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特表2024-526090同種CAR T細胞の持続性を延長するための宿主CD70+アロ反応性細胞の選択的標的化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】同種CAR T細胞の持続性を延長するための宿主CD70+アロ反応性細胞の選択的標的化
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20240709BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20240709BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20240709BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240709BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240709BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240709BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 31/664 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240709BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240709BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20240709BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240709BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240709BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
C12N5/071 ZNA
C12N5/078
C12N5/0781
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/63 Z
A61K35/17
A61K35/15
A61K45/00
A61K31/664
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61P31/12
A61P31/04
A61P29/00
A61P43/00
A61P37/06
C07K19/00
C07K14/705
C07K16/28
C12N15/12
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577355
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 US2022033598
(87)【国際公開番号】W WO2022266203
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/210,979
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/351,223
(32)【優先日】2022-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519089657
【氏名又は名称】アロジーン セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ローロン,エルビン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】パノフスキー,シレル
(72)【発明者】
【氏名】サス,バーバラ ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】サマー,シーザー アドルフォ
(72)【発明者】
【氏名】シュリーバトサ スリニバサン,スラビ
(72)【発明者】
【氏名】バン ブラーコム,トーマス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ラング,シャンシャン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
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4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZC52
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA38
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC52
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZC52
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA50
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
CD70結合ドメインおよび膜貫通ドメインを含むCD70結合タンパク質、CD70結合タンパク質を含む操作された免疫細胞、ならびにそれを作製する方法および使用する方法が、本明細書に提供される。がん(例えば、固形腫瘍および血液腫瘍)ならびに他の望ましくない状態を治療するために患者に投与するための操作された免疫細胞、例えば、CAR(キメラ抗原受容体)T細胞も本明細書に提供される。細胞は、第一の抗原結合分子、例えば、CD70 CARおよび第二の抗原結合分子、例えば、がんまたは他の疾患もしくは望ましくない状態の特徴である標的分子に結合する第二のCARを機能的に発現するよう操作されている。細胞は、TRAC、CD52、およびCD70のうちの一つまたは複数の機能的発現レベルを低減するようにさらに操作され得る。また、操作された細胞、組成物、及びそれらを含むキットを作製及び使用する方法、並びにそれらを投与することによる治療方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD70陽性細胞を、CD70結合ドメインおよび膜貫通ドメインを含むCD70結合タンパク質を含むか、または機能的に発現する操作された免疫細胞と接触させる工程を含む、インビトロまたは患者における前記CD70陽性細胞の増殖および/または活性を阻害する方法。
【請求項2】
前記CD70陽性細胞を操作された免疫細胞と接触させる前記工程が、患者において生じ、前記操作された免疫細胞を前記患者に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
それを必要とする患者におけるリンパ枯渇の方法であって、操作された免疫細胞を前記患者に投与する工程を含み、前記操作された免疫細胞が、CD70結合ドメインおよび膜貫通ドメインを含むCD70結合タンパク質を含むか、または機能的に発現し、前記操作された免疫細胞が、前記患者におけるCD70陽性細胞の増殖および/または活性を阻害する、方法。
【請求項4】
前記CD70結合ドメインが、CD70抗体、またはCD70の受容体またはそのCD70結合断片を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記CD70結合ドメインが、抗CD70抗体を含み、任意選択的に、前記抗CD70抗体が、scFvである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記CD70結合タンパク質が、ヒンジドメインをさらに含み、任意選択的に、前記ヒンジドメインが、CD8ヒンジを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記CD70結合タンパク質が、CD3ζシグナル伝達ドメイン、CD3δシグナル伝達ドメイン、CD3γシグナル伝達ドメイン、CD3εシグナル伝達ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン、CD2シグナル伝達ドメイン、OX40シグナル伝達ドメイン、および4-1BBシグナル伝達ドメイン、またはそのバリアントからなる群から選択される一つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記CD70結合タンパク質が、CD3ζまたはCD3γシグナル伝達ドメインを含み、共刺激ドメインを含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記CD70結合タンパク質が、4-1BBシグナル伝達ドメインを含み、CD3ζシグナル伝達ドメインを含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記CD70結合タンパク質が、4-1BBシグナル伝達ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記一つまたは複数の細胞内ドメインが、配列番号265、271~278、281~295、311~337、580~591、または616~617のうちの一つまたは複数のアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記CD70結合タンパク質が、細胞内シグナル伝達ドメインを含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記CD70陽性細胞が、前記患者における正常または非がん性リンパ球である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記CD70陽性細胞が、T細胞、B細胞、またはNK細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記CD70陽性細胞が、活性化T細胞である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記操作された免疫細胞が、末梢血単核球(PBMC)、T細胞、NK細胞、もしくはその混合物であるか、またはiPSCからもたらされるか、もしくは開発される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記操作された免疫細胞が、前記患者にとって自己または同種である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記操作された免疫細胞が、内因性TCRa遺伝子、内因性CD52遺伝子、および内因性CD70遺伝子のうちの一つまたは複数の一つまたは複数の遺伝子改変をさらに含み、前記操作された免疫細胞が、前記一つまたは複数の遺伝子改変を含まない対照免疫細胞と比較して、低減されたレベルのTCRa、CD52および/またはCD70タンパク質の発現および/または活性を示す、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が、宿主対移植片拒絶反応を有するか、または有することが予測される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が移植を必要とする、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記患者が、骨髄移植、幹細胞移植、または組織移植を必要とし、前記移植が、前記操作された免疫細胞を投与されない対照と比較して、前記患者においてより長い持続性を示す、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、養子細胞療法を受けており、任意選択的に、前記養子細胞療法が、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が、目的の標的に特異的なCAR T細胞をさらに投与される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記患者が、目的の前記標的に特異的な前記CAR T細胞を投与される前、同時、または後に、前記患者が、前記操作された免疫細胞を投与され、任意選択的に、前記患者が、前記CAR T細胞を投与される前、同時、または後に、前記患者が、リンパ枯渇剤をさらに投与され、任意選択的に、前記リンパ枯渇剤が、化学療法剤または抗CD52抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記患者が、前記CAR T細胞を投与される前、同時、または後に、前記患者が、化学療法剤をさらに投与され、任意選択的に、前記化学療法剤が、シクロホスファミドである、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記患者が、前記CAR T細胞を投与される前、同時、または後に、前記患者が、フルダラビンを投与されない、請求項23または24に記載の方法。
【請求項27】
前記CAR T細胞が、前記操作された免疫細胞を投与されていない対照と比較して、前記操作された免疫細胞を投与された前記患者においてより長い持続性を示す、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記操作された免疫細胞が、目的の標的に特異的な追加の抗原結合ドメインをさらに含むか、または機能的に発現し、任意選択的に、前記抗原結合ドメインが、目的の前記標的と結合する抗体を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
一つのタンパク質が、前記追加の抗原結合ドメインおよび前記CD70結合タンパク質を含み、前記追加の抗原結合ドメインが、目的の前記標的に結合する抗体を含み、任意選択的に、前記追加の抗原結合ドメインが、scFvを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記一つのタンパク質が、二重特異性CARである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記追加の抗原結合タンパク質が、前記CD70結合タンパク質とは別個のタンパク質として発現される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記別個のタンパク質が、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記別個のタンパク質が、CD3ζシグナル伝達ドメイン、CD28シグナル伝達ドメインおよび4-1BBシグナル伝達ドメインからなる群から選択される細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記別個のタンパク質が、目的の前記標的に特異的なCARである、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
目的の前記標的が、疾患状態に関連する標的である、請求項23~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患状態が、がんである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
目的の前記標的が、BCMA、EGFRvIII、Flt-3、WT-1、CD20、CD22、CD23、CD30、CD38、CD33、CD133、WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、HER2、MSLN、PSMA、PSCA、GPC3、Liv1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKG2D、CS1、CD44v6、ROR1、CD19、Claudin-18.2(Claudin-18A2、もしくはClaudin18アイソフォーム2)、DLL3(Delta様タンパク質3、ショウジョウバエデルタ相同体3、Delta3)、Muc17、Muc3、Muc16、FAPアルファ(線維芽細胞活性化タンパク質アルファ)、Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体座位タンパク質G6d、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25)、またはRNF43(E3ユビキチン-タンパク質リガーゼRNF43、RINGフィンガータンパク質43)である、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記操作された免疫細胞が、CD70座位で遺伝子改変されて、CD70発現のレベルを低減する、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記操作された免疫細胞が、CD70発現のレベルを低減するためにCD70座位で遺伝子改変されていない、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
それを必要とする患者における疾患状態を治療する方法であって、前記患者に、CD70結合ドメインおよび膜貫通ドメインを含むCD70結合タンパク質を含むか、または機能的に発現する操作された免疫細胞、ならびに任意選択的に、別個の治療剤を投与する工程を含み、前記操作された免疫細胞が、前記患者におけるCD70陽性細胞の増殖および/または活性を阻害する、方法。
【請求項41】
前記CD70結合ドメインが、CD70抗体、またはCD70の受容体またはそのCD70結合断片を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記CD70結合ドメインが、抗CD70抗体を含み、任意選択的に、前記抗CD70抗体が、scFvである、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記CD70陽性細胞が、正常または非がん性リンパ球である、請求項40~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記正常なリンパ球が、T細胞、B細胞、またはNK細胞である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記操作された免疫細胞がPBMCである、請求項40~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記操作された免疫細胞が、T細胞もしくはNK細胞、またはその混合物であるか、あるいはiPSCからもたらされるか、または開発される、請求項40~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記患者が、目的の標的に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を含む治療剤を投与される、請求項40~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記患者が、目的の前記標的に特異的な前記CAR T細胞を投与される前、同時、または後に、前記患者が、前記操作された免疫細胞を投与され、任意選択的に、前記患者が、前記CAR T細胞を投与される前、同時、または後に、前記患者が、化学療法剤をさらに投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記患者が、前記CAR T細胞を投与される前、同時、または後に、前記患者が、化学療法剤を投与され、任意選択的に、前記化学療法剤が、シクロホスファミドである、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記患者が、前記CAR T細胞を投与される前、同時、または後に、前記患者が、フルダラビンを投与されない、請求項47~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記CAR T細胞が、前記操作された免疫細胞を投与されていない対照と比較して、前記操作された免疫細胞を投与された前記患者においてより長い持続性を示す、請求項47~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記操作された免疫細胞が、目的の標的に特異的な追加の抗原結合ドメインをさらに含むか、または機能的に発現し、任意選択的に、前記抗原結合ドメインが、目的の前記標的と結合する抗体を含む、請求項40~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
一つのタンパク質が、前記追加の抗原結合ドメインおよび前記CD70結合タンパク質を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記一つのタンパク質が、二重特異性CARである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記追加の抗原結合ドメインが、目的の前記標的に結合する抗体を含み、任意選択的に、目的の前記標的に結合する前記抗体が、scFvを含む、請求項52~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記追加の抗原結合ドメインが、前記CD70結合タンパク質とは別個のタンパク質として発現される、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記別個のタンパク質が、目的の前記標的に特異的なCARである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
目的の前記標的に特異的な前記CARが、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3zシグナル伝達ドメイン、CD28シグナル伝達ドメインまたは4-1BBシグナル伝達ドメインを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
目的の前記標的が、疾患状態に関連する標的である、請求項47~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
目的の前記標的が、BCMA、EGFRvIII、Flt-3、WT-1、CD20、CD22、CD23、CD30、CD38、CD33、CD133、WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、HER2、MSLN、PSMA、PSCA、GPC3、Liv1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKG2D、CS1、CD44v6、ROR1、CD19、Claudin-18.2(Claudin-18A2、もしくはClaudin18アイソフォーム2)、DLL3(Delta様タンパク質3、ショウジョウバエデルタ相同体3、Delta3)、Muc17、Muc3、Muc16、FAPアルファ(線維芽細胞活性化タンパク質アルファ)、Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体座位タンパク質G6d、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25)、またはRNF43(E3ユビキチン-タンパク質リガーゼRNF43、RINGフィンガータンパク質43)である、請求項47~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記疾患状態が、がんである、請求項47~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記がんが、胃がん、肉腫、リンパ腫(非ホジキンスリンパ腫を含む)、白血病、頭頸部がん、胸腺がん、上皮がん、唾液腺がん、肝臓がん、胃がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、膵がん、グリオーマ、白血病、多発性骨髄腫、腎細胞がん、膀胱がん、子宮頸がん、絨毛がん、結腸がん、口腔がん、皮膚がん、及びメラノーマからなる群から選択される、請求項62に記載の方法。いくつかの実施形態では、対象は、局所進行性若しくは転移性メラノーマ、扁平上皮細胞頭頸部がん(SCHNC)、卵巣がん、肉腫、又は再発性若しくは難治性の古典的ホジキンリンパ腫(cHL)を有する、以前に治療を受けた成人対象である。
【請求項64】
それを必要とする患者における宿主対移植片拒絶または反応を治療または予防する方法であって、前記患者に、CD70結合ドメインおよび膜貫通ドメインを含むCD70結合タンパク質を含むか、または機能的に発現する操作された免疫細胞を投与することを含み、前記CD70結合タンパク質が、前記患者におけるCD70陽性細胞の増殖および/または活性を阻害する、方法。
【請求項65】
第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質および第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質を機能的に発現する操作された免疫細胞であって、前記第一の抗原結合ドメインが、目的の標的に特異的に結合し、前記第二の抗原結合ドメインが、CD70に特異的に結合し、任意選択的に、前記第二の抗原結合ドメインが、抗CD70 scFv、抗CD70 VHH、抗CD70 VHまたはCD70の受容体を含み、任意選択的に、CD70の前記受容体が、CD27またはそのCD70結合断片である、操作された免疫細胞。
【請求項66】
前記第一の抗原結合ドメインを含む前記タンパク質が、第一のCARであり、前記第二の抗原結合ドメインを含む前記タンパク質が、第二のCARである、請求項65に記載の操作された免疫細胞。
【請求項67】
一つのタンパク質が、前記第一の抗原結合ドメインと前記第二の抗原結合ドメインの両方を含む、請求項65に記載の操作された免疫細胞。
【請求項68】
前記一つのタンパク質が二重特異性CARである、請求項67に記載の操作された免疫細胞。
【請求項69】
目的の前記標的が、BCMA、EGFRvIII、Flt-3、WT-1、CD20、CD22、CD23、CD30、CD38、CD33、CD133、WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、HER2、MSLN、PSMA、PSCA、GPC3、Liv1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKG2D、CS1、CD44v6、ROR1、CD19、Claudin-18.2(Claudin-18A2、もしくはClaudin18アイソフォーム2)、DLL3(Delta様タンパク質3、ショウジョウバエデルタ相同体3、Delta3)、Muc17、Muc3、Muc16、FAPアルファ(線維芽細胞活性化タンパク質アルファ)、Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体座位タンパク質G6d、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25)、またはRNF43(E3ユビキチン-タンパク質リガーゼRNF43、RINGフィンガータンパク質43)からなる群から選択されるタンパク質である、請求項65~68のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項70】
目的の前記標的が、BCMA、EGFRvIII、Flt-3、WT-1、CD20、CD22、CD23、CD30、CD38、CD33、CD133、WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、HER2、MSLN、PSMA、PSCA、GPC3、Liv1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKG2D、CS1、CD44v6、ROR1、CD19、Claudin-18.2(Claudin-18A2、もしくはClaudin18アイソフォーム2)、DLL3(Delta様タンパク質3、ショウジョウバエデルタ相同体3、Delta3)、Muc17、Muc3、Muc16、FAPアルファ(線維芽細胞活性化タンパク質アルファ)、Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体座位タンパク質G6d、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25)、またはRNF43(E3ユビキチン-タンパク質リガーゼRNF43、RINGフィンガータンパク質43)からなる群から選択されるタンパク質のヒト形態である、請求項65~68のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項71】
前記操作された免疫細胞が、内因性TCRa遺伝子、内因性CD52遺伝子、および内因性CD70遺伝子のうちの一つまたは複数の一つまたは複数の遺伝子改変をさらに含む、請求項65~70のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項72】
前記細胞が、
(a)TRACの一方または両方の対立遺伝子での破壊、
(b)CD52の一方または両方の対立遺伝子での破壊、および
(c)CD70の一方または両方の対立遺伝子での破壊、のうちの一つまたは複数を含み、
任意選択的に、任意の一つまたは複数の破壊が、ノックアウトを含む、請求項65~70のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項73】
前記操作された免疫細胞が、TRAC、CD52およびCD70のうちの任意の一つまたは複数を、操作されていない免疫細胞における発現レベルの90%以下、75%以下、50%以下、25%以下、または10%以下のレベルで発現する、請求項65~72のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項74】
前記操作された免疫細胞が、操作されたT細胞である、請求項65~73のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項75】
前記操作された免疫細胞が、第一の抗原結合ドメインを含む前記タンパク質をコードする第一の核酸および第二の抗原結合ドメインを含む前記タンパク質をコードする第二の核酸を含む、請求項65~74のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項76】
単一の核酸が、前記第一の核酸と前記第二の核酸の両方を含む、請求項75に記載の操作された免疫細胞。
【請求項77】
第一のベクターが、前記第一の核酸を含み、第二のベクターが、前記第二の核酸を含み、任意選択的に、一方または両方のベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項75に記載の操作された免疫細胞。
【請求項78】
一つのベクターが、前記第一の核酸と前記第二の核酸の両方を含み、任意選択的に、前記ベクターが、レンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである、請求項75に記載の操作された免疫細胞。
【請求項79】
ベクターが、前記核酸を含み、任意選択的に、前記ベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項76に記載の操作された免疫細胞。
【請求項80】
前記第一の核酸および/または前記第二の核酸が、破壊されたTRAC座位、破壊されたCD52座位または破壊されたCD70座位内に位置する、請求項75に記載の操作された免疫細胞。
【請求項81】
前記単一の核酸が、破壊されたTRAC座位、破壊されたCD52座位または破壊されたCD70座位内に位置する、請求項76に記載の操作された免疫細胞。
【請求項82】
前記免疫細胞が、健常ボランティアから得られた免疫細胞である、若しくはそれに由来するか、患者から得られるか、又はiPSCに由来する、請求項65~81のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項83】
請求項71~82のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団であって、前記操作された免疫細胞の75%以下が、TRAC、CD52およびCD70のうちの一つまたは複数を機能的に発現する、集団。
【請求項84】
前記操作された免疫細胞の集団が、少なくとも10%操作されたT細胞、少なくとも20%操作されたT細胞、少なくとも30%操作されたT細胞、少なくとも40%操作されたT細胞、少なくとも50%操作されたT細胞、少なくとも75%操作されたT細胞、又は少なくとも90%操作されたT細胞を含む、請求項83に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項85】
前記操作された細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、又は少なくとも90%が、内因性TCRa遺伝子、内因性CD52遺伝子および内因性CD70遺伝子のうち一つ以上について、一つ以上の遺伝子改変を含む、請求項83~84のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項86】
前記集団が、10~1010個の細胞を含む、請求項83~85のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項87】
請求項65~82のうちの一項または複数に記載の10~1010個の操作された免疫細胞を含む、細胞の集団。
【請求項88】
前記操作された免疫細胞の集団が、健常ボランティアから得られた一つ以上の免疫細胞に由来するか、患者から得られた一つ以上の免疫細胞に由来するか、又は一つ以上のiPSCに由来する、請求項83~87のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項89】
請求項65~82のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞または請求項83~88のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団のうちの一つまたは複数を含み、少なくとも一つの薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む、医薬組成物。
【請求項90】
TALEN、亜鉛フィンガー、Cas-CLOVER、およびCRISPR/Casシステムからなる群から選択される一つまたは複数の遺伝子編集技術を使用して、免疫細胞におけるTRAC、CD52およびCD70のうちの一つまたは複数の機能的発現を低減させることを含む、請求項71~82のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞を作製する方法。
【請求項91】
免疫細胞に、第一の抗原結合ドメインを含む前記タンパク質をコードする第一の核酸および第二の抗原結合ドメインを含む前記タンパク質をコードする第二の核酸を導入することを含む、請求項65~82のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞を作製する方法。
【請求項92】
一つのベクターが、前記第一の核酸と前記第二の核酸の両方を含み、任意選択的に、前記ベクターが、レンチウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターである、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
第一のベクターが、前記第一の核酸を含み、第二のベクターが、前記第二の核酸を含み、任意選択的に、前記第一のベクターと前記第二のベクターのいずれかまたは両方が、レンチウイルスベクターであるか、または前記第一のベクターと前記第二のベクターのいずれかまたは両方が、アデノ随伴ウイルスベクターである、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記第一の核酸と前記第二の核酸が、部位特異的統合によって前記操作された免疫細胞に導入され、任意選択的に、前記第一のベクターと前記第二のベクターのいずれかまたは両方が、アデノ随伴ウイルスベクターである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
患者における状態または疾患を治療する方法であって、前記患者に、請求項65~82のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞、請求項83~88のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団、または請求項89に記載の医薬組成物のうちの一つまたは複数を投与することを含む、方法。
【請求項96】
前記状態または疾患が、固形腫瘍または血液腫瘍である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記状態または疾患が、ウイルス疾患、細菌疾患、がん、炎症性疾患、免疫疾患、または加齢関連疾患である、請求項95に記載の方法。
【請求項98】
前記状態または疾患が、胃がん、肉腫、リンパ腫(非ホジキンスリンパ腫を含む)、白血病、頭頸部がん、胸腺がん、上皮がん、唾液腺がん、肝臓がん、胃がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、膵がん、グリオーマ、白血病、多発性骨髄腫、腎細胞がん、膀胱がん、子宮頸がん、絨毛がん、結腸がん、口腔がん、皮膚がん、及びメラノーマからなる群から選択される、請求項95に記載の方法。
【請求項99】
前記患者が、局所進行性若しくは転移性メラノーマ、扁平上皮細胞頭頸部がん(SCHNC)、卵巣がん、肉腫、又は再発性若しくは難治性の古典的ホジキンリンパ腫(cHL)を有する、以前に治療を受けた成人対象である、請求項95に記載の方法。
【請求項100】
前記方法が、体重1kg当たり約10もしくは10~約10個の請求項65~82のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞、または体重1kg当たり約10~約10個の請求項65~82のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞、または体重1kg当たり約0.1×10~5×10個の請求項65~82のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞を投与することを含む、請求項95~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記細胞が、単回用量として投与される、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記操作された免疫細胞が、ある期間にわたって二回以上の用量として投与される、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
前記操作された免疫細胞が、前記患者のCD70陽性リンパ球の増殖および/または活性を阻害する、請求項95~102のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月15日に出願された米国仮特許出願第63/210,979号および2022年6月10日に出願された米国仮特許出願第63/351,223号の優先の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2022年6月13日に作成されたこのASCIIコピーは、AT-049_03_SL.txtと名付けられ、サイズは319,200バイトである。
【0003】
本開示は、概して、治療用途での操作された免疫細胞(例えば、T細胞)の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
悪性腫瘍関連抗原を認識するように遺伝子改変された免疫細胞の養子移入は、がんを治療するための新しいアプローチとして有望視されている(例えば、Brenner et al.,Current Opinion in Immunology,22(2):251-257(2010);Rosenberg et al.,Nature Reviews Cancer,8(4):299-308(2008)を参照)。免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)、抗原認識部分からなる融合タンパク質及びT細胞活性ドメインを発現するように遺伝子改変され得る(例えば、Eshhar et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90(2):720-724(1993)を参照)。CARを含有する免疫細胞、例えば、CAR-T細胞(CAR-T)は、標的細胞を認識及び殺傷する能力を保持又は強化しながら、抗原特異性を有するように操作される。
【0005】
しかしながら、CAR改変自己細胞療法の生成は高価であり、数週間のプロセスと品質検査を必要とし、採用される患者特異的T細胞の初期の品質及び量に応じて変動する効力の産物をもたらす。同種CAR改変細胞療法は、健康なドナー由来の細胞をCARで改変してから、複数の患者に投与するものであり、必要に応じて直ちに送達できる自己療法よりも安価でより堅牢な産物が見込まれる(例えば、Graham et al.,Cells 2018,7,155;doi:10.3390/cells7100155を参照)。さらに、同種療法は、望ましい製品特性(例えば、遺伝子編集効率、統合部位、有害なオフターゲット遺伝子編集の欠如、ハプロタイプなど)の選択を可能にし、より洗練された細胞操作(例えば、効力、持続性、ホーミングなどを改善する複数の遺伝子編集)を促進する。同種CAR改変細胞療法を実施するための大きなハードルは、患者の免疫系(宿主)による、産物(ドナー)の拒絶反応の可能性である。
【0006】
同種細胞療法は、自己細胞療法よりも多くの利点があるが、同種細胞はまた、宿主とは異なる同種細胞産物の表面上のT及びNKエピトープ決定基と反応する宿主又はレシピエントの免疫系細胞による拒絶に直面する。本開示は、レシピエントの自然な防御にもかかわらず、投与された細胞の持続性の向上をもたらす改善された同種療法の利点を提供する。
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、細胞が導入された宿主又はレシピエントにおけるそれらの持続性を改善するために、操作された、例えば、遺伝子操作された免疫細胞、操作された細胞を含む組成物及び集団、並びにそれを使用して患者における状態、例えば、がんを治療する方法と、が提供される。本開示の免疫細胞は、第一の抗原結合タンパク質及び第二の異なる抗原結合タンパク質、例えば、第一のCAR及び第二のCARを機能的に発現するように操作される。第一の抗原結合タンパク質、例えば、CARは、患者における状態、例えば、がんの治療的処置に対するその適合性について選択される。例えば、第一の抗原結合タンパク質は、発現される抗原、例えば、状態を引き起こす細胞、例えば、がん細胞及び/又は腫瘍細胞の特徴である抗原を認識するCARであり得る。第二の抗原結合タンパク質、例えば、CARなどのCD70結合タンパク質は、CD70に対する結合特異性を有し、これは、例えば、同種CAR T細胞に応答してレシピエント免疫細胞上に発現される。したがって、操作された細胞は、レシピエントの免疫応答に対してそれ自体を防御することができ、それによって、投与後の同種細胞の生存を延長する。あるいは、一つの抗原結合タンパク質、例えば、一つのCARは、治療的結合活性とCD70結合活性の両方を含み得る。したがって、本開示は、例えば、同種CAR T細胞または任意の他の同種CAR免疫細胞(例えば、CAR NK細胞)の持続性を増加させる方法を提供し、方法は、CAR細胞、例えば、CAR T細胞、CAR NK細胞、CAR単球またはCARマクロファージを操作して、第一の抗原結合タンパク質、例えば、細胞が機能的に発現するCARに加えて、抗CD70抗原結合タンパク質、例えば、抗CD70 CARなどのCD70結合タンパク質を機能的に発現させることを含む。
【0008】
CD70陰性免疫細胞が、CD70 CARによって標的化されないと予想され、したがって長期の免疫抑制を回避するため、このアプローチは、深部リンパ枯渇レジメンに対するより安全な代替手段を提供する可能性がある。さらに、CD70は、腎細胞がん、リンパ腫、および急性骨髄性白血病を含む、様々な腫瘍の悪性細胞によっても発現される。したがって、CD70に対するCARおよびCD19またはCD20などの第二の腫瘍特異的標的を、別個のCARとして、または二重特異性を有する単一のCARとして発現するようにT細胞を操作することは、CAR T細胞の抗腫瘍有効性および持続性を強化し、宿主免疫系による拒絶反応を遅延させ得る。
【0009】
したがって、一態様では、本開示は、CD70陽性細胞を、CD70に結合する細胞外リガンド結合ドメイン(またはCD70結合ドメイン)および膜貫通ドメインを含むCD70結合タンパク質を含むか、または機能的に発現する操作された免疫細胞と接触させる工程を含む、インビトロまたは患者におけるCD70陽性細胞の増殖及び/又は活性を阻害する方法を提供する。関連する態様では、本開示は、操作された免疫細胞を患者に投与する工程を含み、操作された免疫細胞は、CD70に結合する細胞外リガンド結合ドメイン(またはCD70結合ドメイン)および膜貫通ドメインを含むCD70結合タンパク質を含むか、または機能的に発現し、操作された免疫細胞は、患者におけるCD70陽性細胞の増殖及び/又は活性を阻害する、それを必要とする患者におけるリンパ枯渇の方法を提供する。一部の実施形態では、CD70陽性細胞は、T細胞、B細胞、またはNK細胞である。一部の実施形態では、CD70陽性細胞は、正常または非がん性リンパ球である。一部の実施形態では、CD70陽性細胞は、活性化リンパ球である。一部の実施形態では、CD70陽性細胞は、活性化T細胞である。
【0010】
別の態様では、本開示は、第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質および第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質を機能的に発現する操作された免疫細胞を提供し、第一の抗原結合ドメインは、目的の標的に特異的に結合し、第二の抗原結合ドメインは、CD70(例えば、CD70結合タンパク質)に特異的に結合する。様々な実施形態では、第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、第一のタンパク質であり、第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、第一のタンパク質とは別個かつ異なる第二のタンパク質である。様々な実施形態では、第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、第一のCARであり、第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、第二のCAR、すなわち,CD70 CARである。様々な実施形態では、一つの抗原結合タンパク質、例えば、一つのCARは、第一の抗原結合ドメインと第二の抗原結合ドメインの両方を含み、例えば、CARは、目的の標的とCD70の両方を認識する二重特異性CARである。他の実施形態では、目的の標的を認識する第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質、および第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質、すなわち、CD70結合タンパク質は、異なるタンパク質である。
【0011】
一部の実施形態では、第一の抗原結合ドメインの目的の標的、例えば、第一のCARの目的の標的は、目的の任意の分子であり、例えば、これに限定されないが、CD70、BCMA、EGFRvIII、Flt-3、WT-1、CD20、CD22、CD23、CD30、CD38、CD33、CD133、WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、HER2、MSLN、PSMA、PSCA、GPC3、Liv1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKG2D、CS1、CD44v6、ROR1、CD19、Claudin-18.2(Claudin-18A2もしくはClaudin18アイソフォーム2とも称される)、DLL3(Delta様タンパク質3、ショウジョウバエデルタ相同体3、Delta3とも称される)、Muc17、Muc3、Muc16、FAPアルファ(線維芽細胞活性化タンパク質アルファ)、Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体座位タンパク質G6d、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25とも称される)、またはRNF43(E3ユビキチン-タンパク質リガーゼRNF43、RINGフィンガータンパク質43とも称される)を含み、列挙された任意の例示的な標的についてヒト型を特異的に含む。目的の標的は、例えば、細胞の表面上に発現され、任意の形態の癌などの状態または疾患の何らかの点で特徴的である、任意の分子、例えば、任意のタンパク質であってもよく、その阻害、低減または除去は、治療的に有益であるか、またはそうでなければ望ましい。
【0012】
一部の実施形態では、CD70(例えば、CD70結合タンパク質)に特異的に結合する第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、CD70 CARであるか、またはそれを含む。一部の実施形態では、第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、抗CD70 scFv、抗CD70 VHもしくはCD70の受容体、またはこれらのうちのいずれか二つ以上を含む。一部の実施形態では、CD70の受容体は、CD27またはCD27に対する結合特異性を保持するCD70の断片、例えば、CD27のCD70結合断片である。一部の実施形態では、CD27は、UniProtKBエントリーP26842に開示されるヒトCD27のアミノ酸配列を有するか、またはそれを含む。一部の実施形態では、第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、CD3細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARである。一部の実施形態では、第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、一つまたは一つより多くの共刺激ドメインを含むCARである。一部の実施形態では、第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、共刺激ドメインを有さないCD3細胞内シグナル伝達ドメインを含むCAR(第一世代のCAR)である。一部の実施形態では、第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、CD3細胞内シグナル伝達ドメインおよび共刺激ドメインを含むCAR(第二世代のCAR)である。一部の実施形態では、第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、共刺激ドメインを含まないCARである。一部の実施形態では、第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質、例えば、CD70結合タンパク質は、細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。一部の実施形態では、第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、一つまたは一つより多くの共刺激ドメインを任意選択的に含むCARである。第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質の様々な実施形態では、タンパク質は、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または一つもしくは複数の共刺激ドメインなどの細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、全長CD27またはCD27のCD70結合断片を含み、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む。
【0013】
様々な実施形態では、操作された免疫細胞は、低減されたレベルでCD70、TRAC、およびCD52のうちの一つまたは複数を機能的に発現する。いくつかの実施形態では、対応するが操作されていない免疫細胞における発現レベルと比較して提示される、低減された発現レベルは、例えば、遺伝子の両方の染色体コピーがノックアウトされている場合には0%であるか、又は、例えば、遺伝子の二つの染色体コピーのうちの一方がノックアウトされ、かつその遺伝子の他方の染色体コピーの発現に代償的な増加がない場合には50%(すなわち、操作されていない対照免疫細胞におけるレベルの50%)である。一部の実施形態では、細胞は、操作されていない免疫細胞における発現レベルの90%以下、75%以下、50%以下、25%以下、または10%以下のレベルで、CD70、TRACおよびCD52のうちの一つまたは複数を発現する。一部の実施形態では、操作された免疫細胞におけるCD70、TRACおよびCD52のうちの一つまたは複数の発現レベルは、CD70、TRAC、および/またはCD52に関して対応して操作されていない対照細胞におけるレベルの0%~90%の間の任意の値である。いくつかの実施形態では、操作された細胞における発現レベルは、例えば、対照細胞におけるレベルの10%~90%、25%~90%、25%~75%、10%~50%、25%~50%、50%~90%、又は50%~75%である。いくつかの実施形態では、0%又は50%以外の、低減された発現レベルは、例えば、遺伝子の一方のみの染色体コピーがノックアウトされ、残りの染色体コピーの発現レベルの増加を代償機構が引き起こす場合、又は発現の低下が、遺伝子ノックアウト以外の方法、既知のノックダウン方法など、例えば、様々なRNAベースの技術(例えば、アンチセンスRNA、miRNA、shRNA、siRNA;例えば、Lam et al.,Mol.Ther.-Nucleic Acids 4:e252(2015),doi:10.1038/mtna.2015.23;Sridharan and Gogtay,Brit.J.Clin.Pharmacol.82:659-72(2016)を参照)のいずれかを使用するものによって達成される場合に得られる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、好適な対照と比較して、細胞表面におけるMHCクラスIタンパク質又は複合体の発現レベルの低減を示す。様々な実施形態において、細胞は、T細胞、例えば、ヒトT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、CD70、CD52およびTRAC座位もしくは遺伝子のうちの一つまたは複数における変異ならびに/またはCD70、CD52およびTRAC座位もしくは遺伝子のうちの一つまたは複数の破壊(これは、破壊された座位もしくは遺伝子の機能的発現の低下を引き起こす)を含む。一実施形態では、変異または破壊は、任意の遺伝子変異または遺伝子編集技術によってCD70、CD52およびTRAC遺伝子または座位のうちの一つまたは複数に導入され、これには、既知の相同組み換え技術、ならびにメガヌクレアーゼ、TALEN、亜鉛フィンガー、shRNA、Cas-CLOVER、およびCRISPR/Casシステムのうちいのずれか一つまたは複数を用いる技術が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細胞は、非ヒト細胞、例えば、霊長類細胞又は非霊長類哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、変異又は破壊は、例えば、細胞内で発現される一つ以上のタンパク質又は遺伝子産物をコードする核酸など、核酸内でノッキングすることによって生じる。一部の実施形態では、核酸は、第一のCARおよび第二のCARのいずれかまたは両方をコードする。
【0014】
本明細書において、第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質および第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質を機能的に発現する操作された免疫細胞が提供され、第一の抗原結合ドメインは、目的の標的に特異的に結合し、第二の抗原結合ドメインは、CD70(またはCD70結合タンパク質)に特異的に結合し、その使用が提供される。
【0015】
様々な実施形態では、第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、第一のCARであり、第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、第二のCARである。一部の実施形態では、第二の抗原結合ドメインは、CAR、例えば、一つまたは一つより多くの共刺激ドメインを含む第二のCARである。一部の実施形態では、第二の抗原結合ドメインは、CAR、例えば、共刺激ドメインを含まない第二のCARである。一部の実施形態では、第二の抗原結合ドメインは、CAR、例えば、一つまたは一つより多くの共刺激ドメインを任意選択的に含む第二のCARである。
【0016】
様々な実施形態では、一つのタンパク質は、第一の抗原結合ドメインと第二の抗原結合ドメインの両方を含む。特定の実施形態では、一つのタンパク質は、二重特異性CARである。
【0017】
特定の実施形態では、目的の標的は、CD70、BCMA、EGFRvIII、Flt-3、WT-1、CD20、CD22、CD23、CD30、CD38、CD33、CD133、WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、HER2、MSLN、PSMA、PSCA、GPC3、Liv1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKG2D、CS1、CD44v6、ROR1、CD19、Claudin-18.2(Claudin-18A2、もしくはClaudin18アイソフォーム2)、DLL3(Delta様タンパク質3、ショウジョウバエデルタ相同体3、Delta3)、Muc17、Muc3、Muc16、FAPアルファ(線維芽細胞活性化タンパク質アルファ)、Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体座位タンパク質G6d、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25)、またはRNF43(E3ユビキチン-タンパク質リガーゼRNF43、RINGフィンガータンパク質43)からなる群から選択されるタンパク質である。特定の実施形態では、目的の標的は、CD70、BCMA、EGFRvIII、Flt-3、WT-1、CD20、CD22、CD23、CD30、CD38、CD33、CD133、WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、HER2、MSLN、PSMA、PSCA、GPC3、Liv1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKG2D、CS1、CD44v6、ROR1、CD19、Claudin-18.2(Claudin-18A2、もしくはClaudin18アイソフォーム2)、DLL3(Delta様タンパク質3、ショウジョウバエデルタ相同体3、Delta3)、Muc17、Muc3、Muc16、FAPアルファ(線維芽細胞活性化タンパク質アルファ)、Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体座位タンパク質G6d、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25)、またはRNF43(E3ユビキチン-タンパク質リガーゼRNF43、RINGフィンガータンパク質43)からなる群から選択されるタンパク質のヒト形態である。
【0018】
様々な実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、内因性TRAC遺伝子、内因性CD52遺伝子、および内因性CD70遺伝子のうちの一つまたは複数のうちの一つまたは複数の遺伝子改変をさらに含む。特定の実施形態では、細胞は、TRACの一方もしくは両方の対立遺伝子におけるノックアウト、CD52の一方もしくは両方の対立遺伝子におけるノックアウト、またはCD70の一方もしくは両方の対立遺伝子におけるノックアウト、またはTRAC、CD52およびCD70のうちの一つまたは複数の一方もしくは両方の対立遺伝子におけるノックアウトを含む。様々な実施形態では、操作された免疫細胞は、操作されていない免疫細胞における発現レベルの90%以下、75%以下、50%以下、25%以下、または10%以下のレベルで、TRAC、CD52およびCD70のうちの一つまたは複数を発現する。
【0019】
様々な実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、操作されたT細胞である。様々な実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、操作されたNK細胞である。
【0020】
様々な実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質をコードする第一の核酸および第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質をコードする第二の核酸を含む。特定の実施形態では、第一のベクターは、第一の核酸を含み、第二のベクターは、第二の核酸を含む。一部の実施形態では、一方または両方のベクターは、レンチウイルスベクターである。一部の実施形態では、一方または両方のベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。特定の実施形態では、第一の核酸および/または第二の核酸は、破壊されたTRAC、CD52またはCD70座位内に位置する。特定の実施形態では、一つのベクターは、第一の核酸と第二の核酸の両方を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターまたはAAVベクターである。
【0021】
特定の実施形態では、操作された免疫細胞は、第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質と第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質の両方をコードする一つの核酸を含む。一部の実施形態では、ベクターは、一つの核酸を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターまたはAAVベクターである。特定の実施形態では、一つの核酸は、破壊されたTRAC、CD52またはCD70座位内に位置する。
【0022】
様々な実施形態では、操作された免疫細胞は、一つまたは複数の遺伝子改変、例えば、内因性遺伝子座位、例えば、以下:内因性CD70遺伝子、内因性TCRa遺伝子および内因性CD52遺伝子のうちの一つまたは複数の一方または両方の対立遺伝子の改変を含むか、またはさらに含む。様々な実施形態では、一つ以上の遺伝子改変は、改変を含む遺伝子の機能的発現の減少又は不在の原因となる。様々な実施形態では、改変は、座位の破壊、例えば、ノックアウト、ノックダウンまたはノックインを含む。様々な実施形態では、破壊は、第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質をコードする第一の核酸および/または第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質をコードする第二の核酸の挿入を含む。様々な実施形態では、改変は、ノックダウン、例えば、アンチセンスRNA、siRNA、miRNA、shRNA介在性ノックダウンによって遺伝子の機能的発現の低減または不存在を引き起こす。
【0023】
本明細書で提供される操作された免疫細胞は、様々な供給源のいずれかからの細胞に由来するか、または調製することができる。操作された免疫細胞は、操作された免疫細胞が投与される人以外の人、例えばレシピエント以外のドナー(例えば、健常ボランティア)からの、一つまたは複数の細胞、例えば幹細胞若しくは免疫細胞から調製若しくは誘導され得、又は操作された免疫細胞が投与される人(レシピエント)からの、細胞、例えば幹細胞若しくは免疫細胞から調製若しくは誘導され得、又は一つ以上の人工多能性幹細胞(iPSC)から誘導され得る。様々な実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、健常ボランティアから得られた免疫細胞であるか、若しくはそれに由来するか、患者から得られるか、又はiPSCに由来する。
【0024】
また、本明細書に開示される操作された免疫細胞の集団が本明細書に提供される。様々な実施形態では、集団は、本明細書に提供される10~1010個の操作された免疫細胞、例えば、10、10、10、10、10、10、10、もしくは1010個の操作された免疫細胞、またはそれらの値のうちのいずれか二つの間の任意の範囲を含む。特定の実施形態では、集団の操作された免疫細胞の75%以下、50%以下、または25%以下は、TRAC、CD52およびCD70のいずれか一つ、またはTRAC、CD52およびCD70のいずれか二つ以上を機能的に発現する。特定の実施形態では、集団の操作された免疫細胞の75%以下、50%以下、または25%以下は、TRACを機能的に発現する。特定の実施形態では、集団の操作された免疫細胞の75%以下、50%以下、または25%以下は、CD52を機能的に発現する。特定の実施形態では、集団の操作された免疫細胞の75%以下、50%以下、または25%以下は、TRACを機能的に発現し、集団の操作された免疫細胞の75%以下、50%以下、または25%以下は、CD52を機能的に発現する。
【0025】
また、細胞の集団も本明細書に提供され、細胞の集団は、本明細書に開示される少なくとも10%の操作された免疫細胞、本明細書に開示される少なくとも20%の操作された免疫細胞、本明細書に開示される少なくとも30%の操作された免疫細胞、本明細書に開示される少なくとも40%の操作された免疫細胞、本明細書に開示される少なくとも50%の操作された免疫細胞、本明細書に開示される少なくとも75%の操作された免疫細胞、または本明細書に開示される少なくとも90%の操作された免疫細胞を含む。特定の実施形態では、操作された細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、または少なくとも90%は、内因性TCRa(またはTRAC)遺伝子、内因性CD52遺伝子および内因性CD70遺伝子のうちの一つまたは複数の一つまたは複数の遺伝子改変を含む。様々な実施形態では、細胞の集団は、10~1010個の細胞を含む。
【0026】
様々な実施形態では、本明細書に開示される細胞および操作された免疫細胞の集団は、健康なボランティアから得られた一つまたは複数の免疫細胞、患者から得られた一つまたは複数の免疫細胞、または一つまたは複数の人工多能性幹細胞(iPSC)に由来する。
【0027】
また、本明細書に開示される操作された免疫細胞のうちの一つまたは複数を含むか、または細胞もしくは本明細書に開示される操作された免疫細胞の集団を含み、少なくとも一つの薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む医薬組成物が、本明細書に提供される。
【0028】
さらに、内因性TCRa遺伝子、内因性CD52遺伝子および内因性CD70遺伝子のうちの一つまたは複数の一つまたは複数の遺伝子改変を含む本明細書に開示される操作された免疫細胞を作製する方法が本明細書に開示され、方法は、TALEN、亜鉛フィンガー、Cas-CLOVER、およびCRISPR/Casシステムからなる群から選択される一つまたは複数の遺伝子編集技術の使用、ならびに/あるいはいずれかの既知の遺伝子ノックダウン方法、例えば、本明細書に開示される操作された免疫細胞におけるTRAC、CD52およびCD70の一つまたは一つより多くの機能的発現、ならびに/またはいずれかの他の座位からの機能的発現を低減するための様々なRNAベースの技術(例えば、shRNA、アンチセンスRNA、miRNA、siRNA;例えば、Lam et al.,Mol.Ther.-Nucleic Acids 4:e252(2015),doi:10.1038/mtna.2015.23;Sridharan and Gogtay,Brit.J.Clin.Pharmacol.82:659-72(2016)を参照)のいずれかを利用するものの使用を含む。
【0029】
さらに、免疫細胞に、第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質をコードする第一の核酸および第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質をコードする第二の核酸を導入することを含む本明細書に開示される操作された免疫細胞を作製する方法が、本明細書に提供される。特定の実施形態では、一つのベクターは、第一の核酸と第二の核酸の両方を含む。様々な実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。様々な実施形態では、第一のベクターは、第一の核酸を含み、第二のベクターは、第二の核酸を含む。特定の実施形態では、第一のベクターと第二のベクターのいずれかまたは両方は、レンチウイルスベクターである。様々な実施形態では、第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、CARであり、および/または第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、CD70 CARである。様々な実施形態では、第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質および第二の抗原結合ドメイン(すなわち、CD70結合ドメイン)を含むタンパク質は、物理的に別個かつ異なるタンパク質である。特定の実施形態では、別個かつ異なるタンパク質は、例えば、P2AまたはT2Aペプチドによって分離される、バイシストロニック発現カセットから発現される。一部の実施形態では、第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質は、CD70結合ドメインを含むタンパク質のN末端である。一部の実施形態では、CD70結合ドメインを含むタンパク質は、第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質のN末端である。様々な実施形態では、第一の抗原結合ドメインを含むタンパク質および第二の抗原結合ドメイン(すなわち、CD70結合ドメイン)を含むタンパク質は、同じタンパク質、例えば、二重特異性CARである。
【0030】
また、患者に、本明細書に開示される操作された免疫細胞のうちのいずれか一つまたは複数、または細胞もしくは本明細書に開示される操作された免疫細胞の集団、または本明細書に開示される組成物のうちの一つまたは複数を投与することを含む、患者における状態または疾患を治療する方法が、本明細書に提供される。様々な実施形態では、状態または疾患は、固形腫瘍または血液腫瘍である。様々な実施形態では、状態または疾患は、ウイルス性疾患、細菌性疾患、がん、炎症性疾患、免疫疾患、又は加齢関連疾患であり得る。様々な実施形態では、状態または疾患は、胃がん、肉腫、リンパ腫(非ホジキンスリンパ腫を含む)、白血病、頭頸部がん、胸腺がん、上皮がん、唾液腺がん、肝臓がん、胃がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、膵がん、グリオーマ、白血病、多発性骨髄腫、腎細胞がん、膀胱がん、子宮頸がん、絨毛がん、結腸がん、口腔がん、皮膚がん、及びメラノーマからなる群から選択され得る。様々な実施形態では、患者は、局所進行性若しくは転移性メラノーマ、扁平上皮細胞頭頸部がん(SCHNC)、卵巣がん、肉腫、又は再発性若しくは難治性の古典的ホジキンリンパ腫(cHL)を有する、以前に治療を受けた成人対象である。
【0031】
様々な実施形態では、方法は、体重1kg当たり本明細書に開示される約10または10~約10個の操作された免疫細胞、または体重1kg当たり本明細書に開示される約10~約10個の操作された免疫細胞、または体重1kg当たり本明細書に開示される約0.1×10~5×10個の操作された免疫細胞を投与することを含む。
【0032】
様々な実施形態では、細胞は、単回用量として投与される。様々な実施形態では、細胞は、ある期間にわたり一回より多い用量として投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、腫瘍抗原を認識し、結合することができる第一のCARと、CD70を認識し、結合することができる、図中で「CD70ダガー」と称される第二のCARの両方を含む同種CAR T細胞の機能を説明する。第一の抗腫瘍抗原CARは、認識された腫瘍細胞を溶解させる。第二の、抗CD70 CAR、別名、CD70ダガーは、同種CAR T細胞に応答し、および/または攻撃する患者(同種CAR T細胞のレシピエント)の免疫細胞(例えば、NKおよび/またはT細胞)の溶解を引き起こす。それによって、同種CAR T細胞は、患者の免疫細胞による攻撃を防止または制限することによって、より長く持続する。
【0034】
図2-1】図2A~2D。移植片ドナーCD70 CAR T細胞は、レシピエントアロ反応性T細胞による殺傷から保護される。八人のレシピエントドナー由来のPBMCを、照射された移植片ドナーT細胞と7日間共培養して、アロ反応性レシピエントT細胞(RTC)の初回刺激および拡大を可能にした。図2A。次いで、初回刺激されたアロ反応性RTCを単離し、移植片ドナーT細胞受容体アルファ定常(TRAC)ノックアウト(KO)CD70 CAR T細胞または移植片ドナーT細胞受容体アルファ定常(TRAC)ノックアウト(KO)非形質導入T細胞(NTD)のいずれかと、1:1の比で48時間共培養した。移植片ドナー細胞の殺傷を、フローサイトメトリーによって評価した。図2B。低アロ反応性RTCおよび高アロ反応性RTCとの共培養後の非形質導入およびCD70 CAR T細胞の殺傷率。図2C。CD70+RTCの殺傷を示す代表的なフローサイトメトリープロット。図2D。CD4およびCD8 RTCの絶対数(Abs.No.)および生存。記号は、個々のRTCドナーを表す。データは、二つの独立した実験を代表するものである。
図2-2】同上。
【0035】
図3図3A~3B。複数のドナー由来の移植片ドナーCD70 CAR T細胞は、RTCの殺傷を示す。レシピエントドナー由来のPBMCを、三人の異なるドナーから生成された移植片ドナーTRAC KO CD70 CAR T細胞と1:1の比で6日間共培養した。レシピエントT細胞の殺傷を、フローサイトメトリーによって評価した。図3A、絶対数、および図3B、CD4およびCD8 RTCの生存率。記号は、個々のCAR T細胞移植片ドナーを表す。
【0036】
図4-1】図4A~4B。移植片ドナーCD70 CAR T細胞は、CD70陽性レシピエントB細胞、T細胞、およびNK細胞の殺傷を示す。レシピエントドナー由来のPBMCを、移植片ドナーTRAC KO CD19またはCD70 CAR T細胞と2:1の比で6日間共培養した。CD70陽性レシピエント細胞の殺傷を、フローサイトメトリーによって評価した。図4A。フローサイトメトリープロットは、活性化B細胞、T細胞、およびNK細胞上のCD70の上方制御、ならびにCD70 CAR T細胞によるCD70+レシピエント細胞の殺傷を示す。図4B。CD70+レシピエントB細胞、T細胞、およびNK細胞の絶対数。
図4-2】同上。
【0037】
図5-1】図5A~5C。活性化ヒトT細胞を、広範のCD70ダガータンパク質(CD70dg)をコードするLVVで形質導入し、細胞をフローサイトメトリーによって分析した。活性化14日後のCD70ダガー+細胞の割合を、図5Aに示す。活性化の14日後のCD4:CD8比を図5Bに示す。形質導入細胞の活性化状態を、活性化の9日後にCD25および4-1BBの発現を測定することによって評価した(図5C)。円形は、第一世代のCARであるNTD対照またはCD70ダガーのいずれかを表し、三角形は、第二世代のCARであるCD70ダガーを示す。エラーバーは、平均±SEMを表す。MFI:平均蛍光強度。
図5-2】同上。
【0038】
図6-1】図6A~F。CD70ダガー(またはCD70結合タンパク質)を発現するT細胞は、アロ反応性T細胞を枯渇させ、T細胞媒介性拒絶反応に抵抗する。アロ反応性T細胞MLR(図6A)およびPBMC MLR(図6B)を、CD70ダガーを発現するTRACKO移植片ドナーT細胞を使用して行った。9日目にフローサイトメトリーによって細胞を分析し、残りの宿主T細胞およびNK細胞の絶対数を測定した。図6C~Dのデータは、活性化宿主T細胞およびNK細胞が、PBMC MLRにおいてCD70ダガーを発現するT細胞によって除去されたことを示す。データは、二つの独立した実験を代表するものである。記号は、固有の移植片-宿主ドナー対を表す。図6E~Fは、バリアントCD3zシグナル伝達ドメイン(bbz1XXおよびbbzXX3)を担持する第二世代のCARである追加のCD70ダッガー構築物のPBMC MLRアッセイの結果を示す。エラーバーは、平均±SEMを表す。
図6-2】同上。
図6-3】同上。
【0039】
図7-1】図7A~G。部位特異的統合によって導入されるCD70ダガーを発現するT細胞。活性化ヒトT細胞を改変して、部位特異的統合により導入されたAAVベクターからコードされた異なるCD70ダガータンパク質を発現させ、細胞をフローサイトメトリーにより分析した。図7Aは、CD70ダガー陽性細胞の割合を示し、図7Bは、活性化の14日後の両方のCD70ダガー発現レベルを示す。活性化の9日後の活性化マーカーCD25および4-1BBの発現を、図7Cに示し、活性化の14日後のフローサイトメトリーによって決定されたCD4:CD8比を、図7Dに示す。点線は、「CD70 CAR」として示される、CD3ζおよび4-1BBシグナル伝達ドメインを有する第二世代のCARであるCD70ダガーを発現する細胞の平均値を示す。円形および三角形は、それぞれ、第一世代のCARおよび第二世代のCARであるCD70ダガーを表す(図7E~G)。PBMC MLRは、異なるCD70ダガータンパク質を発現するTRAC-KO T細胞を使用して行われ、細胞数は、経時的に測定された。図7Eのデータは、CD70ダガーT細胞が、宿主拒絶反応に抵抗し、PBMC MLRアッセイで拡大したことを示す。図7F~Gのデータは、宿主T細胞およびNK細胞拡大が、CD70ダガーT細胞によって阻害されたことを示す。データは、図7E~Gのパネルの4つの固有の移植片-宿主ドナー対の合わせた結果である。エラーバーは、平均±SEMを表す。
図7-2】同上。
図7-3】同上。
【0040】
図8-1】図8A~Cは、CD70三量体複合体に結合する異なる抗体に重要なCD70のアミノ酸残基を示す。図8D~Eは、抗CD70抗体クローン4F11、8C8、または8F8に由来するCD70結合ドメインを含有するCD70ダガータンパク質を発現する移植片細胞による宿主拒絶反応の抵抗性および宿主T細胞の阻害の結果を示す。
図8-2】同上。
図8-3】同上。
図8-4】同上。
【0041】
図9図9は、抗腫瘍抗原CAR、例えば、CD19 CARを単独またはCD70ダガーと併用して発現するT細胞の細胞傷害性の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本開示は、レシピエントの免疫系による拒絶反応の影響を克服または軽減することができる治療用同種細胞(例えば、CAR T細胞)製品を提供するための戦略を提供する。これにより、細胞産物がレシピエント内でより長く持続することが可能となり、したがって治療効果が促進及び/又は改善される。本戦略は、同種細胞に対して活性化される宿主免疫細胞に対する防御を同種細胞にもたらす。この防御は、CD70結合タンパク質、例えば、CD70 CARの同種細胞による発現を含む。したがって、この戦略は、宿主またはレシピエント、例えば、患者のT細胞およびNK細胞上のCD70(分化クラスター70)タンパク質を選択的に標的化する。
【0043】
一般的技術
本開示の実施は、別段の示唆がない限り、当該技術分野の技術内である分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の技術を採用する。そのような技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al.,1989)Cold Spring Harbor Press、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press、Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987)、Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993-1998)J.Wiley and Sons、Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995)などの文献に完全に説明される。例えば、TALEN、CRISPR/Cas9、及びmegaTALヌクレアーゼを使用する遺伝子編集技術は、当技術の技能に含まれるものであり、T.Gaj et al.,Genome-Editing Technologies:Principles and Applications,Cold Spring Harb Perspect Biol 2016;8:a023754などの文献、及びその中での引用などで全面的に説明されている。
【0044】
定義
本明細書で使用される場合、「自己」は、対象を治療するために使用される、前記対象から取得される、細胞、細胞株、又は細胞集団を意味する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「同種」とは、対象を治療するために使用される細胞又は細胞集団が、前記対象に由来せず、ドナーに由来することを意味する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「内因性」という用語は、生物、細胞、組織、又は系からの、又はそれらの内部で産生される任意の材料を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、生物、細胞、組織、又は系から導入されるか、又はそれらの外部で産生される任意の材料を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、「免疫細胞」は、先天的及び/又は適応性免疫応答の開始及び/又は実行に機能的に関与する造血起源の細胞を指す。免疫細胞の例としては、T細胞、例えば、アルファ/ベータT細胞及びガンマ/デルタT細胞、調節性T(Treg)細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マスト細胞、並びに骨髄球由来食細胞が挙げられる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、プロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、組換えポリヌクレオチドを組み込む、コスミド、プラスミド(例えば、裸の又はリポソーム中に含有される)、並びにウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)を含む、当該技術分野で既知の全てのものを含む。
【0051】
様々な実施形態では、本開示の操作された免疫細胞は、第一の抗原結合タンパク質および第二のCD70結合タンパク質、例えば、第一のCARおよび第二のCD70 CARを機能的に発現し、任意選択的に、さらなる特徴をさらに含む。例えば、それらは、遺伝子改変、例えば、遺伝子の機能的発現を低減もしくは除去するCD70、TCRaおよびCD52のうちの一つまたは複数などの、内因性遺伝子での遺伝子改変、例えば、変異を含むことができ、ならびに/あるいは一つまたは複数のさらなるタンパク質を発現することができる。それらはまた、例えば、遺伝子ノックダウンによって遺伝子の機能的発現を減少または除去する一つまたは複数の他の遺伝子改変を含み得る。抗原結合タンパク質および一つまたは複数のさらなるタンパク質は、本明細書に記載される技術によって、細胞に導入されるタンパク質(シグナル配列を有するか、または有さない)をコードする外因性核酸から発現され得る。本明細書に記載されるように、本開示の操作された免疫細胞は、細胞、例えば、様々な供給源から得られた免疫細胞から、由来、例えば調製され得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、遺伝子を「機能的に発現する」とは、遺伝子が発現され、その発現が機能的な遺伝子最終生成物をもたらすことを意味する。例えば、遺伝子がタンパク質をコードする場合に、遺伝子の発現が最終的に適切に機能するタンパク質を産生する場合、細胞はその遺伝子を機能的に発現する。したがって、遺伝子が転写されない場合、又は遺伝子の発現が最終的に翻訳されないRNAを産生するか、又は翻訳が機能しないタンパク質のみを産生する場合、例えば、タンパク質が正しく折り畳まれない、若しくはその作用部位(例えば、膜結合タンパク質については膜)に輸送されないなどの場合には、遺伝子は機能的に発現されない。機能的発現は、直接的に(例えば、遺伝子産物自体についてのアッセイによって)又は間接的に(例えば、遺伝子産物の効果についてのアッセイによって)測定することができる。
【0053】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」は、一方の機能が他方によって影響を受けるような、単一の核酸断片上の核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列の発現に影響を与えることができる(すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある)場合、コード配列と作動可能に連結されている。
【0054】
本明細書で使用される場合、「発現制御配列」は、核酸の転写を誘導する核酸配列を意味する。発現制御配列は、構成的若しくは誘導性プロモーターなどのプロモーター、又はエンハンサーであり得る。発現制御配列は、転写される核酸配列に作動可能に連結されている。
【0055】
「プロモーター」及び「プロモーター配列」は、互換的に使用され、コード配列又は機能性RNAの発現を制御することができるDNA配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列に対して3’に位置する。異なるプロモーターが、異なる組織若しくは細胞型中で、又は異なる発生段階で、又は異なる環境条件若しくは生理学的条件に応答して、遺伝子の発現を誘導できることが、当業者によって理解される。
【0056】
本開示のベクターのいずれかにおいて、ベクターは、本明細書に開示されるプロモーターを任意選択的に含む。
【0057】
「宿主細胞」は、ポリヌクレオチド挿入物の組み込みのためのベクターのレシピエントであり得るか、又はそうであった個々の細胞又は細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫を含み、子孫は、自然変異、偶発的な変異、又は意図的な変異により、元の親細胞と必ずしも完全に同一ではない場合がある(形態又はゲノムDNA相補体において)。宿主細胞は、本開示のポリヌクレオチドを用いてインビボでトランスフェクトされた細胞を含む。
【0058】
本明細書で使用される場合、「細胞外リガンド結合ドメイン」という用語は、リガンドに結合することができるオリゴペプチド又はポリペプチドを指す。好ましくは、ドメインは、細胞表面分子と相互作用することができる。例えば、細胞外リガンド結合ドメインは、特定の疾患状態に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用するリガンドを認識するように選択されることができる。「ストークドメイン」という用語は、本明細書で、膜貫通ドメインを細胞外リガンド結合ドメインに連結するよう機能する任意のオリゴペプチド又はポリペプチドを指すために使用される。特に、ストークドメインは、細胞外リガンド結合ドメインに対して更なる柔軟性及びアクセス可能性を提供するために使用される。
【0059】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクターシグナル機能シグナルを形質導入し、特殊化した機能を実施するように細胞を誘導する、タンパク質の部分を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それによって、増殖などであるがこれに限定されない、細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子としては、MHCクラスI分子、BTLA、及びTollリガンド受容体が挙げられるが、これらに限定されない。共刺激性分子の例としては、CD27、CD28、CD8、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及びCD83などと特異的に結合するリガンドが挙げられる。
【0061】
「共刺激リガンド」は、T細胞上の同族共刺激シグナル分子に特異的に結合し、それによって、例えば、ペプチドが装填されたMHC分子とのTCR/CD3複合体の結合によって提供される一次シグナルに加えて、増殖活性化、分化などを含むがこれらに限定されないT細胞応答を媒介するシグナルを提供する、抗原提示細胞上の分子を指す。共刺激リガンドとしては、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、4-1 BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、M1 CB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、Tollリガンド受容体に結合するアゴニスト又は抗体、及びB7-H3と特異的に結合するリガンドが挙げられ得るが、これらに限定されない。共刺激リガンドはまた、とりわけ、CD27、CD28、4-1 BB、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LTGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンドなどであるがこれらに限定されない、T細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体を包含する。
【0062】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する、少なくとも一つの抗原認識部位を介した、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的への特異的結合が可能な免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される場合、この用語は、無傷のポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvなど)、並びに例えば、限定されないが、一本鎖(scFv)及びドメイン抗体(例えば、サメ抗体及びラクダ類抗体を含む)、及び抗体を含む融合タンパク質を含む、抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された構成も包含する。抗体は、IgG、IgA、若しくはIgMなどの任意のクラス(又はそのサブクラス)の抗体を含み、抗体は、任意の特定のクラスである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには五つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのうちのいくつかは、例えば、lgG1、lgG2、lgG3、lgG4、lgA1、及びlgA2などのサブクラス(アイソタイプ)に更に分割されることができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成は、周知である。
【0063】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合断片」又は「抗原結合部分」という用語は、所与の抗原に特異的に結合する能力を保持する、無傷の抗体の一つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、無傷の抗体の断片によって実施され得る。抗体の「抗原結合断片」という用語内に包含される結合断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、VHドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片、抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片、単一ドメイン抗体(dAb)断片(例えば、Ward et al.,Nature 341:544-546,1989を参照)、並びに単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0064】
標的に「特異的に結合する」抗体、抗体コンジュゲート、又はポリペプチドは、当該技術分野で十分理解された用語であり、そのような特異的結合を決定するための方法も、当該技術分野で周知である。分子は、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、かつ/又はより高い親和性で、別の細胞又は物質とよりも特定の細胞又は物質と反応又は会合する場合、「特異的結合」を示すと言われる。抗体は、他の物質に結合するよりも高い親和性、結合力で、より容易に、かつ/又はより長い持続時間で結合する場合、標的に「特異的に結合する」。この定義の下、例えば、第一の標的に特異的に結合する抗体(又は部分若しくはエピトープ)が、第二の標的に特異的に結合してもよく、又は結合しなくてもよいことも理解される。したがって、「特異的結合」は、排他的結合を(含むことができるが)必ずしも必要としない。
【0065】
抗体の「可変領域」は、抗体軽鎖の可変領域又は抗体重鎖の可変領域を、単独で又は組み合わせて指す。当該技術分野で知られているように、重鎖及び軽鎖の可変領域は各々、超可変領域としても知られる三つの相補性決定領域(CDR)によって接続された、四つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖中のCDRは、FRによって近接して一緒に保持され、他方の鎖からのCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するための技術はいくつかあり、例えば、種間配列の可変性に基づくアプローチ(すなわち、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,National Institutes of Health,Bethesda MD))、及び抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al-lazikani et al.,1997,J.Molec.Biol.273:927-948)、Chothiaシステム(すなわち、Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.(1987)196(4):901-917)である。本明細書で使用される場合、CDRは、いずれかのアプローチによって、又は両方のアプローチの組み合わせによって定義されるCDRを指す場合がある。
【0066】
可変ドメインの「CDR」は、Kabat、Chothiaの定義、Kabat及びChothiaの両方の蓄積、AbM、接触、及び/若しくは構造定義、又は当該技術分野で周知のCDR決定の任意の方法に従って特定される可変領域内のアミノ酸残基である。抗体CDRは、Kabat et al.によって最初に定義された超可変領域として特定されることができる。例えば、Kabat et al.,1992,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,NIH,Washington D.C.を参照。CDRの位置もまた、Chothiaなどによって最初に記載された構造的ループ構造として特定される場合がある。例えば、Chothia et al.,Nature 342:877-883,1989を参照されたい。CDR特定のための他のアプローチとしては、KabatとChothiaとの間の妥協策であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(現Accelrys(登録商標))、又はMacCallum et al.,J.Mol.Biol.,262:732-745,1996に記載される、観察された抗原接触に基づくCDRの「接触定義」を使用して導出される「AbM定義」が挙げられる。本明細書でCDRの「構造定義」と称される別のアプローチでは、CDRの位置は、抗原結合に対するエンタルピー的に寄与する残基として特定される場合がある。例えば、Makabe et al.,Journal of Biological Chemistry,283:1 156-1 166,2008を参照されたい。更に他のCDR境界定義は、上記のアプローチのうちの一つに厳密には従わなくてもよいが、それにもかかわらず、それらは、特定の残基若しくは残基の群、又は更にはCDR全体が抗原結合に大きな影響を与えないという予測又は実験的発見を考慮して、短縮又は延長されることができるが、Kabat CDRの少なくとも一部分と重複する。本明細書で使用される場合、CDRは、アプローチの組み合わせを含む、当該技術分野で既知の任意のアプローチによって定義されるCDRを指す場合がある。本明細書で使用される方法は、これらのアプローチのいずれかに従って定義されるCDRを利用することができる。二つ以上のCDRを含有する任意の所与の実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、拡張、AbM、接触、AHo及び/又は構造定義のいずれかに従って定義されることができる。
【0067】
本開示の抗体(およびCAR)は、当該技術分野で周知の技術、例えば、組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、又はそのような技術若しくは当該技術分野で容易に知られる他の技術の組み合わせを使用して産生されることができる(例えば、Jayasena,S.D.,Clin.Chem.,45:1628-50,1999、及びFellouse,F.A.,et al,J.Mol.Biol.,373(4):924-40,2007を参照されたい)。
【0068】
当該技術分野で知られているように、本明細書で互換的に使用される場合、「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドの鎖を指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、改変されたヌクレオチド若しくは塩基、及び/又はそれらの類似体、又はDNA若しくはRNAポリメラーゼによって鎖に組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの改変されたヌクレオチドを含むことができる。存在する場合、ヌクレオチド構造への改変は、鎖の集合の前又は後に与えられることができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成成分によって中断される場合がある。ポリヌクレオチドは、標識構成成分とのコンジュゲーションなどによって、重合後に更に改変される場合がある。他のタイプの改変としては、例えば、天然に存在するヌクレオチドのうちの一つ以上の類似体による「キャップ」置換、ヌクレオチド間改変、例えば、非荷電連結を有するもの(例えば、ホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)、及び電荷連結を有するもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)などのペンダント部分を含有するもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を有するもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、改変された連結を有するもの(例えば、アルファアノマー核酸など)、並びに非改変形態のポリヌクレオチドが挙げられる。更に、糖中に通常存在するヒドロキシル基のいずれかは、例えば、ホスホン酸基、リン酸基によって置換される場合があるか、標準的な保護基によって保護される場合があるか、若しくは追加のヌクレオチドへの追加の連結を準備するために活性化される場合があるか、又は固体支持体にコンジュゲートされる場合がある。5’末端及び3’末端のOHは、リン酸化され得るか、又は1~20個の炭素原子のアミン若しくは有機キャッピング基部分で置換され得る。他のヒドロキシルも、標準的な保護基に誘導体化される場合がある。ポリヌクレオチドはまた、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ-、又は2’-アジド-リボース、炭素環式糖類似体、アルファ又はベータアノマー糖、アラビノース、キシロース、又はリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及びメチルリボシドなどの脱塩基ヌクレオシド類似体を含む、当該技術分野で一般的に知られている類似の形態のリボース又はデオキシリボース糖を含有することができる。一つ以上のホスホジエステル連結は、代替の連結基によって置き換えられる場合がある。これらの代替の連結基としては、リン酸塩が、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、又はCH2(「ホルムアセタール」)によって置き換えられる実施形態が挙げられるが、これらに限定されず、各R又はR’は独立して、H、又はエーテル(-O-)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、若しくはアラルジル(araldyl)を任意選択的に含有する置換若しくは非置換アルキル(1-20C)である。ポリヌクレオチド中の全ての連結が、同一である必要はない。前述の説明は、RNA及びDNAを含む、本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0069】
本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」は、細胞による外因性又は異種のRNA又はDNAの取り込みを指す。細胞は、外因性又は異種のRNA又はDNAが細胞内に導入されている場合、そのようなRNA又はDNAによって「トランスフェクト」されている。細胞は、トランスフェクトされたRNA又はDNAが表現型の変化に影響を及ぼす場合、外因性又は異種のRNA又はDNAによって「形質転換」されている。形質転換RNA又はDNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに統合(共有結合)され得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、「形質転換」は、核酸断片が宿主生物のゲノムに移入し、遺伝子的に安定した遺伝をもたらすことを指す。形質転換された核酸断片を含有する宿主生物は、「トランスジェニック」又は「組換え」又は「形質転換された」生物と称される。
【0071】
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋」とは、少なくとも50%純粋(すなわち、混入物質を含まない)、より好ましくは、少なくとも90%純粋、より好ましくは、少なくとも95%純粋、更により好ましくは、少なくとも98%純粋、及び最も好ましくは、少なくとも99%純粋である材料を指す。「競合する」という用語は、抗体に関して本明細書で使用される場合、第一の抗体、又はその抗原結合断片(若しくは部分)が、第二の抗体又はその抗原結合部分の結合と十分に類似した様式で、エピトープに結合し、これにより、第一の抗体のその同族エピトープとの結合の結果が、第二の抗体の非存在下での第一の抗体の結合と比較して、第二の抗体の存在下で検出できるほどに減少するようにすることを意味する。第二の抗体のそのエピトープへの結合も、第一の抗体の存在下で検出できるほどに減少するという別の可能性も、事実であり得るが、そうである必要はない。すなわち、第一の抗体は、その第二の抗体が第一の抗体のそのそれぞれのエピトープへの結合を阻害することなく、第二の抗体のそのエピトープへの結合を阻害することができる。しかしながら、各抗体が、他方の抗体のその同族エピトープ又はリガンドとの結合を、同じ程度、より大きい程度、又はより小さい程度であるかにかかわらず、検出できるほどに阻害する場合、抗体は、それらのそれぞれのエピトープの結合について、互いに「交差競合」すると言われる。競合抗体及び交差競合抗体の両方が、本開示によって包含される。そのような競合又は交差競合が発生する機序(例えば、立体障害、構造変化、又は共通エピトープ、若しくはその一部分への結合)にかかわらず、当業者は、本明細書に提供される教示に基づいて、そのような競合抗体及び/又は交差競合抗体が包含され、本明細書に開示される方法に有用であり得ることを理解するであろう。
【0072】
本明細書で使用される場合、「治療」は、有益な又は所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本開示の目的で、有益な又は所望の臨床結果としては、以下のうちの一つ以上が挙げられるが、これらに限定されない:腫瘍細胞若しくはがん細胞の増殖の低減(若しくは破壊)、腫瘍細胞の転移の阻害、腫瘍の大きさの縮小若しくは減少、疾患(例えば、がん)の寛解、疾患(例えば、がん)に起因する症状の減少、疾患(例えば、がん)に罹患している者の生活の質の向上、疾患(例えば、がん)を治療するために必要とされる他の薬剤の用量の減少、疾患(例えば、がん)の進行の遅延、疾患(例えば、がん)の治癒、及び/又は疾患(例えば、がん)を有する対象の生存の延長。
【0073】
「改善すること」とは、治療を行わないことと比較した一つ以上の症状の軽減又は改善を意味する。「改善すること」はまた、症状の持続時間の短縮又は低減を含む。本明細書で使用される場合、薬物、化合物、又は医薬組成物の「有効投与量」又は「有効量」は、任意の一つ以上の有益な又は所望の結果をもたらすのに十分な量である。予防的使用について、有益な又は所望の結果は、疾患の生化学的、組織学的、及び/又は行動的症状、疾患の発症中に現れるその合併症及び中間の病理学的表現型を含む、リスクの排除若しくは低減、重症度の低下、又は疾患の発症の遅延を含む。治療的使用について、有益な又は所望の結果は、様々な疾患又は状態(例えば、がんなど)の一つ以上の症状の発生率の低減若しくは改善、疾患を治療するために必要とされる他の薬剤の用量の減少、別の薬剤の効果の強化、及び/又は疾患の進行の遅延などの臨床結果を含む。有効投与量は、一回以上の投与で投与され得る。本開示の目的で、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効投与量は、直接的又は間接的のいずれかで、予防的又は治療的処置を達成するのに十分な量である。臨床的文脈で理解されるように、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効投与量は、別の薬物、化合物、又は医薬組成物と併せて達成されてもよく、又は達成されなくてもよい。したがって、「有効投与量」は、一つ以上の治療剤を投与する文脈において考慮されることができ、単一の薬剤は、一つ以上の他の薬剤と併せて、所望の結果が達成されることができるか、又は達成される場合、有効量で与えられるとみなされることができる。
【0074】
本明細書で使用される場合、「対象」は、任意の哺乳動物、例えば、ヒト又はサルである。哺乳動物としては、家畜、スポーツ動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、及びラットが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な実施形態では、対象は、ヒトである。例示的な実施形態では、対象は、サル、例えば、カニクイザルである。
【0075】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、宿主細胞中に一つ以上の目的の遺伝子又は配列を送達し、好ましくは発現することができる構築物を意味する。ベクターの例としては、ウイルスベクター、裸DNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド、又はファージベクター、カチオン性縮合剤と会合したDNA又はRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNA又はRNA発現ベクター、及び産生細胞などのある特定の真核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」又は「薬学的に許容される賦形剤」は、有効成分と組み合わせた場合に、成分が生物活性を保持することを可能にし、対象の免疫系と非反応性である任意の材料を含む。例としては、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、及び様々なタイプの湿潤剤などの標準的な医薬担体のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。エアロゾル又は非経口投与のための好ましい希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は通常の(0.9%)生理食塩水である。そのような担体を含む本開示の組成物は、周知の従来の方法によって製剤化される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1990、及びRemington,The Science and Practice of Pharmacy 21 st Ed.Mack Publishing,2005を参照)。
【0077】
本明細書で使用される場合、「同種反応性」は、胸腺発生中に見られなかったMHC複合体を認識するT細胞の能力を指す。同種反応性は、宿主対移植片拒絶または反応及び移植片対宿主疾患として臨床的に現れる。
【0078】
本明細書の値又はパラメータにつける「約」への言及は、その値又はパラメータ自体のプラス又はマイナス1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10%を対象とする実施形態を含む(及び記述する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。数値範囲は、その範囲を定義する数値を含む。
【0079】
本明細書に「含むこと」という用語で記載される実施形態がどこにあっても、「からなること」及び/又は「から本質的になること」という観点から記載される他の点で類似した実施形態もまた提供されることが理解される。
【0080】
本開示の態様又は実施形態が、マーカッシュ群又は他の代替の群分けの観点から記載される場合、本開示は、全体として列挙された群全体だけでなく、群の個々の各メンバー及び主要な群の可能性のある全ての部分群、並びに主要な群に、群メンバーのうちの一つ以上がないものも包含する。本開示はまた、開示及び/又は請求される実施形態における群メンバーのいずれかのうちの一つ以上の明示的な除外を想定する。
【0081】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」という語、又は「含む(comprises)」若しくは「含むこと(comprising)」などの変化形は、規定された整数又は整数の群の包含を暗示するが、任意の他の整数又は整数の群の排除は暗示しないと理解されるであろう。文脈によって別に必要とされない限り、単数形は、複数形を含むものとし、複数形は、単数形を含むものとする。
【0082】
例示的な方法及び材料が本明細書に記載されているが、本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料も、本開示の実施又は試験に使用され得る。材料、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0083】
「抗原結合タンパク質」は、一つ以上の抗原結合ドメインを含む。本明細書で使用される場合、「抗原結合ドメイン」は、指定された標的抗原に結合する任意のポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、腫瘍細胞上の抗原に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、過剰増殖性疾患に関与する細胞上の抗原、又はウイルス抗原若しくは細菌抗原に結合する。
【0084】
抗原結合ドメインは、免疫学的に機能的な断片である抗体結合領域を含むが、これに限定されない。抗原結合ドメインの「免疫学的に機能的な断片」(又は「断片」)という用語は、全長鎖に存在するアミノ酸の少なくとも一部を欠くが、それでもなお標的抗原に特異的に結合することが可能な抗体の部分(その部分がどのように取得又は合成されるかによらない)を含む抗原結合ドメインの種である。こうした断片は、標的抗原に結合し、所与のエピトープに結合するために、無傷の抗体を含む他の抗原結合ドメインと競合しうるという点で、生物学的に活性である。
【0085】
免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片は、scFv断片、Fab断片(Fab’、F(ab’)2など)、一つ以上の相補性決定領域(「CDR」)、二重特異性抗体(同じ鎖上の二つのドメイン間での対形成を可能にするにはあまりに短い、短いペプチドリンカーを介して結合された、軽鎖可変ドメインと同じポリペプチド上の重鎖可変ドメイン)、ドメイン抗体、二価抗原結合ドメイン(二つの抗原結合部位を含む)、多特異性抗原結合ドメイン、及び一本鎖抗体を含むが、これらに限定されない。これらの断片は、ヒト、マウス、ラット、ラクダ類、又はウサギを含むがこれらに限定されない、任意の哺乳類供給源に由来しうる。当業者によって理解されるように、抗原結合ドメインは、非タンパク質成分を含みうる。
【0086】
可変領域は、典型的に、3つの超可変領域(CDR)で結合された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を呈する。それぞれの対の二つの鎖のCDRは、典型的に、フレームワーク領域によって整列されるのであり、それにより特定のエピトープへの結合が可能となりうる。N末端からC末端まで、軽鎖可変領域と重鎖可変領域の両方は、典型的に、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。慣例により、重鎖中のCDR領域は、典型的にHC CDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれる。軽鎖中のCDR領域は、典型的にLC CDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれる。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体の全長の軽鎖又は重鎖中に存在する一つ以上の相補性結合領域(CDR)を含み、いくつかの実施形態では、単一の重鎖及び/又は軽鎖又はその一部を含む。これらの断片は、組換えDNA技術によって産生され得るか、又は無傷の抗体を含む抗原結合ドメインの酵素的切断若しくは化学的切断によって産生され得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、その抗体又は断片であり、その相補性決定領域(CDR)のうちの一つ以上を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、軽鎖CDRであるCDR1、CDR2及びCDR3、並びに重鎖CDRであるCDR1、CDR2及びCDR3を含む、一本鎖可変断片(scFv)である。
【0089】
フレームワーク、CDR、及び可変ドメインのそれぞれへのアミノ酸の割り当ては、典型的には、Kabatナンバリング(例えば、Kabat et al.in Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,NIH Publication 91-3242,Bethesda Md.1991を参照)、Chothiaナンバリング(例えば、Chothia & Lesk,(1987),J Mol Biol 196:901-917;Al-Lazikani et al.,(1997)J Mol Biol 273:927-948;Chothia et al.,(1992)J Mol Biol 227:799-817;Tramontano et al.,(1990)J Mol Biol 215(1):175-82;及び米国特許第7,709,226号を参照)、接触ナンバリング、AbMスキーム(Antibody Modeling program、Oxford Molecular)、又はAHoシステム(Honneger and Pluckthun,J Mol Biol(2001)309(3):657-70)のナンバリングスキームに従う。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、組換え抗原受容体である。本明細書で使用される場合、「組換え抗原受容体」という用語は、細胞外抗原結合ドメイン又は細胞外リガンド結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内ドメインと、を含む、天然に存在しない表面受容体を広く指す。いくつかの実施形態では、組換え抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である。キメラ抗原受容体(CAR)は、当該技術分野で周知である。CARは、抗原認識部分、膜貫通ドメイン、及びT細胞活性ドメインを含む融合タンパク質である(例えば、Eshhar et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90(2):720-724(1993)を参照)。
【0091】
いくつかの実施形態では、組換え抗原受容体の細胞内ドメインは、共刺激ドメイン及びITAM含有ドメインを含む。いくつかの実施形態では、組換え抗原受容体の細胞内ドメインは、細胞内タンパク質又はその機能的バリアント(例えば、短縮、挿入、欠失、又は置換)を含む。
【0092】
本明細書において使用される場合、「細胞外リガンド結合ドメイン」又は「細胞外抗原結合ドメイン」という用語は、リガンド若しくは抗原に結合することができるか、又はリガンド若しくは表面抗原などの細胞表面分子と相互作用することができるポリペプチドを指す。例えば、細胞外リガンド結合ドメイン又は抗原結合ドメインは、特定の疾患状態に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用するリガンド、例えば、腫瘍特異的抗原を認識するように選択される場合がある。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体、又は抗体の抗原結合断片若しくは抗原結合部分を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、Fv若しくはscFv、Fab若しくはscFab、F(ab’)2若しくはscF(ab’)2、Fd、モノボディ、アフィボディ、ラクダ類抗体、VHH抗体、単一ドメイン抗体、又はDARPinを含む。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、表面受容体に結合するリガンド、又はリガンドに結合する表面受容体のエクトドメインなどの結合対のパートナーを含む。
【0093】
「ストークドメイン」又は「ヒンジドメイン」という用語は、膜貫通ドメインを細胞外リガンド結合ドメインに連結するように機能する任意のポリペプチドを指すために、本明細書で互換的に使用される。特に、ストークドメインは、細胞外リガンド結合ドメインに対して更なる柔軟性及びアクセス可能性を提供するためによく使用される。
【0094】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクターシグナル機能シグナルを形質導入し、特殊化した機能を実施するように細胞を誘導する、タンパク質の部分を指す。
【0095】
ベクター
ポリヌクレオチド組成物の投与のための発現ベクター及び方法は、当該技術分野で既知であり、本明細書にさらに記載される。
【0096】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを作製する方法を提供する。
【0097】
任意のそのような配列に相補的なポリヌクレオチドも、本開示によって包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コード若しくはアンチセンス)又は二本鎖である場合があり、DNA(ゲノム、cDNA、若しくは合成)又はRNA分子である場合がある。RNA分子は、イントロンを含有し、一対一でDNA分子に対応するhnRNA分子、及びイントロンを含有しないmRNA分子を含む。追加のコード配列又は非コード配列は、本開示のポリヌクレオチド内に存在することができるが、そうである必要はなく、ポリヌクレオチドは、他の分子及び/又は支持材料に連結されることができるが、そうである必要はない。
【0098】
ポリヌクレオチドは、天然配列(すなわち、抗体又はその一部分をコードする内因性配列)を含むことができるか、又はそのような配列のバリアントを含むことができる。ポリヌクレオチドバリアントは、天然の免疫反応性分子と比較して、コードされたポリペプチドの免疫反応性が低減されないような、一つ以上の置換、付加、欠失、及び/又は挿入を含有する。コードされたポリペプチドの免疫反応性に対する効果は、概して、本明細書に記載されるように評価されることができる。バリアントは、好ましくは、天然抗体又はその一部分をコードするポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも約70%の同一性、より好ましくは少なくとも約80%の同一性、更により好ましくは少なくとも約90%の同一性、及び最も好ましくは少なくとも約95%の同一性を示す。二つのポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列は、二つの配列中のヌクレオチド又はアミノ酸の配列が、以下に記載されるように最大一致のために整列されたときに同じである場合、「同一」であると言われる。二つの配列間の比較は、典型的には、比較ウィンドウにわたって配列を比較して、配列類似性の局所領域を特定及び比較することによって実施される。本明細書で使用される場合、「比較ウィンドウ」は、少なくとも約20、通常30~約75、又は40~約50個の隣接する位置のセグメントを指し、配列は、二つの配列が最適に整列された後、同じ数の隣接する位置の参照配列と比較されることができる。
【0099】
比較のための配列の最適な整列は、デフォルトパラメータを使用して、バイオインフォマティクスソフトウェアのLasergeneスイートのMegalignプログラム(DNASTAR,Inc.、ウィスコンシン州マジソン)を使用して行われることができる。このプログラムは、以下の参考文献に記載されるいくつかの整列スキームを具現化する:Dayhoff,M.O.,1978,A model of evolutionary change in proteins-Matrices for detecting distant relationships.In Dayhoff,M.O.(ed.)Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,Washington DC Vol.5,Suppl.3,pp.345-358、Hein J.,1990,Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp.626-645 Methods in Enzymology vol.183,Academic Press,Inc.,San Diego,CA、Higgins,D.G.and Sharp,P.M.,1989,CABIOS 5:151-153、Myers,E.W.and Muller W.,1988,CABIOS 4:1 1-17、Robinson,E.D.,1971,Comb.Theor.1 1:105、Santou,N.,Nes,M.,1987,Mol.Biol.Evol.4:406-425、Sneath,P.H.A.and Sokal,R.R.,1973,Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy,Freeman Press,San Francisco,CA、Wilbur,W.J.and Lipman,D.J.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726-730。
【0100】
いくつかの実施形態では、「配列同一性の割合」は、少なくとも20個の位置の比較ウィンドウにわたって、二つの最適に整列された配列を比較することによって決定され、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列の部分は、二つの配列の最適な整列について、参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、20パーセント以下、通常5~15パーセント、又は10~12パーセントの付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含むことができる。割合は、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列中で生じる位置の数を決定して、一致した位置の数を得ること、一致した位置の数を、参照配列中の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割ること、及びその結果に100を乗じて、配列同一性の割合を得ることによって計算される。
【0101】
バリアントはまた、又は代替的に、天然遺伝子、又はその一部分若しくは相補体に対して実質的に相同である場合がある。そのようなポリヌクレオチドバリアントは、天然抗体(又は相補的配列)をコードする天然に存在するDNA配列に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる。
【0102】
好適な「中程度にストリンジェントな条件」は、5×SSC、0.5%のSDS、1.0mMのEDTA(pH8.0)の溶液中での前洗浄、50℃~65℃、5×SSCでの一晩のハイブリダイズ、続く0.1%のSDSを含有する2×、0.5×、及び0.2×SSCの各々での65℃、20分間の2回の洗浄を含む。
【0103】
本明細書で使用される場合、「高度にストリンジェントな条件」又は「高ストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温、例えば、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを50℃で採用し、(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミドなどの変性剤、例えば、50%(v/v)ホルムアミドを、0.1%のウシ血清アルブミン/0.1%のFicoll/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)と、750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムと42℃で採用し、又は(3)50%のホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCI、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/m\)、0.1%のSDS、及び10%のデキストラン硫酸塩を42℃で採用し、洗浄は、42℃の0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)及び55℃の50%のホルムアミド中であり、続く高ストリンジェンシー洗浄は、55℃でEDTAを含有する0.1×SSCからなる、条件である。当業者は、プローブ長さなどの要因に適応するために必要に応じて、温度、イオン強度などを調整する方法を認識するであろう。
【0104】
遺伝子コードの縮退の結果として、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列があることが、当業者によって理解されるであろう。これらのポリヌクレオチドのうちのいくつかは、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列に対する最小限の相同性を有する。それにもかかわらず、コドン使用の差異により異なるポリヌクレオチドが、本開示によって具体的に企図される。更に、本明細書に提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本開示の範囲内である。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加、及び/又は置換などの、一つ以上の変異の結果として改変される内因性遺伝子である。結果として生じるmRNA及びタンパク質は、変化した構造又は機能を有することができるが、そうである必要はない。対立遺伝子は、標準的な技術(ハイブリダイゼーション、増幅、及び/又はデータベース配列比較など)を使用して特定されることができる。
【0105】
本開示のポリヌクレオチドは、化学合成、組換え方法、又はPCRを使用して得られ得る。化学的ポリヌクレオチド合成の方法は、当該技術分野で周知であり、本明細書に詳細に記載される必要はない。当業者は、本明細書に提供される配列及び市販のDNA合成装置を使用して、所望のDNA配列を産生することができる。
【0106】
組換え方法を使用してポリヌクレオチドを調製するために、本明細書に更に記載されるように、所望の配列を含むポリヌクレオチドは、好適なベクターに挿入され得、更にはベクターは、複製及び増幅のために好適な宿主細胞に導入され得る。ポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の任意の手段によって宿主細胞に挿入されることができる。細胞は、直接的な取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F-接合、又はエレクトロポレーションによって外因性ポリヌクレオチドを導入することによって、形質転換される。一旦導入されると、外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター(プラスミドなど)として細胞内に維持され得るか、又は宿主細胞ゲノムに統合され得る。そのように増幅されたポリヌクレオチドは、当該技術分野で周知の方法によって宿主細胞から単離され得る。例えば、Sambrook et al.,1989を参照されたい。
【0107】
あるいは、PCRは、DNA配列の再生を可能にする。PCR技術は、当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号、及び同第4,683,202号、並びにPCR:The Polymerase Chain Reaction,Mullis et al.eds.,Birkauswer Press,Boston,1994に記載されている。
【0108】
RNAは、適切なベクター中で単離されたDNAを使用し、それを好適な宿主細胞に挿入することによって得られ得る。細胞が複製し、DNAがRNAに転写される場合、RNAは、例えば、Sambrook et al.,1989(上記参照)に記載されるように、当業者に周知の方法を使用して単離され得る。
【0109】
好適なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築されることができるか、又は当該技術分野で利用可能な多数のクローニングベクターから選択されることができる。選択されるクローニングベクターは、使用されることが意図される宿主細胞に応じて異なる場合がある一方、有用なクローニングベクターは、概して、自己複製する能力を有するのであり、特定の制限エンドヌクレアーゼに対する単一の標的を有することができ、かつ/又はベクターを含有するクローンの選択に使用される場合があるマーカーの遺伝子を担持することができる。好適な例としては、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、並びにpSA3及びpAT28などのシャトルベクターが挙げられる。これら及び多くの他のクローニングベクターは、BioRad、Strategene、及びInvitrogenなどの商業ベンダーから入手可能である。
【0110】
発現ベクターは概して、本開示によるポリヌクレオチドを含有する複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームとして、又は染色体DNAの不可欠な部分としてのいずれかで、宿主細胞内で複製可能でなければならないことが暗示される。好適な発現ベクターとしては、国際公開WO 87/04462に開示されるプラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含むウイルスベクター、コスミド、及び発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。ベクター構成成分としては概して、以下のうちの一つ以上が挙げられる場合があるが、これらに限定されない:シグナル配列、複製起源、一つ以上のマーカー遺伝子、好適な転写制御要素(プロモーター、エンハンサー、及びターミネーターなど)。発現(すなわち、翻訳)について、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、及び終止コドンなど、一つ以上の翻訳制御要素も通常必要とされる。
【0111】
目的のポリヌクレオチドを含有するベクターは、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、又は他の物質を採用したトランスフェクション、マイクロプロジェクタイル衝撃、リポフェクション、及び感染(例えば、ベクターがワクシニアウイルスなどの感染性病原体である場合)を含む多数の適切な手段のいずれかによって、宿主細胞に導入され得る。導入ベクター又はポリヌクレオチドの選択は、宿主細胞の特徴に依存することが多い。
【0112】
抗原結合タンパク質(例えば、CAR)をコードするポリヌクレオチドは、発現カセット又は発現ベクター(例えば、細菌宿主細胞への導入のためのプラスミド、又は昆虫宿主細胞のトランスフェクションのためのバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、又は哺乳動物宿主細胞のトランスフェクションのためのレンチウイルスなどのプラスミド若しくはウイルスベクター)中に存在することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド又はベクターは、例えば、限定されないが、2Aペプチドをコードする配列などの、リボソームスキップ配列をコードする核酸配列を含むことができる。ピコルナウイルスのアフトウイルス亜群で特定された2Aペプチドは、コドンによってコードされる二つのアミノ酸間のペプチド結合の形成なしに、あるコドンから次のコドンへのリボソーム「スキップ」を引き起こす(例えば、Donnelly and Elliott 2001;Atkins,Wills et al.2007;Doronina,Wu et al.2008を参照)。「コドン」とは、リボソームによって一つのアミノ酸残基に翻訳されるmRNA上(又はDNA分子のセンス鎖上)の三つのヌクレオチドを意味する。したがって、ポリペプチドが、インフレームである2Aオリゴペプチド配列によって分離される場合、imRNA内の単一の隣接するオープンリーディングフレームから、二つのポリペプチドが合成され得る。そのようなリボソームスキップ機序は、当該技術分野で周知であり、単一のメッセンジャーRNAによってコードされるいくつかのタンパク質の発現のためにいくつかのベクターによって使用されることが知られている。
【0113】
宿主細胞の分泌経路に膜貫通ポリペプチドを誘導するために、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド配列又はベクター配列において、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列、又はプレ配列としても知られる)が提供される。分泌シグナル配列は、膜貫通核酸配列に作動可能に連結されており、すなわち、二つの配列が正しいリーディングフレームで結合され、宿主細胞の分泌経路に新しく合成されたポリペプチドを誘導するように位置付けられている。分泌シグナル配列は一般的に、目的のポリペプチドをコードする核酸配列に対して5’に位置付けられているが、ある特定の分泌シグナル配列は、目的の核酸配列の他の場所に位置付けられることができる(例えば、Welch et al.、米国特許第5,037,743号;Holland et al.、米国特許第5,143,830号を参照)。当業者であれば、遺伝的コードの縮退を考慮して、かなりの配列変動がこれらのポリヌクレオチド分子の間で可能であることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、本開示の核酸配列は、哺乳動物細胞中の発現のために、好ましくはヒト細胞中の発現のためにコドン最適化されている。コドン最適化は、所与の種の高度に発現される遺伝子において一般的に稀であるコドンを、そのような種の高度に発現される遺伝子において一般的に頻繁にあるコドンに、目的の配列において交換することを指し、そのようなコドンは、交換されているコドンと同じアミノ酸をコードする。
【0114】
免疫療法における使用のための免疫細胞を調製する方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)を一つ以上の免疫細胞に導入すること、又は抗原結合タンパク質(例えば、CAR)をコードするポリヌクレオチドを導入すること、及び細胞を増殖させることを含む。いくつかの実施形態では、本開示は、免疫細胞を操作する方法に関し、方法は、免疫細胞を提供することと、少なくとも一つの抗原結合タンパク質(例えば、CAR)を細胞の表面上で発現することと、を含む。いくつかの実施形態では、方法は、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドで細胞をトランスフェクトすることと、細胞中で少なくとも一つのポリヌクレオチドを発現することと、を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)をコードするポリヌクレオチドは、細胞における安定した発現のための一つ以上の発現ベクター中に存在する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、細胞における安定した発現のためのウイルスベクター中に存在する。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、例えば、レンチウイルスベクター又はアデノウイルスベクターである場合がある。
【0116】
いくつかの実施形態では、本開示によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば、エレクトロポレーションにより直接細胞に導入されるmRNAであり得る。いくつかの実施形態では、CytoPulse技術を使用して、材料を細胞中に送達するために、生細胞を一過性に透過化することができる。パラメータは、最小の死亡率で高いトランスフェクション効率のための条件を決定するために改変され得る。
【0117】
免疫細胞、例えば、T細胞をトランスフェクトする方法も、本明細書に提供される。一般に、エレクトロポレーションによってRNA、DNA又はタンパク質のいずれかを細胞内に導入することなどの、当業者に知られている任意の従来の方法を使用できる。例えば、Luft and Ketteler,J.Biomolec Screening 20(8):932(2015)(DOI:10.1177/1087057115579638)を参照。いくつかの実施形態では、方法は、T細胞をRNAと接触させることと、T細胞に、(a)約2250~3000V/センチメートルの電圧範囲を有する電気パルス、(b)0.1msのパルス幅、(c)工程(a)と(b)との電気パルス間の約0.2~10msのパルス間隔、(d)約100msのパルス幅、及び工程(b)の電気パルスと工程(c)の第一の電気パルスとの間の約100msのパルス間隔を伴う、約2250~3000V/センチメートルの電圧範囲を有する電気パルス、並びに(e)約0.2msのパルス幅、及び四つの電気パルスの各々の間の2msのパルス間隔を伴う、約325Vの電圧を有する4つの電気パルスからなる、アジャイルパルスシーケンスを印加することと、を含む。いくつかの実施形態では、T細胞をトランスフェクトする方法は、当該T細胞をRNAと接触させることと、T細胞に、(a)約1600、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2400、2450、2500、2600、2700、2800、2900、又は3000V/センチメートルの電圧を有する電気パルス、(b)0.1msのパルス幅、(c)及び工程(a)と(b)との電気パルス間の約0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10msのパルス間隔、(d)100msのパルス幅、及び工程(b)の電気パルスと工程(c)の第一の電気パルスとの間の100msのパルス間隔を伴う、約2250~3000V/センチメートルの電圧範囲を有する、例えば、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2400、2450、2500、2600、2700、2800、2900、又は3000V/センチメートルの一つの電気パルス、並びに(e)約0.2msのパルス幅、及び4つの電気パルスの各々の間の約2msのパルス間隔を伴う、約325Vの電圧を有する4つの電気パルスを含む、アジャイルパルスシーケンスを印加することと、を含む。上記の値範囲に含まれる任意の値が、本出願に開示されている。エレクトロポレーション培地は、当該技術分野で既知の任意の好適な培地であり得る。いくつかの実施形態では、エレクトロポレーション培地は、約0.01~約1.0ミリジーメンスに及ぶ範囲の導電率を有する。
【0118】
一部の実施形態では、方法は、例えば、限定されないが、TCRの構成成分(例えば、TRAC)および/または免疫抑制剤の標的を発現する少なくとも一つの遺伝子の発現レベルを不活性化すること(例えば、ノックアウト)または低減することによって、細胞を遺伝子操作する工程をさらに含むことができる。遺伝子を不活性化するとは、目的の遺伝子が機能性タンパク質の形態で発現されないことが意図される。いくつかの実施形態では、不活性化される遺伝子は、例えば、限定されないが、TCRα、TCRβ、CD52およびCD70からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、方法は、選択的DNA切断によって遺伝子を選択的に不活性化することができる低頻度切断エンドヌクレアーゼを細胞に導入することによって、一つ以上の遺伝子を不活性化すること、又はその発現レベルを低減することを含む。いくつかの実施形態では、低頻度切断エンドヌクレアーゼは、例えば、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALE-ヌクレアーゼ若しくはTALEN(登録商標))、megaTALヌクレアーゼ、又はCas9エンドヌクレアーゼであり得る。
【0119】
別の態様では、免疫細胞、例えば、T細胞を遺伝子改変又は操作する工程は、免疫抑制剤の標的を発現する少なくとも一つの遺伝子を不活性化することによって、免疫細胞、例えば、T細胞を改変することと、細胞を、任意選択的に免疫抑制剤の存在下で増殖させることと、を含むことができる。免疫抑制剤は、いくつかの作用機序のうちの一つによって免疫機能を抑制する薬剤である。免疫抑制剤は、免疫応答の範囲及び/又は貪食(voracity)を低減することができる。免疫抑制剤の非限定的な例としては、カルシニューリン阻害剤、ラパマイシンの標的、インターロイキン-2α鎖遮断剤、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼの阻害剤、ジヒドロ葉酸レダクターゼの阻害剤、コルチコステロイド、及び免疫抑制代謝拮抗剤が挙げられる。いくつかの細胞毒性免疫抑制剤は、DNA合成を阻害することによって作用する。他の細胞毒性免疫抑制剤は、T細胞の活性化を介して、又はヘルパー細胞の活性化を阻害することによって作用する場合がある。本開示による方法は、例えば、T細胞中の免疫抑制剤の標的を不活性化することによって、免疫療法のためのT細胞に対する免疫抑制耐性を付与することを可能にする。非限定的な例として、免疫抑制剤の標的は、例えば、限定されないが、CD52、グルココルチコイド受容体(GR)、FKBPファミリー遺伝子メンバー、及びシクロフィリンファミリー遺伝子メンバーなどの免疫抑制剤の受容体であり得る。
【0120】
細胞(例えば、操作された免疫細胞)において抗原結合タンパク質、例えば、CARを、同じ細胞において機能的に発現するCD70結合タンパク質、例えば、CD70 CAR(CD70を特異的に認識するCAR)と併せて、機能的に発現させる組成物および方法が、本明細書に提供される。また、免疫細胞、例えば、CAR-T細胞などのT細胞の機能活性を改善するための、そのような組成物及び方法の使用が提供される。本明細書において提供される方法および組成物は、免疫細胞、例えば、同種免疫細胞(例えば、同種T細胞、同種CAR-T細胞)のインビボ持続性および治療有効性を改善するのに有用である。
【0121】
様々な実施形態では、操作された免疫細胞、例えば、本明細書に提供される操作されたT細胞は、第一の抗原結合タンパク質、例えば、第一のキメラ抗原受容体(CAR)および第二の抗原結合タンパク質、例えば、第二のCARを機能的に発現し、第二のCARは、CD70 CARである。有利なことに、本明細書に提供される操作された免疫細胞は、操作されていない細胞と比較して、インビボでの持続性の改善及び/又はレシピエントの免疫系による拒絶反応に対する耐性の増大を示す。例えば、第一のCARおよび第二のCD70 CARを含む細胞の集団は、同じ第一のCARを含み、第二のCARを含まないか、またはCD70に特異的に結合しない第二のCARのいずれかを含む細胞の集団よりも長く持続する。
【0122】
一つ以上の抗原結合タンパク質、例えば、一つ以上のCARは、タンパク質をコードするポリヌクレオチド構築物を細胞内に導入した後に、細胞内の原位置で合成することができる。あるいは、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)は、細胞の外部で産生され、次いで細胞内に導入されることができる。ポリヌクレオチド構築物を細胞内に導入するための方法は、当該技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、安定的形質転換方法を使用して、ポリヌクレオチド構築物を細胞のゲノムに統合することができる。他の実施形態では、一過性形質転換法を使用して、ポリヌクレオチド構築物、及び細胞のゲノム内に組み込まれていないポリヌクレオチド構築物を一過性に発現することができる。他の実施形態では、ウイルス媒介方法を使用することができる。ポリヌクレオチドは、例えば、組換えウイルスベクター(例えば、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス)、リポソームなどの任意の適切な手段によって細胞内に導入され得る。一過性形質転換法には、例えば、限定されるものではないが、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、又は粒子衝撃が含まれる。ポリヌクレオチドは、例えばプラスミドベクター又はウイルスベクターなどのベクターに含まれてもよい。
【0123】
本明細書に提供される操作された免疫細胞(例えば、T細胞)のいくつかの実施形態では、細胞が発現するそれぞれのCARは、細胞外リガンド結合ドメイン(例えば、一本鎖可変断片(scFv))と、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むことができる。いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインは、一つのポリペプチド中に、すなわち、一本鎖中にある。多鎖のCARおよびポリペプチドも本明細書において提供される。一部の実施形態では、多鎖CARは、膜貫通ドメインと少なくとも一つの細胞外リガンド-結合ドメインを含む第一のポリペプチド、および膜貫通ドメインと少なくとも一つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む第二のポリペプチドを含有し、この場合において当該ポリペプチドは一緒に組み立てられて多鎖CARを形成する。
【0124】
細胞外リガンド結合ドメインは、目的の標的に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、目的の標的は、例えば、第一のCARの目的の標的は、目的の任意の分子であってもよく、例えば、これに限定されないが、CD70、BCMA、EGFRvIII、Flt-3、WT-1、CD20、CD22、CD23、CD30、CD38、CD33、CD133、WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、HER2、MSLN、PSMA、PSCA、GPC3、Liv1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKG2D、CS1、CD44v6、ROR1、CD19、Claudin-18.2(Claudin-18A2、もしくはClaudin18アイソフォーム2)、DLL3(Delta様タンパク質3、ショウジョウバエデルタ相同体3、Delta3)、Muc17、Muc3、Muc16、FAPアルファ(線維芽細胞活性化タンパク質アルファ)、Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体座位タンパク質G6d、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25)、またはRNF43(E3ユビキチン-タンパク質リガーゼRNF43、RINGフィンガータンパク質43)を含み、列挙された任意の例示的な標的についてヒト型を特異的に含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体の軽鎖可変(VL)領域と重鎖可変(VH)領域を含有するscFvを含有し、それら領域は柔軟なリンカーにより結合されている。一本鎖可変領域断片は、短い結合ペプチドを使用することによって、軽鎖及び/又は重鎖可変領域を結合させることにより作製される(Bird et al.,Science 242:423-426,1988)。連結ペプチドの一例は、一方の可変領域のカルボキシ末端と他方の可変領域のアミノ末端との間を約3.5nmで架橋するアミノ酸配列(GGGGS)3(配列番号16)を有するGSリンカーである。他の配列のリンカーが設計及び使用されている(Bird et al.,1988,上記参照)。一般に、リンカーは、短い柔軟なポリペプチドであってもよく、好ましくは、約20個以下のアミノ酸残基から構成され得る。更にはリンカーは、例えば、薬剤の付加又は固体支持体への付加などの追加機能のために修飾され得る。一本鎖バリアントは、組換えにより、又は合成により、産生され得る。scFvの合成による産生については、自動化合成装置を使用することができる。scFvの組換え産生については、scFvをコードするポリヌクレオチドを含有する、好適なプラスミド又は他のベクターが、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、若しくは哺乳動物細胞などの真核細胞、又はE.coliなどの原核細胞のいずれかの好適な宿主細胞に導入され得る。目的のscFvをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのライゲーションなどの日常的な操作によって作製され得る。得られるscFvは、当該技術分野で既知の標準的なタンパク質精製技術を使用して単離され得る。
【0126】
本開示によるCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、標的への細胞外リガンド結合ドメインの結合後の細胞内シグナル伝達に関与しており、免疫細胞の活性化及び免疫応答をもたらす。細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが発現されている免疫細胞の正常なエフェクター機能のうちの少なくとも一つを活性化させる能力を有する。例えばT細胞のエフェクター機能は、細胞溶解性の活性であってもよく、またはサイトカイン分泌を含むヘルパー活性であってもよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、CARにおける使用のための細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば限定されないが、抗原受容体係合後にシグナルトランスダクションを開始するよう協働して作用するT細胞受容体及び共受容体の細胞質配列、並びにこれら配列の任意の誘導体又はバリアント、及び同じ機能を有する任意の合成配列であってもよい。細胞内シグナル伝達ドメインは、以下の二つの別個のクラスの細胞質シグナル伝達配列を含有する:抗原依存性の一次活性化を開始させる配列、及び抗原非依存性の様式で作用して、二次シグナル又は共刺激性シグナルを生じさせる配列。一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフまたはITAMとして知られる、シグナル伝達モチーフを含むことができる。ITAMは、syk/zap70クラスのチロシンキナーゼの結合部位としての役割を果たす、様々な受容体の細胞質内尾部に見出される明確に定義されたシグナル伝達モチーフである。本開示で使用されるITAMの例としては、非限定的な例として、ΤCRζ、FcRγ、FcRβ、FcRε、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b及びCD66d、またはそのバリアントに由来するITAMを挙げることができる。いくつかの実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインまたはCD3ζドメインのバリアントを含有してもよい。いくつかの実施形態では、本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子のドメインを含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB(GenBank:AAA53133)及びCD28(NP_006130及びそのアイソフォーム)の断片からなる群から選択される共刺激分子の一部を含む。
【0129】
CARは、細胞の表面膜上で発現される。ゆえにそれぞれのCARは、膜貫通ドメインを含有することができる。本明細書に開示されるCARに対する好適な膜貫通ドメインは、(a)細胞、例えば、免疫細胞、例えば、限定されないが、リンパ球細胞(例えば、T細胞)又はナチュラルキラー(NK)細胞の表面で発現される能力、並びに(b)所定の標的細胞に対して免疫細胞の細胞性応答を誘導するために、リガンド結合ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインと相互作用する能力を有する。膜貫通ドメインは、天然源又は合成源のいずれかに由来し得る。膜貫通ドメインは、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来し得る。非限定的な例として、膜貫通ポリペプチドは、CD3複合体を構成するα、β、γ、若しくはδポリペプチドなどのT細胞受容体のドメイン、IL-2受容体、例えば、p55(α鎖)、p75(β鎖若しくはγ鎖)、Fc受容体、特にFcγ受容体IIIのサブユニット鎖、又はCDタンパク質であり得る。あるいは、膜貫通ドメインは合成であってもよく、主にロイシン及びバリンなどの疎水性残基を含んでもよい。いくつかの実施形態では、当該膜貫通ドメインは、ヒトCD8α鎖(例えば、NP_001139345.1)に由来するか、またはヒトCD8α鎖膜貫通ドメインである。一部の実施形態では、当該膜貫通ドメインは、ヒトCD28膜貫通ドメインを含むか、またはヒトCD28タンパク質膜貫通ドメインに由来する。膜貫通ドメインは、細胞外リガンド結合ドメインと前述の膜貫通ドメインとの間にストークドメインをさらに含有してもよい。ストークドメインは、最大300個のアミノ酸、例えば、10~100個のアミノ酸又は25~50個のアミノ酸を含むことができる。ストーク領域は、CD8、CD4、又はCD28の細胞外領域の全て若しくは一部、又は抗体定常領域の全て若しくは一部など、天然に存在する分子の全て又は一部に由来する場合がある。あるいは、ストークドメインは、天然ストーク配列に相当する合成配列である場合があり、又は全体が合成ストーク配列である場合がある。いくつかの実施形態では、当該ストークドメインは、ヒトCD8α鎖(例えば、NP_001139345及びそのアイソフォーム)の一部である。別の特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、ヒトCD8α鎖の一部を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示され、本明細書に開示される操作された免疫細胞において機能的に発現されるCARは、CD70または本明細書に開示される目的の標的のいずれかに特異的に結合する細胞外リガンド結合ドメイン、CD8αヒトストークおよび膜貫通ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、ならびに4-1BBシグナル伝達ドメインを含むことができる。一部の実施形態では、本明細書に開示され、本明細書に開示される操作された免疫細胞において機能的に発現されるCARは、一つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを有するか、または有さない、CD70に特異的に結合する細胞外リガンド結合ドメイン(例えば、CD70抗原結合ドメインまたはCD70結合ドメイン)および膜貫通ドメインを含むことができる。いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、ベクター、例えば、プラスミドベクターまたはレンチウイルスベクターを介して導入遺伝子として免疫細胞内に導入され得る。いくつかの実施形態では、ベクター、例えば、プラスミドベクターはまた、例えば、ベクターを受容した細胞の特定及び/又は選択を提供する選択マーカーを含有することができる。
【0130】
CARポリペプチドは、細胞内へのCARポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの導入後に細胞内の原位置で合成され得る。あるいは、CARポリペプチドは、細胞の外部で産生され、次いで細胞内に導入され得る。ポリヌクレオチド構築物を細胞内に導入するための方法は、当該技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、安定的形質転換方法を使用して、ポリヌクレオチド構築物を細胞のゲノムに統合することができる。他の実施形態では、一過性形質転換法を使用して、ポリヌクレオチド構築物、及び細胞のゲノム内に組み込まれていないポリヌクレオチド構築物を一過性に発現することができる。他の実施形態では、ウイルス媒介方法を使用することができる。ポリヌクレオチドは、例えば、組換えウイルスベクター(例えば、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)、アデノウイルス)、リポソームなどの任意の好適な手段によって細胞に導入されることができる。一過性形質転換法には、例えば、限定されるものではないが、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、又は粒子衝撃が含まれる。ポリヌクレオチドは、例えばプラスミドベクター又はウイルスベクターなどのベクターに含まれてもよい。
【0131】
免疫細胞、例えば、本明細書に記載される方法のいずれか一つに従って得られた単離されたT細胞または末梢血単核球(PBMC)などのT細胞も、本明細書に提供される。異種のDNAを発現することができる任意の免疫細胞は、目的の抗原結合タンパク質(例えば、CAR)を発現する目的で、さらにはNLRC5および/またはTAP2の低減されたレベルの発現をするように操作するために、使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、例えば、限定されないが、幹細胞に由来し得る。幹細胞は、成体幹細胞、非ヒト胚性幹細胞、より詳細には、非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞、分化全能性幹細胞、又は造血幹細胞であり得る。代表的なヒト細胞は、CD34+細胞である。単離された細胞はまた、樹状細胞、キラー樹状細胞、マスト細胞、NK細胞、B細胞、又は炎症性Tリンパ球、細胞毒性Tリンパ球、調節性Tリンパ球、若しくはヘルパーTリンパ球からなる群から選択されるT細胞であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、CD4+T-リンパ球及びCD8+T-リンパ球からなる群から生じることができる。いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えば、T細胞)、例えば単離されたT細胞などは、操作されていない同等の細胞と比較して、対応する機能的タンパク質について低減されたレベルをそれらが発現するように、さらに改変され、例えば、本明細書に記載される方法(例えば、一つまたは複数の座位、例えば、CD70、TRACおよびCD52を部分的もしくは全体的に欠失させるか、又は破壊するための、TALEN、CRISPR/Cas9、またはmegaTALヌクレアーゼ)によって遺伝子操作される。
【0132】
本明細書に提供される操作された免疫細胞は、細胞のソーティングを可能にして、本明細書に記載されるように操作された細胞の集団、例えば、抗原結合タンパク質を発現する細胞の集団を濃縮する、及び/又は、細胞が患者若しくはレシピエントに投与された後に免疫細胞を不活性化する、例えば、有害作用を制限する、安全スイッチ機構を提供する、一つ以上のミモトープ配列を含むことができる。こうしたミモトープ配列、並びに細胞ソーティングにおける、及び安全スイッチとしてのそれらの用途は、当技術分野で既知であり、例えば、US2018/0002435に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0133】
増殖及び遺伝子改変の前に、細胞源は、様々な非限定的な方法を介して対象から取得することができる。細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含む、多数の非限定的な供給源から得られ得る。いくつかの実施形態では、当業者に利用可能かつ既知の任意の数のT細胞株を使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、健康なドナー、がんと診断された対象、又は感染症と診断された対象に由来し得る。いくつかの実施形態では、細胞は、異なる表現型特徴を示す細胞の混合集団の一部であってもよい。
【0134】
また、本明細書に記載される方法のいずれかに従って改変、例えば、形質転換又は操作された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞から得られる細胞株が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、操作された免疫細胞、例えば、本開示による操作されたT細胞は、第一の抗原結合タンパク質、例えば、CARをコードする第一のポリヌクレオチド、および第二のCD70結合タンパク質、例えば、CD70 CARをコードする第二のポリヌクレオチドを含み、任意選択的に、低減されたレベルでCD70、TRACおよびCD52のうちの一つまたは複数を発現するようにさらに修飾されるか、または操作される、例えば遺伝子改変される(例えば、いずれかまたは両方の座位のノックアウトを含むよう修飾される)。一部の実施形態では、一つのポリヌクレオチドは、第一の抗原結合タンパク質、例えば、CARと、第二のCD70結合タンパク質例えば、CD70 CARの両方をコードする。
【0135】
本開示の免疫細胞、例えば、T細胞は、例えば、限定されないが、米国特許第6,352,694号、同第6,534,055号、同第6,905,680号、同第6,692,964号、同第5,858,358号、同第6,887,466号、同第6,905,681号、同第7,144,575号、同第7,067,318号、同第7,172,869号、同第7,232,566号、同第7,175,843号、同第5,883,223号、同第6,905,874号、同第6,797,514号、同第6,867,041号、及び米国特許出願公開第20060121005号に概して記載される方法を使用して、細胞の改変の前又は後のいずれかに、活性化及び増殖することができる。免疫細胞、例えば、T細胞は、インビトロ又はインビボで増殖することができる。概して、本開示の免疫細胞は、例えば、免疫細胞の表面でCD3 TCR複合体及び共刺激分子を刺激する薬剤と接触して、細胞の活性化シグナルを作製することによって増殖することができる。例えば、カルシウムイオノフォアA23187、ホルボル12-ミリスチン酸13-酢酸塩(PMA)、又はフィトヘマグルチニン(PHA)のような有糸分裂性レクチンなどの化学物質を使用して、免疫細胞、例えば、T細胞の活性化シグナルを作製することができる。
【0136】
いくつかの実施形態では、T細胞集団は、例えば、抗CD3抗体若しくはその抗原結合断片、若しくは表面上に固定化された抗CD2抗体と接触することによって、又はカルシウムイオノフォアと組み合わせたタンパク質キナーゼCアクチベーター(例えば、ブリオスタチン)と接触することによって、インビトロで刺激される場合がある。T細胞の表面上のアクセサリー分子の共刺激には、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の集団は、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で、抗CD3抗体及び抗CD28抗体と接触することができる。T細胞培養に適切な条件としては、血清(例えば、ウシ胎児若しくはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-2、IL-15、TGFβ、及びTNF、又は当業者に既知の細胞増殖のための任意の他の添加物を含む、増殖及び生存に必要な因子を含有することができる、適切な培地(例えば、最小必須培地、RPMI培地1640、又はX-VIVO(商標)5、(Lonza))が挙げられる。細胞の増殖のための他の添加物としては、限定されるものではないが、界面活性剤、Plasmanate(登録商標)、及びN-アセチル-システイン及び2-メルカプトエタノールなどの還元剤が挙げられる。培地は、追加のアミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、及びビタミンを有する、RPMI 1640(本明細書に記載)、AIM V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-VIVO(商標)10、X-VIVO(商標)15及びX-VIVO(商標)20、OpTmizer(商標)を含むことができ、無血清であるか、又は適切な量の血清(若しくは血漿)若しくは定義されたホルモンのセット、及び/又はT細胞の成長及び増殖に十分な量のサイトカインが補充されている。例えばペニシリン及びストレプトマイシンなどの抗生物質は、実験培養物にのみ含まれ、対象に注入される細胞の培養物には含まれない。標的細胞は、例えば、適切な温度(例えば、37℃)及び雰囲気(例えば、空気+5%のCO)などの増殖を支持するために必要な条件下で維持される。様々な刺激時間に曝露された免疫細胞、例えば、T細胞は、異なる特徴を示すことができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、組織又は細胞と共培養することによって増殖することができる。細胞はまた、インビボで、例えば、対象に細胞を投与した後の対象の血液中で増殖し得る。
【0138】
別の態様では、本開示は、本開示の細胞またはそのような細胞を含む集団のいずれかを含む組成物(医薬組成物など)を提供する。一部の実施形態では、組成物は、操作された免疫細胞、例えば、本開示による操作されたT細胞を含み、第一の抗原結合タンパク質、例えば、CARをコードする第一のポリヌクレオチド、および第二のCD70結合タンパク質、例えば、CD70 CARをコードする第二のポリヌクレオチドを含み、任意選択的に、さらに改変されていない細胞と比較して、低減されたレベルでCD70、TRACおよびCD52のうちの一つまたは複数を発現するようにさらに修飾されるか、または操作される、例えば遺伝子改変される(例えば、いずれかまたは両方の座位のノックアウトを含むよう修飾される)。一部の実施形態では、一つのポリヌクレオチドは、第一の抗原結合タンパク質、例えば、CARと、第二のCD70結合タンパク質例えば、CD70 CARの両方をコードする。いくつかの実施形態では、組成物は、そのような操作された免疫細胞の集団、例えば、操作されたT細胞、例えば、10、10、10、10、10、10、10、若しくは1010個のそのような操作された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞、又はこれらの値のうちのいずれか二つの間のいくつかの数の細胞を含む。様々な実施形態では、本明細書に開示される組成物は、一つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、ドナーから単離された初代細胞は、本明細書に記載されるように操作されて、結果として生じる細胞の亜集団(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%など、100%未満の割合)が所望の改変の全てを含む細胞集団を提供する。改変の全てを含む細胞及び含まない細胞の混合物を含む、そのような結果として生じる集団は、本開示の治療方法で、及び本開示の組成物を調製するために使用され得る。あるいは、この細胞集団(「開始集団」)は、既知の方法、例えば、望ましい改変を有する、細胞ソーティング及び/又は細胞の増殖によって操作して、一つ以上の望ましい改変を含む細胞用に濃縮された細胞集団を提供することができ(例えば、望ましい抗原結合タンパク質の両方を発現する細胞用に濃縮、任意選択的に、CD70、TRACおよび/またはCD52に関して操作されていない同等の細胞と比較して低減されたレベルでCD70、TRACおよびCD52のうちの一つまたは複数を発現する細胞用にさらに濃縮)、すなわち、開始集団よりも高い割合のそのような改変又は操作された細胞を含む。次いで、改変された細胞が濃縮された集団は、本開示の治療方法で、及び例えば、本開示の組成物を調製するために使用され得る。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞集団は、改変のうちの一つ以上を有する、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%の細胞を含有するか、又は少なくともそれらを含有する。他の実施形態では、改変のうちの一つ以上を含む濃縮された細胞集団の細胞の割合は、所望の改変を含む細胞の開始集団の細胞の割合よりも少なくとも30%高い。
【0140】
CD70結合タンパク質またはCD70特異的CARおよびその作製方法
関連する態様では、本開示は、本明細書に記載されるCD70結合タンパク質を提供し、CD70結合タンパク質は、CD70に結合する細胞外リガンドまたは抗原結合ドメイン(またはCD70結合ドメイン)および膜貫通ドメインを含む。CD70結合タンパク質は、本明細書に記載される一つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインに全く含まれない。
【0141】
本開示は、ブダペスト条約の規定に基づき寄託され、受託番号P32970-1が付与されたものなどの、CD70(例えば、ヒトCD70(例えば、配列番号601))に結合するCARを含むが、これらに限定されない、CD70結合タンパク質を提供する。本明細書に提供されるCD70特異的CARは、一本鎖CARおよび多鎖CARを含む。一部の実施形態では、CARは、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、非MHC拘束性様式でT細胞特異性および反応性をCD70に向け直す能力を有する。非MHC拘束性抗原認識は、CARを発現するT細胞に、抗原プロセシングとは無関係に抗原を認識する能力を与え、これにより腫瘍エスケープの主要な機構を迂回する。
【0142】
一部の実施形態では、本明細書に提供されるCD70結合タンパク質は、細胞外ドメイン(例えば、一本鎖可変断片(scFv))および膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるCD70結合タンパク質またはCD70 CARは、細胞外リガンド結合ドメイン(例えば、scFv)、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、CD70結合タンパク質は、CD3ζシグナル伝達ドメイン、CD3δシグナル伝達ドメイン、CD3γシグナル伝達ドメイン、CD3εシグナル伝達ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン、CD2シグナル伝達ドメイン、OX40シグナル伝達ドメイン、および4-1BBシグナル伝達ドメイン、またはそのバリアントからなる群から選択される一つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号265、271~278、281~295、311~337、580~591、または616~617のうちの一つまたは複数のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号271、616、272、617、276、275、582、583、585、または586のうちの一つまたは複数のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD70結合タンパク質は、CD3ζもしくはCD3γシグナル伝達ドメイン、またはそのバリアントを含み、共刺激ドメインを含まない。いくつかの実施形態では、CD70結合タンパク質は、4-1BBシグナル伝達ドメイン、またはそのバリアントを含み、CD3シグナル伝達ドメインを含まない。いくつかの実施形態では、CD70結合タンパク質は、4-1BBシグナル伝達ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、CD70結合タンパク質は、細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。異なる細胞内シグナル伝達ドメインまたはその組み合わせは、T細胞増殖、効力、生存、持続性、および/または宿主免疫細胞拒絶反応に対する抵抗性に寄与し得る異なるシグナル伝達強度を付与し得る。一つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含まないCD70結合タンパク質が、本明細書に記載される。
【0143】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるCD70結合タンパク質を含む操作された免疫細胞は、宿主免疫細胞による拒絶反応に対する異なるレベルの持続性および/または抵抗性を示すことができ、患者に投与されたときにインビボでのリンパ枯渇における使用に好適であり得る。一部の実施形態では、本明細書に記載されるCD70結合タンパク質を含む操作された免疫細胞は、宿主免疫細胞の増殖および/または活性を異なる程度に阻害することができ、それにより、患者に投与されたときにインビボでのリンパ枯渇の深さの微調整が可能となり得る。例えば、MLRアッセイにおいて、宿主免疫細胞の増殖または活性の延長した拡大および/または阻害を示したCD70結合タンパク質を含む、例えば、操作された免疫細胞を、延長したリンパ枯渇に使用することができる。対照的に、同一または類似のアッセイにおいて宿主免疫細胞の拡大および/または阻害があまり延長されないCD70結合タンパク質を含む操作された免疫細胞は、完全なリンパ枯渇または完全なリンパ枯渇が望まれる場合に使用することができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるCARは、細胞外リガンド結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置し得る、「ヒンジ」ドメインまたは「ストーク」ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインは、一つのポリペプチド中に、すなわち、一本鎖中にある。多鎖のCARおよびポリペプチドも本明細書において提供される。一部の実施形態では、多鎖CARは、膜貫通ドメインと少なくとも一つの細胞外リガンド-結合ドメインを含む第一のポリペプチド、および膜貫通ドメインと少なくとも一つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む第二のポリペプチドを含有し、この場合において当該ポリペプチドは一緒に組み立てられて多鎖CARを形成する。一部の実施形態では、CARは、低分子(例えば、AP1903)またはタンパク質(例えば、Epo、Tpo、もしくはPD-1)などによって誘導可能である。いくつかの実施形態では、CD70特異的多鎖CARは、IgEに対する高親和性受容体(FcεRI)に基づく。肥満細胞および好塩基球上で発現されるFcεRIは、アレルギー反応を誘発する。FcεRIは、単一のαサブユニット、単一のβサブユニット、および二つのジスルフィド結合γサブユニットから構成される四量体複合体である。αサブユニットは、IgE結合ドメインを含有する。βおよびγサブユニットは、シグナル伝達を媒介するITAMを含有する。一部の実施形態では、FcRα鎖の細胞外ドメインは欠失され、CD70特異的細胞外リガンド結合ドメインにより置き換えられる。いくつかの実施形態では、多鎖CD70特異的CARは、CD70、CD8αヒンジ、及びFcRβ鎖のITAMに特異的に結合するscFvを含む。いくつかの実施形態では、CARは、FcRγ鎖を含んでもよく、含まなくてもよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、標的抗原(すなわち、CD70)に特異的なモノクローナル抗体の軽鎖可変(VL)領域と重鎖可変(VH)領域を含有するscFvを含有し、それら領域は柔軟なリンカーにより結合されている。一本鎖可変領域断片は、短い結合ペプチドを使用することによって、軽鎖及び/又は重鎖可変領域を結合させることにより作製される(Bird et al.,Science 242:423-426,1988)。連結ペプチドの一例は、一方の可変領域のカルボキシ末端と他方の可変領域のアミノ末端との間を約3.5nmで架橋するアミノ酸配列(GGGGS)(配列番号296)を有するGSリンカーである。他の配列のリンカーが設計及び使用されている(Bird et al.,1988,上記参照)。他の例示的なリンカーは、概して、(GGGGS)x(式中、xは、1、2、3、4、5である(配列番号604))を含むことができる他のGSリンカーを含むことができる。一部の実施形態では、xは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または約20未満の任意の整数である。いくつかの実施形態では、リンカーは、(GGGGS)4(配列番号602)である。いくつかの実施形態では、リンカーは、Whitlow et al,Protein Eng.(1993)6(8):989-895に記載される、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号603)である。概して、リンカーは、短い柔軟なポリペプチドであってもよく、概して、約20個以下のアミノ酸残基から構成される。更にはリンカーは、例えば、薬剤の付加又は固体支持体への付加などの追加機能のために修飾され得る。一本鎖バリアントは、組換えにより、又は合成により、産生され得る。scFvの合成による産生については、自動化合成装置を使用することができる。scFvの組み換えによる産生については、scFvをコードするポリヌクレオチドを含む好適なプラスミドは、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、もしくは哺乳動物細胞などの真核細胞、またはE.coliなどの原核細胞のいずれかの好適な宿主細胞に導入され得る。目的のscFvをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのライゲーションなどの日常的な操作によって作製され得る。得られるscFvは、当該技術分野で既知の標準的なタンパク質精製技術を使用して単離され得る。
【0146】
別の態様では、CD70に特異的に結合する、CARが提供され、CARは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46もしくは48に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含むVH領域;ならびに/または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45もしくは47に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含むVL領域を含む細胞外リガンド結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、VH及びVLは、可動性リンカーによって互いに連結されている。いくつかの実施形態では、可動性リンカーは、配列番号 296に示されるアミノ酸配列を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、本開示のCARは、表1に列挙される部分的軽鎖配列のいずれか一つ、および/または表1に列挙される部分的重鎖配列のいずれか一つを有する細胞外リガンド結合ドメインを含む。表1では、下線付き配列は、KabatによるCDR配列であり、Chothiaによるものは太字である。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0148】
また、CD70に対するCARの細胞外リガンド結合ドメインのCDR部分(Chothia、Kabat CDR、及びCDR接触領域を含む)が、本明細書に提供される。CDR領域の決定は十分、当該技術分野の技術内である。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat及びChothia CDRの組み合わせ(また、組み合わされたCR又は拡張されたCDRとも呼ばれる)であり得ることが理解される。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat CDRである。他の実施形態では、CDRは、Chothia CDRである。言い換えれば、二つ以上のCDRを有する実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、組み合わせCDR、又はそれらの組み合わせのいずれかであってもよい。表2A~2Bは、本明細書に提供されるCDR配列の例を提供する。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0149】
本開示は、表1または2A~2Bに示される配列を含むCAR及びポリペプチドへの改変を包含し、これは、それらの特性に有意な影響を与えない改変を有する機能的に等価なCAR、並びに活性及び/又は親和性の強化又は減少を有するバリアントを含む。例えば、アミノ酸配列は、変異して、CD70に対する所望の結合親和性を有する抗体を得ることができる。ポリペプチドの改変は、当該技術分野での通常の業務であり、本明細書に詳細に記載される必要はない。改変されたポリペプチドの例としては、アミノ酸残基の保存的置換を有するポリペプチド、機能活性を著しく有害に変化させないか、若しくはそのリガンドに対するポリペプチドの親和性を成熟させる(強化する)アミノ酸の一つ以上の欠失若しくは付加を有するポリペプチド、又は化学類似体を使用したポリペプチドが挙げられる。
【0150】
アミノ酸配列挿入には、長さが1個の残基から100個以上の残基を含有するポリペプチドまでに及ぶアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合物、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体、またはエピトープタグに融合された抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体は、血液循環中の抗体の半減期を増加させる酵素又はポリペプチドの抗体のN末端又はC末端への融合を含む。
【0151】
置バリアントは、除去された抗体分子中に少なくとも一つのアミノ酸残基を有し、その場所に異なる残基が挿入されている。置換的変異誘発のための最も関心の高い部位は、超可変領域を含むが、FR変化も企図される。保存的置換は、表3の「保存的置換」の見出しの下に示されている。そのような置換が生物活性の変化をもたらす場合、表3で「例示的な置換」と表示されるか、又はアミノ酸クラスに関して以下に更に記載される、より実質的な変化が導入され得、生成物がスクリーニングされ得る。
【表4】
【0152】
一部の実施形態では、本開示は、CD70結合タンパク質、例えば、CD70に結合し、31H1、63B2、40E3、42C3、45F11、64F9、72C2、2F10、4F11、10H10、17G6、65E11、P02B10、P07D03、P08A02、P08E02、P08F08、P08G02、P12B09、P12F02、P12G07、P13F04、P15D02、P16C05、10A1、10E2、11A1、11C1、11D1、11E1、12A2、12C4、12C5、12D3、12D6、12D7、12F5、12H4、8C8、8F7、8F8、9D8、9E10、9E5、9F4または9F8の配列を含むScFvを含む細胞外ドメインを含むCARを含む、本明細書に記載されるCARとCD70への結合について競合する細胞外リガンド結合ドメインを含むCD70 CARを提供する。
【0153】
一部の実施形態では、CD70(またはCD70結合ドメイン)に結合する細胞外リガンド結合ドメインは、配列番号599のアミノ酸配列を含むscFv、または抗体を、任意選択的に、配列番号599のアミノ酸配列を含むscFvと、CD70への結合について競合するscFvとして含む。一部の実施形態では、CD70(またはCD70結合ドメイン)に結合する細胞外リガンド結合ドメインは、配列番号600のアミノ酸配列を含むscFvまたは配列番号600のアミノ酸配列を含むscFvと、CD70への結合について競合するscFvを含む。一部の実施形態では、CD70(またはCD70結合ドメイン)に結合する細胞外リガンド結合ドメインは、配列番号370および371のアミノ酸配列を含むscFvまたは配列番号370および371のアミノ酸配列を含むscFvと、CD70への結合について競合するscFvを含む。結合競合を決定する方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、ELISAまたはBiacore SPRアッセイを含む。
【0154】
一部の実施形態では、CD70結合ドメインは、CD70の膜遠位部分に結合する抗CD70抗体を含む。一部の実施形態では、CD70結合ドメインは、CD70の膜近位部分に結合する抗CD70抗体を含む。CD70構造解析は、例えば、Liu et al ., 2021, J. Biol. Chem. Structural delineation and phase-dependent activation of the costimulatory CD27:CD70 complex. 297(4):101102に見ることができる。
【0155】
一部の実施形態では、本開示は、CD70に特異的に結合するCARを提供し、CARは、配列番号20に示される配列を含むVH領域および/または配列番号19に示される配列を含むVL領域を含む。一部の実施形態では、本開示は、CD70に特異的に結合するCARを提供し、CARは、配列番号22に示される配列を含むVH領域および/または配列番号21に示される配列を含むVL領域を含む。一部の実施形態では、本開示は、CD70に特異的に結合するCARを提供し、CARは、配列番号28に示される配列を含むVH領域および/または配列番号27に示される配列を含むVL領域を含む。一部の実施形態では、本開示は、CD70に特異的に結合するCARを提供し、CARは、配列番号36に示される配列を含むVH領域および/または配列番号35に示される配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施形態では、CD70に特異的に結合するCARが、本明細書に提供され、CARは、配列番号46に示される配列を含むVH領域、及び/又は配列番号45に示される配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施形態では、CD70に特異的に結合するCARが、本明細書に提供され、CARは、配列番号18に示される配列を含むVH領域、及び/又は配列番号17に示される配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施形態では、CD70に特異的に結合するCARが、本明細書に提供され、CARは、配列番号34に示される配列を含むVH領域、及び/又は配列番号33に示される配列を含むVL領域を含む。一部の実施形態では、本開示はまた、CDR接触領域に基づき、抗体のCDR部分を含むCARをCD70抗体にもたらす。CDR接触領域は、抗原に対する特異性を抗体に与える抗体の領域である。一般に、CDR接触領域は、抗体が特定の抗原に結合するための適切なループ構造を維持するために拘束されるCDR及びバーニアゾーンにおける残基位置を含む。例えば、Makabe et al.,J.Biol. Chem.,283:1156-1166,2007を参照されたい。CDR接触領域の決定は十分、当該技術分野の技術内である。
【0156】
CD70(例えば、ヒトCD70)に対する、本明細書に記載されるCD70特異的CARのリガンド結合ドメインの結合親和性(KD)は、例えば約0.1~約1000nM、例えば約0.5nM~約500nM、又は例えば約1nM~約250nMであり得る。いくつかの実施形態では、結合親和性は、約1000nm、750nm、500nm、400nm、300nm、250nm、200nM、100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、45nM、40nM、35nM、30nM、25nM、20nM、19nm、18nm、17nm、16nm、15nM、10nM、8nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5.5nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.3nM、又は0.1nMのいずれかである。
【0157】
一部の実施形態では、CD70に対する、本明細書に記載されるCD70特異的CARのリガンド結合ドメインのscFvの結合親和性(KD)は、約10nM~約100nM、約10nM~約90nM、約10nM~約80nM、約20nM~約70nM、約25nM~約75nM、または約40nM~約110nMである。一部の実施形態では、本段落に記載されるscFvの結合親和性は、ヒトCD70に対するものである。
【0158】
いくつかの実施形態では、結合親和性は、約1000nm、900nm、800nm、250nM、200nM、100nM、50nM、30nM、20nM、10nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5nMのいずれか未満である。
【0159】
本開示によるCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、標的への細胞外リガンド結合ドメインの結合後の細胞内シグナル伝達に関与しており、免疫細胞の活性化及び免疫応答をもたらす。細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが発現されている免疫細胞の正常なエフェクター機能のうちの少なくとも一つを活性化させる能力を有する。例えばT細胞のエフェクター機能は、細胞溶解性の活性であってもよく、またはサイトカイン分泌を含むヘルパー活性であってもよい。
【0160】
一部の実施形態では、CARにおける使用のための細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば限定されないが、抗原受容体係合後にシグナル伝達を開始するよう協働して作用するT細胞受容体および共受容体の細胞質配列、ならびにこれら配列の任意の誘導体またはバリアント、および同じ機能を有する任意の合成配列であってもよい。細胞内シグナル伝達ドメインは、以下の二つの別個のクラスの細胞質シグナル伝達配列を含む:抗原依存性の一次活性化を開始させる配列、および抗原依存性の様式で作用して、二次シグナルまたは共刺激性シグナルを生じさせる配列。一次細胞質シグナル伝達配列は、ITAMの免疫受容体活性化チロシンモチーフとして知られているシグナル伝達モチーフを含有してもよい。ITAMは、syk/zap70クラスのチロシンキナーゼの結合部位としての役割を果たす、様々な受容体の細胞質内尾部に見出される明確に定義されたシグナル伝達モチーフである。本開示で使用されるITAMの例としては、非限定的な例として、TCRζ、FcRγ、FcRβ、FcRε、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するITAMが挙げられる。いくつかの実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号272または617に示されるアミノ酸配列と少なくとも約70%、少なくとも80%、少なくとも90%、95%、97%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するCD3ζシグナル伝達ドメインを含み得る。一部の実施形態では、本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子のドメインを含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、41BB(GenBank:AAA53133.)およびCD28(NP_006130.1)の断片からなる群から選択される共刺激分子の一部を含む。いくつかの実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号271または616に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、95%、97%、または99%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号271もしくは616に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、95%、97%、または99%の配列同一性、および/または配列番号276に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、95%、97%、または99%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む。
【0162】
CARは、細胞の表面膜上で発現される。ゆえにCARは、膜貫通ドメインを含有することができる。本明細書に開示されるCARの好適な膜貫通ドメインは、(a)一部の実施形態では、例えば、例えば、Tヘルパー(T)細胞、細胞傷害性T(T)細胞、T制御性(Treg)細胞、またはナチュラルキラー(NK)細胞などのリンパ球細胞などの免疫細胞である、細胞の表面で発現する能力、および/または(b)予め定義された標的細胞に対して免疫細胞の細胞応答を指示するために、リガンド結合ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインと相互作用して細胞応答を誘導する能力を有する。膜貫通ドメインは、天然源又は合成源のいずれかに由来し得る。膜貫通ドメインは、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来し得る。非限定的な例として、膜貫通ポリペプチドは、CD3複合体を構成するα、β、γ、もしくはδポリペプチドなどのT細胞受容体の配列またはサブユニット、IL-2受容体p55(α鎖)、p75(β鎖)、もしくはγ鎖、Fc受容体、特にFcγ受容体IIIのサブユニット鎖、またはCDタンパク質であってもよい。あるいは、膜貫通ドメインは合成であってもよく、主にロイシン及びバリンなどの疎水性残基を含んでもよい。一部の実施形態では、前述の膜貫通ドメインは、ヒトCD8α鎖(例えば、NP_001139345.1)に由来する。膜貫通ドメインは、細胞外リガンド結合ドメインと前述の膜貫通ドメインとの間にストークドメインをさらに含有してもよい。ストークドメインは、最大300個のアミノ酸を含むことができ、いくつかの実施形態では10~100個のアミノ酸、またはいくつかの実施形態では25~50個のアミノ酸を含む。ストーク領域は、CD8、CD4、CD28、4-1BB、若しくはIgG(特に、IgGのヒンジ領域)の細胞外領域の全て若しくは一部、又は抗体重鎖定常領域の全て若しくは一部など、天然に存在する分子の全て又は一部に由来し得る。あるいはストークドメインは、天然ストーク配列に相当する合成配列であってもよく、または全体が合成ストーク配列であってもよい。いくつかの実施形態では、当該ストークドメインは、ヒトCD8α鎖(例えば、NP_001139345.1)の一部である。別の特定の実施形態では、当該ヒンジおよび膜貫通ドメインは、一部の実施形態では、配列番号268および270からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、95%、97%、または99%の配列同一性を含む、ヒトCD8α鎖の一部を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のCARのストークドメインは、CD8α、IgG1、またはFcγRIIIαのサブ配列、特にCD8α、IgG1、またはFcγRIIIαのいずれかのヒンジ領域を含む。一部の実施形態では、ストークドメインは、ヒトCD8αヒンジ、ヒトIgG1ヒンジ、またはヒトFcγRIIIαヒンジを含み、一部の実施形態では、本明細書に開示されるCARは、CD70に特異的に結合する細胞外リガンド結合ドメインを含み得る。一部の実施形態では、本明細書に開示されるCARは、scFv、CD8αヒトヒンジおよび膜貫通ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、および4-1BBシグナル伝達ドメインを含む。
【0163】
表4は、本明細書に開示されるCARに使用され得るドメインの例示的な配列を提示する。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【0164】
標的抗原の下方制御または変異は、がん細胞において一般的に見られ、抗原損失回避バリアントを生成する。したがって、腫瘍回避を相殺し、免疫細胞を標的により特異的にするために、CD70特異的CARは、標的中の異なるエレメントに同時に結合し、それによって免疫細胞の活性化および機能を増強する、一つまたは複数の追加の細胞外リガンド結合ドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、同じ膜貫通ポリペプチド上に直列に配置され得、任意選択的に、リンカーによって分離され得る。いくつかの実施形態では、当該異なる細胞外リガンド結合ドメインは、CARを構成する異なる膜貫通ポリペプチド上に配置され得る。一部の実施形態では、本開示は、CARの集団に関し、それぞれのCARは、異なる細胞外リガンド結合ドメインを含む。特に、本開示は、免疫細胞を用意すること、および細胞の表面でCARの集団を発現させることを含む、免疫細胞を操作する方法に関し、それぞれのCARは、異なる細胞外リガンド結合ドメインを含む。別の特定の実施形態では、本開示は、免疫細胞を用意すること、およびそれぞれ一つが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCARの集団を構成するポリペプチドをコードする細胞ポリヌクレオチドを細胞に導入することを含む、免疫細胞を操作する方法に関する。CARの集団とは、それぞれ一つが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含む少なくとも二つ、三つ、四つ、五つ、六つ以上のCARを意味する。本開示による異なる細胞外リガンド結合ドメインは、一部の実施形態では、標的中の異なるエレメントに同時に結合し、それによって免疫細胞の活性化および機能を増強することができる。本開示はまた、それぞれ一つが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCARの集団を含む単離された免疫細胞に関する。
【0165】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるCARおよびポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の手順によって作製され、発現され得る。
【0166】
別の態様では、本開示は、本開示の細胞のいずれかを含む組成物(医薬組成物など)を提供する。一部の実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるCARのいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む細胞を含む。さらに他の実施形態では、組成物は、以下の、配列番号297および配列番号298、配列番号299および配列番号300、配列番号301および配列番号302、配列番号303および配列番号304、配列番号305および配列番号306、配列番号307および配列番号308または配列番号309および配列番号310に示されるポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。
4F11重鎖可変領域
CAGGTCACCTTGAAGGAGTCTGGTCCTGTGCTGGTGAAACCCACAGAGACCCTCACGCTGACCTGCACCGTCTCTGGGTTCTCACTCAGTAATGCTAGAATGGGTGTGACCTGGATCCGTCAGCCCCCAGGGAAGGCCCTGGAGTGGCTTGCACACATTTTTTCGAATGACGAAAAATCCTACAGTACATCTCTGAAGAGCAGGCTCACCATCTCCAAGGACACTTCCAAAACCCAGGTGGTCCTTACCATGACCAACATGGACCCTGTGGACACAGCCACATATTACTGTGCACGGATACGAGATTACTATGACATTAGTAGTTATTATGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCAGCGTCTCCTCA(配列番号297)
4F11軽鎖可変領域
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCTGCCATGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGTCGGGCGAGTCAGGACATTAGCAATTATTTAGCCTGGTTTCAGCAGAAACCAGGGAAAGTCCCTAAGCGCCTGATCTATGCTGCATCCAGTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGCGGCAGTGGATCGGGGACAGAATTCACTCTCACAATCAGCAGCCTGCTGCCTGAAGATTTTGCAACTTATTACTGTCTACAGCTTAATAGTTTCCCGTTCACTTTTGGCGGAGGGACCAAGGTGGAGATCAAC(配列番号298)
【0167】
さらに他の実施形態では、組成物は、以下の、配列番号299および配列番号300に示されるポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。
17G6重鎖可変領域
GAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTCCAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGTAGCCTCTGGATTCACCTTTAGTAGTTATTGGATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTGGCCAGCATAAAGCAAGATGGAAGTGAGAAATACTATGTGGACTCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAACTCAGTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGGTGTGTATTACTGTGCGAGAGAAGGAGTCAACTGGGGATGGAGACTCTACTGGCACTTCGATCTCTGGGGCCGTGGAACCCTGGTCACTGTCTCCTCA(配列番号299)
17G6軽鎖可変領域
GACATCGTGATGACCCAGTCTCCAGACTCCCTGGCTGTGTCTCTGGGCGAGAGGGCCACCATCAACTGCAAGTCCAGCCAGAGTGTTTTATACAGCTACAACAATAAGAACTACGTAGCTTGGTACCAGCAGAAACCAGGACAACCTCCTAACCTACTCATTTTCTGGGCATCTACCCGGGAATCCGGGGTCCCTGACCGATTCAGTGGCAGCGGGTCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTGCAGGCTGAAGATGTGGCAGTTTACTACTGTCAGCAATATTATAGTACGCTCACTTTCGGCGGAGGGACCAAGGTGGAGATCAAA(配列番号300)。
【0168】
さらに他の実施形態では、組成物は、以下の、配列番号301および配列番号302に示されるポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。
10H10重鎖可変領域
GAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGTCTCTGGATTCACCTTCAGTAACCATAACATACACTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTTCATACATTAGTCGAAGTAGTAGTACCATATATTACGCAGACTCTGTGAAGGGCCGATTCACAATCTCCAGAGACAATGCCAAGAACTCACTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGACGAAGACACGGCTGTGTATTACTGTGCGAGAGATCACGCTCAGTGGTACGGTATGGACGTTTGGGGCCAAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCA(配列番号301)。
10H10軽鎖可変領域
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCTTCCGTGTCTGCATCGGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGTCGGGCGAGTCAGGGTATTAGCAGCTGGTTAGCCTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGGTCCTGATCTATGCTGCATCCAGTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGCGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTGCAGCCTGAAGATTTTGCAACTTACTATTGTCAACAGGCTTTCAGTTTCCCATTCACTTTCGGCCCTGGGACCAAAGTGGATATCAAA(配列番号302)。
【0169】
さらに他の実施形態では、組成物は、以下の、配列番号303および配列番号304に示されるポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。
P07D03重鎖可変領域
GAAGTGCAGCTTGTCCAGAGCGGAGCCGAAGTGAAGAAGCCTGGCGAGAGCCTGAAGATCAGCTGCAAGGGCTCCGGATATCGCTTCACAAGTTACTGGATAGGGTGGGTGCGCCAGATGCCTGGTAAGGGACTGGAATGGATGGGCTCTATATATCCTGATGATTCCGACACACGTTATAGCCCAAGCTTTCAGGGCCAGGTCACAATCAGCGCTGACAAGAGCATCAGCACCGCCTACCTTCAGTGGTCGTCTCTGAAGGCCAGCGACACCGCAATGTACTACTGCGCCTCTAGCACAGTTGACTACCCGGGATACAGTTACTTCGACTACTGGGGCCAAGGTACACTGGTCACCGTCAGCAGC(配列番号303)
P07D03軽鎖可変領域
GAGCTCCAGAGCGTGCTGACCCAGCCTCCTAGCGCAAGCGGCACCCCTGGACAGCGTGTGACAATTAGCTGTAGCGGAAGTCGTAGCAATATCGGATCAAACTATGTGTATTGGTATCAGCAATTGCCCGGTACAGCACCCAAATTGCTCATATATAGAAATAATCAGAGACCTAGCGGAGTGCCTGATCGTTTTAGCGGTAGCAAAAGCGGCACCAGCGCATCACTGGCAATTTCAGGCCTGCGTAGCGAAGATGAGGCGGATTATTACTGTGCGAGTTGGGATGGTTCGCTGAGTGCTGTTGTGTTCGGCACCGGTACAAAACTGACCGTTCTG(配列番号304)
【0170】
さらに他の実施形態では、組成物は、以下の、配列番号305および配列番号306に示されるポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。
P08G02重鎖可変領域
GAAGTGCAGCTTGTCCAGAGCGGAGCCGAAGTGAAGAAGCCTGGCGAGAGCCTGAAGATCAGCTGCAAGGGCTCCGGATACACCTTTCCTTCATCATGGATAGGTTGGGTGCGCCAGATGCCTGGTAAGGGACTGGAATGGATGGGCATCATATACCCTGATACTAGCCATACCCGTTACAGCCCAAGCTTTCAGGGCCAGGTCACAATCAGCGCTGACAAGAGCATCAGCACCGCCTACCTTCAGTGGTCGTCTCTGAAGGCCAGCGACACCGCAATGTACTACTGTGCCCGTGCGAGCTATTTCGATCGTGGAACAGGGTATAGTTCTTGGTGGATGGATGTGTGGGGCCAAGGTACACTGGTCACCGTCAGCAGC(配列番号305)
P08G02軽鎖可変領域
GAGCTCGATATTCAGATGACCCAGAGCCCTAGCAGCCTGAGCGCAAGCGTGGGCGATAGAGTGACCATTACCTGTAGGGCCTCACAATCCATATACGACTATTTGCACTGGTATCAGCAGAAACCCGGGAAAGCACCCAAACTGCTGATTTACGATGCTTCCAACCTACAGAGTGGCGTTCCTTCACGTTTTAGCGGTAGCGGTTCAGGCACCGATTTCACCCTGACCATTAGCAGCCTTCAGCCCGAAGATTTCGCTACGTATTATTGCCAGCAATCATACACCACGCCGTTGTTTACATTCGGCCAGGGTACCAAAGTGGAAATCAAA(配列番号306)
【0171】
さらに他の実施形態では、組成物は、以下の、配列番号307および配列番号308に示されるポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。
P08F08重鎖可変領域
GAAGTGCAGCTTGTCCAGAGCGGAGCCGAAGTGAAGAAGCCTGGCGAGAGCCTGAAGATCAGCTGCAAGGGCTCCGGATACGGATTCACAAGTTATTGGATAGGTTGGGTGCGCCAGATGCCTGGTAAGGGACTGGAATGGATGGGTATCATTCATCCCGATGATAGCGACACCAAATACAGCCCAAGCTTTCAGGGCCAGGTCACAATCAGCGCTGACAAGAGCATCAGCACCGCCTACCTTCAGTGGTCGTCTCTGAAGGCCAGCGACACCGCAATGTACTACTGTGCCTCTAGCTATTTGCGTGGCTTGTGGGGAGGCTATTTTGACTATTGGGGCCAAGGTACACTGGTCACCGTCAGCAGC(配列番号307)
P08F08軽鎖可変領域
GAGCTCCAGAGCGTGCTGACCCAGCCTCCTAGCGCAAGCGGCACCCCTGGACAGCGTGTGACAATTAGCTGTAGCGGATCAAGCTCAAACATTGGCTCAAATTATGTGAATTGGTATCAGCAATTGCCCGGTACAGCACCCAAACTGCTCATTTATGGAGATTATCAACGACCTAGCGGAGTGCCTGATCGTTTTAGCGGTAGCAAAAGCGGCACCAGCGCATCACTGGCAATTTCAGGCCTGCGTAGCGAAGATGAGGCGGATTATTACTGTGCTACCCGCGACGATTCGTTATCTGGGTCTGTCGTTTTTGGCACCGGTACAAAACTGACCGTGCTG(配列番号308)
【0172】
さらに他の実施形態では、組成物は、以下の、配列番号309および配列番号310に示されるポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。
P15D02重鎖可変領域
GAAGTGCAGCTTGTCCAGAGCGGAGCCGAAGTGAAGAAGCCTGGCGAGAGCCTGAAGATCAGCTGCAAGGGCTCCGGATACAGTTTTGCCTCATACTGGATCGGTTGGGTGCGCCAGATGCCTGGTAAGGGACTGGAATGGATGGGCGTAATTTACCCCGGAACTAGCGAGACACGTTACAGCCCAAGCTTTCAGGGCCAGGTCACAATCAGCGCTGACAAGAGCATCAGCACCGCCTACCTTCAGTGGTCGTCTCTGAAGGCCAGCGACACCGCAATGTACTACTGCGCTAAAGGGTTGAGTGCGAGTGCAAGTGGATATTCTTTCCAATATTGGGGCCAAGGTACACTGGTCACCGTCAGCAGC(配列番号309)
P15D032軽鎖可変領域
GAGCTCGATATTCAGATGACCCAGAGCCCTAGCAGCCTGAGCGCAAGCGTGGGCGATAGAGTGACCATTACCTGTAGGGCCTCACAAAGCATCGACACATATTTAAACTGGTATCAGCAGAAACCCGGGAAAGCACCCAAACTGCTGATTTATTCAGCTAGTAGCCTACACAGTGGCGTTCCTTCACGTTTTAGCGGTAGCGGTTCAGGCACCGATTTCACCCTGACCATTAGCAGCCTTCAGCCCGAAGATTTCGCTACGTATTATTGCCAACAATCATACAGCACAACTGCTTGGACATTCGGCCAGGGTACCAAAGTGGAAATCAAA(配列番号310)
【0173】
発現ベクター、及びポリヌクレオチド組成物の投与について、本明細書に更に記載される。
【0174】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを作製する方法を提供する。
【0175】
任意のそのような配列に相補的なポリヌクレオチドも、本開示によって包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コード若しくはアンチセンス)又は二本鎖であってもよく、DNA(ゲノム、cDNA、若しくは合成)又はRNA分子であってもよい。RNA分子は、イントロンを含有し、一対一でDNA分子に対応するhnRNA分子、及びイントロンを含有しないmRNA分子を含む。追加のコード配列又は非コード配列は、本開示のポリヌクレオチド内に存在してもよいが、そうである必要はなく、ポリヌクレオチドは、他の分子及び/又は支持材料に連結されていてもよいが、そうである必要はない。
【0176】
ポリヌクレオチドは、天然配列(すなわち、抗体又はその一部分をコードする内因性配列)を含んでもよいか、又はそのような配列のバリアントを含んでもよい。ポリヌクレオチドバリアントは、天然の免疫反応性分子と比較して、コードされたポリペプチドの免疫反応性が低減されないような、一つ以上の置換、付加、欠失、及び/又は挿入を含有する。コードされたポリペプチドの免疫反応性に対する効果は、概して、本明細書に記載されるように評価されてもよい。バリアントの実施形態は、天然抗体又はその一部分をコードするポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも約70%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約90%の同一性、または少なくとも約95%の同一性を示す。
【0177】
二つのポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列は、二つの配列中のヌクレオチド又はアミノ酸の配列が、以下に記載されるように最大一致のために整列されたときに同じである場合、「同一」であると言われる。二つの配列間の比較は、典型的には、比較ウィンドウにわたって配列を比較して、配列類似性の局所領域を特定及び比較することによって実施される。本明細書で使用される場合、「比較ウィンドウ」は、少なくとも約20、通常30~約75、又は40~約50個の隣接する位置のセグメントを指し、配列は、二つの配列が最適に整列された後、同じ数の隣接する位置の参照配列と比較され得る。
【0178】
比較のための配列の最適な整列は、デフォルトパラメータを使用して、バイオインフォマティクスソフトウェアのLasergeneスイートのMegalignプログラム(DNASTAR,Inc.、Madison,Wl)を使用して行われ得る。このプログラムは、以下の参考文献に記載されるいくつかの整列スキームを具現化する:Dayhoff,M.O.,1978,A model of evolutionary change in proteins-Matrices for detecting distant relationships.In Dayhoff,M.O.(ed.)Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,Washington DC Vol.5,Suppl.3,pp.345-358、Hein J.,1990,Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp.626-645 Methods in Enzymology vol.183,Academic Press,Inc.,San Diego,CA、Higgins,D.G.and Sharp,P.M.,1989,CABIOS 5:151-153、Myers,E.W.and Muller W.,1988,CABIOS 4:11-17、Robinson,E.D.,1971,Comb.Theor.11:105、Santou,N.,Nes,M.,1987,Mol.Biol.Evol.4:406-425、Sneath,P.H.A.and Sokal,R.R.,1973,Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy,Freeman Press,San Francisco,CA、Wilbur,W.J.and Lipman,D.J.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726-730。
【0179】
「配列同一性の割合」は、少なくとも20個の位置の比較ウィンドウにわたって、二つの最適に整列された配列を比較することによって決定され、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列の部分は、二つの配列の最適な整列のために、参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、20パーセント以下、通常5~15パーセント、又は10~12パーセントの付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。割合は、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列中で生じる位置の数を決定して、一致した位置の数を得ること、一致した位置の数を、参照配列中の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割ること、及びその結果に100を乗じて、配列同一性の割合を得ることによって計算される。
【0180】
バリアントはまた、又は代替的に、天然遺伝子、又はその一部分若しくは相補体に対して実質的に相同であってもよい。そのようなポリヌクレオチドバリアントは、天然抗体(又は相補的配列)をコードする天然に存在するDNA配列に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる。
【0181】
好適な「中程度にストリンジェントな条件」は、5×SSC、0.5%のSDS、1.0mMのEDTA(pH8.0)の溶液中での前洗浄、50℃~65℃、5×SSCでの一晩のハイブリダイズ、続く0.1%のSDSを含有する2×、0.5×、及び0.2×SSCの各々での65℃、20分間の2回の洗浄を含む。
【0182】
本明細書で使用される場合、「高度にストリンジェントな条件」又は「高ストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温、例えば、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを50℃で採用し、(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミドなどの変性剤、例えば、50%(v/v)ホルムアミドを、0.1%のウシ血清アルブミン/0.1%のFicoll/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)と、750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムと42℃で採用し、又は(3)50%のホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%のSDS、及び10%のデキストラン硫酸塩を42℃で採用し、洗浄は、42℃の0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)及び55℃の50%のホルムアミド中であり、続く高ストリンジェンシー洗浄は、55℃でEDTAを含有する0.1×SSCからなる、条件である。当業者は、プローブ長さなどの要因に適応するために必要に応じて、温度、イオン強度などを調整する方法を認識するであろう。
【0183】
遺伝子コードの縮退の結果として、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列があることが、当業者によって理解されるであろう。これらのポリヌクレオチドのうちのいくつかは、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列に対する最小限の相同性を有する。それにもかかわらず、コドン使用の差異により異なるポリヌクレオチドが、本開示によって具体的に企図される。更に、本明細書に提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本開示の範囲内である。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加、及び/又は置換などの、一つ以上の変異の結果として改変される内因性遺伝子である。結果として生じるmRNA及びタンパク質は、変化した構造又は機能を有し得るが、そうである必要はない。対立遺伝子は、標準的な技術(ハイブリダイゼーション、増幅、及び/又はデータベース配列比較など)を使用して特定され得る。
【0184】
本開示のポリヌクレオチドは、化学合成、組換え方法、又はPCRを使用して得られ得る。化学的ポリヌクレオチド合成の方法は、当該技術分野で周知であり、本明細書に詳細に記載される必要はない。当業者は、本明細書に提供される配列及び市販のDNA合成装置を使用して、所望のDNA配列を産生することができる。
【0185】
組換え方法を使用してポリヌクレオチドを調製するために、本明細書で更に考察されるように、所望の配列を含むポリヌクレオチドは、好適なベクターに挿入され得、ベクターは、複製及び増幅のために好適な宿主細胞に導入され得る。ポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の任意の手段によって宿主細胞に挿入されてもよい。細胞は、直接的な取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F-接合、又はエレクトロポレーションによって外因性ポリヌクレオチドを導入することによって、形質転換される。一旦導入されると、外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター(プラスミドなど)として細胞内に維持され得るか、又は宿主細胞ゲノムに統合され得る。そのように増幅されたポリヌクレオチドは、当該技術分野で周知の方法によって宿主細胞から単離され得る。例えば、Sambrook et al.,1989を参照されたい。
【0186】
あるいは、PCRは、DNA配列の再生を可能にする。PCR技術は、当該技術分野で周知であり、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号、及び同第4,683,202号、並びにPCR:The Polymerase Chain Reaction,Mullis et al.eds.,Birkauswer Press,Boston,1994に記載されている。
【0187】
RNAは、適切なベクター中で単離されたDNAを使用し、それを好適な宿主細胞に挿入することによって得られ得る。細胞が複製し、DNAがRNAに転写される場合、RNAは、例えば、Sambrook et al.,1989(上記参照)に記載されるように、当業者に周知の方法を使用して単離され得る。
【0188】
好適なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築されてもよいか、又は当該技術分野で利用可能な多数のクローニングベクターから選択されてもよい。選択されるクローニングベクターは、使用されることが意図される宿主細胞に応じて異なり得るが、有用なクローニングベクターは、概して、自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼに対する単一の標的を有してもよく、かつ/又はベクターを含有するクローンの選択に使用され得るマーカーの遺伝子を担持してもよい。好適な例としては、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、並びにpSA3及びpAT28などのシャトルベクターが挙げられる。これら及び多くの他のクローニングベクターは、BioRad、Strategene、及びInvitrogenなどの商業ベンダーから入手可能である。
【0189】
発現ベクターは概して、本開示によるポリヌクレオチドを含有する複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームとして、又は染色体DNAの不可欠な部分としてのいずれかで、宿主細胞内で複製可能でなければならないことが暗示される。好適な発現ベクターとしては、国際公開第87/04462号に開示されるプラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含むウイルスベクター、コスミド、及び発現ベクター、ならびにClonetechから入手可能なレンチウイルスpLVXベクターが挙げられるが、これらに限定されない。ベクター構成成分としては概して、以下のうちの一つ以上が挙げられ得るが、これらに限定されない:シグナル配列、複製起源、一つ以上のマーカー遺伝子、好適な転写制御要素(プロモーター、エンハンサー、及びターミネーターなど)。発現(すなわち、翻訳)について、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、及び終止コドンなど、一つ以上の翻訳制御要素も通常必要とされる。
【0190】
目的のポリヌクレオチドを含有するベクターは、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、又は他の物質を採用したトランスフェクション、マイクロプロジェクタイル衝撃、リポフェクション、及び感染(例えば、ベクターがワクシニアウイルスなどの感染性病原体である場合)を含む多数の適切な手段のいずれかによって、宿主細胞に導入され得る。導入ベクター又はポリヌクレオチドの選択は、宿主細胞の特徴に依存することが多い。
【0191】
本明細書に開示されるCD70特異的CARをコードするポリヌクレオチドは、発現カセット又は発現ベクター(例えば、細菌宿主細胞への導入のためのプラスミド、又は昆虫宿主細胞のトランスフェクションのためのバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、又は哺乳動物宿主細胞のトランスフェクションのためのレンチウイルスなどのプラスミド若しくはウイルスベクター)中に存在することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド又はベクターは、例えば、限定されないが、2Aペプチドをコードする配列などの、リボソームスキップ配列をコードする核酸配列を含むことができる。ピコルナウイルスのアフトウイルス亜群で特定された2Aペプチドは、コドンによってコードされる二つのアミノ酸間のペプチド結合の形成なしに、あるコドンから次のコドンへのリボソーム「スキップ」を引き起こす((Donnelly and Elliott 2001、Atkins,Wills et al.2007、Doronina,Wu et al.2008)を参照されたい)。「コドン」とは、リボソームによって一つのアミノ酸残基に翻訳されるmRNA上(又はDNA分子のセンス鎖上)の三つのヌクレオチドを意味する。したがって、ポリペプチドが、インフレームである2Aオリゴペプチド配列によって分離される場合、mRNA内の単一の隣接するオープンリーディングフレームから、二つのポリペプチドが合成され得る。そのようなリボソームスキップ機序は、当該技術分野で周知であり、単一のメッセンジャーRNAによってコードされるいくつかのタンパク質の発現のためにいくつかのベクターによって使用されることが知られている。
【0192】
宿主細胞の分泌経路に膜貫通ポリペプチドを誘導するために、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド配列又はベクター配列において、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列、又はプレ配列としても知られる)が提供される。分泌シグナル配列は、膜貫通核酸配列に作動可能に連結されており、すなわち、二つの配列が正しいリーディングフレームで結合され、宿主細胞の分泌経路に新しく合成されたポリペプチドを誘導するように位置付けられている。分泌シグナル配列は一般的に、目的のポリペプチドをコードする核酸配列に対して5’に位置付けられているが、ある特定の分泌シグナル配列は、目的の核酸配列の他の場所に位置付けられてもよい(例えば、Welch et al.,米国特許第5,037,743号、Holland et al.,米国特許第5,143,830号を参照されたい)。一部の実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号266または277に示されるアミノ酸配列を含む。当業者であれば、遺伝的コードの縮退を考慮して、かなりの配列変動がこれらのポリヌクレオチド分子の間で可能であることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、本開示の核酸配列は、哺乳動物細胞中の発現のために、または一部の実施形態では、ヒト細胞中の発現のためにコドン最適化されている。コドン最適化は、所与の種の高度に発現される遺伝子において一般的に稀であるコドンを、そのような種の高度に発現される遺伝子において一般的に頻繁にあるコドンによって、目的の配列において交換することを指し、そのようなコドンは、交換されているコドンとしてのアミノ酸をコードする。
【0193】
CD70結合タンパク質を含むか、または機能的に発現する免疫細胞およびその使用方法
CD70結合タンパク質、例えば、本明細書に記載されるCD70 CARを含むか、または機能的に発現する操作された免疫細胞、およびその使用方法が、本明細書に提供される。
【0194】
一態様では、本開示は、患者に、CD70結合タンパク質を含むか、または機能的に発現する操作された免疫細胞を投与することを含む、それを必要とする患者におけるリンパ枯渇の方法を提供し、操作された免疫細胞は、患者におけるCD70陽性細胞の増殖および/または活性を阻害する。一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、末梢血単核球(PBMC)、T細胞、NK細胞、単球もしくはマクロファージ、またはその混合物からもたらされるか、または開発されるか、または調製されるか、あるいはiPSCからもたらされるか、または開発されるか、または調製される。一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、患者にとって自己または同種である。一部の実施形態では、患者は、宿主対移植片拒絶反応もしくは宿主対移植片反応を有するか、または有することが予測される。いくつかの実施形態では、患者は、限定されないが、骨髄移植、幹細胞移植、または組織移植を含む移植を必要とし、移植は、操作された免疫細胞を投与されない対照と比較して、患者においてより長い持続性または宿主拒絶反応に対するより多くの抵抗性を示す。一部の実施形態では、患者は、養子細胞療法を受けており、任意選択的に、養子細胞療法は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法である。一部の実施形態では、患者は、同種CAR T療法を受けている。
【0195】
一部の実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞を投与すること、または本明細書に開示されるこのような操作された免疫細胞を含む細胞の集団を投与することは、同等であるが操作されていない細胞を受けている対照、又はそのような操作された細胞を含まない同等な集団と比較して、患者における、例えば、移植または養子細胞療法の宿主拒絶反応を低減する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD70結合タンパク質を含むか、または機能的に発現する操作された免疫細胞は、一つまたは複数のリンパ枯渇剤と併せて(例えば、前、同時に、または後に)患者に投与され、任意選択的に、リンパ枯渇剤の一部は、本明細書に記載される操作された免疫細胞を投与されていない患者よりも低いレベルで取り除かれるか、または投与され得る。一部の実施形態では、一つまたは複数のリンパ枯渇剤は、化学療法剤または抗体である。いくつかの実施形態では、一つまたは複数のリンパ枯渇剤は、フルダラビン、シクロホスファミドまたは抗CD52抗体、例えば、アレムツズマブである。
【0196】
特定の実施形態では、操作された免疫細胞は、目的の標的に特異的な追加の抗原結合ドメインを含むか、または機能的に発現し、任意選択的に、抗原結合ドメインは、目的の標的に結合する抗体を含む。一部の実施形態では、一つのタンパク質は、追加の抗原結合ドメインおよびCD70結合タンパク質を含み、追加の抗原結合ドメインは、目的の標的に結合する抗体を含み、任意選択的に、追加の抗原結合ドメインは、scFvを含む。一部の実施形態では、追加の抗原結合タンパク質は、CD70結合タンパク質とは別個のタンパク質として発現される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD70結合タンパク質を含むか、または機能的に発現する操作された免疫細胞は、一つまたは複数のリンパ枯渇剤と併せて(例えば、前、同時に、または後に)患者に投与され、有利には、リンパ枯渇剤の一部は、本明細書に記載される操作された免疫細胞を投与されていない対照よりも低いレベルで取り除かれるか、または投与され得る。
【0197】
CD70特異的抗体およびその作製方法
本明細書において、CD70抗体が提供される。
【0198】
いくつかの実施形態では、本開示のCD70抗体は、表1に列挙される部分的軽鎖配列のいずれか一つ、および/または表1に列挙される部分的重鎖配列のいずれか一つを含む。表1では、下線付き配列は、KabatによるCDR配列であり、Chothiaによるものは太字である。
【0199】
表2A~2Bは、本明細書に提供されるCD70抗体のCDR配列の例を提供する。
【0200】
一部の実施形態では、本開示は、抗体(例えば、表面抗原分類70(CD70)に特異的に結合する一本鎖可変断片(scFv)などの、抗体断片を含む)を提供し、抗体は、(a)(i)配列番号49、50、51、55、56、57、61、62、63、67、68、69、73、74、75、79、80、81、85、86、87、91、92、93、97、98、99、103、104、105、109、110、111、115、116、117、121、122、123、127、128、129、133、134、135、139、140、141、145、146、147、151、152、153、157、158、159、163、164、165、169、170、171、175、176、177、181、182、183、187、188、189、382、383、384、388、389、390、394、395、396、400、401、402、406、407、408、412、413、414、418、419、420、424、425、426、430、431、432、607、608、609、436、437、438、442、443、444、448、449、450、454、455、456、460、461、462、466、467、468、472、473、474、478、479、480、484、485、486、490、491、492、496、497、498、502、503、504、508、509、もしくは510に示される配列を含むVH相補性決定領域一(CDR1);(ii)配列番号52、53、58、59、64、65、70、71、76、77、82、83、88、89、94、95、100、101、106、107、112、113、118、119、124、125、130、131、136、137、142、143、148、149、154、155、160、161、166、167、172、173、178、179、184、185、190、191、385、386、391、392、397、398、403、404、409、410、415、416、421、422、427、428、433、434、610、661、439、440、445、446、451、452、457、458、463、464、469、470、475、476、481、482、487、488、493、494、499、500、505、506、511、もしくは512に示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、387、393、399、405、411、417、423、429、435、612、441、447、453、459、465、471、477、483、489、495、501、507、もしくは513に示される配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または(i)配列番号193、196、199、202、205、208、211、214、217、220、223、226、229、232、235、238、241、244、247、250、253、256、259、262、514、517、520、523、526、529、532、535、538、613、541、544、547、550、553、556、559、562、565、568、571、574、もしくは577に示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号194、197、200、203、206、209、212、215、218、221、224、227、230、233、236、239、242、245、248、251、254、257、260、263、515、518、521、524、527、530、533、536、539、614、542、545、548、551、554、557、560、563、566、569、572、575、もしくは578に示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号195、198、201、204、207、210、213、216、219、222、225、228、231、234、237、240、243、246、249、252、255、258、261、264、516、519、522、525、528、531、534、537、540、615、543、546、549、552、555、558、561、564、567、570、573、576、もしくは579に示される配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0201】
一部の実施形態では、本開示は、表面抗原分類70(CD70)に特異的に結合する、抗体(例えば、scFv)を提供し、抗体は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、339、341、343、345、347、349、351、353、355、606、357、359、361、363、365、367、369、371、373、375、377、379、もしくは381に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;および/または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、338、340、342、344、346、348、350、352、354、605、356、358、360、362、364、366、368、370、372、374、376、378、もしくは380に示されるVL配列配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0202】
一部の実施形態では、本開示は、CD70に特異的に結合し、前述の抗体のいずれかと競合する単離された抗体を提供する。
【0203】
一部の実施形態では、本発明は、CD70に結合し、31H1、63B2、40E3、42C3、45F11、64F9、72C2、2F10、4F11、10H10、17G6、65E11、P02B10、P07D03、P08A02、P08E02、P08F08、P08G02、P12B09、P12F02、P12G07、P13F04、P15D02、P16C05、10A1、10E2、11A1、11C1、11D1、11E1、12A2、12C4、12C5、12D3、12D6、12D7、12F5、12H4、8C8、8F7、8F8、9D8、9E10、9E5、9F4または9F8を含む、本明細書に記載される抗体と競合する抗体を提供する。
【0204】
一部の実施形態では、本発明はまた、CDR接触領域に基づき、抗体のCDRをCD70抗体にもたらす。CDR接触領域は、抗原に対する特異性を抗体に与える抗体の領域である。一般に、CDR接触領域は、抗体が特定の抗原に結合するための適切なループ構造を維持するために拘束されるCDR及びバーニアゾーンにおける残基位置を含む。例えば、Makabe et al.,J.Biol.Chem.,283:1156-1166,2007を参照されたい。CDR接触領域の決定は十分、当該技術分野の技術内である。
【0205】
CD70(例えば、ヒトCD70(例えば、(配列番号601))に対する本明細書に記載されるCD70抗体の結合親和性(K)は、約0.001~約5000nMであってもよい。一部の実施形態では、結合親和性は、およそ、5000nM、4500nM、4000nM、3500nM、3000nM、2500nM、2000nM、1789nM、1583nM、1540nM、1500nM、1490nM、1064nM、1000nM、933nM、894nM、750nM、705nM、678nM、532nM、500nM、494nM、400nM、349nM、340nM、353nM、300nM、250nM、244nM、231nM、225nM、207nM、200nM、186nM、172nM、136nM、113nM、104nM、101nM、100nM、90nM、83nM、79nM、74nM、54nM、50nM、45nM、42nM、40nM、35nM、32nM、30nM、25nM、24nM、22nM、20nM、19nM、18nM、17nM、16nM、15nM、12nM、10nM、9nM、8nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5.5nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.3nM、0.1nM、0.01nM、または0.001nMのいずれかである。一部の実施形態では、結合親和性は、およそ、5000nM、4000nM、3000nM、2000nM、1000nM、900nM、800nM、250nM、200nM、100nM、50nM、30nM、20nM、10nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5nM、4.5nM、4nM、3.5nM、3nM、2.5nM、2nM、1.5nM、1nM、または0.5nM未満のいずれかである。
【0206】
一部の実施形態では、本開示は、前述の単離された抗体のいずれかをコードする核酸を提供する。一部の実施形態では、本開示は、かかる核酸を含むベクターを提供する。一部の実施形態では、本開示は、かかる核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0207】
本開示はさらに、医薬として使用するための前述の抗体の抗体のいずれかを提供する。一部の実施形態では、医薬は、腎細胞がん、グリア芽腫、低グレードグリオーマなどのグリオーマ、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキン病(HD)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型リンパ腫、濾胞性リンパ腫、または非小細胞肺がんからなる群から選択されるCD70関連のがんの治療における使用のためのものである。
【0208】
一部の実施形態では、本開示は、前述の抗体のいずれかを用意すること、および当該抗体を当該対象に投与することを含む、それを必要とする対象を治療する方法を提供する。
【0209】
一部の実施形態では、本開示は、前述の抗体のいずれかを含む医薬組成物を提供する。
【0210】
一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象に、有効量の、前述の抗体または前述の抗体のいずれか一つを含む医薬組成物のいずれか一つを投与することを含む、対象におけるCD70を発現する悪性細胞と関連する状態を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、状態は、がんである。一部の実施形態では、がんは、腎細胞がん、グリア芽腫、低グレードグリオーマなどのグリオーマ、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキン病(HD)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型リンパ腫、濾胞性リンパ腫、または非小細胞肺がんからなる群から選択されるCD70関連のがんである。
【0211】
一部の実施形態では、本開示は、その必要のある対象に、対象にとって有効量の本開示の医薬組成物を投与することを含む、CD70を発現する悪性細胞を有する対象における腫瘍の増殖または進行を阻害する方法を提供する。
【0212】
一部の実施形態では、本開示は、その必要のある対象に、対象にとって有効量の本開示の医薬組成物を投与することを含む、対象におけるCD70を発現する悪性細胞の転移を阻害する方法を提供する。
【0213】
一部の実施形態では、本開示は、その必要のある対象に、対象にとって有効量の本開示の医薬組成物を投与することを含む、CD70を発現する悪性細胞を有する対象における腫瘍の退縮を誘導する方法を提供する。
【0214】
一部の実施形態では、抗体の産生をもたらす条件下で、本開示の宿主細胞を培養すること、および宿主細胞または培養物から抗体を単離することを含む。
【0215】
本発明に有用な抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、一本鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質(例えば、ドメイン抗体)、ヒト化抗体、ならびに抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、および共有結合で修飾された抗体を含む必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された配置を含み得る。抗体は、マウス、ラット、ヒト、または任意の他の起源(キメラ抗体もしくはヒト化抗体を含む)であってもよい。
【0216】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるCD70一特異性抗体は、モノクローナル抗体である。例えば、CD70一特異的抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。
【0217】
本開示はさらに、以下の例示的な実施形態を提供する。
1.表面抗原分類70(CD70)に特異的に結合する単離抗体であって、
(a)(i)配列番号49、50、51、55、56、57、61、62、63、67、68、69、73、74、75、79、80、81、85、86、87、91、92、93、97、98、99、103、104、105、109、110、111、115、116、117、121、122、123、127、128、129、133、134、135、139、140、141、145、146、147、151、152、153、157、158、159、163、164、165、169、170、171、175、176、177、181、182、183、187、188、189、382、383、384、388、389、390、394、395、396、400、401、402、406、407、408、412、413、414、418、419、420、424、425、426、430、431、432、607、608、609、436、437、438、442、443、444、448、449、450、454、455、456、460、461、462、466、467、468、472、473、474、478、479、480、484、485、486、490、491、492、496、497、498、502、503、504、508、509、もしくは510に示される配列を含むVH相補性決定領域一(CDR1);(ii)配列番号52、53、58、59、64、65、70、71、76、77、82、83、88、89、94、95、100、101、106、107、112、113、118、119、124、125、130、131、136、137、142、143、148、149、154、155、160、161、166、167、172、173、178、179、184、185、190、191、385、386、391、392、397、398、403、404、409、410、415、416、421、422、427、428、433、434、610、611、439、440、445、446、451、452、457、458、463、464、469、470、475、476、481、482、487、488、493、494、499、500、505、506、511、もしくは512に示される配列を含むVH CDR2;および(iii)配列番号54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、387、393、399、405、411、417、423、429、435、612、441、447、453、459、465、471、477、483、489、495、501、507、もしくは513に示される配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または
(b)(i)配列番号193、196、199、202、205、208、211、214、217、220、223、226、229、232、235、238、241、244、247、250、253、256、259、262、514、517、520、523、526、529、532、535、538、613、541、544、547、550、553、556、559、562、565、568、571、574、もしくは577に示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号194、197、200、203、206、209、212、215、218、221、224、227、230、233、236、239、242、245、248、251、254、257、260、263、515、518、521、524、527、530、533、536、539、614、542、545、548、551、554、557、560、563、566、569、572、575、もしくは578に示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号195、198、201、204、207、210、213、216、219、222、225、228、231、234、237、240、243、246、249、252、255、258、261、264、516、519、522、525、528、531、534、537、540、615、543、546、549、552、555、558、561、564、567、570、573、576、もしくは579に示される配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む、抗体。
2.表面抗原分類70(CD70)に特異的に結合する単離された抗体であって、
(a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、339、341、343、345、347、349、351、353、355、606、357、359、361、363、365、367、369、371、373、375、377、379、もしくは381に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含むVH領域;ならびに/または
(b)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、338、340、342、344、346、348、350、352、354、605、356、358、360、362、364、366、368、370、372、374、376、378、もしくは380に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含むVL領域を含む、抗体。
3.CD70に特異的に結合し、実施形態1の抗体と競合する、単離された抗体。
4.実施形態1~3のいずれか一つの抗体をコードする核酸。
5.実施形態4の核酸を含むベクター。
6.実施形態4の核酸を含む宿主細胞。
7.医薬として使用するための実施形態1~3のいずれか一つの抗体。
8.医薬が、腎細胞がん、グリア芽腫、低グレードグリオーマなどのグリオーマ、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキン病(HD)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型リンパ腫、濾胞性リンパ腫または非小細胞肺がんからなる群から選択されるCD70関連のがんの治療における使用のためである、実施形態7の抗体。
9.それを必要とする対象を治療する方法であって、
a.実施形態1~3のいずれか一つに記載の抗体を用意すること;および
b.当該抗体を当該対象に投与することを含む、方法。
10.実施形態1~3のいずれか一つの抗体を含む、医薬組成物。
11.対象におけるCD70を発現する悪性細胞と関連する状態を治療する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の、実施形態1~3のいずれか一つの抗体または実施形態10の医薬組成物を投与することを含む、方法。
12.状態ががんである、実施形態11の方法。
13.がんが、腎細胞癌、グリア芽腫、低グレードグリオーマなどのグリオーマ、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキン病(HD)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型リンパ腫、濾胞性リンパ腫、または非小細胞肺癌からなる群から選択されるCD70関連のがんである、実施形態12の方法。
14.CD70を発現する悪性細胞を有する対象における腫瘍の成長または進行を阻害する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の実施形態10の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法。
15.象におけるCD70を発現する悪性細胞の転移を阻害する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の実施形態10の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法。
16.CD70を発現する悪性細胞を有する対象における腫瘍の退縮を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の実施形態10の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法。
17.抗体を産生する方法であって、抗体の産生をもたらす条件下で、実施形態6の宿主細胞を培養すること、および宿主細胞または培養物から抗体を単離することを含む、方法。
【0218】
治療方法
操作された免疫細胞、例えば、本明細書に記載される操作されたT細胞、任意選択的に、本明細書に記載される方法によって得られる操作されたT細胞、このような操作された免疫細胞または操作されたT細胞からもたらされる本明細書に記載される細胞株、およびこのような細胞を含む本明細書に記載される組成物は、医薬として使用することができる。いくつかの実施形態では、そのような医薬品は、例えば、ウイルス性疾患、細菌性疾患、がん、炎症性疾患、免疫疾患、又は加齢関連疾患などの障害を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態では、がんは、胃がん、肉腫、リンパ腫(非ホジキンスリンパ腫を含む)、白血病、頭頸部がん、胸腺がん、上皮がん、唾液腺がん、肝臓がん、胃がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、膵がん、グリオーマ、白血病、多発性骨髄腫、腎細胞がん、膀胱がん、子宮頸がん、絨毛がん、結腸がん、口腔がん、皮膚がん、及びメラノーマからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、対象は、局所進行性若しくは転移性メラノーマ、扁平上皮細胞頭頸部がん(SCHNC)、卵巣がん、肉腫、又は再発性若しくは難治性の古典的ホジキンリンパ腫(cHL)を有する、以前に治療を受けた成人対象である。
【0219】
いくつかの実施形態では、本開示による操作された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞、又は操作された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞に由来する細胞株は、障害の治療を必要とする対象においてそれを行うための医薬品の製造で使用され得る。いくつかの実施形態では、障害は、例えば、がん、自己免疫性障害、宿主対移植片拒絶反応、又は感染症であり得る。
【0220】
また、対象を治療するための方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、本開示の操作された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞またはこのような細胞を含む組成物を、それを必要とする対象に投与又は提供することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、本開示の操作された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞、またはこのような細胞を含む組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0221】
いくつかの実施形態では、本開示の操作された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞は、堅牢なインビボでの細胞増殖を経ることができ、長期間、持続することができる。本開示の治療方法は、改善、治癒、又は予防することができる。本開示の方法は、自己免疫療法の一部、又は同種免疫療法的な処置の一部のいずれでもあり得る。本開示は、同種免疫療法に特に好適である。ドナーから提供された操作された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞は、標準プロトコルを使用して非-同種反応性細胞に形質転換され、必要に応じて再生され、それによって、例えば、一つの対象又は複数の対象に投与され得るCAR-T細胞を産生することができる。こうしたCAR-T細胞療法は、同種ALLO CAR T(商標)治療用製品として利用可能にすることができる。
【0222】
別の態様では、本開示は、腫瘍を有する対象における腫瘍の増殖又は進行を阻害する方法を提供し、方法は、有効量の操作された免疫細胞、例えば、本明細書に記載される操作されたT細胞を対象に投与することを含む。別の態様では、本開示は、対象におけるがん細胞の転移を阻害又は予防する方法を提供し、方法は、それを必要とする対象に、有効量の操作された免疫細胞、例えば、本明細書に記載される操作されたT細胞を投与することを含む。別の態様では、本開示は、腫瘍を有する対象における腫瘍退縮を誘導する方法を提供し、方法は、有効量の操作された免疫細胞、例えば、本明細書に記載される操作されたT細胞を対象に投与することを含む。
【0223】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される免疫細胞、例えば、T細胞は、対象に非経口的に投与され得る。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0224】
いくつかの実施形態では、方法は、有効量の第二の治療剤を投与することを更に含むことができる。いくつかの実施形態では、第二の治療剤は、例えば、クリゾチニブ、パルボシクリブ、抗CTLA4抗体、抗-4-1 BB抗体、PD-1抗体、又はPD-L1抗体である。
【0225】
また、がんの治療のための、又は腫瘍増殖若しくは進行の阻害を必要とする対象においてそれを行うための医薬品の製造における、本明細書に提供される免疫細胞、例えば、T細胞のうちいずれかの使用が、提供される。
【0226】
特定の実施形態では、本開示の操作された免疫細胞において、本開示に従ってノックダウンまたはノックアウトされる任意の遺伝子の機能発現レベルは、適当な対照細胞における対応する発現レベルと比較して、約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、もしくは100%だけ、または少なくともそれらだけ、減少される。発現レベルは、FACS又はMACなどの任意の既知の方法によって決定され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、本開示に従ってノックダウンまたはノックアウトされた任意の遺伝子を、適当な対照細胞、例えば、操作されていない免疫細胞(操作された免疫細胞と他の点では同じである、例えば、操作された免疫細胞と同じ成分を含む)での発現レベルの75%以下、50%以下、25%以下、10%以下のレベルで、又は0%のレベルで、機能的に発現する。いくつかの実施形態では、一つの遺伝子の両方の対立遺伝子がノックアウトされ、その結果、本明細書に開示される操作された免疫細胞における遺伝子の発現レベルが、対照細胞のそれの0%となる。いくつかの実施形態では、遺伝子の二つの対立遺伝子のうちの一方がノックアウトされ、その結果、本明細書に開示される操作された免疫細胞における遺伝子の発現レベルは、対応する操作されていない細胞のそれの50%又は約50%(例えば、代償機構によって、残りの対立遺伝子の発現が通常よりも大きくなった場合)である。本明細書に記載されるように、例えば、発現がノックアウト以外の何らかの手段によって減少する場合、中間的な発現レベルが観察されることがある。
【0227】
いくつかの実施形態では、本開示の操作された細胞における、本開示に従って操作される任意の遺伝子の発現レベルは、当業者にとって既知の標準技法(例えば、RT-qPCR、核酸配列決定、抗体染色法、フローサイトメトリー、又は何らかの技術の組み合わせ)を使用して、遺伝子産物及びそれらの特性について、細胞のアッセイによって測定することができる。これらの測定値は、対応する遺伝子の機能発現レベルを減少させるようには操作されていない、同等の細胞に対して行われた対応する測定値と比較することができる。操作された細胞、例えば、本発明の操作された免疫細胞を含む細胞集団において、測定される材料のプールされた試料(例えば、RNA又はタンパク質又は細胞)は、一部の細胞が、目的の遺伝子を発現せず、両方の対立遺伝子をノックアウトされ、例えば、一部の細胞が目的の遺伝子を操作されていないレベルの50%又は約50%で発現し、一つの対立遺伝子のみしかノックアウトされておらず、及び集団が操作されていない細胞を含む場合、一部の細胞が正常レベルの目的の遺伝子を発現する、という事実を反映する。
【0228】
いくつかの実施形態では、操作された細胞、例えば本明細書に開示される操作されたT細胞を投与すること、又はそのような操作された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞を含む細胞集団を投与することで、同等であるが操作されていない細胞、又はそのような操作された細胞を含まない同等な集団と比較して、投与された細胞又は細胞集団の宿主拒絶反応が低減される。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質、例えば、CARおよびCD70結合タンパク質もしくはCD70 CARを含む、本開示の操作された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞を投与すること、またはこのような操作された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞を含む細胞の集団を投与することで、同等であるが操作されていない細胞、又はそのような操作された細胞を含まない集団と比較して、投与された細胞又は細胞集団の宿主拒絶反応が低減される。例えば、そのような投与は、同一であるが、CD70 CARを発現するよう操作されていない細胞の宿主拒絶反応と比較して、宿主拒絶反応を1%~99%、例えば、5%~95%、10%~90%、50%~90%だけ、例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%だけ低減させる。いくつかの実施形態では、宿主拒絶反応は、90%超低減される。
【0229】
いくつかの実施形態では、一部の実施形態では、抗原結合タンパク質、例えば、CARおよびCD70結合タンパク質、例えば、CD70 CARを含む本開示の免疫細胞。例えば、T細胞を投与すること、またはこのような免疫細胞、例えば、T細胞を含む細胞の集団を投与することで、同一であるが、CD70 CARを発現するようには操作されていない細胞の持続性と比較して、持続性を増強若しくは改善し、及び/又は細胞の持続性を増大させる。いくつかの実施形態では、持続性は、例えば、1~7日だけ、1~12週間だけ(例えば、1~4週間、4~8週間、又は8~12週間)、又は1~12か月だけ、又はこれらの範囲内に収まる特定の時間の長さだけ増加する。いくつかの実施形態では、持続性の差は、集団又は組成物中の投与された細胞の半減期を比較することによって測定され、例えば、半減期は、例えば、1~7日だけ、1~12週間だけ(例えば、1~4週間、4~8週間、又は8~12週間)、又は1~12か月だけ、又はこれらの範囲内に収まる特定の時間の長さだけ増加する。いくつかの実施形態では、持続性の差は、投与後に投与された細胞を検出することができる時間の長さを比較することによって、測定される。いくつかの実施形態では、持続性の改善は、例えば、T細胞又はNK細胞などの免疫細胞の存在下で、例えば、混合後約72時間、5日、7日又は13日における、CD70 CARおよび非CD70 CAR細胞の生存を比較することによって、インビトロで測定される。いくつかの実施形態では、このようなインビトロアッセイでは、測定時に操作されていない細胞よりも、操作された細胞は約1.5~10倍多く生存する。CD70 CAR発現細胞の持続性または生存の改善の程度は、部分的に、共インキュベート(例えば、「攻撃してる」または宿主)免疫細胞におけるCD70の発現のレベルに依存する。
【0230】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される宿主拒絶反応の減少及び/又は投与された細胞の持続性の増加は、当業者に知られている様々な技法のいずれかによって決定される。一部の実施形態では、フローサイトメトリー、PCR、例えば、定量的PCR、および患者またはレシピエント免疫細胞とのエクスビボでの共培養のうちのいずれか一つまたは組み合わせが使用される。
【0231】
いくつかの実施形態では、治療は、抗体療法、化学療法、サイトカイン療法、樹状細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、レーザー光療法、及び放射線療法の群から選択される、がんに対する一つ以上の療法との組み合わせであり得る。
【0232】
いくつかの実施形態では、治療は、免疫抑制治療を受けている対象に投与され得る。実際に、本開示は、そのような免疫抑制剤に対する受容体をコードする遺伝子の不活性化に起因して、少なくとも一つの免疫抑制剤に対して抵抗性にされた細胞又は細胞集団に依存し得る(例えば、一部の実施形態では、治療するために投与される操作された免疫細胞は、アレムツズマブなどの抗CD52リンパ液枯渇抗体の作用を回避するためのCD52ノックアウトを含み得る)。この態様では、免疫抑制治療は、対象内の本開示によるT細胞の選択及び増殖を補助し得る。
【0233】
本開示による細胞又は細胞集団の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸液、注入、移植(implantation)、又は移植(transplantation)を含む任意の簡便な方法で行われ得る。本明細書に記載される組成物は、対象に、皮下、皮内、腫瘍内、節内、髄内、筋肉内、静脈内注射若しくはリンパ管内注射、又は腹腔内に投与され得る。一実施形態では、本開示の細胞組成物は、静脈内注射によって投与される。
【0234】
いくつかの実施形態では、本開示による細胞又は細胞集団の投与は、例えば、体重1kg当たり約10若しくは10個~約10個の本明細書に開示される操作された免疫細胞の投与を含むことができ、それらの範囲内にある細胞数の全ての整数値を含む。いくつかの実施形態では、細胞又は細胞集団の投与は、体重1kg当たり約10~約10個の本明細書に開示される操作された免疫細胞(この範囲内のすべての整数値の細胞数を含む)の投与、又は体重1kg当たり本明細書に開示される操作された免疫細胞0.1×10~5×10個、若しくは合計で本明細書に開示される操作された免疫細胞0.1×10~5×10個の投与を含み得る。細胞又は細胞集団は、一回以上の用量で投与され得る。いくつかの実施形態では、細胞の有効量は、単回投与として投与され得る。いくつかの実施形態では、細胞の有効量は、ある期間にわたる二回以上の用量として投与され得る。投与のタイミングは、担当医師の判断内にあり、対象の臨床状態に依存する。細胞又は細胞集団は、血液バンク又はドナーなどの任意の供給源から取得され得る。個々のニーズが変化する一方で、特定の疾患又は状態に対する所与の細胞型の有効量の最適範囲の決定は、当該技術分野の技術範囲内にある。有効量とは、治療利益又は予防利益を提供する量を意味する。投与される投与量は、レシピエントの年齢、健康状態、及び体重、もしあれば併用治療の種類、治療頻度、並びに所望の効果の性質に依存する。いくつかの実施形態では、有効量の細胞又はそれらの細胞を含む組成物は、非経口的に投与される。いくつかの実施形態では、投与は、静脈内投与であり得る。いくつかの実施形態では、投与は、腫瘍内に注射により直接行われ得る。
【0235】
本開示のいくつかの実施形態では、細胞は、モノクローナル抗体療法、CCR2アンタゴニスト(例えば、INC-8761)、抗ウイルス療法、シドホビル及びインターロイキン-2、MS対象に対するシタラビン(ARA-Cとしても知られる)若しくはナタリジイマブ(nataliziimab)治療、又は乾癬対象に対するエファリズチマブ(efaliztimab)治療、又はPML対象に対する他の治療などの薬剤を用いた治療が挙げられるが、これらに限定されない、任意の数の関連する治療様式と併せて(例えば、その前、それと同時、又はその後に)、対象に投与される。いくつかの実施形態では、BCMA特異的なCAR-T細胞は、抗PD-1抗体(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ)、抗PD-L1抗体(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、若しくはデュルバルマブ)、抗OX40抗体、抗4-1 BB抗体(例えば、ウトミルマブ(Utolimumab))、抗MCSF抗体、抗GITR抗体、及び/又は抗TIGIT抗体のうちの一つ以上と併せて対象に投与される。更なる実施形態では、本開示の免疫細胞、例えば、T細胞は、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、及びFK506、抗体、又は他の免疫除去剤、例えば、CAMPATH(アレムツズマブ)、抗CD3抗体、又は他の抗体療法、シトキサン、フルダラビン、シクロホスファミド、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、及び/又は照射と組み合わせて使用されてもよい。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリン(シクロスポリン及びFK506)を阻害するか、又は成長因子誘導シグナル伝達(ラパマイシン)に重要であるp70S6キナーゼを阻害する(Henderson,Naya et al.Immunology.1991 Jul;73(3):316-321、Liu,Albers et al.Biochemistry 1992 Apr 28;31(16):3896-901、Bierer,Hollander et al.Curr Opin Immunol.1993 Oct;5(5):763-73)。
【0236】
更なる実施形態では、本開示の細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビンなどの化学療法剤、外照射療法(XRT)、シクロホスファミド、又はCAMPATH(アレムツズマブ)などの抗体のいずれかを使用したT細胞切除療法と併せて(例えば、その前、それと同時、又はその後に)、対象に投与される。いくつかの実施形態では、本開示の細胞組成物は、CD20、例えば、リツキサンと反応する薬剤などのB細胞切除療法の後に投与される。例えば、一実施形態では、対象は、高用量化学療法、続いて、末梢血幹細胞移植を用いた標準的な治療を受けることができる。ある特定の実施形態では、移植後、対象は、本開示の増殖した免疫細胞の注入を受ける。いくつかの実施形態では、増殖した細胞は、手術の前又は後に投与される。
【0237】
キット
本開示はまた、本方法で使用するためのキットを提供する。本開示のキットは、本開示の組成物、又は本開示の免疫細胞、例えば、T細胞、又は本開示の免疫細胞、例えば、操作されたT細胞を含む細胞集団を含む、一つ以上の容器を含む。様々な実施形態では、免疫細胞、例えば、T細胞は、第一および第二の抗原結合タンパク質、例えば、本明細書に記載される第一のCARおよび第二のCD70 CARをコードする一つまたは複数のポリヌクレオチド(複数可)を含み、さらに、任意選択的に、低減されたレベルのTRACおよび/またはCD52を発現するよう操作される。キットは、本明細書に記載される本開示の方法のいずれかによる使用のための指示を更に含む。概して、これらの指示は、上記の治療的処置のための本明細書に記載される、組成物、免疫細胞、例えば、T細胞、又は細胞集団の投与の説明を含む。
【0238】
キット構成要素の使用に関する指示は、概して、意図された治療のための投与量、投与スケジュール、及び投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数回用量パッケージ)、又はサブユニット用量であり得る。本開示のキットで供給される指示は、典型的には、ラベル又は添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)上の書面での指示であるが、機械可読命令(例えば、磁気又は光学記憶ディスク上に保持された命令)も許容される。
【0239】
本開示のキットは、好適なパッケージング内にある。好適なパッケージングとしては、バイアル、ボトル、瓶、柔軟なパッケージング(例えば、密封Mylar又はプラスチックバッグ)などが挙げられるが、これらに限定されない。吸入器、鼻腔投与デバイス(例えば、アトマイザー)、又はミニポンプなどの注入デバイスなどの特定のデバイスと組み合わせて使用するためのパッケージも企図される。キットは、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する、静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)。容器もまた、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する、静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも一つの活性剤は、本開示による免疫細胞、例えば、T細胞である。容器は、第二の薬学的活性剤を更に含み得る。
【0240】
キットは、緩衝材及び解釈情報などの追加の構成要素を任意選択的に提供することができる。通常、キットは、容器、及び容器上の又はその容器に関連付けられたラベル又は添付文書を含む。
【0241】
ソーティング及び枯渇の方法
いくつかの実施形態では、免疫細胞の集団のインビトロソーティングのための方法が提供され、免疫細胞の集団のサブセットは、本明細書に記載されるように、一つまたは複数の抗原結合タンパク質を発現するように操作された免疫細胞を含む。様々な実施形態では、方法は、免疫細胞の集団を、操作された細胞に特有のエピトープ(例えば、US2018/0002435に記載されているものなどのミモトープ)(例えば、抗原結合タンパク質のエピトープ、又は抗原結合タンパク質に組み込まれたミモトープ)に特異的なモノクローナル抗体と接触させることと、モノクローナル抗体に結合する免疫細胞を選択して、抗原結合タンパク質を発現する操作された免疫細胞に富んだ細胞集団を得ることと、を含む。
【0242】
いくつかの実施形態では、エピトープに特異的なモノクローナル抗体は、フルオロフォアに任意でコンジュゲートされる。この実施形態では、モノクローナル抗体に結合する細胞を選択する工程は、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)によって行うことができる。
【0243】
いくつかの実施形態では、前述のエピトープに特異的な前述のモノクローナル抗体は、磁性粒子に任意でコンジュゲートされる。この実施形態では、モノクローナル抗体に結合する細胞を選択する工程は、磁気活性化細胞ソーティング(MACS)によって行うことができる。
【0244】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質(CARなど)を発現する免疫細胞をソーティングするための方法で使用されるmAbは、アレムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、ムロモナブ-CD3、トシツモマブ,アブシキシマブ、バシリキシマブ、ブレンツキシマブ ベドチン、セツキシマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、セルトリズマブペゴル、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ゲムツズマブ、ナタリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、ラニビズマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、ベドリズマブ、アダリムマブ、ベリムマブ、カナキヌマブ、デノスマブ、ゴリムマブ、イピリムマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、QBEND-10及び/又はウステキヌマブから選択される。いくつかの実施形態では、前述のmAbはリツキシマブである。別の実施形態では、前述のmAbはQBEND-10である。
【0245】
いくつかの実施形態では、上述のCAR発現免疫細胞をインビトロでソーティングするための方法を使用する場合に取得される、CAR発現免疫細胞の集団は、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%のCAR発現免疫細胞を含む。いくつかの実施形態では、CAR発現免疫細胞をインビトロでソーティングするための方法を使用する場合に取得される、CAR発現免疫細胞の集団は、少なくとも85%のCAR発現免疫細胞を含む。
【0246】
いくつかの実施形態では、上述のCAR発現免疫細胞のインビトロ選別方法を使用した場合に得られたCAR発現免疫細胞の集団は、初期(非ソーティング)細胞集団と比較して、インビトロでの細胞傷害活性の増加を示す。いくつかの実施形態では、前述の細胞傷害活性は、インビトロで10%、20%、30%、または50%増加する。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。
【0247】
レシピエントに投与されるCAR発現免疫細胞は、供給源集団からインビトロで濃縮され得る。供給源集団の拡大の方法には、密度遠心分離、免疫磁気ビーズ精製、親和性クロマトグラフィー、及び蛍光活性化細胞ソーティングの組み合わせを使用して、CD34抗原などの抗原を発現する細胞を選択することが含まれ得る。
【0248】
フローサイトメトリーを使用して、細胞集団内の特定の細胞型を定量化することができる。概して、フローサイトメトリーは、主に光学的手段によって細胞の構成要素又は構造特徴を定量化するための方法である。構造特徴を定量化することによって異なる細胞型を区別することができるため、フローサイトメトリー及び細胞ソーティングを使用して、混合物中の異なる表現型の細胞をカウント及びソートすることができる。
【0249】
フローサイトメトリー解析は、二つの主要な工程、1)一つ以上の標識マーカーで選択された細胞型を標識すること、及び2)集団内の細胞の総数に対して標識細胞の数を決定すること、を伴う。いくつかの実施形態では、細胞型を標識する方法は、特定の細胞型によって発現されるマーカーに、標識された抗体を結合することを含む。抗体は、蛍光化合物で直接標識されるか、又は例えば、第一の抗体を認識する蛍光標識された第二の抗体を使用して間接的に標識され得る。
【0250】
いくつかの実施形態では、CARを発現するT細胞をソーティングするために使用される方法は、磁気活性化細胞ソーティング(MACS)である。磁気活性化細胞ソーティング(MACS)は、超常磁性ナノ粒子及びカラムを使用することによって、その表面抗原(CD分子)に応じて様々な細胞集団を分離するための方法である。MACSを使用して、純細胞集団を取得することができる。単一細胞懸濁液中の細胞は、マイクロビーズで磁気標識され得る。試料は、強磁性球体からなるカラムに適用され、細胞にやさしいコーティングで覆われ、細胞の迅速かつ穏やかな分離を可能にする。標識されていない細胞は通過し、一方で磁気標識された細胞はカラム内に保持される。フロースルーは、非標識細胞画分として収集され得る。洗浄工程の後、カラムは分離器から除去され、磁気標識された細胞はカラムから溶出される。
【0251】
T細胞などの特定の細胞集団の精製のための詳細なプロトコルは、Basu S et al.(2010)(Basu S,Campbell HM,Dittel BN,Ray A.Purification of specific cell population by fluorescence activated cell sorting(FACS).J Vis Exp.(41):1546)に見出すことができる。
【実施例
【0252】
実施例1.CD70ダガーは、同種の拒絶反応を予防し、CAR T細胞の抗腫瘍有効性を改善し得る。
図1は、CD70ダガー(またはCD70ダガータンパク質もしくはCD70結合タンパク質)が、同種CAR T細胞を同種拒絶反応からどのように保護するかを示す。CD70ダガーを備えた細胞は、活性化したアロ反応性細胞の細胞表面上のCD70を認識することができる。したがって、CD70ダガーCAR T細胞に近づく任意の活性化したアロ反応性細胞を認識し、殺傷する(図1)。アロ反応性細胞を除去することは、次いで、CD70ダガーCAR T細胞がより長く持続し、腫瘍細胞殺傷を行うことを可能にする。
【0253】
実施例2.CD70 CAR抗拒絶作用を示すことは、初回刺激したアロ反応性T細胞に対して機能する。
アロ反応性T細胞は、同種拒絶反応の主要なメディエーターであると考えられる。したがって、初回刺激したアロ反応性T細胞混合リンパ球反応(MLR)を、標的細胞としてCD70 CAR T細胞を使用して行い、CD70 CARを可能性のある抗拒絶ダガー(CD70ダガー)として評価した。この実験で試験したCD70 CARは、scFvの形態の抗CD70クローン4F11に由来するCD70結合ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、および4-1BB共刺激ドメインを含有する。簡潔に述べると、八人のレシピエントドナー由来のPBMCを、照射した移植片ドナーT細胞と7日間共培養して、アロ反応性レシピエントT細胞(「RTC」)の初回刺激および拡大を可能にした。次いで、初回刺激したアロ反応性RTC(エフェクター細胞)を単離し、移植片ドナーT細胞受容体アルファ定常(TRAC)ノックアウト(KO)CD70 CAR T細胞、または移植片ドナーT細胞受容体アルファ定常(TRAC)ノックアウト(KO)非形質導入T細胞のいずれかと共に、1:1の比で48時間共培養した(図2A)。移植片ドナー細胞の殺傷を、フローサイトメトリーによって評価した。非形質導入対照T細胞(NTD)を、アロ反応性RTCによって効率的に殺傷し、一方でCD70 CAR T細胞の大部分は、アロ反応性RTCの存在下で生存した(図2B)。CD70 CAR T細胞の生存は、CD70+ RTCの低減と相関し(図2Cおよび2D)、CD70ダガーとして機能する、CD70 CARの発現を示すことにより、アロ反応性細胞の殺傷をもたらし、移植片細胞の持続性を改善することができる。
【0254】
実施例3.同種PBMCに対するCD70ダガー活性の試験
実施例2からの所見が、より生理学的に関連するシナリオに及ぶかどうかを決定するために、CD70 CAR T細胞を標的細胞として使用してPBMC MLRを行った。ここで、CD70ダガー活性を、レシピエントドナーの代わりに複数の移植片ドナーを使用して評価した。レシピエントドナー由来のPBMCを、三人の異なるドナーから生成された移植片ドナーTRAC KO CD70 CAR T細胞と1:1の比で6日間共培養した。レシピエントT細胞の殺傷を、フローサイトメトリーによって評価した。結果は、CD70ダガーとして機能しているCD70 CAR T細胞が、RTCカウントおよび頻度を低減したという点で、実施例2の所見と一致した(図3Aおよび3B)。CD70+RTCの除去に加えて、CD70 CAR T細胞も、CD70+同種B細胞およびNK細胞を除去した(図4Aおよび4B)。要約すると、これらのデータは、CD70ダガーを使用して、宿主免疫細胞による同種CAR T細胞の同種拒絶反応を低減することができることを示す。
【0255】
実施例4.LVV形質導入によって生成した異なるCD70ダガー(CD70結合タンパク質)を発現する操作されたT細胞の調査。
本発明者らは、第一世代のCAR(すなわち、共刺激ドメインを含まない)または第二世代のCAR(すなわち、共刺激ドメインを有する)である、一連のクローン4F11ベースのCD70ダガー構築物を生成した。さらに、本発明者らは、ミモトープベースのセーフティースイッチを有する、または有さない構築物を試験した。結果を図5A~Cに示す。試験したすべてのCD70ダガーは、別段の示唆がない限り、野生型CD3zシグナル伝達ドメイン(「z」)およびCD8膜貫通ドメインを含有する。第一世代のCARであるCD70ダガーのうち:QR3z:QR3セーフティースイッチ(リツキシマブミモトープR(配列番号592)、続いて配列番号595を含む二つの部分のセーフティースイッチ)をさらに含有する;QQz、QQセーフティースイッチ(配列番号596)をさらに含有する;Qz:Qセーフティースイッチ(配列番号594)をさらに含有する;およびQR328TMz:QR3セーフティースイッチに加えて、CD8膜貫通ドメインの代わりに、CD28膜貫通ドメインをさらに含有する。第二世代CARであるすべての構築物は、CD8膜貫通ドメインおよびCD3zシグナル伝達ドメインに加えて、共刺激4-1BBシグナル伝達ドメインを含有し、その中で、「CD70 CAR」は、QR3セーフティースイッチをさらに含有し、名称QQbbz、Qbbz、およびbbzは、それぞれ、QQセーフティースイッチ、Qセーフティースイッチを含有し、セーフティースイッチを含有しない。すべての細胞をさらに改変して、TRAC座位をノックアウトした。
【0256】
初代T細胞を単離し、異なるCD70ダガー構築物を発現するレンチウイルスベクター(LVV)で形質導入した。試験した構築物で形質導入した細胞を、すべて首尾よく生成し、Qz、zおよびQbbzと命名した構築物は、最も高いレベルの発現を示し(図5A)、ならびに構築物Qzおよびzは、最低レベルの活性化マーカー発現を有していた(図5C)。概して、CD70ダガー発現細胞は、NTD細胞と比較して、同様のCD4:CD8 T細胞比(図5B)および分化状態(データは示さず)を示した。
【0257】
CD70ダガー構築物の活性を評価するために、本発明者らは、選択したCD70ダガー発現細胞を用いて同種反応性T細胞MLRを行った。同種反応性T細胞MLRおよびMLTCについては、初回刺激した同種反応性T細胞を、移植片T細胞、または移植片T細胞と腫瘍標的の組み合わせと、丸底96ウェルプレート中、10%FBSおよび20U/mLの組換えヒトIL-2を添加した200μLのRPMI培地中で、示した比で共培養した。MLR共培養が4日を超える場合、培地の半分を4日目に交換した。次いで、培地を2~3日ごとに交換した。細胞を、示した時点でフローサイトメトリーによって分析した。PBMC MLRについては、宿主PBMCを、丸底96ウェルプレート中、10%FBSおよび20U/mLの組換えヒトIL-2を添加した200μLのRPMI培地中で、10:1の比で移植片T細胞と共培養した。同種反応性T細胞を初回刺激するために、未編集の移植片ドナーT細胞を、30Gyで照射し、10%FBSならびに20U/mLの組換えヒトIL-2、IL-7およびIL-15を添加したRPMI中、1:1の比で宿主PBMCと共培養した。共培養の4日目に、培地の半分を、10%FBSを添加した新鮮なRPMIで置き換えた。7日目に、製造業者のプロトコルが指示した通り、EasySep(商標)ヒトT細胞単離キット(STEMCELL Technologies)を使用してT細胞を単離した。
【0258】
図6Aに示すように、「CD70 CARダガー」を発現するT細胞は、同種反応性T細胞介在性拒絶反応に抵抗し、一方でNTD T細胞は、完全に拒絶した。CD70dg-Qbbz、CD70dg-Qz、およびCD70dg-z発現T細胞は、NTD T細胞と比較して、様々な程度まで生存率の改善を示した(図6A)。次に本発明者らは、PBMC MLRにおけるCD70ダガーの活性を試験し、NK細胞同種反応性が、拒絶反応に寄与し、宿主T細胞の初回刺激動態が、同種T細胞に応答して自然に生じる。PBMC MLRアッセイでは、試験したすべてのCD70ダガーは、NTD対照細胞と比較して移植片T細胞の生存を有意に増加させ、これを9日目までに排除した(図6B)。同じPBMC MLRアッセイでは、CD70ダガーT細胞は、HTCおよび宿主NK細胞の絶対数を有意に減少させ、これは、有効なダガー活性の証拠である。図6C~Dを参照のこと。逆に、HTCおよび宿主NK細胞は、NTD T細胞と共培養したときに拡大した。
【0259】
1XXおよびXX3(それぞれ、配列番号585および586)と称するITAMバリアントを含有するCD3zドメインを含む、CD3zシグナル伝達ドメイン中に改変を含有する追加の構築物も試験した。Feucht et al.Nat Med.2019,25(1):82-88を参照のこと。細胞をさらに改変して、TRAC座位をノックアウトした。CD70ダガー活性を、同種PBMCとインキュベートしたMLRアッセイで試験した。CD3zバリアントを発現する移植片細胞は、野生型CD3zを発現する移植片細胞と比較して、同等またはより良好に拡大し(図6E)、すべての移植片細胞は、宿主T細胞の同等のレベルの殺傷を示した(図6F)。したがって、CD70ダガー活性は、CD3z細胞内ドメインの改変によって有意に影響を受けなかった。
【0260】
実施例5.部位特異的統合によって生じた異なるCD70結合タンパク質(CD70ダガー)を発現する操作された免疫細胞のCD70ダガー活性の試験。
次に本発明者らは、様々なCD70ダガーを発現する細胞を生成し、構築物を部位特異的統合(SSI)によってT細胞に導入した。この実験では、CD70ダガー構築物を相同組換えによってCD52座位に導入した。この実験では、追加の構築物を試験した。CD28HTMz:CD28ヒンジおよび膜貫通ドメインおよびCD3zシグナル伝達ドメインを含有する;CD8H-CD28TM-z:CD8ヒンジおよびCH28膜貫通ドメインおよびCD3zドメインを含有する;bbz、CD3シグナル伝達ドメインに加えて4-1BBシグナル伝達ドメインを指す。
【0261】
第一世代のCARであるCD70ダガー構築物を発現するSSI由来T細胞は、第二世代のバリアントと比較して、より高いレベルの表面発現およびより低いレベルの活性化マーカーを有していた(図7A~C)。LVVまたはNTD T細胞対照に由来するCD70 CARを発現するT細胞と比較して、SSI由来CD70ダガーT細胞において、CD4:CD8比のわずかな増加を観察した(図CD7D)。次いで、選択したCD70ダガー細胞を、PBMC MLRアッセイで試験した。試験したすべてのCD70ダガーT細胞は、CD70dg-QR3zを除いて、13日目に拡大するか、または持続した。図7Eを参照。CD70dg-QR3z T細胞は、NTD T細胞対照よりも長く持続したが、最終的に13日目までに拒絶した。すべてのCD70ダガー細胞は、宿主T細胞および宿主NK細胞に対する活性を示した(図7F~G)。CD70dg-zは、試験した全てのCD70ダガー構築物の中で最も高い程度まで拡大し、CD70 CARを発現する細胞と同等のダガー活性を示した。
【0262】
実施例6.異なるCD70結合ドメインを含有するCD70ダガー。
次に本発明者らは、クローン4F11に加えて、抗CD70抗体に由来するCD70結合ドメインを含有するCD70ダガーを試験した。scFvの形態におけるクローン4F11、8C8および8F8の結合親和性は、互いに10倍以内である。国際公開第2019/152742号を参照のこと。
【0263】
第二世代のCARにおいてscFvとして発現する場合、抗CD70抗体の結合毒性をさらに分析した。ルシフェラーゼ発現ACHN細胞を、CAR LVVで形質導入し、2.5μg/mLのHisタグ付きFabで染色し、続いて1:50希釈の抗His抗体で染色した。異なる抗CD70抗体の結合部位(すなわち、エピトープ)を、マスキングアッセイで分析した。簡潔に述べると、それぞれのCD70 CARの細胞外ドメインで発現するscFvは、ACHN細胞の表面上の抗原CD70タンパク質に結合する。結合は、細胞表面上のCD70タンパク質のエピトープをマスクし、他の抗CD70抗体(Fab)の結合が同一のエピトープに結合することを遮断するが、異なるエピトープに結合する他の抗CD70 Fabの結合を可能にする。結果は、8F8 scFvを発現するCARが、4F11 Fabの細胞への結合を遮断し、その逆もまた可能であることを示した(データは示さず)。したがって、8F8および4F11は、CD70への結合について競合し、したがって、同じまたは重複するエピトープへの結合の可能性があった。一方で、8C8 scFvを発現するCARは、8F8または4F11 Fabの細胞への結合を遮断しなかった(データは示さず)。したがって、クローン8C8は、4F11または8F8のいずれかとCD70への結合について競合せず、4F11および8F8とは異なるエピトープに結合する可能性が高い。
【0264】
それぞれのクローンの結合部位を、タンパク質構造解析および変異誘発解析により確認した。CD70三量体複合体の曝露した表面上の28個の残基を個別に変異させて、CD70三量体変異体のパネルを作製した。抗CD70キメラ抗原受容体(CAR)の結合領域を、抗体断片として再フォーマット化し、バイオセンサー分析によって様々な三量体変異体への結合について評価した。CD70抗原単一点変異上清試料のSPR分析を、Biacore T200 SPR装置(Cytiva、Marlborough、MA)で決定した。全てのCD70抗原単一点変異試料を、BirAとの共発現を介して部位特異的にビオチン化し、続いて透析し、SPR分析前に濾過した。これらのビオチン化CD70試料をすべて、BiacoreのCAP表面上の未変性上清として捕捉した。次いで、すべてのフロー細胞を、20μMアミン-PEG2-ビオチン(APB)でブロッキングした。緩衝液および100nMの試験した全ての抗CD70 Fabを分析物として2分間注入し、解離を、30μL/分で15分間モニタリングした。表面を製造業者のプロトコルに従って再生した。全ての相互作用を、三回の独立した分析物希釈系列および捕捉試料を使用して三回測定した。すべてのセンサーグラムを、緩衝液分析物注射からのデータで二重参照した(Myszka,1999)。データを、Biacore T200評価ソフトウェア(バージョン2.0)を使用した質量転送を伴う1:1のラングミューア結合モデルに適合させた。
【0265】
それぞれのCARの結合に重要な残基を特定し、CD70三量体複合体の構造上に、膜から遠位のCAR結合、または膜に近位のCAR結合のいずれかにマッピングした。図8A~C中の構造の説明は、それぞれ、クローン8F8、4F11および8C8のCD70三量体複合体、すなわち、結合部位またはエピトープへの結合に重要な残基を示す。変異誘発研究は、クローン4F11および8F8が、CD70タンパク質の膜遠位部位に結合し、クローン8C8が、CD70リマー複合体の膜近位部位に結合することを示した。
【0266】
次に、scFvの形態の抗CD70抗体クローン8C8、8F8、および4F11を含有するCD70ダッガー構築物を生成した。LVV形質導入によって異なるCD70ダガーを発現するT細胞を、T細胞MLRアッセイで試験した。三つのCD70ダガーすべてが、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインおよび4-1BB共刺激ドメインを含有する。図8D~Eに示す通り、CD70ダガー発現T細胞はすべて、MLRアッセイにおいて拡大したが、様々な程度の持続性を示す。三つのCD70ダガー構築物すべてが、CD70の膜遠位部位に結合する4F11および8F8由来CD70ダガーで宿主T細胞の増殖を阻害し、8C8由来CD70ダガーより有効であった。
【0267】
結果は、LVV形質導入または部位特異的統合のいずれかによって生成した、異なるエピトープに結合する異なるCD70結合ドメイン、および/または異なる細胞内シグナル伝達ドメインを有する、試験した全てのCD70ダガー構築物が、宿主T細胞および/またはNK細胞を低減することによってダガー活性を示したことを示す。異なる構築物によって示さした様々な程度の拡大およびダガー活性は、CD70ダガー活性が、例えば、養子細胞療法またはCAR T細胞療法で使用するための所望のレベルのリンパ枯渇を達成するように微調整し得ることを示唆している。
【0268】
実施例7.CD70ダガーは、非CD70標的に特異的なCARと併せて発現した。
次に、本発明者らは、非CD70腫瘍標的に特異的なCARと併せて発現させた場合のCD70ダガー活性を調べる。抗CD70クローン4F11 scFvおよび抗CD19クローン4G7 scFv(US10,874,693)を含むタンデムCARを構築した。タンデムCARを発現するCAR T細胞を、T細胞MLRアッセイまたはPBMC MLRアッセイまたはMLTCアッセイで試験する。CD70ダガー発現CAR T細胞の拡大ならびに宿主T細胞および/またはNK細胞の阻害を、MLRアッセイで測定する。
【0269】
ダガーが、CD19発現標的細胞に対するCD19-CD70タンデムCAR T細胞の細胞傷害性に影響を与えるであろうかどうかを調べた。図9の結果は、CD19-CD70タンデムCAR T細胞が、エフェクター細胞およびルシフェラーゼ標識標的細胞の共培養の48時間後に残存ルシフェラーゼ活性を測定することによって決定する、CD19標的細胞株Rajiに対する堅牢な細胞傷害性を示したことを示す。この実験では、CD19結合ドメインを有さないダガー細胞単独も、Raji細胞上のCD70の存在により細胞傷害活性を示した。結果は、タンデムCAR中のCD70結合ドメインの存在が、CD19 CARの細胞傷害活性に悪影響を及ぼさなかったことを示す。CD70ダガーが別個のT細胞上で発現され、別個のCD70ダガー細胞の存在が、長期殺傷アッセイにおいて別のnon-CD70標的に特異的なCAR T細胞の細胞傷害性に悪影響を及ぼさなかったとき、同様の結果が観察された(データは示さず)。この実験のデータは、CD70ダガーが、別個のダガー細胞上または同じCAR T細胞(例えば、タンデムCARの一部として)上に発現されても、その特異的腫瘍抗原に対するCARの細胞傷害活性に悪影響を及ぼさなかったことを示す。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図9
【配列表】
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【国際調査報告】