(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】タンタル-タングステン合金粉およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/04 20060101AFI20240709BHJP
C22C 27/02 20060101ALI20240709BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240709BHJP
B22F 1/065 20220101ALI20240709BHJP
B22F 1/052 20220101ALI20240709BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20240709BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240709BHJP
B22F 10/34 20210101ALN20240709BHJP
【FI】
B22F9/04 C
C22C27/02 103
B22F1/00 R
B22F1/065
B22F1/052
B22F1/14
B33Y70/00
B22F10/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580732
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 CN2021110476
(87)【国際公開番号】W WO2023272871
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】202110737910.8
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507313113
【氏名又は名称】ニンシア オリエント タンタル インダストリー カンパニー、 リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】リー,シャオピン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ヤジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー,シンユー
(72)【発明者】
【氏名】ツオ,ワンヨン
(72)【発明者】
【氏名】マ-,ジン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,レイ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,サイリ
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA07
4K017BB04
4K017CA01
4K017CA07
4K017EA03
4K017EA09
4K018BA03
4K018BB03
4K018BB04
4K018BC06
4K018BD09
4K018CA44
4K018EA51
4K018KA01
4K018KA07
(57)【要約】
タンタル-タングステン合金粉を調製するための方法であって、以下のステップ:タンタル-タングステン合金インゴットを準備するステップ;タンタル-タングステン合金インゴットを繰り返し何度も溶融製錬するステップ;前のステップの生成物を鍛造するステップ;前のステップの生成物を水素雰囲気内に配置して、水素化熱処理を実施するステップ;前のステップの生成物を機械的に粉砕して、粗い粉末を得るステップ;粗い粉末からaμm~bμm(a=10~20、b=50~60)の範囲の粒径を有する粉末を篩分けするステップ;前のステップの生成物に真空下で脱水素熱処理を実施するステップ;前のステップの生成物にマグネシウム粉末を添加して、脱酸素熱処理を実施するステップ;ならびに粉末の球形度が99%超に到達するように、前のステップの生成物にプラズマ球状化処理を実施するステップを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンタル-タングステン合金粉を調製する方法であって、
タンタル-タングステン合金インゴットを準備するステップ、
タンタル-タングステン合金インゴットを繰り返し何度も溶融製錬するステップ、
前のステップの生成物を鍛造するステップ、
前のステップの生成物を水素雰囲気内に配置して、水素化熱処理を実施するステップ、
前のステップの生成物を機械的に粉砕して、粗い粉末を得るステップ、
粗い粉末から、aμm~bμm(a=10~20、b=50~60)の範囲の粒径を有する粉末を篩分けするステップ、
前のステップの生成物に真空中で脱水素熱処理を実施するステップ、
前のステップの生成物にマグネシウム粉末を添加して、脱酸素熱処理を実施するステップ、
粉末が99%を超える球形度を有するように、前のステップの生成物にプラズマ球状化処理を実施するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
以下の特徴:
鍛造温度が800℃~900℃である、
水素雰囲気の水素圧が0.16MPa~0.19MPaである、
水素化熱処理の温度が600℃~900℃である、
脱水素熱処理の温度が600℃~900℃である、
脱酸素熱処理の温度が500℃~1000℃である
のうちの1つまたは複数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素化熱処理が以下の処理:
T1で3時間~5時間の加熱処理、T1=500℃~800℃
T2で0.5時間~2.5時間の加熱処理、T2=600℃~900℃、T2-T1≧50℃
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
脱水素熱処理が以下の処理:
600℃~700℃で60分間~90分間の加熱処理、
880℃~920℃で120分間~180分間の加熱処理
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
脱酸素熱処理が以下の処理:
500℃~650℃で60分間~90分間の加熱処理
800℃~900℃で700分間~800分間の加熱処理
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
鍛造ステップと水素化熱処理ステップとの間に、酸洗浄ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
脱酸素熱処理とプラズマ球状化処理との間に、酸洗浄ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
酸洗浄に使用される酸が、フッ化水素酸、硝酸、および塩酸の混合した酸である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
タンタル-タングステン合金が、タンタル元素およびタングステン元素を含み、タンタル元素の含有量が85wt%~95wt%であり、タングステン元素の含有量が5wt%~15wt%である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
タンタル-タングステン合金粉が15μm~60μmの範囲の粒径および酸素含有量<300ppmを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法により調製されるタンタル-タングステン合金粉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は材料の分野にあり、特にタンタル-タングステン合金粉およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタル-タングステン合金は高密度、高い融点および高い強度を有するレアメタル合金材料であり、高温における非常に高い強度、良好な延性、溶接性および優れた耐食性を有し、高温、高圧、耐食性などを有する作業環境に適切である。最近、タンタル-タングステン合金は、産業界において急速に開発され、特に化学薬品産業、航空宇宙、原子エネルギー産業などの局面において広く応用され、非常に重要なエンジニアリングおよび機能材料である。タンタル中でタングステンは、置換型の連続固溶体をタンタルと共に形成し、固体-溶液強化効果を取り込み、タンタル金属の室温および高温の機械的特性を著しく増加させることができる。
【0003】
現在では、タンタル-タングステン合金材料は、熱間押出加工、ハンマー分塊、ラジアル鍛造、圧延および他のモードにより、ブランクへと通常加工され、次いで、機械加工および他のモードにより必要とされる構造を有するパーツへと加工される。近年では、個別化された要件の特別形状の製品に対して、3Dプリント技術が開発されたので、これらは、3Dプリントの手段により実現化することができる。純粋なタンタル球形粉についての現在の研究は中国において比較的熟している一方で、タンタル-タングステン合金球形粉についての研究は熟していない。この解決策を取り入れることにより、3Dプリント要件を満たすことができるタンタル-タングステン合金球形粉が調製される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
付加製造中、タンタル-タングステン合金は、酸素を吸収することにより亀裂ができやすくなり、粉末の球形度が不十分となり、これによってプリント欠陥を形成することが発明者らにより見出された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は、付加製造のためのタンタル-タングステン合金粉およびその調製方法を提供する。本出願により提供されるタンタル-タングステン合金粉は、均一な合金構成成分、集中した粒径分布(例えば、15μm~53μmの範囲の粒径)、高い球形度および低い酸素含有量(例えば、酸素含有量≦300ppm)を有する。本出願のタンタル-タングステン合金球形粉は3Dプリント(付加製造)加工要件を満たすことができる。本出願のタンタル-タングステン合金粉を3Dプリント技術に適用することにより、本出願は、複雑な構造を有する個別化されたパーツのプリントを実現し、化学薬品産業、航空宇宙、武器、原子エネルギー産業などの分野におけるタンタル-タングステン合金の応用をさらに促進することができる。
【0006】
本開示は、タンタル-タングステン合金粉を調製する方法であって、
タンタル-タングステン合金インゴットを準備するステップ、
タンタル-タングステン合金インゴットを繰り返し何度も溶融製錬するステップ、
前のステップの生成物を鍛造するステップ、
前のステップの生成物を水素雰囲気内に配置して、水素化熱処理を実施するステップ、
前のステップの生成物を機械的に粉砕して、粗い粉末を得るステップ、
粗い粉末からaμm~bμm(a=10~20、b=50~60)の範囲の粒径を有する粉末を篩分けするステップ、
前のステップの生成物に真空中で脱水素熱処理を実施するステップ、
前のステップの生成物にマグネシウム粉末(例えば、0.1~1wt%で添加される)を添加して、脱酸素熱処理を実施するステップ、
粉末が99%を超える球形度を有するように、前のステップの生成物にプラズマ球状化処理を実施するステップ
を含む、方法を提供する。
【0007】
上記の特定の加工の順序、すなわち、ブランキング、水素化、粉砕、脱水素、脱酸素化、酸洗浄、およびプラズマ球状化処理を使用することによって、得られたタンタル-タングステン合金球形粉は、均一な構成成分、集中した粒径分布、高い球形度および低い酸素含有量という利点を有する。
【0008】
一部の実施形態では、鍛造温度は800℃~900℃である。
一部の実施形態では、水素雰囲気の水素圧は0.16MPa~0.19MPaである。
一部の実施形態では、水素化熱処理の温度は600℃~900℃である。
【0009】
一部の実施形態では、脱水素熱処理の温度は600℃~900℃である。
一部の実施形態では、脱酸素熱処理の温度は500℃~1000℃である。
一部の実施形態では、水素化熱処理は、下記処理:
T1で3時間~5時間(例えば、4時間)の加熱処理、T1=500℃~800℃(例えば、600~700℃)、
T2で0.5時間~2.5時間(例えば、1時間~2時間)の加熱処理、T2=600℃~900℃(例えば、700℃~800℃)、T2-T1≧50
を含む。
【0010】
一部の実施形態では、脱水素熱処理は、下記処理:
600℃~700℃(例えば650℃)で、60分間~90分間(例えば70分間~80分間)の加熱処理、
880℃~920℃(例えば900℃)で、120分間~180分間(例えば140分間~160分間)の加熱処理
を含む。
【0011】
一部の実施形態では、脱酸素熱処理は、下記処理:
500℃~650℃(例えば、550℃~600℃)で60分間~90分間(例えば、70分間~80分間)の加熱処理、
800℃~900℃(例えば、850℃)で700分間~800分間(例えば、750分間)の加熱処理
を含む。
【0012】
一部の実施形態では、鍛造ステップと水素化熱処理ステップとの間に、酸洗浄ステップがさらに含まれる。
一部の実施形態では、脱酸素熱処理とプラズマ球状化処理との間に、酸洗浄ステップがさらに含まれる。
【0013】
一部の実施形態では、酸洗浄に使用される酸は、フッ化水素酸、硝酸、および塩酸の混合した酸である。
一部の実施形態では、タンタル-タングステン合金は、タンタル元素およびタングステン元素を含み、タンタル元素の含有量は85wt%~95wt%であり、タングステン元素の含有量は5wt%~15wt%である。
【0014】
一部の実施形態では、タンタルタングステン合金粉は、15μm~60μmの範囲の粒径および酸素含有量<300ppmを有する。
一部の実施形態では、プラズマ球状化処理のサイドガスはHeガスおよびArガスであり、粉末送達キャリアガスはArガスであり、中心ガスはArガスであり、プラズマパワーは35KW~40KWであり、粉末送達速度は25g/分~30g/分である。
【0015】
一部の実施形態では、上記個々のステップは、文字どおり記載されている順序に従い実施される。
一部の実施形態では、上記個々のステップを実施するための順序は任意ではあり、文字どおり記載されている順序に限定されない。
【0016】
一部の態様では、本開示は、上記方法のいずれか1つで調製したタンタル-タングステン合金粉を提供する。
一部の態様では、本開示は、上記タンタル-タングステン合金粉を使用して、付加製造(例えば、3Dプリント)を実施することを含む、付加製造方法を提供する。
【0017】
一部の態様では、本開示は、上記付加製造方法により調製される付加製造された製品を提供する。
【発明の効果】
【0018】
現在、慣習的加工では、部分的に個別化された、特別に成形された製品の加工を実現することはできない。3Dプリントのためのタンタル-タングステン合金球形粉に対して、いかなる調製技術も現在存在しない。
【0019】
本出願の1つまたは複数の実施形態は、以下の利点のうちの1つまたは複数を有する:
(1)タンタル-タングステン合金粉の合金成分が均一である、
(2)タンタル-タングステン合金粉の粒径分布が集中している、
(3)タンタル-タングステン合金粉の球形度が高い、
(4)タンタル-タングステン合金粉の酸素含有量が低い、
(5)3Dプリント技術を使用することによって、本出願で製造されたタンタル-タングステン合金球形粉は、個別化された、特別に成形されたパーツの小さなバッチの加工を実現し、材料の利用率を増加させ、製造コストを減少させることができる。
【0020】
[用語の例示]
「プラズマ球状化技術」という用語は、金属粉末を誘導プラズマジェットへスプレーすることを指し、金属粉末は非常に高い温度で直ちに溶融し、次いで表面張力の作用の下で球へと自動的に変化する。一度これら球状液体金属の小滴がプラズマジェットから逸脱すると、直ちに冷却され、球状粒子へと硬化する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1のタンタル-タングステン合金球形粉の100倍拡大写真である。
【
図2】実施例1のタンタル-タングステン合金球形粉の500倍拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本出願の特定の実施形態を詳細に記載する。本出願はこれら特定の実施形態と組み合わせて記載されるが、これら特定の実施形態に限定されることを意図しないことを認識されたい。反対に、実施形態は、特許請求の範囲において定義されている本出願の趣旨および範囲内に含まれ得る、代替の、修飾されたおよび同等の実施形態を包含することを意図する。以下の描写において、いくつかの特定の詳細は、本出願の十分な理解を得るために詳しく述べられている。本出願は、これら特定の詳細のいくつかまたはすべてが欠けると、影響を受けることもある。他の事例では、本出願をいたずらに覆い隠すことのないよう、周知の加工作業は詳細に記載されていない。
【0023】
単数形「a」、「an」、および「the」は、本発明の明細書および添付の特許請求の範囲において、「含む(comprising)」、「を含む方法(method comprising)」などの単語または類似の表現と組み合わせて使用した場合、文脈において他に明確に示されていない限り、複数の参照を含む。他に定義されていない限り、ここで使用されているすべての技術用語および科学用語は、本出願の技術分野の当業者により共通して認識されている意味と同じ意味を有する。
【0024】
特に例示されていない限り、試薬、本出願において使用されている方法および装置は当技術分野で通常の食品等級の試薬、方法および装置である。
特に例示されていない限り、本出願の実施例に使用されている試験条件は当技術分野で通常の試験条件である。特に例示されていない限り、本出願の実施例に使用されているすべての試薬は市販のものである。
【0025】
実施例1
1)インゴット鋳造:Ta10Wタンタル-タングステン合金(Ta 90wt%-W 10wt%)を、ALD1200KW高真空電子ビーム炉を用いて溶融製錬して、インゴットを鋳造し、溶融製錬を2回繰り返して、タングステンの不均一性を10%内にする。
2)鍛造:1)で得たインゴットを鍛造のために加熱し、鍛造温度を850℃に制御することによって、50×120×Lmmへと鍛造した。鋳放しの結晶粒を完全に粉砕して、粉砕した内部構造を得た。
3)機械加工:2)で得た鍛造したブランクを2つの端面で旋削し(単一の旋削の厚さ:1.5mm)、4つの側面で粉砕して鍛造欠陥、例えば、折りたたみなどを十分に除去した。
4)酸洗浄:前のステップの生成物を配合比:HF(>40%):HNO3(65%~68%):HCl(36%~38%)=1:2:3(容量比)の酸溶液で洗浄して、表面不純物を除去した。
5)水素化:前のステップの生成物を反応ボンベに充填し、10-6kPaに真空排気し、600℃/4時間加熱し、800℃の温度で2時間保持し、水素気体を充填して圧力0.19MPaを得た。冷却し、水素気体を吸収させ、実際の温度が100℃まで低減したら水素の充填を終えた。
6)粉砕:前のステップの生成物を、粒径が100μm以下になるまで、ジョークラッシャーで粉砕した。
7)粉末の篩分け:前のステップの生成物をガス保護篩分け機で篩い分けして、15μm~53μmの範囲の粒径を有するタンタル-タングステン合金粉を得た。
8)脱水素処理:前のステップの生成物を反応ボンベに充填することにより、脱水素処理に供した。特に、10-6kPaまで真空排気した。脱水素熱処理は、
650℃/85分間加熱処理するステップ、
900℃/175分間加熱処理するステップ
を含む。
9)脱酸素化の実施:前のステップの生成物の0.2wt%~0.8wt%にてマグネシウム粉末を混合して、アルゴン雰囲気で加熱処理を実施した。パラメーターは、
650℃で85分間の加熱処理
900℃で750分間の加熱処理
を含む。
10)酸洗浄:前のステップの生成物を酸洗浄して、不純物を除去した。酸洗浄に使用した酸は式:HF(濃度>40%):HNO3(濃度65%~68%):HCl(濃度36%~38%)=1:2:3(容量比)を有する。
11)プラズマ球状化:プラズマ球状化技術を用いて、前のステップの生成物を以下の球状化パラメーターで球状化した。:サイドガス:He 60slpm、サイドガス:Ar 50slpm、粉末送達キャリアガス:Ar 4slpm、中心ガス:Ar 18slpm、プラズマパワー:40KWおよび粉末送達速度:30g/分。
【0026】
実施例2
1)インゴット鋳造:Ta10Wタンタル-タングステン合金(Ta 90wt%-W 10wt%)を、ALD1200KW高真空電子ビーム炉を用いて溶融製錬して、インゴットを鋳造し、溶融製錬を2回繰り返して、タングステンの不均一性を10%内にした。
2)鍛造:1)で得たインゴットを鍛造のために加熱し、鍛造温度を900℃に制御することによって、50×120×Lmmへと鍛造した。鋳放し結晶粒を完全に粉砕して、粉砕した内部構造を得た。
3)機械加工:2)で得た、鍛造したブランクを2つの端面で旋削し(単一の旋削の厚さ:1.5mm)、4つの側面で粉砕して、鍛造欠陥、例えば、折りたたみなどを十分に除去した。
4)酸洗浄:前のステップの生成物を配合比:HF(>40%):HNO3(65%~68%):HCl(36%~38%)=1:2:3(容量比)の酸溶液で洗浄して、表面不純物を除去した;
5)水素化:前のステップの生成物を反応ボンベに充填し、10-6kPaに真空排気し、750℃/4時間加熱し、800℃の温度で2時間保持し、水素気体を充填して、圧力0.19MPaを得た。冷却し、水素気体を吸収させ、実際の温度が100℃まで低減したら水素の充填を終えた。
6)粉砕:前のステップの生成物を、粒径が0~100μmになるまで、ジョークラッシャーで粉砕した。
7)粉末篩分け:前のステップの生成物をガス保護篩分け機で篩い分けして、15μm~53μmの範囲の粒径を有するタンタル-タングステン合金粉を得た。
8)脱水素処理:前のステップの生成物を反応ボンベに充填することにより、脱水素処理に供した。特に、10-6kPaまで真空排気した。脱水素熱処理は、
700℃/85分間の加熱処理、
900℃/175分間の加熱処理
を含む。
9)脱酸素化の実施:前のステップの生成物の0.5wt%にてマグネシウム粉末を混合して、アルゴン雰囲気での加熱処理を実施した。パラメーターは、
650℃で85分間の加熱処理、
900℃で750分間の加熱処理
を含む。
10)酸洗浄:前のステップの生成物を酸洗浄して、不純物を除去した。酸洗浄に使用した酸は式:HF(濃度>40%):HNO3(濃度65%~68%):HCl(濃度36%~38%)=1:2:3(容量比)を有する。
11)プラズマ球状化の実施:プラズマ球状化技術を用いて、前のステップの生成物を以下の球状化パラメーターで球状化した:サイドガス:He 60slpm、サイドガス:Ar 50slpm、粉末送達キャリアガス:Ar 4slpm、中心ガス:Ar 18slpm、プラズマパワー:40KWおよび粉末送達速度:30g/分。
【0027】
比較例1
水素化脱水素方法により調製した10kgのタンタル粉末を採取し、次いで振動篩分け装置上の100-メッシュスクリーンに通して、粗い粒子を除去した。
【0028】
上記タンタル粉末をプラズマ球状化装置で球状化した。ここで、プラズマトーチは直流プラズマトーチであり、作動ガスはアルゴンガスであり、プラズマ球状化パワーは5KWであり、作動ガス流は20L/分であり、サイドガス流は100L/分であり、システム圧力は80KPaであり、球状化タンタル粉末の酸素含有量は400ppmであった。
【0029】
球状化したタンタル粉末を振動篩分け装置(スクリーンのメッシュ数は100メッシュである)で篩い分けして、150μm未満または150μmに等しい粒径を有するタンタル粉末を得た。
【0030】
150μm未満または150μmに等しい粒径を有する上記タンタル粉末をアルゴン保護気流評定機器で等級分けして、53μm~150μmの間の粒径分布を有する球形粉を得た。
【0031】
比較例2
99.995%を超えるタンタル含有量を有するタンタルインゴットを選択し、タンタルインゴットを水素化し、粉砕した。水素化したタンタル小片をミリングにより粉砕した。粉砕した材料を400メッシュの篩にかけた。タンタル粉末を400未満のメッシュ篩にかけることによって、400メッシュの20kgのタンタル粒子を得た。続いて、タンタル粒子を反応ボンベに充填し、これを真空排気条件下で加熱し、温度750℃で約120分間保持し、次いでこれらを冷却し、放出し、100メッシュ篩にかけて、19.87kgの脱水素化タンタル粉末を得た。脱水素化タンタル粉末を気流ミルに充填して、気流成形を実施した。この間、作動圧力は6.5kgであり、第1、第2の作動周波数はそれぞれ40Hzおよび40Hzであり、成形を15時間行った後、14.62kgの第1のタンタル粉末および3.20kgの第2のタンタル粉末を得た。気流成形後の第1のタンタル粉末を、HNO3とHFの混合した酸(HNO3:HF:水容量比は4:1:20)で酸洗浄し、金属不純物を除去し、これを乾燥させ、篩い分けして、13.46kgの酸洗浄したタンタル粉末を得た。次いで、酸洗浄したタンタル粉末を真空条件10-1Pa下で加熱処理し、温度を1100℃で60分間保持し、最後にこれを冷却し、不動態化し、放出した。加熱処理したタンタル粉末を、タンタル粉末中1.3wt%のマグネシウム粉末と混合し、次いでこれらを不活性ガスの保護下750℃に加熱し、この温度で2時間保持し、次いで3時間真空排気してマグネシウムを放出した。最後に、混合物を冷却し、不動態化し、放出し、硝酸で洗浄して、余分なマグネシウムおよび酸化マグネシウムを除去し、次いで脱イオン水で洗浄して、中性にした。タンタル粉末を乾燥させ、篩い分けして、12.74kgのタンタル粉末を得た。
【0032】
[分析および検出]
実施例1~2および比較例1~2で得た上記生成物の粉末を以下の通り分析した。
1.原料成分および幾何形状
図1および2は実施例1のタンタル-タングステン合金球形粉のそれぞれ100倍および500倍拡大写真である。
図1~2に示されているとおり、実施例1のタンタル-タングステン合金球形粉は狭い粒径分布および良好な球形度を有していた。
【0033】
実施例1~2および比較例1~2で得た生成物粉末の球形度および酸素含有量を測定した。球形度は、検出方法:「YS/T1297-2019:チタニウムおよびチタニウム合金粉の球形比の測定方法」に従い決定した。酸素含有量は、検出方法:「GB/T15076.14-2008:タンタルおよびニオブの化学分析、酸素含有量の決定方法」に従い測定した。結果を以下の表に示す。
【0034】
【0035】
上記から分かるように、本開示における特定のプロセスを使用することによって調製した実施例1~2におけるタンタル-タングステン合金粉は、比較例1~2で調製したものと比較して、より高い球形度およびより低い酸素含有量を有していた。
2.粒径の分析
「GB/T1480-2012:金属粉末-乾式篩分けによる粒径の決定」および「GB/T19077-2016:粒径分析-レーザー回折方法」を用いた包括的判定方法に従い、実施例1~2で得た生成物粉末を粒径の点から分析した。結果を以下に示す。
【0036】
【0037】
上記から分かるように、実施例1~2では、本開示の特定のプロセスを使用することによって調製したタンタル-タングステン合金粉は狭い粒径分布を有していた。
上記実施例の実験データから分かるように、本開示において調製したタンタル-タングステン合金粉は、以下の利点のうちの1つまたは複数を有する:
(1)タンタル-タングステン合金粉の合金成分が均一である、
(2)タンタル-タングステン合金粉の粒径分布が集中している、
(3)タンタル-タングステン合金粉の球形度が高い、
(4)タンタル-タングステン合金粉の酸素含有量が低い。
【0038】
3Dプリント技術を使用することによって、本出願で製造されたタンタル-タングステン合金球形粉は、個別化された、特別に成形されたパーツの小さなバッチの加工を実現し、材料の利用率を増加させ、製造コストを減少させることができる。
【0039】
最後に、上記実施例は本出願の技術的解決策を例示するだけのために使用されており、これを限定するものではないことが説明されるべきである。本出願は好ましい実施例を参照して詳細に記載されている一方で、本出願の特定の実施形態に対する修正および技術的特徴の一部の同等の置換がさらに行われてもよいことを当業者は認識すべきである。本出願の趣旨から逸脱することなく、これらのそれぞれは本出願で特許請求されたような技術的解決策の範囲内に含有される。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンタル-タングステン合金粉を調製する方法であって、
タンタル-タングステン合金インゴットを準備するステップ、
タンタル-タングステン合金インゴットを繰り返し何度も溶融製錬するステップ、
前のステップの生成物を鍛造するステップ、
前のステップの生成物を水素雰囲気内に配置して、水素化熱処理を実施するステップ、
前のステップの生成物を機械的に粉砕して、粗い粉末を得るステップ、
粗い粉末から、aμm~bμm(a=10~20、b=50~60)の範囲の粒径を有する粉末を篩分けするステップ、
前のステップの生成物に真空中で脱水素熱処理を実施するステップ、
前のステップの生成物にマグネシウム粉末を添加して、脱酸素熱処理を実施するステップ、
粉末が99%を超える球形度を有するように、前のステップの生成物にプラズマ球状化処理を実施するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
以下の特徴:
鍛造温度が800℃~900℃である、
水素雰囲気の水素圧が0.16MPa~0.19MPaである、
水素化熱処理の温度が600℃~900℃である、
脱水素熱処理の温度が600℃~900℃である、
脱酸素熱処理の温度が500℃~1000℃である
のうちの1つまたは複数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素化熱処理が以下の処理:
T1で3時間~5時間の加熱処理、T1=500℃~800℃
T2で0.5時間~2.5時間の加熱処理、T2=600℃~900℃、T2-T1≧50℃
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
脱水素熱処理が以下の処理:
600℃~700℃で60分間~90分間の加熱処理、
880℃~920℃で120分間~180分間の加熱処理
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
脱酸素熱処理が以下の処理:
500℃~650℃で60分間~90分間の加熱処理
800℃~900℃で700分間~800分間の加熱処理
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
鍛造ステップと水素化熱処理ステップとの間に、酸洗浄ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
脱酸素熱処理とプラズマ球状化処理との間に、酸洗浄ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
酸洗浄に使用される酸が、フッ化水素酸、硝酸、および塩酸の混合した酸である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
タンタル-タングステン合金が、タンタル元素およびタングステン元素を含み、タンタル元素の含有量が85wt%~95wt%であり、タングステン元素の含有量が5wt%~15wt%である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
タンタル-タングステン合金粉が15μm~60μmの範囲の粒径および酸素含有量<300ppmを有する、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】