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特表2024-526154フィブロネクチン-インテグリン相互作用及びシグナル伝達を検出及び調節するための組成物及び方法
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  • 特表-フィブロネクチン-インテグリン相互作用及びシグナル伝達を検出及び調節するための組成物及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】フィブロネクチン-インテグリン相互作用及びシグナル伝達を検出及び調節するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20240709BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240709BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
A61P43/00 105
A61K39/395 D
A61K39/395 N
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578861
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 US2022034456
(87)【国際公開番号】W WO2022271782
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/213,492
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】322011885
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ バージニア パテント ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF VIRGINIA PATENT FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】722 Preston Avenue,Suite 107,Charlottesville,VA 22903(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バーカー, トーマス エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】シェティ, ジャガトパラ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA16
4C085BB11
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
提供されるのは、配列番号:2、4、6、14、16若しくは18のアミノ酸配列、又はそれと約95%同一であるアミノ酸配列を含む抗体、及びそのパラトープ含有断片である。また提供されるのは、配列番号:4を含むか、本質的にそれからなるか、若しくはそれからなるVセグメント、配列番号:16を含むか、本質的にそれからなるか、若しくはそれからなるVセグメント、又はそれらの組み合わせをコードする核酸;試料中のFNの立体構造状態を検出し及び/若しくは標的とするためにそれを使用するための方法;疾患及び/若しくは障害を治療するための、並びに/又は対象におけるFNの力誘発性立体構造状態の異常発現に関連する疾患又は障害の結果として生じる少なくとも一つの症状を改善するための方法;並びにFNの立体構造状態に対して選択的結合活性を有する化合物をスクリーニングするための方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:2、4、6、14、16、若しくは18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む単離され精製された抗体、パラトープを含むその断片、又は配列番号:2、4、6、14、16、若しくは18の何れか一の配列と約95%同一であるアミノ酸配列を有する抗体、又はその断片であって、
(i)SYAMS(配列番号:8)を含む重鎖CDR1アミノ酸配列、DIYDGGGTNYADSVKG(配列番号:10)を含む重鎖CDR2アミノ酸配列、TADNFDY(配列番号:12)を含む重鎖CDR3アミノ酸配列、RASQSISSYLN(配列番号:20)を含む軽鎖CDR1アミノ酸配列、AASTLQS(配列番号:22)を含む軽鎖CDR2アミノ酸配列、及びQQANSAPTT(配列番号:24)を含む軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む、単離され精製された抗体;並びに/又は
(ii)EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号:40)を含む重鎖フレームワーク領域1、WVRQAPGKGLEWV(配列番号:41)を含む重鎖フレームワーク領域2、RFTTSRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYC(配列番号:42)を含む重鎖フレームワーク領域3、及びWGQGTLVTVSS(配列番号:43)を含む重鎖フレームワーク領域4を更に含む、単離され精製された抗体;並びに/又は
(iii)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:44)を含む軽鎖フレームワーク領域1、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号:45)を含む軽鎖フレームワーク領域2、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:46)を含む軽鎖フレームワーク領域3、及びFGQGTKVEIK(配列番号:47)を含む軽鎖フレームワーク領域4を更に含む、単離され精製された抗体。
【請求項2】
アミノ酸配列が、アミノ酸欠失、アミノ酸付加、アミノ酸置換、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの修飾を含む、請求項1に記載の単離され精製された抗体。
【請求項3】
抗体がヒト化されている、請求項1に記載の単離され精製された抗体。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の抗体、又はパラトープを含むその断片をコードする、単離され精製された核酸配列。
【請求項5】
試料、任意選択的に対象から単離され又は対象内に存在する生体試料中のフィブロネクチン(FN)の立体構造状態を標的とするための方法であって、試料を、請求項1に記載の単離され精製された抗体、又はそのパラトープ含有断片と接触させることを含む、方法。
【請求項6】
試料が、組織修復を受けている組織、罹患している組織、障害を患っている組織、又はそれらの任意の組み合わせを含む、又は含むことが疑われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
試料中のフィブロネクチン(FN)の立体構造状態を検出するための方法であって、試料を、請求項1に記載の単離され精製された抗体、又はそのパラトープ含有断片と接触させることと;組成物の結合を検出することを含み、それによってFNの立体構造状態が検出される、方法。
【請求項8】
試料が、組織修復を受けている組織、罹患している組織、疾患を患っている組織、又はそれらの組み合わせを含む、又は含むことが疑われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
試料が病的細胞外マトリックス(ECM)を含む、又は含むことが疑われる、請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
試料が線維化ECMを含む、又は含むことが疑われる、請求項7から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
組成物の結合を検出することが、FNに対する組成物の結合比を検出することを含む、請求項7から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
組成物の結合を検出することが、正常組織と患部組織とを区別することを含む、請求項7から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
組成物の結合を検出することが、試料における線維症の重症度を判定することを含む、請求項7から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
組成物の結合を検出することが、FNにおける一過性の力誘発性立体構造変化を検出することを含む、請求項7から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
組成物の結合を検出することが、試料中のECMの構造情報を抽出することを含む、請求項7から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
試料中のECMの構造情報を抽出することが、高ECM歪みの領域を描写することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
高ECM歪みが、αvインテグリン結合特性の増強と関連している、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
組成物の結合の検出に基づいて、対象に施される治療の種類を決定することを更に含む、請求項7から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
対象における疾患又は障害を治療するための方法であって、治療を必要とする対象に、請求項1に記載の単離され精製された抗体、又はそのパラトープ含有断片を、対象における疾患又は障害を治療するのに十分な量及び経路で投与することを含む、方法。
【請求項20】
疾患又は障害が、組織修復を受けている組織、罹患している組織、疾患を患っている組織、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される特徴を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
特徴が病的細胞外マトリックス(ECM)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
特徴が線維化ECMである、請求項20又は請求項21に記載の方法。
【請求項23】
対象におけるFnIII9-4G-10(4G)を含むFNの力誘発性立体構造状態の異常発現に関連する疾患又は障害の結果として生じる少なくとも一つの症状を改善するための方法であって、改善を必要とする対象に、請求項1に記載の単離され精製された抗体、又はそのパラトープ含有断片を、対象における疾患又は障害の少なくとも一つの症状を改善するのに十分な量及び経路で、投与することを含み、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの力誘発性立体構造状態の異常発現に関連する疾患又は障害の結果として生じる少なくとも一つの症状が改善される、方法。
【請求項24】
疾患又は障害が、組織修復を受けている組織、罹患している組織、疾患を患っている組織、又はそれらの組み合わせに関連している、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
疾患又は障害が病的細胞外マトリックス(ECM)に関連している、請求項23又は請求項24に記載の方法。
【請求項26】
疾患又は障害が線維化ECMに関連している、請求項23から25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
抗体が、そのN末端、そのC末端、又は両方に修飾を更に含む、請求項1から3の何れか一項に記載の単離され精製された抗体。
【請求項28】
修飾が、ペプチドタグ、SARAHドメイン、又はそれらの組み合わせの付加を含む、請求項27に記載の単離され精製された抗体。
【請求項29】
タグが、hisタグ、mycタグ、VSVタグ、HAタグ、SortaseAタグ、PelB配列、又はそれらの一若しくは複数の任意の組み合わせを含む、請求項28に記載の単離され精製された抗体。
【請求項30】
SARAHドメインが、配列番号:28~32からなる群から選択される配列を含む、請求項28に記載の単離され精製された抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本開示の主題は、2021年6月22日に出願された米国仮特許出願第63/213492号の利益を主張し、その開示はその全体が出典明示によりここに援用される。
【0002】
[電子的に提出された配列表の参照]
本出願と共に提出されたASCIIテキストファイル(名称:3062_161_PCT_ST25.txt;サイズ:29キロバイト;及び作成日:2022年6月22日)の電子的に提出された配列表の内容は、その全体が出典明示によりここに援用される。
【0003】
[技術分野]
本開示の主題は、フィブロネクチン-インテグリン相互作用及びシグナル伝達を検出及び調節するための、修飾抗体及びその断片を含む組成物、並びにそれを使用する方法に関する。特に、本開示の主題は、フィブロネクチンのインテグリン結合ドメイン内の機械的に露出された潜在部位を標的とするのに有用な組成物及び方法に関する。
【発明の概要】
【0004】
この概要は、本開示の主題の幾つかの実施態様を列挙し、多くの場合、これらの実施態様の変形及び置換を列挙する。この概要は、多数の多様な実施態様の単なる例示に過ぎない。所与の実施態様の一又は複数の代表的な特徴の言及も同様に例示的なものである。そのような実施態様は、典型的には、言及された特徴の有無にかかわらず存在しうる;同様に、その特徴は、この概要に列挙されているかどうかにかかわらず、本開示の主題の他の実施態様に適用することができる。過度の繰り返しを避けるため、この概要では、そのような特徴の全ての可能な組み合わせを列挙したり、提案したりするものではない。
【0005】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、配列番号:2、4、6、14、16、若しくは18を含み、それらから本質的になり、若しくはそれらからなる、単離され精製された抗体、又はその断片、或いは配列番号:2、4、6、14、16、若しくは18の一つと約95%同一であるアミノ酸配列を有する抗体を提供することに関する。幾つかの実施態様では、抗体又はその断片はヒト化されている。
【0006】
幾つかの実施態様では、単離され精製された抗体又はその断片は、アミノ酸配列SYAMS(配列番号:8)を含む重鎖CDR1、アミノ酸配列DIYDGGGTNYADSVKG(配列番号:10)を含む重鎖CDR2、アミノ酸配列TADNFDY(配列番号:12)を含む重鎖CDR3、アミノ酸配列RASQSISSYLN(配列番号:20)を含む軽鎖CDR1、アミノ酸配列AASTLQS(配列番号:22)を含む軽鎖CDR2、及びアミノ酸配列QQANSAPTT(配列番号:24)を含む軽鎖CDR3を含み;並びに/又は、単離され精製された抗体は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号:40)を含む重鎖フレームワーク領域1、WVRQAPGKGLEWV(配列番号:41)を含む重鎖フレームワーク領域2、RFTTSRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYC(配列番号42)を含む重鎖フレームワーク領域3、及びWGQGTLVTVSS(配列番号:43)を含む重鎖フレームワーク領域4を更に含み;並びに/又は、単離され精製された抗体は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:44)を含む軽鎖フレームワーク領域1、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号:45)を含む軽鎖フレームワーク領域2、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:46)を含む軽鎖フレームワーク領域3、及びFGQGTKVEIK(配列番号:47)を含む軽鎖フレームワーク領域4を更に含む。
【0007】
幾つかの実施態様では、単離され精製された抗体、又はその断片若しくはホモログは、そのN末端、そのC末端、又は両方に修飾を含む。幾つかの実施態様では、修飾は、ペプチドタグ、SARAHドメイン、又はそれらの組み合わせの付加を含む。幾つかの実施態様では、タグは、Hisタグ(例えば、HHHHHH;配列番号:35)、mycタグ(例えば、EQKLISEEDL;配列番号:33)、VSVタグ(例えば、YTDIEMNRLGK;配列番号:34)、HAタグ(例えば、YPYDVPDYA;配列番号:36)、SortaseAタグ(例えば、LPTEGG(配列番号:37)及び/又はLPXTG;配列番号:48)、PelB配列(例えば、MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMA(配列番号:38)若しくはMKYLLPTAEAGLLLLLAAPQIA(配列番号:49))、又はそれらの一又は複数の任意の組み合わせを含む。幾つかの実施態様では、SARAHドメインは、配列番号:28~32からなる群から選択される配列を含む。
【0008】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、ここに開示された抗体及び断片をコードする単離され精製された核酸配列をまた提供する。
【0009】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、試料、任意選択的に対象から単離され、若しくは対象内に存在する生体試料中のフィブロネクチン(FN)の立体構造状態を標的とするための方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、試料を、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの立体構造状態に対して選択的結合活性を有する組成物と接触させることを含み、それによって立体構造状態が標的とされる。幾つかの実施態様では、試料は、組織修復を受けている組織、罹患している組織、障害を患っている組織、又はそれらの任意の組み合わせを含む、又は含むことが疑われる。
【0010】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、試料中のフィブロネクチン(FN)の立体構造状態を検出するための方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、試料を、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの立体構造状態に対して選択的結合活性を有する組成物と接触させることと;組成物の結合を検出することを含み、それによってFNの立体構造状態が検出される。幾つかの実施態様では、試料は、組織修復を受けている組織、罹患している組織、障害を患っている組織、又はそれらの組み合わせを含む、又は含むことが疑われる。幾つかの実施態様では、試料は、病的細胞外マトリックス(ECM)を含む、又は含むことが疑われる。幾つかの実施態様では、試料は線維化ECMを含む、又は含むことが疑われる。幾つかの実施態様では、組成物の結合を検出することは、FNに対する組成物の結合比を検出することを含む。幾つかの実施態様では、組成物の結合を検出することは、正常組織と患部組織とを識別することを含む。幾つかの実施態様では、組成物の結合を検出することは、試料中の線維症の重症度を判定することを含む。幾つかの実施態様では、組成物の結合を検出することは、FNにおける一過性の力誘発性立体構造変化を検出することを含む。幾つかの実施態様では、組成物の結合を検出することは、試料中のECMの構造情報を抽出することを含む。幾つかの実施態様では、試料中のECMの構造情報を抽出することは、高ECM歪みの領域を描写することを含む。幾つかの実施態様では、高ECM歪みは、αvインテグリン結合特性の増強と関連している。
【0011】
幾つかの実施態様では、本方法は、組成物の結合の検出に基づいて、対象に施される治療の種類を決定することを更に含む。
【0012】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、対象における疾患及び/又は障害を治療するための方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、治療を必要とする対象に、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの立体構造状態に対して選択的結合活性を有する組成物の治療有効量を投与することを含み、それによって治療が達成される。幾つかの実施態様では、疾患及び/又は障害は、組織修復を受けている組織、罹患している組織、障害を患っている組織、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される特徴を有する。幾つかの実施態様では、特徴は病的細胞外マトリックス(ECM)である。幾つかの実施態様では、特徴は線維化ECMである。
【0013】
本開示の方法の幾つかの実施態様では、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの立体構造状態に対して選択的結合活性を有する組成物は、配列番号:2、4、6、14、16、若しくは18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む単離され精製された抗体、又はその断片、或いは配列番号:2、4、6、14、16、若しくは18の配列と約95%同一の配列を有する抗体、又はその断片である。幾つかの実施態様では、アミノ酸配列は、アミノ酸欠失、アミノ酸付加、アミノ酸置換、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの修飾を含む。幾つかの実施態様では、抗体又はその断片はヒト化される。
【0014】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの立体構造状態に対して選択的結合活性を有する抗体及び/又はその断片及び/又は誘導体をスクリーニングするための方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの立体構造状態を含む試料を提供すること;試料を、候補抗体及び/又はその断片及び/又は誘導体と接触させること;並びに候補抗体及び/又はその断片及び/又は誘導体の試料への結合を検出することを含む。幾つかの実施態様では、候補抗体及び/又はその断片及び/又は誘導体は、抗体及び/又はその断片及び/又は誘導体のライブラリーのメンバーである。幾つかの実施態様では、候補抗体及び/又はその断片及び/又は誘導体は、インタクト抗体である。幾つかの実施態様では、FNの立体構造状態は、Fnにおける力誘発性立体構造変化である。
【0015】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、本開示の方法によって同定される抗体及び/又はその断片及び/又は誘導体をまた提供する。
【0016】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、本開示の主題に係る抗体又はその断片を含む治療有効量の組成物を、治療を必要とする対象に投与することを含み、それによって治療が達成される、対象における疾患及び/又は障害を治療するための方法をまた提供する。
【0017】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、対象におけるFnIII9-4G-10(4G)を含むFNの力誘発性立体構造状態の異常発現に関連する疾患又は障害の結果の少なくとも一つの症状を改善するための方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、本開示の主題に係る抗体又はその断片を含む組成物の治療有効量を、改善を必要とする対象に投与することを含み、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの力誘発性立体構造状態の異常発現に関連する疾患又は障害の結果の少なくとも一つの症状が改善される。
【0018】
治療方法の幾つかの実施態様では、疾患又は障害は、組織修復を受けている組織、罹患している組織、障害を患っている組織、又はそれらの任意の組み合わせに関連する。幾つかの実施態様では、疾患又は障害は、病的細胞外マトリックス(ECM)に関連している。幾つかの実施態様では、疾患又は障害は線維化ECMに関連している。
【0019】
従って、本開示の主題の目的は、フィブロネクチン-インテグリン相互作用及びシグナル伝達を検出し調節するための組成物及び方法を提供することである。この目的及び他の目的は、本開示の主題によって全部又は一部が達成される。更に、本開示の主題の目的は上述したが、本開示の主題の他の目的及び利点は、次の説明、図面、及び実施例を検討すれば当業者には明らかとなるであろう。加えて、本開示の主題の様々な態様及び実施態様が、以下に更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、様々な投薬量におけるフィブロネクチン(Fn)の病的形態(患部)及び健康的形態(正常)に対するH5抗体及びその誘導体の結合効力を決定するためのインビトロELISA結合アッセイの結果を示すグラフである。データは二種の独立した実験の組み合わせを表している:一つ目は大腸菌(eH5)対ベンサミアナタバコ(N.ベンサミアナ(nicoH5)で産生されたH5-scFvを比較し、二つ目はH5-scFv(H5(scFv))とH5-IgG1(H5(IgG)))を比較する。eH5対Fn(患部):白抜き矩形と太い黒線;eH5対Fn(正常):白抜き円形と細い黒線;nicoH5対Fn(患部):塗り潰しの矩形と大刻みのダッシュの破線;nicoH5対Fn(正常):塗り潰しの円形と小刻みのダッシュの破線;H5(scFv)対Fn(患部):白抜き三角形と太い黒線;H5(scFv)対Fn(正常):白抜き逆三角形と破線;H5(IgG)対Fn(患部):塗り潰しの三角形と細い破線;H5(IgG)対Fn(正常):塗り潰しの逆三角形と太い破線。
【0021】
[配列表の簡単な説明]
配列番号:1及び2は、それぞれ、本開示の主題の例示的なH5-IgG1抗体の重鎖の核酸配列及びアミノ酸配列である。
配列番号:3及び4は、それぞれ、本開示の主題の例示的なH5-IgG1抗体の重鎖可変領域の核酸配列及びアミノ酸配列である。
配列番号:5及び6は、それぞれ、本開示の主題の例示的なH5-IgG1抗体の重鎖定常領域の核酸配列及びアミノ酸配列である。
配列番号:7及び8は、それぞれ、本開示の主題の例示的なH5-IgG1抗体の重鎖CDR1の核酸配列及びアミノ酸配列である。
配列番号:9及び10は、それぞれ、本開示の主題の例示的なH5-IgG1抗体の重鎖CDR2の核酸配列及びアミノ酸配列である。
配列番号:11及び12は、それぞれ、本開示の主題の例示的なH5-IgG1抗体の重鎖CDR3の核酸配列及びアミノ酸配列である。
配列番号:13及び14は、それぞれ、本開示の主題の例示的なH5-IgG1抗体の軽鎖の核酸配列及びアミノ酸配列である。
配列番号:15及び16は、それぞれ、本開示の主題の例示的なH5-IgG1抗体の軽鎖可変領域の核酸配列及びアミノ酸配列である。
配列番号:17及び18は、それぞれ、本開示の主題の例示的なH5-IgG1抗体の軽鎖定常領域の核酸配列及びアミノ酸配列である。
配列番号:19及び20は、それぞれ、本開示の主題の例示的なH5-IgG1抗体の軽鎖CDR1の核酸配列及びアミノ酸配列である。
配列番号:21及び22は、それぞれ、本開示の主題の例示的なH5-IgG1抗体の軽鎖CDR2の核酸配列及びアミノ酸配列である。
配列番号:23及び24は、それぞれ、本開示の主題の例示的なH5-IgG1抗体の軽鎖CDR3の核酸配列及びアミノ酸配列である。
配列番号:25は、フィブロネクチンの9番目のIII型リピートに見出されるペンタペプチドモチーフPHSRNのアミノ酸配列である。
配列番号:26及び27は、4つのグリシン残基からなる例示的なテトラペプチドリンカー及びセリン残基に4つのグリシン残基が続いてなる例示的なペンタペプチドリンカーのアミノ酸配列である。リンカーペプチドを作製するために、配列番号:26の1、2、3、若しくはそれ以上のコピーを組み合わせる(すなわち、コンカテマー化する)ことができ、配列番号:27の1、2、3、若しくはそれ以上のコピーを組み合わせる(すなわち、コンカテマー化する)ことができ、又は配列番号:26の1、2、3、又はそれ以上のコピーを、配列番号:27の1、2、3、又はそれ以上のコピーと組み合わせることができることに留意されたい。
配列番号:28~32は、本開示の主題の抗体又はその断片のN末端、C末端、又は両方に付加されうる例示的なSARAHドメインのアミノ酸配列である。
配列番号:33~38は、本開示の主題の抗体又はその断片のN末端、C末端、又は両方に付加されうる例示的なタグのアミノ酸配列である。配列番号:31は例示的なmycタグであり、配列番号:32は例示的なVSVタグであり、配列番号:33は例示的なHisタグであり、配列番号:34は例示的なHAタグであり、配列番号:35は例示的なSortaseAタグであり、配列番号:36は例示的なPelBタグである。
配列番号:39は、例示的なリンカー配列である。
配列番号:40~43は、それぞれ、本開示の主題の例示的なH5-IgG1抗体において用いることができる例示的な重鎖フレームワーク領域1~4である。
配列番号:44~47は、それぞれ、本開示の主題の例示的なH5-IgG1抗体において用いることができる例示的な軽鎖フレームワーク領域1~4である。
配列番号:48及び49は、SortaseAタグ(例えば、LPXTG;配列番号:48)及びPelB配列(例えば、MKYLLPTAEAGLLLLLAAPQIA;配列番号:49)を含む、様々な例示的タグの追加のアミノ酸配列である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
フィブロネクチン(Fn)は、組織発達、組織修復、及び線維症などの疾患の際に、細胞表面インテグリン受容体を介して複雑な細胞接着とシグナル伝達を組織化する細胞外マトリックスタンパク質である。Fnは、そのタンデムIII型リピートにおける機械的力の影響を受けやすく、その結果、分子が大幅に伸長する。而して、細胞由来及び組織由来の力が、重要なインテグリン結合性の9番及び10番III型リピート内の「インテグリンスイッチ」を活性化することができ、差次的細胞応答に至る差次的インテグリン結合特異性が与えられると長年仮定されてきた。しかし、この仮説を証明したり、スイッチの生理学的存在を実証したりする直接的な証拠は存在しない。本開示の主題に従って提供されるのは、インビトロ及びエクスビボの両方で一過性の力誘発性立体構造変化を検出するように改変された抗体を使用した、組織修復と疾患における細胞収縮力の初期の分子シグネチャーの検出及び標的化の機会となる、Fnインテグリンスイッチの直接的な実験的証拠である。
【0023】
細胞外マトリックス(ECM)は、インビボで細胞を取り囲む構造要素の複雑な微小環境を形成する。細胞は、膜貫通受容体(インテグリン)及び細胞の細胞骨格をフィブロネクチン(Fn)などの線維状ECMタンパク質に機械的に結合させる細胞内アダプタータンパク質で構成される大きなタンパク質複合体である接着斑として知られる細胞構造を介してECMと相互作用し、ECMから指示を受ける。接着斑内のタンパク質間の相互作用は動的であり;機械的な力が、接着斑の成熟と発達に対して、並びに機械感受性タンパク質を介した力感受性細胞シグナル伝達に対して重要な役割を果たす。最近の研究では、細胞内接着斑構成要素(例えば、ビンキュリン、インテグリン;Zhu等,2008;Grashoff等,2010;Carisey等,2013を参照)と細胞外成分(例えば、Fn;Smith等,2007;Lemmon等,2011;Cao等,2012を参照)の両方の立体構造が、ECMに伝達され、ECMから伝達される力によって変化させられることが示されている。後者の場合、以前の研究では、ECM内のFnが、インビトロ及びインビボの両方で細胞力に応答して、特徴的であるが未決定の変化した構造状態を示すことが実証された(Chandler等,2011;Cao等,2012を参照)。
【0024】
Fnは、それぞれが二つの逆平行βシートを含む三種のタンデムリピート単位を含む。I型及びII型リピートはジスルフィド結合によって構造的に安定化されている一方、III型リピートは水素結合とファンデルワールス力によってのみ安定化されており、生理学的に関連する力によるアンフォールディングに感受性である(Krammer等,1999;Craig等,200;Craig等,2004;Li等,2005;Gee等,2008を参照)。これらの知見は、インテグリン特異的相互作用の媒介におけるFnの9番及び10番III型リピート(FnIII9-10)の積極的役割と組み合わされて、機械的な力がFnのインテグリン結合プロファイルにおける「スイッチ」を作用させる可能性があるという理論を呼び起こした(Krammer等,1999)。Fn-インテグリン相互作用は重要な細胞挙動を駆動することが知られており、主に10番III型リピート内の標準的かつ乱雑なインテグリン結合配列Arg-Gly-Asp(RGD)を介して媒介される(Ruoslahti及びPierschbacher,1987)。インテグリンα5β1を含むインテグリンのサブセットは、隣接する9番III型リピート内の配列モチーフPHSRN(配列番号:25)に更に依存している(Aota等,1994;Mardon及びGrant,1994;Mould,1997;Garcia等,2002)。Fnに対するインテグリン特異性は、インテグリン結合ドメイン(すなわち、9番及び10番III型リピート)の構造安定性を定方向突然変異(van der Walle等,2002)によって変更することによってインビトロで調節でき、その結果、発生学的及び病理学的に関連する細胞分化経路の調節(Martino等,2009;Brown等,2011)と、重要なことに、微小環境力学に対する細胞応答(例えば、硬化;Markowski等,2012)が生じる。これらの知見にもかかわらず、インテグリンスイッチ理論及びインビボでの生物学的プロセスとのその潜在的関連性は、本開示の主題以前には未決定のままであった。
【0025】
報告では、9番FnIII型リピート内の「シナジー」PHSRN配列(配列番号:25)と10番FnIII型リピート内のRGD部位との間の相対的な分離距離が、インテグリンα5β1(Martino等,2009)とα3β1(Brown等,2015)の結合及び活性化にとって重要であり、高親和性インテグリンα5β1結合(Craig等,2008)にとって最適なPHSRN(配列番号:25)-RGD距離は3.7nmであることが示唆されている。更に、最近の知見では、Fn線維の伸長が細胞の広がりと接着を減少させることが実証された(Hubbard等,2016)。
【0026】
ファージディスプレイによる立体構造特異的抗体の開発は、Lefkowitzと共同研究者の研究がファージディスプレイを使用して活性化β-アレスチン-1に対する立体構造特異的Fabを単離しているため、十分に確立されている(Shukla等,2013)。しかし、本開示の立体構造特異的抗体の開発における特定の課題は、(1)インテグリン結合ドメインの立体構造変化が力を加えたことによるものであったこと、(2)Fn線維に力を加えると、440kDaタンパク質の長さに沿って複数の立体構造変化が生じたこと;(3)FnIII型リピートは力がないとリフォールディングする能力があるため、構造変化が非常に不安定であったことであった。ここでは、ファージディスプレイを実行して親H5クローンを発見するために、分子工学と組み合わせた操舵分子動力学シミュレーションから予測された構造を利用して、歪みのあるインテグリン結合ドメインの模倣物を作製した。二種のモデルFn断片は、RGDとPHSRN(配列番号:25)との間の分離においてだけでなく、相対的な立体構造安定性においてもまた異なる可能性がある。FnIII9*10はFnIII9とFnIII1018の間のLeu1408Pro変異によって安定化される一方、FnIII-4G-10は二つのドメイン間で4-グリシンリンカーによって分離される。
【0027】
本開示の主題の修飾H5-IgG1抗体とその断片の一例示的用途は、高収縮性の筋線維芽細胞を含む病的ECM、幾つかの実施態様では線維化ECMを探索することである。最近の報告では、筋線維芽細胞上のαvインテグリンが広範囲の線維性疾患における線維形成に関与しており、αvインテグリンの薬理学的遮断が肝臓及び肺の線維症を改善することが示唆されている(Henderson等,2013)。本開示の主題は、ヒトにおける進行性肺線維症の致命的な形態である特発性肺線維症(IPF)に関連した、ここに開示した修飾H5-IgG1抗体の使用である。IPF患者の肺は機械的且つ生化学的に不均一であり、柔軟な正常肺組織の領域と成熟した線維症のより硬い領域がある。本開示の主題の修飾H5-IgG1抗体及びその断片は、おそらく進行中の線維症を示す、インテグリン結合ドメインの立体構造に起因する増強されたαvインテグリン結合特性をまた示す高ECM歪み領域を描写するために使用することができる。
【0028】
ECMから構造情報を抽出する修飾H5-IgG1抗体の能力は、内皮発芽によって新しい血管が形成されるプロセスである網膜血管新生のモデルにおいてもまた実証できる(Patan,2004)。マウス組織切片において、高修飾H5-IgG1:Fn比の領域を内皮先端細胞の伸張部に見出すことができ、Fnがこれらの領域で折り畳まれていないことが示唆される。Fnは網膜血管新生のメディエーターであることが知られており、星状膠細胞が血管芽細胞から内皮細胞への分化に先立ってフィブロネクチンを沈着する(Jiang等,1994)。ここに記載の結果は、内皮先端細胞からの力がFnをアンフォールドし、新しい血管の形成に影響を与える可能性がある暫定マトリックス内でαvβ3結合特性を示すことを示唆している。
【0029】
幾つかの実施態様においてここに記載されるのは、Fnのインテグリン結合FnIII9-10ドメインに対する本開示の主題の修飾H5-IgG1に基づく立体構造感受性単鎖抗体であり、証明されるのは、インビトロとエクスビボでの複数のモデル系におけるFnへのその機械感受性結合性である。如何なる特定の作用理論にも束縛されることは望まないが、Fnのインテグリン結合ドメインにおいて観察されるこれらの力感受性構造変化は、Fnエピトープの提示とアクセシビリティの制御に基づいてインビボ及び操作状況においてインテグリン特異的細胞応答を制御する可能性の高い、長い間理論化されていたFn「インテグリン-スイッチ」の証拠とみられる。ここでは、例示的な修飾H5-IgG1抗体が、タンパク質内の力誘発性構造変化を特異的に検出することもまた提供される。組織の力学が線維性疾患の病因にますます関与するようになっているため、組織イメージング及び疾患診断のパラダイムとしてECMの機械化学的特徴を標的とすることを探求する機会が生まれつつある。
【0030】
I.略語と定義
本開示及び/又は特許請求の範囲で用いられる所定の略語を表1にまとめる。
【0031】
見出しは、参照のために、また所定のセクションを見つけやすくするためにここに含められる。これらの見出しは、そこに記載される概念の範囲を限定することを意図したものではなく、これらの概念は、明細書全体を通して他のセクションで適用可能でありうる。
【0032】
本開示の主題を説明し、請求項に記載する際に、次の用語は、以下に記載される定義に従って使用される。ここで使用される用語は、特定の実施態様を説明することのみを目的としており、本開示の主題を限定することを意図したものではない。
【0033】
本開示の主題を説明する際に、多くの技術及びステップが開示されることが理解されるであろう。これらのそれぞれには個別の利点があり、それぞれを他の開示された技術の一又は複数、或いは場合によっては全てと組み合わせて、使用することもできる。
【0034】
従って、明確にするために、この明細書では、個々のステップのあらゆる可能な組み合わせを不必要に繰り返すことは控える。それにも関わらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが完全に本開示の主題及び特許請求の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
【0035】
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」「含む(containing)」又は「特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の未記載の要素又は方法ステップを排除するものではない。「含む(Comprising)」とは、請求項の文言で使用される専門用語で、指定された要素は必須であるが、他の要素を追加して特許請求の範囲内の構成を尚も形成できることを意味する。
【0036】
ここで使用される場合、「からなる(consisting of)」という語句は、特許請求の範囲において特定されていないあらゆる要素、ステップ、又は成分を除外する。「からなる」という語句が、前段部の直後ではなく、請求項の特徴部の文節に現れる場合、その文節に記載される要素のみを限定する;他の要素は全体として請求項から除外されるものではない。
【0037】
ここで使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、特許請求の範囲を、特定の材料又はステップと、加えて、請求項記載の主題の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えないものとに限定する。
【0038】
「含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」、及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語に関して、これら三種の用語のうちの一つがここで使用される場合、本開示の請求項記載の主題は、他の二種の用語の何れかの使用を含みうる。
【0039】
ここで使用される場合、エンティティのリストの文脈で使用される「及び/又は」という用語は、単独で又は組み合わせて存在するエンティティを指す。従って、例えば、「A、B、C、及び/又はD」という語句には、A、B、C、及びDが個別に含まれるが、A、B、C、及びDの任意のあらゆる組み合わせ及びサブコンビネーションもまた含まれる。
【0040】
「a」及び「an」という冠詞は、ここでは、冠詞の文法的対象の一つ又は複数(すなわち、少なくとも一つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、明示的に記載されない限り、制限なく、一つの要素又は複数の要素を意味する。
【0041】
ここで使用される「約」という用語は、およそ、その辺り、概略、又はおおよそを意味する。「約」という用語が数値範囲と併せて使用される場合、記載された数値の上下の境界を拡張することによってその範囲を変更する。一般に、「約」という用語は、ここでは、数値を、記載された値の10%の分散だけ上下に修正するために使用される。幾つかの実施態様では、「約」という用語は、それが使用されている数値のプラス又はマイナス10%を意味する。従って、約50%とは45%~55%の範囲を意味する。ここで端点によって記載される数値範囲には、その範囲内に包含される全ての数値及び分数が含まれる(例えば、1から5には、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、及び5が含まれる)。また、全ての数及びその分数は、「約」という用語によって修飾されると推定されることも理解されるべきである。
【0042】
ここで使用される場合、「アジュバント」という用語は、特定の抗原と組み合わせて使用した場合に免疫応答の増強を誘発する物質を指す。
【0043】
ここで使用される場合、組成物の「投与」及び/又は組成物を「投与する」という用語は、治療を必要とする対象に本開示の主題の組成物を提供することを意味すると理解されるべきである。
【0044】
ここで使用される場合、「薬剤」は、薬物、タンパク質、抗体及び/又はその断片若しくは誘導体など、効果を引き出すために細胞、組織、又は器官と接触されているものを含むことを意味する。
【0045】
本開示の主題の文脈で使用される「追加の治療活性化合物」又は「追加の治療剤」という用語は、治療されている特定の傷害、疾患、又は障害に対する追加の治療用途のための化合物の使用又は投与を指す。このような化合物には、例えば、無関係の疾患若しくは障害、又は治療されている傷害、疾患若しくは障害に対する一次治療に応答性ではない可能性のある疾患又は障害を治療するために使用されているものが含まれうる。追加の治療活性剤によって治療されている疾患及び障害には、例えば、がん、線維症などが含まれる。追加の化合物は、限定されないが、疼痛及び炎症を含む、傷害、疾患、又は障害に関連する症状を治療するために使用することもできる。
【0046】
ここで使用される場合、「アゴニスト」は、ヒトなどの哺乳動物に投与された場合、哺乳動物における目的の標的生物学的活性分子のレベル又は存在に起因する生物学的活性を増強又は延長する物質の組成物である。
【0047】
「アンタゴニスト」は、ヒトなどの哺乳動物に投与された場合、哺乳動物における目的の生物学的活性分子のレベル又は存在に起因する生物学的活性を阻害する物質の組成物である。
【0048】
ここで使用される場合、「疾患又は障害の症状を軽減する」とは、症状の重篤度又は患者が経験するそのような症状の頻度、又はその両方を低減させることを意味する。
【0049】
ここで使用される場合、化合物の「類似体」とは、例として、構造が互いに似ているが、必ずしも異性体ではない化合物である(例えば、5-フルオロウラシルはチミンの類似体である)。
【0050】
ここで使用される場合、アミノ酸は、表2に要約されるように、その正式名称、それに対応する3文字コード、及び/又はそれに対応する1文字コードによって表される:
【0051】
ここで使用される「アミノ酸」という表現は、天然アミノ酸と合成アミノ酸の両方、及びDアミノ酸とLアミノ酸の両方を含むことを意味する。「標準アミノ酸」とは、天然に存在するペプチドに一般的に見出される20種の標準L-アミノ酸の何れかを意味する。「非標準アミノ酸残基」とは、合成的に調製されたものであるか天然源に由来するものであるかに関係なく、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を意味する。ここで使用される場合、「合成アミノ酸」は、限定されないが、塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)、及び置換を含む、化学的に修飾されたアミノ酸をまた包含する。ペプチド(例えば、本開示の主題の抗体、その断片、及び誘導体)内に含まれるアミノ酸、特にカルボキシ末端又はアミノ末端のアミノ酸は、メチル化、アミド化、アセチル化、又はペプチドの循環半減期をその活性に悪影響を与えることなく、変化させることができる他の化学基による置換によって修飾することができる。加えて、本開示の主題のペプチド中には、ジスルフィド結合が存在する場合もあれば、存在しない場合もある。
【0052】
「アミノ酸」という用語は、「アミノ酸残基」と互換的に使用され、遊離アミノ酸とペプチドのアミノ酸残基を指しうる。その用語が遊離アミノ酸を指すのか、ペプチドの残基を指すのかは、用語が使用される文脈から明らかであろう。アミノ酸は次の一般的な構造を有する:
【0053】
アミノ酸は側鎖Rに基づいて7群に分類できる:(1)脂肪族側鎖、(2)ヒドロキシル(OH)基を含む側鎖、(3)硫黄原子を含む側鎖、(4)酸性又はアミド基を含む側鎖、(5)塩基性基を含む側鎖、(6)芳香環を含む側鎖、及び(7)側鎖がアミノ基に縮合したイミノ酸であるプロリン。
【0054】
本開示の主題の抗体、その断片、及び誘導体を記述するために使用される命名法は、各アミノ酸残基の左側にアミノ基が、右側にカルボキシ基が示される従来の慣行に従う。本開示の主題の選択された特定の実施態様を表す式において、アミノ末端及びカルボキシ末端基は、特に示されないが、別段の指定がない限り、生理学的pH値で想定される形態であることが理解される。
【0055】
ここで使用される「塩基性」又は「正に荷電した」アミノ酸という用語は、R基がpH7.0で正味の正電荷を有するアミノ酸を指し、限定されないが、標準アミノ酸のリジン、アルギニン、及びヒスチジンが含まれる。
【0056】
ここで使用される「抗体」という用語は、抗原上の特定のエピトープに特異的又は選択的に結合できる免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然源又は組換え源に由来するインタクトな免疫グロブリンであり得、またインタクトな免疫グロブリンの免疫反応性部分でありうる。抗体は典型的には、免疫グロブリン分子の四量体である。本開示の主題における抗体は、様々な形態で存在しうる。「抗体」という用語は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体並びにそれらの誘導体(キメラ抗体、合成抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体を含む)を指し、免疫グロブリン若しくは抗体の全体、又は標的抗原に結合する免疫グロブリン分子の任意の機能的断片及び/又はそれらの組み合わせを含む。このような機能的エンティティの例には、完全な抗体分子、抗体断片(F、単鎖F、相補性決定領域(CDR)、V(軽鎖可変領域)、V(重鎖可変領域)、Fab、F(ab’)、及びそれらの任意の組み合わせ、又は標的抗原に結合できる免疫グロブリンペプチドの任意の他の機能的部分が含まれる。
【0057】
抗体は、例えば、インタクトな免疫グロブリンとして、又は様々なペプチダーゼによる消化によって産生される、多くのよく特徴付けられた断片として存在する。従って、例えば、ペプシンはヒンジ領域のジスルフィド結合の下で抗体を消化して、それ自体がジスルフィド結合によってV-CH1に結合した軽鎖であるFabの二量体であるF(ab’)を生成する。F(ab’)は、穏やかな条件下で還元され得、ヒンジ領域のジスルフィド結合が切断され、それによってF(ab’)二量体がFab単量体に変換される。Fab単量体は本質的にヒンジ領域の一部を持つFabである(Paul,1993を参照)。様々な抗体断片がインタクトな抗体の消化に関して定義されるが、当業者であれば、そのような断片が化学的に又は組換えDNA法を利用することによって新たに合成できることが分かるであろう。従って、ここで使用される抗体という用語には、全抗体の修飾によって生成される抗体断片、又は組換えDNA法を使用して新たに合成されるものもまた含まれる。
【0058】
ここで使用される「抗体重鎖」は、全ての抗体分子に存在する二種類のポリペプチド鎖のうちの大きい方を指す。
【0059】
ここで使用される「抗体軽鎖」は、全ての抗体分子に存在する二種類のポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。
【0060】
「単鎖抗体」という用語は、抗体の機能的断片をコードする遺伝情報が単一の連続した長さのDNAに位置する抗体を指す。単鎖抗体の詳細な説明については、Bird等,1988;Huston等,1988を参照のこと。
【0061】
「ヒト化」という用語は、定常領域がヒト免疫グロブリンに対して少なくとも約80%以上の相同性を有する抗体を指す。加えて、マウスなどの非ヒト可変領域アミノ酸残基の一部は、ヒト起源のアミノ酸残基を含むように改変することができる。ヒト化抗体は「再構成(reshaped)」抗体と呼ばれている。相補性決定領域(CDR)の操作は、ヒト化抗体を実現する方法である。例えば、両方とも出典明示によりここに援用される、Jones等,1986;Riechmann等,1988を参照のこと。ヒト化抗体に関する概説論文については、出典明示によりここに援用される、Winter及びMilstein,1991を参照のこと。また、それぞれの全体が出典明示により援用される、米国特許第4816567号;第5482856号;第6479284号;第6677436号;第7060808号;第7906625号;第8398980号;第8436150号;第8796439号;及び第10253111号;並びに米国特許出願公開第2003/0017534号、第2018/0298087号、第2018/0312588号、第2018/0346564号、及び第2019/0151448号を参照のこと。
【0062】
ここで使用される「合成抗体」という用語は、例えばここに記載のバクテリオファージによって発現される抗体など、組換えDNA技術を使用して産生される抗体を意味する。この用語は、抗体をコードするDNA分子の合成によって生成され、そのDNA分子が抗体タンパク質を発現するか、又はアミノ酸配列が抗体を特定する抗体を意味するものとも解釈されるべきであり、ここで、DNA又はアミノ酸配列は、当該技術分野において利用可能でよく知られている合成DNA又はアミノ酸配列技術を使用して得られる。
【0063】
ここで使用される「抗原」という用語は、免疫応答を引き起こす分子として定義される。この免疫応答には、抗体産生、特定の免疫適格細胞の活性化、又はその両方が関与しうる。抗原は、生物、タンパク質/抗原のサブユニット、死滅又は不活化された全細胞又は可溶化物に由来しうる。
【0064】
ここで使用される「抗微生物薬」という用語は、本開示の主題の方法で実施される場合に、ヒト又は動物の使用に対して安全であり、微生物の死滅化、又は微生物の増殖の実質的な阻害に効果的である、任意の天然、合成、若しくは半合成の化合物又はその組成物若しくは混合物を指す。ここで使用される「抗微生物薬」には、抗菌薬、抗真菌薬、及び抗ウイルス薬が含まれる。
【0065】
ここで使用される「生体適合性」という用語は、宿主において実質的に有害な応答を誘発しない材料を指す。
【0066】
ここで使用される場合、ポリペプチドの「生物学的に活性な断片」又は「生物活性断片」という用語は、その天然リガンドに特異的又は選択的に結合することができ、又はタンパク質の機能を実施することができる全長タンパク質の天然又は合成部分を包含する。
【0067】
ここで使用される「生体試料」という用語は、限定されないが、皮膚、毛髪、組織、血液、血漿、細胞、汗及び尿を含む、対象から得られた試料を指す。
【0068】
ここで使用される「細胞」及び「細胞株」という用語は、互換的に使用することができる。これらの用語の全てには、その後の任意且つ全ての世代であるその子孫も含まれる。意図的又は偶発的な突然変異により、全ての子孫が同一ではない可能性があることが理解される。
【0069】
ここで使用される「細胞培養」及び「培養」という用語は、人工のインビトロ環境における細胞の維持を指す。しかしながら、「細胞培養」という用語は一般名称であり、個々の細胞だけでなく、組織、器官、器官系、又は全生物の培養をまた包含するために使用でき、「組織培養」、「器官培養」、「器官系培養」、又は「器官型培養」という用語が、「細胞培養」という用語と時折互換的に使用される場合があることを理解されたい。
【0070】
「細胞培養培地」、「培養培地」(何れの場合も複数は「培地(media)」)、及び「培地配合物」という語句は、細胞を培養するための栄養液を指し、互換的に使用することができる。
【0071】
遺伝子の「コード領域」は、遺伝子の転写によって生成されるmRNA分子のコード領域とそれぞれ相同又は相補的である、遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基及び遺伝子の非コード鎖のヌクレオチドを含む。
【0072】
ここで使用される「化合物」とは、一般に薬物とみなされる任意の種類の物質若しくは薬剤、又は薬物として使用するための候補、上記の組み合わせ、及び混合物、並びに本開示の主題のポリペプチド及び抗体を指す。
【0073】
ここで使用される場合、「保存的アミノ酸置換」という用語は、表3にまとめた5群のなかの一群のアミノ酸交換としてここで定義される。
【0074】
「対照」細胞、組織、試料、又は対象は、試験細胞、組織、試料、又は対象と同じ種類の細胞、組織、試料、又は対象である。対照は、例えば、試験細胞、組織、試料、又は対象が検査されるのと正確に又はほぼ同時に検査されうる。対照は、また、例えば、試験細胞、組織、試料、又は対象が検査される時間とは隔たった時間に検査することもでき、対照の検査の結果を記録して、記録された結果を、試験細胞、組織、試料、又は対象の検査によって得られた結果と比較することができるようにすることができる。対照は、また、試験群又は試験対象以外の別の供給源又は類似の供給源から得ることもでき、その場合、試験試料は、試験が実施されている疾患又は障害を有することが疑われる対象から得られる。
【0075】
「試験」細胞、組織、試料、又は対象とは、検査又は治療されているものである。
【0076】
疾患又は障害に罹患していない動物の組織内に一つ又は複数の細胞が存在する場合、組織は細胞を「正常に含む」。
【0077】
ここで使用される場合、化合物の「誘導体」とは、アルキル、アシル、又はアミノ基によるHの置換など、一つ又は複数のステップで類似の構造の別の化合物から生成されうる化合物を指す。
【0078】
「検出する」という語とその文法的変形語の使用は、定量を伴わない種の測定を指すことを意味する一方、「決定する」又は「測定する」という語とその文法的変形語の使用は、定量を伴う種の測定を指すことを意味する。「検出する」及び「同定する」という用語は、ここでは互換的に使用される。
【0079】
ここで使用される場合、「検出可能マーカー」又は「レポーター分子」は、マーカーを含まない類似化合物の存在下で、マーカーを含む化合物の特異的検出を可能にする原子又は分子である。検出可能マーカー又はレポーター分子には、例えば、放射性同位体、抗原決定基、酵素、ハイブリダイゼーションに利用可能な核酸、発色団、フルオロフォア、化学発光分子、電気化学的に検出可能な分子、及び変化した蛍光偏光又は変化した光散乱をもたらす分子が含まれる。
【0080】
「疾患」とは、動物が恒常性を維持できない動物の健康状態であり、疾患が改善されない場合、動物の健康は悪化し続ける。
【0081】
対照的に、動物の「障害」とは、動物が恒常性を維持することはできるが、動物の健康状態が、障害がない場合よりも好ましくない健康状態である。治療せずに放置しても、障害は必ずしも動物の健康状態の更なる低下を引き起こすとは限らない。
【0082】
ここで使用される場合、「ドメイン」という用語は、限定されないが、疎水性、極性、球状、及び螺旋ドメイン、又はリガンド結合、シグナル伝達、細胞透過などの性質など、共通の物理化学的特徴を共有する分子又は構造の一部を指す。結合ドメインの具体例には、限定されないが、DNA結合ドメイン、ATP結合ドメイン、及びフィブロネクチンのインテグリン結合ドメインが含まれる。
【0083】
ここで使用される場合、「有効量」又は「治療有効量」は、疾患又は障害の症状を軽減するなど、選択された効果を生み出すのに十分な量を意味する。複数の化合物などの組み合わせの形態で化合物を投与する状況では、別の化合物と組み合わせて投与される場合の各化合物の量は、その化合物が単独で投与される場合とは異なりうる。従って、化合物の組み合わせの有効量は、組み合わせを全体として集合的に指し、各化合物の実際の量は変動しうる。「より有効な」という用語は、選択された効果が、比較されている第二の治療と比較して、一つの治療によりより大きな度合いまで軽減されることを意味する。
【0084】
「コードする」とは、明らかにされたヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNA、及びmRNA)又は明らかにされたアミノ酸配列、及びそれらから生じる生物学的特性を有する、他のポリマー及び巨大分子を生物学的プロセスにおいて合成するための鋳型として機能する、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。従って、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写と翻訳が細胞又は他の生物学的系においてタンパク質を生成する場合、そのタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に提供さるコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方が、タンパク質、又はその遺伝子若しくはcDNAの他の産物をコードすると称されうる。
【0085】
「エンハンサー」は、転写開始部位に対するエンハンサーの距離又は配向に関係なく、転写効率を増大させることができるDNA調節エレメントである。
【0086】
ここで使用される「エピトープ」という用語は、抗体を誘発し、抗体と反応することができる抗原分子上の小さな化学基として定義される。抗原は一つ又は複数のエピトープを有しうる。殆どの抗原には多くのエピトープがある;つまり、それらは多価である。一般に、エピトープはおよそ5つのアミノ酸又は糖のサイズである。当業者であれば、一般に、分子の特定の線状配列ではなく、全体の三次元構造が抗原特異性の主な基準であることを理解する。
【0087】
「断片」又は「セグメント」は、少なくとも一つのアミノ酸を含むアミノ酸配列の一部、又は少なくとも一つのヌクレオチドを含む核酸配列の一部である。「断片」及び「セグメント」という用語は、ここでは互換的に使用される。
【0088】
ここで使用される場合、タンパク質又はペプチド(例えば、本開示の主題の抗体又はその断片若しくは誘導体)に適用される「断片」という用語は、通常は、少なくとも約3~15アミノ酸長、少なくとも約15~25のアミノ酸、少なくとも約25~50のアミノ酸長、少なくとも約50~75のアミノ酸長、少なくとも約75~100のアミノ酸長、及び100を超えるアミノ酸長でありうる。幾つかの実施態様では、本開示の主題の抗体の断片はパラトープを含む。
【0089】
ここで使用される場合、核酸に適用される「断片」という用語は、通常は、少なくとも約20ヌクレオチド長、典型的には少なくとも約50ヌクレオチド、より典型的には約50から約100ヌクレオチド、幾つかの実施態様では少なくとも約100から約200ヌクレオチド、幾つかの実施態様では少なくとも約200ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、更に幾つかの実施態様では少なくとも約300から約350、幾つかの実施態様では少なくとも約350ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、更に幾つかの実施態様では少なくとも約500から約600、幾つかの実施態様では少なくとも約600ヌクレオチドから約620ヌクレオチド、更に幾つかの実施態様では少なくとも約620から約650であり得、最も多くの実施態様では、核酸断片は約650ヌクレオチド長より大きいであろう。
【0090】
ここで使用される場合、「機能的」生体分子は、それが特徴付けられる特性を示す形態の生体分子である。例えば、機能的酵素とは、その酵素が特徴付けられる特徴的な触媒活性を示す酵素である。
【0091】
ここで使用される「相同」とは、2つのポリマー分子間、例えば2つの核酸分子間、例えば2つのDNA分子若しくは2つのRNA分子間、又は2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の類似性を指す。2つの分子の両方のサブユニット位置が同じ単量体サブユニットによって占められている場合、例えば2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニンによって占められている場合、それらはその位置で相同である。2つの配列間の相同性は、一致するか又は相同な位置の数の一次関数であり、例えば、2つの化合物配列の位置の半分(例えば、10サブユニット長のポリマーにおける5つの位置)が相同である場合、2つの配列は50%相同であり、位置の90%、例えば10中9が一致するか又は相同である場合、2つの配列は90%の相同性を共有する。例として、DNA配列3’-ATTGCC-5’と3’-TATGGC-5’は50%の相同性を共有する。
【0092】
ここで使用される場合、「相同性」は「同一性」と同義的に使用される。
【0093】
2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成できる。例えば、2つの配列を比較するのに有用な数学的アルゴリズムは、Karlin及びAltschul,1990のアルゴリズムを、Karlin及びAltschul,1993のように修正したものである。このアルゴリズムは、Altschul等,1990のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれており、例えば国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のワールドワイドウェブサイトからアクセスできる。BLASTヌクレオチド検索は、ここに記載の核酸と相同なヌクレオチド配列を得るために、次のパラメーターを使用してNBLASTプログラム(NCBIウェブサイトでは「blastn」と命名)で実施できる:ギャップペナルティ=5;ギャップ伸長ペナルティ=2;ミスマッチペナルティ=3;マッチ報酬=1;期待値10.0;及びワードサイズ=11。BLASTタンパク質検索は、ここに記載のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を取得するためのに、XBLASTプログラム(NCBIウェブサイトでは「blastn」と呼ばれる)又はNCBI「blastp」プログラムで次のパラメーターを使用して実施されうる:期待値10.0、BLOSUM62スコアリングマトリックス。比較目的でギャップのあるアラインメントを取得するには、Altschul等,1997に記載されているように、Gapped BLASTを利用できる。或いは、PSI-Blast又はPHI-Blastを使用して、分子間の遠い関係(同上)及び共通のパターンを共有する分子間の関係を検出する反復検索を実行することができる。BLAST、Gapped BLAST、PSI-Blast、及びPHI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用できる。
【0094】
2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップを許容するか許容しないで、上記したものと類似の技術を使用して決定できる。同一性パーセントの計算では、典型的には完全一致がカウントされる。
【0095】
ここで使用される場合、「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的な核酸の対形成に関して使用される。ハイブリダイゼーションとハイブリダイゼーションの強度(つまり、核酸間の結合の強度)は、核酸間の相補性の程度、関連する条件のストリンジェンシー、形成されたハイブリッドの長さ、核酸内のG:C比などの要因によって影響される。
【0096】
「成分(ingredient)」という用語は、化学的又は生物学的起源にかかわらず、細胞の増殖、生存、又は分化を維持又は促進するために細胞培養培地中で使用されうる任意の化合物を指す。「成分(component)」、「栄養素」、「栄養補助剤」、及び「成分(ingredient)」という用語は互換的に使用でき、全てそのような化合物を指すことを意図している。細胞培養培地で使用される典型的な非限定的成分には、アミノ酸、塩、金属、糖、脂質、核酸、ホルモン、ビタミン、脂肪酸、タンパク質などが含まれる。エクスビボでの細胞の培養を促進又は維持する他の成分は、特定の必要性に応じて当業者によって選択されうる。
【0097】
ここで使用される「阻害する」という用語は、活性又は機能を、対照値と比較してより低くなるように抑制又は遮断することを意味する。阻害は、直接的又は間接的な機構を介しうる。幾つかの実施態様では、活性は、対照値と比較して少なくとも10%、幾つかの実施態様では少なくとも25%、幾つかの実施態様では少なくとも50%、抑制又は遮断される。
【0098】
ここで使用される「阻害剤」という用語は、その適用が、限定されないが発現、レベル、活性を含む目的のプロセス又は機能の阻害をもたらす、限定されないが本開示の主題の抗体、その断片、及び誘導体などの任意の化合物又は薬剤を指す。目的の活性又は機能が低下するならば、阻害が推測されうる。
【0099】
ここで使用される「タンパク質を阻害する」という用語は、タンパク質の合成、レベル、活性、又は機能を阻害する任意の方法又は技術、並びに目的のタンパク質の合成、レベル、活性、又は機能の誘導又は刺激を阻害する方法を指す。この用語は、目的のタンパク質の合成、レベル、活性、又は機能を調節できる任意の代謝又は調節経路もまた指す。この用語には、他の分子との結合及び複合体形成が含まれる。従って、「タンパク質阻害剤」という用語は、その適用がタンパク質機能又はタンパク質経路機能の阻害をもたらす任意の薬剤又は化合物を指す。しかし、この用語は、これらの機能の各々及び一つ残らずが同時に阻害されなければならないことを意味するものではない。幾つかの実施態様では、本開示の主題の抗体、その断片、及び誘導体は、タンパク質阻害剤である。
【0100】
ここで使用される場合、「注射又は適用」には、限定されないが、硝子体内、局所、経口、頬側、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内(心室内)、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所、舌下、膣内、眼、肺、又は直腸手段を含む任意の数の経路及び手段による本開示の主題の組成物の投与が含まれる。
【0101】
「傷害」とは、暴力、事故、外傷、骨折などにより引き起こされる身体への任意の損傷並びに手術による損傷を指す。
【0102】
ここで使用される場合、「使用説明資料」には、ここに記載の様々な疾患又は障害の軽減をもたらすためのキットにおける本開示の主題のペプチド(例えば、抗体、その断片及び誘導体)の有用性を伝達するために使用されうる刊行物、記録、図表、又は任意の他の表現媒体が含まれる。任意選択的に、又は代替的に、使用説明資料には、哺乳動物の細胞又は組織における疾患又は障害を軽減する一つ又は複数の方法を記述することができる。本開示の主題のキットの使用説明資料は、例えば、本開示の主題の同定された抗体、その断片、及び/又は誘導体を含む容器に添付することができ、或いは、同定された抗体、その断片、及び/又は誘導体が含まれる容器と一緒に出荷されうる。或いは、使用説明資料は、使用説明資料と、本開示の主題の抗体、その断片、及び/又は誘導体が受領者によって協同して使用されることを意図して、容器とは別に出荷することもできる。
【0103】
ここで互換的に使用されるのは、1)「単離する」及び「選択する」;2)「検出する」及び「同定する」という用語である。
【0104】
「単離された」という用語は、組成物及び細胞に関して使用される場合、それが起源の組織内に天然に共に存在する他の細胞型又は他の細胞物質から少なくとも部分的に単離された、特定の組成物若しくは目的の細胞、又は目的の細胞の集団を指す。組成物又は細胞試料は、目的の組成物又は細胞以外の材料、組成物、細胞を少なくとも60%、又は少なくとも75%、又は少なくとも90%、場合によっては少なくとも99%含まない場合に「実質的に純粋」である。純度は、任意の適切な方法、例えば、蛍光標識細胞分取(FACS)、又は細胞型を区別する他のアッセイによって測定することができる。抗体及びその断片についての代表的な単離技術がここに開示される。
【0105】
「単離された核酸」とは、天然に存在する状態でそれに隣接する配列から分離された核酸セグメント又は断片、例えば、通常は断片に隣接する配列から、例えばそれが天然に存在するゲノム内で断片に隣接する配列から除去されたDNA断片を指す。この用語はまた、核酸に天然に付随する他の成分、例えば、細胞内で天然に付随するRNA、DNA、又はタンパク質から実質的に精製された核酸にも適用される。従って、この用語には、例えば、ベクター、自律複製プラスミド又はウイルス、又は原核生物又は真核生物のゲノムDNAに取り込まれ、又は他の配列から独立して別個の分子として(例えば、cDNA又はPCR若しくは制限酵素消化によって生成されるゲノム又はcDNA断片として)存在する組換えDNAが含まれる。これには、追加のポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含まれる。
【0106】
別に特定されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮重型であり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質及びRNAをコードするヌクレオチド配列にはイントロンが含まれる場合がある。
【0107】
ここで使用される場合、「リガンド」は、標的分子に特異的又は選択的に結合する分子である。リガンド(例えば、抗体)は、異種性分子の試料中の分子の存在を決定する結合反応においてリガンドが機能する場合、分子「に特異的に結合し」、「と特異的に免疫反応性であり」、「と選択的結合活性を有し」、「に選択的に結合し」、又は「と選択的に免疫反応性である」。従って、指定されたアッセイ(例えばイムノアッセイ)条件下では、リガンドは特定の分子に優先的に結合し、試料中に存在する他の分子には有意な度合いでは結合しない。例えば、抗体は、イムノアッセイ条件下で、その抗体が産生されたエピトープを有する抗原に特異的又は選択的に結合する。様々なイムノアッセイ形式を使用して、特定の抗原と特異的に免疫反応性である抗体を選択できる。例えば、固相ELISAイムノアッセイが、抗原と特異的に免疫反応性であるモノクローナル抗体を選択するために常套的に使用される。特異的な免疫反応性を決定するために使用できるイムノアッセイ形式及び条件の記述については、Harlow及びLane,1988を参照のこと。
【0108】
「受容体」は、リガンドに特異的又は選択的に結合する分子である。
【0109】
ここで使用される場合、「結合」という用語は、2つの基の間の連結を指す。連結は、限定されないが、イオン結合、水素結合、及び疎水性/親水性相互作用を含む、共有結合又は非共有結合の何れかでありうる。
【0110】
ここで使用される場合、「リンカー」という用語は、共有結合又は非共有結合の何れかで、例えばイオン結合若しくは水素結合若しくはファンデルワールス相互作用を通じて、2つの他の分子を一緒にする分子を指す。
【0111】
ここで使用される「調節する(modulate)」という用語は、活性、機能、又はプロセスのレベルを変化させることを指す。「調節する」という用語は、活性、機能、又はプロセスを阻害することと刺激することの両方を包含する。「調節する(modulate)」という用語は、ここでは「調節する(regulate)」という用語と互換的に使用される。
【0112】
「核酸」という用語は、典型的には、大きなポリヌクレオチドを指す。「核酸」とは、デオキシリボヌクレオシド又はリボヌクレオシドで構成されているかどうか、及びホスホジエステル結合又は修飾結合、例えばホスホトリエステル、ホスホロアミデート、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチルエステル、アセトアミデート、カルバメート、チオエーテル、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロアミデート、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオエート、架橋ホスホロチオエート又はスルホン結合、及びそのような結合の組み合わせで構成されているかどうかにかかわらず、任意の核酸を意味する。「核酸」という用語には、具体的には、生物学的に存在する5種の塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン、及びウラシル)以外の塩基から構成される核酸もまた含まれる。
【0113】
ここで使用される場合、「核酸」という用語は、RNA、並びに一本鎖及び二本鎖DNA及びcDNAを包含する。更に、「核酸」、「DNA」、「RNA」という用語及び類似の用語には、核酸類似体、すなわちホスホジエステル骨格以外を有する類似体も含まれる。例えば、当該技術分野で知られており、骨格にホスホジエステル結合の代わりにペプチド結合を有する、いわゆる「ペプチド核酸」は、本開示の主題の範囲内であるとみなされる。「核酸」とは、デオキシリボヌクレオシド又はリボヌクレオシドで構成されているかどうか、及びホスホジエステル結合又は修飾結合、例えばホスホトリエステル、ホスホラミデート、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチルエステル、アセトアミデート、カルバメート、チオエーテル、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロアミデート、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオエート、架橋ホスホロチオエート又はスルホン結合、及びそのような結合の組み合わせで構成されているかどうかにかかわらず、任意の核酸もまた意味する。「核酸」という用語には、具体的には、生物学的に存在する5種の塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン、及びウラシル)以外の塩基から構成される核酸もまた含まれる。ここでは、ポリヌクレオチド配列を記述するために一般的な表記法が使用される:一本鎖ポリヌクレオチド配列の左端は5’末端であり;二本鎖ポリヌクレオチド配列の左端側は5’方向と呼ばれる。新生RNA転写物へのヌクレオチドの5’から3’への付加の方向は、転写方向と呼ばれる。mRNAと同じ配列を持つDNA鎖は「コード鎖」と呼ばれ;DNA上の参照点の5’に位置するDNA鎖上の配列は「上流配列」と呼ばれ;DNA上の参照点の3’にあるDNA鎖上の配列は「下流配列」と呼ばれる。
【0114】
別に特定されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮重型であり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質及びRNAをコードするヌクレオチド配列にはイントロンが含まれる場合がある。
【0115】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、典型的には、一般に約50ヌクレオチド以下の短いポリヌクレオチドを指す。ヌクレオチド配列がDNA配列(つまり、A、T、G、C)で表される場合、これには、「T」が「U」に置き換わるRNA配列(つまり、A、U、G、C)も含まれることが理解される。
【0116】
2つのポリヌクレオチドを「作用可能に連結した」と記述することは、一本鎖又は二本鎖核酸部分が、その2つのポリヌクレオチドのうちの少なくとも一つが、それが他のもので特徴づけられる生理学的効果を発揮できるように核酸部分内に配置された2つのポリヌクレオチドを含むことを意味する。例として、遺伝子のコード領域に作用可能に連結されたプロモーターは、コード領域の転写を促進することができる。
【0117】
ここで使用される場合、薬学的組成物の「非経口投与」には、対象の組織の物理的破壊及び組織の破壊を介した薬学的組成物の投与を特徴とする任意の投与経路が含まれる。従って、非経口投与には、限定されないが、組成物の注射、外科的切開を通した組成物の適用、組織貫通非外科的創傷を通した組成物の適用などによる薬学的組成物の投与が含まれる。特に、非経口投与には、限定されないが、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内注射、及び腎臓透析注入術が含まれると考えられる。
【0118】
「ペプチド」という用語は、典型的には、短いポリペプチドを指す。しかしながら、幾つかの実施態様では、「ペプチド」という用語は、本開示の主題の抗体、又はその断片若しくは誘導体を指す。而して、幾つかの実施態様では、「ペプチド」という用語は、インタクトな抗体を指す。
【0119】
ここで使用される「適用による」という用語は、任意の分子(例えば、本開示の主題の抗体、その断片、及び誘導体)の対象への投与を指す。
【0120】
「薬学的組成物」という用語は、少なくとも一種の活性成分を含む組成物を意味し、それにより、組成物は、哺乳動物(例えば、限定されないが、ヒト)における特定の有効な結果についての研究に適している。当業者であれば、当業者のニーズに基づいて活性成分が所望の有効な結果をもたらすかどうかを決定するのに適切な技術を理解し、評価するであろう。
【0121】
ここで使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語には、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水若しくは水/油エマルジョンなどのエマルジョン、及び様々なタイプの湿潤剤などの標準的な薬学的担体の任意のものが含まれる。この用語には、米国連邦政府の規制当局によって承認され、又はヒトを含む動物に使用するために米国薬局方に記載されている薬剤の任意のものも包含される。
【0122】
ここで使用される場合、「生理学的に許容される」エステル又は塩という用語は、薬学的組成物の任意の他の成分と適合性があり、組成物が投与される対象に有害ではない、活性成分のエステル又は塩の形態を意味する。
【0123】
「複数」とは少なくとも2つを意味する。
【0124】
「ポリヌクレオチド」は、核酸の一本鎖又は平行及び逆平行鎖を意味する。従って、ポリヌクレオチドは一本鎖又は二本鎖核酸でありうる。
【0125】
「ポリペプチド」とは、アミノ酸残基から構成されるポリマー、関連する天然に存在する構造変異体、及びペプチド結合を介して連結された合成の非天然の類似体、関連する天然に存在する構造変異体、及びその合成の非天然の類似体を指す。
【0126】
「合成ペプチド又はポリペプチド」とは、非天然のペプチド又はポリペプチドを意味する。合成ペプチド又はポリペプチドは、例えば自動ポリペプチド合成装置を使用して合成することができる。様々な固相ペプチド合成法が当業者に知られている。
【0127】
ここで使用される「防止する」という用語は、何かが起こらないようにすること、又は何かが起こる可能性があり又はおそらく起こることに対して事前の措置を講じることを意味する。医学の文脈では、「防止」とは一般に、疾患又は状態に罹患する可能性を減らすために取られる措置を指す。
【0128】
「予防性(preventive)」又は「予防的(prophylactic)」治療は、疾患又は障害の兆候を示さないか、又は初期の兆候のみを示す対象に施される治療である。予防的又は予防性治療は、疾患又は障害の発症に関連する病状の発症リスクを低下させる目的で施される。
【0129】
「プライマー」とは、指定されたポリヌクレオチド鋳型に特異的にハイブリダイズし、相補的ポリヌクレオチドの合成の開始点を提供することができるポリヌクレオチドを指す。このような合成は、合成が誘導される条件下、すなわちヌクレオチド、相補的ポリヌクレオチド鋳型、及びDNAポリメラーゼなどの重合剤の存在下にポリヌクレオチドプライマーを置くと起こる。プライマーは典型的には一本鎖であるが、二本鎖にすることもできる。プライマーは典型的にはデオキシリボ核酸であるが、多種多様な合成及び天然プライマーが多くの用途に有用である。プライマーは、合成の開始部位として機能するようにハイブリダイズするように設計された鋳型に相補的であるが、鋳型の正確な配列を反映する必要はない。このような場合、プライマーの鋳型への特異的ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存する。プライマーは、例えば発色部分、放射性部分、又は蛍光部分で標識され、検出可能な部分として使用されうる。
【0130】
「増殖する」という用語は、再生又は産生することを意味する。
【0131】
ここで使用される場合、末端アミノ基に関する「保護基」とは、ペプチドの末端アミノ基を指し、この末端アミノ基は、ペプチド合成において伝統的に用いられる様々なアミノ末端保護基の何れかと結合される。このような保護基には、例えば、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、スクシニル、及びメトキシスクシニルなどのアシル保護基;ベンジルオキシカルボニルなどの芳香族ウレタン保護基;及び脂肪族ウレタン保護基、例えば、tert-ブトキシカルボニル又はアダマンチルオキシカルボニルが含まれる。適切な保護基については、Gross及びMienhofer,1981を参照のこと。
【0132】
ここで使用される場合、末端カルボキシル基に関する「保護基」とは、ペプチドの末端カルボキシル基を指し、この末端カルボキシル基は、様々なカルボキシル末端保護基の何れかと結合される。このような保護基には、例えば、tert-ブチル、ベンジル、又はエステル若しくはエーテル結合を介して末端カルボキシル基に結合される他の許容可能な基が含まれる。
【0133】
「タンパク質」という用語は、典型的には、大きなポリペプチドを指す。ここでは、ポリペプチド配列を描くために一般的な表記法が使用される:ポリペプチド配列の左端はアミノ末端であり;ポリペプチド配列の右端はカルボキシル末端である。本開示の主題の幾つかの実施態様では、タンパク質は、抗体又はその断片若しくは誘導体である。
【0134】
ここで使用される「タンパク質調節経路」という用語は、タンパク質を調節する上流調節経路と、そのタンパク質が調節する下流事象の両方を指す。このような調節には、限定されないが、目的のタンパク質の転写、翻訳、レベル、活性、翻訳後修飾、及び機能、並びにタンパク質が調節する下流事象が含まれる。
【0135】
「タンパク質経路」及び「タンパク質調節経路」という用語は、ここでは互換的に使用される。
【0136】
ここで使用される場合、「精製された」という用語及び類似の用語は、天然環境において分子又は化合物に通常は付随する他の成分と比較しての、分子又は化合物の濃縮に関する。「精製された」という用語は、プロセス中に特定の分子の完全な純度が達成されていることを必ずしも示すわけではない。ここで使用される「高度に精製された」分子又は化合物は、90%を超える純度の分子又は化合物を指す。抗体及びその断片及び誘導体についての代表的な精製技術がここに開示される。
【0137】
「組換えポリヌクレオチド」とは、天然には一緒に結合していない配列を有するポリヌクレオチドを指す。増幅又は構築された組換えポリヌクレオチドは、適切なベクターに含めることができ、そのベクターを使用して、適切な宿主細胞を形質転換することができる。
【0138】
組換えポリヌクレオチドは、非コード機能(例えば、プロモーター、複製起点、リボソーム結合部位など)をまた果たすことができる。
【0139】
組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞」と呼ばれる。組換えポリヌクレオチドを含む、組換え宿主細胞内で発現される遺伝子は、「組換えポリペプチド」を産生する。
【0140】
「組換えポリペプチド」は、組換えポリヌクレオチドの発現により産生されるものである。
【0141】
「調節する」という用語は、目的の機能又は活性を刺激又は阻害することを指す。
【0142】
ここで使用される場合、「調節エレメント」という用語は、「調節配列」と互換的に使用され、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御エレメント、又はそのようなエレメントの任意の組み合わせを指す。
【0143】
「可逆的に埋め込み可能な」デバイスとは、動物の体内に(例えば、外科的に、又は動物の自然開口部への挿入によって)挿入し、その後、動物の健康に大きな害を与えることなく取り除くことができるデバイスである。
【0144】
ここで使用される「試料」とは、幾つかの実施態様では、限定されないが、正常組織試料、患部組織試料、生検、血液、唾液、糞便、精液、涙、及び尿を含む、対象からの生体試料を指す。試料は、目的の細胞、組織、又は体液を含む対象から得られる任意の他の材料源であってもよい。試料は細胞又は組織培養物から取得することもできる。
【0145】
ここで使用される場合、「二次抗体」という用語は、別の抗体(一次抗体)の定常領域に結合する抗体を指す。
【0146】
「シグナル配列」という用語は、細胞内でポリペプチドがたどる経路を指示するペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を意味し、すなわち、これは、限定されないが、細胞からのポリペプチドの最終的な分泌を含む、細胞内でのポリペプチドの細胞プロセシングを指示する。シグナル配列は、排他的ではないが、典型的には、小胞体へのポリペプチドの合成を標的とするポリペプチドのアミノ末端に見出されるアミノ酸の配列である。場合によっては、シグナルペプチドはポリペプチドからタンパク質分解的に除去され、よって成熟タンパク質には存在しない。
【0147】
「低分子干渉RNA(siRNA)」とは、とりわけ、センス鎖とアンチセンス鎖の両方から構成される単離されたdsRNA分子を意味する。幾つかの実施態様では、それは10ヌクレオチド長を超える。siRNAはまた、標的遺伝子からのセンス配列と相補的アンチセンス配列の両方を有する単一転写産物、例えばヘアピンを指す。siRNAには更に、任意の形態のdsRNA(より大きなdsRNAのタンパク質分解的に切断された産物、部分的に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え産生されたRNA)、並びに一つ又は複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換、及び/又は改変によって天然に存在するRNAとは異なる改変RNAが含まれる。
【0148】
ここで使用される場合、分子との結合を形成する基質に関して使用されるときの「固体担体」という用語は、様々な分子と結合(幾つかの実施態様では共有結合)を形成することができる溶媒不溶性基質に関する。担体は、限定されないが、細胞又はバクテリオファージ粒子などの性質が生物学的であるもの、又は限定されないが、アクリルアミド誘導体、アガロース、セルロース、ナイロン、シリカ、又は磁化粒子などの合成物でありうる。
【0149】
「組織培養環境において細胞を維持するのに適した固体担体」という用語は、細胞を含む培地を添加することができ、細胞を維持又は増殖させるための組織培養インキュベーターなどの適切な環境内に担体を配することができる、組織培養皿又はプレート、更にはカバーなどの任意の表面を意味する。もちろん、これは無菌であるか、又は滅菌可能な固体担体であるべきである。担体は細胞付着に適したものである必要はない。
【0150】
「固体担体は、細胞培養を目的とした低付着性、超低付着性、又は非付着性の担体である」という用語は、哺乳動物細胞が表面に付着する能力を向上させるように処理又は調製されていない、細菌学的プレート又は組織培養皿若しくはプレートなどのビヒクルを指す。例えば、細胞の付着を防ぐために寒天の層が添加されたディッシュが含まれうる。細菌学的プレートは一般に寒天と共に使用され、その場合、細菌は寒天中に懸濁されて、寒天中で増殖するため、細菌プレートは哺乳動物細胞の付着を促進するように処理されないことが当業者には知られている。
【0151】
ここで使用される「標準」という用語は、比較のために使用されるものを指す。例えば、標準は、対照試料に投与又は添加され、試験試料中の分子を測定する際の結果を比較するために使用される既知の標準薬剤又は分子でありうる。標準とは、既知の量で試料に添加され、目的のマーカーを測定する前に試料を処理し又は精製若しくは抽出手順に供する際の精製若しくは回収率などを決定するのに役立つ薬剤又は分子などの「内部標準」を指す場合もある。
【0152】
ここで使用される「刺激する」という用語は、対照値と比較してより高くなるように活性又は機能レベルを誘導又は増加させることを意味する。刺激は直接的又は間接的機構によりうる。幾つかの実施態様では、活性又は機能は、対照値と比較して少なくとも10%刺激され、更に幾つかの実施態様では少なくとも25%、幾つかの実施態様では少なくとも50%刺激される。
【0153】
ここで使用される「刺激剤」という用語は、限定されないが、創傷治癒、血管新生、骨治癒、骨芽細胞生産及び機能、並びに破骨細胞生産、分化、及び活性を含む、目的のプロセス又は機能の刺激をもたらす、任意の組成物、分子又は薬剤を指す。
【0154】
診断又は治療の「対象」は、ヒトを含む動物である。ペット及び家畜も含まれる。
【0155】
ここで使用される場合、「それを必要とする対象」とは、本開示の主題の方法から恩恵を受けるであろう患者、動物、哺乳動物、又はヒトである。
【0156】
2つのポリヌクレオチドを「作用可能に連結した」と記述することは、一本鎖又は二本鎖核酸部分が、2つのポリヌクレオチドのうちの少なくとも一つが、それが他のもので特徴づけられる生理学的効果を発揮できるように核酸部分内に配置された2つのポリヌクレオチドを含むことを意味する。例として、遺伝子のコード領域に作用可能に連結されたプロモーターは、コード領域の転写を促進することができる。
【0157】
ここで使用される場合、「実質的に相同なアミノ酸配列」には、参照抗体鎖のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%の相同性、幾つかの実施態様では少なくとも約96%の相同性、更に幾つかの実施態様では少なくとも約97%の相同性、幾つかの実施態様では少なくとも約98%の相同性、最も多くの実施態様では少なくとも約99%以上の相同性を有するアミノ酸配列が含まれる。アミノ酸配列の類似性又は同一性は、BLAST(基本的なローカルアライメント検索ツール)2.0.14アルゴリズムを用いるBLASTP及びTBLASTNプログラムを使用して計算できる。これらのプログラムに使用されるデフォルト設定は、本開示の主題の目的のために実質的に類似したアミノ酸配列を同定するのに適している。
【0158】
「実質的に相同な核酸配列」とは、参照核酸配列に対応する核酸配列を意味し、この対応する配列は、参照核酸配列によってコードされるアミノ酸配列と実質的に同じ構造及び機能を有するアミノ酸配列をコードし;例えば、アミノ酸配列の機能に有意に影響を及ぼさないアミノ酸の変化のみが生じる。幾つかの実施態様では、実質的に同一の核酸配列は、参照核酸配列によってコードされる同じアミノ酸配列をコードする。実質的に類似した核酸配列と参照核酸配列との間の同一性のパーセンテージは、少なくとも約50%、65%、75%、85%、95%、99%又はそれ以上である。核酸配列の実質的な同一性は、例えば物理的/化学的方法(すなわち、ハイブリダイゼーション)又はコンピュータアルゴリズムによる配列アラインメントによって、二つの配列の配列同一性を比較することによって決定されうる。ヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列と実質的に類似しているかどうかを決定するための適切な核酸ハイブリダイゼーション条件は、50℃での7%ドデシル硫酸ナトリウムSDS、0.5M NaPO4、1mM EDTAで、50℃での2×標準クエン酸塩水(SSC)、0.1%SDS中の洗浄を伴い;幾つかの実施態様では、50℃での7%(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTAで、50℃での1×SSC、0.1%SDS中の洗浄を伴い;幾つかの実施態様では、50℃での7%SDS、0.5M NaPO4、1mM EDTAで、50℃での0.5×SSC、0.1%SDS中の洗浄を伴い;更に幾つかの実施態様では、50℃での7%SDS、0.5M NaPO4、1mM EDTAで、65℃での0.1×SSC、0.1%SDS中の洗浄を伴う。二つの核酸配列間の実質的な類似性を決定するための適切なコンピュータアルゴリズムには、GCSプログラムパッケージ(Devereux等,1984)、及びBLASTN又はFASTAプログラム(Altschul等,1990a;Altschul等,1990b;Altschul等,1997)が含まれる。これらのプログラムで提供されるデフォルト設定は、本開示の主題の目的のために核酸配列の実質的な類似性を決定するのに適している。
【0159】
「実質的に純粋な」という用語は、天然に付随する成分から分離された分子、例えばタンパク質又はポリペプチドを記述する。典型的には、分子は、試料中の全材料の少なくとも10%、更に幾つかの実施態様では少なくとも20%、更に幾つかの実施態様では少なくとも50%、更に幾つかの実施態様では少なくとも60%、更に幾つかの実施態様では少なくとも75%、更に幾つかの実施態様では少なくとも90%、最も多くの実施態様では少なくとも99%(体積、湿重量又は乾燥重量、又はモルパーセント又はモル分率)が目的の分子であるとき、実質的に純粋である。純度は、任意の適切な方法によって、例えば、ポリペプチドの場合には、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、又はHPLC分析によって測定することができる。分子、例えばタンパク質は、天然に付随する成分が本質的に含まれていない場合、又は天然の状態でそれに付随する天然の汚染物質から分離されている場合にも、実質的に精製されている。
【0160】
「界面活性剤(surface active agent)」又は「界面活性剤(surfactant)」は、材料の表面張力を低下させ、材料内への且つ材料を通した浸透を可能にする能力を有する物質である。
【0161】
ここで使用される「症状」という用語は、患者が経験し、疾患を示す、構造、機能、又は感覚における正常からの逸脱又は任意の病的な現象を指す。対照的に、「兆候」は疾患の客観的な証拠である。例えば、鼻血は兆候である。それは患者、医師、看護師、その他の観察者には明らかである。
【0162】
「治療的」処置とは、病理学的兆候を示す対象に、それらの兆候を軽減又は除去する目的で施される治療である。
【0163】
分子の「治療有効量」とは、分子が投与される対象に有益な効果をもたらすのに十分な分子の量である。
【0164】
「組織培養皿又はプレート」という語句の使用は、増殖又は分化のために細胞を播種するために使用できる任意の種類の容器を指す。
【0165】
「熱傷(thermal injury)」という用語は、ここでは「熱傷(thermal burn)」と互換的に使用される。
【0166】
「組織」とは、(1)特定の機能を実施するために結合した類似細胞の群;(2)類似の構造及び機能を有する細胞の集合体からなる生物の一部;又は(3)筋肉若しくは神経組織など、その構造と機能によって同様に特徴付けられる細胞の集団を意味する。
【0167】
ここで使用される「局所適用」という用語は、皮膚などの表面への投与を指す。この用語は、皮膚の場合には「皮膚への適用」と互換的に使用される。「局所適用」は「直接適用」である。
【0168】
「経皮(transdermal)」送達とは、薬物が皮膚又は粘膜組織を通過して血流中に入る送達を意味する。経皮とは、薬物又は分子の局所適用による薬物又は分子の投与のための入り口としての皮膚をまた指す。「経皮(transdermal)」は「経皮(percutaneous)」と互換的に使用される。
【0169】
「トランスフェクション」という用語は、「遺伝子導入」、「形質転換」、及び「形質導入」という用語と互換的に使用され、ポリヌクレオチドの細胞内導入を意味する。「トランスフェクション効率」とは、トランスフェクションを受けた細胞によって取り込まれた導入遺伝子の相対量を指す。実際には、トランスフェクション効率は、トランスフェクション手順後に発現されるレポーター遺伝子産物の量によって推定される。
【0170】
ここで使用される場合、「導入遺伝子」という用語は、アミノ酸配列をコードする核酸に作用可能に連結されたプロモーター/調節配列をコードする核酸を含む外因性核酸配列を意味し、その外因性核酸はトランスジェニック哺乳動物によってコードされる。
【0171】
ここで使用される場合、「トランスジェニック哺乳動物」という用語は、その生殖細胞が外因性核酸を含む哺乳動物を意味する。
【0172】
ここで使用される場合、「トランスジェニック細胞」は、導入された核酸配列によってコードされる遺伝子の発現を可能にする形で細胞に導入されている核酸配列を含む任意の細胞である。
【0173】
ここで使用される「治療する(treat)」という用語は、患者又は対象が症状を経験する頻度を減らすこと、又は症状を経験する頻度を減らすために薬剤又は分子を投与することを意味する。
【0174】
「予防的」治療は、疾患に関連する病状を発症するリスクを低減する目的で、疾患の兆候を示さないか又は疾患の初期の兆候のみを示す対象に施される治療である。
【0175】
ここで使用される場合、「治療する(treating)」という用語には、特定の障害若しくは状態の予防、又は特定の障害若しくは状態に関連する症状の緩和、及び/又は前記症状の予防若しくは除去が含まれる。「予防的」治療は、疾患に関連する病状を発症するリスクを低減する目的で、疾患の兆候を示さないか又は疾患の初期の兆候のみを示す対象に施される治療である。
【0176】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用されうる物質の組成物である。限定されないが、線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性分子と結合したポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含む、多数のベクターが当該技術分野で知られている。従って、「ベクター」という用語には、自律複製プラスミド又はウイルスが含まれる。この用語はまた、例えばポリリジン分子、リポソームなどの、細胞への核酸の移入又は送達を促進する非プラスミド及び非ウイルス分子を含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、限定されないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、組換えウイルスベクターなどが含まれる。非ウイルスベクターの例には、限定されないが、リポソーム、DNAのポリアミン誘導体などが含まれる。
【0177】
「発現ベクター」とは、発現されるヌクレオチド配列に作用可能に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現に十分なシス作用性エレメントを含む;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、又はインビトロ発現系で供給されうる。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドを組み込んだコスミド、プラスミド(例えば、ネイキッド、又はリポソームに含まれる)及びウイルスなど、当該技術分野で知られている全てのベクターが含まれる。
【0178】
ここで使用される場合、「創傷」という用語は、組織又は細胞層の物理的な引き裂き、破損、又は破裂を意味する。創傷は、外科的処置を含むあらゆる物理的損傷によって、又は疾患、障害状態の結果として発生する場合がある。
【0179】
ここに記載されていない、本開示の主題の実施に有用な方法もまた当該技術分野で知られている。有用な方法には、PCT国際特許出願国際公開第2007/019107号;国際公開第2007/030652号;国際公開第2007/089798号;国際公開第2008/060374号に記載されているものが含まれ、それらの方法は出典明示によりここに援用される。
【0180】
II.例示的な実施態様
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、フィブロネクチンのインテグリン結合ドメイン内の機械的に露出された潜在部位を標的とするのに有用な組成物及び方法を提供する。従って、幾つかの実施態様では、本開示の主題は、試料、任意選択的に対象から単離された又は対象内に存在する生体試料中のフィブロネクチン(FN)の立体構造状態を標的にするための方法を提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの立体構造状態に対して選択的結合活性を有する組成物と試料を接触させることを含み、それによって立体構造状態が標的とされる。幾つかの実施態様では、試料は、組織修復を受けている組織、罹患している組織、障害を患っている組織、又はそれらの任意の組み合わせを含むか又は含むことが疑われる。
【0181】
本開示の主題は、組織形成及び線維症の間のフィブロネクチン(Fn)内のインテグリン結合メカノスイッチの検出を提供する。開示された結果は、インテグリン結合ドメイン内の長い間理論化されていたFn立体構造スイッチのインビボでの存在と活性化を実証し、発生過程と病理学的組織線維症の両方におけるインテグリン特異性の歪みにおけるその影響を示唆する。従って、本開示の修飾H5-IgG1抗体などの抗体は、重要な発生過程及び疾患過程を検出及び標的化するための魅力的なアプローチとなる。
【0182】
修飾H5抗体の結合動態及び活性がここに開示される。修飾H5抗体は、ここではFnIII9-4G-10(4G)とも呼ばれるFnIII9を認識し、Fn吸収表面へのαvβ3結合を選択的に阻害する。
【0183】
特に、本開示の主題の修飾H5抗体は、H5抗体の可変領域をIgG1サブクラスのユニバーサル定常領域と組み合わせることによって産生された。H5抗体の重鎖可変領域をコードする核酸配列を、CH1、CH2、及びCH3を含むIgG1のIgG1サブクラス定常領域をコードする配列と組み合わせた。同様に、H5抗体の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を、定常軽(CL)鎖-カッパをコードする核酸配列と組み合わせた。修飾H5抗体を全長IgG1型で発現させるために、H5-軽鎖可変領域及びH5-重鎖可変領域をコードするドナーコンストラクトを、Cas9ターゲティングによってハイブリドーマ細胞のゲノムの免疫グロブリン遺伝子座(IgG1)内に安定に組み込んだ。修飾H5-IgG1抗体を発現する細胞の培養上清をIgGの存在について分析し、定量し、実施例1に記載のELISA結合アッセイにおいて使用した。哺乳動物細胞におけるH5-IgG1の常套的な大規模生産について、H5-重鎖可変領域及びH5-軽鎖可変領域配列は、Gibson Assembly(登録商標)Cloning、NEBUILDER(登録商標)HiFi DNA Assembly(New England Biolabs,Ipswich.Massachusetts,United States of America)、IN-FUSION(登録商標)Snap Assembly(Takara Bio USA,Inc.,Mountain View,California,United States of America)、又は任意の他の戦略によって、二つの独立したIgG1発現ベクター骨格に別個にクローニングされうる。これらのプラスミドはそれぞれヒトIgG1重鎖とκ軽鎖の定常領域をコードしており、選択した可変領域を挿入するためのフレームワークを提供する。H5-IgG1の一過性発現の場合、H5-重鎖及びH5-軽鎖を含むプラスミドを、293-6E又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの選択した哺乳動物浮遊細胞に同時トランスフェクトする。トランスフェクション後48~96時間の間に培養上清を収集し、プロテインL又はプロテインGクロマトグラフィーによる全長H5-IgG1の単離に使用する。
【0184】
修飾H5-IgG1抗体及びその抗原結合断片は、FN断片に対する遥かに高い親和性を特徴としており、等モル濃度の親H5抗体と比較した場合、少なくとも50倍高い結合を示す。更に、修飾H5-IgG1抗体は、FN-9-10(健康)型と比較して、FN-4G-10(すなわち、罹患)型に対してより高い親和性を示した。
【0185】
而して、本開示の主題は、Fnの別個の立体構造状態を検出するのに有用な組成物及び方法を提供する。幾つかの実施態様では、修飾H5-IgG1抗体及びその抗原結合断片のFnへの結合は、FnIII9-4G-10(4G)などのFnの別個の立体構造状態を検出することができる。
【0186】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、Fnの別個の立体構造状態を検出するのに有用な組成物及び方法を提供し、結合比は、正常組織を、罹患し又は障害を患っている組織から区別するのに有用である。幾つかの実施態様では、組織における線維症の重症度を判定することができる。幾つかの実施態様では、本開示の主題は、Fnにおける一過性の力誘発性立体構造変化を検出するのに有用である。この組成物及び方法は、組織修復中の細胞収縮力の初期の分子シグネチャーを標的とするのに有用である。この組成物及び方法は、疾患及び障害における細胞収縮力の初期の分子シグネチャーを標的とするのに有用である。
【0187】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、病的ECMを検出し比較するのに有用な組成物及び方法を提供する。幾つかの実施態様では、本開示の主題は、線維化ECMを検出し区別するのに有用な組成物及び方法を提供する。
【0188】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、高ECM歪みの領域を描写するのに有用な組成物及び方法を提供する。幾つかの実施態様では、高ECM歪みは、おそらく進行中の線維症を示している、インテグリン結合ドメインの立体構造によるαvインテグリン結合特性の増強と関連している。
【0189】
幾つかの実施態様では、本開示の主題の抗体は、ECMから構造情報を抽出するのに有用である。
【0190】
幾つかの実施態様では、組成物及び方法は、抗体:Fn比を決定するのに有用であり、この比は、更に正常組織と患部組織を診断又は区別するため、及び対象が疾患又は障害と診断された場合に施される治療の種類を決定するために使用することができる。
【0191】
本開示の主題は、他の抗体及びその生物学的に活性な断片及びホモログ、並びにここに開示の特性について新しい抗体を調製し試験するための方法を提供する。
【0192】
幾つかの実施態様では、抗体又はその生物学的に活性な断片若しくはホモログは、ここに開示されたフィブロネクチン相互作用シグナル伝達経路に関連する疾患又は障害を治療するのに有用である。幾つかの実施態様では、経路はメカノスイッチによって調節される。
【0193】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、生物学的に活性な抗体、又はその生物学的に活性な断片若しくはホモログを使用する。幾つかの実施態様では、単離されたポリペプチドは、ここに開示された配列の少なくとも一つのアミノ酸配列を有するポリペプチドと少なくとも約30%相同な哺乳動物分子を含む。幾つかの実施態様では、単離されたポリペプチドは、ここに開示されたペプチド配列の少なくとも一つと少なくとも約35%相同であり、更に幾つかの実施態様では約40%相同であり、更に幾つかの実施態様では約45%相同であり、幾つかの実施態様では約50%相同であり、更に幾つかの実施態様では約55%相同であり、幾つかの実施態様では約60%相同であり、幾つかの実施態様では約65%相同であり、幾つかの実施態様、更に幾つかの実施態様では約70%相同であり、更に幾つかの実施態様では約75%相同であり、幾つかの実施態様では約80%相同であり、更に幾つかの実施態様では約85%相同であり、更に幾つかの実施態様では約90%相同であり、幾つかの実施態様では約95%相同であり、更に幾つかの実施態様では約96%相同であり、更に幾つかの実施態様では約97%相同であり、更に幾つかの実施態様では約98%相同であり、最も多くの実施態様では約99%相同である。
【0194】
本開示の主題は、アミノ酸の欠失、付加、及び置換、特に保存的置換を含む、ここに開示された抗体及びその断片の修飾を更に包含する。本開示の主題は、インビボ半減期を増加させ、インビボ分解を減少させるための修飾をまた包含する。置換、付加、及び欠失は、ここに開示された活性が実質的に同じである限り、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、及び25の変化を含みうる。
【0195】
本開示の主題は、本開示の主題の抗体、又はその断片若しくはホモログをコードする核酸配列を含む単離された核酸を含む。幾つかの実施態様では、核酸配列は、本開示の主題の抗体配列、又はそのホモログの生物学的に活性な断片を含むペプチドをコードする。
【0196】
幾つかの実施態様では、本開示の主題のペプチド(抗体又は断片)のホモログは、一つ又は複数のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有し、ここに記載される配列同一性を有するものである。幾つかの実施態様では、置換、欠失、又は追加は保存的である。幾つかの実施態様では、本開示の主題のペプチドにおいてシステイン残基がセリン又はアラニンに置換される。
【0197】
幾つかの実施態様では、対象は哺乳動物である。幾つかの実施態様では、哺乳動物はヒトである。
【0198】
本開示の主題は、精製された単離ペプチド、組換えペプチド、及び合成ペプチドの使用を包含する。
【0199】
本開示の主題は、ここに開示された露出した潜在部位を標的とすることができ、例えば、ここに開示された構造変化を認識し、ここに開示された同じ活性を有しうる薬物又は他の分子の使用を更に包含する。
【0200】
従って、本開示の主題は、幾つかの実施態様では、試料中のフィブロネクチン(FN)の立体構造状態を検出するための方法を提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、試料を、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの立体構造状態に対して選択的結合活性を有する組成物と接触させることと、組成物の結合を検出することを含み、それにより、FNの立体構造状態が検出される。幾つかの実施態様では、試料は、組織修復を受けている組織、罹患している組織、障害を患っている組織、又はそれらの組み合わせを含むか、又は含むことが疑われる。幾つかの実施態様では、試料は、病的細胞外マトリックス(ECM)を含むか、又は含むことが疑われる。幾つかの実施態様では、試料は線維化ECMを含むか、又は含むことが疑われる。
【0201】
幾つかの実施態様では、組成物の結合を検出することは、正常組織と患部組織とを区別することを含む。幾つかの実施態様では、組成物の結合を検出することは、例えば組成物のFNに対する結合比を使用することによって、試料中の線維症の重症度を判定することを含む。幾つかの実施態様では、組成物の結合を検出することは、FNにおける一過性の力誘発性立体構造変化を検出することを含む。幾つかの実施態様では、組成物の結合を検出することは、試料中のECMの構造情報を抽出することを含む。幾つかの実施態様では、試料中のECMの構造情報を抽出することは、高ECM歪みの領域を描写することを含む。幾つかの実施態様では、高ECM歪みは、αvインテグリン結合特性の増強と関連している。
【0202】
幾つかの実施態様では、本方法は、組成物の結合の検出に基づいて、対象に施される治療の種類を決定することを更に含む。
【0203】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、対象における疾患及び/又は障害を治療するための方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、治療を必要とする対象に、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの立体構造状態に対して選択的結合活性を有する組成物の治療有効量を投与することを含み、それによって治療が達成される。幾つかの実施態様では、疾患及び/又は障害は、組織修復を受けている組織、罹患している組織、障害を患っている組織、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される特徴を有する。幾つかの実施態様では、特徴は病的細胞外マトリックス(ECM)である。幾つかの実施態様では、特徴は線維化ECMである。
【0204】
本開示の方法の幾つかの実施態様では、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの立体構造状態に対して選択的結合活性を有する組成物は、配列番号:2、4、6、14、16、若しくは18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む単離され精製された抗体、その断片、或いは配列番号:2、4、6、14、16、若しくは18の配列と約95%同一の配列を有する抗体、又はその断片である。幾つかの実施態様では、アミノ酸配列は、アミノ酸欠失、アミノ酸付加、アミノ酸置換、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの修飾を含む。幾つかの実施態様では、単離された抗体は複数のコピーで存在し(すなわち、多量体化され)、各コピーはリンカーによって連結されている。複数のコピーには、幾つかの実施態様では2つのコピー、幾つかの実施態様では3つのコピー、幾つかの実施態様では4つのコピー、幾つかの実施態様では5つのコピー、幾つかの実施態様では5つを超えるコピーが含まれうる。幾つかの実施態様では、多量体組成物の個々のメンバーは互いに同一であり、幾つかの実施態様では、多量体組成物の一又は複数の個々のメンバーは、多量体組成物の少なくとも一つの他の個々のメンバーとは異なる。
【0205】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの立体構造状態に対して選択的結合活性を有する分子をスクリーニングするための方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの立体構造状態を含む試料を提供することと;試料を候補分子と接触させることと;候補分子の試料への結合を検出することを含む。幾つかの実施態様では、候補分子は分子ライブラリーのメンバーである。幾つかの実施態様では、候補化合物は小分子又は抗体である。幾つかの実施態様では、FNの立体構造状態は、Fnにおける力誘発性立体構造変化である。
【0206】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、本開示の方法によって同定される化合物をまた提供する。
【0207】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、本開示の主題に係る抗体又はその断片を含む治療有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含み、それによって治療が達成される、対象における疾患及び/又は障害を治療するための方法をまた提供する。
【0208】
本開示の主題はまた幾つかの実施態様では、対象におけるFnIII9-4G-10(4G)を含むFNの力誘発性立体構造状態の異常発現に関連する疾患又は障害の結果の少なくとも一つの症状を改善するための方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、本開示の主題に係る抗体又はその断片を含む組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、FnIII9-4G-10(4G)を含むFNの力誘発性立体構造状態の異常発現に関連する疾患又は障害の結果として生じる少なくとも一つの症状が改善される。
【0209】
治療方法の幾つかの実施態様では、疾患又は障害は、組織修復を受けている組織、罹患している組織、障害を患っている組織、又はそれらの任意の組み合わせに関連する。幾つかの実施態様では、疾患又は障害は、病的細胞外マトリックス(ECM)に関連している。幾つかの実施態様では、疾患又は障害は線維化ECMに関連している。
【0210】
III.本開示の主題の例示的な配列
本開示の主題は、ここに記載される活性を有する様々な抗体、並びにその生物学的に活性な断片及びホモログの使用を提供する。
【0211】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、配列番号:2、4、6、14、16、若しくは18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む単離され精製された抗体、その断片、配列番号:2、4、6、14、16、若しくは18の何れか一つの配列と約95%同一であるアミノ酸配列を有する抗体、その断片、及び前述の配列の何れかの実質的に相同なアミノ酸配列を提供する。幾つかの実施態様では、アミノ酸配列は、アミノ酸欠失、アミノ酸付加、アミノ酸置換、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの修飾を含む。幾つかの実施態様では、抗体又はその断片はヒト化されている。
【0212】
幾つかの実施態様では、単離され精製された抗体、又はその断片若しくはホモログは、配列SYAMS(配列番号:8)の重鎖CDR1、配列DIYDGGGTNYADSVKG(配列番号:10)の重鎖CDR2、配列TADNFDY(配列番号:12)の重鎖CDR3、配列RASQSISSYLN(配列番号:20)の軽鎖CDR1、配列AASTLQS(配列番号:22)の軽鎖CDR2、及び配列QQANSAPTT(配列番号:24)の軽鎖CDR3を含む。
【0213】
幾つかの実施態様では、単離され精製された抗体、又はその断片若しくはホモログは、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号:40)を含む重鎖フレームワーク領域1、WVRQAPGKGLEWV(配列番号:41)を含む重鎖フレームワーク領域2、RFTTSRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYC(配列番号:42)を含む重鎖フレームワーク領域3、及びWGQGTLVTVSS(配列番号:43)を含む重鎖フレームワーク領域4を含み;並びに/又は単離され精製された抗体は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:44)を含む軽鎖フレームワーク領域1、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号:45)を含む軽鎖フレームワーク領域2、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:46)を含む軽鎖フレームワーク領域3、及びFGQGTKVEIK(配列番号:47)を含む軽鎖フレームワーク領域4を更に含む。
【0214】
幾つかの実施態様では、単離され精製された抗体、又はその断片若しくはホモログは、そのN末端、そのC末端、又は両方に修飾を含む。幾つかの実施態様では、修飾は、ペプチドタグ、SARAHドメイン、又はそれらの組み合わせの付加を含む。幾つかの実施態様では、タグは、hisタグ、mycタグ、VSVタグ、HAタグ、SortaseAタグ、PelB配列、又はそれらの一若しくは複数の任意の組み合わせを含む。幾つかの実施態様では、Hisタグは、アミノ酸配列HHHHHH(配列番号:35)を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、mycタグは、アミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号:33)を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、VSVタグは、アミノ酸配列YTDIEMNRLGK(配列番号:34)を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、HAタグは、アミノ酸配列YPYDVPDYA(配列番号:36)を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、SortaseAタグは、アミノ酸配列LPXTG(配列番号:48)を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、ここで、配列番号:48のアミノ酸3のXは任意のアミノ酸でありうる。幾つかの実施態様では、PelB配列は、アミノ酸配列MKYLLPTAEAGLLLLLAAPQIA(配列番号:49)を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、本開示の主題の単離され精製された抗体、又はその断片若しくはホモログは、Hisタグ、mycタグ、VSVタグ、HAタグ、SortaseAタグ、及びPelB配列の、これら配列の一若しくは複数又は列挙配列の一若しくは複数の一を更に超える任意の組み合わせを含む、一又は複数の任意の組み合わせを含む。幾つかの実施態様では、SARAHドメインは、配列番号:28~32からなる群から選択される配列を含む。
【0215】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、ここに開示された抗体及び断片をコードする単離され精製された核酸配列、及びそれらと実質的に相同な核酸配列をまた提供する。
【0216】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、組換え核酸及びそれと実質的に相同な核酸配列をまた提供する。幾つかの実施態様では、組換え核酸は、配列番号:4を含む第一のアミノ酸配列を含むVセグメント、配列番号:16を含む第二のアミノ酸配列を含むVセグメント、又はその組み合わせをコードする第一の核酸セグメントを含み、ここで、第一及び第二のセグメントは、任意選択的に同じリーディングフレームに存在する。幾つかの実施態様では、組換え核酸は、第一及び第二のセグメントをインフレームで一緒に結合するリンカーペプチドをコードする第三の核酸セグメントを更に含む。幾つかの実施態様では、組換え核酸は、組換え核酸が組換えインタクト抗体をコードするように、インタクト抗体の一又は複数の部分配列をコードする一又は複数の追加の核酸セグメントを更に含む。
【0217】
幾つかの実施態様では、本開示の抗体、その断片、及びホモログは、発現、安定性、精製、単離、又は他の所望の特徴又は態様を促進するために使用することができる、タグ配列、リンカー配列、スペーサー配列、及び/又は他の追加の配列を含みうる。そのような配列の複数のコピーを用いることができる。そのような配列は、本開示の主題の抗体、その断片、若しくはホモログのN末端、C末端、又は両方に付加されうる。代表的なそのような配列には、SARAH配列が含まれる。配列番号:28~32は、本開示の主題の抗体、その断片、若しくはホモログのN末端、C末端、又は両方に付加されうる例示的なSARAHドメインのアミノ酸配列である。代表的なそのような配列には、myc、VSV、His、HA、SortaseA、及びPelBタグなどのタグ配列もまた含まれる。限定ではなく特定の例としては、配列番号:33~38は、本開示の主題の抗体、その断片、若しくはホモログのN末端、C末端、又は両方に付加されうるN末端、C末端、又はその両方に付加されうる、例示的なタグのアミノ酸配列である。EQKLISEEDL(配列番号:33)は例示的なmycタグであり、YTDIEMNRLGK(配列番号:34)は例示的なVSVタグであり、HHHHHH(配列番号:35)は例示的なHisタグであり、YPYDVPDYA(配列番号:36)は例示的なHAタグであり、LPTEGG(配列番号:37)は例示的なSortaseAタグであり、MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMA(配列番号:38)は例示的なPelBタグである。
【0218】
幾つかの実施態様では、本開示の主題に係る抗体又はその断片は、SARAHドメインによって修飾される。SARAHドメインを取り込むための代表的なアプローチは、それぞれの全体が出典明示によりここに援用される、欧州特許出願第17868682.0号;PCT国際特許出願国際公開第2018/088403号;米国特許出願第16/345639号;及びArimori等,2017に記載されている。幾つかの実施態様では、SARAHドメインのN末端は、本開示の主題に係る抗体又はその断片の重鎖ドメイン(V領域)のC末端及び/又は軽鎖ドメイン(V領域)のC末端に連結される。SARAHドメインは、N末端側の短いヘリックス(h1)とC末端側の長いヘリックス(h2)を含むドメイン(ペプチド)であり、幾つかの実施態様では、通常は42から54、任意選択的に43から49、更に任意選択的に47から49、また更に任意選択的に49のアミノ酸残基を含み、h2と別のSARAHドメインとの間に逆平行コイルドコイルを形成する特性を有する。h1は5から7のアミノ酸残基を含み得、h2は38から42個のアミノ酸残基を含みうることに留意されたい。
【0219】
ここで使用されるSARAHドメインは、本開示を検討した当業者にとって適切と思われる任意のSARAHドメインでありうる。限定ではない更なる例では、二つのSARAHドメインがh2間で逆平行コイルドコイルを形成する場合、二つのSARAHドメイン(2つのh1)の両N末端間の距離は、任意選択的に約35Aから45A、更に任意選択的に約39Aから41A、更に任意選択的に約40Aである。このようなSARAHドメインの特定の例には、ヒト哺乳動物無菌20様キナーゼ1ポリペプチドのSARAHドメイン(hMST1;DYEFLKSWTVEDLQKRLLALDPMMEQEIEEIRQKYQSKRQPILDAIEAK、配列番号:28;GENBANK(登録商標)生物配列データベースの受入番号NP_006273.1のアミノ酸432~480に相当)、ヒト哺乳動物無菌20様キナーゼ2ポリペプチドのSARAHドメイン(hMST2;DFDFLKNLSLEELQMRLKALDPMMEREIEELRQRYTAKRQPILDAMDAK、配列番号:29;GENBANK(登録商標)生物配列データベースの受入番号NP_001243242.1のアミノ酸325~373に相当)、ヒトras関連ドメイン含有プロテイン5アイソフォームCポリペプチドのSARAHドメイン(hRAF5;GEVEWDAFSIPELQNFLTILEKEEQDKIQQVQKKYDKFRQKLEEALRES、配列番号:30;GENBANK(登録商標)生物配列データベースの受入番号NP_872606.1のアミノ酸212~260に相当)、ヒトras関連ドメイン含有プロテイン1アイソフォームBポリペプチドのSARAHドメイン(hRAF1;GEVNWDAFSMPELHNFLRILQREEEEHLRQILQKYSYSRQKIQEALHAS、配列番号:31;GENBANK(登録商標)生物配列データベースの受入番号NP_001193886.1のアミノ酸138~186と47/49アミノ酸同一性を示す)、ヒトタンパク質salvadorホモログ1ポリペプチドのSARAHドメイン(hSAV1;HILKWELFQLADLDTYQGMLKLLFMKELEQIVKMYEAYRQALLTELENR、配列番号:32;GENBANK(登録商標)生物配列データベースの受入番号NP_068590.1のアミノ酸320~368に相当)が含まれ、更に、前述のSARAHドメインの一つと幾つかの実施態様では85%以上、幾つかの実施態様では90%以上、幾つかの実施態様では95%以上の配列相同性を有するものが含まれる。前述の代表的なSARAHドメインに関して、一般的なデザインアプローチは、2残基(Gly-Ser)リンカーを介して49残基のSARAHドメインと個々に融合されている所与の抗体の重鎖及び軽鎖を含みうる。前述の代表的なSARAHドメインに関する幾つかの実施態様では、hRAF1 SARAHドメイン内の2つのCys残基(38及び49)をSerで置換して、望ましくないジスルフィド結合の形成を回避した。幾つかの実施態様では、残基24及び35をCysに変異させて、ホモ二量体hMST1構造に基づいて非対称鎖間ジスルフィド結合を形成する。
【0220】
当業者であれば、ここに開示された抗体の成分の配列に基づいて、それらは、挿入、欠失、及び置換を含む保存的アミノ酸変化によって互いに独立して修飾されうること、並びに価数もまた変更されうることを理解するであろう。アミノ酸の変化(断片及びホモログ)は、それらが併用療法で使用されている場合にまた抗体内で独立して生じさせることができる。
【0221】
幾つかの実施態様では、本開示の主題のタンパク質若しくはペプチド、又はそれらの組み合わせは、限定されないが、静脈内、くも膜下腔内、局所(locally)、筋肉内、局所(topically)、経口、動脈内、非経口等々を含んで選択される経路によって投与することができる。投与は一回を超えうる。当業者であれば、分子を投与する頻度、使用される用量、及び治療薬及び/又は抗微生物薬、抗炎症薬などの他の薬物又は分子などの他の薬剤とどのような組み合わせで投与できるかを決定することができる。当業者であれば、追加の薬剤及び投与経路をいつ使用するか又は使用するかどうかを決定することができるであろう。
【0222】
幾つかの実施態様では、本タンパク質又はポリペプチドは注射によって投与される。ポリペプチドの非経口投与経路は、既知の方法、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、皮下、又は病巣内経路による注射又は注入に従う。タンパク質又はポリペプチドは、注入又はボーラス注射によって連続的に投与することができる。静脈内注入のための典型的な組成物は、任意選択的に20%アルブミン溶液を補充した10から50mlの滅菌0.9%NaCl又は5%グルコースと10μgと50mgの間、幾つかの実施態様では50μgと10mgの間のポリペプチドを含むように構成されうる。筋肉内注射のための典型的な薬学的組成物は、例えば、1~10mlの滅菌緩衝水と、10μgと50mgの間、幾つかの実施態様では、50μgと10mgの間の本開示の主題のポリペプチドを含むように構成されるであろう。非経口投与可能な組成物を調製するための方法は当該技術分野で周知であり、例えば、あらゆる目的のためにその全体が出典明示によりここに援用されるGenaro 1985を含む、様々な情報源においてより詳細に記載されている。
【0223】
治療のためにインビボで使用される場合、本開示の主題の抗体は、治療有効量(すなわち、所望の治療効果を有する量)で対象に投与される。それらは通常は非経口的に投与される。用量及び投与計画は、疾患又は障害の程度、使用される特定の抗体又は免疫毒素の特性、例えばその治療指数、患者、及び患者の病歴に依存する。有利には、抗体又はその断片は、1~2週間の期間にわたって連続的に投与される。任意選択的に、投与は、補助療法、例えば抗微生物治療、又は腫瘍壊死因子、インターフェロン、若しくは他の細胞保護剤若しくは免疫調節剤の投与の過程中になされる。
【0224】
非経口投与の場合、抗体及びその断片は、薬学的に許容される非経口ビヒクルと組み合わせて、単位投薬量の注射可能な形態(溶液、懸濁液、乳濁液)に製剤化することができる。そのようなビヒクルは本質的に非毒性であり、非治療的である。そのようなビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖溶液、及び5%ヒト血清アルブミンがある。固定油及びオレイン酸エチルなどの非水性ビヒクルもまた使用できる。リポソームは担体として使用できる。ビヒクルには、等張性及び化学的安定性を高める物質、例えば緩衝剤及び保存料などの添加物が少量含まれていてもよい。抗体は典型的には、そのようなビヒクル中に約1.0mg/mlから約10mg/mlの濃度で製剤化される。
【0225】
使用される抗体組成物は、治療される症状又は障害、個々の患者の状態、組成物の送達部位、投与方法、及び実務者に知られている他の要因を考慮して、適正な医療行為と一致する形で製剤化され、投薬量が樹立される。抗体組成物は、以下の投与用のポリペプチドの調製の記載に従って、投与用に調製される。
【0226】
ハイブリッド抗体及びハイブリッド抗体断片は、幾つかの実施態様では、全長重鎖及び軽鎖を有する完全な抗体分子、又は限定されないが抗原に結合する断片(例えば、パラトープを含む)を含むその任意の断片を含む。ここに記載の可変領域及び様々な種由来の定常領域を有するキメラ抗体もまた適している。例えば、米国特許出願公開第2003/0022244号を参照のこと。
【0227】
本開示の主題のペプチドは、標準的な十分に確立された技術、例えば、Stewart等,1984;Bodanszky及びBodanszky,1984に記載されているような固相ペプチド合成(SPPS)によって容易に調製することができる。先ず、適切に保護されたアミノ酸残基が、そのカルボキシル基を介して、架橋ポリスチレン又はポリアミド樹脂などの誘導体化された不溶性ポリマー担体に結合される。
【0228】
「適切に保護された」とは、アミノ酸のα-アミノ基と任意の側鎖官能基の両方に保護基が存在することを指す。側鎖保護基は、合成を通して使用される溶媒、試薬及び反応条件に対して一般に安定であり、最終ペプチド生成物に影響を与えない条件下で除去できる。オリゴペプチドの段階的合成は、初期のアミノ酸からN-保護基を除去し、それに所望のペプチドの配列における次のアミノ酸のカルボキシル末端を結合させることによって行われる。このアミノ酸もまた適切に保護される。入ってくるアミノ酸のカルボキシルは、カルボジイミド、対称酸無水物、又はヒドロキシベンゾトリアゾール若しくはペンタフルオロフェニルエステルのような「活性エステル」基との形成などの反応性基との形成によって、担体に結合したアミノ酸のN末端と反応するように活性化されうる。
【0229】
固相ペプチド合成法の例には、α-アミノ保護基としてtert-ブチルオキシカルボニルを利用したBOC法、アミノ酸残基のα-アミノを保護するために9-フルオレニルメチルオキシカルボニルを利用するFMOC法が含まれ、その両方の方法とも当業者にはよく知られている。
【0230】
化学的又は生物学的合成技術で得られるタンパク質又はペプチドが所望のペプチドであることを確認するために、ペプチド組成物の分析がなされるべきである。このようなアミノ酸組成分析は、高分解能質量分析法を使用して実施し、ペプチドの分子量を決定することができる。或いは、又は加えて、ペプチドのアミノ酸含有量は、酸性水溶液中でペプチドを加水分解し、HPLC又はアミノ酸分析装置を使用して混合物の成分を分離、同定、定量することによって確認できる。ペプチドを逐次分解してアミノ酸を順番に同定するプロテインシークエネーターをまたペプチドの配列を正確に決定するために使用できる。
【0231】
使用前に、ペプチドを精製して夾雑物を除去することができる。この点に関して、ペプチドは、適切な規制当局によって設定された標準に合致するように精製されることが理解される。必要とされるレベルの純度を達成するために、例えば、C4-、C8-、又はC18-シリカなどのアルキル化シリカカラムを使用する逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む多くの一般的な精製手順の何れか一を使用できる。精製を達成するには、一般に、有機含有量が増加する勾配移動相、例えば、通常は少量のトリフルオロ酢酸を含む水性緩衝液中のアセトニトリルが使用される。ペプチドをその電荷に基づいて分離するために、イオン交換クロマトグラフィーをまた使用することができる。
【0232】
ここに記載されたようにして得られる実質的に純粋なペプチドは、タンパク質精製のための既知の手順に従って精製することができ、手順の各段階で精製を監視するために免疫学的、酵素的、又は他のアッセイが使用される。タンパク質の精製方法は当該技術分野で周知であり、例えばDeutscher等 1990に記載されている。
【0233】
[ペプチド修飾及び調製]
ペプチドを生成、修飾、及び精製する方法は既知である。本開示の主題のタンパク質及びペプチドは、活性に影響を与えることなく修飾されたアミノ酸残基を取り込むことができることは理解されるであろう。例えば、末端は、ブロッキング基、すなわち、分子の機能に影響を与える可能性がある、その末端での分子のあらゆる種類の酵素的、化学的又は生化学的分解を包含する用語である「望ましくない分解」、すなわち、分子のその末端での逐次的分解からN末端及びC末端を保護及び/又は安定化させるのに適した化学置換基を含むように誘導体化することができる。
【0234】
ブロッキング基には、ペプチドのインビボ活性に悪影響を及ぼさない、ペプチド化学の分野で従来から使用されている保護基が含まれる。例えば、適切なN末端ブロッキング基は、N末端のアルキル化又はアシル化によって導入することができる。適切なN末端ブロッキング基の例には、C1~C5分枝又は非分枝アルキル基、ホルミル及びアセチル基などのアシル基、並びにアセトアミドメチル(Acm)基などのその置換形態が含まれる。アミノ酸のデスアミノ類似体もまたN末端ブロッキング基として有用であり、ペプチドのN末端に結合させることも、又はN末端残基の代わりに使用することもできる。C末端のカルボキシル基が組み込まれているか組み込まれていない適切なC末端ブロッキング基には、エステル、ケトン又はアミドが含まれる。エステル又はケトン形成アルキル基、特にメチル、エチル及びプロピルなどの低級アルキル基、及び第一級アミン(-NH)などのアミド形成アミノ基、及びメチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ等などのモノ及びジアルキルアミノ基がC末端ブロッキング基の例である。アグマチンなどのデスカルボキシル化アミノ酸類似体もまた有用なC末端ブロッキング基であり、ペプチドのC末端残基に結合させることも、その代わりに使用することもできる。更に、末端の遊離アミノ及びカルボキシル基をペプチドから一斉に除去して、ペプチド活性に影響を与えることなく、そのデスアミノ及びデスカルボキシル化形態を得ることができることが理解されるであろう。
【0235】
本開示の主題の酸付加塩もまた機能的等価物として企図される。従って、ペプチドの水溶性塩を提供するために、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、又は酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸で処理された、本開示の主題に係るペプチドは、本開示の主題での使用に適している。
【0236】
本開示の主題は、タンパク質の類似体をまた提供する。類似体は、保存的アミノ酸配列の違い、又は配列に影響を与えない修飾、又はその両方によって、天然に存在するタンパク質又はペプチドと異なりうる。例えば、保存的アミノ酸変更を行うことができ、これは、タンパク質又はペプチドの一次配列を変更するが、通常はその機能を変更しない。そのため、10個以上の保存的アミノ酸変更は典型的にはペプチド機能に影響を与えない。
【0237】
(通常は一次配列を変更しない)修飾には、ポリペプチドのインビボ又はインビトロの化学的誘導体化、例えばアセチル化又はカルボキシル化が含まれる。また含まれるのは、グリコシル化の修飾、例えば、ポリペプチドの合成及びプロセシング中、又は更なるプロセシング過程においてポリペプチドのグリコシル化パターンを修飾することによって、例えば、ポリペプチドを、グリコシル化に影響を与える酵素、例えば、哺乳動物のグリコシル化酵素又は脱グリコシル化酵素に曝露することによって、なされる修飾である。また包含されるのは、リン酸化されたアミノ酸残基、例えばホスホチロシン、ホスホセリン、又はホスホスレオニンを有する配列である。
【0238】
また含まれるのは、タンパク質分解に対するその耐性を改善するため、又は溶解特性を最適化するため、又は治療薬としてより適したものにするために、通常の分子生物学的技術を使用して修飾されたポリペプチドである。このようなポリペプチドの類似体には、天然に存在するL-アミノ酸以外の残基、例えばD-アミノ酸、又は非天然又は非標準合成アミノ酸を含むものが含まれる。本開示の主題のペプチドは、ここに列挙される特定の例示的なプロセスの何れかの生成物に限定されない。
【0239】
本開示の主題には、構造:
を有するベータアラニン(βアラニン、β-Ala、bA、及びβAとも呼ばれる)の使用が含まれる。
【0240】
ここでは「βA」という記号を使用する配列が提供されるが、本明細書と共に提出された配列表では「βA」は「Xaa」として提供され、配列表のテキスト中の参照はXaaがベータアラニンであることを示す。
【0241】
当然のことながら、ペプチド又は抗体、それらの誘導体、又は断片は、活性に影響を与えることなく修飾されるアミノ酸残基を取り込むことができる。例えば、末端は、ブロッキング基、すなわち、化合物の機能に影響を与える可能性がある、その末端での化合物のあらゆる種類の酵素的、化学的又は生化学的分解を包含する用語である「望ましくない分解」、すなわち、化合物のその末端での逐次的分解からN末端及びC末端を保護及び/又は安定化させるのに適した化学置換基を含むように誘導体化することができる。
【0242】
ブロッキング基には、ペプチドのインビボ活性に悪影響を及ぼさない、ペプチド化学の分野で従来から使用されている保護基が含まれる。例えば、適切なN末端ブロッキング基は、N末端のアルキル化又はアシル化によって導入することができる。適切なN末端ブロッキング基の例には、C1~C5分枝又は非分枝アルキル基、ホルミル及びアセチル基などのアシル基、並びにアセトアミドメチル(Acm)基などのその置換形態が含まれる。アミノ酸のデスアミノ類似体もまたN末端ブロッキング基として有用であり、ペプチドのN末端に結合させることも、又はN末端残基の代わりに使用することもできる。C末端のカルボキシル基が組み込まれているか組み込まれていない適切なC末端ブロッキング基には、エステル、ケトン又はアミドが含まれる。エステル又はケトン形成アルキル基、特にメチル、エチル及びプロピルなどの低級アルキル基、及び第一級アミン(-NH)などのアミド形成アミノ基、及びメチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ等などのモノ及びジアルキルアミノ基がC末端ブロッキング基の例である。アグマチンなどのデスカルボキシル化アミノ酸類似体もまた有用なC末端ブロッキング基であり、ペプチドのC末端残基に結合させることも、又はその代わりに使用することもできる。更に、末端の遊離アミノ及びカルボキシル基をペプチドから一斉に除去して、ペプチド活性に影響を与えることなく、そのデスアミノ及びデスカルボキシル化形態を得ることができることが理解されるであろう。
【0243】
活性に悪影響を与えることなく他の修飾も組み込むことができ、これらには、限定されないが、天然のL-異性体形態のアミノ酸の一又は複数をD-異性体形態のアミノ酸で置換することが含まれる。従って、ペプチドは、一又は複数のD-アミノ酸残基を含むことができ、又は全てD-体であるアミノ酸を含みうる。本開示の主題に係るペプチドのレトロインベルソ型、例えば、全てのアミノ酸がD-アミノ酸型で置換されている逆方向ペプチドもまた企図される。
【0244】
ここに記載されたようにして得られる実質的に純粋なタンパク質は、タンパク質精製のための既知の手順に従って精製することができ、手順の各段階で精製を監視するために免疫学的、酵素的、又は他のアッセイが使用される。タンパク質の精製方法は当該技術分野で周知であり、例えばDeutscher等 1990に記載されている。
【0245】
検討したように、本開示の主題のペプチドリガンドの修飾又は最適化は、本出願の範囲内である。修飾又は最適化されたペプチドは、ペプチド結合リガンドの定義に含まれる。具体的には、同定されたペプチド配列を修飾して、その効力、薬物動態挙動、安定性、及び/又は他の生物学的、物理的、及び化学的特性を最適化することができる。
【0246】
[アミノ酸置換]
所定の実施態様では、開示された方法及び組成物は、一つ又は複数の置換アミノ酸残基を有するペプチドを調製することを含みうる。
【0247】
様々な実施態様では、ペプチド配列の構造的、物理的、及び/又は治療的特徴は、一つ又は複数のアミノ酸残基を置換することによって最適化することができる。
【0248】
活性に悪影響を与えることなく他の修飾をまた組み込むことができ、これらには、限定されないが、天然のL-異性体形態のアミノ酸の一つ又は複数をD-異性体形態のアミノ酸で置換することが含まれる。従って、ペプチドは、一つ又は複数のD-アミノ酸残基を含み得、或いは全てD体であるアミノ酸を含みうる。本開示の主題に係るペプチドのレトロインベルソ型、例えば、全てのアミノ酸がD-アミノ酸体で置換されている逆方向ペプチドもまた企図される。
【0249】
当業者であれば、一般に、ペプチドにおけるアミノ酸置換は、典型的には、あるアミノ酸を、比較的類似した特性の別のアミノ酸で置換すること(すなわち、保存的アミノ酸置換)を含むことを認識するであろう。様々なアミノ酸の特性と、タンパク質の構造及び機能に対するアミノ酸置換の効果は、当該技術分野における広範な研究及び知識の対象となっている。
【0250】
例えば、得られるポリペプチドが上述の特性と同様の又は改善されたプロファイルを有することを期待して、親ポリペプチド配列に次の等比体積及び/又は保存的アミノ酸の変更を加えることができる:
【0251】
アルキル置換された疎水性アミノ酸の置換: アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ノルロイシン、S-2-アミノ酪酸、S-シクロヘキシルアラニン、或いは分岐、環状及び直鎖アルキル、アルケニル又はアルキニル置換を含むC1~10炭素の脂肪族側鎖で置換された他の単純なα-アミノ酸を含む。
【0252】
芳香族置換疎水性アミノ酸の置換: フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ビフェニルアラニン、1-ナフチルアラニン、2-ナフチルアラニン、2-ベンゾチエニルアラニン、3-ベンゾチエニルアラニン、ヒスチジン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アザ、先に列挙した芳香族アミノ酸のハロゲン化(フルオロ、クロロ、ブロモ、若しくはヨード)又はアルコキシ置換形態を含み、その具体例は、2-,3-若しくは4-アミノフェニルアラニン、2-,3-若しくは4-クロロフェニルアラニン、2-、3-若しくは4-クロロフェニルアラニン、2-、3-若しくは4-メチルフェニルアラニン、2-、3-若しくは4-メトキシフェニルアラニン、5-アミノ-、5-クロロ-、5-メチル-若しくは5-メトキシトリプトファン、2’-、3’-、若しくは4’-アミノ-、2’-、3’-、若しくは4’-クロロ-、2、3、若しくは4-ビフェニルアラニン、2’-、3’-、若しくは4’-メチル-2、3若しくは4-ビフェニルアラニン、及び2-若しくは3-ピリジルアラニンである。
【0253】
塩基性官能基を含むアミノ酸の置換: アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、2,3-ジアミノプロピオン酸、ホモアルギニン、先のアミノ酸のアルキル、アルケニル、又はアリール置換(C~C10分岐、直鎖状、又は環状)誘導体で、置換がヘテロ原子(例えば、アルファ窒素、若しくは遠位窒素)上にあるか、又は例えばプロR位のアルファ炭素上にあるものを含む。例証的な例となる化合物には、N-イプシロン-イソプロピル-リジン、3-(4-テトラヒドロピリジル)-グリシン、3-(4-テトラヒドロピリジル)-アラニン、N,N-ガンマ,ガンマ’-ジエチル-ホモアルギニンが含まれる。また含まれるのは、アルキル基がアルファ炭素のプロR位を占める、アルファメチルアルギニン、アルファメチル2,3-ジアミノプロピオン酸、アルファメチルヒスチジン、アルファメチルオルニチンなどの化合物である。また含まれるのは、アルキル、芳香族、ヘテロ芳香族(ここで、ヘテロ芳香族基は一つ又は複数の窒素、酸素、又は硫黄原子を単独で若しくは組み合わせて有する)カルボン酸、又は酸塩化物、活性エステル、活性アゾリド及び関連誘導体などの多くのよく知られている活性化誘導体の何れか及びリジン、オルニチン、又は2,3-ジアミノプロピオン酸から形成されるアミドである。
【0254】
酸性アミノ酸の置換: アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、チロシン、2,4-ジアミノプロピオン酸のアルキル、アリール、アリールアルキル、及びヘテロアリールスルホンアミド、オルニチン又はリジン、及びテトラゾール置換アルキルアミノ酸を含む。
【0255】
側鎖アミド残基の置換: アスパラギン、グルタミン、及びアスパラギン又はグルタミンのアルキル又は芳香族置換誘導体を含む。
【0256】
ヒドロキシル含有アミノ酸の置換: セリン、スレオニン、ホモセリン、2,3-ジアミノプロピオン酸、及びセリン又はスレオニンのアルキル又は芳香族置換誘導体を含む。また、上に列挙したカテゴリーのそれぞれのなかのアミノ酸は、同じ群の別のアミノ酸と置換できることも理解される。
【0257】
例えば、アミノ酸の疎水性親水性指標を考慮することができる(Kyte及びDoolittle,1982)。アミノ酸の相対的な疎水性親水性特性は、得られるタンパク質の二次構造に寄与し、それがタンパク質と他の分子との相互作用を規定する。各アミノ酸には、その疎水性と電荷特性に基づいて疎水性親水性指標が割り当てられており(Kyte及びDoolittle,1982)、これらは次の通りである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)。保存的置換を行う場合、その疎水性親水性指標が+/-2以内であるアミノ酸の使用が好ましく、+/-1以内がより好ましく、+/-0.5以内が更により好ましい。
【0258】
アミノ酸置換では、アミノ酸残基の親水性をまた考慮に入れることができる(例えば、米国特許第4554101号)。親水性の値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0);グルタミン酸(+3.0);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±0.1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。アミノ酸を類似の親水性を持つ他のアミノ酸に置換することが好ましい。
【0259】
その他の考慮事項には、アミノ酸側鎖のサイズが含まれる。例えば、グリシン又はセリンなどのコンパクトな側鎖を有するアミノ酸を、例えばトリプトファン又はチロシンなどの嵩張る側鎖を有するアミノ酸で置換することは一般に好ましくない。タンパク質の二次構造に対する様々なアミノ酸残基の影響もまた考慮される。実証的研究を通じて、タンパク質ドメインがαヘリックス、βシート、又は逆向ターンの二次構造を採る傾向に対する異なるアミノ酸残基の影響が決定されており、当該技術分野で知られている(例えば、Chou及びFasman,1974;Chou及びFasman,1978;Chou及びFasman,1979を参照)。
【0260】
このような考慮及び広範な実証的研究に基づいて、保存的アミノ酸置換の表が構築されており、当該技術分野で知られている。例えば、アルギニンとリジン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;そしてバリン、ロイシン、及びイソロイシン。或いは、Ala(A)Leu、Ile、Val;Arg(R)Gln、Asn、Lys;Asn(N)His、Asp、Lys、Arg、Gln;Asp(D)Asn、Glu;Cys(C)Ala、Ser;Gln(Q)Glu、Asn;Glu(E)Gln、Asp;Gly(G)Ala;His(H)Asn、Gln、Lys、Arg;Ile(I)Val、Met、Ala、Phe、Leu;Leu(L)Val、Met、Ala、Phe、Ile;Lys(K)Gln、Asn、Arg;Met(M)Phe、Ile、Leu;Phe(F)Leu、Val、Ile、Ala、Tyr;Pro(P)Ala;Ser(S)、Thr;Thr(T)Ser;Trp(W)Phe、Tyr;Tyr(Y)Trp、Phe、Thr、Ser;Val(V)Ile、Leu、Met、Phe、Ala。
【0261】
アミノ酸置換に対するその他の考慮事項には、残基がタンパク質の内部に位置しているか、又は溶媒に曝露されているかどうかが含まれる。内部残基の場合、保存的置換には、AspとAsn;SerとThr;SerとAla;ThrとAla;AlaとGly;IleとVal;ValとLeu;LeuとIle;LeuとMet;PheとTyr;TyrとTrpが含まれる。例えば、PROWLロックフェラー大学のウェブサイトを参照のこと。溶媒に曝露された残基の場合、保存的置換には、AspとAsn;AspとGlu;GluとGln;GluとAla;GlyとAsn;AlaとPro;AlaとGly;AlaとSer;AlaとLys;SerとThr;LysとArg;ValとLeu;LeuとIle;IleとVal;PheとTyrが含まれる。アミノ酸置換の選択を支援するために、PAM250スコア行列、Dayhoff行列、Grantham行列、McLachlan行列、Doolittle行列、Henikoff行列、Miyata行列、Fitch行列、Jones行列、Rao行列、Levin行列及びRisler行列などの様々な行列が構築されている(例えば、PROWLロックフェラー大学のウェブサイトを参照)。
【0262】
アミノ酸置換を決定する際には、正に荷電した残基(例えば、His、Arg、Lys)と負に荷電した残基(例えば、Asp、Glu)間のイオン結合(塩橋)又は近くのシステイン残基間のジスルフィド結合の形成のような分子間又は分子内結合の存在がまた考慮されうる。
【0263】
コードされたペプチド配列において任意のアミノ酸を任意の他のアミノ酸に置換する方法は周知であり、例えば部位特異的変異誘発の技術により、又はアミノ酸置換をコードするオリゴヌクレオチドの合成及びアセンブリと発現ベクターコンストラクトへのスプライシングによる、当業者にとって常套的な実験事項である。
【0264】
[抗体フォーマットとその調製]
本開示の主題のタンパク質、ポリペプチド、又はそれらのペプチド断片に対する抗体は、当該技術分野で周知の方法を使用して生成することができる。例えば、その全体が出典明示によりここに援用される米国特許第5436157号は、ペプチドに対する抗体を産生する方法を開示している。抗体の産生のために、限定されないが、ウサギ、マウス、及びラットを含む様々な宿主動物を、ポリペプチド又はそのペプチド断片を注射することによって免疫することができる。免疫学的応答を高めるために、限定されないが、フロイント(完全及び不完全)、ミネラルゲル、例えば水酸化アルミニウム、界面活性物質、例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及びBCG(カルメットゲラン桿菌)及びコリネバクテリウム・パルバムなどの潜在的に有用なヒトアジュバントを含む、様々なアジュバントを宿主種に応じて使用できる。
【0265】
幾つかの実施態様では、一つ又は複数の抗体又はその断片が使用される。幾つかの実施態様では、一つ又は両方の抗体は、単鎖、モノクローナル、二重特異性、合成、ポリクローナル、キメラ、ヒト、若しくはヒト化、又はその活性断片若しくはホモログである。幾つかの実施態様では、抗体結合断片は、F(ab’)、F(ab)、Fab’、又はFab断片である。
【0266】
モノクローナル抗体の調製には、培養中の連続細胞株による抗体分子の産生をもたらす任意の技術を利用することができる。例えば、Kohler及びMilsteinによって最初に開発されたハイブリドーマ技術、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor及びRoder,1983)、及びEBVハイブリドーマ技術(Cole等,1985)を用いて、ヒトモノクローナル抗体を産生することができる。幾つかの実施態様では、モノクローナル抗体は無菌動物において産生される。
【0267】
本開示の主題によれば、ヒト抗体は、ヒトハイブリドーマを利用することによって(Cote等,1983)、又はインビトロでヒトB細胞をEBVウイルスで形質転換することによって(Cole等,1985)、使用し得ることができる。更に、SLLPポリペプチドのエピトープに特異的なマウス抗体分子からの遺伝子を適切な生物学的活性のヒト抗体分子からの遺伝子と一緒にスプライシングすることによる「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(Morrison等,1984;Neuberger等,1984;Takeda等,1985)を用いることができ;そのような抗体は、本開示の主題の範囲内にある。ひとたび特異的モノクローナル抗体が開発されれば、従来の技術によるその変異体及びバリアントの調製もまた利用可能である。
【0268】
ヒト化抗体の抗体断片の産生のために、様々な技術が開発されている。伝統的に、これらの断片は、完全長抗体のタンパク質分解消化によって得られた(例えば、Morimoto及びInouye,1992;Brennan等,1985を参照)。しかし、これらの断片は、現在は、組換え宿主細胞によって直接産生できる。或いは、Fab’-SH断片を大腸菌から直接回収し、化学的に結合させてF(ab’)断片を形成することもできる(Carter等,1992a)。別のアプローチによれば、F(ab’)断片を組換え宿主細胞培養物から直接単離できる。抗体断片の生成のための他の技術は、当業者には明らかであろう。PCT国際特許出願国際公開第1993/16185号;米国特許第5571894号、第5587458号を参照のこと。抗体断片はまた、例えば米国特許第5641870号に記載されているような「直鎖抗体」でありうる。このような直鎖抗体断片は、単一特異性又は二重特異性でありうる。
【0269】
ヒト化(キメラ)抗体は、ヒト部分と非ヒト部分を含む免疫グロブリン分子である。より具体的には、ヒト化キメラ抗体の抗原結合領域(又は可変領域)は非ヒト供給源(例えばマウス)に由来し、(免疫グロブリンに生物学的エフェクター機能を与える)キメラ抗体の定常領域はヒト供給源に由来する。ヒト化キメラ抗体は、非ヒト抗体分子の抗原結合特異性と、ヒト抗体分子によって付与されるエフェクター機能を有していなければならない。キメラ抗体を生成する多数の方法が当業者によく知られている(例えば、米国特許第4975369号、第5075431号、第5081235号、第5169939号、第5202238号、第5204244号、第5231026号、第5292867号、第5354847号;第5472693号;第5482856号;第5491088号;第5500362号;及び第5502167号を参照)。キメラ(ヒト化)抗体の詳細な調製方法は、米国特許第5482856号に見出すことができる。「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むヒト/非ヒトキメラ抗体である。殆どの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの超可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ、又は所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域の残基によって置き換えられている。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体には見出されない残基を含みうる。これらの修飾は、抗体の性能を更に改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのループに対応し、FR残基の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意選択的に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含みうる。更なる詳細については、例えば、Jones等,1986;Riechmann等,1988;Presta,1992,PCT国際特許出願国際公開第92/02190号、米国特許出願公開第2006/0073137号、及び米国特許第5225539号;第5530101号;第5585089号;第5693761号;第5693762号;第5714350号;第5766886号;第5770196号;第5777085号;第5821123号;第5821337号;第5869619号;第5877293号;第5886152号;第5895205号;第5929212号;第6054297号;第6180370号;第6407213号;第6548640号;第6632927号;第6639055号;及び第6750325号を参照のこと。
【0270】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は完全ヒト抗体を提供する。ヒト抗体は、完全にヒトの特徴的なポリペプチド配列から構成される。本開示の主題のヒト抗体は、多種多様な方法を使用して産生することができる(例えば、概説として米国特許第5001065号を参照のこと)。
【0271】
典型的には、ヒト化抗体には、非ヒトである供給源から導入された一つ又は複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」残基と呼ばれることが多く、典型的には「移入」可変ドメインから取得される。ヒト化は本質的に、ヒト「アクセプター」抗体の対応する配列の代わりに超可変領域配列を使うことによって、Winterと共同研究者の方法(Jones等,1986;Riechmann等,1988);Verhoeyen等,1988)に従って実施することができる。従って、そのような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインよりも実質的に少ない部分が、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されているキメラ抗体である(例えば、米国特許第4816567号及び第5482856号を参照)。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、幾つかの超可変領域残基と場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0272】
ヒト化抗体を作製する別の方法は、米国特許出願公開第2003/0017534号に記載されており、そこではヒト化抗体及び抗体調製物がトランスジェニック非ヒト動物から産生される。非ヒト動物は、トランスジェニック非ヒト動物において遺伝子再構成及び遺伝子変換を受けて多様なヒト化免疫グロブリンを産生することができる一つ又は複数のヒト化免疫グロブリン遺伝子座を含むように遺伝子操作される。
【0273】
幾つかの実施態様では、ヒト化抗体の作製に使用されるヒト可変ドメイン(軽鎖及び重鎖の両方)の選択は、抗原性を低下させるために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法によれば、齧歯類抗体の可変ドメインの配列が、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー又はヒト生殖系列配列のライブラリーに対してスクリーニングされる。齧歯類の配列に最も近いヒト配列は、その後、ヒト化抗体のヒトフレームワーク領域として受け入れられうる(Sims等,1993;Chothia及びLesk,1987)。別の方法では、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークを幾つかの異なるヒト化抗体に使用することができる(Carter等,1992b;Presta等,1993)。ヒト患者における抗体分子の免疫原性を低下させるためにデザインされた他の方法には、ベニヤ抗体(例えば、米国特許第6797492号及び米国特許出願公開第2002/0034765号及び第2004/0253645号を参照)、並びにT細胞エピトープ分析及び除去によって修飾された抗体(例えば、米国特許出願公開第2003/0153043号及び米国特許第5712120号を参照)が含まれる。
【0274】
抗体をヒト化する場合、抗体が抗原に対する高い親和性とその他の好ましい生物学的特性を保持することが重要である。この目標を達成するために、好ましい方法によれば、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用する、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析プロセスによってヒト化抗体が調製される。三次元免疫グロブリンモデルは一般に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元立体構造を図示して表示するコンピュータープログラムが利用可能である。これらの表示を検査することにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の考えられる役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を与える残基の分析が可能になる。このようにして、標的抗原に対する親和性の増加など、所望の抗体特性が達成されるように、レシピエント配列及び移入配列からFR残基を選択して組み合わせることができる。一般に、超可変領域残基は、抗原結合への影響に直接的かつ最も実質的に関与している。
【0275】
本開示の主題の抗体部分は、単鎖抗体でありうる。
【0276】
「抗体」という用語の範囲内の断片には、その断片が標的分子に特異的に結合できる限り、様々なプロテアーゼによる消化によって生成されるもの、化学的切断及び/又は化学的解離によって生成されるもの、及び組換えによって生成されるものが含まれる。そのような断片には、Fab、Fab’、Fv、及びF(ab’)がある。
【0277】
抗体分子のイディオタイプを含む抗体断片は、既知の技術によって生成することができる。例えば、そのような断片には、限定されないが、抗体分子のペプシン消化によって生成できるF(ab’)断片;F(ab’)断片のジスルフィド橋を還元することによって生成できるFab’断片;抗体分子をパパイン及び還元剤で処理することによって生成できるFab断片;及びFv断片が含まれる。
【0278】
タンパク質又はペプチドの完全長又はペプチド断片に対するモノクローナル抗体は、例えばHarlow及びLane,1988;Tuszynski等,1988に記載されているものなどの任意の周知のモノクローナル抗体調製手順を使用して調製することができる。化学合成技術を使用して、所定量の所望のペプチドをまた合成することができる。或いは、所望のペプチドをコードするDNAをクローニングし、多量のペプチドの生成に適した細胞内の適切なプロモーター配列から発現させることができる。ペプチドに対するモノクローナル抗体は、ここで参照される標準手順を使用して、ペプチドで免疫化されたマウスから産生される。
【0279】
例えば、より低い免疫原性、改善された抗原結合性若しくは他の機能的特性などの改善された特性、及び/又は例えばより優れた安定性などの改善された物理化学的特性を有するそのようなヒト化抗体の例示的な相補性決定領域(CDR)残基若しくは配列及び/又はフレームワーク領域(FR)におけるアミノ酸置換のための部位が提供される。
【0280】
本開示の主題は、ここに開示された特定の断片及びヒト化断片以上のものを包含する。幾つかの実施態様では、抗体は、単鎖抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、合成抗体、ポリクローナル抗体、若しくはヒト化抗体、又はそれらの活性断片若しくはホモログからなる群から選択される。
【0281】
ここに記載の手順を使用して得られる抗体をコードする核酸は、当該技術分野で利用可能な技術を使用してクローニングし配列決定することができ、例えば、Wright等,1992とそこで引用された参考文献に記載されている。更に、本開示の主題の抗体は、Wright等,1992及びその中で引用されている参考文献、及びGu等,1997に記載されている技術を使用して「ヒト化」することができる。
【0282】
ファージ抗体ライブラリーを生成するには、先ず、ファージ表面上で発現される所望のタンパク質、例えば所望の抗体を発現する細胞、例えばハイブリドーマから単離されたmRNAからcDNAライブラリーを取得する。mRNAのcDNAコピーは、逆転写酵素を使用して生成される。免疫グロブリン断片を特定するcDNAをPCRにより取得し、得られたDNAを適切なバクテリオファージベクターにクローニングして、免疫グロブリン遺伝子を特定するDNAを含むバクテリオファージDNAライブラリーを生成する。異種DNAを含むバクテリオファージライブラリーを作製する手順は当該技術分野で周知であり、例えば、Green及びSambrook,2012に記載されている。
【0283】
所望の抗体をコードするバクテリオファージは、その対応する結合タンパク質、例えば、抗体が向けられる抗原との結合に利用できるような方法でタンパク質がその表面に提示されるように操作することができる。従って、特定の抗体を発現するバクテリオファージが、対応する抗原を発現する細胞の存在下でインキュベートされると、バクテリオファージは細胞に結合する。抗体を発現しないバクテリオファージは細胞に結合しない。このようなパニング技術は当該技術分野でよく知られている。
【0284】
上述のようなプロセスは、M13バクテリオファージディスプレイを使用してヒト抗体を産生するために開発された(Burton及びBarbas,1994)。本質的に、cDNAライブラリーは、抗体産生細胞の集団から得られたmRNAから生成される。mRNAは再構成された免疫グロブリン遺伝子をコードしており、よってcDNAは同じものをコードしている。増幅されたcDNAはM13発現ベクターにクローニングされ、その表面にヒトFab断片を発現するファージのライブラリーが作成される。目的の抗体を提示するファージが抗原結合によって選択され、細菌内で増殖させて可溶性ヒトFab免疫グロブリンを産生する。従って、従来のモノクローナル抗体合成とは対照的に、この手順は、ヒト免疫グロブリンを発現する細胞ではなく、ヒト免疫グロブリンをコードするDNAを不死化する。
【0285】
ここで示した手順は、抗体分子のFab部分をコードするファージの生成を記述する。しかしながら、本開示の主題は、Fab抗体をコードするファージの生成のみに限定されると解釈されるべきではない。Fab分子はIg軽鎖全体を含み、つまり、軽鎖の可変領域と定常領域の両方を含むが、重鎖の可変領域と第一の定常領域ドメイン(CH1)のみを含む。単鎖抗体分子は、Ig Fv断片を含むタンパク質の単鎖を含む。Ig Fv断片は、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域のみを含み、そこには定常領域は含まれない。所望の抗体を単離するためにそのようにして生成されたファージのパニングは、Fab DNAを含むファージライブラリーについて記載されたものと同様の方法で行われる。
【0286】
本開示の主題はまた、ほぼ全ての可能な特異性を含むように重鎖及び軽鎖可変領域を合成することができる合成ファージディスプレイライブラリーを含むと解釈されるべきである(Barbas,1995;de Kruif等,1995)。
【0287】
抗体の産生において、所望の抗体のスクリーニングは、当該技術分野で知られている技術、例えばELISA(酵素結合免疫吸着検定法)によって達成することができる。本開示の主題に従って生成される抗体には、限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ(すなわち、「ヒト化」)、及び単鎖(組換え)抗体、Fab断片、及びFab発現ライブラリーによって生成される断片が含まれうる。
【0288】
幾つかの実施態様では、本開示の抗体、その断片、及びバリアントは、大腸菌での発現後に精製することができる。限定ではなく例を挙げると、哺乳動物細胞と同様に、免疫グロブリン断片を含む組換えタンパク質生産のための宿主として大腸菌を使用することができる。大腸菌を用いて、本開示の主題の抗体及び断片を多量に産生することができる(例えば、Verma等,1998を参照)。
【0289】
幾つかの実施態様では、使用される大腸菌株は、T7ポリメラーゼを発現するBL21 DE3でありうる。このポリメラーゼは、天然大腸菌RNAポリメラーゼよりも最大5倍速くDNA配列を転写し、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)による強力なタンパク質発現の誘導を可能にする。加えて、BL21 DE3にはLonプロテアーゼ(Gottesman,1996)と外膜プロテアーゼOmpT(Grodberg及びDunn,1988)が欠如している。
【0290】
本開示の抗体、その断片、及び誘導体は、抗体軽鎖に優先的に結合するプロテインLカラムを使用するアフィニティーHPLCによって精製することもできる。
【0291】
ここに記載されたようにして得られる実質的に純粋なペプチドは、タンパク質精製のための既知の手順に従って精製することができ、手順の各段階で精製を監視するために免疫学的、酵素的、又は他のアッセイが使用される。タンパク質の精製方法は当該技術分野で周知であり、例えばDeutscher等,1990に記載されている。
【0292】
組換えヒト化抗体の分野では、ハーセプチン(トラスツズマブ)のフレームワーク領域など、ヒトの治療で以前に使用されていた十分に確立されたヒト免疫グロブリンフレームワーク上にマウスCDR配列を移植することが一般的である。幾つかの実施態様では、限定されないが、それぞれ配列番号:40~43として示されるものを含む、重鎖フレームワーク領域1~4、及び/又は、限定されないが、それぞれ配列番号:44~47として示されるものを含む、軽鎖フレームワーク領域1~4のうちの一つ又は複数をコードする発現カセットが用いられる。このような発現カセットには、ここに開示されたCDRをコードするヌクレオチド配列(すなわち、重鎖CDR1~3についてそれぞれ配列番号:8、10、及び12をコードする配列番号:7、9、及び11、並びに軽鎖CDR1~3のそれぞれについて配列番号:20、22、及び24をコードする配列番号:19、21、及び23)を導入することができ、その結果、限定されないが、配列番号:3(配列番号:4をコードする)及び配列番号:15(配列番号:16をコードする)によってそれぞれコードされるものを含む、全長重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が宿主細胞において産生されうる。
【0293】
幾つかの実施態様では、治療のためにインビボで使用される場合、本開示の主題の抗体又はその断片及び/又は誘導体は、治療有効量(すなわち、所望の治療効果を有する量)で対象に投与される。それらは通常は非経口的に投与される。用量と投与計画は、感染の程度、使用される特定の抗体又は免疫毒素の特性、例えばその治療指数、患者、及び患者の病歴に依存する。有利には、抗体又は免疫毒素は、1~2週間の期間にわたって連続的に投与される。任意選択的に、投与は、抗微生物治療、又は腫瘍壊死因子、インターフェロン、若しくは他の細胞保護剤若しくは免疫調節剤の投与などの補助療法の過程中になされる。
【0294】
幾つかの実施態様では、非経口投与の場合、抗体又はその断片及び/又は誘導体は、薬学的に許容される非経口ビヒクルと組み合わせて、単位用量の注射可能な形態(溶液、懸濁液、乳濁液)に製剤化することができる。このようなビヒクルは本質的に非毒性であり、非治療的である。このようなビヒクルの例は、水、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖溶液、及び5%ヒト血清アルブミンである。固定油及びオレイン酸エチルなどの非水性ビヒクルもまた使用できる。リポソームは担体として使用できる。ビヒクルには、緩衝剤及び保存剤などの等張性及び化学的安定性を高める物質などの添加剤が少量含まれていてもよい。抗体は典型的には、そのようなビヒクル中に約1.0mg/mlから約10mg/mlの濃度で製剤化される。
【0295】
[薬学的組成物と投与]
本開示の主題は、本開示の主題の抗体、その断片、及び/又は誘導体を対象に投与する方法にまた向けられる。
【0296】
本開示の抗体、その断片、及び/又は誘導体を含む薬学的組成物は、限定されないが、局所、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、脳室内(心室内)、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所、舌下、又は直腸手段を含む、任意の数の経路によって、それを必要とする対象に投与される。
【0297】
幾つかの実施態様によれば、そのような治療を必要とする対象を治療する方法が提供される。この方法は、本開示の主題の少なくとも一つの抗体、その断片、及び/又は誘導体を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。本開示の主題の抗体、その断片、及び/又は誘導体は、他の既知の生物学的に活性な薬剤及び/又は他の医薬と共に投与することもできる。
【0298】
本開示の主題を実施するのに有用な薬学的組成物は、1ng/kg/日と100mg/kg/日の間の用量を送達するように投与されうる。
【0299】
本開示の主題は、ここに開示された疾患及び障害の治療に有用な少なくとも一つの抗体、その断片、及び/又は誘導体を活性成分として含む薬学的組成物の調製及び使用を包含する。このような薬学的組成物は、対象への投与に適した形態の活性成分のみから構成されうるか、又は薬学的組成物は、活性成分と一つ又は複数の薬学的に許容される担体、一つ又は複数の追加成分、又はこれらの幾らかの組み合わせを含みうる。活性成分は、当該技術分野で周知のように、例えば生理学的に許容されるカチオン又はアニオンと組み合わせて、生理学的に許容されるエステル又は塩の形態で薬学的組成物中に存在させることができる。
【0300】
ここで使用される場合、「生理学的に許容される」エステル又は塩という用語は、薬学的組成物の任意の他の成分と適合性があり、組成物が投与される対象に有害ではない活性成分のエステル又は塩の形態を意味する。
【0301】
本開示の主題の組成物は、少なくとも一つの活性な抗体、その断片、及び/又は誘導体、一つ又は複数の許容される担体、及び任意選択的に他の抗体、その断片、及び/又は誘導体、及び/又は治療薬を含みうる。
【0302】
インビボ適用の場合、本開示の主題の抗体、その断片、及び/又は誘導体は、薬学的に許容される塩を含みうる。本開示の主題の抗体、その断片、及び/又は誘導体とそのような塩を形成することができる適切な酸には、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、リン酸などの無機酸;及びギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、アントラニル酸、桂皮酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸などの有機酸が含まれる。
【0303】
薬学的に許容される担体には、生理学的に耐容又は許容される希釈剤、添加物、溶媒、及び/又はアジュバントが含まれる。幾つかの実施態様では、組成物は無菌かつ非発熱性である。適切な担体の例には、限定されないが、水、通常の生理食塩水、ブドウ糖、マンニトール、乳糖又は他の糖、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、システイン塩酸塩、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、植物油(オリーブ油など)、注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチル、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、カオリン、寒天及びトラガカント、又はこれらの物質の混合物などが含まれる。
【0304】
薬学的組成物は、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、抗微生物薬及び抗真菌薬(パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)のような、少量の非毒性補助薬学的物質又は添加物(excipient)及び/又は添加剤(additive)をまた含みうる。適切な添加剤としては、限定されないが、生理学的に生体適合性の緩衝液(例えば、トロメタミン塩酸塩)、キレート剤(例えば、DTPA又はDTPA-ビスアミドなど)の添加剤(例えば、0.01から10モルパーセント)、又はカルシウムキレート錯体(例えば、カルシウムDTPA又はCaNaDTPA-ビスアミドなど)、又は任意選択的に、カルシウム又はナトリウム塩(例えば、塩化カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム又は乳酸カルシウム)の添加剤(例えば、1から50モルパーセント)が含まれる。所望される場合、吸収促進剤又は吸収遅延剤(リポソーム、モノステアリン酸アルミニウム、又はゼラチンなど)を使用できる。組成物は、液体溶液又は懸濁液、注射前の溶液又は懸濁液に適した固体形態、又は乳濁液の何れかとして、従来の形態で調製することができる。本開示の主題に係る薬学的組成物は、十分に当業者の範囲内の方法で調製することができる。
【0305】
本開示の主題の抗体、その断片、及び/又は誘導体、その薬学的に許容される塩、又はそれらを含む薬学的組成物は、抗体、その断片、及び/又は誘導体が望ましい生理学的効果を提供するように投与することができる。投与は経腸的又は非経口的;例えば、経口的、直腸的、槽内、膣内、腹腔内、局所的(例えば、粉末、軟膏、又はドロップ剤を用いて)、又は頬側又は鼻腔内スプレー又はエアロゾルとして行うことができる。幾つかの実施態様では、投与は非経口である。例示的な非経口投与方法には、血管内投与(例えば、静脈内ボーラス注射、静脈内注入、動脈内ボーラス注射、動脈内注入、及び血管系へのカテーテル注入)、標的組織周囲及び標的組織内注射、皮下注射又は皮下注入(浸透圧ポンプなどによる)を含む沈着、筋肉内注射、及び例えばカテーテル又は他の配置デバイスによる標的領域への直接適用が含まれる。
【0306】
抗体、その断片、及び/又は誘導体の投与が注射又は直接適用による場合、注射又は直接適用は、単回用量であっても複数回用量であってもよい。抗体、その断片、及び/又は誘導体の投与が注入による場合、注入は、長期間にわたる単回持続用量又は複数回の注入でありうる。
【0307】
ここに記載の薬学的組成物の製剤は、薬理学の分野で既知の方法、又は今後開発される任意の方法によって調製することができる。一般に、そのような調製方法には、活性成分を担体又は一つ又は複数の他の補助成分と組み合わせ、その後、必要又は望ましい場合に、製品を所望の単回又は複数回用量単位に成形又は包装するステップが含まれる。
【0308】
このような薬学的組成物が一般にあらゆる種類の動物への投与に適していることは当業者には理解されよう。本開示の主題の薬学的組成物の投与が企図される対象には、限定されないが、ヒト及び他の霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、及びイヌなどの商業的に関連する哺乳動物を含む哺乳動物、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、七面鳥などの商業的に関連する鳥を含む鳥が含まれる。
【0309】
本開示の主題の薬学的組成物は、バルクで、単一の単位用量として、又は複数の単一の単位用量として、調製し、包装し、又は販売されうる。ここで使用される場合、「単位用量」は、予め決められた量の活性成分を含む薬学的組成物の離散量である。活性成分の量は、一般に、対象に投与される活性成分の投薬量、又はそのような投薬量の都合のよい割合、例えば、そのような投薬量の2分の1又は3分の1に等しい。
【0310】
本開示の主題の薬学的組成物中の活性成分、薬学的に許容される担体、及び任意の追加成分の相対量は、治療される対象のアイデンティティ、サイズ及び状態に応じて、更には組成物が投与される経路に応じて、変化するであろう。一例として、組成物は、0.1%から100%(w/w)の活性成分を含みうる。
【0311】
活性成分に加えて、本開示の主題の薬学的組成物は、一又は複数の追加の薬学的活性剤を更に含みうる。特に企図される追加の薬剤には、制吐剤及びスカベンジャー、例えばシアン化物及びシアン酸塩スカベンジャーが含まれる。
【0312】
本開示の主題の薬学的組成物の制御又は持続放出製剤は、従来の技術を使用して製造することができる。
【0313】
ここで使用される場合、「追加成分」には、限定されないが、次のものの一つ又は複数が含まれる:添加物;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒及び崩壊剤;結合剤;潤滑剤;甘味料;香味料;着色料;保存料;ゼラチンなどの生理分解性組成物;水性ビヒクル及び溶媒;油性ビヒクル及び溶媒;懸濁剤;分散又は湿潤剤;乳化剤、粘滑薬;緩衝液;塩;増粘剤;充填剤;乳化剤;酸化防止剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;及び薬学的に許容されるポリマー又は疎水性材料。本開示の主題の薬学的組成物に含まれうる他の「追加成分」は当該技術分野で知られており、例えば出典明示によりここに援用されるGenaro,1985に記載されている。
【0314】
典型的には、動物、幾つかの実施態様ではヒトに投与されうる本開示の主題の化合物の投薬量は、動物の体重1kg当たり1μgから約100gの量の範囲である。投与される正確な投薬量は、限定されないが、治療されている動物の種類及び病状の種類、動物の年齢及び投与経路を含む多くの要因に応じて変化する。幾つかの実施態様では、化合物の投薬量は、動物の体重1kg当たり約1mgから約10gまで変化するであろう。別の態様では、投薬量は、動物の体重1キログラム当たり約10mgから約1gまで変化するであろう。
【0315】
化合物は、1日に数回という頻度で動物に投与することができ、或いは、1日1回、1週間に1回、2週間に1回、月に1回など、又はより低い頻度、例えば数か月に1回又は年に1回以下で投与することもできる。投与の頻度は、当業者には容易に明らかであり、限定されないが、診断されているがんの種類、治療されている状態又は疾患の種類及び重症度、動物の種類及び年齢等々など、任意の数の要因に依存するであろう。
【0316】
適切な調製物には、溶液又は懸濁液としての注射剤が含まれるが、注射前の液体への溶解、懸濁に適した固体形態もまた調製することができる。調製物を乳化することもでき、又はポリペプチドをリポソームにカプセル化することもできる。活性成分は、薬学的に許容され、活性成分と適合性がある添加物としばしば混合される。適切な添加物は、例えば、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなど、及びそれらの組み合わせである。加えて、所望されるならば、ワクチン調製物は、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、及び/又はアジュバントなどの補助物質を少量含むこともできる。
【0317】
本開示の主題は、本開示の主題の組成物と、対象の細胞又は組織への組成物の外膜的投与を説明する使用説明資料とを含むキットをまた含む。幾つかの実施態様では、このキットは、化合物を対象に投与する前に、本開示の主題の組成物を溶解又は懸濁するのに適した(幾つかの実施態様では、無菌の)溶媒を含む。
【0318】
[特発性肺線維症]
フィブロネクチン(Fn)は、早期発症型特発性肺線維症(IPF)の潜在的な標的として特定されている。IPFは、他の形態の呼吸器疾患に見られるのと同様の瘢痕化及び組織の肥厚化を引き起こすため、疾患の正確な原因を特定することが困難である。線維症の進行において考えられる経路には、Fnの歪んだ立体構造が関与している。本開示の主題は、FnIII9-4G-10(4G)と呼ばれるFnの歪み構造である病態モデルに結合するH5と呼ばれる抗体を提供する。H5よりも4Gによく結合する代表的な抗体もまたここに提供される。限定ではなく例として、変異誘発によってH5配列に変異を導入し、エラープローンPCRによって増幅して、抗体の多様なライブラリーを開発した。次に、このライブラリーをファージディスプレイと複数回のELISAラウンドを使用してスクリーニングした。クローン強度を吸光度比によって定量化し、比が高いほど結合性能が優れていることを示した。試験の結果、H5を上回る23個のクローンを同定することができた;しかし、クローンの配列を決定したところ、4つがH5とは異なることが同定された。
【0319】
肺線維症(PF)は、時間の経過と共に肺組織が厚く、硬くなり、瘢痕化する疾患である。瘢痕化した肺組織は、肺から血流中への酸素の移動を妨げ、その結果、身体を循環する利用可能な酸素の量を減少させる(例えば、国立心肺血液研究所のウェブサイト;King等,2011を参照)。PFは更に、呼吸不全を引き起こす(Datta等,2011)機能的肺胞単位の破壊の原因となる、フィブロネクチン(Fn)などの細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の沈着を更に特徴とする。制御可能な量のECM産生は、傷害治癒のための瘢痕組織を介するなど、身体に恩恵をもたらすが、制御できない量は、特発性肺線維症などでは致命的になる場合がある(IPF;Raghu及びMitocenic,2018)。IPFは、少なくとも200の異なる形態のPFのうちの一つであり、肺機能の不可逆的な低下を引き起こす慢性的な線維症状態である。IPFには65歳を超える成人200人のうち1人が罹患しており、毎年5万人の成人が診断され、更に4万人がIPFにより死亡している(Pulmonary Fibrosis Foundation,2018)。IPFの進行を遅らせるには、直ちに治療が必要である。従って、IPFの経路をより良く検出し、理解するために研究を継続することが不可欠である。
【0320】
本開示の代表的なH5抗体は、Fnの歪んだ立体構造に結合する。Fnの関連領域の歪み立体構造と正常立体構造をモデル化するために、二つの異なる断片をデザインした。Fnの歪み型であるFnIII9-4G-10(4G)には、9番目と10番目のIII型リピートの間に4つのグリシンの付加が含まれ、これは、α5β1インテグリンに対するFnの結合親和性を低下させる変異である。操作されたFnは、病態における機械的力に応じた変化をモデル化し、Fnのインテグリンスイッチの存在を証明するための実験において使用した。正常型FnIII910(910)は、9番目と10番目のIII型リピートにFnの正常フォールディングを発現する。従って、歪んだFnへの結合を改善し、通常のFnへの結合を禁止又は制限するためのH5抗体の改変が、本開示の主題に従って、定向進化、ファージディスプレイ、及びELISAを通じて提供される。
【0321】
ここに開示されるように、本開示の主題の例示的なH5抗体は、4Gに対して「極大」結合親和性を有することが特定されている。しかし、結合は「絶対最大値」、つまり潜在的な最良の結合状態には達していなかった。定向進化の基礎は、適応度ピークに達するために、遺伝子の最大の多様性を備えたライブラリーを作成することである。従って、またここに開示されるのは、4Gに対する「絶対最大」結合親和性に到達するのに十分に多様なH5抗体クローンのライブラリーを開発するための実験である。幾つかの実施態様では、ランダム変異誘発を用いて、本H5抗体DNA配列にランダム変異を導入する(Cadwell及びJoyce,1992)。
【0322】
ファージディスプレイ技術は、4Gに対するH5クローンの結合親和性を向上させ、910への結合を禁止又は制限するために使用される。ファージディスプレイは、ファージの遺伝子型の操作を通じて溶原性糸状バクテリオファージの表面にポリペプチドを提示するために使用されるプロセスである(Bazan等,2012)。抗体作製におけるその使用は、少なくとも一つの抗体の標的結合能力を増強するために、抗体に遺伝的変異を導入する試行錯誤のアプローチを使用する、定向進化と呼ばれるより大きな枠組みの中で開発された(Trafton,2010)。この技術は最近、その貢献者がノーベル化学賞を受賞したことで有名になった(Offord及びGrens,2018)。このフレームワークを通じて、幾つかの実施態様では、エラープローンPCRを通した変異誘発による抗体ライブラリーの多様性の最適化を通じて修飾される抗体及びその抗原結合断片が提供されると同時に、タンパク質の適応が成功し、より速やかな時間尺度で生成されうることも確認される。
【0323】
最後に、ELISAを実施し(実施例1を参照)、H5より優れていると同定されたクローンを、更なる抗体特性評価のためにファージから分離した。クローンの配列を、ここに開示されたようにして解析した。
【実施例
【0324】
次の実施例は例証的な実施態様を提供する。本開示及び当業者の一般的な水準を考慮すると、当業者であれば、次の実施例が例示のみを目的としており、本開示の主題の範囲から逸脱することなく数多くの変更、修正、及び変形を採用できることが理解されるであろう。
【0325】
実施例1
[様々な例示的抗体及びscFvのELISA分析]
未修飾H5抗体を、大腸菌(図1においてeH5及びH5(scFv)として示す)又はベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)(nicoH5)の何れかで産生した。本開示の主題の修飾H5-IgG1(H5-IgG)抗体を、プラグアンド(ディス)プレイハイブリドーマ(PnP)として知られる哺乳動物ハイブリドーマ細胞株において産生した。
【0326】
インビトロELISA結合アッセイを用いて、フィブロネクチンの罹患型(患部)及び健康型(正常)に対するH5抗体及びその誘導体の結合の効力を決定した。マレイミド活性化ELISAプレートを使用して、FN-4G-10及びFN-9-10と名付けられた組換えフィブロネクチン断片を繋ぎ、それぞれがFNの患部型及び正常型を模倣した。H5の両フォーマットを、10-5Mで始まり10-11Mで終わる異なるモル濃度で使用した。結合した抗体を比色法により検出した。
【0327】
結果を図1に示す。データは二通りの独立した実験の組み合わせを表し、一つが大腸菌(eH5)とベンサミアナタバコ(nicoH5)で産生されたH5-scFvを比較し、もう一つはH5-scFv(scFv)とH5-IgG1(H5-IgG)を比較した。試験したH5の二通りのフォーマットの間で、H5の修飾IgG1フォーマットがFN断片に対して更に高い親和性を示し、等モル濃度の抗体を使用した場合と比較して少なくとも50倍高い結合性を示した。更に、FN-9-10(健康型)と比較してFN-4G-10(罹患型)に対して高い親和性を示す二つの断片を識別した。
【0328】
[参考文献]
限定されないが、全ての特許、特許出願及びその公報、科学雑誌記事、及びデータベースエントリ(限定されないが、UniProt、EMBL、及びGENBANK(登録商標)生物配列データベースエントリ及びそのなかの利用可能な全ての注釈を含む)を含む、本開示に列挙される全ての参考文献は、ここで用いられる方法論、技術、及び/又は組成物を補足し、説明し、その背景を提供し、及び/又は教示する範囲で、その全体が出典明示によりここに援用される。参考文献の検討は、単にその著者によってなされた主張を要約することを意図している。如何なる参考文献(又は如何なる参考文献の一部)も関連した先行技術であるということは自認しない。出願人は、引用した参考文献の正確性及び適切性について異議を唱える権利を留保する。
【0329】
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【0330】
本開示の主題を、特定の実施態様を参照して開示したが、本開示の主題の他の実施態様及び変形態様が、本開示の主題の真の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって案出されうることは明らかである。
図1
【配列表】
2024526154000001.app
【国際調査報告】