(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】TRIP鋼およびその作製方法、冷間圧延鋼板および溶融亜鉛メッキ鋼板
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240709BHJP
C22C 38/06 20060101ALI20240709BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C22C38/00 301S
C22C38/06
C21D9/46 G
C21D9/46 J
C22C38/00 301T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580529
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 CN2022102199
(87)【国際公開番号】W WO2023274281
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】202110727388.5
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 濛 瀟
(72)【発明者】
【氏名】鐘 勇
(72)【発明者】
【氏名】王 利
(72)【発明者】
【氏名】謝 爽
【テーマコード(参考)】
4K037
【Fターム(参考)】
4K037EA01
4K037EA06
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4K037FL01
4K037FL02
4K037GA05
4K037JA07
(57)【要約】
本発明では、TRIP鋼およびその作製方法、冷間圧延鋼板および溶融亜鉛メッキ鋼板が開示され、前記TRIP鋼は、質量パーセントで、以下の化学成分:C:0.15~0.3%、Si:0.6~1.0%、Mn:1.7~2.5%、Al:0.5~0.9%、P≦0.01%、S≦0.01%、N≦0.007%、Fe≧90%、を含む。本発明のTRIP鋼は、炭素ケイ素マンガン鋼を基礎とし、炭素とケイ素とマンガンとアルミニウムの割合を最適化させることにより、従来のTRIP鋼におけるSiが一部にAlで置き換えられることで、炭化物の析出が抑制され、残留オーステナイトが安定化され、TRIP鋼の力学的性質が確保されるとともに、鋼板の表面品質及びメッキ性が改善される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量パーセントで、以下の化学成分:C:0.15~0.3%、Si:0.6~1.0%、Mn:1.7~2.5%、Al:0.5~0.9%、P≦0.01%、S≦0.01%、N≦0.007%、Fe≧90%、を含む、TRIP鋼。
【請求項2】
C:0.15~0.3%、Si:0.6~1.0%、Mn:1.7~2.5%、Al:0.5~0.9%、P≦0.01%、S≦0.01%、N≦0.007%、残部がFeおよびその他の不可避的不純物、を含む、請求項1に記載のTRIP鋼。
【請求項3】
Cの含有量は0.17~0.23%である、請求項1に記載のTRIP鋼。
【請求項4】
Siの含有量は0.7~0.9%である、請求項1に記載のTRIP鋼。
【請求項5】
Mnの含有量は1.8~2.0%、請求項1に記載のTRIP鋼。
【請求項6】
Alの含有量は0.6~0.8%、請求項1に記載のTRIP鋼。
【請求項7】
前記TRIP鋼の金相組織は、体積分率で、38~58%のフェライト、30~50%のベイナイト、10~12%の残留オーステナイトおよび≦2%のマルテンサイトを含む、請求項1-6のいずれ一項に記載のTRIP鋼。
【請求項8】
前記TRIP鋼のフェライトのうち、10μm以下のフェライト結晶粒は80%以上を占め、そのうち、5μm以下のフェライト結晶粒は60%以上を占め、前記残留オーステナイトの平均結晶粒径は2μm以下であり、前記残留オーステナイト結晶粒の平均C含有量1wt%以上である、請求項7に記載のTRIP鋼。
【請求項9】
前記TRIP鋼は、降伏強度が420MPa以上であり、引張強度が800MPa以上であり、破断伸び率が25%以上であり、強度延性積は23GPa.%を超える、請求項1-6のいずれ一項に記載のTRIP鋼。
【請求項10】
前記TRIP鋼は、降伏強度が420~600MPaであり、引張強度が800~950MPaであり、破断伸び率が25%~35%であり、強度延性積が23GPa.%を超える、請求項1-6のいずれ一項に記載のTRIP鋼。
【請求項11】
以下の工程:
製錬、鋳造;
熱間圧延、巻取り;
冷間圧延;
連続焼鈍;
を含む、請求項1~10中のいずれ一項に記載のTRIP鋼の作製方法。
【請求項12】
前記作製方法におけるパラメータは、下記:
前記製錬、鋳造工程では、連続鋳造の過熱度は15~30℃とする;
前記熱間圧延工程では、スラブの加熱温度は1150~1250℃とし、仕上げ圧延終了温度は850~950℃とする;
前記巻取り工程では、巻取り温度は520~600℃とする;
前記冷間圧延工程では、冷間圧延圧下量は50~70%とする;
前記連続焼鈍工程では、まずは焼鈍保温温度800~860℃で60~200s保温し、さらに3~10℃/sの第一冷却速度で急冷開始温度690~730℃まで冷却し、さらに30~60℃/sの第二冷却速度で急冷終了温度350~450℃まで冷却し、そして200~400s保温する時効処理を行い、最後に2~10℃/sの第三冷却速度で150℃以下まで冷却する、
の少なくとも一つを満たすように制御される、請求項11に記載のTRIP鋼の作製方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載のTRIP鋼の作製工程、および溶融亜鉛メッキ処理工程を含む、溶融亜鉛メッキTRIP鋼板の作製方法。
【請求項14】
請求項1-10のいずれ一項に記載のTRIP鋼から作製された冷間圧延鋼板。
【請求項15】
請求項14に記載の冷間圧延鋼、板および前記冷間圧延鋼板の表面に形成された溶融亜鉛メッキ層を含む、溶融亜鉛メッキ鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金技術の分野に関し、特にTRIP鋼およびその作製方法、冷間圧延鋼板および溶融亜鉛メッキ鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車体軽量化の実現、省エネの達成、衝撃安全性の向上および製造コストの削減などの目的のため、自動車用の先端高張力鋼が広く利用されている。先端高張力鋼は、鋼板強度の向上により鋼板厚さが薄くなると同時に、優れた成形性能が保たれるため、現在では総合的な競争力が最も高い車体軽量化素材である。
【0003】
変態誘起可塑性(TRIP)効果に基づく先端高張力鋼では、高強度を保つと同時に、良好な延性も有する必要がある。顕微組織の観点から見ると、TRIP鋼はフェライト、ベイナイトおよび残留オーステナイトからなり、自動車のドア保護ロッド、バンパーおよびフロア構造部品の製造に主に使用される。
【0004】
TRIP鋼では、残留オーステナイトの体積分率および安定性は、力学的性質に影響を与える主な要因である。TRIP鋼では、残留オーステナイトを安定化させ、炭化物の析出を抑制することが重要である。従来のTRIP鋼は、主にSiを高添加することで炭化物の析出を抑制するが、Si含有量が高くなると、鋼材表面にSi酸化物の層が形成され、材料のメッキ性に大きな影響を与える。同時に、第一世代の先端高張力鋼の中で現在最も優れた強度延性を有するTRIP鋼でも、その強度延性は一般に20GPa.%以下である。強度延性をさらに向上させるために、第三世代の自動車用先進高張力鋼の設計主旨は、主に次の通りである:(1)多量のMnを添加してオーステナイト逆変態プロセスを達成し、成形性に優れるオーステナイトを得るが、材料コストが高くなり、製造が困難になり、かつ高すぎるMnは溶接性にも悪影響を与える;(2)焼入れ分布(QPプロセス)により一定量の残留オーステナイトを含むマルテンサイト鋼組織を得るが、これは焼鈍工程と装置に大きな課題をもたらす。
【0005】
例えば:中国発明特許CN201610867413.9には、20GPa.%を超える強度延性を備えた経済的な高強度冷間圧延TRIP鋼およびその製造方法が記載され、当該TRIP鋼の主な化学成分は、重量パーセントで、以下の成分:C:0.15~0.25%、Si:1.3~1.7%、Mn:1.5~2.5%、P:≦0.030%、S:≦0.020%、Al:0.02~0.06%、残部はFeおよび不可避的不純物、を含む。その製造方法には、製錬、熱間圧延、酸洗冷間圧延、連続焼鈍が含まれる。この方法で得られる材料は、強度延性には優れているが、Si含有量が高いため当該材料の表面品質が悪く、溶融亜鉛メッキ後の製品表面に色ムラが生じやすい。
【0006】
中国発明特許CN201310520998.3には、980MPa級の高強度延性の自動車用鋼板の熱処理工程が記載され、処理したTRIP780冷間圧延鋼板を焼き入れした後、一定温度に加熱して分布させることで、強度延性が26.3~26.8GPa.%になり、伸び率が23%以上になる980MPa級の高強度延性の自動車用鋼板を得る。その欠点は、急速焼入れおよび再分布工程には、高い装置の冷却および加熱性能が必要であり、現在の焼鈍装置ではその要件を完全に満たすことができない。
【0007】
中国発明特許CN200810119818.Xには、高強度冷間圧延溶融亜鉛メッキ用TRIP鋼板およびその作製方法が記載され、その利点は、低Siの成分設計で、メッキ性が良好である。しかし、Al含有量が高すぎるため連続鋳造生産が困難となり、安定したバッチ生産が難しくなると同時に、成分中のNb、Ti、Cu、Ni等の合金元素の添加で生産コストも増加するという欠点がある。
【0008】
中国発明特許CN201510596778.8には、TRIP鋼の表面品質を改善するための処理方法が記載され、これも、低Si(≦0.5%)、高Al(1~5%)の成分設計で、焼鈍温度範囲が従来のTRIP鋼より広いという利点があるが、高Alの成分設計のため、安定した連続鋳造生産が難しく、得られる製品は引張強度が低く(445~520MPa)、強度延性はわずか16~18GPa.%である。
【0009】
中国発明特許CN201510112679.8には、30GPa.%を超える強度延性を有する高Al中マンガン鋼の製造方法が記載され、当該TRIP鋼の利点は、高強度、高伸び率、低密度であり、車体軽量化のための材料選択を満たすことができるが、Mn、Al含有量が高すぎるため製造が困難になり、コストが高くなるという欠点がある。
【0010】
中国発明特許CN201110280804.8には、1000MPa級以上の冷間圧延TRIP鋼およびその製造方法が記載され、Nb、Vのマイクロ合金と組み合わせる高Si高Alの成分設計で、材料はRmが1000MPa以上である場合、伸び率A80が18%以上になる。しかし、高Si、高Al、高Mnの成分およびNb、Vのマイクロ合金のため、連続鋳造生産は困難であり、材料の生産コストも増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のTRIP鋼における高Si量による表面品質の低下、高Mn、Al量による連続鋳造生産過程の困難さ、及びNb、Ti、Cu、Ni、V等の合金元素の使用による生産コストの増加などという問題を解決するために、本発明は、従来のTRIP鋼におけるSiを一部Alに置き換え、且つC、Si、Mn及びAlの割合を最適化させることで、炭化物の析出を抑制し、残留オーステナイトを安定化させ、TRIP鋼の力学的性質を確保すると同時に、鋼板の表面品質及びメッキ性を改善し、加工の難しさおよび生産コストを削減することができる。
【0012】
本発明の目的の一つは、TRIP鋼の提供である。本発明の技術案で得られるTRIP鋼は、良好なメッキ表面品質および高強度延性を有する。具体的には、その降伏強度は420MPa以上であり、例えば420~600MPaであり、引張強度は800MPa以上であり、例えば800~950MPaであり、破断伸び率は25%以上であり、例えば25%~35%であり、強度延性は23GPa.%を超える。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のTRIP鋼は、質量パーセントで、以下の化学成分:C:0.15~0.3%、Si:0.6~1.0%、Mn:1.7~2.5%、Al:0.5~0.9%、P≦0.01%、S≦0.01%、N≦0.007%、Fe≧90%、を含む。
【0014】
さらに、本発明のTRIP鋼は、質量パーセントで、以下の化学成分およびそのパーセント含有量:C:0.15~0.3%、Si:0.6~1.0%、Mn:1.7~2.5%、Al:0.5~0.9%、P≦0.01%、S≦0.01%、N≦0.007%、残部がFeおよびその他の不可避的不純物、を含む。
【0015】
一実施形態では、本発明のTRIP鋼の均一延伸率(UEL)は18.5%以上、例えば18.5~26.0%である。
【0016】
本発明では、各元素の設計主旨は以下の通りである:
炭素(C):炭素は、鋼板/鋼帯の強度、溶接性および成形性に直接影響する。炭素含有量が高いほど、鋼板強度の向上に有利である。炭素含有量が0.15%未満であると、鋼板/鋼帯の強度が目標を満たさないが、炭素含有量が0.30%を超えると、炭素当量が高すぎ、鋼板の溶接性が悪化しやすくなる。同時に、Cは、オーステナイト安定化元素でもあり、一定量のCを含有するオーステナイトこそ、室温下でも安定に存在でき、TRIP効果で、材料の高強度延性の要求を満たすことができ。そのため、本発明では、炭素の質量パーセントは0.15~0.30%に、好ましくは、Cの含有量は0.17~0.23%に制御される。
【0017】
ケイ素(Si):ケイ素は、主に固溶体としてTRIP鋼中に存在してベイナイト変態におけるセメンタイトの形成を抑制する。同時に、Siは、フェライトに分布してCの化学ポテンシャルを高め、フェライトにおけるCのオーステナイト内部への拡散を促進する。それは、炭素を多く含む残留オーステナイトの形成が、TRIP効果が生まれる基本条件だからである。材料の優れる可塑性を確保するために、Si含有量は少なくとも0.6%以上である必要がある。しかし、Siは鋼板の表面品質を悪化させる元素でもあり、Siの含有量が1.0%を超えると、熱間圧延鋼板/鋼帯の表面にひどい熱間圧延酸化鉄皮膜が生成しやすく、鋼板/鋼帯の表面品質が悪化し、溶融亜鉛メッキ鋼板/鋼帯の生産に悪影響をもたらすだけでなく、鋼板/鋼帯のメッキ性も悪くなる。そのため、本発明では、ケイ素の質量パーセントは0.6~1.0%に、好ましくは、Siの含有量は0.7~0.9%に限定される。
【0018】
マンガン(Mn):本発明のTRIP鋼では、Mnは、オーステナイト相領域を拡大させ、MsおよびMfを減少させ、オーステナイト安定性および鋼の焼入れ性を向上させ、臨界変態速度を低下させ、残留オーステナイトの室温までの保存に有利であり、同時に重要な固溶強化元素でもある。ただし、注意する必要があるのは、鋼中のMn含有量が高すぎると、耐腐食性能や溶接性能が悪化し、同時に結晶粒の粗大化傾向が悪化し、鋼の可塑性と靱性が低下することである。そのため、本発明では、Mnの質量パーセントは1.70~2.50%に、好ましくは、Mnの含有量は1.8~2.0%に制御される。
【0019】
アルミニウム(Al):アルミニウムは、ケイ素に類似し、時効過程における炭化物の形成を抑制させて残留オーステナイトを安定化させることができるが、その効果はSiより弱い。Siとは異なるのは、Alは、鋼材の表面品質に悪影響がなく、溶融亜鉛メッキ製品の表面品質の改善に有利である。Alは、炭化物の形成を抑制する効果も有するので、TRIP鋼のメッキ性の改善のために、Alを添加してSiを一部に置き換えてもよい。また、Alは、Ac3点を大きく上昇でき、Al含有量が高すぎると、熱間圧延終了および仕上げ圧延温度はいずれも高める必要があり、同時に2相域での焼鈍温度も相応に高める必要がある。Alの質量パーセント含有量が0.9%を超えると、製鋼および連続鋳造過程に非常に不利であり、連続鋳造ノズルでのノジュールなどの問題が発生しやすくなる。そのため、優れた表面品質および良好な強度延性を両立するTRIP鋼を得るために、本発明では、SiとAlの複合添加で、SiをAlに置き換えることで上記目的を達成する。ただし、Al含有量が0.5%未満の場合、必要な強度延性を達成するために、より多くのSi(>1.0%)を添加する必要があり、製品の表面品質が低下し、色ムラ、赤い鉄の鱗などの欠陥が発生する。そのため、本発明では、Alの質量パーセントは0.5~0.9%に、好ましくは、Alの含有量は0.6~0.8%に制御される。
【0020】
リン(P)、硫黄(S)、窒素(N)は、鋼中の不純物元素であり、含有量が少ないほど鋼の純度が高く、性能が良くなる。そのうち、Pは一定の固溶強化の役割を果たし、炭化物の形成を抑制し、残留オーステナイトの安定性を向上させるのに有益であるが、Pの質量パーセントが高すぎると粒界が弱くなり、脆性が増加し、溶接性が悪化するため、Pの質量パーセントはP≦0.01%に制御される必要がある。Nについては、Nの質量パーセントが高すぎると、製鋼や連続鋳造が困難になり、介在物の制限にも不利であるため、本発明では、Nの質量パーセントはN≦0.007%に制御される。また、鋼中のS元素の質量パーセントが高すぎると、材料の可塑性が明らかに悪化するため、本発明では、Sの質量パーセントはS≦0.01%に制御される。
【0021】
さらに、本発明のTRIP鋼の金相組織は、体積分率で、38~58%のフェライト、30~50%のベイナイト、10~12%の残留オーステナイトおよび≦2%のマルテンサイトを含む。
【0022】
ベイナイト含有量が50%を超えると材料強度が高く可塑性が不足し、ベイナイト含有量が30%未満では強度が不足し可塑性が溢れるため、本発明では、ベイナイトの体積分率は30~50%に制御される。材料の優れた強度延性には残留オーステナイト含有量が重要であり、残留オーステナイトの体積分率を10~12%に制御されることで、一定のTRIP効果を発揮し、鋼の強度延性を向上させる。マルテンサイトの体積分率を低く制御することで、材料の優れた強度延性を確保できる。
【0023】
さらに、本発明のTRIP鋼のフェライトのうち、10μm以下のフェライト結晶粒は80%以上を占め、そのうち5μm以下のフェライト結晶粒は60%以上を占める。残留オーステナイトの平均結晶粒径は2μm以下であり、残留オーステナイト結晶粒の平均C含有量は1wt%以上である。
【0024】
さらに、本発明のTRIP鋼は、降伏強度が420MPa以上、例えば420~600MPaであり、引張強度は800MPa以上、例えば800~950MPaであり、破断伸び率は25%以上、例えば25%~35%であり、強度延性積は23GPa.%を超える。
【0025】
本発明のもう一つ目的は、以下の工程:
製錬、鋳造;
熱間圧延、巻取り;
冷間圧延;
連続焼鈍。
【0026】
を含む、上記TRIP鋼の作製方法の提供である
さらに、上記製錬、鋳造工程では、連続鋳造の過熱度は15~30℃に制御される。
【0027】
連続鋳造過程において、溶鋼の連続注湯を円滑に進めるためには、溶鋼にある程度の過熱度が必要である。過熱度が15℃未満であると、溶鋼を安定して連続注湯することができず、過熱度が30℃を超えると、スラブ中心部の内部品質が悪化し、偏析や引け巣などの欠陥が発生しやすくなる。
【0028】
さらに、上記熱間圧延工程では、スラブの加熱温度は1150~1250℃に、仕上げ圧延終了温度は850~950℃に制御される。
【0029】
熱間圧延過程では、材料を軟化させ、成分を均一に拡散させるために、鋳造スラブは、まず、一定期間で、完全オーステナイトゾーンで高温で加熱される。中間スラブの板厚規定まで粗圧延した後、加熱炉内で発生した粗大組織が破壊・微細化され、仕上げ圧延により必要な板厚まで圧延され、均一で緻密な再結晶材組織が形成される。仕上げ圧延終了温度が850℃未満であると、仕上げ圧延前にフェライトが析出し、最終組織中のベイナイト含有量が低下し、熱間圧延強度が不足し、その後の冷間圧延焼鈍性に影響を与える。スラブの加熱温度の上限や圧延過程での温度降下を考慮すると、仕上げ圧延終了温度は通常950℃を超えない。
【0030】
さらに、上記巻取り工程では、巻取り温度は520~600℃とする。
さらに、上記冷間圧延工程では、冷間圧延圧下量は50~70%とする。
【0031】
熱間圧延巻取り温度は、熱間圧延の特性に影響を与える最も重要な工程の一つである。巻取り温度が600℃を超えると、鋼板表面にSi、Mnの内部酸化が起こりやすくなり、酸洗により表面破砕層が形成され、最終製品の表面品質に影響を与える。巻き取り温度が520℃未満であると、熱間圧延強度が高すぎるため、その後の冷間圧延に不利で、過度の変形抵抗が生じる。熱間圧延コイル表面の酸化鉄皮膜を除去するために酸洗した後に、50~70%の冷間圧延圧下量で鋼板を目標厚さにし、一定の変形エネルギーが蓄積され、その後の焼鈍と再結晶に有益となる。
【0032】
さらに、上記連続焼鈍工程では、まずは鋼板/鋼帯を焼鈍保温温度800~860℃で60~200s保温し、さらに3~10℃/sの第一冷却速度で急冷開始温度690~730℃まで冷却し、さらに30~60℃/sの第二冷却速度で急冷終了温度350~450℃まで冷却し、そして200~400s保温する時効処理を行い、最後に2~10℃/sの第三冷却速度で150℃以下まで冷却する。
【0033】
冷間圧延後の変形組織は、2相域で800~860℃の焼鈍保持温度で60~200s焼鈍される。当該過程の主な目的は、冷間圧延後の鋼板の組織を再結晶させることであるが、温度が低すぎると鋼板組織の再結晶が不完全となり、温度が高すぎると鋼板組織が粗大化して析出物が分解し、鋼板の強度が低下する。そのため、本発明では、焼鈍保温温度を800~860℃に制御される。当該過程の時間制御も重要で、時間が短すぎると鋼板組織の再結晶が不完全となり、オーステナイト安定化元素(C、Mn)の拡散が不十分になり、時間が長すぎると鋼板組織の結晶粒が異常に粗大化して析出物の分解などの異常状態が発生しやすくなるため、焼鈍保持時間は60~200sに制御される。この過程では、鋼板組織の一部がオーステナイト化され、フェライト中のC、Mnなどのオーステナイト安定化元素がオーステナイトに移行する。
【0034】
次に、保温後の鋼帯は、第一冷却速度3~10℃/sで690~730℃までゆっくり冷却される。当該過程では、鋼板組織中のオーステナイトの一部がフェライトに変化し、C、Mnなどの元素がさらにオーステナイト中に濃化する。
【0035】
最後に、送風により徐冷した鋼帯を第二冷却速度30~60℃/sで350~450℃まで急冷し、次に、200~400s保温する時効処理を行う。この過程では、冷却速度が遅すぎるとパーライトの生成が招かれ鋼板の性能が低下し、冷却速度が速すぎると製造の困難さや製造コストの増加につながるため、第二冷却速度は30~60℃/sに制御される。時効過程では、オーステナイトの一部がベイナイトに変態し、鋼帯の強度が向上する。相変態後、ベイナイト中の炭素がベイナイト変態しないオーステナイトに移行し、オーステナイトを室温まで安定に保存させる。当該段階では、残留オーステナイトの炭素含有量、体積分率、分布サイズが決定され、最終製品の性能に決定的な影響を与える。時効処理した後の鋼帯は、最終的に第三冷却速度2~10℃/sで150℃以下まで冷却される。当該温度以下では素鋼の組織相変態が起こらなくなる。この過程では、時効過程中に残った残留オーステナイトが最終冷却過程で新しいマルテンサイトを形成し、鋼帯の可塑性に影響を与えるのを防ぐために、冷却速度が速すぎてはならない。
【0036】
さらに、上記TRIP鋼の作製方法は、溶融亜鉛メッキ処理工程を含む。
本発明のもう一つの目的は、上記TRIP鋼から作製された冷間圧延鋼板の提供である。
【0037】
例えば、鋼板/鋼帯を、製錬、鋳造;熱間圧延、巻取り;冷間圧延;連続焼鈍の工程を経て、冷間圧延鋼板を得る。
【0038】
本発明のもう一つの目的は、上記冷間圧延鋼板、および冷間圧延鋼板の表面に形成された溶融亜鉛メッキ層を含む溶融亜鉛メッキ鋼板の提供である。
【0039】
例えば、本発明の時効処理を行った鋼帯に溶融亜鉛メッキ処理を施し、ベイナイト変態を完了した鋼帯を亜鉛釜に浸漬して表面亜鉛メッキを施すことにより、溶融亜鉛メッキ焼鈍鋼板を得る。
【0040】
一実施形態では、本発明は、さらに、溶融亜鉛メッキ鋼板の作製方法を提供する。それは、本発明のいずれかの実施形態に記載のTRIP鋼の作製工程および溶融亜鉛メッキ処理工程を含む。さらに、本文に記載の時効処理を行ったTRIP鋼帯を亜鉛釜に浸漬して表面亜鉛メッキを施すことにより、前記溶融亜鉛メッキ鋼板を作製する。
【0041】
上記冷間圧延鋼板および溶融亜鉛メッキ鋼板の顕微組織は、いずれもフェライト、ベイナイト、残留オーステナイト及び微量なマルテンサイト相を含み、そのうちベイナイトの含有量は30~50%であり、残留オーステナイトの含有量は10~12%であり、マルテンサイトの含有量は2%以下であり、残りはフェライト相である。冷間圧延鋼板および溶融亜鉛メッキ鋼板は、力学的性質に大差がない。
【0042】
本発明による有益な効果は以下の通りである:
1、本発明に記載のTRIP鋼は、炭素ケイ素マンガン鋼を基礎とし、炭素とケイ素とマンガンとアルミニウムの割合が最適化され、従来のTRIP鋼におけるSiが一部にAlで置き換えられることで、炭化物の析出が抑制され、残留オーステナイトが安定化され、TRIP鋼の力学的性質が確保されるとともに、鋼板の表面品質及びメッキ性が改善される。本発明の元素組成では、高Si含有量のTRIP鋼溶融亜鉛メッキ製品に遍在する色ムラ、メッキ漏れ等の表面欠陥問題が解決される。
【0043】
2、本発明では、最も基本的なC、Si、Mn、Al元素以外に、Ti、Nb、Cr、Mo等のその他のいずれの高価な合金元素も添加されない。TRIP鋼の総合的な力学的性質および良好な表面メッキ性が確保される上で、原料の生産コストが最大限に低減され、鋼材の適用性が高まり、市場の促進に適し、良好な汎用の見通しを持つ。
【0044】
3、本発明では、仕上げ圧延終了温度、巻取り温度および連続焼鈍過程での温度及び冷却速度を正確に制御することにより、最終的に得られる冷間圧延鋼板及び溶融亜鉛メッキ鋼板は適切な組織分布および結晶粒径を有し、混晶や結晶粒粗大化等の現象による鋼の力学的性質への影響が避けられる。
【0045】
4、本発明の技術案では、良好な表面品質および総合的な力学的性質を有するTRIP鋼が得られる。当該鋼の組織は、体積分率で、38~58%のフェライト、30~50%のベイナイト、10~12%の残留オーステナイトおよび≦2%のマルテンサイトを含み、そのうち10μm以下のフェライト結晶粒は80%以上を占め、そのうち5μm以下のフェライト結晶粒は60%以上を占め、残留オーステナイトの平均結晶粒径は2μm以下であり、残留オーステナイト結晶粒の平均C含有量は1wt%以上である。当該TRIP鋼は、降伏強度は420MPa以上(例えば420~600MPa)であり、引張強度は800MPa以上(例えば800~950MPa)であり、破断伸び率は25%以上(例えば25%~35%)であり、強度延性積は23GPa.%を超える。
【0046】
図面は具体的な実施例を示すが、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、本発明の実施例7のTRIP鋼の微視組織形態図を示す;
【
図2】
図2は、本発明の実施例7のTRIP鋼の鋼金相組織EBSD図を示す;
【
図3】
図3は、本発明の実施例7のTRIP鋼の溶融亜鉛メッキ製品の表面形態図を示す;
【
図4】
図4は、本発明の比較例2のTRIP鋼の溶融亜鉛メッキ製品の表面形態図を示す;
【
図5】
図5は、本発明の比較例1のTRIP鋼の溶融亜鉛メッキ製品の表面形態図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態について特定の具体的な実施例を挙げて説明するが、当業者であれば、本明細書に開示された内容から、本発明のその他の利点や効果を安易に理解できる。本発明を好ましい実施例に関連して説明するが、これは本発明の特徴がこの実施形態のみに限定される意味ではない。逆に、実施形態と併せて本発明を説明する目的は、本発明の請求の範囲に基づいて延びられる他の選択や改変をカバーするためである。本発明に対する深い見解を提供するために、以下の説明は、数多くの具体的な詳細を含んている。本発明は、これらの詳細がなくてもに実施できる。また、本発明の重点の曖昧化を避けるために、いくつかの具体的な詳細が説明から省略される。矛盾しない限り、本発明の実施例および実施例における特徴は互いに組み合わせることができる。
【0049】
実施例1-20および比較例1-3
本発明では、実施例1-20のTRIP鋼を以下の工程で作製した:
工程1、製錬、連続鋳造:表1に示される化学成分に従って製錬し、連続鋳造により、スラブに鋳造した。連続鋳造では、タンディッシュの目標温度は液相線温度より15~30℃高い温度に制御され、かつ注湯過程では、動的軽圧下および電磁撹拌を行った。
【0050】
工程2、鋼スラブの熱間圧延:スラブの加熱温度は1150~1250℃とした。粗圧延後、仕上げ圧延で求められる厚さまで圧延した。仕上げ圧延終了温度は850~950℃とした。
【0051】
工程3、圧延後冷却、巻取り:圧延後では、水冷を行い、巻取り温度は520~600℃とした。
【0052】
工程4、酸洗いで酸化鉄皮膜を除去した。
工程5、冷間圧延:50~70%の圧下量で求められる厚さまで上記熱間圧延スラグを冷間圧延した。
【0053】
工程6、連続焼鈍、溶融亜鉛メッキ:焼鈍保温温度800~860℃で60~200s保温し、さらに3~10℃/sの第一冷却速度冷で急冷開始温度690~730℃まで冷却し、一定の割合のフェライトを得た。さらに、30~60℃/sの第二冷却速度で急冷終了温度350~450℃まで急冷した。そして、200~400s保温する時効処理を行った。時効処理の後に、鋼帯/鋼板に対し溶融亜鉛メッキ処理を行った。最後に第三冷却速度2~10℃/sで150℃以下まで冷却し、溶融亜鉛メッキ焼鈍鋼板の製品を得た。
【0054】
比較例1-3のTRIP鋼も、製錬、連続鋳造、熱間圧延、巻取り、冷間圧延、連続焼鈍および溶融亜鉛メッキ工程により作製され、鋼における化学成分および作製過程のパラメータは表1-2に示される。
【0055】
表1には、実施例および比較例のTRIP鋼における各化学元素の質量パーセントが示される。
【0056】
【0057】
表2-1と表2-2には、実施例1-20のTRIP鋼および比較例1-3の比較鋼の具体的なパラメータが示される。
【0058】
【0059】
【0060】
表3には、実施例1-20および比較例1-3のTRIP鋼の力学的性質測定結果が示される。ISO 6892:1998(金属材室温引張試験法)、P14(A50)引張サンプル標準で測定された。
【0061】
【0062】
表3からわかるように、本実施例1-20のTRIP鋼は、強度が確保されると同時に、可塑性も非常に優れ、降伏強度は420~600MPaであり、引張強度は800~950MPaであり、破断伸び率は25%~35%である。同時に、前記材料の強度延性は23GPa.%を超え、最高には28GPa.%までにいたる。
【0063】
表4には、実施例1-20のTRIP鋼の顕微組織観察結果が示される。
【0064】
【表4】
表3および表4からわかるように、本発明実施例1-20のTRIP鋼の顕微組織は、体積分率で、38~58%のフェライト+30%~50%のベイナイト+10%~12%の残留オーステナイト+微量マルテンサイト(≦2%)であり、フェライトのうち、10μm以下の結晶粒が80%以上を占め、そのうち、5μm以下の結晶粒が60%以上を占め、残留オーステナイトの平均結晶粒径は2μm以下であり、残留オーステナイト結晶粒の平均C含有量は1wt%以上である。つまり、本発明の各実施例のTRIP鋼は、一定量の微細結晶粒フェライトを有し、そして良好な組織均一性を有する。同時に、本発明のTRIP鋼は、高い含有量で残留オーステナイトを含有するため、変形中のTRIP効果が確保され、各実施例のTRIP鋼は、引張強度が800MPa以上であると同時に、きわめて良好な可塑性を有することができる。
【0065】
鋼種成分システムには、SiをAlに置き換えるという設計概念を採用して鋼組成におけるSi含有量を低減させることで、鋼材の表面品質を大幅に高め、高Si含有量の溶融亜鉛メッキ製品に遍在する色ムラ、メッキ漏れ等の表面欠陥問題を解決できる。
図3および
図4には、実施例7と比較例2で製造された溶融亜鉛メッキ製品の表面品質がそれぞれ示され、比較すれば、実施例7で表面品質が明らかに改善され、比較例2で板幅の中心部に存在する典型的な色ムラの表面欠陥がないことがわかる。同時に、
図5には、比較例1で製造された溶融亜鉛メッキ製品の表面品質が示され、そのSi含有量が低いものの、比較例1で製造時に用いられた熱間圧延の巻き取り温度が高すぎるため、表面色ムラの欠陥が表れた。
【0066】
図1は、実施例7のTRIP鋼の微視組織形態図を示す。
図2は、実施例7のTRIP鋼の金相組織EBSD図を示す。
【0067】
図1および
図2を組み合わせると、実施例7のTRIP鋼の顕微組織は、54.43%のフェライト+33.10%のベイナイト+10.60%の残留オーステナイト+1.87%のマルテンサイトであり、フェライトのうち、10μm以下の結晶粒が93.24%を占め、5μm以下の結晶粒が62.88%を占め、残留オーステナイトの平均結晶粒径が1.6μmである;及び/または残留オーステナイトのうち、平均C含有量が1.18wt%であることが分かる。当該TRIP鋼は、良好な総合的力学的性質を有する。具体的に、その降伏強度は495MPaであり、引張強度は821MPaであり、均一伸び率は24.9%であり、破断伸び率は33.1%であり、強度延性積は27.18GPa.%である。
【0068】
このように、本発明に記載のTRIP鋼は、炭素ケイ素マンガン鋼を基礎とし、鋼板の表面品質及びメッキ性を改善するために、一定のAlを添加してSiをAlに置き換えるとともに、他のいずれの高価な合金元素も添加せずに、従来のTRIP鋼に一般的に採用されるSi含有量を大幅に低減させる。炭素とケイ素とマンガンとアルミニウムの割合を最適化することで、優れた表面品質を有する高強度延性の冷間圧延鋼板およびその溶融亜鉛メッキ製品を得た。本発明の技術案で得られるTRIP鋼は、同様な強度条件下で、より優れた伸び率を有するため、自動車安全構造品への応用の見通しが良好であり、特に複雑な形状を有し、成形性能に高い要求を有する車両構造品や安全品、例えばA/Bピラー、ドア衝突防止バー、縦ビーム、バンパーなどの製造に適す。
【0069】
本発明の特定の好ましい実施形態を参照して本発明を図示し、説明してきたが、当業者であれば、上記の内容は具体的な実施形態と併せて本発明をさらに詳細に説明したものであり、本発明の実施はこれに限らないことを理解されたい。当業者は、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、単純な推定または変更を行うことも含めて、形式および詳細において様々な変更を加えてもよい。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量パーセントで、以下の化学成分:C:0.15~0.3%、Si:0.6~1.0%、Mn:1.7~2.5%、Al:0.5~0.9%、P≦0.01%、S≦0.01%、N≦0.007%、Fe≧90%、を含む、TRIP鋼。
【請求項2】
C:0.15~0.3%、Si:0.6~1.0%、Mn:1.7~2.5%、Al:0.5~0.9%、P≦0.01%、S≦0.01%、N≦0.007%、残部がFeおよびその他の不可避的不純物、を含む、請求項1に記載のTRIP鋼。
【請求項3】
Cの含有量は0.17~0.23%である、請求項1に記載のTRIP鋼。
【請求項4】
Siの含有量は0.7~0.9%である、請求項1に記載のTRIP鋼。
【請求項5】
Mnの含有量は1.8~2.0%、請求項1に記載のTRIP鋼。
【請求項6】
Alの含有量は0.6~0.8%、請求項1に記載のTRIP鋼。
【請求項7】
前記TRIP鋼の金相組織は、体積分率で、38~58%のフェライト、30~50%のベイナイト、10~12%の残留オーステナイトおよび≦2%のマルテンサイトを含む、請求項
1に記載のTRIP鋼。
【請求項8】
前記TRIP鋼のフェライトのうち、10μm以下のフェライト結晶粒は80%以上を占め、そのうち、5μm以下のフェライト結晶粒は60%以上を占め、前記残留オーステナイトの平均結晶粒径は2μm以下であり、前記残留オーステナイト結晶粒の平均C含有量1wt%以上である、請求項7に記載のTRIP鋼。
【請求項9】
前記TRIP鋼は、降伏強度が420MPa以上であり、引張強度が800MPa以上であり、破断伸び率が25%以上であり、強度延性積は23GPa.%を超える、請求項
1に記載のTRIP鋼。
【請求項10】
前記TRIP鋼は、降伏強度が420~600MPaであり、引張強度が800~950MPaであり、破断伸び率が25%~35%であり、強度延性積が23GPa.%を超える、請求項
1に記載のTRIP鋼。
【請求項11】
以下の工程:
製錬、鋳造;
熱間圧延、巻取り;
冷間圧延;
連続焼鈍;
を含む、請求項1~10中のいずれ
か一項に記載のTRIP鋼の作製方法。
【請求項12】
前記作製方法におけるパラメータは、下記:
前記製錬、鋳造工程では、連続鋳造の過熱度は15~30℃とする;
前記熱間圧延工程では、スラブの加熱温度は1150~1250℃とし、仕上げ圧延終了温度は850~950℃とする;
前記巻取り工程では、巻取り温度は520~600℃とする;
前記冷間圧延工程では、冷間圧延圧下量は50~70%とする;
前記連続焼鈍工程では、まずは焼鈍保温温度800~860℃で60~200s保温し、さらに3~10℃/sの第一冷却速度で急冷開始温度690~730℃まで冷却し、さらに30~60℃/sの第二冷却速度で急冷終了温度350~450℃まで冷却し、そして200~400s保温する時効処理を行い、最後に2~10℃/sの第三冷却速度で150℃以下まで冷却する、
の少なくとも一つを満たすように制御される、請求項11に記載のTRIP鋼の作製方法。
【請求項13】
請求項1
1に記載のTRIP鋼の作製工程、および溶融亜鉛メッキ処理工程を含む、溶融亜鉛メッキTRIP鋼板の作製方法。
【請求項14】
請求項1-10のいずれ
か一項に記載のTRIP鋼から作製された冷間圧延鋼板。
【請求項15】
請求項14に記載の冷間圧延鋼、板および前記冷間圧延鋼板の表面に形成された溶融亜鉛メッキ層を含む、溶融亜鉛メッキ鋼板。
【国際調査報告】