(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】低接続性および改善された熱安定性を有する金属‐有機フレームワークの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/00 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
C07F7/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580408
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 US2022034742
(87)【国際公開番号】W WO2023278249
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ファルコフスキー,ジョセフ エム
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥルカリム,メアリー エス
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジュリー ジェイ
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN06
4H049VP10
4H049VQ25
4H049VW02
(57)【要約】
本明細書中では、第1の温度で約12時間後に分解する欠陥を有する金属‐有機フレームワークを熱的に安定化する後合成の方法が提供される。この方法は、金属‐有機フレームワークを安定化溶液と接触させて、処理された金属‐有機フレームワークを提供することを含む。処理された金属‐有機フレームワークは、第1の温度より少なくとも約50℃高い第2の温度で12時間後でも熱的に安定である。また、処理された金属‐有機フレームワークは、未処理の金属‐有機フレームワークのPXRDパターンと実質的に同じPXRDパターンを有する。本明細書中では、金属‐有機フレームワークのCO2吸着を改善するための後合成の方法も提供する。本明細書中では、変性されたEMM-71金属有機フレームワークも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金属‐有機フレームワークを提供する工程、および
(b)金属‐有機フレームワークを安定化溶液と接触させて、処理された金属‐有機フレームワークを提供する工程
を含み、
前記金属‐有機フレームワークが第1のPXRDパターンを有し、第1の温度で約12時間後に分解し、
前記処理された金属‐有機フレームワークは、第1のPXRDパターンと実質的に同じ第2のPXRDパターンを有し、処理された金属‐有機フレームワークは、12時間後に、第1の温度よりも少なくとも約50℃高い第2の温度で熱的に安定である、複数の欠陥を有する金属‐有機フレームワークを熱的に安定化させる方法。
【請求項2】
前記安定化溶液が、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、およびそれらの混合物から成る群から選択されるフッ化物イオンの供給源を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フッ化物イオンの量が、金属‐有機フレームワークに対して約0.5~20モル当量の範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記安定化溶液が、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、ホスホン酸、およびそれらの混合物から成る群から選択される酸、好ましくはカルボン酸または硫酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記安定化溶液が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、およびそれらの混合物から成る群から選択されるカルボン酸を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸の量が、金属‐有機フレームワークに対して、約0.5~20モル当量の範囲である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
第1のPXRDパターンの少なくとも5つの反射が第2のPXRDパターンに存在し、好ましくは第1のPXRDパターンの反射の強度が第2のPXRDパターンの反射の強度と実質的に同じである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
金属‐有機フレームワークを金属カチオンおよびフッ化物イオンと接触させて、非フレームワークカチオン性金属種およびフッ化物を含む処理された金属‐有機フレームワークを作製することを含む、CO
2吸着が改善された金属‐有機フレームワークの製造方法。
【請求項9】
フッ化物イオンの供給源が、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化カリウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カチオン性金属種が遷移金属またはアルカリ金属である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記カチオン性金属種が、リチウム、ナトリウム、セシウム、ニッケル、コバルト、銅、カリウム、および/または銀から成る群から選択される、請求項9~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
金属フッ化物をフッ化物イオンおよびカチオン性金属種の供給源として使用する、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記金属フッ化物が、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化ニッケル、フッ化銀、フッ化コバルト、フッ化銅、およびそれらの混合物、好ましくはフッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化ニッケル、フッ化銀、フッ化コバルトおよび/またはフッ化銅から成る群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
フッ化アンモニウムと接触させることを更に含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
混合物中のMOF金属:カチオン性金属種のモル比が、約3:4~24:1、好ましくは約2:1~6:1の範囲である、請求項9~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
混合物中のフッ化物イオン:カチオン性金属種のモル比が約1:1~3:1の範囲である、請求項9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
金属‐有機フレームワークが、アルミニウム、鉄、ジルコニウム、チタンおよび/またはハフニウムから選択される複数の金属を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
金属‐有機フレームワークがジルコニウム、チタンおよび/またはハフニウムの金属ノードを含み、好ましくは、金属‐有機フレームワークがジルコニウム系金属‐有機フレームワークであり、任意選択でハフニウムおよび/またはチタンを更に含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
金属‐有機フレームワークが、EMM‐71、UiO‐66、UiO‐67、UiO‐68、MOF808、フマル酸ジルコニウム、またはNu1000から選択され、好ましくはEMM‐71である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
EMM‐71と、
ホルメート、アセテート、ベンゾエート、プロピオネート、ブタノエート、イソブタノエート、メチルスルホネート、エチルスルホネート、プロピルスルホネート、ブチルスルホネート、および/またはフェニルスルホネート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジフェニルホスフェート、フッ化物、スルフェート、またはビスルフェート、好ましくは、フッ化物、イソブタノエート、ブタノエート、および/またはホルメートから成る群から選択される部分と
を含む、金属‐有機フレームワーク。
【請求項21】
請求項1~7および17~19のいずれか1項に記載の方法により得られる、請求項20に記載の金属‐有機フレームワーク。
【請求項22】
フッ化物を含む、請求項20または21に記載の金属‐有機フレームワーク。
【請求項23】
ナトリウム、リチウム、セシウム、ニッケル、コバルト、銅、カリウム、銀、およびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの非フレームワークカチオン性金属種を更に含む、請求項20~22のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク。
【請求項24】
非フレームワークカチオン性金属種が、MOF金属カチオンに対する非フレームワークカチオン性金属種の原子比として計算される量少なくとも0.1で存在する、請求項23に記載の金属‐有機フレームワーク。
【請求項25】
請求項8~19のいずれか1項に記載の方法によって得られる、請求項23または24に記載の金属‐有機フレームワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2022年3月8日に出願された米国仮出願第63/317582号、2022年1月4日に出願された米国仮出願第63/296,178号、および2021年6月28日に出願された米国仮出願第63/202856号の優先権および利益を主張するものであり、これらは参照によりその全体が本明細書中に援用される。
【0002】
本開示は、金属‐有機フレームワークの熱安定性を向上させるための合成後処理に関する。本開示はまた、CO2吸着を改善するための金属‐有機フレームワークの合成後処理に関する。本開示は更に、非フレームワーク金属カチオン種を含む金属‐有機フレームワークに関する。
【背景技術】
【0003】
金属‐有機フレームワークの不安定性は、アルミニウム、クロム、鉄のような3価の金属、またはジルコニウム、ハフニウム、チタンのような4価の金属を組み込むことによって緩和される。その結果、金属クラスターとリンカー間の高度な連結性が、構造全体の崩壊や化学的安定性の損失を伴わずに、欠陥の形成を可能にする。この欠陥は、触媒活性部位として、あるいは他の元素を固定する部位として機能し、質量やプロトンの輸送に有益である。しかし、金属‐有機フレームワーク中の欠陥の量を増やすと、金属‐有機フレームワークの熱安定性が低下する。従って、より高温の環境において欠陥を有する金属‐有機フレームワークの有用性は低下する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書中において提供されるのは、(a)金属‐有機フレームワークを提供する工程、および(b)金属‐有機フレームワークを安定化溶液と接触させて、処理された金属‐有機フレームワークを提供する工程を含み、金属‐有機フレームワークが第1のPXRDパターンを有し、第1の温度で約12時間後に分解し、処理された金属‐有機フレームワークが、第1のPXRDパターンと実質的に同じ第2のPXRDパターンを有し、処理された金属‐有機フレームワークが、12時間後に、第1の温度よりも少なくとも約50℃高い第2の温度で熱的に安定である、複数の欠陥を有する金属‐有機フレームワークを熱的に安定化させる合成後の方法である。
【0005】
また、金属‐有機フレームワークを金属カチオンおよびフッ化物イオンと、例えば金属フッ化物の形態で接触させ、非フレームワークカチオン性金属種およびフッ化物を含む処理された金属‐有機フレームワークを作製することを含む、CO2吸着が改善された金属‐有機フレームワークの製造方法が提供される。
【0006】
また、リチウム、セシウム、ニッケル、コバルト、銅、カリウム、銀、およびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの非フレームワークカチオン性金属種を含む金属‐有機フレームワークも提供される。
【0007】
開示された方法およびシステムのこれらおよび他の特徴および属性、ならびにそれらの有利な用途および/または使用は、以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本明細書中の対象を製造および使用する際に関連技術分野における通常の技術者を支援するために、添付の図面を参照する。
【
図1】実施例1、2および3で作製された材料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図2】実施例5で作製した材料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図3】実施例6で作製した材料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図4】実施例7で作製した材料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図5】実施例9および10で作製した材料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図6】実施例12に記載されるように、NH
4Fを使用して焼成したUiO‐66試料およびNH
4Fを使用せずに焼成したUiO‐66試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図7】実施例13に記載したように、最初にギ酸または塩酸のいずれかで処理し、フッ化アンモニウムの存在下で300℃から450℃まで50℃刻みで焼成したEMM‐71試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図8】実施例13で詳述したように、フッ化物源で処理し、焼成したEMM‐71試料の窒素吸着等温線を示す。
【
図9】ギ酸または塩酸で処理したEMM‐71試料(即ち、それぞれ実施例1および2のEMM‐71‐FormateおよびEMM‐71‐HCl)の粉末X線回折パターンを示し、その後、実施例13で詳述したように、フッ化アンモニウムまたは塩化アンモニウムのいずれかで処理し、300℃で4時間熱処理した。
【
図10】ギ酸処理および塩酸処理(即ち、それぞれ実施例1および2のEMM‐71‐FormateおよびEMM‐71‐HCl)され、実施例14に従って異なる重量パーセントのフッ化リチウムの存在下で焼成されたEMM‐71試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図11】種々の酸および脱炭酸生成物の全内部エネルギーの差を表す密度汎関数理論(「DFT」)計算を示す。
【
図12】実施例15で詳述したように、種々の混合物(即ち、イソ酪酸(またはイソブタン酸)、n‐ブタン酸、ギ酸、ギ酸ナトリウム、およびHCl)で処理した後のEMM‐71試料の、25℃~350℃の間の温度で収集された粉末X線回折パターンを示す。
【
図13】NH
4F処理前後のZr‐Fumarate(UiO‐66のフマレート類似体)の、実施例16で詳述したように、25℃~450℃の間の温度で収集された粉末X線回折パターンを示す。
【
図14】NH
4F処理の前後で0.91のジルコニウムに対するフマル酸の比を有するZr‐Fumarateの、実施例16で詳述したように、25℃~450℃の温度で収集された粉末X線回折パターンを示す。
【
図15】実施例18の合成後処理の前後のEMM‐71の、100℃~500℃の範囲の温度での粉末X線回折パターンを示す。
【
図16】実施例19の温度プログラムX線回折実験のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本化合物、成分、組成物、および/または方法が開示され、記載される前に、特に明記されない限り、本開示は、特定の化合物、成分、組成物、反応物、反応条件、配位子、触媒構造、MOF構造などに限定されず、そのようなものは変化してもよいと解されるべきである。また、本明細書中で使用される用語は、特定の態様を説明するためのものであり、限定することを意図するものではないと解されるべきである。
【0010】
詳細な説明内のすべての数値は、示された値を「約」で修正し、当業者によって予想される実験誤差および変動を考慮する。
【0011】
本明細書中で使用される場合、用語「2価」は、2価カチオンの酸化状態を指し、それが全体的な荷電分子の一部であるかどうかではない(例えば、ZnCl2は溶解しており、解離していない)。
【0012】
本明細書中で使用される場合、用語「~価」は、カチオンの酸化状態を指し、それが全体的な荷電分子の一部であるかどうかは含まない(即ち、2価は、Zn2+(H2O)6のような荷電種とZnEt2のような中性化合物の両方を指すことができる)。
【0013】
本明細書中で説明するように、試料は、白金ストリップヒーターを備えたAnton Paar HTK-16N環境ステージを取り付けたPanalytical XPert Pro粉末X線回折装置、またはBruker D8 Endeavor粉末X線回折装置のいずれかで分析した。すべての試料は、そのままの状態で、更に粉砕することなく分析した。高温で収集したX線パターンはすべて、実施例18および
図16に記載した温度プログラム傾斜中に収集した。各スキャンは、0.02°の工程サイズで2~60°の2θの範囲で~20分であった。測定に対応する温度プログラムの部分は、
図16に破線で表されている。
【0014】
本明細書中で使用する場合、PXRDパターンが別のPXRDパターンと実質的に同じであるのは、PXRDパターンが少なくとも5つの主要な反射を共通に有し、主反射(出発材料で最も強度が高い)のピーク高さが50%以上減衰しないか、またはピーク幅(半値幅として測定)が2倍以上増加しない場合である。
【0015】
第2のPXRDパターンにおける失われた反射は、第一のPXRDパターンを有する金属‐有機フレームワーク中の不純物に起因する可能性がある。例えば、未溶解のNH4Fまたは他の種が粉末回折パターン中に最初に存在し、その結果、未処理のMOF試料では観察されないピークが生じることがある。これらのピークは、種の揮発により加熱時に消失することがあります。この場合、混合物の非MOF成分が失われるが、フレームワークを表すピークは残る。あるいは、この方法によって欠陥が除去されるケースもある。UiO‐66/EMM‐71の場合、フッ化アンモニウム処理後の焼成中に、4°と6°2θのピークが減衰する。これらのピークのみが減衰するという事実は、欠陥構造に起因するものであり、MOFのバルクに起因するものではないことを強調している。一般に、パターンから選択的なピークが消失することは、欠陥構造または不純物の消失を示すと考えることができる。
【0016】
本明細書中で使用されるように、安定化溶液は、流動剤、化学剤、または精製剤であり、安定化溶液中で複数の機能を有することができる。
【0017】
米国仮特許出願番号63/202,856号に先に記載されているように、EMM‐71金属‐有機フレームワークは、一般に、約1100m2/g~2700m2/gの表面積、約0.45cc/g~1.1cc/gの空隙率、および0.35に等しいかそれ以上の相対強度を有する。ある態様では、これらの金属‐有機フレームワークは一般に、((111)反射に対する(110)反射の)半値幅のピーク幅の相対比が3未満である。半値におけるピーク幅の相対比は、高さの半分におけるピークの幅に等しい。加えて、本明細書中に記載されるように、EMM‐71金属‐有機フレームワークは、5.0重量%以下の量の2価カチオンを有してもよい。
【0018】
金属‐有機フレームワーク(「MOF」)は、金属イオン(金属クラスター)と有機配位子との三次元集合体で構築される。金属‐有機フレームワークは、配位結合を介して金属ノード(「二次構成単位」または「SBU」と呼ばれる)を橋渡しする有機リンカー(「配位子」とも呼ばれる)を含み、自己集合して配位ネットワークを形成することができる。有機リンカー/金属ノードの等軸拡張または官能基化によってトポロジーを調整できるため、金属‐有機フレームワークは、触媒変換から生物医学的応用まで、さまざまな異なる用途にカスタマイズ可能である。高い孔容積を有する秩序構造および調整可能性を有する金属‐有機フレームワークは、触媒作用および電池として、ならびにガス貯蔵および大量輸送、分離(ガス吸着)、精製および加熱/冷却などの方法に適している。
【0019】
金属‐有機フレームワーク(「MOF」)の安定性は、類似の分極率のイオン(即ち、カルボン酸塩と高(>3+)価の硬い金属カチオン、またはイミダゾレートと低(2+)価の軟らかい金属カチオン)の間の強い相互作用に起因する。当初、安定な金属‐有機フレームワークは、3価のカチオン、即ちAl3+、Fe3+、Cr3+に由来するフタル酸系のMOFに限られていた。その後、Zr4+、Hf4+、Ti4+などの他の多価カチオンが採用され、強固なフレームワークが提供されるようになった。多価カチオンを有する例示的な金属‐有機フレームワークの一つは、金属‐有機フレームワークUiO‐66である。Cavka, J. H. et al., (2008) "A New Zirconium Inorganic Building Brick Forming Metal Organic Frameworks with Exceptional Stability", J. Am. Chem. Soc., v.130(42), pp.13850-13851。発見当時、UiO‐66は既知の金属‐有機フレームワークの中で最も高い結合性を有していた。
【0020】
UiO‐66は、主にソルボサーマルという様々な合成経路で合成されてきた。元の金属‐有機フレームワークUiO‐66は、結晶構造に内在するオープンな金属サイトを有しておらず、有機配位子は更なる官能基化のためのサイトを含んでいなかった。先行技術の合成条件には、ジルコニウム塩(塩化物またはオキシ塩化物)と直鎖状ジカルボン酸との反応である。UiO‐66の初期バージョンはテレフタル酸で作られた。官能基化された誘導体および等網状(isoreticular)類似体(即ち、4,4'‐ビフェニルジカルボン酸などのより長い直鎖状二酸から構成されるもの)が生じた。最も一般的なものは、高沸点非プロトン性溶媒であり、しばしばN,N‐ジメチルホルムアミド(「DMF」)を利用した。
【0021】
金属‐有機フレームワークの吸着特性や触媒特性を向上させるために、合成時に金属‐有機フレームワークに欠陥を組み込んだ。欠陥は、有機リンカー欠陥またはノード欠落欠陥、あるいはその両方の形である。金属クラスターとリンカー間の結合性が高いため、構造全体を崩壊させることなく、高濃度で欠陥を形成することができる。ノード欠落欠陥(クラスターの除去)は、メソスケールの空洞を残し、質量とプロトンの輸送に有益な、よりオープンな階層的な細孔構造を提供する。更に、配位不足の金属イオンは、触媒活性部位または他の活性元素の固定部位として機能する。欠陥の程度は、広い欠陥領域の積分強度((100)反射と(110)反射の積分強度の合計に相当)を比較し、この積分値を特定の反射(即ち、(111)反射、(200)反射、(600)反射)の強度の平均値で割ることによって特徴付けられる。
【0022】
吸着と触媒の両方の用途におけるノード欠陥の有用性は相当なものである。グラフト化された触媒サイトの場合、欠陥は触媒部位でキャップされ、付加的な機能性を提供する。分離用途の場合、より大きな欠陥は、拡散特性を向上させることにより、多環ナフテン分離のための選択性の向上、および/または多環ナフテンの選択的結合を提供する。しかし、欠陥は金属‐有機フレームワークの機械的および物理的特性に影響を与える可能性がある。従って、MOFの合成中に、十分に定義された調整可能な構造を維持するために、欠陥形成の制御は、所望のMOF特性を達成するために不可欠である。
【0023】
更に、金属‐有機フレームワーク中の欠陥含有量が増加すると、熱安定性が低下する可能性がある。例えば、UiO‐66を高温方法で使用するためには、ほとんど欠陥のない材料が必要である。しかしながら、これは、より高い孔容積を必要とする方法パラメータとは相反する。
【0024】
本明細書中の実施例12~19に記載されているように、欠陥のある金属‐有機フレームワーク、例えば、ジルコニウム金属‐有機フレームワークEMM‐71(完全欠陥UiO‐66と記載されてもよい)の熱安定性は、欠陥のない金属‐有機フレームワーク、例えば、UiO‐66の熱安定性よりも低いことを発見した。より高温の方法は、この問題に対する解決策を要求する。本明細書中で提示するように、本発明の合成後処理方法は、Zr系のEMM‐71材料などの欠陥を有する金属‐有機フレームワークの熱安定性を向上させることができる。
【0025】
第1の態様において、金属‐有機フレームワークを熱的に安定化させる本発明の方法は、合成後に実施される。本方法は以下の工程:(a)複数の欠陥および第1のPXRDパターンを有する金属‐有機フレームワークを提供する工程;および(b)金属‐有機フレームワークを安定化溶液と接触させて、第2のPXRDパターンを有する処理された金属‐有機フレームワークを提供する工程を含む。本明細書中に記載されるように、金属‐有機フレームワークは第1の温度で約12時間後に分解する。しかしながら、処理された金属‐有機フレームワークは、12時間後に、第1の温度よりも少なくとも約50℃高い第2の温度で熱的に安定であり、第2のPXRDパターンは第1のPXRDパターンと実質的に同じである。
【0026】
1つの実施形態において、第1のPXRDパターンの少なくとも5つの反射が第2のPXRDパターンに存在する。1つの実施形態において、第1のPXRDパターンの反射の強度は、第2のPXRDパターンと実質的に同じである。
【0027】
1つの実施形態において、金属‐有機フレームワークは立方晶構造(ここで、構造はBravais格子型を指す)を有する。
【0028】
1つの実施形態において、金属‐有機フレームワークは、アルミニウム、鉄、ジルコニウム、チタンおよび/またはハフニウムから選択される複数の金属を含み、特に、金属‐有機フレームワークは、ジルコニウム、チタンおよび/またはハフニウムの金属ノードを含む。1つの実施形態では、金属‐有機フレームワークは、Zr6-xMx金属ノードを含み、ここでMは、ハフニウムまたはチタン、またはZr6金属ノードであってもよい。更なる1つの実施形態において、金属‐有機フレームワークは、ジルコニウム金属‐有機フレームワークまたはハフニウムを更に含むジルコニウム系金属‐有機フレームワークである。
【0029】
1つの実施形態において、金属‐有機フレームワークは、EMM‐71、UiO‐66、UiO‐67、UiO‐68、MOF808、フマル酸ジルコニウム、またはNU1000から選択され、特にEMM‐71である。
【0030】
1つの実施形態において、安定化溶液はフッ化物イオンを含む。フッ化物イオンの供給源は、例えば、フッ化アンモニウムおよび/またはアルカリ金属フッ化物、例えばフッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、およびそれらの混合物、特にフッ化アンモニウムおよび/またはフッ化リチウムから成る群から選択されてもよい。理論に束縛されることを望むものではないが、フッ化アンモニウムによる後処理は、必ずしもFイオンによる欠陥のキャッピングを通じてではなく、構造の再配列を通じて安定性をもたらすと考えられる。実際、本発明者らは、フッ化アンモニウムを使用することにより、材料の欠陥の少なくとも一部が失われ、全体的な熱安定性が向上する一方、アルカリ金属フッ化物での後処理後、安定性は改善されたものの、欠陥の消失は観察されなかったことに気づいた。フッ化物イオンの供給源の量は、MOFに対して例えば約0.5~約50重量%、例えば約1~約30重量%、例えば約1、5、10、15または20重量%の範囲であってよい。フッ化物イオンの量は、MOFに対して約0.5~20モル当量の範囲であってもよい(MOFの分子量が1550g/モルであると仮定して)。MOFとフッ化物イオンの供給源との接触は、任意の好適な条件下、例えば、室温での単純な接触、または任意選択で混合物(例えば、スラリー)の混合もしくは撹拌もしくは混錬(mull)下、例えば250℃などの焼成温度までの加熱下で行われてもよい。接触期間は、任意の好適な時間、例えば30秒~12時間、例えば1分または10分~1時間または2時間以上であってよい。
【0031】
代替の実施形態において、安定化溶液は、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、ホスホン酸、およびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの酸、好ましくはカルボン酸または硫酸を含む。例えば、カルボン酸は、ギ酸、酢酸、安息香酸、プロピオン酸、ブタン酸、またはイソブタン酸から選択されてもよい。スルホン酸は、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、プロピルスルホン酸、ブチルスルホン酸、またはフェニルスルホン酸から選択されてもよい。ホスホン酸は、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ジメチルホスホン酸、ジエチルホスホン酸、ジプロピルホスホン酸、ジブチルホスホン酸、またはジフェニルホスホン酸から選択されてもよい。ジアルキルホスホン酸はまた、混合アルキル基、例えばメチルエチルホスホン酸であってもよい。より具体的な実施形態において、安定化溶液は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、および/またはイソブタン酸、特にイソブタン酸、n‐ブタン酸および/またはギ酸、最も好ましくはイソブタン酸を含む。1つの実施形態において、有機部分の酸と有機部分の酸の脱炭酸生成物との間の全内部エネルギーの差(ΔU)は、約15U/kcal・mol-1である。接触期間は、任意の好適な時間、例えば30秒~12時間、例えば1分または10分~1時間または2時間以上であってよい。この実施形態では、酸の量は、MOF(1550g/molのMOF分子量を仮定する)に対して約0.5~20モル当量の酸の範囲であってもよい。金属‐有機フレームワークと酸含有安定化溶液との接触は、任意の好適な条件下で行われてよく、例えば、室温での単純な接触または250℃などの焼成温度までの任意の加熱下、最も頻繁には室温で、任意に混合物(例えば、スラリー)の混合または撹拌または混錬下で行われる。接触期間は、任意の好適な時間、例えば30秒~12時間、例えば1分または10分~1時間または2時間以上であってよい。
【0032】
処理混合物から処理MOFを単離することは、遠心分離または濾過によるなどの標準的な手段によって実施してもよい。処理されたMOFは、任意の標準的な手段、例えば、水および/またはメタノール、エタノール、および/またはアセトンなどの溶媒によって更に洗浄されてもよい。
【0033】
1つの実施形態において、MOFの複数の欠陥の少なくとも一部は、処理後にキャップまたは補強されている。更なる実施形態において、本開示の第1の態様の方法によって得られる処理された金属‐有機フレームワークは、その欠陥の少なくとも一部が、ギ酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、プロピオン酸塩、ブタン酸塩、および/またはイソブタン酸塩などのカルボン酸塩;メチルスルホネート、エチルスルホネート、プロピルスルホネート、ブチルスルホネート、および/またはフェニルスルホネートなどのスルホネート;並びにジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、またはジフェニルホスフェートなどのホスフェート;の少なくとも1つから選択される有機部分でキャップされ、および/または金属‐有機フレームワークは、その欠陥の少なくとも一部が、フッ化物、スルフェート(または硫酸塩)、およびビスルフェート(または重硫酸塩)の少なくとも1つから選択される無機部分でキャップされている。
【0034】
本明細書中の実施例1~11に記載したように、フッ化物で処理した金属‐有機フレームワーク材料は、金属種をフレームワークに担持して吸着特性を増強し、触媒効果を付与することが可能であることも見出した。
【0035】
従って、本明細書中においても、第2の態様において、金属‐有機フレームワークを金属カチオンおよびフッ化物イオンと、例えば金属フッ化物の形態で接触させ、非フレームワークカチオン性金属種およびフッ化物を含む処理された金属‐有機フレームワークを生成することを含む、改善されたCO2吸着を有する金属‐有機フレームワークの製造方法が提供される。
【0036】
1つの実施形態において、金属‐有機フレームワークは立方晶構造(ここで、構造はBravais格子型を指す)を有する。
【0037】
1つの実施形態において、金属‐有機フレームワークは、アルミニウム、鉄、ジルコニウム、チタンおよび/またはハフニウムから選択される複数の金属を含み、特に、金属‐有機フレームワークは、ジルコニウム系、チタン系および/またはハフニウム系である。1つの実施形態では、金属‐有機フレームワークは、Zr6-xMx金属ノードを含み、ここでMは、ハフニウムまたはチタン、またはZr6金属ノードであってもよい。更なる実施形態では、金属‐有機フレームワークは、ジルコニウム金属‐有機フレームワークまたはハフニウムを更に含むジルコニウム系金属‐有機フレームワークである。
【0038】
1つの実施形態において、金属‐有機フレームワークは、EMM‐71、UiO‐66、UiO‐67、UiO‐68、MOF808、フマル酸ジルコニウム、またはNU1000、特にEMM‐71から選択される。
【0039】
1つの実施形態において、フッ化物イオンの供給源は、フッ化アンモニウムおよび/またはアルカリ金属フッ化物、例えばフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化カリウム、およびこれらの混合物から選択される。1つの実施形態において、金属カチオン(またはカチオン性金属種)は、遷移金属、例えばニッケル、コバルト、銅、および/または銀から選択される。追加的または代替的な実施形態において、金属カチオン(またはカチオン性金属種)は、アルカリ金属、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムおよび/またはセシウム、好ましくはカリウムおよび/またはセシウムから選択される。金属カチオン(またはカチオン性金属種)の前記供給源は、金属塩化物、硝酸塩、および/またはフッ化物の形態など、任意の好適な形態であってよい。特別な実施形態において、金属フッ化物は、フッ化物イオンおよび金属カチオン(またはカチオン性金属種)の両方の供給源として使用されてもよい。そのような金属フッ化物の好適な例としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化ニッケル、フッ化銀、フッ化コバルト、および/またはフッ化銅、好ましくはフッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化ニッケル、フッ化銀、フッ化コバルト、および/またはフッ化銅が挙げられ、任意にフッ化アンモニウムの存在下で使用される。理論に束縛されることを望むものではないが、フッ化物イオンがMOF金属ノード(例えば、Zr‐ノード)上に負の電荷を誘導し、これにより処理されたMOF中に金属カチオンを保持することが可能になると考えられる。
【0040】
1つの実施形態では、処理されたMOFは、金属‐有機フレームワークを金属カチオンおよびフッ化物イオンの溶液と接触させ、従って混合物、特にスラリーを生成し、任意に混合物を50℃または60℃まで加熱することによって合成される。接触は、任意の好適な条件下で、任意に、混合または撹拌または混錬下で行われてもよい。接触期間は、任意の好適な時間、例えば0~16時間、例えば1分~10時間、例えば約1時間または2時間であってよい。処理混合物から処理されたMOFを単離することは、遠心分離または濾過によってなど、標準的な手段によって実施してもよい。処理されたMOFは、任意の標準的な手段、例えば、水および/またはメタノール、エタノール、および/またはアセトンなどの溶媒によって更に洗浄してもよい。しかしながら、処理されたMOFからフッ化物および金属カチオンが洗い流されるのを防ぐために、過度の洗浄は避けるべきである。
【0041】
更なる実施形態において、接触が行われる場合、混合物中のMOF金属(例えば、Zr)と金属カチオンとのモル比は、約3:4~24:1、例えば約2:1~6:1の範囲であってよい。更なる実施形態において、接触が行われるとき、混合物中のフッ化物イオン:金属カチオンのモル比は、約1:1~3:1の範囲、例えば約2:1であってよい。全ての場合において、MOFの分子量は1550g/mol(例えば、258.3g/molのZr)であると仮定される。
【0042】
1つの実施形態では、本開示の第2の態様の方法によって得られる処理された金属‐有機フレームワークは、少なくとも約0.1、例えば少なくとも約0.15、例えば少なくとも約0.2、更には少なくとも約0.25または0.3、約0.65以下、例えば約0.5以下、例えば約0.4以下(即ち、EDXまたはXRFによって測定される、非フレームワークカチオン性金属種:MOF金属カチオンの原子比(例えば、Cu:Zr、Co:Zr、K:Zrなど))の量の非フレームワークカチオン性金属種を含む。1つの実施形態において、本発明の第2の態様の方法によって得られる処理された金属‐有機フレームワークは、約0.1~1、例えば約0.2~0.8、例えば約0.5または0.6(即ち、EDXまたはXRFによって測定される、フッ化物イオン:MOF金属カチオン(例えば、F:Zr)の原子比)の量のフッ化物イオンを含む。
【0043】
また、本明細書中では、第3の態様において、変性EMM‐71金属‐有機フレームワーク、特に、EMM‐71と、ギ酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、プロピオン酸塩、ブタン酸塩、イソブタン酸塩、メチルスルホン酸塩、エチルスルホン酸塩、プロピルスルホン酸塩、ブチルスルホン酸塩、フェニルスルホン酸塩、ジメチルホスフィン酸塩、ジエチルホスフィン酸塩、ジプロピルホスフィン酸塩、ジブチルホスフィン酸塩、ジフェニルホスフィン酸塩、フッ化物、スルフェート、またはビスルフェートから成る群から選択される部分、例えば、フッ化物、イソブタン酸塩、ブタン酸塩、および/またはギ酸塩;とを含む。理論に束縛されることを望むものではないが、EMM‐71金属‐有機フレームワークの複数の欠陥の少なくとも一部は、前記部分によってキャップされるかまたは補強されると考えられる。この変性EMM‐71金属‐有機フレームワークは、好適には、本開示の第1の態様の方法によって得てもよい。
【0044】
前記変性EMM‐71金属‐有機フレームワーク、特にフッ化物部分を含んでなるEMM‐71金属‐有機フレームワークは、例えばナトリウム、リチウム、セシウム、ニッケル、コバルト、銅、カリウム、銀、およびそれらの混合物から選択される非フレームワークカチオン性金属種、特にリチウム、セシウム、ニッケル、コバルト、銅、カリウム、および/または銀を更に含んでもよい。前記カチオン性金属種は、例えば、少なくとも約0.1、例えば少なくとも約0.15、例えば少なくとも約0.2、更には少なくとも約0.25または0.3、約0.65以下、例えば約0.5以下、例えば約0.4以下(即ち、EDXまたはXRFによって測定される、非フレームワークカチオン性金属種:MOF金属カチオンの原子比(例えば、Cu:Zr、Co:Zr、K:Zrなど))の量で存在してもよい。この変性EMM‐71金属‐有機フレームワークは、好適には、本開示の第2の態様の方法によって得られてもよい。
【0045】
欠陥を有するジルコニウムMOFの製造方法
ジルコニウムMOFを製造する従来の合成では、直鎖状二座(ジトピック;ditopic)配位子を、ジルコニウム源(即ち、塩化ジルコニルまたは四塩化ジルコニウム)および調節剤とともに、極性アプロトン性溶媒、典型的にはジメチルホルムアミドに溶解する。調整剤は、ギ酸、酢酸、安息香酸、またはトリフルオロ酢酸のようなモノカルボン酸であってもよいが、水または塩酸であってもよい。テレフタレートリンカーを生成できるポリトピック型有機カルボン酸(即ちテレフタル酸)は、ジルコニウム系金属‐有機フレームワークの合成において普遍的なものとなっている。オリジナルの合成プロトコルには、反応混合物を加熱して多結晶粉末を得る工程も含まれていた。
【0046】
合成に使用する調整剤の種類(酢酸‐安息香酸)に依存して、金属‐有機フレームワークの表面積を調整してもよい。更に、調整剤の濃度はリンカーの空孔を制御することが示されている。更に、カルボン酸調整剤のpKaも同様に影響力のある変数であると考えられている。同様に、非常に低い含水量を使用して、ノード欠落UiO‐66、ならびにメチルおよびアミノ官能基化類似体を合成する場合、水は効果的に欠陥を生成することが可能である。
【0047】
ノード欠落欠陥を作製するために、本発明者らは最近、クラスター/ノード欠落欠陥を有する金属‐有機フレームワークを従来知られているよりも効率的に製造するための新しい合成法を開発した。2021年6月28日に出願された米国特許出願第63/202,856号「Metal Organic Frameworks Having Node Defects and Methods of Making the Same」を参照。記載されているように、本発明者らは、選択された2価の金属を含めると、ノード欠陥が誘発されるだけでなく、選択された2価の金属は、先行技術の方法論よりもはるかに高い程度でクラスター欠落の生成を誘発することが可能であることを示している。同様のレベルの欠陥は、プレ配位子を用いた濃縮反応条件を用いても実証されている。2022年1月4日に出願された米国特許出願第63/296,178号「Method of Making Metal-Organic Frameworks with a Ligand Precursor and Crystallization Aide」を参照。記載されているように、本発明者らはこの合成法によって、EMM‐71(および官能基化誘導体)は、2価の金属やアミド溶媒を使用することなく製造することが可能であることを示した。
【0048】
ノード欠落欠陥形成における選択的な2価金属カチオンの予期せぬ役割を超えて、本発明者らは、カチオンの有効性が溶液中のハロゲン化物カチオンの存在に依存すること、およびこの方法がHClまたはNH4Clのいずれかの添加によって可逆的であることを観察した。例えば、NH4Brは有効であるが、臭化物アニオンが元素状臭素に酸化されると、この方法が妨害される可能性がある。逆に、フッ化物は代替相の形成を引き起こすため、金属‐有機フレームワークの合成においてフッ化アンモニウムを添加しても金属‐有機フレームワークは形成されない。
【0049】
更に、REO生成メカニズム、即ちFCUトポロジーからREOトポロジーへの移行を作動させることができるのは、わずかな量の塩化物だけである。酸化亜鉛のような非ハライド金属調整剤(2価の亜鉛源としての亜鉛金属も同様)は、FCUトポロジーからREOトポロジーへの移行、およびREOドメインを効果的に生成する。酸化亜鉛の場合、酸化物は酢酸と反応して酢酸亜鉛と水を生成する。しかし、金属亜鉛は可燃性ガスを発生させ、酸化亜鉛は溶液の酸/塩基特性に影響を与える可能性がある。
【0050】
M:Zrとして測定される欠陥生成カチオンは、約37重量%で最適となるようである。より低い、約25重量%の2価カチオン比は、特に粉末X線回折(「PXRD」)で測定した場合、REO欠陥(REOトポロジーのクラスターまたはノード欠落欠陥と呼ばれる)の生成に効果的である。更に、空隙率は、わずかに高い値の方が最大化しやすいようである。2価カチオン含有量がジルコニウムに対して約10重量%まで低下すると、減衰したピークが観察される。過剰な酢酸塩と高いpHは、溶液法に影響を与え、ノード欠落欠陥をもたらす可能性がある。
【0051】
ハロゲン化物濃度に加えて、(1)酢酸濃度、(2)水含有量、(3)反応温度、(4)金属/配位子比、および(5)2価のドーパント含有量を含む他の変数が、得られる金属‐有機フレームワーク材料の欠陥の程度に影響を与えることが可能である。水はジルコニウム二次構成単位を形成するが、濃度が高すぎると欠陥密度が低下する可能性があるため、張力が発生し、反応濃度の上限が必要となる。水和塩を使用する場合、ある一定の反応濃度を超えると、水の濃度にかかわらず、高い収率と高い欠陥濃度が得られない。これは、ZrCl4などの無水塩を使用するか、反応媒体にジルコニウムをゆっくり添加することで改善することが可能である。ナノスケール材料の特性評価のために、粉末X線回折は、American Chemical Societyによって発行された論説、Holder, C. F. et al. (2019) "Tutorial on Powder X-ray Diffraction for Characterizing Nanoscale Materials," ACS Nano, v.13(7), pp.7359-7365に記載されている。
【0052】
酢酸と水に加え、温度が金属‐有機フレームワークの合成において重要な変数であることも観察された。Lillerudの観察と同様に、高温の反応条件は低欠陥含有材料を生成する傾向がある。Shearer, et al. (2016) "Functionalizing the Defects: Postsynthetic Ligand Exchange in the Metal-Organic Framework Uio-66", Chem. Mater.、v.28(20), pp.7190-7193を参照。その研究では、反応条件は100℃~220℃の間でスクリーニングされ、220℃で合成された材料はほとんど欠陥がなかった。REOトポロジーを有する金属‐有機フレームワークの場合、温度依存性が強調される。80℃~130℃の間で反応を行ったところ、90℃~100℃の間で反応を行った場合にのみ、高レベルの欠陥がPXRDパターンを支配することが観察された。この温度以下では、未反応のBDCが大量に存在し、この温度以上では、REOドメインの減衰した反射が生じた。
【0053】
ペンダント配位子を除去し、欠陥を有する構造を示す孔容積を実現するために、欠陥のあるMOFをわずかに塩基性の溶液で洗浄してもよい。例えば、弱く相互作用するアニオンであるホウ酸ナトリウム(リン酸塩または炭酸塩とは対照的)および適度なpH9の緩衝液を使用してMOFを洗浄することができ、ピーク強度の有意な減少が観察されることがある。
【0054】
ギ酸塩で洗浄した材料は、測定された微孔容積と表面積を増加させることができる。しかし、これらの結果は、最適化されていない洗浄手順を表している。ペンダント配位子の除去は、合成の高温、高pH条件に起因する構造劣化と同時に起こる。
【0055】
2021年6月28日に出願された米国仮出願第63/202,856号に詳細に記載されているように、多数のクラスター/ノード欠落欠陥(例えば、EMM‐71)によって特徴付けられる金属‐有機フレームワークを製造するのに必要な一般的工程には、(a)溶液中で4価の金属カチオンを生成することができる第1の金属源(例えば、金属前駆体、金属錯体または金属酸化物の形態)、テレフタレートリンカーを生成することができるポリトピック型有機カルボン酸、溶液中で2価のカチオンを生成することができる第2の金属源(例えば、金属前駆体、金属錯体または金属酸化物の形態)、および1つ以上のモノカルボン酸を溶媒中で反応させて、反応溶液を提供する工程;(b)反応溶液を、例えば、少なくとも75℃の反応温度まで加熱して、反応混合物を提供する工程;および(c)反応混合物から金属‐有機フレームワーク材料を分離する工程を含む。反応混合物は金属‐有機フレームワーク材料を含み、金属‐有機フレームワーク材料は複数の金属‐有機フレームワークを含む。この方法に従って、複数の4価のカチオンおよびテレフタレートリンカーを有する複数の金属‐有機フレームワークの各々は、単純立方格子(即ち、立方晶Bravais格子型)で結晶化される。
【0056】
1つの実施形態において、欠陥を有する金属‐有機フレームワークを合成する方法は、例えば、ギ酸、酢酸、安息香酸、ジフルオロ酢酸またはトリフルオロ酢酸から選択されるモノカルボン酸を含む。1つの実施形態において、モノカルボン酸濃度は、溶媒の総量(溶媒の総量は、反応溶液中に存在するモノカルボン酸、有機溶媒および任意の水の総量として計算される)の約30体積%~70体積%の間である。更に、1つの実施形態において、欠陥を有するMOFを作製する方法論は、約1.75:1~約1:1.75の間の4価カチオン:リンカー(特にテレフタレートリンカー)のモル比を含む。また、1つの実施形態において、2価カチオン/4価カチオンのモル比は、約0~約5である。1つの実施形態において、反応溶液は、全反応体積1リットル当たり約0モル~5モルの間の濃度の水を更に含んでもよい。1つの実施形態において、第1の金属は、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、セリウム、またはそれらの混合物、例えばZrまたはZrとHfとの組み合わせから選択される。1つの実施形態では、第2の金属は、Zn、Co、Sn、Cu、またはそれらの混合物から選択される。1つの実施形態において、ポリトピック型有機カルボン酸は、テレフタレートリンカーを生成することができる芳香族ジ、トリまたはテトラカルボン酸から選択される。1つの実施形態において、ポリトピック型有機カルボン酸は、テレフタル酸またはトリメシン酸から選択される。1つの実施形態において、ポリトピック型有機カルボン酸は、例えば、アルキル基、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、スルホニル基、チオ基、イソシアノ基、アルコキシ基、エーテル基、エステル基、またはカルボキシレート基によって官能基化される。1つの実施形態において、溶媒は極性非プロトン性溶媒、例えばジメチルホルムアミド(DMF)である。
【0057】
1つの実施形態において、反応溶液は、F、Cl、BrまたはIイオンの1つ以上、特にClを更に含む。
【0058】
ジルコニウム金属‐有機フレームワークの合成後処理
前述のように、UiO‐66は2008年に初めて発見され、化学的および熱的に安定な金属‐有機フレームワークの開発における多面的な変化を象徴するものであった。発見当時、元の材料(テレフタレートリンカーとジルコニウムカチオンを含む)は化学的官能基化を欠いていた。他の多くのMOFとは異なり、元の形では、金属‐有機フレームワークUiO‐66は結晶構造に内在するオープンな金属サイトを有さず、その有機配位子は官能基を付加するためのサイトを含んでいなかった。前述したように、UiO‐66および他のジルコニウムMOFに、化学および吸着のためのサイト(オープン金属サイト)を提供する欠陥を生成するための合成が開発されてきた。
【0059】
更に、合成後の変性(合成後の金属カチオンまたは配位子の交換)は、UiO‐66に化学的機能を付与するのに成功しているが、より高いスケールで利用するのは困難である。更に、分離および触媒作用に関連するカチオン種を固定するためにこれらの技術を利用することは、ベース材料の複数回の変換を必要とし、手間がかかる。
【0060】
例えば、トリメチルアルミニウム、アルキルリチウム、アルキルGrignard試薬などの金属アルキル種を含む高反応性種と官能基化されていないMOF材料の反応が開発され、その後に金属交換されることが可能であるサイトを形成する。例えば、Drake, T. et al. (2018) "Site Isolation in Metal-Organic Frameworks Enables Novel Transition Metal Catalysis," Acc. Chem. Res., v.51, pp. 2129-2138; Ji, P. et al. (2016) "Single-Site Cobalt Catalysts at New Zr8(μ2-O)8(μ2-OH)4 Metal-Organic Framework Nodes for Highly Active Hydrogenation of Alkenes, Imines, Carbonyls, and Heterocycles," J. Am. Chem. Soc., v.138, pp. 12234-12242; Zhang, T. et al. (2016) "Metal-Organic Frameworks Stabilize Solution-Inaccessible Cobalt Catalysts for Highly Efficient Broad-Scope Organic Transformations" J. Am. Chem. Soc., v.138, pp.3241-3249; Manna, K. et al. (2016) "Chemoselective single-site Earth-abundant metal catalysts at metal-organic framework nodes," Nat. Commun., v.7, pg. 12610; Manna, K. et al. (2016) "Metal-Organic Framework Nodes Support Single-Site Magnesium-Alkyl Catalysts for Hydroboration and Hydroarnination Reactions," J. Am. Chem. Soc., v.138, pp.7488-7491; Li, Z. et al. (2016) "Sintering-Resistant Single-Site Nickel Catalyst Supported by Metal Organic Framework," J. Am. Chem. Soc., v.138(6), pp. 1977-1982; Ahn, S. et al. (2016) "Stable Metal-Organic Framework-Supported Niobium Catalysts," Inorg. Chem., v.55, pp.11954-11961; Liu, J. et al. (2018) "Beyond the Active Site: Tuning the Activity and Selectivity of a Metal-Organic Framework-Supported Ni Catalyst for Ethylene Dimerization," J. Am. Chem. Soc., v.140(36), pp.11174-11178; Mondloch, J.E. et al. (2013) "Vapor-Phase Metalation by Atomic Layer Deposition in a Metal-Organic Framework," J. Am. Chem. Soc., v.135(28), pp. 10294-10297; Zhang, T. et al. (2016) "Metal-Organic Frameworks Stabilize Solution-Inaccessible Cobalt Catalysts for Highly Efficient Broad-Scope Organic Transformations" J. Am. Chem. Soc., v.138, pp.3241-3249; Kung, C-W. et al. (2015) "Metal-Organic Framework Thin Films as platformss for Atomic Layer Deposition of Cobalt Ions To Enable Electrocatalytic Water Oxidation," ACS Appl. Interfaces, v.7(51), pp.28223-28230; Ahn, S. et al. (2018) "Pushing the Limits on Metal-Organic Frameworks as a Catalyst Support:NU-1000 Supported Tungsten Catalysts for o-Xylene Isomerization and Disproportionation,"J. Am. Chem. Soc. Soc., v.140(27), pp.8535-8543; Platero-Prats, A. et al. (2017) "Bridging Zirconia Nodes within a Metal-Organic Framework via Catalytic Ni-Hydroxo Clusters to Form Heterobimetallic Nanowires," J. Am. Chem. Soc., v.139(30), pp.10410-10418; and Peters, A.W. et al. (2015) "Atomically Precise Growth of Catalytically Active Cobalt Sulfide on Flat Surfaces and within a Metal-Organic Framework via Atomic Layer Deposition," ACS Nano, v.9(8), pp.8484-8490. あるいは、ジメチルホルムアミド中のジルコニウム二次構成単位に金属を組み込むこともできる。Yuan, S. et al. (2015) "Cooperative Cluster Metalation and Ligand Migration in Zirconium Metal-Organic Frameworks," Angew Chemie Int. Ed.、v.54(49)、pp 14696-14700。しかし、この効果は、金属導入工程の妨げになると予想される水中では実証されなかった。例えば、Abdel-Mageed, A.M., et al. (2019) "Highly Active and Stable Single-Atom Cu Catalysts Supported by a Metal-Organic Framework," J. Am. Chem. Soc., v.141(13), pp.5201-5210。
【0061】
ジルコニウムMOFへのフッ化物の取り込みが行われている。Lin, K-Y A. et al. (2016) "Adsorption of fluoride to Uio-66-NH2 in Water: Stability, Kinetic, Isotherm and Thermodynamic Studies," J. Col. Inter Sci., v.461, pp.79-87; Zhao, X. et al. (2014) "The Stability and Defluoridation Performance of MOFs in Fluoride Solutions," Micro. Meso. Mater., v.185, pp.72-78; Prabhu, S.M. et al. (2021) "Synthesis and Characterization of Defective Uio-66 for Efficient Co-immobilization of Arsenate and Fluoride from Single/Binary Solutions" Environ. Poll.、v.278、pg.116841。しかしこれまで、これらのフッ化物材料がカチオンを吸着する能力は検討されていなかった。本発明者らは、フッ化物で処理した材料は、金属種をフレームワークに担持して吸着特性を増強し、触媒効果を付与できることを発見した。
【0062】
本開示の態様を、具体的な実施例によってより詳細に説明する。以下の実施例は、例示を目的として提供されるものであり、いかなる方法によっても本開示を限定することを意図するものではない。関連技術分野の当業者であれば、様々なパラメータを変更または修正して、本質的に同じ結果を得ることができることを容易に認識するであろう。以下の非限定的な実施例は、本開示を説明するために提供される。
【実施例】
【0063】
試料は、白金ストリップヒーターを備えたAnton Parr HTK‐16N環境ステージを取り付けたPanalytical XPert Pro粉末X線回折装置、またはLynxeye検出器を備えた銅Kα線、Bragg‐Bentanoジオメトリを使用する連続モードのBruker D8 Envdevor装置のいずれかを用いて、2~60°の2θ範囲において分析した。いずれの場合も、面間スペーシング(d‐スペーシング)はオングストローム単位で計算した。強度はローレンツ効果と偏光効果に対して補正していない。2θにおける回折ピークの位置、および線の相対ピーク面積強度I/I(o)(Ioはバックグラウンドより強い線の強度)は、3次多項式バックグラウンドフィットを用いたMDI Jade peak fitting algorithmで決定した。単一の線として記載された回折データは、結晶学的変化の違いなど特定の条件下では、分解または部分的に分解された線として現れる複数の重なり合った線から構成される場合があることを理解すべきである。典型的には、結晶学的変化には、単位格子パラメータの軽微な変化および/または結晶対称性の変化が含まれ、フレームワークの連結性は変化しない。相対強度の変化を含むこれらの軽微な影響は、カチオン含有量、フレームワーク組成、細孔充填の性質と程度、結晶サイズと形状、優先配向、熱および/または水熱履歴の違いの結果として生じることもある。すべての試料は、更に研磨することなく、そのまま分析した。高温で収集したすべてのX線回折パターンは、実施例18および
図16に記載したプログラムされた温度上昇中に収集した。各スキャンは、0.02°の工程サイズで2~60°の2θの範囲で~20分であった。測定に対応する温度プログラムの部分は、破線として
図16に表されている。
【0064】
原子比は、Oxford Ultim Max170 EDS 検出器を2つ備えたThermo Fisher Apreo 2 S HiVacを使用して、エネルギー分散型X線(EDX)により収集した。Oxford Aztecソフトウェアで処理した。試料は、0.2~0.8nAの電流で5または15keVで分析するか、または、蛍光X線(XRF)により、波長分散XRFモードにおいて3kW(60kV、150mA)で動作するRh X線管を使用するBurker S8 Tiger蛍光X線装置を用いて分析した。
【0065】
Mettler Toledo TGA/DSC1熱重量分析装置を用いて、1バールの85/15のCO2/N2で重量測定CO2吸収量(吸着およびと吸着能力)を測定した。測定前に、試料を分析装置内で、140℃の窒素気流下でアウトガス化した。その後、試料を35℃まで冷却し、ガスを1バールのCO2/N2の85/15混合ガスに切り替えた。
【0066】
以下の実施例1~実施例11に示すように、本開示の第1の態様の方法を支持して、吸着および触媒用途に関連する金属種の吸着を可能にするために、ジルコニウム金属‐有機フレームワークへのフッ化物種の吸着を活用した。
【0067】
以下の実施例12~実施例19は、本開示の第2の態様の方法を支持する、ジルコニウム金属‐有機フレームワークの熱安定化を例示する。
【0068】
実施例1:EMM‐71‐Formateの合成
金属‐有機フレームワークEMM‐71を、63/202,856または63/296,178に記載されている方法によって合成した。次いで、EMM‐71を0.25Mのギ酸ナトリウムに懸濁し、10重量%のMOF懸濁液とした(例えば、EMM‐7の1グラム当たり10グラム(「g」)のギ酸塩溶液)。溶液を100℃に30分間加熱した後、濾過し、フィルターケーキを1体積%ギ酸溶液(最初のギ酸ナトリウム溶液と等量)で洗浄した。その後、フィルターケーキをアセトンで濯いで水分を除去し、風乾させた。この乾燥粉末は、欠陥がギ酸塩でキャップされたEMM‐71に相当し、EMM‐71‐Formateと呼ばれる。
図1は、実施例1、2および3で作製した材料の粉末X線回折パターンである。
【0069】
実施例2:EMM‐71‐HClの合成
実施例1からのEMM‐71‐Formateを秤量し、ビーカーに加えた。1体積%のHCl溶液をビーカーに加え、10重量%のスラリーを作成した。このスラリーを室温で30~90分間撹拌した後、濾過した。次いで、フィルターケーキを少なくとも3体積当量(最初のMOF/HClスラリーの体積に対して)の水で洗浄した。次にフィルターケーキをアセトンで洗浄して水を置換し、乾燥させた。HClで洗浄すると、すべての欠陥が露出する。得られた粉末がEMM‐71‐HClである(
図1のPXRDパターンを参照)。
【0070】
実施例3:EMM‐71‐Fluoride(EMM‐71‐F)の合成
実施例1からのEMM‐71‐Formateまたは実施例2からのEMM‐71‐HClを容器に塊状に取り出し、水に懸濁して10重量%のスラリーを作成した。これにフッ化ナトリウムを添加した(MOFに対して10重量%)。混合物を撹拌し、90分間加熱した(35℃~50℃)。その後、混合物を濾過し、最初のスラリー体積に対して3体積当量の水で洗浄した。得られた粉末はEMM‐71‐Fである(
図1のPXRDパターンを参照)。
【0071】
実施例4:EMM‐71‐HClの塩化銅二水和物または塩化コバルト(無水)での処理
実施例2からの500mgのEMM‐71‐HClを水10mLに懸濁した。塩化銅脱水物250mgまたは塩化コバルト(無水)187mgのいずれかを混合物に添加し、50℃で撹拌した。混合物を濾過し、2体積当量の水、次いでアセトンで洗浄した。フィルターケーキを乾燥させた。
【0072】
実施例5:フッ化アンモニウム存在下でのEMM‐71‐HClのフッ化銅水和物、フッ化コバルトまたはフッ化ニッケルによる処理
実施例2からの500mgのEMM‐71‐HClを脱イオン水5mLに懸濁し、100mgまたは200mgのフッ化銅二水和物、70mgまたは140mgのフッ化コバルト、または220mgのフッ化ニッケルのいずれかを100mgのフッ化アンモニウムと共に添加した。混合物を50℃で90分間撹拌した後、濾過し、水で洗浄し、次いでアセトンで洗浄した。
図2は、実施例5で作製した材料の粉末X線回折パターンを示す。
【0073】
実施例6:EMM‐71‐HClの塩化銅二水和物または塩化コバルト(無水)およびフッ化アンモニウムによる処理
実施例2からの1,000mgのEMM‐71‐HClを脱イオン水10mLに懸濁し、塩化銅二水和物250mgをフッ化アンモニウム100~150mgと共に添加した。次いで、混合物を50℃に90分間加熱し、濾過し、水で洗浄し、次いでアセトンで洗浄した。
【0074】
実施例2からの2gのEMM‐71‐HClを脱イオン水20mLに懸濁し、塩化コバルト330mgをフッ化アンモニウム420mgとともに加えた。次いで、混合物を50℃に90分間加熱し、濾過し、水で洗浄し、次いでアセトンで洗浄した。
【0075】
図3は、実施例6で作製した材料の粉末X線回折パターンを示す。
【0076】
実施例7:フッ化アンモニウム存在下でのEMM‐71‐Fの金属塩化物による処理
実施例3からの500mgのEMM‐71‐Fを、50mgのフッ化アンモニウムとともに5mLの水に懸濁した。82mgの塩化コバルト(無水)、109mgの塩化銅二水和物、または305mgの塩化ニッケル六水和物のいずれかを添加した。反応混合物を50℃で90分間撹拌し、その後濾過し、水、アセトンで洗浄し、風乾した。
図4は、実施例7で作製した材料の粉末X線回折パターンを示す。
【0077】
実施例8:フッ化物が存在しない金属塩でのEMM‐71‐Fの処理
実施例3からの500mgのEMM‐71‐Fを5mLの水に懸濁した。82mgの塩化コバルト(無水)、109mgの塩化銅二水和物、305mgの塩化ニッケル六水和物、または135mgの硝酸銀のいずれかを添加した。反応混合物を50℃で90分間撹拌した後、濾過し、水、アセトンで洗浄し、風乾した。銀試料の場合、反応は遮光された。これらの結果は、たとえMOFがあらかじめフッ素化されていても、金属塩で処理する際にフッ素を追加しなければ、銀以外の金属は限られた量しか吸着しないことを示している(表1参照)。
【0078】
実施例9:EMM‐71‐HClのアルカリ金属フッ化物塩による処理
実施例2からの6gのEMM‐71‐HClを40mLの水に懸濁し、1.12gのフッ化カリウムまたは1.47gのフッ化セシウムのいずれかを混合物に添加した。混合物を50℃に加熱し、90分間撹拌した。固体を濾別し、10mLの脱イオン水で洗浄した。その後、水をアセトンで交換し、フィルターケーキを乾燥させた。
図5は、実施例9で作製した材料の粉末X線回折パターンを示す。
【0079】
実施例10:EMM‐71‐Formateのアルカリ金属フッ化物塩による処理
実施例1からの500mgのEMM‐71‐Formateを水5mLに懸濁し、50~200mgのフッ化セシウムを反応混合物に添加し、50℃に90分間加熱した。固体を濾別し、10mLの脱イオン水で洗浄した。その後、水をアセトンで交換し、フィルターケーキを乾燥させた。
図5は更に、実施例10で作製した材料の粉末X線回折パターンを示す。
【0080】
実施例11:重量測定CO
2
吸収量測定
本明細書中の実施例1、2、9および10の試料を、熱重量分析装置中で、N2気流下、140℃でアウトガス化した。その後、試料を35℃まで冷却し、ガスを1バールでCO2/N2の85/15混合ガスに切り替えた。
【0081】
以下の表1は、EDX(実施例1、2、3、4、5、6および7の比)およびXRF(実施例8および9の比)により収集された原子比を示す。
【0082】
以下の表2は、85/15のCO
2/N
2の1バールで測定した重量測定CO
2吸着容量を示している。
【0083】
実施例12:フッ化アンモニウム処理によるUiO‐66の熱安定化
300mgのUiO‐66試料を塊状にし、30mgのフッ化アンモニウムを含む1mLの水溶液に懸濁し、短時間混合して均質化した。次に、試料を350~500℃の温度で焼成し、未処理のUiO‐66試料と比較した。F
-の存在下で焼成した試料は、450℃の温度でPXRDパターンを維持し、より高い熱安定性を示した。これは、400℃の温度で結晶性が完全に失われる未処理の材料と比較したものである。
図6は、400℃および500℃でNH
4Fを使用した処理後および使用せずに焼成したUiO‐66試料の粉末X線回折パターンを示す。
【0084】
実施例13:フッ化アンモニウム処理によるEMM‐71の欠陥除去と熱安定化
EMM‐71(実施例1のEMM‐71‐Formateまたは実施例2のEMM‐71‐HCl)の300mgの試料を塊状にし、30mgのフッ化アンモニウムを含む1mLの水溶液に懸濁し、短時間混合して均質化した。その後、試料を300~500℃の温度で焼成した。Fの存在下で焼成した試料は、450℃の温度でPXRDパターンを維持しながら、より高い熱安定性を示した。これは、300℃の温度で結晶性が完全に失われる未処理の材料と比較したものである。
図7は、ギ酸(即ち、実施例1のEMM‐71‐Formate)または塩酸(即ち、実施例2のEMM‐71‐HCl)のいずれかで処理し、フッ化アンモニウムの存在下、温度300℃から450℃まで50℃刻みで焼成したEMM‐71試料の粉末X線回折パターンを示す。
図8は、フッ化アンモニウム源で処理し、焼成したEMM‐71試料の窒素吸着等温線を示す。
図9は、フッ化アンモニウムまたは塩化アンモニウムで処理し、300℃で4時間熱処理したEMM‐71‐FormateおよびEMM‐71‐HCl試料(それぞれ実施例1および2から)の粉末X線回折パターンを示す。
【0085】
実施例14:フッ化リチウム処理による限定した欠陥除去を伴うEMM‐71の熱安定化
EMM‐71(実施例1のEMM‐71‐Formateまたは実施例2のEMM‐71‐HCl)の300mgの試料を塊状にし、15、30または45mgのフッ化リチウムとともに2mLの水に懸濁した。試料を80℃で1時間撹拌し、次いで4時間(4hr)のランプの後、空気下、350℃で12時間焼成した。試料は、粉末X線回折パターンを示し、4°および6°の2θの明瞭なピークを依然として含み、欠陥が残存していることを示している。
図10は、ギ酸処理および塩酸処理したEMM‐71試料(即ち、それぞれ実施例1のEMM‐71‐Formateおよび実施例2のEMM‐71-塩酸塩)を、異なる重量パーセントのフッ化リチウムの存在下で焼成した試料の粉末X線回折パターンを示す。
【0086】
実施例15:イソ酪酸処理による限定的欠陥除去を伴うEMM‐71の熱安定化
有機部分でキャッピングされた欠陥もまた、熱劣化に対して強固であることが可能である。熱安定性の限界は、有機部分の固有の熱安定性と関連している。密度汎関数理論(DFT)モデリングにより、イソブタン酸は他の有機酸と比較して優れた熱安定性を示すと予測した。イソブタン酸はいくつかの方法で添加することができる。EMM‐71の試料は、イソブタン酸の水溶液(~0.25M)に撹拌しながら懸濁し、任意で加熱した後、濾過して単離することができる。あるいは、EMM‐71は、イソブタン酸の溶液(スラリーを作成するのに十分な水とMOFの234μL/g)と混合し、焼成して、熱的に安定な材料を得ることができる。
図11は、様々な酸および脱炭酸生成物の全内部エネルギーの差を示す密度汎関数理論(「DFT」)計算を示す。
図12は、様々な混合物(即ち、イソ酪酸(またはイソブタン酸)、n‐ブタン酸、ギ酸、ギ酸ナトリウム、およびHCl)で洗浄した後のEMM‐71試料の粉末X線回折パターンを示す;前記パターンは、25℃から350℃の間の温度で収集された。これらの結果は、以下の安定化効率を示している:イソ酪酸(i‐BuCO
2H))>n‐ブタン酸(n‐BuCO
2H)~ギ酸>ギ酸ナトリウム>HCl。
【0087】
実施例16:フッ化アンモニウム処理によるZr‐フマル酸塩の市販試料の熱安定化
この実施例では、フマル酸ジルコニウム(UiO‐66のフマル酸アナログ)のNH
4F処理を例示する。フマル酸ジルコニウムの試料は、Zr‐フマル酸のモル比がそれぞれ0.68~0.92(Strem商品番号40‐1114)および0.91(Strem商品番号40‐1106)であるStrem Chemical社から購入した。フマル酸Zrをフッ化アンモニウムと混合し、MOFに対してNH
4Fを10重量%混合した。最小限の水を加え、混合物を攪拌し、100℃で乾燥させた。NH
4F処理の前後で0.68~0.92のジルコニウムに対するフマル酸のモル比を有するZr‐フマル酸塩(UiO‐66のフマル酸塩類似体)の粉末X線回折パターンを
図13に示す;前記パターンは25℃~450℃の温度で収集された。NH
4F処理の前後で0.91のジルコニウムに対するフマル酸のモル比を有するフマル酸Zrの粉末X線回折パターン;前記パターンは25℃と450℃の間の温度で収集された;を
図14に示す。
【0088】
実施例17:Dmol3を用いたΔUの計算
出発のカルボン酸、結果の二酸化炭素(またはギ酸の場合は一酸化炭素)、および結果のアルカン(またはギ酸の場合は水)の分子モデルを生成した。アルカンとCO2の計算では、相互作用が計算に含まれないように、両方の分子を同じモデルに入れ、間隔をあけて計算した。
【0089】
実施例18:MOFの硫酸処理による熱安定化
5gのEMM‐71を秤量し、50mLの水を加えてスラリーとした。500mgまたは1,000mgの濃硫酸(10または20重量%H
2SO
4溶液になる)を加え、混合物を室温で2時間撹拌した。その後、混合物を濾過し、メタノール(または代わりにエタノール、アセトン、および/または水)で洗浄した。単離された固体を100℃~150℃で乾燥させた。
図15は、処理前(黒)と処理後(灰色)のEMM‐71の試料について収集した粉末X線回折パターンを示す。温度は、実施例19で詳述した温度プログラムPXRD実験に対応する。
【0090】
実施例19:温度プログラム粉末X線回折
白金ストリップヒーターを装備したAnton Paar HTK-16N環境ステージを取り付けたPanalytical XPert Pro粉末X線回折装置で試料を分析した。試料は、
図16に示す温度プログラムに従って処理した。
図16は、温度プログラムX線回折実験のプロットである。黒線はランプまたはホールド時間を表す。破線は、回折パターンが収集された時を表す。
【0091】
本開示の精神または範囲から逸脱することなく、前述の説明に照らして多くの変更、修正、および変形が当業者には明らかであり、本明細書中において数値下限値および数値上限値が記載されている場合、任意の下限値から任意の上限値までの範囲が想定される。
【0092】
追加の実施形態
更に、または代替的に、本発明は以下に関する:
【0093】
実施形態1
(a)金属‐有機フレームワークを提供する工程、および
(b)金属‐有機フレームワークを安定化溶液と接触させて、処理された金属‐有機フレームワークを提供する工程
を含み、
前記金属‐有機フレームワークが第1のPXRDパターンを有し、第1の温度で約12時間後に分解し、
前記処理された金属‐有機フレームワークは、第1のPXRDパターンと実質的に同じ第2のPXRDパターンを有し、処理された金属‐有機フレームワークは、12時間後に、第1の温度よりも少なくとも約50℃高い第2の温度で熱的に安定である、複数の欠陥を有する金属‐有機フレームワークを熱的に安定化させる方法。
【0094】
実施形態2
安定化溶液がフッ化物イオンを含み、特にフッ化物イオンの供給源がフッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、およびそれらの混合物から成る群から選択され、好ましくはフッ化アンモニウムおよび/またはフッ化リチウム、より好ましくはフッ化アンモニウムである、実施形態1に記載の方法。
【0095】
実施形態3
フッ化物イオンの量が、金属‐有機フレームワークに対して約0.5~20モル当量の範囲であり、および/またはフッ化物イオンの供給源の量が、金属‐有機フレームワークに対して約0.5~50重量%、好ましくは約1~30重量%の範囲である、実施形態2に記載の方法。
【0096】
実施形態4
安定化溶液が、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、ホスホン酸、およびそれらの混合物から成る群から選択される酸、好ましくはカルボン酸または硫酸を含む、実施形態1に記載の方法。
【0097】
実施形態5
安定化溶液が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、およびそれらの混合物から成る群から選択されるカルボン酸、好ましくはイソブタン酸、n‐ブタン酸、および/またはギ酸、より好ましくはイソブタン酸を含む、実施形態4に記載の方法。
【0098】
実施形態6
酸の量が、金属‐有機フレームワークに対して約0.5~20モル当量の範囲である、実施形態4または5に記載の方法。
【0099】
実施形態7
第1のPXRDパターンの少なくとも5つの反射が第2のPXRDパターンに存在する、実施形態1~6のいずれか1項に記載の方法。
【0100】
実施形態8
第1のPXRDパターンの反射の強度が、第2のPXRDパターンの反射の強度と実質的に同じである、実施形態1~7のいずれか1項に記載の方法。
、実施形態1~6のいずれか1項に記載の方法。
【0101】
実施形態9
金属‐有機フレームワークを金属カチオンおよびフッ化物イオンと接触させて、非フレームワークカチオン性金属種およびフッ化物を含む処理された金属‐有機フレームワークを作製することを含む、CO2吸着が改善された金属‐有機フレームワークの製造方法。
【0102】
実施形態10
フッ化物イオンの供給源が、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化カリウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される、実施形態9に記載の方法。
【0103】
実施形態11
カチオン性金属種が遷移金属またはアルカリ金属である、実施形態9または10に記載の方法。
【0104】
実施形態12
カチオン性金属種が、リチウム、ナトリウム、セシウム、ニッケル、コバルト、銅、カリウム、および/または銀から成る群から選択される、実施形態9~11のいずれか1項に記載の方法。
【0105】
実施形態13
金属フッ化物をフッ化物イオンおよびカチオン性金属種の供給源として使用する、実施形態9から12のいずれか1項に記載の方法。
【0106】
実施形態14
金属フッ化物が、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化ニッケル、フッ化銀、フッ化コバルト、フッ化銅、およびこれらの混合物、好ましくはフッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化ニッケル、フッ化銀、フッ化コバルトおよび/またはフッ化銅から成る群から選択される、実施形態13に記載の方法。
【0107】
実施形態15
フッ化アンモニウムと接触させることを更に含む、実施形態13または14に記載の方法。
【0108】
実施形態16
混合物中のMOF金属:カチオン性金属種のモル比が、約3:4~24:1、好ましくは約2:1~6:1の範囲である、実施形態9~15のいずれか1項に記載の方法。
【0109】
実施形態17
混合物中のフッ化物イオン:カチオン性金属種のモル比が、約1:1~3:1の範囲である、実施形態9~16のいずれか1項に記載の方法。
【0110】
実施形態18
金属‐有機フレームワークが、アルミニウム、鉄、ジルコニウム、チタンおよび/またはハフニウムから選択される複数の金属、好ましくはジルコニウム、チタンおよび/またはハフニウムから選択される複数の金属を含む、実施形態1~17のいずれか1項に記載の方法。
【0111】
実施形態19
金属‐有機フレームワークが、ジルコニウム、チタンおよび/またはハフニウムの金属ノードを含む、実施形態1~18のいずれか1項に記載の方法。
【0112】
実施形態20
金属‐有機フレームワークが、ジルコニウム系金属‐有機フレームワークであり、任意選択で、ハフニウムおよび/またはチタンを更に含み、好ましくはジルコニウム系またはジルコニウムおよびハフニウム系の金属‐有機フレームワークである、実施形態1~19のいずれか1項に記載の方法。
【0113】
実施形態21
金属‐有機フレームワークがZr6金属ノードを含む、実施形態1~20のいずれか1項に記載の方法。
【0114】
実施形態22
前記金属‐有機フレームワークが立方晶単位格子を有する、実施形態1~21のいずれか1項に記載の方法。
【0115】
実施形態23
金属‐有機フレームワークが、EMM‐71、UiO‐66、UiO‐67、UiO‐68、MOF808、フマル酸ジルコニウム、またはNu1000から選択され、好ましくはEMM‐71である、実施形態1~22のいずれか1項に記載の方法。
【0116】
実施形態24
EMM‐71と、
ホルメート、アセテート、ベンゾエート、プロピオネート、ブタノエート、イソブタノエート、メチルスルホネート、エチルスルホネート、プロピルスルホネート、ブチルスルホネート、および/またはフェニルスルホネート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジフェニルホスフェート、フッ化物、スルフェート、またはビスルフェート、好ましくは、フッ化物、イソブタノエート、ブタノエート、および/またはホルメートから成る群から選択される部分と
を含む、金属‐有機フレームワーク。
【0117】
実施形態25
EMM‐71がZr系のEMM‐71である、実施形態24に記載の金属‐有機フレームワーク。
【0118】
実施形態26
実施形態1~8および16~23のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる、実施形態24または25に記載の金属‐有機フレームワーク。
【0119】
実施形態27
フッ化物を含む、実施形態24~26のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク。
【0120】
実施形態28
ナトリウム、リチウム、セシウム、ニッケル、コバルト、銅、カリウム、銀、およびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの非フレームワークカチオン性金属種を更に含む、実施形態24~27のいずれか1項に記載の金属‐有機フレームワーク。
【0121】
実施形態29
非フレームワークカチオン性金属種が、MOF金属カチオンに対する非フレームワークカチオン性金属種の原子比として計算される量少なくとも0.1で、好ましくは約0.1~0.65、より好ましくは約0.2~0.5の量で存在する、実施形態28に記載の金属‐有機フレームワーク。
【0122】
実施形態30
実施形態9~23のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる、実施形態28または29に記載の金属‐有機フレームワーク。
【図】
【国際調査報告】