(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】神経監視データ分析装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/378 20210101AFI20240709BHJP
A61B 5/38 20210101ALI20240709BHJP
A61B 5/397 20210101ALI20240709BHJP
【FI】
A61B5/378
A61B5/38
A61B5/397
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580969
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 IB2022056217
(87)【国際公開番号】W WO2023281399
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524001673
【氏名又は名称】ナーヴィオ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NERVIO LTD
【住所又は居所原語表記】Manof Industrial Park, Manof, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーマニー エイナット
(72)【発明者】
【氏名】ザルキ ニル
(72)【発明者】
【氏名】ザルキ オメール
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127AA04
4C127DD01
4C127DD02
4C127DD03
4C127GG15
4C127GG16
(57)【要約】
実施形態の態様は、以下、すなわち、被験体の神経系の複数の神経構造において少なくとも1つの信号を反応可能なように生成するために哺乳類被験体に加えられる少なくとも1つの物理刺激を記述するデータと、加えられた物理刺激に応じて生成される少なくとも1つの神経生理学的反応信号を記述するセンサデータと、を含む、患者データを含む患者データを受信すること、を採用することによって、神経監視データ分析を実行するように構成されたシステムに関する。システムはさらに、少なくとも1つの物理刺激を記述する受信した患者データ及び生成された反応信号に基づいて、患者の複数の神経構造のうちの少なくとも1つに関する少なくとも1つの特性を判定するように構成されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の神経系を監視するように構成された神経監視データ分析装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
少なくとも1つのメモリであって、
患者データを受信することであって、
前記哺乳類被験体の神経系の少なくとも2つの神経構造に加えられる複数の物理刺激を記述するデータと、
前記複数の物理刺激を前記加えることに応じて、前記少なくとも2つの神経構造で生成される複数の神経生理学的反応信号を記述するセンサデータと、を含む前記患者データを受信することと、
前記複数の神経生理学的反応信号を記述する前記センサデータに基づいて、前記少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷を示す異常事象を識別することと、
を実行させるために前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能なデータ及びソフトウェアコード部分を記憶するように構成された、前記少なくとも1つのメモリと、
を備える、前記神経監視データ分析装置。
【請求項2】
前記ステップは、前記識別された事象に関連する第1の出力を提供することをさらに含む、請求項1に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項3】
前記識別することは、加えられた前記複数の物理刺激を記述する前記データにさらに基づく、請求項2に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項4】
前記識別することが、
前記少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷に関連する第1の異常事象と、
前記少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷に関連しない第2の異常事象と
を区別することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つの神経構造で生成された前記複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、前記加えられた物理刺激を記述する前記データとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陽性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陽性率と比較して、低減される、請求項1~4のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項6】
前記少なくとも2つの神経構造で生成された前記複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、加えられた前記物理刺激を記述するデータとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陰性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陰性率と比較して、低減される、請求項1~5のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項7】
前記識別することが、
異常事象を以下のカテゴリ、すなわち、
前記少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷に関連する第1の異常事象、及び
前記少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷に関連しない第2の異常事象、
のうちの1つに分類することを含む、請求項1~6のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項8】
前記第1の出力は、検出された前記異常事象が前記少なくとも1つの神経構造の損傷に関連する確率に関する情報を含む、請求項1~7のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項9】
前記第2の異常事象を記述する第2の出力を提供するように構成された、請求項4~8のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項10】
前記第2の異常事象を記述する前記出力は、前記第2の異常事象が以下の、
センサ誤構成;信号アーチファクト、全身性生理学的要因、システム動作不良、環境要因、またはこれらの任意の組み合わせ、のうちの1つによって引き起こされるかどうかに関する情報を含む、請求項9に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項11】
全身性要因が、以下の、
患者の麻酔、血圧、患者の位置、患者の姿勢、または前述の任意の組み合わせ、のうちの1つ以上を含む、請求項10に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項12】
前記異常事象が、神経構造の機能状態に関連する、請求項1~11のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項13】
前記複数の神経構造のうちの前記神経構造が、神経経路及び/または受容体を含む、請求項12に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項14】
前記第1の異常事象が、神経機能状態を以下のカテゴリ、「低下」または「消失」、のうちの1つに分類する、請求項1~13のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項15】
前記第2の異常事象は、前記少なくとも1つの神経構造の機能状態を「正常」と分類することを含む、請求項4~14のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項16】
前記複数の物理刺激は、以下の、誘発電位、反射、自発電位、またはこれらの任意の組み合わせ、のうちの1つに関連する、請求項1~15のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項17】
被験体の神経系を監視するように構成された神経監視データ分析装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
少なくとも1つのメモリであって、
患者データを受信することであって、
前記哺乳類被験体の神経系の少なくとも2つの神経構造に加えられる複数の物理刺激を記述するデータと、
前記複数の物理刺激を前記加えることに応じて、前記少なくとも2つの神経構造で生成される複数の神経生理学的反応信号を記述するセンサデータと、
を含む前記患者データを受信することと、
前記複数の神経生理学的反応信号を分析することと、
前記集合的な分析することに基づいて、前記少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷を示す異常事象を識別することと、
を実行させるために前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能なデータ及びソフトウェアコード部分を記憶するように構成された、前記少なくとも1つのメモリと、
を備える、前記神経監視データ分析装置。
【請求項18】
前記分析することが、前記複数の反応信号を集合的に分析することを含む、請求項17に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項19】
前記分析することが、前記複数の反応信号を記述するデータと、前記複数の反応信号を生成するために前記少なくとも2つの神経構造に加えられた前記加えられた物理刺激を記述する前記データとを集合的に分析することを含む、請求項17及び/または請求項18に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項20】
前記少なくとも2つの神経構造で生成された前記複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、加えられた前記物理刺激を記述するデータとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陽性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陽性率と比較して、低減される、請求項16~18のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項21】
前記少なくとも2つの神経構造で生成された前記複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、加えられた前記物理刺激を記述する前記データとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陰性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陰性率と比較して、低減される、請求項17~20のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項22】
検出された前記異常が前記少なくとも1つの神経構造の損傷に関連しないと判定された場合に、検出された前記異常に関する情報を含む第2の出力を提供するように、さらに構成された、請求項17~21のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項23】
検出された前記異常が前記少なくとも1つの神経構造の損傷を示す確率を示す第1の出力を提供するように構成された、請求項17~22のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項24】
前記少なくとも1つの神経構造の前記損傷が、前記少なくとも1つの神経構造を含む組織領域との物理的係合の結果である、請求項17~23のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項25】
前記異常を前記検出することは、前記生成された反応信号を対応するベースライン信号と比較することを含む、請求項17~24のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項26】
前記少なくとも1つの神経構造の神経機能状態を、以下のカテゴリ、「正常」、「低下」、「消失」のうちの1つに分類することのための分類器を含む、請求項17~25のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項27】
被験体の神経系を監視するように構成された神経監視データ分析装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
少なくとも1つのメモリであって、
患者データを受信することであって、
前記哺乳類被験体の神経系の少なくとも2つの神経構造に加えられる複数の物理刺激を記述するデータと、
加えられた前記複数の物理刺激に応じて、前記少なくとも2つの神経構造で生成される複数の神経生理学的反応信号を記述するセンサデータと、
を含む前記患者データを受信することと、
前記反応信号を記述するデータにおける検出された異常が、少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷を示すか否かを判定することと、
を実行させるために前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能なデータ及びソフトウェアコード部分を記憶するように構成された、前記少なくとも1つのメモリと、
を備える、前記神経監視データ分析装置。
【請求項28】
前記少なくとも2つの神経構造に前記物理刺激を同時に与えるように構成された、請求項27に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項29】
前記検出された異常が前記少なくとも1つの神経構造の損傷に関連しないと判定された場合に、前記検出された異常に関する情報を含む第2の出力を提供するように、さらに構成された、請求項27及び/または請求項28に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項30】
前記検出された異常が前記少なくとも1つの神経構造の損傷を示す確率を示す第1の出力が提供されるように構成された、請求項27~29のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項31】
前記少なくとも1つの神経構造の前記損傷が、前記少なくとも1つの神経構造を含む組織領域との物理的係合の結果である、請求項27~30のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項32】
前記異常を前記検出することは、前記生成された反応信号を対応するベースライン信号と比較することを含む、請求項27~31のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項33】
前記少なくとも1つの神経構造の神経機能状態を、以下のカテゴリ、「正常」、「低下」、「消失」のうちの1つに分類することのための分類器を含む、請求項27~32のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項34】
前記メモリが、以下の、
臨床患者データ、
人口統計学的患者データ、
麻酔データ、
生理学的患者データ、
手術データ、
ベースライン運動誘発電位信号データ、
ベースラインEMG信号、
ベースラインEEG信号、
ベースライン体性感覚誘発電位信号データ、
反射作用、または
それらの任意の組み合わせ、
のうちの1つをさらに含む患者データを受信するように構成される、請求項27~33のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項35】
前記第1の出力が、以下の、
運動損傷衝撃位置を含む運動傷害、感覚衝撃位置を含む体性感覚傷害、
完全または不完全な損傷を含む脊髄経路損傷重症度、
またはそれらの任意の組み合わせ、
のうちの1つに関連するものとして経路損傷を特徴付ける情報を含む、請求項27~34のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項36】
前記少なくとも1つの神経構造の損傷を、以下の、
筋節損傷、
完全な損傷または不完全な損傷を含む神経損傷重症度、
のうちの1つに関連するものとして特徴付けるように構成される、請求項37~35のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項37】
前記異常事象の前記第2の出力は、以下の、
全身性生理学的状態、
神経監視システム動作不良、
またはその両方、
のうちの1つを記述する臨床情報を含む、請求項27~36のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項38】
以下の、
追加の運動誘発電位を誘発する、
追加の体性感覚誘発電位を誘発する、
追加の運動誘発電位の刺激強度を変化させる、
追加の体性感覚誘発電位の刺激強度を変化させる、
記録パラメータを更新する、
神経監視システムの動作不良をチェックする、
インピーダンスをチェックする、
麻酔パラメータをチェックする、
末梢神経刺激を行う、
生理学的パラメータをチェックする、
患者位置をチェックする、
手術を維持する、
電極の位置決め、
患者の位置決め、または
これらの任意の組み合わせ、
のうちの1つを含む手術推奨出力を提供するように、さらに構成される、請求項27~37のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項39】
前記手術推奨出力は、識別された前記異常に依存する、請求項38に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項40】
前記階層的に配置された機械学習サブモデルの第1のレベルの機械学習サブモデルは、信号モダリティに関連する複数のチャネルの信号を分析して、複数のそれぞれのチャネルごとの分析出力を生成するように構成される、請求項27~39のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項41】
階層的に配置された前記機械学習サブモデルの第2のレベルの機械学習サブモジュールは、前記複数のチャネルごとの分析出力を受信するように構成されており、
前記第2のレベルの機械学習サブモジュールは、前記信号モダリティの受信された前記複数のチャネルごとの分析出力を分析して、前記モダリティを記述する分析出力を提供するように構成される、請求項40に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項42】
前記階層的に配置された機械学習サブモデルの第3のレベルの機械学習サブモジュールは、前記モダリティを記述する分析出力を受信し、
前記第3のレベルの機械学習サブモジュールは、前記第2のサブモジュールから受信された前記出力を分析して、前記受信された患者データの臨床的解釈を記述する出力を生成するように構成される、請求項41に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項43】
前記少なくとも2つの神経構造で生成された前記複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、加えられた前記物理刺激を記述する前記データとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陽性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陽性率と比較して、低減される、請求項27~42のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項44】
前記少なくとも2つの神経構造で生成された前記複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、加えられた前記物理刺激を記述するデータとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陰性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陰性率と比較して、低減される、請求項27~43のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項45】
被験体の神経系を監視するように構成された神経監視データ分析装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
少なくとも1つのメモリであって、
患者データを受信することであって、
前記被験体の神経系の少なくとも2つの神経構造において複数の対応する刺激信号を反応可能なように生成するために、哺乳類被験体に加えられる複数の物理刺激を記述するデータと、
加えられた前記複数の物理刺激に応じて生成される複数の神経生理学的反応信号を記述するセンサデータと、
を含む前記患者データを受信することと、
前記反応信号が、前記少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つに関する異常特性を示すか否かを判定することと、
前記少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷を示す異常特性と、前記少なくとも1つの神経構造の損傷を示さない異常特性とを区別することと、
を実行させるために前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能なデータ及びソフトウェアコード部分を記憶するように構成された、前記少なくとも1つのメモリと、
を備える、前記神経監視データ分析装置。
【請求項46】
前記異常を前記検出することは、前記生成された反応信号を対応するベースライン信号と比較することを含む、請求項45に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項47】
前記少なくとも2つの神経構造で生成された前記複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、前記加えられた物理刺激を記述する前記データとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陽性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陽性率と比較して、低減される、請求項45~46のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項48】
前記少なくとも2つの神経構造で生成された前記複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、前記加えられた物理刺激を記述するデータとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陰性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陰性率と比較して、低減される、請求項45~47のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項49】
被験体の神経系を監視するように構成された神経監視データ分析装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
少なくとも1つのメモリであって、
患者データを受信することであって、
前記被験体の神経系の少なくとも2つの神経構造において複数の対応する刺激信号を反応可能なように生成するために、哺乳類被験体に加えられる複数の物理刺激を記述するデータと、
加えられた前記複数の物理刺激に応じて生成される複数の神経生理学的反応信号を記述するセンサデータと、
を含む前記患者データを受信することと、
反応信号に関して検出された異常を、以下のカテゴリの、
前記少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷を示す第1の異常、及び
前記少なくとも1つの神経構造の損傷に関連しない第2の異常、
のうちの1つに分類することと、
を実行させるために前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能なデータ及びソフトウェアコード部分を記憶するように構成された、前記少なくとも1つのメモリと、
を備える、前記神経監視データ分析装置。
【請求項50】
前記少なくとも2つの神経構造で生成された前記複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、前記加えられた物理刺激を記述するデータとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陽性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陽性率と比較して、低減される、請求項49に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項51】
前記少なくとも2つの神経構造で生成された前記複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、前記加えられた物理刺激を記述するデータとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陰性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陰性率と比較して、低減される、請求項49~50のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項52】
前記分類することはまた、前記少なくとも2つの神経構造の各構造に対するベースライン信号を考慮に入れる、請求項49~51のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項53】
前記分類することは、以下のステップ、
前記加えられた物理刺激の前記受信されたデータ及び前記生成された反応信号を分析すること、及び
前記分析することに基づいて、前記生成された反応信号のうちの少なくとも1つの異常を検出すること、
の後に行われる、請求項49~52のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項54】
前記分析することが、前記加えられた物理刺激の前記受信されたデータと、前記生成された反応信号とを、集合的に分析することを含む、請求項53に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項55】
前記分析することは、前記加えられた物理刺激の前記受信されたデータ、前記生成された反応信号、及び前記対応するベースライン信号を集合的に分析することを含む、請求項54に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項56】
前記異常を前記検出することは、前記生成された反応信号を対応するベースライン信号と比較することを含む、請求項53に記載の神経監視データ分析装置。
【請求項57】
被験体の神経系を監視するように構成された神経監視データ分析装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
少なくとも1つのメモリであって、
患者のデータを受信することであって、
前記被験体の神経系の複数の神経構造において少なくとも1つの信号を反応可能なように生成するために哺乳類被験体に加えられる少なくとも1つの物理刺激を記述するデータと、
前記加えられた物理刺激に応じて生成される少なくとも1つの神経生理学的反応信号を記述するセンサデータと、
を含む、前記患者のデータを受信することと、
前記少なくとも1つの物理刺激を記述する前記受信した患者のデータ及び前記生成された反応信号に基づいて、前記患者の前記複数の神経構造のうちの少なくとも1つに関する少なくとも1つの特性を判定することと、
を実行させるために前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能なデータ及びソフトウェアコード部分を記憶するように構成された、前記少なくとも1つのメモリと、
を備える、前記神経監視データ分析装置。
【請求項58】
神経監視データ分析を行うための神経監視データ分析方法であって、
哺乳動物に、異なる経路の複数の神経構造における複数の神経物理刺激を与えることと、
前記哺乳動物に前記1つ以上の神経刺激を与えたことに応じて、前記哺乳動物の前記複数の神経構造に関連して生成される複数の神経生理学的反応信号を記述するデータを分析することと、
前記検出された異常が前記少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷を示すか否かを判定することと、
を含む、前記神経監視データ分析方法。
【請求項59】
前記集合的に分析することはまた、対応するベースライン反応信号を考慮に入れる、請求項58に記載の神経監視データ分析方法。
【請求項60】
前記少なくとも1つの神経構造の損傷を示す検出された異常が、前記神経構造の機能状態に関係する、請求項58及び/または請求項59に記載の神経監視データ分析方法。
【請求項61】
前記判定することが、前記機能状態を分類することを含む、請求項58~60のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析方法。
【請求項62】
前記神経機能状態を、以下の、「正常」、「低下」または「消失」のうちの1つに分類することを含む、請求項58~61のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析方法。
【請求項63】
信号モダリティに関連する複数のチャネルの信号を分析して、前記階層的に配置された学習サブモデルの第1のレベルの機械学習サブモデルによって複数のそれぞれのチャネルごとの分析出力を生成することを含む、請求項58~62のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析方法。
【請求項64】
前記階層的に配置されたサブモジュールの第2のレベルの機械学習サブモジュールによって、前記複数のチャネルごとの分析出力を受信することと、
前記第2のレベルの機械学習サブモジュールによって、前記信号モダリティの受信された前記複数のチャネルごとの分析出力を分析して、前記モダリティを記述する分析出力を提供することと、
を含む、請求項63に記載の神経監視データ分析方法。
【請求項65】
前記階層的に配置された機械学習サブモジュールの第3のレベルの機械学習サブモジュールで、前記モダリティを記述する前記分析出力を受信することと、
前記第3のレベルの機械学習サブモジュールによって、前記第2のレベルのサブモジュールから受信された前記分析出力を分析して、前記受信された患者データの臨床的解釈を記述する出力を生成することと、
を含む、請求項64に記載の神経監視データ分析方法。
【請求項66】
前記少なくとも2つの神経構造で生成された前記複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、加えられた前記物理刺激を記述する前記データとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陽性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陽性率と比較して、低減される、請求項58~65のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析方法。
【請求項67】
前記少なくとも2つの神経構造で生成された前記複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、加えられた前記物理刺激を記述するデータとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陰性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陰性率と比較して、低減される、請求項58~66のいずれか1項以上に記載の神経監視データ分析方法。
【請求項68】
専門家が患者のデータを、請求項1~57のいずれか1項に記載の神経監視データ分析装置の機械学習モデルの訓練のための1つ以上のラベルと関連付けることを可能にするインターフェースを備えるラベリングプラットフォームであって、前記1つ以上のラベルが、前記患者の神経系の特性に関連する、ラベリングプラットフォーム。
【請求項69】
前記ラベリングすることは、前記神経監視データ分析装置の前記機械学習モデルを訓練するための、神経監視システムから受信された患者データをラベリングするために、術中に実施される、請求項68に記載のラベリングプラットフォーム。
【請求項70】
神経監視システムの実行中に、前記神経監視システムに関連付けられた神経監視ラベリングプラットフォームで患者データを受信することと、
前記ラベリングプラットフォームの入出力(I/O)デバイスのディスプレイ上に、前記受信された患者データに関連する情報を表示することと、
前記実行中に、前記I/Oデバイスを使用して前記患者データをラベリングすることと、
を含む方法であって、
前記1つ以上のラベルが、患者の神経系の特性に関連する、前記方法。
【請求項71】
前記ラベリングすることは、神経監視データ分析装置の機械学習モデルを訓練するための、前記神経監視システムから受信された患者データをラベリングするために、術中に実施される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記ラベリングすることは、前記I/Oデバイスの前記ディスプレイ上で1つ以上のウィンドウをドラッグすることによって、前記表示された情報の一部を選択することを含む、請求項70または請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記ラベリングすることは、前記I/Oデバイスの前記ディスプレイをタッチ押下することによって、前記表示された情報の一部を選択することを含む、請求項70~72のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項74】
前記ラベリングすることは、前記I/Oデバイスに音声入力を提供することによって、前記表示された情報の一部を選択することを含む、請求項70~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記ラベリングすることは、前記I/Oデバイスに注視に基づく入力を提供することによって、前記表示された情報の一部を選択することを含む、請求項70~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記ラベリングすることは、複数のレベルの階層的に配置された機械学習サブモデルを含む機械学習モデルにおいて、前記表示された情報の一部を、前記選択された情報と前記選択された情報の対応する階層レベルとの間の関連に基づいて選択することを含む、請求項70~75のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月5日に出願されたイスラエル特許出願284635に対する、さらに2021年7月6日に出願された米国仮出願63/218,673に対する国際優先権及び/または国内優先権を主張するものであり、いずれも参照により全体として援用する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、一般に、例えば、術中神経監視を含む神経監視(neuromonitoring)に関する。術中神経監視は、脊椎または脳などの組織領域で手術を行うときに、患者の神経構造に不注意による損傷を与えるリスクを回避するためまたは低減するために必須である。手術中、術中神経学的監視(IONM)に関する専門知識を有する神経科医は、神経学的信号の記録を分析して、機能的神経欠損を予防するため、または軽減するために、早期のアラートを外科医に提供する。
【0003】
上記の説明は、この分野における関連技術の一般的な概要として提示されるものであり、それに含まれる情報のいずれかが本特許出願に対する先行技術になると認めるものと解釈されるべきではない。
【0004】
図は、一般に、本明細書で説明する様々な実施形態を、限定ではなく例として例示する。
【0005】
例示を簡潔かつ明瞭にするために、図面に示される要素は必ずしも縮尺通りに描かれていない。例えば、要素のいくつかの寸法は、提示を明確にするために、他の要素に対して誇張されている場合がある。さらに、参照数字は、対応する要素または類似の要素を示すために、図の中で繰り返される場合がある。以前に提示された要素への言及は、それらが現れる図面または説明を必ずしもさらに引用しなくても暗示される。図は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】いくつかの実施形態による、神経監視データ分析装置の概略ブロック図を示す。
【
図2A】ある実施形態による、神経監視データ分析装置によって実装される機械学習モデルを作成するための一般的なブロック図を示す。
【
図2B】ある実施形態による、神経監視データ分析装置によって実装される機械学習モデルを作成するためのより具体的なブロック図を示す。
【
図3】いくつかの実施形態による、神経監視ラベリングプラットフォームの概略ブロック図である。
【
図4】いくつかの実施形態による、神経監視データ分析装置によって分析される信号のプロットを表示するスクリーンショットの概略ブロック図である。
【
図5】いくつかの実施形態による、神経監視データ分析装置によって表示された分析された信号のプロットを表示する別のスクリーンショットの概略ブロック図である。
【
図6】いくつかの実施形態による、神経監視データ分析装置によって分析された信号のプロットを表示する別のスクリーンショットの概略ブロック図である。
【
図7】いくつかの実施形態による、患者の神経系を監視するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
開示される実施形態の態様は、神経監視データ分析装置によって受信され(直接的及び/または間接的に受信され)、処理された感知神経学的信号及び/または被測定神経学的信号についての患者データに基づく自動または半自動神経監視に関する。いくつかの実施形態では、本装置は、患者の現在の機能的神経状態に関連している出力及び/または患者の現在の機能的神経状態を記述している出力を、任意選択でその臨床的解釈と共に提供するように動作可能である及び/または構成される。加えて、神経監視データ分析装置は、例えば、脊髄及び脳の領域における神経構造、神経領域、神経及び/または神経根の機能的マッピングを実行するように動作可能であり得る及び/または構成され得る。さらに、いくつかの実施形態では、神経監視データ装置は、(神経)刺激に反応した反射反応(reflectory reaction)または反射作用の機能状態を判定するように構成され得る。いくつかの実施例では、本装置によって実行されたデータ分析に関する出力は、医療(例えば、外科)処置を受けている患者の神経系を(例えば、術中に)監視するために採用された神経監視システムの出力デバイスによって、及び/または、とりわけ術中神経監視システムから受信されたデータを分析する分析装置によって、提供され(例えば、視覚的及び/または聴覚的に表示され)得る。したがって、実施形態は、例えば、監視システムによる神経系監視情報の提供、及び分析装置による関連分析出力の提供について記載することがあるが、これは、決して限定的に解釈されるべきではない。例えば、本装置によって生成される分析出力(例えば、アラート、フラグ)は、監視システムによって表示される神経系監視情報(例えば、信号プロット)と重ねて表示され得る。いくつかの実施例では、本分析装置は、出力を提供するのではなく、単に分析を実行して分析結果(例えば、異常分類)を生成し得る。
【0008】
患者データのいくつかは、術前に受信された患者データを含む場合があり、患者データのいくつかは、術中に受信された患者データを含む場合がある。
【0009】
患者データは、患者の神経学的機能に関連し得、例えば、患者の神経系の複数の神経構造において少なくとも1つの信号を反応的に生成するために哺乳類の被験体(例えば、ヒト被験体)に与えられる少なくとも1つの物理的(例えば、神経)刺激を記述し得る。患者データは、さらに、与えられた1つ以上の物理刺激に反応して生成された少なくとも1つの反応信号を記述するセンサデータを記述し得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、患者データは、患者の神経学的機能の情報に加えて、解剖学的(例えば、構造的)患者情報及び/または生理学的患者情報を記述し得る。追加の生理学的患者情報には、例えば、患者の体温、体重、血液酸素飽和度、心電図情報、及び/または同様のものなども含まれ得る。
【0011】
神経監視データ分析装置は、受信された患者データに基づいて、複数の神経構造のうちの少なくとも1つに関する少なくとも1つの特性を判定するように構成され得る。特性は、例えば、患者の神経構造の機能における異常(例えば、欠損)を示し得る神経機能状態に関連し得る。いくつかの実施例では、機能状態の特性に関する出力は、例えば、欠損がアラート出力基準を満たす場合、例えば、アラートを出力するための1つ以上の条件が満たされる場合、アラートを含み得る。いくつかの実施例では、本装置が、欠損の重症度が重症度しきい値を超えることを識別する場合、アラート出力基準が満たされ得る。いくつかの実施例では、本装置が、外科的に誘発された欠損が、非回復性の欠損(例えば、神経構造に恒久的な危害または損傷を与える欠損)、または特定の重症度を超える非回復性の欠損、または特定の重症度を超える回復性の欠損(例えば、神経構造の回復を可能にする欠損)、を引き起こす可能性があることを識別した場合、アラート出力基準が満たされ得る。本装置は、神経構造に近接する組織または隣接する組織と係合するために使用される外科用付属品または器具によって引き起こされ得る、神経構造の損傷に関わる臨床的に重要な、または神経構造の損傷に臨床的に関連する(例えば、神経構造に引き起こされる損傷を示す)神経信号異常と、神経構造の損傷に関連しない神経信号異常とを区別する(例えば、これらの異常を神経構造の損傷に臨床的に関連しないものとして分類する)ように動作可能である。アラートは、術中に監視された神経パラメータ値に関わる患者の具体的な臨床症状に関する情報を含み得る。例えば、本装置は、例えば、損傷(傷害でもある)を受けた神経経路のタイプと、損傷(傷害でもある)の重症度及び/または結果として生じる欠損と、神経損傷の発端位置及び/または発端領域と、結果として生じる機能欠損の発端位置及び/または発端領域とを含む、患者データの臨床的解釈を提供するように構成され得る。いくつかの実施形態では、本装置は、神経監視システムまたはセットアップの誤構成を識別し、検出された異常(異常パラメータ値でもある)がそのような誤構成に起因することをユーザにアラートするように構成され得る。例えば、本装置は、感知電極及び/または刺激電極の患者との誤った係合または不適切な係合についてユーザにアラートすることができる。
【0012】
いくつかの実施例では、本明細書で使用される「神経構造の損傷」、「神経損傷」、及び/または「機能欠損」の表現(及びその文法的変形)は、神経構造の完全性が、対応する神経構造との直接的な外科的係合の結果として悪影響を受ける状況に関連し得ることに留意されたい。いくつかの実施例では、本装置は、「脊髄損傷」、「神経損傷」を区別し、任意選択で対応する出力を提供するように構成され得る。
【0013】
外科的係合による神経構造に関する表現「損傷」は、非恒久的及び/または恒久的な損傷に関連し得ることにさらに留意されたい。神経構造は、例えば、外科医によって使用される外科用付属品が、神経構造から、損傷の回復が可能な許容できる距離だけ離れている場合、及び/または神経構造から、許容できない距離の範囲内にあり、神経構造に回復不能な危害または損傷をもたらす可能性がある場合、例えば、データ分析装置が医療専門家(例えば、外科医または神経科医)にアラートすることの結果として、損傷後に少なくとも部分的に、または完全に回復し得る。
【0014】
神経監視システムは、自然発生的及び非自然発生的な神経生理学的信号を監視するように構成され得る。例えば、本システムは、患者の神経系の神経構造における測定可能な神経活動信号を発生させ、及び/または監視するために、術中に、少なくとも1つの神経信号測定モダリティに関連して、少なくとも1つの物理(例えば、電気、聴覚、及び/または視覚)刺激を患者(標的個体または哺乳類被験体でもある)に与えるように構成されてもよい。
【0015】
少なくとも1つの神経測定モダリティは、例えば、運動誘発電位(MEP)信号、体性感覚誘発電位(SSEP)信号、反射(例えば、H反射、球海綿体反射、瞬目反射)、自律神経信号(ANS)、筋電図検査(EMG)信号、脳波検査(EEG)信号、及び/または他の神経信号の監視に関連し得る。
【0016】
例えば、脳手術の間、吸引デバイスは、対応する筋反応を測定することによって、吸引デバイスが皮質延髄路を含む運動経路にどれだけ近いかを判定するために、電気刺激を与える。
【0017】
本装置は、少なくとも2つの異なる神経信号測定モダリティによって得られた神経信号に関するデータを分析及び/または処理して、例えば、複数の現在の神経信号を(例えば、患者が手術処置を受けていない状況において)個人の神経機能信号の複数の正常ベースライン値と比較することによって、患者の(例えば、現在の)機能的神経状態を判定するようにさらに構成される。いくつかの実施例では、神経状態は、機能的ステージングパラメータ値で表され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、本装置は、様々な神経学的刺激及び反応信号の処理及び分析を行い、任意選択で、神経監視データ分析装置で受信された追加の患者データ(例えば、術前及び術中に受信された生理学的パラメータ値)の処理及び分析を行って、ユーザに提示すべき分析結果をもたらすように構成され得る。いくつかの実施形態では、分析出力は、神経学的機能が正常であるか否かを示し得る。例えば、本装置は、神経構造の機能性を正常または異常として分類するように構成され得る。いくつかの実施形態では、本装置は、異常パラメータ値が、以下の2つまたはそれ以上のカテゴリ、すなわち、神経構造の機能欠損及び/または損傷であることを示す第1の異常、ならびに神経構造の機能欠損及び/または損傷であることを示さない、または神経構造の機能欠損及び/または損傷に関連していない第2の異常、のうちの1つに該当するかどうかを判定するように構成され得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、簡単に上述したように、本装置は、入力データに基づいて、監視された神経学的信号の臨床的解釈を出力するように構成され得る。
【0020】
本装置は、実行された分析に基づいて、システムによって表示される現在の出力を提供及び/または変更し得る。分析には、標的個体の神経機能状態及び/またはその変化に関するシステム出力を表示または更新するために基準が満たされているかどうかを判定することが含まれ得る。いくつかの実施形態では、分析は、ユーザの介入なしで自動的に提供され得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、ユーザは、選択された分析を実行するために装置にコマンド入力を提供し得る。いくつかの実施形態では、神経監視データ分析装置は、術中神経監視及び機能評価に関連する可能なコマンド入力のリストをユーザに術中に提示するように構成され得る。例えば、ユーザは、(例えば、システム及び/または装置のI/Oを介して)手術の種類、患者の年齢、脊椎、脳を入力し得、及び/または異なる術中神経監視プロトコルを生じさせる。さらに、外科医は、手術における異なるステップに関する入力を提供し、これに基づいて、装置は、異なるプロトコルを適用する。例えば、経頭蓋運動誘発電位による運動刺激は、例えば、外科医が承認を与えるときにのみ行われなければならない。
【0022】
いくつかの実施形態では、本装置は、一連のチェックを自動的に適用するように構成され得る。例えば、本装置は、本装置によって運動機能をチェックしまたは分析するために、システムによって実行されることになるいくつかの試験を適用することができる。試験の結果が運動機能の欠損を示す場合、本装置は、状況を分析し、試験が運動機能欠損を示す結果をもたらした理由を示す1つ以上の出力を提供し、任意選択的に、例えば、刺激を増加させることを含む追加の試験を実施することに関する推奨を提供してもよい。いくつかの実施例では、本装置は、自律的に、または(例えば、外科医の承認を受けることを条件として)半自律的に、神経監視システムに追加の刺激(複数可)を加えさせることができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、本装置は、現在の状況に応じて、どの分析出力がユーザに(例えば、システムのディスプレイを介して)表示されるべきかを、自動的に、自律的に、かつ連続的に判定して、実施すべき追加の刺激に関する推奨及びそれらの関連するパラメータ値を提供することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、この分析は、人工ニューラルネットワーク(ANN)などの、1つ以上の機械学習モデルまたはアルゴリズムによって実行して、患者の機能的神経状態を示す出力を提供してもよい。いくつかの実施形態では、本装置は、ヒューリスティックスモデルを使用して信号分析を実行するように構成され得る。さらに、いくつかの事例では、機械学習モデル及びヒューリスティックスモデルは、神経監視信号分析を実行するためのハイブリッドモデルに組み合わされ得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、機械学習モデルは、神経監視の分野で専門家によって以前に行われた複数の分析に基づいて訓練され得る。いくつかの実施例では、本装置は、AIベースの機械学習モデルのための入力訓練データとして使用され得る神経監視分析情報を記述しているデータを受信するように構成され得る。いくつかの実施形態では、分析情報は、術中に提供され得る。
【0026】
機械学習モデルを訓練するためのデータセットは、以下のようにセグメント化することができる。すなわち、
60%訓練データ(これに基づいてMLモデルが訓練される)、
20%試験データ(これに基づいてMLは訓練されない)、及び
20%検証データ(これは、例えば、オーバーフィッティングを防止するために、パラメータ値を検証するのに使用される)。データセットは、ランダムに分離され得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、機械学習モデルは、術中神経監視に関連するデータを実際の条件下でラベリングすることによって、術中更新され得る。いくつかの実施形態では、以前に実行された神経監視分析に関連するデータは、将来の神経監視分析のためのプロセスにおいて使用され得る、及び/または神経監視機械学習モデルを訓練するための訓練入力データとして使用され得る規則及び観察結果を抽出するために、「マイニング」され得るか、または他の方法で処理され得る。いくつかの実施形態では、機械学習モデルは、分類器を含み得る。いくつかの実施例では、分類器は、人工神経回路網(ANN)に基づく、または勾配ブースティングモデルに基づく、回帰ベースの分類器であり得る。
【0028】
勾配ブースティングアルゴリズムは、弱い予測モデル(例えば、決定木)のアンサンブルに基づく予測モデルを生成する。モデルは、テストデータセットについてのモデル予測と、ラベリングされたデータのデータセットにおける実際のラベルとの間の差を最小化しようとする最適化問題を解くように設計される。いくつかの実施例では、実際のラベルは、例えば、本明細書に概説されるように、オンラインまたは実際のシナリオにおいて専門家によってオンザフライで提供されてもよい。
【0029】
いくつかの実施例では、機械学習モデルは、試験データセットによって生成されたラベルを評価することによって検討され得る。検証尺度には、例えば、ラベリングされたデータのデータセットにおける実際のラベルに関する正解率、再現率及び/または適合率が含まれ得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、標的個体の神経機能状態及び/またはその変化を示す出力は、例えば、カテゴリ値、順序値及び/または数値パラメータ値の形で提供され得る(例えば、表示され得る)。神経機能状態出力は、機能状態が正常であるか、欠損しているか、欠損しそうであるか、改善しているか、または改善しそうであるかを示し得る。神経構造の機能は、傷害のため、及び/または全身性要因(例えば、麻酔薬、血圧、体温を含む)のため、欠損するか、または他の形で変化する可能性がある。例えば、システムは、低血圧などの全身性生理学的状態を識別し、ユーザにアラートするように構成され、さらに、検出された低血圧が深麻酔、低体温、及び/または技術的な問題の結果であるかどうかを判定するように構成され得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、神経監視データ分析装置は、神経損傷の結果である神経学的変化を示す変化(例えば、神経学的欠損に関連するインディケーション)、全身性要因の結果である変化、及び/または神経監視システムの動作不良及び/または誤構成に起因する変化を区別するように構成され得る。
【0032】
いくつかの実施例では、神経監視データ分析装置は、神経機能の変化がまた、またはもっぱら、全身性要因に起因するのか否かを分析するために、全身性関連の信号の寄与または変動を識別し、全身性関連の信号の寄与/変動を全信号から差し引きし得る。いくつかの実施例では、神経監視データ分析装置は、全身性生理学的条件及び/または環境条件(電気アーチファクト及び電磁ノイズ)に起因して導入される、神経生理学的監視の信頼性を損ない得る信号アーチファクトに関する警告を出力するように構成され得る。
【0033】
神経構造の損傷は、部分的な欠損または完全な機能無効化などの神経機能異常を引き起こし得る。さらに、損傷は、恒久的または非恒久的な機能欠損を引き起こし得る。神経構造の機能性は、非可逆的、部分的に可逆的、または完全に可逆的であり得る。
【0034】
本装置は、出力をリアルタイムで提供するように構成され得る。表現「リアルタイム」は、用語「準リアルタイム」の意味も包含し得ることに留意されたい。本明細書で使用される場合、表現「リアルタイム」は、一般に、データが受信されるのと本質的に同じ速度での情報の更新を意味する。本開示の文脈において、「リアルタイム」は、ユーザが気付き得るジャダー、レイテンシまたはラグなしで出力が表示されるほど十分に高いデータレートかつ十分に小さい時間遅延で、神経生理学的信号が記録され、処理される(例えば、分析される)ことを意味するよう意図されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、例えば、神経機能状態の装置出力は、「正常な」機能状態、あるいは例えば、正常な及び/または現在の機能状態からの「悪化」または「低下」、正常な及び/または現在の機能状態から低機能状態への差し迫った「悪化」または「低下」などの異常であることを示し得、及び/または神経機能信号の複数の正常ベースライン値と比較して判定される、正常または低機能状態のさしあたりのまたは差し迫った「消失」を示し得る。明確に、追加または代替のラベルが装置によって出力されてもよい。
【0036】
神経機能異常(例えば、正常な機能状態からの低下、潜時の増加など)は、いくつかの方法で現れ得る。例えば、誘発電位信号(MEP及び/またはSSEP)及びベースライン反応信号を考慮すると、反応信号の(例えば、振幅、周波数及び/または位相に関する)信号特性は、以下のように分類され得る。すなわち、反応なし、反応の残り、ベースライン反応からの大幅な低下、ベースライン反応からの中程度の低下、正常、ベースライン反応に対する反応の増加、潜時の増加、及び/または同種のものである。いくつかの実施例では、MEP及び/またはSSEP反応信号の検出される異常が、技術的な問題の結果として本装置によって識別され得る。例えば、SEP信号及び/または実施するEEGに関して、比較的低い周波数成分が、信号の分析を歪ませ得るバイアスを導入するので、バンドパスフィルタリングが実施され得る。
【0037】
EEG信号に関して、いくつかの実施形態では、神経監視データ分析装置は、スペクトル及び時間領域におけるEEG信号特性を分析し、例えば、信号電力分析を実行するように構成され得る。信号特性は、皮質機能状態及びその覚醒状態の指標として使用され得る。いくつかの実施例では、EEG分析は、信頼性の高い神経監視には不十分な全身性生理学的状態を検出し得る。いくつかの実施例では、EEG分析は、監視される信号、例えば、MEP、SSEP、及び様々な反射作用の変動が全身性要因の影響に起因する程度を評価するのに役立ち得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、神経監視データ分析装置は、EMG信号を処理するように構成され得る。EMG信号に関して、異常(例えば、「静穏」からの逸脱)は、例えば、列信号及び/またはバーストによって特徴付けられ得る。いくつかの実施例では、EMG信号において検出される異常は、技術的な問題の結果として、または低レベルの感覚消失から、装置によって識別され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、例えば、神経機能状態の装置出力は、例えば、既存の機能状態に対する「改善」、既存の機能状態からの差し迫った「改善」であることを示し得、及び/または以前に消失した正常または低機能状態のさしあたりのまたは差し迫った「再発」または「回復」を示し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、神経機能状態は、例えば、特定の期間内に、標的個体において、機能状態の現在の欠損の重症度、特定の重症度の神経系における機能欠損を引き起こすさしあたりの状況の可能性または確率、及び/または同様のものを示し得る。いくつかの実施形態では、神経機能状態は、神経機能状態の適切さの程度、さしあたりの神経機能状態の適切さを増加させるさしあたりの状況の可能性または確率、及び/または同様のものを示し得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、本装置は、神経機能状態が不適切な神経監視システム設定に起因して欠損している場合または欠損していない場合を示す出力を提供し得る。例えば、本装置は、ベースライン信号と反応信号とを区別するように構成され、さらに、ベースライン信号と反応信号との不一致の差が、技術的な問題、間違った神経監視システムの設定の結果であるかどうか、及び/または手術によって誘発される生理学的神経機能欠損に起因するかどうかを示すように構成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、神経監視データ分析装置は、受信された患者データの臨床的解釈を含む出力を提供するように構成され得る。いくつかの実施例では、臨床的解釈を提供するために、機能的神経状態及び関連出力は、タイムスタンプを付けられ、標的個体に対して実行される1つ以上の動作のインディケーションとともに記録され得る。例えば、術中神経監視(IONM)を行うための神経生理学者の動作は、患者に対して実施される外科医の動作及び/または麻酔医の動作及び/または患者の位置とともに、連続的に監視され(例えば、タイムスタンプとともに感知され、記録される)、分析出力を提供するための装置によって考慮され得る。例えば、外科医が標的の個体または患者と手術可能なほどに係合する位置及び継続時間は、本装置によって、連続的に記録され、分析され、任意選択的に出力(例えば、表示)され得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、本装置は、神経構造のタイプ(例えば、経路)に関連して、神経機能状態(例えば、「正常」または「欠損」)を判定(例えば、分類)するように構成され得る。例えば、本装置は、異常が運動神経経路、感覚神経経路及び/または自律神経経路に関連することを、解剖学的位置または領域とともに識別し、提示するように構成され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、神経監視データ分析装置は、機能的神経状態を判定するように構成され、動作可能であるだけでなく、神経及び神経根のマッピングも実行し得る。いくつかの実施例では、神経マッピングは、機能的神経状態の判定に関連付けられ得る。
【0045】
例えば、解剖学的位置または領域(及び例えば関連する体性感覚機能欠損)は、例えば、左側、右側、両側、高頸部(例えば、頚椎)、低頸部(例えば、腰椎)、胸部、(右及び/または左)上肢及び/または下肢として、関連する機能状態(欠損なし、部分的欠損、完全欠損)とともに、及び/または同様のものとして識別され得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、本装置は、特定の位置が特定の機能状態に関連付けられ得ないことを判定し得、任意選択的に、その旨のインディケーションを提供する。
【0047】
いくつかの実施形態では、本装置は、判定された神経構造をマッピングするように構成され得る。神経及び神経根のマッピングは、誘発されたEMGを介して本装置によって行われ得る。例えば、誘発されたEMGにおいて、神経及び任意選択でその機能状態が、例えば、L-三角筋、L-二頭筋、L-三頭筋、L-拇指球、R-三角筋、R-二頭筋、R-三頭筋、R-拇指球、または上記の任意の組み合わせを含む筋節に関連付けられ得る。マッピング関連情報は、例えば、システム及び/または装置のI/Oデバイスによってユーザに提示され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、神経監視データ分析装置は、脳領域をマッピングするように動作可能であり得、脳マッピングは、直接脳刺激を介して神経監視データ分析装置によって実行され得る。神経監視データ分析装置は、さらに、局在神経または神経根の具体的な神経機能の状態を示す出力を提供し得る。
【0049】
誘発EMG及び直接脳刺激の両方は、プローブまたは手術ツールを通じて送出される異なるまたは別個の特性を有する電気刺激を活用して行われる。
【0050】
例示的な一シナリオでは、外科医が手術可能なほどに係合する脳領域は(例えば、システム及び/または装置によって)特定の神経根に対して自動的にマッピングされ、対応する機能ラベル及び機能状態とともにユーザに提示されてもよい。
【0051】
例えば、腫瘍除去手術中の馬尾などのテント下脳経路における神経根マッピングは、プローブ刺激及び誘発EMG記録を用いて行い得る。神経監視データ分析装置は、対応する筋肉からの刺激反応と、その反応を引き起こす刺激閾値とを分析し、脳の神経根に近接することを警告する。
【0052】
さらなる実施例では、大脳皮質及び皮下白質(テント上脳経路)の連続運動マッピングは、プローブ刺激によって、または切片を通して送達される連続刺激によって行い得る。本装置は、刺激反応と、その反応を引き起こす刺激閾値とを分析し、手術野内の運動野に近接することを警告する。
【0053】
同様に、脊椎手術に関して、本装置は、手術中に外科医が手術可能なほどに係合する神経経路のタイプ(例えば、体性感覚神経信号、運動感覚神経信号または自律神経信号、あるいは前述の任意の組み合わせ)を、外科医が脊椎神経に係合する位置(例えば、椎骨位置に対する位置)を示す出力とともに自動的に識別するように構成され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、神経監視データ分析装置は、刺激に反応した反射反応または反射作用に関連する特性を感知することによって、反射弓の機能状態を判定するように構成され得る。例となる反射作用には、例えば、胸椎手術中のH反射、球海綿体反射、瞬目反射及び/または同様のものなどが含まれ得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、本装置は、現在の(例えば、正常な)神経機能状態を維持して、神経機能の悪化を逆転させるために、またはさらなる悪化を防止するために可能な措置を講じる方法についての実行可能な命令を示す出力を提供するように構成され得る。
【0056】
実行可能な命令は、例えば、神経生理学的監視のための患者の生理学的全身状態を改善しまたは最適化するために、例えば、1つ以上の追跡試験及び/またはパラメータ値の適合を含み得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、出力は、システム出力を検証するための命令に関係し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、神経監視データ分析装置は、異常が検出され、識別された(例えば、分類された)場合に、意思決定支援を提供するように構成され得る。例えば、本装置は、正常な機能状態に戻すために、異常を検証する、克服する、または修正する方法に関する、ユーザへの実行可能な提案または命令を示す出力をユーザに提供し得る。例えば、神経監視装置出力には、追加の運動誘発電位を誘発するための命令または提案、追加の体性感覚誘発電位を誘発するための命令または提案、追加の運動誘発電位の刺激関連特性(例えば、強度、極性)を変更するための命令または提案、追加の体性感覚誘発電位の刺激強度、反射刺激、及び四連(TOF)などの末梢神経刺激を変更するための命令または提案、及び/または同種のものが含まれ得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、出力には、記録パラメータを更新及び/または変更するための命令または提案、神経監視システムの動作不良識別チェック及び/または構成チェックに関連する命令または提案、自動化、半自動化及び/または手動トラブルシューティング神経監視システム誤構成のための命令または提案を含む、システムの動作不良及び/または誤構成を克服する方法が含まれ得る。出力には、例えば、記録パラメータの更新などの(例えば、トラブルシューティング)命令または提案、システム動作不良チェック、インピーダンスチェック、麻酔パラメータチェック、電極接触チェック、生理学的患者パラメータをチェックするための命令、患者体位をチェックするための命令または提案、手術を保留にするための命令または提案、あるいは前述の任意の組み合わせが含まれ得る。いくつかのシナリオでは、装置によって提供される出力は、ユーザが追加のステップに全く取り掛からないことを示し得る。
【0060】
神経監視データ分析装置のユーザは、装置及び/または神経監視システムに、例えば、受信したシステム出力に従って、また上述のように、実際のシナリオ環境においては、手術段階に関する情報に従って、コマンド入力を提供し得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、神経機能状態に関連する(例えば、神経機能状態を説明している)出力は、例えば、X線(例えば、コンピュータ断層撮影法を含む)ベースの撮像技術、核撮像技術、MRI撮像技術及び/または超音波撮像技術を含む1つ以上の撮像モダリティによって得られる医療画像を介して、構造状態を説明する出力と併せて提供されてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、神経監視データ分析装置は、過去に実施され完了した手術中に記録された神経データのオフラインラベリングを通じて機械学習モードを訓練できるように構成される(例えば、人間-機械インターフェースを提供する)。オフラインラベリングは、実際の臨床症状を模倣しようとする条件下で、例えば遡及的に行われる。
【0063】
いくつかの実施形態では、機械学習モデルの訓練目的のために、様々な神経生理学的データのオフライン(例えば、遡及的)ラベリング、及び/またはシミュレートされた手術または実際の手術中のオンラインまたは「リアルタイム」ラベリングを可能にするように構成されたラベリングプラットフォームが提供される。
【0064】
いくつかの実施形態では、ラベリングプラットフォームは、患者データを受信し、記録するために使用される神経監視システムのアドオンモジュールとして構成されてもよい。いくつかの実施例では、神経監視データ分析装置は、神経監視システムに含まれ得る。いくつかの実施形態では、サブシステムが、神経監視データ分析装置及びラベリングプラットフォームの両方を含み得る。いくつかの実施例では、神経監視データ分析装置が、ラベリングプラットフォームを含み得る。いくつかのさらなる実施例では、ラベリングプラットフォームが、神経監視データ分析装置を含み得る。本明細書では、以下の議論を単に簡略化するために、限定的に解釈されることなく、神経監視データ分析装置とラベリングプラットフォームとが別個のエンティティとして見なされる。
【0065】
実際のシナリオ環境における臨床事象に関する様々な神経生理学的データのオンラインまたは「リアルタイム」ラベリングは、装置によって受信された神経生理学的データの対応するラベリングに到達するために、(例えば、器具によって生じたノイズまたは音、外科医への質問、麻酔医への質問、外科医及び/または麻酔医へ命令を与えることなどの環境パラメータを考慮することによって)手術中の状況をリアルタイムで調査することを可能にする。したがって、ラベリングプラットフォームは、機械学習モデルを連続的に適応させることができるような「開放された」機械学習を可能にし得る。これに対して、閉じた機械学習プロセスでは、機械学習モデルは固定されており、神経監視データ分析装置の使用中には変化しない。いくつかの実施形態では、神経監視データ分析装置の機械学習モデルは、本明細書に開示されるオンラインラベリングプラットフォームを使用することによって「オンザフライ」で更新され得る。
【0066】
いくつかの実施例では、オンラインで提供されるラベルは、遡及的環境またはオフラインシナリオで装置によって生成される出力ラベルと比較され得る。
【0067】
機械学習モデルをオンライン環境(例えば、術中)で訓練すると、本明細書に例示するように、オフラインラベリング環境の場合と比べて、神経生理学的データの異なった、より実際的なラベリングが行われ、この結果として、より良好なモデルの訓練が行われ得る。
【0068】
オンラインラベリング対オフラインラベリングに関する実施例1
例示的な一シナリオでは、麻酔を導入し、頸部減圧手術のための神経生理学的セットアップが完了した数分後に、外科医が患者の位置を定める。これらの瞬間に、神経生理学的信号の著しい悪化が記録される。
【0069】
神経生理学者(または「専門家」)は、この悪化の原因となり得る2つの事象を区別するように要求され得る。すなわち、
ラベリングオプション1A:適切な麻酔深度を確立するために麻酔薬の投与量が麻酔科医によって変更された結果としての良性の全身的作用。
ラベリングオプション1B:新しい頭の位置で脊髄にかかる圧力が増加した結果としての進行する脊髄損傷。
【0070】
この2つの事象のどちらが適用できるかの決定に達するために、オンラインラベリングシナリオにおいて、神経生理学者は、麻酔を深めることに起因して神経生理学的悪化が起こったか否かを判断するために、麻酔医に質問して、過去数分間に何をしたかを尋ねることがある。後者の場合、神経学的欠損の増加は、麻酔の深さの増加のためよりも、脊髄が受ける圧力が原因である可能性が高い。
【0071】
明らかに、オフラインラベリング環境では、麻酔医に質問することは不可能であり、観察された神経生理学的信号の悪化に関連するラベリングは、実際のシナリオを模倣するために、例えば、対応するまたは類似の手術について過去に記録された神経生理学的データの長さに沿って時間的に前後に移動することによって、最も可能性の高いシナリオを「推測」することによって行われる。しかしながら、そのような「推測された」または遡及的なラベリングは、当然ながら、手術が行われた時にあった実際の臨床的状況を反映していない可能性があり、誤ったラベリング、したがって機械学習モデルの最適でないまたは誤った訓練を引き起こす可能性がある。対照的に、オンラインラベリング環境は、所与の実際の臨床的状況をより正確に反映する。したがって、オンラインラベリングは、バイアス及びエラーの傾向がより低い可能性がある。
【0072】
オンラインラベリング対オフラインラベリングに関する実施例2
さらなる実施例では、オンラインラベリングは、追跡試験の実施及び試験パラメータの変更を可能にして、仮説の確認または拒絶を行う。対照的に、オフラインラベリングを行う場合、仮説の試験は不可能である。
【0073】
実施例1との関連で、神経生理学者は、麻酔の深さを浅くすること、及び神経学的改善が明らかでない場合には、患者の体位を変更することを手術室スタッフに推奨することができる。このようにして、神経生理学的機能の低下の2つの(例えば、可能性がある、または考えられる)原因を確実に区別することが可能になる。
【0074】
神経生理学者が状況の一部として実行する追加のステップは、以下を含む。すなわち、
オプション2A:技術的な障害を排除するための神経監視システム及びセットアップの技術試験、
オプション2B:刺激の強度を増加させること、または刺激の極性もしくは位置を変化させること、
オプション2C:試験の頻度を増加させて、数分間にわたって傾向を評価すること。
【0075】
上記の全てのオプションは、神経生理学者がより正確な診断に到達することを可能にし、したがって、より良好な治療、及びより正確なラベリングの両方をもたらす。
【0076】
実施例3-アルゴリズム/機械学習モデルの検証のための試験セットの改善または最適化
神経監視データ分析装置の性能を客観的に調べるには、神経生理学者が、(現実のまたはシミュレートされた)手術中に、ラベリングプラットフォームを使用して、実際の条件下で、リアルタイムまたは実質的にリアルタイムで、監視データをラベリングする状況で、手術を監視することが必要であり得る。このように、提供されるラベリング入力は、手術室で利用可能な全ての情報を神経生理学者が自由に使える場合に、神経生理学者の働きを忠実に反映する。
【0077】
同時に、神経監視データ分析装置は、同じ手術の患者データを受け取り、ラベリングプラットフォームに提供されるラベリングとは無関係に、アルゴリズム及び/または訓練された機械学習モデルに従ってラベルを出力する。神経監視データ分析システムによって出力されるラベルは、医師によってラベリングプラットフォームに提供されるラベルと比較され得る。これにより、医師のラベルを、神経監視データ分析装置によって出力されるラベルと比較することが可能になる。この比較により、神経監視データ分析装置の性能を信頼性の高い方法で分析することが可能になる。
【0078】
いくつかの実施形態では、神経監視データ分析装置は、患者データを受信し、記録するために使用される神経監視システムのアドオン(例えば、ソフトウェア及び/またはハードウェア実装)モジュールとして構成されてもよい。いくつかの実施例では、神経監視データ分析装置は、神経監視システムに含まれ得る。いくつかのさらなる例では、神経監視データ分析装置は、(術中)神経監視システムの外部にあってもよい。いくつかの実施例では、分析装置の全部または一部の部分、構成要素、及び/またはモジュールは、監視システムによって実施され得る。いくつかの実施例では、分析装置の部分、構成要素、及び/またはモジュールのいずれも、監視システムによって実施され得ない。
【0079】
図1を参照すると、神経監視データ分析装置1000は、I/Oデバイス1100、プロセッサ1200、及びメモリ1300を備え得る。
【0080】
いくつかの例示的な実装では、神経監視データ分析装置は、そのユーザに、1つ以上の出力デバイスを備えたI/Oデバイス1100を介して出力を提供し得る。1つ以上の出力デバイスは、例えば、電気信号を、音、光、及び/または接触などの人間が出力として感知することができる出力に変換するように構成されたデバイスを含み得る。出力デバイスは、表示画面、及び/または、例えば、スピーカ(複数可)及び/またはイヤホンなどのオーディオ出力デバイス(複数可)を含み得る。
【0081】
I/Oデバイス1100は、例えば、機械で生成された信号及び/または物的移動、身体的接触または物理的圧力、及び/または同様のものなどの人間によって生成された信号を、コンピューティングシステムへの入力データとして電気信号に変換することによって、任意のタイプのデータ及び/または情報を受信するように構成される1つ以上の入力デバイスをさらに含み得る。そのような入力デバイスの実施例は、タッチスクリーン、マイクロホン、ハンドジェスチャ追跡デバイス、ハンドヘルドポインティングデバイス(例えば、コンピュータマウス、スタイラス)及び/または同様のものを含む。
【0082】
I/Oデバイス1100は、神経監視データ分析装置1000によって生成されたデータ及び/または情報にアクセスするために、及び/または例えば、制御コマンド、動作パラメータ、問い合わせ、及び/または同様のものを含む入力を提供するために、使用され得る。例えば、I/Oデバイス1100は、神経監視システムのユーザが、例えば、出力電極1102を介して、患者に、1つ以上の物理刺激を与えることを可能にし得る。I/Oデバイス1100は、さらに、センサ1104を介して、例えば、聴覚性脳幹誘発電位のための音、視覚誘発電位のための閃光、熱刺激及び/または触覚刺激を含む非電気的刺激を患者に与えることに反応して生成される信号を感知するように構成され得る。感知された反応信号は、例えば、SSEP及び/またはMEPなどを含み得る。出力電極1102は、1つ以上の電極を含み得る。センサ1104は、例えば電極を含む1つ以上のセンサを含み得る。
【0083】
神経監視データ分析装置1000は、プロセッサ1200と、データ1310(例えば、患者データ)及びアルゴリズムコード及び/または機械学習(ML)モデル1320を記憶するように構成されたメモリ1300とをさらに含み得る。プロセッサ1200は、アルゴリズムコードを実行し、及び/または機械学習(ML)モデル1320をデータ1310の処理に適用するように構成され得、その結果、術中神経監視データ分析(INDA)エンジン1400が実装される。INDAエンジン1400は、例えば、本明細書に概説されるように、患者の神経機能状態を特徴付けるように、及び/またはオンラインラベリングを可能にするように構成され得る。
【0084】
用語「プロセッサ」は、本明細書で使用される場合、追加的にまたは代替的に、コントローラを意味し得る。プロセッサ1200は、例えば、組み込み型プロセッサ、通信プロセッサ、グラフィックス処理ユニット(GPU)加速コンピューティング、ソフトコアプロセッサ、量子ベースのプロセッサ及び/または汎用プロセッサを含む様々なタイプのプロセッサデバイス及び/またはプロセッサアーキテクチャによって実装され得る。
【0085】
メモリ1300は、トランザクションメモリ及び/または長期記憶メモリ機能を含む様々なタイプのメモリによって実装され得、ファイル記憶、文書記憶、プログラム記憶として、または作業メモリとして機能し得る。後者は、例えば、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、キャッシュ及び/またはフラッシュメモリの形態であり得る。作業メモリとして、メモリ1300は、例えば、時間ベースの命令及び/または非時間ベースの命令を含み得る。長期メモリとして、メモリ1300は、例えば、揮発性または不揮発性コンピュータ記憶媒体、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、磁気記憶媒体、フラッシュメモリ、及び/または他の記憶設備を含み得る。ハードウェアメモリ設備は、例えば、ファイル、プログラム、アプリケーション、ソースコード、オブジェクトコード、データ、及び/また同様のものを含むが、これらに限定されない、固定情報セット(例えば、ソフトウェアコード)を記憶し得る。
【0086】
神経監視データ分析装置1000は、装置の様々な構成要素及び/またはモジュール間の有線及び/または無線通信を可能にするように構成され、1つ以上の通信バス(図示せず)、信号線(図示せず)及び/またはネットワークインフラストラクチャを介して互いに通信し得る、少なくとも1つの通信モジュール1500をさらに備え得る。通信モジュール1500は、例えば、インターネット通信、光またはRF通信、電話ベースの通信技術、及び/また同様のものなどの1つ以上の通信フォーマット、プロトコル及び/または技術を使用した通信を可能にするように構成され得る。いくつかの実施例では、通信モジュール1500は、ネットワークを介したデータの送信及び/または受信を可能にするために、I/Oデバイスドライバ(図示せず)及びネットワークインターフェースドライバ(図示せず)を含み得る。デバイスドライバは、例えば、キーパッドとまたはUSBポートにインターフェースし得る。ネットワークインターフェースドライバは、例えば、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、エクストラネット、2G、3G、3.5G、4G、5G、6Gモバイルネットワーク、3GPP、LTE、LTEアドバンスト、Bluetooth(登録商標)(例えば、Bluetoothスマート)、ZigBee(商標)、近距離無線通信(NFC)、及び/または他の任意の現在または将来の通信ネットワーク、規格、及び/またはシステムを使用するインターネット、もしくはイントラネット、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)用のプロトコルを例えば実行し得る。
【0087】
神経監視データ分析装置1000は、装置の様々な構成要素及び/またはモジュール及び/またはサブシステムに電力を供給するための電力モジュール1600をさらに含み得る。電力モジュール1600は、内部電源(例えば、再充電可能な電池)及び/または外部電源への接続を可能にするためのインターフェースを含み得る。
【0088】
プロセッサ及び/またはメモリなどの別個のハードウェア構成要素が、神経監視データ分析装置1000の各構成要素及び/またはモジュールに割り当てられ得ることが理解されよう。しかしながら、簡単にするために、また限定的に解釈されることなく、本説明及び請求項は、単一のモジュール及び/または構成要素を指すことがある。例えば、プロセッサ1200は、いくつかのプロセッサによって実装され得るが、以下の説明では、プロセッサ1200に、神経監視データ分析装置1000の全ての必要な処理機能を実行する構成要素として言及する。
【0089】
神経監視データ分析装置1000の機能は、「スマートホン」としても知られる多機能モバイル通信デバイス、モバイルデバイスまたはポータブルデバイス、非モバイルデバイスまたは非ポータブルデバイス、デジタルビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、(例えば、ファイルホスティングサービス、クラウドストレージサービス、オンラインファイルストレージプロバイダ、ピアツーピアファイルストレージまたはホスティングサービス、及び/またはサイバーロッカーを含む、ビジネスまたは企業エンティティに関連する1つ以上のサーバまたはストレージシステム及び/またはサービスに関連し得る)サーバ、パーソナルデジタルアシスタント、ワークステーション、ウェアラブルデバイス、ハンドヘルドコンピュータ、ノートブックコンピュータ、車両デバイス、非車両デバイス、及び/または静止デバイスによって、完全にまたは部分的に実装され得る。例えば、INDAエンジン1400機能の一部はオンプレミスによって(例えば、病院内または他の臨床施設内に)、一部はオフプレミス(例えば、「クラウド」)に位置するデバイス、装置、及び/またはシステムによって、実装され得る。代替的な構成も考えられ得る。
【0090】
神経監視システムの神経監視データ分析装置1000によって使用する機械学習モデルを実装するために、様々な手法が採用され得る。例えば、機械学習(ML)モデルは、複数のMLサブモデルを含み得る。実施例では、MLサブモデルは、MLモデルの特定のレベルに関連し得る。いくつかの事例では、複数のMLモデルは、例えば、
図2A及び
図2Bと併せて本明細書で説明するように、階層構造で編成されることがある。いくつかの実施例では、MLサブモデルは、特徴ベースであり得、任意選択で、特徴抽出を実行するために信号の前処理を必要とする。いくつかの他の実施例では、MLサブモデルは、人工神経回路網(ANN)に基づき得る。
【0091】
例えば、
図2Aに概略的に示すように、少なくとも1つの第1のMLサブモデル(例えば、チャネルモデル3010)が、信号モダリティの入力信号2000のうちの選択された信号を分析するために作成され、適用され得る。
【0092】
信号モダリティは、例えば、MEP、SSEP、EMG、EEG、及び/または同様のもののうちの1つを包含する信号カテゴリに関連し得、異なるタイプの入力信号は、同じ信号モダリティの対応する異なるチャネルに関連し得る。例えば、MEPモダリティ信号の異なるタイプまたはチャネルは、例えば、三角筋の左、三角筋の右、二頭筋の左/右、三頭筋の左/右、拇指球の左、拇指球の右、前脛骨筋の左/右、大腿四頭筋-前脛骨筋の左/右を含み得る。
【0093】
信号モダリティの各チャネルの信号を分析するために用いられる異なるチャネルサブモデル2010を区別するために、例えば、第1のチャネルサブモデル2010A、第2のチャネルサブモデル2010B、第3のチャネルサブモデル2010Cのように、数字の後に大文字のアルファベット文字が追加される。ただし、各チャネルモデルを特に区別する必要がない場合には、単にチャネルサブモデル2010と総称する。
【0094】
いくつかの実施例では、少なくとも1つの第1のMLサブモデル(または「少なくとも1つの第1のチャネルサブモデル2010A」)が、第1のMEP入力信号を分析するために適用され得、少なくとも1つの第2のチャネルサブモデル2010Bが、第2のMEP入力信号を分析するために適用され得るなどである。
【0095】
第2のレベルとして、少なくとも1つのモダリティサブモデル2020が、特定のモダリティ(例えば、MEPモダリティ、SSEPモダリティ)の信号を全体として分析するために用いられ得る。例えば、MEPモダリティサブモデルは、選択されたモダリティの複数の信号を分析して、MEPモダリティのモダリティ予測を提供するために用いられ得る。少なくとも1つのモダリティサブモデル2020は、少なくとも1つの第1のMLサブモデルまたはチャネルサブモデル2010によって生成された予測(例えば、ラベル)を受け取り得る。
【0096】
第3のレベルとして、少なくとも1つの臨床診断サブモデル2500が用いられ得る。少なくとも1つの臨床診断サブモデル2500は、第2のレベルの少なくとも1つのモダリティサブモデル3030によって生成された予測を受け取って、それに基づいて臨床出力2700を提供し得る。
【0097】
いくつかの実施例では、少なくとも1つのモダリティサブモデル2020、及び/または臨床診断サブモデル2500は、モダリティ予測を分析して臨床出力2700を生成するために、臨床及び/または手術データ2600で補完され得る。
【0098】
図2Bに例示されるように、第1のレベルでは、選択されたモダリティの特定の信号(例えば、MEP信号2100、SSEP信号2200、EEG信号2300、及び/またはEMG信号2400)が、対応するチャネルサブモデルによって受信され得る。例えば、運動チャネルサブモデル2110は、MEP信号2100を受信し得、センサチャネルサブモデル2220は、SSEP信号2200を受信し得る。
【0099】
いくつかの実施例では、入力信号は、特徴抽出の目的で前処理され得る。例えば、MEP信号2100は、少なくとも1つのMEP信号に対して特徴抽出を実行するために前処理され得(ブロック2105)、SSEP信号2200は、少なくとも1つのSSEP信号に対して特徴抽出を実行するために前処理され得る(2205)。上述のように、運動チャネルサブモデルなどのMLモデルは、必ずしも特徴抽出ベースである必要はなく、人工神経回路網などの深層学習MLモデルに基づいてもよい。
【0100】
さらに、第2のレベルでは、運動チャネルサブモデル2110によって生成された分析出力は、運動モダリティサブモデル2140へ、それによるさらなる分析のために提供され、センサチャネルサブモデル2210によって生成された分析出力は、センサモダリティサブモデル2240へ、それによるさらなる分析のために提供される。任意選択的に、第2のレベルのMLサブモデルへの入力は、第1のレベルのMLモデルの出力である。第1のMLモデルの入力に基づいて、第2のレベルのMLサブモデルは、例えば、専門家の注意を必要とする信号に有意な変化があるか否かを判定する。
【0101】
運動モダリティサブモデル2140、及びセンサモダリティサブモデル2240によって生成された分析出力は、臨床診断サブモデル2500へ、それによるさらなる分析のために提供されて、様々なMLサブモデルに提供されたデータの臨床解釈を表す臨床出力が得られる。
【0102】
いくつかの実施例では、臨床出力2700を生成するために、臨床及び/または手術データが、(例えば、MEP及び/またはSSEP)モダリティサブモデル及び/または臨床診断サブモデル2500に提供され得る。いくつかの実施例では、EEG信号2300及び/またはEMG信号2400に関するデータが、臨床診断モデル2500に提供され得る。いくつかの実施例では、EEG信号2300、及びEMG信号2400は、特徴抽出の目的で前処理され得る(それぞれブロック2305及び2405)。
【0103】
以下の3つの実施例は、本装置が、信号における異常を臨床的に有意であるとして、すなわち神経構造の損傷として、正確に識別するシナリオに関する。
【0104】
例示的なシナリオでは、本装置は、脊髄中心症候群とも呼ばれる、頚椎椎弓切除術中の皮質脊髄路機能の障害を識別する。本装置は、右手筋及び右脚筋から反応が消失する時点までの運動反応の著しい減少を識別し得、任意選択で、その異常を脊髄中心症候群として分類する。
【0105】
例示的なシナリオでは、ブラウン・セカール症候群としても知られる、頚椎椎弓切除術中の皮質脊髄路機能の障害が、本装置によって識別される。手筋から左右相称に反応が消失する時点までの運動反応の著しい減少が本装置によって識別され、任意選択で、ブラウン・セカール症候群として分類される。
【0106】
例示的なシナリオでは、本装置は、頚椎椎弓切除術中のC5/C6神経機能の障害を識別する。データは、監視システムによって表示された信号を記述し、右上腕二頭筋からの運動反応の著しい減少を示す。顕著なベースライン反応と「現在の」反応とは、異なる色を使用して監視システムによって表示され得る。
【0107】
以下の2つの実施例は、信号における異常が神経構造損傷ではなく、全身的作用によって引き起こされる運動反応の減少に関係するシナリオに関する。したがって、検出された異常は、神経構造損傷に関して臨床的に有意ではない。
【0108】
例示的なシナリオは、右脚のベースライン試験から実証された皮質脊髄路機能の障害に関する。手筋における運動反応の著しい減少、ならびに腕及び脚の筋肉における中等度の減少が表示され、これは麻酔薬及び血圧の変化に起因して現れる。
【0109】
別の例示的なシナリオは、右脚のベースライン試験から実証された皮質脊髄路機能の障害に関する。左手筋及び左足筋における運動反応の著しい減少が、麻酔薬及び血圧変化に起因して現れる。右脚チャネルにはベースライン反応及び「現在の」反応は表示されず、左チャネルには「現在の」反応の著しい減少が表示される。したがって、監視システムによって表示される信号によって表される運動反応の減少は、全身的作用及び術前機能障害に起因する。
【0110】
以下の4つの実施例は、例えば頸椎固定に関して、先行技術の神経監視データ分析装置によって提供される、神経構造損傷を関連する偽陽性アラートが示す信号を記述するデータに関する。
【0111】
以下のこれらの4つの実施例は、先行技術の装置が、しばしば、信号中の臨床的に重要でない異常(神経構造の損傷に関連しない異常)を、臨床的に重要な異常(例えば、神経構造の損傷に関連する異常)として誤識別する、または誤分類することを実証する。このことは、例えば、先行技術の装置が、個々の信号の「ピークツーピーク」などの規則ベースの基準を使用し、選択された「現在の」信号の、対応するベースライン信号、曲線下面積モデル、または同様のものに対する比較のみに依存し得るためである。対照的に、本明細書に提示される分析装置の実施形態は、損傷を正確に識別するために、例えば、訓練された機械学習モデルによって、任意選択的に規則ベースの手法と組み合わせて、監視システムによって感知される複数の異なるまたは別個の信号を記述するデータを考慮する(例えば、集合的に分析する)。
【0112】
ある例のシナリオでは、先行技術の装置は、ベースラインにおける運動反応を1つの色で表示し、第1の色とは異なる第2の色を使用して「現在の」運動反応を表示する。先行技術の装置は、神経構造損傷に関する信号の臨床的に有意な変化として先行技術の装置によって誤って識別される重要でない変化の「アラート」または「フラグ」(例えば、神経監視システムによって表示される信号プロットの対応するタイムスタンプまたは部分における「赤フラグ」)を出力する。さらに、先行技術の分析装置は、技術的な刺激によって引き起こされたアーチファクトを誤って反応として識別する。
【0113】
さらなる例のシナリオでは、ベースライン(第1の色)での運動反応及び「現在」(第2の色)の運動反応が表示され得る。先行技術の分析装置は、推定的に全身麻酔の変化に起因する、重要でない変化(例えば、神経構造損傷に関して臨床的に重要でない変化)に関連して、アラート(「赤いフラグ」)を出力する。先行技術の分析装置はまた、技術的な刺激によって引き起こされたアーチファクトを誤って反応として識別し得る。
【0114】
さらなる例のシナリオである先行技術の分析装置では、ベースラインにおける技術的な刺激によって引き起こされたアーチファクトは、誤って反応として識別または測定され、「現在の」反応におけるその消失が、偽陽性のアラートをもたらす。
【0115】
別の例のシナリオでは、先行技術の分析装置は、体性感覚反応における重要でない変化(例えば、神経構造損傷に関して臨床的に重要でない変化)に対して、印を付け、またはアラートを生成する。
【0116】
さらに、ここで
図3を参照すると、神経監視ラベリングプラットフォーム1002が、オンラインまたはオンザフライの(例えば、現実またはシミュレートされた術中の)ラベリング能力を可能にするラベリングインターフェース1700を有するように構成され得る。
【0117】
例えば、I/Oデバイス1100はまた、実際の手術環境において、専門家が神経監視データの「オンザフライ」またはリアルタイムのラベリングを行うことを可能にする1つ以上のデバイスインターフェース(例えば、1つ以上のタッチスクリーン)を含み得る。例えば、I/Oデバイス1100は、例えば、I/Oデバイス1100によって表示され得る様々なフィールドを概略的に示す
図4~
図6に関して概略的に示すように、専門家が表示された信号及び/またはデータのオンラインラベリングを実行することを可能にするユーザ選択可能なフィールドを表示し得る。
【0118】
図4は、専門家が、例えば、「左-DI信号及びベースライン」を表す特定の信号またはチャネルを選択した場合に、I/Oデバイス1100によって表示され得る様々なフィールドを概略的に示す。いくつかの実施例では、本装置は、ディスプレイを備えなくてもよいが、様々な信号を生成するように構成されたシステムの出力に対して構成されてもよいことに留意されたい。本装置は、システムによってグラフとして表示される信号を記述するデータの分析を実行するために、システムと動作可能なほどに通信し得る。
【0119】
様々なチャネルフィールドは、測定信号及び関連するベースラインなどの対応する信号プロットを示す。しかしながら、単に説明を簡単にするために、プロットは取り除かれており、プロットの対応する説明と置き換えられた。例えば、フィールド4010は、「左-DI信号及びベースライン」として注釈が付けられている。
【0120】
専門家によって選択されたデータまたは信号フィールドに応じて、異なる選択可能なラベリングオプションが、I/Oデバイス1100によって自動的に表示される。
【0121】
例えば、
図4に概略的に示すように、左-Di信号及びベースライン4010などの特定のチャネルが専門家によって選択されると、I/Oデバイス1100は、例えば、「高反応」、「正常反応」、「中等度の低下」、「大幅な低下」、「反応の残り」、及び「無反応」などの様々なチャネル関連シナリオに関連する様々なラベルによって注釈された、専門家が選択可能なフィールドである、対応するチャネルラベリングオプション4150Aを表示する。行われた選択は、太い矩形4001Aによって概略的に示される。したがって、複数の信号の分析に基づいて、分析装置は、複数の信号のうちの少なくとも1つを対応するカテゴリに分類し、任意選択的に、対応する出力を提供するように構成され得る。
【0122】
別の実施例では、
図5に概略的に示すように、専門家が特定のモダリティの全ての信号(例えば、MEP信号4010~4110)を選択すると、I/Oデバイス1100は、例えば「正常」及び「大幅な低下」のうちの1つであり得る様々なモダリティ関連シナリオに関連する様々なラベルによって注釈された、対応するモダリティラベリングオプション4150Bを表示する。行われた選択は、太い矩形4001Bによって概略的に示される。したがって、複数の信号の分析に基づいて、分析装置は、複数の信号のうちの少なくとも1つを対応するカテゴリに分類し、任意選択的に、対応する出力を提供するように構成され得る。
【0123】
さらにさらなる実施例では、
図6に概略的に示すように、専門家が全てのモダリティの全ての信号を選択すると、I/Oデバイス1100は、例えば、「正常」、「脊髄損傷」、「神経損傷」、及び「全身性」のうちの1つであり得る様々な臨床シナリオに関連する様々なラベルによって注釈された、対応する臨床的解釈ラベリングオプション4150Cを表示する。全ての信号の選択は、太い矩形4001Cで概略的に示される。それに対応して、いくつかの実施例では、分析装置は、少なくとも2つの神経構造に関連する複数の信号の集合分析に基づいて、複数の信号のうちの少なくとも1つの信号の状態を、以下のカテゴリ、すなわち、「正常」、「脊髄損傷」、「神経損傷」、及び「全身性」のうちの1つに分類し得、任意選択で、対応する出力を提供する。
【0124】
いくつかの実施例では、I/Oデバイス1100は、選択されたシナリオのうちの1つが技術的問題と関連があるか否かを示すために「技術的問題」と注釈されたチェックボックスを表示し得る。
【0125】
I/Oデバイス1100によって表示され得る追加のフィールドには、例えば、現在の時間及び表示されたモダリティに関する情報を表示するタイトル及び時間フィールド4105、EEG信号フィールド4120、EEGスペクトログラムフィールド4130、選択されたラベル表示フィールド4140、一般コメントフィールド4170、ページプロパティ構成フィールド4180、及び選択されたラベルに関するメモを入力するためのメモフィールド4190が含まれ得る。
【0126】
さらに
図7を参照する。医療処置を受けている患者の神経系における信号を記述するデータを分析するための方法は、いくつかの実施形態では、患者に複数の物理刺激を与えた結果として、患者の少なくとも2つの(例えば、別個のまたは異なる)(例えば、異なる経路に関連する)神経構造で生成された複数の神経生理学的反応信号を記述するデータを受信する(ブロック7100)ことを含み得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、本方法は、受信したデータに基づいて、少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷を示す異常な事象を識別する(ブロック7200)ことをさらに含み得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、本方法は、識別された事象に関する第1の出力を提供する(ブロック7300)ことを含み得る。
【0129】
追加の実施例:
実施例1は、被験体の神経系の神経監視信号を分析するように構成された神経監視データ分析装置に関し、本装置は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのメモリであって、被験体の神経系の複数の神経構造において少なくとも1つの信号を反応可能なように生成するために哺乳類被験体に加えられる少なくとも1つの物理刺激を記述するデータと、加えられた物理刺激に応じて生成される少なくとも1つの神経生理学的反応信号を記述するセンサデータと、を含む患者データを受信することと、少なくとも1つの物理刺激を記述する受信した患者データ及び生成された反応信号に基づいて、患者の複数の神経構造のうちの少なくとも1つに関する少なくとも1つの特性を判定することと、を実行させるために少なくとも1つのプロセッサによって実行可能なデータ及びソフトウェアコード部分を記憶するように構成された、少なくとも1つのメモリと、を備える。任意選択的に、複数のレベルの階層的に配置された機械学習サブモデルを含む機械学習モデルが、受信された患者データを分析するために使用される。
【0130】
実施例2は、実施例1の主題を含み、任意選択的に、少なくとも1つの特性が、神経構造の機能状態に関連する。
【0131】
実施例3は、実施例1及び/または実施例2の主題を含み、任意選択的に、複数の神経構造の神経構造は、神経経路及び/または受容体を含む。
【0132】
実施例4は、実施例1~3のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、神経機能状態を判定するための少なくとも1つの分類器を含む。
【0133】
実施例5は、実施例4の主題を含み、任意選択的に、例えば、勾配ブースティング及び/または人工神経回路網を含む機械学習モデルを採用することを含む。
【0134】
実施例6は、実施例5の主題を含み、任意選択的に、手術中に、専門家が、少なくとも1つの物理刺激を記述する受信された患者データ及び生成された反応信号を、機械学習モデルの訓練のための1つ以上のラベルと関連付けることを可能にするインターフェースを備えており、1つ以上のラベルが患者の神経系の特性に関連する。
【0135】
実施例7は、実施例4及び/または実施例5の主題を含み、任意選択的に、神経機能状態を以下の「正常」、「低下」または「消失」のうちの1つに分類するように構成される。
【0136】
実施例8は、実施例1~7のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、少なくとも1つの物理刺激は、以下の、誘発電位、反射、自発電位、または上記の任意の組み合わせのうちの1つに関連する。
【0137】
実施例9は、実施例1~8のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、メモリは、以下の、臨床患者データ、人口統計学的患者データ、麻酔データ、生理学的患者データ、手術データ、ベースライン運動誘発電位信号データ、ベースラインEMG信号、ベースラインEEG信号、ベースライン体性感覚誘発電位信号データ、反射作用、またはそれらの任意の組み合わせ、のうちの1つをさらに含む患者データを受信するように構成される。
【0138】
実施例10は、実施例1~9のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、情報は、以下の、全身性生理学的状態、システム動作不良、または両方のうちの1つを記述する臨床情報をさらに含む。
【0139】
実施例11は、実施例1~10のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、以下の、運動損傷衝撃位置を含む運動傷害、感覚衝撃位置を含む体性感覚傷害、完全または不完全な損傷を含む脊髄経路損傷重症度、またはそれらの任意の組み合わせ、のうちの1つに関連するものとして経路損傷を特徴付けるようにさらに構成される。
【0140】
実施例12は、実施例1~11のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、以下の、筋節損傷、完全な損傷または不完全な損傷を含む神経損傷重症度、のうちの1つに関連するように、少なくとも1つの神経構造の損傷を特徴付けるようにさらに構成される。
【0141】
実施例13は、実施例1~12のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、少なくとも1つの特性は、リアルタイムまたは準リアルタイムでユーザに提供される。
【0142】
実施例14は、実施例1~13のいずれか1つの主題を含み、任意選択的に、さらに、以下の、追加の運動誘発電位を誘発する、追加の体性感覚誘発電位を誘発する、追加の運動誘発電位の刺激強度を変化させる、追加の体性感覚誘発電位の刺激強度を変化させる、記録パラメータを更新する、神経監視システムの動作不良をチェックする、インピーダンスをチェックする、麻酔パラメータをチェックする、末梢神経刺激を行う、生理学的パラメータをチェックする、患者位置をチェックする、手術を維持する、電極の位置決めを変更及び/またはチェックする、患者の位置決め、または前述の任意の組み合わせ、のうちの1つを含む手術推奨出力を提供するように構成される。
【0143】
実施例15は、実施例1~14のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、装置は、術中に使用可能であるように構成される。
【0144】
実施例16は、実施例4~15のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、機械学習モデルは、複数の機械学習サブモデルを含む。
【0145】
実施例17は、実施例7の主題を含み、任意選択的に、階層的に配置された機械学習サブモデルの第1のレベルの機械学習サブモデルは、信号モダリティに関連する複数のチャネルの信号を分析して、複数のそれぞれのチャネルごとの分析出力を生成するように構成される。
【0146】
実施例18は、実施例17の主題を含み、階層的に配置された機械学習サブモデルの第2のレベルの機械学習サブモデルは、複数のチャネルごとの分析出力を受信するように構成され、第2のレベルの機械学習サブモジュールは、信号モダリティの複数の受信されたチャネルごとの分析出力を分析して、モダリティを記述する分析出力を提供するように構成される。
【0147】
実施例19は、実施例18の主題を含み、任意選択的に、階層的に配置されたサブモジュールの第3のレベルの機械学習サブモジュールは、モダリティを記述する分析出力を受信し、第3のレベルの機械学習サブモジュールは、第2のサブモジュールから受信された出力を分析して、受信された患者データの臨床的解釈を記述する出力を生成するように構成される。
【0148】
実施例20は、神経監視データ分析を行うための方法を含み、本方法は、
【0149】
患者データを受信することであって、
【0150】
被験体の神経系の複数の神経構造において少なくとも1つの信号を反応可能なように生成するために哺乳類被験体に加えられる少なくとも1つの物理刺激を記述するデータと、加えられた物理刺激に応じて生成される少なくとも1つの神経生理学的反応信号を記述するセンサデータと、を含む、患者データを受信することと、
【0151】
少なくとも1つの物理刺激を記述する受信した患者データ及び生成された反応信号に基づいて、患者の複数の神経構造のうちの少なくとも1つに関する少なくとも1つの特性を判定することと、を含む。任意選択的に、判定することは、受信された患者データを分析するために、複数のレベルの階層的に配置された機械学習サブモデルを有する機械学習モデルを採用することを含む。
【0152】
実施例21は、実施例20の主題を含み、任意選択的に、少なくとも1つの特性が、神経構造の機能状態に関連する。
【0153】
実施例22は、実施例20及び/または実施例21の主題を含み、任意選択的に、判定することは、神経機能状態を分類することを含む。
【0154】
実施例23は、実施例21~23のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、判定することは、患者データを分析するために、機械学習モデルを採用することを含む。
【0155】
実施例24は、実施例22~23のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、神経機能状態を以下の、「正常」、「低下」または「消失」のうちの1つに分類する。
【0156】
実施例25は、実施例20~24のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、以下の、
【0157】
追加の運動誘発電位を誘発する、
【0158】
追加の体性感覚誘発電位を誘発する、
【0159】
追加の運動誘発電位の刺激強度を変化させる、
【0160】
追加の体性感覚誘発電位の刺激強度を変化させる、
【0161】
記録パラメータを更新する、
【0162】
神経監視システムの動作不良をチェックする、
【0163】
インピーダンスをチェックする、
【0164】
麻酔パラメータをチェックする、
【0165】
末梢神経刺激を行う、
【0166】
生理学的パラメータをチェックする、
【0167】
患者位置をチェックする、
【0168】
手術を維持する、
【0169】
電極の位置決め、
【0170】
患者の位置決め、または
【0171】
前述の任意の組み合わせ、のうちの1つを含む手術推奨出力を提供する。
【0172】
実施例26は、実施例20~25のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、患者データのデータ分析を術中に実施することを含む。
【0173】
実施例27は、実施例23~26のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、機械学習モデルは、複数の機械学習サブモデルを含む。
【0174】
実施例28は、実施例27の主題を含み、任意選択的に、信号モダリティに関連する複数のチャネルの信号を分析して、階層的に配置されたサブモデルの第1レベルの機械学習サブモデルによって複数のそれぞれのチャネルごとの分析出力を生成する。
【0175】
実施例29は、実施例28の主題を含み、任意選択的に、階層的に配置されたサブモデルの第2のレベルの機械学習サブモジュールによって、複数のチャネルごとの分析出力を受信することと、
【0176】
第2のレベルの機械学習モジュールによって、信号モダリティの複数の受信されたチャネルごとの分析出力を分析して、モダリティを記述する分析出力を提供することと、を含む。
【0177】
実施例30は、実施例29の主題と、任意選択的に、階層的に配置されたサブモジュールの第3のレベルの機械学習サブモジュールで、モダリティを記述する分析出力を受信することと、
【0178】
第3のレベルの機械学習サブモジュールによって、第2のサブモジュールから受信された出力を分析して、受信された患者データの臨床的解釈を記述する出力を生成することと、を含む。
【0179】
実施例31は、神経監視システムの実行中に、神経監視システムに関連付けられた神経監視ラベリングプラットフォームで患者データを受信することと、ラベリングプラットフォームの入出力(I/O)デバイスのディスプレイ上に、受信された患者データに関連する情報を表示することと、実行中に、I/Oデバイスを使用して患者データをラベリングすることとを含む方法であって、1つ以上のラベルが、患者の神経系の特性に関連する、方法を含む。
【0180】
実施例32は、実施例31の主題を含み、任意選択的に、ラベリングすることは、神経監視データ分析装置の機械学習モデルを訓練するために神経監視システムから受信した患者データのラベリングのために術中に実施される。
【0181】
実施例33は、実施例31及び/または実施例32の主題を含み、任意選択的に、ラベリングすることは、I/Oデバイスのディスプレイ上で1つ以上のウィンドウをドラッグすることによって、表示された情報の一部を選択することを含む。
【0182】
実施例34は、実施例31~33のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、ラベリングすることは、I/Oデバイスのディスプレイをタッチ押下することによって、表示された情報の一部を選択することを含む。
【0183】
実施例35は、実施例31~34のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、ラベリングすることは、I/Oデバイスに音声入力を提供することによって、表示された情報の一部を選択することを含む。
【0184】
実施例36は、実施例31~35のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、ラベリングすることは、I/Oデバイスに注視に基づく入力を提供することによって、表示された情報の一部を選択することを含む。
【0185】
実施例37は、実施例31~36のいずれか1つ以上の主題を含み、任意選択的に、ラベリングすることは、複数のレベルの階層的に配置された機械学習サブモデルを含む機械学習モデルにおいて、選択された情報と、選択された情報の対応する階層レベルとの間の関連に基づいて、表示された情報の一部を選択することを含む。
【0186】
いくつかの実施例では、神経監視データ分析装置は、以下のステップ、すなわち、哺乳動物に、例えば、異なるまたは別個の経路の、またはそれに関連する、複数の神経構造における複数の神経物理刺激を与えることと、哺乳動物に1つ以上の神経刺激を与えたことに応じて、哺乳動物の複数の神経構造に関連して生成される複数の神経生理学的反応信号を記述するデータを分析することと、検出された異常が少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷を示すか否かを判定することと、任意選択で、検出された異常が少なくとも1つの神経構造の損傷を示す場合に、出力を提供することと、を実行するように構成される。異なる経路は、例えば、異なる運動及び/または感覚及び/または副交感神経及び/または交感神経経路に関連し得る。いくつかの実施例では、「異なる経路」は、同じカテゴリ(異なる運動経路)または異なるカテゴリ(運動及び感覚経路)の異なる経路に関連し得る。
【0187】
いくつかの実施例では、被験体の神経系を監視するように構成された神経監視データ分析装置は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのメモリであって、患者データ及びセンサデータを受信することと、受信した患者データに基づいて、少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷を示す異常な事象を識別することと、識別された事象に関連する第1の出力を提供することと、を実行させるために少なくとも1つのプロセッサによって実行可能なデータ及びソフトウェアコード部分を記憶するように構成された、少なくとも1つのメモリと、を備える。
【0188】
いくつかの実施例では、患者データは、哺乳類被験体の神経系の少なくとも2つの神経構造に加えられる複数の物理刺激を記述する。いくつかの実施例では、センサデータは、複数の物理刺激を加えることに応じて、少なくとも2つの神経構造で生成される複数の神経生理学的反応信号を記述する。
【0189】
いくつかの実施例では、識別するステップは、さらに、複数の神経構造に任意選択で同時に加えられる、複数の物理刺激を記述するセンサデータに基づく。
【0190】
いくつかの実施例では、識別するステップは、1)少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷に関連する第1の異常事象と、2)少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷に関連しない第2の異常事象とを区別することを含む。
【0191】
実施例では、少なくとも2つの神経構造で生成された複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、加えられた物理刺激を記述するデータとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陽性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陽性率と比較して、低減される。
【0192】
いくつかの実施例では、少なくとも2つの神経構造によって及び/またはその中で生成される複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、加えられた物理刺激を記述するデータとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陰性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陰性率と比較して、低減される。
【0193】
いくつかの実施例では、識別することは、異常事象を、以下のカテゴリ、すなわち、少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷及び/または傷害に関連する第1の異常事象、及び少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷に関連しない第2の異常事象、のうちの1つに分類することを含む。
【0194】
いくつかの実施例では、第1の出力は、検出された異常事象が少なくとも1つの神経構造の損傷に関連する確率に関する情報を含む。
【0195】
いくつかの実施例では、本装置は、第2の異常事象を記述する第2の出力を提供するように構成される。
【0196】
いくつかの実施例では、第2の異常事象を記述する出力は、第2の異常事象が以下の、センサ誤構成;信号アーチファクト、全身性生理学的要因、システム動作不良、環境要因、または前述の任意の組み合わせ、のうちの1つに関係するかどうかに関する情報を含む。
【0197】
いくつかの実施例では、全身性要因は、以下の、患者の麻酔、血圧、患者の位置、患者の姿勢、または前述の任意の組み合わせ、のうちの1つ以上を含む。
【0198】
いくつかの実施例では、第1の異常事象は、神経構造の機能状態に関連する。
【0199】
いくつかの実施例では、神経構造は、神経経路及び/または受容体を含む。
【0200】
いくつかの実施例では、第1の異常事象は、以下のカテゴリ、「低下」または「消失」、のうちの1つに分類される神経機能状態に関連する。
【0201】
いくつかの実施例では、第2の異常事象は、少なくとも1つの神経構造の機能状態を「正常」と分類することを含む。
【0202】
いくつかの実施例では、複数の物理刺激は、以下の、誘発電位、反射、自発電位、または上記の任意の組み合わせ、のうちの1つに関連する。
【0203】
いくつかの実施例では、神経監視データ分析装置は、哺乳類被験体の神経系の少なくとも2つの神経構造に加えられる複数の物理刺激を記述するデータと、複数の物理刺激を加えることに応じて少なくとも2つの神経構造において生成される複数の神経生理学的反応信号を記述するセンサデータと、を含む患者データを受信するように構成される。本装置は、さらに、複数の神経生理学的反応信号を(例えば、集合的に)分析して、(例えば、集合的に)分析することに基づいて、損傷及び少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つを示す異常事象を識別し、任意選択で、識別された事象に関連する第1の出力を提供するように構成される。いくつかの実施例では、「集合的に分析すること」という表現は、分析された信号のうちの1つ以上の異常を検出して分類するための、様々な信号を記述するより多くの量のデータを分析することに関連する。比較的多数の信号の寄与を考慮することによって、偽陽性比(例えば、神経構造損傷としての異常の分類)は、異常検出及び分類について比較的少数の信号が分析される手法と比較して低減される。
【0204】
いくつかの実施例では、分析することは、複数の反応信号を記述し、複数の反応信号を生成するために少なくとも2つの神経構造に加えられる物理刺激を記述するデータを(例えば、集合的に)分析することを含む。
【0205】
いくつかの実施例では、少なくとも2つの神経構造で生成された複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、加えられた物理刺激を記述するデータとを考慮する(例えば、集合的に分析する)ことによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陽性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られるはずの偽陽性率と比較して、低減される。いくつかの実施例では、少なくとも2つの神経構造で生成された複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、加えられた物理刺激を記述するデータとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陰性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られるはずの偽陰性率と比較して、低減される。
【0206】
いくつかの実施例では、神経監視データ分析装置は、検出された異常が少なくとも1つの神経構造の損傷に関連しないと判定された場合に、検出された異常に関する情報を含む第2の出力が提供されるように構成される。
【0207】
いくつかの実施例では、第1の出力は、検出された異常が少なくとも1つの神経構造の損傷及び/または傷害を示す確率を示す。
【0208】
いくつかの実施例では、少なくとも1つの神経構造の損傷は、機能欠損を引き起こす可能性があり、少なくとも1つの神経構造を含む組織領域との物理的係合(外科的係合)の結果である。
【0209】
いくつかの実施例では、本装置は、生成された反応信号を対応するベースライン信号と比較することによって異常を検出するように構成される。
【0210】
いくつかの実施例では、本装置は、少なくとも1つの神経構造の神経機能状態を、以下のカテゴリ、「正常」、「低下」、「消失」のうちの1つに分類するための分類器を含む。
【0211】
いくつかの実施例では、神経監視データ分析装置は、哺乳類被験体の神経系の少なくとも2つの神経構造に加えられた複数の物理刺激を記述するデータと、複数の加えられた物理刺激に応じて少なくとも2つの神経構造において生成される複数の神経生理学的反応信号を記述するセンサデータと、を含む、患者データを受信することと、反応信号を記述するデータにおける検出された異常が、少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷を示すか否かを判定することと、検出された異常が、少なくとも1つの神経構造の損傷に関連すると装置によって判定された場合、装置は、任意選択で、少なくとも1つの神経構造の損傷に関する情報を含む第1の出力を提供することと、を実施するように構成される。
【0212】
いくつかの実施例では、患者データは、以下の、臨床患者データ、人口統計学的患者データ、麻酔データ、生理学的患者データ、手術データ、ベースライン運動誘発電位信号データ、ベースラインEMG信号、ベースラインEEG信号、ベースライン体性感覚誘発電位信号データ、反射作用、または前述の任意の組み合わせ、のうちの1つを記述する。
【0213】
いくつかの実施例では、第1の出力は、例えば、以下の、運動損傷衝撃位置を含む運動傷害、感覚衝撃位置を含む体性感覚傷害、完全または不完全な損傷を含む脊髄経路損傷重症度、または前述の任意の組み合わせ、のうちの1つに関連するものとして経路損傷を特徴付ける情報を含む。いくつかの実施例では、本装置は、以下の、筋節損傷、及び/または完全な損傷または不完全な損傷を含む神経損傷重症度、のうちの1つに関連するものとして、少なくとも1つの神経構造の損傷を特徴付けるように構成される。
【0214】
いくつかの実施例では、異常事象の第2の出力は、1つを記述する臨床情報、すなわち、全身性生理学的状態、神経監視システム動作不良、またはその両方を含む。
【0215】
いくつかの実施例では、本装置は、以下の、追加の運動誘発電位を誘発する、追加の体性感覚誘発電位を誘発する、追加の運動誘発電位の刺激強度を変化させる、追加の体性感覚誘発電位の刺激強度を変化させる、記録パラメータを更新する、神経監視システムの動作不良をチェックする、インピーダンスをチェックする、麻酔パラメータをチェックする、末梢神経刺激を行う、生理学的パラメータをチェックする、患者の位置及び/または姿勢をチェックする及び/または変更する(方法)、手術を維持する、電極の位置決め、または前述の任意の組み合わせ、のうちの1つを含む手術推奨出力を提供するように構成される。いくつかの実施例では、手術推奨出力は、識別された異常に依存する。
【0216】
いくつかの実施例では、本装置は、複数の階層的に構成された機械学習サブモデルを含む。階層的に配置された機械学習サブモデルの第1のレベルの機械学習サブモデルは、信号モダリティに関連する複数のチャネルの信号を分析して、複数のそれぞれのチャネルごとの分析出力を生成するように構成され得る。階層的に配置された機械学習サブモデルの第2のレベルの機械学習サブモジュールは、複数のチャネルごとの分析出力を受信するように構成され得る。第2のレベルの機械学習サブモジュールは、信号モダリティの複数の受信されたチャネルごとの分析出力を分析して、モダリティを記述する分析出力を提供するように構成され得る。階層的に配置された機械学習サブモデルの第3のレベルの機械学習サブモジュールは、モダリティを記述する分析出力を受け取り得る。第3のレベルの機械学習サブモジュールは、第2のサブモジュールから受信された出力を分析して、受信された患者データの臨床的解釈を記述する出力を生成するように構成される。
【0217】
いくつかの実施例では、神経監視データ分析装置は、被験体の神経系の少なくとも2つの神経構造において複数の対応する刺激信号を反応的に生成するために哺乳類被験体に適用される複数の物理刺激を記述するデータと、複数の加えられた物理刺激に応じて生成される複数の神経生理学的反応信号を記述するセンサデータと、を含む患者データを受信するように構成され、反応信号が少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つに関して異常な特性を示すか否かを判定し、少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷を示す少なくとも1つの異常特性と、少なくとも1つの神経構造の損傷及び/または傷害を示さない少なくとも1つの異常特性とを区別し、任意選択的に、検出された異常特性が少なくとも1つの神経構造の損傷を示す場合に出力を提供する。
【0218】
いくつかの実施例では、神経監視データ分析装置は、被験体の神経系の少なくとも2つの神経構造において複数の対応する刺激信号を反応的に生成するために哺乳類被験体に適用される複数の物理刺激を記述するデータと、複数の加えられた物理刺激に応じて生成される複数の神経生理学的反応信号を記述するセンサデータと、を含む患者データを受信するように構成され、反応信号に関して検出された異常を、以下のカテゴリ、少なくとも2つの神経構造の少なくとも1つの損傷を示す第1の異常、及び少なくとも1つの神経構造の損傷に関連しない第2の異常、のうちの1つに分類し、任意選択的に、異常が第1の異常として分類された場合に出力を提供する。いくつかの実施例では、分類することはまた、少なくとも2つの神経構造の各構造に関連するベースライン信号を考慮に入れる。
【0219】
いくつかの実施例では、分類することは、以下のステップ、加えられた物理刺激の受信されたデータ及び生成された反応信号を分析すること、及び分析することに基づいて、生成された反応信号のうちの少なくとも1つの異常を検出すること、の後に行われる。
【0220】
いくつかの実施例では、分析することは、生成された反応信号、及び任意選択的に、加えられた物理刺激の受信されたデータを集合的に分析することを含む。いくつかの実施例では、分析することは、加えられた物理刺激の受信データ、生成された反応信号、及び対応するベースライン信号を集合的に分析することを含む。
【0221】
いくつかの実施例では、神経監視データ分析方法は、哺乳動物に神経刺激を与えることと、加えられた神経刺激に応じて生成された信号を記述するデータを分析することと、生成された反応信号に関連する異常を検出することと、検出された異常が少なくとも2つの神経構造のうちの少なくとも1つの損傷を示すか否かを判定することと、任意選択的に、検出された異常が少なくとも1つの神経構造の損傷を示す場合に出力を提供することとを含む。いくつかの実施例では、データはまた、哺乳動物の神経系において複数の反応信号を反応的に生成するために哺乳類被験体に加えられる物理刺激を記述する。いくつかの実施例では、(集合的に)分析されるデータはまた、対応するベースライン反応信号を記述する。いくつかの実施例では、少なくとも1つの神経構造の損傷を示す検出された異常は、神経構造の機能状態に関連する。いくつかの実施例では、判定することは、神経構造の機能状態を分類することを含む。いくつかの実施例では、本方法は、神経機能状態を以下の、「正常」、「低下」、または「消失」のうちの1つに分類することを含む。
【0222】
いくつかの実施例では、本方法は、階層的に配置された学習サブモデルの第1のレベルの機械学習サブモデルによって、複数のそれぞれのチャネルごとの分析出力を生成するために、信号モダリティに関連する複数のチャネルの信号を(例えば、集合的に)分析することを含む。
【0223】
いくつかの実施例では、本方法は、階層的に配置されたサブモジュールの第2のレベルの機械学習サブモジュールによって、複数のチャネルごとの分析出力を受信することと、第2のレベルの機械学習サブモジュールによって、信号モダリティの複数の受信されたチャネルごとの分析出力を分析して、モダリティを記述する分析出力を提供することとを含む。いくつかの実施例では、本方法は、階層的に配置された機械学習サブモジュールの第3のレベルの機械学習サブモジュールにおいて、モダリティを記述する分析出力を受信することと、第3のレベルの機械学習サブモジュールによって、第2のレベルのサブモジュールから受信された出力を分析して、受信された患者データの臨床的解釈を記述する出力を生成することとを含む。
【0224】
いくつかの実施例では、少なくとも2つの神経構造で生成された複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、加えられた物理刺激を記述するデータとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陽性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陽性率と比較して、低減される。
【0225】
いくつかの実施例では、少なくとも2つの神経構造で生成された複数の神経生理学的反応信号と、任意選択で、加えられた物理刺激を記述するデータとを考慮することによって、神経構造の損傷に関連すると識別された異常事象の偽陰性率は、各反応信号が個々に分析された場合に得られる偽陰性率と比較して、低減される。
【0226】
本明細書に記載され、添付の図に示される方法は、限定的に解釈されないものとする。例えば、本明細書に記載される方法は、本明細書に記載される及び/または図に示されるものと比較して、追加のプロセスまたは動作を含み、あるいはさらに少ないプロセスまたは動作を含み得る。加えて、方法ステップは、本明細書に図示及び記載されているような時系列順序に必ずしも限定されない。
【0227】
本明細書に例示される任意のデジタルコンピュータシステム、装置、ユニット、デバイス、モジュール及び/またはエンジンは、本明細書に開示される方法を実施するように構成されまたは他の方法でプログラムされることができ、システム、装置、モジュール及び/またはエンジンがそのような方法を実施するように構成される限り、それは本開示の範囲及び趣旨の範囲内である。システム、装置、モジュール及び/またはエンジンが、本明細書に開示された方法を実施するプログラムソフトウェアからのコンピュータ読み取り可能かつ実行可能な命令に従って特定の機能を実行するようにプログラムされると、実際には、本明細書に開示された方法の実施形態に特化した特別目的のコンピュータとなる。本明細書に開示される方法及び/またはプロセスは、例えば、非一時的な有形のコンピュータ可読、及び/または非一時的な有形の機械可読記憶装置内を含む情報担体内に有形に具現化され得るコンピュータプログラム製品として実装され得る。コンピュータプログラム製品は、本明細書に開示される方法及び/またはプロセスを実行するためのソフトウェアコード部分を含むデジタルコンピュータの内部メモリに直接ロード可能である。
【0228】
本明細書に開示される方法及び/またはプロセスは、コンピュータ可読信号媒体によって無形的に具現化され得るコンピュータプログラムとして実装され得る。コンピュータ可読信号媒体は、例えば、ベースバンドでまたは搬送波の一部として、コンピュータ可読プログラムコードが具現化された伝搬データ信号を含み得る。このような伝搬信号は、電磁、光学、またはその任意の組み合わせを含むが、これに限定されるものではない様々な形のいずれかをとり得る。コンピュータ可読信号媒体は、非一時的なコンピュータまたは機械可読記憶装置ではなく、本明細書で論じる装置、システム、プラットフォーム、方法、操作、及び/またはプロセスによって、またはそれらに関連して使用されるプログラムを通信、伝播、または伝送することができる任意のコンピュータ可読媒体であってもよい。
【0229】
「非一時的コンピュータ可読記憶装置」及び「非一時的機械可読記憶装置」という用語は、配布媒体、中間記憶媒体、コンピュータの実行メモリ、及び本明細書に開示される方法の実施形態を実装するコンピュータプログラムによって後で読み取るために記憶することが可能な任意の他の媒体または装置を包含する。コンピュータプログラム製品は、1つのコンピュータ上、または1つのサイトの複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができ、または複数のサイトに分散して配置され、1つ以上の通信ネットワークによって相互接続され得る。
【0230】
これらのコンピュータ可読命令及びコンピュータ実行可能命令は、汎用コンピュータのプロセッサ、専用コンピュータ、または機械を製造するための他のプログラム可能データ処理装置に提供され得、これにより、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサを介して実行する命令は、ブロックまたは複数のブロックのフローチャート及び/またはブロック図に指定される機能/行為を実施するための手段を作成する。また、これらのコンピュータ可読プログラム命令及びコンピュータ実行可能プログラム命令は、コンピュータ、プログラム可能データ処理装置、及び/または他のデバイスに特定の方法で機能するように命令できるコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよく、これにより命令を格納させるコンピュータ可読記憶媒体は、ブロックまたは複数のブロックのフローチャート及び/またはブロック図に指定される機能/行為の態様を実施する命令を含んだ、製造品を含む。
【0231】
また、コンピュータ可読命令及びコンピュータ実行可能命令をコンピュータ、その他のプログラム可能なデータ処理装置、またはその他のデバイスにロードすることで、一連の操作ステップをコンピュータ、その他のプログラム可能なデータ処理装置、またはその他のデバイス上で実行し、コンピュータ、その他のプログラム可能なデータ処理装置、またはその他のデバイスで実行される命令がフローチャート及び/またはブロック図の1つ以上のブロックで指定される機能/行為を実施するような、コンピュータ実施プロセスを生成することができる。
【0232】
「エンジン」という用語は、1つ以上のコンピュータモジュールを含むことができ、モジュールは、より大きなシステムとインターフェースする内蔵型ハードウェア及び/またはソフトウェアコンポーネントであり得る。モジュールは、1つの機械または複数の機械の実行可能命令を備え得る。モジュールは、本明細書に開示される方法、プロセス、及び/または動作を、システム、装置、及び/またはプラットフォームに実施させるようにプログラムされた回路またはコントローラによって具現化され得る。例えば、モジュールは、カスタムVLSI回路またはゲートアレイ、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理チップ、トランジスタなどの既製の半導体、及び/または他の個別部品などを含むハードウェア回路として実装し得る。モジュールはまた、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルアレイロジック、プログラマブルロジックデバイス、及び/または同種のものなどのプログラマブルハードウェアデバイスに実装され得る。
【0233】
議論では、特に明記しない限り、本発明の実施形態の特徴または特徴の条件または関係特性を修正する「実質的に」及び「約」などの形容詞は、その条件または特性が、それが意図される用途のための実施形態の動作に許容される許容範囲内に定義されることを意味すると理解されるべきである。
【0234】
特に指定のない限り、大きさまたは数値に関する「実質的に」、「約」及び/または「近い」という用語は、それぞれの大きさまたは数値の-10%~+10%の包含範囲内であることを意味し得る。
【0235】
「~と結合した」には、間接的に「~と結合した」という意味もあれば、直接的に「~と結合した」という意味もある。
【0236】
本方法に含まれ得ることは、これらの図または対応する説明に限定されないことに留意することが重要である。例えば、本方法は、図に記載されているものと比較して、追加的な、あるいはさらに少ないプロセスまたは操作を含んでもよい。さらに、本方法の実施形態は、本明細書に図示され説明されるような時系列的順序に必ずしも限定されない。
【0237】
本明細書において、「処理」、「計算」、「算出」、「判断」、「確定」、「分析」、「確認」、「推定」、「導出」、「選択」、「推論」などの用語を使用する議論は、コンピュータ、コンピューティングプラットフォーム、コンピューティングシステム、または他の電子コンピューティングデバイスの操作及び/またはプロセス(複数可)であって、コンピュータのレジスタ及び/またはメモリ内の物理的(例えば、電子的)量として表されるデータを、コンピュータのレジスタ及び/またはメモリ、または操作及び/またはプロセスを実行する命令を格納し得る他の情報記憶媒体内の物理的量として同様に表される他のデータに操作及び/または変換する、操作及び/またはプロセスを指し得る。判断するという用語は、場合によっては「発見的に判断する」という意味も含み得る。
【0238】
ある実施形態が「閾値以上」の条件に言及している場合、これは「閾値と同等以上」の条件に言及している実施形態を排除するものと解釈されるべきではないことに留意すべきである。同様に、ある実施形態が「閾値未満」の条件について言及している場合、このことは、「閾値と等しいか、または閾値未満」の条件について言及している実施形態を排除するものと解釈されるべきではない。所与のパラメータの値が閾値を上回る場合に、条件が満たされると解釈される場合、所与のパラメータの値が所与の閾値以下である場合に、同じ条件が満たされないと見なされることは明らかである。逆に、所与のパラメータの値が閾値と等しいか、閾値以上であれば、条件は満たされると解釈されるべきであり、所与のパラメータの値が所与の閾値以下であれば(そして閾値以下でなければ)、同じ条件は満たされないと見なされる。
【0239】
特許請求の範囲または明細書が「a」または「an」要素及び/または特徴に言及している場合、そのような言及は、その要素が1のみであると解釈されるべきではないことを理解されたい。従って、例えば、「要素(an element)」または「少なくとも1つの要素(at least one element)」への言及は、「1つ以上の要素(one or more elements)」も包含し得る。
【0240】
単数形で使用される用語は、明示的に別段に記載される場合または文脈が他の形で必要とする場合を除いて、複数形も含むものとする。
【0241】
本願明細書及び特許請求の範囲において、「備える(comprise)」「含む(include)」及び「有する(have)」の各動詞、及びその活用語は、動詞の1つのデータ部分または複数のデータ部分が、動詞の1つ以上の主語の構成要素、要素、または部分の完全なリストであるとは限らないことを示すために使用される。
【0242】
特に断りのない限り、選択のための選択肢のリストの最後の2つのメンバー間に「及び/または」という表現を使用することは、リストされた選択肢の1つ以上の選択が適切であり、それを行うことができることを示す。さらに、「及び/または」という表現は、「以下の少なくとも1つ」、「以下のいずれか1つ」、または「以下の1つ以上」という表現と互換的に使用することができ、その後に様々な選択肢を列挙することができる。
【0243】
本明細書において、「A、B、C、または前述の任意の組み合わせ」という語句は、以下の全てを意味するものと解釈されるべきである:(i)AもしくはBもしくはC、またはA、B及びCの任意の組み合わせ、(ii)A、B及びCの少なくとも1つ、(iii)A、及び/またはB及び/またはC、及び(iv)A、B及び/またはC。適切な場合、A、B及び/またはCという語句は、A、BまたはCという意味に解釈できる。A、BまたはCという語句は、「A、B及びCからなる群から選択される」という意味に解釈されるべきである。この概念は、3つの要素(すなわち、A、B、C)に対して示されるが、より少ない数及びより多い数の要素(例えば、A、B、C、Dなど)にも及ぶ。
【0244】
明確にするために、別々の実施形態または実施例の文脈で説明されている本発明の特定の特徴も、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態、実施例、及び/またはオプションの文脈で説明されている本発明の様々な特徴も、別個に、または任意の適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の説明された実施形態、実施例、またはオプションにおいて適切なように提供され得る。様々な実施形態、実施例、及び/または任意選択の実施態様の文脈で説明される特定の特徴は、その実施形態、実施例、及び/または任意選択の実施態様がそれらの要素なしでは動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴とは見なされない。
【0245】
「いくつかの実施形態では」、「いくつかの実施形態による」、「例えば(for example)」、「例えば(e.g.)」、「例えば(for instance)」及び「任意選択で」という用語は、本明細書において互換的に使用され得ることに留意されたい。
【0246】
図に示された要素の数は、決して限定的なものとして解釈されるべきではなく、例示のみのためのものである。
【0247】
用語「~するように動作可能」は、用語「~するように変更または構成された」の意味を包含しうることに留意されたい。言い換えれば、あるタスクを「動作可能な」機械は、いくつかの実施形態では、その機能を実行するための単なる能力(例えば、「修正」)を包含し、他のいくつかの実施形態では、その機能を実行するために実際に作られた(例えば、「構成」された)機械を包含することができる。
【0248】
本出願を通じて、様々な実施形態が範囲形式で提示され、及び/または範囲形式に関連して提示され得る。範囲形式での記述は、単に便宜上及び簡潔にするためのものであり、本実施形態の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、その範囲内の個々の数値だけでなく、可能性のある全てのサブ範囲を具体的に開示したものと見なされるべきである。例えば、1~6といった範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などといったサブ範囲と、その範囲内の個々の数値、例えば、1、2、3、4、5、及び6とが具体的に開示されていると見なされるべきである。これは、範囲の広さに関係なく適用される。
【0249】
第1の表示番号と第2の表示番号との「間の範囲(ranging/ranges between)」という句、及び第1の表示番号「から」第2の表示番号「まで(to)」の「範囲(ranging/ranges from)」という句は、本明細書では互換的に使用され、第1の表示番号及び第2の表示番号と、それらの間の分数及び整数の数字の全てを含むことを意味する。
【0250】
本発明を、限られた数の実施形態に関して説明してきたが、これらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろ実施形態の一部を例示するものとして解釈されるべきである。
【国際調査報告】