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特表2024-526149消化管への活性物質の投与を制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】消化管への活性物質の投与を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/48 20060101AFI20240709BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20240709BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K47/38
A61K47/36
A61K35/747
A61P1/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578776
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 US2022034683
(87)【国際公開番号】W WO2022271922
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/214,438
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522346729
【氏名又は名称】ロンザ・グリーンウッド・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ベラマイン,アワテフ
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,タイラー
(72)【発明者】
【氏名】ダーキー,シェーン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA54
4C076AA58
4C076AA95
4C076BB01
4C076CC16
4C076DD38
4C076EE32H
4C076EE58H
4C076FF21
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA10
4C087BC58
4C087CA09
4C087MA05
4C087MA37
4C087MA52
4C087NA13
4C087ZA73
(57)【要約】
本開示は、活性物質が送達される哺乳動物による活性物質の最適な生物活性及び吸収のための送達システムを使用して、薬学的成分、栄養補助食品、酵素、又はプロバイオティクスを含む、活性物質の効果的な経口投与を提供する方法を対象とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物への活性物質の効果的な経口投与を提供する方法であって、前記活性物質が、前記哺乳動物の消化管に送達され、前記方法が、送達システムを哺乳動物に投与することを含み、前記送達システムが、
a.外側シェル壁及び内部チャンバを有する外側カプセルと、
b.外部シェル壁及び内側コンパートメントを有する内側カプセルであって、前記内側カプセルが、前記外側カプセルの前記内部チャンバ内に位置し、前記内側カプセルが、耐酸性である、内側カプセルと、
c.活性物質であって、前記活性物質が、前記内側カプセルの前記内側コンパートメント内に存在する、活性物質と、を含み、
前記送達システムが、哺乳動物に経口投与され、前記送達システムが、前記活性物質を有効量で前記哺乳動物の腸に送達する、方法。
【請求項2】
前記外側カプセルが、HPMC硬カプセルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内側カプセルが、耐酸性を有するHPMC硬カプセルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記内側カプセルが、HPMC及びジェランガムを含むカプセルを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ジェランガムが、前記HPMC100部当たり約4部~15部の量で存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記HPMCカプセルが、熱ゲル化HPMCを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記外側カプセルが、耐酸性カプセルである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記外側カプセルが、耐酸性を有するHPMC硬カプセルを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記外側カプセルが、HPMC及びジェランガムを含むカプセルを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ジェランガムが、前記HPMC100部当たり約4部~15部の量で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記活性物質が、プロバイオティクスを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記内側カプセル及び前記外側カプセルが、各々耐酸性カプセルであり、各耐酸性カプセルが、HPMC及びジェランガムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ジェランガムが、前記HPMC100部当たり約4部~15部の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項14】
前記内側カプセルが、2つ以上の内側カプセルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記内側カプセルが、禁止されている、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記活性物質が、胃又は小腸内で溶解するカプセルよりも少なくとも10倍多い量で結腸に送達される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記活性物質が、胃又は小腸内で溶解するカプセルよりも少なくとも20倍多い量で結腸に送達される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記活性物質が、胃又は小腸内で溶解するカプセルよりも少なくとも30倍多い量で結腸に送達される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
活性成分を腸に投与することによって、前記腸のマイクロバイオーム及びコロニー形成を改変する方法であって、前記方法が、送達システムを哺乳動物に投与することを含み、前記送達システムが、
a.外側シェル壁及び内部チャンバを有する外側カプセルと、
b.外部シェル壁及び内側コンパートメントを有する内側カプセルであって、前記内側カプセルが、前記外側カプセルの前記内部チャンバ内に位置し、前記内側カプセルが、耐酸性である、内側カプセルと、
c.プロバイオティクス活性成分であって、前記活性物質が、前記内側カプセルの前記内側コンパートメント内に存在する、プロバイオティクス活性成分と、を含み、
前記送達システムが、哺乳動物に経口投与され、前記送達システムが、前記プロバイオティクス活性物質を有効量で前記哺乳動物の前記腸に送達し、前記活性成分が、前記腸内の健康な細菌の前記マイクロバイオーム又はコロニー形成を改善する、方法。
【請求項20】
外側カプセルが、HPMC硬カプセルを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記内側カプセルが、耐酸性を有するHPMC硬カプセルを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記内側カプセルが、HPMC及びジェランガムを含むカプセルを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ジェランガムが、前記HPMC100部当たり約4部~15部の量で存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記HPMCカプセルが、熱ゲル化HPMCを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記外側カプセルが、耐酸性カプセルである、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記外側カプセルが、耐酸性を有するHPMC硬カプセルを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記外側カプセルが、HPMC及びジェランガムを含むカプセルを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ジェランガムが、前記HPMC100部当たり約4部~15部の量で存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記内側カプセル及び前記外側カプセルが、各々耐酸性カプセルであり、各耐酸性カプセルが、HPMC及びジェランガムを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記ジェランガムが、前記HPMC100部当たり約4部~15部の量で存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記内側カプセルが、2つ以上の内側カプセルを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記内側カプセルが、禁止されているか、又は前記カプセルの各部分の接合部に禁止物質を有する、先行請求項19~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記活性物質が、胃又は小腸内で溶解するカプセルよりも少なくとも10倍多い量で結腸に送達される、先行請求項19~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記活性物質が、胃又は小腸内で溶解するカプセルよりも少なくとも20倍多い量で結腸に送達される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記活性物質が、胃又は小腸内で溶解するカプセルよりも少なくとも30倍多い量で結腸に送達される、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、出願日が2021年6月24日である米国仮特許出願第63/214,438号に基づき、それに対する優先権を主張し、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
薬学的成分、栄養補助食品成分、又はプロバイオティクスなどの活性物質の経口投与は一般的に、その利便性、潜在的な制御放出、及び使用者のコンプライアンスのために、活性物質を哺乳動物に投与するための好ましい方法である。これらの利点にもかかわらず、製品性能、活性成分の十分かつ効率的な投薬、及び胃腸管活性における活性物質の生存可能性などの多くの課題が、活性物質の経口投与に関連している。
【0003】
上部胃腸管(GIT)内では、経口投与された薬学的成分、栄養補助食品成分、及びプロバイオティクスは、胃内の過酷な酸性条件及び胃酵素(すなわち、ペプシン)のために、分解されやすい。十二指腸では、膵酵素(すなわち、リパーゼ、トリプシン、アミラーゼ、ペプチダーゼ)及び胆汁塩が、これらの成分の安定性、特にプロバイオティクスの生存率に有意な影響を及ぼし得る。絶食条件又は給餌条件の間に、異なる輸送時間、pHプロファイル、及び酵素レベルが説明されており、より良好な有効性及び性能のためには経口実体の剤形の調整が必要である。
【0004】
したがって、pH感受性活性物質が経口送達される場合、即時放出製剤は避けるべきである。例えば、生きた微生物であるプロバイオティクスは、適切なレベルで投与された場合にのみ宿主に健康上の利益を与え、例えば、低pHのためにGIT輸送中に株生存率が低減した場合には、性能がより低くなる可能性がある。フラボノイド、カロテノイド、ヒドロキシシナモイル酸、又はビタミンCなどの栄養サプリメントもまた、胃腸消化中に高度に分解(80~91%)され得る一方で、タンパク質及びペプチドなどの生物活性物質は、ペプシン及びトリプシン分解の作用によって損傷を受ける可能性があり、したがって、それらの活性を有意に低減する。
【0005】
錠剤コーティング又は生物活性カプセル化を含む異なる戦略が、酸感受性生成物用の適切な製剤を提供するために開発されてきた。錠剤は、圧縮可能成分が少ない、溶解が遅い、又は苦味があるという欠点を有する。加えて、薬物開発の初期段階の間、限定的な量の薬物利用可能性は、コーティングされたペレット又は錠剤製剤の開発を妨げる可能性がある。したがって、セルロース誘導体又はアクリル/メタクリル酸誘導体などの特定のカプセルポリマーは、より良好な固形剤形を提供し、また小腸又は大腸への液体又は半固体製剤の送達を標的とする可能性を提供する可能性もある。したがって、カプセル技術は、過去数年間で大きな進歩を遂げ、薬学的製剤、栄養補助食品製剤、及びプロバイオティクス製剤のための経済的に便利な代替品、並びに標的化した実体の放出を提供している。
【発明の概要】
【0006】
一般に、本開示は、活性物質が送達される哺乳動物による活性物質の最適な生物活性及び吸収のための送達システムを使用して、薬学的成分、栄養補助食品、酵素、又はプロバイオティクスを含む、活性物質の効果的な経口投与を提供する方法を対象とする。
【0007】
第1の実施形態では、本開示は、哺乳動物への活性物質の効果的な経口投与を提供する方法を対象とし、活性物質は、哺乳動物の消化管に送達される。本方法は、送達システムを調製することを含み、送達システムは、外側シェル壁及び内部チャンバを有する外側カプセルと、外部シェル壁及び内側コンパートメントを有する内側カプセルとを含む。内側カプセルは、外側カプセルの内部チャンバ内に位置し、該内側カプセルは、耐酸性であり、活性物質を含有する。活性物質は、内側カプセルの内側コンパートメント内に存在する。送達システムは、哺乳動物に経口投与され、送達システムは、活性物質を有効量で哺乳動物の腸に送達する。
【0008】
第2の実施形態では、本開示は、活性成分を腸に投与することによって、腸のマイクロバイオーム及びコロニー形成を改変する方法を対象とする。本方法は、送達システムを調製することを含む。送達システムは、外側シェル壁及び内部チャンバを有する外側カプセルと、外部シェル壁及び内側コンパートメントを有する内側カプセルとを含む。内側カプセルは、外側カプセルの内部チャンバ内に位置し、内側カプセルは、耐酸性であるように製剤化され得る。プロバイオティクス活性成分は、内側カプセルの内側コンパートメント内に存在する。送達システムは、哺乳動物に経口投与され、送達システムは、プロバイオティクス活性物質を有効量で哺乳動物の腸に送達する。活性成分は、腸内の健康な細菌のマイクロバイオーム又はコロニー形成を改善する。
【0009】
本開示の更なる一態様では、送達システムにおいて、外側カプセルは、HPMC硬カプセルを含む。
【0010】
本開示の更なる一態様では、送達システムにおいて、内側カプセルは、耐酸性を有するHPMC硬カプセルを含む。
【0011】
本開示の別の態様では、内側カプセルは、HPMC及びジェランガムを含むカプセルを含む。特定の一態様では、ジェランガムは、HPMC100部当たり約4部~15部の量で存在する。
【0012】
本開示の異なる一態様では、HPMC外側カプセルは、熱ゲル化HPMCを含む。
【0013】
本開示の更なる一実施形態では、外側カプセルは、耐酸性カプセルである。一態様では、外側耐酸性カプセルは、耐酸性を有するHPMC硬カプセルである。特定の実施形態では、外側カプセルは、HPMC及びジェランガムを含むカプセルである。ジェランガムは、HPMC100部当たり約4部~15部の量で存在する。
【0014】
一実施形態では、活性物質は、プロバイオティクスを含む。
【0015】
本開示の異なる一実施形態では、内側カプセル及び外側カプセルは、それぞれ耐酸性カプセルを含み、各耐酸性カプセルは、HPMC及びジェランガムを含む。
【0016】
別の実施形態では、本方法は、胃又は小腸内で溶解するカプセルよりも少なくとも10倍多い量で活性物質を結腸に送達する方法を提供する。更なる実施形態では、活性物質は、胃又は小腸内で溶解するカプセルよりも少なくとも20倍多い、更には胃又は小腸内で溶解するカプセルよりも少なくとも30倍多い量で結腸に送達される。
【0017】
本開示の他の特徴及び態様は、以下でより詳細に考察される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】カプセルインカプセル構成を有する、本開示の方法で使用可能な送達システムを示す。
図2】三重カプセル構成を有する、本開示の方法で使用可能な送達システムを示す。
図3】多重カプセル構成を有する、本開示の方法で使用可能な送達システムを示す。
図4A】給餌条件下、実施例で使用されるpHプロファイルを示す。
図4B】絶食条件下、実施例で使用されるpHプロファイルを示す。
図5図5Aは、模擬絶食条件下での胃及び小腸内のカフェイン放出に対するカプセル構成の効果を示す。図5Bは、模擬絶食条件下での胃及び小腸内のカフェイン放出に対するカプセル構成の効果を示す。図5Cは、模擬絶食条件下での胃及び小腸内のカフェイン放出に対するカプセル構成の効果を示す。図5Dは、模擬絶食条件下での胃及び小腸内のカフェイン放出に対するカプセル構成の効果を示す。
図6図6Aは、給餌条件下での模擬消化における胃及び小腸内のカフェイン放出に対するカプセル構成の効果を示す。図6Bは、給餌条件下での模擬消化における胃及び小腸内のカフェイン放出に対するカプセル構成の効果を示す。図6Cは、給餌条件下での模擬消化における胃及び小腸内のカフェイン放出に対するカプセル構成の効果を示す。図6Dは、給餌条件下での模擬消化における胃及び小腸内のカフェイン放出に対するカプセル構成の効果を示す。
図7図7Aは、カフェイン放出及びプロバイオティクス生存に対するカプセル構成の効果を示す。図7Bは、カフェイン放出及びプロバイオティクス生存に対するカプセル構成の効果を示す。図7Cは、カフェイン放出及びプロバイオティクス生存に対するカプセル構成の効果を示す。図7Dは、カフェイン放出及びプロバイオティクス生存に対するカプセル構成の効果を示す。
図8図8Aは、絶食条件下での胃及び小腸の模擬消化後のL.ACIDOPHILUS株の培養可能性に対するカプセル構成の効果を示す。図8Bは、給餌条件下での胃及び小腸の模擬消化後のL.ACIDOPHILUS株の培養可能性に対するカプセル構成の効果を示す。
図9】模擬結腸環境における微生物活性調節に対する異なるカプセルを通したプロバイオティクス投与の効果を示す。
【0019】
定義
本明細書で使用される場合、「約」、「およそ」、又は「一般的に」という用語は、値を修飾するために使用されるとき、値が10%上昇又は低下し、開示される態様に留まり得ることを示す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、そのような治療を必要とする哺乳動物に組成物が投与又は送達される、特定の薬理学的若しくは栄養学的反応を提供する、その投薬量又は組成物の量を意味するものとする。特定の例で特定の対象に投与される「治療有効量」は、病気を治療するか、又は別様に本明細書に記載の健康を改善する上で必ずしも有効ではないが、そのような投薬量は、当業者によって「治療有効量」とみなされることが強調される。特定の対象は、実際には、「治療有効量」に対して「難治性」であり得る。例えば、難治性対象は、特定の受容体、代謝経路、又は臨床的有効性が得られない応答能力において、低い生物学的利用能又は遺伝的可変性を有し得る。組成物、又は特定の場合サプリメントは、経口投薬量として、又は血液中で測定され得る成分レベルに関して測定され得ることを更に理解されたい。他の実施形態では、腸が活性成分の標的である場合、投薬量は、腸マイクロバイオームに正の影響を与えることができる量で測定され得る。
【0021】
「栄養補助食品」という用語は、その基本的な栄養価に加えて、健康又は医療上の利益を提供する食事源(例えば、食品、飲料、又は食事サプリメント)に添加される任意の化合物を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「送達すること」又は「投与すること」という用語は、医学界により標準として受け入れられている、組成物、製品、又は栄養補助食品を対象に提供するための任意の経路を指す。例えば、本開示は、経口摂取を含む送達又は投与経路を企図する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「哺乳動物」という用語は、改善された関節の健康、回復力、気分、回復、及び一般的な健康から利益を得ることができる任意の哺乳動物を含み、これには、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ヒツジ、又はブタ哺乳動物が含まれ得るが、これらに限定されない。本出願の目的では、「哺乳動物」は、ヒト対象を含み、動物と互換的に使用され得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「カプセル」という用語は、従来の硬カプセル、又は哺乳動物への経口投与を意図したゼラチンカプセルを意味する。カプセルは、本体及びキャップと呼ばれる、2つの同軸の伸縮式に接合された部分を有する。通常、キャップ及び本体は、側壁、開放端、及び閉鎖端を有する。該部分のそれぞれの側壁の長さは一般的に、カプセルの直径よりも大きい。カプセルのキャップ及び本体は、それらの側壁を部分的に重なり合わせ、カプセルシェルを得るように、ともに伸縮式に接合される。「部分的に重なり合う」はまた、キャップ及び本体が伸縮式に接合されるとき、該キャップの側壁が該本体の側壁全体を包み込むように、キャップ及び本体の側壁が実質的に同じ長さを有する実施形態も包含する。したがって、本発明のカプセルは、カプセルの従来の定義から構造的に逸脱しない。一般的に、「カプセル」は、空のカプセル及び充填されたカプセルの両方を指す一方で、「シェル」は、特に空のカプセルを指す。硬カプセルシェルが液体形態の物質で充填される場合、本発明の硬カプセルは、含有された物質の漏出を避けるために、従来の技術に従って密封又はバンド付けされ得ることが意図される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「耐酸性」又は「耐酸性の」という用語は、USP崩壊試験に供したときに、本発明のカプセルシェル及びカプセルが、少なくとも1時間漏出を呈しないことを意味する。本開示の目的では、USP-30の剤形(本質的に、バスケット/ラック組立における37±2℃の模擬胃液TS)用の崩壊試験において開示される装置及び手順を使用して、耐酸性を試験する。
【0026】
本発明の耐酸性カプセルシェル及びカプセルはまた、パドル装置において、pH6.8、37±2℃の模擬腸液中で満足な溶解特性を示す。模擬胃液及び腸液中の本発明の例示的なカプセルの溶解プロファイルを、実施例及び図1に開示する。日本薬局方2(JP2)に開示される溶解試験で試験した場合、本発明の硬カプセルは、その中に含有される腸溶耐性硬カプセルの定義を満たした。
【0027】
本開示の他の特徴及び態様は、以下でより詳細に考察される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本考察は、例示的な実施形態の説明に過ぎず、本開示のより広範な態様を限定することを意図するものではないことが、当業者によって理解されるべきである。
【0029】
本開示で使用可能なカプセルは、硬カプセルであり得る。内側カプセル及び外側カプセルの両方が、硬カプセルであってもよい。
【0030】
好適な硬カプセルには、フィルム形成ポリマー基質材料、任意で1つ以上の着色剤、及び水を含有する、カプセル形成水性組成物から調製され得るカプセルが含まれる。任意で、可塑剤、抗菌剤、ゲル化剤、及び中和剤(特にアルカリ性材料)などの他の添加剤が存在してもよい。
【0031】
フィルム形成ポリマー基質材料は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC又はヒプロメロース)、HPMCP、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、メチルセルロース(MC)などの1つ以上のセルロース;ゼラチン;プルラン;ポリ酢酸ビニル又はポリビニルアルコール、並びにデンプン誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルデンプン及びその混合物から選択することができ、これらのフィルム形成ポリマーは、弾性モジュール及び脆性に関して最適な機械的性能を有するフィルムを形成する。特定の一実施形態では、フィルム形成ポリマーは、HPMC及び/又はゼラチンを含む。別の実施形態では、フィルム形成ポリマーは、唯一のフィルム形成ポリマー基質材料であり得るHPMCを含有する。異なる一実施形態では、フィルム形成ポリマー基質材料は、唯一のフィルム形成基質材料としてゼラチンを含有し得る。好適なタイプのHPMCは、当該技術分野で周知であり、一例は、HPMCタイプ2910(USP30-NF25において定義される)である。他のタイプのHPMCは、HPMC2208及びHPMC2906(USP30-NF25で定義されるとおり)である。特定の一実施形態では、セルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0032】
本明細書におけるHPMCメトキシ及びヒドロキシプロポキシ含有量は、USP30-NF25に従って表される。20℃のHPMC2重量%水溶液の粘度は、セルロース誘導体のためのUSP30-NF25法に従って測定される。
【0033】
典型的には、水性組成物は、フィルム形成ポリマーの、カプセル形成水性組成物の総重量に基づいて、10~50重量%、より典型的には15重量%~35重量%を構成する。好適なヒドロキシプロピルメチルセルロースは、市販されている。一般的に、カプセルを形成し、乾燥によって水を除去した後に、フィルム形成ポリマーは、最終カプセルシェルの重量で主要構成物となる。カプセルを形成するためのディップ成形製造プロセスにおける水溶性ポリマーの使用は、既に公知であり、多くの出版物及び特許に広く開示されている。カプセル形成プロセスは、以下でより詳細に説明される。現在使用されている水溶性フィルム形成ポリマーは、全て市販されている。
【0034】
特定の一実施形態では、本明細書の水性組成物中のHPMCは、20℃の2%w/w水溶液として4.0~5.0cPsの粘度を有するHPMCである。HPMC水溶液の粘度は、ウベローデタイプの粘度計を使用することによって、従来の技術によって、例えば、USPに開示されるように、測定することができる。好適な水性組成物はまた、同じタイプであるが異なる粘度グレードのHPMCをブレンドすることによっても得ることができる。
【0035】
一実施形態では、本明細書のカプセルの作製に使用される水性組成物は、カプセル形成水性組成物の総重量に基づいて、0重量%~5重量%、典型的には0重量%~2重量%の、硬カプセルの製造に典型的に使用される追加の非動物由来のフィルム形成ポリマーを含有し得る。一実施形態では、本発明のHPMC水性組成物は、現在開示されているHPMC以外のフィルム形成ポリマーを含有しない。非動物由来のフィルム形成ポリマーは、例えば、ポリビニルアルコール、植物由来又は細菌由来のフィルム形成ポリマーである。典型的な植物由来のフィルム形成ポリマーは、本明細書に定義されるHPMC及びその混合物以外の、デンプン、デンプン誘導体、セルロース、セルロース誘導体である。典型的な細菌由来フィルム形成ポリマーは、エキソ多糖である。典型的なエキソ多糖は、キサンタン、アセタン、ジェラン、ウェラン、ラムザン、フルセレラン(furcelleran)、サクシノグリカン、スクレログリカン(scleroglycan)、シゾフィラン、タマリンドガム、カードラン、プルラン、デキストラン、及びそれらの混合物である。
【0036】
特定の一実施形態では、本明細書のHPMC水性組成物は、カプセル形成水性組成物の総重量に基づいて、0重量%~1重量%、好ましくは0重量%の硬カプセルの製造に従来使用される動物由来の材料を含有する。典型的な動物由来の材料は、ゼラチンである。
【0037】
別の実施形態では、本明細書のカプセル形成水性組成物は、カプセル形成水性組成物の総重量に基づいて、最大約10重量%のゲル化剤又はゲル化システム。典型的には、カプセル形成水性組成物は、カプセル形成水性組成物の総重量に基づいて、0.2重量%~5重量%のゲル化剤又はゲル化システムを含有する。「ゲル化システム」とは、1つ以上のゲル化剤を有する1つ以上のカチオンを意味する。典型的なカチオンは、K、Na、Li、NH 、Ca++、Mg++、及びそれらの混合物である。典型的なゲル化剤(複数可)は、アルギン酸、寒天ガム、グアーガム、ロカストビーンガム(キャロブ)、カラゲナン、タラガム、アラビアガム、ガッティガム、カヤグランディフォリア(khaya grandifolia)ガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、アラビアン(アラバン)、キサンタン、ジェランガム、コンニャクマンナン、ガラクトマンナン、フノラン、及びそれらの混合物などの親水コロイドである。通常通り、ゲル化剤は、カチオン、及び封鎖剤などの他の成分と組み合わせて使用して、ゲル化システムを形成することができる。本発明で使用可能な市販のカプセルには、例えば、VCaps(登録商標)plus Color、及びPlantCaps(登録商標)としてLonza Consumer Health Inc(所在地Greenwood,South Carolina,USA)から入手可能なカプセルが含まれる。
【0038】
異なる一実施形態では、フィルム形成ポリマーに応じて、ゲル化剤又はゲル化システムは、カプセル形成水性組成物の総重量に基づいて、0.2重量%未満、及びゲル化剤又はシステムを本質的に含まないカプセル形成組成物については、典型的には0.1重量%未満、及び更にはゲル化システムを完全に含まないカプセル形成組成物については、0重量%の量で存在し得る。ゲル化剤又はゲル化システムを使用しない場合、カプセル形成水性組成物のフィルム形成ポリマーは、ゲル化剤を必要とせずにフィルムを形成することができる必要がある。
【0039】
特定の一実施形態では、平均HPMCグレード2906を含有するHPMC水性組成物は、ゲル化システムなしで強力かつ物理的に安定したゲルを得るのに好適であり、から作製されるHPMCカプセルの溶解特性は、ゲル化システム、特にカチオンに典型的に関連する欠点によって悪影響を受けることはない。このタイプのカプセルは、VCaps Plus(登録商標)としてLonza Consumer Health Inc(所在地Greenwood,South Carolina,USA)から入手可能である。
【0040】
本開示の別の実施形態では、カプセルのうちの1つは、遅延放出カプセルであり得る。遅延放出カプセルの例には、耐酸性であるか、又は腸溶性カプセルであるカプセルが含まれる。これらのカプセルは、胃内又は酸性条件下では溶解せず、カプセルの含有物が使用者の腸内に送達されることを可能にする。耐酸性は、非耐酸性カプセルを腸溶性フィルムでコーティングすることによって達成され得る。腸溶性フィルムは、pH依存性水溶性を有する周知の耐酸性材料を含む。典型的には、これらの材料は、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-AS)、アクリルコポリマー、及びシェラックなどの、カルボン酸基含有ポリマーである。これらの材料は、胃条件(従来はpH1.2によって模擬)下では水不溶性であり、腸条件(従来はpH6.8によって模擬)下では容易に水溶性である。コーティング溶液の欠点は、典型的には製造コーティングプロセスの複雑さ及び費用、その効果的な実行に必要な高度な専門知識、製造サイクルの終了時、すなわち、カプセルが既に充填された後にコーティングを実行する必要性、並びに最後に、乾燥後にカプセル表面に有毒な溶媒残留物を残し得る溶媒ベースのコーティング組成物とカプセルを接触させる必要性によって表される。
【0041】
したがって、耐酸性又は腸溶性特性を達成する他の方法が、開発されている。一態様では、耐酸性カプセルは、耐酸性薬学的硬カプセルの製造のための水性組成物から調製することができ、それは、(i)水性溶媒、(ii)ジェランガム、及び(iii)1つ以上の水溶性フィルム形成ポリマーを含み、ジェランガム対該1つ以上の水溶性フィルム形成ポリマーの重量比は、重量に基づいて4/100~15/100である(下限及び上限を含む)ことを特徴とする。
【0042】
特定の一実施形態では、本発明のカプセル形成水性組成物は、(i)水性溶媒、(ii)ジェランガム、及び(iii)1つ以上の水溶性フィルム形成ポリマーを含有し、ジェランガム対該1つ以上の水溶性フィルム形成ポリマーの重量比は、4/100~15/100である(下限及び上限を含む)。耐酸性又は腸溶性カプセル用のフィルム形成ポリマーは、上記のフィルム形成ポリマーと同じである。これらの耐酸性カプセルは、Cadeらの米国特許第8,852,631号に詳細に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
カプセル形成水性組成物中に含有される1つ以上の水溶性フィルム形成ポリマーは一般的に、最終カプセルシェルの主成分の重量で主要構成物となる。遅延放出又は腸溶性硬カプセルを調製するためのディップ成形製造プロセスにおける水溶性ポリマーの使用は、既に公知であり、多くの出版物及び特許に広く開示されている。現在使用されている水溶性フィルム形成ポリマーは、全て市販されている。
【0044】
ジェランガムは、発酵によって生成されるエキソ多糖である。本発明では、ジェランガムは、1つ以上の水溶性フィルム形成ポリマー約100重量部当たり、約4~15重量部、好ましくは約4.5~8重量部、より好ましくは約4.5~6重量部(下限及び上限を含む)の比で使用される。本発明の異なる一実施形態では、ジェランガムは、1つ以上の水溶性フィルム形成ポリマー約100重量部当たり約5又は5.5重量部の比で使用される。実験的証拠に基づいて、より少ない量のジェランガムを使用すると、最終的な硬カプセルは、pH1.2の崩壊試験下で十分な耐酸性を有しないと考えられる一方で、従来の非熱ゲル化浸漬成形技術(従来のプロセスについては、例えば、上記に報告した特許文献を参照されたい)に典型的なプロセス条件(例えば、T及び固体含有物)でのより高いジェラン含有量は、水性組成物の過剰な粘度及び過剰なゲル化能力を引き起こす可能性があり、したがって、要求される高速及び品質でのカプセルの製造が不可能になる。ジェラン対ポリマー比の好ましい値は、本発明及び加工可能性の態様によって達成される技術的効果を最適に組み合わせると考えられる。
【0045】
そのゲル化特性のために、ゼラチンとは対照的に、使用される水溶性フィルム形成ポリマーがそれ自体で満足なゲル化特性を示さない場合(例えば、HMPC又は修飾デンプン)、ジェランガムは、即時放出硬カプセルの製造に従来使用される固化システムの典型的な構成要素である。しかしながら、先行技術では、ジェランガムは、水溶性フィルム形成ポリマー(複数可)の重量に対して、典型的には非常に低い重量で使用される。例えば、典型的に用いられるジェランガムの量は、水溶性フィルム形成ポリマー(複数可)約100重量部当たり1重量部未満であり、この量は、本発明で使用される量よりも有意に低い。
【0046】
加えて、ジェランガムは、多くの場合、いわゆるゲル化助剤(典型的にはNa+、K+、又はCa2+の塩)と組み合わせて使用される。少量のジェランガムの使用、及びそのゲル化助剤との組み合わせは、主要フィルム形成ポリマーが浸漬ピン上でゲル化するようにする必要性に完全に応答し、好適な硬カプセルシェルを得るように教示されている。
【0047】
上記に示されるジェランガム対水溶性フィルム形成ポリマーの比で作業することによって、好適な硬カプセルを得ることができ、またそのようなカプセルに耐酸性を付与することができることも見出された。
【0048】
別の顕著な利点は、HPMCのように、それ自体が不良なゲル化特性を有するフィルム形成ポリマーで作業する場合でさえも、いわゆるゲル化助剤の添加が、もはや必要ではないことである。言い換えれば、ジェランガムを上記に示される重量比で使用した場合、ゲル化助剤(例えば、カチオン)を水性組成物に添加することなく、硬カプセルの製造に好適な組成物を、HPMC又はヒドロキシプロピルデンプン水性組成物から得ることができる。ゲル化助剤の添加の任意の不在は、最終的な硬カプセルシェルに充填された活性成分の安定性、及び硬カプセル溶解プロファイルに対して有利な影響を有する。本発明の水性組成物がゲル化助剤の添加を含有しないという事実は、好ましくは、ゲル化助剤、好ましくは、それが、ゲル化助剤、例えば、カチオンを、ジェランガム中に天然に存在する同じ助剤の量よりも多い量では含有しないことを意味する。別の実施形態では、本発明の水性組成物がゲル化助剤の添加を含有しないという事実は、好ましくは、それが、ゲル化助剤、例えば、カチオンを、ジェランガム中に天然に存在する同じ助剤の量よりも多くない量で含有することを意味する。そのような天然の量は、購入したジェランガムのバッチに対する通例の実験室試験によって容易に確立され得るか、又はそれは、ジェランガムの供給業者によって直接提供され得る。
【0049】
耐酸性を有する硬カプセルは、USP-30模擬胃液中、pH1.2で少なくとも1時間にわたって漏出せず、これは、耐酸性性能を確認する。
【0050】
典型的には、本発明の水性組成物中の成分(ii)及び(iii)(すなわち、1つ以上の水溶性フィルム形成ポリマーと一緒に合わせたジェラン)の合計量は、水性組成物の総重量にわたって、約10重量%~40重量%、より好ましくは約15重量%~25重量%である。フィルム形成ポリマーの適切な濃度を、使用される特定のポリマー及びフィルムの所望の機械的特性に適合させることは、ゆうに硬カプセル製造の分野の当業者の能力の範囲内である。本発明で使用可能な市販の遅延放出カプセルには、例えば、VCaps(登録商標)、DRcaps(登録商標)としてLonza Consumer Health Inc(所在地Greenwood,South Carolina,USA)から入手可能なカプセルが含まれる。
【0051】
任意で、本発明の水性組成物は、二酸化チタン、炭酸カルシウム鉄酸化物、及び他の着色剤などの、少なくとも1つの不活性、無毒の薬学的グレード又は食品グレードの顔料を含有し得る。一般的に、0.001~5.0重量%の顔料が、水性組成物に含まれ得る。重量は、水性組成物中の固体の総重量にわたって表される。
【0052】
任意で、本発明の水性組成物は、グリセリン又はプロピレングリコールなどの適切な可塑剤を含有し得る。過度の柔軟性を避けるために、可塑剤含有量は、水性組成物中の固形分の総重量にわたって、0重量%~20重量%、より好ましくは0重量%~10重量%、更により好ましくは0重量%~5重量%など、低くなくてはならない。
【0053】
任意で、本発明の水性組成物は、界面活性剤及び香料剤などの、硬カプセルの製造に典型的に使用される更なる成分を、当業者に既知であり、硬カプセルの出版物及び特許において入手可能である量で含有し得る。
【0054】
別の態様では、本発明は、上記に定義される水性組成物を使用することによって得られる耐酸性硬カプセルシェルに関する。特定の一実施形態では、シェルは、(I)水分、(II)ジェランガム、及び(III)1つ以上の水溶性フィルム形成ポリマーを含み、ジェランガム対該1つ以上の水溶性フィルム形成ポリマーの重量比は、4/100~15/100である(下限及び上限を含む)。
【0055】
好ましい一実施形態では、耐酸性硬カプセルシェルは、(I)水分、(II)ジェランガム、及び(III)1つ以上の水溶性フィルム形成ポリマーからなり、ジェランガム対該1つ以上の水溶性フィルム形成ポリマーの重量比は、4/100~15/100である(下限及び上限を含む)。耐酸性及び活性成分の遅延放出を有する例示的な市販のカプセルは、Lonza Consumer Health Inc(所在地Greenwood,South Carolina,USA)から入手可能なDRcaps(登録商標)である。
【0056】
適用可能な場合はいつでも、かつ技術的に不適合でない限り、本発明の水性組成物に関連して開示される全ての特徴及び好ましい実施形態はまた、耐酸性硬カプセルシェル及び本発明のシェルを含む、本発明の任意の他の態様に関連しても開示される。
【0057】
本発明のカプセルシェルの水分含有量は、主に、使用される1つ以上の水溶性フィルム形成ポリマー、及びシェルが生産後に貯蔵される環境の相対湿度に依存する。典型的には、水分含有量は、シェルの総重量に対して約2%~16%である。一例として、硬カプセルの貯蔵に従来採用されている条件下で、本発明の硬カプセルシェルは、使用される唯一のフィルム形成ポリマーがHPMCである場合、シェルの重量に対して約2~8重量%、好ましくは約2~6重量%、好ましくは約3~6重量%の水分、及び使用される唯一のフィルム形成ポリマーがゼラチンである場合、シェルの重量に対して10~16重量%の水分を含有する。
【0058】
別の態様では、本発明は、上記に定義されるシェルを含む、耐酸性硬カプセルに関する。
【0059】
本発明のカプセルは、本発明のシェルをカプセル化される1つ以上の物質で充填することによって得ることができる。充填後、カプセルは、例えば、硬カプセルの分野で使用される適切なバンド付け溶液を使用して、接合部を耐久性のあるものにすることによって、不正開封防止にすることができる。
【0060】
特定の一実施形態では、上記に定義される本発明の硬カプセルシェルは、1つ以上の酸不安定物質、並びに/又はヒト及び/若しくは動物における胃の副作用に関連する1つ以上の物質で充填される。
【0061】
別の態様では、本発明は、耐酸性薬学的硬カプセルシェルの製造のための浸漬成形プロセスに関し、該プロセスは、
(a)上記に定義される水性組成物にピンを浸漬するステップと、
(b)浸漬ピンを水性組成物から引き抜くステップと、
(c)浸漬ピンに付着した組成物を乾燥させて、シェルを得るステップと、を含み、
ステップ(a)~(c)は、それらが提示される順序で実行される。
【0062】
乾燥ステップ(c)の後、得られたシェルをピンから剥がし、所望の長さに切断してもよい。この様式で、カプセルシェルパーティ(本体及びキャップ)が得られ、その後、それは、最終的な空のカプセルを形成するように伸縮式に接合され得る。液体物質で充填される場合、かつ所望される場合、充填後に、カプセルは、米国特許第9,579,290号、及び同第9,980,918、及び米国特許出願第2020/0163893号(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるものを含む、バンド付け又は密封技術などの分野で既知の適切な技術によって不正開封防止にすることができる。
【0063】
最初に図1を参照すると、1で一般的に示される二重カプセル送達デバイスは、液体活性成分3を含有する第1の外側硬カプセル2と、第2の内側硬カプセル4とを含み、第2の内側硬カプセル4はまた、外側硬カプセル2に含有されるものと同じ液体活性成分5を含有し、6で示されるようにコーティングされ得る。
【0064】
同様に、図2は、11で一般的に示される三重カプセル送達デバイスを示し、これは、液体活性成分13を含有する第1の外側硬カプセル12と、第2の内側硬カプセル14とを含み、第2の内側硬カプセル14はまた、外側硬カプセル12に含有されるものと同じ液体活性成分15を含有し、18で示されるようにコーティングされ得る。第2の内側硬カプセル14はまた、第3の内側硬カプセル16も含有し、これは転じて、第1の外側硬カプセル12及び第2の内側硬カプセル14に含有されるものと同じであるが、固体粒子形態である、活性成分を含有する。第2の内側硬カプセル14はまた、19で示されるように、コーティングされ得る。カプセル12、14、及び16は、互いに直列である。
【0065】
ここで図3を参照すると、21で一般的に示される多重カプセル送達デバイスは、液体活性成分23を含有する第1の外側硬カプセル22と、4つの内側硬カプセル24とを含み、4つの内側硬カプセル24は、第1の外側カプセル22に含有されるものと同じであるが、半固体形態である、活性成分25を含有する。4つの内側カプセル24は、互いに平行であるが、外側カプセル22と直列である。
【0066】
哺乳動物に効果的に送達され得る例示的な活性物質には、栄養補助食品、医薬品、プロバイオティクス、及びそれらの組み合わせが含まれる。本開示は、摂取時にプロバイオティクスが胃を通過して生存することを可能にする上で非常に効果的である。
【0067】
カプセルインカプセル構成を使用して、治療を必要とする哺乳動物の腸下部に活性物質を送達することができることが示されている。耐酸性カプセル単独と比較して、外側カプセルが、ゲル化剤を有するHPMC、熱ゲル化HPMC、又はゼラチン若しくは耐酸性カプセルであるかどうかにかかわらず、外側カプセルの中に耐酸性内側カプセルを使用することが発見された。熱ゲル化外側カプセル及び耐酸性内側カプセルにおいて、腸、及び特に腸下部に送達される活性成分の量が、10倍、20倍、又はそれ以上増加し得ることが示されている。耐酸性の内側カプセル及び外側カプセルの場合、哺乳動物が絶食状態にあるか給餌状態にあるかにかかわらず、活性成分の放出量は、単一の耐酸性カプセルよりも20~50倍以上多くあり得る。
【0068】
本開示の利点は、活性物質の哺乳動物への送達並びに利点の提供に使用される送達システムであり、これらの利益は、高発酵及び結果として機能的プロバイオティクスを示す乳酸産生の有意な増加を可能にすること、給餌条件下でのプロピオン酸の有意な減少、プロピオン酸産生細菌の減少を示唆すること、酪酸産生細菌の増加を示す絶食条件下での酪酸産生の増加、並びに腸内のマイクロバイオーム多様性の変化を示唆する機能的変化を提供することなどである。本明細書に示唆されるカプセルの組み合わせを使用して、放出活性物質を使用者の腸に標的化することができ、哺乳動物に活性物質の生物学的利用能の増加を提供することができる。
【0069】
それにもかかわらず、本開示の特定の実施形態は、以下の実施例に従ってよりよく理解され得、これらの実施例は、本質的に非限定的かつ例示的であることが意図される。
【実施例
【0070】
実施例1
試験手順
これらの実施例で使用される全ての試薬は、別様に記載される、Sigma(Overijse,Belgium)によって提供された。
【0071】
カプセルシステムの組成
この実施例では、7つのタイプのカプセルインカプセルシステム及び3つの単一カプセルを評価した(表1)。カプセルインカプセルの構成は、以下のような外側カプセル(サイズ番号00)及び内側カプセル(サイズ番号3)の組み合わせであった。
【0072】
カプセルに、放出マーカーとしてのカフェイン(50mg/カプセル)、及び表1に示す2×1010CFU/カプセルの濃度のプロバイオティクス株(L.acidophilus ATCC-43121、LGC Standards)を充填した。
【表1】
【0073】
カプセル構成の試験
カプセル構成の試験を、2相で完了させた。第1相は、上部GIT模擬実験であった。完了時に、試験の第2相を完了させた。
【0074】
上部GIT模擬実験を、胃及び小腸消化条件を模擬する2つの連続した二重ジャケット反応器内で実行した。温度を37℃に維持し、実験中、連続磁気撹拌(300rpm)を適用した。カプセル溶解試験のために、カプセルを、特別設計のシンカーを用いて、胃及び小腸反応器内に維持した。
【0075】
給餌(すなわち、食事中又は食事直後の製品の消費)及び絶食(すなわち、食事前の製品の消費)条件を模倣するために、pHプロファイル、酵素レベル、及び保持時間を調整した。図4には、給餌(A)及び絶食(B)条件下での実験中のpHプロファイルを示す。培地のpHは、自動的に制御した。矢印は、胃の開始及び終了(ST0、ST終了)並びに小腸インキュベーション相を示す。差異を図4A及び図4Bに示し、図4Aは、給餌条件のpHプロファイルを示し、図4Bは、絶食条件のpHプロファイルを示す。示されるように、給餌(A)及び絶食(B)条件下での実験中のpHプロファイルは、異なる。ST=胃、SI=小腸。培地のpHは、自動的に制御した。矢印は、胃の開始(ST0)及び終了(ST終了)、並びに小腸インキュベーション相(開始SI、終了十二指腸、終了空腸、及び終了回腸)を示す。
【0076】
絶食条件下で、胃消化を、0.66g/LのKCl、3.63g/LのNaCl、及び3.95g/Lのムチン、0.4mLのレシチン(Carl Roth GmbH+Co.KG、Germany)(3.4g/L)、及び3.6mLのペプシン(Chem Lab、Zedelgem,Belgium)(10g/L)を含有する胃液(76mL、pH2)中での45分間のインキュベーションで模擬した。Senseline pH meter F410(ProSense、Oosterhout,The Netherlands)及びHCl(0.5M)又はNaOH(0.5M)の自動ポンプ投薬量によって、連続pH制御を実行して、pHを2で一定に保った。胃インキュベーション後、胃の消化量を測定し、MilliQ水で100mLに調整した。カプセルシンカー及び胃液を小腸反応器に移し、35.2mLの膵液(2.6g/LのNaHCO3、4.8g/Lの雄ウシ胆汁、及び1.9g/Lのパンクレアチン)、2.15mLのトリプシン(10g/L)、並びに2.7mLのキモトリプシン(10g/L)を添加した。小腸pHを2から6.5に徐々に増加させ、このpHで27分間にわたって維持し、十二指腸インキュベーションを模擬した。この相に続いて、63分間以内にpHを段階的に(7分ごとに0.1pH単位)7.5まで増加させ、空腸環境を模倣した。最後に、90分間の回腸インキュベーション中、pHは、7.5で一定のままであった。60、90、及び120分でのNaHCO3(8.4g/L)の添加によって、pHの増加を達成し、腸含有物の希釈を模倣した。
【0077】
給餌条件下では、以下の修正を伴う以外、絶食条件と同様の方法で試験を実施した。胃消化を、SHIME(登録商標)栄養培地(20.53g/LのPDNM001B、ProDigest、Ghent,Belgium)、NaCl(3.63g/L)、KCl(0.65g/L)、0.4mLのレシチン(13.5g/L)、及び3.6mLのペプシン(40g/L)をpH4.6で含有する76mLの胃液溶液中での、120分間のインキュベーションで模擬した。給餌胃消化中に、確立された時点でのHCl(0.5M)の制御されたポンピングによって、4.6から2へのpHのS字形の減少を得た。胃インキュベーション後、小腸相を前述のように実行したが、膵液(7.7g/LのNaHCO3、15g/Lの雄ウシ胆汁、及び10g/Lのパンクレアチン)、2.15mLのトリプシン(10g/L)、2.7mLのキモトリプシン(10g/L)の異なる組成であった。60、90、及び120分でのNaHCO3(4.8g/L)の添加によって、pHの増加を達成した。
【0078】
カフェイン又はL.acidophilusを有しないブランク対照カプセルを、カフェインHPLC分析のバックグラウンド培地として全てのアッセイに含めた。陰性対照は、カプセルなしで単独で使用されるL.acidophilus及びカフェインからなった。全てのアッセイを三連で実行した。
【0079】
全胃腸管模擬実験及び結腸発酵
試験の第2相において、GIT試験全体を完了させた。上記の給餌及び絶食条件下での上部GITインキュベーションに続いて、160mLの新鮮な結腸嫌気性培地[KH2PO4(6.6g/L)、K2HPO4(20.5g/L)、NaCl(5g/L)、酵母抽出物(2g/L)、ペプトン(2g/L)、グルコース(1g/L)、デンプン(2g/L)、ムチン(1g/L)、L-システインHCl(0.5g/L)、Tween(登録商標)80(2mL)]、40mLの嫌気性PBS[K2HPO4(8.8g/L)、KH2PO4(6.4g/L)、NaCl(8.5g/L)、及びL-システインHCl(0.5g/L)]を添加することによって、結腸インキュベーションを模擬した。6.5~5.8の固定pH間隔を実行し、HCl(0.5M)又はNaOH(0.5M)を添加することによって自動的に調整した。次に、以前に記載したように、健康なドナーに由来する糞便接種材料を使用して、結腸インキュベーションを接種した。
【0080】
簡潔には、1:10(w/v)の糞便試料及び嫌気性リン酸緩衝液(8.8g/LのK2HPO4;6.8g/LのKH2PO4;0.1g/Lのチオグリコール酸ナトリウム;0.015g/Lの亜ジチオン酸ナトリウム)の混合物を、10分間均質化した(BagMixer 400、Interscience、Louvain-La-Neuve,Belgium)。遠心分離(2分間、500g)(遠心分離器5417C、Eppendorf,VWR、Belgium)後、大きな粒子を除去し、糞便接種材料を、20%(v/v)で異なる反応器の上部GIT消化液に添加した。結腸インキュベーションを、37℃の嫌気条件及び90rpmの撹拌下で、24時間にわたって実行した(MaxQ 4000 Benchtop Orbital Shaker、Thermo Fisher Scientific、Belgium)。
【0081】
カフェイン放出の定量化
Kinetex(登録商標)C18 LCカラム(シリアル番号00D-4601-E0、5μm、100Å、LCカラム100×4.6mm、コアシェル型シリカの固体支持体)(Phenomenex、Belgium)上で、均一濃度分離法(25%のメタノール:75%の水)を使用して、HPLC-UV/Vis(Hitachi Chromaster HPLC-DAD、Hitachi High-Tech Corporation、Japan)によって、カフェインを定量化した。カラム温度を25±0.1℃に制御して保った。試料当たりの合計実行時間は、7分間であった。注入体積は、10μLであり、UV/Vis検出器は、272nmで運用した。カフェインの定量化は、外部標準(Sigma-Aldrich,Merck KGaA、Darmstadt,Germany)を使用して実行した。カラム上への注入前に、試料を5000gで15分間遠心分離した。続いて、上清を、0.2μmのフィルターを通してHPLCバイアル中に濾過した。15、30、及び45分(給餌及び絶食)並びに60、90、及び120分(給餌)で、胃試料に対してカフェイン分析を実行した。30、60、90、120、150、及び180分で、小腸試料を収集した。インキュベーションの1、2、及び24時間で、結腸試料を得た。
【0082】
PMAベースのqPCRによるL.acidophilusの生存
プロピジウムモノアジド(PMA)ベースのqPCRによって、細菌生存を試験した。この手順のために、嫌気性リン酸緩衝液中の1:1(v/v)希釈の試料を、1.25μLのPMAxx(商標)染料(20mM)(VWR International Europe、Leuven,Belgium)と混合した。試料を、定常振盪(500rpm)中、暗所で5分間インキュベートし、最大速度(18.327g)で30秒間遠心分離した。その後、試料を、LED-active Blue system(GenIUL、Barcelona,Spain)であるPhAST blue PhotActivation System(GenIUL、Barcelona,Spain)内に15分間置き、13.000gで10分間遠心分離した。上清を直ちに除去し、DNAを前述のように単離した。(Van den Abbeele,Kamil et al.2018)に以前に記載されたプログラム条件を有するQuantStudio 5 Real-Time PCR system(Applied Biosystems、Foster City,CA,USA)を使用して、Lactobacillus acidophilus[L.acid_F(5’-GAAAGAGCCCAAACCAAGTGATT-3’)及びL.acid_R(5’-CTTCCCAGATAATTCAACTATCGC-3’)]に特異的なプライマーを用いて、qPCRを実行した。胃インキュベーションの終了時(絶食条件で45分及び給餌条件で120分)、小腸消化の60分、120分、及び180分、並びに結腸発酵の1、2、及び24時間で、L.acidophilusの生存を試験した。
【0083】
L.acidophilusの培養可能性
全胃腸管通過中に得た試料中、L.acidophilusの培養可能性をMRS寒天プレートを通して試験した。胃の終了時(絶食で45分及び給餌で120分)並びに小腸相(180分)で試料を収集し、嫌気性リン酸緩衝生理食塩水中の一連の10倍希釈を、MRS寒天プレートにプレーティングした。プレートを、37℃で少なくとも48時間にわたって好気的にインキュベートした。コロニー形成単位(CFU)の数を、平均対数(CFU)±SEM(n=3)として報告する。
【0084】
結腸条件下でのL.acidophilusの機能及び腸細菌叢の代謝活性の評価
24時間の結腸インキュベーションの間に、微生物活性評価のために、0、1、2、及び24時間時点の試料を得た。Senseline pH meter F410(ProSense、Oosterhout,The Netherlands)を使用して、pH測定を実行した。短鎖脂肪酸(SCFA)(酢酸、プロピオン酸、及び酪酸)並びに分岐鎖脂肪酸(BCFA)(イソ酪酸、イソ吉草酸、及びイソカプロン酸)を、以前に記載(Ghyselinck,Verstrepen et al.2020)されるように、ガスクロマトグラフィーによって決定した。乳酸産生を、製造業者の指示に従って、キット(R-Biopharm、Darmstadt,Germany)で評価した。
【0085】
統計的方法
三連からの平均及び標準誤差(SEM)について、結果を提示する。多重比較のために、t-チューキー検定を用いて、時間及び異なる条件を含む双方向ANOVA検定を適用した。統計的差異を、p<0.05として設定した。GraphPad Prism software,version 9.0(GraphPad Software、CA,USA)を使用して、分析を実行した。
【0086】
結果
給餌又は絶食条件下での上部胃腸管通過中のカプセル放出挙動の特徴付け
【0087】
研究の第1部では、表1に示す10個のカプセル構成を、絶食及び給餌条件下で上部GIT模擬実験に通過させた。カフェインを活性マーカーとして使用して、胃及び小腸消化様環境中の異なる時点でのカプセル溶解を評価した。
【0088】
図5は、上記の絶食条件中に放出されるカフェインに対するカプセル構成の効果を示す。図5の左パネル、左パネルは、胃内のカフェイン放出を示す。15分間の胃消化後、比較試料C3(19.7±1.3mg)から、並びにより少ない程度で比較試料C2(0.7±0.3mg)及び比較試料C1(0.2±0.04mg)中で、カフェインの放出があった。30分間のインキュベーション後、遊離カフェインは、比較試料C3について急速に増加(40.8±2.6mg)し、より少ない程度で比較試料C2(5.7±1.4mg)、比較試料C1(0.7±0.1mg)中で増加した。試料E(0.5±0.1mg)、試料A(0.1±0.003mg)、及び試料G(0.1±0.02mg)。胃インキュベーション(45分間)の終了時、比較試料C3は、最も高いカフェイン放出(41.9±2.8mg)を有し、これは、カプセルの完全な溶解を示した。他のカプセルは、部分的なカフェイン放出を示し、値は、比較試料2で11.3±2.2mg、試料Eで2.9±1.5mg、及び比較試料1で1.5±0.3mgであった。最後に、カプセルの高い完全性を示す低いカフェイン放出値(0.1~0.2mg)が、試料G、試料F、試料A、試料D、試料C、及び試料Bについて見出された。
【0089】
図5の右パネルは、上記の模擬消化条件下での腸内のカフェイン放出を示す。十二指腸インキュベーションの終了時、比較試料C2(36.4±3.9mg)及び試料E(27.0±9.8mg)についてカフェイン放出の大きな増加があり、比較試料C1(6.5±1.5mg)、試料D(5.8±1.4mg)、試料B(3.8±0.6mg)、試料G(1.7±0.5mg)、試料F(1.0±0.1mg)、及び試料A(0.5±0.2mg)について小さいが一定のカフェイン放出があった。試料Cカプセルは、無傷のままであった(0.2±0.1mg)が、比較試料C3からのカフェインは、胃インキュベーション中に既に放出されていた。60分間の小腸インキュベーション後、試料D(42.6±4.8mg)及び試料E(36.5±3.0mg)についてカフェイン放出の大きな増加があり、これは、空腸相の途中でのカプセルの完全な溶解を示した。比較試料C2もまた、完全に崩壊した(41.8±2.3mg)。試料G(18.5±13mg)、試料B(14.3±1.2mg)、比較試料C1(12.7±1.7mg)、及び試料F(3.8±0.1mg)、及び試料A(2.5±0.9mg)について、緩やかだが一定の放出が継続した。カフェインの最初の放出は、空腸インキュベーションにおいて試料Cで検出された(0.9±0.2mg)。回腸相の開始時、90分間の小腸インキュベーション後、試料B(38.2±4.6mg)及び試料G(31.1±9.8mg)についてカフェイン放出の大きな増加があり、比較試料C1(20.1±3.4mg)、試料A(8.8±3.8mg)、試料F(8.8±0.1mg)、試料C(30.1±0.7mg)について値はより穏やかであった。更に回腸相では、120分間の小腸インキュベーション後、試料B及び試料Gは、完全に溶解した。試料Aカプセルについて、カフェイン放出の大きな増加(31.6±6.6mg)が観察された。他のカプセル、すなわち、比較試料C1(26.2±4.7mg)、試料F(21.4±0.6mg)、及び試料C(7±1.7mg)は、小腸相の終了時まで、低く連続的なカフェイン放出を伴って、依然として高い完全性を示した。インキュベーションの終了時に部分的に溶解したカプセルは、試料C(24.2±6.8mg)であった一方、試料F(46.3±4.2mg)、試料A(41.5±0.4mg)、及び比較試料C1(36.7±6.5mg)は、完全に溶解した。
【0090】
図6は、上記の給餌条件中に放出されるカフェインに対するカプセル構成の効果を示す。図6の左パネルは、給餌条件下での胃内のカフェイン放出の結果を示す。給餌インキュベーション中(図6、左パネル)、及び15分間の胃消化後、比較試料C3(19.5±7.6mg)及び比較試料C2(2.4±1.4mg)ではカフェインが検出されたが、30分間の胃消化後、試料E、比較試料C1、試料A、試料D、試料F、及び試料Gについては少量のみのカフェイン放出(0.1~0.9mg)が発生した。比較試料C2(32.2±3.3mg)及び比較試料C3(35.3±2.5mg)については、高いカフェインの増加が観察された。45分後、比較試料C3カプセルは、溶解した。比較試料C2カプセルは、35.4±2.3mgを放出した。他のカプセル、試料E(1.3±0.7mg)、比較試料C1(1.3±0.1mg)、試料A(0.5±0.1mg)、試料D(0.4±0.1mg)、試料F(0.2±0.01mg)、及び試料G(0.2±0.1mg)は、穏やかだが一定の放出を示し、試料B及び試料Cは、カフェイン放出の最初の徴候(0.1±0.003mg)を示した。
【0091】
胃インキュベーションの途中(60分)、比較試料C2カプセルは、完全に溶解する。以下のカプセルについては、穏やかだが一定の放出が継続した。試料D(5.2±2.3mg)、試料E(4.3±1.0mg)、試料A(1.9±0.1mg)、比較試料C1(2.3±0.4mg)、試料B(0.5±0.1mg)、試料G(0.5±0.2mg)、試料F(0.4±0.1mg)、及び試料C(0.3±0.2mg)。90分間の胃インキュベーション後、試料Dではカフェイン放出の大きな増加(39.8±0.1mg)が発生し(これは、カプセルの完全な溶解を示す)、より少ない程度で試料E(20.1±2.1mg)及び試料A(11.7±3.5mg)中で発生した。比較試料C1(5.6±1.1mg)、試料B(2.8±0.6mg)、試料G(2.1±0.8mg)、試料F(1.7±0.5mg)、及び試料C(0.2±0.01mg)について、穏やかだが一定の放出が継続した。胃インキュベーションの終了時、試料Eカプセルは、完全に溶解した。他のカプセルは、部分的に溶解した。試料A(20.6±3.6mg)、比較試料C1(9.5±2.1mg)、試料B(6.2±1.0mg)、試料G(5.8±1.5mg)、試料F(4.7±1.4mg)、及び試料C(0.7±0.04mg)。
【0092】
図6の右パネルは、給餌条件下での小腸内のカフェイン放出の結果を示す。小腸インキュベーションは、以下の4つの完全に溶解したカプセル、比較試料C3、試料D、試料E、及び試料Bで開始した。十二指腸インキュベーション後、試料Aカプセルもまた、完全に溶解した(41.4±0.7mg)。試料G(23.7±7.3mg)、試料F(22.4±4.8mg)、比較試料C1(14.5±3.1mg)、試料B(12.3±1.9mg)、及び試料C(5.5±0.1mg)について、小腸内で穏やかなカフェイン放出が継続した。空腸相(60分間の小腸消化)では、試料G(37.1±5.0mg)及び試料F(35.7±5.9mg)のカフェイン放出は完了した一方で、比較試料C1(18.8±3.1mg)、試料B(17.7±3.9mg)、及び試料C(6.3±3.8mg)は、消化培地に対するより高い完全性及びより低いカフェイン放出を示した。回腸相(90分間の小腸消化)では、試料G及び試料Fは、完全に溶解した。回腸相の開始時、試料Bのカフェイン放出の大きな増加(37.4±7.8mg)があり、これは、カプセルの完全な溶解を示した。比較試料1(22.8±3.1mg)及び試料C(15.8±3.2mg)は、120分間の小腸インキュベーションまで穏やかなカフェイン放出を継続し、その時点で、試料C中に含有された全てのカフェインが消化液中に存在し(44.5±2.0mg)、これは、カプセルの完全な崩壊を示した。小腸インキュベーションの終了時に32.7±2.5mgのカフェインが最終的に放出されるまで、更なるインキュベーション全体を通して、比較試料C1のみが、それらの穏やかで一定のカフェイン放出を継続した。第1相の研究の所見に基づいて、試料B、試料C、及び比較Samを用いて第2相の研究を完了させた。
【0093】
胃及び小腸様環境消化中の試料C及び試料BによるL.acidophilusの保護は、結腸レベルでのプロバイオティクスの生存を促進する。
【0094】
第2相の研究では、3つのカプセル構成(試料C、試料B、及び比較試料C3)を、第1部の試験におけるそれらの遅延放出に基づいて選択して、絶食又は給餌条件下での完全な胃腸管内のそれらの挙動を評価した。結腸生態系におけるL.acidophilusの生存及びその調節効果を、更に試験した。比較試料C3を選択したのは、これが最も即時放出のカプセルであり、対照として使用することができるためであった。試料Cを選択したのは、これが絶食及び給餌条件下で上部GI部におけるカフェインの最も遅延した放出を伴うカプセルインカプセル構成であるためであった。第3のカプセル、試料Bは、給餌条件下で第2の最も遅延したカプセルインカプセル構成として選択した。
【0095】
カプセル構成がカフェインの放出及びプロバイオティクスの生存に及ぼす効果を、図7に示す。図7A及び図7Cは、胃、小腸、及び結腸消化中のカフェイン放出の時間経過を示す。図7Aは、絶食条件であり、図7Cは、給餌条件である。点は、選択された時点での対応する消化又は発酵培地中のカフェイン含有量を表す(平均±標準誤差、n=3)。図7B及び図7Dは、胃、小腸、及び結腸消化におけるLactobacillus acidophilusの生存の時間経過を示す。図7Bは、絶食条件であり、図7Dは、給餌条件である。点は、選択された時点での対応する消化又は発酵培地中のPMA処理試料のコピー/mLを対数単位で表す(平均±標準誤差、n=3)。
【0096】
以前に観察されたように、絶食条件では、カフェイン放出は、比較試料C3で、二重構成よりも有意に速く(図7A)、これは、結腸環境に到達する前のカプセルの崩壊を示した。小腸インキュベーション時間の終了時、試料Cは、部分的に溶解し、1時間の結腸インキュベーション後にカプセルが完全に溶解した。
【0097】
胃インキュベーションの終了時、L.acidophilusのPMA-DNAコピー(図7B)は、試料B(対数5.2±0.1コピー/mL)及び試料C(対数5.0±0.2コピー/mL)の両方で類似していたが、比較試料C3では、より高いPMA-DNA(対数7.94コピー/mL)が検出され、これは、プロバイオティクス株の消化液へのより高い放出に起因する可能性が高い。しかしながら、60分間の小腸インキュベーション後、この数は、対数6.2±0.3コピー/mLまで低減した一方で、他のカプセルについては、PMA-DNAコピーは、類似した値内に留まった。120分間の小腸インキュベーション後、L.acidophilusのPMA-DNAコピーは、試料Bでは対数8.8±0.7コピー/mL及び試料Cでは対数7.4±1.2コピー/mLであり、これは、小腸条件の終了時までの株の高い生存を示した。
【0098】
胃及び腸通過後の寒天プレート上でのその成長に基づく、L.acidophilusの生存を、図8に提示する。図8は、絶食(A)及び給餌(B)条件下での胃及び小腸の模擬消化後のL.acidophilus株の培養可能性に対するカプセル構成の効果を示す。棒は、異なるカプセル構成に曝露した胃及び小腸消化液からのプレート計数によって得た、対数単位(平均±標準誤差、n=3)でのCFUを表す。製品は、異なるカプセル中に接種した最大L.acidophilus CFUを指す。有意差は、アスタリスク(p<0.05*、p<0.01**、p<0.001***、p<0.0001***)で標識する。試料C及び試料BからのL.acidophilusは、それが小腸環境において絶食条件下で比較試料C3に含まれるときよりも有意に高い成長を示したが、給餌状態では、差異は、120分後に胃相で観察され、試料C及び試料B中のコロニー形成単位(CFU)は、比較試料C3中よりも穏やかであった。これは、胃培地での比較試料C3からのカプセル含有物のより高い放出によって引き起こされる可能性が高い。
【0099】
模擬結腸環境では、3つのカプセルを介した微生物活性に対するプロバイオティクス投与の効果を、異なる時点で測定した(図9)。一般に、絶食条件下で観察された効果は、給餌条件下よりも少なかった。酪酸は、最も影響を受けた代謝産物であった。
【0100】
絶食条件下では、試料Bと比較試料C3との間に、唯一の有意差が観察された(図9)。特に、試料C(6.0±0.3mM)及び試料B(5.6±0.3mM)中にL.acidophilus補充を含めた場合、対照試料C3(3.4±0.1mM)と比較して、酪酸が増加した。アンモニウムレベルは、試料B(143.8±1.7mg/L)と比較して、比較試料C3(156.1±6.1mg/L)でわずかに増加したが、BCFAは、反対の傾向を示し、試料C及び試料B(0.48~0.5mM)と比較して、比較試料C3(0.3±0.01mM)中で有意に減少した。
【0101】
給餌条件下では、試料C及び試料BではpH減少がより高かった(-0.6±0.01Δ24~0h)が、乳酸レベルは、両方の二重構成で有意に増加した(1.3~2.8mM)。特に、酢酸及びプロピオン酸は、他の条件(酢酸=38.2~42.5mM、プロピオン酸=8~9.1mM)と比較して、試料C(酢酸=35.0±0.8mM、プロピオン酸=7.4±0.01)中で低減した。対照的に、最も高い酪酸レベルは、試料Bの反応器(6.6±0.3mM)中で検出され、アンモニウム(108.8±4.2mg/L)について反対の効果が観察された。給餌条件下では、異なるカプセル間で分岐鎖脂肪酸産生に有意差はなかった。
【0102】
結果の考察
薬学的に活性な化合物、栄養サプリメント、又はプロバイオティクスの標的化した送達は、製品性能、並びにプロバイオティクス生存可能性及びその機能(コロニー形成及びマイクロバイオーム調節を含む)の提供に不可欠である。
【0103】
最も一般的なカプセル材料は、その利便性、低価格、非毒性、体温での生体液中の溶解性、及びゲル化特徴のために、ゼラチンであった。しかしながら、ゼラチンについては、アルデヒド基、糖、金属イオン、可塑剤、又は防腐剤に対する反応性などのいくつかの欠点が記載されている。加えて、高い環境湿度、依存性温度放出、及び動物(ブタ)起源による水分変化は、全てゼラチンの欠点である。HPMCは、植物ベースの材料であり、賦形剤との交差反応性が低く、幅広い温度及び湿気条件で安定しており、かつヒトによる消費のための安全性が証明されているため、それは、ゼラチンベースのカプセルに取って代わるための複数の基準を満たしている。
【0104】
この研究の目的は、カフェインの生物学的利用能及びプロバイオティクスの生存をマーカーとして使用して、カプセルインカプセル構成における異なるHPMCベースのカプセルの組み合わせの放出及び崩壊特徴を評価することであった。SHIMEモデルを使用して、全長胃腸管条件を模擬している。我々は、比較試料C1を含む組み合わせが、給餌及び絶食の両方の条件下で、胃及び小腸内でカフェイン放出の遅延を示し、結腸レベルでのプロバイオティクスの生存率及び性能に有意な増加を与えることを見出した。
【0105】
ゲル化剤の性質及び濃度は、放出挙動を決定する。我々の研究では、絶食及び給餌の胃環境の終了時、単一の比較試料C2カプセルではカフェイン放出が完了した一方で、比較試料C1ではそのプロファイルが低かったことが示された。比較試料C2及び比較試料C1はともに、比較試料C2と比較して、比較試料C1に組み込んだゲル化剤(ジェランガム)を用いて、HPMCから製造される。4未満のpHでのジェラン不溶性、及びゲル化によるHPMCフィルムの物理的特性の変化は、胃通過中の機械的応力に対する耐性を増加させ、比較試料C1の遅延放出挙動の原因となる可能性がある。ゲル化剤としてカラゲナンを含有するHPMCカプセルは、ゼラチンカプセルと同様に、絶食条件下、インビボで速い崩壊プロファイルを示した(7~9分後に完全放出)ことが他の場所で報告されている。加えて、セルロースフィルムのより低い機械的強度のため、ゲル化添加剤はまた、カプセルシェルHPMC製造にも必要である。カラゲナン及び塩化カリウムは、HPMCゲル化において効果的であることが証明されているが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はクエン酸ナトリウムと組み合わせたジェランガムが、HPMCカプセル製造において使用されている。
【0106】
小腸相では、絶食条件下では試料Cについて、及び給餌条件下では比較試料C1について、最も高い遅延カフェイン放出が観察されたが、いずれも、小腸の末端部であっても全てのカフェインの送達を達成しなかった。この観察は、試料Cを使用して、それらの作用部位で生存可能なプロバイオティクスの結腸を標的とした送達することができることを示唆している。貯蔵又は投与とともにプロバイオティクスの生存率は、その有効性の重要な要因である。したがって、経口投与されたプロバイオティクスの生存は、それらの性能のために必要である。
【0107】
比較試料C1からのカフェイン放出は、給餌及び絶食条件下の両方で直線的な傾向(R2>0.9)に続き、これは、時間的に持続した定常状態送達を示唆し、これもまた、腸内でのプロバイオティクスの生着にも有益であり得る。SCFAプロファイルの変化は、細菌叢からの他の細菌が外因性L.acidophilusの導入によって影響を受けることを示唆し、これは、この結腸への標的送達がマイクロバイオームの調節を可能にしたことを示している。特に、観察された乳酸の増加は、L.acidophilusによるコロニー形成を示唆している。複雑な生態系に導入された十分な質量の生存可能な「生着菌」微生物は、他の共生生物と競合することができるため、マイクロバイオームの多様性を調節する。このプロセスは、侵襲の成功は、治療の細胞数(又は用量)及びそれらが適用される頻度に関連する、生態系に入るのに十分な数の個体を必要とするという、増殖圧仮説として既知である。共生微生物の事前に確立された微小環境のレジリエンスのために、プロバイオティクス株は、ヒト腸生態系には容易に生着しない。しかしながら、例えば、抗生物質摂取後の腸内菌共生バランス失調条件下では、プロバイオティクス微生物がコロニー形成し、腸の恒常性を回復させる潜在的な利点を、カプセルインカプセル構成を使用する標的化した結腸送達によって改善させることができる。実際、インビボでの以前の研究は、カプセルインカプセル構成の耐酸性カプセルが、絶食条件下で低pH胃環境に耐性があることを示した。同じ著者らは、胃排出時間における高い個体間可変性を報告しており、これは、崩壊時間及び生成物放出に有意に影響を及ぼす可能性がある。胃腸プロセスの複雑な性質及び個体間可変性のために、インビトロ試験とは異なり得るインビボ条件にもかかわらず、胃腸消化を模擬する異なるインビトロモデルが、絶食及び給餌条件下でのヒト生理学を模倣するために開発されている。生理学的な胃及び腸のpH及び胆汁塩濃度は、消化プロセス中に徐々に変化を受け、これは、酸及び消化液を一定に添加することによって本研究で再現されており、異なるpH、保持時間、及び胆汁塩濃度で、以前に開発された静的設定(十二指腸、空腸、及び回腸期を含む)を改善し、インビトロシステムをヒトにおける胃腸消化により近づけた。
【0108】
カフェイン放出の変化は、特に絶食条件下で、L.acidophilusの生存率の差異を伴った。その作用部位でのL.acidophilusの機能を更に評価するために、我々は、プロバイオティクス生存率のこれらの変化が、結腸条件下での腸の微生物調節に対して効果を有するかどうかを評価した。3つの選択されたカプセルについて、胃腸消化を模擬結腸発酵で継続した。結腸環境における生存可能なL.acidophilusの検出は、試料C又は試料B中に投与したときに有意により高かった。乳酸減少によって示唆されるように、比較試料C3を陰性対照として使用した。加えて、試料C及び試料Bはまた、結果として得られる酢酸及びプロピオン酸の減少並びに酪酸の増加に基づいて、微生物の結腸組成及び多様性に影響を及ぼした。L.acidophilusの保護は、潜在的に、細菌叢中の他の細菌に基質として乳酸を提供することによって、より高い結腸培地の酸性化及び乳酸産生を誘導した可能性がある(交差供給相互作用)。プロバイオティクスLactobacillus菌種は、非消化性繊維を発酵させて、乳酸産生を可能にすることができ、これは、その後、酪酸産生細菌によって基質として使用されることが以前に記載されている。酪酸は、免疫調節、腸の運動性、及び上皮障壁機能を含む、腸の恒常性の維持に重要な役割を果たす微生物代謝産物である。酪酸の増加は、酪酸産生細菌の増加を反映し得る。酢酸及びプロピオン酸の減少は、SCFA産生細菌の減少を反映し得る。
【0109】
低い胃pH及び高い胆汁酸濃度は、プロバイオティクスの生存率を低減する主な要因である。したがって、結腸送達を標的とする比較試料C1又は試料Bなどの遅延放出製剤は、インビトロで本研究で観察されるように、腸の微生物の多様性及び組成の調節におけるプロバイオティクス性能を改善することができ、これは、様々な健康上の利益をもたらす。他方では、比較試料C3からの速いカフェイン放出は、この製剤を標的化した胃放出に使用することができることを示唆し得る。
【0110】
実施例2
MRI試験
カプセル製剤中の様々なカプセルを、有効性について試験した。カプセル及び構成を表2に示す
【表2】
【0111】
カプセルを粉末混合物で充填した。カプセルの充填に使用される粉末混合物は、カプセルの崩壊挙動に影響を与えないことが既知である一般的な賦形剤で構成される。単一カプセル(研究群I、II、及びVII)について、充填混合物は、5%の黒色酸化鉄、12%のクロスカルメロース、10%の13C3標識カフェイン(=25mg)、並びに標準カプセル充填粉末(99.5%のマンニトール及び0.5%の二酸化ケイ素)からなる。
【0112】
カプセルインカプセル構成(群III~VI及びVIII~X)は、同様の混合物で充填したが、内側カプセルがより小さいため、カフェインの量は、パーセンテージベースでより多かった。送達形態のカフェイン含有量は、各カプセル中で25mgで一定であることを決定した。内側カプセル混合物もまた、5%の黒色酸化鉄、12%のクロスカルメロース、23%の13C3標識カフェイン(=25mg)、並びに標準カプセル充填粉末(99.5%のマンニトール及び0.5%の二酸化ケイ素)からなった。外側カプセル充填は、より小さいカプセル(サイズ3、研究群に依存)のうちの1つであり、間隙は、7.2%の天然に存在するカフェイン(=25mg)及びハイビスカス茶粉末の混合物で充填した。カフェインの量は、カプセル当たり約50mg(25mgの13C3標識及び25mgの天然カフェイン)であった。全てのカプセルタイプを実験室スケールで手動で充填して、サイズ00の単一カプセルで250mg、サイズ3のカプセルで106mg、サイズ00のカプセルインカプセルの組み合わせで300mgの充填重量を標的とした。
【0113】
健康なボランティア研究を実行した。これは、研究日間に少なくとも72時間の休薬相を有する非盲検、単一施設、10元配置交差研究として実行した。この研究のために、6人の健康な若いボランティア(2人の男性及び4人の女性)を募集した。これらの対象は、平均年齢が23.2±3.6歳、平均BMIが23.5±2.6kg/m2であった。ボランティアは、各研究日の少なくとも3日間及び各研究日中、コーヒー、紅茶、及びチョコレート製品などのカフェイン含有食品を控えるようことが必要であった。
【0114】
各カプセルタイプを、単一カプセル(群I、II、及びVII)として調査した。更に、7つの異なるカプセルの組み合わせを調査した。各研究群について、表2に示す個々のカプセル又はカプセルインカプセル構成の内側カプセルの推定最大崩壊時間に基づいて、観察期間を設定した。
【0115】
研究日の間に、少なくとも72時間の休薬相があった。全ての対象は、少なくとも10時間の一晩の絶食後、午前中に研究ユニットに到着した。各研究群について、-5分で絶食時MRIを得、-2分でブランク唾液プローブを得て、それぞれ同一の臨床条件を確実にした。時間0分を、240mLの水とともに直立位置でカプセルを摂取した時間として定義した。全ての研究群は、10分間隔での60分間の観察時間からなり、研究群V~Xでは、15分間隔での追加の120分間の観察時間を追加し、研究群Xでは、15分間隔での更なる60分間の観察時間を実行した。各観察時点で、2つの対照的な薬剤である酸化鉄及びハイビスカス茶粉末を区別することができるように、2つのMRI配列(TRUFI及びVIBE)を適用した。配列パラメータを表3及び4に列挙する。
【0116】
T2*/T1重み付けTRUFI配列は、適用されるフェリ磁性黒色酸化鉄などの磁性材料によって生成される磁化率アーチファクトに高度に感受性である。この特徴的なアーチファクトは水和状態に依存せず、したがって、これを無傷のカプセルの検出に適用した。酸化鉄を含有するカプセルが崩壊するとすぐに、酸化鉄が拡散し、これは、アーチファクトの拡大として目に見える。粉末状の酸化鉄の拡散を加速するために、強力な崩壊剤であるクロスカルメロースをカプセル充填混合物に添加した。対照的に、乾燥ハイビスカス茶粉末は、いかなる順序でも目に見えない。しかしながら、それが水と接触するとすぐに、マンガンなどの含有された常磁性元素がT1水プロトンシグナルを延長し、これは、VIBE配列の明るい斑点として検出することができる。したがって、ハイビスカス茶粉末の標識は、外側カプセルの崩壊の検出を目的とした。それにもかかわらず、この研究の主な目的は、臨床応用に関連するビヒクルである内側カプセルの運命を調査することであった。
【0117】
予定された観察時間内に完全なカプセル崩壊が観察できなかった場合、測定を30分間延長した(2回の追加測定)。単一カプセル(I、II、及びVII)のみを有する研究群の場合、単一カプセルには、VIBEシーケンスが目的とするハイビスカス茶粉末が含有されていないため、TRUFI配列のみを実行した。唾液試料は常に、画像化の1分後に得た。
【0118】
GreifswaldのInstitute of Diagnostic Radiology and Neuroradiologyで、場の強度が1.5テスラであるSiemens MAGNETOM Aera MR-スキャナ(Siemens Healthcare、Erlangen,Germany))を使用して、MR画像化を実行した。全ての測定は、仰臥位(対象は背中を下にして横たわり、頭は前向き)で実行した。アーチファクトが胃内にある間には、2つの異なる空間配向(横位及び冠状方向)を使用し、胃排出後にのみ、冠状方向を使用した。
【表3】
【表4】
【0119】
画像分析
画像分析は、Horos Viewer Version 3.3.6を使用して実行した。追跡、胃腸コンパートメントへの割り当て、及び崩壊時点の評価は、手動で実行した。全ての記録は、3人の独立した観察者が独立して評価し、不明瞭な所見を議論した。
【0120】
湿潤したハイビスカス茶粉末によって引き起こされるVIBE配列における明るい斑点の出現は、外側カプセルの崩壊として定義した。転じて、内側カプセルの崩壊が検出された時点(TRUFI配列において検出)は、GI管内の特徴的に形作られた磁化率アーチファクトの拡散、又は胃内の酸化鉄の目に見える沈降の時間として定義した。崩壊が決定されたときにアーチファクト又は対応する粒子(ハイビスカス茶粉末又は黒色酸化鉄)が位置するGI管部を、それぞれの(外側又は内側)カプセルの崩壊部位として評価した。
【0121】
結果
研究群IIIの組み合わせの1回の投与及び研究群IVの組み合わせの1回の投与を除いて(これらの研究群では他の全ての対象よりも崩壊に時間がかかり、したがって計画したMRI観察時間よりも時間がかかったため)、カプセルの局在及びそれらの崩壊は、TRUFI配列において明確に識別することができる。画像化の追加の30分間以内に、それらの崩壊を検出することはできなかった。MRIによって得た所見を表5及び6に要約する。結果は、別のカプセルの中にカプセルを入れることで、全体的な崩壊時間を遅延させることが可能であることを示している。いくつかの組み合わせについて、崩壊時間は、個々のカプセルについて決定した両方の崩壊時間のほぼ正確な合計であり、例えば、単一の研究群Iでは23分、研究群IIIでは40分である。これは、耐酸性カプセルをカプセルインカプセル構成に含めた場合には当てはまらなかった。ここで、内側カプセルの崩壊時間は、典型的には外側カプセル及び内側カプセルの崩壊時間の合計よりも長かった。崩壊時間の増加は、多くの場合、可変性の増加を伴った(研究群IVは±18分であったのと比較して、ゲル化剤及び熱ゲル化HPMCを有するHPMCカプセルは±5分及び±12分であった)。
【0122】
単一カプセルの崩壊部位及びカプセルの組み合わせもまた、非常に可変的であった(表5)。2つの例外が観察された。研究群II及び研究群Xの組み合わせは、それぞれの異なる特性で最も再現性が高く崩壊した。したがって、2つの耐酸性カプセルの組み合わせは、6回全ての投与の回腸内での崩壊をもたらした。ゲル化剤を有するHPMC及び熱ゲル化HPMC、並びにそれらの組み合わせは、胃又は小腸の近位部分内での崩壊をもたらす短い崩壊時間を示したが、耐酸性カプセル、及びそれらの外側シェルとしての耐酸性カプセルとの組み合わせは、主に小腸内で崩壊した。試験した組み合わせ又は単一カプセルのいずれも、結腸には到達しなかった。熱ゲル化HPMCカプセルは、崩壊時間及び部位において非常に低い可変性で、速い胃内崩壊を示した。合計で、ゲル化剤カプセルを外側シェルとして有するHPMCを用いた24回の投与のうち4回、及び耐酸性カプセルを外側シェルとして用いた24回の投与のうち1回が、食道内で崩壊した。いずれの対象も食道へのカプセルのいかなる付着にも気付かず、いかなる否定的な感覚も述べなかった。
【表5】
【0123】
カフェイン決定の結果
唾液カフェイン決定によって得た結果を、MRI結果とともに表6に要約する。単一サイズ00カプセルについて決定した平均唾液13C3-カフェイン出現時間は、研究群Iでは22±12分、研究群IIでは15±0分、研究群VIIでは25±11分であった。これらの時間は、これらのカプセルを外側カプセルとして使用するカプセルインカプセル構成について決定した唾液カフェインの出現時間とよく一致している。MRI結果と一致して、研究群Xの組み合わせは、115±31分で最長の唾液カフェインの出現時間、及び123±25分で最長の崩壊時間を示した。また、MRIでも観察されたように、熱ゲル化HPMCカプセルは、崩壊時間及び唾液カフェインの出現において最も低い可変性を有した。
【0124】
表6に、MRIによって決定した平均崩壊時間、並びに天然カフェイン及び13C3標識カフェインの唾液出現時間を示す。更に、内側シェルの崩壊と外側シェルの崩壊との間の時間スパン、及び胃排出時間も与える。一般に、カフェインは、MRIによる崩壊の検出と同時に又はそれよりも早く出現する。しかしながら、カプセルの組み合わせのより後の崩壊時間及びより高い可変性への傾向が、両方について明らかであり、研究群の比は、互いに非常に類似している。
【表6】
【0125】
本発明に対するこれら及び他の修飾及び変形は、添付の特許請求の範囲により具体的に記載される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施され得る。加えて、様々な実施形態の態様は、全体的又は部分的に交換され得ることを理解されたい。更に、当業者は、前述の説明が例としてのみであり、そのような添付の特許請求の範囲に更に記載されるように本発明を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】