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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】抗ユビキチン化抗体および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20240709BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240709BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240709BHJP
   C40B 40/10 20060101ALI20240709BHJP
   C07K 17/00 20060101ALI20240709BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12M1/34 F
C40B40/10
C07K17/00
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577515
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 US2022072995
(87)【国際公開番号】W WO2022266659
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/212,075
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カークパトリック, ドナルド エス.
(72)【発明者】
【氏名】ケルバー, ジェームズ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス, クリストファー ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB15
4B029CC01
4B029FA15
4B029GA03
4B029GA08
4B029GB06
4B029GB10
4B065AA01X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体およびそのような抗体をスクリーニングする方法が本明細書に提供される。N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドを検出または濃縮するために、そのような抗体を使用する検出および濃縮方法も本明細書に提供される。
【選択図】図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合し、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない抗体。
【請求項2】
GGA、GGE、GGF、GGG、GGH、GGI、GGL、GGM、GGN、GGQ、GGS、GGT、GGVおよびGGWからなる群から選択されるN末端配列を含むペプチドに結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
GGAのN末端配列を含むペプチド、GGEのN末端配列を含むペプチド、GGFのN末端配列を含むペプチド、GGGのN末端配列を含むペプチド、GGHのN末端配列を含むペプチド、GGIのN末端配列を含むペプチド、GGLのN末端配列を含むペプチド、GGMのN末端配列を含むペプチド、GGNのN末端配列を含むペプチド、GGQのN末端配列を含むペプチド、GGSのN末端配列を含むペプチド、GGTのN末端配列を含むペプチド、GGVのN末端配列を含むペプチド、およびGGWのN末端配列を含むペプチドに結合する、請求項1または請求項2に記載の抗体。
【請求項4】
ウサギ抗体、齧歯類抗体またはヤギ抗体である、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
完全長抗体またはFab断片である、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
検出可能な標識にコンジュゲートしている、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
標識が、ビオチン、ジゴキシゲニンおよびフルオレセインからなる群から選択される、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
固体支持体上に固定化されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
ビーズ上に固定化されている、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
Kabatに従ってナンバリングして、一方の側の35位にAsn、37位にVal、93位にThr、101位にAsnおよび103位にTrpを含む可変重鎖(VH)と、34位にAla、36位にTyrおよび49位にTyrを含む可変軽鎖(VL)とを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
抗体が、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体が、アミノ酸配列XXXMN(配列番号35)を含むCDRH1と、アミノ酸配列XXXXXGXXYYATWA(配列番号36)を含むCDRH2と、アミノ酸配列DDXXXXNX(配列番号37)を含むCDRH3とを含み、抗体が、アミノ酸配列QSXXSVYXXNXLX(配列番号38)を含むCDRL1と、アミノ酸配列XASTLXS(配列番号39)を含むCDRL2と、アミノ酸配列LGXXDCXSXDCXX(配列番号40)を含むCDRL3とを含み、Xが任意のアミノ酸である、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
VHが、配列番号33に記載のアミノ酸を含み、VLが、配列番号34に記載のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
抗体が、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むVHのCDRH1、CDRH2およびCDRH3と、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むVLのCDRL1、CDRL2およびCDRL3とを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
配列番号3に記載のCDRH1アミノ酸配列と、配列番号4に記載のCDRH2アミノ酸配列と、配列番号5に記載のCDRH3アミノ酸配列と、配列番号6に記載のCDRL1アミノ酸配列と、配列番号7に記載のCDRL2アミノ酸配列と、配列番号8に記載のCDRL3アミノ酸配列とを含む、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
VHが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の抗体。
【請求項16】
抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号52に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号53に記載のアミノ酸を含む、請求項13から15のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項17】
抗体が、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体が、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むVHのCDRH1、CDRH2およびCDRH3と、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVLのCDRL1、CDRL2およびCDRL3とを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項18】
配列番号11に記載のCDRH1アミノ酸配列と、配列番号12に記載のCDRH2アミノ酸配列と、配列番号13に記載のCDRH3アミノ酸配列と、配列番号14に記載のCDRL1アミノ酸配列と、配列番号15に記載のCDRL2アミノ酸配列と、配列番号16に記載のCDRL3アミノ酸配列とを含む、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
VHが、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の抗体。
【請求項20】
抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号54に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号55に記載のアミノ酸を含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項21】
抗体が、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体が、配列番号17に記載のアミノ酸配列を含むVHのCDRH1、CDRH2およびCDRH3と、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むVLのCDRL1、CDRL2およびCDRL3とを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項22】
配列番号19に記載のCDRH1アミノ酸配列と、配列番号20に記載のCDRH2アミノ酸配列と、配列番号21に記載のCDRH3アミノ酸配列と、配列番号22に記載のCDRL1アミノ酸配列と、配列番号23に記載のCDRL2アミノ酸配列と、配列番号24に記載のCDRL3アミノ酸配列とを含む、請求項21に記載の抗体。
【請求項23】
VHが、配列番号17に記載のアミノ酸を含み、VLが、配列番号18に記載のアミノ酸を含む、請求項22に記載の抗体。
【請求項24】
抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号56に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号57に記載のアミノ酸を含む、請求項21から23のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項25】
抗体が、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体が、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むVHのCDRH1、CDRH2およびCDRH3と、配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むVLのCDRL1、CDRL2およびCDRL3とを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項26】
配列番号27に記載のCDRH1アミノ酸配列と、配列番号28に記載のCDRH2アミノ酸配列と、配列番号29に記載のCDRH3アミノ酸配列と、配列番号30に記載のCDRL1アミノ酸配列と、配列番号31に記載のCDRL2アミノ酸配列と、配列番号32に記載のCDRL3アミノ酸配列とを含む、請求項25に記載の抗体。
【請求項27】
VHが、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号26に記載のアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の抗体。
【請求項28】
抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号58に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号59に記載のアミノ酸を含む、請求項25から27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項29】
請求項1から28のいずれか一項に記載の抗体をコードする核酸。
【請求項30】
請求項29に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項31】
N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をスクリーニングする方法であって、抗体が、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体が、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合せず、前記方法が、
i)抗体ライブラリーを提供すること、
ii)N末端にアミノ酸配列GGX(Xは任意のアミノ酸である)を含むペプチドに結合する抗体を正に選択すること、および
iii)アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドに結合する抗体を負に選択することを含み、
それによって、N末端にアミノ酸GGXを含むペプチドに特異的に結合し、アミノ酸配列K-ε-GGに結合しない抗体を産生することを含む、方法。
【請求項32】
工程ii)では、N末端にアミノ酸配列GGMを含むペプチドに結合する抗体が正に選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドに結合する抗体を負に選択することが、工程ii)と同時に行われる、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
工程ii)の前または後に、アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドに結合する抗体を負に選択する、、請求項31または32に記載の方法。
【請求項35】
ライブラリーが、ファージライブラリーまたは酵母ライブラリーである、請求項31から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
ライブラリーが、N末端にアミノ酸配列GGMを含むペプチドを含むペプチドライブラリーを用いて哺乳動物を免疫化することによって生成される、請求項31から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
哺乳動物が、ウサギまたはマウスである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
工程ii)~iii)が、2回以上繰り返される、請求項31から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
請求項31から38のいずれか一項に記載の方法によって産生される抗体。
【請求項40】
ペプチドの混合物を含む試料中のN末端ユビキチン化タンパク質のペプチドを濃縮する方法であって、
i)試料を、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体と接触させることと、
ii)試料から抗体結合ペプチドを選択することとを含み、抗体が、N末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体が、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない、方法。
【請求項41】
試料が細胞溶解物である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
細胞内のデユビキチナーゼを欠失させることと、細胞を溶解して細胞溶解物を生成することとをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
細胞内でユビキチンリガーゼを過剰発現させることと、細胞を溶解して細胞溶解物を生成することとをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
細胞溶解物が、ペプチドを生成するために、トリプシンとインキュベートされる、請求項41から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
細胞溶解物が、ペプチドを生成するために、細菌プロテアーゼまたはウイルスプロテアーゼとインキュベートされる、請求項41から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
溶解物生成の前に、かつトリプシンとのインキュベーションの前または細菌プロテアーゼもしくはウイルスプロテアーゼとのインキュベーションの前に、プロテアソーム阻害剤または脱ユビキチン化阻害剤によって細胞を処理することをさらに含む、請求項42から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
選択された抗体結合ペプチドを検出することをさらに含む、請求項40から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
抗体結合ペプチドが、質量分析によって検出される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
抗体結合ペプチドが、タンパク質配列決定によって検出される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
抗体結合ペプチドが、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体に結合する二次抗体を使用して検出される、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
請求項40から50のいずれか一項に記載の方法によって産生されたN末端ユビキチン化タンパク質のペプチドのライブラリー。
【請求項52】
ペプチドの混合物を含む試料中のN末端ユビキチン化タンパク質のペプチドを検出する方法であって、
i)試料を酵素とインキュベートして、ペプチドを生成すること、
ii)ペプチドを、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体と接触させること、および
iii)ペプチドを検出することを含み、抗体が、N末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体が、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない、方法。
【請求項53】
ペプチドが、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体に結合する二次抗体を使用して検出される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
試料が細胞溶解物である、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
細胞内のデユビキチナーゼを欠失させることと、細胞を溶解して細胞溶解物を生成することとをさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
細胞内でユビキチンリガーゼを過剰発現させることと、細胞を溶解して細胞溶解物を生成することとをさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
細胞溶解物が、ペプチドを生成するために、細菌プロテアーゼまたはウイルスプロテアーゼとインキュベートされる、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
溶解物生成の前に、かつ細菌プロテアーゼまたはウイルスプロテアーゼとのインキュベーションの前に、プロテアソーム阻害剤または脱ユビキチン化阻害剤によって細胞を処理することをさらに含む、請求項55から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体と、使用説明書とを含む、試料中のN末端ユビキチン化タンパク質のペプチドを検出するためのキットであって、抗体が、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合し、抗体が、N末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体が、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない、キット。
【請求項60】
抗体が、検出可能な標識にコンジュゲートしている、請求項59に記載のキット。
【請求項61】
検出可能な標識が、ビオチン、ジゴキシゲニンおよびフルオレセインからなる群から選択される、請求項60に記載のキット。
【請求項62】
抗体が、固体支持体上に固定化されている、請求項59から61のいずれか一項に記載のキット。
【請求項63】
抗体が、ビーズ上に固定化されている、請求項62に記載のキット。
【請求項64】
プロテアーゼをさらに含む、請求項59から63のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月17日に出願された米国仮特許出願第63/212,075号に対する優先権の利益を主張するものであり、上記仮特許出願の内容全体は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出物の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される:コンピュータ可読形態(CRF)の配列表(ファイル名:146392052340SEQLIST.TXT、記録日:2022年5月26日、サイズ:42,584バイト)。
【0003】
本発明は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
タンパク質ユビキチン化は、タンパク質ホメオスタシス、DNA損傷応答、自然免疫および適応免疫、細胞周期ならびに炎症シグナル伝達を含む多様な細胞機能を調節する複雑な翻訳後修飾である(Komander,D.&Rape,M.Annul Rev Biochem 81,203-229(2012);Yau,R.&Rape,M.Nat Cell Biol 18,579-586(2016);Swatek,K.N.&Komander,D.Cell Res 26,399-422(2016);Dittmar,G.&Winklhofer,K.F.Front Chem 7,915(2020))。タンパク質基質へのユビキチン(Ub)の共有結合は、3つの酵素、すなわち、E1 Ub活性化酵素、E2 Ub結合酵素(conjugating enzyme)およびE3 Ubリガーゼの協調活性によって起こる(Deshaies,R.J.&Joazeiro,C.A.P.Annu Rev Biochem 78,399-434(2009);Schulman,B.A.&Harper,J.W.Nat Rev Mol Cell Bio 10,319-331(2009);Ye,Y.&Rape,M.Nat Rev Mol Cell Bio 10,755-764(2009))。Ub自体は、7つのリジン残基(K6、K11、K27、K29、K33、K48およびK63)とN末端とを有し、これらはいずれもコンジュゲーションに適している(Komander,D.&Rape,M.Annu Rev Biochem 81,203-229(2012))。K48およびK63結合ポリユビキチン鎖は最もよく試験されており、従来の見解は、K48結合Ub鎖はプロテアソーム分解のためにタンパク質をマークするが、K63結合Ub鎖はタンパク質スカフォールディングの役割を有するというものである(Swatek,K.N.&Komander,D.Cell Res 26,399-422(2016);Hershko,A.&Ciechanover,A.Annu Rev Biochem 67,425-479(1998);Chen,Z.J.&Sun,L.J.Mol Cell 33,275-286(2009))。さらに、試験では、混合結合と分岐Ub鎖とが存在し、同型(homeotypic)K48またはK-63結合Ub鎖よりも強力な機能的シグナルとして機能し得ることが示されている(Kirkpatrick,D.S.et al.Nat Cell Biol 8,700-710(2006);Emmerich,C.H.et al.Proc National Acad Sci 110,15247-15252(2013);Meyer,H.J.&Rape,M.Cell 157,910-921(2014))。リジン残基のε-アミノ基へのUbのコンジュゲーションは、ユビキチン化の最も一般的な形態である。このタイプのコンジュゲーションは、UbペプチドのC末端グリシン残基(「GG」)がリジンのε-アミノ基(「K-ε」)に結合するK-ε-GGモチーフを形成する。Thr、Ser、Cys、および基質N末端のα-アミノ基などの他のアクセプター残基が同定されており、非カノニカルなユビキチン化標的であると考えられている(Cadwell,K.&Coscoy,L.Science 309,127-130(2005);Wang,X.et al.J Cell Biology 177,613-624(2007);Ciechanover,A.&Ben-Saadon,R.Trends Cell Biol 14,103-106(2004))。これらの非カノニカルなユビキチン化の生物学的重要性は十分に理解されていない。
【0005】
N末端Ubは、その最初の発見時に、タンパク質分解シグナルとして機能すると考えられた(Breitschopf,K.et al.,Embo J 17,5964-5973(1998);Bloom,J.et al.,Cell 115,71-82(2003);Coulombe,P.et al.,Mol Cell Biol 24,6140-6150(2004))。これらの試験では、リジン残基を欠く操作されたタンパク質、または天然に存在する、リジンを有しないタンパク質が、依然としてプロテアソーム分解を受けることが示され、N末端Ubが分解シグナルとして間接的に暗示された。その後の研究では、N末端ユビキチン化タンパク質はプロテアソーム阻害時に顕著に蓄積しないことが実証され、N末端ユビキチン化が、プロテアソーム媒介分解を促進すること、例えば、新生ポリペプチドのフォールディングを支援すること(Finley,D.et al.,Nature 338,394-401(1989))を超える追加の役割を有し得ることが示唆された(Akimov,V.et al.,Nat Struct Mol Biol 25,631-640(2018))。LUBACによって形成された直鎖ポリユビキチン鎖を除いて、UBE2Wは、UbのC末端Gly-76と基質タンパク質N末端のα-アミノ基との間にペプチド結合を形成すると報告されている唯一のE2 Ub結合酵素またはE3リガーゼ酵素である(Scaglione,K.M.et al.,J Biol Chem 288,18784-18788(2013);Kirisako,T.et al.Embo J 25,4877-4887(2006))。現在のデータでは、ユビキチンリガーゼと協調して、UBE2WがそれらのN末端でタンパク質基質を厳密にモノユビキチン化することが示唆されている。これらのプライミング修飾は、他のE2/E3複合体によってN末端結合ポリユビキチン鎖に同化され得る(Tatham,M.H.et al.,Biochem J 453,137-145(2013))。興味深いことに、UBE2Wは、本質的に無秩序なN末端を有する基質の認識にとって重要な部分的に無秩序なC末端を含有する(Vittal,V.et al.,Nat Chem Biol 11,83-89(2015))。N末端ユビキチン化、ならびにUBE2Wの構造的特性および生化学的特性の理解が高まっているにもかかわらず、同定されているのはN末端ユビキチン化UBE2W基質の小さなセットのみである。したがって、この修飾の生理的結果をさらに解明するために、N末端ユビキチン化タンパク質を同定するための新たな戦略が必要とされている。
【0006】
特に、質量分析と適合するN末端ユビキチン化タンパク質を全体的にプロファイリングする戦略がとりわけ有益であろう。質量分析(MS)は、アミノ酸残基レベルでの基質特異的ユビキチン化を同定および解明するための強力な分析ツールである(Peng,J.et al.Nat Biotechnol 21,921-926(2003);Kim,W.et al.Mol Cell 44,325-340(2011);Wagner,S.A.et al.Mol Cell Proteomics 10,M111.013284(2011))。1つの手法が、酵素的切断時に生成されたUb C末端レムナントを有するペプチドを特異的に濃縮するツールの生成であった。例えば、リジンの側鎖に結合したイソペプチド結合ジグリシン(K-ε-GG)からなるトリプシン性Ubレムナントを認識するモノクローナル抗体の開発により、ユビキチン化部位の全体的なプロファイリングが可能になった(Kim,W.et al.Mol Cell 44,325-340(2011);Xu,G.,et al.,Nat Biotechnol 28,868-873(2010);Bustos,D.,et al.,Mol Cell Proteomics 11,1529-1540(2012))。さらに近年では、Ubの伸長したLysC生成レムナントを認識し、Ubにコンジュゲートされた基質と、NEDD8およびISG15などの他のUb様タンパク質とを区別するためのモノクローナル抗体が生成された(Akimov,V.et al.,Nat Struct Mol Biol 25,631-640(2018))。他の親和性ベースの濃縮、または遺伝子タグ付け系も開発されている(Akimov,V.et al.,Nat Struct Mol Biol 25,631-640(2018);Peng,J.et al.Nat Biotechnol 21,921-926(2003);Akimov,V.et al.,J Proteome Res 17,296-304(2017);Kliza,K.et al.,Nat Methods 14,504-512(2017);Danielsen,J.M.R.et al.Mol Cell Proteomics 10,M110.003590(2011);Hjerpe,R.et al,.Embo Rep 10,1250-1258(2009);Akimov,V.et al.,Mol Biosyst 7,3223-3233(2011))。特に、これらの戦略のいくつかは、カノニカルなK-ε-GGペプチドだけでなく、N末端ユビキチン化に対応するペプチドも検出する(Akimov,V.et al.,Nat Struct Mol Biol 25,631-640(2018);Akimov,V.et al.,J Proteome Res 17,296-304(2017))。以前の定量的プロテオミクスデータは、典型的なタンパク質内のリジンの頻度、およびタンパク質の約80~90%がそれらのN末端でアセチル化され、N末端ユビキチン化を妨げることができるという事実を考慮すると、N末端Ub結合の相対存在量が基礎条件下では極めて低いことを示唆している(Akimov,V.et al.,Nat Struct Mol Biol 25,631-640(2018);Arnesen,T.et al.Proc National Acad Sci 106,8157-8162(2009);Aksnes,H.et al.,Cell Reports 10,1362-1374(2015))。したがって、当技術分野では、N末端ユビキチン化タンパク質に固有のペプチドを特異的に検出し濃縮することができる抗体が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
一態様では、本発明は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合し、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない抗体を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、抗体は、GGA、GGE、GGF、GGG、GGH、GGI、GGL、GGM、GGN、GGQ、GGS、GGT、GGVおよびGGWからなる群から選択されるN末端配列を含むペプチドに結合する。
【0009】
いくつかの実施形態では、抗体は、GGAのN末端配列を含むペプチド、GGEのN末端配列を含むペプチド、GGFのN末端配列を含むペプチド、GGGのN末端配列を含むペプチド、GGHのN末端配列を含むペプチド、GGIのN末端配列を含むペプチド、GGLのN末端配列を含むペプチド、GGMのN末端配列を含むペプチド、GGNのN末端配列を含むペプチド、GGQのN末端配列を含むペプチド、GGSのN末端配列を含むペプチド、GGTのN末端配列を含むペプチド、GGVのN末端配列を含むペプチド、およびGGWのN末端配列を含むペプチドに結合する。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗体は、ウサギ、齧歯類、またはヤギ抗体である。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗体は、完全長抗体またはFab断片である。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートしている。
【0013】
いくつかの実施形態では、標識は、ビオチン、ジゴキシゲニンおよびフルオレセインからなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗体は、固体支持体上に固定化されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗体は、ビーズ上に固定化されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗体は、Kabatに従ってナンバリングして、一方の側の35位にAsn、37位にVal、93位にThr、101位にAsnおよび103位にTrpを含む可変重鎖(VH)と、34位にAla、36位にTyrおよび49位にTyrを含む可変軽鎖(VL)とを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗体は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体は、アミノ酸配列XXXMN(配列番号35)を含むCDRH1と、アミノ酸配列XXXXXGXXYYATWA(配列番号36)を含むCDRH2と、アミノ酸配列DDXXXXNX(配列番号37)を含むCDRH3とを含み、抗体は、アミノ酸配列QSXXSVYXXNXLX(配列番号38)を含むCDRL1と、アミノ酸配列XASTLXS(配列番号39)を含むCDRL2と、アミノ酸配列LGXXDCXSXDCXX(配列番号40)を含むCDRL3とを含み、Xは任意のアミノ酸である。
【0018】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号33に記載のアミノ酸を含み、VLは、配列番号34に記載のアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗体は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むVHのCDRH1、CDRH2およびCDRH3と、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むVLのCDRL1、CDRL2およびCDRL3とを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号3に記載のCDRH1アミノ酸配列と、配列番号4に記載のCDRH2アミノ酸配列と、配列番号5に記載のCDRH3アミノ酸配列と、配列番号6に記載のCDRL1アミノ酸配列と、配列番号7に記載のCDRL2アミノ酸配列と、配列番号8に記載のCDRL3アミノ酸配列とを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、抗体は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むVHのCDRH1、CDRH2およびCDRH3と、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVLのCDRL1、CDRL2およびCDRL3とを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号11に記載のCDRH1アミノ酸配列と、配列番号12に記載のCDRH2アミノ酸配列と、配列番号13に記載のCDRH3アミノ酸配列と、配列番号14に記載のCDRL1アミノ酸配列と、配列番号15に記載のCDRL2アミノ酸配列と、配列番号16に記載のCDRL3アミノ酸配列とを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、抗体は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体は、配列番号17に記載のアミノ酸配列を含むVHのCDRH1、CDRH2およびCDRH3と、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むVLのCDRL1、CDRL2およびCDRL3とを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号19に記載のCDRH1アミノ酸配列と、配列番号20に記載のCDRH2アミノ酸配列と、配列番号21に記載のCDRH3アミノ酸配列と、配列番号22に記載のCDRL1アミノ酸配列と、配列番号23に記載のCDRL2アミノ酸配列と、配列番号24に記載のCDRL3アミノ酸配列とを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号17に記載のアミノ酸を含み、VLは、配列番号18に記載のアミノ酸を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、抗体は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体は、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むVHのCDRH1、CDRH2およびCDRH3と、配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むVLのCDRL1、CDRL2およびCDRL3とを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号27に記載のCDRH1アミノ酸配列と、配列番号28に記載のCDRH2アミノ酸配列と、配列番号29に記載のCDRH3アミノ酸配列と、配列番号30に記載のCDRL1アミノ酸配列と、配列番号31に記載のCDRL2アミノ酸配列と、配列番号32に記載のCDRL3アミノ酸配列とを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号26に記載のアミノ酸配列を含む。
【0031】
別の態様では、段落[0006]~[0029]のいずれか1つの抗体をコードする核酸が提供される。
【0032】
別の態様では、段落[0030]の核酸を含む宿主細胞が提供される。
【0033】
別の態様では、本発明は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をスクリーニングする方法であって、抗体が、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体が、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合せず、
i)抗体ライブラリーを提供すること、
ii)N末端にアミノ酸配列GGX(Xは任意のアミノ酸である)を含むペプチドに結合する抗体を正に選択すること、および
iii)アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドに結合する抗体を負に選択し、
それによって、N末端にアミノ酸GGXを含むペプチドに特異的に結合し、アミノ酸配列K-ε-GGに結合しない抗体を産生することを含む、方法を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態では、工程ii)では、N末端にアミノ酸配列GGMを含むペプチドに結合する抗体が正に選択される。
【0035】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドに結合する抗体を負に選択することが、工程ii)と同時に行われる。
【0036】
いくつかの実施形態では、工程ii)の前または後に、アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドに結合する抗体を負に選択する。
【0037】
いくつかの実施形態では、ライブラリーはファージライブラリーまたは酵母ライブラリーである。
【0038】
いくつかの実施形態では、ライブラリーは、N末端にアミノ酸配列GGMを含むペプチドを含むペプチドライブラリーを用いて哺乳動物を免疫化することによって生成される。
【0039】
いくつかの実施形態では、哺乳動物はウサギまたはマウスである。
【0040】
いくつかの実施形態では、工程ii)~iii)は2回以上繰り返される。
【0041】
別の態様では、段落[0032]~[0039]のいずれか1つの方法によって産生される抗体が提供される。
【0042】
別の態様では、本発明は、ペプチドの混合物を含む試料中のN末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法であって、
i)試料を、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体と接触させることと、
ii)試料から抗体結合ペプチドを選択することとを含み、抗体が、N末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体が、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない、方法を提供する。
【0043】
いくつかの実施形態では、試料は細胞溶解物である。
【0044】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞内のデユビキチナーゼを欠失させることと、細胞を溶解して細胞溶解物を生成することとをさらに含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞内でユビキチンリガーゼを過剰発現させることと、細胞を溶解して細胞溶解物を生成することとをさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、ペプチドを生成するために、トリプシンとインキュベートされる。
【0047】
いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、ペプチドを生成するために、細菌プロテアーゼまたはウイルスプロテアーゼとインキュベートされる。
【0048】
いくつかの実施形態では、方法は、溶解物生成の前に、かつトリプシンとのインキュベーションの前または細菌プロテアーゼもしくはウイルスプロテアーゼとのインキュベーションの前に、プロテアソーム阻害剤または脱ユビキチン化阻害剤によって細胞を処理することをさらに含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、方法は、選択された抗体結合ペプチドを検出することをさらに含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、抗体結合ペプチドは、質量分析によって検出される。
【0051】
いくつかの実施形態では、抗体結合ペプチドは、タンパク質配列決定によって検出される。
【0052】
いくつかの実施形態では、抗体結合ペプチドは、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体に結合する二次抗体を使用して検出される。
【0053】
別の態様では、段落[0041]~[0051]のいずれか1つの方法によって生成されたN末端ユビキチン化ペプチドのライブラリーが提供される。
【0054】
別の態様では、本発明は、ペプチドの混合物を含む試料中のN末端ユビキチン化ペプチドを検出する方法であって、
i)試料を酵素とインキュベートして、ペプチドを生成すること、
ii)ペプチドを、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体と接触させること、および
iii)N末端ユビキチン化ペプチドを検出することを含み、抗体が、N末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体が、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない、方法を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドは、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体に結合する二次抗体を使用して検出される。
【0056】
いくつかの実施形態では、試料は細胞溶解物である。
【0057】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞内でユビキチンリガーゼを過剰発現させることと細胞を溶解して細胞溶解物を生成することとをさらに含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞内のデユビキチナーゼを欠失させることと、細胞を溶解して細胞溶解物を生成することとをさらに含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、ペプチドを生成するために、細菌プロテアーゼまたはウイルスプロテアーゼとインキュベートされる。
【0060】
いくつかの実施形態では、方法は、溶解物生成の前に、かつ細菌プロテアーゼまたはウイルスプロテアーゼとのインキュベーションの前に、プロテアソーム阻害剤または脱ユビキチン化阻害剤によって細胞を処理することをさらに含む。
【0061】
別の態様では、本発明は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体と、使用説明書とを含む、試料中のN末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットであって、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体、抗体が、N末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体が、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない、キットを提供する。
【0062】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートしている。
【0063】
いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、ビオチン、ジゴキシゲニンおよびフルオレセインからなる群から選択される。
【0064】
いくつかの実施形態では、抗体は、固体支持体上に固定化されている。
【0065】
いくつかの実施形態では、抗体は、ビーズ上に固定化されている。
【0066】
いくつかの実施形態では、キットは、プロテアーゼをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1A】抗GGXモノクローナル抗体(mAb)を生成するために使用される免疫化およびファージパニング戦略の模式的概要を示す。
図1B】Gly-Gly-Metペプチド(GGM;上)およびK-ε-GGペプチド(下)の化学構造を示す。
図1C】ストレプトアビジンを対照として用いて、ウサギ8匹の各々由来のポリクローナル抗体(pAb)がGGMペプチドおよびK-ε-GGペプチドに結合する能力を測定する酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)から得られたデータを提供する。ウサギの同一性をx軸上に示し、個々のバーは、各ウサギについて左から右に、GGMペプチド、K-ε-GGペプチドおよびストレプトアビジンへの結合レベルを表す。650nmでの光学濃度をy軸上に示す。
図1D】モノクローナル抗体1C7、2H2、2E9および2B12の軽鎖可変領域(上)および重鎖可変領域(下)のアミノ酸配列アライメントを示す。軽鎖可変領域アライメントは、上から下に、1C7(配列番号2)、2H2(配列番号26)、2E9(配列番号18)および2B12(配列番号10)を含む。重鎖可変領域アライメントは、上から下に、1C7(配列番号1)、2H2(配列番号25)、2E9(配列番号17)および2B12(配列番号9)を含む。Kabatによるアミノ酸位置のナンバリング、およびCDRの位置を各アライメントの上に示す。
図1E】対照としてニュートラアビジンを用いて、1C7、2B12、2E9、2H2および抗K-ε-GG mAbがGGMペプチドおよびK-ε-GGペプチドに結合する能力を測定するELISAからのデータを示す。抗体の同一性をx軸上に示し、個々のバーは、各抗体について左から右に、GGMペプチド、K-ε-GGペプチドおよびニュートラアビジンへの結合レベルを表す。650nmでの光学濃度をy軸上に示し(n=3)、エラーバーは標準偏差を示す。
図1F】1C7、2B12、2E9および2H2がGGXペプチドに結合する能力を測定するELISAからのデータを示す。y軸上に示されるように、システインを除く20個のアミノ酸全部が「X」位で置換された。抗体の同一性をx軸上に示す。陰影が濃くなるほど良好な結合に対応し(すなわち、右側のスケールに示すように、650nmでの光学濃度が高くなる)、ブランク行はストレプトアビジン対照であり、n=3である。
図2A】GGMペプチド(スティック線図(stick diagram)として示す)に結合した1C7 Fabの表面表現を示す。1C7 CDRの位置が標識されている。
図2B】1σで輪郭付けした、電子密度メッシュ内に包まれた、GGMペプチド(スティック線図として示す)に結合した1C7 Fabのカートーン表現を示す。
図2C】水素結合ネットワーク、ならびに軽鎖および重鎖の両方との接触を示す、ジグリシンと1C7 Fabとの間の相互作用の詳細図を示す。GGMペプチドは、空間充填図によって囲まれたスティック線図として示されている。重鎖残基をGGMペプチドの上に示し、軽鎖残基をGGMペプチドの下に示す。抗体およびGGMペプチド上のアミノ酸残基が標識されている。
図2D】疎水性残基および親水性残基の混合物を含有する、軽鎖-重鎖接触面に位置するメチオニン認識ポケットの詳細図を示す。重鎖残基を上に示し、軽鎖残基を下に示す。アミノ酸残基が標識されている。
図2E】1C7 Fabの構造にモデリングしたGly-Gly-Pro(GGP)ペプチド(スティック線図として示す)を示し、抗体への結合を妨げる可能性が高い立体的衝突を強調している。
図2F】Trp側鎖に結合し得る、2B12のポケットのモデルを示し、HC Thr93Val残基およびLC Leu96Asn残基が示されている。
図3A】GGXペプチドの免疫親和性濃縮および質量分析(MS)(GGX-IAP-LC-MS/MS)のためのワークフローの概略図を示す。
図3B】抗K-ε-GG抗体、抗GGX抗体2B12および抗GGX抗体1C7免疫親和性濃縮MS実験におけるK48およびK63 K-ε-GGポリユビキチン鎖結合ペプチドLIFAGKGGQLEDGR(配列番号41;左)およびTLSDYNIQKGGESTLHLVLR(配列番号42;右)に関する抽出イオンクロマトグラム(+/-10ppm)を示す。x軸は分単位の時間を示し、y軸はペプチドの存在量を示す。
図3C】抗K-ε-GG抗体、抗GGX抗体2E9および抗GGX抗体2H2免疫親和性濃縮MS実験におけるK48およびK63 K-ε-GGポリユビキチン鎖結合ペプチドLIFAGKGGQLEDGR(配列番号41;左)およびTLSDYNIQKGGESTLHLVLR(配列番号42;右)に関する抽出イオンクロマトグラム(+/-10ppm)を示す。x軸は分単位の時間を示し、y軸はペプチドの存在量を示す。
図3D】抗K-ε-GG抗体、抗GGX抗体2B12および抗GGX抗体1C7免疫親和性濃縮MS実験における内部GGXペプチドGGMLTNAR(配列番号43;左)およびGGMoxALALAVTK(配列番号44;右)に関する抽出イオンクロマトグラム(+/-10ppm)を示す。x軸は分単位の時間を示し、y軸はペプチドの存在量を示す。
図3E】抗K-ε-GG抗体、抗GGX 2E9抗体および抗GGX 2H2抗体免疫親和性濃縮MS実験における内部GGXペプチドGGLATFHGPGQLLCHPVLDLR(配列番号45;左)およびGGMTSTYGR(配列番号46;右)に関する抽出イオンクロマトグラム(+/-10ppm)を示す。x軸は分単位の時間を示し、y軸はペプチドの存在量を示す。
図3F】X位に様々なアミノ酸残基を有する免疫親和性濃縮内部GGXペプチドの数を示す。x軸はX位のアミノ酸残基を示し、y軸はペプチドの数を示す。
図3G】抗GGX mAb 1C7(左上)、2H2(右上)、2B12(左下)および2E9(右下)によって濃縮された内部GGXペプチドの配列多様性を表すWebLogoを示す。
図3H】抗K-ε-GG抗体、抗GGX抗体2B12および抗GGX抗体1C7免疫親和性濃縮MS実験におけるN末端GGXペプチドGGMFGSAPQRPVAMTTAQR(配列番号47)に関する抽出イオンクロマトグラム(+/-4ppm)を示す。x軸は分単位の時間を示し、y軸はペプチドの存在量を示す。
図3I】三重荷電654.9938m/z N末端GGX修飾ペプチドGGMFGSAPQRPVAMTTAQR(配列番号47)のMS/MSスペクトル同定を示す。検出されたbイオンおよびyイオンが標識されている。
図4A】ドキシサイクリン処理の24時間後の安定なドキシサイクリン誘導性UBE2W HEK293細胞のウエスタンブロットを示す。下に、チューブリンのウエスタンブロットを対照として示す。
図4B】無標識GGX-MS実験におけるUBE2W過剰発現(UBE2Woe)対対照条件に関する差次的なN末端タンパク質ユビキチン化データを示すボルケーノプロットを示す。x軸はlog倍率変化(FC)を示し、y軸は-log10(P値)を示す。各データ点は1つのタンパク質を表し、示されているタンパク質名の代表的なセット。log倍率変化(FC)>1.0および-log10 P値>1.3(P<0.05)に設定されたタンパク質レベルカットオフを破線で示す。
図4C】ドキシサイクリン処理の24時間後の安定なドキシサイクリン誘導性UBE2W/RNF4 HEK293細胞のウエスタンブロットを示す。
図4D】タンデム質量タグ付け(tandem mass tagging)(TMT)11-plex GGX-IAP-LC-MS/MS実験における、UBE2W過剰発現対対照(UBE2Woe-ctrl)およびコンボ対RNF4過剰発現(コンボ-RNF4oe)の対比における差次的なN末端タンパク質ユビキチン化を有するタンパク質を示す散布図を示す。x軸はUBE2W過剰発現対対照のlog倍率変化(FC)を示し、y軸は、コンボ対RNF4過剰発現のlog倍率変化(FC)を示す。データ点のサイズは、P値によってスケーリングされている。破線は、両対比において-log10 P値>1.3(P<0.05)のものに対応する。複製物(対照n=3、UBE2Wのみn=3、RNF4のみn=2、およびコンボn=3)を用いて全実験を行った。
図4E】無標識GGX-MS実験における、UBE2W過剰発現対対照(UBE2Woe-Ctrl;左)、コンボ対対照(コンボ-Ctrl;中央)およびコンボ対RNF4過剰発現(コンボ-RNF4oe;右)条件に関する差次的なN末端タンパク質ユビキチン化データを示すボルケーノプロットを示す。各プロットでは、x軸はlog倍率変化(FC)を示し、y軸は-log10(P値)を示す。各データ点は1つのタンパク質を表す。破線で示された、log倍率変化>1.0および-log10 P値>1.3(P<0.05)に設定されたタンパク質レベルカットオフ。
図4F】無標識GGX-MS実験における、UBE2W過剰発現対対照およびコンボ対RNF4過剰発現の対比における差次的なN末端タンパク質ユビキチン化を有するタンパク質を示す散布図を示す。x軸はUBE2W過剰発現対対照(UBE2Woe-ctrl)のlog倍率変化(FC)を示し、y軸は、コンボ対RNF4過剰発現(コンボ-RNF4oe)のlog倍率変化(FC)を示す。データ点のサイズは、P値によってスケーリングされている。破線は、両対比において-log10 P値>1.3(P<0.05)のものに対応する。
図4G】3つのMS実験の各々からの同定された推定UBE2W基質の数を比較する面積比例ベン図を示す。第1の無標識定量(LFQ)実験(LFQ_1)は左上の円であり、第2のLFQ実験(LFQ_2)は左下の円であり、TMT実験は右の円である。数字は、各実験内で同定された、または複数の実験間で共有された基質の数を表す。BioVennウェブアプリケーション(Hulsen,T.et al.,BMC Genomics 9,488(2008))を使用してベン図を生成した。
図4H】相対的なN末端ユビキチン化存在量を示すヒストグラムを示し、個々のバーは、生物学的複製物に対応する個々のTMT-11plexチャネルの値を示す。各バーは、技術的複製物(n=2)の平均を表す。左から右に、RS7、MIP18およびQKIの結果を示す。各プロットでは、x軸は実験から得られた試料を表し、y軸は相対存在量を示す。
図4I】推定UBE2W基質のリジンを有しない変異体5つをコードするコンストラクトによってトランスフェクトされた野生型、ドキシサイクリン誘導性UBE2W/RNF4およびドキシサイクリン誘導性UBE2WW144E/RNF4安定HEK293細胞のウエスタンブロットを示す。抗HAタグ抗体を使用して、タンパク質検出用の各コンストラクトのC末端にHAタグを融合した。矢印は、各基質の修飾型を示す。結果は、3つの独立した実験の代表である。各ブロットの下に、チューブリンのウエスタンブロットを対照として示す。
図4J】イニシエーターメチオニンの後の免疫親和性濃縮UBE2W基質の2番目の位置の分析を示す。x軸はイニシエーターメチオニンの後のX位のアミノ酸残基を示し、y軸はペプチドの数を示す。
図5A】GGX-IAP-LC-MS/MS実験からの対照(CTLR;上部プロット)およびUBE2W過剰発現(UBE2W oe;下部プロット)条件における、それぞれUCHL1(左)およびUCHL5(右)のN末端トリプシン性GGXペプチドGGMQLKPMEINPEMLNK(配列番号48)およびGGMTGNAGEWCLMESDPGVFTELIK(配列番号49)に関する抽出イオンクロマトグラム(+/-10ppm)を示す。x軸は分単位の時間を示し、y軸はペプチドの存在量を示す。
図5B】N末端トリプシン性GGX修飾ペプチドGGMQLKPMEINPEMLNK(配列番号48)(三重荷電、643.9907m/z;左)およびGGMTGNAGEWCLMESDPGVFTELIK(配列番号49)(三重荷電、900.4094m/z;右)のMS/MSスペクトル同定を示す。検出されたbイオンおよびyイオンが標識されている。
図5C】GGX-IAP-LC-MS/MS実験からの対照(CTLR;上部プロット)およびUBE2W過剰発現(UBE2Woe;下部プロット)条件における、それぞれUCHL1(左)およびUCHL5(右)のN末端半トリプシン性(semi-tryptic)GGXペプチドGGMQLKPME(配列番号50)およびGGMTGNAGEWCLME(配列番号51)に関する抽出イオンクロマトグラム(+/-10ppm)を示す。x軸は分単位の時間を示し、y軸はペプチドの存在量を示す。
図5D】N末端半トリプシン性GGX修飾ペプチドGGMQLKPME(配列番号50)(二重荷電、495.7406m/z;左)およびGGMTGNAGEWCLME(配列番号51)(二重荷電、756.7994m/z;右)のMS/MSスペクトル同定を示す。検出されたbイオンおよびyイオンが標識されている。
図5E】リジンを有しない触媒的に不活性なUCHL1(上)およびUCHL5(下)に対して行ったin vitroユビキチン化アッセイの結果を示す。UBE2Wの非存在下(レーン1および2)およびUBE2Wの存在下(レーン3~5)で2時間の反応を行った。ユビキチンを用いて(レーン2)または用いずに(レーン5)、全反応物をE1、E3(RNF4)、ATP/MgClとインキュベートした。結果は、3つの独立した実験の代表である。
図5F】ドキシサイクリン処理の24時間後のドキシサイクリン誘導性UBE2W/RNF4およびUBE2WW144E/RNF4 HEK293細胞のウエスタンブロットを示す。抗UCHL1抗体を用いて、内因性UCHL1発現を分析した。結果は、3つの独立した実験の代表である。
図5G】ドキシサイクリン処理の24時間後のドキシサイクリン誘導性UBE2W/RNF4 HEK293細胞のウエスタンブロットを示す。細胞採取前に、ボルテゾミブ(10μM、5時間)によって細胞をさらに処理した。
図5H】ドキシサイクリン処理の24時間後のドキシサイクリン誘導性UBE2W/RNF4 HEK293細胞のウエスタンブロットを示す。細胞採取前に、シクロヘキシミド(10μg/ml)によって、示された時間にわたって細胞をさらに処理した。
図6A】Bio-Layer干渉法(BLI)実験の概略図を示す。ストレプトアビジン(SA)バイオセンサー上の固定化ビオチン-ユビキチン(Ub)を使用して、UCHL1およびUCHL5相互作用を測定し、遊離UCHL1またはUCHL5およびUb-UCHL1またはUCHL5とUb表面との会合を測定した。
図6B】(最高応答から最低応答までの)UCHL1、UbG76V-UCHL1、UbI44A,G76V-UCHL1、UCHL5、UbG76V-UCHL5、およびUbI44A,G76V-UCHL5に関する組み合わされた定常状態結合曲線を示す。x軸は被分析物の濃度をnM単位で示し、y軸は被分析物の各濃度に関するRmax値をnm単位で示す。各アッセイを3重で行った。
図6C】野生型UCHL1(上)、N末端ユビキチン化模倣物(UbG76V-UCHL1;中央)またはUbI44A,G76V-UCHL1(下)へのUbの結合を示す代表的なセンサーグラムを示す。
図6D】野生型UCHL5(上)、N末端ユビキチン化模倣物(UbG76V-UCHL5;中央)またはUbI44,AG76V-UCHL5(下)へのUbの結合を示す代表的なセンサーグラムを示す。
図6E】ユビキチン-Rho110およびUCHL1コンストラクト(左)およびUCHL5コンストラクト(右)を用いて行った活性アッセイの結果を示す。UCHL1およびUCHL5については、試料は、野生型タンパク質(丸として示す)、触媒的に死滅した変異体(C90SまたはC88S;白四角として示す)、N末端ユビキチン化模倣物(UbG76V;黒四角として示す)、またはUbI144,AG76V(上向き三角形)を含んでいた。各プロットでは、x軸はユビキチン-Rho110の濃度をμM単位で示し、y軸は反応速度をμM s-1単位で示す。データは、非線形回帰フィットからの標準誤差を伴う最良適合値として報告されている。結果は、2つの独立した実験の代表である。
図6F】ユビキチンビニルスルホンアッセイの結果を示す。示された時点(0、5、15または30分)にわたって、UCHL1、そのN末端ユビキチン化模倣物、UbG67V-UCHL1、およびUbI44A,G67V-UCHL1(左)、ならびにUCHL5、そのN末端ユビキチン化模倣物、UbG67V-UCHL5、およびUbI44A,G67V-UCHL5(右)を、自殺プローブ(suicide probe)であるユビキチン-ビニルスルホン(Ub-VS)と反応させた。矢印は、HA-Ub-VSと反応するN末端ユビキチン化模倣物に関連するバンドを示す。結果は、3つの独立した実験の代表である。
図6G】左から右に、ドキシサイクリン処理の24時間後の、空のベクター、野生型UCHL1、UbG76V-UCHL1、UCHL1C90S(触媒的に不活性な変異体)、UbG76V-UCHL1C90S、またはUCHL1D30K(非Ub結合変異体)によってトランスフェクトしたHEK293細胞のウエスタンブロットを示す。矢印によってモノユビキチンを示す。結果は、2つの独立した実験の代表である。チューブリンのウエスタンブロットを対照として示す。
図7A】プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブによる処理を用いた、または用いない、UBE2W過剰発現を有する、または有しない、試料中のユビキチンレベルおよびUBE2Wレベルのウエスタンブロットを示す。チューブリンのウエスタンブロットを対照として示す。
図7B】UBE2W過剰発現対Ctrl(左)、およびコンボ対ボルテゾミブ処理(コンボ-Btz;左)に関する差次的なN末端タンパク質ユビキチン化データを示すボルケーノプロットを示す。各プロットでは、x軸はlog倍率変化(FC)を示し、y軸は-log10(P値)を示す。各データ点は1つのタンパク質を表す。
図7C】x軸に沿って左から右に、対照の2つの複製物、ボルテゾミブ(Btz)処理の2つの複製物、UBE2W過剰発現の2つの複製物、およびRNF4/UBE2Wの組合せの2つの複製物に関する無標識ピーク面積を示すヒートマップを示す。y軸は、示されたタンパク質のレベルを示す。
図7D】対照の2つの複製物、ボルテゾミブ(Btz)処理の2つの複製物、UBE2W過剰発現の2つの複製物、およびRNF4/UBE2Wの組合せの2つの複製物の間の相関を示す試料相関表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
I.定義
本明細書で使用される「GGX」は、N末端にアミノ酸配列(N末端からC末端)Gly-Gly-Xを含むペプチドを指し、ここで、Xは任意のアミノ酸である。
【0069】
本明細書で使用される「抗GGX抗体」は、N末端にGGXペプチドを含むポリペプチドに結合する抗体を指す。
【0070】
本明細書で使用される「K-ε-GG」は、リジン残基(「K-ε」)のε-アミノ基に結合した2つのグリシン残基(「GG」)を指す。K-ε-GGは、ユビキチン化の最も一般的な形態である、リジン残基のε-アミノ基へのユビキチンのコンジュゲーションのシグネチャーである。ユビキチンの3つのC末端残基はArg-Gly-Glyであり、カノニカルなユビキチン化では、C末端グリシン残基は、標的ポリペプチド内のリジン残基にコンジュゲートしている。トリプシンによって消化すると、ユビキチンはアルギニン残基の後で切断され、コンジュゲートされたリジン上にGly-Glyジペプチドレムナントが生じる。したがって、トリプシン消化ポリペプチド内のK-ε-GGペプチド(「K-ε-GGジ-グリシンレムナント」または「分岐ジグリシン」とも呼ばれる)の存在は、ポリペプチド内のリジン残基のε-アミノ基へのユビキチンの事前のコンジュゲーションを示す。K-ε-GGの化学構造を図1Bに示す。
【0071】
「抗体」という用語は、本明細書では最も広い意味で用いられ、限定はしないが、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を含めた、様々な抗体構造を包含する。
【0072】
「抗体断片」とは、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、限定するものではないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化により、各々単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と、容易に結晶化するその能力を反映して命名された残りの「Fc」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片が産生される。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋し得るF(ab’)断片をもたらす。
【0073】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、例えば、天然に存在する変異を含有するか、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる可能性のあるバリアント抗体(例えば、そのようなバリアントは一般に微量で存在する)を除いて、集団を構成する個々の抗体は同一であり、および/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の製造を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない種々の手法によって作製され得、モノクローナル抗体を作製するためのこのような方法および他の例示的な方法は、本明細書中に記載される。
【0074】
「ネイキッド抗体」は、異種部分(例えば、細胞傷害性部分)または放射性標識にコンジュゲートしていない抗体を指す。ネイキッド抗体は、薬学的製剤中に存在してもよい。
【0075】
「天然抗体」は、様々な構造を有する天然に生じる免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる、可変領域(VH)、それに続く3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有する。同様に、N末端からC末端jにかけて、各軽鎖は、可変領域(VL)(可変軽ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる)と、それに続く1つの定常軽(CL)ドメインとを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのうちの1つに割り当てられ得る。
【0076】
抗体の「クラス」とは、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域のタイプのことを指す。抗体には5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgAおよびIgAにさらに分類され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに相当する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0077】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生された抗体の、またはヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列、あるいは他のヒト抗体をコードする配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0078】
用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の起源または種に由来し、その重鎖および/または軽鎖の残りの部分が、異なる起源または種に由来する抗体のことを指す。
【0079】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL配列またまたはヒト免疫グロブリンVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループから行われる。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3にあるようなサブグループである。一実施形態では、VLについて、サブグループは上記のKabat et al.にあるようなサブグループカッパIである。一実施形態では、VHについて、サブグループは上記のKabat et al.にあるようなサブグループIIIである。
【0080】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトCDR由来のアミノ酸残基と、ヒトFR由来のアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、CDRの全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のCDRに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のFRに対応する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0081】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、類似の構造を一般に有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの相補性決定領域(CDR)とを含む。(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照)。抗原結合特異性を付与するには、単一のVHドメインまたはVLドメインで十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体を、その抗原に結合する抗体のVHドメインまたはVLドメインを用いて単離し、相補的なVLドメインまたはVHドメインそれぞれのライブラリーをスクリーニングしてもよい。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993);Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照されたい。
【0082】
例示的なCDR(CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2およびCDRH3)は、L1のアミノ酸残基24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1の31~35B、H2の50~65、およびH3の95~102に存在する。(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991).)VHにおけるCDR1を除き、CDRは、概して、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRは、「特異性決定領域」、すなわち「SDR」も含み、それは、抗原と接触する残基である。SDRは、略語-CDR、すなわちa-CDRと呼ばれるCDRの領域内に含まれる。例示的なa-CDR(a-CDRL1、a-CDRL2、a-CDRL3、a-CDRH1、a-CDRH2およびa-CDRH3)は、L1のアミノ酸残基31~34、L2の50~55、L3の89~96、H1の31~35B、H2の50~58、およびH3の95~102に存在する。(Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照。)別途指示がない限り、可変ドメイン内のCDR残基および他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上記のKabat et al.に従ってナンバリングされる。
【0083】
「Fab」断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における少数の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインの1つまたは複数のシステイン残基が、遊離チオール基を持つFab’の本明細書での呼称である。F(ab’)抗体断片は、元来、間にヒンジシステインを有する一対のFab’断片として生成された。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
【0084】
本明細書中の用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域およびバリアントFc領域を包含する。特定の実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端に及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在しても存在しなくてもよい。本明細書で特に明記されない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されるような、EU番号付けシステム(EUインデックスとも呼ばれる)に従う。
【0085】
「フレームワーク」または「FR」は、CDR残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3およびFR4から一般になる。したがって、CDR配列およびFR配列は、VH(またはVL)では、以下の配列で一般に現れる:FR1-CDRH1(L1)-FR2-CDRH2(L2)-FR3-CDRH3(L3)-FR4。
【0086】
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、および「全抗体」は、本明細書中で交換可能に使用され、天然型抗体構造と実質的に類似の構造を有するか、または本明細書で定義されるFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0087】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」および「宿主細胞培養物」という用語は、交換可能に使用され、外因性の核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、これらは、継代数によらず、一次形質転換細胞およびそれに由来する子孫を含む。子孫は、核酸の含有量が親細胞と完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。元の形質転換細胞においてスクリーニングまたは選択されたのと同じ機能または生物活性を有する変異子孫が、本明細書に含まれる。
【0088】
「イムノコンジュゲート」とは、細胞傷害剤を含むがこれに限定されない、1種以上の異種分子にコンジュゲートされた抗体である。
【0089】
「単離」抗体は、その天然環境の成分から分離されたものである。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)によって決定される場合、95%超または99%超の純度まで精製される。抗体純度を評価する方法の概要については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照されたい。
【0090】
「単離された」核酸は、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸には、通常核酸分子を含有する細胞内に含有される核酸分子が含まれるが、核酸分子は、染色体外、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0091】
「添付文書」という用語は、治療用製品の市販パッケージに通例含まれる説明書であって、そのような治療用製品の使用に関する適応症、用法、用量、投与、併用療法、禁忌および/または警告についての情報を含む説明書を指すために使用される。
【0092】
基準となるポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列同一性最大パーセントが得られるように、配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入した後に、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、基準となるポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のための整列は、当技術分野における技術の範囲内にある種々の方法において、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較される配列の完全長にわたる最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアライメントするための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が作成したものであり、ソースコードは、使用者用書類とともに、米国著作権局、Washington D.C.、20559に提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.(South San Francisco,California)から公的に入手可能であるか、またはそのソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含む、UNIXオペレーティングシステムでの使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変わらない。
【0093】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Bに対する、アミノ酸配列Bとの、またはアミノ酸配列Bとの対照での、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに対し、アミノ酸配列Bと、またはアミノ酸配列Bとの対照で、特定のアミノ酸配列同一性%を有するかもしくは含む、所与のアミノ酸配列Aとして記述することができる)は、以下のように計算される:
100×分数X/Y
ここで、Xは配列アライメントプログラムALIGN-2により、AとBのそのプログラムのアライメントにおいて同一と一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。別途明記しない限り、本明細書で使用される全ての%アミノ酸配列同一性値が、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用し、直前の段落で説明したように、得られる。
【0094】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸を増殖させることのできる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造体としてのベクター、およびそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。ある種のベクターは、それが作動可能に連結されている核酸の発現を誘導することができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0095】
本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、別途指示がない限り、複数への言及を含む。
【0096】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、この技術分野の当業者であれば容易に理解する、それぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」に続く値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(且つ説明する)。
【0097】
本明細書に記載の本発明の態様および実施形態が、態様および実施形態「を含む」、「からなる」、および「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0098】
II.組成物および方法
一態様では、本開示は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのエピトープなどの領域と相互作用するか、または他の方法で結合する抗体を提供する。
【0099】
A.N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体
1.N末端ユビキチン化ポリペプチド
本開示は、N末端ユビキチン化ポリペプチドを特異的に検出し濃縮することができる抗体の開発に部分的に基づく。実施例1に記載されるように、本発明者らは、潜在的なN末端ユビキチン化ポリペプチドのかなりの部分が、トリプシン消化の際に開始メチオニン残基の前にジグリシン修飾を有するペプチドを生じる、アセチル化されていないインタクトなイニシエーターメチオニンを有する新生ポリペプチドであると予測した。したがって、N末端にジグリシン配列を含有するトリプシン性ペプチドを選択的に濃縮することができる抗体を同定するための選択を設計した(図1Aおよび実施例1を参照)。本明細書に詳細に記載されるように、ウサギ免疫ファージ戦略を使用して、N末端ジグリシンモチーフを有するペプチドを選択的に認識するが、ユビキチンコンジュゲートリジンのトリプシン消化によって生成された分岐ジグリシンレムナントは認識しない新規抗体を生成した(K-ε-GG;図1Aおよび実施例1を参照)。生化学的方法と構造的方法との組合せを使用して、本明細書では、これらの抗体が、第3のアミノ酸に対する緩和された選択性を伴ってN末端ジグリシンを主に認識し、これらのmAbが広範囲のペプチド配列に結合することを可能にすることが示される(実施例2を参照)。
【0100】
N末端ユビキチン化ポリペプチドを生成することができる2つの酵素が、当技術分野では知られている。第1に、ユビキチン結合酵素UBE2Wは、N末端ユビキチンを有することが報告されている(Scaglione,K.M.et al.,J Biol Chem 288,18784-18788(2013))。第2に、ユビキチンリガーゼである線状ユビキチン鎖集合体複合体(「LUBAC」)は、N末端ユビキチン鎖を含むことが報告されている(Kirisako,T.et al.,Embo J 25,4877-4887(2006))。したがって、いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドはUBE2Wである。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドはLUBACである。
【0101】
一態様では、本開示の抗体を使用して、N末端ユビキチン化ポリペプチドを同定した(実施例3~4を参照)。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、細胞溶解物(例えば、HEK293細胞溶解物、または誘導可能なUBE2W発現を有するHEK293細胞の溶解物)からN末端ユビキチン化ポリペプチドを選択的に濃縮する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドは、イニシエーターメチオニンまたはネオN末端(neo-N-terminus)にジグリシンを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ポリペプチドのN末端にアミノ酸配列GGXを含む。いくつかの実施形態では、濃縮は、実施例3または実施例4に記載されるように計算される。いくつかの実施形態では、抗体は、細胞溶解物からのポリペプチドを1log(倍率変化)を超える(例えば、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9または10log(倍率変化)を超える)レベルまで濃縮する。いくつかの実施形態では、抗体は、細胞溶解物からのポリペプチドをp<0.05(例えば、p<0.05、p<0.04、p<0.03、p<0.02、p<0.01、p<0.005、p<0.001、p<0.0001またはp<0.00001)である統計学的有意性まで濃縮する。いくつかの実施形態では、濃縮は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体と接触していない細胞溶解物中のポリペプチドの存在量に対して計算される。誘導可能なUBE2W発現を有するHEK293細胞の溶解物からポリペプチドが選択的に濃縮されるいくつかの実施形態では、ポリペプチドは、UBE2W発現の誘導時に濃縮される。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドは、表7または表8に列挙されたポリペプチドのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドは、ヒトDCTP1、ヒトF13A、ヒトHNRPK、ヒトPUR9、ヒトRFA1、ヒトRPB7、ヒトS11IPおよびヒトUCHL5からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドは、ヒトAAAT、ヒトAES、ヒトAIG1、ヒトARF1、ヒトARL5B、ヒトBABA2、ヒトBUB3、ヒトC1TC、ヒトC2AIL、ヒトC9J470、ヒトCD81、ヒトCDC45、ヒトDCTP1、ヒトDHRSX、ヒトDMKN、ヒトE2AK1、ヒトEF1B、ヒトF13A、ヒトFA60A、ヒトFBRL、ヒトFLOT1、ヒトGCYB1、ヒトGOT1B、ヒトGPAA1、ヒトHIKES、ヒトHNRPK、ヒトIMPA3、ヒトLAT3、ヒトLAT4、ヒトLRWD1、ヒトMED25、ヒトMFS12、ヒトMIP18、ヒトMMGT1、ヒトMOONR、ヒトNARR、ヒトNDUB6、ヒトNENF、ヒトNOL6、ヒトNOP10、ヒトNUDC、ヒトP121A、ヒトPIGC、ヒトPLBL2、ヒトPRDX1、ヒトPRDX2、ヒトPUR9、ヒトQKI、ヒトRAD21、ヒトRCAS1、ヒトREEP1、ヒトRFA1、ヒトRPB1、ヒトRPB7、ヒトRS29、ヒトRS7、ヒトS11IP、ヒトSGMR1、ヒトT179B、ヒトTAF1、ヒトTCPG、ヒトTF3C4、ヒトTM127、ヒトTMM97、ヒトTMX2、ヒトTSN13、ヒトTSN3、ヒトTTC27、ヒトUBAC1、ヒトUBAC2、ヒトUCHL1、ヒトUCHL5、ヒトVKOR1、ヒトVRK3、ヒトZDH12、ヒトZN253およびヒトZN672からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドはヒトUCHL1である。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドはヒトUCHL5である。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドは、UniProtアクセッション番号Q15758、Q08117、Q9NVV5、P84077、Q96KC2、Q9NXR7、O43684、P11586、Q96HQ2、C9J470、P60033、O75419、Q9H773、Q8N5I4、Q6E0U4-8、Q9BQI3、P24534、P00488、Q9NP50、P22087、O75955、Q02153、Q9Y3E0、O43292、Q53FT3、P61978、Q9NX62、O75387、Q8N370、Q9UFC0、Q71SY5、Q6NUT3、Q9Y3D0、Q8N4V1、Q2KHM9、P0DI83、O95139、Q9UMX5、Q9H6R4、Q9NPE3、Q9Y266、Q96HA1、Q92535、Q8NHP8、Q06830、P32119、P31939、Q96PU8、O60216、O00559、Q9H902、P27694、P24928、P62487、P62273、P62081、Q8N1F8、Q99720、Q7Z7N9、P21675、P49368、Q9UKN8、O75204、Q5BJF2、Q9Y320、O95857、O60637、Q6P3X3、Q9BSL1、Q8NBM4、P09936、Q9Y5K5、Q9BQB6、Q8IV63、Q96GR4、O75346およびQ499Z4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドは、無秩序なN末端を含む。
【0102】
2.N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体
N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、抗体は、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体は、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない。いくつかの実施形態では、Xは任意のアミノ酸である。
【0103】
N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合し、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない抗体が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、抗体は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって決定される場合、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、ELISAによって決定される場合、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合するよりも大きい程度まで、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列への抗体の結合レベルの2、3、4、5、6、7、8、9または10倍を超える(これらの値の間の任意の値または範囲を含む)結合レベルで結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに、対照試料(例えば、ニュートラアビジンまたはストレプトアビジン)への抗体の結合レベルの2、3、4、5、6、7、8、9または10倍を超える(これらの値の間の任意の値または範囲を含む)結合レベルで結合する。いくつかの実施形態では、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXはGGMである。結合を測定する例示的な方法は、実施例1(「モノクローナル抗体ELISA」を参照)および図1Eに提供されている。
【0104】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、対照抗体がペプチドに結合するよりも高い親和性で、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合する。いくつかの実施形態では、対照抗体は、アイソタイプ対照である。いくつかの実施形態では、対照抗体は、抗K-ε-GG抗体(例えば、Cell Signaling Technology(登録商標)PTMScan(登録商標)Ubiquitin Remnant Motif抗体)である。いくつかの実施形態では、抗体は、ウエスタンブロットでは、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、ペプチドのN末端にアミノ酸配列GGXを含むペプチドを免疫沈降することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、ペプチドのN末端にアミノ酸配列GGXを含むペプチドと共結晶化することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイでは、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに特異的に結合する。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗体は、100、10、1または0.1μM未満の解離定数(K)でN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、75または100μM(これらの値の間の任意の値または範囲を含む)であるKでN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、100、10または1nM未満のKでN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、250、500、750または1000nMであるK(これらの値の間の任意の値または範囲を含む)でN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、Kは、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して測定される。いくつかの実施形態では、Kは、GGMペプチドへの結合を測定することによって測定される。
【0106】
分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない抗体が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、抗体は、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合せず、抗体の結合は、バックグラウンドを超えて検出することができないか、または陰性対照と同じレベル(例えば、非特異的結合のレベル、または結合ニュートラアビジンのレベル)である。いくつかの実施形態では、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列への抗体の結合は、検出することができない(例えば、ELISA、SPRアッセイ、ウエスタンブロットおよび/または免疫沈降法によって検出することができない)。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗体は、N末端ユビキチン化ポリペプチドへの抗体の結合レベルの50%、40%、30%、20%、10%未満のレベル(これらの値の間の任意の値または範囲を含む)で、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合し、抗体は、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体がニュートラアビジンに結合するのと同じ程度に、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体がストレプトアビジンに結合するのと同じ程度に、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合する。いくつかの実施形態では、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列への抗体の結合レベルは、陰性対照試料への結合レベル(例えば、ニュートラアビジンまたはストレプトアビジンへの結合レベル)の1.1、1.2、1.3、1.4または1.5倍以下である。いくつかの実施形態では、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列への抗体の結合レベルは、陰性対照試料への結合レベル(例えば、ニュートラアビジンまたはストレプトアビジンへの結合レベル)と統計的に有意に異ならない。
【0108】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、GGA、GGE、GGF、GGG、GGH、GGI、GGL、GGM、GGN、GGQ、GGS、GGT、GGVおよびGGWからなる群から選択されるN末端配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGA配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGE配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGF配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGG配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGH配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGI配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGL配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGM配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGN配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGQ配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGS配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGT配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGV配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGW配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、GGA、GGE、GGF、GGG、GGH、GGI、GGL、GGM、GGN、GGQ、GGS、GGT、GGVおよびGGWのN末端配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、GGAのN末端配列を含むペプチド、GGEのN末端配列を含むペプチド、GGFのN末端配列を含むペプチド、GGGのN末端配列を含むペプチド、GGHのN末端配列を含むペプチド、GGIのN末端配列を含むペプチド、GGLのN末端配列を含むペプチド、GGMのN末端配列を含むペプチド、GGNのN末端配列を含むペプチド、GGQのN末端配列を含むペプチド、GGSのN末端配列を含むペプチド、GGTのN末端配列を含むペプチド、GGVのN末端配列を含むペプチド、およびGGWのN末端配列を含むペプチドに結合する。
【0109】
いくつかの実施形態では、抗体は、ペプチドの任意の組合せを含む、GGA、GGE、GGF、GGG、GGH、GGI、GGL、GGM、GGN、GGQ、GGS、GGT、GGVおよびGGWからなる群から選択されるN末端配列を含む1つ以上のペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGA配列を含むペプチド、N末端GGE配列を含むペプチド、N末端GGF配列を含むペプチド、N末端GGG配列を含むペプチド、N末端GGH配列を含むペプチド、N末端GGI配列を含むペプチド、N末端GGL配列を含むペプチド、N末端GGM配列を含むペプチド、N末端GGN配列を含むペプチド、N末端GGQ配列を含むペプチド、N末端GGS配列を含むペプチド、N末端GGT配列を含むペプチド、およびN末端GGV配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGA配列を含むペプチド、N末端GGF配列を含むペプチド、N末端GGI配列を含むペプチド、N末端GGL配列を含むペプチド、N末端GGM配列を含むペプチド、N末端GGV配列を含むペプチド、およびN末端GGW配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGA配列を含むペプチド、N末端GGF配列を含むペプチド、N末端GGI配列を含むペプチド、N末端GGL配列を含むペプチド、N末端GGM配列を含むペプチド、N末端GGN配列を含むペプチド、およびN末端GGQ配列を含むペプチド、N末端GGS配列を含むペプチド、およびN末端GGT配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGA配列を含むペプチド、N末端GGE配列を含むペプチド、N末端GGF配列を含むペプチド、N末端GGG配列を含むペプチド、N末端GGH配列を含むペプチド、N末端GGI配列を含むペプチド、N末端GGL配列を含むペプチド、N末端GGM配列を含むペプチド、N末端GGN配列を含むペプチド、N末端GGQ配列を含むペプチド、N末端GGS配列を含むペプチド、N末端GGT配列を含むペプチド、およびN末端GGV配列を含むペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、N末端GGA配列を含むペプチド、N末端GGE配列を含むペプチド、N末端GGF配列を含むペプチド、N末端GGG配列を含むペプチド、N末端GGH配列を含むペプチド、N末端GGI配列を含むペプチド、N末端GGL配列を含むペプチド、N末端GGM配列を含むペプチド、N末端GGN配列を含むペプチド、N末端GGQ配列を含むペプチド、N末端GGS配列を含むペプチド、N末端GGT配列を含むペプチド、N末端GGV配列を含むペプチド、およびN末端GGW配列を含むペプチドに結合する。例示的な抗体の特異性を図1Fに示す。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗体は、ウサギ抗体、齧歯類抗体またはヤギ抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ウサギもしくはウサギ細胞によって産生される抗体、またはウサギ抗体レパートリーもしくは他のウサギ抗体コード配列を利用する非ウサギ供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するウサギ抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はウサギに由来する。いくつかの実施形態では、抗体は、ニュージーランド白ウサギに由来する。いくつかの実施形態では、抗体は齧歯類に由来する。いくつかの実施形態では、抗体はヤギに由来する。いくつかの実施形態では、抗体は、ウサギ抗体、ヤギ抗体または齧歯類抗体に由来するFc領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ウサギ、ヤギ、または齧歯類抗体由来の抗体断片を含む。
【0111】
本発明のさらなる態様では、上記の実施形態のいずれかによるN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディまたはF(ab’)断片である。別の実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、完全長抗体、例えば、インタクトなIgG1抗体、または本明細書で定義される他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。いくつかの実施形態では、抗体は完全長抗体、Fab断片またはscFvである。いくつかの実施形態では、抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgMクラスの抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はIgGクラスのものである。いくつかの実施形態では、抗体はIgGクラスのものであり、IgGアイソタイプ、IgGアイソタイプ、IgGアイソタイプまたはIgGアイソタイプを有する。いくつかの実施形態では、抗体はIgAクラスのものであり、IgAアイソタイプまたはIgAアイソタイプを有する。
【0112】
本発明のさらなる態様では、上記の実施形態のいずれかによる、または本明細書に記載されるN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、異種部分、薬剤または標識にコンジュゲートしている。適切な標識の例は、蛍光色素標識、化学発光標識、放射性標識などの直接検出され得る部分と、検出されるために反応させなければならないかまたは誘導しなければならない酵素などの部分とを含む、イムノアッセイにおける使用のために知られている多数の標識である。そのような標識の例には、色素前駆体、例えば、HRP、ラクトペルオキシダーゼまたはミクロペルオキシダーゼを酸化するために過酸化水素を使用する酵素、ビオチン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ストレプトアビジン-HRP、およびストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼとMUGによって検出可能)、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定フリーラジカルなどと結合される放射性同位体32P、14C、125I、Hおよび131I、フルオロフォア、例えば、希土類キレートまたはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン類、HRP、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、複素環式オキシダーゼ、例えば、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼが挙げられる。いくつかの実施形態では、標識は、ビオチン、ジゴキシゲニンおよびフルオレセインからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、上記の実施形態のいずれかによるN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、ビオチンにコンジュゲートしている。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗体は、固体支持体上に固定化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、ビーズ上に固定化されている。いくつかの実施形態では、固定化は、非水溶性マトリックスもしくは表面への吸着(米国特許第3,720,760号)、もしくは非共有結合もしくは共有結合カップリング(例えば、米国特許第3,645,852号またはRotmans et al.;J.Immunol.Methods,57:87-98(1983)に記載されているような硝酸および還元剤などによる支持体の事前の活性化の有無にかかわらず、グルタルアルデヒドまたはカルボジイミド系架橋剤を使用する)によって、またはその後、例えば、免疫沈降法によって抗体を不溶化することによって達成される。固定化に使用される固体支持体は、本質的に非水溶性な任意の不活性支持体または担体であってよく、例えば、表面、粒子、多孔性マトリックスなどの形態の支持体を含む。一般に使用される固体支持体の例には、小さなシート、SEPHADEX(登録商標)ゲル、ポリ塩化ビニル、プラスチックビーズ、およびポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリスチレンなどから製造されるアッセイプレートまたは試験管が含まれ、これには、96ウェルマイクロタイタープレート、ならびにろ紙、アガロース、架橋デキストラン、およびその他多糖類といった粒子材料が含まれる。
【0114】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、一方の側の35位にAsn、37位にVal、93位にThr、101位にAsn、および103位にTrpを含む可変重鎖(VH)を含む。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、Kabatに従ってナンバリングして、34位にAla、36位にTyr、および49位にTyrを含む可変軽鎖(VL)を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体は、アミノ酸配列XXXMN(配列番号35)を含むCDRH1と、アミノ酸配列XXXXXGXXYYATWA(配列番号36)を含むCDRH2と、アミノ酸配列DDXXXXNX(配列番号37)を含むCDRH3とを含み、抗体は、アミノ酸配列QSXXSVYXXNXLX(配列番号38)を含むCDRL1と、アミノ酸配列XASTLXS(配列番号39)を含むCDRL2と、アミノ酸配列LGXXDCXSXDCXX(配列番号40)を含むCDRL3とを含み、Xは任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号33に記載のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号34に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号33に記載のアミノ酸を含み、VLは、配列番号34に記載のアミノ酸配列を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、表2Aおよび表2Bに示されるように、抗体1C7の1、2、3、4、5または6つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、表3に示されるように、抗体1C7のVHおよび/またはVLを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、表4に示されるように、抗体1C7の重鎖および/または軽鎖を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある特定の実施形態では、VH配列は、配列番号1のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号1を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号1では合計1~13個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH1、(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRH2、および(c)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRH3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含む。
【0118】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体が提供される。ある特定の実施形態では、VL配列は、配列番号2のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号2を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号2では合計1~11個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDRL2、および(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDRL3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含む。
【0119】
一実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLと、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHとを含む。
【0120】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRH3を含むVHと、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDRL2、および配列番号8のアミノ酸配列を含むCDRL3を含むVLとを含む抗体が提供される。
【0121】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、配列番号1に記載の配列を有するVHのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3と、配列番号2に記載の配列を有するVLのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3とを含む抗体が提供される。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号52のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖を含む。ある特定の実施形態では、重鎖配列は、配列番号52のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号52を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号52では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号52に記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号53のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖配列は、配列番号53のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号53を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号53では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号53に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、表2Aおよび表2Bに示されるように、抗体2B12の1、2、3、4、5または6つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、表3に示されるように、抗体2B12のVHおよび/またはVLを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、表4に示されるように、抗体2B12の重鎖および/または軽鎖を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある特定の実施形態では、VH配列は、配列番号9のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号9を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号9では合計1~13個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDRH1、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDRH2、および(c)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDRH3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含む。
【0126】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体が提供される。ある特定の実施形態では、VL配列は、配列番号10のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号10を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号10では合計1~11個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDRL1、(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDRL2、および(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDRL3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含む。
【0127】
一実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLと、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHとを含む。
【0128】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むCDRH3を含むVHと、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDRL2、および配列番号16のアミノ酸配列を含むCDRL3を含むVLとを含む抗体が提供される。
【0129】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、配列番号9に記載の配列を有するVHのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3と、配列番号10に記載の配列を有するVLのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3とを含む抗体が提供される。
【0130】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号54のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖を含む。ある特定の実施形態では、重鎖配列は、配列番号54のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号54を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号52では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号54に記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号55のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖配列は、配列番号55のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号55を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号55では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号55に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、表2Aおよび表2Bに示されるように、抗体2E9の1、2、3、4、5または6つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、表3に示されるように、抗体2E9のVHおよび/またはVLを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、表4に示されるように、抗体2E9の重鎖および/または軽鎖を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある特定の実施形態では、VH配列は、配列番号17のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号17を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号17では合計1~13個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDRH1、(b)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDRH2、および(c)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDRH3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含む。
【0134】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドのペプチドに結合する抗体であって、配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体が提供される。ある特定の実施形態では、VL配列は、配列番号18のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号18を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号18では合計1~11個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDRL1、(b)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDRL2、および(c)配列番号24のアミノ酸配列を含むCDRL3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含む。
【0135】
一実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含むVLと、配列番号17のアミノ酸配列を含むVHとを含む。
【0136】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号21のアミノ酸配列を含むCDRH3を含むVHと、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDRL2、および配列番号24のアミノ酸配列を含むCDRL3を含むVLとを含む抗体が提供される。
【0137】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、配列番号17に記載の配列を有するVHのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3と、配列番号18に記載の配列を有するVLのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3とを含む抗体が提供される。
【0138】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号56のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖を含む。ある特定の実施形態では、重鎖配列は、配列番号56のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号56を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号56では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号56に記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号57のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖配列は、配列番号57のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号57を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号53では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、表2Aおよび表2Bに示されるように、抗体2H2の1、2、3、4、5または6つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、表3に示されるように、抗体2H2のVHおよび/またはVLを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、表4に示されるように、抗体2H2の重鎖および/または軽鎖を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドのペプチドに結合する抗体は、配列番号25のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある特定の実施形態では、VH配列は、配列番号25のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号25を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号25では合計1~13個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号27のアミノ酸配列を含むCDRH1、(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むCDRH2、および(c)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDRH3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含む。
【0142】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体が提供される。ある特定の実施形態では、VL配列は、配列番号26のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号26を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号26では合計1~11個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDRL1、(b)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDRL2、および(c)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDRL3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含む。
【0143】
一実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、配列番号26のアミノ酸配列を含むVLと、配列番号25のアミノ酸配列を含むVHとを含む。
【0144】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号28のアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号29のアミノ酸配列を含むCDRH3を含むVHと、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDRL2、および配列番号32のアミノ酸配列を含むCDRL3を含むVLとを含む抗体が提供される。
【0145】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、配列番号25に記載の配列を有するVHのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3と、配列番号26に記載の配列を有するVLのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3とを含む抗体が提供される。
【0146】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号58のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖を含む。ある特定の実施形態では、重鎖配列は、配列番号58のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号58を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号58では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号59のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖配列は、配列番号59のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号59を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号59では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0148】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、上に提供される実施形態のいずれかのようなVHと、上に提供される実施形態のいずれかのようなVLとを含む抗体が提供される。
【0149】
別の態様では、上記の実施形態のいずれかによる、または本明細書に記載されるN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体のうちの1つ以上を含む組成物が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、抗体のうちの1つ以上を含む組成物は、薬学的に許容される担体を含む。
【0150】
本明細書に記載のN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体を産生する方法も本明細書に提供される。
【0151】
3.抗体バリアント
ある特定の実施形態では、本明細書に提供されるN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製されてもよい。このような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列内の残基への挿入、および/または抗体のアミノ酸配列内の残基の置換が挙げられる。最終コンストラクトが所望の特性、例えば、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドへの結合を有する限り、最終コンストラクトに到達するために、欠失、挿入および置換の任意の組合せを行うことができる。
【0152】
ある特定の実施形態では、1種以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換変異誘発に関心のある部位には、CDRおよびFRが含まれる。好ましい保存的置換は、「好ましい置換」という見出しの下に表1に示される。さらに実質的な変化は、「例示的な置換」という見出しの下に表1に提供され、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される通りである。アミノ酸置換を目的の抗体に導入し、その産物を所望の活性、例えば抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングすることができる。
【0153】
アミノ酸は、共通する側鎖の特性に従って以下のように分類することができる。
・疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
・中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
・酸性:Asp、Glu;
・塩基性:His、Lys、Arg;
・鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
・芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0154】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0155】
ある種の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基またはCDR残基を置換することを伴う。一般に、さらなる試験のために選択される得られたバリアントは、親抗体と比較して特定の生物学的特性に修飾(例えば、改良)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低下)を有する、および/または親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持する。例示的な置換バリアントは、アフィニティ成熟した抗体であり、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイに基づくアフィニティ成熟技術を用い、簡便に作成されてもよい。要約すると、1つ以上のCDR残基を変異させ、バリアント抗体をファージ上に提示し、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
【0156】
例えば、抗体親和性を改善するために、CDRにおいて変更(例えば、置換)が行われ得る。そのような改変は、CDR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟過程中に高頻度で変異を経るコドンによってコードされた残基(例えば、Chowdhury,Methods Afol.Biol.207:179-196(2008)を参照)、および/またはSDR(a-CDR)に対して行われてもよく、得られたバリアントVHまたはVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリーを構築し、それから再選択することによる親和性成熟が、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001).)に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指定突然変異)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリーが作成される。次いで、このライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を持つ任意の抗体バリアントを同定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのCDR残基(例えば、一度に4~6残基)をランダム化するCDR指定手法を伴う。抗原結合に関与するCDR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発またはモデル化を使用して特異的に同定され得る。特に、CDRH3およびCDRL3が多くの場合標的とされる。
【0157】
特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1以上のCDR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)がCDRに対して行われ得る。そのような変更は、CDR「ホットスポット」またはSDRの範囲外であり得る。上記で提供された変異体VHおよびVL配列の特定の実施形態では、各CDRは、改変されていないか、または1以上、2以上、または3以上のアミノ酸置換を含まない。
【0158】
突然変異誘発の標的となり得る、抗体の残基または領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085に記載されているように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、標的残基のうちのある残基または群(例えば、Arg、Asp、His、LysおよびGluなどの荷電残基)が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えばアラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられる。更なる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の位置に導入され得る。
【0159】
これに代えて、またはこれに加えて、抗体と抗原との間の接点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基および隣接残基は、置換の候補として、標的化または排除され得る。バリアントをスクリーニングして、所望の特性を含むかどうかを決定することができる。
【0160】
アミノ酸配列挿入物には、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合体、ならびに単一または多数のアミノ酸残基の配列内挿入物が含まれる。末端挿入物の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入バリアントには、酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの抗体のN末端もしくはC末端への融合が含まれ、これは抗体の血清半減期を増加させる。
【0161】
B.核酸、ベクター、宿主細胞
N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸も本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、核酸は、本明細書中に記載される抗体のいずれかをコードする。
【0162】
いくつかの実施形態では、核酸は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードし、抗体は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体は、アミノ酸配列XXXMN(配列番号35)を含むCDRH1と、アミノ酸配列XXXXXGXXYYATWA(配列番号36)を含むCDRH2と、アミノ酸配列DDXXXXNX(配列番号37)を含むCDRH3とを含み、抗体は、配列番号QSXXSVYXXNXLX(配列番号38)に記載のCDRL1配列と、アミノ酸配列XASTLXS(配列番号39)を含むCDRL2と、アミノ酸配列LGXXDCXSXDCXX(配列番号40)を含むCDRL3とを含み、Xは任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号33に記載のアミノ酸を含むVHを含む抗体をコードする。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号34に記載のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体をコードする。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号33に記載のアミノ酸を含むVHと、配列番号34に記載のアミノ酸配列を含むVLとを含む抗体をコードする。
【0163】
いくつかの実施形態では、核酸は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードし、抗体は、表2Aおよび表2Bに示されるように、抗体1C7の1、2、3、4、5または6つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、表3に示されるように、抗体1C7のVHおよび/またはVLを含む抗体をコードする。いくつかの実施形態では、核酸は、表4に示されるように、抗体1C7の重鎖および/または軽鎖を含む抗体をコードする。
【0164】
いくつかの実施形態では、核酸は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードし、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある特定の実施形態では、核酸は、配列番号1のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号1を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持するVH配列をコードする。ある特定の実施形態では、配列番号1では合計1~13個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、核酸は、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH1、(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRH2、および(c)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRH3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含むVHを含む抗体をコードする。
【0165】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸が提供され、抗体は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、核酸は、配列番号2のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号2を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持するVL配列を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、配列番号2では合計1~11個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、核酸は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDRL2、および(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDRL3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含むVLを含む抗体をコードする。
【0166】
一実施形態では、核酸は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードし、抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLと、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHとを含む。
【0167】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸が提供され、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRH3を含むVHと、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDRL2、および配列番号8のアミノ酸配列を含むCDRL3を含むVLとを含む。
【0168】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸が提供され、抗体は、配列番号1に記載の配列を有するVHのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3と、配列番号2に記載の配列を有するVLのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3とを含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号52のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、重鎖配列は、配列番号52のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号52を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号52では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号52に記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号53のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、軽鎖配列は、配列番号53のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号53を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号53では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号53に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、核酸は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードし、抗体は、表2Aおよび表2Bに示されるように、抗体2B12の1、2、3、4、5または6つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、表3に示されるように、抗体2B12のVHおよび/またはVLを含む抗体をコードする。いくつかの実施形態では、核酸は、表4に示されるように、抗体2B12の重鎖および/または軽鎖を含む抗体をコードする。
【0172】
いくつかの実施形態では、核酸は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードし、抗体は、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある特定の実施形態では、核酸は、配列番号9のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号9を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する能力を保持するVH配列を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、配列番号9では合計1~13個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、核酸は、(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDRH1、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDRH2、および(c)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDRH3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含むVHを含む抗体をコードする。
【0173】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸が提供され、抗体は、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、核酸は、配列番号10のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号10を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する能力を保持するVL配列を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、配列番号10では合計1~11個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、核酸は、(a)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDRL1、(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDRL2、および(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDRL3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含むVLを含む抗体をコードする。
【0174】
一実施形態では、核酸は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードし、抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLと、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHとを含む。
【0175】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸が提供され、抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むCDRH3を含むVHと、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDRL2、および配列番号16のアミノ酸配列を含むCDRL3を含むVLとを含む。
【0176】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸が提供され、抗体は、配列番号9に記載の配列を有するVHのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3と、配列番号10に記載の配列を有するVLのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3とを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号54のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、重鎖配列は、配列番号54のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号54を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号54では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号54に記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号55のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、軽鎖配列は、配列番号55のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号55を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号55では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号55に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、核酸は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードし、抗体は、表2Aおよび表2Bに示されるように、抗体2E9の1、2、3、4、5または6つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、表3に示されるように、抗体2E9のVHおよび/またはVLを含む抗体をコードする。いくつかの実施形態では、核酸は、表4に示されるように、抗体2E9の重鎖および/または軽鎖を含む抗体をコードする。
【0180】
いくつかの実施形態では、核酸は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードし、抗体は、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある特定の実施形態では、核酸は、配列番号17のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号17を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する能力を保持するVH配列を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、配列番号17では合計1~13個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、核酸は、(a)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDRH1、(b)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDRH2、および(c)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDRH3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含むVHを含む抗体をコードする。
【0181】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸が提供され、抗体は、配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、核酸は、配列番号18のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号18を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持するVL配列を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、配列番号18では合計1~11個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、核酸は、(a)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDRL1、(b)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDRL2、および(c)配列番号24のアミノ酸配列を含むCDRL3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含むVLを含む抗体をコードする。
【0182】
一実施形態では、核酸は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードし、抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含むVLと、配列番号17のアミノ酸配列を含むVHとを含む。
【0183】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸が提供され、抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号21のアミノ酸配列を含むCDRH3を含むVHと、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDRL2、および配列番号24のアミノ酸配列を含むCDRL3を含むVLとを含む。
【0184】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸が提供され、抗体は、配列番号17に記載の配列を有するVHのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3と、配列番号18に記載の配列を有するVLのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3とを含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号56のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、重鎖配列は、配列番号56のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号52を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号56では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号56に記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号57のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、軽鎖配列は、配列番号57のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号57を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号57では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、核酸は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードし、抗体は、表2Aおよび表2Bに示されるように、抗体2H2の1、2、3、4、5または6つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、表3に示されるように、抗体2H2のVHおよび/またはVLを含む抗体をコードする。いくつかの実施形態では、核酸は、表4に示されるように、抗体2H2の重鎖および/または軽鎖を含む抗体をコードする。
【0188】
いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号25のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする。ある特定の実施形態では、核酸は、配列番号25のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号25を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する能力を保持するVH配列を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、配列番号25では合計1~13個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、核酸は、(a)配列番号27のアミノ酸配列を含むCDRH1、(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むCDRH2、および(c)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDRH3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含むVHを含む抗体をコードする。
【0189】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸が提供され、抗体は、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、核酸は、配列番号26のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号26を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する能力を保持するVL配列を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、配列番号26では合計1~11個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。特定の実施形態では、核酸は、(a)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDRL1、(b)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDRL2、および(c)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDRL3からなる群から選択される1、2または3つのCDRを含むVLを含む抗体をコードする。
【0190】
一実施形態では、核酸は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードし、抗体は、配列番号26のアミノ酸配列を含むVLと、配列番号25のアミノ酸配列を含むVHとを含む。
【0191】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸が提供され、抗体は、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号28のアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号29のアミノ酸配列を含むCDRH3を含むVHと、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDRL2、および配列番号32のアミノ酸配列を含むCDRL3を含むVLとを含む。
【0192】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸が提供され、抗体は、配列番号25に記載の配列を有するVHのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3と、配列番号26に記載の配列を有するVLのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列をそれぞれ含むVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3とを含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号58のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、重鎖配列は、配列番号58のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号58を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号58では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号59のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖を含む抗体をコードする。ある特定の実施形態では、軽鎖配列は、配列番号59のアミノ酸配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、配列番号59を含む抗体としてN末端ユビキチン化ポリペプチドに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号59では合計1~20個のアミノ酸が置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0195】
別の態様では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸が提供され、抗体は、上に提供される実施形態のいずれかのようなVHと、上に提供される実施形態のいずれかのようなVLとを含む。
【0196】
本明細書に記載の核酸のいずれか1つを含むベクターも本明細書に提供される。ベクター、および/または本明細書に記載の核酸のいずれか1つを含む宿主細胞も本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は単離または精製される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、細胞培地中にある。
【0197】
抗体産生のために、本明細書に記載の核酸を含むベクターは、例えば、NS0細胞などの当技術分野で公知の適切な産生細胞株に導入され得る。発現ベクターの導入は、エレクトロポレーションまたは当技術分野で利用可能な任意の他の適切な形質転換技術による同時トランスフェクションによって達成され得る。次いで、抗体産生細胞株を選択し、増殖させ、ヒト化抗体を精製し得る。次いで、精製された抗体を、SDS-PAGEなどのカノニカルな技術によって分析し得る。
【0198】
N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をコードする核酸を含む宿主細胞も提供される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本明細書に記載の抗体のいずれかをコードする核酸を含む。抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現のための適切な宿主細胞には、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞が含まれる。例えば、特に、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要ない場合には、抗体は細菌内で産生されてもよい。細菌内の抗体断片およびポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、米国特許第5,789,199号および米国特許第5,840,523号を参照されたい。(大腸菌(E.coli)内の抗体断片の発現を記載しているCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照。)発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離されてもよく、さらに精製され得る。
【0199】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現宿主としては、原核生物に加えて、糸状菌や酵母などの真核微生物が適しており、その中にはグリコシル化経路が「ヒト化」されており、結果として部分的または完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体を産生する真菌株や酵母株も含まれる。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、およびLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照されたい。
【0200】
また、グリコシル化抗体を発現させるのに適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物細胞および昆虫細胞が含まれる。昆虫細胞と組み合わせて、特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに使用され得るバキュロウイルス株が数多く同定されている。
【0201】
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している)米国特許第5,959,177号、米国特許第6,040,498号、米国特許第6,420,548号、米国特許第7,125,978号および米国特許第6,417,429号を参照されたい。
【0202】
脊椎動物細胞も、宿主として使用される。例えば、懸濁液中で増殖するように適合されている哺乳動物細胞株は有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓系統(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載される293または293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されるTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562)、例えば、Mather et al.,Annals N Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載されるTRI細胞、MRC 5細胞、およびFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびに骨髄腫細胞株、例えば、Y0、NS0およびSp2/0が含まれる。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0203】
モノクローナル抗体(本明細書に記載されるように、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合する抗体であって、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない抗体を含む)は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法を使用して作製され得るか、または組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製され得る。
【0204】
ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えば、ハムスターまたはマカクザルが、本明細書に上記されるように免疫化されて、免疫化のために使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生することができるリンパ球が誘発される。あるいは、リンパ球をin vitroで免疫化してもよい。次いで、ポリエチレングリコールなどの好適な融剤を使用してリンパ球を骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。そのように調製されたハイブリドーマ細胞は、融合されていない親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を好ましくは含有する好適な培養培地に播種され、成長する。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)を含み、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の成長を阻害する。
【0205】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高レベルの産生を支持し、HAT培地等の培地に感受性があるものである。これらのうち、好ましい骨髄腫細胞株は、マウス骨髄腫株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,California USAから入手可能なMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍、ならびにAmerican Type Culture Collection,Rockville,Maryland USAから入手可能なSP-2またはX63-Ag8-653細胞由来のものである。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている(Kozbor,J.lmmunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0206】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法によって、またはin vitro結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素免疫測定法(ELISA)によって決定される。
【0207】
所望の特異性、親和性および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、限界希釈手順によってクローンをサブクローニングし、標準的な方法によって増殖させてもよい(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。この目的に好適な培養培地としては、例えば、D-MEM培地またはRPMI-1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物の腹水腫瘍としてin vivoで増殖させてもよい。
【0208】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーなどによって、培地、腹水または血清から好適に分離される。
【0209】
抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として機能する。単離されると、DNAは発現ベクター内に配置され得、これは次いで、宿主細胞、例えば、大腸菌細胞、シミアンCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞にトランスフェクトされて、組換え宿主細胞内のモノクローナル抗体の合成体が得られる。
【0210】
DNAはまた、例えば、相同マウス配列の代わりにヒト重鎖定常ドメインおよびヒト軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することによって(米国特許第4,816,567号、Morrison,et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,81:6851(1984))、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部もしくは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することによって修飾され得る。
【0211】
典型的には、かかる非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインの代わりに置換されるか、またはそれらは、抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換されて、抗原に対して特異性を有する1つの抗原結合部位、および異なる抗原に対して特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作製する。
【0212】
C.スクリーニング方法
N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合し、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない抗体をスクリーニングする方法も本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、Xは任意のアミノ酸である。
【0213】
いくつかの実施形態では、方法は、i)抗体ライブラリーを提供すること、ii)N末端にアミノ酸配列GGX(Xは任意のアミノ酸である)を含むペプチドに結合する抗体を正に選択すること、およびiii)アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドに結合する抗体を負に選択し、それによって、N末端にアミノ酸配列GGXを含むペプチドに特異的に結合し、アミノ酸配列K-ε-GGに結合しない抗体を産生することを含む。いくつかの実施形態では、工程ii)では、N末端にアミノ酸配列GGMを含むペプチドに結合する抗体が正に選択される。いくつかの実施形態では、工程ii)では、N末端にGGA、GGE、GGF、GGG、GGH、GGI、GGL、GGM、GGN、GGQ、GGS、GGT、GGVおよびGGWからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドに結合する抗体が正に選択される。
【0214】
いくつかの実施形態では、方法は、抗体ライブラリーを提供することと、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合する抗体を正に選択することとを含む。いくつかの実施形態では、ファージディスプレイライブラリーが提供される。いくつかの実施形態では、酵母ディスプレイライブラリーが提供される。いくつかの実施形態では、細菌ディスプレイライブラリーが提供される。
【0215】
本明細書に提供される抗体ライブラリーは、様々な供給源由来の抗体を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、合成抗体のライブラリーが提供される。いくつかの実施形態では、ヒトナイーブ抗体のライブラリーが提供される。いくつかの実施形態では、ラクダ抗体のライブラリーが提供される。いくつかの実施形態では、マウス抗体ライブラリーが提供される。いくつかの実施形態では、ウサギ抗体のライブラリーが提供される。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体のライブラリーが提供される。
【0216】
いくつかの実施形態では、ライブラリーは、N末端にアミノ酸配列GGMを含むペプチドを含むペプチドライブラリーを用いて哺乳動物を免疫化することによって生成される。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、免疫された哺乳動物から抗体をクローニングすることによって作製される。いくつかの実施形態では、免疫化された哺乳動物は、齧歯類(例えば、マウス)またはウサギである。いくつかの実施形態では、哺乳動物をペプチドライブラリーで免疫する。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、N末端ユビキチン化ポリペプチドのライブラリーによって免疫化される。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ペプチドのN末端にアミノ酸配列GGXを含むペプチドを含むN末端ユビキチン化ポリペプチドによって免疫化される。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ペプチドのN末端にアミノ酸配列GGMを含むペプチドを含むN末端ユビキチン化ポリペプチドによって免疫化される。
【0217】
N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合する抗体を産生および/またはスクリーニングするために使用され得るペプチドライブラリーも本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、Xは任意のアミノ酸である。
【0218】
いくつかの実施形態では、抗体ライブラリーは、N末端にアミノ酸配列GGMを含むペプチドに結合する抗体について正に選択される。いくつかの実施形態では、抗体ライブラリーは、ファージパニングによって正に選択される。いくつかの実施形態では、抗体ライブラリーは、固体支持体に結合した、N末端にアミノ酸配列GGMを含む1つ以上のペプチドとともにインキュベートされる。いくつかの実施形態では、未結合抗体を洗浄によって除去し、結合抗体をHClで溶出する。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、または5回超正に選択される。いくつかの実施形態では、抗体ライブラリーは、実施例1(例えば、実施例1、材料および方法、ファージライブラリーの生成および選択を参照)に記載の方法に従って正に選択される。
【0219】
いくつかの実施形態では、抗体ライブラリーは、1つ以上のN末端ユビキチン化ポリペプチドとインキュベートすることによって正に選択される。いくつかの実施形態では、抗体ライブラリーは、N末端にアミノ酸配列GGMを含む1つ以上のペプチドとインキュベートすることによって正に選択される。
【0220】
いくつかの実施形態では、複数回の正の選択が、各回に異なるペプチドを用いて行われる。いくつかの実施形態では、複数ラウンドの正の選択は、各ラウンドにおいて同じペプチドを用いて行われる。
【0221】
いくつかの実施形態では、抗体ライブラリーは、アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドに結合する抗体について負に選択される。いくつかの実施形態では、負の選択は、アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドとともに抗体ライブラリーをインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、負の選択は、固体基質に結合した、アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドとともに抗体ライブラリーをインキュベートし、上清を保持し、結合した抗体を廃棄することを含む。いくつかの実施形態では、負の選択は、アミノ酸配列K-ε-GGを含む遊離ペプチドとともに抗体ライブラリーをインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、負の選択は、実施例1(例えば、実施例1、材料および方法、ファージライブラリーの生成および選択を参照)に記載の方法に従って行われる。
【0222】
いくつかの実施形態では、正の選択および負の選択は同時に行われる。いくつかの実施形態では、抗体ライブラリーは、固体支持体に結合した、N末端にアミノ酸配列GGMを含む1つ以上のペプチドとともにインキュベートされ、アミノ酸配列K-ε-GGを含む1つ以上の未結合ペプチドとともにインキュベートされる。いくつかの実施形態では、固体基質に結合した抗体が選択される。
【0223】
いくつかの実施形態では、正の選択および負の選択は同時に行われる。いくつかの実施形態では、抗体ライブラリーは、N末端にアミノ酸配列GGMを含む1つ以上の未結合ペプチドとともにインキュベートされ、固体支持体に結合した、アミノ酸配列K-ε-GGを含む1つ以上のペプチドとともにインキュベートされる。いくつかの実施形態では、固体基質に結合していない抗体が選択される。
【0224】
いくつかの実施形態では、正の選択および負の選択は連続的である。例えば、いくつかの実施形態では、抗体ライブラリーは、N末端にアミノ酸配列GGMを含むペプチドに結合する抗体について最初に正に選択され、次いで、アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドに結合する抗体について負に選択される。いくつかの実施形態では、抗体ライブラリーは、アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドに結合する抗体について最初に負に選択され、次いで、N末端にアミノ酸配列GGMを含むペプチドに結合する抗体について正に選択される。
【0225】
いくつかの実施形態では、正の選択および負の選択の工程は、2回以上繰り返される。例えば、いくつかの実施形態では、正の選択および負の選択は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、または少なくとも5回繰り返される。
【0226】
いくつかの実施形態では、選択された抗体は、ペプチドのN末端にアミノ酸配列GGXを含むペプチドに結合するが、K-ε-GGを含むアミノ酸配列には結合しないことを確認するためにアッセイされる。いくつかの実施形態では、抗体は、ELISAまたはSPRを使用してアッセイされる。いくつかの実施形態では、抗体は、実施例1(例えば、実施例1、材料および方法、pAb ELISAおよびモノクローナル抗体ELISAを参照)に記載の方法に従ってアッセイされる。いくつかの実施形態では、抗体は、ユビキチン化アッセイでアッセイされる。例示的なユビキチン化アッセイ方法は、実施例5に記載されている。
【0227】
本明細書に記載のスクリーニング方法によって産生される抗体も本明細書に提供される。
【0228】
D.試料中のN末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法
ペプチドの混合物を含む試料中のN末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法も本明細書に提供される。さらに、N末端ユビキチン化ペプチドのライブラリーが提供される。
【0229】
1.濃縮方法
ペプチドの混合物を含む試料中のN末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、i)試料を、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体と接触させること、およびii)試料から抗体結合ペプチドを選択することを含み、抗体は、N末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体は、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない。いくつかの実施形態では、Xは任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に記載のN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、1つ以上の抗体、例えば、抗体の等モル混合物が使用される。いくつかの実施形態では、1C7、2B12、2E9および2H2の等モル混合物が使用される。
【0230】
いくつかの実施形態では、試料は細胞溶解物である。いくつかの実施形態では、試料はヒト細胞溶解物である。いくつかの実施形態では、試料はHEK293細胞溶解物である。いくつかの実施形態では、試料は、誘導可能なユビキチン結合酵素E2(UBE2W)発現を有するHEK293細胞に由来する細胞溶解物である。いくつかの実施形態では、試料は、誘導可能なUBE2W発現および誘導可能なRNF4発現を有するHEK293細胞に由来する細胞溶解物である。
【0231】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞内のデユビキチナーゼを欠失させることと、細胞を溶解して細胞溶解物を生成すること(例えば、デユビキチナーゼをコードする遺伝子をノックアウトすることによって)とをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞内のデユビキチナーゼを欠ダウンレギュレートすること、および細胞を溶解して細胞溶解物を生成することをさらに含む。いくつかの実施形態では、デユビキチナーゼは、UCHL1またはUCHL5である。理論に拘束されることを望むものではないが、デユビキチナーゼを欠失させるかまたはダウンレギュレートすると、N末端Ub部位の数が増加すると考えられる。
【0232】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞内でユビキチンリガーゼを過剰発現させること、および細胞を溶解して細胞溶解物を生成することをさらに含む。いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼはN末端ユビキチンリガーゼである。いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼはユビキチン結合酵素E2(UBE2W)である。いくつかの実施形態では、細胞内のユビキチンリガーゼの過剰発現は、ドキシサイクリン(Dox)誘導性発現系を使用して達成される。いくつかの実施形態では、細胞内のユビキチンリガーゼの過剰発現は、実施例4(例えば、実施例4、材料および方法を参照)に記載される方法に従って達成される。
【0233】
いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、ペプチドを生成するために、プロテアーゼとインキュベートされる。いくつかの実施形態では、プロテアーゼはトリプシンである。トリプシンは、どちらかの残基の後にプロリン残基が続く場合を除いて、リジンアミノ酸残基またはアルギニンアミノ酸残基のカルボキシル側でポリペプチド鎖を切断するセリンプロテアーゼである。トリプシン消化は、質量分析による検出に適した平均サイズ(約700~1500ダルトン)であり、リジン残基またはアルギニン残基の存在に起因して荷電されるペプチドを生成する(例えば、Lackay,U.A.et al.,J Proteome Res.2013 Dec 6;12(12):5558-69を参照)。したがって、トリプシン消化は、質量分析に基づくプロテオミクス実験の前に典型的に行われる。細胞溶解物をトリプシンとインキュベートしてペプチドを生成するいくつかの実施形態では、選択された抗体結合ペプチドは、質量分析を使用して検出される。
【0234】
いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、ペプチドを生成するために、細菌プロテアーゼまたはウイルスプロテアーゼとインキュベートされる。いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、ペプチドを生成するために、ウイルスプロテアーゼとインキュベートされる。いくつかの実施形態では、ウイルスプロテアーゼは口蹄疫ウイルスリーダープロテアーゼである。いくつかの実施形態では、ウイルスプロテアーゼはLbproである。Lbproは口蹄疫ウイルスリーダープロテアーゼである。ユビキチン化を試験するためのLbproの使用は、例えば、いずれも参照によりその全体が本明細書に援用されるSwatek,K.N.et al.,Nature 2019 Aug 1;572(7770):533-537、およびSwatek,K.N.et al.,Protocol Exchange 2019 Aug 22;10.21203/rs.2.10850/v1に記載されている。Lbproは、Gly-Glyモチーフに先行するペプチド結合、例えば、結合したユビキチンのC末端グリシン残基を特異的に切断する。したがって、Lbproによる消化は、基質からユビキチンを不完全に除去し、基質のユビキチン化残基に結合したシグネチャーC末端Gly-Glyジペプチドを残す。いくつかの実施形態では、ウイルスプロテアーゼは、操作されたウイルスプロテアーゼ、例えば、操作された口蹄疫ウイルスリーダープロテアーゼである。いくつかの実施形態では、操作されたウイルスプロテアーゼはLbpro*である。Swatek,K.N.et al.,Nature 2019 Aug 1;572(7770):533-537に記載されているように、Lbpro*は、ユビキチン切断活性の増強を示すL102Wアミノ酸置換を有する、Lbproのバリアントである。ユビキチン化部位を示すGly-Glyモチーフを有するポリペプチドを生成するためのLbpro/Lbpro*の使用は、「Ubクリッピング」と呼ばれている。いくつかの実施形態では、プロテアーゼ切断によって生成される(例えば、Lbpro/Lbpro*を使用して)ペプチドは、Gly-Gly残基を含む。
【0235】
いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、ペプチドを生成するためにプロテアーゼとインキュベートされ、プロテアーゼは、ユビキチン化ポリペプチドを特異的に切断する。いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、ペプチドを生成するためにプロテアーゼとインキュベートされ、プロテアーゼは、Gly-Glyモチーフに先行するペプチド結合でポリペプチドを切断する。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、LbproまたはLbpro*である。リジンアミノ酸残基またはアルギニンアミノ酸残基のカルボキシル側でペプチド鎖を主に切断するトリプシンと比較して、LbproおよびLbpro*の方が、大きな配列特異性でタンパク質を選択的に切断する。したがって、そのようなプロテアーゼと細胞溶解物とのインキュベーションは、トリプシンなどの低特異性プロテアーゼとのインキュベーションと比較して、ユビキチン化基質由来のペプチドが濃縮されたペプチドプールをもたらすことが予測される。いくつかの実施形態では、ユビキチン化ポリペプチドを特異的に切断するプロテアーゼとのインキュベーションは、N末端ユビキチン化ペプチドの濃縮レベルを改善する。
【0236】
いくつかの実施形態では、方法は、溶解物生成の前、およびプロテアーゼ(例えば、トリプシン、LbproまたはLbpro*)とのインキュベーションの前に、プロテアソーム阻害剤または脱ユビキチン化阻害剤によって細胞を処理することをさらに含む。いくつかの実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、ラクタシスチン、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガレート、マリゾミブ(サリノスポラミドA)、オプロゾミブ(ONX-0912)、デランゾミブ(CEP-18770)、エポキソミシン、MG132、ベータ-ヒドロキシベータ-メチルブチレート、およびボルテゾミブからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、プロテアソーム阻害剤はボルテゾミブである。
【0237】
いくつかの実施形態では、方法は、選択された抗体結合ペプチドを検出することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗体結合ペプチドは、質量分析によって検出される。質量分析用試料の調製は、公知の技術(例えば、"Modem Protein Chemistry:Practical Aspects",Howard,G.C.and Brown,W.E.,Eds.(2002)CRC Press,Boca Raton,Floridaを参照)に従って一般に行われ得る。高い質量精度、高感度、および高分解能が可能な様々な質量分析システムが当技術分野で公知であり、本発明の方法に使用され得る。そのような質量分析計の質量分析器には、限定するものではないが、四重極(Q)、飛行時間(TOF)、イオントラップ、磁気セクタもしくはFT-ICRまたはそれらの組合せが含まれる。質量分析計のイオン源は、試料分子イオン、または疑似分子イオン、および特定の特徴的な断片イオンを主にもたらすはずである。そのようなイオン源の例には、大気圧イオン化源、例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)および大気圧化学イオン化(APCI)ならびにMatrix Assisted Laser Desorption Ionization(MALDI)が挙げられる。ESIおよびMALDIは、質量分析のためにタンパク質をイオン化するために最も一般的に使用される2つの方法である。ESIおよびAPCIは、LC/MSによる小分子の分析に最も一般的に使用されるイオン源技術である(Lee,M."LC/MS Applications in Drug Development"(2002)J.Wiley&Sons,New York)。いくつかの実施形態では、抗体結合ペプチドは、タンデム質量分析(LC-MS/MS)を用いた液体クロマトグラフィーによって検出される。LC-MS/MSを行うための例示的な方法を実施例3に記載する。いくつかの実施形態では、抗体結合ペプチドは、nanoAcquity UPLC(Waters)を使用する液体クロマトグラフィーによって分離される。いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィー後、分離されたペプチドは、エレクトロスプレーイオン化によってOrbitrap Elite(商標)またはQ Exactive(商標)HF質量分析計(ThermoFisher)に導入される。いくつかの実施形態では、抗体結合ペプチドは、無標識定量(LFQ)質量分析によって検出される。いくつかの実施形態では、抗体結合ペプチドは、タンデム質量タグ(TMT)質量分析によって検出される。いくつかの実施形態では、抗体結合ペプチドは、タンパク質配列決定によって検出される。
【0238】
いくつかの実施形態では、抗体結合ペプチドは、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体に結合する二次抗体を使用して検出される。いくつかの実施形態では、二次抗体は、抗ウサギ二次抗体、抗齧歯類二次抗体または抗ヤギ二次抗体である。いくつかの実施形態では、二次抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートしている。
【0239】
2.N末端ユビキチン化ペプチドのライブラリー
N末端ユビキチン化ペプチドのライブラリーが本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、上記の濃縮方法のいずれか1つによって生成される。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、表7または表8に列挙されたポリペプチドのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、ヒトAAAT、ヒトAES、ヒトAIG1、ヒトARF1、ヒトARL5B、ヒトBABA2、ヒトBUB3、ヒトC1TC、ヒトC2AIL、ヒトC9J470、ヒトCD81、ヒトCDC45、ヒトDCTP1、ヒトDHRSX、ヒトDMKN、ヒトE2AK1、ヒトEF1B、ヒトF13A、ヒトFA60A、ヒトFBRL、ヒトFLOT1、ヒトGCYB1、ヒトGOT1B、ヒトGPAA1、ヒトHIKES、ヒトHNRPK、ヒトIMPA3、ヒトLAT3、ヒトLAT4、ヒトLRWD1、ヒトMED25、ヒトMFS12、ヒトMIP18、ヒトMMGT1、ヒトMOONR、ヒトNARR、ヒトNDUB6、ヒトNENF、ヒトNOL6、ヒトNOP10、ヒトNUDC、ヒトP121A、ヒトPIGC、ヒトPLBL2、ヒトPRDX1、ヒトPRDX2、ヒトPUR9、ヒトQKI、ヒトRAD21、ヒトRCAS1、ヒトREEP1、ヒトRFA1、ヒトRPB1、ヒトRPB7、ヒトRS29、ヒトRS7、ヒトS11IP、ヒトSGMR1、ヒトT179B、ヒトTAF1、ヒトTCPG、ヒトTF3C4、ヒトTM127、ヒトTMM97、ヒトTMX2、ヒトTSN13、ヒトTSN3、ヒトTTC27、ヒトUBAC1、ヒトUBAC2、ヒトUCHL1、ヒトUCHL5、ヒトVKOR1、ヒトVRK3、ヒトZDH12、ヒトZN253およびヒトZN672からなるポリペプチドの群に由来する1つ以上のペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、ヒトDCTP1、ヒトF13A、ヒトHNRPK、ヒトPUR9、ヒトRFA1、ヒトRPB7、ヒトS11IPおよびヒトUCHL5を含む。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、ヒトUCHL1に由来するペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、ヒトUCHL5に由来するペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、UniProtアクセッション番号Q15758、Q08117、Q9NVV5、P84077、Q96KC2、Q9NXR7、O43684、P11586、Q96HQ2、C9J470、P60033、O75419、Q9H773、Q8N5I4、Q6E0U4-8、Q9BQI3、P24534、P00488、Q9NP50、P22087、O75955、Q02153、Q9Y3E0、O43292、Q53FT3、P61978、Q9NX62、O75387、Q8N370、Q9UFC0、Q71SY5、Q6NUT3、Q9Y3D0、Q8N4V1、Q2KHM9、P0DI83、O95139、Q9UMX5、Q9H6R4、Q9NPE3、Q9Y266、Q96HA1、Q92535、Q8NHP8、Q06830、P32119、P31939、Q96PU8、O60216、O00559、Q9H902、P27694、P24928、P62487、P62273、P62081、Q8N1F8、Q99720、Q7Z7N9、P21675、P49368、Q9UKN8、O75204、Q5BJF2、Q9Y320、O95857、O60637、Q6P3X3、Q9BSL1、Q8NBM4、P09936、Q9Y5K5、Q9BQB6、Q8IV63、Q96GR4、O75346およびQ499Z4からなるポリペプチドの群に由来する1つ以上のペプチドを含む。
【0240】
E.試料中のN末端ユビキチン化ペプチドを検出する方法
ペプチドの混合物を含む試料中のN末端ユビキチン化ペプチドを検出する方法も本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、i)試料を酵素とインキュベートして、ペプチドを生成すること、ii)ペプチドを、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体と接触させること、およびiii)N末端ユビキチン化ペプチドを検出することを含み、抗体は、N末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体は、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない。いくつかの実施形態では、Xは任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に記載のN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体のいずれか1つである。
【0241】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドは、血液試料、血漿試料、血清試料、尿試料、唾液試料、痰試料、肺滲出液試料または組織試料中で検出される。いくつかの実施形態では、試料はヒト試料である。いくつかの実施形態では、試料は細胞溶解物である。いくつかの実施形態では、試料はHEK293細胞溶解物である。いくつかの実施形態では、試料は、誘導可能なユビキチン結合酵素E2(UBE2W)発現を有するHEK293細胞に由来する細胞溶解物である。いくつかの実施形態では、試料は、誘導可能なUBE2W発現および誘導可能なRNF4発現を有するHEK293細胞に由来する細胞溶解物である。
【0242】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドは、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体に結合する二次抗体を使用して検出される。いくつかの実施形態では、二次抗体は、抗ウサギ二次抗体、抗齧歯類二次抗体または抗ヤギ二次抗体である。いくつかの実施形態では、二次抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートしている。
【0243】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドは、細胞溶解物中で検出される。いくつかの実施形態では、方法は、細胞内でユビキチンリガーゼを過剰発現させること、および細胞を溶解して細胞溶解物を生成することをさらに含む。いくつかの実施形態では、ユビキチンリガーゼはユビキチン結合酵素E2(UBE2W)である。いくつかの実施形態では、細胞内のユビキチンリガーゼの過剰発現は、ドキシサイクリン(Dox)誘導性発現系を使用して達成される。いくつかの実施形態では、細胞内のユビキチンリガーゼの過剰発現は、実施例4(例えば、実施例4、材料および方法を参照)に記載される方法に従って達成される。いくつかの実施形態では、方法は、細胞内のデユビキチナーゼを欠失させることと、細胞を溶解して細胞溶解物を生成すること(例えば、デユビキチナーゼをコードする遺伝子をノックアウトすることによって)とをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞内のデユビキチナーゼを欠ダウンレギュレートすること、および細胞を溶解して細胞溶解物を生成することをさらに含む。いくつかの実施形態では、デユビキチナーゼは、UCHL1またはUCHL5である。理論に拘束されることを望むものではないが、デユビキチナーゼを欠失させるかまたはダウンレギュレートすると、N末端Ub部位の数が増加すると考えられる。
【0244】
いくつかの実施形態では、細胞溶解物は、ペプチドを生成するために、ウイルスプロテアーゼとインキュベートされる。いくつかの実施形態では、ウイルスプロテアーゼは口蹄疫ウイルスリーダープロテアーゼである。いくつかの実施形態では、ウイルスプロテアーゼはLbproである。いくつかの実施形態では、ウイルスプロテアーゼは、操作されたウイルスプロテアーゼ、例えば、操作された口蹄疫ウイルスリーダープロテアーゼである。いくつかの実施形態では、操作されたウイルスプロテアーゼはLbpro*である。いくつかの実施形態では、ウイルスプロテアーゼは、Gly-Glyモチーフに先行するペプチド結合でポリペプチドを切断する。いくつかの実施形態では、プロテアーゼ切断によって生成される(例えば、Lbpro/Lbpro*を使用して)ペプチドは、Gly-Gly残基を含む。
【0245】
いくつかの実施形態では、方法は、溶解物生成の前、およびウイルスプロテアーゼ(例えば、LbproまたはLbpro*)とのインキュベーションの前に、プロテアソーム阻害剤または脱ユビキチン化阻害剤によって細胞を処理することをさらに含む。いくつかの実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、ラクタシスチン、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガレート、マリゾミブ(サリノスポラミドA)、オプロゾミブ(ONX-0912)、デランゾミブ(CEP-18770)、エポキソミシン、MG132、ベータ-ヒドロキシベータ-メチルブチレート、およびボルテゾミブからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、プロテアソーム阻害剤はボルテゾミブである。
【0246】
検出は、任意の好適な方法、例えば、質量分析、免疫蛍光顕微鏡法、フローサイトメトリー、光ファイバ走査サイトメトリーまたはレーザスキャンサイトメトリーに基づく方法によって行われ得る。いくつかの実施形態では、検出はイムノアッセイである。いくつかの実施形態では、検出は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)またはラジオイムノアッセイである。いくつかの実施形態では、イムノアッセイは、イムノブロッティング、免疫拡散、免疫電気泳動または免疫沈降を含む。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドは、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体を用いたブロット法によって検出される。
【0247】
F.キット
本発明のスクリーニング方法、濃縮方法および検出方法は、キットの形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、スクリーニング、濃縮または検出のためのそのようなキットは、本明細書に記載のN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体、またはN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体を含む組成物を含む。抗体は、本明細書に記載のN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体のいずれか1つであり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体は、アミノ酸配列XXXMN(配列番号35)を含むCDRH1と、アミノ酸配列XXXXXGXXYYATWA(配列番号36)を含むCDRH2と、アミノ酸配列DDXXXXNX(配列番号37)を含むCDRH3とを含み、抗体は、アミノ酸配列QSXXSVYXXNXLX(配列番号38)を含むCDRL1と、アミノ酸配列XASTLXS(配列番号39)を含むCDRL2と、アミノ酸配列LGXXDCXSXDCXX(配列番号40)を含むCDRL3とを含み、Xは任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号33に記載のアミノ酸を含むVHを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号34に記載のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号33に記載のアミノ酸を含むVHと、配列番号34に記載のアミノ酸配列を含むVLとを含む。様々な実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、本明細書に記載される抗体のうちの1つ以上(例えば、1C7、2B12、2E9または2H2)である。
【0248】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、本明細書に記載されるように、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合し、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない抗体をスクリーニングする方法に使用するためのキットが提供される。いくつかの実施形態では、Xは任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をスクリーニングする方法に使用するためのキットは、本明細書に記載のN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体のいずれか(例えば、1C7、2B12、2E9または2H2)を含む。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をスクリーニングする方法に使用するためのキットは、本明細書に記載されるように、正の選択(例えば、N末端ユビキチン化ポリペプチドに結合するための選択)または負の選択(例えば、アミノ酸配列K-ε-GGに結合しないための選択)を行うための説明書を提供する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をスクリーニングする方法に使用するためのキットは、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体を産生および/またはスクリーニングするために使用され得るペプチドライブラリーを含む。いくつかの実施形態では、ペプチドライブラリーは、N末端にアミノ酸配列GGX(例えば、N末端にアミノ酸配列GGM)を含むペプチドを含む。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をスクリーニングする方法に使用するためのキットは、負の選択に使用され得るペプチドライブラリーを含む。いくつかの実施形態では、負の選択用のペプチドライブラリーは、アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドを含む。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をスクリーニングする方法に使用するためのキットは、N末端ユビキチン化ポリペプチドへの抗体の結合を検出するための試薬を提供する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をスクリーニングする方法に使用するためのキットは、ペプチドライブラリー(例えば、N末端にアミノ酸配列GGXを含むペプチド)への抗体の結合を検出するための試薬を提供する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をスクリーニングする方法に使用するためのキットは、負の選択用のペプチドライブラリーへの抗体の結合を検出するための試薬を提供する。いくつかの実施形態では、ペプチドライブラリーへの抗体の結合、または負の選択のためのペプチドライブラリーはELISAによって検出される。いくつかの実施形態では、キットはELISAのための説明書または試薬を提供する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をスクリーニングする方法に使用するためのキットは、標準としてN末端ユビキチン化ペプチド(例えば、UBE2Wおよび/またはLUBAC)を含む。
【0249】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるN末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法に使用するためのキットが提供される。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法に使用するためのキットは、本明細書に記載のN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体のいずれか(例えば、1C7、2B12、2E9または2H2)を含む。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法に使用するためのキットは、試料を抗体と接触させるための試薬を含む。いくつかの実施形態では、試料を抗体と接触させるための試薬は、適切な緩衝液である。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法に使用するためのキットは、試料から抗体結合ペプチドを選択するための試薬を含む。いくつかの実施形態では、試料から抗体結合ペプチドを選択するための試薬は、上記の捕捉試薬である。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法に使用するためのキットは、選択された抗体結合ペプチドを検出するための説明書を提供する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法に使用するためのキットは、選択された抗体結合ペプチドを検出するための試薬を提供する。いくつかの実施形態では、抗体結合ペプチドは、タンパク質配列決定によって検出される。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法に使用するためのキットは、タンパク質配列決定のための説明書を提供する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法に使用するためのキットは、標準としてN末端ユビキチン化ペプチド(例えば、UBE2Wおよび/またはLUBAC)を含む。
【0250】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法に使用するためのキットは、プロテアーゼ(例えば、トリプシン、細菌プロテアーゼまたはウイルスプロテアーゼ)をさらに含む。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、LbproまたはLbpro*である。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、Gly-Glyモチーフに先行するペプチド結合でポリペプチドを切断する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法に使用するためのキットは、例えば、Swatek,K.N.et al.,Protocol Exchange 2019 Aug 22;10.21203/rs.2.10850/v1に記載されているように、プロテアーゼを細胞溶解物とともにインキュベートするための試薬および説明書を提供する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法に使用するためのキットは、細胞溶解物を「Ubクリッピング」するための試薬および説明書を提供する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法に使用するためのキットは、例えば、以下に記載される検出キットに従って、N末端ユビキチン化ペプチドを検出するための試薬および説明書をさらに含む。特定の実施形態では、濃縮されたN末端ユビキチン化ペプチドは、ウエスタンブロットを使用して検出される。いくつかの実施形態では、キットは、二次抗体を含む。
【0251】
一態様では、試料中のN末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットが提供される。いくつかの実施形態では、検出するためのキットは、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体と、使用説明書とを含み、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体、抗体は、N末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体は、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない。いくつかの実施形態では、Xは任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットは、抗体を用いてN末端ユビキチン化ポリペプチドを検出するための説明書を提供する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットは、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体と、抗体を検出する方法とを提供する。例えば、いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットは、標識にコンジュゲートしているN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体を提供する。いくつかの実施形態では、抗体は、ビオチン、ジゴキシゲニンまたはフルオレセインで標識される。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットは、抗体を用いてN末端ユビキチン化ポリペプチドを検出するための試薬を提供する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットは、抗体を用いてN末端ユビキチン化ポリペプチドを検出するためのELISAのための試薬を提供する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットは、抗体を用いたウエスタンブロットでN末端ユビキチン化ポリペプチドを検出するための試薬を提供する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットは、抗体を用いてN末端ユビキチン化ポリペプチドを検出するためのSPRアッセイのための試薬を提供する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットは、免疫沈降法で抗体を用いてN末端ユビキチン化ポリペプチドに試薬を提供する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのそのようなキットは、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体から構成された捕捉試薬と、本明細書に記載のN末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する検出可能な(標識または非標識の)抗体と、これらの試薬を使用してアッセイ方法を行う方法に関する説明書との基本要素を含むパッケージされた組合せである。これら基本要素は、上記に定義されている。N末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットは、別個の要素として提供され得るか、または捕捉試薬が既に固定化されている、捕捉試薬のための固体支持体をさらに含み得る。したがって、キット中の捕獲抗体は、固体支持体に固定化されていても、またはキットに含まれるかもしくはキットとは別に提供されるこのような支持体に固定化されていてもよい。いくつかの実施形態では、捕捉試薬は、固体材料(例えば、マイクロタイタープレート、ビーズまたは櫛)上にコートまたは付着されている。検出可能な抗体は、直接検出される標識抗体であってもよいし、異なる種で産生した非標識抗体に対する標識抗体によって検出される非標識抗体であってもよい。標識が酵素である場合、キットは通常、酵素が必要とする基質および補助因子を含み;標識がフルオロフォアである場合、検出可能な発色団を提供する色素前駆体を含み;標識がビオチンである場合、アビジン、ストレプトアビジン、MUGを用いてHRPまたはβ-ガラクトシダーゼにコンジュゲートさせたストレプトアビジンなどのアビジンを含む。N末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットはまた、標準としてのN末端ユビキチン化ペプチド(例えば、UBE2Wおよび/またはLUBAC)、ならびに他の添加剤、例えば、安定剤、洗浄バッファーおよびインキュベーションバッファーなども典型的に含有する。
【0252】
いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートしている。いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、ビオチン、ジゴキシゲニンおよびフルオレセインからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗体は、固体支持体上に固定化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、ビーズ上に固定化されている。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットは、プロテアーゼ(例えば、トリプシン、細菌プロテアーゼまたはウイルスプロテアーゼ)をさらに含む。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、LbproまたはLbpro*である。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、Gly-Glyモチーフに先行するペプチド結合でポリペプチドを切断する。いくつかの実施形態では、N末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットは、プロテアーゼを使用するための、例えば、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体を使用して検出する前の試料の消化のための説明書を含む。
【0253】
実施形態
1.N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体であって、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合し、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない抗体。
2.GGA、GGE、GGF、GGG、GGH、GGI、GGL、GGM、GGN、GGQ、GGS、GGT、GGVおよびGGWからなる群から選択されるN末端配列を含むペプチドに結合する、実施形態1の抗体。
3.GGAのN末端配列を含むペプチド、GGEのN末端配列を含むペプチド、GGFのN末端配列を含むペプチド、GGGのN末端配列を含むペプチド、GGHのN末端配列を含むペプチド、GGIのN末端配列を含むペプチド、GGLのN末端配列を含むペプチド、GGMのN末端配列を含むペプチド、GGNのN末端配列を含むペプチド、GGQのN末端配列を含むペプチド、GGSのN末端配列を含むペプチド、GGTのN末端配列を含むペプチド、GGVのN末端配列を含むペプチド、およびGGWのN末端配列を含むペプチドに結合する、実施形態1または実施形態2の抗体。
4.ウサギ抗体、齧歯類抗体またはヤギ抗体である、実施形態1から3のいずれか1つの抗体。
5.完全長抗体またはFab断片である、実施形態1から4のいずれか1つの抗体。
6.検出可能な標識にコンジュゲートしている、実施形態1から5のいずれか1つの抗体。
7.標識が、ビオチン、ジゴキシゲニンおよびフルオレセインからなる群から選択される、実施形態6の抗体。
8.固体支持体上に固定化されている、実施形態1から7のいずれか1つの抗体。
9.ビーズ上に固定化されている、実施形態8の抗体。
10.Kabatに従ってナンバリングして、一方の側の35位にAsn、37位にVal、93位にThr、101位にAsnおよび103位にTrpを含む可変重鎖(VH)と、34位にAla、36位にTyrおよび49位にTyrを含む可変軽鎖(VL)とを含む、実施形態1から9のいずれか1つの抗体。
11.抗体が、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体が、アミノ酸配列XXXMN(配列番号35)を含むCDRH1と、アミノ酸配列XXXXXGXXYYATWA(配列番号36)を含むCDRH2と、アミノ酸配列DDXXXXNX(配列番号37)を含むCDRH3とを含み、抗体が、アミノ酸配列QSXXSVYXXNXLX(配列番号38)を含むCDRL1と、アミノ酸配列XASTLXS(配列番号39)を含むCDRL2と、アミノ酸配列LGXXDCXSXDCXX(配列番号40)を含むCDRL3とを含み、Xが任意のアミノ酸である、実施形態1から9のいずれか1つの抗体。
12.VHが、配列番号33に記載のアミノ酸を含み、VLが、配列番号34に記載のアミノ酸配列を含む、実施形態11の抗体。
13.抗体が、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むVHのCDRH1、CDRH2およびCDRH3と、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むVLのCDRL1、CDRL2およびCDRL3とを含む、実施形態1から9のいずれか1つの抗体。
14.配列番号3に記載のCDRH1アミノ酸配列と、配列番号4に記載のCDRH2アミノ酸配列と、配列番号5に記載のCDRH3アミノ酸配列と、配列番号6に記載のCDRL1アミノ酸配列と、配列番号7に記載のCDRL2アミノ酸配列と、配列番号8に記載のCDRL3アミノ酸配列とを含む、実施形態13の抗体。
15.VHが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む、実施形態13の抗体。
16.抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号52に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号53に記載のアミノ酸を含む、実施形態13から15のいずれか1つの抗体。
17.抗体が、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体が、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むVHのCDRH1、CDRH2およびCDRH3と、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVLのCDRL1、CDRL2およびCDRL3とを含む、実施形態1から9のいずれか1つの抗体。
18.配列番号11に記載のCDRH1アミノ酸配列と、配列番号12に記載のCDRH2アミノ酸配列と、配列番号13に記載のCDRH3アミノ酸配列と、配列番号14に記載のCDRL1アミノ酸配列と、配列番号15に記載のCDRL2アミノ酸配列と、配列番号16に記載のCDRL3アミノ酸配列とを含む、実施形態17の抗体。
19.VHが、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む、実施形態18の抗体。
20.抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号54に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号55に記載のアミノ酸を含む、実施形態17から19のいずれか1つの抗体。
21.抗体が、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体が、配列番号17に記載のアミノ酸配列を含むVHのCDRH1、CDRH2およびCDRH3と、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むVLのCDRL1、CDRL2およびCDRL3とを含む、実施形態1から9のいずれか1つの抗体。
22.配列番号19に記載のCDRH1アミノ酸配列と、配列番号20に記載のCDRH2アミノ酸配列と、配列番号21に記載のCDRH3アミノ酸配列と、配列番号22に記載のCDRL1アミノ酸配列と、配列番号23に記載のCDRL2アミノ酸配列と、配列番号24に記載のCDRL3アミノ酸配列とを含む、実施形態21の抗体。
23.VHが、配列番号17に記載のアミノ酸を含み、VLが、配列番号18に記載のアミノ酸を含む、実施形態22の抗体。
24.抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号56に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号57に記載のアミノ酸を含む、実施形態21から23のいずれか1つの抗体。
25.抗体が、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、抗体が、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含むVHのCDRH1、CDRH2およびCDRH3と、配列番号26に記載のアミノ酸配列を含むVLのCDRL1、CDRL2およびCDRL3とを含む、実施形態1から9のいずれか1つの抗体。
26.配列番号27に記載のCDRH1アミノ酸配列と、配列番号28に記載のCDRH2アミノ酸配列と、配列番号29に記載のCDRH3アミノ酸配列と、配列番号30に記載のCDRL1アミノ酸配列と、配列番号31に記載のCDRL2アミノ酸配列と、配列番号32に記載のCDRL3アミノ酸配列とを含む、実施形態25の抗体。
27.VHが、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号26に記載のアミノ酸配列を含む、実施形態26の抗体。
28.抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号58に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号59に記載のアミノ酸を含む、実施形態25から27のいずれか1つの抗体。
29.実施形態1から28のいずれか1つの抗体をコードする核酸。
30.実施形態29の核酸を含む宿主細胞。
31.N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体をスクリーニングする方法であって、抗体が、ペプチドのN末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体が、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合せず、該方法が、
i)抗体ライブラリーを提供すること、
ii)N末端にアミノ酸配列GGX(Xは任意のアミノ酸である)を含むペプチドに結合する抗体を正に選択すること、および
iii)アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドに結合する抗体を負に選択することを含み、
それによって、N末端にアミノ酸GGXを含むペプチドに特異的に結合し、アミノ酸配列K-ε-GGに結合しない抗体を産生する、方法。
32.工程ii)では、N末端にアミノ酸配列GGMを含むペプチドに結合する抗体が正に選択される、実施形態31の方法。
33.アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドに結合する抗体を負に選択することが、工程ii)と同時に行われる、実施形態31または32の方法。
34.工程ii)の前または後に、アミノ酸配列K-ε-GGを含むペプチドに結合する抗体を負に選択する、実施形態31または32の方法。
35.ライブラリーが、ファージライブラリーまたは酵母ライブラリーである、実施形態31から34のいずれか1つの方法。
36.ライブラリーが、N末端にアミノ酸配列GGMを含むペプチドを含むペプチドライブラリーを用いて哺乳動物を免疫化することによって生成される、実施形態31から35のいずれか1つの方法。
37.哺乳動物が、ウサギまたはマウスである、実施形態36の方法。
38.工程ii)~iii)が、2回以上繰り返される、実施形態31から37のいずれか1つの方法。
39.実施形態31から38のいずれか1つの方法によって産生される抗体。
40.ペプチドの混合物を含む試料中のN末端ユビキチン化ペプチドを濃縮する方法であって、
i)試料を、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体と接触させること、および
ii)試料から抗体結合ペプチドを選択することを含み、抗体が、N末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体が、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない、方法。
41.試料が細胞溶解物である、実施形態40の方法。
42.細胞内のデユビキチナーゼを欠失させることと細胞を溶解して細胞溶解物を生成することとをさらに含む、実施形態41の方法。
43.細胞内でユビキチンリガーゼを過剰発現させることと細胞を溶解して細胞溶解物を生成することとをさらに含む、実施形態41の方法。
44.細胞溶解物が、ペプチドを生成するために、トリプシンとインキュベートされる、実施形態41から43のいずれか1つの方法。
45.細胞溶解物が、ペプチドを生成するために、細菌プロテアーゼまたはウイルスプロテアーゼとインキュベートされる、実施形態41から43のいずれか1つの方法。
46.溶解物生成の前に、かつトリプシンとのインキュベーションの前または細菌プロテアーゼもしくはウイルスプロテアーゼとのインキュベーションの前に、プロテアソーム阻害剤または脱ユビキチン化阻害剤によって細胞を処理することをさらに含む、実施形態42から45のいずれか1つの方法。
47.選択された抗体結合ペプチドを検出することをさらに含む、実施形態40から46のいずれか1つの方法。
48.抗体結合ペプチドが、質量分析によって検出される、実施形態47の方法。
49.抗体結合ペプチドが、タンパク質配列決定によって検出される、実施形態47の方法。
50.抗体結合ペプチドが、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体に結合する二次抗体を使用して検出される、実施形態47の方法。
51.実施形態40から50のいずれか1つの方法によって産生されたN末端ユビキチン化ペプチドのライブラリー。
52.ペプチドの混合物を含む試料中のN末端ユビキチン化ペプチドを検出する方法であって、
i)試料を酵素とインキュベートして、ペプチドを生成すること、
ii)ペプチドを、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体と接触させること、および
iii)N末端ユビキチン化ペプチドを検出することを含み、抗体が、N末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体が、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない、方法。
53.N末端ユビキチン化ペプチドが、N末端ユビキチン化タンパク質のペプチドに結合する抗体に結合する二次抗体を使用して検出される、実施形態52の方法。
54.試料が細胞溶解物である、実施形態52または53の方法。
55.細胞内のデユビキチナーゼを欠失させることと、細胞を溶解して細胞溶解物を生成することとをさらに含む、実施形態54の方法。
56.細胞内でユビキチンリガーゼを過剰発現させることと細胞を溶解して細胞溶解物を生成することとをさらに含む、54の方法。
57.細胞溶解物が、ペプチドを生成するために、細菌プロテアーゼまたはウイルスプロテアーゼとインキュベートされる、実施形態54から56のいずれか1つの方法。
58.溶解物生成の前、かつ細菌プロテアーゼまたはウイルスプロテアーゼとのインキュベーションの前に、プロテアソーム阻害剤または脱ユビキチン化阻害剤によって細胞を処理することをさらに含む、実施形態55から57のいずれか1つの方法。
59.N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体と、使用説明書とを含む、試料中のN末端ユビキチン化ペプチドを検出するためのキットであって、N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体、抗体が、N末端のアミノ酸配列GGXに結合し、抗体が、分岐ジグリシン(K-ε-GG)を含むアミノ酸配列に結合しない、キット。
60.N末端ユビキチン化ポリペプチドのペプチドに結合する抗体が、検出可能な標識にコンジュゲートしている、実施形態59のキット。
61.検出可能な標識が、ビオチン、ジゴキシゲニンおよびフルオレセインからなる群から選択される、実施形態60のキット。
62.抗体が、固体支持体上に固定化されている、実施形態59から61のいずれか1つのキット。
63.抗体が、ビーズ上に固定化されている、実施形態62のキット。
64.プロテアーゼをさらに含む、実施形態59から63のいずれか1つのキット。
【実施例
【0254】
特許請求される本開示の範囲をいかなる意味でも限定することを意図しない以下の実施例において、本開示についてさらに詳細に説明する。添付図面は、本明細書および本開示の記載に欠くことのできない一部として考慮されることを意図している。以下の実施例は、特許請求される開示を例示するために供与されるのであって、限定するために供与されているのではない。
【0255】
実施例1:新規抗GGXモノクローナル抗体の生成
以下の実施例は、N末端にジグリシン配列を含有するトリプシン性ペプチドを選択的に濃縮することができる抗体の生成を記載する。
【0256】
材料および方法
抗体選択の設計
N末端にジグリシン配列を含有するトリプシン性ペプチドを選択的に濃縮することができる抗体を同定するための選択を設計した(図1Aを参照)。理論に拘束されることを望むものではないが、潜在的基質のかなりのプールは、トリプシン消化の際に、開始メチオニンの前にジグリシン修飾を有するペプチドを生じる、アセチル化されていないインタクトなイニシエーターメチオニンを有する新生ポリペプチドであると仮定された(Waller,J.-P.J Mol Biol 7,483-IN1(1963))。したがって、ウサギはペプチドおよび小型ハプテンに対する高親和性抗体を生成することが知られているため(Weber,J.et al.,Exp Mol Medicine 49,e305-e305(2017))、ウサギ免疫化のための抗原としてGly-Gly-Met(GGM)ペプチドを使用した(以下のウサギ免疫化方法を参照)。重要なことに、ポリクローナル抗体(pAb)血清の精製後、同一のジグリシン配列特徴を共有するにもかかわらず、従来の比較的豊富なK-ε-GGペプチドに対する交差反応性が最小限であるモノクローナル抗体(mAb)を同定するために選択を行った(以下のファージライブラリーの生成および選択方法を参照;図1BのGGMペプチドおよびK-ε-GGペプチドの構造を参照)。
【0257】
ウサギ免疫化
動物において免疫応答を誘発するために、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)担体タンパク質またはオボアルブミン(OVA)担体タンパク質のいずれかにコンジュゲートしたGly-Gly-Metペプチドによって、ニュージーランド白ウサギ8匹を免疫化した。CFAアジュバントと混合した500μgのKLH結合ペプチドによってウサギをプライミングし、続いて、ウサギに皮内注射した。IFAアジュバント中のペプチド抗原250μgを用いて、4回の隔週ブーストを行った。B細胞応答が担体タンパク質ではなくペプチドに向けられることを確実にするために、担体と各ブーストとを交互に交代した。最後のブーストの後、5~10mLの血液を各ウサギから採取し、プロテインA精製pAb血清を生成して、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって免疫応答をモニタリングした。力価が最良であったウサギ4匹を安楽死させ、脾臓と腸関連リンパ組織(GALT)とを採取した。
【0258】
ファージライブラリーの生成および選択
ウサギの脾臓および腸関連リンパ組織から抽出した全RNAを使用して、可変重(VH)レパートリーおよび可変軽(VL)レパートリーを別個に増幅した。標準的なGibsonクローニング法を使用して、VHレパートリーおよびVLレパートリーを一本鎖Fv(scFv)形式に構築し、ファージディスプレイベクターにクローニングした。選択に使用したペプチド抗原は、BSAコンジュゲートGGMペプチドまたはC末端ビオチン化GGMペプチド、および対抗選択のためのビオチン化K-ε-GGペプチド(AAA{K-ε-GG}AAA)のいずれかであった。結合したファージを100mM HClによって溶出し、中和し、M13-KO7ヘルパーファージ(New England Biolabs)を加えて大腸菌XL1-blue(Stratagene)で増幅する3回のプレートベースの選択を行った。選択後、個々のファージクローンを採取し、カルベニシリンおよびM13-KO7の存在下で2×YT増殖培地を含む96ウェルのディープウェルブロックで増殖させた。ペレット化後、培養上清をファージELISAに使用して特異性をスクリーニングした。
【0259】
pAb ELISA
PBS中10μg/mLで、ニュートラアビジンELISAプレート(Thermo Scientific)上にビオチン化GGMペプチドまたはK-ε-GGペプチドを3重で4℃で一晩コーティングした。使用前に、Tween(登録商標)20(PBST)溶液を含むPBSによってプレートを洗浄した。100μg/mLで開始するプロテインA精製pAbの段階希釈物を25℃で1~2時間インキュベートした。プレートをPBSTによって洗浄した。洗浄後、抗ウサギFc特異的HRP 2°抗体(vendor)を25℃で1時間かけて加えた。プレートを洗浄し、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を用いて5分間発色させ、650nmで検出した(図1Cを参照)。
【0260】
モノクローナル抗体ELISA
PBS中1μg/mLで、ニュートラアビジンELISAプレート(Thermo Scientific)上にビオチン化ペプチド(GGMおよびK-ε-GG)を3重で4℃で一晩コーティングした。使用前に、プレートをPBSTによって洗浄した。1μg/mLのGGX mAbまたはK-ε-GG mAb(Cell Signaling Technology)の段階希釈物を25℃で1~2時間かけて加えた。プレートを洗浄し、上記のようにさらに発色させた(図1Eを参照)。
【0261】
ビオチン化GGXペプチドを合成し、PBS中1μg/mLで、ニュートラアビジンELISAプレート(Thermo Scientific)上に3重で4℃で一晩コーティングした。プレートを洗浄し、1μg/mLで開始するGGX mAbの段階希釈物を25℃で1~2時間かけて加えた。ELISAプレートをPBSTによって洗浄し、上記のように発色させた(図1Fを参照)。
【0262】
FabおよびIgGの産生
Fabの細菌発現用構築物を遺伝子合成によって作製した。続いて、Fabを以前に記載されたように発現させ、精製した(Simmons,L.C.et al.,J Immunol Methods 263,133-147(2002);Lombana,T.N.et al.,Sci Rep(2015)doi:https://doi.org/10.1038/srep17488)。ウサギIgGの哺乳動物発現のためのコンストラクトを遺伝子合成によって生成した。LCおよびHCをコードするプラスミドを293個の細胞に同時トランスフェクトし、カノニカルな方法(MabSelect SuRe(商標),GE Healthcare,Piscataway,ニュージャージー州ピスカタウェイ、米国)を使用してアフィニティークロマトグラフィー、引き続いてSECで精製した。
【0263】
DNAコンストラクト
全DNAコンストラクトをカスタム遺伝子合成(GeneScript)によって得て、NcoI部位およびXhoI部位を使用してドキシサイクリン誘導性piggyBacトランスポゾンプラスミド(BH1.2、Genentech)にサブクローニングした。
【0264】
モノクローナル抗体配列決定
当技術分野で標準的な技術を使用して、抗体1C7、2B12、2E9および2H2のアミノ酸配列を決定した(図1Dおよび表2~4を参照)。
【0265】
結果
精製ポリクローナル抗体(pAb)を用いたELISAにより、GGMペプチドに対する堅牢な免疫応答が確認され、K-ε-GGを有するペプチドに対する交差反応性は驚くほど最小限であった(図1C)。強いpAbシグナルに基づいて、ファージディスプレイを行って、所望の特異性を有するmAbを直接選択した。いくつかの一本鎖Fv(scFv)ディスプレイライブラリーを個々のウサギから構築し、K-ε-GGペプチドに対する対抗選択によって、GGMペプチドに対して3回のプレートベースのバイオパニングを行った(図1A)。ファージELISAによる一次スクリーニング後、ヒットを配列決定し、固有のクローンをIgGに再フォーマットした。4つの固有の抗体クローン(1C7、2B12、2E9および2H2と呼ばれる)を同定した。4つのクローンは、高い配列類似性を有したが、複数の相補性決定領域(CDR)に多様性が生じた(X位での縮重認識を示す図1Dを参照)。GGMペプチドおよびK-ε-GGペプチドに対するELISAによってmAbを特性評価し、4つのクローンがいずれも、K-ε-GGペプチドではなくGGMペプチドに選択的に結合することが見出された(図1E)。
【0266】
潜在的なmAb標的の最大プールは、真核生物のメチオニンから主に始まる新生ポリペプチドであるが、遊離N末端のいくつかの他の供給源が存在する。これらの供給源は、アミノペプチダーゼによるMetクリッピング、シグナルペプチド除去、および内部タンパク質分解から生じる。Metアミノペプチダーゼ(MetAP)によるクリッピングの場合、切断は、Ala、Cys、Gly、Pro、Ser、ThrまたはVal残基の前に典型的に起こる(Sherman,F.et al.,Bioessays 3,27-31(1985))。mAbがこれらの潜在的なN末端ユビキチン化部位からトリプシン性ペプチドも認識するかどうかを調査するために、システインを除く20個のアミノ酸の各々により進行するジグリシンを含有するペプチドを評価した。本明細書では、これらは「GGX」ペプチドと呼ばれ、Xは、N末端から延びるGG配列付加を含有するポリペプチド配列内の初期アミノ酸を表す。注目すべきことに、mAb 1C7および2H2は同様のセットのGGXペプチドを認識したが、2E9および2B12は異なる特異性を示した。まとめると、これらの4つのmAbは19個のGGXペプチドのうちの14個に結合し、MetAPクリッピング(Sherman,F.et al.,Bioessays 3,27-31(1985))、GGG、GGA、GGS、GGTおよびGGV(図1F)に対して易反応性であり得るいくつかのアミノ酸に対する強い優先性を示した。
【0267】
CDR、重鎖可変領域および軽鎖可変領域、および1C7、2B12、2E9および2H2の完全長重鎖および完全長軽鎖のアミノ酸配列、ならびにコンセンサス配列を図1Dならびに以下の表2A、表2B、表3および表4に示す。表2A、表2Bおよび表3に示すコンセンサス配列の場合、Xは任意のアミノ酸を表す。
【0268】
全体として、これらのデータから、3番目の位置(GGX)で広範囲な特異性を有するトリプシン性ジグリシン含有直鎖ペプチドを選択的に認識し、カノニカルなユビキチン化部位に対応するイソペプチド結合ジグリシン修飾リジン含有ペプチドに対する交差反応性を欠く4つの新規抗GGX mAbが生成されたことが明らかにされた。
【0269】
実施例2:GGXペプチド認識の構造的基礎
以下の実施例は、GGMペプチドに結合した1C7抗GGX FabのX線結晶構造の決定を記載する。
【0270】
材料および方法
結晶化条件および構造決定
タンパク質:ウェル溶液の比が1:1であるハンギングドロップ法を使用して、結晶化について1C7 Fab-GGM複合体をスクリーニングした。結晶は複数の条件で観察され、最良の条件は2M硫酸アンモニウムおよび0.1M TRIS pH7.5であった。最適化すると、2M硫酸アンモニウムおよび0.1M MES pH6.5では、単結晶は約200mmに成長した。結晶を2週間にわたって成熟させ、2M硫酸アンモニウム中20%(v/v)エチレングリコールと、0.1M MES pH6.5とを用いて急速凍結した。Advanced Light Source(ALS)ビームライン5.0.2で100Kの温度で回折データを収集した。HKL2000(Otwinowski,Z.&Minor,W.Methods in Enzymology 276,(1997))を用いてデータを2.85Å分解能に処理し、モデルウサギFab(PDB:4ZTP)による分子置換によってPHENIXを用いて相を得た。COOT(Emsley,P.&Cowtan,K.Acta Crystallogr Sect D Biological Crystallogr 60,2126-2132(2004))を使用して構造を構築し、PHENIX(Adams,P.D.et al.,Acta Crystallogr Sect D Biological Crystallogr 66,213-221(2010))を使用して精密化した。GGMペプチド、水分子およびバッファー分子を加えた後に最終モデルを生成した(図2A図2Eおよび表5を参照)。
【0271】
結果
直鎖ジグリシン含有ペプチドに対する抗GGX mAbの選択性に関する洞察を得るために、GGMペプチドに結合した1C7 FabのX線結晶構造を2.85Å分解能で決定した。以下の表5は、1C7 Fab GGMペプチド共結晶構造に関するデータ収集および精密化統計を提供し、括弧内の値は最高分解能シェルに関する。
【0272】
非対称単位内には2つのFab-GGM複合体が存在し、重鎖(HC)CDRおよび軽鎖(LC)CDRの接触面のポケットに結合するGGMペプチドについて明確に定義された電子密度を有した(図2A図2B)。GGMペプチドとFabとの相互作用は、247.5Åの埋没表面積を有する。興味深いことに、LC-HC接触面にあるこのポケットは、ハプテンを認識するために抗体によって一般的に使用される(Finlay,W.J.J.&Almagro,J.C.Front Immunol 3,342(2012))。Fab-ペプチド複合体の詳細な検査により、ペプチドのジグリシン部分の認識を容易にする一連の水素結合が明らかにされた。HC Asp95およびLC Glu46の側鎖は、アミノ末端および2つのアミドを含む、ジグリシンの骨格と5つの水素結合を作り出す(図2C)。2つのカルボキシレートの負電荷は、アミノ末端の正電荷を中和するように見え、アミノ末端の正電荷は、Fab残基によって取り囲まれ、溶媒から除外された。さらに、LC Ala34、LC Tyr36およびLC Tyr49に対するジグリシンの緊密なパッキングは、ペプチドの最初の2つの位置のいずれかで非Gly残基の認識を立体的にブロックした可能性が高い。この結合様式は、HC Asp95側鎖とMetの骨格アミンとの間の水素結合によってさらに安定化された(図2C)。
【0273】
Met結合ポケットの検査により、この位置での所望の縮重アミノ酸特異性の構造的基礎が明らかにされた。このポケットは、一方の側ではHC残基Asn35、Val37、Thr93、Asn101およびTrp103、他方の側ではLC残基Tyr36、Leu89、Leu96およびPhe98によって裏打ちされていた(図2D)。メチオニン側鎖との最も近い接触は、硫黄原子とHC Thr93との間の3.1Åの水素結合である(図2C)。この分析から、疎水性および親水性の両方の特徴を有するゆるくパッキングされたポケットが示され、これにより、理論に拘束されることを望むものではないが、広範囲のアミノ酸の認識が可能になると考えられる。Trp、Lys、TyrおよびArgの認識の欠如は、このポケットを裏打ちする複数の側鎖との立体的衝突によって容易に説明された。Proの場合、抗体内のHC Asp95側鎖およびLC Tyr35側鎖とペプチド内のPro側鎖との間の複数の衝突が起こる(図2E)。
【0274】
この抗体の重要な特徴は、高度に類似したK-ε-GGペプチドの認識の欠如であった。したがって、GG認識の様式がGGMペプチドの場合と同じであると仮定して、K-ε-GGペプチドがどのようにFabと相互作用するかを分析した。リジン側鎖はGGMの主鎖と同様の軌跡をたどることができるが、Lys Cα位置での分岐(すなわち、ペプチド内のLysの前および後の残基)はCDRH3およびHC Tyr33と立体的に衝突し、mAbへの結合を妨げると仮定された。
【0275】
2E9 mAbおよび2B12 mAbはともに1C7に対する配列類似性を有したが、変化した認識プロファイルを示したため、この結果の潜在的な構造的基礎を調査した。GGM結合ポケット内では、2E9は、Metポケットを圧縮し、理論に拘束されることを望むものではないが、広範囲の残基の認識を妨げる可能性が高い2つの相違点(LC Thr91GluおよびLeu96Phe)を有した(図2D)。2B12では6つの残基の相違点により、Metポケットがさらになお劇的に再形成される。例えば、LC Thr91LeuおよびHC Thr93Valはポケットの疎水性を増加させ、これにより、他のmAbと比較してGGWに結合する固有の能力が説明され得る(図2D)。Trp側鎖に結合し得る、2B12のポケットのモデルを図2Fに提供し、HC Thr93Val残基およびLC Leu96Asn残基を示す。
【0276】
まとめると、本明細書に記載される構造的試験により、これらの抗体が、高度に類似するK-ε-GGの認識を回避しながら、どのようにGGXの縮重認識を達成するかが解明された。
【0277】
実施例3:抗GGX mAbは、細胞溶解物由来のGGXペプチドを選択的に濃縮する
以下の実施例は、複合細胞溶解物由来のペプチドの抗GGXモノクローナル抗体による免疫親和性濃縮を調査する実験を記載する。具体的には、HEK293細胞溶解物中の抗GGX抗体によって結合されたタンパク質を同定するために、免疫親和性濃縮とそれに続く質量分析を行った。
【0278】
材料および方法
試薬選択性を実証するパイロット質量分析実験
40mgのタンパク質溶解物をコンフルエントなHEK293 T細胞から調製し、トリプシン(Promega)によって消化した。トリプシン性ペプチドのPTMScan(登録商標)IAPバッファー(Cell Signaling Technologies)溶液を80μgの抗GGX mAbまたは抗K-ε-GG mAb(Cell Signaling Technology(登録商標))と4℃で30分間インキュベートした(図3Aを参照)。続いて、抗体-ペプチド混合物に、80μLのプロテインGアガローススラリーを4℃でさらに30分間かけて加えた。4つのGGX mAbをプールしてペプチド免疫親和性濃縮に使用したMS実験では、50μgの各mAbを一緒に混合した後、トリプシン消化ペプチドおよび脱塩ペプチドと接触させた。
【0279】
質量分析
再懸濁した試料を、120分の総実行時間法でLC-MS/MSによって分析した。ペプチドをnanoAcquity UPLC(Waters)を用いて分離し、エレクトロスプレーイオン化によってOrbitrap Elite(商標)またはQ Exactive(商標)HF質量分析計(ThermoFisher)に導入した。各試料の30~40パーセントを100μm×100mm Waters 1.7μm BEH-130 C18カラムにロードし、90分間にわたって適用される二段階直線勾配を使用して、1μl/分の流速で低pH逆相クロマトグラフィー(溶媒A:0.1%FA/98%水/2%ACN、溶媒B:0.1%FA/98%ACN/2%水)によって分離した。第1の段階では溶媒Bを85分間にわたって2%から25%に増加させ、続いて、第2の段階では溶媒Bを5分間にわたって25%から40%に増加させた。Orbitrap Elite(商標)およびQ Exactive(商標)HF質量分析計の両方をデータ依存モードで操作し、MS2フラグメンテーションについてそれぞれ上位15および上位10の最も豊富なイオンを選択した。各機器のために最適化した、分析に使用した質量分析計の特定の設定は、以下の通りであった。
【0280】
分解能60,000、自動利得制御(AGC)目標1×10、および最大注入時間200msで、Orbitrap Elite(商標)フーリエ変換質量分析(FTMS1)スキャンを収集した。正規化衝突エネルギー35%に設定した衝突誘起解離(CID)、自動利得制御(AGC)目標1×10、および最大注入時間100msを使用して、イオントラップ質量分析(ITMS2)を行った。
【0281】
分解能60,000、AGC目標3×10、および最大注入時間60msで、Q Exactive(商標)HF FTMS1スキャンを収集した。FTMS2を、正規化衝突エネルギー30%に設定した高エネルギー衝突解離(HCD)を使用して行い、分解能15,000、AGC目標1×10、および最大注入時間75msで収集した。
【0282】
データ分析
Mascot(Matrix Science)を使用して、Uniprotヒト配列(2017年8月ダウンロード)および共通夾雑物配列を含有する標的デコイデータベースに対してデータファイルを検索した。25ppmのプリカーサイオン質量公差、0.8Da(ITMS2)または0.02Da(FTMS2)の断片イオン公差(fragment ion tolerance)、および半トリプシン性酵素特異性を使用した。カルバミドメチル化システイン(+57.0215Da)を固定修飾として設定し、メチオニン酸化(15.9949Da)、K-ε-GG(+114.0429)およびN末端GG(+114.0429)を可変修飾と考えた。線形判別分析を使用して、5パーセントの偽発見率までペプチドスペクトル一致をペプチドレベルでフィルタリングし、続いて、調査されている生物学に関連する配列特徴に基づいてフィルタリングした。
【0283】
結果
非刺激HEK293細胞由来の溶解物をトリプシンによって消化し、4つの抗GGX mAbの各々を個別に使用してGGXペプチドについて免疫親和性濃縮を行った。得られたペプチドプールを液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)によって分析した(図3A)。並行して、対照として抗K-ε-GG mAbを用いて免疫親和性濃縮を行った。これらの溶解物中に存在するK48結合Ub鎖およびK63結合Ub鎖の存在量が高いことを考慮して、これらの標的ペプチドを使用して、豊富なK-ε-GGペプチドに対するGGXペプチドの免疫親和性濃縮のための新規mAbの選択性を確認した。抗GGX濃縮試料および抗K-ε-GG濃縮試料のLC-MSデータから、K48結合Ub鎖およびK63結合Ub鎖に対応する代表的なペプチドイオンの抽出イオンクロマトグラム(XIC)を作成して、それらのレベルを比較した。イソペプチド結合K48 Ubペプチドおよびイソペプチド結合K63 Ubペプチドの強い濃縮を示した抗K-ε-GG mAbと比較して、4つの抗GGX mAbのいずれかを濃縮に使用した場合、シグナルは検出されなかった(図3B図3C)。
【0284】
次に、抗GGX mAbによって濃縮されたペプチド配列を調査した。プロテオーム内のグリシン残基、リジン残基およびアルギニン残基の頻度を考慮すると、多くのGGXペプチドは、トリプシン切断部位(R/KGGXXXX)が先行する天然に存在する内部GGX配列モチーフを含有するタンパク質に由来して、プロテオームにコードされる。予測されたように、この実験では多くのそのようなペプチドが検出された。注目すべきことに、各濃縮試料にわたって適用された代表的な内部GGX配列の抽出イオンクロマトグラムは、抗GGX mAb濃縮試料では特異的シグナルを示したが、抗K-ε-GG mAbによる免疫親和性濃縮後には特異的シグナルを示さなかった。ELISAデータと組み合わせると、これらの結果から、標的化される配列に対する抗GGX mAbの選択性が実証された(図3D図3E)。
【0285】
N末端ユビキチン化タンパク質と同様に、内部GGXペプチドは、トリプシン切断後にのみ露出され、各mAbの配列優先傾向に関する貴重な洞察を提供する。これらの内部ペプチドを使用して、3番目の位置のアミノ酸優先傾向を決定した。パンニング戦略、ELISAおよび構造データと一致して、3番目の位置ではメチオニンおよびロイシンに対する強い優先傾向が観察され、次に最も優勢なアミノ酸はフェニルアラニンおよびグルタミンであった(図3F)。配列特異性をさらにプロファイリングするために、各抗GGX mAbについて配列ロゴを生成した(図3G)(Schneider,T.D.&Stephens,R.M.Nucleic Acids Res 18,6097-6100(1990))。ここでも、配列ロゴは、3番目の位置のメチオニンおよびロイシンに対する包括的な優先傾向を示すが、重要なことに、3~6位の他のアミノ酸の多様性を示す(図3G)。これらのデータから、特に4~6位の相違点を考慮した場合、各mAbが個々のmAb間で部分的重複を有する固有のペプチドのセットを濃縮したことを示すELISAの結果が再確認された(表6)。これらのデータに基づいて、可能性のあるペプチドの最も広いカバレッジを確実にするために、その後のMS実験のために4つの抗GGX mAbの等モル混合物を使用してPTMscan(登録商標)プロトコールを確立した(実施例4を参照)。
【0286】
N末端ユビキチン化の部位に注目して、データを手動で検査し、イニシエーターメチオニンまたはネオN末端にジグリシンレムナントを有するものについて、ペプチドスペクトル一致(PSM)をフィルタリングした。ジグリシンの質量に対応する114.0429Daの質量付加を有するペプチドを同定し、次いで、該ゲノムによってコードされたポリペプチド配列が、トリプシン感受性R/K残基が直前に先行するジグリシン配列を含有しないことが確認された。厳密なフィルタリングの後、推定N末端ユビキチン化部位を有する6つ超のタンパク質が同定された(表7)。一例は、以前に記載されているいくつかの部位(Akimov,V.et al.,Nat Struct Mol Biol 25,631-640(2018))に加えて、セリン/スレオニン-プロテインキナーゼ11相互作用タンパク質(STK11IP)上で観察された推定N末端ユビキチン化部位(図3H図3I)であった。
【0287】
全体として、この試験では、トリプシン消化によって露出された、ゲノムによってコードされた内部GGXペプチド配列、およびN末端ユビキチン化に由来するGGXペプチドの広範囲なパネルを濃縮するこれらの抗GGX mAbの選択的能力が実証された。このパイロットMS実験では、抗GGX mAbの有用性が検証されたが、内因性HEK293細胞から得られた推定N末端ユビキチン化基質は12個未満であった。この結果は既存の文献と一致し、N末端ユビキチン修飾の基底レベルが低いことが確認された(Akimov,V.et al.,Nat Struct Mol Biol 25,631-640(2018))。
【0288】
実施例4:推定UBE2W基質のプロテオミクス同定
以下の実施例は、ユビキチン結合酵素E2をコードする遺伝子であるUBE2Wのドキシサイクリン(Dox)誘導性発現によるHEK293細胞株の生成を記載する。さらに、免疫親和性濃縮MS実験では、Dox誘導性UBE2W HEK293細胞株を使用して、抗GGX mAbによって結合されたペプチドを同定した。
【0289】
材料および方法
質量分析による無標識定量(LFQ)分析のためのUBE2W発現細胞由来のGGXペプチドおよびK-ε-GGペプチドの免疫親和性濃縮
ユビキチン結合酵素E2(UBE2W)を誘導的に発現するHEK293細胞と、適合させた対照(すなわち、E3ユビキチン-タンパク質リガーゼRNF4、またはUBE2WおよびRNF4の両方を発現する細胞)とを完全変性条件(8M尿素、20mM HEPES pH8.0、1mMオルトバナジン酸ナトリウム、2.5mMピロリン酸ナトリウム、1mM β-グリセロリン酸)下で溶解した。溶解物を氷上でマイクロチップ超音波処理し(2×30秒)、高速超遠心分離(18,000×g、15分)によって清澄化した。40mgの各溶解物を還元(4.1mMジチオスレイトール、37℃で60分)、アルキル化(9.1mMヨードアセトアミド、室温で15分)、4倍希釈し、次いで、リジルエンドペプチダーゼ(Wako)と配列決定グレードのトリプシン(Promega)との組合せを用いて、1:100の酵素対タンパク質比で一晩消化し、後者を前者とのインキュベーションの4時間後に加えた。消化したペプチドをTFAによって最終濃度1%に酸性化し、遠心分離(18,000×g、15分)によって清澄化し、Sep-Pak(登録商標)C18重力流固相抽出(Waters)によって脱塩し、48時間凍結乾燥させた。乾燥ペプチドを1mLの1×IAPバッファー(Cell Signaling Technology)中で再構成し、その後の免疫親和性濃縮のために高速遠心分離(18,000×g、10分)によって清澄化した。
【0290】
200μgの抗GGX抗体カクテル(すなわち、1C7、2B12、2E9および2H2の等モル混合物)または200μgの抗K-ε-GG(Cell Signaling Technology)抗体のいずれかに結合したProPlus樹脂20μLを充填したPhytips(Phynexus)1mLを使用して、PhyNexus MEA2自動精製システムを用いて、いずれも4℃で行った2回の連続した免疫親和性濃縮にペプチドを供した。ジグリシン修飾N末端(GGX)を含有するペプチドに対する抗GGX IP、およびジグリシン修飾リジン残基(K-ε-GG)を含有するペプチドに対する抗K-ε-GG IPの順序で濃縮を行った。
【0291】
PhyNexus MEA2を用いた免疫親和性濃縮を以前に記載されたように行った(Phu,L.et al.,Mol Cell 77,1107-1123.e10(2020))。要約すると、Phytipカラムを、ペプチドと接触させる前に1×IAPバッファー1mLによって2サイクルにわたって(1サイクル=吸引および分注、0.9mL、0.5mL/分)平衡化し、16サイクルの捕捉のためにペプチドとインキュベートし、6サイクルにわたって洗浄した(1×IAPバッファー1mLによって2回、続いて水1mLによって4回)。捕捉したペプチドを60μLの0.15%TFAによって8サイクルで溶出し、吸引/分注した体積を0.06mLに調整した。続いて、溶出したペプチドをC18ステージチップ(Rappsilber,J.et al.,Nat Protoc 2,1896-1906(2007))を使用して脱塩し、Speed-Vac(ThermoFisher)によって完全に乾燥させた。
【0292】
濃縮したGGXペプチドを2%アセトニトリル(ACN)/0.1%ギ酸(FA)中で再構成し、1.7μm BEH-130 C18樹脂(Waters)を充填した100μm×250mm PicoFrit(New Objective)カラムを使用して、Dionex UltiMate 3000 RSLC(ThermoFisher)に連結したOrbitrap Fusio(商標)Lumos(商標)質量分析計(ThermoFisher)を用いて、LC-MS/MSによって2連で(各40%注入)分析した。96分の2段階直線勾配で450nL/分で低pH逆相分離(溶媒A:0.1%FA/98%水/2%ACN、溶媒B:0.1%FA/98%ACN/2%水)を行い、溶媒Bを102分かけて2%から35%に増加させ、次いで、2分かけて35%から50%に増加させ、総実行時間は120分であった。Orbitrap Fusion(商標)Lumos(商標)をデータ依存モードで動作させ、それにより、AGC目標1×10および最大注入時間50msでFTMS1スキャンを分解能240,000で収集した。正規化衝突エネルギー30%、AGC目標2.0×10および最大注入時間11msでHCDフラグメンテーションを有するイオントラップでは、2~4の電荷状態を有する上位15の最も強いプリカーサに対するMS2スキャンを収集した。
【0293】
2連注入では、MS2スペクトルをイオントラップではなくOrbitrapで分析した。OTMS2 AGC目標は2.0×10に設定し、最大注入時間は54msであった。
【0294】
LC-MS分析のためのUBE2Wおよび/またはRNF4発現細胞由来のGGXペプチドおよびK-ε-GGペプチドの免疫親和性濃縮
以下の修飾を用いて、上に詳述したように、非誘導性(N=3)、またはE3ユビキチン-タンパク質リガーゼRNF4(N=2)、UBE2W(N=3)もしくはその組合せ(N=3)を誘導的に発現するHEK293細胞のそれぞれ40mgから得られたGGXペプチドおよびK-ε-GGペプチドの免疫親和性濃縮を行った。
【0295】
200μgの抗GGX抗体カクテルまたは200μgの抗K-ε-GG(Cell Signaling Technology)抗体のいずれかによるMEA2自動精製システム(Phynexus)を用いて上記のようにいずれも行った、3回の連続した免疫親和性濃縮にペプチドを供した。ジグリシン修飾N末端(GGX)を含有するペプチドに対する抗GGX IP、ジグリシン修飾リジン残基(K-ε-GG)を含有するペプチドに対する抗K-ε-GG IP、続いて、もう一度GGXに対する抗GGX IPの順序で濃縮を行った。
【0296】
続いて、以前に記載されたように(Rose,C.M.et al.,Cell Syst 3,395-403.e4(2016);Phu,L.et al.,Mol Cell 77,1107-1123.e10(2020))、タンデム質量タグ付け(TMT-11)多重化定量分析のために、1回目(GGX)および2回目(K-ε-GG)の免疫沈降法から得られた濃縮ペプチドを調製したのに対して、無標識定量質量分析のために、3回目から得られた濃縮GGXペプチドを調製した。
【0297】
TMT-11多重化試料調製
濃縮GGXペプチドまたは濃縮K-ε-GGペプチドを含有する溶出液を、C18ステージチップを使用して脱塩し、SpeedVacによって完全に乾燥させ、その後の11-plexタンデム質量タグ付け(TMT)試薬(ThermoFisher)による等圧標識化のために25μLの200mM HEPES pH8.0中で再構成した。TMT試薬の各バイアルを室温で5分間解凍し、ベンチトップ遠心分離機を使用して遠心し、41μLの無水アセトニトリル(ACN)に再懸濁した。29%の最適標識反応最終ACN濃度に達するように、各溶出液に2μLのACNとともに8μLのTMT試薬を加えた。室温で1時間インキュベートした後、4μLの5%ヒドロキシルアミンを15分間加えることによって反応をクエンチした。標識ペプチドを合わせ、真空遠心分離によって乾燥させた。
【0298】
TMT標識GGXペプチドを溶媒A(2%アセトニトリル(ACN)/0.1%ギ酸(FA))に再懸濁し、40%と60%との2つの部分に分割し、前者にはさらに操作することなくLC-MS/MS分析を予定し、後者は、0.1%トリエチルアミン/アセトニトリル系溶出バッファーを使用するAssayMap(Agilent)のRPSカートリッジを使用して追加のオフライン高pH逆相断片化に供した。6つの画分を収集した(F1:12%ACN、F2:17%%ACN、F3:22%ACN、F4:27%ACN、F5:32%ACN、F6:80%ACN)。その後、断片化GGXペプチドを凍結乾燥させ、LC-MS/MS分析のために溶媒Aに再懸濁した。
【0299】
TMT標識K-ε-GGペプチドについて、市販のキット(ThermoFisher)を使用して高pH逆相断片化を行った。0.15%TFAに再溶解後、11画分を収集し(F1:13.5%ACN、F2:15%ACN、F3:16.25%ACN、F4:17.5 ACN、F5:20%ACN、F6:21.5%ACN、F7:22.5%ACN、F8:23.75%ACN、F9:25%ACN、F10:27.5%ACNおよびF11:30%ACN)、次いで、6画分(F1+F6、F2+F7、F8、F3+F9、F4+F10、F5+F11)に合わせた改変溶出スキームを用いて、製造業者のプロトコールに従って断片化を行った。ペプチドを凍結乾燥させ、LC-MS/MS分析のために10μLの溶媒Aに再懸濁した。
【0300】
1.7uMのBEH-130 C18(Waters)を充填した100μm×250mm PicoFrit(登録商標)カラム(New Objective)を備えたNanoAcquity(登録商標)UPLC(Waters)システムに連結したFusion(商標)Lumos(商標)質量分析計(ThermoFisher)を用いて、未断片化GGX試料のLC-MS/MS分析を行った。163分の2段階直線勾配で500nL/分で低pH逆相分離(溶媒A:0.1%FA/98%水/2%ACN、溶媒B:0.1%FA/98%ACN/2%水)を行い、溶媒Bを158分かけて2%から30%に増加させ、次いで、5分かけて30%から75%に増加させ、総実行時間は180分であった。分解能120,000、AGC目標1×10および最大注入時間50msで、Fusion(商標)Lumos(商標)FTMS1スキャンを収集した。正規化衝突エネルギー35%、AGC目標5.0×10および最大注入時間200msでのCIDフラグメンテーションを用いて、分解能15,000で、2~6の電荷状態を有するプリカーサに対するFTMS2スキャンを収集した。正規化衝突エネルギー55%、AGC目標1.5×105および最大注入時間400msでHCDフラグメンテーションに供されたMS2スペクトルにおける上位8つの最も強いイオンを用いて、分解能50,000でOrbitrapで同期プリカーサ選択(synchronous-precursor-selection)(SPS)MS3スキャンを分析した。
【0301】
以下の例外を除いて上記のように、断片化されたGGXペプチドに対するLC-MS/MS分析を行った。Dionex Ultimate 3000 RSLC(ThermoFisher)を使用して、300nL/分の流速を低下させ、溶媒Bを135分かけて2%から30%に増加させ、15分かけて30%から50%に増加させる改変した勾配で実行するAurora Series 25cm×75μm I.D.カラム(IonOpticks)を用いて、液体クロマトグラフィーを行った。
【0302】
断片化されたK-ε-GGペプチドに対するLC-MS/MS分析を、フラグメンテーションのために選択されたプリカーサイオンを電荷状態3~6を有するものに制限するMS法に対する改変を伴って、未断片化GGX試料について記載されるように正確に行った。
【0303】
TMT分析では、データ依存法の性能に影響を及ぼすと思われる一連の大きな予想外の特徴がMS1データに観察された。これらの特徴は、クロマトグラムにわたって溶出する一連の強いピークを含み、これは11個の試料の各々に存在する豊富な内部GGXペプチドの複合シグナルとして同定された。このシグナルは、11個の試料のサブセットのみ(UBE2Wのみ、コンボ)に存在すると予測される目的のN末端ユビキチン化GGXペプチドからの低強度シグナルを覆い隠すと仮定された。シグナルに関する高存在量の内部GGXペプチドの競合を最小限に抑え、不明瞭になっている可能性がある追加の同定を回復させるための試みでは、上記のように、TMT標識実験からのフロースルーペプチドを使用した免疫親和性濃縮、およびそれらの濃縮ペプチドを無標識定量(LFQ)分析のためにLC-MSに供した。TMT多重化データについては、Mascotを使用して、共通夾雑物配列を含有するUniProtヒト標的デコイデータベース(2017年8月ダウンロード)に対して、ppmプリカーサイオン質量公差25ppm、断片イオン公差0.02Da、および半トリプシン性酵素特異性を用いて生のMSデータを検索した。カルバミドメチル化システイン残基(+57.0215Da)およびTMT標識n末端(+229.1629)を固定修飾として設定し、メチオニン酸化(15.9949Da)、K-ε-GG(+114.0429)およびN末端GG(+114.0429)を可変修飾と考えた。LDAを使用して、各実行に関するペプチドスペクトル一致を理論的プリカーサm/zからFDR3%およびppm質量公差-5~4にフィルタリングした。Mojave(Zhuang,G.et al.,Sci Signal 6,ra25-ra25(2013))を使用してTMT-MS3定量を行った。オープンソースR/BioconductorパッケージであるMSstatsTMT v1.6.3を使用して、TMTプロテオミクスデータの定量および統計試験を行った(Huang,T.et al.,Mol Cell Proteomics 19,mcp.RA120.002105(2020))。MSstatsTMT分析の前に、PSMが(1)デコイタンパク質由来である場合、(2)7未満の長さを有するペプチド由来である場合、(3)50%未満の単離特異性を有する場合、(4)256未満のレポーターイオン強度を有する場合、または(5)30,000未満の合計レポーターイオン強度(全11チャネルにわたって)を有する場合、さらなる分析からフィルタリングした。ペプチドおよびチャネル当たりの最大レポーターイオン強度を最初に取得し、次いで、各PSMについて最大レポーターイオン強度を有する画分を選択することによって、冗長なPSM(すなわち、同じペプチドにマッピングされる1回のMS実行中の複数のPSM)を要約した。次に、MSstatsTMTにより、Tukey中央値洗練集計(median polish summarization)(TMP)を使用して、ペプチドをタンパク質修飾部位レベルに要約した。タンパク質当たりの線形混合効果モデルに基づいてMSstatsTMTによって、条件間の示差的存在量分析を計算した。経験的Bayes収縮を適用することによって推論手順を調整し、Benjamini-Hochberg手順による多重仮説検定のために、得られたp値を調整した。
【0304】
プールされたTMT試料では、内部GGXペプチドが、N末端ユビキチン化GGXレムナントと比較して不釣り合いに高いシグナルを示すことが観察された。この作用を克服し、追加のUBE2W基質を捕捉するための試みでは、対照(doxなし)、UBE2Wのみ、RNF4のみ、およびRNF4/UBE2W(コンボ)試料に対して追加の免疫親和性濃縮実験および無標識MS分析を行った。
【0305】
2つの条件のLFQ実験と同様に、液体クロマトグラフィーおよびデータ取得に以下のわずかな改変を加えて、LC-MS/MSを行った。Aurora Series 25cm×75μm I.D.カラム(IonOpticks)を用いて、流速450nL/分で低pH逆相分離を行った。91分かけて2から35パーセント溶媒Bまで増加させ、5分かけて35から75パーセントまで増加させるように二段階勾配を改変した。全注入について、MS2スペクトルをイオントラップで分析した。
【0306】
これらのMSデータは、Mascot(Matrix Science)を使用して、UniProtヒト配列および共通夾雑物配列を含有する標的デコイデータベース(2017年8月ダウンロード)に対して、プリカーサイオン質量公差25ppm、断片イオン公差0.8Da、および半トリプシン性酵素特異性を使用して検索した。カルバミドメチル化システイン(+57.0215Da)を固定修飾として設定し、メチオニン酸化(15.9949Da)、K-ε-GG(+114.0429)およびN末端GG(+114.0429)を可変修飾と考えた。3パーセントの偽発見率での線形判別分析を使用して、ペプチドレベルでペプチドスペクトル一致をフィルタリングした。正確なプリカーサイオン質量および保持時間を利用して実行全体にわたってペプチドを定量する、直接PSMによって導かれるアルゴリズムであるXQuantを使用して、全データファイルにわたるN末端GGペプチドの無標識定量を行った(Kirkpatrick,D.S.et al.Proc National Acad Sci 110,19426-19431(2013))。オープンソースR/BioconductorパッケージであるMSstats v3.20.0を使用して、無標識プロテオミクスデータの定量および統計試験を行った(Choi,M.et al.,Bioinformatics 30,2524-2526(2014))。MSstats分析の前に、PSMが(1)デコイタンパク質由来である場合、(2)7未満の長さを有するペプチド由来である場合、(3)71未満のVistaQuant信頼度スコアを有した場合、または(4)ピーク面積が256未満である場合、さらなる分析から除外した。実行ごとに最大強度をとることによって、冗長なPSM(すなわち、同じペプチドにマッピングされる1回のMS実行中の複数のPSM)を要約した。次に、MSstatsにより、Tukey中央値洗練集計(TMP)を使用して、ペプチドをタンパク質修飾部位レベルに要約した。タンパク質当たりの線形混合効果モデルに基づいてMSstatsによって、条件間の示差的存在量分析を計算した。Benjamini-Hochberg手順を使用することによって、多重仮説検定のために、線形混合効果モデルからのP値を調整した。
【0307】
細胞培養
HEK293細胞株は、Genentechの細胞株コア施設gCellから入手した。10%FBS、2mM L-グルタミンおよび50U/mlペニシリン-ストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で細胞を維持した。全細胞株を37℃/5%COの加湿インキュベーター内で培養し、培地を1日おきに交換した。必要に応じて、示された時間にわたって、ビヒクルDMSO(カタログ番号D2650、Sigma-Aldrich)および1μg/mlドキシサイクリン(カタログ番号D9891、Sigma-Aldrich)によって細胞を処理した。
DNAコンストラクト、トランスフェクションおよびウエスタンブロット法
【0308】
全DNAコンストラクトをカスタム遺伝子合成(GeneScript)によって得て、NcoI部位およびXhoI部位を使用してドキシサイクリン誘導性piggyBacトランスポゾンプラスミド(BH1.2、Genentech)にサブクローニングした。一過性発現のために、HEK293細胞を6ウェルプレートに播種し、DMEM培地中で約50%コンフルエンスまで増殖させた。次いで、製造業者の指示に従って10μlのFugene(Promega)を使用することによって、細胞を1μgのpiggyBacトランスポゾンプラスミドによってトランスフェクトした。安定な細胞株生成のために、10μlのFugene(Promega)を使用して、250ngのpiggyBacトランスポザーゼプラスミド(pBO、Transposagen)および750ngのpiggyBacトランスポゾンプラスミドによって細胞を同時トランスフェクトした。トランスフェクションの3日後、細胞を、1μg/mLのピューロマイシンを含有する選択培地に分割し、10日間選択した。次いで、ウエスタンブロット分析によって、タンパク質発現について、安定なまたは一過性のトランスフェクト細胞をアッセイした(例えば、図4A図4C図4Iを参照)。1μg/mLのDoxによって処理した2日後、細胞を変性溶解バッファー(9M尿素、RIPAバッファー)によって溶解し、超音波処理し、13,000rpmで10分間、4℃で遠心分離した。15~50μgのタンパク質を1×SDSローディングバッファー(ThermoFisher)および1×還元剤(ThermoFisher)中で調製し、5分間かけて90℃に加熱し、12%Tris-グリシンゲル(Bio-Rad)中で泳動させた。Trans-Blot Turbo System(Bio-Rad)を使用して23Vで7分間かけて、ゲルをニトロセルロースメンブレンに転写した。メンブレンを、0.1%Tween(登録商標)20(PBS-T)を含むPBSで希釈した5%脱脂乳によって30分間ブロックし、PBS-Tによって短時間3回すすぎ、5%BSAを含むPBS-T中の一次抗体とともに4Cで一晩インキュベートした。ブロットをPBS-T中で5分間にわたって3回洗浄し、次いで、5%BSAを含むPBS-T中で二次抗体と室温で1時間インキュベートした。ブロットを前述のように洗浄し、Supersignal Femto(Pierce)を用いて検出を行った。抗体は、1:5000ウサギ抗ベータチューブリン(カタログ番号ab6046;Abcam)、1:1000ウサギ抗UBE2W(カタログ番号PA5-67547;Thermo Fisher)、1:2,000ウサギ抗UCHL1(カタログ番号HPA005993;Thermo Fisher)、1:500マウス抗ユビキチン(カタログ番号VU-1;LifeSensors)、ならびに1:10,000ヤギ抗マウスIgG HRPおよびヤギ抗ウサギIgG HRP(カタログ番号31460および31430、Thermo Fisher)であった。
【0309】
結果
ユビキチン結合酵素E2(UBE2W)は、N末端ユビキチン化を媒介することが知られている唯一のE2 Ub結合酵素であり、UBE2W発現レベルはHEK293細胞では低いため、理論に拘束されることを望むものではないが、UBE2Wの外因性発現が内因性基質のN末端ユビキチン化を刺激し得ると推論された。したがって、ドキシサイクリン(Dox)誘導性UBE2W HEK293細胞株を生成し、実施例3に記載されているように、パイロットMS実験と同様の免疫親和性濃縮およびMSワークフローを行うために使用した。
【0310】
UBE2W基質を、UBE2W発現時にそのN末端のGGXペプチドの存在量が増加したタンパク質として同定することを目的として、MS1ピーク強度の無標識定量(LFQ)を使用して、DOX+UBE2W発現を対照DOX-条件と比較した(図4A)。実施例3に記載したのと同様の手法を適用して、イニシエーターメチオニンまたはネオN末端のいずれかでのジグリシン結合に対応するタンパク質N末端配列についてペプチドスペクトル一致(PSM)をフィルタリングした。合計で、109個のタンパク質に由来する152個の固有のGGX PSMが、それぞれ0.80%および3.67%のペプチド偽発見率およびタンパク質偽発見率で同定された。PSMに関するlog倍率変化(log FC)>1およびp<0.05の基準を使用して、この実験では、33個のUBE2W基質が同定された(図4B、表8)。
【0311】
大部分のE2 Ub結合酵素はE3リガーゼと協同的に作用し(例えば、RNF4)、以前の研究では、UBE2Wがいくつかの基質のRNF4依存性ユビキチン化を示すことが報告された(Tatham,M.H.et al.,Biochem J 453,137-145(2013))。したがって、次のDox誘導性RNF4およびバイシストロニック(RNF4/UBE2W、「コンボ」)発現ベクターを生成し、安定なHEK293細胞株を調製するために使用した(図4C)。ここでは、上記のLFQ手法に加えて、抗K-ε-GG mAbについて記載されているように(Rose,C.M.et al.,Cell Syst 3,395-403.e4(2016))、タンデム質量タグ付け(TMT)による等圧多重化と協調して抗GGX mAb免疫親和性濃縮を行った。TMT分析では、単一の多重化実験で各条件のいくつかの複製物を互いに比較することが可能であった:対照(doxなし)、UBE2Wのみ、RNF4のみ、およびRNF4/UBE2W(コンボ)。試料のこのセットにより、基質のN末端ユビキチン化におけるUBE2WとRNF4との間の潜在的なE2/E3相乗作用を評価することが可能になった。このパラダイムでは、UBE2W基質は、UBE2W-対照およびコンボ-RNF4という2つの対比で表される。対比とは、同定および定量された特徴のリストにわたって比較される一対の条件を指す。TMT分析では、99個のタンパク質に由来する141個の固有のN末端ユビキチン化GGX PSMが、それぞれ0.80%および2.02%のペプチド偽発見率およびタンパク質偽発見率で同定された。データを大まかに調査すると、RNF4過剰発現は、RNF4のみの試料でも、またはUBE2Wと共発現した場合に相乗的にも(すなわち、コンボ試料)、N末端ユビキチン化レベルに顕著に影響を及ぼさなかったことが明らかにされた。これらの条件の各々は、それぞれ対照条件およびUBE2Wのみの条件と同様の定量的データをもたらした。複数の条件から出現するヒットを探すために、コンボ-RNF4対比のlogFCをUBE2W-対照のものと比較し、複数の条件にわたってlogFC>1およびp<0.05を有する60個のUBE2W基質の高信頼度セットを得た。(図4D、表8)。
【0312】
対応するLFQ分析では、120個のタンパク質に由来する186個の固有のN末端ユビキチン化GGX PSMが、1.38%のペプチド偽発見率で同定された。このデータセットのタンパク質偽発見率は、ペプチドレベルでの反復同定の頻度に起因して、13.33%と異常に高かった。N末端ユビキチン化レベルがUBE2Wのみ対対照、コンボ対RNF4のみ、およびコンボ対対照では増加した(logFC>1およびp<0.05)タンパク質に着目すると、このデータから、TMT分析と部分的に重複する38個のUBE2W基質がもたらされた(図4E)。UBE2W-対照およびコンボ-RNF4のみの対比ではlogFC>1およびp<0.05を要求することによる最高信頼度ヒットのフィルタリングにより、28個の高信頼度UBE2W基質タンパク質ヒットが得られた(図4F)。
【0313】
本明細書に記載される全MS実験データを統合することにより、個々の実験の各々で同定された固有の基質のサブセットとの、同定された基質における顕著な重複が明らかにされた(図4G)。さらなる検査により、大部分(約53%)がUBE2W単独とUBE2W/RNF4コンボ条件との間で共有されることが明らかにされ、RNF4の外因性発現がin vivoでUBE2Wの活性を増強しないことが確認された(図4E、表8)。
【0314】
3つの定量的免疫親和性濃縮実験、すなわち、UBE2W過剰発現対対照を調査するLFQ、UBE2WおよびRNF4過剰発現を個別におよび組み合わせて対照と比較するTMT分析、ならびに追跡LFQ実験からまとめて、74個のUBE2W基質が統計学的有意性に達したと報告されている(以下の表8の概要を参照)。TMT実験から生じる定量的データでは、対照と比較して、UBE2Wを発現する試料からのいくつかのタンパク質についてシグナルの増加が一定してもたらされたため、これらが実際にUBE2Wの基質であることが示された(図4HのRS7、MIP18およびQKIの結果を参照)。
【0315】
次に、UBE2W、または細胞内でユビキチン結合を減少させる変異体であるUBE2WW144Eを用いて、リジンを有しないC末端HAタグ付きタンパク質を異所的に発現させることによって、新たに同定された基質を検証した(Vittal,V.et al.,Nat Chem Biol 11,83-89(2015))。N末端HAタグがUBE2Wによって認識および修飾され得る本質的に無秩序な配列を表すという以前の観察結果を考慮すると、C末端タグ化基質を使用することは重要である(Vittal,V.et al.,Nat Chem Biol 11,83-89(2015))。同定されたUBE2W基質の大部分は、モノユビキチン化形態の濃縮を示したが、いくつかの例では、理論に拘束されることを望むものではないが、他の酵素の作用を介してN末端ユビキチン化の後に生じると考えられるポリユビキチン化と一致して高分子量バンドを検出することができた(図4I)。重要なことに、これらの基質のモノユビキチン化種は変異体UBE2WW144Eを発現する細胞に蓄積せず、これらの基質がUBE2Wユビキチン結合、およびその後の標的タンパク質アミノ末端への移行に依存することが確認された(図4I)。実験にわたって同定された基質の検査により、N末端ユビキチン化が翻訳開始メチオニン上でのみ起こったことが明らかにされた。これらの同じタンパク質の多くが2番目の位置に小さい疎水性アミノ酸を示し、これにより、MetAP39によるN末端Metの除去が引き起こされる傾向があるため、これは驚くべきことであった(免疫親和性濃縮UBE2W基質の2番目の位置の分析が、イニシエーターメチオニンの後にグリシン、アラニン、バリンまたはフェニルアラニンを含有するペプチドの優先的濃縮を示す図4Jを参照)。UBE2Wは無秩序なN末端を有するタンパク質を優先的にユビキチン化することが知られているため(Vittal,V.et al.,Nat Chem Biol 11,83-89(2015))、タンパク質予測ソフトウェアを使用して、これらの推定基質が実際に無秩序なN末端を有するかどうかを評価した。Protein DisOrder prediction System(PrDOS)(Ishida,T.&Kinoshita,K.Nucleic Acids Res 35,W460-W464(2007))を使用すると、これらのタンパク質のうち62個が、予測された無秩序なN末端を有することが見出された(表8、右列)。
【0316】
まとめると、UBE2Wの74個の細胞基質が同定された。UBE2W基質、ならびに実施例3に記載のパイロット免疫親和性濃縮およびMS実験で同定された推定N末端ユビキチン化部位を有するタンパク質の概要を以下の表8に示す。表8では、「X」は、タンパク質が、対応するMS実験で同定されたか、または無秩序なN末端を有すると予測されたことを示す。
【0317】
実施例5:UCHL1およびUCHL5はUBE2Wの基質であり、N末端ユビキチン化はUCHL1およびUCHL5のデユビキチナーゼ活性を調節する
以下の実施例は、ユビキチンC末端ヒドロラーゼ(UCH)ファミリーのデユビキチナーゼの2つのメンバー、UBE2W基質UCHL1およびUCHL5を特性評価する実験を記載する。具体的には、UCHL1およびUCHL5は、in vitroユビキチン化アッセイでは、UBE2WによってN末端ユビキチン化されることが実証された。さらに、N末端ユビキチン化は、UCHL1およびUCHL5のデユビキチナーゼ活性を調節することが示された。
【0318】
材料および方法
細胞培養
HEK293細胞株およびCOS-7細胞株は、Genentechの細胞株コア施設gCellから入手した。10%FBS、2mM L-グルタミンおよび50U/mlペニシリン-ストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で細胞を維持した。全細胞株を37℃/5%COの加湿インキュベーター内で培養し、培地を1日おきに交換した。必要に応じて、示された時間にわたって、ビヒクルDMSO(カタログ番号D2650、Sigma-Aldrich)、1μg/mlドキシサイクリン(カタログ番号D9891、Sigma-Aldrich)、1μMボルテゾミブ(カタログ番号2204、CST)および10μg/mlシクロヘキシミド(カタログ番号2112、CST)によって細胞を処理した。
【0319】
ユビキチン化アッセイ
ユビキチン化アッセイのために、100nM E1(カタログ番号E-305、Boston Biochem)と、4μM UBE2W(カタログ番号E2-740、Boston Biochem)と、1μM UCHL1-K0およびUCHL5-K0(自社製)と、1μM RNF4(カタログ番号E3-210、Boston Biochem)と、250μM Ub(カタログ番号U-100H、Boston Biochem)との混合物を使用した。全反応を、40μlのユビキチン化バッファー(50mMトリスpH7.5、5mM MgCl、50mM KCL、および0.2mM DTT)中、37℃で2時間行った。反応を3mM ATPによって開始し、Laemmliバッファーを加えることによって停止させ、90℃に加熱し、続いて、SDS-PAGEによってタンパク質を分離し、適切な抗体による免疫ブロット法によって可視化した。
【0320】
Biolayer干渉法アッセイ
384傾斜ウェルプレートを使用して、Octet Red 384(Forte Bio)プラットフォームを用いてBLIアッセイを実行した。全実験を25℃、1000RPM振盪、60μLウェル容量で行い、150mM NaCl、20mM Tris 7.5、1mg/mL BSA、0.01%Tween(登録商標)-20、および1mM TCEPを含有するバッファーを使用した。ブランクバッファー中での各ローディング、会合または解離工程に、60秒間のベースラインまたは洗浄工程が先行した。300秒間のローディング工程にわたる1nMの応答のために、ストレプトアビジンバイオセンサー(カタログ番号18-5019、Forte Bio)上で、ビオチン化ユビキチン(カタログ番号UB-570、Boston Biochem)の固定化を18nM(0.156μg/μL)に最適化した。野生型またはユビキチン融合タンパク質の会合を行った、5μMから開始してタンパク質の4倍希釈。会合工程を180秒間測定し、解離工程を300秒間測定した。ビオチン-ユビキチンがロードされていないストレプトアビジンチップを使用して、チップ表面との各タンパク質希釈物の非特異的結合を測定し、カーブフィッティングの前に生データ測定値からデータを差し引いた。プリズムにおける1:1結合モデルを使用して会合曲線および解離曲線をフィッティングし、Kを速度定数および定常状態測定値から決定した(図6A図6B図6Cおよび図6Dを参照)。
【0321】
Ub-ローダミン110酵素アッセイ
Ub-ローダミン110(カタログ番号U-555、Boston Biochem)をDMSOに溶解し、10μlの反応バッファー(50mM HEPES pH7.5、50mM KCl、5%グリセロール、5mM MgCl、5mM DTT、0.1mg/ml BSA、および0.005%Tween-20)中0.5μMの基質(Ub-Rho110)を含む1nMの精製酵素を使用して活性アッセイを決定した。実験を、黒色384ウェル非結合面低フランジプレート(Corning)内37℃で行い、EnVision(登録商標)2105 Multimode Plate Reader(PerkinElmer)で、それぞれ350nmおよび450nmの励起波長および発光波長を使用してモニタリングした。120分間にわたって60秒ごとに測定を行った(図6Eを参照)。
【0322】
ユビキチンビニルスルホンアッセイ
精製タンパク質(50nM)を1μM UbビニルスルホンHAタグ付きプローブ(Ub-VS-HA)(カタログ番号U-212、Boston Biochem)による酵素反応に供した。全反応を40μlのデユビキチナーゼ(DUB)バッファー(50mM HEPES pH7.5、50mM KCl、5%グリセロール、5mM MgCl、5mM DTT、0.1mg/ml BSA、および0.005%Tween(登録商標)-20)中、37℃で30分間行った。適切な抗体による免疫ブロット法によって、部位特異的HA-Ub-VSプローブによる酵素の修飾を検出した(図6Fを参照)。
【0323】
タンパク質の発現および精製
全ての完全長野生型および変異体タンパク質、ならびにN末端融合Ubを、カスタム遺伝子合成(GeneScript)によって得、大腸菌内の発現のために単一タンパク質発現ベクターにサブクローニングした。全配列をそれらのC末端で6-Hisタグによってタグ付けした。タンパク質を、BL21-Gold(DE3)細胞内で18℃で18時間発現させ、次いで、500mM NaCl、50mM Tris 7.5、5%グリセロール、および1mM TCEPを含有する溶解バッファー中での遠心分離によって採取した。アフィニティークロマトグラフィー(Ni-NTA Agarose、Thermofisher)、続いて、サイズ排除クロマトグラフィー(16/600 Superdex200、GE Healthcare)によってタンパク質を精製した。タンパク質試料を濃縮し、GFバッファー(150mM NaCl、20mM Tris 7.5、1mM TCEP)中で凍結した。
【0324】
結果
UCHL1およびUCHL5はUBE2Wの基質である
UBE2W基質リストの中で注目すべきは、ユビキチンC末端ヒドロラーゼ(UCH)ファミリーのデユビキチナーゼの2つのメンバー、UCHL1およびUCHL5であった(図5A図5B図5C図5D、表8)。UCHL1は、3つのLC-MS実験のうちの1つで推定基質として同定されたが、UCHL5は3つ全てで同定された。データ依存性ショットガン配列決定のイディオシンクラティックな性質のために、これらの実験は、TMT試料中のUCHL1のN末端ユビキチン化を実証するデータをもたらさなかった。各々の半トリプシン性形態および完全トリプシン性形態を表す、N末端ユビキチン化UCHL1ペプチドおよびN末端ユビキチン化UCHL5ペプチドの2つの異なる形態が同定され、それぞれの同定の信頼性をさらに高めた。以前に、UCHL1はN末端ユビキチン化されていることが示唆されていたが、この修飾に関与する酵素は不明であった(Meray,R.K.&Lansbury,P.T.J Biol Chem 282,10567-10575(2007))。これらの2つのデユビキチナーゼが実際にN末端ユビキチン化されたことを検証するために、in vitroユビキチン化アッセイを精製タンパク質を用いて行ったところ、UBE2Wが、リジンを有しないバージョンのUCHL1およびUCHL5の両方をモノユビキチン化できることが観察された(図5E)。これらのデータを裏付けて、内因性UCHL1は、細胞内のUBE2Wの発現時にモノユビキチン化された(図5F)。重要なことに、UBE2WW144E発現は、Ub-UCHL1の形成を裏付けなかった(図5F)。残念ながら、UCHL5の修飾は、ウエスタンブロット実験では検出されなかった(データは示さず)。
【0325】
N末端ユビキチン化は、タンパク質分解のシグナルであると提案されている(Ciechanover,A.&Ben-Saadon,R.Trends Cell Biol 14,103-106(2004);Breitschopf,K.et al.,Embo J 17,5964-5973(1998);Bloom,J.et al.,Cell 115,71-82(2003);Coulombe,P.et al.,Mol Cell Biol 24,6140-6150(2004))。ただし、近年、N末端ユビキチン化タンパク質はプロテアソーム阻害剤の存在下ではわずかにしか蓄積しないことが示され、N末端ユビキチン化がタンパク質分解以外の役割を有する可能性があることが示唆された(Akimov,V.et al.,Nat Struct Mol Biol 25,631-640(2018))。そのため、N末端ユビキチン化が細胞アッセイでUCHL1の分解を促進するかどうかを評価した。これを試験するために、UBE2Wを発現させ、HEK293細胞をプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブによって処理した。ボルテゾミブによって処理した細胞には高分子量ユビキチン化タンパク質が蓄積したが、Ub-UCHL1の蓄積は観察されなかった(図5G)。UCHL1のN末端モノユビキチン化がその分解を引き起こさないことを再確認するために、シクロヘキシミド追跡実験を行った。不安定なタンパク質p21は、UBE2Wを発現し、シクロヘキシミドによって処理した細胞内で迅速に分解されたが、Ub-UCHL1は安定なままであった。その後の時点(5時間)でのみ、UCHL1タンパク質レベルが低下し始めた(図5H)。全体として、これらの結果から、細胞内のUBE2WによるN末端モノユビキチン化がUCHL1の分解を引き起こさないことが示唆された。
【0326】
N末端ユビキチン化はUCHL1およびUCHL5のデユビキチナーゼ活性を調節する
N末端ユビキチン化は細胞ベースのアッセイではUCHL1分解を促進しなかったため、次に、N末端ユビキチン化がUCHL1およびUCHL5のデユビキチナーゼ機能を調節するかどうかを評価した。これを評価するために、野生型(UCHL1WTおよびUCHL5WT)、触媒的に不活性な変異体(UCHL1C90SおよびUCHL5C88S)、N末端ユビキチン化模倣物(UbG76V-UCHL1およびUbG76V-UCHL5)、およびユビキチン変異体(UbI44A,G76V-UCHL1およびUbI44A,G76V-UCHL5)を含む多数のUCHL1バリアントおよびUCHL5バリアントを生成した。模倣物については、ユビキチンのC末端をデユビキチナーゼの最初のメチオニンに融合し、ユビキチンの最後のグリシンをバリンに変異させて、UCH自己触媒活性を介したユビキチンの除去を防止した。
【0327】
以前の構造研究では、Ub結合がUCHL1活性部位残基を触媒的に適格な配置に再配列させることが示された(Boudreaux,D.A.et al.,Proc National Acad Sci 107,9117-9122(2010))。しかし、UCHL1の活性部位付近の内部リジンのモノユビキチン化は、その基質の結合をブロックすることが示されている(Meray,R.K.&Lansbury,P.T.J Biol Chem 282,10567-10575(2007))。さらに、UCHL5の活性は、基質親和性のレベルで調整される(Yao,T.et al.,Nat Cell Biol 8,994-1002(2006))。したがって、N末端ユビキチン化がUCHL1およびUCHL5のユビキチン結合親和性を調節するかどうかを試験した。Bio-Layer干渉法(BLI)を使用して、UCHL1WT、UCHL5WT、UbG76V-UCHL1、UbG76V-UCHL5、UbI44A,G76V-UCHL1、およびUb I44A,G76V-UCHL5のモノユビキチン結合能を調査した(図6A)。以前の報告と一致して(Larsen,C.N.et al.,Biochemistry-us 37,3358-3368(1998);Osaka,H.et al.,Hum Mol Genet 12,1945-1958(2003))、モノユビキチンとUCHL1WTとの間に強い相互作用が観察された。ただし、モノユビキチンとUbG76V-UCHL1との間では、高いモノユビキチン濃度(5μM)でのみ結合が観察された(図6B図6C)。UCHL5についても同様の傾向が見られたが、モノユビキチンに対する親和性は、UCHL1と比較してはるかに低下した(図6B図6D)。興味深いことに、UbI44A,G76V-UCHL1は、UbG76V-UCHL1と比較して結合の約3倍の増加を示し、UCHL1がそのN末端Ub修飾とシスで相互作用することができることが示唆された。対照的に、I44Aの付加は、UbG76V-UCHL1のUb結合に影響を及ぼさなかった。したがって、N末端ユビキチン化は、UCHL1およびUCHL5がモノユビキチンに結合するのを妨げるとの結論が下された。
【0328】
次に、ユビキチン-ローダミン110(Ub-Rho110)を使用してデユビキチナーゼ活性アッセイを行うことによって、UCHL1およびUCHL5のデユビキチナーゼ活性がN末端ユビキチン化時に変化するかどうかを調査した。UCHL1WTおよびUCHL5WTの動態は以前の報告と一致し(Boudreaux,D.A.et al.,Proc National Acad Sci 107,9117-9122(2010);Yao,T.et al.,Nat Cell Biol 8,994-1002(2006))、予測通り、触媒的に死滅したUCHL1C90SおよびUCHL5C88Sから活性は検出できなかった(図6Eおよび表9)。驚くべきことに、UCHL1およびUCHL5のN末端ユビキチン化は、それらのそれぞれのデユビキチナーゼ活性に対して反対の効果を付与した。UbG76V-UCHL1およびUbI44A,G76V-UCHL1は、UCHL1WTと比較して顕著に低下した活性を示したが、UbG76V-UCHL5およびUbI44A,G76V-UCHL5は、UCHL5WTと比較して顕著に増強された活性を有した(図6Eおよび表9)。Ub-Rho110アッセイを裏付けるために、自殺プローブユビキチン-ビニルスルホン(Ub-VS)を使用した(Borodovsky,A.et al.,Embo J 20,5187-5196(2001))。UCHL1WTはUb-VSと容易に反応し、30分後に完了に近づいたが、UbG76V-UCHL1は大部分が非修飾のままであった(図6F)。逆に、UCHL5WTは30分の時点で部分的にしか修飾されなかったが、UbG76V-UCHL5はUb-VSと迅速に反応した(図6F)。まとめると、これらのデータでは、N末端ユビキチン化はUCHL1およびUCHL5の両方のデユビキチナーゼ活性を調節したが、反対方向であったことが実証されている。
【0329】
最後に、以前の報告では、UCHL1デユビキチナーゼ活性が細胞内の遊離モノユビキチンプールを調節することが示されている(Osaka,H.et al.,Hum Mol Genet 12,1945-1958(2003))。N末端ユビキチン化はin vitroでUCHL1活性を負に調節したため、細胞内のこの修飾の生理的結果を調査した。COS-7細胞を対象とした以前の研究と一致して(Meray,R.K.&Lansbury,P.T.J Biol Chem 282,10567-10575(2007))、UCHL1WTの外因性発現は、遊離モノユビキチンのレベルを顕著に増加させた(図6G、レーン1と比較したレーン2)。ただし、UbG76V-UCHL1の発現は、遊離モノユビキチンの蓄積をバックグラウンドレベルまで減少させた(図6G、レーン3)。この結果は、UbG76V-UCHL1がモノユビキチンに結合できないことを示すin vitro生化学的観察結果を裏付けている(図6B図6C)。UCHL1C90S発現は、UCHL1WTと同様に遊離モノユビキチンの蓄積を引き起こした(図6G、レーン4をレーン2と比較)。ただし、UbG76V-UCHL1C90Sを発現する細胞、および非Ub結合UCHL1変異体(UCHL1D30K)は、基礎レベルの遊離モノユビキチンを示した(図6G、レーン5および6)。
【0330】
まとめると、本明細書に提示されるデータは、UCHL1の触媒活性ではなくUb結合活性が、細胞内の遊離モノユビキチンのプールを調節したことを示した。さらに、これらの結果は、UCHL1のN末端ユビキチン化がUb結合をブロックし、その細胞機能を阻害することを実証した。
【0331】
結論
要約すると、本明細書に記載される研究は、N末端ユビキチン化ポリペプチドを包括的にプロファイリングするための新しい抗体ツールキットを確立し、この非カノニカルな形態のユビキチン化の新しい役割を同定する。この翻訳後修飾の合成に関与する重要な酵素が特徴付けられており、基質がそれらのN末端でどのように修飾されるかに関する洞察が提供されている。
実施例6:N末端ユビキチン化がプロテアソーム分解とは独立して機能することの実証
【0332】
以下の実施例は、N末端ユビキチン化が大きなセットの基質のプロテアソーム分解をもたらすかどうかを試験する実験を記載する。データは、UCHL1がN末端ユビキチン化時にプロテアソーム分解の標的とされなかったことを実証したが、既存のデータは、N末端ユビキチン化とプロテアソーム分解とのさらに広範囲な関連を排除しなかった。この関連を体系的に評価するために、今回はプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(Btz)の存在下および非存在下で、UBE2W Dox誘導性過剰発現モデルを使用した。
【0333】
材料および方法
実施例4に記載されているように、無標識定量を使用して実験を行った。10μMのプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(Btz)によって細胞を2時間さらに処理した後、細胞を採取した。
【0334】
結果
対照(Dox(-)/Btz(-))、Btzプロテアソーム阻害単独(Dox(-)/Btz(+))、UBE2W過剰発現単独(Dox(+)/Btz(-))、およびコンボ(Dox(+)/Btz(+))の4つの個々の試料を生物学的2連で生成した(図7A)。以前のMS実験と同じフィルタリングおよびカットオフを使用して、GGX濃縮ペプチドの無標識定量的データを調査して、プロテアソーム阻害時にN末端ユビキチン化が増加するかどうかを調査した。以前のRNF4実験と同様に、UBE2W-Ctrl(左、図7B)およびコンボ-Btz(右、図7B)の対比によって表されるように、Btz処理の非存在下および存在下の両方でUBE2W依存性基質を同定した。興味深いことに、GGX濃縮ペプチド存在量は、広範囲の基質にわたるプロテアソーム阻害によって体系的に変化せず(図7C)、プロテアソーム分解がN末端ユビキチン化の主要な結果ではないという仮説が確認された。この観察と一致して、UBE2W過剰発現条件間に強い相関があったが(すなわち、UBE2Wおよびコンボ)、Btz処理試料は対照とよく似ていた(図7D)。ただし、コンボ-UBE2Wおよびコンボ-Btzの対比ではLogFC>2によって表されるように、236個のGGXペプチドのうち12個(約5%)が、Btz処理単独またはUBE2W過剰発現のいずれかと比較して、コンボ試料における存在量の協調的増加を示した。まとめると、本明細書に記載の無標識プロテオミクス分析では、UBE2WによるN末端ユビキチン化が大部分の基質でプロテアソーム分解を引き起こすのに十分ではないことが確認された。
【0335】
実施例7:ユビキチン化ポリペプチドを検出するための抗GGX抗体の使用
以下の実施例は、プロテアーゼLbpro*による細胞溶解物の消化、および消化された細胞溶解物中のGly-Glyモチーフを有するペプチドを検出するための抗GGX抗体の使用を記載する。Lbpro*は、Gly-Glyアミノ酸残基に先行するペプチド結合を切断する。したがって、リジンアミノ酸残基またはアルギニンアミノ酸残基のカルボキシル側でペプチド鎖を主に切断するトリプシンと比較して、Lbpro*の方が、大きな配列特異性でタンパク質を選択的に切断する。Gly-Glyモチーフを欠くタンパク質はLbpro*によって切断されないため、細胞溶解物を消化するためにLbpro*を使用すると、消化ペプチド、またはユビキチン化基質由来のペプチドが濃縮された修飾タンパク質のプールがもたらされると考えられる。
【0336】
Lbpro*の調製、およびUbクリッピング
Lbpro*は、Swatek,K.N.et al.,Protocol Exchange 2019 Aug 22;10.21203/rs.2.10850/v1に記載されているプロトコールに従って発現および精製される。さらに、「Ubクリッピング」は、細胞溶解物全体を使用して行われる(同書)。具体的には、細胞溶解物をLbproとインキュベートして、ユビキチン化部位にGG付加を含有する修飾タンパク質を生成する。
【0337】
ユビキチン化ポリペプチドの検出。
次いで、本明細書に提供される抗GGX抗体を使用したウエスタンブロットによって、細胞溶解物中のユビキチン化ポリペプチドを検出する。具体的には、Lbpro*によって消化した細胞溶解物全体をSDS-PAGEゲルにロードし、分離し、当技術分野で標準的な技術を使用してメンブレンに転写する。あるいは、Lbpro*によって消化した細胞溶解物全体を抗GGX抗体による免疫沈降法に供してから、SDS-PAGEゲルにロードすることができる。メンブレンを1つ以上の抗GGX抗体とインキュベーションする。GGX抗体は、二次抗体、例えば、抗ウサギ抗体を使用して標識または検出され得る。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G-3H】
図3I
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E-6F】
図6G
図7A
図7B
図7C
図7D
【配列表】
2024526103000001.app
【国際調査報告】