(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】遠隔操作ロボット手術システムのマイクロ手術器具の較正方法、および関連システム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/37 20160101AFI20240709BHJP
B25J 3/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61B34/37
B25J3/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577521
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 IB2022055584
(87)【国際公開番号】W WO2022264080
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】102021000015899
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518132307
【氏名又は名称】メディカル・マイクロインストゥルメンツ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL MICROINSTRUMENTS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】タンツィーニ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】プロクター,マイケル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】プリスコ,ジュゼッペ マリア
(72)【発明者】
【氏名】シミ,マッシミリアーノ
【テーマコード(参考)】
3C707
4C130
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707BS15
3C707BS26
3C707HS27
3C707HT04
3C707JT05
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3C707JU12
3C707KS34
3C707KW03
3C707KX06
3C707LT14
3C707LT17
3C707LU08
4C130AA02
4C130AA04
4C130AA13
4C130AA19
4C130AA24
4C130AB02
4C130AD01
4C130DA10
(57)【要約】
遠隔操作ロボット手術システム1の手術器具20を較正する方法を説明する。手術器具20は、それぞれの複数の腱31、32、33、34、35、36に関連付けられた複数の伝達要素21、22、23、24、25、26と、伝達要素の一連の動きと関節式エンドエフェクタ装置40のそれぞれの動作または姿勢との間の固有の相関関係を決定するように、伝達要素にそれぞれの腱を介して機械的に接続可能な関節式エンドエフェクタ装置40とを備える。遠隔操作ロボット手術システム1は、前述の手術器具20に加えて、複数の電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16および制御手段9を含む。電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16は、制御手段の制御下で伝達要素に動きを与えるために、それぞれの伝達要素21、22、23、24、25、26に作動的に接続可能である。本方法は、まず、関節式エンドエフェクタ装置40を、関節式エンドエフェクタ装置40の基準位置とみなされる所定の既知の位置に配置し、ロックするステップを含む。関節式エンドエフェクタ装置40のこのような基準位置は、伝達要素21、22、23、24、25、26のそれぞれの結果として生じる位置と一義的に関連付けられる。次に、本方法は、電動アクチュエータの各々がそれぞれの伝達要素21、22、23、24、25、26と接触するように、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16を作動させるステップと、各電動アクチュエータがそれぞれの伝達要素と接触したときの電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16の位置を記憶するステップと、エンドエフェクタ装置の基準位置に一義的に関連付けられた電動アクチュエータの基準位置として、電動アクチュエータの記憶された位置のセットを考慮するステップとを提供する。次に、この方法は、制御手段9によって電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16に付与される動きが参照される仮想ゼロ点を、電動アクチュエータの前記記憶された基準位置に関連付ける、運動学的ゼロ条件を定義することを提供する。作動ステップは、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16が、ゼロより大きく閾値以下の力を外科器具のそれぞれの伝達要素に加えるように、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16を制御するステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作ロボット手術システム(1)の手術器具(20)を較正する方法であって、
手術器具(20)は、それぞれの複数の腱(31、32、33、34、35、36)に関連付けられた複数の伝達要素(21、22、23、24、25、26)と、伝達要素の一連の動きと関節式エンドエフェクタ装置(40)のそれぞれの動作または姿勢との間の一義的な相関関係を決定するように、伝達要素にそれぞれの腱を介して機械的に接続可能な関節式エンドエフェクタ装置(40)と、を含み、
遠隔操作ロボット手術システム(1)は、手術器具(20)に加えて、複数の電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)および制御手段(9)を含み、電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)は、それぞれの伝達要素(21、22、23、24、25、26)に動作可能に接続可能であり、制御手段9の制御下で伝達要素に動きを与え、
方法は、
関節式エンドエフェクタ装置(40)を、関節式エンドエフェクタ装置(40)の基準位置とみなされる、既知の予め定義された位置に配置しロックするステップを含み、このような関節式エンドエフェクタ装置(40)の基準位置は、各伝達要素(21、22、23、24、25、26)のそれぞれの結果的な位置と一義的に関連付けられ、
方法はまた、
電動アクチュエータの各々がそれぞれの伝達要素(21、22、23、24、25、26)と接触するように、電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)を作動させるステップと、
各電動アクチュエータがそれぞれの伝達要素と接触したときに、すべての電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)の位置を記憶するステップと、を含み、記憶された電動アクチュエータの位置のセットを、エンドエフェクタ装置(40)の基準位置に一義的に関連付けられた電動アクチュエータの基準位置とみなし、
方法はまた、
制御手段(9)によって電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)に付与される動きが参照される仮想ゼロ点を、電動アクチュエータの記憶された基準位置に関連付けることにより、運動学的ゼロ状態を定義するステップを含み、
作動ステップは、電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)を、それらが手術器具のそれぞれの伝達要素にゼロより大きく閾値力以下である力を加えるように制御するステップを含む、
方法。
【請求項2】
閾値力は、伝達要素(21、22、23、24、25、26)および関節式エンドエフェクタ装置(40)の両方に動作可能に連結された腱に、エンドエフェクタ装置(40)が静止してロックされている条件下でわずかな予荷重を付与するように、閾値力を決定する予備ステップにおいて予め決定され、
作動ステップは、電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)を制御して、公差(ε)の範囲内で、手術器具のそれぞれの伝達要素に閾値力に等しい力を加えるようにするステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遠隔操作ロボット手術システムが、各々がそれぞれの伝達要素(21、22、23、24、25、26)に動作可能に接続された力センサ(17、17’、18、18’)を含み、
及び/又は、電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)がそれぞれの伝達要素(21、22、23、24、25、26)に力を加え、各伝達要素に実際に加えられた力を検出するように構成され、
各伝達要素(21、22、23、24、25、26)にゼロより大きく閾値力より小さい力を加えるステップは、フィードバック制御ループによって伝達要素(21、22、23、24、25、26)に力を加えるステップを含み、
フィードバック信号は、伝達要素または各電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)に作動的に接続されたそれぞれの力センサ(17、17’、18、18’)によって実際に検出された伝達要素に加えられた力を代表する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
関節式エンドエフェクタ装置(40)は関節を含み、
関節式エンドエフェクタ装置(40)の所定の既知の位置は、関節式エンドエフェクタ装置(40)の各関節がその関節作業空間の中心位置にある状態に対応する位置である、
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
関節式エンドエフェクタ装置(40)は関節を含み、
関節式エンドエフェクタ装置(40)の所定の既知の位置は、関節式エンドエフェクタ装置(40)が手術器具(20)のシャフト(27)の軸と整列している状態に対応する位置である、
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
関節式エンドエフェクタ装置(40)の基準位置は、先端キャップ(37)によって拘束される、
請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)のモータがそれぞれの伝達要素(21、22、23、24、25、26)と接触して停止する閾値力は、0.01Nから5.0Nの範囲内、好ましくは0.05Nから2.0Nの範囲内である、
請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)の基準位置、好ましくは電動アクチュエータのそれぞれの、例えば他のものとは独立した基準位置と、所定の公称ゼロ位置との間のオフセットの制御が実施され、そのようなオフセットが最大許容絶対オフセット(dx
MAX)より大きい場合、較正手順は無効であるとみなされる、
請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
対応する伝達要素(21、22、23、24、25、26)と接触しているときに各電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)によって到達される位置間の相対オフセットの制御が実施され、そのような相対オフセットが最大許容相対オフセット(dx)よりも大きい場合、較正手順は無効であるとみなされる、
請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
最大許容相対オフセット(dx)は0~20mm、好ましくは5~15mmの範囲内である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
拮抗腱(31、32;33、34;35、36)のそれぞれの1対または複数対に動作可能に連結された1対または複数対の拮抗伝達要素(21、22;23、24;25、26)が提供され、
各対の拮抗腱は、関節式エンドエフェクタ装置(40)の一体型のリンク(42、43、44)を反対の移動方向に移動させるように適合される、
請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
弾性要素(46)が設けられ、それぞれの伝達要素(21、22、23、24、25、26)に作用して、伝達要素(21、22、23、24、25、26)をそれぞれの電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)から離間させるのに適合した一定の最小予荷重レベルを維持する、
請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
作動ステップは、電動アクチュエータとそれぞれの伝達要素との間の第1の接触ステップにおいて、電動アクチュエータに第1の速度(v1)が付与され、それぞれの伝達要素に第1の力(F1)が加えられるように、電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)を制御するステップを含む、
請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
作動ステップは、第1の速度(v1)が0.1~30mm/sの範囲内、好ましくは1~10mm/sの範囲内にあるように、
及び/又は、第1の力(F1)が0.01~2N、好ましくは0.05N~0.5Nの範囲内にあることが検出されたときに、電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)の動きを停止するように、
電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)を制御するステップを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
作動ステップは、第1の接触ステップに加えて、
電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)がシフト(dx1)だけ後退する後退ステップと、
電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)が第2の速度(v2)で前進し、第2の力(F2)に等しい接触力が検出されると停止する第2の前進および第2の接触ステップと、を含む、
請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
第2の力(F2)が閾値力に等しい、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第2の速度(v2)は、第1の速度(v1)よりも低く、好ましくは0.1~5mm/sの範囲内、より好ましくは0.5~3mm/sの範囲内であり、
及び/又は第2の力(F2)は、第1の力(F1)よりも大きく、好ましくは0.1~5Nの範囲内、より好ましくは0.5~2Nの範囲内である、
請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
後退ステップの間、電動アクチュエータの動きは、後者によって加えられる力が第3の力値(Fm)に達するように制御され、
第3の力値(Fm)は好ましくは0.1~5Nの範囲内である、
請求項15~17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
作動ステップは、電動アクチュエータの位置が、伝達要素との最初の接触の前に、ストローク(dX3)に対応する空間に沿って、自由ストローク状態が発生していることを制御手段が認知している予め定義された範囲にあるときに、電動アクチュエータが、第1の速度(v1)および第2の速度(v2)よりも大きい第3の速度(v3)に等しい速度で前進するように、電動アクチュエータを制御するステップを含む、
請求項13~17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
可撓性で弾性のある無菌ドレープ(19)が、電動アクチュエータと手術器具との間に介在し、
無菌ドレープの抵抗によって発生する力は、既知のオフセット力またはバイアス力(Foff)であり、制御手段(9)は、実行される力チェックから、および/または、閾値力との比較から、このような既知のオフセット力またはバイアス力(Foff)を考慮して算入するように、または、除去するように、または、考慮しないように構成される、
請求項1~19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
外部拘束によってロックされることなく移動可能な状態にあるとき、関節式エンドエフェクタ装置(40)を、制御手段(9)が最大操作力(Fa)を加えることによって移動させ、
最大操作力は、閾値力以下である、
請求項1~20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)はピストン(11、12、13、14、15、16)、及び/又は、キャプスタンなどの回転ディスク(11、12、13、14、15、16)を含む、
請求項1~21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
拮抗腱が、それぞれの伝達要素および関節式エンドエフェクタ装置(40)のそれぞれのリンクの両方に動作可能に接続され、関節式エンドエフェクタ装置(40)の少なくとも1つの自由度のうちの少なくとも1つの自由度を反対の動きで作動させ、
電動アクチュエータと伝達要素との間の接触ステップまたは係合ステップの後に、エンドエフェクタ装置(40)の各自由度について、一対の拮抗腱の両方の拮抗腱に対して同時に定義ステップを実行することを提供し、
定義ステップは、拮抗腱の様々な対に対して順に適用され、または、一度に1つの対のみに対して実行されることが好ましい、
請求項1~22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
拮抗腱が、それぞれの伝達要素および関節式エンドエフェクタ装置(40)のそれぞれのリンクの両方に動作可能に接続され、関節式エンドエフェクタ装置(40)の少なくとも1つの自由度の少なくとも1つの自由度を反対の動きで作動させ、
電動アクチュエータと伝達要素との間の接触ステップまたは係合ステップの後に、エンドエフェクタ装置(40)の各自由度について、定義ステップは、
- エンドエフェクタ装置(40)の各自由度をストローク終端の当接に到達させるステップと、
- それぞれの伝達要素に大きな力(Fe)を加えることにより、それぞれの腱に応力を適用するステップと、
- 各自由度について、こうして得られた伝達要素の対応する位置(Xe)を記憶するステップと、
- 各自由度について記憶された伝達要素の位置(Xe)に基づいて、運動学的ゼロ位置を定義および/または再計算するステップと、
を含み、
好ましくは、到達させるステップ、適用するステップ、記憶するステップ、および定義および/または再計算するステップは、すべての伝達要素、特に伝達要素および互いに拮抗する腱について実施され、各自由度について、当該自由度の拮抗する腱に関連する2つの伝達要素の2つの位置(Xe、Xe_ant)が記憶されるようにする、
請求項1~22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
1つの自由度の運動学的ゼロ位置とそのストローク終端との間の角度距離が既知であり、
定義するステップは、
- エンドエフェクタ装置(40)の1つの自由度をストローク終端の当接に近づけるステップと、
- 一対の拮抗する腱のうち、腱に作用する力を大きな力値(Fe)にするステップと、
- 腱に対応する伝達要素の位置(Xe)を記憶するステップと、
- 一対の拮抗腱の他方の腱に拮抗力(Fe_ant)を作用させるステップを実行する間、腱に作用する高い力(Fe)を保持するステップであって、高い力(Fe)が拮抗力(Fe_ant)よりも大きいステップと、
- 拮抗腱に対応する伝達要素の位置(Xe_ant)を記憶するステップと、
- 記憶されたそれぞれの位置(Xe、Xe_ant)の値に基づいて、一対の拮抗伝達要素の運動学的ゼロ位置を計算するステップと、
- 伝達要素を、計算された運動学的ゼロ位置に移動させるステップと、
を含む、
請求項1~24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
腱が、例えば絡み合わせたポリマ繊維から作られたポリマ腱である、
請求項1~25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
遠隔操作ロボット手術システム(1)であって、手術器具(20)と、複数の電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)と、制御手段(9)と、を含み、
手術器具(20)は、それぞれの複数の腱(31、32、33、34、35、36)に関連付けられた複数の伝達要素(21、22、23、24、25、26)と、伝達要素の一連の動きと関節式エンドエフェクタ装置(40)のそれぞれの動作または姿勢との間の一義的な相関関係を決定するように、伝達要素にそれぞれの腱を介して機械的に接続可能な関節式エンドエフェクタ装置(40)と、を含み、
関節式エンドエフェクタ装置(40)は、関節式エンドエフェクタ装置(40)の基準位置とみなされる既知の所定の位置に配置され、ロックされるように適合されており、関節式エンドエフェクタ装置(40)のそのような基準位置は、伝達要素(21、22、23、24、25、26)のそれぞれの結果として生じる位置と一意に関連付けられ、
電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)は、それぞれの伝達要素(21、22、23、24、25、26)に動作可能に接続され、制御手段(9)の制御下で伝達要素に動きを与え、
関節式エンドエフェクタ装置(40)が、基準位置とみなされる既知の所定位置に配置され、ロックされているとき、制御手段(9)は、
- 電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)を作動させて、電動アクチュエータの各々がそれぞれの伝達要素(21、22、23、24、25、26)に接触するようにし、電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)を制御して、電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)が、ゼロより大きく閾値以下の力を手術器具のそれぞれの伝達要素に加えるようにし、
- 各電動アクチュエータがそれぞれの伝達要素に接触したときのすべての電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)の位置を記憶し、記憶された電動アクチュエータの位置の集合を、エンドエフェクタ装置(40)の基準位置に一義的に関連付けられた電動アクチュエータの基準位置として考慮し、
- 電動アクチュエータの記憶された基準位置を、制御手段(9)によって電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)に付与される運動が参照される仮想ゼロ点と関連付けるゼロ合わせ、すなわち運動学的ゼロ条件を定義するように構成されている、
遠隔操作ロボット手術システム(1)。
【請求項28】
請求項1~26のいずれか1つに記載の方法を実行するように構成された、
遠隔操作ロボット手術システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作ロボット手術システムのマイクロ手術器具の較正方法に関する。
【0002】
したがって、本明細書は、より一般的には、遠隔手術用ロボットシステムの操作制御の技術分野に関する。
【背景技術】
【0003】
遠隔操作ロボット手術システムでは、スレーブ手術器具(slave surgical instrument)の自由度の1つ以上の作動は、一般に、外科医によって付与されたコマンドを受け取るように構成された1つ以上のマスター制御装置(master control device)に隷属させられる。このようなマスター・スレーブ制御アーキテクチャは、典型的には、ロボット手術用ロボット内に収容可能な制御装置を含む。
【0004】
ロボット手術システム用の既知のヒンジ式手術器具は、例えば、同じ出願人の名義の文書WO2017-064301およびWO2018-189729に示されているように、患者の解剖学的構造に対する手術および/または手術針の取り扱いを意図した手術器具の先端に遠位側で、手術器具のバックエンド部分に作動可能に接続された、アクチュエータからの運動を伝達するための作動腱(actuation tendons)またはケーブルを含む。かかる文献は、一対の拮抗腱(antagonistic tendons)が、手術器具と同じ自由度を作動させるように構成される解決策を開示している。例えば、手術器具の回転関節(ピッチの自由度及びヨーの自由度)は、前述の拮抗腱のトルクによって加えられる引張力を加えることによって制御される。
【0005】
さらに、WO2010-009221に示されているように、二対の腱のみが手術器具の3自由度を制御するように構成されているように、同じ腱対が同時に1自由度以上の自由度を作動させることができる手術器具も知られている。
【0006】
例えば、US2020-0054403は、ロボットシステムの作動インタフェースにおける手術器具の係合手順を示しており、この係合手順では、ロボットシステムの電動回転ディスクが、手術器具のエンドエフェクタの自由度の作動ケーブルに接続された手術器具の対応する回転ディスクと係合する。そこに記載されている係合手順により、ロボットシステムの電動回転ディスクによって感知される応答を評価することにより、手術器具がロボットシステムに動作可能に係合しているかどうかを認識することができる。
【0007】
一般に、ロボット手術用の腱は、金属コード(またはストランド)の形で作られ、手術器具に沿って取り付けられたプーリーに巻かれている。各腱は、アクチュエータによって作動されたときに手術器具の自由度の迅速な作動応答を提供し、その結果、手術器具の自由度に対する良好な制御を提供するために、各腱が常に引張状態になるように、器具に取り付けられ、弾性的に予負荷をかけられる、または、器具に組み付ける前に予め調整され(pre-conditioned)てもよい。
【0008】
一般論として、すべてのコードは負荷を受けると伸長する。絡み合わせ(intertwine)タイプの新しいコードは、少なくとも部分的にはコードを形成する繊維のほつれにより、負荷を受けると塑性弾性(plastic-elastic)の高い伸びを示すのが一般的である。
【0009】
このため、手術器具に組み付ける前に、新しい腱に高い初期負荷をかけ、引き抜きや絡み合わせの過程や素材自体に残存する塑性を除去するのが一般的である。
【0010】
一般的に、コードには通常3つの伸長(延長)要素がある:
(1)弾性伸長変形、これは引張負荷が停止したときに回復する;
(2)回復可能な変形、すなわち、ある一定の時間をかけて徐々に回復する比較的小さな変形で、絡み合いの性質の関数であることが多く、回復には、負荷を受けない場合には数時間から数日の期間を要する;
(3)回復不可能な永久伸び変形。
【0011】
上述したような永久伸び変形は、器具に組み付ける前に行うコード慣らし手順によって達成することができ、この慣らし手順は、負荷および負荷解除(loading and unloading)サイクルを含み、繊維自体の塑性的な伸び変形を伴うことができる。
【0012】
引張負荷下での粘性クリープ変形は、疲労を受けるとある種の絡み合ったコードに影響を及ぼす時間依存性の効果であり、一般に加えられる負荷の強さによって回復可能な場合と回復不可能な場合がある。
【0013】
一般に、ポリマ繊維の疲労挙動は金属繊維の疲労挙動とは異なり、ポリマ繊維は金属繊維のように亀裂伝播による破壊を受けないが、繰り返し負荷によって別の形態の破壊につながる可能性がある。
【0014】
同出願人名義のWO2017-064306は、ロボット手術用の極めて小型化された手術器具の解決策を示しており、この手術器具は、大きい曲率半径に適応すると同時に、手術器具のヒンジ式(すなわち関節式)先端部を形成する、一般に「リンク」と呼ばれる剛性要素の表面上を摺動するように適合された腱を使用している。このような腱の摺動を可能にするためには、腱とリンクの摺動摩擦係数をできる限り低く保つ必要があり、上述の文献では、(鋼鉄製の腱を使用するのではなく)ポリマ繊維で形成された腱を使用することを教示している。
【0015】
多くの観点から有利であり、実際、ポリマ繊維によって形成された前述の腱を使用することによって手術器具の極端な小型化が得られるという事実の結果として、この解決策に関しては、長さの同じ変化では、サイズが小さくなるにつれて、小型化された手術器具の制御不能の影響が強調されることになるから、手術器具の作動条件下で腱の伸長または短縮(収縮)の発生を回避することがさらに重要になる。
【0016】
金属製の腱は、回復可能な伸長性がある程度あり、手術器具に組み付ける前に行われる前述の予負荷工程は、通常、残留可塑性を完全に除去するのに十分である一方、組み付けたときに受ける予負荷は、使用時の即時反応性を維持する。
【0017】
そうでなければ、ポリマ材料で作られた腱は、上述の寄与により高い伸びを有し、さらに、組立前に予負荷工程を実施しても、腱が低い引張負荷を受けるとすぐに、回復可能な伸びの大部分を迅速に回復することを防ぐことはできない。一方では、高い組立予負荷を予測することが変形の回復を防ぐとすれば、他方では、使用していないときでもポリマ製腱のクリープ過程を悪化させ、腱をほとんど無期限に伸張させ、弱体化させることになり、したがって、実行可能な策とは言えない。
【0018】
例えば、高分子量ポリエチレン繊維(HMWPE、UHMWPE)で形成された絡合コードは、通常、復元不可能な変形を起こすが、アラミド、ポリエステル、液晶ポリマ(LCP)、PBO(Zylon(登録商標))、ナイロンなどの絡合コードは、この特徴の影響を受けにくい。
【0019】
手術器具の場合、上述した腱の伸長現象に起因する腱の長さのばらつき、および伸長の回復は、特に手術条件下では、手術器具自体の十分なレベルの精度と正確さを維持するための制御において、必然的に客観的な複雑さを課すことになるため、非常に望ましくない。
【0020】
特に、関節式エンドエフェクタのロボット運動の精度も臨床性能を決定する基本要素である小型化器具の場合、数十ミクロン(μm)の腱の作動でも、関節先端部(例えば、WO-2017-064301に例えば示されているように、ヒンジ付き手首)の何度かの回転を決定することができる。
【0021】
電動リニアアクチュエータを有するモータボックスを含むロボットマニピュレータと、電動アクチュエータによってそれぞれの作動腱に付与される運動の対応する伝達ピストンを含む近位インタフェース部分(またはバックエンド部分)を有する手術器具とを含む腱作動システムの例は、例えば、同一出願人名義のWO-2018-189729に示されている。
【0022】
しかしながら、このような小型化された器具の製造方法、とりわけ組立方法は、このような組立体の再現性を極めて困難にし、その象徴として、関節式エンドエフェクタの中心運動学的ゼロ位置(central kinematic zero position)に対する運動伝達手段、ディスクまたはピストンの位置の本質的なばらつきが存在する。
【0023】
バックエンド作動手段の位置が、ある器具と別の器具との間のエンドエフェクタの既知の位置と一意に関連付けられない小型化された器具の場合、共通の係合手段で運動学的ゼロ位置または基準位置または「運動学的ゼロ点」位置を定義することは不可能である。
【0024】
実際、関節式エンドエフェクタの運動学的ゼロ位置が与えられると、各器具は、ディスクまたはピストンなどのバックエンド作動手段の異なる位置を有し、そのような多様性は重要であり、無視できるものではない。このような場合、ゼロ位置は器具ごとに異なるため、当技術分野で一般的に知られているような既知の係合位置までモータを前進させることは容認されない。
【0025】
さらに、手術器具がポリマ繊維腱のように摩擦を最小限に抑えてエンドエフェクタの表面上を摺動するように設計された腱を備えている場合、腱はポリマであり、予測困難な態様で変形するため、非伸張性鋼製腱の場合のように荷重下で運用して腱の非伸張性に頼ることさえ受け入れられないはずである。言い換えれば、例えばUS-2020-0054403に示されているように、高い抵抗力(BEMF)が発生し検出されるまで、このような腱に予荷重をかけることは、ポリマ腱の場合、大きな塑性変形を起こす可能性があるため、現実的ではない。
【0026】
同出願人のUS-2021-137618は、無菌バリアを介して手術器具のそれぞれのカウンターピストン(counter-piston)と接触するように直線的に前進する電動ピストンを含む手術器具に作動力を伝達するシステムを有する手術遠隔操作用ロボットシステムの解決策を示している。カウンターピストンは、手術器具の関節先端部の自由度のポリマ作動腱にストレスを与える。ポリマ作動腱は、例えばUS-2020-008890にも示されている。
【0027】
例えば、US-2020-054403は、手術器具の先端をロックすることを含む較正方法を示している。
【0028】
例えば、US-2021-0052340は、関節式手術器具の先端の自由度を、その上に装着されたカニューレの内壁に2つの反対方向に衝突させ、平均位置を計算し、その自由度の基準位置として保存することを含む、手術器具の較正プロセスを示している。
【0029】
US-2018-214219は、器具の関節先端部の自由度を、それに触れることなくロックするための歯付き装置を備える手術器具を示す。このような装置は、器具の使用中に挿入することができ、必要に応じて器具の挿入カニューレに沿って前進させ、手術フィールドの器具の関節先端部に到達させる。
【0030】
したがって、端的に述べると、それぞれの手術器具について、正確かつ適時に「運動学的ゼロ点」を正確に定義する必要性がある。
【0031】
特に、小型化されたエンドエフェクタを有する手術器具の場合、さらに、拮抗するポリマケーブルによって作動する手術器具の場合、また、製造のばらつきが大きい手術器具の場合、「運動学的ゼロ点」を正確に定義する必要がある。
【発明の概要】
【0032】
本発明の目的は、遠隔操作ロボット手術システムの手術器具の較正方法を提供することであり、これにより、背景技術を参照して上記で述べた欠点を少なくとも部分的に克服し、考慮される技術分野で特に感じられる前述のニーズに応えることができる。このような目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0033】
このような方法のさらなる実施形態は、請求項2~26によって定義される。
【0034】
本発明のさらなる目的は、前述の方法を実行することができ、および/または前述の手術器具の較正方法によって較正されるように適合された遠隔操作ロボット手術システムを提供することである。かかる目的は、請求項27に記載のシステムによって達成される。
【0035】
このようなシステムのさらなる実施形態は、請求項28によって定義される。
【0036】
より詳細には、本発明の目的は、以下に要約される特徴を有する、前述の技術的要求に沿った解決策を提供することである。
【0037】
本発明のさらなる特定の目的は、遠隔操作の前に、前述のロボットプラットフォームのモータ装置(または「モータボックス」)に属する複数のモータ(例えば、6つのモータ)の単一の構成を、それに属する少なくとも2つの自由度(例えば、「ピッチ」および「ヨー」と呼ばれる自由度)からなる手術器具の単一の構成にマッチさせることができる方法を提供することである。
【0038】
運動学的ゼロ点は、ロボットマニピュレータの電動アクチュエータ(すなわち、モータボックスに属するモータ)の位置と、手術器具の伝達要素(例えば、ピストン)の位置との結合によって与えられる。
【0039】
モータの始動位置は、機械、すなわちモータボックスハウジングを含むロボットマニピュレータまたはロボットアームに固有のものである。
【0040】
一方、ピストンの初期位置は、手術器具ごとに異なることがある。
【0041】
ロボットマニピュレータ、すなわちロボットアームは使い捨ての要素ではなく、機械とそのライフサイクルに関連しているため、モータの多様性(variability)ははるかに限定的であるが、手術器具は使い捨ての要素であり、遠隔操作セッションごとに高い確率で交換され得るため、手術器具の多様性ははるかに高い。
【0042】
モータボックスと器具はどちらも独特な形状をしており、モータボックスの場合、例えば取り付けの不完全さに起因することがある。
【0043】
装置の極端な小型化と作動システムの幾何学的形状により、仮想的なユニークな構成からのいかなる種類の違いも、たとえ1ミリメートルの100分の1のレベルであっても、遠隔操作中の動作に影響を与えるマスター装置とスレーブ装置の間の運動学的整合性に大きな影響を与える可能性がある。
【0044】
このような欠点に加え、腱の弾性塑性(elastic‐plastic)変形(回復可能か否かを問わず)があるため、遠隔操作に重大な支障をきたす可能性がある。実際、エンドエフェクタの既知の構成に関連する伝達要素、したがってそれに作動的に接続された電動アクチュエータの位置は、ポリマ腱の回復可能または回復不可能な弾性塑性変形のような小さな不完全性のために、完全には再現できない。
【0045】
提案された解決策により、器具を係合させて「原点復帰(homing)」操作を行うことが可能である。すなわち、エンドエフェクタの位置が分かっている状態で、手術器具の伝達要素(例えば、ピストン)上に常に異なる態様で配置されたアクチュエータの位置をリセットすることが可能である。
【0046】
提案された解決策により、伝達チェーンが極めて低い摩擦を維持するように設計され(例えばポリマ腱を使用する)、従って関節式エンドエフェクタの運動を作動させるために極めて低い作動力しか必要としないことを特徴とする場合であっても、器具を係合させ、手術器具の「ホーミング」を実行することが可能である。
【0047】
本発明による較正手順または方法は、好ましくは、各遠隔操作ステップの前に実行される。
【0048】
較正手順は遠隔操作の準備に貢献し、手術器具がロボットマニピュレータの各ポケットに正しく装着されていることが確認された後に実行できる。
【0049】
較正手順は、手術器具がその腱の調整(「プレストレッチ」)を受ける初期調整ステップを含む初期化ステップの後、および遠隔操作ステップの前に実行することができる。
【0050】
較正手順は、手術器具がその腱の調整(「プレストレッチ」)および保持ステップ(「ホールドホーミング(hold homing)」)を受ける初期調整ステップを含む初期化ステップの後、および遠隔操作ステップの前に実行することができる。
【0051】
較正手順は、2つの隣接する遠隔操作ステップの間、すなわち、1つの遠隔操作ステップの終了から次の遠隔操作ステップの開始までの間に実行することができる。これは、例えば、遠隔操作ステップの間に、ポリマ腱の少なくともいくつかが伸長変形を受けたときに、その後の遠隔操作ステップを開始する前に、更新された運動学的ゼロ位置を記憶保存するように較正手順が実行される。
【0052】
例えば、2つの隣接する遠隔操作ステップの間に、中断された遠隔操作ステップ及び/又は制限された遠隔操作ステップ及び/又は収容ステップ及び/又は休息ステップのように、スレーブ装置の手術器具がマスター装置に隷属しない(すなわち、スレーブがマスターに追従しない)中間ステップを介在させることができる。遠隔操作ロボット手術中に実行可能な連続する隣接する遠隔操作ステップの数は、様々な偶発的および特定の必要性に依存し得る。
【0053】
実際、手術器具がマスター装置に完全に隷属している遠隔操作ステップの間、手術器具の自由度を集中的に作動させるために、少なくともいくつかの腱の性能が低下することがあり、(例えば、ピッチ/ヨーの自由度に関して)高い曲率半径が腱に要求され得る作動などである。
【0054】
提案された解決策により、腱が回復可能または回復不可能な弾性塑性変形を受ける場合や、エンドエフェクタの極端な小型化の結果、1つの手術器具と別の手術器具との間に本質的なばらつきがある場合でも、ロボットマニピュレータの電動アクチュエータの位置と手術器具のエンドエフェクタの構成との間の正確なマッチングを取得し、更新することが可能である。
【0055】
提案された解決策により、プラグまたはキャップを使用して手術器具の関節先端部をロックすることが可能であり、各電動アクチュエータと手術器具のそれぞれの伝達要素との間の接触は、電動アクチュエータの力センサ(ロードセル)によって検出される。従って、電動アクチュエータのモータ電流を読み取る必要がなく、ヒンジ付き先端部の自由度をロックするためにモータ自体を使用する必要もない。
【0056】
器具の関節先端部に装着され、少なくとも対向する2つの側面で前述の関節先端部に当接するプラグまたはキャップの形態の拘束要素を設けることにより、先端部自体のいかなる範囲の動きも回避して、手術器具の関節先端部の1つまたは複数の自由度をロックすることができる。これにより、プラグまたはキャップ(拘束要素)の1つの位置で、例えば手術器具の長手方向軸に整列された、所望の既知の位置に関節先端部をロックすることが可能になり、較正手順を迅速かつ正確なものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明による方法のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、非限定的な指示として与えられる好ましい例示的な実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【0058】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る、遠隔操作手術のロボットシステムの不等角図である。
【
図2】
図2は、
図1の遠隔操作手術のロボットシステムの一部の不等角図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係るロボットマニピュレータの遠位部分の不等角図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る手術器具の不等角図であり、腱が破線で模式的に図示されている。
【
図5】
図5は、あり得る作動モードにおける手術器具の関節式のエンドエフェクタ装置(またはエンドエフェクタ)の自由度の作動を示す、平面図および明確にするための部分的断面図である。
【
図6】
図6は、あり得る作動モードにおける遠隔操作準備方法の調整ステップを
図5の例を取って示す図である。
【
図7A】
図7Aは、あり得る作動モードにおける較正方法の手順を図示する。
【
図7B】
図7Bは、あり得る作動モードにおける較正方法の手順を図示する。
【
図7C】
図7Dは、あり得る作動モードにおける較正方法の手順を図示する。
【
図7D】
図7Dは、あり得る作動モードにおける較正方法の手順を図示する。
【
図8】
図8は、明確化のために部分的に断面図である不等角図であり、一実施形態に係る手術器具の関節式エンドエフェクタを示す。
【
図9A】
図9Aは、拘束要素によって構想された関節式エンドエフェクタの断面を図式的に示し、明確化のために腱は省略されている。
【
図9B】
図9Bは、拘束要素によって構想された関節式エンドエフェクタの断面を図式的に示し、明確化のために腱は省略されている。
【
図10A】
図10Aは、あり得る作動モードによる較正方法のシーケンスを図式的に示す。
【
図10B】
図10Bは、あり得る作動モードによる較正方法のシーケンスを図式的に示す。
【
図10C】
図10Cは、あり得る作動モードによる較正方法のシーケンスを図式的に示す。
【
図10D】
図10Dは、あり得る作動モードによる較正方法のシーケンスを図式的に示す。
【
図11A】
図11Aは、較正方法の一実施形態に係る、電動アクチュエータ、伝達要素、および手術器具の間の相互作用のシーケンスに関する詳細図である。
【
図11B】
図11Bは、較正方法の一実施形態に係る、電動アクチュエータ、伝達要素、および手術器具の間の相互作用のシーケンスに関する詳細図である。
【
図11C】
図11Cは、較正方法の一実施形態に係る、電動アクチュエータ、伝達要素、および手術器具の間の相互作用のシーケンスに関する詳細図である。
【
図13】
図13は、較正方法の各実施形態に係る、伝達要素と手術器具との間の相互作用の各シーケンスに関する詳細図である。
【
図14A】
図14Aは、較正方法の各実施形態に係る、伝達要素と手術器具との間の相互作用の各シーケンスに関する詳細図である。
【
図14B】
図14Bは、較正方法の各実施形態に係る、伝達要素と手術器具との間の相互作用の各シーケンスに関する詳細図である。
【
図14C】
図14Cは、較正方法の各実施形態に係る、伝達要素と手術器具との間の相互作用の各シーケンスに関する詳細図である。
【
図15A】
図15Aは、較正方法の各実施形態に係る、伝達要素と手術器具との間の相互作用の各シーケンスに関する詳細図である。
【
図15B】
図15Bは、較正方法の各実施形態に係る、伝達要素と手術器具との間の相互作用の各シーケンスに関する詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1~15を参照して、遠隔操作ロボット手術システム1の手術器具20を較正する方法を説明する。
【0060】
手術器具20は、複数の腱31、32、33、34、35、36それぞれに関連付けられた複数の伝達要素21、22、23、24、25、26と、伝達要素の1セットの動作と関節式エンドエフェクタ装置40のそれぞれの動作または姿勢(pose)との間の一義的な相関関係を決定するように、それぞれの腱を介して伝達要素に機械的に接続可能な関節式エンドエフェクタ装置40と、を含む。
【0061】
遠隔操作ロボット手術システム1は、前述の手術器具20に加えて、複数の電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16と、制御手段9とを含む。電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16は、制御手段の制御下で伝達要素に動作を与えるために、それぞれの伝達要素21、22、23、24、25、26に動作可能に接続されている。
【0062】
本方法は、まず、関節式エンドエフェクタ装置40を、関節式エンドエフェクタ装置40の基準位置(reference position)とみなされる、予め定義された既知の位置(この目的のために既知であり予め指定されていれば、原則的に任意の所望の位置とすることができる)に配置しロックするステップを含む。このような関節式エンドエフェクタ装置40の基準位置は、各伝達要素21、22、23、24、25、26のそれぞれの結果的な位置と一義的に関連付けられる。
【0063】
次に、この方法は、電動アクチュエータの各々がそれぞれの伝達要素21、22、23、24、25、26と接触するように、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16を作動させるステップと、次に、各電動アクチュエータがそれぞれの伝達要素と接触したときに、すべての電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16の位置を記憶するステップとを提供し、記憶された電動アクチュエータの位置のセットを、エンドエフェクタ装置40の基準位置に一義的に関連付けられた電動アクチュエータの基準位置とみなす。
【0064】
次に、この方法は、制御手段9によって電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16に付与される動きが参照される仮想ゼロ点を、電動アクチュエータの前述の記憶された基準位置に関連付ける、運動学的ゼロ状態を定義するステップを含む。
【0065】
前述の作動ステップは、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16を、それらが手術器具のそれぞれの伝達要素にゼロより大きく閾値力(threshold force)以下の力を加えるように制御するステップを含む。
【0066】
関節式エンドエフェクタ装置(以下、「ヒンジ付き端末」または「関節先端部」または「関節式エンドエフェクタ」とも定義される)を参照すると、実施形態において、それは、好ましくは、ピッチ、ヨー、および開閉(「グリップ」とも呼ばれる)の自由度を有し、好ましくは、回転の自由度(「ロール」とも呼ばれる)も有するヒンジ付き手首(すなわち、カフ(cuff))であることに留意すべきである。
【0067】
この方法は、例えば手術器具を使用する前に行うことができる。
【0068】
一実施形態によれば、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16を作動させる前述のステップは、電動アクチュエータを作動させるステップを含み、それにより各電動アクチュエータがそれぞれの伝達要素21、22、23、24、25、26と接触し、その際、電動アクチュエータを移動させることはなく、あるいは、関連するポリマ腱の変形を補償するためにわずかに移動させる。
【0069】
本方法の一実施形態によれば、前述の閾値力は、伝達要素21、22、23、24、25、26および関節式エンドエフェクタ装置40の両方に動作可能に連結された腱に、エンド装置40が静止してロックされている条件下でわずかな予荷重を付与するように、閾値力を決定する予備ステップにおいて予め決定される。
【0070】
このような場合、前述の作動ステップは、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16を制御して、公差εの範囲内で、手術器具のそれぞれの伝達要素に前述の閾値力に等しい力を加えるようにするステップを含む。
【0071】
一実施形態によれば、本方法は、各々がそれぞれの伝達要素21、22、23、24、25、26に動作可能に接続された力センサ17、17’、18、18’を含み、及び/又は、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16がそれぞれの伝達要素21、22、23、24、25、26に力を加え、各伝達要素に実際に加えられた力を検出するように構成された遠隔操作ロボット手術システムに適用される。
【0072】
このような場合、各伝達要素21、22、23、24、25、26にゼロより大きく閾値力より小さい力を加える前述のステップは、フィードバック制御ループによって伝達要素21、22、23、24、25、26に力を加えるステップを含み、フィードバック信号は、伝達要素または各電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16に作動的に接続されたそれぞれの力センサ17、17’、18、18’によって実際に検出された伝達要素に加えられた力を代表する。
【0073】
システムがアクチュエータと伝達要素との間に配置された、無菌のわずかに伸縮性のあるドレープ19を含む特定の実施形態によれば、力は、無菌ドレープ19を通してそれぞれの伝達要素(例えば、21)上に電動アクチュエータによって加えられる。この場合、アクチュエータ(例えば、11)に取り付けられた力センサ17、17’、18、18’は、アクチュエータ-ドレープ-伝達要素の接触力(contact force)を検出するので、アクチュエータと伝達要素の接触は、この場合、間接的である。無菌ドレープまたは布19は、好ましくは、その平坦な構成において弾性的に予圧され、その結果、アクチュエータが前進するとき、電動アクチュエータの底面に近位方向に予圧がかかる。力センサ17、17’、18、18’は、好ましくは、ロボットマニピュレータ10の電動アクチュエータの底部、すなわち無菌ドレープ19の非無菌側にある。
【0074】
一実施形態によれば、関節式エンドエフェクタ装置40は関節(joint)を含み、関節式エンドエフェクタ装置40の前述の所定の既知の位置は、関節式エンドエフェクタ装置40の各関節がその関節作業空間の中心位置にある状態に対応する位置である。
【0075】
例えば、
図8に示す実施形態では、ピッチの自由度P、ヨーの自由度Y、およびグリップの自由度Gを定義する回転ジョイントが使用され、前述の中心位置とは、中心角度位置である。
【0076】
例えば
図13に示すように、中心角度位置は、エンドエフェクタ40のヨーYの自由度を規定する回転ジョイントに対して、当該中心角度位置とそれぞれのストローク終端との間の互いに等しい2つの角度αを規定することができる。
【0077】
例えば
図14のA-Cに示すように、ヨーYの自由度はストローク終端にもたらされ、最初に角距離α1、次に第2の角距離α2(ここに示す例では第1の角距離より大きい)を描く(describe)拮抗伝達要素21、22に作用し、実施形態によれば、ゼロ点は、前述の角距離α1、α2を描くために拮抗伝達要素21、22によって実施されるストロークの中間点として、次の関係に従って計算される。
【0078】
【0079】
関節式エンドエフェクタ装置40が関節を含む別の実施形態によれば、関節式エンドエフェクタ装置40の前述の所定の既知の位置は、関節式エンドエフェクタ装置40が手術器具20のシャフト27またはロッド27の軸と整列している状態に対応する位置である。
【0080】
好ましくは、シャフトは、(
図10に示すように)長手方向延在方向r-rに沿って延在する剛性シャフトであるので、関節式エンドエフェクタ装置40は、シャフト27の長手方向延在方向r-rと整列し、好ましくは、各回転ジョイントの中心角度位置は、前述の長手方向r-rと整列し、それにより、リンク(すなわち、接合要素、すなわち、接続要素)の長手方向に扁平または細長い本体は、シャフト27と長手方向に整列する。
【0081】
本方法の一実施形態によれば、関節式エンドエフェクタ装置40の基準位置は、先端キャップ37によって拘束される。先端キャップ37は、ピッチ、ヨーおよびグリップの自由度をロックするように適合させることができ、ロールの自由度、すなわち長手方向軸r-r周りの回転もロックするように適合させることができる。
【0082】
本方法の一実施形態によれば、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16のモータがそれぞれの伝達要素21、22、23、24、25、26と接触して停止する前述の閾値力は、0.01Nから5.0Nの範囲内、好ましくは0.05Nから2.0Nの範囲内である。
【0083】
本方法の一実施形態によれば、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16の基準位置、好ましくは電動アクチュエータのそれぞれの、例えば他のものとは独立した基準位置と、所定の公称ゼロ位置との間のオフセットの制御が実施され、そのようなオフセットが最大許容絶対オフセットdxMAXより大きい場合、較正手順は無効とみなされる。
【0084】
一実施形態によれば、較正手順を無効とみなすには、アクチュエータの1つだけが前述の最大絶対オフセットdxMAXより大きいオフセットを有していれば十分である。
【0085】
本方法の一実施形態によれば、対応する伝達要素21、22、23、24、25、26と接触しているときに各電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16によって到達される位置間の相対オフセットの制御が実施され、そのような相対オフセットが最大許容相対オフセットdxよりも大きい場合、較正手順は無効とみなされる。
【0086】
一実施形態によれば、一対の拮抗する伝達要素の、伝達要素に関連する電動アクチュエータ間の相対オフセットが制御される。
【0087】
可能な実施形態によれば、最大許容相対オフセットdxは0~20.0mm、好ましくは5~15mmの範囲内である。
【0088】
本方法の一実施形態によれば、拮抗腱(31、32)、(33、34)、(35、36)のそれぞれの1対または複数対に動作可能に連結された1対または複数対の拮抗伝達要素(21、22)、(23、24)、(25、26)が提供される。各対の拮抗腱は、関節式エンドエフェクタ装置40のリンク(すなわち、一体型の連結要素)42、43、44を反対方向の移動、例えば、反対方向の角度に移動させるように適合されており、言い換えれば、各対の拮抗腱は、それぞれの自由度(ピッチP、またはヨーY、またはグリップG)を反対方向に移動させるように適合されている。
【0089】
一実施形態によれば、弾性要素46が設けられ、この弾性要素46は、それぞれの伝達要素21、22、23、24、25、26に作用して、伝達要素21、22、23、24、25、26をそれぞれの電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16から離間させるのに適合した一定の最小予荷重レベルを維持する。
【0090】
一実施形態によれば、前述の作動ステップは、電動アクチュエータとそれぞれの伝達要素との間の第1の接触ステップにおいて、電動アクチュエータに第1の速度v1が付与され、それぞれの伝達要素に第1の力F1が加えられるように、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16を制御するステップを含む。
【0091】
一実施形態によれば、作動ステップは、前述の第1の速度v1が0.1~30mm/sの範囲内、好ましくは1~10mm/sの範囲内にあるように、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16を制御するステップを含む。
【0092】
一実施形態によれば、作動ステップは、前述の第1の力F1が0.01~2N、好ましくは0.05N~0.5Nの範囲内にあることが検出されたときに、前述の電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16の移動を停止するように、前述の電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16を制御するステップを含む。
【0093】
一実施形態によれば、作動ステップは、前述の第1の接触ステップに加えて、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16がオフセットdx1(および後退速度v4)だけ後退する後退ステップと、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16が第2の速度v2で前進し、第2の力F2に等しい接触力が検出されると停止する第2の前進および第2の接触ステップとを含む。
【0094】
一実施例によれば、第2の力F2は前述の閾値力に等しい。
【0095】
一実施形態によれば、前述の第2の速度v2は、前述の第1の速度v1よりも低く、好ましくは0.1~5mm/sの範囲内、より好ましくは0.5~3mm/sの範囲内である。
【0096】
一実施形態によれば、前述の第2の力F2は、前述の第1の力F1よりも大きく、好ましくは0.1~5Nの範囲内、より好ましくは0.5~2Nの範囲内である。
【0097】
一実施形態によれば、前述の後退ステップの間、電動アクチュエータの動きは、後者によって加えられる力が第3の力値Fmに達するように制御される。
【0098】
一実施例によれば、第3の力値Fmは好ましくは0.1~5Nの範囲内である。
【0099】
一実施形態によれば、前述の作動ステップは、電動アクチュエータの位置が、伝達要素との最初の接触の前に、ストロークdX3に対応する空間に沿って、自由ストローク状態(free stroke regime)が発生していることを制御手段が知っている予め定義された範囲(
図11Aにおいてk
3として示されている)にあるときに、電動アクチュエータが、前述の第1の速度v1および第2の速度v2よりも大きい第3の速度v3に等しい速度で前進するように、電動アクチュエータを制御するステップを含む。
【0100】
前述の第1の速度v1、第2の速度v2および第3の速度v3、ならびに後退速度v4は、
図11A~Dに示す実施例において示されている。
【0101】
一実施形態(既に上述した)によれば、可撓性で弾性のある無菌ドレープ19が、電動アクチュエータと手術器具との間に介在する。このような場合、このような無菌ドレープの抵抗によって発生する力は、既知のオフセット力またはバイアス力Foffであり、制御手段9は、実行される力チェックから、および/または、閾値力との比較から、このような既知のオフセット力またはバイアス力Foffを考慮して算入するように、または、除去するように、または、考慮しないように構成される。
【0102】
一実施形態によれば、無菌ドレープ19は伸縮性を有し、使用状態のときに弾性変形する。ドレープ19の弾性は、布を変形していない平坦な形状に戻すことを目的としている。従って、アクチュエータが押すために前進するとき、ドレープ19によってアクチュエータの底部に及ぼされる最小の予荷重があり、一方、アクチュエータがそのそれぞれの伝達要素によって押されて後退するとき、例えばその拮抗子(antagonist)がストローク終端に押されている場合、ドレープによって及ぼされる予荷重は伝達要素に及ぼされ、遠位側に向けられる。
【0103】
本方法の一実施形態によれば、制御手段9は、関節式エンドエフェクタ装置40が外部拘束によってロックされることなく移動可能な状態にあるとき、前述の閾値力以下である最大操作力(Fa)を加えることによって、関節式エンドエフェクタ装置40を移動させる。
【0104】
このような最大操作力は、一実施形態によれば、5N以下である。
【0105】
一実施形態によれば、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16はピストン11、12、13、14、15、16を含む。
【0106】
このような場合、一実施例によれば、腱は、例えば接着剤でそれぞれのピストンに固定することができ(
図6に示すように)、そのため、ピストンによって画定された直線経路に沿って前進し、それぞれの腱の接着された端部を引きずる。ピストンの下流(およびエンドエフェクタ40の上流、さらにシャフト27の上流)のバックエンド29には、リターン(例えば、リターンプーリー)が設けられており、これにより、ピストンが前進すると、腱の経路がリターンの上流部分に延び、したがって、他の拮抗する腱、したがって、他の拮抗するピストンの後ろに運ばれながら、それを動かすためにそれぞれの自由度を「引っ張る」ことが確かとなる。
【0107】
言い換えれば、ピストンが「押される」と、自由度が角度方向に作動し、もう一方の拮抗するピストンが「上昇」する。
【0108】
別の実施形態によれば、腱はピストンに接着されるのではなく、器具の内壁に接着され、前進するピストンが腱の経路を(ギターの弦のように)たわませて伸ばし、それ自体がリターン要素として作用する。
【0109】
別の実施形態によれば、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16は、回転ディスク11、12、13、14、15、16を含む。
【0110】
このような回転ディスクは、腱の近位部を一定の角度変位で移動させながら巻き上げ/巻き戻しする。
【0111】
このような場合、アクチュエータも、好ましくは、伝達要素の回転ディスクと係合する回転ディスクである。このような場合、無菌ドレープも、例えば、回転ディスクの回転作動運動を伝達するように適合された挿入物や硬質プラスチック板などの剛性インタフェースを含んでもよい。
【0112】
前述の回転円盤は、例えばキャプスタン(capstans:絞盤)である。
【0113】
拮抗腱が、それぞれの伝達要素および関節式エンドエフェクタ装置40のそれぞれのリンクの両方に動作可能に接続され(好ましくは、直接固定され)、少なくとも1自由度(関節式エンドエフェクタ装置の前述の少なくとも1自由度の間)を反対の動きで作動させる場合に適用される、方法の2つの実施形態を以下に説明する。
【0114】
このような2つの実施形態のうちの第1の実施形態では、本方法は、電動アクチュエータと伝達要素との間の接触ステップまたは係合ステップの後に、エンドエフェクタ装置40の各自由度について、一対の拮抗腱の両方の拮抗腱に対して同時に定義ステップを実行することを提供し、さらに、前述の定義ステップは、拮抗腱の様々な対に対して連続して適用され、すなわち、一度に1つの対に対して実行されることが好ましい。このような場合、1つの自由度を固定するために、拮抗する一対の腱の両方に適切な応力をかける。
【0115】
このような2つの実施形態のうちの第2の実施形態では、本方法は、電動アクチュエータと伝達要素との間の接触ステップまたは係合ステップの後に、エンドエフェクタ装置40の制御された自由度の各々について、定義ステップが、以下を含むことを提供する:
- エンドエフェクタ装置40の各自由度をストローク終端の当接に到達させるステップ;
- それぞれの伝達要素に大きな力Feを加えることにより、それぞれの腱に応力を適用するステップ;
- 各自由度について、こうして得られた伝達要素の対応する位置Xeを記憶するステップ;
- 各自由度について記憶された伝達要素の位置Xeに基づいて、運動学的ゼロ位置を定義および/または再計算するステップ。
【0116】
このような場合、好ましくは、前述の到達させるステップ、適用するステップ、記憶するステップ、および定義および/または再計算するステップは、すべての伝達要素、特に伝達要素および互いに拮抗する腱について実施され、各自由度について、当該自由度の拮抗する腱に関連する2つの伝達要素の2つの位置(Xe、Xe_ant)が記憶されるようにする。
【0117】
可能な実施形態では、ゼロ位置は必ずしも拮抗する当接の中間の位置ではなく、エンドエフェクタの形状と構造に依存することに留意すべきである。
【0118】
一自由度の運動学的ゼロ位置とそのストローク終端との間の角度距離が既知である方法の一実施形態によれば、定義するステップは以下のステップを含む:
- エンドエフェクタ装置40の1つの自由度をストローク終端の当接に近づけるステップ;、
- 一対の拮抗する腱のうち、腱に作用する力を大きな力値Feにするステップ;
- 前述の腱に対応する伝達要素の位置Xeを記憶するステップ;
- 一対の拮抗腱の他方の腱に拮抗力Fe_antを作用させるステップを実行する間、当該腱に作用する高い力Feを保持するステップであって、当該高い力Feが前述の拮抗力Fe_antよりも大きいステップ;
- 前述の拮抗腱に対応する伝達要素の位置Xe_antを記憶するステップ;
- 前述の記憶されたそれぞれの位置Xe、Xe_antの値に基づいて、前述の一対の拮抗伝達要素の運動学的ゼロ位置を計算するステップ;
- 前述の伝達要素を、計算された運動学的ゼロ位置に移動させるステップ。
【0119】
可能な実施形態によれば、本方法は、好ましくは、各自由度について、すなわち各対の拮抗腱について、同時にまたは連続して、上述のステップを繰り返すことを含む。
【0120】
図15Aおよび
図15Bに示す特定の実施形態によれば、この方法は、ピッチおよびヨーの自由度に作用する拮抗腱を係合させ、準備して調整し、手術器具のエンドエフェクタ装置40が動かない高閾値力Feよりも低い閾値の力値になるようにする。
【0121】
より具体的には、エンドエフェクタの関節の当接位置と関節手首の運動学的ゼロとの間の距離が既知であるため、ケーブル(または腱)を関節が当接するように移動させ、高力値Feに達するまで力を加え、ピストンの対応する位置Xeを記憶する。次に、エンドエフェクタの自由度が動かないように、高力値Feよりも小さい値F_antに達する力を加えて拮抗ケーブル(または腱)を動かせ、拮抗ピストンの対応する位置X_antを記憶する。距離は既知であるため、記憶された位置XeとX_antは運動学的ゼロ位置を計算するために使用され、ピストンは最終的にそのような運動学的ゼロ位置に配置される。
【0122】
一実施形態によれば、本方法は、前述の腱が、例えば、絡み合ったまたは編合わされたポリマ繊維から形成されたポリマ腱である場合に適用される。
【0123】
このような腱は、経年変化、温度、予荷重のような制御できない外部パラメータに基づいてその長さが変化するため、ケーブルがどの程度伸長しているか不明であるから、それこそが上述の方法を実行することが特に有利である理由である。
【0124】
一実施形態によれば、本方法は、手術器具がマイクロ手術器具であるマイクロ手術遠隔操作用ロボットシステムからなるロボットシステムに適用される。
【0125】
再び
図1~15を参照すると、本発明の方法が適用される手術器具のさらなる図が以下に提供され、この方法自体のさらなる理解に役立つとともに、非限定的な例として、この方法のいくつかの実施形態に関するさらなる詳細が提供される。
【0126】
一実施形態によれば、本方法は以下のステップを含む。
- 電動アクチュエータ(またはマニピュレータ10のモータボックスのモータ)の連結(coupling)が手術器具の伝達要素(ピストン)と共に配置されるように、器具を特別なハウジング内に配置するステップであって、モータボックスのモータは、あらかじめモータボックスのゼロ位置またはモータシャフトが後退した位置に配置されている必要があるステップ;
- 接触力Flightでピストンに到達するために、モータボックスのモータを(独立してでも)動かすステップ。このような接触力Flightは、モータの先端に配置された力センサによって測定可能な最小の力である(例えば、このような力は、伝達要素に加えられる、ゼロより大きく閾値以下の前述の力に相当する)。最小適用力は、ピストンを移動させることなく、ピストンに触れることを可能にしなければならない。これは、装置の内部アクチュエータと結合するピストンの固有摩擦によって可能である。それでもなお,器具の自由度は,その動きを初期位置に拘束する特別なキャップによってロックされる;
- 各ピストンにかかる力を保持し、腱にかかる応力を最小にするように、力制御を作動させるステップ;
- 得られた連結は、最初の遠隔操作に入る直前に運動学的ゼロとして保存され、モータの現在位置からなる。
【0127】
好ましくは、前述の位置決めおよび移動ステップは、以下のステップを含むことができる。
(1) 手術器具の運動学的ゼロ位置を設定するコマンド。
このコマンドは、ユーザーインターフェースからの入力、または手術器具の挿入の検出から決定される自動入力の2つのソースのうちの1つから起動することができる。
(2) 手術器具の運動学的ゼロ位置を設定する手順。
【0128】
運動学的ゼロ位置を設定する手順は,「器具係合(instrument engagement)」とも呼ばれ,ロードセルを器具のピストンと係合させるためにモータボックスのモータを動かす一連のソフトウェアコマンドである。ゼロ位置(すなわち運動学的ゼロ)は、モータボックスのロードセルによって測定されるように、器具のすべてのピストンが等しい力で係合する位置に設定される。係合の精度を確保し、係合手順を短時間で完了させるために、係合は、一連のサイクルの繰り返しによって発生することができ、各サイクルは、エンドエフェクタの先端のいかなる動きも決定しない正確な係合のために、十分に遅い速度値と最終的な係合力値が使用されるまで、モータ速度と距離と力との間の妥協点である。
【0129】
係合ルーチンは、器具のゼロ位置を設定する手順を開始するコマンドを受信する。このルーチンは、システム状態が準備できており、必要なサブシステムの初期化が実行されていることを確認する。
【0130】
時間を短縮するために、ルーチンはモータボックスの6軸の高速軌道を指令し、モータボックスのピストンを器具のピストンに近い位置まで駆動する。その後、前述の高速軌道の速度値よりも低い速度値VMSを課し、器具のピストンとの最初の接触力Flightを得る。各軸は、それぞれのロードセルが接触力値Flightを検出すると、独立して停止する。
【0131】
その後、軸は器具のピストンに接触するように制御され、ゼロ力が決定される。その後、ロードセルがゼロ位置になければならない値まで、プログラムされた方法で接触力を増加させる。
【0132】
正確な接触のために、軸はピストンに接触するように低速軌道で制御され、あらかじめ定義された特定の力が得られるまで移動を続け、各軸はそれぞれのロードセルでそのようなあらかじめ定義された力値Fhomeに達すると独立して停止する。すべてのロードセルが必要な力を検出し、すべての軸の移動が停止すると、係合手順が完了する。
【0133】
いずれかの軸が、軌道に割り当てられた距離で、それぞれのロードセルに期待された力値を検出しない場合、ルーチンはエラー表示を出し、器具は強制的に切り離される。
【0134】
したがって、要約すると、前述の手順は以下のステップを含む:
a) 器具の存在を確認するステップ;
b) モータボックスの軸がゼロ位置を獲得したことを確認するステップ;
c) モータボックスの軸がゼロバックストップ(backstop)位置にあることを確認するステップ;
d) ロードセルにそれぞれの較正値及びオフセット値が適用されていることを確認するステップ;
e) ロードセルが、ノイズを考慮する範囲内にゼロ値を有することを確認するステップ;
f) 手順の構成パラメータを読み込む(load)ステップ:
(i)係合力値を読み込む:
- 第一接触力値
- 係合接触力値
(ii)軸の係合距離を読み込む:
- 軸の高速アプローチ距離
- 軸の低速アプローチ距離
- 軸の最大許容接触距離
(iii)軸の係合速度を読み込む:
- 軸の高速アプローチ速度
- 軸の低速アプローチ速度
- 軸の第一係合速度
- 軸の低速係合速度
g) 高速軌道を実行してモータボックスピストンおよび器具ピストンの後方位置間のインターバルをカバーするステップ:
- 接触力値を設定する;
- 速度値を高速アプローチ値に設定する;
- 距離値を高速アプローチ値に設定する;
- 設定された速度と距離を用いて台形の速度プロファイルで高速アプローチ軌道を生成する;
- 生成された軌跡を使用してモータボックスの軸を移動するように制御し、そこで、移動手順は、ロードセルが接触力以上の力を読み取った場合、その軸の移動を停止するような制御を含み、ルーチンは、すべての軸がその移動を完了するまで待機し、余分な軌道の移動していない距離は破棄される;
- モータボックスを制御して、接触している各軸を後方に移動させ、次のステップにおいてバランスのとれた接触を確かにする目的で、接触していないことを示すロードセルの値がゼロになるようにする;
h) 中間速度とタッチで第1の接触軌道を実行するステップ:
- 接触力の値を設定する;
- 速度値を中間アプローチ値に設定する;
- 距離値を最大許容アプローチ値に設定する;
- 設定された速度と距離を使用して、台形の速度プロファイルで高速アプローチ軌道を生成する;
- 生成された軌道を使用してモータボックスの軸を移動するように制御し、各軸はそれぞれのロードセル力が得られると停止し、ルーチンはすべての軸が移動を完了するまで待機し、余分な軌道の移動していない距離は破棄される;
- モータボックスを制御して、接触している各軸を後方に移動させ、次のステップにおいてバランスのとれた接触を確かにする目的で、接触していないことを示すロードセルの値がゼロになるようにする;
i) 低速速度および必要な接触力を使用して正確な接触を得るように最終接触を実行するステップ:
- 接触力の値をゼロ位置に必要な値に設定する;
- 速度値を低速アプローチ値に設定する;
- 距離値を最大許容アプローチ値に設定する;
- 設定された速度と距離を使用して、台形の速度プロファイルで高速アプローチ軌道を生成する;
- 生成された軌道を使用してモータボックスの軸を移動するように制御し、各軸はそれぞれのロードセル力が得られると停止し、ルーチンはすべての軸が移動を完了するまで待機し、余分な軌道の移動していない距離は破棄される;
j) 各軸について、移動距離が制御軌道距離よりも小さいことを確認するステップ:
k) 各軸について、ロードセルによって検出された力の値が必要な値であることを確認するステップ;
l) 上記の両方のチェックに合格した場合、時間経過に伴う腱の伸長または短縮を補正するために、力制御が装置のピストンモータに同じ力を維持することを可能にするステップ;
m) 確認に合格しなかった場合,軸に離脱ルーチンを実行するよう命令するステップ;
n) ユーザが遠隔操作状態に入るよう命令すると、モータの現在位置が運動学的ゼロとして保存されるステップ。
【0135】
本方法の実装オプションが
図12に示されており、示されたパラメータは以下の意味を有する:
V_Mot
n n番目のモータ(電動アクチュエータ)の速度;
P
HS 高速で到達するモータ(電動アクチュエータ)の位置;
V
MS 中速;
V
HS 高速;
F_Mot
n ) N番目のモータ(電動アクチュエータ)の力;
F
light 軽い力;
V
SS 低速;
F
home 係合力。
【0136】
一実施形態によれば、少なくとも1つのアクチュエータ11、12、13、14、15、16は、直線アクチュエータとすることができる。少なくとも1つの伝達要素21、22、23、24、25、26は、例えば
図6に示すように、実質的に直線的な経路x-xに沿って移動するように適合されたピストンなどの直線伝達要素とすることができる。
【0137】
較正方法を実行するために、すべての電動アクチュエータが同時に動く必要はないが、好ましい実施形態によれば、電動アクチュエータは同時に動く(前進する)。
【0138】
例えば
図9Aおよび
図9Bに図式的に示すように、較正手順を容易にするために、1つまたは複数の自由度P、Y、Gをロックするために、拘束体37またはキャップ37を関節式エンドエフェクタ40に取り付けることができる。拘束体37は、関節先端部40を所定の構成で一時的にロックするために設けることができる。拘束体37は、手術器具20のシャフト27に沿って引き込み可能であり得る。拘束体37は、手術器具20のシャフト27に沿って引き込み可能でなく、例えば、エンドエフェクタ40の自由端に対して遠位側に取り外すことができるプラグ37または先端キャップ37とすることができる。
【0139】
関節式エンドエフェクタ40は、好ましくは複数のリンク41、42、43、44を含み、前述のリンクの少なくともいくつか、例えば
図8のリンク42、43、44は、それぞれ一対の拮抗する腱31、32;33、34;35、36に接続することができる。
【0140】
例えば
図8に示すように、一対の拮抗腱31、32をリンク42に機械的に連結して、前述のリンク42をピッチ軸Pを中心としてリンク41に対して移動させることができ、この場合、リンク41は手術器具20のシャフト27と一体的に示されている;別の一対の拮抗腱33、34をリンク43(ここでは自由端を有するように示されている)に機械的に連結して、前述のリンク43をヨー軸Yを中心としてリンク42に対して移動させることができる; さらに別の一対の拮抗腱35、36をリンク44(ここでは自由端を有するように示す)に機械的に連結して、ヨー軸Yを中心としてリンク42に対して前述のリンク44を移動させることができる;ヨー軸Yを中心とするリンク43、44の適切な共同作動によって、開閉またはグリップGの自由度を決定することができる。当業者であれば、腱およびリンクの構成ならびに関節式エンドエフェクタ40の自由度は、本開示の範囲内にありながら、
図8に示すものに対して変化し得ることを理解するであろう。
【0141】
3つの自由度(例えば、ピッチP、ヨーY、およびグリップGの自由度)を作動させるために、三対の拮抗腱(31、32)、(33、34)、(35、36)を存在させることができる。このような場合、手術器具20は、6つの伝達要素21、22、23、24、25、26(例えば
図4に示すように6つのピストン)、すなわち、例えば三対の拮抗する電動アクチュエータ(11、12)(13、14)(15、16)と協働することを意図した三対の拮抗する伝達要素(21、22)、(23、24)、(25、26)を含むことができる。
【0142】
無菌バリア19は、少なくとも1つのアクチュエータと少なくとも1つの伝達要素との間に介在させることができ、例えば、プラスチックシートとして作られた無菌布、または布もしくは不織布のような他の手術用に無菌にされた布材料などである。
【0143】
少なくとも1つの腱は、好ましくは非弾性的変形可能であるが、弾性的変形可能であることもできる。
【0144】
好ましい実施形態によれば、手術器具20の前述の少なくとも1つの腱、好ましくは全ての腱は、ポリマ材料で作られている。
【0145】
好ましくは、手術器具20の前述の少なくとも1つの腱、好ましくはすべての腱は、ポリマストランドを形成するように巻かれ、および/または絡み合った複数のポリマ繊維を含む。一実施形態によれば、前述の少なくとも1つの腱は、複数の高分子量ポリエチレン繊維(HMWPE、UHMWPE)を含む。
【0146】
前述の少なくとも1本の腱は、複数のアラミド繊維、および/または、ポリエステル、および/または、液晶ポリマ(LCP)、および/または、PBO(Zylon(登録商標))、および/または、ナイロン、および/または、高分子量ポリエチレン、および/または、これらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0147】
前述の少なくとも1つの腱は、金属ストランドのような金属材料で作ることができる。
【0148】
前述の少なくとも1つの腱は、部分的に金属材料で、部分的にポリマ材料で作ることができる。例えば、前述の少なくとも1つの腱は、金属繊維とポリマ繊維の絡み合いによって形成することができる。
【0149】
ロボットシステム1の電子制御装置9は、例えば、前述の少なくとも1つのロボットマニピュレータ10に動作可能に接続され、アクチュエータ11、12、13、14、15、16(例えば、モータピストン)の動きを監視することができ、較正手順は、手術器具20の関節先端部40の自由度が所定の構成、例えば関節先端部のリンクが器具の中心線および/または各自由度の範囲の中心線r-rに沿って整列しているときに、アクチュエータをそれぞれの伝達要素に接触させることを含んでもよい。
【0150】
このような所定の状態は、関節先端部40のリンクが伝達要素21、22、23、24、25、26のストロークx-xと整列しているときに生じ得る。
【0151】
好ましくは、電子制御装置9は、電動アクチュエータのゼロ位置を記憶するためのメモリ8と関連している。
【0152】
電動アクチュエータのゼロ位置は、必ずしも電動アクチュエータがすべて同じレベルにあることを意味するものではなく、言い換えれば、例えば
図10A~Dに示すように、ゼロ位置に達したときに、手術器具の伝達要素がそれぞれのストローク内ですべて同じレベルにあるとは限らない。実際、いくつかのポリマ腱は異なる伸びを受けることがある。
【0153】
再び
図1~15を参照すると、遠隔操作ロボット手術システム1が説明されており、手術器具20と、複数の電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16と、を含み、さらに制御手段9とを含んでいる。
【0154】
手術器具20は、それぞれの複数の腱31、32、33、34、35、36に関連付けられた複数の伝達要素21、22、23、24、25、26と、伝達要素の一連の動きと関節式エンドエフェクタ装置40のそれぞれの動作または姿勢との間の一義的な相関関係を決定するように、伝達要素にそれぞれの腱を介して機械的に接続可能な関節式エンドエフェクタ装置40とを含む。
【0155】
前述の関節式エンドエフェクタ装置40は、関節式エンドエフェクタ装置40の基準位置とみなされる既知の所定の位置に配置され、ロックされるように適合されており、関節式エンドエフェクタ装置40のそのような基準位置は、伝達要素21、22、23、24、25、26のそれぞれの結果として生じる位置と一意に関連付けられる。
【0156】
電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16は、それぞれの伝達要素21、22、23、24、25、26に動作可能に接続され、制御手段9の制御下で伝達要素に動きを与える。
【0157】
制御手段9は、関節式エンドエフェクタ装置40が、基準位置とみなされる前述の既知の所定位置に配置され、ロックされているとき、以下の動作を実行するように構成されている:
- 電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16を作動させて、電動アクチュエータの各々がそれぞれの伝達要素21、22、23、24、25、26に接触するようにし、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16を制御して、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16がゼロより大きく閾値以下の力を手術器具のそれぞれの伝達要素に加えるようにするステップ;
- 各電動アクチュエータがそれぞれの伝達要素に接触したときのすべての電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16の位置を記憶し、記憶された電動アクチュエータの位置の集合を、エンドエフェクタ装置40の基準位置に一義的に関連付けられた電動アクチュエータの基準位置として考慮するステップ;
- 電動アクチュエータの前述の記憶された基準位置を、制御手段9によって電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16に付与される運動が参照される仮想ゼロ点と関連付けるゼロ合わせ、すなわち運動学的ゼロ条件を定義するステップ。
【0158】
異なる実施形態によれば、遠隔操作ロボット手術システム1は、本明細書に例示される方法実施形態のいずれかに従って較正方法を実行するように構成される。
【0159】
示されたとおり、先に示した本発明の目的は、上記で詳細に開示した特徴により、また本発明の概要ですでに開示したように、上述の方法によって完全に達成される。
【0160】
偶発的なニーズを満たすために、当業者は、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、上述の方法の実施形態に変更および適合を加えることができ、または機能的に同等である他の要素と置き換えることができる。可能な実施形態に属するものとして上述した全ての特徴は、上述した他の実施形態に関係なく実施することができる。
【符号の説明】
【0161】
1 遠隔操作手術用ロボットシステム
2 ロボットシステムのスレーブアセンブリ
3 マスターコンソール
8 メモリ
9 コントローラ、すなわちコンソールユニット
10 ロボットシステムのマニピュレータ
11、12、13、14、15、16 電動アクチュエータ
17、17’、18、18’ 力センサ、またはロードセル
19 無菌バリア
20 手術器具
21、22、23、24、25、26 伝達要素
27 シャフト
28 ポケット
29 手術器具バックエンド
31、32、33、34、35、36 腱
37 拘束体、またはプラグ、またはキャップ
40 関節先端部、または手術器具の関節式エンドエフェクタ装置
41、42、43、44 関節先端部のリンク
46 弾性要素
x-x 直線方向
r-r 中心線
P、Y、G 関節先端部の自由度、それぞれピッチ、ヨー、グリップ
【国際調査報告】