(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】プロトン伝導性充電池および方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20240709BHJP
H01M 10/05 20100101ALI20240709BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240709BHJP
H01M 50/497 20210101ALI20240709BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240709BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/05
H01M50/434
H01M50/497
H01M50/403 A
H01M50/403 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577791
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021023413
(87)【国際公開番号】W WO2022269687
(87)【国際公開日】2022-12-29
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヤン クーシャン
(72)【発明者】
【氏名】椎▲崎▼ 伸二
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
【Fターム(参考)】
5H021BB01
5H021EE22
5H021HH01
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AJ12
5H029AK02
5H029AL02
5H029AM14
5H029CJ02
5H029CJ28
5H029DJ09
5H029DJ17
5H029HJ01
5H029HJ14
5H029HJ20
(57)【要約】
【課題】リチウムイオンのサイクルに依存しない新たな固体電池を提供する。
【解決手段】プロトン伝導性セパレータ材料および前記セパレータ材料を用いた充電式プロトン伝導性セルを提供する。セパレータは無機セラミック材料を含み、無機セラミック材料は任意でセパレータ中の主成分として存在する。無機セラミック材料はペロブスカイト酸化物相を85wt%未満含み、25℃でのプロトン伝導度が0.1mS/cm以上である。また、充電式プロトン伝導性セルのセパレータとして有効に機能できるように向上されたプロトン伝導性を有する無機セラミック材料の製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトンを可逆的に吸収可能な正極活物質を含む正極と、
プロトンを可逆的に吸収可能な負極活物質を含む負極と、
セパレータ中の主成分として無機セラミック材料を含むセパレータであって、前記無機セラミック材料がペロブスカイト酸化物相を85wt%未満含み、25℃でのプロトン伝導度が0.1mS/cm以上であるセパレータと、
を含む、プロトン伝導性充電式セル。
【請求項2】
請求項1に記載のセルにおいて、前記ペロブスカイト酸化物相が70wt%未満存在し、任意で50wt%未満存在する、セル。
【請求項3】
請求項1に記載のセルにおいて、前記無機セラミック材料が1種類以上の第2族元素を含む、セル。
【請求項4】
請求項3に記載のセルにおいて、前記1種類以上の第2族元素がBaを含む、セル。
【請求項5】
請求項1に記載のセルにおいて、前記セパレータがACO
3相を含み、Aは1種類以上の第2族元素を含む、セル。
【請求項6】
請求項5に記載のセルにおいて、前記ACO
3相が20wt%以上存在し、任意で30wt%以上存在する、セル。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のセルにおいて、前記セパレータの重量が、前駆体材料よりも5wt%以上大きく、任意で10wt%以上大きく、任意で20wt%以上大きい、セル。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載のセルにおいて、前記プロトン伝導度が23mS/cm未満である、セル。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載のセルにおいて、前記無機セラミック材料が、AZr
xY
yM
zの酸化物、炭酸塩、水酸化物、またはそれらの組合せを含み、ここで、Aは1種類以上の第2族元素であり、Mは1種類以上の遷移金属または希土類金属であり、0≦x≦0.8、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.8である、セル。
【請求項10】
請求項9に記載のセルにおいて、xが0.1から0.5の範囲である、セル。
【請求項11】
請求項9に記載のセルにおいて、yが0.1から0.3の範囲である、セル。
【請求項12】
請求項9に記載のセルにおいて、MがCeであり、zが0.4から0.8の範囲である、セル。
【請求項13】
請求項9に記載のセルにおいて、MがLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Ti、Hf、B、Al、Ga、およびそれらの組合せからなる群から選択される、セル。
【請求項14】
25℃でのプロトン伝導度が0.1mS/cm以上であるプロトン伝導性材料を製造する方法であって、
1種類以上の第2族元素を含む前駆体材料を準備することと、
前記前駆体材料を焼成温度で焼成して焼成前駆体材料を形成することと、
前記焼成前駆体材料に対して、ある処理時間および処理温度で加湿処理を行い、プロトン伝導性材料を提供することと、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記処理温度が70℃から200℃の範囲である、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、前記加熱処理を行うことは、前記処理時間中に前記処理温度を上昇させることを含む、方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法において、前記処理時間が1時間から40時間の範囲であり、任意で10時間から20時間の範囲である、方法。
【請求項18】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、プロトン伝導性材料が、ペロブスカイト酸化物相を85wt%未満含み、25℃でのプロトン伝導度が0.1mS/cm以上である、方法。
【請求項19】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、前記ペロブスカイト酸化物相が70wt%未満存在し、任意で50wt%未満存在する、方法。
【請求項20】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、前記プロトン伝導性材料が1種類以上の第2族元素を含み、任意で、前記1種類以上の第2族元素がBaを含む、方法。
【請求項21】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、前記プロトン伝導性材料がACO
3相を含み、ここで、Aが1種類以上の第2族元素を含む、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記ACO
3相が20wt%以上存在し、任意で30wt%以上存在する、方法。
【請求項23】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、前記プロトン伝導性材料の重量が、加湿処理中に5wt%以上増加し、任意で10wt%以上増加し、任意で20wt%以上増加する、方法。
【請求項24】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、前記プロトン伝導度が23mS/cm未満である、方法。
【請求項25】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、前記無機セラミック材料が、AZr
xY
yM
zの酸化物、炭酸塩、水酸化物、またはそれらの組合せを含み、ここで、Aは1種類以上の第2族元素であり、Mは1種類以上の遷移金属または希土類金属であり、0≦x≦0.8、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.8である、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法において、xが0.1から0.5の範囲である、方法。
【請求項27】
請求項25に記載の方法において、yが0.1から0.3の範囲である、方法。
【請求項28】
請求項25に記載の方法において、MがCeであり、zが0.4から0.8の範囲である、方法。
【請求項29】
請求項25に記載の方法において、MがLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Ti、Hf、B、Al、Ga、およびそれらの組合せからなる群から選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関し、より具体的には、1つ以上の装置に電力供給するために使用され得る電流の生成において負極と正極の間でプロトンを循環させる充電池に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーの貯蔵および貯蔵エネルギーの効率的な回収は、世界のエネルギーソリューションにおいてますます重要な要素になっている。電気化学蓄電機構は、電動車両、ポータブルコンピューティング、および無線通信などの様々な産業で使用されている。現在のところ、これらのシステムに電力供給するために研究されている最も一般的な技術は、リチウムイオン電池のケミストリーに基づいている。
【0003】
典型的なリチウムイオン電池は電荷担体としてリチウムイオンを用いてサイクルを行う。リチウムイオンの利点としては、イオン化エネルギーが高いことや利用できる資源量が多いことが挙げられ、従来のシステムと比較して許容できるエネルギー密度につながる。ほとんどのリチウムイオン電池では、混合遷移金属酸化物正極に接続された黒鉛負極を使用し、有機炭酸塩および溶解性リチウム塩からなる電解質を採用している。しかし、これらのシステムの主な欠点は、有機溶媒の可燃性が極めて高いことにより、液漏れや過充電の場合に発火するおそれがある点である。
【0004】
従来のリチウムイオン電池の危険性により、多くの人々が許容可能なリチウムイオン伝導性を有する不燃性固体電解質を用いた固体リチウムイオン電池の使用について研究を行っている。一般に、リチウムイオン固体電池は、長寿命である点、従来のシステムの可燃性電解質材料をなくすことにより安全に動作し、エネルギー密度をさらに高めるためのバイポーラ設計が可能となる点、および製造が容易である点で極めて望ましい。このことから、固体電池の技術分野では、通常、上記のようなリチウムイオン技術の利点により固体電池用のリチウムイオンケミストリーに重点が置かれている。大きく進歩しているものの、リチウムイオン固体電池は、依然として、リチウムイオンの室温伝導性が低いために通常の動作温度での有効性が低下する固体電解質を用いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下で説明するように、本開示は、リチウムイオンのサイクルに依存しない新たな固体電池を提供することによってこれらのニーズに対応する。むしろ、本開示で提供されるセルは、向上した室温伝導性を有する新たな固体プロトン伝導性セパレータを用いてプロトンをサイクルするものであり、これによりリチウムイオン固体セルの問題を解決する。本開示のこれらの利点および他の利点は、以下の図面、検討および説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の概要は、本開示に特有の革新的な特徴のうちの一部についての理解を促進するために提供されるものであり、完全な説明を意図したものではない。明細書全体、特許請求の範囲、図面、および要約を総合的に考慮することで、本開示の様々な態様について十分な理解が得られる。本開示に記載される発明は、以下の特許請求の範囲に示される。
【0007】
プロトン伝導性電池は、リチウムイオン電池と比較して、高速イオン伝導、高エネルギー密度、比較的低いコスト、および改良された安全性プロファイルなどの数多くの利点を有する。これまでのところ、固体電池の設計にこれらのセルタイプを効果的に組み込む方法を見出すことは難しいとわかっている。本開示は、効率的かつコンパクトな固体電池のための新たな材料を提供する。
【0008】
したがって、プロトン伝導性充電式セル内でセパレータとして機能することが可能な新たな材料であって、改良されたプロトン伝導性を有することにより、従来のシステムのいくつかの欠点に対処する材料が提供される。プロトンを可逆的に吸収可能な正極活物質を含む正極と、プロトンを可逆的に吸収可能な負極活物質を含む負極と、セパレータ中の主成分として無機セラミック材料を含むセパレータであって、前記無機セラミック材料がペロブスカイト酸化物相を85重量パーセント(wt%)未満含み、摂氏25度(℃)でのプロトン伝導度が0.1mS/cm以上であるセパレータと、を含むプロトン伝導性充電式セルが提供される。無機セラミック材料は、任意で複数の相を含み、任意で、ペロブスカイト酸化物相と、セパレータの無機セラミック材料を生成するために使用される前駆体材料中の相の重量パーセントに対して増加した非ペロブスカイト酸化物相とを含む。無機セラミック材料中、ペロブスカイト酸化物相は、70wt%未満存在し、任意で50wt%未満存在する。無機セラミック材料中、非ペロブスカイト酸化物相は、任意で20wt%以上存在し、任意で30wt%以上存在する。いくつかの態様では、非ペロブスカイト酸化物相は、ACO3相であるか、またはACO3相を含み、ここで、Aは1種類以上の第2族元素であり、任意でBaである。得られる無機セラミック材料は、任意で23mS/cm未満のプロトン伝導度を有する。
【0009】
いくつかの態様では、無機セラミック材料は、AZrxYyMzの酸化物、炭酸塩、水酸化物、またはそれらの組合せを含み、ここで、Aは1種類以上の第2族元素であり、Mは1種類以上の遷移金属または希土類金属であり、0≦x≦0.8、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.8である。任意で、xは0.1~0.5である。任意で、yは0.1~0.3である。任意で、MはCeであり、zは0.4~0.8である。AZrxYyMz材料中のMは、任意で、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Ti、Hf、B、Al、Ga、およびそれらの組合せである。
【0010】
また、充電式プロトン伝導性セルのセパレータとして使用するためのプロトン伝導性材料としての無機セラミック材料を形成する方法が提供される。1つの方法は、前駆体材料に対して加湿処理を行い、それによって前駆体材料に比べてプロトン伝導性材料のプロトン伝導度を向上させることを含み得る。前記方法は、1種類以上の第2族元素を含む前駆体材料を準備することと、前記前駆体材料を焼成温度で焼成して焼成前駆体材料を形成することと、前記焼成前駆体材料に対して特定の処理時間および処理温度で加湿処理を行い、プロトン伝導性材料を提供することと、を含む。前記処理温度は、任意で70℃から200℃の範囲である。いくつかの態様では、前記処理時間中に前記処理温度を上昇させる。処理時間は、任意で1時間から40時間の範囲であり、任意で10時間から20時間の範囲である。前記処理は、任意で、ペロブスカイト酸化物相を85wt%未満含み、25℃でのプロトン伝導度が0.1mS/cm以上であるプロトン伝導性材料を提供する。任意で、ペロブスカイト酸化物相は70wt%未満存在し、任意で50wt%未満存在する。
【0011】
前記プロトン伝導性材料において、ペロブスカイト酸化物相は70wt%未満存在してもよく、任意で50wt%未満存在してもよい。前記プロトン伝導性材料において、非ペロブスカイト酸化物相は、任意で20wt%以上存在し、任意で30wt%以上存在する。いくつかの態様では、非ペロブスカイト酸化物相はACO3相であるか、またはACO3相を含み、ここで、Aは1種類以上の第2族元素であるか、または第2族元素を含み、任意でBaであるか、またはBaを含む。得られる無機セラミック材料は、任意で、23mS/cm未満のプロトン伝導度を有する。いくつかの態様では、プロトン伝導性材料は、AZrxYyMzの酸化物、炭酸塩、水酸化物、またはそれらの組合せを含み、ここで、Aは1種類以上の第2族元素であり、Mは1種類以上の遷移金属または希土類金属であり、0≦x≦0.8、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.8である。任意で、xは0.1~0.5である。任意で、yは0.1~0.3である。任意で、MはCeであり、zは0.4~0.8である。AZrxYyMz材料中のMは、任意で、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Ti、Hf、B、Al、Ga、およびそれらの組合せである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示の様々な態様が、以下の図面に例示されている。これらの図面は、本発明の範囲を限定するものではない。
【
図1A】本開示で提供されるいくつかの態様に係る固体セパレータ構造の種々の態様を示す図である。
【
図1B】本開示で提供されるいくつかの態様に係る固体セパレータ構造の種々の態様を示す図である。
【
図1C】本開示で提供されるいくつかの態様に係る固体セパレータ構造の種々の態様を示す図である。
【
図1D】本開示で提供されるいくつかの態様に係る固体セパレータ構造の種々の態様を示す図である。
【
図1E】本開示で提供されるいくつかの態様に係る固体セパレータ構造の種々の態様を示す図である。
【
図2】加湿前の試料1のXRDパターンを示す図である。
【
図3】加湿後の試料1のXRDパターンを示す図である。
【
図4】加湿後の試料2のXRDパターンを示す図である。
【
図5】セル内でセパレータとして用いられる試料1の充放電プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
優れた室温電荷担体伝導性を初めて提供するプロトン伝導性固体電解質材料およびその製造方法が提供される。提供される固体セパレータおよびその製造方法は、セパレータの化学組成を調整し、それによって室温プロトン伝導性を向上させる。
【0014】
よって、本開示では、プロトンを可逆的に吸収可能な正極活物質を含む正極と、プロトンを可逆的に吸収可能な負極活物質を含む負極と、本開示で提供されるプロトン伝導性セパレータとを含むプロトン伝導性充電式セルが提供される。前記セパレータは、セパレータ中で主成分として存在し得る無機セラミック材料を利用する。無機セラミック材料の前駆体は、ペロブスカイト酸化物材料であってもよいが、この前駆体ペロブスカイト酸化物は、85wt%未満のペロブスカイト酸化物相を含むように変性される。得られる材料は25℃でのプロトン伝導度が0.1mS/cm以上である。
【0015】
本開示で提供されるプロトン伝導性電池は、負極と正極の間でプロトンを循環させることで動作する。これにより、負極は、充電中に負極で1種類以上の元素の水素化物を形成する。この水素化物は、放電時に水素化物がプロトンおよび電子の両方を生じさせながら負極活物質の元素部分になるように可逆的に形成される。負極での半反応式は、以下の半反応式により表すことができる。
【0016】
【数1】
式中、Mは、1種類以上の遷移金属もしくはポスト遷移金属であるか、または1種類以上の遷移金属もしくはポスト遷移金属を含む。
【0017】
対応する正極反応の半反応式は、典型的には以下のとおりである。
【0018】
【数2】
式中、M
cは、正極電気化学活物質に適した任意の1種類以上の金属であり、任意で、NiまたはMnを主成分とし、他の代替金属を含む。
【0019】
本開示の電池は、このプロトン伝導ケミストリーを利用しているが、さらに、本開示で提供される材料を含むセパレータを採用することによって、室温で機能するセルの能力を利用している。
【0020】
ここでいう「電池」との用語は、固体電池において構成されるような、直列の2つ以上のセルの集合を意味する。「セル」とは、正極活物質と、負極活物質と、本開示で提供されるようなセパレータとを含み、電気化学的にエネルギーを可逆的に貯蔵するように機能するものをいう。
【0021】
本開示における「負極」は、充電時に電子受容体として機能する電気化学活物質を含む。
【0022】
本開示における「正極」は、充電時に電子供与体として機能する電気化学活物質を含む。
【0023】
原子比率(at%)が特に定義されずに示されている場合、その原子比率は、記載されている材料中の、水素および酸素を除いた全ての元素の量に基づいて表される。
【0024】
充電式プロトン伝導性セルは、単独で使用され又はイオン交換膜と関連付けられ得る1種類以上の無機セラミック材料を含むセパレータを含む。したがって、前記無機セラミック材料は、任意で
図1に示されるように、スタンドアロン型の膜として用いてもよいし、イオン交換膜もしくは基板上のコーティングとして用いてもよいし、イオン交換膜に埋め込んでもよいし、単独の多孔質基板もしくはイオン交換膜と組み合わせた多孔質基板の細孔内に含浸してもよいし、またはそれらの任意の組合せであってもよい。
【0025】
よって、2つ以上のセルを含む充電式プロトン伝導性電池であって、少なくとも1つの前記セルが、正極活物質と、負極活物質と、前記正極活物質と前記負極活物質との間に設けられたプロトン伝導性セパレータとを含む、充電式プロトン伝導性電池が提供される。他の態様では、本開示で提供される電池は、固体ポリマー電解質、液体電解質、またはそれらの任意の組合せであり得る電解質を含み、前記電解質は、前記セパレータ内に完全に収容されてもよいし、前記セパレータと前記負極活物質および/または前記正極活物質との間において一方側または両側で前記セパレータに隣接していてもよい。
【0026】
本開示で提供される充電式プロトン伝導性電池は、プロトン伝導性セパレータを含む。いくつかの態様では、セパレータは、プロトン伝導性フィルムの形態であってもよい。プロトン伝導性フィルムは、負極活物質と正極活物質の上またはその間に積層されるために十分なフィルム特性(例えば剛性)を有するものであってもよく、負極活物質を正極活物質から物理的かつ/または電気的に分離するために適切な厚みを提供するものであってもよい。これらの態様におけるセパレータは、セルの組立て前に完全に形成されて、セルの形成時にセルの他の要素と単に積層されてもよい。
【0027】
セパレータとして又はセパレータの成分として用いられる無機セラミック材料の例示としては、本開示で提供される未処理のペロブスカイト酸化物および/または処理済みのペロブスカイト酸化物が挙げられる。ペロブスカイト型酸化物は、一般式ABO3を有し、より大きなA陽イオンが12個の陰イオンに対して配位し、B陽イオンが6個の配位サイトを占めて、頂点を共有するBO6八面体のネットワークを形成する相を有する。A陽イオンは希土類、アルカリまたはアルカリ土類元素であってもよい。典型的には、B元素は1種類以上の遷移金属または希土類金属である。いくつかの態様では、AはCa、Be、Sr、La、Na、K、Mg、またはそれらの組合せであってもよい。任意で、Bは、Ce、Zr、Y、Al、Ti、Nb、Ta、Ga、またはそれらの組合せであってもよい。
【0028】
いくつかの態様におけるセパレータは、セパレータ中のペロブスカイト酸化物相の量が前駆体ペロブスカイト酸化物よりも少なくなるように、変性ペロブスカイト酸化物で形成されるか、または変性ペロブスカイト酸化物を含んでいてもよい。したがって、前駆体ペロブスカイト酸化物は、セパレータ材料を形成するように変性され、任意で、本開示で提供される1つ以上の方法によりセパレータ材料を形成するように変性される。したがって、セパレータは、ペロブスカイト酸化物および非ペロブスカイト酸化物の相であり得る1つ以上の相を含み得る。前駆体中のペロブスカイト酸化物相の重量パーセントは、60重量パーセント(wt%)以上、任意で70wt%、80wt%、85wt%、またはそれよりも高くすることができる。
【0029】
セパレータ材料中のペロブスカイト酸化物相は、前駆体材料中のペロブスカイト酸化物相の重量パーセントよりも少なく、任意で、本開示で提供される方法を用いて生成される前駆体材料中のペロブスカイト酸化物相の重量パーセントよりも少ない。任意で、セパレータ中のペロブスカイト酸化物相の重量パーセントは、全無機セラミック材料に対して、任意で70wt%未満であり、任意で50wt%未満である。いくつかの態様では、ペロブスカイト酸化物相の重量パーセントは、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10%以下であるか、またはそれよりも少ない。
【0030】
いくつかの態様では、前駆体材料中の非ペロブスカイト酸化物相に対して増加した非ペロブスカイト酸化物相は、セパレータ材料を形成するために元々使用されるようなペロブスカイト酸化物のA陽イオン(複数可)の炭酸塩であるか、またはそれを含む。前駆体に対して処理レジームを行って材料を効果的に水和させることにより、ペロブスカイト酸化物相の少なくとも一部、場合によっては全部が、元のペロブスカイト酸化物の1種類以上のA陽イオンの炭酸塩相に変化し、この形態は前駆体の室温伝導度を劇的に向上させ、それによってプロトン伝導セルにおいてより効果的になる。よって、本発明のセパレータは、任意で、処理済みのペロブスカイト酸化物を85重量%以下含み、任意でセパレータ中にペロブスカイト酸化物相を70重量%未満含む。
【0031】
得られるセパレータの25℃でのプロトン伝導度は、任意で0.1mS/cm以上である。いくつかの態様では、25℃でのプロトン伝導度は、0.11mS/cm以上であり、任意で0.12mS/cm、任意で0.13mS/cm、任意で0.14mS/cm、任意で0.15mS/cm、任意で0.16mS/cm、任意で0.17mS/cm、任意で0.18mS/cm、任意で0.19mS/cm、任意で0.2mS/cm、任意で0.21mS/cm、任意で0.22mS/cm、任意で0.23mS/cm、任意で0.24mS/cm、任意で0.25mS/cmである。いくつかの態様では、セパレータのプロトン伝導度は23mS/cm以下である。
【0032】
無機セラミック材料は、任意で、1種類以上の第2族元素を含む。無機セラミック材料に含まれ得る第2族元素は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、またはそれらの任意の組合せであってもよい。任意で、無機セラミック材料は、Ba、Mg、またはCaを含んでいてもよい。他の態様では、無機セラミック材料は、BaまたはCaを含んでいてもよい。いくつかの態様では、無機セラミック材料は、唯一の第2族元素として、または1種類以上の他の第2族元素との組合せで、Baを含んでいてもよい。
【0033】
よって、本開示で提供されるセパレータは、任意で、Aが1種類以上の第2族元素であるACO3相を含む。任意で、無機セラミック材料は、AがBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、またはそれらの任意の組合せであり得るACO3相を含む。任意で、ACO3相のAはBa、Mg、またはCaである。他の態様では、ACO3相のAはBaまたはCaである。いくつかの態様では、ACO3相のAは、唯一の第2族元素として、または1種類以上の他の第2族元素との組合せで、Baである。ACO3相は無機セラミック材料中に15wt%以上で存在してもよい。任意で、ACO3相は無機セラミック材料中に20wt%以上で存在してもよい。任意で、ACO3相は無機セラミック材料中に30wt%以上で存在してもよい。任意で、ACO3相は無機セラミック材料中に25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、または85wt%以上で存在してもよい。
【0034】
いくつかの態様では、無機セラミック材料は、AZrxYyMzの酸化物、炭酸塩、水酸化物、もしくはそれらの組合せであるか、またはAZrxYyMzの酸化物、炭酸塩、水酸化物、もしくはそれらの組合せを含み、ここで、Aは1種類以上の第2族元素であり、Mは1種類以上の遷移金属または希土類金属であり、0≦x≦0.8、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.8である。Zr、Y、MおよびAの相対量を調整しても、所望の室温プロトン伝導性を有するセパレータを得ることができる。例えば、xは任意で0.1~0.5の範囲またはその間の任意の値もしくは範囲である。任意で、yはゼロである。任意で、yは0.1~0.3の範囲またはその間の値もしくは範囲である。yがゼロよりも大きい場合、欠陥のあるペロブスカイト酸化物が形成される可能性がある。いくつかの態様では、欠陥のあるペロブスカイト酸化物が存在すると、室温プロトン伝導性が高くなる。任意で、Zは0.4~0.8の範囲またはその間の任意の値もしくは範囲である。任意で、Aの相対値が1であり、x、yおよびzの値が、無機セラミック材料の全体組成に基づいてAの値に対して正規化される。例えば、いくつかの態様では、Aが1であり、x+y+z=1であり、これは化学量論的ペロブスカイト酸化物である。他の例では、Aが1であり、x+y+z>1であり、任意で1.06である。他の例では、Aが1であり、x+y+z<1である。
【0035】
上記式AZrxYyMzにおいて、Aは1種類以上の第2族元素であり、MはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Ti、Hf、B、Al、Ga、およびそれらの組合せであってもよい。他の態様では、MはLa、Ce、Ti、Al、またはBである。他の態様では、MはLa、Ce、またはTiである。任意で、MはCeであり、任意で他の元素を含まない。いくつかの態様では、MはCeであり、zは0.4~0.8またはその間の任意の値もしくは範囲である。いくつかの態様では、MはCeであり、AはBeである。
【0036】
処理されたペロブスカイト酸化物は、本開示で提供される方法などの特定の方法により形成された、化学的に変性させたペロブスカイト酸化物の生成物であってもよい。化学的に変性させたペロブスカイト酸化物は、任意で、ペロブスカイト酸化物相の量を85wt%以下に減少させるように、かつ/または、本開示に記載されるような(任意で15wt%以上で存在する)ACO3相の重量パーセントもしくは増加した重量パーセントを生じさせるように加湿によって化学的に変性される。
【0037】
変性ペロブスカイト酸化物は、任意で加湿されて、それによって前駆体に対する材料の重量増加を生じさせる。任意で、重量増加はゼロよりも大きい。任意で、変性ペロブスカイト酸化物の重量増加は5wt%以上である。いくつかの態様では、変性ペロブスカイト酸化物の重量増加率は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20%以上である。任意で、変性ペロブスカイト酸化物の重量増加率は20%以上である。
【0038】
無機セラミック材料は、本技術分野で知られるゾルゲル法によって生成することができる。例えば、材料を形成するために必要な所望の塩を、水中で酸と組み合わせてもよく、任意でOsman et al., Advanced Materials Research, 2014; 896:112-115に記載されているようにトリエチレンテトラミンと組み合わせてもよい。得られた材料を乾燥させてもよく、任意で、材料から全ての液体を除去するのに十分な時間にわたって100℃で乾燥させてもよい。
【0039】
変性無機セラミック材料は、まず、無機セラミック材料を焼成温度で焼成して焼成前駆体材料を形成し、次に、焼成前駆体材料に対して、ある処理時間にわたる、ある処理温度での加湿処理を施してプロトン伝導性材料を提供することにより形成することができ、任意で、プロトン伝導性材料の25℃でのプロトン伝導度を0.1mS/cm以上としてもよい。加湿処理は任意で水を含む雰囲気中で行われる。水は、任意で気体中の水蒸気として大気中に存在し、任意で気体中の飽和水蒸気として大気中に存在する。気体は不活性ガスであってもよく、任意で、空気、窒素、アルゴンまたは他の所望の気体であってもよい。大気の相対湿度は、任意で80%以上、任意で90%以上、任意で99%以上、任意で100%(つまり飽和)である。
【0040】
焼成前駆体材料に対して、任意で、ある処理時間にわたる、ある処理温度での加湿処理を行う。処理時間および/または処理温度は、任意で、前駆体材料の重量以上の重量を有するプロトン伝導性材料を生成するのに十分な時間であり、かつ/または、プロトン伝導性材料中に所望する量のペロブスカイト酸化物相を、任意で85wt%以下のペロブスカイト酸化物相を生成するのに十分な時間である。
【0041】
任意で、処理時間および/または処理温度は、25℃でのプロトン伝導度が0.1mS/cm以上のプロトン伝導性材料を生成するのに十分な処理時間および/または処理温度である。いくつかの態様では、処理時間は、25℃でのプロトン伝導度が0.11mS/cm以上、任意で0.12mS/cm、任意で0.13mS/cm、任意で0.14mS/cm、任意で0.15mS/cm、任意で0.16mS/cm、任意で0.17mS/cm、任意で0.18mS/cm、任意で0.19mS/cm、任意で0.2mS/cm、任意で0.21mS/cm、任意で0.22mS/cm、任意で0.23mS/cm、任意で0.24mS/cm、任意で0.25mS/cmのプロトン伝導性材料を生成するのに十分な処理時間である。いくつかの態様では、セパレータのプロトン伝導度が23mS/cm以下である。
【0042】
いくつかの態様では、処理時間および/または処理温度は、重量増加が所望量以上であるプロトン伝導性材料を生成するのに十分な処理時間および/または処理温度である。任意で、処理時間および/または処理温度は、ゼロよりも大きい重量増加率を示すプロトン伝導性材料を生成するのに十分な処理時間および/または処理温度である。任意で、前駆体材料に対するプロトン伝導性材料の重量増加は5wt%以上である。いくつかの態様では、プロトン伝導性材料の重量増加率は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20%以上である。任意で、変性ペロブスカイト酸化物の重量増加率は20%以上である。
【0043】
いくつかの態様では、処理時間および/または処理温度は、85wt%未満のペロブスカイト酸化物相を有するプロトン伝導性材料を生成するのに十分な処理時間および/または処理温度である。任意で、処理時間および/または処理温度は、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10wt%以下のペロブスカイト酸化物相を有するプロトン伝導性材料を生成するのに十分な処理時間および/または処理温度である。
【0044】
いくつかの態様では、処理時間および/または処理温度は、20wt%以上のACO3相を有するプロトン伝導性材料を生成するのに十分な処理時間および/または処理温度である。任意で、処理時間および/または処理温度は、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、または85wt%以上のACO3相を有するプロトン伝導性材料を生成するのに十分な処理時間および/または処理温度である。
【0045】
処理温度は任意で70℃から200℃の範囲またはその間の任意の値もしくは範囲である。いくつかの態様では、処理温度は75℃以上であり、任意で80℃、任意で85℃、任意で90℃、任意で95℃、任意で100℃、任意で125℃、任意で150℃、任意で175℃、任意で200℃である。
【0046】
任意で、処理時間の間、処理温度は一定ではない。処理温度は、処理後の材料における重量増加および/または飽和度を調整するように、処理時間の間、昇降させてもよい。
【0047】
処理時間は、任意で1時間から40時間の範囲またはその間の任意の値もしくは範囲である。任意で、処理時間は5時間から30時間の範囲であり、任意で10時間から20時間の範囲であり、任意で15時間から17時間の範囲である。いくつかの態様では、処理時間は、1、2、3、5、7、10、15、20、25、30、35、または40時間以上である。
【0048】
処理時間は、任意で1時間から40時間の範囲であり、任意で10時間から20時間の範囲であり、処理温度は、70℃から200℃の範囲またはその間の任意の値もしくは範囲である。任意で、処理時間は、いくつかの態様では、1、2、3、5、7、10、15、20、25、30、35、または40時間以上であり、処理時間は、5時間から30時間であり、任意で10時間から20時間であり、任意で15時間から17時間であり、任意で1、2、3、5、7、10、15、20、25、30、35、または40時間以上である。
【0049】
その結果、無機セラミック材料を処理することにより、無機セラミック材料を含み、任意でセパレータ中に無機セラミック材料を主成分として含み、ペロブスカイト酸化物相が85wt%未満であり、かつ/または、25℃で0.1mS/cm以上のプロトン伝導度を示すセパレータを形成することができる。無機セラミック材料は、セパレータ材料として単独で使用してもよいし、基板および/またはイオン伝導性ポリマーと組み合わせて使用してもよい。セパレータは、本明細書で提供される電池の1つ以上のセルにおいて負極と正極との間に配置される。セパレータは、各セル内で正極活物質を負極活物質から完全に分離してもよい。セパレータの縁は、集電体板の表面に負極活物質または正極活物質が配置されていない場合には、負極活物質を正極活物質から完全に分離するように集電体板の周縁と接触していてもよい。セパレータは、デンドライト形成によるセルの短絡を防止するように機能し、液体電解質(存在する場合)、プロトン、電子、またはこれらの要素の任意の組合せがセパレータを通過できるように、任意で選択的にセパレータを通過できるように、またはセパレータにより伝導されることができるように機能する。
【0050】
セパレータは、無機セラミック材料に加えて、ポリマーフィルムや、任意で、多孔質ポリマーフィルム、ガラスマット、多孔質ゴム、イオン伝導性ゲル、または天然材料などの非導電性材料を含んでいてもよい。セパレータとして有用な例示的材料としては、セパレータにおいてベースまたはイオン伝導性ポリマーとして機能する多孔質または非多孔質の高分子量または超高分子量ポリオレフィン材料が挙げられる。
【0051】
セパレータは、任意で
図1Aに示されているような、セルの正極と負極との間でプロトンを搬送するためのスタンドアロン型システムとして機能し得る、剛性または可撓性の無機セラミック材料1のシートなどのプロトン伝導性膜の形態であってもよい。いくつかの態様では、
図1Bに示されるように、無機セラミック材料2の複数の粒子が、シートまたはフィルムの形態のイオン伝導性ポリマー3(ICP,任意でプロトンに対して選択性を有する)と会合していてもよいし、任意で、イオン伝導性ポリマー3の内部または表面に埋め込まれていてもよい。任意で、セパレータは、任意で
図1Cに示されるように、イオン伝導性ポリマーの成分としてプロトン伝導性固体支持体4と会合する無機セラミック材料であってもよい。ここで、本開示で提供される支持体についての「固体」との用語は、その支持体が、セルの稼働中に支持体を通してICPを伝達しないということを意味している。他の態様では、実質的に
図1Dに示されるように、支持体4が多孔質であってもよく、無機セラミック材料2の粒子を単独で、またはイオン伝導性ポリマーと共に細孔内に収容していてもよい。シート状のイオン伝導性ポリマー3は、
図1Eに示されるように、無機セラミック材料1の層の上に積層されるか、コーティングされるか、他の方法で直接接触した状態で配置されてもよい。
【0052】
いくつかの態様では、セパレータは、任意で
図1Dに示されているような、セパレータを貫通する細孔または蛇行経路を含む多孔質基板を含んでいてもよく、前記多孔質基板は、電解質、プロトン、電子、またはそれらの任意の組合せがセパレータを通過できるようにする。基板の細孔に1種類以上のICPが充填されることで、セパレータが形成されてもよい。このような極めて多孔質な基板材料は、公知の多孔質セラミックまたはポリマー材料から形成され得る。ICPは、セパレータ材料を通してイオンが流動または伝導するための伝導経路を形成するように細孔の中に収容されていてもよい。いくつかの態様では、セパレータ全体を形成する際に、多孔質セパレータ材料が一方の側または両側においてICPのシートまたはフィルムでさらに被覆される。任意で、セパレータの構造面をなすポリプロピレンなどの電気的絶縁材料にICPがコーティングされてもよい。
【0053】
多孔質基板が、任意で、多孔質基板の総体積に対する細孔の体積(つまり隙間の体積)の比率として定められる空隙率を有し、本分野で公知の任意の方法によって、例えば水銀圧入法、ガス吸着法、またはキャピラリフローポロメーターで得られるような、膜を通過する流体の流れに基づくキャピラリフロー法によって測定することができる。空隙率は、任意で20%以上であり、任意で30%以上、任意で40%以上、任意で50%以上、任意で60%以上、任意で70%以上、任意で80%以上である。いくつかの態様では、空隙率は20%以上80%以下の範囲であり、任意で30%以上60%以下の範囲、任意で40%以上50%以下の範囲である。
【0054】
本開示で提供されるセパレータは、任意で、無機セラミック材料に加えて、イオン伝導性ポリマーを含む。イオン伝導性ポリマーの例示としては、プロトンを伝導し、任意でプロトンを選択的に伝導し、かつ、電気的絶縁性を有するものが挙げられる。本開示で提供されるセルに用いられるセパレータの電気抵抗率は1x10-4ohm・m2以下であり、任意で8x10-5ohm・m2以下、任意で6x10-5ohm・m2以下、任意で4x10-5ohm・m2以下、任意で3x10-5ohm・m2以下である。
【0055】
セパレータのICPとしての使用に適したプロトン伝導性材料としては、以下に限定されるものではないが、相互侵入型の疎水性ドメインと親水性ドメインとを含む水和酸性ポリマーであって、疎水性ドメインがポリマーの構造寸法を提供し得て、親水性ドメインが選択的なプロトン伝導を可能にする水和酸性ポリマーが挙げられる。このようなポリマーの例示としては、ポリ(スチレンスルホネート)から形成されたものが挙げられる。プロトン伝導性材料の他の例示としては、以下に限定されるものではないが、NAFFIONなどのパーフルオロスルホン酸(PFSA)ポリマーなどのパーフルオロ化ポリマーが挙げられる。いくつかの態様では、ポリマーは、電気的絶縁性を有しながらもプロトン伝導性を有する多芳香族ポリマーである。さらなる態様では、プロトン伝導性ポリマーは、プロトン伝導性材料が、任意で非プロトン伝導性であるポリマーマトリックス内に埋め込まれるか、またはポリマーマトリックスに接着された複合材料である。
【0056】
プロトン伝導性ポリマーは、任意で、電気的絶縁性を有しながらもプロトン伝導性を有する。プロトン伝導度は、任意で、室温で測定したときに0.1mS/cm以上であり、任意で0.2mS/cm以上、任意で1mS/cm以上である。
【0057】
セパレータは、1種類以上のイオン伝導性ポリマーおよび/または無機セラミック材料をイオン伝導性基板上に、またはイオン伝導性基板内に含浸された状態で含んでいてもよい。イオン伝導性基板の例示として、1種類以上の遷移金属、またはそれらの酸化物、水酸化物、もしくはオキシ水酸化物で形成されたものが含まれる。例示として、以下に限定するものではないが、Pt、Pd、LaNi5が挙げられる。代替的または追加的に、セパレータで使用するためのイオン伝導性基板は、金属酸化物(例えば、ZrO2、CeO2、TiO2)または本開示で他に記載されるようなペロブスカイト酸化物などの酸化物を含むことができる。
【0058】
セパレータは、膜またはフィルムの形態で提供されて負極活物質と正極活物質との間に単に積層されてもよいし、負極活物質、正極活物質、またはその両方にコーティングされてもよい。イオン伝導性ポリマーセパレータの形成は、所望の前駆体材料から、本技術分野で公知の一般的な重合法、例示的にはフリーラジカル重合法によって達成することができる。イオン伝導性ポリマー層は、任意で、所望の電極表面上で材料を重合させるなどにより、所望の電極表面上にコーティングしてもよい。前駆体材料を溶媒と組み合わせ、電極材料上にコーティングしてもよい。ポリマーの重合反応に用いる溶媒は特に限定されない。例示的には、溶媒は、炭化水素系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、ヘプタン、およびキシレン)、エステル系溶媒(酢酸エチルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、エーテル系溶媒(テトラヒドロフラン、ジオキサン、および1,2-ジエトキシエタン)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、およびシクロヘキサノン)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、およびイソブチロニトリル)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタンおよびクロロホルム)などであってもよい。一例として、1種類以上のイオン伝導性ポリマーセパレータ前駆体材料を電極表面で溶媒と組み合わせ、任意で電極自体の構造、電極が入れられる容器、または他の保持システムによって保持し、前駆体材料を電極表面で乾燥または重合させ、それによって電極表面上に所望のサイズおよび厚さで層を形成することができる。
【0059】
本開示で提供されるセパレータは、厚さを有する。厚さは、所望の電気抵抗を達成するとともに、負極を正極から物理的に分離するのに十分な厚さでありながらも、セパレータを介したプロトンの効率的な輸送を不所望に阻害するほどの厚さではないようにする必要がある。例示的に、セパレータの厚さは1ミクロンから100ミクロン以上である。任意で、セパレータの厚さは1ミクロンから50ミクロンであり、任意で10ミクロンから30ミクロンであり、任意で20ミクロンから30ミクロンである。
【0060】
負極、正極、またはその両方が、集電体基板にコーティングされた電気化学活物質を含む。コーティングは、溶媒の存在下で金属基板を電極活物質の層でコーティングすることにより実現してもよい。一般的に使用される例示的な溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。また、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を例とするバインダーを含んでいてもよい。電極材料のコーティングを基板に適用した後、加熱、周囲雰囲気への曝露、マイクロ波エネルギーまたは他のエネルギーへの曝露などの方法でコーティングを乾燥させてもよい。任意で、材料に対して、コーティングの密度を高めるカレンダー処理を施して、コーティングを加圧・加熱してもよい。コーティングと基板との接着は、通常、表面粗さ、化学結合、および/または界面反応もしくは化合物によって達成される。
【0061】
負極活物質または正極活物質が特定の構造において使用されているかどうかに応じて、それぞれの電極活物質を正極基板または負極基板などの支持基板と組み合わせてもよい。支持基板の存在により、迅速な製造のために任意で(電池設計に応じて)バイポーラ板、集電体基板およびセパレータと個別に積層できる、よりロバストな正極または負極構造を得ることができる。負極または正極に用いる例示的な基板は、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼などの鋼、アルミニウム(任意でアルミニウム合金)、ニッケルもしくはニッケル合金、銅もしくは銅合金、ポリマー、ガラス、または所望のイオンおよび電子を適切に伝導または透過し得る他の材料、または他のそのような材料である。1つ以上の基板は、シート(任意で箔)、固体基板、多孔質基板、グリッド、発泡体もしくは1種類以上の金属で被覆された発泡体、孔あきニッケルめっきステンレス鋼などの孔あき金属材料などの形態、または他の形態であってもよい。いくつかの態様では、負極基板、正極基板、またはその両方が、箔の形態である。任意で、グリッドは、エキスパンドメタルグリッドや孔あき箔グリッドを含んでいてもよい。負極基板、正極基板、またはその両方が、バイポーラ金属板または集電体基板と直接接触している必要はなく、それぞれの電極活物質内に収容されていてもよい。もっとも、いくつかの態様では、負極基板、正極基板、またはその両方が、バイポーラ金属板および/または集電体基板と電気的に接触しており、任意で電気的に直接接触している。
【0062】
本開示で提供されるプロトン伝導性充電式セルで使用される負極活物質は、任意で、1種類以上の水素貯蔵材料を含む。このような材料の例示としてはABx型の水素貯蔵材料であり、ここで、Aは水素化物形成元素であり、Bは非水素化物形成元素であり、xは1~5である。例示としては、本技術分野で知られているAB、AB2、AB3、A2B7、A5B19およびAB5型の材料が挙げられる。水素化物形成金属成分(A)としては、以下に限定されるものではないが、任意で、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、イットリウム、またはこれらの組合せ、またはミッシュメタルなどの他の金属が挙げられる。B(非水素化物形成)成分としては、任意で、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、スズ、またはそれらの組合せからなる群から選択される金属が挙げられる。いくつかの態様では、負極電気化学活物質にさらに含まれ得るABx型材料が、例えば、米国特許第5,536,591号および米国特許第6,210,498号に開示されている。任意で、非第14族元素含有水素貯蔵材料は、Young, et al., International Journal of Hydrogen Energy, 2014; 39(36):21489-21499またはYoung, et al., Int. J. Hydrogen Energy, 2012; 37:9882に記載されているような材料である。任意で、負極活物質は、米国特許出願公開第2016/0118654号に記載されているような物質である。いくつかの態様では、負極活物質は、Ni、Co、Al、Mnの水酸化物、酸化物、またはオキシ水酸化物、またはそれらの組合せを含み、任意で、米国特許第9,502,715号に記載されているような物質である。任意で、負極活物質は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Au、Cdなどの遷移金属またはそれらの組合せを含み、任意で、米国特許第9,859,531号に開示されているような物質である。いくつかの態様では、負極活物質は、1種類以上の第4族元素であるか、1種類以上の第4族元素を含み、任意で、Si、Ge、C、またはそれらの組合せであるか、Si、Ge、C、またはそれらの組合せを含む。
【0063】
負極活物質は粉体の形態で提供され得る。つまり、負極電気化学活物質は、摂氏25度(℃)で固体であり、基板を含まないということである。粉体は、負極の形成時に基板、バイポーラ金属板、または集電体基板の上または内部にコーティングされる層で粉体粒子を会合させるバインダーによって、共に保持されていてもよい。
【0064】
また、本開示で提供されるプロトン伝導性充電式セルは、正極活物質を含む正極を含む。正極活物質は、正極活物質が負極活物質と組み合わされて機能し電流を生成するように、電池のサイクルにおいて水素イオンを吸収および脱離する能力を有する。正極活物質に使用するのに適した例示的な材料としては、金属水酸化物が挙げられる。正極活物質に使用し得る金属水酸化物の例示としては、米国特許第5,348,822号、米国特許第5,637,423号、米国特許第5,366,831号、米国特許第5,451,475号、米国特許第5,455,125号、米国特許第5,466,543号、米国特許第5,498,403号、米国特許第5,489,314号、米国特許第5,506,070号、米国特許第5,571,636号、米国特許第6,177,213号、および米国特許第6,228,535号に記載されているものが挙げられる。
【0065】
いくつかの態様では、正極活物質は、Niの水酸化物を単独で、または1種類以上の追加の金属との組合せで含む。任意で、正極活物質は、Niと、1、2、3、4、5、6、7、8、9種類以上の追加の金属とを含む。任意で、正極活物質はNiを唯一の金属として含む。
【0066】
任意で、正極活物質は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、その水素化物、その酸化物、その水酸化物、そのオキシ水酸化物、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される1種類以上の金属を含む。任意で、正極活物質は、Ni、Co、Mn、Zn、Al、Zr、Mo、Mn、希土類、またはそれらの組合せのうちの1種類以上を含む。いくつかの態様では、正極活物質は、Ni、Co、Al、またはそれらの組合せを含む。
【0067】
正極活物質はNiを含んでいてもよい。Niは、任意で、正極活物質中の全金属に対する原子比率として10原子パーセント(at%)以上で存在する。任意で、Niは15at%以上で存在し、任意で20at%以上、任意で25at%以上、任意で30at%以上、任意で35at%以上、任意で40at%以上、任意で45at%以上、任意で50at%以上、任意で55at%以上、任意で60at%以上、任意で65at%以上、任意で70at%以上、任意で75at%以上、任意で80at%以上、任意で85at%以上、任意で90at%以上、任意で91at%以上、任意で92at%以上、任意で93at%以上、任意で94at%以上、任意で95at%以上、任意で96at%以上、任意で97at%以上、任意で98at%以上、任意で99at%以上で存在する。任意で、正極電気化学活物質中の唯一の金属がNiである。
【0068】
負極活物質、正極活物質、またはその両方が、任意で粉末状または粒子状である。粒子は、負極または正極を形成する際にバインダーによって共に保持されて集電体上に層を形成してもよい。負極、正極、またはその両方の形成に用いるのに適したバインダーは、任意で、そのような目的およびプロトンの伝導に適した本技術分野で公知の任意のバインダーである。
【0069】
例示的に、負極、正極、またはその両方の形成に用いるためのバインダーは、以下に限定されるものではないが、ポリマーバインダー材料を含む。任意で、バインダー材料はエラストマー材料であり、任意で、スチレン-ブタジエン(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、およびスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)である。バインダーの具体的な例示としては、以下に限定するものではないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、テフロン化アセチレンブラック(TAB-2)、スチレン-ブタジエンバインダー材料、または/およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。例示は、米国特許第10,522,827号に記載されている。バインダーに対する電気化学活物質の比は、任意で4:1から1:4である。任意で、バインダーに対する電気化学活物質の比は、1:3から1:2である。
【0070】
正極、負極、またはその両方は、さらに、活物質と混合された1種類以上の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は任意で導電性材料である。導電性材料は、最適には導電性炭素である。導電性炭素の例示としては、グラファイトが挙げられる。他の例としては、黒鉛化コークスなどの黒鉛状炭素を含む材料がある。考えられる炭素材料のさらに他の例としては、石油コークスやカーボンブラックのような、非晶質、非結晶性、無秩序であり得る非黒鉛状炭素が挙げられる。導電性材料は、任意で、負極または正極中に、重量%(wt%)として0.1wt%~20wt%の範囲またはその間の任意の値もしくは範囲で存在する。
【0071】
負極または正極は、本技術分野で知られている任意の方法によって形成することができる。例えば、負極電気化学活物質または正極電気化学活物質を適切な溶媒中でバインダーおよび任意で導電性材料と組み合わせて、スラリーを形成することができる。このスラリーをバイポーラ金属板、集電体基板または電極支持体上に塗布し、乾燥させて溶媒の一部または全部を蒸発させることにより、電気化学的に活性な層を形成することができる。
【0072】
いくつかの態様では、本開示で提供されるセパレータは、プロトンまたはヒドロキシルイオンを伝導し、負極と正極との間のセパレータとして機能するために必要な電気絶縁特性を提供するセパレータの能力により、セパレータおよび電解質の両方として機能し得るが、いくつかの態様では、プロトン伝導性充電式セルが別個の電解質、任意で液体または固体ポリマー電解質をさらに含み得ると理解される。電解質は、セパレータに含浸されてもよいし、セパレータと隣接する電極との間の片側または両側でセパレータに隣接してもよい。
【0073】
電解質は、任意のプロトン伝導性電解質であってもよい。任意で、電解質は、有機または無機酸溶液、固体ポリマー電解質、またはそれらの特定の組合せである。
【0074】
任意で、電解質は任意で固体ポリマー電解質である。固体ポリマー電解質としては、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、またはエピクロロヒドリンとエチレンオキシドのコポリマーなどの高分子材料が挙げられ、任意でカリウム、ナトリウム、カルシウム、リチウムの水酸化物、またはそれらの任意の組合せを1種類以上含む高分子材料であってもよい。
【0075】
電解質は、任意で、1種類以上の有機溶液であってもよいし、または1種類以上の有機溶液を含んでいてもよい。有機電解質材料の例示としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、または酸を添加したポリビニルアルコール(PVA)、本技術分野で知られているプロトン伝導性イオン液体が挙げられる。プロトン伝導性イオン液体の例示としては、以下に限定するものではないが、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BMIM)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMIM)、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム、トリス-(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、1,2,4-トリメチルピラゾリウムの酢酸塩、スルホン酸塩、またはホウ酸塩、またはそれらの組合せを含むものが挙げられる。具体例としては、ジエチルメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート(DEMA TfO)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM Ac)または1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMIM TFSI)が挙げられる。
【0076】
セルのスタックは、任意で、両端で集電基板によって挟まれている。集電体基板は、関連するセルから外部環境へ電子を伝達するのに適した導電性を有する任意の材料で形成することができる。集電体基板は、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼などの鋼、アルミニウム(任意でアルミニウム合金)、ニッケルもしくはニッケル合金、銅もしくは銅合金、または他のそのような材料から形成することができる。酸性電解液中での耐食性のために、集電体基板をステンレス鋼で形成してもよい。任意で、セルスタックの負極端と正極端の集電体基板の両方が、ニッケルめっきステンレス鋼で形成される。
【0077】
集電体は任意でシートの形態であり、箔、固体基板、多孔質基板、グリッド、発泡体もしくは1種類以上の金属で被覆された発泡体の形態、または本技術分野で知られる他の形態であってもよい。いくつかの態様では、集電体は箔の形態である。任意で、グリッドは、エキスパンドメタルグリッドや孔あき箔グリッドを含んでいてもよい。
【0078】
集電体または基板は、セルの放電中に生成される電子が1つまたは複数のデバイスに電力供給するために使用され得るように、集電体からセル外部の領域への電子の移動を可能にし、1つまたは複数の集電体を回路に接続するための1つ以上のタブを含んでいてもよい。タブは、任意の適切な導電性材料(例えば、Ni、Al、または他の金属)で形成することができ、集電体に溶接することができる。任意で、各電極が1つのタブを有する。
【0079】
電池の1つ以上のセルは、セルケース(例えばハウジング)に収容することができる。ハウジングは、金属製またはポリマー製の缶の形態であってもよいし、アルミニウム被覆ポリプロピレンフィルムなどのヒートシール可能なアルミニウム箔などのラミネートフィルムとすることもできる。よって、本開示で提供されるセルまたは電池は、任意の既知のセル形状であってよく、例示的には、ボタン電池、パウチ電池、円筒形電池、または他の適切な形態であり得る。いくつかの態様では、ハウジングは可撓性フィルム、任意でポリプロピレンフィルムの形態である。このようなハウジングは、パウチ電池を形成するために一般的に使用される。プロトン伝導性電池は、任意の適切な形態または形状を有していてよく、円筒形または角柱形であってもよい。
【0080】
電池は、任意でバイポーラ電池であり、本開示で提供されるプロトン伝導性セルを2個以上含み、これらのセルのうちの少なくとも2つがバイポーラ金属板によって分離され、スタックの各端に集電体基板が存在する。バイポーラ電池は、2個以上のセルを有していてもよく、任意で、3個以上のセル、任意で4、5、6、7、8、9、10個以上のセルをスタック配置で有していてもよい。
【0081】
本開示の様々な態様は、以下の非限定的な実施例によって説明される。実施例は例示を目的とするものであり、本発明を実施するにあたり限定を加えるものではない。本発明の要旨および範囲から逸脱することなく、変形および修正がなされ得ることが理解される。
【実施例】
【0082】
異なる合成条件下で、様々な組成の変性無機セラミック材料の6つの試料を形成した。これらの組成物はBaCeZrYの酸化物として形成された。以下の6つの試料およびコントロールを作製した。δは残りの要素を満たすために示されている。
試料1:Brij O10を用いず、1100℃で焼成して形成したBaCe0.6Zr0.26Y0.2O3-δ;
試料2:Brij O10を用いて、1100℃で焼成して形成したBaCe0.6Zr0.26Y0.2O3-δ;
試料3:Brij O10を用いて、950℃で焼成して形成したBaCe0.5Zr0.3Y0.2O3-δ;
試料4:Brij O10を用いて、1100℃で焼成して形成したBaCe0.5Zr0.3Y0.2O3-δ;
試料5:Brij O10を用いて、950℃で焼成して形成したBaCe0.3Zr0.5Y0.2O3-δ;
試料6:Brij O10を用いて、1100℃で焼成して形成したBaCe0.3Zr0.5Y0.2O3-δ;および
試料7:BaCO3粉末(組成コントロール)。
【0083】
試料2の非化学量論例では、δは-0.02である。試料3の化学量論例では、δは0.1である。δの値は通常の手法で容易に決定される。試料は、表1に示す試薬および量を用いてゾルゲル法によって形成した。
【表1】
【0084】
表1に示される所望の量に従って塩、クエン酸、TETAをそれぞれ水に溶解し、試料1を形成した。次に、透明な溶液1~4を混合した。溶液5を、約200回転/分(rpm)で攪拌しながら、約1.5ミリリットル(ml)/分(min)の速度で溶液6にゆっくりとポンプで注入した。溶液5と6を合わせて得られた溶液の温度が40℃まで低下してから、当該溶液を約1.5ml/minの攪拌速度で塩溶液にゆっくりとポンプで注入した。次に、溶液7(エチレングリコール)を塩含有溶液にポンプで注入した。最後に溶液8を塩溶液にポンプで注入した。混合物全体を攪拌しながら85~100℃に1時間加熱した。最初の加熱に続いて、溶液の温度が最終温度の150℃に達するまで、15分につき20℃の速度で昇温した。溶液が透明な黄色のゲルを形成すると、加熱を停止した。このゲルを100℃のオーブンに移し、20時間乾燥させた。得られた生成物を10℃/minの昇温速度で325℃まで焼成し、325℃で2時間保持した後、さらに10℃/minで1100℃まで昇温し、1100℃で10時間保持した。試料1の焼成後の粒子径は約10μmであった。
【0085】
試料2は、表1に規定された量の界面活性剤Brij O10の存在下で形成を行ったことを除き、試料1と同一のプロセスで形成した。Brij O10の存在下での粒子形態は、ドデシルスルホン酸ナトリウム(SDS)のような他の界面活性剤を用いた場合よりも高い均一性を示すことが分かった。
【0086】
試料3は、ビーカー内で硝酸塩およびクエン酸をエチレングリコールに溶解することによって形成した。試薬が完全に溶解した後、Brij O10を添加し、溶液を磁気撹拌しながら加熱プレート上で2℃/minの昇温速度で加熱し、蒸気が観察されなくなるまで180~200℃で保持した。次に、得られたスラリーを10℃/minの昇温速度で325℃まで焼成し、325℃で2時間保持した後、10℃/minの昇温速度で950℃まで加熱し、その温度で10時間再び保持した。生成物を室温まで自然冷却した後、走査型電子顕微鏡による測定で平均10ミクロンの粒径(平均径)に粉砕した。
【0087】
試料4は試料3と同様に調製した。ただし、焼結を継続し、1100℃に保持した。
【0088】
試料5は、使用したCe塩およびZr塩の所望の量を除き、試料3と同様に調製した。
【0089】
試料6は試料5と同様に調製した。ただし、焼結を継続し、1100℃に保持した。
【0090】
試料1~7の組成物に対して、加湿を行い、またはコントロールとして加湿を行わなかった。加湿は、粒子材料を、飽和水蒸気を含む70℃の空気中に16時間置くことによって行った。その後、得られた加湿材料を、含水率が20wt%となるまで乾燥させた。含水率は加湿前の重量に対する材料の重量増加で計算した。
【0091】
次に、得られた材料を、Cu-K
αを放射源とするBruker D2 PHASER X線回折装置を用いて、合成および処理ステップまたはコントロールから生じる様々な相構造についてX線回折(XRD)により分析した。
図2に非加湿コントロール試料のXRDスペクトルが示されており、少量のBaCO
3およびCeO
2相構造とともにABO
3相構造の混合物の存在が示されている。試料1のコントロールにおけるこれらの相の相対存在量は、BaCO
3が5.3wt%、CeO
2が2.1wt%、ABO
3が92.6wt%と求められた。
【0092】
図3に示されるように、加湿後、試料の相構造が変化し、ABO
3相の存在量が減少した。加湿後の試料1の相の相対存在量は、BaCO
3が78wt%、CeO
2が22wt%であり、残りがABO
3相であった。
【0093】
試料1の加湿と同様に、試料2を加湿した場合のXRDパターン(
図4)では、ABO
3相の存在量が7wt%と低く、BaCO
3相(44wt%)とCeO
2相(49wt%)の存在量が高いことが明らかになった。
【0094】
加湿した各種試料およびコントロールに対してプロトン伝導度測定を行った。各試料粉末を内径6ミリメートル(mm)のチューブに入れ、160MPaのプレスで厚さ約0.5mmにプレスしてセパレータを形成した。このセパレータの各面に焼結Ni(OH)2正極(厚さ0.5mm)とPd箔負極(厚さ12.5μm)をそれぞれ配置し、両端に鋼製の集電体を取り付けた。鋼製の集電体の腐食の可能性を避けるため、最初の10サイクル後に鋼製の集電体をステンレス鋼製の集電体に交換した。全体として、この設計のセル容量は約20:1(正極対負極)であった。得られたセルは、Pd箔の容量で計算した充放電レートとし、1回目の充電をC/5レートで20時間行い、その後カットオフ電圧0Vまで放電した。その後、セルをC/5レートで5時間充電し、C/5、C2、1Cレートで放電を測定した。得られた放電電圧と放電電流密度との差を用いて、固体セパレータのプロトン伝導度を算出した。
【0095】
図5に加湿後の試料1に関する様々な曲線を示す。正極について1回目の形成サイクルの後、充電電圧は残りの試験サイクルでほぼ同じである。クーロン効率は最初に低下し、その後ほぼ100%まで上昇した。表2に、様々なサイクルにおいてセパレータからの伝導度が支配的であったセルの伝導度を示す。
【表2】
【0096】
サイクルデータの分析によると、セルは最初の10サイクルの間、約0.2mS/cmの安定したセル伝導度を示した。集電体をステンレス鋼に交換する必要があったため、セル伝導度の測定値は0.17mS/cmに低下したが、58サイクルまではほぼ一定であった。12~58サイクルでのセル伝導度の低下は、集電体をステンレス鋼に変更したためであり、単なる測定プロトコルのアーチファクトである。セパレータの伝導度は、測定サイクルを通して一定であったと理解され、加湿されたペロブスカイト酸化物が少なくとも58サイクルまで同じ伝導度を維持できることを示している。セル伝導度はセパレータ伝導度の上限である。1/セル_伝導度=1/正極_伝導度+1/負極_伝導度+1/セパレータ_伝導度+1/集電体_伝導度である。電極と集電体の伝導度は、固体電解質中の伝導度よりもはるかに高い。したがって、セルの伝導度は固体電解質の伝導度に左右される。
【0097】
すべての試料およびコントロールの全体的なBaCO
3相の存在量と伝導度を表3に示す。
【表3】
【0098】
全体として、表3に示されたデータによると、ペロブスカイト酸化物材料の加湿により、BaCO3相の存在量、重量増加、および伝導度のすべてが、加湿処理なしの同一の材料と比較して著しく増加する。なお、加湿後のセパレータ材料のプロトン伝導度は、100倍を超えて増加する。しかし、コントロールのBaCO3材料は極めて低い伝導度を示し、BaCO3材料の存在だけでは十分なプロトン伝導性材料を生成するには不十分であり、高い伝導性を有するセパレータを製造するには、材料の相対相存在量を変化させる加湿処理が必要であることを示している。
【0099】
いずれの例においても加湿は材料のBaCO3相存在量を20wt%超に増加させ、これは顕著に向上したプロトン伝導度と直接的に相関する。特定の理論に限定されるものではないが、ペロブスカイトABO3がBaCO3とCeO2に解離することが伝導度の上昇の原因であると考えられる。微細な解離生成物の表面に結合した残留水が、材料全体でのプロトン伝導の向上に役立っている可能性がある。
【0100】
特定の態様についての上記説明は、あくまでも例示的な性質のものであり、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲、その適用、または用途を限定することを決して意図したものではなく、これらの範囲、適用、または用途は当然ながら変わり得る。本開示は、本開示に含まれる非限定的な定義および用語との関連で提供される。これらの定義および用語は、本発明の範囲または実施を限定するものとして機能するように意図されたものではなく、例示および説明のみを目的として提示されている。プロセスまたは組成物は、ある順序の個々のステップで、または特定の材料を用いるものとして記載されているが、本発明についての説明が、当業者によって容易に理解されるような、多数の方法で配置された複数の部分またはステップを含み得るように、ステップまたは材料は相互に交換可能であり得ると理解されたい。
【0101】
ある要素が他の要素の「上」にあると称される場合、その要素は他の要素の上に直接存在してもよいし、それらの間に介在要素が存在してもよいと理解されたい。対照的に、ある要素が他の要素の上に「直接」設けられると称される場合、介在要素は存在しない。
【0102】
本開示では、「第1」、「第2」、「第3」などの用語を用いて様々な要素、構成要素、領域、層、および/または部分を説明していることがあるが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/または部分は、これらの用語によって限定されるものではないと理解されたい。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、または部分を、別の要素、構成要素、領域、層、または部分から区別するために用いられているに過ぎない。つまり、本開示の教示から逸脱することなく、後述する「第1の要素」、「構成要素」、「領域」、「層」、または「部分」を、第2の(または他の)要素、構成要素、領域、層、または部分と称することもできる。
【0103】
本開示で使用される用語は、特定の実施形態の説明のみを目的としており、限定を意図したものではない。本開示で使用される場合、単数形(“a”、“an”および“the”)は、その文脈でそうでないことが明確に示されていない限り、“少なくとも1つ”を含む複数形を含むことを意図している。“または”は“および/または”を意味する。本開示で使用される場合、“および/または”という用語は、関連するリスト項目のうちの1つ以上のあらゆる組合せを含む。さらに、本明細書で使用される場合、「備える/含む」(“comprises”および/または“comprising”)や「含む」(“includes”および/または“including”)との用語は、記載された特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素、および/もしくはそれらの群の存在または追加を除外するものではないと理解されたい。「またはそれらの組合せ」との用語は、前述の要素の少なくとも1つを含む組合せを意味する。
【0104】
特に定義されない限り、本開示で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において明示的に定義されない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味で解釈されないものと理解されたい。
【0105】
本明細書で言及する特許、刊行物、および出願は、本発明が属する技術分野の当業者の水準を示すものである。これらの特許、刊行物、および出願は、個別の特許、刊行物、または出願が個別具体的に参照により本明細書に組み込まれる場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0106】
以上のことから、本発明に他の修正および変形を行い得ると理解されたい。上記の図面、検討および説明は、本発明のいくつかの具体的な実施形態を例示するものであり、本発明を実施するにあたり限定を加えるものではない。本発明の範囲は、均等な範囲全てを含む以下の特許請求の範囲により定められる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトンを可逆的に吸収可能な正極活物質を含む正極と、
プロトンを可逆的に吸収可能な負極活物質を含む負極と、
セパレータ中の主成分として無機セラミック材料を含むセパレータであって、前記無機セラミック材料がペロブスカイト酸化物相を85wt%未満含み、25℃でのプロトン伝導度が0.1mS/cm以上であるセパレータと、
を含む、プロトン伝導性充電式セル。
【請求項2】
請求項1に記載のセルにおいて、前記ペロブスカイト酸化物相が70wt%未満存
在する、セル。
【請求項3】
請求項1に記載のセルにおいて、前記無機セラミック材料が1種類以上の第2族元素を含む、セル。
【請求項4】
請求項3に記載のセルにおいて、前記1種類以上の第2族元素がBaを含む、セル。
【請求項5】
請求項1に記載のセルにおいて、前記セパレータがACO
3相を含み、Aは1種類以上の第2族元素を含む、セル。
【請求項6】
請求項5に記載のセルにおいて、前記ACO
3相が20wt%以上存
在する、セル。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のセルにおいて、前記セパレータの重量が、前駆体材料よりも5wt%以上大
きい、セル。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載のセルにおいて、前記プロトン伝導度が23mS/cm未満である、セル。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載のセルにおいて、前記無機セラミック材料が、AZr
xY
yM
zの酸化物、炭酸塩、水酸化物、またはそれらの組合せを含み、ここで、Aは1種類以上の第2族元素であり、Mは1種類以上の遷移金属または希土類金属であり、0≦x≦0.8、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.8である、セル。
【請求項10】
請求項9に記載のセルにおいて、xが0.1から0.5の範囲である、セル。
【請求項11】
請求項9に記載のセルにおいて、yが0.1から0.3の範囲である、セル。
【請求項12】
請求項9に記載のセルにおいて、MがCeであり、zが0.4から0.8の範囲である、セル。
【請求項13】
請求項9に記載のセルにおいて、MがLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Ti、Hf、B、Al、Ga、およびそれらの組合せからなる群から選択される、セル。
【請求項14】
25℃でのプロトン伝導度が0.1mS/cm以上であるプロトン伝導性材料を製造する方法であって、
1種類以上の第2族元素を含む前駆体材料を準備することと、
前記前駆体材料を焼成温度で焼成して焼成前駆体材料を形成することと、
前記焼成前駆体材料に対して、ある処理時間および処理温度で加湿処理を行い、プロトン伝導性材料を提供することと、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記処理温度が70℃から200℃の範囲である、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、前記加熱処理を行うことは、前記処理時間中に前記処理温度を上昇させることを含む、方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法において、前記処理時間が1時間から40時間の範囲で
ある、方法。
【請求項18】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、プロトン伝導性材料が、ペロブスカイト酸化物相を85wt%未満含み、25℃でのプロトン伝導度が0.1mS/cm以上である、方法。
【請求項19】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、前記ペロブスカイト酸化物相が70wt%未満存
在する、方法。
【請求項20】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、前記プロトン伝導性材料が1種類以上の第2族元素を
含む、方法。
【請求項21】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、前記プロトン伝導性材料がACO
3相を含み、ここで、Aが1種類以上の第2族元素を含む、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記ACO
3相が20wt%以上存
在する、方法。
【請求項23】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、前記プロトン伝導性材料の重量が、加湿処理中に5wt%以上増
加する、方法。
【請求項24】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、前記プロトン伝導度が23mS/cm未満である、方法。
【請求項25】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、前記無機セラミック材料が、AZr
xY
yM
zの酸化物、炭酸塩、水酸化物、またはそれらの組合せを含み、ここで、Aは1種類以上の第2族元素であり、Mは1種類以上の遷移金属または希土類金属であり、0≦x≦0.8、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.8である、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法において、xが0.1から0.5の範囲である、方法。
【請求項27】
請求項25に記載の方法において、yが0.1から0.3の範囲である、方法。
【請求項28】
請求項25に記載の方法において、MがCeであり、zが0.4から0.8の範囲である、方法。
【請求項29】
請求項25に記載の方法において、MがLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Ti、Hf、B、Al、Ga、およびそれらの組合せからなる群から選択される、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0106
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0106】
以上のことから、本発明に他の修正および変形を行い得ると理解されたい。上記の図面、検討および説明は、本発明のいくつかの具体的な実施形態を例示するものであり、本発明を実施するにあたり限定を加えるものではない。本発明の範囲は、均等な範囲全てを含む以下の特許請求の範囲により定められる。
なお、本開示は、実施の態様として以下の内容を含む。
[態様1]
プロトンを可逆的に吸収可能な正極活物質を含む正極と、
プロトンを可逆的に吸収可能な負極活物質を含む負極と、
セパレータ中の主成分として無機セラミック材料を含むセパレータであって、前記無機セラミック材料がペロブスカイト酸化物相を85wt%未満含み、25℃でのプロトン伝導度が0.1mS/cm以上であるセパレータと、
を含む、プロトン伝導性充電式セル。
[態様2]
態様1に記載のセルにおいて、前記ペロブスカイト酸化物相が70wt%未満存在し、任意で50wt%未満存在する、セル。
[態様3]
態様1に記載のセルにおいて、前記無機セラミック材料が1種類以上の第2族元素を含む、セル。
[態様4]
態様3に記載のセルにおいて、前記1種類以上の第2族元素がBaを含む、セル。
[態様5]
態様1に記載のセルにおいて、前記セパレータがACO
3
相を含み、Aは1種類以上の第2族元素を含む、セル。
[態様6]
態様5に記載のセルにおいて、前記ACO
3
相が20wt%以上存在し、任意で30wt%以上存在する、セル。
[態様7]
態様1から6のいずれか一態様に記載のセルにおいて、前記セパレータの重量が、前駆体材料よりも5wt%以上大きく、任意で10wt%以上大きく、任意で20wt%以上大きい、セル。
[態様8]
態様1から6のいずれか一態様に記載のセルにおいて、前記プロトン伝導度が23mS/cm未満である、セル。
[態様9]
態様1から6のいずれか一態様に記載のセルにおいて、前記無機セラミック材料が、AZr
x
Y
y
M
z
の酸化物、炭酸塩、水酸化物、またはそれらの組合せを含み、ここで、Aは1種類以上の第2族元素であり、Mは1種類以上の遷移金属または希土類金属であり、0≦x≦0.8、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.8である、セル。
[態様10]
態様9に記載のセルにおいて、xが0.1から0.5の範囲である、セル。
[態様11]
態様9に記載のセルにおいて、yが0.1から0.3の範囲である、セル。
[態様12]
態様9に記載のセルにおいて、MがCeであり、zが0.4から0.8の範囲である、セル。
[態様13]
態様9に記載のセルにおいて、MがLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Ti、Hf、B、Al、Ga、およびそれらの組合せからなる群から選択される、セル。
[態様14]
25℃でのプロトン伝導度が0.1mS/cm以上であるプロトン伝導性材料を製造する方法であって、
1種類以上の第2族元素を含む前駆体材料を準備することと、
前記前駆体材料を焼成温度で焼成して焼成前駆体材料を形成することと、
前記焼成前駆体材料に対して、ある処理時間および処理温度で加湿処理を行い、プロトン伝導性材料を提供することと、
を含む、方法。
[態様15]
態様14に記載の方法において、前記処理温度が70℃から200℃の範囲である、方法。
[態様16]
態様14に記載の方法において、前記加熱処理を行うことは、前記処理時間中に前記処理温度を上昇させることを含む、方法。
[態様17]
態様14に記載の方法において、前記処理時間が1時間から40時間の範囲であり、任意で10時間から20時間の範囲である、方法。
[態様18]
態様14から17のいずれか一態様に記載の方法において、プロトン伝導性材料が、ペロブスカイト酸化物相を85wt%未満含み、25℃でのプロトン伝導度が0.1mS/cm以上である、方法。
[態様19]
態様14から17のいずれか一態様に記載の方法において、前記ペロブスカイト酸化物相が70wt%未満存在し、任意で50wt%未満存在する、方法。
[態様20]
態様14から17のいずれか一態様に記載の方法において、前記プロトン伝導性材料が1種類以上の第2族元素を含み、任意で、前記1種類以上の第2族元素がBaを含む、方法。
[態様21]
態様14から17のいずれか一態様に記載の方法において、前記プロトン伝導性材料がACO
3
相を含み、ここで、Aが1種類以上の第2族元素を含む、方法。
[態様22]
態様21に記載の方法において、前記ACO
3
相が20wt%以上存在し、任意で30wt%以上存在する、方法。
[態様23]
態様14から17のいずれか一態様に記載の方法において、前記プロトン伝導性材料の重量が、加湿処理中に5wt%以上増加し、任意で10wt%以上増加し、任意で20wt%以上増加する、方法。
[態様24]
態様14から17のいずれか一態様に記載の方法において、前記プロトン伝導度が23mS/cm未満である、方法。
[態様25]
態様14から17のいずれか一態様に記載の方法において、前記無機セラミック材料が、AZr
x
Y
y
M
z
の酸化物、炭酸塩、水酸化物、またはそれらの組合せを含み、ここで、Aは1種類以上の第2族元素であり、Mは1種類以上の遷移金属または希土類金属であり、0≦x≦0.8、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.8である、方法。
[態様26]
態様25に記載の方法において、xが0.1から0.5の範囲である、方法。
[態様27]
態様25に記載の方法において、yが0.1から0.3の範囲である、方法。
[態様28]
態様25に記載の方法において、MがCeであり、zが0.4から0.8の範囲である、方法。
[態様29]
態様25に記載の方法において、MがLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Ti、Hf、B、Al、Ga、およびそれらの組合せからなる群から選択される、方法。
【国際調査報告】