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特表2024-526165直交振幅変調を用いたスペクトル拡散ビデオ転送
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】直交振幅変調を用いたスペクトル拡散ビデオ転送
(51)【国際特許分類】
   H04J 13/18 20110101AFI20240709BHJP
   H04L 27/36 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H04J13/18
H04L27/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578994
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 US2022035472
(87)【国際公開番号】W WO2023287580
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/220,587
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/318,204
(32)【優先日】2022-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/851,821
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519316313
【氏名又は名称】ハイファイ ユーエスエー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギラット,オフィル
(57)【要約】
直交振幅変調(QAM)送信機は、入力デジタル・レベルをI成分及びQ成分に分離する。変形形態では、QAM送信機は、入力デジタル・レベルを1つおきに、I成分又はQ成分として使用する。QAM受信機は、QAMで変調された信号を受信し、デジタル・レベルを出力する。アナログ・レベルを送信するQAM送信機は、I成分及びQ成分として、入力アナログ・レベルの対を使用する。QAM受信機は、QAMで変調された信号を受信し、アナログ・レベルを出力する。デジタル入力レベル及びアナログ入力レベルは、L個の直交符号を使用して、N個のサンプルを符号化することによって生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力デジタル・サンプルを送信する送信機であって、
N個のデジタル・サンプルである入力ベクトルを入力し、L個のデジタル・レベルを出力するために、長さLであって、N個の直交拡散符号を使用して、前記N個のデジタル・サンプルを符号化するエンコーダであって、前記直交拡散符号を前記N個のデジタル・サンプルのうちの1つに対して使用するエンコーダと、
前記エンコーダから前記L個のデジタル・レベルを示すストリームを受信し、前記L個のデジタル・レベルをQAMコンスタレーションにシンボル配置して、I成分及び位相がずれたQ成分を取得するマッピング回路と、
前記I成分及び前記Q成分を受信し、前記I成分及び前記Q成分を使用して直交振幅変調を実行し、前記デジタル・サンプルを示す電磁信号をEM経路に生成するQAM回路とを備え、
前記L、及び、前記Nが、L≧N≧2の関係である
送信機。
【請求項2】
前記N個のデジタル・サンプルは、単一の信号源が生成し、
前記EM経路が、受信側において終端となる
請求項1に記載の送信機。
【請求項3】
前記EM経路が、表示ユニットの表示パネルにおいて終端となり、前記表示ユニット内に配置される
請求項1に記載の送信機。
【請求項4】
前記エンコーダが、前記N個のデジタル・サンプルを同期して前記L個のデジタル・レベルに符号化し、
前記N個のデジタル・サンプルが、前記L個のデジタル・レベルを示す
請求項1に記載の送信機。
【請求項5】
前記マッピング回路が、前記L個のデジタル・レベルを、前記QAMコンスタレーションにシンボル配置して、前記I成分及び前記位相がずれたQ成分を取得する
請求項1に記載の送信機。
【請求項6】
前記マッピング回路で受信される各デジタル・レベルが、最上位ビット(MSB)及び最下位ビット(LSB)を含み、
前記マッピング回路が、前記マッピング回路で受信されるデジタル・レベルごとに、前記MSBを、前記I成分のMSB及び前記位相がずれたQ成分のMSBに分配し、
前記マッピング回路が、前記マッピング回路で受信されるデジタル・レベルごとに、前記LSBを、前記I成分のLSB及び前記位相がずれたQ成分のLSBに分配し、
前記マッピング回路が、前記I成分及び前記Q成分を取得する
請求項1に記載の送信機。
【請求項7】
前記電磁信号を受け取り、前記EM経路にアナログ信号を出力する、デジタル・アナログ変換器をさらに備える
請求項1に記載の送信機。
【請求項8】
P個の送信機のうちの1つであり、
前記P個の送信機のそれぞれが、電磁信号を生成し、
前記電磁信号が、単一の信号源からのメディア信号を示す
請求項1に記載の送信機。
【請求項9】
デジタル・サンプルを出力する受信機であって、
EM経路からQAM電磁信号を受信し、QAM復号を実行して、前記QAM電磁信号のデジタルのI成分及びデジタルの位相がずれたQ成分を生成する、QAM回路と、
前記I成分及び前記Q成分を入力し、対応するQAM送信機のマッピング回路に従って、前記I成分及び前記Q成分をデジタル入力レベルに変換する、逆マッピング回路と、
L個の前記デジタル入力レベルを入力し、N個のデジタル・サンプルを示す出力ベクトルを出力するために、長さLのN個の直交拡散符号を使用して前記L個のデジタル入力レベルを復号化する、デコーダであって、前記直交拡散符号が、前記N個のデジタル・サンプルのうちの1つで使用される、デコーダとを備え、
前記L、及び、前記Nが、L≧N≧2の関係である
受信機。
【請求項10】
前記N個のデジタル・サンプルは、単一の信号源が生成し、
前記EM経路が、受信側において終端となる
請求項9に記載の受信機。
【請求項11】
前記EM経路が、表示ユニットの表示パネルにおいて終端となり、
前記QAM送信機が、前記表示ユニット内に配置される
請求項9に記載の受信機。
【請求項12】
前記デコーダが、前記L個のデジタル入力レベルを同期して前記N個のデジタル・サンプルに復号化し、
前記N個のデジタル・サンプルが、前記L個のデジタル入力レベルを示す
請求項9に記載の受信機。
【請求項13】
前記逆マッピング回路が、QAMコンスタレーションを、前記デジタル入力レベルのうちの1つに変換する
請求項9に記載の受信機。
【請求項14】
前記逆マッピング回路が、前記I成分及び前記Q成分の各対の最上位ビット(MSB)を、前記デジタル入力レベルのうちの1つのMSBに分配し、
前記逆マッピング回路が、前記各対の最下位ビット(LSB)を、前記1つのデジタル入力レベルのLSBに分配する
請求項9に記載の受信機。
【請求項15】
前記QAM回路が、前記I成分及び前記Q成分を生成する、少なくとも1つのアナログ・デジタル変換器を備える
請求項9に記載の受信機。
【請求項16】
入力アナログ・サンプルを送信する送信機であって、
N個のアナログ・サンプルを示す入力ベクトルを入力し、L個のアナログ・レベルを出力するために、長さLのN個の直交拡散符号を使用して前記N個のアナログ・サンプルを符号化するエンコーダであり、前記直交拡散符号が、前記N個のアナログ・サンプルのうちの1つで使用するエンコーダと、
前記L個のアナログ・レベルを示すストリームを受信するスイッチ回路であり、前記スイッチ回路が、受信された前記アナログ・レベルの対ごとに、前記対のうち、第1のアナログ・レベルをI成分として出力し、前記対のうち、第2のアナログ・レベルを位相がずれたQ成分として出力する、スイッチ回路と、
前記I成分及び前記Q成分を受信し、前記I成分及び前記Q成分を使用して直交振幅変調を実行し、前記アナログ・サンプルを示す電磁信号をEM経路に生成する、QAM回路とを備え、
前記L、及び、前記Nが、L≧N≧2の関係である
送信機。
【請求項17】
前記N個のアナログ・サンプルは、単一の信号源が生成し、
前記EM経路が、受信側において終端となる
請求項16に記載の送信機。
【請求項18】
前記EM経路が、表示ユニットの表示パネルにおいて終端となり、前記表示ユニット内に配置される
請求項16に記載の送信機。
【請求項19】
前記エンコーダが、前記N個のアナログ・サンプルを同期して前記L個のアナログ・レベルに符号化し、
前記N個のアナログ・サンプルが、前記L個のアナログ・レベルを示す
請求項16に記載の送信機。
【請求項20】
マッピングするためのQAMコンスタレーションを有しない
請求項16に記載の送信機。
【請求項21】
デジタル・アナログ変換器を備えない
請求項16に記載の送信機。
【請求項22】
P個の送信機のうちの1つであり、
前記P個の送信機のそれぞれが、電磁信号を生成し、
前記電磁信号が、単一の信号源からのメディア信号を示す
請求項16に記載の送信機。
【請求項23】
アナログ・サンプルを出力する受信機であって、
EM経路からQAM電磁信号を受信し、QAM復号を実行して、I成分及び位相がずれたQ成分を生成する、QAM回路と、
前記I成分及び前記Q成分を入力する複合回路であって、前記複合回路が、アナログ入力レベルのストリームを出力するために、前記I成分及び前記Q成分の対ごとに、第1のアナログ・レベル及び第2のアナログ・レベルを出力する、複合回路と、
L個の前記アナログ入力レベルを入力し、N個のアナログ・サンプルを示す出力ベクトルを出力するために各々長さLのN個の直交拡散符号を使用して前記L個のアナログ入力レベルを復号化する、デコーダであって、前記直交拡散符号が、前記N個のアナログ・サンプルのうちの1つで使用されるデコーダとを備え、
前記L、及び、前記Nが、L≧N≧2の関係である
受信機。
【請求項24】
前記N個のアナログ・サンプルは、単一の信号源が生成し、
前記EM経路が、受信側において終端となる
請求項23に記載の受信機。
【請求項25】
前記EM経路が、表示ユニットの表示パネルにおいて終端となり、
QAM送信機が、前記表示ユニット内に配置される
請求項23に記載の受信機。
【請求項26】
前記デコーダが、前記L個のアナログ入力レベルを同期して前記N個のアナログ・サンプルに復号化し、
前記N個のアナログ・サンプルが、前記L個のアナログ・レベルを示す
請求項23に記載の受信機。
【請求項27】
マッピングするためのQAMコンスタレーションを有しない
請求項23に記載の受信機。
【請求項28】
アナログ・デジタル変換器を備えない
請求項23に記載の受信機。
【請求項29】
P個の受信機のうちの1つであり、前記P個の受信機のそれぞれが、電磁信号を受信し、
前記電磁信号が、単一の信号源からのメディア信号を示す
請求項23に記載の受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願について]
この出願は、2021年7月12日に出願された米国仮特許出願第63/220,587号、名称「Method and System for Pulsital Communication」、2022年3月9日に出願された米国仮特許出願第63/318,204号、名称「Spread-Spectrum Video Transport with Quadrature Amplitude Modulation」、及び2022年6月28日に出願された米国特許出願第17/851,821号、名称「Spread-Spectrum Video Transport with Quadrature Amplitude Modulation」の優先権を主張し、このすべてが参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
この出願には、2018年3月19日に出願された米国特許出願第15/925,123号、2018年12月18日に発行された現在の米国特許第10,158,396号、2019年9月17日に出願された米国特許出願第16/494,901号、2021年8月12日に出願された米国特許出願第63/232,486号、2022年3月4日に出願された米国特許出願第17/686,790号、2021年11月16日に出願された米国特許出願第63/280,017号、及び、2022年3月8日に出願された米国特許出願第63号/317,746号が、参照により組み込まれている。
【0003】
本発明は、概ね、電磁経路を介してサンプリングされた信号の転送に関する。本発明は、直交振幅変調(QAM:quadrature amplitude modulation)と、符号化された信号、具体的には、スペクトル拡散ビデオ転送(SSVT:spread-spectrum video transport)技法を使用して、符号化された信号の転送との組合せに関する発明である。
【背景技術】
【0004】
画像センサ、表示パネル、及びビデオ・プロセッサは、より大きいフォーマット、より大きい色深度、より高いフレーム・レート、又は、より高い解像度を実現させるために、絶えず技術競争している。ビデオ転送(センサ、デバイス、もしくは表示ユニット内か、人を取り巻く構築された環境の中であるか、又は長距離であるかに係わらず)には必ず、1本又は複数の電磁(EM:electromagnetic)経路を介したメディア信号(ビデオ信号等)の送信が含まれる。
【0005】
すべてのEM経路は、減衰、インピーダンス不整合による反射、及び影響を与える障害信号等の現象によって、EM経路を通るEM信号は劣化する。この劣化は、受信端末で受信する電磁信号が、対応する送信端末で利用可能となるレベルとは、異なるという意味である。したがって、すべてのEM路は、不完全な電磁経路とも言える。EM経路の品質も、EM経路を介した送信後に受信端末で測定されたレベルと、送信機のレベルとの比較によって定まる。
【0006】
米国特許第10,158,396号は、アナログ又はデジタル・サンプルを符号化し、その符号化されたサンプルを、EM経路を介して送信し、そのサンプルを復号化するシステム及び技法を開示する。米国特許出願第16/494,901号は、最終的に復号化して使用するために、複数のEM経路を介して符号化されたサンプルを分配及び送信するシステム及び技法を開示し、一方、2021年8月12日に出願された米国特許出願第63/232,486号は、サンプルの符号化、及び、1本又は複数のEM経路を介した送信の前に、サンプルの分配、ステージング、及び、並べ替えを行う(その後、復号化、ステージング、並べ替え、及びそのサンプルの収集が続く。)システム及び技法を開示する。米国特許出願第17/686,790号は、EM経路を介して、符号化されたアナログ又はデジタル・サンプルを送信、エンコーダを備えた送信機(及びデコーダを備えた受信機)の実施形態を開示する。米国特許出願第63/317,746号及び第63/280,017号は、ビデオを転送するためにSSVT技法を使用する、表示ユニット内の送信機及び受信機について開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
EM経路が本質的に不完全であることを考慮し、かつ、上記の開示が、符号化されたサンプルを、EM経路を介して送信する技法を使用するのに対し、送信端末から受信端末に送信するEM信号の品質を高める新しい技法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の目的は、直交振幅変調(QAM)を使用して、符号化されたアナログ又はデジタル・サンプルを変調、送信端末から受信端末へ送信、及び、QAM信号をアナログ又はデジタル・サンプルに復号化することである。
【0009】
第1の実施形態では、送信機は、デジタル・サンプルをデジタル出力レベルに符号化する。これらのデジタル・レベルは、QAM回路にマッピングされ、出力される。なお、変形例では、マッピング回路は、各デジタル・レベルのMSB及びLSBをそれぞれ、I成分及びQ成分のMSB及びLSBに分配する。対応する受信機では、QAM信号を受信し、デジタル出力レベル(変調されていてもよい。)を生成し、続いて、デジタル出力レベルは復号化されて、元のデジタル・サンプルに戻る。
【0010】
第2の実施形態では、送信機は、アナログ・サンプルをアナログ出力レベルに符号化する。これらのアナログ・レベルは、QAM回路に分配され、出力される。スイッチ回路は、アナログ・レベルの対をI成分及びQ成分に分配する。対応する受信機では、QAM信号を受信し、アナログ出力レベルを生成し、続いてアナログ出力レベルは復号化され、元のアナログ・サンプルに戻る。
【0011】
本発明は、コンピュータ・システム、テレビ、モニタ、ゲーム・ディスプレイ、ホーム・シアタ・ディスプレイ、小売店の看板、又は、屋外看板等で使用される。また、高解像度、かつ、ダイナミック・レンジの広いディスプレイに適用可能である。ほかにも、本実施形態は、ビデオ信号を送受信するために使用でき、表示ユニットに適用可能である。また、本発明における送信機は、例として、米国特許出願第63/317,746号で説明されている、送信機等であり、一方で、受信機は、米国特許出願第63/280,017号で説明されている、受信機等である。
【0012】
本発明は、添付した図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】QAM送信機を示す図である。
図2】QAM送信機と併せて使用され得る、16‐QAMコンスタレーションを示し、シンボル配置を示す図である。
図3】Q軸及びI軸を有する、1024‐QAMシンボル配置を示す図である。
図4】QAM送信機においてサンプリングされた信号の符号化を示す図である。
図5A】MSB及びLSBの分割をマッパ内で行う例を示す図である。
図5B】値を複素QAM平面上でどのように示すかを説明する図である。
図5C】QAMシンボル配置例を示す図である。
図6A】デジタル・サンプルをマッパ内に配置する別の例を示す図である。
図6B】値を複素QAM平面上でどのように示すかを説明する図である。
図7】QAMによるサンプリングされたアナログ入力レベルの使用例を示すシンボル配置図である。
図8】SSVT送信機の論理ブロック図である。
図9】アナログ入力を使用するQAM送信機においてサンプリングされた信号の符号化を示す図である。
図10】アナログのサンプルが、エンコーダによってどのように符号化され、EM経路を介して送信されるかの例を示す図である。
図11】デジタルのサンプルに適用可能な符号化方法を示す図である。
図12図10に示すエンコーダを使用して符号化されたアナログ入力レベルの復号化を示す図である。
図13A】アナログエンコーダ、及びアナログデコーダの使用法を示す図である。
図13B】デジタルエンコーダ、及びアナログデコーダの使用法を示す図である。
図13C】EM経路を介して送信された、符号化されたアナログ信号を復号化する、デジタルデコーダを示す図である。
図14】EM経路を介して送信されるSSVT波形の、シミュレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記で言及したように、EM経路は本質的に不完全である。そこで、本開示の発明者らは、符号化されたアナログ又はデジタル・サンプルの送信に関して、送信機から受信機に送信される上で、EM信号がどのように劣化するか、及び、送信における品質を向上させるために、以下を調査した。
【0015】
符号化されたアナログ、又は、デジタル・サンプルの送信において重要なのは、ケーブル等といったEM経路を介した送信における、SN比(信号対雑音比、SNR:signal-to-noise ratio)である。SN比は、クロストーク、減衰、熱雑音、及び、非線形歪み等によって劣化する。クロストークは、シールドされたケーブルで送信する際において、遠端側クロストーク(FEXT:far-side crosstalk)が特に問題であり、受信機がノイズとして受信する。さらに、SN比は、Cat-5、Cat-6、又は、Cat-7等のケーブルでは、周波数に依存し、周波数がより高く、ケーブル長がより長くなると、大きく低下する。このように、周波数がより高く、ケーブル長がより長くなると、信号が減衰し、クロストークが増加し、これらによって、SN比が低下する。SN比を劣化させる第2のメカニズムは、熱雑音である。この影響に起因して、ケーブルを送信する際において、信号の減衰により、信号がノイズ・フロアにより近づき、SN比の劣化をもたらす。SN比の劣化をもたらす第3のメカニズムは、非線形歪みである。SN比の劣化は、無線(無線リンク、例えば、2地点間(Point-to-Point)バックホール、LTE、Wi-Fi(登録商標)等)、又は、光等といった他のチャネルでも存在する。
【0016】
発明者らは、本発明に関して、サンプルを送信する際にSN比が重要であるとする。SSVTによる復元力を利用して、サンプルを送信し、SSVTの復元力を利用して情報密度をより高める。1つの変調方法は、直交振幅変調(QAM)である。デジタル又はアナログ・サンプルの符号化及び送信を行う上で、QAMとSSVTと組み合わせると、高い電気的な復元力を使用して、高い情報密度を実現できる。発明者らは、QAMをアナログ及びデジタル・サンプルの符号化及び送信を統合し、QAMを活用することが、重要であると結論づける。
【0017】
SSVT出力とQAMの組み合わせは、強い経路長への依存する場合、非線形性を有する場合、ケーブル及び他の媒体等のEM経路を使用する場合、帯域幅をより多く使用する場合、ノイズの多い環境の場合、及び、システムにおいて、有用である。
【0018】
[QAM送信機(基本構成)]
図1は、QAM送信機10を示す。角度変調された正弦波は、1/4サイクル(π/2ラジアン)だけ位相がずれ、かつ、2つの振幅変調された正弦波を合成して生成できる。これらの振幅変調された正弦波は、同相(I)成分及び直交(Q)成分となる。ビット・ストリーム20は、シリアル-パラレル変換器24で、送信機に入力される。シリアル-パラレル変換器24は、ビット・ストリームを、デジタル値を示すビット群に変換する。例えば、変換器24は、変調の対象とするデジタル値が4ビットである場合、ビット・ストリームをそれぞれ4ビットのグループに変換する。各グループは、QAM変調する目的で分割され、2ビットが、Q経路26でシンボル配置ユニット30へ送信され、他の2ビットが、I経路28でシンボル配置ユニット34へ送信される。MPAMは、「MアレイPAM」を示し、I経路28及びQ経路26のいずれのEMでも、信号はMアレイPAMで変調され、QAMコンスタレーションの各コンスタレーション点に対するX(I)軸及びY(Q)軸に応じてマッピングが行われる。
【0019】
シンボル配置ユニット30は、Q成分32を生成し、一方で、シンボル配置ユニット34は、I成分36を生成する。Q成分及びI成分(I及びQは実数信号であり、対応する{I,Q}は複素信号である。)の信号はそれぞれ、帯域幅を一定幅に、ローパスフィルタ40、42を通過する。次に、IF信号源44(基本的に、可変周波数型発振器である。)は、同相成分及び直交成分を取得し、各信号にIF信号源の振幅を乗算し、一方で、直交成分を90°位相をずらして提供し、次いで加算器50で、両方を加算する。加算器50からの出力は、送信機に入力される元のデジタル値を示す実数信号となる。実施態様に応じて、加算器50の後にDACが追加されてもよく、又は、シンボル配置ユニット30及び34後のQ経路及びI経路に1つずつ、2つのDACが設置されてもよい。最後に、ビット・ストリーム20を示すQAM信号70を出力するために、バンドパスフィルタ60を使用して、不要なスプリアス及び高周波をフィルタ処理してもよい。
【0020】
図2は、送信機10と併せて使用され得る、16‐QAMコンスタレーション80を示し、シンボル配置を示す図である。16‐QAMコンスタレーション80では、デジタル値は、それぞれ4ビットである。この例では、入力デジタル値が「1110」である。16‐QAMコンスタレーション80を使用して、このデジタル値をシンボル配置すると、図示のように、振幅86及び位相88を有するベクトルが得られる。なお、より大きいサイズのコンスタレーションが使用されてもよい。
【0021】
[QAM送信機]
上記のQAM送信機への様々な改良によって符号化された出力値を変調及び送信するため、QAMを用いる。なお、様々なサイズのQAMコンスタレーションが使用されてもよい。
【0022】
図3は、Q軸及びI軸を有する、1024‐QAMシンボル配置を示す図である。このコンスタレーション内の各デジタル値96は、10ビット長である。QAMコンスタレーションのサイズは、4‐QAM、16‐QAM、64‐QAM、256‐QAM、1024‐QAM、及び4096‐QAMのように、4である。これより大きいQAMコンスタレーションのサイズは、ほとんど使用されない。また、2QAMコンスタレーションも存在するが、符号化がより複雑であり、I経路及びQ経路において符号化には適さない場合が多い。
【0023】
図4は、QAM送信機100と統合した構成によってサンプリングされた信号の符号化を行う構成を示す図である。米国特許第10,158,396号及び米国特許出願第16/494,901号で説明されているように、任意の数のデジタル又はアナログ・サンプルを含む入力ベクトル110は、EM経路を介して送信するL個の出力レベル160を生成するために、エンコーダにおいて、コード・ブックが示す符号に基づいて符号化される。この符号化技法の詳細は、図8図10、及び図11に示す。この例では、サンプルは、デジタル値であり、デジタル符号化が使用され、出力レベル160は、デジタル値である。下記でより詳細に説明するように、アナログ・サンプル、アナログ符号化、及び、アナログ出力レベルが使用されてもよい。
【0024】
図4は、エンコーダ102及びQAM送信機202を図示する。入力ベクトル110は、N個のサンプル112~118を含む。この例では、各サンプルは、5ビット長で、サンプル112の値は「01101」である。N個の符号122~128があり、各符号がサンプルのうちの1つに対応し、各符号はL個のチップの長さを有し、それぞれが互いに直交する。符号化を実行するために、特定のサンプルに対応する符号の各チップが、そのサンプルを変調130することにより、サンプルごとにL個の変調された値が生成される。この簡単な例では、符号122を用いる第1のチップによるサンプル112の変調により、変調された値142(1)が得られる。各サンプルを、サンプルに対応する符号を用いて、第1のチップが変調を行うと、変調された値142(1)~148(1)が得られる。次に、これらの変調された値142(1)~148(1)は、合計150する計算がされ、第1のデジタル出力レベル161が生成される。同様に、他の変調された値142(2:L)~148(2:L)が合計され、残りの出力レベル160が生成される。このデジタル出力レベルのストリームは、後述する、最適なQAMコンスタレーションを使用してシンボル配置され、QAMアナログ出力290を生成するために、直交振幅変調が行われる。
【0025】
出力レベル160は、任意のビット長にできる。例えば、各出力レベルの長さは、10ビットである。したがって、1024‐QAM(例えば、ビット数nごとに、2QAMが使用される。)コンスタレーションが使用され、QAM送信機で使用するために、シンボル配置が実行される。シンボル配置については、後述する。
【0026】
フィルタ器222及び224は、入力信号のサンプリング・レートを高める補間フィルタである。変換器232及び234は、周波数の、ベースバンド信号からのアップコンバータを形成する、周波数変換器である。NCO230は、同相成分及び直交成分を作り出すために、変換器232及び234と主に相互作用する、数値制御型発振器である。次に、同相成分及び直交成分は、出力レベル160を示す実数出力信号242を生成するために、加算器240で合計される。信号242は、アナログ信号260を出力するDAC250に入力され、アナログ信号260は、バンドパスフィルタ270を通過し、その後、アンプ(VGA:variable gain amplifier)280によって、EM経路を介して送信するために増幅される。構成要素222~250は、MAX5857RF DAC(クロック逓倍PLL/VCO252及び14ビットRF DACコアを備える。)で実現する。シンボル配置マップによって定まる振幅及び位相を有する実数のサンプルが、クロック・サイクルごとに入力される。図4では、DACが、RF周波数よりも高い、又は、RF周波数に近い高い周波数でクロック駆動する。なお、変形例は、1つのDAC250ではなく、I経路及びQ経路に1つずつ、2つのDACがある。
【0027】
QAMアナログ出力290は、RF出力として図示されているが、ケーブル及び光ファイバ等、他の種類のEM経路を介した出力でもよい。
【0028】
加えて、ケーブルを介した送信の不完全性(減衰、位相ずれ等である。)のため、受信機との同期を行うプリアンブル(又はトレーニングシーケンス)がサンプルのストリームに追加される。プリアンブルは、事前に定める信号であり、受信機によるチャネル推定に使用される。必要に応じて、QAM変調への入力の前に、プリアンブルを挿入するスイッチがあってもよい。
【0029】
別の実施態様では、図1に示すように、I経路とQ経路との両方(ローパスフィルタ42及び40の直前位置)にDACがあり、DACより下流はアナログ値である。このような構成では、十分に低いサンプリング・レートで、より安価な部品を使用できる。ただし、図4に示す構成が、より望ましい。
【0030】
[デジタル値のシンボル配置]
変調I/Qマッパ210は、シンボル配置を実行し、シンボル配置は、公知技術が適用できる。変調I/Qマッパ210は、下記に示す方法で入力されるデジタル・レベルをシンボル配置する回路を備える。一実施形態では、エンコーダからの出力レベルごとに、下位半分のビットは、Q経路214を介して送信され、一方、上位半分のビットは、I経路212を介して送信される。別の実施形態では、奇数番目の出力レベルが、I経路212を介して送信され、一方、偶数番目の出力レベルが、Q経路214を介して送信される。さらに別の実施形態では、各デジタル出力レベルが12ビット長とする。16‐QAMが使用される場合、デジタル出力レベルは、4ビットの3つのビット群に分割される。次に、ビット群は、2ビットのI値及びQ値に分割される。なお、シンボル配置は、グレイ・コーディングを用いてもよい。デジタル・データでは、複数ビットのエラーの確率を下げるために、グレイ・コーディングが使用される。グレイ・コーディングは、隣接するコンスタレーション点のコーディングが1ビットだけ異なることを意味する。
【0031】
好ましい一実施形態では、エンコーダからの各デジタル出力レベルの最上位ビット(MSB:most significant bit)は、I経路とQ経路との間で分割されて、I経路及びQ経路のMSBとなる。一方、各デジタル出力レベルの最下位ビット(LSB:least significant bit)は、I経路とQ経路との間で分割されて、I経路及びQ経路のLSBとなる。例えば、デジタル出力レベルが、4ビットの2進数[ABCD]とする。A、B、C、Dは、2進数(例えば、「1」又は「0」)である。ABは最上位ビットを示す。CDは最下位ビットを示す。これらの4ビットは、I経路とQ経路との間で、I=AC、Q=BDのように分割される。したがって、デジタル出力レベルの最上位ビットは、I経路及びQ経路の最上位ビットになり、一方、デジタル出力レベルの最下位ビットは、I経路及びQ経路の最下位ビットになる。
【0032】
このように分割する理由は、送信途中にノイズ又は障害が生じた場合、受信されたQAM信号が歪む場合がある。又は、最下位ビットが失われる場合がある。しかし、本発明におけるデジタル出力レベルは、メディア信号(例えば、カメラ信号源からの画素値)である。そのため、送信機から受信機まで、すべてのビットが完全でなくともよい。対照的に、コンピュータ間のデジタル・データ(文書等)は、送信されるすべてのビットが完全でないと、エラー検出となる。言い換えると、QAM受信機は、MSBの誤差よりも、LSBの誤差の影響を受け難い。したがって、この分割により、LSBと比較して、MSBが保護される。各ビットは、デジタル・データの送信とは異なり、すべてのビットが同じ重みではなく、ビットの位置がよりMSBに近づくほど、重要である。したがって、I経路とQ経路との間で、各デジタル出力レベルのMSBとLSBとを分割すると、QAM信号が歪み、障害が生じた場合でも、失われるのは元のデジタル出力レベルのLSBだけである。このように、メディア信号のLSBの損失は、致命的なエラーにはならない。
【0033】
図5Aは、MSB及びLSBの分割をマッパ(変調I/Qマッパ210)内で行う例を示す図である。デジタル出力レベルX510がNビットである。デジタル出力レベルX510が、任意の数のMSBビット512及び任意の数のLSBビット514を有し、MSBビットが、ビットの総数の半分又はほぼ半分であるとする。次いで、Nが偶数であると仮定する。デジタル・レベルは、偶数ビット及び奇数ビットを選択し、偶数番目のビット(0を含む。)を値530に割り当て、かつ、奇数番目のビットを値520に割り当てにより、2つのデジタル値XI530及びXQ520に分割できる。デジタル値XI及びXQは、各MSBが符号ビットとなり、残りのビットが振幅となる、符号付きの2進数となる。次に、値531及び521は、複素QAM平面のI経路及びQ経路の値となる。もちろん、偶数番目のビットが、値520に割り当てられ、奇数番目のビットが、値530に割り当てられてもよい。
【0034】
上記の方式では、各MSBが符号ビットになるが、MSBが示す値は失われない。互いに「より近い」値、例えば、値-1及び値0は、近いコンスタレーション点にシンボル配置される。MSBは、両方の値で同じではないが、2つの値間に誤りがある場合、誤差は、「アナログ」サンプルの可能な最小誤差である、「1」となる。
【0035】
値520及び530から符号付きの値を作成する、他の技法も可能である。例えば、シンボル配置は、MSBを符号ビットにするのではなく、符号なしの値を取得し、最小値と最大値との間の中央値である、オフセットを減算して実現してもよい。
【0036】
図5Bは、値521及び531によって複素QAM平面上の点542を示す、グラフ540である。
【0037】
図5Cは、QAMシンボル配置例を示す図である。XI及びXQを示すビットの数は、有限である。したがって、I及びQが有する可能性のある実際の値の数も、有限である。この例では、元のデジタル・レベル510は、6ビットである。したがって、I及びQを示す3ビットがあり、第1のビットは符号ビットである。これは、コンスタレーション560に示す通り、それぞれの値が-3から3の範囲となる。したがって、このコンスタレーション560を使用して、XI及びXQを、QAM送信機のI経路及びQ経路のI値及びQ値にシンボル配置できる。
【0038】
図6Aは、デジタル・サンプルをマッパ(変調I/Qマッパ210である。)内に配置する別の例を示す図である。ここでは、デジタル・レベルをQAM平面にシンボル配置するために、偶数デジタル・レベルXm-1及び奇数デジタル・レベルXがそれぞれ、同じ2進数を使用して、I成分及びQ成分にシンボル配置される。MSBは、符号ビットである。入力デジタル・レベルX570及び後続のデジタル・レベルXm-1572が、Nビットとする。次に、値581及び583は、複素QAM平面のI経路及びQ経路の値として使用される。
【0039】
図6Bは、値581及び583によって複素QAM平面上の点592を示すグラフ590である。
【0040】
[アナログ入力を使用した直交振幅変調]
図10等で説明するように、本発明は、図4の入力ベクトル110に対して行うデジタル・サンプルの符号化ではなく、アナログ・サンプルを符号化し、アナログ出力レベルを生成できる。したがって、L個の出力レベル160は、アナログ・レベルとなる。例えば、アナログ・レベルは、図14の波形である。本実施形態は、直交振幅変調(QAM)を使用して、これらL個のアナログ出力レベルを変調し、送信することもできる。図10等に示すように、アナログ・レベルは、正又は負の可能性がある。これらのレベルは、シンボル配置方法を変えるものではない。デジタルの場合、MSBを符号ビットとして設定するのは、「符号なし」の値を、正又は負の可能性がある値にシンボル配置するというものである。
【0041】
図7は、QAMによるサンプリングされたアナログ入力レベルの使用例を示すシンボル配置の図である。このコンスタレーション300は、16個のデジタル値304を示すが、デジタル値304へのシンボル配置には使用されず、これらの値は単に、アナログ・レベルがどのように入力されるかを示す。図4の通り、エンコーダからのL個のアナログ出力レベルをデジタル出力レベルに変換する。次に、これらのデジタル出力レベルは、QAM送信機に入力可能であるが、この実施形態では、アナログ出力レベルを直接使用する。言い換えると、アナログ出力レベルが、I成分及び位相がずれたQ成分を示すことができる。
【0042】
図9は、アナログ入力を使用するQAM送信機610においてサンプリングされた信号の符号化を示す。QAM送信機610に入力される、エンコーダからのL個のアナログ出力レベル601とする。
【0043】
スイッチ・デバイス612は、サンプル・ホールド機能を実現し、交互に(奇数、偶数)サンプリングされたアナログ・レベルが、タイミングを調整して、Q経路626及びI経路628に同時に与えられる。したがって、2つのアナログ・レベルごとに、{I,Q}の対が生成される。このタイミング調整は、順次与えられるアナログ・レベルを、確実に、コンスタレーションで同時に変調するために行う。スイッチ612は、アナログ・レベルの送信先を選択し、アナログ・レベルをいずれかの経路へ分配するハードウェア・デバイスである。一方で、QAM受信機では、スイッチ612は、{I,Q}の対を受信し、2つのアナログ・レベルを生成する、複合デバイス又は複合回路である。
【0044】
Q成分及びI成分(I及びQは、実数信号であり、対{I,Q}は複素信号である。)はそれぞれ、信号帯域幅を制限するために、ローパスフィルタ640、642を通過する。次に、IF信号源644(基本的に、可変周波数型発振器)は、同相成分及び直交成分を取得し、各信号にIF信号源の振幅(NCOの振幅、及び90度シフトされたNCOの振幅である。)を乗算し、一方で、直交成分を90°位相をずらして提供し、次いで加算器650で、両方を加算する。加算器650の出力は、送信機に入力された元の2つの連続したアナログ・レベルを示す、実数信号(この実数信号は、通過帯域信号とも呼ばれる、NCOの周波数にシフトされたベースバンド信号である。)となる。バンドパスフィルタ660を使用して、不要なスプリアス及び高周波をフィルタ処理し、最後に、(図4のアンプ280と同様の)アンプ680を使用して、エンコーダからのアナログ出力レベル601の、元の連続した入力を示す、QAM信号690を増幅して出力する。
【0045】
例として、L個のアナログ出力レベル601がシリーズとなって与えられるとすると、奇数番目は、I経路628に提供され、一方で、偶数番目は、Q経路626に提供される。もちろん、奇数番目がQ経路に提供され、偶数番目がI経路に提供されてもよい。したがって、I成分及びQ成分は、相異なるアナログ出力レベルを示すことができる。例えば、出力レベル601では、第1のアナログ出力レベル602は、I経路に提供され、第2のアナログ出力レベルは、Q経路に提供され、第3のアナログ出力レベルは、I経路に提供される。図7において、第1のアナログ出力レベルが「2」であり、第2のアナログ出力レベルが「3」とする。概念的には、これら2つの値(I,Q)は、図7に示すように、特定の振幅及び位相312となるベクトルを示す点310にマッピングされる。次に、第3のアナログ出力レベルが「-2」、第4のアナログ出力レベルが「-0.5」であるとする。これら2つの値は、図7に示すように、特定の振幅及び位相322となるベクトルを示す点320にマッピングされる。このようにして、RF信号を生成するために、L個のシリーズであるアナログ出力レベル601が、QAM送信機610に入力される。RF信号690の出力は、RF出力として図示されているが、ケーブル及び光ファイバ等、他の種類のEM経路による出力でもよい。
【0046】
図7は、QAMコンスタレーションを示す例であるが、各アナログ・レベルを使用してI値及びQ値を形成できるので、各アナログ・レベルをコンスタレーションにマッピングしなくともよい。結果的に得られるベクトル(resultant vector)の振幅及び位相は、図示のように、I値及びQ値に基づいて決定される。
【0047】
アナログ出力レベルを直接マッピングして使用する、他の方法が適用されてもよい。アナログ・サンプルの場合、誤差の振幅を最小限に抑えることは有効である。したがって、偶数番目のサンプル及び奇数番目のサンプルを、I及びQに別々にマッピングすることは理にかなう。アナログ・サンプルでは、各サンプルの下位ビットの重みがより小さく、上位ビットよりも重要性が低いので、グレイ・コーディングは好適ではない場合がある。したがって、奇数番目のレベルはQ経路214へ送信されてもよく、偶数番目のレベルはI経路212へ送信されてもよく、又は逆も可能である。
【0048】
[QAM受信機及び復号化]
上記で、直交振幅変調(QAM)送信機の実施形態、ならびにQAM信号を受信機へ送信するために、エンコーダからL個のデジタル出力レベルを入力してマッピングする実施形態、及びエンコーダからL個のアナログ出力レベルを入力して分配する実施形態について説明してきた。当業者は、デジタル・マッピング技法又はアナログ分配技法に関して、QAM送信機で従来例を使用して、QAM無線周波数信号を受け入れ、場合に応じてL個のデジタル出力レベル又はL個のアナログ出力レベルを出力する、対応するQAM復号器及び受信機を実現できる。
【0049】
[スペクトル拡散ビデオ転送(SSVT)信号]
上記の通り、本実施形態は、アナログ信号を使用して、ビデオ情報を局所的に(例えば、表示ユニット内である。)又はより長距離にわたって、送信する。本実施形態において、電磁信号(EM信号)は、その振幅が時間の経過と共に変化する、電磁エネルギーとして示す変数である。電磁信号は、ワイヤ対(又はケーブル)、空間(又は無線)、及び光又は導波路(ファイバ)等のEM経路を介して、送信機端末から受信機端末に送信する。電磁信号は、時間及び振幅の2つの次元のそれぞれにおいて、連続的であるか、又は離散的である。
【0050】
本実施形態は、公知のSSDS-CDMA信号を改善した「スペクトル拡散ビデオ転送」(SSVT)信号と呼ばれる、新規の離散時間、連続振幅の電磁信号を利用する。SSVTとは、本実施形態において、1本又は複数のEM経路を介して、電磁(EM)ビデオ信号を受信器へ送信することを指す。
【0051】
符号分割多重アクセス(CDMA)は、一般的に、携帯電話を含む無線通信技法に使用される、よく知られたチャネル・アクセス・プロトコルである。CDMAは、多重アクセスの一例であり、いくつかの送信機が、単一の通信チャネルを介して同時に情報を送信できる。電気通信では、CDMAにより、複数のユーザが、他のユーザからの干渉を受けることなく、周波数帯域を共有できる。CDMAは、スペクトル直接拡散方式(SSDS)を採用しており、符号化は、各ユーザのデータを符号化するのに、固有の符号に依存する。固有の符号を使用することにより、複数のユーザによる送信を組み合わせて、複数のユーザ間で干渉せずに送信できる。受信側では、複数のユーザが、同じ固有の符号を使用して復号化し、各ユーザのデータを復号化する。下記でより詳細に説明するように、SSVTは、CDMAとは相異なる。
【0052】
[SSVT送信機、分配器/エンコーダ]
図8は、SSVT送信機428の論理ブロック図を示す。分配器440は、組立てバンク450、ステージング・バンク452、提供バンク454、及び、コントローラ456を備える。エンコーダブロック460は、デジタル・アナログ変換器(DAC)462のバンクと、伝送媒体であるEM経路ごとに1つずつ、4つのエンコーダ442とを備える。上記の通り、単一の信号源(カメラ、画像センサ、別のセンサ等)からのサンプルのストリームは、符号化するために、送信機428に到着する。エンコーダ442は、図4における入力ベクトル110等の入力ベクトルを符号化し、出力レベル160等といった出力レベルのシリーズを生成する。したがって、図4に示されたように、任意の数(P)のエンコーダ102及び対応するQAM送信機202が存在し、EM経路ごとにエンコーダ及びQAM送信機が存在してもよい。
【0053】
分配器440は、サンプルのセットのストリームが示す、露光化された色情報(例えば、RGB)を受信する。組立てバンク450は、これに応じて、入力するサンプルのセットのストリームが示す、露光化された色情報(例えば、RGB)から、4つのベクトルV、V、V、及びVを生成する。サンプルのセットは、受信されると、所定の順列に従って組立てバンク450に記憶される。ただし、分配器440は、N個のサンプルを含むベクトルを生成するときに、任意の数の別の順列を使用してもよい。
【0054】
ステージング・バンク452により、4つのベクトルV、V、V、及びVのそれぞれのN個のサンプルは、リタイマによって使用される第1のクロックの周波数(又は第1のタイミングドメイン)から、符号化、及びその結果得られたEM出力レベルを、伝送媒体を介して送信するのに使用される、第2のクロックの周波数(又は第2のドメイン)へ移すことが容易にできる。N=60及びS=3の場合、RGBサンプルの80セットを示すサンプルが、4つのエンコーダへ入力されるベクトルV、V、V、及び、Vに含まれる。
【0055】
実施形態において、第1のクロック周波数は、第2のクロック周波数よりも速いか、遅いか、又は同じであってもよい。第1のクロック周波数f_pixは、ビデオ送信元によって選択されたビデオ・フォーマットによって決定される。第2のクロック周波数f_ssvtは、第1のクロック周波数f_pix、伝送媒体内のEM経路の数P、入力/出力サンプルの各セットのサンプルの数S、SSVT変換パラメータN(入力/出力ベクトルの場所の数)、及び、L(各SSDS符号の長さ)の関数であり、ここで、f_ssvt=(f_pix*S*L)/(P*N)である。この例では、入力クロック(pix_clk)と、SSVTクロック(ssvt_clk)は別の周波数で発振する。pix_clkとssvt_clkとは、同じでも異なっていてもよい。エンコーダが、次の入力ベクトルが準備される間に符号化する。提供バンク54は、4つの符号化器入力ベクトルV、V、V、及びVのそれぞれのN個のサンプルを、エンコーダブロック460に送信する(例えば、ベクトルVは、Sample0,0からSample0,N-1までを含むとする)。
【0056】
コントローラ456は、組立てバンク450、ステージング・バンク452、及び提供バンク454の動作及びタイミングを制御する。コントローラは、具体的には、4つのエンコーダへ入力されるベクトルV、V、V、及びVを生成するときに、使用される順列及びサンプル数Nを規定する役割を果たす。コントローラ456は、ステージング・バンク452によって実行される、第1のクロック周波数から第2のクロック周波数へクロック・ドメインを移すのにおいて、調整する役割も果たす。さらに、コントローラ456は、提供バンク454がエンコーダへ入力されるベクトルV、V、V、及びVのそれぞれの、N個のサンプルをエンコーダブロック460に入力するタイミングを、調整する役割も果たす。
【0057】
エンコーダブロック460内には、複数のデジタル・アナログ変換器(DAC)462が備えられ、それぞれが、4つのエンコーダへ入力されるベクトルV、V、V、及びVにまとめて割り当てられたP*N個のサンプル(サンプル0,0からサンプルP-1,N-1まで)のうちの1つを、受信する。各DAC462は、デジタル・ドメインから受信したサンプルを、入力するサンプルのデジタル値に比例した電圧を示す差動信号対に変換する。DAC462の出力は、最大電圧から最小電圧までの範囲である。
【0058】
4つのエンコーダ442は、4つのエンコーダへ入力されるベクトルV、V、V、及びVに対応して備えられる。各エンコーダ442は、エンコーダへ入力される入力ベクトルのN個のサンプルの差動信号対を受信し、各サンプルに対応する符号から、チップを使用してN個の差動信号対を変調し、変調された値を蓄積し、次いで差動EMレベル出力レベルを生成する。この例では、4つのエンコーダ442があるので、伝送媒体を介して同時に送信されるEMレベル信号(LevelからLevelまで)が存在する。
【0059】
シーケンサ回路465は、DAC462及びエンコーダ442のタイミングを調整する。シーケンサ回路465は、DAC462及びエンコーダ442のクロック制御を行う。シーケンサ回路465はまた、エンコーダ442を制御する役割を果たす、2つのクロック位相信号「clk1」及び「clk2」を生成する役割も果たす。
【0060】
当業者には理解されるように、送信機428に対応する受信機は、出力レベルを受信し、復号化し、サンプルをRGB信号にする。この例では、アナログ符号化を示すが、デジタル符号化(及び復号化)でもよい。DAC又はADCは、場合に応じて、エンコーダ(又はデコーダ)の前又は後に配置されてもよい。
【0061】
[SSVT信号、符号化及び復号化]
上記の通り、本実施形態は、符号化された出力レベル(アナログ又はデジタル)、すなわちSSVT信号が、QAM送信機に入力、又はQAM受信機がQAMで変調された信号を受信し、復号化するためのSSVT信号を生成することについて開示する。下記では、SSVT信号についてさらに詳細に説明し、SSVT信号の利点を提示する。
【0062】
この開示では、電磁信号(EM信号)は、その振幅が時間の経過と共に変化する、電磁エネルギーとして示す変数である。電磁信号は、ワイヤ対(又はケーブル)、空間(又は無線)、及び光又は導波路(ファイバ)等のEM経路を介して、送信機端末から受信機端末に送信される。電磁信号は、時間及び振幅の2つの次元のそれぞれにおいて、連続的、又は離散的である。「純粋なアナログ」信号は、連続時間、連続振幅の電磁信号である。一方で、「デジタル」信号は、離散時間、離散振幅の電磁信号である。「サンプリングされたアナログ」信号は、離散時間、連続振幅の電磁信号である。本実施形態は、既存のSSDS-CDMA信号を改善する、「スペクトル拡散ビデオ転送」(SSVT)信号と呼ばれる、新規の離散時間、連続振幅の電磁信号についてである。SSVTとは、改善されたスペクトル直接拡散方式(SSDS)ベースの変調を使用して、1本又は複数のEM経路を介して、電磁信号を送信することを指す。
【0063】
符号分割多重アクセス(CDMA)は、一般的に、携帯電話を含む無線通信技法に使用される、よく知られたチャネル・アクセス・プロトコルである。CDMAは、多重アクセスの一例であり、いくつかの様々な送信機が、単一の通信チャネルを介して同時に情報を送信することができる。電気通信では、CDMAにより、複数のユーザが、他のユーザからの干渉を受けることなく、周波数帯域を共有できる。CDMAは、スペクトル直接拡散方式(SSDS)を採用しており、符号化は、各ユーザのデータを符号化するのに、固有の符号に依存する。固有の符号を使用することにより、複数のユーザによる送信を組み合わせて、複数のユーザ間で干渉せずに送信できる。受信側では、複数のユーザが、同じ固有の符号を使用して復号化し、各ユーザのデータを復号化する。
【0064】
SSVT信号は、CDMAとは相異なる。(例えば)入力ビデオのサンプルのストリームをエンコーダで受信すると、サンプルは、SSVT信号を生成するために、複数のエンコーダへ入力されるベクトルごとに、SSDSベースの変調によって、符号化される。SSVT信号は、次いで、伝送媒体を介して送信される。受信側では、入力するSSVT信号は、符号化されたサンプルを再構築するために、対応するSSDSベースの復調によって復号化される。その結果、複数のユーザから複数の受信機へデータを送信するCDMAとは異なり、単一のビデオ送信元から単一のビデオの受信側へ、色情報及び画素関係情報を含む時系列であるビデオ・サンプルのストリームが送信される。
【0065】
図10は、アナログのサンプルが、エンコーダによってどのように符号化され、EM経路を介して送信されるかの、例を示す図である。図10の通り、ビデオ・フレーム内の画素が示す電圧である、N個のアナログ値902~908の入力ベクトルがあるとする。これらの電圧は、白黒画像の明度、又は画素の特定のカラー値、例えば画素のR、G、又はBのカラー値の明度を示す。つまり、各値は、指定された色空間における、感知又は測定された光量を表す。この例では、画素の電圧が使用されているが、この符号化技法は、LIDARの値、音響値、触覚値、エアロゾルの値等、センサからの様々な信号で示す電圧が使用されてもよく、アナログ値は、電流等といったサンプルでもよい。デジタル値である信号サンプルがまた、符号化されてもよく、このデジタル符号化は、下記で説明する。さらに、1つのエンコーダ及び1つのEM経路とするが、実施形態は、それぞれがEM経路を介して送信する、複数のエンコーダを使う場合に適用されてもよい。
【0066】
これらの電圧の範囲は、効率化するために、0から1Vまでであることが好ましいが、別の範囲も可能である。これらの電圧は通常、特定の順序で、フレームの行の画素から取得されるが、これらの画素を選択して順序づけするのに、別ルールが使用されてもよい。これらの画素を選択して、符号化するために順序づけするのに、別ルールが使用されようとも、これらの電圧を同じ順序で復号化し、復号化された電圧が属するフレームに、復号化された電圧を配置するのに、同じルールが受信側で使用される。同様な理由で、フレームがカラーで、RGBを使用する場合、このルールは、最初にR画素が、次いでG及びBが符号化されてもよく、又は、ルールは、電圧902~906がその行の画素のRGB値であり、次の3つの電圧908~912が次の画素のRGB値を示す、等でもよい。繰り返しとなるが、このエンコーダが、順序づけて符号化するためのルールが、受信側のデコーダで使用される。デコーダが同じルールを使用するのであれば、アナログ値902~908を順序づける(カラー値によって、行によって、等)ための、ルールは、どのようなルールが使用されてもよい。図示のように、コード・ブック920を使用して、任意の数のN個のアナログ値902~908が、一度に符号化されてもよく、これは、コード・ブック内のN個のエントリの数によってのみ制限される。
【0067】
コード・ブック920は、上記のように、任意の数であるN個の符号932~938を有する。コード・ブック920は、この例では、4つのアナログ値902~908を一度に符号化するため、4つの符号を有する。127個の符号、255個の符号等、より多数の符号が使用されてもよいが、回路の複雑さ等により、より少ない数の符号を有する構成であるのが好ましい。コード・ブック920は、当技術分野で知られているように、それぞれの長さがLの、N個の互いに直交する符号を有し、この例ではL=4である。各符号は、典型的には、SSDS符号であるが、本明細書で論じられているように、必ずしも拡散符号である必要はない。図示のように、各符号は、L個の時間間隔(「チップ」とも呼ばれる)に分割され、各時間間隔は、その符号の2値の値を有する。符号942に示すように、符号934は、2進数「1100」と表現してもようし、符号934が、下記で説明するように、変調する際の使いやすさから、符号944のように、「1 1 -1 -1」と表現してもよい。符号932、936~938も、942、又は、944のように表現してもよい。長さLの各符号は、CDMAでされるように別のコンピュータ処理デバイス(電話等)、別の人、又は別の送信機に関連づけられていないことに留意されたい。
【0068】
したがって、4つのアナログ値902~908を、伝送媒体を介して受信機(対応するデコーダを備える。)に送信するために、以下の技法が使用される。各アナログ値は、各アナログ値に対応する符号944の各チップを使って変調される。例えば、アナログ値902、すなわち、「.3」は、符号932に対応した符号944の各チップで、連続的に変調948される。変調948は、乗算演算子でもよい。したがって、「.3」を、符号932を使って変調すると、「.3,.3,.3,.3」という系列になる。同様に、符号934を使って「.7」を変調すると、「.7,.7,-.7,-.7」となり、「0」は「0,0,0,0」となり、「1」は「1,-1,1,-1」となる。典型的には、各符号の最初のチップが、最初のチップに対応するアナログ値を変調し、次いで、各符号の次のチップが、次のアナログ値を変調するが、一実施態様ではまた、次のアナログ値に進む前に、その符号のすべてのチップを使って、特定のアナログ値を変調してもよい。
【0069】
変調されたアナログ値は、次いで、時間間隔ごとに合計951が計算されて(この図では、垂直方向に計算となる。)、アナログ出力レベル952~958が得られる。例えば、これらの時間間隔に対して、変調された値を合計951すると、「2,0,.6,-1.4」の出力レベルが得られる。これらのアナログ出力レベル952~958は、伝送線の電圧の制限に合わせて、正規化又は増幅することができ、次いで、生成されると、この順序で、伝送媒体であるEM経路(差動信号対等)を介して、連続的に送信される。一方で、受信機は、これらの出力レベル952~958を、この順序に受信する。次いで、同じコード・ブック920を使用し、符号化の逆を行って、出力レベル952~958を復号化する。画素電圧902~908は、ルールに基づき、受信側においてディスプレイで表示する。アナログ値902~908は、L個のアナログ出力レベル952~958のシリーズとして、単一のEM経路を介して効果的に同期して符号化され、送信される。本明細書に示され、説明されたように、多数のエンコーダ及びEM経路があってもよい。さらに、符号化されるN個のサンプルの数は、コード・ブックの直交符号の数によって異なる。
【0070】
堅牢なSSDS技法(拡散符号等)の使用により、帯域幅の大幅な低下が生じるにも係わらず、互いに直交する符号の使用、各サンプルの対応する符号のチップを使った各サンプルの変調、合計、及びL個の出力レベルを使用したN個のサンプルの並列での送信により、帯域幅の大幅な増加が得られる。2進数が連続で符号化され、合計される、従来のCDMA技法とは対照的に、本発明は、最初にサンプル全体(すなわち、単一ビットではなく、アナログ値又はデジタル値の全体である。)を、符号の各チップを使って変調し、次いで符号の時間間隔ごとに、これらの変調を合計し、その結果得られるアナログ電圧レベルを、時間間隔ごとに取得して得られた波形の振幅を利用する。伝送媒体を介して送信されるものは、これらのアナログ出力レベルであり、2進数ではない。本発明はさらに、様々な人々、様々なデバイス、又は様々な信号源による、複数のアクセスを可能にし、複数の受信側に送信するCDMA技法とは異なり、1つのビデオ送信元から別のビデオの受信側へ、すなわちシンクからシンクへ、アナログ電圧を送信することを容易にする。さらに、サンプル値の送信には、圧縮は不要である。
【0071】
図11は、デジタルのサンプルに適用可能な符号化方法を示す図である。ここで、デジタル値902’~908’は、電圧のデジタル表現である。値902’は「1101」、値904’は「0011」、値906’は「0001」、値908’は「1000」である。各デジタル値は、変調の対象とするデジタル値に対応するチップによって、符号944、つまり「1」又は「-1」を使って変調される(デジタル的に乗算される)。各符号の第1時間間隔940において符号ビットとなる最上位ビット(MSB:most significant bit)を追加する「1101」の変調を行うと、「01101」が得られる(MSBの「0」は正の値を意味する。)。「0011」の変調を行うと、「00011」が得られる。「0001」の変調を行うと、「00001」が得られる。「1000」の変調を行うと、「01000」が得られる。これらの変調された値は、第1時間間隔で注釈付きで図示する(図示されていないが、「-1」チップを使った変調により、負の値に対応する2値表現を使用して、2進数で示す負の値が得られる)。
【0072】
第1時間間隔におけるこれらの変調された値を、デジタル的に合計すると、デジタル値952’「011001」が得られる(MSBは符号ビットである)。他のデジタル値954’~958’は、この例には示されていないが、同様に計算される。10進法で、この合計を考えてみると、変調された値「13、3、1、及び8」の合計は25になる。この例では示されていないが、典型的には、追加したMSBは、レベル952’~958’で使用でき、合計を示すには6ビット以上が必要となる。例えば、値902’~908’が4ビットである場合、レベル952’~958’が64個の符号である場合(64ビットのlog2)、最大10ビットを使用する。又は、32個の変調された値が合計されると、さらに5ビットが必要になる。出力レベルに必要なビット数は、符号の数によって異なる。
【0073】
出力レベル950’は、最初に正規化され、DACの入力要件に基づいて調整され、次いで、EM経路を介して送信するため、各デジタル値が、各デジタル値に対応するアナログ値に変換されるため、DAC959に入力される。DAC959は、MAX5857RF DAC(クロック逓倍PLL/VCO及び14ビットRF DACコアを備え、RF DACコアに直接アクセスするために、複数のパスがあってもよい。)であってもよく、その後にバンドパスフィルタ、及びアンプ(VGA:variable gain amplifier)があってもよい。状況によっては、レベル950’で使用されるビット数が、DAC959で可能な数よりも多く、例えば、レベル952’は10ビットであるが、DAC959は8ビットDACであるとする。このような状況では、適当な数のLSB側のビットが破棄され、残りのMSB側のビットがDACによって処理されるが、その結果、ディスプレイで表示する画像の品質が損なわれることはない。
【0074】
デジタル値全体が変調され、次いで、これらの変調されたデジタル値全体がデジタル的に合計され、変換及び送信するためにデジタル出力レベルが生成されるので有利である。この技法は、デジタル値の各2進数を変調し、次いでこれらの変調されたビットを合計して出力を生成するCDMAとは異なる。例えば、各デジタル値が「B」ビットあると仮定すると、CDMAでは、合計でB*L個の出力レベルが送信される。一方で、本実施形態に係るデジタル(又はアナログ)符号化技法では、合計L個の出力レベルしか送信されず、利点を有している。
【0075】
図12は、図10に示すエンコーダを使用して符号化された、アナログ入力レベルの復号化を示す図である。図示のように、L個の入力レベル950が、伝送媒体の単一のEM経路を介して受信される。コード・ブック920は、本明細書で説明され、以前に言及されたように、入力レベル950を復号化し、N個のアナログ値902~908、つまり、上記で符号化された同じアナログ値902~908の、出力ベクトルを生成するために使用される、N個の直交符号932~938を有する。各入力レベル952~958は、復号化を実行するために、垂直方向の矢印で示す、出力ベクトル902~908のインデックスに対応する、各チップを使って変調961される。第1の符号932を使ったレベル952~958の変調を考えてみると、変調によって、系列「2,0,.6,-1.4」を生成する。第2の符号934を使ったレベル952~958の変調は、系列「2,0,-0.6,1.4」を生成する。第3の符号936を使った変調は「2,0,-0.6,-1.4」を生成し、第4の符号938を使った変調は「2,0,.6,1.4」を生成する。
【0076】
次に、水平方向の矢印で示す、アナログ値902~908のうち、1つを生成するために、変調された値の各系列が合計される。例えば、第1の系列が合計されて、アナログ値「1.2」が生成される(スケール係数「4」を使用して正規化された後、「.3」になる)。同様に、変調された値の他の3つの系列が合計されて、アナログ値「2.8」、「0」、及び、「4」が生成され、正規化された後、アナログ値902~908の出力ベクトルが得られる。各符号は、入力レベルを変調することができ、次いでその系列を合計することができるか、又は各系列が合計される前に、すべての符号が入力レベルを変調することができる。したがって、N個のアナログ値902~908の出力ベクトルは、L個の出力レベルを使用して並列に送信される。
【0077】
これらの例には、デジタル入力レベルを復号化する例は示されていないが、当業者は、上記の説明におけるデジタル値の符号化を読めば、復号化を容易に実行できる。
【0078】
図13A図13B、及び図13Cは、エンコーダ及びデコーダが、アナログ・サンプル又はデジタル・サンプルのいずれに対しても動作できることを示す。様々なアナログ及びデジタルのエンコーダ及びデコーダについては、上記で説明した通りである。上記で説明したように、場合によっては、EM経路が複数あり、したがって複数のエンコーダ/デコーダの対、及び対応する数のDAC又はADCが存在してもよい。
【0079】
図13Aは、アナログエンコーダ、及びアナログデコーダの使用法を示す図である。アナログエンコーダ900への入力は、アナログ・サンプル970、又は、アナログエンコーダに配置されたDAC972によってアナログに変換された、デジタル・サンプル971のいずれかである。このようにして、アナログエンコーダに到着するアナログ・サンプル又はデジタル・サンプルのいずれかが、伝送媒体であるEM経路を介して送信されるために符号化される。アナログデコーダ900’は、符号化されたアナログ・サンプルを復号化して、出力となるアナログ・サンプル970を生成する。アナログ・サンプル970は、そのまま使用されてもよく、又はADCを使用してデジタル・サンプルに変換されてもよい(図示せず)。
【0080】
図13Bは、デジタルエンコーダ、及び、アナログデコーダの使用法を示す図である。デジタルエンコーダ901への入力は、デジタル・サンプル971、又はデジタルエンコーダに配置されたADC973によってデジタルに変換された、アナログ・サンプル970のいずれかである。エンコーダに配置されたDAC959は、エンコーダがデジタル用なので、EM経路を介して送信する前に、符号化されたサンプルをアナログに変換する。このようにして、デジタルエンコーダに到着するアナログ・サンプル又はデジタル・サンプルのいずれかが、伝送媒体であるEM経路を介して送信されるために符号化される。アナログデコーダ900’は、符号化されたアナログ・サンプルを復号化して、出力となるアナログ・サンプル970を生成する。アナログ・サンプル970は、そのまま使用されてもよく、又はADCを使用してデジタル・サンプルに変換されてもよい(図示せず)。
【0081】
図13Cは、伝送媒体であるEM経路を介して受信した、符号化されたアナログ信号を復号化する、デジタルデコーダの使用法を示す。符号化されたアナログ信号は、上記の通り、アナログエンコーダ又はデジタルエンコーダのいずれかを使用して送信される。デジタルデコーダ976に配置されたADC974は、EM経路を介して送信された、符号化されたアナログ・サンプルを受信し、サンプルをデジタルに変換する。この符号化されたデジタル・サンプルは、次いで、デジタルデコーダ976によってデジタル・サンプル978へ復号化される(EM経路を介して送信される前に符号化された、サンプルの入力ベクトルの値と一致する)。デジタル・サンプル978は、そのまま使用されてもよく、又はDACを使用してアナログ・サンプルに変換されてもよい。
【0082】
図14は、アナログエンコーダから送信された後(又はデジタル的に符号化され、次いでDACによって変換された後である。)、EM経路を介して送信されるSSVT波形602のシミュレーション(理想状態でオシロスコープのトレースした場合に類似する。)を示す。縦軸は電圧であり、横軸は100ピコ秒の、オシロスコープによる測定時間である。SSVT信号602は、デジタル信号ではなく、アナログ波形であり(つまり、信号は2進数でない。)、この実施形態では、約-15Vから約+15Vまでが電圧の範囲である。アナログ波形の電圧値は、完全にアナログである(又は少なくとも完全にアナログで示せる。)。また、電圧は何らかの最大値に制限されるものではないが、大きい値は現実的ではない。
【0083】
アナログ電圧レベルは、上記の通り、EM経路を介して順次送信され、各レベルは、上記のアナログ出力レベル952~958、又は上記のデジタル出力レベル952’~958’(DACを通過した後である。)等、時間間隔ごとの変調されたサンプルの合計である。これらの出力レベルは、送信されると、波形602のような波形となる。具体的には、電圧レベル980は、特定の時間間隔における変調されたサンプルの合計を示す(つまり、出力レベルである)。単純化した例の場合、連続する電圧レベル980~986は、4つの出力レベルを示す。この例では、32個の符号が使用されており、これは、32個のサンプルを並行して送信できることを意味している。したがって、電圧レベル980~986(符号のチップ数Lに応じて、後続して複数の電圧レベルが続いて出力となる。)は、32個の符号化されたサンプル(ビデオ送信元からの画素電圧等である。)の、並列送信である。その送信に続く、波形602のL個の電圧レベルの次のセットは、次の32個のサンプルを示す。波形602は、概ね、アナログ又はデジタル値をアナログ出力レベルへ符号化した結果、及び合成したアナログ波形であって、離散的にレベルを示す。
【0084】
減衰、インピーダンス不整合による反射、及び影響を与えるアグレッサ信号等の現象により、すべての電磁気経路は、それを通って伝播する電磁気信号を劣化させ、したがって、受信端末で取得される入力レベルの測定値は、孫伸端末で対応する出力レベルに対して、常に誤差の影響を受ける。したがって、当技術分野で知られているように、受信機での入力レベルのスケーリング(又は送信機での出力レベルの正規化又は増幅)によって、補償してもよい。さらに、当技術分野で知られているように、プロセス・ゲインにより(すなわち、電気的復元性も向上する、Lの増加により)、デコーダで復号化された入力レベルは、スケール係数によって符号長を使用して正規化され、送信された出力レベルを復元する。
【0085】
前述の発明は、理解を明確にするために、ある程度詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲内で特定の変更及び修正が実施されてもよいことは、明らかであろう。したがって、説明された実施形態は、限定的ではなく例示として解釈されるべきであり、本発明は、本明細書で提示された詳細に限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及びその均等物の全範囲によって定義されるべきである。
【符号の説明】
【0086】
0 :サンプル
10 :QAM送信機
20 :ストリーム
24 :パラレル変換器
26 :Q経路
28 :I経路
30 :シンボル配置ユニット
32 :Q成分
34 :シンボル配置ユニット
36 :I成分
40 :ローパスフィルタ
42 :ローパスフィルタ
44 :IF信号源
50 :加算器
54 :提供バンク
60 :バンドパスフィルタ
70 :QAM信号
80 :QAMコンスタレーション
86 :振幅
88 :位相
96 :デジタル値
100 :QAM送信機
102 :エンコーダ
110 :入力ベクトル
112 :サンプル
113 :サンプル
114 :サンプル
115 :サンプル
116 :サンプル
117 :サンプル
118 :サンプル
130 :変調
160 :出力レベル
161 :第1のデジタル出力レベル
202 :QAM送信機
210 :Qマッパ
212 :I経路
214 :Q経路
222 :フィルタ器
232 :変換器
240 :加算器
242 :実数出力信号
260 :アナログ信号
270 :バンドパスフィルタ
280 :アンプ
290 :QAMアナログ出力
300 :コンスタレーション
304 :デジタル値
428 :SSVT送信機
440 :分配器
442 :エンコーダ
450 :組立てバンク
452 :バンク
454 :提供バンク
456 :コントローラ
460 :エンコーダブロック
465 :シーケンサ回路
510 :レベル
512 :MSBビット
514 :LSBビット
540 :グラフ
560 :コンスタレーション
590 :グラフ
601 :アナログ出力レベル
602 :SSVT信号
610 :QAM送信機
612 :スイッチ
626 :Q経路
628 :I経路
640 :ローパスフィルタ
642 :ローパスフィルタ
644 :IF信号源
650 :加算器
660 :バンドパスフィルタ
680 :アンプ
690 :QAM信号
900 :アナログエンコーダ
900' :アナログデコーダ
901 :デジタルエンコーダ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
【国際調査報告】