(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】高い連続電流及び非常に高い短絡回路電流を伝導するスイッチング装置
(51)【国際特許分類】
H01H 31/02 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
H01H31/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580729
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2022063575
(87)【国際公開番号】W WO2023001427
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021118585.8
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514122166
【氏名又は名称】シャルトバウ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001346
【氏名又は名称】弁理士法人MM&A
(72)【発明者】
【氏名】クネーベル、イェンズ
(57)【要約】
本発明は、高い連続電流及び非常に高い短絡回路電流を伝導するスイッチング装置(1)に関する。本発明は、従来技術から知られている問題を回避し、特に、分離されていない状態、すなわち接触状態にあるときに、溶着することなく、高い連続電流及びさらに高い短絡電流を流すことができるスイッチング装置を提供するという課題を解決する。上記課題を解決する本発明に係るスイッチング装置(1)は、少なくとも2つの接触位置(9、10)を備え、接触位置のそれぞれは、可動接触子(11)及び固定接触子(12)を備え、接触位置(9、10)の可動接触子及び固定接触子の一方は、ソケット(13)内に形成され、他方は、ソケット(13)内で支持可能なピン(14)に形成され、接触位置(9、10)の可動接触子(11)は共通部品として形成され、接触位置(9、10)の少なくとも1つにおいて接触子(12)の1つは複数のリブ(26)を備えることで、接触位置(9、10)において複数の接点が形成され、リブは接触用薄板部の形である別の部品であり、前記別の部品は、接触位置のそれぞれにおいて対応する接触部に配置され、接触用薄板部は高電流接点用ストリップ(27)の形であり、高電流接点用ストリップは、2つの境界フランジ(28)を有する柔軟性のあるキャリアストリップ(30)と、境界フランジ(28)に対して垂直であり且つ境界フランジ(28)に接続された複数の接触ウェブ(29)とを備え、接触ウェブ(29)には接触片(31)が固定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの接触位置(9、10)において高い連続電流及び非常に高い短絡回路電流を伝導するスイッチング装置(1)であって、
前記接触位置のそれぞれは、可動接触子(11)及び固定接触子(12)を備え、
前記接触位置(9、10)の前記可動接触子及び前記固定接触子の一方は、ソケット(13)内に形成され、他方は、前記ソケット(13)内で支持又は収容可能なピン(14)に形成され、
前記接触位置(9、10)の前記可動接触子(11)は、共通部品として形成され、
前記接触位置(9、10)の少なくとも1つにおいて前記接触子(12)の1つは、複数のリブ(26)を備えることで、前記接触位置(9、10)において複数の接点が形成され、
前記リブは、接触用薄板部の形である別の部品であり、
前記別の部品は、前記接触位置のそれぞれにおいて対応する接触部に配置され、
前記接触用薄板部は、高電流接点用ストリップ(27)の形であり、
前記高電流接点用ストリップは、2つの境界フランジ(28)を有する柔軟性のあるキャリアストリップ(30)と、前記境界フランジ(28)に対して垂直に延在し且つ前記境界フランジ(28)に接続された複数の接触ウェブ(29)とを備え、
前記接触ウェブ(29)には、接触片(31)が固定されている
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング装置(1)において、
前記少なくとも2つの接触位置(9、10)の前記固定接触子(12)のそれぞれはソケット(13)の形であり、
前記少なくとも2つの接触位置(9、10)の前記可動接触子(11)は共通のピン(14)に形成される
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項3】
請求項2に記載のスイッチング装置(1)において、
少なくとも1つの第3接触位置が形成され、
前記第3接触位置は、ソケットとして構成される固定接触子と、可動接触子とを有し、
前記第3接触位置の前記可動接触子も、前記共通のピンに形成される
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のスイッチング装置(1)において、
前記ピン(14)は、各スイッチング位置における前記ソケット(13)の少なくとも1つに支持又は収容される
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項5】
請求項1に記載のスイッチング装置(1)において、
前記キャリアストリップ(30)はばね鋼製であり、前記接触片(31)は銅製である
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のスイッチング装置(1)において、
2つの接触部の一方は、前記接触位置の少なくとも1つにおいて且つ前記ソケット及び前記ピンの長手方向において互いに隣り合って配置された2つのリブを有する
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のスイッチング装置(1)において、
前記ピン(14)は、前記ピン(14)の長手方向に延在し且つセンタリングボルト(20)と係合する中央孔(33)を有する
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項8】
請求項2~7のいずれかに記載のスイッチング装置(1)において、
前記ソケット(13)のそれぞれは、中実ブロック(15)に支持又は収容される
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項9】
請求項8に記載のスイッチング装置(1)において、
前記中実ブロック(15)のそれぞれは、接続端子(16)に対して導電可能に接続される
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項10】
請求項2~9のいずれか1項に記載のスイッチング装置(1)において、
前記ピン(14)は、少なくとも1つの、好ましくは2つのシリンダ(19)により移動可能である
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のスイッチング装置(1)において、
前記スイッチング装置は、ノーマルオープン接点方式、若しくはノーマルクローズ接点方式、又は切換接点方式として構成される
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のスイッチング装置(1)において、
前記スイッチング装置は、手動式断路器として構成される
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い連続電流及び非常に高い短絡回路電流を伝導するスイッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DE 66 08 223 Uによれば、最大2000A以下の連続電流を伴う高い連続電流負荷用の接点構成が既に知られている。この接点構成は、静止接触片と円筒状スイッチングピンで構成される。静止接触片は、接点用筐体に対して移動可能に配置されて所定の要素に接続される。この要素は、接点構成を電流が流れるときに加熱して膨張又は収縮し、それによって静止接触片を停止位置から変位、回転又は傾斜させる。静止接触片がこのような移動を行っている際、互いに接触している接触面の間では摺動が起こり、電流を妨げる酸化皮膜が破壊され、接触抵抗が低下する。
【0003】
US 4,039,786は、ピン状又は棒状の可動接触アームを備えた超高速動作スイッチを開示している。接触アームは管状ガイド内を移動可能に案内される。接触アームは、リレーに接続された駆動ロッドによって移動可能であり、固定接触子に当接させることができる。固定接触子は、スリーブ状である。また、固定接触子は、接触アームに面する端部において、複数の平行な可撓性フィンガーを有し、これらのフィンガーに接触アームの丸みを帯びた端部を収容することができる。管状ガイドは、金属板によって外部接続ケーブルに接続され、固定接触子は、外部クランプに接続される。
【0004】
DE 718 554 Aは、ガス絶縁開閉器、すなわち、流れる加圧媒体によるアーク消火を伴う電気スイッチを開示している。スイッチは、ピンとして構成された可動接触子を備え、この可動接触子は固定接触子と当接させることができる。加えて、可動接触子は中間接触子に案内されて、集合接触子に接続される。スイッチの閉位置において、可動接触子は中間接触子を貫通して延在し、固定接触子に収容される。スイッチが開位置のとき、可動接触子は後退され、集合接触子にのみ案内される。
【0005】
EP 2 525 455 A1は、バス一体型ディスコネクタを備えたガス絶縁開閉器を開示している。バス一体型ディスコネクタは、可動側方接触部に案内されるピン状の可動接触子を有する。可動接触子は、レバー要素を介して移動させることが可能であり、固定側方接触部と当接させることができる。これは電気的に接続された状態又は閉状態を表す。可動接触子は固定側方接触部から再び後退させることができ、その結果、ディスコネクタは電気的に切断された状態になる。
【0006】
US 2016/0035501 A1には、絶縁ガスで満たされた容器内において対向配置された固定電極及び可動電極と、固定電極及び可動電極を電気的に接続する棒状の可動導体とを備えるガス絶縁電力スイッチング装置が開示されている。固定電極及び可動電極は、そこを通って可動導体に電流が流れる接触子を有する。固定電極及び可動電極はリング状の摺動体を有し、リング状の摺動体は接触子の両側に配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スイッチング装置は、短絡強度が不足していることが知られている。短絡が発生すると、その装置は破壊された結果使用できず、交換を要するしなければならないことがある。
【0008】
従って、本発明の目的は、従来技術から知られている問題を回避するスイッチング装置、具体的には、非分離状態(すなわち接触状態)において、溶着することなく高い連続電流及びさらに高い短時間電流を流すことができるスイッチング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、独立請求項1の特徴部により解決される。当該特徴部によれば、高い連続電流及び非常に高い短絡回路電流を伝導するスイッチング装置が本発明に係る以下の課題可決手段を備える。すなわち、スイッチング装置は、少なくとも2つの接触位置を有する。前記接触位置のそれぞれは、可動接触子及び固定接触子を備える。前記接触位置の前記可動接触子及び前記固定接触子の一方は、ソケット内に形成され、他方は、前記ソケット内で支持可能なピンに形成される。前記接触位置の前記可動接触子は、共通部品として形成される。前記接触位置の少なくとも1つにおいて前記接触子の1つが複数のリブを備えることで、前記接触位置において複数の接点が形成される。前記リブは、接触用薄板部(contact lamemmae)の形である別の部品である。前記別の部品は、前記接触位置のそれぞれにおいて対応する接触部に配置される。前記接触用薄板部は、高電流接点用ストリップ(細長片)の形である。前記高電流接点用ストリップは、2つの境界フランジを有する柔軟性のあるキャリアストリップと、前記境界フランジに対して垂直であり且つ前記境界フランジに接続された複数の接触ウェブとを備える。前記接触ウェブには、接触片が固定されている。
【0010】
本発明に係るこの解決手段によれば、スイッチング装置は、接触状態の接触位置において、接触部を溶着することなく、高い連続電流とさらに高い短時間電流を流すことが可能となる。同時に、低い作動力しか必要としない。
【0011】
上記において、高い連続電流とは、1000A以下の動作電流を意味すると理解される。高い又はさらに高い短時間電流は30kA以下の範囲である。接触位置がプラグイン式の接触部として構成され、各接触位置がソケットと、ソケット内で支持又は収容可能なピンとを有し、これにより、ピンと、ピンを支持又は収容するソケットの全周にわたって接触部が設けられる。従って、高電流(例えば短絡電流)で発生する電磁反発力による接触部の開動作につながらないことが保証される。接触部の溶着につながるフラッター効果も回避される。スイッチング装置の短絡強度が向上し、高い連続電流の導通が確保される。接触位置の少なくとも1つにおける2つの接触部の1つが複数のリブを有する。そのため、遷移抵抗が減少し、接触位置の溶着が回避され、1000A以下の高い連続電流と30kA以下の短絡電流の安全な導通が可能になる。簡単な構成においてこれを実現するためには、接触用薄板部の形の別の部品としてリブを構成し、この接触用薄板部を、各接触位置の対応する接触部に配置することができる。接触用薄板部は、好ましくは、リング状のストリップ(帯状体)又はスリーブ(筒状体)、すなわち高電流接点用ストリップとして構成され、単純にピンに差し込むか、ソケットに挿入することができる。従って、これにより、リング状に配置された接触用薄板部の中にばね力が幾何学的に配置される単純な構造が可能となる。
【0012】
好ましくは、ソケットと少なくとも1つのピンは互いに同軸に整列される。簡単な構成においては、ソケットと少なくとも1つのピンは円筒状である。これにより、接触部を互いに単純に差し込むことができる。しかしながら、接触位置が互いに単純に差し込んだり引き離したりできる限り、ソケットとピンの他の断面形状ももちろん可能である。
【0013】
本発明の好適な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0014】
本発明の好適な実施形態では、少なくとも2つの接触位置のそれぞれの固定接触子がそれぞれ1つのソケットとして形成され、少なくとも2つの接触位置の可動接触子が共通のピンに形成される。これにより、スイッチングの際、共通のピンはソケットの中に又は外に移動される。これにより、シンプルで安定した構成が可能になる。
【0015】
さらに、少なくとも1つの第3接触位置を設け、この第3接触位置が、ソケットとして構成された固定接触子と可動接触子を有し、第3接触位置の可動接触子も共通のピンに形成することも可能である。これにより、少なくとも3つの回路の簡単な相互接続が可能になる。
【0016】
本発明の別の特に好適な実施形態によれば、各スイッチング位置において、ピンがソケットの少なくとも1つに支持又は収容される。開位置において、ピンは少なくとも1つのソケットに支持又は収容され、閉位置において、ピンは、少なくとも2つのソケットに支持又は収容される。このようにして、安定性の向上が達成される。
【0017】
本発明の別の特に好ましい実施形態によれば、キャリアストリップがばね鋼製であり、接触片が銅製である。ばね鋼製(好ましくはステンレスばね鋼製)のキャリアストリップは、高い機械的強度と優れた耐緩和性を有し、これにより機械的強度と接触力を発生させる。高導電性である銅製の接触片は、高い通電性能を確保する。
【0018】
さらに別の実施形態によれば、2つの接触部の1つが2組のリブを有し、この2組のリブは、ソケット及びピンの長手方向における接触位置の少なくとも1つにおいて互いに隣接して配置される。このような並列接続、及びその結果としての複数のリブ付き領域を隣接して配置することにより、スイッチング装置の通電能力をさらに増大させることができる。
【0019】
スイッチング装置の安定性を高めるため、ピンは、ピンの長手方向に延在し、センタリングボルトと係合する中央孔を有してもよい。
【0020】
スイッチング装置の安定性のさらなる向上は、各ソケットが中実ブロックに支持又は収容されることにより実現可能である。
【0021】
さらに別の実施形態によれば、各中実ブロックは、接続端子に導電可能に接続される。このようにすれば、簡単な接続が可能になる。
【0022】
少なくとも1つの可動ピンを安全且つ安定して案内可能とするため、ピンは、少なくとも1つのシリンダ、好ましくは2つのシリンダによって移動可能としてもよい。
【0023】
幅広い用途を可能にするため、スイッチング装置は、ノーマルオープン接点方式、若しくはノーマルクローズ接点方式、又は切換接点方式として構成してもよい。これは、スイッチング軸の異なるバージョンによって可能になる。
【0024】
本発明の別の特に好ましい実施形態によれば、スイッチング装置は、手動式断路器(ディスコネクタ)として構成される。好ましくは、スイッチング装置は、バッテリ駆動系の保守時にバッテリ/電圧源と負荷とを安全にガルバニック分離するための手動式断路器として構成される。動作状態(つまり閉状態)において、手動式断路器は、全ての発生電流を流すことができ、すなわち、最大1000Aの動作電流と30kAの短時間電流を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係るスイッチング装置の分解図である。
【
図2】
図1に示す本発明に係るスイッチング装置が接触状態にある斜視図である。
【
図3】
図1に示す本発明に係るスイッチング装置が切断状態にある斜視図である。
【
図4】
図1に示す本発明に係るスイッチング装置の固定接触子の分解図である。
【
図5】
図1に示す本発明に係るスイッチング装置の可動接触子の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0027】
以下の説明において、同一の構成要素には同一の参照符号を付す。図が、当該図に関連して詳細な説明がなされない参照符号を含んでいる場合、それより前又は後の図で説明される。
【0028】
図1は、本発明に係るスイッチング装置を分解図で示す。スイッチング装置1は、2つの側壁3、4と、2つの端壁5、6と、ベースプレート7と、カバー8とを備える筐体2を有する。筐体2には、2つの接触位置9、10が形成される。2つの接触位置9、10のそれぞれは、可動接触子11及び固定接触子12を有する。
図1に示す実施形態において、2つの固定接触子12のそれぞれは、ソケット13として形成される、或いはソケット13内に形成される。ソケット13は円筒状である。各ソケット13は、中実ブロック15に支持又は収容されている。ブロック15のそれぞれは、接続端子16に導電可能に接続されている。
図1の後ろ側の側壁3には、そこを通って接続端子16の1つが外部に案内されるスロット17が形成されている。同様に、カバー8には別のスロット18が形成され、この別のスロット18を通って接続端子16の2番目が外部に案内される。
【0029】
可動接触子12は、ソケット13内に支持又は収容可能なピン14に形成されている。ピン14も円筒状であり、ソケット13に挿入したり、ソケット13から引き出したりできるように構成されている。従って、ソケット13及びピン14は、互いに同軸に配置されている。ソケット13に対してピン14を移動可能にするため(それにより、接触位置9、10を開閉可能にするため)、ピン14は、スイッチング装置1の端壁の一方である端壁5に摺動可能に取り付けられた2つのシリンダ19によって移動可能に案内される。2つのシリンダ19は、スイッチング機構21に接続される。シリンダ19は、このスイッチング機構21を介して移動され、可動接触子11が形成された可動ピン14にスイッチング動作を伝達する。
【0030】
スイッチング装置1の他方の端面6には、センタリングボルト20が取り付けられている。センタリングボルト20も、ソケット13及びピン14と同軸である。ピン14には、センタリングボルト20を支持又は収容する中央の長手方向孔が形成され、それによりピン14の確実な案内に寄与する。
【0031】
図2は、接触状態にあるスイッチング装置1を上面側から見た斜視図である。スイッチング機構21は後退位置にある。このことが意味するのは、シリンダ19がスイッチング装置1の筐体2内に最大限引き込まれ、可動ピン14、又は可動ピン14に形成された2つの可動接触子11を、固定接触子12を形成する両ソケット13に係合させているということである。こうして、可動ピン14は両方のソケット13と係合し、両方の接触位置9、10は閉じられ、スイッチング装置1は動作状態になる。接触位置9、10の構成(以下でさらに説明する。)により、発生する全ての電流、すなわち最大1000Aの動作電流及び最大30kAの短時間電流を流すことができる。
【0032】
図3は、切断状態にあるスイッチング装置1を上面側から見た斜視図である。切断状態では、スイッチング機構21は最大伸長位置にある。このことは、シリンダ19がスイッチング装置1の筐体2の外側に向かって最大限伸長していることを意味する。従って、可動ピン14は、ソケット13の1つ(
図3において左側に示されているもの)から引き出されている。従って、接触位置10は開いている。他方の接触位置9では、可動ピン14は依然としてソケット13と係合している。
図3には、可動ピン14が案内されるセンタリングピン20も示されている。
【0033】
図4は、
図1のスイッチング装置1の詳細の分解図を示す。すなわち、スイッチング装置1における固定接触子12の構成又は配置を示す。両方の接触位置9、10における固定接触子12の配置は同一に構成されているが、スイッチング装置1において互いに90°回転している。各固定接触子12の締結部は、中央孔22が形成された中実ブロック15を有する。中央孔22には、各ケースでソケット13の1つが支持又は収容される。ソケット13は、接続端子16及び保持プレート23を介して中実ブロック15に捕捉可能に保持される。中実ブロック15、保持プレート23及び接続端子16の間の接続は、好ましくは、
図4に示すねじ24のような固定手段によって行われる。
【0034】
各ソケット13は、その内側25に複数のリブ26を有する。ここにいう内側25は、可動ピン14と接触する側であると共に、それぞれの固定接触子12が形成される側である。このリブにより、各接触位置9、10には、規定された複数の接点が形成される。従って、伝達される電流は複数の接点に分散され、各接点では全電流の一部のみが相手の接触子に伝達されればよい。このようにして、接触抵抗が低減される。
【0035】
図4に示す場合において、ソケット13内にはスリーブ状の高電流接点用ストリップストリップ27が配置されており、このストリップ27が複数のリブ26を形成する。高電流接点用ストリップ27は、弾力性のあるキャリアストリップ30を有する。キャリアストリップ30は、2つの境界フランジ28と、境界フランジ28に対して垂直に延在する複数の接触ウェブ29(板状片)とを有する。接触ウェブ29のそれぞれには、接触片31が固定されている。キャリアストリップ30は、好ましくはばね鋼、特にステンレスばね鋼製であり、接触片31は銅製である。銅製の接触片31は高い熱吸収能力を有し、非常に高い短絡電流伝達能力を実現することができる。接触位置で必要とされるばね力は、リング状の高電流接点用ストリップに幾何学的に含まれるため、半径方向で均等に分布される。
【0036】
リブを接触用薄板部として構成することも可能である。さらに、リブを可動接触子に形成すること(すなわち可動ピンに形成すること)も考えられる。この場合、高電流接点用ストリップからなるスリーブを、上述のようにピンに適用することができ、その際、接触ウェブ(すなわち接触片)もスリーブの外側に形成される。さらにまた、各接触位置において、ピン又はソケットの長手軸方向に互いに平行に配置された2組以上の複数のリブを形成することも考えられる。これは、スリーブ状の高電流接点用ストリップを、ピン又はソケットの長手軸Lの方向に2つ以上隣り合わせに平行に配置することによって行うことができる。
【0037】
図5は、
図1のスイッチング装置1のさらなる詳細の分解図を示す。すなわち、可動ピン14と、可動ピン14に接続されるシリンダ19とを示す。シリンダ19は、保持プレート32を介して可動ピン14に接続されている。シリンダ19、保持プレート32及び可動ピン14の間の接続も、好ましくはねじ接続を介して行われる。可動ピン14は中央孔33を有する。この中央孔33はピン14の長手方向Lに延び、従ってソケット13の長手方向Lにも延びる。センタリングピン20(
図3参照)は、中央孔33で支持又は収容することができる。可動接触子11はピン14に形成される。
【0038】
好ましくは、スイッチング装置1は、バッテリ駆動系の保守時にバッテリ/電圧源と負荷を安全にガルバニック分離するための手動式断路器(ディスコネクタ)として構成される。この断路器は、断路器が閉じている動作状態において、発生する全ての電流、すなわち、最大1000Aの動作電流及び30kAの短時間電流を流すことができる。
【0039】
スイッチング軸の構成によっては、スイッチング装置をノーマルオープン接点方式又は切換接点方式として構成することもできる。従って、スイッチング装置が3つ以上の接触位置を有するように構成することも可能である。この場合、複数のスイッチング回路を接続することが可能である。複数のソケットは、スイッチング装置の筐体内に1つずつ配置されるのが好ましい。ソケットは互いに同軸に整列され、固定接触子を形成する。可動接触子は全て共通の可動ピンに形成される。この可動ピンもソケットと同軸上に配置され、複数の又は全てのソケットを相互接続することができる。
【0040】
好ましくは、スイッチング装置は、スイッチング容量を必要とせず、無負荷スイッチングに使用される。
【符号の説明】
【0041】
1 スイッチング装置
2 筐体
3 側壁
4 側壁
5 端壁
6 端壁
7 ベースプレート
8 カバー
9 接触位置
10 接触位置
11 可動接触子
12 固定接触子
13 ソケット
14 ピン
15 中実ブロック
16 接触端子
17 スロット
18 スロット
19 シリンダ
20 センタリングボルト
21 スイッチング機構
22 中央孔
23 保持プレート
24 ねじ
25 ソケットの内側
26 リブ
27 高電流接点用ストリップ
28 境界フランジ
29 接触ウェブ
30 キャリアストリップ
31 接触プレート
32 保持プレート
33 孔
L 長手方向
【手続補正書】
【提出日】2024-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの接触位置(9、10)において高い連続電流及び非常に高い短絡回路電流を伝導するスイッチング装置(1)であって、
前記接触位置のそれぞれは、可動接触子(11)及び固定接触子(12)を備え、
前記接触位置(9、10)の前記可動接触子及び前記固定接触子の一方は、ソケット(13)内に形成され、他方は、前記ソケット(13)内で支持又は収容可能なピン(14)に形成され、
前記接触位置(9、10)の前記可動接触子(11)は、共通部品として形成され、
前記接触位置(9、10)の少なくとも1つにおいて前記接触子の1つ
(12)は、複数のリブ(26)を備えることで、前記接触位置(9、10)において複数の接点が形成され、
前記リブは、接触用薄板部の形である別の部品であり、
前記別の部品は、前記接触位置のそれぞれにおいて対応する接触部に配置され、
前記接触用薄板部は、高電流接点用ストリップ(27)の形であり、
前記高電流接点用ストリップは、2つの境界フランジ(28)を有する柔軟性のあるキャリアストリップ(30)と、前記境界フランジ(28)に対して垂直に延在し且つ前記境界フランジ(28)に接続された複数の接触ウェブ(29)とを備え、
前記接触ウェブ(29)には、接触片(31)が固定されている
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング装置(1)において、
前記少なくとも2つの接触位置(9、10)の前記固定接触子(12)のそれぞれはソケット(13)の形であり、
前記少なくとも2つの接触位置(9、10)の前記可動接触子(11)は共通のピン(14)に形成される
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項3】
請求項2に記載のスイッチング装置(1)において、
少なくとも1つの第3接触位置が形成され、
前記第3接触位置は、ソケットとして構成される固定接触子と、可動接触子とを有し、
前記第3接触位置の前記可動接触子も、前記共通のピンに形成される
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のスイッチング装置(1)において、
前記ピン(14)は、各スイッチング位置における前記ソケット(13)の少なくとも1つに支持又は収容される
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項5】
請求項1に記載のスイッチング装置(1)において、
前記キャリアストリップ(30)はばね鋼製であり、前記接触片(31)は銅製である
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項6】
請求項1~
3、5のいずれか1項に記載のスイッチング装置(1)において、
2つの接触部の一方は、前記接触位置の少なくとも1つにおいて且つ前記ソケット及び前記ピンの長手方向において互いに隣り合って配置された2つのリブを有する
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項7】
請求項1~
3、5のいずれか1項に記載のスイッチング装置(1)において、
前記ピン(14)は、前記ピン(14)の長手方向に延在し且つセンタリングボルト(20)と係合する中央孔(33)を有する
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項8】
請求項2
又は3に記載のスイッチング装置(1)において、
前記ソケット(13)のそれぞれは、中実ブロック(15)に支持又は収容される
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項9】
請求項8に記載のスイッチング装置(1)において、
前記中実ブロック(15)のそれぞれは、接続端子(16)に対して導電可能に接続される
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項10】
請求項2
、3又は5に記載のスイッチング装置(1)において、
前記ピン(14)は、少なくとも1つのシリンダ(19)により移動可能である
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項11】
請求項1~
3、5のいずれか1項に記載のスイッチング装置(1)において、
前記スイッチング装置は、ノーマルオープン接点方式、若しくはノーマルクローズ接点方式、又は切換接点方式として構成される
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【請求項12】
請求項1~
3、5のいずれか1項に記載のスイッチング装置(1)において、
前記スイッチング装置は、手動式断路器として構成される
ことを特徴とするスイッチング装置(1)。
【国際調査報告】