(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】管状の中空体の横断面を中空体の変形加工によって減少させるための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B21C 1/24 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B21C1/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580842
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2022065524
(87)【国際公開番号】W WO2023274671
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518004369
【氏名又は名称】フェルス システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Felss Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Dieselstrasse 2, D-75203 Koenigsbach-Stein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ナデシダ ミッサル
(72)【発明者】
【氏名】セルヨシャ ハインリヒス
(72)【発明者】
【氏名】マックス オラフ ヤント
(72)【発明者】
【氏名】ザシャ フェーゲレ
【テーマコード(参考)】
4E096
【Fターム(参考)】
4E096EA16
4E096FA28
4E096FA32
(57)【要約】
塑性変形可能な材料から成る中空体壁(3)と、中空体(2)の長手方向で延在する中空体軸線(4)とを有した管状の中空体(2)の横断面を減少させるための装置(1)は、中空体(2)の外面に配置するための変形加工ダイ(5)と、中空体(2)の内部に配置するためのマンドレル(6)と、マンドレル駆動装置(9)およびダイ駆動装置(10)を含む変形加工駆動装置(8)と、を有している。変形加工ダイ(5)には、出発状態における中空体(2)の中空体横断面よりも小さい開口横断面を有するダイ開口(7)が設けられている。中空体(2)の外面に配置された変形加工ダイ(5)は、ダイ駆動装置(10)を用いて、中空体(2)の横断面を減少させながら、軸方向のダイ運動で中空体軸線(4)に沿って、軸方向のダイ運動の方向(14)で中空体(2)に対して可動である。中空体(2)の内部に配置されたマンドレル(6)は、マンドレル駆動装置(9)を用いて、中空体軸線(4)に沿って、軸方向のダイ運動とは逆向きの軸方向のマンドレル運動で可動である。この場合、中空体壁(3)には、マンドレル(6)によって、軸方向のマンドレル運動の方向(13)で引張負荷がかけられ、中空体壁(3)は、中空体(2)の外面に配置された変形加工ダイ(5)に対して、軸方向のマンドレル運動の方向(13)でダイ開口(7)を通して引っ張られる。変形加工駆動装置(8)の駆動制御装置(11)を用いて、マンドレル駆動装置(9)とダイ駆動装置(10)とは、軸方向のマンドレル運動と軸方向のダイ運動とが互いに重畳されるように制御可能である。上記の装置(1)を用いて、管状の中空体(2)の横断面を減少させるための方法が実施される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の中空体(2)の横断面を該中空体(2)の変形加工によって減少させるための装置であって、前記中空体は、塑性変形可能な材料から成る中空体壁(3)と、前記中空体(2)の長手方向で延在する中空体軸線(4)とを有しており、
前記中空体(2)の外面に配置されるように形成された変形加工ダイ(5)であって、前記中空体(2)を受容するように形成された、出発状態で前記中空体(2)の中空体横断面よりも小さい開口横断面を有しているダイ開口(7)を備えた変形加工ダイ(5)と、
前記中空体(2)の内部に配置されるように形成されたマンドレル(6)と、
ダイ駆動装置(10)および駆動制御装置(11)を有した変形加工駆動装置(8)と、
を備え、
前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)は、前記ダイ駆動装置(10)を用いて、前記中空体(2)の横断面を減少させながら、軸方向のダイ運動で前記中空体軸線(4)に沿って、前記軸方向のダイ運動の方向(14)で前記中空体(2)に対して可動である、装置において、
前記変形加工駆動装置(8)は、前記ダイ駆動装置(10)に加えてマンドレル駆動装置(9)を有しており、前記中空体(2)の内部に配置された前記マンドレル(6)は、前記マンドレル駆動装置を用いて、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)の前記軸方向のダイ運動とは逆向きの軸方向のマンドレル運動で、前記中空体軸線(4)に沿って、前記ダイ開口(7)を通るように可動であって、
前記中空体壁(3)には、前記軸方向のマンドレル運動に基づき、前記マンドレル(6)を用いて前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で引張負荷をかけることができ、これにより、前記中空体壁(3)は、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)に対して、前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で前記ダイ開口(7)を通して引っ張ることができ、
前記変形加工駆動装置(8)の前記駆動制御装置(11)を用いて、前記マンドレル駆動装置(9)と前記ダイ駆動装置(10)とは、前記軸方向のマンドレル運動と、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)の前記軸方向のダイ運動とが互いに重畳されるように制御可能であることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記中空体(2)のために、軸方向の支持体(12)が設けられており、該支持体には、前記中空体(2)が、前記軸方向のダイ運動の方向(14)で支持されており、前記支持体は、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)によって、前記中空体(2)に対して前記軸方向のダイ運動が行われる際に、前記中空体軸線(4)に沿って定置である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記変形加工駆動装置(8)の前記駆動制御装置(11)を用いて、前記ダイ駆動装置(10)と前記マンドレル駆動装置(9)とは、前記軸方向のマンドレル運動の速度と、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)の前記軸方向のダイ運動の速度との比が、出発状態の前記中空体(2)の横断面と、前記中空体(2)の減少する横断面との比に依存するように制御可能である、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記軸方向のマンドレル運動の量と、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)の前記軸方向のダイ運動の量との比が、前記軸方向のマンドレル運動の速度と、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)の前記軸方向のダイ運動の速度との比に対して逆である、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記変形加工ダイ(5)は、前記ダイ駆動装置(10)を用いて、変形加工すべき前記中空体(2)から離れた位置から、前記変形加工ダイ(5)が前記中空体(2)の外面に配置される位置へと、位置決め運動によって移動可能であり、
前記変形加工駆動装置(8)の前記駆動制御装置(11)を用いて、前記ダイ駆動装置(10)と前記マンドレル駆動装置(9)とは、前記マンドレル駆動装置(9)が前記軸方向のマンドレル運動を開始した後で、前記変形加工ダイ(5)が、前記変形加工ダイ(5)の前記位置決め運動に基づき前記中空体(2)の外面に配置されるように制御可能である、
請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
出発状態における前記マンドレル(6)と、前記中空体(2)の前記中空体壁(3)との共同の横断面は、前記変形加工ダイ(5)の前記ダイ開口(7)の前記開口横断面よりも大きい、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記変形加工ダイ(5)は、前記ダイ開口(7)の周面に、形状付与エレメント、特に形状付与歯列を備えており、
かつ/または
前記マンドレル(6)は、その周面に、形状付与エレメント、特に形状付与歯列を備えている、
請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記マンドレル(6)が、前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で有効な形状接続で前記中空体壁(3)に支持されていることによって、前記軸方向のマンドレル運動に基づき、前記中空体壁(3)に、前記マンドレル(6)を用いて前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で引張負荷をかけることができる、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記マンドレル(6)が、前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で有効な摩擦接続で前記中空体壁(3)に支持されていることによって、前記軸方向のマンドレル運動に基づき、前記中空体壁(3)に、前記マンドレル(6)を用いて前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で引張負荷をかけることができる、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)が、前記中空体壁(3)を、前記中空体軸線(4)の半径方向で前記マンドレル(6)に対して負荷することによって、前記マンドレル(6)が、前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で有効な摩擦接続で前記中空体壁(3)に支持されている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
管状の中空体(2)の横断面を該中空体(2)の変形加工によって減少させるための方法であって、前記中空体は、塑性変形可能な材料から成る中空体壁(3)と、前記中空体(2)の長手方向で延在する中空体軸線(4)とを有しており、
前記中空体(2)の外面に変形加工ダイ(5)を配置し、該変形加工ダイは、前記中空体(2)を受容するように形成された、出発状態で前記中空体(2)の中空体横断面よりも小さい開口横断面を有しているダイ開口(7)を有しており、
前記中空体(2)の内部にマンドレル(6)を配置し、
前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)を、ダイ駆動装置(10)を用いて、前記中空体(2)の横断面を減少させながら、軸方向のダイ運動で前記中空体軸線(4)に沿って、前記軸方向のダイ運動の方向(14)で前記中空体(2)に対して動かす、方法において、
前記中空体(2)の内部に配置された前記マンドレル(6)を、前記ダイ駆動装置(10)に加えて設けられたマンドレル駆動装置(9)を用いて、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)の前記軸方向のダイ運動とは逆向きの軸方向のマンドレル運動で、前記中空体軸線(4)に沿って前記ダイ開口(7)を通るように動かし、
前記中空体壁(3)に、前記軸方向のマンドレル運動に基づき、前記マンドレル(6)を用いて前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で引張負荷をかけ、これにより、前記中空体壁(3)を、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)に対して、前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で前記ダイ開口(7)を通して引っ張り、
前記マンドレル駆動装置(9)と前記ダイ駆動装置(10)とを、前記軸方向のマンドレル運動と、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)の前記軸方向のダイ運動とが互いに重畳されるように制御することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状の中空体の横断面を中空体の変形加工によって減少させるための装置であって、中空体は、塑性変形可能な材料から成る中空体壁と、中空体の長手方向で延在する中空体軸線とを有しており、
中空体の外面に配置されるように形成された変形加工ダイであって、中空体を受容するように形成された、出発状態で中空体の中空体横断面よりも小さい開口横断面を有しているダイ開口を備えた変形加工ダイと、
中空体の内部に配置されるように形成されたマンドレルと、
ダイ駆動装置および駆動制御装置を有した変形加工駆動装置と、
を備え、
中空体の外面に配置された変形加工ダイは、ダイ駆動装置を用いて、中空体の横断面を減少させながら、軸方向のダイ運動で中空体軸線に沿って、軸方向のダイ運動の方向で中空体に対して可動である、装置に関する。
【0002】
本発明はさらに、管状の中空体の横断面を中空体の変形加工によって減少させるための方法であって、中空体は、塑性変形可能な材料から成る中空体壁と、中空体の長手方向で延在する中空体軸線とを有しており、
中空体の外面に変形加工ダイを配置し、この変形加工ダイは、中空体を受容するように形成された、出発状態で中空体の中空体横断面よりも小さい開口横断面を有しているダイ開口を有しており、
中空体の内部にマンドレルを配置し、
中空体の外面に配置された変形加工ダイを、ダイ駆動装置を用いて、中空体の横断面を減少させながら、軸方向のダイ運動で中空体軸線に沿って、軸方向のダイ運動の方向で中空体に対して動かす、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭で述べた形式の従来技術は、実際の使用により公知である。例えば、中空軸として形成された、自動車のためのステアリングシャフトは、冒頭で述べた装置によって冒頭で述べた方法を用いて、未加工シャフトを減径させながら製造される。
【0004】
稼働現場では、公知の方法および公知の装置を使用した場合、関連する複数の事例において、横断面を減少させるべき中空体における望ましくない圧潰が観察されている。中空体の圧潰を阻止するために、マンドレルおよび変形加工ダイに付加的に設けられた補強材が中空体のために使用可能であり、この補強材は、中空体の外面を取り囲み、半径方向で中空体を支持している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、管状の中空体の横断面減少を、可能な限り僅かな構造的手間で、特に、加工すべき中空体の付加的な補強なしに、確実な機能かつ高品質な加工成果で可能にする装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この課題は、請求項1による装置によって、ならびに請求項11による方法によって解決される。
【0007】
本発明の場合、変形加工駆動装置は、ダイ駆動装置に加えてマンドレル駆動装置を有している。中空体の外面に配置された変形加工ダイは、ダイ駆動装置を用いて、軸方向のダイ運動で中空体軸線に沿って能動的に動かされる。出発状態で存在している変形されていない中空体は、ダイ開口、すなわち減少した中空体横断面を生じさせるために形成された、変形加工ダイの開口(「キャリブレーション区間」)の開口横断面よりも大きな寸法を有している。中空体に対する変形加工ダイの能動的な運動に基づき、変形加工ダイによって負荷される中空体壁は、変形加工ダイによって、軸方向のダイ運動の方向で、能動的に圧縮負荷される。同時に、中空体壁は、軸方向のダイ運動とは逆方向の軸方向のマンドレル運動により、軸方向のマンドレル運動の方向に位置する、変形加工ダイによる負荷の側で、軸方向のマンドレル運動の方向で引張負荷を受ける。
【0008】
本発明において重要であるのは、本発明による変形加工駆動装置の駆動制御により実現される、能動的な軸方向のマンドレル運動と、中空体の外面に配置された変形加工ダイの能動的な軸方向のダイ運動との相互の重畳である。上記両運動の重畳により、変形加工ダイによる負荷に基づき中空体壁において壁横断面にわたって生じる圧縮応力は、能動的な軸方向のマンドレル運動により生じる中空体壁における引張応力によって、少なくとも部分的に相殺される。
【0009】
変形加工ダイによる中空体の圧縮負荷と、マンドレルによる中空体の引張負荷とを、例えば経験的に相応に見積もり、相互に調整した場合、中空体壁を負荷する変形加工ダイの、軸方向のダイ運動の方向で位置する側における中空体壁の望ましくない圧潰は、中空体の付加的な補強を行わなくても、確実に阻止される。同時に、能動的なダイ運動と能動的なマンドレル運動との重畳により、高い変形加工速度が得られる。
【0010】
一般に、軸方向のマンドレル運動および軸方向のダイ運動は、位置制御および力制御することができる。
【0011】
本発明による装置および本発明による方法の変形加工速度は、変形加工すべき中空体の材料強度にほぼ依存しない。強度の高い材料の場合、確かに、比較的高い変形力が必要であるが、同時に、強度の高い材料から成る中空体の圧潰傾向は比較的低い。逆に、強度の低い材料から成る管状の中空体は、圧潰傾向が比較的高いが、このような中空体の横断面減少は、比較的低い変形力で既に可能である。
【0012】
本発明の意味では、横断面減少とは、中空体壁の厚さが不変の場合には、変形加工すべき中空体のもっぱら中空室横断面の(円筒形の管の場合には管の内径の)減少であると、または
中空体の中空室横断面が不変の場合には、もっぱら中空体壁の厚さの減少であると、または
変形加工すべき中空体の中空室横断面および中空体壁の厚さの両方の減少であると、理解されたい。
【0013】
請求項1による装置および請求項11による方法の特別な構成形式は、従属請求項2~10から明らかである。
【0014】
請求項2によると、本発明の好適な構成では、中空体のために定置の軸方向の支持体が設けられており、この支持体では、軸方向ダイ運動の方向で変形加工ダイによって負荷される際に中空体が支持される。
【0015】
請求項3によると、本発明では、変形加工駆動装置の駆動制御装置を用いて、軸方向のマンドレル運動の速度と、中空体の外面に配置された変形加工ダイの軸方向のダイ運動の速度との比が、出発状態の中空体の横断面と、中空体の減少する横断面との比に依存するように調整される。変形加工度に応じて、中空体の外面に配置された変形加工ダイの軸方向のダイ運動の速度の値が、軸方向のマンドレル運動の速度の値よりも大きくなる場合があり、しかしまた、より小さくなる場合もある。本発明の試験的な使用の範囲で、30mm/秒~60mm/秒のダイ速度かつ21mm/秒~43mm/秒のマンドレル速度で、高品質の加工成果を達成することができた。
【0016】
請求項4によると、本発明のさらなる構成では、軸方向のマンドレル運動の量と、変形加工中の軸方向のダイ運動の量との比が、軸方向のマンドレル運動の速度と、変形加工中の軸方向のダイ運動の速度との比に対して逆である。これにより、中空体の変形加工のために変形加工長さにわたって実施される能動的なマンドレル運動および変形加工ダイ運動は、マンドレルと変形加工ダイとの速度が異なっているにもかかわらず、変形長さに到達した際に、同時に終了することが保証されている。
【0017】
請求項5には、本発明のさらに有利な構成が記載されており、変形加工ダイは、ダイ駆動装置を用いて、変形加工すべき中空体から離れた位置から、変形加工ダイが中空体の外面に配置される位置へと、位置決め運動によって移動可能であり、装置駆動装置の駆動制御装置を用いて、ダイ駆動装置とマンドレル駆動装置とは、マンドレル駆動装置が軸方向のマンドレル運動を開始した後で、変形加工ダイが、位置決め運動に基づき、中空体壁を負荷するように、制御される。したがって、変形加工ダイが、変形加工すべき中空体に最初に接触する際には、マンドレルと、このマンドレルによって中空体軸線に沿って駆動されて変形加工プロセス中に引張負荷をかけられる中空体とは既に動かされている。好ましくは、変形加工ダイの位置決め運動は、軸方向のダイ運動の方向で行われる。
【0018】
変形加工ダイによる中空体壁の負荷の前の、軸方向のマンドレル運動の速度および変形加工ダイの位置決め運動の速度は、変形加工プロセス中の速度よりも著しく高くすることができる。したがって、中空体を含むマンドレルをかつ/または変形加工ダイを、次いで行われる中空体の加工のために変形加工ダイが中空体壁に接触する位置へと高速で動かすことができる。
【0019】
請求項6による本発明の構成は、中空体壁の厚さを減少させることによって中空体の横断面を減少させるための本発明による横断面比に基づき設計されている。
【0020】
請求項7によると、本発明のさらなる構成では、中空体の横断面減少は、中空体壁の外面および/または内面における中空体壁の付加的な変形加工を伴う。横断面減少と同時に、好ましくは、横断面が減少される中空体の外側歯列および/または内側歯列が形成される。補足的にまたは代替的に、中空体の横断面減少を、中空体の所望の外側プロフィールの形成および/または中空体の所望の内側プロフィールの形成に関連付けることができる。
【0021】
軸方向のマンドレル運動の方向で中空体に引張負荷を加えるためにマンドレルおよび中空体を運動的に連動させることは、本発明によれば様々な方法で行うことができる。
【0022】
請求項8によれば、本発明によれば、マンドレルは、中空体壁に、マンドレルと中空体壁との間に生じる形状接続に基づき引張負荷を加える。形状接続を形成するために、例えば、中空体壁は、中空体内部に突出する突出部を有することができ、マンドレルは、この突出部に、軸方向のマンドレル運動の方向に位置する端部で支持される。
【0023】
請求項9によれば、本発明のさらなる構成では、マンドレルと、変形加工すべき中空体の中空体壁との間に、摩擦接続が形成される。好適には、請求項10によれば、このために、中空体の外面に配置された変形加工ダイが、中空体壁を、中空体軸線の半径方向でマンドレルに対して負荷していることが想定されている。したがって、中空体壁とマンドレルとの間の摩擦接続の形成は、変形加工プロセスの開始時に行われる。
【0024】
本発明によれば、軸方向のマンドレル運動を実施するマンドレルに、中空体壁を形状接続によって、かつ摩擦接続によって結合させることも考えられる。
【0025】
以下に、例示的な概略図に基づき本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】変形加工工程開始前の、管の横断面を減少させるための装置を極めて概略的に示す図である。
【
図2】変形加工工程中の、
図1の装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1および
図2によれば、装置1は、円筒形の管2の形態の、管状の中空体の横断面を減少させるために用いられる。管2は、中空体壁として、塑性変形可能な材料から成る管壁3を有しており、中空体軸線として、管2の長手方向に延びる管軸線4を有している。
【0028】
管2からは、複数の製造ステップで、自動車用のステアリングシャフトが製造される。
【0029】
製造プロセスの範囲で、管2の横断面を、詳細には管壁3の厚さを、装置1を用いて減少させる。
【0030】
このために、装置1は、従来の構造形式のアキシャルフォーミング機に、例えばFELSS Systems GmbH社(75203 Koenigsbach-Stein、ドイツ)により製品名「Aximus」として提供されるようなアキシャルフォーミング機に組み込まれている。
【0031】
アキシャルフォーミング機は、変形加工ダイ5用の、管軸線4に沿って可動の工具保持部と、同様に管軸線4に沿って可動の、マンドレル6の、変形加工ダイ5とは反対の側の端部を固定するためのマンドレルホルダとを有している。変形加工ダイ5用の工具保持部およびマンドレルホルダは、簡略化のために図面には示されていない。
【0032】
変形加工ダイ5は、管2の横断面を減少させるために形成されたダイ開口7(「キャリブレーション区間」)を備えており、ダイ開口の開口横断面は、
図1に示した出発状態における管2の横断面よりも小さい。
【0033】
図示した例の場合、ダイ開口7は平滑な壁をなしている。代替的に、ダイ開口7は、その周面に、形状付与エレメント、例えば形状付与歯列またはプロフィール形成エレメントを備えていてもよい。
【0034】
図1に著しく概略的に示された変形加工駆動装置8は、マンドレル駆動装置9ならびにダイ駆動装置10を含む。数値式の駆動制御装置11は、マンドレル駆動装置9およびダイ駆動装置10の両方を制御する。
【0035】
変形加工すべき管2は、アキシャルフォーミング機において、一方の端部で、管軸線4に沿って定置の軸方向の支持体12に支持されている。
【0036】
管2の横断面減少のために、マンドレル6は、マンドレル駆動装置9を用いて、軸方向のマンドレル運動で管軸線4に沿って矢印13の方向に移動され、変形加工ダイ5は、ダイ駆動装置10を用いて、軸方向のダイ運動で管軸線4に沿って矢印14の方向に移動される。
【0037】
図1には、管2の横断面を減少させる変形加工の開始直前の装置1における状態が示されている。マンドレル6はマンドレル駆動装置9を用いて、変形加工ダイ5はダイ駆動装置10を用いて、管軸線4に沿った各位置へと、それぞれ高速で移動される。
【0038】
この時点では比較的高い、変形加工ダイ5およびマンドレル6の送り速度は、変形加工ダイ5のダイ開口7が、管2の、変形加工ダイ5の側に位置する端部に達すると直ちに、駆動制御装置11によるマンドレル駆動装置9およびダイ駆動装置10の相応の制御に基づき、大幅に減じられる。
【0039】
変形加工ダイ5およびマンドレル6の速度減少は、位置制御および力制御の両方によって行うことができる。
【0040】
図示した実施例の場合、管2の変形加工のために、駆動制御装置11を用いて、矢印13の方向での軸方向のマンドレル運動の速度は15mm/秒に調節され、矢印14の方向での変形加工ダイ5の軸方向のダイ運動の速度は60mm/秒に調節される。軸方向のマンドレル運動および軸方向のダイ運動は、駆動制御装置11によって互いに重畳される。
【0041】
管2の自由端部がダイ開口7内に進入すると、管壁3は、この当該領域でマンドレル6へと押し付けられる。これにより、管壁3とマンドレル6との間に摩擦接続が形成される。
【0042】
同時に、管壁3は、軸方向のマンドレル運動に重畳する、矢印14の方向での軸方向のダイ運動に基づき、変形加工ダイ5によって、矢印14の方向に位置する側で圧縮負荷され、これにより管壁3の材料の降伏点が超過される。変形加工ダイ5によって負荷される管2を支持する軸方向の支持体12は、変形加工ダイ5によって管2が負荷される間、管軸線4に沿って定置である。
【0043】
管壁3とマンドレル6との間の摩擦接続により、外面で変形加工ダイ5によって負荷される管壁3には、変形加工ダイ5の、軸方向のマンドレル運動の方向13に位置する側で、マンドレル6によって矢印13の方向で引張負荷される。したがって、マンドレル駆動装置9によって駆動されるマンドレル6は、管壁3を、能動的に、矢印13の方向でダイ開口7を通して引っ張り、管2の伸張と同時に管壁3の厚さが減じられる。
【0044】
図2は、変形加工プロセス進行中の装置1における状態を示している。
【0045】
マンドレル6は、軸方向のマンドレル運動の方向13で変形加工ダイ5とは反対の側で、管壁3に引張負荷をかける。変形加工ダイ5によって、管壁3は圧縮負荷される。変形加工ダイ5およびマンドレル6によって管壁3に加えられる力は、
図2に矢印15,16により示されている。
【0046】
矢印13の方向での軸方向のマンドレル運動と、矢印14の方向での軸方向のダイ運動とを相応に調整することにより、すなわちマンドレル駆動装置9およびダイ駆動装置10の相応の制御により、変形加工ダイ5の、矢印14の方向に位置する側で管2の圧潰が生じることなしに、管壁3の厚さの減少が生じる。したがって、装置1の場合は、管2の圧潰を回避するために、管2の外面に付加的な補強材を設ける必要もない。
【0047】
図2では、
図1におけるマンドレルの位置に対して、軸方向のマンドレル運動の方向13でマンドレル6が摺動した距離長が、X
Dによって示されている。相応に、
図2では、
図1の状態を起点とした変形加工ダイ5の移動距離の長さが、X
Mによって示されている。
【0048】
図示した実施例の場合、マンドレル駆動装置9およびダイ駆動装置10を相応に制御することにより、管2の所望の変形長さに到達したら、マンドレル駆動装置9とダイ駆動装置10とを同時に停止させることができるようになっている。
【0049】
軸方向のマンドレル運動と、これとは逆方向の軸方向のダイ運動とが同時に行われるという状況により、装置1を用いて高い変形加工速度が達成される。高い変形加工速度にもかかわらず、管2では高品質の加工成果が得られる。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の中空体(2)の横断面を該中空体(2)の変形加工によって減少させるための装置であって、前記中空体は、塑性変形可能な材料から成る中空体壁(3)と、前記中空体(2)の長手方向で延在する中空体軸線(4)とを有しており、
前記中空体(2)の外面に配置されるように形成された変形加工ダイ(5)であって、前記中空体(2)を受容するように形成された、出発状態で前記中空体(2)の中空体横断面よりも小さい開口横断面を有しているダイ開口(7)を備えた変形加工ダイ(5)と、
前記中空体(2)の内部に配置されるように形成されたマンドレル(6)と、
ダイ駆動装置(10)および駆動制御装置(11)を有した変形加工駆動装置(8)と、
を備え、
前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)は、前記ダイ駆動装置(10)を用いて、前記中空体(2)の横断面を減少させながら、軸方向のダイ運動で前記中空体軸線(4)に沿って、前記軸方向のダイ運動の方向(14)で前記中空体(2)に対して可動である、装置において、
前記変形加工駆動装置(8)は、前記ダイ駆動装置(10)に加えてマンドレル駆動装置(9)を有しており、前記中空体(2)の内部に配置された前記マンドレル(6)は、前記マンドレル駆動装置を用いて、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)の前記軸方向のダイ運動とは逆向きの軸方向のマンドレル運動で、前記中空体軸線(4)に沿って、前記ダイ開口(7)を通るように可動であって、
前記中空体壁(3)には、前記軸方向のマンドレル運動に基づき、前記マンドレル(6)を用いて前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で引張負荷をかけることができ、これにより、前記中空体壁(3)は、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)に対して、前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で前記ダイ開口(7)を通して引っ張ることができ、
前記変形加工駆動装置(8)の前記駆動制御装置(11)を用いて、前記マンドレル駆動装置(9)と前記ダイ駆動装置(10)とは、前記軸方向のマンドレル運動と、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)の前記軸方向のダイ運動とが互いに重畳されるように制御可能であることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記中空体(2)のために、軸方向の支持体(12)が設けられており、該支持体には、前記中空体(2)が、前記軸方向のダイ運動の方向(14)で支持されており、前記支持体は、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)によって、前記中空体(2)に対して前記軸方向のダイ運動が行われる際に、前記中空体軸線(4)に沿って定置である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記変形加工駆動装置(8)の前記駆動制御装置(11)を用いて、前記ダイ駆動装置(10)と前記マンドレル駆動装置(9)とは、前記軸方向のマンドレル運動の速度と、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)の前記軸方向のダイ運動の速度との比が、出発状態の前記中空体(2)の横断面と、前記中空体(2)の減少する横断面との比に依存するように制御可能である、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記軸方向のマンドレル運動の量と、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)の前記軸方向のダイ運動の量との比が、前記軸方向のマンドレル運動の速度と、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)の前記軸方向のダイ運動の速度との比に対して逆である、請求項
1記載の装置。
【請求項5】
前記変形加工ダイ(5)は、前記ダイ駆動装置(10)を用いて、変形加工すべき前記中空体(2)から離れた位置から、前記変形加工ダイ(5)が前記中空体(2)の外面に配置される位置へと、位置決め運動によって移動可能であり、
前記変形加工駆動装置(8)の前記駆動制御装置(11)を用いて、前記ダイ駆動装置(10)と前記マンドレル駆動装置(9)とは、前記マンドレル駆動装置(9)が前記軸方向のマンドレル運動を開始した後で、前記変形加工ダイ(5)が、前記変形加工ダイ(5)の前記位置決め運動に基づき前記中空体(2)の外面に配置されるように制御可能である、
請求項
1記載の装置。
【請求項6】
出発状態における前記マンドレル(6)と、前記中空体(2)の前記中空体壁(3)との共同の横断面は、前記変形加工ダイ(5)の前記ダイ開口(7)の前記開口横断面よりも大きい、請求項
1記載の装置。
【請求項7】
前記変形加工ダイ(5)は、前記ダイ開口(7)の周面に、形状付与エレメント、特に形状付与歯列を備えており、
かつ/または
前記マンドレル(6)は、その周面に、形状付与エレメント、特に形状付与歯列を備えている、
請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記マンドレル(6)が、前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で有効な形状接続で前記中空体壁(3)に支持されていることによって、前記軸方向のマンドレル運動に基づき、前記中空体壁(3)に、前記マンドレル(6)を用いて前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で引張負荷をかけることができる、請求項
1記載の装置。
【請求項9】
前記マンドレル(6)が、前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で有効な摩擦接続で前記中空体壁(3)に支持されていることによって、前記軸方向のマンドレル運動に基づき、前記中空体壁(3)に、前記マンドレル(6)を用いて前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で引張負荷をかけることができる、請求項
1記載の装置。
【請求項10】
前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)が、前記中空体壁(3)を、前記中空体軸線(4)の半径方向で前記マンドレル(6)に対して負荷することによって、前記マンドレル(6)が、前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で有効な摩擦接続で前記中空体壁(3)に支持されている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
管状の中空体(2)の横断面を該中空体(2)の変形加工によって減少させるための方法であって、前記中空体は、塑性変形可能な材料から成る中空体壁(3)と、前記中空体(2)の長手方向で延在する中空体軸線(4)とを有しており、
前記中空体(2)の外面に変形加工ダイ(5)を配置し、該変形加工ダイは、前記中空体(2)を受容するように形成された、出発状態で前記中空体(2)の中空体横断面よりも小さい開口横断面を有しているダイ開口(7)を有しており、
前記中空体(2)の内部にマンドレル(6)を配置し、
前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)を、ダイ駆動装置(10)を用いて、前記中空体(2)の横断面を減少させながら、軸方向のダイ運動で前記中空体軸線(4)に沿って、前記軸方向のダイ運動の方向(14)で前記中空体(2)に対して動かす、方法において、
前記中空体(2)の内部に配置された前記マンドレル(6)を、前記ダイ駆動装置(10)に加えて設けられたマンドレル駆動装置(9)を用いて、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)の前記軸方向のダイ運動とは逆向きの軸方向のマンドレル運動で、前記中空体軸線(4)に沿って前記ダイ開口(7)を通るように動かし、
前記中空体壁(3)に、前記軸方向のマンドレル運動に基づき、前記マンドレル(6)を用いて前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で引張負荷をかけ、これにより、前記中空体壁(3)を、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)に対して、前記軸方向のマンドレル運動の方向(13)で前記ダイ開口(7)を通して引っ張り、
前記マンドレル駆動装置(9)と前記ダイ駆動装置(10)とを、前記軸方向のマンドレル運動と、前記中空体(2)の外面に配置された前記変形加工ダイ(5)の前記軸方向のダイ運動とが互いに重畳されるように制御することを特徴とする、方法。
【国際調査報告】