(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】脂質ナノ粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20240709BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240709BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240709BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240709BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240709BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240709BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K47/34
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/28
A61K47/24
A61K45/00
A61K38/02
A61K31/713
A61K31/7105
A61K31/711
A61P43/00 105
A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579558
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 KR2022008941
(87)【国際公開番号】W WO2022270941
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0082361
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0076212
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523483577
【氏名又は名称】セルナ セラピューティクス
【氏名又は名称原語表記】THERNA THERAPEUTICS
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】イ テウ
(72)【発明者】
【氏名】ペク ユミ
(72)【発明者】
【氏名】リュ ジウォン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ダヘ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076DD49
4C076DD52
4C076DD59
4C076DD60
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C084AA03
4C084AA17
4C084BA44
4C084NA10
4C084ZB211
4C084ZC411
4C086AA01
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086NA10
4C086ZB21
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、脂質ナノ粒子及びその製造方法に関し、より詳細には、イオン化脂質(ionizable lipid)とポリエチレングリコール誘導体モイエティ(PEG moiety)-分解可能連結官能基-脂質(lipid)コンジュゲート(conjugate)を含む粒子であり、生体内副作用を最小化し、ナノ粒子をターゲット細胞に効果的に伝達して薬理効能物質を細胞質に効率的に運搬することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次を含む脂質ナノ粒子:
(a)イオン化脂質及びポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートを含む脂質配合物;及び
(b)前記脂質配合物内に封入された薬物、核酸又はこれらの組合せ。
【請求項2】
前記ポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートは、化学式1で表されることを特徴とする、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【化1】
化学式1で、
aは、0又は1であり、
Lは、ターゲッティングリガンド(targeting ligand)であり、
Mは、H、OH、単結合、O、S、C(O)、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)又はC(O)Oであり、
Pは、CH
2O(CH
2CH
2O)qCH
2又はCH
2CH
2O(CH
2CH
2O)qCH
2であり、ここで、qは、2~120の整数であり、
L
6は、C(O)NH-N=CR
4、R
4C=N-NHC(O)、NH-N=CR
4、R
4C=N-NH、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、O-N=CR
4、R
4C=N-O、S-S、S又はtrans-シクロオクテン(trans-cyclooctene)、又は
【化2】
であり、ここで、R
4は、H、C
1-C
20アルキル、C
2-C
20アルケニル、C
2-C
20アルキニル、C
3-C
10シクロアルキル、C
6-C
20アリール、又はフッ素、酸素、硫黄及び窒素の中から選ばれるヘテロ原子を含有するラジカルであるヘテロサイクルであり、Zは、NH、O又はSであり、dは、1~10の整数であり、eは、1~10の整数であり、
Tは、単結合又は1,4-C
6H
4O-であり、
R
1及びR
3はそれぞれ独立に-Y-Rであり、R
2は、-CH
2-Y-Rであり、ここで、Yは、単結合、O、S、C(O)、C(O)O、OC(O)、C(O)NH、又はNHC(O)であり、Rは、H、C
10~C
20アルキル、アルケニル又はステロールである。
【請求項3】
前記ターゲッティングリガンドLは、化学式2で表されることを特徴とする、請求項2に記載の脂質ナノ粒子。
【化3】
化学式2で、
a、b及びcは0又は1であるが、a、b及びcのうち一つ以上は必ず1であり、
X
1、X
2及びX
3は、ターゲッティングリガンドであり、
L
1、L’
1及びL”
1は、単結合、O、S、C(O)、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)又はC(O)Oであり、
L
2、L’
2及びL”
2は、(CH
2)
n又は(OCH
2CH
2)mであり、ここで、nは、1~20の整数であり、mは、1~10の整数であり、
L
3、L’
3及びL”
3は、単結合、O、S、C(O)、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)又はC(O)Oであり、
L
4、L’
4及びL”
4は、(CH
2)
nであり、ここで、nは、1~20の整数であり、
L
5、L’
5及びL”
5は、単結合、O、S、C(O)、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)又はC(O)Oである。
【請求項4】
前記X
1、X
2及びX
3は、N-アセチル-D-ガラクトサミン(N-acetyl-D-galactosamine,GalNAc)、N-アセチル-D-ガラクトース(N-acetyl-D-galactose)、D-ガラクトース(D-galactose)、N-アセチル-D-グルコサミン(N-acetyl-D-glucosamine)、N-アセチル-D-グルコサミン、D-グルコース、D-マンノース、L-フコース、炭水化物誘導体、葉酸(folate)、トランスフェリン(transferrin)、RGDペプチド、サイクリックRGDペプチド、TATペプチド、R9ペプチド、CADYペプチド、HA2ペプチド、モノクローナル抗体、抗原結合断片(antigen-binding fragment)又は抗体断片、一本鎖可変断片(single-chain variable fragment.scFv)及びアプタマー(aptamer)からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項3に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項5】
前記ポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートは、化学式3で表されることを特徴とする、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【化4】
化学式3で、nは、2~120の整数である。
【請求項6】
前記ポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートは、化学式4で表されることを特徴とする、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【化5】
化学式4で、nは、2~120の整数である。
【請求項7】
前記ポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートは、化学式1においてaが0である化合物とaが1である化合物との混合物であることを特徴とする、請求項2に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項8】
前記aが0である化合物とaが1である化合物のモル比は、0.01~99.9:0.01~99.9であることを特徴とする、請求項7に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項9】
前記脂質ナノ粒子において前記ポリエチレングリコールモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートの含有量は、脂質ナノ粒子を構成する全脂質成分の0.5~50モル%であることを特徴とする、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項10】
前記脂質ナノ粒子のサイズは、20~200nmであることを特徴とする、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項11】
前記イオン化脂質は、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)、8-[(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ]-オクタン酸(SM-102)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-DAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジメチル-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、スペルミンコレステリルカルバメート(GL-67);ビス-グアニジニウム-スペルミジン-コレステロール(BGTC)、3β-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、1,1’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチルアザンジイル)ジドデカン-2-オール(C12-200)、N-t-ブチル-N’-テトラデシルアミノ-プロピオンアミジン(ジC14-アミジン);ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシル)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、1,2-ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、及びアミノプロピル-ジメチル-ビス(ドデシルオキシ)-プロパンアミニウムブロミド(GAP-DLRIE)からなる群から1種以上選択されることを特徴とする、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項12】
ステロール脂質と中性脂質をさらに含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項13】
前記ステロール脂質は、コレステロール又はコレステリルエステルであることを特徴とする、請求項12に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項14】
前記中性脂質は、リン脂質又はスフィンゴ脂質であることを特徴とする、請求項12に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項15】
前記リン脂質は、DOPE(dioleoylphosphatidylethanolamine)、DSPC(distearoylphosphatidylcholine)、POPC(palmitoyloleoylphosphatidylcholine)、EPC(egg phosphatidylcholine)、DOPC(dioleoylphosphatidylcholine)、DPPC(dipalmitoylphosphatidylcholine)、DOPG(dioleoylphosphatidylglycerol)、DPPG(dipalmitoylphosphatidylglycerol)、DSPE(distearoylphosphatidylethanolamine)、PE(Phosphatidylethanolamine)、DPPE(dipalmitoylphosphatidylethanolamine)、DOPE(1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、POPE(1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、POPC(1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)、DOPS(1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-[phospho-L-serine])、セラミド(ceramide)、スフィンゴミエリン(sphingomyelin)及びその混合物からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項14に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項16】
前記薬物は、ペプチド、タンパク質薬物、タンパク質-核酸構造体、及び陰イオン性生体高分子-薬物接合体からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項17】
前記核酸は、一本鎖(single-stranded)siRNA、二本鎖(double-stranded)siRNA、rRNA、DNA、cDNA、プラスミド(plasmid)、アプタマー(aptamer)、mRNA、tRNA、lncRNA、piRNA、circRNA、saRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、miRNA、リボザイム(ribozyme)、PNA、及びDNAzymeからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項16に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項18】
次の段階を含む請求項1の脂質ナノ粒子の製造方法:
(a)イオン化脂質及びポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートを含む脂質配合物を含有する有機溶液と、薬物、核酸、又はその組合せを含有するバッファ溶液とを混合してpHを調整する段階;及び
(b)前記混合溶液の溶媒を除去する段階。
【請求項19】
前記有機溶液と前記バッファ溶液の混合比は、1:1~1~100の体積比であることを特徴とする、請求項18に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項20】
前記ポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートは、化学式1で表されることを特徴とする、請求項18に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【化6】
化学式1で、
aは、0又は1であり、
Lは、ターゲッティングリガンド(targeting ligand)であり、
Mは、H、OH、単結合、O、S、C(O)、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)又はC(O)Oであり、
Pは、CH
2O(CH
2CH
2O)qCH
2又はCH
2CH
2O(CH
2CH
2O)qCH
2であり、ここで、qは、2~120の整数であり、
L
6は、C(O)NH-N=CR
4、R
4C=N-NHC(O)、NH-N=CR
4、R
4C=N-NH、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、O-N=CR
4、R
4C=N-O、S-S、S又はtrans-シクロオクテン(trans-cyclooctene)、又は
【化7】
であり、ここで、R
4は、H、C
1-C
20アルキル、C
2-C
20アルケニル、C
2-C
20アルキニル、C
3-C
10シクロアルキル、C
6-C
20アリール、又はフッ素、酸素、硫黄及び窒素の中から選ばれるヘテロ原子を含有するラジカルであるヘテロサイクルであり、Zは、NH、O又はSであり、dは、1~10の整数であり、eは、1~10の整数であり、
Tは、単結合又は1,4-C
6H
4O-であり、
R
1及びR
3はそれぞれ独立に-Y-Rであり、R
2は、-CH
2-Y-Rであり、ここで、Yは、単結合、O、S、C(O)、C(O)O、OC(O)、C(O)NH、又はNHC(O)であり、Rは、H、C
10~C
20アルキル、アルケニル又はステロールである。
【請求項21】
前記ターゲッティングリガンドLは、化学式2で表されることを特徴とする、請求項20に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【化8】
化学式2で、
a、b及びcは0又は1であるが、a、b及びcのうち一つ以上は必ず1であり、
X
1、X
2及びX
3は、ターゲッティングリガンドであり、
L
1、L’
1及びL”
1は、単結合、O、S、C(O)、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)又はC(O)Oであり、
L
2、L’
2及びL”
2は、(CH
2)
n又は(OCH
2CH
2)mであり、ここで、nは、、1~20の整数であり、mは、1~10の整数であり、
L
3、L’
3及びL”
3は、単結合、O、S、C(O)、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)又はC(O)Oであり、
L
4、L’
4及びL”
4は、(CH
2)
nであり、ここで、nは、1~20の整数であり、
L
5、L’
5及びL”
5は、単結合、O、S、C(O)、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)又はC(O)Oである。
【請求項22】
前記X
1、X
2及びX
3は、N-アセチル-D-ガラクトサミン(N-acetyl-D-galactosamine,GalNAc)、N-アセチル-D-ガラクトース(N-acetyl-D-galactose)、D-ガラクトース(D-galactose)、N-アセチル-D-グルコサミン(N-acetyl-D-glucosamine)、N-アセチル-D-グルコサミン、D-グルコース、D-マンノース、L-フコース、炭水化物誘導体、葉酸(folate)、トランスフェリン(transferrin)、RGDペプチド、サイクリックRGDペプチド、TATペプチド、R9ペプチド、CADYペプチド、HA2ペプチド、モノクローナル抗体、抗原結合断片(antigen-binding fragment)又は抗体断片、一本鎖可変断片(single-chain variable fragment.scFv)及びアプタマー(aptamer)からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項21に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項23】
前記ポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートは、化学式3で表されることを特徴とする、請求項18に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【化9】
化学式3で、nは2~120の整数である。
【請求項24】
前記ポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートは、化学式4で表されることを特徴とする、請求項18に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【化10】
化学式4で、nは、2~120の整数である。
【請求項25】
前記ポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートは、化学式1においてaが0である化合物とaが1である化合物との混合物であることを特徴とする、請求項20に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項26】
前記aが0である化合物とaが1である化合物のモル比は、0.01~99.9:0.01~99.9であることを特徴とする、請求項25に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項27】
前記脂質ナノ粒子において前記ポリエチレングリコールモイエティの含有量は、脂質ナノ粒子を構成する全脂質成分の0.5~50モル%であることを特徴とする、請求項18に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項28】
前記脂質ナノ粒子のサイズは、20~200nmであることを特徴とする、請求項18に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項29】
前記イオン化脂質は、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)、8-[(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ]-オクタン酸(SM-102)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-DAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジメチル-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、スペルミンコレステリルカルバメート(GL-67);ビス-グアニジニウム-スペルミジン-コレステロール(BGTC)、3β-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、1,1’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチルアザンジイル)ジドデカン-2-オール(C12-200)、N-t-ブチル-N’-テトラデシルアミノ-プロピオンアミジン(ジC14-アミジン);ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシル)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、1,2-ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、及びアミノプロピル-ジメチル-ビス(ドデシルオキシ)-プロパンアミニウムブロミド(GAP-DLRIE)からなる群から1種以上選択されることを特徴とする、請求項18に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項30】
ステロール脂質と中性脂質をさらに含む、請求項18に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項31】
前記ステロール脂質は、コレステロール又はコレステリルエステルであることを特徴とする、請求項30に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項32】
前記中性脂質は、リン脂質であることを特徴とする、請求項30に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項33】
前記リン脂質は、DOPE(dioleoylphosphatidylethanolamine)、DSPC(distearoylphosphatidylcholine)、POPC(palmitoyloleoylphosphatidylcholine)、EPC(egg phosphatidylcholine)、DOPC(dioleoylphosphatidylcholine)、DPPC(dipalmitoylphosphatidylcholine)、DOPG(dioleoylphosphatidylglycerol)、DPPG(dipalmitoylphosphatidylglycerol)、DSPE(distearoylphosphatidylethanolamine)、PE(Phosphatidylethanolamine)、DPPE(dipalmitoylphosphatidylethanolamine)、DOPE(1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、POPE(1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、POPC(1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)、DOPS(1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-[phospho-L-serine])、セラミド(ceramide)、又はスフィンゴミエリン(sphingomyelin)及びその混合物からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項32に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項34】
前記薬物はペプチド、タンパク質薬物、タンパク質-核酸構造体、及び陰イオン性生体高分子-薬物接合体からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項18に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項35】
前記核酸は、一本鎖(single-stranded)siRNA、二本鎖(double-stranded)siRNA、rRNA、DNA、cDNA、プラスミド(plasmid)、アプタマー(aptamer)、mRNA、tRNA、lncRNA、piRNA、circRNA、saRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、miRNA、リボザイム(ribozyme)、PNA、及びDNAzymeからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項34に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質ナノ粒子及びその製造方法に関し、より詳細には、イオン化脂質(ionizable lipid)とポリエチレングリコール誘導体モイエティ(PEG moiety)-分解可能連結官能基-脂質(lipid)コンジュゲート(conjugate)を含むことにより、生体内副作用を最小化し、ナノ粒子をターゲット細胞に効果的に伝達して薬理効能物質を細胞質に効率的に運搬する、脂質ナノ粒子及びその製造方法に関する。
【0002】
【背景技術】
【0003】
同一の薬物であっても、伝達する方法によって効能は千差万別である。このように、医薬品の副作用を最小化する上にも、効能及び効果を極大化させて必要な量の薬物を効率的に伝達する投与経路と薬の形態を、薬物伝達システム(DDS,Drug Delivery System)という。医薬製剤産業において薬物伝達システムは、新薬開発に立ち並ぶほどの経済的利益を創出できるとともに成功可能性が大きい高付加価値の中核技術であるといえる。
【0004】
薬物伝達システムの中核技術の一つである薬物吸収促進技術に属する難溶性薬物の可溶化技術は、新薬物質の開発コストを低減しながらも医薬品の付加価値を上げ得る最も合理的な方法とされている。特に、韓国のように新薬開発環境が悪い状況では薬物の可溶化技術の開発による改良新薬の開発は、低コストで莫大な付加価値を創出することができる。
【0005】
近年、様々な薬物伝達システムの中でも、遺伝子薬物伝達システムを用いた遺伝子治療法の開発が拡大されつつある傾向である。遺伝子治療法を成功的に且つ安全に行うためには、遺伝子又は遺伝子調節因子を所望の組織に伝達することが重要である。このような遺伝子又は遺伝子調節因子の代表としてmRNAとsiRNAなどを挙げることができる。mRNAなどの核酸は、特定タンパク質を発現させる機能を有するので、遺伝的要因によって欠乏しているタンパク質を補完する機能が可能である。のみならず、癌標識子、ウイルスの表面タンパク質を発現させるmRNAを使用することで、生体内の免疫反応を活性化させる方式の抗ガン剤及びワクチンなどの開発が可能である。また、siRNAなどの核酸は、生体内で特定タンパク質の発現を抑制させ得る物質で、癌、遺伝病、感染疾病、自己免疫疾患などの治療に重要なツールとして脚光を浴びている。しかし、mRNA、siRNAのような核酸は細胞内に直接伝達することが困難であり、血液内で酵素によって分解しやすくなるため、これを克服するための研究が多く行われている。
【0006】
【0007】
陽イオン性リポソーム又は陽イオン性ポリマーベースのナノ粒子の特性及び限界
【0008】
このような物質を効果的に伝達するために、陽イオン性リポソーム及び重合体のような非ウイルス性遺伝子担体が開発され、これは、向上した安定性プロファイル及び重合体伝達体の製造及び操作の容易性により、効果的で安全な遺伝子伝達用の非毒性及び生分解性重合体担体のデザイン及び合成に対する研究を加速化させた。ポリ(L-リジン)、ポリエチレンイミン(polyethylenimine)、スターバースト(starburst)、ポリアミドアミン(polyamidoamine)デンドリーマー及び陽イオン性リポソームなどは陰イオン性のオリゴと結合して独自で自己組立可能であり、プラスミドDNA(pDNA)をエンドサイトーシスによって細胞に取り込ませるのに十分に小さな構造で圧縮できることから、非ウイルス性遺伝子伝達体として広く研究されてきた。
【0009】
しかしながら、陽イオン性リポソーム方式又は陽イオン性ポリマーを使用する方式によって製造されたナノ粒子は、治療剤として開発するには適合しないという限界があった。この方式の特徴は、陽イオンのリポソーム又はポリマーを陰イオンのオリゴと混合して静電気的引力による密集方式でナノ粒子を製造するため、安定した粒子を製造するためには、陰イオン電荷量に比して過量の陽イオン物質を使用しなければならない。同じモル比の陽イオンと陰イオンを使用してはナノ粒子が形成されず、少なくは数倍から多くは数十倍の陽イオンを過量で使用することになる。このため、このような方式で製造されたナノ粒子は、陰イオンとの相互作用によって中和して残った陽イオンがナノ粒子に相変らず過量で存在するため、生成されたナノ粒子は陽イオン電荷を常時維持する。しかし、陽性電荷を帯びるナノ粒子は、生体内で免疫細胞を含む様々な細胞との不要な相互作用によって副作用を誘発するという短所が広く知られており、このようなナノ粒子を用いて治療剤を開発することは困難である。
【0010】
【0011】
イオン化脂質を使用する脂質ナノ粒子の特性及びその製造方法
【0012】
近年、このような陽イオン性ナノ粒子の短所を克服する非ウイルス性遺伝子伝達体として新しい形態の脂質ナノ粒子を用いて効果的な治療剤が開発された(非特許文献1~9)。脂質ナノ粒子は、生体内に存在する物質であるリン脂質とコレステロールなどを使用するため、生体利用率及び親和度が高く、薬物の放出及び制御が可能であり、酵素などによる分解に対して高い安定性を有する粒子性薬物伝達体である。特に、このような脂質ナノ粒子が既存の陽イオン性ナノ粒子と区別される本質的な差異点は、イオン化脂質を構成成分として含むことであるといえる。イオン化脂質は、酸性pHでは陽イオン状態であるが、中性pHでは電気的に中性状態を維持する特徴がある。したがって、イオン化脂質を用いて製造されたナノ粒子は、中性pH状態の血流において電気的に中性状態であるため、陽イオン性ポリマー又は陽イオン性リポソームの陽イオン性質によって発生する生体内の副作用を画期的に除去できる。
【0013】
もう一つの差異点は脂質ナノ粒子の製造方法にある。より具体的に脂質ナノ粒子の製造方法について述べると、次の通りである。脂質ナノ粒子は、有機相に溶解された脂質成分とバッファ水溶液に溶解されたオリゴを混合する方式で製造する。有機相と水溶液が混合されながら溶媒の極性が変わるため、有機相に含まれた脂質成分は、混合溶液相で独自で粒子を形成する。この時、有機相に含まれたイオン化脂質が、オリゴを含む酸性条件のバッファ水溶液と混合されると、イオン化脂質が陽イオン状態に転移するので、陽イオンのイオン化脂質と陰イオンのオリゴとが静電気的引力によって結合しつつオリゴを含入したナノ粒子を形成する。
【0014】
イオン化脂質を使用する脂質ナノ粒子のさらに他の特徴は、ナノ粒子を製造する際に、ナノ粒子凝集防止用脂質を有機相に含めて製造するということである。凝集防止用脂質は、脂質成分と親水性の物質とが結合した形態の分子構造を有する。親水性物質としては、炭水化物、タンパク質などの生物学的物質を使用することができ、ポリオール、PEGなどの合成物質を使用できるが、代表的には、PEG-脂質コンジュゲート形態の物質を使用する。PEG-脂質コンジュゲート物質において脂質成分は疎水性であるため、脂質ナノ粒子を形成する際に粒子の内部に向かうし、PEG部分は親水性であるため、脂質ナノ粒子の表面に位置して粒子の外部に向かう(非特許文献11及び12)。万一、この過程でナノ粒子の表面を構成するPEG-脂質コンジュゲートのような粒子凝集防止用脂質を構成成分として含めないと、ナノ粒子が互いに持続して凝集する現象が発生する。このため、ナノ粒子を比較的均一なサイズに製造することが非常に難しく、不均一なナノ粒子によって効能も期待し難い。
【0015】
凝集防止用脂質の親水性物質として代表的にPEGを使用する他の理由は、脂質ナノ粒子の表面を構成するPEGが脂質ナノ粒子の生物学的特性にも影響を及ぼすためである。一般に、ナノ粒子を生体内に注入すると、血流中のタンパク質、脂質、免疫成分との吸着による大食細胞の食作用によって損失するなどの短所がある。このような短所を克服するために、生体親和性に優れた親水性高分子であるPEGを表面に修飾することが知られている(米国登録特許US9,999,673 B2号;韓国公開特許第10-2018-0032652号公報、WO 2020/061284)。PEGは、生体に副作用がなく、容易に脂質ナノ粒子及びその他の薬物伝達体に適用できることから、最も代表的に用いられている(非特許文献10)。
【0016】
【0017】
PEG-脂質コンジュゲート使用の短所及び既存解決方案の限界点
【0018】
PEGは、脂質ナノ粒子の製造過程において必須の構成成分であるとともに、生体内でナノ粒子と他の物質との非特異的相互作用を抑制することによって多くの副作用を軽減させ得るという明確な長所があるが、根本的な限界を持っている。PEGが生体内でナノ粒子と他の生体構成物質との非特異的相互作用を減少させるということは、結局としてナノ粒子とターゲット細胞との相互作用も抑制する結果を招く。このため、PEGは、ナノ粒子をターゲット細胞中に伝達することを難しくし、その結果、薬理効率も顕著に低下させる(非特許文献13~15)。
【0019】
PEGがナノ粒子とターゲット細胞との相互作用を抑制させており、この問題を解決するために、2つの方法が考案されている。第一の方法は、ナノ粒子が生体内に注入された後にPEGを脂質ナノ粒子から分離されるようにする方法である。一般に、PEG-脂質コンジュゲートの脂質成分は2本の脂肪酸で構成されるが、脂肪酸を構成する炭素の個数を少なくして脂肪酸の疎水性の性質を減少させると、ナノ粒子が生体内で循環する間にナノ粒子からPEG-脂質コンジュゲートが分離され、容易に除去される。結果的に、PEGによる妨害効果が除去されるため、ナノ粒子の効率を維持できる。万一、脂肪酸を構成する炭素の個数が増加すると、ナノ粒子からPEG-脂質コンジュゲートが除去されず、効能が減少することが知られている(非特許文献14~16)。しかし、このような方式でナノ粒子構成要素であるPEG-脂質コンジュゲートを除去すると、粒子自体が不安定になって、粒子を構成する他の要素も失われる短所がある(非特許文献17)。
【0020】
PEGによって脂質ナノ粒子がターゲット細胞に伝達される効能が低下する問題を解決するための第二の方法は、PEGの一方の末端に細胞受容体と結合し得るリガンドを連結して使用することである(非特許文献16)。PEG末端のリガンドが特定細胞の受容体と結合するので、リガンドを含むナノ粒子は受容体によって細胞内のエンドソームに伝達され得る。しかし、リガンドを用いてナノ粒子を細胞内のエンドソームまで効果的に伝達できるとしても、薬理効能を発生させるためには、ナノ粒子に含まれている薬理効能物質である核酸などがエンドソームから細胞質内に伝達される必要がある。そのためには脂質ナノ粒子とエンドソーム脂質膜との相互作用による融合過程が必要であるが、ナノ粒子外部を包んでいるPEGがこれを妨害してしまう。結果的に、PEGの末端にリガンドを付着すると、ターゲット細胞のエンドソーム内にへナノ粒子を伝達することはできるが、エンドソームから細胞質に効能物質を伝達し難いため、効能改善の側面では大きな効果が期待できない(非特許文献16)。
【0021】
【0022】
PEG-分解可能官能基-脂質コンジュゲートのイオン化脂質ナノ粒子への適用
【0023】
エンドソーム内でのPEGによる効能低下を解決するために、通常、エンドソーム内で脂質粒子表面を包んでいるPEGを除去する方法を用いている。エンドソームの内部は、pHが酸性を帯びるので、PEGを脂質成分と連結する部位に、酸性条件で加水分解され得る官能基を含むようにPEG-分解可能官能基-脂質コンジュゲート形態の物質を構成要素として含むわけである。これにより、エンドソーム内でナノ粒子の表面を構成するPEGが効果的に除去され得ることが知られている(非特許文献18及び19)。
【0024】
しかしながら、酸性条件で分解される分解可能官能基を含むPEG-分解可能官能基-脂質コンジュゲート形態の物質を構成成分として使用可能なナノ粒子の製造条件は制限的である。なぜなら、PEG-分解可能官能基-脂質コンジュゲートの分解可能官能基は酸性条件では不安定であるため、ナノ粒子の製造条件が、中性pH又はアルカリ性条件で製造するナノ粒子にのみ適用できるためである。ところが、最近に様々なオリゴ別治療剤開発に広く使用している脂質ナノ粒子は、イオン化脂質を構成成分としており、前述したように、イオン化脂質を使用してオリゴ成分を含む脂質ナノ粒子を製造する時には必ず酸性pHで製造しなければならない。このような理由で、イオン化脂質成分を含む脂質ナノ粒子を製造するとき、酸性条件で加水分解される官能基を含む形態、すなわちPEG-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを構成成分として使用することは、本質的に不可能であるとされており、現在まで試みられたことがない。
【0025】
そこで、本発明者らは上記の問題点を解決するために鋭意努力した結果、イオン化脂質成分を一つの構成成分とする脂質ナノ粒子を製造するとき、ポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートを使用して粒子を安定して製造できることを確認した。特に、PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートは、脂質ナノ粒子を製造する酸性条件の工程では安定的に保持されるが、エンドソームの酸性条件では効果的に加水分解されることでエンドソーム脂質膜と脂質ナノ粒子との融合を促進させる役割を担い、その結果としてオリゴ伝達効率を画期的に向上させ、このような脂質ナノ粒子を製造して治療剤として使用する場合に、ナノ粒子の構成成分による生体内副作用を最小化し、ナノ粒子をターゲット細胞に効果的に伝達し、ターゲット細胞内のエンドソームを効率的に脱皮して核酸などの薬理効能物質を細胞質に運搬することに適することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0026】
【0027】
【0028】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】米国登録特許第9,999,673 B2号公報
【0030】
【特許文献2】韓国公開特許第10-2018-0032652号公報
【0031】
【特許文献3】国際公開特許WO2020/061284号公報
【0032】
【0033】
【非特許文献】
【0034】
【非特許文献1】Moss, K.H., Popova, P., Hadrup, S.R., Astakhova, K. & Taskova, M. Lipid Nanoparticles for Delivery of Therapeutic RNA Oligonucleotides. Mol Pharm 16, 2265-2277 (2019).
【0035】
【非特許文献2】Kulkarni, J.A., Witzigmann, D., Chen, S., Cullis, P.R. & van der Meel, R. Lipid Nanoparticle Technology for Clinical Translation of siRNA Therapeutics. Acc Chem Res 52, 2435-2444 (2019).
【0036】
【非特許文献3】Buck, J., Grossen, P., Cullis, P.R., Huwyler, J. & Witzigmann, D. Lipid-Based DNA Therapeutics: Hallmarks of Non-Viral Gene Delivery. ACS Nano 13, 3754-3782 (2019).
【0037】
【非特許文献4】Akinc, A. et al.The Onpattro story and the clinical translation of nanomedicines containing nucleic acid-based drugs. Nat Nanotechnol14, 1084-1087 (2019).
【0038】
【非特許文献5】Springer, A.D. & Dowdy, S.F. GalNAc-siRNA Conjugates: Leading the Way for Delivery of RNAi Therapeutics. Nucleic Acid Ther 28, 109-118 (2018).
【0039】
【非特許文献6】Kulkarni, J.A., Cullis, P.R. & van der Meel, R. Lipid Nanoparticles Enabling Gene Therapies: From Concepts to Clinical Utility. Nucleic Acid Ther 28, 146-157 (2018).
【0040】
【非特許文献7】Rietwyk, S. & Peer, D. Next-Generation Lipids in RNA Interference Therapeutics. ACS Nano 11, 7572-7586 (2017).
【0041】
【非特許文献8】Fang, Y. et al.Cleavable PEGylation: a strategy for overcoming the "PEG dilemma" in efficient drug delivery. Drug Deliv 24, 22-32 (2017).
【0042】
【非特許文献9】Cullis, P.R. & Hope, M.J. Lipid Nanoparticle Systems for Enabling Gene Therapies. Mol Ther 25, 1467-1475 (2017).
【0043】
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【0044】
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【0045】
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【0046】
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【0047】
【非特許文献14】Mui, B.L. et al. Influence of Polyethylene Glycol Lipid Desorption Rates on Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of siRNA Lipid Nanoparticles. Mol Ther Nucleic Acids2, e139 (2013).
【0048】
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【0049】
【非特許文献16】Akinc, A. et al.Targeted delivery of RNAi therapeutics with endogenous and exogenous ligand-based mechanisms. Mol Ther 18, 1357-64 (2010).
【0050】
【非特許文献17】Chen, S. et al.Influence of particle size on the in vivo potency of lipid nanoparticle formulations of siRNA. J Control Release235, 236-244 (2016).
【0051】
【非特許文献18】Bargh, J.D., Isidro-Llobet, A., Parker, J.S. & Spring, D.R. Cleavable linkers in antibody-drug conjugates. Chem Soc Rev 48, 4361-4374 (2019).
【0052】
【非特許文献19】Zhao, G. et al. Smart pH-sensitive nanoassemblies with cleavable PEGylation for tumor targeted drug delivery. Sci Rep 7, 3383 (2017).
【0053】
【0054】
【発明の概要】
【0055】
本発明の目的は、ナノ粒子の構成成分による生体内副作用を最小化し、ナノ粒子をターゲット細胞に効果的に伝達し、ターゲット細胞内のエンドソームを脱皮して核酸などの薬理効能物質を細胞質に効率的に運搬する脂質ナノ粒子を提供することにある。
【0056】
上記の目的を達成するために、本発明は、(a)イオン化脂質及びポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートを含む脂質配合物;及び、(b)前記脂質配合物内に封入された薬物、核酸又はこれらの組合せを含む、脂質ナノ粒子を提供する。
【0057】
本発明は、また、(a)イオン化脂質及びポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートを含む脂質配合物を含有する有機溶液と、薬物、核酸又はその組合せを含有するバッファ溶液とを混合して、pHを調整する段階;及び、(b)前記混合溶液の溶媒を除去する段階を含む、前記脂質ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0058】
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】本発明の一実施例によって、PEG2K-Hz-DSG又はPEG2K-PE-DSGを、ナノ粒子構成全脂質に対して1、2、5モル%を含む脂質ナノ粒子を製造し、DLSでサイズを測定したグラフ(A)及びこれを数値化したグラフ(B)である。
【0060】
【
図2】本発明の一実施例によって、脂質ナノ粒子にルシフェラーゼ(luciferase)をターゲットとするsiRNA含めて製造し、ルシフェラーゼを常時発現する細胞に処理し、ルシフェラーゼ発現抑制効能を測定したグラフである。AはPEG2K-Hz-DSG又はPEG2K-PE-DSGを、BはPEG1K-Hz-DSG又はPEG1K-PE-DSGをそれぞれ1、2、5モル%を含む脂質ナノ粒子を使用し、Cは、PEG600-Hz-DSGを1、2、5、10、20、30、40モル%を含む脂質ナノ粒子を使用して測定したグラフである。
【0061】
【
図3】本発明の一実施例によって、脂質ナノ粒子に含まれたPEG含有量が細胞のアップテーク(uptake)効率に及ぼす影響を測定した図である。Aは、PEG-DMGを全脂質に対して2、5、10モル%比率の含有量別に含む脂質ナノ粒子を使用して細胞アップテーク効率を流細胞分析機(FACS)で分析した図であり、Bは、PEG-DMGをそれぞれ0、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10モル%含むナノ粒子にルシフェラーゼ(luciferase)をターゲットとするsiRNA含めて製造し、ルシフェラーゼを常時発現する細胞に処理してルシフェラーゼ発現抑制効能を測定したグラフである。C、Dは、PEG-DMG又はPEG600-Hz-DSGをそれぞれ1、2、5、10モル%含む脂質ナノ粒子を製造し、互いに異なる細胞株でルシフェラーゼ発現抑制効能を測定したグラフであり、E、Fは、EC50を求めた資料である。
【0062】
【
図4】本発明の一実施例によって、PEG-DMG 1.5モル%(A)又はPEG600-Hz-DSG 10モル%(B)を含む脂質ナノ粒子のサイズを酸性条件で時間別に測定した資料である。
【0063】
【
図5】本発明の一実施例によって、PEG600-Hz-DSGを5又は10モル%含む脂質ナノ粒子を製造し、pH4又は7で前処理後に細胞株に処理してルシフェラーゼ発現抑制効能を測定したグラフである。
【0064】
【
図6】本発明の一実施例によって、それぞれPEG600-Hz-DSG、PEG600-Ester-DSG、又はPEG600-PhHz-DSGを1、2、5、10モル%含む脂質ナノ粒子を製造して細胞株に処理し、ルシフェラーゼ発現抑制効能を測定したグラフ(A)と、当該脂質ナノ粒子のサイズを中性又は酸性条件で測定した資料(B)である。
【0065】
【
図7】本発明の一実施例によって、PEG600-Hz-DSG 10モル%又はPEG-DMG 1.5モル%と蛍光染料を含む脂質ナノ粒子を製造し、該当のpH条件でリポソーム脂質膜との融合強度を測定した資料(A)と、GalNAc-PEG600-Hz-DSG又はPEG-DMGを5又は10モル%含有する脂質ナノ粒子を使用してpH4.5とpH7.4条件で溶血反応(hemolysis)を測定した資料(B)である。
【0066】
【
図8】本発明の一実施例によって、PEG-DMGを全脂質に対して各1.5モル%、5モル%を含む脂質ナノ粒子とGalNAc-PEG2K-Hz-DSGを全脂質に対して5モル%を含む脂質ナノ粒子を製造する時にFRET蛍光染料を含めて製造し、これをラットの血漿に担持して、ナノ粒子に含まれた蛍光強度変化を時間別に測定した資料である。
【0067】
【
図9】GalNAc-PEG600-Hz-DSGを10モル%含む脂質ナノ粒子を、ラットから分離した末梢血液単核細胞(PBMC)と混合し、サイトカイン(cytokine)の相対的発生量をq-PCRで分析した資料である。
【0068】
【
図10】本発明の一実施例によって、PEG2K-PE-DSG又はPEG2K-Hz-DSGを含む脂質ナノ粒子をマウスに投与し、血清のFactor 7の含有量を測定した資料である。
【0069】
【
図11】本発明の一実施例によって、PEG600-Hz-DSG 10モル%又はPEG600-Hz-DSG 9.5モル%とGalNAc-PEG2K-Hz-DSG 0.5モル%混合脂質を含む脂質ナノ粒子をマウスに投与し、血清のFactor 7の含有量を測定した資料である。
【0070】
【
図12】本発明の一実施例によって、PEG-DMG又はPEG-Hz-DSGを含む脂質ナノ粒子を各細胞株に処理し、細胞株の相対的生存率を測定した資料である。
【0071】
【0072】
【発明を実施するための形態】
【0073】
特に断らない限り、本明細書で使われる全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書における命名法及び以下に記述する実験方法は、本技術分野でよく知られており、通常用いられるものである。
【0074】
【0075】
本発明は、化学式1のポリエチレングリコール誘導体モイエティ-分解可能官能基-脂質とイオン化脂質を構成成分として含む脂質ナノ粒子を製造して治療剤として使用する場合に、ナノ粒子の構成成分による生体内副作用を最小化し、ナノ粒子をターゲット細胞に効果的に伝達し、ターゲット細胞内のエンドソームを効率的に脱皮して核酸などの薬理効能物質を細胞質に運搬するのに適合することを確認した。
【0076】
したがって、本発明は、一観点において、(a)イオン化脂質及びポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートを含む脂質配合物;及び、(b)前記脂質配合物内に封入された薬物、核酸又はこれらの組合せを含む、脂質ナノ粒子に関する。
【0077】
【0078】
本発明は、他の観点において、また、(a)イオン化脂質及びポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートを含む脂質配合物を含有する有機溶液と、薬物、核酸又はその組合せを含有するバッファ溶液とを混合して、pHを調整する段階;及び、(b)前記混合溶液の溶媒を除去する段階を含む、前記脂質ナノ粒子の製造方法に関する。
【0079】
【0080】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0081】
本願に使われる用語、「ポリエチレングリコール」、「PEG」、「PEGモイエティ」及び「PEG誘導体は、ポリエチレングリコールに該当する官能基を含むもので、互いに置換可能な概念で使われてよい。本願において特に表示されないか又は文脈において明確に矛盾しない限り、全ての可能な変形において前述の要素の組合せが含まれる。
【0082】
本発明に係る脂質ナノ粒子は、(a)イオン化脂質及びPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを含む脂質配合物;及び、(b)前記脂質配合物内に封入された薬物、核酸又はこれらの組合せを含む。
【0083】
本発明において、前記PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートは、化学式1で表示されてよい。
【0084】
[化学式1]
【0085】
【0086】
化学式1で、
【0087】
aは、0又は1であり、
【0088】
Lは、ターゲッティングリガンド(targeting ligand)であり、
【0089】
Mは、H、OH、単結合、O、S、C(O)、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)又はC(O)Oであり、
【0090】
Pは、CH2O(CH2CH2O)qCH2又はCH2CH2O(CH2CH2O)qCH2であり、ここで、qは、2~120の整数であり、
【0091】
L6は、C(O)NH-N=CR4、R4C=N-NHC(O)、NH-N=CR4、R4C=N-NH、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、O-N=CR4、R4C=N-O、S-S、S又はtrans-シクロオクテン(trans-cyclooctene)、
【0092】
又は、
であり、ここで、R
4はH、C
1-C
20アルキル、C
2-C
20アルケニル、C
2-C
20アルキニル、C
3-C
10シクロアルキル、C
6-C
20アリール、又はフッ素、酸素、硫黄及び窒素の中から選ばれるヘテロ原子を含有するラジカルであるヘテロサイクルであり、Zは、NH、O又はSであり、dは、1~10の整数であり、eは、1~10の整数であり、
【0093】
Tは、単結合又は1,4-C6H4O-であり、
【0094】
R1及びR3はそれぞれ独立に-Y-Rであり、R2は、-CH2-Y-Rであり、ここで、Yは、単結合、O、S、C(O)、C(O)O、OC(O)、C(O)NH、又はNHC(O)であり、Rは、H、C10~C20アルキル、アルケニル又はステロールである。
【0095】
【0096】
また、本発明は、PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートの一方の末端にリガンドを含んでよい。
【0097】
前記PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートのリガンド(L)は、下記化学式2で表示されてよい。
【0098】
[化学式2]
【0099】
【0100】
化学式2で、
【0101】
a、b及びcは0又は1であるが、a、b及びcのうち一つ以上は必ず1であり、
【0102】
X1、X2及びX3は、ターゲッティングリガンドであり、
【0103】
L1、L’1及びL”1は、単結合、O、S、C(O)、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)又はC(O)Oであり、
【0104】
L2、L’2及びL”2は、(CH2)n又は(OCH2CH2)mであり、ここで、nは、1~20の整数であり、mは、1~10の整数であり、
【0105】
L3、L’
3及びL”
3は、単結合、O、S、C(O)、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)又はC(O)Oであり、
【0106】
L4、L’4及びL”4は、(CH2)nであり、ここで、nは、1~20の整数であり、
【0107】
L5、L’5及びL”5は、単結合、O、S、C(O)、NHC(O)、C(O)NH、OC(O)又はC(O)Oである。
【0108】
本発明において、前記X1、X2、X3は、N-アセチル-D-ガラクトサミン(N-acetyl-D-galactosamine,GalNAc)、N-アセチル-D-ガラクトース(N-acetyl-D-galactose)、D-ガラクトース(D-galactose)、N-アセチル-D-グルコサミン(N-acetyl-D-glucosamine)、N-アセチル-D-グルコサミン、D-グルコース、D-マンノース、L-フコース、炭水化物誘導体、葉酸(folate)、トランスフェリン(transferrin)、RGDペプチド、サイクリックRGDペプチド、TATペプチド、R9ペプチド、CADYペプチド、HA2ペプチド、モノクローナル抗体、抗原結合断片(antigen-binding fragment)又は抗体断片、一本鎖可変断片(single-chain variable fragment,scFv)及びアプタマー(aptamer)からなる群から選ばれてよい。ここで、抗体の抗原結合断片又は抗体断片は、抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどを含む。
【0109】
本発明において、リガンドとして使用可能な抗体の例示には、anti-CD3、anti-CD19、anti-CD20、anti-CD22、anti-CD33、anti-CD38、anti-CD54、anti-CD74、anti-CD138、anti-CD166、anti-CD209、anti-cMET、anti-EGFR、anti-HER2、anti-HIV-gp120、anti-HLA-DR、anti-transferrin receptor(TfRscFv)などがあるが、これに限定されるものではない。
【0110】
本発明において、前記ポリエチレングリコール(PEG)モイエティ-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートは、好ましくは、下記化学式3(PEG-Hz-lipid)で表示されてよい。
【0111】
[化学式3]
【0112】
【0113】
化学式3で、nは、2~120の整数である。
【0114】
本発明において、前記PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートは、好ましくは、リガンド-PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲート(化学式1で、aが1である。)であり、より好ましくは、化学式4(GalNAc-PEG-Hz-Lipid)で表示されてよい。
【0115】
[化学式4]
【0116】
【0117】
化学式4で、nは、2~120の整数である。
【0118】
【0119】
本発明において、前記ポリエチレングリコールモイエティ組成として、PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲート(化学式1で、aが0である。)とリガンド-PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲート(化学式1で、aが1である。)との混合物を使用することができる。
【0120】
本発明において、化学式1でaが0である化合物とaが1である化合物のモル比は、(0.01~99.9):(0.01~99.9)、好ましくは(50~99.9):(0.01~50)、より好ましくは(70~99):(1~30)、最も好ましくは(90~95):(5~10)であってよい。すなわち、前記リガンド-PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートは、リガンド-PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートとPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲート混合物の0.01~100モル%、好ましくは0.01~20モル%、より好ましくは5~10モル%を構成できる。このとき、リガンド-PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートは、結合されるリガンドによって変わってよい。本発明の実施例に使用したN-アセチル-D-ガラクトサミン(N-acetyl-D-galactosamine,GalNAc)は、その量(5~10モル%)を少なく含めて使用しても脂質ナノ粒子の効能を示すことができる。
【0121】
本発明において、前記脂質ナノ粒子のサイズは、20~200nm、好ましくは30~200nmであってよい。
【0122】
本発明に係るPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートにおいてPEGモイエティの構造的な特徴は次の通りである。
【0123】
1.PEGモイエティは、100~5000の分子量を有し、単一又は分岐状の化学構造を有する。前記PEGモイエティの含有量は、脂質ナノ粒子を構成する全脂質成分の0.5~50モル%、好ましくは0.5~40モル%、より好ましくは0.5~30モル%であってよい。前記PEGモイエティの含有量が0.5モル%未満である場合には、脂質ナノ粒子を製造するとき、均一なサイズのナノ粒子が得難い点と、ナノ粒子を構成する他の脂質成分が表面に露出されて非特異的な相互作用を誘発し易い問題点があり、50モル%を超える場合には、PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲート成分が脂質ナノ粒子に含まれずに独立したミセル(micelle)を形成する問題点がある。また、PEG分子量と脂質ナノ粒子含有量は、互いに逆の相関関係にある。5000付近の大きい分子量のPEGを使用する場合に、脂質ナノ粒子に含まれる含有量は20モル%以下であるが、PEG分子量が100である場合は、脂質ナノ粒子に含まれる含有量が50モル%まで増加させることが可能である。分子量のサイズが増加するほど、PEGによる立体妨害効果(steric effect)によって均一な脂質ナノ粒子の形成がし難く、その上、親水性であるPEG部分が疎水性である脂質部分に比べてより増加するため、脂質ナノ粒子と結合せずに独立したミセルを形成しようとする傾向が強いためである。
【0124】
2.ポリエチレングリコール(PEG)モイエティ-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートの一部又は全部を、PEGモイエティの一方の末端に、細胞の受容体に結合可能なリガンドと結合して使用することができる。リガンドは、N-アセチルガラクトサミン(acetylgalactosamine)、グルコース(glucose)、マンノース(mannose)、フコース(fucose)などから構成された糖又は炭水化物の形態、RGDなどを含むペプチド形態、葉酸(folate)などの小さい分子形態、アプタマーなどの核酸形態、抗体又は抗原認識部分抗体などのタンパク質形態などで特定細胞に発現している受容体と選択的に結合し得るリガンドを含む。より具体的には、N-アセチル-D-ガラクトサミン(N-acetyl-D-galactosamine,GalNAc)、N-アセチル-D-ガラクトース(N-acetyl-D-galactose)、D-ガラクトース(D-galactose)、N-アセチル-D-グルコサミン(N-acetyl-D-glucosamine)、N-アセチル-D-グルコサミン、D-グルコース、D-マンノース、L-フコース、炭水化物誘導体、葉酸(folate)、トランスフェリン(transferrin)、RGDペプチド、サイクリックRGDペプチド、TATペプチド、R9ペプチド、CADYペプチド、HA2ペプチド、モノクローナル抗体、抗原結合断片(antigen-binding fragment)又は抗体断片、一本鎖可変断片(single-chain variable fragment,scFv)又はアプタマー(aptamer)などを含む。
【0125】
3.PEGモイエティの他方の末端はリンカー(linker)で連結されるが、リンカーは、特定条件で分解される化学官能基又は生物学的加水分解酵素の基質(substrate)を含む。例えば、-C(O)-NH-N=CR-、-RC=N-NH-C(O)-、-NH-N=CR-、-RC=N-NH-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-O-C(O)-O-、-O-N=CR-、-RC=N-O-、-S-S-、-S-又は-trans-cyclooctene-を含む。ここで、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロサイクルなどである。
【0126】
4.リンカーは、脂肪酸形態の脂質(lipid)又はステロールなどの疎水性物質と連結されている。
【0127】
【0128】
本発明に係る脂質ナノ粒子の構成要素のうちイオン化脂質は、脂質成分と結合されたイオン化可能な化合物で、薬物(例えば、陰イオン性薬物及び/又は核酸)との静電気的相互作用により、前記薬物が脂質ナノ粒子内に高い効率で封入されるようにする役割を担うことができる。イオン化脂質は、中性pHでは中性電荷を帯び、酸性pHでは陽電荷を帯びる。
【0129】
本発明において、前記イオン化脂質は、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)、8-[(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ]-オクタン酸(SM-102)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-DAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジメチル-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、スペルミンコレステリルカルバメート(GL-67);ビス-グアニジニウム-スペルミジン-コレステロール(BGTC)、3β-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、1,1’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチルアザンジイル)ジドデカン-2-オール(C12-200)、N-t-ブチル-N’-テトラデシルアミノ-プロピオンアミジン(ジC14-アミジン);ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシル)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、1,2-ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、及びアミノプロピル-ジメチル-ビス(ドデシルオキシ)-プロパンアミニウムブロミド(GAP-DLRIE)からなる群から1種以上選択されてよい。
【0130】
好ましくは、化学式5(DLin-MC3-DMA)、化学式6(ALC-0315)又は化学式7(Lipid H(SM-102))で表される化合物であってよい。
【0131】
[化学式5]
【0132】
【0133】
[化学式6]
【0134】
【0135】
[化学式7]
【0136】
【0137】
【0138】
本発明に係る脂質ナノ粒子は、ステロール脂質と中性脂質をさらに含むことができる。
【0139】
本発明に係る脂質ナノ粒子の構成要素のうち中性脂質は、脂質ナノ粒子内でイオン化脂質及び薬物が相互作用して形成されたコアを包んで保護する役割を担い、ターゲット細胞の脂質二重層と結合して、薬物の細胞内への伝達時に細胞膜通過及びエンドソーム脱出を容易にする。本発明に係る脂質ナノ粒子の構成要素のうち前記中性脂質は、脂質粒子の融合を促進し得るリン脂質又はスフィンゴ脂質(sphingolipids)であればいずれも使用可能であり、好ましくは、DOPE(dioleoylphosphatidylethanolamine)、DSPC(distearoylphosphatidylcholine)、POPC(palmitoyloleoylphosphatidylcholine)、EPC(egg phosphatidylcholine)、DOPC(dioleoylphosphatidylcholine)、DPPC(dipalmitoylphosphatidylcholine)、DOPG(dioleoylphosphatidylglycerol)、DPPG(dipalmitoylphosphatidylglycerol)、DSPE(distearoylphosphatidylethanolamine)、PE(Phosphatidylethanolamine)、DPPE(dipalmitoylphosphatidylethanolamine)、DOPE(1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、POPE(1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、POPC(1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)、DOPS(1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-[phospho-L-serine])、セラミド(ceramide)、又はスフィンゴミエリン(sphingomyelin)であってよい。
【0140】
本発明に係る脂質ナノ粒子の構成要素のうちステロール脂質は、脂質ナノ粒子内で脂質充填に形態的側面において堅固性を付与し、ナノ粒子のコア及び表面に分散されてナノ粒子の安定性を向上させる役割を担うが、コレステロール、コレステリルエステルを含むコレステロール誘導体を使用することができる。
【0141】
【0142】
本発明において、前記薬物は、ペプチド、タンパク質薬物、タンパク質-核酸構造体、及び陰イオン性生体高分子-薬物接合体からなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0143】
本発明において、前記核酸は、一本鎖(single-stranded)siRNA、二本鎖(double-stranded)siRNA、rRNA、DNA、cDNA、プラスミド(plasmid)、アプタマー(aptamer)、mRNA、tRNA、lncRNA、piRNA、circRNA、saRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、miRNA、リボザイム(ribozyme)、PNA、及びDNAzymeからなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0144】
本発明において、siRNAは、非アルコール性脂肪肝炎を含む代謝性疾患のACACA、ANGPTL3、AOC3、MAP3K5、CCR2、CCR5、DGAT2、DPP4、FASN、HSD17B13、KHK、LGALS3、LOXL2、METAP2、MPC、NOX1、NOX4、PNPLA3、SCD、SGLT1、SGLT2などの遺伝子、ウイルス疾患の例としてB型肝炎ウイルス(HBV)のHBV-S、HBV-P、HBV-Xなどの遺伝子、TTR媒介アミロイド症(TTR-mediated amyloisosis)疾患のTTR遺伝子、急性肝ポルフィリア(Acute hepatic porphyrias)疾患のALAS1遺伝子、原発性水酸過剰尿症(primary hyperoxaluria)疾患のHAO1遺伝子、過コレステロール血症(hypercholesterolemia)疾患のPCSK9遺伝子、血友病(hemophilia)のAT遺伝子、補体媒介疾患(complement-mediated disease)のC5遺伝子、Alpha-1肝疾患のAAT遺伝子、高血圧のAGT遺伝子、Alpha-1抗トリプシン(antitrypsin)欠乏疾患のAAT遺伝子、高中性脂質血症(hypertriglyceridemia)疾患のAPOC3遺伝子、高中性脂質血症(hypertriglyceridemia)疾患のANGPTL3遺伝子、心血管疾患のLA遺伝子、特発性肺線維化症疾患のHSP47遺伝子、原発性水酸過剰尿症(primary hyperoxaluria)疾患のLDHA遺伝子、気候性及びケロイド瘢痕疾患のCTGF、癌疾患のCTNNB1、HSP90、KRAS、EPHA2、BCL2L12、PKN3、HIF-2alpha遺伝子、嚢胞性線維症(cystic fibrosis)疾患のalphaENaC遺伝子などをターゲットとするが、これに限定されるものではない。
【0145】
本発明において、前記mRNAは、抗原を発現するmRNA使用するワクチン、抗体を発現するmRNAを使用する免疫治療剤、遺伝子の変異などによる欠乏タンパク質を発現するmRNA、特定DNA遺伝子編集のためのCRISPR技術を適用するCasタンパク質及びガイド(guide)RNAを発現するmRNA及びsgRNAなどがある。ワクチン開発のための抗原発現mRNAの例示として、狂犬病ワクチンのための狂犬病ウイルスの糖タンパク質(glycoprotein)mRNA、呼吸器細胞融合ウイルス(respiratory syncytical virus)ワクチンの糖タンパク質(glycoprotein)mRNA、安定化融合前(stabilized prefusion)Fタンパク質mRNA、ジカウイルスワクチンのジカウイルス構造タンパク質mRNA、チクングニアウイルスワクチンのウイルス抗原タンパク質mRNA、巨大細胞ウイルス(cytomegalovirus)ワクチンのペタメリックウイルス抗体(petameric viral antigen)、gBタンパク質mRNA、インフルエンザー(influenza)ワクチンのHAタンパク質mRNA、HIVワクチンのT細胞活性発生のためのHIV免疫原(immunogen)タンパク質mRNAなどがある。抗ガン剤又は抗癌ワクチン開発のためのmRNAの例示として、患者由来の特定過発現タンパク質抗原を発現するmRNA、前立腺癌のPAP、PSA、PSCA、PSMA、STEAP1などを含む抗原発現mRNA、腎癌(Renal cancer)のMUC1、CEA、Her-2neu、テロメラーゼ(telomerase)、サバイビン(survivin)、MAGE-A1m RNA、黒色腫のMelan-A、チロシナーゼ(tyrosinase)、gp100、MAGE-A1、MAGE-A3、サバイビン(survivin)mRNA、そして様々な固形癌又は血液癌ワクチン又は治療剤としてIL-23、IL-36、IL-12、IL-15、GM-CSF、INF-alpha、IL-7、IL-2などを含むサイトカインmRNAなどがある。また、抗体を発現するmRNAを用いて生体内で抗体を直接発現するmRNAの例示として、チクングニアウイルス中和単一クローン(monoclonal)抗体を発現するmRNAなどが例示されているが、これに限定されるものではない。
【0146】
本発明に係る前記脂質ナノ粒子は、(a)イオン化脂質及びポリエチレングリコールモイエティ(PEG moiety)-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートを含む脂質配合物を含有する有機溶液と、薬物、核酸又はその組合せを含有するバッファ溶液とを混合して、pHを調整する段階;及び、(b)前記混合溶液の溶媒を除去する段階を行うことによって製造されてよい。
【0147】
本発明に係る脂質ナノ粒子は、有機相に溶解された脂質成分とバッファ水溶液に溶解されたオリゴとを混合する方式で製造できる。有機相科水溶液とが混合されながら溶媒の極性が変わるので、有機相に含まれた脂質成分は混合溶液相で独自で粒子を形成する。このとき、有機相に含まれたイオン化脂質が、オリゴを含む酸性条件のバッファ水溶液と混合されると、イオン化脂質が陽イオン状態に転移するので、陽イオンのイオン化脂質と陰イオンのオリゴとが静電気的引力によって結合しながら脂質ナノ粒子内にオリゴを封入したナノ粒子を形成する。
【0148】
本発明に係る脂質ナノ粒子の製造方法において前記有機溶液と前記バッファ溶液の混合比(体積比)は、1:1~1~100であってよい。
【0149】
【0150】
脂質ナノ粒子に含まれたPEG含有量による効率
【0151】
脂質ナノ粒子を製造する時に、PEG-脂質コンジュゲート成分を1~2モル%の割合で含めて製造するのが一般的である。PEGを含めずに脂質ナノ粒子を製造すると、生成される粒子同士が互いに凝集する現象が発生してしまい、これを抑制するために、一定量のPEG-脂質コンジュゲート成分を含めて製造しなければならない。含まれたPEG-脂質コンジュゲートの脂質部分は、生成されるナノ粒子の内部を構成する疎水性環境に配置され、親水性であるPEG部分は、粒子の表面に配置されてナノ粒子間の凝集現象を抑制する。一方、PEG含有量が多すぎるナノ粒子も、粒子表面に露出されたPEGの立体的(steric)効果によって脂質ナノ粒子と細胞との相互作用を抑制する。その結果、脂質ナノ粒子は細胞中に効果的に伝達されない副作用が発生する。
【0152】
脂質ナノ粒子製造に一般的に多く使用されるPEG-脂質コンジュゲートであるPEG-DMG(1,2-dimyristoyl-3-PEG-glycerol)を用いて脂質ナノ粒子を製造すると、PEG含有量が増加する場合に、細胞にアップテーク(uptake)される効率が減少し、siRNAによるmRNA分解能も低下する。しかし、本発明に係るPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートの一部又は全部は、特定細胞に発現した受容体に特異的に結合するリガンドをPEGの一方の末端に含んでいるので、本発明に係るPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを用いて製造された脂質ナノ粒子は、PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートの含有量に関係なく細胞のアップテーク効率が高いことが確認できる。すなわち、PEGの立体的効果による細胞アップテーク阻害を、リガンドを使用して克服できることが分かる。
【0153】
【0154】
脂質ナノ粒子のPEG除去確認
【0155】
脂質ナノ粒子が核酸などの効能物質を細胞内に伝達して効能を発生させるためには、2段階の伝達過程を経る必要がある。第一に、脂質ナノ粒子が細胞のアップテーク過程によって細胞のエンドソームに進入しなければならない。第二に、効能物質を効果的にエンドソームから脱出させて細胞質に伝達することが必須である。脂質ナノ粒子は、細胞との相互作用によって細胞のエンドソームに取り込まれ、脂質ナノ粒子の脂質成分がエンドソームを構成する脂質膜と融合を進行すると同時に効能物質を細胞質に伝達できるということは広く知られた事実である。ところが、脂質ナノ粒子表面がPEGで包まれていると、エンドソーム脂質膜との相互作用が抑制され、細胞質への伝達が難しくなる。したがって、脂質ナノ粒子表面のPEGは、細胞との相互作用を阻害して脂質ナノ粒子の細胞アップテーク効率を低下させる他、エンドソームに成功的に取り込まれたナノ粒子とエンドソーム脂質膜間の相互作用も妨害する働きをするため、ナノ粒子の効率側面ではPEGは粒子の効率を二重に阻害する要素となる。
【0156】
したがって、エンドソーム脂質膜と脂質ナノ粒子との効果的な相互作用のために、エンドソーム内でPEGを除去することが有利である。しかし、一般的に多く使用するPEG-DMGのようなPEG-脂質コンジュゲートを使用するナノ粒子は、PEGを除去できる官能基がないため、エンドソーム内でもPEGが粒子表面に相変らず存在することになる。これに対し、本発明で述べるPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートは、PEGと脂質との間に、酸性条件で加水分解される化学的官能基を含んでいる。例えば、化学式3に提示されたPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートは、2本の脂質とPEGがヒドラゾン(hydrazone)官能基(-C=NNH-)で連結されている。ヒドラゾン官能基は、中性pHでは安定的であるが、酸性条件では加水分解される性質がある。本発明に係るPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを使用して製造した脂質ナノ粒子のサイズを、酸性条件で時系列変化を観察すれば、ヒドラゾン官能基が加水分解されながら粒子表面のPEGが除去され、粒子を構成する脂質成分の融合現象によってサイズが次第に増加することが分かる。また、粒子間の融合現象は持続して経時進行され、サイズが次第に増加することが分かる。これは、酸性条件でヒドラゾン官能基が成功的に加水分解されて粒子間の融合を触発する現象であり、これはまた、エンドソーム脂質膜とナノ粒子との融合を円滑に誘引する要因としても働く。
【0157】
【0158】
脂質ナノ粒子の溶血反応(hemolysis)誘発
【0159】
脂質ナノ粒子とエンドソーム脂質膜との相互作用を評価するための方法として、ナノ粒子を赤血球と接触させて赤血球が破壊される程度、すなわち、溶血する程度を測定する方法はよく知られている。ここで、赤血球細胞膜は、エンドソームの脂質膜代用として見なされる。溶血現象が多く発生することは、脂質ナノ粒子がより効率的にエンドソーム脂質膜と融合したと解釈できる。
【0160】
脂質ナノ粒子の構成成分の一つであるイオン化脂質(ionizable lipid)は、エンドソーム脂質膜との相互作用に中核的な役割を担うものと知られている。イオン化脂質は、中性pHでは電荷を帯びず、エンドソーム内の環境である酸性条件では陽電荷を帯びるようにアミン基(amine group)を含む場合が多いが、アミン基の最適pKaは、5~7未満程度が適当であると知られている。したがって、脂質ナノ粒子がエンドソーム脂質膜と融合する程度を調べるために、アミン基のpKaよりも低いpH条件で赤血球とナノ粒子とを混合して溶血反応を測定して評価する。本実施例に使用されたイオン化脂質は、DLin-MC3-DMAであるが、この物質のアミン基pKaは略6.5であり、pH4条件ではアミン基が陽電荷を帯びることになる。陽電荷は、エンドソームの脂質膜の陰電荷と静電気的引力によってより容易に融合が進行されるように助ける。しかし、ナノ粒子の表面にPEGが分布すると、静電気的引力をPEGが弱化させる遮り効果を発生させるだけでなく、ナノ粒子の表面とエンドソームの脂質膜との直接接触も妨害する不具合がある。
【0161】
したがって、分解可能官能基を含まない一般的なPEG-DMGを構成成分として含む脂質ナノ粒子は、PEGの含有量が増加するほど溶血反応が抑制されるのに対し、PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートは酸性条件で加水分解によってPEGが除去されるので、PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを構成成分として含む脂質ナノ粒子は、PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートの含有量に関係なく溶血反応を効果的に誘発する。
【0162】
【0163】
PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを構成する脂質の長さと脂質ナノ粒子の構造的安定性との関係
【0164】
脂質ナノ粒子表面を取り囲んでいるPEGは、脂質ナノ粒子製造過程では必要であるが、薬理的効能側面では不利に作用する。したがって、脂質ナノ粒子が生体内で血流に乗って循環する間にPEGが脂質ナノ粒子から自ずから除去され易いように、PEGに連結された脂質は一般的に、炭素数が14個で構成されたミリスチン酸(myristate)などを使用する。脂質部分の炭素数が少ないほど、脂質ナノ粒子を構成する他の脂質成分との相互作用大きさが減り、生体内で比較的容易に脂質ナノ粒子からPEG-脂質コンジュゲートが分離されて除去されるためである。パルミチン酸(palmitate、炭素数16個)、ステアリン酸(stearate、炭素数18個)など、脂肪酸の長さが相対的に長い物質を用いて製造された脂質ナノ粒子は、血流による循環過程でPEG除去が円滑でないため、細胞のエンドソーム進入が難しく、結果として効能が低下する。
【0165】
しかしながら、このように、循環過程中にPEGを除去する方式は、脂質ナノ粒子の構造的安定性側面からは、非常に不安定な要素として作用する。脂質ナノ粒子からPEG--脂質が分離されて除去され始めると、粒子自体の安定性低下によって、脂質ナノ粒子を構成している他の脂質成分まで流失し始めるためである。脂質ナノ粒子が適切な効率を有するためにはPEGを除去することが必須であるが、このように脂肪の長さが短いPEGを使用して製造された脂質ナノ粒子は、粒子の安定性が弱化する。
【0166】
一方、本発明で述べるPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートは、酸性条件でPEGを除去する分解可能官能基を含んでいるので、相対的に長い炭化水素、例えば、炭素数18個で構成された脂質を使用することができる。分解官能基が分解され得るエンドソームの酸性条件に到達するまではPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートがナノ粒子の構成成分に残っているので、血流による循環過程中に粒子の安定性を維持できる。
【0167】
【0168】
脂質ナノ粒子の免疫反応誘発
【0169】
脂質ナノ粒子を構成するイオン化脂質(ionizable lipid)は、免疫細胞を刺激して免疫反応を誘発するものと知られている。脂質ナノ粒子のPEG含有量を増加させると、免疫細胞と脂質ナノ粒子間の直接的な相互作用を抑制し、脂質成分による免疫副作用を最小化させることができる。しかし、PEG含有量の増加は必然的に細胞によるナノ粒子のアップテーク効率と細胞内のエンドソーム脱出を深刻に阻害することにつながるため、PEG含有量を必要最小量以上に増加させることは困難である。
【0170】
しかしながら、本発明のPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを含む脂質ナノ粒子は、リガンドを使用して細胞アップテーク効率を増加させることができ、エンドソーム内でPEGを除去できる分解可能官能基を含んでいる。したがって、本発明で提示するPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを使用すると、PEG含有量を増加させても、製造された脂質ナノ粒子は効能が低下せず、同時に免疫反応誘発も抑制させることができる。したがって、PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを使用した脂質ナノ粒子を末梢血液単核細胞(PBMC)と混合し、脂質ナノ粒子がサイトカイン(cytokine)を誘発する程度を測定すれば、陰性対照群として使用したPBS緩衝溶液処理群と類似のレベルであることが分かる。
【0171】
【0172】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものと解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0173】
【0174】
【0175】
[実施例]
【0176】
実施例1:ポリエチレングリコール(PEG)モイエティ-分解可能官能基-脂質(lipid)コンジュゲートの合成
【0177】
実施例1-1:2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エタノール
【0178】
【0179】
2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エタノール(2.00g、11.86mmol)水溶液(40mL)にアジ化ナトリウム(1.54g、23.72mmol)を添加して90℃で18時間撹拌した。反応物をジクロロメタンで3回抽出して硫酸マグネシウム及び減圧で乾燥させ、化合物(2.22g)を98.5%収率で得た。
【0180】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.75-3.70 (m, 2H), 3.69-3.65 (m, 6H), 3.63-3.59 (m, 2H), 3.42-3.36 (m, 2H), 2.31 (s, 1H).
【0181】
【0182】
実施例1-2:2-メチル-3,4,5-トリ-O-アセチル-1,2-デオキシ-アルファ-D-ガラクトピラノ[2,1,d]-2-オキサゾリン
【0183】
【0184】
DCE(22mL)に溶かした過アセチル化ガラクトサミン(400mg、1.03mmol)溶液に、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸塩(0.2mL、1.13mmol)を常温で添加した後、50℃で4時間撹拌した。反応温度を常温に下げ、トリエチルアミンを徐々に添加した後、15分間撹拌した。反応が終わった後、水とCH2Cl2を加えて抽出した有機溶媒層を、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後に減圧蒸留した。減圧蒸留して得られた混合物は、カラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH=40:1)で分離し、所望の化合物(260mg、0.77mmol)を78%収率で得た。
【0185】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.99 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 5.46 (t, J = 3.0 Hz, 1H), 4.90 (dd, J = 7.5, 3.3 Hz, 1H), 4.26-4.08 (m, 3H), 3.99 (m, 1H), 2.12 (s, 3H), 2.07 (s, 3H), 2.07 (s, 3H), 2.05 (d, J = 1.2 Hz, 3H).
【0186】
【0187】
実施例1-3:5-アセトアミノ-2-(アセトキシメチル)-6-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4-ジイルジアセテート
【0188】
【0189】
DCE(7.2mL)に溶かした2-メチル-3,4,5-トリ-O-アセチル-1,2-デオキシ-アルファ-D-ガラクトピラノ[2,1,d]-2-オキサゾリン(390mg、1.18mmol)と2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エタノール(228mg、1.30mmol)との混合溶液に、4Å分子体(190mg)を入れて5分撹拌した。トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸塩(104μL、0.59mmol)を常温で添加した後、16時間撹拌した。反応が終わった後に濾過して4Å分子体を除去し、水とCH2Cl2を加えて抽出した有機溶媒層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後に減圧蒸留した。減圧蒸留して得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(EA:MeOH=9:1)で分離し、所望の化合物(460mg、0.91mmol)を77%収率で得た。
【0190】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ6.14 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 5.32 (dd, J = 3.4, 1.1 Hz, 1H), 5.05 (dd, J = 11.2, 3.4 Hz, 1H), 4.78 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 4.22 (dt, J= 11.2, 8.9 Hz, 1H), 4.19-4.10 (m, 2H), 3.93-3.83 (m, 3H), 3.76-3.65 (m, 4H), 3.63 (dd, J = 7.1, 3.2 Hz, 4H), 3.51-3.39 (m, 2H), 2.15 (s, 3H), 2.04 (s, 3H), 1.99 (s, 3H), 1.98 (s, 3H).
【0191】
【0192】
実施例1-4:2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エチル2-アセトアミノ-3,4,6-トリ-O-アセチル-2-ジオキシ-α-D-ガラクトピラノシド
【0193】
【0194】
THF(10mL)に溶かした5-アセトアミノ-2-(アセトキシメチル)-6-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4-ジイルジアセテート(240mg、0.476mmol)溶液にPPh3(150mg、0.571mmol)を常温で添加した後、48時間撹拌した。H2O(26μL、1.427mmol)を添加した後、24時間撹拌した。その後、トルエン(10mL)を添加し、トリフルオロ酢酸(73μL、0.951mmol)を添加して塩を生成した。水とCH2Cl2を加えて抽出した水層を減圧蒸留し、所望の化合物(270mg、0.91mmol)を98%収率で得た。
【0195】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ5.35 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 5.05 (dd, J = 11.2, 3.2 Hz, 1H), 4.58 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.16-3.96 (m, 4H), 3.64-3.74 (m, 10H), 3.24 (m, 2H), 2.14 (s, 3H), 2.03 (s, 3H), 1.95 (s, 3H), 1.94 (s, 3H).
【0196】
【0197】
実施例1-5:トリス{[2-(ターシャリーブトキシカルボニル)エトキシ]メチル}メチルアミン
【0198】
【0199】
DMSO(2.0mL)に溶かしたトリス(1.21g、10.00mmol)溶液に5.0M水酸化ナトリウム(0.2mL)を15℃で添加した後、5分間撹拌した。Tert-ブチルアクリレート(5.0mL、34mmol)を徐々に滴加した。次に、水(0.2mL)を添加した後、アルゴン下、常温で24時間撹拌した。反応が終わった後、減圧蒸留して得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(EA:Hex=2:1)で分離し、所望の化合物(2.5g、5.00mmol)を50%収率で得た。
【0200】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ3.65 (t, J = 6.0 Hz, 6H), 3.32 (s, 6H), 2.46 (t, J = 6.0 Hz, 6H), 1.45 (s, 27H).
【0201】
【0202】
実施例1-6:(R)-((2,3-bis(オクタデシロキシ)プロポキシ)メチル)ベンゼン
【0203】
【0204】
トルエン(2.5mL)に溶かした(R)-3-ベンジロキシ-1,2-プロパンジオール(106mg、0.55mmol)溶液に、1-ブロモオクタデカン(732mg、2.20mmol)、水酸化カリウム(123mg、2.20mmol)を常温で添加した後、110℃で24時間還流させた。反応が終わった後に水とCH2Cl2を加えて抽出した有機溶媒層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後に減圧蒸留した。減圧蒸留して得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(Hex:EA=10:1)で分離し、所望の化合物(300mg、0.44mmol)を80%収率で得た。
【0205】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.32-7.21 (m, 5H), 4.55 (s, 2H), 3.64-3.48 (m, 7H), 3.43 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 1.61-1.51 (m, 4H), 1.39-1.21 (m, 60H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H).
【0206】
【0207】
実施例1-7.(S)-2,3-bis(オクタデシロキシ)プロパン-1-オール
【0208】
【0209】
CH2Cl2(4mL)に(R)-((2,3-bis(オクタデシロキシ)プロポキシ)メチル)ベンゼン(50mg、0.07mmol)を溶解させた後、Pd/C(10mg)を滴加した。水素下、常温で20時間撹拌した。反応が終わった後、セライト545を使用してエチルアセテート溶媒で濾過した後に減圧蒸留し、所望の化合物(40mg、0.07mmol)を92%収率で得た。
【0210】
1H NMR (CDCl3) δ 3.75-3.37 (m, 9H), 2.17 (m, 1H), 1.55 (m, 4H), 1.38-1.21 (m, 60H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H).
【0211】
【0212】
実施例1-8:(R)-2,3-bis(オクタデシロキシ)プロパンアル
【0213】
【0214】
CH2Cl2(3.7mL)に溶かしたデス-マーチンペルヨージナン(88mg、0.206mmol)溶液を、CH2Cl2(1.3mL)に溶かした(S)-2,3-bis(オクタデシロキシ)プロパン-1-オール(110mg、0.184mmol)溶液に0℃で徐々に滴加した後、常温で2時間撹拌した。反応が終わった後に水とCH2Cl2、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて有機溶媒層を抽出し、水とCH2Cl2、チオ硫酸ナトリウムを加えて抽出した有機溶媒層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後に減圧蒸留した。減圧蒸留して得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(Hex:EA=20:1)で分離し、所望の化合物(83mg、0.15mmol)を80%収率で得た。
【0215】
1H NMR (CDCl3) δ 3.81-3.37 (m, 9H), 1.65-1.51 (m, 4H), 1.38-1.21 (m, 60H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H).
【0216】
【0217】
実施例1-9:3,6-ジオキソ-1-フェニル-2,8,11,14-テトラオキサ-4,5-ジアザヘキサデカン-16-オイックアシドMn=600
【0218】
【0219】
DMF(5.8mL)にポリ(エチレングリコール)ビスカルボキシメチル)エーテル(1g、1.72mmol)を溶解させた後、0℃でCbzNHNH2(300mg、1.81mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾル(244mg、1.81mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(320μL、1.81mmol)を滴加した。アルゴン下、常温で18時間撹拌した。反応が終わった後、水とCH2Cl2、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて水層として抽出した後、再び水とCH2Cl2、H3PO4を加えて抽出した有機層を減圧蒸留して得られた生成物を40%収率で得た。
【0220】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.39-7.30 (m, 5H), 5.15 (s, 2H), 4.13 (s, 2H), 4.10 (s, 2H), 3.73-3.60 (m, 70H).
【0221】
【0222】
実施例1-10:1-ベンジル21-(tert-ブチル)16,16-bis((3-(tert-ブトキシ)-3オキソプロポキシ)メチル)-4,14-ジオキソ-6,9,12,18-テトラオキサ-2,3,15-トリアザヘニコサンジオエートMn=600
【0223】
【0224】
DMF(4mL)に3,6-ジオキソ-1-フェニル-2,8,11,14-テトラオキサ-4,5-ジアザヘキサデカン-16-オイックアシド混合物(870mg、1.16mmol)、トリス{[2-(ターシャリーブトキシカルボニル)エトキシ]メチル}メチルアミン(526mg、1.04mmol)を溶解させた後、0℃でヒドロキシベンゾトリアゾル(157mg、1.16mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(248μL、1.40mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(243μL、1.40mmol)を滴加した。アルゴン下、常温で18時間撹拌した。反応が終わった後、水とCH2Cl2、リン酸を加えて有機溶媒層を抽出した。抽出した有機溶媒層に水とCH2Cl2、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて抽出した有機溶媒層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後に減圧蒸留した。減圧蒸留して得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH=15:1)で分離し、所望の化合物を40%収率で得た。
【0225】
1H NMR (400 MHz; CD3OD) δ 7.38-7.31 (m, 5H), 5.16 (s, 2H), 4.30-4.13 (m, 3H), 4.13 (s, 2H), 3.90 (s, 2H), 3.77-3.60 (m, 70H), 2.46 (t,J = 6.0 Hz, 6H), 1.46 (s, 27H).
【0226】
【0227】
実施例1-11:18,18-bis((2-カルボキシエトキシ)メチル)-3,6,16-トリオキソ-1-2,8,11,14,20-ペンタオキサ-4,5,17-トリアザトリコサン-23-オイックアシドMn=600
【0228】
【0229】
1-ベンジル21-(tert-ブチル)16,16-bis((3-(tert-ブトキシ)-3オキソプロポキシ)メチル)-4,14-ジオキソ-6,9,12,18-テトラオキサ-2,3,15-トリアザヘニコサンジオエートMn=600(570mg、0.46mmol)を85%ギ酸(4.0mL)に溶かし、常温で18時間撹拌した。反応が終わった後、50℃で減圧蒸留し、所望の化合物を99%収率で得た。
【0230】
1H NMR (CD3OD) δ 7.38-7.30 (m, 5H), 5.15 (s, 2H), 4.30-4.17 (m, 3H), 4.13 (s, 2H), 3.90 (s, 2H), 3.78-3.63 (m, 70H), 2.53 (t, J = 6.0 Hz, 6H).
【0231】
【0232】
実施例1-12:トリ-アセチルガラク-PEG600-Cbzヒドラジド
【0233】
【0234】
DMF(4.4mL)に18,18-bis((2-カルボキシエトキシ)メチル)-3,6,16-トリオキソ-1-2,8,11,14,20-ペンタオキサ-4,5,17-トリアザトリコサン-23-オイックアシド、トリス{[2-(ターシャリーブトキシカルボニル)エトキシ]メチル}メチルアミン(1.58mmol)を溶解させた後、0℃でヒドロキシベンゾトリアゾル(214mg、1.58mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(280μL、1.58mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(550μL、3.16mmol)を滴加した。アルゴン下、常温で18時間撹拌した。さらにアルゴン下、常温でジイソプロピルエチルアミン(550μL、3.16mmol)を滴加し、常温で24時間撹拌した。反応が終わった後、水、CH2Cl2、リン酸を加えて有機溶媒層を抽出した。抽出した有機溶媒層を水とCH2Cl2、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて有機溶媒層を抽出した後に硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後に減圧蒸留した。残留混合物はカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH=10:1)で分離し、所望の化合物を23%収率で得た。
【0235】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.40-7.31 (m, 5H), 5.34 (d, J = 3.0 Hz, 3H), 5.07 (dd, J = 11.2, 3.3 Hz, 3H), 5.16 (s, 2H), 4.64 (t, J = 8.5 Hz, 3H), 4.16-4.02 (m, 16H), 3.95-3.91 (m, 6H), 3.77-3.61 (m, 106H), 3.55 (t, J = 5.6 Hz, 6H), 3.38 (t, J = 5.6 Hz, 6H), 2.45 (t, J= 6.0 Hz, 6H), 2.14 (s, 9H), 2.03 (s, 9H), 1.95 (s, 9H), 1.93 (s, 9H).
【0236】
【0237】
実施例1-13:トリ-アセチルガラク-PEG600-ヒドラジド
【0238】
【0239】
MeOH(2mL)にトリ-アセチルガラク-PEG600-Cbzヒドラジド(373mg、0.16mmol)を溶解させた後、Pd/C(13mg)、酢酸(28μL、0.48mmol)を滴加した。水素下、常温で20時間撹拌した。反応が終わった後、セライト545を使用してメタノール溶媒で濾過した後に減圧蒸留し、所望の化合物(120mg、0.05mmol)を99%収率で得た。
【0240】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.94 (s, 9H), 5.34 (d, J = 3.0 Hz, 3H), 5.07 (dd, J = 11.2, 3.4 Hz, 3H), 4.64 (d, J= 8.5 Hz, 3H), 4.17-3.91 (m, 16H), 3.77-3.61 (m, 106H), 3.56 (t, J = 5.5 Hz, 6H), 3.39 (t, J = 5.5 Hz, 6H), 2.46 (t, J = 5.9 Hz, 6H), 2.15 (s, 9H), 2.03 (s, 9H), 1.95 (s, 9H), 1.94 (s, 9H).
【0241】
【0242】
実施例1-14:ジオクタデシルオキシ-プロピリデントリ-アセチルガラク-PEG600-アシルヒドラゾン
【0243】
【0244】
EtOH(1mL)、CH2Cl2(0.1mL)混合溶液にトリ-アセチルガラク-PEG600-ヒドラジド(0.05mmol)、(R)-2,3-bis(オクタデシロキシ)プロパンアル(39mg、0.06mmol)を溶解させた後、アルゴン下、常温で3時間撹拌した。反応が終わった後、減圧蒸留した。減圧蒸留して得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH=10:1)で分離し、所望の化合物を26%収率で得た。
【0245】
1H NMR (CDCl3) δ 9.92 (s, 1H), 7.43 (d, J= 6.9 Hz, 1H), 7.19 (m, 2H), 7.03 (s, 1H), 6.6 (s, 1H), 5.32 (d, J = 3.0 Hz, 3H), 5.16 (dd, J = 11.3, 3.0 Hz, 3H), 4.78 (d, J = 8.5 Hz, 3H), 4.15-3.40 (m, 134H), 2.45 (t, J = 5.9 Hz, 6H), 2.13 (s, 9H), 2.03 (s, 9H), 1.98 (s, 9H), 1.94 (s, 9H), 1.54-1.48 (m, 4H), 1.24 (m, 60H), 0.86 (t, J = 6.8 Hz, 6H).
【0246】
【0247】
実施例1-15:ジオクタデシルオキシ-プロピリデントリ-ガラク-PEG600-アシルヒドラゾン(GalNAc-PEG600-Hz-DSG)
【0248】
【0249】
【0250】
MeOH(1mL)、CH2Cl2(0.1mL)混合溶液に、ジオクタデシルオキシ-プロピリデントリ-アセチルガラク-PEG600-アシルヒドラゾン(0.013mmol)を溶解させた後、メトキシドナトリウム(0.7mg、0.013mmol)を滴加した。アルゴン下、常温で2時間撹拌した。反応が終わった後、アンバーライトIR-120イオン交換樹脂で処理後に減圧蒸留し、所望の化合物を26%収率で得た。
【0251】
1H NMR (CDCl3) δ 9.97(s, 1H), 8.54 (s, 1H), 7.90(m, 2H), 7.72 (m, 1H), 4.47 (m, 3H), 4.15-3.44 (m, 144H), 2.47 (t, J= 5.9 Hz, 6H), 2.00 (s, 9H), 1.55 (m, 4H), 1.24 (m, 60H), 0.87 (t, J = 6.8 Hz , 6H).
【0252】
【0253】
実施例1-16:3,6-ジオキソ-1-フェニル-2,8,11,14-テトラオキサ-4,5-ジアザヘキサデカン-16-オイックアシドMn=2000
【0254】
【0255】
実施例1-9と同じ方法により、収得率40%で所望の化合物を得た。
【0256】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.39-7.30 (m, 5H), 5.15 (s, 2H), 4.13 (s, 2H), 4.10 (s, 2H), 3.73-3.68 (m, 190H).
【0257】
【0258】
実施例1-17:1-ベンジル21-(tert-ブチル)16,16-bis((3-(tert-ブトキシ)-3オキソプロポキシ)メチル)-4,14-ジオキソ-6,9,12,18-テトラオキサ-2,3,15-トリアザヘニコサンジオエートMn=2000
【0259】
【0260】
実施例1-10と同じ方法により、収得率30%で所望の化合物を得た。
【0261】
1H NMR (400 MHz; CD3OD) δ 7.38-7.31 (m, 5H), 5.16 (s, 2H), 4.30-4.13 (m, 3H), 4.13 (s, 2H), 3.90 (s, 2H), 3.77-3.60 (m, 190H), 2.46 (t, J= 6.0 Hz, 6H), 1.46 (s, 27H).
【0262】
【0263】
実施例1-18:18,18-bis((2-カルボキシエトキシ)メチル)-3,6,16-トリオキソ-1-2,8,11,14,20-ペンタオキサ-4,5,17-トリアザトリコサン-23-オイックアシドMn=2000
【0264】
【0265】
実施例1-11と同じ方法により、収得率99%で所望の化合物を得た。
【0266】
1H NMR (CD3OD) δ 7.38-7.30 (m, 5H), 5.15 (s, 2H), 4.12 (s, 4H), 3.78-3.96 (m, 190H), 2.53 (t, J = 6.0 Hz, 6H).
【0267】
【0268】
実施例1-19:トリ-アセチルガラク-PEG2K-Cbzヒドラジド
【0269】
【0270】
実施例1-12と同じ方法により、収得率30%で所望の化合物を得た。
【0271】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.40-7.31 (m, 5H), 5.34 (d, J = 3.0 Hz, 3H), 5.16 (s, 2H), 5.07 (dd, J = 11.2, 3.3 Hz, 3H), 4.64 (t, J = 8.5 Hz, 3H), 4.16-4.02 (m, 16H), 3.95-3.91 (m, 6H), 3.77-3.61 (m, 226H), 3.55 (t, J = 5.6 Hz, 6H), 3.38 (t, J= 5.6 Hz, 6H), 2.45 (t, J = 6.0 Hz, 6H), 2.14 (s, 9H), 2.03 (s, 9H), 1.95 (s, 9H), 1.93 (s, 9H).
【0272】
【0273】
実施例1-20:トリ-アセチルガラク-PEG2K-ヒドラジド
【0274】
【0275】
実施例1-13と同じ方法により、収得率99%で所望の化合物を得た。
【0276】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 5.34 (d, J = 3.0 Hz, 3H), 5.07 (dd, J = 11.2, 3.4 Hz 3H), 4.64 (d, J = 8.5 Hz, 3H), 4.17-3.91 (m, 16H), 3.77-3.60 (m, 226H), 3.56 (t, J = 5.5 Hz, 6H), 3.39 (t, J = 5.5 Hz, 6H), 2.46 (t, J = 5.9 Hz, 6H), 2.15 (s, 9H), 2.03 (s, 9H), 1.95 (s, 9H), 1.94 (s, 9H).
【0277】
【0278】
実施例1-21:ジオクタデシルオキシ-プロピリデントリ-アセチルガラク-PEG2K-アシルヒドラゾン
【0279】
【0280】
実施例1-14と同じ方法により、収得率37%で所望の化合物を得た。
【0281】
1H NMR (CDCl3) δ 9.95 (s, 1H), 7.43 (d, J= 6.9 Hz, 1H), 7.19 (m, 2H), 7.03 (s, 1H), 6.6 (s, 1H), 5.32 (d, J = 3.0 Hz, 3H), 5.16 (dd, J = 11.3, 3.0 Hz, 3H), 4.78 (d, J = 8.5 Hz, 3H), 4.15-3.40 (m, 226H), 2.45 (t, J = 5.9 Hz, 6H), 2.13 (s, 9H), 2.03 (s, 9H), 1.98 (s, 9H), 1.94 (s, 9H), 1.54-1.48 (m, 4H), 1.24 (m, 60H), 0.86 (t, J = 6.8 Hz, 6H).
【0282】
【0283】
実施例1-22:ジオクタデシルオキシ-プロピリデントリ-ガラク-PEG2K-アシルヒドラゾン(GalNac-PEG2K-Hz-DSG)
【0284】
【0285】
実施例1-15と同じ方法により、収得率26%で所望の化合物を得た。
【0286】
1H NMR (CDCl3) δ 9.93 (s, 1H), 8.54 (s, 1H), 7.90 (m, 2H), 7.72 (m, 1H), 4.47 (m, 3H), 4.15-3.44 (m, 236H), 2.47 (t, J= 5.9 Hz, 6H), 2.00 (s, 9H), 1.55 (m, 4H), 1.24 (m, 60H), 0.87 (t, J = 6.8 Hz, 6H).
【0287】
【0288】
実施例1-23.ベンジル4-オキソ-6,9,12-トリオキサ-2,3-ジアザトリデカノエート-PEG600
【0289】
【0290】
2.7mL DMFに2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)酢酸(150mg、0.27mmol)を溶解させた後、CbzNHNH2(50mg、0.3mmol)、EDCI(58μL、0.33mmol)及びHOBt(44mg、0.33mmol)を0℃で添加し、室温で一日撹拌した。反応終結後に反応物をDCM(40mL)に移し、希釈したH3PO4(1M、40mL)、NaHCO3(1M、40mL)水溶液(40mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。反応物をシリカゲルカラムにおいてDCM/メタノール(10/1,v/v)で分離し、化合物175mgを91%収率で得た。
【0291】
1H NMR (400 MHz, MeOH-d4) δ 7.39-7.30 (m, 5H), 5.16 (s, 2H), 4.20 (s, 2H), 3.68-3.52 (m, 50H). 3.37 (s, 3H)
【0292】
【0293】
実施例1-24:2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)アセトヒドラジド-PEG600
【0294】
【0295】
メタノール(2.8mL)にCbzヒドラジド(175mg、0.25mmol)を溶解させ、Pd/C(18mg、10w/w%)を添加して、水素下で20時間撹拌した。反応終結後にセライト545で濾過し、化合物147mgを95%収率で得た。
【0296】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.14-4.01 (m, 2H), 3.61 (m, 50 H), 3.34 (s, 3H)
【0297】
【0298】
実施例1-25:ジオクタデシルオキシ-プロピリデンPEG600-アシルヒドラゾン(PEG600-Hz-DSG)
【0299】
【0300】
1.3mLエタノールに実施例1-24の結果物(79mg、0.127mmol)を溶解し、実施例1-8の結果物アルデヒド(113mg、0.19mmol)を添加した。混合物は50℃で18時間撹拌し、反応を終結させた。反応物をカラムで精製し、化合物123mgを85%の収率で得た。
【0301】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.97(s, 1H), 7.38 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 4.15 (m, 3 H), 3.65-3.40 (m, 56 H), 3.36(s, 3H), 1.52(m, 4H), 1.23 (m, 60 H), 0.86 (t, J = 6.4 Hz, 3H).
【0302】
【0303】
実施例1-26:ベンジル4-オキソ-6,9,12-トリオキサ-2,3-ジアザトリデカノエート-PEG2K
【0304】
【0305】
実施例1-23と同じ方法により、化合物160mgを95%収率で得た。
【0306】
1H NMR (400 MHz, MeOH-d4) δ 7.39-7.30 (m, 5H), 5.16 (s, 2H), 4.20 (s, 2H), 3.68-3.52 (m, 190H). 3.36 (s, 3H)
【0307】
【0308】
実施例1-27:2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)アセトヒドラジド-PEG2K
【0309】
【0310】
実施例1-24と同じ方法により、化合物110mgを75%収率で得た。
【0311】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.14-4.01 (m, 2H), 3.61 (m, 190 H), 3.34 (s, 3H)
【0312】
【0313】
実施例1-28:ジオクタデシルオキシ-プロピリデンPEG2K-アシルヒドラゾン(PEG2K-Hz-DSG)
【0314】
【0315】
実施例1-25と同じ方法により、化合物57mgを53%収率で得た。
【0316】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.95(s, 1H), 7.36 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 4.14 (m, 3 H), 3.60-3.40 (m, 200 H), 3.34(s, 3H), 1.51(m, 4H), 1.21 (m, 60 H), 0.84 (t, J = 6.4 Hz, 3H).
【0317】
【0318】
実施例1-29:(R)-1-(4-(2,3-ビス(オクタデシルオキシ)プロポキシ)フェニル)エタン-1-オン
【0319】
【0320】
2mL THFに実施例1-7の結果物(59.8mg、100umol)を溶解し、4-ヒドロキシアセトフェノン(15.0mg、110umol)、PPh3(39.4mg、150umol)、DIAD(30uL,150umol)を0℃で添加した。混合物を室温で12時間撹拌して反応を終結させた。反応物をジクロロメタンで3回抽出し、塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧で乾燥させた。シリカクロマトグラフィーで結果物を精製し、結果物55.0mgを77%の収率で得た。
【0321】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.92 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.95 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.19-4.05 (m, 2H), 3.79 (quin, J = 5.1 Hz, 1H), 3.64-3.57 (m, 4H), 3.46 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.55 (s, 3H), 1.61-1.50 (m, 4H), 1.32-1.21(m, 60H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz).
【0322】
【0323】
実施例1-30:(R,E)-N’-(1-(4-(2,3-bis(オクタデシルオキシ)プロポキシ)フェニル)エチリデン)-2-(2-メトキシエトキシ)アセトヒドラジド(PEG600-PhHz-DSG)
【0324】
【0325】
エタノール(4mL)にm-PEG-ヒドラジドMn=550(CreativePEGworks)(200mg、364umol)を溶解し、実施例1-29の結果物(260mg、364umol)、酢酸(100uL、3.64mmol)を添加した。混合物を85℃で16時間撹拌した。反応物をカラム精製方式で精製し、結果物265mgを66%収率で得た。
【0326】
【0327】
実施例1-31:(2R)-2,3-ビス(オクタデシルオキシ)プロピル2-(メトキシポリエチレングリコール550)アセテート(PEG600-Ester-DSG)
【0328】
【0329】
DCM(30.0mL)に2-(メトキシポリエチレングリコール550)カルボン酸(100mg、0.156mmol)を溶解させた後、(S)-2,3-ビス(オクタデシルオキシ)プロパン-1-オール(187mg、0.312mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(23mg、0.187mmol)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(37mg、0.180mmol)を滴加した。窒素下、常温で24時間撹拌した。反応が終わった後、反応物をセライト545でフィルターした後、水とCH2Cl2を加えて有機層として3回抽出した後、抽出した有機溶媒層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後に減圧蒸留した。減圧蒸留して得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(DCM:MeOH=20:1)で分離し、所望の化合物(68mg、0.64mmol)を41%収率で得た。
【0330】
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 4.24 (t, 2H), 3.60-3.70 (m, 33H), 3.42 (s, 2H), 1.96-1.98 (d, 3H), 1.75-1.76 (d, 3H), 1.29 (s, 60H), 0.92 (t, 6H)
【0331】
【0332】
実施例2:脂質ナノ粒子の製造
【0333】
本発明で述べるPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲート、すなわち、酸性条件で分解される性質がある官能基を含むPEG誘導体が、脂質ナノ粒子を製造する酸性条件で安定してナノ粒子を形成できるかを確認するために、2種類のナノ粒子を製造した。その一つは、酸性条件で加水分解されるヒドラゾン(hydrazone)官能基を含むPEG2K-Hz-DSG(化学式3)を含み、もう一つは、酸性条件で加水分解されないPEG2K-PE-DSG(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[methoxy(polyethylene glycol)]-2000,Avanti)を使用するナノ粒子を製造した。イオン化脂質を含むナノ粒子を製造する通常の方法によって製造するために2種の溶液を準備した。一つは、脂質成分を含有する有機溶液であり、エタノールに脂質ナノ粒子を構成する脂質成分を溶解させて準備した。PEG2K-Hz-DSG又はPEG2K-PE-DSG 1モル%を含む脂質ナノ粒子を製造するために、DLin-MC3-DMA、DSPC(distearoylphosphatidylcholine)、コレステロール、PEG2K-Hz-DSG又はPEG2K-PE-DSGをそれぞれ、50:10:39:1モル比を維持しつつ総4.5mg/mLの濃度となるように準備した。PEG2K-Hz-DSG又はPEG2K-PE-DSGをそれぞれ2モル%、5モル%の割合で含む脂質ナノ粒子の製造のためには、前記PEG1モル%脂質ナノ粒子の製造に使用されたPEG含有量の2倍、5倍のPEGを含めて溶液を準備した。
【0334】
一方、siRNAをpH 4のクエン酸緩衝溶液に0.046mg/mLの濃度となるように準備した。マイクロミキサーチップ又はT-lineチップを用いてエタノール溶液とバッファ水溶液を3:1の体積比で混合して脂質ナノ粒子を製造するが、混合溶液の流速は4mL/minとなるようにした。チップを通過して出た溶液にさらに、1:1の体積比でバッファを混合し、pH 7に変更させた後、これをpH 7.5 PBS緩衝溶液で24時間透析させた。製造された脂質ナノ粒子を動的光散乱(Dynamic Light Scattering,DLS)装置を用いて、粒子のサイズを測定した。万一、PEG2K-Hz-DSGのヒドラゾン(hydrazone)が、脂質ナノ粒子を製造する酸性条件でPEGと脂質(DSG)で加水分解されると、PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを含まないナノ粒子の製造と同様に、脂質成分が不均一なサイズの沈殿物として析出されるべきである。しかし、
図2から分かるように、PEG2K-Hz-DSGを構成成分として含むナノ粒子は、PEG2K-PE-DSGを含むナノ粒子と同様に均一なサイズのナノ粒子を形成し、PEG含有量が増加するほど、小さいサイズのナノ粒子を形成することが分かる。この実施例から、酸性条件で分解される性質がある官能基を含むPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートが、脂質ナノ粒子を製造する酸性条件で分解されずに安定してナノ粒子を形成できることを確認した。
【0335】
【0336】
実施例3:PEG-Hz-DSG又はPEG-PE-DSGを含む脂質ナノ粒子の効能比較
【0337】
PEG-Hz-DSG又はPEG-PE-DSGを含む脂質ナノ粒子の効能を確認するために、ルシフェラーゼ(luciferase)をターゲットとするsiRNAを含めて実施例2に記載の方式で脂質ナノ粒子を製造した。これを、ルシフェラーゼを常時発現する細胞株にsiRNA濃度基準で様々な濃度で脂質ナノ粒子を処理し、ルシフェラーゼ活性抑制程度を評価した。
【0338】
脂質ナノ粒子に含まれるPEGの分子量と含有量が効能に及ぼす影響を確認するために、PEG2000(PEG2K-Hz-DSG又はPEG2K-PE-DSG)又はPEG1000(PEG1K-Hz-DSG又はPEG1K-PE-DSG)をそれぞれ1、2、5モル%含むように製造した。PEG600-Hz-DSGの場合は、より様々な含有量を含むように1、2、5、10、20、30、40モル%含む脂質ナノ粒子も製造して評価した。
【0339】
PEG-PE-DSGを含む脂質ナノ粒子は、PEG含有量に関係なく効能がないか(
図2A)、含有量が増加するほど効能が低下する(
図2B)ことが分かるが、PEG-Hz-DSGは含有量に関係なく効果的にルシフェラーゼ発現を抑制できることを確認した。特に、PEG600-Hz-DSGを含む脂質ナノ粒子は、含有量が20モル%に到達するまでより効果的にルシフェラーゼの発現を抑制し、効能が向上することが確認できた。
【0340】
【0341】
実施例4:脂質ナノ粒子に含まれたPEG含有量による細胞アップテーク(uptake)及びターゲット阻害効率比較確認
【0342】
脂質ナノ粒子製造に一般的に多く使用されるPEG-DMGを用いて脂質ナノ粒子を製造すれば、PEG含有量が増加する場合に、細胞にアップテークされる効率が減少することが知られている。これを確認するために、PEG-DMGをそれぞれ2、5、10モル%含有する脂質ナノ粒子を製造する際に、蛍光染料DiI(1,1’-Dioctadecyl-3,3,3’,3’-tetramethylindocarbocyanine perchlorate)を0.2モル%含めて製造した後、HepG2細胞株に24時間処理した。ナノ粒子の細胞アップテーク効率を流細胞分析機(FACS)で分析した結果、PEG含有量が増加するほど、細胞のアップテークが低下することが確認できる(
図3A)。
【0343】
低下したアップテーク(uptake)の結果は、脂質ナノ粒子の効能低下を招く。前記PEG-DMGをそれぞれ0、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10モル%の含有量別に含む脂質ナノ粒子を製造する際に、ルシフェラーゼ(luciferase)をターゲットとするsiRNAを含めて製造した。これを、ルシフェラーゼを常時発現する細胞に処理し、ルシフェラーゼの活性度を測定した。
図3のBグラフから確認できるように、PEGの含有量が0.5~2モル%の区間で最も優れた効率を示した。0~0.2モル%のPEGを含む脂質ナノ粒子では効能が観察されておらず、2モル%以上の区間では、PEGの含有量が増加するほど、ルシフェラーゼの活性阻害効率が減少することが分かる。非常に低いPEGを含むと粒子形成自体が不均一になり、PEG含有量が一定レベルを超えると、細胞へのアップテーク(uptake)及びエンドソーム脱出を難しくするためである。
【0344】
PEG-DMGとPEG600-Hz-DSGを含有量別に含む脂質ナノ粒子の効能を直接に比較するために、該当PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲート成分をそれぞれ1、2、5、10モル%とし、ルシフェラーゼをターゲットとするsiRNA含む脂質ナノ粒子を製造した。脂質ナノ粒子を、ルシフェラーゼを常時発現するHEPG2とHEK293細胞株に処理し、24時間後にルシフェラーゼ発現量を測定した結果、PEG-DMGを含む脂質ナノ粒子は、PEGの含有量が増加するほど効率が減少するのに対し、PEG600-Hz-DSGを含む脂質ナノ粒子は、PEG含有量が増加する際に効率に変動がないか、却って向上することが確認できた(
図3C及び
図3D)。この資料に基づいてEC50を計算した結果を
図3E及び
図3Fに示したが、HEPG2細胞株においてPEG-DMGとPEG600-Hz-DSGを10%ずつ含む脂質ナノ粒子のEC50はそれぞれ8.9nMと0.2nMであって、約45倍の差が出たし、HEK293細胞株ではそれぞれ26nMと0.72nMであって、約36倍の差があることが確認できた。
【0345】
【0346】
実施例5:脂質ナノ粒子のPEG除去確認
【0347】
脂質ナノ粒子が細胞のエンドソーム内に進入した後には、エンドソーム脂質膜と脂質ナノ粒子の効果的な相互作用のために、エンドソーム内でPEGを除去することが効率側面で有利である。分解可能官能基がない一般的なPEG-脂質コンジュゲートを使用する脂質ナノ粒子は、エンドソームの内部環境を摸写する酸性条件で粒子の構造が相対的に安定している。これに対し、PEG-Hz-DSGのように酸性条件で分解される官能基を含む脂質ナノ粒子は、酸性条件でPEGが除去されて不安定になる。これを確認するために、通常の脂質ナノ粒子製造比率である1.5モル%PEG-DMGを含むナノ粒子と本発明で使用するPEG600-Hz-DSGを10モル%含む脂質ナノ粒子を、pH 7.4、5.5、5.0、4.5の緩衝溶液でサイズ変化を測定した。
【0348】
PEG-DMGを使用して製造されたナノ粒子をそれぞれ、pH条件で粒子サイズの変化を時系列で観察すれば、大きい変化がないことが分かる(
図4A)。一方、PEG600-Hz-DSGを含む脂質ナノ粒子のサイズは、中性条件であるpH 7.4では安定したサイズを保持するが、酸性pH環境では粒子間の融合が活性化されることが分かる(
図4B)。のみならず、各酸性条件では、粒子間の融合現象が持続して経時進行してサイズが益々増加することが分かる。すなわち、ナノ粒子表面を構成しているPEGが酸性条件で効果的に除去されることが分かる。
【0349】
したがって、ヒドラゾンのように酸性条件で加水分解される官能基を含むPEG-Hz-DSGは、脂質ナノ粒子を製造する時の酸性条件(pH 4、エタノール20~40%緩衝溶液)では構造的安定性を維持するが(
図1)、エタノールを除去した後には酸性pHでヒドラゾンが速く加水分解され、PEGと脂質部分とが分離されたことが確認できる。
【0350】
【0351】
実施例6:分解可能官能基の加水分解時点確認
【0352】
脂質ナノ粒子表面のPEGを除去する時点によって効能差が発生するか否かを確認するために、PEG600-Hz-DSGを5又は10モル%含有する脂質ナノ粒子を製造する際に、ルシフェラーゼをターゲットとするsiRNAを含めて製造した。脂質ナノ粒子をpH 7又は4緩衝溶液で24時間処理した後、ルシフェラーゼを常時発現する細胞株に72時間処理してルシフェラーゼ発現量を測定した。
【0353】
pH 7の緩衝溶液で前処理された脂質ナノ粒子は、効果的にルシフェラーゼ発現を抑制できるが、pH 4緩衝溶液でPEGが除去された脂質ナノ粒子は効能が全く観察されなかった(
図5)。すなわち、脂質ナノ粒子が細胞のエンドソーム内に進入した後にPEGが除去されてこそ効能が発生するが、細胞にアップテークされる前にPEGが除去されたナノ粒子は効能を喪失するということが分かった。
【0354】
【0355】
実施例7:分解可能官能基の化学構造が効能に及ぼす影響評価
【0356】
PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲート成分において分解可能官能基をなす化学的構造によって、酸性条件での加水分解半減期に差異が発生する。酸性条件での加水分解敏感度が脂質ナノ粒子の効能に及ぼす影響を確認するために、分解可能官能基をエステル(PEG600-Ester-DSG、化学式8)又はアリールヒドラゾン(PEG600-PhHz-DSG、化学式9)とするPEG誘導体を1、2、5、10モル%含む脂質ナノ粒子を製造した。
【0357】
[化学式8]
【0358】
【0359】
[化学式9]
【0360】
【0361】
該当脂質ナノ粒子にルシフェラーゼをターゲットとするsiRNA含めて製造し、ルシフェラーゼを常時発現する細胞株に24時間処理後に、ルシフェラーゼ活性を測定した(
図6A)。
【0362】
PEG600-Hz-DSGとPEG600-Ester-DSGの含有量が増加するほど、脂質ナノ粒子の効率が向上することが分かったし、ヒドラゾン官能基がエステル官能基に比べて優れた効率を示すことが確認できた。
【0363】
このような結果と各官能基の酸性条件加水分解敏感度との相関関係を確認するために、該当PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを10モル%含有する脂質ナノ粒子を、PBS pH7.4又はクエン酸pH 4.5緩衝溶液に移した後、粒子のサイズ変化を動的光散乱方式で測定した(
図6B)。ヒドラゾン、エステル、アリールヒドラゾンの官能基順に粒子のサイズが増加したが、これは、各官能基が前記の順に酸性条件でよく加水分解されるということを意味する。すなわち、活発に加水分解されてPEGが効果的に除去されるほど、優れた効率を示すということが、
図6A及び
図6Bから確認できた。
【0364】
【0365】
実施例8:脂質ナノ粒子の脂質膜融合及び溶血反応(hemolysis)誘発評価
【0366】
脂質ナノ粒子がエンドソーム脂質膜と融合する程度を調べるために、イオン化脂質のpKaよりも低いpH条件でリポソーム脂質膜又は赤血球とナノ粒子とを混合し、脂質膜融合反応又は溶血反応を測定して評価した。本実施例に使用されたイオン化脂質は、DLin-MC3-DMAであるが、この物質のアミン基pKaは約6.5であり、pH 4条件ではアミン基が陽電荷を帯びる。陽電荷は、エンドソームの脂質膜の陰電荷と静電気的引力によってより容易に融合が進行するように助ける。しかし、ナノ粒子の表面にPEGが分布すると、静電気的引力をPEGが弱化させる遮り効果を発生させる他にも、ナノ粒子の表面とエンドソームの脂質膜との直接接触を妨害する効果がある。
【0367】
脂質ナノ粒子とエンドソーム脂質膜との融合効率を評価するために、PEG600-Hz-DSG 10モル%又は脂質ナノ粒子の製造に通常使用されるPEG-DMG 1.5モル%を含む脂質ナノ粒子を製造したが、このとき、各ナノ粒子に、18:1 NBD PE(1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-(7-nitro-2-1,3-benzoxadiazol-4-yl)(ammonium salt))と18:1 Liss Rhod PE(1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-(lissamine rhodamine B sulfonyl)(ammonium salt))を0.5モル%含めた。
【0368】
エンドソーム脂質膜を摸写するためにリポソームを製造して使用した。Soy PS:DOPC:DOPEを25:25:50モル%の割合でクロロホルムに総1mM濃度となるように溶解させ、丸底フラスコにおいてクロロホルムを減圧乾燥方式で除去した。ここに1mLのPBSを投入し、ソニケーションを行ってリポソームを生成した。
【0369】
pH 7.4、6.5、6.0、5.5、5.0、4.5緩衝溶液において各脂質ナノ粒子とリポソームとを混合した。脂質ナノ粒子に含まれたNBDとLiss Rhodが近接した位置にある時には蛍光信号が測定できないが、ナノ粒子がリポソームの脂質膜と融合して蛍光脂質の相対的距離が遠ざかると、NBDの蛍光信号が増加するため、これを用いて脂質膜融合効率が測定できる。ex 475/em 540波長条件でNBDの蛍光信号を測定してナノ粒子の脂質膜融合効率を測定した。
【0370】
蛍光信号発生を測定し、PEG-DMG又はPEG600-Hz-DSGを含む脂質ナノ粒子が酸性条件でリポソームの脂質膜と融合することが確認できた(
図7A)。特に、PEGを1.5%含むPEG-DMG脂質ナノ粒子に比べて高い含有量である10% PEG600-Hz-DSGを含む脂質ナノ粒子において相対的により高いpHで脂質膜と融合を始め、より強い蛍光信号を発生することを確認した。すなわち、両ナノ粒子とも同一イオン化脂質を使用したため、イオン化脂質の陽電荷による効果は同一であるが、PEG-DMG脂質ナノ粒子のPEGは粒子表面にそのまま存在するのに対し、PEG600-Hz-DSGのPEGはヒドラゾン基の加水分解によって除去されるため、相対的に優れた脂質膜融合効率を示すことを確認した。
【0371】
脂質ナノ粒子と脂質膜との融合効率は、赤血球を使用した溶血実験からも確認できる。
図7Bは、脂質ナノ粒子製造に一般的に使用するPEG-DMGをそれぞれ5、10モル%含む脂質ナノ粒子を製造し、これを使用してpH 4.5又は7.4の条件で溶血誘発反応を測定した結果を示す。PEGの含有量が5%から10%に増加すると、溶血反応が抑制されることが確認できる。すなわち、PEG含有量が増加すると、PEGによる遮り効果によって脂質膜融合能力が阻害されることが分かる。一方、リガンドを含むPEG600-Hz-DSGを使用して製造した脂質ナノ粒子は、酸性条件で加水分解によってPEGが除去されるため、PEG誘導体の含有量が10%に増加した脂質ナノ粒子も溶血反応を効果的に誘発することが分かる。
【0372】
参考として、pH7.4の中性条件ではイオン化脂質のアミン基が電気的に中性状態であるため、2種類の脂質ナノ粒子とも溶血反応を誘発しないことが分かる。すなわち、 中性状態のpHでは、脂質ナノ粒子周囲の他の細胞と相互作用を進行しないが、脂質ナノ粒子がエンドソームに到達した場合は、PEG誘導体を含む脂質ナノ粒子が相対的に容易にエンドソーム脂質膜と融合過程を発生させることが分かる。
【0373】
【0374】
実施例9:PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを構成する脂質の長さと脂質ナノ粒子の構造的安定性との関係
【0375】
上記の実施例から確認したように、脂質ナノ粒子表面を取り囲んでいるPEGは、脂質ナノ粒子製造過程では必要であるが、薬理的効能側面では不利に作用する。したがって、脂質ナノ粒子が生体内で血流に乗って循環する間にPEGが脂質ナノ粒子から自ずから除去されやすいように、PEGを炭素数が14個で構成されたミリスチン酸(myristate)などの炭化水素脂肪に連結した物質であるPEG-DMGを一般的に使用する。パルミチン酸(palmitate、炭素数16個)、ステアリン酸(stearate、炭素数18個)など、脂肪酸の長さが相対的に長い物質を使用して製造された脂質ナノ粒子は、血流による循環過程でPEG除去が円滑でないため、細胞のエンドソーム進入が難しく、結果して効能が低下する。
【0376】
しかしながら、脂肪酸の長さが短いPEG-脂質コンジュゲートを使用して循環過程中にPEG除去する方式は、脂質ナノ粒子の構造的安定性の側面では、非常に不安定な要因として作用する。脂質ナノ粒子からPEG-脂質コンジュゲートが分離されて除去され始めると、粒子自体の安定性が低下するため、脂質ナノ粒子を構成している他の脂質成分も流失され始める。これを確認するために、PEG-DMG(脂質の炭素長14)を1.5%又は5%含有する脂質ナノ粒子と、脂肪酸の長さが18と構成されたPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲート(化学式4)5%を含有する脂質ナノ粒子の構造的安定性を比較した。
【0377】
脂質ナノ粒子を製造する時に、蛍光を帯びる18:1 NBD PEと18:1 Liss Rhod PEをそれぞれ1モル%含めた。脂質ナノ粒子を37℃のラット血漿に入れ、指定された時刻に試料を採取してNBDの蛍光強度を測定した(
図8)。粒子が安定的に維持された場合は、両蛍光染料がナノ粒子内で比較的近接した距離にあるため、NBD蛍光染料の蛍光信号が小さく測定される。万一、ナノ粒子構造が不安定になると、ナノ粒子の構成成分の流出を誘発し、この場合、各蛍光染料が標識された脂肪酸も流出されながら蛍光信号が増加する。資料に見られるように、脂肪酸の長さが短いPEG-DMGを使用して製造された脂質ナノ粒子は、粒子の安定性に脆弱であるため、短時間で蛍光信号が増加するのに対し、脂肪酸の長さが長いPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートは、蛍光信号増加が相対的に遅いことが分かる。すなわち、脂質ナノ粒子からPEGを除去するために、意図的に、短い長さの脂肪酸からなるPEG-脂質コンジュゲートを使用する脂質ナノ粒子は、血流による循環過程でPEGが除去されると同時に他の脂質成分も速く流失されるが、本発明で述べるPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを使用して製造された脂質ナノ粒子は、比較的安定した構造を保持できることが分かる。
【0378】
【0379】
実施例10:脂質ナノ粒子の免疫反応誘発測定
【0380】
脂質ナノ粒子を構成するイオン化脂質は、免疫細胞との相互作用によって不要な免疫反応を誘発することがある。このような副作用を最小化するためにPEGを使用できるが、上記の実施例に見られるように、PEG含有量の増加は、不要な相互作用を抑制して免疫反応を効果的に軽減させることができるが、必然的に細胞によるナノ粒子のアップテーク効率と細胞内のエンドソーム脱出を深刻に阻害することにつながるため、PEG含有量を必要最小量以上に増加させることは困難である。
【0381】
一方、本発明で述べるPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを含む脂質ナノ粒子は、リガンドを使用して細胞アップテーク効率を増加させることができ、エンドソーム内でのPEGを除去できる化学官能基を含んでいる。したがって、PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを使用すると、PEG含有量を増加させても、製造された脂質ナノ粒子は効能が低下せず、同時に免疫反応誘発を抑制させることができる。これを確認するために、リガンドを含むPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲート10モル%を使用した脂質ナノ粒子を、ラットから抽出した末梢血液単核細胞(PBMC)と混合して、脂質ナノ粒子がサイトカイン(cytokine)を誘発する程度を測定した。
図9に示すように、PEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを使用した脂質ナノ粒子の免疫反応誘発程度は、陰性対照群として使用したPBS緩衝溶液処理群と類似のレベルであることが分かる。
【0382】
【0383】
実施例11:動物を用いた脂質ナノ粒子の効能評価
【0384】
細胞実験において効能を示す脂質ナノ粒子を用いて、生体内での効果を確認するために動物実験を行った。そのために、PEG2K-PE-DSG又はPEG2K-Hz-DSGを5モル%含む脂質ナノ粒子を製造したし、各脂質ナノ粒子は、Factor 7をターゲットとするsiRNAを含めた。8週齢のC57BL/6雌マウス(ラオンバイオ)にPBS又は各脂質ナノ粒子を、siRNA基準で0.3又は1mg/kg容量を静脈注射方式(I.V.injection)で注入した。注入時に、物質の投与体積は10mL/kgを維持した。注入して48時間後に、血清内のFactor 7の含有量をFactor 7分析キット(Abcam)で定量し、PBSを投入した陰性対照群対比の含有量を測定した(
図10)。
【0385】
細胞を用いた実験結果(
図2A)と類似に、分解可能官能基であるヒドラゾンを含んでいる脂質ナノ粒子では、容量依存的にFactor 7の発現を抑制したが、分解可能官能基を含んでいない脂質ナノ粒子では、効能が確認できなかった。
【0386】
【0387】
実施例12:リガンドを含む脂質ナノ粒子の効能評価
【0388】
特定受容体を発現する組織にナノ粒子を選択的に伝達するために、該当受容体と特異的に結合するリガンドを脂質ナノ粒子に含めて製造することができる。リガンドを含む脂質ナノ粒子の効果を確認するために、PEG600-Hz-DSGを10モル%含む脂質ナノ粒子と、肝組織に特異的な伝達のために0.5モル%のGalNac-PEG2K-Hz-DSGと9.5モル%のPEG600-Hz-DSGを混合使用した脂質ナノ粒子をそれぞれ製造した。siRNA基準で0.1mg/kgの容量をマウスに投与したが、実施例11に記載の方式と同一にして動物実験を行った。
【0389】
結果として、肝特異的なリガンドを含む脂質ナノ粒子が、リガンドを含まない脂質ナノ粒子に比べてより優れた効能を示すことが分かった(
図11)。
【0390】
【0391】
実施例13:脂質ナノ粒子の細胞毒性評価
【0392】
通常使用されるPEG-DMGを含む脂質ナノ粒子と、本発明で使用するPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを含む脂質ナノ粒子との相対的毒性を評価した。そのために、PEG-DMGを1.5モル%含む脂質ナノ粒子と、GalNAc-PEG2K-Hz-DSGとPEG600-Hz-DSGがそれぞれ1モル%及び9モル%である混合物を含む脂質ナノ粒子を製造した。脂質ナノ粒子に含まれたsiRNA濃度を基準にHepG2、HEK293、H460、A549などの細胞株に処理し、72時間後に各細胞株の活性をCellTiter-Gloキット(プロメガ)で測定した(
図12)。
【0393】
PEG-DMGを含む脂質ナノ粒子を高濃度で細胞に処理すると、細胞が多く死滅するのに対し、本発明で使用するPEGモイエティ-分解可能官能基-脂質コンジュゲートを10モル%含む脂質ナノ粒子は、相対的に細胞の死滅を誘発しないことを確認し、毒性が非常に低いということが分かった。
【0394】
【0395】
本発明に係る脂質ナノ粒子を用いた治療剤は、ナノ粒子の構成成分による生体内副作用を最小化し、ナノ粒子をターゲット細胞に効果的に伝達し、ターゲット細胞内のエンドソームを脱皮して核酸などの薬理効能物質を細胞質に効率的に運搬できる。
【0396】
本発明に係る脂質ナノ粒子は、粒子の外部がPEGでコートされているので、非特異的な相互作用を抑制させることができる。また、PEG末端にリガンドを付着して標的細胞にのみ伝達できる。リガンドと細胞の受容体によってエンドソーム内取り込まれた脂質ナノ粒子は、エンドソーム内で分解可能官能基が分解され、ナノ粒子外部のPEGが除去されるため、脂質ナノ粒子の表面とエンドソーム脂質膜との相互作用を増加させることができる。また、PEGを連結する脂肪成分に、相対的に長さの長い鎖の脂肪酸を含めることができるので、脂質ナノ粒子に構造的安定性を付与し、細胞への処理中に粒子が安定して維持される効果がある。
【0397】
【0398】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好ましい実施態様であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されるものでない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、請求項とそれらの等価物によって定義されると言えよう。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0182
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0182】
実施例1-2:2-メチル-3,4,6-トリ-O-アセチル-1,2-デオキシ-アルファ-D-ガラクトピラノ[2,1,d]-2-オキサゾリン
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0189
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0189】
DCE(7.2mL)に溶かした2-メチル-3,4,6-トリ-O-アセチル-1,2-デオキシ-アルファ-D-ガラクトピラノ[2,1,d]-2-オキサゾリン(390mg、1.18mmol)と2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エタノール(228mg、1.30mmol)との混合溶液に、4Å分子体(190mg)を入れて5分撹拌した。トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸塩(104μL、0.59mmol)を常温で添加した後、16時間撹拌した。反応が終わった後に濾過して4Å分子体を除去し、水とCH2Cl2を加えた。有機溶媒層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後に減圧蒸留した。減圧蒸留して得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(EA:MeOH=9:1)で分離し、所望の化合物(460mg、0.91mmol)を77%収率で得た。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0194
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0194】
THF(10mL)に溶かした5-アセトアミノ-2-(アセトキシメチル)-6-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4-ジイルジアセテート(240mg、0.476mmol)溶液にPPh3(150mg、0.571mmol)を常温で添加した後、48時間撹拌した。H2O(26μL、1.427mmol)を添加した後、24時間撹拌した。その後、トルエン(10mL)を添加し、トリフルオロ酢酸(73μL、0.951mmol)を添加して塩を生成した。水とCH2Cl2を加えた後に、抽出した水層を減圧蒸留し、所望の化合物(270mg、0.91mmol)を98%収率で得た。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0197
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0197】
実施例1-5:トリス{[2-(tert-ブトキシカルボニル)エトキシ]メチル}メチルアミン
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0199
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0199】
DMSO(2.0mL)に溶かしたトリス(1.21g、10.00mmol)溶液に5.0M水酸化ナトリウム(0.2mL)を15℃で添加した後、5分間撹拌した。t-ブチルアクリレート(5.0mL、34mmol)を徐々に滴加した。次に、水(0.2mL)を添加した後、アルゴン下、常温で24時間撹拌した。反応が終わった後、減圧蒸留して得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(EA:Hex=2:1)で分離し、所望の化合物(2.5g、5.00mmol)を50%収率で得た。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0204
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0204】
トルエン(2.5mL)に溶かした(R)-3-ベンジロキシ-1,2-プロパンジオール(106mg、0.55mmol)溶液に、1-ブロモオクタデカン(732mg、2.20mmol)、水酸化カリウム(123mg、2.20mmol)を常温で添加した後、110℃で24時間還流させた。反応が終わった後に水とCH2Cl2を加えた。抽出した有機溶媒層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧蒸留した。減圧蒸留して得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(Hex:EA=10:1)で分離し、所望の化合物(300mg、0.44mmol)を80%収率で得た。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0214
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0214】
CH2Cl2(3.7mL)に溶かしたデス-マーチンペルヨージナン(88mg、0.206mmol)溶液を、CH2Cl2(1.3mL)に溶かした(S)-2,3-bis(オクタデシロキシ)プロパン-1-オール(110mg、0.184mmol)溶液に0℃で徐々に滴加した後、常温で2時間撹拌した。反応が終わった後に水とCH2Cl2、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。抽出した有機溶媒層、チオ硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧蒸留した。減圧蒸留して得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(Hex:EA=20:1)で分離し、所望の化合物(83mg、0.15mmol)を80%収率で得た。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0217
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0217】
実施例1-9:カルボキシメチル-PEG600-Cbz-ヒドラジド(M
n
of PEG=600)
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0219
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0219】
DMF(5.8mL)にポリ(エチレングリコール)ビスカルボキシメチル)エーテル(M
n
=600)(1g、1.72mmol)を溶解させた後、0℃でCbzNHNH2(300mg、1.81mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾル(244mg、1.81mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(320μL、1.81mmol)を滴加した。アルゴン下、常温で18時間撹拌した。反応が終わった後、水とCH2Cl2、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。分離した水相は、H
3
PO
4
で酸性化し、そしてCH
2
Cl
2
で抽出した。そして有機層を減圧蒸留して得られた生成物を40%収率で得た。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0222
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0222】
実施例1-10:トリス{[2-(t-ブトキシカルボニル)エトキシ]メチル}メチルアミド-PEG600-Cbz-ヒドラジド(M
n
of PEG=600)
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0224
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0224】
DMF(4mL)にカルボキシメチル-PEG600-Cbz-ヒドラジド(M
n
=600)(870mg、1.16mmol)、トリス{[2-(t-ブトキシカルボニル)エトキシ]メチル}メチルアミン(526mg、1.04mmol)を溶解させた後、0℃でヒドロキシベンゾトリアゾル(157mg、1.16mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(248μL、1.40mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(243μL、1.40mmol)を滴加した。アルゴン下、常温で18時間撹拌した。反応が終わった後、水とCH2Cl2、H
3
PO
4
を加えた。抽出した有機溶媒層は、NaHCO
3
液で洗浄した。有機溶媒層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後に減圧蒸留した。減圧蒸留して得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH=15:1)で分離し、所望の化合物を40%収率で得た。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0227
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0227】
実施例1-11:トリス{[2-(カルボキシメチル)エトキシ]メチル}メチルアミド-PEG600-Cbz-ヒドラジド(M
n
of PEG=600)
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0229
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0229】
トリス{[2-(t-ブトキシカルボニル)エトキシ]メチル}メチルアミド-PEG600-Cbz-ヒドラジド(570mg、0.46mmol)を85%ギ酸(4.0mL)に溶かし、常温で18時間撹拌した。反応が終わった後、50℃で減圧蒸留し、所望の化合物を99%収率で得た。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0232
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0232】
実施例1-12:トリ-(パラセチル-GalNAc)-PEG600-Cbzヒドラジド
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0234
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0234】
DMF(4.4mL)にトリス{[2-(カルボキシメチル)エトキシ]メチル}メチルアミド-PEG600-Cbz-ヒドラジド(0.5mmole)、2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エチル 2-アセトアミノ-3,4,6-トリ-O-アセチル-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(1.58mmol)を溶解させた後、0℃でヒドロキシベンゾトリアゾル(214mg、1.58mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(280μL、1.58mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(550μL、3.16mmol)を滴加した。アルゴン下、常温で18時間撹拌した。さらにアルゴン下、常温でジイソプロピルエチルアミン(550μL、3.16mmol)を滴加し、常温で24時間撹拌した。反応が終わった後、水、CH2Cl2、H
3
PO
4
を加えた。抽出した有機溶媒層は、分離し、NaHCO
3
液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後に減圧蒸留した。得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH=10:1)で分離し、所望の化合物を23%収率で得た。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0237
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0237】
実施例1-13:トリ-(パラセチル-GalNAc)-PEG600-ヒドラジド
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0239
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0239】
MeOH(2mL)にトリ-(パラセチル-GalNAc)-PEG600-Cbzヒドラジド(373mg、0.16mmol)を溶解させた後、Pd/C(13mg)、酢酸(28μL、0.48mmol)を滴加した。水素下、常温で20時間撹拌した。反応が終わった後、セライト545を使用してメタノール溶媒で濾過した後に減圧蒸留し、所望の化合物(120mg、0.05mmol)を99%収率で得た。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0242
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0242】
実施例1-14:トリ-(パラセチル-GalNAc)-PEG600-(ジオクタデシルオキシ-プロピリデン)-アシルヒドラゾン
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0244
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0244】
EtOH(1mL)、CH2Cl2(0.1mL)混合溶液にトリ-(パラセチル-GalNAc)-PEG600-ヒドラジド(0.05mmol)、(R)-2,3-bis(オクタデシロキシ)プロパンアル(39mg、0.06mmol)を溶解させた後、アルゴン下、常温で3時間撹拌した。反応が終わった後、減圧蒸留した。得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH=10:1)で分離し、所望の化合物を26%収率で得た。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0247
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0247】
実施例1-15:トリ-(GalNAc)-PEG600-(ジオクタデシルオキシ-プロピリデン)-アシルヒドラゾン(3GalNAc-PEG600-Hz-DSG)
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0250
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0250】
MeOH(1mL)、CH2Cl2(0.1mL)混合溶液に、トリ-(パラセチル-GalNAc)-PEG600-(ジオクタデシルオキシ-プロピリデン)-アシルヒドラゾン(0.013mmol)を溶解させた後、メトキシドナトリウム(0.7mg、0.013mmol)を滴加した。アルゴン下、常温で2時間撹拌した。反応が終わった後、アンバーライトIR-120イオン交換樹脂で処理後に減圧蒸留し、所望の化合物を26%収率で得た。
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0253
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0253】
実施例1-16:カルボキシメチル-PEG2000-Cbz-ヒドラジド(M
n
of PEG=2000)
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0258
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0258】
実施例1-17:トリス{[2-(t-ブトキシカルボニル)エトキシ]メチル}メチルアミド-PEG2000-Cbz-ヒドラジド(M
n
of PEG=2000)
【手続補正24】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0263
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0263】
実施例1-18:トリス{[2-(カルボキシメチル)エトキシ]メチル}メチルアミド-PEG2000-Cbz-ヒドラジド(M
n
of PEG=2000)
【手続補正25】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0268
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0268】
実施例1-19:トリ-(パラセチル-GalNAc)-PEG2K-Cbzヒドラジド
【手続補正26】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0273
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0273】
実施例1-20:トリ-(パラセチル-GalNAc)-PEG2K-ヒドラジド
【手続補正27】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0278
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0278】
実施例1-21:トリ-(パラセチル-GalNAc)-PEG2K-(ジオクタデシルオキシ-プロピリデン)-アシルヒドラゾン
【手続補正28】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0283
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0283】
実施例1-22:トリ-(GalNAc)-PEG2K-(ジオクタデシルオキシ-プロピリデン)-アシルヒドラゾン(3GalNAc-PEG2K-Hz-DSG)
【手続補正29】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0288
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0288】
実施例1-23.メチル-PEG600-Cbzヒドラジド(M
n
of PEG=600)
【手続補正30】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0290
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0290】
2.7mL DMFにα-メチル-ω-カルボキシメチル-ポリ(エチレングリコール)エーテル(M
n
of PEG=600)(150mg、0.27mmol)を溶解させた後、CbzNHNH2(50mg、0.3mmol)、EDCI(58μL、0.33mmol)及びHOBt(44mg、0.33mmol)を0℃で添加し、室温で一日撹拌した。反応終結後に反応物をDCM(40mL)に移し、希釈したH3PO4(1M、40mL)、NaHCO3(1M、40mL)水溶液(40mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。反応物をシリカゲルカラムにおいてDCM/メタノール(10/1,v/v)で分離し、化合物175mgを91%収率で得た。
【手続補正31】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0293
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0293】
実施例1-24:メチル-PEG600-ヒドラジド(M
n
of PEG=600)
【手続補正32】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0295
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0295】
メタノール(2.8mL)にメチル-PEG600-Cbzヒドラジド(175mg、0.25mmol)を溶解させ、Pd/C(18mg、10w/w%)を添加して、水素下で20時間撹拌した。反応終結後にセライト545で濾過し、化合物147mgを95%収率で得た。
【手続補正33】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0298
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0298】
実施例1-25:メチル-PEG600-(ジオクタデシルオキシ-プロピリデン)アシルヒドラゾン(mPEG600-Hz-DSG)
【手続補正34】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0300
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0300】
1.3mLエタノールに実施例1-24の結果物(79mg、0.127mmol)を溶解し、実施例1-8の結果物アルデヒド(113mg、0.19mmol)を添加した。混合物は50℃で18時間撹拌し、反応を終結させた。反応物をカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物123mgを85%の収率で得た。
【手続補正35】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0303
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0303】
実施例1-26:メチル-PEG2K-Cbz-ヒドラジド(M
n
of PEG=2000)
【手続補正36】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0308
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0308】
実施例1-27:メチル-PEG2K-ヒドラジド(M
n
of PEG=2000)
【手続補正37】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0313
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0313】
実施例1-28:メチル-PEG2K-(ジオクタデシルオキシ-プロピリデン)-アシルヒドラゾン(mPEG2K-Hz-DSG)
【手続補正38】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0320
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0320】
2mL THFに実施例1-7の結果物(59.8mg、100umol)を溶解し、4-ヒドロキシアセトフェノン(15.0mg、110umol)、PPh3(39.4mg、150umol)、DIAD(30uL,150umol)を0℃で添加した。混合物を室温で12時間撹拌して反応を終結させた。反応物をジクロロメタンで3回抽出し、塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧で乾燥させた。シリカゲルクロマトグラフィーで結果物を精製し、結果物55.0mgを77%の収率で得た。
【手続補正39】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0323
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0323】
実施例1-30:メチル-PEG600-(2,3-ジオクタデシルオキシプロポキシ)フェニル-アセトヒドラゾン(mPEG600-PhHz-DSG)
【手続補正40】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0327
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0327】
実施例1-31:メチル-PEG600-(2,3-ジオクタデシルオキシプロポキシ)カルボニル-メチルエーテル(mPEG600-Ester-DSG)
【手続補正41】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0329
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0329】
DCM(30.0mL)にω-(メトキシポリエチレングリコール)カルボン酸(M
n
=600)(100mg、0.156mmol)を溶解させた後、(S)-2,3-ビス(オクタデシルオキシ)プロパン-1-オール(187mg、0.312mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(23mg、0.187mmol)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(37mg、0.180mmol)を滴加した。窒素下、常温で24時間撹拌した。反応が終わった後、反応物をCH
2
Cl
2
とセライト545でフィルターした。有機溶媒層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後に減圧蒸留した。減圧蒸留して得られた混合物はカラムクロマトグラフィー(DCM:MeOH=20:1)で分離し、所望の化合物(68mg、0.64mmol)を41%収率で得た。
【国際調査報告】