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特表2024-526134抗-TM4SF4ヒト化抗体及びこの用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】抗-TM4SF4ヒト化抗体及びこの用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240709BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240709BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
G01N33/574 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578042
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 KR2022008570
(87)【国際公開番号】W WO2022265439
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0079629
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】597060645
【氏名又は名称】コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】KOREA ATOMIC ENERGY RESEARCH INSTITUTE
(71)【出願人】
【識別番号】518448323
【氏名又は名称】インダストリー アカデミー コーオペレーション ファウンデーション オブ セジョン ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,インキュ
(72)【発明者】
【氏名】リュ,チュンゼ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミンキュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,レクォン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ファンソ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ムンジュ
(72)【発明者】
【氏名】カム,ヨンジ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ビョンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ウヒ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B064DA14
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA16
4C085BB01
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、抗-TM4SF4(TransMembrane 4 Superfamily Member 4)ヒト化抗体及びこの用途に関し、本発明の抗-TM4SF4ヒト化抗体は、TM4SF4に高い親和度で特異的結合ができながらも、ヒトにおいて低い免疫原性を示すので、TM4SF4を検出するかTM4SF4を過剰発現する癌細胞、癌幹細胞を標的として有用に用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を有するFR-H1、配列番号2又は配列番号3のアミノ酸配列を有するFR-H2、配列番号4のアミノ酸配列を有するFR-H3及び配列番号5のアミノ酸配列を有するFR-H4を含む重鎖可変領域;及び
配列番号6のアミノ酸配列を有するFR-L1、配列番号7のアミノ酸配列を有するFR-L2、配列番号8のアミノ酸配列を有するFR-L3及び配列番号9のアミノ酸配列を有するFR-L4を含む軽鎖可変領域;
を含み、
TM4SF4(TransMembrane 4 Superfamily Member 4)に特異的に結合する、ヒト化抗体又はこの抗原結合断片。
【請求項2】
前記重鎖可変領域は、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号77のアミノ酸配列を有するCDR-H2及び配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR-H3よりなる群から選択される少なくとも1つのCDRをさらに含み、
前記軽鎖可変領域は、配列番号79のアミノ酸配列を有するCDR-L1、配列番号18のアミノ酸配列を有するCDR-L2及び配列番号80のアミノ酸配列を有するCDR-L3よりなる群から選択される少なくとも1つのCDRをさらに含むものである、請求項1に記載のヒト化抗体又はこの抗原結合断片。
【請求項3】
前記CDR-H2は、配列番号11、配列番号12及び配列番号13より構成される群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を有するものであるか、
前記CDR-L1は、配列番号15、配列番号16及び配列番号17より構成される群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を有するものであるか、又は
前記CDR-L3は、配列番号19のアミノ酸配列を有するものである、請求項2に記載のヒト化抗体又はこの抗原結合断片。
【請求項4】
前記重鎖可変領域は、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号11のアミノ酸配列を有するCDR-H2及び配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR-H3をさらに含み、
前記軽鎖可変領域は、配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR-L1、配列番号18のアミノ酸配列を有するCDR-L2及び配列番号19のアミノ酸配列を有するCDR-L3をさらに含むものである、請求項3に記載のヒト化抗体又はこの抗原結合断片。
【請求項5】
前記重鎖可変領域は、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23よりなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を有するものであり、
前記軽鎖可変領域は、配列番号24、配列番号25及び配列番号26よりなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を有するものである、請求項1に記載のヒト化抗体又はこの抗原結合断片。
【請求項6】
前記ヒト化抗体は、配列番号27のアミノ酸配列を有する重鎖不変領域及び配列番号28のアミノ酸配列を有する軽鎖不変領域より構成される群から選択される少なくとも1つをさらに含むものである、請求項1から5のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はこの抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗原結合断片は、Fab、F(ab’)、F(ab’)及びFvよりなる群から選択されるいずれか1つのものである、請求項1から5のいずれか1項に記載の抗体又はこの抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体又はこの抗原結合断片は、平衡解離定数(KD)が2.4×10-8M以下の
ものである、請求項1から5のいずれか1項に記載の抗体又はこの抗原結合断片。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はこの抗原結合断片を暗号化する塩基配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項9に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項11】
請求項10に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項12】
請求項10に記載の宿主細胞を培養する段階を含む、ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を生産する方法。
【請求項13】
請求項1から5のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はこの抗原結合断片を含む、TM4SF4検出用組成物。
【請求項14】
請求項13に記載のTM4SF4検出用組成物を含む、TM4SF4検出用キット。
【請求項15】
請求項1から5のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はこの抗原結合断片を、TM4SF4が含まれているものと予想される検出対象試料と接触させる段階を含む、TM4SF4を検出する方法。
【請求項16】
請求項1から5のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はこの抗原結合断片を含む、癌の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項17】
前記癌の予防又は治療は、癌治療途中の癌化学耐性、癌治療後の癌化学耐性、癌再発及び癌転移よりなる群から選択される少なくとも1つを予防するか治療するものである、請求項16に記載の癌の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項18】
前記癌は、肺癌、胃癌、卵巣癌、子宮頸部癌、乳癌、すい臓癌、大腸癌、結腸癌、食道癌、皮膚癌、甲状腺癌、腎臓癌、肝癌、頭頸部癌、膀胱癌、前立腺癌、血液癌、多発性骨髓腫、急性骨髓性白血病、悪性リンパ腫、胸腺癌、骨肉腫、繊維質腫瘍及び脳癌よりなる群から選択される少なくとも1つのものである、請求項16に記載の癌の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項19】
請求項1から5のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はこの抗原結合断片を含む、癌幹細胞成長抑制用組成物。
【請求項20】
請求項1から5のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はこの抗原結合断片を含む、放射線抗癌治療補助用組成物。
【請求項21】
前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片は、癌幹細胞を含む癌細胞の放射線に対する敏感度を増進させるものである、請求項20に記載の放射線抗癌治療補助用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TM4SF4(TransMembrane 4 Superfamily
Member 4)に高い親和度で特異的結合することができ、ヒトにおいて低い免疫原性を示すヒト化抗体及びこれを含む癌の予防又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
TM4SF4(TransMembrane 4 Superfamily Member 4)は、テトラスパニン(tetraspanin)タンパク質の一種であり、この分類の他のタンパク質であるTM4SF1及びTM4SF5は多数の腫瘍から発現が上向き調節され、上皮間葉転換及び細胞移動に関与することが報告され、癌細胞関連の研究が多数進められている。TM4SF4は、癌細胞で細胞の死滅と分化、そして細胞の浸透能力に関与すると一部で報告されており、最近、本発明の研究陣は、ヒト肺癌細胞でTM4SF4タンパク質が癌幹細胞の成長、自己複製(Self-renewal)能力及び転移/浸潤を促進させると報告し、TM4SF4が癌の発生に重要な信号伝達システムであるIGF1Rβ/AKT/NFκB又はJAK2(又はFAK)/STAT3活性化を促進させ、それにより促進されるサイトカイン分泌により癌幹細胞の特性を強化させ、腫瘍をさらに悪性化させることを提示した(Choi SI et al.,Oncotarget.2014;5(20):9823-9837、Choi SI et al.,Oncotarget.2017;8(60):101284-101297)。
【0003】
抗体は、ターゲット抗原に対する高い結合特異性と人体内安定性により治療剤として活用されている。特に、抗癌機能の抗体は、抗体工学技術の発展に基づいてヒト化抗体、単鎖抗体、二重抗体、薬物融合抗体などに改善し、癌治療効能を大きく向上させて活用されている。しかし、癌特性の多様性と新たな抗原の発現による治療抵抗性の誘導などにより、既存に癌細胞ターゲティングのために活用されている抗原の種類に限界性が指摘されており、新規の癌特異抗原を探索してこれに対する抗体を導出する研究が持続している。
【0004】
特に、既存の癌治療法に活用されている標的薬物や放射線治療に抵抗性を示して再発する癌の場合、癌幹細胞の特性が重要に作用することが報告されており、癌幹細胞ターゲティングに活用することができる抗原の発掘及び特異抗体の確保が重要なものとして浮上している。
【0005】
一方、特定抗原に対して特異的に結合する単一クローン抗体を開発するため、ヒト以外の動物を対象として抗原を注入させ、動物の免疫システムを介して作られる抗体を用いる方法が主に用いられている。ところが、前記方法を介して作られる抗体は、ヒト以外の動物から由来する抗体であるという点でヒトのタンパク質でないので、人体に投与した際に免疫原性(immunogenicity)の問題点が発生することがある。すなわち、ヒト以外の種から由来する抗体が人体に投与される場合、HAMA(Human Anti-Mouse Antibody)の発生を誘導することがあり、前記異種由来の抗体による治療効能が減少することがある。
【0006】
よって、前記ヒト以外の種から由来する抗体を構成するアミノ酸配列のうち、抗原との結合に重要な役割を担う配列を得て、残りの部分はヒト抗体の配列で代替することにより、前記で説明した問題点を解決しようとする方法が提示される。ところが、このような方法を介して製造されるキメラ抗体(chimeric antibody)やヒト化抗体(humanized antibody)は、互いに異なる2つのタンパク質領域を融合させたものであるという点で、抗体として機能することができないか、抗原に対する結
合親和度が減少する可能性が発生する。よって、人体においてHAMAの発生を誘導しないとともに、抗原に対する高い特異性と親和度を示すヒト化抗体を開発することには依然として困難を伴うことが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、癌細胞の表面に過剰発現して現れるTM4SF4(TransMembrane 4 Superfamily Member 4)タンパク質に高い親和度で特異的に結合することができながらも、人体に投与されたときに低い免疫原性を示し得る新規のヒト化抗体又はこの抗原結合断片を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を暗号化してこれを発現させることができるポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、そして前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を生産する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記宿主細胞を培養する段階を含む、抗体又はこの抗原結合断片を生産する方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、TM4SF4を検出するための用途の組成物、キット、そしてTM4SF4を検出する方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、癌を予防するか治療するための薬学的組成物、癌幹細胞の成長抑制用組成物、そして放射線抗癌治療補助用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、配列番号1のアミノ酸配列を有するFR-H1、配列番号2又は配列番号3のアミノ酸配列を有するFR-H2、配列番号4のアミノ酸配列を有するFR-H3及び配列番号5のアミノ酸配列を有するFR-H4を含む重鎖可変領域;及び、配列番号6のアミノ酸配列を有するFR-L1、配列番号7のアミノ酸配列を有するFR-L2、配列番号8のアミノ酸配列を有するFR-L3及び配列番号9のアミノ酸配列を有するFR-L4を含む軽鎖可変領域;を含み、TM4SF4(TransMembrane 4 Superfamily Member 4)に特異的に結合する、ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を提供する。
【0012】
本発明の他の側面は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を暗号化する塩基配列を含むポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、そして前記発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0013】
本発明の他の側面は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を含むTM4SF4検出用組成物、及び前記TM4SF4検出用組成物を含むTM4SF4検出用キットを提供する。
【0014】
本発明の他の側面は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を含むTM4SF4が含まれているものと予想される検出対象試料と接触させる段階を含むTM4SF4を検出する方法を提供する。
【0015】
本発明の他の側面は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を含む癌の予防又は治療用薬学的組成物、癌幹細胞成長抑制用組成物及び放射線抗癌治療補助用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のヒト化抗体は、BSAのような物質には結合しないながらもTM4SF4に特異的に結合することができるので、TM4SF4を検出するかTM4SF4を過剰発現す
る癌細胞、癌幹細胞を標的として有用に用いることができる。特に、本発明のヒト化抗体は、マウス由来の抗体と類似するか、キメラ抗体に比べて結合親和度が顕著に高いという特徴があるので優れた効果を奏する。
【0017】
また、本発明のヒト化抗体は、大部分のCDR配列を除外した残りの配列がヒト抗体由来のアミノ酸配列を用いるかその一部を変形したものなので、人体に投与した際にもHAMA(Human Anti-Mouse Antibody)を誘導する可能性が低くて免疫原性(immunogenecity)も低いという効果がある。これによって、本発明のヒト化抗体は、マウス由来の抗体を用いることにより発生し得る免疫反応の問題点を解決することができるという長所がある。
【0018】
但し、本発明の効果は、前記で言及した効果に制限されず、言及されていないまた他の効果は、下記の記載から当業者に明確に理解され得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のヒト化抗体のうちHz2B7-1.0と称される重鎖可変領域を暗号化する遺伝子配列を製造するための組換えPCR過程に対して説明している模式図である。
図2】前記Hz2B7-1.0重鎖可変領域遺伝子の製造結果を示した図であって、Aは、T1、T2、T3切片に対するアガロースゲル電気泳動の結果を示し、Bは、T、T2、T3を連結した最終完成のHz2B7-1.0重鎖可変領域遺伝子が含まれたDNAの電気泳動の結果を示す。
図3】本発明のヒト化抗体のうちHz2B7-0.1と称される軽鎖可変領域を暗号化する遺伝子が含まれたDNAのアガロースゲル電気泳動の結果を示した図である。
図4】本発明のヒト化抗体であるHz2B7-1.1抗体のアミノ酸配列と抗原であるTM4SF4のエピトープ配列に基づき、ドッキングシミュレーションを介してこれらの相互作用を分析した結果であって、エピトープと相互作用する抗体の主なアミノ酸残基と結合自由エネルギーの値を表示した。表示した抗体原子の中で、ピンク色は炭素、青色は窒素、赤色は酸素を示す。エピトープの炭素原子は緑色で表示した。
図5】本発明のヒト化抗体であるHz2B7抗体を製造する過程で元来のマウス抗体(2B7)及びこれと類似のヒト抗体(human-3QRG)重鎖(A)軽鎖(B)アミノ酸配列と、新しく製造したヒト化抗体Hz2B7重鎖4種、軽鎖3種のアミノ酸配列を互いに比較した図である。ハイフン(-)は、元来のマウス抗体アミノ酸と同一であることを意味し、ボックスで表示したのは、本発明でエピトープと結合に重要に発掘したアミノ酸の位置である。
図6】Aは、本発明のヒト化抗体のうち、Hz2B7-2.0と称される重鎖可変領域(Hz2B7 HC V46A)、Hz2B7-3.0と称される重鎖可変領域(Hz2B7 HC W55Y)、Hz2B7-4.0と称される重鎖可変領域(Hz2B7 HC W55S)遺伝子を含むDNAのアガロースゲル電気泳動の結果を示した図であり、Bは、Hz2B7-0.2と称される軽鎖可変領域(Hz2B7 LC N31V)、Hz2B7-0.3と称される軽鎖可変領域(Hz2B7 LC N31F)遺伝子を含むDNAのアガロースゲル電気泳動の結果を示した図である。
図7】比較例として用いられたキメラ抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子のアガロースゲル電気泳動の結果(A)、前記重鎖遺伝子が含まれたベクターの電気泳動の結果(B)、前記軽鎖遺伝子が含まれたベクターの電気泳動の結果(C)を示した図である。
図8】前記キメラ抗体の遺伝子を含むベクターの構造を示した図である。
図9】Aは、本発明のヒト化抗体とキメラ抗体、マウス由来の2B7抗体、そして、ヒト抗体であるIgGを対象としてSDS-PAGE及びクマシブルー染色を行った結果を示した図である。Bは、前記抗体を対象としてウェスタンブロッティングを行った結果を示した図であって、2次抗体は、ヒト抗体のIgGガンマ鎖とカッパ鎖に結合するものを用いた。
図10】本発明の10種のヒト化抗体、キメラ抗体(Chi2B7)、そして、ヒトIgG(Isotype hIgG)を用いて、間接ELISA(Indirect ELISA)を行った結果を示した図であって、Aは、TM4SF4-BSA抗原に対する全ての抗体の結合親和度を、Bは、ヒト化抗体の中でもより高い結合親和度を示すHz2B7-1.1、Hz2B7-1.2、Hz2B7-1.3の結合親和度を、Cは、BSAに対する全ての抗体の結合親和度を示すグラフである。
図11】表面プラズモン共鳴(Surface plasmon resonance、SPR)分析を用いて抗-TM4SF4ヒト化抗体5種のTM4SF4タンパク質エピトープに対する抗体親和度を比較分析したものであって、先ずビオチン結合されたTM4SF4ペプチドをセンサチップに付着し、5種のヒト化抗体を流しながら、抗体の結合率(Association rate、Ka)と解離率(Dissociation rate、Kd)及び平衡解離定数(KD、Kd/Ka)の値を算出したものを示した図である。
図12】本発明のヒト化抗体(Hz2B7-1.1、Hz2B7-1.2、Hz2B7-1.3)、キメラ抗体(Chi2B7)、そして、ヒトIgGを用いて肺癌、ヒト初代肝細胞、肝癌細胞株を対象としてフローサイトメーターを用いてFACS分析を行った結果を示す図である。Aは、肺癌細胞株であるA549細胞とCalu-3細胞株での抗体の結合能を比較したグラフであり、Bは、Hz2B7-1.1とHz2B7-1.2抗体の結合能をヒト初代肝細胞(hPH)、肝癌細胞株であるHuh-7、SNU-387、SNU-449細胞株で確認したグラフである。
図13】CHO-DG44細胞に本発明のヒト化抗体を暗号化する遺伝子を導入させて形質転換させた後、G418抵抗性を有するクローンを選別し、ELISAを介して各クローンの抗体生産量をOD値を測定して比較した図である。陽性対照群としては、1μgのヒトIgGを用いた。
図14】MTXを介して抗体遺伝子を増幅させたHz2B7-1.1-4H12クローン及びHz2B7-1.2-4A12クローンを対象としてサンドイッチELISA(sandwich ELISA)を介して抗体生産量を比較したものであって、Aは、Hz2B7-1.1-4H12クローンのうちMTXを処理していないクローンと0.08μMのMTXを処理したクローンの抗体生産量を比較して示し、Bは、Hz2B7-1.2-4A12クローンの抗体生産量を比較して示した図である。
図15】0.08μMのMTXを処理して抗体遺伝子を増幅させたHz2B7-1.1-4H12クローン及びHz2B7-1.2-4A12クローンの抗体生産量(μg/10cell/24hr)をサンドイッチELISAを介し測定して比較した図である。
図16】ヒト血清内におけるマウス及びヒト化抗体の安定性を測定し比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
1.TM4SF4に特異的に結合するヒト化抗体及びこの抗原結合断片
本発明の一側面は、TM4SF4に特異的に結合して人体で低い免疫原性を示すヒト化抗体又はこの抗原結合断片を提供する。
【0022】
本発明における用語『抗体(antibody)』は、免疫学的に抗原のエピトープ(epitope)と特異的に結合して反応性を有する免疫グロブリン分子を意味する。前記抗体は、単一クローン抗体、多クローン抗体、全体長さの鎖構造を有した抗体(全長抗体、full-length antibody)、少なくとも抗原結合機能を有する機能的な断片(抗原結合断片)及び組換え抗体をいずれも含むことができ、具体的に、本発
明の抗体は、単一クローン抗体又はこの抗原結合断片であってよい。前記単一クローン抗体は、実質的に同一の抗体集団から得た単一分子組成の抗体分子を称し、このような単一クローン抗体は、特定のエピトープに対して単一結合特異性及び親和度を示す。前記全長抗体は、2個の全長軽鎖及び2個の全長重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は重鎖とジスルフィド結合で連結されてよい。前記抗体は、重鎖(heavy chain、HC)及び軽鎖(light chain、LC)ポリペプチドを含み、前記重鎖及び軽鎖は、可変領域及び不変領域を含むことができる。
【0023】
前記不変領域は、免疫系の多様な種類の細胞(T-細胞など)、補体系の成分を含む宿主組織などに、前記抗体が結合できるように媒介する部位である。前記不変領域は、同じ種から由来する同じ種類の抗体であれば、抗原の種類と関わりなく同一の機能をし、これをなすアミノ酸配列も抗体ごとに同一であるか高い類似度を有する。前記不変領域は、重鎖不変領域(CHと略称され得る)と軽鎖不変領域(CLと略称され得る)に分類され得る。前記重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及び/又はイプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとしてガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及び/又はアルファ2(α2)を有する。軽鎖不変領域は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)タイプを有する。IgGは、亜型(subtype)として、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む。
【0024】
前記可変領域は、抗原に対して特異性を有する抗体部位であって、重鎖可変領域(VHと略称され得る)と軽鎖可変領域(VLと略称され得る)に分類され得る。前記可変領域には、3個のCDR(complementary-determining regions、又は相補性決定領域)と4個のFR(framework regions)が含まれてよい。前記CDRは、抗原の認識に関与する環状の部位であってよく、前記CDRのアミノ酸配列によって抗原に対する特異性が決定され得る。前記CDRは、その順序により、CDR1、CDR2、CDR3と称されてよく、重鎖及び軽鎖のうちどのポリペプチドのCDRであるのかにより、重鎖可変領域の場合、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3に、軽鎖可変領域の場合、CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3に称されてよい。FRも同様に、重鎖可変領域の場合、FR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4に、軽鎖可変領域の場合、FR-L1、FR-L2、FR-L3、FR-L4に称されてよい。また、前記CDR及びFRは、それぞれの可変領域で次のような順に配列されてよい。順は、N-末端(アミノ-末端)からC-末端(カルボキシ-末端)の方向:重鎖可変領域の場合、FR-H1、CDR-H1、FR-H2、CDR-H2、FR-H3、CDR-H3、FR-H4、軽鎖可変領域の場合、FR-L1、CDR-L1、FR-L2、CDR-L2、FR-L3、CDR-L3、FR-L4。
【0025】
本発明における用語『抗原結合断片』は、抗体の抗原結合機能を保有する、本発明のヒト化抗体の任意の断片を意味する。前記抗原結合断片は、『断片』、『抗体断片』などの用語と互換して称されてよく、前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなどであってよいが、これに制限されるものではない。
【0026】
前記Fabは、軽鎖及び重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域及び重鎖の1番目の不変領域(CH1ドメイン)を有する構造で、1個の抗原結合部位を有する。前記Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に1つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点で前記Fabと差がある。前記F(ab’)は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなすことで生成される。前記Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のみを有している最小の抗体片を意味する。二重鎖Fv(two-chain Fv)は、非共有結合で重鎖可変領域と軽鎖可変領域が連結されており、単鎖Fv(single-chain Fv)は、一般にペプチドリンカー
を介して重鎖可変領域と軽鎖可変領域が共有結合で連結されるか、又はC-末端で直ぐ連結されているので、二重鎖Fvのようにダイマーのような構造をなすことができる。前記抗原結合断片は、タンパク質加水分解酵素を用いるか(例えば、全体抗体をパパインで制限切断すればFabを得ることができ、ペプシンで切断すればF(ab’)断片を得ることができる)、又は遺伝子組換え技術を介して製作することができるが、これに制限されるものではない。
【0027】
本発明における用語『ヒト化抗体(humanized antibody)』は、ヒトに減少した免疫原性(immunogenicity)を示したり、非免疫原性(non-immunogenecity)である抗体を意味する。前記ヒト化抗体は、例えば、ヒト以外の個体(非ヒト種)から由来するCDR(complementarity determining regions)を、ヒト抗体由来の不変領域、ヒト抗体由来の可変領域のうちFR(framework regions)と結合して製造されるものであってよい。前記ヒト化抗体は、CDR-移植(CDR-grafting)方法を介して非ヒト種抗体のCDRがヒト抗体のFR配列間に移植されて製造されてよい。
【0028】
本発明における用語『FR(framework regions)』は、免疫グロブリン分子の可変領域のうち相補性決定領域以外の部分を称する。フレームワーク領域には、軽鎖、重鎖それぞれ4個のフレームワーク領域(フレームワーク領域1、フレームワーク領域2、フレームワーク領域3及びフレームワーク領域4)がある。
【0029】
本発明における用語『ヒト抗体』は、軽鎖、重鎖のいずれもヒト由来の抗体を称する。ヒト抗体は、重鎖の不変領域の差によって、γ鎖の重鎖を有するIgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む)、μ鎖の重鎖を有するIgM、α鎖の重鎖を有するIgA(IgA1、IgA2を含む)、δ鎖の重鎖を有するIgD、又はε鎖の重鎖を有するIgEを含む。また、原則的に軽鎖は、κ鎖及びλ鎖のうち1つ以上を含む。
【0030】
本発明における用語『キメラ抗体(chimeric antibody)』は、抗体の可変領域がヒト以外の個体(非ヒト種)から由来し、不変領域が前記個体と異なる種、例えば、ヒトから由来する抗体を意味する。
【0031】
前記ヒト化抗体及びキメラ抗体についてより詳細に説明する。マウス由来の抗体とヒト抗体を対象として比較するとき、マウス抗体-キメラ抗体-ヒト化抗体-ヒト抗体の順にヒト抗体と配列上の類似性を有するようになる。よって、ヒト化抗体は、マウス抗体やキメラ抗体と比較するとき、ヒト抗体との類似性がさらに高いため、人体に投与されたときに免疫原性が低いという特徴がある。
【0032】
本発明における用語『エピトープ(epitope)』は、免疫グロブリン、抗体又はこの抗原結合断片が特異的に認識して結合することができる抗原上の特定部位を意味する。前記エピトープは、連続アミノ酸から、又はタンパク質の3次折り畳みにより併置された不連続アミノ酸から形成されてよい。
【0033】
本発明のヒト化抗体又はこの抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を有するFR-H1、配列番号2又は配列番号3のアミノ酸配列を有するFR-H2、配列番号4のアミノ酸配列を有するFR-H3、配列番号5のアミノ酸配列を有するFR-H4を含む重鎖可変領域を含み、配列番号6のアミノ酸配列を有するFR-L1、配列番号7のアミノ酸配列を有するFR-L2、配列番号8のアミノ酸配列を有するFR-L3、配列番号9のアミノ酸配列を有するFR-L4を含む軽鎖可変領域を含み、TM4SF4(TransMembrane 4 Superfamily Member 4)に特異的に結合する。
【0034】
前記配列番号1のアミノ酸配列を有するFR-H1は、本発明において「Hz2B7-1.0」、「Hz2B7-2.0」、「Hz2B7-3.0」、「Hz2B7-4.0」と称される重鎖可変領域のFR1配列であってよい。前記配列番号2のアミノ酸配列を有するFR-H2は、本発明において「Hz2B7-1.0」、「Hz2B7-3.0」、「Hz2B7-4.0」と称される重鎖可変領域のFR2配列であってよく、前記配列番号3のアミノ酸配列を有するFR-H2は、本発明において「Hz2B7-2.0」と称される重鎖可変領域のFR2配列であってよい。前記配列番号4のアミノ酸配列を有するFR-H3は、本発明において「Hz2B7-1.0」、「Hz2B7-2.0」、「Hz2B7-3.0」、「Hz2B7-4.0」と称される重鎖可変領域のFR3配列であってよい。前記配列番号5のアミノ酸配列を有するFR-H4は、本発明において「Hz2B7-1.0」、「Hz2B7-2.0」、「Hz2B7-3.0」、「Hz2B7-4.0」と称される重鎖可変領域のFR4配列であってよい。
【0035】
前記配列番号6のアミノ酸配列を有するFR-L1は、本発明において「Hz2B7-0.1」、「Hz2B7-0.2」、「Hz2B7-0.3」と称される軽鎖可変領域のFR1配列であってよい。前記配列番号7のアミノ酸配列を有するFR-L2は、本発明において「Hz2B7-0.1」、「Hz2B7-0.2」、「Hz2B7-0.3」と称される軽鎖可変領域のFR2配列であってよい。前記配列番号8のアミノ酸配列を有するFR-L3は、本発明において「Hz2B7-0.1」、「Hz2B7-0.2」、「Hz2B7-0.3」と称される軽鎖可変領域のFR3配列であってよい。前記配列番号9のアミノ酸配列を有するFR-L4は、本発明において「Hz2B7-0.1」、「Hz2B7-0.2」、「Hz2B7-0.3」と称される軽鎖可変領域のFR4配列であってよい。
【0036】
前記TM4SF4は、テトラスパニン(tetraspanin)タンパク質の一種であって、癌細胞において細胞の死滅と分化、そして細胞の浸透能力に関与するものと知られているタンパク質である。また、前記TM4SF4は、癌幹細胞の生長、転移などを促進するものと知られており、癌幹細胞の特性を強化させて腫瘍をさらに悪性化させることがある。前記TM4SF4タンパク質は、細胞の膜に存在する膜タンパク質であってよく、TM4SF4の一部が細胞外部に露出されていてよい。前記露出部位は、2個のループ構造を含むことができ、前記TM4SF4の細胞外露出部位のうち一部のアミノ酸配列が、本発明のヒト化抗体又はこの抗原結合断片が特異的に認識して結合することができるエピトープとなり得る。前記TM4SF4のエピトープは、例えば、「TWGYPFHDGDYLNDE」(N-末端からC-末端の方向の順)のアミノ酸配列を含むものであってよい。
【0037】
前記重鎖可変領域は、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR-H1、配列番号77のアミノ酸配列を有するCDR-H2及び配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR-H3よりなる群から選択される少なくとも1つのCDRをさらに含むものであってよい。特に、前記CDR-H2は、配列番号78のアミノ酸配列を有するものであってよく、具体的に、配列番号11、配列番号12及び配列番号13よりなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を有するものであってよい。
【0038】
前記軽鎖可変領域は、配列番号79のアミノ酸配列を有するCDR-L1、配列番号18のアミノ酸配列を有するCDR-L2及び配列番号80のアミノ酸配列を有するCDR-L3よりなる群から選択される少なくとも1つのCDRをさらに含むものであってよい。特に、前記CDR-L1は、配列番号15、配列番号16及び配列番号17よりなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を有するものであってよく、前記CDR-L3は、配列番号19のアミノ酸配列を有するものであってよい。
【0039】
前記配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR-H1は、本発明において「Hz2B7-1.0」、「Hz2B7-2.0」、「Hz2B7-3.0」、「Hz2B7-4.0」と称される重鎖可変領域のCDR1配列であってよい。前記配列番号11のアミノ酸配列を有するCDR-H2は、本発明において「Hz2B7-1.0」、「Hz2B7-2.0」と称される重鎖可変領域のCDR2配列であってよく、前記配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR-H2は、本発明において「Hz2B7-3.0」と称される重鎖可変領域のCDR2配列であってよく、前記配列番号13のアミノ酸配列を有するCDR-H2は、本発明において「Hz2B7-4.0」と称される重鎖可変領域のCDR2配列であってよい。前記配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR-H3は、本発明において「Hz2B7-1.0」、「Hz2B7-2.0」、「Hz2B7-3.0」、「Hz2B7-4.0」と称される重鎖可変領域のCDR3配列であってよい。
【0040】
前記配列番号15のアミノ酸配列を有するCDR-L1は、本発明において「Hz2B7-0.1」と称される軽鎖可変領域のCDR1配列であってよく、前記配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR-L1は、本発明において「Hz2B7-0.2」と称される軽鎖可変領域のCDR1配列であってよく、前記配列番号17のアミノ酸配列を有するCDR-L1は、本発明において「Hz2B7-0.3」と称される軽鎖可変領域のCDR1配列であってよい。前記配列番号18のアミノ酸配列を有するCDR-L2は、本発明において「Hz2B7-1.0」、「Hz2B7-2.0」、「Hz2B7-0.3」と称される軽鎖可変領域のCDR2配列であってよい。前記配列番号19のアミノ酸配列を有するCDR-L3は、本発明において「Hz2B7-1.0」、「Hz2B7-2.0」、「Hz2B7-0.3」と称される軽鎖可変領域のCDR3配列であってよい。
【0041】
前記重鎖可変領域は、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23よりなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を有するものであってよい。
【0042】
前記軽鎖可変領域は、配列番号24、配列番号25及び配列番号26よりなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を有するものであってよい。
【0043】
前記配列番号20のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域は、本発明において「Hz2B7-1.0」と称される重鎖可変領域の配列であってよく、前記配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域は、本発明において「Hz2B7-2.0」と称される重鎖可変領域の配列であってよく、前記配列番号22のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域は、本発明において「Hz2B7-3.0」と称される重鎖可変領域の配列であってよく、前記配列番号23のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域は、本発明において「Hz2B7-4.0」と称される重鎖可変領域の配列であってよい。
【0044】
前記配列番号24のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域は、本発明において「Hz2B7-0.1」と称される軽鎖可変領域の配列であってよく、前記配列番号25のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域は、本発明において「Hz2B7-0.2」と称される軽鎖可変領域の配列であってよく、前記配列番号26のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域は、本発明において「Hz2B7-0.3」と称される軽鎖可変領域の配列であってよい。
【0045】
本発明のヒト化抗体又はこの抗原結合断片は、ヒトから由来する抗体の重鎖不変領域及び/又は軽鎖不変領域を含むことができ、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片がTM4SF4に対して特異的に結合する特性を阻害しないものであれば、前記ヒトから由来する抗体の重鎖不変領域及び/又は軽鎖不変領域は制限なく用いられてよい。例えば、前記重鎖不変領域は、配列番号27のアミノ酸配列を有する重鎖不変領域であってよく、前記軽鎖不変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を有する軽鎖不変領域であってよい。
【0046】
前記で説明したアミノ酸配列は、これを含むポリペプチドの構造、機能、活性などに影響を及ぼさない範囲内で、アミノ酸残基の欠失、挿入、置換又はこれらの組み合わせにより異なる配列を有する変異体を含むことができる。また、前記アミノ酸配列は、当業界に知られている通常の変形が起こったアミノ酸を含むものであってよく、前記アミノ酸の変形は、例えば、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)などであってよい。本発明のヒト化抗体又はこの抗原結合断片は、前記で説明したアミノ酸配列を含むものだけでなく、これと実質的に同一のアミノ酸配列を有するものであるか、その変異体を含む。前記実質的に同一のアミノ酸配列を有することの意味は、前記で説明したアミノ酸配列と90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は99.5%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むものであってよいが、これに制限されるものではない。
【0047】
本発明のヒト化抗体又はこの抗原結合断片は、平衡解離定数(KD)が3.0×10-8M以下であってよく、例えば、2.9×10-8M以下、2.8×10-8M以下、2.7×10-8M以下、2.6×10-8M以下又は2.5×10-8M以下であってよく、具体的に、2.4×10-8M以下であってよい。
【0048】
本発明の具体的な実施例によると、本発明のヒト化抗体を用いた間接ELISAを介してTM4SF4に対する結合能を測定して比較した結果、本発明のヒト化抗体は、キメラ抗体(マウス由来のECL-2B7抗体の可変領域とヒト抗体の不変領域を組み合わせた抗体)と比較するとき、顕著に高い結合力を示すことを確認することができた(図10のA、B)。特に、軽鎖可変領域と重鎖可変領域の多様な組み合わせのヒト化抗体の中でも、Hz2B7-1.2と称されるヒト化抗体の結合能が最も優れたものと示された(図10図11)。また、本発明のヒト化抗体は、BSAを対象として行った前記間接ELISA実験では結合力が表れていないので、TM4SF4に対してのみ特異的に結合する抗体であるとのことも確認することができた(図10)。
【0049】
本発明の他の具体的な実施例によると、本発明のヒト化抗体を用いたFACS実験の結果、本発明のヒト化抗体は、TM4SF4を細胞表面に過剰発現する肺癌細胞株であるCalu-3及びA549細胞に対して優れた結合能があることを確認することができた(図12)。前記キメラ抗体を用いたFACS実験の結果と比較するときにも、本発明のヒト化抗体を用いる場合、肺癌細胞との結合力がより高く測定され、前記間接ELISA実験と同様にHz2B7-1.2と称されるヒト化抗体の効果が最も優れていることを確認することができた(図10から図12)。
【0050】
2.TM4SF4特異的ヒト化抗体を発現するための技術
本発明のまた他の側面は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を発現して製造するために用いられ得る、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞及び生産方法を提供する。
【0051】
前記ヒト化抗体、この抗原結合断片、TM4SF4などに関する説明は、「1.TM4SF4に特異的に結合するヒト化抗体及びこの抗原結合断片」でこれらについて説明したものと同一なので、繰り返し説明を避けるために記載を省略し、以下では、ポリヌクレオチド、発現ベクター及び宿主細胞に係わる内容に対してのみ説明する。
【0052】
本発明における用語『ポリヌクレオチド』は、DNA及びRNA分子を包括的に含むものであって、前記ポリヌクレオチドの基本構成単位であるヌクレオチドは、自然界に存在
するヌクレオチドだけでなく、糖又は塩基部位が変形された類似体(analogue)も含まれてよい。
【0053】
本発明のポリヌクレオチドは、ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を暗号化する塩基配列を含む。
【0054】
前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を暗号化するとのことは、前記ポリヌクレオチドが転写、翻訳などの通常のタンパク質発現の過程を経て、本発明のヒト化抗体又はこの抗原結合断片のアミノ酸配列を有するタンパク質が合成できる遺伝情報が暗号化されているということを意味する。このとき、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片と完全に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質だけでなく、前記で説明したように、前記タンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質や、前記タンパク質と同一及び/又は類似の活性を有するタンパク質を暗号化するポリヌクレオチドまで本発明の範囲に含まれてよい。
【0055】
前記ポリヌクレオチドは、これを導入させて発現させようとする生物の種類と前記生物の転写、翻訳などの発現システムによって、最適化された塩基配列を含むことができる。
【0056】
具体的に、前記ポリヌクレオチドは、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55及び配列番号56よりなる群から選択される少なくとも1つの塩基配列を含むものであってよい。
【0057】
前記配列番号29の塩基配列は、前記配列番号1のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号30の塩基配列は、前記配列番号2のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号31の塩基配列は、前記配列番号3のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号32の塩基配列は、前記配列番号4のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号33の塩基配列は、前記配列番号5のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号34の塩基配列は、前記配列番号6のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号35の塩基配列は、前記配列番号7のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号36の塩基配列は、前記配列番号8のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号37の塩基配列は、前記配列番号9のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号38の塩基配列は、前記配列番号10のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号39の塩基配列は、前記配列番号11のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号40の塩基配列は、前記配列番号12のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号41の塩基配列は、前記配列番号13のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号42の塩基配列は、前記配列番号14のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号43の塩基配列は、前記配列番号15のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号44の塩基配列は、前記配列番号16のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号45の塩基配列は、前記配列番号17のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号46の塩基配列は、前記配列番号18のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号47の塩基配列は、前記配列番号19のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号48の塩基配列は、前記配列番号20のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号49の塩基配列は、前記配列番号21のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号50の塩基配列は、前記配列番号22
のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号51の塩基配列は、前記配列番号23のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号52の塩基配列は、前記配列番号24のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号53の塩基配列は、前記配列番号25のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号54の塩基配列は、前記配列番号26のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号55の塩基配列は、前記配列番号27のアミノ酸配列を暗号化するものであってよく、前記配列番号56の塩基配列は、前記配列番号28のアミノ酸配列を暗号化するものであってよい。
【0058】
本発明のポリヌクレオチドは、前記羅列された塩基配列と実質的に同一の塩基配列を含むことができる。前記実質的に同一の塩基配列とは、例えば、転写及び翻訳されたときに同一のアミノ酸が合成できる場合を含み、前記羅列された塩基配列と90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は99.5%以上の相同性を有する塩基配列であってよいが、これに制限されるものではない。
【0059】
本発明の発現ベクターは、前記ポリヌクレオチドを含む。
【0060】
本発明における用語『発現ベクター』は、宿主細胞で特定の遺伝子を発現させるための手段を意味し、具体的に、プラスミドベクター;コスミドベクター;そしてバクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターなどを含むが、これに制限されない。
【0061】
前記発現ベクターは、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を暗号化する塩基配列の他にも、プロモーター、ターミネーターなどの調節配列をさらに含むことができ、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を暗号化する塩基配列がプロモーターに作動可能に連結されている(operatively linked)ものであってよい。前記作動可能に連結されていることは、調節配列(例えば、プロモーター、シグナル配列、転写調節因子結合位置のアレイなど)と他の塩基配列の間の機能的な結合を意味し、これにより前記調節配列は、前記他の塩基配列の転写及び/又は翻訳を調節することができる。
【0062】
本発明の発現ベクターシステムは、当業界に公知の多様な方法を介して構築されてよい。
【0063】
前記発現ベクターは、原核細胞又は真核細胞を宿主として構築されてよい。
【0064】
例えば、前記発現ベクターが原核細胞を宿主とする場合は、転写を進めさせることができる強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーター及びT7プロモーターなど)、翻訳開始のためのリボソーム結合サイト及び転写/翻訳終結配列を含むことが一般的である。宿主細胞としてE.coli(例えば、HB101、BL21、DH5αなど)が用いられる場合、E coliトリプトファン生合成経路のプロモーター及びオペレーター部位(Yanofsky,C,J
Bacteriol、(1984)158:1018-1024)、そしてファージλの左向プロモーター(pLλプロモーター、Herskowitz,I and Hage
n,D,Ann Rev Genet,(1980)14:399-445)が調節部位として用いられてよい。宿主細胞としてバチルス菌が用いられる場合、バチルスチューリンゲンシスの毒素タンパク質遺伝子のプロモーター(Appl Environ Microbiol(1998)64:3932-3938;Mol Gen Genet(1
996)250:734-741)又はバチルス菌で発現可能な如何なるプロモーターであっても調節部位に用いられてよい。前記発現ベクターは、当業界でたびたび用いられるプラスミド(例えば、pCL、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、pME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pGEXシリーズ、pETシリーズ及びpUC19など)、ファージ(例えば、λgt4・λB、λ-Charon、λΔz1及びM13など)又はウイルス(例えば、SV40など)を操作して製作されてよい。
【0065】
前記発現ベクターが真核細胞を宿主とする場合は、哺乳動物細胞のゲノムから由来されたプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター、β-アクチンプロモーター、ヒトヘモグロビンプロモーター及びヒト筋肉クレアチンプロモーター)、又は哺乳動物ウイルスから由来されたプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス75Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタインバールウイルス(EBV)のプロモーター及びラウス肉腫ウイルス(RSV)のプロモーター)が用いられてよく、転写終結配列としてポリアデニル化配列を一般的に有することができる。前記発現ベクターは、CMVプロモーターを有するものであってよい。
【0066】
また、前記発現ベクターは、これから発現される抗体の精製を容易にするために他の配列と融合されてよい。融合される配列には、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(Pharmacia、USA)、マルトース結合タンパク質(NEB、USA)、FLAG(IBI、USA)及び6x His(hexahistidine;Quiagen、USA)などがある。また、本発明の発現ベクターにより発現されるタンパク質がヒト化抗体又はこの抗原結合断片なので、この特性を考慮するとき、精製のための更なる配列がなくとも、発現されたタンパク質をタンパク質Aカラムなどを介して容易に精製することもできる。
【0067】
前記発現ベクターは、選択標識として当業界で通常用いられる抗生剤耐性遺伝子を含み、例えば、アンピシリン、ゲンタマイシン、カベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲネチシン、ネオマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子を含むことができる。
【0068】
前記発現ベクターは、軽鎖と重鎖が1つのベクターで同時に発現されるベクターシステムであるか、軽鎖と重鎖をそれぞれ別途のベクターで発現させるシステムであってよい。後者の場合、2つのベクターは、例えば、同時形質転換(co-transfomati
on)又は標的形質転換(targetedTransformation)を介して宿主細胞に導入され得る。同時形質転換は、軽鎖及び重鎖をコーディングするそれぞれのベクターDNAを同時に宿主細胞に導入した後、軽鎖と重鎖を全て発現する細胞を選別する方法である。標的形質転換は、軽鎖(又は重鎖)を含むベクターに形質転換された細胞を選別し、選別された細胞を重鎖(又は軽鎖)を含むベクターに再び形質転換して軽鎖及び重鎖の全部を発現する細胞を最終的に選別する方法である。
【0069】
本発明の宿主細胞は、前記発現ベクターを含む。
【0070】
前記宿主細胞は、本発明の前記発現ベクターを安定的かつ連続的にクローニング及び発現させることができる宿主細胞であれば、当業界に公知の如何なる宿主細胞も用いることができ、例えば、エシェリキアコリ(Escherichia coli)、バチルスサブティリス(Bacillus subtilis)及びバチルスチューリンゲンシス(
Bacillus thuringiensis)のようなバチルス属菌株、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)、例えば、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、又はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、例えば、スタフィロコッカスカルノーサス(Staphylococcus carnosus)のような原核宿主細胞であってよいが、これに制限されるものではない。
【0071】
前記宿主細胞が真核宿主細胞である場合、アスペルギルス属(Aspergillus
species)のような真菌、ピキアパストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミケス(Schizosaccharomyces)及びニューロスポラクラッサ(Neurospora crassa)のような酵母、その他の下等真核細胞、昆虫-由来細胞のような高等真核生物の細胞、そして植物又は哺乳動物から由来した細胞を用いることができる。前記宿主細胞は、COS7細胞(monkey kidney cells)、NSO細胞、SP2/0、チャイニーズハムスター卵巣(CHO:Chinese hamster ovary)細胞、W138、ベビーハムスターの腎臓(BHK:baby hamster kidney)細胞、MDCK、骨髄腫細胞株、HuT 78細胞又は293細胞であってよいが、これに制限されない。
【0072】
前記宿主細胞への形質転換及び/又は形質感染は、核酸を有機体、細胞、組織又は器官に導入する如何なる方法で用いられてもよく、当分野で公知の通り、宿主細胞に従って好適な標準技術を選択して行うことができる。具体的に、電気衝撃遺伝子伝達法(electroporation)、原形質融合、リン酸カルシウム(CaPO)沈澱、塩化カルシウム(CaCl)沈澱、シリコンカーバイド繊維を用いた撹拌、アグロバクテリア媒介形質転換、PEG、硫酸デキストラン、リポフェクタミン及び乾燥/抑制媒介形質転換方法などが含まれるが、これに制限されない。
【0073】
本発明のヒト化抗体又はこの抗原結合断片を生産する方法は、前記宿主細胞を培養する段階を含む。
【0074】
前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を生産する方法は、前記宿主細胞で前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を発現させる段階をさらに含むことができる。
【0075】
前記宿主細胞の培養は、当業界に知られている適当な培地と培養条件によりなされ得る。このような培養の過程は、当業者であれば、選択される菌株に従って容易に調整して用いることができる。細胞培養は、細胞の成長方式により懸濁培養と付着培養、培養方法により回分式、流加式及び連続培養式の方法に区分される。培養に用いられる培地は、特定の菌株の要求条件を適切に満たさなければならない。
【0076】
動物細胞培養において、前記培地は、多様な炭素源、窒素源及び微量元素成分を含む。使用可能な炭素源の例には、ブドウ糖、蔗糖、乳糖、果糖、マルトース、澱粉及びセルロースのような炭水化物、大豆油、ひまわり油、ひまし油、ココナッツ油のような脂肪、パルミチン酸、ステアリン酸及びリノール酸のような脂肪酸、グリセロール及びエタノールのようなアルコール、そして酢酸のような有機酸があり、これらの炭素源は単独で又は組み合わせて用いられてよい。
【0077】
前記窒素源は、例えば、ペプトン、酵母抽出物、肉汁、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液(CSL)及び大豆粕のような有機窒素源、並びにヨウ素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムのような無機
窒素源を含んでよく、これらの窒素源は単独で又は組み合わせて用いられてよい。
【0078】
前記培地には、リン源として、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム及び対応されるナトリウム含有塩が含まれてよい。また、硫酸マグネシウム又は硫酸鉄のような金属塩を含むことができる。その他、アミノ酸、ビタミン、及び適切な前駆体などが含まれてよい。
【0079】
前記培養する段階で、培養中に、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アムモニア、リン酸及び硫酸のような化合物を培養物に適切な方式で添加することで培養物のpHを調整することができる。また、培養中には、脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡の生成を抑制することができる。また、培養物の好気状態を維持するために、培養物内に酸素又は酸素-含有気体(例えば、空気)を注入する。培養物の温度は、普通20℃から45℃、又は25℃から40℃であってよい。
【0080】
前記生産方法は、前記宿主細胞で発現されたヒト化抗体又はこの抗原結合断片を回収する段階をさらに含むことができる。前記形質転換された宿主細胞を培養して得た前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片は、精製していない状態で用いられてよく、又は追加で多様な通常の方法、例えば、透析、塩沈澱及びクロマトグラフィーなどを用いて高純度に精製して用いられてよい。クロマトグラフィーを用いる場合、カラムの種類と順序は、抗体の特性、培養方法などにより、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィーなどから選択することができる。
【0081】
3.本発明のヒト化抗体のTM4SF4検出の用途
本発明のまた他の側面は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片のTM4SF4検出の用途を提供する。具体的に、本発明では、TM4SF4検出用組成物、TM4SF4検出用キット及びTM4SF4を検出する方法を提供する。
【0082】
前記ヒト化抗体、この抗原結合断片、TM4SF4などに関する説明は、「1.TM4SF4に特異的に結合するヒト化抗体及びこの抗原結合断片」でこれらについて説明したものと同一なので、繰り返し説明を避けるために記載を省略する。
【0083】
本発明のTM4SF4検出用組成物は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を含み、本発明のTM4SF4検出用キットは、前記TM4SF4検出用組成物を含む。
【0084】
また、本発明のTM4SF4を検出する方法は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を、TM4SF4が含まれているものと予想される検出対象試料と接触させる段階を含む。
【0085】
前記TM4SF4検出用組成物、これを含むキットは、TM4SF4に特異的に結合する本発明のヒト化抗体又はこの抗原結合断片を検出対象試料に接触させて抗原-抗体複合体を形成することにより、効果的にTM4SF4を検出することができる。
【0086】
前記抗原-抗体複合体は、試料中のTM4SF4を発現する腫瘍又は癌細胞を確認するための、TM4SF4とこれを認知する抗体の結合物を意味する。
TM4SF4検出用組成物、これを含むキット又は前記ヒト化抗体、この抗原結合断片を用いたTM4SF4抗原の定量方法は、抗原-抗体複合体の形成を確認して行われてよく、前記抗原-抗体複合体の形成の確認は、酵素免疫分析法(ELISA)、ウエスタンブロッティング(Western Blotting)、免疫蛍光(Immunofluorescence)、免疫組織化学染色(Immunohistochemistry staining)、フローサイトメトリー(Flow cytometry)、免疫疫
細胞化学法(Immunocytochemistry)、放射免疫分析法(RIA)、免疫沈澱分析法(Immunoprecipitation Assay)、免疫拡散分析法(Immunodiffusion assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、タンパク質チップ(Protein Chip)などによりなされてよいが、これに制限されるものではない。前記酵素免疫分析法(ELISA)には、固体支持体に付着された抗原を認知する標識された抗体を用いる直接的ELISA、固体支持体に付着された抗原を認知する抗体の複合体で捕獲抗体を認知する標識された2次抗体を用いる間接的ELISA、固体支持体に付着された抗体と抗原の複合体で抗原を認知する標識されたまた他の抗体を用いる直接的サンドイッチELISA、固体支持体に付着された抗体と抗原の複合体で抗原を認知するまた他の抗体と反応させた後、この抗体を認知する標識された2次抗体を用いる間接的サンドイッチELISAなどの多様なELISA方法を含む。
【0087】
抗原-抗体複合体の形成を定性又は定量的に測定可能とする標識には、酵素、蛍光物、リガンド、発光物、ミクロ粒子(microparticle)、レドックス分子及び放射線同位元素などがあるが、これに制限されるものではない。前記酵素には、β-グルクロニダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヘキソキナーゼとGDPase、RNase、グルコースオキシダーゼとルシフェラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ、ホスホエノールピルビン酸デカルボキシラーゼ、β-ラクタマーゼなどがあるが、これに制限されない。
【0088】
4.本発明のヒト化抗体の癌の予防又は治療用途、癌幹細胞の成長抑制用途及び放射線抗癌治療補助の用途
本発明のまた他の側面は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を含む癌の予防又は治療用薬学的組成物、癌幹細胞の成長抑制用組成物及び放射線抗癌治療補助用組成物を提供する。
【0089】
前記ヒト化抗体、この抗原結合断片、TM4SF4などに関する説明は、「1.TM4SF4に特異的に結合するヒト化抗体及びこの抗原結合断片」でこれらについて説明したものと同一なので、繰り返し説明を避けるために記載を省略する。
【0090】
但し、本発明の前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片は、2B7抗体のCDR配列と同一であるか、その一部配列を変形させたCDR配列を含むことができるが、前記2B7抗体の特徴及び効果は、韓国特許出願第2020-0168467号を参考とすればよい。
【0091】
本発明の癌の予防又は治療用薬学的組成物は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を含む。
【0092】
前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片は、TM4SF4に高い親和度で結合することができ、前記TM4SF4は、癌細胞の表面に過剰発現されて存在するものと知られているので、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片は癌細胞を標的に用いられてよい。
【0093】
前記組成物は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片が単独で用いられるか、又は通常の薬学的に許容される担体とともに、癌のような過増殖性疾患の治療、予防及び診断に用いられてよい。
【0094】
前記癌は、具体的に、肺癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、三重陰性乳癌、膠母細胞腫、すい臓癌、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮内膜癌、唾液腺癌又は
甲状腺癌であり、より具体的には、肺癌、乳癌、肝癌、腎臓癌、胃癌、すい臓癌、脳癌であってよいが、これに制限されない。本発明における癌は、特にTM4SF4の過剰発現、増幅、突然変異又は活性化による癌であってよいが、これに制限されない。すなわち、本発明のヒト化抗体又はこの結合断片を含む組成物は、TM4SF4の異常発現又は突然変異と関わりなく全ての癌腫に対して増殖抑制効果を有するので、本発明の医薬用途がTM4SF4の発現様態又は突然変異の有無により制限されない。
【0095】
前記組成物は、薬学的組成物、医薬外品組成物、健康食品用組成物の形態であってよい。
【0096】
本発明の癌の予防又は治療用組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。前記「薬学的に許容可能な」の意味は、有効成分の活性を抑制せずとも、適用(処方)対象が適応可能である以上の毒性を有しないということであり、前記「担体」は、細胞又は組織内への化合物の付加を容易にする化合物として定義される。
【0097】
本発明の前記薬学的組成物は、単独で又はある便利な担体などと共に混合して投与されてよく、そのような投与の剤形は、単回投与又は反復投与の剤形であってよい。前記薬学組成物は、固形製剤又は液状製剤であってよい。固形製剤には、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、坐剤などがあるが、これに限定されるものではない。固形製剤には、担体、着香剤、結合剤、防腐剤、崩壊剤、滑剤、充填剤などが含まれてよいが、これに制限されるものではない。液状製剤としては、水、プロピレングリコール溶液のような溶液剤、懸濁液剤、乳剤などがあるが、これに限定されるものではなく、適当な着色剤、着香剤、安定化剤、粘性化剤などを添加して製造することができる。例えば、散剤は、本発明の有効成分である多重不飽和脂肪酸のトリ-ヒドロキシ誘導体と、乳糖、澱粉、微晶質セルロースなどの薬剤学的に許容可能な適当な担体とを単に混合することにより製造され得る。顆粒剤は、本発明の前記多重不飽和脂肪酸のトリ-ヒドロキシ誘導体、薬学的に許容可能な適当な担体、及びポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの薬学的に許容可能な適当な結合剤を混合した後、水、エタノール、イソプロパノールなどの溶媒を用いた湿式顆粒法、又は圧縮力を用いた乾式顆粒法を用いて製造され得る。また、錠剤は、前記顆粒剤をマグネシウムステアレートなどの薬学的に許容可能な適当な滑剤と混合した後、打錠機を用いて打錠することにより製造され得る。
【0098】
前記薬学的組成物は、治療すべき疾患及び個体の状態により、経口剤、注射剤(例えば、筋肉注射、腹腔注射、静脈注射、注入(infusion)、皮下注射、インプラント)、吸入剤、鼻腔投与剤、膣剤、直腸投与剤、舌下剤、経皮剤、外用剤などで投与されてよいが、これに制限されるものではない。投与経路により、通常用いられて非毒性である、薬学的に許容可能な担体、添加剤、ビヒクルを含む適当な投与ユニットの剤形に製剤化されてよい。
【0099】
前記薬学組成物は、毎日約0.0001mg/kgから約10g/kgが投与されてよく、約0.001mg/kgから約1g/kgの1日投与用量で投与されてよい。しかし、前記投与量は、前記混合物の精製の程度、患者の状態(年齢、性別、体重など)、治療している状態の深刻性などにより多様であり得る。必要に応じて、便利性のために1日の総投与量が1日間数回に分けて投与されてよい。
【0100】
本発明の癌幹細胞成長抑制用組成物は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を含む。
【0101】
前記癌幹細胞(cancer stem cell、CSC)は、多様な癌細胞に分化することができる能力を有した未分化細胞を意味する。癌幹細胞は、悪性腫瘍組織内に1~2%程度で存在し、正常の幹細胞の特性である自己複製能力と多分化能を有しているが
、自己調節機能に異常があって細胞分裂活性化で細胞数が増加するようになり、自ら悪性腫瘍細胞に分化する。このような癌幹細胞の特徴により、抗癌治療を介して一般の癌細胞は除去されるが癌幹細胞は生き残り、生き残った一部の癌幹細胞により癌の再発及び転移がなされると知られている。
【0102】
具体的に、本発明の癌幹細胞は、癌幹細胞のマーカー中の1つであるALDH1(aldehyde dehydrogenase 1)タンパク質が過剰発現されるか、タンパク質活性が陽性である癌細胞であってよい。
【0103】
本発明の前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片は、癌幹細胞を選択的に抑制することができ、特に、抗癌治療抵抗性の高い癌幹細胞が含まれている癌細胞群を死滅させることにより、優れた抗癌効果を得ることができる。前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片は、癌幹細胞の自己再生能力、浸潤能力及び移住能力を減少させることにより、癌幹細胞の成長を抑制することができる。
【0104】
前記抗体又はこの抗原結合断片は、癌幹細胞の特性を有する癌を予防又は治療するために用いることができるが、これに制限されるものではない。前記癌幹細胞の特性を有する癌は、既存の抗癌治療に対して抵抗性を示してその予後が良くないので、既存の抗癌治療とは異なる治療が適用されなければならない。例えば、同一の癌腫の患者であるとしても、その癌腫が癌幹細胞の比率が高い場合に該当するならば、この患者は抗癌剤投与又は放射線治療のような既存に知られている抗癌治療では、癌治療効果を得ることができなくなる。したがって、同一種類の癌であるとしても、癌病変部位の細胞で癌幹細胞の比率が高い場合には、既存の抗癌治療と異なる新たな治療法を適用するのが非常に重要である。
【0105】
前記癌幹細胞特性を有する癌は、癌を構成する細胞群で癌幹細胞の比率が高い癌であってよい。一般的な癌細胞中の癌幹細胞の比率が約1%以上5%未満程度であることを考慮するとき、例えば、癌を構成する細胞群で癌幹細胞の比率が5%以上、10%以上、30%以上、50%以上、70%以上である場合を癌幹細胞特性を有する癌として定義することができ、前述した通り、既存の抗癌治療に対して抵抗性を示して抗癌治療の予後が良くないことを特徴とすることができる。具体的に、本発明における前記癌幹細胞特性を有する癌は、ALDH1を過剰発現する癌であってよい。前記ALDH1を過剰発現する癌は、ALDH1を発現するかその活性が陽性である癌幹細胞の比率が一般的な癌より相対的に高い癌であってよい。
【0106】
具体的に、前記ALDH1を過剰発現する癌は、肺癌、乳癌、肝癌、腎臓癌、胃癌、すい臓癌及び脳癌より構成された群から選択される何れか1つ以上のものであってよいが、これに制限されない。
【0107】
前記癌の予防又は治療は、癌幹細胞の再生能、成長能、浸潤能又は移動能を減少させることを介し、癌治療途中又は癌治療後の癌化学耐性、癌再発、又は癌転移を予防又は治療することであってよい。
【0108】
本発明の放射線抗癌治療補助用組成物は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を含む。
【0109】
前記組成物は、前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を、癌関連細胞の放射線敏感性を向上させるための有効成分として含む。
【0110】
前記癌関連細胞は、癌を構成している細胞であって、正常の細胞に比べて形状が一定でなく、無制限に増殖し、周辺細胞との結束力が弱い特徴を有するものであってよい。具体
的に、前記癌関連細胞は、癌細胞又は癌幹細胞であってよく、具体的に癌幹細胞であってよい。
【0111】
前記癌幹細胞は、多様な癌細胞に分化することができる能力を有した未分化細胞であってよく、具体的にALDH1を発現するか活性が陽性である癌細胞であってよい。本発明における前記癌幹細胞は、放射線の照射によっても細胞増殖が抑制されず、自己再生能力が低下せず、移動及び浸潤能力が抑制されないという特徴を有するものであってよい。
【0112】
また、前記癌関連細胞は、放射線に対する敏感性が低いもの、すなわち放射線治療に対する抵抗性が高いものであってよく、実質的に放射線に対する敏感性がなくて放射線照射による抗癌治療が不可能なものであってよい。
【0113】
前記抗癌は、放射線照射、外科的手術及び化学療法などを介して癌関連細胞の増殖の抑制、転移及び浸潤の抑制、細胞の死滅を誘導することであってよい。本発明における前記抗癌は、放射線照射と併用して前記ヒト化抗体又はこの抗原結合断片を投与することであってよい。このようにヒト化抗体又は抗原結合断片を放射線照射と併用して投与する場合、前記抗体又は抗原結合断片により癌関連細胞の放射線敏感性が向上され、放射線照射による抗癌治療効果を最大化することができ、さらには、癌の再発及び転移を防ぐことができる。
【0114】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0115】
但し、下記実施例は、本発明を具体的に例示するものであり、本発明の内容が下記実施例によって限定されない。
【0116】
[実施例及び比較例]
【0117】
[実施例1]
TM4SF4に特異的に結合するヒト化抗体の設計及び発現ベクターの製造
TM4SF4タンパク質に対し高い親和度を有して特異的に結合することができるヒト化抗体を製造した。このために、TM4SF4と特異的な結合を形成するための抗体部位のうち可変領域のCDR(complementarity determining regions)のアミノ酸配列を、ヒト抗体の不変領域のアミノ酸配列と可変領域のFR(framework regions)のアミノ酸配列を用いて、TM4SF4に対する特異的結合性を有しながらも、人体に投与されたときに低い免疫原性(immunogenicity)を示し得る新規のヒト化抗体を製造した。
【0118】
具体的に、本発明のヒト化抗体のCDR配列は、TM4SF4に特異的に結合可能なマウス由来抗体のCDR配列に次の配列を用いた。重鎖可変領域のCDR-H1(配列番号10)、CDR-H2(配列番号11)、CDR-H3(配列番号14)、そして軽鎖可変領域のCDR-L1(配列番号15)、CDR-L2(配列番号18)、CDR-L3(配列番号19)を用いた。また、FR配列には、重鎖可変領域のFR-H1(配列番号1)、FR-H2(配列番号2)、FR-H3(配列番号4)、FR-H4(配列番号5)、そしてFR-L1(配列番号6)、FR-L2(配列番号7)、FR-L3(配列番号8)、FR-L4(配列番号9)を用いた。前記CDR配列は、マウス由来のTM4SF4抗体であるECL-2B7抗体のCDR配列を用いており、前記FR配列は、ヒト抗体である3QRG抗体のFR配列を用いた。前記3QRG抗体は、米国国立生物工学情報センター(NCBI)のBLASTP分析プログラムを用いて前記ECL-2B7抗体の重鎖及び軽鎖アミノ酸配列と類似のヒト抗体候補群の中から選別したものである。前記CDR配列をCDR-移植(CDR-grafting)方法で前記FR配列に移植し、本
発明のヒト化抗体を製造した。先ず、前記CDR配列中で重鎖可変領域のCDR配列(配列番号10、配列番号11及び配列番号14)の前方に信号ペプチド配列を追加して得たCDR配列のアミノ酸配列に基づき、逆翻訳(reverse translate)プログラム(https://www.bioinformatics.org/sms2/rev_trans.html)を用いて、これを暗号化する塩基配列に変換した。その後、組換えPCRを用いて、前記FR配列(配列番号1、配列番号2、配列番号4及び配列番号5)と連結して本発明のヒト化抗体の重鎖可変領域を暗号化する遺伝子を合成した。約450bpの長さの遺伝子を3個の区間に分け、図1に示したように、ECL-2B7-S-H-5’及びECL-2B7-S-H-3’プライマーを用いてT1(164bp)を、ECL-2B7-HC-1-5’及びECL-2B7-HC-1-3’プライマーを用いてT2(167bp)を、そして、ECL-2B7-HC-2-5’及びECL-2B7-HC-2-3’プライマーを用いてT3(157bp)に該当する部位の重鎖可変領域遺伝子の切片を合成した。その後、T1及びT2切片を組換えPCRを介して連結して310bp大きさの切片に合成し、T1とT2が連結された切片を再びT3切片とCh57-H.C-5’及びECL-2B7-WH-3’プライマーを用いて連結することにより、EcoRIとApaI制限酵素切断部位を両末端に有した約450bpの本発明のヒト化抗体の重鎖可変領域(Hz2B7-1.0)遺伝子を合成した。前記重鎖可変領域は、FR-H1、CDR-H1、FR-H2、CDR-H2、FR-H3、CDR-H3、FR-H4の順に配列されるように製作し、これをアガロースゲルで確認した(図2)。この過程に用いられた前記プライマー配列は、下記表1に示した。そして、本発明のヒト化抗体の軽鎖可変領域(Hz2B7-0.1)の遺伝子は、遺伝子合成業者(Bionics、韓国)に依頼し、FR-L1(配列番号6)、CDR-L1(配列番号15)、FR-L2(配列番号7)、CDR-L2(配列番号18)、FR-L3(配列番号8)、CDR-L3(配列番号19)、FR-L4(配列番号9)の順に配列されるようにして約450bpの長さの軽鎖可変領域(Hz2B7-0.1)遺伝子を合成し、これをアガロースゲルで確認した(図3)。そして、T4連結酵素(T4 ligase、NEB、米国)を用いて前記重鎖可変領域遺伝子をpdCMV-dhfrベクターのEcoRI-ApaIの位置に、前記軽鎖可変領域遺伝子をHindIII-BsiWIの位置にT4連結酵素を用いてクローニングし(図8)、本発明のヒト化抗体(Hz2B7-1.1)を暗号化するベクターpdCMV-dhfrC-Hz2B7-1.1を製造した。
【0119】
【表1】
【0120】
[実施例2]本発明のヒト化抗体の変異体抗体の設計及び発現ベクターの製造
【0121】
[2-1]本発明のヒト化抗体とエピトープの相互作用分析及び分子モデリング
前記実施例1を介して設計した本発明のヒト化抗体のアミノ酸配列のうち一部の配列を変形させた変異体抗体を製造するために、先ず、前記ヒト化抗体と標的であるTM4SF4のエピトープの間の相互作用を確認した。一般に、抗原-抗体の結合力は、ドッキングシミュレーション(docking simulation)を介して定性的に予測することができるが、前記実施例1のヒト化抗体は、X-線構造が知られていないため、ホモロジー(Homology)モデリングを介してその構造を予測し、それに基づいて前記
抗体とエピトープの間の結合力を確認した。このために、MODELLERプログラムの8.2バージョンを用いて、前記実施例1のヒト化抗体とアミノ酸配列との類似度が高いマウスのキメリック抗体X836をBLASTを用いてホモロジーモデリングのテンプレートとして用いた。前記X836抗体の235個のアミノ酸のうち、実施例1のヒト化抗体と176個のアミノ酸が一致してアミノ酸配列の類似性が75%程度と示され、これに基づいて前記実施例1のヒト化抗体の3次元構造を予測することができた(図4)。
【0122】
抗原であるTM4SF4タンパク質のエピトープは、短い長さのポリペプチド鎖なので、1つの有機化合物としてみなして前記実施例1のヒト化抗体のCDR領域でドッキングシミュレーションを行い、結合自由エネルギーと結合モードを計算した。具体的に、TM4SF4タンパク質の126番から140番までのアミノ酸配列Thr-Trp-Gly-Tyr-Pro-Phe-His-Asp-Gly-Asp-Tyr-Leu-Asn-Asp-Gluで構成された15-merオリゴペプチドを全体抗原に対する単純化モデルにして計算を行った。前記ヒト化抗体に対するエピトープの結合自由エネルギーは-11.6kcal/molに算出され、K値に換算すると、3nM程度と計算された。これは、本発明のヒト化抗体とTM4SF4のエピトープの間に非常に強い抗原-抗体の結合が形成されるものであることを意味する。ドッキングプログラムとしては、米国Scripps Research Instituteで開発したAutoDock version 4.2.6を変形したものを用い、正確度の向上のためにタンパク質-リガンド結合自由エネルギー関数の一部の項を改善して用いた。具体的に、静電気的相互作用項と水素結合エネルギー項及びリガンドの水和エネルギー項に入っているパラメーターをより正確に最適化し、ドッキングシミュレーションに用いた。抗体とエピトープの間の静電気的相互作用部分においては、抗体分子の誘電定数値を直接計算して用い、水素結合エネルギー項では、角度と距離の相互依存性も反映するために、モース(Morse)関数の積として表現することにより計算の正確度を向上させた。リガンド水和エネルギー部分においては、パラメーター数を69個に増やした後、遺伝アルゴリズムを介して最適化する方法により正確度を改善した。ファンデルワールス結合、水素結合、静電気的相互作用、エントロピー、そして水和エネルギー項に対する重み付け係数(weighting factor)の値は、それぞれ0.1485、0.0656、0.1146、0.3113、及び0.1711として既存のAutoDockプログラムに与えられた値をそのまま用いた。
【0123】
前記のようなドッキングシミュレーションで得た実施例1のヒト化抗体とエピトープの複合体構造分析の結果を介し、結合に重要な役割を担うアミノ酸の部位を確認することができた。前記ヒト化抗体Hz2B7-1.1のアミノ酸のうち、軽鎖99番のアルギニン(Arg,R)、重鎖58番のアスパラギン(Asn,N)、重鎖60番のチロシン(Tyr,Y)、重鎖102番のグリシン(Gly,G)、重鎖103番のセリン(Ser,S)などの5個がCDR領域に属するとともに、エピトープと水素結合を形成しつつ抗体の機能において核心の役割を担うものと予想された(図4図5)。ファンデルワールス結合は相対的に弱いものと示され、疎水性アミノ酸のうち、軽鎖38番のチロシンと軽鎖98番のチロシンのみが抗体-エピトープ複合体の境界面で観察された(図4図5)。
【0124】
エピトープと水素結合あるいはファンデルワールス結合で直接相互作用するアミノ酸は、抗体の機能に重要な役割を担うので維持し、エピトープとの結合力を増大するためには、結合力が弱いか遠い距離にあるアミノ酸を置換する必要がある。例えば、図4図5においてエピトープのフェニルアラニン及びトリプトファン残基が結合する部分である、前記ヒト化抗体Hz2B7-1.1の軽鎖可変領域のCDR1に該当する31番のアスパラギン(Asn,N)を、より疎水性を帯びた芳香族性アミノ酸で置換する場合、エピトープと抗体の間のファンデルワールス結合が強化されるに伴って結合力が増加するものと予測された。また、前記ヒト化抗体Hz2B7-1.1の重鎖可変領域のCDR2に該当す
る55番のトリプトファン(Trp,W)は、エピトープのアスパラギン酸と隣接した位置にあるので、水素結合をより強く形成することができるアミノ酸で置換する場合、結合力が増加するものと予測された。したがって、軽鎖可変領域のCDR1に該当する31番、重鎖可変領域のCDR2に該当する55番の位置は、エピトープと親和度を増加させることができる重要な位置である(図4図5)。また、軽鎖可変領域のCDR3に該当する100番のトレオニン(Thr,T)、重鎖可変領域のCDR2に該当する54番のトリプトファン、重鎖可変領域のCDR2に該当する56番のアスパラギンなどの3つのアミノ酸もエピトープと比較的に近くの距離に位置しているので、これらを化学的性質が異なるアミノ酸で置換すると、エピトープとの新たな水素結合又はファンデルワールス結合が誘導されて抗体の効能を増大させることができるものと予想される。したがって、軽鎖可変領域のCDR3に該当する100番、重鎖可変領域のCDR2に該当する54番、56番の位置も、エピトープと親和度を増加させることができるまた他の重要な位置である(図4図5)。
【0125】
[2-2]変異体ヒト化抗体アミノ酸配列の設計及びベクターの製造
前記実施例2-1のドッキングシミュレーション分析を介し、前記実施例1のヒト化抗体重鎖可変領域の46番のアラニン(Ala、A)をバリン(Val,V)で置換することにより、前記実施例1のヒト化抗体配列のうちFR-H2を配列番号3のアミノ酸配列として重鎖可変領域Hz2B7-2.0(HC A46V)を設計した(図5)。
【0126】
また、前記実施例1のヒト化抗体重鎖可変領域の55番のトリプトファン(Trp,W)をセリン(Ser,S)又はチロシン(Tyr,Y)でそれぞれ置換することにより、前記実施例1のヒト化抗体配列のうちCDR-H2を、それぞれ配列番号12又は配列番号13のアミノ酸配列として重鎖可変領域Hz2B7-3.0(HC W55S)と重鎖可変領域Hz2B7-4.0(HC W55Y)を設計した(図5)。このために、h2B7-H.C-W55S-5’とh2B7-H.C-W55S-3’プライマー、そして、h2B7-H.C-W55Y-5’とh2B7-H.C-W55Y-3’プライマーを合成し、インフュージョンクローニング(in-fusion cloning)のためにh2B7-H.C-SLIC-3’プライマーとh2B7-H.C-SLIC-3’プライマーを用いて組換えPCRを施行した(図6のA)。合成された遺伝子の配列をキット(EZ-FusionTM HT Cloning Kit、Enzymomics、韓国)を用いてEcoR1とApaIで切断したpdCMV-dhfr-h2B7ベクターにクローニングした(図8)。塩基配列分析で変異を確認した後、前記変異体ヒト化抗体を発現させることができるpdCMV-dhfr-Hz2B7-3.0とpdCMV-dhfr-Hz2B7-4.0を製造した。
【0127】
また、前記実施例1のヒト化抗体軽鎖可変領域の31番のアスパラギン(Asn,N)をフェニルアラニン(Phe,F)又はバリン(Val,V)でそぞれ置換することにより、前記実施例1のヒト化抗体配列のうちCDR-L1を、それぞれ配列番号16又は配列番号17のアミノ酸配列として軽鎖可変領域Hz2B7-0.2(LC N31F)と軽鎖可変領域Hz2B7-0.3(LC N31V)を設計し、これをアガロースゲルで確認した(図5)。このために、h2B7-L.C-N31F-5’とh2B7-L.C-N31F-3’プライマー、そして、h2B7-L.C-N31V-5’とh2B7-L.C-N31V-3’プライマーを合成し、インフュージョンクローニングのためにh2B7-L.C-SLIC-3’プライマーとh2B7-L.C-SLIC-3’プライマーを用いて組換えPCRを施行した(図6のB)。合成された遺伝子の配列をキット(EZ-FusionTM HT Cloning Kit、Enzymomics、韓国)を用いてHindIIIとBsiWIで切断したpdCMV-dhfr-h2B7-1.1ベクターにクローニングした(図8)。塩基配列分析で変異を確認した後、前記変異体ヒト化抗体を発現させることができるpdCMV-dhfr-Hz2B7-0.2とp
dCMV-dhfr-Hz2B7-0.3を製造した。
【0128】
この過程で用いられた前記プライマー配列は、下記表2に示した。
【0129】
【表2】
【0130】
[比較例]TM4SF4を標的とするキメラ抗体の設計及び発現ベクターの製造
前記実施例1及び2のヒト化抗体は、抗体の重鎖/軽鎖可変領域のうちCDR配列は、マウス抗体のCDR配列を用い、抗体の不変領域と可変領域のうちFR配列は、ヒト抗体の配列を用いて製造したものである。よって、本発明のヒト化抗体と比較するために、重鎖/軽鎖可変領域全体はマウス抗体から由来し、不変領域はヒト抗体から由来するキメラ抗体(chimeric antibody)を製造した。すなわち、前記キメラ抗体は、ヒト抗体との類似度の側面から、マウス抗体とヒト化抗体の中間に該当する抗体であるとみることができる。
【0131】
先ず、マウス由来の前記ECL-2B7抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子を対象として、PCRを行い、ゲル抽出キット(gel extraction kit、FAVORGEN、台湾)を用いて約400bpと390bpのDNAを分離した。そして、重鎖遺伝子の信号配列を合成するために、pdCMV-dhfrベクターを鋳型として5’-signal-EcoR1(5`-GAC GAA TTC ACT CTA ACC ATG
GAA TGG A)プライマーとECL-2B7-S-H-3’(CTT CAC CTC GGA GTG GAC ACC TGT AGT TA-3`)プライマーを用いてPCRを行った(図7のA)。また、重鎖可変領域を増幅するために、重鎖可変領域のDNAを鋳型として2B7-S-H-5’(5`-GTC CAC TCC GAG GTG AAG CTG GAG GAG TC)プライマーとECL-2B7-HC-Chi-3’(TTG GGC CCT TGG TGG AGG CTG CAG AGA CAG TGA CCA G-3`)プライマーを用いてPCRを行った(図7のA)。その後、前記重鎖の信号配列と重鎖可変領域遺伝子を連結するために、5’-signal-EcoR1プライマーとECL-2B7-HC-Chi-3’プライマーを用いて組換えPCRを行った。これを介して重鎖可変領域と重鎖信号配列が連結された遺伝子を得、1%のアガロースゲルに展開させて確認し、DNA分離キット(FavorPreP GELTM PCR Purification Kit、Farvorgen、台湾)を用いて約450bpに該当するDNAを分離した(図7のA)。前記信号配列が連結された重鎖可変領域遺伝子をEcoRI及びApaIで処理した後、前記FavorPrep GELTM PCR Purification Kitを用いて分離した(図7のB)。このように得られた重鎖可変領域遺伝子を、ヒト抗体の重鎖不変領域(IgG1)遺伝子が含まれているpdCMV-dhfrベクターのEcoRI及びApaIの位置にT4 DNA連結酵素(T4 DNA ligase、NEB、米国)を用いてクローニングした(図8)。軽鎖遺伝子の場合にも同様に、信号配列を合成するためにpdCMV-dhfr-ch57ベクターを鋳型として、ch57-LC-whole 5’(5`-CTG CAA AGC TTC GGC ACG AGC A)プライマーとECL-2B7-S-L-3’(CAC AAT ATC TCC TTC AAC ACC AGA CAA CC-3`)プライマーを用いてPCRを行い、軽鎖可変領域遺伝子の増幅のためにECL-2B7-S-L-5’(5`-GTT GAA GGA GAT ATT GTG ATG ACC CAG TCT)プライマーとECL-2B7-LC-chi-3’(CCA CCG TAC GTT TGA TTT CCA GCT T-3`)プライマーを用いてPCRを行った(図7のA)。前記信号配列と軽鎖可変領域の連結のために、ch57-LC-whole 5’プライマーとECL-2B7-LC-chi-3’プライマーを用いて組換えPCRを行った後、1%のアガロースゲルに展開させて確認し、重鎖可変領域遺伝子と同一の方法で分離した(図7のA)。前記軽鎖可変領域遺伝子をHindIII及びBsiwIで処理して分離した後、ヒト抗体の軽鎖不変領域(Ck)遺伝子を含んで先に製作した重鎖遺伝子が挿入されたpdCMV-dhfr-chi2B7-HCベクターのHindIII及びBisWIの位置にクローニングすることにより(図7のC)、前記キメラ抗体を発現させることができるベクターを製造した(pdCMV-dhfr-chi2B7、図8)。前記ベクターを大腸菌DH5αにRbCl2方法で形質転換した後、約450bpの大きさを有した大腸菌を選抜した。この大腸菌を50μg/mlのアンピシリンが含有された5mlのLB培地で一晩中培養した後、プラスミドDNA分離のためのキット(DNA-spinTM Plasmid DNA purification kit、INTRON、韓国)を用いてプラスミドDNAを分離して塩基配列を確認した(Bionics、韓国)。その結果、前記形質転換体から分離されたcDNAの塩基配列は、前記ECL-2B7抗体の可変領域遺伝子と同一であり、ヒト抗体の重鎖及び軽鎖不変領域遺伝子と正しく連結されていることを確認した。
【0132】
[実験例1]
ヒト化抗体及びキメラ抗体の発現及び精製
前記実施例1、2を介して製造した本発明のヒト化抗体のベクターと、前記比較例のキメラ抗体ベクターから抗体タンパク質を発現させて精製した。
【0133】
先ず、前記キメラ抗体(「Chi2B7」)を発現させて精製するために、150mm
の培養皿を用いて1×10のHEK293T細胞(ヒト胚芽腎細胞株)を20mlのDMEM培地(Biowest、フランス)で培養した。培養された細胞に50μgの前記pdCMV-dhfr-chi2B7発現ベクターと75μlのポリエチレンイミン(polyethyleneimine、1mg/ml)を混ぜた後、トランスフェクション最適化培地500μlと混ぜて均一に細胞培養培地の上にふりかけた。翌日、上澄液を収集し、新しい培地を満たして細胞株から発現されて出たキメラ抗体を収集し、その上澄液をビーズ(Protein G agarose beads、Amicogen、韓国)がパッキングされているカラムに入れ、抗体が前記ビーズと結合することができるようにした。その後、PBS(pH8.0)でビーズを洗浄し、0.1Mのグリシン(pH2.8)10mlと1MのTris-HCl(pH9.0)を用いて抗体をビーズから溶出することでChi2B7キメラ抗体を精製し、SDS-PAGEとクマシブルー(Coomassie blue)染色法を介してこれを確認した(図9のA)。また、前記精製したキメラ抗体がヒト抗体の不変領域を有したものなのか否かを、ヤギの抗体(goat-α-hIgG-gamma chain-HRP、Invitrogen、米国、そして、goat-α-hIgG-kappa chain-HRP、Bethyl、米国)を2次抗体として用いてウェスタンブロッティングを介して検出した結果、前記キメラ抗体は、ヒト抗体の不変領域を含む抗体であることを確認することができた(図9のB)。
【0134】
また、前記実施例1、2のヒト化抗体を発現、精製した。前記実施例1及び2を介し、本発明のヒト化抗体の重鎖可変領域を4種類に、軽鎖可変領域を3種類に製造したので、これらの組み合わせを介して多様な形態のヒト化抗体を製造することができる。これによって、前記実施例1、2の発現ベクターをHEK293T細胞に導入させ、前記キメラ抗体と同一の方法を介してヒト化抗体を発現させ、Protein Gビーズ及びカラムを用いて分離及び精製した。
【0135】
精製された前記キメラ抗体と本発明のヒト化抗体、そしてマウス由来の2B7抗体の精製純度を確認するために10%のSDS-PAGEを実施した。全体10種のヒト化抗体のうち代表的な6種(Hz2B7-1.1、Hz2B7-1.2、Hz2B7-1.3、Hz2B7-2.1、Hz2B7-3.2、Hz2B7-4.3)を分析し、このとき、各抗体は1μgずつ用いて、SDS-PAGE以後、クマシブルー染色とウェスタンブロッティング分析を行った(図9)。クマシブルー染色のための溶液(PageBlue staining solution、Thermo Scientific、米国)を処理して染色を行った結果、各抗体の重鎖及び軽鎖が約55kDa、25kDaの位置で確認された(図9のA)。これは、前記キメラ抗体及びヒト化抗体がいずれもIgGタイプの抗体であり、ヒト抗体の一部の配列を有するものであることを意味する。ウェスタンブロッティングのために、2次抗体としてヤギの抗体(goat-α-hIgG-gamma chain-HRP、Invitrogen、米国、そして、goat-α-hIgG-kappa chain-HRP、Bethyl、米国)を用い、ECLキット(Western Bright ECL kit、advansta、米国)を用いてバンドを検出した。その結果、ECL-2B7抗体はマウス抗体なので、ウェスタンブロッティングを介して検出されず、他の抗体(キメラ抗体及びヒト化抗体)の場合、SDS-PAGEの結果と同様に各抗体の重鎖及び軽鎖が検出され、これらがヒト抗体配列を有することを確認することができ、抗体の精製純度を確認することができた(図9のB)。
【0136】
[実験例2]
ELISAによるヒト化抗体のTM4SF4抗原結合能の比較
本発明のヒト化抗体、そしてキメラ抗体を用いて、間接ELISA(indirect
ELISA)を介しTM4SF4に対する結合能を確認した。
具体的に、前記ヒト化抗体は、前記実施例1、2を介して設計した重鎖可変領域変異種の4種と軽鎖可変領域変異種の3種を組み合わせて、Hz2B7-1.1、Hz2B7-1
.2、Hz2B7-1.3、Hz2B7-2.1、Hz2B7-3.1、Hz2B7-3.2、Hz2B7-3.3、Hz2B7-4.1、Hz2B7-4.2及びHz2B7-4.3の10種の形態に製造した。このために、96-ウェルプレートの各ウェルの底にコーティング緩衝溶液(100mM carbonate/bicarbonate coating buffer、pH9.6)で溶解させたTM4SF4-BSA(1μg/ml)又はBSA溶液(1μg/ml)100μlを加えて4℃で16時間以上吸着させた。その後、コーティングされた抗原を洗浄緩衝溶液(wash buffer、0.05% PBS-T、Tween-20)で3回洗浄し、各ウェルの底に抗原が吸着されていない部分にブロック緩衝溶液(blocking buffer、5% skim milk in wash buffer)200μlを加えて4℃で16時間以上反応させた後、再び洗浄緩衝溶液で3回洗浄した。その後、前記実験例1を介して精製させた前記10種の組み合わせのヒト化抗体とキメラ抗体をブロック緩衝溶液を用いて多様な濃度も希釈して準備した後、濃度別に各ウェルに100μlずつ入れて室温で2時間反応させた。再び3回洗浄した後、これを検出するための1mg/mlの抗体(α-human
IgG-Kappa chain-HRP、Bethyl、米国)をブロック緩衝溶液を用いて10,000倍に希釈し、各ウェルに100μlを加えて室温で1時間反応させた。反応が終わった後、洗浄緩衝溶液で3回洗浄し、基質溶液(OPD solution、30%のH 4μl、100μlのOPD stock(40mg/ml)、phosphate citrate bufferで10mlに合わせる)を各ウェルに100μlずつ加えて室温で反応させた後、2.5MのHSO 50μlを加えて反応を終結させた。最後に、固体状に結合された酵素の活性を測定するために、ELISAリーダーを用いて490nmで吸光度を測定した(図10)。
【0137】
その結果、本発明のヒト化抗体10種はいずれもBSAに結合せず、TM4SF4-BSA抗原に対しては高い特異性を有して結合するものと表れた(図10)。よって、本発明のヒト化抗体は、TM4SF4に対する結合力を有するだけでなく、これに対して特異的に結合する特性があることを確認することができた。また、TM4SF4-BSAに対する親和度を比較したとき、10種のヒト化抗体は、いずれもキメラ抗体Chi2B7に比べて顕著に高いTM4SF4親和度を示した。そして、10種のヒト化抗体は、それぞれ異なる結合親和度(binding affinity)を示し、その中でHz2B7-1.2ヒト化抗体の場合、Hz2B7-1.1に比べて明白に増加した結合親和度を示したので、TM4SF4に対する結合力が最も優秀であることを確認することができた(図10のA及びB)。
【0138】
[実験例3]
SPR分析による抗-TM4SF4ヒト化単一クローン抗体敏感度の比較
構築された抗-TM4SF4ヒト化単一クローン抗体のヒトTM4SF4-ペプチド(hTM4SF4 aa 126-140)抗原に対する結合能を比較するために表面プラズモン共鳴(Surface plasmon resonance、SPR)分析を行った。
【0139】
アナライト(Analyte)であるヒト化抗体は計5種であって、表3のように、最初突然変異型1種(HzE2B7-1.1)、軽鎖突然変異型2種(HzE2B7-1.2(LC N31F)、HzE2B7-1.3(LC N31V))、重鎖/軽鎖突然変異型2種(HzE2B7-4.3(HC W55Y、LC N31V)、HzE2B7-3.2(HC W55S、LC N31F))が分析され、ヒトTM4SF4タンパク質の126番から140番までのアミノ酸配列にビオチン(biotin)が結合された形態である合成ペプチド(Biotin-GSAGGSTWGYPFHDGDYLNDE、GSAGGS:BiotinとTM4SF4 aa 126-140であるTWGYPFHDGDYLNDEの間のスペース配列)をリガンド(Ligand)として用いた。
【0140】
【表3】
【0141】
先ず、ストレプトアビジン接合センサチップ(Series S Senser Chip SA、Cytiva社)をBiacore T200(Cytiva社)に挿入して活性化バッファー(1M NaCl、50mM NaOH)を30秒間流した後、HBS-EPバッファー(Cytiva社)を流してセンサチップ表面の活性化と安定化を誘導した。安定したセンサチップにリガンド(Biotin-hTM4SF4 aa 126-140)を1nM~128nMの濃度で流してリガンドをセンサチップ表面に固定させ、再生溶液(Regeneration buffer、20mM NaOH)を流してビオチン-ペプチドリガンドが安定的に結合されたストレプトアビジン接合センサチップを構築した。親和度分析のためのアナライト抗体は、512nmole/Lから1/2順次希釈して16nmol/Lの濃度まで準備し、構築されたリガンド結合ストレプトアビジン接合センサチップに各濃度別のアナライト抗体を480秒間30ul/minの速度で流して結合を誘導した後、HBS-EP緩衝溶液を同一時間と速度で流してアナライト抗体がリガンドペプチドから解離される程度を反応値(Response unit)の形態で得、同一方法で得られたリガンド非結合センサチップ反応値を除外する方式でBiacore T200評価ソフトウェア(Cytiva社)を用いて結合率(Association rate、K)と解離率(Dissociation rate、K)及び平衡解離定数(KD、K/K)値を算出した。算出基準としてリガンドペプチドとアナライト抗体の相互作用に対する物質伝達フィッティングモデルは1:1結合を用いて分析された。図11に表記された平衡解離定数(KD)を基準として抗-TM4SF4ヒト化単一クローン抗体のヒトTM4SF4-ペプチド(hTM4SF4 aa 126-140)抗原に対する結合能は、HzE2B7-1.2(LC N31F)抗体が6.03×10-9Mで最も低く、HzE2B7-1.1は2.442×10-8M、HzE2B7-1.3(LC N31V)は3.542×10-8M、HzE2B7-4.3(HC W55Y LC N31V)は8.165×10-8M、HzE2B7-3.2(HC W55S LC N31F)は1.119×10-7Mに評価された(表3)。ヒト化抗体の平衡解離定数(KD)値は低いことがより好ましく、商業的に許可を受けた一般的なヒト化抗体でその値が普通10-8M以下であり、下限は特に限定されない。したがって、最初にデザインしたヒト化抗体(HzE2B7-1.1)のKDが既に有用な2.442×10-8Mを有し、ドッキングモデルを介して得た情報に基づいて軽鎖31番目のアスパラギン(Asparagine,N)をフェニルアラニン(Phenylalanine,F)で置換したHzE2B7-1.2(LC N31F)抗体は、抗原に対する結合力が最初にデザインしたHzE2B7-1.1より約4倍さらに増加し、平衡解離定数(KD)値が6.03×10-9Mに至っていることを示すことから、商業的
な価値がより高い抗体であることが分かる。
【0142】
[実験例4]
FACSによるヒト化抗体の癌細胞結合能の比較
前記実験例2を介し、本発明のヒト化抗体がTM4SF4に対して高い親和度を有し特異的に結合することを確認したので、前記TM4SF4を過剰発現する特徴がある癌細胞に本発明のヒト化抗体を処理して結合可否を確認した。
【0143】
具体的に、肺癌細胞株であるCalu-3、A549細胞株をDMEM培地(Biowest、フランス)に10%のウシ胎児血清(WelGene)を用いて培養した。そして、肝癌細胞株であるHuh7、SNU-387、SNU-449細胞株は、RPMI-1640培地(Biowest)に10%のウシ胎児血清を用いて培養した。その後、80%程度成長した前記細胞に酵素(TrypLETM Express Enzyme、GibcoTM)を処理して離し、この細胞をPBS(pH7.4)で洗浄した後、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)で4℃で15分間固定させた。その後、PBA(0.1% BSA in PBS)で2回洗浄した後、抗体別に5×105個の細胞にマウス由来の2B7抗体(10μg/ml)、キメラ抗体Chi2B7(10μg/ml)、本発明のヒト化抗体Hz2B7-1.1(10μg/ml)、Hz2B7-1.2(10μg/ml)、Hz2B7-1.3(10μg/ml)、マウスとヒトのアイソタイプ(Isotype)対照群のIgG1抗体(10μg/ml)をそれぞれ含んでいるPBAを入れ、1時間4℃で反応させた。反応後、PBAで2回洗浄した後、マウス由来の2B7抗体及びマウスアイソタイプIgG(2μg/ml、Invitrogen)が入っているグループにはFITC蛍光が結合されており、マウスIgGに特異的なα-mouse
IgG-FITC(2μg/ml)抗体を入れた。そして、ヒトアイソタイプIgG、キメラ抗体及びヒト化抗体が入っているグループにはFITC蛍光が結合されており、ヒトIgGに対して特異的なα-Human IgG-FITC(2μg/ml、Invitrogen)抗体を入れ、30分間4℃で反応させた。反応後、PBAで洗浄し、500μlのPBAで浮遊させた後、フローサイトメーター(FACS Calibur、BD、米国)を用いて前記抗体が抗原に対して特異性を有するのかを確認した。
【0144】
その結果、マウス由来の2B7抗体と同様に、本発明のヒト化抗体と比較例のキメラ抗体は、表面にTM4SF4を発現するCalu-3とA549肺癌細胞に特異的に結合することを確認することができた。また、ヒト初代肝細胞(human primary hepatocyte、hPH)の表面には結合しなかったが、肝癌細胞株であるHuh7、SNU-387及びSNU-449肝癌細胞にも特異的に結合することを確認することができた。その中でも、本発明のヒト化抗体Hz2B7-1.2の場合、分析の結果、特に、A549細胞株で顕著に高い結合能を有していることを確認することができた(図12)。
【0145】
[実験例5]
本発明のヒト化抗体を高い生産性で生産することができる細胞株の製造
本発明のヒト化抗体を生産することができる細胞株を製造するために、CHO細胞(Chinese ovary hamster cells)の中でジヒドロ葉酸還元酵素(dihydrofolate reductase)を暗号化する遺伝子が欠損されているDG44細胞株を用いた。前記DG44細胞は、IMDM培地(Welgene、韓国)にH.T.(hypoxanthine-thymidine、sigma、Germany)及びDialyed FBS(Gibco、USA)を添加して培養し、トリプシン-EDTA(welgene、韓国)で細胞株を離した後、6ウェルプレートに1×10cells/wellだけ分株した。ここに、本発明のヒト化抗体の中でHz2B7-1.1及びHz2B7-1.2(LC N31F)を暗号化する発現ベクターを形
質転換(transfection)するために、15ugのPvuI制限酵素(Enzynomics、韓国)をそれぞれ処理して線形化させたpdCMV-dhfr-hz2B7-1.1及びpdCMV-dhfr-hz2B7-1.2をTOM培地(transfection optimized medium)によく混ぜて準備し、15μlのリポフェクタミン(lipofectamine)2000(Invitrogen、USA)をTOM培地で反応させた後、前記ベクターが含有された培地と混合して20分間反応させた。そして、反応された溶液を前記DG44細胞に滴下して形質転換を行った。
【0146】
本発明のヒト化抗体を暗号化する遺伝子が導入された前記細胞は、100μg/ml濃度のG418が含有された培地でネオマイシン(neomycin)抵抗性可否を介しスクリーニングし、コロニーが形成された細胞の上澄液を得た。上澄液に含まれた本発明のヒト化抗体を用いてサンドイッチELISA(Sandwich ELISA)を行って抗体の生産を確認した。それぞれの形質転換体のうち、ELISAの結果、OD値が高い結果を示して抗体発現量に優れた5個のクローンを選抜した後、MTX(methotrexate)を処理して本発明の抗体遺伝子を増幅させた。0.02μM濃度でMTXを処理して1週間前記抗体遺伝子を増幅させた後、再びELISAを介して抗体生産量を測定し、生産量が増加したクローンを再び5個ずつ選別し、0.08μM濃度でMTXを増加させて遺伝子を2次増幅させた。
【0147】
これにより、Hz2B7-1.1ヒト化抗体を高く生産する細胞株として3A12、H12、4A12、4B12及び4H12の計5個のクローンを選抜した。そして、hz2B7-1.2抗体(LC N31F)を高く生産する細胞株として4A9、4A12、4B9、4C7及び4H12クローンを選抜し、さらなる形質転換を介して得た7A8及び6G10クローンを含めて計7個のクローンを選抜した(図13)。前記12個のクローンの細胞スタックを作り、これをIMDM培地に10%のDialyzed FBSを添加して培養し、細胞が50%程度育った後、MTXを2日ごとに0.08μMの濃度で処理して抗体遺伝子を増幅させた。約30日間MTXを処理しつつ培養した結果、0.08μM濃度のMTXで抵抗性を有する細胞株を獲得することができたし、Hz2B7-1.1抗体の高発現細胞株として4H12クローンを、Hz2B7-1.2抗体の高発現細胞株として4A12クローンを選定した。
【0148】
前記0.08μM濃度のMTXで生き残って選定されたクローンを単一クローン選別するために、100mmディッシュに3×10cellsだけ分株した。約10日後、形成された各コロニーを用いてスタックを作って保管し、残った細胞はサンドイッチELISAを介して抗体生産量の増加可否を確認した。具体的に、96ウェルプレートの各ウェルの底にコーティング緩衝溶液(100mM carbonate/bicarbonate coating buffer、pH 9.6)で溶解させたα-ヒトIgG-Fc特異的抗体(2μg/ml)を100μl加えて4℃で16時間以上吸着させた。洗浄及びブロッキングを行った後、前記4H12クローン(Hz2B7-1.1-4H12)、4A12クローン(Hz2B7-1.2-4A12)とMTX 0.08μMの濃度で選別した、抗体遺伝子が増幅されたそれぞれの単一クローンを、37℃のCO培養器で24時間培養した後、培養液を収集した。前記培養液とヒトIgGアイソタイプ対照群抗体を多様な濃度に希釈して準備した後、濃度別に各ウェルに100μlずつ入れ、室温で2時間反応させた。その後、α-ヒトIgG-Kappa鎖-HRP(1mg/ml、Bethyl、米国)をブロッキングバッファーを用いて10,000倍に希釈し、各ウェルに100ul加えて室温で1時間反応させた。反応が終わった後、基質であるOPD溶液(30%のH 4μl、100μlのOPD stock(40mg/ml)、phosphate citrate bufferで10mlに合わせる)を各ウェルに100μlずつ加えて室温で10分間反応させた後、2.5MのHSO 50μlを加えて反応を終結させた。
【0149】
ELISAを行った結果、MTXにより抗体遺伝子が増幅されたHz2B7-1.1-4H12-0.08及びHz2B7-1.2-4A12-0.08の各クローンのうち、MTXにより増幅される前のクローンに比べてより高い吸光度を示したクローンを確認した。そして、定量的抗体生産量の分析を介して抗体の濃度を計算した(図14及び図15)。その結果、Hz2B7-1.1-4H12クローンの場合、MTXにより抗体遺伝子が増幅される前の細胞の抗体生産量が約2.8μg/10cell/24hrであったが、MTXにより抗体遺伝子が増幅されたHz2B7-1.1-4H12-0.08-#1クローンの抗体生産量は、約3.8倍増加して10.8μg/10cell/24hrと示され、Hz2B7-1.2-4A12クローンの場合、増幅前の抗体生産量が2.5μg/10cell/24hrであったが、このクローンをMTX濃度0.08μM
に増幅したHz2B7-1.2-4A12-0.08クローンの場合、#9クローンは約14.2μg/10cell/24hr、#20クローンは7.9μg/10cell/24hrの抗体生産量を示し、遺伝子が増幅されていないクローンと比べてそれぞれ約5.7倍、3.1倍増加した抗体生産量を示したので、最大5.7倍に抗体生産性が増加したことが分かる(図15)。
【0150】
次に、血液内の抗体の安定性を測定するために血清安定性(serum stability)実験を進めた。マウスハイブリドーマ細胞株から精製したマウス抗体2B7と、CHO細胞株から精製したヒト化抗体Hz2B7-1.1及びHz2B7-1.2とを、それぞれ37℃の60%ヒト血清(human serum)(Sigma-Aldrich)に最大4日間培養した後、0、3、24、48、72、96時間での抗原結合能をIndirect ELISAを用いて測定した。具体的に、0.5μg/mlのTM4SF4-BSA抗原をコーティング緩衝溶液(100mM carbonate/bicarbonate coating buffer、pH 9.6)を用いて4℃で16時間以上吸着させた後、洗浄及びブロッキング過程を行った。その後、ヒト血清で培養した抗体を一次抗体として用いて、以前と同様にELISA過程を進め、時間に応じて抗原結合能が維持されるのかを確認した。吸光度を測定した後、0時間での抗原結合能を100%と仮定して比べた結果、マウス抗体2B7は、ヒト血清内で96時間まで同等な抗原結合能を有することを確認した(図16のA)。また、抗体の配列と構造が変化したヒト化抗体Hz2B7-1.1及びHz2B7-1.2も、ヒト血清内で約4日まで分解されずに一定の抗原結合能が維持されるものと確認された(図16のB及びC)。
【0151】
したがって、本発明のヒト化抗体遺伝子で形質転換されたCHO-DG44細胞でMTXを用いて抗体遺伝子を特異的に増幅することにより、本発明の抗体を生産する細胞株としてHz2B7-1.1-4H12-0.08-#1、Hz2B7-1.2-4A12-0.08-#9の細胞株を確立することができた。
【0152】
以上、本発明は、記載された実施形態に対してのみ詳細に説明されたが、本発明の技術思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であるのは当業者において明白なことであり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属するのは当然なことである。
図1
図2
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【配列表】
2024526134000001.app
【国際調査報告】