(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】マイクロキャビティ容器のための保護キャリア
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579532
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 US2022033351
(87)【国際公開番号】W WO2023278136
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】クルーティエ,トーマス アルバート
(72)【発明者】
【氏名】レイシー,ウィリアム ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】パルド,アナ マリア デル ピラール
(72)【発明者】
【氏名】タナー,アリソン ジーン
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA08
4B029BB01
4B029CC01
(57)【要約】
マイクロキャビティ容器のための保護キャリアが提供される。この保護キャリアは、上面と底面を含む実質的に平らな剛性板を備えている。この剛性板の外周の少なくとも一部の周りにフランジが配置されており、そのフランジは、剛性板の上面から延在している。剛性板の底面に1つ以上のリブが配置されている。底面にマイクロキャビティ基体を備えたマイクロキャビティ容器、および保護キャリアを含む保護マイクロキャビティ容器キャリアシステムが提供される。このマイクロキャビティ容器は、マイクロキャビティフラスコ、開放ウェル貯留プレートなどのマイクロキャビティプレート、マイクロキャビティバイオリアクタ、または積層型3Dマイクロキャビティ培養容器であってよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロキャビティ容器のための保護キャリアにおいて、
上面と底面を備えた実質的に平らな剛性板、
前記剛性板の外周の少なくとも一部の周りに配置されたフランジであって、該剛性板の上面から延在するフランジ、および
前記剛性板の底面に配置された1つ以上のリブ、
を含む保護キャリア。
【請求項2】
前記フランジが、前記剛性板の上面の外周の周りに連続的に配置されている、請求項1記載の保護キャリア。
【請求項3】
前記フランジが、前記剛性板の1つの側を除いて全ての側で該剛性板の上面の外周の周りに配置されている、請求項1記載の保護キャリア。
【請求項4】
前記剛性板の底面に配置された1つ以上のリブが、該剛性板の外周に近接している、請求項1記載の保護キャリア。
【請求項5】
前記1つ以上のリブが、前記剛性板の底面から延在する約1mm~2mmの高さを有する、請求項1記載の保護キャリア。
【請求項6】
複数のスタンドオフをさらに含み、該複数のスタンドオフの各スタンドオフが、前記剛性板の上面にある前記フランジの内面に配置されている、請求項1記載の保護キャリア。
【請求項7】
各スタンドオフが「L」字形であり、第1の部分が前記フランジの内面に垂直に配置され、第2の部分が前記剛性板の上面に水平に配置されている、請求項6記載の保護キャリア。
【請求項8】
各スタンドオフの前記第1の部分が、約3mm~4mmの高さおよび約0.5mm~1.5mmの厚さを有し、各スタンドオフの前記第2の部分が、約3mm~4mmの長さおよび約0.5mm~1.5mmの厚さを有する、請求項7記載の保護キャリア。
【請求項9】
前記保護キャリアが、マイクロキャビティ容器の底部分を保持するように作られており、該マイクロキャビティ容器の底部分は、前記フランジで画成された前記外周内で前記剛性板の上面に配置されている、請求項6記載の保護キャリア。
【請求項10】
前記複数のスタンドオフが、前記マイクロキャビティ容器の底部分を支持し、該マイクロキャビティ容器のマイクロキャビティ基体への空気交換を可能にするように作られている、請求項9記載の保護キャリア。
【請求項11】
前記保護キャリアが、約7mmから8mmの高さを有する、請求項1記載の保護キャリア。
【請求項12】
前記剛性板の厚さが約1mm~2mmである、請求項1記載の保護キャリア。
【請求項13】
前記保護キャリアが、高分子、金属、またはガラスから形成されており、
前記高分子が、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、他のそのような高分子、またはその組合せを含み、
前記金属が、アルミニウム、ステンレス鋼、亜鉛、またはその組合せを含み、
前記ガラスが、ホウケイ酸ガラスを含む、請求項1記載の保護キャリア。
【請求項14】
底面にマイクロキャビティ基体を備えたマイクロキャビティ容器、および
実施形態1に記載された保護キャリア、
を含む保護マイクロキャビティ容器キャリアシステムであって、
前記マイクロキャビティ基体が、複数のマイクロキャビティを備え、各マイクロキャビティが丸底を有する、保護マイクロキャビティ容器キャリアシステム。
【請求項15】
前記マイクロキャビティ基体の内面が、細胞に対して非接着性である、請求項14記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2021年6月30日に出願された米国仮特許出願第63/216754号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、細胞培養デバイスおよび方法に関する。特に、本開示は、三次元(3D)細胞培養およびマイクロキャビティ容器のための保護キャリアに関する。
【背景技術】
【0003】
3D環境で培養された細胞は、単層として二次元(2D)環境で培養された細胞よりも生体内のような機能を示す。2D細胞培養システムにおいて、細胞は、それらが培養される基体に接着する。対照的に、細胞は、3Dシステムで増殖された場合、基体に接着するよりも、互いと相互作用して、3D細胞培養物またはスフェロイドやオルガノイドなどの細胞集合体を形成する。しかしながら、多量の均一な細胞集合体の培養または産生は、難点を提示する。CellSTACK(登録商標)培養チャンバ(ニューヨーク州、コーニング所在のCorning Incorporated)における低接着性または非接着性表面などの細胞非接着性表面は、大規模培養容器内で細胞集合体の形成を促進するかもしれないが、そのような大規模培養容器内で形成された細胞集合体は、均質ではない。
【0004】
均質な細胞集合体の形成のために市販されている細胞培養デバイスのフォーマットは、ミクロンサイズのウェルを有するマイクロキャビティ容器に限定されている。多数の細胞集合体の産生を可能にするために、マイクロキャビティ容器は、多数の均質な細胞集合体を産生するための大きい共通の培養区域を有することがあり、ガス透過性、播種密度、成長時間、スフェロイドクラスターの移動または除去の恐れ、またはその組合せに向けられた特徴を備えることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、そのような特徴のために、マイクロキャビティ容器が、出荷と使用の最中に損傷を受けやすくなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに記載された主題の態様において、出荷中にマイクロキャビティ容器のガス透過性マイクロキャビティを保護し、細胞培養に使用する最中にマイクロキャビティ容器の保護キャリアの機能も果たすことのできるデバイスが提供される。この保護キャリアは、マイクロキャビティ容器の底部のフットプリントよりもわずかに大きい剛性板からなる。実施の形態において、そのマイクロキャビティ容器は、マイクロキャビティ容器の底面にマイクロキャビティ基体を備える。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ容器はマイクロキャビティフラスコであることがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ容器は、開放ウェルマイクロキャビティプレートなどのマイクロキャビティプレートであることがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ容器は、蓋をさらに備えることがある。
【0007】
ある態様において、本開示は、マイクロキャビティ容器のための保護キャリアに関する。いくつかの実施の形態において、その保護キャリアは、上面と底面を備えた実質的に平らな剛性板;その剛性板の外周の少なくとも一部の周りに配置されたフランジであって、剛性板の上面から延在するフランジ;および剛性板の底面に配置された1つ以上のリブを含む。
【0008】
いくつかの実施の形態において、フランジは、剛性板の上面の外周の周りに連続的に配置されている。
【0009】
いくつかの実施の形態において、フランジは、剛性板の1つの側を除いて全ての側で剛性板の上面の外周の周りに配置されている。
【0010】
いくつかの実施の形態において、保護キャリアのフットプリントは実質的に長方形である。いくつかの実施の形態において、保護キャリアのフットプリントは、丸い角を有する。
【0011】
いくつかの実施の形態において、剛性板の底面に配置された1つ以上のリブは、剛性板の外周に近接している。いくつかの実施の形態において、1つ以上のリブは、剛性板の底面から延在する約1mm~2mmの高さを有する。
【0012】
ある態様において、保護キャリアの実施の形態は、複数のスタンドオフ(standoff)をさらに含む。いくつかの実施の形態において、この複数のスタンドオフの各スタンドオフは、剛性板の上面にあるフランジの内面に配置されている。
【0013】
いくつかの実施の形態において、各スタンドオフは「L」字形であり、ここで、第1の部分はフランジの内面に垂直に配置され、第2の部分は剛性板の上面に水平に配置されている。いくつかの実施の形態において、各スタンドオフの第1の部分は、約3mm~4mmの高さおよび約0.5mm~1.5mmの厚さを有する。いくつかの実施の形態において、各スタンドオフの第2の部分は、約3mm~4mmの長さおよび約0.5mm~1.5mmの厚さを有する。
【0014】
いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、マイクロキャビティ容器の底部分を保持するように作られており、このマイクロキャビティ容器の底部分は、フランジで画成された外周内で剛性板の上面に配置されている。いくつかの実施の形態において、複数のスタンドオフは、マイクロキャビティ容器の底部分を支持し、マイクロキャビティ容器のマイクロキャビティ基体への空気交換を可能にするように作られている。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ容器は、マイクロキャビティフラスコ、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティバイオリアクタ、または積層型3Dマイクロキャビティ培養容器である。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ容器は、マイクロキャビティフラスコを構成する。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ容器は、マイクロキャビティプレートを構成する。
【0015】
いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、約7mmから8mmの高さを有する。いくつかの実施の形態において、剛性板の厚さは約1mm~2mmである。
【0016】
いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、高分子、金属、またはガラスから形成される。いくつかの実施の形態において、その高分子は、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、他のそのような高分子、またはその組合せを含む。いくつかの実施の形態において、金属は、アルミニウム、ステンレス鋼、亜鉛、またはその組合せを含む。いくつかの実施の形態において、ガラスは、ホウケイ酸ガラスを含む。
【0017】
いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、再生利用可能な材料から形成される。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、生分解性材料から形成される。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは不透明である。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは半透明である。
【0018】
ある態様において、本開示の実施の形態は、底面にマイクロキャビティ基体を備えたマイクロキャビティ容器;およびここに記載された実施の形態による保護キャリアを含む保護マイクロキャビティ容器キャリアシステムに関する。
【0019】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ容器は、マイクロキャビティフラスコ、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティバイオリアクタ、または積層型3Dマイクロキャビティ培養容器である。
【0020】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ基体は、複数のマイクロキャビティを備える。いくつかの実施の形態において、複数のマイクロキャビティは、六方最密パターンで配列されている。いくつかの実施の形態において、各マイクロキャビティは丸底を有する。いくつかの実施の形態において、各マイクロキャビティは、そのマイクロキャビティ容器内で培養される細胞が三次元(3D)細胞集合体を形成するように作られている。
【0021】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ基体の内面は、細胞に対して非接着性である。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ基体の内面は、パーフルオロポリマー、オレフィン、脂質、アガロース、非イオン性ヒドロゲル、ポリエーテル、ポリオール、細胞接着を阻害するポリマー、またはその組合せから作られた細胞非接着性表面コーティングを含む。いくつかの実施の形態において、細胞非接着性表面コーティングは、極低接着(ULA)表面コーティングを含む。
【0022】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ基体は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルペンテン、(ポリ)4-メチルペンテン(PMP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、シリコーンゴムまたは共重合体、エチレン酢酸ビニル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、またはその組合せから形成される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】マイクロプレート用の保護プラテンの実施の形態を示す図
【
図2】マイクロキャビティ容器のマイクロキャビティ基体の実施の形態の画像
【
図3】マイクロキャビティ基体の実施の形態の拡大図
【
図4】マイクロキャビティ基体の実施の形態の拡大図
【
図5】マイクロキャビティ基体の実施の形態の拡大図
【
図7】実施の形態による、マイクロキャビティ容器と一緒の保護キャリアの斜視図
【
図8】実施の形態による、マイクロキャビティ容器と一緒の保護キャリアの斜視図
【
図9】実施の形態による、マイクロキャビティ容器と一緒の保護キャリアの断面側面図
【
図11】実施の形態による、マイクロキャビティ容器と一緒の保護キャリアの斜視図
【
図12】実施の形態による、マイクロキャビティ容器と一緒の保護キャリアの斜視図
【
図13】実施の形態による、マイクロキャビティ容器と一緒の保護キャリアの断面側面図
【
図15】実施の形態において、マイクロキャビティ容器と一緒の保護キャリアの斜視図
【
図18】
図17の保護キャリアの実施の形態の線C-Cでの断面側面図
【
図19】
図17の保護キャリアの実施の形態の線D-Dでの断面側面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、そのいくつかの実施の形態が添付図面に示されている、本開示の主題の様々な実施の形態を詳しく参照する。図面に使用されている同様の数字は、同様の構成要素、工程などを指す。しかしながら、所定の図面においてある構成要素を指すためにある数字を使用することは、同じ数字が振られた別の図面の構成要素を限定する意図はないことが理解されよう。それに加え、構成要素を指すために異なる数字を使用することは、異なる数字が振られた構成要素は、他の数字が振られた構成要素と同じまたは類似ではあり得ないことを示す意図はない。
【0025】
ガス透過性は、3D細胞培養環境に寄与する性質である。マイクロキャビティ容器のマイクロキャビティ内でガス透過性を可能にすることによって、細胞培養増殖培地は、それほど頻繁に交換する必要がないであろうし、細胞増殖が促進されるであろう。マイクロキャビティ容器は、マイクロキャビティ基体とも称される、微小規模のウェルを備えたガス透過性基体から形成されるという点で、その表面形状と形成が独特である。そのようなマイクロキャビティ容器は、マイクロキャビティ基体の厚さのために、ガス透過性を享受しており、ガス透過性は、マイクロキャビティ基体が、約28マイクロメートルから約72マイクロメートルの厚さを有する、非常に薄いポリスチレン素材から形成されるために生じる。ガス透過性は細胞集合体を培養するための利点であるかもしれないが、マイクロキャビティ基体の素材が薄いために、マイクロキャビティ細胞培養容器が、出荷と使用の最中に損傷を受けやすくなってしまう。
【0026】
図1に示されるように、1536ウェルのマイクロプレート(ニューヨーク州、コーニング所在のCorning Incorporated)などのある主のマイクロプレート110は、出荷中に保護プラテン120を備えることがある。プラテン120は、出荷中にマイクロプレートのウェルの底部の擦り傷を防ぐためにマイクロプレート110の底凹部に嵌まるサイズである。しかしながら、そのようなプラテンでは、マイクロキャビティを備えた容器は保護されないであろう。例えば、プラテン120は、マイクロプレートのフットプリント内に嵌まるように作られているので、ガス交換の部屋や空間がなく、そのようなプラテンは、使用中にマイクロプレート上に保持されたり、マイクロプレートを運んだりすることが意図されていない。
【0027】
図2は、ある実施の形態によるマイクロキャビティ容器のマイクロキャビティ基体の断面の画像を示している。
図2に示されるように、マイクロキャビティ基体は、波状であるか、または正弦波に類似の形状の断面形状を有することがある。そのような実施の形態において、マイクロキャビティウェルの底は丸まっており(例えば、半球状に丸い)、側壁は、ウェルの底部から上部まで直径が増加し、ウェル間の境界またはバリアは丸まっている。それゆえ、マイクロキャビティウェルの上部は直角では終わらない。いくつかの実施の形態において、ウェルの幅は、隣接するウェル間のバリアの幅より大きい。そのような実施の形態により、培養表面の所定の区域内でウェルの数を多くすることができる。
【0028】
図2に示されたマイクロキャビティ基体の実施の形態は、各マイクロキャビティの底部に沿ったマイクロキャビティの割合と基体の厚さを示す。マイクロキャビティの直径は約500マイクロメートルである。
図2のマイクロキャビティ基体におけるマイクロキャビティウェルの深さは、560.396マイクロメートルと測定され、その測定は、ウェル間の境界の上部でのマイクロキャビティウェルの開口の中心から、マイクロキャビティウェルの底部の中心までで行われた。マイクロキャビティウェルの底部で測定された
図2のマイクロキャビティ基体の厚さは、マイクロキャビティの底部内で厚さが測定された場所に応じて、26.151マイクロメートルから67.756マイクロメートルの範囲にある。
図2のマイクロキャビティ基体の厚さを、ウェルの底部がウェルの側壁と出合う、マイクロキャビティウェルの底部で測定した場合、厚さの測定値は65.756マイクロメートルであった。
図2のマイクロキャビティ基体の厚さを、マイクロキャビティウェルの底部の中心で測定した場合、厚さ範囲は26.15マイクロメートルから28.529マイクロメートルであった。
【0029】
ここに記載された実施の形態によるマイクロキャビティ容器は、複数のマイクロキャビティを備えるマイクロキャビティ基体を含む。各マイクロキャビティは、細胞に非接着性である丸底を有する内部空洞を含むことがある。それゆえ、ここに記載されたマイクロキャビティ容器は、マイクロキャビティ中に播種された細胞が、自己組織化するか、または互いに接着して、各マイクロキャビティ中にスフェロイドを形成することによって、3D細胞培養を促進する細胞培養デバイスである。マイクロキャビティは、浅く、細胞培養培地が、一度に全てのキャビティ内のスフェロイド、オルガノイド、または3D細胞集合体の全てを覆うことができ、手作業が容易になる。
【0030】
ある実施の形態において、マイクロキャビティの上面は、側壁の底部に近い位置まで窪んでいることがある。個々のマイクロキャビティは、少容量の培地を保持することができる。個々のマイクロキャビティは、どの適切な寸法を有してもよい。例えば、個々のマイクロキャビティの直径または幅は、約500マイクロメートルから約5ミリメートルの範囲にあることがある。個々のマイクロキャビティの深さは、約500マイクロメートルから約6ミリメートルの範囲にあることがある。いくつかの実施の形態において、個々のマイクロキャビティの深さは、約500マイクロメートルから約650マイクロメートルであることがある。いくつかの実施の形態において、個々のマイクロキャビティの深さは、約1.6ミリメートルであることがある。スフェロイド、オルガノイド、または3D細胞集合体が、個々のマイクロキャビティ内の少量の培地のみに依存する必要がないように、マイクロキャビティ容器に過剰の培地が添加されることがある。
【0031】
図3は、マイクロキャビティ容器の底面を形成する、マイクロウェルのアレイのパターンが形成されたマイクロキャビティ基体の実施の形態の拡大図を示す。マイクロキャビティ基体300の拡大図は、マイクロキャビティ310またはマイクロウェルのアレイを含む。ここに記載されたマイクロキャビティまたはマイクロウェルのアレイを有するそのようなマイクロキャビティ基体は、どの適切なサイズや形状を有してもよい、いくつの適切な数のマイクロキャビティを画成してもよい。マイクロキャビティは、そのサイズと形状に基づいて、容積を規定する。多くの実施の形態において、マイクロキャビティの1つ以上または全てが、縦軸に対して対称および/または回転対称である。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの1つ以上または全ての縦軸は、互いに平行である。マイクロキャビティは、均一にまたは不均一に間隔が空けられることがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティは、均一に間隔が空けられている。マイクロキャビティの1つ以上または全てが、同じサイズと形状を有しても、または異なる形状とサイズを有しても差し支えない。
【0032】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティを画成するマイクロキャビティ基体は、六方最密マイクロキャビティのアレイを備える。そのような六方最密充填密度または「ハニカム」マイクロキャビティ形態は、マイクロキャビティの微小サイズの構造と相まって、多くのスフェロイド、オルガノイド、または3D細胞集合体を一度に培養し、バルクスフェロイド、オルガノイド、または3D細胞集合体生産を可能にする。六角形マイクロキャビティ401のアレイを有する基体を示す、そのような基体400の実施の形態の画像が、
図4に示されている。ある実施の形態において、そのような充填密度により、約4.5インチ×約3インチ(約11cm×7.6cm)の典型的なマイクロプレートの作業表面積において直径が500μmである、約12,588個のウェルが含まれる。
図5は、六方最密マイクロキャビティ構造を有するマイクロキャビティのアレイを有する基体510の実施の形態のマイクロキャビティ501内で増殖させられている細胞(スフェロイド、オルガノイド、または3D細胞集合体)500を示す。いくつかの実施の形態において、各マイクロキャビティ501内の細胞は、図から分かるように、1つのスフェロイド、オルガノイド、または3D細胞集合体500を形成している。
【0033】
本開示の実施の形態によるマイクロキャビティ容器は、均一な培養環境を提供する。そのマイクロキャビティ容器内で培養された全てのスフェロイド、オルガノイド、または3D細胞集合体は、同時に同じ処理を受けることができ、それによって、均一な培養環境が提供される。対照的に、個々のウェル内の典型的なプレートは、自動化設備でさえも、各ウェルに同じ容量を分配することは難しいので、どちらかというと不均一な培養環境を有する。
【0034】
ここに記載された主題の態様において、出荷中にマイクロキャビティ容器のガス透過性マイクロキャビティを保護し、細胞培養に使用する最中にマイクロキャビティ容器の保護キャリアの機能も果たすことのできるデバイスが提供される。この保護キャリアは、マイクロキャビティ容器の底部のフットプリントよりもわずかに大きい剛性板からなる。実施の形態において、そのマイクロキャビティ容器は、マイクロキャビティ容器の底面にマイクロキャビティ基体を備える。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ容器はマイクロキャビティフラスコであることがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ容器は、開放ウェルマイクロキャビティプレートまたは貯留マイクロキャビティプレートなどのマイクロキャビティプレートであることがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ容器は、積層可能であることがあり、蓋または上面をさらに備えることがある。
【0035】
ある実施の形態において、マイクロキャビティ容器の底部にある繊細なマイクロキャビティ基体を保護するための保護キャリアが提供される。ある態様において、保護キャリアは、マイクロキャビティ容器を支持することになる剛性材料から形成されることがある。保護キャリアは、実質的に平らな剛性板から作られることがあり、その剛性板は、剛性板の上面から上方に延在するフランジおよび剛性板の底面から下方に延在する1つ以上のリブを有する。保護キャリアが反っていたり、ねじれていたりする場合、マイクロキャビティ容器の底部は、保護キャリア内または上に嵌まらないことがある。この実質的に平らな剛性板は、実質的に長方形の形状を有することがある。いくつかの実施の形態において、剛性板は、角が丸まった実質的に長方形の形状を有することがある。剛性板は、マイクロキャビティ容器を支持した状態で、ユーザが保護キャリアを取り扱ったり、輸送したりできるどの適切な厚さを有してもよい。いくつかの実施の形態において、剛性板は、約1mmから約2mmの厚さを有する。いくつかの実施の形態において、剛性板は、約1.5mmから1.8mmの厚さを有する。
【0036】
ある実施の形態において、保護キャリアは、マイクロキャビティ容器の底部外周の形状に一致する、剛性板の上面の外周の周りにある隆起フランジを備えることがある。剛性板上のフランジは、マイクロキャビティ容器を、保護キャリア内にまだありながら、充填および排出のために操作できるように、その中に間隙または開口を有することがある。いくつかの実施の形態において、剛性板の区域は、キャリアを容器で適所に保持するための場所を提示するハンドルの機能を果たすために拡張されることがある、またはフランジ内に間隙がないことがある。いくつかの実施の形態において、剛性板の区域は、ハンドルを形成するために保護キャリアの1つの側に延長部分を備える。フランジは、マイクロキャビティ容器を保護キャリアで収容し、支持することを可能にするどの適切な高さを有してもよい。いくつかの実施の形態において、フランジは、約5mmから約6mmの高さを有する。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、約7mmから約8mmの全高を有する。
【0037】
ある実施の形態において、保護キャリアは、剛性板の上面にあるフランジ内部に複数の隆起スタンドオフを備えることがある。そのスタンドオフは、保護キャリアの上面からマイクロキャビティ容器を離して持ち上げて、マイクロキャビティと周囲空気との間でガス交換を行わせることができる。隆起スタンドオフは、マイクロキャビティ容器の底部が剛性板の上面と密接に接触するのを防ぐ。スタンドオフのためにマイクロキャビティ容器と剛性板の上面との間に作られた空間により、マイクロキャビティ容器のガス透過性基体を通じてガス交換を行うことができる。例えば、スタンドオフにより、キャリアとマイクロキャビティ基体との間に酸素が入り込み、ガス交換を行うことができる。いくつかの実施の形態において、各スタンドオフは、約0.5mmから約1.5mmの厚さを有する。いくつかの実施の形態において、各スタンドオフは、約3mmから4mmの高さで剛性板の上面から延在する第1の部分を含む。いくつかの実施の形態において、その第1の部分の高さは約3mmから約3.5mmである。いくつかの実施の形態において、各スタンドオフは、約3mmから約4mmの長さで剛性板の上面に沿ってフランジの内面から延在する第2の部分を含む。いくつかの実施の形態において、スタンドオフの第2の部分の長さは約3mmから約3.5mmである。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、実質的に長方形の保護キャリアの角に近接して配置されたスタンドオフを備える。
【0038】
ある実施の形態において、保護キャリアは、保護キャリアの剛性板の底面に1つ以上のリブを備えることがある。剛性板の底面から下方に延在する1つ以上のリブは、保護キャリアを、それが載置されている表面から離して隆起させる。1つ以上のリブは、保護キャリアの底部にある脚部の機能を果たす。保護キャリアに剛性板の底面から延在するリブを設けることによって、保護キャリアと、それが載置されている表面との間に空間が設けられる。この特徴により、保護キャリアの下で空気が循環することができ、保護キャリアが持ち上げ易くなる。リブまたは脚部は、輸送を容易にし、使いやすくする。何故ならば、脚部は、実験台やインキュベータの表面などの作業面と保護キャリアの底面との間に存在するかもしれない真空をなくすのに役立つからである。例えば、キャリアの底面が平らな場合、保護キャリアの平らな底面と平らな作業面との間に真空が生じることがある。そのような真空は、マイクロキャビティ容器と一緒の保護キャリアを作業面から移動させようとするまたは持ち上げようとするときの問題(これには、容器と一緒のキャリアを表面の縁まで不安定に引きずって、真空を破る必要があるであろう)を含む難点をユーザに提示するであろう。
【0039】
そのリブは、空気流の循環を可能にするどの適切な高さであってもよい。いくつかの実施の形態において、1つ以上のリブは、約1mmから約2mmの高さを有する。いくつかの実施の形態において、1つ以上のリブは、底面の縁から約1mmから約2mmの位置で、底面の外周に広がる。いくつかの実施の形態において、1つ以上のリブは連続リブである。いくつかの実施の形態において、1つ以上のリブは、剛性板の角に近接する1つ以上のリブのオフセットと比べて、剛性板の側部での底面の縁からのオフセットが大きい。いくつかの実施の形態において、1つ以上のリブのオフセットは、第1の保護キャリアの1つ以上のリブが、第2の保護キャリアのスタンドオフと密接に接触せずに、第1の保護キャリアを第2の保護キャリアの上に積み重ねられるように作られている。
【0040】
ある実施の形態において、保護キャリアは、保護キャリアにより収容されるべきマイクロキャビティ容器のフットプリントに従うどの適切な形状を有してもよい。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、実質的に長方形の形状を有することがある。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、約85mmから約90mmの幅を有する。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、約87mmから約88mmの幅を有する。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、約120mmから約125mmの長さを有する。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、約122mmから約123mmの長さを有する。いくつかの実施の形態において、保護キャリアの実質的に長方形の形状は、丸まった角を有することがある。いくつかの実施の形態において、保護キャリアの形状は、マイクロキャビティ容器のフットプリントを収容するように実質的に長方形の部分およびユーザのためのハンドルの機能を果たすために、フットプリントを超えて延在する剛性板の区域を含むことがある。
【0041】
ある態様において、保護キャリアの上部は、マイクロキャビティフラスコやマイクロキャビティプレートなどの3D培養容器の底部と係合するように作られている。マイクロキャビティフラスコは、マイクロキャビティフラスコの底部に脚部を有することがあり、底部の脚部は、複数のスタンドオフ上に載って、保護キャリアのフランジと上面との間に空間を作り、ガス交換を可能にすることができる。
【0042】
ある態様において、保護キャリアの底部は、マイクロキャビティフラスコやマイクロキャビティプレートなどの3D培養容器の上部と係合するように作られている。いくつかの実施の形態において、保護キャリアの底部は、マイクロキャビティフラスコの上面にある蓋と係合して、マイクロキャビティフラスコと保護キャリアを積み重ねられるように作られている。そのような積重ねは、インキュベータ内や、実験台上の空間を使用するのに有益であろう。マイクロキャビティフラスコは、マイクロキャビティフラスコの上部にある蓋にリッジまたはリップも有することがあり、保護キャリアの底面にある1つ以上のリブは、積み重ねられるように、マイクロキャビティフラスコの蓋にあるリッジまたはリップと係合するように作られることがある。
【0043】
保護キャリアは、マイクロキャビティ容器のための剛性支持を提供するのに適したどの材料から製造されてもよい。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、高分子材料、金属、ガラス、またはその組合せから形成されることがある。保護キャリアの高分子構成材料は、「プラスチック」重合体、共重合体、またはポリマーブレンドを含むことがある。高分子材料の非限定例としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、他のそのような高分子、またはその組合せが挙げられる。いくつかの実施の形態において、保護キャリアはポリプロピレンから形成される。金属材料の非限定例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、亜鉛、またはその組合せが挙げられる。ガラス材料の非限定例としては、ホウケイ酸ガラスまたはGorilla(登録商標)ガラス(ニューヨーク州、コーニング所在のCorning Incorporated)が挙げられる。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、キャリアが半透明または透明であるような材料から形成されることがある。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、キャリアが着色されている、または不透明であるような材料から形成されることがある。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、再生利用可能または再利用可能な材料から形成されることがある。いくつかの実施の形態において、保護キャリアは、生分解性である材料から形成されることがある。再生利用可能または生分解性材料の非限定例としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、他のそのような高分子、またはその組合せなどの高分子材料が挙げられる。
【0044】
ある態様において、ここに記載された実施の形態による保護キャリアは、マイクロキャビティ容器を輸送するまたは運ぶために使用されることがある。この薄いマイクロキャビティ基体は剛性保護キャリアで保護され、この剛性保護キャリアは、薄いマイクロキャビティ基体に損傷を与える恐れなく、ユーザがマイクロキャビティ容器を保持するおよび/または運ぶためのより大きい表面積を提供する。
【0045】
ある態様において、ここに記載された実施の形態による保護キャリアは、マイクロキャビティ容器の底部で薄いマイクロキャビティ基体を保護するために、出荷中に使用されることがある。保護キャリアは、マイクロキャビティ容器の底部が保護キャリアの上部と係合できるように作られている。この保護キャリアは、剛性板の外周の少なくとも一部の周りにフランジが配置された上面を有する剛性板を含むことがあり、そのフランジは、剛性板の上面から上方に延在している。フランジの内面の周りと、剛性板の上面にスタンドオフが配置されることがある。実施の形態において、マイクロキャビティ容器は、マイクロキャビティ容器の外周の少なくとも一部上など、底面から下方に脚部が延在した、薄いマイクロキャビティ基体を有する底面を備える。マイクロキャビティ容器の底部に配置された脚部は、保護キャリアのフランジ内に収まり、保護キャリアのスタンドオフ上に載るまたは着座する。このスタンドオフにより、マイクロキャビティ容器の側面および底部と、保護キャリアのフランジおよび上面との間に空間ができる、またはそれらの間が分離される。
【0046】
ある態様において、ここに記載された実施の形態による保護キャリアは、組織培養細胞の増殖に十分な一定の温度と湿度を有する細胞培養インキュベータまたは環境内で使用するのに適している。マイクロキャビティ容器は保護キャリアと係合して、マイクロキャビティ容器の底部で薄いマイクロキャビティ基体が、インキュベータ表面と擦れるのを防ぐ。保護キャリアは、酸素がマイクロキャビティ容器の底部でマイクロキャビティ基体に到達して、マイクロキャビティ容器のガス交換を行うこともできる。
【0047】
図6から
図9は、マイクロキャビティ容器の保護キャリア800の実施の形態を示している。
図6は、実施の形態による保護キャリア800の斜視図を示す。
図7は、保護キャリア800の上にイクロキャビティ容器810が浮かんでいる保護キャリア800の斜視図を示す。
図8は、マイクロキャビティ容器810が保護キャリア800上の適所にある、
図7の保護キャリア800およびマイクロキャビティ容器810の斜視図を示す。
図9は、保護キャリア800上の適所にあるマイクロキャビティ容器810の断面側面図を示す。
【0048】
保護キャリア800は、上面833および底面837を有する剛性板830を備える。保護キャリア800の外周の少なくとも一部の周りで上面833からフランジ840が上方に延在している。
図6~9に示された保護キャリアの実施の形態において、フランジ840は、保護キャリア800の外周の周りに連続して延在しておらず、保護キャリア800の1つの側831でフランジ840に間隙がある。ハンドル835は、マイクロキャビティ容器810の底部815またはフットプリントを収容する保護キャリアの部分を超えて、フランジ840がない剛性板830の側831に向かって延在する保護キャリアの区域である。ハンドル835は、どの適切な形状やサイズであってもよい。ある実施の形態において、ハンドル835は、保護キャリア800の反対側の幅より小さい幅を有することがある。
図7~9に示されるように、マイクロキャビティフラスコなどのマイクロキャビティ容器810の前方部分817は、保護キャリア800の側831でフランジ840の間隙に位置付けられることがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ容器810の前方部分817は、保護キャリア800のハンドル835を超えて延在することがある。
【0049】
複数のスタンドオフ850が保護キャリア800の上面833上に配置されており、各スタンドオフ850は、フランジ840の内面847と密接に接触して上面833から垂直に延在する第1の部分、および上面833と密接に接触して、それに沿って水平方向に第1の部分から延在する第2の部分を含む。いくつかの実施の形態において、各スタンドオフ850の第1の部分は、フランジ840の上部843を垂直に超えて延在しない。マイクロキャビティ容器810の底部分815は、スタンドオフ850の第1の部分に接触して、スタンドオフ850の第2の部分の上に載ることがある。それゆえ、マイクロキャビティ容器は、保護キャリアの上部で、保護キャリアの外周の少なくとも一部を形成するフランジ内に配置されることがある。マイクロキャビティ容器810の底部分815は、スタンドオフ850上に載るか、またはそれに支持されるので、マイクロキャビティ基体813を含むマイクロキャビティ容器の底部は、剛性板830の上面833と密接に接触していない。スタンドオフ850により、保護キャリア800の上面833とマイクロキャビティ基体813との間の空間、並びにフランジ840の内面847とマイクロキャビティ容器810の底部分815との間の空間が生じる。スタンドオフ850により作られた空間のために、壊れやすいマイクロキャビティ基体813を実質的に平らな剛性板で保護することができる。スタンドオフ850で作られた空間のために、マイクロキャビティ容器810のガス透過性マイクロキャビティ基体813を通じた空気交換ができるようになる。
【0050】
保護キャリア800は、剛性板830の底面837に1つ以上のリブ860を備える。1つ以上のリブ860は、連続リブであることがある。1つ以上のリブ860は、底面837の外周に近接した連続リブとして、その底面の縁から約1mmから約2mmだけ延在することがある。1つ以上のリブ860は、剛性板830の底面837から下方に延在し、保護キャリア800の脚部の機能を果たす。保護キャリア800に、底面837から延在する1つ以上のリブ860を設けることによって、保護キャリア800と、その保護キャリアが着座することのある水平面(例えば、実験台、インキュベータ表面)などの表面との間に空間が設けられ、それによって、保護キャリアの下で空気が循環することができる。
【0051】
図10から
図14は、マイクロキャビティ容器のための保護キャリア1000の実施の形態を示している。
図10は、実施の形態による保護キャリア1000の斜視図を示す。
図11は、保護キャリア1000の上にマイクロキャビティ容器1010が浮かんでいる保護キャリア1000の斜視図を示す。
図12は、マイクロキャビティ容器1010が保護キャリア1000上の適所にある、
図11の保護キャリア1000およびマイクロキャビティ容器1010の斜視図を示す。
図13は、保護キャリア1000上の適所にあるマイクロキャビティ容器1010の断面側面図を示す。
図14は、保護キャリア1000の底面図を示す。
【0052】
保護キャリア1000は、上面1033および底面1037を有する剛性板1030を備える。フランジ1040が、保護キャリア1000の外周1038の周りに上面1033から上方に延在している。
図10~14に示された保護キャリアの実施の形態において、フランジ1040は、保護キャリア1000の外周の周りに連続して延在している。保護キャリアを形成する剛性材料のために、ユーザは、保護キャリア内に配置されたマイクロキャビティ容器の底部にある繊細なマイクロキャビティ基体に損傷を与えずに、輸送中または使用中に、保護キャリアの底面にしがみつく、または保護キャリアを側部から持ち上げることができる。
【0053】
複数のスタンドオフ1050が保護キャリア1000の上面1033上に配置されており、各スタンドオフ1050は、フランジ1040の内面1047と密接に接触して上面1033から垂直に延在する第1の部分、および上面1033と密接に接触して、それに沿って水平方向に第1の部分から延在する第2の部分を含む。いくつかの実施の形態において、各スタンドオフ1050の第1の部分は、フランジ1040の上部1043を垂直に超えて延在しない。マイクロキャビティ容器1010の底部分1015は、スタンドオフ1050の第1の部分に接触して、スタンドオフ1050の第2の部分の上に載ることがある。それゆえ、マイクロキャビティ容器は、保護キャリアの上部で、保護キャリアの外周を形成するフランジ内に配置されることがある。マイクロキャビティ容器1010の底部分1015は、スタンドオフ1050上に載るか、またはそれに支持されるので、マイクロキャビティ基体1013を含むマイクロキャビティ容器の底部は、剛性板1030の上面1033と密接に接触していない。スタンドオフ1050により、保護キャリア1000の上面1033とマイクロキャビティ基体1013との間の空間、並びにフランジ1040の内面1047とマイクロキャビティ容器1010の底部分1015との間の空間が生じる。スタンドオフ1050により作られた空間のために、壊れやすいマイクロキャビティ基体1013を実質的に平らな剛性板で保護することができる。スタンドオフ850で作られた空間のために、マイクロキャビティ容器1010のガス透過性マイクロキャビティ基体1013を通じた空気交換もできるようになる。
【0054】
保護キャリア1000は、剛性板1030の底面1037に1つ以上のリブ1060を備える。
図14に示されるように、1つ以上のリブ1060は連続リブ1060である。1つ以上のリブ1060は、底面1037の外周1038に近接した連続リブとして、その底面の縁から約1mmから約2mmだけ延在する。1つ以上のリブ1060は、剛性板の角に近接する1つ以上のリブのオフセットと比べて、剛性板の側部での底面1037の縁または外周1038からのオフセットが大きい。1つ以上のリブ1060は、剛性板1030の底面1037から下方に延在し、保護キャリア1000の底部で脚部の機能を果たす。保護キャリア1000に、底面1037から延在する1つ以上のリブ1060を設けることによって、保護キャリア1000と、その保護キャリアが着座することのある水平面(例えば、実験台、インキュベータ表面)などの表面との間に空間が設けられる。この特徴によって、保護キャリアの下で空気が循環することができ、保護キャリアをより容易に持ち上げることができる。
【0055】
ここに記載された主題の態様において、保護キャリアは、マイクロキャビティ基体を含むマイクロキャビティ容器を収容するのに適した寸法を有することがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティプレートは、開放ウェルプレートを含むことがある。例えば、開放ウェル型マイクロキャビティプレートは、底部プレートまたは底面および1つ以上の側壁を備えることがある。ある実施の形態において、開放ウェル型マイクロキャビティプレートは、主面を画成する底部プレート、底部プレートから延在して貯留部を画成する1つ以上の側壁、および主面内に形成される複数のマイクロキャビティを備えることがある。底部プレートは、スフェロイド、オルガノイド、または3D細胞集合体の増殖を促進または誘発する一連のマイクロキャビティを有する基体から、全体または一部が形成されることがある。各マイクロキャビティは、主面と同一平面であり、貯留部に開いた上部開口、および主面の下に位置付けられたマイクロキャビティの一番底を画成する。開放ウェル型マイクロキャビティプレートは、マイクロキャビティの表面の上に貯留部を画成することがあり、これにより、増加した体積の細胞培養培地を使用することができ、それゆえ、それほど頻繁に培地交換を行わずに済む。貯留部プレートは、マイクロウェルプレートの個々の浅いウェルを充填するのに典型的に使用されるであろう培地を上回って培地を追加することが可能になり、異なるマイクロキャビティ内で培養される細胞と流体連通することができる。
【0056】
図15から
図19は、開放ウェル型マイクロキャビティプレートなどのマイクロキャビティ容器1510と一緒の保護キャリア1500の実施の形態を示している。
図15は、実施の形態によるマイクロキャビティ容器1510と一緒の保護キャリア1500の斜視図を示す。
図16は、保護キャリア1500の斜視図を示す。
図17は、保護キャリア1500の上面図を示す。
図18は、保護キャリア1500の線C-Cでの断面側面図を示す。
図19は、保護キャリア1500の線D-Dでの断面側面図を示す。
図15~19に示されるように、保護キャリアはマイクロキャビティ容器1510を収容するように作られており、保護キャリア1500は、マイクロキャビティ容器1510の底部分1515よりわずかに大きいフットプリントを有する。保護キャリア1500は、外周1538、上面1533および底面1537を有する実質的に長方形の剛性板1530を備える。フランジ1540が、剛性板1530の外周1538に配置され、上面1533から上方に延在している。複数のスタンドオフ1550がフランジ1540の周りに配置されており、各スタンドオフ1550の第1の部分が、フランジ1540の内面1547と密接に接触して、上面1533から垂直に延在しており、各スタンドオフ1550の第2の部分が、剛性板1530の上面1533に沿って第1の部分から水平に延在している。実施の形態において、保護キャリアは、マイクロキャビティ容器を支持し、マイクロキャビティ容器のマイクロキャビティ基体への空気交換を可能にするスタンドオフをいくつの適切な数だけ有してもよい。スタンドオフは、どの適切な位置で上面にあるフランジの周りに配置されてもよい。いくつかの実施の形態において、スタンドオフは、保護キャリアの周りに均一に配置されることがある。いくつかの実施の形態において、スタンドオフは、剛性板の各角に近接して、剛性板の側部に沿って、またはその組合せで、配置されることがある。実施の形態において、各スタンドオフの厚さTsは、マイクロキャビティ容器を支持し、マイクロキャビティ容器のマイクロキャビティ基体への空気交換を可能にする任意の適切な厚さになる。いくつかの実施の形態において、保護キャリアの複数のスタンドオフの各スタンドオフは、同じTsを有することになる。
【0057】
ある態様において、ここに記載された保護キャリアは、液体取扱工程中に細胞培養容器をある角度に向けるために使用されることがある。細胞培養容器をそのようにある角度に向けることにより、液体取扱工程中にスフェロイドを維持することができる。例えば、保護キャリアが平面に位置付けられることがあり、細胞培養容器の一部が保護キャリア上に位置付けられることがある。さらに、細胞培養容器の第1の部分(例えば、細胞培養容器の第1の側;細胞培養容器の第1の角)が、保護キャリア上に位置付けられることがあり、細胞培養容器の第2の部分(例えば、第1の側と反対の細胞培養容器の第2の側;細胞培養容器の第1の角と反対の細胞培養容器の第2の角)が平面に位置付けられ、それによって、保護キャリア上に位置付けられた第1の部分から平面に位置付けられた第2の部分まで下方に角度が向けられた細胞培養容器が提供される。液体取扱工程は、培地交換(例えば、細胞培養容器からの培地除去、およびそこへの追加)を含むことがある。
【0058】
ある実施の形態において、細胞培養容器は、細胞培養の液体取扱工程中に少なくとも部分的に保護キャリア上に位置付けられることがある。ある実施の形態において、液体取扱工程は、細胞培養培地の交換を含む。ある実施の形態において、細胞培養培地の交換は、細胞培養容器への細胞培養培地の追加、細胞培養容器からの細胞培養培地の除去、またはその組合せを含む。保護キャリアは、平面に位置付けられる、または置かれることがある。細胞培養容器は、次に、少なくとも部分的に平面に、部分的に保護キャリア上に配置される、または位置付けられることがある。ある実施の形態において、細胞培養容器の第1の角は、保護キャリア上に位置付けられることがあり、第1の角と反対にある細胞培養容器の第2の角は、平面に配置されるまたは位置付けられることがある。ある実施の形態において、細胞培養容器の第1の側は、保護キャリア上に位置付けられることがあり、第1の側と反対にある細胞培養容器の第2の側は、平面に配置されるまたは位置付けられることがある。それゆえ、このように配置された位置は、ある角度に向けられた細胞培養容器を提供し、ここで、細胞培養容器は、保護キャリア上に配置されたまたは位置付けられた細胞培養容器の第1の部分(例えば、第1の角または第1の側)から、平面に配置されたまたは位置付けられた細胞培養容器の第2の部分(例えば、第2の角または第2の側)まで下方に角度が向けられている。
【0059】
本開示の実施の形態によるマイクロキャビティ容器は、細胞培養に使用するためのマイクロキャビティを含むどの適切な容器であってもよい。マイクロキャビティ容器の非限定例としては、マイクロキャビティフラスコ、開放ウェル型貯留部プレートなどのマイクロキャビティプレート、マイクロキャビティバイオリアクタ、または積層型3Dマイクロキャビティ培養容器が挙げられるであろう。
【0060】
本開示の実施の形態によるマイクロキャビティ容器は、均一な培養環境を提供する。このマイクロキャビティプレート内で培養される全てのスフェロイド、オルガノイド、または3D細胞集合体は、同じときに同じ処理を受け、それによって、均一な培養環境を提供することができる。対照的に、個々のウェルを有する典型的なプレートは、自動化設備でさえ、各ウェルに同じ容量を分配することが難しいので、どちらかというと、不均一な培養環境を有する。
【0061】
特定の実施の形態において、ここに記載されたマイクロキャビティ容器は、底面としてマイクロキャビティ基体を含む。マイクロキャビティ基体は、複数のマイクロキャビティを備える。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティは、マイクロキャビティ基体のガス透過性材料を通じてマイクロキャビティ容器の外部と気体連通している。複数のマイクロキャビティにおける各マイクロキャビティは、マイクロキャビティ内で培養された細胞が、規定の直径のスフェロイド、オルガノイド、または3D細胞集合体を形成するように作られることがある。マイクロキャビティは、スフェロイド、オルガノイド、または3D細胞集合体、または3D細胞集合体を培養するのに適したどのサイズであってもよい。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの幅は、約500マイクロメートルから約5mmの範囲にあることがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの深さは、約500マイクロメートルから約6mmの範囲にあることがある。例えば、サイズがより大きいマイクロキャビティの実施の形態において、マイクロキャビティはスフェロイドプレートのウェルサイズと重複し、それによって、バルク培養においてオルガノイドを成長させることができる。
【0062】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの形状は、液体をマイクロキャビティに導入した際の空気逃しの問題を軽減するように移行する。いくつかの実施の形態において、円形断面のマイクロキャビティの底(またはマイクロキャビティの底部分)は、スフェロイドの形成には最適であるかもしれないが、ポケットを形成せずに空気逃しするには問題であろう。この問題を軽減するために、円形のウェルの底部断面および非円形(例えば、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形など)の上部開口を有するマイクロキャビティが形成されることがある。そのような実施の形態において、側壁は、非円形(例えば、多角形)の上部開口から、円形のマイクロキャビティの底に移行する。いくつかの実施の形態において、その移行は、液体をマイクロキャビティに導入した際に、マイクロキャビティから逃げる気泡の「停滞(hanging up)」をもたらし得るどのような干渉する、ギザギザのある、または水平に現れるマイクロキャビティの側壁特徴を導入しないように徐々になっている。いくつかの実施の形態において、移行する壁および上部開口の非円形(例えば、多角形)の形状により生じるマイクロキャビティの側壁における角は、液体の進入および/または空気の逃げのための経路を提供する。
【0063】
マイクロキャビティ基体は、同じ材料または類似の材料から、マイクロキャビティ容器の残りを製造するための方法により形成されることがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ基体は、マイクロキャビティ容器の残りとは別々に成形または形成され、その後、熱結合、超音波溶接、またはプラスチック接合のどの他の方法によって結合されてもよい。マイクロキャビティ容器、マイクロキャビティ基体、またはその両方の構造の材料は、「プラスチック」重合体、共重合体、またはポリマーブレンドから作られることがある。非限定例としては、シリコーンゴム、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、他のそのような高分子、またはその組合せが挙げられる。どの適切な構成方法を使用して、マイクロキャビティ基体を形成してもよく、その非限定例としては、射出成形、熱成形、3Dプリンティング、またはプラスチック部品を形成するのに適した任意の他の方法が挙げられる。
【0064】
いくつかの実施の形態において、ガス透過性/液体不透過性材料が、マイクロキャビティ基体、マイクロキャビティ容器、またはその両方の構成に使用される。ガス透過性/液体不透過性材料の非限定例としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル、ポリスルホン、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または相溶性フルオロポリマー、シリコーンゴムまたは共重合体、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、またはポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、またはこれらの材料の組合せが挙げられる。マイクロキャビティ基体は、ウェルの少なくとも一部に亘り適切なガス透過性を有するどの適切な材料から形成されてもよい。適切なマイクロキャビティ基体の非限定例としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルペンテン、(ポリ)4-メチルペンテン(PMP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、シリコーンゴムまたは共重合体、エチレン酢酸ビニル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、またはその組合せが挙げられる。そのような材料により、マイクロキャビティの細胞培養区域と外部環境との間の効果的なガス交換が可能となり、液体や汚染物質の通過を防ぎつつ、酸素および他の気体の進入を可能にする。
【0065】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ基体の厚さは、ガス交換を最適にできるように調節される。マイクロキャビティ基体の厚さは、構成材料に依存することがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの底の厚さは、10μmと75μmの間(例えば、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、60μm、70μm、75μm、およびそれらの間の任意の範囲)にある。実施の形態において、マイクロキャビティは、2000cc/m2/日以上のマイクロキャビティ基体のガス透過性高分子材料を通る酸素透過率を有することがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティは、3000cc/m2/日以上の基体を通るガス透過率を有することがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティは、5000cc/m2/日以上の基体を通るガス透過率を有することがある。
【0066】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティは、培養中にスフェロイド、オルガノイド、または3D細胞集合体の形成を促進させる環境を提供するように、構成され、配置される。すなわち、実施の形態において、マイクロキャビティは、スフェロイド誘発構造を有する。例えば、中で細胞を増殖させるマイクロキャビティは、マイクロキャビティ内の細胞に、互いに結合し、スフェロイド、オルガノイド、または3D細胞集合体を形成させるように、細胞に非接着性であり得る。スフェロイドは、マイクロキャビティの構造により課せられるサイズ限界まで膨張する。マイクロキャビティの均一な表面形状により、その中で増殖した細胞は、同等のサイズの細胞集合体またはスフェロイドを形成することができる。いくつかの実施の形態において、デバイス内の細胞培養基体は、細胞に、基体ではなく、互いに結合させるように細胞に非接着性である。非接着性マイクロキャビティ、スフェロイド誘発マイクロキャビティ構造、および重力の組合せにより、マイクロキャビティ内で培養される細胞の増殖が限定される閉じ込め体積が規定され得、それにより、閉じ込め体積により規定される寸法を有するスフェロイドが形成される。
【0067】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの内面、または細胞培養表面は、低接着性または非接着性材料から作られている、および/または低接着性または非接着性材料で被覆されている。例えば、いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの内面、または細胞培養表面は、細胞接着を防ぐために、細胞接着を阻害する高分子や脂質で被覆または処理されることがある。そのような高分子または脂質処理の非限定例としては、ポリ-HEMA処理、プルロニック(登録商標)処理、Lipidure(登録商標)-CM5206粉末(マサチューセッツ州、ケンブリッジ所在のAmsbio)などの脂質低接着処理による処理、または超低接着(ULA)材料などの超低結合性材料による処理が挙げられる。非付着性または非接着性材料の例としては、パーフルオロポリマー、オレフィン、脂質、または同様の高分子またはその混合物が挙げられる。他の例としては、アガロース、ポリアクリルアミドなどの非イオン性ヒドロゲル、ポリエチレンオキシドなどのポリエーテル、およびポリビニルアルコールなどのポリオール、または同様の材料もしくはその混合物が挙げられる。いくつかの実施の形態において、低結合性処理または表面コーティングは、「Corning」Ultra Low Attachment(ULA)表面コーティング(ニューヨーク州、コーニング所在のCorning Incorporated)である。この「Corning」ULA(ニューヨーク州、コーニング所在のCorning Incorporated)表面は、親水性で、生物学的に不活性で、非分解性であり、これにより、高度に再現性のあるスフェロイドの形成と、容易な収穫が促進される。ULA表面の共有結合により、ウェル表面への細胞接着が低下する。ULA表面により、均一で再現性のある3D多細胞スフェロイド形成が可能になる。
【0068】
多種多様な細胞種類を、ここに記載されたマイクロキャビティ容器内で培養することができる。例えば、ここに記載されたマイクロキャビティ容器の実施の形態で、以下に限られないが、不死化細胞、初代培養細胞、がん細胞、幹細胞(例えば、胚または人工多能性)などを含む、どの種類の細胞も培養することができる。細胞は、哺乳類細胞、鳥類細胞、魚類細胞などであってよい。細胞は、分散(例えば、新たに播種された)、コンフルエント、二次元、三次元、スフェロイドなどを含む、どの培養形態にあってもよい。培養細胞は、さらに、様々な研究、診断、薬物スクリーニングおよび試験、治療、および工業用途に使用されることがある。
【0069】
いくつかの実施の形態において、細胞は哺乳類細胞(例えば、ヒト、ネズミ、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ニワトリ、ヤギ、ウマなど)である。細胞は、以下に限られないが、腎臓、線維芽細胞、乳腺、皮膚、脳、卵巣、肺、骨、神経、筋肉、心臓、結腸直腸、膵臓、免疫(例えば、B細胞)、血液などを含むどの組織の種類のものであってもよい。細胞は、以下に限られないが、副腎、膀胱、血管、骨、骨髄、脳、軟骨、子宮頸部、角膜、子宮内膜、食道、消化管、免疫系(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、白血球、マクロファージ、および樹状細胞)、肝臓、肺、リンパ管、筋肉(例えば、心筋)、神経、卵巣、膵臓(例えば、膵島細胞)、下垂体、前立腺、腎臓、唾液腺、皮膚、腱、精巣、および甲状腺を含む、どの所望の組織または臓器の種類からのものであっても、それに由来していてもよい。いくつかの実施の形態において、細胞は体細胞である。いくつかの実施の形態において、細胞は、任意の所望の分化状態(例えば、多能性(pluripotent, multi-potent)、運命決定、不死化など)にある、幹細胞または前駆細胞(例えば、胚幹細胞、人工多能性幹細胞)である。いくつかの実施の形態において、細胞は、疾患細胞または疾患モデル細胞である。例えば、いくつかの実施の形態において、スフェロイドは、1種類以上の種類のがん細胞または過剰増殖性状態に誘発できる細胞(例えば、形質転換細胞)を含む。
【0070】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたシステム、デバイス、および方法は、1種類以上の細胞を含む。いくつかの実施の形態において、細胞は凍結保存されている。いくつかの実施の形態において、細胞は三次元培養されている。そのような実施の形態のいくつかにおいて、そのシステム、デバイス、および方法は、1種類以上のスフェロイドを含む。いくつかの実施の形態において、細胞の1種類以上は、活発に分裂している。いくつかの実施の形態において、スフェロイドは1種類の細胞を含有する。いくつかの実施の形態において、スフェロイドは複数の種類の細胞を含有する。いくつかの実施の形態において、複数のスフェロイドが増殖される場合、各スフェロイドは同じ種類であり、一方で、他の実施の形態において、2種類以上の異なる種類のスフェロイドが増殖される。スフェロイド内で増殖している細胞は、天然細胞または変性細胞(例えば、1種類以上の非天然遺伝子変化を含む細胞)であることがある。
【0071】
この中の実施の形態に記載された細胞培養デバイスを使用して細胞を培養する場合、細胞の増殖を支援できるどの細胞培養培地を使用してもよい。細胞培養培地は、例えば、以下に限られないが、糖類、塩類、アミノ酸、血清(例えば、ウシ胎仔血清)、抗体、成長因子、分化因子、着色剤、または他の所望の因子であることがある。例示の細胞培養培地としては、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハムF12栄養混合物、最小必須培地(MEM)、RPMI培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、MesenCult(商標)-XF培地(STEMCELL Technologies Inc.から市販されている)などが挙げられる。
【0072】
いくつかの実施の形態において、前記システム、デバイス、および方法は、培地(例えば、栄養素(例えば、タンパク質、ペプチド、アミノ酸)、エネルギー(例えば、炭化水素)、必須金属およびミネラル(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、リン酸塩、硫酸塩)、緩衝剤(例えば、リン酸塩、酢酸塩)、pH変化の指示薬(例えば、フェノールレッド、ブロモクレゾールパープル)、選択剤(例えば、化学薬品、抗菌剤)などを含む)を含む。いくつかの実施の形態において、1種類以上の試験化合物(例えば、薬物)が、そのシステム、デバイス、および方法に含まれる。
【0073】
様々な開示された実施の形態は、その特定の実施の形態に関連して記載された特定の特徴、要素、または工程を含むことがあるのが認識されよう。特定の特徴、要素、または工程が、ある特定の実施の形態に関連して記載されているにもかかわらず、様々な説明されていない組合せまたは配列で代わりの実施の形態と交換されてもよいまたは組み合わされてもよいことも認識されよう。
【0074】
ここに用いられているように、名詞は、「少なくとも1つ」の対象を指し、特に明記のない限り、「ただ1つ」に限定されるべきではないことも理解されよう。それゆえ、例えば、「開口」に対する言及は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、そのような「開口」を2つ以上有する例を含む。
【0075】
ここに用いられた全ての科学用語と技術用語は、特に明記のない限り、当該技術分野で一般に使用されている意味を持つ。ここに提供された定義は、ここに頻繁に使用されている特定の用語の理解を容易にするためであり、本開示の範囲を限定する意図はない。
【0076】
ここに用いられているように、「有する」、「含む」、「構成する」などは、制約のない意味で使用され、一般に、「含むが、限定されない」ことを意味する。
【0077】
範囲が、「約」ある特定値から、および/または「約」別の特定値まで、とここに表現されることがある。そのような範囲が表現された場合、例は、そのある特定値から、および/または他方の特定値までを含む。同様に、値が、「約」という先行詞を使用して、近似として表現される場合、その特定値が別の態様を形成することが理解されよう。範囲の各々の端点が、他方の端点との関連で、および他方の端点とは関係なくの両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0078】
ここに表現される全ての数値は、特に明記のない限り、そのように記載されていようとなかろうと、「約」を含むものとして解釈されるべきである。しかしながら、列挙された各数値が、「約」その値と表現されているかいないかにかかわらず、同様に正確に考えられることがさらに理解されよう。それゆえ、「10mm未満の寸法」および「約10mm未満の寸法」の両方は、「約10mm未満の寸法」並びに「10mm未満の寸法」の実施の形態を含む。
【0079】
特に明記のない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程が特定の順序で行われることを必要とすると解釈されることは、決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、その工程がしたがうべき順序を実際に列挙していない場合、または工程が、特定の順序に限定されるべきことが、特許請求の範囲または説明に他に具体的に述べられていない場合、どの特定の順序も暗示されることは、決して意図されていない。
【0080】
特定の実施の形態の様々な特徴、要素または工程が、「含む」という移行句を使用して開示されることがあるが、「からなる」または「から実質的になる」という移行句を使用して記載されることのあるものを含む、代わりの実施の形態が暗示されることを理解すべきである。それゆえ、例えば、A+B+Cを含む方法に対して暗示される代わりの実施の形態は、方法がA+B+Cからなる実施の形態、および方法がA+B+Cから実質的になる実施の形態を含む。
【0081】
本開示の多数の実施の形態を詳細な説明を記載してきたが、本開示は、開示された実施の形態に限定されず、以下の請求項により述べられ、定義されたような本開示から逸脱せずに、様々な再配置、改変および置換が可能であることを理解すべきである。
【0082】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0083】
実施形態1
マイクロキャビティ容器のための保護キャリアにおいて、
上面と底面を備えた実質的に平らな剛性板、
前記剛性板の外周の少なくとも一部の周りに配置されたフランジであって、該剛性板の上面から延在するフランジ、および
前記剛性板の底面に配置された1つ以上のリブ、
を含む保護キャリア。
【0084】
実施形態2
前記フランジが、前記剛性板の上面の外周の周りに連続的に配置されている、実施形態1に記載の保護キャリア。
【0085】
実施形態3
前記フランジが、前記剛性板の1つの側を除いて全ての側で該剛性板の上面の外周の周りに配置されている、実施形態1に記載の保護キャリア。
【0086】
実施形態4
前記保護キャリアのフットプリントが実質的に長方形である、実施形態1に記載の保護キャリア。
【0087】
実施形態5
前記保護キャリアのフットプリントが、丸い角を有する、実施形態4に記載の保護キャリア。
【0088】
実施形態6
前記剛性板の底面に配置された1つ以上のリブが、該剛性板の外周に近接している、実施形態1に記載の保護キャリア。
【0089】
実施形態7
前記1つ以上のリブが、前記剛性板の底面から延在する約1mm~2mmの高さを有する、実施形態1に記載の保護キャリア。
【0090】
実施形態8
複数のスタンドオフをさらに含む、実施形態1に記載の保護キャリア。
【0091】
実施形態9
前記複数のスタンドオフの各スタンドオフが、前記剛性板の上面にある前記フランジの内面に配置されている、実施形態8に記載の保護キャリア。
【0092】
実施形態10
各スタンドオフが「L」字形であり、第1の部分が前記フランジの内面に垂直に配置され、第2の部分が前記剛性板の上面に水平に配置されている、実施形態9に記載の保護キャリア。
【0093】
実施形態11
各スタンドオフの前記第1の部分が、約3mm~4mmの高さおよび約0.5mm~1.5mmの厚さを有する、実施形態10に記載の保護キャリア。
【0094】
実施形態12
各スタンドオフの前記第2の部分が、約3mm~4mmの長さおよび約0.5mm~1.5mmの厚さを有する、実施形態10に記載の保護キャリア。
【0095】
実施形態13
前記保護キャリアが、マイクロキャビティ容器の底部分を保持するように作られており、該マイクロキャビティ容器の底部分は、前記フランジで画成された前記外周内で前記剛性板の上面に配置されている、実施形態8に記載の保護キャリア。
【0096】
実施形態14
前記複数のスタンドオフが、前記マイクロキャビティ容器の底部分を支持し、該マイクロキャビティ容器のマイクロキャビティ基体への空気交換を可能にするように作られている、実施形態13に記載の保護キャリア。
【0097】
実施形態15
前記マイクロキャビティ容器が、マイクロキャビティフラスコを構成する、実施形態13に記載の保護キャリア。
【0098】
実施形態16
前記マイクロキャビティ容器が、マイクロキャビティプレートを構成する、実施形態13に記載の保護キャリア。
【0099】
実施形態17
前記保護キャリアが、約7mmから8mmの高さを有する、実施形態1に記載の保護キャリア。
【0100】
実施形態18
前記剛性板の厚さが約1mm~2mmである、実施形態1に記載の保護キャリア。
【0101】
実施形態19
前記保護キャリアが、高分子、金属、またはガラスから形成される、実施形態1に記載の保護キャリア。
【0102】
実施形態20
前記高分子が、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、他のそのような高分子、またはその組合せを含む、実施形態19に記載の保護キャリア。
【0103】
実施形態21
前記金属が、アルミニウム、ステンレス鋼、亜鉛、またはその組合せを含む、実施形態19に記載の保護キャリア。
【0104】
実施形態22
前記ガラスが、ホウケイ酸ガラスを含む、実施形態19に記載の保護キャリア。
【0105】
実施形態23
前記保護キャリアが、再生利用可能または生分解性材料から形成される、実施形態1に記載の保護キャリア。
【0106】
実施形態24
前記保護キャリアが不透明である、実施形態1に記載の保護キャリア。
【0107】
実施形態25
前記保護キャリアが半透明である、実施形態1に記載の保護キャリア。
【0108】
実施形態26
底面にマイクロキャビティ基体を備えたマイクロキャビティ容器、および
実施形態1に記載された保護キャリア、
を含む保護マイクロキャビティ容器キャリアシステム。
【0109】
実施形態27
前記マイクロキャビティ容器が、マイクロキャビティフラスコ、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティバイオリアクタ、または積層型3Dマイクロキャビティ培養容器である、実施形態26に記載のシステム。
【0110】
実施形態28
前記マイクロキャビティ基体が、複数のマイクロキャビティを備える、実施形態26に記載のシステム。
【0111】
実施形態29
前記複数のマイクロキャビティが、六方最密パターンで配列されている、実施形態28に記載のシステム。
【0112】
実施形態30
各マイクロキャビティが丸底を有する、実施形態29に記載のシステム。
【0113】
実施形態31
各マイクロキャビティが、前記マイクロキャビティ容器内で培養される細胞が三次元(3D)細胞集合体を形成するように作られている、実施形態29に記載のシステム。
【0114】
実施形態32
前記マイクロキャビティ基体の内面が、細胞に対して非接着性である、実施形態26に記載のシステム。
【0115】
実施形態33
前記マイクロキャビティ基体の内面が、パーフルオロポリマー、オレフィン、脂質、アガロース、非イオン性ヒドロゲル、ポリエーテル、ポリオール、細胞接着を阻害するポリマー、またはその組合せから作られた細胞非接着性表面コーティングを含む、実施形態32に記載のシステム。
【0116】
実施形態34
前記細胞非接着性表面コーティングが、極低接着(ULA)表面コーティングを含む、実施形態33に記載のシステム。
【0117】
実施形態35
前記マイクロキャビティ基体が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルペンテン、(ポリ)4-メチルペンテン(PMP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、シリコーンゴムまたは共重合体、エチレン酢酸ビニル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、またはその組合せから形成される、実施形態26に記載のシステム。
【符号の説明】
【0118】
110 マイクロキャビティプレート
120 保護プラテン
300、813 マイクロキャビティ基体
310、401、501 マイクロキャビティ
400、510 基体
500 細胞
800、1000、1500 保護キャリア
810、1010、1510 マイクロキャビティ容器
815、1015、1515 マイクロキャビティ容器の底部
817 マイクロキャビティ容器の前方部分
830、1030、1530 剛性板
833、1033、1533 剛性板の上面
837、1037、1537 剛性板の底面
835 ハンドル
840、1040、1540 フランジ
847、1047、1547 フランジの内面
850、1050、1550 スタンドオフ
860、1060 リブ
【国際調査報告】