(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ナノ粒子を含有する核酸
(51)【国際特許分類】
A61K 9/51 20060101AFI20240709BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240709BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240709BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240709BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240709BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240709BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240709BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240709BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240709BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K9/51 ZNA
A61K47/28
A61K47/24
A61K47/42
A61K47/14
A61K31/7088
A61K48/00
A61K31/7105
A61K31/713
A61P37/02
A61P35/00
A61P37/06
A61P9/00
C12N15/88 Z
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579371
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2022067073
(87)【国際公開番号】W WO2022268913
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523480565
【氏名又は名称】バイオ-トリップ ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デア メール,ロイ
(72)【発明者】
【氏名】マルダー,ウィレム ジェイ.エム.
(72)【発明者】
【氏名】クルザ,エヴェリナ
(72)【発明者】
【氏名】ホフストラート,スティン
(72)【発明者】
【氏名】アンベルゲン,トム
(72)【発明者】
【氏名】ズウォルスマン,ロビー コルネリス
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,ヘンリクス マリー
(72)【発明者】
【氏名】フランセン,ピーター ミシェル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC27
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE41
4C076FF70
4C076GG12
4C084AA13
4C084MA38
4C084NA13
4C084ZA36
4C084ZB07
4C084ZB08
4C084ZB26
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA38
4C086NA13
4C086ZA36
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB26
(57)【要約】
本明細書では、リン脂質、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、ステロール、カチオン性脂質又はイオン化可能なカチオン性脂質及び核酸を含むナノ粒子、並びにそのようなナノ粒子を含む組成物及びそのようなナノ粒子を調製する方法が開示される。ナノ粒子は、自然免疫応答を刺激又は阻害することによる疾患の治療などにおいて、医薬として使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層に囲まれたコアを含むナノ粒子であって、
前記コアは、核酸及びカチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質を含み、
前記表面層は、
リン脂質、
ステロール、及び
アポリポタンパク質若しくはアポリポタンパク質模倣物又はそれらの組合せ
を含む、ナノ粒子。
【請求項2】
前記アポリポタンパク質、アポリポタンパク質模倣物、又はそれらの組合せが、前記表面層の外面に位置する、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記ナノ粒子コアが、充填剤、好ましくはトリアシルグリセリド及びコレステロールアシルエステル又はそれらの組合せから選択される充填剤を更に含む、請求項1又は2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記トリアシルグリセリドがトリカプリリンであり、並びに/又は前記コレステロールアシルエステルがカプリル酸コレステリル及び/若しくはオレイン酸コレステリルである、請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記核酸が、RNA、DNA又は核酸類似体である、請求項1から4のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記RNAが、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、piwi相互作用RNA(piRNA)、核内低分子RNA(snoRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、tRNA由来低分子RNA(tsRNA)、調節低分子RNA(srRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、修飾mRNA、リボソームRNA(rRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)若しくはガイドRNA(gRNA)、又はそれらの組合せ及び/又はそれらの修飾である、請求項5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記DNAが、一本鎖又は二本鎖DNAである、請求項5に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記核酸がアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ホスホジエステル骨格又は2’リボースの修飾を含むヌクレオチド又はヌクレオシド類似体からなる一本鎖DNA又はRNAである、請求項1から5のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記ヌクレオチド又はヌクレオシド類似体が、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、モルフォリノ又はペプチド核酸(PNA)から選択される、請求項8に記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記アポリポタンパク質が、ApoA1、ApoA1-Milano、ApoA2、ApoA4、ApoA5、ApoB48、ApoB100、ApoC-I、ApoC-II、ApoC-III、ApoC-IV、ApoD、ApoE、ApoF、ApoH、ApoL、ApoM及びそれらの組合せから選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項11】
前記アポリポタンパク質が、ApoA1、ApoA2、ApoA4、ApoA5、ApoB100、ApoC-I、ApoC-II、ApoC-III、ApoC-IV、ApoE及びそれらの組合せから選択される、請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項12】
前記アポリポタンパク質が、ApoA1、ApoA4、ApoA5、ApoB100、ApoC-III、ApoE及びそれらの組合せから選択される、請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項13】
前記アポリポタンパク質が、ApoA1、ApoB100、ApoE及びそれらの組合せから選択される、請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項14】
前記ナノ粒子中の前記アポリポタンパク質が、
-調製時及び保存時の凝集を防止するため、
-インビボ安定性を改善するため、
-自然なステルス性を提供するため、及び/又は
-免疫細胞との相互作用を促進するため
に使用される、請求項1から13のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項15】
前記カチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質が、長鎖アルコールのイオン化可能なカチオン性エステル、ジグリセリドのイオン化可能なカチオン性エステル若しくはステロールのイオン化可能なカチオン性エステル、又はそれらの組合せから選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項16】
前記イオン化可能なカチオン性脂質が、式(I)、(II)、(III)、(IV)又は(V)のいずれか1つに記載の分子であって、
【化35】
式中、ICGは
【化36】
であり、波線は式(I)、(II)、(III)、(IV)若しくは(V)の化合物との結合点を示し、
pは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11から選択される整数であり、
各R
1は、直鎖又は分岐鎖C1~C19アルキル、直鎖又は分岐鎖C1~C19アルケニル、アリール、アリーレン-アルキル及びアルキレン-アリール基からなる群から独立して選択され、前記アルキル又はアルケニル基は、場合により、O及びNから独立して選択される5個までのヘテロ原子を含み、
R
2は、水素、メチル、エチル及び-CH
2-O-C(O)-R
1aからなる群から選択され、
R
3は、水素、アリール、アリーレン-アルキル、アルキレン-アリール及び直鎖C1~C6アルキル基からなる群から選択され、
R
1aは、直鎖又は分岐鎖C1~C19アルキル、直鎖又は分岐鎖C1~C19アルケニル、アリール、アリーレン-アルキル及びアルキレン-アリール基からなる群から選択され、前記アルキル又はアルケニル基は、場合により、O及びNから独立して選択される5個までのヘテロ原子を含み、
各R
xは、メチル、エチル、プロピル及び-CH
2-CH
2-OHからなる群から独立して選択され、
各R
y基は、水素、直鎖又は分岐鎖C1~C18アルキル、アリール、アリーレン-アルキル又はアルキレン-アリール基からなる群から独立して選択され、前記アルキル基は、場合により、O及びNから独立して選択される5個までのヘテロ原子を含む、分子、
又はその回転異性体、互変異性体、立体異性体若しくは位置異性体である、請求項1から15のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項17】
前記ステロールが、コレステロール、デスモステロール、スチグマステロール、β-シトステロール、エルゴステロール、ホパノイド、ヒドロキシステロイド、植物ステロール、ステロイド、水素化コレステロール、カンペステロール、動物ステロール、又はそれらの組合せから選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項18】
前記リン脂質が、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン及びホスファチジルグリセロール又はそれらの組合せから選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項19】
前記リン脂質中のアシル基の少なくとも一方、より好ましくは両方が長鎖脂肪酸である、請求項18に記載のナノ粒子。
【請求項20】
前記長鎖脂肪酸が、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸又はそれらの組合せから選択される、請求項19に記載のナノ粒子。
【請求項21】
前記リン脂質が、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジラウロイルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジラウロイルホスファチジルセリン(DLPS)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から20のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項22】
前記アポリポタンパク質の量が、0.08~2.0モル%、例えば0.10~2.0モル%の範囲であり、及び/又は
前記リン脂質の量が、5~90モル%、例えば15~90モル%の範囲であり、及び/又は
前記ステロールの量が、2.5~65モル%、例えば2.5~50モル%の範囲であり、及び/又は
前記カチオン性若しくはイオン化可能なカチオン性脂質の量が、5.0~80モル%、例えば8.0~80mol%の範囲であり、前記モル百分率が、前記ナノ粒子中の前記アポリポタンパク質、前記リン脂質、前記ステロール及び前記カチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質の合計量のみに基づく、
請求項1から21のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項23】
前記アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物の量が、0.1~90重量%の範囲であり、
前記核酸の量が、0.01~90重量%の範囲であり、
前記リン脂質の量が、0.1~95重量%の範囲であり、
前記ステロールの量が、0.1~95重量%の範囲であり、並びに/又は
前記カチオン性及び/若しくはイオン化可能なカチオン性脂質の量が、0.1~95重量%の範囲であり、
これらの重量百分率が、前記アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、前記核酸、前記リン脂質、前記ステロール並びに前記カチオン性及び/又はイオン化可能なカチオン性脂質の合計量に基づく、
請求項1から22のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項24】
モル重量百分率に基づくアポリポタンパク質とリン脂質との比が、1:25~1:400、より好ましくは1:50~1:200、更により好ましくは1:75~1:150である、請求項1から23のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項25】
重量に基づくアポリポタンパク質とリン脂質との比が、2:1~1:10、より好ましくは1:1~1:5、更により好ましくは1:1.5~1:4である、請求項1から24のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項26】
平均サイズが10~100nm、例えば30~100nmである、請求項1から25のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項27】
請求項1から26のいずれか一項に記載のナノ粒子と、生理学的に許容され得る担体とを含む、組成物。
【請求項28】
前記組成物が医薬組成物である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
医薬としての使用のための、請求項1から26のいずれか一項に記載のナノ粒子、又は請求項27若しくは28に記載の組成物。
【請求項30】
前記使用が、核酸を骨髄区画又は脾臓に送達することを含む、請求項29に記載の使用のためのナノ粒子又は組成物。
【請求項31】
自然免疫応答を刺激又は阻害することによって疾患の治療に使用するための、請求項1から26のいずれか一項に記載のナノ粒子、又は請求項27若しくは28に記載の組成物。
【請求項32】
前記疾患が、癌、心血管疾患、自己免疫障害又は異種移植片拒絶である、請求項31に記載の使用のためのナノ粒子又は組成物。
【請求項33】
ナノ粒子を調製するための方法であって、
a)有機溶媒中の脂質成分と水性緩衝液中の核酸とを迅速に混合して脂質ナノ粒子を調製する工程であって、前記脂質成分が、リン脂質、ステロール、カチオン性脂質又はイオン化可能なカチオン性脂質を含み、前記水性緩衝液のpHが5.0以下である、脂質ナノ粒子を調製する工程と、
b)前記脂質ナノ粒子と、アポリポタンパク質、アポリポタンパク質模倣物、又はそれらの組合せとを迅速に混合して、6.0~8.0のpHで前記ナノ粒子を調製する工程と、を含む、方法。
【請求項34】
前記ナノ粒子が請求項33に記載の方法によって得ることができるか又は得られる、請求項1から26のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項35】
細胞に核酸を導入するためのインビトロ又はエクスビボ方法であって、請求項1から26のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項27若しくは28に記載の組成物を細胞と接触させることを含む、インビトロ又はエクスビボ方法。
【請求項36】
細胞に核酸を導入するためのインビボ方法であって、請求項1から26のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項27若しくは28に記載の組成物を細胞と接触させることを含む、インビボ方法。
【請求項37】
対象への核酸のインビボ送達において使用するための、請求項1から26のいずれか一項に記載のナノ粒子、又は請求項27若しくは28に記載の組成物。
【請求項38】
核酸のインビボ送達のための方法であって、請求項1から26のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項27若しくは28に記載の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項39】
自然免疫応答を刺激又は阻害することによって、治療を必要とする対象における疾患又は障害を治療するための方法であって、治療有効量の請求項1から26に記載のナノ粒子又は請求項27若しくは28に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項40】
前記疾患が、癌、心血管疾患、自己免疫障害又は異種移植拒絶から選択される、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸治療薬の分野に関し、標的部位での核酸の細胞内送達のための新規かつ進歩性を有するナノ粒子を提供する。本発明は更に、例えば自然免疫応答を刺激又は阻害することによる疾患の治療において、ナノ粒子を使用する治療方法に関する。本発明は更に、ナノ粒子を使用して細胞内に核酸を導入するためのインビボ、インビトロ又はエクスビボ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低分子アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、低分子干渉RNA(siRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)及び他の種類などの核酸治療薬(NAT)は、遺伝子発現を調節する可能性を有する革新的な新しい種類の薬剤である。近年、ASO、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)-siRNAコンジュゲート、siRNA又はmRNAを含有する脂質ナノ粒子(LNP)、及びプラスミドDNA(pDNA)を含有するいくつかのウイルスベクターを含む、インビボ適用のためのいくつかの核酸ベースの製剤が承認されている。加えて、後期臨床試験にはいくつかのNATがある。更に、いくつかの遺伝子操作されたエクスビボ細胞治療薬製剤が承認されている。
【0003】
非経口投与後の核酸の治療適用は困難である。核酸の種類によってサイズ及び物理化学的特性が異なるが、共通の特徴としては、サイズが大きく、高分子であり、負電荷を帯びていることである。その結果、全身投与すると、腎臓濾過及びヌクレアーゼの分解により、核酸が循環から急速に除去される。加えて、NATは細胞内で作用するが、細胞膜を容易に通過することができない。最後に、外因性核酸の投与は免疫応答を誘発する。このことは有利であり得るが(例えば、ワクチン開発のために)、通常、核酸の迅速なクリアランス及び有害作用に寄与する。
【0004】
これらの課題を克服するために、全ての核酸治療薬は、化学修飾及び/又はナノテクノロジーベースの送達システムに依存する。全ての承認されたNATは、細胞内送達を促進し、その後、非経口投与後に治療効果を誘導するための化学修飾及び/又はナノテクノロジープラットフォームに依存している。
1)ASOは、安定性を高め、免疫刺激効果を低下させ、有効性を高めるために高度に化学修飾される。ASOは、肝細胞を標的とするために皮下投与されるか、又は中枢神経系の細胞を標的とするために髄腔内投与される。
2)GalNAc-siRNAコンジュゲートは、ASOと同様に修飾され、皮下投与される。GalNAc部分は、肝細胞におけるアシアロ糖タンパク質受容体媒介性取り込みを確実にする。
3)脂質ナノ粒子(LNP)は、直径が約50~100nmであり、全身、皮内又は筋肉内に投与することができる。全身投与後、LNPは肝細胞に効率的に蓄積し、遺伝子サイレンシング(siRNA)又はタンパク質産生(mRNA)の機会を提供する。皮内又は筋肉内投与後、LNPは、免疫細胞、例えばワクチン目的のために利用することができる抗原提示細胞によって取り込まれる。LNPは、mRNA治療の現在の至適基準であり、インビボでの遺伝子編集用途のための標準的な送達プラットフォームにもなる可能性が高い。LNPは、過敏反応及び/又はアナフィラキシーに関連している合成ポリエチレングリコール(PEG)結合脂質を含有する。
4)ウイルス送達系、例えばアデノウイルス、レンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、DNAを送達するための効果的なビヒクルである。ウイルスベクターは、それらの限られたペイロード容量及び免疫原性を特徴とする。しかしながら、眼などの免疫特権組織では、ウイルスベクターがNATの現在の至適基準を構成する。ウイルスベクターは、エクスビボ治療薬(例えば、CAR T)のために広く使用されるか、又はワクチン目的のために、肝臓の細胞を標的とするために静脈内投与され、網膜の細胞を標的とするために硝子体内/網膜下に投与されるか、又は筋肉内に投与される。
【0005】
ウイルスベクター又はLNP-mRNAベースのワクチンを除いて、承認された核酸治療薬の大部分は、免疫療法以外の適応症のために開発されている。したがって、治療用核酸を骨髄区画に送達することは依然として困難である。更に、核酸分子の化学修飾又はウイルス送達は、本質的に免疫系の望ましくない活性化のリスクを有し、NATの分解又はクリアランスをもたらす。
【0006】
例えば、核酸を担持するナノ粒子は、例えば、非カチオン性脂質及び核酸と組み合わせたカチオン性脂質の使用を記載する国際公開第2009/127060号に記載されている。カチオン性脂質は核酸を中和し、対象における核酸の非標的化送達に使用され得るナノ粒子の形成を可能にする。これらのナノ粒子の欠点は、骨髄区画を標的化することができないことである。
【0007】
他のシステム、例えば国際公開第2019/103998号には、骨髄区画を標的化することができるナノ生物製剤が記載されており、このナノ生物製剤は、リン脂質及びApoA1並びに低分子薬物を含む。これらのナノ生物製剤の欠点は、疎水性コアのために、極性構造、例えば核酸、例えばDNA及びRNAの取り込みができないことである。
【0008】
したがって、骨髄区画への治療用核酸の改善された送達システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、骨髄区画への核酸カーゴの送達を可能にするナノ粒子を最初に開発した。より詳細には、本発明者らは、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、リン脂質、ステロール、カチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質、並びに核酸、例えばsiRNA又はmRNAを含む安定な脂質ベースのナノサイズ製剤(直径約10~200nm)を開発した。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、ナノ粒子のコアが、(イオン化可能な)カチオン性脂質と相互作用する核酸の集合体を含み、このコアが、表面バリアとして機能するアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、リン脂質及びステロールを含む外側保護表面又は脂質シェル内にパッケージングされ、埋め込まれていると考えている。
【0010】
核酸は、ポリエチレン-グリコール(PEG)などのポリマーの合成(非天然)親水性ポリマー又は(脂質)コンジュゲートを必要とせずに、本発明のナノ粒子に適切かつ安定に組み込まれる。
【0011】
更に、本発明のナノ粒子はまた、そのような合成(非天然)親水性ポリマー又はそのようなポリマーの(脂質)コンジュゲートが存在しない場合でも、制御不能に凝集及び/又は融合しない。
【0012】
加えて、本発明のナノ粒子は、ナノ粒子の外面におけるアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物の存在の結果として、骨髄系細胞及び免疫系に関連する他の細胞に対する標的化能力を有する。
【0013】
更に、本明細書で教示されるナノ粒子は、安定であり、毒性が低いか、又は非毒性であり、高い核酸保持及び高い核酸活性を有する。
【0014】
本発明者らは更に、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物ベースのナノ粒子に核酸を首尾よく組み込むための制御製剤プロセスを開発した。
【0015】
したがって、本発明の第1の態様は、表面層に囲まれたコアを含むナノ粒子を提供し、
コアは、核酸及びカチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質を含み、
表面層は、
リン脂質、
ステロール、及び
アポリポタンパク質若しくはアポリポタンパク質模倣物又はそれらの組合せ
を含む。
【0016】
本発明は更に、本発明によるナノ粒子と生理学的に許容され得る担体とを含む組成物に関する。
本発明は更に、医薬として使用するための本発明によるナノ粒子又は組成物に関する。
【0017】
本発明は更に、自然免疫応答を刺激又は阻害することによって疾患の治療に使用するための本発明によるナノ粒子又は組成物に関する。
【0018】
本発明は更に、ナノ粒子を調製するための方法であって、
a)有機溶媒中の脂質成分と水性緩衝液中の核酸とを迅速に混合して脂質ナノ粒子を調製する工程であって、脂質成分が、リン脂質、ステロール、カチオン性脂質又はイオン化可能なカチオン性脂質、及び場合により充填剤材料、好ましくはトリグリセリドを含み、pH5.0以下である、脂質ナノ粒子を調製する工程と、
b)脂質ナノ粒子(a)の下で調製したものと、アポリポタンパク質、アポリポタンパク質模倣物、又はそれらの組合せとを迅速に混合して、6.0~8.0のpHでナノ粒子を調製する、工程と、
を含む、方法に関する。
【0019】
本発明は更に、細胞に核酸を導入するためのインビトロ又はエクスビボ方法であって、本発明によるナノ粒子又は組成物を細胞と接触させることを含む、インビトロ又はエクスビボ方法に関する。
【0020】
本発明は更に、本発明による方法によって得ることができるか又は得られる本発明によるナノ粒子に関する。
【0021】
本発明は更に、細胞に核酸を導入するためのインビボ方法であって、本発明によるナノ粒子又は組成物を細胞と接触させることを含む、インビボ方法に関する。
【0022】
本発明は更に、対象への核酸のインビボ送達に使用するための本発明によるナノ粒子又は組成物に関する。
【0023】
本発明は更に、核酸のインビボ送達のための方法であって、本発明によるナノ粒子又は組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。
【0024】
本発明は更に、自然免疫応答を刺激又は阻害することによって、治療を必要とする対象における疾患又は障害を治療するための方法であって、治療有効量の本発明によるナノ粒子又は組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】核酸送達のための、本発明の特定の実施形態によるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)プラットフォーム技術の概略図である。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、そのようなRNA-aNPは、任意の充填剤材料(例えばトリグリセリド)及び(イオン化可能な)カチオン性脂質によって複合体化されたRNAなどの核酸を含有する疎水性コアから構成されると考えられる。疎水性コアは、リン脂質及びステロールを含有する表面層又はバリア、場合によっては単層によって封入及び遮蔽される。脂質ナノ粒子の表面はまた、凝集を防止し、粒子安定性を提供し、天然のステルス性を提供し、及び/又は免疫細胞との相互作用を促進するための構造的完全性のためのアポリポタンパク質を含む。
【0026】
【
図2】本明細書に記載のRNAなどの核酸を含有するアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)を調製するための本発明の特定の実施形態による例示的な方法の概略図である。
【0027】
【
図3】本発明の特定の実施形態によるアポリポタンパク質ナノ粒子(aNP)中のsiRNA保持及びアポリポタンパク質を含まない比較例ナノ粒子(NP)の不安定性を示す図である。(A)代表的なsiRNAを含有するaNP(siRNA-aNP)18及び34を、
図2に示される調製手順に従って調製した(白色バー)。更に、アポリポタンパク質A1が製剤に組み込まれる手順の第2の工程を省略することによって比較NPを調製した(黒色バー)。製剤化の1日後にリボグリーン(Ribogreen)アッセイを使用してRNA保持を決定した。(B)アポリポタンパク質A1が組み込まれていない比較例siRNA-NP製剤18の代表的な画像。(C)比較例siRNA-NP製剤18の代表的なクライオ透過型電子顕微鏡写真(スケールバー50nm)。
【0028】
【
図4】本発明の特定の実施形態によるsiRNAを含有するアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)(siRNA-aNP)の脂質組成は、それらの物理化学的特性に影響を及ぼし、最適な特性を有するsiRNA-aNPを得るために最適化することができる。(A)製剤化の1日後、ライブラリの個々のsiRNA-aNP製剤の物理化学的特性を、動的光散乱(DLS)を使用して評価した場合の(i)粒径(z平均)及び(ii)粒径分散性、(iii)リボグリーン(Ribogreen)アッセイを使用したsiRNA保持、(iv)比色タンパク質定量アッセイを使用したアポリポタンパク質A1(apo-A1)、並びに標準比色定量アッセイを使用した(v)コレステロール及び(vi)リン脂質回収に従って決定した。1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)又は1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)のいずれかを使用した両方の製剤タイプについてデータを示す。(B)製剤のトリグリセリド含有量によって示される、製剤化1日後の動的光散乱(DLS)を使用した(i)粒径(数平均)及び(ii)粒径分散性によるライブラリの個々のsiRNA-aNP製剤の分析。(C)製剤のN/P比によって示される、製剤化1日後の動的光散乱(DLS)を使用した(i)粒径(数平均)及び(ii)粒径分散性によるライブラリの個々のsiRNA-aNP製剤の分析。N/P比は、負に帯電した核酸リン酸(P)基に対するイオン化可能なカチオン性材料の正に帯電可能なアミン(N=窒素)基の使用される比である。
【0029】
【
図5】本発明の特定の実施形態によるsiRNAを含有するアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)(siRNA-aNP)の脂質組成が、これらのaNPの形態及びサイズに影響を及ぼすために使用することができることを示す代表的なクライオ透過型電子顕微鏡写真。ライブラリの個々のsiRNA-aNP製剤全てを、FEI TITAN 300kVを使用してクライオ電子透過電子顕微鏡検査に供して、粒径、形態及び製剤均一性(スケールバー50nm)を決定した。
【0030】
【
図6】ホタルルシフェラーゼsiRNAを含有する本発明の特定の実施形態によるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)(siRNA-aNP)は、インビトロで強力なレポーター遺伝子発現ノックダウンを誘導する。(A)安定した二重レポータールシフェラーゼ発現(ホタル及びウミシイタケルシフェラーゼ)のためにpmirGLOプラスミド(Promega)でトランスフェクトしたマウスRAW264.7マクロファージを、ホタルルシフェラーゼ(Fluc)siRNAを含有するライブラリの個々のsiRNA-aNP製剤に48時間曝露した。発光アッセイは、製造業者のプロトコル(Dual-Gloルシフェラーゼアッセイシステム、Promega)に従って実施した。非特異的siRNAを含有する対照siRNA-aNP製剤についてデータを補正する。(B)ライブラリの個々のsiRNA-aNP製剤のリン脂質タイプ及びトリグリセリド含有量に従って示されたホタルルシフェラーゼ発現ノックダウンデータ。(C)ライブラリの個々のsiRNA-aNP製剤のリン脂質タイプ及びN/P比に従って示されたホタルルシフェラーゼ発現ノックダウンデータ。N/P比は、負に帯電した核酸リン酸(P)基に対するイオン化可能なカチオン性材料の正に帯電可能なアミン(N=窒素)基の使用される比である。
【0031】
【
図7】放射性標識siRNAを含有する本発明の特定の実施形態によるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)(siRNA-aNP)は、マウスにおける静脈内投与後に脾臓及び骨髄を含む造血組織に局在する。(A)マウスにおける静脈内投与後のsiRNA-aNPの生体内分布。C57BL/6マウス(n=6/製剤)に、本発明のsiRNA-aNP製剤又はジルコニウム89放射性標識非特異的siRNAを含有する比較例LNP製剤
#を2mg/kg siRNAの用量で静脈内注射した。注射の24時間後、マウスを屠殺し、ガンマ線計測による定量分析のために器官を収集した。データは、組織1グラム当たりの%注射用量(%ID/g)の平均±SDとして提示され、チューキーの事後検定による二元配置分散分析によって分析される。
*はp値<0.05を示し、
****はp値<0.0001を示す。(B)生体内分布の結果は、組織1グラム当たりの%注射用量(%ID/g)の骨髄対肝臓の比として示した。
#LNP-siRNA比較例は、siRNAを含む、Dlin-MC3-DMA、DSPC、コレステロール及びPEG-DMG(50:38.5:10:1.5モル%)から構成される。
【0032】
【
図8A】本発明の特定の実施形態によるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)は、mRNAを封入して安定な製剤を得て、インビトロで遺伝子発現を誘導することができる。(A)ホタルルシフェラーゼメッセンジャーRNA(mRNA)含有aNP製剤を、
図2に記載される方法を使用して調製した。本発明の特定の実施形態によるmRNA-aNP製剤及びLNP-mRNA比較例製剤
#を、動的光散乱(DLS)を使用してそれらの粒径及び粒径分散性に関して特徴付けた。リボグリーン(Ribogreen)アッセイを使用して、mRNA捕捉効率を評価した。(B)代表的なmRNA-aNPなクライオ透過型電子顕微鏡写真(スケールバー50nm)。(C)ヒトHEK293細胞をホタルmRNA含有aNP及び比較例LNPに24時間曝露した。レポーター遺伝子発現(左)を発光によって決定し、細胞生存率(右)をMTTアッセイによって決定したところ、mRNA-aNPは、インビトロで毒性を誘導することなく用量依存的なホタルルシフェラーゼ発現を誘導することが示された。(D)マウスRAW264.7マクロファージをホタルmRNA含有aNPに24時間曝露した。遺伝子発現を発光によって決定し、mRNA-aNPがマクロファージ細胞培養物において用量依存的なホタルルシフェラーゼ発現を誘導することを示した。(E)初代マウス骨髄由来マクロファージをホタルmRNA含有aNPに24時間曝露した。遺伝子発現を発光によって決定し、mRNA-aNPが初代細胞において用量依存的なホタルルシフェラーゼ発現を誘導することを示した。
#LNP-mRNA比較例は、mRNAを含む、Dlin-MC3-DMA、DSPC、コレステロール及びPEG-DMG(50:38.5:10:1.5モル%)から構成される。
【0033】
【
図9】本発明の特定の実施形態によるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)に組み込むために、RNA(又は他の核酸)を複合体化するために使用することができる一価のイオン化可能なカチオン性材料の分子構造。
図9で参照される実施例1~15は、実施例9の下位実施例1~15である。
【0034】
【
図10】本発明の特定の実施形態によるsiRNAを含有するアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)(siRNA-aNP)は、安定な製剤を得るために様々なイオン化可能なカチオン性材料を用いて調製することができる。リン脂質、コレステロール、
図9に示されるようなイオン化可能なカチオン性物質(イオン化可能なカチオン性脂質5、16、17及び19は、
図9に示すように、それぞれ実施例10、13、9及び8の分子である)、トリグリセリド、アポリポタンパク質A1及びsiRNAを含有するsiRNA-aNP製剤を、
図2に記載される手順を使用して調製した。製剤化の1日後、ライブラリの個々のsiRNA-aNP製剤及びLNP-siRNA比較例製剤
#を、動的光散乱(DLS)を使用した(A)粒径及び(B)粒径分散性、並び委(C)リボグリーン(Ribogreen)アッセイを使用したsiRNA保持について分析した。
#LNP-siRNA比較例は、siRNAを含む、Dlin-MC3-DMA、DSPC、コレステロール及びPEG-DMG(50:38.5:10:1.5モル%)から構成される。
【0035】
【
図11A】表1:72個のsiRNA aNP製剤のライブラリの例示的な製剤。
【
図11B】表1:72個のsiRNA aNP製剤のライブラリの例示的な製剤。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、単数及び複数の指示対象の両方を含む。
【0037】
本明細書で使用される「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」及び「から構成される(comprised of)」という用語は、「含有すること(including)」、「含む(includes)」、「含有すること(containing)」又は「含有する(contains)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない部材、要素又は方法工程を除外しない。この用語はまた、「から構成される(constituted of)」、「からなる(consists in)」、「からなること(consisting of)」、及び「からなる(consists of)」を包含し、また、「から本質的になること(consisting essentially of)」、「から本質的になること(consisting essentially in)」、及び「から本質的になる(consists essentially of)」という用語も包含し、これらは、特許用語において十分に確立された意味を享受する。
【0038】
端点による数値範囲の列挙は、全ての整数、及び適切な場合にはそれぞれの範囲内に包含される分数、並びに列挙された端点を含む。これは、「~から~」という表現又は「~から~の間」という表現又は別の表現によって導入されるかどうかにかかわらず、数値範囲に適用される。本明細書に列挙された任意の数値範囲は、その中に包含される全ての部分範囲を含むことが意図されている。
【0039】
測定可能な値、例えばパラメータ、量、持続時間などを指す場合に本明細書で使用される「約(about)」又は「およそ(approximately)」という用語は、指定された値の変動及び指定された値からの変動、例えば指定された値の+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、更により好ましくは+/-0.1%以下の変動を、そのような変動が開示された発明において実行するのに適切である限り包含することを意味する。修飾語「約(about)」又は「およそ(approximately)」が指す値自体も具体的に、好ましくは開示されていることを理解されたい。
【0040】
更に、明細書及び特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、特定されない限り、同様の要素を区別するために使用され、必ずしも連続的又は時系列的な順序を説明するためのものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載又は図示されている以外の順序で動作することができることを理解されたい。
【0041】
「1つ又はそれ以上」又は「少なくとも1つ」という用語、例えば1つ又はそれ以上のメンバー又はメンバーの群の少なくとも1つのメンバーは、更なる例示によってそれ自体明確であるが、この用語は、とりわけ、当該メンバーのいずれか1つ、又は当該メンバーのいずれか2つ以上、例えば当該メンバーのいずれか3以上、4以上、5以上、6以上又は7以上など、及び全ての当該メンバーへの言及を包含する。別の例では、「1つ又はそれ以上」又は「少なくとも1つ」は、1、2、3、4、5、6、7又はそれ以上を指すことができる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目のリストで使用される場合、列挙された項目のいずれか1つを単独で使用することができるか、又は列挙された項目の2つ以上の任意の組合せを使用することができることを意味する。例えば、リストが群A、B、及び/又はCを含むと記載されている場合、リストは、A単独、B単独、C単独、AとBの組合せ、AとCの組合せ、BとCの組合せ、又はA、B、及びCの組合せを含むことができる。
【0043】
本明細書における本発明の背景の議論は、本発明の文脈を説明するために含まれる。これは、言及された材料のいずれかが、特許請求の範囲のいずれかの優先日に、いずれかの国で公開された、公知の、又は共通の一般知識の一部であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【0044】
本開示を通して、様々な刊行物、特許及び公開された特許明細書は、特定の引用によって参照される。本明細書で引用される全ての文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に、本明細書で具体的に言及されるそのような文書の教示又はセクションは、参照により組み込まれる。
【0045】
他に定義されない限り、技術用語及び科学用語を含む、本明細書の開示で使用されている全ての用語は、本発明が属する当分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。更なる指針によって、本発明の教示をよりよく理解するために用語定義が含まれる。本発明の特定の態様又は本発明の特定の実施形態に関連して特定の用語が定義される場合、そのような含意又は意味は、他に定義されない限り、本明細書全体にわたって、すなわち本発明の他の態様又は実施形態の文脈においても適用されることを意味する。
【0046】
以下の節では、本発明の異なる態様又は実施形態がより詳細に定義される。そのように定義された各態様又は実施形態は、そうでないことが明確に示されていない限り、任意の他の態様又は実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の1つ又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0047】
本明細書全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における「一実施形態では」又は「実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではないが、そうであってもよい。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ又はそれ以上実施形態において、本開示から当業者に明らかであるように、任意の適切な方法で組み合わせることができる。更に、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが、他の特徴を含まないが、異なる実施形態の特徴の組合せは、本発明の範囲内であり、当業者によって理解されるように、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲において、特許請求される実施形態のいずれも、任意の組合せで使用することができる。
【0048】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、本発明の様々な特徴は、本開示を簡素化し、様々な本発明の態様の1つ又はそれ以上の理解を助ける目的で、単一の実施形態、図、又はその説明にまとめられることがあることを理解されたい。
【0049】
「インビトロ」という用語は当分野において十分に理解されており、特に、それらの自然状態から単離された生物の成分を使用して行われる実験又は測定を指すことができる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「エクスビボ」という用語は当分野で十分に理解されており、特に、自然状態の変化を最小限に抑えながら、外部環境で生物の組織内又は組織上で行われる実験又は測定を指すことができる。
【0051】
「核酸」、「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、当分野で十分に理解されている。更なる指針により、この用語は、典型的には、ヌクレオシド単位から本質的に構成される任意の長さのポリマー(好ましくは直鎖ポリマー)を指す。ヌクレオシド単位は、一般に複素環式塩基及び糖基を含む。複素環式塩基としては、とりわけ、プリン及びピリミジン塩基、例えば、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)を挙げることができ、これらは、天然に存在する核酸、他の天然に存在する塩基(例えば、キサンチン、イノシン、ヒポキサンチン)、並びに化学的又は生化学的に修飾された(例えば、メチル化)、非天然又は誘導体化塩基に広く分布している。例示的な修飾核酸塩基としては、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、並びに2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシンを含むN-2、N-6及びO-6置換プリンが挙げられるが、これらに限定されない。特に、5-メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を増加させることが示されている。糖基としては、とりわけ、ペントース(ペントフラノース)基、例えば好ましくは天然に存在する核酸に一般的なリボース及び/若しくは2-デオキシリボース、又はアラビノース、2-デオキシアラビノース、トレオース若しくはヘキソース糖基、並びに修飾又は置換糖基(例えば、限定されないが、2’-O-アルキル化された、例えば、2’-O-メチル化された又は2’-O-エチル化された糖、例えば、リボース;2’-O-アルキルオキシアルキル化された、例えば2’-O-メトキシエチル化された糖、例えばリボース;又は2’-O,4’-C-アルキレン結合、例えば2’-O,4’-C-メチレン結合又は2’-O,4’-C-エチレン結合糖、例えばリボース;2’-フルオロ-アラビノースなど)を挙げることができる。ヌクレオシド単位は、とりわけ、天然に存在する核酸に一般的なホスホジエステル結合、及び更なる修飾されたホスファート又はホスホナート系結合、例えばホスホロチオアート、アルキルホスホロチオアート、例えばメチルホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、アルキルホスホナート、例えばメチルホスホナート、アルキルホスホノチオアート、ホスフォトリエステル、例えばアルキルホスホトリエステル、ホスホロアミダート、ホスホロピペラジダート、ホスホロモルフォリダート、架橋ホスホロアミダート、架橋メチレンホスホナート、架橋ホスホロチオアート;並びに更に、シロキサン、カルボナート、スルファマート、カルボアルコキシ、アセトアミダート、カルバマート、例えば3’-N-カルバマート、モルフォリノ、ボラノ、チオエーテル、3’-チオアセタール及びスルホンヌクレオシド間結合を含む、多数の既知のヌクレオシド間結合のいずれか1つによって互いに結合されてもよい。好ましくは、ヌクレオシド間結合は、修飾されたリン酸系結合を含むリン酸系結合、例えばより好ましくはホスホジエステル、ホスホロチオアート若しくはホスホロジチオアート結合又はそれらの組合せであってもよい。「核酸」という用語はまた、限定するものではないが、ペプチド核酸(PNA)、リン酸基を有するペプチド核酸(PHONA)、ロックド核酸(LNA)、モルフォリノホスホロジアミデート骨格核酸(PMO)、シクロヘキセン核酸(CeNA)、トリシクロ-DNA(tcDNA)、及びアルキルリンカー又はアミノリンカーを有する骨格部分を有する核酸を含むポリマー、例えば核酸模倣物を含有する任意の他の核酸塩基も包含する(例えば、Kurreck 2003(Eur J Biochem 270:1628-1644)を参照されたい)。この文脈で使用される「アルキル」は、低級炭化水素部分、例えば、C1~C4直鎖又は分岐鎖飽和又は不飽和炭化水素、例えばメチル、エチル、エテニル、プロピル、1-プロペニル、2-プロペニル、及びイソプロピルを特に包含する。
【0052】
本明細書で意図される核酸は、天然に存在するヌクレオシド、修飾ヌクレオシド又はそれらの混合物を含むことができる。修飾ヌクレオシドは、修飾複素環塩基、修飾糖部分、修飾ヌクレオシド間結合又はそれらの組合せを含むことができる。「核酸」という用語は、更に好ましくは、DNA、RNA及びDNA/RNAハイブリッド分子、具体的にはhnRNA、プレ-mRNA、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、増幅産物、オリゴヌクレオチド及び合成(例えば、化学的に合成される)DNA、RNA又はDNA/RNAハイブリッドを包含する。核酸は、天然に存在していてもよく、例えば、天然に存在していてもよく、又は天然から単離されていてもよく、組換え型であってもよく、すなわち、組換えDNA技術によって産生されていてもよく、及び/又は部分的若しくは全体的に、化学的若しくは生化学的に合成されていてもよい。「核酸」は、二本鎖、部分的に二本鎖、又は一本鎖であってもよい。一本鎖の場合、核酸はセンス鎖又はアンチセンス鎖であってもよい。加えて、核酸は環状又は直鎖状であってもよい。
【0053】
特定の実施形態では、この用語は、DNA分子及びRNA分子、並びにロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、モルフォリノ又はペプチド核酸(PNA)を含むことが意図され得る。核酸(分子)は、任意の核酸(分子)であってもよく、例えば、一本鎖又は二本鎖であってもよい。
【0054】
「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」という用語は、交換可能に使用することができ、当分野で十分に理解されており、特に、診断、予後診断、又は治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象を指すことができる。この用語は、例えば、動物、好ましくは温血動物、より好ましくは脊椎動物、更により好ましくは哺乳動物、更により好ましくは霊長類を指すことができ、具体的にはヒト患者並びに非ヒト哺乳動物及び霊長類を含むことができる。好ましい患者は、性別及びその全ての年齢カテゴリーの両方を含むヒト対象である。哺乳動物対象としては、ヒト、飼育動物、家畜、及び動物園、競技用又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、ウシ、クマなどが挙げられる。本明細書で定義されるように、対象は生存していても死亡していてもよい。試料は、死後、すなわち死亡後の対象から採取することができ、及び/又は試料は、生きている対象から採取することができる。好ましくは、対象はヒトである。
【0055】
「治療する」又は「治療」という用語は、当分野で十分に理解されており、特に、既に発症した疾患又は状態の治療的治療、並びに防止的又は予防的手段の両方を包含することができ、その目的は、望ましくない苦痛の発生の可能性を予防又は低減すること、例えば疾患又は障害の発生、発症及び進行を予防することである。有益な又は所望の臨床結果としては、1つ若しくはそれ以上の症状又は1つ若しくはそれ以上の生物学的マーカーの緩和、疾患の程度の減弱、疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延又は緩徐化、疾患状態の改善又は緩和などを挙げることができるが、これらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けていない場合に予想される生存と比較して生存を延長することを意味することができる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」という用語は、特に、ペイロードを標的、例えば対象の器官又は細胞に送達するために使用することができる、例えば直径約10nm~約200nmの範囲の小さな粒子を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、(例えば、標的細胞、例えばそれだけに限らないが、骨髄系細胞)細胞を標的化すること又は組織若しくは器官を標的化することを指す場合の「標的化する」という用語は、意図された細胞、器官若しくは組織に近接させること、又は意図された細胞、器官若しくは組織に近接して濃縮することを意味すると理解されるべきである。これは、意図された細胞、器官又は組織を標的とする場合、平均して、粒子のランダム又は自然な分布に基づいて予想することができるように、より多くのナノ粒子が意図された細胞、器官又は組織に近接していることを意味する。本明細書において近接とは、ナノ粒子が細胞(又は組織若しくは器官)と相互作用してそのペイロード(核酸)を送達できるように配置されることを意味する。
【0058】
「骨髄系細胞」という用語は、当分野で十分に理解されており、特に、巨核球、顆粒球、単球、赤血球の共通の前駆細胞に由来する血球を指すことができる。骨髄系細胞は、単球、樹状細胞、組織マクロファージ及び顆粒球を含む免疫系の主要な細胞区画である。本明細書で使用される場合、骨髄区画という用語は、生物中の骨髄系細胞全体を指す。
【0059】
「アルキル」という用語は、それ自体で又は別の置換基の一部として、式CnH2n+1のヒドロカルビル基を指し、式中、nは1以上の数である。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であってもよく、本明細書に示されるように置換されていてもよい。一般に、本発明のアルキル基は、1~18個の炭素原子、好ましくは1~17個の炭素原子、好ましくは1~15個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子、より好ましくは1~3個の炭素原子、更により好ましくは1~2個の炭素原子を含む。炭素原子に続いて下付き文字が本明細書で使用される場合、下付き文字は、指定された基が含み得る炭素原子の数を指す。例えば、基又は基の一部としての「C1~6アルキル」という用語は、nが1~6の範囲の数である式-CnH2n+1のヒドロカルビル基を指す。したがって、例えば、「C1~6アルキル」は、1~6個の炭素原子を有する全ての直鎖又は分岐鎖アルキル基を含み、したがって、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、ブチル及びその異性体(例えば、n-ブチル、i-ブチル及びt-ブチル)、ペンチル及びその異性体、ヘキシル及びその異性体を含む。例えば、「C1~5アルキル」は、1~5個の炭素原子を有する全ての直鎖又は分岐鎖アルキル基を含み、したがって、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、ブチル及びその異性体(例えば、n-ブチル、i-ブチル及びt-ブチル)、ペンチル及びその異性体を含む。例えば、「C1~4アルキル」は、1~4個の炭素原子を有する全ての直鎖又は分岐鎖アルキル基を含み、したがって、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、ブチル及びその異性体(例えば、n-ブチル、i-ブチル及びt-ブチル)を含む。例えば、「C1~3アルキル」は、1~3個の炭素原子を有する全ての直鎖又は分岐鎖アルキル基を含み、したがって、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピルを含む。
【0060】
接尾辞「エン」がアルキル基と併せて使用される、すなわち「アルキレン」の場合、これは、他の基との結合点として2つの単結合を有する本明細書で定義されるアルキル基を意味することを意図している。本明細書で使用される場合、「C1~6アルキレン」という用語は、それ自体で又は別の置換基の一部として、二価である、すなわち2つの他の基に結合するための2つの単結合を有するC1~6アルキル基を指す。アルキレン基は、直鎖又は分岐鎖であってもよく、本明細書に示されるように置換されていてもよい。アルキレン基の非限定的な例としては、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2-CH2-)、メチルメチレン(-CH(CH3)-)、1-メチル-エチレン(-CH(CH3)-CH2-)、n-プロピレン(-CH2-CH2-CH2-)、2-メチルプロピレン(-CH2-CH(CH3)-CH2-)、3-メチルプロピレン(-CH2-CH2-CH(CH3)-)、n-ブチレン(-CH2-CH2-CH2-CH2-)、2-メチルブチレン(-CH2-CH(CH3)-CH2-CH2-)、4-メチルブチレン(-CH2-CH2-CH2-CH(CH3)-)、ペンチレン及びその鎖異性体、ヘキシレン及びその鎖異性体が挙げられる。
【0061】
基又は基の一部としての「アルケニル」という用語は、1つ又はそれ以上の炭素-炭素二重結合を含む直鎖又は分岐鎖であってもよい不飽和ヒドロカルビル基を指す。炭素原子に続いて下付き文字が本明細書で使用される場合、下付き文字は、指定された基が含み得る炭素原子の数を指す。例えば、「C2~6アルケニル」という用語は、1つ又はそれ以上の炭素-炭素二重結合を含み、2~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖であってもよい不飽和ヒドロカルビル基を指す。例えば、C2~4アルケニルは、2~4個の炭素原子を有する全ての直鎖又は分岐鎖アルケニル基を含む。C2~6アルケニル基の例は、エテニル、2-プロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-ペンテニル及びその異性体、2-ヘキセニル及びその異性体、2,4-ペンタジエニルなどである。
【0062】
基又は基の一部としての「アリール」という用語は、単環(すなわちフェニル)又は一緒に縮合した複数の芳香環(例えばナフチル)を有するか、又は共有結合して、典型的には6~24個の炭素原子、好ましくは6~12個の原子、少なくとも1つの環が芳香族である、好ましくは6~10個の原子を含む多価不飽和芳香族ヒドロカルビル基を指す。適切なアリールの例としては、C6~10アリール、より好ましくはC6~8アリールが挙げられる。C6~12アリールの非限定的な例は、フェニル;ビフェニリル;ビフェニレニル;又は1-若しくは2-ナフタネリル;1-、2-、3-、4-、5-又は6-テトラリニル(「1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン」としても知られている);1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-又は8-アズレニル、4-、5-、6又は7-インデニル、4-又は5-インダニル、5-、6-、7-又は8-テトラヒドロナフチル;1,2,3,4-テトラヒドロナフチル;及び1,4-ジヒドロナフチル;1-、2-、3-、4-又は5-ピレニルを含む。接尾辞「エン」がアリール基と併せて使用される、すなわちアリーレンの場合、これは、他の基との結合点として2つの単結合を有する本明細書で定義されるアリール基を意味することを意図している。適切な「C6~12アリーレン」基としては、1,4-フェニレン、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、ビフェニリレン、ナフチレン、インデニレン、1-、2-、5-又は6-テトラリニレンなどが挙げられる。アリール基中の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置き換えられている場合、得られた環は、本明細書ではヘテロアリール環と呼ばれる。ヘテロ原子は、O、N、P及びSからなる群から選択することができ、好ましくはO又はNである。
【0063】
基又は基の一部としての「アルキレン-アリール」という用語は、少なくとも1個の水素原子が本明細書で定義される少なくとも1個のアリールで置き換えられている、本明細書で定義されるアルキレンを意味する。アルキレン-アリール基は、典型的には7~25個の炭素原子を含む。アルキレン-アリール基の非限定的な例としては、ベンジル、フェネチル、ジベンジルメチル、メチルフェニルメチル、3-(2-ナフチル)-ブチルなどが挙げられる。基又は基の一部としての「アリーレン-アルキル」という用語は、少なくとも1個の水素原子が本明細書で定義される少なくとも1個のアルキルで置き換えられている、本明細書で定義されるアリーレンを意味する。アリーレン-アルキル基は、典型的には7~25個の炭素原子を含む。
【0064】
エステル基、アミド基、カルボン酸基及びアルコール基を以下に定義し、式中、Rpは水素原子又は環状、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルキレン基を表す。2つ以上のRp元素を含む群では、これらの元素を独立して選択することができる。本明細書に示されるエステル(官能)基又は部分は、式-C(O)-O-による基として理解されるべきである。この文書に示されるアミド(官能性)基又は部分は、式-NRp-C(O)-による基として理解されるべきである。この文書に示されるカルボン酸(官能性)基又は部分は、式-C(O)OHによる部分又は基として理解されるべきである。この文書に示されるアルコール(又はヒドロキシ)官能基又は部分は、式-OHによる基として理解されるべきである。
【0065】
本発明は、骨髄系細胞区画へのNAT送達に適したナノ粒子プラットフォーム技術を構成する。本明細書に記載のナノ粒子は、分解及び急速なクリアランスを防ぐことによって循環中のNATペイロードを保護するアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物によって安定化された(ホスホ)脂質ベースのナノ粒子である。同時に、ナノ粒子は、血液中の成分との望ましくない相互作用を制限することによってNATの免疫刺激関連有害作用を低減する。加えて、本発明は、効果的な免疫療法のために、リンパ系器官、例えば骨髄及び脾臓の骨髄系細胞区画への効率的な核酸治療薬の送達を可能にする。
【0066】
本明細書に記載のナノ粒子は、疎水性コアと、外表面を覆うアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物とを有する脂質ベースのナノサイズ製剤(直径約10~200nm、例えば特定の実施形態では約30~200nm)である。理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、ナノ粒子のコアが、(イオン化可能な)カチオン性脂質と相互作用する核酸の集合体を含み、このコアが、表面層又はバリアとして機能することができるアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、リン脂質及びステロールを含む外側保護表面又は脂質シェル内にパッケージングされ、埋め込まれていると考えている。アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物は、疎水性及び/又は荷電(イオン)相互作用を使用して、外側保護表面の他の成分と相互作用することができる。外側保護表面は、場合により、核酸成分と複合体を形成していないいくつかの(イオン化可能な)カチオン性脂質も含むことができる。
図1は、本発明のナノ粒子の印象の概略図を示す。アポリポタンパク質は、それらの両親媒性のために脂質層に対して固有の親和性を有するらせん状タンパク質である。アポリポタンパク質にはいくつかのクラスがあり、全てナノ粒子製剤の構造成分として使用することができる。アポリポタンパク質の組込みは、構造安定性を提供することによってナノ粒子の物理化学的特性及び貯蔵寿命に影響を及ぼす。更に、アポリポタンパク質の存在は、ナノ粒子の生物学的挙動を調節する。例えば、アポリポタンパク質A1は、スカベンジャー受容体クラスB1(SRB1)及びATP結合カセットトランスポーターABCA1を介して細胞と相互作用する。これは、リンパ器官における骨髄系細胞とのナノ粒子の相互作用を増加させる。
【0067】
ナノ粒子製剤中のリン脂質は、それらの両親媒性のために、疎水性コアと水性溶媒との間の界面に蓄積し、脂質単層膜、又は表面層若しくはバリアを効果的に形成する。生物学的使用のために、固有の生体適合性及び正味の中性電荷のために、単一又は複数のリン脂質タイプが使用される。場合により、荷電脂質、例えば1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)又は1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスフェート(18PA)のモル百分率(約1~95モル%;使用されるリン脂質の総量に対して)を添加して、製剤全体に特定の荷電特性を与えることができる。
【0068】
本明細書で教示されるナノ粒子は、本質的に親水性である核酸を複合化するように操作され、したがって、核酸を疎水性ナノ粒子コアに引き込むためにヘルパー分子が必要である。この目的のために、カチオン性疎水性分子が使用される。カチオン性基は、イオン性相互作用を介して糖リン酸骨格中のアニオン性リン酸基と複合体を形成することができる。ヘルパー分子の疎水性部分は、親水性核酸分子の周りにシェルを形成する。カチオン性ヘルパー分子は、永久的に荷電していてもイオン化可能であってもよい。カチオン性ヘルパー分子は、市販又は社内で合成した多種多様な分子を含むが、2つの一般的な基準に従う必要がある。1)負に帯電した糖リン酸骨格との複合体形成を可能にするための正に帯電した基。2)疎水性シェルを形成し、ナノ粒子コアへの組込みを可能にする疎水性部分。ナノ粒子製剤中のカチオン性材料の含有量は、カチオン対アニオン比が1:1~25:1の範囲であってもよい。N/P(窒素/リン酸)比と呼ばれることが多いこの比は、(イオン化可能な)カチオン性脂質中の正電荷(多くの場合、窒素ベース)の数対核酸ペイロード中の負電荷(通常はリン酸)の数に基づく。したがって、N/P比は、カチオン性又はイオン化可能な脂質成分中のカチオン性及び/又はイオン化可能な基(N)の累積モル量と核酸成分中のリン酸基(P)の累積モル量との比である。特定の実施形態では、本明細書において教示されるナノ粒子のN/P比は、1~25、1~20、1~15、1~12、1~9、1~6、又は1~3である。例えば、本明細書で教示されるナノ粒子のN/P比は、3、6、9又は12であってもよい。
【0069】
核酸及びカチオン性ヘルパー分子に加えて、更なる疎水性分子(例えば、充填剤材料(すなわち、充填剤又は充填剤分子))をナノ粒子製剤のコアに含めることができる。それらの主な用途は、ナノ粒子の物理化学的特性を変化させ、及び/又は安定性を改善することである。
【0070】
治療用核酸を含有するナノ粒子は、骨髄系細胞区画における遺伝子発現を正確に調節し、それによって免疫応答を調節すると予想される。本明細書で教示されるナノ粒子プラットフォーム技術の主な利点は、aNP製剤の生物学的挙動及び相互作用を変化させることなく核酸ペイロードを交換する可能性である。したがって、治療用核酸を含有するナノ粒子は、例えば癌若しくは感染性疾患を治療するために免疫応答を促進する免疫療法として、又は例えば自己免疫疾患を治療するために若しくは臓器移植中に免疫応答を減衰させるために実施することができる。
【0071】
したがって、第1の態様では、本発明は、
-アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物;
-リン脂質;
-ステロール;
-カチオン性脂質、イオン化可能なカチオン性脂質、又はそれらの組合せ;
-核酸;及び
-場合により、充填剤材料
を含む、それらから本質的になる、又はそれらからなるナノ粒子に関する。
【0072】
理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、本明細書に記載のナノ粒子が、主にアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、リン脂質及びステロール、並びにカチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質及びカーゴ、すなわち核酸を含むコアを含む外層を有すると考える。より詳細には、本明細書の他の箇所に記載されているように、本明細書で教示されるナノ粒子のコアは、(イオン化可能な)カチオン性脂質と相互作用する核酸の集合体を含み、本発明のナノ粒子のこのコアは、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、リン脂質及びステロールを含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる脂質シェルによって取り囲まれている。
【0073】
ナノ粒子は、意図された目的地、例えば細胞、組織又は器官にカーゴを送達するために使用することができる。好ましくは、核酸カーゴは、標的細胞、組織又は器官の細胞内に送達される。
【0074】
特定の実施形態では、核酸は、ナノ粒子の内部(すなわち内側)に位置する。換言すれば、特定の実施形態では、核酸は、ナノ粒子の外面に位置せず、及び/又はナノ粒子の周囲に露出しない。
【0075】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物は、ナノ粒子の外面に位置し、及び/又はナノ粒子の周囲に露出している。
【0076】
特定の実施形態では、本発明は、表面層に囲まれたコアを含むナノ粒子に関し、
コアは、核酸及びカチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなり、
表面層は、
リン脂質、
ステロール、及び
アポリポタンパク質若しくはアポリポタンパク質模倣物又はそれらの組合せ
を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。
【0077】
アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、例えばApoA1を使用することによって、ナノ粒子をインビトロ、エクスビボ及びインビボで骨髄区画に首尾よく標的化することができることが見出された。これは、自然免疫応答を刺激又は阻害するために、免疫前駆細胞が薬物によって標的化され得るという利点を有する。そのような使用が有益であると考えられるいくつかの治療的用途、例えば、限定されないが、癌、心血管疾患、自己免疫障害及び異種移植片拒絶がある。
【0078】
本明細書に記載のナノ粒子はHDL粒子と同一の外部を有するので、ナノ粒子は免疫応答を誘発せず、意図された標的、例えば骨髄区画に到達する前に免疫系によるナノ粒子の早期分解又はクリアランスをもたらすことができる。
【0079】
本発明は、アポリポタンパク質ベースのナノ粒子又はアポリポタンパク質模倣物ベースのナノ粒子が、核酸を収容するように首尾よく修飾され得るという認識に基づいている。これは、以下の特徴の組合せ、
-核酸を中和してナノ粒子の疎水性コアに充填させるためにカチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質を使用すること、
-ナノ粒子の構造成分及び/又はそれらの相対量の範囲、例えばアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、ステロール、リン脂質、カチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質、及び場合により充填剤材料(例えばトリグリセリド)の量を定義することによって達成することができる。
【0080】
本発明のナノ粒子は、当分野に記載されている任意のナノ粒子とは異なる。
【0081】
特定の実施形態では、本発明のナノ粒子は毒性が低いか、又は非毒性である。
【0082】
特定の実施形態では、本発明のナノ粒子のコアは、水性コアを取り囲む脂質二重層を有する小胞様粒子又はリポソーム粒子に存在するような脂質二重層によって囲まれていない。
【0083】
特定の実施形態では、本発明のナノ粒子は、合成(非天然)親水性ポリマー又はそのようなポリマーの(脂質)コンジュゲート、例えば最も顕著にはポリエチレングリコール(PEG)を含まない。その結果、そのようなナノ粒子は、特に反復投与時に望ましくない免疫応答を誘発しない。
【0084】
特定の実施形態では、本発明のナノ粒子のペイロード(すなわち核酸)は、粒子の外側(表面)でのイオン相互作用によって結合されない。粒子の外側表面への核酸の結合は、核酸がすぐ周囲に曝露されたままであるので望ましくなく、おそらく粒子をより毒性にし、核酸ペイロードの迅速な(生物)分解をもたらす。
【0085】
特定の実施形態では、本発明のナノ粒子は、実質的に又は完全に生分解性である。特定の実施形態では、本発明のナノ粒子は、天然又は生体適合性の構成要素によって形成される。例えば、本発明のナノ粒子は、C、H、N、O、S及びP原子と、更なる対カチオン及び/又はアニオンとから本質的になるか、又はそれらからなる。特定の実施形態では、本発明のナノ粒子は、無機物及び/又は金属(例えば、固体Au又はAg)を含まない。無機物及び/又は金属は生分解性でないか、又は生分解性が低く、インビボ使用にはほとんど適合しない。更なる特定の実施形態では、本発明のナノ粒子のコアは、無機物及び/又は金属(例えば、固体Au又はAg)を含まない。
【0086】
ナノ粒子のコアは、固体であってもよく、コア内に有意な水性空隙又は貯蔵部を有さなくてもよいか、又は担持しなくてもよい。特定の実施形態では、ナノ粒子のコアは非水性である。
【0087】
本発明者らは、個々の成分を単純に混合して本明細書に記載のナノ粒子を得ることはできないので、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物ベースのナノ粒子に核酸を首尾よく組み込む方法を更に開発した。第1の工程では核酸含有ナノ粒子が形成され、次の第2の工程ではアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物がナノ粒子に含まれる二段階反応が行われることが必須であることが見出された。好ましくは、第1の工程は低pHで実施され、第2の工程は生理学的pHで実施される。この知見は、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物ベースのナノ粒子に核酸を含めることを初めて可能にし、したがって骨髄区画への当該核酸の送達を可能にする。
【0088】
本明細書で使用される場合、ナノ粒子は、ペイロードを標的、例えば対象の器官又は細胞に送達するために使用することができる、例えば直径約10nm~約200nmの範囲の小さな粒子を指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、対象は、ヒト又は非ヒト動物、例えば哺乳動物であってもよく、好ましくはヒトであってもよい。
【0090】
充填剤材料
本明細書に記載のナノ粒子は、充填剤材料(本明細書では「充填剤」又は「充填剤分子」とも呼ばれる)、例えば、それだけに限らないが、脂質、例えばトリグリセリドを更に含むことができる。したがって、一実施形態では、ナノ粒子は、トリアシルグリセリド(単にトリグリセリドとも呼ばれる)及びコレステロールアシルエステル(コレステリルエステルとも呼ばれる)又はそれらの組合せから選択される充填剤を更に含み、好ましくはトリアシルグリセリドはトリカプリリンであり、並びに/又はコレステロールアシルエステルはカプリル酸コレステリル及び/若しくはオレイン酸コレステリルである。酢酸コレステリルもまた、充填剤材料として使用することができる。適用することができる更に他の充填剤材料は、C1~C18カルボン酸、好ましくはC6~C18脂肪酸から誘導されるジグリセリド又はトリグリセリド又は他のエステルであり、これらのカルボン酸及び脂肪酸は飽和又は不飽和であってもよい。好ましくは、充填剤は、C6~C18脂肪酸から誘導されるトリグリセリドであることが好ましい。
【0091】
本明細書に記載のナノ粒子は、ナノディスク又はナノスフェア、すなわち異なる形状の粒子を形成し得る。ナノ粒子の形状は、充填剤材料の有無に依存し得る。充填剤は、例えば、ペイロード(核酸)及びカチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質と共に粒子のコアに含まれるトリグリセリドであってもよい。より多くの充填剤を含むと、ナノ粒子がある程度まで大きくなり、粒子が不安定になると考えられることが理解される。理論に拘束されるものではないが、充填剤材料の封入は、ナノ粒子の安定化に寄与し得るか、又はペイロードの包含を安定化し得るか、又は核酸の送達を調節又は増強し得る。
【0092】
核酸
多くの異なるタイプのRNA、DNA又は合成オリゴヌクレオチドが核酸治療薬として使用されている。本発明は、ナノ粒子中のカチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質を使用して充填することができる任意のタイプで機能することが想定されるので、本発明は特定のタイプの核酸に限定されない。したがって、一実施形態では、核酸はRNA、又はDNA若しくは核酸類似体である。
【0093】
好ましい実施形態では、RNAは、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、piwi相互作用RNA(piRNA)、核内低分子RNA(snoRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、tRNA由来低分子RNA(tsRNA)、調節低分子RNA(srRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、修飾mRNA、リボソームRNA(rRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)若しくはガイドRNA(gRNA)、又はそれらの組合せ及び/又はそれらの修飾である。
【0094】
特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA又はRNAである。
【0095】
好ましい実施形態では、DNAは一本鎖又は二本鎖DNAである。
【0096】
好ましい実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホジエステル骨格又は2’リボースの修飾を含有するヌクレオチド又はヌクレオシド類似体からなる一本鎖DNA又はRNAであり、好ましくは、ヌクレオチド又はヌクレオシド類似体は、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、モルフォリノ又はペプチド核酸(PNA)から選択される。
【0097】
本発明の一実施形態では、核酸がコンジュゲートされ、核酸コンジュゲートが本発明のナノ粒子に組み込まれる。核酸コンジュゲートには、例えばリン脂質、又はステロール、例えばコレステロール、又は疎水性アルキル鎖との脂質コンジュゲートが含まれる。核酸コンジュゲートには、オリゴマー又はポリマーとのコンジュゲートも含まれる。好ましくは、これらのオリゴマー又はポリマーは疎水性である。
【0098】
本発明の一実施形態では、核酸はそのまま、又は本発明のナノ粒子内に「そのまま」組み込まれ、これは核酸がコンジュゲートされていないことを意味する。おそらく、この実施形態のナノ粒子は、好ましい生体適合性様式で挙動する。
【0099】
アポリポタンパク質
本明細書で使用される場合、「アポリポタンパク質」という用語は、脂質と共にリポタンパク質、すなわち脂質とタンパク質の集合体を形成するタンパク質を指す。この用語は、野生型アポリポタンパク質(例えば、特にヒト野生型アポリポタンパク質)、並びにその生物学的に活性な断片、アポリポタンパク質の生物学的に活性なバリアント又はその生物学的に活性な断片を包含し、生物学的に活性な変異体(例えば、天然に存在する変異体又は天然に存在しない変異体)アポリポタンパク質又はその生物学的に活性な断片を含む。アポリポタンパク質は、典型的には、血液中の脂質及び脂溶性物質を輸送するように機能する。アポリポタンパク質が記載されており、ApoA1、ApoA1-Milano、ApoA2、ApoA4、ApoA5、ApoB48、ApoB100、ApoC-I、ApoC-II、ApoC-III、ApoC-IV、ApoD、ApoE、ApoF、ApoH、ApoL及びApoMが挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質に関して本明細書を通して使用される「断片」という用語は、一般に、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の一部、例えば典型的にはペプチド、ポリペプチド又はタンパク質のN末端及び/又はC末端が切断された形態を表す。好ましくは、断片は、当該ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列長の少なくとも約30%、例えば少なくとも約50%又は少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、及び更により好ましくは少なくとも約95%又は更に約99%を含むことができる。
【0101】
タンパク質、ポリペプチド、ペプチド又は核酸の「バリアント」という用語は、一般に、そのアミノ酸配列が、又はそのヌクレオチド配列が、タンパク質、ポリペプチド若しくはペプチド、又は核酸の配列と実質的に同一(すなわち、大部分は同一であるが、完全には同一ではない)、例えば少なくとも約80%同一又は少なくとも約85%同一、例えば好ましくは少なくとも約90%同一、例えば少なくとも91%同一、92%同一、より好ましくは少なくとも約93%同一、例えば少なくとも94%同一、更により好ましくは少なくとも約95%同一、例えば少なくとも96%同一、更により好ましくは少なくとも約97%同一、例えば少なくとも98%同一、及び最も好ましくは少なくとも99%同一であるタンパク質、ポリペプチド若しくはペプチド、又は核酸を指す。好ましくは、バリアントは、列挙されたタンパク質、ポリペプチド、ペプチド又は核酸の全配列が配列アラインメント(すなわち、全体的な配列同一性)において照会される場合、列挙されたタンパク質、ポリペプチド、ペプチド又は核酸に対してそのような程度の同一性を示し得る。配列同一性は、配列アラインメントを行うための適切なアルゴリズム及びそれ自体公知の配列同一性の決定を使用して決定することができる。例示的であるが非限定的なアルゴリズムとしては、Altschul et al.1990(J Mol Biol 215:403-10)によって最初に記載されたBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)に基づくもの、例えばTatusova and Madden 1999(FEMS Microbiol Lett 174:247-250)によって記載された「Blast 2 sequences」アルゴリズムなどが挙げられ、例えば、公開されたデフォルト設定又は他の適切な設定(例えば、BLASTNアルゴリズムの場合:ギャップを開くためのコスト=5、ギャップを拡張するためのコスト=2、不一致に対するペナルティ=-2、一致に対するリワード=1、ギャップx_ドロップオフ=50、期待値=10.0、ワードサイズ=28;又はBLASTPアルゴリズムの場合:行列=Blosum62(Henikoff et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.,89:10915-10919)、ギャップを開くためのコスト=11、ギャップを拡張するためのコスト=1、期待値=10.0、ワードサイズ=3)を使用する。
【0102】
特定のアミノ酸配列と照会ポリペプチドのアミノ酸配列との間の同一性パーセントを決定するための例示的な手順は、ウェブアプリケーションとして、又は独立型実行可能プログラム(BLASTバージョン2.2.31+)としてNCBIウェブサイト(www.ncbi.nlm.nih.gov)で入手可能なBlast 2 sequences(Bl2seq)アルゴリズムを使用して、適切なアルゴリズムパラメータを使用して2つのアミノ酸配列をアライメントすることを伴う。
【0103】
タンパク質、ポリペプチド又はペプチドのバリアントは、対応するタンパク質又はポリペプチドに対して(すなわち、比較して)1つ又はそれ以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換含むことができる。
【0104】
「生物学的に活性」という用語は、断片及び/又はバリアントが、それぞれの又は対応するペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の生物学的活性又は意図される機能性を少なくとも部分的に保持することを示す、「機能的に活性」又は「機能的」などの用語と交換可能である。ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の「活性」への言及は、一般に、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の生物学的活性の任意の1つ又はそれ以上の態様、例えば限定されないが、その生化学的活性、酵素活性、シグナル伝達活性、相互作用活性、リガンド活性及び/又は構造活性の任意の1つ又はそれ以上の態様、例えば細胞、組織、器官又は生物内を包含することができる。
【0105】
好ましくは、機能的に活性な断片又はバリアント、例えば変異体は、対応するペプチド、ポリペプチド又はタンパク質と比較して、意図される生物学的活性又は機能性の少なくとも約20%、例えば少なくとも約25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、より好ましくは少なくとも約70%、例えば少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも約85%、更により好ましくは少なくとも約90%、及び最も好ましくは少なくとも約95%、又は更に約100%を保持することができる。特定の実施形態では、機能的に活性な断片又はバリアントは、対応するペプチド、ポリペプチド又はタンパク質と比較してより高い生物学的活性又は機能性を示すことができ、例えば、対応するペプチド、ポリペプチド又はタンパク質と比較して、意図される生物学的活性又は機能性の少なくとも約100%、又は少なくとも約150%、又は少なくとも約200%、又は少なくとも約300%、又は少なくとも約400%、又は少なくとも約500%を示すことができる。所与のペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の活性が定量的出力を有するアッセイ、例えば定量可能なシグナルを生成する酵素アッセイ又はシグナル伝達アッセイ又は結合アッセイで容易に測定することができる例によれば、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の機能的に活性な断片又はバリアントは、対応するペプチド、ポリペプチド又はタンパク質によって生成されるシグナルの少なくとも約20%、又は少なくとも約25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも60%、より好ましくは少なくとも約70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約100%、又は少なくとも約150%、又は少なくとも約200%、又は少なくとも約300%、又は少なくとも約400%、又は少なくとも約500%であるシグナルを生成することができる。
【0106】
一例であって限定するものではないが、アポリポタンパク質の生物学的に活性な断片又はバリアントは、対応する天然又は野生型アポリポタンパク質の生物学的活性の1つ又はそれ以上の態様を少なくとも部分的に保持する。例えば、アポリポタンパク質の生物学的活性への言及は、特に、ナノ粒子の表面層の成分と相互作用する能力(例えば、リン脂質及びステロール)、本明細書で教示されるナノ粒子を安定化する能力、及び/又は骨髄区画を標的とする能力、例えば骨髄系細胞を標的とする能力を意味することができる。
【0107】
本明細書で使用される場合、アポリポタンパク質という用語は、アポリポタンパク質模倣物を更に指すことができる。アポリポタンパク質模倣物は、アポリポタンパク質の特性を模倣する短いペプチド、例えば最大50アミノ酸、18量体又は36量体などである。ApoA1模倣ペプチドの例は通常「18A」と称され、これは、非官能化N末端及びC末端を有する、アミノ配列:DWLKAFYDKVAEKLKEAF(配列番号1)を有するペプチドである。別の報告された、より簡便で、またより活性な模倣物は、Ac-DWLKAFYDKVAEKLKEAF-NH2(配列番号2)であるApoA1模倣ペプチド「2F」、すなわち、アセトアミドでキャップされたN末端及びアミドC末端を有するApoA1模倣ペプチド18Aである。Leman,L.J.et al.,J.Med.Chem.2014,57,2169-2196(10.1021/jm4005847)では、ApoA1ペプチド模倣物の更なる例が、特に表2及び表3に記載される。他のApoA1ペプチド模倣物、例えば、二量体ペプチド、三量体ペプチド及び四量体ペプチドが、Zhou et al.,J.Am.Chem.Soc.2013,135,13414-13424(dx.doi.org/10.1021/ja404714a)に示されている。好ましいApoA1ペプチド模倣物は、18A、2F及び4F、並びにこれらのペプチドの任意の多量体である。2F及びこのペプチドの任意の二量体又は三量体がより好ましい。
【0108】
アポリポタンパク質は、脂質に結合してリポタンパク質を形成するタンパク質である。アポリポタンパク質は、血液、脳脊髄液及びリンパ中で脂質及び脂溶性ビタミンを輸送する。リポタンパク質の脂質成分は水に不溶性である。しかしながら、リポタンパク質の両親媒性のために、アポリポタンパク質及びリン脂質などの他の両親媒性分子は、脂質を取り囲み、それ自体が水溶性であり、したがって水系循環(すなわち、血液、細胞外液、リンパ液)を介して運ばれ得るリポタンパク質粒子を作り出すことができる。リポタンパク質構造の安定化及び脂質成分の可溶化に加えて、アポリポタンパク質はリポタンパク質受容体及び脂質輸送タンパク質と相互作用し、それによってリポタンパク質の取り込み及びクリアランスに関与する。アポリポタンパク質は、リポタンパク質の代謝に関与する特定の酵素の酵素補因子としても機能する。
【0109】
アポリポタンパク質A1は、ヒトにおいてAPOA1遺伝子によってコードされるタンパク質である。特定の実施形態では、アポリポタンパク質A1はヒトアポリポタンパク質A1である。更なる指針により、ヒトアポリポタンパク質A1前駆体は、UniProt受託番号P02647.1(www.uniprot.org)で注釈が付けられている。HDL粒子の主成分として、ヒトアポリポタンパク質A1前駆体は脂質代謝において特異的な役割を有する。このタンパク質は、HDL粒子の成分として、細胞内から脂肪(酸化LDL粒子から摂取された脂肪で過負荷になった動脈壁内のマクロファージを含む)を受容して他の場所(細胞外の水中)に輸送し、LDL粒子又は肝臓に戻して排出することによって、脂肪分子の流出を可能にする。
【0110】
任意のアポリポタンパク質がナノ粒子に使用することができることが想定される。したがって、一実施形態では、アポリポタンパク質は、ApoA1、ApoA1-Milano、ApoA2、ApoA4、ApoA5、ApoB48、ApoB100、ApoC-I、ApoC-II、ApoC-III、ApoC-IV、ApoD、ApoE、ApoF、ApoH、ApoL及びApoMから選択され、好ましくはApoA1、ApoA2、ApoA4、ApoA5、ApoB100、ApoC-I、ApoC-II、ApoC-III、ApoC-IV及びApoEから選択され、より好ましくはApoA1、ApoA4、ApoA5、ApoB100、ApoC-III及びApoEから選択され、更により好ましくはApoA1、ApoB100及びApoEから選択される。特に好ましい実施形態では、アポリポタンパク質は、骨髄区画へのナノ粒子の非常に効率的な標的化を可能にするので、ApoA1である。別の好ましい実施形態では、アポリポタンパク質は、樹状細胞へのナノ粒子の標的化を可能にするので、ApoEである。
【0111】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質は、野生型アポリポタンパク質又はその断片、好ましくは全長野生型アポリポタンパク質である。
【0112】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質若しくはその断片のバリアント又はアポリポタンパク質若しくはその断片の変異体である。
【0113】
アポリポタンパク質は、当分野で公知の方法、例えば、大腸菌又は他の生物からの組換えタンパク質発現によって産生及び精製することができ、その後、アポリポタンパク質、例えば、ApoA1を(十分に)純粋な形態で単離するために必要な工程が続く。アポリポタンパク質は、当分野で公知の一連の精製方法、例えばChapman MJ、Goldstein S、Lagrange D、Laplaud PMに記載されている方法を適用することによって、血液から単離することもできる。ヒト血清から主要リポタンパク質クラスを単離するための密度勾配超遠心法。J Lipid Res.1981 Feb;22(2):339-58.PMID:6787159.アポリポタンパク質ペプチド模倣物は、当分野で公知のペプチド合成プロトコル及びコンジュゲーション方法に従って合成することができる。
【0114】
本発明者らは、標的部位に核酸を送達するためのナノ粒子におけるアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物の使用に関連するいくつかの利点があることを見出した。第一に、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物は、調製及び貯蔵中に凝集物を防止することによってナノ粒子を安定化する。ナノ粒子が安定なエマルジョン中に留まるためには、粒子の沈殿をもたらす可能性があるナノ粒子が凝集又は融合しないことが不可欠である。アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物は、粒子を安定化するのを助け、凝集を防ぐ。更に、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物は、ナノ粒子のインビボ安定性を確実にする。アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物は、血流中を循環する脂質粒子、例えばLDL及びHDL上に天然に存在するので、それらは免疫系によって非自己として認識されず、それによって、安定性を改善するための化学修飾又は他の非天然方法とは対照的に、天然のステルス性を保証する。最後に、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物の使用は、核酸カーゴを送達するための、例えば骨髄区画における免疫細胞との望ましい相互作用を促進する。
【0115】
したがって、一実施形態では、ナノ粒子中のアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物は、
-調製時及び保存時の凝集を防止するため、
-インビボ安定性を改善するため、
-自然なステルス性を提供するため、及び/又は
-免疫細胞との相互作用を促進するため
に使用される。
【0116】
カチオン性脂質及びイオン化可能なカチオン性脂質
本明細書で使用される場合、イオン化可能なカチオン性脂質という用語は、生理学的pH(例えば、pH7~7.5、好ましくはpH7.3~7.5、例えばpH7.4で)で中性電荷を有し、より低いpH(例えば、pH1~5、好ましくはpH1~4、例えばpH4で)でプロトン化又は正電荷を有する脂質を指す。イオン化可能なカチオン性脂質は、低pHでプロトン化することができ、したがって親水性核酸への結合を促進するので、特に有用であることが理解される。続いてpHを上昇させることによって、脂質は(部分的に)中性になり、疎水性環境、例えばナノ粒子の疎水性コアへの封入を更に促進することができる。あるいは、理論に拘束されるものではないが、リン脂質ステロール及びアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物を含むナノ粒子の表面層の作用に起因して、及び/又はナノ粒子内の非水性環境に起因して、周囲の水溶液のpHが約7.4などの生理学的pHに上昇したとしても、イオン化可能な脂質はナノ粒子内で正に帯電したままであり得る。更に、イオン化可能なカチオン性脂質は、標的細胞における核酸のエンドソーム回避を促進するために理論化されており、低pHに起因してイオン化可能なカチオン性脂質がプロトン化される。
【0117】
イオン化可能なカチオン性脂質の非限定的な例は、DLin-DMA(2-[2,2-ビス(オクタデカ-9,12ジエニル)-1,3-ジオキソラン-4-イル]-N,N-ジメチルエタンアミン)、DLin-KC2-DMA(2-[2,2-ビス[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12ジエニル]-1,3-ジオキソラン-4-イル]-N,N-ジメチルエタンアミン)及び以下の式1によって表されるDLin-MC3-DMA([(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル]4-(ジメチルアミノ)ブタノアート)である。
式1
【化1】
【0118】
実際、様々な一連のイオン化可能なカチオン性脂質が開発され、文献に報告されているので、広範囲のイオン化可能なカチオン性脂質(リピドイド(lipidoid)を含む)を本発明のナノ粒子の調製に使用することができる。更なる非限定的な例としては、分子cKK-E12、C12-200、L319、Acuitas-A9、Moderna-L5、TT3及びssPalmE(例えば、Witzigmann et al.,Advanced Drug Delivery Reviews 159(2020)344-363;doi.org/10.1016/j.addr.2020.06.026に記載されている)が挙げられる。
【0119】
イオン化可能な脂質は、更に、イオン化可能なトリグリセリドであってもよい。非限定的な例は、式2に示す化合物である。
式2
【化2】
【0120】
イオン化可能な脂質は、コレステロールエステル(コレステリルエステルとも呼ばれる)であってもよい。非限定的な例は、式3に示す化合物である。
式3
【化3】
【0121】
本明細書で使用される場合、カチオン性脂質という用語は、生理学的pH(例えば、pH7.4)で正に帯電した脂質を指す。カチオン性脂質の非限定的な例は、DOTMA(1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン)、DOGS(2,5-ビス(3-アミノプロピルアミノ)-N-[2-[ジ(ヘプタデシル)アミノ]-2-オキソエチル]ペンタンアミド)、DOSPA(2-[3-[4-(3-アミノプロピルアミノ)ブチルアミノ]プロプルカルバモイルアミノ]エチル-[2,3-ビス[[(Z)-オクタデカ-9-エノイル]オキシ]プロピル]ジメチルアザニウム)及びDOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン)である。他の例としては、例えばアルキル化によって、例えばメチル化(-Me)、エチル化(-Et)、ベンジル化(-Bn)又はエトキシル化(-CH2CH2-OH)などによって、第三級アミン部分が第四級アンモニウム部分に変換されている任意のイオン化可能なカチオン性脂質分子が挙げられる。得られた第四級アンモニウム分子は、永久的な正(カチオン性)電荷を有し、したがって対アニオン、例えば塩化物アニオンも有する。
【0122】
一実施形態では、イオン化可能なカチオン性脂質のみを使用して本発明のナノ粒子を調製する。したがって、一実施形態では、本明細書で教示されるナノ粒子はカチオン性脂質を含まない。
【0123】
一実施形態では、カチオン性脂質のみを使用して本発明のナノ粒子を調製する。したがって、一実施形態では、本明細書で教示されるナノ粒子はイオン化可能なカチオン性脂質を含まない。
【0124】
一実施形態では、イオン化可能なカチオン性脂質とカチオン性脂質との組合せを使用して、本発明のナノ粒子を調製する。
【0125】
本明細書で使用される場合、「ペイロード」という用語は、一般に、粒子に含まれ、標的部位に送達される物質を指す。本発明のナノ粒子に言及する場合、「ペイロード」という用語は、好ましくはカチオン性及び/又はイオン化可能なカチオン性脂質と組み合わせた核酸を指す。
【0126】
「脂質」という用語は当分野で周知であり、本明細書で使用される場合、特に、両方の脂質、すなわち天然に存在する疎水性生体分子、例えば脂肪酸、脂肪酸のモノ-、ジ-又はトリ-グリセリド、ステロール(誘導体)又はリン脂質、及び脂質様生体分子を包含すると見なすことができる。本明細書に記載のカチオン性脂質又はイオン化可能なカチオン性脂質(又はリピドイド)は、典型的には、この用語の最も狭い解釈の範囲内の脂質ではない、すなわち、天然に存在する疎水性生体分子、例えば脂肪酸、脂肪酸のモノ-、ジ-又はトリ-グリセリド、ステロール(誘導体)又はリン脂質であるが、脂質生体分子に類似する脂質様生体分子である、すなわち、好ましくは生体適合性である基(例えば、エステル又はアミドなど)を含有する、及び/又は天然に存在する構成要素(例えば、脂肪酸、グリセロール、コレステロール)を使用して構築される基を含有することに留意されたい。一実施形態では、カチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質は、長鎖アルコールのイオン化可能なカチオン性エステル、ジグリセリドのイオン化可能なカチオン性エステル若しくはステロールのイオン化可能なカチオン性エステル、又はそれらの組合せから選択される。
【0127】
長鎖アルコールのイオン化可能なカチオン性エステルは、カルボキシ基を有する第三級アミン、例えば、式中、nは1以上の整数であり、例えば、nは1~12である式(CH3)2N(CH2)nCOOHを有する化合物、例えば、3-ジメチルアミノ-プロピオン酸又は4-ジメチルアミノ-酪酸又は5-ジメチルアミノ-ペンタン酸のエステルであってもよい。エステルは、長鎖アルコールで形成される。長鎖アルコールは、好ましくは、8個以上の炭素原子、例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上の直鎖又は分岐鎖長を有する第一級又は第二級アルコールである。
【0128】
ジグリセリドのイオン化可能なカチオン性エステルは、好ましくは、カルボキシ基を有する三級アミン、例えば、式中、nは1以上の整数であり、例えば、nは1~12である式(CH3)2N(CH2)nCOOHを有する化合物、例えば、3-ジメチルアミノ-プロピオン酸又は4-ジメチルアミノ-酪酸又は5-ジメチルアミノ-ペンタン酸と1又は2位でカップリングされたジアシルグリセロール(すなわち、ジ-グリセリド)である。ジアシルグリセロールは、中鎖若しくは長鎖の飽和若しくは不飽和脂肪酸又はその誘導体若しくは修飾物を含むことができる。
【0129】
ステロールのイオン化可能なカチオン性エステルは、好ましくは、カルボキシ基を有する第三級アミン、例えば、式中、nは1以上の整数であり、例えば、nは1~12である式(CH3)2N(CH2)nCOOHを有する化合物、例えば、3-ジメチルアミノ-プロピオン酸又は4-ジメチルアミノ-酪酸又は5-ジメチルアミノ-ペンタン酸にヒドロキシル基において結合したステロールのエステルである。ステロールは、コレステロール、スチグマステロール又はβ-シトステロールであってもよい。
【0130】
上記において、カルボキシ化合物は、式中、nは1以上の整数である式(CH3)2N(CH2)nCOOHで表される。この化合物の代わりに、式中、nは1以上の整数であり、例えばnは1~12である式NH2-(C=NH)-NH-(CH2)nCOOHを有する代替化合物を使用することができる。このカルボキシ化合物は、第三級アミン基の代わりにグアニジン基を含む。
【0131】
本発明のナノ粒子を調製するために、イオン化可能なカチオン性脂質は、例えば、式(I)~(V)による分子から選択することができる。
【化4】
【0132】
式(I)はトリグリセリドを表し、イオン化可能なカチオン性基(ICG)は1位に含まれる。
【0133】
式(II)は、式(I)で表されるのと同じタイプのトリグリセリドを表すが、分子は天然に存在する立体配置で立体特異的に定義され、すなわちリン脂質でICG基はリン酸基中のリン酸基と同じ位置にあるように定義される。
【0134】
式(III)はトリグリセリドを表し、イオン化可能なカチオン性基(ICG)は2位に含まれる。
【0135】
式(IV)はジエステル(又はトリエステル)を表し、イオン化可能なカチオン性基(ICG)はアミド官能基を介して結合している。
【0136】
式(V)はコレステリルエステルを表し、イオン化可能なカチオン性基(ICG)はエステル官能基を介して結合している。
【0137】
イオン化可能なカチオン性基(ICG)は、式(I)~(V)のいずれかの分子の残りの部分に波線結合を介して結合され、ICGは、第三級アミン(ICGタイプA、又はICG-A)を表すことができるか、又はグアニジン(ICGタイプB、又はICG-B)を表すことができる。
【0138】
式(I)~(IV)において、R1は全ての位置について独立して選択することができ、直鎖又は分岐鎖C1~C19アルキル、直鎖又は分岐鎖C1~C19アルケニル、アリール、アリーレン-アルキル又はアルキレン-アリール基を表し、当該アルキル基又はアルケニル基は、場合により5個のヘテロ原子を含み、O及びNから独立して選択される。好ましくは、式(I)~(IV)のいずれかによる特定の分子内の全てのR1基は同じR1基である。好ましくは、R1基は、直鎖若しくは分岐鎖C5~C19アルキル基、又は直鎖若しくは分岐鎖C5~C19アルケニル基である。R1がアルケニル基である場合、この基は単二重結合のみを有することが好ましい。より好ましくは、R1基は、直鎖若しくは分岐鎖C9~C17アルキル基又は直鎖若しくは分岐鎖C5~C17アルケニル基である。好ましくは、R1は、直鎖C5~C15アルキル基又は直鎖C17~C19アルケニルである。R1から誘導されるカルボン酸、すなわちR1-COOHは、好ましくは天然に存在する脂肪酸分子、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸又はリノール酸である。C10~C16飽和脂肪酸並びにオレイン酸(C18、不飽和)が好ましい。
【0139】
整数pは、ばらばらの数字であり、平均値ではなく、pは、0~11であることができる。好ましくは、pは0、1、2、3、4、5、6、7、8又は9である。より好ましくは、pは1、2、3又は4である。
【0140】
式(IV)中のR2基は、水素、メチル、エチル及び-CH2-O-C(O)-R1a基(式中、R1aは上記で定義したR1と同じ意味を有する)から選択することができる。好ましくは、R2は、水素、メチル又は-CH2-O-C(O)-R1基である。より好ましくは、R2はメチルである。
【0141】
式(IV)中のR3基は、水素、アリール、アリーレン-アルキル、アルキレン-アリール又は直鎖C1~C6アルキル基から選択することができる。好ましくは、R3は水素又はメチルである。より好ましくは、R3は水素である。
【0142】
ICG-A中のRx基は、全ての位置について独立して選択することができ、メチル、エチル、プロピル及びエチレン-ヒドロキシ(-CH2-CH2-OH)基から選択され、好ましくはメチル基である。好ましくは、ICG-Aの両方のRx基は同じ基であり、好ましくはメチル基である。
【0143】
ICG-B中のRy基は、水素、直鎖又は分岐鎖C1~C18アルキル、アリール、アリーレン-アルキル又はアルキレン-アリール基からあらゆる位置について独立して選択することができ、当該アルキル基は、場合により、O及びNから独立して選択される5個までのヘテロ原子を含む。好ましくは、Ry基は、水素及び直鎖C1~C6アルキル基から選択される。更により好ましくは、Ry基は水素である。好ましくは、ICG-B中の4つのRy基は全て同じ基であり、それらは好ましくは水素である。
【0144】
式(I)~(V)より、式(I)、(II)及び(IV)が好ましい。式(I)及び(II)がより好ましい。
【0145】
ICG-A及びICG-Bより、ICG-Aが好ましく、すなわち第三級アミンイオン化可能なカチオン性脂質が好ましい。
【0146】
式(I)~(V)のいずれか1つによるイオン化可能なカチオン性脂質分子は、250ダルトン超、好ましくは350ダルトン超、より好ましくは450ダルトン超の分子量を有する。これは、3000ダルトン未満、好ましくは1800ダルトン未満、より好ましくは1200ダルトン未満の分子量を有する。
【0147】
式(I)~(V)で表される分子は、様々な異性体の形態、例えば、回転異性体、互変異性体、立体異性体、又は位置異性体で存在してもよく、これらの全てが本発明の範囲に含まれる。
【0148】
式(I)~(V)のいずれか1つによるイオン化可能なカチオン性脂質は、好ましくは単一の化合物であり、すなわち化合物の混合物ではない。したがって、式(I)~(V)のイオン化可能なカチオン性脂質の純度は、好ましくは50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。イオン化可能なカチオン性脂質が化合物の混合物である場合、これは好ましくは分子内に未定義の立体中心が存在することのみに起因する。一例は、ラセミ由来のイオン化可能なカチオン性脂質における分岐鎖アルキル鎖の使用である。他の例としては、グリセロール実体中の3つのヒドロキシ基に対する置換パターンが立体特異的に定義されていないトリグリセリドがある。
【0149】
式(I)~(V)のいずれか1つによるイオン化可能なカチオン性脂質は、当分野で公知の合成方法によって調製することができる。本出願の実施例のセクション、より具体的には実施例9では、イオン化可能なカチオン性脂質の様々な非限定的な合成が提示される。
【0150】
(イオン化可能な)カチオン性脂質は、好ましくは溶液から処理することができる。したがって、(イオン化可能な)カチオン性脂質は、極性の範囲の溶媒に可溶性であることが好ましい。したがって、(イオン化可能な)カチオン性脂質は、好ましくはトリカプリリン、エタノール又はイソプロパノールに、より好ましくはこれらの溶媒の3つ全てに可溶性である。溶解度は、約20mgの(イオン化可能な)カチオン性脂質を約1グラムのトリカプリリン、エタノール又はイソプロパノール中で撹拌し、全ての物質が自然に溶解して約2重量%の濃度を有する明澄/透明溶液を生成するかどうかを評価することによってチェックすることができる。試験は、約20℃(室温)又は約37℃で行うことができる。好ましくは、(イオン化可能な)カチオン性脂質は室温で可溶性である。
【0151】
(イオン化可能な)カチオン性脂質は、好ましくは非毒性であるか、又はそれ自体で、又は核酸と結合若しくは一緒に試験した場合、又は本発明のナノ粒子でアッセイした場合のいずれかで、限定された低い毒性を有し得る。毒性細胞試験は、当分野で公知の方法、例えば細胞生存率MTTアッセイ、又は類似若しくは同等の試験などによって実施することができる。
【0152】
更なる態様は、上記でより詳細に指定されるように、式(I)~(V)のいずれか1つによるイオン化可能なカチオン性脂質分子を提供する。更なる態様は、ナノ粒子、例えば核酸含有ナノ粒子の調製における式(I)~(V)のいずれか1つによるイオン化可能なカチオン性脂質分子の使用を提供し、例えば、イオン化可能なカチオン性脂質分子は、核酸と複合体化するために使用される。
【0153】
ステロール
本明細書で使用される場合、ステロールという用語は、水素原子の一部を他の化学基で置換することによって、又は環内の結合を修飾することによって、ステロール(2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-オール)から誘導される化合物を指す。ステロール及び関連化合物は、真核生物の生理学において必須の役割を果たす。例えば、コレステロールは、動物の細胞膜の一部を形成し、細胞膜の流動性に影響を及ぼし、発達シグナル伝達における二次メッセンジャーとして働く。本明細書で使用される場合、ステロールは、例えば、コレステロール、デスモステロール、スチグマステロール、β-シトステロール、エルゴステロール、ホパノイド、ヒドロキシステロイド、植物ステロール、ステロイド、水素化コレステロール、カンペステロール、動物ステロール、又はそれらの組合せからなる群から選択されるステロールを指すことができる。ナノ粒子では、ステロールは膜流動性(すなわち、ナノ粒子のリン脂質表面の(単)層バリアにおいて)を維持又は調節する。一実施形態では、ステロールは、コレステロール、スチグマステロール若しくはβ-シトステロール、又はそれらの組合せから選択される。一実施形態では、ステロールは、コレステロール、エルゴステロール、ホパノイド、ヒドロキシステロイド、植物ステロール、ステロイド、動物ステロール、スチグマステロール又はβ-シトステロールである。好ましい実施形態では、ステロールはコレステロールであるか、又はコレステロールを含む。
【0154】
リン脂質
リン脂質は、ホスファチドとしても知られており、その分子がリン酸基を含有する親水性頭部と、脂肪酸に由来する2つの疎水性尾部とを有し、グリセロール分子によって連結されている脂質の一種である。
【0155】
リン脂質が海洋性リン脂質である場合、リン脂質は、典型的には、リン脂質分子の一部として組み込まれたオメガ-3脂肪酸EPA及びDHAを有する。リン酸基を修飾するために、コリン、エタノールアミン又はセリンなどの単純な有機分子を使用することができる。
【0156】
リン脂質は、全ての細胞膜の重要な成分である。リン脂質は、両親媒性の特徴のために脂質二重層を形成することができる。真核生物では、細胞膜はまた、リン脂質の間に散在する別の種類の脂質、ステロール(特にコレステロール)を含む。この組合せは、破壊に対する機械的強度と組み合わされた二次元の流動性を提供する。
【0157】
したがって、一実施形態では、リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン及びホスファチジルグリセロール、又はそれらの組合せから選択される。
【0158】
リン脂質中のアシル基は、個々に、中鎖又は長鎖脂肪酸であってもよい。一実施形態では、リン脂質中のアシル基の少なくとも1つ、好ましくは両方が長鎖脂肪酸であり、好ましくは当該長鎖脂肪酸がC14、C16及びC18鎖、すなわちミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、リノール酸及びオレイン酸、又はそれらの組合せから選択される。
【0159】
特に好ましい実施形態では、リン脂質は中性リン脂質であり、これは生理学的pHで双性イオン性である(正味の中性電荷を有する)ことを意味する。したがって、好ましい実施形態では、リン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)又はホスファチジルエタノールアミン(PE)である。
【0160】
したがって、使用することができるリン脂質の非限定的な例は、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジラウロイルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジラウロイルホスファチジルセリン(DLPS)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、並びにそれらの混合物である。
【0161】
リゾリン脂質は、加水分解によってアシル基の1つが除去され、アルコール基が残ったリン脂質である。したがって、これらの分子は、2つではなく1つの脂肪酸鎖を有する。これらのリン脂質は、例えば、本明細書で教示されるナノ粒子の外層の形状、機能及び流動性を調節するために適用することもできる。リゾリン脂質として、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロホスホコリン(MHPC)、1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PHPC)及び1-ステアロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SHPC)、又はそれらの混合物を使用することができる。
【0162】
一実施形態では、本発明のナノ粒子を調製するために使用される全てのリン脂質は天然起源であり、これは、任意の種類の自然環境、例えば(a)特定の細胞膜に見出されることを意味する。したがって、これらのリン脂質は生体適合性及び生分解性である。天然起源のリン脂質は、天然源(ダイズ、牛乳、ナタネ、鶏卵、ヒマワリなど)から単離及び精製することができるが、(半)合成手段によって調製及び精製することもできる。
【0163】
ナノ粒子の特徴
本発明の実施形態のナノ粒子は、核酸、カチオン性及び/又はイオン化可能なカチオン性脂質、リン脂質、ステロール、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、並びに場合により充填剤材料を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなり、
アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物の量は、0.1~90重量%の範囲であり、及び/又は
核酸の量は、0.01~90重量%の範囲であり、及び/又は
リン脂質の量は、0.1~95重量%の範囲であり、及び/又は
ステロールの量は、0.1~95重量%の範囲であり、及び/又は
カチオン性及び/又はイオン化可能なカチオン性脂質の量は、0.1~95重量%の範囲であり、
場合により存在する充填剤材料の量は、0~95重量%の範囲であり、これらの重量百分率は、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、核酸、リン脂質、ステロール並びにカチオン性及び/又はイオン化可能なカチオン性脂質+任意の充填剤材料、すなわち、これらの5つ又は6つの成分の合計量がナノ粒子の重量の100%になる量に基づく。
【0164】
一実施形態では、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物の量は、0.2~50重量%、例えば3~20重量%又は4~20重量%、より好ましくは0.5~30重量%、より好ましくは1~20重量%の範囲である。
【0165】
一実施形態では、核酸の量は、0.02~30重量%、より好ましくは0.05~20重量%、より好ましくは0.1~15重量%、例えば0.5~5重量%の範囲である。
【0166】
一実施形態では、リン脂質の量は、0.2~60重量%、より好ましくは1~50重量%、例えば10~50重量%、より好ましくは3~40重量%、例えば10~40重量%の範囲である。
【0167】
一実施形態では、ステロールの量は、0.2~90重量%、より好ましくは0.5~70重量%、例えば2~65重量%、より好ましくは1~50重量%、例えば2~45重量%、10~45重量%又は10~20重量%の範囲である。
【0168】
一実施形態では、カチオン性及び/又はイオン化可能なカチオン性脂質の量は、0.2~90重量%、より好ましくは0.5~80重量%、より好ましくは1~70重量%、例えば5~60重量%、8~60重量%、9~60重量%、10~60重量%、15~25重量%、又は20~60重量%の範囲である。
【0169】
一実施形態では、任意の充填剤又は充填剤分子の量は、0~90重量%、より好ましくは0~80重量%、より好ましくは0~70重量%、例えば0~65重量%の範囲である。
【0170】
特定の実施形態では、任意の充填剤又は充填剤分子の量は、20~80重量%、より好ましくは30~70重量%、更により好ましくは30~65重量%、例えば40~65重量%、45~55重量%又は30~60重量%の範囲である。
【0171】
特定の実施形態では、本明細書で教示されるナノ粒子は、充填剤又は充填剤分子を含まない。
【0172】
上記のようなこれらの重量百分率は、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、核酸、リン脂質、ステロール並びにカチオン性及び/又はイオン化可能なカチオン性脂質、並びに場合により充填剤材料、すなわちこれらの5つ又は6つの成分の合計量が、これらの記述の文脈においてナノ粒子の重量の100%になる量に基づく。
【0173】
これらの範囲内のアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、リン脂質、ステロール並びにカチオン性及び/又はイオン化可能なカチオン性脂質から構築されたナノ粒子は安定であり、核酸を首尾よく組み込むことができることが見出された。
ナノ粒子の外層は、リン脂質、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、並びにステロールから構成される。好ましい実施形態では、重量に基づくアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物とリン脂質との比は、2:1~1:10であり、これにより安定なナノ粒子を組み立てることが可能になる。したがって、一実施形態では、重量に基づくアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物とリン脂質との使用される比は、2:1~1:10、より好ましくは1:1~1:5、更により好ましくは1:1.5~1:4である。
【0174】
一実施形態では、ナノ粒子中の成分の相対量は、ナノ粒子を調製するために使用される比に関する。
【0175】
本発明のナノ粒子の製剤化及び場合により精製後、様々なナノ粒子成分の保持(又は回収若しくは捕捉)を評価することができる。これは、当分野で公知の方法によって行うことができる。例えば、RNA保持は、リボグリーン(Ribogreen)アッセイを使用して決定することができ、アポリポタンパク質A1(Apo-A1)の回収は、比色タンパク質定量アッセイを使用して評価することができる。コレステロール及び脂質の回収は、標準的な比色定量アッセイを使用して決定することができる。本発明のナノ粒子の様々な成分の回収率は高い。
【0176】
一実施形態では、ナノ粒子中の成分の相対量は、製剤化及び場合により精製後のナノ粒子中の成分の決定された組込みレベルに関する。
【0177】
一実施形態では、ナノ粒子中の核酸(例えば、siRNA又はmRNA)保持率は、好ましくは1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは20%以上、例えば40%以上、更により好ましくは50%以上、例えば60%以上、70%以上、又は80%以上である。
【0178】
一実施形態では、ナノ粒子中のステロール(例えば、コレステロール)回収率は、1%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、例えば40%以上、更により好ましくは50%以上、例えば60%以上、70%以上、80%以上、又は85%以上である。
【0179】
一実施形態では、ナノ粒子中のリン脂質回収率は、1%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、例えば40%以上、更により好ましくは50%以上、例えば60%以上、70%以上、又は80%以上である。
【0180】
一実施形態では、ナノ粒子中のアポリポタンパク質(例えば、Apo-A1)及び/又はアポリポタンパク質模倣物の回収率は、1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更により好ましくは20%以上、例えば30%以上又は35%以上である。
【0181】
一実施形態では、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物の量は、0.05~2.0モル%、例えば0.10~2.0モル%又は0.08~0.5モル%の範囲であり、及び/又はリン脂質の量は、5~90モル%、例えば15~90モル%又は8.0~50モル%の範囲であり、及び/又はステロールの量は、2.5~65モル%、例えば2.5~50モル%又は4~65モル%の範囲であり、及び/又はカチオン性若しくはイオン化可能なカチオン性脂質の量は、5.0~80モル%、例えば8.0~80モル%又は5~65モル%の範囲であり、モル百分率は、ナノ粒子中のアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、リン脂質、ステロール並びにカチオン性及び/又はイオン化可能なカチオン性脂質の合計量のみに基づく。これらの範囲内のアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、リン脂質、ステロール並びにカチオン性及び/又はイオン化可能なカチオン性脂質から構築されたナノ粒子は安定であり、核酸を首尾よく組み込むことができることが見出された。
【0182】
ナノ粒子の外層は、リン脂質、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、並びにステロールから構成される。安定なナノ粒子を組み立てるために、好ましくは、モル重量百分率に基づくアポリポタンパク質とリン脂質との比は、1:25~1:400である。したがって、一実施形態では、モル重量百分率に基づくアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物とリン脂質との比は、1:25~1:400、より好ましくは1:50~1:200、更により好ましくは1:75~1:150である。
【0183】
本発明によるナノ粒子は、比較的規定された一定のサイズを有することが見出された。換言すれば、本発明によるナノ粒子は、サイズが均一である。平均サイズは、コア成分、すなわち核酸の量及び種類、カチオン性及び/又はイオン化可能なカチオン性脂質の量及び充填剤の量によって主に決定されると考えられる。充填剤は任意であり、充填剤の量を増加させることによって粒径をおそらく増加させることができることが理解される。一実施形態では、本発明によるナノ粒子は、約10~約200nm、約20~約200nm、又は約30~約200nm、好ましくは約30~約100nmの平均サイズを有し、好ましくは平均サイズは粒径を指す。
【0184】
特定の実施形態では、サイズは、z平均サイズ又は数平均サイズである。
【0185】
本発明のナノ粒子のサイズは、当分野で公知の方法によって評価することができる。例えば、動的光散乱(DLS)を使用して、ナノ粒子の直径を測定することができる。クライオTEM測定もこの目的のために使用することができる。両方の技術を使用して、調製したナノ粒子製剤の直径の分布(又は分散性)を評価することもできる。
【0186】
特定の実施形態では、本明細書で教示されるナノ粒子群内の粒径分散度は、0~0.5、好ましくは0~0.4、より好ましくは0~0.3、最も好ましくは0~0.2である。
【0187】
本発明のナノ粒子の形状及び性質は、例えばクライオTEM測定によって評価することができる。粒子は、球形又はほぼ球形の形状であってもよい。粒子はまた、楕円形又はらせん形状であってもよい。粒子は、円盤状であってもよい。好ましくは、粒子は、球形、ほぼ球形、及び/又はいくらか楕円形の形状である。好ましくは、粒子は円盤状の形状ではない。好ましくは、粒子は、本質的に固体であるように見え、すなわち、粒子内に有意な又は大きな内部水性区画を観察することができない。クライオTEMで観察される粒子は完全に均質である必要はなく、すなわち電子密度は粒子内で変化し得る。好ましくは、本発明の粒子は、同様のサイズ及び形状を有し、すなわち、サイズ及び形状に大きな分布がない。本明細書で定義されるナノ粒子は、疎水性コア及び親水性表面を含み、したがって、水又は水溶液、例えば食塩水又は緩衝液に溶解することができる。本発明によって定義されるナノ粒子の構成成分から生じる固有の特性により、ナノ粒子は、数ヶ月間、例えば少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも8ヶ月間、少なくとも10ヶ月間、又は少なくとも12ヶ月間、懸濁状態で安定である。適切な水性緩衝液は、当技術分野で公知であり、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス緩衝生理食塩水(TBS)である。適切な生理食塩水は公知であり、非限定的な例としては、NaCl又はKClの水溶液が挙げられる。ナノ粒子が対象に投与されることが意図される場合、ナノ粒子は、その目的のために生理学的に許容され得る担体に懸濁されなければならない。例えば、ナノ粒子が静脈内送達を意図される場合、生理学的に許容され得る担体は、典型的には血液と等張の流体である。例えば、0.9質量体積%濃度の塩化ナトリウムの溶液、5質量体積%のデキストロース溶液、リンゲル液、乳酸リンゲル液又は酢酸リンゲル液を使用してもよいが、他の適切な担体が知られている。
【0188】
したがって、一態様では、本発明は、本発明によるナノ粒子と生理学的に許容され得る担体とを含む組成物に関する。一実施形態では、組成物は医薬組成物である。組成物は、追加の成分、例えば、それだけに限らないが、医薬品又はバイオ医薬品を更に含むことができることが理解される。これは、(ナノ粒子に含まれる)核酸と薬剤との併用療法にとって魅力的な選択肢であり得る。薬剤は、低分子化合物、抗体又は抗原結合断片、更なるナノ粒子であってもよいが、これらに限定されない。
【0189】
使用
本明細書に記載のナノ粒子の目的は、細胞に核酸を送達すること、又は対象に核酸療法を送達することである。核酸は、例えば、細胞で発現されることになる目的のペプチド若しくはタンパク質をコードするmRNAであってもよいか、又は短い核酸、例えば遺伝子発現を妨害すること(例えば、遺伝子サイレンシング)を意図したsiRNA、shRNAを含むことができるか、又は細胞のゲノムに変異を誘導するCRISPR-Cas又は関連系(例えばgRNA)の成分を含むことができる。したがって、一般に、核酸(ナノ粒子のペイロード)の作用様式は細胞質又は核内にある。したがって、ナノ粒子は、好ましくは少なくとも以下の特性、1)意図された標的細胞の標的化を可能にすること、及び2)ペイロードがその作用を行使できる場所(したがって、ほとんどの場合、標的細胞の細胞質又は核内)に送達することができることを有する。
【0190】
本発明の更なる態様は、医薬として使用するための本発明によるナノ粒子又は本発明による組成物に関する。
【0191】
ナノ粒子を含む核酸療法は、それを必要とする対象に投与することができることが理解される。標的細胞又は組織に応じて、投与は非経口、例えば静脈内、筋肉内又は皮下であってもよい。投与は更に、経口、舌下、局所、直腸、経鼻(吸入)又は経膣であってもよい。更に、標的組織又は細胞の標的化は、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物の適切な選択によって決定される。一実施形態では、本発明によるナノ粒子又は組成物の使用は、骨髄区画又は脾臓に核酸を送達することを含む。この送達は、例えば、静脈内非経口投与によって達成することができる。好ましくは、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物は、骨髄区画を標的とするアポリポタンパク質、例えばApoA1である。
【0192】
本発明者らは、本明細書で教示されるナノ粒子が、効果的な免疫療法のために、リンパ系器官、例えば限定されないが骨髄及び脾臓の骨髄系細胞区画への効率的な核酸治療薬の送達を可能にすることを見出した。実際、本発明者らは、本発明のナノ粒子が、全身注射後に、免疫細胞の存在に関連する組織(脾臓、骨髄)を標的化することができることを見出した。
【0193】
更なる態様は、免疫療法に使用するための本明細書で教示されるナノ粒子又は本明細書で教示される組成物を提供する。
【0194】
一態様では、本発明は、自然免疫応答を刺激又は阻害することによって疾患の治療に使用するための本発明によるナノ粒子又は本発明による組成物に関し、好ましくは、当該疾患は、対象における自然免疫応答を刺激又は阻害することから利益を得る疾患、例えば、不完全な自然免疫応答を特徴とする疾患であり、より好ましくは、治療される当該疾患は、癌、心血管疾患、自己免疫障害又は異種移植片拒絶である。したがって、本発明によるナノ粒子は、免疫系に関連する任意の疾患、例えば任意の免疫障害の治療に、又は免疫応答の調節が実行可能な治療選択肢と考えられる任意の疾患若しくは障害の治療に使用することができる。
【0195】
更なる態様では、本発明は、核酸のインビボ送達のための方法であって、本発明によるナノ粒子又は本発明による組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。
【0196】
更なる態様では、本発明は、自然免疫応答を刺激又は阻害することによって、治療を必要とする対象における疾患又は障害を治療するための方法であって、治療有効量の本発明によるナノ粒子又は本発明による組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。特定の実施形態では、疾患又は障害は、不完全な自然免疫応答を特徴とする疾患又は障害である。一実施形態では、疾患又は障害は、癌、心血管疾患、自己免疫障害又は異種移植片拒絶から選択される。
【0197】
骨髄区画を標的化することによって、血液及び組織に存在する既に分化した細胞、例えばT細胞及びマクロファージとは対照的に、核酸療法を異なる血液細胞型の前駆細胞に首尾よく送達することができる。そうすることで、自然免疫応答は、所望の結果に応じて、核酸療法によって調節、例えば刺激又は阻害され得る。例えば、自己免疫障害、心血管疾患又は異種移植片拒絶(の予防)では、自己免疫応答の阻害が望ましいが、癌では、標的癌細胞に対する免疫応答の刺激が望ましい。
【0198】
ナノ粒子製剤-aNPの調製
本発明は、核酸を含むアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物ベースのナノ粒子(本明細書では、本発明のこれらの粒子はaNPと呼ばれることがある)を提供する。これまで、そのような粒子のコアが疎水性であるため、したがって親水性である核酸の取り込みに適しておらず、そのようなナノ粒子に核酸を含めることは不可能であった。核酸と一緒にイオン化可能なカチオン性脂質を使用することは、核酸の細胞内送達のためのツールとして記載されているが、イオン化可能なカチオン性脂質及び核酸を他の脂質成分と単に組み合わせることは、本明細書に記載の脂質ナノ粒子の形成をもたらさない。例えば、核酸(例えば、siRNA又はmRNA)をリポソーム製剤と混合すると、核酸が粒子の水性周囲に露出しており、核酸が急速に分解されやすい粒子が調製される。更に、これらの粒子は不安定であり、大きな不明確な凝集体の形成を示す。別の例では、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物のリポソーム製剤への単純な添加は、定義された所望の特徴を有するナノ粒子製剤をもたらさない。
【0199】
驚くべきことに、PEG、PEGコンジュゲート又は別の合成ポリマー型安定剤材料を使用せずに、本発明者らは、明確に定義されたサイズ及び形状を有し、封入及び遮蔽された核酸ペイロードを有し、使用される成分のための適切な回収率を有し、(様々な)細胞株に曝露された場合に活性である核酸ペイロードを有する安定及び/又は非毒性のaNPを調製する制御製剤プロセスを見出した。更に、広範囲の組成物(例えば、様々な種類及び/又はレベルのアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、リン脂質、ステロール、カチオン性及び/又はイオン化可能なカチオン性脂質、核酸及び任意の充填剤)を使用して、これらのaNPを調製することができる。
【0200】
したがって、本発明はまた、二段階製剤化プロセスを使用することによって核酸をナノ粒子に組み込むことができるという認識を中心に展開する。
【0201】
したがって、一態様では、本発明は、ナノ粒子を調製するための方法であって、
a)有機溶媒中の脂質成分と水性緩衝液中の核酸とを混合し、好ましくは迅速に混合して脂質ナノ粒子を調製する工程であって、脂質成分が、リン脂質、ステロール、カチオン性脂質又はイオン化可能なカチオン性脂質、及び場合により充填剤材料(例えば、トリグリセリド)を含み、水性緩衝液のpHが5.0以下である工程と、
b)脂質ナノ粒子(a)の下で調製したものと、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物とを混合し、好ましくは迅速に混合して、6.0~8.0のpHで本発明のナノ粒子を調製する工程と、
を含む、方法に関する。
【0202】
有機溶媒は、アルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、メタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルム又はそれらの組合せなどであってもよい。好ましい有機溶媒は、水混合性及び非毒性、例えばエタノール及びDMSO、又はそれらの組合せである。
【0203】
例えば、有機溶媒は、96%~100%のエタノール、好ましくは100%のエタノールであってもよい。
【0204】
迅速な混合は当分野で公知であり、例えばHirota et al.BIOTECHNIQUES VOL.27,NO.2,p286-289;Jeffs et al.,Pharm Res 22,362-372(2005);Kulkarni et al.,ACS Nano 2018,12,5,4787-4795に記載されている。
【0205】
工程a)の水性緩衝液は、低pHであり、イオン化可能なカチオン性脂質が確実に正に帯電し核酸/カチオン性脂質複合体の粒子内への結合及び封入を可能にする。例えば、緩衝液のpHは、5.0以下、例えば4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1、4.0、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5以下であってもよい。水性緩衝液は、核酸を損傷しない任意の緩衝液であってもよい。例示的な緩衝液は、pH4.0の酢酸ナトリウムである。次いで、ナノ粒子は、pHが約6~8、好ましくは7~8、より好ましくは約7.4である水性緩衝液に取り込まれる。これは、例えば、示されたpH範囲の水性緩衝液を用いた透析によって達成することができる。この工程に適した水性緩衝液の非限定的な例は、pH7.4の155mM PBSであるが、核酸を損傷しない任意の緩衝液を使用してもよいことが理解される。
【0206】
工程b)では、pH6~8、好ましくはpH7~8の水性緩衝液中のナノ粒子を、pH6~8、好ましくはpH7~8の水性緩衝液中のアポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物と迅速に混合して、本発明によるナノ粒子を得る。
【0207】
本明細書中に教示される上記の二段階製剤化プロセスにより、広範囲の所望の有益な特徴(安定性、低毒性又は非毒性、高核酸保持、核酸活性など)を有するaNPが得られる。しかしながら、他のプロセスでも有益な特徴を有するaNPを得ることができるので、記載された製剤化方法は非限定的である。
【0208】
更なる態様では、本発明は、以下の工程、
a)有機溶媒中の脂質成分と水性緩衝液中の核酸とを混合し、好ましくは迅速に混合して脂質ナノ粒子を調製する工程であって、脂質成分が、リン脂質、ステロール、カチオン性脂質又はイオン化可能なカチオン性脂質、及び場合により充填剤材料(例えば、トリグリセリド)を含み、水性緩衝液のpHが5.0以下である工程と、
b)脂質ナノ粒子(a)の下で調製したものと、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物とを混合し、好ましくは迅速に混合して、6.0~8.0のpHで本発明のナノ粒子を調製する工程と、
を含む方法によって得ることができるか又は得られるナノ粒子に関する。
【0209】
本発明の更なる態様
本発明によるナノ粒子は、標的細胞又は組織に核酸を送達することができることが理解される。標的細胞又は組織は、対象内にあってもよく、又はインビトロ若しくはエクスビボであってもよい。したがって、一態様では、本発明は、細胞に核酸を導入するためのインビボ、インビトロ又はエクスビボ方法であって、本発明によるナノ粒子又は本発明による組成物を細胞と接触させることを含む、インビボ、インビトロ又はエクスビボ方法に関する。特定の実施形態では、細胞は骨髄区画の細胞又は骨髄系細胞である。
本出願はまた、以下の記述に記載されている態様及び実施形態を提供する。
【0210】
記述1.ナノ粒子であって、
-アポリポタンパク質、
-リン脂質、
-ステロール、
-カチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質、及び
-核酸
を含むナノ粒子。
【0211】
記述2.ナノ粒子が、トリアシルグリセリド及びコレステロールアシルエステル又はそれらの組合せから選択される充填剤を更に含み、好ましくはトリアシルグリセリドがトリカプリリンであり、並びに/又はコレステロールアシルエステルがカプリル酸コレステロール及び/若しくはオレイン酸コレステロールである、記述1に記載のナノ粒子。
【0212】
記述3.核酸がRNA、DNA又は核酸類似体であり、
好ましくは、RNAは、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、piwi相互作用RNA(piRNA)、核内低分子RNA(snoRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、tRNA由来低分子RNA(tsRNA)、調節低分子RNA(srRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、修飾mRNA、リボソームRNA(rRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)若しくはガイドRNA(gRNA)、又はそれらの組合せ及び/又はそれらの修飾であり、又は
好ましくは、DNAは一本鎖又は二本鎖DNAであり、又は
好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホジエステル骨格又は2’リボースの修飾を含有するヌクレオチド又はヌクレオシド類似体からなる一本鎖DNA又はRNAであり、より好ましくは、ヌクレオチド又はヌクレオシド類似体は、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、モルフォリノ又はペプチド核酸(PNA)から選択される、
記述1及び2のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0213】
記述4.アポリポタンパク質が、ApoA1、ApoA2、ApoA4、ApoA5、ApoB48、ApoB100、ApoC-I、ApoC-II、ApoC-III、ApoC-IV、ApoD、ApoE、ApoF、ApoH、ApoL及びApoMから選択され、
好ましくはApoA1、ApoA2、ApoA4、ApoA5、ApoB100、ApoC-I、ApoC-II、ApoC-III、ApoC-IV及びApoEから選択され、
より好ましくはApoA1、ApoA4、ApoA5、ApoB100、ApoC-III及びApoEから選択され、
最も好ましくはApoA1、ApoB100及びApoEから選択される、
記述1から3のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0214】
記述5.ナノ粒子中のアポリポタンパク質が、
-調製時及び保存時の凝集を防止するため、
-インビボ安定性を改善するため、
-自然なステルス性を提供するため、及び/又は
-免疫細胞との相互作用を促進するために使用される、
記述1から5のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0215】
記述6.カチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質が、長鎖アルコールのイオン化可能なカチオン性エステル、ジグリセリドのイオン化可能なカチオン性エステル若しくはステロールのイオン化可能なカチオン性エステル、又はそれらの組合せから選択される、記述1から5のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0216】
記述7.ステロールが、コレステロール、スチグマステロール若しくはβ-シトステロール、又はそれらの組合せから選択される、記述1から6のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0217】
記述8.リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン及びホスファチジルグリセロール又はそれらの組合せから選択され、好ましくはリン脂質中のアシル基の少なくとも1つ、より好ましくは両方が長鎖脂肪酸であり、更により好ましくは当該長鎖脂肪酸がミリストレイン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸又はそれらの組合せから選択される、
記述1から7のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0218】
記述9.アポリポタンパク質の量が0.10~2.0モル%の範囲であり、及び/又は
リン脂質の量が15~90モル%の範囲であり、及び/又は
ステロールの量が2.5~50モル%の範囲であり、及び/又は
カチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質の量が8.0~80mol%の範囲であり、モル百分率が、ナノ粒子中のアポリポタンパク質、リン脂質、ステロール及びカチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質の合計量のみに基づく、
記述1から8のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0219】
記述10.モル重量百分率に基づくアポリポタンパク質とリン脂質との比が、1:25~1:400、より好ましくは1:50~1:200、更により好ましくは1:75~1:150である、記述1から9のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0220】
記述11.平均サイズが30~100nmである、記述1から10のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0221】
記述12.記述1から11のいずれか一項に記載のナノ粒子と生理学的に許容され得る担体とを含む組成物であって、好ましくは医薬組成物である、組成物。
【0222】
記述13.医薬として使用するための、記述1から11のいずれか一項に記載のナノ粒子、又は記述12に記載の組成物。
【0223】
記述14.使用が、核酸を骨髄区画又は脾臓に送達することを含む、記述13に記載の使用のためのナノ粒子又は組成物。
【0224】
記述15.自然免疫応答を刺激又は阻害することによって疾患の治療に使用するための、好ましくは当該疾患が癌、心血管疾患、自己免疫障害又は異種移植片拒絶である、記述1から11のいずれか一項に記載のナノ粒子、又は記述12に記載の組成物。
【0225】
記述16.ナノ粒子を調製するための方法であって、
a)有機溶媒中の脂質成分と水性緩衝液中の核酸とを混合し、好ましくは迅速に混合して脂質ナノ粒子を調製する工程であって、脂質成分が、リン脂質、ステロール、トリグリセリド(任意)及びカチオン性脂質又はイオン化可能なカチオン性脂質、並びに核酸を含み、水性緩衝液のpHが5.0以下である工程と、
b)脂質ナノ粒子と、アポリポタンパク質とを混合し、好ましくは迅速に混合して、6.0~8.0のpHで本発明のナノ粒子を調製する工程と、
を含む、方法。
【0226】
記述17.細胞に核酸を導入するためのインビボ、インビトロ又はエクスビボ方法であって、記述1から11のいずれか一項に記載のナノ粒子又は記述12に記載の組成物を細胞と接触させることを含む、インビボ、インビトロ又はエクスビボ方法。
【0227】
記述18.核酸のインビボ送達のための方法であって、記述1から11のいずれか一項に記載のナノ粒子又は記述12に記載の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【0228】
記述19.自然免疫応答を刺激又は阻害することによって、治療を必要とする対象における疾患又は障害を治療するための方法であって、治療有効量の記述1から11に記載のナノ粒子又は記述12に記載の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【0229】
記述20.疾患が、癌、心血管疾患、自己免疫障害又は異種移植拒絶から選択される、記述19に記載の方法。
本発明をその特定の実施形態と共に説明してきたが、当業者にとって前述の記述に照らして多くの代替、変更及び変形が明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広範な範囲において、以下のような全てのそのような代替物、変更物、及び変形物を包含することが意図されている。
【0230】
本発明の本明細書に開示された態様及び実施形態は、以下の非限定的な例によって更に支持される。
【実施例】
【0231】
実施例1.製剤化及び特性評価の一般的説明
ナノ粒子製剤は、イオン性及び疎水性相互作用に基づいて自己集合する。成分は、それぞれの有機溶媒(脂質及び他の構造成分)又は水性緩衝液(核酸ペイロード)中で所望の濃度で調製される。次いで、溶液は、マイクロ流体又はT字接合混合を含む高速混合技術によって一緒にされる。
【0232】
過剰の水性緩衝液が形成プロセスに必須である。本明細書で使用される場合、過剰の水性緩衝液は、少なくとも2:1以上、例えば2.2:1、2.5:1、2.8:1又は3:1以上の(水性緩衝液):(有機溶媒)の比(体積基準)を指す。
【0233】
最初の混合後、少量の有機溶媒を、例えば透析又は遠心濾過によって除去する。これらの工程により、脂質ナノ粒子が得られ、次の工程において、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物が迅速混合技術(例えば滴下法など)によって添加される。アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物の添加及びプロセシングの後、残留タンパク質を透析又は遠心濾過によって除去する必要がある。最後に、試料を所望の濃度に濃縮する(
図2を参照)。
【0234】
したがって、核酸ナノ粒子aNPは、
(a)核酸、
(b)(イオン化可能な)カチオン性分子、
(c)アポリポタンパク質、
(d)リン脂質、
(d)ステロール、及び
(e)場合により、トリグリセリド又はその誘導体
を含む。
【0235】
aNPを製剤化した後、ナノ粒子製剤の物理化学的特性を決定する。これらの特性は、製剤の具体的な組成に応じて変化し得る。動的光散乱(DLS)及び電子顕微鏡(例えば、クライオTEM)によってナノ粒子のサイズ及び分散性を決定する。ナノ粒子形態を評価するために電子顕微鏡法も使用する。更に、投入材料成分、例えば核酸、アポリポタンパク質及び/又はアポリポタンパク質模倣物、リン脂質及びコレステロールの回収を当分野で公知の様々な市販のアッセイで決定する。貯蔵寿命は、4℃の緩衝液中で保存しながら長期間(1ヶ月)にわたって製剤の物理化学的特性を決定することによって評価する。多数の核酸ナノ粒子製剤(約150)について、物理化学的特性及び貯蔵寿命が特性評価されている。特定の製剤を用いて、生理学的条件下での再現性及び安定性を調査した。
【0236】
成分の以下のモル百分率範囲を試験し、調製したaNPが安定であることが見出され、モル百分率は、アポリポタンパク質(Apo-A1)、リン脂質、ステロール(コレステロール)及びカチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質のみの総量に基づき、充填剤、核酸及び任意の他の成分を除外し、
アポリポタンパク質Apo-A1の量は、0.08モル%~2.0モル%の範囲であり、例えば、0.10モル%~2.0モル%の範囲であり、及び/又は
リン脂質の量は、5~90モル%、例えば15~90モル%の範囲であり、及び/又は
ステロールの量は、2.5~65モル%、例えば2.5~50モル%の範囲であり、及び/又は
カチオン性若しくはイオン化可能なカチオン性脂質の量は、5.0~80モル%、例えば8.0~80モル%の範囲である。
【0237】
これらの範囲外では、ナノ粒子は不安定であり得る。更に、トリグリセリドなどの充填剤材料は、0~95モル%の範囲で添加することができ、モル百分率は、アポリポタンパク質、リン脂質、ステロール及びカチオン性又はイオン化可能なカチオン性脂質のみの総量に基づく。
【0238】
実施例2.本明細書に記載の核酸、例えばRNAを含有するアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)を調製するための例示的な方法(
図2)。
第1の工程では、リン脂質、ステロール、例えばコレステロール、イオン化可能なカチオン性脂質、及び任意の充填剤材料(例えばトリグリセリド)を、水混和性有機溶媒、例えば96%~100%エタノール(例えば2.33mL)に溶解し、溶液を、より低いpHに維持した核酸を含む水溶液(例えば、25mM酢酸ナトリウム7mL、pH4)と迅速に混合した(指定された流量及び比で)。混合には、28mL/分などのT字接合混合装置を使用した。他のマイクロ流体ベースの混合方法、例えば互い違いのヘリンボーン構造を有するチップでの混合も使用することができる。得られた脂質ナノ粒子を生理学的pH(例えば、4℃、一晩、2×、155mM PBS、pH7.4での透析)で透析し、次に第2の工程で、生理学的pHでアポリポタンパク質、例えばアポリポタンパク質A1と迅速に混合して、本発明によるナノ粒子(aNP)を得た。アポリポタンパク質A1は、155mM PBS、pH4中に存在し得る。あるいは、アポリポタンパク質のペプチド模倣物を第2の混合工程で使用することができる。混合のために、T字接合混合装置を、例えば13.3mL/分で使用することができる。混合後、得られた核酸ナノ生物剤を1時間インキュベートすることができる。場合により、ナノ粒子を濾過し、濃縮することができる(例えば、0.2μmの濾過とそれに続く100kDaの遠心濾過)。本発明のaNPはまた、他の方法によって処理されてもよい。
【0239】
実施例3.アポリポタンパク質ナノ粒子(aNP)中のsiRNA保持及びアポリポタンパク質を含まない比較例ナノ粒子(NP)の不安定性(
図3)。
実施例2による調製手順(
図2)に従って、代表的な2つのsiRNAを含むaNP(siRNA-aNP)(aNP18及び34、その製剤を表1に示す(
図11))を調製した。siRNA-aNP製剤18及び34は、本発明の特定の実施形態による製剤であり、様々な量のリン脂質(すなわち、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)又は1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC))、コレステロール、イオン化可能なカチオン性脂質(すなわち、Dlin-MC3-DMA)、トリグリセリド、アポリポタンパク質A1(ApoA1)及びsiRNAを含む。
【0240】
更に、アポリポタンパク質A1が製剤に組み込まれる手順の第2の工程を省略することによって比較NPを調製した。NPの製剤化の1日後にリボグリーン(Ribogreen)アッセイ(ThermoFisher-R11490)を使用してRNA保持を決定した。
【0241】
本発明によるaNPのみが、siRNAペイロードを説得力をもって捕捉した(
図3A)。アポリポタンパク質を含まない比較例NPは、siRNAを保持しなかったか、ほとんど保持しなかった(
図3A)。
【0242】
図3Bは、アポリポタンパク質A1が組み込まれていない比較例siRNA-NP製剤18の代表的な画像を示し、濁った溶液中の大きな明確でない沈殿物/凝集物を示し、安定な(透明な)製剤を形成することができないことを示している。
【0243】
図3Cは、大きな明確でない凝集物を示す比較例siRNA-NP製剤18の代表的なクライオ透過型電子顕微鏡写真を示す(スケールバー50nm)。
【0244】
結論として、これらのデータは、アポリポタンパク質が、核酸を含有するアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)の形成及び安定性のための重要かつ必須の構造成分であることを示している。
【0245】
ApoA1の精製
pET20b-apoA1プラスミドで形質転換したClearColi細胞の小規模培養を、100μg/mLのアンピシリンを含むLB培地で開始した。翌日、20mLの小型培養物を1リットルの2YT培地で希釈して、大型培養を開始した。培養物を、0.6~0.8のOD600まで37℃及び150rpmで増殖させ、次いで、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を0.1mMの最終濃度で添加して発現を誘導した。誘導した培養物を20℃及び150rpmで一晩インキュベートした。誘導された細菌培養物をペレット化し、細胞を、ペレット1グラム当たり5mLのBugBuster Protein Extraction Reagent(Novagen)にペレットを再懸濁することによって化学的に溶解した。BugBusterに再懸濁した細胞にベンゾナーゼヌクレアーゼ(Merck Millipore)を添加した後、振盪しながら室温でインキュベートした。細胞溶解物を常に氷上に保った。溶解後、細胞溶解物を遠心分離して不溶性細胞残屑をペレット化し、上清を固定化ニッケルイオンを含有するIMACカラムに流した。カラムを8カラム体積の緩衝液A(20mM Tris、500mM NaCl、10mMイミダゾール、pH7.9)で洗浄し、次いで8カラム体積の緩衝液A50(20mM Tris、500mM NaCl、50mMイミダゾール、pH7.9)で洗浄した。apoA1を溶出するために、8カラム体積の緩衝液A500(20mM Tris、500mM NaCl、500mMイミダゾール、pH7.9)をカラムに添加した。精製工程の全ての画分を回収し、SDS-PAGEで分析した。精製したapoA1を含有する画分の緩衝液を、Amicon超遠心フィルタ(Amicon)を使用してPBSに変更した。apoA1を保存するために、アリコートを液体窒素中で急速凍結し、-70℃で保存した。
【0246】
実施例4.siRNAを含有するアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)(siRNA-aNP)の脂質組成は、それらの物理化学的特性に影響を及ぼし、最適な特性を有するsiRNA-aNPを得るために最適化することができる(
図4)。
72個のsiRNA-aNP製剤のライブラリを確立し、物理化学的パラメータを分析した。siRNA-aNP製剤は、8~52モル%のリン脂質(すなわち、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)又は1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC))、4~62モル%のコレステロール、5~62モル%のイオン化可能なカチオン性脂質(すなわちDlin-MC3-DMA)、0~76mol%のトリグリセリド、0.08~0.5モル%のアポリポタンパク質A1(実施例3に記載のように調製)及び0.03~0.18%の非特異的(Integrated DNA technologies-51-01-14-03)又はホタルルシフェラーゼ(Integrated DNA technologies-カスタム配列)siRNAを含有した。製剤1、3、6、7、8、9、10、11、12、14、18、19、20、21、22、23、24、29、31、32、33、34、35、39、42、43、44、45、46、47、48、50、54、55、56、59、60、67、68、71及び72の正確な製剤を表1(
図11)に示す。
【0247】
実施例2に記載の手順を用いてsiRNA-aNP製剤を調製した。
【0248】
製剤化の1日後、ライブラリの個々のsiRNA-aNP製剤の物理化学的特性を、動的光散乱(DLS)を使用して評価した場合の(i)粒径(z平均)及び(ii)粒径分散性、(iii)リボグリーン(Ribogreen)アッセイを使用したsiRNA保持、(iv)比色タンパク質定量アッセイを使用したアポリポタンパク質A1(apo-A1)、並びに標準比色定量アッセイを使用した(v)コレステロール及び(vi)リン脂質回収に従って決定した(
図4A)。1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)又は1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)のいずれかをリン脂質として使用した両方の製剤タイプについてデータを
図4Aに示す。
図4Aの結果は、siRNAを効果的に封入する約100nmの安定で均一な製剤を得るために組成を変えることによってaNPを最適化したことを示す。
図4Aの結果は、アポリポタンパク質A1、コレステロール及びリン脂質が製剤に効果的に組み込まれたことも示している。
【0249】
ライブラリの個々のsiRNA-aNP製剤を、製剤のトリグリセリド含有量によって示される、製造1日後の動的光散乱(DLS)を使用した(i)粒径(数平均)及び(ii)粒径分散性に従って更に分析した。
図4Bの結果は、充填剤分子としてトリグリセリドを添加すると、siRNA-aNPサイズ及び均一性が増加したことを示す。
【0250】
ライブラリの個々のsiRNA-aNP製剤も、製剤のN/P比によって示される、製造1日後の動的光散乱(DLS)を使用した(i)粒径(数平均)及び(ii)粒径分散性に従って分析した。N/P比は、本明細書の他の箇所に記載されるように、核酸成分中の負に帯電した核酸リン酸(P)基に対するイオン化可能なカチオン性材料の正に帯電可能なアミン(N=窒素)基の使用される比である。
図4Cの結果は、siRNA-aNPが、粒径又は分散性に影響を及ぼすことなく、様々なN/P比で調製されたことを示している。
【0251】
実施例5.siRNAを含有するアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)(siRNA-aNP)の脂質組成が、これらのaNPの形態及びサイズに影響を及ぼすために使用することができることを示す代表的なクライオ透過型電子顕微鏡写真(
図5)。
ライブラリの個々のsiRNA-aNP製剤全てを、FEI TITAN 300kVを使用してクライオ電子透過電子顕微鏡検査に供して、粒径、形態及び製剤均一性(スケールバー50nm)を決定した。
【0252】
72個のsiRNA-aNPを含有するライブラリの全ての個々の製剤から、クライオ透過型電子顕微鏡(クライオTEM)画像を撮影した。72個のsiRNA-aNPの製剤は、実施例4に記載の通りである。結果は、製剤が球形の外観を有し、それらの形態、内部構造、サイズ及び均一性が製剤組成に依存したことを示している。例えば、製剤1などの少量のコレステロール及びトリグリセリドを含む製剤が複数の同心環を含む内部構造を有するように見えた場合、製剤72などの多量のコレステロール及びトリグリセリドを含む製剤は、表面バリアによって囲まれた電子密度の高いコアを有するように見えた。画像を検査すると、必ずしも単層であるとは限らないが、粒子は(別個の)表面バリア層を含み、おそらくリン脂質、コレステロール及びアポリポタンパク質で構成されていたことが分かる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、層が、イオン化可能なカチオン性脂質によってコアに埋め込まれたsiRNAを遮蔽し、保護すると考えている。
【0253】
実施例6.ホタルルシフェラーゼsiRNAを含有するアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)(siRNA-aNP)は、インビトロで強力なレポーター遺伝子発現ノックダウンを誘導する(
図6)。
マウスRAW264.7マクロファージにおけるホタルルシフェラーゼノックダウンを測定することによって、siRNA-aNPライブラリの72個の個別の製剤の機能的効果を決定した。より具体的には、マウスRAW264.7マクロファージを、安定した二重レポータールシフェラーゼ発現(ホタル及びウミシイタケルシフェラーゼ)のためにpmirGLOプラスミド(Promega、E1330)でトランスフェクトし、続いてホタルルシフェラーゼ(Fluc)siRNAを含有するライブラリの個々のsiRNA-aNP製剤に48時間曝露した。発光アッセイは、製造業者のプロトコル(Dual-Gloルシフェラーゼアッセイシステム、Promega、E2920)に従って実施した。非特異的siRNAを含有する対照siRNA-aNP製剤についてデータを補正した。72個のsiRNA-aNPの製剤は、実施例4に記載の通りである。
【0254】
結果は、製剤の組成に応じて、ホタルルシフェラーゼsiRNA-aNPが、非特異的siRNA-aNPと比較して強力な遺伝子サイレンシングを誘導したことを示している。
図6Aは、40%以上、更には最大100%のサイレンシングをもたらすいくつかの代表的な製剤を示す。
図6Bの結果は、製剤にトリグリセリドを添加すると、製剤のリン脂質タイプに関係なく、それらの機能的効果に影響を及ぼし得ることを示している。
図6Cの結果は、製剤のリン脂質タイプに関係なく、N/P比を3から9に増加させると機能的効果が改善されるように見えたことを示している。
【0255】
実施例7.放射性標識siRNAを含有するアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)(siRNA-aNP)は、マウスにおける静脈内投与後に脾臓及び骨髄を含む造血組織に局在する(
図7)。
siRNA-aNP製剤3、39、14、55、22及び72は全て、本発明の特定の実施形態による製剤であり、様々な量のリン脂質(すなわち、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)又は1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC))、コレステロール、イオン化可能なカチオン性脂質(すなわち、Dlin-MC3-DMA)、トリグリセリド、アポリポタンパク質A1(実施例3に記載のように調製)及びsiRNAを含んでいた。siRNA-aNPの製剤は、表1(
図11)に記載の通りである。
【0256】
図7Aは、マウスにおける静脈内投与後のsiRNA-aNPの生体内分布を示す。C57BL/6マウス(n=6/製剤)に、本発明の例示的なsiRNA-aNP製剤又はジルコニウム89放射性標識非特異的siRNAを含有する比較例LNP製剤
#を2mg/kg siRNAの用量で静脈内注射した。LNP対照製剤はPEG化脂質を含んでいた。注射の24時間後、マウスを屠殺し、ガンマ線計測による定量分析のために器官を収集した。データは、組織1グラム当たりの%注射用量(%ID/g)の平均±SDとして提示され、チューキーの事後検定による二元配置分散分析によって分析される。
*はp値<0.05を示し、
****はp値<0.0001を示す。
【0257】
図7Bは、組織1グラム当たりの%注射用量(%ID/g)の骨髄対肝臓の比として示した生体内分布の結果を示す。
#LNP-siRNA比較例は、siRNAを含む、Dlin-MC3-DMA、DSPC、コレステロール及びPEG-DMG(50:38.5:10:1.5モル%)から構成された。
【0258】
結論として、データは、本発明の特定の実施形態によるペイロードとしてsiRNAを含有するaNPが、全身注射後に免疫細胞の存在に関連する組織を標的化することができたことを示している。更に、siRNA-aNPの組成物は、標的化及びその後の生体内分布を導くために使用することができる。
【0259】
実施例8.アポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)は、mRNAを封入して安定な製剤を得て、インビトロで遺伝子発現を誘導することができる(
図8)。
ホタルルシフェラーゼメッセンジャーRNA(mRNA、Trilink Biotechnologies-L7602)含有aNP製剤を、実施例2に記載される方法を使用して調製した。本発明のmRNA-aNP製剤及びLNP-mRNA比較例製剤
#を、動的光散乱(DLS)を使用してそれらの粒径及び粒径分散性に関して特徴付けた(
図8A、左パネル)。リボグリーン(Ribogreen)アッセイを使用して、mRNA捕捉効率を評価した(
図8A、右パネル)。
【0260】
図8Bは、代表的なmRNA-aNP(本発明の特定の実施形態による)のクライオ透過型電子顕微鏡写真(スケールバー50nm)を示す。
【0261】
ヒトHEK293細胞をホタルmRNA含有aNP及び比較例LNPに24時間曝露した。レポーター遺伝子発現を発光によって決定し(
図8C、左パネル)、細胞生存率をMTTアッセイ(Promega-G3582)によって決定したところ(
図8C、右パネル)、mRNA-aNPは、インビトロで毒性を誘導することなく用量依存的なホタルルシフェラーゼ発現を誘導したことが示された。
【0262】
マウスRAW264.7マクロファージをホタルmRNA含有aNPに24時間曝露した。遺伝子発現を発光によって決定し、mRNA-aNPがマクロファージ細胞培養物において用量依存的なホタルルシフェラーゼ発現を誘導したことを示している(
図8D)。
【0263】
初代マウス骨髄由来マクロファージをホタルmRNA含有aNPに24時間曝露した。遺伝子発現を発光によって決定し、mRNA-aNPが初代細胞において用量依存的なホタルルシフェラーゼ発現を誘導したことを示した(
図8E)。
#LNP-mRNA比較例は、mRNAを含む、Dlin-MC3-DMA、DSPC、コレステロール及びPEG-DMG(50:38.5:10:1.5モル%)から構成された。
【0264】
実施例9.式(I)~(V)によるイオン化可能なカチオン性脂質の合成(
図9に示す)
出発化合物、試薬、溶媒、重水素化溶媒及び(精製)材料は、商業的供給源(例えば、Merck、ABCR、Cambridge Isotopes Laboratoriesなど)から購入した。NMR分析は、Bruker 400MHz分光計で行った。MALDI-TOF-MS分析は、Bruker Autoflex分光計で行った。HPLC-MSは、ESIイオントラップMS検出器並びにPDA検出器を備えたLCQ Fleet(Thermo Scientific)で、C18逆相カラム(Kinetex 5μm粒子、2.1mm(内径)×50mm、Phenomenex)を適用し、5%アセトニトリル及び95%水から95%アセトニトリル及び5%水まで(両方とも0.1%ギ酸を含む)の溶離剤勾配を用いて0.2mL/分の流速で行った。
【0265】
式(II)(ICG-A型)の例:1,2-グリセロールイオン化可能なカチオン性脂質
【化5】
スキームA:ICG-A型を用いた式(II)によるイオン化可能なカチオン性脂質への合成経路。DPTS=4-(ジメチルアミノ)-ピリジニウム4-トルエンスルホナート;DIC=N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド;DCM=ジクロロメタン;RT=室温;DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン;Pd/C=パラジウム炭素;THF=テトラヒドロフラン;HAc=酢酸;H2(g)=水素ガス。
【0266】
中間体1:(S)-4-((ベンジルオキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン
この化合物は、文献の手順(Lee,Jong-Dae;et al,Organic Letters(2007),9(2),323-326)に従って(S)-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノールのベンジル保護を介して得た。収量:16.8g(88%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0267】
中間体2:(R)-3-((ベンジルオキシ)プロパン-1,2-ジオール
この化合物は、文献の手順(Lee,Jong-Dae;et al,Organic Letters(2007),9(2),323-326)に従って酢酸及び水を使用して、(S)-4-((ベンジルオキシ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソランのジオール基の脱保護によって得た。収量:9.45g(76%)。
1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【化6】
【0268】
中間体3:(S)-3-(ベンジルオキシ)プロパン-1,2-ジイルジドデカノアート
この化合物は、DPTS(0.4g、1.36mmol、約0.1モル当量)及びDIC(5.2g、41.3mmol、2.5モル当量)をカップリング試薬として使用して、DCM(23mL)中で(R)-3-((ベンジルオキシ)プロパン-1,2-ジオール(3g、16.5mmol)とドデカン酸(6.92g、34.6mmol、2.1モル当量)とのカップリングによって得た。反応混合物を室温で24時間撹拌し、その後、反応混合物をセライトプラグで濾過した。粗混合物を、溶離剤として1/9 EtOAc/ヘプタンを使用するシリカカラムクロマトグラフィにより精製した。収量:8.21g(91%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0269】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ7.43-7.27(m,5H,Ar-H),5.37-5.06(m,1H,キラル OCH
2CHCH
2O),4.67-4.43(m,2H,OCH
2-Bn),4.43-4.08(m,2H,CHCH
2OCO),3.67-3.31(m,2H,CHCH
2OCH
2),2.29(dt,J=16.9,7.5Hz,4H,CH
2CH
2COO),1.59(dq,J=10.6,7.1Hz,4H,CH
2CH
2COO),1.26(d,J=4.2Hz,32H,CH
3(CH
2)
8CH
2),0.88(t,J=6.8Hz,6H,CH
3CH
2).
【化7】
【0270】
中間体4:(S)-3-(ベンジルオキシ)プロパン-1,2-ジイルジウンデカノアート。
(R)-3-((ベンジルオキシ)プロパン-1,2-ジオールとウンデカン酸との間の反応を、中間体3について行った方法と同様の方法で行った。収量:478mg(90%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0271】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ7.54-7.26(m,5H,Ar-H),5.33-5.12(m,1H,キラルOCH
2CHCH
2O),4.66-4.44(m,2H,OCH
2-Bn),4.35-4.19(m,2H,CHCH
2OCO),3.59(d,J=5.3Hz,2H,CHCH
2OCH
2),2.30(dt,J=17.0,7.5Hz,4H,CH
2CH
2COO),1.74-1.49(m,4H,CH
2CH
2COO),1.50-1.08(m,28H,CH
3(CH
2)
7CH
2),0.88(t,J=6.8Hz,6H,CH
3CH
2).
【化8】
【0272】
中間体5:(S)-3-(ベンジルオキシ)プロパン-1,2-ジイルジデカノアート
(R)-3-((ベンジルオキシ)プロパン-1,2-ジオールとデカン酸との間の反応を、中間体3について行った方法と同様の方法で行った。収量:505mg(93%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0273】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ7.42-7.27(m,5H,Ar-H),5.24(dtd,J=6.4,5.2,3.7Hz,1H,キラルOCH2CHCH2O),4.65-4.44(m,2H,OCH2-Bn),4.35-4.19(m,2H,CHCH2OCO),3.59(dd,J=5.2,1.2Hz,2H,CHCH2OCH2),2.30(dt,J=16.9,7.5Hz,4H,CH2CH2COO),1.74-1.51(m,4H,CH2CH2COO),1.51-1.08(m,24H,CH3(CH2)6CH2),1.08-0.67(m,6H,CH3CH2).
下位実施例1:(R)-3-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)プロパン-1,2-ジイルジドデカノアート
【0274】
工程1、構成要素1:(S)-3-ヒドロキシプロパン-1,2-ジイルジドデカノアート
【化9】
【0275】
この化合物は、THF(50mL)及び酢酸(0.5mL)中、水素バルーン及び触媒としてPd/C(250mg、Degussa型)を使用して、(S)-3-(ベンジルオキシ)プロパン-1,2-ジイルジドデカノアート(中間体3、8.21g、15mmol)の脱ベンジル化によって得た。反応混合物を室温で24時間撹拌し、その後、反応混合物をセライトプラグで濾過し、蒸発乾固させた。粗混合物をクロロホルムに溶解し、脱塩水で洗浄し、次いで、飽和NaCl溶液(水溶液)で洗浄した。ゆっくりと固体になる油が得られた。収量:7.1g(100%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0276】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.09(p,J=5.0Hz,1H,キラルOCH2CHCH2O),4.48-4.19(m,2H,CHCH2OCO),3.73(t,J=4.0Hz,2H,CHCH2OH),2.33(dt,J=9.0,7.5Hz,4H,CH2CH2COO),1.61(h,J=5.2,3.1Hz,4H,CH2CH2COO),1.28(d,J=14.7Hz,32H,CH3(CH2)8CH2),1.04-0.66(m,6H,CH3CH2).
【0277】
工程2:(R)-3-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)プロパン-1,2-ジイルジドデカノアート
【化10】
【0278】
この化合物は、試薬としてDIPEA(74mg、0.58mmol、2.6モル当量)、DPTS(6.4mg、0.1モル当量)及びDIC(41.4mg、0.33mmol、1.5モル当量)を使用して、DCM(1mL)中で(S)-3-ヒドロキシプロパン-1,2-ジイルジドデカノアート(構成要素1、0.1g、0.22mmol)を4-(ジメチルアミノ)ブタン酸塩酸塩(55mg、0.33mmol、1.5モル当量)にカップリングすることによって得た。反応混合物を室温で24時間撹拌し、その後、反応混合物をセライトプラグで濾過し、濾液をDCMで希釈し、続いて0.1M HCl(水溶液)、0.1M NaOH(水溶液)及び飽和NaCl(水溶液)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させた。粗混合物をアセトニトリル中で撹拌し、濾過した。濾液を蒸発乾固させて、4℃でゆっくりと固体になった油を得た。収量:90mg(80%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0279】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.27(tt,J=6.0,4.3Hz,1H,OCH2CHCH2O),4.30-4.15(4H,CHCH2OCO),2.44-2.25(m,8H,CH2CH2COO及びNCH2),2.21(s,6H,N(CH3)2),1.78(p,J=7.4Hz,2H,NCH2CH2CH2COO),1.70-1.51(m,4H,CH2CH2COO),1.40-1.08(m,32H,CH3(CH2)8CH2),1.08-0.69(m,6H,CH3CH2).
MALDI-TOF-MS(CHCAマトリックス、ポジティブリフレクタモード):m/z(M+H)+=570.48。計算値:C33H63NO6(正確な質量569.47、分子量569.87)。
下位実施例2:(R)-3-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)プロパン-1,2-ジイルジウンデカノアート
【0280】
工程1、構成要素2:(S)-3-ヒドロキシプロパン-1,2-ジイルジウンデカノアート
【化11】
【0281】
(S)-3-(ベンジルオキシ)プロパン-1,2-ジイルジウンデカノアート(中間体4)の水素化反応を、構成要素1の調製のために行った方法と同様の方法で行った。収量:405mg(80%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0282】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.09(p,J=5.1Hz,1H,キラルOCH2CHCH2O),4.42-4.20(m,2H,CHCH2OCO),3.94-3.52(m,2H,CHCH2OH),2.33(dt,J=9.1,7.5Hz,4H,CH2CH2COO),1.76-1.53(m,4H,CH2CH2COO),1.28(d,J=14.9Hz,28H,CH3(CH2)7CH2),0.88(t,J=6.8Hz,6H,CH3CH2).
【0283】
工程2:(R)-3-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)プロパン-1,2-ジイルジウンデカノアート
【化12】
【0284】
(S)-3-ヒドロキシプロパン-1,2-ジイルジウンデカノアート(構成要素2)と4-(ジメチルアミノ)ブタン酸塩酸塩との間の反応を、下位実施例1の調製のために行った方法と同様の方法で行った(工程2)。収量:96mg(87%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0285】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.27(tt,J=6.0,4.3Hz,1H,OCH2CHCH2O),4.30-4.15(m,4H,CHCH2OCO),2.55-2.25(m,8H,(CH3)2NCH2CH2CH2COO,(CH3)2NCH2CH2CH2COO及びC10尾部のCH2CH2COO),2.21(s,6H,N(CH3)2),1.78(p,J=7.4Hz,2H,NCH2CH2CH2COO),1.61(td,J=7.3,6.8,3.1Hz,4H,CH2CH2COO),1.28(d,J=14.1Hz,28H,CH3(CH2)7CH2),1.06-0.67(m,6H,CH3CH2).
【0286】
MALDI-TOF-MS(CHCAマトリックス、ポジティブリフレクタモード):m/z(M+H)+=542.45、(M+Na)+=564.43。計算値:C31H59NO6(正確な質量541.43、分子量541.81)。
下位実施例3:(R)-3-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)プロパン-1,2-ジイルジデカノアート
【0287】
工程1、構成要素3:(S)-3-ヒドロキシプロパン-1,2-ジイルジデカノアート
【化13】
【0288】
(S)-3-(ベンジルオキシ)プロパン-1,2-ジイルジデカノアート(中間体5)の水素化反応を、構成要素1の調製のために行った方法と同様の方法で行った。収量:412mg(100%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0289】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.09(p,J=5.0Hz,1H,キラルOCH2CHCH2O),4.46-4.20(m,2H,CHCH2OCO),3.74(t,J=5.6Hz,2H,CHCH2OH),2.33(dt,J=9.1,7.5Hz,4H,CH2CH2COO),1.78-1.54(m,4H,CH2CH2COO),1.28(d,J=8.8Hz,24H,CH3(CH2)6CH2),1.09-0.51(m,6H,CH3CH2).
【0290】
工程2:(R)-3-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)プロパン-1,2-ジイルジデカノアート
【化14】
【0291】
DIPEAを使用しないが、(S)-3-ヒドロキシプロパン-1,2-ジイルジデカノアート(構成要素3)と4-(ジメチルアミノ)ブタン酸塩酸塩との間の反応を、下位実施例1(工程2)について行った方法と同様の方法で行った。収量:110mg(80%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0292】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.27(tt,J=6.0,4.3Hz,1H,OCH2CHCH2O),4.30-4.15(m,4H,CHCH2OCO),2.48-2.23(m,8H,(CH3)2NCH2CH2CH2COO,(CH3)2NCH2CH2CH2COO及びC9尾部のCH2CH2COO),2.21(s,6H,N(CH3)2),1.78(p,J=7.4Hz,2H,NCH2CH2CH2COO),1.61(ddt,J=11.7,7.8,4.7Hz,4H,CH2CH2COO),1.40-1.12(m,24H,CH3(CH2)6CH2),1.02-0.73(m,6H,CH3CH2).
【0293】
MALDI-TOF-MS(CHCAマトリックス、ポジティブリフレクタモード):m/z(M+H)
+=514.43。計算値:C
29H
55NO
6(正確な質量513.40、分子量513.76)。
下位実施例4:(R)-3-((3-(ジメチルアミノ)プロパノイル)オキシ)プロパン-1,2-ジイルジドデカノアート
【化15】
【0294】
(S)-3-ヒドロキシプロパン-1,2-ジイルジドデカノアート(構成要素1)と3-(ジメチルアミノ)プロパン酸塩酸塩との間の反応を、下位実施例1の調製のために行った方法と同様の方法で行った(工程2)。収量:83mg(68%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0295】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.27(tt,J=6.0,4.3Hz,1H,OCH2CHCH2O),4.40-4.16(m,4H,CHCH2OCO),2.68-2.55(m,2H,(CH3)2NCH2CH2COO),2.55-2.43(m,2H,(CH3)2NCH2CH2COO),2.31(td,J=7.5,3.7Hz,4H,C11尾部のCH2CH2COO),2.23(s,6H,N(CH3)2),1.62(qt,J=7.0,3.4Hz,4H,CH2CH2COO),1.27(d,J=9.9Hz,32H,CH3(CH2)8CH2),1.09-0.64(m,6H,CH3CH2).
【0296】
MALDI-TOF-MS(CHCAマトリックス、ポジティブリフレクタモード):m/z(M+H)
+=556.48、(M+Na)
+=578.44。計算値:C
32H
61NO
6(正確な質量555.45、分子量555.84)。
下位実施例5:(R)-3-((3-(ジメチルアミノ)プロパノイル)オキシ)プロパン-1,2-ジイルジウンデカノアート
【化16】
【0297】
(S)-3-ヒドロキシプロパン-1,2-ジイルジウンデカノアート(構成要素2)と3-(ジメチルアミノ)プロパン酸塩酸塩との間の反応を、下位実施例1の調製のために行った方法と同様の方法で行った(工程2)。収量:108mg(82%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0298】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.27(tt,J=6.0,4.3Hz,1H,OCH2CHCH2O),4.31-4.04(m,4H,CHCH2OCO),2.74-2.56(m,2H,(CH3)2NCH2CH2COO),2.56-2.42(m,2H,(CH3)2NCH2CH2COO),2.31(ddd,J=9.1,5.6,2.4Hz,4H,C10尾部のCH2CH2COO),2.25(d,J=1.2Hz,6H,N(CH3)2),1.62(tt,J=7.3,3.6Hz,4H,CH2CH2COO),1.51-1.07(m,28H,CH3(CH2)7CH2),1.07-0.66(m,6H,CH3CH2).
【0299】
MALDI-TOF-MS(CHCAマトリックス、ポジティブリフレクタモード):m/z(M+H)
+=528.45。計算値:C
30H
57NO
6(正確な質量527.42、分子量527.79)。
下位実施例6:(R)-3-((3-(ジメチルアミノ)プロパノイル)オキシ)プロパン-1,2-ジイルジデカノアート
【化17】
【0300】
DIPEAを使用しないが、(S)-3-ヒドロキシプロパン-1,2-ジイルジデカノアート(構成要素3)と3-(ジメチルアミノ)プロパン酸塩酸塩との間の反応を、下位実施例1の調製のために行った方法と同様の方法で行った(工程2)。収量:131mg(80%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0301】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.42-5.06(m,1H,OCH2CHCH2O),4.51-4.17(m,4H,CHCH2OCO),2.75-2.53(m,4H,(CH3)2NCH2CH2COO,(CH3)2NCH2CH2COO),2.48-2.03(m,10H,N(CH3)2),C9尾部のCH2CH2COO),1.61(td,J=7.3,3.5Hz,4H,CH2CH2COO),1.39-1.18(m,24H,CH3(CH2)6CH2),0.88(t,J=6.8Hz,6H,CH3CH2).
【0302】
MALDI-TOF-MS(CHCAマトリックス、ポジティブリフレクタモード):m/z(M+H)
+=500.42。計算値:C
28H
53NO
6(正確な質量499.39、分子量499.73)。
下位実施例7:(R)-3-((3-(ジメチルアミノ)プロパノイル)オキシ)プロパン-1,2-ジイルジステアラート
【化18】
【0303】
構成要素4、すなわち(S)-3-ヒドロキシプロパン-1,2-ジイルジステアラートは、Merck(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール、CAS10567-21-2)から購入した。DIPEAを使用しないが、この構成要素4と3-(ジメチルアミノ)プロパン酸塩酸塩との間の反応を、下位実施例1の調製のために行った方法と同様の方法で行った(工程2)。また、反応物を室温ではなく40℃で撹拌した。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0304】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.27(tt,J=6.0,4.2Hz,1H,OCH
2CHCH
2O),4.30-4.16(m,4H,CHCH
2OCO),2.60(dd,J=7.4,6.0Hz,2H,(CH
3)
2NCH
2CH
2COO),2.49(dd,J=7.5,6.2Hz,2H,(CH
3)
2NCH
2CH
2COO),2.31(td,J=7.6,3.7Hz,4H,C
18尾部のCH
2CH
2COO),2.23(s,6H,N(CH
3)
2),1.70-1.51(m,4H,CH
2CH
2COO),1.26(s,56H,CH
3(CH
2)
14CH
2),0.88(t,J=6.8Hz,6H,CH
3CH
2).
式(I)(ICG-A型)の例:1,2-グリセロールイオン化可能なカチオン性脂質
下位実施例8:(R)-3-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)プロパン-1,2-ジイルジオレアート
【化19】
【0305】
構成要素5、すなわち(S)-3-ヒドロキシプロパン-1,2-ジイルジオレアートは、ABCRから購入した。それはラセミ化合物(CAS2442-61-7)である。構成要素5と4-(ジメチルアミノ)ブタン酸塩酸塩との間の反応を、下位実施例1の調製のために行った方法と同様の方法で行った(工程2)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0306】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.35(td,J=7.2,6.1,4.2Hz,4H,CH=CH),5.25(ddd,J=10.2,5.8,4.3Hz,1H,OCH
2CHCH
2O),4.30-4.14(m,2H,CHCH
2OCO),2.43-2.28(m,8H,(CH
3)
2NCH
2CH
2CH
2COO,(CH
3)
2NCH
2CH
2CH
2COO,オレイン酸尾部のCH
2CH
2COO),2.26(s,6H,N(CH
3)
2),2.11-1.92(m,8H,CH
2CH=CHCH
2),1.81(p,J=7.4Hz,2H,NCH
2CH
2CH
2COO),1.62(q,J=7.2Hz,4H,CH
2CH
2COO),1.42-1.19(m,40H,CH
3(CH
2)
6CH
2CH=CH(CH
2)
4CH
2COO),0.95-0.82(m,6H,CH
3CH
2).
下位実施例9:(R)-3-((3-(ジメチルアミノ)プロパノイル)オキシ)プロパン-1,2-ジイルジオレアート
【化20】
【0307】
構成要素5、すなわち(S)-3-ヒドロキシプロパン-1,2-ジイルジオレアートは、ABCRから購入した。それはラセミ化合物(Cas[2442-61-7])である。DIPEAを使用しないが、構成要素5と3-(ジメチルアミノ)プロパン酸塩酸塩との間の反応を、下位実施例1の調製のために行った方法と同様の方法で行った(工程2)。収量:120mg(33%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0308】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.46-5.19(m,5H,CH=CH,OCH2CHCH2O),4.31-4.15(m,4H,CHCH2OCO),2.62(td,J=7.1,3.8Hz,2H,(CH3)2NCH2CH2COO),2.50(td,J=7.2,2.6Hz,2H,(CH3)2NCH2CH2COO),2.31(dd,J=9.1,6.1Hz,4H,オレイン酸尾部のCH2CH2COO),2.24(s,6H,N(CH3)2),2.02(dq,J=12.8,6.7Hz,8H,CH2CH=CHCH2),1.60(q,J=7.2Hz,4H,CH2CH2COO),1.52-1.18(m,40H,CH3(CH2)6CH2CH=CH(CH2)4CH2COO),0.99-0.77(m,6H,CH3CH2).
【0309】
HPLC-MS:(M+H+)=720。計算値:C44H81NO6(正確な質量、719.61分子量720.13)。
式(III)(ICG-A型)の例:1,3-グリセロールイオン化可能なカチオン性脂質
下位実施例10:2-((3-(ジメチルアミノ)プロパノイル)オキシ)プロパン-1,3-ジイルジドデカノアート
【0310】
工程1:2-オキソプロパン-1,3-ジイルジドデカノアート
【化21】
【0311】
この化合物は、カップリング試薬としてDIPEA(2.32mL、13.3mmol、2.4モル当量)、DMAP(67ミリグラム、0.56mmol、0.2モル当量)及びEDC.HCl(2.65グラム、13.8mmol、2.4モル当量)を使用して、DCM(50mL)中で1,3-ジヒドロキシプロパン-2-オン(0.5グラム、5.6mmol)とドデカン酸(2.28グラム、11.4mmol、2.05モル当量)とをカップリングすることによって得た。抽出/洗浄工程、続いてシリカカラムクロマトグラフィによる精製作業。収量:2.27g(90%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0312】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ4.75(s,4H,OCCH2OCO),2.42(t,J=7.5Hz,4H,CH2CH2COO),1.67(q,J=7.4Hz,4H,CH2CH2COO),1.50-1.07(m,32H,CH3(CH2)8CH2),1.07-0.64(m,6H,CH3CH2).
【0313】
工程2:2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイルジドデカノアート
【化22】
【0314】
この化合物は、THF(45mL)及び水(3mL)中、水素化ホウ素ナトリウム(229mg、7.9mmol、2.4モル当量)で2-オキソプロパン-1,3-ジイルジドデカノアート(1.54グラム、3.37mmol)を還元することによって得た。冷却したTHF/水(0℃の氷浴)中のケトンの溶液に水素化ホウ素ナトリウムを添加した。反応混合物を2時間撹拌し、その後、酢酸(1mL)を添加することによって反応をクエンチした。反応混合物をクロロホルム(50mL)で希釈し、飽和Na2CO3溶液及び飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させた。次いで、粗生成物を、溶離剤としてクロロホルム中2%アセトンを使用するシリカカラムクロマトグラフィによって精製した。純粋な生成物画分が得られ(440mg、収率28%)、不純な画分も得られた。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0315】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ4.31-4.01(m,5H,OCH2CH(OH)CH2O),2.42(d,J=4.8Hz,1H,OH),2.35(t,J=7.6Hz,4H,CH2CH2COO),1.74-1.58(m,4H,CH2CH2COO),1.27(d,J=12.5Hz,32H,CH3(CH2)8CH2),0.88(t,J=6.8Hz,6H,CH3CH2).
【0316】
工程3:2-((3-(ジメチルアミノ)プロパノイル)オキシ)プロパン-1,3-ジイルジドデカノアート
【化23】
【0317】
2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイルジドデカノアートと3-(ジメチルアミノ)プロパン酸塩酸塩との間の反応を、下位実施例1の調製のために行った方法と同様の方法で行った(工程2)。収量:165mg(68%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0318】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.28(tt,J=5.8,4.4Hz,1H,OCH2CHCH2O),4.30-4.16(m,4H,CHCH2OCO),2.61(td,J=7.1,1.1Hz,2H,(CH3)2NCH2CH2COO),2.50(ddd,J=7.9,6.9,1.1Hz,2H,(CH3)2NCH2CH2COO),2.31(t,J=7.6Hz,4H,C11尾部のCH2CH2COO),2.23(s,6H,N(CH3)2),1.62(q,J=7.1Hz,4H,CH2CH2COO),1.27(d,J=8.7Hz,32H,CH3(CH2)8CH2),0.99-0.71(m,6H,CH3CH2).
【0319】
MALDI-TOF-MS(CHCAマトリックス、ポジティブリフレクタモード):m/z(M+H)+=556.46。計算値:C32H61NO6(正確な質量555.45、分子量555.84)。
式(II)(ICG-B型)の例:1,2-グリセロールイオン化可能なカチオン性脂質
下位実施例11:(R)-3-((5-グアニジノペンタノイル)オキシ)プロパン-1,2-ジイルジドデカノアート
【0320】
工程1:(Z)-5-(2,3-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ)ペンタン酸
【化24】
【0321】
tert-ブチル(E)-(((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(1H-ピロール-1-イル)メチル)カルバマート(0.5グラム、4.25mmol)と5-アミノペンタン酸(1.45グラム、4.68mmol、1.1モル当量)との反応を、ピリジン(10mL)中、室温で48時間行った。反応混合物懸濁液は透明溶液になった。混合物を蒸発乾固し、残渣を1M NaOH(25mL)に溶解し、EtOAc(50mL)で洗浄した。濃HCl溶液を使用して水層をpH3に酸性化した。水層をEtOAcで2回抽出し、回収した有機層を最初に飽和NaCl溶液で洗浄し、次いでNa2SO4で乾燥させた。溶媒を蒸発させて、白色固体(1.22グラム)を得た。この粗生成物を、酢酸(約0.2v/v%)を滴下した1/3 EtOAc/ヘプタンの混合物中で撹拌することによって更に精製した。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0322】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ8.35(t,J=5.3Hz,1H),3.73-3.15(m,2H,NCH2CH2),2.40(t,J=7.0Hz,2H,CH2CH2COOH),1.83-1.57(m,4H.NCH2CH2CH2CH2COOH),1.50(d,J=2.3Hz,18H,CH3Boc).
【0323】
HPLC-MS:m/z(M+H)+=359.92。計算値:C16H29N3O6(正確な質量359.21、分子量359.42)。
【0324】
工程2:(R,E)-6-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2,2-ジメチル-4,12-ジオキソ-3,13-ジオキサ-5,7-ジアザヘキサデカ-5-エン-15,16-ジイルジドデカノアート
【化25】
【0325】
(Z)-5-(2,3-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ)ペンタン酸(0.43グラム、1.2mmol、1.1モル当量)と(S)-3-ヒドロキシプロパン-1,2-ジイルジドデカノアート(構成要素1、0.5グラム、1.1mmol)との反応を、試薬としてDIC(0.15g、1.2mmol、1.1モル当量)及びDPTS(32mg、0.11mmol、0.1モル当量)を使用して、DCM(4mL)中で行った。混合物を室温で72時間撹拌した。混合物をDCM(25mL)で希釈し、次いで、続いて1M NaOH(25mL)及び飽和NaCl(水溶液)溶液で洗浄した。溶液をNa2SO4で乾燥させた。粗生成物を、溶離剤としてEtOAc/ヘプタン(1/3)を用いるシリカカラムクロマトグラフィにより精製した。収量:0.471g(54%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0326】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ11.50(s,1H,NH),8.32(t,J=5.2Hz,1H,NH),5.26(tt,J=6.0,4.3Hz,1H,OCH2CHCH2O),4.30-4.14(m,4H,CHCH2OCO),3.43(td,J=6.9,5.2Hz,2H,NCH2(CH2)2CH2COO),2.59-2.20(m,6H,C11尾部のCH2CH2COO,NCH2(CH2)2CH2COO),1.84-1.56(m,8H,NCH2CH2CH2CH2COOH,CH2CH2COO),1.50(d,J=3.9Hz,18H,CH3Boc),1.27(d,J=9.2Hz,32H,CH3(CH2)8CH2),1.11-0.64(m,8H,CH3).
【0327】
工程3:(R)-3-((5-グアニジノペンタノイル)オキシ)プロパン-1,2-ジイルジドデカノアート
【化26】
【0328】
(R,E)-6-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2,2-ジメチル-4,12ジオキソ-3,13-ジオキサ-5,7-ジアザヘキサデカ-5-エン-15,16-ジイルジドデカノアート(0.471グラム、0.6mmol)を室温で24時間、DCM中のTFAで脱保護した。反応混合物を蒸発させ、DCMと数回共蒸発させて過剰のTFAを除去した。生成物をクロロホルムで希釈し、最初に0.05M NaOH溶液(25mL)で洗浄し、次いで、飽和NaCl(水溶液)溶液で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、溶液を濃縮して生成物を得た。収量:0.35g(100%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0329】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.27(td,J=6.1,3.0Hz,1H,OCH2CHCH2O),4.49-4.00(m,4H,CHCH2OCO),3.21(q,J=6.8,6.1Hz,2H,NCH2(CH2)2CH2COO),2.57-2.26(m,6H,C11尾部のCH2CH2COO,NCH2(CH2)2CH2COO),1.88-1.48(m,8H,NCH2CH2CH2CH2COO,CH2CH2COO),1.27(d,J=9.0Hz,32H,CH3(CH2)8CH2),0.88(t,J=6.7Hz,6H,CH3).
【0330】
MALDI-TOF-MS(CHCAマトリックス、ポジティブリフレクタモード):m/z(M+H)+=598.46。計算値:C33H63N3O(正確な質量597.47、分子量597.88)。
式(IV)(ICG-A型)の例:セリノール由来型のイオン化可能なカチオン性脂質
下位実施例12:2-(4-(ジメチルアミノ)ブタンアミド)-2-メチルプロパン-1,3-ジイルジドデカノアート
【0331】
工程1:tert-ブチル(1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)カルバマート
【化27】
【0332】
2-アミノ-2-メチルプロパン-1,3-ジオール(5グラム、48mmol)をメタノール(120mL)とTHF(30mL)との混合物中でBOC無水物(8グラム、96mmol、2モル当量)と反応させた。BOC無水物溶液を、氷浴(0℃)で冷却した反応混合物に滴下した。反応混合物を室温で24時間撹拌した後、濃縮した。残渣をEtOAcに溶解し、脱塩水で3回洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。粗生成物をEtOAcから再結晶化した。収量:3.5g(36%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0333】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ4.98(s,1H,NH),3.78-3.62(m,4H,OCOCH2CCH2OCO),3.52(s,2H,OH),1.44(s,9H,CH3Boc),1.17(s,3H,NCCH3).
【0334】
工程2:2-((tert-ブトキシ-カルボニル)アミノ)-2-メチルプロパン-1,3-ジイルジドデカノアート
【化28】
【0335】
試薬としてDPTS(70mg、0.24mmol、0.1モル当量)及びDIC(0.77グラム、41.2mmol、6.1モル当量)を使用して、DCM(4mL)中のドデカン酸(1.02グラム、5.1mmol、2.1モル当量)にtert-ブチル(1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)カルバマート(0.5グラム、2.43mmol)をカップリングした。反応混合物を室温で24時間撹拌した後、セライトプラグで濾過した。濾液をDCM(25mL)で希釈し、次いで、0.1M HCl(25mL)、0.1M NaOH(25mL)及び飽和NaCl(水溶液)溶液(25mL)で洗浄した。溶液をNa2SO4で乾燥させた。更なる精製を、溶離剤としてEtOAc/Hept 1/20を使用するシリカカラムクロマトグラフィにより行った。収量:1.13g(82%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0336】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ4.73(s,1H,NH),4.42-3.96(m,4H,OCOCH2CCH2OCO),2.33(t,J=7.5Hz,4H,C11尾部のCH2CH2COO),1.62(p,J=7.7Hz,4H,CH2CH2COO),1.52(s,9H,CH3Boc),1.36(s,3H,NCCH3),1.33-1.09(m,32H,CH3(CH2)8CH2),0.88(t,J=6.7Hz,6H,CH3).
【0337】
工程3:2-アミノ-2-メチルプロパン-1,3-ジイルジドデカノアート
【化29】
【0338】
(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-メチルプロパン-1,3-ジイルジドデカノアート(1.13グラム、1.98mmol)をTFA(2mL)及びDCM(4mL)中、室温で24時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、粗生成物残渣(白色固体)をクロロホルムに再溶解し、続いて有機溶液を1.0M NaOH(25mL)及び飽和NaCl(水溶液)溶液で洗浄した。Na2SO4中で乾燥させた後、生成物を単離した。収量:0.853g(91%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0339】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ3.94(q,J=10.9Hz,4H,OCOCH2CCH2OCO),2.33(t,J=7.6Hz,4H,C11尾部のCH2CH2COO),1.63(q,J=7.2Hz,4H,CH2CH2COO),1.27(d,J=11.9Hz,32H,CH3(CH2)8CH2),1.12(s,3H,NCCH3),0.88(t,J=6.7Hz,6H,CH3).
【0340】
MALDI-TOF-MS(CHCAマトリックス、ポジティブリフレクタモード):m/z(M+H)+=470.43、(M+Na)+=492.41。計算値:C28H55NO4(正確な質量469.41、分子量469.75)。
【0341】
工程4:2-(4-(ジメチルアミノ)ブタンアミド)-2-メチルプロパン-1,3-ジイルジドデカノアート
【化30】
【0342】
試薬としてDPTS(20mg、0.24mmol、0.07モル当量)及びDIC(0.127グラム、1.01mmol、1.5モル当量)を使用して、2-アミノ-2-メチルプロパン-1,3-ジイルジドデカノアート(0.32グラム、0.68mmol)を、DCM(2mL)中の4-(ジメチルアミノ)ブタン酸塩酸塩(0.17グラム、1.02mmol、1.5モル当量)にカップリングした。反応混合物を室温で24時間撹拌し、その後、セライトプラグで濾過した。濾液をDCM(25mL)で希釈し、0.1M HCl(25mL)、0.1M NaOH(25mL)、飽和NaCl(水溶液)(25mL)で洗浄し、最後にNa2SO4で乾燥させた。粗生成物を、2%MeOH/クロロホルムから10%MeOH/クロロホルムの溶離剤勾配を使用するシリカカラムクロマトグラフィによって精製した。収量:294mg(75%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0343】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ6.86(s,1H,NH),4.50-4.09(m,4H,OCOCH2CCH2OCO),2.40(t,J=6.6Hz,2H.CH2N(CH3)2),2.36-2.16(m,10H,NCOCH2,OCOCH2及びCH2N(CH3)2),1.79(q,J=6.8Hz,2H,CH2CH2N(CH3)2),1.75-1.54(m,4H,CH2CH2COO),1.39(s,3H,NCCH3),1.27(d,J=9.1Hz,32H,CH3(CH2)8CH2),1.12-0.52(m,6H,CH3).
【0344】
MALDI-TOF-MS(CHCAマトリックス、ポジティブリフレクタモード):m/z(M+H)+=583.47、(M+Na)+=605.46。計算値:C34H66N2O5(正確な質量582.50、分子量582.91)。
【0345】
式(V)(ICG-A型)の例:コレステリルイオン化可能なカチオン性脂質
【化31】
スキームB:ICG-A型を用いた式(V)によるコレステリルイオン化可能なカチオン性脂質への合成経路。DPTS=4-(ジメチルアミノ)-ピリジニウム4-トルエンスルホナート;DIC=N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド;DCM=ジクロロメタン。
下位実施例13:(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-((R)-6-メチルヘプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノアート
【化32】
【0346】
試薬としてDPTS(21.7ミリグラム、0.077mmol、0.1モル当量)及びDIC(0.15グラム、1.16mmol、1.5モル当量)を使用して、コレステロール(0.30g、0.77mmol)を、DCM(2mL)中で4-(ジメチルアミノ)ブタン酸塩酸塩(0.195グラム、1.16mmol、1.5モル当量)と反応させた。反応混合物を室温で24時間撹拌し、その後、セライトプラグで濾過した。濾液をDCM(25mL)で希釈し、0.1M NaOH(25mL)及び飽和NaCl(水溶液)(25mL)で洗浄し、最後にNa2SO4で乾燥させた。粗混合物をクロロホルム(1.5mL)からアセトニトリル(50mL)に0℃で沈殿させた。生成物沈殿物を濾過によって回収し、冷アセトニトリルで洗浄し、40℃で乾燥させた。収量:165mg(42%)。
【0347】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.37(d,J=5.0Hz,1H,C=CHCH2),4.71-4.49(m,1H,CH2CHCOO),2.37-2.25(m,6H,CH2N(CH3)2,CH=CCH2CHCOO,CH2COO),2.22(s,6H,CH2N(CH3)2),2.08-1.91(m,2H),1.91-1.71(m,5H),1.57-1.41(m,6H),1.34(d,J=8.2Hz,3H),1.26(d,J=10.9Hz,1H),1.22-1.05(m,7H),1.02(s,5H),0.99-0.94(m,2H),0.91(d,J=6.5Hz,3H),0.86(dd,J=6.6,1.8Hz,6H),0.68(s,3H).1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0348】
HPLC-MS:m/z(M+H)
+=500.42。計算値:C
33H
57NO
2(正確な質量499.44、分子量499.82)。
下位実施例14:(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-((R)-6-メチルヘプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル3-(ジメチルアミノ)プロパノアート
【化33】
【0349】
実施例13に記載される手順と同様の手順を用いて、コレステロール(0.097グラム、0.25mmol)を3-(ジメチルアミノ)プロパン酸塩酸塩(0.058グラム、0.375mmol、1.5モル当量)にカップリングした。収量:76mg(63%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0350】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.37(d,J=4.9Hz,1H),4.62(t,J=5.9Hz,1H),2.67-2.56(m,2H),2.51-2.41(m,2H),2.32(d,J=7.5Hz,2H),2.24(s,6H),2.05-1.91(m,2H),1.84(tt,J=9.5,4.2Hz,3H),1.66-1.42(m,9H),1.42-1.23(m,4H),1.23-1.04(m,7H),1.02(s,4H),0.96(dd,J=11.3,5.3Hz,2H),0.91(d,J=6.5Hz,3H),0.86(dd,J=6.6,1.8Hz,6H),0.68(s,3H).
【0351】
HPLC-MS:m/z(M+H)
+=486.33。計算値:C
32H
55NO
2(正確な質量485.42、分子量485.80)。
下位実施例15:(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-((R)-6-メチルヘプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルジメチルグリシナート
【化34】
【0352】
実施例13に記載される手順と同様の手順を用いて、コレステロール(0.193グラム、0.5mmol)をジメチル-グリシン塩酸塩(0.077グラム、0.75mmol、1.5モル当量)にカップリングした。収量:147mg(63%)。1H-NMRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0353】
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ5.38(d,J=5.1Hz,1H),4.78-4.61(m,1H),3.14(s,2H),2.35(s,8H),2.08-1.92(m,2H),1.92-1.75(m,3H),1.72-1.41(m,10H),1.30(dd,J=31.8,9.6Hz,4H),1.23-1.04(m,7H),1.02(s,4H),0.99-0.94(m,2H),0.91(d,J=6.5Hz,3H),0.86(dd,J=6.6,1.8Hz,6H),0.68(s,3H).
【0354】
HPLC-MS:m/z(M+H)+=472.17。計算値:C31H53NO2(正確な質量471.41、分子量471.77)。
【0355】
実施例10.siRNAを含有するアポリポタンパク質脂質ナノ粒子(aNP)(siRNA-aNP)を、様々なイオン化可能なカチオン性材料を用いて調製して、安定な製剤を得ることができる(
図10)。
リン脂質、コレステロール、
図9に示す選択されたイオン化可能なカチオン性材料、トリグリセリド、アポリポタンパク質A1及びsiRNAを含有するsiRNA-aNP製剤。siRNA-aNPを、実施例2に記載する手順を使用して調製した。製剤化の1日後、ライブラリの個々のsiRNA-aNP製剤及びLNP-siRNA比較例製剤
#を、動的光散乱(DLS)を使用した(A)粒径及び(B)粒径分散性、並び委(C)リボグリーン(Ribogreen)アッセイを使用したsiRNA保持について分析した。
#LNP-siRNA比較例は、siRNAを含む、Dlin-MC3-DMA、DSPC、コレステロール及びPEG-DMG(50:38.5:10:1.5モル%)から構成された。
【0356】
加えて、イオン化可能なカチオン性材料17及び19の最適化されていないsiRNA-aNP製剤を試験し、安定な二重レポータールシフェラーゼ発現(ホタル及びウミシイタケルシフェラーゼ)のためにpmirGLOプラスミド(Promega)でトランスフェクトしたマウスRAW264.7マクロファージにおいて中程度(約50%)のサイレンシング能力を示した。
【配列表】
【国際調査報告】