(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】発光ダイオードを製作するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
H01L 33/02 20100101AFI20240709BHJP
H01L 33/26 20100101ALI20240709BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20240709BHJP
H01L 33/24 20100101ALI20240709BHJP
H01L 33/08 20100101ALI20240709BHJP
H01L 33/06 20100101ALI20240709BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240709BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01L33/02
H01L33/26
H01L33/32
H01L33/24
H01L33/08
H01L33/06
G09F9/00 338
G09F9/33
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580826
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 FR2022051268
(87)【国際公開番号】W WO2023275471
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・ドーダン
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・ゲラル
【テーマコード(参考)】
5C094
5F241
5G435
【Fターム(参考)】
5C094AA43
5C094BA25
5C094DA13
5C094FB02
5C094FB14
5F241AA41
5F241AA42
5F241AA47
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5F241CA05
5F241CA08
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5F241CA40
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5F241CB27
5F241FF06
5G435AA17
5G435BB04
5G435KK05
(57)【要約】
- 第1のタイプの導電型でドープされた無機半導体でできた第1のセグメント(106)を製作するステップと、- 第1のセグメントの第1の領域上に、マスク(110)を通して、無機半導体でできた第1の放出セグメント(108)を製作するステップと、- マスクを動かすステップと、- 第1のセグメントの第2の領域上に、無機半導体でできた第2の放出セグメント(116)を製作するステップと、- 少なくとも第1および第2の放出セグメント上に、第2のタイプの導電型でドープされた無機半導体でできたセグメント(128)を製作するステップとを含み、第1および第2の放出セグメントの化学組成が互いに異なり、それらのバンドギャップがドープされた無機半導体でできたセグメントバンドギャップよりも狭いか等しい、発光ダイオード(100)を製作するためのプロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の少なくとも1つの部分(106)を製作するステップと、
前記第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(106)上に、前記第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(106)の少なくとも1つの第1の領域(114)に面して配設される少なくとも1つの開口(112)を備える少なくとも1つのマスク(110)を通して、無機半導体の少なくとも1つの第1の放出部(108)を製作するステップと、
前記第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(106)の、前記第1の領域(114)とは別個の、少なくとも1つの第2の領域(122)に面して前記開口(112)が配設されるように前記マスク(110)を動かすステップと、
前記第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(106)上に、前記マスク(110)を通して、無機半導体の少なくとも1つの第2の放出部(116)を製作するステップと、
前記第1のタイプの導電型と反対の第2のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の少なくとも1つの部分(128)を、少なくとも前記第1および第2の放出部(108、116)上に製作するステップと
を含み、
前記第1および第2の放出部(108、116)の化学組成が互いに異なり、それらの禁止帯エネルギーがドープされた無機半導体の前記部分(106、128)のもの以下であるような、発光ダイオード(100)を製作するための方法。
【請求項2】
第1の希土類元素イオンが、前記第1の放出部(108)の前記無機半導体へと組み込まれ、および/または、第2の希土類元素イオンが、前記第2の放出部(116)の前記無機半導体へと組み込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の希土類元素イオンが、前記第1の放出部(108)の前記無機半導体へと組み込まれ、前記第1の希土類元素イオンと異なる性質の前記第2の希土類元素イオンが、前記第2の放出部(116)の前記無機半導体へと組み込まれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の放出部(116)の前記製作後、および前記第2のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(128)の前記製作前に、
前記第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(106)の、前記第1および第2の領域(114、122)とは別個の、少なくとも1つの第3の領域に面して前記開口(112)が配設されるように前記マスク(110)を動かすステップと、次いで
前記第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(106)上に、前記マスク(110)を通して、その化学組成が前記第1および第2の放出部(108、116)のものと異なり、その禁止帯エネルギーがドープされた無機半導体の前記部分(106、128)のもの以下であるような、無機半導体の少なくとも1つの第3の放出部(124)を製作するステップと
をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1、第2、および第3の放出部が各々、赤色、緑色、および青色のうちの1つに対応する波長を放出することが可能となるように、前記第1、第2、および第3の放出部(108、116、124)の前記化学組成が選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第3の放出部(124)の前記製作後、および前記第2のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(128)の前記製作前に、
前記第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(106)の、前記第1、第2、および第3の領域(114、122)とは別個の、少なくとも1つの第4の領域に面して前記開口(112)が配設されるように前記マスク(110)を動かすステップと、次いで
前記第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(106)上に、前記マスク(110)を通して、その化学組成が前記第1、第2、および第3の放出部(108、116、124)のうちの1つのものと同様である、無機半導体の少なくとも1つの第4の放出部(126)を製作するステップと
をさらに含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
ドープされた無機半導体の前記部分(106、128)および前記放出部(108、116、124、126)が、窒素の原子ならびにアルミニウムおよび/またはガリウムおよび/またはインジウムの原子を含む化合物を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(106)の前記製作の前に、基板上の前記第1のタイプの導電型に従ってドープされた、有利にはGaNの半導体のベース部と呼ばれる少なくとも1つの部分(104)を製作するステップであって、前記第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(106)が次いで前記ベース部(104)上に製作される、ステップをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ベース部(104)がGaNを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
無機半導体の前記部分(106、128)および前記放出部(108、116、124、126)が、ナノワイヤまたは平面層の形で製作される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
無機半導体の前記部分(106、128)および前記放出部(108、116、124、126)がナノワイヤの形で製作されるとき、前記第2のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(128)の前記製作後に実施される、前記ナノワイヤ間に電気絶縁材料を堆積するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のタイプの導電型がnタイプに対応し、前記第2のタイプの導電型がpタイプに対応する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(128)が、マグネシウムおよび/もしくはインジウムの原子によってドープされ、ならびに/または
前記第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の前記部分(106)が、シリコンおよび/もしくはゲルマニウムの原子によってドープされた、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の発光ダイオード(100)を製作するための方法の実施を含む、ディスプレイデバイス(1000)を製作するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードまたはLEDを製作する分野に関する。本発明は、特に、LEDを有するディスプレイデバイスの製作に関し、より具体的には、LEDを有するマイクロディスプレイデバイスの製作に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイデバイス、特に、たとえばスマートフォンスクリーン用に使用されるマイクロディスプレイデバイスは、1組の画素を備える。ディスプレイデバイスがカラースクリーンに対応するとき、各画素は、各々がサブピクセルを形成し、各々が3つの以下の基本色または原色、すなわち赤、緑、および青のうちの1つを局所的に放出する、少なくとも3つのLEDまたはマイクロLEDを備えることができる。この場合、これらは、RGB画素と呼ばれる。
【0003】
そのようなディスプレイデバイスは、一般的に、多数の画素について、支持体上に様々なLEDを組み立てることによって製作される。この組立ステップは、欠陥なしで実行するのは困難である。これは、小型高解像度ディスプレイデバイスの製作中に、特に重大である。これらの欠陥のわずか1つが、所望の色を放出しない「死んだ」画素を作り、このことは、販売が意図されるディスプレイデバイスにとって容認できない。
【0004】
ディスプレイデバイスの製作のために使用されるLEDは、一般的に、有機材料を含み、OLED(有機発光ダイオード)と呼ばれる。赤、緑、および青といった3つの色の放出は、異なる有機材料からOLEDを製作することによって得られる。各色について、大きい表面積を有する構造が製造され、次いで、最終的な組立の前に、各々がLEDに対応する小さい要素へと切断される。この解決策は費用がかかり、信頼性が制限される。
【0005】
さらに、OLEDを含むディスプレイデバイスの輝度は制限され、このことは、特に、高解像度ディスプレイデバイスで使用される非常に小さい寸法を有する画素の場合に厄介となる。
【0006】
この輝度は、無機半導体からLEDを製作することによって改善することができる。たとえば、窒化物を含む半導体材料によって、青色の光放出を生じるための非常に効率的なLEDを製造すること、および緑色の光放出を生じるためのより軽い程度のLEDを製造することが可能になる。特に、量子井戸を形成するGaN/InGaNヘテロ構造を製作すること、およびその中で組み込まれるインジウムの量を、LEDの放出の波長を変更するため調整することが可能である。しかし、窒化物を含むこれらの半導体材料では、青色および緑色に対応する波長の範囲で放出するものと同じくらい効率的な、赤色の光を放出するLEDをこの同じ技術で得るのが可能ではない。したがって、赤のサブピクセルを形成するために、別の系統の材料、すなわち、リン化物(GaP/GaInP)の材料を使用することが必要である。LEDを製作するためのこの技術的な複雑さならびに多数のLEDの欠陥のない組立に関する難しさによって、この技術で製作できるディスプレイデバイスの性能およびサイズが現在制限されている。
【0007】
希土類元素のイオンをGaNまたはAlNのナノワイヤ中に埋め込むことによって、単色LEDを製作することも知られている。しかし、この解決策は、このようにして製作されたサブピクセルの組立およびそれからもたらされる欠陥に関する問題にやはり直面する。
【0008】
S. Ichikawaらによる文書、「Eu-doped GaN and InGaN monolithically stacked full-color LEDs with a wide color gamut」、2021年Appl. Phys. Express 14 031008は、各々が原色のうちの1つで放出する3つのスタックした活性層を備えるモノリシック垂直スタックの形のLEDの製作を提案する。これらの活性層のうちの1つは、ユーロピウムの原子を含み、赤色の光放出を生じるために使用される。2つの他の活性層は、InGaNの量子井戸を備え、その化学組成は、これら2つの層のうちの一方用に青、これら2つの層のうちの他方用に緑で放出するように調整される。この文書中に提案された解決策は、上で開示された組立の問題を解決するが、スタックの様々なレベルで、LEDの各々の電気接点を作成することが可能な複数の技術ステップを必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】S. Ichikawaらによる文書、「Eu-doped GaN and InGaN monolithically stacked full-color LEDs with a wide color gamut」、2021年Appl. Phys. Express 14 031008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の1つの目的は、上で記載した従来技術の方法の欠点を有さない、発光ダイオードまたはLEDを製作するための方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、少なくとも、
- 第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の少なくとも1つの部分を製作するステップと、
- 第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分上に、第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分の少なくとも1つの第1の領域に面して配設される少なくとも1つの開口を備える少なくとも1つのマスクを通して、無機半導体の少なくとも1つの第1の放出部を製作するステップと、
- 第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分の、第1の領域とは別個の、少なくとも1つの第2の領域に面して開口が配設されるようにマスクを動かすステップと、
- 第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分上に、マスクを通して、無機半導体の少なくとも1つの第2の放出部を製作するステップと、
- 第1のタイプの導電型と反対の第2のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の少なくとも1つの部分を、少なくとも第1および第2の放出部上に製作するステップと
を含み、
第1および第2の放出部の化学組成が互いに異なり、それらの禁止帯エネルギーがドープされた無機半導体の部分のもの以下であるような、発光ダイオードを製作するための方法が提案される。
【0012】
この方法は、少なくとも2つのLEDを製作することを提案し、ここでは、第1の放出部およびこの第1の放出部のいずれかの側に位置決めされるドープされた半導体の部分の部位が第1のLEDを形成する。この第1のLEDは、この第1の放出部を画定して位置決めするマスクの開口によって、マスクの主面(最大の表面積を有する面であり、第1の開口がそれを通過する)に平行な平面に、幾何学的に(形状および寸法を)画定される。
【0013】
同様に、第2の放出部およびこの第2の放出部のいずれかの側に位置決めされるドープされた半導体の部分の部位が第2のLEDを形成する。この第2のLEDは、第1の放出部の製作に対して動かされこの第2の放出部を画定して位置決めするマスクの開口によって、マスクの主面(最大の表面積を有する面であり、第2の開口がそれを通過する)に平行な平面に、幾何学的に(形状および寸法を)画定される。
【0014】
この方法は、したがって、たとえばいくつかのLEDのかなりの表面積を覆った、これらのLEDを組み立てることのない、または、これらのLED上に電気接点を作成することが可能な複雑なステップのない製作についての技術的解決策を提案する。
【0015】
この方法は、水平に集積することによって、同じレベルで、異なる範囲の波長で放出する一方で、垂直に集積することおよび関連する技術的な複雑さの不利益を回避する、様々なLEDを製作することを可能にする。
【0016】
この方法は、製作される放出部の化学組成に依存する可視範囲の異なる波長の光を放出することが可能なLEDを局所的に製作することを提案する。LEDは、こうして同じ半導体スタック中にその場で連続して製作され、こうしてLEDの組立が後で実施されるのを回避する。
【0017】
さらに、この方法は、有機材料を使用せず、OLEDで得られるものより良好な輝度を得ることが潜在的に可能である。
【0018】
本文書の全体を通して、「LED」という用語は、その寸法を区別することなく、LEDまたはマイクロLEDを表すために使用される。
【0019】
ドープされた無機半導体の部分の禁止帯エネルギーは異なってよく、この場合、放出部のうちの1つの禁止帯エネルギーは、最低の禁止帯エネルギーを有するドープされた無機材料の部分のもの以下であってよい。
【0020】
製作される様々な放出部の化学組成間の差異は、様々な放出部に異なる性質の希土類元素のイオンを組み込むこと、ならびに/または、様々な性質の原子を含む化合物(たとえば、AlGaN、InGaNなど)を有する、および/もしくは、その比率が異なる(たとえば、Yと異なる値を有するXを有する、InXGa(1-X)NとInYGa(1-Y)N)様々な放出部を製作することによって得ることができる。
【0021】
この方法で実施できる希土類元素のイオンの組み込みの各々は、少なくとも1つのタイプの希土類元素のイオンの組み込みに対応する。言い換えると、組み込みの各々は、1つまたは複数の異なるタイプの希土類元素のイオン、任意選択で、希土類元素のイオンに対応しない原子の組み込みに対応することができる。たとえば、所与の色にとっての希土類元素のイオンの光放出の化学プロセスを最適化するため、希土類元素のイオンに対応しない原子を伴う、任意選択で、異なる希土類元素の共ドープを同じ放出部で行うことが可能である。たとえば、赤の放出について、ユーロピウムおよび酸素の共ドープを実行することができる。
【0022】
本発明の意味における希土類元素のイオンの組み込みは、放出部を製作するための、たとえばこれらの放出部のエピタキシーによる、たとえばMBEタイプ(「分子線エピタキシー」)のフレーム中の希土類元素を含む原子流の使用に対応する。
【0023】
製作される発光ダイオードの各々は、ドープされた無機半導体の部分間に配設される単一の放出部、または、1つまたは複数のバリア層によって互いから分離されるいくつかの放出部のスタックを備えることができ、その禁止帯エネルギーは、放出部のものより大きく、スタックは、ドープされた無機半導体の部分間に配設される。
【0024】
さらに、実装される放出部を製作するためのステップの各々によって、使用されるマスクの開口の数に従った、1つまたは複数の放出部を形成することができる。
【0025】
マスクの動きは、その上に放出部が製作される第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分に対するマスクの相対的な動きに対応する。つまり、マスクおよび/または半導体部分を動かすことが可能である。
【0026】
第1の希土類元素イオンを、第1の放出部の無機半導体へと組み込むことができ、および/または、第2の希土類元素イオンを、第2の放出部の無機半導体へと組み込むことができる。
【0027】
特定の例示的な実施形態によれば、第1の希土類元素イオンを、第1の放出部の無機半導体へと組み込むことができ、第1の希土類元素イオンと異なる性質の第2の希土類元素イオンを、第2の放出部の無機半導体へと組み込むことができる。
【0028】
方法は、第2の放出部の製作後、および第2のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分の製作前に、
- 第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分の、第1および第2の領域とは別個の、少なくとも1つの第3の領域に面して開口が配設されるようにマスクを動かすステップと、次いで
- 第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分上に、マスクを通して、その化学組成が第1および第2の放出部のものと異なり、その禁止帯エネルギーがドープされた無機半導体の部分のもの以下であるような、無機半導体の少なくとも1つの第3の放出部を製作するステップと
をさらに含むことができる。
【0029】
特定の例示的な実施形態によれば、第1および第2の希土類元素イオンのものと異なる性質の第3の希土類元素のイオンを、第3の放出部へと組み込むことができ、ならびに/または、第3の放出部は、異なる性質の原子を含む化合物を含むことができる、もしくは、その比率が第1および第2の放出部の化合物と異なる。
【0030】
有利には、第1、第2、および第3の放出部が各々、赤色、緑色、および青色のうちの1つに対応する波長を放出することが可能となるように、第1、第2、および第3の放出部の化学組成を選択することができる。特定の例示的な実施形態では、第1、第2、および第3の放出部へと組み込まれる希土類元素のイオンは、(赤色の光の放出を可能にする)ユーロピウム、(緑色の光の放出を可能にする)テルビウムおよび/またはエルビウム、ならびに(青色の光の放出を可能にする)ツリウムのイオンから選択することができる。(赤色の光の放出を可能にする)プラセオジム、および/または、(緑色の光の放出を可能にする)ホルミウム、および/または、(青色の光の放出を可能にする)セリウムのイオンを使用することも可能である。
【0031】
方法は、第3の放出部の製作後、および第2のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分の製作前に、
- 第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分の、第1、第2、および第3の領域とは別個の、少なくとも1つの第4の領域に面して開口が配設されるようにマスクを動かすステップと、次いで
- 第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分上に、マスクを通して、その化学組成が第1、第2、および第3の放出部のうちの1つのものと同様である、無機半導体の少なくとも1つの第4の放出部を製作するステップと
をさらに含むことができる。
【0032】
特定の例示的な実施形態によれば、第1または第2または第3の希土類元素イオンのものと同様の性質の第4の希土類元素のイオンを、第4の放出部へと組み込むことができ、ならびに/または、第4の放出部は、同様の性質の原子を含む化合物を含むことができ、その比率が第1、第2、および第3の放出部のうちの1つの化合物と同様である。
【0033】
この場合、第1、第2、第3、および第4の放出部は、有利には、それらが行列を形成して配置されるように製作することができる。
【0034】
放出部の各々の製作のために使用されるマスクはハードマスクに対応する。
【0035】
ドープされた無機半導体の部分および放出部を製作するためのステップは、各々がエピタキシーまたは堆積の実施を含むことができる。
【0036】
有利には、ドープされた無機半導体の部分および放出部は、窒素の原子ならびにアルミニウムおよび/またはガリウムおよび/またはインジウムの原子を含む化合物を含むことができる。こうして、この方法で製作されるIII-N系半導体は、GaNまたはAlNまたはInNおよびそれらの三元合金または四元合金(AlGaN、InGaN、InAlN、AlGaInN)に対応することができる。窒化物を含むそのような半導体の使用は、以下であるために、特に有利である。
- 半導体のギャップの値が高いために、光を放出できる希土類元素イオンへのエネルギー転送の効率はさらに高くなる。これは、特にGaNおよびAlNおよびAlGaNを含む合金の窒化物を含む半導体の場合である。
- Euの組み込みによって赤で放出することが可能な放出部を製作することによって、窒化物を含む半導体群を用いて、特にInGaNを介して、青および緑で放出する他の放出部を製造することが可能である。
【0037】
有利な例示的な実施形態では、ドープされた無機半導体の部分および放出部が、AlNを含むことができる。
【0038】
有利には、方法は、第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分の製作の前に、基板上の第1のタイプの導電型に従ってドープされた半導体のベース部と呼ばれる少なくとも1つの部分を製作するステップであって、第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分が次いでベース部上に製作される、ステップをさらに含むことができる。そのようなベース部によって、この場合、たとえば半導体、アモルファス、または金属といった任意のタイプの基板上で、第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の第1の部分の成長を開始することが可能になる。
【0039】
有利には、ベース部がGaNを含む、またはGaNから構成される。
【0040】
無機半導体の部分および放出部は、ナノワイヤまたは平面層の形で製作することができる。ナノワイヤの形での半導体部分の製作は、それによって、LEDの製作中に送り出された原子種が横方向に拡散する可能性を回避することが可能になるために、有利である。したがって、製作される様々な放出部によって放出される様々な色の全体的な分離を得ることが可能である。
【0041】
この場合、方法は、無機半導体の部分および放出部がナノワイヤの形で製作されるとき、第2のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分の製作後に実施される、ナノワイヤ間に電気絶縁材料を堆積するステップをさらに含むことができる。これによって、特に、ナノワイヤの横側を不動態化することが可能になる。
【0042】
第1のタイプの導電型がnタイプに対応してよく、第2のタイプの導電型がpタイプに対応してよい。
【0043】
方法は、以下のようであってよい。
- 第2のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分が、マグネシウムおよび/もしくはインジウムの原子によってドープされ、ならびに/または
- 第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体の部分が、シリコンおよび/もしくはゲルマニウムの原子によってドープされる。
【0044】
その中に希土類元素のイオンが組み込まれた半導体の光放出に含まれる電子遷移は、希土類元素イオンの電子層4fに属する深い電子について生じるものに対応する。外側層の電子によるこの層のスクリーニングによって、放出が非常に安定になり、結晶質またはアモルファス、半導体または絶縁体であってよい周りの材料の性質と無関係になる。これらの希土類元素のイオンが半導体に導入されるとき、電子層4fで生じる電子遷移を、電流の通過によって励起し、したがって、グランド状態への戻りに光放出が伴うことができる。一方で励起および結合の効果、他方で励起した発光の寿命は、希土類元素のイオンが組み込まれる半導体のギャップの値に敏感である。ギャップが大きくなると、全体効率が向上する。
【0045】
有利には、ここで述べられる方法では、pドープされた半導体のマグネシウムおよびインジウムの原子によるドープによって、たとえば、AlNなどの大きいギャップを有する半導体を使用することが可能になり、このことによって、非常に良好な発光効率を有する光放出の領域を得ることが可能になる。
【0046】
第2のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体中のインジウムの存在によって、インジウムを含まないこの同じ半導体に関して、得られるマグネシウムの原子濃度が半導体中に存在するインジウムの量に比例するために、マグネシウムのより多いドープ原子を組み込むことが可能になる。したがって、たとえば第2の部分の半導体で得ることができるpタイプドープのレベルは、この場合、より大きく、より多い電流の注入および電流線のより良好な分布を得ることが可能になる。たとえば、AlNまたはAlGaN中のインジウムの存在によって、これらの材料中のマグネシウムの溶解度が、約10に等しい係数だけ向上することが可能になり、こうして、この半導体中で得ることができるドープのレベルが向上する。
【0047】
半導体がインジウムを含むときの、より多いマグネシウムの原子を組み込む可能性は、これら2つのタイプの原子が、特にAlNへと別個に導入されると圧縮応力をもたらすために、予想されない。したがって、マグネシウムの追加によってもたらされる弾性応力の緩和にインジウムの追加が寄与しないために、累積される弾性エネルギーの観点で、それらを同時に導入することが好ましいことに演繹的な理由はない。
【0048】
第2のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体中のマグネシウムの原子濃度は、1020原子/cm3から1021原子/cm3の間もしくは1020原子/cm3以上であってよく、ならびに/または、第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体中のシリコンおよび/もしくはゲルマニウムの原子濃度は、1019原子/cm3から1020原子/cm3の間であってよい。そのようなマグネシウムの原子濃度は、たとえば、マグネシウムの原子濃度とインジウムの原子濃度との比率が、1から20の間、または1から50の間、または1から100の間でさえ得られ、好ましくは約10であるときに得られる。この構成によって、たとえば、そのようなレベルのドープで、マグネシウムの効果的なイオン化エネルギーを著しく下げることによって、半導体の良好なレベルのpタイプドープ、したがって、金属電極のものに近いまたは同様の第2の部分の電気伝導を介してLEDの中への電流の良好な注入を得ることが可能になる。
【0049】
上で述べたような発光ダイオードを製作するための方法の実施を含む、ディスプレイデバイスを製作するための方法がやはり提案される。
【0050】
この方法は、有利には、RGB画素、すなわち、各々が、赤色、緑色、および青色に対応する波長を放出する少なくとも3つのサブピクセルを備える画素を有するディスプレイデバイスを製作するために実施することができる。しかし一般的に、この方法は、必ずしもRGB画素に対応するとは限らない異なる波長を放出する少なくとも2つのサブピクセルを各々が備える画素を備えるディスプレイデバイスを製作するために実施することができる。
【0051】
この方法は、各々がディスプレイデバイスの画素を形成するため別個に製作されるいくつかのサブピクセルの組立に関する欠点を有さない。
【0052】
この方法は、大きい表面積を有するディスプレイデバイスを製作するために実施することができる。これらのデバイスのうちのいくつかを後で組み立てることによって、任意の大きい係数だけ、最終的なデバイスのサイズを、コンピュータもしくはテレビジョンスクリーンまたは壁面ディスプレイのものに達するように増やすことを可能にすることができる。
【0053】
本文書の全体を通して、「上(on)」という用語は、この用語が関係する要素の空間における方位を区別することなく使用される。たとえば、「ある部分の面上」の特徴において、本部分のこの面が必ずしも上向きであるとは限らず、任意の方向に向けられた面に対応することができる。さらに、第2の要素上の第1の要素の配置とは、第1の要素と第2の要素との間に何ら介在する要素なしに、直接第2の要素に対して第1の要素を配置することに対応することができること、または、第1の要素と第2の要素との間に配設される1つまたは複数の介在する要素を用いて第2の要素上に第1の要素を配置することに対応することができることと理解するべきである。
【0054】
本発明は、純粋に情報のために与えられ限定する目的ではない例示的な実施形態の記載を読む一方で、添付図面を参照すれば、より良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】第1の実施形態に従った、本発明の目的の発光ダイオードを製作するための方法において実施されるステップを示す図である。
【
図2】第1の実施形態に従った、本発明の目的の発光ダイオードを製作するための方法において実施されるステップを示す図である。
【
図3】第1の実施形態に従った、本発明の目的の発光ダイオードを製作するための方法において実施されるステップを示す図である。
【
図4】第1の実施形態に従った、本発明の目的の発光ダイオードを製作するための方法において実施されるステップを示す図である。
【
図5】第1の実施形態に従った、本発明の目的の発光ダイオードを製作するための方法において実施されるステップを示す図である。
【
図6】第1の実施形態に従った、本発明の目的の発光ダイオードを製作するための方法において実施されるステップを示す図である。
【
図7】第1の実施形態に従った、本発明の目的の発光ダイオードを製作するための方法において実施されるステップを示す図である。
【
図8】第1の実施形態の代替形態に従った、本発明の目的の発光ダイオードを製作するための方法の実施によって得られる発光ダイオードを示す図である。
【
図9】第2の実施形態に従った、本発明の目的の発光ダイオードを製作するための方法の実施によって得られる発光ダイオードを示す図である。
【
図10】本発明の目的を形成する方法を実施することによって製作されるディスプレイデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
下に記載される様々な図の同一、同様、または等価な部分は、1つの図から他の図への移行を容易にするように、同じ参照数字を担う。
【0057】
図に示される様々な部分は、図をより読取り可能にさせるため、必ずしも均一な縮尺に従って示されるわけではない。
【0058】
様々な可能性(代替形態および実施形態)は、互いに排他的ではないと理解するべきであり、互いに組み合わせることができる。
【0059】
第1の実施形態に従ったLED100を製作するための方法が、
図1から
図7に関連して下で記載される。
【0060】
ここで記載される例示的な実施形態では、LED100は、たとえば、シリコンまたはサファイアまたは別の材料などの半導体を含む、基板102上のエピタキシーによって作成されたナノワイヤの形で製作される。
【0061】
有利には、ナノワイヤを形成するためここで実施されるエピタキシーステップは、プラズマ支援分子線エピタキシーまたはPA-MBEのステップに対応する。あるいは、これらのステップは、たとえば、有機金属化学気相堆積またはMOCVD、有機金属気相エピタキシーまたはMOVPE、またはパルスレーザ堆積またはPLDのような堆積のステップに対応することができる。
【0062】
これらのナノワイヤを形成するため、第1のステップでは、第1のタイプの導電型に従ってドープされた半導体、有利にはGaNのベース部104が、ナノワイヤの形成での成長によって製作される。これらのベース部104の製作は任意選択である。これらのベース部104によって、LED100の材料の他の部分を後で成長させるのを容易にすることが可能になる。
【0063】
この例示的な実施形態では、第1のタイプの導電型がnタイプに対応する。
【0064】
第1のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体106、ここでは、nドープAlNの部分が、次いで、部分104上での成長によって製作される(
図1参照)。たとえば、nドープは、部分106の材料の中にシリコンおよび/またはゲルマニウムの原子を導入することによって得ることができる。部分106の半導体中のドーパントの濃度は、たとえば、10
17原子/cm
3から10
20原子/cm
3、有利には、10
19原子/cm
3から10
20原子/cm
3の間である。ナノワイヤの成長の方向に平行な部分106の各々の寸法(
図1から
図7で軸Zに平行な寸法)は、たとえば500nmに等しく、より一般的には、100nmから1000nmの間である。
【0065】
無機半導体、ここではAlNの第1の放出部108は、次いで、部分106の第1の領域114に面して配設される開口112を備えるマスク110を通して成長させることによって製作される(
図2参照)。これらの第1の放出部108は、第1の範囲の波長での光放出を生じる第1のLEDの部分であることが意図される。このため、第1の放出部108の成長中に、第1の希土類元素のイオンが、第1の放出部108の半導体中に組み込まれる。たとえば、第1の放出部108が赤色の光を放出することが意図されるとき、組み込まれる第1の希土類元素のイオンはユーロピウムイオンに対応することができる。
【0066】
第1の放出部108を製作した後に、部分106の、第1の領域114とは別の第2の領域122に面して開口112が配設されるように、マスク110が動かされる。
【0067】
次いで、無機半導体、ここではAlNの第2の放出部116が、開口112に面して、マスク110を通して成長させることによって製作される(
図3参照)。これらの第2の放出部116は、第2の範囲の波長での光放出を生じる第2のLEDの部分であることが意図される。このため、第2の放出部116は、それらの化学組成が第1の放出部108のものと異なるように製作される。第1の実施形態では、第1の放出部108と第2の放出部116との間で化学組成のこの差異を得るために、第2の放出部116の成長中に、第1の希土類元素のイオンと異なる性質の、第2の希土類元素のイオンが第2の放出部116の半導体の中に組み込まれる。たとえば、第2の放出部116が緑色の光を放出することが意図されるとき、組み込まれる第2の希土類元素のイオンはテルビウムおよび/またはエルビウムイオンに対応することができる。
【0068】
ここで記載される例示的な実施形態では、部分106の、第1の領域114および第2の領域122とは別の第3の領域に面して開口112が配設されるように、マスク110が再び動かされる。
【0069】
次いで、無機半導体、ここではAlNの第3の放出部124が、開口112に面して、マスク110を通して成長させることによって製作される。これらの第3の放出部124は、第3の範囲の波長での光放出を生じる第3のLEDの部分であることが意図される。このため、第3の放出部124は、それらの化学組成が第1の放出部108および第2の放出部116のものと異なるように製作される。第1の実施形態では、一方の第3の放出部124と他方の第1の放出部108および第2の放出部116との間で化学組成のこの差異を得るために、第3の放出部124の成長中に、第1および第2の希土類元素のイオンと異なる性質の、第3の希土類元素のイオンが第3の放出部124の半導体の中に組み込まれる。たとえば、第3の放出部124が青色の光を放出することが意図されるとき、組み込まれる第3の希土類元素のイオンはツリウムイオンに対応することができる。
【0070】
ここで記載される例示的な実施形態では、部分106の、第1の領域、第2の領域、および第3の領域とは別の第4の領域に面して開口112が配設されるように、マスク110が再び動かされる。
【0071】
次いで、無機半導体、ここではAlNの第4の放出部126が、開口112に面して、マスク110を通して成長させることによって製作される。これらの第4の放出部126は、第1、第2、または第3の範囲の波長のうちの1つと同様の範囲の波長での光放出を生じる第4のLEDの部分であることが意図される。このため、第4の放出部126は、それらの化学組成が、第1の放出部108のものまたは第2の放出部116のものまたは第3の放出部124のものと同様となるように製作される。第1の実施形態では、第4の放出部126と第1の放出部108または第2の放出部116または第3の放出部124との間で化学組成のこの類似性を得るために、第4の放出部126の成長中に、第1、第2、または第3の希土類元素のイオンのものと同様の性質の第4の希土類元素のイオンが第4の放出部126の半導体の中に組み込まれる。たとえば、第4の放出部126が、第1の放出部108のように赤色の光を放出するのが意図されるのは有利である。というのは、この色は、光放出が最も非効率的であるものに対応し、組み込まれる第4の希土類元素のイオンは、この場合、ユーロピウムイオンに対応してよい。
【0072】
図4は、上から見た、製作される放出部108、116、124、および126の分布の例を概略的に示す。この例では、これらの放出部108、116、124、および126は、行列すなわち行と列を形成することによって配置される。
【0073】
ナノワイヤの成長の方向に平行な(
図1から
図7では軸Zに平行な)放出部108、116、124、および126の各々の寸法は、たとえば、5nmから50nmの間である。
【0074】
1つの分子線エピタキシー用装置では、使用されるセルによって生じる原子流は、エピタキシーが実行される表面に対する垂線に対して角度αをなす。この角度の値αは、特に、その1つの装置および使用されるセルに依存し、たとえば、25°から30°の間である。基板102が成長中に回転すると仮定すると、その上でエピタキシーが実行され、エピタキシャル材料の表面密度が最高である表面の領域の直径deffの値は、使用されるマスクの厚さe、それを通してエピタキシーが実行される開口の寸法d(たとえば、円形の断面を有する開口の場合の直径、または、正方形もしくは長方形の断面を有する開口の場合の辺のうちの1つの寸法)、および次式に従う角度αに依存する。
deff=d-2・e・tan(α)
【0075】
この構成は、
図5に概略的に示される。この図では、エピタキシー中に生じる原子流が、参照番号127を担う。
【0076】
たとえば、α=25°、d=5μm、および、e=1μmでは、deffの値は、約4μmに等しい。
【0077】
直径deffを有するこの領域の周りに、e・tan(α)に等しい幅を有するリングの形状の別の領域が、やはりエピタキシーによって形成される。この他の領域で得られる希土類元素のイオンの表面密度は、直径deffを有する領域に堆積されるものの半分に等しい。この他の領域における成長の速度は、やはり、直径deffを有する中心領域中のものに対して半分に減少する。したがって、希土類元素のイオンの密度は、直径dのゾーン全体にわたって一定である。
【0078】
したがって、製作されるLEDのサイズおよび形態上の最適化は、特に、使用されるマスクのパラメータeおよびdの適切な選択に依存する。
【0079】
さらに、たとえば、各開口は、その上でエピタキシーが実行される表面に平行な平面に、たとえば、2×2μm2と5×5μm2との間の寸法を有する長方形または正方形の形状を有する断面を有することができる。開口のうちの1つの寸法が2×2μm2に等しいとき、そのような開口に面して位置決めされるナノワイヤの部分の数は、たとえば、400に等しい。
【0080】
図6は、放出部108、116、124、および126の製作のために使用されるマスク110を通した、これらの放出部の製作のための動作モードの例を図示する。この図では、原子流127は、(マスク110を堆積面から所望の距離へより近くに動かすため)軸Zに従って、ならびに(成長が実行される原子ビームにさらされるゾーンの位置を変えるため)軸XおよびYに従ってマスク110を動かすことを可能にするデバイスに堅く接続されるマスク110を通して送られる。
【0081】
マスクは、その場以外で、すなわち、成長が実行されるフレームの外側で製作することができる。このマスクは、たとえば、SiN上の原子流の低い割合のボンディングを介したウェハの汚染を制限するためSiNが堆積されるシリコンのウェハから製作され、それを通して、たとえばリソグラフィによって開口が製作される。このリソグラフィは、マスクに良好な機械的剛性をもたらすため、リブを形成することもできる。
【0082】
第2のタイプの導電型に従ってドープされた無機半導体、ここでは、pドープAlNの部分128が、次いで、部分108、116、124、および126上での成長によって製作される。部分106の製作のように、これらの部分128の成長にはマスクは使用しない。
【0083】
ここで、pタイプドープは、有利には、部分128の中にマグネシウムおよびインジウムの原子を組み込むことによって得られる。有利には、これらの部分128の半導体中のマグネシウムの原子濃度は、1017原子/cm3から1021原子/cm3の間、有利には、1020原子/cm3から1021原子/cm3の間である。
【0084】
MBEによる部分128の半導体の成長では、放出部108、116、124、126の上面に対応する成長面上に、アルミニウム、活性窒素、インジウム、および任意選択でガリウムのフラックスが送られる。マグネシウムのフラックスは、マグネシウムの原子によってpドープされるよう製作される半導体のためにやはり送られる。これらのフラックスの値、すなわち、送られるこれらの化学元素の各々の原子の量は、部分128の半導体に求められる組成、特に、インジウムの原子濃度が0から1%の間、好ましくは0.1%に等しいようなやり方に従って選択される。インジウムのこのフラックスが存在することで、部分128の半導体中のマグネシウムの原子濃度は、この半導体の中に組み込まれるインジウムの量に比例し、たとえば、1017原子/cm3から1021原子/cm3の間、有利には、1020原子/cm3から1021原子/cm3の間、または、0.1%から1%の間のマグネシウムの原子濃度である。
【0085】
MOCVDによる成長による部分128の製作中に、半導体の成長に使用される要素は、たとえば、アルミニウムの発生源として使用されるトリメチルアルミニウムまたはトリエチルアルミニウム、窒素の発生源として使用されるアンモニア、インジウムの発生源として使用されるトリメチルインジウムまたはトリエチルインジウム、および任意選択で、ガリウムの発生源として使用されるトリメチルガリウムまたはトリエチルガリウムといった、有機金属前駆物質である。マグネシウムの原子は、たとえば、マグネソセンまたはMg(Cp)2の溶液といった好適な前駆物質によって得られる。MOCVDによって得ることができるインジウムおよびマグネシウムの濃度は、MBEによって得られるものと同様になることができる。
【0086】
部分128の各々の軸Zに従った寸法は、有利には、生じる画素101への電流の注入を最適化させるように非常に短く、たとえば50nmから300nmの間、有利には50nmから100nmの間である。
【0087】
有利には、製作されるナノワイヤの構造は、強くpドープされたGaNの短い部分130の成長により製作することによって完成し、このことによって、製作されるLEDとの電気接点を作成することを容易にすることが可能になる。部分130の厚さ(軸Zに従った寸法)は、たとえば20nmから30nmの間である。
【0088】
部分104、106、108(または、部分116、124、126のうちの1つ)および128によって形成される各ナノワイヤの直径は、たとえば、100nmから150nmの間である。ナノワイヤが製作される周期または繰返し率は、2つの隣接するナノワイヤの中心間の距離に対応するが、たとえば、150nmから300nmの間である。特定の例示的な実施形態によれば、周期の値は、ナノワイヤのうちの1つの直径の値の倍に等しくてよい。
【0089】
特定の例示的な実施形態によれば、製作される部分128および130は、直径deffを有する放出部108、116、124、126の中心部上に位置決めして、放出部108、116、124、126のこれらの中心部と残りとの間の特性における差異によってもたらされる放出の強度で生じうる差異を回避することができる。
【0090】
次いで、製作される構造上に、電気接点131を堆積することができる。この電気接点131は、たとえば酸化インジウムスズ(ITO)といった導電性で透明な材料を含む。
【0091】
電気接点131を製作するこのステップは、たとえばナノワイヤ間に電気的な絶縁材料を堆積することに対応する不動態化および平坦化のステップが先行することができる。この堆積は、たとえばALDタイプ(原子層堆積)のものである。堆積される材料は、たとえば、酸化アルミニウムまたはSiO2またはそのような堆積に適合される任意の他の電気絶縁材料である。この絶縁材料の堆積は、ナノワイヤの横面を不動態化すること、および、LED100の効率に有害な表面欠陥上でのキャリアの非放射の再結合を制限することを可能にする。この絶縁材料の堆積は、ナノワイヤの全部にある種の機械抵抗を与えることも可能にする。次いで、研磨のステップを実施して、電気接点131の堆積を容易にする平坦な面を形成することができる。
【0092】
図7は、上で記載したステップの実施後に得られるLED100のうちの1つを概略的に示す。
【0093】
上で記載した例示的な実施形態では、成長によって製作される材料は、AlNまたはGaNに対応する。より一般的に、様々な部分、104、106、108、116、124、126、128、および130の各々は、窒素の原子ならびにアルミニウムおよび/またはガリウムおよび/またはインジウムの原子を含む化合物を含むことができる。たとえば、1つの代替形態によれば、各ナノワイヤの部分104および106は、たとえばnドープGaNまたはnドープAlGaNといった材料の単一部分に対応することができる。
【0094】
上で述べた第1の実施形態の代わりに、部分104を製作せず、基板102上に直接部分106を製作することが可能である。
【0095】
様々な部分の材料がナノワイヤの形で製作される上で述べた第1の実施形態の代わりに、これらの様々な部分が、基板102上に連続して堆積される材料の層の形で製作されることが可能である。基板102上で互いの隣に別個の垂直構造を形成するナノワイヤとは異なり、基板102上に堆積される層は、2つの隣接するLED100間で連続する。
図8はこの代替形態に従って得られる構造の断面図を概略的に示す。そのような層を形成するために実施される技法は、有利には、MOCVDまたはPLDタイプの堆積である。
【0096】
上で述べた第1の実施形態では、LED100の光放出の領域は、放出部中の希土類元素のイオンの組み込みを介して得られ、異なる化学組成を有する放出部を得ることにつながる。
【0097】
第2の実施形態では、LED100の光放出の領域は、部分106と128との間に、1つもしくは複数の量子井戸またはMQW(複数量子井戸)を有する構造を製作することによって得ることができる。
【0098】
図9は、この第2の実施形態に従ったLED100の例示的な実施形態を概略的に示す。この例示的な実施形態では、Ganの2つのバリア層134間に配設されるInGaNの量子井戸によって、各ナノワイヤ中に放出部が形成される。第1の実施形態でのように、放出部を形成する量子井戸は、部分106の様々な領域上に、異なる波長を放出することが可能な放出部を連続して製作するために、マスク110を通して製作される。活性領域によって放出される波長が組み込まれる希土類元素イオンのタイプに依存する第1の実施形態とは対照的に、様々な部分によって放出される波長は、この第2の実施形態では、たとえばInGaNを含む量子井戸の場合のインジウムの濃度(これは、1%から10%の間、有利には1%から5%の間であってよい)といった、放出部の化合物の性質および/または原子比率に依存する。第1の実施形態でのように、井戸の化学組成は、赤色に対応する波長を放出することが可能な放出部、緑色に対応する波長を放出することが可能な他の部分、および青色に対応する波長を放出することが可能な他の部分を形成するように選択することができる。
【0099】
図9の例では、製作される各ナノワイヤは、2つのバリア層134間に配設される単一の放出部を備える。あるいは、その間に放出部が配設されるバリア層が、ドープされた無機半導体の部分106および128によって形成されることが可能である。
【0100】
さらに、各ナノワイヤが、たとえばバリア層134と同様の1つまたは複数のバリア層によって互いから分離されるいくつかの放出部のスタックを備え、その禁止帯エネルギーは、放出部のものより大きく、このスタックは、ドープされた無機半導体の部分間に配設されることも可能である。
【0101】
第1の実施形態について上で記載された様々な代替形態を第2の実施形態に適用することができる。
【0102】
さらに、第2の実施形態の代替形態によれば、1つまたは複数の放出部108、116、124、126を、その中に希土類元素のイオンが組み込まれる量子井戸またはいくつかの積層した量子井戸のスタックによって形成することが可能である。そのような代替形態は、この場合、バリア層間に位置決めされる(たとえばInGaNでできている)放出部が、キャリアの閉込めのゾーンを決定し、希土類元素のイオン近くにそれらが存在するのを最大化し、したがって、希土類元素のイオンの励起の効率を最大化することを可能にするために有利である。
【0103】
他の代替形態によれば、希土類元素のイオンを組み込む放出部のいくつかおよび/または希土類元素のイオンを組み込まない1つもしくは複数の他の放出部を有することが可能である。
【0104】
上で記載されたすべての実施形態および代替形態では、たとえばスクリーンに対応するディスプレイデバイス1000は、上で記載されたLED100でこのデバイス1000の画素を作ることによって得ることができる。たとえば、そのようなデバイス1000の各画素は、2×2行列を形成することによって配置される4つのLED100によって形成することができる。そのようなデバイス1000が
図10に概略的に示される。
【符号の説明】
【0105】
100 発光ダイオード、LED
101 画素
102 基板
104 部分、ベース部
106 部分、第1のセグメント
108 第1の放出部、放出部、部分、第1の放出セグメント
110 マスク
112 開口
114 第1の領域
116 第2の放出部、放出部、部分、第2の放出セグメント
122 第2の領域
124 第3の放出部、放出部、部分
126 第4の放出部、放出部、部分
127 原子流
128 部分、セグメント
130 部分
131 電気接点
134 バリア層
1000 ディスプレイデバイス、デバイス
【国際調査報告】