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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】新規な化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20240709BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07D471/04 121
C07D471/04 CSP
A61P31/04
A61K31/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578107
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2022067039
(87)【国際公開番号】W WO2022268890
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21181117.9
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】520117994
【氏名又は名称】デバイオファーム インターナショナル エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ゲールス,ビンセント
(72)【発明者】
【氏名】フィン,テリー
(72)【発明者】
【氏名】ポールズ,ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ベルマン,ジャッド
(72)【発明者】
【氏名】ブラーボ,フアン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB11
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
(57)【要約】
【課題】
グラム陰性菌及びグラム陽性菌、特に黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(K. pneumoniae)及びA.バウマニ(A. baumannii)に対する抗菌活性を示す化合物。これらの化合物を含有する医薬組成物、その治療的使用及びそれを製造する方法の提供。
【解決手段】
一般式(I)(式中、LHSは、式(II)であり、ここで、アスタリスク()は、結合点を示す)の化合物又はその医薬的に許容されるプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物を提供する。
【化1】

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、
LHSは、
【化2】

であり、ここで、アスタリスク()は、結合点を示し;
Yは、CH、NH及びNRからなる群から選択され;
は、O、S、NH及びN-C1~4アルキルからなる群から選択され;
は、F、CHF、CH及びClからなる群から選択されるか、又は代わりに、Rは、R14と一緒に、R14が結合されるNを含み、及び5~8つの環構成員を有する複素環を形成し、好ましくは、前記環中の唯一のヘテロ原子は、R14が結合される前記Nであり;
は、H、F、Cl、Br、I、C1~4アルキル、C1~4アルキレン-OR、NR、CO-NR、C1~4アルキレン-NR、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記C1~4アルキル、シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;
3a、R3b及びR3cは、独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CHからなる群から選択され;
及びRは、独立して、H、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;
は、H、F、I、Br、Cl、O、C1~4アルキル、CONH、OH、NH、O-C1~4アルキル、NH-C1~4アルキル、N(C1~4アルキル)、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NH、NO、CN、C2~4アルケニル、C2~4アルキニル、C2~4アルキニレン-OH、C2~4アルキニレン-NH、SOCH並びにO-C1~4アルキレン-OHからなる群から選択され;
10は、H又はメチルであり;
13は、H又はRからなる群から選択され;
14は、CHであるか、又は代わりに、R14は、LHSのRと一緒に、R14が結合されるNを含み、及び5~8つの環構成員を有する複素環を形成し、好ましくは、前記環中の唯一のヘテロ原子は、R14が結合される前記Nであり;及び
は、-POe2、-CH-OPOe2からなる群から選択され、Rは、H及び医薬的に許容される塩を形成するのに適した陽イオンからなる群から選択される)
の化合物又はその医薬的に許容されるプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物であって、
前記医薬的に許容されるプロドラッグは、好ましくは、式(I)に基づく化合物であって、リン酸メチレン部分又はホスホロアミダート部分を結合することによって修飾される化合物であり;
前記式(I)の化合物は、以下の実施形態(A)又は(B):
(A)Rは、H又はF、好ましくはHであり、及びRは、H、F、メチル、エチル、CN、OH、NH及びCH-OH;好ましくはH、F、メチル、CN、OH又はCH-OHからなる群から選択され;
11及びR12は、独立して、H、R、任意選択的に置換されるC1~4アルキルからなる群から選択され、前記任意選択的に置換されるC1~4アルキル基のそれぞれは、F、OH、OMe及びNH、NHMe、NMeから選択される置換基を保有し得るか、又は代わりに、R11及びR12は、それらが結合されるNと一緒に、複素環式基であって、前記二環式基に結合される窒素原子に加えて酸素原子又は窒素原子を任意選択的に含む4、5又は6つの環構成員を有すると共に、前記R11及びR12基を保有する複素環式基を形成し、前記複素環式基は、F、メチル、OH及びNHから独立して選択される1つ又は2つの置換基、好ましくはF、メチル、OH及びNHから選択される単一の置換基又はジェミナル若しくは異なる位置にあり得る2つのメチル基置換基を保有し得;
前記式(I)、実施形態(A)の化合物は、以下の化合物
【化3】

のいずれでもなく、及び
【化4】

などの前記化合物の立体異性体のいずれでもないこと、
(B)前記式(I)の化合物は、式(Ia)
【化5】

(式中、Rは、メチル基、ヒドロキシル基又はニトリル基であり;
11及びR12は、独立して、H、R、C1~4アルキル、CO-C1~4アルキル、SO(C1~4アルキル)、C1~4アルキル-F、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NHからなる群から選択されるか、又は代わりに、R11及びR12は、それらが結合される前記Nと一緒に、4~9つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基を形成するか、又はR11及びR12は、7~11の環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式スピロ基を形成し、前記複素環式基又は複素環式スピロ基は、1~3つのR基で置換され得、R11及びR12により、それらが結合される前記Nと一緒に形成される前記複素環式基は、好ましくは、前記R11及びR12基を保有する前記窒素原子に加えて酸素原子又はNH基を任意選択的に含む4、5又は6つの環構成員を有する、任意選択的に置換される複素環式基であり、前記任意選択的に置換される複素環式基は、F、メチル、OH及びNHから独立して選択される1つ又は2つの置換基、好ましくはF、メチル、OH及びNHから選択される単一の置換基又は2つのメチルを保有し得る)
によって特徴付けられ、
前記化合物は、Rを保有するキラル炭素原子及びNR1112を保有するキラル炭素原子に関連してジアステレオマー的に純粋であり;
実施形態(B)における前記式(Ia)の化合物は、
【化6】

ではないこと
の1つに従って更に特徴付けられる、化合物又はその医薬的に許容されるプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物。
【請求項2】
式(Ia)
【化7】

(式中、LHS、Y、R、R11、R12、R13及びR14は、請求項1、実施形態(A)に規定される通りである)
の化合物であり、前記化合物は、Rを保有するキラル炭素原子及びNR1112を保有するキラル炭素原子に関連してジアステレオマー的に純粋である、請求項1、実施形態(A)に記載の化合物。
【請求項3】
前記R基を保有する前記キラル炭素原子は、前記化合物が、一般式(1b)
【化8】
によって特徴付けられるように、前記複素環の面の下にある、請求項1、実施形態(B)又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
11及びR12は、R11及びR12が結合される前記窒素が6.0~8.5、好ましくは6.2~7.5、より好ましくは6.4~7.0の範囲のpKaを示すように選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
は、Oであり、Rは、CHであり、及び/又はR14は、CHである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
3aは、Hであり、R3bは、Hであり、R3cは、Hであり、及び/又はRは、H、F、Cl、Br、I及びNRからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
は、H、F、OH、CN、CH-OH又はメチル基から選択される、請求項1、実施形態(A)又は請求項2~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
11及びR12は、独立して、H、メチル、エチル、2-ヒドロキシエチル、2-アミノエチルから選択されるか、又はR11及びR12は、隣接する窒素原子と一緒に、アゼチジン基、ピロリジン基、ピペリジン基、モルホリン基及びピペラジン基から選択される複素環を形成し、前記複素環のそれぞれは、F、OH、NH及びメチルから選択される基によって置換されるか、又はジェミナル若しくは異なる位置にあり得る2つのメチル基によって置換され得る、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Yは、CHである、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
Yは、NHである、請求項1又は8に記載の化合物。
【請求項11】
Yは、CH又はNHであり;
は、Oであり;
は、CHであり;
13は、H又はRであり;
14は、CHであり;
は、H、F、Cl、Br、I及びNRから選択され;
3aは、Hであり、R3bは、Hであり、及びR3cは、Hであり;及び
11及びR12は、独立して、H、メチル、エチル、2-ヒドロキシエチル、2-アミノエチルから選択されるか、又はR11及びR12は、隣接する窒素原子と一緒に、アゼチジン基、ピロリジン基、ピペリジン基、モルホリン基及びピペラジン基から選択される複素環を形成し、前記複素環のそれぞれは、F、OH、NH及びメチルから選択される基によって置換されるか、又はジェミナル若しくは異なる位置にあり得る2つのメチル基によって置換され得る、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
【化9】

【化10】

【化11】

並びにそのいずれかの医薬的に許容されるプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項14】
治療の方法に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物又は組成物であって、好ましくは、前記治療の方法は、細菌感染症を治療する方法であり、好ましくは、前記細菌感染症は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及びA.バウマニ(A. baumannii)からなる群から選択される1つ又は複数の細菌に関連し、最も好ましくは、前記細菌感染症は、A.バウマニ(A. baumannii)に関連し、及び好ましくは肺炎、最も好ましくは院内肺炎である、化合物又は組成物。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物を製造する方法であって、式M1又はM1’
【化12】

(式中、Xは、好ましくは、ヒドロキシル基、トシレート基、トリフレート基、メシレート基、ヨウ化物、臭化物、塩化物、メトキシ及びエトキシから選択される脱離基を表し、及びPgは、好ましくは、Boc基、PMB基及びDMB基から選択される保護基を表す)
の前駆体化合物を、式M2b
【化13】

(式中、Y、Q及び全てのR基は、請求項1~12のいずれか一項に規定されたものと同じ意味を有し、並びにR11及び/又はR12は、上記に規定されるように定義されることに加えて、好ましくはBoc基、PMB基及びDMB基から選択される保護基も含み得る)
のアミン化合物とカップリングさせるステップを含む第1の変形形態;及び式M6又はM6’
【化14】

の化合物を、式M7b
【化15】

(式中、Pgは、好ましくは、Boc基、PMB基及びDMB基から選択される保護基を表し、Y、Q及び全てのR基は、請求項1~12のいずれか一項に規定されたものと同じ意味を有し、R11及びR12は、請求項1~12のいずれか一項に定義される基であり得るか、又は好ましくはBoc基、PMB基及びDMB基から選択される保護基も含む前記定義される基であり得る)
の化合物とカップリングさせるステップを含む第2の変形形態から選択される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗生物質化合物、それを含む医薬組成物並びに細菌感染症の治療のためのこれらの化合物及び組成物の使用に関する。本発明は、本発明の前記化合物を作製する方法に更に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
抗生物質耐性は、世界中のあらゆる地域で危険なほど高いレベルに上昇しており、増え続ける様々な感染症を有効に治療及び予防するための人々の能力を脅かしている。したがって、定着した抗生物質が機能しない場合に活性を示し得る新規な抗生物質化合物の開発が必要とされている。
【0003】
あらゆるタイプの細菌(グラム陰性菌及びグラム陽性菌の両方)は、ある程度の抗生物質耐性を生じるものと考えられるが、特定の細菌種、例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(S. aureus)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(K. pneumoniae)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)(A.バウマニ(A. baumannii))及び大腸菌(Escherichia coli)(E. coli)は、他の種より抗生物質耐性に関連している。したがって、これらの細菌種の1つ又は複数に対して活性な新規な抗生物質化合物に対する特定の必要性があり得る。
【0004】
最近開発された新しい種類の抗生物質化合物は、FabI阻害剤である。これらの化合物は、II型細菌脂肪酸生合成経路(FAS-II)からのNADH依存性エノイルレダクターゼ(FabI)を阻害し、それにより、定着した抗生物質が機能しない場合に細菌感染症を治療するための代替的な手法を提供する。有利には、このFabI作用機序は、定着した抗生物質に対する交差抵抗性を示すことが予想されていない。しかしながら、公知のFabI阻害剤化合物は、一部の細菌種に対して非常に有効であり得るが、前記化合物は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、A.バウマニ(A. baumannii)及び肺炎桿菌(K. pneumoniae)、特にグラム陰性菌種大腸菌(E. coli)、A.バウマニ(A. baumannii)及び肺炎桿菌(K. pneumoniae)等の他の種に対して活性でないことがあるか又は不十分な活性を有し得る。例えば、国際公開第2020/099341 A1号は、淋菌(N. gonorrhoeae)細菌感染症の治療において有効なFabI阻害剤を開示している。これらの化合物が、大腸菌(E. coli)、A.バウマニ(A. baumannii)及び肺炎桿菌(K. pneumoniae)による感染症を治療するためにも使用され得るかどうかは、依然として明らかになっていない。これは、これらのグラム陰性菌の外膜及び内膜の両方に浸透する問題、流出によって更に化合され得る問題のためであり得る。したがって、(特に定着した抗生物質が機能しない場合に)グラム陽性菌及び/又はグラム陰性菌、特に黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(K. pneumoniae)及びA.バウマニ(A. baumannii)の1つ又は複数、最も特に大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(K. pneumoniae)及びA.バウマニ(A. baumannii)に対して抗菌活性を示し得る化合物及びそれを含む医薬組成物が依然として必要とされている。更に、このような化合物は、好ましい肺曝露を示し、及び定着した抗生物質に対する交差抵抗性を生じないことが好ましく、このような化合物は、低い/許容可能な副作用の発生率を生じることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、これらの上記の必要性の1つ又は複数に対処することである。本発明の根底にある更なる目的及び課題は、本発明の以下の説明から明らかになり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
意外なことに、本発明者らは、本発明の目的が本発明の化合物、医薬組成物、その治療的使用及び合成方法によって達成され得ることを見出した。本発明は、添付の請求項1に記載される化合物、医薬的に許容される塩、プロドラッグ及び/又は溶媒和物を含む。好ましい実施形態は、後続の請求項2~12に記載される。
【0007】
本発明は、医療に使用するためのこのような化合物を更に提供する。本発明の化合物を含む医薬組成物も提供される。これらは、添付の請求項13に記載される。
【0008】
本発明の更に別の態様は、治療の方法に使用するための、本明細書に記載される化合物の提供に関し、好ましくは、治療の方法は、細菌感染症を治療する方法であり、好ましくは、細菌感染症は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及びA.バウマニ(A. baumannii)からなる群から選択される細菌の1つ又は複数に関連し、最も好ましくは、細菌感染症は、A.バウマニ(A. baumannii)に関連し、好ましくは肺炎、最も好ましくは院内肺炎である。したがって、本発明は、細菌感染症の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、患者への、本明細書に記載される化合物の投与を含む方法も提供する。好ましくは、前記細菌感染症は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及びA.バウマニ(A. baumannii)からなる群から選択される細菌の1つ又は複数に関連し、最も好ましくは、細菌感染症は、A.バウマニ(A. baumannii)に関連する。感染症は、好ましくは、肺炎、最も好ましくは院内肺炎である。
【0009】
本発明は、例えば、添付の請求項15に記載される本発明の化合物を製造する方法を更に提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
定義
以下に示す定義は、読者を支援するために提供するものである。別段の指定がない限り、本明細書において使用する全ての技術用語、表記法並びに他の科学及び医学用語又は専門用語は、化学及び医学分野の当業者に一般に理解されている意味を有することが意図されている。一般に理解されている意味を有する用語を明確化すること及び/又は容易に参照できるようにすることを目的として、本明細書において定義する場合もあるが、この種の定義を本明細書に含めることは、当技術分野において一般に理解されている用語の定義との実質的な違いを表すものと解釈すべきではない。
【0011】
幾つかの実施形態において、「約」という語は、記載した値から±10%の変動があることを表す。本明細書において数字に言及する際に「約」という語を使用した場合、本発明の更なる他の実施形態は、「約」という語で修飾されていないその数字を包含することを理解すべきである。
【0012】
薬物を患者に「投与する」又は「~の投与」(及びこの句の文法上の均等物)とは、医療従事者による患者への投与若しくは自己投与であり得る直接投与及び/又は薬物を処方する行為であり得る間接投与を指す。例えば、薬物の自己投与を患者に指導するか又は患者に薬物の処方箋を提供する医師は、患者に薬物を投与している。
【0013】
「用量」及び「投与量」という語は、投与される活性剤又は治療剤の具体的な量を指す。このような量は、「剤形」に含有される。剤形は、ヒトの対象及び他の哺乳動物のための投与単位として適した物理的に分離した単位を指し、各単位は、所望の作用発現、忍容性及び治療効果を発揮するように算出された予め定められた量の活性剤を1種又は複数の担体等の適切な賦形剤と一緒に含有する。
【0014】
本特許出願において使用される「治療」及び「療法」という語は、健康問題を改善することを目的として、疾患及び/又は徴候を治癒及び/又は改善することを企図して使用される一連の衛生学的、薬理学的、外科学的及び/又は物理的手段を指す。「治療」及び「療法」という語は、いずれも個人及び動物の健康の維持及び/又は回復を対象とするため、予防的方法及び治癒的方法を包含する。その徴候、疾患及び障害の起源に関わらず、健康問題を改善及び/又は治癒するのに適した医薬の投与は、本出願に関連する治療又は療法の一形態と解釈すべきである。
【0015】
本明細書に用いる「単位剤形」という語は、治療すべき対象に適した治療用製剤の物理的に分離した単位を指す。しかしながら、本発明の組成物の1日の総使用量は、担当医が合理的な医学的判断の範囲内で決定することが理解されるであろう。任意の特定の対象又は生物に対する具体的な有効用量は、治療すべき障害及びその治療の重症度、採用した具体的な活性剤の活性;採用した具体的な組成物;対象の年齢、体重、全体的な健康、性別及び食事;採用した具体的な活性剤の投与時間及び排泄率;治療期間;採用した具体的な化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬物及び/又は追加の療法等、医療技術分野においてよく知られている様々な因子に応じて変化するであろう。
【0016】
本明細書において用いる冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、1つ又は1つを超える(即ち少なくとも1つの)冠詞の文法上の目的語を指す。一例として、「要素」は、1つの要素又は1つを超える要素を意味する。
【0017】
「包含する」という語は、「含むが、限定されない」ことを意味するために使用される。「含む」及び「含むが、限定されない」は、互換的に使用される。「含む」という語は、「包含する」と同義で使用される。「からなる」という語は、列挙した構成要素が存在するが、それ以外の言及されていない構成要素が存在しないことを示すために使用する。「含む」という語は、好ましい実施形態としての「からなる」の意味を包含するように使用される。
【0018】
「FabI」という語は、当技術分野において認識されており、細菌の脂肪酸生合成の各サイクルに関与する4つの反応の最終段階でエノイル(アシル輸送タンパク質)(ACP)還元酵素として機能すると考えられている細菌の酵素を指す。この酵素は、細菌及び植物中に広く分布すると考えられている。
【0019】
「酵素阻害剤」という語は、酵素がそれぞれの生化学的な役割を効果的に遂行することを阻害する任意の化合物を指す。したがって、「FabI阻害剤」は、FabIがその生化学的な役割を遂行するのを阻害する任意の化合物である。この種の任意の化合物による酵素の阻害量は、変化するであろう。これに関して、本明細書及び他の箇所に記載されている。
【0020】
「抗生剤」又は「抗菌剤」という語は、あらゆる細菌性障害又はその合併症(それに起因する及び/又は本明細書に記載するあらゆる状態、疾患又は合併症を含む)を治療するか、予防するか又は他に重症度を低下するのに有用な任意の薬物を意味するものとする。抗生剤としては、例えば、セファロスポリン系、キノロン系及びフルオロキノロン系、ペニシリン系及びβラクタマーゼ阻害剤、カルバペネム系、モノバクタム系、マクロライド系及びリンコサミド系、グリコペプチド系、リファンピン、オキサゾリジノン系、テトラサイクリン系、アミノグリコシド系、ストレプトグラミン系、スルホンアミド系等の抗菌剤が挙げられる。他の抗生剤又は抗菌剤も本明細書に開示されており、これらは、当業者に知られている。特定の実施形態において、「抗生剤」という語は、FabI阻害剤である剤を含まず、したがって、特定の例における本発明の組合せは、FabI阻害剤である1種の剤と、FabI阻害剤でない他の剤とを含む。
【0021】
本明細書において使用する「薬物」という語は、2001年11月6日付け指令2001/83/ECの2012年11月16日版の第1条第2(a)、2(b)若しくは3a項に示されている定義又は2001年11月6日付け指令2001/82/ECの2009年8月7日版の第1条、第2(a)若しくは2(b)項に示されている定義及び2004年3月31日付け規則(EC)No.726/2004の第2条に示されている定義の少なくとも1つの範囲に含まれる任意の物質を指す。
【0022】
本明細書において用いられる「病気」という語は、生物による感染により引き起こされるか、又はそれに関連する任意の病気を指す。
【0023】
本明細書において用いられる「細菌性の病気」という語は、細菌による感染により引き起こされるか、又はそれに関連する任意の病気を指す。
【0024】
「シス」という語は、当技術分野において認識されており、二重結合に対する2つの原子又は基の配置が、その原子又は基が二重結合の同じ側にあるような配置であることを指す。シス配置は、(Z)配置と表記されることも多い。
【0025】
「トランス」という語は、当技術分野において認識されており、二重結合に対する2つの原子又は基の配置が、その原子又は基が二重結合の反対側にあるような配置であることを指す。トランス配置は、(E)配置と表記されることも多い。
【0026】
「治療効果」という語は、当技術分野において認識されており、薬理活性物質によって引き起こされる、動物、特に哺乳動物、より詳細にはヒトの局所又は全身作用を指す。したがって、この語は、動物又はヒトにおける、疾患の診断、治癒、緩和、治療若しくは予防又は所望の身体的若しくは精神的な発達及び/又は状態の向上に関する、任意の測定可能な効果を意味する。「治療有効量」という句は、この種の物質が、任意の治療において適切な妥当なリスク・ベネフィット比で何らかの望ましい局所又は全身作用をもたらす量を意味する。この種の物質の治療有効量は、治療を受ける対象及び疾患の状態、対象の体重及び年齢、疾患の状態の重症度、投与様式等に応じて変化することになり、これは、当業者であれば容易に決定することができる。例えば、本発明の特定の組成物を、この種の治療において適切な妥当なリスク・ベネフィット比でもたらすのに十分な量で投与することができる。
【0027】
「キラル」という語は、当技術分野において認識されており、鏡像の相手と重ね合わせることができない性質を有する分子を指す一方、「アキラル」という語は、その鏡像の相手と重ね合わせることができる分子を指す。「プロキラルな分子」とは、特定のプロセスによってキラルな分子に変換される潜在性を有する分子である。
【0028】
本開示の化合物は、1つ又は複数の不斉中心及び/又は二重結合を含むことができ、したがって幾何異性体、エナンチオマー又はジアステレオマーとして存在することができる。エナンチオマー及びジアステレオマーは、不斉炭素原子に対する置換基の配置に応じて、記号「(+)」、「(-)」、「R」又は「S」で表すことができるが、当業者であれば、ある構造が暗黙的に1つ又は複数の不斉中心を表し得ることを認識するであろう。エナンチオマー又はジアステレオマーの混合物は、命名法において「(±)」で表すことができるが、当業者であれば、ある構造が暗黙的にキラル中心を表し得ることを認識するであろう。炭素-炭素二重結合に対する置換基の配置又はシクロアルキル環若しくは複素環に対する置換基の配置の結果として生じる幾何異性体は、本発明の化合物にも存在し得る。
【0029】
記号
【化1】

は、本明細書に記載するような単、二重又は三重結合であり得る結合を表す。
【0030】
炭素-炭素二重結合上の置換基は、「Z」又は「E」配置と表され、「Z」及び「E」という語は、IUPAC標準に準拠して使用される。別段の指定がない限り、二重結合が描かれている構造は、「E」体及び「Z」体の両方の異性体を包含する。代わりに、炭素-炭素二重結合上の置換基は、「シス」又は「トランス」と称することもでき、「シス」は、二重結合の同じ側にある置換基を表し、「トランス」は、二重結合の反対側にある置換基を表す。炭素環上の置換基の配置も「シス」又は「トランス」と表すことができる。「シス」は、環の平面に対して同じ側にある置換基を表し、「トランス」は、環の平面に対して反対側にある置換基を表す。置換基が環平面に対して同じ側に配置されている化合物及び反対側に配置されている化合物の両方の混合物は、「シス/トランス」又は「Z/E」と表される。
【0031】
本明細書において用いる「立体異性体」という語は、幾何異性体、エナンチオマー又はジアステレオマーの全てからなる。本発明は、これらの化合物の様々な立体異性体及びそれらの混合物を包含する。開示した化合物の配座異性体及び回転異性体も想定されている。
【0032】
「IC50」という語は、当技術分野において認識されており、所与の生物学的又は生化学的プロセス(又はプロセスの構成要素、即ち酵素、細胞、細胞受容体又は微生物)を阻害する際の物質の有効性を指す。IC50は、インビトロで50%の阻害に必要とされる、薬物、例えば本発明の化合物の濃度を表す。
【0033】
「MIC」という語は、当技術分野において認識されており、通常、mg/L又はμg/mLとして報告される、一晩のインキュベーション後の、微生物の目に見える成長を阻害する抗微生物の最低濃度である最小阻害濃度を指す。
【0034】
「抗微生物」という語は、当技術分野において認識されており、本明細書に開示する化合物が細菌、真菌、原生生物、ウィルス等の微生物の成長を防止するか、抑制するか又は機能を損なわせる能力を指す。
【0035】
「抗菌」という語は、当技術分野において認識されており、本明細書に開示する化合物が、細菌である微生物の成長を防止するか、抑制するか又は機能を損なわせる能力を指す。
【0036】
「微生物」という語は、当技術分野において認識されており、微小生物を指す。特定の実施形態において、微生物という語は、細菌に適用される。他の実施形態において、この語は、微小生物の病原性を示す形態を指す。
【0037】
特段の指定がない限り、「肺曝露」という用語は、患者の肺に送達される薬物の量を特徴付ける。この特性は、1mg/kgで静脈内(IV)投与され、肺AUC lastを決定する、対象とする化合物を用いて、マウスPKによって定量化され得る。「好ましい肺曝露」は、例えば、肺AUC last>1000hng/mlを有する肺曝露であると見なされ得る。この閾値を超えるAUC値は、肺感染症の治療に特によく適していると見なされる。
【0038】
本明細書において用いられる「アルキル」という語は、飽和直鎖又は分岐炭化水素、例えば本明細書においてそれぞれC~Cアルキル又はC~Cアルキルと称する、1~8又は1~6つの炭素原子を有する直鎖又は分岐基を指す。本明細書において使用する「低級アルキル」という語は、具体的には、飽和の直鎖又は分岐の炭化水素、例えば本明細書においてそれぞれC~Cアルキル及びC~Cアルキルと称する、1~4又は1~3つの炭素原子を有する直鎖又は分岐基を指す。例示的なアルキル基及び低級アルキル基としては、これらに限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、3-メチル-2-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル及びヘキシルが挙げられる。
【0039】
更に、「アルキル」(又は「低級アルキル」)という語は、アルカンジイル基又はアルキレン基と称することもある2価飽和直鎖又は分岐炭化水素基も含む。「アルキル」という語は、非置換基だけでなく、「置換アルキル」も包含し、即ち1つ又は複数の位置における1つ又は複数の置換基を任意選択的に有することが理解されるべきである。即ち、これは、炭化水素骨格の炭素上の水素をそれぞれ置き換える1つ又は複数(例えば2つ、3つ、4つ、5つ、6つ等)の置換基を有するアルキル部分も指す。この種の置換基としては、例えば、ヒドロキシル、カルボニル基(ここで、カルボニル基は、例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル又はアシル基となるように、水素原子、アルキル基又は本段落で定義する他の基を有する)、チオカルボニル含有基(ここで、カルボニル基は、例えば、チオエステル、チオアセテート又はチオホルメートとなるように、水素原子、アルキル基又は本段落に定義する他の基を有する)、アルコキシル、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフェート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、シクロアルキル、複素環又は芳香族若しくは複素芳香族部分を挙げることができる。上述の基が1価を超える原子価を有する全ての例において、更なる遊離原子価は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環式基、アリール基又はヘテロアリール基で飽和し得る。更に、当業者は、炭化水素鎖を置換する部分が、適切な場合、それ自体置換され得ることを理解するであろう。例えば、置換されたアルキルの置換基として、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネート、ホスフィネート及びホスフェートを含む)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイル及びスルホネートを含む)及びシリル基に加えて、エーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート及びエステルを含む)、ニトリル及びイソニトリルの置換及び無置換の形態を挙げることができる。誤解を避けるために、他のアルキル基を有するアルキル基は、他のアルキル基を有するアルキル基としてではなく、単一の分岐アルキル基と見なすべきである。
【0040】
「アルキレン」という語は、当技術分野において認識されており、2遊離原子価を有することを除いて、上に定義されるアルキル基に対応する基を指す。アルキレン基は、アルカンジイル基と称することもある。
【0041】
「アルケニル」という語は、当技術分野において認識されており、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を有することを除いて上に定義したアルキル基に相当する基を指す。当然のことながら、二重結合の総数はアルケニル基の炭素原子の数により制限され、少なくとも1つの二重結合が可能になるために、アルケニル基は少なくとも2つの炭素原子を有していなければならない。この違いを除いて、上述のアルキル基の定義及び特徴は、アルケニル基にも同様に適用される。
【0042】
「アルキニル」という語は、当技術分野において認識されており、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合を有することを除いて、上に定義したアルキル基に相当する基を指す。当然のことながら、二重結合の総数は、アルケニル基の炭素原子の数により制限され、少なくとも1つの三重結合が可能になるために、アルキニル基は少なくとも2つの炭素原子を有していなければならない。この違いを除いて、上述のアルキル基の定義及び特徴は、アルキニル基にも同様に適用される。
【0043】
「アリール」という語は、当技術分野において認識されており、純粋な芳香族炭素環であり得るか、又は0~4つのヘテロ原子を含み得る5員又は6員の単環芳香族基、例えばベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジン等を指す。これらのアリール基で環構造内にヘテロ原子を有するものは、「ヘテロアリール」又は「複素芳香族」と称することもできる。芳香族環は、非置換であるか、又は環の1つ又は複数の位置が、上に述べたような置換基、例えばハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフェート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又は複素芳香族部分、-CF、-CN等で置換され得る。「アリール」という語は、2以上の環を有し、2つの隣接する環(この環は「縮合環」である)が2つ以上の炭素を共有しており、少なくとも1つの環が上に定義されるように芳香族であるが、1つ又は複数の更なる縮合環に関して特に制限はなく、例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又はヘテロシクリルであり得る、多環系も包含する。
【0044】
「アラルキル」又は「アリールアルキル」という語は、当技術分野において認識されており、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、芳香族又は複素芳香族基)を指す。
【0045】
「炭素環」という語は、当技術分野において認識されており、環の各原子が炭素である芳香族又は非芳香族環を指す。
【0046】
本明細書において用いられる「シクロアルキル」という語は、本明細書では、例えば「C3~6シクロアルキル」又は「C4~6シクロアルキル」と称され、シクロアルカンから誘導される、例えば3~6つ又は4~6つの炭素を有する単環式の飽和又は一部不飽和アルキル又はアルケニル基を指す。例示的なシクロアルキル基としては、これらに限定されるものではないが、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロペンタン、シクロブタン、シクロプロパン又はシクロペンテンが挙げられる。前記シクロアルキル基は、無置換であるか、又は1つ若しくは複数の位置が上に記載した1つ若しくは複数の置換基で置換され得る。
【0047】
本明細書において用いられる「ハロゲン」という語は、F、Cl、Br又はIを指す。「ハライド」は、ハロゲンの対応する陰イオンを表す。
【0048】
本明細書において用いられる「アミノ」は、一般構造-NRによって表される任意の基を指し、特段の指定がない限り、R及びRは、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素環式基に加えて、置換アルキル基の範囲に関して上に列挙した他の任意の置換基からなる群から独立して選択され、但し、カルボニル基、チオカルボニル基、イミン基並びにN、O、S及びPから選択されるヘテロ原子を介して分子の残りに結合している置換基を除く。代わりには、R及びRは、それらが結合されている窒素原子と一緒になって複素環を形成するように結合している炭化水素基を表すこともできる。
【0049】
本明細書において用いられる「ヘテロアリール」という語は、同一でるか又は異なり得る、窒素、酸素及び硫黄等の1つ又は複数のヘテロ原子、例えば1~3つのヘテロ原子を含む単環式の芳香族5~6員環系を指す。可能な場合、前記ヘテロアリール環は、隣接する基に炭素又は窒素を介して結合することができる。ヘテロアリール環の例としては、これらに限定されるものではないが、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ピロール、チアゾール、オキサゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン及びピリミジンが挙げられる。前記ヘテロアリール基は、無置換であるか、又はアリール基に関して上に記載した1つ若しくは複数の置換基で置換され得る。「ヘテロアリール」という語は、2つ以上の環を有し、2つの隣接する環(この環は「縮合環」である)が2つ以上の炭素又はヘテロ原子を共有しており、少なくとも1つの環が上に定義したヘテロアリールであり、それと同時に、他の環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、芳香族環及び/又は飽和若しくは不飽和若しくは芳香族の複素環であり得る、多環系も包含する。
【0050】
本明細書において用いられる「複素環」という語は、同一であるか又は異なり得る1つ又は複数のヘテロ原子、例えば窒素、酸素及び硫黄等の1~3つのヘテロ原子を含む単環を指す。残りの環構成員は炭素原子で構成されている。複素環は、通常、4~8つの環構成員、好ましくは5又は6つの環構成員を有する。特段の指定がない限り、複素環は、芳香族、部分飽和又は完全飽和であり得る。特段の指定がない限り、これは、本明細書に規定する許される置換基を含んでいてもいなくてもよい。
【0051】
本明細書において用いられる「複素環式スピロ」という語は、同一であるか又は異なり得る1つ又は複数のヘテロ原子、例えば窒素、酸素及び硫黄等の1~3つのヘテロ原子を含む、スピロ環構造、例えば二環式構造を指す。残りの環構成員は炭素原子で構成されている。複素環式スピロは、通常、7~11の環構成員、好ましくは7又は9つの環構成員を有する。特段の指定がない限り、複素環式スピロは、部分飽和又は完全飽和であり得る。特段の指定がない限り、これは、本明細書に規定する許される置換基を含んでいてもいなくてもよい。
【0052】
本明細書において用いられる「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」という語は、-OH基を指す。
【0053】
「ニトロ」という語は、当技術分野において認識されており、-NOを指し;「スルフヒドリル」という語は、当技術分野において認識されており、-SHを指し;「スルホニル」という語は、当技術分野において認識されており、-SO-を指す。
【0054】
各表現の定義は、それが任意の構造内に1回を超えて出現する場合、その定義は同一構造内の他の箇所の定義とは独立していることが意図されている。
【0055】
「トリフリル」、「トシル」、「メシル」及び「ノナフリル」という語は、当技術分野において認識されており、それぞれトリフルオロメタンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基、ノナフルオロブタンスルホニル基を指す。トリフラート、トシラート、メシラート及びノナフラートという語は、当技術分野において認識されており、それぞれトリフルオロメタンスルホナート、p-トルエンスルホナート、メタンスルホナート及びノナフルオロブタンスルホナート官能基並びに前記基を含む分子を指す。
【0056】
略語Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts及びMsは、それぞれメチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p-トルエンスルホニル及びメタンスルホニルを表す。当業者である有機化学者が利用する略語のより包括的な一覧は、Journal of Organic Chemistryの各巻の第1号に掲載されており、この一覧は、通常、Standard List of Abbreviationsと題した表に記載されている。
【0057】
本明細書において言及される際のアミノ基の「pKa」は、以下の酸-塩基反応の平衡を特徴付けることが意図される。
【化2】

以下の通りである:pKa=-log10(Ka)
式中、Ka=[c(R-N(R11)(R12))c(H)]/c(R-NH(R11)(R12
c( )は、括弧内に記載される成分の濃度をmol/l単位で示し、平衡定数Kaの単位mol/lは、その対数を計算するときに省略される。アミノ基のpKa値は、化合物を半滴定し(c(R-N(R11)(R12))=c(R-NH(R11)(R12になるように)、pHを決定することによって決定され得る。ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式によれば、pKa=滴定の該当する時点におけるpHであり、pKaは、pHの決定によって得られるようになっている。本発明の一実施形態によれば、pKaは、ソフトウェアChemDraw Professional, version 17. 1. 0. 105の化学的特性(標準パラメータ)の範囲内の対応する特徴に依拠する計算によって決定され得る。
【0058】
「プロドラッグ」という語は、活性化合物(薬物)の誘導体であって、体内等の使用条件下で変換されて、活性薬物を放出するものを指す。プロドラッグは、必ずしもそうではないが、多くの場合、活性薬物に変換されるまでは薬理学的に不活性である。
【0059】
「置換」又は「~で置換された」には、そのような置換が、置換された原子及び置換基に許される原子価に従うものであること並びにその置換により、安定した化合物、例えば自発的に転位、環化、脱離又は他の反応等の変換を起こさない化合物が得られるという暗黙の条件を含むことが理解されるであろう。
【0060】
「置換された」という語は、有機化合物に許されているあらゆる置換基を含むことも想定している。広い態様において、許される置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、例えば、本明細書において、例えば置換アルキルに関連して上に記載したものが挙げられる。許される置換基は、適切な有機化合物において1つ又は複数であり得、同一であるか又は異なり得る。本開示の目的上、窒素等のヘテロ原子は、水素置換基及び/又はそのヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載する有機化合物の任意の許される置換基を有することができる。これに関連する「許される置換基」という語は、化学結合形成の一般原則、例えば対象の原子の価電子の最大数に反することなく、及び治療効果を達成するために必要とされる最小用量であってさえも患者に許容できない毒性が認められるほど化合物に毒性を生じさせることなく、コア分子に結合することができる任意の置換基を意味する。
【0061】
本発明の目的上、化学元素は、Handbook of Chemistry and Physics, 67th Ed., 1986-87の表紙裏のCAS方式の元素周期律表に従い同定する。同じく本開示の目的上、「炭化水素」という語には、少なくとも1つの水素原子及び1つの炭素原子を有するあらゆる許される化合物を包含することが想定されている。広い態様において、許される炭化水素としては、置換又は無置換であり得る、非環式及び環式の分岐及び非分岐の炭素環式及び複素環式の芳香族及び非芳香族有機化合物が挙げられる。
【0062】
「医薬的に許容される塩」という語は、当技術分野において認識されており、例えば本発明の組成物に含まれるもの等、及び他の承認薬(この承認は、本出願の発効日までの時点でEU、USA、CA、JP、CN又はKRのいずれかの規制当局によるものであり得る)中に存在するもの等、比較的毒性がない、化合物の無機及び有機酸付加塩又は無機若しくは有機塩基付加塩を指す。
【0063】
「ジアステレオマー的に純粋」という用語は、2つ以上のキラル中心を有するキラル化合物が、分子の90%以上、好ましくは95%以上が1つのジアステレオマー配置にあり、分子の10%以下、好ましくは5%以下が他のジアステレオマー配置にあるように提供されることを示す。同様に、「エナンチオマー的に純粋」という表示は、分子の90%以上、好ましくは95%以上がエナンチオマーの1つの形態で存在し、10%以下、好ましくは5%以下が他のエナンチオマーの形態で存在する(即ち化合物が80%ee以上、好ましくは90%ee以上の鏡像体過剰率を有する)ことを示す。立体化学についての情報を含む構造式による化合物の表示は、化合物が上記の定義に従ってジアステレオマー的に純粋又はエナンチオマー的に純粋であることを示す。化合物が、キラル原子の1つの立体化学についての情報を示さない構造式に関連してジアステレオマー的に純粋であるという語句の記載は、立体化学についての情報を有さない前記キラル原子が、2つの可能な配置のいずれか1つで存在し得るが、ただし、可能な配置の1つが、上記の基準が満たされるように優勢でなければならない、即ち1つのジアステレオマーが90%以上又は好ましくは95%以上の相対量で存在することを示す。
【0064】
「治療」という語は、その結果として、状態、疾患、障害等が改善する、例えば軽減、縮小、調節又は解消される任意の有意な作用を含む。
【0065】
「予防的」又は「治療的」治療という語は、当技術分野において認識されており、宿主に1種又は複数の対象の組成物を投与することを指す。望まない状態(例えば、宿主動物の疾患又は他の望まない状況)の臨床徴候が出現する前に投与を行った場合、その治療は予防的である、即ち宿主を望まない状態の発生から保護する。一方、望まない状態が出現した後に投与を行った場合、その治療は治療的である(即ち既に発生している望まない状態又はそれによる副次的作用を減少、回復又は維持することを目的とする)。
【0066】
対象の方法により治療すべき「患者」、「対象」又は「宿主」は、ヒト又は非ヒト動物のいずれかを意味することができる。非ヒト動物としては、伴侶動物(例えば、ネコ、イヌ)及び消費用として育てられた動物(例えば、食用動物)、例えばウシ、ブタ、ニワトリが挙げられる。非ヒト動物は、好ましくは哺乳動物である。
【0067】
「哺乳動物」という語は、当技術分野において知られており、例示的な哺乳動物としては、ヒト、霊長類、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられる。
【0068】
「生物学的に利用可能な」という語は、当技術分野において認識されており、対象とする開示又は投与された量の一部を、それを投与した対象又は患者に吸収されること、取り込まれること又は他に生理学的に利用可能となることを可能にする形態を指す。
【0069】
「医薬的に許容される担体」という語は、当技術分野において認識されており、任意の対象となる組成物又はその構成成分を、ある臓器又は身体のある部位から他の臓器又は身体の他の部位に運ぶか又は輸送することに関与する、医薬的に許容される材料、組成物又は媒体、例えば液体又は固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル化材料を指す。各担体は、対象となる組成物及びその構成成分と適合性を有し、患者に有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。医薬的に許容される担体として作用することができる材料の一部の例として、以下のものが挙げられる:(1)糖類、例えばデキストロース、ラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン類、例えばコーンスターチ及びバレイショデンプンに加えて、デンプン誘導体、例えばシクロデキストリン及び変性シクロデキストリン(好ましくは(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン及びスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを含む);(3)セルロース及びその誘導体、例えば微結晶セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び酢酸セルロース;(4)トラガカント粉末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)マトリックスを形成する高分子賦形剤、例えばポリビニルピロリジン(PVP)、例えばPVP K30、アクリル系ポリマー及びコポリマー、例えば異なるグレードのEudragit、好ましくはEurdragit L100、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、他のコポリマー、例えばSoluplus等のポリエチレングリコール系コポリマー;(9)賦形剤、例えばカカオ脂及び坐剤用ロウ;(10)油、例えば落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及びダイズ油;(11)グリコール、例えばプロピレングリコール;(12)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;(13)エステル、例えばオレイン酸エチル、ベヘン酸グリセリル及びラウリン酸エチル;(14)寒天;(15)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(16)アルギン酸;(17)発熱性物質を含まない水;(18)等張性生理食塩水;(19)リンゲル液;(20)エチルアルコール;(21)リン酸緩衝液;並びに(22)医薬製剤に使用される他の適合性を有する無害な物質。開示した賦形剤は1を超える作用を提供することができる。例えば、充填剤及び結合剤は、崩壊剤、流動化剤、付着防止剤、滑沢剤、甘味料等にもなり得る。
【0070】
本明細書において用いられる「溶媒」という用語は、自身以外の対象物質(「溶質」)をかなりの量溶解し、それにより透明及び均質な溶液を生成することができる液体化学物質を意味する。「かなりの量」という語は、溶解した溶質の量が、その溶液に意図されている使用を必ず可能にするような、その意図されている使用に応じて決まる量である。例えば、本発明の化合物を溶液形態で注射により投与することが意図されている場合、溶媒は、治療的用量の投与が可能になるような量の化合物を溶解することができなければならない。
【0071】
「酸」及び「塩基」という語は、それぞれプロトン供与体及びプロトン受容体(即ちブレンステッド酸及び塩基)としてのそれらの従来の意味を有するように使用される。「強塩基」は、THF中のt-BuOKの塩基性又はそれより強い塩基性を有する任意の塩基であることを意味する。「弱酸」は、1MのHSOの酸性又はそれより弱い酸性を有する任意の酸であることを意味する。
【0072】
特段の指定がない限り、本明細書に記載する全ての反応は、所望の目的化合物を生成させ、反応速度及び選択性の間で合理的な妥協点が見出される反応温度で実施される。Pdをベースとするカップリング反応及びFeをベースとする環化反応の典型的な反応温度は、80℃~90℃である一方、保護基の除去は、通常、0℃~室温(25℃)の温度で達成される。
【0073】
特段の指定がない限り、可変基が、式Iの化合物並びに式Ia及びIbのその特定の実施形態について規定されたものと同一であるという、従属請求項中の全ての記載は、他の従属請求項中でこれらの可変基に関して記載されるより具体的な意味も可能であり、一層好ましいと理解すべきである。同じことが一般的な説明中の可変基の意味の説明にも適用される。異なる可変基に関して意味の組合せに依存することが特に好ましく、これらの意味の2、3つ又はそれを超えるもの及び理想的には全てが好ましいものと個別に記載されている。
【0074】
特段の指定がない限り、本明細書における「保護基」という語は、ある官能基が、想定されている化学反応に参加しないように、この官能基に結合させた基の特徴を表すために用いられる語である。保護基は、想定されている反応条件下で不活性でなければならないが、この保護基は、分子の他の部位においてそれ以上の変換が起こらないように化合物から除去することも可能でなければならない。各官能基に適した保護基は、“Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis”, Peter G. M. Wuts, Theodora W. Greene, John Wiley & Sons, 20 Dec 2012に記載されている。
【0075】
概説
意外なことに、グラム陽性菌及び/又はグラム陰性菌、より詳細には黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(K. pneumoniae)及び/又はA.バウマニ(A. baumannii)に対する抗菌活性は、本明細書に記載される式(I)及び/又は(Ia)の化合物を用いて達成され得ることが分かった。本発明の化合物は、グラム陽性菌及び/又はグラム陰性菌、より詳細には黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(K. pneumoniae)及び/又はA.バウマニ(A. baumannii)に関して低いMICを有し得ることが意外にも分かったが、これは、式(I)及び/又は(Ia)の化合物が、これらのタイプの細菌に対して有効であり得るだけでなく、低い投与量でも有効であり得、それにより副作用を最小限に抑えることができることを示す。理論に制約されるのを望むものではないが、本発明者らは、本発明の化合物が、前の世代のFabI阻害剤化合物に関するFabI阻害の機構を克服し得、A.バウマニ(A. baumannii)、大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(K. pneumoniae)等のグラム陰性菌は、このような細菌の細胞質によりよく浸透することができるか、又は前記細菌から流出しにくく、及び/又はより強力であり得ると考える。
【0076】
より詳細には、以後、第1及び第2の実施形態並びに添付の特許請求の範囲における実施形態(A)と呼ばれる第1の態様において、本発明は、分子の右側のアミノ基が1つ又は2つの小さいアルキル置換基で置換されるか、又はこのような小さいアルキル置換基を連結することによって形成される小さい複素環に組み込まれる、式(I)の化合物に関する。意外なことに、このような化合物は、FabI、特にA.バウマニ(A. Baumannii)FabIに対する特に高い親和性を示すことが分かった。更に、このような化合物は、好ましい肺曝露を示し、それにより肺炎、特に院内肺炎などの肺の感染症を治療するのに特に適している。特定の好ましい態様によれば、第1の態様の化合物は、それが特定の範囲内の塩基性度を示すように置換された、分子の右側のアミノ基を有する。より詳細には、アミノ基の置換基は、アミノ基のpKaが6.0~8.5、好ましくは6.2~7.5、より好ましくは6.4~7.0の範囲内に入るように選択され;FabI、特にA.バウマニ(A. Baumannii)FabIに対する予想外に高い親和性は、このような化合物を用いて達成され得る。この態様の化合物は、好ましい肺曝露も示す。
【0077】
以後、第3及び第4の実施形態並びに添付の特許請求の範囲における実施形態(B)と呼ばれる更なる態様において、本発明は、分子の右側の7員複素環中の規定された立体化学を有する化合物を提供する。意外なことに、この規定された立体化学を有する化合物は、FabI、特にA.バウマニ(A. Baumannii)FabIに対する予想外に高い親和性を示すことが分かった。
【0078】
本発明の化合物
本発明は、以下の一般式I
【化3】

(式中、
LHSは、
【化4】

であり、ここで、アスタリスク()は、結合点を示す)
によって表される化合物並びにその医薬的に許容されるプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物に関する。
【0079】
第1の実施形態において、可変の基は、以下の意味:
Yは、CHであり;
は、O、S、NH及びN-C1~4アルキルからなる群から選択され、好ましくは、Qは、Oであり;
は、F、CHF、CH及びClからなる群から選択されるか、又は代わりに、Rは、R14と一緒に、R14が結合されるNを含み、及び5~8つの環構成員を有する複素環を形成し、好ましくは、前記環中の唯一のヘテロ原子は、R14が結合されるNであり;Rは、CHであることが好ましく;
は、H、F、Cl、Br、I、C1~4アルキル、C1~4アルキレン-OR、NR、CO-NR、C1~4アルキレン-NR、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記C1~4アルキル、シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;好ましくは、Rは、H、F、Cl、Br、I、NRからなる群から選択され、より好ましくは、Rは、H又はFであり;
3a、R3b及びR3cは、独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CHからなる群から選択され、好ましくは、R3a、R3b及びR3cのそれぞれは、Hであり;
及びRは、独立して、H、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;好ましくは、Rは、Hである一方、Rは、H、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;
は、H、F、I、Br、Cl、O、C1~4アルキル、CONH、OH、NH、O-C1~4アルキル、NH-C1~4アルキル、N(C1~4アルキル)、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NH、NO、CN、C2~4アルケニル、C2~4アルキニル、C2~4アルキニレン-OH、C2~4アルキニレン-NH、SOCH並びにO-C1~4アルキレン-OHからなる群から選択され;好ましくは、Rは、H、F、Br、Cl、C1~4アルキル、NH、O-C1~4アルキル、NH-C1~4アルキル、N(C1~4アルキル)、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NH及びCNからなる群から選択され;
は、H又はF、好ましくはHであり、及びRは、H、F、メチル、エチル、CN、OH、NH及びCH-OH;好ましくはH、F、メチル、CN、OH又はCH-OHからなる群から選択され;
10は、H又はメチルであり;
11及びR12は、独立して、H、R、任意選択的に置換されるC1~4アルキルからなる群から選択され、任意選択的に置換されるC1~4アルキル基のそれぞれは、F、OH、OMe及びNH、NHMe、NMeから選択される置換基を保有し得るか、又は代わりに、R11及びR12は、それらが結合されるNと一緒に、複素環式基であって、二環式基に結合される窒素原子に加えて酸素原子又は窒素原子を任意選択的に含む4、5又は6つの環構成員を有すると共に、R11及びR12基を保有する複素環式基を形成し、前記複素環式基は、F、メチル、OH及びNHから独立して選択される1つ又は2つの置換基、好ましくはF、メチル、OH及びNHから選択される単一の置換基又はジェミナル若しくは異なる位置にあり得る2つのメチル基置換基を保有し得;
13は、H又はRからなる群から選択され;
14は、CHであるか、又は代わりに、R14は、LHSのRと一緒に、R14が結合されるNを含み、及び5~8つの環構成員を有する複素環を形成し、好ましくは、前記環中の唯一のヘテロ原子は、R14が結合されるNであり;好ましくは、R14は、CHであり;及び
は、-POe2、-CH-OPOe2からなる群から選択され、Rは、H及び医薬的に許容される塩を形成するのに適した陽イオンからなる群から選択されること
を有し、
医薬的に許容されるプロドラッグは、好ましくは、式(I)に基づく化合物であって、リン酸メチレン部分又はホスホロアミダート部分を結合することによって修飾される化合物であり;
前記式(I)の化合物は、以下の化合物:
【化5】

のいずれでもなく、及び
【化6】

などのこれらの化合物の立体異性体のいずれでもないか、又は
(E)-3-(7-アミノ-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド、
(E)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)-3-(7-モルホリノ-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)アクリルアミド、
(E)-N-((7-アミノ-2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)-N-メチル-3-(8-オキソ-7-(ピロリジン-1-イル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)アクリルアミド、
(S,E)-N-((7-アミノ-2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)-3-(7-アミノ-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)-N-メチルアクリルアミド、及び
(S,E)-3-(7-アミノ-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド
でもない。
【0080】
第1の実施形態の好ましい態様において、Rは、H、F、Cl、Br、I、C1~4アルキル、OR、C1~4アルキレン-OR、CN、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記C1~4アルキル、シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得る。第1の実施形態のより好ましい態様において、Rは、H、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される。第1の実施形態の更により好ましい態様において、Rは、H又はFである。第1の実施形態の更により好ましい態様において、Rは、Hである。
【0081】
第1の実施形態の好ましい態様によれば、Qは、Oであり、Rは、CHであり、Rは、Hであり、R3a、R3b及びR3cのそれぞれは、Hである。
【0082】
第1の実施形態の好ましい態様において、Rは、Hであり、Rは、H、F、CN、OH又はCH-OHからなる群から選択される。
【0083】
第1の実施形態の別の好ましい態様によれば、R及びRは、それぞれHであり、R10は、メチルである。この態様のより具体的な化合物は、R及びRがそれぞれHであり、R10がメチルであるだけでなく、更にR11及びR12がそれぞれHであることによって特徴付けられる。R及びRがそれぞれHであり、R10がメチルであり、任意選択的に、R11及びR12がそれぞれHである化合物のこの亜属の範囲内において、R13は、典型的には、Hであり、R14は、典型的には、メチルである。
【0084】
特定の実施形態によれば、R3aは、Hである。幾つかの実施形態によれば、R3bは、Hである。幾つかの実施形態によれば、R3cは、Hである。幾つかの実施形態によれば、Rは、H、ヒドロキシル基、ニトリル基又はメチル基である。幾つかの実施形態によれば、Rは、H又はFである。
【0085】
第1の実施形態の好ましい態様によれば、式(I)の化合物は、式(II)又はYの意味を考慮に入れるときに式(II-1)によって特徴付けられ、これらの両方が以下に示される。
【化7】

式中、可変の基の意味は、第1の実施形態について上記に規定される通りである。特定の態様において、可変の基の2、3、4、5、6つ又はそれを超えるもの、最も好ましくは全ては、以下の特定の意味を有する一方、残りの可変の基は、第1の実施形態について上記に規定されるより広い定義に従う:
(a)Qは、Oであり;
(b)Rは、CHであり;
(c)Rは、H、F、Cl、Br、I、NRからなる群から選択され;
(d)R3a、R3b及びR3cのそれぞれは、Hであり;
(e)Rは、Hであり;
(f)Rは、H、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;
(g)Rは、H、F、Br、Cl、C1~4アルキル、NH、O-C1~4アルキル、NH-C1~4アルキル、N(C1~4アルキル)、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NH及びCNからなる群から選択され;
(h)Rは、Hであり;
(i)Rは、H、F、メチル、CN、OH又はCH-OHからなる群から選択され;
(j)R11及びR12は、独立して、H、メチル、エチル、2-ヒドロキシエチル、2-アミノエチルから選択されるか、又はR11及びR12は、隣接する窒素原子と一緒に、アゼチジン基、ピロリジン基、ピペリジン基、モルホリン基及びピペラジン基から選択される複素環を形成し、これらの複素環のそれぞれは、F、OH、NH及びメチルから選択される基によって置換されるか、又はジェミナル若しくは異なる位置にあり得る2つのメチル基によって置換され得;
(k)R14は、CHである。
【0086】
特定の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(d)及び任意選択的に(e)~(k)の1つ又は複数を有する。
【0087】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び任意選択的に(f)~(k)の1つ又は複数を有する。
【0088】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)及び任意選択的に(g)~(k)の1つ又は複数を有する。
【0089】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)及び任意選択的に(h)~(k)の1つ又は複数を有する。
【0090】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)及び任意選択的に(i)~(k)の1つ又は複数を有する。
【0091】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)及び任意選択的に(j)~(k)の1つ又は複数を有する。
【0092】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)及び任意選択的に(k)を有する。
【0093】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)及び(k)を有する。
【0094】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)及び(k)を有する。
【0095】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)及び(k)を有する。
【0096】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)及び(k)を有する。
【0097】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(d)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)及び(k)を有する。
【0098】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(g)、(h)、(i)、(j)及び(k)を有する。
【0099】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(h)、(i)、(j)及び(k)を有する。
【0100】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(i)、(j)及び(k)を有する。
【0101】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(j)及び(k)を有する。
【0102】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)及び(k)を有する。
【0103】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)及び(j)を有する。
【0104】
項目(c)の下でのRの意味がH又はFのいずれかである上記で特定される化合物のものが特に好ましい。
【0105】
第1の実施形態の好ましい態様において、R11及びR12は、R11及びR12が結合される窒素が6.0~8.5、好ましくは6.2~7.5、より好ましくは6.4~7.0の範囲のpKaを示すように選択される。
【0106】
第1の実施形態の更なる好ましい態様によれば、NR1112基を保有するキラル環原子は、規定された立体化学を有する。即ち、本発明は、以下の式(Ia):
【化8】

に示されるように、分子の90%以上、好ましくは95%以上が、NR1112基が複素環の面の下にある配置によって特徴付けられる化合物にも関し、式中、LHS、Y、R、R11、R12、R13及びR14は、第1の実施形態について上記で規定される通りである。式(II)の好ましい態様に関連して、これは、化合物が以下の式(IIa):
【化9】

によって特徴付けられることを意味し、式中、可変の基は、上記の第1の実施形態について規定される意味、特に好ましいと記載される意味を有する。Yの意味を考慮して、式は、以下に示されるように、式(IIa-1):
【化10】

として表され得る。
【0107】
第1の実施形態の更なる有利な態様によれば、Rを保有するキラル炭素の立体化学も規定される。好ましい実施形態によれば、NR1112基を保有するキラル環原子及びRを保有する隣接する炭素は、化合物がジアステレオマー的に純粋であるように規定された立体化学を有する。したがって、本発明は、特に、式(Ib)及び(Ic)の以下の好ましい化合物に関し、式中、分子の少なくとも90%、好ましくは分子の95%が、以下の式(Ib)又は(Ic)について示される立体化学によって特徴付けられる。
【化11】

式中、可変の基は、上記の第1の実施形態について規定される意味、特に好ましいと記載される意味を有する。
【0108】
第2の実施形態において、可変の基は、以下の意味を有し、Yは、NH及びNRからなる群から選択され;
は、O、S、NH及びN-C1~4アルキルからなる群から選択され、好ましくは、Qは、Oであり;
は、F、CHF、CH及びClからなる群から選択されるか、又は代わりに、Rは、R14と一緒に、R14が結合されるNを含み、及び5~8つの環構成員を有する複素環を形成し、好ましくは、前記環中の唯一のヘテロ原子は、R14が結合されるNであり;Rは、CHであることが好ましく;
は、H、F、Cl、Br、I、C1~4アルキル、C1~4アルキレン-OR、NR、CO-NR、C1~4アルキレン-NR、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記C1~4アルキル、シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;好ましくは、Rは、H、F、Cl、Br、I、NRからなる群から選択され、より好ましくは、Rは、H又はFであり;
3a、R3b及びR3cは、独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CHからなる群から選択され;好ましくは、R3a、R3b及びR3cのそれぞれは、Hであり;
及びRは、独立して、H、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;好ましくは、Rは、Hである一方、Rは、H、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;
は、H、F、I、Br、Cl、O、C1~4アルキル、CONH、OH、NH、O-C1~4アルキル、NH-C1~4アルキル、N(C1~4アルキル)、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NH、NO、CN、C2~4アルケニル、C2~4アルキニル、C2~4アルキニレン-OH、C2~4アルキニレン-NH、SOCH並びにO-C1~4アルキレン-OHからなる群から選択され;好ましくは、Rは、H、F、Br、Cl、C1~4アルキル、NH、O-C1~4アルキル、NH-C1~4アルキル、N(C1~4アルキル)、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NH及びCNからなる群から選択され;
は、H又はF、好ましくはHであり、及びRは、H、F、メチル、エチル、CN、OH、NH及びCH-OH;好ましくはH、メチル、CN又はCH-OHからなる群から選択され;
10は、H又はメチルであり;
11及びR12は、独立して、H、R、任意選択的に置換されるC1~4アルキルからなる群から選択され、任意選択的に置換されるC1~4アルキル基のそれぞれは、F、OH、OMe及びNH、NHMe、NMeから選択される置換基を保有し得るか、又は代わりに、R11及びR12は、それらが結合されるNと一緒に、複素環式基であって、二環式基に結合される窒素原子に加えて酸素原子又は窒素原子を任意選択的に含む4、5又は6つの環構成員を有すると共に、R11及びR12基を保有する複素環式基を形成し、前記複素環式基は、F、メチル、OH及びNHから独立して選択される1つ又は2つの置換基、好ましくはF、メチル、OH及びNHから選択される単一の置換基又はジェミナル若しくは異なる位置にあり得る2つのメチル基置換基を保有し得;
13は、H又はRからなる群から選択され;
14は、CHであるか、又は代わりに、R14は、LHSのRと一緒に、R14が結合されるNを含み、及び5~8つの環構成員を有する複素環を形成し、好ましくは、前記環中の唯一のヘテロ原子は、R14が結合されるNであり;好ましくは、R14は、CHであり;及び
は、-POe2、-CH-OPOe2からなる群から選択され、Rは、H及び医薬的に許容される塩を形成するのに適した陽イオンからなる群から選択され、式(I)の化合物は、以下の化合物:
【化12】

のいずれでもなく、及び
【化13】
などのこの化合物の立体異性体のいずれでも、(E)-3-((2R,3S)-3-アミノ-2-メチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[2,3-b][1,4]ジアセピン-8-イル)-N-((7-アミノ-2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)-N-メチルアクリルアミドでもない。
【0109】
第2の実施形態の好ましい態様において、Rは、H、F、Cl、Br、I、C1~4アルキル、OR、C1~4アルキレン-OR、CN、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記C1~4アルキル、シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得る。第2の実施形態のより好ましい態様において、Rは、H、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される。第2の実施形態の更により好ましい態様において、Rは、H又はFである。第2の実施形態の更により好ましい態様において、Rは、Hである。
【0110】
第2の実施形態の好ましい態様によれば、Qは、Oであり、Rは、CHであり、Rは、Hであり、R3a、R3b及びR3cのそれぞれは、Hである。
【0111】
特定の実施形態によれば、R3aは、Hである。幾つかの実施形態によれば、R3bは、Hである。幾つかの実施形態によれば、R3cは、Hである。幾つかの実施形態によれば、Rは、H、ヒドロキシル基、ニトリル基又はメチル基である。幾つかの実施形態によれば、Rは、H又はFである。
【0112】
第2の実施形態の好ましい態様によれば、式(I)の化合物は、式(II)若しくは好ましくは式(II-2)又はプロドラッグとして式(II-2’)によって特徴付けられ、これらの全ては、以下:
【化14】

に示され、式中、可変の基の意味は、第2の実施形態について上記に規定される通りである。特定の態様において、可変の基の2、3、4、5、6つ又はそれを超えるもの、最も好ましくは全ては、以下の好ましい意味を有する:
(a’)Qは、Oであり;
(b’)Rは、CHであり;
(c’)Rは、H、F、Cl、Br、I、NRからなる群から選択され;
(d’)R3a、R3b及びR3cのそれぞれは、Hであり;
(e’)Rは、Hであり;
(f’)Rは、H、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;
(g’)Rは、H、F、Br、Cl、C1~4アルキル、NH、O-C1~4アルキル、NH-C1~4アルキル、N(C1~4アルキル)、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NH及びCNからなる群から選択され;
(h’)Rは、Hであり;
(i’)Rは、H、メチル、CN又はCH-OHからなる群から選択され;
(j’)R11及びR12は、独立して、H、メチル、エチル、2-ヒドロキシエチル、2-アミノエチルから選択されるか、又はR11及びR12は、隣接する窒素原子と一緒に、アゼチジン基、ピロリジン基、ピペリジン基、モルホリン基及びピペラジン基から選択される複素環を形成し、これらの複素環のそれぞれは、F、OH、NH及びメチルから選択される基によって置換されるか、又はジェミナル若しくは異なる位置にあり得る2つのメチル基によって置換され得;
(k’)R14は、CHである。
【0113】
特定の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(d’)及び任意選択的に(e’)~(k’)の1つ又は複数を有する。
【0114】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(d’)、(e’)及び任意選択的に(f’)~(k’)の1つ又は複数を有する。
【0115】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)及び任意選択的に(g’)~(k’)の1つ又は複数を有する。
【0116】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)、(g’)及び任意選択的に(h’)~(k’)の1つ又は複数を有する。
【0117】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)、(g’)、(h’)及び任意選択的に(i’)~(k’)の1つ又は複数を有する。
【0118】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)、(g’)、(h’)、(i’)及び任意選択的に(j’)~(k’)の1つ又は複数を有する。
【0119】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)、(g’)、(h’)、(i’)、(j’)及び任意選択的に(k’)を有する。
【0120】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)、(g’)、(h’)、(i’)、(j’)及び(k’)を有する。
【0121】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)、(g’)、(h’)、(i’)、(j’)及び(k’)を有する。
【0122】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(d’)、(e’)、(f’)、(g’)、(h’)、(i’)、(j’)及び(k’)を有する。
【0123】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(e’)、(f’)、(g’)、(h’)、(i’)、(j’)及び(k’)を有する。
【0124】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(d’)、(f’)、(g’)、(h’)、(i’)、(j’)及び(k’)を有する。
【0125】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(g’)、(h’)、(i’)、(j’)及び(k’)を有する。
【0126】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)、(h’)、(i’)、(j’)及び(k’)を有する。
【0127】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)、(g’)、(i’)、(j’)及び(k’)を有する。
【0128】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)、(g’)、(h’)、(j’)及び(k’)を有する。
【0129】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)、(g’)、(h’)、(i’)及び(k’)を有する。
【0130】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’)、(b’)、(c’)、(d’)、(e’)、(f’)、(g’)、(h’)、(i’)及び(j’)を有する。
【0131】
項目(c’)の下でのRの意味がH又はFのいずれかである、上記で特定される化合物のものが特に好ましい。
【0132】
第2の実施形態の好ましい態様において、R11及びR12は、R11及びR12が結合される窒素が6.0~8.5、好ましくは6.2~7.5、より好ましくは6.4~7.0の範囲のpKaを示すように選択される。
【0133】
第2の実施形態の更なる好ましい態様によれば、NR1112基を保有するキラル環原子は、規定された立体化学を有する。即ち、本発明は、以下の式(Ia):
【化15】
に示されるように、分子の90%以上、好ましくは95%以上が、NR1112基が複素環の面の下にある配置によって特徴付けられる化合物にも関し、式中、LHS、Y、R、R11、R12、R13及びR14は、第2の実施形態について上記で規定される通りである。式(II)の好ましい態様に関連して、これは、化合物が式(IIa-2)又はプロドラッグの態様について式(IIa-2’):
【化16】

によって特徴付けられることを意味し、式中、可変の基は、上記の第2の実施形態について規定される意味、特に好ましいと記載される意味を有する。
【0134】
第2の実施形態の更なる有利な態様によれば、Rを保有するキラル炭素の立体化学も規定される。好ましい実施形態によれば、NR1112基を保有するキラル環原子及びRを保有する隣接する炭素は、化合物がジアステレオマー的に純粋であるように規定された立体化学を有する。したがって、本発明は、特に、式(Ib)及び(Ic)の以下の好ましい化合物に関し、式中、分子の少なくとも90%、好ましくは分子の95%が、以下の式(Ib)又は(Ic)について示される立体化学によって特徴付けられる。
【化17】

式中、可変の基は、上記の第2の実施形態について規定される意味、特に好ましいと記載される意味を有する。
【0135】
第3の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ia)
【化18】

によって特徴付けられる化合物又はその医薬的に許容されるプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物であり;
LHSは、
【化19】

であり、ここで、アスタリスク()は、結合点を示し;
Yは、CHであり;
は、O、S、NH及びN-C1~4アルキルからなる群から選択され;好ましくは、Qは、Oであり;
は、F、CHF、CH及びClからなる群から選択されるか、又は代わりに、Rは、R14と一緒に、R14が結合されるNを含み、及び5~8つの環構成員を有する複素環を形成し、好ましくは、前記環中の唯一のヘテロ原子は、R14が結合されるNであり;Rは、CHであることが好ましく;
は、H、F、Cl、Br、I、C1~4アルキル、OR、C1~4アルキレン-OR、CN、NR、CO-NR、C1~4アルキレン-NR、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記C1~4アルキル、シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;好ましくは、Rは、H、F、Cl、Br、I、NRからなる群から選択され、より好ましくは、Rは、H又はFであり;
3a、R3b及びR3cは、独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CHからなる群から選択され;好ましくは、R3a、R3b及びR3cのそれぞれは、Hであり;
及びRは、独立して、H、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;好ましくは、Rは、Hである一方、Rは、H、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;
は、H、F、I、Br、Cl、O、C1~4アルキル、CONH、OH、NH、O-C1~4アルキル、NH-C1~4アルキル、N(C1~4アルキル)、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NH、NO、CN、C2~4アルケニル、C2~4アルキニル、C2~4アルキニレン-OH、C2~4アルキニレン-NH、SOCH並びにO-C1~4アルキレン-OHからなる群から選択され;好ましくは、Rは、H、F、Br、Cl、C1~4アルキル、NH、O-C1~4アルキル、NH-C1~4アルキル、N(C1~4アルキル)、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NH及びCNからなる群から選択され;
は、メチル基、ヒドロキシル基又はニトリル基であり;
11及びR12は、独立して、H、R、C1~4アルキル、CO-C1~4アルキル、SO(C1~4アルキル)、C1~4アルキル-F、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NHからなる群から選択されるか、又は代わりに、R11及びR12は、それらが結合されるNと一緒に、4~9つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基を形成するか、又はR11及びR12は、7~11の環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式スピロ基を形成し、前記複素環式基又は複素環式スピロ基は、1~3つのR基で置換され得、R11及びR12により、それらが結合されるNと一緒に形成される複素環式基は、好ましくは、R11及びR12基を保有する窒素原子に加えて酸素原子又はNH基を任意選択的に含む4、5又は6つの環構成員を有する、任意選択的に置換される複素環式基であり、前記任意選択的に置換される複素環式基は、F、メチル、OH及びNHから独立して選択される1つ又は2つの置換基、好ましくはF、メチル、OH及びNHから選択される単一の置換基又はジェミナル若しくは異なる位置にあり得る2つのメチル基置換基を保有し得;
好ましくは、R11及びR12は、独立して、H、任意選択的に置換されるC1~4アルキルからなる群から選択され、任意選択的に置換されるC1~4アルキル基のそれぞれは、F、OH、OMe及びNH、NHMe、NMeから選択される置換基を保有し得るか、又は代わりに、R11及びR12は、それらが結合されるNと一緒に、複素環式基であって、二環式基に結合される窒素原子に加えて酸素原子又は窒素原子を任意選択的に含む4、5又は6つの環構成員を有すると共に、R11及びR12基を保有する複素環式基を形成し、前記複素環式基は、F、メチル、OH及びNHから独立して選択される1つ又は2つの置換基、好ましくはF、メチル、OH及びNHから選択される単一の置換基又はジェミナル若しくは異なる位置にあり得る2つのメチル基置換基を保有し得;
13は、H又はRからなる群から選択され;
14は、CHであるか、又は代わりに、R14は、LHSのRと一緒に、R14が結合されるNを含み、及び5~8つの環構成員を有する複素環を形成し、好ましくは、前記環中の唯一のヘテロ原子は、R14が結合されるNであり;好ましくは、R14は、CHであり;及び
は、-POe2、-CH-OPOe2からなる群から選択され、Rは、H及び医薬的に許容される塩を形成するのに適した陽イオンからなる群から選択され、
化合物は、Rを保有するキラル炭素原子及びNR1112を保有するキラル炭素原子に関連してジアステレオマー的に純粋である。
【0136】
第3の実施形態の好ましい態様において、Rは、H、F、Cl、Br、I、C1~4アルキル、OR、C1~4アルキレン-OR、CN、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記C1~4アルキル、シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得る。第3の実施形態のより好ましい態様において、Rは、H、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される。第3の実施形態の更により好ましい態様において、Rは、H又はFである。第3の実施形態の更により好ましい態様において、Rは、Hである。
【0137】
第3の実施形態の好ましい態様において、Rは、ヒドロキシル基又はニトリル基である。
【0138】
第3の実施形態の好ましい態様によれば、Qは、Oであり、Rは、CHであり、Rは、Hであり、R3a、R3b及びR3cのそれぞれは、Hである。
【0139】
特定の実施形態によれば、R3aは、H又はFである。幾つかの実施形態によれば、R3bは、Hである。幾つかの実施形態によれば、R3cは、H、F、OH又はNHである。幾つかの実施形態によれば、Rは、ヒドロキシル基、ニトリル基又はメチル基である。幾つかの実施形態によれば、Rは、Hである。
【0140】
第3の実施形態の好ましい態様によれば、式(Ia)の化合物は、式(IIa)又はYの意味を考慮に入れるときに式(IIa-1)によって特徴付けられ、これらの両方が以下に示される。
【化20】

式中、可変の基の意味は、第3の実施形態について上記に規定される通りである。
【0141】
より詳細には、この態様に係る化合物は、以下に示される、以下の式(IIb-1)の化合物又は以下の式(IIc-1)の化合物のいずれかであり、式中、可変の基の意味は、第3の実施形態について上記に規定される通りである。
【化21】
【0142】
特定の態様において、可変の基の2、3、4、5、6つ又はそれを超えるもの、最も好ましくは全ては、特定の意味を有する一方、残りの可変の基は、第3の実施形態について上記に規定されるより広い定義に従う:
(a’’)Qは、Oであり;
(b’’)Rは、CHであり;
(c’’)Rは、H、F、Cl、Br、I、NRからなる群から選択され;
(d’’)R3a、R3b及びR3cのそれぞれは、Hであり;
(e’’)Rは、Hであり;
(f’’)Rは、H、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;
(g’’)Rは、H、F、Br、Cl、C1~4アルキル、NH、O-C1~4アルキル、NH-C1~4アルキル、N(C1~4アルキル)、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NH及びCNからなる群から選択され;
(h’’)R11及びR12は、独立して、H、メチル、エチル、2-ヒドロキシエチル、2-アミノエチルから選択されるか、又はR11及びR12は、隣接する窒素原子と一緒に、アゼチジン基、ピロリジン基、ピペリジン基、モルホリン基及びピペラジン基から選択される複素環を形成し、これらの複素環のそれぞれは、F、OH、NH及びメチルから選択される基によって置換されるか、又はジェミナル若しくは異なる位置にあり得る2つのメチル基によって置換され得;
(i’’)R14は、CHである。
【0143】
特定の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’’)、(b’’)、(c’’)、(d’’)及び任意選択的に(e’’)~(i’’)の1つ又は複数を有する。
【0144】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’’)、(b’’)、(c’’)、(d’’)、(e’’)及び任意選択的に(f’’)~(i’’)の1つ又は複数を有する。
【0145】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’’)、(b’’)、(c’’)、(d’’)、(e’’)、(f’’)及び任意選択的に(g’’)~(i’’)の1つ又は複数を有する。
【0146】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’’)、(b’’)、(c’’)、(d’’)、(e’’)、(f’’)、(g’’)及び任意選択的に(h’’)~(i’’)の1つ又は複数を有する。
【0147】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’’)、(b’’)、(c’’)、(d’’)、(e’’)、(f’’)、(g’’)、(h’’)及び任意選択的に(i’’)を有する。
【0148】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(b’’)、(c’’)、(d’’)、(e’’)、(f’’)、(g’’)、(h’’)及び(i’’)を有する。
【0149】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’)、(c’’)、(d’’)、(e’’)、(f’’)、(g’’)、(h’’)及び(i’’)を有する。
【0150】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’)、(b’’)、(d’’)、(e’’)、(f’’)、(g’’)、(h’’)及び(i’’)を有する。
【0151】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’)、(b’’)、(c’’)、(e’’)、(f’’)、(g’’)、(h’’)及び(i’’)を有する。
【0152】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’)、(b’’)、(c’’)、(d’’)、(f’’)、(g’’)、(h’’)及び(i’’)を有する。
【0153】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’)、(b’’)、(c’’)、(d’’)、(e’’)、(g’’)、(h’’)及び(i’’)を有する。
【0154】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’)、(b’’)、(c’’)、(d’’)、(e’’)、(f’’)、(h’’)及び(i’’)を有する。
【0155】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’)、(b’’)、(c’’)、(d’’)、(e’’)、(f’’)、(g’’)及び(i’’)を有する。
【0156】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’)、(b’’)、(c’’)、(d’’)、(e’’)、(f’’)、(g’’)及び(h’’)を有する。
【0157】
項目(c’’)の下でのRの意味がH又はFのいずれかである上記で特定される化合物のものが特に好ましい。
【0158】
第3の実施形態の好ましい態様において、R11及びR12は、R11及びR12が結合される窒素が6.0~8.5、好ましくは6.2~7.5、より好ましくは6.4~7.0の範囲のpKaを示すように選択される。
【0159】
第4の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ia)
【化22】

によって特徴付けられる化合物又はその医薬的に許容されるプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物であり;
LHSは、
【化23】

であり、ここで、アスタリスク()は、結合点を示し;
Yは、NH又はNRであり;
は、O、S、NH及びN-C1~4アルキルからなる群から選択され;好ましくは、Qは、Oであり;
は、F、CHF、CH及びClからなる群から選択されるか、又は代わりに、Rは、R14と一緒に、R14が結合されるNを含み、及び5~8つの環構成員を有する複素環を形成し、好ましくは、前記環中の唯一のヘテロ原子は、R14が結合されるNであり;Rは、CHであることが好ましく;
は、H、F、Cl、Br、I、C1~4アルキル、OR、C1~4アルキレン-OR、CN、NR、CO-NR、C1~4アルキレン-NR、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記C1~4アルキル、シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;好ましくは、Rは、H、F、Cl、Br、I、NRからなる群から選択され、より好ましくは、Rは、H又はFであり;
3a、R3b及びR3cは、独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CHからなる群から選択され;好ましくは、R3a、R3b及びR3cのそれぞれは、Hであり;
及びRは、独立して、H、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;好ましくは、Rは、Hである一方、Rは、H、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;
は、H、F、I、Br、Cl、O、C1~4アルキル、CONH、OH、NH、O-C1~4アルキル、NH-C1~4アルキル、N(C1~4アルキル)、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NH、NO、CN、C2~4アルケニル、C2~4アルキニル、C2~4アルキニレン-OH、C2~4アルキニレン-NH、SOCH並びにO-C1~4アルキレン-OHからなる群から選択され;好ましくは、Rは、H、F、Br、Cl、C1~4アルキル、NH、O-C1~4アルキル、NH-C1~4アルキル、N(C1~4アルキル)、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NH及びCNからなる群から選択され;
は、メチル基、ヒドロキシル基又はニトリル基であり;好ましくは、Rは、メチル基又はニトリル基であり;
11及びR12は、独立して、H、R、C1~4アルキル、CO-C1~4アルキル、SO(C1~4アルキル)、C1~4アルキル-F、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NHからなる群から選択されるか、又は代わりに、R11及びR12は、それらが結合されるNと一緒に、4~9つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基を形成するか、又はR11及びR12は、7~11の環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式スピロ基を形成し、前記複素環式基又は複素環式スピロ基は、1~3つのR基で置換され得、R11及びR12により、それらが結合されるNと一緒に形成される複素環式基は、好ましくは、R11及びR12基を保有する窒素原子に加えて酸素原子又はNH基を任意選択的に含む4、5又は6つの環構成員を有する、任意選択的に置換される複素環式基であり、前記任意選択的に置換される複素環式基は、F、メチル、OH及びNHから独立して選択される1つ又は2つの置換基、好ましくはF、メチル、OH及びNHから選択される単一の置換基又はジェミナル若しくは異なる位置にあり得る2つのメチル基置換基を保有し得;
好ましくは、R11及びR12は、独立して、H、任意選択的に置換されるC1~4アルキルからなる群から選択され、任意選択的に置換されるC1~4アルキル基のそれぞれは、F、OH、OMe及びNH、NHMe、NMeから選択される置換基を保有し得るか、又は代わりに、R11及びR12は、それらが結合されるNと一緒に、複素環式基であって、二環式基に結合される窒素原子に加えて酸素原子又は窒素原子を任意選択的に含む4、5又は6つの環構成員を有すると共に、R11及びR12基を保有する複素環式基を形成し、前記複素環式基は、F、メチル、OH及びNHから独立して選択される1つ又は2つの置換基、好ましくはF、メチル、OH及びNHから選択される単一の置換基又はジェミナル若しくは異なる位置にあり得る2つのメチル基置換基を保有し得;
13は、H又はRからなる群から選択され;
14は、CHであるか、又は代わりに、R14は、LHSのRと一緒に、R14が結合されるNを含み、及び5~8つの環構成員を有する複素環を形成し、好ましくは、前記環中の唯一のヘテロ原子は、R14が結合されるNであり;及び
は、-POe2、-CH-OPOe2からなる群から選択され、Rは、H及び医薬的に許容される塩を形成するのに適した陽イオンからなる群から選択され、
化合物は、Rを保有するキラル炭素原子及びNR1112を保有するキラル炭素原子に関連してジアステレオマー的に純粋であり;
式(Ia)の化合物は、
【化24】

ではない。
【0160】
第4の実施形態の好ましい態様において、Rは、H、F、Cl、Br、I、C1~4アルキル、OR、C1~4アルキレン-OR、CN、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記C1~4アルキル、シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得る。第4の実施形態のより好ましい態様において、Rは、H、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される。第4の実施形態の更により好ましい態様において、Rは、H又はFである。第4の実施形態の更により好ましい態様において、Rは、Hである。
【0161】
第4の実施形態の好ましい態様によれば、Qは、Oであり、Rは、CHであり、Rは、Hであり、R3a、R3b及びR3cのそれぞれは、Hである。
【0162】
特定の実施形態によれば、R3aは、Hである。幾つかの実施形態によれば、R3bは、Hである。幾つかの実施形態によれば、R3cは、Hである。幾つかの実施形態によれば、Rは、ニトリル基又はメチル基である。幾つかの実施形態によれば、Rは、H又はFである。
【0163】
第4の実施形態の好ましい態様によれば、式(Ia)の化合物は、上記に示される式(IIa)、又はYの意味を考慮に入れるときに式(IIa-2)、又はプロドラッグの態様について式(IIa-2’)によって特徴付けられ、これらの両方が以下に示される。
【化25】

式中、可変の基の意味は、第4の実施形態について上記に規定される通りである。
【0164】
より詳細には、この態様に係る化合物は、以下に示される、以下の式(IIb-2)の化合物又は以下の式(IIc-2)の化合物のいずれかであり、式中、可変の基の意味は、第4の実施形態について上記に規定される通りである。
【化26】
【0165】
プロドラッグの態様について、対応する構造は、以下の式(IIb-2’)及び(IIc-2’):
【化27】

によって示される。
【0166】
特定の態様において、可変の基の2、3、4、5、6つ又はそれを超えるもの、最も好ましくは全ては、以下の特定の意味を有する一方、残りの可変の基は、第4の実施形態について上記に規定されるより広い定義に従う:
(a’’’)Qは、Oであり;
(b’’’)Rは、CHであり;
(c’’’)Rは、H、F、Cl、Br、I、NRからなる群から選択され;
(d’’’)R3a、R3b及びR3cのそれぞれは、Hであり;
(e’’’)Rは、Hであり;
(f’’’)Rは、H、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、フェニル並びに5又は6つの環構成員と、N、O及びSから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子とを有する複素環式基からなる群から選択され、前記シクロアルキル、フェニル又は複素環式基は、1~3つのR基で任意選択的に置換され得;
(g’’’)Rは、H、F、Br、Cl、C1~4アルキル、NH、O-C1~4アルキル、NH-C1-4-アルキル、N(C1~4アルキル)、C1~4アルキレン-OH及びC1~4アルキレン-NH及びCNからなる群から選択され;
(h’’’)Rは、メチル又はCNからなる群から選択され;
(i’’’)R11及びR12は、独立して、H、メチル、エチル、2-ヒドロキシエチル、2-アミノエチルから選択されるか、又はR11及びR12は、隣接する窒素原子と一緒に、アゼチジン基、ピロリジン基、ピペリジン基、モルホリン基及びピペラジン基から選択される複素環を形成し、これらの複素環のそれぞれは、F、OH、NH及びメチルから選択される基によって置換されるか、又はジェミナル若しくは異なる位置にあり得る2つのメチル基によって置換され得;
(j’’’)R14は、CHである。
【0167】
特定の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’’’)、(b’’’)、(c’’’)、(d’’’)及び任意選択的に(e’’’)~(j’’’)の1つ又は複数を有する。
【0168】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’’’)、(b’’’)、(c’’’)、(d’’’)、(e’’’)及び任意選択的に(f’’’)~(j’’’)の1つ又は複数を有する。
【0169】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’’’)、(b’’’)、(c’’’)、(d’’’)、(e’’’)、(f’’’)及び任意選択的に(g’’’)~(j’’’)の1つ又は複数を有する。
【0170】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’’’)、(b’’’)、(c’’’)、(d’’’)、(e’’’)、(f’’’)、(g’’’)及び任意選択的に(h’’’)~(j’’’)の1つ又は複数を有する。
【0171】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’’’)、(b’’’)、(c’’’)、(d’’’)、(e’’’)、(f’’’)、(g’’’)、(h’’’)及び任意選択的に(i’’’)~(j’’’)の1つ又は複数を有する。
【0172】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、少なくとも上記で特定される特定の意味(a’’’)、(b’’’)、(c’’’)、(d’’’)、(e’’’)、(f’’’)、(g’’’)、(h’’’)、(i’’’)及び任意選択的に(j’’’)を有する。
【0173】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(b’’’)、(c’’’)、(d’’’)、(e’’’)、(f’’’)、(g’’’)、(h’’’)、(i’’’)及び(j’’’)を有する。
【0174】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’’)、(c’’’)、(d’’’)、(e’’’)、(f’’’)、(g’’’)、(h’’’)、(i’’’)及び(j’’’)を有する。
【0175】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’’)、(b’’’)、(d’’’)、(e’’’)、(f’’’)、(g’’’)、(h’’’)、(i’’’)及び(j’’’)を有する。
【0176】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’’)、(b’’’)、(c’’’)、(e’’’)、(f’’’)、(g’’’)、(h’’’)、(i’’’)及び(j’’’)を有する。
【0177】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’’)、(b’’’)、(c’’’)、(d’’’)、(f’’’)、(g’’’)、(h’’’)、(i’’’)及び(j’’’)を有する。
【0178】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’’)、(b’’’)、(c’’’)、(d’’’)、(e’’’)、(g’’’)、(h’’’)、(i’’’)及び(j’’’)を有する。
【0179】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’’)、(b’’’)、(c’’’)、(d’’’)、(e’’’)、(f’’’)、(h’’’)、(i’’’)及び(j’’’)を有する。
【0180】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’’)、(b’’’)、(c’’’)、(d’’’)、(e’’’)、(f’’’)、(g’’’)、(i’’’)及び(j’’’)を有する。
【0181】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’’)、(b’’’)、(c’’’)、(d’’’)、(e’’’)、(f’’’)、(g’’’)、(h’’’)及び(j’’’)を有する。
【0182】
特定の他の好ましい態様において、化合物は、上記で特定される特定の意味(a’’’)、(b’’’)、(c’’’)、(d’’’)、(e’’’)、(f’’’)、(g’’’)、(h’’’)及び(i’’’)を有する。
【0183】
項目(c’’’)の下でのRの意味がH又はFのいずれかである上記で特定される化合物のものが特に好ましい。
【0184】
第4の実施形態の好ましい態様において、R11及びR12は、R11及びR12が結合される窒素が6.0~8.5、好ましくは6.2~7.5、より好ましくは6.4~7.0の範囲のpKaを示すように選択される。
【0185】
本発明の特定の態様によれば、上記の実施形態のいずれかに係る化合物であって、
【化28】

【化29】

からなる群から選択される化合物並びにそのいずれかの医薬的に許容されるプロドラッグ、塩及び/又は溶媒和物が提供される。
【0186】
特段の明示的な指定がない限り、本開示は、本発明の範囲に含まれるシス及びトランス異性体、R-及びS-エナンチオマー、ジアステレオマー、(d)-異性体、(l)-異性体、これらのラセミ混合物並びにこれらの混合物を含むあらゆるこの種の化合物を想定している。但し、分子の中心にあるピリジン環及びアミド基の間にある炭素-炭素二重結合は、上の式に示したようにトランス配置でなければならない。更なる不斉炭素原子がアルキル基等の置換基内に存在し得る。あらゆるこの種の異性体に加えて、その混合物も本発明に包含されることが意図されている。
【0187】
例えば、本明細書に開示する化合物の特定のエナンチオマーが所望される場合、不斉合成によるか、又は不斉補助剤を用いて誘導体化することにより調製することができ、結果として得られるジアステレオマー混合物を分離し、補助基を切断することにより、純粋な所望のエナンチオマーが得られる。代わりに、分子がアミノ等の塩基性官能基又はカルボキシル等の酸性官能基を含む場合、適切な光学活性な酸又は塩基でジアステレオマー塩を形成した後、こうして形成されたジアステレオマーを当技術分野において知られている分別結晶又はクロマトグラフィー手段により分割し、続いて純粋なエナンチオマーを回収する。
【0188】
更に、本発明の化合物の個々のエナンチオマー及びジアステレオマーを、不斉中心又は立体中心を含む市販の出発物質から合成して調製することができるか、又はラセミ混合物を調製した後、当業者によく知られている分割方法を実施することができる。このような分割方法としては、(1)エナンチオマーの混合物を不斉補助剤に結合させ、得られたジアステレオマーの混合物を再結晶若しくはクロマトグラフィーによって分離し、光学的に純粋な生成物を補助剤から遊離させること、(2)光学活性な分割剤を用いて塩を形成すること、(3)光学対掌体の混合物をキラル液体クロマトグラフィーカラムで直接分離すること、又は(4)立体選択性を示す化学的若しくは酵素的試薬を用いて速度論的光学分割すること、が例示される。ラセミ混合物は、キラル相ガスクロマトグラフィー又はキラル溶媒中での化合物の結晶化等のよく知られている方法により、ラセミ混合物を構成しているエナンチオマーに分割することもできる。単一種の反応体が、新たな立体中心を生成することにより、又は既に存在する立体中心が移動することにより、不均等な立体異性体混合物を生成する立体選択的合成、化学的反応又は酵素的反応は、当技術分野においてよく知られている。立体選択的合成は、エナンチオ及びジアステレオ選択的変換の両方を包含する。例えば、Carreira and Kvaerno, Classics in Stereoselective Synthesis, Wiley-VCH: Weinheim, 2009を参照されたい。
【0189】
本発明は、本明細書に列挙する本発明の化合物において、1つ又は複数の原子が、自然界で通常見られる原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子に置き換えられていることのみが異なる、同位体標識された化合物も包含する。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体、例えばそれぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F及び36Clが挙げられる。例えば、本発明の化合物は、1つ又は複数のH原子が重水素に置き換えられ得る。
【0190】
特定の同位体標識された本開示化合物(例えば、3H及び14Cで標識されたもの)は、化合物及び/又は基質の組織分布試験に有用である。トリチウム化(即ち3H)及び炭素-14(即ち14C)同位体は、調製が容易であり、及び検出しやすいことから特に好ましい。更に、重水素(即ちH)等の質量数の高い同位体で置換すると、これらの代謝的安定性が高いことに起因して(例えば、生体内半減期がより長くなる又は必要投与量が低減される)、特定の治療的利点を得ることが可能になり、したがって、状況によっては好ましい場合もある。同位体標識された本発明の化合物は、一般に、例えば本明細書の実施例に開示するものと類似の手順に従い、同位体標識されていない試薬を同位体標識された試薬に置き換えることによって調製することができる。
【0191】
プロドラッグ
本発明のプロドラッグは、少なくとも1つのプロドラッグ部分、即ち生理学的条件下で切断されることにより活性種を放出する部分を含む。このようなプロドラッグ部分は、十分な反応性を示す全ての位置において本発明の化合物に結合され得る。例えば、Rの意味では、R13は、プロドラッグ部分であり得るか、又はYがNである場合、Yに結合されるRなどのプロドラッグ部分があり得る。したがって、本発明の好ましい態様において、プロドラッグは、R13として又はNであるYに結合される置換基として基Rを選択することによって形成される。
【0192】
塩、溶媒和物、多形
本発明の化合物は、遊離形態又は代わりに医薬的に許容される塩の形態で使用され得る。酸付加塩が特に好適である。本発明において使用され得る医薬的に許容される塩は、当業者に周知であり、例えばS. M. Berge et al., J. Pharm. Sci.,1977,66,1,1-19;R. J. Bastin, et al., Org. Proc. Res. Dev.,2000,4,427-435;及びP. H. Stahl, C. G. Wermuth, Eds. “Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use”,2nd Ed. Wiley-VCH,2011に開示されている。特に有効な塩は、塩酸塩、例えば塩酸塩又は二塩酸塩又はフルオロ酢酸塩、例えばトリフルオロ酢酸塩であり得る。
【0193】
本発明のプロドラッグは、遊離形態又は医薬的に許容される塩の形態でも提供され得る。例えば、上記で引用される文献に記載されるような、当業者に周知の医薬的に許容される塩が好適である。
【0194】
本発明の化合物は、非溶媒和形態並びに水、エタノール等の医薬的に許容される溶媒で溶媒和された形態で存在することができ、本発明は溶媒和及び非溶媒和形態の両方を包含することを意図している。
【0195】
本発明の化合物は、単一種又は複数種の結晶形態又は多形で存在することができる。一実施形態において、化合物は非晶質である。一実施形態において、化合物は単一の多形である。他の実施形態において、化合物は多形の混合物である。他の実施形態において、化合物は結晶形態にある。
【0196】
医薬組成物
本発明の化合物は、医薬組成物中に含まれ得る。本開示の前記医薬組成物は、当技術分野においてよく知られているように、意図された用途に応じて、様々な手段で投与され得、製剤の任意の適切な形態を取り得る。例えば、本開示の組成物を経口投与する場合、それらは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤又はシロップ剤として製剤化することができる。代わりに、本明細書に開示される組成物は、非経口的に投与され、注射剤(injection)/注射剤(injectable)(静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下)、点滴注射製剤又は坐剤として製剤化され得る。眼粘膜経路で適用する場合、本明細書に開示される組成物は、点眼剤又は眼軟膏剤として製剤化することができる。組成物は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、可溶化剤、懸濁助剤、乳化剤又は被覆剤等の任意の従来の添加剤を含み得る。湿潤剤、乳化剤及び滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム並びに着色剤、離型剤、被覆剤、甘味剤、風味剤及び着香剤、防腐剤及び酸化防止剤も、組成物中に含まれ得る。
【0197】
本発明の組成物において、添加剤は、2つ以上の機能を果たし得る。例えば、充填剤又は結合剤は、崩壊剤、流動化剤、付着防止剤、滑沢剤、甘味料等にもなり得る。
【0198】
組成物は、該当する製剤のタイプ、例えば錠剤、注射剤等に依存し得る任意の従来の手段により調製することができる。組成物は、任意の従来の賦形剤及び/又は添加剤、例えば上に記載されるものの1つ又は複数を含み得る。
【0199】
組成物は、経口、経鼻(例えば、乾燥粉末製剤又は噴霧製剤を配合することによる吸入による)、経直腸、経膣、エアゾール及び/又は非経口(例えば、注射、例えば静脈内、腹腔内、筋肉内若しくは皮下注射による)投与に好適であるように製剤化され得る。前記組成物は、好都合には、単位剤形で提供することができ、製薬分野においてよく知られている任意の方法で調製することができる。賦形剤、例えば担体材料と組み合わせて1回分量とすることができる本明細書に開示される化合物の量は、化合物の種類、治療対象及び具体的な投与方式により変化し得る。
【0200】
上述されるように、本発明の組成物は、任意の従来の手段により調製することができ、前記従来の手段は、組成物、例えば錠剤、注射剤(injection)/注射剤(injectable)の所望の形態に依存し得る。本発明の組成物を調製する方法は、本開示の組成物を担体及び任意選択的に1種又は複数の更なる添加剤成分と集合させるステップを含み得る。一般に、組成物は、本発明の化合物を液体担体若しくは微細な固体担体又はその両方と均一及び緊密に集合させ、次に必要に応じて生成物を成形することにより調製される。
【0201】
経口投与に適するように製剤化される本発明の組成物は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ドロップ剤(フレーバー付与された基剤、通常、ショ糖及びアラビアゴム又はトラガカントガムを使用)、散剤、顆粒剤又は水性若しくは非水性液体中の溶液製剤若しくは懸濁液製剤の形態、又は水中油型若しくは油中水型エマルジョン製剤、又はエリキシル剤若しくはシロップ剤又はトローチ剤(ゼラチン及びグリセリン等の不活性基剤又はショ糖及びアラビアゴムを使用)であり得、それぞれ活性成分としてその対象組成物を予め定められた量で含む。本開示の組成物は、ボーラス、舐剤又はペーストとして投与することもできる。
【0202】
経口投与用固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣剤、散剤、顆粒剤等)において、対象組成物は、以下の1種又は複数の医薬的に許容される医薬品添加剤と混合され得る:(1)充填剤又は希釈剤、例えばデンプン、デキストロース、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及び/又はケイ酸;(2)結合剤、例えばセルロース(例えば、微結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びカルボキシメチルセルロース)、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/又はアラビアゴム等;(3)保湿剤、例えばグリセロール;(4)崩壊剤:例えば、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンNa(デンプングリコール酸ナトリウム)、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、ジェランガム、キサンタンガム、寒天、炭酸カルシウム、バレイショデンプン又はタピオカデンプン、アルギン酸及びアルギン酸ナトリウム、特定のケイ酸塩、特にケイ酸カルシウム並びに炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延化剤、例えばパラフィン;(6)吸収促進剤、例えば4級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えばセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール等;(8)吸収剤、例えばカオリン及びベントナイトクレイ;(9)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びこれらの混合物;(10)着色剤;(11)錯化剤、例えばシクロデキストリン及び修飾シクロデキストリン、好ましくは(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン及びスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン等;(12)マトリックスを形成する高分子賦形剤、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、例えばPVP K30、アクリル系ポリマー及びコポリマー、例えば異なるグレードのEudragit、好ましくはEudragit L100、(酢酸/コハク酸)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、他のコポリマー、例えばSoluplus等のポリエチレングリコールをベースとするコポリマー、(13)担体、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、組成物は緩衝剤も含むことができる。類似の種類の固形組成物を、ラクトース、即ち乳糖等の賦形剤及び高分子量ポリエチレングリコール等を用いる軟及び硬ゼラチンカプセル剤の充填剤として用いることもできる。開示した医薬品添加剤は1を超える作用を提供することができる。例えば、充填剤及び結合剤は、崩壊剤、流動化剤、付着防止剤、滑沢剤、甘味剤等にもなり得る。本発明によれば、2種以上の賦形剤を使用することが可能であり、前記2種以上の賦形剤は、同一及び/又は異なる分類に属するものであり得る。この点に関する制限はない。
【0203】
静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下投与を含む非経口投与のために製剤化される本発明の組成物は、それらが好適な溶媒(例えば、油又は水、NaCl水溶液、例えば0.9重量%のNaCl溶液、グルコース水溶液、デキストロース溶液)中で希釈され得るように、バイアル中で、固体形態で提供され得る。固体形態は、賦形剤及び/又は更なる成分、例えばクエン酸ナトリウム等の緩衝剤、可溶化剤(共溶媒)、例えばエタノール、錯化剤(シクロデキストリン及び変性シクロデキストリン(好ましくは(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン及びスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを含む)等)、安定化剤、例えばセルロース、2-ヒドロキシプロピルエーテル、ポリエチレングリコール4000架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)及び/又はポリエチレングリコール、浸透圧性薬剤、例えばグルコース又は塩化ナトリウム、界面活性剤、例えばポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエート、ポリオキシルヒマシ油及び/又はラウリル硫酸ナトリウム、防腐剤又は静菌剤、例えばクエン酸ナトリウム、ベンジルアルコール及び/又はベンジルアルコール若しくはカルボキシメチルセルロースとしての粘度調整剤の1つ又は複数と混合される式(I)の化合物を含み得る。他の医薬的に許容される賦形剤は、前記固体形態中に含めるのに好適でもあり得、例えば経口投与のために製剤化される組成物中に含めるのに好適であると本明細書において上述される医薬的に許容される賦形剤の1つ又は複数であり得る。固体形態の所望の特性に応じて、適切な賦形剤を選択することは、当業者の技能の十分範囲内である。非経口投与のために製剤化される組成物は、例えば、輸液バッグ又は予め充填されたシリンジ中において液体形態でも提供され得る。この場合、上に列挙されるのと同じ成分が液体製剤中に存在し得る。液体製剤は、水性製剤、NaCl水溶液、例えば0.9重量%のNaC溶液、グルコース水溶液又はデキストロース溶液であり得、液体製剤は、油製剤でもあり得、例えばリン脂質によって安定化される中鎖トリグリセリド及び長鎖トリグリセリドを含む安定化された水中油型エマルジョンであり得る。
【0204】
特に、埋め込み型医療機器若しくは埋め込み型抗生物質中に又は埋め込み型医療機器若しくは埋め込み型抗生物質におけるコーティング中に本発明の化合物を含む、埋め込み型医療機器又は埋め込み型抗生物質を含む更なる非経口投与のタイプも考えられる。
【0205】
本明細書において用いられる「埋め込み型医療機器」という語は、生物学的構造を代替、補助又は強化することを意図された任意の留置(患者の身体内に設置される)医療機器を指す。埋め込み型医療機器は、永続的に設置され得、例えばステント又は人工関節であり得、代わりに、それらは、一時的に設置され、それらが必要なくなったときに取り外され得る(例えば化学療法ポート又は整形外科用ねじ)。
【0206】
本明細書において用いられる「埋め込み型抗生物質」という語は、任意の留置(患者の身体内に設置される)医療機器を指し、前記医療機器は、抗生物質の送達により、感染症、例えば細菌感染症を治療又は予防することを主な目的として患者に埋め込まれる。埋め込み型抗生物質は、永続的に設置され得、代わりに、それらは、一時的に設置され、それらが必要なくなったとき、例えば感染が根絶されたときに取り外され得るか、又はそれらは、身体内で時間と共に簡単に溶解し得る。
【0207】
本発明の化合物は、医療機器、例えば手術器具又は縫合具にも適用され得る。これは、前記医療機器における細菌増殖を防止し得る。前記医療機器は、手術部位又は例えば縫合具の場合には創傷部において抗生物質も送達し得る。
【0208】
本明細書において用いられる医療機器という語は、患者の診断又は治療のために医療現場で使用される任意のツール、例えば外科用メス及び鉗子、ハサミ及び縫合糸等の手術用ツールを指す。本明細書において用いられる「医療機器」という語は、歯科用器具を包含する。
【0209】
特に、経口又は静脈内(IV)投与のために製剤化される組成物のための一般的な賦形剤としては、以下のものが挙げられる。
安定化剤
安定化剤は、製剤の物理化学的安定性を改善するために有利に使用され得る。本発明に使用することができる安定化剤に特に制限はない。
【0210】
エンドトキシン制御PVP及び/又はポリビニルピロリドンの使用は、非経口投与のために製剤化される組成物のための安定化剤として好ましいことがある。
【0211】
安定化剤は、0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%、より好ましくは0.1重量%~1重量%の相対量で存在し得る。本明細書及びその後の節における重量%の表示は、100重量%である医薬組成物の総重量を基準にする。
【0212】
緩衝剤
緩衝剤は、非経口製剤のpH溶液を制御するために有利に使用され得る。本発明に使用することができる緩衝剤に特に制限はない。
【0213】
用いられる緩衝剤は、本発明の化合物の物理化学的特性、例えば安定性及び溶解性、緩衝剤の能力及び所望のpHに依存し得る。ホスフェート、シトレート、トリス、スクシネート及び/又はヒスチジン緩衝剤が例えば使用され得る。
【0214】
緩衝剤は、0.01重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%、より好ましくは0.01重量%~3重量%の相対量で存在し得る。
【0215】
可溶化剤(共溶媒)
可溶化剤(共溶媒)は、本発明の化合物の溶解性を改善するために有利に使用され得る。本発明に使用することができる可溶化剤(共溶媒)に特に制限はない。
【0216】
例えばポリオキシエチレン300又は400、エタノール、プロピレングリコール及び/又はグリセリンといった生体適合性共溶媒の使用が好ましいことがある。
【0217】
共溶媒は、1重量%~60重量%、好ましくは1重量%~30重量%、より好ましくは1重量%~15重量%の相対量で存在し得る。
【0218】
浸透圧性薬剤
浸透圧性薬剤は、溶液の等張性に達するために有利に使用され得る。本発明に使用することができる浸透圧性薬剤に特に制限はない。
【0219】
グルコース及び/又は塩化ナトリウムの使用が好ましいことがある。
【0220】
浸透圧性薬剤は、0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、より好ましくは0.09重量%~5重量%の相対量で存在し得る。
【0221】
防腐剤
防腐剤は、酸化、光、温度のような物理化学的分解から化合物を保護するために有利に使用され得る。本発明に使用することができる防腐剤に特に制限はない。
【0222】
重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルベート、亜硫酸ナトリウム及び/又はチオグリセロールの使用が好ましいことがある。
【0223】
防腐剤は、0.01重量%~3重量%、好ましくは0.01重量%~2重量%、より好ましくは0.01重量%~0.01重量%の相対量で存在し得る。
【0224】
結合剤
結合剤は、有利には、単独で又は賦形剤と一緒に、活性成分の粒子径を増大させるために及び取扱い性を向上させるために使用され得る。本発明に使用することができる結合剤の材料は、特に限定されない。
【0225】
好適な結合剤材料としては、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、コポビドン(ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル))、マルトデキストリン、ポロキサマー(第1ポリ(エチレンオキシド)ブロック、第2及び中央ポリ(プロピレンオキシド)ブロック及び第3ポリ(エチレンオキシド)ブロックを有するブロックコポリマー)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、アルミノケイ酸マグネシウム、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸、カルボマー、(例えば、カーボポール)、デキストリン、デキストレート類(デンプンの酵素加水分解を制御することにより得られる糖類の混合物を精製したもの)、グアーガム、水添植物油、グルコース液、ワックス、デンプン(アルファ化及び未加工)、アルギン酸ナトリウム並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0226】
ポビドン及び/又はコポビドンを使用することが好ましい場合がある。
【0227】
結合剤は、0.5重量%~15重量%、好ましくは1重量%~12重量%、より好ましくは4重量%~10重量%の相対量で存在させることができる。
【0228】
希釈剤
希釈剤は、医薬組成物の嵩を増やし、及び組成物の取扱いを容易にするために有利に使用される。本発明に使用することができる希釈剤の材料は、特に限定されない。
【0229】
好適な希釈剤の材料としては、マンニトール、イソマルト、ヒスチジン、ラクトース(無水物又は一水和物形態を含む)、リン酸カルシウム(二塩基性及び三塩基性リン酸カルシウムを含む)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、スクロース、フルクトース、マルトース、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ケイ酸アルミニウム、デキストロース、デンプン(アルファ化及び未加工)、グルコース、デキストレート類(デンプンの酵素加水分解を制御することにより得られる糖類の混合物を精製したもの)、炭酸マグネシウム及びこれらの混合物が挙げられる。
【0230】
マンニトール、キシリトール、ソルビトール、イソマルト及び/又はヒスチジンを使用することが好ましい場合がある。特にマンニトールが好ましい場合がある。
【0231】
存在する希釈剤の相対量は、特に限定されない。好適な量は、2重量%~85重量%、好ましくは8重量%~80重量%、より好ましくは10重量%~50重量%の範囲であり得る。
【0232】
界面活性剤
界面活性剤は、錠剤及び有効成分の濡れ性を高めるために有利に使用することができる。界面活性剤は任意選択的な成分であるが、好ましい成分である。本発明に使用することができる界面活性剤の材料は、特に限定されない。
【0233】
好適な界面活性剤材料としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマー、ドクサートナトリウム、ソルビタンエステル、ポリエチレンオキシド、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80(脂肪酸でエステル化されたエトキシル化ソルビタンであり、数字はポリエチレングリコールの繰り返し単位の数を表す)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0234】
ラウリル硫酸ナトリウムを使用することが好ましい場合がある。
【0235】
存在する界面活性剤の相対量は、特に限定されない。好適な量は、0重量%以上~7重量%、好ましくは0.1重量%~6.5重量%、より好ましくは1重量%~6重量%の範囲であり得る。
【0236】
崩壊剤
崩壊剤は、医薬組成物の崩壊を促進し、それにより有効成分の溶解及び取込みを促進するために使用され得る。本発明に使用することができる崩壊剤の材料は、特に限定されない。
【0237】
適当な崩壊剤の材料としては、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、カルボキシメチルデンプンNa(デンプングリコール酸ナトリウム)、クロスカルメロースナトリウム、ジェランガム、キサンタンガム、アルミノケイ酸マグネシウム、アルギン酸ナトリウム、アルファ化デンプン、アルギン酸、グアーガム、(メタ)アクリル酸のホモ及びコポリマー並びにその塩、例えばポラクリリンカリウム並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0238】
クロスポビドンを使用することが好ましい場合がある。
【0239】
存在する崩壊剤の相対量は、特に限定されない。好適な量は、0重量%以上~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは2重量%~10重量%の範囲であり得る。
【0240】
流動化剤
流動化剤は、医薬組成物の流動性を向上させ、それにより取扱い性を向上するために有利に使用され得る。流動化剤は任意選択的であるが、好ましい成分である。本発明に使用することができる流動化剤の材料は、特に限定されない。
【0241】
好適な流動化剤の材料としては、コロイド状二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸三カルシウム及びこれらの混合物が挙げられる。
【0242】
コロイド状二酸化ケイ素を使用することが好ましい場合がある。
【0243】
存在する流動化剤の相対量は、特に限定されない。好適な量は、0重量%以上~5重量%、好ましくは0.1重量%~4重量%、より好ましくは0.2重量%~1重量%の範囲であり得る。
【0244】
滑沢剤
滑沢剤は、有利には、特に錠剤が打錠杵に付着するのを防ぐことによって打錠を容易にするために使用され得る。滑沢剤は任意選択的であるが、好ましい成分である。本発明に使用することができる滑沢剤の材料は、特に限定されない。
【0245】
好適な滑沢剤の材料としては、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ステアリン酸、ロイシン、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、ベヘン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸マグネシウム、脂肪酸のショ糖エステル、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、水添ヒマシ油、水添植物油、鉱油、安息香酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸、カルナウバロウ、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンモノステアレート、ケイ酸カルシウム及びこれらの混合物が挙げられる。
【0246】
ステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウム並びにこれらの混合物から選択される滑沢剤を使用することが好ましい場合がある。
【0247】
存在する滑沢剤の相対量は、特に限定されない。好適な量は、0重量%以上~7重量%、好ましくは0.1重量%~4重量%、より好ましくは0.5重量%~3.5重量%の範囲であり得る。
【0248】
マトリックス形成ポリマー及びコポリマー
マトリックス形成ポリマー又はコポリマーは、任意選択的であるが、好ましい成分として使用され得る。
【0249】
好適なマトリックス形成ポリマー及びコポリマーとしては、ポリビニルピロリジン(PVP)、アクリル系ポリマー及びコポリマー、例えば異なるグレードのEudragit、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)並びに他のコポリマー、例えばSoluplus等のポリエチレングリコールをベースとするコポリマーが挙げられる。
【0250】
好ましいマトリックス形成ポリマー及びコポリマーは、HPMC AS及びSoluplusであり得る。
【0251】
存在するマトリックス形成ポリマー及びコポリマーの相対量は、特に限定されない。好適な量は、0.1g~10g又は0.1重量%~10重量%、好ましくは0.2g~5g又は0.2重量%~5重量%、より好ましくは0.3g~4g又は0.3重量%~4重量%の範囲であり得る。
【0252】
錯化剤
錯化剤は、任意選択的であるが、好ましい成分として使用され得る。
【0253】
好適な錯化剤としては、シクロデキストリン及び修飾シクロデキストリンが挙げられる。
【0254】
好ましい錯化剤としては、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン及びスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンが挙げられる。
【0255】
存在する錯化剤の相対量は、特に限定されない。好適な量は、0.1g~24g又は0.1重量%~40重量%、若しくは30重量%、若しくは24重量%、好ましくは0.1g~10g又は0.1重量%~10重量%、より好ましくは0.1g~5g又は0.1重量%~6重量%若しくは5重量%の範囲であり得る。
【0256】
他の種類の医薬品添加剤
本発明の組成物は、当技術分野において一般に使用されている更なる医薬品添加剤を含むことができる。
【0257】
この種の更なる医薬品添加剤としては、本発明の組成物の被覆に使用するための放出速度調整剤、可塑剤、皮膜形成剤、着色剤、付着防止剤及び/又は顔料を挙げることができる。他の種類の存在し得る医薬品添加剤としては、風味剤、甘味剤、酸化防止剤、吸収促進剤及び/又は増量剤が挙げられる。この種の医薬品添加剤賦形剤の相対的な量は、特に限定されない。これは、一般的な知識及び定型的手順に基づき当業者が決定することができる。
【0258】
皮膜形成剤は、有利には、凝集性被覆を有する本発明の錠剤を提供するために使用される。好適な皮膜形成剤としては、イソマルト、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、マルトデキストリン、スクロース、キシリトール、マルチトール、アクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー、ポリ酢酸フタル酸ビニル(PVAP)、メタクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー、シェラック、アルギン酸ナトリウム、ツェインからなる群から選択される材料等の腸溶性被覆剤が挙げられる。
【0259】
好適な可塑剤としては、ソルビトール、トリアセチン、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリル、ジアセチル化モノグリセリド、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル及びクエン酸トリブチルが挙げられる。
【0260】
上に述べた医薬品添加剤の各分類に関して、単一種の物質のみを使用することも、同一の分類に属する2種以上の物質の組合せを使用することも可能である。当然のことながら、各分類に属する構成要素が全て存在する必要はない。
【0261】
本発明の組成物は、本明細書に開示する化合物を非晶性物質の粒子形態又は任意の結晶形態で含むことができる。粒子径は、特に限定されない。例えば、組成物は、本開示化合物の微粉化された結晶を含むことができる。微粉化は、本発明化合物の結晶のみに対しても、結晶と賦形剤又は担体の一部又は全部との混合物に対しても行うことができる。本開示化合物の微粉化された結晶の平均粒子径は、例えば、約5~約200ミクロン又は約10~約110ミクロンであり得る。本発明の化合物はポリマーマトリックス中の分子分散体形態で存在することもできる。更なる他の実施形態において、本発明の化合物は、シクロデキストリン等の好適な錯化剤を用いて錯体化することができる。
【0262】
錠剤は、任意選択的な1種又は複数の助剤成分と一緒に圧縮又は成形することにより製造することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチン、微結晶セルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースNa)、表面活性剤又は分散剤を用いて製剤化することができる。湿製錠剤は、対象の組成物を不活性な液体希釈剤で湿らせた混合物を適切な機械で成形することにより作製することができる。錠剤及び他の固形剤形、例えば糖衣剤、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤は、任意選択的に割線を設けるか、又は被覆及びシェル層、例えば腸溶性被覆及び医薬品製剤化の分野においてよく知られている他の被覆を有するように製剤化することができる。開示した医薬品添加剤は1を超える作用を提供することができる。例えば、充填剤及び結合剤は、崩壊剤、流動化剤、付着防止剤、滑沢剤、甘味剤等にもなり得る。
【0263】
開示された組成物は、凍結乾燥(lyophilized)又は凍結乾燥(freeze dried)された本明細書に開示する化合物を含み得ることが理解されるであろう。例えば、開示された化合物を結晶性及び/又は非晶性粉末形態で含む組成物を本明細書に開示する。この種の形態は、再構成して、例えば水性組成物として使用することができる。
【0264】
経口投与用液体剤形としては、医薬的に許容されるエマルジョン製剤、マイクロエマルジョン製剤、溶液製剤、懸濁液製剤、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられる。液体剤形は、対象の組成物に加えて、当技術分野において慣用されている不活性希釈剤、例えば水又は他の溶媒等、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、シクロデキストリン並びにこれらの混合物を含むことができる。
【0265】
懸濁剤は、対象の組成物に加えて、懸濁剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、水酸化酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカントガムを含むことができる。
【0266】
直腸内又は膣内投与のために製剤化された組成物は、坐剤として提供することができ、これは、対象の組成物を、室温では固体であるが体温で液体となり、したがって体腔内で溶けて活性剤を放出することになる、1種又は複数の好適な非刺激性賦形剤又は担体、例えばカカオ脂、ポリエチレングリコール、坐剤用ワックス又はサリチル酸塩を含有するものと混合することにより調製することができる。膣内投与に適した形態に製剤化される組成物としては、当技術分野において適切であることが知られている担体等を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、泡沫剤又は噴霧剤も挙げられる。
【0267】
対象の組成物を経皮投与するための剤形としては、散剤、噴霧剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液製剤剤、パッチ剤が挙げられる。本発明の化合物は、無菌条件下において、医薬的に許容される担体及び必要に応じて防腐剤、緩衝剤又は噴射剤と混合することができる。
【0268】
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤及びゲル剤、ドロップ剤は、対象の組成物に加えて、動物性及び植物性の脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカントガム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、酸化亜鉛又はこれらの混合物等の賦形剤を含むことができる。
【0269】
散剤及び噴霧剤は、対象の組成物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ポリアミド粉末又はこれらの混合物等の賦形剤を含むことができる。噴霧剤は、一般的な噴射剤、例えばクロロフルオロハイドロカーボン並びにブタン及びプロパン等の揮発性無置換炭化水素を更に含むことができる。
【0270】
本開示の組成物及び化合物は、代わりに、エアゾール剤により投与するために適した形態に製剤化することができる。これは、本発明化合物を含む水性エアゾール、リポソーム製剤又は固体粒子を調製することによって達成され得る。非水性(例えば、フルオロカーボン噴射剤)の懸濁液を使用することもできる。超音波式ネブライザーを使用し得、なぜなら、対象の組成物に含まれる化合物を分解させる可能性がある剪断に薬剤が曝されることを最小限に抑えられるためである。
【0271】
水性エアゾール剤は、通常、対象の組成物を従来の医薬的に許容される担体及び安定化剤と一緒に製剤化して、水溶液又は水性懸濁液とすることにより製造される。担体及び安定化剤は、具体的な対象組成物の要件に応じて変化するが、通常、非イオン性界面活性剤(Tween、pluronics又はポリエチレングリコール)、血清アルブミン等の無害なタンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシン等のアミノ酸、緩衝剤、塩、糖又は糖アルコールを含む。エアゾール剤は、一般に、等張液から調製される。
【0272】
例示した医薬品添加剤は、2つ以上の作用を示し得ることに留意すべきである。例えば、充填剤及び結合剤は、崩壊剤、流動化剤、付着防止剤、滑沢剤、甘味剤等にもなり得る。一実施形態において、異なるタイプの賦形剤について本明細書において上に規定される量の指示の達成は、規定の機能を有する全ての賦形剤の総量を考慮に入れて、各タイプの賦形剤について評価される。
【0273】
非経口投与に適した本開示の医薬組成物は、本発明の化合物を、1種又は複数の、医薬的に許容される無菌の等張性水性若しくは非水性溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルジョン又は滅菌粉末との組合せとして含む。前記組成物は、使用の直前に無菌の注射可能な溶液又は分散液に再構成され得る。前記組成物は、本明細書において上記に記載される1つ又は複数の賦形剤、例えば酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、意図された受容者の血液と製剤を等張化する溶質又は懸濁剤若しくは増粘剤を含有し得る。例えば、本明細書では、開示された化合物を含み、更に例えばデキストロース(例えば、約1~約10重量パーセントのデキストロース又は水中約5重量パーセントのデキストロース(D5W)を含むことができる水性組成物を提供する。
【0274】
本開示の医薬組成物中に使用することができる好適な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)及びこれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油並びに注射可能な有機酸エステル、例えばオレイン酸エチル及びシクロデキストリンが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチン等の界面活性剤の使用、分散液の場合に所要の粒子径の維持及び界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0275】
想定されている組成物及び製剤形態、例えば経口製剤(例えば、丸剤又は錠剤)及び非経口製剤、例えば静脈内(IV)注入のための溶液は、放出制御製剤、例えば即時放出型製剤、遅延放出型製剤又はこれらの組合せとして製剤化できることが理解されるであろう。
【0276】
特定の実施形態において、対象の化合物及び組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤又は他の適切な摂取可能な製剤(以後、「錠剤」と総称する)又は非経口投与のための水性若しくは非水性溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルジョンとして製剤化することができる。本開示の組成物は、患者(ヒト又はヒト以外の哺乳動物)に提供/投与される抗菌剤、即ち本発明の化合物の得られる量が治療有効量(治療用量)となるように製剤化することができる。前記治療有効量は、例えば3日間~5週間、例えば7日間~2週間にわたって、例えば複数回の静脈内(i.v.)投与/日の投与単位に分割され得る。前記治療有効量は、個体の少なくとも50%、例えば少なくとも60、70、80、90、95%又は100%が統計的に有意な感染の低下を示す量であり得る。前記量は、前記抗菌剤の毒性を考慮に入れるべきでもある。治療有効量は、被験体のサイズ、体重、年齢、病態及びタイプ並びに治療される感染及び製剤、例えば錠剤のタイプ及び/又は投与方式、例えば経口若しくは非経口、例えば皮下、筋肉内若しくは静脈注射に応じて変化し得る。標準的な薬剤開発技術及び方法、例えばインビトロ及び/又はインビボ実験を用いてこのような治療有効量を決定すること、例えば標達成確率(PTA)を決定すること、及び/又は例えば動物及び/又はヒトにおける投与量決定臨床試験及び毒性/最大耐用量/安全性試験を行うことは、当業者の技能の十分範囲内である。
【0277】
単位投与量
本発明の医薬組成物による患者の治療が経口投与によるものである場合、本発明の医薬組成物の1回分の単位投与量は、通常、1日に1回、2回又は3回投与される。1日投与量(1日に投与される総投与量)は、内科医が上述の指針に従い、感染のタイプ及び重症度、患者の性別、体重、年齢及び全身状態を考慮して決定する。好ましい1日の経口投与量は、40~5000mg、例えば40~3000mg、好ましくは40mg~2000mg、例えば100~2000mgの範囲であり得る。1日投与量は、意図されている投与の頻度、例えば1日1回、週に1回に応じて変化し得る。
【0278】
非経口投与(例えば、静脈内(i.v.)又は筋肉内(i.m.)又は腹腔内(i.p)又は皮下投与)の場合、本発明の医薬組成物は、1日2回、3回又はそれを超える頻度で投与され得る。好ましい1日投与量は40~5000mgの範囲であり、典型的な単位投与量は、40~3000mg、好ましくは100~1000mgであり得る。ここに指定した範囲の上限は、その実現可能性によって決まる。例えば、筋肉内(i.m.)又は皮下投与の場合、溶解性が低く、それに従い薬物溶液の体積が増加してしまうために、1回の注射で投与できる最大用量が制限されることがある。そのような場合、最大単位投与量は最大耐用量により制限される。
【0279】
組合せ医薬
本明細書では、1種又は複数の開示される化合物と第2の成分とを含む組成物も想定されている。本開示のこのような組成物中の第2の成分は、本明細書に開示される化合物以外の別の抗生剤、例えばFabI阻害剤であり得る。他のFabI阻害剤又は他の抗生剤を含む他の更なる成分も存在し得る。想定されている本明細書に開示される治療方法は、幾つかの実施形態では、別の抗生剤(本明細書に開示される化合物以外)などの別の剤を投与することを更に含むことができる。例えば、細菌感染症を治療する方法であって、開示される化合物を投与することを含み、別の抗生剤又は抗菌剤を投与することを更に含む方法が提供される。本明細書に開示される化合物及び第2の成分は、同一剤形の一部とすることもできるか、又は2種の別々の剤形として製剤化することもできる。これらが2種の別々の剤形に製剤化されている場合、第2の成分を含む剤形は、本明細書に開示される化合物を含む剤形と同時、その前又はその後に投与することができる。
【0280】
医学的適応
本発明の化合物及び組成物は、患者の細菌感染症の治療に使用することができる。それらは、特に、以下の細菌の1つ又は複数を含む細菌感染症の治療に適し得る:黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及び/又はA.バウマニ(A. baumannii)。このような感染症としては、これらに限定されるものではないが、創傷感染症、例えば火傷若しくは手術部位の感染、皮膚及び軟組織感染、例えば細菌性毛包炎、膿痂疹、例えば局所的な膿痂疹、蜂巣炎、できもの、せつ、吹き出もの、膿瘍、皮膚炎、例えば湿疹;菌血症及び敗血症、髄膜炎、腹腔内感染症、胸膜肺感染症並びに院内感染性(hospital acquired)肺炎、院内(nosocomial)肺炎及び人工呼吸器関連肺炎を含む肺炎;感染性心内膜炎;例えば黄色ブドウ球菌(S. aureus)又は大腸菌(E. coli)による下痢及び食中毒;複雑性尿路感染症を含む尿路感染症、細菌によって引き起こされる場合の血栓性静脈炎、骨関節感染症、例えば敗血症性関節炎、糖尿病性足、骨及び関節感染及び人工関節感染、医療機器/埋め込み物に関連する感染症、口腔内潰瘍、例えば歯周膿瘍等の口腔の感染症、歯科感染症、例えば歯性感染症及び歯肉炎;眼感染症、例えば角膜潰瘍;黄色ブドウ球菌(S. aureus)による鼻腔のコロニー形成が挙げられる。
【0281】
特に、本発明の化合物及び組成物は、A.バウマニ(A. baumannii)に関連する細菌感染症の治療に有効であり得、前記感染症は、肺炎、最も好ましくは院内肺炎又は人工呼吸器関連肺炎であり得る。
【0282】
投与タイプ
上述されるように、本発明の化合物及び組成物は、静脈内、筋肉内、腹腔内若しくは皮下投与又は代わりに経口投与によって患者に投与され得る。溶解性及び又はバイオアベイラビリティを高めるために、化合物は、プロドラッグの形態又は塩形態で有利に投与され得る。例えば、埋め込み(例えば、埋め込み型医療機器の一部として)、吸入による更なる投与形態も考えられる。
【0283】
投与量
任意の開示されている化合物又は組成物の投与量は、患者の症状、年齢、体重、治療又は予防すべき障害の性質及び重症度、投与経路、対象となる組成物の形態に応じて変化するであろう。対象の組成物のいずれも、単回投与でも分割投与でも投与することができる。本組成物の投与量は、当業者に知られている技法又は本明細書の教示に従い容易に決定することができる。
【0284】
特定の実施形態において、対象の化合物の投与量は、一般に、約0.01ng~約10g/kg体重の範囲、詳細には約1ng~約0.1g/kg体重の範囲、より詳細には約1mg~約0.1g/kg体重の範囲であろう。
【0285】
本開示の任意の特定の組成物に関して、組成物の有効用量又は量及び組成物を投与するタイミングに及ぼされ得るあらゆる影響を判断することが必要な場合もある。これは、動物の1つ又は複数の群(好ましくは1群当たり少なくとも2~5匹)に対して、定型的な実験を行うか、又は適切な場合にはヒトに対する試験を行うことによって達成することができる。任意の対象組成物及び治療又は予防方法の有効性の評価は、組成物を投与し、1つ又は複数の適切な指標を測定し、治療後のこれらの指標の値を治療前の同じ指標の値と比較して投与の効果を評価することによって行うことができる。
【0286】
所与の患者に最も有効な治療をもたらすであろう任意の具体的な対象組成物の正確な投与時間及び量は、対象組成物の活性、薬物動態及び生物学的利用能、患者の生理学的状態(年齢、性別、疾患の種類及び段階、全般的な身体状態、所与の投与量及び薬物療法の種類に対する反応性等)、投与経路等に依存することになる。本明細書に提示した指針を治療の最適化に使用することができ、例えば投与に最も適した時間及び/又は量を決定するために、対象の監視並びに投与量及び/又はタイミングの調整から構成される定型的な実験以外は不要であろう。
【0287】
対象を治療する間、治療期間の予め定められた時点で1つ又は複数の該当する指標を測定することにより、患者の健康を監視することができる。このような監視の結果に従い、治療(組成、量、投与時間及び製剤を含む)を最適化することができる。同じパラメータを測定することにより定期的に再評価を行い、患者の改善の程度を判断することができる。この再評価に基づき、投与される対象組成物の量及び場合により投与時間も調整することができる。
【0288】
治療は、化合物の最適な用量よりも少ない、少量の投与量から開始し得る。その後、最適な治療効果が得られるまで投与量を少量ずつ増加させることができる。
【0289】
対象の薬物の組合せを使用することにより、この組成物に含まれる任意の個々の剤に必要とされる投与量を低減することができ、なぜなら、異なる剤の効果の発現及び持続時間は、相補的であるためである。
【0290】
対象組成物の毒性及び治療効果は、例えば、細胞培養又は実験動物を用いる標準的な薬学的手順を用いて決定することができる。
【0291】
細胞培養試験及び動物実験から得られたデータを、ヒトに使用する範囲の投与量で製剤化するために用いることができる。任意の対象組成物の投与量は、好ましくは、血中濃度が、個体の少なくとも50%、例えば少なくとも60、70、80、90、95%又は100%の感染を統計的に有意に低減しながら、毒性を殆ど又は全く示さない範囲にある。投与量は、採用した剤形及び利用した投与経路に応じてこの範囲内で変化させることができる。本開示の組成物の場合、治療有効用量はまず細胞培養試験から推定することができる。
【0292】
投与頻度
本明細書に開示される化合物及び組成物は、任意の適切な頻度で投与され得る。前記頻度は、治療される被験体並びに感染症の重症度及びタイプに依存し得る。投与は、例えば1日1回又は複数回であり得る。投与の回数は、組成物の形態並びに治療される被験体及び病状、例えば細菌感染症にも依存し得る。
【0293】
治療期間
本明細書に開示される化合物及び組成物は、無期限に投与することができる。有利には、これらを、細菌感染が完全に根絶されるか、又は少なくとも患者の免疫系が残存している病理学的細菌に対処することができる程度になるまでの期間投与する。典型的な投与期間は、3日間~7週間、例えば1~5週間、例えば7日間~2週間であり得る。しかしながら、より長い治療期間が一部の感染症、例えば骨感染症のために必要となり得る。
【0294】
治療方法
本明細書に開示される化合物及び組成物は、治療の方法に使用され得る。特に、本明細書に開示される化合物及び組成物は、細菌感染症を治療する方法であって、それを必要とする患者に、本発明の開示される化合物又は本発明の開示される化合物を含む医薬組成物を投与することを含む方法に使用され得る。細菌感染症は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及び/又はA.バウマニ(A. baumannii)による感染症であり得る。
【0295】
本発明の化合物は、治療、特にそれを必要とする患者の細菌感染症の治療に使用するための医薬組成物の製造にも使用され得、前記細菌感染症は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及び/又はA.バウマニ(A. baumannii)によるものであり得る。
【0296】
更なる実施形態は、必要とする患者の黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及び/又はA.バウマニ(A. baumannii)細菌感染症などの細菌感染症を治療する方法であって、本発明の化合物又は組成物を投与することを含む方法に関する。
【0297】
本発明の化合物の製造
本発明の化合物は、本明細書において後述される確立された有機化学合成方法及び手順及び/又は情報を用いて調製され得る。出発材料は、購入されるか(市販されている場合)又は本明細書において後述される確立された有機化学合成方法及び手順及び/又は情報を用いて合成され得る。
【0298】
本明細書に開示される化合物は、式M1又はM1’
【化30】

(式中、Xは、脱離基を表し、R13は、R13が-POe2又は-CH2-OPOe2である場合を除いて本明細書に定義される通りであり、各Rは、TMSCHCH又はCNCHCHなどのPg基であり、M1’中のPgは、BOC基などの保護基を表し、R11及びR12は、R11及びR12について本明細書に開示される請求項又は項目のいずれかに定義される基であり得るか、又は好ましくはBoc基、PMB基及びDMB基から選択される保護基も含む、このような定義される基であり得る)
の前駆体化合物を、式M2b:
【化31】

(式中、R~R12、R14、Y及びQは、式Iについて規定されたものと同一の意味を有する)
のアミン化合物とカップリングさせるステップを含む、以下に示す方法を用いて調製することができる。脱離基Xは、ヒドロキシル基、トシレート基、トリフレート基、メシレート基、ヨウ化物、臭化物、塩化物、メトキシ、エトキシなどであり得る。
【0299】
カップリング反応は、好ましくは、溶媒中で、カップリング剤及び塩基の存在下に実施される。溶媒は、好ましくは、DMF、2-Me-THF、DCM、EtOAc、DMC、CPMEから選択される(好ましくは、脱離基がヒドロキシル基である場合、溶媒は、DMFである)。カップリング剤は、好ましくは、HATU、HBTU、HCTU、TBTU、COMU、TOMBU、COMBU、PyBOP、TP、DIC-HOBt、DCC、CDI、EDC、EDC-HOBtから選択される(好ましくは、脱離基がヒドロキシル基である場合、カップリング剤は、HATU又はTPである)。反応は、通常、塩基の存在下に実施される。塩基は、好ましくは、DIPEA、TEA、ピリジン又はDMAPから選択される(好ましくは、TPがカップリング剤として使用される場合、TEAは、塩基として使用される)。M1’の保護基は、好ましくは、カップリング反応の直後に除去され得る。一方、R13及び/又はR11及び/又はR12におけるいずれかの保護基は、好ましくは、最終ステップとして除去される。
【0300】
反応順の例を次のスキーム1に示す。類似の反応スキームは、保護された前駆体M1’について適用される。当然のことながら、この類似のスキームには、前の保護反応及びその後の脱保護反応が追加される必要がある。
スキーム1
【化32】
【0301】
右側部分の前駆体の製造
式M1’の前駆体化合物は、式M3/M3
【化33】

(式中、M1’中のPgは、Bocなどの好適な保護基であり、R13は、R13が-POe2又は-CH2-OPOe2である場合を除いて本明細書に定義される通りであり、各Rは、TMSCHCH又はCNCHCHなどのPg基であり、R11及び又はR12は、本明細書に定義される通りであることに加えて、保護基も含み得、これは、好ましくは、Boc基、PMB基及びDMB基から選択される)
の化合物を、アクリル酸のC1~4アルキルエステル(好ましくはtert-ブチル、エチル又はメチルエステル)等、カルボキシルで保護されたアクリル酸と反応させることにより製造することができる。このカップリング反応は、ヘックカップリング条件下において、好ましくはPd(II)塩、例えばPd(OAc)及びホスフィン配位子、例えばキサントホス、XPhos又はトリ-(o-トリル)ホスフィン又は1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)の存在下に実施される。CyNMe及びNBuClの存在下に高効率のパラジウム触媒-Pd-162も適用される。反応は、通常、DMF、プロピオニトリル、これらの組合せ又は1,4-ジオキサン等の溶媒の存在下及び更にDIPEAなどの塩基の存在下で実施される。このような反応順を次のスキーム2に示す。
スキーム2
【化34】
【0302】
カップリング反応に続いて、カルボキシル基の脱保護及びヒドロキシル以外の任意選択的な脱離基の導入を行う。脱離基Xは、ヒドロキシル基、トシレート基、トリフレート基、メシレート基、ヨウ化物、臭化物、塩化物などであり得る。Pgは、保護されるカルボキシル官能基に好適な保護基、例えばカルボキシル基の保護のためのアルキル基(Me、Et、t-Bu)を表す。アミド基中の窒素原子は、任意選択的に、好適な保護基(Pg’)、例えばBOC基又は代わりに保護されるプロドラッグ基によって保護され得、Pg’’基は、TMSCHCH又はCNCHCHなどの基であり、R11及びR12は、R11及びR12について本明細書に開示される請求項又は項目のいずれかに定義される基であり得るか、又は好ましくはBoc基、PMB基及びDMB基から選択される保護基も含む、このような定義される基であり得る。
【0303】
前駆体化合物M3は、以下に説明されるスキーム3及び4に示されるように合成され得る。
【0304】
スキーム3
【化35】

スキーム3において、無機(KCO)又は有機塩基(EtN)の存在下にTHF又はACN中における、適切な酸(ここで、R11及び又はR12は、本明細書に定義される通りであることに加えて、好ましくはBoc基、PMB基及びDMB基から選択される保護基も含み得、Rz=Hである)、例えば((S)-3-アミノ-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロパン酸又はエステル(ここで、Rzは、C1~4アルキル、好ましくはメチル、例えばメチル3-アミノ-2-((2S,6R)-2,6-ジメチルモルホリノ)プロパノエート又は(2S,3R)-メチル3-アミノ-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタノエートである)による5-ブロモ-3-フルオロ-2-ニトロピリジンの縮合は、良好な収率で3-(置換アミノ)プロパノエート又はブタノエートをもたらす。2位におけるニトロ基還元は、80℃で、酢酸中又は水、エタノール及び塩化アンモニウムの混合物中でFeなどの還元剤の存在下に実施される。環化は、DMF中の水素化ナトリウムを用いて達成される(経路A)。この反応順をスキーム3に示す。保護基Rzは、水及びTHFの混合物中の水酸化リチウムを用いて、塩基性加水分解によって除去される。DIPEAのような塩基の存在下及びDMFなどの溶媒中における、HATUなどの剤を用いた環化(経路B)は、スキーム3に示されるように、3-アミノ-8-ブロモ-1,2,3,5-テトラヒドロ-4H-ピリド[2,3-b][1,4]ジアゼピン-4-オン誘導体の形成をもたらす。
【0305】
式M3の前駆体化合物は、以下のスキーム4に示される式M4の化合物の反応によっても製造され得る。
【化36】
【0306】
式M4の化合物は、参照により本明細書に援用される、AFFINIUM PHARMACEUTICALS, INC.の国際公開第2007/67416号、2007、A2に記載されるように合成され得る。
【0307】
スキーム4
【化37】

DCM中のTMEDA、TMSI、Iの存在下における3-ブロモ-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オンの直接のヨウ素化は、良好な収率で予想されるヨウ化物の形成をもたらした。ヨウ化物は、塩基としてKCOの存在下に50~80℃でアセトニトリル中における、様々なアミンHNR1211(ここで、R12及びR11は、式Iについて上記に定義される通りである)(例えばアゼチジン-3-オール、モルホリン、ピロリジン及びその誘導体、シクロプロパノアミン、ピペラジン及びその誘導体、7-オキサ-2-アザスピロ[3.5]ノナン、チオモルホリン1,1-ジオキシドなど)によるその処理により、対応するアミン(第1級、第2級、第3級及び複素環化合物)に容易に転化され得る。代わりに、DMF中のアジ化ナトリウムとのヨウ化物反応及びその連続的還元により、対応する第一級アミンが得られる。
【0308】
左側部分の前駆体の製造
左側部分の前駆体M2bは、次のスキーム5に示される反応順によって調製され得る。保護されたカルボキシル基の、ヒドロキシメチル基への還元は、THF中の水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)を用いて達成され得る。その後のアルデヒドへの酸化は、DCM中のデス・マーチン・ペルヨージナンを用いて行われ得る。この順序における最後の反応は、まず、エタノール/THF中のメチルアミンと反応させ、続いてエタノール/THF中の水素化ホウ素ナトリウムによる還元によって実施され得る。保護された形態の前駆体M2bを得ることが望ましい場合、得られる生成物、即ちPgの位置に水素を有する以外は以下に示される化合物は、トリエチルアミンの存在下にDCM中におけるカルボキシベンジルクロリドとの反応による、好適な保護基、例えばカルボキシベンジル(Cbz)基によるアミノ基の保護の最終ステップに供され得る。この任意選択的な最終保護ステップは、以下のスキーム5にも示される。
スキーム5
【化38】
【0309】
代わりに、左側部分の前駆体M2bは、スキーム5’に示される反応順によって調製され得、カルボン酸(又はそのアルキルエステル)は、アミド化(例えば、MeNH.HCl、DIPEA、EDCl-HOBt、DMF又はMeNH2/EtOH、還流によって)によってその対応するアミドに転化され、その後、アミド還元(例えばTHF中のBMS又はDCM中のトリフルオロメタンスルホン酸無水物/NaBHを用いて)により、対応するアミンが得られる。
スキーム5’
【化39】
【0310】
代わりに(QがOである場合)、左側部分の前駆体M2bは、スキーム5’’に示される反応順の1つによって調製され得、カルボキシフェノールは、ACN又はTHFなどの溶媒中でKCO又はNaOHなどの塩基の存在下において、2-ブロモプロパン酸エチルを用いて置換され、続いて無水酢酸中で酢酸ナトリウムなどの塩基によって媒介される脱炭酸環化により、ベンゾフラン二環式環が得られ、カルボニル部分は、塩化スズ(IV)などのルイス酸触媒の存在下において、ジクロロ(メトキシ)メタンを用いて3位に導入される。
スキーム5’’
【化40】
【0311】
スキーム5、5’及び5’’において、Pgは、カルボキシベンジル基(BOC基、PMB基、DMB基)などの保護基を表す。Qは、式I中のQと同一の意味を有する(上記のスキーム5’’について記載されるQに対する制限を有する以外)。R、R3a、R3b及びR3cは、式Iにあるのと同一の意味も有し得る。代わりに、これらの基の1つ又は複数は、式Iに従って所望の置換基に後に転化される前駆体基であり得る。例えば、Br置換基は、このような前駆体として使用され得る。
【0312】
14がCHと異なる場合(R14は、LHSのRと一緒に、R14が結合されるNを含み、及び5~8つの環構成員を有する複素環を形成し、好ましくは、前記環中の唯一のヘテロ原子は、R14が結合されるNである)、前駆体M2bは、スキーム5’’’に示される反応順によって調製され得、アミノ(チオ)フェノール前駆体は、環状1,3-ジオンと縮合され、オキシムに転化され、次にベックマン転位に供され、そのアミドがアミンに還元される。
スキーム5’’’
【化41】
【0313】
本発明の化合物の製造の代替的な経路
上記の合成手法の代替として、本発明の化合物は、式M6の化合物又はその保護された形態M6’
【化42】

を、式M7b:
【化43】

(式中、Y及びQは、式(I)について規定されたものと同一の意味を有し、全てのR基(R~R14)は、式Iについて規定されたものと同一の意味を有するか、又はその前駆体、例えば他の基、例えばCN、OH、エステル等のための前駆体としてのBrであり得るか、又はR11及び若しくはR12は、本明細書に定義される通りであることに加えて、好ましくはBoc基、PMB基及びDMB基から選択される保護基も含み得る)
の化合物とカップリングさせることによっても調製され得、このカップリングは、ヘックカップリング条件下で行われ得る。通常、それは、Pd-162(即ち[P(tBu)]Pd(クロチル)Cl)などのPd(II)錯体、テトラブチルアンモニウムクロリド、N-シクロヘキシル-N-メチルシクロヘキサンアミン(DIPEA)及びジオキサンの存在下に行われる。Pd(OAc)などのPd(II)塩と、ホスフィン配位子、例えばトリ-o-トリルホスフィン、DIPEAのような塩基及びDMF及びプロピオニトリルの混合物又は1,4-ジオキサンなどの溶媒との組合せを使用することも可能である。反応は、次の反応スキームによって式Iaの化合物について示される。
スキーム6
【化44】
【0314】
この反応順で保護された前駆体M6’を使用することが有利である。この場合、上記のスキームに示される反応順後、脱保護ステップが行われて、上記に示される反応生成物が得られる。
【0315】
Y及びQは、式Iについて規定されたものと同一の意味を有し、R~R12は、式(I)について規定されたものと同一の意味を有するか、又はその前駆体、例えば他の基、例えばCN、OH、エステル等のための前駆体としてのBrであり得るか、又はR11及び若しくはR12は、本明細書に定義される通りであることに加えて、好ましくはBoc基、PMB基及びDMB基から選択される保護基も含み得る一方、R13は、水素である。
【0316】
本発明の化合物のプロドラッグ(例えば、ここで、R13は、-POe2又は-CH-OPOe2である)の調製は、通常、本発明のそれぞれの化合物(ここで、R13は水素である)を、R13が、生理的条件下で切断可能なプロドラッグ部分、例えば上記で規定されるホスフェート含有基を表すことを除いて同じ構造を有する化合物に転化することによって達成される。プロドラッグ部分は、好ましくは、リン酸メチレン部分又はホスホロアミダート部分である。このようなプロドラッグ部分及びリン酸メチレンプロドラッグを製造するための好適な反応条件は、国際公開第2013/190384 A1号(リン酸メチレン)及びJ. Med. Chem. 2000, 43, 1234-1241(ホスホロアミダート)に記載されている。
【0317】
略語
本開示では、以下に示す略語を使用する。
CC カラムクロマトグラフィー
DCM ジクロロメタン
N 規定度
g グラム
pH 水素イオン指数
mol モル
v/v 体積/体積
vol 体積
m/z 質量電荷比
℃ 摂氏度
TEA, EtN トリエチルアミン
Et2O ジエチルエーテル
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
Boc tert-ブチルオキシカルボニル
h 時間
mL ミリリットル
eq. 当量
M 質量
Me メチル基
MeOH メタノール
AcOH 酢酸
THF テトラヒドロフラン
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
Pd(OAc) 酢酸パラジウム(II)
EtOH エタノール
DCE 1,2-ジクロロエタン
EtOAc 酢酸エチル
Aq. 水性
RT,rt 室温
Rt,tret 保持時間
DMF ジメチルホルムアミド
ACN アセトニトリル
NHOAc 酢酸アンモニウム
TFA トリフルオロ酢酸
HOBT/HOBt 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
TLC 薄層クロマトグラフィー
O 水
sat. 飽和
sol. 溶液
EDCI 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
NMR 核磁気共鳴
s 一重線
d 二重線
t 三重線
m 多重線
dd 二重の二重線
MHz メガヘルツ
ppm 百万分率
H プロトン
J カップリング定数
UPLC-MS 超高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法
DMSO ジメチルスルホキシド
CDCl 重水素化クロロホルム
ML 母液
SCX 強陽イオン交換クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー質量分析法
HATU 1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b] ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HBTU (2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、
ヘキサフルオロホスフェートベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム
CyNCH3,DCHMA N-シクロヘキシル-N-メチルシクロヘキサンアミン
PMB p-メトキシベンジル
STAB トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム
DMC 炭酸ジメチル
EtOAc 酢酸エチル
HCTU O-(1H-6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
TBTU 3-[ビス(ジメチルアミノ)メチリウミル]-3H-ベンゾトリアゾール-1-オキシドヘキサフルオロホスフェート
COMU (1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウム-ヘキサフルオロホスフェート
TOMBU N-{[1,3-ジメチル-2,4,6-トリオキソテトラヒドロピリミジン-5(6H)-イリデンアミノオキシ](ジメチルアミノ)メチレン}-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェート
COMBU 4-{[1,3-ジメチル-2,4,6-トリオキソテトラヒドロピリミジン-5(6H)イリデンアミノオキシ](ジメチルアミノ)メチレン}モルホリン-4-イウムヘキサフルオロホスフェート
PyBOP ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
P 2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2λ5,4λ5,6λ5-トリオキサトリホスフィナン2,4,6-トリオキシド
DIC N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド
DCC N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド
CDI 1,1’-カルボニルジイミダゾール
EDC 3-(エチルイミノメチレンアミノ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン
DMAP N,N-ジメチルピリジン-4-アミン
DMB 3,4-ジメトキシベンジル
BMS ボラン-ジメチルスルフィド
DIAD アゾジカルボン酸ジイソプロピル
BrettPhos 2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル
DMP デス・マーチン・ペルヨージナン
DIBAL 水素化ジイソブチルアルミニウム
Pd-162 トリ-tert-ブチルホスフィン(クロロ)(クロチル)パラジウム(II)
Pd-173 クロチル(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-3,6-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル)パラジウム(II)トリフレート
Pd-175 アリル(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)パラジウム(II)トリフレート
Pd(dba) トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
NBS 1-ブロモ-2,5-ピロリジンジオン; N-ブロモスクシンイミド
pTSA 4-メチルベンゼン-1-スルホン酸
LDA リチウムジイソプロピルアミド
BINOL 1,1’-ビ-2-ナフトール
DMA N,N-ジメチルアセトアミド
DABCO 1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
DPPF 1,1’- ビス(ジフェニルホスファニル)フェロセン
Xphos 2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル
BuLi n-ブチルリチウム
DPPA ジフェニルホスホリルアジド
メシル メタンスルホニル
【0318】
本明細書に開示される本発明の全ての特徴は、自由に組み合わされ得、変形形態及び変更形態は、特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱せずになされ得ることが理解されるべきである。公知の均等物が特定の特徴に対して存在する場合、このような均等物は、具体的に本明細書において言及されているかのように組み込まれる。更に、本明細書に記載される本発明の好ましい実施形態に対する様々な変形形態及び変更形態は、当業者に明らかであろうことが理解されるべきである。このような変形形態及び変更形態は、本発明の主題の趣旨及び範囲から逸脱せずに、及びその意図される利点を減少させずになされ得る。したがって、このような変形形態及び変更形態は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【実施例
【0319】
実施例
以下に示す実施例は、本発明の範囲を決して限定することを意図しておらず、本発明の化合物及びその調製を例示することのみを目的として提供するものである。
【0320】
一般手順
全ての出発物質及び溶媒は、商業的な供給元から入手するか、又は引用文献に従い調製した。別段の指定がない限り、反応は全て撹拌して行った。有機溶液は無水硫酸マグネシウム又は硫酸ナトリウムにより定型的な方法で乾燥させた。
【0321】
カラムクロマトグラフィーは、プレパックドシリカ(230~400メッシュ、40~63μm)カートリッジにて、記載した溶出液を用いて実施した。SCXはSilicycleから購入し、使用前に1M塩酸で処理した。別段の指定がない限り、精製すべき反応混合物はまずMeOHで希釈し、数滴のAcOHで酸性化した。この溶液を直接SCXに負荷し、MeOHで洗浄した。次いで所望の物質を、0.7MのMeOH中NH3で洗浄することにより溶出させた。
【0322】
分析方法
分析UPLC/MS。
方法1b:
Acquity PDA検出器、QDA質量検出器及び四成分溶媒系を備えたWaters Acquity UPLC HClass機器;PDA:210~350nm。0.8mLで以下のカラム:Acquity CSH C18カラム(2.1×50mm 1.7μm)においてアセトニトリル及び水、5%の水中2体積%のギ酸(99%)の可変の勾配を用いて、酸性方法を実施した。
【0323】
標準的な方法:
Acquity PDA検出器、SQ質量検出器及び四成分溶媒系を備えたWaters Acquity UPLC;PDA:210~400nm。0.9mLで以下のカラム:Acquity BEH C18カラム(2.1×50mm 1.7μm)において0.00~3.00分にわたり、MeCN(ギ酸0.1%含有)のグラジエント条件を5→100%とした。
【0324】
分析LCMS
方法1a:Waters X-Select CSH C18、2.5μm、4.6×30mmカラムを用いて、水(ギ酸0.1%含有)中MeCN(ギ酸0.1%含有)により勾配溶出させる。0.00~3.00分にわたり、MeCN(ギ酸0.1%含有)のグラジエント条件を5→95%として流量を2.5mL/分とし、3.01~3.5分にわたり4.5mL/分でフラッシュした。3.60~4.00分にわたり、5%MeCNを2.5mL/分で通液してカラムを再平衡化させた。溶出ピークのUVスペクトルをAgilent 1260 Infinity又はAgilent 1200 VWDを使用して254nmで測定した。質量スペクトルをAgilent 6120若しくはAgilent 1956 MSDを用いて正/負を切替えて運転するか、又はAgilent 6100 MSDを正イオンモード又は負イオンモードのいずれかで運転して測定した。
【0325】
実施例1.3-ブロモ-7-ヨード-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(化合物2)の合成。
一般的な合成スキーム。
【化45】

3-ブロモ-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(化合物1)を、AFFINIUM PHARMACEUTICALS, INC.-国際公開第2007/67416号、2007、A2に記載されるように調製した。
【0326】
ステップ1.3-ブロモ-7-ヨード-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(化合物2):DCM(5mL)中の3-ブロモ-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(710mg、2.95mmol、1.0当量)の撹拌溶液に0℃で、TMEDA(1.76mL、11.8mmol、4.0当量)及びヨードトリメチルシラン(0.907mL、6.18mmol、2.1当量)を加えた。反応混合物を0℃で15分間撹拌した。二ヨウ素(2.25g、8.85mmol、3.0当量)を0℃で加え、反応混合物を0℃で4時間撹拌した。混合物をNaの飽和溶液(20mL)及び水(40mL)でクエンチした。水性層をDCM(2×50mL)で2回抽出した。組み合わされた有機層をNaSO上で乾燥させ、濃縮乾固させた。オレンジ色の固体をMeOH(10mL)で研和して、所望の化合物(763mg、2.08mmol、70.6%)を白色の固体として得た。
UPLC-MS:m/z=366.8/368.8[M+H](ES+);tret=1.41分(標準的な方法)
【0327】
実施例2.N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(化合物7)の合成。
一般的な合成スキーム。
【化46】

ステップ1.2-メチルベンゾフラン-3-カルバルデヒド(化合物4):0℃でDCM(100mL)中のジクロロ(メトキシ)メタン(5.10mL、56.7mmol、1.5当量)の溶液に2-メチルベンゾフラン(5.00g、37.8mmol、1.0当量)及び次に塩化スズ(IV)のDCM中1Mの溶液(60.5mL、60.5mmol、1.6当量)を30分間にわたって加えた。添加後、混合物を30分間にわたって室温に温め、次にNaHCOの氷冷飽和溶液(500mL)に注いだ。混合物をDCM(2×100mL)で2回抽出した。組み合わされた有機層をNaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、シリカクロマトグラフィー(0~50%のEtOAc/イソヘキサン)によって精製して、所望の化合物(5.30g、86%)を黄色の固体として得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ、ppm 10.16(s,1H)、8.06-8.01(m,1H)、7.41-7.35(m,1H)、7.34-7.23(m,2H)、2.70(s,3H).
【0328】
ステップ2.N-ベンジル-N-メチル-1-(2-メチルベンゾフラン-3-イル)メタンアミン(化合物5):DCE(20mL)中の2-メチルベンゾフラン-3-カルバルデヒド(1.00g、6.24mmol、1.0当量)の溶液にN-メチル-1-フェニルメタンアミン(0.98mL、7.49mmol、1.2当量)及びナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(1.99g、9.37mmol、1.5当量)を加えた。反応混合物を室温で72時間撹拌し、次にNaHCOの飽和溶液(20mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、所望の化合物(1.60g、94%の収率)を淡黄色の油として得て、それをそのまま次のステップに使用した。H NMR(400MHz、DMSO-d):δ、ppm 7.63-7.58(m,1H)、7.48-7.43(m,1H)、7.33(d,J=4.8Hz、4H)、7.28-7.20(m,3H)、3.56(s,2H)、3.52(s,2H)、2.42(s,3H)、2.08(s,3H).
【0329】
ステップ3.N-メチル-1-(2-メチルベンゾフラン-3-イル)メタンアミン塩酸塩(化合物6):MeOH(20mL)中のN-ベンジル-N-メチル-1-(2-メチルベンゾフラン-3-イル)メタンアミン(1.60g、6.03mmol、1.0当量)の溶液に、塩酸の1Mの水溶液をpH=1になるまで及び炭素に担持された5%のPd-C 87L(0.64g、40%)を加えた。反応混合物を18時間にわたって室温において5バールで水素化し、セライト上で濾過し、濃縮乾固させて、所望の化合物(737mg、56%)を白色の固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d):δ、ppm 9.24(s,2H)、7.89-7.80(m,1H)、7.59-7.49(m,1H)、7.34-7.23(m,2H)、4.24(s,2H)、2.57(s,3H)、2.55(s,3H).
【0330】
ステップ4.N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(化合物7):THF(10mL)中のN-メチル-1-(2-メチルベンゾフラン-3-イル)メタンアミン塩酸塩(300mg、1.42mmol、1.0当量)の溶液にトリエチルアミン(600μL、4.25mmol、3.0当量)を加え、室温で15分間にわたって塩化アクリロイル(154mg、1.70mmol、1.2当量)を滴下して加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次に水(30mL)に注いだ。有機溶媒を蒸発させた。懸濁液中の固体を濾過によって収集し、水(10mL)で洗浄し、乾燥させて、所望の化合物(316mg、95%)を無色の固体として得た。
UPLC-MS:m/z=230.1[M+H](ES+);tret=1.56分(標準的な方法)
【0331】
実施例3.(E)-N-メチル-3-(7-(メチルアミノ)-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(化合物11)。
一般的な合成スキーム。
【化47】

ステップ1.3-ブロモ-7-(メチルアミノ)-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(化合物8):THF(9.0mL)中の3-ブロモ-7-ヨード-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(320mg、0.872mmol、1.0当量)の撹拌溶液にTHF中のメチルアミンの2M溶液(4.36mL、8.72mmol、10当量)を加えた。反応物を80℃で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、次に残渣をKCOの溶液(50mL)で希釈し、DCM(2×50mL)で2回抽出した。組み合わされた有機相をNaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、所望の化合物(236mg、0.785mmol、90.0%の収率)を黄色の固体として得た。
UPLC-MS:m/z=270.0/272.0[M+H](ES+);tret=0.93分(標準的な方法)
【0332】
ステップ2.tert-ブチルN-(3-ブロモ-8-オキソ-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-7-イル)-N-メチル-カルバメート(化合物9):DCM(8.5mL)中の3-ブロモ-7-(メチルアミノ)-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(230mg、0.851mmol、1.0当量)の撹拌溶液にトリエチルアミン(216mg、2.13mmol、2.5当量)及び二炭酸ジ-tert-ブチル(197mg、0.894mmol、1.05当量)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次に水(50mL)で希釈し、DCM(2×50mL)で2回抽出した。組み合わされた有機層をNaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、n-ヘプタン中0~70%のEtOAcで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物(202mg、0.546mmol、64.1%の収率)を白色の固体として得た。
UPLC-MS:m/z=370.1/372.1[M+H](ES);tret=1.66分(標準的な方法)
【0333】
ステップ3.tert-ブチルN-メチル-N-[3-[(E)-3-[メチル-[(2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル]アミノ]-3-オキソ-プロパ-1-エニル]-8-オキソ-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-7-イル]カルバメート(化合物10):ジオキサン(1.5mL)中のN-(3-ブロモ-8-オキソ-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-7-イル)-N-メチル-カルバメート(200mg、0.540mmol、1.0当量)の撹拌溶液にN-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(186mg、0.810mmol、1.5当量)、N-エチル-N-イソプロピルプロパン-2-アミン(0.284mL、1.62mmol、3.0当量)、塩化テトラブチルアンモニウム(22.5mg、0.081mmol、0.15当量)及びクロロ(クロチル)(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(II)(13.0mg、0.032mmol、0.06当量)を加えた。反応混合物をNでフラッシュし、90℃で2時間撹拌し、ジオキサンを蒸発させ、残渣を、n-ヘプタン中0~100%のEtOAcで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物(255mg、0.492mmol、91.0%の収率)を白色の固体として得た。
UPLC-MS:m/z=519.3[M+H](ES+);tret=1.94分(標準的な方法)
【0334】
ステップ4.(E)-N-メチル-3-[7-(メチルアミノ)-8-オキソ-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル]-N-[(2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル]プロパ-2-エナミド(化合物11):DCM(1.5mL)中のtert-ブチルN-メチル-N-[3-[(E)-3-[メチル-[(2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル]アミノ]-3-オキソ-プロパ-1-エニル]-8-オキソ-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-7-イル]カルバメート(262mg、0.505mmol、1.0当量)の撹拌溶液に2,2,2-トリフルオロ酢酸(3.90mL、50.5mmol、100当量)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、EtO(100mL)に注いだ。白色の固体を濾過して取り出し、DCM(50mL)及びKCOの飽和溶液(50mL)に取り込んだ。水性層をDCM(50mL)で1回抽出した。組み合わされた有機層をNaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、凍結乾燥させて、所望の化合物(165mg、0.382mmol、75.7%の収率)を白色の固体として得た。
H NMR(400MHz、DMSO-d):δ 10.34(s,1H)、8.57-8.54(回転異性体,1H)、8.21-8.16(回転異性体,1H)、7.72-7.43(m,3H)、7.38-7.15(m,3H)、4.94-4.74(回転異性体,CH、2H)、3.05-2.82(回転異性体,CH、3H)、3.02-2.92(m,1H)、2.75-2.55(m,2H)、2.52-2.47(回転異性体,CH、3H)、2.40-2.29(m,1H)、2.15(s,3H)、1.89-1.80(m,1H)
UPLC-MS:m/z=419.3[M+H](ES+);tret=1.21分(標準的な方法)
【0335】
実施例4.(E)-3-[7-(ジメチルアミノ)-8-オキソ-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル]-N-メチル-N-[(2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル]プロパ-2-エナミド(化合物13)の合成。
一般的な合成スキーム。
【化48】

ステップ1.3-ブロモ-7-(ジメチルアミノ)-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(化合物12):THF(8.0mL)中の3-ブロモ-7-ヨード-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(300mg、0.818mmol、1.0当量)の撹拌溶液にTHF中のジメチルアミンの2M溶液(4.09mL、8.17mmol、10当量)を加えた。反応物を80℃で1時間撹拌し、次に溶媒を減圧下で除去し、残渣をKCOの溶液(50mL)で希釈し、DCM(2×50mL)で2回抽出した。組み合わされた有機相をNaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、DCM中0~15%のMeOHで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物(165mg、0.523mmol、63.9%の収率、90%純粋)を白色の固体として得た。
UPLC-MS:m/z=284.0/286.0[M+H](ES+);tret=0.91分(標準的な方法)
【0336】
ステップ2.(E)-3-[7-(ジメチルアミノ)-8-オキソ-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル]-N-メチル-N-[(2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル]プロパ-2-エナミド(化合物13):ジオキサン(1.6mL)中の3-ブロモ-7-(ジメチルアミノ)-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(165mg、0.581mmol、1.0当量)の撹拌溶液にN-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(200mg、0.871mmol、1.5当量)、N-エチル-N-イソプロピルプロパン-2-アミン(0.305mL、1.74mmol、3.0当量)、塩化テトラブチルアンモニウム(24.2mg、0.087mmol、0.15当量)及びクロロ(クロチル)(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(II)(13.9mg、0.035mmol、0.06当量)を加えた。反応混合物をNでフラッシュし、90℃で2時間撹拌し、ジオキサンを蒸発させ、残渣を、DCM中0~10%のMeOHで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、90%純粋な所望の化合物を得た。これを、DCM中0~1%のNEtで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、凍結乾燥させて、95%純粋な所望の化合物(35.0mg、0.077mmol、13.2%の収率)を白色の固体として得た。
H NMR(400MHz、DMSO-d):δ 10.13(s,1H)、8.53-8.50(回転異性体,1H)、8.18-8.13(回転異性体,1H)、7.70-7.46(m,3H)、7.38-7.15(m,3H)、4.94-4.74(回転異性体,CH、2H)、3.05-2.82(回転異性体,CH、3H)、3.02-2.92(m,1H)、2.80-2.71(m,1H)、2.70-2.60(m,1H)、2.52-2.47(回転異性体,CH、3H)、2.28(s,6H)、2.26-2.12(m,2H)
UPLC-MS:m/z=433.3[M+H](ES+);tret=1.20分(標準的な方法)
【0337】
実施例5.(E)-N-メチル-N-[(2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル]-3-(8-オキソ-7-ピロリジン-1-イル-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)プロパ-2-エナミド(化合物15)の合成。
一般的な合成スキーム。
【化49】

ステップ1.3-ブロモ-7-ピロリジン-1-イル-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(化合物14):THF(8.0mL)中の3-ブロモ-7-ヨード-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(300mg、0.818mmol、1.0当量)の撹拌溶液にピロリジン(0.689mL、8.17mmol、10当量)を加えた。反応物を80℃で1時間撹拌し、次に溶媒を減圧下で除去した。残渣をKCOの溶液(50mL)で希釈し、DCM(2×50mL)で2回抽出した。組み合わされた有機相をNaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、DCM中0~15%のMeOHで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物(80.0mg、0.258mmol、31.5%)を白色の固体として得た。
UPLC-MS:m/z=310.0/312.0[M+H](ES+);tret=0.58分(標準的な方法)
【0338】
ステップ2.(E)-N-メチル-N-[(2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル]-3-(8-オキソ-7-ピロリジン-1-イル-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)プロパ-2-エナミド(化合物15):ジオキサン(0.7mL)中の3-ブロモ-7-ピロリジン-1-イル-5,6,7,9-テトラヒドロピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(80.0mg、0.258mmol、1.0当量)の撹拌溶液にN-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(88.7mg、0.387mmol、1.5当量)、N-エチル-N-イソプロピルプロパン-2-アミン(0.135mL、0.774mmol、3.0当量)、塩化テトラブチルアンモニウム(10.8mg、0.039mmol、0.15当量)及びクロロ(クロチル)(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(II)(6.20mg、0.0155mmol、0.06当量)を加えた。反応混合物をNでフラッシュし、90℃で3時間撹拌した。ジオキサンを蒸発させ、残渣を、DCM中0~10%のMeOHで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物(72.0mg、0.157mmol、60.9%の収率)を白色の固体として得た。
H NMR(400MHz、DMSO-d):δ 10.13(s,1H)、8.57(s,1H)、8.24-8.19(回転異性体,1H)、7.70-7.46(m,3H)、7.37-7.15(m,3H)、4.94-4.74(回転異性体,CH、2H)、3.05-2.82(回転異性体,CH、3H)、2.80-2.64(m,4H)、2.52-2.47(回転異性体,CH、3H)、2.30-2.21(m,1H)、1.86~160(m,4H)、4つの脂肪族プロトンが観察されなかった。
UPLC-MS:m/z=459.2[M+H](ES+);tret=1.23分(標準的な方法)
【0339】
実施例6.(E)-3-((2R,3S)-3-アミノ-2-メチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[2,3-b][1,4]ジアセピン-8-イル)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(化合物23)の合成。
一般的な合成スキーム。
【化50】

メチル(2S,3R)-3-アジド-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタノエート(化合物16)を、J. Med. Chem. 2017, 60, 12, 5002-5014に記載されるように調製した。
【0340】
ステップ1.(2S,3R)-メチル3-アミノ-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタノエート(化合物17):トリフェニルホスフィン(0.65g、2.48mmol、2.0当量)及び水(0.09mL、4.96mmol、4.0当量)をTHF(10mL)中の(2S,3R)-メチル3-アジド-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタノエート(0.32g、1.24mmol、1.0当量)の撹拌溶液に加え、反応混合物を60℃に加熱し、16時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却させ、次にNaHCO(40mL、飽和水溶液)を加え、水性混合物をEtOAc(3×40mL)で抽出した。組み合わされた有機抽出物を塩水(1×40mL)で洗浄し、MgSOを用いて乾燥させ、減圧下で濃縮し、SCXカラムにかけた。SCXカラムをMeOH(30mL)で洗浄し、生成物をメタノール性アンモニアで溶出させ、減圧下で濃縮して、所望の生成物を無色油(0.24g、78%)として得た。H NMR(500MHz、DMSO-d)δ 6.97(d,J=8.4Hz、1H)、3.88(dd,J=8.4、4.6Hz、1H)、3.62(s,3H)、3.16-3.10(m,1H)、1.52(s,2H)、1.39(s,9H)、0.97(d,J=6.6Hz、3H)。
【0341】
ステップ2.(2S,3R)-メチル3-((5-ブロモ-2-ニトロピリジン-3-イル)アミノ)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタノエート(化合物19):MeCN(5mL)の5-ブロモ-3-フルオロ-2-ニトロピリジン(0.22g、0.99mmol、1.0当量)、(2S,3R)-メチル3-アミノ-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタノエート(0.23g、0.99mmol、1.0当量)及びトリエチルアミン(0.55mL、3.96mmol、4.0当量)の混合物を80℃で5時間及び室温で3日間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(0~50%のEtOAc/イソヘキサン)によって精製して、所望の生成物を黄色の油(0.37g、82%)として得た。
1.80分(方法1a)m/z 377/379(M-tBu)(ES);H NMR(500MHz、DMSO-d)δ 7.98(d,J=1.9Hz、1H)、7.88(d,J=1.8Hz、1H)、7.73(d,J=9.4Hz、1H)、7.68(d,J=8.3Hz、1H)、4.44-4.35(m,1H)、4.33(dd,J=8.4、5.2Hz、1H)、3.59(s,3H)、1.37(s,9H)、1.23(d,J=6.5Hz、3H)。
【0342】
ステップ3.(2S,3R)-メチル3-((2-アミノ-5-ブロモピリジン-3-イル)アミノ)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタノエート(化合物20)。EtOH(10mL)及びHO(2.5mL)の混合物中の(2S,3R)-メチル3-((5-ブロモ-2-ニトロピリジン-3-イル)アミノ)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタノエート(0.37g、0.85mmol、1.0当量)、鉄粉末(0.38g、6.83mmol、8.0当量)及びNHCl(0.18g、3.42mmol、4.0当量)の混合物を加熱し、90℃で2時間撹拌した。反応混合物をCelite(登録商標)に通して濾過し、ケーキをEtOH(50mL)で洗浄し、濾液を減圧下で濃縮した。粗材料をカラムクロマトグラフィー(0~100%のEtOAc/イソヘキサン)によって精製して、所望の生成物を茶色の油(0.22g、52%)として得た。R 1.43分(方法1a)m/z 403/405(M+H)(ES);H NMR(500MHz、DMSO-d)δ 7.31(d,J=2.0Hz、1H)、7.15(d,J=9.3Hz、1H)、6.75(d,J=2.1Hz、1H)、5.68(s,2H)、4.53(d,J=9.7Hz、1H)、4.29(dd,J=9.3、3.8Hz、1H)、4.11-4.05(m,1H)、3.56(s,3H)、1.42(s,9H)、1.11(d,J=6.5Hz、3H)。
【0343】
ステップ4.tert-ブチル((2R,3S)-8-ブロモ-2-メチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[2,3-b][1,4]ジアゼピン-3-イル)カルバメート(化合物21)。鉱油中60%のNaH(50mg、1.23mmol、3.0当量)を0℃でDMF(5mL)中の(2S,3R)-メチル3-((2-アミノ-5-ブロモピリジン-3-イル)アミノ)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタノエート(0.17g、0.41mmol、1.0当量)の撹拌溶液に加えた。反応混合物を室温に戻し、1.5時間撹拌し、次に反応物を水(50mL)で反応停止させた。得られた析出物を濾過によって回収して、所望の生成物をオフホワイトの固体(72mg、47%)として得た。次に、水性濾液をEtOAc(3×100mL)で抽出し、組み合わされた有機層を塩水(1×50mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗材料をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/イソヘキサン)によって精製して、所望の生成物の更なる分量を白色の固体(36mg、23%)として得た。R 1.91分(方法1a)m/z 315/317(M-tBu)(ES);H NMR(500MHz、DMSO-d)δ 10.29(s,1H)、7.77(d,J=2.1Hz、1H)、7.32(d,J=2.1Hz、1H)、6.82(d,J=7.6Hz、1H)、6.47(d,J=6.4Hz、1H)、4.38-4.26(m,1H)、3.83-3.69(m,1H)、1.38(s,9H)、1.10(d,J=6.5Hz、3H)。
【0344】
ステップ5.tert-ブチル((2R,3S)-2-メチル-8-((E)-3-(メチル((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アミノ)-3-オキソプロパ-1-エン-1-イル)-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[2,3-b][1,4]ジアセピン-3-イル)カルバメート(化合物22):ジオキサン(2.5mL)中のtert-ブチル((2R,3S)-8-ブロモ-2-メチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[2,3-b][1,4]ジアセピン-3-イル)カルバメート(105mg、0.282mmol、1.0当量)の撹拌溶液にN-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(97.0mg、0.424mmol、1.5当量)、N-エチル-N-イソプロピルプロパン-2-アミン(0.133mL、0.764mmol、2.7当量)及びクロロ(クロチル)(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(II)(11.3mg、0.028mmol、0.10当量)を加えた。反応混合物をNでフラッシュし、90℃で2時間撹拌し、ジオキサンを蒸発させ、残渣を、DCM中0~3%のMeOHで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物(127mg、0.244mmol、86.0%の収率)を黄色の固体として得た。
UPLC-MS:m/z=464.1[M+H](ES+);tret=2.50分(方法1b)
【0345】
ステップ6.(E)-3-((2R,3S)-3-アミノ-2-メチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[2,3-b][1,4]ジアセピン-8-イル)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(化合物23):tert-ブチル((2R,3S)-2-メチル-8-((E)-3-(メチル((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アミノ)-3-オキソプロパ-1-エン-1-イル)-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[2,3-b][1,4]ジアセピン-3-イル)カルバメート(100mg、0.192mmol、1.0当量)をジクロロメタン(3mL)及びトリフルオロ酢酸(2ml、26mmol、135当量)に溶解させた。反応混合物を室温で10分間撹拌した。反応混合物を減圧下で蒸発させ、残渣をDCM(30mL)に溶解させ、NaHCOの飽和溶液(30mL)で洗浄した。
【0346】
DCM相を相分離カラムに通して乾燥させ、減圧下で蒸発させた。粗生成物を逆相精製(Biotage Isolera、12gのRPカラムC18カートリッジ;14CV上で(水+0.1%のギ酸)中の勾配5~80%(アセトニトリル+0.1%のギ酸))によって精製し、清浄な画分を凍結乾燥させて、所望の生成物(59mg、0.140mmol、73%の収率)を得た。
UPLC-MS:m/z=420.2[M+H](ES+);tret=1.34分(方法1b)
H NMR(400MHz、DMSO-d):δ 1.10(d,3H)、2.52-2.48(DMSO残留溶媒ピークの下,3H)、3.00(s,3H)、3.64-3.62(m,1H)、3.70-3.66(m,1H)、4.77(s,2H)、5.81(d,1H)、7.27-7.03(m,3H)、7.41(d,1H)、7.50-7.43(m,2H)、7.54(d,1H)、8.00(d,1H)、8.14(s,1H)、9.62(s,1H).
【0347】
実施例7.(S,E)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)-3-(8-オキソ-7-(ピロリジン-1-イル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)アクリルアミド(化合物25;立体化学が任意に割り当てられた)の合成。
一般的な合成スキーム。
【化51】

ステップ1.キラル分離-(S,E)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)-3-(8-オキソ-7-(ピロリジン-1-イル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)アクリルアミド(化合物25;立体化学が任意に割り当てられた):ラセミ化合物(E)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)-3-(8-オキソ-7-(ピロリジン-1-イル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)アクリルアミド(54.6mg、0.119mmol)を、50mL/分の流量及び溶離剤(45/55のEtOH/CO(0.2%のNHを含む))を用いて、Chiralpak IH(20mm×250mm、5um)を用いてSFSにおいて精製して、化合物25として任意に割り当てられた最初に溶出するエナンチオマー(16.1mg、0.035mmol、29.4%の収率、ee:99.6%)をベージュ色の固体として得た。
UPLC-MS:m/z=459.4[M+H](ES+);tret=1.22分(標準的な方法)
H NMR(400MHz、DMSO-d):δ 10.13(s,1H)、8.57(s,1H)、8.24-8.19(回転異性体,1H)、7.70-7.46(m,3H)、7.37-7.15(m,3H)、4.94-4.74(回転異性体,CH、2H)、3.05-2.82(回転異性体,CH、3H)、2.80-2.64(m,4H)、2.52-2.47(回転異性体,CH、3H)、2.30-2.21(m,1H)、1.86-1.60(m,4H)、4つの脂肪族プロトンが観察されなかった。
【0348】
実施例8.(E)-3-((R)-7-((R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(化合物28;立体化学が任意に割り当てられた)の合成。
一般的な合成スキーム。
【化52】

ステップ1.3-ブロモ-7-((R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(化合物26):THF(4.0mL)中の3-ブロモ-7-ヨード-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(150mg、0.409mmol、1.0当量)の撹拌溶液に(R)-ピロリジン-3-オール(363mg、4.09mmol、10当量)を加えた。反応物を80℃で1時間撹拌し、次に溶媒を減圧下で除去した。残渣をKCOの溶液(50mL)で希釈し、DCM(2×50mL)で2回抽出した。組み合わされた有機相をNaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、DCM中0~30%のMeOHで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物(155.0mg、0.356mmol、87.2%)を白色の固体として得た。
UPLC-MS:m/z=326.0/328.0[M+H](ES+);tret=0.54分(標準的な方法)
【0349】
ステップ2.(E)-3-(7-((R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(化合物27):ジオキサン(1.3mL)中の3-ブロモ-7-((R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(155mg、0.475mmol、1.0当量)の撹拌溶液にN-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(163mg、0.713mmol、1.5当量)、N-エチル-N-イソプロピルプロパン-2-アミン(0.250mL、1.426mmol、3.0当量)、塩化テトラブチルアンモニウム(19.8mg、0.071mmol、0.15当量)及びクロロ(クロチル)(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(II)(11.4mg、0.029mmol、0.06当量)を加えた。反応混合物をNでフラッシュし、90℃で3時間撹拌した。ジオキサンを蒸発させ、残渣を、DCM中0~10%のMeOHで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物(226mg、0.475mmol、定量的収率)を白色の固体として得た。
UPLC-MS:m/z=476.2[M+H](ES+);tret=1.09分(標準的な方法)
【0350】
ステップ3.キラル分離-(E)-3-((R)-7-((R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(化合物28;立体化学が任意に割り当てられた):ジアステレオ異性体(E)-3-(7-((R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(226mg、0.475mmol)の混合物を、5mL/分の流量及びイソクラティック溶離(1/1のMeOH/EtOH(0.1%のジエチルアミンを含む))を用いて、Daicel Chiralpak IBN-5(25010mm)を用いて、液体クロマトグラフィーにおいて精製して、化合物28として任意に割り当てられた最初に溶出するジアステレオ異性体(35.0mg、0.074mmol、15.5%の収率、de:93.64%)を白色の固体として得た。
UPLC-MS:m/z=476.2[M+H](ES+);tret=1.09分(標準的な方法)
H NMR(400MHz、80℃、DMSO-d):δ 9.76(ブロードs,1H)、8.46(d,J=4.0Hz、1H)、8.01(d,J=4.0Hz、1H)、7.58-7.51(m,2H)、7.46-7.44(m,1H)、7.25-7.16(m,3H)、4.79(s,2H)、4.32(ブロードs,1H)、4.11(ブロードs,1H)、3.25-3.00(m,3H)、2.93-2.85(m,1H)、2.80-2.60(m,5H)、2.37-2.17(m,2H)、1.90-1.79(m,1H)、1.54-1.45(m,1H).4つの脂肪族プロトンが視認できない。
【0351】
実施例9.(S,E)-3-(7-アミノ-7-メチル-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(化合物39;立体化学が任意に割り当てられた)の合成。
一般的な合成スキーム。
【化53】

ステップ1.(E)-3-((2R,3S)-3-アミノ-2-メチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[2,3-b][1,4]ジアセピン-8-イル)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミド(化合物29):DMF(45.5mL)中の7-ヨード-5H,6H,7H,8H,9H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(1当量、2.71g、9.407mmol)のアルゴンでパージされた溶液にアジ化ナトリウム(8当量、4.89g、75.25mmol)を加え、反応混合物を室温で30分間撹拌した。得られた暗色の溶液を水(40mL)で希釈し、EtOAc(60mL)を加えた。2つの層を分離し、水性層をEtOAc(60mL)で抽出した。組み合わされた有機層を塩水(3×50mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、所望の化合物(1.78g、8.76mmol、93%)をオレンジ色の固体として得た。
LC-MS:(ESI) m/z[M+H]=204.06(保持時間1.48分)
H NMR(400MHz、DMSO-d):10.5(ブロードs,1H)、8.28(dd,1H、J=4.7Hz、J=1.8Hz)、7.72(dd,1H、J=7.5Hz、J=1.8Hz)、7.15(dd,1H、J=7.5Hz、J=4.9Hz)、4.03(dd,1H、J=11.3Hz、J=8.0Hz)、2.77-2.66(m,2H)、2.46-2.40(m,1H)、2.16-2.08(m,1H).
【0352】
ステップ2.7-アミノ-5H,6H,7H,8H,9H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン塩酸塩(化合物30):THF(32.49mL)中の7-アジド-5H,6H,7H,8H,9H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(1当量、0.86g、4.21mmol)及びトリフェニルホスフィン(1.1当量、1.21g、4.63mmol)の溶液を75℃で1時間加熱した。次に、水(8.55mL)を加え、反応混合物を75℃で2時間加熱した。溶媒を減圧下で除去し、HClの水溶液(1M、8mL)及びEtOAc(15mL)を加えた。2つの層を分離し、水性層をEtOAc(2×15mL)で抽出した。水性層を減圧下で濃縮し、EtOHと2回共蒸発させて、所望の化合物(860mg、4.025mmol、96%)をベージュ色の固体として得た。
LC-MS:(ESI) m/z[M-HCl+H]=178.09(保持時間0.53分)
H NMR(400MHz、DMSO-d):10.8(ブロードs,1H)、8.40(ブロードs,3H)、8.33(dd,1H、J=5.0Hz、J=1.8Hz)、7.81(dd,1H、J=7.6Hz、J=1.8Hz)、7.22(dd,1H、J=7.5Hz、J=4.9Hz)、3.80-3.73(m,1H)、2.84-2.79(m,1H)、2.76-2.70(m,1H)、2.62-2.56(m,1H)、2.22-2.14(m,1H).
【0353】
ステップ3.3-ブロモ-7-((ジフェニルメチレン)アミノ)-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(化合物31):室温で1,2-DCE(20mL)中の7-アミノ-3-ブロモ-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン、HCl(1.53g、5.00mmol)の懸濁液にTEA(0.76mL、5.50mmol)を加え、反応物を50℃で15分間撹拌した。次に、1,2-DCE(10mL)中のジフェニルメタンイミン(1.35g、7.46mmol)の溶液を反応混合物に加え、反応物を85℃で18時間撹拌した。反応物を室温に冷却した。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗生成物をTBME/イソ-ヘキサン(1:1、20mL)で2回研和した。固体を濾過し、減圧下で乾燥させて、表題化合物を褐色の固体(1.57g、71%)として得た。
Rt 1.93分(方法1b)
m/z 421(M+H)(ES
H NMR(500MHz、DMSO-d)δ 10.18(s,1H)、8.31(d,J=2.4Hz、1H)、7.90(d,J=2.4Hz、1H)、7.56-7.35(m,4H)、7.30(t,J=7.8Hz、2H)、7.22-7.17(m,2H)、7.09-7.03(m,2H)、3.97(t,J=6.4Hz、1H)、2.86-2.71(m,2H)、2.36(h,J=7.0Hz、1H)、2.23(h,J=7.1Hz、1H).
【0354】
ステップ4.3-ブロモ-7-((ジフェニルメチレン)アミノ)-9-(4-メトキシベンジル)-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(化合物32):室温で、N雰囲気下で、乾燥DMF(14mL)中の3-ブロモ-7-((ジフェニルメチレン)アミノ)-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(0.7g、1.6mmol)の撹拌溶液にNaH(鉱油中60%の分散体、82mg、2.1mmol)を加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。1-(クロロメチル)-4-メトキシベンゼン(0.29mL、2.06mmol)を加え、反応物を室温で18時間撹拌した。次に、反応混合物をHO(150mL)に加え、生成物を、EtOAc(3×50mL)を用いて抽出した。有機層を組み合わせて、HO(100mL)及び塩水(100mL)で洗浄した。有機相を無水NaSO上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去して、表題化合物を褐色の固体(0.86g、88%)として得た。
Rt 2.43分(方法1b)
m/z 541/543(M+H)(ES
H NMR(500MHz、DMSO-d)δ 8.46(d,J=2.4Hz、1H)、7.91(d,J=2.4Hz、1H)、7.45-7.38(m,4H)、7.30(t,J=7.7Hz、2H)、7.20-7.16(m,2H)、7.16-7.11(m,2H)、7.02-6.93(m,2H)、6.81-6.76(m,2H)、5.09-4.91(m,2H)、4.08(s,1H)、3.68(s,3H)、2.70-2.52(m,2H)、2.43-2.19(m,2H).
【0355】
ステップ5.3-ブロモ-7-((ジフェニルメチレン)アミノ)-9-(4-メトキシベンジル)-7-メチル-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(化合物33):マイクロ波反応バイアルに、LiHMDS(THF中1M、1.79mL、1.79mmol)をTHF(15mL)中の3-ブロモ-7-((ジフェニルメチレン)アミノ)-9-(4-メトキシベンジル)-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(0.73g、1.19mmol)の溶液に加えた。反応物を15分間撹拌した。ヨードメタン(0.22mL、3.56mmol)を加え、反応バイアルを密閉し、反応物を65℃で3時間撹拌した。反応物を室温に冷却させた。次に、反応混合物をHO(30mL)に加え、生成物を、EtOAc(3×30mL)を用いて抽出した。有機層を組み合わせて、塩水(50mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させて、表題化合物を茶色のガム(0.77g、93%)として得た。
Rt 2.60分(方法1b)
m/z 553/555(M+H)(ES
H NMR(500MHz、DMSO-d)δ 8.15(d,J=2.4Hz、1H)、8.07(d,J=2.4Hz、1H)、7.54-7.41(m,3H)、7.37-7.26(m,3H)、7.20-7.12(m,2H)、7.05-6.98(m,2H)、6.88-6.79(m,2H)、6.79-6.71(m,2H)、4.93-4.73(m,2H)、3.65(s,3H)、2.78(td,J=13.1、7.4Hz、1H)、2.65(dd,J=13.4、7.0Hz、1H)、2.48-2.38(m,1H)、2.32(dd,J=13.1、8.1Hz、1H)、1.27(s,3H).
【0356】
ステップ6.7-アミノ-3-ブロモ-7-メチル-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(化合物34):DCM(10mL)中の3-ブロモ-7-((ジフェニルメチレン)アミノ)-9-(4-メトキシベンジル)-7-メチル-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(0.57g、0.82mmol)の溶液にTfOH(0.73mL、8.15mmol)及びTFA(1.30mL、16.9mmol)を加え、反応物を室温で4時間撹拌した。次に、HO(8mL)を加え、反応物を室温で2時間にわたって激しく撹拌した。水性層をDCM(2×15mL)で抽出し、有機抽出物を廃棄した。次に、水性層を飽和NaHCO水溶液(40mL)で塩基性化し、生成物をDCM(3×30mL)で抽出した。組み合わされた有機層を塩水(50mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去して、表題化合物をオフホワイトの固体(0.17g、71%)として得た。
Rt 0.77分(方法2b)
m/z 270/272(M+H)(ES
H NMR(500MHz、DMSO-d)δ 9.94(s,1H)、8.26(d,J=2.4Hz、1H)、7.87(d,J=2.4Hz、1H)、2.70(t,J=6.9Hz、2H)、2.06-1.94(m,2H)、1.73(s,2H)、1.03(s,3H).
【0357】
ステップ7.tert-ブチル(3-ブロモ-7-メチル-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-7-イル)カルバメート(化合物35):DCM(4mL)中の7-アミノ-3-ブロモ-7-メチル-5,6,7,9-テトラヒドロ-8H-ピリド[2,3-b]アゼピン-8-オン(0.17g、0.58mmol)の溶液にTEA(0.40mL、2.90mmol)を加えた。混合物を室温で15分間撹拌した。次に、DCM(1mL)中のBocO(0.19g、0.87mmol)の溶液を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。反応混合物を45℃において減圧下で濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィー(0~100%のEtOAc/イソ-ヘキサン(+2%のTEA))によって精製して、表題化合物を淡黄色の固体(0.11g、36%)として得た。
Rt 1.17分(方法2b)
m/z 270/272(M+H-Boc)(ES
H NMR(500MHz、DMSO-d)δ 9.81(s,1H)、8.21(d,J=2.4Hz、1H)、7.77(d,J=2.4Hz、1H)、6.61(s,1H)、2.77-2.66(m,1H)、2.63-2.56(m,1H)、2.44-2.32(m,1H)、2.06-1.99(m,1H)、1.24(s,9H)、1.21(s,3H).
【0358】
ステップ8.tert-ブチル(E)-(7-メチル-3-(3-(メチル((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アミノ)-3-オキソプロパ-1-エン-1-イル)-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-7-イル)カルバメート(化合物36):窒素下で、マイクロ波バイアル中に、クロロ(クロチル)(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(II)(2.98mg、0.0074mmol、0.05当量)、塩化テトラブチルアンモニウム(1.24mg、0.0045mmol、0.03当量)、N-メチル-N-[(2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル]プロパ-2-エナミド(37.46mg、0.16mmol、1.1当量)及びtert-ブチルN-(3-ブロモ-7-メチル-8-オキソ-6,9-ジヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-7-イル)カルバメート(55.mg、0.15mmol、1当量)を加えた。次に、1,4-ジオキサン(0.7428mL)及び乾燥N-エチル-N-イソプロピルプロパン-2-アミン(0.08mL、0.45mmol、3当量)を加え、混合物を80℃で1時間撹拌した。クロロ(クロチル)(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(II)(8.94mg、0.02mmol、0.15当量)を加え、混合物を80℃で90分間撹拌した。溶液を蒸発させ、残渣を、n-ヘプタン中10~100%のEtOAcで溶離するシリカゲルのパッドにおいて迅速に精製した。所望の化合物(77mg、0.149mmol、77%)を含有する精製画分を次のステップに直接使用した。
UPLC-MS:m/z=519.2[M+H](ES+);tret=1.82分(標準的な方法)
【0359】
ステップ9.(E)-3-(7-アミノ-7-メチル-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミドトリフルオロ酢酸(化合物37):tert-ブチルN-[7-メチル-3-[(E)-3-[メチル-[(2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル]アミノ]-3-オキソ-プロパ-1-エニル]-8-オキソ-6,9-ジヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-7-イル]カルバメート(77.04mg、0.15mmol、1当量)を含む丸底フラスコ中に、DCM(4mL)及びトリフルオロ酢酸(4mL)を加えた。混合物を室温で15分間撹拌し、次に蒸発させ、残渣を、水(0.1%のTFA)中5~100%のMeCN(+0.1%のTFA)で溶離するシリカゲルにおいて精製して、凍結乾燥後、所望の生成物(48mg、0.088mmol、79%)を白色の粉末として得た。
UPLC-MS:m/z=419.2[M+H](ES+);tret=1.20分(標準的な方法)
【0360】
ステップ10.(S,E)-3-(7-アミノ-7-メチル-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミドトリフルオロ酢酸(化合物39;立体化学が任意に割り当てられた):(E)-3-(7-アミノ-7-メチル-8-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[2,3-b]アゼピン-3-イル)-N-メチル-N-((2-メチルベンゾフラン-3-イル)メチル)アクリルアミドトリフルオロ酢酸を、DCM/MeOH(50/50)で溶離するChiral PAK-ICにおいて精製して、凍結乾燥後、所望の生成物(3.61mg)を白色の固体として得た。キラリティを任意に割り当てた。
UPLC-MS:m/z=419.2[M+H](ES+);tret=1.20分(標準的な方法)
H NMR(500MHz、DMSO-d)δ 10.92(s,1H)、8.64-8.60(m,1H)、8.30、(braod s、3H)、8.23-8.18(m,1H)、7.75-7.45(m,3H)、7.40-7.13(m,3H)、4.94-4.75(回転異性体,CH)、3.06-2.88(回転異性体,CH)、2.86-2.80(m,2H)、2.55-2.52(回転異性体,CH)、2.44-2.40(m,1H)、2.28-2.20(m,1H)、1.13-1.11(回転異性体,CH).
【0361】
実施例10.抗菌活性
例示される化合物を、以下の試験手順に依拠して、標的酵素及び細菌に対する活性について試験した。
【0362】
FabIタンパク質の阻害:
アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)及び大腸菌(Escherichia coli)からのFabI酵素の阻害を、96ウェルプレート形式で、試験化合物の存在下又は非存在下において、自動化プレートリーダーを用いてNADH消費速度(340nm/分のΔ吸光度)を30℃で測定することによって試験した。試験混合物は、100mMのTris-HCl、pH7.25(A.バウマニ(A. baumannii))又は7.5(大腸菌(E. coli))、100mMの酢酸アンモニウム、0.02%(A.バウマニ(A. baumannii))又は0.05%の(大腸菌(E. coli))Pluronic F-68、25μMのクロトニルACP、50μMのNADH、25pM(A.バウマニ(A. baumannii))又は50pM(大腸菌(E. coli))組み換えFabIタンパク質及び7.5%のDMSOを含有していた。試験化合物を0.17~10,000nMの範囲の濃度で加えて、ウェルの終量を100μlとした。この用量反応阻害試験は、各試験化合物について10段階の希釈系列を用いて実施した。各試験化合物のIC50値は、阻害の用量反応曲線にロジスティック回帰によりシグモイド曲線を当てはめることにより求めた。
【0363】
MIC:
感受性及び多剤耐性A.バウマニ(A. baumannii)、大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(K. pneumoniae)及び黄色ブドウ球菌(S. aureus)を含む所定のグラム陰性菌及びグラム陽性菌種に対するFabI阻害剤の抗菌活性を、不溶性化合物のためのCLSIガイドラインに従い、微量液体希釈最小発育阻止濃度(MIC)試験を用いて試験した。被験物質を100%のジメチルスルホキシド(DMSO)中で2倍に連続希釈し、次に陽イオン調整ミューラー・ヒントンブロス(CA-MHB)中で100倍希釈して、1%のDMSOの10段階の試験濃度範囲を達成した。最終的な化合物濃度は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して0.016~8μg/ml又はグラム陰性種に対して0.06~32μg/mlであった。次に、MIC試験プレートを、100μlの最終試験培地(CA-MHB、1%のDMSO中の被験物質)を、滅菌した低結合96ウェルポリスチレンプレートの適切なウェル中に移すことによって調製した。試験株の直接コロニー懸濁液接種材料をCLSIガイドラインに従って新たに調製し、適切な試験ウェルを接種して、5×10CFU/mlの最終細菌細胞密度を達成した。成長制御(被験物質なし)及び陰性対照(細菌接種材料なし)ウェルも含まれていた。光への曝露は、試験調製の全ての段階で最小限に抑えられた。MIC試験プレートを35℃で20時間インキュベートした。次に、細菌増殖を、SpectraMax Plusプレートリーダー分光光度計を用いて600nmの光学密度(OD600)を測定することによって決定した。OD600値及びウェルの目視検査の両方の評価に従い、MIC値を割り当て、最も低い被験物質濃度は、目に見える細菌増殖をもたらさなかった。
【0364】
結果が以下の表Iに示される。
【0365】
【表1】
【0366】
【表2】
【国際調査報告】