む、例えば、試験データセットの形態の、バイオマーカープロフィールは、試験対象から採取された試料から作成することができる。試験データセットは、訓練データセット中に使用された同じ特徴の全て、またはこれらの特徴のサブセットを含み得る。モデルは、次いで、試験データセットへ適用されるかまたはこれに対して実行される。バイオマーカープロフィールを状態、疾患状況、予後、進行のリスク、薬物応答の見込みなどと関連付けることは、モデルを実行する形式である。関連付けは人によって、または機械、例えば、プログラム可能なデジタル式コンピューターによって、行うことができる。選択は関連付けの操作の複雑さに依存し得る。これは、推測、例えば、クラスもしくはクラスター群(例えば、診断)、またはスケールにおける場所(例えば、治療的介入に対して反応する見込み)に属するとしての対象の分類をもたらす。
【0147】
ある態様において、クラシファイヤーは、神経変性関連タンパク質の、複数のオリゴマータンパク質形態および、典型的に、しかし必ずではなく、1つまたは複数のモノマー形態を含む。クラシファイヤーは、例えば、形式AX+BY+CZ = Nの、線形モデルであってもなくてもよく、ここで、A、BおよびCは、形態X、YおよびZの測定量である。クラシファイヤーは、例えば、サポートベクターマシン解析を必要とし得る。例えば、推測モデルはパターン認識を行い得、ここで、バイオマーカープロフィールは、正常と異常との間のスケール上にあり、様々なプロフィールが正常の方へまたは異常の方へ、より向かっている。従って、クラシファイヤーは、プロフィールが正常または異常である信頼水準を示し得る。異常なバイオマーカープロフィールは、分類アルゴリズムによって解析される場合、疾患が存在する、または疾患のリスクが高いなどの、非正常カテゴリーに対象を分類するプロフィールであり得る。バイオマーカーの測定値は、測定値が正常と見なされる範囲の外にある場合、例えば、統計的に有意である正常範囲からの逸脱の場合、異常であり得る。
【0148】
クラシファイヤーまたはモデルは、1つまたは複数の測定された形態から、モデルとして機能する単一の診断数を生じさせ得る。神経病理学的状況、例えば、シヌクレオパチー状況(例えば、診断、病期、進行、予後およびリスク)を分類することは、診断数が閾値(「診断レベル」)を上回るかまたは下回るかどうかを決定することを伴い得る。例えば、診断数は、2つの異なるシグナル伝達キナーゼの相対量であり得る。その閾値は、例えば、神経変性(例えば、シヌクレオパチー)状態のいかなる徴候も有さない正常な個体を上回る診断数の一定の偏差に基づいて決定することができる。診断数の、平均値、中央値または最頻値などの、代表値は、統計的に有意な数の正常および異常な個体において決定することができる。正常な量を上回るカットオフは、神経変性(例えば、シヌクレイノパチー)状態の診断レベルとして選択され得る。その数は、例えば、変動または標準偏差などの、代表値からの偏差の一定の程度であり得る。一態様において、偏差の測定値は、正常平均値からの標準偏差のZスコアまたは数である。
【0149】
モデルは、所望のレベルの感度、特異性または陽性予測力を提供するように選択され得る。例えば、診断レベルは、少なくとも80%、90%、95%もしくは98%のいずれかの感度、および/または少なくとも80%、90%、95%もしくは98%のいずれかの特異性、および/または少なくとも80%、90%、95%もしくは98%のいずれかの陽性予測値を提供することができる。試験の感度は、陽性の試験結果が出る実際の陽性のパーセンテージである。試験の特異性は、陰性の試験結果が出る実際の陰性のパーセンテージである。試験の陽性予測値は、陽性の試験結果が出る対象が実際の陽性である確率である。
【0150】
1.例示的なインデックス
一つの方法では、インデックスまたはクラシファイヤーはいくつかの変数の関数である。これらの変数は、(1)シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、からなる、2つ以上のグループからのバイオマーカーを含む。あるインデックスは、少なくとも1つまたは複数のシグナル伝達キナーゼおよび1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、特に、神経変性関連タンパク質のオリゴマー形態を使用する。他のインデックスは、3つのグループ全てのバイオマーカーを使用する。他のインデックスは、1つまたは複数のシグナル伝達キナーゼおよび1つまたは複数の触媒酵素の両方を使用する。他のインデックスは、1つまたは複数のシグナル伝達キナーゼ、1つまたは複数の触媒酵素および1つまたは複数の神経変性関連タンパク質形態を使用する。他のインデックスは、1つまたは複数のシグナル伝達キナーゼ、1つまたは複数の触媒酵素、1つまたは複数の神経変性関連タンパク質形態および1つまたは複数のmiRNAを使用する。
【0151】
他のインデックスは、神経変性状態の上方制御バイオマーカー 対 下方制御バイオマーカーの、相対量(例えば比率)を使用する。例えば、あるインデックスは、1つまたは複数の上方制御シグナル伝達キナーゼ(例えばAKT)、1つまたは複数の上方制御触媒酵素(例えばTH-S40)、および1つまたは複数の上方制御神経変性関連タンパク質形態(例えばアルファシヌクレインオリゴマー)を含むグループ;ならびに1つまたは複数の下方制御シグナル伝達キナーゼ(例えばMAPK)、1つまたは複数の下方制御触媒酵素(例えばTH(総タンパク質))(またはあるリン酸化形態、例えばTH S40(数ある中でも)で測定される場合には相対的に上方制御され、またはPD症状の処置のためのドーパミン作動薬の投与中には相対的に下方制御される)を含むグループの相対量を使用する。他のインデックスは、複数の上方制御シグナル伝達キナーゼ(例えばAKT)、1つまたは複数のシヌクレインオリゴマーおよび1つまたは複数のmiRNAを含むグループ、ならびに複数の下方制御シグナル伝達キナーゼ(例えばMAPK)および1つまたは複数の下方制御触媒酵素(例えばTH(例えば総タンパク質)を含むグループの相対量を使用する。
【0152】
図7を参照して、本開示は様々な診断インデックスを企図する。診断インデックスは、バイオマーカーセットとして、(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、を使用することができる。
【0153】
神経変性疾患についての診断インデックスは、1つまたは複数のリン酸化シグナル伝達キナーゼの関数であり得る。(図7、インデックス1)。例えば、インデックスは複数のシグナル伝達キナーゼを含み得る。パーキンソン病についての一つのそのようなインデックスは、AKTおよびMAPK3の、相対量の関数である。このインデックスの増加は、パーキンソン病と正に関連する。(図7、インデックス2)。
【0154】
別のインデックスにおいて(図7、インデックス3)、診断は、1つまたは複数のシグナル伝達キナーゼ、1つまたは複数の触媒酵素、1つまたは複数の神経変性関連タンパク質形態および1つまたは複数のマイクロRNAの関数である。
【0155】
パーキンソン病についての別のインデックスにおいて、インデックスは、AKT、リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ、miRNA、MAPK3、および総または非リン酸化チロシンヒドロキシラーゼの関数であり;また、一つのバージョンでは、(AKT、リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ、miRNA) 対 (MAPK3および総/非リン酸化チロシンヒドロキシラーゼタンパク質)の、相対量の関数である。(図7、インデックス4)。
【0156】
パーキンソン病についての別のインデックスにおいて、インデックスは、AKT、リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ、1つまたは複数の神経変性関連タンパク質形態、MAPK3、および非リン酸化チロシンヒドロキシラーゼの関数であり;また、一つのバージョンでは、(AKT、リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ、1つまたは複数の神経変性関連タンパク質形態) 対 (MAPK3および非リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ)の、相対量の関数である。(図7、インデックス5)。
【0157】
パーキンソン病についての別のインデックスにおいて、診断は、AKT、MAPK、任意選択の第2および第3のシグナル伝達キナーゼ、1つまたは複数の触媒酵素、1つまたは複数の神経変性関連タンパク質形態ならびに1つまたは複数のマイクロRNAの関数である。パーキンソン病についての特定のバージョンでは、インデックスは、AKT、第2のシグナル伝達キナーゼ、1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、1つまたは複数のmiRNA、MAPK3、第4のシグナル伝達キナーゼおよび非リン酸化チロシンヒドロキシラーゼの関数である。一つのバージョンでは、インデックスは、(AKT、第2のシグナル伝達キナーゼ、1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および1つまたは複数のmiRNA) 対 (MAPK3、第4のシグナル伝達キナーゼおよび非リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ)の、相対量の関数である。(図7、インデックス6)。AKTは、AKT S473などの、そのリン酸化形態で測定することができる。MAPK3は、そのリン酸化形態MAPK T202で測定することができる。
【0158】
VI.神経変性状態を処置するための治療的介入の開発
別の局面において、神経変性状態、例えば、シヌクレオパチー状態、アミロイドパチー状態、タウオパチー状態、およびハンチントン病についての治療的介入の実際的な開発を可能にする方法を、本明細書に提供する。方法は、数ある中でも、臨床試験について対象を選択する工程、および対象のセットにおける治療的介入の有効性を決定する工程を伴う。
【0159】
神経変性関連タンパク質のバイオマーカープロフィールをモニタリングする工程を含む方法は、実験的治療的介入がシヌクレイノパチーの臨床的発症の予防もしくはその後の進行の阻害において有効であるかどうか、または、そのような状態を処置するための薬物候補の効能を試験するために対象が臨床試験に登録されるべきかどうかを決定するために有用である。神経変性関連タンパク質のバイオマーカープロフィールまたはバイオマーカープロフィールの変化のオリゴマーおよびモノマー形態の相対量または相対量の変化率)は、例えば基礎疾患プロセスを含む、状態に対する処置効果の直接的決定を可能にする。
【0160】
A.対象登録
臨床試験は、医薬などの、潜在的な治療的介入の効能および安全性を試験するための対象の登録を伴う。典型的に、対象は、ある共通の特徴に基づいて選択されるが、対象はまた、状況の他の状態において重要な差異が明らかであるようにも選択される;例えば、疾患の診断を有するもしくは有さない、または異なる疾患病期にある、または異なる疾患サブタイプ、または異なる予後の対象。臨床試験対象は、同じにまたは異なって処置される異なる群へ層別化することができる。層別化は、疾患の病期を含む、任意の数の因子に基づき得る。疾患病期分類は、診断所見を使用する分類システムであり、病因、病態生理学および重症度などの因子に基づいて患者のクラスターをもたらす。それは、臨床的に均質な患者をクラスター化し、ケアの質、臨床転帰の分析、リソースの利用、および代替処置の効能を評価するための基礎として役立ち得る。
【0161】
別の方法において、潜在的な臨床試験対象は、少なくとも部分的に、バイオマーカープロフィールに対して層別化される。従って、例えば、異なるバイオマーカープロフィール(例えば、経時的変化について、より高いおよびより低い相対量または割合)を有する対象は、異なる群へ割り当てられ得る。
【0162】
臨床試験における対象の集団は、薬物が転帰において統計的に有意な差をもたらすかどうかを示すために十分であるべきである。このパワーレベルに依存して、試験中の個体の数は、少なくとも20、少なくとも100、または少なくとも500の対象であり得る。これらの中でも、神経変性状態を有することと一致するバイオマーカープロフィール(例えば、増加したレベルのバイオマーカー)を示す有意な数の個体が存在しなければならない。例えば、対象の少なくとも20%、少なくとも35%、少なくとも50%、または少なくとも66%が、そのようなバイオマーカープロフィール(例えば、シグナル伝達キナーゼの様々な種を含む)を最初に有し得る。さらに、有意な数の対象がクラス状況間で分けられる。例えば、対象の少なくとも20%、少なくとも35%、少なくとも50%、少なくとも66%または100%が、神経変性状態(例えば、シヌクレオパチー状態(例えば、PD)、アミロイドパチー状態、タウオパチー状態およびハンチントン病)の診断を最初に有し得る。
【0163】
B.薬物開発
臨床試験の開始で、異なる層別化群に対する治療的介入の有効性は、(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、より選択されるバイオマーカーを含む、バイオマーカープロフィールに対する効果の関数として迅速に決定することができる。より具体的には、バイオマーカープロフィールの変化は、治療的介入の臨床的有効性を予測する。方法は、シグナル伝達キナーゼ、および、任意で、神経変性関連タンパク質を含むバイオマーカープロフィールを決定するために、個体を先ず試験する工程を一般に伴う。測定後、治療的介入、例えば、実験的薬物を、対象の少なくともサブセットへ投与する。典型的に、対象の少なくともサブセットにプラセボを与えるかまたは処置を与えない。場合によっては、対象はそれら自身の対照として役立ち、先ずプラセボを受容し、次いで、比較のために、実験的介入を受容し、または逆を受容する。ある場合において、これは、既に認識された処置形態の投与と併せて行われ得る。集団は治療的介入の投薬、タイミングおよび投与速度によって分けられ得る。倫理規定は、統計的に有意な改善が試験対象において見られる場合には試験を中止することを要求し得る。本明細書において使用される場合、「実験的薬物」および「薬物候補」は、治療効果について試験されたかまたは試験される薬剤を指す。「推定神経保護剤」は、神経保護作用を有すると試験されたかまたは試験される薬剤を指す。
【0164】
治療的介入を施した後、バイオマーカープロフィールを再び決定し、変化率の関数としてさらに評価することができる。
【0165】
治療的介入は、薬物候補の投与であり得る。標準統計法を使用して、治療的介入が、(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、より選択されるバイオマーカーを含む、バイオマーカープロフィールに対して有意な影響を有したかどうかを決定することができる。一般に、統計的に有意な変化、特に、最初のバイオマーカープロフィールと比較しての、より正常なプロフィールの方へのシフトは、治療的介入が神経保護的であり、従って、臨床的発症を遅らせるか、または神経変性状態(例えば、シヌクレイノパチー状態、アミロイドパチー状態、タウオパチー状態、ハンチントン病)の進行を遅くするかもしくは好ましくは逆転させることを示す。
【0166】
従って、(1)少なくとも1つのシグナル伝達キナーゼ、および、任意で、神経変性関連タンパク質の少なくとも1つのオリゴマー形態、または(2)1つもしくは複数の異なるシグナル伝達キナーゼの各々より選択されるバイオマーカーを含むバイオマーカープロフィールが測定され得る対象としては、例えば、以下が挙げられる:(1)神経変性状態(例えば、シヌクレイノパチー状態、アミロイドパチー状態、タウオパチー状態、ハンチントン病)について無症候である対象;(2)最小限の神経変性疾患症状を有するかまたは神経変性状態を示唆する徴候を有さない対象(例えば、特に、ある遺伝的および/または環境的リスク因子が同定された場合、神経変性状態について「疑いあり」または「症状発現前」と診断され得る対象);(3)「可能性の高い」神経変性状態の診断を有する対象および神経変性状態と診断された(「確定診断」)対象。これらとしては以下が挙げられる:例えば、(1)シヌクレオパチー状態について無症候である対象;(2)最小限のパーキンソン病様症状を有するかまたはシヌクレイノパチー状態を示唆する徴候を有さない対象(例えば、特に、ある遺伝的および/または環境的リスク因子が同定された場合、PDまたはいくつかの関連するシヌクレイノパチーについて「疑いあり」または「症状発現前」と診断され得る対象);(3)「可能性の高い」シヌクレイノパチー(例えば、PD)の診断を有する対象およびシヌクレイノパチー状態と診断された(「確定診断」)対象。
【0167】
対象は、典型的にヒトであるが、非ヒト動物、例えば、PDについてのモデルとして使用される非ヒト動物、例えば、げっ歯動物(例えば、マウスおよびラット)、ネコ、イヌ、他の家畜化された四肢動物(例えば、ウマ、ヒツジおよびブタ)、ならびに非ヒト霊長動物(例えば、サル)も含む。動物モデルは、遺伝モデルおよび神経毒投与に基づくモデルの両方を含む。そのようなモデルにおいて使用される神経毒は、例えば、6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)および1-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)投与、ならびにパラコートおよびロテノンを含む。遺伝モデルは、SNCA (α-syn、PARK1、および4)、PRKN (パーキンRBR E3ユビキチンタンパク質リガーゼ、PARK2)、PINK1 (PTEN誘導推定キナーゼ1、PARK6)、DJ-1 (PARK7)、およびLRRK2 (ロイシンリッチリピートキナーゼ2、PARK8)における遺伝子突然変異を含む。
【0168】
シヌクレイノパチーなどの神経変性状態のための神経保護療法についての臨床試験は、潜在的な療法の有効性を即座に示す尺度を必要とする。そうでなければ、非定量的な性質についての臨床観察に基づく薬効の決定には、何カ月もかかる。神経変性関連タンパク質オリゴマー、および、任意で、モノマーを含むバイオマーカープロフィールは、そのような尺度を提供し、従って、PDなどの致命的な脳障害に罹患している対象における疾患修飾薬物効能の実際的な評価を可能にする。
【0169】
C.検証
対象は、臨床症状において臨床的に有意な改善を示す場合、治療に対して反応すると言われる。試験される薬物の効能は、典型的には、臨床的測定によって、例えば、疾患の症状、徴候および病期を決定することによって、検証される。そのような臨床的尺度としては、修正ホーン・ヤールの重症度分類尺度および統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)などの、本明細書に記載のものが挙げられる。本明細書に記載されるバイオマーカープロフィールもまた、治療に対する反応の指標を提供し、他の形態の臨床評価よりも遥かに早い時期にそうすることができる。これは、典型的には、薬物が従来の方法を使用して検証された後に起こる。しかし、バイオマーカープロフィールは、対象または対象の集団における薬物の効能を決定するために、臨床マーカーに加えて、または臨床マーカーの代わりに使用することができる。例えば、治療開始から約18ヶ月後になって初めて従来の手段によって検出することができる反応は、バイオマーカープロフィールにおいては、治療開始後わずか12ヶ月、6ヶ月または3ヶ月で検出することができる。従って、いくつかの態様において、治療に対する反応の決定は、第1の時点で対象の第1バイオマーカープロフィールを決定し、治療的介入を対象に施すこと;治療的介入を施した後、例えば、治療開始の約1ヶ月以内、3ヶ月以内、6ヶ月以内、9ヶ月以内、12ヶ月以内、15ヶ月以内、または18ヶ月以内のいずれかで第2バイオマーカープロフィールを決定すること;および、変化を同定するために第1および第2のバイオマーカープロフィールを比較することを含む。バイオマーカープロフィールにおいて統計的に有意な差がないことは、治療に対する反応がないことを示す。正常なバイオマーカープロフィールの方への統計的に有意な変化は、治療に対する肯定的な反応を示し、一方、正常なプロフィールから離れた統計的に有意な変化は、治療または疾患の進行に対する否定的な反応を示す。治療的介入が開始される前に正常なプロフィールがわかっている場合、第1のバイオマーカープロフィールの測定は省略することができ、決定は第2のバイオマーカープロフィールに依存することができる。
【0170】
バイオマーカー解析に基づき治療的介入の効果がないとの早期の証明は、治療的介入を施すことを取りやめるために使用することができ、それに伴うリスク、ひいては治験参加者の安全性を改善する。
【0171】
VII.処置方法
本明細書に記載されるようなバイオマーカープロフィールに基づいて対象が分類される神経変性状態(例えば、シヌクレオパチー状態、アミロイドパチー状態、タウオパチー状態、ハンチントン病)の病期またはクラスに依存して、対象は治療的介入の必要があり得る。本明細書に開示される方法によって、神経変性状態(例えば、シヌクレオパチー状態、およびアミロイドパチー状態、タウオパチー状態、ハンチントン病)を示すと決定された対象を、状態を処置するために有効な治療的介入で処置する方法を本明細書に提供する。シグナル伝達キナーゼのレベル、および、任意で、神経変性関連タンパク質のレベルを変化させる治療的介入、特に、それを戻す治療的介入は、有効な処置、例えば、本明細書中の方法によって開発され、そして臨床的に検証された治療的介入を反映する。
【0172】
本明細書において使用される場合、用語「治療的介入」、「療法」および「処置」は、治療効果または有益な効果をもたらす(例えば、「治療的に有効」である)介入を指す。治療的に有効な介入は、シヌクレイノパチー状態などの疾患を、予防する、その進行を遅くする、その症状の発症を遅らせる、その状態を改善する(例えば、その寛解をもたらす)、その症状を改善する、またはそのQOLを改善する、またはその寿命を延ばす、または治癒する。治療的介入は、例えば、処置の投与、医薬、または治療的意図を持っての生物学的もしくは栄養補助物質の投与を含み得る。治療的介入は、典型的には、医療ケアのプロ、例えば医師または看護師によって施される。治療的介入に対する反応は完全または部分的であり得る。いくつかの局面において、疾患の重症度は、例えば、投与前の個体または処置を受けない対照個体と比較した場合、少なくとも10%減少する。いくつかの局面において、疾患の重症度は、少なくとも25%、50%、75%、80%、または90%減少するか、または場合によっては、標準診断技術を使用してもはや検出可能でない。対象のあるサブグループが療法に対して反応しない場合があることを認識して、治療有効性の一つの尺度は、少なくとも100人の対象に関して、介入を受けている対象の少なくとも90%についての有効性であり得る。
【0173】
本明細書において使用される場合、治療的介入(「有効な処置」もしくは「に対して有効な処置」)または薬学的薬物の量(「有効量」)を修飾するような用語「有効な」は、上述のような、障害を改善するためのその処置または量を指す。例えば、所与のパラメータについて、治療有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、または少なくとも100%のパラメータの増加または減少を示す。治療効能はまた、「倍」増加または減少として表すことができる。例えば、治療有効量は、対照と比べて少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、またはそれ以上の効果を有し得る。現在、パーキンソン病様対象における運動症状の重症度に対する臨床的効能は、UPDRSおよびHoehn and Yahrスケール;精神および認知症状についてはADAS-cogまたはMMPIスケールなどの標準化スケールを使用して測定することができる。(そのようなスケールの有用性は、基礎疾患状態のタイプまたは性質に必ずしも依存するとは限らないことが、認識される)。
【0174】
従って、いくつかの方法によれば、対象は、先ず、対象由来の生体試料中の神経変性関連タンパク質のオリゴマー形態および/またはモノマー形態を含むバイオマーカープロフィールについて試験される。適切な状態またはクラスへの分類が、バイオマーカープロフィールに基づいて決定される。分類に基づいて、対象への最適に有効な治療的介入を施すことについての、タイプ、量、経路およびタイミングに関して決定がなされ得る。
【0175】
A.シヌクレイノパチー状態
ある態様において、PDについての症状修飾治療的介入(即ち、対症または緩和療法)は、ドーパミンアゴニスト(例えば、プラミペキソール(例えば、Mirapex)、ロピニロール(例えば、Requip)、ロチゴチン(例えば、Neupro)、アポモルフィン(例えば、Apokyn))、レボドパ、カルビドパ-レボドパ(例えば、Rytary、Sinemet)、MAO-B阻害剤(例えば、セレギリン(例えば、Eldepryl、Zelapar)もしくはラサギリン(例えば、Azilect))、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤(例えば、エンタカポン(Comtan)もしくはトルカポン(Tasmar))、抗コリン作用薬(例えば、ベンズトロピン(例えば、Cogentin)もしくはトリヘキシフェニジル)、アマンタジンまたはコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、リバスチグミン(Exelon))またはいくつかの同様の薬剤もしくは薬剤の群より選択される薬物の投与を含む。
【0176】
別の態様において、薬物は、NK1-アンタゴニストと6-プロピルアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-アミンとの組み合わせである。例えば、NK1-アンタゴニストはロラピタントまたはアプレピタントであり得、6-プロピルアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-アミンはプラミペキソール二塩酸塩一水和物である。例えば、アプレピタントの1日用量は10mg~250mgであり得、プラミペキソール二塩酸塩一水和物の1日用量は1.5mg~45mgであり得る(例えば、米国特許出願第2020/0147097号を参照のこと)。別の態様において、薬物は、6-プロピルアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-アミンの治療的に有効な1日用量と組み合わせた5HT3-アンタゴニストの送達を含む組合せ製品、例えば、オンダンセトロン塩酸塩二水和物およびプラミペキソール二塩酸塩一水和物との組み合わせである。オンダンセトロン塩酸塩二水和物の1日用量は、4mg~32mgであり得、プラミペキソールの1日用量は、1.5mg~42mgであり得る(例えば、米国特許第10,799,484号を参照のこと)。ある態様において、PDについての神経保護的または疾患修飾治療的介入は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、以下の仮特許出願のいずれかに記載されるような推定的疾患修飾薬の投与を含む:2017年3月27日に出願された、シリアル番号62/477187;2017年4月10日に出願された、シリアル番号62/483,555;2017年4月13日に出願された、シリアル番号62/485,082;2017年5月26日に出願された、シリアル番号62/511,424;2017年7月3日に出願された、シリアル番号62/528,228;2017年4月24日に出願された、シリアル番号62/489,016;2017年6月30日に出願された、シリアル番号62/527,215。
【0177】
B.アミロイドパチー状態
ある態様において、アミロイドパチー状態についての症状修飾治療的介入(即ち、対症または緩和療法)は、Razadyne(登録商標)(ガランタミン)、Exelon(登録商標)(リバスチグミン)、およびAricept(登録商標)(ドネペジル)などの薬物の投与を含む。
【0178】
C.タウオパチー状態
ある態様において、タウオパチー状態についての症状修飾治療的介入(即ち、対症または緩和療法)は、Razadyne(登録商標)(ガランタミン)、Exelon(登録商標)(リバスチグミン)、およびAricept(登録商標)(ドネペジル)、またはPDの対症療法について使用される本明細書において引用されるものなどの薬物の投与を含む。
【0179】
D.ハンチントン病
ある態様において、ハンチントン病についての症状修飾治療的介入(即ち、対症または緩和療法)は、テトラベナジン(Austedo(登録商標)(デューテトラベナジン)、IONIS-HTTRx、ならびに様々な神経弛緩薬およびベンゾジアゼピン類などの薬物の投与を含む。
【0180】
VIII.治療的介入に対する反応性を評価する方法
神経変性障害(例えば、シヌクレオパチー状態、アミロイドパチー状態、タウオパチー状態、ハンチントン病)に罹患している対象において、治療的介入の有効性または治療的介入に対する対象の反応性は、バイオマーカープロフィールに対する治療的介入の効果を評価することによって決定することができる。これは、任意の神経変性状況、例えば、診断、病期、進行、予後およびリスクにおける有効性を含む。より正常のプロフィールの方へのバイオマーカープロフィールの変化は、治療的介入の有効性を示す。
【0181】
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、より選択されるバイオマーカーのセットを含む、バイオマーカープロフィールの使用は、そのような事態における処置効能を判断するための従来の手段(例えば、総体的症状、機能的スケールまたは放射線スキャンの変化)に比べて利点を与える。効能を判断するそのような従来の手段は低感度、不正確かつ半定量的であるだけでなく、正確に測定するために十分な大きさになる前に長期間(例えば、数年)を典型的に必要とする。従って、試験される潜在的に有用な処置の数は著しく減少し、臨床試験の費用および従って有用な薬の最終的なコストは実質的に増加する。
【0182】
ある態様において、タンパク質バイオマーカー種のバイオマーカープロフィールは、複数回、典型的に、治療的介入を施す前、施している最中および施した後に、または治療的介入後の複数の時点で、測定される。
【0183】
IX.キット
別の局面において、本明細書に記載されるようなバイオマーカーを検出するためのキットを本明細書に提供する。キットは、体液から細胞外小胞を単離するための試薬、全ての細胞外小胞から神経細胞由来の細胞外小胞、例えばドーパミンニューロンを優先的に単離するための試薬、ならびにキナーゼおよび/または神経変性関連タンパク質の形態を検出するために十分な試薬を保持するための容器を含むことができる。
【0184】
例えば、神経変性状態について生体試料中のバイオマーカーを検出および病期分類することにおける使用のためのキットは、試薬、緩衝液、酵素、抗体、およびこの目的に特異的な他の組成物を含むことができる。例えば、キットは、シグナル伝達キナーゼ、触媒酵素または神経変性関連タンパク質の形態に特異的である抗体を含有する容器を含むことができる。キットはまた、miRNAなどの核酸分子を単離するためのクロマトグラフ媒体を含有することができる。キットはまた、典型的に、使用説明書ならびにデータ解析および解釈のためのソフトウェアを含むことができる。キットは、標準として役立つ試料をさらに含み得る。各溶液または組成物はバイアルまたはボトル中に含有され得、全てのバイアルは、商用販売用の箱の中に厳重に閉じ込められた状態で保持され得る。
【0185】
X.コンピューターシステム
本明細書に提供されるようなデータベースおよびそれらに対する操作は、プログラム可能なデジタルコンピュータによって実行することができる。
【0186】
図8は例示的なコンピューターシステムを示す。コンピューターシステム9901は、中央処理装置(CPU、本明細書では「プロセッサ」および「コンピュータープロセッサ」ともいう)9905を含み、これは、シングルコアまたはマルチコアプロセッサ、または並列処理のための複数のプロセッサであり得る。コンピューターシステム9901はまた、メモリまたはメモリロケーション9910(例えば、ランダムアクセスメモリ、リードオンリメモリ、フラッシュメモリ)、電子記憶ユニット9915(例えば、ハードディスク)、1つまたは複数の他のシステムと通信するための通信インターフェース9920(例えば、ネットワークアダプタ)、ならびにキャッシュ、他のメモリ、データ記憶および/または電子ディスプレイアダプタなどの周辺機器9925を含む。コンピューター可読メモリ9910、記憶ユニット9915、インターフェース9920および周辺機器9925は、マザーボードなどの通信バス(実線)を介してCPU9905と通信している。記憶ユニット9915は、データを記憶するためのデータ記憶ユニット(またはデータリポジトリ)であり得る。コンピューターシステム9901は、通信インターフェース9920の助けを借りて、コンピュータネットワーク(「ネットワーク」)9930に動作可能に接続され得る。ネットワーク9930は、インターネット、インターネットおよび/もしくはエクストラネット、またはインターネットと通信しているイントラネットおよび/もしくはエクストラネットであり得る。ネットワーク9930は、場合によっては、電気通信および/またはデータネットワークである。ネットワーク9930は、クラウドコンピューティングなどの分散コンピューティングを可能にすることができる1つまたは複数のコンピュータサーバを含むことができる。CPU9905は、プログラムまたはソフトウェアで具現化することができる一連の機械可読命令を実行することができる。命令は、コンピューター可読メモリ9910などのメモリロケーションに記憶され得る。命令はCPU9905へ向けられ得、その後、本開示の方法を実行するようにCPU9905をプログラムするか、または別の方法で設定し得る。
【0187】
記憶ユニット9915は、ドライバ、ライブラリ、および保存されたプログラムなどのファイルを記憶することができる。記憶ユニット9915は、ユーザーデータ、例えば、ユーザー嗜好およびユーザープログラムを記憶することができる。コンピューターシステム9901は、場合によっては、イントラネットまたはインターネットを介してコンピューターシステム9901と通信しているリモートサーバ上に位置するような、コンピューターシステム9901の外部にある1つまたは複数の追加のデータ記憶ユニットを含むことができる。
【0188】
コンピューターシステム9901は、ネットワーク9930を介して1つまたは複数のリモートコンピューターシステムと通信することができる。
【0189】
本明細書に記載されるような方法は、例えば、コンピューター可読メモリ9910または電子記憶ユニット9915上など、コンピューターシステム9901の電子記憶場所上に記憶された機械(例えば、コンピュータープロセッサ)実行可能コードを介して実行され得る。機械実行可能または機械可読コードはソフトウェアの形で提供することができる。使用中、コードは、(例えば、デジタル回路に設計された)コンピューター論理を使用してプロセッサ9905によって実行され得る。コードは関数またはモデルを具体化できる。場合によっては、コードは、記憶ユニット9915から検索され、プロセッサ9905によってすぐにアクセスできるようにメモリ9910に記憶され得る。コードは、受け取られそして記憶された電子形式のメモリデータからアクセスできる。状況によっては、電子記憶ユニット9915を排除することができ、機械実行可能命令はメモリ9910に格納される。
【0190】
機械実行可能コードは、メモリ(例えば、リードオンリメモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)またはハードディスクなどの電子記憶ユニットに格納することができる。「ストレージ」タイプのメディアは、コンピューター、プロセッサなど、またはそれらの関連モジュール、例えば、様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどの有形メモリのいずれかまたは全部を含むことができ、これらは、ソフトウェアプログラミングのためにいつでも非一時的なストレージを提供し得る。ソフトウェアの全部または一部は、インターネットまたは様々な他の電気通信網を介して時には通信され得る。
【0191】
コンピューターシステム9901は、例えば、本明細書に記載される方法のための入力パラメータを提供するためにユーザーインターフェース(UI)9940を備える電子ディスプレイ9935を含むか、またはそれと通信することができる。UIの例としては、非限定的に、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)およびウェブベースのユーザーインターフェースが挙げられる。
【0192】
本明細書に記載されるプロセスは、一緒にネットワーク化され得る1つまたは複数のコンピューターシステムを使用して実行することができる。計算はクラウドコンピューティングシステムにおいて行うことができ、ここで、ホストコンピューター上のデータが通信ネットワークを介してクラウドコンピューターに通信され、クラウドコンピューターが計算を実行し、通信ネットワークを介してユーザーに通信するかまたは結果を出力する。例えば、出力は、ユーティリティスコアアルゴリズムが本明細書に記載される方法の1つまたは複数の操作を行うクラウドコンピューティングシステムに送信され得る。クラウドコンピューティングシステムは、どの段階でも、計算の結果をユーザーによって操作されるコンピューターに送り返すことができる。
【0193】
データは、例えばインターネットを介して、電子的に送信され得る。データは、ユーザーによってアクセス可能なデバイスへ出力され得る。電子通信は、例えば、デジタル加入者線(DSL)、ケーブルモデム、ファイバー、無線、衛星および電力線搬送通信(BPL)を含むがこれらに限定されない、高速伝送網を例えば含む、任意の通信ネットワークを介するものであり得る。情報は、デスクトップコンピューターなどのコンピューターへの、通信、例えば無線または有線通信のためにモデムへ送信され得る。あるいは、レポートはモバイルデバイスへ送信され得る。レポートは、レポートを表示するウェブサイトにユーザーがアクセスするサブスクリプションプログラムを通じてアクセス可能であり得る。レポートは、ユーザーによってアクセス可能なユーザーインターフェースデバイスへ送信され得る。ユーザーインターフェースデバイスは、例えば、パーソナルコンピューター、ラップトップ、スマートフォン、またはウェアラブルデバイス、例えば、例えば手首に装着する腕時計であり得る。
【実施例
【0194】
以下の実施例は、限定のためではなく、例示のために提示される。
【0195】
I.実施例1:バイオマーカープロフィールはシヌクレイノパチー状態において変化する
研究の対象である個体のコホートは、シヌクレイノパチー状態と診断されている。対象に、活性な治療的介入、次いで、異なる、不活性であることが恐らく知られているものを与える。代わりに、介入を逆の順序で与えることができる。または、シヌクレイノパチー状態と診断された複数の対象中の、シヌクレイノパチー状態について無症候である複数の対象を含むコホートが、研究の対象である。いずれの場合においても、静脈血試料を、ベースラインまたは対照(例えば、不活性介入処置)条件下で、および潜在的に活性な(例えば、実験的介入)処置の投与中に再び、を含む様々な時間で、静脈穿刺によって各対象から採取する。神経細胞由来の細胞外小胞を、本明細書に記載される方法を使用して血液から単離する。単離された細胞外小胞(例えば、エキソソーム)内に含有される、(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、を含むバイオマーカーの量を測定する。これらのデータをデータセットへと組み合わせる。データセットを、統計法を使用して解析し、この場合、学習アルゴリズム(例えば、サポートベクターマシン)を訓練するために使用し、対象がシヌクレイノパチー状態を有するまたは有さないと分類されるべきかどうかを推測するモデルを開発する。結果は、シヌクレイノパチー状態と診断された対象のコホートにおいて、ある種のシグナル伝達キナーゼが、他のシグナル伝達キナーゼと比べて、統計的に有意な程度まで異なる活性を有することを示す。さらに、神経変性関連タンパク質のオリゴマー形態もまた統計的に有意な程度まで変化する。このバイオマーカーアッセイの結果において有意な変化を有すると分かったものは、臨床状況において比例した変化を有すると後で分かる。
【0196】
II.実施例2:診断法の開発
PDを有さないおよび異なる診断された病期にあるPDを有するボランティアの対象を試験し、(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、を含むバイオマーカーを含む、バイオマーカープロフィールを決定する。決定されたバイオマーカープロフィールに基づいて、対象を、疾患の存在または非存在、および、任意で、疾患の病期を示すと分類する。プロフィールは、コンピューター化学習アルゴリズムを使用して決定され、これは、データ解析後、診断を推測する分類アルゴリズムを生じさせる。推測モデルは、所望の感度および特異性で試験をもたらすように選択される。
【0197】
III.実施例3:対象層別化/臨床試験
PDを有さないおよびPDを有するボランティアの対象を試験し、神経細胞由来の細胞外小胞中の、(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、を含むバイオマーカーを含む、バイオマーカープロフィールを決定する。決定されたバイオマーカープロフィールに基づいて、また、上記実施例において決定されたクラシファイヤーを使用して、対象をいくつかの試験群へクラスター化する。ある試験群にプラセボを与える。他の試験群に、臨床試験において異なる量の化合物を投与する。投与中に、および、任意で、投与後に、試験を繰り返す。収集した測定値を解析する。治療的介入は、バイオマーカープロフィールの正常の方への統計的に有意な変化をもたらすと決定される。
【0198】
IV.実施例4:シヌクレイノパチーについて神経保護的である薬物候補についての臨床試験
第II相試験の目的は、PDおよび関連障害を有する患者において、アプレピタントと共にかつ任意でロバスタチンまたは同様に有効な薬物有りまたは無しで与えられる、プラミペキソールの安全性、認容性および初期効能を評価することである。PD(PD)、多系統萎縮症(MSA)、レヴィー小体認知症(LBD)、または関連するシヌクレイノパチー障害を有する最大30人の患者において、連続処置、漸増用量、交差、外来患者で試験を行う。医学的に許容されると見なされる程度まで試験の全体にわたって安定用量で維持される、レボドパ-カルビドパ(Sinemet)を除き、参加者の誰も、臨床研究エントリー前の3ヵ月間中にドーパミンアゴニストまたは他の中枢作用薬で処置されることは認められない。統一PD評価尺度(UPDRS-パートIII)、ならびに(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、を含むバイオマーカーを含む、バイオマーカー決定を含む、ベースライン臨床および実験室評価に続いて、登録基準を満たしている同意する個体を、研究前PD処置レジメンからプラミペキソールERおよびアプレピタントを含むものへ切り替える。プラミペキソールER用量を、最適に許容される用量(または最大9 mg/日)へ用量設定し、次いで、最大約12~16週間安定に維持する。その最大認可用量で与えられる追加の薬物(例えば、スタチン)での共処置を、臨床的に適切であると見なされる場合は、追加の3ヵ月間について次いで開始してもよく、この時、全ての対象を、それらの入院前処置レジメンへ戻す。試験の間、バイオマーカーレベルの決定を含む、ベースライン効能および安全性測定を一定間隔で繰り返した。効能は、バイオマーカープロフィールの正常の方への統計的に有意な変化の関数として決定される。
【0199】
V.実施例5:診断
対象は、PDと一致するある症状を有することを示すが、この病気の顕著な臨床的特徴の多くを未だ欠いている場合は症状発現前レベルである。血液を静脈穿刺によって対象から採取する。(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、を含むバイオマーカーの量を、血液中の神経細胞由来の細胞外小胞から測定する。バイオマーカープロフィールを決定する。診断アルゴリズムは、プロフィールについて、PDの診断と一致する、と分類する。対象をPDと診断し、症状を軽減するための緩和的処置、または神経保護の目的での疾患の病因に向けられた処置のいずれかの、治療レジメンに供する。
【0200】
VI.実施例6:病期分類
対象は、PDであるとの診断を受ける。医療提供者(例えば、医師)は対象に対して血液検査を命じ、(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、を含むバイオマーカーを含む、バイオマーカープロフィールを決定する。バイオマーカープロフィールに基づいて、医療専門家は、対象がPDの初期にあり、従って特定の治療的介入に対してより反応性であることを決定する。
【0201】
VII.実施例7:予後/進行
対象は、PDであるとの診断を受ける。医療専門家は、数ヵ月間離して、対象に対して第1および第2の血液検査を命じ、(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、を含むバイオマーカーを含む、バイオマーカープロフィールを決定する。バイオマーカープロフィールに基づいて、医療専門家は、対象の疾患が徐々に進行していること、および、対象が、危険な治療的介入無しでさえ、数年間の寿命を有すると予想されることを決定する。
【0202】
VIII.実施例8:リスク評価
対象は、身体検査について、シヌクレイノパチー疾患の症状を有さないことを示す。この場合、この個体は、遺伝的または環境的リスク因子を自覚している。医療専門家は対象に対して血液検査を命じ、(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、を含むバイオマーカーを含む、バイオマーカープロフィールを決定する。健康な対照個体と比較して、バイオマーカーの一部のまたは全部の測定可能な種の相対的に異常なバイオマーカープロフィールに基づいて、医療専門家は、対象がPDを発症する低い確率を有することを決定する。
【0203】
IX.実施例9:療法に対する反応
対象は、PDであるとの診断を受ける。医療専門家は、対象に対して最初の血液検査を命じ、処置を開始する前に、(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNA、を含むバイオマーカーを含む、バイオマーカープロフィールを決定する。一連の処置後、しかし臨床症状が変化する前に、医療専門家は第2の血液検査を命じる。aにおける(in the a)正常の方への変化に基づいて、医療専門家は、処置が有効であること、または用量を変更するかまたは繰り返す必要があるかどうかを決定する。
【0204】
例示的態様
1.
神経変性状態についての診断インデックスを作成するための方法であって、以下の工程:
a)生体試料のコレクション中の各生体試料を、神経細胞由来の細胞外小胞、例えば微小小胞またはエキソソームについて濃縮する工程であって、生体試料のコレクションが対象のコホート中の対象に由来し、コホートが、以下を含む対象:
(i)1つまたは複数の異なる病期の各々にある神経変性状態と診断された複数の対象であって、診断された対象の各々が推定神経保護剤を受けたことがある、複数の対象、および/または
(ii)神経変性状態と診断されなかった複数の対照対象
を含み、生体試料が、推定神経保護剤による処置過程前に、および処置過程中に再び、1回または複数回、および、任意で処置過程後に、収集された、工程;
b)複数のバイオマーカー試料を生成するために、各試料より、細胞外小胞全体、細胞外小胞の内部区画、または細胞外小胞膜から、タンパク質内容物を単離する工程;
c)データセットを作成するために、各バイオマーカー試料において、バイオマーカーのセットを測定する工程であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(3)1つまたは複数のmiRNA
を含む、工程;ならびに
d)(i)疾患進行速度または推定神経保護剤に対する反応の程度を予測する診断アルゴリズムを決定するため、経時的に個々の対象において、または
(ii)(1)病原診断を行う、(2)臨床的に類似しているが病因的に異なる神経変性障害サブグループを分ける、または(3)対象が推定神経保護剤に反応する可能性が高いかどうかもしくは対象が推定神経保護剤に反応する可能性が高い程度を予測する、診断アルゴリズムを決定するため、異なる対象間で、
バイオマーカーセットにおける差を比較するために、データセットに対して解析を行う工程
を含む、方法。
2.
濃縮する工程の前に、以下の工程:
I)対象のコホートを提供する工程であって、コホートが、以下を含む対象:
(i)複数の異なる病期の各々にある神経変性状態と診断された複数の対象、および/または
(ii)複数の対照対象
を含む、工程;
II)診断された対象の各々へ推定神経保護剤を投与する工程;
III)推定神経保護剤の投与前に、および投与中に再び、1回または複数回、および、任意で投与後に、コホート中の対象の各々から生体試料を収集する工程
をさらに含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
3.
e)標準臨床的尺度に対して診断アルゴリズムのうちの1つまたは複数を検証する工程
をさらに含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
4.
バイオマーカーが、(1)1つまたは複数のリン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素、1つまたは複数(one or more)の、(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および(3)1つまたは複数のmiRNAを含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
5.
酵素が、1つまたは複数のシグナル伝達キナーゼを含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
6.
シグナル伝達キナーゼのうちの少なくとも1つが、PI3K-Akt-mTORシグナル伝達経路のキナーゼである、態様5記載の方法。
7.
シグナル伝達キナーゼのうちの少なくとも1つが、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPKまたはMEK)、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3B)、AKTキナーゼ、およびベクリンより選択される、態様5記載の方法。
8.
少なくとも1つのシグナル伝達キナーゼが、複数のシグナル伝達キナーゼである、態様5記載の方法。
9.
複数のシグナル伝達キナーゼが、AKT、MAPK3、MEK、mTOR、GSK3B、JNK、MEK 1/2、およびPI3Kより選択される、態様8記載の方法。
10.
複数のシグナル伝達キナーゼが、リン酸化AKT(例えば、AKT S473またはAKT T308)およびリン酸化MAPK3(例えば、MAPK T202)を含む、態様8記載の方法。
11.
シグナル伝達キナーゼのうちの少なくとも1つが、AKT S473;AKT T308;ERK P44;GSK3B S6;GSK3B S9;GSK3 T216;GSK3A S21;MAPK T202;mTOR S2448;mTOR c1/2 T246;mTOR c1/2 S638;JNK 1/2/3;JNK pY183;JNK pY185;MEK 1/2 S217;MEK S221;PI3K p85;PI3K T458;PKB S473;PI3K p55-T199;およびPKB T308より選択される、態様5記載の方法。
12.
診断アルゴリズムが、AKT:MAPKの相対量を決定する、態様8記載の方法。
13.
少なくとも1つの触媒酵素が、TH(チロシンヒドロキシラーゼ)全体、ならびにリン酸化形態、TH S40、TH S19およびTH S32より選択される、態様1記載の方法。
14.
診断アルゴリズムが、1つまたは複数のシグナル伝達キナーゼ、1つまたは複数の触媒酵素、1つまたは複数の神経変性関連タンパク質形態、および1つまたは複数のマイクロRNAの測定値の関数である、前述の態様のいずれかに記載の方法。
15.
診断アルゴリズムが、AKT、リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ、miRNA、MAPK3、および非リン酸化チロシンヒドロキシラーゼの測定値の関数である、前述の態様のいずれかに記載の方法。
16.
診断アルゴリズムが、(AKT、リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ、miRNA) 対 (MAPK3および非リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ)の、測定値の関数である、前述の態様のいずれかに記載の方法。
17.
診断アルゴリズムが、少なくとも神経変性関連タンパク質形態の関数である、前述の態様のいずれかに記載の方法。
18.
定量的測定値が決定される神経変性関連タンパク質形態が、以下:
(I)少なくとも1つのオリゴマー形態;
(II)複数のオリゴマー形態;
(III)少なくとも1つのオリゴマー形態および少なくとも1つのモノマー形態;
(IV)複数のオリゴマー形態および少なくとも1つのモノマー形態;
(V)少なくとも1つのオリゴマー形態および複数のモノマー形態;ならびに
(VI)複数のオリゴマー形態および複数のモノマー形態
より選択される、態様17記載の方法。
19.
診断アルゴリズムが、(AKTのリン酸化形態、第2のシグナル伝達キナーゼのリン酸化形態、アルファ-シヌクレインのオリゴマー形態、miRNA) 対 (MAPK3のリン酸化形態、第4のシグナル伝達キナーゼのリン酸化形態、チロシンヒドロキシラーゼの非リン酸化形態)の、相対的測定値の関数である、前述の態様のいずれかに記載の方法。
20.
診断アルゴリズムが、AKT、リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ、神経変性関連タンパク質形態、MAPK3、および非リン酸化チロシンヒドロキシラーゼの測定値の関数である、前述の態様のいずれかに記載の方法。
21.
診断アルゴリズムが、(AKT、リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ、神経変性関連タンパク質形態) 対 (MAPK3および非リン酸化チロシンヒドロキシラーゼ)の、相対的測定値の関数である、前述の態様のいずれかに記載の方法。
22.
診断アルゴリズムが、1つまたは複数の神経変性関連タンパク質形態および1つまたは複数のmiRNAの関数である、前述の態様のいずれかに記載の方法。
23.
バイオマーカーが、(i)シグナル伝達キナーゼおよび触媒酵素より選択される酵素、ならびに(ii)モノマーおよびオリゴマーより選択される神経変性関連タンパク質を含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
24.
バイオマーカーが、(i)シグナル伝達キナーゼおよび触媒酵素より選択される酵素、ならびに(iii)miRNAを含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
25.
神経変性関連タンパク質が、アルファシヌクレイン、アミロイドβ、タウ、またはハンチンチンより選択される、前述の態様のいずれかに記載の方法。
26.
神経変性関連タンパク質のオリゴマー形態が、オリゴマー形態、例えば、アルファシヌクレインのオリゴマー、例えば、アルファシヌクレイン2-50、例えば、アルファシヌクレイン4-30、例えば、アルファシヌクレイン4-20のコレクションである、前述の態様のいずれかに記載の方法。
27.
バイオマーカーが、7-5p;15b-5p;19b;22-3p;24;27a-3p 24;29a;30c-2-3p;494-3p;92b-3p;106b-3p;122-5p;124-3p;122-5p;132-3p;138-5p;142-3p;146a-5p;204-5p;220-3p;331-5p;338-3p;431-5p;584-5p;942-5p;および1468-5pより選択される1つまたは複数のmiRNAを含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
28.
神経変性状態が、シヌクレイノパチー障害、例えば、パーキンソン病、またはレヴィー小体認知症を含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
29.
神経変性状態が、アミロイドパチー、例えばアルツハイマー病、タウオパチー、例えばアルツハイマー病、またはハンチントン病を含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
30.
タンパク質内容物をミクロソームの内部区画から単離する、前述の態様のいずれかに記載の方法。
31.
標準臨床的尺度が、UPDRSスコア、CGIスコア、および放射線学的所見より選択される、態様3記載の方法。
32.
解析が、相関、ピアソン相関、スピアマン相関、カイ二乗、平均値の比較(例えば、対応のあるT検定、独立T検定、ANOVA)、回帰分析(例えば、単回帰、重回帰、線形回帰、非線形回帰、ロジスティック回帰、多項回帰、段階的回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、エラスティックネット回帰)またはノンパラメトリック分析(例えば、ウィルコクソン順位和検定、ウィルコクソン符号順位検定、符号検定)を含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
33.
解析が、コンピューターによって実行される、前述の態様のいずれかのいずれかに記載の方法。
34.
解析が、機械学習を含む、態様33記載の方法。
35.
生体試料が、静脈血試料を含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
36.
異なる病期が、疑いあり、初期、中期、および臨床的進行のうちの1つまたは複数を含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
37.
投与中または投与後の時間が、処置後1、2、3ヵ月またはそれ以上より選択される、前述の態様のいずれかに記載の方法。
38.
試料をドーパミン産生ニューロンからの細胞外小胞についてさらに濃縮する、前述の態様のいずれかに記載の方法。
39.
濃縮する工程が、1つまたは複数の脳特異的タンパク質マーカーを使用することを含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
40.
脳特異的マーカーのうちの少なくとも1つが、K1camを含む、態様39記載の方法。
41.
単離する工程が、表面膜結合タンパク質を除去するために各濃縮試料中の細胞外小胞を洗浄することを含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
42.
細胞外小胞をPBSで洗浄する、態様41記載の方法。
43.
神経変性関連タンパク質の形態を、ゲル電気泳動、ウェスタンブロット、または蛍光技術によって測定する、前述の態様のいずれかに記載の方法。
44.
対象が、ヒトである、前述の態様のいずれかに記載の方法。
45.
対象が、神経変性疾患の病因に関与する(例えば、神経変性疾患を引き起こす)と疑われる環境条件へ曝露された(例えば、パーキンソン病を引き起こす疑いがある、パラコートへ曝露された)ことがある、前述の態様のいずれかに記載の方法。
46.
生体試料のコレクションが、少なくとも25、50、100、200、500または1000の試料のうちのいずれかを含む、前述の態様のいずれかに記載の方法。
47.
個体における神経変性状態の状況を推測する診断インデックスを開発する方法であって、以下の工程:
a)複数の対象の各々について、(1)神経変性状態の状況、および(2)バイオマーカーのセットの測定値を示す値を含むデータセットを提供する工程であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(3)1つまたは複数のmiRNA
を含む、工程;ならびに
b)個体における神経変性状態の状況を推測するモデルを開発するために、データセットに対して解析を行う工程
を含む、方法。
48.
解析が、コンピューターによって行われる、態様47記載の方法。
49.
解析が、コンピューターによって行われない、態様47記載の方法。
50.
解析が、相関、ピアソン相関、スピアマン相関、カイ二乗、平均値の比較(例えば、対応のあるT検定、独立T検定、ANOVA)、回帰分析(例えば、単回帰、重回帰、線形回帰、非線形回帰、ロジスティック回帰、多項回帰、段階的回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、エラスティックネット回帰)またはノンパラメトリック分析(例えば、ウィルコクソン順位和検定、ウィルコクソン符号順位検定、符号検定)を含む、態様47記載の方法。
51.
解析が、データセットをコンピューターメモリに受け取ること、およびコンピュータープロセッサを用いてデータセットに対して機械学習アルゴリズムを訓練することを含む、態様47記載の方法。
52.
機械学習アルゴリズムが、以下:人工神経回路網(例えば、バックプロパゲーションネットワーク)、デシジョンツリー(例えば、再帰分割プロセス、CART)、ランダムフォレスト、判別分析(例えば、BayesianクラシファイヤーまたはFischer分析)、線形分類器(例えば、多重線形回帰(MLR)、部分最小二乗(PLS)回帰、主成分回帰(PCR))、混合または変量効果モデル、ノンパラメトリック分類器(例えば、k最近傍)、サポートベクターマシン、およびアンサンブル法(例えば、バギング、ブースティング)より選択される、態様51記載の方法。
53.
状況が、神経変性状態の診断、病期、予後、または進行より選択される、態様47記載の方法。
54.
状況が、カテゴリー変数(例えば、バイナリー状況、または複数のカテゴリー状況のうちの1つ)として測定される、態様47記載の方法。
55.
カテゴリーが、神経変性状態を有することと一致する診断(例えば、陽性または有すると診断される)、および神経変性状態を有することと矛盾する診断(例えば、陰性または有さないと診断される)を含む、態様54記載の方法。
56.
カテゴリーが、神経変性状態の異なる病期を含む、態様54記載の方法。
57.
状況が、(例えば、スケールにおける)連続変数として測定される、態様47記載の方法。
58.
連続変数が、神経変性状態の範囲または程度である、態様57記載の方法。
59.
対象が、動物、例えば、魚類、鳥類、両生類、爬虫類、または哺乳動物、例えば、げっ歯動物、霊長動物、もしくはヒトである、態様47記載の方法。
60.
複数の対象が、少なくとも10、25、50、100、200、400、または800のうちのいずれかである、態様47記載の方法。
61.
各対象について、定量的測定値が決定される試料を第1の時点で採取し、神経変性状態の状況を、後の時点である第2の時点で決定する、態様47記載の方法。
62.
生体試料が、血液または血液画分(例えば、血漿または血清)を含む、態様47記載の方法。
63.
神経変性状態が、シヌクレイノパチー、例えば、パーキンソン病またはレヴィー小体認知症である、態様47記載の方法。
64.
神経変性状態が、アミロイドパチー、例えばアルツハイマー病、タウオパチー、例えばアルツハイマー病、またはハンチントン病である、態様47記載の方法。
65.
複数の対象が、少なくとも25、50、100、200、500、または1000の対象のうちのいずれかである、前述の態様である態様47~64のいずれかに記載の方法。
66.
神経変性関連タンパク質によって特徴付けられる神経変性状態の、発症リスク、診断、病期、予後、または進行を推測する方法であって、以下の工程:
a)データセットを作成するために、神経細胞由来の細胞外小胞、例えば微小小胞またはエキソソームについて濃縮された対象からの生体試料から、バイオマーカーのセットを測定する工程であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(3)1つまたは複数のmiRNA
を含む、工程;ならびに
b)神経変性状態の、発症リスク、診断、病期、予後、または進行を推測するために、データセットに対してモデル、例えば、態様47記載のモデルを実行する工程
を含む、方法。
67.
シグナル伝達キナーゼのうちの少なくとも1つが、PI3K-Akt-mTORシグナル伝達経路のキナーゼである、態様66記載の方法。
68.
シグナル伝達キナーゼのうちの少なくとも1つが、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPKまたはMEK)、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3B)、AKTキナーゼ、およびベクリンより選択される、態様66記載の方法。
69.
神経変性関連タンパク質が、アルファシヌクレイン、アミロイドβ、タウ、またはハンチンチンより選択される、態様66記載の方法。
70.
神経変性関連タンパク質のオリゴマー形態が、オリゴマー形態、例えば、アルファシヌクレインのオリゴマー、例えば、アルファシヌクレイン2-50、例えば、アルファシヌクレイン4-30、例えば、アルファシヌクレイン4-20のコレクションである、態様66記載の方法。
71.
オリゴマー形態のうちの少なくとも1つが、神経変性関連タンパク質の種のコレクションを構成する、態様66記載の方法。
72.
モデルが、神経変性関連タンパク質のモノマー形態に対するオリゴマー形態の相対量を、統計的に有意な数の対照個体における相対量と比較することを含む、態様66記載の方法。
73.
モデルが、複数のオリゴマー形態の相対量のパターンを検出することを含み、これからモデルが推測を行う、態様66記載の方法。
74.
対象が、神経変性状態について無症候または症状発現前である、態様66記載の方法。
75.
対象が、定期的な通院中にまたは医療専門家の通常の医療活動の一部として、医療専門家などの医療提供者を訪れる、態様66記載の方法。
76.
モデルが、コンピューターによって実行される、態様66記載の方法。
77.
モデルが、コンピューターによって実行されない、態様66記載の方法。
78.
神経変性状態の処置における治療的介入の有効性を決定するための方法であって、以下の工程:
(a)以下の段階:
(1)データセットを作成するために、神経細胞由来の細胞外小胞、例えば微小小胞またはエキソソームについて濃縮された対象からの生体試料から、バイオマーカーのセットを測定する段階であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(A)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(B)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(C)1つまたは複数のmiRNA
を含む、段階、および
(2)モデル、例えば、態様47記載のモデルを使用して、初期状況を推測する段階
によって、神経変性状態の初期状況を、複数の対象を含む集団中の各対象において、推測する工程;
(b)推測する工程後、対象へ治療的介入を施す工程;
(c)施す工程後、以下の段階:
(1)データセットを作成するために、神経細胞由来の細胞外小胞、例えば微小小胞またはエキソソームについて濃縮された対象からの生体試料から、バイオマーカーのセットを測定する段階であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(3)1つまたは複数のmiRNA
を含む、段階、および
(2)モデルを使用して後続状況を推測する段階
によって、神経変性状態の後続状況を、集団中の各対象個体において、推測する工程;ならびに
(d)集団中の初期および後続の推測に基づいて、後続の推測が初期の推測と比較して正常状況の方への統計的に有意な変化を示す場合は、治療的介入が有効であること、または、後続の推測が初期の推測と比較して正常状況の方への統計的に有意な変化を示さない場合は、治療的介入が有効ではないことを決定する工程
を含む、方法。
79.
治療的介入が、薬物または薬物の組み合わせの投与を含む、態様78記載の方法。
80.
集団が、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500または少なくとも1000の対象を含み、対象のうちの少なくとも20%、少なくとも35%、少なくとも50%、または少なくとも75%が、タンパク質のモノマー形態の量と比べてのタンパク質のオリゴマー形態の上昇した量を最初に有する、態様78記載の方法。
81.
対象のうちの少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、または少なくとも35%、少なくとも50%、少なくとも66%、少なくとも80%、または100%が、神経変性状態の診断を最初に有する、態様78記載の方法。
82.
推測が、コンピューターによって行われる、態様78記載の方法。
83.
推測が、コンピューターによって行われない、態様78記載の方法。
84.
神経変性状態の処置または予防のための治療的介入の臨床試験について対象を認定するための方法であって、以下の工程:
a)以下の段階:
(1)データセットを作成するために、神経細胞由来の細胞外小胞、例えば微小小胞またはエキソソームについて濃縮された対象からの生体試料から、バイオマーカーのセットを測定する段階であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(A)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(B)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(C)1つまたは複数のmiRNA
を含む、段階、および
(2)神経変性状態に関して対象が異常であることを推測するために、プロフィールに対してモデル、例えば、態様47記載のモデルを実行する段階
によって、神経変性状態に関して対象が異常であることを決定する工程;ならびに
b)該神経変性状態についての潜在的治療的介入の臨床試験に対象を登録する工程
を含む、方法。
85.
モデルが、コンピューターによって実行される、態様84記載の方法。
86.
モデルが、コンピューターによって実行されない、態様84記載の方法。
87.
神経変性状態についての治療的介入における対象の経過をモニタリングする方法であって、以下の工程:
(a)以下の段階:
(1)神経細胞由来の細胞外小胞、例えば微小小胞またはエキソソームについて濃縮された対象からの生体試料から、バイオマーカーのセットの測定値を決定する段階であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(A)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(B)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(C)1つまたは複数のmiRNA
を含む、段階、および
(2) 神経変性状態の初期状況を推測するために、モデル、例えば、態様47記載のモデルを実行する段階
によって、神経変性状態の初期状況を、対象において、推測する工程;
(b)推測する工程後、対象へ治療的介入を施す工程;
(c)施す工程後、以下の段階:
(1)データセットを作成するために、神経細胞由来ミクロソーム粒子について濃縮された対象からの生体試料から、複数の異なるシグナル伝達キナーゼの各々の量を含むバイオマーカープロフィールを決定する段階、および
(2)神経変性状態の後続状況を推測するために、モデル、例えば、態様47記載のモデルを実行する段階
によって、神経変性状態の後続状況を、対象において、推測する工程;ならびに
(d)初期状況および後続状況の推測に基づいて、後続の推測が初期の推測と比較して正常状況の方への変化を示す場合は、対象が、治療的介入に対してポジティブに反応していること、または、後続の推測が初期の推測と比較して正常状況の方への変化を示さない場合は、治療的介入が、有効ではないことを決定する工程
を含む、方法。
88.
モデルが、コンピューターによって実行される、態様87記載の方法。
89.
モデルが、コンピューターによって実行されない、態様87記載の方法。
90.
(a)態様66記載の方法によって、対象が、神経変性状態を有することを決定する工程、および
(b)状態を処置するために効果的な緩和的または神経保護的な治療的介入を該対象へ施す工程
を含む、方法。
91.
治療的介入が、正常の方へ対象のバイオマーカープロフィールを移動させ、正常の方への移動が、神経保護を示す、態様90記載の方法。
92.
態様66記載の方法によってバイオマーカーの異常なパターンを有すると決定された対象へ、状態を処置するために有効な緩和的または神経保護的な治療的介入を施す工程
を含む、方法。
93.
対象が、神経変性状態について無症候または症状発現前である、態様92記載の方法。
94.
(1)シグナル伝達キナーゼのうちの少なくとも1つおよび神経変性関連タンパク質の少なくとも1つのオリゴマー形態;または
(2)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ
のいずれかを検出するために十分な試薬を含む、キット。
95.
試薬が、抗体を含む、態様94記載のキット。
96.
神経変性状態の、発症リスク、診断、病期、予後、または進行を推測する方法であって、以下の工程:
a)データセットを作成するために、神経細胞由来の細胞外小胞、例えば微小小胞またはエキソソームについて濃縮された対象からの生体試料から、バイオマーカーのセットを測定する工程であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(A)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(B)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(C)1つまたは複数のmiRNA
を含む、工程;ならびに
b)データセットを、神経変性状態の、発症リスク、診断、病期、予後、または進行と関連付ける工程
を含む、方法。
97.
以下の工程:
(a)神経変性状態を有するかまたは神経変性状態についての処置に対してポジティブに反応する可能性が高い対象を特定する工程であって、特定する工程が、以下の段階:
(1)バイオマーカープロフィールを作成するために、神経細胞由来の細胞外小胞について濃縮された対象からの試料において(例えば、細胞外小胞の内部内容物から)、バイオマーカーのセットを測定する段階であって、バイオマーカーのセットが、以下:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(A)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(B)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(C)1つまたは複数のmiRNA
を含む、段階、および
(2)異常なバイオマーカープロフィールに基づいて、対象が、神経変性状態に罹患していると決定する段階
を含む、工程;ならびに
(b)特定された対象へ、神経変性状態を処置するために有効量の薬学的組成物を投与する工程
を含む、方法。
98.
神経変性状態が、シヌクレオパチー状態であり、
薬学的組成物が、ドーパミンアゴニスト(例えば、プラミペキソール(例えば、Mirapex(商標))、ロピニロール(例えば、Requip)、ロチゴチン(例えば、Neupro)、アポモルフィン(例えば、Apokyn))、レボドパ、カルビドパ-レボドパ(例えば、Rytary、Sinemet)、MAO-B阻害剤(例えば、セレギリン(例えば、Eldepryl、Zelapar)もしくはラサギリン(例えば、Azilect))、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤(例えば、エンタカポン(Comtan)もしくはトルカポン(Tasmar))、抗コリン作用薬(例えば、ベンズトロピン(例えば、Cogentin)もしくはトリヘキシフェニジル)、アマンタジンまたはコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、リバスチグミン(Exelon))を含む、態様97記載の方法。
99.
シヌクレオパチー状態が、パーキンソン病である、態様97記載の方法。
100.
薬学的組成物が、ドーパミンアゴニストを含む、態様99記載の方法。
101.
薬学的組成物が、NK1-アンタゴニストをさらに含む、態様100記載の方法。
102.
ドーパミンアゴニストが、6-プロピルアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-アミンであり、NK1-アンタゴニストが、アプレピタントまたはロラピタントである、態様101記載の方法。
103.
薬学的組成物が、5HT3-アンタゴニストをさらに含む、態様100記載の方法。
104.
ドーパミンアゴニストが、6-プロピルアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-アミンであり、5HT3アンタゴニストが、オンダンセトロン塩酸塩二水和物である、態様103記載の方法。
105.
神経変性状態を示すバイオマーカープロフィールを有するかまたは神経変性状態についての処置に対してポジティブに反応する可能性が高いと特徴付けられた対象へ、神経変性状態を処置するために有効量の薬学的組成物を投与する工程
を含む方法であって、
バイオマーカーパネルが、
神経細胞由来の細胞外小胞について濃縮された対象からの試料から(例えば、細胞外小胞の内部内容物から)測定された、1つまたは複数のシグナル伝達キナーゼ、および、任意で、神経変性関連タンパク質の少なくとも1つのオリゴマー形態
を含む、バイオマーカーのセット
を含む、方法。
106.
神経変性状態が、パーキンソン病であり、薬学的組成物が、ドーパミンアゴニストを含む、態様105記載の方法。
107.
(1)シグナル伝達キナーゼのうちの少なくとも1つ、
(2)少なくとも1つの触媒酵素、
(3)神経変性関連タンパク質の少なくとも1つのオリゴマー形態、および
(4)少なくとも1つのmiRNA
のいずれかを検出するために十分な試薬を含む、キット。
108.
少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサによる実行のための少なくとも1つのプログラムを記憶するメモリとを含むコンピューターシステムにおいて、
以下の工程:
a)少なくとも25、50、100、200、500または1000の対象の各々からの生体試料から複数のバイオマーカーについての電子形式のバイオマーカーデータを得る工程であって:
(i)対象が、
(i)1つまたは複数の異なる病期の各々にある神経変性状態と診断された複数の対象であって、診断された対象の各々が推定神経保護剤を受けたことがある、複数の対象と、
(ii)神経変性状態と診断されなかった複数の対照対象と
を含み;
(ii)試料が、神経細胞由来エキソソームについて濃縮され;かつ
(iii)バイオマーカーデータが、以下の測定値:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(3)1つまたは複数のmiRNA
を含む、工程;
b)(i)経時的に個々の対象において、疾患進行速度または推定神経保護剤に対する反応の程度を予測する、または
(ii)異なる対象間で、(1)病原診断を行う、(2)臨床的に類似しているが病因的に異なる神経変性障害サブグループを分ける、または(3)対象が、推定神経保護剤に反応する可能性が高いかどうか、もしくは、対象が、推定神経保護剤に反応する可能性が高い程度を予測する、
モデルを生成するために、コンピューター論理を用いて、学習アルゴリズムを実行する工程
を含む、方法。
109.
少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサによる実行のための少なくとも1つのプログラムを記憶するメモリとを含むコンピューターシステムにおいて、以下の工程:
a)対象からの生体試料から複数のバイオマーカーについての電子形式のバイオマーカーデータを得る工程であって:
(i)試料が、神経細胞由来エキソソームについて濃縮され;かつ
(ii)バイオマーカーデータが、以下の測定値:
(i)複数の異なるシグナル伝達キナーゼ、または
(ii)以下より選択される少なくとも2つのグループからのバイオマーカー:
(1)リン酸化シグナル伝達キナーゼおよび/または触媒酵素より選択される1つまたは複数の酵素、
(2)モノマーまたはオリゴマー形態の1つまたは複数の神経変性関連タンパク質、および
(3)1つまたは複数のmiRNA
を含む、工程;
b)(i)経時的に個々の対象において、疾患進行速度または推定神経保護剤に対する反応の程度を予測する、または
(ii)異なる対象間で、(1)病原診断を行う、(2)臨床的に類似しているが病因的に異なる神経変性障害サブグループを分ける、または(3)対象が、推定神経保護剤に反応する可能性が高いかどうか、もしくは、対象が、推定神経保護剤に反応する可能性が高い程度を予測する、
モデルを、コンピューター論理を用いて、実行する工程;ならびに
c)対象によってアクセス可能な電子デバイスへ予測を出力する工程
を含む、方法。
【0205】
本明細書において使用される場合、特別の定めのない限り、以下の意味が適用される。単語「できる(can)」および「得る(may)」は、義務的な意味(即ち、しなければならないを意味する)ではなくむしろ、許容的な意味(即ち、可能性を有することを意味する)で使用される。単語「含む(include)」、「含む(including)」、および「含む(includes)」などは、含むが、限定されないことを意味する。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は複数の指示物を含む。従って、例えば、「要素(an element)」への参照は、「1つまたは複数の」などの、1つまたは複数の要素についての他の用語および句の使用にもかかわらず、2つ以上の要素の組み合わせを含む。句「少なくとも1つ」は、「1つ」、「1つ以上」、「1つまたは複数」を含み、従って、用語「複数」の使用を企図する。用語「または」は、特別の指示のない限り、非排他的であり、即ち、「および」および「または」の両方を包含する。修飾語と一連のものとの間の「のうちのいずれか」という用語は、修飾語が、一連のものの各メンバーを修飾することを意味する。従って、例えば、句「少なくとも1、2または3のうちのいずれか」は、「少なくとも1、少なくとも2または少なくとも3」を意味する。用語「約」は、特定の使用の文脈内で、記載された数値からプラスまたはマイナス5%である範囲を指す。用語「本質的にからなる」は、記載された要素と、請求される組み合わせの基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない他の要素とを包含することを指す。
【0206】
説明および図面は、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、しかし逆に、その意図は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内にある全ての改変物、均等物、および代替物を網羅することであることが理解されるべきである。本発明の様々な局面のさらなる改変物および代替態様は、この説明に鑑みて当業者には明らかであろう。従って、この説明および図面は、例示としてのみ解釈されるものであり、当業者に本発明を実施する一般的な方法を教示することを目的としている。本明細書に示されかつ記載される本発明の形態は、態様の一例としてとられることが理解されるものとする。要素および材料は、本明細書に例示および説明されるものに置き換えられてもよく、パーツおよびプロセスは、逆転または省略されてもよく、本発明のある特徴は、本発明のこの説明の利益を得た後に当業者に明らかであるように、独立して用いられてもよい。以下の特許請求の範囲に記載されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の要素に変更を加えてもよい。
【0207】
本明細書に言及される全ての刊行物、特許および特許出願は、各個々の刊行物、特許または特許出願が参照により組み入れられるように具体的かつ個々に示されているのと同程度まで、参照により本明細書に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024526089000001.app
【国際調査報告】