(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】電気アーク炉のための動作方法
(51)【国際特許分類】
F27B 3/28 20060101AFI20240709BHJP
F27D 11/08 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
F27B3/28
F27D11/08 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578992
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2022065633
(87)【国際公開番号】W WO2022268511
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516128728
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マチュラット
【テーマコード(参考)】
4K045
4K063
【Fターム(参考)】
4K045AA04
4K045BA02
4K045RB02
4K063FA53
4K063FA66
4K063FA72
4K063FA78
(57)【要約】
電気アーク炉の制御デバイス(9)は、溶融段階において、および、その後に、フラットバス段階において、第1の制御値(A1)によってエネルギー供給デバイス(3)を制御し、前記エネルギー供給デバイスが、電気エネルギーを炉変圧器(5)を介して電気アーク炉の電極(6)に供給するようになっている。制御デバイスは、両方の段階において、第2の制御値(A2)によって位置決めデバイス(7)をさらに制御し、前記位置決めデバイスが、溶融段階において、依然として溶融されていない含鋼材料(2)に対して電極(6)を位置決めし、フラットバス段階において、溶融鋼(15)に対して電極(6)を位置決めするようになっている。結果として、両方の段階において電気アーク(14)が形成され、それによって、含鋼材料(2)が溶融され、または、溶融鋼(15)がさらに加熱される。溶融段階の間に、第1の制御値(A1)と第2の制御値(A2)との両方が決定され、電極(6)に供給される電気エネルギーの電気的パラメータ(U、I、P)が、対応する目標変数(U*、I*、P*)に可能な限り近似されるようになっている。フラットバス段階において、これは、第1の制御値(A1)にのみ適用される。対照的に、第2の制御値(A2)は、電気的パラメータ(U、I、P)とは完全に無関係に決定されるか、または、電気アーク破壊および/もしくは短絡のリスクが電気的パラメータ(U、I、P)に基づいて識別される場合にのみ、電気的パラメータ(U、I、P)に応じて決定されるかのいずれかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気アーク炉のための動作方法であって、
- 前記電気アーク炉の制御デバイス(9)が、最初に溶融段階において、および、その後に、前記溶融段階に続くフラットバス段階において、第1の起動値(A1)を使用して、前記電気アーク炉の電力供給デバイス(3)を起動させ、前記電力供給デバイス(3)が、供給システム(4)から電気エネルギーを引き出すようになっており、前記電気エネルギーを炉変圧器(5)を介して前記電気アーク炉の電極(6)に供給するようになっており、前記電気アーク炉の前記制御デバイス(9)が、第2の起動値(A2)を使用して、前記電気アーク炉の位置決めデバイス(7)をさらに起動させ、前記位置決めデバイス(7)が、固体凝集状態にある含鋼材料(2)に対して前記電極(6)を位置決めするようになっており、前記含鋼材料(2)は、前記溶融段階において、前記電気アーク炉の炉容器(1)の中に位置付けられており、電気アーク(14)が、前記溶融段階において、前記電極(6)と前記含鋼材料(2)との間に形成されるようになっており、それによって、前記含鋼材料(2)は、鋼溶融物(15)を形成するように溶融され、前記含鋼材料(2)は、前記フラットバス段階において、前記鋼溶融物(15)に対して位置決めされ、前記フラットバス段階において、電気アーク(14)が、前記電極(6)と前記鋼溶融物(15)との間に形成されるようになっており、それによって、前記鋼溶融物(15)がさらに加熱され、
- 前記制御デバイス(9)が、前記電極(6)に供給される前記電気エネルギーの電気的パラメータ(U、I、P)が対応する目標値(U*、I*、P*)に可能な限り近似されるような様式で、前記溶融段階の間に、前記第1の起動値(A1)と前記第2の起動値(A2)の両方を決定し、
- 前記制御デバイス(9)が、前記電気的パラメータ(U、I、P)が前記対応する目標値(U*、I*、P*)に可能な限り近似されるような様式で、前記フラットバス段階の間に、前記第1の起動値(A1)をさらに決定するが、前記電気的パラメータ(U、I、P)とは完全に無関係に、または、前記制御デバイス(9)が前記電気的パラメータ(U、I、P)に基づいて電気アーク破壊および/もしくは短絡の危険を検出した場合にのみ、前記電気的パラメータ(U、I、P)に応じて、前記第2の起動値(A2)を決定する、動作方法。
【請求項2】
少なくとも前記フラットバス段階の間に、前記電気的パラメータ(U、I、P)は、電極電流(I)であることを特徴とする、請求項1に記載の動作方法。
【請求項3】
少なくとも前記フラットバス段階の間に、前記電気的パラメータ(U、I、P)は、電力(P)であることを特徴とする、請求項1に記載の動作方法。
【請求項4】
前記制御デバイス(9)は、前記電気的パラメータ(U、I、P)を前記対応する目標値(U*、I*、P*)に近似させるために、前記電極(6)に供給される電極電流(I)の周波数(f)、および/または、前記電極(6)に印加される電極電圧(U)の周波数(f)が変更されるような様式で、前記フラットバス段階の間に前記第1の起動値(A1)を決定することを特徴とする、請求項1、2または3に記載の動作方法。
【請求項5】
前記フラットバス段階において、前記電極(6)に供給される前記電極電流(I)の前記周波数(f)および/または前記電極(6)に印加される前記電極電圧(U)の前記周波数(f)は、前記供給システム(4)の基底周波数(f0)よりも小さいことを特徴とする、請求項4に記載の動作方法。
【請求項6】
前記電気アーク(14)は、結果的に、前記フラットバス段階の開始時に基本長さ(L0)を有しており、前記制御デバイス(9)は、前記フラットバス段階の間に前記鋼溶融物(15)に向けて前記電極(6)を移動させ、前記鋼溶融物(15)に向けての前記移動の後に、前記電気アーク(14)が、前記基本長さ(L0)よりも小さい残留長さ(LR)を依然として有するようになっていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項7】
前記残留長さ(LR)は、前記基本長さ(L0)の少なくとも20%であることを特徴とする、請求項6に記載の動作方法。
【請求項8】
前記制御デバイス(9)は、前記フラットバス段階の開始時に存在しているような前記電気的パラメータ(U、I、P)に基づいて、前記基本長さ(L0)を決定することを特徴とする、請求項6または7に記載の動作方法。
【請求項9】
電気アーク炉の制御デバイス(9)のための制御プログラムであって、前記制御プログラムは、前記制御デバイス(9)によって実行され得るマシンコード(11)を含み、前記制御デバイス(9)による前記マシンコード(11)の前記実行は、前記制御デバイス(9)に、請求項1から8のいずれか一項に記載の動作方法に従って、電気アーク炉を動作させる、制御プログラム。
【請求項10】
電気アーク炉の制御デバイスであって、前記制御デバイスは、請求項9に記載の制御プログラム(10)によってプログラムされており、前記制御デバイスが、請求項1から8のいずれか一項に記載の動作方法に従って、前記電気アーク炉を動作させるようになっている、制御デバイス。
【請求項11】
電気アーク炉であって、
- 前記電気アーク炉は、炉容器(1)を有しており、含鋼材料(2)が、固体凝集状態で前記炉容器(1)に供給されることが可能であり、
- 前記電気アーク炉は、電力供給デバイス(3)および電極(6)を有しており、炉変圧器(5)も有しており、
- 前記電力供給デバイス(3)は、入力側において供給システム(4)に接続されており、出力側において、前記炉変圧器(5)を介して前記電極(6)に接続されており、
- 前記電気アーク炉は、位置決めデバイス(7)を有しており、前記位置決めデバイス(7)によって、前記電極(6)は、溶融段階において、前記含鋼材料(2)に対して位置決めされることが可能であり、前記溶融段階に続くフラットバス段階において、前記含鋼材料(2)を溶融することによって生成される鋼溶融物(15)に対して位置決めされることが可能であり、
- 前記電気アーク炉は、制御デバイス(9)を有しており、前記制御デバイス(9)によって、前記溶融段階と前記フラットバス段階との両方において、前記電力供給デバイス(3)は、第1の起動値(A1)を使用して起動させられることが可能であり、前記位置決めデバイス(7)は、第2の起動値(A2)を使用して起動させられることが可能であり、
- 前記制御デバイス(9)は、請求項10に記載のように設計されている、電気アーク炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出発点として、電気アーク炉のための動作方法であって、
- 電気アーク炉の制御デバイスが、最初に溶融段階において、および、その後に、溶融段階に続くフラットバス段階において、第1の起動値を使用して、電気アーク炉の電力供給デバイスを起動させ、電力供給デバイスが、供給システムから電気エネルギーを引き出すようになっており、電気エネルギーを炉変圧器を介して電気アーク炉の電極に供給するようになっており、電気アーク炉の制御デバイスが、第2の起動値を使用して、電気アーク炉の位置決めデバイスをさらに起動させ、位置決めデバイスが、固体凝集状態にある含鋼材料に対して電極を位置決めするようになっており、含鋼材料は、溶融段階において、電気アーク炉の炉容器の中に位置付けられており、電気アークが、溶融段階において、電極とスチール含有材料との間に形成されるようになっており、それによって、含鋼材料は、鋼溶融物を形成するように溶融され、含鋼材料は、フラットバス段階において、鋼溶融物に対して位置決めされ、フラットバス段階において、電気アークが、電極と鋼溶融物との間に形成されるようになっており、それによって、鋼溶融物がさらに加熱され、
- 制御デバイスが、電極に供給される電気エネルギーの電気的パラメータが対応する目標値に可能な限り近似されるような様式で、溶融段階の間に、第1の起動値と第2の起動値との両方を決定し、
- 制御デバイスが、電気的パラメータが対応する目標値に可能な限り近似されるような様式で、フラットバス段階の間に、第1の起動値を決定する、動作方法を用いる。
【0002】
本発明は、出発点として、電気アーク炉の制御デバイスのための制御プログラムであって、制御プログラムは、制御デバイスによって実行され得るマシンコードを含み、制御デバイスによるマシンコードの実行は、制御デバイスに、このタイプの動作方法に従って、電気アーク炉を動作させる、制御プログラムをさらに用いる。
【0003】
本発明は、出発点として、電気アーク炉の制御デバイスであって、制御デバイスは、このタイプの制御プログラムによってプログラムされており、このタイプの動作方法に従って、制御デバイスが電気アーク炉を動作させるようになっている、制御デバイスをさらに用いる。
【0004】
本発明は、出発点として、電気アーク炉であって、
- 電気アーク炉は、炉容器を有しており、含鋼材料は、固体凝集状態で炉容器に供給されることが可能であり、
- 電気アーク炉は、電力供給デバイスおよび電極を有しており、炉変圧器も有しており、
- 電力供給デバイスは、入力側において供給システムに接続されており、出力側において、炉変圧器を介して電極に接続されており、
- 電気アーク炉は、位置決めデバイスを有しており、位置決めデバイスによって、電極は、溶融段階において、含鋼材料に対して位置決めされることが可能であり、溶融段階に続くフラットバス段階において、含鋼材料を溶融することによって生成される鋼溶融物に対して位置決めされることが可能であり、
- 電気アーク炉は、制御デバイスを有しており、制御デバイスによって、溶融段階とフラットバス段階との両方において、電力供給デバイスは、第1の起動値を使用して起動させられることが可能であり、位置決めデバイスは、第2の起動値を使用して起動させられることが可能であり、
- 制御デバイスは、上記に説明されているように設計されている、電気アーク炉をさらに用いる。
【背景技術】
【0005】
上述の主題は、一般的に知られている。たとえば、特許文献1を参照することが可能である。また、特許文献2および特許文献3が、この文脈において言及されることが可能である。
【0006】
また、電気アーク炉のための動作方法が、特許文献4から知られている。この動作方法では、電力供給デバイスは、間接型コンバーターとして電気アーク炉の電極のために設計されている。間接型コンバーターは、炉変圧器の下流にあるようである。特許文献4は、より詳細には電極の位置制御をカバーしていない。
【0007】
電気アーク炉のための動作方法が、特許文献3から知られており、そこでは、電極のための電力供給デバイス、および、電極のための位置決めデバイスが、電気アーク炉の電気的動作値の関数として一緒に起動させられる。
【0008】
メルトダウン段階として知られるものの間の電気アーク炉のための動作方法が、特許文献5から知られており、そこでは、電極が、電気アークの短絡および破壊(breakdown)に関して個別に検査され、そのような状態が起こる場合には、電極位置が補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2015/176899号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 026 921号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3 124 903号明細書
【特許文献4】国際公開第2019/207611号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願公開第5,115,447号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
電気アーク炉の中での鋼の溶融の間に、電気アーク炉の電極への電気エネルギーの供給は、炉変圧器を介して行われる。多くの場合に、炉変圧器は、中電圧変圧器を介して供給システムに接続されている。炉変圧器は、複数の電圧ステップを提供する。一定の電力の範囲および他の高電流範囲に関して、それぞれの電圧ステップが、炉変圧器において選ばれることが可能である。特定の電圧ステップの中での細かい制御は、たとえば、インピーダンス制御によって行われることが可能である。
【0011】
このアプローチでは、数個の電圧ステップしか可能でなく、電極電流は、強力な変動を受ける。変動を低減させるために、電極の位置決めは、ほとんどの場合に、油圧調節デバイスによって、機械的に制御される。電極の機械的な調節は、電気アークの現実の挙動よりもかなり小さなダイナミクスを有する。したがって、変動は、不満足にしか補償され得ない。さらに、変動は、コンポーネント(たとえば、高電流ケーブル、電流を流すブラケット、油圧シリンダーなど)のかなりの負荷をもたらす。溶融段階とフラットバス段階との両方において、変動が起こる。
【0012】
フラットバス段階において、比較的に小さな電圧が、一般的に、電極に印加され、さらに、電極は、鋼溶融物の表面の比較的に近くに位置決めされている。結果として、高電流が設定される。同時に、熱損失が、発泡スラグによって信頼性高く遮蔽される。しかし、電気アーク炉の性能レベルに応じて、または、特定の鋼(とりわけ、ステンレス鋼および高級鋼)の生成の間に、電気アークは、発泡スラグによって部分的にしか包囲されないか、または、全く包囲されない。結果として、電気アーク炉のエネルギー効率は降下する。
【0013】
炉変圧器の電圧ステップを介した電極電圧の調節の間に、電極の位置決めは、継続的に再調節されなければならない。再調節は、たとえば、特定のインピーダンスまたは特定の電力まで制御が実施されるような様式で行われることが可能である。位置決めデバイスのダイナミクスは、電気アークの電気システムの変化と比較して相対的に低いので、特定の変動が残り、それは、補償され得ない。変動は、鋼溶融物の波動およびフローによって再び増加される。結果として、鋼溶融物の中へのエネルギー入力は、最適ではない。
【0014】
電極電圧が連続的に調節され得るアプローチが、先行技術の文献から知られており、とりわけ、特許文献1および特許文献3から、ならびに、限られた範囲では、特許文献2からも知られている。これらの実施形態は、炉変圧器の電圧ステップによって電極電圧を調節することと比較して、かなりの利点を提供する。一方では、電極電圧は、ステップバイステップで変更されることが可能であるだけでなく、連続的にも変更されることが可能である。他方では、炉変圧器は、より単純に設計されることが可能である。その理由は、それが、複数の電圧ステップを提供する必要がないからである。さらに、さらなるタイプの制御が、これらの実施形態によって可能となる。
【0015】
本発明の目的は、フラットバス段階において単純で信頼性の高い様式で電気アークの高速で高品質の制御が可能になるオプションを生成させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本目的は、請求項1の特徴を有する動作方法によって実現される。動作方法の有利な実施形態は、従属請求項2から8の主題である。
【0017】
本発明によれば、導入部に述べられているタイプの動作方法は、電気的パラメータとは完全に無関係に、または、制御デバイスが電気的パラメータに基づいて電気アーク破壊および/もしくは短絡の危険を検出する場合にのみ、電気的パラメータに応じて、制御デバイスが、フラットバス段階の間に第2の起動値を決定するように構成されている。
【0018】
したがって、第1の起動値は、(先行技術と同様に)制御デバイスによってフラットバス段階の間に、電気的パラメータが対応する目標値に可能な限り近似されるような様式で決定される。対照的に、第2の起動値は、(絶対的に回避されなければならない特定の動作状態の危険の場合を除いて)電気的パラメータとは無関係に決定される。結果として、したがって、電極電圧および電極電流の補正が、電力供給デバイスの起動を適合させることによって排他的に行われる。
【0019】
電極に供給される電気エネルギーの電気的パラメータは、必要に応じて決定されることが可能である。たとえば、電気的パラメータは、電極電流とすることが可能である。とりわけ、有効電流は、電極電流として可能である。しかし、特定のケースでは、電気的パラメータは、無効電流および/または皮相電流であることも可能である。代替的に、電気的パラメータは、電力とすることが可能である。とりわけ、有効電力は、電力として可能である。しかし、特定のケースでは、電気的パラメータは、無効電力および/または皮相電力であることも可能である。
【0020】
電極に印加される電圧、ひいては、電極に供給される電流も、一般的に、交流量であり、すなわち、AC電圧および交流電流である。交流量は、ある期間の間のそれらの振幅、それらの周波数、およびそれらの曲線(たとえば、正弦波、三角波、鋸歯状波、方形波など)によって特徴付けられることが可能である。時間曲線は、好ましくは、正弦波である。
【0021】
振幅は、常に、適切な様式で設定されなければならない。周波数は、いくつかのケースでは、一定に維持されることが可能である。しかし、他のケースでは、制御デバイスは、電気的パラメータを対応する目標値に近似させるために、電極に供給される電極電流の周波数、および/または、電極に印加される電極電圧の周波数も変更されるような様式で、フラットバス段階の間に第1の起動値を決定するということが好適であることとなる。このアプローチは、電気アーク炉の動作の最適化において、より大きなフレキシビリティーを提供する。
【0022】
好ましくは、フラットバス段階において、電極に供給される電極電流の周波数および/または電極に印加される電極電圧の周波数は、供給システムの基底周波数よりも小さい。このアプローチは、実験においてとりわけ有利であることが証明されている。
【0023】
フラットバス段階の開始時に、電極は、鋼溶融物の表面から間隔を置いて配置されている。電気アークは、結果的に、フラットバス段階の開始時に基本長さを有する。いくつかの状況において、制御デバイスが、フラットバス段階の間に鋼溶融物に向けて電極を移動させ、鋼溶融物に向けての移動の後に、電気アークが、基本長さよりも小さい残留長さを依然として有するようになっているということが有利である。しかし、短絡の危険を回避するために、特定の最小長さは、下回って降下されるべきではない。この理由のために、残留長さは、好ましくは、基本長さの少なくとも20%である。
【0024】
基本長さは、フラットバス段階の開始時に存在しているような電気的パラメータに基づいて、決定されるかまたは少なくとも推定されることが可能である。この決定/推定は、人によって知的に行われることが可能である。しかし、それは、好ましくは、制御デバイスによって行われる。
【0025】
さらに、本目的は、請求項9の特徴を有する制御プログラムによって実現される。本発明によれば、制御デバイスによるマシンコードの実行は、好ましくは、本発明による動作方法に従って、制御デバイスが電気アーク炉を動作させることを引き起こす。
【0026】
さらに、本目的は、請求項10の特徴を有する制御デバイスによって実現される。本発明によれば、制御デバイスは、本発明による制御プログラムによってプログラムされており、制御デバイスが、本発明による動作方法に従って、電気アーク炉を動作させるようになっている。
【0027】
さらに、本目的は、請求項11の特徴を有する電気アーク炉によって実現される。本発明によれば、制御デバイスは、本発明による制御デバイスとして設計されている。
【0028】
本発明の上述の特性、特徴、および利点、ならびに、これらが実現される様式は、図面に関連してより詳細に説明される例示的な実施形態の以下の説明に関連して、より明確になり、より明確に理解可能になる。図において、概略図では、下記の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図4】溶融段階における制御デバイスの作用のモードを示す図である。
【
図5】フラットバス段階の間の炉容器を示す図である。
【
図6】フラットバス段階における制御デバイスの作用のモードを示す図である。
【
図10】決定ブロックおよびトレーラブロックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1によれば、電気アーク炉は、炉容器1を有する。含鋼材料2(
図2を参照)は、炉容器1に供給されることが可能である。含鋼材料2は、固体凝集状態で炉容器1に供給される。含鋼材料2は、たとえば、スクラップとすることが可能である。
【0031】
さらに、電気アーク炉は、電力供給デバイス3を有する。電力供給デバイス3は、入力側において供給システム4に接続されている。供給システム4は、一般的に、中電圧システムであり、それは、2桁kV範囲にある公称電圧を有しており、基底周波数f0で動作される(
図11を参照)。基底周波数f0は、一般的に、50Hzまたは60Hzである。
図1における図示によれば、供給システム4は、一般的に、3相システムである。
【0032】
さらに、電気アーク炉は、炉変圧器5および電極6を有する。電力供給デバイス3は、出力側において炉変圧器5を介して電極6に接続されている。一般的に、
図1における図示によれば、複数の電極6が存在しており、炉変圧器5は、さらに、3相変圧器として設計されている。しかし、他の実施形態も可能であり、とりわけ、単相の実施形態も可能である。実際の実施形態とは無関係に、電極6に印加される電極電圧Uは、しかし、明らかに供給システム4の公称電圧の下方にある。電極電圧Uは、
図1では電極6のうちの1つに関してのみ図示されている。ほとんどの場合に、電極電圧Uは、数100Vの範囲にある。特定のケースでは、1kVを上回る電圧も可能である。しかし、2kVは、一般的に超えることはない。
【0033】
一般的に、さらに、スイッチング機器が存在しており、それによって、電力供給デバイス3は、供給システム4から切り離されることが可能である。さらに、スイッチング機器が存在することが可能であり、それによって、電力供給デバイス3は、炉変圧器5から切り離されることが可能であり、および/または、炉変圧器5は、電極6から切り離されることが可能である。スイッチング機器は、純粋にバイナリースイッチング動作を実施するが、電圧および電流の調節を実施しない。さらに、アクティブフィルターデバイスまたはパッシブフィルターデバイスが、炉変圧器5の1次側または2次側に配置されることが可能である。スイッチング機器、また、フィルターデバイスは、本発明による機能性にとって付随的に重要なものであり、したがって、また、明確化のために
図1には(および他の図にも)図示されていない。
【0034】
電力供給デバイス3は、供給システム4から電気エネルギーを引き出し、引き出された電気エネルギーを炉変圧器5を介して電極6に供給することが可能である。電力供給デバイス3は、一般的に、この目的のために、多くの半導体スイッチを有する。電力供給デバイス3の可能な実施形態は、 特許文献1(「絶対的基準」)に説明されている。代替的に、たとえば、特許文献3または特許文献2による実施形態が使用されることも可能である。電力供給デバイス3の実際の実施形態とは無関係に、電力供給デバイス3は、しかし、出力側において(すなわち、炉変圧器5に向けて)、電極6に印加される電極電圧Uおよび/または電極6に供給される電極電流Iのほとんど連続的なステッピングを実施することができる。電極電圧Uに関する図示と同様に、電極電流Iは、同様に
図1では電極6のうちの1つに関してのみ図示されている。
【0035】
さらに、電気アーク炉は、位置決めデバイス7を有する。位置決めデバイス7によって、電極6は、
図1において電極6のうちの1つの隣に両方向矢印8によって示されているように位置決めされることが可能である。最も単純なケースでは、複数の電極6が、一緒に位置決めされる。しかし、電極6の個々の位置決めが行われることも可能である。電極6が位置決めされている移動方向は、垂直方向とすることが可能である。代替的に、移動方向は、垂直方向に対してわずかに傾斜されることも可能である。しかし、このケースでも、垂直方向の成分は、移動の支配的な成分である。位置決めデバイス7は、たとえば、1つまたは複数の油圧シリンダーユニットを有することが可能である。
【0036】
最後に、電気アーク炉は、制御デバイス9を有する。(少なくとも)電力供給デバイス3および位置決めデバイス7は、制御デバイス9によって制御される。したがって、制御デバイス9は、第1の起動値A1(それを使用して、制御デバイス9は、電力供給デバイス3を起動させる)および第2の起動値A2(それを使用して、制御デバイス9は、位置決めデバイス7を起動させる)を発生させる。電力供給デバイス3および位置決めデバイス7は、それぞれの起動値A1、A2に従って動作される。
【0037】
制御デバイス9は、ソフトウェアでプログラム可能な制御デバイスとして設計されている。これは、
図1において情報「μP」(マイクロプロセッサー制御に関する)によって示されている。したがって、制御デバイス9の作用および動作のモードは、制御プログラム10によって決定され、制御デバイス9は、制御プログラム10を使用してプログラムされている。制御プログラム10は、マシンコード11を含み、マシンコード11は、制御デバイス9によって実行されることが可能である。制御デバイス9によるマシンコード11の実行は、さらなる図に関連して以下により詳細に説明されているように、動作方法に従って制御デバイス9が電気アーク炉を動作させることを引き起こす。
【0038】
第1に、炉容器1は、ステップS1において、
図3に従って含鋼材料2を給送される。このプロセスは、制御デバイス9による制御の下で行われることが可能であるが、そのように行われる必要があるわけではない。したがって、ステップS1は、
図3では単に破線で図示されている。
【0039】
電気アーク炉の溶融段階が、含鋼材料2を給送することに続く。溶融段階は、ステップS2からS4を含む。フラットバス段階が、溶融段階に続く。フラットバス段階は、ステップS5からS7を含む。
【0040】
溶融段階において、制御デバイス9は、ステップS2において、電力供給デバイス3のための第1の起動値A1、および、位置決めデバイス7のための第2の起動値A2を決定する。決定は、対応する決定ブロック12および13において、
図4に従って行われる。ステップS3において、制御デバイス9は、決定された起動値A1、A2に従って、電力供給デバイス3および位置決めデバイス7を起動させる。
【0041】
第1の起動値A1の決定は、対応する起動により、電力供給デバイス3が供給システム4から電気エネルギーを引き出し、それを炉変圧器5を介して電極6に供給するような様式で行われる。第2の起動値A2の決定は、位置決めデバイス7が含鋼材料2に対して電極6を位置決めするような様式で行われる。制御デバイス9による第1の起動値A1の決定および第2の起動値A2の決定は、電極6と含鋼材料2との間に電気アーク14(
図2を参照)が形成されるような様式で、互いに対して調節される。電気アーク14に起因して、含鋼材料2は溶融され、したがって、鋼溶融物15(
図5)が徐々に生成される。
【0042】
第1の起動値A1および第2の起動値A2を決定するために、電極6に供給される電気エネルギーのパラメータU、I、Pは、
図4に従って制御デバイス9に供給される。パラメータU、I、Pは、たとえば、電極電圧Uおよび/もしくは電極電流Iならびに/またはそれから導出された値とすることが可能である。導出された値は、たとえば、瞬時電力P(=電極電圧Uと電極電流Iとの積)である。さらなる導出された値は、電極電圧Uおよび電極電流Iの時間曲線から結果として生じることが可能である。このタイプの値は、たとえば、有効電流、有効電力、皮相電力、無効電流、および無効電力である。そのパラメータは、代替的に、電極6の全体に関して、または、それぞれの電極6に関して個別に、与えられるかまたは導出されることが可能である。第1の起動値A1および第2の起動値A2を決定するために、パラメータU、I、Pに関する目標値U*、I*、P*は、さらに、制御デバイス9に供給され、たとえば、電極電圧Uおよび/もしくは電極電流Iに関する目標値U*、I*または他の適切な目標値(たとえば、電力Pに関する目標値P*)が供給される。パラメータU、I、Pと目標値U*、I*、P*との両方は、溶融段階において両方の決定ブロック12、13に供給される。
【0043】
パラメータU、I、Pおよび関連の目標値U*、I*、P*に基づいて、制御デバイス9は、第1の起動値A1および第2の起動値A2を決定する。決定は、電気的パラメータU、I、Pが対応する目標値U*、I*、P*に可能な限り近似されるような様式で、両方の決定ブロック12、13において行われる。このアプローチ、ひいては、ステップS2の実装形態は、一般的に当業者に知られている。したがって、それは、より詳細に説明される必要がない。
【0044】
ステップS4において、制御デバイス9は、溶融段階が完了したかどうかをチェックする。溶融段階は、
図5における図示に従った鋼溶融物15が連続的な水平方向表面を完全にまたは少なくとも実質的に形成した場合に完了する。したがって、含鋼材料2は、完全に溶融したか、または、含鋼材料2のまだ溶融していないエレメントが鋼溶融物15の表面の完全に下方に位置付けられているか、もしくは、含鋼材料2のまだ溶融していないエレメントが鋼溶融物15の表面を越えてわずかにのみ依然として突出しているかのいずれかである。さらに、スラグ層16が、鋼溶融物15の表面の上に形成されている可能性がある。
【0045】
溶融段階が完了したかどうかについてのチェックの文脈において計量的に検出される電気アーク炉の実際の値を制御デバイス9が評価することが可能である。たとえば、電極電流Iおよび/または電極電圧U、とりわけ、その変動を、制御デバイス9が評価することが可能である。また、制御デバイス9は、電気アーク炉の音響値、たとえば、騒音レベル、または、発生させられる騒音の音響スペクトルを評価することが可能である。代替的に、オペレーター(図示略)によって、制御デバイス9のために、溶融段階が完了したことが特定されることが可能である。
【0046】
溶融段階がまだ完了していない場合には、制御デバイス9は、次いで、ステップS2に戻る。対照的に、溶融段階が完了している場合には、制御デバイス9は、フラットバス段階に移行し、ひいては、ステップS5に移行する。
【0047】
フラットバス段階において、制御デバイス9は、ステップS5において、電力供給デバイス3のための第1の起動値A1、および、位置決めデバイス7のための第2の起動値A2を決定する。ステップS6において、制御デバイス9は、決定された起動値A1、A2に従って、電力供給デバイス3および位置決めデバイス7を起動させる。
【0048】
第1の起動値A1の決定は、対応する起動により、電力供給デバイス3が供給システム4から電気エネルギーを引き出し、それを炉変圧器5を介して電極6に供給するような様式で行われる。第2の起動値A2の決定は、位置決めデバイス7が鋼溶融物15に対して電極6を位置決めするような様式で行われる。この点において、ステップS5およびS6の手順は、ステップS2およびS3の手順とマッチしている。
【0049】
また、ステップS5およびS6の手順は、電気アーク14が形成されるような様式で第1の起動値A1および第2の起動値A2が互いに対して調節される範囲において、ステップS2およびS3の手順とマッチしている。しかし、電気アーク14は、電極6と鋼溶融物15との間において、
図5における図示に従って、フラットバス段階の中に形成される。鋼溶融物15は、電気アーク14に起因してさらに加熱される。
【0050】
さらに、電極6に供給される電気エネルギーのパラメータU、I、Pおよび関連の目標値U*、I*、P*は、
図6に従って制御デバイス9にも供給される。しかし、パラメータU、I、Pおよび関連の目標値U*、I*、P*は、制御デバイス9の内側の決定ブロック12のみに供給される。したがって、制御デバイス9は、さらに、電気的パラメータU、I、Pが対応する目標値U*、I*、P*に可能な限り近似されるような様式で、第1の起動値A1を決定する。
【0051】
対照的に、決定ブロック13は、フラットバス段階において非起動させられる。その代わりに、決定ブロック17が、
図6に従って起動させられる。制御デバイス9は、フラットバス段階において決定ブロック17によって第2の起動値A2を決定する。とりわけ、
図3における図示に従って、電気的パラメータU、I、Pとは完全に無関係に、制御デバイス9が第2の起動値A2を決定することが可能である。このケースでは、
図6における図示に従って、電気的パラメータU、I、Pが決定ブロック17に全く供給されないことが可能である。その代わりに、制御デバイス9は、その他の内部決定に基づいて、または、外部仕様V(たとえば、オペレーターから来る仕様)に基づいて、第2の起動値A2を決定することが可能である。
【0052】
ステップS7において、制御デバイス9は、フラットバス段階が完了したかどうかをチェックする。フラットバス段階が完了したかどうかについてのチェックの文脈において計量的に検出される電気アーク炉の実際の値を制御デバイス9が評価することが可能である。代替的に、オペレーターによって、制御デバイス9のために、フラットバス段階が完了したことが特定されることが可能である。
【0053】
フラットバス段階がまだ完了していない場合には、制御デバイス9は、ステップS5に戻る。対照的に、フラットバス段階が完了している場合には、制御デバイス9は、ステップS8に移行する。ステップS8において、生成される鋼溶融物15は、炉容器1から除去され、たとえば、取鍋(図示略)の中へ注がれる。このプロセスは、制御デバイス9による制御の下で行われることが可能であるが、そのように行われる必要があるわけではない。したがって、ステップS8は、ステップS1と同様に、
図3では単に破線で図示されている。
【0054】
ステップS8の実行によって、電気アーク炉の動作における完全なサイクルが終了される。したがって、ステップS1から開始する新しいサイクルを開始させることが可能である。
【0055】
最も単純な実施形態において、第2の起動値の決定は、以前に述べられたように、電気的パラメータU、I、Pとは無関係に行われる。代替的に、第2の起動値A2は、一般的に、電気的パラメータU、I、Pとは無関係に決定ブロック17によって決定されるが、これらは、特定の状況下において実際に考慮に入れられることも可能である。このケースでは、対応する電気的パラメータU、I、Pは、
図7における図示に従って決定ブロック17に供給される。また、対応する目標値U*、I*、P*を供給することは、対照的に、必要ではない。
【0056】
このケースでは、決定ブロック17(および、決定ブロック17は制御デバイス9の構成要素であるので、その結果として、制御デバイス9)は、電気的パラメータU、I、Pが所定の条件を満たすかどうかをチェックする。とりわけ、決定ブロック17は、このケースでは、それが電気的パラメータU、I、Pに基づいて電気アーク破壊および/または短絡の危険を検出するかどうかをチェックする。そのときにのみ、決定ブロック17は、第2の起動値A2の決定において電気的パラメータU、I、Pを考慮に入れる。しかし、このケースでも、電気アーク破壊および/または短絡の危険が存在する場合に限ってのみ、それらが考慮に入れられる。危険がもはや存在しない場合には、第2の起動値A2の決定が、また、電気的パラメータU、I、Pとは無関係に再び行われる。これは、
図8に関連して以下により詳細に説明される。
【0057】
図8は、フラットバス段階における手順を示している。溶融段階における手順は、変更されなくてもよい。
【0058】
図8によれば、制御デバイス9は、最初に、ステップS4からステップS11に移行する。ステップS11において、制御デバイス9は、それが電気アーク破壊の危険を検出するかどうかをチェックする。ステップS11のチェックの文脈において、制御デバイス9は、電気的パラメータU、I、Pを評価する。制御デバイス9が電気アーク破壊の危険を検出する場合には、それは、ステップS12に移行する。ステップS12において、制御デバイス9は、電気アーク破壊の危険が解消されるように、第1の起動値A1および第2の起動値A2を決定する。たとえば、制御デバイス9は、電極電圧Uが増加されるように、第1の起動値A1を変更することが可能であり、電極6が鋼溶融物15に向かう方向に低下されるように、第2の起動値A2を変更することが可能である。
【0059】
ステップS11において、制御デバイス9が電気アーク破壊の危険を検出しない場合には、制御デバイス9は、ステップS13に移行する。ステップS13において、制御デバイス9は、それが短絡の危険を検出するかどうかをチェックする。ステップS13のチェックの文脈において、制御デバイス9は、同様に、電気的パラメータU、I、Pを評価する。制御デバイス9が短絡の危険を検出する場合には、それは、ステップS14に移行する。ステップS14において、制御デバイス9は、短絡の危険が解消されるように、第1の起動値A1および第2の起動値A2を決定する。たとえば、制御デバイス9は、電極電圧Uが減少されるように、第1の起動値A1を変更することが可能であり、とりわけ、電極6が鋼溶融物15から離れる方向に持ち上げられるように、第2の起動値A2を変更することが可能である。
【0060】
ステップS13において、制御デバイス9が短絡の危険を検出しない場合には、制御デバイス9は、ステップS5に移行する。ステップS5において、第1の起動値A1および第2の起動値A2の決定は、
図6に関連してすでに説明されたように行われる。
【0061】
制御デバイス9がステップS12、ステップS14、またはステップS5を実行したかどうかとは無関係に、制御デバイス9は、次にステップS6に移行し、ステップS6において、制御デバイス9は、決定された第1および第2の起動値A1、A2に従って、電力供給デバイス3および位置決めデバイス7を起動させる。その後に、制御デバイスは、ステップS7に移行する。そこから、ステップS8への移行が存在するか、または、制御デバイス9がステップS11に戻るかのいずれかである。
【0062】
パラメータU、I、Pは、さまざまな方式で選ばれることが可能である。たとえば、
図9における図示によれば、少なくともフラットバス段階の間に、電気的パラメータU、I、Pは電極電流Iとすることが可能である。代替的に、
図10における図示によれば、少なくともフラットバス段階の間に、電気的パラメータU、I、Pを電力Pとすることが可能である。このケースでは、トレーラブロック18が、たとえば、決定ブロック12の上流にあってもよい。このケースでは、たとえば、電極電圧Uおよび電極電流Iが、トレーラブロック18に供給されることが可能である。このケースでは、たとえば、トレーラブロック18は、瞬時電力を瞬時に決定するか、または、電極電圧Uの期間にわたって平均電力を決定し、決定された値を電気的パラメータPとして決定ブロック12に出力する。
【0063】
電極電圧Uの周波数f(または、これに対応する電極電流Iの周波数f)が変更されるような様式で、フラットバス段階の間に、制御デバイス9が第1の起動値A1を決定することが可能である。これは、対応する期間Tが変更される点において、
図11に示されている。期間Tの変更、および、これに対応して、周波数fの変更は、両方向矢印19によって
図11に示されている。それは、電気的パラメータU、I、Pを対応する目標値U*、I*、P*に近似させる目的のために行われる。周波数fの変更は、好ましくは、基底周波数f0の70%から90%の間にある範囲、とりわけ、基底周波数f0の75%から85%の間にある範囲において行われる。
【0064】
フラットバス段階の開始時において、したがって、制御デバイス9がステップS4からステップS5に移行するときに(または、
図8による実施形態のケースでは、ステップS11に移行するときに)、
図5における図示による電気アーク14は、基本長さL0を有する。いくつかのケースでは、フラットバス段階の間に制御デバイス9が鋼溶融物15に向けて電極6を移動させるならば有利である。鋼溶融物15に向けて移動させた後に、
図12による電気アーク14は、残留長さLRのみを依然として有する。残留長さLRは、基本長さL0よりも小さい。しかし、
図13における図示によれば、それは、基本長さL0の少なくとも20%であるべきである。
【0065】
基本長さL0は、さまざまな方式で制御デバイス9に知られるようになる可能性がある。たとえば、制御デバイス9の基本長さL0は、オペレーターによって特定されることが可能である。代替的に、
図14における図示によれば、制御デバイス9は、ステップS4の直後にステップS21を最初に実行することが可能である。このケースでは、制御デバイス9は、フラットバス段階の開始時に存在しているような電気的パラメータU、I、Pに基づいて、ステップS21において基本長さL0を決定する。対応するアプローチは、当業者に知られている。ステップS21は、それが存在している場合には、一回だけ実行される。したがって、それは、ステップS5からステップS7のループの中に含まれていない。これは、ステップS11からS14が存在している場合にも同様に当てはまる。
【0066】
制御デバイス9が基本長さL0に基づいて残留長さLRを決定することが可能である。代替的に、制御デバイス9が残留長さLRに関して1つの最小許容値のみを決定すること、または、残留長さLRに関する対応する最小許容値が制御デバイス9のために予め決定されていることが可能である。このケースでは、制御デバイス9がパラメータU、I、Pの評価に基づいて電気アーク炉の最適化された動作を検出するまで、または、残留長さRLが最小許容値に到達するまで、制御デバイス9が電極6の移動を維持することが可能である。実際にとられるアプローチとは無関係に、ステップS5は、このケースでは、第1の起動値A1が以前に説明されたように決定されるような様式で実装されるが、第2の起動値A2は、基本長さL0から開始して電気アーク14の長さが低減されるような様式で決定される。電気アーク14の長さが残留長さLRまで低減することに起因して、電気アーク炉のエネルギー効率は、電気アーク炉の特定の動作状態において改善されることが可能である。
【0067】
本発明は、多くの利点を有する。しかし、とりわけ、位置決めデバイス7の機械的な負荷が低減されることが可能であり、電気アーク炉の動作の間のエネルギー効率がさらに改善されることが可能である。
【0068】
本発明は、好適な例示的な実施形態によってより詳細に図示されて説明されたが、本発明は、開示されている例によって限定されず、他のバリエーションが、本発明の保護範囲から逸脱することなく、当業者によってこれから推測されることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 炉容器
2 含鋼材料
3 電力供給デバイス
4 供給システム
5 炉変圧器
6 電極
7 位置決めデバイス
8、19 両方向矢印
9 制御デバイス
10 制御プログラム
11 マシンコード
12、13、17 決定ブロック
14 電気アーク
15 鋼溶融物
16 スラグ層
18 トレーラブロック
A1、A2 起動値
f 周波数
f0 基底周波数
I 電極電流
L0 基本長さ
LR 残留長さ
P 電力
S1~S21 ステップ
T 期間
U 電極電圧
U、I、P パラメータ
U*、I*、P* 目標値
V 仕様
【国際調査報告】