(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】小型振動センサ
(51)【国際特許分類】
H04R 19/04 20060101AFI20240709BHJP
H04R 1/00 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
H04R19/04
H04R1/00 327
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578807
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022066185
(87)【国際公開番号】W WO2022268573
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521044671
【氏名又は名称】ソニオン・ネーデルランド・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アドリアヌス・マリア・ラフォート
【テーマコード(参考)】
5D021
【Fターム(参考)】
5D021CC02
5D021CC06
5D021CC07
(57)【要約】
本発明は、振動センサであって、第1の表面および第2の表面を備えるキャリア基板と、サスペンション部材およびそれに固定される可動質量であり、可動質量および/またはサスペンション部材の少なくとも一部が、振動センサが外部振動にさらされると振動するように適合される、サスペンション部材および可動質量と、可動質量および/またはサスペンション部材の少なくとも一部の振動を検出するための読出機構と、少なくとも読出機構からの電気信号を処理するための信号プロセッサとを備え、可動質量が、キャリア基板によって画定される平面に第1の投影面積を形成し、信号プロセッサが、キャリア基板によって画定される平面に第2の投影面積を形成し、第1および第2の投影面積が、キャリア基板によって画定される平面において、少なくとも部分的に、空間的に重複している、振動センサに関する。本発明は更に、そのような振動センサを備える聴覚装置、および聴覚装置における音声認識のための振動センサの使用法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動センサであって、
a)第1の表面および第2の表面を備えるキャリア基板(1)と、
b)サスペンション部材(11、11’、20)およびそれに固定される可動質量(17)であって、前記可動質量(17)および/または前記サスペンション部材(11、11’、20)の少なくとも一部が、前記振動センサが外部振動にさらされると振動するように適合される、サスペンション部材(11、11’、20)および可動質量(17)と、
c)前記可動質量(17)および/または前記サスペンション部材(11、11’、20)の少なくとも一部の振動を検出するための読出機構と、
d)少なくとも前記読出機構からの電気信号を処理するための信号プロセッサ(7)とを備え、
前記可動質量(17)が、前記キャリア基板(1)によって画定される平面に第1の投影面積(17’)を形成し、かつ前記信号プロセッサ(7)が、前記キャリア基板(1)によって画定される前記平面に第2の投影面積(7’)を形成する、振動センサにおいて、
前記第1および第2の投影面積(7’、17’)が、前記キャリア基板(1)によって画定される前記平面において少なくとも部分的に空間的に重複している
ことを特徴とする、振動センサ。
【請求項2】
前記可動質量(17)および前記信号プロセッサ(7)が前記キャリア基板(1)の対向側に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の振動センサ。
【請求項3】
前記キャリア基板(1)が、対向する第1および第2の表面を備える第1のPCB(1)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の振動センサ。
【請求項4】
前記信号プロセッサ(7)がフリップチップボンディング(8)を介して前記第1のPCB(1)の前記第2の表面に固定されることを特徴とする、請求項3に記載の振動センサ。
【請求項5】
前記振動センサが、前記第1のPCB(1)の前記第2の表面に固定されるスペーサ(2)を更に備えること、および前記スペーサ(2)が、前記第1のPCB(1)の前記第2の表面に電気接続される1つまたは複数のビア(3、9)を備えることを特徴とする、請求項4に記載の振動センサ。
【請求項6】
前記スペーサ(2)が窪み(6)を更に備えており、前記窪み内に前記信号プロセッサ(7)が少なくとも部分的に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の振動センサ。
【請求項7】
前記スペーサ(2)内の前記窪み(6)が、中に前記信号プロセッサ(7)が少なくとも部分的に配置されて、充填材料で少なくとも部分的に充填されること、および前記信号プロセッサ(7)に関して電気遮蔽を提供するために前記スペーサ(2)内の前記充填された窪みを覆うように導電遮蔽層(25)が設けられることを特徴とする、請求項6に記載の振動センサ。
【請求項8】
前記導電遮蔽層(25)がグランドに電気接続されることを特徴とする、請求項7に記載の振動センサ。
【請求項9】
前記振動センサが、対向する第1および第2の表面を備える第2のPCB(27)を更に備えること、ならびに前記スペーサ(2)の前記1つまたは複数のビア(3)が前記第2のPCB(27)の前記第1の表面に電気接続されること、ならびに外部電子デバイスに前記振動センサを接続するために前記第2のPCB(27)の前記第2の表面に1つまたは複数のコンタクトパッド(28、29)が設けられることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の振動センサ。
【請求項10】
前記読出機構が、エアギャップ(16)によって分離される第1のコンデンサ電極(11’)および第2のコンデンサ電極(10)によって形成されるコンデンサを備えることを特徴とする、請求項3から9のいずれか一項に記載の振動センサ。
【請求項11】
前記サスペンション部材(11、11’)の少なくとも一部が導電性であることを特徴とする、請求項10に記載の振動センサ。
【請求項12】
前記サスペンション部材の少なくとも前記導電部分が前記第1のコンデンサ電極(11’)を形成することを特徴とする、請求項11に記載の振動センサ。
【請求項13】
前記第2のコンデンサ電極(10)が前記第1のPCB(1)の前記第1の表面に設けられることを特徴とする、請求項11または12に記載の振動センサ。
【請求項14】
前記第1および第2のコンデンサ電極(11’、10)間のスクイーズ膜減衰効果を低減させるために前記第1および/または第2のコンデンサ電極(11’、10)が1つまたは複数の通気路(14、15)を備えることを特徴とする、請求項13に記載の振動センサ。
【請求項15】
前記第1のコンデンサ電極(11’)がグランドに電気接続されること、および前記第2のコンデンサ電極(10)が前記信号プロセッサ(7)によって電気的にバイアスされることを特徴とする、請求項10から14のいずれか一項に記載の振動センサ。
【請求項16】
前記読出機構が、1つまたは複数の圧電層(22)および前記それぞれの圧電層(22)上に配置される1つまたは複数の電極(21)を備えることを特徴とする、請求項3から9のいずれか一項に記載の振動センサ。
【請求項17】
前記サスペンション部材が、静止端および可動端を備える片持梁(20)を形成することを特徴とする、請求項16に記載の振動センサ。
【請求項18】
前記可動質量(17)が前記片持梁(20)にその可動端またはその近くにおいて固定されること、および前記1つまたは複数の圧電層(22)が、前記1つまたは複数の圧電層(22)が仮想ヒンジ線と交差するような様式で前記片持梁(20)に固定されることを特徴とする、請求項17に記載の振動センサ。
【請求項19】
前記振動センサが、高周波干渉を抑制するためのフィルタ機構を更に備えること、ならびに前記フィルタ機構が、誘電層(32)によって分離される1つまたは複数の信号電極(33)および1つまたは複数の接地電極(31)を備えることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の振動センサ。
【請求項20】
前記1つまたは複数の信号電極(33)、前記1つまたは複数の接地電極(31)および前記誘電層(32)が前記第1のPCB(1)に埋め込まれることを特徴とする、請求項19に記載の振動センサ。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の振動センサを備える聴覚装置であって、前記聴覚装置が、補聴器、ヒアラブル、ヘッドセット、イヤーバッドまたは同様の装置を備える、聴覚装置。
【請求項22】
聴覚装置における請求項1から20のいずれか一項に記載の振動センサの使用法において、前記振動センサが、前記聴覚装置のユーザの頭蓋骨内の音声誘導振動を検出するために使用されること、および前記検出された音声誘導振動が前記ユーザ自身の声の音声認識のために使用されることを特徴とする、振動センサの使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動センサであって、第1の表面および第2の表面を備えるキャリア基板と、サスペンション部材およびそれに固定される可動質量であり、可動質量および/またはサスペンション部材の少なくとも一部が、振動センサが外部振動にさらされると振動するように適合される、サスペンション部材および可動質量とを備える、振動センサに関する。振動センサは、可動質量および/またはサスペンション部材の少なくとも一部の振動を検出するための読出機構と、少なくとも読出機構からの電気信号を処理するための信号プロセッサとを更に備える。可動質量は、キャリア基板上に第1の投影面積を形成し、そして信号プロセッサは、キャリア基板上に第2の投影面積を形成する。
【背景技術】
【0002】
振動センサは、利用可能なスペースが非常に制限される装置に使用される。したがって、厳しいスペース関連の要求を満たすために種々の要素が最適な様式でパッケージ内に収まる必要性がある。同時に、例えば振動センサが聴覚装置へ組み込まれることになり、そこで聴覚装置のユーザの頭蓋骨内の音声誘導振動を検出すると意図される場合に、振動センサは、必要とされる感度を提供するために或る大きさおよび形状の可動質量を必要とする。
【0003】
先行技術センサの一例が例えば米国特許出願公開第2020/136586号に提案されている。米国特許出願公開第2020/136586号に提案されるセンサは、他の素子の中で、圧電素子/共振子および感温部品を備える。感温部品は、測定温度を電気信号に変換する。圧電素子/共振子および感温部品が重ねられた配置で、すなわち基板の対向側に配置されるが、米国特許出願公開第2020/136586号に提案されるセンサは、それが例えば感温部品からの信号を処理するための信号プロセッサを欠くという点で不利である。米国特許出願公開第2020/136586号に提案されるセンサに信号プロセッサを追加することは、センサのフットプリントを増加させるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/136586号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フットプリントが小さな小型振動センサを提供することが本発明の実施形態の目的とみなされてもよい。
【0006】
振動センサの感度、およびそのため性能を損なうことなく表面積が低減された小型振動センサを提供することが本発明の実施形態の更なる目的と見られてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的は、第1の態様において、振動センサであって、
a)第1の表面および第2の表面を備えるキャリア基板と、
b)サスペンション部材およびそれに固定される可動質量であって、可動質量および/またはサスペンション部材の少なくとも一部が、振動センサが外部振動にさらされると振動するように適合される、サスペンション部材および可動質量と、
c)可動質量および/またはサスペンション部材の少なくとも一部の振動を検出するための読出機構と、
d)少なくとも読出機構からの電気信号を処理するための信号プロセッサとを備え、
可動質量が、キャリア基板によって画定される平面に第1の投影面積を形成し、かつ信号プロセッサが、キャリア基板によって画定される平面に第2の投影面積を形成し、かつ第1および第2の投影面積が、キャリア基板によって画定される平面において少なくとも部分的に空間的に重複している、振動センサを提供することによって満たされる。
【0008】
本発明の振動センサは、キャリア基板によって画定される平面に、少なくとも部分的に、空間的に重複する第1および第2の投影面積を有する可動質量および信号プロセッサの相対配置のため有利である。以下に更に詳細に述べられることになるように、第1および第2の投影面積の少なくとも部分的に空間的に重複することは、振動センサの全体の大きさを減少させる。
【0009】
本文脈では投影面積という用語は、キャリア基板によって画定される平面への可動質量および信号プロセッサの外側輪郭の幾何投影として理解されるはずである。言い換えれば、投影面積は、キャリア基板によって画定される平面へ可動質量および信号プロセッサによって投じられる影として理解されるはずである。可動質量および信号プロセッサが投影される平面は、キャリア基板の第1の表面もしくは第2の表面と一致してもよく、またはそれは、キャリア基板の第1の表面もしくは第2の表面と平行である仮想平面など、キャリア基板と関連付けられる仮想平面であってもよい。
【0010】
可動質量および信号プロセッサは、好ましくはキャリア基板の対向側に配置される。本文脈では対向という用語は、可動質量がキャリア基板の1つの側に配置される一方、信号プロセッサがキャリア基板の別の側に配置されることを意味する。この配置によりキャリア基板は、可動質量と信号プロセッサとの間に配置されるようになる。キャリア基板の対向側に、すなわち重ねられた配置で可動質量および信号プロセッサを配置することは、可動質量の、1つまたは複数の表面積などの、寸法が次いで最大化され得るという点で有利である。
【0011】
本発明の振動センサは、好ましくは、補聴器、ヒアラブル、ヘッドセット、イヤーバッドまたは同様の装置などの、聴覚装置へ組み込まれるのに適切である。振動センサの全体寸法は、したがって振動センサの性能を損なうことなく可能な限り小さく保たれるべきである。振動センサの役割は、頭蓋骨内の骨伝導を介して音声誘導振動を検出することなどの、多数であり得る。頭蓋骨内のそのような音声誘導振動の検出は、好ましくは、通常であれば音響的な雑音環境においてユーザ自身の声が分離または認識される音声認識に関して使用される。
【0012】
好ましくは、キャリア基板は、対向する第1および第2の表面を備える第1のプリント回路板(PCB)を備える。第1のPCBの第1の表面は、好ましくは第1のPCBの可動質量と同じ側にある一方、第1のPCBの第2の表面は、好ましくは第1のPCBの信号プロセッサと同じ側にある。第1および第2の表面は、好ましくは第1のPCBを通して設けられる1つまたは複数のビアによって電気接続される導電パターンを備える。好ましくは、信号プロセッサは、フリップチップボンドを介して第1のPCBの第2の表面に固定される。その上、信号プロセッサは、好ましくは第1のPCBの第2の表面上の導電パターンに電気接続される。
【0013】
好ましくは、振動センサは、第1のPCBの第2の表面に固定される、スペーサを更に備えており、スペーサは、第1のPCBの第2の表面に電気接続される1つまたは複数のビアを備える。スペーサ内の1つまたは複数のビアは、スペーサにわたって1つまたは複数の電気接続を提供する。その上、スペーサは、好ましくは窪みを更に備えており、窪み内に信号プロセッサが少なくとも部分的に配置される。そのため、本発明によれば、信号プロセッサは、スペーサに形成される窪みまたは空洞に少なくとも部分的に配置される。信号プロセッサのこの配置は、それが省スペース配置を提供して、振動センサの実装をより小型にするという点で有利である。スペーサ内の窪みまたは空洞は、スペーサ内の貫通した開口または通路として実装されてもよい。
【0014】
スペーサ内の窪みは、中に信号プロセッサが配置されて、充填材料で少なくとも部分的に充填されてもよく、そして信号プロセッサに関して電気遮蔽を提供するためにスペーサ内の充填された窪みを覆うように導電遮蔽層が設けられてもよい。好ましくは、導電遮蔽層は、グランドに電気接続される。信号プロセッサの周りの充填材料の存在は、それが充填材料に埋め込まれるようになる信号プロセッサを構造的に支持し、そのためセンサのロバスト性を改善するという点で有利である。
【0015】
振動センサは、好ましくは対向する第1および第2の表面を備える第2のPCBを更に備えており、スペーサの1つまたは複数のビアは第2のPCBの第1の表面に電気接続され、かつ外部電子デバイスに振動センサを接続するために第2のPCBの第2の表面に1つまたは複数のコンタクトパッドが設けられる。本文脈では、外部電子デバイスは、電源および、増幅器、フィルタ等などの、追加の信号プロセッサを含んでもよい。
【0016】
振動センサの1つの実施形態において、読出機構は、好ましくはエアギャップによって分離される第1のコンデンサ電極および第2のコンデンサ電極によって形成されるコンデンサを備える。本実施形態の振動センサは、それが低雑音レベルおよび高感度を提供するという点で有利である。低雑音レベルおよび高感度は、比較的大きな可動質量(>1mg)および第1のコンデンサ電極と第2のコンデンサ電極との間の細いエアギャップ(5~15μm)の組込みのため提供される。その上、本発明の振動センサは、それがリフロー可能であるので有利である。
【0017】
スペースを節約するために、サスペンション部材の少なくとも一部が好ましくは導電性である。その上、サスペンション部材の少なくとも導電部分は、好ましくは第1のコンデンサ電極を形成する。第2のコンデンサ電極は、好ましくはキャリア基板の第1の表面に設けられる。そのため、エアギャップは、第1のコンデンサ電極を形成する導電サスペンション部材と好ましくは第1のPCBの第1の表面に設けられる第2のコンデンサ電極との間に形成される。
【0018】
エアギャップにおよび/またはエアギャップから空気を導くために、好ましくは第1および/または第2のコンデンサ電極に1つまたは複数の通気路が設けられる。そのため、1つまたは複数の通気路は、好ましくは、エアギャップが減少されるときに空気がエアギャップ内で加圧されることを防止し、そしてエアギャップが増大されるときに空気をエアギャップに案内できることを保証するべきである。これは、第1および第2のコンデンサ電極間のスクイーズ膜減衰効果が次いで有意に低減されるという点で有利である。本文脈ではスクイーズ膜減衰という用語は、第1および第2のコンデンサ電極間のエアギャップに閉じ込められた空気によって生じる粘性減衰として理解されるはずである。本発明の振動センサにおいてエアギャップは、典型的に5~15μmの範囲にある。
【0019】
好ましくは、第1のコンデンサ電極は、グランドに電気接続され、そして第2のコンデンサ電極は、信号プロセッサによって電気的にバイアスされる。そのため、信号プロセッサは、読出機構からの電気信号を処理することに加えて、第2のコンデンサ電極に実質的に一定の電荷を提供するように適合される。電極バイアスも信号処理も単一の集積回路に組み合わされるという事実は、それがスペースを節約するという点で有利である。
【0020】
別の実施形態において、読出機構は、好ましくは1つまたは複数の圧電層およびそれぞれの圧電層上に配置される1つまたは複数の電極を備える。本実施形態において、サスペンション部材は、好ましくは静止端および可動端を備える片持梁を形成する。外部振動に応答するために、可動質量は、好ましくは片持梁にその可動端またはその近くにおいて固定される一方、1つまたは複数の圧電層は、好ましくは1つまたは複数の圧電層が仮想ヒンジ線と交差するような様式で片持梁に固定される。
【0021】
本文脈では、仮想ヒンジ線という用語は、可動質量が外部振動のため変位されるときに片持梁が有効に曲がる片持梁の静止端と可動端との間の線を画定する。
【0022】
好ましくは、振動センサは、電磁干渉を抑制するための遮蔽機構を更に備えており、遮蔽機構は、誘電層によって分離される1つまたは複数の信号電極および接地電極を備え、かつ1つまたは複数の信号電極、接地電極および誘電体層は、第1のPCBに埋め込まれる。この遮蔽機構は、それが信号プロセッサへの/信号プロセッサからの信号を入射電磁放射から遮蔽するという点で有利である。遮蔽機構は、その上、それが第1のPCBに埋め込まれ、そのためそれが振動センサの全体寸法を増加させないという点で有利である。
【0023】
第2の態様において、本発明は、第1の態様に係る振動センサを備える聴覚装置に関し、聴覚装置は、補聴器、ヒアラブル、ヘッドセット、イヤーバッドまたは同様の装置を備える。
【0024】
第3の態様において、本発明は、第1の態様に係る振動センサの使用法に関し、振動センサは、聴覚装置のユーザの頭蓋骨内の音声誘導振動を検出するために使用され、かつ検出された音声誘導振動は、ユーザ自身の声の音声認識のために使用される。
【0025】
概して、本発明の様々な態様は、本発明の範囲内で可能ないかなる方法でも組み合わされて結合されてもよい。本発明のこれらおよび他の態様、特徴および/または利点は、以下に記載される実施形態から明らかであり、それらを参照しつつ説明されることになる。
【0026】
本発明は、ここで添付図面を参照しつつ記載されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】容量読出機構を有する振動センサの一実施形態の横断面図を示す。
【
図2】キャリア基板によって画定される平面での可動質量および信号プロセッサの空間的に重複している投影を例示する。
【
図3】圧電読出機構を有する振動センサの別の実施形態の横断面図を示す。
【
図4】振動センサの信号プロセッサの拡大横断面図を示す。
【
図5】振動センサの信号プロセッサのための遮蔽機構の拡大横断面図を示す。
【
図6】振動センサの第2のPCB(下PCB)の拡大横断面図を示す。
【
図7】電磁遮蔽を提供するために中に追加のビアが配置されるスペーサの下面図を示す。
【
図8】電磁干渉を抑制するための埋め込み遮蔽機構の拡大横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
概して、本発明は、小型振動センサであって、特に、可動質量および信号プロセッサが、振動センサのキャリア基板によって画定される平面において(可動質量および信号プロセッサの)それぞれの投影が、少なくとも部分的に、空間的に重複している、重ねられた配置で配置される、振動センサに関する。
【0029】
既に言及されたように、振動センサは、補聴器、ヒアラブル、ヘッドセット、イヤーバッドまたは同様の装置などの、聴覚装置へ組み込まれるように適合される。聴覚装置内の利用可能な限られたスペースのため、振動センサの全体寸法は、したがって振動センサの性能を損なうことなく可能な限り小さく保たれるべきである。前に言及されたように、振動センサの役割は、頭蓋骨内の骨伝導を介して音声誘導振動を検出することなどの、多数であり得る。頭蓋骨内のそのような音声誘導振動の検出は、好ましくは、通常であれば音響的な雑音環境においてユーザ自身の声が分離または認識される音声認識に関して使用される。
【0030】
骨伝導を介して音声誘導振動信号を検出するために、振動センサの帯域幅は、典型的に6kHzより大きい。これに加えて、振動センサの共振周波数は、典型的に帯域幅の上限に近く、例えば4kHzを超え、そして共振ピークは、典型的に1kHzでの感度と比較して10dB未満である。この手法により、Qは、典型的に3より小さいであろう。その上、振動センサのノイズフロアは低い、すなわち共振周波数での1/3オクターブバンドで<-98dB re. 1gであるべきである。これらの要件を満たすために、可動質量の質量は、1mgより高いなど、比較的高い必要がある。可動質量が典型的に100~200μmの範囲の厚さを有するので、可動質量の大きくかつ対向する、そのため投影表面積は最高2.5mm2であることができる。製造の点から、可動質量は、鋼、タンタルまたはタングステンを含む各種の材料から作られてもよい。
【0031】
図1をここで参照すると、振動センサの一実施形態の横断面図が描かれる。
図1に見られるように、可動質量17および信号プロセッサ7は、それらのそれぞれの影、すなわちそれらの投影面積が、少なくとも部分的に、第1のPCB1上で空間的に重複しているという点で重ねられた配置で配置される。可動質量17および信号プロセッサ7の空間的に重複することは、
図2に例示されており、
図2aは、他の素子の中で、可動質量17および信号プロセッサ7を備える振動センサの横断面図を示す。
図2aにおける水平線1’は、キャリア基板1、
図1参照、によって画定される仮想平面を例示する。既に述べられたように、仮想平面は、キャリア基板の第1の表面もしくは第2の表面と一致してもよく、またはそれは、キャリア基板の第1の表面もしくは第2の表面と平行である仮想平面であってもよい。
図2bに見られるように、可動質量17は、この仮想平面1’に投影面積17’を形成し、そして信号プロセッサ7は、同じ仮想平面1’に投影面積7’を形成する。投影面積7’、17’が斜線範囲によって示されるように空間的に重複することが
図2bから明らかである。概して、
図1に図示される実施形態は、第1のコンデンサ電極11と第2のコンデンサ電極10との間の距離、およびそのため静電容量が、振動センサが外部振動にさらされると変化するように適合される容量検出方式に依存する。
図1に図示される実施形態において、第1のコンデンサ電極11は、グランドに電気接続される一方、第2のコンデンサ電極10は、信号プロセッサ7によって電気的にバイアスされる。その上、信号プロセッサ7は、第1のコンデンサ電極11と第2のコンデンサ電極10との間の静電容量変化によって生じる電圧変化を処理するように適合される。信号プロセッサ7は、フリップチップボンディング8および第1のPCB1内のビア5を通じて第2のコンデンサ電極10に電気接続される。第1のPCB1は、追加のビア4を備える。
【0032】
図1に見られるように、第1のコンデンサ電極11および第2のコンデンサ電極10は、スペーサ12’によって画定されるエアギャップ16によって分離される。既に述べられたように、このエアギャップ16の大きさ、すなわち第1のコンデンサ電極11と第2のコンデンサ電極10との間の距離は、第1のコンデンサ電極11がそれに固定される可動質量17のためのサスペンション部材としても作用するので振動センサが外部振動にさらされると変化するように適合される。エアギャップは、典型的に5~15μmの範囲にある。
【0033】
第2のコンデンサ電極10の周りまたはその外側に、周囲を形成するリム12が設けられる。好ましくは、リム12は、第2のコンデンサ電極10およびリム12が厳密に同じ厚さを有するように第2のコンデンサ電極10と同じ層の一部を形成する。リム12の上にスペーサ12’が配置される。好ましくは、リム12もスペーサ12’も導電性である。その上、リム12およびスペーサ12’は、好ましくは第1のPCB1内のビア4を通じておよび第1のPCB1に固定されるスペーサ2内のビア3を通じてグランドに電気接続される。
【0034】
サスペンション部材/第1のコンデンサ電極11の弾力性は、サスペンション部材/第1のコンデンサ電極11に固定されるかその一部を形成する弾性部材13によって提供される。キャビティ18を画定するハウジング19が可動質量17およびサスペンション部材/第1のコンデンサ電極11を覆って設けられる。
【0035】
図1にも描かれるように、振動センサは、信号プロセッサ7が配置される窪みまたは空洞6を備えるスペーサ2を更に備える。スペーサ2は、スペーサ2の下面に配置される1つまたは複数のコンタクトパッドと第1のPCB1を電気接続するための1つまたは複数のビア3、9を備える。1つまたは複数のコンタクトパッドは、外部電子デバイスへの振動センサの容易な接続を促進する。
【0036】
図6に描かれるように、第2のPCB27がスペーサ2に固定されてもよい。第2のPCB27は、外部電子デバイスへの振動センサの容易な接続を促進する1つまたは複数のコンタクトパッド28、29を備える。第1のPCB1、スペーサ2および第2のPCB27によって形成されるキャビティ6は、信号プロセッサ7がこの充填材料に埋め込まれるように充填材料で満たされてもよい。信号プロセッサ7は、任意のデジタル符号体系を適用するアナログまたはデジタル領域で動作していてもよい。信号調節の点から、信号プロセッサ7は、増幅、バッファリング、フィルタリング、デジタル化等のために構成されてもよい。
【0037】
ここで
図1および容量検出方式に戻ると、第1のコンデンサ電極11の電気活性部は、可動質量17に固定される中心電極部分11’である。第2のコンデンサ電極10は、第1のコンデンサ電極部分11’と第2のコンデンサ電極10との間のスクイーズ膜減衰効果を低減させるために通気路14、15によって外側リム12から分離される。そのため、第1のコンデンサ電極11の電気活性部と第2のコンデンサ電極10との間の距離が減少されると、空気は通気路14、15を介して逃げるのを許容され、それによってスクイーズ膜減衰効果が低減される。
【0038】
ここで
図3に移ると、振動センサの別の実施形態の横断面図が描かれる。
図3に見られるように、可動質量17および信号プロセッサ7は、それらのそれぞれの投影面積が、少なくとも部分的に、第1のPCB1上で空間的に重複しているという点でやはり重ねられた配置で配置される。
【0039】
図3に見られるように、可動質量17は、サスペンション部材20に固定される。サスペンション部材20は、残部12’における静止端および可動質量17が固定される可動端を有する片持梁の形状を有する。可動質量17および片持梁20の少なくとも可動端は、振動センサが外部振動にさらされると変位するように適合される。ハウジング19が、片持梁20およびそれに固定される可動質量17を保護する。
【0040】
概して、
図3に図示される実施形態は、振動センサが外部振動にさらされると可動質量17の変位を検出するための圧電検出方式に依存する。
図3に図示される実施形態において、上に電極21が配置される圧電層22が、圧電層が仮想ヒンジ線(図示せず)と交差するように片持梁20上に配置される。単一の圧電層の代わりに上にそれぞれの電極が配置される複数の圧電層が任意選択で適用されてもよいことが留意されるべきである。
【0041】
可動質量17の変位(上または下)が仮想ヒンジ線において片持梁20を曲げ、それによって圧電層22が横方向に伸縮される。圧電層22の横歪の変化は、圧電層22にわたる、すなわち圧電層22の厚さを横切る電界強度の変化を誘発する。圧電層22にわたる電界強度の変化は、圧電層22の対向側に配置される2つの電極間に発生される電圧の変化を提供する。
図3に図示される実施形態において、圧電層22の下側電極(接地される)が片持梁20によって形成される一方、圧電層22上に電極21が形成される。この別個の電極21は、ワイヤボンディング、第1のPCB1上の電極23、第1のPCB1を通るビア4および信号プロセッサ7へのフリップチップボンディング8を介して信号プロセッサ7に電気接続される。そのため、圧電層22にわたる検出された電圧変化は、任意のデジタル符号体系を適用するアナログまたはデジタル領域で動作していてもよい信号プロセッサ7によって処理される。再び、信号調節の点から、信号プロセッサ7は、増幅、バッファリング、フィルタリング、デジタル化等のために構成されてもよい。
【0042】
図3にも描かれるように、振動センサは、信号プロセッサ7が配置される窪みまたは空洞6を備えるスペーサ2を更に備える。スペーサ2は、スペーサ2の下面に配置される1つまたは複数のコンタクトパッドと第1のPCB1を電気接続するための1つまたは複数のビア4、5を備える。1つまたは複数のコンタクトパッドは、外部電子デバイスへの振動センサの容易な接続を促進する。
【0043】
ここで
図4を参照すると、ビア3、3’が一体化されたより薄いスペーサ2を備える一実施形態の拡大横断面図が描かれる。
図4に図示される実施形態は、上述したように容量または圧電読出機構を備えてもよい。信号プロセッサ7は、フリップチップボンディング8を介して第1のPCB1に固定される。振動センサのリフローはんだ付けを促進するために一対のはんだボール24、24’が設けられる。はんだボールの数が
図4に描かれる2つと異なってもよいことが留意されるべきである。
【0044】
ここで
図5に移ると、埋め込み信号プロセッサ7を備える一実施形態の拡大横断面図が描かれる。
図5において、スペーサ2内の窪みまたは空洞6は、信号プロセッサ7が窪みまたは空洞6に埋め込まれるように充填材料で充填される。埋め込まれた信号プロセッサ7に関して電気遮蔽を提供するためにスペーサ2内の充填された窪みまたは空洞6を覆うように導電遮蔽層25が設けられる。導電遮蔽層25は、グランドに電気接続されるスペーサ2内のビア3に電気接続される。ビア3’およびコンタクトパッド26は、電源、追加の信号プロセッサ、増幅器等に接続されてもよい。
図5に図示される実施形態は、上述したように容量または圧電読出機構を備えてもよい。信号プロセッサ7は、フリップチップボンディング8を介して第1のPCB1に固定される。
【0045】
図6に描かれるように、振動センサは、対向する第1および第2の表面を備える第2のPCB27を備えてもよい。外部電子デバイスへの振動センサの容易な接続を促進するために第2のPCB27の第2の表面に1つまたは複数のコンタクトパッド28、29が設けられる。第2のPCB27は、スペーサ2に固定される。第1のPCB1、スペーサ2および第2のPCB27によって形成されるキャビティ6は、前述のように、信号プロセッサ7がこの充填材料に埋め込まれるように充填材料で充填されてもよい。
図6に図示される実施形態に係る振動センサは、容量または圧電読出機構を備えてもよく、そして信号プロセッサ7は、フリップチップボンディング8を介して第1のPCB1に固定される。
【0046】
ここで
図7を参照すると、スペーサ2の窪みまたは空洞6に配置される信号プロセッサ7の電磁遮蔽を提供するために複数の電気的に接地されるビア30を有するスペーサ2を備える振動センサの下面図である。より大きなビア3は、スペーサ2にわたってセンサ信号、電力信号等を通すように適合されてもよい。
図7に図示される実施形態に係る振動センサは、容量または圧電読出機構を備えてもよく、そして信号プロセッサ7は、フリップチップボンディングを介して第1のPCB(図示せず)に固定されてもよい。
【0047】
ここで
図8に移ると、容量振動センサの拡大横断面図が描かれる。可動質量17、第1のコンデンサ電極部分11’、第2のコンデンサ電極10、エアギャップ16、スペーサ12’、通気路15、弾性部材13およびハウジング19の実装は、
図1に図示される実施形態に関して既に述べられた。そのビア3を含むスペーサ2、窪みまたは空洞6、および第1のPCB1へのそのフリップチップ取り付け部8を含む、信号プロセッサ7の実装に関しては、前の実施形態の開示も参照される。第1のPCB1に関して、高周波干渉を抑制するためのフィルタ機構が中に埋め込まれた。
図8に描かれるように、機構は、各々ビア3および4を通じてグランドに電気接続されている1つまたは複数の導電層31を備える。リム12、スペーサ12’およびハウジング19もグランドに電気接続される。第1のコンデンサ電極11(第1のコンデンサ電極部分11’を含む)、リム12およびスペーサ12’もグランドに電気接続される。1つまたは複数の信号電極33が、振動センサの外部コンタクトパッドに接続され、各々1つまたは複数の導電層31とコンデンサを形成する。これらのコンデンサの静電容量は、誘電層32の誘電率、誘電層32の厚さおよびそれぞれの電極33の面積によって決定される。静電容量は、振動センサの外部コンタクトパッドに到達する高周波電流がグランドに向けられるように設計およびそのため選択される。
【0048】
上述の実施形態によれば、可動質量およびサスペンション部材の少なくとも一部の変位は、コンデンサまたは圧電層を使用して検出される。例えば空気圧または光学手段が適用されてもよいことが留意されるべきである。空気圧手段に関しては、可動質量およびサスペンション部材の少なくとも一部の変位による空気圧変化を測定できる。光学手段に関しては、可動質量に取り付けられる格子上のレーザ光線の回折を測定できる。
【0049】
本発明の例証的な実施形態を参照しつつ本発明が以上において述べられたが、本発明は、本発明から逸脱することなく多くの方法で変更できるこれらの特定の実施形態に限定されない。述べられた例証的な実施形態は、したがってそれと厳密に一致した添付の特許請求の範囲を解釈するために使用されないものとする。逆に、実施形態は、単に添付の特許請求の範囲の語法を説明すると意図されるだけであり、特許請求の範囲をこれらの例証的な実施形態に限定する意図はない。本発明の保護の範囲は、したがって添付の特許請求の範囲に従ってのみ解釈されるものとし、特許請求の範囲の語法の起こりうる曖昧性は、これらの例証的な実施形態を使用して解決されるものとする。
【符号の説明】
【0050】
1 第1のPCB
1’ 水平線
2 スペーサ
3、3’、9 ビア
4、5 ビア
6 窪みまたは空洞
7 信号プロセッサ
7’ 投影面積
8 フリップチップボンディング
10 第2のコンデンサ電極
11 第1のコンデンサ電極
11’ 中心電極部分
12 リム
12’ スペーサ
13 弾性部材
14、15 通気路
16 エアギャップ
17 可動質量
17’ 投影面積
18 キャビティ
19 ハウジング
20 片持梁
21 電極
22 圧電層
23 電極
24、24’ はんだボール
25 導電遮蔽層
26 コンタクトパッド
27 第2のPCB
28、29 コンタクトパッド
30 ビア
31 導電層
32 誘電層
33 信号電極
【国際調査報告】