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特表2024-526113生物電気化学センサを用いたオゾン投与の制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】生物電気化学センサを用いたオゾン投与の制御
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/78 20230101AFI20240709BHJP
   C02F 3/02 20230101ALI20240709BHJP
   C02F 3/12 20230101ALI20240709BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20240709BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240709BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 11/00 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
C02F1/78
C02F3/02 Z
C02F3/12 N
G01N33/18 105
C12M1/34 A
C12N1/20 D
C12N1/20 F
C12Q1/02
C12N11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577657
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 US2022033766
(87)【国際公開番号】W WO2022266308
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】2106452
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517430716
【氏名又は名称】ビーエル テクノロジーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペラン,ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】ビエイラ,アドリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】シツルスキ,ジョエル・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ルンゴア,ジュリアン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B033
4B063
4B065
4D003
4D028
4D050
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB02
4B033NA12
4B033ND04
4B033NG02
4B063QA05
4B063QQ06
4B063QQ89
4B063QS36
4B063QX05
4B065AA01X
4B065BB40
4B065BC41
4B065BC50
4B065CA55
4D003AA01
4D003BA02
4D003CA10
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4D003FA05
4D028AC03
4D028AC09
4D028BA00
4D028BB02
4D028BD01
4D028CA01
4D028CB01
4D028CC01
4D028CD00
4D028CE01
4D050AA12
4D050AB11
4D050BB02
4D050BD08
4D050CA17
(57)【要約】
水処理システムは、オゾン処理ユニット(12)、生物学的センサ(16)および任意選択で生物学的処理ユニット(14)を有する。生物学的センサ(16)は、オゾン処理の後に有機汚染物質の生物分解性を測定する。生物学的センサ(16)は、センサの電極における細菌の代謝活動に関連する電気信号を作り出す生物電気化学センサであり得る。生物学的センサ(16)は、オゾン処理ユニット(12)、または生物学的処理ユニット(16)、またはそれら両方の1つ以上の動作パラメータを調節するように適合されたコントローラ(18)に接続され得る。水の生物分解性を測定するために生物学的センサを使用する、水を処理する方法、および水処理プロセスを制御する方法がさらに説明される。測定値は、上流のオゾン処理プロセスまたは下流の生物処理プロセスを調節するために使用され得る。これらのシステムおよび方法は、都市または産業の廃水プラントからの2次排出水または3次排出水から難溶性有機化合物または有機微小汚染物質を除去するために使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン処理ユニットと、
生物学的センサと
を備える水処理システムであって、
生物学的センサが、オゾン処理ユニットからの排出水に接触し、生物学的センサに関連付けられた微生物の成長または代謝を測定するように適合される、システム。
【請求項2】
生物学的センサが、オゾン処理ユニットからの排出水における有機汚染物質の生物分解可能な程度を測定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
生物学的センサが、生物学的センサに関連付けられた細菌集団の炭素消費率(CCR)または炭素生分解(CBD)に関連する測定値または信号を作り出すかまたは可能にする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
生物学的センサが、センサの電極における細菌の代謝活動に関連する電気信号を作り出す生物電気化学センサである、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
生物電気化学センサが、バイオセンサの電極対にわたって電圧または電流を送達するための電源ユニットを備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
生物学的センサが、オゾン処理ユニットの動作パラメータを調節するように適合されたコントローラに接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
オゾン処理ユニットの下流に生物学的処理ユニットを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
生物学的処理ユニットが生物学的活性フィルタである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
生物学的センサが、生物学的処理ユニットの動作パラメータを調節するように適合されたコントローラに接続されている、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
都市または産業の廃水処理プラントの2次処理ユニットまたは3次処理ユニットの出口に接続されている、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
水を処理する方法、または水処理プロセスを制御する方法であって、
水をオゾンと接触させてオゾン処理された排出水を作り出すことと、
オゾン処理された排出水を生物学的センサと接触させることと
を含む、方法。
【請求項12】
生物学的センサが、オゾン処理された排出水の中の有機汚染物質が生物分解可能な程度を測定する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
生物学的センサが、オゾン処理された排出水に暴露された生物の、代謝活動、任意選択で炭素消費率を測定する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
生物学的センサが、バイオセンサの電極における細菌集団の代謝活動に対応する電気信号を提供する生物電気化学センサである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
バイオセンサの電極対にわたって電圧または電流を適用することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
バイオセンサからの測定値または信号が、廃水へのオゾン送達の速度を調節するために使用される、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
オゾン処理された排出水の汚染物質の生物学的分解を含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
生物学的分解が生物学的活性フィルタの中で生じる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
生物学的分解処理ステップの動作パラメータを調節するためにバイオセンサからの測定値または信号が使用され得る、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
水が、都市または産業の廃水処理プラントからの2次排出水または3次排出水である、請求項11から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
オゾン接触器および生物学的活性フィルタを備える廃水処理システムを動作させる方法であって、
全有機体炭素(TOC)排出水の目標を設定すること、
オゾン接触器の下流に位置付けられた1つ以上の生物学的センサからの代謝活動データを収集すること、
TOC流入水データを収集すること、
代謝活動データ、TOC流入水データ、およびTOC排出水の目標を考慮に入れて、目標オゾン量を決定すること、
目標オゾン量にしたがってオゾン接触器へのオゾン注入を制御すること
を含む、方法。
【請求項22】
(a)代謝活動と、(b)廃水処理システムまたは類似のシステムに関する、TOC排出水のTOC流入水に対する、たとえば比または差といった比較との間の、第1の関係を決定することと、
(a)オゾン量のTOC流入水に対する比と、(b)廃水処理システムまたは類似のシステムに関する代謝活動との間の、第2の関係を決定することと、
第1の関係および第2の関係を考慮に入れて、目標オゾン量を決定することと
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第1の関係、TOC排出水の目標、およびTOC流入水のデータを考慮に入れて、所望の代謝活動を決定することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
所望の代謝活動および第2の関係を考慮に入れて、オゾン量のTOC流入水に対する所望の比を決定することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
廃水処理プラントを動作させながら収集された履歴データを使用して、第1の関係および/または第2の関係を生成することを含む、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
廃水処理システムの動作の最初の1から6か月の間に履歴データを収集することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
流入水の安定したNO濃度において第1の関係を決定すること、または廃水処理システムへの流入水中のNO濃度を考慮して、第1の関係を決定することを含む、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
流入水のNO濃度に基づいて目標オゾン量を調節することを含む、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によって本明細書に組み込まれる、2021年6月17日出願のフランス特許出願第2106452号の利益を主張するものである。
【0002】
本明細書は、任意選択で生物学的処理と組み合わせられる、廃水処理システムにおけるオゾン投与の制御を含む廃水処理に関する。
【背景技術】
【0003】
米国特許第10,287,182号、Regulating Method for a Water Treatment Installation Using Measured Parameters and Control of an Ozonisation Deviceは、オゾン処理段、転送段、および生物学的フィルタを有する水処理設備を制御するための方法を説明している。この方法は、流入水、転送段の水および排出水における汚染物質濃度の測定値との関連で供給されるオゾンの量を制御することを含む。汚染物質濃度は蛍光センサまたはUV/Visセンサを使用して測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10,287,182号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0283314号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2020/0003754号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2014/0353170号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の概要の意図は、本発明および続く詳細な説明を読者に紹介することであり、特許請求の範囲を限定したり定義したりすることではない。
【0006】
本明細書は、オゾン処理ユニット(任意選択でオゾン接触器と称される)および生物学的センサ(任意選択でバイオセンサと称される)を用いる水処理システムを説明する。生物学的センサは、水処理プロセスの流れの中の有機汚染物質が、オゾンと接触した後に、どの程度生物分解可能になったかということに関連する代謝パラメータを測定するように適合されている。たとえば、生物学的センサは、たとえば細菌集団の炭素生分解(carbon bio-degradation)(CBD)または炭素消費率(carbon consumption rate)(CCR)といった代謝活動(metabolic activity)に関連する測定値または信号を作り出し得、または可能にし得る。いくつかの例では、生物学的センサは、センサの電極における細菌の代謝活動に関連する電気信号を作り出すことによって、たとえば炭素消費率といった代謝活動を測定するように適合された生物電気化学センサである。生物学的センサは、廃水へのオゾン送達の速度を調節するように適合されたコントローラに、任意選択で接続される。いくつかの例では、オゾン処理ユニットの下流に、たとえば生物学的活性フィルタ(biologically active filter)(BAF)といった生物学的処理ユニットが設けられる。任意選択で、生物学的処理ユニットの動作パラメータを調節するためにバイオセンサからの測定値または信号が使用され得る。
【0007】
本明細書は、生物学的センサを使用して、水を処理する方法、および水処理プロセスを制御する方法も説明する。生物学的センサは、オゾンと接触した水に接触する。生物学的センサは、水の中の有機汚染物質が生物分解可能になった程度を測定する。たとえば、生物学的センサは、オゾン処理された水に暴露された生物の、代謝活動、たとえば炭素消費率を測定し得る。いくつかの例では、生物学的センサは、バイオセンサの電極における細菌集団の代謝活動に対応する電気信号を提供する生物電気化学センサである。任意選択で、バイオセンサの電極対にわたって電圧および/または電流が送達され得る。バイオセンサからの測定値または信号が、廃水へのオゾン送達の速度を調節するために使用される。廃水の汚染物質は、オゾンと接触した後に生物学的に分解され得る。たとえば、廃水は、生物学的活性フィルタ(あるいは生物学的活性化されたフィルタ、または生物学的フィルタ、またはバイオフィルタと称される)において処理され得る。任意選択で、生物学的分解プロセスの動作パラメータを調節するためにバイオセンサからの測定値または信号が使用され得る。
【0008】
本明細書で説明されるシステムおよび方法は、他の例の中でも、都市または産業の廃水処理プラントからの2次排出水または3次排出水の処理のために有効である。これらのシステムおよび方法は、処理された排出水の放出または処理された廃水の直接的もしくは間接的な再利用の前に、1種類以上の難溶性化合物または微小汚染物質(micro-pollutant)の濃度を低減させるのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】廃水処理システムの概略図および廃水処理プロセスのプロセスフロー図である。
図2図1の廃水処理システムまたは廃水処理プロセスにおいて処理されている廃水に関する全有機体炭素(TOC)および炭素消費率の経時的な概略グラフである。
図3】生物学的センサを使用して廃水処理システムのO3を制御する方法を示す図である。
図4】TOC排出水/TOC流入水の比較すなわち比と、たとえばCCRといった代謝活動との間の関係を示す概略グラフである。
図5】O3/TOC流入水の比に応じての、たとえばCCRといった代謝活動の概略グラフであり、オゾンはオゾン接触器に追加されたオゾンの量である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で説明されるシステムおよび方法は、たとえば生物電気化学センサといった生物学的センサを使用して、廃水処理システムまたは廃水処理プロセスの動作条件を制御する。廃水処理システムは、オゾン処理ユニットを含み、任意選択で、生物学的活性フィルタなど、下流の生物学的処理ユニットを含む。廃水処理システムは、任意選択で、都市または産業の廃水処理プラント内で、そのプラントの2次レベル処理または3次レベル処理の下流に配置される。生物学的センサは、たとえばオゾン処理ユニットの終端の近くもしくは下流、またはオゾン処理ユニットと生物学的処理ユニットとの間の中間ゾーンにおいてオゾン処理された排出水と接触するか、あるいは生物学的処理内に組み込まれる。たとえば、生物学的センサは、BAFの中の媒体の上に配置されてよく、または媒体の頂部の下に、少し、たとえば約2から約3インチ埋め込まれてもよい。生物学的センサは、たとえば生物学的センサに対するO3中和の悪影響を回避するために、好ましくは亜硫酸ナトリウム注入の下流にある。生物学的センサは、オゾン処理された排出水の中の有機体炭素化合物の生物学的利用率(biological availability)を、直接的または間接的に測定する。これらの生物分解可能な化合物のうちの少なくともいくつかは、オゾン処理ユニットにおける難溶性有機化合物または微小汚染物質のオゾン処理によって作り出される。いくつかの例では、生物学的センサは、バイオフィルム含浸(biofilm-impregnated)電極を通る電子輸送を測定する。生物分解可能な化合物の取込みの速度をリアルタイムで測定すると、オゾン処理ユニットの制御が可能になり得る。一例では、生物分解可能な化合物の取込みの速度の急な低下または増加は、動作上の問題を示している可能性がある。動作上の問題は、オゾン投与量または栄養物質の急な変動に関連していることがあり、これらは、たとえばBAFの動作を適合させるかまたはオゾン投与量を制御することによって、適合させる必要があり得る。代わりに、または加えて、生物分解可能な化合物の取込みの速度をアルゴリズムと組み合わせて測定することにより、任意選択で同一または類似の廃水処理プラントからの履歴データに基づき、オゾン処理ユニットの制御を、任意選択で操作員またはコンピュータによって実施することが可能になり得る。たとえば、オゾン接触器におけるオゾン注入率は、最小の変換、電力消費、ターゲット水品質、オゾン消費および生物学的処理ファクターなどの1つ以上のファクターを含む関数にしたがって:容易に生物分解される有機化合物の最高濃度;少なくとも容易に生物分解される有機化合物の最小濃度;ならびに容易に生物分解される有機化合物の最適濃度のうちの、1つ以上を提供するように制御され得る。汚染物質の生物分解性が増加すると、任意選択の下流の生物学的処理ユニットの性能を改善し得る。任意選択で、生物学的処理パラメータのうちの1つ以上の動作パラメータは、生物学的センサによって提供される測定値に基づいて調節され得る。任意選択で、容易に生物分解される有機化合物のバックグラウンド濃度が、オゾン処理による難溶性化合物の変換によって作られた容易に生物分解される有機化合物と区別され得るように、流入廃水と通信する第2の生物学的センサが提供され得る。
【0011】
廃水処理プラントにおけるオゾン生成は、TOC排出水、TOC流入水、たとえば生物学的センサよって決定される代謝活動、およびオゾンの間の、1つ以上の関係を使用して制御され得る。これらの関係は、たとえば計算、モデル化、またはプラント動作の履歴データうちの1つ以上によって作られ得る。履歴データは、1つ以上の類似のプラント、すなわちオゾン接触器およびBAFを有するプラントから収集され得る。いくつかの例では、履歴データは、場所に特有のO投与量制御アルゴリズムを作り出すように制御されている同じ廃水処理プラントから収集される。「アルゴリズム」という単語は、本明細書では、ステップを包含する方法を示すように使用され、ステップのうちのいくつかまたはすべは、任意選択でコンピュータによって実装される。一例では、プラントは、類似のプラントにおける以前のアプリケーションからの所定のアルゴリズムを用いて、または計算もしくはモデル化された関係に基づいて、開始され得る。たとえばCCR測定値といった代謝活動を含む履歴データは、動作の最初の数か月(すなわち1-8か月)を通じて収集されてよく、次いで、アルゴリズムが作られまたは改良され得る。任意選択で、アルゴリズムは、収集された履歴データに基づいて、たとえばプラントの動作の最初の年を通して、またはそれより長くを通して、さらに改良され得る。一例では、アルゴリズムは、プラントに特有のやり方でアルゴリズムの改良を継続するために、1つ以上の生物学的センサによって収集されたデータおよび他の関係のある運用データを用いて常に更新され得る。オゾン生成を制御するために、O制御アルゴリズムが、リアルタイムの生物学的センサ読取り値と組み合わせて使用される。任意選択で、たとえば流入水のTOCおよび/またはターゲット排出水のTOCから収集されたTOCまたは窒素のデータといった他の入力もアルゴリズムに入力される。
【0012】
生物学的センサは、1つ以上の態様に対する生物学的応答に基づいて水の1つ以上の態様を測定する。いくつかの例では、任意選択で生物電気化学センサと称されるバイオセンサは、微生物燃料電池または別の生物電気化学システムに基づき得る。生物電気化学センサは、センサの電極上で成長する電気活性な微生物によって作り出された電気信号を感知し得る。信号の一態様は微生物の代謝プロセスに関連し得、次に微生物の代謝プロセスは、センサと接触する水の1つ以上の態様に関連し得る。任意選択で、容易に生物分解可能な化合物の濃度は、生物学的センサからの、炭素消費率(CCR)に関連する信号または炭素消費率(CCR)として解釈される信号から測定され得る。
【0013】
システムおよび方法は、下記で、廃水処理システムの一例のコンテキストにおいてさらに説明されるが、それらは、他のシステムおよび方法に使用されるかまたは適合され得る。例示的なシステムは、生物学的活性フィルタの上流にオゾン接触器を有する。このタイプのシステムは、たとえば活性汚泥プラントまたは膜バイオリアクタ(MBR)システムといった従来の都市または産業の廃水処理プラントの排出水から、難溶性の化学的酸素要求量(chemical oxygen demand)(COD)、全有機体炭素(total organic carbon)(TOC)または微小汚染物質を除去するために使用されてきた。都市セクタでは、オゾン接触ユニットと生物学的活性フィルタの製品との組合せが、排出水の放出前のTOCおよび微小汚染物質の除去、または間接的もしくは直接的飲用再利用(indirect- or direct- potable reuse)(IPR/DPR)処理方式用に主に適用される。
【0014】
オゾン接触および生物学的活性濾過システムでは、各処理ステップにそれ自体の目的がある。オゾン処理は、難溶性有機化合物を、より生物分解可能な種に変換し、生物学的活性濾過は、変換された有機化合物を生物分解する。運営コスト(OPEX)の観点から見ると、オゾン処理ステップは、たとえば80%以上と、組み合わせたシステムの用役費の大部分を占めている。用役費は主に電力および酸素である。しかしながら、ほとんどのオゾン処理システムは、上流のプラントからの排出水が、たとえばTOC濃度の規制された限度といった所望のパラメータを満たさないので設置されている。したがって所望のレベルの処理に達するために、いくつかの有用なものを消費する必要がある。
【0015】
酸素および電力の消費を最小化する要求と、所望のレベルの処理に達する要求とのバランスをとるには、オゾン処理ユニットの最適化に向けた制御が必要である。オゾン処理ユニットの制御は、オゾン接触器に注入されるオゾンの量を、任意選択で水の流量または処理される水の単位体積に関して調節することによって実施され得る。オゾン接触器に注入されるオゾンが不十分であると、生物学的活性フィルタが十分な有機化合物を除去することなく、たとえば生物学的活性フィルタ排出水のTOC濃度といった全体の除去目標に届かないはずである。オゾン接触器に注入されるオゾンが多すぎると、オゾンおよび電力の消費が不必要に増加することになる。加えて、オゾンが多すぎると、有機化合物を過度に変換してしまう可能性がある。これは、場合によってはあまり生物分解性ではない種を作る可能性があり、それによって、生物学的活性フィルタが効率的に作用するのを妨げる。オゾンが過剰に注入されることは、OPEXの増加、および潜在的に、望ましくない化学的副産物の形成につながる。したがって、a)オゾン処理による難溶性化合物の最大の変換、b)(オゾン処理と生物学的処理とを)組み合わせた製品における難溶性化合物の最大の除去、c)望ましくない副産物の形成の最小化、またはd)オゾン処理によって、または組み合わせた製品において、難溶性化合物の変換の目標に達するのに必要な最小のOPEXのために、オゾン接触器に注入される最適のオゾン投与量がある。これらの目的のうちの1つ以上を達成するために、オゾン処理ユニットまたは組み合わせた製品を制御するように、生物学的センサからの測定値が使用される。
【0016】
生物分解可能な種の測定は、通常は、生物化学的酸素要求量(biochemical oxygen demand)(BOD)の分析によって行われる。しかしながら、オゾン接触器によるBOD生産の直接的な測定は、最適なオゾン投与速度をリアルタイムで制御するには非実用的である。BODの分析は、数時間から数日を要することがあり、オゾン処理プロセスの効果的な制御のためには遅すぎる。加えて、非常に低いBODレベル(すなわち数mg/l未満)の読取り値を、オゾン投与速度を制御するための十分な精度で実現することはできない。
【0017】
直接的なBOD測定の問題を解決するために、蛍光測定またはUV/Vis測定のような代理手段が使用されてきた。複雑な難溶性分子からのいくつかの有機化合物の、より単純で生物学的に利用可能な分子への変換は、オゾン処理前後の蛍光測定またはUV吸収の変化によって表現され得る。しかしながら、蛍光測定またはUV/Vis測定で測定され得るのは、変換された有機化合物のうちのほんの少しだけである。蛍光測定またはUV/Vis測定は、蛍光を発するかまたはUV感知可能な官能基を有しない有機成分に関する情報を提供することなく、UV吸収測定は無機のUV活性種から干渉を受ける可能性がある。したがって、この方法は、なんらかの廃水流れを処理するとき誤った結果を作り出す可能性がある。加えて、蛍光パラメータまたはUV254などのUV/Visパラメータは、水が、オゾン処理と生物学的活性濾過とを組み合わせたシステムを通って進むとき、滑らかな連続的に減少する曲線を辿る。オゾン処理の後に、最適化され組み合わせたシステム性能をもたらす最適なUV254の明瞭な定義はない。インラインTOC測定は、サンプル中に存在するすべての有機体炭素種の全濃度を提供することはできるが、オゾン処理に起因するサンプル内の有機化合物の生物分解性の変化に対する洞察は提供しない。
【0018】
オゾン接触器および生物学的活性フィルタシステムなどのオゾン接触器を有するシステムでは、生物学的センサはオゾン接触器の下流に設置される。バイオフィルム成長または有機体炭素の取込みなどの代謝活動は、センサによって検知される。センサは、たとえばオゾン投与速度といったオゾン接触器の一態様を制御するのに有用な測定値または信号を、十分な率で、すなわち1時間につき少なくとも1回生成する。いくつかの例では、生物学的センサは生物電気化学センサであり得る。生物電気化学センサは、基本的に連続した、またはたとえば10分以内ごとに更新される信号といったリアルタイムのデジタル信号を生成し得る。任意選択で、センサ上の生物活性の存在が、炭素消費率(CCR)の測定として解釈される電子の流れを生成する。CCR測定は、センサと接触する水中の汚染物質の生物分解性と相関しており、難溶性有機物が、オゾン処理ステップの後に生物分解可能になった程度と相関している。図2を参照して、CCRは、オゾン処理の間に増加し、下流におけるあらゆる任意選択の生物学的処理の間に減少する。CCRのピークは、オゾン処理ステップの最後、またはオゾン処理ステップと生物学的処理ステップとの間に生じる。CCRの最大読取り値を作り出すようにオゾン投与量を制御することは、非難溶性排出水を作り出すためのオゾン接触器における最適のオゾン投与速度に対応する。あるいは、閾値を上回るかまたは所望の範囲内のCCRにとどまるようにオゾン投与量を最小化すると、排出水目標を満たしながら電力やオゾンの消費を低減すること、または生物学的処理ステップにおける所望の動作条件を提供すること、またはそれら両方が可能になる。CCRの閾値または範囲は:任意選択で、最小の運営コストで、排出水の品質目標を満たすこと;下流の生物学的プロセスに対する所望の入力;ならびに、排出水品質および動作コストの要素を含む最適化関数のうちの1つ以上に基づいて選択され得る。あるいは、システムは、可能な最大のCCRを提供するように制御されてもよい。
【0019】
市販の生物電気化学センサの一例は、Island Water Technologies社によって作成されたSENTRYTMセンサである。生物電気化学センサの例は、米国特許出願公開第2020/0283314号、米国特許出願公開第2020/0003754号および米国特許出願公開第2014/0353170号にも説明されており、これらのすべてが参照によって本明細書に組み込まれる。あるいは、バイオセンサの他の形態が使用され得る。たとえば、オゾン処理の後の生物分解可能な種の生産は、バイオフィルム監視装置、またはバイオフィルム厚監視装置を使用して測定され得る。
【0020】
図1は、オゾン接触ユニット12および生物学的活性フィルタ14を有する水処理システム10を示す。オゾン接触ユニット12は、液体酸素タンク40、酸素蒸発器42、オゾン生成器30、オゾン流量制御弁32、接触タンク36、脱泡システム38、たとえば触媒反応のオゾン破壊ユニットといったオゾン破壊ユニット44、オゾン泡生成器46を含む。廃水48は、接触タンク36に入り、これを通って流れる。オゾンは、廃水48に溶け込んで、廃水48の中の有機化合物と反応する。廃水は、オゾン処理された後に、接触タンク36から生物学的活性フィルタ14の反応器52へ流れる。反応器50は、この例ではバイオフィルムでコーティングされた媒体床(media bed)50を含んでいる。バイオフィルムの中の細菌が、廃水の中のオゾン処理された有機化合物を生物分解する。
【0021】
オゾン接触ユニット12と生物学的活性フィルタ14との間を流れる水と通信する生物電気化学センサ16が設けられている。生物電気化学センサ16はコントローラ18に接続されている。生物電気化学センサ16は亜硫酸ナトリウム注入24の下流にある。示されるように、コントローラ18は、生物電気化学センサのローカルコントローラ20だけに接続されている。これによって、たとえば、生物電気化学センサからシステム操作員に測定値を表示することが可能になる。システム操作員は、表示された測定値に基づいて、さらなる計算に基づいて、またはコントローラ18によって提供された推奨に基づいて、オゾン接触ユニット12または生物学的活性フィルタ14の動作を調節し得る。任意選択で、コントローラ18は、システム10における1つ以上の他のローカルコントローラにも接続される。たとえば、コントローラ18は、オゾン生成器30またはオゾン流量制御弁32の一方または両方に関連付けられた1つ以上のローカルコントローラ20に接続され得る。コントローラ18は、生物電気化学センサ16からの信号に基づいて、任意選択で、たとえば流入水の流量センサ34といった1つ以上の他のセンサからの信号の組合せた生物電気化学センサ16からの信号に基づいて、水に送達されるオゾンの量を制御するように構成され得る。代わりに、または加えて、コントローラ18は、生物電気化学センサ16からの信号に基づいて、任意選択で、1つ以上の他のセンサから信号と組合せた生物電気化学センサ16からの信号に基づいて、生物学的活性フィルタ14の1つ以上の動作パラメータを制御するように構成され得る。
【0022】
図3は、任意選択で、オゾン生成制御アルゴリズムで使用される関係(すなわち数学的関数)を生成するためのデータを収集することを含む、1つ以上の生物学的センサを使用して廃水処理プラントを制御する例示の方法300を示す。予備ステップにおいて、プラントは、生物学的センサがプラント環境に順応するための約1か月を許容して起動されてもよい。次いで、生物学的センサはデータを収集して、O3および流入水TOCの条件の範囲にわたって測定された代謝活動(すなわちCCR)に基づいてたとえばCCR=f(O3/TOC)といった曲線(すなわち関数)の関係を決定する(ステップ302)ために使用され得る。TOC除去(すなわち、測定された流入水TOCと排出水TOCとの間の比または差)と測定されたCCRとを比較する関係が、ステップ302と並行して、または順次に構築され得る(ステップ304)。たとえば、f(CCR)=TOC排出水/TOC流入水の曲線(すなわち関数)が構築され得る。システム内のBAF媒体が吸着性である場合、BAFが、吸着性であることから、所望の生物学的プロセスを行うことへ遷移するのを可能にするために、プラントを起動してからf(CCR)=TOC排出水/TOC流入水の曲線を構築するまでに、3-6か月の待ち時間を要する可能性がある。媒体が吸着性でなければ、曲線は、プラントを起動してから約1から約6か月で構築され得る。次いで、ステップ302およびステップ304において決定された関係が、オゾン生成制御方法の残りにおいて使用され得る。たとえば、目標のTOC排出水は、たとえば放出規制に基づいて設定され得る(ステップ306)。ステップ308において、TOC排出水/TOC流入水の比が、TOC流入水の測定値と、ステップ306において決定された目標のTOC排出水とを使用して計算され得る。ステップ308では、ステップ304で構築された曲線(またはその逆関数)およびTOC排出水/TOC流入水の比を使用して、代謝活動(すなわちCCR)も決定され得る。ステップ302において作られた曲線は、O3/流入水TOCに応じての代謝活動(すなわちCCR)を描写するものであり、したがって、この比(O3/流入水TOC)は、ステップ310において逆の関係を使用して識別され得る。O3/流入水TOCの複数の比が代謝活動(すなわちCCR)に対応する場合、最小の比が使用される。必要とされるO3投与の量は、ステップ312において、測定された流入水TOCに基づいて、O3/流入水TOCの比から決定され得る。いくつかの例では、ステップ302における曲線は、NO2がオゾンを消費するので、安定したNO2濃度において、または流入水NO2濃度を考慮して生成される。たとえば、ステップ302における関係は、NO2によって消費されるオゾンを差し引いたオゾンに基づき得る。任意選択で、ステップ312で決定されるO3は、たとえば、NO2によって消費されるオゾンを差し引いたオゾンに基づく関係を使用して決定されたO3を、流入水のNO2によって消費される量だけ増加することにより、流入水のTOCおよびNO2に基づいて決定され得る。このプロセスは、ステップ312の後に、たとえば10-120分ごとに1回といった適切な時間間隔でオゾンを投与するように調整するために、ステップ308に戻ってよい。任意選択で、たとえば規制変更によってTOC排出水の目標を変更する場合には、プロセスはステップ306に戻ってよい。任意選択で、プロセスは、本明細書で説明された関数または他の関係を定期的に更新するために、ステップ302に戻ってよい。
【0023】
図4は、ステップ304において構築され得る、CCRに応じてのTOC排出水/TOC流入水の比を示すサンプルの曲線を示す。図5は、ステップ302において構築され得る、O3/TOC流入水の比に応じてのCCRを示すサンプルの曲線を示す。これらの曲線の各々が、計算、モデル化、類似のプラントからの履歴データ、または曲線を使用して制御されているプラントからの履歴データのうちの1つ以上を使用して作り出され得る。任意選択で、曲線は、そのプラントに特有のO3制御アルゴリズムを提供するために、履歴データが収集されるプラントに固有のものになる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】