(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】二相液体充填物を有する液体充填カプセル
(51)【国際特許分類】
A61K 9/48 20060101AFI20240709BHJP
A61K 9/56 20060101ALI20240709BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240709BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K9/56
A61K45/00
A61K47/36
A61K47/38
A61K9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580466
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022034866
(87)【国際公開番号】W WO2023278265
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522346729
【氏名又は名称】ロンザ・グリーンウッド・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】シングレタリー,スカーレット
(72)【発明者】
【氏名】グラブ,スタニスロウ
(72)【発明者】
【氏名】ファウラー,ケリ
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,タイラー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076AA54
4C076AA94
4C076AA95
4C076BB01
4C076EE30H
4C076EE31H
4C076EE32H
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4C076FF36
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4C076FF70
4C076GG01
4C076GG37
4C084AA17
4C084MA05
4C084NA12
4C084NA13
4C084NA20
(57)【要約】
本開示は、内部コンパートメントを有する容器と、容器の内部コンパートメント内に配置された第1及び第2の液相を含む液体充填組成物とを有する、活性成分送達システムに関する。第1の液相及び第2の液相が互いに不適合であることで、第1の液相及び第2の液相が不混和であり、かつ内部コンパートメント内で2つの異なる相に分離される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分送達システムであって、
a.内部コンパートメントを有する容器と、
b.第1の液相及び第2の液相を含む液体充填組成物であって、前記第1の液相及び前記第2の液相が互いに不適合であることで、前記第1の液相及び前記第2の液相が互いに不混和である、液体充填組成物と、
c.前記第1の液相及び前記第2の液相のうちの少なくとも一方に存在する活性成分と、を含み、
前記液体充填組成物が、前記容器の前記内部コンパートメント内に含有される、活性成分送達システム。
【請求項2】
液体充填組成物が、乳化剤を本質的に含まない、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記第1の液相が、脂質(油)ベースの相であり、前記第2の相が、水性ベースの相である、請求項1に記載の送達システム。
【請求項4】
前記第1及び第2の液相のそれぞれが、少なくとも1つの活性成分を含有する、請求項3に記載の送達システム。
【請求項5】
前記液体充填物が、乳濁液ではない、先行請求項のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項6】
前記容器が、カプセルである、先行請求項のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項7】
前記カプセルが、硬カプセルである、請求項6に記載の送達システム。
【請求項8】
少なくとも1つの多糖又は多糖誘導体を含むフィルム形成組成物から得られる成形体である前記容器、請求項6に記載の送達システム。
【請求項9】
前記多糖が、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルアルキルセルロース、及びセルロースエーテルからなる群から選択されるセルロース誘導体である、請求項8に記載の送達システム。
【請求項10】
セルロース誘導体が、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセチルフタレート(CAP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロースエーテル、ヒドロキシプロピルセルロースエーテル、ヒドロキシエチルメチルセルロースエーテル、ヒドロキシエチルエチルセルロースエーテル、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテルからなる群から選択される、請求項9に記載の送達システム。
【請求項11】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)から選択される、請求項10に記載の送達システム。
【請求項12】
前記多糖が、プルランである、請求項8に記載の送達システム。
【請求項13】
前記液体充填組成物の一方又は両方の液相が、着色剤を含有する、請求項1に記載の送達システム。
【請求項14】
前記着色剤が、前記液相の一方又は両方に存在する場合、各液相の総重量に基づいて、約0.01~約10%の量で存在する、請求項13に記載の送達システム。
【請求項15】
前記第1の相が、脂質(油)相であり、前記脂質(油)相が、前記脂質(油)相の総重量に基づいて、0.1重量%~100重量%、典型的には0.5重量%~75重量%、より典型的には前記脂質(油)相の1重量%~20重量%の前記活性成分を含有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項16】
前記第2の相が、水相であり、前記水相が、前記水相の総重量に基づいて、0.1重量%~80重量%、典型的には1重量%~75重量%、及びより典型的には3重量%~70重量%の前記活性成分を含有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項17】
前記活性成分が、前記相のうちの少なくとも一方に着色を提供する、請求項1~16のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項18】
脂質相及び水相を含有する二相液体カプセル充填組成物を形成する方法であって、前記脂質相及び前記水相が、互いに分離され、異なり、前記方法が、
a.活性成分を含有する脂質相を形成することと、
b.水溶性活性成分を含有する水相を形成すること、
c.高剪断速度ミキサーを使用して前記脂質相を前記水相と混合して、組み合わせた液相を形成することと、
d.前記組み合わせた液相を容器又はカプセル中に配置することと、
e.前記脂質相及び前記水相を前記容器又はカプセル中で分離させることと、を含む、方法。
【請求項19】
前記混合が、100RPM(毎分回転数)~15,000RPMの混合速度で、高剪断ミキサーで実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記容器が、コーティング又はバンド付けされている、請求項1~17のいずれか一項に記載の送達システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
単一の送達デバイス内で互いに不適合(不混和)である2つ以上の活性成分の送達は、様々な技術を使用して達成されている。これらの技術には、例えば、錠剤をカプセル中に配置すること、材料のミニ錠剤若しくは微小ビーズを形成し、それらをカプセル中に配置すること、1つの成分をカプセル中に配置し、そのカプセルをより大きなカプセル中に配置すること、又は脂質(油)多粒子を形成し、それらをカプセル中に配置することが含まれる。不適合な活性成分を送達するこれらの方法のそれぞれは、利点及び欠点を有する。主な欠点の1つは、費用である。費用には、錠剤、ミニ錠剤、微小ビーズを作製する費用、及び追加のカプセル費用が含まれる。更に、カプセルインカプセル又は錠剤インカプセルなどの構成は、より大きな外側カプセルに対する必要性をもたらす可能性があり、それらは、一部の使用者にとって嚥下が困難であり得る。
【0002】
不適合な成分を送達形態で一緒に配置する他の方法は、水相及び脂質(油)相にある不適合な成分の乳濁液を形成することを含む。これらの乳濁液は、油中水乳濁液又は水中油乳濁液であり得る。乳化剤は、二相システムの単一のカプセル中への組み込みを可能にするために存在するが、乳化剤などの追加の成分の添加は、成分のための既に限られた量のスペースにおいて貴重なスペースを費やしてしまう。乳化剤の添加は、活性成分の送達に使用されるより大きなカプセルに対する必要性をもたらす可能性がある。更に、乳化剤の費用は、使用者に活性成分を送達する費用を増加させる。乳化剤を使用する上での別の欠点は、それらが、複数の成分が使用者に投与されていることを使用者に伝達しない、不透明な一相外観を有する充填組成物をもたらすことである。
【0003】
本開示は、水相及び脂質(油)系相を組み合わせるための独自の方法、並びに活性成分を使用者に送達するための効果的な方法、並びに場合によってはより多くの活性成分を使用者に送達するための方法を提供する。本開示の製品はまた、使用者にとって視覚的に魅力的でもあり得る。これは、脂溶性活性物質を組み込む脂質(油)系相と組み合わせた、1つ以上の水溶性活性成分を含有する水相を作製することを通して達成される。これは、視覚的に魅力的であり、かつ1つの剤形における二相間の不混和性の問題を解決する、新たな送達技術を作製するための広範な用途を提供する。視覚的に魅力的であることに加えて、それはまた、製造費用の低減を提供し、活性成分を保持するためのカプセルサイズの低減を可能にする。
【発明の概要】
【0004】
一般に、本開示は、内部コンパートメントを有する容器と、容器の内部コンパートメント内に配置された第1の液相及び第2の液相を構成する液体充填組成物とを有する、活性成分送達システムに関する。第1の液相及び第2の液相が互いに不適合であることで、第1の液相及び第2の液相が不混和であり、かつ内部コンパートメント内で2つの異なる相に分離される。第1の液相及び第2の液相のうちの少なくとも一方に存在する活性成分。特定の一実施形態では、第1及び第2の液相の両方が、活性成分を含有する。
【0005】
本開示の一態様では、本送達システムの液体充填組成物は、乳化剤を本質的に含まない。加えて、液体充填組成物は、乳濁液ではない。
【0006】
本開示の別の態様では、第1の液相は、脂質(油)ベースの相であり、第2の相は、水性ベースの相である。
【0007】
本開示の一実施形態では、第1及び第2の液相のそれぞれは、少なくとも1つの活性成分を含有する。
【0008】
本開示の別の実施形態では、容器は、カプセルである。典型的な一実施形態では、カプセルは、硬カプセルである。特定の一実施形態では、容器は、少なくとも1つの多糖又は多糖誘導体を含むフィルム形成組成物から得られる成形体である。特定の実施形態では、多糖は、セルロース誘導体又はプルランである。
【0009】
本開示の更に別の実施形態では、セルロース誘導体の特定の実施形態は、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルアルキルセルロース、及びセルロースエーテルである。特定の一実施形態では、セルロース誘導体は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセチルフタレート(CAP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロースエーテル、ヒドロキシプロピルセルロースエーテル、ヒドロキシエチルメチルセルロースエーテル、ヒドロキシエチルエチルセルロースエーテル、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテルからなる群から選択される。典型的には、セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0010】
本開示の別の態様では、液体充填組成物の一方又は両方の液相は、着色剤を含有する。特定の一態様では、着色剤は、脂質相に存在する場合、液体の総重量に基づいて、約0.01~約10%の量で存在する。別の実施形態では、活性成分(複数可)は、一方又は両方の相に色を提供し得ることに留意されたい。
【0011】
更なる一実施形態では、第1の相は、脂質相であり、脂質(油)相は、脂質(油)相の総重量に基づいて、約0.1重量%~約100重量%、典型的には約0.5重量%~約75重量%、より典型的には約1重量%~約20重量%、より具体的には、脂質(油)相の総重量に基づいて、約3重量%~約15重量%の活性成分を含有する。別の実施形態では、第2の相は、水相であり、水相は、水相の総重量に基づいて、1重量%~75重量%、より典型的には3重量%~70重量%の活性成分を含有する。
【0012】
本開示の別の態様では、脂質相及び水相を含有する二相液体カプセル充填組成物を形成する方法が提供される。脂質相及び水相は、互いに分離され、異なる。充填組成物は、1)脂溶性活性成分を任意で含有する脂質相を形成することと、2)水溶性活性成分を任意で含有する水相を形成することと、3)高剪断速度ミキサーを使用して脂質相を水相と混合して、組み合わせた液相を形成することと、4)組み合わせた液相を容器又はカプセル中に配置することと、並びに5)脂質相及び水相を容器又はカプセル中で分離させることとを含む、方法によって形成される。脂質相及び水相のうちの少なくとも一方は、活性成分を含有する。
【0013】
更なる態様では、混合は、100RPM(毎分回転数)~15,000RPMの混合速度で、高剪断ミキサーで実行される。
【0014】
本開示の更に別の実施形態では、容器がコーティング又はバンド付けされている送達システムが提供される。
【0015】
本開示の他の特徴及び態様は、以下でより詳細に考察される。
【0016】
定義
本明細書で使用される場合、「約」、「およそ」、又は「一般的に」という用語は、値を修飾するために使用されるとき、値が10%上昇又は低下し、開示される態様に留まり得ることを示す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「本質的に含まない」という語句は、製剤中に構成要素がないか、又は0.05重量%未満であることを意味する。これは、微量の構成要素のみが存在し得ることを意味する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「活性成分」という用語は、栄養価を有する成分を意味する。
【0019】
「栄養機能食品」という用語は、その基本的な栄養価に加えて、健康又は医療上の利益を提供する栄養源(例えば、食品、飲料、又は栄養補助食品)に添加される任意の化合物を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「送達すること」又は「投与すること」という用語は、医学界により標準として受け入れられているように、組成物、製品、活性成分、又は栄養機能食品を対象に提供するための任意の経路を指す。例えば、本開示は、経口摂取を含む送達又は投与経路を企図する。
【0021】
本開示の他の特徴及び態様は、以下でより詳細に考察される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本考察は、例示的な実施形態の説明に過ぎず、本開示のより広範な態様を限定することを意図するものではないことが、当業者によって理解されるべきである。
【0023】
本開示では、液体充填組成物は、使用者が液体充填組成物を摂取することができる容器又はカプセル中に配置される。容器又はカプセル容器の選択は、水及び脂質(油)中に可溶性ではない材料に限定される。一実施形態では、容器又はカプセルは、少なくとも1つの多糖又は多糖誘導体を含むフィルム形成組成物から形成される。多糖又はその誘導体は、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、修飾デンプン、プルラン、デキストランなど、及び前述のいずれかの混合物であり得る。
【0024】
好適なセルロース誘導体は、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、及びカルボキシアルキルアルキルセルロースからなる群から選択され、それらには、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセチルフタレート(CAP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び前述のいずれかの混合物からなる群から選択されるメンバーが含まれるが、それらに限定されない。本開示で特に使用可能なのは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0025】
追加のセルロース誘導体には、セルロースエーテルが含まれる。好適なセルロースエーテルは、アルキル鎖中に1~4個の炭素原子を有するアルキル及び/又はヒドロキシアルキル置換セルロースエーテルからなる群から選択され、好ましくはメチルセルロースエーテル、ヒドロキエチルセルロースエーテル、ヒドロキプロピルセルロースエーテル、ヒドロキエチルメチルセルロースエーテル、ヒドロキエチルエチルセルロースエーテル、ヒドロキプロピルメチルセルロースエーテルなど、及び前述のいずれかの混合物からなる群から選択される。特に好ましいのは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテルである。
【0026】
デンプン以外では、デンプンエーテル及び酸化デンプン、カルボキシメチルデンプン、ヒドロキシアルキル化デンプン、並びにコハク酸化デンプンなどの修飾デンプンを使用することができ、より具体的にはヒドロキシプロピル化デンプン(HPS)若しくはヒドロキシエチル化デンプン(HES)、又はそれらの混合物を、本発明による容器を得るためのフィルム形成組成物中のフィルム形成材料として使用することができる。米国特許第6,635,275B1号に開示される修飾デンプンは、本発明に好適である。所望の修飾デンプンは、HPSである。
【0027】
特定の一実施形態では、容器は、最終容器又はカプセルの約90重量%~99重量%の少なくとも1つの多糖若しくは多糖誘導体、又はそれらの混合物を含むフィルム形成組成物から得られる成形体である。本開示で使用可能な1つの特定の多糖は、プルランである。プルランは、α-1,4-、α-1,6-グルカン’としても知られるマルトトリオース単位からなる多糖ポリマーである。マルトトリオース中の3つのグルコース単位は、α-1,4グリコシド結合によって接続されているが、連続したマルトトリオース単位は、α-1,6グリコシド結合によって互いに接続されている。本開示で使用可能なプルラン容器又はカプセルには、低い単糖、二糖、及びオリゴ糖含有量を有する、US10,130,587に記載のものが含まれる。
【0028】
本発明による例示的な一実施形態では、容器は、HPMC硬カプセルである。カプセルは、2ピースの硬カプセルであってもよく、これは、浸漬法によって生産するか、又は射出成形法によって生産することができる。カプセルは、1つのコンパートメントの剤形及び複数のコンパートメントの剤形であり得る。そのような2ピースのカプセルを作製するための好適な方法には、当該技術分野で見出される方法が含まれる。例えば、2ピースのカプセルは、浸漬法によって作製され得る。
【0029】
本開示による容器又はカプセルは、ヒト又は動物への経口投与を意図とした市販の硬カプセルである。そのような硬カプセルは一般的に、浸漬成形プロセス及び装置を使用することによってポリマーから製造される。このプロセスでは、ピン鋳型を、水性ベースのフィルム形成組成物中に浸漬する。その後、ピンに接着した組成物をゲル化することによって、フィルムを形成する。次いで、フィルムを乾燥させ、ピンを剥がし、所望の長さに切断する。このようにして、カプセルキャップ及び本体を得る。次いで、そのような2つの部分を同軸でかつ伸縮式に接合して、カプセルシェルを形成する。通常、キャップ及び本体は、側壁、開放端、及び閉鎖端を有する。該部分のそれぞれの側壁の長さは一般的に、カプセルの直径よりも大きい。カプセルのキャップ及び本体は、それらの側壁を部分的に重なり合わせ、硬カプセルシェルを得るように、ともに伸縮式に接合される。「部分的に重なり合う」はまた、キャップ及び本体が伸縮式に接合されるとき、該キャップの側壁が該本体の側壁全体を包み込むように、キャップ及び本体の側壁が実質的に同じ長さを有する実施形態も包含する。別段示されない限り、「カプセル」は、充填されたカプセルシェルを指す一方で、「シェル」は、特に空のカプセルを指す。
【0030】
本発明の容器を得るためのフィルム形成組成物は、既知のゲル化剤から選択される好適なゲル化剤を任意で含み得るが、これは、そのようなゲル化剤が、カプセルのゲル化能力を改善し、マトリックス組成物及び/又は活性剤(複数可)を含む液体充填物と相互作用しないことを条件とする。好適なゲル化剤の例には、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、寒天、カラゲナン、キャロブガム、及びジェランガムが含まれる。最も望ましいゲル化剤は、ジェランガムである。
【0031】
カプセルは、例えば、腸溶特性を提供するために、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、メタクリル酸ゼラチン、フタル酸ヒプロメロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキアルキルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びそれらの混合物からなる群から選択されるメンバーなどの好適なコーティング剤で任意でコーティングされてもよい。
【0032】
本発明の更なる一実施形態では、カプセルは、バンド付け又は液体密封技術などの当該技術分野で既知の手段を使用して追加的に密封されてもよい。好適な密封技術の例は、WO 01/08631に記載のものである。一実施形態では、カプセルは、例えば、WO 01/08631(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の水素アルコール溶液を使用して密封される。
【0033】
Lonza Consumer Health Inc(オフィス所在地Greenwood,South Carolina)から入手可能なDRCAPS(登録商標)及びVCAPS(登録商標)Plus、LICAPS(登録商標)などの市販のカプセルは、充填組成物の送達に使用可能な例示的なカプセルである。
【0034】
容器又はカプセルは、活性成分を含有する充填製剤を保持することができる内部コンパートメントを有する。一実施形態では、容器又はカプセルは、液体含有物が使用者の目に見えるように、典型的には透明であるか、又はほぼ透明である。容器又はカプセルは、色を有してもよいが、一般的に完全に透明である。
【0035】
容器又はカプセル中の液体充填組成物は、水ベースの相及び脂質(油)ベースの相の二相を有する。これらの二相は、互いに分離され、異なり、互いに不適合(不溶性)である。二相及び充填製剤は、乳化剤、又は乳化特性を有し得る成分を本質的に含まない必要がある。乳化剤、又は乳化特性を有する成分の存在は、2つの異なる相を有する液体充填組成物をもたらさない。これは、乳化剤、又は乳化特性を有する成分が、水相と脂質(油)相との間の表面張力を低減する傾向があるためである。水相及び脂質(油)相の成分に応じて、油中水又は水中油の乳濁液をもたらす。
【0036】
充填組成物の水相(water phase)又は水相(aqueous phase)は、水及び少なくとも1つの水溶性活性成分を含有する。他の成分が水相中に存在してもよいが、これは、いかなる追加の成分も乳化特性を有しないことを条件とする。水相(water phase)又は水相(aqueous phase)中に存在し得る追加の成分の例には、グリセリン、ガム増粘システム、又は水相の増粘に使用され得る任意の他のシステムが含まれる。加えて、水相の希釈剤として塩化コリンを使用することができる。
【0037】
脂質(油)ベースは、油ベースの組成物であってもよい。油自体が活性剤であってもよいか、又は油が脂(油)溶性活性成分を含有してもよい。本開示で使用可能な油は、植物油、動物油、海洋油、若しくは鉱物油、及び/又は任意の他の食用油であり得る。一般的に、油は、医薬品及び/又は食品中で許容されるべきである。
【0038】
一実施形態では、植物油が使用される。植物油の例には、ベニバナ油、オリーブ油、ダイズ油、亜麻仁油、コメ胚芽油、コムギ胚芽油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、ナタネ油、ゴマ油、サンフラワー油、アーモンド油、カシュー油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、モンゴンゴ油、ピーカン油、松果油、ピスタチオ油、クルミ油、カラバッシュ種子油、バッファローゴーアド油、カボチャ種子油、スイカ種子油、カシス種子油、ボラージ種子油、月見草油、アマランス油、アプリコット油、リンゴ種子油、アルガン油、アーティチョーク油、アボカド油、ババス油、ベン油、ケープチェストナッツ油、キャロブ油、コフネヤシ油、コリアンダー油、ジカ(dica)油、アマナズナ油、ブドウ種子油、ヘンプ油、カポック種子油、ラレマンティア油、マルーラ油、メドウフォーム種子油、マスタード油、オクラ種子油(ハイビスカス油)、パパイヤ油、エゴマ油、ポピー種子油、プルーンカーネル油、キヌア油、ラムティル(ramtil)油、ツバキ油、アザミ油、トマト油、ノコギリヤシ油、及び/又はボラージ油が含まれる。
【0039】
動物油には、乳脂肪、バター脂肪、及びバター油を含む、牛乳の脂肪である乳脂肪に由来する油が含まれる。
【0040】
海洋油には、魚油、オキアミ油、ドコサヘキサエン酸(DHA)、及び海洋源由来のエイコサペンタエン酸(EPA)が含まれる。
【0041】
鉱物油及びヒマシ油などの、他の薬学的又は栄養学的に許容される油もまた使用することができる。
【0042】
水相は、L-テアニン、カルニチン、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB6、ビタミンB12、アルファGPC(L-アルファグリセリルホスホリルコリン)、メラトニン、及びエルダーベリーを含むがこれらに限定されない、本開示で使用可能な水溶性活性成分を有する。
【0043】
本開示で使用可能な脂(油)溶性活性成分には、ビタミンE、藻類油、ラベンダー油、ベニバナ油、ビタミンA、ビタミンD、及びビタミンKが含まれるが、これらに限定されない。代替的な一実施形態では、脂質(油)相中の油自体が、有益な成分であってもよく、脂質(油)相が、追加の脂(油)溶性活性成分などのいかなる追加の活性成分を含有する必要もない。
【0044】
脂質(油)相中の活性成分は、脂質(油)相の最大100%であり得る。一般的に、脂質(油)相は、脂質(油)相の総重量に基づいて、約0.1重量%~約100重量%、典型的には約0.5重量%~約75重量%、より典型的には約1重量%~約20重量%、より具体的には、活性成分に応じて、脂質(油)相の総重量に基づいて、約3重量%~約15重量%の活性成分を含有する。脂質(油)相中の活性成分の上限は、脂質(油)語句の最大100重量%、例えば、最大90重量%、80重量%、70重量%、60重量%、50重量%、40重量%、30重量%、若しくは20重量%、又はそれらの間の任意の量であり得る。脂質(油)相中の活性成分の下限は、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、3重量%、5重量%、7重量%、10重量%、15重量%、20重量%、30重量%以上、及びこれらの定義された下限の間の任意の量であり得る。
【0045】
水相中の活性成分は、水相の総重量に基づいて、最大100重量%の量で存在し得る。一般的に、水相は、水相の総重量に基づいて、0.1重量%~80重量%、典型的には、水相の総重量に基づいて、1重量%~75重量%、より典型的には、活性成分に応じて、3重量%~70重量%の範囲内の活性成分を含有する。水相中の活性成分の上限は、水語句の最大80重量%、例えば、最大75重量%、70重量%、60重量%、50重量%、40重量%、30重量%、若しくは20重量%、又はそれらの間の任意の量であり得る。水相中の活性成分の下限は、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、3重量%、5重量%、7重量%、10重量%、15重量%、20重量%、30重量%以上、及びこれらの定義された下限の間の任意の量であり得る。
【0046】
他の成分が、充填組成物の脂質(油)相及び水相のそれぞれに存在し得る。他の成分の例には、例えば、酸化防止剤、着色剤、防腐剤、風味マスキング材料、相分離を引き起こさない界面活性剤、粘度調整剤、及びそれらの混合物が含まれる。酸化防止剤の非限定的な例には、アスコルビン酸及び保存剤が含まれる。保存剤の非限定的な例は、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、BHT(ブチルヒドロキストルエン(hydroxutoluene))、及びパルミチン酸アスコルビルである。界面活性剤の非限定的な例には、ポリソルベートが含まれる。粘度調整剤の非限定的な例には、二酸化ケイ素及びHPMCが含まれる。他の成分は、容器又はカプセル中で油相及び水相が分離したままであることを維持する必要がある。更に、追加の成分は、望ましくは、カプセル又は容器の使用者がカプセル又は容器中に存在する二相を識別するのに役立つ。加えて、脂質(油)相及び水相の両方の液体の性質は、充填物の成分を含有してはならず、硬カプセルシェルに有害な影響を提供してはならない。
【0047】
充填組成物は、単相製剤として容器又はカプセル中に追加され得る。単相製剤を形成するために、脂質(油)相及び水相を一緒に高剪断速度混合プロセスに供し、これが、単相製剤の形成をもたらす。典型的な剪断速度は、100RPM(毎分回転数)~15,000RPMであることができ、これは、水相及び脂質(油)相が均一に混合され、容器又はカプセル中に追加され得ることを確実にする。また、熱は触媒分離を引き起こす可能性があるため、混合中の熱の使用は避ける必要がある。一般的に、高剪断混合は、25℃の室温又はその付近で生じるべきである。
【0048】
容器中に配置した後、水相及び脂質(油)相の不適合性を考慮して、二相は互いに分離し始めて、容器又はカプセル中で非常に異なる相を形成する。一般的に、脂質(油)相は、充填組成物の約10体積%~約90体積%であり、水相は、充填組成物の約90体積%~約10体積%である。実際の比は、脂質(油)相及び水相のそれぞれにおける活性成分の量、並びに容器又はカプセル中の活性成分の所望の量に依存し得る。
【0049】
脂質(油)相及び水相の一方又は両方への着色剤又は着色剤の添加は、脂質(油)相及び水相の適合性を考慮して、郷愁に満ちたラバライトによく似た美学的に見て美しい概念を提供する。着色剤又は着色剤は、存在する場合、液体の総重量に基づいて、約0.01%~約10%の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、活性成分に応じて、活性成分はまた、脂質(油)相及び水相の一方又は両方に色を提供するのにも役立つ。
【0050】
別段示されない限り、液体充填物と容器又はカプセルとの適合性への言及は、容器又はカプセルシェル中に充填した後、液体充填物が、カプセルの物理的安定性に影響を与えないこと、すなわち、カプセルが、示された期間にわたって観察したときに、漏出、変形、変色、及び/又は過度の軟化若しくは脆性なく、無傷かつ剛性のままであることを意味する。物理的安定性又は物理的に安定した、は、少なくとも該シェルの機械的安定性、より好ましくは該シェルの機械的及び化学的安定性の両方に関する。機械的安定性は、例えば、シェルの硬度の維持及び漏出の欠如に基づいて評価することができる。化学的安定性は、例えば、封入された物質の適切な溶解プロファイルの維持に基づいて評価することができる(この後者の態様については、例えば、USP-32物質研究書を参照することができる)。
【0051】
一実施形態では、液体充填物は、上記に定義される硬カプセルシェル中に充填した後、許容されるレベルを超えて機械的及び化学的安定性に影響を与えることはない。一実施形態では、許容されるレベルは、商業的に許容されるレベルである。一実施形態では、商業的に許容されるレベルは、硬カプセル、好ましくは液体充填硬カプセルの分野の当業者によって、許容される製造費用で担体充填硬カプセルを商業化するために満足なレベルとして認識されるレベルである。
【0052】
一実施形態では、好ましくは少なくとも50個の硬カプセルシェルのバッチを該液体充填物で充填し、充填したカプセルを指定されたシェルの乾燥減量(LOD)で機械的頑健性試験(例えば、チューブ試験)に供するときに、該バッチのカプセルの0%が約2%~約6%のLODで構成されるシェル含水量で失敗する場合、液体充填物は、許容されるレベルを超えて硬カプセルシェルの物理的安定性(機械的又は化学的)に影響を及ぼすことはない。そのような「機械的頑健性試験」は、充填物とシェルとの間の相互作用に起因するカプセルの機械的特性の変化を実証し、様々な相対湿度条件及び温度で充填及び保管したときの脆性又は軟化の潜在的な傾向を評価する。
【0053】
本開示の容器又はカプセルシェルは、液体形態の物質で充填されるため、所望される場合、硬カプセルは、手動で、又は自動バンド付け若しくは密封装置を介して、従来の技術に従って密封又はバンド付けされ得ることが意図される。
【0054】
本体とキャップとの間隙を通した漏出を減少させるための、いくつかの解決策が開発されている。例えば、保管中の含有物の漏出を防止するために、ゼラチンバンド付け溶液での硬ゼラチンカプセルバンド付けが一般的に使用される。漏出を減少させるための別の方法は、「密封流体」によって、カプセルのキャップ及び本体を互いに直接密封することである。例えば、米国特許第3,071,513号、米国特許第2,924,920号、FR2,118,883、EP0152517、米国特許第4,756,902号、FR2118883、EP0152517、及び米国特許第4,756,902号を参照されたい。2ピースの硬カプセルをバンド付けする方法、及びバンド付けのための装置は、例えば、米国特許第8,181,425号、同第7,229,639号、同第7,094,425号、同第5,054,208号、同第4,940,499号、同第4,922,682号、同第4,761,932号、及び同第4,734,149号を参照されたく、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
それにもかかわらず、本開示の特定の実施形態は、以下の実施例に従ってよりよく理解され得、これらの実施例は、本質的に非限定的かつ例示的であることが意図される。
【実施例】
【0056】
実施例1
水相については表1に示される構成要素、及びその油相については表2に示される構成要素を使用して、以下に示される別々の製剤化ステップで水相及び脂質(油)相を形成することによって、液体充填製剤を調製する。脂質(油)相及び水相を調製した後、3500RPMの剪断速度で高剪断ミキサーを使用して、100重量部の油相及び100重量部の水相をともに組み合わせ、水相及び油相のほぼ均一な単相混合物を形成する。次いで、単相混合物を透明なカプセル中に追加する。ともに混合した水及び脂質(油)の二相をカプセル中で一定期間放置し、二相は分離して、カプセル中で水相及び脂質(油)相を形成する。
【表1】
【表2】
【0057】
実施例2
水相については表1に示される構成要素、及びその油相については表2に示される構成要素を使用して、以下に示されるように、別々の製剤化ステップで水相及び脂質(油)相を形成することによって、液体充填製剤を調製する。脂質(油)相及び水相を調製した後、3500RPMの剪断速度で高剪断ミキサーを使用して、100重量部の油相及び100重量部の水相をともに組み合わせ、水相及び油相のほぼ均一な単相混合物を形成する。次いで、単相混合物を透明なカプセル中に追加し、一定期間放置し、相を水相及び脂質(油)相に分離させる。得られたカプセルは、カプセル中に水相及び液相を有する。
【表3】
【表4】
【0058】
実施例3
水相については表5に示される構成要素、及びその油相については表6に示される構成要素を使用して、以下に示される別々の製剤化ステップで水相及び脂質(油)相を形成することによって、液体充填製剤を調製する。脂質(油)相及び水相を調製した後、3500RPMの剪断速度で高剪断ミキサーを使用して、100重量部の油相及び100重量部の水相をともに組み合わせ、水相及び油相のほぼ均一な単相混合物を形成する。次いで、単相混合物を透明なカプセル中に追加し、一定期間放置し、相を水相及び脂質(油)相に分離させる。得られたカプセルは、カプセル中に水相及び液相を有する。
【表5】
【表6】
【0059】
本発明に対するこれら及び他の修正及び変更は、添付の特許請求の範囲により具体的に記載される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施され得る。加えて、様々な実施形態の態様は、全体的又は部分的に交換され得ることを理解されたい。更に、当業者は、前述の説明が例としてのみであり、そのような添付の特許請求の範囲に更に記載されるように本発明を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。
【国際調査報告】