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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】毛細管採血装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/151 20060101AFI20240709BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61B5/151 100
G01N1/10 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580434
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 US2022034650
(87)【国際公開番号】W WO2023278234
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/216,287
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トリス,アンソニー ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】アルトホフ,チャールズ ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ヤニッチ,ヴラド
【テーマコード(参考)】
2G052
4C038
【Fターム(参考)】
2G052AA30
2G052AD06
2G052BA04
2G052BA12
2G052BA17
2G052DA02
2G052DA03
2G052DA12
2G052DA13
2G052DA15
2G052DA33
2G052HA12
2G052HB02
2G052HB04
2G052JA16
4C038TA02
4C038UE07
(57)【要約】
血液サンプルを取得するための装置は、血液サンプルを受容するための空洞を画定する採取容器と、採取容器を受容するための空洞を画定するアダプターとを備え、アダプターは、採取容器を、アダプターに挿入されたときに所望の位置に配向させるための保持機構を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液サンプルを取得するための装置であって、
前記血液サンプルを受容するための空洞を画定する採取容器と、
前記採取容器を受容するための空洞を画定するアダプターとを備え、
前記アダプターは、前記採取容器を、前記アダプターに挿入されたときに所望の位置に配向させるための保持機構を備える、装置。
【請求項2】
前記アダプターは、前記アダプターの端部から延びる少なくとも1つの突出部を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記採取容器は、前記アダプターの前記少なくとも1つの突出部を受容するように構成された少なくとも1つの溝を画定する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記アダプターは、前記採取容器上に位置するバーコードが前記アダプターを通して見えるように透明な材料で作られている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記アダプターは、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン製である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記アダプターは、前記アダプターの底部に、前記アダプターにおいて前記採取容器の高さを上昇させるための高さ調整部材を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
高さ調節部材の上縁には、前記採取容器を、前記アダプターに挿入されたときに自己配向させるための正弦波状カム面が設けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記アダプターは、軸方向の保持機構および回転方向の保持機構を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記アダプターは、回転方向の保持機構を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
血液サンプルを取得するための装置であって、
サンプル源を受容するためのホルダーであって、作動部およびポートを有するホルダーと、
前記血液サンプルを受容するための空洞を画定する採取容器と、
前記採取容器を受容するための空洞を画定するアダプターとを備える、装置。
【請求項11】
前記アダプターは、前記アダプターの端部から延びる少なくとも1つの突出部を備える、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記採取容器は、前記アダプターの前記少なくとも1つの突出部を受容するように構成された少なくとも1つの溝を画定する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記アダプターは、前記採取容器上に位置するバーコードが前記アダプターを通して見えるように透明な材料で作られている、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記アダプターは、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン製である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記アダプターは、前記アダプターの底部に、前記アダプターにおいて前記採取容器の高さを上昇させるための高さ調整部材を備える、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
高さ調節部材の上縁には、前記採取容器を、前記アダプターに挿入されたときに自己配向させるための正弦波状カム面が設けられる、請求項10に記載の装置。
【請求項17】
前記アダプターは、軸方向の保持機構および回転方向の保持機構を備える、請求項10に記載の装置。
【請求項18】
前記アダプターは、回転方向の保持機構を備える、請求項10に記載の装置。
【請求項19】
前記サンプル源をランセットで切開するために前記ホルダーの前記ポートに取り外し可能に接続されたランセットをさらに備える、請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「Capillary Blood Collection Device」と題された、2021年6月29日出願の米国特許仮出願第63/216,287号明細書の優先権を主張するものであり、その開示の全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、生物学的サンプルを取得するための装置に関する。より詳細には、本開示は、制御された方法で、指をランセットで切開して、圧搾して、血液サンプルを採取し、安定化させて、分注する能力を有する、一体型の指ベース毛細管採血装置に関する。
【背景技術】
【0003】
血液サンプルなどの生物学的サンプルを取得して採取するための装置は、医療業界で一般的に使用されている。医療分野で一般的に行われている採血の1つのタイプは毛細管採血であり、それは検査のための血液サンプルを採取するためにしばしば行われている。糖尿病などのある種の疾患は、例えば患者の血糖値を監視するために、患者の血液を定期的に検査することを必要とする。さらに、コレステロール検査キットなどの検査キットは、分析のために血液サンプルをしばしば必要とする。採血手順は通常、血液サンプルを取得するために指その他の適切な身体部分を刺すことを伴う。一般的には、そのような検査に必要とされる血液の量は、比較的少量であり、通常は小さな刺創または切開でこれらの検査に十分な血液量を提供する。患者の皮膚を穿刺して患者から毛細管血液サンプルを取得するために使用される様々な種類のランセット装置が開発されてきた。
【0004】
多くの異なる種類のランセット装置が、個人消費者だけでなく、病院、診療所、医院などにも市販されている。そのような装置は通常、針のような鋭く尖った部材、または刃のようなエッジの鋭い部材を備え、少量の出血をもたらすために患者の皮膚に迅速な穿刺や切開を行うために使用される。手持ちの針や刃で自分の指を刺すことは、多くの人にとって生理的にも心理的にもしばしば困難である。その結果、ランセット装置は、トリガー機構が作動すると患者の皮膚を穿刺または切断する自動装置へと進化してきた。装置の中には、針または刃が、患者、または患者から採血することを担当する医療専門家であり得るユーザーが引き金を引くまで、待機位置に保たれるものがある。引き金が引かれると、針または刃は、例えば指の上で患者の皮膚を穿刺または切開する。患者の皮膚を穿刺または切開するのに必要な「自動的な」力を与えるために、ばねが装置に組み込まれることが多い。
【0005】
穿刺要素または切断要素の装置からの自動排出および装置内への自動引き込みを特徴とする1つのタイプの接触作動式ランセット装置は、本出願の譲受人であるベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー(Becton, Dickinson and Company)によって所有されている米国特許第9,380,975号である。このランセット装置は、ハウジングと、穿刺要素を有するランセット構造とを備えている。ランセット構造は、ハウジング内に配置され、穿刺要素がハウジング内に保持される保持または作動前位置と、穿刺要素がハウジングの前端を通って延在する穿刺位置との間の移動に適している。ランセット装置は、ランセット構造を穿刺位置に向かって付勢するためにハウジング内に配置された駆動ばねと、駆動ばねの付勢に抗してランセット構造を引き込み位置に保持する保持ハブとを備えている。保持ハブは、ランセット構造と干渉係合する旋回式レバーを備えている。ハウジング内のアクチュエータがレバーを旋回させ、それによって駆動ばねを少なくとも部分的に圧縮するようにランセット構造をハウジングの後方端部に向かって移動させ、ランセット構造との干渉係合からレバーを解放する。受容された血液サンプルは、その後、採取または検査、あるいは採取して検査される。この検査は、ポイントオブケア(Point-Of-Care:POC)検査装置によって行うか、または採取して検査施設に移送して行うことができる。
【0006】
現状では、毛細管採血のワークフローは、高度な技術レベルを必要とする複雑な多段階プロセスである。このプロセスの多段階性によって、溶血、不十分なサンプル安定化、およびマイクロクロットなどのサンプル品質の問題を引き起こす可能性があるいくつかの変動性がもたらされる。血液サンプルを取得するためにランセット装置を使用することによって、検査中にランセットを静止保持すること、穿刺部位から十分な血流を取得すること、血液を適切に採取すること、血栓を防ぐことなどを含むがこれらに限定されない、毛細管血液サンプルの採取に影響を及ぼすいくつかの変動性がもたらされる可能性がある。プロセスの変動性の最も一般的な原因のいくつかとして、(1)不適切なランセット切開部位の洗浄および最初の液滴の除去により、汚染されたサンプルが生じる場合があること、(2)ランセット切開位置および深さが不安定なことによって、潜在的に不十分なサンプル量および大きな割合の間質液がもたらされる可能性があること、(3)圧搾技術が不安定なことおよびランセット切開部位付近の圧力が過剰であることによって血液抽出(例えば、血液のミルキング)が促進されることにより、潜在的に溶血サンプルがもたらされる可能性があること、(4)移送インターフェースおよび採取技術の変動によって、潜在的に溶血サンプルまたは汚染されたサンプルがもたらされる可能性があること、および(5)抗凝血剤とサンプルの不十分な混合によって潜在的に微小凝血塊もたらされる可能性があること、がある。
【0007】
毛細管採血は通常、医療従事者が指を使って穿刺部位周辺の組織を手で圧迫するか、真空圧を利用した装置で部位から血液を抜き取るかのいずれかによって行われる。
【0008】
手で採取部位を絞ることは、技能に大きく依存するプロセスであり、成功率とサンプルの質(溶血-血球破裂で測定)に非常に大きなばらつきをもたらす。医療従事者は通常、患者に依存する血流量の違いを補うために、圧迫圧力と圧迫数を調整する。強く絞ると血流が速くなるが、溶血も増加する。また、医療従事者によっても、個人的選択、経験、手の疲労によって、絞る場所は異なる。従事者によっては、指の付け根から指先に向かって滑らせながら圧力をかける「ミルキング」と呼ばれるプロセスを実施ことさえある。このプロセスは、国内外の保健機関によって、サンプルの質の低下につながるとして推奨されていない。
【0009】
真空で駆動される装置によって、血流の圧力と手法は標準化されるが、通常、全体的な血流の悪さに悩まされる。印加することができる最大圧力は、大気圧と絶対真空(14psi以下)の差によって制限され、装置は絶対真空の数分の1でしか作動しない。参考として、男女を問わず握力は平均して50~100ポンドであり、手による方法が血流ではなく溶血に影響される理由を示している。真空による方法によっても一貫した圧力がかかるため、組織が血液を補充する能力が制限される。
【0010】
従って、当該技術分野において、制御された方法で、指をランセット切開して圧搾し、サンプルを採取し、サンプルを安定させ、続いてサンプルを分注する能力を有する装置が必要とされている。当該技術分野において、溶血および微小凝血塊を含む低サンプル品質に通常伴うワークフローの変動性を排除することによって、毛細管採血を単純化および合理化する装置もまた必要とされている。当該技術分野では、血液曝露および装置の再使用を排除する閉鎖系での採取および移送が依然として求められている。当該技術分野においては、(1)異なる毛細管採血および移送の容器の収容に柔軟性を導入し、(2)高品質で均一に混合/安定化された毛細管血液サンプルを生成する能力を有し、(3)毛細管血漿サンプルから装置内血漿を生成する能力を有し、(4)痛みを軽減しながら大量の毛細管血液サンプル(>50~500μL)を採取する能力を有し、(5)採取時の患者情報と対を成す固有のサンプル識別子を含み、(6)毛細管血液を採取して装置内診断を実行する能力を有し、そして(7)同一または異なる抗凝血剤を有する異なる容器に血液サンプルを収集するための複数の収集ポートを有する装置に対するさらなる必要性がある。当該技術分野には、印加圧力の位置が標準化され制御されており、十分な血流のために十分高いが溶血閾値未満の圧力を印加し、指に血液が満たされるように、一貫した圧力ではなく規定されたリズミカルな圧力を印加し、平均血流速度を増加させ、そして操作者による最大印加力を低下させることでユーザーの疲労を軽減させることを含む毛細管採血装置がさらに必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、上述の必要性を満たし、かつ、制御された方法で、指をランセット切開し圧搾し、サンプルを採取し、サンプルを安定化し、続いてサンプルを分注する能力を有する毛細管採血装置のような、生物学的サンプルを取得する装置を対象とする。この装置はまた、溶血および微小凝血塊を含む低サンプル品質に通常伴うワークフローの変動性を排除することによって、毛細管採血を単純化および合理化する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、ランセット切開して、例えば最大500マイクロリットルまでまたはそれを超える大容量の毛細管血液サンプルを採取および安定化する能力を有する、自己完結型かつ完全に一体型の指ベースの毛細管採血装置を含む。この装置は、溶血、微小凝血塊、および患者の不快感を含む低いサンプル品質に通常伴うワークフローステップおよび変動性を排除することによって、大量の毛細管採血を単純化および合理化する。この装置は、指をランセット切開することができる引き込み式ランセット切開機構と、穿刺された指の部位から採取容器への毛細管血液の付着および移動を確実にする、関連する血液流経路とを含む。この装置はまた、指から出る血液流を刺激、すなわち圧送するように周期的に圧搾可能なホルダーと、採取されたサンプルを安定化させるための流路または採取容器に沈着した抗凝固剤とを備える。
【0013】
一設計によれば、装置は、ホルダー、ランセット、および採取容器などの個別の構成要素を備えることができる。別の設計によれば、ランセットおよび採取容器は、1つの装置に一体化されることが可能であり、そうすると、その装置はホルダーと共に使用される。さらに別の設計によれば、ホルダー、ランセット、および採取容器を単一のシステムに一体化することができる。これらの設計のいずれも、自立型使い捨て装置として、または疼痛軽減制御のための外部電源と連携して、あるいはその両方が可能な装置として使用されることが想定されている。毛細管採血装置は、小管から毛細管分注器に及ぶ様々な毛細管血液採取容器、ならびに装置内血漿分離モジュールのためのプラットフォームとして機能することができる。この機能により、ポイントオブケア(POC)カートリッジへの分注や、遠心分離機や分析機器で使用できる小型収集管への移送などを含む様々な用途に製品の柔軟性が広がる。
【0014】
本開示の一実施形態において、血液サンプルを取得するための装置は、血液サンプルを受容するための空洞を画定する採取容器、および採取容器を受容するための空洞を画定するアダプターを備え得る。アダプターは、採取容器を、アダプターに挿入されたときに所望の位置に配向させるための保持機構を備えている。
【0015】
本開示の一実施形態では、アダプターは、アダプターの端部から延びる少なくとも1つの突出部を備え得る。採取容器は、アダプターの少なくとも1つの突出部を受容するように構成された少なくとも1つの溝を画定し得る。アダプターは、採取容器内に位置するバーコードがアダプターを通して見えるように透明な材料で作られてもよい。アダプターは、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン製でもよい。アダプターは、アダプターの底部に、アダプターにおいて採取容器の高さを上昇させるための高さ調整部材を備え得る。高さ調節部材の上縁には、採取容器を、アダプターに挿入されたときに自己配向させるための正弦波状カム面が設けられる。アダプターは、軸方向の保持機構と回転方向の保持機構とを備え得る。アダプターは回転方向の保持機構を備え得る。
【0016】
本開示の一実施形態において、血液サンプルを取得するための装置は、サンプル源を受容するためのホルダーであって、作動部およびポートを有するホルダー、血液サンプルを受容するための空洞を画定する採取容器、および採取容器を受容するための空洞を画定するアダプターを備え得る。
【0017】
本開示の一実施形態では、アダプターは、アダプターの端部から延びる少なくとも1つの突出部を備え得る。採取容器は、アダプターの少なくとも1つの突出部を受容するように構成された少なくとも1つの溝を画定し得る。アダプターは、採取容器内に位置するバーコードがアダプターを通して見えるように透明な材料で作られてもよい。アダプターは、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン製でもよい。アダプターは、アダプターの底部に、アダプターにおいて採取容器の高さを上昇させるための高さ調整部材を備え得る。高さ調節部材の上縁には、採取容器を、アダプターに挿入されたときに自己配向させるための正弦波状カム面が設けられる。アダプターは、軸方向の保持機構と回転方向の保持機構とを備え得る。アダプターは回転方向の保持機構を備え得る。ランセットをホルダーのポートに取り外し可能に接続し、サンプル源をランセットで切開することができる。
【0018】
本発明は、以下の項にも記載されている。
【0019】
項1:血液サンプルを取得するための装置であって、血液サンプルを受容するための空洞を画定する採取容器と、採取容器を受容するための空洞を画定するアダプターとを備え、アダプターは、採取容器を、アダプターに挿入されたときに所望の位置に配向させるための保持機構を備える、装置。
【0020】
項2:アダプターは、アダプターの端部から延びる少なくとも1つの突出部を備える、項1に記載の装置。
【0021】
項3:採取容器は、アダプターの少なくとも1つの突出部を受容するように構成された少なくとも1つの溝を画定する、項2に記載の装置。
【0022】
項4:アダプターは、採取容器上に位置するバーコードがアダプターを通して見えるように透明な材料で作られている、項1~3のいずれかに記載の装置。
【0023】
項5:アダプターは、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン製である、項4に記載の装置。
【0024】
項6:アダプターは、アダプターの底部に、アダプターにおいての採取容器の高さを上昇させるための高さ調整部材を備える、請求項1~5のいずれかに記載の装置。
【0025】
項7:高さ調節部材の上縁には、採取容器を、アダプターに挿入されたときに自己配向させるための正弦波状カム面が設けられる、項1~6のいずれかに記載の装置。
【0026】
項8:アダプターは、軸方向の保持機構および回転方向の保持機構を備える、項1~7のいずれかに記載の装置。
【0027】
項9:アダプターは、回転方向の保持機構を備える、項1~8のいずれかに記載の装置。
【0028】
項10:血液サンプルを取得するための装置であって、サンプル源を受容するためのホルダーであって、作動部およびポートを有するホルダーと、血液サンプルを受容するための空洞を画定する採取容器と、採取容器を受容するための空洞を画定するアダプターとを備える、装置。
【0029】
項11:アダプターは、アダプターの端部から延びる少なくとも1つの突出部を備える、項10に記載の装置。
【0030】
項12:採取容器は、アダプターの少なくとも1つの突出部を受容するように構成された少なくとも1つの溝を画定する、項11に記載の装置。
【0031】
項13:アダプターは、採取容器上に位置するバーコードがアダプターを通して見えるように透明な材料で作られている、項10~12のいずれかに記載の装置。
【0032】
項14:アダプターは、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン製である、項13に記載の装置。
【0033】
項15:アダプターは、アダプターの底部に、アダプターにおいて採取容器の高さを上昇させるための高さ調整部材を備える、請求項10~14のいずれかに記載の装置。
【0034】
項16:高さ調節部材の上縁には、採取容器を、アダプターに挿入されたときに自己配向させるための正弦波状カム面が設けられる、項10~15のいずれかに記載の装置。
【0035】
項17:アダプターは、軸方向の保持機構および回転方向の保持機構を備える、項10~16のいずれかに記載の装置。
【0036】
項18:アダプターは、回転方向の保持機構を備える、項10~17のいずれかに記載の装置。
【0037】
項19:サンプル源をランセットで切開するためにホルダーのポートに取り外し可能に接続されたランセットをさらに備える、項10~18のいずれかに記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1は、本発明の実施形態に係るホルダーの透視図である。
【0039】
図2は、本開示の別の実施形態に係る、患者の指から血液サンプルを取得するための装置およびランセットの断面図である。
【0040】
図3は、本発明の別の実施形態に係る、患者の指から血液サンプルを取得するための装置および採取容器の透視図である。
【0041】
図4は、本開示の一実施形態に係る、アダプターに受容された採取容器の透視図である。
【0042】
図5は、本発明の別の実施形態に係る、アダプターに受容された採取容器の透視図である。
【0043】
図6は、図4のアダプターの別の透視図である。
【0044】
図7は、図5のアダプターの別の透視図である。
【0045】
図8は、図4の採取容器とアダプターの断面図である。
【0046】
図9は、図5の採取容器とアダプターの断面図である。
【0047】
図10は、図5のアダプターに保持された採取容器のキャップを取り外すための工具の使用を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下の説明は、本発明を実施するように企図された、説明する実施形態を当業者が製作し、使用することを可能にするために提供される。しかし、様々な改変形態、等価物、変形形態、および代替策が、依然として当業者に容易に明白になるであろう。あらゆるすべてのそのような改変形態、変形形態、等価物、および代替策は、本発明の趣旨および範囲に含まれるように意図される。
【0049】
本明細書のこれ以後の説明のために、用語「上側」、「下側」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「上部」、「底部」、「横方向」、「長手方向」、およびそれらの派生語は、これが図に配向されるように本発明に関連付ける。しかし、そうではないと明白に指定しない限り、本発明は代替的な変形形態およびステップ順序をとり得ることを理解されたい。また、添付の図に示し、以下の明細書において説明する特有の装置およびプロセスは、本発明の例示的な実施形態にすぎないことも理解されたい。故に、本明細書において開示する実施形態に関連付けられた特有の寸法および他の物理的特性は、限定的であると考えられるものではない。
【0050】
本開示は、上述の必要性を満たし、かつ、制御された方法で、指をランセット切開し圧搾し、サンプルを採取し、サンプルを安定化し、続いてサンプルを分注する能力を有する毛細管採血装置のような、生物学的サンプルを取得する装置を対象とする。この装置はまた、溶血および微小凝血塊を含む低サンプル品質に通常伴うワークフローの変動性を排除することによって、毛細管採血を単純化および合理化する。本装置は、医師や看護師などの医療専門家、または装置を自己適用して使用する患者が使用することができる。
【0051】
採血は基本的に圧力駆動の流れによって行われる。装置や技術は、血管外の圧力を下げるか(真空駆動流)、血管内の圧力を上げるかのいずれかである。どちらのアプローチも血管内圧と外圧の差を大きくし、血管内から採取容器のある外部への流量を増加させる。軟部組織(脂肪、皮膚、筋肉組織など)は血液が灌流されているが、硬組織や関節は灌流が乏しいか、機械的に安定しすぎて、患者の痛みを伴わずに圧迫することができないので、圧迫する位置も重要となる場合がある。
【0052】
赤血球(Red Blood Cells:RBC)は採取中に溶血しやすい。溶血(RBC破壊)により、細胞含有物がサンプルの液体血清中に流出するとともに、ヘモグロビンによって血清が赤く着色され、比色反応が妨げられることによって、診断分析用のサンプルが汚染される。採血中の溶血量は、組織や血管の物理的圧縮が細胞を損傷できる圧力による溶血に加えて、流量や流路に起因するせん断を介した細胞破壊によっても左右される。従って、溶血は、圧迫される指のどの位置においても、加えられる圧力と流量が高すぎないようにすることでコントロールできる。
【0053】
本開示は、ランセット切開して、例えば最大500マイクロリットルまでまたはそれを超える大容量の毛細管血液サンプルを採取および安定化する能力を有する、自己完結型かつ完全に一体型の指ベースの毛細管採血装置を含む。この装置は、溶血、微小凝血塊、および患者の不快感を含む低いサンプル品質に通常伴うワークフローステップおよび変動性を排除することによって、大量の毛細管採血を単純化および合理化する。この装置は、指をランセット切開することができる引き込み式ランセット切開機構と、穿刺された指の部位から採取容器への毛細管血液の付着および移動を確実にする、関連する血液流経路とを含む。この装置はまた、指から出る血液流を刺激、すなわち圧送するように周期的に圧搾可能なホルダーと、採取されたサンプルを安定化させるための流路または採取容器に沈着した抗凝固剤とを備える。
【0054】
一設計によれば、装置は、ホルダー、ランセット、および採取容器などの個別の構成要素を備えることができる。別の設計によれば、ランセットおよび採取容器は、1つの装置に一体化されることが可能であり、そうすると、その装置はホルダーと共に使用される。さらに別の設計によれば、ホルダー、ランセット、および採取容器を単一のシステムに一体化することができる。これらの設計のいずれも、自立型使い捨て装置として、または疼痛軽減制御のための外部電源と連携して、あるいはその両方が可能な装置として使用されることが想定されている。毛細管採血装置は、小管から毛細管分注器に及ぶ様々な毛細管血液採取容器、ならびに装置内血漿分離モジュールのためのプラットフォームとして機能することができる。この機能により、ポイントオブケア(POC)カートリッジへの分注や、遠心分離機や分析機器で使用できる小型収集管への移送などを含む様々な用途に製品の柔軟性が広がる。
【0055】
図1図3を参照すると、例示的な実施形態では、本開示の装置10は、個別の構成要素、例えばホルダー12(図1に示すように)、ランセットハウジングまたはランセット14(図2に示すように)、および採取容器16を備える。別の例示的な実施形態では、本開示の半一体型装置は、角度を持った流れを有し得るとともに、別個のホルダーと接続できる一体型ランセットハウジングおよび採取容器を備え得る。別の例示的実施形態では、本開示の半一体型装置は、一直線状の流れを有し得るとともに、別個のホルダーと接続できる一体型ランセットハウジングおよび採取容器を備え得る。別の例示的な実施形態では、本開示の一体型装置は、角度を持った流れを有し得るとともに、一体型ホルダー、ランセットハウジング、および採取容器を備え得る。別の例示的な実施形態では、本開示の一体型装置は、一直線状の流れを有し得るとともに、一体型ホルダー、ランセットハウジング、および採取容器を備え得る。
【0056】
図1を参照すると、血液サンプル18などの生物学的サンプルを供給するためのサンプル源、例えば指19、を受容することができる本開示のホルダー12の例示的実施形態が示されている。本開示のホルダー12は、第1開口部22を有する指受容部20(図1)と、作動部24と、第2開口部28を有するポート26と、指端部ガード30とを一般に備えている。一実施形態では、指端部ガード30は、指19をホルダー12内に適切に位置合わせして固定するための停止部を備える。指端部ガード30はさらに、患者の指19に加えられる圧力が適切な血流をもたらすように、患者の指19が指受容部20内の適切な位置に配置されることを保証しやすくする。
【0057】
指受容部20の第1開口部22は、血液サンプル18などの生物学的サンプルを供給するためのサンプル源、例えば指19を受容するように構成されている。サンプル源は、第1開口部22内に嵌合できる身体の他の部分を含む可能性があることが理解できる。ポート26は指受容部20と連通している。例えば、指19がホルダー12内に受容された状態で、ポート26は指19の一部と連通している。本開示のホルダー12は、あらゆるサイズの指を収容できるようにサイズ決定することができる。
【0058】
ポート26の第2開口部28は、以下により詳細に説明されるように、ランセットハウジング14および採取容器16を受容するように構成されている。一実施形態では、ポート26は、ランセットハウジング14および採取容器16をポート26内にしっかりと受容するためのロック部32を備えている。
【0059】
一実施形態では、作動部24は、ホルダー12が第1の直径を画定する第1の位置と、ホルダー12が第2の直径を画定する第2の位置との間で移行可能であり、第2の直径は第1の直径より小さい。一実施形態では、作動部24は、ホルダー12が第1の楕円形を画定する第1の位置と、ホルダー12が第2の楕円形を画定する第2の位置との間で移行可能であり、第1の楕円形は第2の楕円形とは異なる。このようにして、ホルダー12が小径の第2の位置にある状態で、ホルダー12の一部はサンプル源に接触し、ホルダー12の作動部24は、以下により詳細に説明するように、血液18を圧送または抽出、あるいは圧送して抽出することができる。
【0060】
図1を参照すると、一実施形態では、作動部24は接触部材34を備えている。作動部24が第1の位置にある状態では、接触部材34は係合解除位置にあり、すなわち接触部材34はサンプル源、例えば指19に対して第1の位置に設けられていて、接触部材34がサンプル源とわずかに接触することができるようになっている。作動部24が第2の位置にある状態では、接触部材34は係合位置にあり、すなわち接触部材34はサンプル源、例えば指19に対して第2の位置に設けられていて、接触部材34が指19と加圧接触し、ホルダー12の作動部24が血液18を圧送または抽出、あるいは圧送して抽出することができるようになっている。例えば、接触部材34が係合位置にある状態では、接触部材34はサンプル源に圧力を加える。
【0061】
図1を参照すると、一実施形態では、作動部24は、サンプル源、例えば指19に圧力を加えるための圧送部材36を備えている。一実施形態では、圧送部材36は、一対の対向するタブまたはウイング38を備える。そのような実施形態では、各タブ38は接触部材34を備え得る。一実施形態では、ホルダー12は可動ヒンジ部42を備えている。可動ヒンジ部42は、ユーザーが第1の位置(受動状態)と第2の位置(能動状態)との間でウイング38を締めることを可能にする。患者の指19から血液18を引き出すためにタブまたはウイング38を使用することにより、患者の指19からの血液の適切な流れを維持しながら溶血を最小限に抑えることができる。ウイング38の静止位置と可動ヒンジ部42は、ホルダー12内に収まることができる最も小さい患者の指との接触と保持を維持するように設計されている一方、血流を妨げることなくホルダー12内に最も大きい患者の指を収容するように屈曲する。
【0062】
有利には、本開示のホルダー12は、所望量の血液18が採取容器16内に充填されるまで、ユーザーがウイング38を繰り返し圧迫および解放して指19から血液18を圧送または抽出、あるいは圧送して抽出することを可能にする。ウイング38は、ホルダー12と共に使用され得る範囲の患者の指のサイズに対して穏やかな接触を維持し、ホルダー12を患者の指19上に保持するために、屈曲するように構成されている。
【0063】
有利には、ホルダー12が指19の上に置かれた状態で、ホルダー12は血液流を収縮させずにランセット切開および指圧搾の位置を画定する。圧搾タブまたはウイング38は、指19全体に一貫して加えられる所定の範囲の圧搾圧力を提供する。そうすることによって、ホルダー12は、制御された態様で優しく指をマッサージし、血液抽出を刺激していかなる潜在的な溶血も最小化する。
【0064】
図1を参照すると、一実施形態では、ホルダー12は安定性延長部40を備えている。これによって、ホルダー12が指19上にしっかりと配置されるための追加の支持が提供される。一実施形態では、指受容部20は、全体としてC字形の部材を形成し、ホルダー12を指19上にしっかりと配置されるようにさらに把持して支持するための複数の内側把持部材を備えている。安定性延長部40は、ホルダー12の使用中、血液供給および患者の指19の指関節を避けながら、患者の指19との接触を維持することを補助する。
【0065】
一実施形態では、指受容部20は可撓性材料で形成されている。いくつかの実施形態では、指受容部20およびポート26は可撓性材料で形成されている。
【0066】
本開示の血液サンプル18(図3に示す)を取得するための装置10は、ホルダー12のポート26に取り外し可能に接続可能なランセットハウジングまたはランセット14を備えている。図2を参照すると、一実施形態では、ランセットハウジング14は、入口または開口部50、内部空間52、穿刺要素54、係合部56、引き込み機構58、および駆動ばね60を備えている。一実施形態では、穿刺要素54は、穿刺要素54がランセットハウジング14の内部空間52内に保持される作動前位置と、穿刺要素54の少なくとも一部がランセットハウジング14の入口50を通って延在して指19の一部をランセット切開する穿刺位置との間で移動可能である。
【0067】
一実施形態では、本開示のランセット14は、接触作動式ランセットであり、本出願と同一出願人によって、「接触作動式ランセット装置」という名称で、2005年5月6日に出願された米国特許出願公開第2006/0052809号に開示された特徴に従って構成され得る。その全開示内容は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0068】
一実施形態では、ランセットハウジング14は、ホルダー12および採取容器16とは別の構成要素であり得る。いくつかの実施形態では、採取容器16およびランセットハウジング14は、ホルダー12のポート26に取り外し可能に接続可能な単一の構成要素を形成する。いくつかの実施形態では、採取容器16、ランセットハウジング14、およびホルダー12は単一の構成要素を形成する。
【0069】
図2を参照すると、一実施形態では、ホルダー12とランセットハウジング14とが別々の構成要素である状態では、ランセットハウジング14はホルダー12のポート26に取り外し可能に接続することができる。そのような実施形態では、ランセットハウジング14は係合部56を備えている。図2を参照すると、一実施形態では、ランセットハウジング14の係合部56がホルダー12のロック部32内にロックされるように、ランセットハウジング14がホルダー12のポート26に押し込まれる。このようにして、ランセットハウジング14はホルダー12にしっかりと接続されかつロックされて、ランセットハウジング14の穿刺要素54が作動されてサンプル源、例えば指19をランセット切開または穿刺することができるようになっている。いくつかの実施形態では、ホルダー12のポート26は、ランセット14または採取容器16をポート26内に固定しかつロックするための複数のリブを備えている。
【0070】
ランセット14を作動させるために、ランセット14が指19に押し付けられてランセット14の引き込み機構58を作動させて指19をランセット切開する。本開示のランセット14により、一貫して、正確な深さにおけるランセット切開、および所定の位置におけるランセット切開が可能となり、十分なサンプル量の確保が可能となる。
【0071】
一実施形態では、ランセット14は、穿刺要素54を穿刺位置に向けて付勢するためにランセットハウジング14の内部空間52内に配置された駆動ばね60を備えている。穿刺後、穿刺要素54は直ちに引き込まれてランセットハウジング14の内部空間52内において安全に固定される。
【0072】
一実施形態では、本開示のランセット14が使用されて指19の皮膚をランセット切開し、その後、以下により詳細に説明するように、血液サンプル18が採取容器16内に押し込まれる。
【0073】
一実施形態では、本開示のランセットハウジング14は、ランス経路に沿って指19の皮膚をランセット切開するために使用され、その後、血液サンプル18は、以下により詳細に説明されるように、ランス経路に対して角度を有する血液流経路に沿って流れる。
【0074】
一実施形態では、ランセット14は中空針を備えている。そのような実施形態では、本開示のランセットハウジング14を使用して、ランス経路に沿って指19の皮膚がランセット切開され、次いで血液サンプル18が中空針を通って平行な血液流経路に沿って流れる。
【0075】
図3に示すように、本開示の血液サンプル18を取得するための装置10は、ホルダー12のポート26に取り外し可能に接続可能な採取容器16を備えている。採取容器16では、血液サンプル18を受容するための採取空洞70、容器係合部72、血液採取部74、およびキャップまたはセプタム76が画定されている。所望量の血液18が容器16内に採取されると、採取されたサンプル18を診断機器または検査装置、あるいは診断機器および検査装置に移送するために、血液採取部74は採取装置10から取り外される。血液採取部74は、採取装置10から取り外されると、キャップまたはセプタム76によって封印されて、血液サンプル18を採取空洞70に保護可能に封印する。
【0076】
一実施形態では、採取容器16は、ホルダー12およびランセットハウジング14とは別の構成要素であり得る。いくつかの実施形態では、採取容器16およびランセットハウジング14は、ホルダー12のポート26に取り外し可能に接続可能な単一の構成要素を形成する。いくつかの実施形態では、採取容器16、ランセットハウジング14、およびホルダー12は単一の構成要素を形成する。
【0077】
一実施形態では、ホルダー12と採取容器16とが別々の構成要素である状態では、容器16はホルダー12のポート26に取り外し可能に接続可能である。そのような実施形態では、容器16は容器係合部72を備えている。一実施形態では、容器16がホルダー12のポート26に押し込まれて、容器16の容器係合部72がホルダー12のロック部32内でロックされるようになっている。このようにして、容器16は、ホルダー12にしっかりと接続されかつロックされて、血液サンプル18がホルダー12内の指19から容器16の採取空洞70へ安全に流れることができるようになっている。
【0078】
数種類の採取容器16が、本開示の装置10と共に使用可能であることが理解できる。また、採取容器16は別体の分注ユニットとの連携が可能であること、あるいは採取容器16が血液18を検査装置に分注するための一体型分注部を備えることが可能であることも理解できる。
【0079】
図1を参照して、個別の構成要素、例えばホルダー12、ランセットハウジングまたはランセット14、および採取容器16を有する本開示の装置10の使用について説明する。
【0080】
図1を参照すると、最初に所望の指19が洗浄され、所望の指19に適したサイズを有するホルダー12が選択され、指19の上にしっかりと置かれる。図2を参照すると、次に、ランセットハウジング14がホルダー12のポート26に接続される。上述したように、ランセットハウジング14がホルダー12のポート26内に押し込まれて、ランセットハウジング14の係合部56がホルダー12のロック部32内でロックされるようになっている。このようにして、ランセットハウジング14は、ホルダー12にしっかりと接続されかつロックされて、ランセットハウジング14の穿刺要素54(図2)が作動されてサンプル源、例えば指19をランセット切開または穿刺することができるようになっている。ランセット14がホルダー12のポート26に接続された状態で、ランセット14は指19とつながっている。
【0081】
ランセット14を作動させて指19の皮膚をランセット切開することが望まれるとき、ランセット14が指19に対して押し付けられて、ランセット14の引き込み機構58(図2)を作動させて指19をランセット切開する。本開示のランセット14は、正確なランセット切開深さおよび所定のランセット切開位置を一貫してもたらし、これによって十分なサンプル量を確保する。
【0082】
指19がランセット切開されて指19からの血液18の流れを形成した後、ランセット14はホルダー12から取り外され、採取容器16がホルダー12のポート26内に押し込まれる。図3を参照すると、容器16がホルダー12のポート26内に押し込まれて、容器16の容器係合部72がホルダー12のロック部32内でロックされるようになっている。このようにして、容器16は、ホルダー12にしっかりと接続されかつロックされて、血液サンプル18がホルダー12内の指19から容器16の採取空洞70へ安全に流れることができるようになっている。
【0083】
図1を参照すると、血液サンプル18の採取のために容器16がホルダー12に適切に固定された状態で、ユーザーは、ホルダー12のウイング38を繰り返し圧迫および解放して、所望量の血液18が採取容器16内に充填されるまで、指19から血液18を圧送または抽出、あるいは圧送して抽出することができる。有利には、ホルダー12が指19の上に置かれた状態で、ホルダー12は血液流を収縮させずにランセット切開および指圧搾の位置を画定する。圧搾タブまたはウイング38は、指19全体に一貫して加えられる所定の範囲の圧搾圧力を提供する。そうすることによって、ホルダー12は、制御された態様で優しく指をマッサージし、血液抽出を刺激していかなる潜在的な溶血も最小化する。
【0084】
例えば、図1を参照すると、一実施形態では、作動部24は接触部材34を備えている。作動部24が第1の位置にある状態では、接触部材34は係合解除位置にある、すなわち、接触部材34はサンプル源、例えば指19に対して第1の位置にある。作動部24が第2の位置にある状態では、接触部材34は係合位置にあり、すなわち接触部材34は第2の位置にあり、サンプル源、例えば指19と加圧接触していて、ホルダー12の作動部24は、血液18を圧送または抽出、あるいは圧送して抽出することができる。例えば、接触部材34が係合位置にある状態では、接触部材34はサンプル源に圧力を加える。
【0085】
所望量の血液18が容器16内に採取されると、採取されたサンプル18を診断機器または検査装置、あるいは診断機器および検査装置に移送するために、血液採取部74は採取装置10から取り外される。血液採取部74は、採取装置10から取り外されると、キャップまたはセプタム76によって封印されて、血液サンプル18を採取空洞70に保護可能に封印する。
【0086】
本開示の装置は、検査装置が診療現場外であるかポイントオブケア検査装置であるかにかかわらず、任意の既知の検査装置と互換性がある。様々なポイントオブケア検査装置が当該技術分野において既知である。そのようなポイントオブケア検査装置は、検査紙、スライドガラス、診断カートリッジ、または検査および分析用の他の検査装置を備えている。検査紙、スライドガラス、および診断カートリッジは、血液サンプルを受容し、その血液を1つまたは複数の生理学的および生化学的状態について検査するポイントオブケア検査装置である。分析のためにサンプルを研究室に移送する必要なしに、非常に少量の血液をベッドサイドで分析するための、カートリッジベースのアーキテクチャを使用する多くのポイントオブケア装置がある。これは結果を得るための時間を長期的に節約できるが、高度にルーチン化された研究環境に対する異なる課題が生じる。そのような検査カートリッジの例として、アボットグループから発売されているi-STAT(登録商標)検査カートリッジが含まれる。i-STAT(登録商標)カートリッジなどの検査用カートリッジは、化学物質および電解質の存在、血液学、血液ガス濃度、凝固、または心臓マーカーを含む様々な状態について検査するために使用され得る。このようなカートリッジを使用した検査の結果は、迅速に臨床医に提供される。
【0087】
採取容器16はまた、その中に配置された血液サンプル18または血液サンプル18の成分、あるいは血液サンプル18および血液サンプル18の成分を安定化させるためのサンプル安定化剤、例えば抗凝固剤を含み得る。採取容器16はまた、所定量のサンプルに対応する少なくとも1本の充填線を含み得る。採取容器はまた、採取された血液量を表示/計量してもよい。
【0088】
本開示の血液サンプルを取得するための装置のいずれも、自立型使い捨て装置として、または疼痛軽減制御のための外部電源と連携して、あるいはその両方が可能な装置として使用することができる。例えば、ホルダー12の一部は、疼痛軽減制御のための熱、振動、経皮的電気神経刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:TENS)のうちの少なくとも1つを与えるための、外部の疼痛制御モジュールから信号を受信する埋め込み電極を備え得る。本開示の血液サンプルを取得するための装置はまた、装置内血漿分離のための様々なオプションを含み得る。本開示の血液サンプルを取得するための装置はまた、採取時に患者情報と対を成すことができる固有のサンプル識別子を含み得る。本開示の血液サンプルを取得するための装置はまた、採取時に装置内診断フィードバックを含み得る。本開示の血液サンプルを取得するための装置はまた、二重採取、例えば同じ供給源からの複数のサンプルの採取を可能にする複数の採取ポートを使用し、2つのサンプルを2つの別々の容器に採取し、これらのサンプルを抗凝固剤などの異なるサンプル安定化剤で処理することを可能にする。
【0089】
本開示の血液サンプルを取得するための装置は、ランセットおよび毛細管を使用する従来の毛細管採血と比較して、指からの大量の毛細管採血を大幅に単純化して熟練作業を不要にする。本開示の装置は、血液の曝露を排除し、装置の再使用を防止する。
【0090】
本開示の血液サンプルを取得するための装置は、採取プロセスを単純化し、熟練作業を不要にして、合理化する。これはすべて、自己完結型の閉鎖系システム装置によって達成され、それが指の上に置かれた後、ランセット切開、血液抽出、安定化および格納機能をすべて1つのユニットで提供する。
【0091】
本開示の血液サンプルを取得するための装置は、自動圧送、制御された指の圧搾、および自動サンプルラベリングおよび処理を提供する自立型ユニットと連携し得る。
【0092】
図4を参照すると、本開示の一実施形態によれば、装置10と共に使用するためのアダプター80が提供され得る。アダプター80は、血液分析装置またはシステム(図示せず)で自動処理するために、装置10の採取容器16を受けるように構成することができる。アダプター80は、遠心分離機のような公知の血液分析装置またはシステムと共に使用するように構成され得ることを理解されたい。装置10は、患者の指先からの毛細管採血のために、機能的に可能な限り小さく設計されることがある。採取中に装置10が患者の指19に接続されている間は、装置10は小さくて邪魔にならない大きさが望まれ、ランシング中(採取前)に患者の手/手首との干渉を避けることが望まれる。しかし、装置10のサイズが小さいと、血液分析装置またはシステム上での高速サンプル処理および自動処理に対応できない場合がある。従って、この問題を解決するために、アダプター80を装置10と共に利用することができ、それによって、装置10を高速サンプル処理と自動処理を考慮したものに変換することができる。
【0093】
アダプター80は、装置10の採取容器16を受容するように構成された空洞82を画定することができる。アダプター80はまた、アダプター80の端部から延びる突起84を備え得る。突起84は、採取容器16に画定された溝86に受容されるように構成されている。突起84は、アダプター80を採取容器16に固定するために溝86にはめ込むラッチを備え得る。一実施形態では、突起84の少なくとも1つは、溝86と係合してアダプター80内で採取容器16を自己配向(self-orient)させるように、他の突起84よりもさらに延長していてもよい。採取容器16は、突起84が溝86に滑り込むまで回転することができ、採取容器16をアダプター80内の所望の位置に確実に配向させる(oriented)ことができる。
【0094】
本開示の一実施形態では、アダプター80は、患者/試料識別のために、ユーザーがアダプター80に受容された採取容器16に設けられたバーコード88をスキャンすることを可能にする透明材料で作られてもよい。アダプター80はまた、血液サンプル18を各スコープ内機器に対して最適な高さまで採取容器16内で上昇させるための高さ調整部材90を備え得る。アダプター80は、各装置タイプの要件に基づいて、血液サンプル保持のための特定の機能を有し得る。エチレンジアミン四酢酸(EthyleneDiamineTetraacetic Acid:EDTA)装置(図4に示す)のために、アダプター80は自動細胞再懸濁のための軸方向の保持を提供する。アダプター80により、バーコード88のスキャンを可能とするための回転方向における位置の保持が可能となる。
【0095】
本開示の別の実施形態では、図5を参照して、血清分離チューブ(Serum Separating Tube:SST)アダプター92が示され、説明される。アダプター92は、上述したアダプター80と類似しているが、異なるタイプの採取容器16を受け入れるために異なる寸法を含み得る。アダプター92は、装置10の採取容器16を受容するように構成された空洞94を画定することができる。アダプター92はまた、アダプター92の端部から延びる突起96を備え得る。突起96は、採取容器16に画定された溝98に受容されるように構成されている。突起96は、アダプター92を採取容器16に固定するために溝98にはめ込むラッチを備え得る。一実施形態では、突起96の少なくとも1つは、溝98と係合してアダプター92内で採取容器16を自己配向(self-orient)させるように、他の突起96よりもさらに延長していてもよい。採取容器16は、突起96が溝98に滑り込むまで回転することができ、採取容器16がアダプター92内の所望の位置に確実に配向させる(oriented)ことができる。アダプター92は、デキャッピング作業を助けるために、強固な回転方向の保持を提供するように構成され得る。アダプター92はまた、血液サンプル18を各スコープ内機器に対して最適な高さまで採取容器16内で上昇させるための高さ調整部材100を備え得る。
【0096】
アダプター80、92は、採取容器16の外径を変更するために、装置10の採取容器16を受容するように構成されている。効果的に、採取容器16はアダプター80、92の外径を持つことになる。採取容器16の外径を大きくすることにより、採取容器16は、血液分析装置またはシステムの固定形状部および操作形状部の寸法ニーズに効果的に適合する。アダプター80、92は、血液サンプル18をアダプター80、92の軸に対して中心に保持することを助ける。
【0097】
図6および図7を参照すると、本開示のさらなる実施形態では、アダプター80、92の高さ調節部材90、100にそれぞれ設けられた正弦波状カム形状部102、104が、採取容器16のアダプター80、92への挿入または設置中に採取容器16を自己配向(automatically orient)させるために設けられてもよい。採取容器16の底面のリブは、採取容器16のリブが高さ調節部材90、100の保持溝に嵌まるまで、正弦波状カム面102、104の上面に乗ることができる。正弦波状カム面102、104をアダプター80、92上に設けることにより、採取容器16を任意の向きでアダプター80、92に挿入することができ、正弦波状カム面102、104が採取容器16を所定の位置に誘導し、それによりアダプター80、92の整列/保持機構を採取容器16の方に向ける。正弦波状カム面102、104はまた、採取容器16の自動処理中にバーコードラベル88がスキャニングのための最適な位置にあることを確実にするために使用することもできる。
【0098】
本開示のいくつかの実施形態では、アダプター80、92は、アダプター80、92の側壁を通してバーコードのスキャニングができるように、光学的に透明な材料(例えば、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(Methylmethacrylate Acrylonitrile Butadiene Styrene:mABS))で作られてもよい。このような材料を使用することにより、アダプター80、92は、複数の採取容器16と血液サンプル18との間で再使用することができ、それぞれその固有の識別子を血液分析装置またはシステムに提示することができる。
【0099】
図8および図9を参照すると、本開示の実施形態によれば、アダプター80、92は、血液サンプル18の高さをバーコード88のスキャンに最適な高さまで上昇させ、(血液サンプル18を保持する)採取容器16の空洞70の底部をデッドボリュームが最小のサンプル吸引に最適な高さまで持ち上げるための高さ調節部材90、100を備え得る。各アダプター80、92の底部オフセット106、108は、各アダプター80、92のタイプ(EDTA/SST)に固有である。
【0100】
各アダプター80、92は、血液分析装置またはシステムを使った自動サンプル処理の準備および実行を可能にするための特定の保持機構を備え得る。アダプター80は、軸方向の保持機構および回転方向の保持機構を備え得る。軸方向の保持機構は、採取容器16を所定の位置に固定し、自動細胞再懸濁処理中にアダプター80から外れるのを防ぐ。アダプター80の回転方向の保持機構により、血液分析装置またはシステムはアダプター80を回転させ、採取容器16上の固有のバーコード88を読み取ることができる。図10に示すように、本開示の一実施形態では、アダプター92に備えられた回転方向の保持機構は、工具110を用いたデキャッピング処理の間、採取容器19を所定の位置にしっかりと保持する。工具110を採取容器16の上端の周囲にセットし、キャップ76をひねって採取容器16から取り外すことができる。アダプター92の偽底にあるリブ形状部により、デキャッピング処理の間固定することができ、あるいは、デキャッピング操作中にアダプター92を手で持つこともできる。
【0101】
アダプター80、92は、その特定の機能セットにより、装置10を、指先採血に最適なサイズから、血液分析装置またはシステムを介した自動処理およびサンプリングに最適なサイズ、位置、および拘束に変換する。アダプター80、92は、装置10からの血液サンプル18を、現在利用可能な血液分析装置およびシステムを用いて処理することを可能にする。マイクロティナ(Microtainer)アダプターのような現在入手可能なアダプターは、自動処理中に採取容器16を取り扱うことができるように採取容器16の外径を変換しない。現在のアダプターは、アダプター80、92に装着された状態でデキャッピングを可能にする機能を有しておらず、また、バーコードおよび血液サンプル18の底部オフセットを最適な高さまで上昇させることもしない。さらに、現在のアダプターは、採取容器16をアダプター80、92に対して自己配向(automatically orient)させるための正弦波状のカム面を備えていない。
【0102】
毛細管採血装置の一実施形態が添付図に示され、本明細書で詳細に説明されているが、他の実施形態は、当業者に明らかであり、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者によって容易に作製されるであろう。従って、前述の説明は、限定的なものではなく、例示的なものであることを意図している。以上、本明細書に記載された発明は、添付の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の意味および均等性の範囲内に入る本発明に対するすべての変更は、その範囲内に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】