(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ドライブダイナミックコントロール内のエラー検出のための方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/88 20060101AFI20240709BHJP
B60T 17/22 20060101ALI20240709BHJP
B60T 13/138 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B60T8/88
B60T17/22
B60T13/138 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579298
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2022058538
(87)【国際公開番号】W WO2023280451
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】102021207039.6
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ブーベック,サミュエル
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB05
3D048CC05
3D048CC08
3D048HH13
3D048RR06
3D048RR35
3D049BB03
3D049CC02
3D049HH10
3D049HH42
3D049RR04
3D049RR13
3D246GA01
3D246GC16
3D246HA03A
3D246HA43A
3D246HA45A
3D246MA08
(57)【要約】
パワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとから成り、前記パワーブレーキを前記ドライブダイナミックコントロールと液圧連結させるために設置されているシステム内における、前記ドライブダイナミックコントロール内のエラー検出のための方法を提案する:第1の制御信号を発生させ、前記第1の制御信号を前記ドライブダイナミックコントロールに提供することで、前記ドライブダイナミックコントロールにより第1の液圧を提供する;前記ドライブダイナミックコントロールにより前記第1の液圧を発生させ、この場合前記システム内の液圧体積が一定に維持されるように前記パワーブレーキにより前記液圧連結部において第2の液圧を制御する;この場合前記第1の液圧の発生の終了後に、前記液圧連結部における前記ドライブダイナミックコントロールの第3の液圧を特定することで、前記ドライブダイナミックコントロール内のエラーを検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーブレーキ(1000)とドライブダイナミックコントロール(1100)とから成り、前記パワーブレーキ(1000)を前記ドライブダイナミックコントロール(1100)と液圧連結させるために設置されているシステム内における、前記ドライブダイナミックコントロール内のエラー検出のための方法において、
第1の制御信号を発生させ(S20)、前記第1の制御信号を前記ドライブダイナミックコントロール(1100)に提供することで、前記ドライブダイナミックコントロール(1100)により第1の液圧を提供し、
前記ドライブダイナミックコントロール(1100)により前記第1の液圧を発生させ(S30)、この場合前記システム内の液圧体積が一定に維持される(S40)ように前記パワーブレーキ(1000)により前記液圧連結部において第2の液圧を制御し、
この場合前記第1の液圧の発生の終了(S60)後に、前記液圧連結部における前記ドライブダイナミックコントロール(1100)の第3の液圧を特定する(S80)ことで、前記ドライブダイナミックコントロール(1100)内のエラーを検出する、
方法。
【請求項2】
前記システムの前記液圧体積を、前記パワーブレーキ(1000)のプランジャー(1060)により一定に保持する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パワーブレーキ(1000)の前記プランジャー(1060)のピストンの位置が初期位置から機械的に移動することにより、前記システムの前記液圧体積を一定に保持する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
タイムインターバルが満了(S50)した後に、前記第1の液圧の発生を終了させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記タイムインターバルの満了後に弁(1111)を開くことで、前記弁(1111)により前記パワーブレーキ(1000)と前記ドライブダイナミックコントロール(1100)を互いに液圧連結させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記弁(1111)が、前記ドライブダイナミックコントロール(1100)の特にコントロール可能な弁である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の液圧および/または前記第2の液圧および/または前記第3の液圧を、前記パワーブレーキ(1000)の圧力センサ(1065)を用いて前記液圧連結部において特定する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の制御信号を前記パワーブレーキ(1000)の制御器によって提供する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の制御信号がバイナリー信号および/またはアナログ信号である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
モバイルプラットフォームのスタート前に実施する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法の最初のステップの前に、モバイルプラットフォームのパーキングブレーキを閉じる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
パワーブレーキ(1000)とドライブダイナミックコントロール(1100)とから成るシステム内における前記ドライブダイナミックコントロール(1100)内のエラー検出のためのシステムにおいて、
パワーブレーキ(1000)と
ドライブダイナミックコントロール(1100)を有し、前記システムが前記パワーブレーキ(1000)と前記ドライブダイナミックコントロール(1100)とを液圧連結させるために設置されており、
前記パワーブレーキ(1000)のための制御器を有し、
前記パワーブレーキ(1000)が前記ドライブダイナミックコントロール(1100)と信号連結されており、
前記システムが、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法を実施するために設置されている、
システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムを、モバイルプラットフォームの少なくとも1つの車輪を制動するために使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブダイナミックコントロール内のエラー検出のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現今の車両ブレーキシステムは、たとえば古典的なESP/ABS機能の形態の安定化機能以外に、ドライバーのアシスト、電気機械式ブレーキ倍力装置(eBKV)によるブレーキ操作時のブレーキペダルへのパワー導入、或いは、ドライバーがアクティブに関与しない、制動液圧をアクティブに変調させるためのユニット(たとえばESP,eBKV,ブーストユニットなど)によるアシスト機能または半アシスト機能もそうであるが、このような拡張機能を含むことが増えてきている。
ドライバーアシストシステムは、今日の自動車ではますます様々な形で普及している。ドライバーアシストシステムは、駆動、たとえば操舵のような制御、または、車両の信号化機構に半自動でまたは自動で介入し、或いは、危険な状況の直前またはその間に適当な人間・機械・インターフェースによってドライバーに警告する。典型的には、ブレーキシステムは電子式ブレーキ倍力装置(eBKV)とESPシステムとを有する。この組み合わせでは、ブレーキシステムの多くがESPシステムによる機能を実現でき、ブレーキ倍力装置は動圧を増圧させるために外部のアクチュエータとして利用される。択一的に、ワンボックス・ブレーキシステムにおいては、対応する液圧システムを制御するために、1つの装置内でブレーキ倍力装置とESP機能とが組み合わされていてよい。
【発明の概要】
【0003】
このような車両のための各ブレーキシステムは、車両の登録許可と運転とに有効な法律に対応して、簡単なエラーにおいては、ペダル力が500ニュートンの場合に2.44m/s2の最小減速を確保しなければならない。この目標と、見込み客のより厳しい更なるガイドラインとが決め手となって、ブレーキシステムの液圧設計を決定することがある。
したがって、このようなブレーキシステムのマスタシリンダは、適当な入力パワーがあった場合、車輪ブレーキでの圧力の付加的な増幅なしに、対応的に理にかなった液圧を調整できるように設計される。しかしながら、このような設計は同時に、体積受容程度が異なっているために、すべてのタイプの車両もしくはすべての可能なブレーキキャリパーが、マスタシリンダおよび/またはペダルストロークをかなり延長することなしに、1つのブレーキシステム設計で操作できることを阻んでいる。
【0004】
本発明の観点によれば、パワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとから成るシステム内におけるドライブダイナミックコントロール内のエラー検出のための方法と、ドライブダイナミックコントロール内のエラー検出のためのシステムと、システムの使用方法とが、独立請求項の構成に従って提案される。有利な構成は、従属請求項および以下の説明の対象である。
【0005】
本発明のこの説明全体において、本方法を容易に理解できるように一連の方法ステップが提示されている。しかし当業者は、方法ステップの多くが他の順番でも完遂できて、同じ結果または対応する結果に導くことを認識している。この意味では、方法ステップの順番は適当に変更してよい。いくつかの構成要件は、読みやすさを改善するため、または、関係をより一義的にするため、数値を備えているが、これは特定の構成要件が存在しているという意味を含むものではない。
【0006】
本発明の1つの観点によれば、パワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとから成るシステム内におけるドライブダイナミックコントロール内のエラー検出のための方法が提案され、この場合システムは、パワーブレーキをドライブダイナミックコントロールと液圧連結させるために設置され、この場合本方法は以下のステップを含んでいる。
1つのステップで、第1の制御信号を発生させ、第1の制御信号をドライブダイナミックコントロールに提供することで、ドライブダイナミックコントロールにより第1の液圧を提供する。更なるステップで、ドライブダイナミックコントロールにより第1の液圧を発生させ、この場合システム内の液圧体積が一定に維持されるようにパワーブレーキにより液圧連結部において第2の液圧を制御し、この場合第1の液圧の発生の終了後に、液圧連結部におけるドライブダイナミックコントロールの第3の液圧を特定することで、ドライブダイナミックコントロール内のエラーを検出する。
【0007】
このようなシステムは、たとえば連結解除される電気式ブレーキ倍力装置(英語名:decoupled power brake;DPB)をブレーキ力制動手段として含んでおり、電気式ブレーキ倍力装置では、ドライバーが通常作動時にシミュレータに介入して制動し、本来のブレーキ圧はプランジャーを用いて生成させる。この予圧は、2つのブレーキ管を介してドライブダイナミックコントロールへ転送することができる。このようなブレーキシステムにおいては、ブレーキペダルの操作とは独立に、パワーブレーキのプランジャーにより、または、ドライブダイナミックコントロールのポンプにより、ブレーキ圧を増圧させることができる。その際、パワーブレーキは主にブレーキ圧の必要な動的増圧の用を成し、縦方向動的ブレーキアシスト機能を実施するために構成されていてよい。ドライブダイナミックコントロールは、安定化機能と、場合によってはたとえばブレーキ液圧の増圧のような必要な緊急時機能とを、エラー時に提供することができる。
したがって、システムのドライブダイナミックコントロールは、緊急時に必要なブレーキ圧をドライバーの要望に基づいて増圧させることができる。択一的にまたは追加的に、このシステムに基づいているブレーキシステムは、パワーブレーキの故障の際に、または、法的に規定されている最小減速度がもはや可能でないことを生じさせるシステム内での漏れの際に、必要なブレーキ圧をドライブダイナミックコントロールにより増圧させることができる。このような緊急時機能のこのような安全上重要な設計のためには、ドライブダイナミックコントロールは非常に高い可用性を持っていなければならない。
【0008】
高い可用性は、ドライブダイナミックコントロールの潜在的エラーを検出するために、上述のエラー検出のための方法を用いて確保することができる。というのは、このようなエラーは、たとえば連結解除されたブレーキ倍力装置および/またはドライブダイナミックコントロール内での液圧漏れのようなパワーブレーキの故障の際に、緊急時機能を正確に作動させるのを妨げる可能性があるからである。
【0009】
エラー検出のための本方法は、たとえば、電子パーキングブレーキがまだ閉じているときの原動機の始動時に実施することができる。しかしながら、テストは車両の停止中に他の時点でも実施することができる。エラー検出のための本方法は、走行中にも実施でき、特にその際に生成させた車輪ブレーキ圧が、現在の走行状況および現在の制動要望にふさわしい場合に、ならびに/または、走行の際に生成した車輪ブレーキ圧が特定の走行状況と適合している場合に、実施できる。
【0010】
その際、エラー検出のための本方法は、パワーブレーキを用いて、すなわち特にパワーブレーキの制御器によって制御できる。第1の制御信号を提供するため、パワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとの間で他の機能をも信号連結させるインターフェースを使用できる。
【0011】
第1の制御信号に基づいてドライブダイナミックコントロールにより増圧させる第1の液圧の大きさは、設定変更可能であってよく、エラー検出のための本方法では、パワーブレーキによって要求され得る。第1の液圧の大きさは、法的に規定された緊急時機能に対応するブレーキ圧に対応していてよい。
ドライブダイナミックコントロールは、ポンプを用いて、第1の制御信号の要求に基づいて、要求された圧力を増圧させることができ、このため、パワーブレーキによって提供される液圧体積をそのために使用する。換言すれば、液圧体積をドライブダイナミックコントロールによってパワーブレーキから吸い込むことができる。
パワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとから成っているシステムは、たとえばブレーキシステムとして閉じているので、たとえばブレーキ液のような液圧体積の吸込みをパワーブレーキに伝達させるのをドライブダイナミックコントロールに可能にさせるインターフェースが設けられていてよい。その際、パワーブレーキは、望ましくない付加的な液圧体積がシステム内へ、たとえばシステムのブレーキ回路内へ到達するのを阻止するために設置されていてよい。
このため、パワーブレーキはプランジャーを有していてよく、これをいわゆる吸込み支援で、負圧がシステム内にまたは特にパワーブレーキ内に生じないようにコントロールしてよい。なぜなら、負圧が十分に高いと、パワーブレーキ内に、たとえばBSV弁のような安全弁を通じて液圧体積が貯留タンクから吸い込まれることがあるからである。たとえばブレーキ液のような液圧体積を貯留タンクから吸い込むというこの可能性は、特殊な状況に対して考慮されているもので、通常の作動では、システムの申し分のない機能を保証するために回避すべきことである。
【0012】
ドライブダイナミックコントロール内での第1の液圧の増圧に成功したならば、たとえばそれぞれの車輪のブレーキシリンダに、或いは、ドライブダイナミックコントロールのそのつどの高圧液圧回路内に、望ましい液圧が印加されている。その際、システム内の液圧体積が一定に維持されるように、第2の液圧をパワーブレーキの液圧連結部においてたとえばプランジャーを用いて制御または調整する。換言すれば、ドライブダイナミックス内での増圧に必要な液圧体積はプランジャー(そのピストンはそのために対応的に移動する)からの液圧体積によって提供される。換言すれば、ドライブダイナミックコントロール内での増圧に必要な液圧体積はパワーブレーキから、特にプランジャーの液圧体積によって提供され、このためにたとえばプランジャーのピストンは前部位置へ移動する。
【0013】
その際、パワーブレーキのプランジャーとドライブダイナミックコントロールの連結弁との間の領域で支配的な第2の液圧は、たとえば液圧を特定するためにこの領域に配置されているパワーブレーキの圧力センサを用いて、低い大きさに調整してよい。
【0014】
パワーブレーキおよび/またはドライブダイナミックコントロールは、互いに連結するために設置されていてよく、このため、パワーブレーキの連結弁とドライブダイナミックコントロールの連結弁とが互いに液圧連結されるために設置されている。すなわち、パワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとを備えたシステムの液圧連結部は、パワーブレーキの連結弁とドライブダイナミックコントロールの連結弁との間で、パワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとを互いに液圧連結させるために設置されていてよい。
【0015】
第1の液圧を発生させることは、たとえばパワーブレーキがドライブダイナミックコントロールに適当な終了信号を送出することにより、事前に設定した時間後に終了させてよい。更なるステップで、パワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとの間にあるドライブダイナミックコントロールの連結弁を開くことで、パワーブレーキのプランジャーに至るまで液圧平衡を達成させてよい。その際、パワーブレーキのプランジャーを、当該プランジャーのピストンの以前の位置が保持されるように制御することで、このようにして連結させた液圧管内の圧力上昇をプランジャーに至るまで達成させる。プランジャー圧力センサを用いると、ドライブダイナミックコントロール内でのエラーを検出するために第3の液圧を特定することができる。すなわち、第3の液圧がある程度予想される大きさに到達すれば、および/または、これを越えれば、ドライブダイナミックコントロール内で十分に高い第2の液圧が増圧されたことになり、したがってドライブダイナミックコントロールが十分に機能できることが証明されたことになる。
【0016】
有利な態様では、エラー検出のための本方法は、たとえば車両のスタート時にアクティブな機能テストを実施することで、この時点でドライブダイナミックコントロールの液圧系内および付属の電子構成要素内に潜在的なエラーがあることを推定することができる。なお、ドライブダイナミックコントロールの液圧系内での潜在的なエラーを特定するために、この機能テストはエラー検出のための本方法を含んでいてよい。
【0017】
有利な態様では、エラー検出のための本方法を使用することにより、ブレーキシステムの液圧設計の点で明らかにより高い自由度を達成でき、これに伴ってブレーキシステム対車両全体のより高い汎用性がOEMおよび供給者に対する選択可能性を達成できる。したがって、ブレーキシステムが多くの車両型式に対しフレキシブルに使用できるようにブレーキシステムを設計できる。
【0018】
すなわち、このように構成された車両を運転しているドライバーのためのブレーキ力アシストが故障する確率が十分に抑えられることで、エラー検出のための本方法を使用することによりブレーキシステムに対する設計ガイドラインを拡張できる。なぜなら、たとえばエラー時にドライブダイナミックコントロールによって提供されるべきブレーキ力アシストのような緊急時機能の可用性を、エラー検出のための本方法によって保証できるからである。
【0019】
有利な態様では、ドライバーに対し連結解除されているパワーブレーキを用いて、エラー検出のための本方法はいつでも特別な処置なしに中断させることができる。
第1の制御信号をドライブダイナミックコントロールに提供するため、有利な態様では、パワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとの間の信号のために既存のインターフェースを使用することができる。エラー検出のための本方法は、パワーブレーキによって制御でき、これにより2つのシステムに分割する必要がなく、よってドライブダイナミックコントロールと他の製造業者の製品との互換性を簡単に成し遂げることができる。
【0020】
1つの観点によれば、第1の制御信号をパワーブレーキを用いて、特にパワーブレーキの制御器を用いて発生させることが提案される。
【0021】
1つの観点によれば、パワーブレーキが連結解除される電気式ブレーキ倍力装置(英語名:decoupled power brake;DPB)であり、および/または、ESPシステム(electronic Stability Control System)であることが提案される。
【0022】
1つの観点によれば、システムの液圧体積をパワーブレーキのプランジャーにより一定に保持することが提案される。
【0023】
1つの観点によれば、プランジャーは漏らし孔を有していないことが提案される。エラー検出のための本方法により、有利な態様では、漏らし孔を有していないプランジャーを使用でき、これによってシステムのための構成空間を小さくすることができる。
【0024】
1つの観点によれば、パワーブレーキのプランジャーのピストンの位置が初期位置から機械的に移動することにより、システムの液圧体積を一定に保持することが提案される。
【0025】
1つの観点によれば、タイムインターバルが満了した後に、第1の液圧の発生を終了させることが提案される。
【0026】
1つの観点によれば、タイムインターバルの満了後に弁を開くことで、この弁によりパワーブレーキとドライブダイナミックコントロールを互いに液圧連結させることが提案される。
【0027】
1つの観点によれば、前記弁はドライブダイナミックコントロールの、特にコントロール可能な弁であることが提案される。
特に、前記弁はドライブダイナミックコントロールの連結弁であってよい。
【0028】
1つの観点によれば、第1の液圧および/または第2の液圧および/または第3の液圧を、パワーブレーキの圧力センサを用いて、液圧連結部において特定することが提案される。特に、パワーブレーキの圧力センサはプランジャー圧力センサであってよい。
【0029】
1つの観点によれば、第1の制御信号をパワーブレーキの制御器によって提供することが提案される。その際、パワーブレーキの制御器は、特にパワープレーのための制御器、および/または、パワーブレーキを制御するためにパワーブレーキとともに専用のユニットを形成している制御器であってよい。
【0030】
1つの観点によれば、第1の制御信号がバイナリー信号および/またはアナログ信号であることが提案される。
【0031】
1つの観点によれば、本方法をモバイルプラットフォームのスタート前に実施することが提案される。
【0032】
1つの観点によれば、本方法の最初のステップの前に、モバイルプラットフォームのパーキングブレーキを閉じることが提案される。
【0033】
パワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとから成るシステム内におけるドライブダイナミックコントロール内のエラー検出のためのシステムが提案され、この場合システムは、パワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとを含み、システムは、パワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとを液圧連結させるために設置されている。加えて、システムはパワーブレーキのための制御器を含み、この場合パワーブレーキはドライブダイナミックコントロールと信号連結されており、その際システムは、上述した方法の1つを実施するために設置されている。
このようなシステムにより、本方法を異なるモバイルプラットフォームに組み込むことができるので有利である。
【0034】
上述したシステムを、モバイルプラットフォームの少なくとも1つの車輪を制動するために使用することが提案される。
【0035】
モバイルプラットフォームとは、移動式である、少なくとも部分的に自動化されたシステムであり、および/または、車両のドライバーアシストシステムである。一例を挙げると、少なくとも部分的に自動化された車両、または、ドライバーアシストシステムを備えた車両であってよい。すなわち、これに関連して、少なくとも部分的に自動化されたシステムは、少なくとも部分的に自動化された機能性に関してモバイルプラットフォームを含んでおり、しかしモバイルプラットフォームは、ドライバーアシストシステムを含む車両または他のモバイルマシーンをも含んでいる。モバイルプラットフォームに対しさらに例を挙げると、複数のセンサを備えたドライバーアシストシステム、たとえばロボット掃除機もしくは芝刈り機のようなモバイルマルチセンサロボット、マルチセンサ監視システム、製造機、パーソナルアシスタントまたはアクセスコントロールシステムであってよい。これらシステムのいずれも、完全にまたは部分的に自動化されたシステムであってよい。
【0036】
モバイルプラットフォーム、および、特に上述したシステムを有する、少なくとも部分的に自動化された車両が提案される。このようなモバイルプラットフォームは、ドライブダイナミックコントロール内のエラー検出のための本方法のすべての利点を実現できるので有利である。
【0037】
本発明の1実施形態が
図1ないし
図6に関して図示されており、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】エラー検出のための本方法のフローチャートの概要図である。
【
図2】ドライブダイナミックコントロール内を増圧する際のパワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとから成るシステムを示す図である。
【
図3】得られた圧力を評価する際のパワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとから成るシステムを示す図である。
【
図4】ドライブダイナミックコントロールの第1の回路を評価する際のパワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとから成るシステムを示す図である。
【
図5】ドライブダイナミックコントロールの第2の回路を評価する際のパワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとから成るシステムを示す図である。
【
図6】ドライブダイナミックコントロールの第2の回路の択一的な評価の際のパワーブレーキとドライブダイナミックコントロールとから成るシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、パワーブレーキ1000とドライブダイナミックコントロール1100とから成るシステムにおいて、ドライブダイナミックコントロール1100内でエラー検出を行うための方法のフローチャートの概要図であり、前記システムは、パワーブレーキ1000をドライブダイナミックコントロール1100と液圧連結するために設置されている。
たとえば車両のようなモバイルプラットフォームのたとえばスタートパターンにおいて起動させることができるエラー検出S10を行う方法のスタート後、第1の制御信号を発生させS20、この第1の制御信号をドライブダイナミックコントロール1100に提供することで、第1の液圧をドライブダイナミックコントロールを用いてたとえば車両ブレーキのブレーキシリンダに対し提供する。
ドライブダイナミックコントロール1100を用いて第1の液圧を発生させる際、液圧連結部における第2の液圧をパワーブレーキ1000を用いて次のように制御し、すなわちシステム内の液圧体積が一定に維持されS40、他方第1の液圧がドライブダイナミックコントロール1100により増圧されるS30ように制御する。タイムインターバルが満了したS50後、第1の液圧の発生を終了させ、そして液圧連結部においてプランジャー圧力センサ1065を用いてドライブダイナミックコントロール1100の第3の液圧を特定するS80ことで、ドライブダイナミックコントロール内のエラーを検出するために、連結弁SCC1111または1112を開く。その際、連結弁SCC1111または1112を開くと、プランジャー1060の体積は一定に保持されS70、すなわちプランジャー1060のピストンがその位置を維持することで、プランジャー1060の手前で第3の液圧を増圧することが達成される。
第3の液圧が所定の最小値を上回ると、ドライブダイナミックコントロール1100が現在動作可能であるという前提から出発することができ、その結果パワーブレーキ1000が故障した場合のドライブダイナミックコントロール1100の緊急機能が保証されている。
【0040】
図2は、第1の液圧を増圧する場合の弁位置を併せて示した、パワーブレーキ1000とドライブダイナミックコントロール1100とから成るシステムの概略図であり、この場合システムは、パワーブレーキの第1および第2の連結弁PSV1 1021およびPSV2 1022と、ドライブダイナミックコントロールの第1および第2の連結弁SCC1111および1112とを用いて、パワーブレーキ1000をドライブダイナミックコントロール1100と液圧連結させ、よって液圧連結部を形成するために設置されている。その際、パワーブレーキ1000もドライブダイナミックコントロール1100も2回路に設計されている。
第1または第2の回路切り離し弁CSV1 1011またはCSV2 1012を用いて、ドライブダイナミックコントロール1100のそれぞれに付設の回路により、ブレーキシリンダ1101,1102または1103および1104に液圧の作用を与えることで、緊急ブレーキ作用を得るため、マスタシリンダ1050は、当該マスタシリンダと機械的に結合されているペダルによって手動で操作することができる。その際、ブレーキマスタシリンダ1050は2つの漏らし孔により作動液用リザーバー1030と液圧結合されている。
通常作動での増圧のため、プランジャー1060によりブレーキシリンダ1101,1102または1103および1104にブレーキ作用を生じさせることができ、このためプランジャー1060は、液圧体積をパワーブレーキの連結弁PSV1 1021またはPSV2 1022を介して、ドライブダイナミックコントロール1100の2つの回路内へ変位させる。プランジャー1060は、弁POV1061を介して液圧リザーバーRSV1,2 1030と液圧連結させてよい。プランジャー1060は、ピストンにより液圧体積を放出または受容できるようにするため、電動機と連結されている。電動機は、電動機位置を特定するためのセンサ装置RPS1062と連結されている制御部によってコントロールすることができる。マスタシリンダ1050の圧力は、マスタシリンダ圧力センサ1053を用いて特定できる。
2回路に設計されたマスタシリンダ1050は、ブレーキペダルを操作するドライバーに液圧増圧をシミュレートするために、弁SSV1051を介してブレーキシミュレータPFS1052と液圧連結されていてよい。その際、通常作動における液圧体積がプランジャー1060によりドライブダイナミックコントロール1100に対し提供されることで、ドライブダイナミックコントロール1100と液圧連結されているブレーキシリンダ1101,1102または1103および1104にブレーキ作用を得る。ブレーキペダルの機械的位置は、プランジャー1060を特にブレーキペダルの機械的位置に依存して制御するため、ブレーキペダルと機械的に連結されている距離センサs/Uによって特定できる。
プランジャー1060によって発生させる第2の液圧は、プランジャー圧力センサ1065により特定できる。第1の逆止弁BSV1 1041またはBSV2 1042を用いると、液圧システムにパワーブレーキ1000およびドライブダイナミックコントロール1100から作動液を順次供給することができる。
【0041】
ドライブダイナミックコントロール1100の両回路は十分に対応しており、その結果1つの回路を説明すれば十分である。
ドライブダイナミックコントロール1100の2つの回路のうちの少なくとも1つでは、圧力センサ1190を用いて液圧連結部での圧力を特定することができる。
パワーブレーキ1000は、パワーブレーキの連結弁PSV1 1021またはPSV2 1022により、ドライブダイナミックコントロールの連結弁SCC1111または1112と液圧連結され、したがってパワーブレーキ1000とドライブダイナミックコントロール1100との間の液圧連結部を形成している。
【0042】
図2のシステムの弁は、ドライブダイナミックコントロール1100により第1の動圧を増圧するために設置されている。その際、ドライブダイナミックコントロール1100は、それぞれのポンプ1131または1132により第1の動圧をドライブダイナミックコントロール1100のために供給するために設置されている。
【0043】
第1の動圧を増圧するための第1の信号が、たとえばエラー検出のための本方法のスタート時に、たとえばパワーブレーキ1000の制御によってドライブダイナミックコントロール1100に提供されると、ドライブダイナミックコントロール1100は当該ドライブダイナミックコントロール1100内に第1の動圧を発生させることを開始する。
このために必要な液圧体積は、パワーブレーキ1000によって液圧連結部でドライブダイナミックコントロール1100に提供される。
【0044】
液圧体積を液圧連結部に提供するため、第2の液圧をパワーブレーキ1000によってプランジャー1060により発生させ、プランジャー圧力センサ1065によりコントロールし、パワーブレーキ1000によってドライブダイナミックコントロール1100の液圧連結部に提供することで、ドライブダイナミックコントロール1100が提供された液圧体積により第1の液圧を増圧できるようにする。
【0045】
このため、ドライブダイナミックコントロールのそれぞれの連結弁SCC1111または1112を閉じ、高圧弁HSR1121または1122を開くことで、ドライブダイナミックコントロールのそれぞれのポンプ1131または1132を液圧連結部と液圧連結させる。その際、プランジャー1060によって発生させる第2の液圧は、必要な液圧体積がリザーバー1030から取り出されずに、ドライブダイナミックコントロール1100による第1の動圧の増圧用にプランジャー1060によって提供されるために用いられる。というのは、第2の動圧は、それぞれの逆止弁BSV1 1041またはBSV2 1042が開くのを阻止するからである。
このようにして発生させたドライブダイナミックコントロール1100の第1の液圧を、開いているそれぞれの弁ICF1141,1171または1142,1172を介してブレーキシリンダ1101,1102または1103,1104に提供することで、ブレーキ作用を得る。
【0046】
図3は、第3の液圧を特定するためのパワーブレーキ1000とドライブダイナミックコントロール1100とから成るシステムの弁位置の概要図である。このため、ドライブダイナミックコントロールの高圧弁HSR1121または1122を閉じ、ドライブダイナミックコントロールのそれぞれの連結弁SCC1111または1112を開き、その結果パワーブレーキの開いている連結弁PSV1 1021またはPSV2 1022を用いて、プランジャー圧力センサ1065で第3の液圧を特定することができる。その際、プランジャー1060の容積が、当該プランジャーのピストンの位置を固定することによって一定に保持されることで、第3の液圧を増圧することができる。
この第3の液圧が予め決められている値よりも大きければ、ドライブダイナミックコントロール1100は健全であり、緊急機能を提供することができるという前提から出発できる。
【0047】
図4は、ドライブダイナミックコントロール1100の2つの回路のうちの1つの回路だけの機能性を検出するためのパワーブレーキ1000とドライブダイナミックコントロール1100とから成るシステムの弁位置を説明する図であり、このため、パワーブレーキの連結弁PSV2 1022は第3の液圧の増圧後閉じたままであり、パワーブレーキの開いている連結弁PSV1 1021を備える対応する他の回路のみが、プランジャー圧力センサ1065と液圧結合されているこの回路内でエラーを検出するために、検出され得る。
【0048】
図5は、
図4の説明による本方法で検出されなかった第2の回路の機能性を検出するためのパワーブレーキ1000とドライブダイナミックコントロール1100とから成るシステムの弁位置を説明する図である。このため、
図4を用いて説明したように本方法に従ってパワーブレーキの連結弁PSV2 1022を開く。しかも、プランジャー圧力センサ1065を用いて特定した第3の液圧が予め決められている値よりも大きな圧力であると特定すれば、ドライブダイナミックコントロール1100の第2の回路も動作可能であるという前提から出発することができる。というのは、第2の回路内に欠陥があれば、第1の回路によって増圧された第3の圧力は低下すると考えられるからである。
【0049】
図6は、第2の回路の機能性を検出するためのパワーブレーキ1000とドライブダイナミックコントロール1100とから成るシステムの択一的な弁位置を説明する図であり、第2の回路において、
図4に関連して説明したような第1の回路での圧力の増圧およびエラー検出の後に、第2の回路内の第3の液圧を連結圧力センサ1165を用いて特定し、この連結圧力センサがドライブダイナミックコントロール1100の第2の回路の液圧連結部での圧力を特定できるように液圧的に配置されている。連結圧力センサ1165で特定した値が予め決めた値よりも大きければ、ここでもドライブダイナミックコントロール1100の第2の回路は動作可能であるという前提から出発することができ、或いは、連結圧力センサ1165で特定した値が予め決めた値よりも小さければ、エラーが検出される。
【0050】
換言すれば、ドライブダイナミックコントロールの複数の連結弁SCC1111または1112を別々に開弁することにより、或いは、パワーブレーキの1つの連結弁PSV1 1021またはPSV2 1022を閉じることにより、エラー検出を回路ごとにも行うことができる。このため、まず1つの回路をプランジャー圧力センサ1065と結合させ、第2の回路内で、前記圧力センサに対する結合が開かないように連結弁を切換える。この時点で、第1の回路内の圧力を評価することができる。第2の回路内の評価に対しては2つの異なる可能性がある。次のステップで、第2の回路もプランジャー圧力センサ1065と結合させ、したがってドライブダイナミックコントロール1100によって第2の回路内に生成させた第3の液圧を評価するか、或いは、第2の回路内の第3の液圧を、プランジャー圧力センサ1065に対する結合を伴って、または、結合なしに連結圧力センサ1190によって評価するかのいずれかである。
そのあと、パワーブレーキ1000が再びパッシブな状態または静止状態に制御されることでテストは終了する。
ブレーキシリンダ1101,1102または1103および1104内の圧力は、排出弁1151,1161もしくは1152,1162を用いてブレーキシリンダからドライブダイナミックコントロール1100によって、特にアキュムレータ1183および1184を介して且つ逆止弁1181,1182を介して再び受容することができ、ならびに/または、高圧ポンプ1131もしくは1132を介して再びドライブダイナミックコントロール1100の高圧回路内へ吸い上げることができる。
【符号の説明】
【0051】
1000 パワーブレーキ
1060 パワーブレーキのプランジャー
1065 プランジャー圧力センサ
1100 ドライブダイナミックコントロール
1111 ドライブダイナミックコントロールの連結弁
S20 第1の制御信号の発生
S30 第1の液圧の発生
S40 システム内の液圧体積を一定に維持
S50 タイムインターバルの満了
S60 第1の液圧の発生の終了
S80 第3の液圧を特定
【国際調査報告】