(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ジメチル置換チアゾロラクタム化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 513/04 20060101AFI20240709BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240709BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07D513/04 301
C07D513/04 CSP
A61P35/00
A61K31/506
A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580483
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 CN2022101283
(87)【国際公開番号】W WO2023274088
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】202110723288.5
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111669920.9
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210693547.9
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522360286
【氏名又は名称】徳昇済医薬(無錫)有限公司
【氏名又は名称原語表記】D3 Bio (Wuxi) Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 324, 88 MeiLiang Road, MaShan Street, BinHu District, Wuxi, JiangSu, 214092, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】李翼
(72)【発明者】
【氏名】于涛
(72)【発明者】
【氏名】劉寧
(72)【発明者】
【氏名】呉成徳
(72)【発明者】
【氏名】陳曙輝
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB27
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
ジメチル置換チアゾロラクタム化合物及び関連疾患を治療するための薬物の調製におけるその使用が提供される。具体的には、式(I)によって表される化合物及びその薬学的に許容される塩が提供される。
[化1]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物
【化1】
(式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H及びC
1~3アルキルから選択され、ここで、上記C
1~3アルキルは、任意選択で1、2又は3個のR
aで置換されており、
各R
4は、独立して、H、F、Cl、Br、I及びC
1~3アルキルから選択され、ここで、上記C
1~3アルキルは、任意選択で1、2又は3個のR
cで置換されており、
nは1及び2から選択され、
環Aは、ピラゾリル及びテトラヒドロピラニルから選択され、ここで、上記ピラゾリル及びテトラヒドロピラニルは、任意選択で1、2又は3個のR
dで置換されており、
R
a及びR
cは、それぞれ独立して、D、F、Cl、Br及びIから選択され、
R
dは、F、Cl、Br、I、C
1~3アルキル及びC
1~3アルコキシから選択され、ここで、上記C
1~3アルキル及びC
1~3アルコキシは、任意選択で1、2又は3個のRで置換されており、
Rは、F、Cl、Br及びIから選択される)
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、H、CH
3及びCH
2CH
3から選択され、ここで、上記CH
3及びCH
2CH
3が、任意選択で1、2又は3個のR
aで置換されている、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、H、CH
3、CHF
2、CD
3及びCH
2CH
3から選択される、請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R
4が、独立して、H、F、Cl、Br、I及びCH
3から選択され、ここで、上記CH
3が、任意選択で1、2又は3個のR
cで置換されている、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
R
4が、独立して、H、F、Cl、Br、I及びCH
3から選択される、請求項4に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
R
dが、F、Cl、Br、I、CH
3及びOCH
3から選択され、ここで、上記CH
3及びOCH
3が、任意選択で1、2又は3個のRで置換されている、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
R
dが、CH
3及びOCH
3から選択される、請求項6に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
環Aが、
【化2】
から選択され、ここで、上記
【化3】
が、任意選択で1、2又は3個のR
dで置換されている、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
環Aが、
【化4】
から選択される、請求項8に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
構造部分
【化5】
が
【化6】
から選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
構造部分
【化7】
が
【化8】
から選択される、請求項10に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
上記化合物が、
【化9】
(式中、
R
2は、請求項1から3のいずれか一項に定義される通りであり、
R
4は、請求項1、4又は5のいずれか一項に定義される通りである)
から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
以下の化合物から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化10】
【請求項14】
固形腫瘍を治療するための医薬品の製造における、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、
2021年6月28日出願の中国特許出願公開第202110723288.5号明細書、
2021年12月31日出願の中国特許出願公開第202111669920.9号明細書、
2022年6月17日出願の中国特許出願公開第202210693547.9号明細書の優先権を主張する。
【0002】
<技術分野>
本開示は、ジメチル置換チアゾロラクタム化合物のクラス、及び関連疾患を治療するための医薬品の製造におけるその使用に関する。具体的には、本開示は、式(I)で表される化合物及びその薬学的に許容される塩に関する。
【背景技術】
【0003】
Ras/Raf/MEK/ERK経路は、古典的なマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達カスケード経路であり、活性化後の様々な成長因子、サイトカイン、マイトジェン及びホルモン受容体のシグナル伝達に関与し、細胞の成長、分化及び生存を制御するための最も重要なシグナル伝達経路の1つである。
【0004】
研究により、変異又は増幅によって引き起こされるRas/Raf/MEK/ERK経路の異常な活性化が様々ながんの決定因子であることがわかっている。ヒト腫瘍では、RAS変異の発生率は約22%であり、BRAF変異の発生率は約7%であり、MEK変異の発生率は約1%である。したがって、この経路上の重要なノードタンパク質は、がんの治療の重要な標的となっている(CancerDiscov.2019,9,329-341)。現在、いくつかのBRAF阻害剤及びMEK1/2阻害剤、並びにそれらの併用レジメンが、メラノーマ、BRAFV600E変異非小細胞肺がん及び他のがんの治療について米国FDAによって承認されている。しかしながら、これらの上流ノードについてのBRAF阻害剤及びMEK阻害剤の使用は、突然変異又は経路再活性化に起因する薬物耐性の問題をたちまち引き起こし、それらの臨床応用を大幅に制限する可能性がある。
【0005】
細胞外調節プロテインキナーゼ(ERK)(特にERK1及びERK2キナーゼ)は、Ras/Raf/MEK/ERK経路における主要なプレイヤー且つ下流の重要なノードであり、それらの過剰活性化は、多くのヒトがんにおいて見出され得る。ERKは、この経路の末端シグナル伝達キナーゼとしては、薬物耐性をもたらす変異を有することは未だ見出されていない。したがって、ERKキナーゼを標的化する薬物は、上流の標的阻害剤による治療によって引き起こされる薬物耐性の問題を克服し、より有望な治療戦略になると期待される。しかし、これまでのところ、ERK阻害剤に関する研究は依然として臨床段階にあり、いかなるERK阻害剤も薬物として販売承認されていない。
【0006】
要約すると、腫瘍の治療のニーズを満たすために安全且つ有効なERK阻害薬を開発することが急務である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、式(I)によって表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化1】
【0008】
式中、
【0009】
R1及びR2は、それぞれ独立して、H及びC1~3アルキルから選択され、ここで、上記C1~3アルキルは、任意選択で1、2又は3個のRaで置換されており、
【0010】
各R4は、独立して、H、F、Cl、Br、I及びC1~3アルキルから選択され、ここで、上記C1~3アルキルは、任意選択で1、2又は3個のRcで置換されており、
【0011】
nは1及び2から選択され、
【0012】
環Aは、ピラゾリル及びテトラヒドロピラニルから選択され、ここで、上記ピラゾリル及びテトラヒドロピラニルは、任意選択で1、2又は3個のRdで置換されており、
【0013】
Ra及びRcは、それぞれ独立して、D、F、Cl、Br及びIから選択され、
【0014】
Rdは、F、Cl、Br、I、C1~3アルキル及びC1~3アルコキシから選択され、ここで、上記C1~3アルキル及びC1~3アルコキシは、任意選択で1、2又は3個のRで置換されており、
【0015】
Rは、F、Cl、Br及びIから選択される。
【0016】
本開示は、式(I)によって表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化2】
【0017】
式中、
【0018】
R1及びR2は、それぞれ独立して、H及びC1~3アルキルから選択され、ここで、上記C1~3アルキルは、任意選択で1、2又は3個のRaで置換されており、
【0019】
各R4は、独立して、H、F、Cl、Br、I及びC1~3アルキルから選択され、ここで、上記C1~3アルキルは、任意選択で1、2又は3個のRcで置換されており、
【0020】
nは1及び2から選択され、
【0021】
環Aは、ピラゾリル及びテトラヒドロピラニルから選択され、ここで、上記ピラゾリル及びテトラヒドロピラニルは、任意選択で1、2又は3個のRdで置換されており、
【0022】
Ra及びRcは、それぞれ独立して、D、F、Cl、Br及びIから選択され、
【0023】
Rdは、F、Cl、Br、I、C1~3アルキル及びC1~3アルコキシから選択され、ここで、上記C1~3アルキル及びC1~3アルコキシは、任意選択で1、2又は3個のRで置換されており、
【0024】
Rは、F、Cl及びBrから選択される。
【0025】
本開示のいくつかの実施形態では、上述のR1及びR2は、それぞれ独立して、H、CH3及びCH2CH3から選択され、ここで、上記CH3及びCH2CH3は、任意選択で1、2又は3個のRaで置換され、他の変数は本開示で定義される通りである。
【0026】
本開示のいくつかの実施形態では、上述のR1及びR2は、それぞれ独立して、H、CH3、CHF2、CD3及びCH2CH3から選択され、他の変数は本開示で定義される通りである。
【0027】
本開示のいくつかの実施形態では、上述のR4は、独立して、H、F、Cl、Br、I及びCH3から選択され、ここで、上記CH3は、任意選択で1、2又は3個のRcで置換され、他の変数は本開示で定義される通りである。
【0028】
本開示のいくつかの実施形態では、上述のR4は、独立して、H、F、Cl、Br、I及びCH3から選択され、他の変数は本開示で定義される通りである。
【0029】
本開示のいくつかの実施形態では、上述のRdは、F、Cl、Br、I、CH3及びOCH3から選択され、ここで、上記CH3及びOCH3は、任意選択で1、2又は3個のRで置換され、他の変数は本開示で定義される通りである。
【0030】
本開示のいくつかの実施形態では、上述のRdは、CH3及びOCH3から選択され、他の変数は本開示で定義される通りである。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態では、上述の環Aは、
【化3】
から選択され、ここで、上記
【化4】
は、任意選択で1、2又は3個のR
dで置換され、他の変数は本開示で定義される通りである。
【0032】
本開示のいくつかの実施形態では、上述の環Aは、
【化5】
から選択され、他の変数は本開示で定義される通りである。
【0033】
本開示のいくつかの実施形態では、上述の構造部分
【化6】
は
【化7】
から選択され、他の変数は本開示で定義される通りである。
【0034】
本開示のいくつかの実施形態では、上述の構造部分
【化8】
は
【化9】
から選択され、他の変数は本開示において定義される通りである。
【0035】
本開示はまた、上述の変数のいずれかを組み合わせることによって得られるいくつかの実施形態を含む。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態では、上述の化合物又はその薬学的に許容される塩が開示され、ここで、その化合物は以下から選択される。
【化10】
【0037】
(式中、R2及びR4は本開示で定義される通りである)
【0038】
本開示はまた、以下の式によって表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化11】
【0039】
本開示はまた、固形腫瘍を治療するための医薬品の製造における上述の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【発明の効果】
【0040】
本開示の化合物は、ERK1及びERK2酵素に対して優れた阻害活性を示し、本開示の化合物は、HT29細胞増殖に対して優れた阻害活性を示し、本開示の化合物は、様々なpH条件下で良好な溶解性を有し、本開示の化合物は、優れた薬物動態特性及び腫瘍阻害効果を有し、本開示の化合物は、hERGカリウムチャネル電流に対する阻害効果が弱く、心毒性のリスクが低く、安全性が高く、本開示の化合物は、中程度から高い血漿タンパク質結合を有する。
【0041】
定義及び用語
別段の定めがない限り、本明細書で使用される以下の用語及び語句は、以下の意味を有することを意図している。特定の用語又は語句は、特定の定義がない場合にあいまい又は不明確と見なされるべきではなく、従来の意味で理解されるべきである。商品名が本明細書に現れる場合、それに相当する商品又はその有効成分を指すことを意図している。
【0042】
「薬学的に許容される」という用語は、合理的な利益/リスク比に見合っており、過度の毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症を伴わず、信頼できる医学的判断の範囲内でヒト及び動物組織と接触して使用するのに適した化合物、材料、組成物及び/又は剤形に関して本明細書で使用される。
【0043】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に開示される特定の置換基を有する化合物を比較的非毒性の酸又は塩基と反応させることによって調製される、本明細書に開示される化合物の塩を意味する。本明細書に開示される化合物が比較的酸性の官能基を含む場合、純粋な溶液又は適した不活性溶媒中で化合物を十分な量の塩基と接触させることによって、塩基付加塩を得ることができる。本明細書に開示される化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合、純粋な溶液又は適した不活性溶媒中で化合物を十分な量の酸と接触させることによって、酸付加塩を得ることができる。本明細書に開示されるある特定の化合物は、塩基性及び酸性官能基の両方を含み、任意の塩基又は酸付加塩に変換することができる。
【0044】
本明細書に開示される薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、酸性又は塩基性部分を含む親化合物から調製することができる。一般に、そのような塩は、遊離酸又は塩基形態の化合物を化学量論量の適当な塩基又は酸と水又は有機溶媒又はそれらの混合物中で反応させることによって調製することができる。
【0045】
別段の定めがない限り、「異性体」という用語は、幾何異性体、シス又はトランス異性体、立体異性体、エナンチオマー、光学異性体、ジアステレオマー及び互変異性体を含むことが意図される。
【0046】
本明細書に開示される化合物は、特定の幾何又は立体異性体形態で存在し得る。本開示は、シス異性体及びトランス異性体、(-)-エナンチオマー及び(+)-エナンチオマー、(R)-エナンチオマー及び(S)-エナンチオマー、ジアステレオ異性体、(D)-異性体、(L)-異性体、並びにラセミ混合物及び他の混合物、例えば、エナンチオマー又はジアステレオ異性体が濃縮された混合物などの全てのこのような化合物を企図し、これらは全て本明細書に開示される範囲内に包含される。アルキルなどの置換基は、更に不斉炭素原子を有してもよい。これらの異性体及びそれらの混合物はすべて、本明細書に開示される範囲内に包含される。
【0047】
別段の定めがない限り、「エナンチオマー」又は「光学異性体」という用語は、互いに鏡像関係にある立体異性体を意味する。
【0048】
別段の定めがない限り、「シス-トランス異性体」又は「幾何異性体」という用語は、環形成炭素原子間の二重結合又は単結合が自由に回転することができないことによって生じる。
【0049】
別段の定めがない限り、「ジアステレオマー」とは、分子内にキラル中心を2個以上含み、分子間で鏡像関係にない立体異性体を意味する。
【0050】
別段の定めがない限り、「(+)」はデキストロアイソマーを意味し、「(-)」はレボアイソマーを意味し、「(±)」はラセミ体を意味する。
【0051】
別段の定めがない限り、くさび形実線結合
【化12】
及びくさび形破線結合
【化13】
は、立体中心の絶対配置を示し、真っ直ぐな実線結合
【化14】
及び真っ直ぐな破線結合
【化15】
は、立体中心の相対配置を示し、波線
【化16】
はくさび形実線結合
【化17】
又はくさび形破線結合
【化18】
を示すか、又は波線
【化19】
は真っ直ぐな実線結合
【化20】
及び真っ直ぐな破線結合
【化21】
を示す。
【0052】
別段の定めがない限り、「互変異性体」又は「互変異性型」という用語は、異性体中の異なる官能基が動的平衡にあり、室温で互いにすぐに変換し得ることを意味する。互変異性体が(溶液中で)可能である場合、互変異性体の化学平衡が達成され得る。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピック互変異性体としても知られる)には、ケト-エノール異性化及びイミン-エナミン異性化などのプロトン移動による相互変換が含まれる。原子価互変異性体は、いくつかの結合電子の再結合による相互変換を含む。ケト-エノール互変異性化の具体例は、2つの互変異性体ペンタン-2,4-ジオン及び4-ヒドロキシペンタ-3-エン-2-オン間の相互変換である。
【0053】
別段の定めがない限り、「1つの異性体が濃縮された」、「濃縮された異性体」、「1つのエナンチオマーが濃縮された」又は「濃縮されたエナンチオマー」という用語は、1つの異性体又はエナンチオマーの含有量が100%未満あり、その異性体又はエナンチオマーの含有量が60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上、又は99.5%以上、又は99.6%以上、又は99.7%以上、又は99.8%以上、又は99.9%以上であることを意味する。
【0054】
別段の定めがない限り、「異性体過剰率」又は「エナンチオマー過剰率」という用語は、2つの異性体又は2つのエナンチオマーの相対的割合の差を意味する。例えば、一方の異性体又はエナンチオマーが90%の量で存在し、他方の異性体又はエナンチオマーが10%の量で存在する場合、異性体又はエナンチオマー過剰率(ee値)は80%である。
【0055】
光学活性(R)-及び(S)-異性体、又はD及びL異性体は、キラル合成若しくはキラル試薬又は他の従来技術を用いて調製することができる。本明細書に開示される特定の化合物の1種類のエナンチオマーを得たい場合、純粋な所望のエナンチオマーは、不斉合成又はキラル補助剤の誘導体作用に続いて、得られたジアステレオマー混合物を分離し、補助基を切断することによって得ることができる。あるいは、分子が塩基性官能基(アミノ基など)又は酸性官能基(カルボキシル基など)を含む場合、化合物は適当な光学活性な酸又は塩基と反応してジアステレオマー異性体の塩を形成し、次いで、これを当技術分野における従来方法によってジアステレオマー分割に供して純粋なエナンチオマーを得る。更に、エナンチオマー及びジアステレオ異性体は、一般に、キラル固定相を使用し、任意選択で化学誘導体法(例えば、アミンから生成されるカルバメート)と組み合わせるクロマトグラフィーによって単離される。
【0056】
本明細書に開示される化合物は、化合物を構成する原子の1つ以上に不自然な割合の原子同位体を含み得る。例えば、化合物は、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)又はC-14(14C)などの放射性同位体で標識することができる。別の例では、水素を重水素で置き換えて重水素化薬物を形成することができる。重水素と炭素との結合は、通常の水素と炭素との結合よりも強い。重水素化されていない薬物と比較して、重水素化された薬物は、薬物の毒性副作用の減少、薬物安定性の増加、有効性の向上、及び生物学的半減期の延長という利点を有する。本明細書に開示される化合物の同位体組成の全ての変化は、放射能にかかわらず、本開示の範囲内に含まれる。
【0057】
「任意選択の」又は「任意選択で」という用語は、後続の事象又は状態が生じ得るが必須ではないことを意味し、この用語は、その事象又は状態が生じる事例及びその事象又は状態が生じない事例を含む。
【0058】
「置換される」という用語は、特定の原子上の1個又は複数の水素原子が、重水素及び水素変異体を含む置換基によって置換されされるが、ただし、その特定の原子の原子価が正常であり、置換された化合物が安定であることを意味する。置換基がオキソ(すなわち、=O)である場合、2個の水素原子が置換されることを意味する。芳香環上の位置をオキソで置換することはできない。「任意選択で置換される」という用語は、原子が置換基で置換される場合とされない場合があることを意味し、別段の定めがない限り、置換基の種類及び数は、化学的に達成可能である限り任意であり得る。
【0059】
化合物の構成又は構造に任意の変数(例えば、R)が複数回出現する場合、各出現時の変数の定義は独立している。したがって、例えば、ある基が0~2個のRで置換されている場合、その基は任意選択で最大で2個のRで置換されていてもよく、各出現時のRの定義は独立している。更に、置換基及び/又はその変異体の組み合わせは、その組み合わせが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。
【0060】
-(CRR)0-のように連結基の数が0である場合、連結基が単結合であることを意味する。
【0061】
置換基の数が0である場合、その置換基が存在しないことを意味する。例えば、-A-(R)0は、その構造が実際には-Aであることを意味する。
【0062】
置換基が空の場合は、その置換基が存在しないことを意味する。例えば、A-XにおいてXが空である場合、A-Xの構造は実際にはAである。
【0063】
変数の1つが単結合である場合、単結合によって連結された2つの基が直接接続されていることを意味する。例えば、A-L-ZにおけるLが単結合を表す場合、A-L-Zの構造は実際にはA-Zである。
【0064】
置換基の結合が環上の2つ以上の原子に架橋することができる場合、そのような置換基は環上の任意の原子に結合することができる。例えば、構造部分
【化22】
は、その置換基Rがシクロヘキシル又はシクロヘキサジエン上の任意の部位で置換され得ることを表す。列挙された置換基がどの原子を介して置換される基に連結されるかを示さない場合、そのような置換基はその原子のいずれかを介して結合され得る。例えば、置換基としてのピリジル基は、ピリジン環上のいずれか1つの炭素原子を介して置換される基と連結されていてもよい。
【0065】
列挙された連結基がその連結方向を示さない場合、その連結方向は任意である。例えば、
【化23】
における連結基Lが-M-W-である場合、-M-W-は、左から右へ読む順序と同じ方向で環A及び環Bと連結されて、
【化24】
を構成することができるか、又は、左から右へ読む順序とは逆方向で環A及び環Bと連結されて、
【化25】
を構成することができる。連結基、置換基及び/又はそれらの変異体の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物をもたらすことができる場合にのみ許容される。
【0066】
別段の定めがない限り、ある基が1つ以上の接続可能な部位を有する場合、その基の任意の1つ以上の部位は、化学結合を介して他の基に接続することができる。化学結合の接続位置が可変であり、接続可能な部位にH原子がある場合、H原子を有する接続可能な部位が化学結合に接続されると、この部位のH原子の数は、接続した化学結合の数が増加するにつれ、それに応じて減少し、その基は対応する原子価の基になる。その部位と他の基との間の化学結合は、真っ直ぐな実線結合
【化26】
、
真っ直ぐな破線結合
【化27】
又は波線
【化28】
によって表すことができる。例えば、-OCH
3における真っ直ぐな実線結合は、その基がその基中の酸素原子を介して他の基と接続されることを示し、
【化29】
における真っ直ぐな破線結合は、その基がその基中の窒素原子の2つの末端を介して他の基に接続されることを示し、
【化30】
における波線は、その基がフェニル基中の1-炭素原子及び2-炭素原子を介して他の基に接続されることを示し、
【化31】
は、ピペリジニル基上の任意の接続可能な部位が、1つの化学結合を介して他の基に接続することができ、少なくとも4つの接続様式
【化32】
が含まれることを示し、たとえH原子が-N-上に描かれているとしても、
【化33】
は依然として
【化34】
の接続様式を含み、ただ、1つの化学結合が接続された場合、この部位のHが1つだけ減って、その基が対応する一価ピペリジニル基になる。
【0067】
別段の定めがない限り、環上の原子の数は、一般に、環員の数として定義され、例えば、「5~7員環」は、円周方向に配置された5~7個の原子の「環」を指す。
【0068】
別段の定めがない限り、「C1~3アルキル」という用語は、1~3個の炭素原子からなる直鎖又は分岐飽和炭化水素基を示すために使用される。C1~3アルキル基としては、C1~2アルキル基、C2~3アルキル基などが挙げられる。一価(例えば、メチル)、二価(例えば、メチレン)又は多価(例えば、メテニル)であり得る。C1~3アルキル基の例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(n-プロピル及びイソプロピルを含む)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
別段の定めがない限り、「C1~3アルコキシ」という用語は、1から3個の炭素原子を含み、酸素原子によって分子の残部に結合しているアルキル基を指す。C1~3アルコキシ基としては、C1~2アルコキシ基、C2~3アルコキシ基、C3アルコキシ基、C2アルコキシ基などが挙げられる。C1~3アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(n-プロポキシ及びイソプロポキシを含む)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
本明細書に開示される化合物は、以下に列挙される実施形態、他の化学合成方法と組み合わせた以下に列挙される実施形態によって形成される実施形態、及び当業者に周知の同等の代替物などの当業者に周知の様々な合成方法によって調製することができる。代替の実施形態は、本明細書に開示される例を含むが、これらに限定されない。
【0071】
本開示で使用される溶媒は市販されている。
【0072】
本開示では以下の略語が使用される。aqは水性を表し、eqは当量の又は当量を表し、DCMはジクロロメタンを表し、PEは石油エーテルを表し、DMSOはジメチルスルホキシドを表し、EtOAcは酢酸エチルを表し、EtOHはエタノールを表し、MeOHはメタノールを表し、Cbzはアミン保護基であるベンジルオキシカルボニルを表し、BOCはアミン保護基であるtert-ブトキシカルボニルを表し、r.t.は室温を表し、O/Nは一晩を表し、THFはテトラヒドロフランを表し、Boc2Oはジ-tert-ブチルジカーボネートを表し、TFAはトリフルオロ酢酸を表し、DIPEAはジイソプロピルエチルアミンを表し、iPrOHは2-プロパノールを表し、mpは融点を表す。
【0073】
化合物は、当技術分野における一般的な命名原理に従って、又はChemDraw(登録商標)ソフトウェアによって命名され、市販の化合物は、それらのベンダーのディレクトリ名で命名される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】溶媒及びWX001をそれぞれ投与した後のモデル動物におけるヒトメラノーマA375の腫瘍成長曲線である。
【0075】
【
図2】投与中のヒトメラノーマA375のモデル動物における体重変化率である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下、実施例により本開示を詳細に説明する。ただし、これらの実施例が本開示に対していかなる不利な限定も有することは意図されていない。本開示は本明細書で詳細に説明されており、実施形態も本明細書に開示されている。本明細書に開示された趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された実施形態に対して様々な変更及び修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。
参考例1
【化35】
【化36】
【0077】
工程1:化合物A-1-2の合成
【0078】
反応フラスコに、A-1-1(500g、2.12mol、1eq)、水(1875mL)及びテトラヒドロフラン(1875mL)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換し、次いで、水酸化リチウム一水和物(97.76g、2.33mol、1.1eq)を添加し、混合物を25℃で3時間反応させた。反応終了後、混合物を濃縮して有機溶媒を除去した後、氷水(2L)を加えた。次いで、4Nの濃度の塩酸溶液(600mL)をゆっくり添加してpHを2~3に調整した。混合物を20分間撹拌し、次いで、濾過した。濾過ケークを水(1L)及びアセトニトリル(500mL)で洗浄した。濾過ケークを回収した。濾過ケークをアセトニトリル(1L)に添加し、混合物を0.5時間撹拌した。混合物を濾過し、濾過ケークをアセトニトリル(500mL)で洗浄した。濾過ケークを回収し、焼成により乾燥してA-1-2を得た。
【数1】
【0079】
工程2:化合物A-1-3の合成
【0080】
反応フラスコに、A-1-2(175g、823.55mmol、純度97.9%、1eq)及び2-メチルテトラヒドロフラン(1.75L)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換し、混合物を-30℃まで冷却した。リチウムジイソプロピルアミド(2M、905.90mL、2.2eq)をゆっくり滴下し、混合物を-30℃で更に1時間撹拌した。その後、アセトン(95.66g、1.65mol、121.09mL、2eq)と2-メチルテトラヒドロフラン(175mL)の溶液をゆっくり滴下し、混合物を-30℃で1時間反応させた。反応が完了した後、反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液(1750mL)でクエンチし、4N塩酸(約2L)でpH3~4に調整した。各層を分離し、水相を酢酸エチル(3000mL×2)で抽出した。有機相を飽和ブライン(1500mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を回収し、減圧下で濃縮乾固して粗生成物を得た。粗生成物にメチルtert-ブチルエーテル(3.5L)を加え、混合物を30分間撹拌した。n-ヘキサン(3.5L)を添加し、混合物を更に4時間撹拌した。混合物を濾過し、濾過ケークを回収してA-1-3を得た。
【数2】
【0081】
工程3:化合物A-1-4の合成
【0082】
反応フラスコに、A-1-3(200g、668.89mmol、純度89%、1eq)及びアセトニトリル(2L)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換し、エチルエーテル中の三フッ化ホウ素(265.82g、1.87mol、231.15mL、2.8eq)を添加した。混合物を60℃で8時間反応させた。反応終了後、反応液にエタノール(200mL)を加え、混合物を減圧濃縮して粗生成物を得た。続いて、粗生成物を水(2000mL)にゆっくり注いだ。混合物を30分間撹拌し、濾過した。濾過ケークを回収した。無水エタノール(600mL)を濾過ケークに添加し、混合物を30分間撹拌し、濾過した。濾過ケークをエタノール(200mL)で洗浄した。濾過ケークを回収し、乾燥させてA-1-4を得た。
【数3】
【0083】
工程4:化合物A-1の合成
【0084】
反応フラスコに、A-1-4(150g、481.93mmol、純度92.9%、1eq)及びエタノール(750mL)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換し、臭化水素(1.07kg、5.30mol、719.67mL、純度40%、11eq)をゆっくり滴下した。混合物を50℃で24時間反応させた。反応が完了した後、ジクロロメタン(1.5L)及び氷水(500mL)を反応液に添加し、混合物を4N水酸化ナトリウム水溶液(約1500mL)でpH7~8に調整した。各層を分離し、水相をジクロロメタン(1000mL×2)で抽出して有機相を得て、これを飽和食塩水(1000mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物に酢酸エチル(225mL)及びn-ヘキサン(225mL)を添加し、混合物を2時間撹拌した。混合物を濾過し、濾過ケークを回収してA-1を得た。
【数4】
参考例2
【化37】
【化38】
【0085】
工程1:化合物B-1-2の合成
【0086】
反応フラスコに、水酸化ナトリウム(590.8g、14.8mol、1.05eq)、水(20L)、及びB-1-1(2000.00g、14.07mol、1eq)を添加した。次いで、ヨウ化メチル(2495.80g、17.59mol、1.25eq)を添加し、混合物を25℃で2時間反応させた。反応終了後、反応フラスコに6N氷塩酸水溶液をゆっくり加えてpHを6~7に調整した。混合物を0.5時間撹拌し、濾過した。濾過ケークを回収した。アセトニトリル(500mL)を濾過ケークに添加した。混合物を0.5時間撹拌し、濾過した。濾過ケークを回収し、焼成により乾燥してB-1-2を得た。
【数5】
【0087】
工程2:化合物B-1-3の合成
【0088】
反応フラスコに、アセトニトリル(15L)及びB-1-2(1500.00g、9.60mol、1eq)を25℃で添加した。次いで、オキシ塩化リン(1840.00g、12.0mol、1.25eq)を添加した。混合物を62℃までゆっくり加熱し、62℃で12時間反応させた。反応液を水(10.5L)に注ぎ、固体の重炭酸ナトリウムを加えてpHを6~7に調整した。混合物を酢酸エチル(10.5L)で抽出し、各層を分離して有機相を得た。有機相を飽和ブライン(7.5L)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮してB-1-3を得た。
【数6】
【0089】
工程3:化合物B-1の合成
【0090】
反応フラスコに、B-1-3(100g、572.57mmol、1eq)、水(24.76g、1.37mol、24.76mL、2.4eq)及びアセトニトリル(1000mL)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。ヨウ化ナトリウム(571.59g、3.81mol、6.66eq)及びトリメチルクロロシラン(186.61g、1.72mol、218.00mL、3eq)を順次加え、混合物を20℃で14時間反応させた。反応終了後、反応液にジクロロメタン(800mL)及び水(12000mL)を順次加えた。次いで、固体の重炭酸ナトリウムを添加してpHを6~7に調整した。各層を分離し、水相をジクロロメタン(500mL)で1回抽出した。有機相を合わせ、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(500mL)及び飽和ブライン(500mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物にn-ヘプタン(0.5L)を加え、混合物を1時間撹拌した。混合物を濾過し、濾過ケークを回収してB-1を得た。
【数7】
参考例3
【化39】
【化40】
【0091】
工程1:化合物D-1-2の合成
【0092】
乾燥した反応フラスコに、酢酸ナトリウム(4.54g、55.39mmol、5eq)、一過硫酸カリウム(13.62g、22.16mmol、2eq)及び水(46mL)を添加した。混合物を0℃に冷却し、D-1-1(4.6g、11.08mmol、1eq)、メタノール(46mL)及びテトラヒドロフラン(46mL)の溶液を添加した。混合物を25℃で12時間反応させた。反応が完了した後、反応液を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(50mL)でクエンチし、ジクロロメタン(50mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、飽和食塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を水ポンプで減圧濃縮してD-1-2を得た。
【数8】
【0093】
工程2:化合物D-1の合成
【0094】
乾燥した反応フラスコに、D-1-2(4.68g、10.46mmol、1eq)、D-1-3(1.22g、12.56mmol、1.2eq)及びテトラヒドロフラン(70mL)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。リチウムヘキサメチルジシラジド(1M、21.98mL、2.1eq)を-30℃で滴下した。混合物を-30℃で2時間反応させた。反応終了後、反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)に注ぎ、酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。有機相を合わせた。合わせた有機相を飽和ブライン(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製してD-1を得た。
【数9】
参考例4
【化41】
【化42】
【0095】
工程1:化合物E-1-3の合成
【0096】
反応フラスコに、カリウムtert-ブトキシド(4.83g、43.04mmol、2.5eq)及びテトラヒドロフラン(16mL)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。テトラヒドロフラン(16mL)にE-1-1(2g、17.22mmol、2.30mL、1eq)及びE-1-1(2.55g、34.44mmol、2.77mL、2eq)を溶解した溶液をゆっくり滴下した。混合物を25℃で3時間反応させた。反応が完了した後、混合物を濃縮してE-1-3を得た。
【0097】
工程2:化合物E-1-5の合成
【0098】
反応フラスコに、E-1-3(2.24g、17.21mmol、1eq)及びイソプロパノール(140mL)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。E-1-4(2.62g、34.42mmol、2eq)を加え、混合物を90℃で12時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物に水20mLを加え、混合物を酢酸でpH4に調整し、濾過した。濾過ケークを回収した。濾過ケークをカラムクロマトグラフィーにより精製してE-1-5を得た。
【数10】
【0099】
工程3:化合物E-1-6の合成
【0100】
反応フラスコに、水酸化ナトリウム(1.34g、33.61mmol、1.05eq)及び水(50mL)を添加した後、化合物E-1-5(5g、32.01mmol、1eq)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。混合物を10℃に冷却し、ヨウ化メチル(5.68g、40.01mmol、2.49mL、1.25eq)をゆっくり添加した。混合物を10℃で0.5時間反応させ、25℃までゆっくりと加熱し、更に2.5時間反応させた。反応終了後、反応液を0~5℃まで冷却した後、6N塩酸でpH7~8に調整し、濾過した。濾過ケークを回収し、乾燥させてE-1-6を得た。
【数11】
【0101】
工程4:化合物E-1-7の合成
【0102】
反応フラスコに、E-1-6(7.4g、43.47mmol、1eq)及びアセトニトリル(75mL)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した後、オキシ塩化リン(8.33g、54.34mmol、5.05mL、1.25eq)をゆっくりと滴下した。混合物を62℃で2.5時間反応させた。反応終了後、反応液を水(100mL)に注ぎ、固体の炭酸ナトリウムを加えてpHを6~7に調整した。水相を酢酸エチル(50mL×2)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮してE-1-7を得た。
【数12】
【0103】
工程5:化合物E-1の合成
【0104】
反応フラスコに、E-1-7(3.5g、18.55mmol、1eq)及びアセトニトリル(40mL)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。ヨウ化ナトリウム(18.52g、123.54mmol、6.66eq)、トリメチルクロロシラン(6.71g、61.77mmol、7.84mL、3.33eq)及び水(802.26mg、44.52mmol、802.26μL、2.4eq)を順次添加した。混合物を25℃で12時間反応させた。反応が完了した後、ジクロロメタン(50mL)及び水(50mL)を反応液に順次添加し、重炭酸ナトリウム固体を添加することによってpH6~7に調整した。各層を分離した。水相をジクロロメタン(50mL)で抽出し、有機相を合わせた。有機相を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(50mL)及び飽和ブライン(50mL)でそれぞれ洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製してE-1を得た。
【数13】
実施例1
【化43】
【0105】
【0106】
工程1:WX001-1の合成
【0107】
乾燥した反応フラスコに、A-1(70g、283.27mmol、1eq)、ジクロロメタン(1400mL)、4-ジメチルアミノピリジン(38.07g、311.60mmol、1.1eq)及びジ-tert-ブチルジカーボネート(123.65g、566.54mmol、130.15mL、2eq)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。混合物を20℃で12時間反応させた。反応終了後、反応液に水(300mL)を加え、有機相と水相を分離した。水相をジクロロメタン(400mL)で3回抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(300mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をn-ヘキサン(140mL)でスラリー化し、濾過した。濾過ケークを回収し、乾燥させてWX001-1を得た。
【数14】
【0108】
工程2:WX001-2の合成
【0109】
乾燥した反応フラスコに、WX001-1(10g、28.80mmol、1eq)、テトラヒドロフラン(133mL)、塩化亜鉛溶液(0.7M、41.14mL、1eq)及びテトラメチルエチレンジアミン(3.35g、28.80mmol、4.35mL、1eq)を添加した。混合物を-78℃に冷却した。n-ブチルリチウム(2.5M、17.28mL、1.5eq)を添加し、混合物を10分間撹拌した。更にn-ブチルリチウム(2.5M、5.76mL、0.5eq)を添加し、混合物を更に10分間撹拌した。更にn-ブチルリチウム(2.5M、3.46mL、0.3eq)を添加し、混合物を20℃で更に1時間反応させて反応液1を得た。
【0110】
B-1(7.66g、28.80mmol、1eq)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(998.39mg、863.99μmol、0.03eq)及びN’N-ジメチルホルムアミド(67mL)の混合物を50℃に加熱して反応液2を得た。反応液1を反応液2に滴下し、混合物を50℃で40分間反応させた。反応終了後、反応液に0.1Mエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム水溶液(450mL)を加えた。混合物を30分間撹拌し、濾過した。濾過ケークを回収して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製してWX001-2を得た。
【数15】
【0111】
工程3:WX001-3の合成
【0112】
乾燥した反応フラスコに、WX001-2(10g、24.60mmol、1eq)、DCM(100mL)及びトリフルオロ酢酸(36.49g、320.03mmol、23.69mL、13.01eq)を添加した。混合物を20℃で1時間反応させた。反応終了後、反応液を濃縮し、次いでクロロホルム(30mL×3)で抽出して残留トリフルオロ酢酸を除去して、WX001-3を得た。
【数16】
【0113】
工程4:WX001-5の合成
【0114】
乾燥した反応フラスコに、WX001-3(150mg、489.55μmol、1eq)、N’N-ジメチルホルムアミド(1.5mL)、炭酸セシウム(239.26mg、734.32μmol、1.5eq)及びWX001-4(109.30mg、587.46μmol、1.2eq)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。混合物を25℃で16時間反応させた。反応終了後、反応液に水(10mL)を加えた。混合物を濾過して濾過ケークを得た。濾過ケークをジクロロメタン(10mL)に溶解し、飽和ブライン(15mL)で洗浄した。各層を分離して有機相を得た。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮乾固してWX001-5を得た。
【数17】
【0115】
工程5:WX001-6の合成
【0116】
乾燥した反応フラスコに、WX001-5(130mg、315.88μmol、1eq)、アセトニトリル(3mL)、水(1.5mL)及び一過硫酸カリウム(388.39mg、631.77μmol、2eq)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。混合物を20℃で16時間反応させた。反応終了後、反応液に飽和チオ硫酸ナトリウム溶液(10mL)を加え、混合物をジクロロメタン(10mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(20mL×2)及び飽和ブライン(20mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮してWX001-6を得た。
【数18】
【0117】
工程6:WX001の合成
【0118】
乾燥した反応フラスコに、WX001-6(140mg、315.64μmol、1eq)、D-1-3(61.31mg、631.28μmol、2eq)、ジクロロメタン(1mL)及びテトラヒドロフラン(1mL)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。反応液を0℃まで冷却し、リチウムヘキサメチルジシラジド(1M、599.72μL、1.9eq)を滴下した。滴下終了後、混合物を0℃で更に2時間反応させた。反応が完了した後、水(10mL)を添加することによって反応液をクエンチし、次いで、ジクロロメタン(10mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(15mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を高速液体クロマトグラフィー(カラム:Waters Xbridge BEH C18 100*30mm*10μm、移動相:[水(10mM重炭酸アンモニウム)-アセトニトリル]、B(アセトニトリル)%:25%-55%、8分)により精製してWX001を得た。
【数19】
実施例2
【化45】
【0119】
【0120】
工程1:WX002の合成
【0121】
乾燥した反応フラスコに、WX001-6(180mg、405.82μmol、1eq)、WX002-1(246.29mg、2.43mmol、6eq)及びDMSO(1mL)を添加した。混合物を100℃で12時間反応させた。反応終了後、反応液をそのまま高速液体クロマトグラフィー(カラム:Phenomenex C18 80*40mm*3μm、移動相:[水(重炭酸アンモニウム)-アセトニトリル]、B(アセトニトリル)%:25%-55%、8分)により精製してWX002を得た。
【数20】
実施例3
【化47】
【0122】
【0123】
工程1:WX003-1の合成
【0124】
乾燥した反応フラスコに、A-1(500mg、2.02mmol、1eq)、N’N-ジメチルホルムアミド(5mL)、炭酸セシウム(988.88mg、3.04mmol、1.5eq)及びWX001-4(451.74mg、2.43mmol、1.2eq)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。混合物を25℃で16時間反応させた。反応終了後、反応液に水(20mL)を加え、混合物を濾過した。濾過ケークをジクロロメタン(10mL)に溶解し、飽和ブライン(15mL×3)で洗浄した。各層を分離して有機相を得た。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮乾固してWX003-1を得た。
【数21】
【0125】
工程2:WX003の合成
【0126】
乾燥した反応フラスコに、WX003-1(150mg、425.84μmol、1eq)、D-1(217.46mg、468.42μmol、1.1eq)及びトルエン(3mL)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(98.42mg、85.17μmol、0.2eq)を添加した。混合物を110℃に加熱し、12時間反応させた。反応終了後、反応液をそのまま減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を最初にシリカゲルプレートの薄層クロマトグラフィーによって精製し、次いで、高速液体クロマトグラフィー(カラム:Waters Xbridge BEH C18 100*25mm*5μm、移動相:[水(重炭酸アンモニウム)-アセトニトリル]、B(アセトニトリル)%:20%-50%、10分)によって分離してWX003を得た。
【数22】
実施例4
【化49】
【0127】
【0128】
工程1:WX004-2の合成
【0129】
乾燥した反応フラスコに、WX001-1(500.00mg、1.44mmol、1eq)、テトラヒドロフラン(6.5mL)、塩化亜鉛溶液(0.7M、2.06mL、1eq)及びテトラメチルエチレンジアミン(167.33mg、1.44mmol、217.32μL、1eq)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。混合物を-78℃まで冷却した。n-ブチルリチウム(2.5M、863.99μL、1.5eq)を滴下し、混合物を10分間撹拌した。更にn-ブチルリチウム(2.5M、288.00μL、0.5eq)を添加し、混合物を更に10分間撹拌した。更にn-ブチルリチウム(2.5M、172.80μL、0.3eq)を添加した。添加終了後、混合物を20℃で1時間反応させて反応液1を得た。
【0130】
E-1(403.38mg、1.44mmol、1eq)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(49.92mg、43.20μmol、0.03eq)及びN’N-ジメチルホルムアミド(3.5mL)の混合物を窒素下で50℃に加熱し、次いで、上述の反応液1を添加した。混合物を50℃で更に40分間反応させた。反応が完了した後、反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)でクエンチし、酢酸エチル(20mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮乾固して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製してWX004-2を得た。
【数23】
【0131】
工程2:WX004-3の合成
【0132】
反応フラスコに、WX004-2(200mg、475.57μmol、1eq)及びジクロロメタン(5mL)を添加した。混合物を0℃に冷却した。トリフルオロ酢酸(108.45mg、951.14μmol、70.42μL、2eq)を反応フラスコに加え、混合物を25℃で1時間撹拌した。反応終了後、反応液を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(20mL)にゆっくり注ぎ、pH7~8に調整した。混合物をジクロロメタン(10mL×2)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮乾固してWX004-3を得た。
【数24】
【0133】
工程3:WX004-4の合成
【0134】
反応フラスコに、WX004-3(225mg、702.18μmol、1eq)、炭酸セシウム(343.17mg、1.05mmol、1.5eq)及びN’N-ジメチルホルムアミド(5mL)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。WX001-4(156.77mg、842.61μmol、1.13mL、1.2eq)を加え、混合物を25℃で2時間反応させた。反応が完了した後、反応液を氷水混合物(200mL)に注いだ。混合物を0.5時間撹拌し、濾過した。濾過ケークをトルエン(5mL×3)で共沸濃縮してWX004-4を得た。
【数25】
【0135】
工程4:WX004-5の合成
【0136】
乾燥した反応フラスコに、WX004-4(100mg、234.98μmol、1eq)、水(1.5mL)及びアセトニトリル(3mL)を添加した。雰囲気を窒素で置換した。混合物を0℃に冷却し、一過硫酸カリウム(288.92mg、469.96μmol、2eq)を分割添加した。混合物を25℃で12時間反応させた。反応終了後、反応液に飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(10mL)を加えた。混合物を0.5時間撹拌し、次いで、酢酸エチル(10mL×2)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮してWX004-5を得た。
【数26】
【0137】
工程5:WX004の合成
【0138】
WX004-5(55mg、120.20μmol、1eq)、D-1-3(23.35mg、240.40μmol、2eq)、ジクロロメタン(1mL)及びテトラヒドロフラン(1mL)を反応フラスコに添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。混合物を0℃に冷却した。反応フラスコにリチウムヘキサメチルジシラジド(1M、228.38μL、1.9eq)を滴下し、混合物を0℃で1時間撹拌した。反応が完了した後、水(10mL)を添加することによって反応液をクエンチし、次いで、酢酸エチル(10mL×2)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を最初にシリカゲルプレートの薄層クロマトグラフィーによって精製し、次いで、高速液体クロマトグラフィー(カラム:Waters Xbridge BEH C18 100*30mm*10μm、移動相:[水(重炭酸アンモニウム)-アセトニトリル]、B(アセトニトリル)%:25%-55%、8分)によって分離してWX004を得た。
【数27】
【0139】
アッセイ例1.インビトロキナーゼ活性アッセイ
1.アッセイの目的:
【0140】
ERK1及びERK2キナーゼ活性を阻害する化合物の能力を測定した。
【0141】
2.アッセイ緩衝液:
【0142】
20mM Hepes(pH7.5)、10mM MgCl2、1mMエチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸(EGTA)、0.02%Brij35、0.02mg/mLウシ血清アルブミン(BSA)、0.1mM Na3VO4、2mMジチオトレイトール(DTT)、1%DMSO。
【0143】
3.化合物の処理:
【0144】
アッセイ化合物を100%DMSOに溶解して、特定の濃度のストック溶液を調製した。Integra Viaflo Assistスマートピペットを使用して、化合物をDMSO溶液で段階希釈した。
【0145】
4.アッセイの方法:
【0146】
a)新たに調製した反応緩衝液で基質MBPを調製した。
【0147】
b)ERK1(又はERK2)キナーゼを上述のMBP溶液に添加し、穏やかに混合した。
【0148】
c)100%DMSOに溶解した化合物を、超音波技術(Echo550、ナノリットル範囲)を用いてキナーゼ反応系に添加し、混合物を室温で20分間インキュベートした。
【0149】
d)反応系に33P-ATP(比濃度10μCi/μL)を加え、この時点で反応が開始した。
【0150】
e)混合物を室温で2時間インキュベートした。
【0151】
f)放射能量はフィルター結合法により検出した。
【0152】
g)ERK1(又はERK2)キナーゼ活性を、対照群(DMSOで処理)のキナーゼ活性に対するアッセイサンプルにおける残存キナーゼ活性の比として計算した。Prism(GraphPadソフトウェア)を用いて曲線をフィッティングし、IC50値を計算した。
【0153】
【0154】
結論:本開示の化合物は、ERK1キナーゼに対して優れた阻害活性を示す。
【表2】
【0155】
結論:本開示の化合物は、ERK2キナーゼに対して優れた阻害活性を示す。
【0156】
アッセイ例2.インビトロ細胞増殖阻害アッセイ
1.アッセイの目的:
【0157】
HT29腫瘍細胞の増殖を阻害する化合物の能力を測定した。
【0158】
2.化合物の処理:
【0159】
アッセイ化合物を100%DMSOに溶解して、10mMのストック溶液を調製した。
【0160】
3.アッセイの方法及び工程:
【0161】
a)生物学的安全キャビネットのUV光を点灯し、30分をカウントダウンした。
【0162】
b)37℃の水浴中で、RPMI1640培地及びトリプシンを予熱した。
【0163】
c)UV照射終了後、生物学的安全キャビネットを開けた。予熱した培地、トリプシン及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などをアルコールで拭き取り、生物学的安全キャビネットに入れた。
【0164】
d)HT29細胞をインキュベーターから取り出し、生物学的安全キャビネットで古い培地を取り出した。10mLのPBSを添加した。混合物を穏やかに振盪し、次いで、PBSを除去した。
【0165】
e)予熱した0.25%トリプシン1.5mlを添加した。トリプシンが底部の細胞を均一に覆うように培養容器を水平方向に振盪し、インキュベーターに2分間入れた。
【0166】
f)完全培地で細胞消化を停止させ、細胞懸濁液を均一になるまでピペッティングし、計数した。
【0167】
g)細胞計数の結果に従い、細胞懸濁液の密度を1500細胞/ウェルに調整し、細胞懸濁液を50μl/ウェルで播種した。
【0168】
h)化合物のストック溶液をDMSO溶液で段階希釈し、Tecanを用いて化合物を細胞プレートに添加した。
【0169】
i)化合物添加細胞プレート及びCellTiterGloを室温で平衡化させ、次いで、25マイクロリットルのCellTiterGloを各ウェルに添加した。細胞プレートを1~2分間振盪し、次いで10分間静置した。次いで、シグナル値を検出した。XL-Fitを用いてデータを分析し、各化合物のIC50を計算した。
【0170】
【0171】
結論:本開示の化合物は、HT29細胞増殖に対する優れた阻害活性を示す。
【0172】
アッセイ例3.マウスにおけるインビボPK試験
1.アッセイの目的:
【0173】
雌BALB/cマウスをアッセイ動物として使用して、単回投与後の化合物の血中濃度を求め、薬物動態挙動を評価した。
【0174】
2.アッセイの手順:
【0175】
4匹の健康な成体雌BALB/cマウスを選択し、2匹のマウスを静脈内注射群とし、2匹のマウスを経口群とした。静脈内注射群のビヒクルは5%DMSO+95%(20%HP-β-CD)とした。アッセイする化合物を適当な量の静脈内注射用ビヒクルと混合し、ボルテックスし、超音波処理して、0.5mg/mLの透明な溶液を調製した。透明な溶液を微多孔膜で濾過してすぐに使用できるようにした。経口群のビヒクルは5%DMSO+95%(20%HP-β-CD)とした。アッセイする化合物をビヒクルと混合し、ボルテックスし、超音波処理して、0.3mg/mLの溶液を調製した。マウスに1mg/kg静脈内投与又は3mg/kg経口投与を行った後、全血を一定期間採取した。血漿を調製した。LC-MS/MS法によって薬物濃度を分析し、Phoenix WinNonlinソフトウェア(Pharsight、米国)によって薬物動態パラメータを計算した。
【0176】
注釈:DMSO:ジメチルスルホキシド、HP-β-CD:ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
【0177】
【0178】
注釈:Cmaxは最大濃度であり、F%は経口バイオアベイラビリティであり、DNAUCはAUCPO/Doseであり、AUCPOは経口曝露であり、Doseは薬物用量であり、Vdssは分布容積であり、Clはクリアランス速度であり、T1/2は半減期である。
【0179】
結論:本開示の化合物は、優れた経口曝露及びバイオアベイラビリティを示す。
【0180】
アッセイ例4.溶解度試験
1.アッセイの目的:
【0181】
化合物の溶解度を測定して、化合物の溶解特性を評価した。
【0182】
2.アッセイ溶液:
【0183】
1)緩衝液A(pH2.0):50mMリン酸緩衝液、pH2.0;緩衝液B(pH6.5):50mMリン酸緩衝液、pH6.5;緩衝液C(pH7.4):50mMリン酸緩衝液、pH7.4
【0184】
2)標準溶液の調製:
【0185】
a)50%アセトニトリル溶液と50%緩衝液を混合して希釈液を得た。
【0186】
b)希釈液(490μL/化合物)に10mM(10μL/化合物)の化合物ストック溶液を加えて200μMの検出標準溶液を得た。
【0187】
c)200μMのUV検出標準溶液を10倍及び200倍体積の希釈液で希釈して、それぞれ20μM及び1μMのUV標準溶液を得た。
【0188】
d)溶解度アッセイのための標準溶液として、1μM、20μM及び200μMのUV標準溶液を使用した。
【0189】
3.アッセイの方法:
【0190】
a)化合物をDMSOに溶解して、10mMのストック溶液を調製した。アミオダロン塩酸塩、カルバマゼピン及びクロラムフェニコールを溶解度アッセイの対照として使用した。
【0191】
b)アッセイ化合物及び対照のストック溶液(それぞれ10μL)を96ウェルプレートに入れ、490μLの3つの異なる溶解培地(緩衝液A、B、C)をそれぞれ添加した。対応する溶解度溶液のpHは、それぞれ2.0、6.5及び7.4であった。アッセイ化合物の理論上の最大濃度は、2%DMSOで200μMである。
【0192】
c)プレートを室温(25±2℃)の振盪機で600rpmにて24時間振盪した。
【0193】
d)この溶液200μLを96ウェルプレートからピペッティングし、真空吸引濾過装置で吸引濾過し、新たな96ウェルプレートにアッセイサンプルとして移した。
【0194】
e)HPLC-UVを用いて化合物濃度を求めた。HPLC条件は表5に示す通りであった。
【表5】
【0195】
f)低濃度から高濃度までの3つのUV標準溶液(1μM、20μM、200μM)をHPLCに注入し、次いで、アッセイする化合物のアッセイサンプルを注入した。
【0196】
g)UVクロマトグラフィーピークを積分し、サンプルの溶解度を計算した。
【0197】
【0198】
結論:本開示の化合物は、様々なpH条件下で良好な溶解度を有する。
【0199】
アッセイ例5.ヒトメラノーマA375のマウスモデルにおけるインビボ有効性アッセイ:
1.アッセイの目的:
【0200】
WX001の抗腫瘍効果を、ヌードマウスにおけるヒトメラノーマA375細胞の皮下異種移植腫瘍モデルを使用して評価した。
【0201】
2.アッセイ動物:
【0202】
種:マウス
【0203】
系統:BALB/cヌードマウス
【0204】
年齢:6~8週齢
【0205】
性別:雌
【0206】
体重:18~22グラム
【0207】
供給者:Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd.
【0208】
3.飼育環境:
【0209】
20~26℃の温度及び40~70%の湿度でSPFグレードの動物舎のIVC(独立給気システム、恒温恒湿)ケージ(1ケージあたり3匹の動物)で動物を飼育した。
【0210】
ケージ:ケージはポリカーボネート製で、容積は375mm×215mm×180mmであった。寝床の材料をトウモロコシの芯として、これを週に1回交換した。
【0211】
餌:アッセイ動物は、アッセイ期間を通して餌(照射により滅菌された乾燥ペレット餌)を自由摂食させた。
【0212】
飲料水:アッセイ動物は滅菌水に自由飲水させた。
【0213】
ケージの識別:各ケージの動物情報カードは、ケージ内の動物の数、性別、系統、受取日、投与スケジュールのアッセイ番号、群及びアッセイの開始日を示すものとする。
【0214】
動物の識別:アッセイ動物を耳タグによって識別した。
【0215】
4.アッセイ手順:
【0216】
1)アッセイ細胞及び培養:ヒトメラノーマA375細胞をインビトロで単層で培養した。培養条件は、DMEM培地+10%ウシ胎児血清及び37℃の5%CO2インキュベーターとした。トリプシン-EDTAによる定型的な消化を、継代のために週に2回行った。細胞飽和度が80%~90%で、その量が必要量に達したとき、細胞を回収し、計数し、接種した。
【0217】
2)腫瘍組織接種及び群分け:0.1mL(5×10
5)のA375細胞を各マウスの右脇の下に皮下接種した。平均腫瘍体積が170mm
3に達したら、動物を無作為に4群に分け、投与を開始した。アッセイの群分け及び投与スケジュールを表7に示した。
【表7】
【0218】
3)アッセイ動物の毎日の観察:このアッセイプロトコルの開発及びあらゆる修正は、動物実験委員会(IACUC)によって評価及び承認された。アッセイ動物の使用及び福祉は、Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)の規則に従って実施した。健康及び死亡について動物を毎日モニタリングした。定型的な検査には、腫瘍成長の観察、並びに動物の毎日の行動、例えば行動の活動、餌や水の摂取(目視検査のみ)、体重変化(週に2回の体重測定)、外観の徴候又は他の異常に対する薬物処置の効果が含まれた。各群の動物の死亡及び副作用を、各群の動物の数に基づいて記録した。
【0219】
4)アッセイ化合物の製剤
【0220】
a)ビヒクル群:5%DMSO+95%(20%HP-β-CD)
【0221】
b)アッセイ化合物群:定量的な量のアッセイ化合物を製剤ボトルに秤量した。対応する体積のDMSOを添加し、次いで混合物をボルテックスして透明な溶液を得た。対応する体積の20%HP-β-CDを添加し、次いで混合物をボルテックスして均一な懸濁液を得た。
【0222】
5)腫瘍測定及びアッセイ指標:
【0223】
a)腫瘍直径をノギスで週に2回測定した。腫瘍体積の計算式は、TV=1/2×a×b2(aは腫瘍の長径、bは腫瘍の短径)とした。
【0224】
b)化合物の腫瘍阻害有効性をTGI(%)によって評価した。TGI(%)は腫瘍成長の阻害率を反映した。TGI(%)は、以下のように算出した:TGI(%)={[1-(処置群の投与終了時の平均腫瘍体積-該処置群の投与開始時の平均腫瘍体積)]/(溶媒対照群の処置終了時の平均腫瘍体積-溶媒対照群の処置開始時の平均腫瘍体積)}×100%。
【0225】
5.アッセイ結果:
【0226】
1)表8及び
図1に示されるように、ヌードマウスにおけるヒトメラノーマA375細胞の皮下異種移植腫瘍モデルにおいて、WX001は、経口投与後21日目まで用量依存的に腫瘍成長を阻害することができ、5mg/kg、10mg/kg及び20mg/kgの3つの用量において、TGIはそれぞれ36%、81%及び104%であった。
【0227】
2)アッセイ動物の体重を、薬物毒性の間接測定のための参照指標として使用した。
図2に示すように、21日目まで投与した場合、溶媒対照群及びWX001群の全ての動物の体重は有意には減少せず、罹患も死亡もなかった。
【表8】
【0228】
結論:WX001は、5mg/kg、10mg/kg及び20mg/kgの3つの用量で用量依存的に腫瘍成長を阻害することができ、投与中、動物の体重の有意な減少は観察されず、耐性は良好である。
【0229】
アッセイ例6.SDラットにおけるインビボPK試験
1.アッセイの目的:
【0230】
雄SDラットをアッセイ動物として使用した。単回投与後、化合物の血漿濃度を測定し、薬物動態挙動を評価した。
【0231】
2.アッセイの手順:
【0232】
6匹の健康な成体雄SDラットを選択し、3匹のラットは静脈内注射群とし、3匹のラットは経口群とした。静脈内注射群のビヒクルは5%DMSO+95%(20%HP-β-CD)とした。アッセイする化合物を適当な量の静脈内注射用ビヒクルと混合し、ボルテックスし、超音波処理して、0.2mg/mLの透明な溶液を調製した。透明な溶液を微多孔膜で濾過してすぐに使用できるようにした。経口群のビヒクルは5%DMSO+95%(20%HP-β-CD)とした。アッセイする化合物をビヒクルと混合し、ボルテックスし、超音波処理して、1mg/mLの溶液を調製した。SDラットに1mg/kg静脈内投与又は10mg/kg経口投与を行った後、全血を一定期間採取した。血漿を調製した。LC-MS/MS法によって薬物濃度を分析し、Phoenix WinNonlinソフトウェア(Pharsight、米国)によって薬物動態パラメータを計算した。
【0233】
注釈:DMSO:ジメチルスルホキシド、HP-β-CD:ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
【0234】
3.アッセイ結果を表9に示す。
【0235】
【0236】
注釈:Cmaxは最大濃度であり、F%は経口バイオアベイラビリティであり、DNAUCはAUCPO/Doseであり、AUCPOは経口曝露であり、Doseは薬物用量であり、Vdssは分布容積であり、Clはクリアランス速度であり、T1/2は半減期である。
【0237】
結論:本開示の化合物は、優れた経口曝露及びバイオアベイラビリティを示す。
【0238】
アッセイ例7.カニクイザルにおけるインビボPK試験
1.アッセイの目的:
【0239】
雄カニクイザルをアッセイ動物として使用した。単回投与後、化合物の血漿濃度を測定し、薬物動態挙動を評価した。
【0240】
2.アッセイの手順:
【0241】
5匹の健康な成体雄カニクイザルを選択し、2匹の動物は静脈内注射群とし、3匹の動物は経口群とした。静脈内注射群のビヒクルは5%DMSO+95%(20%HP-β-CD)とした。アッセイする化合物を適当な量の静脈内注射用ビヒクルと混合し、撹拌しながら溶解して、0.4mg/mLの透明な溶液を調製した。透明な溶液を微多孔膜で濾過してすぐに使用できるようにした。経口群のビヒクルは5%DMSO+95%(20%HP-β-CD)とした。アッセイする化合物をビヒクルと混合し、撹拌しながら溶解して、0.3mg/mLの溶液を調製した。カニクイザルに1mg/kg静脈内投与又は3mg/kg経口投与を行った後、全血を一定期間採取した。血漿を調製した。LC-MS/MS法によって薬物濃度を分析し、Phoenix WinNonlinソフトウェア(Pharsight、米国)によって薬物動態パラメータを計算した。
【0242】
注釈:DMSO:ジメチルスルホキシド、HP-β-CD:ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
【0243】
3.アッセイ結果を表10に示す。
【0244】
【0245】
注釈:Cmaxは最大濃度であり、F%は経口バイオアベイラビリティであり、DNAUCはAUCPO/Doseであり、AUCPOは経口曝露であり、Doseは薬物用量であり、Vdssは分布容積であり、Clはクリアランス速度であり、T1/2は半減期である。
【0246】
結論:本開示の化合物は、優れた経口曝露及びバイオアベイラビリティを示す。
【0247】
アッセイ例8.ビーグル犬におけるインビボPK試験
1.アッセイの目的:
【0248】
雄ビーグル犬をアッセイ動物として使用した。単回投与後、化合物の血漿濃度を測定し、薬物動態挙動を評価した。
【0249】
2.アッセイの手順:
【0250】
5匹の健康な成体雄ビーグル犬を選択し、2匹は静脈内注射群とし、3匹は経口群とした。静脈内注射群のビヒクルは5%DMSO+95%(20%HP-β-CD)とした。アッセイする化合物を適当な量の静脈内注射用ビヒクルと混合し、撹拌しながら溶解して、0.4mg/mLの透明な溶液を調製した。透明な溶液を微多孔膜で濾過してすぐに使用できるようにした。経口群のビヒクルは5%DMSO+95%(20%HP-β-CD)とした。アッセイする化合物をビヒクルと混合し、撹拌しながら溶解して、0.3mg/mLの溶液を調製した。カニクイザルに1mg/kg静脈内投与又は3mg/kg経口投与を行った後、全血を一定期間採取した。血漿を調製した。LC-MS/MS法によって薬物濃度を分析し、Phoenix WinNonlinソフトウェア(Pharsight、米国)によって薬物動態パラメータを計算した。
【0251】
注釈:DMSO:ジメチルスルホキシド、HP-β-CD:ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
【0252】
【0253】
注釈:Cmaxは最大濃度であり、F%は経口バイオアベイラビリティであり、DNAUCはAUCPO/Doseであり、AUCPOは経口曝露であり、Doseは薬物用量であり、Vdssは分布容積であり、Clはクリアランス速度であり、T1/2は半減期である。
【0254】
結論:本開示の化合物は、優れた経口曝露及びバイオアベイラビリティを示す。
【0255】
アッセイ例9.hERGアッセイ
1.アッセイの目的:
【0256】
完全自動パッチクランプ法を用いて、hERGカリウムチャネル(ヒトEther-a-go-go Related Geneカリウムチャネル)電流に対する化合物の効果をアッセイした。
【0257】
2.アッセイの方法:
【0258】
2.1 細胞の調製
【0259】
CHO-hERG細胞を175cm2培養フラスコで培養した。細胞が60~80%の密度まで増殖したら、培養培地を除去した。細胞を7mLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で1回洗浄し、次いで、消化のために3mLのDetachinを添加した。消化終了後、7mLの培養培地を加えて中和した後、混合物を遠心分離した。上清を吸引し、次いで5mLの培養培地を添加して、細胞を再懸濁し、細胞密度が2~5×106/mLになるようにした。
【0260】
2.2 溶液の調製
【0261】
細胞外溶液製剤(mM):140NaCl、5KCl、1CaCl2、1.25MgCl2、10HEPES及び10グルコース;この製剤をNaOHでpH7.4に調整した。
【0262】
細胞内溶液製剤(mM):140KCl、1MgCl2、1CaCl2、10EGTA及び10HEPES;この製剤をKOHでpH7.2に調整した。
【0263】
2.3 電気生理学的記録プロセス
【0264】
単一細胞高インピーダンスシーリング及び全細胞パターン形成プロセスはすべて、Qpatch機器によって自動的に実行された。全細胞記録モードを得た後、細胞を-80mVでクランプした。細胞に50ミリ秒間-50mVのプレ電圧及び5秒間+40mVの脱分極刺激を順次印加し、次いで5秒間-50mVに再分極してから-80ミリボルトに戻した。この電圧刺激を15秒毎に印加し、2分間記録した。次いで、細胞外溶液を与え、5分間記録した。次いで、薬物投与プロセスを開始した。化合物濃度は最低アッセイ濃度から開始し、各アッセイ濃度を2.5分間与えた。すべての濃度を連続して与えた後、陽性対照化合物である3Mシサプリドを与えた。各濃度について少なくとも3個の細胞をアッセイした(n≧3)。
【0265】
2.4 化合物の製剤
【0266】
20.00mMの化合物の母液をDMSOで希釈した。化合物の母液10μLをDMSO溶液20μLに添加し、3倍に段階希釈して6種類のDMSO濃度にした。6種類のDMSO濃度を有する化合物4μLをそれぞれ396μLの細胞外溶液に添加し、100倍に段階希釈して6種類の中間濃度にした。6種類の中間濃度を有する化合物80μLをそれぞれ細胞外溶液320μLに添加し、5倍に段階希釈して、アッセイする最終濃度にした。最も高いアッセイ濃度は40μMであり、合計で6種類の濃度:それぞれ40、13.3、4.4、1.48、0.494及び0.165μMであった。最終アッセイ濃度におけるDMSO含有量は0.2%を超えなかった。この濃度のDMSOは、hERGカリウムチャネルに影響を及ぼさなかった。化合物の調製における全ての希釈は、Bravo機器によって行った。
【0267】
2.5 データ解析
【0268】
アッセイデータを、GraphPad Prism5.0ソフトウェアによって解析した。
【0269】
2.6 品質管理
【0270】
環境:湿度20~50%、温度22~25℃
【0271】
試薬:使用したアッセイ試薬はSigmaから購入し、純度は98%超であった。
【0272】
報告書のアッセイデータは、以下の基準を満たしていなければならない。
【0273】
全細胞シーリングインピーダンス>100MΩ
【0274】
テール電流振幅>300pA
【0275】
薬理学的パラメータ:
【0276】
hERGチャネルに対する複数の濃度のシサプリドの阻害効果を陽性対照として測定した。
【0277】
【0278】
結論:本開示の化合物は、hERGカリウムチャネル電流に対する弱い阻害効果を有し、それによって心毒性のリスクを低下させ、安全性を改善する。
【0279】
アッセイ例10.血漿タンパク質結合(PPB)アッセイ
1.アッセイの目的:
【0280】
アッセイ化合物のヒト/マウス/ラット/イヌ/サル血漿アルブミンへの結合度を試験した。
【0281】
2.アッセイの手順:
【0282】
1)マトリックスの調製:アッセイ当日に、血漿を冷水で解凍し、3220rpmで5分間遠心分離して、すべての血餅を除去した。得られた血漿のpHを測定し、必要に応じて1%リン酸又は1N水酸化ナトリウムを用いて7.4±0.1に調整した。
【0283】
2)アッセイ化合物の希釈手順:アッセイ化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して、それぞれ10mM及び2mMの濃度のストック溶液を調製した。2μLのストック溶液(2mM)を98μLのDMSOで希釈することによって、40μMの作業溶液を調製した。10μLのストック溶液を240μLのDMSOで希釈することによって、対照化合物の400μMの作業溶液を調製した。化合物の作業溶液(5μL)をブランクマトリックス(995μL)と1:200の比率でよく混合して、ローディングマトリックスを調製した。
【0284】
3)分析工程:
【0285】
a)等体積の30μLのローディングマトリックス(n=2)をサンプル回収プレートに移して、残留物測定のための時間0(T0)サンプルを調製した。サンプルを直ちに対応するブランク緩衝液と合わせて60μLの最終体積とし、各ウェル中の血漿対緩衝液の体積比を1:1とした。次いで、H2O中の4%H3PO460μL及び内部標準を含む停止溶液480μLを、アッセイ化合物のT0サンプルに添加した。次いで、さらなる処理のために2~8℃で他のサンプルと共に保管した。
【0286】
b)残りの血漿サンプルを、37±1℃の二酸化炭素インキュベーター内で30分間プレインキュベートした。タンパク質を含まないサンプル(Fサンプル)及びローディングマトリックスのサンプル(230μL)をすべてポリカーボネート管(n=2)に移し、37℃及び155,000×g(35,000rpm)で4時間超遠心分離した。
【0287】
c)Tサンプル(アッセイサンプル)を調製するために、追加のマトリックス含有サンプルを別の96ウェルプレート(サンプルインキュベーションプレート)に移し、37℃で4時間インキュベートした。
【0288】
d)遠心分離の終了時に、30μLのタンパク質を含まないサンプル及び30μLのTサンプルを上清の第二の層(最上層の下)から新しいサンプル回収プレートに移した。各サンプルを対応するブランク緩衝液又はマトリックスと混合して、最終体積を60μL、マトリックス:緩衝液の体積比を1:1とした。60μLの4%H3PO4水溶液及び480μLの停止溶液(内部標準を含む)をすべてのサンプルに添加した。混合物を4000rpmで20分間遠心分離し、各サンプルの上清100μLをLC-MS/MSによって分析した。
【0289】
【0290】
結論:本開示の化合物は、中程度から高い血漿タンパク質結合を有する。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物
【化1】
(式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H及びC
1~3アルキルから選択され、ここで、上記C
1~3アルキルは、任意選択で1、2又は3個のR
aで置換されており、
各R
4は、独立して、H、F、Cl、Br、I及びC
1~3アルキルから選択され、ここで、上記C
1~3アルキルは、任意選択で1、2又は3個のR
cで置換されており、
nは1及び2から選択され、
環Aは、ピラゾリル及びテトラヒドロピラニルから選択され、ここで、上記ピラゾリル及びテトラヒドロピラニルは、任意選択で1、2又は3個のR
dで置換されており、
R
a及びR
cは、それぞれ独立して、D、F、Cl、Br及びIから選択され、
R
dは、F、Cl、Br、I、C
1~3アルキル及びC
1~3アルコキシから選択され、ここで、上記C
1~3アルキル及びC
1~3アルコキシは、任意選択で1、2又は3個のRで置換されており、
Rは、F、Cl、Br及びIから選択される)
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
上記化合物が以下の定義:
i)R
1及びR
2が、それぞれ独立して、H、CH
3及びCH
2CH
3から選択され、ここで、上記CH
3及びCH
2CH
3が、任意選択で1、2又は3個のR
aで置換されている
こと;
ii)R
1
及びR
2
が、それぞれ独立して、H、CH
3
、CHF
2
、CD
3
及びCH
2
CH
3
から選択されること;
iii)R
4
が、独立して、H、F、Cl、Br、I及びCH
3
から選択され、ここで、上記CH
3
が、任意選択で1、2又は3個のR
c
で置換されていること;
iv)R
4
が、独立して、H、F、Cl、Br、I及びCH
3
から選択されること;
v)R
d
が、F、Cl、Br、I、CH
3
及びOCH
3
から選択され、ここで、上記CH
3
及びOCH
3
が、任意選択で1、2又は3個のRで置換されていること;
vi)R
d
が、CH
3
及びOCH
3
から選択されること;
vii)環Aが、
【化2】
から選択され、ここで、上記
【化3】
が、任意選択で1、2又は3個のR
d
で置換されていること;
viii)環Aが、
【化4】
から選択されること;
ix)構造部分
【化5】
が
【化6】
から選択されること;
x)構造部分
【化7】
が
【化8】
から選択されること;
xi)R
d
が、F、Cl、Br、I及びC
1~3
アルキルから選択され、ここで、上記C
1~3
アルキルが、任意選択で1、2又は3個のRで置換されていること;
xii)R
d
が、F、Cl、Br、I及びCH
3
から選択され、ここで、上記CH
3
が、任意選択で1、2又は3個のRで置換されていること;
xiii)R
d
がCH
3
から選択されること;
xiv)環Aが、
【化9】
から選択され、ここで、上記
【化10】
が、任意選択で1、2又は3個のR
d
で置換されていること;
のうち1つ以上を有する、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
上記化合物が、
【化11】
(式中、
R
2は、請求項
1に定義される通りであり、
R
4は、請求項
1に定義される通りである)
から選択される、請求項
1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
以下の化合物から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化12】
【請求項5】
固形腫瘍を治療するための医薬
組成物であって、請求項1か
ら4のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩
を含む医薬組成物。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0096
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0096】
反応フラスコに、カリウムtert-ブトキシド(4.83g、43.04mmol、2.5eq)及びテトラヒドロフラン(16mL)を添加した。雰囲気を窒素ガスで置換した。テトラヒドロフラン(16mL)にE-1-1(2g、17.22mmol、2.30mL、1eq)及びE-1-2(2.55g、34.44mmol、2.77mL、2eq)を溶解した溶液をゆっくり滴下した。混合物を25℃で3時間反応させた。反応が完了した後、混合物を濃縮してE-1-3を得た。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0250
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0250】
5匹の健康な成体雄ビーグル犬を選択し、2匹は静脈内注射群とし、3匹は経口群とした。静脈内注射群のビヒクルは5%DMSO+95%(20%HP-β-CD)とした。アッセイする化合物を適当な量の静脈内注射用ビヒクルと混合し、撹拌しながら溶解して、0.4mg/mLの透明な溶液を調製した。透明な溶液を微多孔膜で濾過してすぐに使用できるようにした。経口群のビヒクルは5%DMSO+95%(20%HP-β-CD)とした。アッセイする化合物をビヒクルと混合し、撹拌しながら溶解して、0.3mg/mLの溶液を調製した。ビーグル犬に1mg/kg静脈内投与又は3mg/kg経口投与を行った後、全血を一定期間採取した。血漿を調製した。LC-MS/MS法によって薬物濃度を分析し、Phoenix WinNonlinソフトウェア(Pharsight、米国)によって薬物動態パラメータを計算した。
【国際調査報告】