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特表2024-526139ビニル芳香族ポリマーの調製プロセス
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  • 特表-ビニル芳香族ポリマーの調製プロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ビニル芳香族ポリマーの調製プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/02 20060101AFI20240709BHJP
   C08F 12/08 20060101ALI20240709BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20240709BHJP
   C08F 2/01 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C08F2/02
C08F12/08
C08F2/38
C08F2/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578115
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 IB2022055998
(87)【国際公開番号】W WO2023275746
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】102021000017519
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508128303
【氏名又は名称】ベルサリス、ソシエタ、ペル、アチオニ
【氏名又は名称原語表記】VERSALIS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ カサリーニ
(72)【発明者】
【氏名】アルド ロンゴ
(72)【発明者】
【氏名】エミリュ ソンシン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ フィオロット
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011FA01
4J011FA02
4J011FA03
4J011FA05
4J011FB05
4J011FB10
4J011FB13
4J011NA12
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4J011NB04
4J100AB02P
4J100AB03P
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4J100AB16Q
4J100AJ02Q
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4J100CA01
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4J100EA05
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA18
4J100FA28
4J100FA29
4J100FA47
4J100GB05
4J100JA58
4J100JA59
(57)【要約】
少なくとも1つのビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1つのラジカル開始剤を混合装置に連続的に供給して、反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を連続撹拌槽反応器(CSTR)に供給する工程であって、前記連続撹拌槽反応器(CSTR)は、液相の反応混合物中に、前記液相の反応混合物の総質量に対して45質量%~60質量%の間、好ましくは50質量%~58質量%の間のポリマーフラクションを含有する、工程と、前記連続撹拌槽反応器(CSTR)を出る液相の反応混合物を少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)に供給する工程であって、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)は、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物中に、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物の総質量に対して少なくとも65質量%、好ましくは70質量%~80質量%の間のポリマーフラクションを含有する、工程と、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物のフラクションを前記混合装置にリサイクルする工程であって、前記フラクションは、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物の総質量に対して25質量%~50質量%の間、好ましくは25質量%~40質量%の間である、工程と、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物の残りのフラクションを、脱揮システムに供給する工程と、任意に、前記脱揮システムを出るポリマーを、添加システムに供給する工程と、前記脱揮システムを出る、または前記添加システムを出るポリマーを造粒システムに供給して、ポリマーを回収する工程とを含む、ビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセス。このようにして得られたビニル芳香族ポリマーは、コンパクトな製造品、発泡体および発泡性ビーズの製造に有利に使用され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1つのラジカル開始剤を混合装置に連続的に供給して、反応混合物を得る工程と、
前記反応混合物を連続撹拌槽反応器(CSTR)に供給する工程であって、前記連続撹拌槽反応器(CSTR)は、液相の反応混合物中に、前記液相の反応混合物の総質量に対して45質量%~60質量%の間、好ましくは50質量%~58質量%の間のポリマーフラクションを含有する、工程と、
前記連続撹拌槽反応器(CSTR)を出る液相の反応混合物を少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)に供給する工程であって、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)は、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物中に、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物の総質量に対して少なくとも65質量%、好ましくは70質量%~80質量%の間のポリマーフラクションを含有する、工程と、
前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物のフラクションを前記混合装置にリサイクルする工程であって、前記フラクションは、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物の総質量に対して25質量%~50質量%の間、好ましくは25質量%~40質量%の間である、工程と、
前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物の残りのフラクションを、脱揮システムに供給する工程と、
任意に、前記脱揮システムを出るポリマーを、添加システムに供給する工程と、
前記脱揮システムを出る、または前記添加システムを出るポリマーを造粒システムに供給して、ポリマーを回収する工程と
を含む、ビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセス。
【請求項2】
前記ビニル芳香族モノマーは、一般式(I):
【化1】

(式中、
Rは水素原子またはメチル基であり、
nは0または1であり、
Yは、塩素、臭素などのハロゲン原子、またはヒドロキシル、またはクロロメチル、ブロモメチル、1-ブロモエチル、1-クロロエチルなどの1~2個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、または1~2個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルコキシ基である)
を有するビニル芳香族モノマーから選択される、請求項1に記載のビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセス。
【請求項3】
一般式(I)を有する前記ビニル芳香族モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンの異性体、エチルスチレンの異性体、臭素スチレンの異性体、塩素スチレンの異性体、メチルブロモスチレンの異性体、メチルクロロスチレンの異性体、1-ブロモエチルスチレンの異性体、1-クロロエチルスチレンの異性体、メトキシスチレンの異性体、アセトキシスチレンの異性体、ヒドロキシスチレンの異性体、メチルヒドロキシスチレンの異性体、またはそれらの混合物から選択され、好ましくはスチレンである、請求項1または2に記載のビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセス。
【請求項4】
少なくとも1つのコモノマーが前記混合装置に供給される、先行する請求項のいずれかに記載のビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセス。
【請求項5】
前記コモノマーは、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物から誘導されるC-Cアルキルエステルなどのビニルモノマー:ジビニルベンゼンの異性体、(メタ)アクリル酸とジオールとのエステル、例えば、エチレングリコール-ジメタクリレート、ブタンジオール-ジアクリレート、ブタンジオール-ジメタクリレート、ヘキサンジオール-ジアクリレート、ヘキサンジオール-ジメタクリレート、またはそれらの混合物などのジビニルモノマー;またはそれらの混合物から選択される、請求項4に記載のビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセス。
【請求項6】
前記ラジカル開始剤は、モノクロロベンゼン溶媒中、105℃~134℃の間でDSC(示差走査熱量測定)により決定される1時間の半減期を有するラジカル開始剤から選択され、好ましくは二官能性ラジカル開始剤、例えば、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシアセテート、tert-ブチル-ペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ジ-tert-ブチル-ペルオキシブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、ブチル-4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ(tert-ブチルペルオキシ-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、またはそれらの混合物であり、好ましくは1,1-ジ(tert-ブチル-ペルオキシ)-シクロヘキサンである、先行する請求項のいずれかに記載のビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセス。
【請求項7】
前記ラジカル開始剤は、前記連続撹拌槽反応器(CSTR)に供給される反応混合物中に、前記脱揮システムに入る液相の反応混合物の重量流量に基づいて計算して、液相の反応混合物1kgあたり0.2ミリモル~2.5ミリモルの間の過酸化物基-[OO]-の濃度、好ましくは液相の反応混合物1kgあたり0.4ミリモル~2.0ミリモルの間の過酸化物基-[OO]-の濃度、より好ましくは液相の反応混合物1kgあたり0.6ミリモル~1.8ミリモルの間の過酸化物基-[OO]-の濃度で存在する、先行する請求項のいずれかに記載のビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセス。
【請求項8】
少なくとも1つの溶媒が、反応混合物の総重量に対して0重量%~20重量%の間、好ましくは2重量%~10重量%の間の量で前記混合装置に供給され、前記溶媒は、好ましくは、エチルベンゼン、キシレン、n-プロピルベンゼン、クメン、エチルトルエンなどの任意に置換された芳香族炭化水素から選択される、先行する請求項のいずれかに記載のビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセス。
【請求項9】
少なくとも1つの連鎖移動が、前記連続撹拌槽反応器(CSTR)または前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)に供給される、先行する請求項のいずれかに記載のビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセス。
【請求項10】
前記連鎖移動剤は、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン(α-メチルスチレンダイマー)、炭化水素タイプの多価不飽和有機物質、例えば、植物油、スクアレン、ファルネセン、リモネン、テルピノレン、またはそれらの混合物などの低反応性連鎖移動剤;4~12個の炭素原子を有する第三級メルカプタン、例えば、tert-ブチルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、またはそれらの混合物などの中反応性連鎖移動剤;4~12個の炭素原子を有する第一級メルカプタン、例えば、n-ブチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、またはそれらの混合物などの高反応性連鎖移動剤から選択される、請求項9に記載のビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセス。
【請求項11】
前記連続撹拌槽反応器(CSTR)において、反応温度が120℃~140℃の間、好ましくは122℃~135℃の間である、先行する請求項のいずれかに記載のビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセス。
【請求項12】
前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)において、反応温度が130℃~175℃の間、好ましくは135℃~170℃の間である、先行する請求項のいずれかに記載のビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ビニル芳香族ポリマーの調製プロセスに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1つラジカル開始剤を混合装置に連続的に供給して、反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を連続撹拌槽反応器(CSTR)に供給する工程と、前記連続撹拌槽反応器(CSTR)を出る液相の反応混合物を少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)に供給する工程と、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物のフラクションを前記混合装置にリサイクルする工程とを含む、ビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセスに関する。
【0003】
このようにして得られたビニル芳香族ポリマーは、コンパクトな製造品、発泡体、および発泡性ビーズの製造に有利に使用することができる。
【背景技術】
【0004】
スチレンなどのビニル芳香族モノマーの連続ラジカル塊状重合は、通常、モノマーおよび溶媒の精製が可能な供給セクション、直列に接続された1つ以上の反応器を含む反応セクション、残留モノマーおよび溶媒を除去するための生成ポリマーの脱揮セクション、および仕上げセクションを含むプラントで実施される。これらのセクションのそれぞれは、1つ以上の機器からなる。
【0005】
ビニル芳香族モノマーの調製プロセスは当技術分野で知られている。
【0006】
例えば、米国特許第3,903,202号は、分散グラフトジエンゴム相を含むポリアルケニル芳香族ポリマーの連続塊状重合プロセスに関するものであり、ここで、前記連続塊状重合は、第1反応段階のできるだけ早い段階で反応混合物中にポリマーのフラクションが存在する状態で、連続撹拌層反応器(CSTR)(反応器1)と連続撹拌段階的等圧反応器(SIRS)(反応器2)を含むプラント内で連続して蒸発させながら行われる。第1の反応器(反応器1)内の反応混合物中のポリマーフラクションは、10%~50%の範囲である。
【0007】
米国特許第4,777,210号は、2つの連続撹拌槽反応器(CSTR)と少なくとも1基のプラグフロー反応器(PFR)を含む連続プラントでハイインパクトポリスチレン(HIPS)を製造するための重合プロセスに関する。第一反応器における反応混合物中のポリマーフラクションは20%未満である。
【0008】
米国特許第2,769,804号は、連続撹拌槽反応器(CSTR)またはプラグフロー反応器(PFR)を用いて、均一な分子量分布曲線(MWD)を有するモノビニル芳香族モノマーからポリマーを得る連続塊状重合プロセスに関し、反応器を出る反応混合物の一部は前記反応器にリサイクルされ、一部は生成ポリマーから未反応混合物を分離するために脱揮され、反応器への供給としてリサイクルされる。
【0009】
米国特許第3,821,330号は、断熱プラグフロー反応器(PFR)を使用してアクリルポリマーを得る連続塊状重合プロセスであって、流出する反応混合物の少なくとも55%が供給物にリサイクルされる、連続塊状重合プロセスに関する。
【0010】
米国特許第3,954,722号は、連続撹拌槽反応器(CSTR)を用いた不飽和オレフィン系モノマーの塊状または溶液中での連続重合プロセスに関するものであり、混合物反応の均一性を高めるために、供給原料中の粘度が100ポアズを超える反応器内の反応混合物の一部をリサイクルして、リサイクルなしでは10ポアズ未満となる供給混合物の粘度を増加させる。不飽和オレフィン系モノマー、溶媒、開始剤、連続撹拌槽反応器(CSTR)の蒸発する凝縮液、反応器から排出されるポリマー混合物の脱揮セクションから来る凝縮液、および反応器のリサイクル反応混合物からなる混合物は、前記反応器に供給する特別なミキサーで調製される。
【0011】
米国特許第4,209,599号は、重合開始剤の存在下でモノマー混合物を少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)に供給する、ビニルポリマーの製造のための連続塊状重合プロセスに関するものであり、少なくとも75%のアウトプットでモノマーを転化し、前記プラグフロー反応器(PFR)への供給時に、出て行く反応混合物の50%~95%をリサイクルするスタティック混合要素を有する。したがって、リサイクル反応混合物の流量と後続の脱揮セクションに送られる流量との間のリサイクル比(RR)は1~19の間で変動し、入口転化率は37.5%~71.3%の間で変動する。前述のプロセスが実施されるプラントは、それぞれがリサイクルを行う複数のプラグフロー反応器(PFR)を直列に含むことができる。
【0012】
米国特許第4,948,847号は、スチレンと任意のビニルコモノマーとの連続塊状重合プロセスに関するものであり、直列に配置された少なくとも1つのリサイクル可能な管状反応器と少なくとも1つのリサイクル可能でない管状反応器を含み、各管状反応器内のピストンフローと壁との熱交換は、スタティック混合要素によって促進される。供給されるモノマー混合物は、2%~10%の溶媒と、98%~90%のモノマーと、75℃~130℃の間で10時間の半減期を有する有機過酸化物とを含み、前記少なくとも1つのリサイクル可能な管状反応器中で少なくとも70%反応する。前記管状反応器は、リサイクルの有無にかかわらず、スルザー型管状ミキサー、ケニックス型スタティックミキサー、東レ型管状ミキサーとすることができる。
【0013】
しかしながら、上記で報告されたプロセスにはいくつかの欠点がある可能性がある。例えば、連続撹拌槽反応器(CSTR)を使用するプロセスでは、リサイクルの有無にかかわらず、狭い分子量分布曲線(MWD)を有する均一なポリマーの製造が可能であるが、重合開始剤を完全に反応させて効率的に使用することはできない。実際、単一の連続撹拌槽反応器(CSTR)を使用して、反応混合物中のポリマーのフラクションを60%より高くし、反応速度および重量平均分子量(M)を増加させるために任意に供給される二官能性ラジカル開始剤などのラジカル開始剤を完全に反応させるためには、反応器内で長い滞留時間が必要である。さらに、連続撹拌槽反応器(CSTR)を使用すると、良好な混合条件下で運転しても、発泡フォームおよび顆粒状の発泡性ポリマーの分野での用途に適した広い分子量分布曲線(MWD)を得ることは不可能である。
【0014】
一連の連続撹拌槽反応器(CSTR)を使用するプロセスの場合、広い分子量分布曲線(MWD)が得られ、最初の連続撹拌槽反応器(CSTR)でモノマー混合物と共に供給される二官能性ラジカル開始剤などのラジカル開始剤を完全に反応させることができる可能性が高くなるが、最初の反応器中のポリマーのフラクションが50%より低いと、環状オリゴマーが多量に生成し、最後の連続撹拌層反応器(CSTR)が蒸発する場合、ポリマーのフラクションが70%を超えると粘度が高くなるため、その管理が難しくなる。
【0015】
反応温度を良好に制御しながら運転される、1つまたは一連のプラグフロー反応器(PFR)を使用するプロセスの場合、所望の分子量分布曲線(MWD)を有するポリマーの製造においてより高い柔軟性があり、一連の反応器を出るポリマーのフラクションが高く、第1のプラグフロー反応器(PFR)においてモノマー混合物と共に供給される二官能性開始剤などの任意の開始剤が完全に消費されるが、他方で、反応混合物が供給される前記第1のプラグフロー反応器(PFR)内のモノマーのフラクションが高いため、環状オリゴマーの生産量が高い。
【0016】
反応混合物の一部を最後のプラグフロー反応器(PFR)から最初のプラグフロー反応器にリサイクルする、1つまたは一連のプラグフロー反応器(PFR)を使用するプロセスの場合、最初のプラグフロー反応器(PFR)に入るポリマーの高いフラクション、すなわち45%を超えるフラクションを得るためには、リサイクルされる反応混合物中の高いポリマーフラクションのため、粘性ポリマー溶液の高いリサイクル率(RR)が必要となる。
【0017】
したがって、出願人は、上記の問題を克服できるビニル芳香族ポリマーの調製プロセスを見つけるという課題を自らに課した。具体的には、出願人は、ビニル芳香族ポリマーの調製プロセスであって、オリゴマーの生成を抑えて高い生産性を得ることができ、その分子量分布曲線(MWD)を制御することができ、エネルギー消費を抑え、設備コストを低く抑えることができるプロセスを見出すことを課題とした。
【0018】
出願人は、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1つのラジカル開始剤を混合装置に連続的に供給して、反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を連続撹拌槽反応器(CSTR)に供給する工程と、前記連続撹拌槽反応器(CSTR)を出る液相の反応混合物を少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)に供給する工程と、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る前記液相の反応混合物のフラクションを前記混合装置にリサイクルする工程とを含む、ビニル芳香族ポリマーの調製のための新規な連続塊状重合プロセスを見出した。前記プロセスにより、オリゴマーの生成が少なく高い生産性が得られ、その分子量分布曲線(MWD)を制御することができ、エネルギー消費を抑え、設備コストを低く抑えることができる。このようにして得られたビニル芳香族ポリマーは、コンパクトな製造品、発泡体および発泡性ビーズの製造に有利に使用され得る。
【0019】
したがって、本発明の対象は、
少なくとも1つのビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1つのラジカル開始剤を混合装置に連続的に供給して、反応混合物を得る工程と、
前記反応混合物を連続撹拌槽反応器(CSTR)に供給する工程であって、前記連続撹拌槽反応器(CSTR)は、液相の反応混合物中に、前記液相の反応混合物の総質量に対して45質量%~60質量%の間、好ましくは50質量%~58質量%の間のポリマーフラクションを含有する、工程と、
前記連続撹拌槽反応器(CSTR)を出る液相の反応混合物を少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)に供給する工程であって、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)は、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物中に、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物の総質量に対して少なくとも65質量%、好ましくは70質量%~80質量%の間のポリマーフラクションを含有する、工程と、
前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物のフラクションを前記混合装置にリサイクルする工程であって、前記フラクションは、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物の総質量に対して25質量%~50質量%の間、好ましくは25質量%~40質量%の間である、工程と、
前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物の残りのフラクションを、脱揮システムに供給する工程と、
任意に、前記脱揮システムを出るポリマーを、添加システムに供給する工程と、
前記脱揮システムを出る、または前記添加システムを出るポリマーを造粒システムに供給して、ポリマーを回収する工程と
を含む、ビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセスである。
【0020】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲において、数値範囲の定義は、特に断りのない限り、常に包括的(inclusive)である。
【0021】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲において、「~を含む」という用語には、「本質的に~からなる」または「~からなる」という用語も含まれる。
【0022】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲において、「連続撹拌槽反応器」(CSTR)という用語は、定常状態において、供給口と出口で一定かつ等しい質量流量を有し(蓄積なし)、液相の反応混合物の温度および組成が液体反応体積全体にわたって実質的に同じである、混合反応器を指す。
【0023】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲において、「プラグフロー反応器」(PFR)という用語は、「連続管状反応器」とも呼ばれ、定常状態において、供給口と出口で一定かつ等しい質量流量を有し(蓄積なし)、反応物から生成物への液相の反応混合物の進行の程度が、反応器の軸に沿って入口から出口に向かって増加し、半径方向には実質的に一定である、反応器を指す。
【0024】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲において、「前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物」という用語は、直列にいくつかのプラグフロー反応器(PFR)がある場合、前記プラグフロー反応器(PFR)の最後のものを出る液相の反応混合物を指す。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ビニル芳香族モノマーは、例えば、一般式(I):
【化1】

(式中、
Rは水素原子またはメチル基であり、
nは0または1であり、
Yは、塩素、臭素などのハロゲン原子、またはヒドロキシル、またはクロロメチル、ブロモメチル、1-ブロモエチル、1-クロロエチルなどの1~2個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、または1~2個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルコキシ基である)
を有するビニル芳香族モノマーから選択され得る。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、一般式(I)を有する前記ビニル芳香族モノマーは、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンの異性体、エチルスチレンの異性体、臭素スチレンの異性体、塩素スチレンの異性体、メチルブロモスチレンの異性体、メチルクロロスチレンの異性体、1-ブロモエチルスチレンの異性体、1-クロロエチルスチレンの異性体、メトキシスチレンの異性体、アセトキシスチレンの異性体、ヒドロキシスチレンの異性体、メチルヒドロキシスチレンの異性体、またはそれらの混合物から選択され得、好ましくはスチレンである。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのコモノマーが前記混合装置に供給され得る。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記コモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物から誘導されるC-Cアルキルエステルなどのビニルモノマー:ジビニルベンゼンの異性体、(メタ)アクリル酸とジオールとのエステル、例えば、エチレングリコール-ジメタクリレート、ブタンジオール-ジアクリレート、ブタンジオール-ジメタクリレート、ヘキサンジオール-ジアクリレート、ヘキサンジオール-ジメタクリレート、またはそれらの混合物などのジビニルモノマー;またはそれらの混合物から選択され得る。
【0029】
上記のプロセスに従って得られるビニル芳香族ポリマーは、好ましくは、以下のものである:
反応混合物中のモノマーの総質量に対して100質量%の一般式(I)を有するビニル芳香族モノマーを含むポリマー、好ましくは反応混合物中のモノマーの総質量に対して100質量%のスチレンを含むポリマー(すなわち、ポリスチレン);
一般式(I)を有するビニル芳香族モノマーを含むコポリマーであって、反応混合物中のモノマーの総質量に対して少なくとも90質量%のスチレンと、反応混合物中のモノマーの総質量に対して10質量%以下のビニルコモノマー、例えばスチレン-アルキルアクリレートコポリマー、スチレン-アルキルメタクリレートコポリマー、スチレン-グリシジルメタクリレートコポリマーとを含む、コポリマー;
一般式(I)を有するビニル芳香族モノマーを含むコポリマーであって、反応混合物中のモノマーの総質量に対して少なくとも90質量%のスチレンと、反応混合物中のモノマーの総質量に対して10質量%以下のビニルコモノマーと、反応混合物中に存在する全モノマーに対して計算したモル数で500ppm未満の量のジビニルモノマーとを含む、コポリマー(例えば、例えば、スチレン-ジビニルベンゼン、スチレン-n-ブチルアクリレート-ジビニルベンゼン、スチレン-2-エチルヘキシルアクリレート-ジビニルベンゼン、スチレン-n-ブチルメタクリレート-ジビニルベンゼン、スチレン-2-エチルヘキシルメタクリレート-ジビニルベンゼン、スチレン-n-ブチルアクリレート-エチレングリコールジメタクリレート、スチレン-2-エチルヘキシルアクリレート-エチレングリコールジメタクリレート、スチレン-n-ブチルメタクリレート-エチレングリコールジメタクリレート、スチレン-2-エチルヘキシルメタクリレート-エチレングリコールジメタクリレート)。
【0030】
本発明のプロセス対象に従って得られるビニル芳香族ポリマー中には、不純物、例えば、得られるビニル芳香族ポリマーの総質量に対して500質量ppmより低い量の、エチルベンゼン、キシレン、クメン、n-プロピル-ベンゼンなどの置換芳香族炭化水素、および/または5個以上の炭素原子数を有する直鎖状および分岐状パラフィン;および/または、得られるビニル芳香族ポリマーの総質量に対して0.5質量%より低い量、好ましくは0.25質量%より低い量の、ポリマーに平行してビニル芳香族モノマーの反応によって形成される、二量体または三量体、直鎖状または環状(ワックス)が含まれ得ることに留意されたい。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ラジカル開始剤は、例えば、モノクロロベンゼン溶媒中、105℃~134℃の間でDSC(示差走査熱量測定)により決定される1時間の半減期を有するラジカル開始剤から選択され得、好ましくは二官能性ラジカル開始剤、例えば、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシアセテート、tert-ブチル-ペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ジ-tert-ブチル-ペルオキシブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、ブチル-4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ(tert-ブチルペルオキシ-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、またはそれらの混合物である。1,1-ジ(tert-ブチル-ペルオキシ)-シクロヘキサンが好ましい。
【0032】
前述のラジカル開始剤は、個別に使用することも、一緒に混合して使用することもできる。具体的には、重量平均分子量(M)の高いポリマーを得るためには、二官能性ラジカル開始剤が好ましく、最後のプラグフロー反応器(PFR)からの出口で、反応混合物中、供給量に対して少なくとも99.5%、好ましくは99.9%、より好ましくは100%反応するような滞留時間と反応温度の条件下で使用される:これらでは、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサンが好ましい。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ラジカル開始剤は、前記連続撹拌槽反応器(CSTR)に供給される反応混合物中に、前記脱揮システムに入る液相の反応混合物の重量流量に基づいて計算して、液相の反応混合物1kgあたり0.2ミリモル~2.5ミリモルの間の過酸化物基-[OO]-の濃度、好ましくは液相の反応混合物1kgあたり0.4ミリモル~2.0ミリモルの間の過酸化物基-[OO]-の濃度、より好ましくは液相の反応混合物1kgあたり0.6ミリモル~1.8ミリモルの間の過酸化物基-[OO]-の濃度で存在し得る。
【0034】
前述のビニル芳香族ポリマーの調製のための連続塊状重合プロセスは、本発明の例示的な、しかし限定するものではない目的のために実施例(パイロットプラント)で報告されているようにオープンサイクルで実施することもできるし、工業プラントの場合にはクローズドサイクルで実施することもできることに留意されたい。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの溶媒が、反応混合物の総重量に対して0重量%~20重量%の間、好ましくは2重量%~10重量%の間の量で前記混合装置に供給され得、前記溶媒は、好ましくは、例えば、エチルベンゼン、キシレン、n-プロピルベンゼン、クメン、エチルトルエンなどの任意に置換された芳香族炭化水素から選択される。
【0036】
前記溶媒は、そのまま、または前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物のフラクションの前記混合装置へのリサイクルを通して、前記混合装置に供給され得る。実際、クローズドサイクルプラントの最初の始動段階(例えば、工業プラントの場合)を除いて、連続撹拌槽反応器(CSTR)に供給される液相の反応混合物中には、非重合性物質が存在し、これらは、重合反応と並行してビニル芳香族モノマーの反応によって形成される不純物、例えば、エチルベンゼン、キシレン、n-プロピルベンゼン、エチルトルエン、クメンなどの置換芳香族炭化水素、5個以上の炭素原子を有する直鎖状および分岐状パラフィン、二量体、三量体、直鎖状および環状(ワックス)の蓄積によって溶媒を構成する。前記不純物は、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物のフラクションを前記混合装置にリサイクルすることにより、溶媒を構成する。
【0037】
前記混合装置に供給される溶媒の量は、モノマーを希釈する目的と、連鎖移動剤および調整剤としての反応性に基づいて、前記プロセスを通じて得ようとするビニル芳香族ポリマーの反応速度および重量平均分子量(M)を低下させる目的の両方で調整され得ることに留意されたい。上述したように、高価な分離操作を除いて、最後のプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物のフラクションと、任意に、脱揮システムを出る蒸発物の凝縮混合物のフラクションをリサイクルすることによって前記混合装置にリサイクルされる溶媒中には、重合反応と並行したビニル芳香族モノマーの反応に由来する、直鎖状および環状の二量体および三量体(ワックス)などのオリゴマーの一部も存在する。直鎖状オリゴマーは、連鎖移動剤としても反応速度の調整剤としても重要な効果を持つため、特に高い重合速度とビニル芳香族ポリマーの高い重量平均分子量(M)を得ることを意図する場合は、その濃度を下げる必要がある。最終ポリマー中に存在する直鎖状および環状の二量体および三量体(ワックス)のフラクションも、ガラス転移温度(Tg)の低下に寄与し、環状の二量体の一部は、その後の顆粒の変形プロセス(押出成形および射出成形)でスチレンに分解し、コンパクトな製品を製造することができる。
【0038】
広い分子量分布曲線(MWD)を得るために、ビニル芳香族ポリマーの全部または一部の重量平均分子量(M)を低下させることを意図する場合には、連鎖移動剤を使用することができる。
【0039】
成長するビニル芳香族ラジカル鎖に対して低および中反応性を有する連鎖移動剤は、ビニル芳香族ポリマー鎖の重量平均分子量(M)を幅広いモノマー転化率範囲で調節することを可能にし、好ましくは、最後のプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物のフラクション、および、任意に、脱揮システムを出る蒸発物の凝縮混合物のフラクションを前記混合装置にリサイクルすることなどを通して、前述のように連続撹拌槽反応器(CSTR)に供給される。
【0040】
成長するビニル芳香族ラジカル鎖に対して高い反応性を有する連鎖移動剤は、特に、広い分子量分布曲線(MWD)を有するビニル芳香族ポリマーを得ることを意図する場合に使用され、好ましくは、供給量に対して99.9%を超える量で反応し、したがって、最後のプラグフロー反応器(PFR)を出て混合装置にリサイクルされる液相の反応混合物のフラクションおよび脱揮システムに供給される液相の反応混合物のフラクションの両方において、供給量に対して0.1%未満の量で存在するか、または存在しないことさえあるような滞留時間および反応温度の条件下で運転されるプラグフロー反応器(PFR)または一連のプラグフロー反応器(PFR)に供給される。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの連鎖移動剤が、前記連続撹拌槽反応器(CSTR)または前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)に供給され得る。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、前記連鎖移動剤は、例えば、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン(α-メチルスチレンダイマー)、炭化水素タイプの多価不飽和有機物質、例えば、植物油、スクアレン、ファルネセン、リモネン、テルピノレン、またはそれらの混合物などの低反応性連鎖移動剤;4~12個の炭素原子を有する第三級メルカプタン、例えば、tert-ブチルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、またはそれらの混合物などの中反応性連鎖移動剤;4~12個の炭素原子を有する第一級メルカプタン、例えば、n-ブチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、またはそれらの混合物などの高反応性連鎖移動剤から選択され得る。
【0043】
ビニル芳香族ポリマーの全部または一部の重量平均分子量(M)を低下させることを意図する場合、好ましい連鎖移動剤はtert-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタンである。具体的には、
tert-ドデシルメルカプタンは、好ましくは、液相の反応混合物100重量部当たり0.005重量部~1重量部の間の濃度で連続撹拌槽反応器(CSTR)に供給され、前記濃度は、連続撹拌槽反応器(CSTR)を出る液相の反応混合物の重量流量に基づいて計算される;
n-ドデシルメルカプタンは、好ましくは、液相の反応混合物100重量部当たり0.01重量部~1重量部の間の濃度でプラグフロー反応器(PFR)に供給され、前記濃度は、最後のプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物の重量流量に基づいて計算される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記連続撹拌槽反応器(CSTR)において、反応温度が120℃~140℃の間、好ましくは122℃~135℃の間であり得る。
【0045】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)において、反応温度が130℃~175℃の間、好ましくは135℃~170℃の間であり得る。
【0046】
本発明のプロセス対象は、連続撹拌槽反応器(CSTR)とプラグフロー反応器(PFR)または一連のプラグフロー反応器(PFRs)における反応温度を調整することによって、ラジカル開始剤の濃度を調整することによって、混合装置および連続撹拌槽反応器(CSTR)への供給中に任意に存在するコモノマーの濃度を調整することによって、混合装置への連鎖移動剤の供給を調整するか、または連続撹拌槽反応器(CSTR)とプラグフロー反応器(PFR)の間で、またはプラグフロー反応器(PFR)を含む一連の反応器において、連鎖移動剤が高反応性である場合には、最後のプラグフロー反応器(PFR)からの出口で、前記連鎖移動剤を任意に完全に反応させることによって、脱揮システムを出た蒸発物の凝縮混合物の混合装置および連続撹拌槽反応器(CSTR)への供給と、連続撹拌槽反応器(CSTR)と、脱揮システムから来た溶媒を含有するプラグフロー反応器(PFR)または一連のプラグフロー反応器(PFR)との間、および任意に、前記2つの反応器における反応混合物の蒸発からの供給を調整することによって、重量平均分子量(M)と数平均分子量(M)の間の比(M/M)によって与えられる多分散指数が2~10のビニル芳香族ポリマーを得ることを可能にする。
【0047】
また、例えばn-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートなどのガラス転移温度を下げるコモノマー、または、例えばα-メチルスチレンなどのガラス転移温度を上げるコモノマーを混合装置および連続撹拌槽反応器(CSTR)に供給することによって、ビニル芳香族ポリマーのガラス転移温度(T)を調節することも容易であり、特に、例えば欧州特許EP3056534およびEP1485429に記載されているような膨張性顆粒の製造のための加工性を改善することができる。
【0048】
本発明の目的のために、ビニル芳香族ポリマーの連続塊状重合のためのプラントが有利に使用され得、このプラントは、以下を含む:
スタティックミキサーまたはダイナミックミキサーなどの少なくとも1つの混合装置と、連続撹拌槽反応器(CSTR)への少なくとも1つの供給ラインと、反応セクションの最後のプラグフロー反応器(PFR)を出る液相の反応混合物のフラクションを前記混合装置にリサイクルするための少なくとも1つのラインを含み、任意に、
阻害剤、酸素、およびその他の任意に存在しうる不要な不純物からのモノマーの精製セクション;
連続撹拌槽反応器(CSTR)に供給する反応混合物を恒温化するセクション;
を含む、供給セクション;
反応混合物の温度制御を備えた連続撹拌槽反応器(CSTR)を含む反応セクションであって、前記制御は、好ましくは、前記反応混合物の供給温度の調節、前記反応混合物の一部の蒸発、および恒温ジャケットの存在による前記連続撹拌槽反応器(CSTR)の壁温度の調節によって実施され、前記連続撹拌槽反応器(CSTR)は、液相の調整可能なレベルと、液相中の反応混合物の均一な温度と組成の均一性の両方を可能にする適切な撹拌システムと、好ましくは蒸発せず、少なくとも2つの恒温ゾーンを有する直列の少なくとも1つのプラグフロー反応器(PFR)、または1つの蒸発プラグフロー反応器(PFR)が使用される場合には、1つの恒温ゾーンのみを備える、反応セクション;
連鎖移動剤と、蒸発する場合は脱揮セクションおよび任意に前述の反応器から蒸気として出る凝縮モノマー混合物、またはこれらの一部を、連続撹拌槽反応器(CSTR)への供給ライン上、直列のプラグフロー反応器(PFR)への入口ライン上、および任意に、最初の反応器に続く各プラグフロー反応器(PFR)の入口で任意に添加するための混合システム;
ポリマーが溶媒および非重合モノマーから分離される脱揮セクション;
仕上げセクション。
【0049】
任意に、添加剤のタイプの化学的-物理的特性に基づいて、当技術分野で既知の任意のタイプであり得る前記脱揮セクションの入口および/または出口に、酸化防止剤、可塑剤、離型剤、耐熱剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、染料、安定剤など、得られるビニル芳香族ポリマーの用途に応じて適切かつ異なる添加剤を添加するための供給および混合システムが存在してもよい。
【0050】
前述の仕上げセクションは、顆粒、膨張シートおよび膨張可能な顆粒の製造に適した、当技術分野で知られている任意のタイプのものであり得る。
【0051】
次に、以下に示す図1を参照して、実施形態を通じて本発明をより詳細に説明する。
【0052】
図1は、以下の例で使用されるパイロットプラントの一実施形態の概要を示す(重合はオープンサイクルで実施)。具体的には、図1は、1つ以上のモノマー(M)(例えば、スチレン)、溶媒(S)(例えば、エチルベンゼン)、重合開始剤(好ましくは二官能性、例えば鉱油中50質量%の1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシシクロヘキサン)(I)ならびに任意の他の添加剤および試薬(図1では破線の矢印で指定)が供給される混合装置(例えば、ダイナミックミキサー)(1)と、背圧バルブ付きポンプ(2a)と、ギアポンプ(2b)と、低粘度液体用の前記背圧バルブ付きポンプ(2a)(リサイクルが存在しない、以下に報告される例1、2、4および5で使用)および粘性液体用の前記ギアポンプ(2b)(リサイクルが存在する、以下に報告される例3、6および7で使用)に送られる反応混合物の流量計(3)であって、反応混合物の内部温度に応じて水温を調節可能なサーモスタットバルブ(図1には示されていない)を備え、粘性混合物用のダブルベルト撹拌機(図1には示されていない)で撹拌されるジャケット付き蒸発連続撹拌槽反応器(CSTR)(4)に接続された流量計(3)と、反応混合物をプラグフロー反応器(PFR)(5)に供給するギアポンプ(4a)に接続された底部の排出ノズル(図1には示されていない)と、圧力差用のレベルメーター(図1には示されていない)と、反応混合物をプラグフロー反応器(PFR)(5)に供給するギアポンプ(4a)に接続された底部の吐出ノズル(図1には示されていない)と、凝縮器(4b)に接続され、次いで出口流量計(4d)に接続された液体回収タンク(4c)に接続された蓋上のノズル(図1には示されていない)とを含むプラントを示す。ギアポンプ(4a)とプラグフロー反応器(PFR)(5)の間に設置されたサンプリングバルブ(4e)により、連続撹拌槽反応器(CSTR)(4)からの出口で液相の反応混合物のサンプルを採取し、その組成を決定することができる。サンプリングバルブ(4e)の後、連続撹拌槽反応器(CSTR)(4)とプラグフロー反応器(PFR)(5)の間に設置されたミキサー(4f)により、連続撹拌槽反応器(CSTR)(4)を出た液相の反応混合物に液体(例えば、溶媒、連鎖移動剤)を供給することができる(図1の破線)。
【0053】
前記プラグフロー反応器(PFR)(5)は、3つの恒温ゾーンに分割され、3つのゾーン(図1には示されていない)の別々の反応温度を調節するための循環油を含有するパイプを有し、連続撹拌槽反応器(CSTR)(4)を出た反応混合物の入口と2つの出口を有し、2つの出口のうち一つは、混合装置(1)に供給するギアポンプ(5a)を有し、もう一つは、熱交換器(6a)および真空容器(6b)を備えた脱揮システム(6)に供給し、プラグフロー反応器(PFR)(5)を出たポリマーを液相の反応混合物の非重合成分から分離する。プラグフロー反応器(PFR)(5)と熱交換器(6a)の間に設置されたサンプリングバルブ(5b)により、プラグフロー反応器(PFR)(5)からの出口で液相の反応混合物のサンプルを採取し、その組成を決定することができる。得られたポリマーは、前記真空容器(6b)の底から出て、ギアポンプ(6c)によって造粒システム(7)に送られる。真空容器(6b)内に存在する溶媒蒸気と未反応モノマーは凝縮器(6d)に送られ、凝縮器(6d)は液体回収タンク(6e)およびサンプリングバルブ(6f)に接続され、サンプリングバルブ(6f)から液体サンプルを採取し、その組成を決定する。
【実施例
【0054】
本発明をより良く理解し、それを実践するために、本発明のいくつかの例示的かつ非限定的な例を以下に示す。
【0055】
例1~5(比較例)および例6~7(本発明例)
例は、図1に従って、パイロット・オープン・サイクル・プラントで行われた。
【0056】
この目的のために、撹拌機、温度制御およびレベル制御(図1には示されていない)を備えた1000リットル容量のジャケット付きダイナミックミキサー(1)に、質量比94/6のスチレン(純度99.8%-Versalis社製)とエチルベンゼン(Versalis社製)、鉱油中の50質量%の1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン(Akzo Nobel社製)(例4~7、表1に示す量で)、およびプラグフロー反応器(PFR)(5)を出た液相の反応混合物の一部(表1中、例3、6~7)を70℃で連続的に供給した。
【0057】
得られた反応混合物は、低粘度液体用の背圧バルブ付きポンプ(2a)(表1に示すようにリサイクルのない例1、2、4および5)または粘性液体用のギア付きポンプ(2b)(表1に示すようにリサイクルのある例3、6および7で使用)と流量計(3)を通して、100%レベル(液相中の反応混合物224kg、充填率75%に等しい)で300リットルのジャケット付き蒸発連続撹拌槽反応器(CSTR)(4)に送られ、ジャケット付き蒸発連続撹拌槽反応器(CSTR)(4)は、反応混合物の内部温度に基づいて調節可能なジャケット内の循環水の温度のサーモスタットバルブ(図1には示されていない)が取り付けられ、粘性混合物用のダブルベルト撹拌機(図1には示されていない)で撹拌され、圧力差用のレベルメーター(図1には示されていない)と、3つの恒温ゾーンに分割されていて3つのゾーンで異なる反応温度を調節するための循環油を含有するパイプを有する垂直式の撹拌型120リットルプラグフロー反応器(PFR)(5)に反応混合物を供給するギアポンプ(4a)に接続されたノズル底部ドレン(図1には示されていない)と、凝縮器(4b)に接続され、次いで出口流量計(4d)に接続された液体回収タンク(4c)に接続された蓋上のノズル(図1には示されていない)とを備える。ギアポンプ(4a)とプラグフロー反応器(PFR)(5)の間に設置されたサンプリングバルブ(4e)により、連続撹拌槽反応器(CSTR)(4)からの出口で、液相の反応混合物のサンプルを採取し、その組成を決定した。
【0058】
例3および6~7では、プラグフロー反応器(PFR)(5)を出た液相の反応混合物のフラクション(33.3%)を、表1に示すリサイクル比(RR)で運転するダイナミックミキサー(1)に、ポンプギア(5a)を介してリサイクルした。
【0059】
プラグフロー反応器(PFR)(5)を出た反応混合物の残りのフラクションは、脱揮システム(6)に供給され、そこで熱交換器(6a)で250℃の温度に加熱され、真空容器(6b)で11mmHgの残圧に維持され、溶媒および未反応モノマーを除去した。
【0060】
脱揮システムを出たポリマーは、表1に示すすべての例についてほぼ一定の流量(約60.7kg/hに等しい)で造粒機(7)に送られた。
【0061】
サンプリングバルブ(5b)から抜き出した反応混合物中に存在するポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定は、以下からなるGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)装置を用いて行われた:
Waters Alliance E2695ポンプ-インジェクターモジュール、脱気装置付き;
プレカラムおよび4本のPhenogel(Phenomenex社)カラムを備えたWatersオーブン、、寸法300×7.8mm、粒子径5μ、ポロシティ106Å、105Å、104Å、103Å;
RI Waters 410屈折率検出器。
【0062】
使用した運転条件は以下の通りであった:
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)(Merck社製);
カラム温度:30℃;
フロー:1ml/分;
内部標準:トルエン;
注入量:200マイクロリットル。
【0063】
(多分散)サンプルを1mg/mlの濃度で注入した。
【0064】
ユニバーサル検量線は、分子量(Mp)が2170Da~4340000Daの20個の単分散ポリスチレン標準を注入し、それぞれの分子量に対する固有粘度と溶出量を記録することで構築した。
【0065】
データの取得および処理は、Empower2ソフトウェア(Waters社製)を用いて行った。
【0066】
表1に、得られたポリマーの質量平均分子量(Mw)を示す。
【0067】
サンプリングバルブ(4e)およびサンプリングバルブ(5b)から抜き出した反応混合物中のポリマーの量は、0.5gの反応混合物(1000分の1グラムの精度で天秤で秤量)を20mlのクロロホルム(Carlo Erba社製)に溶解し、得られた溶液を、150mlのエタノール(Carlo Erba社製)を含むグラスに撹拌下に一滴ずつ加えて沈殿させることで、重量測定により決定された。最後に、ポリマーが底に沈殿して液体が透明になるまで全体を静置した。その後、ポリマーをVitraPOR(商標)20304(Robu Glass Filter社製)濾過るつぼフィルターで濾過することによって回収し、真空下、110℃のオーブンで一定重量になるまで乾燥させた。
【0068】
サンプリングバルブ(5b)から抜き出した反応混合物中に存在するスチレンの直鎖状および環状の二量体および三量体(ワックス)の量は、以下のように操作することによりガスクロマトグラフィーによって測定された:
「オンカラム」インジェクター、オートサンプラー(Triplus社製)および電子キャリアフロー制御を備えたガスクロマトグラフ(Trace 1300);
長さ25m、固定相の厚さ0.52mm、直径0.32mmのメチルシリコーン相(Agilent HP1)を用いたクロマトグラフィーカラム;
炎イオン化検出器(FID);
クロマトグラフィー取得ソフトウェア。
ガスクロマトグラフは以下のように設定された:
キャリア:水素;
フローランプ:2ml/分で1分間、4.2ml/分まで0.2ml/分で上昇、その後ストローク終了まで4.2ml/分で一定;
検出器温度:330℃;
温度プログラム:60℃から160℃まで40℃/分で昇温、160℃で5分間等温、8℃/分で325℃まで昇温、5分間等温。
【0069】
分析するポリマーサンプルは、0.5gのサンプルを内部標準物質としての50ppmのn-ヘキサデカン(メルク社製)を含む3mlのジクロロメタン(メルク社製)に溶解し、その後8mlのエタノール(Carlo Erba社製)でポリマーを沈殿させることにより調製された:前記沈殿から得られた液体1mlを前述のガスクロマトグラフに注入した。応答因子1がすべてのオリゴマーに帰属された:得られた値を表1に示す。
【0070】
表1には、使用した反応条件も示されている。
【0071】
【表1】
【0072】
in CSTR:流量計(3)によって決定されるCSTR(4)に供給される反応混合物の総流量(kg/h);
CSTR:定常状態において、液体回収タンク(4c)の1時間のレベル差と、(4d)から採取したサンプルの液体の密度を測定することによって決定される、CSTR(4)を出る凝縮蒸気の流量(kg/h);
F. init.:CSTR(4)に供給される反応混合物の全流量に基づいて計算される、ラジカル開始剤[鉱油中50%の1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン]の質量分率[g/(g×10)];
T CSTR:反応混合物およびCSTRジャケット(4)の温度(℃);
F. Polout CSTR:サンプリングバルブ(4e)から採取した反応混合物サンプルの重量分析によって決定される、CSTR(4)を出る液相の反応混合物中のポリマーのフラクション(%);
T PFR:PFR(5)の3つのゾーンにおける液相の反応混合物の温度の上昇範囲(℃);
out PFR:PFR(5)を出る液相の反応混合物の総流量(kg/h)。PFR(5)に入る流量とCSTR(4)を出る液相の流量に等しく、流量計流量(3)で測定された流量から液体回収タンク(4c)内の凝縮蒸気の流量を差し引いた値に基づいて計算される;
F. Polout PFR:PFR(5)を出る液相の反応混合物中のポリマーのフラクション(%)。サンプリングバルブ(5b)を通して採取された反応混合物サンプルの重量分析によって決定され、造粒機(7)を出るポリマーの量と、液体回収タンク(6e)の1時間のレベル差によって測定される凝縮蒸気の流量と、サンプリングバルブ(6f)から採取されたサンプルの液体の密度とに基づいて計算される;
RR:PFR(5)を出て、ギアポンプ(5a)によりダイナミックミキサー(1)にリサイクルされる液相の反応混合物の流量と、PFRを出て、脱揮システム(6)に送られる反応混合物の流量との間のリサイクル比。ギアポンプ(4a)および(5a)の回転数の比、ならびに、流量Qout PFRおよび造粒機(7)を出る顆粒の流量に基づいて計算される;
wax:脱揮システム(6)に供給されるサンプリングバルブ(5b)によってサンプリングされた液相の反応混合物中において、反応で形成され、測定された直鎖状および環状の二量体および三量体(ワックス)の流量(g/h);
wax/Qpol:脱揮システム(6)に供給されたポリマー1kg当たり、反応で生成した直鎖状および環状の二量体および三量体(ワックス)の特定の量(g/kg);
:サンプリングバルブ(5b)から採取されたサンプルから決定される、PFR(5)を出るポリマーの重量平均分子量(kDa)。
【0073】
表1に示すデータから、以下のことが推測できる:
ラジカル開始剤を供給せず、PFR(5)からダイナミックミキサー(1)へのリサイクルを行わなかった例1(比較例)では、高いワックス生成(655g/h、Qwax/Qpol比が10.8g/kg)および259kDaの重量平均分子量の値(M)を示した;
例1(比較例)のようにラジカル開始剤を供給せず、PFR(5)からダイナミックミキサー(1)へのリサイクルを行わず、CSTR(4)への流量を低くし、CSTR(4)およびPFR(5)の反応温度を高くした例2(比較例)では、CSTR(4)およびPFR(5)を出るポリマーのフラクションが増加し、生成されるワックスはわずかに減少したが(643g/h、Qwax/Qpol比が10.6g/kg)、重量平均分子量(M)は252kDaに減少した;
例1(比較例)のようにラジカル開始剤を供給せず、PFR(5)を出る反応混合物の33.3%に等しいリサイクルを挿入した例3(比較例)では、ダイナミックミキサー(1)への供給において(RR=0.5)、生成されるワックスがわずかに減少し(617g/h、Qwax/Qpolが10,2g/kgで)、重量平均分子量(M)が236kDaにさらに減少した;
例4(比較例)および例5(比較例)では、PFR(5)からダイナミックミキサー(1)へのリサイクルは行わず、むしろラジカル開始剤の供給量を増加させることにより、同じポリマー生産量で、特にCSTR(4)における反応温度を下げることが可能であった:例5(比較例)では、例1(比較例)と比較して、ワックスの生成が半減し(329g/h、Qwax/Qpol比が5.4g/kg)、重量平均分子量(M)が288kDaに増加した;
例6(実施例)では、PFR(5)を出る反応混合物の33.3%に等しいリサイクルを、ダイナミックミキサー(1)への供給において挿入し(RR=0.5)、その結果、特にCSTR(4)において、反応温度を低下させることによって生成ポリマーの流量を維持することが可能であり、ワックスの生成の減少(235g/h、Qwax/Qpol比が3.9g/kg)および重量平均分子量(M)の291kDaへの増加が観察された;
0.5に等しいリサイクル比(RR)を例6(実施例)と同様に維持し、ラジカル開始剤の流量を増加させた例7(実施例)では、ワックスの生成がさらに減少し(182g/h、Qwax/Qpol比が3.0g/kg)、重量平均分子量(M)が300kDaにさらに増加した。
図1
【国際調査報告】