(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】IL-23Rに特異的な抗原結合体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240709BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240709BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240709BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240709BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240709BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20240709BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240709BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240709BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240709BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240709BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240709BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240709BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240709BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240709BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240709BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240709BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240709BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240709BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12N5/0783
A61K35/17
A61P29/00
A61P37/06
A61P1/04
A61P37/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P25/00
A61P3/10
A61P19/08
A61P17/06
A61P21/04
A61P17/00
A61P27/02
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579361
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 US2022035028
(87)【国際公開番号】W WO2022272153
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523443180
【氏名又は名称】サンガモ セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アベル,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】デ ラ ロサ,マウルス
(72)【発明者】
【氏名】フェナルド,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ガートナー-ダーデン,ジュリー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AA94X
4B065AA98X
4B065CA44
4C087BB37
4C087BB65
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4C087ZA66
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4C087ZA94
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4C087ZB05
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4C087ZB15
4C087ZC35
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
IL23R過剰発現は、自己免疫疾患及び慢性炎症の発症及び維持に関与する病原性炎症細胞の共通の特徴として説明されている。本開示は、IL-23Rを指向する新規の抗原結合体、該抗原結合体を含む組成物、及び該抗原結合体の使用に関する。本開示はさらに、該抗原結合体を含む融合タンパク質、例えばキメラ抗原受容体に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された抗IL-23受容体(IL-23R)抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
前記抗体またはフラグメントの重鎖可変領域(VH)が、それぞれ配列番号1~3を含む相補性決定領域(HCDR)1~3、または配列番号1~3のうちの1つと少なくとも約90%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意のHCDRを含み、かつ
前記抗体またはフラグメントの軽鎖可変領域(VL)が、それぞれ配列番号4~6を含む相補性決定領域(LCDR)1~3、または配列番号4~6のうちの1つと少なくとも約90%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意のLCDRを含む、
前記抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
単離された抗IL-23受容体(IL-23R)抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
前記抗体またはフラグメントの重鎖可変領域(VH)が、それぞれ配列番号1~3を含む相補性決定領域(HCDR)1~3を含み、かつ
前記抗体またはフラグメントの軽鎖可変領域(VH)が、それぞれ配列番号4~6を含む相補性決定領域(LCDR)1~3を含む、
前記抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
マウス及びヒトIL-23Rを結合することができる、請求項1に記載の単離された抗IL-23R抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
40nM未満のEC50でヒトIL-23Rアルファサブユニットに結合することができる、請求項1または3に記載の単離された抗IL-23R抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
60nM未満のEC50でマウスIL-23Rアルファサブユニットに結合することができる、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離された抗IL-23R抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記VHが、配列番号7または配列番号7に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ
前記VLが、配列番号8または配列番号8に対して少なくとも約90%同一である任意のアミノ酸配列を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の単離された抗IL-23R抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記VHが配列番号7を含み、かつ
前記VLが配列番号8を含む、
請求項6に記載の単離された抗IL-23R抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
配列番号15または配列番号15に対して少なくとも約95%同一である任意のアミノ酸配列を含むscFvである、請求項1~7のいずれか1項に記載の単離された抗IL-23R抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
配列番号15を含むscFvである、請求項8に記載の単離された抗IL-23R抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
(i)請求項1~9のいずれか1項に記載の抗IL-23R抗体またはその抗原結合フラグメントを含む細胞外ドメインと、
(ii)膜貫通ドメインと、
(iii)細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインと、
を含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項11】
リーダー配列をさらに含む、請求項10に記載のCAR。
【請求項12】
前記細胞外ドメインが、配列番号15を含むscFvを含む、請求項10または11に記載のCAR。
【請求項13】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、
ヒトCD28共刺激シグナル伝達ドメインであって、任意選択で、配列番号32もしくは配列番号32に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む前記ヒトCD28共刺激シグナル伝達ドメイン、及び/または
ヒトCD3ゼータドメインであって、任意選択で、配列番号30もしくは配列番号30に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む前記ヒトCD3ゼータドメイン
を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項14】
前記膜貫通ドメインがヒトCD8に由来し、任意選択で、配列番号22または配列番号22に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項10~13のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項15】
前記リーダー配列が、CD8リーダー配列であって、任意選択で配列番号40または配列番号40に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)同一であるアミノ酸配列を含む前記CD8リーダー配列に由来するアミノ酸配列を含む、請求項10~14のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項16】
前記リーダー配列が、CD25リーダー配列であって、任意選択で配列番号58または配列番号58に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)同一であるアミノ酸配列を含む前記CD25リーダー配列に由来するアミノ酸配列を含む、請求項10~14のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項17】
(i)抗IL-23R scFvであって、任意選択で配列番号15を含む、前記抗IL-23R scFvと、
(ii)ヒトCD8由来のヒンジドメインであって、任意選択で配列番号20を含む、前記ヒンジドメインと、
(iii)ヒトCD8由来の膜貫通ドメインであって、任意選択で配列番号22を含む、前記膜貫通ドメインと、
(iv)ヒトCD28共刺激シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインであって、任意選択で配列番号32を含む、前記細胞内シグナル伝達ドメイン、及びヒトCD3ゼータドメインであって、任意選択で配列番号30を含む、前記ヒトCD3ゼータドメインと、
(v)任意選択でタグ及び/またはリーダー配列と、
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項18】
(i)抗IL-23R scFvであって、任意選択で配列番号15を含む、前記抗IL-23R scFvと、
(ii)ヒトCD8由来のヒンジドメインであって、任意選択で配列番号20を含む、前記ヒンジドメインと、
(iii)ヒトCD8由来の膜貫通ドメインであって、任意選択で配列番号22を含む、前記膜貫通ドメインと、
(iv)ヒトCD28共刺激シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインであって、任意選択で配列番号32を含む、前記細胞内シグナル伝達ドメイン、及びヒトCD3ゼータドメインであって、任意選択で配列番号30を含む、前記ヒトCD3ゼータドメインと、
(v)CD8に由来するリーダー配列であって、任意選択で配列番号40を含む、前記リーダー配列と、
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項19】
(i)抗IL-23R scFvであって、任意選択で配列番号15を含む、前記抗IL-23R scFvと、
(ii)ヒトCD8由来のヒンジドメインであって、任意選択で配列番号20を含む、前記ヒンジドメインと、
(iii)ヒトCD8由来の膜貫通ドメインであって、任意選択で配列番号22を含む、前記膜貫通ドメインと、
(iv)ヒトCD28共刺激シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインであって、任意選択で配列番号32を含む、前記細胞内シグナル伝達ドメイン、及びヒトCD3ゼータドメインであって、任意選択で配列番号30を含む、前記ヒトCD3ゼータドメインと、
(v)CD25に由来するリーダー配列であって、任意選択で配列番号58を含む、前記リーダー配列と、
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項20】
請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは請求項10~19のいずれか1項に記載のCARをコードする核酸分子。
【請求項21】
請求項20に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項22】
請求項10~19のいずれか1項に記載のCARを発現する、または請求項20に記載の核酸分子もしくは請求項21に記載のベクターを含む、免疫細胞。
【請求項23】
請求項20に記載の核酸分子または請求項21に記載のベクターを含む細胞。
【請求項24】
免疫細胞である、請求項23に記載の細胞。
【請求項25】
請求項22に記載の免疫細胞、または請求項23もしくは請求項24に記載の細胞を含む、組成物。
【請求項26】
医薬として使用するための、請求項22に記載の免疫細胞、請求項22に記載の免疫細胞集団、請求項23もしくは請求項24に記載の細胞、または請求項23もしくは24に記載の細胞集団。
【請求項27】
治療を必要とする対象におけるIL-23R発現細胞によって媒介される疾患または障害の治療に使用するための、請求項22に記載の免疫細胞、請求項22に記載の免疫細胞集団、請求項23もしくは請求項24に記載の細胞、または請求項23もしくは24に記載の細胞集団であって、任意選択で前記疾患または障害が、自己免疫性または炎症性疾患または障害である、前記免疫細胞、前記免疫細胞集団、前記細胞、または前記細胞集団。
【請求項28】
前記疾患または障害が、炎症性腸疾患(任意選択でクローン病または潰瘍性大腸炎)、ループス(任意選択で全身性エリテマトーデス)、関節炎(任意選択で関節リウマチまたは若年性特発性関節炎)、シェーグレン症候群、全身性硬化症、多発性硬化症、強直性脊椎炎、1型糖尿病、自己免疫性甲状腺障害、重症筋無力症、乾癬、乾癬性関節炎、皮膚疾患、及びブドウ膜炎からなる群から選択され、さらに任意選択で前記疾患がクローン病である、請求項27に記載の使用のための免疫細胞または細胞。
【請求項29】
治療を必要とする対象における疾患または障害を治療するための方法であって、患者に、請求項22に記載の免疫細胞、請求項22に記載の免疫細胞集団、請求項23もしくは請求項24に記載の細胞、または請求項23もしくは24に記載の細胞集団を投与することを含む、前記方法。
【請求項30】
前記疾患または障害が、治療を必要とする前記対象におけるIL-23R発現細胞によって媒介され、任意選択で、前記疾患または障害が自己免疫性または炎症性疾患または障害である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記疾患または障害が、炎症性腸疾患(任意選択でクローン病または潰瘍性大腸炎)、ループス(任意選択で全身性エリテマトーデス)、関節炎(任意選択で関節リウマチまたは若年性特発性関節炎)、シェーグレン症候群、全身性硬化症、多発性硬化症、強直性脊椎炎、1型糖尿病、自己免疫性甲状腺障害、重症筋無力症、乾癬、乾癬性関節炎、皮膚疾患、及びブドウ膜炎からなる群から選択され、さらに任意選択で前記疾患がクローン病である、請求項29または請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月25日に両方とも出願された米国特許出願第63/214,950号及び欧州特許出願第21181801.8号の優先権を主張するものである。この両方の優先権主張出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2022年6月24日に作成された当該ASCIIコピーは、025297_WO038_SL.txtという名称であり、48,578バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
IL-12サイトカインファミリーのメンバーであるインターロイキン-23(IL-23)は、p19とp40の2つのサブユニットで構成されている。IL-23受容体(IL-23R)は、IL-23Rαサブユニットと、IL-12受容体の共通のサブユニットでありチロシンキナーゼ2(Tyk2)と相互作用するIL-12Rβ1サブユニットとの複合体からなる。
【0004】
IL-23Rは、主に免疫細胞、特にT細胞(例えば、Th17及びγδT細胞)、マクロファージ、樹状細胞、及びNK細胞上で発現する(Duvallet et al.,Ann Med.(2011)43(7):503-11)。IL-23/IL-23Rシグナル伝達経路は、IL-17を分泌する免疫細胞、特にCD4+Th17細胞及びγδT細胞の増殖及び分化を促進するのに重要であると説明されている。IL23R過剰発現は、自己免疫疾患及び慢性炎症の発症及び維持に関与する病原性炎症細胞の共通の特徴として説明されている。IL-23Rの細胞表面発現は、IL-23曝露によって誘導され、炎症レベルに応じて異なる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書の発明者らは、炎症部位で過剰発現したIL-23Rの結合に基づいて、炎症部位で免疫細胞を活性化するための新規なツールを開発した。より具体的には、本発明者らは、IL-23Rに結合可能な新規な抗体を本明細書に開示する。特に、本発明者らは、IL-23Rに高親和性で結合可能な新規な抗体を本明細書に開示する。有利なことに、本発明のIL-23R結合抗体は、ヒト及びマウス両方のIL-23Rに結合可能であることが見出されている。免疫細胞の細胞表面上で発現するキメラ抗原受容体(CAR)に当該抗体の抗原結合部分を含めることにより、IL-23Rへ結合すると炎症部位においてこれらの細胞を活性化することが可能となる。本発明者らは、当該抗原結合部分の安定したシグナル伝達及び低バックグラウンドの活性化を開示する。理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、本発明のCARの利点が、該CARを発現する免疫細胞(例えばT細胞)においてトニックシグナル伝達を低減し、それによって細胞の治療能力を向上させる該CARの能力に部分的に存在し得ると仮定する。したがって、これらの操作された免疫細胞は、自己免疫性及び/または炎症性疾患または障害を治療するための価値のある治療ツールとなり得る。
【0006】
一態様では、本開示は、単離された抗IL-23受容体(IL-23R)抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体またはフラグメントの重鎖可変領域(VH)が、それぞれ配列番号1~3を含む相補性決定領域(HCDR)1~3、または配列番号1~3のうちの1つと少なくとも約90%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意のCDRを含み、かつ該抗体またはフラグメントの軽鎖可変領域(VL)が、それぞれ配列番号4~6を含む相補性決定領域(LCDR)1~3、または配列番号4~6のうちの1つと少なくとも約90%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意のCDRを含む、該抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。一態様では、本開示は、単離された抗IL-23受容体(IL-23R)抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体またはフラグメントの重鎖可変領域(VH)が、それぞれ配列番号1~3と少なくとも約90%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する相補性決定領域(HCDR)1~3を含み、かつ該抗体またはフラグメントの軽鎖可変領域(VL)が、それぞれ配列番号4~6と少なくとも約90%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する相補性決定領域(LCDR)1~3を含む、該抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。一態様では、本開示は、単離された抗IL-23受容体(IL-23R)抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体またはフラグメントの重鎖可変領域(VH)が、それぞれ配列番号1~3を含む相補性決定領域(HCDR)1~3を含み、かつ該抗体またはフラグメントの軽鎖可変領域(VL)が、それぞれ配列番号4~6を含む相補性決定領域(LCDR)1~3を含む、該抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは、マウス及びヒトIL-23Rを結合することができる。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは、40nM未満のEC50でヒトIL-23Rアルファサブユニットに結合することができる。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは、60nM未満のEC50でマウスIL-23Rアルファサブユニットに結合することができる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号7または配列番号7に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVLは配列番号8または配列番号8に対して少なくとも約90%同一である任意のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは配列番号7を含み、VLは配列番号8を含む。特定の実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号15または配列番号15に対して少なくとも約95%同一である任意のアミノ酸配列を含むscFvである。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号15を含むscFvである。
【0007】
本開示はまた、本明細書に記載の抗IL-23R抗体またはその抗原結合フラグメントを含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインと、を含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。いくつかの実施形態では、CARは、さらにリーダー配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、配列番号15を含むscFvを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD28共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、配列番号32または配列番号32に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む)及び/またはヒトCD3ゼータドメイン(例えば、配列番号30または配列番号30に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む)を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、ヒトCD8(例えば、配列番号22または配列番号22に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む)に由来する。特定の実施形態では、CARは、該細胞外ドメイン、該膜貫通ドメイン、及び/または該細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、リーダー配列は、CD8リーダー配列であって、任意選択で配列番号40または配列番号40に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)同一であるアミノ酸配列を含むCD8リーダー配列に由来するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リーダー配列は、CD25リーダー配列であって、任意選択で配列番号58または配列番号58に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)同一であるアミノ酸配列を含むCD25リーダー配列に由来するアミノ酸配列を含む。具体的な実施形態では、CARは、抗IL-23R scFv(例えば、配列番号15を含む)と、ヒトCD8由来のヒンジドメイン(例えば、配列番号20を含む)と、ヒトCD8由来の膜貫通ドメイン(例えば、配列番号22を含む)と、ヒトCD28共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、配列番号32を含む)を含む細胞内シグナル伝達ドメインと、ヒトCD3ゼータドメイン(例えば、配列番号30を含む)と、を含む。CARはまた、タグ及び/またはリーダー配列を含んでもよい。具体的な実施形態では、CARは、抗IL-23R scFv(例えば、配列番号15を含む)と、ヒトCD8由来のヒンジドメイン(例えば、配列番号20を含む)と、ヒトCD8由来の膜貫通ドメイン(例えば、配列番号22を含む)と、ヒトCD28共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、配列番号32を含む)を含む細胞内シグナル伝達ドメインと、ヒトCD3ゼータドメイン(例えば、配列番号30を含む)と、CD8に由来するリーダー配列(例えば、配列番号40を含む)と、を含む。具体的な実施形態では、CARは、抗IL-23R scFv(例えば、配列番号15を含む)と、ヒトCD8由来のヒンジドメイン(例えば、配列番号20を含む)と、ヒトCD8由来の膜貫通ドメイン(例えば、配列番号22を含む)と、ヒトCD28共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、配列番号32を含む)を含む細胞内シグナル伝達ドメインと、ヒトCD3ゼータドメイン(例えば、配列番号30を含む)と、CD25に由来するリーダー配列(例えば、配列番号58を含む)と、を含む。
【0008】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは本明細書に記載のCARをコードする核酸分子を提供する。本開示はまた、核酸分子を含むベクター(例えば、発現ベクター)を提供する。さらに、本開示は、本明細書に記載の核酸分子またはベクターを含む細胞を提供する。さらに、本開示は、本明細書に記載の核酸分子またはベクターを含む免疫細胞を提供する。
【0009】
本開示はまた、本明細書に記載の細胞を含む組成物を提供する。本開示はまた、本明細書に記載の免疫細胞を含む組成物を提供する。また、医薬として使用するための、本明細書に記載の細胞または細胞集団も提供される。また、医薬として使用するための、本明細書に記載の免疫細胞または免疫細胞集団も提供される。いくつかの実施形態では、細胞または免疫細胞集団は、治療を必要とする対象におけるIL-23R発現細胞によって媒介される疾患または障害の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、免疫細胞または免疫細胞集団は、治療を必要とする対象におけるIL-23R発現細胞によって媒介される疾患または障害の治療に使用するためのものである。本開示はまた、治療を必要とする対象における障害または疾患を治療するための方法であって、患者に本明細書に記載の細胞、または本明細書に記載の細胞集団を投与することを含む、方法を提供する。本開示はまた、治療を必要とする対象における障害または疾患を治療するための方法であって、患者に本明細書に記載の免疫細胞、または本明細書に記載の免疫細胞集団を投与することを含む、方法を提供する。疾患または障害は、治療を必要とする対象におけるIL-23R発現細胞によって媒介される疾患または障害であり得る。疾患または障害は、自己免疫性または炎症性疾患または障害であり得る。特定の実施形態では、疾患または障害は、自己免疫性または炎症性疾患または障害である。疾患または障害は、例えば、炎症性腸疾患(例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)、ループス(例えば、全身性エリテマトーデス)、関節炎(例えば、関節リウマチまたは若年性特発性関節炎)、シェーグレン症候群、全身性硬化症、多発性硬化症、強直性脊椎炎、1型糖尿病、自己免疫性甲状腺障害、重症筋無力症、乾癬、乾癬性関節炎、皮膚疾患、及びブドウ膜炎から選択され得る。具体的な実施形態では、疾患はクローン病である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の抗IL-23Rキメラ抗原受容体(CAR)構築物(CAR#2)の概略図を表す。抗IL23R CARは、ヒト/マウス(hm)IL-23R(αIL-23R;IL23RLamS4-G3)に対して指向するscFvと、ヒンジドメイン(CD8リンカー)と、ヒトCD8由来の膜貫通ドメイン(CD8 TM)と、ヒトCD28由来の細胞内シグナル伝達ドメイン(CD28)と、CD3ゼータ(CD3ζまたはCD3Z)と、を含む。CAR構築物は、さらにGFPコード配列及びHAタグコード配列を含む。この構築物は、scFv 14-11-D07に由来し、同様にIL-23Rを標的とするCAR#1構築物と比較される。
【
図2A】非形質導入細胞と、最初の増殖サイクルの終了時にCAR#2またはCAR#1を形質導入した細胞の制御性T細胞(Treg)表現型をモニタリングしたグラフである。Treg細胞は、ヒトCD4、CD25、CD127、及びCTLA-4に対して指向する抗体で標識した。FOXP3及びHelios転写因子の検出のために、核内標識を行った(A)。Helios及びFOXP3も、11日間のCAR結合後に評価した(B)。エラーバーは合計5つのTregドナーを含む3つの独立した実験からの平均±SEMを表す。
【
図2B】非形質導入細胞と、最初の増殖サイクルの終了時にCAR#2またはCAR#1を形質導入した細胞の制御性T細胞(Treg)表現型をモニタリングしたグラフである。Treg細胞は、ヒトCD4、CD25、CD127、及びCTLA-4に対して指向する抗体で標識した。FOXP3及びHelios転写因子の検出のために、核内標識を行った(A)。Helios及びFOXP3も、11日間のCAR結合後に評価した(B)。エラーバーは合計5つのTregドナーを含む3つの独立した実験からの平均±SEMを表す。
【
図3】合計5つのTregドナーを含む3つの独立した実験からの、活性化の非存在下(活性化なし)またはCARを通じた24時間の刺激後(IL-23R被覆ビーズの添加による;IL-23R)もしくはTCRを通じた24時間の刺激後(抗CD3及び抗CD28で被覆したビーズによる;3/28)のいずれかのTreg活性化状態(GFP発現でゲーティングしたCD69発現によって測定)を示すグラフである。
【
図4】CAR#2を発現するTreg細胞が効率的なCAR媒介抑制活性を呈することを示すグラフの組み合わせである。活性化の非存在下(点線の曲線)またはIL-23Rにより誘導されるCAR活性化後(黒線)またはTCRにより誘導される活性化後(灰色の曲線)のIL-23R-CARによって媒介される接触依存的抑制を、フローサイトメトリーを用いて従来型T細胞(Tconv)の増殖を測定することにより評価した。エラーバーは合計4つのTregドナーを含む3つの独立した実験からの平均±SEMを表す。
【
図5】本開示の抗IL-23Rキメラ抗原受容体(CAR)構築物のマウスバージョン(mCAR#2b)の概略図を表す。このマウスバージョンは、ヒト/マウスIL-23Rに対して指向するscFv(αIL-23R;ヒト/マウス交差反応性であるIL23RLamS4-G3)、マウスヒンジ由来のCD8膜貫通ドメイン(mCD8 TM)、マウスCD28由来の細胞内ドメイン(mCD28)、及びマウスCD3ゼータ(mCD3Z)を含む。この構築物を、mCAR#2bに対応するがマウスCD28膜貫通ドメイン(mCD28 TM)を有するマウスCAR#2a(mCAR#2a)と、IL-23Rを標的とする公開されたscFv(14-11-D07)から誘導されたマウスCAR#1(mCAR#1)と比較する。
【
図6A】デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性炎症性腸疾患(IBD)の短いモデルの設計を示す概略図を表す。
【
図6B】グラフのセットは、腸間膜リンパ節(左)、結腸(中央)、及び脾臓(右)におけるCTLA-4陽性Treg細胞の測定値を示す。
【
図7】Aは、DSS誘発性IBDの有効性モデルの設計を示す概略図を表す。Bは、対照治療(生理食塩水)、非形質導入Treg細胞(「Poly Treg」)、またはCAR-Treg細胞(「CAR#2b Treg」)を投与されたマウスの3つの群の疾患活動性指標の測定値を示すグラフを表す。
【
図8】CAR#2、CAR#3、CAR#4、CAR#5、CAR#6、及びCAR#7についての一貫した形質導入効率(約40~50%)を示すグラフである。結果は9つの異なるTregドナーの平均±SEMである。
【
図9】CAR#2、CAR#3、CAR#4、CAR#5、CAR#6、及びCAR#7についてのCAR-Tregの一貫した生存率及び増殖倍率(fold expansion)を示すグラフを表す。結果は9つの異なるTregドナーの平均±SEMである。
【
図10】CAR#2、CAR#3、CAR#4、CAR#5、CAR#6、及びCAR#7についてのCAR-Tregの活性化を示すグラフを表す。CAR#3は、活性化のバックグラウンドが最も低く、CAR活性化後のシグナル対ノイズが最も高いことを示した。CAR Tregの活性化を、抗CD3/抗CD28被覆ビーズ(灰色)を用いてTCRを通じて(灰色)、あるいはIL-23R被覆ビーズまたは細胞表面で低レベルのIL-23Rを発現するJurkat(Jurkat 572)もしくは細胞表面で高レベルのIL-23Rを発現するJurkat(Jurkat 573)のいずれかを用いてCARを通じて活性化を誘導した24時間後に、CAR Tregの細胞表面におけるCD69発現を測定することにより、フローサイトメトリーで評価した。結果は6つのTregドナーの平均±SEMである。二元配置分散分析及びSidakの多重比較試験。*=0.05、**=0.01、***=0.001、及び****=0.0001。
【
図11A】CAR#2、CAR#3、CAR#4、CAR#5、CAR#6、及びCAR#7のCAR媒介抑制活性を示すグラフを表す。CAR Tregによって媒介される抑制を、3日間の共培養後のTconv増殖の阻害を測定することによってフローサイトメトリーで評価した。CAR Tregは、共培養の24時間前に、抗CD3/抗CD28被覆ビーズ(黒丸)を用いてTCRを通じて、あるいはIL-23R被覆ビーズ(黒四角)または細胞表面で高レベルのIL-23Rを発現するJurkat細胞株(Jurkat 573、灰色四角)もしくは低レベルのIL-23Rを発現するJurkat細胞株(Jurkat 572、白四角)のいずれかを用いてCARを通じて活性化される。結果は6つのTregドナーを含む4つの独立した実験からの平均±SEMである。二元配置分散分析及びSidakの多重比較試験。*=0.05、**=0.01。
【
図11B】CAR#2、CAR#3、CAR#4、CAR#5、CAR#6、及びCAR#7のCAR媒介抑制活性を示すグラフを表す。CAR Tregによって媒介される抑制を、3日間の共培養後のTconv増殖の阻害を測定することによってフローサイトメトリーで評価した。CAR Tregは、共培養の24時間前に、抗CD3/抗CD28被覆ビーズ(黒丸)を用いてTCRを通じて、あるいはIL-23R被覆ビーズ(黒四角)または細胞表面で高レベルのIL-23Rを発現するJurkat細胞株(Jurkat 573、灰色四角)もしくは低レベルのIL-23Rを発現するJurkat細胞株(Jurkat 572、白四角)のいずれかを用いてCARを通じて活性化される。結果は6つのTregドナーを含む4つの独立した実験からの平均±SEMである。二元配置分散分析及びSidakの多重比較試験。*=0.05、**=0.01。
【
図12】CAR#2及びCAR#3のCAR媒介抑制活性についての曲線下面積(AUC)を示す。AUC計算は、Tregが、細胞表面で高レベルのIL-23Rを発現するJurkat(Jurkat 573)と結合している場合にはCAR#3のみが同じCAR媒介抑制を示した一方で、CAR Tregが低レベルを発現するJurkat(Jurkat 572)と結合している場合にはCAR媒介抑制が低いことを明らかにしている。この例示的な結果は、CAR#3によるオフターゲット効果の低減を支持するものである。
【
図13】Treg表現型の表現型安定性を示すグラフを表す。主なTregマーカー(CD4、CD25、CD127、FoxP3、Helios及びCTLA-4)をフローサイトメトリーにより測定した。結果は、9つの異なるTregドナーの平均±SEMである。
【
図14】マウス及びヒトIL23Rに結合するCAR#1及びCAR#2の親和性(EC50)の結果を示す。
【
図15】異なる発現カセット(PGKまたはEF1aプロモーター、+/-WPRE Mut6)で作製された4つの異なる構築物(CAR#8、CAR#9、CAR#10及びCAR#11)を示す。
【
図16】本開示の様々なCAR構築物を用いたscFvシグナル伝達の安定性を示すグラフを表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
本開示において、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0012】
量、時を表す期間などの測定可能な値に言及する場合の「約」は、特定の値から±20%、または場合によっては±10%、または場合によっては±5%、または場合によっては±1%、または場合によっては±0.1%の変動を包含することを意味し、そのような変動は開示された方法を実行するのに適切である。
【0013】
「親和性」は、抗体-抗原複合体の強度を定義するために使用される。親和性は、エピトープと抗体上の抗原結合部位との間の相互作用の強度を示す。それは、親和定数Kaまたは解離定数KDによって表され得る。KDが1μΜ以下、好ましくは100nM以下または10nM以下の場合、抗体は抗原に特異的に結合すると言われる。KDは、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)(BIAcore(登録商標))またはバイオレイヤー干渉法によって、例えばIBIS TechnologiesのIBIS MX96 SPRシステム、Bio-RadのProteOn(登録商標)XPR36 SPRシステム、またはForteBioのOctet(登録商標)システムを使用して測定することができる。
【0014】
本明細書で使用される「抗体」または「免疫グロブリン」は、ジスルフィド結合により相互に接続された2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む四量体を指す。各軽鎖は、軽鎖可変ドメインまたは領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)から構成され、カッパ(κ)軽鎖またはラムダ(λ)軽鎖であり得る。各重鎖は、重鎖可変ドメインまたは領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)から構成される。CHのアミノ酸配列に基づいて、抗体は、異なるアイソタイプ:IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgMに割り当てられ得る。IgG及びIgAアイソタイプは、さらにサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に分けられる。VH及びVLの対合は、単一の抗原結合部位を形成する。一実施形態では、本開示の抗IL-23R抗体は、IgG抗体である。
【0015】
「抗原結合フラグメント」は、本明細書で使用される場合、全抗体よりも少ないアミノ酸残基を含むが、依然として全抗体の抗原(例えば、IL-23R)に結合することができる抗体の一部もしくは領域、または誘導体を指す。抗原結合フラグメントは、一本鎖抗体、Fv(例えば、scFv)、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab)’2、Fd、脱フコシル化抗体、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディを包含するが、これらに限定されない。
【0016】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」は、免疫細胞において発現される場合に、その細胞に標的リガンドに対する特異性及び細胞内シグナル生成をもたらす融合タンパク質などのタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、CARは、二量化分子が存在すると、ポリペプチドを互いに連結させることができる、例えば、リガンド結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに連結させることができる二量化スイッチを含むポリペプチドのセットを含む。一実施形態では、CARは、N末端に任意選択のリーダー配列を含み、該リーダー配列は、細胞内プロセシング及び細胞膜へのキメラ抗原受容体の局在化の間に切断される。
【0017】
「相補性決定領域」または「CDR」は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)内で見られる非連続的な抗原結合部位を意味する。所与のCDRの正確なアミノ酸配列の境界は、Kabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”5th Ed.(1991)Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(「Kabat」番号付けスキーム)、Al-Lazikani et al.,JMB(1997)273:927-948(「Chothia」番号付けスキーム)に記載のもの、またはそれらの組み合わせを含む、いくつかの周知のスキームのいずれかを使用して決定することができる。より最近では、普遍的な番号付けシステムが開発されており、広く採用されている、ImMunoGeneTics(IMGT)Information System(登録商標)(Lefranc et al.,Nucleic Acids Res.(1999)27:209-212)。一実施形態では、本明細書のCDR境界は、Kabat et al.(1991)に従って定義されている。
【0018】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それにより、増殖などであるがこれに限定されないT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子は、効率的な免疫応答に寄与する抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内部分であり得る。共刺激分子は、以下のタンパク質ファミリーに代表され得る:TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、及び活性化NK細胞受容体。
【0019】
「エピトープ」とは、抗体またはその抗原結合フラグメントが結合するタンパク質(複数可)上に位置するアミノ酸の特定の配列を指す。エピトープは、多くの場合、アミノ酸または糖側鎖などの化学的に活性な表面分子群からなり、かつ特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有する。エピトープは、直鎖状(または連続性)であっても、構造的、すなわち、抗原の様々な領域に2つ以上のアミノ酸配列(必ずしも連続していなくてもよい)を含むものであってもよい。
【0020】
「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用エレメントを含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞によってまたはin vitro発現系において供給され得る。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えば、ネイキッド、またはリポソームに含まれる)、及びウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)を含む当該技術分野で既知の全てのものが含まれる。
【0021】
「Fcドメイン」、「Fc部分」、及び「Fc領域」は、抗体重鎖のC末端フラグメント、例えば、ヒトガンマ重鎖の約230アミノ酸(aa)~約450aa、または他のタイプの抗体重鎖(例えば、ヒト抗体のα、δ、ε及びμ)もしくは天然に存在するそのアロタイプにおけるその対応配列を指す。
【0022】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。このフラグメントは、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインが、非共有結合で緊密に会合した二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みにより、6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生じ、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗原結合特異性を抗体に与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえも、全結合部位よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識してそれに結合する能力を有する。
【0023】
「同一性」または「同一」は、2つ以上のアミノ酸配列間、または2つ以上の核酸配列間の関係を説明するために本明細書で使用される場合、比較される配列間の配列関係性の程度を指す。「同一性」は、より小さい2つ以上の配列間の同一性の一致の割合(%)を示し、特定の数学的モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によってギャップアラインメント(存在する場合)が対処されている。関連するアミノ酸配列または核酸配列の同一性は、公知の方法によって容易に算出することができる。そのような方法には、以下に記載のものが含まれるが、それらに限定されない:Lesk A.M.(1988).Computational molecular biology:Sources and methods for sequence analysis.New York,NY:Oxford University Press;Smith D.W.(1993).Biocomputing:Informatics and genome projects.San Diego,CA:Academic Press;Griffin A.M.&Griffin H.G.(1994).Computer analysis of sequence data,Part 1.Totowa,NJ:Humana Press;von Heijne G.(1987).Sequence analysis in molecular biology:treasure trove or trivial pursuit.San Diego,CA:Academic press;Gribskov M.R.&Devereux J.(1991).Sequence analysis primer.New York,NY:Stockton Press;Carrillo et al.,SIAM J Appl Math.(1988)48(5):1073-82。同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最大の一致が得られるように設計される。同一性を決定する方法は、公開されているコンピュータプログラムに記載されている。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法としては、GCGプログラムパッケージ、例えばGAP(Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,WI;Devereux et al.,Nucleic Acids Res.(1984)12(1 Pt 1):387-95)、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschul et al.,J Mol Biol.(1990)215(3):403-10)が挙げられる。BLASTXプログラムは、米国国立生物工学情報センター(NCBI)及び他のソース(BLAST Manual,Altschul et al.NCB/NLM/NIH Bethesda,Md.20894)から公開されている。周知のSmith Watermanアルゴリズムを使用して、同一性を決定することもできる。
【0024】
本明細書で使用される「細胞内シグナル伝達ドメイン」とは、分子の細胞内部分を指す。細胞内シグナル伝達ドメインは、キメラ受容体含有細胞の免疫エフェクター機能を促進するシグナルを生成する。キメラ受容体-T細胞における免疫エフェクター機能の例は、細胞溶解活性、抑制活性、調節活性、及びヘルパー活性、例えばサイトカインの分泌が挙げられ得る。
【0025】
「対象」は、免疫応答が誘発され得る生物(例えば、哺乳動物、ヒト)を含むことが意図される。一実施形態では、対象は、「患者」、すなわち、温血動物、より好ましくは、ヒトであり得、医療を受けるのを待機しているもしくは医療を受けている、または医療処置の対象であった/対象である/対象となる、または標的とされる疾患もしくは状態、例えば炎症状態もしくは自己免疫状態の発症についてモニタリングされる。一実施形態では、対象は成体である(例えば、18歳を超える対象)。別の実施形態では、対象は小児(例えば、18歳未満の対象)である。一実施形態では、対象は男性である。別の実施形態では、対象は女性である。一実施形態では、対象は、自己免疫性及び/または炎症性疾患または障害に罹患しており、好ましくはそれと診断されている。一実施形態では、対象は、自己免疫性及び/または炎症性疾患または障害を発症するリスクがある。リスク因子の例としては、自己免疫性及び/または炎症性疾患または障害の遺伝的素因または家族歴が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
「一本鎖Fv」は、「sFv」または「scFv」とも略され、軽鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体フラグメントと重鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体フラグメントとを含む融合タンパク質を指し、該軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、例えば、合成リンカー、例えば、短い可撓性ポリペプチドリンカーを介して連続的に連結され、一本鎖ポリペプチドとして発現されることができ、該scFvは、それが由来するインタクトな抗体の特異性を保持する。特に指定されない限り、本明細書で使用される場合、scFvは、例えばポリペプチドのN末端及びC末端に関して、いずれの順序でVL可変領域及びVH可変領域を有していてもよく、scFvは、VL-リンカー-VHを含んでもよいし、VH-リンカー-VLを含んでもよい。一実施形態では、本発明の抗原結合フラグメントは、一本鎖Fv(scFv)である。
【0027】
「治療有効量」とは、標的に重大な負のまたは有害な副作用を引き起こすことなく、(1)疾患、障害、もしくは状態の発症を遅延もしくは予防すること、(2)疾患、障害、もしくは状態の1つ以上の症状の進行、増悪、もしくは悪化を減速もしくは停止すること、(3)疾患、障害、もしくは状態の症状の改善をもたらすこと、(4)疾患、障害、もしくは状態の重症度もしくは発生率を低下させること、または(5)疾患、障害、もしくは状態を治癒することを目的とする本明細書に記載の抗体のレベルまたは量を指す。治療有効量は、予防的または防止的作用のために、疾患、障害、または状態の発症前に投与され得る。あるいはまたはさらに、治療有効量は、治療作用のために、疾患、障害、または状態の開始後に投与され得る。
【0028】
「治療する」または「治療」または「軽減」は、治療的治療及び予防的または防止的処置の両方を指し、その目的は、標的とする病態または障害を予防するか、または減速(軽減)させることである。治療を必要とする者としては、すでにその障害を有する者、及びその障害を有しやすい者、またはその障害が予防されるべきである者が挙げられる。一実施形態では、本開示による治療量の抗体または細胞を投与された後に、対象が、以下:病原性細胞の数または割合(%)の減少、治療される疾患または障害に関連する1つ以上の症状のある程度の緩和、罹患率及び死亡率の低下、ならびに生活の質の問題の改善、のうちの少なくとも1つを示す場合、対象は、疾患または障害に対して奏功して「治療」されている。疾患における治療の奏功及び改善を評価するための上記のパラメータは、医師によく知られているルーチン手順によって容易に測定可能である。
【0029】
「ゼータ」またはあるいは「ゼータ鎖」、「CD3-ゼータ」、または「TCR-ゼータ」は、GenBankアクセッション番号BAG36664.1として提供されるタンパク質、または非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿など由来の同等の残基として定義され、「ゼータ刺激ドメイン」またはあるいは「CD3ゼータ刺激ドメイン」または「TCR-ゼータ刺激ドメイン」は、ゼータ鎖の細胞質ドメインからのアミノ酸残基、またはその機能的誘導体として定義され、これらは、T細胞の活性化に必要な初期シグナルを機能的に伝達するのに十分である。一実施形態では、ゼータの細胞質ドメインは、GenBankアクセッション番号BAG36664.1の残基52~164、またはその機能的オルソログである、非ヒト種、例えばマウス、げっ歯類、サル、類人猿など由来の同等の残基を含む。
【0030】
I.抗体及び抗原結合フラグメント
本開示は、まず、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに関し、該抗体またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも1つのIL-23R(例えば、IL-23Rアルファサブユニット)に結合する。
【0031】
本明細書で使用される「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図する(例えば、IL-23Rに特異的に結合する単離された抗体は、IL-23R以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、IL-23Rに特異的に結合する単離された抗体は、他の種からのIL-23R分子などの他の抗原に交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は、他の細胞材料及び/または化学物質、特に抗体の治療的使用を妨げ得るもの(酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性もしくは非タンパク質性成分を含むがこれらに限定されない)を実質的に含まない場合がある。本明細書における単離された抗体は、IgG1、IgG2、またはIgG4抗体などのIgG抗体であり得る。
【0032】
I.1 抗原特異性及び親和性
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、細胞表面上に発現したIL-23Rを認識し、それに結合することができる。
【0033】
別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、可溶性IL-23R(すなわち、膜結合ではない)を認識し、それに結合することができる。
【0034】
有利なことに、本発明のIL-23R結合抗体または抗原結合フラグメントは、ヒト及びマウスの両方のIL-23Rに、特に高親和性で結合できることが見出されている(
図14)。この交差反応性は、マウスにおける前臨床試験の結果を、薬剤承認プロセスのためにヒト臨床試験に外挿するのに有益である。
【0035】
ある実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメント、例えば、本発明によるscFvは、マウス及びヒトIL-23Rの両方を結合することができる(
図14)。したがって、マウス及びヒトIL-23RとのscFvの交差反応性が有利な特徴である。
【0036】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒトIL-23Rアルファサブユニットを認識し、それに結合する。好ましくは、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、高親和性でヒトIL-23Rアルファサブユニットに結合する(
図14)。ヒトIL-23Rアルファサブユニットは、11個のエクソンを含む2.8kbの長さのmRNAによってコードされるタンパク質(Genbankアクセッション番号:NM_144701)である。
【0037】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒトIL-23RのバリアントなどのIL-23Rバリアントを認識し、それに結合することができる。
【0038】
一実施形態では、IL-23Rのバリアントは、元の(野生型)IL-23Rと比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のアミノ酸が欠失、付加、または置換されている改変されたIL-23Rを指す。
【0039】
ヒトIL-23Rのスプライスバリアントは、すでに同定されている(Kan et al,Genes and Immunity(2008)9(7):631-639)。具体的には、IL-23Rの24の異なるアイソフォームが記載されている:アイソフォーム_v1(Genbankアクセッション番号AM990313を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v2(Genbankアクセッション番号AM990314を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v3(Genbankアクセッション番号AM990315を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v4(Genbankアクセッション番号AM990316を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v5(Genbankアクセッション番号AM990317を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v6(Genbankアクセッション番号AM990318を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v7(Genbankアクセッション番号AM990319を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v8(Genbankアクセッション番号AM990320を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v9(Genbankアクセッション番号AM990321を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v10(Genbankアクセッション番号AM990322を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v11(Genbankアクセッション番号AM990323を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v12(Genbankアクセッション番号AM990324を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v13(Genbankアクセッション番号AM990325を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v14(Genbankアクセッション番号AM990326を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v15(Genbankアクセッション番号AM990327を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v16(Genbankアクセッション番号AM990328を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v17(Genbankアクセッション番号AM990329を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v18(Genbankアクセッション番号AM990330を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v19(Genbankアクセッション番号AM990331を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v20(Genbankアクセッション番号AM990332を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v21(Genbankアクセッション番号AM990333を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v22(Genbankアクセッション番号AM990334を有するmRNAによってコードされる)、アイソフォーム_v23(Genbankアクセッション番号AM990335を有するmRNAによってコードされる)及びアイソフォーム_v24(Genbankアクセッション番号AM990336を有するmRNAによってコードされる)。
【0040】
したがって、一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、アイソフォーム_v1、アイソフォーム_v2、アイソフォーム_v3、アイソフォーム_v4、アイソフォーム_v5、アイソフォーム_v6、アイソフォーム_v7、アイソフォーム_v8、アイソフォーム_v9、アイソフォーム_v10、アイソフォーム_v11、アイソフォーム_v12、アイソフォーム_v13、アイソフォーム_v14、アイソフォーム_v15、アイソフォーム_v16、アイソフォーム_v17、アイソフォーム_v18、アイソフォーム_v19、アイソフォーム_v20、アイソフォーム_v21、アイソフォーム_v22、アイソフォーム_v23、及びアイソフォーム_v24を含む群から選択されるヒトIL-23Rのスプライスバリアントを認識し、それに結合することができる。
【0041】
さらに、ヒトIL-23Rのアルファサブユニットにおける一塩基多型がすでに記載されている(Kan et al,上記;及びSivanesan et al.,J Biol Chem.(2016)291(16):8673-85)。
【0042】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、アルファサブユニット内の一塩基多型(SNP)を含むヒトIL-23Rバリアントを認識し、それに結合することができ、該SNPは、R381Q、G149R、V362I、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0043】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、マウスIL-23Rアルファサブユニットを認識し、それに結合する。好ましくは、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、高親和性でマウスIL-23Rアルファサブユニットに結合する(
図14)。マウスIL-23Rアルファサブユニットは、11個のエクソンを含む2.5kbの長さのmRNAによってコードされるタンパク質(Genbankアクセッション番号:NM_144548)である。
【0044】
マウスIL-23Rのスプライスバリアントは、すでに同定されている。具体的には、IL-23Rの7つの異なるアイソフォームが記載されている:アイソフォーム1(Uniprot Q5VWK5-1;NM_144701.3)、アイソフォーム2(Uniprot Q5VWK5-2;XP_005270573)、アイソフォーム3(Uniprot Q5VWK5-3)、アイソフォーム4、(Uniprot Q5VWK5-4)、及びアイソフォーム5(Uniprot Q5VWK5-5)(Zhang,et al.,Immunogenetics 57:934-943(2006))、及びアイソフォーム6、(Uniprot Q5VWK5-6;XP_005270574)、及びアイソフォーム7(Uniprot Q5VWK5-7)(Genome Res.14:2121-2127(2004))。いくつかの実施形態では、本開示の抗IL23R抗体またはその抗原結合フラグメントは、アイソフォーム1~7のうちの1つ以上に結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗IL23R抗体または抗原結合フラグメントは、アイソフォーム1及びアイソフォーム3のうちの少なくとも一方1つに結合する。いくつかの実施形態では、本開示の抗IL23R抗体または抗原結合フラグメントは、アイソフォーム4及びアイソフォーム6のうちの少なくとも一方に結合する。
【0045】
I.2.1 CDR配列
一実施形態では、CDRは、Kabat CDR定義システムに従って決定される。
【0046】
一実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントの重鎖は、以下の重鎖CDR(HCDR):
HCDR1:SSNYYWG(配列番号1)
HCDR2:GSIYYSGNTYYNPSL(配列番号2)
HCDR3:REWSPYESEGFDY(配列番号3)
のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つ全てを含む。
【0047】
具体的な一実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号1~3の全てを含む。一実施形態では、HCDR1、HCDR2、及び/またはHCDR3のいずれかは、それぞれ配列番号1~3と比較して、1、2、3またはそれ以上のアミノ酸改変(例えば置換)を含み得る。一実施形態では、HCDR1、HCDR2、及び/またはHCDR3のいずれかは、それぞれ配列番号1~3と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を共有するアミノ酸配列を有する。
【0048】
一実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントの軽鎖は、以下の軽鎖CDR(LCDR):
LCDR1:TGSSSNIGAGYDVH(配列番号4)
LCDR2:GNNNRPS(配列番号5)
LCDR3:QSYDTGLSAW(配列番号6)
のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つ全てを含む。
【0049】
具体的な一実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号4~6の全てを含む。一実施形態では、LCDR1、LCDR2、及び/またはLCDR3のいずれかは、それぞれ配列番号4~6と比較して、1、2、3、4,5またはそれ以上のアミノ酸改変(例えば置換)を含み得る。一実施形態では、LCDR1、LCDR2、及び/またはLCDR3のいずれかは、それぞれ配列番号4~6と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を共有するアミノ酸配列を有する。
【0050】
本発明の抗体または抗原結合フラグメントの一実施形態では、そのHCDR1~3のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つ全ては、それぞれ配列番号1~3を含み、かつそのLCDR1~3のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つ全ては、それぞれ配列番号4~6を含む。
【0051】
一実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号1~6の配列を有するHCDR1~3及びLCDR1~3を含む。
【0052】
本発明の抗体または抗体結合フラグメントの一実施形態では、HCDR1、HCDR2、及び/またはHCDR3のいずれかは、それぞれ配列番号1~3と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を共有するアミノ酸配列を有し、かつLCDR1、LCDR2、及び/またはLCDR3のいずれかは、それぞれ配列番号4~6と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を共有するアミノ酸配列を有する。
【0053】
I.2.2 VH及びVL配列
一実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号7を含むか、またはそれからなるVHアミノ酸配列を有する。
【0054】
一実施形態では、VHアミノ酸配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上のアミノ酸改変(例えば、置換)を有する配列番号7を含むか、またはそれからなる。
【0055】
一実施形態では、VHアミノ酸配列は、上記のHCDR(例えば配列番号1~3)を含み、かつ配列番号7と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を共有する。
【0056】
一実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号8を含むか、またはそれからなるVLアミノ酸配列を有する。
【0057】
一実施形態では、VLアミノ酸配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上のアミノ酸改変(例えば、置換)を有する配列番号8を含むか、またはそれからなる。
【0058】
一実施形態では、VLアミノ酸配列は、上記のLCDR(例えば配列番号4~6)を含み、かつ配列番号8と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を共有する。
【0059】
一実施形態では、VHは、配列番号7を含むか、またはそれからなり、及び/またはVLは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上のアミノ酸改変(例えば、置換)を有する配列番号8を含むか、またはそれからなる。
【0060】
一実施形態では、VH及びVLは、上記のCDR(例えば配列番号1~6)を含み、かつそれぞれ配列番号7及び8と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を共有する。
【0061】
一実施形態では、アミノ酸改変は、挿入、欠失または置換であり得る。一実施形態では、アミノ酸改変は、改変を含む抗体またはその抗原結合フラグメントの結合特性に有意に影響を及ぼさない。指定される可変領域及びCDR配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失、及び/または置換を含み得る。
【0062】
一実施形態では、アミノ酸改変は、好ましくは保存的アミノ酸によるってなされる置換である。保存的アミノ酸とは、元のアミノ酸と同様の物理化学的性質を有する側鎖を持つアミノ酸である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。したがって、本発明の抗体または抗原結合フラグメントのCDR及び/または可変領域内の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリー由来の他のアミノ酸残基で置き換えることができ、改変された抗体または抗原結合フラグメントは、保持された機能(例えば、IL-23Rへの結合)について、本明細書に記載されるアッセイを使用して試験することができる。別の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントのCDR及び/または可変領域内のアミノ酸のストリングは、側鎖ファミリーメンバーの順序及び/または組成が異なる構造的に類似したストリングで置き換えることができる。
【0063】
一実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、以下:
-本明細書で定義される少なくとも1つ(好ましくは3つ)のHCDRを含み、かつ配列番号7または配列番号7に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVHと、
-本明細書で定義される少なくとも1つ(好ましくは3つ)のLCDRを含み、かつ配列番号8または配列番号8に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVLと、
を含む。
【0064】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号7を含むかまたはそれからなるVHと、配列番号8を含むかまたはそれからなるVLとを含む。
【0065】
I.2.3 リンカー
一実施形態では、本発明の抗原結合フラグメントは、そのVH及びVLを連結するリンカーを含む。一実施形態では、抗原結合フラグメントは、N末端からC末端に、VL、リンカー、及びVHを含む。別の実施形態では、抗原結合フラグメントは、N末端からC末端に、VH、リンカー、及びVLを含む。
【0066】
一実施形態では、リンカーは、例えば2~20または2~15アミノ酸の範囲の長さを有するペプチドリンカーである。
【0067】
例えば、グリシン-セリンダブレットは、特に好適なリンカー(GSリンカー)を提供する。一実施形態では、リンカーは、GSリンカーである。GSリンカーの例としては、GSリンカー、G2Sリンカー(例えば、GGS及び(GGS)2)、G3Sリンカー、及びG4Sリンカーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
G3Sリンカーは、アミノ酸配列(Gly-Gly-Gly-Ser)nまたは(GGGS)n(配列番号9)を含み、式中、nは、1以上の正の整数(例えば、n=1、n=2、n=3、n=4、n=5、n=6、n=7、n=8、n=9、またはn=10)である。G3Sリンカーの例としては、GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号10)が挙げられるが、これに限定されない。
【0069】
G4Sリンカーの例としては、GGGGS(配列番号11)に対応する(Gly4-Ser);GGGGSGGGGS(配列番号12)に対応する(Gly4-Ser)2;GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号13)に対応する(Gly4-Ser)3;及びGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号14)に対応する(Gly4-Ser)4が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、リンカーは、(G4S)3リンカー(配列番号13)である。
【0070】
I.2.4 抗体及びフラグメントの種類
一実施形態では、本開示による抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化抗体である。
【0071】
一実施形態では、本開示による抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗体の抗原結合フラグメント、例えば、一本鎖抗体、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab)’2、Fd、脱フコシル化抗体、ダイアボディ、トリアボディ、またはテトラボディである。
【0072】
一実施形態では、本開示による抗体またはその抗原結合フラグメントは、高親和性でヒトIL-23Rアルファサブユニットに結合する。ある実施形態では、本開示による抗体またはその抗原結合フラグメントは、本明細書で定義されるCDRを含み、かつ高親和性でヒトIL-23Rアルファサブユニットに結合する。
【0073】
一実施形態では、本開示による抗体またはその抗原結合フラグメントは、高親和性でマウスIL-23Rアルファサブユニットに結合する。一実施形態では、本開示による抗体またはその抗原結合フラグメントは、本明細書で定義されるCDRを含み、かつ高親和性でマウスIL-23Rアルファサブユニットに結合する。
【0074】
一実施形態では、本開示による抗体またはその抗原結合フラグメントは、200nM、100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nMまたは30nM未満、特に100nM未満、特に40nM未満のEC50でヒトIL-23Rアルファサブユニットに結合することができる。一実施形態では、本開示による抗体またはその抗原結合フラグメントは、200nM、100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nMまたは30nM未満、特に100nM未満、特に60nM未満のEC50でマウスIL-23Rアルファサブユニットに結合することができる。
【0075】
一実施形態では、本開示による抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト及びマウスの両方のIL-23Rと交差反応することができる。ある実施形態では、本開示による抗体またはその抗原結合フラグメントは、本明細書で定義されるCDRを含み、かつヒト及びマウスの両方のIL-23Rと交差反応することができる。
【0076】
I.2.5 scFv完全配列
一実施形態では、本発明の抗原結合フラグメントは、本明細書で定義されるCDRを含むscFvであり、配列番号15または配列番号15に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0077】
一実施形態では、scFvは、高親和性でヒトIL-23Rアルファサブユニットに結合する。ある実施形態では、scFvは、本明細書で定義されるCDRを含み、高親和性でヒトIL-23Rアルファサブユニットに結合する。ある実施形態では、scFvは、配列番号15または配列番号15に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、高親和性でヒトIL-23Rアルファサブユニットに結合する。
【0078】
一実施形態では、scFvは、高親和性でマウスIL-23Rアルファサブユニットに結合する。ある実施形態では、scFvは、本明細書で定義されるCDRを含み、高親和性でマウスIL-23Rアルファサブユニットに結合する。ある実施形態では、scFvは、配列番号15または配列番号15に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、高親和性でマウスIL-23Rアルファサブユニットに結合する。
【0079】
一実施形態では、本開示によるscFvは、200nM、100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nMまたは30nM未満、特に100nM未満、特に40nM未満のEC50でヒトIL-23Rアルファサブユニットに結合することができる。一実施形態では、本開示によるscFvは、200nM、100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nMまたは30nM未満、特に100nM未満、特に60nM未満のEC50でマウスIL-23Rアルファサブユニットに結合することができる。
【0080】
一実施形態では、scFvは、ヒト及びマウスの両方のIL-23Rと交差反応することができる。ある実施形態では、scFvは、本明細書で定義されるCDRを含み、ヒト及びマウスの両方のIL-23Rと交差反応することができる。ある実施形態では、scFvは、配列番号15または配列番号15に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、ヒト及びマウスの両方のIL-23Rに結合する。
【0081】
I.3 核酸
本開示の別の目的は、本発明の単離された抗IL-23R抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸である。
【0082】
「単離された核酸」は、本明細書で使用される場合、他のゲノムDNA配列、ならびに天然配列に自然に付随するタンパク質または複合体、例えばリボソーム及びポリメラーゼから実質的に分離された核酸を指すことを意図する。この用語は、その天然に存在する環境から取り出された核酸配列を包含し、組換えまたはクローニングされたDNA単離物、及び化学的に合成された類似体、または異種系によって生物学的に合成された類似体を含む。実質的に純粋な核酸には、核酸の単離形態が含まれる。これは、元から単離された核酸を指し、単離された核酸に後に人工的に付加された遺伝子または配列を除外するものではない。
【0083】
一実施形態では、核酸は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントの少なくともVHまたはVLをコードする。一実施形態では、核酸は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントの重鎖または軽鎖の可変領域及び定常領域をコードする。一実施形態では、核酸は、抗体または抗原結合フラグメントの重鎖及び軽鎖の両方をコードする。
【0084】
一実施形態では、本明細書の核酸は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントのVHをコードするヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなり、該ヌクレオチド配列は、配列番号16または配列番号16に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有するヌクレオチド配列である。
【0085】
一実施形態では、本明細書の核酸は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントのVLをコードする配列を含むか、またはそれからなり、該ヌクレオチド配列は、配列番号17または配列番号17に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有するヌクレオチド配列である。
【0086】
一実施形態では、本明細書の核酸は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントのVH及びVLをコードするヌクレオチド配列を含む。さらなる実施形態では、本明細書の核酸は、配列番号16及び17を含む。
【0087】
一実施形態では、本明細書の核酸は、VLコード配列とVHコード配列との間に、リンカーヌクレオチド配列をさらに含む。さらなる実施形態では、リンカーヌクレオチド配列は、配列番号18を含むか、またはそれからなる。
【0088】
一実施形態では、本明細書の核酸は、配列番号19または配列番号19に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0089】
I.4.抗体及び抗原結合フラグメントの産生
本開示はまた、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを発現するためのベクター、及び該抗体または抗原結合フラグメントを産生するためのベクターの使用方法を提供する。
【0090】
一般に、好適なベクターは、少なくとも1つの宿主生物において機能的な複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、1つ以上の選択マーカー、及び任意選択でエンハンサーを含む。
【0091】
哺乳動物細胞用の発現ベクターに使用されるプロモーター及びエンハンサーの例としては、SV40の初期プロモーター及びエンハンサー、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーター及びエンハンサー、ならびに免疫グロブリンH鎖のプロモーター及びエンハンサーが挙げられるが、これらに限定されない。転写調節配列のさらなる例については、以下のセクションIIも参照のこと。
【0092】
本開示の別の目的は、本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合フラグメントを産生及び精製する方法である。一実施形態では、この方法は、以下:
-抗体または抗原結合フラグメントの発現カセットを含む発現ベクターを、in vitroまたはex vivoで、コンピテント宿主細胞(例えば、CHO細胞及びNS0細胞などの哺乳動物細胞)に導入することと、
-形質転換された宿主細胞を、抗体またはその抗原結合フラグメントの発現に適した条件下でin vitroまたはex vivoで培養することと、
-任意選択で、抗体または抗原結合フラグメントを発現及び/または分泌する細胞を選択することと、
-発現された抗体または抗原結合フラグメントを細胞培養物から回収することと、
-任意選択で、回収された抗体または抗原結合フラグメントを精製することと、
を含む。
【0093】
タンパク質、特に抗体または抗原結合フラグメントを精製する方法は、当該技術分野で周知であり、プロテインA-セファロース、ゲル電気泳動、及びクロマトグラフィー(例えばプロテインLアガロース上での親和性クロマトグラフィーなどの親和性クロマトグラフィー)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
II.融合タンパク質
本開示はさらに、本開示の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質に関する。一実施形態では、融合タンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)である。
【0095】
II.1 CAR
本開示の目的は、少なくとも1つのIL-23Rに特異的なCARである。CARは、(i)本明細書に記載の抗IL-23R抗原結合フラグメントを含む細胞外結合ドメイン、(ii)任意選択で細胞外ヒンジドメイン、(iii)膜貫通ドメイン、(iv)細胞内シグナル伝達ドメイン、ならびに(v)任意選択でタグ及び/またはリーダー配列を含み得る。一実施形態では、CARは、1つ以上のポリペプチド、例えば2つのポリペプチドを含む。
【0096】
II.1.1.細胞外結合ドメイン
一実施形態では、CARの細胞外結合ドメインは、本開示の抗原結合フラグメントを含むか、またはそれからなる。一実施形態では、抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号1~3を有するHCDR1~3の少なくとも1つ、及び/またはそれぞれ配列番号4~6を有するLCDR1~3の少なくとも1つを含む。さらなる実施形態では、CARの細胞外結合ドメインにおける抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号1~6の配列を有するHCDR1~3及びLCDR1~3を含む。一実施形態では、CARの細胞外結合ドメインは、配列番号7の配列または配列番号7に対して少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%もしくはそれ以上の同一性を有する配列を有するVHと、配列番号8の配列または配列番号8に対して少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%もしくはそれ以上の同一性を有する配列を有するVLと、を含む抗原結合フラグメントを含む。
【0097】
一実施形態では、CARの細胞外結合ドメインは、VHとVLとの間にペプチドリンカーを有する抗IL-23R scFvを含むか、またはそれからなり、該ペプチドリンカーは、配列番号13または配列番号13に対して少なくとも約90%、95%もしくはそれ以上の同一性を有する配列を含む。
【0098】
一実施形態では、CARの細胞外結合ドメインは、配列番号15または配列番号15に対して少なくとも約90%、95%もしくはそれ以上の同一性を有する配列を含む抗IL-23R scFvを含むか、またはそれからなる。
【0099】
II.1.2.ヒンジドメイン
一実施形態では、細胞外IL-23R結合ドメインは、ヒンジドメインによって膜貫通ドメインに接続されている。
【0100】
一実施形態では、ヒンジドメインは、約2~約100アミノ酸、例えば約2~約75アミノ酸を含むか、またはそれらからなる。
【0101】
一実施形態では、ヒンジドメインは、本明細書に記載される、例えば2~20または2~15アミノ酸の範囲の長さを有するペプチドリンカーである。
【0102】
一実施形態では、ヒンジドメインは、CD8ヒンジに由来するアミノ酸配列(例えば、配列番号20)または配列番号20に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号21または配列番号21に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされるCD8ヒンジである。
【0103】
II.1.3.膜貫通ドメイン
本発明のCARにおいて使用され得る膜貫通ドメインの例としては、T細胞受容体(TCR)のα鎖またはβ鎖の膜貫通ドメイン;またはCD28、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CDl la、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRFl)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7R a、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、PD1、ITGAX、CDl1c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CDIOO(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、及びNKG2Cの膜貫通ドメインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
一実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインに由来するアミノ酸配列(例えば、配列番号22)または配列番号22に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号23または配列番号23に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされるCD8膜貫通ドメインである。
【0105】
別の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインに由来するアミノ酸配列(例えば、配列番号24)または配列番号24に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号25または配列番号25に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされるCD28膜貫通ドメインである。
【0106】
別の実施形態では、膜貫通ドメインは、4-1BB(CD137)膜貫通ドメインに由来するアミノ酸配列(例えば、配列番号26)または配列番号26に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号27または配列番号27に対して少なくとも約95(例えば、96%、97%、98%または99%)の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる4-1BB膜貫通ドメインである。
【0107】
別の実施形態では、膜貫通ドメインは、TNFR2膜貫通ドメインに由来するアミノ酸配列(例えば、配列番号28)または配列番号28に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号29または配列番号29に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされるTNFR2膜貫通ドメインである。
【0108】
一実施形態では、膜貫通ドメインは、完全に人工的なものであってもよく、例えば、主として疎水性アミノ酸、例えば、バリン及びロイシンを含んでもよい。
【0109】
II.1.4.細胞内シグナル伝達ドメイン
一実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、それが由来する分子の細胞内部分全体、またはネイティブな細胞内シグナル伝達ドメイン全体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体を含み得る。
【0110】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞一次シグナル伝達ドメイン(またはそれから誘導された配列)と、任意選択でT細胞共刺激分子の1つ以上の細胞内ドメイン(またはそれから誘導された配列(複数可))とを含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメインを含むか、またはそれからなる。
【0112】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞共刺激分子の1つ以上の細胞内ドメインを含むか、またはそれからなる。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞共刺激分子の1つ以上の細胞内ドメインからなる。
【0113】
別の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも1つの共刺激ドメインと、一次シグナル伝達ドメインとを含むか、またはそれらからなる。
【0114】
別の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも2つの共刺激ドメインと、一次シグナル伝達ドメインとを含むか、またはそれらからなる。
【0115】
一実施形態では、T細胞一次シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータの機能的シグナル伝達ドメインを含むか、またはそれからなる。
【0116】
一実施形態では、T細胞一次シグナル伝達ドメインは、配列番号30のCD3ゼータ細胞内ドメインのアミノ酸配列、または配列番号30に対して少なくとも約95%(例えば96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、CD3ゼータ一次シグナル伝達ドメインは、配列番号30の少なくとも1つ、2つまたは3つの改変(ただし20、10または5つ以下の改変)を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0117】
一実施形態では、CD3ゼータ一次シグナル伝達ドメインは、配列番号31または配列番号31に対して少なくとも約95(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0118】
刺激的に作用するT細胞一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAMS)として知られるシグナル伝達モチーフを含んでもよい。一実施形態では、T細胞一次シグナル伝達ドメインは、改変されたITAMドメイン、例えば、ネイティブITAMドメインと比較して変化した(例えば、増加または減少された)活性を有する変異ITAMドメインを含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、改変されたITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、最適化された及び/または切断されたITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のITAMモチーフを含む。
【0119】
一実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインと組み合わされたT細胞一次シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ゼータシグナル伝達ドメイン)を含む。
【0120】
共刺激シグナル伝達ドメインは、T細胞共刺激分子の細胞内ドメイン、または免疫細胞上で発現される他の細胞表面分子に由来し得る。共刺激シグナルドメインの例としては、CD28、CD27、4-1BB(CD137)、MHCクラスI分子、BTLA、Tollリガンド受容体、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS(CD278)、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、ARHR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160(BY55)、CD19、CD19a、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2ra、IL6Ra、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、IL-13RA1/RA2、IL-33R(IL1RL1)、IL-10RA/RB、IL-4R、IL-5R(CSF2RB)、IL-21R、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a/CD18、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、ITGB7、NKG2D、NKG2C、CTLA-4(CD152)、CD95、TNFR1(CD120a/TNFRSF1A)、TNFR2(CD120b/TNFRSF1B)、TGFbR1/2/3、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、共通ガンマ鎖、CD83と特異的に結合するリガンド、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、及びこれらの任意の組み合わせの細胞内ドメイン由来のものであり得る。
【0121】
本開示の一実施形態では、本発明のCARは、CD28、TNFR2、4-1BB、ICOS、CD27、OX40、CTLA4及びPD-1を含む群から選択されるT細胞共刺激分子の少なくとも1つの細胞内ドメインを含む。
【0122】
一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28細胞内ドメインに由来するアミノ酸配列(例えば配列番号32)または配列番号32に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号32のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つまたは3つの改変(ただし20、10または5つ以下の改変)を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号33または配列番号33に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0123】
一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、4-1BB細胞内ドメインに由来するアミノ酸配列(例えば配列番号34)または配列番号34に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号34のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つまたは3つの改変(ただし20、10または5つ以下の改変)を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号35または配列番号35に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0124】
一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27細胞内ドメインに由来するアミノ酸配列(例えば配列番号36)または配列番号36に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号36のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つまたは3つの改変(ただし20、10または5つ以下の改変)を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号37または配列番号37に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0125】
一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、TNFR2細胞内ドメインに由来するアミノ酸配列(例えば配列番号38)または配列番号38に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号38のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つまたは3つの改変(ただし20、10または5つ以下の改変)を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号39または配列番号39に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0126】
一実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、以下:
-配列番号32のCD28細胞内ドメインのアミノ酸配列または配列番号32に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列と、
-配列番号30のCD3ゼータ細胞内ドメインのアミノ酸配列または配列番号30に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列と、
を含む。
【0127】
一実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、ランダムな順序でまたは特定の順序で互いに連結され得る少なくとも2つの異なるドメイン(例えば、一次シグナル伝達ドメイン及びT細胞共刺激分子の少なくとも1つの細胞内ドメイン)を含む。
【0128】
任意選択で、別個のシグナル伝達ドメインを接続するためにペプチドリンカーを使用してもよい。一実施形態では、好適なリンカーとしてグリシン-セリンダブレット(GS)が使用される。一実施形態では、単一のアミノ酸、例えば、アラニン(A)またはグリシン(G)がリンカーとして使用される。ペプチドリンカーの他の例は、上記セクションIに記載されている。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、2つ以上(例えば、2、3、4、5またはそれ以上)の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、2つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインは、本明細書に記載されるようなペプチドリンカーによって分けられている。
【0130】
一実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータの一次シグナル伝達ドメイン(例えば配列番号30)及びCD28の共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば配列番号32)を含む。
【0131】
II.1.5.リーダー配列
一実施形態では、本開示のCARは、IL-23R特異的細胞外結合ドメインに対してN末端に位置するリーダー配列をさらに含む。リーダー配列は、タンパク質がゴルジ複合体から分泌された後にCARタンパク質の細胞表面発現を可能とする。
【0132】
本発明のCARの好適なリーダー配列は、CD8リーダー配列、CD25リーダー配列、またはIgkリーダー配列を含む。
【0133】
リーダー配列の非限定的な例は、配列番号40を含むかまたそれからなり得るCD8のリーダー配列である。一実施形態では、リーダー配列は、CD8リーダー配列に由来するアミノ酸配列(例えば、配列番号40)または配列番号40に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。好ましくは、リーダー配列は配列番号40からなる。
【0134】
一実施形態では、リーダー配列をコードするヌクレオチド配列は、CD8リーダー配列(例えば配列番号41)をコードするヌクレオチド配列または配列番号41に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。好ましくは、リーダー配列は、配列番号41からなる配列によってコードされる。
【0135】
リーダー配列のさらなる非限定的な例は、配列番号58を含むかまたそれからなり得るCD25のリーダー配列である。一実施形態では、リーダー配列は、CD25リーダー配列に由来するアミノ酸配列(例えば、配列番号58)または配列番号58に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。好ましくは、リーダー配列は配列番号58からなる。
【0136】
一実施形態では、リーダー配列をコードするヌクレオチド配列は、CD25リーダー配列(例えば配列番号59)をコードするヌクレオチド配列または配列番号59に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。好ましくは、リーダー配列は配列番号59からなる配列によってコードされる。
【0137】
II.1.6.タグ
一実施形態では、CARは、例えばin vivoでの品質管理、富化、及び追跡のためのタグをさらに含む。該タグは、CARのN末端またはC末端に局在していても、CARポリペプチドの内部に存在していてもよい。タグの例としては、ヘマグルチニンタグ、ポリアルギニンタグ、ポリヒスチジンタグ、Mycタグ、Strepタグ、S-タグ、HATタグ、3×Flagタグ、カルモジュリン結合ペプチドタグ、SBPタグ、キチン結合ドメインタグ、GSTタグ、マルトース結合タンパク質タグ、蛍光タンパク質タグ、T7タグ、V5タグ、及びXpressタグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
一実施形態では、本開示のCARは、HAタグ(配列番号42)を含む。一実施形態では、タグは、配列番号43または配列番号43に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0139】
II.1.7.例示的なCAR
一実施形態によれば、本開示のCARは、IL-23R結合ドメイン(例えば配列番号15を含むかまたはそれからなるドメイン)、任意選択で細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、T細胞共刺激分子の単一の細胞内ドメイン、及びT細胞一次シグナル伝達ドメインを含む。好ましくは、本開示のCARは、さらにリーダー配列を含む。
【0140】
一実施形態では、本開示のCARは、IL-23R結合ドメイン(例えば、配列番号15)、CD8の膜貫通ドメイン(例えば、配列番号22)、CD28の細胞内ドメイン(例えば、配列番号32)、及びCD3ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(例えば、配列番号30)を含む。一実施形態では、本開示のCARは、さらにリーダー配列を含む。
【0141】
一実施形態では、本開示のCARは、IL-23R結合ドメイン(例えば、配列番号15)、CD8のヒンジドメイン(例えば、配列番号20)、CD8の膜貫通ドメイン(例えば、配列番号22)、CD28の細胞内ドメイン(例えば、配列番号32)、及びCD3ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(例えば、配列番号30)を含む。
【0142】
一実施形態では、本開示のCARは、IL-23R結合ドメイン(例えば、配列番号15)、CD8のヒンジドメイン(例えば、配列番号20)、CD8の膜貫通ドメイン(例えば、配列番号22)、CD28の細胞内ドメイン(例えば、配列番号32)、CD3ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(例えば、配列番号30)、及びリーダー配列を含む。一実施形態では、リーダー配列は、配列番号40、配列番号58、配列番号60または配列番号62を含むか、またはそれからなる。好ましくは、リーダー配列は、配列番号40または配列番号58を含むか、またはそれからなる。好ましくは、リーダー配列は配列番号58を含むか、またはそれからなる。
【0143】
一実施形態では、本開示のCARは、抗IL-23R scFv(例えば配列番号15を含むかまたはそれからなるscFv)、CD8のヒンジ領域、ヒトCD8の膜貫通ドメイン、ヒトCD28の細胞内ドメイン、及びヒトCD3ζの細胞内ドメインを含む。一実施形態では、本開示のCARは、さらにリーダー配列を含む。
【0144】
一実施形態では、該CARは、配列番号44または配列番号44に対して少なくとも約95%(例えば約96%、97%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0145】
本開示のCARは、マウス及びヒトIL-23Rを結合することができる新規な交差反応性CARである(実施例3及び
図14)。これらの例示的な結果では、本開示のCARは、IL23Rのヒトとマウスホモログ間で類似した結合プロファイルを呈する。これらの例示的な結果では、本開示のCAR#2は、ヒトIL23RとマウスIL23R間の結合親和性の差が約1.4倍を示す一方で、CAR#1は、ヒトIL23RとマウスIL23R間の結合親和性の差が約3倍を示す。これらの例示的な結果は、本開示のCAR#2が、CAR#1と比較してより類似した親和性で、ヒト及びマウスIL23Rに結合することを示している。この類似性は、マウス前臨床モデルにおけるCAR#2の使用がヒトIL23Rとのその相互作用をより代表するものとなり得ることを示唆している。
【0146】
有利なことに、本開示のCARは、抗原結合部分の安定したシグナル伝達及び低バックグラウンドの活性化を示した(実施例4及び
図16)。
【0147】
II.1.8.マウスCAR
本開示はまた、IL-23R結合ドメイン(例えば配列番号15を含むかまたはそれからなるドメイン)、任意選択で細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、T細胞共刺激分子の単一の細胞内ドメイン、及びT細胞一次シグナル伝達ドメインを含むマウスCARを提供する。
【0148】
一実施形態では、本開示のマウスCARは、IL-23R結合ドメイン(例えば、配列番号15)、マウスCD8の膜貫通ドメイン(例えば、配列番号50)またはマウスCD28の膜貫通ドメイン(配列番号52)、マウスCD28の細胞内ドメイン(例えば、配列番号54)、及びマウスCD3ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(例えば、配列番号56)を含む。特定の実施形態では、マウスCARは、マウスCD8のヒンジドメイン(例えば配列番号46)またはマウスCD28のヒンジドメイン(例えば配列番号48)も含み得る。上述のドメインの任意の組み合わせを有するマウスCARが企図される。
【0149】
II.2.CARをコードする核酸
本開示はまた、本明細書に記載のCARをコードする核酸配列に関する。そのような核酸配列の例は、配列番号45またはその縮重もしくはコドン最適化バージョンである。
【0150】
II.3.CARを発現するためのベクター
本開示の別の目的は、本明細書のCARをコードする核酸を含む発現ベクターである。
【0151】
一実施形態では、CARをコードする核酸はDNAである。一実施形態では、CARをコードする核酸はRNAである。本開示において使用することができるベクターの例としては、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、エピソーム、ウイルスベクター(例えば、動物ウイルス)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
一実施形態では、発現ベクターは、宿主細胞において導入遺伝子(例えば、CAR)を該発現ベクター上で発現させるまたは発現を誘導するための調節エレメント、例えばプロモーター、エンハンサー、及び転写ターミネーターを含み得る。ベクターはまた、1つ以上の選択可能なマーカーを含み得る。
【0153】
動物細胞用の発現ベクターに使用されるプロモーター及びエンハンサーの例としては、SV40の初期プロモーター及びエンハンサー、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーター及びエンハンサー、免疫グロブリンH鎖のプロモーター及びエンハンサーなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な構成的プロモーターの他の例としては、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列、伸長因子lα(EF-lα)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、FOXP3由来プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびにヒト遺伝子プロモーター、例えばアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及びクレアチンキナーゼプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
好適な誘導性プロモーターの例としては、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、cumateプロモーター、及びテトラサイクリンプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
好適な双方向性プロモーターの例としては、i)サイトメガロウイルス(CMV)またはマウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)ゲノムに由来する第1の最小プロモーター配列と、ii)動物遺伝子に由来する完全な効率的プロモーター配列とを含む双方向性プロモーターについて開示する、Luigi Naldiniの米国特許第8,501,464号(参照により本明細書に組み込まれる)によって記載されているプロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0156】
好適なベクターの例としては、pAGE107、pAGE103、pHSG274,pKCR、pSG1ベータd2-4などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
プラスミドの例としては、複製起点を含む複製プラスミド、または組み込みプラスミド、例えばpUC、pcDNA、pBRなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
哺乳動物細胞への遺伝子導入のために多くのウイルスベース系が開発されている。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
レトロウイルスは、遺伝子送達系に好都合なプラットフォームを提供し得る。選択された遺伝子はベクターに挿入され、当該技術分野で既知の技術を使用してレトロウイルス粒子にパッケージングされ得る。次いで、組換えウイルスが単離され、in vivoまたはex vivoのいずれかで対象の細胞に送達され得る。多くのレトロウイルス系が当該技術分野で既知である。
【0160】
いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。多くのアデノウイルスベクターが当該技術分野で既知である。
【0161】
一実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。
【0162】
一実施形態では、AAVベクターが使用される。本明細書で使用される場合、「AAV」という用語は、天然に存在する形態及び操作された形態の両方の全ての血清型及びバリアントを包含する。例えば、この用語は、AAVタイプ1(AAV-1)、AAVタイプ2(AAV-2)、AAVタイプ3(AAV-3)、AAVタイプ4(AAV-4)、AAVタイプ5(AAV-5)、AAVタイプ6(AAV-6)、AAVタイプ7(AAV-7)、及びAAVタイプ8(AAV-8)、及びAAVタイプ9(AAV-9)を包含する。一実施形態では、ベクターはAAV6ベクターである。一実施形態では、AAVは、シュードタイプAAV、例えばAAV6キャプシドを有するAAV、及び別のAAV血清型(例えば、AAV2由来のITRを有する)に由来する組換えゲノムである。
【0163】
組換えウイルスは、パッケージング細胞のトランスフェクション、またはヘルパープラスミドもしくはウイルスによる一過性のトランスフェクションなどの当該技術分野で既知の技術によって産生され得る。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例としては、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞、293T細胞などが挙げられる。そのような複製欠陥組換えウイルスを産生するための詳細なプロトコルは、当該技術分野において見出され得る。昆虫細胞もまた、組換えAAVなどの組換えウイルスを産生するために使用され得る。
【0164】
II.4 CARを発現する細胞
本開示はさらに、本明細書に記載のCARを細胞表面上で発現するように操作された免疫細胞及び免疫細胞集団に関する。
【0165】
一実施形態では、免疫細胞は、制御性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、CD4+T細胞、またはNK T細胞などのT細胞である。
【0166】
一実施形態では、免疫細胞は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。
【0167】
本開示はまた、本明細書に記載されるCARを細胞表面上で発現するように操作された免疫細胞を含むか、またはそれからなる、単離された及び/または実質的に精製された免疫細胞集団、好ましくはT細胞集団に関する。
【0168】
一実施形態では、免疫細胞、好ましくはT細胞は、CARによって認識されるIL-23Rをその表面上で発現する細胞に抑制性である。
【0169】
一実施形態では、免疫細胞、好ましくはT細胞は、CARによって認識されるIL-23Rをその表面上で発現する細胞に細胞傷害性である。
【0170】
一実施形態では、免疫細胞集団、好ましくはT細胞集団は、Treg細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、及び/またはNK T細胞を含むか、またはそれらからなる。
【0171】
一実施形態では、本開示のT細胞はTreg細胞である。
【0172】
一実施形態では、本開示の細胞集団におけるTreg細胞は全て、本明細書に記載のCARを発現し、したがってCAR単一特異性であると定義することができる(すなわち、全てのTreg細胞が同じ抗原(IL-23R)を認識する)。一実施形態では、Treg細胞集団は、TCR単一特異性である(すなわち、全てのTreg細胞は、それらのTCRと同じ抗原を認識する)。別の実施形態では、Treg細胞集団は、TCR多特異性である(すなわち、Treg細胞は、それらのTCRと異なる抗原を認識し得る)。
【0173】
一実施形態では、本開示のCARは、T(例えばTreg)細胞によって発現される場合、T細胞に、IL-23Rをその細胞表面上で発現する細胞に結合し、IL-23Rへの結合により活性化される能力を付与する。
【0174】
IL-23Rを発現する細胞の例としては、Th17細胞、αβT細胞、好中球、γδT細胞、NK細胞、NK T細胞、樹状細胞、及びマクロファージが挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
したがって、本開示の免疫細胞集団(例えば、本開示のT(例えば、Treg)細胞集団)は、リダイレクトされた免疫細胞集団として定義されてもよい。本明細書で使用される場合、「リダイレクトされた」という用語は、本明細書に記載のCARを保持する免疫細胞を指し、該免疫細胞が特異的であるもしくは特異的となったであろう、または該免疫細胞によって活性化されるリガンドとは異なるリガンドに結合し、それによって活性化される能力を免疫細胞に付与する。
【0176】
一実施形態では、本開示のTreg細胞は細胞傷害性ではない。別の実施形態では、本開示のTreg細胞は細胞傷害性である。
【0177】
一実施形態では、本開示のTreg細胞は、CD4+CD25+FOXP3+Treg細胞、Tr1細胞、TGF-β分泌Th3細胞、制御性NK T細胞、制御性γδT細胞、制御性CD8+T細胞、及び二重陰性制御性T細胞を含む群から選択され得る。
【0178】
一実施形態では、免疫細胞はCD4+Treg細胞である。一実施形態では、Tregは、胸腺由来Tregまたは適応性もしくは誘導性Tregである。一実施形態では、Treg細胞は、CD4+FOXP3+Treg細胞またはCD4+FOXP3-制御性T細胞(Tr1細胞)である。
【0179】
一実施形態では、免疫細胞はCD8+Treg細胞である。一実施形態では、CD8+Treg細胞は、CD8+CD28-Treg細胞、CD8+CD103+Treg細胞、CD8+FOXP3+Treg細胞、CD8+CD122+Treg細胞、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、制御性細胞は、INFγ+IL10+IL34+CD8+CD45RClowTreg細胞である。
【0180】
一実施形態では、本開示の免疫細胞はヒトTreg細胞である。
【0181】
一実施形態では、免疫細胞(例えば、T細胞またはTreg細胞)は、人工多能性幹細胞(iPSC)などの幹細胞に由来する。
【0182】
本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞」または「iPSC」という用語は、脱分化またはリプログラミングによって非多能性細胞(例えば、成体の体細胞)から誘導された多能性幹細胞を指す。具体的には、多能性関連遺伝子の特定のセット(リプログラミング因子)を細胞に導入することによって、iPSCを得ることができる。リプログラミング因子は、例えば、転写因子Oct4(Pou5f1)、Sox2、c-Myc、及びKlf4であり得る。
【0183】
一実施形態では、Treg細胞は、以下の表現型:CD4+CD25+、例えばCD4+CD25+CD127-及びCD4+CD25+CD127-CD45RA+を有する。一実施形態では、Treg細胞は、以下の表現型:CD4+CD25+、例えばCD4+CD25+CD127low及びCD4+CD25+CD127lowCD45RA+を有する。一実施形態では、Treg細胞は、以下の表現型:CD4+CD25+、例えばCD4+CD25+CD127low/-及びCD4+CD25+CD127low/-CD45RA+を有する。一実施形態では、Treg細胞は、以下の表現型:FOXP3+CD4+CD25+、例えばFOXP3+CD4+CD25+CD127-及びFOXP3+CD4+CD25+CD127-CD45RA+を有する。一実施形態では、Treg細胞は、以下の表現型:FOXP3+CD4+CD25+、例えばFOXP3+CD4+CD25+CD127low及びFOXP3+CD4+CD25+CD127lowCD45RA+を有する。一実施形態では、Treg細胞は、以下の表現型:FOXP3+CD4+CD25+、例えばFOXP3+CD4+CD25+CD127low/-及びFOXP3+CD4+CD25+CD127low/-CD45RA+を有する。
【0184】
一実施形態では、Treg細胞は、以下の表現型:CD4+CD25high、例えばCD4+CD25highCD127-及びCD4+CD25highCD127-CD45RA+を有する。一実施形態では、Treg細胞は、以下の表現型:CD4+CD25high、例えばCD4+CD25highCD127low及びCD4+CD25highCD127lowCD45RA+を有する。一実施形態では、Treg細胞は、以下の表現型:CD4+CD25high、例えばCD4+CD25highCD127low/-及びCD4+CD25highCD127low/-CD45RA+を有する。一実施形態では、Treg細胞は、以下の表現型:FOXP3+CD4+CD25high、例えばFOXP3+CD4+CD25highCD127-及びFOXP3+CD4+CD25highCD127-CD45RA+を有する。一実施形態では、Treg細胞は、以下の表現型:FOXP3+CD4+CD25high、例えばFOXP3+CD4+CD25highCD127low及びFOXP3+CD4+CD25highCD127lowCD45RA+を有する。一実施形態では、Treg細胞は、以下の表現型:FOXP3+CD4+CD25high、例えばFOXP3+CD4+CD25highCD127low/-及びFOXP3+CD4+CD25highCD127low/-CD45RA+を有する。
【0185】
一実施形態では、Treg細胞は、FOXP3遺伝子座のイントロン1内の保存領域であるTreg特異的脱メチル化領域(TSDR)における選択的脱メチル化及び/または低メチル化に関連する安定なFOXP3発現を有する。
【0186】
分子の発現レベルは、フローサイトメトリー、免疫蛍光、または画像分析によって決定され得る。細胞内タンパク質を検出するために、フローサイトメトリー分析の前に細胞を固定化し、透過処理することができる。
【0187】
一実施形態では、細胞集団中の分子の発現レベルは、分子を発現する細胞集団の細胞の割合(%)によって示される(すなわち、分子に対して細胞「+」)。分子を発現する細胞の割合(%)は、FACSにより測定され得る。目的の細胞マーカーの発現レベルは、このマーカーに特異的な蛍光標識抗体で染色された細胞集団からの細胞の蛍光強度の中央値(MFI)と、特異性は異なるが同じアイソタイプ、同じ蛍光プローブ、及び同じ種由来である蛍光標識抗体で染色された同じ細胞集団からの細胞(アイソタイプ対照と呼ばれる)の蛍光強度(FI)とを比較することによって決定することができる。このマーカーに特異的な蛍光標識抗体で染色され、かつアイソタイプ対照で染色された細胞と同等のMFIまたは低いMFIを示す集団からの細胞は、このマーカーを発現しておらず、(-)または陰性と表記される。このマーカーに特異的な蛍光標識抗体で染色され、かつアイソタイプ対照で染色された細胞を上回るMFI値を示す集団からの細胞は、このマーカーを発現しており、(+)または陽性と表記される。
【0188】
「発現する」(すなわち「陽性」または「+」)及び「発現しない」(すなわち「陰性」または「-」)という用語は、目的の細胞マーカーの発現レベルを指し、「+」に対応する細胞マーカーの発現レベルは高いまたは中間(「+/-」とも称される)であり、「-」に対応する細胞マーカーの発現レベルはゼロである。「low」または「lo」または「lo/-」または「low/-」という用語は、目的の細胞マーカーの発現レベルを、その細胞マーカーの発現レベルが、全体として分析される細胞集団におけるその細胞マーカーの発現レベルと比較して低いことを指す。より具体的には、「lo」という用語は、細胞マーカーを発現する別個の細胞集団が、1つ以上の他の別個の細胞集団よりも低レベルであることを指す。「high」または「hi」または「bright」という用語は、目的の細胞マーカーの発現レベルを、その細胞マーカーの発現レベルが、全体として分析される細胞集団におけるその細胞マーカーの発現レベルと比較して高いことを指す。一般的に、染色強度の上位2、3、4、または5%の細胞は「hi」と表記され、集団の上半分に入る細胞は「+」に分類される。蛍光強度の50%を下回る細胞は「lo」細胞と表記され、5%を下回る細胞は「-」細胞と表記される。
【0189】
有利なことに、良好な活性(高いシグナル対バックグラウンド比)及び良好な抑制活性を示すことに加えて、本開示のCARを発現する免疫細胞は、低トニックシグナル伝達を有することが判明した(
図3及び
図10)。
【0190】
本明細書で使用される「トニックシグナル伝達」という用語は、抗原非依存的な活性のバックグラウンドを指す。トニックシグナル伝達の測定方法は当業者に周知であり、CAR発現細胞の代謝活性を測定すること、受容体によって認識される抗原による刺激の非存在下で細胞活性化の1つ以上の指標を測定すること、細胞老化(cell aging)または細胞老化(cell senescence)に関連する1つ以上の表現型変化を測定すること、抗原刺激の非存在下で細胞周期の進行を判定すること、及び受容体を発現する細胞のサイズを未改変細胞のサイズと比較して測定することが挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
CAR Treg細胞によるCD69の自発的発現を、形質導入されていないTreg細胞と比較してモニタリングすることで、トニックシグナル伝達強度を決定することができる。
【0192】
本明細書で実証されるように、本発明のCAR構築物を発現する操作されたT細胞及び操作されたTreg細胞は低トニックシグナル伝達を示し、CAR結合に続いて、操作されたTreg細胞はTエフェクター細胞増殖に対して非常に効果的な抑制活性を示し、それにより細胞治療に対するこれらのTreg細胞の利点を実証している。
【0193】
一実施形態では、本開示のCARは、Treg細胞によって発現される場合、IL-23Rを指向する他のCAR構築物と比較して、Treg細胞の活性化バックグラウンドの減少を可能にする。
【0194】
加えて、本開示のCARを発現する免疫細胞は、CAR発現細胞が、高レベルのIL-23R発現と結合する場合、低レベルのIL-23R発現と結合する場合と比べて、より強力な抑制活性を有することが判明した(
図12)。したがって、本開示のCARは、オフターゲット活性を低下させることが予想される。
【0195】
一実施形態では、本開示のCARは、Treg細胞によって発現される場合、IL-23Rを指向する他のCAR構築物と比較して、Treg細胞のオフターゲット活性の低下を可能にする。
【0196】
III.組成物、医薬組成物、医薬
本開示の別の目的は、本明細書に記載のIL-23Rに結合する少なくとも1つの抗体、または該抗体の少なくとも1つの抗原結合フラグメント、または本開示による抗体もしくは該抗体の抗原結合フラグメントをコードする少なくとも1つの核酸もしくはベクターを含む、本質的にそれらからなる、またはそれらからなる組成物である。
【0197】
本開示の別の目的は、本開示によるCARを含む少なくとも1つの免疫細胞または少なくとも1つの免疫細胞集団を含む、本質的にそれらからなる、またはそれらからなる組成物である。
【0198】
一実施形態では、該組成物は医薬組成物であり、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0199】
したがって、本開示の別の目的は、本開示によるCARを含む少なくとも1つの免疫細胞または少なくとも1つの免疫細胞集団と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む、本質的にそれらからなる、またはそれらからなる医薬組成物である。
【0200】
本明細書で使用される場合、「本質的に~からなる」とは、組成物に関して、少なくとも1つの抗体もしくはその抗原結合フラグメント、核酸もしくは発現ベクター、または少なくとも1つの免疫細胞もしくは免疫細胞集団が、該組成物内に生物学的活性を有する唯一の治療剤または作用物質であることを意味する。
【0201】
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、緩衝剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、吸収遅延剤などを指す。当該賦形剤は、ヒトなどの対象に投与された場合、副作用、アレルギー反応、または他の有害な反応を生じない。
【0202】
本開示の組成物に使用され得る薬学的に許容される賦形剤の例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えばヒトヒト血清アルブミン)、緩衝剤(例えば、リン酸)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、塩化ナトリウム、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、及び亜鉛塩)、及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0203】
一実施形態では、本開示による医薬組成物は、注射のために薬学的に適したビヒクルを含む。これらは、例えば、等張性の滅菌生理食塩水(例えばリン酸一ナトリウムもしくはリン酸二ナトリウム;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウム;またはそれらの塩の混合物を含む)、または滅菌された水もしくは生理食塩水などの好適なキャリアを添加すると注射可能な溶液の構成を可能にする乾燥(例えば、凍結乾燥)組成物であり得る。
【0204】
本開示の別の目的は、本明細書に記載のIL-23Rに結合する少なくとも1つの抗体、または該抗体の少なくとも1つの抗原結合フラグメント、または本開示による抗体もしくは該抗体の抗原結合フラグメントをコードする少なくとも1つの核酸もしくはベクターを含む、本質的にそれらからなる、またはそれらからなる医薬である。
【0205】
本開示の別の目的は、本開示のCARを発現する免疫細胞の集団を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる医薬である。
【0206】
IV.投与経路
一実施形態では、本開示による組成物、医薬組成物、または医薬は、非経口的に、吸入スプレーにより、直腸的に、経鼻的に、または植込み型リザーバを介して投与される。
【0207】
一実施形態では、組成物、医薬組成物、または医薬は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内、及び頭蓋内注射または注入技術を含むがこれらに限定されない注射によって投与される。
【0208】
注射に適した形態の例としては、溶液、例えば滅菌水溶液、ゲル、分散液、エマルション、懸濁液、使用前に液体を添加して溶液または懸濁液を調製するための使用に適した固体形態、例えば粉末、リポソーム形態などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0209】
V.投与量
一実施形態では、本開示による単離された抗体もしくはその抗原結合フラグメント、核酸、発現ベクター、免疫細胞もしくは免疫細胞集団、組成物、医薬組成物、また医薬は、それを必要とする対象に治療有効量で投与される。
【0210】
しかしながら、治療有効量及び投与頻度は、合理的な医学的判断の範囲内で担当医師によって決定されることが理解されるであろう。任意の特定の患者のための特定の治療有効用量レベルは、治療される疾患及び疾患の重症度;使用される単離された抗体もしくはその抗原結合フラグメント、核酸、発現ベクター、または免疫細胞の活性;対象の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、及び食事;使用される特定の治療剤の投与時間、投与経路、及び排泄速度;治療期間;使用される特定の治療剤と併用または同時に使用される薬剤;ならびに医療分野で周知である同様の因子を含む、様々な因子に依存し得る。例えば、化合物の投与を、所望の治療効果を得るのに必要な量よりも低いレベルから開始し、所望の効果が得られるまで徐々に投与量を増加させることは、当業者の技術範囲内である。各治療に必要な総用量は、複数回で投与しても、1回で投与してもよい。
【0211】
一実施形態では、対象(例えば、ヒト)は、本開示の免疫細胞または免疫細胞集団の単回投与を受ける。
【0212】
一実施形態では、対象(例えば、ヒト)は、本開示の免疫細胞または免疫細胞集団の少なくとも2回の投与を受ける。
【0213】
一実施形態では、免疫細胞集団は、対象に週1回、月1回、または年1回投与される。
【0214】
一実施形態では、対象に投与される免疫細胞の数は、約102個~約109個、約103個~約108個、約104個~約107個、または約105個~約106個の範囲である。
【0215】
一実施形態では、免疫細胞は、それを必要とする対象に、少なくとも1種の他の活性剤と組み合わせて投与される。一実施形態では、該活性剤は、IL-23R関連疾患または障害を治療するために使用され得る薬剤である。他の活性剤の例としては、グルココルチコイド(デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、ベドメタゾン(bedomethasone)、チキソコルトール、トリアムシノロン、ヒドロコルチゾン、ブデソニドまたはフルドロコルチゾンを含むが、これらに限定されない)、ヒトサイトカインまたは成長因子の抗体またはアンタゴニスト(例えばインフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプトなどの抗TNF;抗IL1、抗IL-6、抗IL-12、抗IL-17及び抗IL-23(例えばブラジクマブ、グセルクマブ、ミリキズマブ、リサンキズマブ)、抗IL-12/IL-23(例えばウステキヌマブ);またはIL-1受容体アンタゴニスト類似体(例えばアナキンラ)、細胞表面分子に対する抗体(例えば抗α4インテグリン(例えばナタリズマブ)、抗インテグリンβ7(例えばエトロリズマブ)、抗α4-β7インテグリン(例えばベドリズマブ)、抗CD2、抗CD3(例えば、ビシルズマブ(visiluzumab))、抗CCR9、抗LFA1または抗ICAM1);JAK阻害剤(例えばフィルゴチニブ、ウパダシチニブ)、S1PRモジュレーター(例えばエトラシモド、オザニモド)、5アミノサリチル酸及びその類似体(例えばメサラジン、スルファザリン(sulfazaline)、オルサラジン、またはバルサラジド);プロバイオティクス(例えば、Saccharomyces boulardii)、抗生物質(例えば、メトロニダゾールアンピシリン、シプロフロキサシン、RHB-104)、免疫調節剤(例えば、タクロリムス、シクロスポリン、メトトレキサート、サリドマイド、レフルノミド、ならびにプリンの類似体、例えばアザチオプリン及び6-メルカプトプリン)、ならびに幹細胞療法(例えばダルバドストロセル)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0216】
一実施形態では、本開示の免疫細胞または集団の投与は、対象が投与される少なくとも1種の他の活性剤の量を減少させることを可能にする。
【0217】
一実施形態によれば、少なくとも1つの免疫細胞集団は、少なくとも1種の他の活性剤の投与前に、投与と同時に、または投与後に投与される。
【0218】
VI.治療的使用
本開示はさらに、医薬として使用するための、または治療を必要とする対象における疾患、障害もしくは症状の治療に使用するための、本明細書に記載のIL-23Rに結合する少なくとも1つの単離された抗体または該抗体の少なくとも1つの抗原結合フラグメントに関する。
【0219】
本開示は、医薬として使用するための、または治療を必要とする対象における疾患、障害もしくは症状の治療に使用するための、本明細書に記載の少なくとも1つの核酸またはベクターに関する。
【0220】
本開示はさらに、本明細書に記載の単離された抗体もしくはその抗原結合フラグメント、核酸もしくはベクター、または組成物、医薬組成物、もしくは医薬を対象に投与することを含む、治療を必要とする対象における疾患、障害または症状を治療するための方法に関する。
【0221】
一実施形態では、本開示による単離された抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または核酸もしくはベクターは、治療を必要とする対象におけるIL-23R発現細胞によって媒介される疾患または障害(本明細書ではIL-23R関連疾患または障害とも呼ばれる)を治療するために使用され得る。
【0222】
本開示の別の目的は、治療を必要とする対象においてIL-23R発現細胞によって媒介される疾患または障害を治療するための細胞療法の方法であって、該方法が、本明細書に記載の免疫細胞、例えば本明細書に記載のTreg細胞を対象に投与することを含む、方法である。
【0223】
一実施形態では、投与される免疫細胞は自家細胞であり、換言すれば、細胞療法は自家細胞療法である。本明細書で使用される場合、「自家」という用語は、後に再導入される個体と同じ個体に由来する任意の材料を指す。
【0224】
一実施形態では、細胞療法は他家細胞療法である。本明細書で使用される場合、「他家」という用語は、治療される対象に由来するのではなく、外部の供給源、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)または死体起源の細胞に由来する任意の材料を指す。
【0225】
一実施形態では、細胞療法は異種間である。本明細書で使用される場合、「異種」という用語は、材料が導入される対象とは異なる種の対象に由来する任意の材料を指す。
【0226】
別の実施形態では、投与される免疫細胞は同種異系細胞であり、換言すれば、細胞療法は同種異系細胞療法である。本明細書で使用される場合、「同種異系」という用語は、材料が導入される対象とは同じ種の異なる対象に由来する任意の材料を指す。2つ以上の対象は、1つ以上の遺伝子座の遺伝子が同一ではない場合、互いに同種異系であると言われる。さらなる実施形態では、免疫細胞は、健康なヒトドナーに由来する。
【0227】
いくつかの実施形態では、本発明の遺伝子改変された免疫細胞は、同種異系免疫細胞であり得る。そのような場合には、細胞に対する宿主拒絶(移植片拒絶)及び/または宿主に対する細胞の潜在的な攻撃(移植片対宿主病)を低減するように細胞が操作され得る。例として、細胞は、以下:(i)T細胞受容体(TCRアルファ鎖またはベータ鎖);(ii)多型性主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはII分子(例えば、HLA-A、HLA-BもしくはHLA-C;HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQもしくはHLA-DR;またはβ2-ミクログロブリン(B2M));(iii)抗原処理関連トランスポーター(例えばTAP-1またはTAP-2);(iv)MHCクラスIIトランスアクチベーター(CIITA);(v)マイナー組織適合抗原(MiHA;例えばHA-1/A2、HA-2、HA-3、HA-8、HB-1HまたはHB-1Y);及び(vi)それらの任意の組み合わせのうちの1つ以上の遺伝子型が欠損するように操作され得る。同種異系操作された細胞はまた、インバリアントHLAまたはCD47を発現し、操作されたTreg細胞を宿主拒絶から保護し得る。これらのさらなる遺伝子改変は、当該技術分野で既知の遺伝子編集技術によって実施することができる。
【0228】
さらに編集された同種異系細胞は、適合性の問題なしに複数の患者で使用できるため、特に有用である。したがって、該同種異系細胞を「ユニバーサル」と呼ぶことができ、「オフ・ザ・シェルフ」で使用することができる。「ユニバーサル」細胞の使用は、採用した細胞療法の効率を大幅に改善し、コストを削減する。
【0229】
特定の実施形態では、同種異系免疫細胞は、その表面にいかなる機能的TCRも発現しないように操作するか、機能的TCRを含む1つ以上のサブユニットを発現しないように操作するか、またはその表面上で非常にわずかな機能的TCRしか生成しないように操作することができる。例えば、本明細書に記載の免疫細胞は、TCR分子の細胞表面発現がダウンレギュレーションされるように操作され得る。あるいは、T細胞は、実質的に機能低下したTCRを、例えばTCRの1つ以上のサブユニットの変異型または切断型の発現により発現し得る。「実質的に機能低下したTCR」という用語は、このTCRが宿主において有害な免疫反応を誘発しないことを意味する。
【0230】
特定の実施形態では、同種異系免疫細胞は、その表面に機能的HLAを発現しないように操作され得る。例えば、本明細書に記載の免疫細胞は、HLA、例えば、HLAクラス1及び/またはHLAクラスII及び/または非古典的HLA分子の細胞表面発現がダウンレギュレーションされるように操作され得る。
【0231】
特定の実施形態では、T細胞は、機能的TCRならびに機能的HLA、例えばHLAクラスI及び/またはHLAクラスIIを欠いてもよい。
【0232】
機能的TCR及び/またはHLAの発現を欠く改変された免疫細胞は、TCR及び/またはHLAの1つ以上のサブユニットのノックアウトまたはノックダウンを含む任意の適切な手段によって得ることができる。例えば、Treg細胞は、siRNA、shRNA、クラスター化された規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ(mn、ホーミングエンドヌクレアーゼとしても知られる)、またはmegaTAL(TALエフェクターとmn切断ドメインとの組み合わせ)を用いた、TCR及び/またはHLAのノックダウンを含むことができる。
【0233】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARをコードする核酸は、免疫細胞のゲノム内の特定の遺伝子座、例えば欠失される遺伝子の遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARをコードする核酸は、TCR及び/またはHLA遺伝子座内に挿入され、それによりTCR及び/またはHLA発現の阻害がもたらされる。
【0234】
本開示の別の目的は、治療を必要とする対象においてIL-23R関連疾患または障害を治療するための方法であって、本明細書に記載の少なくとも1つのCARまたは本明細書に記載のCARをコードする少なくとも1つの核酸もしくはベクターを対象に投与することを含む、方法である。一実施形態では、該方法は、遺伝子療法の方法である。
【0235】
VII.IL-23R関連疾患
一実施形態では、IL-23R関連疾患または障害は、炎症性細胞媒介性疾患もしくは障害、Th17媒介性疾患もしくは障害、またはγδT媒介性疾患もしくは障害である。
【0236】
一実施形態では、IL-23R発現細胞媒介性疾患は、自己免疫性疾患もしくは障害及び/または炎症性疾患もしくは障害である。
【0237】
IL-23R関連疾患の例としては、自己免疫性疾患または障害、炎症性疾患または障害、アレルギー性疾患または障害、及びがんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0238】
一実施形態では、IL-23R発現細胞媒介性疾患または障害は、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、ループス(例えば、全身性エリテマトーデス)、関節炎(例えば、関節リウマチ及び若年性特発性関節炎)、シェーグレン症候群、全身性硬化症、強直性脊椎炎、1型糖尿病、自己免疫性甲状腺障害、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬性関節炎、皮膚疾患(例えば乾癬及びアトピー性皮膚炎)、またはブドウ膜炎から選択される。
【0239】
一実施形態では、IL-23R発現細胞媒介性疾患または障害はクローン病である。
【0240】
VIII.製造品
本開示の別の目的は、IL-23R発現細胞によって媒介される疾患または障害の治療に有用な材料を含む製造品である。
【0241】
製造品は、容器と、容器上のまたは容器に付随するラベルまたは添付文書とを含み得る。好適な容器としては、例えば、バッグ、ボトル、バイアル、シリンジ、パウチなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなど様々な材料から形成され得る。
【0242】
製造品、ラベル、または添付文書は、本開示のTreg細胞集団を患者に投与するための説明資料をさらに含み得る。
【0243】
本開示は、本開示の少なくとも1つの免疫細胞集団を含むキットを提供する。「キット」とは、本開示の少なくとも1つのTreg細胞集団を含む任意の製造品(例えば、パッケージまたは容器)を意味することが意図されている。キットは、使用のための説明書を含んでもよい。
【0244】
本明細書で特に定義しない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。例示的な方法及び材料が以下に記載されているが、本明細書に記載のものと類似または同等の方法及び材料も、本開示の実施または試験に使用することができる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。一般的に、本明細書に記載される心臓病学、医学、薬学及び創薬化学、細胞生物学、分子に関連して使用される命名法及びそれらの技術は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。さらに、文脈により別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は、単数形を含むものとする。本明細書及び実施形態全体を通して、用語「有する(have)」及び「含む(comprise)」、または「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、記載された整数または整数の群を包含することを意味するが、任意の他の整数または整数の群を除外することを意味するものではないことが理解されよう。本明細書で言及される全ての刊行物及び他の参考文献は、参照によってその全体が組み込まれる。いくつかの文献が本明細書で引用されているが、この引用は、これらの文献のいずれかが当該技術分野の一般的な知識の一部を形成することを認めるものではない。
【0245】
本明細書で使用される場合、目的の1つ以上の値に適用される「およそ」または「約」という用語は、明記された基準値と類似する値を指す。特定の実施形態では、該用語は、別途明記されない限りまたは別途文脈から明らかでない限り、明記された基準値のいずれかの方向(上回るまたは下回る)において、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下に含まれる値の範囲を指す。
【0246】
本開示がよりよく理解され得るように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は、説明のみを目的とするものであり、いかなる方法でも本開示の範囲を限定するものとして解釈されない。
【実施例】
【0247】
本開示は以下の実施例によってさらに説明される。
【0248】
実施例1:IL-23R-CARリード候補の同定
材料及び方法
PBMC単離
健康なドナーの血液は、Etablissement Francais du Sang(EFS)によって収集された。採血の翌日、末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll勾配遠心分離によってバッフィーコートから単離し、これにより、例えば顆粒球、血小板、及び残存する赤血球混入物などの血液製剤の望ましくない画分が除去できた。その後、目的の細胞集団を以下のように単離した。
【0249】
FOXP3 Treg及びCD4+CD25-従来型T細胞の単離
ヒトCD4+CD127lowCD25+制御性T細胞単離キット(#18063;StemCell)を製造元の指示に従って使用して、CD4+CD25+CD127lowTregを単離した。簡潔に言えば、CD25+細胞を、まず400~500×106個のPBMCから、EasySep(商標)Releasable RapidSpheres(商標)を使用してカラムフリーの免疫磁気陽性選択により単離した。次に、EasySep(商標)で単離したCD25+細胞から結合した磁性粒子を除去し、不要な非Tregを枯渇の標的とした。最終的に単離された画分には、高レベルのFOXP3を発現する高度に精製されたCD4+CD127lowCD25+細胞が含まれ、直ちに下流のアプリケーションに使用した。CD4+CD25-従来型T細胞を、キット#18063(StemCell)からCD4+CD25-レスポンダーT細胞を単離するための任意選択のプロトコルを選択することにより単離し、Tregと並行して機能的研究に使用した。
【0250】
単離されたTregの活性化及び培養
単離されたTreg細胞を活性化し、9日間培養した。簡潔に言えば、0日目に、Treg細胞(0.5×106)を、ヒトトランスフェリン(OZYME)を含有する、1000U/mlのIL-2(Euromedex)+100nMのラパマイシン(Sigma-Aldrich)を添加したXvivo15無血清培地を有する24ウェルプレート(Costar)に培養した。次に、CD3/CD28活性化を、Life TechnologyのDynabeads(登録商標)(ウェル当たり0.5×106ビーズ)を用いて行った。2日目、4日目、及び7日目に、1000U/mlのIL-2を添加した新鮮な培養培地を細胞に与えた。最後に、9日目に、細胞を回収し、計数し、再活性化させた。
【0251】
レンチウイルスベクターの産生及び滴定
CAR発現レンチウイルスベクター(LV)は、古典的な4プラスミドレンチウイルス系を使用して産生作製した。簡潔に言えば、HEK293T細胞(Lenti-X,Ozyme)に、CAR発現トランスファーベクター、HIV-1 Gag/pol(pMDLg/pRRE)、HIV-1 Rev(pRSV.Rev)、及びVSV-G糖タンパク質(pMD2.G)を発現するプラスミド(Didier Trono,EPFL,Switzerland)をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、ウイルス上清を採取し、遠心分離により濃縮し、アリコートして長期保存のために-80℃で凍結した。1ミリリットル当たりの形質導入単位(TU/ml)で表される感染力価は、ウイルス上清の段階希釈を用いてJurkat T細胞株の形質導入後に得られ、形質導入効率は、GFP発現をモニタリングすることにより4日後に評価した。
【0252】
形質導入プロトコル
Tregに活性化2日後にキメラ受容体(
図1のCAR構築物の模式図を参照)を形質導入した。簡潔に言えば、各ウェルに2~5×10
6形質導入単位(TU)/mlをロードすることにより形質導入を行った。37℃で6時間後、ウイルス粒子を洗浄により除去した。次いで、このプレートを5%CO
2で37℃でインキュベートした。形質導入から5日後に形質導入効率を分析した:(i)遺伝子導入効率を、フローサイトメトリーにおいてGFP陽性細胞の割合(%)を分析することにより測定し、(ii)細胞表面でCARを発現した形質導入細胞の割合(%)を、フローサイトメトリーにおいてヘマグルチニンA(HA)タグ発現またはプロテインL染色を分析することにより測定した。
【0253】
形質導入に使用したCAR構築物
CD8膜貫通(TM)ドメインと、CD3ゼータの細胞内ドメインと連結したCD28の細胞内ドメインとから構成され、IL-23Rに対して指向するscFvと会合するIL-23R CARを設計した。本試験で使用した構築物は
図1に列挙され説明される。
【0254】
形質導入Tregの表現型分析
培養9日目に、Treg表現型を、表1に列挙したマーカーを用いてフローサイトメトリーによって分析した。
【表1】
【0255】
CARの活性化アッセイ
活性化アッセイを、培養の9日目に行った。簡潔に言えば、0.05×106個のTregを、96ウェルU底プレート中に、単独で、または抗CD3/抗CD28被覆ビーズの存在下(1:1のTreg対ビーズ比)で、またはIL-23R被覆ビーズの存在下(1:1のTreg対ビーズ比)で、200μLの最終容量で播種した。37℃、5%のCO2で24時間後、細胞をCD4及びCD69について染色し、次いでフローサイトメトリーを用いて分析した。非形質導入Treg細胞と比較してCAR Treg細胞でのCD69自発的発現をモニタリングすることは、トニックシグナル伝達強度の決定を可能にする。
【0256】
T細胞増殖の抑制アッセイ
抑制分析を、培養の9日目に行った。簡潔に言えば、Tregを回収し、計数し、抗CD3/抗CD28被覆ビーズ(1:1のTreg対ビーズ比)を用いてTCRを通じて、もしくはCAR IL-23R被覆ビーズ(1:1のTreg対ビーズ比)のいずれかを通じて活性化するか、または活性化せずに維持し、自発的抑制活性を評価した。並行して、同種異系Tconvを解凍し、Dye 450で染色し、抗CD3/抗CD28被覆ビーズ(3:1のTconv対ビーズ比)で活性化させた。翌日、ビーズをTconvから除去した後、未活性化または活性化Treg(非形質導入または形質導入)と共培養した。3日目に細胞を採取し、Tconvの増殖を、フローサイトメトリーによりdye450希釈の測定を通じて評価した。Tconv増殖の阻害率(%)は以下のように計算した。
【数1】
【0257】
動物
本試験に記載された全ての手順は、地域の倫理委員会(CIEPAL)によって審査及び承認されたものである。実験は、8週齢の雌LY5.1マウスで実施した。マウスを6匹ずつの群で飼育し、各マウスは一意に識別された。動物を、換気されたケージ(タイプII(16×19×35cm、床面積=500cm2))に、以下の制御された条件下で収容した:(i)室温(22±2℃)、(ii)湿度(55±10%)、(iii)光周期(12:12時間の明暗サイクル7am:7pm)、ならびに(iv)水及び餌(参考文献2018,Harlan France)は自由摂取。実験開始前に、マウスを5日間環境に順応させた。
【0258】
DSS誘発性急性大腸炎
DSS(デキストラン硫酸ナトリウム、40kDa、MP Biomedicals)を、0日目~5日目(D0~D5)に8週齢の雌LY5.1マウスに投与した。DSS(2つの異なる濃度)を、2日ごとに新たに取り替えられる飲料水(自由摂取)に加えた。回復期(D5~D15)にはDSSを含まない新鮮な水を与えた。5日目に、10週齢のC57BL/6Jマウスの脾臓から単離した300万個のCAR陽性Tregを尾静脈注射した。マウスTregを形質導入するために使用されるCARは
図5に記載されている。マウスを、以下の表2に示されるように、体重減少、便の硬さ、血液の有無、及び便採取時間の4つのパラメータに基づいて毎日スコアリングした。
【表2】
【0259】
便は炎症性マーカー分析のために採取した。15日目に、マウスを頚椎脱臼により安楽死させ、臓器を採取してex vivo分析を行った。
【0260】
ex vivo分析
組織の消化
・結腸をPBS中で洗浄して糞便を除去し、次いでPBS 5mM EDTA中で37℃で30分間インキュベートした。結腸を、RPMI培地中で2mg/mLのコラゲナーゼD及び20μg/mLのDNAseで37℃で30分間消化した。次いで、結腸をセルストレーナーを通して破砕し、単一細胞懸濁液を得た。次に、細胞を洗浄し、3mLのPBS-2%FCSに再懸濁し、200μLを抗体染色のためにプレーティングした。
・脾臓及び腸間膜リンパ節を、セルストレーナーを通して破砕し、単一細胞懸濁液を得た。赤血球を1mLの赤血球溶解緩衝液で2分間溶解させた。次いで、細胞を洗浄し、それぞれ5mL及び1mLのPBS-2%FCS中に再懸濁し、200μLを抗体染色のためにプレーティングした。
マウス糞便中のリポカリン検出のためのELISA
糞便を毎日回収し、-20℃で凍結した。糞便試料を1mLのPBS Tween 0.1%に再懸濁し、4000rpmで20分間遠心分離した。上清を採取し、製造元の指示に従ってDuoSet ELISAマウスリポカリン2/NGAL(DY1857-05)を使用して、リポカリン検出のために1/1000でプレーティングした。
多色フローサイトメトリー分析
臓器内の細胞サブセットを、フローサイトメトリー分析のために以下のように染色した。
【表3】
【0261】
結果
形質導入効率及び細胞表面でのCAR発現
形質導入効率をGFP陽性細胞の割合(%)により評価し、CAR発現を、組換えプロテインL、免疫グロブリンカッパ軽鎖結合タンパク質、またはHAタグに対して指向する抗体を用いてモニタリングした。形質導入効率のパーセンテージ及び細胞表面でCARを発現する形質導入細胞の割合(%)の結果が表4に提供される。両方の構築物は、細胞表面で95%を超えるCAR発現をもたらした。さらに、細胞1個当たりのCAR数を表す平均蛍光強度(MFI)も同程度であった。
【表4】
【0262】
安定なTreg表現型は新規な抗IL23R CAR#2の存在下において観察される
一般に、操作されたT細胞に関する主な課題は、特にCARの高発現が望ましくない抗原非依存性CAR活性化に関連していることが示されているため、所望の表現型の維持を確実にすることである(Frigault et al.,Cancer Immunol Research(2015)3(4):356-67)。Treg表現型が増殖及びCAR結合中に変化するかどうかを評価するために、Treg同定に関連するマーカーのパネルを分析した。Helios及びFOXP3の発現の維持、ならびにTreg表現型に関連する他のマーカーを、FOXP3
+Treg上で評価した。IL-23R CAR-Tregは、増殖後、9日目にFOXP3及びHeliosの高い発現を維持し(
図2A)、IL-23R被覆ビーズを用いたCAR結合の11日後まで安定であった(
図2B)。
【0263】
新規なscFv由来CARはCAR特異的活性化を維持する
CAR#2構築物は、CAR構築物対照(CAR#1)と比較してTreg細胞の活性化バックグラウンドを減少させた。
図3に示されるように、活性化が存在しない場合のCD69
+IL-23R CAR-Treg細胞の割合(%)は、60%のCD69
+細胞をもたらしたCAR#1と比較してCAR#2ではるかに低かった。さらに、抗CD3/抗CD28被覆ビーズを使用したIL-23R CAR-Treg細胞の活性化は、CAR#2ではCD69
+細胞の6.41倍の増加をもたらし、CAR#1では1.52倍増加するのみであった。
【0264】
最後に、IL-23R被覆ビーズを使用したIL-23R CAR-Treg細胞の活性化は、CAR#2では3.6倍増加したが、CAR#1では1.33倍しか増加しなかった。これらの結果は、本開示のscFvを含むCAR構築物を発現するTreg細胞の優れたCAR媒介活性化を示す。
【0265】
CAR#2は効率的なCAR媒介抑制活性を示す
CAR#2では、対照scFvを有するIL-23R CAR構築物(CAR#1)と比較して、CAR特異的な抑制活性の誘発が観察された(
図4)。実際、
図4に示すように、CAR#1発現Treg細胞(活性化なし条件)の自発的な抑制活性は、特異的TCRまたはCAR媒介抑制活性を示すには強すぎていた。対照的に、CAR#2発現Treg細胞の刺激は、TCR結合後またはIL-23Rリガンドを用いたCAR#2活性化後のいずれにおいても、強力な抑制活性をもたらした。これらの結果は、本開示のscFvの優位性を示している。
【0266】
新規なscFv由来CARを有するTregはin vivoで活性化され、DSS誘発性IBDのマウスモデルにおいて疾患活動性指標を低下させる
マウスTreg細胞に、
図5に記載の異なる構築物を形質導入した。新規なscFv(ヒト及びマウスと交差反応性である)を含むマウスCAR#2CD28(mCAR#2)の2つのバージョン:(1)mCAR#1と同じTMドメイン(マウスCD28 TM)を含むmCAR#2aと、(2)マウスCD8のTMドメインを含むmCAR#2b(よりヒト構築物CAR#2に匹敵)を構築した。
【0267】
非形質導入(NT)、または対照scFvに由来するマウスCAR構築物(mCAR#1)もしくは本開示のscFvに由来するマウスCAR構築物(mCAR#2a及び2b)のいずれかを形質導入されたIL-23R-CARマウスTregを、短いデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性炎症性腸疾患(IBD)のマウスモデルに注射した(
図6A)。このモデルは、注射された細胞のin situでの活性化を測定するために開発され、有効性モデルではなく標的結合モデルである。
図6Bに示されるように、本開示のscFvを含むIL-23R CAR Treg(mCAR#2)は、結腸、腸間膜リンパ節、及び脾臓においてin vivoで見られる。これらのTregは、フローサイトメトリーを用いたTreg上でのCTLA-4の発現によって測定されるように、炎症部位(結腸及び腸間膜リンパ節における)において非形質導入細胞よりも有意に活性化される。興味深いことに、mCAR#2b(CD28細胞内シグナル伝達ドメインと会合したCD8 TMを含む)は、炎症を起こした臓器(結腸及び腸間膜リンパ節)でのみ有意な活性化を示し、炎症を起こしていない臓器(脾臓)では有意な活性化を示さなかった。
【0268】
DSS誘発性IBDの有効性モデル(
図7A)におけるTregの試験では、mCAR#2は疾患活動性指標の有意な低下を誘導することが示された(
図7B)。
【0269】
考察
CAR#2、IL-23R-CARリード候補(LamS4G3)を同定した。CAR#2は、CD8TM/CD28/CD3zに融合された、100個を超える潜在的なヒットを得た大規模なライブラリースクリーニングを通じて同定された抗IL-23R-scFvから構成される第2世代CARである。このCARは、トニックシグナル伝達は検出されずにIL-23Rに対して高い特異性を示し、in vitroで特異的なCAR依存的抑制活性を示した。
【0270】
実施例2:最適化されたIL-23R CAR構築物のヒトTregにおけるin vitro選択
実施例1で同定したCAR#2から出発して、プロモーター、リーダー配列、ヒンジ長、及びコドン最適化を変えることにより、いくつかの最適化が行われた。6つの異なる最適化構築物を、32の構築物マトリックスから選択し、臨床準備が整ったバックボーン(HAタグ及びGFPなし)で産生した。
【0271】
本実施例では、これらの異なる構築物を、いくつかのパラメータ、例えば、生存力、増殖倍率、Treg表現型の安定性、CAR媒介活性化、及びCAR媒介抑制に基づいて比較した。
【0272】
材料及び方法
Jurkat細胞株を発現するIL-23Rの作製
Jurkat IL23R細胞株を、Jurkat細胞においてピューロマイシン選択可能なレンチウイルスベクターを介してIL23Rを過剰発現することにより作製した。レンチウイルスベクターを産生し、Jurkat細胞に形質導入した。
【0273】
rhuIL-23Rを提示する人工APCの作製
Dynabeads(M-270 Epoxy;ThermoFisher Scientific)を、製造元の指示に従ってDynabeads抗体結合キット(Life technology,Thermo fisher,カタログ番号14311D)を用いて組換えヒトIL-23R Fcキメラタンパク質(R&D、カタログ番号1400-IR-050)と結合させた。
【0274】
PBMC及び制御性T細胞の単離
Treg及びTconvを、EFS(Marseille)の健康なボランティアの血液から得たバフィーコートから新たに単離した。簡潔に言えば、供血の翌日、末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll勾配遠心分離によりバフィーコートから単離した。CD4+/CD25+/CD127low nTreg細胞を以下の手順で単離した:CD25+細胞を、EasySep(商標)Releasable RapidSpheres(商標)を用いてカラムフリー免疫磁気陽性選択により単離する。次に、EasySep(商標)で単離したCD25+細胞から結合した磁性粒子を除去し、不要な非Tregを枯渇の標的とした。最終的に単離された画分には、高レベルのFOXP3を発現する高度に精製されたCD4+CD127lowCD25+細胞が含まれた。
【0275】
形質導入
本試験で使用した構築物は表5に記載される。
【表5】
【0276】
形質導入は、24ウェルプレートで行った。簡潔に言えば、単離及び活性化の2日後に、各ウェルから培地の2/3を除去し、各構築物の2~5×10E6TU/mlを各ウェルに添加した。37℃で6時間後、各ウェルに2/3の新鮮な培地を加え、各ウェルをホモジナイズし、チューブに回収し、遠心分離した。上清を除去し、各ペレットを1000U/mlのIL-2を添加した新鮮な培地に再懸濁させた後に、新たなプレートに播種した。形質導入の4~5日後、フローサイトメトリーにおけるIgG*陽性細胞の割合(%)の分析によって有効性を測定した。
【0277】
培養の9日目に、STF-TRB-01-E009 V02の手順に従ってTreg表現型を分析した。この分析に使用されるマーカーは、更新された表6に列挙されている。
【表6】
【0278】
活性化アッセイ
培養の10日目に、活性化アッセイを行った。簡潔に言えば、0.05×10^6個のCAR-Tregを、PL96U底に、単独で、または抗CD28/抗CD3被覆ビーズの存在下(1:1のTreg対ビーズ比)、またはIL-23R被覆ビーズの存在下(1:1のTreg対ビーズ比)、または細胞表面に低レベルのIL-23Rを発現するJurkat(Jurkat 572)もしくは高レベルのIL-23Rを発現するJurkat(Jurkat 573)の存在下で播種した。37℃、5%のCO2で24時間後、細胞をCD4及びCD69について染色し、次いでフローサイトメトリーで分析した。
【0279】
抑制アッセイ
抑制アッセイを10日目に行い、CAR-Tregを採取し、計数し、抗CD28/抗CD3被覆ビーズ(2:1のTreg対ビーズ比)を用いてTCRを通じて、あるいはIL-23R被覆ビーズを用いて(1:1のTreg対ビーズ比)、または細胞表面に低レベルのIL-23Rを発現するJurkat細胞株(Jurkat 572)もしくは高レベルのIL-23Rを発現するJurkat細胞株(Jurkat 573)を用いてCARを通じて活性化するか、または活性化せずに維持し、それらの機能活性についての基礎値を評価した。並行して、同種異系Tconvを解凍し、Dye 450で染色し、抗CD28/抗CD3被覆ビーズ(3:1のTconv対ビーズ比)で活性化させた。翌日、ビーズをTconvから除去した後、未活性化または活性化Tregと共培養した。共培養の3日後、Tconvの増殖をフローサイトメトリーで分析した。
【0280】
結果
同程度の形質導入効率
LowからHighまでのCAR発現レベルをカバーする選択されたCARは、検出可能なバックグラウンド/トニックシグナル伝達を有さず、異なる生物学的エレメント(シグナルペプチド/コドン/リンカー/WPRE)をカバーしている。その試験で使用した構築物は、臨床準備が整ったバックボーン(HAタグ及びGFPなし)で作製及び産生した。抗IgG抗体を用いてIgGが陽性である細胞の割合(%)を測定するフローサイトメトリーにおいて形質導入効率を評価し、細胞表面でのCAR発現レベルをIgG染色の平均蛍光強度(MFI)によって評価した(
図8)。異なる構築物を40~50%で形質導入した。
【0281】
異なる最適化構築物は、培養の最初のサイクル後に同じ生存率及び増殖倍率を示す
異なる変化が培養中のCAR-Tregの挙動に及ぼす影響についても評価した。いかなる変化であっても、異なる構築物を形質導入されたTregは、9日目に同じ生存率レベル(
図9、左側)と増殖倍率(
図9、右側)を示した。
【0282】
CAR#3は、活性化のバックグラウンドが最も低く、CAR活性化後のシグナル対ノイズが最も高いことを示した。
【0283】
異なる最適化がCAR-Tregの活性化に及ぼす影響(
図10)を評価した。CAR#3、CAR#4、CAR#5、CAR#6、及びCAR#7のCAR媒介活性化のプロファイルは、非最適化構築物(CAR#2)のものに近似していた。しかしながら、CAR#3の活性化のバックグラウンドは、最良のシグナル対ノイズを示すCAR#2のものよりもわずかに低かった。
【0284】
有意なCAR媒介抑制
CAR構築物のCAR媒介抑制活性を測定した(
図11)。CAR結合を、人工APC(IL-23R被覆ビーズ;bIL-23R)、または低発現(Jurkat 572)もしくは高発現(Jurkat 573)Jurkat細胞株のいずれかを用いて誘導した。陽性対照として、ポリクローナル活性化(抗CD3/抗CD28被覆ビーズ;ビーズCD3/28)を使用した。自発的抑制は、いかなる活性化も伴わず(none)に測定する。活性化データと同様に、CAR#3、CAR#4、CAR#5、CAR#6、及びCAR#7のプロファイルは、非最適化構築物CAR#2のものに近似する。全ての構築物は、人工APC(
図11A及び11B)または高発現IL-23R Jurkat細胞株(
図11A)を用いてCARが結合している場合に、ロバストなCAR媒介抑制活性を媒介することができる。全ての構築物は、非常に低い自発的抑制活性を示した。
【0285】
曲線下面積をCAR#2及びCAR#3について計算した(
図12)。AUC計算は、Tregが、細胞表面で高レベルのIL-23Rを発現するJurkat(Jurkat 573)と結合している場合に、CAR#3がCAR#2と同じCAR媒介抑制を示したことを明らかにしている。しかしながら、CAR#3は、CAR Tregが低レベルを発現するJurkat(Jurkat 572)と結合した場合、CAR#2よりも低いCAR媒介抑制を示した。このプロファイルは、オフターゲット効果を減少させるはずである。
【0286】
Treg安定性-全ての構築物はTreg表現型の良好な安定性を示した
可塑性は、Tregの十分に記載された特徴である。Treg同定の主なマーカーは、CD4、CD25、CTLA-4、FoxP3及びHeliosである。CAR Tregの表現型安定性を測定するために、これらのマーカーの発現を、最初の増殖サイクルの終了時(9日目)にフローサイトメトリーによって分析した(
図13)。主なTregマーカーの変化は、異なるCARを使用した後に観察されなかった。
【0287】
考察
異なる構築物間の差はごくわずかであり、このことは標準的なCAR#2が異なる変化を引き受けるのに十分ロバストであることを示している。
【0288】
しかしながら、CAR#3構築物は、以下のパラメータに基づいて際立っていた:
-CAR#2よりも低いトニックシグナル伝達が、より高いシグナル対ノイズをもたらす(
図10)
-Tregが細胞表面で高レベルのIL-23Rを発現するJurkatと結合している場合にはCAR#2とCAR媒介抑制が同じであるが、CAR Tregが低レベルのIL-23Rを発現するJurkatと結合している場合にはCAR#2よりもCAR媒介抑制が低い(
図12)。これは、オフターゲットを減少させるはずである。
【0289】
実施例3:IL23R-CAR:scFv(LamS4G3)親和性の特性評価
材料及び方法
示されたscFVを哺乳動物293t細胞で産生し、精製してビオチン化した。次に、ビオチン化scFvを、PBS中でマウスまたはヒトIL23Ra被覆ビーズと共に25℃で30分間インキュベートした。低温洗浄後、結合したIL23R結合scFVがAPC標識ストレプトアビジンとのインキュベーションにより検出され、フローサイトメーターで試料を分析した。各条件からの蛍光強度中央値に基づいてEC50を計算した。計算、カーブフィッティング、及びEC50計算は、Graphpad Prismを介して行った。
【0290】
結果
結合実験により、ヒトIL23Rに対してはEC50が37.6nMと高い親和性で結合し、マウスIL23Raに対してはEC50が53.1nMとほぼ同様の親和性であることが明らかになった。対照的に、基準scFv(これもまた交差反応性である)は、ヒトIL23Rに対しては4.4Nmの高い親和性で結合し、マウスIL23Rに対しては13.1nMと、より顕著な差が生じた(
図14)。
【0291】
これらの例示的な結果では、本開示のCARは、IL23Rのヒト及びマウスホモログ間で類似した結合プロファイルを呈する。これらの例示的な結果では、本開示のCAR#2は、ヒトIL23RとマウスIL23R間の結合親和性の差が約1.4倍を示す一方で、CAR#1は、ヒトIL23RとマウスIL23R間の結合親和性の差が約3倍を示す。これらの例示的な結果は、本開示のCAR#2が、CAR#1と比較してより類似した親和性で、ヒト及びマウスIL23Rに結合することを示している。この類似性は、マウス前臨床モデルにおけるCAR#2の使用がヒトIL23Rとのその相互作用をより代表するものとなり得ることを示唆している。
【0292】
実施例4:scFvシグナル伝達の安定性
材料及び方法
4つの異なる構築物を、異なる発現カセット(PGKまたはEF1aプロモーター、+/-WPRE Mut6)を用いて作製し、レンチウイルス形質導入によって初代ヒトTregに形質導入した(
図15)。
【0293】
結果
選択されたIL-23R scFvは、初代Treg細胞における類似の発現レベル下で、安定したシグナル伝達及び低バックグラウンドを示した(
図16)。
【0294】
発現の増加は、細胞表面でのCARの蓄積の増加と相関する。発現レベルが5倍変化した一方で、未改変の対照細胞(CARトニックシグナル伝達グラフの濃い灰色の水平線)に対するバックグラウンドの違いは観察されなかった(
図16)。さらに、全てのCAR発現条件は、CAR依存的活性化に対して、ならびにCD3/CD28ビーズによる対照活性化に対して同様に強く反応した(
図16)。
【表7】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-02-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】