(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】アンカードカーネル散乱推定
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
A61B6/03 550K
A61B6/03 570E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579517
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 US2021039824
(87)【国際公開番号】W WO2023277900
(87)【国際公開日】2023-01-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505172824
【氏名又は名称】アキュレイ インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】1240 Deming Way, Madison, WI 53717 U.S.A
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー,ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ベイ,チュアンヨン
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA25
4C093EB28
4C093FC16
4C093FC26
4C093FF27
4C093FF34
(57)【要約】
放射線を放出するための放射線源と、放射線源によって放出される放射線を受け取り、放射線データを生成するように配置されている放射線検出器であって、放射線データが一次成分と二次成分とを含む、放射線検出器と、データ処理システムと、を含む放射線撮像装置が提供される。データ処理システムは、生成関数を使用して一次成分に画像変換を適用し、変換を使用して散乱モデル基底を構築し、散乱モデル基底を使用して散乱にフィッティングするように散乱モデル内のパラメータを調整し、フィッティング後の散乱モデルを使用して推定散乱画像を生成し、散乱画像を使用して放射線データを修正して放射線データにおける散乱を減少させ、それによって散乱補正済み画像を生成するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を放出するための放射線源と、
前記放射線源によって放出される放射線を受け取り、放射線データを生成するように配置されている放射線検出器であって、前記放射線データが一次成分と二次成分とを含む、放射線検出器と、
データ処理システムであって、
前記放射線データを受信し、
前記放射線データを前記一次成分と二次成分とに分離し、
生成関数および基底分解のうちの少なくとも1つを使用して、前記一次成分および二次成分のうちの少なくとも1つに画像変換を適用し、
前記画像変換を使用して散乱モデル基底を構築し、
前記散乱モデル基底を使用して前記一次成分における散乱にフィッティングするように前記散乱モデル内のパラメータを調整し、
前記フィッティング後の散乱モデルを使用して推定散乱画像を生成し、および
前記散乱画像を使用して前記放射線データを修正して、前記放射線データにおける前記散乱を減少させ、それによって散乱補正済み画像を生成するように構成されるデータ処理システムと、を備える、撮像装置。
【請求項2】
前記放射線源が、放射線ビームを放出する回転X線源を有し、
前記放射線検出器が、前記X線源から前記放射線を受け取るように配置されているX線検出器を有し、
前記装置が、
前記X線検出器の一次領域が前記放射線ビームに直接露光されるように、且つ、前記X線検出器の少なくとも1つの影領域が前記放射線ビームへの直接露光から遮断されるように、前記X線源によって放出される前記放射線ビームの形状を調整するよう構成されたビームフォーマをさらに備える、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記放射線データの前記散乱成分を推定することが、少なくとも1つの影領域における測定散乱データに基づく、請求項1または2のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記散乱画像を使用して前記放射線データを修正して前記放射線データにおける前記散乱を減少させることが、前記放射線データから前記散乱画像を減算することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記生成関数が、
狭角カーネル、
広角カーネル、
ガウスカーネル、
フィルタおよびフィルタバンクのうちの少なくとも1つ、
正規直交基底、
フーリエ変換、
ウェーブレット基底、および
連続ウェーブレット変換のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記散乱モデルが、畳み込みニューラルネットを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記散乱モデルが、特異値分解または固有値分解を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記散乱モデルが、最小二乗法、重み付き最小二乗法、共役勾配最小二乗法
、最急降下法、および非線形最適化手法のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記散乱モデル基底が、正規直交基底を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記散乱モデル基底が、前記一次画像と畳み込まれたガウスカーネルを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記散乱モデル基底が、非対称ガウスカーネル、対称ガウスカーネル、および非ゼロ歪みのガウスカーネルのうちの少なくとも1つで畳み込まれた前記一次画像を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記放射線データを前記一次成分と散乱成分とに分離することが、前記放射線データをフィルタリングすることを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記放射線データを前記一次成分と散乱成分とに分離することが、前記放射線データをセグメント化することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項14】
散乱にフィッティングするように前記散乱モデル内のパラメータを調整することが、前記放射線データの反復解析を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記反復解析が、一次放射データを含むセグメント化画像を解析する、請求項14に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記データ処理システムが、前記放射線データをオフセットするように構成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記データ処理システムが、前記放射線データを補正するように構成される、請求項1~16のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記データ処理システムが、前記放射線データを正規化すること、および前記放射線データの1つまたは複数の部分を重み付けすることのうちの少なくとも1つを行うように構成される、請求項1~17のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項19】
前記補正が、前記放射線データの一部分のゲインを調整することを含む、請求項16に記載の撮像装置。
【請求項20】
前記放射線検出器が前記放射線を受け取る前に前記放射線源によって放出される前記放射線を操作するためのコリメータの動的配置をさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項21】
放射線撮像装置によって取得される放射線データを処理するための方法であって、
前記放射線データを受信することと、
前記放射線データを前記一次成分と二次成分とに分離することと、
生成関数を使用して前記一次成分および二次成分のうちの少なくとも1つに画像変換を適用することと、
前記変換を使用して散乱モデル基底を構築することと、
前記散乱モデル基底を使用して前記一次成分および二次成分のうちの前記少なくとも1つにおける散乱にフィッティングするように前記散乱モデル内のパラメータを調整することと、
前記フィッティング後の散乱モデルを使用して推定散乱画像を生成することと、
前記散乱画像を使用して前記放射線データを修正して前記放射線データにおける前記散乱を減少させ、それによって散乱補正済み画像を生成することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月25日に出願された「MULTIMODAL RADIATION APPARATUS AND METHODS」と題する米国特許出願第16/694,145号、および2019年11月25日に出願された「APPARATUS AND METHODS FOR SCALABLE FIELD OF VIEW IMAGING USING A MULTI-SOURCE SYSTEM」と題する米国特許出願第16/694,148号に関連するものであり、これらは両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示の技術の態様は、例えば、散乱および散乱補正に関連するノイズおよびアーチファクトを低減すること、より具体的には、非散乱補正済み成分および散乱のみ成分として散乱補正済み画像を処理することを含む、放射線画像処理時の品質の向上に関する。
【背景技術】
【0003】
断層撮影は、組織に重ね合わせることなく三次元(3D)物体の断面画像を生成するために使用される非侵襲的な放射線撮像技術である。断層撮影は、コンピュータ断層撮影(CT)などの透過断層撮影と、単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)および陽電子放射断層撮影(PET)のような放射断層撮影とに分類することができる。CTは、患者を透過するX線に基づいて、身体の断面図を作成する技術である。光子放射コンピュータ断層撮影および陽電子放射断層撮影は、臓器内の代謝および生理学的活性を示す、患者に注入された放射性核種に関する3D画像情報を提供する。
【0004】
断層撮影スキャンでは、(CTにおける回転放射線源と共に)1つまたは複数の回転検出器によって身体の周りの多くの異なる角度から投影が取得される。これらのデータはその後、身体の3D画像を形成するために再構成される。例えば、断層画像の再構成は、フィルタ補正逆投影法および反復法によって達成することができる。
【0005】
最終画像の品質は、いくつかの要因によって制限される。例としては、減衰および散乱光子、検出効率、コリメータ-検出器システムの空間分解能などが挙げられる。これらの要因は、低い空間分解能、低いコントラスト、および/または高いノイズレベルを引き起こす可能性がある。画像データ処理(例えば、フィルタリング)技術を使用して、画像の品質を向上させることができる。
【0006】
コーンビームCTを含むCTでは、検出器要素によって検出される一次信号は、チューブから出て患者の身体を貫通し、検出器に到達するX線を表す。一次信号内のX線は、チューブのチューブ焦点を検出器要素に結ぶX線経路に沿って移動する。同じ要素によって検出される散乱信号はまた、他のX線経路から要素に散乱されるX線を表す。一次信号は、CT画像の再構成を可能にする。しかしながら、散乱信号は、量的と質的の両方でCT画像を劣化させる可能性がある。
【0007】
CTおよびコーンビームCTを含む様々な放射線撮像モダリティにおける散乱は、検出される光子のかなりの部分を占める可能性がある。散乱は、コントラスト、均一性、および量的精度を含む画質に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、散乱測定、推定、および補正は、画像誘導放射線治療(IGRT)に関連するものを含むデータ処理および画像再構成に適用可能である。IGRTでは、治療前、治療中、および/または治療後に患者の画像を収集するために、CTなどの医療撮像技術を利用することができる。
【発明の概要】
【0008】
一変形形態では、放射線を放出するための放射線源と、放射線源によって放出される放射線を受け取り、放射線データを生成するように配置されている放射線検出器であって、放射線データが一次成分と二次成分とを含む、放射線検出器と、データ処理システムと、を含む放射線撮像装置が提供される。データ処理システムは、生成関数を使用して一次成分に画像変換を適用し、変換を使用して散乱モデル基底を構築し、散乱モデル基底を使用して散乱にフィッティングするように散乱モデル内のパラメータを調整し、フィッティング後の散乱モデルを使用して推定散乱画像を生成し、散乱画像を使用して放射線データを修正して放射線データにおける散乱を減少させ、それによって散乱補正済み画像を生成するように構成される。
【0009】
放射線源は、放射線ビームを放出する回転X線源を備え得る。放射線検出器は、X線源から放射線を受け取るように配置されているX線検出器を備え得る。装置は、X線検出器の一次領域が放射線ビームに直接露光され、X線検出器の少なくとも1つの影領域がビーム形成器によって放射線ビームに直接露光されるのを阻止されるように、X線源によって放出される放射線ビームの形状を調整するように構成されたビームフォーマをさらに備え得る。
【0010】
放射線データの散乱成分を推定することは、少なくとも1つの影領域における測定された散乱データに基づき得る。散乱画像を使用して放射線データを修正して放射線データにおける散乱を減少させることは、放射線データから散乱画像を減算することを含み得る。
【0011】
生成関数は、狭角カーネル、広角カーネル、ガウスカーネル、フィルタまたはフィルタバンク、正規直交基底、フーリエ変換、ウェーブレット基底、および連続ウェーブレット変換のうちの少なくとも1つを含み得る。散乱モデルは、畳み込みニューラルネットを含み得る。散乱モデルは、特異値分解または固有値分解を含み得る。散乱モデルは、最小二乗法、重み付き最小二乗法、共役勾配最小二乗法、および非線形最適化手法のうちの少なくとも1つを含み得る。散乱モデル基底は、正規直交基底を含み得る。散乱モデル基底は、ガウスカーネルを含み得る。散乱モデル基底は、非対称ガウスカーネル、対称ガウスカーネル、および非ゼロ歪みのガウスカーネルのうちの少なくとも1つを含み得る。放射線データを一次成分と散乱成分とに分離することは、放射線データをフィルタリングすることを含み得る。放射線データを一次成分と散乱成分とに分離することは、放射線データをセグメント化することを含み得る。散乱にフィットするように散乱モデル内のパラメータを調整することは、放射線データの反復解析を含み得る。反復解析は、一次放射線データを含むセグメント化画像を解析し得る。データ処理システムは、放射線データをオフセットすること、放射線データを正規化すること、放射線データを補正すること、および放射線データの1つまたは複数の部分を重み付けすることのうちの少なくとも1つを行うように構成され得る。装置は、放射線検出器が放射線を受け取る前に放射線源によって放出される放射線を操作するためのコリメータの動的配置をさらに含み得る。
【0012】
変形形態は、放射線撮像装置によって取得される放射線データを処理する方法を含み得る。方法は、放射線データを受信することと、放射線データを一次成分と二次成分とに分離することと、生成関数を使用して一次成分に画像変換を適用することと、変換を使用して散乱モデル基底を構築することと、散乱モデル基底を使用して一次成分および二次成分のうちの少なくとも1つにおける散乱にフィッティングするように散乱モデル内のパラメータを調整することと、フィッティング後の散乱モデルを使用して推定散乱画像を生成することと、散乱画像を使用して放射線データを修正して放射線データにおける散乱を減少させ、それによって散乱補正済み画像を生成することと、を含む。
【0013】
1つの変形形態に関して説明および/または図示される特徴は、1つまたは複数の他の変形形態において同じ方法または同様の方法で、および/または他の変形形態の特徴と組み合わせて、またはその代わりに使用され得る。
【0014】
本発明の説明は、特許請求の範囲で使用される単語または特許請求の範囲もしくは発明の範囲を何らかの形で限定するものではない。特許請求の範囲で使用される単語は、それらの完全な通常の意味のすべてを有する。
【0015】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面には、本発明の変形形態が示されており、これらの変形形態は、上記の本発明の一般的な説明および以下の詳細な説明と共に、本発明の変形形態を例示するのに役立つ。図に示す要素境界(例えば、ボックス、ボックスのグループ、または他の形状)は、境界の1つの変形形態を表すことが理解されよう。いくつかの変形形態では、1つの要素が複数の要素として設計されてもよく、または複数の要素が1つの要素として設計されてもよい。いくつかの変形形態では、別の要素の内部構成要素として示されている要素は、外部構成要素として実装されてもよく、その逆も可能である。さらに、要素は必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】開示の技術の一態様による例示的な撮像装置の斜視図である。
【
図2】開示の技術の一態様による例示的な放射線療法デバイスに組み込まれた撮像装置の概略図である。
【
図3】検出器上への例示的なコリメートされた投影の概略図である。
【
図4】散乱補正の例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図5】放射線療法デバイス内の撮像装置を使用するIGRTの例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図6】アンカードカーネルモデルを使用して画像上の散乱をフレームごとに推定および補正するアルゴリズム600のフロー図である。
【
図7】アルゴリズム600による例示的な処理済み画像700を示す。
【
図8A】ステップ606の画像セグメント化に使用することができる一次領域Cならびに二次(影)領域AおよびBを含む例示的なブールマスク800aを示す。
【
図9】例えば、
図8Bにおけるマスク800bの適用によって生成され得る分離された二次A/B画像900を示す。
【
図10】マスク800aがデータを有する一次領域Cと、定数(例えば、ゼロ)に設定された2つの二次領域AおよびBとを提供した例示的な一次画像1000を示す。
【
図11】ステップ614の畳み込みに使用され得る2つの潜在的な散乱カーネル1102および1104を示す。
【
図12】広角カーネル1102の出力1200を示す。
【
図13】狭角カーネル1104の出力1300を示す。
【
図14】広角散乱カーネル3202の出力1200に二次マスク800bを適用した結果1400を示す。
【
図15】狭角散乱カーネル1104の出力1300に二次マスク800bを適用した結果1500を示す。
【
図16】アルゴリズム600によって生成された全体的な推定散乱画像1600を示す。
【
図17】推定散乱画像1600と比較するための一次領域における散乱の測定値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下は、本開示を通して使用され得る例示的な用語の定義を含む。すべての用語の単数形および複数形の両方が各々の意味に当てはまる。
【0018】
本明細書で使用される「構成要素」は、ハードウェアの一部分、ソフトウェアの一部分、またはそれらの組合せとして定義することができる。ハードウェアの一部分は、少なくともプロセッサ、およびメモリの一部分を含むことができ、メモリは実行する命令を含む。構成要素は、デバイスに関連付けられ得る。
【0019】
本明細書で使用される「回路」と同義の「論理」は、機能(複数可)または動作(複数可)を実行するためのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、および/または各々の組合せを含むが、これらに限定されない。例えば、所望のアプリケーションまたはニーズに応じて、論理は、ソフトウェア制御マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)などの個別論理、または他のプログラム論理デバイスおよび/またはコントローラを含み得る。論理はまた、完全にソフトウェアとして具現化され得る。
【0020】
本明細書で使用される「プロセッサ」は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、中央処理装置(CPU)、およびデジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、グラフィック処理装置(GPU)などの実質的に任意の数のプロセッサシステムまたはスタンドアロンプロセッサのうちの1つ以上を任意の組合せで含むが、これらに限定されない。プロセッサは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラマブル読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、クロック、デコーダ、メモリコントローラ、または割り込みコントローラなど、プロセッサの動作をサポートする様々な他の回路に関連付けられ得る。これらのサポート回路は、プロセッサまたはその関連付けられた電子パッケージの内部または外部にあり得る。サポート回路は、プロセッサと動作可能に通信する。サポート回路は、必ずしもブロック図または他の図面においてプロセッサとは別個に示されていない。
【0021】
本明細書で使用される「信号」は、アナログ信号またはデジタル信号、1つ以上のコンピュータ命令、ビットまたはビットストリームなどを含む1つ以上の電気信号を含むが、これに限定されない。
【0022】
本明細書で使用される「ソフトウェア」は、コンピュータ、プロセッサ、論理、および/または他の電子デバイスに所望の方法で機能、動作、および/または挙動を実行させる1つ以上のコンピュータ可読および/または実行可能命令を含むが、これらに限定されない。命令は、動的にリンクされているソースもしくはライブラリからの別個のアプリケーションもしくはコードを含むルーチン、アルゴリズム、モジュール、またはプログラムなどの様々な形態で具現化され得る。
【0023】
上記に例示的な定義が提供されているが、本明細書と合致する最も広範で合理的な解釈がこれらおよび他の用語に使用されることが出願人の意図である。
【0024】
CTスキャンでは、X線基準データ(I0)は、患者(および患者テーブル)が存在しないときの信号である。生のデータまたは患者データ(Id)が取得されると、各検出器要素における信号に対する線束の比が計算される。患者データが一次信号(Pr)のみを有する場合、比の対数は、対応するX線経路に沿った患者の線形減衰の線積分である。続いて、CT画像は、患者の周りの多くの角度ですべての検出器要素によって測定された線積分から再構成することができる。
【0025】
検出される信号が一次信号(Pr)と散乱信号(Sc)との両方を含む(ただし、I
d=Pr+Sc)ため、検出器信号に対する基準信号の比I
0/Idの直接計算は、信号の散乱成分(S
c)によって汚染されているため、もはやX線経路(l)に沿った患者の線形減衰の積分ではなくなる。明示的には、正しい線積分はl=log(I
0/Pr)でなければならない。散乱を含めて、算出される比を式1に示す。
【数1】
(1)
ただし、
【数2】
である。
【0026】
散乱Scは正の値を有する。散乱補正なしに、算出される線積分は、Scなしの真の線積分よりも小さくなる。汚染された線積分ldを使用した再構成は、画像に量的バイアスをもたらし、質的には、コントラストを低減し、画像にアーチファクトを導入する。
【0027】
上記の散乱問題に対処するために、臨床CTシステムは、ハードウェア手法を使用して、データ取得時に前もっておよび一旦データ取得後に散乱を最小限に抑えることも、ソフトウェア手法を適用して測定データにおける残留散乱を補正することもできる。後者の方は散乱補正と呼ぶことができる。
【0028】
散乱補正の原理は、散乱(Sc_est)を推定し、患者データから推定散乱を除去または減算し、式2に従って補正済みの線積分を計算することである。
【数3】
(2)
【0029】
散乱推定値(Sc_est)が測定データの散乱成分を正確に表す場合、式2は、正確なCT画像再構成を容易にする線積分をもたらす。
【0030】
散乱補正は、算出される線積分におけるノイズを増加させる。これにより、再構成画像のノイズが増加する。散乱補正なしの線積分の分散(ノイズ)を式3に示す。
【数4】
(3)
ただし、Var_Idは測定患者データIdの分散であり、I
0の分散は0であると仮定する。
【0031】
散乱補正後の線積分の分散を式4に示す。
【数5】
(4)
ただし、Var_Sc_estは、推定散乱のノイズが測定データのノイズから独立していると仮定した推定散乱(Sc_est)の分散(ノイズ)である。
【0032】
式4の散乱補正済みの線積分のノイズと式3の非散乱補正済みの線積分のノイズとを比較すると、散乱推定値(Sc_est)にノイズがない場合でも、算出される線積分のノイズは、式5に示す係数で増幅されることが示されている。
【数6】
(5)
【0033】
式5によって表されるノイズ増幅は、測定データにおける散乱の割合が大きくなると増加する。例えば、測定データの50%が散乱である場合、ノイズは4倍に増幅される。散乱防止グリッドを使用するコーンビームCTシステムでは、残留散乱はデータの30%になることがある。式5を用いると、ノイズ増幅は約2と予測される。散乱防止グリッドのないフラットパネル検出器を備えたコーンビームCTでは、散乱は全測定データの50%を超える可能性がある。患者が大きいほど、散乱は大きくなる。
【0034】
散乱補正のためのノイズ低減手法は、(a)式4の右辺の第2項のノイズを低減することに対応する、推定散乱のノイズを低減すること、(b)散乱補正済み生データまたは線積分のノイズを低減すること、(c)反復再構成における散乱を、推定一次への加法項としてモデル化し、推定一次と散乱との和を測定データと比較すること、(d)再構成時にノイズを正規化すること、および/または(e)散乱補正済み画像をフィルタリング/ノイズ除去すること、ができる。
【0035】
これらのアプローチはすべて利点を有し得るが、欠点も有する。手法(a)の場合、ノイズがほとんどない散乱を得ることができたとしても、ノイズは依然として式5に示す係数で増幅される。この係数は、大量の散乱を伴うCTスキャン、特に大きな撮像視野を有し、散乱防止グリッドがないコーンビームCTの場合、非常に大きくなる可能性がある。手法(b)は、手法(a)のこの欠点を有するだけでなく、信号(解像度およびコントラスト)を失う可能性もある。これは、生データがノイズ低減のためフィルタリングされるためである。手法(c)は、より高度な再構成アルゴリズムおよびより長い再構成時間を必要とする。また、ノイズ低減にも限界がある。手法(d)は、正規化の設計によって困難を伴う可能性がある。散乱補正済み画像を、非散乱補正済み成分と散乱補正成分との組合せと考える。非散乱補正済み成分は、散乱補正成分よりもノイズが低い。そのため、画像全体に正規化を適用すると、低ノイズの非散乱補正済み成分が過剰に正規化される傾向がある。手法(e)における再構成後の画像処理(フィルタリング)/ノイズ除去は、手法(d)と同じ課題を共有する。
【0036】
本明細書に開示される変形形態では、散乱補正済み画像は、2つの成分の組合せとして扱うことができる。第1の成分は非散乱補正済み成分であり、第2の成分は散乱のみ成分である。式2の線積分は、式6に示すように2つの成分の和として書き直すことができる。
【数7】
(6)
【0037】
式6の第1項は、散乱補正なしの線積分である。角括弧内の第2項は、線積分の散乱補正成分である。解析的再構成の場合、補正済み線積分の再構成は、2つの項を別々に再構成して2つの画像を生成し、続いて2つの画像を合算して最終的な散乱補正済み画像を得ることに相当する。第1項から再構成される画像は、従来の非散乱補正済み画像(noSC画像)と同等である。第2項から再構成される画像は、散乱だけの画像(散乱のみ画像)と呼ぶことができる。式7は、これらの成分を明示的に示している。
CT画像=noSC画像+散乱のみ画像 (7)
【0038】
散乱推定値(Sc_est)は、式(7)を使用して患者データから除去することができる。散乱のみ画像には、散乱補正に関連するノイズおよびアーチファクトが含まれている。noSC画像は、散乱のみ画像よりもノイズがはるかに低く、CT画像全体は、これら2つの組合せである。
【0039】
生データ内で行われるか、再構成プロセス内で行われるか、それとも再構成後に行われるかに関係なく、散乱補正に関連する従来のノイズ低減は、2つの成分が非常に異なるノイズを有するにもかかわらず、基本的に画像の組み合わされたnoSC成分と散乱のみ成分を用いて行われる。散乱のみ成分におけるノイズを抑制することは、noSC成分の過剰な平滑化(したがって、解像度の劣化)をもたらし得る。解像度の劣化を最小限に抑える手法は、散乱補正に関連するノイズを抑制するのに有効ではない場合がある。
【0040】
本明細書に記載の変形形態は、散乱補正後の画像品質の改善を達成する。改善は、例えば、十分なノイズ低減と低い解像度劣化の両方を含む。これらの変形形態では、散乱のみ画像をnoSC画像とは別個に異なって処理することにより、散乱および散乱補正に関連するノイズおよびアーチファクトを低減することができる。ノイズがより高い散乱のみ画像に、より強力なノイズ抑制データ処理技術(例えば、フィルタ)を適用して、ノイズ低減を改善することができる。同時に、より軽快なノイズ抑制データ処理技術(例えば、フィルタ)をnoSC画像に適用して、解像度損失を最小限に抑えることができる。このような方法や他の方法により、式7の2つの画像成分を独立して改善することができる。組み合わされる最終画像(例えば、CT画像)は、ノイズ低減および解像度維持の妥協点を改善することができる。
【0041】
いくつかの変形形態では、noSC画像を使用して高ノイズ散乱のみ画像のノイズ低減を誘導することは、さらなる利点があり得る。noSC画像は、散乱のみ画像よりもノイズが低いため、散乱のみ画像のノイズ低減を誘導することができる。この誘導は、フィルタカーネルおよびあらゆる関連するパラメータを決定することを含むことができる。散乱のみ画像の誘導ノイズ低減は、noSC画像と同等またはそれよりも低いノイズを有する散乱のみ画像をもたらすことができる。noSC画像内のエッジは、散乱のみ画像のデータ処理(例えば、フィルタリング)の信頼性の高いエッジ保持ガイダンスを提供することができる。組み合わされる最終画像(例えば、CT画像)は、noSC画像と同等のノイズレベルを有するが、エッジ保持は改善され得る。
【0042】
変形形態では、式6の2つの成分は異なる方法で再構成され得る。例えば、より高い解像度のフィルタ(カーネル)を使用してnoSC成分を再構成し得る一方、より高い平滑化フィルタ(より低い解像度のカーネル)を使用して散乱のみ成分を再構成し得る。
【0043】
以下のフローチャートおよびブロック図は、散乱補正および/または画像生成に関連する例示的な構成および方法を示す。例示的な方法は、論理、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組合せで実行し得る。さらに、手順および方法は順序で呈示されているが、ブロックは、直列および/または並列を含む異なる順序で実行されてもよい。よって、撮像、画像ベースの送達前ステップ、および処置送達を含む以下のステップは、連続的に示されているが、リアルタイムを含めて同時に実行されてもよい。さらに、追加のステップまたはより少ないステップを使用されていてもよい。
【0044】
開示の技術の変形は、撮像スキャンからの患者データ(Id)および散乱推定値(Sc_est)を利用することを含む、撮像データにおける散乱を補正することに関する。撮像スキャンは、X線、CT、CBCT、SPECT、PET、MRなどを含むスキャンのタイプに関連する任意の放射線撮像装置で実行することができる。これらの方法は、これらの撮像スキャンからの撮像データの散乱補正、例えば、ノイズおよびアーチファクトの低減に使用することができる。CTスキャナおよびコーンビームCTスキャナは、いくつかの例示的な変形形態で強調されているが、この技術はまた、元のカウントからの不要なカウント/信号の除去に基づく画像再構成/データ処理、例えば、SPECT、PET、MR、SPECT/CT、PET/CT、PET/MRなどの散乱補正などに適用して、補正画像を生成することができる。
【0045】
変形形態では、撮像スキャンは、専用の撮像装置または放射線療法送達装置と一体化された撮像装置を使用して実行され得る。例えば、放射線療法送達デバイスは、IGRTと共に、またはIGRTの一部として使用するためのCT用の一体型低エネルギー放射線源を利用することができる。特に、例えば、放射線療法送達デバイスおよび関連する方法は、両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれている、2019年11月25日に出願された「MULTIMODAL RADIATION APPARATUS AND METHODS」と題する米国特許出願第16/694,145号と、2019年11月25日に出願された「APPARATUS AND METHODS FOR SCALABLE FIELD OF VIEW IMAGING USING A MULTI-SOURCE SYSTEM」と題する米国特許出願第16/694,148号に記載されているように、回転(例えば、ヘリカルまたはステップアンドシュート)画像取得を使用してガントリ内でイメージングするための低エネルギーのコリメートされた放射線源を、治療的処置用の高エネルギー放射線源と組み合わせることができる。これらの変形形態では、低エネルギー放射線源(例えば、キロボルト(kV))は、撮像のために高エネルギー放射線源(例えば、メガボルト(MV))を使用するよりも高品質の画像を生成することができる。
【0046】
撮像データ取得方法は、例えば、(例えば、ガントリボアを通る患者支持体の長手方向の移動と共に、中心軸を中心とするヘリカル状の放射線源軌道での)連続スキャン、患者支持体の長手方向における漸増移動を伴う非連続円周ストップアンドリバーススキャン、ステップアンドシュート円周スキャンなどであり得る複数の回転スキャンを含むか、またはその他で使用することができる。
【0047】
変形形態によれば、撮像装置は、例えばビームフォーマを使用して、放射線源を、例えばコーンビームまたはファンビームなどにコリメートする。一変形形態では、コリメートされたビームは、患者が移動している間に連続的に回転するガントリと組み合わせることができ、その結果、ヘリカル画像取得が可能になる。
【0048】
以下で詳細に説明するように、(様々な行/スライスサイズ、構成、ダイナミックレンジなどを有する)検出器、スキャンピッチ、および/または動的コリメーションは、検出器の一部を選択的に露出させ、アクティブ読み出しエリアを選択的に画定することを含めて、変形形態の追加の特徴である。
【0049】
撮像装置および方法は、関連付けられている放射線検出器(例えば、放射線源から放射線を受け取るように配置されている放射線検出器)のアクティブエリア全体未満を露出させるように放射線ビーム形状を調整することを含む、放射線源によって放出される放射線ビームの選択的かつ可変コリメーションを提供することができる。検出器の一次領域のみを直接放射線に露出させることにより、検出器の影になる領域が散乱のみを受け取ることが可能になる。検出器の影領域の散乱測定値(およびいくつかの変形形態では半影領域の測定値)を用いて、投影データを受信する検出器の一次領域における散乱を推定することができる。
【0050】
図1および
図2を参照すると、(例えば、X線撮像装置を含むことができる)例示的な撮像装置10が示されている。撮像装置10は、IGRTを含むが、これに限定されない様々な用途に使用することができる(
図2に示すような)放射線療法装置に関連付けられ得、および/またはそれに一体化することができることが理解されよう。撮像装置10は、支持ユニットまたはハウジング14によって支持されるまたは収容される、ガントリ12と呼ばれる回転可能ガントリシステムを含む。本明細書のガントリは、1つ以上の放射線源および/または関連付けられている検出器が標的の周りを回転するときにそれらを支持することができる1つ以上のガントリ(例えば、リングまたはCアーム)を備えるガントリシステムを指す。回転可能ガントリ12は、撮像および/または治療のために患者を移動および配置することができるガントリボア16を画定する。一変形形態によれば、回転可能ガントリ12は、検出器によって受信される高品質の撮像データに適した十分な帯域幅を提供すると同時に、撮像用放射線源(X線)および関連付けられている放射線検出器の連続回転を提供するスリップリングガントリとして構成される。
【0051】
患者支持体18は、回転可能ガントリ12に隣接して配置され、回転可能ガントリ12内への長手方向の移動のために、典型的には水平位置で患者を支持するように構成される。患者支持体18は、例えば、ガントリ12の回転平面に垂直な方向に(ガントリ12の回転軸に沿ってまたは平行に)患者を移動させることができる。患者支持体18は、患者および患者支持体18の動きを制御するための患者支持体コントローラに動作可能に結合することができる。装置10は、ボリュームベースおよび平面ベースの撮像取得が可能である。例えば、変形形態では、装置10を使用して、ボリューム画像および/または平面画像を取得し、上述した関連する処理方法を実行することができる。
【0052】
図2に示すように、撮像装置10は、回転可能ガントリ12に結合されるか、または支持される撮像用放射線源30を含む。撮像用放射線源30は、高品質の画像を生成するための(総じて32で示す)放射線ビームを放出する。この変形形態では、撮像用放射線源は、キロ電圧(kV)源(例えば、約20kV~約150kVの範囲のエネルギーレベルを有する臨床用X線源)として構成されたX線源30である。撮像用放射線源は、撮像に適した任意のタイプの透過スキャン用線源とすることができる。他の撮像透過スキャン用線源は、様々な他の変形形態で交換可能に使用することができる。
【0053】
撮像装置10は、回転可能ガントリ12に結合されるまたは支持される、別の放射線源20を含むことができる。一変形形態によれば、放射線源20は、関心領域内の患者内の腫瘍の処置に使用される高エネルギー放射線源などの治療用放射線源として構成される。治療用放射線源は、高エネルギーX線ビーム(例えば、メガボルテージ(MV)X線ビーム)であり得ることが理解されよう。一般に、放射線源20は、撮像用放射線源30よりも高い(ピークおよび/または平均など)エネルギーレベルを有する。
図1および
図2は、放射線源30がリングガントリ12に取り付けられたX線撮像装置10を示しているが、他の変形形態は、例えば、Cアームガントリおよびロボットアームベースのシステムを含む他のタイプの回転可能な撮像装置を含み得る。
【0054】
検出器34(例えば、2次元のフラット検出器または曲面検出器)は、回転可能ガントリ12に結合されるか、または支持され得る。検出器34(例えば、X線検出器)は、撮像用放射線源30から放射線を受け取るように配置され、撮像用放射線源30と共に回転することができる。検出器34は、減衰されていない放射線の量を検出するか、または測定することができ、したがって、(最初に生成された放射線の量と比較して)患者または関連する患者ROIによって実際に減衰された放射線の量を推測することができる。検出器34は、放射線源30が回転して放射線を患者に向けて放出する際に、異なる角度から減衰データを検出するか、または収集することができる。
【0055】
コリメータまたはビームフォーマーアセンブリ(総じて36で示す)は、撮像源30に対して、撮像用放射線源30によって放出される放射線ビーム32の形状を選択的に制御および調整して、検出器34のアクティブエリアの一部分または一領域を選択的に露出させるように配置される。ビームフォーマはまた、放射線ビーム32が検出器34上にどのように配置されるかを制御することもできる。例えば、一変形形態では、各読み出しで、3~4センチメートルの投影画像データを取り込むことができ、片側または両側に約1~2センチメートルの露出していない検出器領域があり、これを使用して散乱データを取り込むことができる。
【0056】
検出器24は、回転可能ガントリ12に結合されるか、または支持され、治療用放射線源20からの放射線22を受けるように配置され得る。検出器24は、減衰されていない放射線の量を検出するか、または測定することができ、したがって、(最初に生成された放射線の量と比較して)患者または関連する患者ROIによって実際に減衰された放射線の量を推測することができる。検出器24は、治療用放射線源20が回転して放射線を患者に向けて放出する際に、異なる角度から減衰データを検出するか、または収集することができる。
【0057】
治療用放射線源20は、撮像源30と同じ平面または異なる平面に(ずらして)取り付けられ、構成され、および/または移動され得る。いくつかの変形形態では、放射線源20、30の同時作動によって引き起こされる散乱は、放射線面をずらすことによって低減することができる。
【0058】
放射線療法デバイスと一体化されると、撮像装置10は、放射線送達手順(治療)をセットアップ(例えば、位置合わせおよび/もしくは見当合わせ)、計画、ならびに/または誘導するために使用される画像を提供することができる。典型的なセットアップは、現在の(処置中の)画像を処置前の画像情報と比較することによって達成される。治療前画像情報は、例えば、X線、CT、CBCT、MR、PET、SPECT、および/もしくは3D回転血管造影(3DRA)データ、ならびに/またはこれらもしくは他の撮像モダリティから得られる任意の情報を含み得る。いくつかの変形形態では、撮像装置10は、処置中の患者、標的、またはROIの動きを追跡することができる。
【0059】
再構成プロセッサ40が検出器24、34に動作可能に結合することができる。一変形形態では、再構成プロセッサ40は、上述したように、放射線源20、30から検出器24、34によって受信される放射線に基づいて患者画像を生成するように構成される。再構成プロセッサ40は、本明細書に記載の方法を実行するように構成することができることが理解されよう。装置10はまた、フィルタおよびデータ処理/フィルタパラメータ、撮像パラメータ、以前のまたは他の方法で以前に取得された画像からの画像データ(例えば、計画画像)、処置計画などを含むデータ処理および再構成アルゴリズムならびにソフトウェアを含むがこれらに限定されない情報を記憶するのに適したメモリ44を含むことができる。
【0060】
撮像装置10は、オペレータ/ユーザインターフェース48を含むことができ、撮像装置10のオペレータは、撮像装置10と対話するか、または他の方法で制御して、スキャンまたは撮像パラメータなどに関連する入力を提供することができる。オペレータインターフェース48は、キーボード、マウス、音声起動コントローラなどの任意の適切な入力デバイスを含むことができる。撮像装置10はまた、撮像装置10のオペレータに出力を提供するためのディスプレイ52または他の人間可読要素を含むことができる。例えば、ディスプレイ52は、オペレータが、再構成された患者画像、および撮像装置10の動作に関連する撮像またはスキャンパラメータなどの他の情報を観察することを可能にすることができる。
【0061】
図2に示すように、撮像装置10は、装置10の1つ以上の構成要素に動作可能に結合されたコントローラ(総じて60と示す)を含む。コントローラ60は、撮像源30および/または治療用放射線源20に電力およびタイミング信号を供給すること、ならびに回転可能ガントリ12の回転速度および位置を制御するガントリモータコントローラを含む、装置10の全体的な機能および動作を制御する。コントローラ60は、患者支持体コントローラ、ガントリコントローラ、治療用放射線源20および/または撮像源30に結合されたコントローラ、ビームフォーマ36コントローラ、検出器24および/または検出器34に結合されたコントローラなどのうちの1つ以上を包含することができることが理解されよう。一変形形態では、コントローラ60は、他の構成要素、デバイス、および/またはコントローラを制御することができるシステムコントローラである。
【0062】
変形形態では、再構成プロセッサ40、オペレータインターフェース48、ディスプレイ52、コントローラ60、および/または他の構成要素は、1つ以上の構成要素またはデバイスに組み合わせることができる。
【0063】
装置10は、様々な構成要素、論理、およびソフトウェアを含み得る。一変形形態では、コントローラ60は、プロセッサ、メモリ、およびソフトウェアを含む。限定ではなく例として、撮像装置および/または放射線療法システムは、特定の用途のための撮像および/またはIGRTに関連する1つ以上のルーチンまたはステップを実施することができる様々な他の装置および構成要素(例えば、とりわけ、ガントリ、放射線源、コリメータ、検出器、コントローラ、電源、患者支持体)を含むことができ、ルーチンは、メモリに記憶することができるそれぞれのデバイスの設定、構成、および/または位置(例えば、経路/軌道)を含む、撮像、画像ベースの送達前ステップ、および/または処置送達を含むことができる。さらに、コントローラ(複数可)は、メモリに記憶されている1つ以上のルーチンまたはプロセスに従って、1つ以上のデバイスおよび/または構成要素を直接的または間接的に制御することができる。直接的制御の一例は、撮像または治療に関連する様々な放射線源またはコリメータパラメータ(出力、速度、位置、タイミング、変調など)の設定である。間接的制御の一例は、患者支持体コントローラまたは他の周辺装置への位置、経路、速度などの通信である。撮像装置に関連付けられ得る様々なコントローラの階層は、適切なコマンドおよび/または情報を所望のデバイスおよび構成要素に通信するために任意の適切な方法で配置することができる。
【0064】
さらに、当業者は、システムおよび方法が他のコンピュータシステム構成で実施されてもよいことを理解するであろう。本発明の図示された態様は、通信ネットワークを介してリンクされているローカルまたはリモート処理デバイスによって特定のタスクが実行される分散型コンピューティング環境で実施されていてもよい。例えば、一変形形態では、再構成プロセッサ40は、別個のシステムに関連付けられてもよい。分散型コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、ローカルとリモートの両方のメモリ記憶デバイスに配置されてもよい。例えば、リモートデータベース、ローカルデータベース、クラウドコンピューティングプラットフォーム、クラウドデータベース、またはそれらの組合せを撮像装置10で利用することができる。
【0065】
撮像装置10は、コンピュータを含む本発明の様々な態様を実施するための例示的な環境を利用することができ、コンピュータは、(例えば、プロセッサと、メモリ44であってもよいメモリとを含む)コントローラ60とシステムバスとを含む。システムバスは、メモリを含むがこれに限定されないシステム構成要素をプロセッサに結合することができ、他のシステム、コントローラ、構成要素、デバイス、およびプロセッサと通信することができる。メモリは、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードドライブ、フラッシュドライブ、および任意の他の形態のコンピュータ可読媒体を含むことができる。メモリは、例えば治療計画を含み得るルーチンおよびパラメータを含む様々なソフトウェアおよびデータを記憶することができる。
【0066】
画像品質には多くの決定要因がある(例えば、撮像用放射線源焦点サイズ、検出器ダイナミックレンジなど)。多くの撮像技術および画像品質の限界は、散乱である。様々な手法を使用して散乱を低減することができる。1つの手法は、(散乱をコリメートする)散乱防止グリッドを使用することである。しかしながら、kV撮像システム上に動き追跡および補正を含む散乱グリッドを実装することは問題となり得る。上述したように、画像データの品質を向上させるのに、投影データにおける散乱を正確に推定することが必要である。変形形態では、検出器34の一次領域で取得される投影データにおける散乱は、検出器34の影領域(および半影領域)で測定されるデータに基づいて推定することができる。
【0067】
図3は、検出器302上への例示的なコリメートされた投影300の概略図である。回転放射線源306(例えば、X線)は、回転放射線源306がy軸の周りを回転するときに回転放射線源306からの(例えば、標的を通過した)直接放射線に、検出器302の一次または中央(C)領域310を露出させる放射線ビーム308を放出しているように示されている。患者支持体(図示せず)の動きは、上述のようなスキャンの一部として含まれる、y軸に沿った軸方向(長手方向)の動きであり得る。検出器302はまた、ビームフォーマ/コリメータ320によって放射線ビーム308への直接露出から遮断されている後方(B)影領域312および前方(A)影領域314を有する。ビームフォーマ/コリメータ320は、回転放射線源306によって検出器302上に放出される放射線ビーム308の形状および/または位置を調整するように構成される。影になる領域312、314は、散乱放射線のみを受ける。
【0068】
コリメータ320の開口部は、(患者のテーブル方向またはy軸に沿った)軸方向または長手方向における検出器302の後方(B)端部312および前方(A)端部314が直接放射線308で照射されないように構成される。これらの(回転y軸に沿った負の長手方向における)後方(B)312および(回転y軸に沿った正の長手方向における)前方(A)314の影領域は、直接放射線を受けないので、散乱測定に利用することができる。例えば、検出器302の読み出し範囲は、1つ以上の影領域312、314内のデータの全部または一部を読み出し、一次領域310の散乱推定にデータを使用するように構成することができる。一次または中央(C)領域310は、直接投影と散乱の両方を受ける。
【0069】
変形形態では、(例えば、プロセッサ40を含む)データ処理システムは、一次領域310内の測定投影データおよび少なくとも1つの影領域312、314内の測定散乱データを受信し、次いで、少なくとも1つの影領域312、314内の測定散乱データに基づいて、一次領域310における推定散乱を決定するように構成することができる。いくつかの変形形態では、現在の回転中の一次領域310における推定散乱を決定することは、隣接する(前のおよび/または後の)回転中の少なくとも1つの影領域312、314内の測定散乱データに基づくことができる。他の変形形態では、(一次領域および影領域に接する)半影領域(複数可)からの測定データも散乱推定に使用することができる。
【0070】
様々な技術および方法は、異なるスキャンジオメトリ、検出器の配置、および/またはビームフォーマ窓形状を利用することができる。いくつかの変形形態では、検出器はまた、横方向にずらされてもよい。
【0071】
図4は、上述のような散乱推定および補正の例示的な方法400を示すフローチャートである。入力は、任意の以前のデータおよび/またはスキャン設計を含むことができる。この変形形態では、ステップ410はデータ取得を含む。例えば、コリメートされた放射線ビームを標的および放射線検出器に向かって投影する放射線源の回転中に、本方法は、放射線検出器の中央(一次)領域の投影データ(一次+散乱)を測定し、検出器の前方影周辺領域および/または後方影周辺領域を使用して散乱を測定する。ステップ410におけるデータ取得はまた、スキャン前および/もしくはスキャン中にビームフォーマを用いて放射線ビームの形状/位置を調整すること、ならびに/または(アクティブ領域を決定することを含む)読み出し範囲を調整することを含むことができる。
【0072】
次に、ステップ420は、散乱推定を含む。例えば、この方法は、影領域(複数可)からの散乱測定値を使用して、中央(一次)領域からの投影データにおける散乱を推定する。次に、ステップ430は散乱補正を含み、これは上述の2つの成分技術のいずれかを含むことができる。出力は、撮像に適した散乱補正済み投影データを含む。様々な変形形態は、異なるスキャンジオメトリ、検出器の配置/アクティブ領域、ビームフォーマの配置/窓形状などを利用することができる。
【0073】
図5は、(例えば、撮像装置10を含む)放射線療法デバイスを使用するIGRTの例示的な方法500を示すフローチャートである。患者の以前の画像データ505を使用することができる。以前の画像データは、以前のCT画像を含む以前に取得された計画画像であってもよい。以前のデータ505はまた、処置計画、ファントム情報、モデル、以前の情報などを含むことができる。いくつかの変形形態では、以前の画像データ505は、同じ放射線療法デバイスによって生成されるが、より早い時期に生成されたものである。ステップ510では、患者の撮像は、低エネルギー放射線源(例えば、X線源30からのkV放射線)を使用して実行される。一変形形態では、撮像は、ファンまたはコーンのビームジオメトリを有するヘリカルスキャンを含む。ステップ510は、上述の散乱推定および補正技術を使用して、高品質(HQ)画像(複数可)または撮像データ515を生成することができる。いくつかの変形例では、画質を調整して画質/解像度と放射線量との間のバランスを改善することができる。言い換えれば、すべての画像が最高品質のものである必要はなく、または画質を調整して画質/解像度と画像取得時間との間のバランスを改善もしくはトレードオフすることができる。撮像ステップ510はまた、(例えば、上記の方法に従って)撮像データに基づいて患者画像を生成するための画像/データ処理を含むことができる。画像処理ステップ520が撮像ステップ510の一部として示されているが、いくつかの変形形態では、画像処理ステップ520は、画像処理が別個のデバイスによって実行される場合も含め、別個のステップである。
【0074】
次に、ステップ530では、ステップ510からの撮像データ515に少なくとも部分的に基づいて、後述する1つ以上の画像ベースの送達前ステップが実行される。以下により詳細に説明するように、ステップ530は、治療的処置および(その後の)撮像計画に関連する様々なパラメータを決定することを含むことができる。いくつかの変形形態では、画像ベースの送達前ステップ(530)は、処置送達(540)の前にさらなる撮像(510)を必要とし得る。ステップ530は、適応放射線療法ルーチンの一部として撮像データ515に基づいて治療計画を適応させることを含むことができる。いくつかの変形形態では、画像ベースの送達前ステップ530は、リアルタイム治療計画を含み得る。変形形態はまた、撮像用放射線源と治療用放射線源の同時、重複および/または交互の作動を含み得る。リアルタイム治療計画は、これらのタイプの撮像用放射線と治療用放射線の(同時、重複、および/または交互の)作動技術のいずれかまたはすべてを含み得る。
【0075】
次に、ステップ540では、治療的処置の送達が、高エネルギー放射線(例えば、治療用放射線源20からのMV放射線)を使用して実行される。ステップ540は、治療計画に従って患者に治療線量545を送達する。いくつかの変形形態では、IGRT方法500は、追加の撮像のために様々な間隔でステップ510に戻り、必要に応じて、これに画像ベースの送達前ステップ(530)および/または処置送達(540)が続くことを含み得る。このようにして、高品質の撮像データ515は、適応療法が可能な一台の装置10を使用してIGRT中に生成および利用されることができる。上述したように、ステップ510、520、530および/または540は、同時に、重複して、および/または交互に実行されてもよい。
【0076】
変形形態では、撮像データが専用の撮像装置を使用して生成されるか、それとも放射線療法送達装置と一体化された撮像装置を使用して生成されるかに関係なく、上述の様々な方法を散乱補正に利用することができる。
【0077】
一変形形態では、CT装置は、回転X線源と、CT画像生成のための生データのセット(例えば、Id)を取得するX線検出器と、生データの散乱汚染を補償/補正するために散乱データのセット(例えば、Sc_est)を測定および/または生成するためのハードウェアおよび/またはソフトウェアと、を含む。
生データから非散乱補正済み画像が再構成され、散乱データから散乱のみ画像が再構成される。この変形形態では、生データを使用して、非散乱補正済みCT画像の再構成のための非散乱補正済み線積分を計算することができる。散乱データを使用して、式6に基づいて散乱のみ画像の再構成のための散乱のみ線積分を計算することができる。非散乱補正済み画像と散乱のみ画像は独立して処理され、後者はノイズがより高いためにより強力にフィルタリングされる。
処理後の非散乱補正済み画像と処理後の散乱のみ画像とを組み合わせて、散乱補正がなされた最終的なCT画像を作成することができる。
【0078】
別の変形形態では、ボリューム画像減算を使用して散乱のみ画像を生成することがある。ここで、散乱データを生データと共に使用して、散乱補正済み画像を再構成するための散乱補正済み線積分を生成する。生データを使用して、非散乱補正済み線積分を計算して、非散乱補正済み画像を再構成することができる。散乱補正済み画像から非散乱補正済み画像を減算して散乱のみ画像を得ることができる。非散乱補正済み画像と散乱のみ画像は独立して処理され、後者はノイズがより高いためにより強力にフィルタリングされる。処理後の非散乱補正済み画像と処理後の散乱のみ画像とを一体に組み合わせて、散乱補正がなされた最終的なCT画像を作成することができる。
【0079】
変形形態では、非散乱補正済み画像を使用して、散乱のみ画像の処理を誘導して、画像内のエッジを保持しながら散乱のみ画像の効果的なノイズおよびアーチファクトの低減を達成することができる。例えば、フィルタは、非散乱補正済み画像のボクセル差を使用して散乱のみ画像フィルタのカーネル重みを決定するガウシアンフィルタとすることができる。このようにして、非散乱補正済み画像内のエッジ情報は、散乱のみ画像内の対応するエッジを保持するために使用される。また、非散乱補正済み画像をより高度なエッジ保持処理スキームで使用して、散乱のみ画像の処理を向上させることもできる。例えば、非散乱補正済み画像内で得られる異方性微分フィルタパラメータに基づいて、散乱のみ画像を処理することができる。
【0080】
別の変形形態では、非散乱補正済み画像と散乱のみ画像は、異なる再構成スキームを使用して再構成することができる。例えば、非散乱補正済み画像は、散乱のみ画像よりも高い解像度のカーネルを使用して再構成することができ、散乱のみ画像は、カスタマイズされたストリークアーチファクト低減アルゴリズムを使用して再構成することができる。散乱のみ画像は、異なるグリッドを使用して再構成して、再構成時間を短縮することができる。例えば、非散乱補正済み画像の再構成が512×512の行列を使用する場合、散乱のみ画像の再構成は、再構成に256×256の行列を使用して再構成時間を短縮することができる。次いで、再構成された散乱のみ画像を、非散乱補正済み画像と同じグリッドに再サンプリングすることができる。次いで、非散乱補正済み画像を使用して、散乱のみ画像の処理を誘導することができる。結果として得られる散乱のみ画像は、非散乱補正済み画像と組み合わせて、散乱補正がなされた最終的な画像を作成することができる。
【0081】
例示的な変形形態のいくつかで強調されているCT環境に加えて、様々な他の変形形態では、散乱(例えば、Id)および散乱データ(例えば、Sc_est)を有する生データを取得または生成する様々な撮像装置は、SPECT、PETなどでは、散乱データを使用して生データを補正することができる。散乱データを使用して、線積分を修正/補正することができ、線積分は、式6と同様の散乱補正なしの成分と散乱補正による成分との線形結合に分解することができる。非散乱補正済み画像は、散乱のみ画像よりもノイズが少ない。2つの画像は、異なって再構成して両方の品質を改善することができ、次いで、組み合わせて最終画像を取得することができる。再構成された非散乱補正済み画像と散乱のみ画像は、独立して処理して両方の品質を改善することができ、次いで、組み合わせて最終画像を取得することができる。非散乱補正済み画像はまた、散乱のみ画像を処理するときに、フィルタリングカーネルの重みを決定するための誘導画像として使用することができる。
【0082】
非散乱補正済み画像を利用して散乱のみ画像の処理を誘導する(すなわち、画像ドメインで動作する)変形形態に加えて、他の変形形態はデータドメインで動作することができる。これらの変形形態では、散乱のみ成分の生成された線積分の処理は、散乱のみ成分内のエッジを保持する誘導データとして、非散乱補正済み成分の線積分データに基づくことができる。結果として得られる散乱のみ成分の線積分は、非散乱補正済み成分の線積分とは別個にまたは一緒に再構成することができる。
【0083】
変形形態では、生データ(例えば、Id)と測定散乱データ(例えば、Sc_est)は、散乱補正済み画像を再構成するために一緒に使用され、生データは、様々な再構成アルゴリズムを使用して非散乱補正済み画像を再構成して、画像を取得するために使用される。いくつかの変形形態では、再構成は解析的再構成であり得る。いくつかの変形形態では、再構成は反復再構成であり得る。変形形態では、散乱のみ画像は、非散乱補正済み画像とは別個に(フィルタリング、アーチファクト低減などを含む)処理がなされ、次いで、非散乱補正済み画像と組み合わされて最終画像を取得する。いくつかの変形形態では、散乱のみ画像は、散乱補正済み画像から非散乱補正済み画像を減算することによって生成される。さらに、最適なノイズおよびアーチファクト低減ならびにエッジ保持のために、非散乱補正済み画像を使用して散乱のみ画像の処理を誘導することができる。
【0084】
図6は、アンカードカーネルモデルを使用して画像上の散乱をフレームごとに推定するアルゴリズム600のフロー図である。アルゴリズム600は、本明細書に記載の他の方法(例えば、方法400または500)のいずれかと併用して散乱を推定するために使用することができる。
【0085】
より具体的には、アルゴリズム600は、散乱の数学的表現と併せて選択的ビーム遮断を使用して散乱を推定する。
【0086】
散乱の適切な数学的表現は、例えば、混合ガウスモデル(GMM)を含み得る。GMM表現では、検出されたビームのガウスカーネルパラメータ(例えば、振幅および/または分散)は、ビーム遮断から測定された散乱を含む測定パラメータにフィッティングすることによって推定される。GMMは、特に、物理的物体の投影によって与えられる物理的散乱メカニズムに関連するより低い空間周波数の画像成分にフィッティングする場合に有用である。簡単に説明すると、GMMは、広角散乱と狭角散乱の両方をキャプチャするためのマルチ解像度の形態のぼかし演算子を提供することができる。
【0087】
GMMは、散乱を表す方法の1つにすぎない。アルゴリズム600は、数学的表現に関して一般的であることを理解されたい。アルゴリズム600と併せて使用され得る他の表現は、非ガウス表現、散乱カーネル表現、連続ウェーブレット変換、フーリエ変換、機械学習(例えば、ニューラルネット)などを使用するものを含む。
【0088】
方法600は、コリメータ(例えば、
図3のコリメータ320)を使用して、二次A/Bおよび一次C部分を有する画像Iを生成する。コリメータは、(例えば、
図3に示す源306の側で)X線源側ビーム遮断を提供する。コリメータ320は、患者の視点から見て、頭側、尾側、同側、および対側のうちの少なくとも1つに配置されたコリメータブレード320aと320bを有することができる。
図3には単一のブレード320aおよび320bが示されているが、他のコリメータ構成も可能である。例えば、他の形状および構成を有するコリメータと同様に、パターン化されたビーム遮断を使用することができる。静的ビーム遮断デバイス位置が
図3に示されているが、スキャン中に動的に配置されるビーム遮断および/またはコリメータが使用されてもよい。例示的な用途は、動的ビームコリメーションを使用して関心領域(ROI)ボリューム撮像および放射線量が低減された標的追跡を実行することを含む。コリメートブレードは、標的の動きの探索空間に従うように、または、例えば、治療中のROI再構成のために「計画」することができる。動的な動きの場合、各フレーム瞬間で、影の位置は記載の方法で使用することができる。
【0089】
このようなビームコリメーションは、フラットパネルX線検出器302上に長方形の影312および314を形成することができる。(例えば、一次C、半影(Cと、AおよびBとの間の図示していない領域)、および二次(すなわち、遮断されているAおよびBを))形成し得る3つの領域は、例えばフレームごとに自動的に検出され得る。それらはまた、ビーム308のジオメトリ校正(例えば、定期的校正、以前の校正)から知り得る。
【0090】
アルゴリズム600は、測定二次データおよび(例えば、ガウス成分振幅がX線吸収データ、および、例えば
図3に示すようなコリメーションスキームからの散乱から推定されるGMMとしての)散乱基底モデル600aを使用するアンカード散乱画像推定を表す。コリメーションスキーム300に関してアルゴリズム600を詳細に説明するが、アルゴリズム600に関して本明細書で説明される概念は、コリメーションスキームの詳細に関して一般的であり、300以外のコリメーションスキームで使用されてもよいことを理解されたい。
【0091】
散乱のフィッティングのための特定の数学的モデル600a(例えば、特定のGMM構成および構築/フィッティングプロトコル)が、アルゴリズム600に関して以下に説明されるが、アルゴリズム600は、いくつかの異なる方法で構成することができる。散乱モデルは、ファントム(患者、および/または他の撮像サンプル)およびガントリ12の角度からの散乱画像の測定値にフィッティングさせることによって、撮像システム300用に事前構成することができる。これは、例えば、GMMにおけるガウス分散の調整を含むことができる。このフィッティングは、例えば、検出器302の全パネル露光と、源306および検出器302のペンシルラスタースキャンまたはスリットスキャンスイープとの間の画像など、測定差を含むことができる。他のタイプの事前構成も可能であり、本開示の範囲内である。しかしながら、このような事前構成はオプションであり、アルゴリズム600を実装するのに必須ではないことを理解されたい。
【0092】
以下でより詳細に説明するように、特定の変形形態では、モデル600aは、マスク適用後の影または「二次」領域(
図3の領域A、B)の画像画素をデータベクトル(b)にベクトル化することによって形成される連立方程式を解くことによって構成することができる。二次領域AおよびBに基づくこの構成では、未知数は、例えば、GMM成分(x)の振幅とすることができる。二次領域AおよびBは純粋な背景散乱信号(すなわち、サンプルからの信号によっても汚染されていない散乱)を含むので、この構成はGMMを散乱用に校正することができる。一次領域Cは、サンプル(例えば、患者またはファントム)からの散乱と信号の両方を含む。
【0093】
続いて、初期モデル600aの成分xを投影画像フレームIの一次領域(
図3の領域C)の画素と数学的に畳み込むことによって、可解システム行列Aを形成することができる。畳み込みが開始されるとき、モデル600aの成分xは任意の振幅を有するものであってもよく、またはモデル600aの成分は、上記で簡単におよび以下でより詳細に説明するように、事前に構成されたものであってもよい。データベクトルbの順序に対応する影領域(AおよびB)の各画素での畳み込みの結果は、システム行列Aの要素であり、一次領域Cにおける散乱の推定値である。任意の適切な回帰アルゴリズム(例えば、重み付き最小二乗法によりAを構成することによって、GMMモデル散乱振幅の推定値を提供する)。
【0094】
影領域(AおよびB)の各画素での畳み込みの結果は、その画素での散乱の推定値である。データベクトル(b)の対応する要素は、その画素での測定散乱である。行列Aは、推定散乱をデータベクトル(b)における測定散乱と一致させることによって解くことができる。Aを一旦解くと、それを使用して一次領域C内のデータと畳み込み、領域C内の推定散乱を推定することができる。その結果は、領域Cにおける一次データの散乱補正に使用することができる。行列Aを解くために使用される方法は、最小二乗法、加重最小二乗法、最急降下法、および画像畳み込み用の任意の他の適切な手法とすることができる。
入力(一次および二次領域を含む測定投影)、以前の仮定(例えば、GMMなどのカーネルモデル)に基づいて連立方程式を解く、出力が一次領域の散乱画像を推定する任意の方法。アルゴリズム600の具体的なステップについては以下で解説する。
【0095】
以下の説明は、アルゴリズム600およびモデル600aを単一の画像フレームに適用する。ステップは、マルチフレーム画像内の各フレームに適用され得ることを理解されたい。複数の画像フレームは、処理および散乱補正が一旦なされると、再構成してトモグラフィ手法で3D表現を形成するされてもよい。以下に説明する各ステップは任意であることを理解されたい。アルゴリズム600は、以下に説明するステップのうちの1つ以上なしで実行され得る。また、以下で説明するのと異なる順序で実行される1つ以上のステップで実行され得る。また、以下で説明していない1つ以上の追加のステップで実行することもできる。このような変形形態はいずれも、本開示の範囲内およびアルゴリズム600の範囲内であると考えるべきである。
【0096】
ステップ602では、アルゴリズム600は、補正(例えば、オフセット、不良画素補正、および利得正規化)を入力信号に適用することができる。入力信号は、検出器302によって検出される生のX線信号である。入力信号は、画像フレームIの形態であってもよい。
【0097】
ステップ602において、統計的に(または別様に)異常な画素が識別され、変更され、および/または除去され得る。これは、隣接する画素と強度が閾値だけ異なる画素を検出することに対応し得る。これらの異常画素は、検出器の欠陥部分、干渉、収集セットアップ300の他の部分から散乱する迷走X線、および/またはデータ収集における他の問題を含む、いくつかの原因から生じ得る。一旦識別されると、異常画素は、平均化された(または他の値の)画素と置き換えられ得る。
【0098】
ステップ602において、画像フレームIは、より迅速かつ/またはより効率的な画像処理のために変えられ得る。例えば、画像Iは、解像度が、より大きな画素サイズまたは他の基底関数にダウンサンプリングされるか、あるいは低減または分解されてもよい。マルチ解像度手法は、一次画像から、本方法で使用されるより低い空間周波数の成分を抽出することができる。こうすることにより、さらなる処理の複雑さを低減することができ、後述する散乱補正などの画像処理を高速化する可能性がある。画像のダウンサイジングは、大きな空間的な変動または空間周波数を有さない画像Iまたは画像Iの一部に特に有利である。これらの場合、ダウンサイジングは、元の画像フレームI内の所望の情報の多くを保存する。散乱信号画像成分は、通常、比較的低い空間的な変動を有する。このため、この前処理ステップにおいて1次A/B画像部分および2次A/B画像部分をダウンサイジングすることが有利であり得る。これにより、散乱信号を迅速かつ正確に処理して画像フレームIを補正することが可能となり得る。
【0099】
ステップ602は、
図7に示す例示的な処理済み画像700のような画像Iをもたらす。例示的な画像700は、ステップ602に従って前処理された後の、源306からの一次ビームCにおける肺ファントムの投影である。例えば、画像700の一次セクションC内の明るい領域としての肺ファントムの2つのセクション702および704を見ることができる。ここで、肺を通るX線は減衰が少ないため、肺における値はより高くなる(すなわち、画像内でより明るく見える)。画像700の一次セクションCは、
図3に示す検出器302の画像セクションCに対応する。言い換えれば、源302からの放射線が肺ファントムサンプルを通過することがコリメータ320のギャップによって可能にされた検出領域である。しかしながら、画像700内の領域AおよびBは、源306からの入射放射線がコリメータブレード320aおよび320bによって遮断された領域に対応するため、純粋な散乱を表す。
【0100】
画像700内の一次領域Cの両側の影または二次領域AおよびBの各々は、一次ビーム領域Cに共通の散乱を含む。一次領域Cは、複数の散乱のタイプ(例えば、一次ビーム領域Cで撮像される、物体、患者、放射線源ハウジング、濾過、コリメーション装置構成要素またはボアカバー、およびX線検出器302の様々な層からの散乱)を含み得る。したがって、二次領域A/Bからの純粋な散乱は、モデル600aをフィッティングさせて画像700全体に存在する散乱の多くを表すのに有用であり得る。
【0101】
ステップ606では、画像Iを一次C領域と二次(AおよびB)領域とにセグメント化することができる。この文脈において、「セグメント化」は、画像700から別々に処理することができる2つの異なる画像を作成することを意味する。2つの画像は各々、画像700のセグメントまたは一部を表す。この例では、1つのセグメント化画像は、二次部分A/Bからの画像700の一部(
図7)を含み得る。もう1つのセグメントは、一次部分Cからの画像700の一部を含み得る。しかしながら、これらは単なる例であり、このステップ中に画像700の任意の適切で有利なセグメント化が可能であることを理解されたい。ステップ606のセグメント化は、任意の適切な方法を用いて実行することができる。適切なセグメント化方法は、例えば、画像データのサブ領域に対する演算を可能にする撮像マスクを画像Iに適用することを含む。セグメント化は、空気を通るX線投影画像に基づいて、画像の一次領域、半影領域、および影領域を明確に示すことができる。測定物体データに基づいてフレームごとにセグメント化することも可能であり得る。セグメント化は、撮像ジオメトリおよび物理放射線源装置の計算モデルに基づくことができる。
【0102】
図8Aは、ステップ606の画像セグメント化に使用することができる一次領域Cならびに二次(影)領域AおよびBを含む例示的なブールマスク800aを示す。マスク800aは、インデックス付けまたは他のソフトウェア抽象化によって一次領域Cのデータを二次領域AおよびBから分離することができる。マスク800aは、一次領域C以外のすべてをインデックス付けすることができる。
図8Bのマスク800bは、セグメント化ステップ606にも使用され得る。マスク800bは、二次領域AおよびB以外のすべてをインデックス付けすることができる。マスキングに加えて、ステップ606は、既知の撮像ジオメトリ(例えば、320および検出器302を含む
図3に示すジオメトリ300)に基づく任意の適切な撮像セグメント化ルーチンを含むことができ、このステップでも適用することができる。セグメント化は、本明細書に記載の方法のいずれかを用いて実行することができる。
【0103】
画像セグメント化の別の利点は、1次Cおよび2次A/Bからの画像が、異なる処理方法に適した異なる特性を有し得ることである。例えば、画素サイズまたは他の基底分解は異なり得、濾過は異なり得、重み係数は一次Cと二次領域A/Bとで異なり得る。一方、一次セグメントCからの画像セグメントは、二次A/B部分よりも大きい空間分解能とより細かな空間分解された詳細とを含み得る。その意味で、一次部分Cに対応するセグメント化画像は、このような詳細を有利に処理することができる撮像処理ルーチンの適用により恩恵を受けるができる。
【0104】
図9は、例えば、
図8Bにおけるマスク800bの適用によって生成され得る分離された二次A/B画像900を示す。二次画像900は、二次領域AおよびBのみのデータを含む。
【0105】
図10は、マスク800aが一次領域Cを分離した例示的な画像1000を示す。二次画像900および一次画像1000は、異なる処理が施されてから再結合されて、散乱補正された合成画像Iを形成することができる。散乱補正からの出力は、補正済みの一次領域のみであってもよい。二次領域は、放射線写真またはCT用途ではもはや利用可能でなくなる可能性があるが、補正済みの二次領域は、推定の質について評価され得る。
【0106】
ステップ606では、画像900および1000の少なくとも一方の解析が実行される。一例として、画像1000の解析が
図10に概略的に示されている。例示的な解析は、二次セグメント内の解析領域1002および一次セグメント内の解析領域1004を含む。領域1002は、画像1000全体が解析されるように、画像1000全体にわたってスキャンすることができる。散乱推定アルゴリズムは、画像全体1000または領域1004からの一次データと、画像1000全体または領域1002からの二次データとを利用していることを理解されたい。領域ごとに画像1000を横断する利点は、散乱挙動が物体の厚さまたは他の要因に応じて光線角度と共に変化し得るため、推定モデルパラメータが横方向に変化し得ることである。異なる幅を有し得る領域1002および1004の利点は、1002の散乱データが照射下の物体のより広い範囲に寄与することである。
【0107】
画像領域1002および1004は、画像処理計算(例えば、画素のベクトル化、最大値/最小値の決定、平均、フーリエ変換など)の焦点とすることができる。計算は、任意の適切な処理方法を含んでもよく、1つ以上のそのような方法を組み合わせてもよい。
【0108】
画像領域1002および1004は、画像1000の並列解析が一度に実行されるように、他の画像領域(図示せず)と同時に処理されていてもよい。画像領域を使用する代わりに、画像1000を単一のステップで解析されていてもよい。ステップ602における処理は、以下に説明する他のステップと反復的に継続し得る。特に、ステップ606における処理は、完全な散乱画像の推定が完了するまで行われ得る。
【0109】
1つの手法は、前の推定値によって一次セグメントを散乱補正した後、二次セグメントの散乱データを反復的に推定する。その利点は、物理的散乱メカニズムが物体を通る減衰に関連しているが、一次領域内の生画像データも散乱信号を含むことである。別の手法では、散乱基底関数は、画像全体から連続的に推定および補正することができる。例えば、散乱モデル600aで使用されるカーネルは、より高い空間周波数からより低い空間周波数へ、またはその逆に、個別に推定され得る。より一般的には、選択される基底関数は、個別に反復的に推定することができる。
【0110】
ステップ612では、アルゴリズム600は、重み付けを適用して画像Iの特定の特徴を強調または非強調することができる。例えば、散乱推定値に対する空気のみを通る経路の影響を非強調する、または低い画像値から散乱推定値への相対寄与を増幅する重み付けを選択され得る。任意の適切な数学的演算を使用して、画像を重み付けされ得る。適切な演算の例は、画像減算や対数(「log」)演算子(例えば、画像の部分を除去するための負対数演算子など)の適用を含む。適切な負対数演算子は、例えば、高い画像値(例えば、患者、ファントム、または他のサンプルを横切らず、したがって物体散乱効果を含まない経路を介して受信されたもの)が減衰またはゼロ化されるように、例えば、画像I(または画像900および1000)のゲイン正規化投影フレームを変換することができる。
【0111】
ステップ614において、アルゴリズム600は、画像1000からのデータを使用してモデル600a(例えば、GMM)の基底関数を作成する。
図11は、画像1000との畳み込みによって散乱モデル基底関数を生成するGMM変動からの2つの例示的な散乱カーネル1102および1104を示す。カーネル1102および1104は単なる例示であり、任意の適切なカーネル、生成関数、または基底分解が使用され得ることを理解されたい。任意の数の散乱カーネルをこのステップで使用され得る。このステップは、基底関数分解の任意の適切な選択、およびその中の基底関数の選択をさらに含み得る。例えば、任意のガウスまたは非ガウス基底および/またはその中の組合せを使用されていてもよい。このステップでは、正規直交基底、ウェーブレット基底、連続ウェーブレット変換、および/またはそれらの組合せを含む他の基底も使用されていてもよい。カーネルが使用される場合、それらは対称または非対称であってもよく、歪んでいても、歪んでいなくてもよい。
【0112】
散乱カーネル1102は例示的な広角カーネルであり、散乱カーネル1104は例示的な狭角散乱カーネルである。広角散乱カーネルと狭角散乱カーネルの両方を一緒に使用すると、幾何学的に異なる散乱メカニズムをモデル600aに与え得る。これらのカーネルタイプおよび/または他のカーネルタイプの1つ以上の組合せは、モデルの精度をさらに改善され得る。より一般的には、モデル600aは、散乱のより正確なモデリングのために1つ以上のカーネルタイプ及び複数のカーネルを含むことができる。任意の適切な数のカーネルまたは基底関数をアルゴリズム600で使用することができる。
【0113】
畳み込みベースの変形形態では、ステップ614の畳み込みは、任意の適切な数学的畳み込みアルゴリズムまたは積分変換を用いて実行することができる。例えば、モデル600aにおいてGMMが使用される場合、GMMの各基底関数と画像データとの積を画像にわたって積分することによって畳み込みが実行されてもよい。画像データを表すためにモデル600aによって使用される基底関数のうちの1つ以上が、畳み込みまたはフィルタリング中に反転および/またはシフトされ得る。他の適切な畳み込み処理も可能である。このステップにおける畳み込みは、これらの畳み込み処理のうちの1つ以上を含む一連の畳み込みステップを使用することによって達成され得る。他のアルゴリズム。画像領域1002を使用する領域的手法では、一次領域Cのより広いエリアに畳み込みベースの変形形態を適用し、次にその出力からそれらのより狭い一次領域のみを抽出することができる。一次領域C全体からの散乱は、より狭い一次領域に寄与する。フーリエ領域で畳み込みを実行することは、計算上の利点を提供することができる。カーネル畳み込みへの一般化は、例えば、フィルタバンクまたはマルチ解像度分解を介して行うことができる。フィルタバンクまたは基底セットの重み付けは、物理的散乱プロセスによって付与または校正することができる。
【0114】
通常、ステップ614における畳み込みは、散乱が一次ビームによって生成されるため、一次画像C(すなわち、
図10のセグメント化画像1000)からの画像領域データを含む。このステップで、モデル600aの基底関数が構成される。しかしながら、場合によっては、畳み込みステップは、二次画像900のデータも含み得る。一次Cおよび半影エリアに畳み込みを適用することができる。二次(影)領域A/B上には一次放射線がほとんどまたはまったくなく、したがって、領域A/B内の画像I画素への放射線源からの直接経路からの追加の散乱寄与はほとんどないと仮定することができる。
【0115】
ステップ616において、アルゴリズム600は、例えばステップ614の散乱カーネルと画像データとの畳み込みから、モデル600a基底関数を再構築することによって散乱基底を作成する。
図12は、広角カーネル1102についてのこの処理の出力1200を示す。広角カーネル畳み込みは、画像にわたって低い変動1202を有する出力1200を生成する。
図13は、狭角カーネル1104のこの処理の出力1300を示す。
図13に示すように、狭角カーネルを用いた畳み込みは、画像の低減衰領域付近に極大値1302および1304を生成する。出力1200および1300は、例示的なモデル基底600aを含む。
【0116】
ステップ616において、ステップ616から畳み込み後の画像データ出力1200および1300に二次マスク800bを適用することができる。
図14は、広角散乱カーネル3202の出力1200に二次マスク800bを適用した結果1400を示す。
図14に示すように、マスクされた画像1400には、広角カーネル最大値1202の影響を見ることができる。
図15は、狭角散乱カーネル1104の出力1300に二次マスク800bを適用した結果1500を示す。
図15は、マスクされた画像1500における狭角カーネルからの2つの最大値1302および1304の影響を示す。
【0117】
ステップ616において、二次領域(AおよびB)モデル600a基底1...Nがベクトル化され、行列(A)に加算される。基底はスカラーx
1...x
N(x)によって重み付けされる。次いで、重み付けされた基底の和(Ax)を求める。より具体的には、2次画像は、以下の式を介してデータベクトル(b)にベクトル化することができる。
【数8】
(1)
【0118】
ステップ616において、式(1)は、重み付け行列(W)によって重み付けすることができる。
【数9】
(2)
ここで、重み付けWは、上記のステップ612と同様の機能を有し、すなわち、特定の画像特徴を強調または非強調することができる。あるいは、重み付けWは、既知の実験的特徴または画像取得セットアップ(例えば、セットアップ300)における特徴に対応してもよい。このような特徴は、入射ビームのエネルギーおよび幅、検出器パラメータ、コリメータ320または線源306の特定の態様などを含む。重み付けはまた、または代替的に、(例えば、一次領域Cにより近いデータを優先することによって)検出器302のジオグラフィを強調してもよい。それはまた、または代替的に、データの特定の特性(例えば、散乱によるものではない可能性がある二次領域A/Bにおけるより高いカウント)にペナルティを課すことができる。例示的な実装形態では、このステップにおける画像データIは逆自己重み付けすることができる。これは、例えば散乱振幅の過大評価を妨げるために、高いカウントにペナルティを課すことができる。
【0119】
ステップ626において、式(3)の連立方程式xを、散乱推定値(x^)について解くことができる。解は、回帰技術、機械学習技術、様々なタイプの(例えば、畳み込み)ニューラルネットワークを介してなど、特異値分解または固有値分解などの他の技術を含むことができる任意の数の適切な方法で求めることができる。このような例示的な方法の1つは、重み付き最小二乗法(WLS)解推定値(x^)である。この推定値x^は、上記の式(1)を使用して散乱Sを推定するのに適したモデル成分(例えば、GMM成分)を表す。
【0120】
ステップ628において、推定散乱画像(S^)が、フィッティングされた散乱カーネル畳み込みの和(Kx^)として計算される。
【数10】
(3)
ただし、Kは散乱モデル基底である。KはAと同様であるが、画像全体のドメインを有するのに対して、Aは画像の列領域にわたって反復し得る。S^を使用して、元の画像フレームI(700)を解釈するための散乱を推定することができる。
【0121】
ステップ630において、ステップ626からの解推定値S^は、元の画像フレームIに対して、具体的には出力データが入力データの画素サイズと一致するように修正することができる。例えば、S^は2D画像に再形成され得る。S^はまた、上記のステップ602で説明したダウンサンプリングを取り消すために、元のフレームI(700)解像度までアップサンプリングすることができる。
【0122】
ステップ632において、アルゴリズム600は、
図16に示す全体的な推定散乱画像1600を生成する。モデルが一旦構成されると、この場合、カーネル振幅x^が推定され、次いでモデルが一次画像Cに適用されて推定散乱画像S^が取得される。
【0123】
ステップ634において、アルゴリズム600は、散乱画像600を使用して、元の入力された画像700を修正する。このステップで使用され得る散乱画像600の方法の1つは、画像700から散乱画像600を減算することによって画像における散乱を除去することである。散乱画像600を使用して画像700における散乱に対処する他の方法も可能である。例えば、散乱画像600の選択部分を画像700から減算してもよい。選択部分は、特に高い散乱の画像領域に対応してもよい
【0124】
図17は、
図16の散乱推定画像1600と直接比較することができる測定散乱画像1700を示す。比較によって分かるように、散乱推定値1600は、測定散乱1700との質的な一致を示す。
【0125】
特定の変形形態における方法600の数学の一般化された演算子表現を以下に示す。
【0126】
ステップ632において、散乱画像成分I
Sは、対象の物体(例えば、患者、ファントム、または撮像されることになる他の物体)を通って放射した後、一次元または二次元一次X線投影I
Pに作用する演算子Fによって近似することができる。
【数11】
(4)
【0127】
X線検出器による測定画像I
Mは、一次(C)画像成分(I
P)と二次(A/B)画像成分(I
S)とを含み得る。I
Mは、例えば、上述の画像Iまたは
図7に示す画像700によって表されていても良い。二次画像成分(A/B)は、散乱X線および焦点外線源放射を含み得る。測定画像は、その一次成分と二次成分の和である。
【数12】
(5)
【0128】
測定画像I
Mは、物体の線源側306上のビーム遮断デバイス(例えば、コリメータ320)によって遮光される1つ以上の領域を含むことができる。これらの領域は、画素位置のセット
【数13】
で表される。遮断されていない画素は、画素位置のセット
【数14】
で表される。測定画像は、遮断されている領域の散乱成分にほぼ等しい。
【数15】
(6)
【0129】
散乱信号成分の推定値
【数16】
(ステップ632)は、演算子Fを測定画像I
Mに適用することによって得ることができる。
【数17】
【0130】
推定一次画像
【数18】
は、推定散乱成分
【数19】
の除去によって推定することができる(ステップ634)。
【数20】
【0131】
大きい散乱対一次信号比(SPR)の場合、方法600は、
【数21】
を用いて反復または補正され得る。
【0132】
モデル化演算子は、ここではベクトル化された未知数xとして示されるパラメトリック自由度を考慮され得る。次いで、測定画像データをモデル化散乱データにフィッティングさせると、これらのパラメータをビーム遮断領域
【数22】
にわたって最適化することができる(ステップ626)。
【数23】
(9)
【数24】
(10)
【数25】
(11)
【0133】
演算子Fの一変形形態では、散乱カーネルのセットは、有限個のガウス生成関数を含み、各ガウス生成関数は、分散
【数26】
と振幅A
iとによってパラメータ化される。各カーネルと一次または測定画像との畳み込みは、モデル600aの一変形形態における、(ステップ614の)混合ガウスモデル(GMM)としても知られる演算子の成分を生成する。振幅および分散パラメータは、例えば校正またはシミュレーションによって事前に最適化または固定されてもよい。
【数27】
【0134】
上記のフレームワーク(すなわち、方法600および式4~12)内では、演算子Fの複数の変形形態が可能である。例えば、演算子Fにおいて、ガウスカーネルは、任意の他の生成フィルタタイプで置き換えられてもよい。演算子Fは、フーリエ変換などの正規直交基底への画像変換を含むことができ、そこから基底関数の重み付き再結合または有限選択から散乱推定値を生成され得る。演算子Fは、連続ウェーブレット変換(CWT)などのウェーブレット基底への画像変換を含むことができ、そこからウェーブレットの重み付き再結合または有限の選択から散乱推定値を生成され得る。演算子Fは、基底成分の切り捨てられたまたは有限の選択の再構成によって散乱画像推定値が形成される、特異値分解(SVD)または固有解析などの画像分解を含まれていてもよい。演算子Fへの入力は、訓練データのセット、または畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などの訓練データから訓練されたネットワークを含まれていてもよい。入力される訓練データは、ビーム遮断領域と、対応する散乱画像とを含む一次画像または測定画像のペアを含まれていてもよい。
【0135】
アルゴリズム600のステップ602~634は、システム300によって取得される一連の画像の各画像フレームI(700)に対して実行される連続プロセスを表すことを理解されたい。アルゴリズム600が一旦各画像フレームIに対して実行されると、画像フレームを再構成して、患者の患部の3D画像を形成することができる。散乱補正はまた、放射線撮影用途にも有益であり得る。アルゴリズム600は、同時に複数の画像フレームに対して同時に実行されてもよい。実際、画像フレームの集合をすべて一度に実行してもよい。これにより、より迅速に最終結果を生成することができる。さらに、アルゴリズム600は、処理が同時および/または並行に行われる場合、他の画像フレームの特徴の解析において特定の画像フレームの特徴を使用してもよい。他の変形形態では、複数のフレームの解析が同時または並行に行われていない場合でも、1つの画像フレームの解析に関する特定のパラメータを記憶し、他の画像フレームの解析に使用され得る。
【0136】
開示の技術は、特定の態様、1つの変形形態または複数の変形形態に関して示され説明されているが、本明細書および添付の図面を読んで理解すると、当業者は同等の変更および修正を想起することは明らかである。特に、上述の要素(構成要素、アセンブリ、デバイス、部材、組成物など)によって実行される様々な機能に関して、そのような要素を説明するために使用される(「手段」への言及を含む)用語は、特に明記しない限り、本明細書に示される開示の技術の例示的な態様、1つの変形形態または複数の変形形態における機能を実行する開示の構造と構造的に同等ではないとしても、記載の要素の指定された機能を実行する任意の要素(すなわち、機能的に等価である要素)に対応することを意図している。さらに、開示の技術の特定の特徴は、いくつかの図示された態様または変形形態のうちの1つ以上のみに関して上述されている場合があるが、このような特徴は、任意の所定のまたは特定の用途にとって望ましく、かつ有利になり得るように、他の変形形態の1つまたは複数の他の特徴と組み合わされてもよい。
【0137】
本明細書で説明した変形形態は、上述したシステムおよび方法に関連しているが、これらの変形形態は例示的であることを意図しており、これらの変形形態の適用性を本明細書に記載の解説のみに限定することを意図していない。本発明をその変形形態の説明によって示し、そして変形形態をある程度詳細に説明しているが、出願人の意図は、添付の特許請求の範囲をこのような詳細に制限すること、または何らかの方法で限定することではない。さらなる利点および修正は、当業者には容易に明らかになるであろう。したがって、本発明のより広い態様は、図示および説明されている特定の詳細、代表的な装置および方法、ならびに例示的な例に限定されない。よって、出願人の一般的な発明概念の主旨または範囲から逸脱することなく、このような詳細から逸脱することができる。
【国際調査報告】