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特表2024-526098免疫測定診断アッセイ用の抗原アナログおよびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】免疫測定診断アッセイ用の抗原アナログおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/165 20060101AFI20240709BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240709BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20240709BHJP
   C07K 14/635 20060101ALI20240709BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07K14/165
G01N33/53 B ZNA
G01N33/53 E
G01N33/53 D
G01N33/569 L
C07K14/635
C07K14/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577457
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 US2022033501
(87)【国際公開番号】W WO2022266151
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/210,904
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/340,372
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518267573
【氏名又は名称】オルト-クリニカル ダイアグノスティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ヒルシュ、ブレット
(72)【発明者】
【氏名】ツェン、ジエン
(72)【発明者】
【氏名】ダゲット、スティーブン
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA57
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA86
4H045EA50
(57)【要約】
半減期が延長された抗原は、より安定で一貫した臨床診断イムノアッセイのコントロール、および、キャリブレーターの製剤化のために提供される。抗原アナログは、抗原の対応する末端アミノ酸配列と同一または類似の第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む。第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、PEG鎖で接続されている。また、本明細書に開示される化合物を使用して、アッセイを校正する方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
X-O-(CHCHO)-Y (I)
の化合物であって、
式中、Xは、RVEWLRKKLQDVHN(配列番号1)、DLETSGLQEQRN(配列番号3)、またはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLS(配列番号5)と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選択される第1のポリペプチドであり、
式中、Yは第2のポリペプチドであり、
式中、nは1~30である、
化合物。
【請求項2】
Xは6~25個のアミノ酸を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Yは6~25個のアミノ酸を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Xは、RVEWLRKKLQDVHN(配列番号1)、DLETSGLQEQRN(配列番号3)、またはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLS(配列番号5)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Yは、EDNVLVESH(配列番号2)、PLQESPRPT(配列番号4)、もしくはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFS(配列番号6)であるか、またはEDNVLVESH、PLQESPRPT、もしくはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Xは、RVEWLRKKLQDVHN、またはRVEWLRKKLQDVHNと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Yは、EDNVLVESH、またはEDNVLVESHと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、請求項1または6に記載の化合物。
【請求項8】
Xは、DLETSGLQEQRN、またはDLETSGLQEQRNと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
Yは、PLQESPRPT、またはPLQESPRPTと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、請求項1または8に記載の化合物。
【請求項10】
Xは、GYYRRATRRIRGGDGKMKDLS、またはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLSと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
Yは、QRQKKQQTVTLLPAADLDDF、またはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、請求項1または10に記載の化合物。
【請求項12】
nは1~8である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
式(I):
X-O-(CHCHO)-Y (I)
の化合物であって、
式中、Xは第1のポリペプチドであり、
式中、Yは、EDNVLVESH(配列番号2)、PLQESPRPT(配列番号4)、またはQRQKKQQTVTLLPAADLDFS(配列番号6)と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選択される第2のポリペプチドであり、
式中、nは1~30である、
化合物。
【請求項14】
Xは6~25個のアミノ酸を有する、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Yは6~25個のアミノ酸を有する、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
Xは、RVEWLRKKLQDVHN(配列番号1)、DLETSGLQEQRN(配列番号3)、もしくはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLS(配列番号5)であるか、またはRVEWLRKKLQDVHN、DLETSGLQEQRN、もしくはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLSと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、請求項13に記載の化合物。
【請求項17】
Yは、EDNVLVESH(配列番号2)、PLQESPRPT(配列番号4)、またはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFS(配列番号6)である、請求項13に記載の化合物。
【請求項18】
Xは、RVEWLRKKLQDVHN、またはRVEWLRKKLQDVHNと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、請求項13に記載の化合物。
【請求項19】
Yは、EDNVLVESH、またはEDNVLVESHと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、請求項13または18に記載の化合物。
【請求項20】
Xは、DLETSGLQEQRN、またはDLETSGLQEQRNと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、請求項13に記載の化合物。
【請求項21】
Yは、PLQESPRPT、またはPLQESPRPTと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、請求項13または20に記載の化合物。
【請求項22】
Xは、GYYRRATRRIRGGDGKMKDLS、またはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLSと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、請求項13に記載の化合物。
【請求項23】
Yは、QRQKKQQTVTLLPAADLDDF、またはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、請求項13または22に記載の化合物。
【請求項24】
nは1~8である、請求項13に記載の化合物。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の化合物を含む組成物。
【請求項26】
請求項1~24のいずれか一項に記載の化合物または請求項13に記載の組成物を使用して光シグナルの強度を測定することを含む、免疫測定診断アッセイを校正する方法。
【請求項27】
請求項6または7に記載の化合物を使用して光シグナルの強度を測定することを含む、インタクト副甲状腺ホルモン(iPTH)免疫測定診断アッセイを校正する方法。
【請求項28】
請求項8または9に記載の化合物を使用して光シグナルの強度を測定することを含む、N末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)免疫測定診断アッセイを校正する方法。
【請求項29】
請求項10または11に記載の化合物を使用して光シグナルの強度を測定することを含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)免疫測定診断アッセイを校正する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年6月15日に出願された米国仮特許出願63/210,904号および2022年5月10日に出願された米国仮特許出願63/340,372号の利益を主張し、両方ともその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、免疫測定診断アッセイおよびその使用のための材料に関する。
【背景技術】
【0003】
臨床診断イムノアッセイでは、サンプル中の分析物を捕捉、検出、および定量するために抗体を使用することができる。分析物は、抗体、ホルモン、補因子、または他の化合物であり、これらの分析物の一部のクラスは一般に抗原と呼ばれる。イムノアッセイでは、アッセイの保存期間にわたって正確な結果を生成するための安定したキャリブレーターが必要である。イムノアッセイでは、アッセイの保存期間にわたって正確な結果を確認するための安定したコントロールが必要である。コントロールおよび/またはキャリブレーターは、天然源、組換え源、または合成源に由来する抗原を用いて製剤化され得る。しかし、これらの抗原の多くは安定しておらず、半減期が非常に短いため、その取り扱いや分析が困難になる。半減期が長い抗原は、より安定で一貫した臨床診断イムノアッセイのコントロールおよびキャリブレーターの製剤化を可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様は、式(I)の化合物を提供する:
X-O-(CHCHO)-Y (I)
式中、Xは第1のポリペプチドであり、
式中、Yは第2のポリペプチドであり、
式中、nは1~30である。
【0005】
前述の化合物において、Xは3~30個のアミノ酸を有していてもよい。Yは3~30個のアミノ酸を有していてもよい。Xは、RVEWLRKKLQDVHN(配列番号1)であってもよいし、またはRVEWLRKKLQDVHNと少なくとも90%の配列同一性を有していてもよい。Yは、EDNVLVESH(配列番号2)であってもよいし、またはEDNVLVESHと少なくとも90%の配列同一性を有していてもよい。Xは、DLETSGLQEQRN(配列番号3)であってもよいし、またはDLETSGLQEQRNと少なくとも90%の配列同一性を有していてもよい。Yは、PLQESPRPT(配列番号4)であってもよいし、またはPLQESPRPTと少なくとも90%の配列同一性を有していてもよい。Xは、GYYRRATRRIRGGDGKMKDLS(配列番号5)であってもよいし、またはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLSと少なくとも90%の配列同一性を有していてもよい。Yは、QRQKKQQTVTLLPAADLDDFS(配列番号6)であってもよいし、またはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFSと少なくとも90%の配列同一性を有していてもよい。いくつかの実施形態では、nは5~10であってもよい。
【0006】
本開示の一態様は、前述の化合物を含む組成物を提供する。
【0007】
本開示の一態様は、前述の組成物を使用して光シグナルの強度を測定することを含む、免疫測定診断アッセイを校正する方法を提供する。
【0008】
本開示の一態様は、式(I)の化合物を提供する:
X-O-(CHCHO)-Y (I)
式中、Xは、RVEWLRKKLQDVHN(配列番号1)、DLETSGLQEQRN(配列番号3)、もしくはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLS(配列番号5)であるか、またはRVEWLRKKLQDVHN、DLETSGLQEQRN、もしくはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLSと少なくとも90%の配列同一性を有する第1のポリペプチドであり;
式中、Yは、EDNVLVESH(配列番号2)、PLQESPRPT(配列番号4)、もしくはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFS(配列番号6)であるか、またはEDNVLVESH、PLQESPRPT、もしくはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFSと少なくとも90%の配列同一性を有する第2のポリペプチドであり;そして、
式中、nは5~10である。
【0009】
本開示の一態様は、前述の化合物を含む組成物を提供する。
【0010】
本開示の一態様は、前述の組成物を使用して光シグナルの強度を測定することを含む、iPTH免疫測定診断アッセイ、NTproBNP免疫測定診断アッセイ、またはSARS-CoV-2免疫測定診断アッセイを校正する方法を提供する。
【0011】
また、式(I)の化合物も本明細書に開示される:
X-O-(CHCHO)-Y (I)
式中、Xは、RVEWLRKKLQDVHN(配列番号1)、DLETSGLQEQRN(配列番号3)、またはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLS(配列番号5)と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選択される第1のポリペプチであり、式中、Yは第2のポリペプチドであり、式中、nは1~30である。いくつかの実施形態では、Xは、RVEWLRKKLQDVHN(配列番号1)、DLETSGLQEQRN(配列番号3)、またはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLS(配列番号5)である。
【0012】
また、式(I)の化合物も本明細書に開示される:
X-O-(CHCHO)-Y (I)
式中、Xは第1のポリペプチドであり、式中、YはEDNVLVESH(配列番号2)、PLQESPRPT(配列番号4)、またはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFS(配列番号6)と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選択される第2のポリペプチであり、式中、nは1~30である。いくつかの実施形態では、Yは、EDNVLVESH(配列番号2)、PLQESPRPT(配列番号4)、またはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFS(配列番号6)である。
【0013】
いくつかの実施形態では、Xは6~25個のアミノ酸を有する。いくつかの実施形態では、Yは6~25個のアミノ酸を有する。いくつかの実施形態では、nは1~8である。
【0014】
いくつかの実施形態では、Yは、EDNVLVESH(配列番号2)、PLQESPRPT(配列番号4)、もしくはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFS(配列番号6)、またはEDNVLVESH、PLQESPRPT、もしくはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
【0015】
いくつかの実施形態では、XはRVEWLRKKLQDVHNまたはRVEWLRKKLQDVHNと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、EDNVLVESHまたはEDNVLVESHと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
【0016】
いくつかの実施形態では、XはDLETSGLQEQRNまたはDLETSGLQEQRNと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、YはPLQESPRPTまたはPLQESPRPTと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
【0017】
いくつかの実施形態では、XはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLS、またはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLSと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、YはQRQKKQQTVTLLPAADLDDF、またはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
【0018】
また、本明細書に開示される化合物を含む組成物も本明細書に開示される。
【0019】
本明細書に開示される化合物または組成物を使用して光シグナルの強度を測定することを含む、免疫測定診断アッセイを校正する方法。
【0020】
本明細書に開示される化合物または組成物を使用して光シグナルの強度を測定することを含む、インタクト副甲状腺ホルモン(iPTH)免疫測定診断アッセイを校正する方法。いくつかの実施形態では、XはRVEWLRKKLQDVHNまたはRVEWLRKKLQDVHNと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、EDNVLVESHまたはEDNVLVESHと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
【0021】
本明細書に開示される化合物または組成物を使用して光シグナルの強度を測定することを含む、N末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)免疫測定診断アッセイを校正する方法。いくつかの実施形態では、XはDLETSGLQEQRNまたはDLETSGLQEQRNと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、YはPLQESPRPTまたはPLQESPRPTと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
【0022】
本明細書に開示される化合物または組成物を使用して光シグナルの強度を測定することを含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)免疫測定診断アッセイを校正する方法。いくつかの実施形態では、XはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLSまたはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLSと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、YはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFまたはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の実施形態による抗原アナログ(iPTHアナログ)の化学式である。
図2】本開示の実施形態による抗原アナログの異なるターゲット濃度における光シグナルの強度を示すグラフである。
図3】本発明の実施形態による合成iPTHと抗原アナログの濃度変化を示すグラフである。
図4】本開示の実施形態による抗原アナログ(NTproBNPアナログ)の化学式である。
図5】本開示の実施形態による抗原アナログの異なるターゲット濃度における光シグナルの強度を示すグラフである。
図6】本開示の実施形態による抗原アナログ(SARS-CoV-2アナログ)の化学式である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。本明細書で提示される説明で使用される用語は、単に特定の実施形態の詳細な説明と併せて利用されているという理由だけで、いかなる限定的または制限的な方法で解釈されることを意図したものではない。
【0025】
抗原アナログ
本開示は、イムノアッセイコントロールおよび/またはキャリブレーターのための抗原の代わりに使用され得る抗原アナログに関する。抗原アナログは、アッセイのコントロールおよび/またはキャリブレーターとして一般的に使用される天然抗原、組換え抗原、または合成抗原と比較して長い半減期を有しながら、アッセイにおいて一貫した同等の応答を生成できる。例えば、タンパク質様抗原またはペプチド様抗原のためのアナログは、1)イムノアッセイ抗体またはエピトープによって認識されるアミノ酸配列、および2)2つのエピトープ部分を分離し、抗原の元の天然ポリペプチド鎖よりも優れた安定性を与える非ペプチド非天然架橋スペーサー部分を有することができる。
【0026】
PEG架橋抗原アナログ
いくつかの実施形態では、タンパク質様抗原またはペプチド様抗原の抗原アナログは、イムノアッセイ抗体またはエピトープによって認識される1つ以上のアミノ酸配列、およびアミノ酸配列に連結された非ペプチド非天然架橋スペーサー鎖を含むことができる。いくつかの実施形態では、抗原アナログは、2つのイムノアッセイ抗体またはエピトープによって認識される2つの末端アミノ酸配列、および2つの末端アミノ酸配列を連結する非ペプチド架橋部分を含むことができる。
【0027】
非ペプチド架橋部分は、抗原アナログの分解が最小限に抑えられるように、化学的または物理的にポリペプチドよりも安定である可能性がある。非ペプチド架橋部分は、容易には分解されず、ペプチダーゼまたはプロテアーゼの存在下でも加水分解されない可能性がある。
【0028】
同時に、非ペプチド架橋部分は、抗原アナログが、その抗原アナログが置換するように設計されたタンパク質様抗原またはペプチド様抗原と同様の様式で作用することを可能にし得る。例えば、抗原アナログは、全体として、タンパク質様抗原またはペプチド様抗原と同様の鎖長、分子量、親水性/疎水性、または3D構造を有し得る。いくつかの実施形態では、非ペプチド架橋部分は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含み得る。非ペプチド架橋部分としてPEG鎖を有する抗原アナログは、本明細書ではPEG架橋抗原アナログと呼ばれ得る。例えば、抗原アナログは、2つの末端配列、第1のポリペプチドすなわちアミノ酸配列(X)および第2のポリペプチドすなわちアミノ酸配列(Y)を有し、式(I)で表される構造を有し得る:
X-O-(CHCHO)-Y (I)
【0029】
PEG鎖の長さ、または式1のnは、抗原アナログが置換するように設計されたタンパク質様抗原またはペプチド様抗原と同様の様式で抗原アナログが作用するように変化し得る。例えば、PEG鎖の長さは、タンパク質様抗原またはペプチド様抗原における対応するペプチド鎖の長さと同様であり得る。いくつかの実施形態では、式1のnは、1~30、3~30、3~20、5~20、5~10、または6~9である。いくつかの実施形態では、nは1~8である。
【0030】
末端アミノ酸配列、第1および第2のポリペプチド配列は、天然のタンパク質様抗原またはペプチド様抗原の対応するアミノ酸配列と同一または類似していてもよい。末端アミノ酸配列のそれぞれは、イムノアッセイ抗体またはエピトープによって認識されるのに十分なサイズまたは長さを有することができるが、末端アミノ酸配列の長さを最小限に抑え、非ペプチド架橋部分のサイズを最大にすることで、抗原アナログの安定性を高めることができる。例えば、第1および第2のポリペプチド配列のそれぞれは、独立して、3~30個のアミノ酸、5~30個のアミノ酸、5~25個のアミノ酸、7~25個のアミノ酸、7~20個のアミノ酸、または10~20個のアミノ酸を有し得る。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド配列および第2のポリペプチド配列のそれぞれは、独立して6~25個のアミノ酸を有し得る。
【0031】
PEG架橋抗原アナログは、天然のタンパク質抗原またはペプチド抗原よりも長い半減期を有しながら、アッセイシグナルを生成する。天然抗原のアミノ酸構造の大部分をPEG鎖で置き換えることにより、抗原アナログの安定性が高まる可能性がある。例えば、いくつかの実施形態では、PEG架橋抗原アナログは10%以下しか分解しない可能性がある。
【0032】
iPTH抗原アナログ
いくつかの実施形態では、PEG架橋抗原アナログは、インタクト副甲状腺ホルモン(iPTH)アッセイ用のアナログであり得る。副甲状腺ホルモン(PTH)は、副甲状腺によって産生される単鎖の84個のアミノ酸のポリペプチドである。PTHは血流に分泌された後、大規模なタンパク質分解を受けてさまざまなフラグメントを生成する。その分解生成物とは対照的に、インタクトPTHの濃度は糸球体濾過速度に比較的依存せず、ホルモンの生物学的活性部分を反映する。PTHアッセイは、血清カルシウムレベルと併せて、高カルシウム血症、低カルシウム血症、副甲状腺疾患の鑑別診断の補助として使用できる。PTHの測定は、腎性骨ジストロフィーを管理するために透析患者をモニタリングする際に重要である。
【0033】
しかしながら、iPTHは、合成ペプチドと共に製剤化されたキャリブレーターおよびコントロールの取り扱い性および保存期間を制限する半減期を有する。 さらに、ヒトiPTHの天然源は不安定であるため市販されていない。
【0034】
図1は、一実施形態によるiPTH100のPEG架橋抗原アナログの構造を示す。各末端に、PEG架橋抗原アナログ100は、イムノアッセイ抗体またはエピトープによって認識される第1のアミノ酸配列101および第2のアミノ酸配列102を有する。
【0035】
図示の実施形態では、第1の末端は、第1のアミノ酸配列101(RVEWLRKKLQDVHN、配列番号1)を有する。いくつかの実施形態では、第1の末端の第1のアミノ酸配列は、アミノ酸配列RVEWLRKKLQDVHNと比較して修飾(すなわち、付加、欠失、および置換)を有してもよく、修飾されたアミノ酸配列は、結合活性などの、RVEWLRKKLQDVHNと同じ活性を維持する。例えば、第1のアミノ酸配列は、アミノ酸配列RVEWLRKKLQDVHNより短くても長くてもよい。第1のアミノ酸配列は、アミノ酸配列RVEWLRKKLQDVHNと1つ以上の置換を有していてもよい。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列は、アミノ酸配列RVEWLRKKLQDVHNと70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列は、1、2、または3個の保存的アミノ酸置換を有するRVEWLRKKLQDVHNを含む。
【0036】
保存的置換を表1の「好ましい置換」の見出しの下に示す。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表1において「例示的な置換」と呼ばれる、またはアミノ酸クラスに関して以下にさらに説明されるような、より実質的な変化が導入され、生成物がスクリーニングされ得る。
【0037】
【表1】
【0038】
図示の実施形態では、第2の末端は、第2のアミノ酸配列102(EDNVLVESH、配列番号2)を有する。いくつかの実施形態では、第2の末端の第2のアミノ酸配列は、アミノ酸配列EDNVLVESHと比較して修飾(すなわち、付加、欠失、および置換)を有してもよく、修飾されたアミノ酸配列は、結合活性などのEDNVLVESHと同じ活性を維持する。例えば、第2のアミノ酸配列は、アミノ酸配列EDNVLVESHより短くても長くてもよい。第2のアミノ酸配列は、アミノ酸配列EDNVLVESHと1つ以上の置換を有していてもよい。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列は、アミノ酸配列EDNVLVESHと70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性であり得る。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列は、1、2、または3個の保存的アミノ酸置換を有するEDNVLVESHを含む。
【0039】
図示の実施形態では、PEG架橋部分103は7つのモノマーを含む。いくつかの実施形態において、PEG架橋部分103のモノマーの数は、1~40、1~30、1~20、または1~10であり得る。いくつかの実施形態において、PEG架橋部分におけるモノマーの数は1~8である。
【0040】
また、本明細書には、iPTH免疫測定診断アッセイ、例えば、VITROS(登録商標)インタクトPTH IIアッセイ(オルト-クリニカル ダイアグノスティックス インコーポレイテッド)におけるiPTHアナログ100の使用も開示される。
【0041】
NT-proBNP抗原アナログ
B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、心臓によって産生されるホルモンである。N末端(NT)-プロホルモンBNP(NT-proBNP)は、BNPを生成する同じ分子から放出される非活性プロホルモンである。BNPとNT-proBNPは両方とも、心臓内の圧力の変化に反応して放出される。
【0042】
図4は、一実施形態によるNT-proBNP400のPEG架橋抗原アナログの構造を示す。PEG架橋抗原アナログ400は、各末端に、イムノアッセイ抗体またはエピトープによって認識される第1および第2のアミノ酸配列401および402を有する。
【0043】
図示の実施形態では、第1の末端は、第1のアミノ酸配列401(DLETSGLQEQRN、配列番号3)を有する。いくつかの実施形態では、第1の末端の第1のアミノ酸配列は、アミノ酸配列DLETSGLQEQRNと比較して修飾(すなわち、付加、欠失、および置換)を有してもよく、修飾されたアミノ酸配列は、結合活性などのDLETSGLQEQRNと同じ活性を維持する。例えば、第1のアミノ酸配列は、アミノ酸配列DLETSGLQEQRNより短くても長くてもよい。第1のアミノ酸配列は、アミノ酸配列DLETSGLQEQRNと1つ以上の置換を有していてもよい。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列は、アミノ酸配列DLETSGLQEQRNと70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性であり得る。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列は、1、2、または3個の保存的アミノ酸置換を有するDLETSGLQEQRNを含む。
【0044】
図示の実施形態では、第2の末端は第2のアミノ酸配列402(PLQESPRPT、配列番号4)を有する。いくつかの実施形態では、第2の末端の第2のアミノ酸配列は、アミノ酸配列PLQESPRPTと比較して修飾(すなわち、付加、欠失、および置換)を有してもよく、修飾されたアミノ酸配列は、結合活性などのPLQESPRPTと同じ活性を維持する。例えば、第2のアミノ酸配列は、アミノ酸配列PLQESPRPTより短くても長くてもよい。第2のアミノ酸配列は、アミノ酸配列PLQESPRPTと1つ以上の置換を有していてもよい。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列は、アミノ酸配列PLQESPRPTと70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性であり得る。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列は、1、2、または3個の保存的アミノ酸置換を有するPLQESPRPTを含む。
【0045】
図示の実施形態では、PEG架橋部分403は7つのモノマーを含む。いくつかの実施形態において、PEG架橋部分403のモノマーの数は、1~40、1~30、1~20、または1~10であり得る。いくつかの実施形態において、PEG架橋部分におけるモノマーの数は1~8である。
【0046】
また、本明細書には、NT-proBNP免疫測定診断アッセイ、例えば、VITROS(登録商標)NTproBNP II免疫診断アッセイ(Ortho-Clinical Diagnostics,Inc.)におけるNT-proBNPアナログ400の使用も開示される。
【0047】
SARS-CoV-2ヌクレオカプシド抗原アナログ
図6は、一実施形態による、SARS-CoV-2(Covid-19,2019-nCoV)ヌクレオカプシド600のPEG架橋抗原アナログの構造を示す。PEG架橋抗原アナログ体600は、各末端に、イムノアッセイ抗体またはエピトープによって認識される第1および第2のアミノ酸配列601および602を有する。
【0048】
第1および第2のアミノ酸配列601、602の少なくとも1つは、SARS-CoV-2由来のモノクローナル抗体のエピトープであり得る。いくつかの実施形態では、第1および第2のアミノ酸配列601、602のそれぞれは、モノクローナル抗体エピトープであり得る。例えば、第1のアミノ酸配列601および/または第2のアミノ酸配列602は、R001、MM05、R004、T30、MM163、MM184、MM137、R957、RC02、MM08、T62、R19、MM181、MM187、MM124、R004、MM182、MM186、R0006、R040、MM123、またはSARS-CoV-2に対する他の既知のモノクローナル抗体からなる群から選択される1つ以上のモノクローナル抗体のエピトープであり得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列601は、SARS-CoV-2由来のモノクローナル抗体MM05のエピトープ、またはその一部を含む。例えば、第1のアミノ酸配列601は、(GYYRRATRRIRGGDGKMKDLS、配列番号5)であってもよい。いくつかの実施形態では、第1の末端の第1のアミノ酸配列601は、アミノ酸配列GYYRRATRRIRGGDGKMKDLSと比較して修飾(すなわち、付加、欠失、および置換)を有してもよく、修飾されたアミノ酸配列は、結合活性などのGYYRRATRRIRGGDGKMKDLSと同じ活性を維持する。例えば、第1のアミノ酸配列601は、アミノ酸配列GYYRRATRRIRGGDGKMKDLSより短くても長くてもよい。第1のアミノ酸配列は、アミノ酸配列GYYRRATRRIRGGDGKMKDLSと1つ以上の置換を有していてもよい。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列は、アミノ酸配列GYYRRATRRIRGGDGKMKDLSと70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性であり得る。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列は、1、2、または3個の保存的アミノ酸置換を有するGYYRRATRRIRGGDGKMKDLSを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、第2の末端は、SARS-CoV-2由来のモノクローナル抗体R001のエピトープ、またはその一部を含む。例えば、第2のアミノ酸配列602は、(QRQKKQQTVTLLPAADLDDFS、配列番号6)であってもよい。いくつかの実施形態では、第2の末端の第2のアミノ酸配列は、アミノ酸配列QRQKKQQTVTLLPAADLDDFSと比較して修飾(すなわち、付加、欠失、および置換)を有してもよく、修飾されたアミノ酸配列は、結合活性などのQRQKKQQTVTLLPAADLDDFSと同じ活性を維持する。例えば、第2のアミノ酸配列は、アミノ酸配列QRQKKQQTVTLLPAADLDDFSより短くても長くてもよい。第2のアミノ酸配列は、アミノ酸配列QRQKKQQTVTLLPAADLDDFSと1つ以上の置換を有していてもよい。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列は、アミノ酸配列QRQKKQQTVTLLPAADLDDFSと0%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性であり得る。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列は、1、2、または3個の保存的アミノ酸置換を有するQRQKKQQTVTLLPAADLDDFSを含む。
【0051】
図示の実施形態では、PEG架橋部分603は7つのモノマーを含む。いくつかの実施形態において、PEG架橋部分603のモノマーの数は、1~40、1~30、1~20、または1~10であり得る。いくつかの実施形態において、PEG架橋部分におけるモノマーの数は1~8である。
【0052】
また、本明細書では、SARS-CoV-2免疫測定診断アッセイ、例えば、VITROS(登録商標)SARS-CoV-2抗原検査(Ortho-Clinical Diagnostics,Inc.)におけるSARS-CoV-2アナログ600の使用も開示される。
【0053】
PEG架橋抗原アナログの使用方法
また、本明細書では、サンプル中に存在する分析物(抗原)と、ビオチン化抗体およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)ラベル化抗体コンジュゲートとの同時反応を伴うイムノアッセイ法も開示される。抗原抗体複合体は、固体培養器(ウェル)上にコーティングされたストレプトアビジンによって捕捉される。結合していない物質は洗浄によって除去される。結合したHRPコンジュゲートは発光反応によって測定される。光シグナルは、存在する分析物の濃度に正比例する、結合したHRPコンジュゲートの量を示す。
【0054】
開示されるイムノアッセイは、本明細書に開示される抗原アナログを使用して校正され、既知の量でサンプルまたはバッファーに添加されて、アッセイのキャリブレーターまたはコントロールとして機能する。
【0055】
(実施例1)
VITROS(登録商標)インタクトPTH IIアッセイ(Ortho-Clinical Diagnostics,Inc.)では、サンプル中に存在するPTH(抗原として)と、ビオチン化抗体(ヤギポリクローナル抗PTH39-84)およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)ラベル化抗体コンジュゲート(ヤギポリクローナル抗PTH1-34)との同時反応を伴う免疫測定イムノアッセイ技術が使用された。抗原抗体複合体は、固体基質(ウェル)上にコーティングされたストレプトアビジンによって捕捉された。結合していない物質は洗浄によって除去された。結合したHRPコンジュゲートは発光反応によって測定された。発光基質(ルミノール誘導体および過酸塩)および電子移動剤を含む試薬を、コーティングされた基質に添加した。結合したコンジュゲート中のHRPは、ルミノール誘導体の酸化を触媒し、光を生成した。電子移動剤(置換アセトアニリド)は、生成される光のレベルを高め、発光を延長する。光シグナルは、システムによって読み取られた。結合したHRPコンジュゲートの量は、存在するPTHの濃度に正比例した。
【0056】
図2は、ウシ血清アルブミンおよび抗菌剤を含むバッファー中の異なるターゲット濃度(すなわち、50pg/mL、500pg/mL、2500pg/mL、および5000pg/mL)で、図1のPEG架橋抗原アナログ100を使用して、VITROS(登録商標)免疫診断ECiプラットフォーム(Ortho-Clinical Diagnostics)によって読み取られた光シグナルの強度(相対発光量(RLU))を示す。50pg/mLのPEG架橋抗原アナログ100では、4.788995RLUが検出された。500pg/mLのPEG架橋抗原アナログ100では、902.34RLUが検出された。2500pg/mLのPEG架橋抗原アナログ100では、15386.346RLUが検出された。5000pg/mLのPEG架橋抗原アナログ100では、44121.512RLUが検出された。これらのことから、PEG架橋抗原アナログ100は、VITROS(登録商標)インタクトPTH IIアッセイにおいて、その濃度に比例したシグナルを生成できることが確認された。
【0057】
(実施例2)
PEG架橋抗原アナログ100および合成iPTH抗原の経時的安定性を測定した。PEG架橋抗原アナログ100を含む溶液、および標準バッファー中に合成iPTH抗原を含む別の溶液を調製した。溶液を周囲温度(~23℃)に保った。PEG架橋抗原アナログ100および合成iPTH抗原の濃度を経時的に測定した。図3は、PEG架橋抗原アナログ100および合成iPTH抗原の天然配列の予測濃度(%)の経時変化を示す。図3に示すように、合成iPTH抗原は5日後に濃度の10%減少を示したが、PEG架橋抗原アナログ100は28日後に濃度の有意な変化を示さなかった。PEG架橋抗原アナログ100は経時的に有意には分解せず、合成iPTH抗原よりも安定であることが確認された。
【0058】
(実施例3)
PEG架橋抗原アナログ100を含むサンプルの再現性を測定した。異なる濃度(30pg/mL;100pg/mL,500pg/mL,1500pg/mL)を持つ4つのサンプルのそれぞれの2回複製を、少なくとも20の別個の日に、1日あたり2回の別々の機会にテストした。データは表2に示されている。
【0059】
表2において、「%CV w/in Run」は、すべての実行にわたって平均した複製間の精度を分散係数(%)の形式で表す。「%CV w/in Cal」は、実行内、実行間、日間の変動の加重成分を含む総合精度を分散(%)の形式で表す。「%CV w/in Lab」は、少なくとも4つのキャリブレーションからのデータを使用して試薬ロット内で計算された、総合精度に対する再キャリブレーションの影響の尺度を表す。表2に示すように、PEG架橋抗原アナログ100を含むサンプルは、すべての濃度において高い精度を示し、3つの測定値すべてにおいて4%未満のCVを示した。
【0060】
【表2】
【0061】
(実施例4)
PEG架橋部分および2つの末端ポリペプチドを有し、PEG架橋部分によって連結されたNTproBNPに類似している、N末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)に対するPEG架橋抗原アナログ400(図4)を調製した。ターゲット濃度500pg/mLおよび20000pg/mLのPEG架橋抗原アナログ400サンプルを調製し、VITROS(登録商標)NTproBNP II免疫診断アッセイ(Ortho-Clinical Diagnostics)に使用した。図5は、これらのサンプルの光シグナルをRLUで示している。図5に示すように、NTproBNPのPEG架橋アナログ400は、500pg/mLで244.5RLU、20000pg/mLで89478.6RLUを生成した。
【0062】
(実施例5)
第1のアミノ酸配列として(GYYRRATRRIRGGDGKMKDLS;配列番号5)および第2のアミノ酸配列として(QRQKKQQTVTLLPAADLDDFS;配列番号6)を有するSARS-CoV-2のPEG架橋抗原アナログ600(図6)を調製した。次いで、PEG架橋抗原アナログ600を、0.016μg/mLの濃度までリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解した。
【0063】
安定性を決定するために、PEG架橋抗原アナログ600溶液を37℃で1、2、3、4、もしくは5日間、または25℃で1、2、3、4、もしくは5日間保存した。
【0064】
固体基質ウェルを1.5μg/mLのSARS-CoV/SARS-CoV-2ヌクレオカプシド抗体R001(ウサギモノクローナル)(Sino Biological,CAT #40143-R001)でコーティングし、0.016μg/mLのPEG架橋抗原アナログ600溶液を37℃で30分間インキュベートした。洗浄後、ウェルを0.016μg/mLのSARS-CoV/SARS-CoV-2ヌクレオカプシド抗体MM05(マウスモノクローナル)(Sino Biological,CAT #40143-MM05)とともに37℃で30分間インキュベートし、続いて洗浄し、HRPロバ抗マウスIgG(H+L)(Jackson Immuno Research Lab,CAT ♯715-035-150)とともにインキュベートした。
【0065】
PEG架橋抗原アナログ600の代わりに、PBS中の2μg/mLのSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質(GenScript,Cat.No.Z03488)溶液を使用して、上記の実験を繰り返した。
【0066】
PEG架橋抗原アナログ600の代わりに、PBS中の0.08μg/mLのSARS-CoV-2(2019-nCoV)ヌクレオカプシド-His組換えタンパク質(SinoBiological,Cat.No.40588-V07E)溶液を使用して、上記の実験を繰り返した。
【0067】
インキュベーション後、ウェルを洗浄し、化学発光シグナル試薬を添加した。次に、Molecular Device i3xマルチモードプレートリーダーで反応性を測定し、相対発光量(RLU)を決定した。結果を以下の表3~6に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
表3~6に示すように、天然および組換えSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質は、周囲温度(25℃)で不安定であることが観察され、イムノアッセイ発光により測定したところ、5日間で最大46%分解した。しかし、PEG架橋抗原アナログは、同じ時間枠および条件に渡って5%未満の分解を示した。これにより、抗原のPEG架橋形式が天然または組換え調製物と比較した場合にロバスト安定性を有することが証明された。
【0073】
別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される、成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表すすべての数字は、すべての場合において用語「約(about)」によって修飾されるものとして理解されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「約(about)」および「およそ(approximately)」は、10~15%以内、好ましくは5~10%以内を意味する。したがって、別段の指示がない限り、明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは近似値であり、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定するものではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示す数値は可能な限り正確に報告されている。ただし、どの数値にも、それぞれのテスト測定で見つかった標準偏差に必然的に起因する特定の誤差が本質的に含まれている。
【0074】
本発明を説明する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)で使用される用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および類似の指示対象は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記載は、その範囲内にあるそれぞれの個別の値を個別に参照する簡略的な方法として機能することを単に意図している。本明細書に別段の指示がない限り、それぞれの個別の値は、あたかも本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意および全ての実施例、または例示的な文言(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本発明をより良く理解することを目的としており、別途特許請求される本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠な特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0075】
本明細書に開示される本発明の代替要素または実施形態のグループ分けは、制限として解釈されるべきではない。各グループの要素は、個別に、またはグループの他の要素もしくは本明細書に記載の他の要素と任意に組み合わせて、参照および特許請求することができる。グループの1以上の要素は、利便性および/または特許性の理由から、グループに含まれたり、グループから削除されたりする可能性があることが予想される。そのような包含または削除が行われた場合、本明細書は、変更されたグループを含むとみなされ、したがって、添付の特許請求の範囲で使用された全てのマーカッシュグループの書面による記述を満たすものである。
【0076】
本発明を実施するため発明者らが知る最良の形態を含めて、本発明の特定の実施形態を本明細書に記載する。もちろん、これらの説明された実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。本発明者は、当業者がそのような変形を適宜採用することを予期しており、本発明が本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用される法律によって認められる、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載された主題のすべての改変および等価物を包含するものである。さらに、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、あらゆる可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。
【0077】
本明細書に開示される特定の実施形態は、特許請求の範囲において、から成る(consisting of)、または、から本質的に成る(consisting essentially of)という文言を用いてさらに限定され得る。特許請求の範囲で使用される場合、出願されたものであるか、補正によって追加されたものであるかにかかわらず、移行句「から成る(consisting of)」は、特許請求の範囲で特定されていない如何なる要素、ステップ、または成分も除外する。移行句「から本質的に成る(consisting essentially of)」は、請求項の範囲を特定の材料またはステップ、および基本的および新規な特性(複数可)に実質的に影響を与えないものに限定する。そのように特許請求された本発明の実施形態は、本明細書において本質的にまたは明確に記載され、実施可能にされる。
【0078】
さらに、本明細書全体を通じて、特許および印刷出版物に対して多数の参照がなされた。上記で引用した参考文献および印刷出版物のそれぞれは、その全体が参照により個別に本明細書に組み込まれている。
【0079】
最後に、本明細書に開示される本発明の実施形態は、本発明の原理を例証するものであることを理解されたい。採用され得る他の改変は本発明の範囲内である。このように、限定ではなく例として、本発明の代替構成を本明細書の教示に従って利用してもよい。したがって、本発明は、図示され説明されたものに正確に限定されるものではない。
【0080】
(付記)
(付記1)
式(I):
X-O-(CHCHO)-Y (I)
の化合物であって、
式中、Xは、RVEWLRKKLQDVHN(配列番号1)、DLETSGLQEQRN(配列番号3)、またはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLS(配列番号5)と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選択される第1のポリペプチドであり、
式中、Yは第2のポリペプチドであり、
式中、nは1~30である、
化合物。
【0081】
(付記2)
Xは6~25個のアミノ酸を有する、付記1に記載の化合物。
【0082】
(付記3)
Yは6~25個のアミノ酸を有する、付記1に記載の化合物。
【0083】
(付記4)
Xは、RVEWLRKKLQDVHN(配列番号1)、DLETSGLQEQRN(配列番号3)、またはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLS(配列番号5)である、付記1に記載の化合物。
【0084】
(付記5)
Yは、EDNVLVESH(配列番号2)、PLQESPRPT(配列番号4)、もしくはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFS(配列番号6)であるか、またはEDNVLVESH、PLQESPRPT、もしくはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、付記1に記載の化合物。
【0085】
(付記6)
Xは、RVEWLRKKLQDVHN、またはRVEWLRKKLQDVHNと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、付記1に記載の化合物。
【0086】
(付記7)
Yは、EDNVLVESH、またはEDNVLVESHと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、付記1または6に記載の化合物。
【0087】
(付記8)
Xは、DLETSGLQEQRN、またはDLETSGLQEQRNと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、付記1に記載の化合物。
【0088】
(付記9)
Yは、PLQESPRPT、またはPLQESPRPTと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、付記1または8に記載の化合物。
【0089】
(付記10)
Xは、GYYRRATRRIRGGDGKMKDLS、またはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLSと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、付記1に記載の化合物。
【0090】
(付記11)
Yは、QRQKKQQTVTLLPAADLDDF、またはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、付記1または10に記載の化合物。
【0091】
(付記12)
nは1~8である、付記1に記載の化合物。
【0092】
(付記13)
式(I):
X-O-(CHCHO)-Y (I)
の化合物であって、
式中、Xは第1のポリペプチドであり、
式中、Yは、EDNVLVESH(配列番号2)、PLQESPRPT(配列番号4)、またはQRQKKQQTVTLLPAADLDFS(配列番号6)と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選択される第2のポリペプチドであり、
式中、nは1~30である、
化合物。
【0093】
(付記14)
Xは6~25個のアミノ酸を有する、付記13に記載の化合物。
【0094】
(付記15)
Yは6~25個のアミノ酸を有する、付記13に記載の化合物。
【0095】
(付記16)
Xは、RVEWLRKKLQDVHN(配列番号1)、DLETSGLQEQRN(配列番号3)、もしくはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLS(配列番号5)であるか、またはRVEWLRKKLQDVHN、DLETSGLQEQRN、もしくはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLSと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、付記13に記載の化合物。
【0096】
(付記17)
Yは、EDNVLVESH(配列番号2)、PLQESPRPT(配列番号4)、またはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFS(配列番号6)である、付記13に記載の化合物。
【0097】
(付記18)
Xは、RVEWLRKKLQDVHN、またはRVEWLRKKLQDVHNと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、付記13に記載の化合物。
【0098】
(付記19)
Yは、EDNVLVESH、またはEDNVLVESHと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、付記13または18に記載の化合物。
【0099】
(付記20)
Xは、DLETSGLQEQRN、またはDLETSGLQEQRNと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、付記13に記載の化合物。
【0100】
(付記21)
Yは、PLQESPRPT、またはPLQESPRPTと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、付記13または20に記載の化合物。
【0101】
(付記22)
Xは、GYYRRATRRIRGGDGKMKDLS、またはGYYRRATRRIRGGDGKMKDLSと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、付記13に記載の化合物。
【0102】
(付記23)
Yは、QRQKKQQTVTLLPAADLDDF、またはQRQKKQQTVTLLPAADLDDFと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、付記13または22に記載の化合物。
【0103】
(付記24)
nは1~8である、付記13に記載の化合物。
【0104】
(付記25)
付記1~24のいずれか一つに記載の化合物を含む組成物。
【0105】
(付記26)
付記1~24のいずれか一つに記載の化合物または付記13に記載の組成物を使用して光シグナルの強度を測定することを含む、免疫測定診断アッセイを校正する方法。
【0106】
(付記27)
付記6または7に記載の化合物を使用して光シグナルの強度を測定することを含む、インタクト副甲状腺ホルモン(iPTH)免疫測定診断アッセイを校正する方法。
【0107】
(付記28)
付記8または9に記載の化合物を使用して光シグナルの強度を測定することを含む、N末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)免疫測定診断アッセイを校正する方法。
【0108】
(付記29)
付記10または11に記載の化合物を使用して光シグナルの強度を測定することを含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)免疫測定診断アッセイを校正する方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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【国際調査報告】