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特表2024-526205クルクミン誘導体とTGF-β受容体抑制剤の併用投与による非アルコール性脂肪性肝炎の治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】クルクミン誘導体とTGF-β受容体抑制剤の併用投与による非アルコール性脂肪性肝炎の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/121 20060101AFI20240709BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 31/4418 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20240709BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K31/121
A61K45/00
A61P1/16
A61P43/00 121
A61K31/167
A61K31/4418
A61K31/444
A23L33/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579431
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 KR2022006873
(87)【国際公開番号】W WO2022270760
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0082417
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0160931
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519154438
【氏名又は名称】ヨンセ大学ウォンジュウ産学協力団
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY INDUSTRY FOUNDATION, YONSEI UNIVERSITY WONJU CAMPUS
【住所又は居所原語表記】1,Yeonsedae-gil,Heungeop-myeon Wonju-si Gangwon-do 26493 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、チュンヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ウンス
(72)【発明者】
【氏名】ハ、キョンボン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ドンコン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ナウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、スホ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018ME14
4C084AA20
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086CB05
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4C086MA04
4C086MA17
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZA75
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB14
4C206CB15
4C206EA02
4C206GA01
4C206GA07
4C206GA31
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA17
4C206MA37
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA05
4C206ZA75
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、クルクミン誘導体及びTGF-β受容体抑制剤を有効成分として含む脂肪性肝炎の予防、改善または治療用薬学組成物、医薬部外品、食品組成物に関し、前記組成物において、TGF-β受容体抑制剤は、肝組織の線維化を抑制し、クルクミン誘導体は、線維化の抑制過程において増加した肝細胞の脂肪生成を抑制することで、従来のようにクルクミン誘導体またはTGF-β受容体抑制剤を単独投与した場合よりも、優れた脂肪性肝炎の予防及び治療効果を示すので、脂肪性肝炎を含む代謝性肝疾患の予防、改善または治療のための薬学組成物、医薬部外品、食品組成物として用いることができる。
【選択図】図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記クルクミン誘導体が、デメトキシクルクミン(demethoxycurcumin)、ビスデメトキシクルクミン(bisdemethoxycurcumin)、5-ヒドロキシ-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)-7-(4-ニトロ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(5-hydroxy-1-(4-hydroxy-3-methoxy-phenyl)-7-(4-nitro-phenyl)-hepta-1,4,6-trien-3-one)、N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エノイル]フェニル}-2-メチルプロパンアミド(N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)prop-2-enoyl]phenyl}-2-methylpropanamide)、4,4'-(3,5-ピリジンジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス(2-メトキシフェノール)(4,4'-(3,5-Pyridinediyldi-2,1-ethynediyl)bis(2-methoxyphenol))、2,6-ジクロロ-N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-プロペノイル]フェニル}ベンズアミド)(2,6-Dichloro-N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-2-propenoyl]phenyl}benzamide)、デヒドロジンゲロン(dehydrozingerone;DHZ)、4-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン(4-(3,4-Dimethoxyphenyl)-3-buten-2-one)及び1-(4-クロロフェニル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン(1-(4-Chlorophenyl)-3-phenyl-1,3-propanedione)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記組成物が、TGF-β受容体AKL4(Activin receptor-like kinase 4)またはAKL5(Activin receptor-like kinase 5)を抑制する、請求項1に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記TGF-β受容体抑制剤が、N-(2-フルオロフェニル)-5-(6-メチル-2-ピリジニル)-4-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル-1H-イミダゾール-2-メタンアミン、(N-(2-fluorophenyl)-5-(6-methyl-2-pyridinyl)-4-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridin-6-yl-1H-imidazole-2-methanamine;EW-7197)である、請求項1に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記クルクミン誘導体とTGF-β受容体抑制剤のモル比が、1:15~15:1である、請求項1に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記代謝性肝疾患が、脂肪肝、肝線維症及び脂肪性肝炎からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記脂肪性肝炎が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項6に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項8】
前記代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物が、経口用薬学製剤に含まれる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
前記経口用薬学製剤が、錠剤、顆粒剤、丸剤、散剤、カプセル剤及び液剤からなる群から選択される少なくとも1種で剤形化される、請求項8に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または治療用医薬部外品。
【請求項11】
前記クルクミン誘導体が、デメトキシクルクミン(demethoxycurcumin)、ビスデメトキシクルクミン(bisdemethoxycurcumin)、5-ヒドロキシ-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)-7-(4-ニトロ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(5-hydroxy-1-(4-hydroxy-3-methoxy-phenyl)-7-(4-nitro-phenyl)-hepta-1,4,6-trien-3-one)、N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エノイル]フェニル}-2-メチルプロパンアミド(N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)prop-2-enoyl]phenyl}-2-methylpropanamide)、4,4'-(3,5-ピリジンジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス(2-メトキシフェノール)(4,4'-(3,5-Pyridinediyldi-2,1-ethynediyl)bis(2-methoxyphenol))、2,6-ジクロロ-N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-プロペノイル]フェニル}ベンズアミド)(2,6-Dichloro-N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-2-propenoyl]phenyl}benzamide)、デヒドロジンゲロン(dehydrozingerone;DHZ)、4-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン(4-(3,4-Dimethoxyphenyl)-3-buten-2-one)及び1-(4-クロロフェニル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン(1-(4-Chlorophenyl)-3-phenyl-1,3-propanedione)からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記TGF-β受容体抑制剤が、N-(2-フルオロフェニル)-5-(6-メチル-2-ピリジニル)-4-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル-1H-イミダゾール-2-メタンアミン(N-(2-fluorophenyl)-5-(6-methyl-2-pyridinyl)-4-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridin-6-yl-1H-imidazole-2-methanamine;EW-7197)である、請求項10に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用医薬部外品。
【請求項12】
クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項13】
前記クルクミン誘導体が、デメトキシクルクミン(demethoxycurcumin)、ビスデメトキシクルクミン(bisdemethoxycurcumin)、5-ヒドロキシ-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)-7-(4-ニトロ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(5-hydroxy-1-(4-hydroxy-3-methoxy-phenyl)-7-(4-nitro-phenyl)-hepta-1,4,6-trien-3-one)、N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エノイル]フェニル}-2-メチルプロパンアミド(N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)prop-2-enoyl]phenyl}-2-methylpropanamide)、4,4'-(3,5-ピリジンジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス(2-メトキシフェノール)(4,4'-(3,5-Pyridinediyldi-2,1-ethynediyl)bis(2-methoxyphenol))、2,6-ジクロロ-N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-プロペノイル]フェニル}ベンズアミド)(2,6-Dichloro-N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-2-propenoyl]phenyl}benzamide)、デヒドロジンゲロン(dehydrozingerone;DHZ)、4-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン(4-(3,4-Dimethoxyphenyl)-3-buten-2-one)及び1-(4-クロロフェニル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン(1-(4-Chlorophenyl)-3-phenyl-1,3-propanedione)からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記TGF-β受容体抑制剤が、N-(2-フルオロフェニル)-5-(6-メチル-2-ピリジニル)-4-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル-1H-イミダゾール-2-メタンアミン、(N-(2-fluorophenyl)-5-(6-methyl-2-pyridinyl)-4-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridin-6-yl-1H-imidazole-2-methanamine;EW-7197)である、請求項12に記載の代謝性肝疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項14】
クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む製剤を複合的、混合的または併用的に含む、代謝性肝疾患治療用の複合剤、混合剤または併用剤キット。
【請求項15】
前記クルクミン誘導体が、デメトキシクルクミン(demethoxycurcumin)、ビスデメトキシクルクミン(bisdemethoxycurcumin)、5-ヒドロキシ-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)-7-(4-ニトロ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(5-hydroxy-1-(4-hydroxy-3-methoxy-phenyl)-7-(4-nitro-phenyl)-hepta-1,4,6-trien-3-one)、N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エノイル]フェニル}-2-メチルプロパンアミド(N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)prop-2-enoyl]phenyl}-2-methylpropanamide)、4,4'-(3,5-ピリジンジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス(2-メトキシフェノール)(4,4'-(3,5-Pyridinediyldi-2,1-ethynediyl)bis(2-methoxyphenol))、2,6-ジクロロ-N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-プロペノイル]フェニル}ベンズアミド)(2,6-Dichloro-N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-2-propenoyl]phenyl}benzamide)、デヒドロジンゲロン(dehydrozingerone;DHZ)、4-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン(4-(3,4-Dimethoxyphenyl)-3-buten-2-one)及び1-(4-クロロフェニル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン(1-(4-Chlorophenyl)-3-phenyl-1,3-propanedione)からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記TGF-β受容体抑制剤が、N-(2-フルオロフェニル)-5-(6-メチル-2-ピリジニル)-4-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル-1H-イミダゾール-2-メタンアミン(N-(2-fluorophenyl)-5-(6-methyl-2-pyridinyl)-4-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridin-6-yl-1H-imidazole-2-methanamine;EW-7197)である、請求項14に記載の代謝性肝疾患治療用の複合剤、混合剤または併用剤キット。
【請求項16】
クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む製剤を複合、混合または併用投与するステップを含む、代謝性肝疾患の治療方法。
【請求項17】
代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物を製造するためのクルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩との用途。
【請求項18】
代謝性肝疾患の予防または改善用食品組成物を製造するためのクルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩との用途。
【請求項19】
代謝性肝疾患治療用の複合剤、混合剤または併用剤キットを製造するためのクルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩との用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クルクミン誘導体(Curcumin derivatives)またはその薬学的に許容される塩及びTGF-β(トランスフォーミング増殖因子ベータ;Transforming Growth Factor beta)受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む代謝性肝疾患の予防、改善または治療用薬学組成物、医薬部外品及び食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪性肝疾患には、アルコールによって形成される脂肪性肝疾患と、代謝調節異常の結果として生じる脂肪肝(hepatic steatosis)、脂肪性肝炎(steatohepatitis)または肝線維症(liver fibrosis)などの代謝性肝疾患(metabolic liver disease)とが含まれる。
【0003】
非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease;NAFLD)は、前述の代謝性肝疾患の一種であって、アルコールの摂取と関連のない、肝臓に脂肪が蓄積することで発生する疾患である。非アルコール性脂肪性肝疾患は、肝細胞に脂肪の過度な蓄積のみがある単純脂肪症(simple steatosis)、肝細胞の壊死と炎症及び線維化を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis;NASH)などを含む一連の疾患群を意味する。
【0004】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の悪化過程において発生する疾患である。先ず、破壊された肝細胞の破片がクッパー(Kupffer)細胞及びマクロファージ(macrophage)によって貪食されると、炎症性サイトカインが分泌される。前記分泌されたサイトカインは、肝類洞壁(hepatic sinusoid)の内皮細胞と肝細胞との間で血流を調節する肝星細胞(hepatic stellate cell)を活性化させて、コラーゲンを始めとした結合組織の成分を合成して分泌し、線維化を発生させる。そのような過程が進められれば、単に脂肪化した肝細胞を有する脂肪症(steatosis)ではなく、風船様腫大(ballooning)、炎症(inflammation)、または線維化(fibrosis)を発生させる重篤な病変である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に進行することになる。
【0005】
一方、クルクミン(Curcumin、Diferuloylmethane)は、東インド産のショウガ科(Zingiberaceae)に属する植物であるウコン(Curcuma longa Linn)の根から抽出され、インドの料理に広く用いられて来たポリフェノール(Polyphenol)成分の黄色い香辛料であって、ターメリック(Turmeric)のクルクミノイド(Curcuminoid)である。食品添加物においては、黄色い色素として用いられ、香辛料として利用されている。細胞生理学におけるクルクミンの役割は多様であり、炎症関連のタンパク質、細胞シグナル物質、転写因子などを含む多くの細胞の構成要素と関わる。
【0006】
また、TGF-β(Transforming Growth factor-β)は、肝星細胞(Hepatic Stellate Cells;HSCs)を筋線維芽細胞に転換分化させて肝臓における線維化を促進する役割をするサイトカインであるため、慢性的な肝疾患におけるTGF-βシグナルを遮断することは、肝線維化の治療に理想的な方法であると知られている。TGF-β受容体抑制剤であるEW-7197は非常に強力であり、選択的かつ経口投与可能な、TGF-β受容体AKL4(Activin receptor-like kinase 4)またはAKL5(Activin receptor-like kinase 5)の抑制剤である。前記EW-7197は、従来の研究において、四塩化炭素(tetrachloride、CCL4)の投与、胆管結紮(bile duct ligation)による肝線維化モデルにおける肝損傷を抑制するだけでなく、UUO(unilateral ureteral obstruction)による腎線維化及びブレオマイシン(bleomycin;BLM)で肺線維化を誘導したモデルにおいてもTGF-β/Smad及びROSシグナルを調節することで、組織線維化を抑制する効果があることが判明された。
【0007】
しかしながら、TGF-β受容体抑制剤は、肝線維化を抑制する過程において、肝臓の脂肪生成を促進する副作用があるため、非アルコール性脂肪性肝炎の治療のためのより効果的な治療方法が求められている。
【0008】
そこで、本発明者は、代謝性肝疾患、特に、非アルコール性脂肪性肝炎にさらに効果的な治療方法を開発するために努力した結果、クルクミン誘導体及びTGF-β受容体抑制剤を併用投与することで、肝線維化の抑制と同時に肝臓における脂肪蓄積を抑制する効果を示すことができるという点を新たに明らかにし、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10-1927399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のTGF-β(Transforming Growth factor-β)受容体抑制剤は、抗線維症効果があるが、組織線維化を抑制する過程において肝細胞における脂肪の生成を増加させる問題点があった。
【0011】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのものであって、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または治療用医薬部外品を提供することを他の目的とする。
【0013】
本発明は、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または改善用食品組成物を提供することをまた他の目的とする。
【0014】
本発明は、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、製剤を複合的、混合的または併用的に含む、代謝性肝疾患治療用の複合剤、混合剤または併用剤キットを提供することをまた他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的を達成するために、本発明は、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または治療に用いるための薬学組成物、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を投与するステップを含む、代謝性肝疾患の治療方法、及び代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物を製造するためのクルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩との用途を提供する。
【0016】
本発明の一様態において、前記クルクミン誘導体は、デメトキシクルクミン(demethoxycurcumin)、ビスデメトキシクルクミン(bisdemethoxycurcumin)、5-ヒドロキシ-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)-7-(4-ニトロ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(5-hydroxy-1-(4-hydroxy-3-methoxy-phenyl)-7-(4-nitro-phenyl)-hepta-1,4,6-trien-3-one)、N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エノイル]フェニル}-2-メチルプロパンアミド(N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)prop-2-enoyl]phenyl}-2-methylpropanamide)、4,4'-(3,5-ピリジンジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス(2-メトキシフェノール)(4,4'-(3,5-Pyridinediyldi-2,1-ethynediyl)bis(2-methoxyphenol))、2,6-ジクロロ-N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-プロペノイル]フェニル}ベンズアミド)(2,6-Dichloro-N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-2-propenoyl]phenyl}benzamide)、デヒドロジンゲロン(dehydrozingerone;DHZ)、4-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン(4-(3,4-Dimethoxyphenyl)-3-buten-2-one)及び1-(4-クロロフェニル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン(1-(4-Chlorophenyl)-3-phenyl-1,3-propanedione)からなる群から選択される少なくとも1種であってもよいが、それらに限定されるものではない。
【0017】
本発明の一様態において、前記組成物は、TGF-β受容体AKL4(Activin receptor-like kinase 4)またはAKL5(Activin receptor-like kinase 5)を抑制してもよい。
【0018】
本発明の一様態において、前記TGF-β受容体抑制剤は、N-(2-フルオロフェニル)-5-(6-メチル-2-ピリジニル)-4-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル-1H-イミダゾール-2-メタンアミン(N-(2-fluorophenyl)-5-(6-methyl-2-pyridinyl)-4-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridin-6-yl-1H-imidazole-2-methanamine;EW-7197)である。
【0019】
本発明の一様態において、前記クルクミン誘導体とTGF-β受容体抑制剤のモル比は、1:15~15:1である。
【0020】
本発明の一様態において、前記代謝性肝疾患は、脂肪肝、肝線維症及び脂肪性肝炎からなる群から選択される少なくとも1種であってもよいが、それらに限定されるものではない。
【0021】
具体的な本発明の一様態において、前記脂肪性肝炎は、非アルコール性脂肪性肝炎である。
【0022】
また、本発明は、前記代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物を含む経口用薬学製剤を提供する。
【0023】
本発明の一様態において、前記経口用薬学製剤は、錠剤、顆粒剤、丸剤、散剤、カプセル剤及び液剤からなる群から選択される少なくとも1種を含むが、それらに限定されるものではない。
【0024】
また、本発明は、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または治療用医薬部外品、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または治療に用いるための医薬部外品、及び代謝性肝疾患の予防または治療用医薬部外品を製造するためのクルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩との用途を提供する。
【0025】
また、本発明は、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または改善用食品組成物、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または改善に用いるための食品組成物、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を投与するステップを含む、代謝性肝疾患の予防または改善方法、及び代謝性肝疾患の予防または改善用食品組成物を製造するためのクルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩との用途を提供する。
【0026】
また、本発明は、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む製剤を複合的、混合的または併用的に含む代謝性肝疾患治療用の複合剤、混合剤または併用剤キット、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む製剤を複合的、混合的または併用的に含む代謝性肝疾患の治療に用いるための複合剤、混合剤または併用剤キット、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む製剤を複合、混合または併用投与するステップを含む、代謝性肝疾患の治療方法、及び代謝性肝疾患治療用の複合剤、混合剤または併用剤キットを製造するためのクルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩との用途を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明のクルクミン誘導体(Curcumin derivatives)及びTGF-β(Transforming Growth factor-β)受容体抑制剤を併用、配合または順次投与したとき、TGF-β受容体抑制剤を単独投与するときに現れる副作用である肝臓における脂肪蓄積の増加を抑制する効果があることを確認した。従って、前記クルクミン誘導体及びTGF-β受容体抑制剤を有効成分として含む組成物は、代謝性肝疾患の予防、改善または治療を目的として有用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】マウス肝細胞株において線維化の誘導のためのTGF-βと各種クルクミン誘導体を濃度ごとに処理するとき、細胞生存に及ぼす影響を示した図である。
図2】TGF-βによって線維化を誘導したマウス肝細胞株においてEW-7197を処理するとき、線維化マーカーのタンパク質発現によって肝線維化の抑制効果を確認した図である。
図3】TGF-βによって線維化を誘導したヒト肝線状細胞株においてEW-7197を処理するとき、線維化マーカーのタンパク質発現によって肝線維化の抑制効果を確認した図である。
図4】マウス肝細胞株を不飽和脂肪酸であるオレイン酸で処理して脂肪を生成させ、クルクミンまたはクルクミン誘導体を処理することで、クルクミンまたはクルクミン誘導体の脂肪の減少効果を確認した図である。
図5図4において陽性染色された脂肪の領域を数値化して示した図である。
図6】マウス肝細胞株を不飽和脂肪酸であるオレイン酸で処理して脂肪を生成させ、クルクミン誘導体またはEW-7197を処理した後、脂肪の合成と分解を確認した図である。
図7】マウス肝細胞株を不飽和脂肪酸であるオレイン酸で処理して脂肪を生成させ、クルクミン誘導体またはEW-7197を処理した後、脂肪の合成と分解を脂肪蓄積因子及び脂肪代謝調節因子のタンパク質発現によって確認した図である。
図8】マウス肝細胞株においてEW-7197とクルクミン5-8の併用処理の際に、相乗効果を示した図であって、TGF-βによって線維化を誘導した肝細胞にEW-7197とクルクミン5-8の併用処理の際に、上皮間葉転換の抑制効果、肝細胞内の脂肪生成の抑制効果及び肝線維化の抑制効果を示した図である。
図9図8において陽性染色された脂肪の領域を数値化して示した図である。
図10図8において陽性染色されたa-SMAの領域を数値化して示した図である。
図11】マウス肝細胞株においてEW-7197とクルクミン5-8の併用処理の際に、相乗効果を示した図であって、TGF-βによって線維化を誘導した肝細胞株にEW-7197とクルクミン5-8の併用処理の際に、線維化マーカーのタンパク質発現によって肝線維化の抑制効果を確認した図である。
図12】ヒト肝星細胞株においてEW-7197とクルクミン5-8の併用処理の際に、相乗効果を示した図であって、TGF-βによって線維化を誘導した肝星細胞株にEW-7197とクルクミン5-8の併用処理の際に、線維化マーカーのタンパク質発現によって肝線維化の抑制効果を確認した図である。
図13】マウス肝細胞株において10μMまたは0.5μMのEW-7197とクルクミン5-8の併用処理の際に、相乗効果を示した図であって、TGF-βによって線維化を誘導した肝細胞にEW-7197とクルクミン5-8の併用処理の際に、肝細胞内の脂肪生成の抑制効果を示した図である。
図14図13において10μMのEW-7197処理群の陽性染色された脂肪の領域を数値化して示した図である。
図15図13において0.5μMのEW-7197処理群の陽性染色された脂肪の領域を数値化して示した図である。
図16】マウス肝細胞株においてEW-7197とクルクミン5-8、デヒドロジンゲロン(DHZ)、デヒドロジンゲロン103(DHZ103)またはデヒドロジンゲロン176(DHZ176)の併用処理の際に、相乗効果を示した図であって、TGF-βによって線維化を誘導した肝細胞にEW-7197とクルクミン5-8、DHZ、DHZ103またはDHZ176の併用処理の際に、上皮間葉転換の抑制効果、肝細胞内の脂肪生成の抑制効果及び肝線維化の抑制効果を示した図である。
図17図16において陽性染色された脂肪の領域を数値化して示した図である。
図18図16において陽性染色されたa-SMAの領域を数値化して示した図である。
図19】MCD(methionine-choline deficient diet)飼料で脂肪性肝炎を誘導した動物モデルにおける高濃度EW-7197(40mg/kg)とクルクミン5-8を併用処理するときの生理学的な変化を示した図である。
図20図19の動物モデルにおける高濃度EW-7197(40mg/kg)とクルクミン5-8を併用処理するときの肝組織内の脂肪蓄積と組織の線維化を抑制する効果を示した図であって、H&E(Hematoxylin&Eosin)、ピクロシリウスレッド(Picrosirius red)、マッソントリクローム(Masson's trichrome)染色によって肝組織の脂肪滴及び線維化の水準を示した図である。
図21図20において陽性染色されたピクロシリウスレッド及びマッソントリクローム領域を数値化して示した図である。
図22図20においてH&E染色された肝組織をNAS(NAFLD acitivity score)システムで評価して示した図である。
図23図19の動物モデルにおける高濃度EW-7197(40mg/kg)とクルクミン5-8を併用処理するときの肝組織内の脂肪蓄積の抑制効果を脂肪代謝調節因子及びそれと関連する信号因子のタンパク質発現によって確認した図である。
図24図19の動物モデルにおける高濃度EW-7197(40mg/kg)とクルクミン5-8を併用処理するときの肝組織の線維化の抑制効果を線維化マーカーのタンパク質発現によって確認した図である。
図25】MCD飼料で脂肪性肝炎を誘導した動物モデルにおける低濃度EW-7197(5mg/kg)とクルクミン5-8を併用処理するときの生理学的な変化を示した図である。
図26図25の動物モデルにおける低濃度EW-7197(5mg/kg)とクルクミン5-8を併用処理するときの肝組織内の脂肪蓄積と組織の線維化を抑制する効果を示した図であって、H&E(Hematoxylin&Eosin)、ピクロシリウスレッド(Picrosirius red)、マッソントリクローム(Masson's trichrome)染色によって肝組織の脂肪滴及び線維化の水準を示した図である。
図27図26において陽性染色されたピクロシリウスレッド及びマッソントリクローム領域を数値化して示した図である。
図28図26においてH&E染色された肝組織をNAS(NAFLD acitivity score)システムで評価して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施形態を挙げて詳しく説明する。本発明の実施例は、当該技術分野における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供するものである。よって、本発明の実施例は様々な他の形態に変形してもよく、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
本発明の明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは特に断らない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0031】
本明細書における「薬学的に許容される」とは、含まれる成分が生物体を大きく刺激することなく、生物学的活性及び特性を損なわないことを意味する。
【0032】
本明細書における「薬学的に許容される塩」とは、好ましい生物活性を有する塩を意味し、無機酸塩(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸)、有機酸塩(酢酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、安息香酸、アスコルビン酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピリジン)、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩)、アンモニウム塩、それらの付加塩の形態などが含まれてもよいが、それらに限定されるものではない。
【0033】
本明細書における「予防」とは、本発明の組成物の体内投入により特定疾患(例えば、代謝性肝疾患)の症状を抑制させるか、あるいは進行を抑制させるあらゆる行為を意味する。
【0034】
本発明における「治療」とは、本発明の組成物の体内投入により特定疾患(例えば、代謝性肝疾患)の症状を好転または有利に変更させるあらゆる行為を意味する。
【0035】
本発明は、クルクミン誘導体(Curcumin derivatives)またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β(Transforming Growth factor-β)受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または治療に用いるための薬学組成物、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を投与するステップを含む、代謝性肝疾患の治療方法、及び代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物を製造するためのクルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩との用途を提供する。
【0036】
本発明において、クルクミンは、ウコン(Curcuma longa Linn)の根から主に抽出されるポリフェノール(polyphenol)を意味する。
【0037】
本発明において、クルクミン誘導体(Curcumin derivatives)は、前記ポリフェノールの一種であるクルクミンの化学構造の一部が削除、付加、変更された化合物を意味する。クルクミン誘導体は、例えば、デメトキシクルクミン(demethoxycurcumin)、ビスデメトキシクルクミン(bisdemethoxycurcumin)、5-ヒドロキシ-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)-7-(4-ニトロ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(5-hydroxy-1-(4-hydroxy-3-methoxy-phenyl)-7-(4-nitro-phenyl)-hepta-1,4,6-trien-3-one)、N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エノイル]フェニル}-2-メチルプロパンアミド(N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)prop-2-enoyl]phenyl}-2-methylpropanamide)、4,4'-(3,5-ピリジンジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス(2-メトキシフェノール)(4,4'-(3,5-Pyridinediyldi-2,1-ethynediyl)bis(2-methoxyphenol))、2,6-ジクロロ-N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-プロペノイル]フェニル}ベンズアミド)(2,6-Dichloro-N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-2-propenoyl]phenyl}benzamide)、デヒドロジンゲロン(dehydrozingerone;DHZ)、4-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン(4-(3,4-Dimethoxyphenyl)-3-buten-2-one)、1-(4-クロロフェニル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン(1-(4-Chlorophenyl)-3-phenyl-1,3-propanedione)などを含む。
【0038】
本発明の一様態において、本発明のクルクミン誘導体は、N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エノイル]フェニル}-2-メチルプロパンアミド(N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)prop-2-enoyl]phenyl}-2-methylpropanamide)であって、下記[化学式1]の構造を有するものであってもよい。本発明の一実施例において、前記クルクミン誘導体は、クルクミン5-8(curcumin5-8、CUR5-8)を指称する。
【0039】
【0040】
また、本発明のクルクミン誘導体は、4,4'-(3,5-ピリジンジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス(2-メトキシフェノール)(4,4'-(3,5-Pyridinediyldi-2,1-ethynediyl)bis(2-methoxyphenol))であって、下記[化学式2]の構造を有するものであってもよい。本発明の一実施例において、前記クルクミン誘導体は、クルクミン4-8(curcumin4-8、CUR4-8)を指称する。
【0041】
【0042】
また、本発明のクルクミン誘導体は、2,6-ジクロロ-N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-プロペノイル]フェニル}ベンズアミド)(2,6-Dichloro-N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-2-propenoyl]phenyl}benzamide)であって、下記[化学式3]の構造を有するものであってもよい。本発明の一実施例において、前記クルクミン誘導体は、クルクミン5-14(curcumin5-14、CUR5-14)を指称する。
【0043】
【0044】
また、本発明のクルクミン誘導体は、デヒドロジンゲロン(Dehydrozingerone;DHZ))であって、下記[化学式4]の構造を有するものであってもよい。
【0045】
【0046】
また、本発明のクルクミン誘導体は、4-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン(4-(3,4-Dimethoxyphenyl)-3-buten-2-one)であって、下記[化学式5]の構造を有するものであってもよい。本発明の一実施例において、前記クルクミン誘導体は、デヒドロジンゲロン103(Dehydrozingerone103;DHZ103)を指称する。
【0047】
【化5】
【0048】
また、本発明のクルクミン誘導体は、1-(4-クロロフェニル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン(1-(4-Chlorophenyl)-3-phenyl-1,3-propanedione)であって、下記[化学式6]の構造を有するものであってもよい。本発明の一実施例において、前記クルクミン誘導体は、デヒドロジンゲロン176(Dehydrozingerone176;DHZ176)を指称する。
【0049】
【0050】
本発明の前記クルクミン誘導体は、肝細胞においてTGF-β受容体抑制剤による脂肪生成を抑制する効果を示すことがある。
【0051】
本発明の前記クルクミン誘導体は、公知の方法によって合成して用いてもよく、商業的に販売されるものを購入して(一例として、Sigmaなどで入手可能)用いてもよい。
【0052】
本発明の一様態において、前記TGF-β受容体抑制剤は、N-(2-フルオロフェニル)-5-(6-メチル-2-ピリジニル)-4-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル-1H-イミダゾール-2-メタンアミン(N-(2-fluorophenyl)-5-(6-methyl-2-pyridinyl)-4-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridin-6-yl-1H-imidazole-2-methanamine)であって、下記[化学式7]の構造を有するものであってもよい。本発明の一実施例において、前記TGF-β受容体抑制剤は、EW-7197を指称する。
【0053】
【0054】
本発明において、前記EW-7197は経口投与が可能であり、CCL4投与及び胆管結紮(bile duct ligation)による肝線維化モデルにおける肝臓の損傷を抑制してもよく、一方の尿管閉鎖(unilateral ureteral obtruction;UUO)による腎線維化モデル及びブレオマイシン(bleomycin)による肺線維化モデルにおける組織の線維化を抑制してもよい。
【0055】
本発明の一様態において、前記薬学組成物は、TGF-β受容体AKL4またはAKL5を抑制してもよい。
【0056】
本発明の前記TGF-β受容体抑制剤は、公知の方法によって合成して用いてもよく、商業的に販売されるものを購入して用いてもよい。
【0057】
本発明の前記クルクミン誘導体とTGF-β受容体抑制剤のモル比は、1:15~15:1、1:14乃至14:1、1:13乃至13:1、1:12乃至12:1、1:11乃至11:1、または1:10乃至10:1であってもよい。
【0058】
より具体的な本発明の一様態において、クルクミン誘導体は、クルクミン5-8、デヒドロジンゲロン、デヒドロジンゲロン103またはデヒドロジンゲロン176であり、TGF-β受容体抑制剤はEW-7197であってもよい。
【0059】
本発明における代謝性肝疾患は、脂肪肝、脂肪性肝炎及び肝線維症からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。具体的に、本発明における代謝性肝疾患は、脂肪性肝炎であってもよく、さらに具体的に、非アルコール性脂肪性肝炎であってもよい。本発明における非アルコール性脂肪性肝炎は、肝細胞の脂肪化、壊死、炎症及び線維化を伴ってもよい。
【0060】
また、本発明の薬学組成物は、本発明の有効成分だけでなく、既存に脂肪性肝疾患の治療効果、肝疾患の治療効果、肝保護効果、肝機能の改善効果などがあるものが認められた物質、一例として、脂肪性肝疾患の治療剤、肝細胞の保護用物質、肝疾患の治療剤または肝機能の改善剤などとして用いられる物質をさらに含むか、前記物質とともに用いられてもよい。本発明の薬学組成物が従来の脂肪肝の予防または治療剤とともに用いられる場合、同時または順次に投与されてもよく、その回数及び順序の影響を受けない。
【0061】
本発明の薬学組成物内の前記クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、前記TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、の含有量は、0.001~99.999重量%、0.01~99.99重量%、0.1~99.9重量%または1~90重量%であってもよいが、それらに限定されるものではなく、投与個体、使用様態、使用方法、製剤の形態などにより、本発明の前記クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩及び前記TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩の含有量を適切に調節して用いられてもよい。
【0062】
また、本発明の薬学組成物は、薬学的に有効な量を投与する。
【0063】
本発明における「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用できる合理的な利益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与時間、投与経路及び排出率、治療期間、同時に用いられる薬物が含まれる要素、並びにその他医学分野で公知の要素により決定される。本発明による薬学組成物は、個別治療剤として投与してもよく、手術、ホルモン治療、薬物治療及び生物学的反応調節剤と併用して用いてもよく、前記製剤と同時に、個別にまたは順次投与してもよく、単一または多重投与してもよい。前記要素を全て考慮して副作用なく最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者により容易に決定される。
【0064】
具体的に、本発明の薬学組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、活性成分の体内への吸収度、不活化率、排泄速度、疾病の種類、併用される薬物によって変わってもよく、一般的には、体重1kgあたり0.1~100mg、好ましくは0.3~80mgを毎日または隔日で投与するか、あるいは1日1~3回に分けて投与してもよい。しかしながら、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などにより増減するので、前記投与量がいかなる方法であれ本発明を限定するものではない。
【0065】
本発明の薬学組成物は、目的とする方法に応じて経口投与または非経口投与(例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮下、皮内または局所に適用)され、投与量は、患者の状態及び体重、疾患の程度、薬物の形態、投与経路及び時間によって異なるが、当業者により適宜選択される。
【0066】
また、本発明の薬学組成物は、コロイド懸濁液、粉末、食塩水、脂質、リポソーム、ミクロスフェア(microspheres)、ナノ球形粒子などの薬学的に許容される担体を用いて輸送されてもよい。これらは輸送手段と複合体を形成するか、互いに連結または担体中に含まれてもよく、脂質、リポソーム、微細粒子、金ナノ粒子、ポリマー、縮合反応剤、多糖類、ポリアミノ酸、デンドリマー、サポニン、吸着促進物質、脂肪酸などの当該技術分野で公知の輸送システムを用いて生体内に/内で輸送されてもよい。その他、薬学的に許容される担体には、製剤の際に通常用いられるラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム 、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱油などが含まれるが、これらに限定されるものではない。また、前記成分以外に、滑沢剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含んでもよい。
【0067】
また、本発明の薬学組成物を製剤化する場合、通常用いる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて製剤化されてもよい。経口用固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、これらの固形製剤は、少なくとも一つの賦形剤(デンプン、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)またはゼラチン)及び潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク)などを混合して製造してもよい。経口用液体製剤しては、懸濁剤、内用液剤、乳剤またはシロップ剤などが含まれ、それらの液状製剤は、少なくとも一つの希釈剤(水、流動パラフィン)、賦形剤、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを混合して製造してもよい。非経口投与用製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁溶剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれ、前記非水溶性溶剤及び懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが用いられてもよく、前記坐剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが用いられてもよい。
【0068】
本発明の一様態において、前記代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物は、経口用薬学製剤であってもよい。具体的に、前記経口用薬学製剤は、錠剤、顆粒剤、丸剤、散剤、カプセル剤及び液剤からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0069】
本発明の一様態において、経口投与用の製剤は、例えば、錠剤、顆粒剤、丸剤、散剤、カプセル剤、液剤などの投与量単位形態及びアンプルであってもよい。これらは、それ自体が公知の方法、例えば、通常の混合、粒状化、糖剤、調製、溶解または凍結乾燥法により製造される。
【0070】
本発明はまた、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または治療用医薬部外品、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または治療に用いるための医薬部外品、及び代謝性肝疾患の予防または治療用医薬部外品を製造するためのクルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩との用途を提供する。
【0071】
本発明の前記クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、代謝性肝疾患に対しては前記クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物に関する内容と同一であるので、前記内容を援用し、以下においては、医薬部外品の特有の構成についてのみ説明する。
【0072】
本発明において用いられる「医薬部外品」なる用語は、ヒトや動物の疾病を診断、治療、改善、軽減、処置または予防する目的で用いられる物品のうち医薬品よりも作用が軽微な物品を意味するものであって、例えば、薬事法によれば、医薬部外品とは、医薬品の用途として用いられる物品を除いたものであって、ヒトや動物の疾病の治療や予防に用いられる製品、人体に対する作用が軽微であるか直接作用しない製品であってもよい。
【0073】
前記医薬部外品組成物は、ボディソープ、消毒清潔剤、洗浄剤、台所用洗浄剤、掃除用洗浄剤、歯磨き粉、洗口剤、ウェットティッシュ、洗剤、石鹸、ハンドソープ、洗髪剤、ヘア柔軟剤、加湿器充填剤、マスク、軟膏剤及びフィルター充填剤、ビタミン製剤、ミネラル製剤、滋養強壮変質剤、健胃消化剤、整腸剤などの医薬品から転換された内服用剤などで構成された群から選択される剤形に製造してもよい。具体的に、本発明の前記医薬部外品は、医薬品から転換された内服用剤であってもよい。
【0074】
本発明はまた、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む代謝性肝疾患の予防または改善用食品組成物、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または改善に用いるための食品組成物、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を投与するステップを含む、代謝性肝疾患の予防または改善方法、及び代謝性肝疾患の予防または改善用食品組成物を製造するためのクルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩との用途を提供する。
【0075】
本発明の前記クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、代謝性肝疾患に対しては前記クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物に対する内容と同一であるので、前記内容を援用し、以下においては、食品組成物の特有の構成についてのみ説明する。
【0076】
前記食品組成物は、機能性食品または健康機能食品であってもよく、代謝性肝疾患の改善または予防と、それにさらに肝臓の保護及び肝臓の機能改善のための健康機能性食品組成物であってもよい。
【0077】
本発明による食品組成物は、栄養素を一つまたはそれ以上含んでいる天然物または加工品を意味し、一例として、ある程度の加工工程を経て直接食べられる状態になったものを意味してもよく、通常、食品、食品添加剤、健康機能食品及び飲料をすべて含む。
【0078】
本発明の前記クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、前記TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を添加してもよい食品としては、例えば、各種食品類、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、機能性食品などがある。さらに、本発明における食品は、特別栄養食品(例えば、調製乳類、乳児食/離乳食など)、食肉加工品、魚肉製品、豆腐類、ムク類、麺類(例えば、ラーメン類、蕎麦類など)、健康補助食品、調味食品(例えば、醤油、味噌、唐辛子ペースト、ミックスペーストなど)、ソース類、菓子類(例えば、スナック類)、乳製品(例えば、発酵乳、チーズなど)、その他の加工食品、キムチ、塩蔵食品(種々のキムチ類、漬物など)、飲料(例えば、果実、野菜類飲料、豆乳類、発酵飲料類など)、天然調味料(例えば、ラーメンブロスパウダーなど)を含むが、それらに限定されるものではない。前記食品、飲料または食品添加剤は、通常の製造方法で製造されてもよい。
【0079】
本発明における機能性食品とは、食品に物理的、生化学的、生物工学的手法などを利用して該当食品の機能を特定の目的に作用、発現するように付加価値を付与した食品群や食品組成が有する生体防御リズムの調節、疾病の防止と回復などに関する体調節機能を生体に対して十分に発現するように設計して加工した食品を意味する。前記機能性食品には、食品学的に許容される食品補助添加剤を含んでもよく、機能性食品の製造に通常用いられる適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含んでもよい。
【0080】
本発明における飲料とは、のどの渇きを解消するか、味を楽しむために飲むものの総称を意味し、機能性飲料を含む。前記飲料は、指示された割合で必須成分として前記クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含むこと以外に、別の成分を含むことには特別な制限がなく、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含んでもよい。前記天然炭水化物の例としては、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロースなど;及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどの通常的な糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。前述したもの以外の香味剤としては、天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を用いることが有利である。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100mLに対して、一般的に約1~20gまたは5~12gである。その他に、本発明の組成物は、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料、野菜飲料の製造のための果肉をさらに含んでもよい。
【0081】
前記以外の本発明の食品組成物は、様々なサプリメント、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤や天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド、増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有してもよい。これらの成分を独立して、あるいは、組み合わせて用いてもよい。これらの添加剤の割合はそれほど重要ではないが、本発明の食品組成物100重量部に対して、0~200,000重量部の範囲で選択されてもよい。
【0082】
本発明における機能性飲料とは、飲料に物理的、生化学的、生物工学的手法などを利用して該当飲料の機能を特定の目的に作用、発現するように付加価値を付与した飲料群や飲料組成が有する生体防御リズムの調節、疾病の防止と回復などに関する体調節機能を生体に対して十分に発現するように設計して加工した飲料を意味する。
【0083】
前記機能性飲料は、指示された割合にて必須成分として本発明の食品組成物の有効成分を含むこと以外は、他の成分には格別な制限がなく、通常の飲料のようにいろいろな香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有していてもよい。前記天然炭水化物の例としては、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロースなど;及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどの通常的な糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。前述したもの以外の香味剤としては、天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を用いることが有利である。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100mLに対して、一般的に約1~20gまたは5~12gであってもよい。
【0084】
また、前記クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む代謝性肝疾患の改善または予防用食品組成物において、前記有効成分の含有量は、全体食品重量に対して、0.0001~99.99重量%または0.001~99.9%重量%または0.01~90重量%または0.1~50重量%で含んでもよく、飲料組成物は、100mLを基準として、0.0002~5gまたは0.03~1gの割合で含んでもよい。
【0085】
また、前記クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む代謝性肝疾患の改善または予防用食品組成物の摂取量は、摂取しようとする個体の状態及び体重、疾病の程度、薬物の形態、投与経路及び期間によって異なり、当業者によって適切に選択されてもよい。一例として、本発明の食品組成物は、有効成分を基準として1日0.0001g/kg(有効成分の量/体重)乃至12g/kg(有効成分の量/体重)または0.01g/kg乃至9g/kgで投与されてもよい。投与方法は一日一回投与してもよく、数回に分けて投与してもよく、投与回数及び投与方法は、いかなる面でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0086】
前記薬学組成物と同一の方式で製剤化されて機能性食品で利用するか、各種食品に添加してもよい。本発明の組成物を添加してもよい食品としては、例えば、飲料類、肉類、チョコレート、食品類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類、アルコール飲料類、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがある。
【0087】
あわせて、本発明は、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む製剤を複合的、混合的または併用的に含む代謝性肝疾患治療用の複合剤、混合剤または併用剤キット、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む製剤を複合的、混合的または併用的に含む代謝性肝疾患の治療に用いるための複合剤、混合剤または併用剤キット、クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む製剤を複合、混合または併用投与するステップを含む、代謝性肝疾患の治療方法、及び代謝性肝疾患治療用の複合剤、混合剤または併用剤キットを製造するためのクルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩との用途を提供する。
【0088】
本発明の前記クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、代謝性肝疾患に対しては、前記クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物に関する内容と同一であるので、前記内容を援用する。
【0089】
以下、実施例及び実験例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例及び実験例は、本発明を例示したものにすぎず、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0090】
細胞実験
<実施例1-1>細胞培養
ネズミ肝細胞であるAML12及びヒト肝星細胞(hepatic stellate cell)であるLX-2細胞を用いて細胞実験を行った。
【0091】
AML12細胞は、肝細胞(hepatocyte)や前立腺上皮細胞(prostate eopthelial cell)の培養に用いられる、DMEM培地とHam's F-12が50:50で混ざったF-12 media(Corning,USA,Arizona)にインスリン(insulin;ITS)5mL、デキサメタゾン(dexamethasone)40ng/mL、1%ペニシリンストレプトマイシン(penicillin streptomycin;anti-anti)及び10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)を添加して作った培養液で培養した。
【0092】
LX-2細胞は、高ブドウ糖が含まれたDMEM培地(4500mg/L D-glucose、L-glutamine、110mg/L sodium pyruvate、sodium bicarbonate)に1%ペニシリンストレプトマイシン(penicillin streptomycin;anti-anti)及び10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)を添加して作った培養液で培養した。
【0093】
<実施例1-2>クルクミン誘導体の細胞毒性の確認
細胞の毒性を確認するために、実施例1-1の細胞にTGF-β 2ng/mLを処理した後、クルクミン(CUR)、クルクミン5-8(CUR5-8)、クルクミン4-8(CUR4-8)、クルクミン5-14(CUR5-14)のそれぞれを0.1、1、3及び5μMで同一の時間にかけて処理した。以後、5%CO、37℃インキュベータで培養した細胞に生存した細胞を染色できるテトラゾリウム(tetrazolium)染色薬によって染色した後(MTT)、分光光度計(sepctrophotometer)を利用して吸光度を測定した。
【0094】
<実施例1-3>TGF-β受容体抑制剤の投与後の肝細胞の線維化の確認
肝細胞にTGF-βで線維化を誘導し、TGF-β受容体抑制剤を投与した後、線維化を確認した。
【0095】
具体的に、実施例1-1の細胞にTGF-β 2ng/mLを投与した後、10μMのEW-7197(EW)を投与または非投与し、24時間にかけて培養した。対照群(Con)はTGF-β及び試料をいずれも処理していない。以後、細胞を回収し、細胞で線維化マーカーでα-SMA、コラーゲンI(Col1)、p-SMAD2、p-SMAD3タンパク質発現をウエスタンブロッティングで確認した。そのため、回収した細胞をRIPA緩衝液(Thermo,MA,USA)でプロテアーゼ抑制剤及びフォスファターゼ抑制剤(Roche,IN,USA)で溶解した後、氷上で30分間インキュベーションした。溶解物を4℃で13,000rpmで20分間遠心分離した後、不溶性物質を除去した。BCA分析(Pierce Biotechnology)でタンパク質の濃度を測定した。同量の細胞溶解物を電気泳動のためにSDS-PAGEゲルにローディングし、PVDFメンブレン(polyvinylidene difluoride,Immobilon-P,Merck KGaA,Darmstadt,Germany)に移した。その後、メンブレンを室温で1時間にかけて1X TBSTの5%(w/v)スキムミルクでブロッキングした。ブロッキングの後にメンブレンに1次抗体で抗-β-アクチン抗体(1:2000;Santa Cruz)、抗-α-SMA抗体(1:1000;Santa Cruz)、抗-コラーゲンI抗体(1:1000;Santa Cruz)、抗-p-SMAD2抗体(1:1000;Cell signaling)、抗-p-SMAD3抗体(1:1000;Cell signaling)のそれぞれを処理し、4℃で一晩中インキュベーションした。その後、1X TBSTで数回洗浄した後、メンブレンを室温(RT)で1時間にかけてブロッキング緩衝液で西洋ワサビペルオキシダーゼ-接合二次抗体(抗-マウス、ウサギまたはヤギ、1:2000;Cell signaling)とともにインキュベーションした。その後、メンブレンを洗浄し、製造業者の手続きに従い、Pico Enhanced Peroxidase Detection(EPD)Western reagent(Elpis Biotechnology)とともに簡単にインキュベーションし、画像分析機(ImageQuantTM LAS 500,GE Healthcare Bio-Sciences AB,Uppsala,Sweden)で定量化した。内部対照群としてβ-アクチンを用いた。タンパク質強度の濃度測定は、Image J(National Institutes of Health)を用いて定量化した。
【0096】
<実施例1-4>クルクミン誘導体の投与後の脂肪の合成と分解の確認
肝細胞にオレイン酸で脂肪蓄積を誘導し、クルクミン誘導体を投与した後、脂肪の合成と分解を確認した。
【0097】
具体的に、オレイン酸の場合、0.2%ウシ血清アルブミン(Bovine serum albumin;BSA)に500μM濃度で溶かして実施例1-1の細胞に24時間にかけて培養して処理し、1μMのクルクミン(Cur)、1μMのクルクミン5-8(Cur5-8)、1μMのクルクミン4-8(Cur4-8)、1μMのクルクミン5-14(Cur5-14)を同一の時間にかけて処理した。以後、5%CO、37℃インキュベータで培養した細胞にBODIPY-脂肪酸(BODIPY-Fatty acid)溶液(Sigma、1mg/mLのストックDMSO溶液をPBS 1Xで希釈し、最終濃度0.2μg/mLを得た。)を投与して1時間にかけて培養した。PBS 1Xで洗浄した後、染色された細胞を観察した。
【0098】
また、実施例1-1の細胞に前記に記載されている方法と同一の方法によりオレイン酸を処理し、1μMのクルクミン(Cur)、1μMのクルクミン5-8(Cur5-8)、10μMのEW-7197(EW)を処理した後、前記と同一の方法によりBODIPY-脂肪酸染色を行った。また、試料を処理した後に細胞を回収し、回収した細胞で脂肪蓄積誘導因子でadipophilin、及び脂肪代謝調節因子でSREBP1Cタンパク質発現をウエスタンブロッティングで確認した。そのために回収した細胞を利用して<実施例1-3>に記載されている方法と同一の方法によりウエスタンブロッティングを行った。そのとき、1次抗体として抗-β-アクチン抗体、抗-adipophilin抗体及び抗-SREBP1C抗体を利用した。
【0099】
<実施例1-5>クルクミン誘導体及びTGF-β受容体抑制剤の併用投与後の肝細胞の線維化及び脂肪の合成と分解の確認
肝細胞にTGF-βで線維化を誘導し、クルクミン誘導体及びTGF-β受容体抑制剤を併用投与した後、線維化及び脂肪の合成と分解を確認した。
【0100】
具体的に、実施例1-1の細胞にTGF-β 2ng/mLを投与した後、ビヒクル(Veh)、1μMのクルクミン(Cur)、1μMのクルクミン5-8(Cur5-8)、0.5μMのEW-7197(EW0.5)、10μMのEW-7197(EWまたはEW10)、1μMのクルクミン及び0.5μMのEW-7197(EW0.5+Cur)、1μMのクルクミン及び10μMのEW-7197(EW+CurまたはEW10+Cur)、1μMのクルクミン5-8及び0.5μMのEW-7197(EW0.5+Cur5-8)、1μMのクルクミン5-8及び10μMのEW-7197(EW+Cur5-8またはEW10+Cur5-8)投与群に分けて試料をそれぞれ投与し、24時間にかけて培養した。対照群(Con)は、TGF-β及び試料をいずれも処理していない。以後、5%CO、37℃インキュベータで培養した細胞を顕微鏡観察によって、上皮間葉転換しているか否かを確認し、BODIPY-脂肪酸(BODIPY-Fatty acid)溶液(Sigma、1mg/mLのストックDMSO溶液をPBS 1Xで希釈し、最終濃度0.2μg/mLを得た。)を投与し、1時間にかけて培養した。PBS 1Xで洗浄した後、染色された細胞を観察した。
【0101】
また、肝細胞の線維化の程度を確認するために、前記24時間にかけて培養した細胞を4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)で固定した後、α-SMA(SantaCruz,Dallas,Texas,USA)、alexafluor488(Cell Signaling,Danvers,Massachusetts USA)抗体とDAPI(abcam Cambridge,MA,USA)を用いて染色した。マウンティング(mounting)溶液(Fisher Scientific、Hampton、Rockingham、USA)でマウンティングし、製作が完了したサンプルは共焦点顕微鏡を利用して染色写真を撮影し、染色された写真で発色の程度をimage Jプログラムで分析した。
【0102】
また、肝細胞の線維化の程度を確認するために、前記24時間にかけて培養した細胞を回収して<実施例1-3>に記載されている方法と同一の方法により線維化マーカーでα-SMA、コラーゲンI(Col1)、p-SMAD2、p-SMAD3タンパク質発現をウエスタンブロッティングで確認した。
【0103】
<実施例1-6>デヒドロジンゲロン誘導体及びTGF-β受容体抑制剤の併用投与後の肝細胞の線維化及び脂肪の合成と分解の確認
肝細胞にTGF-βで線維化を誘導し、クルクミン誘導体でデヒドロジンゲロンまたはその誘導体及びTGF-β受容体抑制剤を併用投与した後、線維化及び脂肪の合成と分解を確認した。また、実施例1-4のクルクミン誘導体Cur5-8及びTGF-β受容体抑制剤を併用投与した後、線維化及び脂肪の合成と分解を再び確認した。
【0104】
具体的に、実施例1-1の細胞にTGF-β 2ng/mLを投与した後、ビヒクル(Veh)、10μMのEW-7197(EW)、1μMのクルクミン及び10μMのEW-7197(EW+Cur)、1μMのクルクミン5-8及び10μMのEW-7197(EW+Cur5-8)、10μMデヒドロジンゲロン(DHZ)及び10μMのEW-7197(EW+DHZ)、10μMデヒドロジンゲロン103(DHZ103)及び10μMのEW-7197(EW+Z103)、10μMデヒドロジンゲロン176(DHZ176)及び10μMのEW-7197(EW+Z176)の投与群に分けて試料をそれぞれ投与し、24時間にかけて培養した。対照群(Con)はTGF-β及び試料をいずれも処理していない。以後、5%CO、37℃インキュベータで培養した細胞を顕微鏡観察によって、上皮間葉転換しているか否かを確認し、BODIPY-脂肪酸(BODIPY-Fatty acid)溶液(Sigma、1mg/mLのストックDMSO溶液をPBS 1Xで希釈し、最終濃度0.2μg/mLを得た。)を投与し、1時間にかけて培養した。PBS 1Xで洗浄した後、染色された細胞を観察した。
【0105】
また、肝細胞の線維化の程度を確認するために、前記24時間にかけて培養した細胞を4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)で固定した後、α-SMA(SantaCruz,Dallas,Texas,USA)、alexafluor 488(Cell Signaling,Danvers,Massachusetts USA)抗体とDAPI(abcam Cambridge,MA,USA)を用いて染色した。マウンティング(mounting)溶液(Fisher Scientific,Hampton,Rockingham,USA)でマウンティングし、製作が完了したサンプルは共焦点顕微鏡を利用して染色写真を撮影し、染色された写真で発色の程度をimage Jプログラムで分析した。
【実施例2】
【0106】
動物実験
<実施例2-1>脂肪性肝炎動物モデルの製作、及びクルクミン誘導体及び高濃度TGF-β受容体抑制剤の併用投与
8週齢の雄20~25gのC57BL/6ネズミをデハンバイオリンク(忠清北道)で購入した。ネズミは室温(25±2℃)、60±5%湿度及び12時間の明/暗の周期下で一週間の適応期間を経た。ネズミに一般飼料(Research Diets;RD)を給与し、水は自由に飲ませた。以後、ネズミに給与する飼料や投与する薬物によって無作為に5個の群に分け、5つの群は一般飼料を給与する群(Con)、MCD飼料(methionine-choline deficient diet)を給与する群(MCD)、MCD飼料にクルクミン5-8(飼料1kgあたりクルクミン5-8 1g)を配合して給与する群(MCD+Cur5-8)、MCD飼料を給与してEW-7197を経口投与する群(MCD+EW)、及びMCD飼料にクルクミン5-8を配合した飼料を給与してEW-7197をともに経口投与する群(MCD+EW+Cur5-8)である(n=10)。
【0107】
EW-7197は40mg/kgで二日に一回ずつ経口投与する方式で胃に直接的に投与した。実験期間の間、毎週体重を測定し、6週間後の肝組織を摘出して-80℃で保管した。すべての実験は、延世大学原州医科大学の動物実験倫理委員会の承認を受けて行った(YWC-200907-1)。
【0108】
<実施例2-2>脂肪性肝炎動物モデルの製作、及びクルクミン誘導体及び低濃度TGF-β受容体抑制剤の併用投与
<実施例2-1>に記載されている方法と同一の方法により脂肪性肝炎動物モデルを製作し、クルクミン誘導体及びEW-7197を併用投与するものの、EW-7197の投与濃度を5mg/kgにした。
【0109】
<実施例2-3>脂肪性肝炎動物モデルの生理学的な変化の確認
クルクミン誘導体(Cur5-8)とTGF-β受容体抑制剤(EW-7197)の併用投与時の生理学的な変化を確認するために、肝の重さ、血清内のTG、TC、AST、ALT、γ-GTの濃度を測定した。また、肝組織における線維化マーカーでhydroxyprolinの発現を確認した。
【0110】
具体的に、実施例2-1及び2-2において摘出した肝組織の重さを保管前に測定した。
【0111】
また、実施例2-1及び2-2で実験終了後に採血し、血清内のTG、TC、AST、ALT、γ-GTの濃度を測定した。血糖、中性脂肪、コレステロール、AST、ALTの濃度測定のために、Asan社のELISA ktiを購入して測定した。肝γ-GTの場合、Sigma社のMak089、hydroxyprolineの場合、Cell Biolabs社のSTA-675 ELISA kitを利用して測定した。
【0112】
あわせて、実施例2-1及び2-2において摘出した肝組織におけるhydroxyprolinの発現を確認した。
【0113】
<実施例2-4>脂肪性肝炎動物モデルの肝組織の病変の観察
クルクミン誘導体(Cur5-8)とTGF-β受容体抑制剤(EW-7197)の併用投与時の肝組織内の脂肪蓄積及び肝組織の線維化の抑制効果を確認するために、肝組織染色を行った。
【0114】
実施例2-1及び2-2において摘出した肝組織を10%ホルムアルデヒド(Formaldehyde)で固定させた後、12時間以上流れる水でホルムアルデヒドを洗浄し、その後、60%のエタノール(Ethanol)で1時間、70%のエタノールで1時間、100%のエタノールで1時間おきで水洗した。そして、キシレン(Xylene)に1時間ずつ3回の透明過程とパラフィンに1時間ずつ2回の浸透過程を実施した。その後、パラフィンブロックを約4μm厚さに切って切片を得た。切片は脱パラフィン化した後、ヘマトキシリン(Hematoxylin)及びエオシン(Eosin)で染色(H&E染色)し、肝組織の血管及び脂質滴などを確認した。
【0115】
前記方法により肝組織の切片を得てピクロシリウスレッド(Picrosirius red)及びマッソントリクローム(Masson's trichrome)染色法によって染色した後、400倍の倍率を有したカメラ付き顕微鏡(Pulnix,Sunnyvale,CA,USA)によって血管周辺組織の線維化を確認した。
【0116】
また、H&E染色された肝切片をNAS(NAFLD acitivity score)システムで評価した。このシステムは脂肪症の程度(0~3)、小葉の炎症(0~3)、そして、肝細胞の膨張(0~2)を考慮した。この点数の合計であるNAS点数は、3点未満は正常、5点以上は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)であると点数を付けてNAFLDの深刻性を示す。
【0117】
<実施例2-5>脂肪性肝炎動物モデルの肝組織内の線維化及び脂肪の合成と分解の確認
クルクミン誘導体(Cur5-8)とTGF-β受容体抑制剤(EW-7197)の併用投与時の肝組織内の脂肪蓄積及び肝組織の線維化の抑制効果を確認するために、肝組織内の線維化マーカー及び脂肪代謝調節因子及びこれと関連する信号因子の発現を確認した。
【0118】
具体的に、実施例2-1において摘出した肝組織を利用して<実施例1-3>に記載されている方法と同一の方法によりウエスタンブロッティングを行った。そのとき、肝組織内の線維化マーカーでα-SMA、Col1、Fibronectin、p-SMAD2、p-SMAD3タンパク質発現を確認するために、1次抗体として抗-β-アクチン抗体、抗-α-SMA抗体、抗-Col1抗体、抗-Fibronectin抗体、抗-p-SMAD2抗体、抗-p-SMAD3抗体を用いた。また、脂肪代謝調節因子及びこれと関連する信号因子でRock1、p-AMPK、AMPK、SREBP1Cタンパク質発現を確認するために、1次抗体として抗-β-アクチン抗体、抗-Rock1抗体、抗-p-AMPK抗体、抗-AMPK抗体、抗-SREBP1C抗体を用いた。
【0119】
<実施例3>統計の分析
すべてのデータは平均±標準偏差で表示された。統計分析には一元分散分析及び多重比較のためのTukeyの事後検定が含まれ、SPSS Statisticsソフトウェア(version 20.0;IBM Corp,Armonk,NY,USA)を用いて行われた。統計的な有意性はP<0.05で設定された。
【0120】
<実験例1>マウス肝細胞株またはヒト肝線状細胞株におけるクルクミン誘導体及びTGF-β受容体抑制剤の併用投与効果の確認
<実験例1-1>マウス肝細胞株におけるTGF-βによる線維化誘導時のクルクミン誘導体が細胞に及ぼす影響の確認
実施例1-2に記載されている方法によりクルクミン(CUR)及びクルクミン誘導体(CUR5-8、CUR4-8、CUR5-14)のそれぞれを濃度ごとにTGF-βと併用投与する時に生存した細胞を測定した。
【0121】
その結果、図1に示すように、0.1μM、1μMの濃度で細胞の生存率が最も高く、0.1μMを除いた濃度のCUR4-8処理群においては細胞毒性が高く示されることを確認した。
【0122】
<実験例1-2>マウス肝細胞株またはヒト肝線状細胞株におけるTGF-βによる線維化誘導時のTGF-β受容体抑制剤が線維化に及ぼす影響の確認
実施例1-3に記載されている方法によりTGF-βで線維化を誘導し、TGF-β受容体抑制剤(EW-7197)を処理した後、線維化マーカーでα-SMA、Col1、p-SMAD2、p-SMAD3タンパク質発現をウエスタンブロッティングで確認した。
【0123】
その結果、図2及び図3に示すように、TGF-βによって増加されたα-SMA、Col1、p-SMAD2、p-SMAD3タンパク質発現がEW-7197投与によって抑制されることを確認した。これにより、EW-7197投与で肝線維化が抑制されることが分かる。
【0124】
<実験例1-3>マウス肝細胞株におけるオレイン酸による脂肪蓄積誘導時のクルクミン誘導体またはTGF-β受容体抑制剤が脂肪の合成に及ぼす影響の確認
実施例1-4に記載されている方法によりオレイン酸をマウス肝細胞株に処理し、それと同時にクルクミン(Cur)及びクルクミン誘導体(Cur5-8、Cur4-8、Cur5-14)のそれぞれを24時間にかけて処理した後、BODIPY染色法を利用して脂肪を染色した。
【0125】
その結果、図4及び図5に示すように、クルクミン誘導体がオレイン酸によって増加された脂肪を減らし、特に、Cur5-8が最も効果的に減らすことを確認した。
【0126】
また、実施例1-4に記載されている方法によりオレイン酸をマウス肝細胞株に処理し、それと同時にクルクミン(Cur)、クルクミン誘導体(Cur5-8)、TGF-β受容体抑制剤(EW-7197)のそれぞれを24時間にかけて処理した後、BODIPY染色法を利用して脂肪を染色し、ウエスタンブロッティングを行った。
【0127】
その結果、図6及び図7に示すように、クルクミン誘導体(Cur5-8)がオレイン酸によって増加された脂肪を減らす一方、TGF-β受容体抑制剤(EW-7197)はオレイン酸による脂肪の増加を促進することが確認された。
【0128】
<実験例1-4>マウス肝細胞株またはヒト肝線状細胞株におけるクルクミン誘導体及びTGF-β受容体抑制剤の脂肪蓄積及び線維化の抑制効果の確認
クルクミン誘導体(Cur5-8)とTGF-β受容体抑制剤(EW-7197)を併用投与するときのTGF-βによる線維化を抑制し、それによる脂肪蓄積も抑制する相乗効果を確認するために、実施例1-5に記載されている方法に従う細胞実験によって、肝細胞の上皮間葉転換の可否を確認し、BODIPY染色及びα-SMA染色を行った。また、α-SMA、コラーゲンIp-SMAD2、p-SMAD3タンパク質発現をウエスタンブロッティングで確認した。
【0129】
その結果、図8図12に示すように、肝細胞にTGF-β 2ng/mLを24時間にかけて処理するとき、上皮間葉転換によって肝細胞の形態が変化し、α-SMA染色の結果、肝線維化が誘導されることを確認した(Veh群、緑色)。クルクミン投与群(Cur)及びクルクミン誘導体投与群(Cur5-8)もTGF-βによる上皮間葉転換が抑制されることなく肝線維化が誘導されることを確認した。EW-7197投与群(EW)は、上皮間葉転換及び肝線維化が抑制されるが、BODIPY染色の結果、細胞内に脂肪が蓄積される現象が現れることを確認した(赤色)。一方、クルクミン及びEW-7197併用投与群(EW+Cur)またはクルクミン誘導体及びEW-7197併用投与群(EW+Cur5-8)は、上皮間葉転換及び肝線維化が抑制され、EW-7197による細胞内の脂肪生成も抑制されることを確認した。特に、EW+Cur群よりEW+Cur5-8群でさらに効果的に細胞内の脂肪生成を抑制することが確認された。
【0130】
また、図13図15に示すように、高濃度(10μM)のEW-7197を投与した場合と低濃度(0.5μM)のEW-7197を投与した場合のいずれも、クルクミンまたはクルクミン誘導体を併用投与したときに細胞内の脂肪生成が抑制され、クルクミン誘導体併用投与群でさらに効果的に細胞内の脂肪生成を抑制することが確認された。
【0131】
<実験例1-5>マウス肝細胞株におけるデヒドロジンゲロン誘導体及びTGF-β受容体抑制剤の脂肪蓄積及び線維化の抑制効果の確認
クルクミン誘導体としてデヒドロジンゲロン(DHZ)またはその誘導体(DHZ103、DHZ176)とTGF-β受容体抑制剤(EW-7197)を併用投与するとき、TGF-βによる線維化を抑制し、それによる脂肪蓄積も抑制する相乗効果を確認するために、実施例1-6に記載されている方法に従う細胞実験によって肝細胞の上皮間葉転換の可否を確認し、BODIPY染色及びα-SMA染色を行った。
【0132】
その結果、図16図18に示すように、肝細胞株にTGF-β 2ng/mLを24時間にかけて処理するとき、上皮間葉転換によって肝細胞の形態が変化し、α-SMA染色の結果、肝線維化が誘導されることを確認した(Veh群、緑色)。また、EW-7197投与群(EW)は、上皮間葉転換及び肝線維化が抑制されるが、BODIPY染色の結果、細胞内の脂肪が蓄積される現象が現れることを確認した(赤色)。一方、クルクミン及びEW-7197併用投与群(EW+Cur)、Cur5-8及びEW-7197併用投与群(EW+Cur5-8)とともにデヒドロジンゲロンまたはその誘導体及びEW-7197併用投与群(EW+DHZ、EW+Z103及びEW+Z176)においても上皮間葉転換及び肝線維化が抑制され、EW-7197による細胞内の脂肪生成も抑制されることを確認した。特に、EW+Cur群よりEW+DHZ、EW+Z103及びEW+Z176群でさらに効果的に細胞内の脂肪生成を抑制することが確認された。
【0133】
<実験例2>脂肪性肝炎を誘導した動物モデルにおけるクルクミン誘導体及びTGF-β受容体抑制剤の肝線維化及び脂肪蓄積の抑制効果の確認
<実験例2-1>脂肪性肝炎を誘導した動物モデルにおけるクルクミン誘導体及び高濃度TGF-β受容体抑制剤の肝線維化及び脂肪蓄積の抑制効果の確認
クルクミン誘導体(Cur5-8)と高濃度TGF-β受容体抑制剤(EW-7197)の併用投与時の肝組織線維化の抑制及び肝組織内の脂肪蓄積の抑制効果を確認するために、実施例2-1に記載されている方法により脂肪性肝炎を誘導した動物モデルを製作し、クルクミン誘導体(Cur5-8)と高濃度TGF-β受容体抑制剤(40mg/kg EW-7197)を併用投与した。以後、実施例2-3に記載されている方法により生理学的な変化を確認し、実施例2-4に記載されている方法により肝組織の病変を観察し、実施例2-5に記載されている方法により肝組織内の線維化及び脂肪の合成と分解を確認した。
【0134】
【表1】
【0135】
その結果、表1及び図19図24に示すように、C57BL/6マウスにMCD餌を飼料として供給する場合、肝組織の線維化病変が発生することを確認した。MCD+Cur5-8投与群は、肝組織の線維化が改善されてはいないが、MCD+EW群及びMCD+EW+Cur5-8群においては肝組織の線維化が抑制されることを確認した。また、C57BL/6マウスにMCD餌を飼料を供給する場合、肝組織内に脂肪が蓄積されることを確認した。MCD+EW群は、肝組織内の脂肪蓄積が抑制されてはいないが、MCD+Cur5-8群とMCD+EW+Cur5-8群は、肝組織内の脂肪蓄積が減少することを確認した。
【0136】
それによって、MCD+EW群及びMCD+Cur5-8群に比べて、MCD+EW+Cur5-8群において著しく優れた非アルコール性脂肪性肝炎の改善効果が示されることを確認した。
【0137】
<実験例2-2>脂肪性肝炎を誘導した動物モデルにおけるクルクミン誘導体及び低濃度TGF-β受容体抑制剤の肝線維化及び脂肪蓄積の抑制効果の確認
クルクミン誘導体(Cur5-8)と低濃度TGF-β受容体抑制剤(EW-7197)の併用投与時の肝組織線維化の抑制及び肝組織内の脂肪蓄積の抑制効果を確認するために、実施例2-2に記載されている方法により脂肪性肝炎を誘導した動物モデルを製作し、クルクミン誘導体(Cur5-8)と高濃度TGF-β受容体抑制剤(5mg/kg EW-7197)を併用投与した。以後、実施例2-3に記載されている方法により生理学的な変化を確認し、実施例2-4に記載されている方法により肝組織の病変を観察し、実施例2-5に記載されている方法により肝組織内の線維化及び脂肪の合成と分解を確認した。
【0138】
【表2】
【0139】
その結果、表2及び図25図28に示すように、低濃度TGF-β受容体抑制剤を併用投与した場合でも、前記<実験例2-1>と類似に肝組織の線維化が抑制され、脂肪蓄積が減少することを確認した。それによって、MCD+EW群に比べて、MCD+EW+Cur5-8群において著しく優れた非アルコール性脂肪性肝炎の改善効果が示されることを確認した。
【0140】
本発明の一実施例において、肝細胞にTGF-βで刺激を与えた後、クルクミン誘導体、例えば、クルクミン5-8、デヒドロジンゲロンまたはその誘導体、及びTGF-β受容体抑制剤、例えば、EW-7197併用投与による変化を確認した。その結果、TGF-βによる細胞変形がEW-7197によって抑制され、そのとき増加する脂肪の生成がクルクミン誘導体によって抑制され、それらを併用投与した場合、それぞれを単独で投与した場合と比べて脂肪性肝炎の予防、改善、治療効果が著しく優れたことが明らかになるため、前記クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩は、代謝性肝疾患の予防または治療用組成物の有効成分として有用に用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明においては、クルクミン誘導体及びTGF-β受容体抑制剤を併用投与した場合、従来のクルクミン誘導体またはTGF-β受容体抑制剤を単独投与したときより優れた脂肪性肝炎の予防及び治療効果を確認したので、前記クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩は、脂肪性肝炎を含む代謝性肝疾患の予防、改善または治療のための薬学組成物、医薬部外品、食品組成物の有効成分として用いられてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【手続補正書】
【提出日】2023-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記クルクミン誘導体が、デメトキシクルクミン(demethoxycurcumin)、ビスデメトキシクルクミン(bisdemethoxycurcumin)、5-ヒドロキシ-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)-7-(4-ニトロ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(5-hydroxy-1-(4-hydroxy-3-methoxy-phenyl)-7-(4-nitro-phenyl)-hepta-1,4,6-trien-3-one)、N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エノイル]フェニル}-2-メチルプロパンアミド(N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)prop-2-enoyl]phenyl}-2-methylpropanamide)、4,4'-(3,5-ピリジンジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス(2-メトキシフェノール)(4,4'-(3,5-Pyridinediyldi-2,1-ethynediyl)bis(2-methoxyphenol))、2,6-ジクロロ-N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-プロペノイル]フェニル}ベンズアミド)(2,6-Dichloro-N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-2-propenoyl]phenyl}benzamide)、デヒドロジンゲロン(dehydrozingerone;DHZ)、4-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン(4-(3,4-Dimethoxyphenyl)-3-buten-2-one)及び1-(4-クロロフェニル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン(1-(4-Chlorophenyl)-3-phenyl-1,3-propanedione)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記組成物が、TGF-β受容体AKL4(Activin receptor-like kinase 4)またはAKL5(Activin receptor-like kinase 5)を抑制する、請求項1に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記TGF-β受容体抑制剤が、N-(2-フルオロフェニル)-5-(6-メチル-2-ピリジニル)-4-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル-1H-イミダゾール-2-メタンアミン、(N-(2-fluorophenyl)-5-(6-methyl-2-pyridinyl)-4-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridin-6-yl-1H-imidazole-2-methanamine;EW-7197)である、請求項1に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記クルクミン誘導体とTGF-β受容体抑制剤のモル比が、1:15~15:1である、請求項1に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記代謝性肝疾患が、脂肪肝、肝線維症及び脂肪性肝炎からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記脂肪性肝炎が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項6に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項8】
前記代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物が、経口用薬学製剤に含まれる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
前記経口用薬学製剤が、錠剤、顆粒剤、丸剤、散剤、カプセル剤及び液剤からなる群から選択される少なくとも1種で剤形化される、請求項8に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または治療用医薬部外品。
【請求項11】
前記クルクミン誘導体が、デメトキシクルクミン(demethoxycurcumin)、ビスデメトキシクルクミン(bisdemethoxycurcumin)、5-ヒドロキシ-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)-7-(4-ニトロ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(5-hydroxy-1-(4-hydroxy-3-methoxy-phenyl)-7-(4-nitro-phenyl)-hepta-1,4,6-trien-3-one)、N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エノイル]フェニル}-2-メチルプロパンアミド(N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)prop-2-enoyl]phenyl}-2-methylpropanamide)、4,4'-(3,5-ピリジンジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス(2-メトキシフェノール)(4,4'-(3,5-Pyridinediyldi-2,1-ethynediyl)bis(2-methoxyphenol))、2,6-ジクロロ-N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-プロペノイル]フェニル}ベンズアミド)(2,6-Dichloro-N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-2-propenoyl]phenyl}benzamide)、デヒドロジンゲロン(dehydrozingerone;DHZ)、4-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン(4-(3,4-Dimethoxyphenyl)-3-buten-2-one)及び1-(4-クロロフェニル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン(1-(4-Chlorophenyl)-3-phenyl-1,3-propanedione)からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記TGF-β受容体抑制剤が、N-(2-フルオロフェニル)-5-(6-メチル-2-ピリジニル)-4-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル-1H-イミダゾール-2-メタンアミン(N-(2-fluorophenyl)-5-(6-methyl-2-pyridinyl)-4-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridin-6-yl-1H-imidazole-2-methanamine;EW-7197)である、請求項10に記載の代謝性肝疾患の予防または治療用医薬部外品。
【請求項12】
クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む、代謝性肝疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項13】
前記クルクミン誘導体が、デメトキシクルクミン(demethoxycurcumin)、ビスデメトキシクルクミン(bisdemethoxycurcumin)、5-ヒドロキシ-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)-7-(4-ニトロ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(5-hydroxy-1-(4-hydroxy-3-methoxy-phenyl)-7-(4-nitro-phenyl)-hepta-1,4,6-trien-3-one)、N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エノイル]フェニル}-2-メチルプロパンアミド(N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)prop-2-enoyl]phenyl}-2-methylpropanamide)、4,4'-(3,5-ピリジンジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス(2-メトキシフェノール)(4,4'-(3,5-Pyridinediyldi-2,1-ethynediyl)bis(2-methoxyphenol))、2,6-ジクロロ-N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-プロペノイル]フェニル}ベンズアミド)(2,6-Dichloro-N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-2-propenoyl]phenyl}benzamide)、デヒドロジンゲロン(dehydrozingerone;DHZ)、4-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン(4-(3,4-Dimethoxyphenyl)-3-buten-2-one)及び1-(4-クロロフェニル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン(1-(4-Chlorophenyl)-3-phenyl-1,3-propanedione)からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記TGF-β受容体抑制剤が、N-(2-フルオロフェニル)-5-(6-メチル-2-ピリジニル)-4-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル-1H-イミダゾール-2-メタンアミン、(N-(2-fluorophenyl)-5-(6-methyl-2-pyridinyl)-4-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridin-6-yl-1H-imidazole-2-methanamine;EW-7197)である、請求項12に記載の代謝性肝疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項14】
クルクミン誘導体またはその薬学的に許容される塩と、TGF-β受容体抑制剤またはその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む製剤を複合的、混合的または併用的に含む、代謝性肝疾患治療用の複合剤、混合剤または併用剤キット。
【請求項15】
前記クルクミン誘導体が、デメトキシクルクミン(demethoxycurcumin)、ビスデメトキシクルクミン(bisdemethoxycurcumin)、5-ヒドロキシ-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)-7-(4-ニトロ-フェニル)-ヘプタ-1,4,6-トリエン-3-オン(5-hydroxy-1-(4-hydroxy-3-methoxy-phenyl)-7-(4-nitro-phenyl)-hepta-1,4,6-trien-3-one)、N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エノイル]フェニル}-2-メチルプロパンアミド(N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)prop-2-enoyl]phenyl}-2-methylpropanamide)、4,4'-(3,5-ピリジンジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス(2-メトキシフェノール)(4,4'-(3,5-Pyridinediyldi-2,1-ethynediyl)bis(2-methoxyphenol))、2,6-ジクロロ-N-{3-[(2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-プロペノイル]フェニル}ベンズアミド)(2,6-Dichloro-N-{3-[(2E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-2-propenoyl]phenyl}benzamide)、デヒドロジンゲロン(dehydrozingerone;DHZ)、4-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン(4-(3,4-Dimethoxyphenyl)-3-buten-2-one)及び1-(4-クロロフェニル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン(1-(4-Chlorophenyl)-3-phenyl-1,3-propanedione)からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記TGF-β受容体抑制剤が、N-(2-フルオロフェニル)-5-(6-メチル-2-ピリジニル)-4-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル-1H-イミダゾール-2-メタンアミン(N-(2-fluorophenyl)-5-(6-methyl-2-pyridinyl)-4-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridin-6-yl-1H-imidazole-2-methanamine;EW-7197)である、請求項14に記載の代謝性肝疾患治療用の複合剤、混合剤または併用剤キット。
【国際調査報告】