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特表2024-526178細菌のコロニー形成に対する耐性のための、ペプトイドが充填されたミクロゲルで修飾された基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】細菌のコロニー形成に対する耐性のための、ペプトイドが充填されたミクロゲルで修飾された基材
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/34 20060101AFI20240709BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20240709BHJP
   C07K 7/64 20060101ALI20240709BHJP
   A61L 17/14 20060101ALI20240709BHJP
   A61L 27/48 20060101ALI20240709BHJP
   A61L 31/10 20060101ALI20240709BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20240709BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20240709BHJP
   A61F 2/24 20060101ALI20240709BHJP
   A61F 2/30 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61L27/34
C12N5/071 ZNA
C07K7/64
A61L17/14 100
A61L27/48
A61L31/10
A61L31/16
A61L27/54
A61F2/24
A61F2/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579152
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 US2022035189
(87)【国際公開番号】W WO2023287570
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/214,782
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523207364
【氏名又は名称】マクスウェル バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, ウェンハン
(72)【発明者】
【氏名】バロン, アナリーズ
(72)【発明者】
【氏名】リベラ, マシュー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C081
4C097
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA96X
4B065BC46
4B065BC50
4B065BD50
4B065CA60
4C081AB05
4C081AB13
4C081AB34
4C081AC02
4C081AC03
4C081BA14
4C081CA022
4C081CA082
4C081CA232
4C081CC04
4C081CE01
4C081CF122
4C081CF152
4C081CG01
4C081CG03
4C081CG05
4C081CG06
4C081CG08
4C081DA04
4C081DA06
4C081DA12
4C081DC03
4C081EA06
4C097AA03
4C097AA27
4C097BB01
4C097CC03
4C097DD01
4C097DD09
4H045AA20
4H045BA09
(57)【要約】
生物医学デバイスの表面を処理するための方法が提供される。方法は、ポリアニオン性ミクロゲルを生物医学デバイスの表面に堆積させることと、堆積されたポリアニオン性ゲルにペプトイドを充填することと、を含む。一態様では、生物医学デバイスの表面を処置するための方法が提供される。方法は、ポリアニオン性ミクロゲルを生物医学デバイスの表面に堆積させることと、堆積されたポリアニオン性ミクロゲルにペプトイドを充填することと、を含む。別の態様では、金属表面、セラミック表面、及びポリマー表面からなる群から選択される表面を含む生物医学デバイスが提供される。ポリアニオン性ミクロゲルが、上記表面上に配置され、ペプトイドが、上記ポリアニオン性ミクロゲル内に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A1. 生物医学デバイスの表面を処理するための方法であって、
前記生物医学デバイスの前記表面上に、ポリアニオン性ミクロゲルを堆積させることと、
堆積された前記ポリアニオン性ミクロゲルに、ペプトイドを充填することと、を含む、方法。
【請求項2】
A2. 前記ポリアニオン性ミクロゲルを堆積させる前に、前記生物医学デバイスの前記表面をポリカチオン層でプライミングすることを更に含む、請求項A1に記載の方法。
【請求項3】
A3. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、膜乳化及びUV光重合を含むプロセスによって合成される、請求項A1に記載の方法。
【請求項4】
A4. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、ポリアクリル酸を含む、請求項A1に記載の方法。
【請求項5】
A5. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、前記生物医学デバイスの前記表面上に準単層のコーティングとして堆積される、請求項A1に記載の方法。
【請求項6】
A6. 前記生物医学デバイスが、股関節/膝プロテーゼ、心臓弁、ペースメーカー、蝸牛インプラント、シャント、外科用メッシュ、縫合糸、及び組織工学的構築物からなる群から選択される、請求項A1に記載の方法。
【請求項7】
A7. 前記生物医学デバイスを対象の体内に移植することを更に含む、請求項A1に記載の方法。
【請求項8】
A8. 前記対象が、ヒト対象である、請求項A7に記載の方法。
【請求項9】
A9. 前記表面が、金属、金属酸化物、及び金属合金からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項A1に記載の方法。
【請求項10】
A10. 前記表面が、アルミナ、ジルコニア、及びジルコニア強化アルミナ(ZTA)からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項A9に記載の方法。
【請求項11】
A11. 前記表面が、少なくとも1つの耐火金属を含む、請求項A9に記載の方法。
【請求項12】
A12. 前記耐火金属が、Zr、Ta、V、Nb、W、Mo及びそれらの合金からなる群から選択される、請求項A11に記載の方法。
【請求項13】
A13. 前記表面が、Ti-6Al-4V合金、Ti-5Al-2.5Fe合金、Ti-6Al-7Nb合金及びβ-Ti合金からなる群から選択される合金を含む、請求項A1に記載の方法。
【請求項14】
A14. 前記表面が、β‐Ti合金を含み、前記β‐Ti合金が、Ti‐12Mo‐6Zr‐2Fe(TMZF)である、請求項A13に記載の方法。
【請求項15】
A15. 前記表面が、少なくとも1つのチタン合金を含む、請求項A9に記載の方法。
【請求項16】
A16. 前記表面が、ステンレス鋼を含む、請求項A9に記載の方法。
【請求項17】
A17. 前記表面が、Co-Cr-Mo合金、ステンレス鋼合金、及び耐火金属合金からなる群から選択される金属合金を含む、請求項A9に記載の方法。
【請求項18】
A18. 前記表面が、酸化ジルコニウム(oxinium)を含む、請求項A9に記載の方法。
【請求項19】
A19. 前記表面が、アルミナ、ジルコニア、及びジルコニア強化アルミナ(ZTA)からなる群から選択される金属合金を含む、請求項A9に記載の方法。
【請求項20】
A20. 前記表面が、マグネシア部分安定化ジルコニア(MgPSZ)及びイットリア安定化酸化物(Y-TZP)からなる群から選択される金属合金を含む、請求項A9に記載の方法。
【請求項21】
A21. 前記表面が、少なくとも1つの有機ポリマーを含む、請求項A1に記載の方法。
【請求項22】
A22. 前記少なくとも1つの有機ポリマーが、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項A21に記載の方法。
【請求項23】
A23. 前記少なくとも1つの有機ポリマーが、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)及び高架橋ポリエチレン(HXLPE)からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項A21に記載の方法。
【請求項24】
A24. 前記ペプトイドが、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NHである、請求項A1に記載の方法。
【請求項25】
A25. 前記ペプトイドが、
H-(NLys-Nspe-Nspe)-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe(p-Br)-NH、H-((NLys-Nspe(p-Br)-Nspe(p-Br))-NH、H-Ntridec-NLys-Nspe-Nspe-NLys-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-Nspe-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe)-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-Ntridec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe(p-Br)-NLys-NH、H-(NLys-Nspe(p-Br)-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-Ntridec-NLys-Nspe-Nspe-NLys-NLys-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-Nspe-NLys-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-Ntridec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、及びH-(NLys-Nssb-Nssb)-NHからなる群から選択される請求項A1に記載の方法。
【請求項26】
A26. 前記ペプトイドが、
H-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe(p-Br)-NH、H-((NLys-Nspe(p-Br)-Nspe(p-Br))-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-Ntridec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe(p-Br)-NLys-NH、H-(NLys-Nspe(p-Br)-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、及びH-Ntridec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NHからなる群から選択される請求項A1に記載の方法。
【請求項27】
A27. 前記ペプトイドが、
H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-spe-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NH
H-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NH
H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NH
H-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Nspe-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Nspe-NH、及び
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NHからなる群から選択される請求項A1に記載の方法。
【請求項28】
A28. 前記ペプトイドが、式
【化1】
(式中、
Aが、末端N-アルキル置換グリシン残基であり、
nが、整数であり、
Bが、NH2、1つ及び2つのN-置換グリシン残基からなる群から選択され、前記1つ及び2つのN-置換グリシン残基が、独立して、天然αアミノ酸側鎖部分、その異性体及び炭素ホモログから選択されるN-置換基を有し、
X、Y、及びZが、独立して、N-置換グリシン残基からなる群から選択され、前記N-置換基が、独立して、天然αアミノ酸側鎖部分、その異性体及び炭素ホモログ、並びにプロリン残基からなる群から選択される)のポリN-置換グリシン化合物である、請求項A1に記載の方法。
【請求項29】
A29. 前記ペプトイドが、環状ペプトイドである、請求項A1に記載の方法。
【請求項30】
A30. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、3D架橋コロイド構造を有する、請求項A1に記載の方法。
【請求項31】
A31. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、両性イオンポリマーを含む、請求項A1に記載の方法。
【請求項32】
A32. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、ポリベタインを含む、請求項A1に記載の方法。
【請求項33】
A33. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、カチオン基及びアニオン基の両方を含有するモノマー単位を含有するポリマー材料を含む、請求項A1に記載の方法。
【請求項34】
A34. 前記カチオン基が、四級アンモニウム基を含む、請求項A33に記載の方法。
【請求項35】
A35. 前記アニオン基が、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスフィン酸基、及びホスホン酸基からなる群から選択される少なくとも1つの基を含む、請求項A35に記載の方法。
【請求項36】
A36. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、細菌、真菌、及びウイルスからなる群から選択される病原体の存在下で前記ペプトイドを放出する、請求項A1に記載の方法。
【請求項37】
A37. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Klebsiella、Proteus、Enterobacter、Clostridium difficile、及びSalmonela、Streptoccociからなる群から選択される病原体の存在下で前記ペプトイドを放出する、請求項A1に記載の方法。
【請求項38】
A38. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、Candida albicans、Aspergillus spp.、Nocardia、Pneumocystis carinii、Cryptococcus neoformans、及びCryptosporidiumからなる群から選択される病原体の存在下で前記ペプトイドを放出する、請求項A1に記載の方法。
【請求項39】
A41. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、呼吸器合胞体ウイルス、サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エボラ、ロタウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザA(サブタイプH2N2及びH3N3を含む)、肝炎及びヘルペスウイルスからなる群から選択される病原体の存在下で前記ペプトイドを放出する、請求項A1に記載の方法。
【請求項40】
A42. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、股関節/膝プロテーゼ、心臓弁、ペースメーカー、蝸牛インプラント、シャント、外科用メッシュ、縫合糸、及び組織工学的構築物からなる群から選択される病原体の存在下で前記ペプトイドを放出する、請求項A1に記載の方法。
【請求項41】
B1. 金属表面、セラミック表面、及びポリマー表面からなる群から選択される表面と、
前記表面上に配置されたポリアニオン性ミクロゲルと、
前記ポリアニオン性ミクロゲル内に配置されたペプトイドと、を含む、生物医学デバイス。
【請求項42】
B2. 前記生物医学デバイスが、股関節/膝プロテーゼ、心臓弁、ペースメーカー、蝸牛インプラント、シャント、外科用メッシュ、縫合糸、及び組織工学的構築物からなる群から選択される、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項43】
B3. 前記表面が、金属、金属酸化物、金属合金、及びポリマー材料からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項44】
B4. 前記表面が、アルミナ、ジルコニア、及びジルコニア強化アルミナ(ZTA)からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項45】
B5. 前記表面が、少なくとも1つの耐火金属を含む、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項46】
B6. 前記表面が、少なくとも1つのチタン合金を含む、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項47】
B7. 前記表面が、ステンレス鋼を含む、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項48】
B8. 前記ポリマー材料が、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項B3に記載の生物医学デバイス。
【請求項49】
B9. 前記ポリマー材料が、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)及び高架橋ポリエチレン(HXLPE)からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項B3に記載の生物医学デバイス。
【請求項50】
B10. 前記金属合金が、Co-Cr-Mo合金、ステンレス鋼合金からなる群から選択される、請求項B3に記載の生物医学デバイス。
【請求項51】
B11. 前記耐火金属が、Zr、Ta、V、Nb、W、Mo及びそれらの合金からなる群から選択される、請求項B3に記載の生物医学デバイス。
【請求項52】
B12. 前記耐火金属の合金が、Ti-6Al-4V合金、Ti-5Al-2.5Fe合金、Ti-6Al-7Nb合金、及びβ-Ti合金からなる群から選択される、請求項B11に記載の生物医学デバイス。
【請求項53】
B13. 前記β-Ti合金が、Ti-12Mo-6Zr-2Fe(TMZF)を含む、請求項B12に記載の生物医学デバイス。
【請求項54】
B14. 前記耐火金属の合金が、酸化ジルコニウム(oxinium)を含む、請求項B11に記載の生物医学デバイス。
【請求項55】
B15. 前記金属合金が、アルミナ、ジルコニア、及びジルコニア強化アルミナからなる群から選択される、請求項B3に記載の生物医学デバイス。
【請求項56】
B16. 前記金属合金が、マグネシア部分安定化ジルコニア(MgPSZ)及びイットリア安定化酸化物(Y-TZP)からなる群から選択される、請求項B3に記載の生物医学デバイス。
【請求項57】
B17. 前記ペプトイドが、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NHである、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項58】
B18. 前記ペプトイドが、
H-(NLys-Nspe-Nspe)-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe(p-Br)-NH、H-((NLys-Nspe(p-Br)-Nspe(p-Br))-NH、H-Ntridec-NLys-Nspe-Nspe-NLys-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-Nspe-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe)-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-Ntridec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe(p-Br)-NLys-NH、H-(NLys-Nspe(p-Br)-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-Ntridec-NLys-Nspe-Nspe-NLys-NLys-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-Nspe-NLys-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-Ntridec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、及びH-(NLys-Nssb-Nssb)-NHからなる群から選択される、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項59】
B19. 前記ペプトイドが、
H-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe(p-Br)-NH、H-((NLys-Nspe(p-Br)-Nspe(p-Br))-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-Ntridec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe(p-Br)-NLys-NH、H-(NLys-Nspe(p-Br)-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、及びH-Ntridec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NHからなる群から選択される、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項60】
B20. 前記ペプトイドが、
H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-spe-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NH
H-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NH
H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NH
H-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Nspe-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Nspe-NH、及び
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NHからなる群から選択される、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項61】
B21. 前記ペプトイドが、式
【化2】
(式中、
Aが、末端N-アルキル置換グリシン残基であり、
nが、整数であり、
Bが、NH2、1つ及び2つのN-置換グリシン残基からなる群から選択され、前記1つ及び2つのN-置換グリシン残基が、独立して、天然αアミノ酸側鎖部分、その異性体及び炭素ホモログから選択されるN-置換基を有し、
X、Y、及びZが、独立して、N-置換グリシン残基からなる群から選択され、前記N-置換基が、独立して、天然αアミノ酸側鎖部分、その異性体及び炭素ホモログ、並びにプロリン残基からなる群から選択される)のポリN-置換グリシン化合物である、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項62】
B22. 前記ペプトイドが、環状ペプトイドである、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項63】
B23. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、細菌、真菌、及びウイルスからなる群から選択される病原体の存在下で前記ペプトイドを放出する、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項64】
B24. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Klebsiella、Proteus、Enterobacter、Clostridium difficile、及びSalmonela、Streptoccociからなる群から選択される病原体の存在下で前記ペプトイドを放出する、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項65】
B25. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、Candida albicans、Aspergillus spp.、Nocardia、Pneumocystis carinii、Cryptococcus neoformans、及びCryptosporidiumからなる群から選択される病原体の存在下で前記ペプトイドを放出する、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項66】
B26. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、呼吸器合胞体ウイルス、サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エボラ、ロタウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザA(サブタイプH2N2及びH3N3を含む)、肝炎及びヘルペスウイルスからなる群から選択される病原体の存在下で前記ペプトイドを放出する、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項67】
B27. 前記ポリアニオン性ミクロゲルが、股関節/膝プロテーゼ、心臓弁、ペースメーカー、蝸牛インプラント、シャント、外科用メッシュ、縫合糸、及び組織工学的構築物からなる群から選択される病原体の存在下で前記ペプトイドを放出する、請求項B1に記載の生物医学デバイス。
【請求項68】
C1. 基材と、
前記基材上に配置されたポリアニオン性ミクロゲルと、
前記ポリアニオン性ミクロゲル内に配置されたペプトイドと、を含む、自己防御的表面。
【請求項69】
C2. 請求項C1に記載の自己防御的表面を含む生物医学デバイスであって、前記生物医学デバイスが、股関節/膝プロテーゼ、心臓弁、ペースメーカー、蝸牛インプラント、シャント、外科用メッシュ、縫合糸、及び組織工学的構築物からなる群から選択される、生物医学デバイス。
【請求項70】
C3. 前記ペプトイドが、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NHである、請求項C2に記載の生物医学デバイス。
【請求項71】
C4. 前記ペプトイドが、
H-(NLys-Nspe-Nspe)-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe(p-Br)-NH、H-((NLys-Nspe(p-Br)-Nspe(p-Br))-NH、H-Ntridec-NLys-Nspe-Nspe-NLys-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-Nspe-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe)-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-Ntridec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe(p-Br)-NLys-NH、H-(NLys-Nspe(p-Br)-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-Ntridec-NLys-Nspe-Nspe-NLys-NLys-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-Nspe-NLys-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe)-NLys-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-Ntridec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、及びH-(NLys-Nssb-Nssb)-NHからなる群から選択される、請求項C2に記載の生物医学デバイス。
【請求項72】
C5. 前記ペプトイドが、
H-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe(p-Br)-NH、H-((NLys-Nspe(p-Br)-Nspe(p-Br))-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-Ntridec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NH、H-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe(p-Br)-NLys-NH、H-(NLys-Nspe(p-Br)-Nspe(p-Br))-NLys-NH、H-Ndec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NH、及びH-Ntridec-(NLys-Nspe-Nspe(p-Br))-NLys-NHからなる群から選択される、請求項C2に記載の生物医学デバイス。
【請求項73】
C6. 前記ペプトイドが、
H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-spe-Npm-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NH
H-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NH
H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NH
H-NLys-Nspe-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Nspe-NH
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NH
H-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Nspe-NH、及び
H-NLys-Npm-Npm-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Nspe-Nspe-NLys-Npm-Npm-NHからなる群から選択される、請求項C2に記載の生物医学デバイス。
【請求項74】
C7. 前記ペプトイドが、式
【化3】
(式中、
Aが、末端N-アルキル置換グリシン残基であり、
nが、整数であり、
Bが、NH2、1つ及び2つのN-置換グリシン残基からなる群から選択され、前記1つ及び2つのN-置換グリシン残基が、独立して、天然αアミノ酸側鎖部分、その異性体及び炭素ホモログから選択されるN-置換基を有し、
X、Y、及びZが、独立して、N-置換グリシン残基からなる群から選択され、前記N-置換基が、独立して、天然αアミノ酸側鎖部分、その異性体及び炭素ホモログ、並びにプロリン残基からなる群から選択される)のポリN-置換グリシン化合物である、請求項C2に記載の生物医学デバイス。
【請求項75】
C8. 前記ペプトイドが、環状ペプトイドである、請求項C2に記載の生物医学デバイス。
【請求項76】
C9. 前記ペプトイドが、PAAミクロゲルと錯形成される、請求項C2に記載の生物医学デバイス。
【請求項77】
C10. アクリル酸基とペプトイドとの比Raa/pepが、1~50の範囲内である、請求項C2に記載の生物医学デバイス。
【請求項78】
C11. アクリル酸基とペプトイドとの比Raa/pepが、2~20の範囲内である、請求項C2に記載の生物医学デバイス。
【請求項79】
C12. アクリル酸基とペプトイドとの比Raa/pepが、3~10の範囲内である、請求項C2に記載の生物医学デバイス。
【請求項80】
C13. アクリル酸基とペプトイドとの比Raa/pepが、4~5の範囲内である、請求項C2に記載の生物医学デバイス。
【請求項81】
C14. ミクロゲルのゼータ電位が、前記ペプトイドの存在下で3.6±1.2mVの範囲内にある、請求項C2に記載の生物医学デバイス。
【請求項82】
D1. 基材と、
前記基材上に配置された放出面であって、病原体の存在に応答してペプトイドを放出する放出面と、を含み、
前記放出面が、3D架橋コロイド構造を含む、生物医学インプラント。
【請求項83】
D2. 前記放出面が、ミクロゲルを含む、請求項D1に記載の生物医学インプラント。
【請求項84】
D3. 前記放出面が、ナノゲルを含む、請求項D1に記載の生物医学インプラント。
【請求項85】
D4. 前記放出面が、両性イオンポリマーを含む、請求項D1に記載の生物医学インプラント。
【請求項86】
D4. 前記放出面が、ポリベタインを含む、請求項D1に記載の生物医学インプラント。
【請求項87】
D5. 前記放出面が、カチオン基及びアニオン基の両方を含有するモノマー単位を含有するポリマー材料を含む、請求項D1に記載の生物医学インプラント。
【請求項88】
D6. 前記カチオン基が、四級アンモニウム基を含む、請求項D5に記載の生物医学インプラント。
【請求項89】
D7. 前記アニオン基が、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスフィン酸基、及びホスホン酸基からなる群から選択される少なくとも1つの基を含む、請求項D5に記載の生物医学インプラント。
【請求項90】
D8. 前記病原体が、細菌、真菌、及びウイルスからなる群から選択される、請求項D1に記載の生物医学インプラント。
【請求項91】
D9. 前記病原体が、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Klebsiella、Proteus、Enterobacter、Clostridium difficile、及びSalmonela、Streptoccociからなる群から選択される、請求項D1に記載の生物医学インプラント。
【請求項92】
D10. 前記病原体が、Candida albicans、Aspergillus spp.、Nocardia、Pneumocystis carinii、Cryptococcus neoformans、及びCryptosporidiumからなる群から選択される、請求項D1に記載の生物医学インプラント。
【請求項93】
D11. 前記病原体が、呼吸器合胞体ウイルス、サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エボラ、ロタウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザA(サブタイプH2N2及びH3N3を含む)、肝炎及びヘルペスウイルスからなる群から選択される、請求項D1に記載の生物医学インプラント。
【請求項94】
D12. 前記生物医学デバイスが、股関節/膝プロテーゼ、心臓弁、ペースメーカー、蝸牛インプラント、シャント、外科用メッシュ、縫合糸、及び組織工学的構築物からなる群から選択される、請求項D1に記載の生物医学インプラント。
【請求項95】
E1. 生物医学インプラントの表面を、細菌培養に対して耐性を持たせるための処理をするための方法であって、
前記インプラントの表面をポリ(アリルアミン塩酸塩)でプライミングし、それによってプライミングされた表面を得ることと、
ポリ(アクリル酸)(PAA)ミクロゲルの準単層を前記プライミングされた表面に適用し、それによって3D架橋コロイド構造を得ることと、
前記PAAミクロゲルとペプトイドとの間で錯体を形成することによって、前記コロイド構造に前記ペプトイドを充填することと、を含む、方法。
【請求項96】
E2. 前記ポリ(アリルアミン塩酸塩)が、正に帯電している、請求項E1に記載の方法。
【請求項97】
E3. 前記インプラントの表面をポリ(アリルアミン塩酸塩)で処理することが、
ポリ(アリルアミン塩酸塩)の水溶液を前記表面に適用し、それによって処理された表面を形成することと、
前記処理された表面をすすぎ、それによってすすがれた表面を得ることと、
前記すすがれた表面を乾燥させることと、を含む、請求項E1に記載の方法。
【請求項98】
E4. 前記プライミングされた表面にPAAミクロゲルの準単層を適用することが、前記プライミングされた表面にPAAを静電的に堆積させることを含む、請求項E1に記載の方法。
【請求項99】
E5. 前記プライミングされた表面上にPAAを静電的に堆積させることが、前記プライミングされた表面をコロイド状の水性ミクロゲル懸濁液に曝露することを含む、請求項E4に記載の方法。
【請求項100】
E6. 前記PAAミクロゲルにペプトイドを充填することが、前記PAAミクロゲルを前記ペプトイドの緩衝溶液に曝露することを含む、請求項E1に記載の方法。
【請求項101】
E7. 前記ペプトイドの前記緩衝溶液が、リン酸緩衝液を含む、請求項E6に記載の方法。
【請求項102】
E8. 前記PAAミクロゲルにペプトイドを充填することが、前記PAAミクロゲルと前記ペプトイドとの間で錯体を形成することを含む、請求項E1に記載の方法。
【請求項103】
E9. 前記PAAミクロゲルが、前記PAAミクロゲルにペプトイドを充填する前に、6±2μmの範囲内の平均直径を有する、請求項E1に記載の方法。
【請求項104】
E10. 前記PAAミクロゲルにペプトイドを充填することが、1~50の範囲内のアクリル酸基対ペプトイドの比Raa/pepをもたらす、請求項E1に記載の方法。
【請求項105】
E11. 前記PAAミクロゲルにペプトイドを充填することが、2~20の範囲内のアクリル酸基対ペプトイドの比Raa/pepをもたらす、請求項E1に記載の方法。
【請求項106】
E12. 前記PAAミクロゲルにペプトイドを充填することが、3~10の範囲内のアクリル酸基対ペプトイドの比Raa/pepをもたらす、請求項E1に記載の方法。
【請求項107】
E13. 前記PAAミクロゲルにペプトイドを充填することが、4~5の範囲内のアクリル酸基対ペプトイドの比Raa/pepをもたらす、請求項E1に記載の方法。
【請求項108】
E13. ミクロゲルのゼータ電位が、非充填状態での-33.5±4.5mVから、充填状態での3.6±1.2mVの値に増加する、請求項E1に記載の方法。
【請求項109】
E14. 前記生物医学インプラントが、股関節/膝プロテーゼ、心臓弁、ペースメーカー、蝸牛インプラント、シャント、外科用メッシュ、縫合糸、及び組織工学的構築物からなる群から選択される、請求項E1に記載の方法。
【請求項110】
E15. 前記生物医学インプラントを対象の体内に移植することを更に含む、請求項E1に記載の方法。
【請求項111】
E16. 前記対象が、ヒト対象である、請求項E15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月25日に出願され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、「SUBSTRATES MODIFIED WITH PEPTOID-LOADED MICROGELS FOR RESISTANCE TO BACTERIAL COLONIZATION」と題される、米国仮出願第63/214,782号(Libera et al.)に対する優先権を主張する。
【0002】
政府の権利
本発明は、陸軍研究局(Army Research Office)によって授与された助成金#W911NF2010277、国立科学財団(National Science Foundation)によって授与された助成金#DMR-1608406、米国公衆衛生局(U.S.Public Health Services)によって授与された助成金#1DP1 OD029517-01、及び米国エネルギー省(U.S.Department of Energy)によって授与された助成金番号DE-AC02-05CH11231の下で政府の支援を受けて行われた。
【0003】
本開示は、概して、表面処理に関し、より具体的には、ペプトイドが充填されたミクロゲルでの処理を通じて基材に細菌コロニー形成に対する耐性を付与する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
外科手術室(OR)は、一般的に無菌(sterile)又は無菌(aseptic)であると称されるが、実際には、OR雰囲気は、多くの異なる供給源からの微生物を含有する。そのような供給源には、換気システム、衣類からの脱落、OR人員によるくしゃみ又は咳、及び歩行者の交通が含まれる[1]。これらの空中浮遊細菌は、デバイスがその無菌にされた包装から取り出されると、移植型生物医学デバイスの表面に直接沈殿する可能性がある。初期の測定[2]は、約3×10CFU/m-hの沈降速度を報告した。改善された衛生慣行により、沈降率は着実に約10~10CFU/m-hに低下した[3]。しかしながら、これらの沈降速度は、これらの改善された条件下でさえ、しばしばデバイスが数百又は数千の細菌によって汚染された後に移植されていることを示唆している。いったん移植され、体内の好ましい成長条件にさらされると、これらの細菌のサブセットは、バイオフィルムに発達し得、慢性的なデバイス関連感染を引き起こし得る。
【0005】
股関節/膝プロテーゼ[4]、心臓弁[5]、ペースメーカー[6]、蝸牛インプラント[7]、シャント[8]、外科用メッシュ[9]、縫合糸[10]、及び組織工学的構築物[11]などの様々な移植型デバイスは、デバイス関連感染の影響を受けやすい。手術部位感染の発生率は、OR[12]内での時間に対して直線的に増加することが十分に確立されており、術中の汚染が少なくとも一部のデバイス関連感染の原因であるという強い意見の一致がある[13]。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、生物医学デバイスの表面を処置するための方法が提供される。方法は、ポリアニオン性ミクロゲルを生物医学デバイスの表面に堆積させることと、堆積されたポリアニオン性ミクロゲルにペプトイドを充填することと、を含む。
【0007】
別の態様では、金属表面、セラミック表面、及びポリマー表面からなる群から選択される表面を含む生物医学デバイスが提供される。ポリアニオン性ミクロゲルが、上記表面上に配置され、ペプトイドが、上記ポリアニオン性ミクロゲル内に配置される。
【0008】
更なる態様では、基材と、上記基材上に配置されたポリアニオン性ミクロゲルと、上記ポリアニオン性ミクロゲル内に配置されたペプトイドと、を含む自己防御的表面が提供される。
【0009】
別の態様では、生物医学インプラントが提供される。生物医学インプラントは、基材と、上記基材上に配置された放出面とを含み、上記放出面は、病原体の存在に応答してペプトイドを放出し、上記放出面は、3D架橋コロイド構造を含む。
【0010】
更なる態様では、生物医学インプラントの表面を処理して、それを細菌培養に対して耐性とするための方法が提供される。方法は、(a)インプラントの表面をポリ(アリルアミン塩酸塩)でプライミングし、それによってプライミングされた表面を得ることと、(b)ポリ(アクリル酸)(PAA)ミクロゲルの準単層をプライミングされた表面に適用し、それによって3D架橋コロイド構造を得ることと、(c)PAAミクロゲルとペプトイドとの間で錯体を形成することによって、コロイド構造にペプトイドを充填することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】生理学的pH(円)において5正電荷を有する12量体の抗菌ペプトイドであるTM1の分子構造を示す図である。
図2図2A:PAAミクロゲル内での錯形成によるTM1充填(0.01Mのリン酸緩衝液中の1mg/mLのTM1)を示す、ミクロゲル直径の時間分解された変化を示すグラフである。挿入された光学顕微鏡写真は、充填前/充填後の水和ミクロゲルの同じセットを示す。図2B:TM1を含まないPBSに曝露したときに、錯形成されたTM1がPAAミクロゲル内に隔離されたままであることを示す、ミクロゲルの直径の変化の欠如を示すグラフである。隔離は、PBSの毎日の交換を伴って4週間(挿入図)維持される。各データ点/エラーバーは、n=5の測定の平均/標準偏差を表す。
図3】4つの異なる表面処理の各々に供されるTiロッドの汚染抵抗性を例示する。図の上部は、Tiロッドに適用される4つの表面処理の一連の概略図である。図の下部は、非充填PAAミクロゲル(左下)及びTM1充填PAAミクロゲル(右下)で修飾されたロッドの表面の一連のSEM画像である。
図4】コロニー形成耐性のアッセイの結果を示す。左上の画像は、Ti-A(修飾されていない)ロッド上の培養可能なコロニーをアッセイするTSAプレートを示す。白い矢印は、寒天表面で4回転がした後のロッドを示している。培養後のTi-Aロッド(左下)のSEM画像は、相当なMSSAコロニー形成を示す。Ti-Dロッド(TM1充填ミクロゲル修飾)の対応する画像は、培養可能なコロニーを示さない。Ti-D SEM画像は、充填されたミクロゲルがロッド表面でインタクトなままであるが、MSSAは存在しないことを示す。4つ全て(A~D)の表面修飾についてのMSSA及びS.epidermidisの両方の汚染の画像を図10~11として提示する。右側のパネルは、4つの条件の各々についての緩やかに結合した、及び強く付着したMSSA及びS.epidermidisのCGUの総数を定量化する。平均が示され、エラーバーはn=3試料の標準偏差を表す。*はp<0.05を示し、**はp<0.005を示す。
図5】ヒト胎児骨芽細胞を使用した細胞適合性アッセイの結果を示す。表面処理ごとの平均がその1日目の値に正規化された、hFOB細胞の代謝活性。アスタリスクは、完全に修飾されたTi-DとTi-A非修飾対照との間の統計的に有意な差異(p<0.05のt検定)を示す。(下)4つの表面処理(スケールバーは100μmである)の各々を用いてTiロッド上で増殖させたhFOB細胞の共焦点蛍光画像(DAPI/Phalloidin染色)。
図6】Tiロッドの湾曲した表面及び粗い表面に関連する撮像の複雑化の多くが、ガラス基材の使用によって回避され得ることを示す。一連の共焦点画像は、7日間の培養後の、非修飾ガラス(左上)及びTM1充填ミクロゲル修飾ガラス(右上)上で培養したhFOB細胞を示す。白い矢印(右上)は、TM1充填ミクロゲルからの自己蛍光を示す。下のSEM画像は、hFOB細胞が、TM1充填ミクロゲル上に広がることができることを示す。
図7】0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.4、[Na+]=0.016M)中で水和した場合のPAAミクロゲル直径のサイズ分布ヒストグラムである。実線は、平均及び標準偏差がそれぞれ6.0μm及び2.0μmであるデータにフィッティングされるガウス分布を表す。
図8】血清含有DMEM又はウマ滑液に曝露したときに、TM1がPAAミクロゲル内に隔離されたままである、ミクロゲルの直径の変化を示さないグラフ及び一連の画像である。(上)安定した直径は、錯形成充填されたTM1が、DMEM+10%FBS及びウマ滑液(ESF)中に隔離されたままであることを示す。(下)画像は、(左)20時間、DMEM+10%FBSへ曝露後及び(右)15時間、ESF中へ曝露後の、TM1充填ミクロゲル修飾ガラス表面を示した。スケールバーは、10μmに対応する。ミクロゲル直径の変化がないことによって示されるように、TM1は、DMEM又はウマ滑液に曝露した場合、PAAミクロゲル内に隔離されたままである。
図9】MSSAに汚染されたTiロッド(白い矢印)を転がし、ボルテックスした後のTSAプレート(24時間の培養)の一連の画像である。(下)転がし、培養した後の汚染されたロッドのSEM画像。これらの画像は、4つ全て(A~D)の表面修飾についてのMSSAコロニー形成アッセイの結果を示す。
図10】S.epidermidisに汚染されたTiロッド(白い矢印)を転がし、ボルテックスした後のTSAプレート(24時間の培養)の一連の画像である。(下)転がし、培養した後の汚染されたロッドのSEM画像。これらの画像は、4つ全て(A~D)の表面修飾についてのS.epidermidis汚染アッセイの結果を示す。
図11】4つの修飾Ti表面上のhFOB代謝活性のMTSアッセイである。アッセイは、4つ(A~D)の表面修飾におけるhFOB細胞の代謝活性を特徴付ける。
図12図12である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
自己防御的表面[14]は、OR汚染による細菌のコロニー形成を阻害することができるかもしれない新たな戦略を表している。「自己防御的」という用語は、細菌が誘発する抗菌剤放出の場合について、Boulmedaisら[15]によって導入された。自己防御的表面で働くメカニズムは、溶出的な薬物送達によって細菌のコロニー形成を阻害する従来の方法とは根本的に異なる。溶出的な技術において、抗菌組成物は、それらが必要であるかどうかにかかわらず、表面から連続的に放出される。対照的に、自己防御的メカニズムは、抗菌組成物が必要なときにのみ、必要な場所でのみ、局所的に非常に少量を放出する。重要なことに、微生物のチャレンジがない場合、自己防御的表面は抗菌組成物をまったく放出しない。
【0013】
自己防御的表面は、局所的なpH変化に応答して特定の抗菌組成物を放出する高分子電解質薄膜コーティングを設計したSukhishviliら[16]によって開発されている。Cado、Boulmedaisら[15a]は、微生物酵素分泌を利用し、局所的なコーティング分解が抗菌組成物を放出するように、それらの特定の酵素の基材を組み込むコーティングを設計した。両方のアプローチは、活性になるために、細菌代謝に依存している。しかしながら、移植前には、汚染されたデバイス表面には栄養源がなく、したがって、著しい細菌代謝の発生は起こりそうにない。したがって、代謝に依存する自己防御的アプローチは、OR汚染への対処には適切ではない可能性がある。
【0014】
「接触移送」[14c]と称される代替の自己防御的機構が開発され、OR汚染の問題により適している可能性がある。接触移送は、細菌代謝の非存在下でもチャレンジする細菌の存在に応答することが示されている[17]。そうすることで、接触移送は、高分子電解質ミクロゲルコーティングからの特定の抗菌組成物の応答性放出を駆動し、それらの抗菌組成物をチャレンジする細菌に移送することができる。この移送は、細菌エンベロープ上における高濃度の負電荷の存在、及びそのエンベロープの疎水性に起因しており、その結果、細菌と抗菌組成物との間の錯形成強度は、ミクロゲルと抗菌組成物との間の錯形成強度よりも大きい。次いで、充填されたミクロゲルへの細菌の近接は、急激な化学電位勾配を生じさせ、ミクロゲルからの抗菌剤の脱錯化及びその細菌への移行を促進する。
【0015】
現在、抗菌ペプトイドは、効果的な自己防衛的合成表面を作成するために、特定の接触移送表面に利用することができることが見出されている。そのような表面は、例えば、ポリ(アクリル酸)(PAA)のミクロゲルを静電的に堆積させて、例えば、ガラスカバースリップ又はチタンロッド上に準単層コーティングを形成することによって製造され得る。次の自己組織化工程では、準単層コーティングに、好適なカチオン性抗菌ペプトイドを充填してもよい。これらの自己防御的表面は、代謝のための栄養素が存在しない場合でも、細菌のコロニー形成を著しく阻害する可能性がある。本明細書に記載されるように、これらの表面の有効性は、OR汚染のインビトロモデルで試験することによって検証されている。
【0016】
TM1(ペプトイド1としても知られる)と呼ばれるペプトイドの使用が好ましいが、本明細書に開示される自己防御的表面には、様々なペプトイドが利用され得る。[18]ペプトイドは、側基がα-炭素上ではなくアミド窒素上に位置するペプチドの類似体である。一般に、それらはタンパク質分解されないため[19]、それらの生体安定性が改善され、免疫原性が低下する。[19a]TM1は、4回繰り返された3量体(NLys-Nspe-Nspe)からなり、二級アミン基で終結させた、螺旋状及び両親媒性の12量体ペプトイドである(図1を参照)。4つのNLys部分の各々は、一級アミン基を含む。これらの5つのアミン基は全て生理学的条件下でプロトン化されており、したがってTM1は+5の正味の静電荷を有する。更に、各Nspeは、錯形成相互作用に寄与することができる芳香族部分を含む。[20]
【0017】
インサイチュ光学顕微法を利用して、ペプトイドとの錯形成中のミクロゲルの解膨潤を撮像することによって、ペプトイド充填プロセスを追跡することができる。かかる撮像はまた、生理学的に関連する媒体に曝露したときにペプトイドがPAAミクロゲル内に隔離されたままでいられる能力を評価することができる。デジタル制御されたエアロゾル化システムを利用して、staphylococci(S.aureus又はS.epidermidisのいずれか)などの明確に定義された量の細菌をTiロッド上に噴霧することができる。その後の細菌生存率及び骨芽細胞応答のインビトロアッセイは、ペプトイドが充填されたミクロゲル修飾表面が、修飾されていない対照に匹敵する細胞適合性を依然として維持しながら、細菌コロニー形成を非常に効果的に阻害することを示す。
【0018】
材料及び方法
ミクロゲルの合成、充填、及び隔離
ポリ(アクリル酸)(PAA)ミクロゲルを、熱的に開始される膜乳化によって合成した。前駆体溶液を、1.0mlのアクリル酸(Sigma)、0.47gの水酸化ナトリウム(NaOH、Sigma)、4mlの脱イオン(DI)水(Millipore type 1)、100mgのリン酸硫酸アンモニウム(ammonium phosphate sulfate)(APS、Sigma)、及び100μlのポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA、M=575Da)を使用して混合した。この水溶液を、N圧力(40kPa)を介して、セラミック膜(1.5μmの孔径(シラス多孔質ガラス(SPG))を通じて、2.56gのSpan(登録商標)80及び160mlのパラフィン油からなる撹拌(400rpm)油相に圧入した。次いで、得られたエマルジョンを、N2バブリングによって30分間脱酸素化し、続いて70℃に加熱し、連続撹拌(500rpm)下で4時間保持した。室温に冷却した後、パラフィン油を遠心分離し、最初にシクロヘキサン中に2回、次にエタノール中に10回、最後にDI水中に10回再懸濁して除去した。得られたPAAミクロゲルを滅菌したDI水に懸濁し、4℃で保管した。
【0019】
ミクロゲル/抗菌剤相互作用のインサイチュ研究のために、ポリジメチルシロキサン(PDMS)ガスケットを使用して、ガラス顕微鏡スライドの上に12個の個々の反応チャンバを画定した。硬化したPDMS(約4mmの厚さ)の鋳造シートから直径6mmの穴を穿孔した。次いで、穿孔したガスケットを、予め洗浄した(3分間の酸素プラズマ)スライドガラス上に押し付け、70℃で20分間アニールした。各ガラス底チャンバの体積は、約100μlであった。各チャンバ内のガラス表面を、正に荷電したポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH、Sigma、Mw=17.5kDa)で、0.2mgのPAH/mlの水溶液を使用して1時間プライミングし、続いてDI水を使用して穏やかに洗浄し、次いでNガスを流すことによって乾燥させた。次いで、PAAミクロゲルの準単層を、各チャンバにコロイド状の水性ミクロゲル懸濁液を室温で充填することによってプライミングされたガラス表面に静電的に堆積させ、30分間浸漬させた。次いで、これらのチャンバをDI水ですすぎ、その後の抗菌剤の充填前に、0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.4、4mMのNaHPO及び6mMのNaHPO)、[Na+]=0.016M)で満たした。
【0020】
TM1(M=1819Da)を前述のように合成した。[21]特定の反応チャンバ内の緩衝液を、0.01Mリン酸緩衝液の1mgのTM1/mlの溶液に置き換えることによって、ミクロゲル内の錯形成によって充填した。充填プロセスに続いて、14ビットCCDカメラ(pco.pixelfly)及びCFI S Fluor ELWD20×対物レンズ(NA=0.45、WD=8.2~6.9mm)を装備した倒立顕微鏡(Nikon、Eclipse Ti-E)を使用したインサイチュ時間分解型光学顕微鏡法が行われた。充填の最初の10分間に、画像を1分間隔で収集し、その後5分間隔で収集した。データ取得後、少なくとも5つの異なるミクロゲルの時間分解直径をImageJを使用して測定した。[22]各直径を、TM1を含まない0.01Mリン酸緩衝液中で測定した初期直径を使用して正規化した。
【0021】
ミクロゲル内に錯形成されたTM1の隔離に続いて、再度インサイチュ撮像を行った。充填後、TM1溶液をDI水を使用して穏やかに洗浄(3回)することによって除去した。次いで、各反応チャンバを、オートクレーブされた0.01Mリン酸緩衝液又はオートクレーブされたPBS(リン酸緩衝食塩水、pH7.4、イオン強度=0.138M)のいずれかで満たした。緩衝液を28日間、毎日、新鮮な緩衝液に置き換えた。同じセットのミクロゲルの光学顕微鏡写真を毎日収集し、デジタル画像分析を使用して、少なくとも5つの異なるミクロゲルからの浸漬時間の関数としてミクロゲル直径を測定した。
【0022】
ミクロゲルに充填されたTM1の量を、UV吸収によって定量化した。10μlの水性PAAミクロゲル懸濁液の2つのアリコートを調製した。一方は、乾燥ミクロゲル重量を測定するために完全に脱水させた。他方を、0.25mgのTM1を含有する1mlの0.01Mリン酸緩衝液に添加した。60分後、充填されたミクロゲルを遠心分離によりペレット化し、上清のUV吸収(230nm)をSynergy HT BioTek Spectrometerを使用して測定した。次いで、充填されたTM1の量を、0.01Mリン酸緩衝液中の既知のTM1濃度の溶液を使用して作成した較正曲線と比較して定量化した。ミクロゲルのゼータ電位は、純粋な0.01Mのリン酸緩衝液に懸濁したミクロゲルのアリコートからMalvern ZETA SIZER Nanoシリーズを使用して、TM1充填の前後に測定した。
【0023】
OR汚染モデル
商業的に純粋な、外科用グレード1のチタンロッド(長さ1cm)を、平均直径1.29mmのワイヤ(Temco RW0469)から切り取った。ロッドを70%エタノールで2回すすぎ、エタノール中で超音波処理し(15分)、洗浄し、オートクレーブされたDI水中で超音波処理し、最後にNガス流を使用して乾燥した。次いで、乾燥されたロッドを酸素プラズマに10分間曝露した。4つの表面を作成するために、更なる修飾がなされた:(Ti-A)プラズマ処理されたが、それ以外は修飾されていないTi、(Ti-B)PAHプライミングされたTi、(Ti-C)ミクロゲル修飾(非充填)Ti、及び(Ti-D)TM1充填ミクロゲル修飾Ti。PAHプライミング、静電PAAミクロゲル堆積、及びTM1充填は全て、ガラス基材について上述した手順に従った。各条件の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM;Zeiss Auriga)によって撮像した。条件DのTM1充填は、修飾されたピンを無菌DI水中のフルオレセインイソチオシアネート(FITC、Sigma)の水溶液に30分間曝露し、続いてDI水で繰り返し洗浄することによって確認した。次いで、FITC染色されたTi-Dロッドを、C3共焦点アタッチメントを有するNikon Eclipse Ti-E倒立顕微鏡を使用して水和しながら撮像した。
【0024】
デジタル制御されたエアロゾル化システムを使用して、4つの表面条件の各々において、十分に制御された量の細菌でロッドの表面を汚染した。システム構成、動作、及び特性の詳細は、他の場所で説明されている。[23]このシステムは、栄養を含まない緩衝液に懸濁したエアロゾル化された細菌の明確に定義されたバーストを、試験表面に再現可能に噴霧することができる。噴霧条件に応じて、噴霧された細菌の密度は10~10/cm程度であり、したがって、手術室の汚染条件を模倣することができる。ここでの実験は、メチシリン感受性Staphylococcus aureus(MSSA、ATCC 29213)及びStaphylococcus epidermidis(ATCC 35984)を使用した。実験の各セットについて、単一の細菌コロニーを10mlのトリプシン大豆ブロス(TSB)に接種し、18時間穏やかな振盪下で37℃で固定相に成長させた。細菌を遠心分離によってペレット化し、滅菌PBS中に2回再懸濁して、TSBを除去した。最終ペレット化後、細菌を滅菌PBS中に、MSSAについては0.0005A、S.epidermidisについては0.0004Aの光学密度(OD600)に懸濁した。これらの密度は、約10CFU/cmの汚染レベルを生成することが示されている。[23]溶液を室温で保持し、調製後3時間以内に使用した。これらの調製条件下では、細菌の90%以上が培養可能であることが示されている[23]。
【0025】
4つの表面修飾条件の各々からの3つのTiロッドの2セットに、100msの細菌性エアロゾルバーストを噴霧した。1セットにMSSAを噴霧し、もう1セットにS.epidermidisを噴霧した。各セットの3つのロッドに同時に噴霧した。噴霧後、試料を、層流バイオセーフティフード内で30分間空気中で乾燥させた。次いで、汚染の程度を、(i)緩やかに結合した培養可能な細菌、及び(ii)強く付着した培養可能な細菌、の数の観点から定量化した。緩やかに結合した細菌を、各ロッドを1.25mlの滅菌PBSに浸し、続いて穏やかにボルテックスすることによって回収した。次いで、緩衝液の3つの250μlのアリコートを、別個のトリプシン大豆寒天(TSA)プレート上に広げた。強く付着した細菌を、滅菌PBSを使用して各々のボルテックスされたTiロッドを穏やかに洗浄し、次いでTSAプレートの表面上に火炎滅菌鉗子を使用して各ロッドを転がすことによってアッセイした。次いで、TSAプレートの両方のセットを37℃で18時間培養した。コロニー形成単位(CFU)の数を手動でカウントした。異なる表面修飾処理の細菌コロニー形成の差異の統計的有意性は、処理されたロッド及び対照ロッドについて不均等な分散を想定した両側スチューデントt検定を使用して決定された。
【0026】
細胞適合性
ヒト胎児骨芽細胞(hFOB、ATCC、VA)を、10%のウシ胎仔血清(FBS、Atlantic Biologicals)及び2.5mMのL-グルタミン(フェノールレッドなし)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)及びハムF12培地の1:1混合物中で培養した。使用前に、培養物を、34℃、5%CO及び95%湿度で、70~80%のコンフルエンスまで維持した。個々の基材(Tiロッド又はガラスカバースリップ)上、及び複数の基材間で等しく、均一な細胞分布を達成するために、hFOB細胞を播種し、特定のプロトコルに従って培養した。簡潔に述べると、4つの表面修飾条件(A~D)の各々をサンプリングするTiロッド及びカバースリップを、70%エタノールを使用して滅菌し、次いで滅菌DI水(3回)で2分間洗浄した。全ての試料を、細胞播種前の20分間、再びUV照射下で滅菌した。各ロッドを最初に100μlのhFOB細胞懸濁液で播種し、次いで細胞が播種されたロッドを15分間(34℃、5%のCO、及び95%の湿度)インキュベートして、細胞付着を促進した。次いで、播種されたロッドを裏返し、100μlのhFOB細胞懸濁液に再び曝露して、2×10細胞/cmの最終播種密度を達成した。カバースリップを、10細胞/cmの播種密度まで、200μlのhFOB細胞懸濁液で播種した。全インキュベーションの30分後、全ての細胞播種試料を、更なる培養のために新しい6ウェルプレートに移した。培養培地を2日ごとに新しくした。
【0027】
ロッド上のhFOB細胞の接着(1日)及び増殖(4日及び7日)を、MTSアッセイを使用して評価した。簡潔に述べると、1、4、及び7日後、培養ロッド(各条件についてn=3)を採取し、12ウェルプレート中に配置し、冷PBSで2回穏やかにすすいだ。次いで、400μLのMTS試薬(アッセイキットをPromega,Madison,WIから購入した)及び1mLの培養培地を含む混合物1.4mLを、各ウェルに添加した。プレートを5%CO、37℃で2時間インキュベートした。各試料からの200μLの上清を96ウェルプレートに移した。490nmでの吸光度を、BioTek Synergyマイクロプレートリーダー(BioTek Instruments,Inc.,Vermont,USA)を使用して記録した。Ti-A表面を対照として使用した場合の一方向t検定を使用し、Ti-A、B、及びC表面を対照として使用した場合のTukeyの平均比較(p<0.05)によるANOVA検定を使用して、統計的に有意な差を評価した。
【0028】
1、4、及び7日間の培養後、Tiワイヤ及びカバースリップ上の細胞形態を特性評価した。検体を4%(w/v)のパラホルムアルデヒドで15分間固定し、PBSで2分間洗浄した(3回)。次に、試料を0.5%のTriton(登録商標)X-100で3回すすぎ、3%(w/v)のBSAでブロックして細胞膜を透過処理した。細胞核を4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI,Sigma,USA)で染色し、細胞骨格フィラメントアクチン(F-アクチン)をAlexa Fluor 488コンジュゲートファロイジンで染色した。染色後、試料をPBSに浸漬し、Nikon Eclipse 80i落射蛍光顕微鏡(Japan)及びZeiss LSM880共焦点レーザー走査顕微鏡(Germany)を使用して水和しながら撮像した。
【0029】
結果及び考察
pH7.4及び[Na+]=0.016Mで0.01Mのリン酸緩衝液中で水和した場合、合成されたままのPAAミクロゲルは、6±2μmの平均直径を有する(図S1)。PAA中のカルボキシル基は、これらの条件下で完全に脱プロトン化されていることが以前に示されている[20]。したがって、それらは、本研究のTM1ペプトイドなどの反対に荷電したマクロイオンと錯形成することができる。TM1が錯形成によってPAAミクロゲルに充填され得るという事実を図2Aに示す。このプロットは、1mg/mlのTM1を有する0.01Mリン酸緩衝液への曝露中の平均ミクロゲル直径に従う。TM1を含まない0.01Mリン酸緩衝液で測定した時間t=0での、データを非充填直径(6.0μm)に正規化する。10分後、正規化された直径は約55%に減少する。別の実験では、UV吸収による充填溶液からのTM1濃度の減少を測定すると、39.6μgの乾燥ミクロゲルが206μgのTM1を充填することが示される。これらの値は、TM1の各分子についての4.8個のアクリル酸基の比を示し、これは、それぞれ+5のTM1分子に対する5個の-1の酸基の化学量論に非常に近い。ミクロゲルのゼータ電位は更に、非充填状態(t=0)での-33.5±4.5mV(n=6)から、充填状態での3.6±1.2mV(n=6)(両方の測定は、0.01Mのリン酸緩衝液で行われた)の値に増加し、再び、TM1/PAAの錯形成による電荷中和を示した。
【0030】
デバイスのコロニー形成は、デバイスが乾燥しているときに移植される前だけでなく、手術部位閉鎖の前にも可能であるため、重要な質問は、デバイスが生理学的流体と接触しているときに、TM1がPAAミクロゲル内で安定して錯形成を保持しているかどうかに集中する。pH7.4の一定のpHで、イオン強度が0.01Mリン酸充填緩衝液中の[Na+]=0.016Mから生理学的条件の典型的な[Na+]=0.14Mに増加すると、追加の塩は、TM1上のアミン基とPAAミクロゲル内の酸基との間の静電対合を遮蔽することができる。このような遮蔽は、例えば、PAAミクロゲルからのコリスチンのバースト放出につながる。[17、20]図2Bが、充填されたミクロゲルをTM1を含まないPBSに曝露したときにミクロゲルの直径の変化を示さないという事実は、安定したTM1/PAAの錯形成を示す。添加されるNaClの濃度を増加させた流動緩衝液を使用する同様の実験は、錯形成されたTM1の急速な放出を可能にするために、pH7.4で約0.35Mの閾値[Na+]が必要であることを示す。コリスチン/PAAと比較して、TM1/PAAの塩析に対するこの強化された耐性は、芳香族性が錯形成強度を強化するという我々の最近の観察と一致している。[20]TM1充填PAAミクロゲルを血清含有DMEM又はウマ滑液に曝露しても、充填されたミクロゲルの直径の変化は誘導されず、再び、これらのより不均一な培地における安定した錯形成を示す(図S2)。図2Bへの挿入図は、更に、4週間の期間にわたるPBS中の安定したTM1/PAA錯形成を示す。
【0031】
指向性自己組織化によってTM1充填PAA-ミクロゲル修飾表面を作成する手段を開発したことで、4つの異なる表面処理の各々に供されたTiロッドの汚染抵抗性が調査された。これらは、図3の上部パネルに概略的に示されている。図3の下部パネルのSEM画像は、非充填ミクロゲル(Ti-C)及びTM1充填ミクロゲル(Ti-D)で修飾されたロッドの表面を示す。ミクロゲルは、粗いTi表面上に準単層コーティングを形成し、ミクロゲル間の間隔は数ミクロン程度である。PAHプライミングされたTi表面は、ミクロゲルの間に露出される。水和(非充填)ミクロゲルは、約97%の水を含む[20]。したがって、SEM撮像のために乾燥させると、それらは平坦化し、わずかなトポグラフィーを示す。対照的に、TM1充填ミクロゲルは、実質的により多くの質量及びより少ない水和を有し、乾燥されたときに非常に特徴的なトポグラフィーを示す。
【0032】
空中浮遊細菌による術中汚染を模倣するために、3つのTiロッドに噴霧し、4つの表面条件の各々を、MSSA又はS.epidermidisを含有する0.0067Mのリン酸緩衝液(0.0067M PO4を有する1×PBS、pH7.0~7.2)のエアロゾルでサンプリングした。噴霧後、ロッドを乾燥させた後、アッセイして、Ti表面に緩やかに結合しているか、又は強く付着している培養可能な細菌の数を決定した。これらの2つのケースは、0.0067Mのリン酸緩衝液中で各ロッドをボルテックスすることによって機械的に区別される。緩衝液中で緩やかに結合した細菌を回収し、汚染されたロッドを寒天プレート上で転がしてボルテックスした後に、強く付着した細菌を回収した。
【0033】
図4は、これらの実験の結果をまとめたものである。画像は、MSSA汚染の場合における、TM1充填ミクロゲル修飾Ti-Dを、修飾されていない対照Ti-Aと比較する。結果は著しく異なる。MSSAコロニー(白い点)は、Ti-Aの4つの転がし経路の各々において明らかであるが、完全に修飾されたTi-Dについては何も見ることができない。全ての培養可能な細菌が必ずしもロッド(上の画像の白い矢印)から寒天に移されるわけではないことを認識しているので、ロッド表面をSEMによって撮像した。図4の左下の画像は、修飾されていないTi-Aの広範なコロニー形成を示す。しかしながら、ミクロゲルは明らかに存在したままであったが、Ti-D表面のSEM撮像によって細菌は見出されなかった。ミクロゲルが充填されたままであるという事実は、それらのトポグラフィーによって反映される。図4のグラフは、4つの表面処理の各々についての緩やかに結合した(青実線)及び強く付着した(オレンジ実線)MSSAの量を定量化する。クロスハッチングされたデータは、S.epidermidisを使用した同様の実験の結果を示す。傾向は非常に類似している。PAHプライミングされたロッド(Ti-B)は、pH7.4でPAHが正に帯電しており[24]、表面が負に帯電しているstaphylococciなどの細菌を引き付けるべきであるという事実と一致する、最高度の汚染を示す。修飾されていないTi-Aと比較して、(充填されていない)ミクロゲル修飾されたTi-Cは、生存可能な細菌がわずかに少ないことを示す。この所見は、ミクロゲルがPAHプライミングされたTi表面よりもコロニー形成に対する感受性が低く、ミクロゲルがTi表面の一部を遮断するという事実に起因し得る。
【0034】
重要なことに、TM1充填ミクロゲル修飾Ti-D試料上に見出される培養可能な細菌の数は非常に少ない。3つの試験では、平均2CFUのみのMSSA及び1CFUのみのS.epidermidisが見出された。これらの少数のCFUは全て、汚染されたロッドをボルテックスした後に緩衝液から回収され、したがって、緩やかに結合したコロニーに対応した。Ti-Dロッドに強く付着した細菌からCFUは見つからなかった。
【0035】
3つの対照表面が全て著しくコロニー形成されるため、Ti-Dロッドが噴霧汚染プロセスの結果として、同様に培養可能な細菌に曝露すると想定される。その後、Ti-Dロッド上に非常に少数のコロニーしか見出されないという事実は、これらの細菌の大部分が表面との相互作用によって死滅したことを示唆している。エアロゾル化プロセス中に細菌が懸濁された表面も媒体(0.067Mのリン酸緩衝液)も栄養素を提供しないため、細菌が表面でほとんど又はまったく代謝を受けないことが予想される。したがって、局所的なpH低下[25]を介して充填されたミクロゲルからのTM1の放出を引き起こす可能性は低い。代わりに、これらの知見は、TM1の局所化学的電位がミクロゲル内よりも細菌エンベロープ内で低い接触移送の概念を支持し、[14c,17]その結果、細菌が近接したときに、いくつかのTM1がミクロゲルから脱錯化し、staphylococcal細胞エンベロープ内で再錯化する。細菌とのそのような錯形成相互作用は、いくつかの宿主防御ペプチドについて広範囲に研究されており、細菌外膜における豊富な高濃度のアニオン性、疎水性、及び芳香族部分に起因する。[26]
【0036】
ミクロゲルが充填されても親水性のままであるという事実は、ミクロゲル-細菌接触の機会を促進する。エアロゾル化された液滴が乾燥したミクロゲル修飾表面に衝突する場合、その液滴からの水は、1つ以上のミクロゲルを局所的に水和する。全体の液滴が蒸発するにつれて、ミクロゲルは表面の最も親水性な要素となり、最後に完全に乾燥する。理論に拘束されることを望むものではないが、乾燥する液滴の縁に関連する表面力は、それが含む可能性のある任意の細菌をミクロゲルに引き寄せ、液滴の蒸発が完了すると、それらの細菌がミクロゲル上又はミクロゲルの近くに集中すると考えられる。
【0037】
また、OR汚染のインビトロモデルは、ラット及びマウスなどの対照動物における感染を誘発するために濃縮接種物(例えば、10~10CFU/mL)が、典型的に必要とされるインビボ感染モデルの場合のように細菌で表面を覆いつくさないことも注目に値する。OR汚染モデルは、ロッド表面に少量の細菌を噴霧する。任意の特定のミクロゲルが細菌と相互作用する確率は低い。チャレンジされていないミクロゲルのその(はるかに大きい)サブセットについては、抗菌剤はこれらのミクロゲル内に隔離されたままであり(図4のToDロッドのSEM画像を参照)、発生した場合に後続の細菌チャレンジに直面することができる。細菌と相互作用するミクロゲルのそのはるかに小さいサブセットは、高い局所濃度の抗菌剤を提示し、図4のアッセイは、表面コロニー形成を防止するのに十分であることを示している。汚染モデルに関与する細菌の全体的な少ない数は、再び、TM1が枯渇した又は部分的に枯渇したミクロゲルに第2の液滴が着陸する確率が非常に低い状況を作り出す。したがって、ミクロゲルの再充填は、原理的には可能であるが、不要である。
【0038】
細胞形態(撮像)及び代謝活性(MTS)を利用して、種々の表面の短期的な細胞適合性を評価した。ミクロゲル修飾表面の場合、表面の一部のみがミクロゲルで覆われる。基礎となるPAHプライミングされたTi表面は、隣接するミクロゲルの間に露出され、PAHがカチオン性であるため、血清含有培地に曝露されると、この露出された表面は、負に荷電した血清タンパク質(例えば、アルブミン、フィブロネクチンなど)によって覆われることが予想される。そのようなミクロゲル修飾表面は、骨芽細胞及びマクロファージの両方と高い適合性を保つことが以前に示されている。[17,27]修飾されていないTi表面は、2~10μm程度の横長スケールにわたって固有の粗さを有し、この粗さは、数ミクロン程度の特徴的な寸法を有するTM1充填ミクロゲルの添加によって更に擾乱されることが注目される。このような表面トポグラフィーは、細胞の接着、拡散、及び増殖に影響を与え、多くの場合、それらを促進することが長い間知られている。[28]
【0039】
図5は、ヒト胎児骨芽細胞を使用した我々の細胞適合性アッセイの結果を示す。細胞代謝活性をMTSアッセイで分析した(図5上部)。初期の細胞接着とは独立して増殖率をより良く評価するために、各試料セットの吸光度を1日目の値に正規化する。生のMTS吸収データを図S5に表す。重要なことに、完全に修飾されたTi-D試料から測定された代謝活性は、修飾されていない対照試料(Ti-A)の代謝活性よりも高い。これは、修飾表面がhFOB細胞の増殖を促進することを示している。図5の下部の撮像データは、定性的であるが、hFOB細胞が同様の方法で様々なロッドに付着し、広がり、増殖することを示す。これらの結果は、TM1充填ミクロゲルが、細菌コロニー形成を阻害するのに有効であるだけでなく、少なくともこれらの短期間のインビトロアッセイで観察されるように、顕著な細胞不適合を引き起こさないことを示す。
【0040】
Tiロッドの湾曲した粗い表面に関連する撮像の複雑化の多くを回避するために、ガラス基材を利用した。図6の上の画像は、修飾されていないガラス上及びTM1充填ミクロゲル修飾ガラス上で7日間培養したhFOB細胞の形態が同等であることを示している。右上の画像は、表面全体に分布する著しい緑色のコントラスト(白い矢印を参照)も示している。この蛍光は、試料を充填後に乾燥させ、その後の培養実験のために再水和させたときにのみ、TM1充填ミクロゲルから観察される。ミクロゲル内のTM1自己組織化とのこのコントラストは、疎水性相互作用、水素結合、及びπ-πスタッキングに起因する可能性があり、これは、TM1がヘリックス束に自己組織化するときについて最近文書化されている。[29]重要なことに、修飾されたTiロッド(Ti-D)は同一に処理され(充填、乾燥、及びその後の再水和)、これはTM1がそのような凝集した束を形成しても抗菌特性が保持されることを示している。自動蛍光は、ミクロゲルの位置を示すだけでなく、hFOB細胞の存在にもかかわらず、TM1がミクロゲル内に充填されたままであることを更に示す。この知見は、Sub5抗菌ペプチドを充填したPAAミクロゲル上でhFOB細胞を培養してもAMP放出を引き起こさないことを示す、以前の結果と一致している。[17]SEM撮像(図6下部)は、hFOB細胞がTM1充填ミクロゲルの真上で成長することができることを示す。
【0041】
結論
医療デバイスがその滅菌パッケージから取り出された時点から創傷部位が完全に閉じられた時点までの間のOR雰囲気への曝露は、雰囲気からの細菌の沈降によるデバイスの汚染につながる可能性がある。そのプロセスは、少量の細菌をチタンロッドに噴霧することができるエアロゾル化システムを使用してモデル化されている。比較的少ない数の細菌が各ロッドを汚染しているにもかかわらず、培養培地に曝露すると、修飾されていないTiロッドに噴霧された細菌は、増殖するコロニーに発達する。本明細書に記載の実験は、カチオン性抗菌ペプトイド(好ましくはTM1)との錯形成によって充填されたポリアニオン性ミクロゲルで修飾されたTi表面が、細菌コロニー形成をほぼ完全に阻害できることを示す。汚染プロセス中に細菌の代謝を可能にするためには栄養素を利用できず、細菌が、pHの局所的な変化によってではなく、接触移送によって局所的なTM1放出を引き起こすことを示す。汚染させる細菌の数が少ないため、充填されたミクロゲルのほとんどは汚染中にチャレンジされないため、それらのTM1ペイロードは隔離されたままである。しかしながら、充填されたペプトイドも、ミクロゲルによって導入された追加のトポグラフィーも、ヒト胎児骨芽細胞を用いたインビトロ実験によってアッセイされた修飾表面の細胞適合性を低下させるものではない。したがって、この表面修飾戦略は、手術室での汚染に起因する曝露された生物医学デバイスの術中細菌コロニー形成を阻害する有望なアプローチを示唆する。
【0042】
本明細書では、TM1(H-(NLys-Nspe-Nspe)-NH)について頻繁に言及されているが、本明細書に開示されるデバイス、方法論、及び組成物には、様々なペプトイドを利用することができる。好適なペプトイドとしては、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「Selective Poly-N-Substituted Glycine Antibiotics」と題されるU.S.8,445,632(Barron et al.)に記載されるペプトイド、及び以下の表1~2に示される名称及び構造を有するペプトイドが挙げられる。
【表1】
【0043】
U.S.9,938,321(Kirshenbaum et al.)、U.S.9,315,548(Kirshenbaum et al.)、及びU.S.8,828,413(Kirshenbaum et al.)を含むがそれらに限定されない、本明細書に開示される様々な環状ペプトイドもまたデバイス、方法論及び組成物で利用でき、これらの全ては参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるペプトイドは、式
【化1】
(式中、
Aは、末端N-アルキル置換グリシン残基であり、
nは、整数であり、
Bは、NH、1つ及び2つのN-置換グリシン残基からなる群から選択され、上記1つ及び2つのN-置換グリシン残基は、独立して、天然αアミノ酸側鎖部分、その異性体及び炭素ホモログから選択されるN-置換基を有し、
X、Y、及びZは、独立して、N-置換グリシン残基からなる群から選択され、上記N-置換基は、独立して、天然αアミノ酸側鎖部分、その異性体及び炭素ホモログ、並びにプロリン残基からなる群から選択される)のポリN置換グリシン化合物である。いくつかの実施形態では、これらのペプトイドは、第1のペプトイドとは異なり、式
【化2】
(式中、
Cは、式
【化3】
(Rは、アルキル基であり、
mは、整数であり、
Dは、NH、1つ及び2つのN-置換グリシン残基からなる群から選択され、上記1つ及び2つのN-置換グリシン残基は、独立して、天然αアミノ酸側鎖部分、その異性体及び炭素ホモログから選択されるN-置換基を有する)の末端N-アルキル置換グリシン残基であり、
J、K、及びLは、独立して、N-置換グリシン残基からなる群から選択され、上記N-置換基は、独立して、天然αアミノ酸側鎖部分、その異性体及び炭素ホモログ、並びにプロリン残基からなる群から選択される)のポリN-置換グリシン化合物である、少なくとも1つの他のペプトイドと組み合わせて利用されてもよい。
【0045】
本明細書に記載の組成物中のペプトイドは、アルキル化されてもよく、好ましくは末端アルキル化を有する。ここで、C10又はC13尾部によるアルキル化(及び特に末端アルキル化)が特に好ましい。そのような末端アルキル化は、ある用途においてペプトイドの有効性を増強し得、ある場合には、低い抗菌活性を有するペプトイドに有意な抗菌活性を有するようにさせ得ることが分かっている。したがって、前述の式では、Rは、約C4~約C20の直鎖、分枝鎖及び環状アルキル部分から選択され得る。Rは、好ましくは少なくとも8個の炭素原子を含み、より好ましくは少なくとも10個の炭素原子を含み、最も好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含む。Rがデシル又はトリデシル部分である実施形態が特に好ましい。
【0046】
前述のペプトイドの様々な塩又は前駆体を、本明細書に開示する組成物及び方法論に利用することができることが更に理解されるであろう。後者の一例として、これらの組成物及び方法論は、一般式A~Pの1つ以上の前駆体を含み得、式中、Pは、前述のペプトイド(又はその塩)のうちの1つであり、Aは、前駆体がインビボ反応(例えば、タンパク質分解分解など)を受けるときに、Pを生成するための脱離基として機能する部分である。
【0047】
N-置換グリシン(及びその塩)の様々なハロゲン化ペプトイド及びハロゲン化オリゴマーも、本明細書に開示される組成物及び方法論において利用され得る。これらには、限定されないが、前述のペプトイドの様々なハロゲン化類似体及びN-置換グリシンのオリゴマーが含まれる。そのようなハロゲン化ペプトイドの例は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「Halogenated Antimicrobial Peptoids」と題されるWO2020/223581A1(Molchanova et al.)に記載される。これらのハロゲン化組成物は、様々な方法でハロゲン化され得る。例えば、これらの化合物は、同じ又は異なるハロゲンを有する任意の数のハロゲン置換を含み得る。特に、これらの化合物は、1つ以上のフルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード置換を含み得、2つ以上の異なるハロゲンによる置換を含み得る。しかしながら、1つ又は2つのブロモ又はクロロ置換の使用は、多くの用途で好ましい。更に、本明細書に記載のペプトイドは様々な位置でハロゲン化され得、アリール環を含有するペプトイド上のパラハロゲン化は多くの用途で特に好ましいが、オルト及びメタ置換、又は過ハロゲン化さえもいくつかの用途で有用であり得る。
【0048】
参照によりその全体が本明細書に含まれる[Nam,H.Y.,Choi,J.,Kumar,S.D.,Nielsen,J.E.,Kyeong,M.,Wang,S.,Kang,D.,Lee,Y.,Lee,J.,Yoon,M.-H.,Hong,S.,Lund,R.,Jenssen,H.,Shin,S.Y.,Seo,J.,2020 Helicity Modulation Improves the Selectivity of Antimicrobial Peptoids.ACS Infectious Diseases 6,2732-2744.doi:10.1021/acsinfecdis.0c00356]に開示されるペプトイドのいずれかもまた、本明細書に開示される組成物及び方法論において利用され得る。これらには、具体的には、以下の表2に示されるペプトイドが含まれる。
【表2】
【0049】
様々な生物医学デバイスは、本明細書の教示に従って取り扱われ得る。これらは、例えば、股関節/膝プロテーゼ、心臓弁、ペースメーカー、蝸牛インプラント、シャント、外科用メッシュ、縫合糸、及び組織工学的構築物を含み得る。これらの生物医学デバイスは、ヒト又は動物対象であり得る、対象の体内に移植されるように設計されたタイプのものであり得る。
【0050】
本明細書に開示される方法論の好ましい実施形態では、ポリアニオン性ミクロゲル(又はいくつかの実施形態では、ナノゲル)を生物医学デバイスの表面に堆積させ、堆積されたポリアニオン性ミクロゲルにペプトイドを充填することによって、生物医学デバイスの表面を処理することを含む。いくつかの実施形態では、生物医学デバイスの表面は、ポリアニオン性ミクロゲルを堆積させる前に、ポリカチオン層でプライミングされてもよい。ポリアニオン性ミクロゲルは、膜乳化及びUV光重合を含むプロセスによって合成され得、好ましくは、生物医学デバイスの表面上に準単層コーティングとして堆積される。好ましくは、ポリアニオン性ミクロゲルは、ポリアクリル酸を含む。
【0051】
本明細書に開示される方法論に従って処理される生物医学デバイスの表面は、様々な材料を含み得る。これらには、限定されないが、例えば、アルミナ、ジルコニア、及びジルコニア強化アルミナ(ZTA)などの金属、金属酸化物、及び金属合金からなる群から選択される材料;Zr、Ta、V、Nb、W、Mo、及びそれらの合金などの耐火金属;例えば、Ti-6Al-4V合金、Ti-5Al-2.5Fe合金、Ti-6Al-7Nb合金、及びβ-Ti合金(Ti-12Mo-6Zr-2Fe(TMZF)を含む)などの金属合金;例えば、Co-Cr-Mo合金、ステンレス鋼合金、及び耐火金属合金などのチタン合金;酸化ジルコニウム(oxinium);アルミナ、ジルコニア、及びジルコニア強化アルミナ(ZTA);マグネシア部分安定化ジルコニア(MgPSZ);及びイットリア安定化酸化物(Y-TZP)が含まれる。本明細書に開示される方法論に従って処理される生物医学デバイスの表面はまた、例えば、ポリエチレン(超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)及び高架橋ポリエチレン(HXLPE)を含む)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの様々な有機ポリマーを含んでもよい。
【0052】
本明細書に開示される自己防御的表面は、様々な細菌、真菌、及びウイルスを含む様々な病原体の存在下で、1つ以上のペプトイドを放出するように適合され得る。そのような病原体の具体的な例としては、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Klebsiella、Proteus、Enterobacter、Clostridium difficile、及びSalmonela、Streptoccoci;Candida albicans、Aspergillus spp.、Nocardia、Pneumocystis carinii、Cryptococcus neoformans、及びCryptosporidium;呼吸器合胞体ウイルス、サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エボラ、ロタウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザA(サブタイプH2N2及びH3N3を含む)、肝炎及びヘルペスウイルスが挙げられ得る。
【0053】
種々のペプトイド放出面は、本明細書の教示に従って作製されてもよい。これらの放出面は、好ましくはミクロゲルを含むが、いくつかの実施形態では、ナノゲルも含むことができる。放出面は、好ましくは、ポリベタインなどの両性イオンポリマーを含む。かかるポリマーは、例えば、四級アンモニウム基などのカチオン基、及び、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスフィン酸基、及びホスホン酸基などのアニオン基を含有してもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、生物医学インプラントの表面を細菌培養に耐性を与えるように処理するための方法が提供される。そのような実施形態では、方法は、(a)インプラントの表面をポリ(アリルアミン塩酸塩)でプライミングし、それによってプライミングされた表面を得ることと、(b)ポリ(アクリル酸)(PAA)ミクロゲルの準単層をプライミングされた表面に適用し、それによって3D架橋コロイド構造を得ることと、(c)PAAミクロゲルとペプトイドとの間で錯体を形成することによって、コロイド構造にペプトイドを充填することと、を含み得る。ポリ(アリルアミン塩酸塩)は、好ましくは正に帯電しており、ポリ(アリルアミン塩酸塩)でインプラントの表面を処理することは、(a)ポリ(アリルアミン塩酸塩)の水溶液を表面に適用し、それによって処理された表面を形成すること、(b)処理された表面をすすぎ、それによってすすがれた表面を得ること、及び(c)すすがれた表面を乾燥させることを含み得る。プライミングされた表面にPAAミクロゲルの準単層を適用することは、プライミングされた表面にPAAを静電的に堆積させることを含み得、これは、プライミングされた表面をコロイド状の水性ミクロゲル懸濁液に曝露することを含み得る。同様に、PAAミクロゲルにペプトイドを充填することは、PAAミクロゲルをペプトイドの緩衝溶液に曝露することを含み得、その場合、リン酸緩衝液の使用が特に好ましい。充填プロセスは、好ましくは、PAAミクロゲルとペプトイドとの間で錯体を形成することを含む。
【0055】
様々な寸法のPAAミクロゲルを、本明細書に記載の構築物及び方法論に利用することができる。好ましくは、PAA lsは、PAAミクロゲルにペプトイドを充填する前に、6±2μmの範囲内の平均直径を有する。PAAミクロゲルにペプトイドを充填すると、好ましくは、アクリル酸基とペプトイドとの比Raa/pepは、1~50、より好ましくは2~20、更により好ましくは3~10、最も好ましくは4~5の範囲内になる。ミクロゲルのゼータ電位は、好ましくは、非充填状態での-33.5±4.5mVから、充填状態での3.6±1.2mVの値に増加する。
【0056】
本発明の上記の説明は例示的であり、限定することを意図するものではない。したがって、本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に種々の追加、置換、及び修正が行われ得ることを理解されたい。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。
【0057】
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図2
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【国際調査報告】